運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-05-24 第24回国会 衆議院 本会議 第54号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十四日(木曜日)     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第五十号   昭和三十一年五月二十四日     午前零時五分開議  第一 教科書法案内閣提出)(前会の続)  第二 家畜取引法案内閣提出参議院送付)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  日程第一 教科書法案内閣提出)(前会の続)   本日は直ちに休憩し午後一時再開すべしとの動議井上良二君外百五十二名提出)   本日はこれにて散会すべしとの動議井上良二君外百五十二名提出)  日程第二 家畜取引法案内閣提出参議院送付)     午前零時十六分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 本日の議事日程参事をして報告いたさせます。     〔参事朗読〕  議事日程 第五十号    昭和三十一年五月二十四日(木曜日)     午前零時五分開議  第一 教科書法案内閣提出)            (前会の続)  第二 家畜取引法案内閣提出参議院送付)      ————◇—————
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第一、教科書法案を議題とし、前会の議事を継続いたします。     〔「総理を出せ」と呼び、その他発言する者あり〕
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 質疑の通告があります。順次これを許します。小林信一君。     〔小林信一登壇
  6. 小林信一

    小林信一君 私は、ただいま提案されました教科書法案に対する修正案に対しまして、小会派を代表して委員長並び提案者質問をいたすものであります。  今、この国会におきましては、さき地方教育行政組織並びに運営に関する法律案と、ただいま上程されました教科書法案内閣から提出されたのでありますが、両者とも現行教育制度を根本的に改革するものでありまして、この点、二つとも共通したものを持っております。すなわち、教育政治が介入する機会を与えている点、官僚の手によって教育が統制され、地方分権から中央集権になる傾向を多分に持っているという点でございます。従いまして、わが国の将来をこの二つ法律案から推測いたしまして、いかなる影響をもたらすかということを考えますときに、私は一つの恐怖を感ぜずにはおられぬのであります。世論があげてこの二つの悪法に反対し、現内閣教育行政の真意と、その意図するものは何であるかに深い疑念を持つに至っているのであります。  教育基本法は、その第十条によって、教育は、不当な支配に属し政治手段に利用されないところに、教育本来の使命である文化国家の建設の基盤になることを明示しております。これは、戦争という歴史の教訓であるとともに、われわれ国民決意であったはずであります。教育行政に当る者は常にこの原則に立っておることを国民に明確にし、審議に当っては、世論の声を聞き、いささかも疑念を持たしてはならないと私は確信しておるのでございます。(拍手)  さらに、さき教委法改正委員会審議を中途で打ち切られまして、中間報告という、類例のない強行手段によって本院の通過をはかり、今回の教科書法審議を尽すことを忘れて、いたずらに採決に専念したことは、現行地教委制度が、昭和二十七年、政府の一年延期の提案与党の一部が反対し、いいとも悪いとも国会意思表示をしないままに、いわゆる審議未了によって生まれた経過とあわせて見て現政府教育行政国民の信頼を完全に失ってしまうものといわなければならぬのであります。(拍手)わが子の成長があるがために、あらゆる労苦に耐え、いかなる犠牲にも従うところの親の心情を思うならば、事、教育行政に当っては、党利党略を捨てて、世論に耳をかす態度を、私は要望してやまないのであります。(拍手)  委員長は本法案審議がこの国民の要望に沿って行われたかどうかを説明する責任があると思うので、私はお伺いするのでありますが、委員長解任決議案というあいくちが、ときどき委員長の横っ腹にひらめきながら、この審議がなされておったことは、私が申し上げるまでもないところであります。(拍手)また、さらに、文部大臣あるいは初中局長等政府責任者出席がきわめて不良であったために、幾多究明すべき個所が残されておることにを私は知っております。しかし、これでも委員長は十分な審議が行われた、こう言われるかどうか。もう一ぺん、委員長は、この壇上から国民に向って御説明願いたいと思います。(拍手)  次に、修正案提案者に対してお伺いいたします。この法案内容並びに文部大臣との質疑によって明らかにされたものは、教科書国家統制にするための取締法だという印象以外には私にはないのであります。清瀬文部大臣は、出席の回数は少かったのでありますが、しかし、われわれ委員質問に対しましては、実に親切丁寧でありました。御老体にもかかわらず、よく法案研究されまして、御説明をなさったのでありますが、この点につきましては、私敬意を表します。しかし、残念ながら、大臣教育の実際というものを御存じなかったという点があるために、以上のような印象が私たちに強く残っておるのであります。(拍手)  その一つを申し上げれば、よい教科書を作るためにこの法案を出したんだ、そうして、その理由説明されるときに、教科書出版業者自由競争を許しておる、その自由競争によって教科書というものがよくなるんだ、しかし、無制限な競争というものは、この検定によって厳重に取り締る、その厳重に取り締るところにのみ、よい教科書が生まれるというのが、終始大臣の申されたところでありまして、教育というもの、人が人を教育するものであって、決して法律教育をするものではない、取締法教育をするのではないということが、私の最も遺憾とするところであったわけであります。(拍手)こういうような形でもって、この法案が実施された場合には、どういうことになるか。出版業者は、いよいよ文部省に迎合することにのみ専念いたしまして、教科書ほんとう創意工夫というふうなものをおろそかにすることがひどくなるわけであります。文部省が見ればよい教科書であっても、しかし、それが果してほんとうによい教科書であるかどうかということは、これは問題でございます。大臣は、もしこの法案が将来災いになるようなことがあれば、大臣が生きている限り責任をとる、というような悲壮な決意まで示されたのでありますが、しかし、これも、あくまでも文部省というものを完全、絶対なものとした場合のことでありまして、いかなる大臣が生まれ、いかなる官僚が生まれるかということを考えますときに、あまりに行き過ぎた考えだといわざるを得ないのでございます。(拍手)  一体、民主主義を育成する教育は現在どんな形で日本が踏み出ておるか、私が今さら申すまでもないのでございますが、決してすべてを教師にゆだねてはおりません。文部大臣指導要領をもちまして教育の大綱を示し、これに基いて教師指導計画を立てる、こういう形がとられておるのでございます。この指導計画教師が立てる場合に、その土地の実情、あるいは子供の特性、こういうものを真剣に考えるときに、初めて教育が成り立つのでございますが、一方におきましてこの指導要領に基いて、教科書には検定基準が作られております。これが基準になりまして教科書検定というものが行われでおる。つまり、文部省指導要領から出発して教科書も作られ、教師指導計画も作られ、その作られた指導計画に基いて教師がよい教科書を選ぶところに、今日の教育組織というものが生まれたわけでございます。しかし、これを全然無視いたしまして、検定を厳重にするところに業者自由競争が激しく行われて、そこによい教科書が生まれる、これはまことに教育本来の目的を失っているものであり、やがては、官僚の手によらなければ日本教育民主主義教育は生まれてこないというような錯覚にもなってくるわけでございます。  この指導計画を立てました教師が、現在非常に父兄から批判はございますが、教師がもし良心的に教科書を選ぶといたしましたならば、業者はこの教師の意向に沿うまで創意工夫をいたしまして、業者教師によって、真に教育に沿うところのよい教科書が生まれてくるのでございます。本法案によるならば、形こそ検定制度を標榜しております。しかし、内容を検討し、大臣見解を聞きますときに、これは決して検定制度本質を全うするものでなく、統制的な形に移行することになっているわけでございます。これに対しまして、先ほどの修正案提案者は、この検定に対する見解というものを、もう一度ここに明確にしていただき、検定拒否の条項を削除することが提案されているのでございますが、これによって、以上のような問題が解決されるかどうか、もう一度明確にお述べになっていただきたいのでございます。  以上の見解からいたしましても、政府提案が示しますところの採択方法というものは教師の立場を全然無視するものでありまして、この政府提案のあやまちを指摘されまして、提案者は、校長並びに教師主体として採択方式をとっておられますが、この点で今のような問題が解決されるかどうか、さらにお伺いをしたいのでございます。  この法案提出者並びにこれを支持しますところの与党諸君が、教師の一部に不正があったからといって、採択基準に対しまして、採択地区を設定し、さらに選定協議会というものを作って、教師意見を聞こうとしないのでございますが、これは基本的な教育作業というものを全然無視するものでございます。いかなる業者の誘惑がございましても、みずからの指導計画を尊重して、責任ある教師が真に教育的な熱情を持って作るその指導要領に沿って教科書が選定されなければならぬのでございますが、このためには、教科書研究施設機会というものを、もっと与えなければならぬのでございます。ただいたずらに教師責任を追及して、教師の一部に不正があったから、直ちにこれを国家統制的な態勢に持っていくというような考えよりも、みずからの今までの施政を反省いたしまして、その落度であります教科書研究施設研究する機会というものに、もっと重点を置かなければならぬのでございますが、この点、修正案提案者はどういうふうにお考えになっておられるか。従来のような、一年間にわずか十日間、狭い校舎に展示会を開いて、その中で見ることのできないような、形ばかりの展示会を作りまして、これによって教科書研究をさしておるというような、そういう怠慢が文部省にあったことを、与党諸君も、また政府もこれを考えなければ、真の教科書制度というものは確立できないと私は考えるものでございます。  次に、政府は、安い教科書を作らなければならない、これを本法案提案の第一条件にしているのでございますが、確かに父兄も要望しております。私たちも安い教科書を作ることに協力するものではございますが、だからといって、ここに政府提案いたします、採択地区を定めて、選定協議会によって一斉採択をすれば安くなるというようなことだけによって安い教科書を作り得るという考えは、まことに浅薄なものでございまして、決してこれでは教科書は安くならない、私はこういうように考えるのでございます。  もちろん、今まで、業者と、あるいは採択者の間に行われました不正な取引というものは、教科書の代価の中に加算されたかもしれません。しかし、専門家でございます業者にわれわれが聞くときには、これは行政監察委員会におきましても、業者がはっきり述べております。駐在員を置きましたり、あるいは多少買収の金を使う、そういうものよりも、教科書が安くならない原因は、文部省が毎年各学校から需要数を報告させまして、これを統計いたしまして、業者に送ります。業者はそれに従って本を作るわけでございますが、大体の業者は、文部省のとりました統計の八〇%を作つてよろしいということになっている。八〇%を作りましても、文部省が示す一〇〇に対して八〇%の教科書作つても、まだ返本がたくさん出て困るというのが、これが文部省統計でございます。こういうでたらめな統計作つて業者に製本をしいておつたところに、返本という、大きな、教科書の定価を高くする要因があったということを忘れているここは、私はまことに無責任だと考えるのでございます。(拍手)しかし、この教科書を安くするという問題が、選定地区一定にいたしまして、広い範囲教科書を使う場合には、確かに業者はこれを安くすることができるかもしれません。しかし、一方におきまして、選定協議会という、教師を全然無視しました採択方法をとるときには、その教育というものは、あてがわれた教科書によって不本意な教育をするという、無味乾燥な、しかも、昔の国定教科書を取り扱つたような、死せる教育になるという二つの矛盾の問題があるわけでございます。これが、社会党修正案によりますと、校長主体にしました教師意見を取り上げて採択をするということになっておりますが、この教科書を安くするという問題はどういうふうに解決できるかを、提案者から御説明願いたいのでございます。  社会党研究を重ねまして代案を出され、今日まで政府案と大別して検討して参つたのでございますが、今回その代案を撤回いたしまして、三点の修正案によって臨まれたことは、私はその態度敬意を表するものでございまして、それに賛成するものでございますけれども、以上述べました検定制度本質、あるいは指導要領を中核とした場合の採択方式に対しまして、提案者の持っておられる理念を御説明願いたい。そして安くするとか、よい教科書を作るという、この、きわめて単純ではございますが、教科書問題にとりましては重大な問題が、以上の三点の修正によって可能であるかどうかを、もう一度提案者に御説明願いたいのでございます。  以上をもちまして、私の質問を終ります。(拍手)     〔佐藤觀次郎登壇
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤觀次郎君 小林委員より質問がございましたので、簡単に答弁をいたしたいと思います。  実は、この教科書法案がおくれました大きな原因は、文部省初中局から、新教育委員会法と、それから教科書法案とが一緒に出て参りました。(「はっきり言え」「日本語をしやべれ」と呼ぶ者あり)黙つて聞け。何が悪いんだ。(発言する者多し)少くとも、今度のこの法案は、同じ文部省初中局において、同じような重要法案を出しているので、なかなか審議が進まない。しかも、これは三月の八日と十一日に出したのでございますが、それがために、あの教育委員会法中間報告で上って、今度参議院へ参わますと、ほとんど大臣は出てこない。(「はっきり言え」と呼ぶ者あり)はっきり言っているんだ。——私たちは、こういう間において、十八回の委員会を開いたのでございますが、大臣はたつた十回出ただけでございます。しかも、その間において、初中局の局長は来す、政務次官と説明員がたつた二人で、こういう不親切な答弁をやつておるわけでございます。教科書法案がおくれた原因は、委員長といたしましては、この政府の無責任やり方が、こういうふうにおくらかしたという原因でございまして、私たちは、なお審議を十分にやりたいと思いましたけれども、ただ、与党諸君が、早くやれ、早くやれということを言うだけで、効果がなかった関係上、こういうようなことになつたわけでございます。(拍手)  逐条審議をやりましたが、これは、高村委員与党の人が、自分で勝手に八百長の逐条審議をやつただけでございまして野党の社会党も、中立も、一人もまだ逐条審議をやらずに、こういうようなことになつたわけでございますので、御承知おき願いたいと思います。  以上、答弁いたします。(拍手)     〔辻原弘市君登壇
  8. 辻原弘市

    辻原弘市君 ただいま小林議員より御質問のありました第一の点は次のようなことであります。  検定政府案のごとく強化することが果してよい教科書ができるゆえんであると考えるかどうか、この点でございましたが、申し上げるまでもなく、教科書価値というものは、ます第一に内容でございます。従って、検定制度、あるいは、検定を行わないで自由に発行し、自由に採択する制度をとりましても、いずれもが、よい教科書作つて、よい内容を持つ教科書教育の上に活用していくという目的でなければならぬと考えておるのでございます。従って、その観点から申し上げますると、今回の政府案のごとく、先刻私が御説明を申し上げました、従来なかった第七条のごとき、事前に検定拒否し得るというような、いわゆる関門を狭くして自由発行を窮屈にするというやり方は、これは決して内容を高めていくゆえんでないということは明らかでございます。すなわち、実際問題に当てはめてみますと、まず、それぞれの内容を高めていきますためには、いろいろ各種の教科書、いろいろな著者、あるいは編著者によって作成せられて、それぞれ他との間の切瑳琢磨の結果によって、初めてこれが内容的に高められて参るのであります。ところが、これが、きわめて強い検定基準をもって臨んで、しかも、その基準を当てはめて、検定という門戸を狭くすることになって参りますと、結局、いい内容教科書教育的に価値のある内容を作るということよりも、いかにしてその検定基準に合致せしめるか、いかにしてこの検定をパスせしめるかという、そういった点に終始することによりまして、だんだん内容切瑳琢磨の結果によって高まつていくということよりも、同じような、きわめて形式的な内容に堕していくという結果がもたらされてくるということは、明らかであろうと考えるのでございます。このことは、今日、検定制度を、政府においてもこれを守ると一応言われておるゆえんのものは、一つには、国定教科書の当時に、いわゆる国定教科書国家目的に活用されるという問題以外に、画一的な一つのものを作つてあてがうというやり方が、内容的に何らの進歩向上も示さなかったという、過去のわが国教科書制度の欠陥に徴して、おそらく、政府においても、一挙に国定ということに踏み切れなかったのであろうと、私はかように判断をいたすのでございます。従って、少くとも、この検定門戸を狭めていくというやり方、これは内容画一化をはかるけれども、決して内容を向上せしめるいい教科書を作るゆえんにはならぬ、こういうことに考えておる次第でございます。  第二の御質問は、検定についての見解は一体どうであるか、第一の御質問ときわめてよく似通った問題でありまするが、ここで私は二つの点を申し上げておきたいと思います。それは、決して検定そのもの教科書制度として採用すべき最もいい方法ではないということであります。その証拠には、先刻も申し上げましたが、いわゆる民主主義国家といわれておる英米仏等におきましても、すでに、検定を強化するという方向よりも、検定はこれをだんだんはずしまして、いわゆる検定自由化ないしは採択自由化という方向をたどつておるのでございます。従って、検定を強化していくという今回の政府案が、かかる諸外国の趨勢にも反しておると、われわれは判定をいたしておるのでございます。第二の問題といたしまして、やはり第七条の検定拒否という点でありますが、この点をきわめて簡単に申し上げますると、結局、今から政府案によってやろうとする検定制度は、関門二つ作るということであります。現行法においては、これは文部大臣検定権ということにはなっておりまするが、実際は、文部大臣諮問機関である検定審議会が直接にそのことを扱つておりまして、文部省は、事実において、何らこの検定を左右することはできないのであります。そういうやり方現行制度であります。それに対して、今回新しくつけ加えたものが、第七条の、いわゆる文部省の手による検定拒否ということであります。従って、この二つが並んで、これからの教科書検定の窓口をうんと締めておるところに、これが画一的な教科書を作る国定への第一歩であると私どもが論駁している理由が存在するのでございます。(拍手)  その次の御質問は、採択の問題でございました。採択は、先刻申し上げましたように、政府の方においては、だんだんとこれを統一いたしまして、郡市ないしは都道府県においての地区作つて、その上で、一種目一ないし二の教科書を選ぶ、こういうふうに、非常に範囲を狭めてきているのでございますが、それに対して、私どもは、一定地区を限定して、その中で一つ二つ教科書を選んで、どの学校でも同じ教科書を使わせるということが、より教育的に価値のある方法ではない、と申しておるのであります。よく、現在の検定制度の中では、ばらばらに学校で選ばれるから、学校ごとの、いわゆる学力の差というものができる、こういうことを言うのでありまするが、果して、それでは、かつて国定の時代に学力差がなかったかどうかという点を、よく反省してみなければならぬと思います。学力差というものは、決して教科書を統一したからなくなる、統一しなかったから生まれるというような問題ではないということを、この機会に申し上げておきたいのであります。そういうことよりも、少くとも、学校で使うものは、その学校で選んでいく、結果において、それが隣の学校と、あるいは一郡市の学校一つになっても、それは差しつかえないのであります。それは、それぞれ教師が常時教科書というものの内容研究して、積み上つた意見集約点として、研さんが高まれば高まるほど、識見が高まれば高まるほど、よい教科書はよい教科書として採用されることが生まれるのであります。それを、頭からこれにしろということは、断じてこれは教育的でないということを、われわれは申すのであります。(拍手)  次に、教科書研究施設についてのお尋ねがございました。この点は、与党諸君におかれましても、政府原案にようやく頭を出しております。これに関する限りは、少くとも、私どもも、また政府においても、今日のいわゆる教科書研究施設が非常にちやちなものであつて展示会そのものが形式的であるということを認められている証拠であろうと思いますが、私どもは、この研究施設をうんと拡充強化して、すなわち、私ども代案に入れました構想としましては、市または郡の区域において、少くとも二または三のこの研究施設を常置いたしまして、そして、それには国が援助を与え、絶えず教師がよい教科書を選び得るだけの力を養う、また、いずれの教科書がよいかどうかを判定し得るだけの力を養う、そういう研究機関を強化することが、これがほんとうによい教科書学校で採用し得る第一条件である、こういう考え方のもとに、この研究施設をわが党としては強化いたしたいという見解を持っておるのでございます。  次に教科書価格の問題でございますが、これは、政府案によりますると、第四十八条に、教科書価格文部大臣の認定を得なければならぬということにいたしております。そのことは、私はけつこうではあると思いまするが、ただいま問題になっておる、先刻もやじの中にもありましたけれども教科書価格を引き下げるということは世論だ。これは確かに世論でありますが、引き下げることと、それを引き下げたがために、内容をもし低下させるような結果が招来するならば、これは角をためて牛を殺す結果を生むのであります。従って、あくまでも、教科書価格は、今日の段階においても、そのことを十分留意しつつ、行政的に考慮を払うならば、安くする方法は幾らでもあるのであります。ところが、今日まで、それらに対する十分な措置を、行政措置の上においても政府はとつていないがために、父兄各方面から教科書価格高の問題を指摘せられているのであります。たとえば、郵便配達料の問題、あるいは鉄道による運賃の問題、こういうものに対して、教科書のような公共性を持つものに何らの恩典を与えていないということ、これらは、私は具体的な事例として、政府が協力し、力をあわせて努力をいたしまするならば、けつこう解決のつく問題であると思います。  その他にもいろいろありまするが、きょうは時間の関係で省略します。ただ、問題は、単に教科書価格を引き下げるということによって、義務教育教科書が少くとも父兄に重い負担がかからないようにするという、そういうやり方のほかに、もっと考うべき点があるということを、われわれは今回の政府案に対抗して出したわが党案によって示唆いたしておるのでございます。しかしながら、このことは、決して私どもが初めて考え出したものではなくして、すでに諸外国においては実施せられているところの、教科書の無償給付の制度でございます。このことが裏づけされるならば、今日世論の中にある教科書が高いという問題、それによって負担が重い、学校に行かしにくいという、これらの父兄大衆の悩みというものは、私は根本的に解決していくことができると考えておるのでございます。(拍手)従って、われわれは、政府与党の御協力、御賛成が得られるならば、これらの教科書の無償給付に対し、年次計画を立てて父兄の負担を軽減して参りたいということを、特にこの機会に申し上げておきたいと思うのでございます。   最後に、小林さんの御質問は、修正案の三点によって、今日学者、文化人あるいは国民の中に、政府提案にかかる教科書についてのいろいろな危惧、あるいは国定にこれが持っていかれるのではないか、あるいは検定によって締め出しをするのではないか、果ては、これは教科書国家統制であり、教育の統制を引き起すものではないかというような、こういう問題について、ことごとくその心配が除かれているかどうかという、こういう御質問で  ございましたが、先刻私が趣旨を申し上げる際に克明に申し上げましたように、この修正案提出に至りました経緯は、結局、われわれが根本的な政策といたしておりますところの教科書制度の案なるものは、代案によってお示しいたしておきました。しかし、これに対して与党諸君の熱心なる御検討を得られなかったために、数において、最終的には否決せられる運命に至つたという点から、与党の御賛成の得られるような修正案にいたしまして、せめても政府案の悪い欠点を除いて国民に安心をさせ、今後の教育の上に重大なる支障を起さないようにいたしたい、かように考えましたので、早々の間ではありましたが、最終的に、他にもいろいろの問題はあったけれども、その他の問題にまで検討に及ばない段階において、去る二十一日に、修正案があるならば本日中に提出をしろという、こういうような強い与党の申し入れに、われわれもいかんともすることができなくて、はなはだ残念ではありまするが、軽重を考えまして、その時間内において可能な限り事務的にも進めまして、ようやく三点にしぼつたのでございます。従いまして、全部が全部、これによって私ども目的を達成し得ておるとは申し上げられませんけれども、しかしながら、政府案の最も欠陥とも称すべき点については、これによって一応尽しておるというふうに考えておる次第でございますので、何とぞ御了承を賜わりたいと存じます。  以上であります。(拍手
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 野原覺君。     〔「休憩動議が出てるじゃないか」「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し〕      ————◇—————
  10. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 井上良二君外百五十二名から、本日は直ちに休憩し午後一時再開すべしとの動議提出されました。  本動議は記名投票をもって採決いたします。本動議に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票〕
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) すみやかに投票願います。     〔各員投票を継続〕
  12. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  13. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数 三百三十   可とする者(白票)  百二十七     〔拍手〕   否とする者(青票)   二百三     〔拍手
  14. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 右の結果、井上良二君外百五十二名提出動議は否決されました。     —————————————  井上良二君外百五十二名提出本日は直ちに休憩し午後一時再開すべしとの動議を可とする議員の氏名    阿部 五郎君  青野 武一君    赤路 友藏君  赤松  勇君    淺沼稻次郎君  飛鳥田一雄君    有馬 輝武君  淡谷 悠藏君    井岡 大治君  井手 以誠君    井上 良二君  井堀 繁雄君    伊瀬幸太郎君  伊藤卯四郎君    伊藤 好道君  猪俣 浩三君    池田 禎治君  石橋 政嗣君    石村 英雄君  石山 權作君    稻村 隆一君  今澄  勇君    今村  等君  受田 新吉君    小川 豊明君  大矢 省三君    岡本 隆一君  加賀田 進君    加藤 清二君  春日 一幸君    片島  港君  片山  哲君    勝間田清一君  上林與市郎君    神田 大作君  川俣 清音君    川村 継義君  河上丈太郎君    木原津與志君  菊地養之輔君    北山 愛郎君  久保田鶴松君    栗原 俊夫君  小平  忠君    小牧 次生君  小松  幹君    五島 虎雄君  河野  密君    佐々木更三君  佐竹 新市君    佐竹 晴記君  佐藤觀次郎君    櫻井 奎夫君  志村 茂治君    島上善五郎君  下川儀太郎君    下平 正一君  杉山元治郎君    鈴木茂三郎君  鈴木 義男君    田中幾三郎君  田中織之進君    田中 武夫君  田中 稔男君    田原 春次君  多賀谷真稔君    高津 正道君  滝井 義高君    竹谷源太郎君  楯 兼次郎君    辻原 弘市君  戸叶 里子君    堂森 芳夫君  中井徳次郎君    中居英太郎君  中村 高一君    中村 英男君  永井勝次郎君    成田 知巳君  西村 榮一君    西村 彰一君  西村 力弥君    野原  覺君  芳賀  貢君    長谷川 保君  原   茂君    日野 吉夫君  平岡忠次郎君    平田 ヒデ君  福田 昌子君    古屋 貞雄君  帆足  計君    穗積 七郎君  細迫 兼光君    細田 綱吉君  前田 榮之助    正木  清君  松井 政吉君    松尾トシ子君  松平 忠久君    松原喜之次君  松前 重義君    松本 七郎君  三鍋 義三君    三宅 正一君  武藤運十郎君    森 三樹二君  森島 守人君    森本  靖君  八百板 正君    八木 一男君  矢尾喜三郎君    柳田 秀一君  山口シヅエ君    山口丈太郎君  山下 榮二君    山田 長司君  山花 秀雄君    横錢 重吉君  横路 節雄君    横山 利秋君  吉田 賢一君    和田 博雄君  渡辺 惣蔵君    石野 久男君  小林 信一君    志賀 義雄君  否とする議員の氏名    阿左美廣治君  相川 勝六君    逢澤  寛君  愛知 揆一君    青木  正君  赤城 宗徳君    赤澤 正道君  秋田 大助君    足立 篤郎君  荒舩清十郎君    有田 喜一君  有馬 英治君    安藤  覺君  五十嵐吉藏君    池田 清志君  池田正之輔君    石井光次郎君  石坂  繁君    石橋 湛山君  一萬田尚登君    稻葉  修君  今井  耕君    今松 治郎君  宇都宮徳馬君    植木庚子郎君  植原悦二郎君    植村 武一君  臼井 莊一君    内田 常雄君  内海 安吉君    江崎 真澄君  遠藤 三郎君    小笠 公韶君  小川 半次君    小澤佐重喜君  大石 武一君   大久保留次郎君  大倉 三郎君    大高  康君  大坪 保雄君    大橋 忠一君  大平 正芳君    大村 清一君  大森 玉木君    岡崎 英城君  荻野 豊平君    加藤 精三君  加藤鐐五郎君    上林山榮吉君  神田  博君    亀山 孝一君  唐澤 俊樹君    川崎末五郎君  川崎 秀二君    川島正次郎君  川村善八郎君    菅  太郎君  木崎 茂男君    菊池 義郎君  岸  信介君    北澤 直吉君  北村徳太郎君    吉川 久衛君  清瀬 一郎君    久野 忠治君  草野一郎平君    楠美 省吾君  熊谷 憲一君    倉石 忠雄君  小泉 純也君    小金 義照君  小島 徹三君    小平 久雄君  小林  郁君    小林かなえ君  河野 金昇君    河本 敏夫君  高村 坂彦君    纐纈 彌三君  佐々木秀世君    齋藤 憲三君  坂田 道太君    櫻内 義雄君  笹本 一雄君    笹山茂太郎君  椎熊 三郎君    椎名悦三郎君  椎名  隆君    重政 誠之君  島村 一郎君    首藤 新八君  正力松太郎君    白浜 仁吉君  周東 英雄君    杉浦 武雄君  鈴木周次郎君    薄田 美朝君  砂田 重政君    關谷 勝利君  園田  直君    田口長治郎君  田中伊三次君    田中 龍夫君  田中 久雄君    田中 正巳君  田村  元君    高岡 大輔君  高木 松吉君    高碕達之助君  高橋 禎一君    高見 三郎君  竹内 俊吉君    竹尾  弌君  竹山祐太郎君    千葉 三郎君  中馬 辰猪君    塚原 俊郎君  辻  政信君    渡海元三郎君  徳田與吉郎君    床次 徳二君  内藤 友明君    中嶋 太郎君  中曽根康弘君    中村 梅吉君  中村三之丞君    中村庸一郎君  中山 榮一君    仲川房次郎君  永山 忠則君    長井  源君  灘尾 弘吉君    南條 徳男君  二階堂 進君    丹羽 兵助君  西村 直己君    野田 卯一君  野田 武夫君    馬場 元治君 橋本登美三郎君    長谷川四郎君  八田 貞義君    鳩山 一郎君  花村 四郎君    濱地 文平君  濱野 清吾君    早川  崇君  林  讓治君    林  唯義君  林   博君    原  捨思君  平塚常次郎君    廣瀬 正雄君  福井 順一君    福井 盛太君  福田 赳夫君    福田 篤泰君  福永 健司君    藤本 捨助君  淵上房太郎君    船田  中君  古井 喜實君    古島 義英君  保科善四郎君    坊  秀男君  星島 二郎君    堀川 恭平君  本名  武君    眞崎 勝次君  眞鍋 儀十君    前尾繁三郎君  前田房之助君    前田 正男君  町村 金五君    松岡 松平君  松澤 雄藏君    松田竹千代君  松本 俊一君    松本 瀧藏君  松山 義雄君    三田村武夫君  水田三喜男君    宮澤 胤勇君  村上  勇君    村松 久義君  粟山  博君    森   清君  森下 國雄君    森山 欽司君  山崎  巖君    山下 春江君  山手 滿男君    山中 貞則君  山本 勝市君    山本 粂吉君  山本 正一君    山本 友一君  横井 太郎君    横川 重次君  吉田 重延君    米田 吉盛君 早稻田柳右エ門君    亘  四郎君      ————◇—————
  15. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 野原覺君。     〔野原覺君登壇
  16. 野原覺

    ○野原覺君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする教科書法案につきましての委員長報告に対し、文教委員長佐藤觀次郎君に質問をいたしまするとともに、あわせて鳩山内閣総理大臣及び清瀬文部大臣に若干の質問をいたさんとするものであります。(拍手)  最初に私は鳩山総理大臣にお尋ねをいたしたいと思うのでございまするが、お尋ねをいたしまする前に、一言総理に申し上げておかなければならぬことがあるのであります。それは、総理も御老体でございます。おからだも御丈夫だとは言えなかろうと思うのであります。それに、このような時刻に、まことに御苦労だとは思うのでありまするけれども、これは私のせいではないということであります。(拍手)つまり、私どもが総理にここで申し上げておきたいことは、このような暁の国会に持ってきたのは、あなたの属する党の諸君が、きょうの午後一時からの本会議でできるものを、このようなむちやをやつておるということを、まず御了承願いたいと思うのであります。(拍手)  そこで質問に入りたいと思うのでありますが、まず総理にお尋ねをいたしまする第一点は、教育の中立性と政党内閣政治との関連をいかに考えておるかということであります。もう一度申し上げまするが、教育の中立性と政党内閣政治との関係をどのように総理はお考えであるかということであります。  御承知のように、ここに議題となっておりまする教科書法案について見ましても、教科書検定は、その基準も、検定そのものも、すべて教科書検定審議会に諮問いたしまして、文部大臣が定めることになっておるのであります。つまり、教科書検定基準文部大臣によって勝手に作られるように今度の法案はできておるのであります。しかも、その検定審議会委員は、文部大臣によって一方的に任命されるのであります。申すまでもなく、文部大臣は政党人でございます。または、少くとも政党内閣の閣僚であるはずであります。どうしても政党色を免れないと思うのであります。そのような政党色を免れることのできない文部大臣によって、教科書検定基準も、検定審議会委員も、一方的に決定されるということになりますると、一体こういうことになるでございましょうか。教育に対する政党の干渉、教育に対する政党の支配ということが起ってこようかと思うのであります。私は、このような政党内閣の閣僚である文部大臣が、子供に教える教科書検定基準審議委員の任命というものを一方的にやる限りにおいて、教育の中立性というものは断じて守られるものではなかろうと思うのであります。(拍手)この点について、鳩山総理大臣はどのような御所見を持たれていらっしゃるか、承わりたいのであります。  次に私が申し上げなければなりませんことは、あなたの任命された閣僚であります清瀬文部大臣は、大臣就任の当初から、口を開けば、常に次のごとく私どもに申しておるのであります。自分は党人であるから、忠実に党の方針に従って動きます。文教政策についても、私は私の属する政党の方針を忠実に実行するつもりです。私は、私の見解がどのようなものでありましようとも、絶対に党議に拘束さるべきものだと思います。もう一度申し上げまするが、文部大臣としての清瀬一郎さんは、文部大臣としての見解がどのようなものでありましようとも、絶対に党議には拘束されるというのであります。党人としては当然でございましょう。そこで、私は総理大臣にお尋ねをいたすのでございまするが、このように忠実に党議に拘束されるということになりますると、党議に拘束されるところの文部大臣が、教科書検定審議会の委員もきめる。検定基準もきめる。しかも、文部省の中には、常勤調査員というものを、一千九百万円の予算で四十五名置いておるのであります。この者によって実質的な教科書検定をやらせる。こうなって参りますると、子供の教科書というものが、政党の考えておる方向に持っていかれないとは、断じて保証できぬのであります。(拍手)これを教育の中立性という上から考えまして、一体どのように総理大臣はお考えでいらっしゃるのか。もう一度申し上げまするが、教育の中立と政党内閣政治との関連にっいて総理の御所信を承わりたいのであります。   第二にお伺いいたしたいことは、日本憲法と教育との関係についてでございます。私どもは、文教委員会におきまして——教育というものは、少くとも日本教育というものは、日本の憲法に立脚して行わるべきものであることは、申し上げる必要もなかろうと思うのであります。そこで、私ども教育実践というもの、国の教育実践におきましては、あくまでも憲法擁護の建前をとるべきではないか、このように考えますがゆえに、私は過日文部大臣にお尋ねをいたしたのであります。つまり、学校教師が、教壇の上から、子供たちに向って、日本の憲法は大切にしなければならない、憲法擁護ということは国民の義務だと話したとすれば、文部大臣は、あなたはどうお考えになるか、ということを尋ねたのであります。これに対して文部大臣が何と答弁をいたしたかと申しますると、速記録をごらん下さると一目瞭然でありますが、要約して申し上げますと次の通りであります。教室において、現行憲法を守るように教えることはよいことであります。しかし、今日、政治の問題として、現行憲法を改正すべきであるか、改正に反対すべきであるかの政治論が現実の課題となっておるのであります。このようになっている以上、教師が子供に憲法を擁護せよとの意見を出すことは、やはりこの教師政治問題に関与することである、と言っておる。私が総理大臣にお尋ねをいたしたいことは、学校の先が教え子たちに憲法を擁護せよと言ってなぜいけないのかということであります。あなた方のお子供さんに、あなた方の子供さんの先生が、日本憲法を守らなければいかぬと教えて、なぜいかぬのでございましょうか。憲法を擁護せよと教育することは慎しまなければならぬという文部大臣の御答弁を、総理大臣は何とお考えであるか、承わりたいのであります。  なお、私は、この機会に、せっかくでございまするから、総理大臣に次のことをお尋ねいたしたいと思うのであります。それは、国の誕生日についての総理の所信であります。教科書法審議の過程において、あるいは教育委員会法審議の過程において、私ども清瀬文部大臣にただしました関係もございまするから、わが国の誕生日という点について、総理大臣はどのようなお考えを持っていらっしゃるか、承わりたいのであります。  そこで、私は、あなたの文部大臣清瀬一郎さんは何と申しておるかということを、御参考までに申し上げておきます。個人に誕生した日があるように、国にも誕生した日がある。これが今日の二月十一日で、ことしで二千六百十六年目であるというお話は——お話は、と逃げておる。歴史家の間に議論はあるとしても、大和の橿原の宮で神武天皇が御即位になったというのは、通常の伝説ではない。祖先が長く信じてきたのだ。客観的日付と言えば、二月十一日が間違いのある日付だと、こう言うならば、キリストもお釈迦様の誕生した日も必ずしも正確ではないだろう。(「その通り」)ここのところはその通りであります。(笑声)そこで、国民感情、あるいは国民の信念というものは抹殺すべきではない——聞くところによれば、その通りとお喜びの方々は、清瀬さんと一緒になって、二月十一日の紀元節復活のために全力をあげていらっしゃるように受け取るのでございまするけれども、私がお尋ねをいたしておるのは総理に対してであります。あなたも、清瀬文部大臣と同じように、昔の紀元節の復活をお考えになっていらっしゃるのかどうかということであります。明快に御答弁を願いたいのであります。  そこで、私は、次に清瀬文部大臣にお尋ねをいたしたいと思います。大臣は、ここに御提案になっておりまする教科書法案によりますると、文教委員会においては、私は決して国定教科書というものを考えてはおりません、このように申されておるのであります。しかるに、今度提案された法案をしさいに検討していただくならばおわかり願えますように、検定審議会委員というものは、文部大臣が一方的にきめる、これは否定することができないのであります。そうして、先ほども申しましたように、文部省の中には常勤の調査員が四十五名がんばっておりまして、これが検定の実質的な役割をやっておるということであります。第三には、学校の教員というものは、自分の組の子供たちにどの国語の本を習わせるか、算術の本を習わせるかという教科書の選択にっいて、何らの発言権も与えられていないのであります。都道府県の教育委員会がやる。都道府県の教育委員会というものの実権は教育長が握るのでございます。この教育長は、新しい教育委員会法によりますると、文部大臣の承認を要すると書いてある。文部大臣が承認した、そういう教育長に教科書の選定をさせて、学校の教員には何らの選定もさせないという、こういうやり方は、これでも国定の精神にそむいていないとお考えであるかどうか、私は本会議の席上で明確に承わっておきたいのであります。(拍手)  もう一点は、こまかなことは委員会ではございませんからお尋ねをいたしませんが、新しい教育委員会法提案されましたときに、私どもは公聴会を開きました。その公聴会の席上に、東大総長矢内原博士がお見えになりました。矢内原総長に、私が、あなたは中央教育審議会の委員でございまするから、清瀬文部大臣は中央教育審議会というものを尊重しておるか、文部大臣は中教審というものをどのように考えていると思うか、という質問を発しましたところ、矢内原先生は、非常に御不満のようでありまして、最近の清瀬さんの言動は中教審を無視しておるとしか思われないという御返答であったのであります。それは、いろいろな面に具体的に現われて参っておりまするが、私はここでは申し上げません。しかし、ここでは申し上げませんけれども、中央教育審議会という、文部大臣が最も頼みにしている諮問機関の良識のある委員諸君は、ことごとく清瀬文政に憤激しているというこの事実を、あなたは何とお考えであるか、承わりたいのでございます。(拍手)  そこで、私は、佐藤文教委員長の報告に対しまして、次の大事なる点についてお尋ねいたしたいと思うのであります。これはぜひとも明らかにしなければならないものでございますので、ゆっくり、はっきり申し上げまするから、佐藤文教委員長は詳細、明確に御答弁下さらんことをお願い申し上げます。  まず第一に、教科書法案についての審議日数であります。一体何日間この教科書法案は正味審議されたのか、悲しいかな、文教委員以外の諸君は知らぬのでございまするから、教えていただきたいのである。  第二は、正味の審議時間であります。私は議院運営委員と文教委員とを兼ねている関係上、十分に文教委員会出席のできないことは、この壇上から告白をいたしまするが、しかし、聞くところによると、参議院において教育委員会法が上程になりますると、文部大臣教育委員会の方にばかり参りまして、教科書法審議にはさっぱり顔を出していないと言われております。これは一体ほんとうであるかどうか、委員長から承わりたいのであります。(拍手)  第三に申し上げたいことは、今月の十七日に、文教委員会におきましては、理事会の申し合せを無視いたしまして、関連質問に名をかりて、ある理事が唐突として質疑終了の動議を出しておるのであります。御承知のように、委員会の運営は理事会によってなされる。その理事会の申し合せを無視して、その辺におった代議士をみんな廊下から連れ込んで、むちゃくちゃに、関連質問に名をかりて質疑終了の申し入れをするというようなやり方を、文教委員長として佐藤觀次郎君はどのようにお考えでございますか、これも承わりたいのであります。  第四番目には、同じく本月十七日のできごとであります。佐藤文教委員長は、解任決議を、与党からこの本会議において突如出されたのでございますが、私は佐藤委員長にお尋ねする。あなたは、わが党から出された文教委員長である。私の知る限り、佐藤君は、きわめて公正で、正直で、温厚である。(「ノーノー」と呼び、その他発言する者多し)その佐藤委員長が、何の罪とがあって与党から解任決議を受けなければならぬのか。あなたに私は友人としてお尋ねをいたしますが、あなたは解任決議を受けなければならぬくらい悪いことをしたのか、不公正なことをしたのかということをお尋ねいたす次第であります。(拍手)  第五番目には、社会党からは二つ教科書に関する議員立法を出したのであります。この二つの議員立法は、政府から出された教科書法案とほとんど前後して提案いたしておるのでございますが、与党の文教委員諸君に、ほんとう教科書法について研究しようという熱意がありとするならば、たとい社会党考えに反対でありましょうとも、委員会において質問すべきである。この質問がなされていないと聞くのでございまするが、それはほんとうでございまするか、承わりたいのであります。(拍手)  第六、今月二十一日、つい二、三日前のことでございまするが、文教委員会は夕刻になって非常な混乱が起ったのであります。文教委員会大混乱という見出しが夕刊にも朝刊にも出されておるのでございまするが、この混乱は、先ほど申し上げましたように、これまた理事会では、質疑終了だけ二十一日はやって、あとは相談ということになっておった。ところが、質疑終了の動議が成立すると、直ちに議事進行、討論、採決と持っていったから混乱をしたというように聞いておりまするが、これはほんとうであるか。知らない与党諸君もおろうかと思いまするから、御説明願いたいのであります。(拍手)  第七、教科書法案についてでございまするが、申し上げるまでもなく、この法案がきわめて重要でありまするから、先ほど同僚の辻原君から御説明申し上げましたように、私ども社会党は、最終的には修正案を出したのであります。ところが、修正案を出す段階になって、皆さん、驚くべきことには、二時間以内に出せと言ってきた。修正案を出すからと言ったら、二時間以内に出さなければ佐藤は首にしてやるという脅迫をやったのであります。地方自治法の改正は二十日間もたな上げしておって、二時間以内に修正案を出さなければ委員長を解任するというような脅迫がなされたのかどうか、これまた佐藤君にお聞きいたしたいのであります。(拍手)  第八、教育委員会に関係する法律案は、学識経験者から十分なる意見を聞かなければならぬというので、二日間の公聴会を開いておりますが、教科書法案の公聴会はわずかに一日である。しかも、教科書法案審議の状況を見ますと、教育委員会法と同時に上程されておりながら、教育委員会法審議ばかり先にやって参議院に送り、参議院にいったら、文部大臣教育委員会法答弁にばかり行って、教科書法のときに帰ってこない。こういうやり方から見ると、政府与党教科書法案教育委員会法よりも軽視しておると国民は受け取っておるのでございますが、委員長は、文教委員会責任者として、どのようにお考えでございますか、これまた承わりたいのであります。  私は最後に申し上げます。日本民主主義に向う歴史の歯車を逆転せしめようという、今回のこの国会提案されました教育二法に対しては、過日、数百万の国民が大会を開いて、皆さんに抗議を発しておるはずであります。国民の識者は、ことごとくこのことに対して憤激をしておる。しかも、第二十四国会というこの同じ国会に、二つ教育重要法案が出されておる。私は、教育法案は、これこそ国民の各層、各階級の意見を聞かなければならぬものであると思いまするがゆえに、教育委員会法もしくは教科書法、このような重要なものを二つ一ぺんに出すということをやめて、一つ法案を出して、みつちり検討するという方向をこそとるべきではなかろうかと思うのでありますが、これがなされていないのであります。しかも、ただいま申し上げましたように、日本教科書は、NHKの放送の統制とは違います。子供の教科書を統制するということは、日本の学問、言論あらゆる思想、行動を取り締るということでありましょう。その重要なる教科書法を、このような拙速的なやり方審議するということに対して、最も責任のある地位にございまする文教委員長佐藤觀次郎君は、どのような所感を持っていらっしゃるのか、承わりたいのであります。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎君登壇
  17. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 野原君の御質問にお答えをいたします。  第一の御質問は、教育の中立性についてでありました。教科書は、教育基本伝の精神にのつとりまして、中正な立場のもとに作成されなければならないことは、もちろんのことであります。今回提案教科書法案は、教育の中立の確保について十二分に配慮しているものと確信をしております。(拍手)  さらに、これに付随いたしまして、中立性と政党内閣政治との関係について御質問がありました。文部大臣が、自己の所属する政党のために教育を利用するがごときことは、断じて避けねばならぬことであります。(拍手)清瀬君は、もちろんりつぱな人物でありまして、公正、中立を守るに適した人だと考えております。(拍手)各政党がそれぞれ独自の文教政策を持ちまして、その党に所属する文部大臣が、自己の所属する党の文教政策に従って予算を計上し、法案を作成することは、当然のことであると私は考えます。(拍手)第三に、憲法と教育との関係について御質問がございました。現行憲法が存する限りは、教師みずから憲法を順守いたしましてまた、児童に対しましても、憲法を順守すべきことを教えることは、当然なことであると考えております。(拍手)  国の祝祭日について御質問がございました。政府は、国民の祝日に関する法律に、祝日として紀元節を加えることを、ただいまは考えておりません。ただ、しかしながら、国の建国の日を記念して、国民が自発的に祝うということは、非常にけっこうなことであると考えております。(拍手)     〔国務大臣清瀬一郎君登壇
  18. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 私に対するお問いの第一は、今回の教科書法案教科書国定化を促進するものじゃないかということでございます。この法案は、民間人の創意と工夫によって編さんされたものを基礎といたしまして、これを検定するのであります。検定をりっぱにするために、いろいろ工夫はいたしましたが、どこどこまでも検定制度でございまして、国定制度の前提でぱございません。(拍手)  お問いの第二は、文部大臣は中央教育審議会を尊重しないのではないかということでございます。私、中央教育審議会は文部大臣の最高の諮問機関でありまするから、その答申に対しては十分尊重しております。今回議題となりました教科書法案を作成いたしまするにつきましても、昨年十月の中央教育審議会の答申を十分に尊重しております。公述人のうちでも、他の人、たとえば森戸君のごときは、この案は中教審の答申を基礎として十分にこれを用いているということを、公聴会で言うておるのであります。(拍手)御了解を願います。     〔佐藤觀次郎登壇
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤觀次郎君 ただいま野原委員よりいろいろな質問がございましたので、文教委員長として十分に答弁をしたいと存じます。  今度の教科書法案は幾日間審議されたかという第一の質問でありますが、十八日間やりました。そのうちで、文部大臣が出られましたのは十回でございます。それから、そのうちで公聴会が一回ございました。質疑の時間数は三十一時間四十五分でございます。そこで、教育委員会法案と比べますと、やはり十時間ぐらい足りません。そういうような考えでございまして、われわれはできるだけ審議を十分にしたいと思いましたが、文部大臣は、参議院教育委員会法案のためにほとんどお出になりまして、先ほど小林委員質問に出ましたと同じように、この教科書法案にはあまり熱意がなく、ただ、ときどき竹尾政務次官と安達説明員の二人だけここに来ておりまして、そして、まあ与党の八百長質問が毎日行われておりました。(「失敬なことを言うな」「何が八百長質問だ」と呼ぶ者あり)君らはおらないで知っておるか。八百長質問をやつておるから言っているんだ。君らは委員会に来たことがあるか。——なお、十一日の質疑の最中でございますが、御承知のように、われわれ委員会におきましては、理事会を中心として審議を進めて参りました。御承知のように、理事会で話をしなければ、少数党の委員長としては勤まりません。ところが、話し合いをしております途中、関連質問と称して与党の理事の方が立たれまして、そうして、突然質疑打ち切りの動議が出ました。私たちといたしましては、約束が違いますので、やむなく散会をいたしました。(「逃げたのだろう」と呼ぶ者あり)ところが、そのときに、私たちは、こういうような動議について、話し合いが違つておる、動議が間違つておる、理事会でちゃんと約束してある、絶対に打ち切りはやらぬという約束をしてあるから散会をしたのでありまして、逃げたのではない。しかるに、突如、自民党が、委員長佐藤觀次郎の解任決議案を出して、おどかして参りました。私たちは、こういうものには驚きません。私たちは、こういう立場から、すべてこれらの混乱は、与党諸君が、強引に、ただ法案だけ上げればいい、質疑なんかどうでもいい、こういう立場でやつてこられたことを、はっきり申し上げます。  それから、これは理事会の話でございますが、理事会のうちで、教科書法案は、政府案辻原弘市君以下の社会党の案が出ておりました。これは当然並行審議をする約束でございましたが、一昨日高村委員から質疑をするということを言われましたけれども、その十八日の間、教科書法案については一度の質問もなく、うやむやに葬られてしまいました、まことに、議員提案としてこういうことが行われたこと、はなはだ残念だと思っております。  それから、二十一日の混乱でございます。これも打ち合せがありまして、二十一日に質疑をやるということで話が進んでおりましたが、そのときもまた、突然打ち切りの動議が出ましたので、約束が違うから散会をいたしたのでございます。これは御承知のように、われわれ少数党の委員長といたしましては、約束がはずされて、それらの動議が約束と違つておれば、当然やらなければならぬので、こういうことの混乱、これはやはり与党諸君が早く法案を上げるというあせりからでございます。そのあせりか大きな混乱になつた考えております。  それから、これは一昨日の問題でございますが、修正案を早く出せ、一時に始まった理事会をやっておりますと、三時までに出さなければ君らの言うことは聞かないといって、わずか二時間余しかございません。こういうようなことでは、われわれが仲よくやつていこう、お互いに審議はおとなしくやつてやろう、こういう立場とは非常に違っておりまして、そういう点については、お互いによく考えてやっていきたいということでありましたが、そういう故障もありました。  全体といたしまして、教科書教育委員会とは、同じ法案でも、これは参議院の関係がございまして、いろいろ問題があったと思うのでありますが、やはり、教科書法案は、教育委員会法よりは非常に軽視されたような考えがございます。  なお、公聴会につきましては、私たちは、少くとも公聴会を二日やりたい、こういうことを申し述べましたけれども与党の理事の方は、教科書は一日でいいということで、やむなく一日にしていただきました。そういう点について、私たちはまじめにやっておりましたけれども、遺憾ながら、その間に手違いがありまして、このようなことになったことを残念に思っております。  以上、委員長答弁を終ります。(拍手
  20. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて質疑は終了いたしました。  これより討論に入ります。高村坂彦君     〔高村坂彦君登壇
  21. 高村坂彦

    ○高村坂彦君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました内閣提案教科書法案、これに賛成をいたしまして、社会党修正案に反対の討論を行わんとするものでございます。(拍手)     〔議長退席、副議長着席〕  教科書わが国国民教育の上に占めておりまする地位はきわめて重要でございますから、教育関係者はもとより、父兄を初め一般国民教科書に対して多大の関心を持っておることは、これは当然といわなければなりません。(拍手)しかるに、現在の教科書に関する制度は、占領下における特殊な事情のもとに、間に合せ的に作られたものでありますから、不備欠陥も多く、すみやかにこれが是正の要があることは、何人も認めざるを得ないところでございます。(拍手)  そこで、わが党といたしましても、昨年以来引き続き検討いたして参りました。政府におきましては、昨年中央教育審議会に諮問をいたしまして、その答申をほとんど全面的に取り入れまして、今回提案いたしました教科書法案と相なっておる次第でございます。(拍手)その眼目とするところは、よい教科書を安く提供せんとするものでございます。しかし、現行制度の基本的性格たる検定制度は、これをあくまでも堅持いたしまして、国定として、国が一方的に教育内容を統制するようなことは好ましからざるものとの見地のもとに、民間の創意工夫によって教科書が作成され、これを国が検定し、各教育委員会、各学校等が適当にこれに関与いたしまして、地方の実情に即した採択をするという制度を採用いたしておるのでございます。  先ほど、佐藤文教委員長が、わが文教委員会における審議の経過及び結果を御報告になりました。しかるに、その内容は、反対意見の立場だけをとって報告されまして、文部大臣のこれに対する答弁並びに公聴会における賛成意見をほとんど無視されたことは、まことに遺憾千万に存ずる次第でございます。(拍手法案の詳細なる内容につきましては、これまでの論議を通じまして、皆様すでに御承知でございますから、省略をいたしたいと存じます。  政府案の反対論者が、この検定制度政治的中立を侵すおそれありと言うのでありますが、今日、教育の中立性が侵され、教科書の偏向が問題となっておりますのは、文部大臣検定権を持っているからでは断じてないのでございます。(拍手)むしろ、文部大臣が適正な検定を行い得ないところにその欠陥が存することは、行政監察委員会の報告を待つまでもなく、明らかなる事実でございます。(拍手)  俗に丹頂ヅルと称せられ、思想的に偏向した幹部によって指導せられ、総評の宣伝部隊をもって任じておる日教組と称する職員団体が、民間文部省と称せられている講師団という集団的指導機関を擁して所属組合員の指導に当らしめ、その執筆した教科書に対し、採択基準を全国組合員に指令することによって、これが採択を期するというがごときことが行われ、ずさんにして偏向した教科書が出版、採択されつつあるところに、今日全国の父兄教科書に対する非常なる不安が存するのでございます。(拍手)今や、日教組という、全国民に対して何らの責任を負い得ない、自己の経済的利益を守ることを主たる目的とする職員団体の、しかも、その一握りの幹部たちによって、日本国民教育が支配されんとしているところに、まさに教育の重大な危機があるのであります。(拍手)かく見て参りますと、政治的中立を保つ上から申しましても、全国民の代表によって選ばれ、全国民の代表である国会に対して責任を負う内閣の一員たる文部大臣検定権を持ち、その諮問機関たる教科書検定審議会の機能を強化拡充し、適切にして公正厳密なる検定を実施せんとする政府案こそ、教育基本法の精神にかない、民主主義の原理に忠実で、国民の期待に沿い得ると、かたく信じて疑わないものでございます。(拍手)  社会党諸君提出した修正案は三点でありますが、二点は、法案をすなおに読んでいただければ、私は修正の要のないことは明らかでおると思うのでございます。(拍手)しかし、そのうちの一点は、社会党が撤回せられた教科書法案内容の重要部分をなしておりまして、これをそのまま修正案として出してこられたのでございますから、この点に関しまして、簡単に反対の理由を述べたいと存じます。  それは教科書採択についてでありますが、政府案では、採択地域を郡市の単位を原則とし、例外として、一県一単位を認めることにいたしているのであります。現行制度では、市町村教育委員会採択を決定するのでありますが、すでに全国で約七〇%が郡市単位を採択地域としている実情であります。これは教科書に対する教員の共同研究を盛んにし、児童生徒の転校の際の不便を除き、教科書の需要を調節し、価格を低廉化する等の必要から、自然発生的に生まれたものでございます。(拍手政府案は、この実情に即した改善案でございます。しかるに、社会党修正案では、各学校ごとに、校長が教員の意見を聞いて採択するということにいたしているのであります。われわれは、現場教員の意見を尊重することに、決してやぶさかなものではございません。政府案において、現場教員の意見を尊重しつつ、さらに県教委、地教委の関係者、その他の知識経験者の参加、協力のもとに採択が決定せられるのでありますから、現場教員だけの判断により、各学校ごとに、ばらばらに教科書採択されるおそれがある修正案よりは、よい結果が得られることは、きわめて明瞭でございます。(拍手)かくのごとく、修正案は、全く現実を無視した逆行的改悪案なりと断ぜざるを得ないのでございます。(拍手)  日教組や社会党諸君は、口を開けば、政府案をもって教科書国定を意図するものであり、思想統制をはからんとするものであると宣伝しておられるのでありますが、政府も、わが党も、絶対にさような考えは持っておりません。これは法案の意図するところをあえて歪曲する、これらの人たちの一流の卑劣なる逆宣伝でありまして国民を欺瞞するもはなはだしいものといわなければなりません。(拍手)応対論者のそうしたデマにもかかわらず、国民政府案に対し圧倒的な支柱を与えているのであります。(拍手)かつて社会党内閣文部大臣をされ、現在広島大学学長である森戸辰男氏は、本案の公聴会で、全面的に政府案を支持して、こう言っておられるのであります。すなわち、政府案に対し一部の人々が言うように、答申案をはなはだしく歪曲したものであるとか、反動化したものであるとかいうふうには、献にはどうしても考えられないのであります、(拍手)現在のもとで、望ましい民主的な改正の方向を指示しているものと私は考えておるのであります、と述べておられるのであります。どうか、野党の諸君も、日教組にお義理があるかもしれませんが、(拍手)虚心たんかい、政府原案に賛成されたいのであります。  私は、二大政党対立下の今日、当物社会党が野党として政府案に対決する教科書法案提出せられました、その努力なり、態度なりに対しましては、一応敬意を払うに決してやぶさかなものではございません。しかし、その内容に至っては、あたかも、本年度予算案に対する社会党の組みかえ案が、総評の圧力に屈したものであり、宣伝的、から手形的のものであったと同様に、総評傘下の日教組のごきげんとりであり、観念的空論の域を脱し得ないものであったことを、まことに遺憾とするものであります。(拍手)しかし、審議の過程を通じ、世論の動向にかんがみられまして、これを撤回せられ、若干の修正にとどめられんとせられますることは、当然のこととはいいながら、私は深くこれを多とするものでございます。  私は、最後に、国家のため社会党の成長を心から念願をいたしまして、討論を終りたいと存じます。(拍手
  22. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 平田ヒデ君。     〔「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し〕     〔副議長退席、議長着席〕     〔「採決々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  23. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 静粛に。平田ヒデ君。     〔平田ヒデ君登壇
  24. 平田ヒデ

    ○平田ヒデ君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程になりました教科書法案に対し、社会党提出修正案に賛成し、政府原案に反対の討論をいたすものでございます。(拍手)  戦後における教育改革は、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を主眼目として、六・三制度教育委員会制度等の実施を通じて着々と行われて参りました。一方、教育内容の方面におきましても、教育者の再教育、新しいカリキュラムの編成、検定教科書制度の実施等によって、戦前に比し面目を一新した点が非常に多いのであります。戦後、新検定教科書が作られ始めてから八年目になりますが、この間に発行された教科書は年とともに内容や体裁が改善されており、国定時代に比べ、はるかに広範囲の人々が編集、検定に携わり、国民の手になる教科書という意味からすれば、非常な進歩であるといわなければなりません。さらに、また、自由競争場裏に置かれるので、学問の進歩や社会情勢の推移に応じ、教育実践の成果に照らして改訂が行われ、国家的思想統制の具となる危険が少く、しかも、教科書は唯一の教材でなく、参考書的性格と考えられ、創意工夫による自由な指導計画を遂行しやすい点等の長所をあげることができるのであります。  申し上げるまでもなく、教科書は、教師と児童生徒が日常の伴侶として、教育推進の大きな支柱となるものでございまして、どんな教科書、どんな制度が最も教育的であるかということを常に念頭に置き、教育外的な問題が前面に押し出され過ぎて、それによって決定されるようなことが絶対あってはならないのであります。(拍手)今度の法案提案理由説明として、清瀬文部大臣は、現在の検定制度は発足がきわめて早急の間に行われたので、立法措置も不十分であり、制度的にも不備を免れなかったので、教科書学校教育上占める重要な地位にかんがみ、この法案を作成いたしました、とお述べになっておられます。その御意思のほどは、なるほどそうかもしれません。けれども、この法案が実施された結果において、私は危惧の念を抱かざるを得ないのであります。(拍手)すなわち、本法案は、さき審議過程にありました教育委員会法案に見られましたように、文部大臣の権限が非常に拡大強化されておるという点であります。国の干渉が教育行政の面に大きく打ち出されることが日本教育をよくするのだという考え方は、これは根本的に誤まりであるといわなければなりません。(拍手)  かつて国定教科書の果した役割について申し上げてみますと、明治三十六年の国定教科書制度移行への理由は、金港堂事件によって大々的に暴露された採決をめぐる教科書業界の醜状でありましたが、理由は決してこれだけでなかったことは、当時の文献に明らかなところでありまして、すなわち、明治三十年、貴族院は小学校読本及び修身用教科書は、国民教育の盛衰に関し、ひいては国家の隆替に及ぶがゆえに、国民教育の実を上げ、国運振興の基礎を拡張することを希望して、国定の建議を行い、次いで明治三十二年、衆議院も修身教科書を国で編集すべきであると建議しております。これが当時の軍国主義的国粋主義の立場から国民思想の統一をねらった策であることは明らかであり、たまたま起きた教科書疑獄が国定実現の格好の口実となったにすぎないことは、周知の事実でございます。(拍手)このようにしてできた国定制度は、日露戦争、第一次世界大戦による皇威発揚の要請とともに、その思想統一のための内容はいよいよ統制強化され、神聖にして侵すべからざる天皇とともに、万邦無比の国体を作り上げ、さらに忠良なる臣民を作り上げるに完全な威力を発揮したのであります。すなわち、国定教科書は、その画一性をマス・コミュニケーションの最適の道具として、軍国主義者たちに奉仕せしめたのであります。支配階級こそ最もよく教科書は最大のマス・コミであるということを知っていた点、私は真剣に考えてみる必要があると思うのであります。  御承知の通り、現在の教科書検定制度昭和二十三年より採用されたものでありまして、当時の文部省国定制を温存しようとしておったこと、忘れてはならないことであります。現在の検定教科書制度は、当時日本のなし得なかったことをなしたという点、高く評価されなければならないと思うのであります。占領中のものだからという言いわけはいけないと私は思います。こうして、検定制度が、徐々にではありますが、その歩みを始めて幾らにもならないとき、昭和二十七年秋に標準教科書を作ろうとする動きが出て参りました。当時、当局の言うところによりますれば、教科書の種類があまりに雑多なので、文部省で模範的標準になる教科書を作ろうとしたものでありました。そうして、昭和二十八年には、教科書編集費として百四十万円の予算が計上されております。そのときも、現在いわれるように、民編国管という表現が使われたことに留意しなければなりません。すなわち、過去の国定というのは文部省で編集したが、今度は広く民間の識者を集めて民主的に編集させ、そのできた原稿の著作権を国に帰属させるというのが、民編国管の実態であったわけであります。つまり、民間識者に編集させるとはいっても、当然国の予算で編集され、しかも、文部省の息のかかった、文部省の言いなりになる御用学者が教科書の執筆者として選ばれ、それと文部省とが相談しながら作るものである以上、それはすでに民編の域を脱して国定であり、思想統制の方向が出てくるのは当然のことであります。(拍手)このときも、文部省は、国定というのは過去のものであり、思想の統制などということはあり得ないと否定しておりましたが、それが明らかな欺瞞であることは、だれしも認めるところでございましょう。(拍手)すなわち、文部省の予算で編さんするが、文部省自身で作ったものでないから国定ではないというのが、政府の言い分でありました。  しかし、この動きは、次年度には世論の反撃もあって中止され、その予算の一部が教材研究に回されたといわれております。近年になり、自制を知らない商業主義のために、教科書が高い、転校したら教科書が手に入らない、教科書がよく変る、あるいは、不当な売り込み競争も黙視できないところまで来ているなどという声も聞えて参るようになりましたが、しかし、これらの素朴な父兄の声は、検定制度そのものに対してではなく、でき上った検定教科書並びにその運営面に向けられているということを父兄たち自身が気づかず、また、これをいいことにして、国定論者たちは直ちに検定制度そのものに罪があるかのごとくふれ回っているのでありまして、私はその点を指摘しないわけには参りません。(拍手)昨年の二月二十三日の東京新聞に、当時の民主党の公約十を上げた中の八番目に、文教の刷新、施設の整備、国定教科書の統一をあげていることを見ても、容易におかることであります。(拍手)また、かつて、吉田内閣時代、池田特使がニューヨークで行なった、いわゆる池田・ロバートソン会談の中で、日本政府日本の再軍備熱を高めるために教育広報活動を行うことを第一の責務とすると約束した事実は、当時朝日新聞ですっぱ抜かれて、ずいぶん世論の攻撃の的になったのでありましたが、(拍手)対米従属をモットーとする現内閣になりましても、右の密約が死んでしまったなどとは、だれしも考えないと思うのであります。そうだといたしますならば、時期が熟しさえすれば、公然と教科書国定化に乗り出すことは当然といわなければなりません。  初めにちょっと触れましたが、検定制度の意義について申し上げてみますと、まず第一に、教育内容にこれまで加えられてきた画一性を打破したことであります。国が教科書の編集に関する限り、こうした画一性が中央集権的思想統制の具に供せられやすいのは道理であります。そうして、その苦い経験を、私たちはついこの間までの戦争中の極端な超国家的、軍国主義的な教育に見出すことができるのであります。自由で民主的な社会の建設を私たちが望む限り、これを教育の面について申しますならば、その国家統一は絶対に避けなければならないということなのであります。(拍手)第二に、それは教科書の選定並びに編集に当って教師に自主性が付与されたことであります。それまで、教科書は、その一字一句は金科玉条として、それを批判する自由も拒否する自由も教師には与えられておりませんでした。教科書教師の外にあつて、自分たちのものではなかったのであります。それで、自由にして創造的な人間形成が行われるはずはありません。教科書を自分たちのものとして、自分たちの中で育てていく、これが民主主義社会における教科書の真のあり方というべきであります。(拍手)  本法案に対して社会党が反対している理由は、単に一制度の改訂に関することではなく、ほんとうわが国の将来の帰趨にゆゆしい影響を及ぼす一大事であると信ずるからであります。少くとも、わが国の民主化が一そう期待される限りにおいて、教育が次代のわが国をになう大切な子供たちの幸福と民主的な人間形成に重大なる寄与を果す限りにおいて、このように断言することができると思うのであります。しかるに、今日ほど、教育の問題が、子供の幸福に対する愛情と長期の見通しを欠いたまま論じられたことはないのであります。そして今日ほど、それが一党一派の党利党略によって撹乱されたこともありません。もとより、教育はその時代の社会や政治と孤立しては存在いたしません。しかし、そのことは、教育政治への従属を意味しないばかりか、むしろ、民主的な社会へ発展する重要な原動力として、その意味は決して忘れることはできないのでございます。(拍手)ただいま参議院において審議されております教育委員会法案とこの教科書法案と、切り離して考えるわけには参りません。  簡単に筋だけを申し上げます。すなわち、教育委員は任命にする。その任命された教育委員会教科書採択をする。中教審の答申では郡市単位となっておりますけれども、これを、本法案では、県単位までに拡大しております。あるいは、東北、関東、中国と、ブロック単位まで拡大されないとは、保証の限りではありません。検定につきましては、何と申しましても問題なのは、文部省初等中等教育局に設置されます常勤調査官であります。これは、この法文には現われていませんが、窓口調査でございます。これが運営を間違えますと、教科書を通じて学問、思想の自由を侵すおそれがあるということになるのでございまして、(拍手)要は、制度よりも人と運営の問題であります。  さらに、重要なる問題点としまして、新教育委員会法案の第三十三条であります。これは教科書以外の教材はすべて教育委員会に届け出て許可を要するという条項であります。実際問題としていろいろの教科書以外の教材をそのつど教育委員会に申し出て、その許可を取っておっては、実際上でき得ません。従って、教師としては、どうしても教科書一本やりということにならざるを得ないのであります。このような教科書一本やりの制度が非常な弊害を及ぼしたという例は、戦前、戦時中の教育を通じて明らかでありまして教師はマイクロホンになってしまうでございましょう。(拍手)この三十三条二項の規定と申しますのは、御存じない方も多いかと思いますので、簡単に説明いたします。NHKが三十一年間にわたって行なってきた学校放送というものを実際において不可能にする結果になるのであります。そのときそのときの問題をとらえて生きた学習を展開させたり、視聴覚教材によって経験を広め、豊かな情操を養い、興味の中に理解を深めることに努めてきた現場に、教材の利用を著しく困難ならしめるばかりでなく、日本の子供たちの視聴覚教育というものは壊滅の状態になりはしないか。このような重大な規定が盛られているのであります。中央教育審議会の教科書問題の主査であります森戸辰男先生が、この点を指摘されております。
  25. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 平田君——平田君、申し合せの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
  26. 平田ヒデ

    ○平田ヒデ君(続) これは、ただいま文部大臣の御答弁によりまして、中教審の答弁は十分尊重していると申されましたけれども……。(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)制度を作ったものだということを言われておるのでありまして、教科書ばかりでなく、その他の教材に対し詳細な制限を加えるということは最もよくないことでございまして、一々文部省が干渉する、教育委員会が干渉するということは、法律の建前は全く誤まりでございます。こうした教育行政の中からは、生き生きとした国民教育は生まれて参りません。(「時間だ、時間だ」と呼び、その他発言する者多し)もう少しですから。(拍手)——いろいろな混乱の中から民主的にして明るい日本教育が成長しつつあるときに、かかる法案が次々と出されましたことは全く残念なことでございまして、全国の母親たちは、子供たちの情操豊かな知性高い人としての成長を念願しております。
  27. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 平田君——平田君、申し合せの時間が過ぎました。結論を急いで下さい。
  28. 平田ヒデ

    ○平田ヒデ君(続) 角をためて牛を殺す結果になることがないように、パンを求めるものに石を与えることのないように、この際特に慎重に反省していただきたいと思うのでございます。  私は、こういう点から、わが党の修正案に賛成し、政府原案に対し絶対に反対をいたすものでございます。(拍手
  29. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 先ほどの高村君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。      ————◇—————
  30. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) この際、井上良二君外百五十二名から、本日はこれにて散会すべしとの動議提出されました。  本動議は記名投票をもって採決いたします。本動議に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票〕
  31. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  32. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数  三百五十二   可とする者(白票)  百三十三     〔拍手〕   否とする者(青票)  二百十九     〔拍手
  33. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 右の結果、井上良二君外百五十三名提出動議は否決されました。     —————————————  井上良二君外百五十二名提出本日はこれにて散会すべしとの動議を可とする議員の氏名    阿部 五郎君    青野 武一君    赤路 友藏君    赤松  勇君   茜ケ久保重光君    淺沼稻次郎君    飛鳥田一雄君    有馬 輝武君    淡谷 悠藏君    井岡 大治君    井手 以誠君    井上 良二君    井堀 繁雄君    伊瀬幸太郎君    伊藤卯四郎君    猪俣 浩三君    池田 禎治君    石橋 政嗣君    石村 英雄君    石山 權作君    稲富 稜人君    稻村 隆一君    今澄  勇君    今村  等君    受田 新吉君    小川 豊明君    大西 正道君    大矢 省三君    岡本 隆一君    加賀田 進君    加藤 清二君    春日 一幸君    片島  港君    片山  哲君    勝間田清一君    上林與市郎君    神田 大作君    川俣 清音君    川村 継義君    河上丈太郎君    河野  正君    木原津與志君    菊地養之輔君    北山 愛郎君    久保田鶴松君    栗原 俊夫君    小平  忠君    小牧 次生君    小松  幹君    五島 虎雄君    河野  密君    佐々木更三君    佐竹 新市君    佐竹 晴記君    佐藤觀次郎君    櫻井 奎夫君    志村 茂治君    島上善五郎君    下川儀太郎君    下平 正一君    杉山元治郎君  鈴木茂三郎君    鈴木 義男君  田中幾三郎君    田中織之進君  田中 武夫君    田中 稔男君  田原 春次君    多賀谷真稔君  高津 正道君    滝井 義高君  竹谷源太郎君    楯 兼次郎君  辻原 弘市君    戸叶 里子君  堂森 芳夫君    中井徳次郎君  中居英太郎君    中崎  敏君  中村 高一君    中村 時雄君  中村 英男君    永井勝次郎君  成田 知巳君    西村 榮一君  西村 彰一君    西村 力弥君  野原  覺君    芳賀  貢君  長谷川 保君    原   茂君  日野 吉夫君    平岡忠次郎君  平田 ヒデ君    福田 昌子君  古屋 貞雄君    帆足  計君  穗積 七郎君    細迫 兼光君  細田 綱吉君    前田榮之助君  正木  清君    松井 政吉君  松尾トシ子君    松平 忠久君  松原喜之次君    松前 重義君  松本 七郎君    三鍋 義三君  三宅 正一君    武藤運十郎君  森 三樹二君    森島 守人君  森本  靖君    八百板 正君  八木 一男君    矢尾喜三郎君  柳田 秀一君    山口シヅエ君  山口丈太郎君    山崎 始男君  山下 榮二君    山田 長司君  山花 秀雄君    山本 幸一君  横錢 重吉君    横路 節雄君  横山 利秋君    吉田 賢一君  和田 博雄君    渡辺 惣蔵君  石野 久男君    小林 信一君  否とする議員の氏名    阿左美廣治君  相川 勝六君    逢澤  寛君  愛知 揆一君    青木  正君  赤城 宗徳君    赤澤 正道君  秋田 大助君    荒舩清十郎君  有田 喜一君    有馬 英治君  安藤  覺君    五十嵐吉藏君  伊藤 郷一君    池田 清志君  池田正之輔君    石井光次郎君  石坂  繁君    石田 博英君  石橋 湛山君    一萬田尚登君  稻葉  修君    今井  耕君  今松 治郎君    宇都宮徳馬君  植木庚子郎君    植原悦二郎君  植村 武一君    臼井 莊一君  内田 常雄君    内海 安吉君  江崎 真澄君    遠藤 三郎君  小笠 公韶君    小川 半次君  小澤佐重喜君    大麻 唯男君  大石 武一君   大久保留次郎君  大倉 三郎君    大高  康君  大坪 保雄君    大橋 武夫君  大橋 忠一君    大平 正芳君  大村 清一君    大森 玉木君  岡崎 英城君    荻野 豊平君  加藤 精三君    加藤常太郎君  加藤鐐五郎君    上林山榮吉君  神田  博君    亀山 孝一君  唐澤 俊樹君    川崎末五郎君  川崎 秀二君    川島正次郎君  川野 芳滿君    川村善八郎君  菅  太郎君    木崎 茂男君  菊池 義郎君    岸  信介君  北澤 直吉君    北村徳太郎君  吉川 久衛君    清瀬 一郎君  久野 忠治君    草野一郎平君  楠美 省吾君    熊谷 憲一君  倉石 忠雄君    小泉 純也君  小金 義照君    小島 徹三君  小平 久雄君    小西 寅松君  小林  郁君    小林かなえ君  河野 金昇君    河本 敏夫君  高村 坂彦君    纐纈 彌三君  佐々木秀世君    齋藤 憲三君  坂田 道太君    櫻内 義雄君  笹本 一雄君    笹山茂太郎君  椎熊 三郎君    椎名悦三郎君  椎名  隆君    重政 誠之君  島村 一郎君    首藤 新八君  正力松太郎君    白浜 仁吉君  周東 英雄君    杉浦 武雄君  助川 良平君    鈴木周次郎君  鈴木 直人君    薄田 美朝君  砂田 重政君    關谷 勝利君  園田  直君    田口長治郎君  田中伊三次君    田中 角榮君  田中 彰治君    田中 龍夫君  田中 久雄君    田中 正巳君  高岡 大輔君    高木 松吉君  高碕達之助君    高瀬  傳君  高橋 禎一君    高見 三郎君  竹内 俊吉君    竹尾  弌君  竹山祐太郎君    千葉 三郎君  中馬 辰猪君    塚原 俊郎君  辻  政信君    渡海元三郎君  徳田與吉郎君    床次 徳二君  内藤 友明君    中嶋 太郎君  中曽根康弘君    中村 梅吉君  中村三之丞君    中村庸一郎君  中山 榮一君    仲川房次郎君  永山 忠則君    長井  源君  灘尾 弘吉君    夏堀源三郎君  南條 徳男君    二階堂 進君  丹羽 兵助君    西村 直己君  野田 卯一君    野田 武夫君  馬場 元治君   橋本登美三郎君  長谷川四郎君    畠山 鶴吉君  八田 貞義君    花村 四郎君  濱地 文平君    濱野 清吾君  早川  崇君    林  讓治君  林  唯義君    林   博君  原  捨思君    平塚常次郎君  平野 三郎君    廣瀬 正雄君  福井 順一君    福井 盛太君  福田 赳夫君    福田 篤泰君  福永 健司君    藤本 捨助君  淵上房太郎君    船田  中君  古井 喜實君    古島 義英君  保科善四郎君    坊  秀男君  星島 二郎君    堀川 恭平君  本名  武君    眞崎 勝次君  眞鍋 儀十君    前尾繁三郎君  前田房之助君    前田 正男君  町村 金五君    松岡 松平君  松澤 雄藏君    松永  東君  松野 頼三君    松村 謙三君  松本 俊一君    松本 瀧藏君  松山 義雄君    三田村武夫君  水田三喜男君    宮澤 胤勇君  村上  勇君    村松 久義君  粟山  博君    森   清君  森下 國雄君    森山 欽司君 山口喜久一郎君    山崎  巖君  山下 春江君    山手 滿男君  山中 貞則君    山本 勝市君  山本 粂吉君    山本 正一君  山本 友一君    横井 太郎君  横川 重次君    吉田 重延君  米田 吉盛君   早稻田柳右エ門  渡邊 良夫君    亘  四郎君      ————◇—————
  34. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 高津正道君。     〔高津正道君登壇
  35. 高津正道

    ○高津正道君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されている教科書法案の原案に反対し、社会党修正の主張に賛成の討論をいたそうとするものであります。(拍手)     〔議長退席、副議長着席〕  その第一点は、戦後の新しい教育に対し大変更を加えようとするものがこの教科書法案であるからであります。回れ右と申しましょうか、それも逆コースで、うしろに教育を向かせようとするこの教科書法案であるがゆえに、私は反対いたすのであります。(拍手)これは、文部大臣説明によりますと、前の民主党において十分に練って用意した着想に基いた案だと言われるのでありますが、前の民主党の出された、あの問題を起した「うれうべき教科書」なるパンフレットの中には、実にこのような驚くべき文句が入っておるのであります。「他国の侵略とは、必ずしも武力によるものでないとするなら、教科書を通じて、疑いもなく、ソ連や中共の日本攻略ははじめられているのである。日本の教職員たちは、或はそれに力をかし、或いはぼう然とそこに立ちすくみ、或いはそれを知らずに、相たずさえて日本教育の危機をつくっているのである。」という言葉であります。五十余万の、全国で教育に携わつている人々に対する、これ以上悪意ある侮辱がまたとあるでありましようか。(拍手)また、そのような認識というものが誤まつていることはもちろんであり、このパンフレットの第三十一ページ以下には、わずか八ページほどの間に「日本共産党及び日教組は」という文句が、実に十三回にわたって書かれてあるのであります。読む人々をして、日教組はすなわち日共であると思わせるような悪意ある書き方であります。  また、この法案提案者の清瀬文相の思想そのものが、実に偏向に満ち満ちたものでありまして、たとえば、四月の十四日に文化放送で放送されたものを、私はテープを二回回してもらって聞いたのでありますが、それには、大東亜戦争は、初めは自衛のために起ったものであり、結末においては、それは西欧の、白人の東洋制覇をアジアのために解放しようとしたものであるという、そのような、あの渋い、あのくせのある声がマイクに吸い込まれて、われわれに伝わるのであります。また、文教委員会において、いろいろわれわれが質問をしてみますと、日本の戦争は全部が悪いものではないんだ。太平洋戦争に対する清瀬君の見方は、すでに、今のように、初めは自衛のためであり、終りは解放のためである、こういうのでありますが、日清、日露の戦争をどう考えているかといえば、それは、一九二六年以前の戦争は、独立国として、どこへ宣戦布告をしようが、国家の固有の権利であって、あの戦争が悪いとは思っていない、ということを文相は言うのであります。私は、この人はわれわれの考えとはズレがある、センスがまるで違うということを感じているのであります。  また、われわれがこの教科書法案に反対するのは、民主主義に対するこれは挑戦であるからであります。日本の現在の民主主義は——私は、四百六十七のこの議席の中に、不思議なる数字を今考えております。戦前に議席にあった人は実に四分の一以下であり、戦後に当選しておる人が、私もその一人でありますが、実に四分の三強であります。そうして、現在の日本民主主義なるものは、法制的にいえば、憲法だとか、行政法だとか、民法、刑法、公職選挙法等々の法律によって建築されておるものでありますが、それらの民主主義的な諸制度を打ち立てたものは、小なるものを無と評価するわけではありませんが、大まかに言うならば、実に、その戦後派の人々が、この民主主義の殿堂を、社会制度を打ち立てたものである、ということも言えようと私は思うのであります。むろん、戦前の人といえども、精神的なリヴァイヴァルを経て、センスは最大公約数的にわれわれと全く同じ考えの人が——わが党の場合のごときはまさにそうでありますが、現在の内閣の閣僚の構成を見ておると、これもまた、おもしろい数字に気づかれるのであります。十人以上の人が、実にA級戦犯及び追放の解除者であります。(拍手)名前は別に読みませんけれども諸君、このような人々が集まって協議をする場合、あるいは閣議で会議をする場合、そこにかもし出すところの雰囲気は……。(「教科書法の問題だぜ」と呼ぶ者あり)これは教科書法の根本であり、教科書法の底を、春景をなすところのものを、われわれが考案しておるのであります。(拍手)——私は、そこに現われる、盛り上る、発酵するところの雰囲気なるものは、それは失地回復であり、われわれ戦前派の者が、といって、失われたるその失地を回復せんとするものであり、若き者あるいは戦後の四分の三以上の人々は、党派を越えて、こういう場合には私は考えねばならないと思うのであります。(拍手)そうして、失地回復と、もう一つは、私は復讐観念であろうかと思う。何に対してであるか。この民主主義的な戦後の諸制度、国会議事堂のごとき建築をした者があるのであるが、それを追放中に白い眼で見てにらんでおり、やつらに何ができるかと思っておった人が十何人も、この内閣に巣ごもるというか、こもって、そこで協議をすれば、戦後の民主主義に対する冷笑であり、反感であり、失地回復ということであろうと思う。ただし、そういうことを表に出したのでは、だれもついてくる者がないから、現内閣のスローガンは、占領政治の是正という、しろうともちょっと……。(「からだのことも考えてやれよ」と呼ぶ者あり)そういうスローガンになっておりますけれども、中身にそういう点がある点を、われわれは考えなければならないと思うのであります。  第三には、この原案の規定によれば、一県を一つ採択地区にもなし得るのでありますが、現在一郡、あるいは小さい市であれば一市、そのようなものが採択の単位になっておるのが全国の七割というのが現状であったものを、今度は、採択地区を、区域を広げて、一県一区の場合もあり得る、静岡県、福岡県の場合は、あるいは二つでもいい、一県一区にもしぼり得るようになっているのでありますが、この法案がすでに国会提出されるや、たとえば九州においては、大分、佐賀、宮崎のごときは、すでに一県は一採択地区でいくんだということをきめておるかのような情報を私たちは得ておるのであります。このような大きい採択地区を設ける場合には、どういう結果が現われるかといえば、その一県に、国語なら国語の一種類を、六年間のものを売る大きな商戦がそこに展開されるので、九十何社ある教科書出版会社は、それに参加し得るものは四つか五つであり、ある場合には、たった二つが残って争うかもしれぬのであります。そういうような大きな角逐戦が行われる場合には、参加しないで、多くは落伍するものであり、これは大企業に対して教科書の出版を独占せしめるものであって、現内閣あるいは自由民主党において常にいわれる中小企業の育成などということは、あれは投票集めの看板にすぎない、本心は常に大企業の味方であるという現実を暴露するものであろうと私は考えるのであります。(拍手清瀬文部大臣に、私たちが、このような大採択地区をもし設けることになれば、これはスキャンダルが現われ……。(「社会党じゃないか」と呼ぶ者あり)大丈夫々々々。——そうして、大会社だけが、四つか五つかの大手筋だけがそれに参加して、ほかのものは落伍して、中小企業は、その業界における中会社、小会社はだめになるではないか、こういう質問をすれば、いいものが勝つんだと、まるで資本主義の社会に——資本の集中とか優勝劣敗とか、弱肉強食で、いかなる業界を見ても、みんな少数の独占に帰しておる事実などは、てんで御存じないかのような認識なのであります。私は、教科書というものはよいものができればいいので、単に中小の会社を擁護するということだけの角度から論ずべきでないことは知っおるけれども、百数十億円という教科書の総売り上げ、それに対して、これを数社にゆだねるということは、ずいぶん乱暴な政策であると考え、この意味においても、この法案には反対をするものであります。  私は、日本の現在の国是は、自由と、そして平和と独立と民主主義を守る、このことが日本の国是でなければならないと確信いたします。私は、この見地から、このような逆コースまる出しの教科書法案に対しては、徹底的に最後まで反対したいと考えるものであります。教育委員会法も逆コースの一つの現われであり、教科書法案も逆コースの現われであり、選挙区を、あんなにいろいろな、得手勝手な区割りを作るのも、逆コースを通すためであり、憲法を改正し、軍備をいよいよ拡大する、そのうしろには、青い目の大きな男が立っておる。われわれは、このような法律案は、アメリカがどんなにわれわれを憎もうとも、財界や保守の諸君がどう考えようとも、われわれは、新しき愛国者として、このような法案に対しては断固反対するものであります。(拍手
  36. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 河野正君。     〔河野正君登壇
  37. 河野正

    ○河野正君 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府提案教科書法案に反対し、日本社会党辻原弘市君外九名より提案せられました修正案に対し強く賛成の意を表し、その討論を行わんとするものでございます。(拍手)  政府原案提案説明によりますと、本案は、教科書検定採択、発行等々の現状にかんがみ、教科書制度の整備改善をはかるというのであります。ところが、今日問題となっております憲法改正、あるいは小選挙区制、あるいはまた地方自治法の改正等々、政府の一連の動きより見て参りましても明々白々のごとく、その意図は教育に対する国家統制の復活であることは、火を見るよりも明らかでございます。(拍手)  御承知のごとく、さきに、日本の権威ある六百数十名の学者は、次のごとき声明を行なったのであります。すなわち、声明の趣旨は、教育は時の政治の動向によって左右されてはならぬことを前提といたしまして、教育に対する国家統制を促すところの最近の傾向というものは、やがて言論、思想の自由の原則を脅かすおそれがあるものと警告いたしておるのでございます。さらに、また、そのような重要な法律案を、適当な審議機関に慎重な諮問も行わず、あるいは世論にも耳を傾けず、にわか作りのまま国会提出する政府の軽率なやり方をきびしく戒め、かつ、健全に育成せられつつあった国民教育の前途をはなはだしく憂うる論旨のものでありまして、政府の文教政策の一般について、これだけの学者あるいは学識者が一致して声明を発しましたことは、教育史上今日までその類例を見ない重大な事態であったものと、私どもはいわざるを得ないのでございます。(拍手)従って、その反対に耳をかさないか、あるいは、あえてこれを無視してきた政府与党態度は、当然に反省さるべきものであると、私どもは信じて疑わないのでございます。(拍手)  今日、政府与党考えているような教育制度の改革が実現する暁におきましては、全国の子供たちに、文部大臣の名によって、時の政府の意図することのみが教えられる心配を持つ者は、単に私一個人のみではないと信ずるのでございます。(拍手)しかも、この中で特に注目すべき点は、教科書制度を改変して、義務教育における教科書を実質的に固定化しようとする動きのある点でございます。この点は、事実上国定の学説、官許の思想のみを国民に押しつけんとする危険性のある、きわめて重大な点でございます。もし、国民教育というものが、このような政治的な権力によって、画一的な統制と支配に屈したといたしますならば、研究や発表の自由はもとより、学問と思想の進歩が重大なる脅威にさらされることも明白といわざるを得ないのであります。(拍手)     〔副議長退席、議長着席〕 今や、政府及び与党は、右手には教育委員会法、左手には教科書法という二つの蕃刀を振りかざして、日本が今日まで血をもって戦い取った、いわゆる民主的な教育制度というものを、ずたずたに根底から切り倒すものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  政府与党は、また、本原案は、現行教科書制度に対する世間の批判にこたえて、これを整備改善しようとするもので、学者の声明等は的はずれであると反論しておるのでありますが、しかし、このような反論というものは、ちようど、はげ頭の男が、この薬はよくききますと言って売り歩く毛はえ薬のようなものでございまして、(拍手)賢明な国民というものは、決して信用するものではないのでございます。  今度の教科書法の特徴を、一言にして要約して申し上げますならば、それは清瀬文相が国会でもたびたび答弁いたしておられまするように、教科書厳選主義の具体化ということでございましょう。もちろん、目ざすべき教科書制度の理想が、自由出版、自由採択にあるということは、言をまたないのでございます。現実の問題として、教科書制度の全般にわたって厳選主義がとられるのはやむを得ないのでございまするが、しかし、厳選主義をとる反面においては、必ず自由制を残すということでなければならぬのでございます。すなわち、厳選主義は断じて画一化であってはならないのであります。  今度の教科書法には、少からぬ危惧と不安とをはらむことを、まことにわれわれは遺憾に思うものでございます。たとえば、発行者について登録制度が設けられることになっているのでございますが、登録拒否条件一つとして、発行者の事業能力及び信用状態があげられているのでございます。ただいま高津議員から申し述べたのでございますが、これでは、教科書出版が限られた大企業に集中して、検定制度の眼目の一つであります出版の機会均等性ということが全く骨抜きになっているのでございます。今日、国内におきましては九十六社の教科書出版会社があるといわれておるのでございますが、本法が不幸にして通過するといたしますならば、巷間伝うるところでは、この九十六の出版会社が五社か六社に限定されてしまうであろうといわれておるのでございます。すでに、保守派の特定人物には、そのようなことで臭気ふんぷんたるものがあることを、私どもは承わっておるのでございます。(拍手)  なお、また、われわれが政府教科書法案の中で最も大きな不満を持つものは、教科書採択方法でございます。すなわち、本法案では、上からの限定採択という面は出ているのでございますが、同じく限定採択と申しましても、下部からの限定採択、すなわち、日ごろから学習指導に当っております現場の教師が中心となりまして厳選を重ねた結果の限定採択ということが、全く本法案におきましては無視されておるのでございます。ところが、教科書は教材の一種でございます。現場の学校教師が最も使いやすいものを、みずから責任をもって選んで使うということが、教育上の立場からも、子供の教育を最も能率的に伸ばしていく上からも、当然といわなければなりません。一方、検定審議会の強化も、党利党略によって民主的教育を右往左往せしめ、かつ、政争によって純真な子供たちの頭をなぶりものにすることは、私どもの断じて容認し得ざるところであります。  政府は、教科書制度の改正については、中央教育審議会に諮問し、その答申を尊重したというのでございますが、最も問題にされる点は、この改正案がたとい行政上合理的なものであっても、一方、それが政治的に悪用される道がたくさん残されておることを、私どもは注目しなければならぬのでございます。(拍手教育基本法第十条には、教育は不当な支配に服してはならないと明記されております。ところが、旧民主党が「うれうべき教科書」を発行しまして以来、今日まで、すでに教科書検定には著しい圧力がかけられまして、教育基本法第十条は、はなはだしくじゅうりんされておる事実を、私どもは明白に認めざるを得ないのでございます。(拍手)  このように、さきには教育委員会法を改悪し、このたびは、さらに教科書制度を根本的に変革せしめ、上よりする規制の面を強く打ち出しておりますることは、まことに遺憾といわなければなりません。このことは、教育中央集権化への危険性をはらむものとして、私どもは断じて見のがしては相ならぬのでございます。(拍手)  清瀬文部大臣は、教育改革については、常に党議優先を繰り返されたのでございます。また、政治は生きものだとも語っておられるのでございます。文教の最高責任者たる文部大臣が、一体、党議優先で済ましていいものでございましょうか。世の多くの論難と批判をこうむったこの法案でありまするから、もし清瀬文部大臣に一片の良識があるといたしますならば、清瀬文部大臣こそは、教育政策修正のために、党内を説得する努力を惜しんではならないと存ずるのでございます。(拍手)このことは、清瀬文部大臣の晩節を全うするためにも、私は一つの大きな使命ではなかろうかというふうに考えておるのでございます。与党も、また、一片の良識ありとするならば、教育の自由、民主、中立の三原則の確立、また、政治道義の高揚のため、あるいは、次の世代をになう青少年を守るためにも、率直に反省されんことを、私どもは切に要望いたしてやまない次第でございます。  これに反し、わが社会党辻原弘市君外九名提案になりまする修正案は、検定拒否採択教師用指導書に関し、きわめて適切な修正を加えるものでございまして、われわれの強く賛意を表してやまない点でございます。  以上、簡単でございまするけれども理由を申し述べまして、政府原案に反対し、わが社会党辻原弘市君外九名の提案になりまする修正案に対し絶対賛成の意を表するものでございます。(拍手
  38. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、辻原弘市君外九名提出修正案につき採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本修正案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票〕
  39. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  40. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数 三百五十八   可とする者(白票)  百三十五     〔拍手〕   否とする者(青票)  二百二十三     〔拍手
  41. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 右の結果、辻原弘市君外九名提出修正案は否決されました。     —————————————  辻原弘市君外九名提出教科書法案に対する修正案を可とする議員の氏名    阿部 五郎君  青野 武一君    赤路 友藏君  赤松  勇君   茜ケ久保重光君  淺沼稻次郎君    飛鳥田一雄君  有馬 輝武君    淡谷 悠藏君  井岡 大治君    井手 以誠君  井上 良二君    井堀 繁雄君  伊瀬幸太郎君    伊藤卯四郎君  伊藤 好道君    猪俣 浩三君  池田 禎治君    石橋 政嗣君  石村 英雄君    石山 權作君  稲富 稜人君    稻村 隆一君  今澄  勇君    今村  等君  受田 新吉君    小川 豊明君  大西 正道君    大矢 省三君  岡本 隆一君    加賀田 進君  加藤 清二君    春日 一幸君  片島  港君    片山  哲君  勝間田清一君    上林與市郎君  神田 大作君    川俣 清音君  川村 継義君    河上丈太郎君  河野  正君    木原津與志君  菊地養之輔君    北山 愛郎君  久保田鶴松君    栗原 俊夫君  小平  忠君    小牧 次生君  小松  幹君    五島 虎雄君  河野  密君    佐々木更三君  佐竹 新市君    佐竹 晴記君  佐藤觀次郎君    櫻井 奎夫君  志村 茂治君    島上善五郎君  下川儀太郎君    下平 正一君  杉山元治郎君    鈴木茂三郎君  鈴木 義男君    田中幾三郎君  田中織之進君    田中 武夫君  田中 稔男君    田原 春次君  多賀谷真稔君    高津 正道君  滝井 義高君    竹谷源太郎君  楯 兼次郎君    辻原 弘市君  戸叶 里子君    堂森 芳夫君  中井徳次郎君    中居英太郎君  中崎  敏君    中村 高一君  中村 時雄君    中村 英男君  永井勝次郎君    成田 知巳君  西村 榮一君    西村 彰一君  西村 力弥君    野原  覺君  芳賀  貢君    長谷川 保君  原   茂君    日野 吉夫君  平岡忠次郎君    平田 ヒデ君  福田 昌子君    古屋 貞雄君  帆足  計君    穗積 七郎君  細迫 兼光君    細田 綱吉君  前田榮之助君    正木  清君  松井 政吉君    松尾トシ子君  松平 忠久君    松原喜之次君  松前 重義君    松本 七郎君  三鍋 義三君    三宅 正一君  武藤運十郎君    森 三樹二君  森島 守人君    森本  靖君  八百板 正君    八木 一男君  矢尾喜三郎君    柳田 秀一君  山口シヅエ君    山口丈太郎君  山崎 始男君    山下 榮二君  山田 長司君    山花 秀雄君  山本 幸一君    横錢 重吉君  横路 節雄君    横山 利秋君  吉田 賢一君    和田 博雄君  渡辺 惣蔵君    石野 久男君  小林 信一君    志賀 義雄君  否とする議員の氏名    阿左美廣治君  相川 勝六君    逢澤  寛君  愛知 揆一君    青木  正君  赤城 宗徳君    赤澤 正道君  秋田 大助君    足立 篤郎君  荒舩清十郎君    有田 喜一君  有馬 英治君    安藤  覺君  五十嵐吉藏君    伊藤 郷一君  池田 清志君    池田正之輔君  石井光次郎君    石坂  繁君  石田 博英君    石橋 湛山君  一萬田尚登君    稻葉  修君  犬養  健君    今井  耕君  今松 治郎君    宇都宮徳馬君  植木庚子郎君    植原悦二郎君  植村 武一君    臼井 莊一君  内田 常雄君    内海 安吉君  江崎 真澄君    遠藤 三郎君  小笠 公韶君    小川 半次君  小澤佐重喜君    大麻 唯男君  大石 武一君   大久保留次郎君  大倉 三郎君    大高  康君  大坪 保雄君    大橋 武夫君  大橋 忠一君    大平 正芳君  大村 清一君    大森 玉木君  岡崎 英城君    荻野 豊平君  加藤 精三君    加藤常太郎君  加藤鐐五郎君    上林山榮吉君  神田  博君    亀山 孝一君  唐澤 俊樹君    川崎末五郎君  川崎 秀二君    川島正次郎君  川野 芳滿君    川村善八郎君  菅  太郎君    木崎 茂男君  菊池 義郎君    岸  信介君  北澤 直吉君    北村徳太郎君  吉川 久衛君    清瀬 一郎君  草野一郎平君    楠美 省吾君  熊谷 憲一君    倉石 忠雄君  小泉 純也君    小金 義照君  小島 徹三君    小平 久雄君  小西 寅松君    小林  郁君  小林かなえ君    河野 金昇君  河本 敏夫君    高村 坂彦君  纐纈 彌三君    佐々木秀世君  齋藤 憲三君    坂田 道太君  櫻内 義雄君    笹本 一雄君  笹山茂太郎君    椎熊 三郎君  椎名悦三郎君    椎名  隆君  重政 誠之君    島村 一郎君  首藤 新八君    正力松太郎君  白浜 仁吉君    周東 英雄君  杉浦 武雄君    助川 良平君  鈴木周次郎君    鈴木 直人君  薄田 美朝君    砂田 重政君  關谷 勝利君    園田  直君  田口長治郎君    田中伊三次君  田中 角榮君    田中 彰治君  田中 龍夫君    田中 久雄君  田中 正巳君    田村  元君  高岡 大輔君    高木 松吉君  高碕達之助君    高瀬  傳君  高橋 禎一君    高見 三郎君  竹内 俊吉君    竹尾  弌君  竹山祐太郎君    千葉 三郎君  中馬 辰猪君    塚原 俊郎君  辻  政信君    渡海元三郎君  徳田與吉郎君    床次 徳二君  内藤 友明君    中嶋 太郎君  中曽根康弘君    中村 梅吉君  中村三之丞君    中村庸一郎君  中山 榮一君    仲川房次郎君  永山 忠則君    長井  源君  灘尾 弘吉君    夏堀源三郎君  南條 徳男君    二階堂 進君  丹羽 兵助君    西村 直己君  根本龍太郎君    野田 卯一君  野田 武夫君    馬場、元治君 橋本登美三郎君    長谷川四郎君  畠山 鶴吉君    八田 貞義君  花村 四郎君    濱地 文平君  濱野 清吾君    早川  崇君  林  讓治君    林  唯義君  林   博君    原  捨思君  平塚常次郎君    平野 三郎君  廣瀬 正雄君    福井 順一君  福井 盛太君    福田 赳夫君  福田 篤泰君    福永 健司君  藤本 捨助君    淵上房太郎君  船田  中君    古井 喜實君  古島 義英君    保科善四郎君  坊  秀男君    星島 二郎君  堀川 恭平君    本名  武君  眞崎 勝次君    眞鍋 儀十君  前尾繁三郎君    前田房之助君  前田 正男君    町村 金五君  松岡 松平君    松澤 雄藏君  松田竹千代君    松永  東君  松野 頼三君    松村 謙三君  松本 俊一君    松本、瀧藏君  松山 義雄君    三田村武夫君  水田三喜男君    宮澤 胤勇君  村上  勇君    村松 久義君  粟山  博君    森   清君  森下 國雄君    森山 欽司君 山口喜久一郎君    山崎  巖君  山下 春江君    山手 滿男君  山中 貞則君    山本 勝市君  山本 粂吉君    山本 正一君  山本 友一君    横井 太郎君  横川 重次君    吉田 重延君  米田 吉盛君  早稻田柳右エ門君  渡邊 良夫君    亘  四郎君     —————————————
  42. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 次に、本案につき採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  43. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  44. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) この際暫時休憩いたします。     午前三時三十二分休憩      ————◇—————     午後五時五分開議
  45. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
  46. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第二、家畜取引法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。農林水産委員会理事吉川久衛君。弥君     —————————————   〔吉川久衛君登壇
  47. 吉川久衛

    ○吉川久衛君 ただいま議題となりました、内閣提出参議院送付家畜取引法案につきまして、農林水産委員会における審査の経過並びにその結果について御報告申し上げます。  戦後、家畜の飼養頭数は、馬を除き著しく増大し、畜産は農家経営の一環として進展して参りましたが、その流通形態は著しく後進的であり、昭和二十三年に家畜市場法が廃止されて以来、わずかに各道府県の地方条例によって律せられているありさまでありますが、家畜は、元来、全国的に広く流動するものであり 地域的な条例のみで規制し得ないことは明らかであります。現在、弱小な家畜市場が乱立し、その取引においても、いわゆるそでの下取引あるいは庭先取引等が行われ、家畜の生産者である農業者は、このような不当な取引慣行のもとに売買を余儀なくされ、わが国畜産業の進歩を阻害する原因となっており、家畜の流通対策の確立が久しく要望されて参ったのでありますが、政府は、この事態に即応し、このたび本案を提出されたのであります。  次に、本法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、家畜市場の開設は都道府県知事の登録制とし、これに伴い登録の基準等の必要な規定を設けること、第二に、家畜市場における取引の公正かつ安全をはかるため、取引の開始前及び終了後に法定事項を公表させること、市場の開催日に獣医師を置くこと、市場の施設について基準を設けること、取引方法は、原則としてせり売りまたは入札とすること、代金の決済は市場開設者を経由せしめること等、市場についての規制事項を設けること、第三に、家畜の生産地で子牛、子馬等の取引される産地家畜市場は、乱立の傾向に陥り、弱小化しているので、都道府県知事が必要であると認める地区について、利害関係人の意見等により協議がととのったときには、都道府県知事が再編整備地域として指定し、この地域においては、一定期間、類似市場の開設を制限し、産地家畜市場の育成をはかろうとすること、第四に、臨時市場の開設については、都道府県知事への届出制をするほか、市場外における家畜取引については、家畜取引業者は法令事項を記載した書類を相手方の農業者等に交付させること等を義務づけようとするものであります。  なお、参議院において、家畜商の欠格条項について修正がなされております。  本法律案は、三月十四日に付託になり、四月三日、政府より、提案理由及び参議院における修正部分について、あわせて説明を聴取し、五月二十二日の委員会において質疑を行なったのでありますが、その詳細については会議録に譲ることといたします。  同日質疑を終了し、討論を省略して直ちに採決を行なったところ、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決した次第であります。  なお、神田委員より、自民、社会両党の共同提案による、家畜取引に内在する因襲を打破し、その改善をはかるための四項目にわたる附帯決議案が提出されましたが、これも全会一致をもって可決された次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  48. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  50. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。     午後五時十一分散会