○細迫兼光君 私は、提案者を代表いたしまして、ただいま上程せられました
外務大臣重光葵君に対する不信任決議案の趣旨説明を試みんとするものであります。(
拍手)
まず、その主文並びに理由を朗読いたします。
主文
本院は、
外務大臣重光葵君を信任せず。
右決議する。
〔
拍手〕
理由
一、
重光外務大臣の拙劣きわまる外交のため
日ソ交渉は事実上決裂し、
政府の重要公約たる
日ソ国交回復は今や不可能視されるに至つた。このことはわが国のアジアにおける
立場をいよいよ孤立せしめるのみならず、
抑留者の引揚を無期延期し、北洋漁業の操業を危たいならしめるものである。
一、
重光外務大臣は昨年米国でのダレス氏との
会談において、防衛分担金の取極において、さらに又原水爆実験中止
要請において自主独立の外交をまつたく放擲し、アメリカ一辺倒の追随外交に終始した。
一、
重光外務大臣のアメリカ追随自主性喪失の外交
政策のためわが国の国連加入もついに不可能となり、わが国の国際社会復帰の絶好の機会を失うに至つた。
一、
重光外務大臣は、アメリカの意を迎うることにきゅうきゅうとし
国民の悲願たる日中
国交回復に対してなんらの熱意を示さず、あまつさえ中華人民共和国周恩来首相の
国交回復のための再三の呼かけをも無視し、日中間の正常なる
国交樹立を意識的に阻害している。
一、
重光外務大臣は日比賠償
交渉に当つて、わが国の経済力を無視した八億ドル賠償案をのみ、他のアジア諸国との賠償問題
解決を困難ならしめるとともに、わが国の経済にはなはだしい重圧を加えんとしている。
一、
重光外務大臣は、わが国と韓国間の紛争
解決につきなんら具体的積極的方策を樹てることなく、いたずらに遅疑逡巡拱手傍観するのみであつて、日韓
国交回復は望み得べきもない。
外務大臣の
責任誠に重大である。
これが、この不信任案を
提出する理由である。
〔
拍手〕
以上は、この
重光外務大臣不信任決議案の主文並びに理由の要旨であります。
以下、私は、いささかこれを敷衍して、諸君の理解ある御賛成を得たいと思うのであります。(
拍手)
すなわち、われわれは、まず第一に、このたびの
日ソ交渉についての
重光外務大臣の
責任を追及しなければなりません。(
拍手)
日ソ交渉は、御承知の
通り、昨年六月
ロンドンにおいて開始せられ、それから月をけみすること十カ月、延々二十三回の
交渉を持ったのでありますが、ついに今日の無
期限休会の羽目に陥らしめてしまったのであります。西ドイツのアデナウアー首相が三日か四日でやってのけた仕事を、一体何年かかってやるつもりであるか。(
拍手)これがために、
ソ連との通商問題はもちろんのこと、緊急を要する漁業問題や
抑留邦人の引き揚げ問題をも無
期限のかなたに押しやってしまったのであります。
漁業問題の重要性は、今さら言うまでもありません。今日、東支那海の漁業も自由でない。朝鮮海峡の漁業に至っては、不当なる圧迫に、漁業者は悲憤の涙に暮れております。(
拍手)また、太平洋においては、アメリカの原水爆実験の脅威にさらされて、わが漁業は重大なる危機に立ち至っておる状態でありまして、漁業者、ことに沿岸中小漁業者は、大規模な漁業会社が北洋漁業に出向くことによって、沿岸漁場の
確保を、今日の
生活の問題として強く強く——
日ソの間の漁業協定の成立を一日千秋の思いで待っておるのであります。(
拍手)
さらに、
抑留邦人の
帰還につきましては、抑留せられておる本人の苦痛は申すに及ばず、
留守家族は首を長くして
日ソ交渉の
妥結を待っておるのであります。(
拍手)このことは、直接
留守家族の陳情を聞かれた
外務大臣のすでによく御承知のことであります。
今や、これらの沿岸漁業者や
留守家族は、失望のどん底に泣いております。まことに
外務大臣の
責任は重大といわねばなりません。(
拍手)
そもそも、
日ソ国交の
回復は、第三次
鳩山内閣の選挙における公約の一枚看板でありました。(
拍手)四十二万戸の
住宅建設の公約も、防衛分担金を削減して社会保障費に回すという公約も、今や全く画餅に帰した今日、ただ
一つ国民が希望を
鳩山内閣に寄せておった
日ソ交渉も、ついに無
期限休会のふちに陥ってしまったのであります。(
拍手)全く
鳩山内閣は
国民の投票を詐欺、横領したものといわなければなりません。(
拍手)これらの公約によって、衆議院百八十四名の議員当選者は、この際あらためて
国民の信任を問うべきであって、われらがさきに衆議院解散
要求決議案を
提出した理由の
一つも実にここにあったのであります。(
拍手)
そもそも、その失敗は、困難なる
領土問題を最終的にこの際
解決せんとする見通しを誤まった根本
態度に出ておるのであります。(
拍手)諸君、われわれは戦争を放棄しております。われわれは、これを光栄とし、誇りとしております。当然に、外交
交渉に当りましては、常に理路整然たる正しい
主張を、堂々と、相手方はもちろんのこと、全世界に訴えて、もってその貫徹を期さなければならぬのであります。(
拍手)
領土問題について、われわれは、先に
田中君が指摘しましたように、沖縄、小笠原とともに、
南樺太、
千島の
返還を強く
要求するものであります。(
拍手)しかしながら、そのきわめて困難なる問題であることも、あわせて、われわれは見通しを持っておるのであります。(
拍手)
重光外務大臣は、かつて東京湾上ミズーリ号の甲板において降伏文書に調印なさったことを覚えておられるでありましょう。(
拍手)この降伏文書には、「茲ニ『ポツダム』宣言ノ条項ヲ誠実ニ履行スルコト」と書いてあります。しこうしてその
ポツダム宣言には、明らかに、「『カイロ』宣言ノ条項ハ履行セラルベク又
日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ
決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」と書いてあります。なお、
サンフランシスコ平和条約において
千島の
領土権を放棄したのであります。こうした過去の
経過をたどってきた
千島、樺太問題でありますがゆえに、それがたとい南
千島に限られようとも、満足な
解決に達することが非常に困難であることは、およそ常識ある人が容易に見通し得るところでなければなりません。(
拍手)
われわれの
主張は、常に世界の何人をも首肯せしめる、堂々たるものでなければなりません。いやしくも世界の良識者が首肯し得ないような
主張をなすことは、われわれの厳に慎しまなくてはならないところであります。(
拍手)それは、せっかくの同情者を失うばかりではなく、今後の各方面の問題に対する
日本の
主張を力弱くするものであります。われわれの見通しにおきましては、
領土問題は非常に困難である。しかし、不可能であるかといえば、決して不可能ではない。(
拍手)
日本に社会党政権が確立せられ、
返還の
地域がアメリカの軍事基地にならないという保障が客観的に成立したとき、それは可能となるのであります。(
拍手)だから、
領土問題についてはこの際最終的な
決定をなすべきでない。南
千島というような、けちな、不利益なところでピリオドを打つべきでない。よろしく
領土問題は未
解決のままで保留しておくべきであると、われわれはかつて
外務大臣に忠告、
要請をしたこともあったのであります。(
拍手)普通の知識を持つ者なら、何人も同感すべきであります。よって、わが社会党は、
戦争状態の
終結と平和
国交の
回復を主眼とする簡潔な
平和条約を
締結し、そうして
抑留者の帰国を早急に
実現させ、引き続き通商問題、漁業問題、
領土問題の諸懸案の
解決を
計画すべきであると
決定いたしたのであります。(
拍手)
重光外務大臣は、この見やすき見通しをも持ち得ないで、ついに今日の無
期限休会に陥らしめたのであります。(
発言する者多し)外交において最も重要なることは、言うまでもなく、精密的確なる見通しを持って、しこうして、それに対する正確なる手を打つべきことであります。(
拍手)しかるに、
重光外務大臣は、この正確なる見通しを持つ能力を持たないで、十カ月の日時をむなしく費し、多大な国費を浪費せしめた
責任は、断じて許すべからざるものといわなければなりません。(
拍手)
次に問題となるのは、重光外相の、この
日ソ交渉に当って、常に
鳩山総理の
早期妥結の希望の足を引っぱって事をここに至らしめた
責任であります。(
拍手)すなわち、
鳩山総理は、本年一月二十六日の記者会見において
領土問題を
あと回しにするという
意見を述べたのであります。朝日新聞の録音による速記は次のように
報告しております。(
拍手)「問、
日ソにしろ、日比にしろ、それも通常国会中に仕上げたいというお
考えですか。答、仕上げたいですね。そこでまあ
戦争状態終結の宣言をしたいというようなことからはじまって来て
戦争状態終結の宣言をすれば当然にそれと同時に
抑留者を帰さなくちゃあならん。
領土の問題にしても不当に占拠しているという理由はないんであるからして戦争を防止するために必要な程度に限ってそういうようなものは暫時の間このままにしといて後日
解決するというような結果になって行ってだね、
日ソ交渉が片付きゃしないかということをこい願っているわけだ。」
鳩山総理はこう言っておられるのであります。
鳩山総理が、かねてから、
日ソの
国交回復だけは自分の手でやりたいと
考えておられることは、
外務委員会などで、しばしばそれと受け取られる
発言によって明瞭であります。私は、それを善意をもって信用しておりました。ほかに何もしておらない
鳩山総理でありますから、さもありなんと信用いたしておりました。(
拍手)しかも、自分の健康に自信がないので、早期に
妥結に持っていきたいと
考えられたことは当然であります。(
拍手)私は、この
鳩山総理の個人的な希望を率直に善意を持って信用し、かつ歓迎しておりました。
私らは、
鳩山内閣が平和憲法を改悪して、再軍備、徴兵を強行しようとするきわめて危険なる内閣であることを見抜きながらも、なお
日ソ交渉の開始だけは党派を越えてこれに協力し、むしろこれを激励するの
態度をとったことは、御承知の
通りであります。(
拍手)
日ソ交渉の開始当初は、いまだ
保守合同が成立していなかった以前でありましたからして、
外務委員会は、
日ソ交渉をぶちこわそうとする自由党の諸君と、
日ソ交渉を早期に
妥結せしめんとする社会党と、この在野の両党の論争の場となるというような奇妙な情景を呈したのであります。(
拍手)この間にあって、重光外相は、常に懸案の同時
解決を
主張し、
領土問題を
鳩山総理が漏らしたごとくに
あと回しにしない限り、今日の行き詰まりに逢着することを、口をすくして忠告したにかかわらず、ついに、今日、事ここに至らしめたのであります。(
拍手)これ、この
日ソ交渉においての重光外相の大失敗が、われわれこの不信任決議案を
提出する第一の理由であります。(
拍手)
次に、日中問題に対する
重光外務大臣の無能ぶりを糾弾しなければなりません。中国の周恩来首相は、今年の一月三十日に、中国人民政治協商
会議第二期全国委員会におきまして、次のように申しております。すなわち、中国の
政府は、去年の八月十七日と十一月四日と二回にわたって、
日本政府に対し、両国
政府が
関係を
正常化し、従来の問題について話し合いをすることを提案した、こういうことであります。私どもは、この周恩来首相の
発言によって、それまですでに二回にもわたって周恩来首相から日中
交渉についてわが
政府に申し入れがあったという事実を、むしろ初めて知ったのであります。(
拍手)しかも、二月十一日に、この三回にわたる周恩来首相の申し入れに対しまして、
日本政府は何らの返事をしていないと申しております。私どもは、この間におきまして、
重光外務大臣が日中の
国交回復あるいは貿易の促進につきまして何らの熱意を持っていないという事実を知ったのであります。去る本
会議におきまして、わが党の鈴木委員長が、重光外相は中国に対して何らの手を打っておらないということを
質問いたしましたのに対しまして、
重光外務大臣は、何の手を打つのかと
答弁をいたしたのでございます。全く、一国の
外務大臣の
答弁といたしまして、驚き入った
答弁でございます。(
拍手)多大の金額、労力を費しまして、お互いに見本市までを開設、交換をいたしておりまする業界の諸方面では、日中の貿易の
回復とその促進をまことに熱望いたしております。しかるにかかわらず、
重光外務大臣は、これら
日本国民、
日本実業家の希望すらをもその耳に入れないのであります。そうして、中国に対しまして何の手を打ってよいか、さっぱりこれがわからないのであります。(
拍手)
私どもは、この中国に対する問題が非常にむずかしい問題であることは百も承知いたしております。それはすなわち、台湾
政府をすでに
承認しておるという事実にかかっております。しかしながら、周恩来首相は、常に注意深く、台湾
政府の
承認という事実は何ら日中の
国交回復を妨げるものでないとまでつけ加えております。しかるにかかわらず、
重光外務大臣は、この間に処しまして、全く何の手を打っていいかわからないで立ちすくんでおる。わずかに、あの見本市をお互いに開催することを
承認しておる程度でございまして、しかも、それのためにやって参りました中国の方々に対しまして、
法律の端々を適用いたしまして、その帰国に際しまして、指紋をとるとかとらないとかいうような好ましくないところの
事態を引き起したのであります。(
拍手)これは、直接にはもちろん法務省の問題でありまするけれども、
外務大臣たる重光氏において、大所高所からこの円満なる進行を促進することは、決して不可能なことではなかったのであります。(
拍手)こういう状態におきまして、中国との
関係はいつ
回復し、われわれの生存に絶対必要なる中国との貿易もいつ促進されるか、いつ一体われわれの目的が達せられるか、全く五里霧中であるといわなければなりません。(
拍手)
御承知のように、台湾、中国だけのことを見ましても、全くばからしい商売をしております。台湾からたくさんの砂糖を輸入いたしております。この協定値段は何と百十五ドルでございます。ニューヨークにおける世界の砂糖相場は六十九ドル四十五セントである。これは、
日本のお金に換算すれば、その間に約一万円の差があるのでありまするが、キューバからでも、どこからでも、六十九ドル四十五セントで輸入できるところのこの砂糖を、わざわざ台湾から百十五ドルで輸入しておる。こういうばかな商売をしておる。(
拍手)一方、輸出の方を見ましても、硫安を一例としてみましょう。硫安におきましては、台湾に輸出しておるのは幾らであるか、五十八ドルから六十ドル、一方、中国におきましては六十四ドルから五ドルで引き受けようといたしております。しかも、その安い方の台湾には三十万トンになんなんとする輸出をいたし、高く買おうとする中国の方にはわずかに見本程度のものしか出しておらない、こういうようなばかな商売がどこにありますか。(
拍手)こういうことをやっておりまするならば、すなわち、高いものを探して買うてくる、安いところを探して売っていくというような商売をいたすならば、これでは
日本の経済はたちまち破産でございます。(
拍手)国においてこういう商売を続けますならば、これは亡国の商売でございます。(
拍手)こういうことを、てんとして顧みず、これの打開策を講ずるの道を知らない。しかしながら、こういう不合理な商売のよってきたるところの原因は一にアメリカ一辺倒の外交
政策に基因することは説明するまでもありません。(
拍手)すなわち、中国との貿易をしようとするものは台湾との取引を禁止するというような脅迫におびえてのことであります。われわれは、この問題、すなわち、中国と
日本との
国交回復の問題につきまして、まことに、この決議案に申しまするごとくに、袖手傍観、なすところを知らざる
重光外務大臣の
責任を、ここに追及せざを得ないのであります。(
拍手)
次に、身近な日韓問題、韓国に対する問題はいかがでありましょうか。全くこれ袖手傍観、なすところを知らない状態。かつて、広島の原子爆弾禁止の世界大会に、世界各国からほとんどその
代表者がやって参りました。
政府は、最初
ソ連あるいは中国の代表の入国を拒否いたしておりましたが、強い
要望のもとに、
ソ連あるいはポーランド、中国の代表は、ついに入国を許可するに至りました。しかしながら、とうとう北朝鮮の代表には一歩も
日本に入れることを許さなかったのであります。このように、全く韓国の李承晩のごきげんを損ずることをおそれ、はれものにさわるがごとくに、何らの手を打つことがない。重光外相は、ただ李承晩のごきげんを買うことによって、この韓国問題の
解決の糸口を見つけようとのみいたしておるのであります。(
拍手)これは外交ではございません。われわれは、韓国に対しましても、決して戦力を用いてなどということは
考えておりません。
主張いたしておりません。しかしながら、朝鮮海峡におきまするところの不当なるあの李承晩ライン問題につきまして、われわれは、その
解決の一日も早からんことをこいねがい、これの促進に
外務大臣は決起することを
要求してやまないのであります。(
拍手)いたずらに李承晩のごきげんを損ずることにのみおそれおののいて、具体的な
交渉開始の手段というものを持たない。われわれは、これに対しまして、よろしく世界の世論を喚起し、不当なる李承晩ラインに対しまして、世界的な正義の声によりまして李承晩の反省を促し、そこに
解決の糸口を求めんとするものであります。(
拍手)今や、かくのごとくいたしまして、韓国問題は全くその打開の希望を失った状態にありまして、これまた
外務大臣の重大なる
責任と申さなければなりません。(
拍手)
さて、
重光外務大臣は、アメリカに対するところのアメリカ一辺倒の
態度のみは一貫しておるのであります。かつて、衆議院におきましても、参議院におきましても、原水爆の実験禁止の決議をいたしました。衆議院の決議は、もちろん、英、米、
ソ連に対し、その国際協定の成立するように、こういう
要望を伝達するというところの決議でありました。しかしながら、参議院の決議は、ころっと趣きを異にいたしまして、その協定ができるまでは
政府において原水爆実験禁止に要する手段をとるべきであるという趣旨であったのであります。しかるに、
重光外務大臣は、この国会における決議を何ら顧慮するところなく、実行するところがなかったのであります。(
拍手)ただ、衆議院においてかくのごとき決議があった、参議院においてかくのごとき決議があったということを伝達するにとどまったのであります。
一つのメッセンジャー・ボーイにすぎなかったのであります。(
拍手)この原水爆実験禁止の問題は、われわれの眼前に迫っておる緊急な問題であり、
重光外務大臣は、ことに国会の決議もあることでありまするがゆえに、全力をあげて、この決議の実行、すなわち、原水爆実験禁止のために奮闘いたさなければならぬ責務があるといわなければなりません。(
拍手)しかるに、単なるメッセンジャー・ボーイに終りまして、この国会の決議を無視いたした結果に相なることは、これまた許すべからざることでございます。(
拍手)
かくのごときアメリカ追随主義の根本方策は、あらゆる方面にその露頭を呈示いたしまして、あの防衛分担金の取りきめのごとき、長きにわたるところの
日本の不利益を固定してしまいました。すなわち、元来アメリカの駐留軍の
費用はみずからこれをまかなうべきであり、われわれがこれを分担しなければならぬ理由は少しもないのでございます。(
拍手)しかるに、いかにも、われわれ
国民の
要望によるからして、これを共同事業であるからして両々半分ずつ分担すべしというがごとき、全く卑屈なるところの
態度により、この重大問題を永久化したのであります。(
拍手)
しかのみならず、去年の八月、
重光外務大臣がアメリカに渡りましてダレスとの
会談を行いました際には、共同声明を発しまして、ついに、あの、わが国の海外派兵を約束するがごときことまでも取りきめて参ったのであります。(
拍手)
重光外務大臣は、この海外派兵のことにつきましては、力を込めて否認をいたしておるのでありますが、その正文には、かくのごとくに出ております。
日本はできるだけすみやかに自国の防衛のための第一次的
責任をとり、かつて西太平洋における国際の平和と安全の維持に寄与することができるような諸条件を確立するため、実行可能なときは何どきでも協力できる基礎に立って協力すべき、
努力すべきことが
合意されたと、このコミュニケは言っているのであります。これがアメリカの官辺筋から発表いたされまして、その真意が、
日本も、西太平洋
地域における安全のためには海外派兵も辞さないものであり、その
責任を同意したものであると発表せられまするや、
重光外務大臣は、周章ろうばいいたしまして、あたかも、このことが海外派兵を
意味しないものであるかのごとくに否認をいたしました。(
拍手)しかしながら、アメリカの官辺筋の言うところのこの発表は、従来の慣例より見まして、相当有力なるアメリカの官辺からの発表であることは確かであります。(
拍手)このことは、そのまま
日本の通信によりまして、われわれの耳にも達したのでありますが、今
重光外務大臣が口を強めてこれを否認しようとしても、この事実は決して消えないのであります。(
拍手)すなわち、この海外派兵までをも約束するがごとき重大なることを、この議会の同意をも得ずして、われわれの上に、
責任をかぶせてきたということは、まことに許すべからざるものであります。(
拍手)
かくのごとくいたしまして、
重光外務大臣は、
日ソ交渉の失敗に重ねまして、日中
国交回復についても何らなすところなく、また、韓国との懸案の
解決にも何らの施すところがなく、また、原水爆の実験禁止の問題につきましても、国会の決議を無視するに至りまして、われわれの国政、ことに、その重大なる外交問題を負担せしめるところの
国務大臣として、全くその資格のないことをここに表明いたしました。フィリピンとの賠償問題における、また、軽率なるこれののみ込みなどに至っては、言語道断であります。(
拍手)
以上、数々の理由によりまして、私は、ここに、
重光外務大臣がその任にあらざることを指摘し、その不信任決議案を
提出いたしたものであります。よろしく諸君の御賛成をお願いいたします。(
拍手)