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1956-03-22 第24回国会 衆議院 本会議 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十二日(木曜日)     —————————————  議事日程 第二十三号   昭和三十一年三月二十二日     午後一時開議  第一 租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二 賠償等特殊債務処理特別会計法案内閣提出)  第三 日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 積雪寒冷特別地域における道路交通確保に関する特別措置法案小坂善太郎君外六名提出)  第六 学校給食法の一部を改正する法律案内閣提出)  第七 日本国カンボディアとの間の友好条約批准について承認を求めるの件  第八 訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第九 昭和二十八年度一般会計歳入歳出決算     昭和二十八年度特別会計歳入歳出決算     昭和二十八年度政府関係機関決算報告書     ————————————— ●本日の会議に付した案件  重光外務大臣日ソ交渉経過についての報告及びこれに対する質疑  馬場建設大臣能代大火被害状況とこれに対する復興対策についての報告及びこれに対する質疑  日程第一 租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第二 賠償等特殊債務処理特別会計法案内閣提出)  日程第三 日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第五 積雪寒冷特別地域における道路交通確保に関する特別措置法案小坂善太郎君外六名提出)  日程第六 学校給食法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第七 日本国カンボディアとの間の友好条約批准について承認を求めるの件  日程第八 訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第九 昭和二十八年度一般会計歳入歳出決算       昭和二十八年度特別会計歳入歳出決算       昭和二十八年度政府関係機関決算報告書  重光外務大臣不信任決議案淺沼稻次郎君外五名提出)     午後四時十九分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 外務大臣から日ソ交渉経過について発言通告があります。これを許します。外務大臣重光葵君。     〔国務大臣重光葵登壇
  4. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 日ソ交渉経過について、その後の情勢を御報告申し上げます。  ロンドンにおける日ソ交渉は、昨年六月以来正式に会談を重ねること二十三回に及び、その間、二回にわたり、ソ連全権が不在となったために、交渉は中断されましたけれども、国交回復するということについては互いに熱意を示し、また、その方法として、平和条約締結し、日ソ関係正常化をはかるということに対しても、双方意見は完全に一致し、自来そのため右平和条約内容について交渉が進められてきましたことは、すでにしばしば申し述べた通りでございます。  交渉の結果、平和条約内容は、本月二十日までに、約九カ項目について大体意見一致を見るに至ったのでございます。その九カ項目と申しますのは、これを交渉の順序によって申し上げれば、一が条約の前文でございます。二が戦争終結条項でございます。三は国連憲章の尊重のことでございます。四は戦前条約の処理問題を扱っております。五は賠償請求権の放棄をすることに規定がございます。六は批准条項となっております。七が漁業問題に関して一般的規定をいたしております。八が紛争処理条項でございます。九が内政不干渉に関するものでございます。最も重要な領土問題に関しましては、双方主張が完全に対立して、遺憾ながら、今日まで妥結を見るに至らないのでございます。  わが方の主張は、さきに申し述べました通りに、わが本土たる北海道に近接する島々、すなわち、色丹島及び歯舞諸島はもちろん、わが本土に近接して日本民族のみの居住する南千島、すなわち国後、択捉の両島等、歴史上いまだかつて日本領土たらざりしことのない島々返還要求し、その他のサンフランシスコ条約において日本が放棄した地域、すなわち南樺太及び千島列島の帰属は、同条約関係もあるので、国際的交渉決定することにゆだねんとするものでありました。しかるに、ソ連全権は、これに対して、領土問題はすでに過去において決定済みの問題である、ソ連はそれによって今日これらの地域を占領している次第であるのであるが、歯舞色丹はこれを日本に譲渡する用意がある、その他の領土返還には応ずることはできない、また、日本海に通ずる各海峡は、ソ連を初め日本海に面する各国の軍艦のためにのみ開放せらるべきものであると言って、将来のわが主権に関する要求をもなしている次第であります。ために、日本側領土問題に関する主張とは相いれず、ここに双方主張は対立することに相なりました。よって、わが全権は、帰朝の上、みずから交渉経過報告し、政府と打ち合せを行いたいというのでありますから、政府はこれを許した次第でございます。交渉自体ロンドンにおいて発表せられました通りに、双方合意する時期に将来再び開かれることに相なっておるのでございます。従いまして、政府といたしましては、もとより、すみやかに交渉再開情勢とならんことを希望するものであります。  なお、抑留同胞の問題につきましては、交渉の当初より、繰り返し、わが方は人道上の問題として早期送還主張して参りました。すなわち、わが方の立場は、この問題は国交交渉とは別個に解決さるべきものであるというのにありました。わが方は、一方、早期送還主張すると同時に、他方、現実の問題として抑留同胞待遇改善要請し続けて参りました。特に、戦争終結後十年も労役に従事した同胞の体力の消耗を指摘して、病人、老人等は特別にまず送還されるよう要請を続けてきておる次第でございます。ソ連は、戦争終結の際の約束があったにもかかわらず、平和条約締結抑留者送還人道問題処理前提としておるのはまことに遺憾でございます。わが全権は、ロンドンにおける最後会談におきましても、抑留者送還及びその待遇改善について、政府意向を体して強く要請をいたした次第でございます。  以上。      ————◇—————  日ソ交渉経過についての重光国務大臣報告に対する質疑
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの報告に対して質疑通告があります。これを許します。田中織之進君。   [田中織之進君登壇
  6. 田中織之進

    田中織之進君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま重光外務大臣より報告のありました日ソ交渉の無期限休会につきまして、特に総理大臣並びに担当の重光外務大臣に、三、四、最も緊急な問題についてたださんとするものでございます。(拍手)  ただいまの重光外務大臣の御報告は、去る二十日の日ソ交渉自然休会に入ったことは、これは必ずしも交渉の絶望的な段階に到達したことを意味するものではない。このことは、われわれもその通り受け取りたいのであります。しかしながら、日ソ交渉が始まりましてからすでに九カ月、この間二十三回の交渉が持たれ、ただいま重光外務大臣が申されましたように、この九カ項目にわたりましては双方の間の意見一致を見ておるのでございます。ところが、特に外務大臣が強調いたしました領土問題並びに日本海航行制限の問題、これに関する問題で彼我の意見一致しないために、いつ交渉が再開せられるかわからない、こういう段階に立ち至ったことは、これはきわめて遺憾なことでありまして、私がまず総理大臣にお伺いをいたしたいのは、この段階に立ち至りまして、従来のロンドン交渉交渉方針というものについて根本的に検討を加えて、わが方が日ソ国交調整をできるだけ早く妥結するように最終的な態度決定を迫られたものだと、かように解するのでありまするが、この点に対する総理大臣の所見をまず伺いたいのであります。(拍手)  私が第二にお伺いをいたしたいのは、日ソ国交調整の問題は鳩山内閣の全国民への公約でございます。(拍手)昨年二月の総選挙におきまして、国民鳩山氏を総裁とする民主党に対しまして百八十余の比較第一党を与えたのも、なお終戦後ソ連に抑留せられておるわが同胞帰還の早いことを望むとともに、日本の真の独立と平和を願う国民が、ソ連並びに中共との国交調整鳩山内閣の手によってなし遂げてくれるであろうという期待からであったと思うのであります。(拍手)しかるに、昨年十一月十五日に自由民主党が結成せられるに当りまして、日ソ国交早期妥結ということにきわめて慎重な態度をとる旧自由党の諸君の意向に引きずられて、早期妥結への方針が、いわゆる保守合同ででき上った自民党緊急政策に基いて、すでにそれ以前から開始せられた交渉におけるわが方の交渉態度が変ったために、今日のような停滞を来たしたものだと私は考えるのでありますが、(拍手)この点につきまして、特に、鳩山総理は、昨年七月二十六日の参議院の外務委員会において、わが党の羽生三七君の質問に対して、日ソ国交調整に関する私の考え方は、私の多年の信念でありまするから、保守合同によっても断じてこれに制約されることはありません、と、あなたは声涙ともに下る答弁をなされておるのであります。ところが、それが今日大きくデッド・ロックに乗り上げたということについては、これはきわめて重大な問題だと私は考えるのでありまして、この点に対しましては、同じ羽生三七君が、去る二月二十九日の予算委員会におきまして、もしも日ソ交渉がうまくいかなくなった場合にはあなたはいかなる政治的責任をとるかという質問をしたのに対しまして、いさぎよく、そのときには、りっぱに政治的責任をとると答弁をせられておるのでありますが、(拍手)今日の段階において、あなたは一体いかなる政治的責任をとられるか、この際明確にお答えを願いたいのであります。(拍手)  日ソ交渉早期妥結と、戦後十年間今なおソ連の各地に抑留せられておるわれわれの同胞帰還促進、並びに、われわれもまたヤルタ協定を認めないという立場において、旧日本領土が完全にわが国に返還せられるべきであるということ、これは全国民的要望であります。われわれもまたその通り考えるものでございます。(拍手)しかしながら、この日ソ交渉早期妥結ということと、旧日本領土完全復帰ということは、一見矛盾するところの二つ国民的な要求なのでございます。そこで、旧日本領土を完全に奪回するためには、暫定条約において日本に返らない領土については、条約締結後において引き続き交渉を続けることを条約の中に明記することによって、この二つ要求を同時的に解決することが困難な場合には、時間的なズレをこちらから設けても、双方完全解決をはかるべきではないかと思うのでございまするが、この点については、鳩山総理はどういうお考えを持っておるか。漫然と、従来の交渉方針に従って、交渉がいつ再開されるかもわからないままに放置すべきではないと考えまするので、わが党が去る二月十日の中央執行委員会決定をもって発表いたしましたように、大局上の見地から、やむを得ずこの際妥結いたしました部分について、すなわち、戦争状態終結外交関係回復抑留邦人の帰国、歯舞色丹返還日本国連加盟への支持を実施し、自余の領土問題を含む諸懸案の解決は、暫定条約締結後引き続き行わるべき平和条約交渉にこれを付して実現をはかるべきであると、われわれは考えるのでありますが、(拍手)この点について総理はどうお考えになっておりますか。今回の交渉が無期限休会に入ったということに対して、特に、留守家族代表者は、難問題はあと回しにしてでも、引揚者の帰還を早くしてもらいたいという切々たる要望を投げつけておることは、この際総理として特にお考えを願わなければならぬ問題であると思うのでございますが、(拍手)果して総理はいかなるお考えを持っておるか、明確にしていただきたいと思うのであります。  同時に、われわれは、日ソ交渉進行過程におきまして、ポツダム宣言、その他、このポツダム宣言がないにいたしましても、人道的な立場から、わが同胞が、十年の長きにわたって、かの地に抑留されておるものを、領土問題その他の問題とからみ合せてきたソ連態度については、皆さんからやかましく言われるまでもなく、全国民がひとしく遺憾としておるところであると思うのでございます。(拍手)しかしながら、領土の問題につきましては先ほど重光外務大臣も述べられましたように、特にわれわれが旧日本領完全返還を求めるに当りまして、南樺太千島は、サンフランシスコ平和条約によって、わが方が領土権を放棄したという事実があるのであります。その意味におきまして、この限りにおいては、日ソ交渉と並行いたしましてサンフランシスコ平和条約の少くともこの部分に対する条約改正というものも、私は当然伴わなければならないと考えるのでありまするが、特に、この点については、重光外務大臣は、先ほど報告せられたところと関連をいたしまして、この国際的な会議にゆだねる部分については具体的にどういう手を打たれようとしておるか、この際明確にお答えを願いたいと思うのであります。(拍手)  その意味におきまして、この際、この自然休会は無期限であるだけに、国民はきわめて不安を持っておるのであります。おそらく、この交渉に対する一つの外交的な攻勢として、仮定のことであろうと思うのでありまするが、北洋における漁区の制限等についてもモスクワ放送が行われておる状況であります。しかしながら、この関係漁業者団体等におかれましても、日ソ交渉とのきわめてデリケートな関係を考慮いたしまして、政府が、この点について、モスクワよりのソ連側の的確なる申し入れを一日も早くキャッチされまして、日ソ交渉とのかね合いにおいてこれを解決することを要望いたしておるのでございます。  その意味において、こうした、やがて一、二カ月後には出漁を開始しなければならない北洋漁業問題についても、これからの日ソ交渉の成り行きが重大な関係を持って参りまするので、この際、政府は、従来の行きがかりを捨てて、新しい事態の上に立って日ソ交渉締結するために、いかなる手を打とうとするか。もしこの点で自信ある政策を遂行することができないならば、気の毒でありまするが、鳩山総理並びに重光外務大臣は、いさぎよく、自分たちの手で日ソ交渉締結することはできないということを国民の前に明らかにいたしまして、その政治的責任をとられんことを要求いたしまして、私の質問を終るものであります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  7. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日ソ交渉の次回の会談は、情勢に従いまして、双方合意によって開かれることになっております。このたびは日ソ交渉は決裂した次第ではないのであります。決裂したことを前提としての諸質問に対しては、私は答える必要はないと考えます。(拍手)     〔国務大臣重光葵登壇
  8. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御質問お答えいたします。(拍手)  将来再び交渉が始まるときには、双方合意によってこれをやります。わが方もむろん国交回復したいのでありますから、いろいろ努力はいたしますが、わが方の一方的の努力じゃだめでございます。ソ連の方も十分に努力をして、国交回復実現に力を尽していただかなければならぬと私は思います。  それから、国際交渉というのはどういうことを考えておるか。これはサンフランシスコ条約に調印した国々のことを考えております。しかし、ソ連は、調印はしていないけれども、重要なる利害関係者でありますから、ともに交渉の地位にあるわけであります。  漁業問題について、いろいろ情報があります。この漁業問題については、今日まで、ロンドンにおいて、ソ連側の事情をも確かめて、そうして、わが方の意向十分向うに伝えております。そういうことによって漁業問題を進めていきたい、こう考えております。(拍手)     〔「総理大臣答弁答弁になっていない、再質問々々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) そのまましばらくお待ち願います。     〔発言する者多し〕
  10. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) そのまましばらくお待ちを願います。     〔「総理大臣もう一回、不誠意きわまるよ」と呼び、その他発言する者多し〕
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 田中君より再質疑の申し出がありますが、きわめて簡単にお願いいたします。田中織之進君。(拍手)     〔田中織之進君登壇
  12. 田中織之進

    田中織之進君 私は、今回の日ソ交渉自然休会が無期限でありますので、その意味で、交渉の前途に対する国民の不安というものが非常に大きいから伺っておるのでありまして、総理は、交渉が決裂したその場合に、あなたは責任をどうするかという私の質問をはき違えてとられておるのでありまして、私も今回の自然休会をもって交渉が決裂したものだとは申しておらないのであります。(拍手)しかし、従来の通り領土——たとえば、特に領土問題でありまするが、従来のわが方の主張を続けていく限りにおいては、交渉再開の見通しがつかないから、この際、新しい事態の上に立って、当然、重光外務大臣報告せられたように、松本全権日本へ帰って参られまして、いろいろの報告を受けられて、あなた方は方針を協議せられるのであろうと思いますけれども、特に、鳩山総理は、閣内においても、早期妥結、場合によれば、戦争終結宣言によって、いわゆるわれわれの主張する暫定取りきめというような方向においてもこの条約妥結したいというお考えを持っておられるのでありまするから、その新しい交渉再開に備える意味において、暫定条約締結等の新しい方針をこの際お考えになる意思はないかということ、特に、もう一つ自民党の統一によりまするところの日ソ交渉政策の変更というものが、大いにこの交渉の停滞したことの原因である。これを、総理立場において、党内、閣内意見を調整せられて、すみやかに交渉を再開し、妥結する方向へ持っていくためにどういう方針を持っていられるかということを、私は伺いたいのであります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  13. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日ソ交渉については、従来通り方針でもって政府は進むつもりでおります。  その以外に、暫定的にきめる工夫を考えているかという御質問がございましたが、そういう点については考えておりません。(拍手
  14. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 先ほどの田中君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。  これにて外務大臣報告に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  15. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 次に、建設大臣から、能代大火被害状況とこれに対する復興対策について発言通告があります。これを許します。建設大臣馬場元治君。     〔国務大臣馬場元治登壇
  16. 馬場元治

    国務大臣馬場元治君) 秋田能代大火状況及びこれに対する復興対策について申し述べたいと存じます。  三月二十日、能代市に発生いたしました火災は、折柄強風にあおられまして、多くの罹災者を生じましたが、現地から報告されました情報によりますと、焼失家屋千三百二十戸、罹災世帯千三百九十九世帯罹災人員五千九百九十八人、罹災地域の面積約十八万坪となっております。  まず応急対策について申し上げますと、秋田県におきましては、直ちに災害救助法を発動し、関係係官現地に急派いたしまして、罹災者の避難、被服、寝具及び生活必需物資給与等救助に万全を期しております。厚生省におきましては、二十一日係官現地に派遣し、救助事務に関し支障のないよう指導を行わせております。なお、応急措置として、毛布三千点を現地に急送いたしました。また、救助費に対する補助金交付等につきましては、現地からの報告を待って処理するよう準備を進めております。一方、日本赤十字社におきましても、今回の火災におきまして、秋田県支部より救護班を現地に出動せしめて救援に当らせまするとともに、義援物資としてメリヤス・シャツ上下一組のもの二千組、中古衣料二千点、バター・オイル千八カン、ドライ・ミルク千八カンを発送いたしております。  次に建設省関係復興対策について申し上げますと、建設省におきましては、直ちに関係係官現地に派遣いたしまして、復興対策について調査及び指導を行わせておりますが、まず、住宅につきましては、滅失戸数の約三割に相当する災害公営住宅を建設するため、三分の二の補助率国庫補助を行う計画であり、また、住宅金融公庫による融資につきましても、滅失戸数の約三割について、その建設資金を融資する予定であります。  次に、都市防火上必要なる防火建築帯につきましては、焼失区域内の調査を待って早急に造成計画を立て、所要の国庫補助をいたしたいと存じます。なお、罹災地跡土地区画整理事業につきましては、調査の上、焼失地域を中心といたしまして、これを実施することとし、これに要する費用につきまして、その二分の一の国庫補助をいたしたいと存じます。  最後に、運輸省関係といたしましては、日本国有鉄道におきまして、貨物輸送運賃について特別扱い措置を講じ、罹災者用救恤品につきましては、三月二十一日から四月二十日までその運賃を無料とし、罹災者用生活物資及び応急建築材料については、三月二十一日から六月二十日までその運賃を五割引といたしております。  以上、今次の能代大火に対する復興対策の概要を申し上げましたが、政府といたしましては、これら対策の実施に万全を期しまして、罹災者各位生活の再建と能代市の復興の一日もすみやかならんことを念願してやまない次第であります。(拍手)      ————◇—————
  17. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの報告に対して質疑通告があります。順次これを許します。須磨吉郎君。     〔須磨吉郎登壇
  18. 須磨彌吉郎

    須磨吉郎君 私は、ただいま御説明のございました能代市の大火災につきまして、自由民主党を代表いたしまして御質疑を申し上げたいのでございます。  今回の大火災は、ただいまの御報告にもありましたような大きな被害でございまするが、その被害面が市街の三分の一に当り、また、組合病院を初めといたしまして、多くの医療機関並びに淳城学園等教育機関、また護国神社、その他の目抜きの場所を全部焼失いたしておりますもので、戦後まれに見る大火災であるわけでございます。  元来、この能代市の地帯は、米代川の河口に位いたしまして、強風がひんぱんに至りまして、元禄年間の大震災はもちろんでありますが、昭和に至りましても、十五年、十八年、次いで二十四年には二千二百余棟を焼失いたしまして、戦後の五大火災一つとして私どもを驚かせましたことは、今なお記憶に新たなるところでございます。それからたった七年目に再びこの災害にあったのでございますから、この機会におきまして、われわれは防火施設について幾多の御注文を申し上げなければならぬと思うのであります。と同時に、罹災者について考えますると、能代市におきましては、一生涯の間に、最も少いので二度は焼け出され、多くは一生涯に五度も焼け出されておるというような始末でございます。  これを考えますと、第一には、罹災者に対します災害救助法を発動いたしまするとともに、応急救助措置につきましては、ただいまもお話がございましたが、なお一そうすみやかに、かつ広範囲にわたって準備を取り整えていただきたいものでございます。また、今回の罹災者中には、保険金を受け取るような境涯にある人は実に少数なことになっておりまして、きわめて零細なる中小企業者や、あるいは消費者から成っておるのでございますから、従来の火災対策とは違って、もっと綿密なる意味において、公営住宅の行き届いた供給でございますとか、ただいまもお話がございましたが、住宅金融公庫等のきわめて広範なる適用等によりまして、格別の措置を必要とするものと思われるのでございます。  かような意味から考えますると、能代市は、日本海におきまする要衝の港湾でありまするばかりでなく、材木製造の中心地であり、御承知のごとく、全国に需要者を有する木材の集散地といたしまして、きわめて重要なる地点でございます。加うるに、最近の調査によりますれば、この地点を中心といたしまする海面一帯の地下資源に関しましては、特に石油資源埋蔵の可能性が多いということが伝えられておりまするやさきでもございまするから、港湾としてのみならず、また鉱業、産業の万般の拠点といたしましても重要なるものがあるわけでありまするから、国家的な考えに立ちまして、ここに私が特にお伺いをいたしたいことは、この能代市に対して、第一に、水道設備の完備ということが実に重大なる要点であると思うのであります。これと同時に、この一帯の地区に対しまして、ただいまもお話がございましたが、いかなる具体的な御計画をもって防火建築帯を御造成になりまするか、これを伺いたいものでございます。  以上をもって私の質疑といたします。(拍手)     〔国務大臣馬場元治登壇
  19. 馬場元治

    国務大臣馬場元治君) 住宅対策に関しましては、先ほど御説明申し上げました通り災害公営住宅を建設いたしまするに全力を尽しますると同時に、さらに、住宅金融公庫による融資によりまして、罹災者住宅の建設を促進することにいたしております。  なお、災害の防除に関しましては、かねて、御承知の通りに、いわゆる防火建築帯の設定をいたすことによりまして、その防火建築帯内には、いわゆる耐火構造による建築のみを許可することにいたし、その耐火建築の建造につきましては、国家において特別の補助をいたすことにいたしております。さきに新潟市の大火の際におきましても、これが実行をいたしたのでありますが、今回の能代市の場合におきましても、その防火建築帯の造成によりまして、将来の防火対策に遺憾なきを期して参りたい、かように考えておる次第でございます。(拍手
  20. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 石山權作君。     〔石山權作君登壇
  21. 石山權作

    ○石山權作君 私は、秋田能代市の大火について、鳩山総理大臣及び自治庁長官その他関係大臣に、社会党を代表いたしまして質問いたします。  能代市は、秋田県の県北米代川の下流で、人口六万三千人の、おもに中小企業である製材業を中心にした都市で、きわめて庶民の多い町です。しかも、去る二十四年二月二十日に、二千二百三十八戸、全市の三分の一を焼失いたしました。市民はこの大災害を五カ年計画で克服すべく努力し、都市建設はやや完成したものの、その間の重税と、そのあとに残されたる起債返還は、なみなみならぬものがあったのです。しかも、重ねて、今回の大火は、罹災者はもちろんなるも、六万市民はその災害にぼう然自失しているものと考えられるのであります。  三月二十日夜半から二十一日未明にかけて約七時間猛火は荒れ狂って、冬の日本海特有の悪魔のごとき強風は、十五メートルの早さで、この貧しき都市と住民を襲ったのでございます。罹災者七千百三十四人、焼失戸数一千四百余世帯と伝えられ、建坪にしまして五万四千二百二十二坪、焼失面積十八万坪、負傷者十二人、その損害額は三十億円といわれております。強き風、降る雪、子を背に、あるいは手にして、夜の猛火に立って逃げ惑い、また、あすの日の不安におののいている罹災者を思うと、まことに、私は、政治家として、その任務の重きに心責められるものがあります。(拍手鳩山首相は、政治に愛を説き、生活に道徳を、と言っておられます。新生活運動は、多分に、民衆にそれをあなた好みで説ごうとしたところの試みであったと考えておりますが、あなたの政治はそのごとく行われ、その方向に進んでいるでしょうか。  三十年十一月一日、新潟市の大火を契機に、国家消防本部では、強風下の消防について、その方法あるいは事前の準備なども示達いたしました。また、全国の都市の現状を一級から十級まで区別して、それに相応する準備をも要望したのであります。この場合、能代市は七級の下、八級に近い条件悪の都市として指示されていたのであります。もし不幸にして一朝強風下に火事があれば、消防用水の不足、道路の狭小からして、大火が予知せられていたのであります。だから、能代市当局は、消防関係の強化と防火思想の宣伝にも努めたのです。市民もまた相互いに戒め合っていたのですが、緊迫精神というものは永続しない性質のものであります。その日暮しの、生きることだけでも大へんに疲れている人々があまりにも多いのです。一市民の不注意を、一市民のその家、あるいは、小さな周辺の犠牲でとどめ得ないものか。そういうことが起らないように考えるのが政治で、そうしてやるのが国家の行政でなければならないはずです。(拍手強風下に火事があれば、必ずといっていいほど、七級の下だから大火になると、その道の権威者たちは言っていたのです。その通りの結果が出たのが今回の能代市の大火です。罹災者は、雪の中にかじかんで、また、学校の中のすし詰めの混雑の中で、なぜ消防用水がなかったのか、なぜ道路が広くできなかったろうか、前の大火考えてみて、なぜ防火壁用のアパートか店舗街を建てなかったのだろうかと思うでしょう。だが、鳩山さん、あなたはこれらに対して何とお答えになられますか。あれは他国からしいられておるのだ、不要不急のものだと、自衛隊のものものしい姿や、二百億もある使い切れない防衛費のことも思うでしょうが、あなたはそれに何と答えられますか。(拍手)地方財政は赤字だから、どうにもこうにもならない、ですから、国のやり方が唯一の頼みと市民は考えております。一体どうしてくれるのだろうと、みんな、国会の方を、あなたの方へと向いておるのですが、その首を長くしてあなたの答弁を聞いておる能代市民に、鳩山さんはどういうふうにお答えになられますか。(拍手)教育二法や、憲法調査会法や、小選挙区制に血道を上げる自民党の、いささか心もお顔も古物然としたのを心楽しくながめておるのは、あなたのことだからやむを得ないが、こんなときこそ私たちを見てくれろ、このありさまをよう見てくれろと言うておる能代市民に、あなたは何と答えますか。(拍手)  最後に、あなたに聞きますが、消防本部から七、八、九、十級などと、火事があれば大火になる要因がある都市は、全国都市の大半でございますが、あなたに市民を愛する気持があり、ほんとうにその気になれば、能代市のような天災にも似た大火は防ぎとめられるのですが、長々とうわさされているあなたの引退の前に、せめてあなたの持説の友愛精神の万分の一を示すために一つ努力していただきたいのですが、お考えはいかがでございますか。(拍手)  次に、関係各大臣にお聞きいたします。  災害は真夜中のこととて、罹災者は身一つにのがれた者が多いのですから、まず飲み食いの道具から衣服、寝具のめんどうを見なければならないのです。特に、秋田地方は、今年は寒気がきびしいので、住宅問題は野放しにされては困るのです。住宅に対する金融はいかにしてもらえますか。国有林の多い秋田においては、住宅用の木材払い下げ、または、被害都市の復興に経済援助の意味も含めまして、業者に製材用の官木を払い下げる用意はございませんか。学童もおそらく学用品と教科書を失ったことでしょうし、学校も、罹災者に長くいられては、学業の妨げにもなるのです。一日も早く復興を望む声は、私の手元にもたくさん来ています。その中でも、罹災者の失業問題は建設事業とともに考えるべき事柄であります。  この木材中心の小都市の復興には、起債、補助金等は、集中的にしかも短期日でなければ効果がありません。この場合、政府大蔵当局は特別交付金を出す用意はありませんか。  もう二度と焼けないようにするためには、都市計画は、今までのような焼跡の区画整理のようなやり方は改めなければなりません。当然、古い、ごみごみした市街の一部は取り払われ、不燃焼の店舗街なりアパートを建設すべきだが、いかがですか。(拍手)この場合、金がないから水道布設も道路拡張もできぬなどということは理由になりません。焼けた損害と跡始末をすることを考えれば、なし得る、やさしい事業でもあるが、建設大臣はいかが考えていますか。  都市建設に当っては、木造家屋の多い現状においては、消防対策こそ建設構想において優先すべきだと考えているが、また、都市の大半が、七、八、九、十級の悪条件にあるのをどうするか。これも、金がないからというだけでは、能力のない、政治性のないことの弁明だと思います。  私は、今回の能代市の大火は、一市民の残念なる過失でもあるが、やはり、これをたぐっていきますと、先にも申しましたように、小さなる過失を無限的に膨大なものにしたのは一に政府の失政と民衆への愛情の欠如から起きた現象であるのですから、(発言する者あり、拍手)人心に不安を与えた罪を謝する意味でも、能代市の災害には万全の対策を講じていただけるものと信じて、質問を申し上げる次第です。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  22. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 能代市の大火につきましては、全く同情にたえません。その復旧と、その救済とについては、政府としてはできるだけのことをいたしたいと思っております。  詳細のことは関係大臣からお答えをいたします。(拍手)     〔国務大臣馬場元治登壇
  23. 馬場元治

    国務大臣馬場元治君) お話通り住宅問題はきわめて重大でございますので、先ほども申し上げました通りに、災害公営住宅の建築、金融公庫の融資による建築等を促進いたしますることはもちろん、厚生省の方面における緊急の対策と相待ちまして、万全を期して参りたいと考えます。(拍手)  なお、道路の問題、これまた重大でありまするのは申し上げるまでもありません。目抜きの場所が焼失をいたしまして、まことに残念しごくに存じます。この際、焼け跡の地域を十分に調査いたしまして、いわゆる区画整理を実行いたしたい。その際、道路の拡張等については、特に今回の経験にかんがみまして十分に考慮をいたし、再びかくのごとき災害を引き起すことのないようにはかりたいと考えております。  なお、先ほども申し上げましたが、いわゆる防火建築帯の造成によりまして、これまた耐火建築、その建設を国家において補助することによりまして、火災による災害をでき得るだけ防止することのできまするように努力をいたして参る所存でございます。(拍手)     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  24. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 能代市の大火は、まことに同情にたえません。つつしんで御同情を申し上げる次第でありますが、ただいまお尋ねの交付金、補助金につきましては、緊急な事態考えまして、政府といたしましては、できるだけの措置を講じまして遺憾なきを期したいと考えておる次第でございます。(拍手)     〔国務大臣大麻唯男君登壇
  25. 大麻唯男

    国務大臣(大麻唯男君) たび重なる能代市の不幸につきましては、実に無念という気持がいたすのでございます。応急対策といたしましては、総理大臣初め、今関係大臣からお話がございましたが、今後、私どもといたしましては、消防力の充実並びに社会公共心の育成等につきまして十分に注意を払って、再びかような不幸が来ないように、万全の措置をするつもりでございます。(拍手)     〔国務大臣小林英三君登壇
  26. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 能代市の今回の大火につきましては、能代市民に対しまして心から御同情申し上げておる次第でございまするが、厚生省といたしましては、災害救助法によりまして、諸般の救助に万全を尽したいと存じておるのであります。(拍手)     〔国務大臣河野一郎君登壇
  27. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 能代市の皆さんに、つつしんでお見舞を申し上げます。  なお、罹災者の木材の点につきましては、すでに現地の営林局と能代市の当局との間にいろいろお話し合いをいたしまして、五万数千石の国有林を切り出すことにいたしておる次第であります。(拍手)     〔国務大臣清瀬一郎君登壇
  28. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) まことにお気の毒なことと存じております。  教育施設につきましては、学校も、公民館も、図書館も、被害はございません。ただ、幼稚園が一つ焼けました。しかしながら、先刻承わる通り、一千三百余りの世帯被害を受けたのでありまするから、子供は多数罹災しておることと存じます。これらに対しては災害救助法の適用があろうと存じまするから、教科書、教材の支給等については、さっそく手配をしたいと存じております。(拍手
  29. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて建設大臣報告に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  30. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第一、租税特別措置法の一部を改正する法律案日程第二、賠償等特殊債務処理特別会計法案日程第三、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案日程第四、国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長松原喜之次君。
  31. 松原喜之次

    ○松原喜之次君 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案外三法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。  まず第一に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法律案の趣旨は、日本に住所を有しない外国人で、日本に一年以上居住しておる者の所得税について、従来設けられておりました特別措置の適用期間が昨年末をもって満了いたしたのでありますが、これがために生ずるそれら外国人の税負担の急増を避けるために、ここに暫定的な経過措置を講じようというのであります。  その内容について申し上げますと、従来、居住外国人につきましては、半額課税の特例と国内払い課税方式という二つの特別措置が講ぜられて、その税負担が軽減されていたのでありますが、今回、この二つ措置のうち、半額課税の特例は昭和三十一年度以降これを廃止し、国内払い課税方式一本といたし、しこうして、その一部に次のような所要の改正を加え、昭和三十五年度まで暫定的にこれを存置することといたしたのであります。すなわち、従来の国内払い課税方式は、居住外国人の給与所得及び退職所得に関し、日本国内で支払われた額と日本へ送金された額との合計額だけが課税対象となり、ただその額が日本における生計費相当額に達しないときに限り、生計費相当額に達するまで、海外払いの部分をも課税対象に取り入れることとしていたのでありますが、その対象金額について、後述のごとくに変更されております。さらに、今回この特別措置の適用対象を、日本経済、文化の向上に役立つと思われる特定の外国人の給与所得のみに限定し、一般居住外国人についてはこの特典を与えないこととしたのであります。また、この特別措置の特典につきましても、昭和三十二年以降漸次これを減少し、昭和三十六年に至ってこれを全廃することといたしておるのであります。すなわち、昭和三十二年以降におきましては、国内払い金額と送金額との合計額が給与全額の一定割合以下の場合には、その一定割合まで課税を行うこととし、その割合は昭和三十二年においては百分の六十、昭和三十三年においては百分の七十、昭和三十四年においては百分の八十、昭和三十五年においては百分の九十というように漸増し、昭和三十六年以降はこれを全廃して、本来の課税、すわなち、一般日本人同様の課税に復するようにしようというのであります。  本法律案は、審議の結果、去る十六日質疑を打ち切り、直ちに討論を省略して採決に入りましたところ、起立多数をもって原案の通り可決いたしました。  次に、賠償等特殊債務処理特別会計法案について申し上げます。  平和の回復に伴いまして、賠償や連合国財産の補償その他の対外特殊債務の処理は、外交交渉等の進展に応じ、逐次その処理の進捗がはかられている状況でありますが、政府は、このような状況にかんがみまして、これらの賠償等特殊債務の処理に関する経理を一般会計と区分して明確にするため、本法案をもって新たに賠償等特殊債務処理特別会計を設けようとするものであります。  次に、この法律案の概要について申し上げますと、第一に、この会計において処理する賠償等特殊債務とは、ビルマ、フィリピン、インドネシア等に対する賠償、旧連合国財産の補償その他戦争遂行の結果、または戦争の遂行もしくは旧連合国の軍隊による占領に関連して負担する債務でありまして、この中には、米軍及び英豪軍の放出物資代金、タイ特別円その他種々の戦時クレームの支払い等を含むものであります。第二に、この会計は大蔵大臣がこれを管理し、一般会計からの繰入金及び付属雑収入をもってその歳入とし、賠償等特殊債務の処理に充てるための経費及び付属諸費をもってその歳出とすることといたしております。第三に、この会計の毎会計年度の支出残額は、順次翌年度に繰り越して使用することができることとし、また、毎会計年度の決算上の剰余金も翌年度の歳入に繰り入れることといたしております。第四に、その他この会計の設置及び運営等に関し必要なる事項を規定いたしております。なお、この会計の設置に伴う経過措置といたしまして、従来一般会計において賠償等特殊債務処理のために充てられていた賠償等特殊債務処理費等の昭和三十年度末における支出残額約百二十億円は、昭和三十一年度においてこの会計の歳入に繰り入れることとし、賠償等特殊債務処理の円滑をはかることといたしております。  この法律案は、去る二月六日大蔵委員会に付託せられ、同七日政府委員より提案理由の説明を聴取し、自来、慎重審議をいたしました。おもなる質疑応答の内容を申し上げますと、まず賠償等特殊債務に関して、現在日本に対して請求をしている国、あるいは、それらの金額は大体どんなことになっているかという質疑に対し、政府委員より、いろいろ外交上の関係もあって詳細なる内訳を言えないが、賠償その他種々のクレーム等を合せて、おおむね七千億円程度になると思うとの答弁がございました。次に、国が債務を背負うときには、憲法第八十五条で国会の議決を必要とするということになっているが、米軍及び英豪軍の放出物資代金については、いつごろ、いかなる形態によって国会の承認を得ておるかという質疑に対し、政府委員より、これら放出物資代金については、当然これは支払うべきものであるという考え方から、国会の協賛を経ておらないとの答弁がございました。  以上がおもなる質疑応答の概略でありますが、この法律案については、三月十六日に質疑を打ち切り、討論を省略して採決いたしましたところ、本案は起立多数をもって原案の通り可決いたしました。  次に、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案について申し上げます。  日本輸出入銀行は、昭和二十五年十二月二十八日設立されて以来、プラント輸出を中心とする輸出入金融を行い、わが国貿易の振興に格段の寄与をいたして参っておりますことは、御承知の通りであります。特に、昭和二十八年度下期以降、プラント輸出が急激に伸張した結果、その業務活動はすこぶる活発となり、昨年十二月末における日本輸出入銀行の融資残高は三百九十二億円に達しているのでありますが、なお、東南アジアを初めとして、海外からのプラント輸出等の引き合いは現在すでに相当の額に上っているほか、賠償及び経済協力関係の融資業務をも行うことが予定されており、日本輸出入銀行の融資を必要とする事案はますますふえる見通しであります。現在、輸出入銀行の資本金は三百五十億円と日本輸出入銀行法規定されております。これは、昭和三十年度予算において、産業投資特別会計からの日本輸出入銀行への出資が百四十億円と予定されましたため、第二十二特別国会で法律の改正をいたし、資本金を二百十億円から三百五十億円に増額した結果であります。しこうして、産業投資特別会計から輸出入銀行への出資予定百四十億円のうち、七十億円は砂糖等の特殊物資特別会計から産業投資特別会計へ繰り入れる予定でありましたが、これに関する法案が不成立となりましたため、七十億円の穴が生じました。そこで、産業投資特別会計から開発銀行へ貸付を予定しておりました六十億円を輸出入銀行への出資に振りかえ、開発銀行の方は市中銀行に肩がわりさせたのであります。従いまして、輸出入銀行に対する百四十億円出資の当初の予定は百三十億円にとどまり、昭和三十年度末の日本輸出入銀行の出資額は三百四十億円となる見込みであります。  一方、昭和三十一年度における日本輸出入銀行の融資見込額といたしましては、年度内融資五百四十八億円、年度末融資残高見込み七百四十二億円と推算いたしておりますが、現在の輸出入銀行の資金量をもってしては、これだけの業務を行うためには当然不足を来たしますので、昭和三十一年度中に、新たに産業投資特別会計から四十八億円、資金運用部から百九十七億円、合計二百四十五億円の資金を供給することといたしております。このうち、産業投資特別会計からの四十八億円は、同特別会計からの出資金として予定しておりますが、先に申し上げましたように、昭和三十年度における同行への出資が予定よりも十億円少くなる見込みでありますので、この十億円を差し引きました三十八億円だけその資本金を増加して、三百八十八億円といたそうとするものであります。  以上がこの法律案内容でありますが、本法律案は去る二月六日大蔵委員会に付託せられ、翌二月七日山手大蔵政務次官より提案理由の説明があり、同九日より質疑が行われました。自由民主党の小山長規委員は、貿易振興、外貨収入増加の政策的見地から、海外における土木建築に関する建設工事を促進することの重要性を強調せられた後、これに関連して、日本輸出入銀行の業務範囲と海外建設工事の所要資金の調達との関係について質疑がありました。すなわち、海外建設工事の重要性にもかかわらず、現行の輸出入銀行法による業務範囲の規定が狭きに失するため、設備等の輸出に伴ってなされるもの以外は融資対象からはずされておる、わが国貿易振興の政策上から法律の改正が必要であるとし、政府の所見をただしたのであります。これに対し、政府委員より、適当に善処する旨の答弁がありました。  かくして、本案は、慎重審議の後、去る十六日質疑を打ち切り、討論を省略して直ちに採決に入りましたところ、起立多数をもって本案は原案通り可決いたしました。  最後に、国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、職員の旅費等の実情に即し、運賃の級別支給区分を改正して、その引き下げを行う反面、日当及ば宿泊料の定額は、旅館の宿泊料金等の実態に比べて低額であると考えられますので、この際、運賃、日当及び宿泊料等の旅賃額を実費弁償の建前に即して改訂するとともに、外国旅行につきましても、右の趣旨に準じて実態に応じた改正を行うほか、あわせて所要の規定の整備を行い、旅費制度の内容及び運営の合理化をはかろうとするものであります。  次に、この法律案の概要について申し上げます。  まず内国旅費につきましては、第一に、鉄道運賃及び船賃の級別支給区分が、現行法では内閣総理大臣等及び十一級以上の職務にある者には一等の、十級以下四級以上の職務にある者には二等の、三級以下の職務にある者には三等の運賃をそれぞれ支給することになっておりますのを、内閣総理大臣等及び七級以上の職務にある者には二等の、六級以下の職務にある者には三等の運賃を支給することといたしております。ただし、内閣総理大臣等及び十四級以上の職務にある者が一等車または一等船室を利用する場合には一等の運賃を支給することといたしております。  第二に、特別二等車の利用が一般化しているので、内閣総理大臣等及び十一級以上の職務にある者に対しましては、片道三百キロメートル以上の旅行をする場合には、新たに特別二等車料金を支給することといたしました。  第三に、特別急行料金を支給できる旅行を、現行法では片道五百キロメートル以上のものとしておりますのを、片道三百キロメートル以上のものに改めております。  第四に、日当、宿泊料及び食卓料の現行定額は、旅館の宿泊料等の実態から見て低額であるので、これらの定額を現行のそれの三割増といたしております。  次に、外国旅行につきましては、第一に、鉄道運賃及び船賃につき、前述内国旅費に準じて、それぞれの級別支給区分を改めることといたしております。すなわち、鉄道賃については、運賃の等級を三以上に区分する線路による旅行の場合に、十三級以上の職務にある者には最上級の運賃を支給することに改め、船賃については、運賃の等級を二以上に区分する船舶による旅行の場合には、最上級の運賃によることになっておりますが、その最上級の運賃をさらに四等級以上に区分する場合及び三等級に区分する場合の級別支給区分を、それぞれ改めることといたしております。  第二に、航空運賃について、現行法では実際に支払った運賃を支給することとなっておりますが、これを運賃の等級が二以上ある場合には、原則として内閣総理大臣等及び十三級以上の者には最上級の運賃、十二級以下の者には最上級のすぐ下位の運賃を支給することといたしております。  第三に、移転料の定額につき別表を補正し、鉄道二千キロ以上を四階級に区分して、新たにそれぞれの定額を定めることといたすほか、その他の規定につきましても、若干規定の整備をはかっておるのであります。  本案につきましては、政府側より提案の理由の説明を聴取し、自来数回にわたって慎重審議を重ねてきましたが、特に社会党の横山委員よりは、政府は本案の提案理由の中で「国家公務員等が内国旅行を行う場合、従来、国家公務員等旅費に関する法律規定に定められ死等級より下位の等級によって鉄道旅行または水路旅行を行うことが多い」云々と書いてあるが、こういう提案理由の実情というものはないと思う、もしそういう事実があるならば資料を提出してほしいとの質疑がありました。これに対して、政府側よりは、実際旅費を担当している各省会計課長の官職なり、あるいは周囲の実例なりによって、大体そういう傾向に相なっておるということを確信して書いたまでであるとの答弁がありました。そのほか、日額旅費の引き上げ、旅費の支給区分、警察官の無賃乗車等に関して質疑がございましたが、これらは速記録に譲ることといたします。  本案につきましては、各派共同の修正案が提出されました。修正の趣旨は、別途今国会に提出され、すでに本院において可決いたされました住宅金融公庫法の一部を改正する法律案において、公庫役職員が公務員でなくなることに伴い、その附則で国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正することとし、その施行期日を本年六月一日からと規定いたしておるのでありますが、本法律案は公布の日から施行することといたしておりますので、本法律案のうち、右に関連する部分の改正規定は六月一日から施行することに改め、この間の調整をはかろうとするものであります。  本案並びに修正案につきましては、審議の結果、去る十六日質疑を打ち切り、討論を省略して直ちに採決いたしましたところ、いずれも全会一致をもって可決され、よって本案は修正議決いたしました。  右、御報告いたします。(拍手
  32. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 討論の通告があります。これを許します。春日一幸君。     〔春日一幸君登壇
  33. 春日一幸

    ○春日一幸君 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部改正案に対しまして、     〔議長退席、副議長着席〕 私は、ここに、日本社会党を代表いたしまして反対の意思を表明し、以下、その立場を明らかにせんとするものでございます。  そもそも、この法律案は、外国人に対しまして税金をまけてやる現行制度をさらに存続せんとする法律であるのでございまして、かくのごとき悪法律、少くとも独立国といたしまして、このような法律を作っておりまする国、およそ今世界にその類例を見ざるところでございます。(拍手)さらに、わが国は、今経済の自立と独立の完成、これを最も強く叫ばれておりまするこのときに、このような法律を通すということは、われら国会の権威において、断じてこれを阻止せなければならぬと存ずるのでございます。(拍手)そこで、私は、この際、鳩山内閣の公約どこの法律との関連性について一考察を加えてみなければ相ならぬと存ずるのでございます。  昨年二月におきまする時の民主党総裁鳩山一郎氏は、まずその公約といたしまして、あの日ソ国交の調整、日中貿易の増進、このことに対しまして異常の決意を示し、最も熱心にこのことを強調されたと存ずるのでございます。果して、これらの政策に期待を寄せられまするところの多くの選挙民たちは、この公約を実現させることのために、鳩山内閣に対しまして多くの信頼を寄せられたと存ずるのでございます。しかるところ、この公約の行方は、今一体どのような形になっておるでございましょうか。これは本日の新聞が最も明確に報道いたしておりまする通り、すなわち、昨年の五月から一年有余になんなんといたしまするマリク・松本会談は、全く何らの妥結を得ることなく、何らの理解を得ることなく、むしろソ連側より最も手きびしい反撃を受けて、ついに無期限休会の状態に立ち至っておるのでございます。これをいうならば、鳩山さんは、当時、すなわち日ソ交渉妥結させるためというので、それこそ一生懸命になってあの選挙運動を戦って参られたのでございましたけれども、あの保守合同の犠牲として、この政策はほとんど埋没してしまったのでございます。(拍手)このような信義も節操もない態度というものは、最も手きびしく糾弾されなければならぬと存ずるのでございます。(拍手)また、先日はダンスが参られましたけれども、日中貿易の促進問題につきまして、これまた何ら有効なる話し合いが行われなかったのでございまして、また、これを増進することのための何らの成果も上ってはいないのでございます。さらに申し上げまするならば、防衛分担金を削減して社会保障制度を拡充強化するという公約もあったのでございまするけれども、本年度予算におきまする防衛関係費は逆増いたしております。そして、社会保障の諸施策は、今回の健康保険法の改悪にありまする通りです。すなわち、患者が診察を受けるつど、一々勘定を払わなければならないというような、およそその公約とは逆の方向へと政策は後退をいたしておるのでございます。さらに、公約の一つには減税のことが強くうたわれておるのでありまして、今日勤労控除額の限度率がわずかばかり引き上げられておるのではありまするけれども、しかしながら、勤労大衆が最も強く要望いたしておりまするところの扶養控除あるいは基礎控除、こういうようなものは何一つ解決がなされてはいないのでございます。私がこの機会に皆様方に申し述べたいことは、このような公約が何一つ果されていないというこの背景の中において、最もりっぱに、最も正確に果されておる公約がただ一つある。その公約は何であるかと申しまするならば、この法律、すなわち、外国人に税金をまけてやるその公約だけが、実にその公約通り実践されておるといわざるを得ない。(拍手)そもそも、徴税行政の本質というものは負担の公正でなければならぬ。所得のあるところには課税をする、担税力の多き者から逐次なき者にこれを低く及ぼしていくというのが、徴税行政の原理原則であらねば相ならぬのであります。(拍手)ところが、本法律は、外国人——外国人といえば、その大部分の者はアメリカ人でございましょうが、資本主義の本山アメリカ、このアメリカのお金持ちの人々にのみ特に税金をまけてやるというようなことは、これは負担の権衡という徴税行政の原理の上に立ってみても、あるいは担税力の多き者から逐次及ぼしていくという徴税行政の基本的な要請から考えてみても、かくのごときことが許されてよいでございましょうか。(拍手)臨時税制調査会が、昭和三十一年度において措置せなければならないという税制改革の中に、次のような答申をいたしておるのでございます。すなわち、居住外国人の所得課税の特例についてでありますが、これに対して、政府が任命をいたしましたところの臨時税制調査会が答申をいたしておるのでございます。その答申は次のごとくうたっておる。「租税特別措置法第四条から第五条の二までに規定する居住外国人の所得税課税の特例措置は、昭和三十年末をもって期限が切れることとなっているが、この措置を更にこのまま延長することは、内外人平等の原則からみて適当でない。」と答申をいたしておるのであります。(拍手政府は、みずから諮問を発し、このような答申があるにもかかわりませず、外国人に対して特に税金をまけてやるというような、このような不平等な、不合理な、妥当性を欠く立法をあえて望んでくるということは、まことに許しがたきことと申さねば相なりません。(拍手)そもそも、外国人課税の特例に関しましては、昭和二十一年七月に初めて占領軍より指令が発せられまして、占領軍軍人、軍属、外交官の給与は免税として、それ以外の者については一般の原則に従って課税することとなっていたのでありますが、次いで、二十二年十一月二十九日付総司令部の覚書によりまして、軍人、軍属及び外交官の公的俸級の免税に合せて、非円通貨によって合法的に取得された所得をも免税とすることが定められ、この結果、ドル、ポンド等による取引から生ずる所得及びこれら非円通貨で支払われる俸給等はすべて日本政府の課税外に置かれまして、事実上、大方の外国人には免税されることとなっておるのでございます。しかしながら、このことは、当時わが国が置かれておりましたところの立場が占領下にあった、すなわち敗残の思い出であるのでございまして、独立が完成されましたる今日、このような汚点は、最もすみやかにこれを払拭されなければ相ならぬのでございます。(拍手)しかし、この特権的課税は、二十五年五月二十七日に覚書の一部改正により、外国人に対しては一般原則に従って課税をすることとなり、日本の課税権が復活したのでありますが、時の親米一辺倒の吉田内閣によりまして、またもや第七国会において、現行の外国人課税の特例が再び制定せられまして、昨年十二月末日まで日本の課税権が否認されておったのであります。外国人課税に関する現行の特例措置は、一つは半額課税の特例であり、他の一つは国内払い課税の特例であります。半額課税の特例というのは、特定の資格を有する居留外国人の給与所得または事業所得については、その収入の半額、最高実に三百五十万円までを非課税とするものであります。また、国内払いの課税の特例というのは、居住外国人のすべての者の給与所得または退職所得について、その収入の全部ではなく、単に……。
  34. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 申し合せの時間が過ぎましたから、なるべく簡潔に願います。
  35. 春日一幸

    ○春日一幸君(続) 日本国内で支払われた額と、日本へ送金された額との合計額についてのみ課税しようとするものであります。  今回の政府改正案では、半額課税の特例は、昭和三十一年分以降は廃止することといたしておりまするが、国内払い課税の特例は、特定の資格を有する居住外国人の給与所得についてのみこれに一部の改正を加えて、昭和三十五年までこの制度を存続せしめようとするものであります。これは、特定国の不当な威力に圧迫されて、日本政府が、卑屈にも、特定国人に対してのみ、内外人平等の課税の大原則をみずからここに打ち破っておるものであるのでございます。(拍手)この間、勤労大衆や中小企業者だけは重税に日夜苦しめられ、政府は毎国会低額所得者に対しては減税をするとは言っておるけれども、実際には、スズメの涙ほどの制度上の減税である。水増し課税——天下り的、懲罰的な、そういう水増し課税を受けて、実質的の税金は年々歳々ふやされておるのであります。  このような状況下において、一たびアメリカの圧力にあうや、何でも言いなりほうだいになっておるということは、一体何たることでありましょうか。私どもは、弱い者には強く、強い者には弱いというのは、前総理大臣吉田茂君のことだけかと思っておったが、鳩山さんも、実は弱い者には強く、強い者には全く弱いという、その本性をここで現わしておると思うのであります。(拍手)信義と友愛などを口にはしておるけれども、幽霊の正体見たり枯れ尾花、同じ人間であるということをここで見て、さらにその慨嘆を深くいたしておるところであります。(拍手)最近米国に旅行いたしました学者が、二、三日前の新聞で、このようなことを書いております。     〔「時間々々」と呼び、その他発言する者あり〕
  36. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 春日君に申し上げます。申し合せの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
  37. 春日一幸

    ○春日一幸君(続) すなわち、前に述べましたような特権的な減税措置を強要したアメリカは、税の取り立てが非常にやかましい。アメリカを旅行する外国人が、五日その国に滞在すると、その間に得た収入に対しては厳重に取り立てる、もしその税金を払わないときは、国から出ることを禁ずるという。アメリカはこれくらい手きびしい外人課税を行なっておるのでありまするのに、わが国だけがどうしてアメリカ人にこのような特権を与えなければならぬ理由があるでありましょうか。(拍手)  さらに申し添えたいことは、今回のこの改正案は、もともと大蔵省の主税局では大反対であったのでありまして、再三新聞紙上でもその反対の意思が明確に発表されております。それが、アメリカの大使館からの圧力がわが外務省に加わりまするや、わが国のあのような屈辱外交が無条件にこれに屈伏して、アメリカと外務省とが一緒になって一萬田大蔵大臣に圧迫を加えて、一萬田大蔵大臣また弱い者には強く、強い者には弱いのでありますから、さきに、徴税当局か、堂々として、かっまた、この税制調査会がりっぱに答申をしておるにもかかわりませず、このような強権に屈して、そうして、その答申をじゅうりんして、さきには外人に対して不公正な課税を是正するのはこのときだと言っておきながら、何もかも白紙に戻して、このような悪立法にくみしておることは、一萬田大蔵大臣またこれ糾弾されなければならぬのであります。(拍手)  かくのごとき、徴税行政の根幹をじゅうりんし、強者におもねる奴隷的、屈辱的徴税立法は、わが国会の権威において、断じてその成立を阻止せねば相ならぬのでございまして、これが本法律案に対して反対する理由であります。何とぞ各位の御賛同をお願いいたします。(拍手
  38. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、日程第一につき採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  39. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告通り可決いたしました。  次に、日程第二ないし第四の三案を一括して採決いたします。日程第二及び第三の委員長の報告は可決、日程第四の委員長の報告は修正であります。三案は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、三案は委員長報告通り決しました。      ————◇—————
  41. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 日程第五、積雪寒冷特別地域における道路交通確保に関する特別措置法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。建設委員会理事荻野豊平君。     〔荻野豊平君登壇
  42. 荻野豊平

    ○荻野豊平君 ただいま議題となりました積雪寒冷特別地域における道路交通確保に関する特別措置法案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、本法案の提出の理由並びに内容について申し上げます。  積雪寒冷地域における道路は、冬季間長期にわたり交通の途絶を余儀なくされ、ために、産業経済活動の停止、生活の不安、文化の障害等、その影響するところ、きわめて広範かつ大なるものがあるのであります。これがため、積雪寒冷地域にあっては近代的な機械による除雪を励行し、防雪の施設を行い、さらにまた、凍上による路層の破損に対しては、排水施設及び路盤改良を施行すること等によって、年間を通じ道路交通確保いたさねばならぬのでありますが、これは、経費の点より見ても、また作業の内容より見ても、普通の道路維持とは全く趣きを異にし、地方公共団体に一任しては、その全きを期することははなはだ困難であります。従いまして、この際、本法に基き特に必要とする主要道路については、これらの事業に対し国庫補助の道を開き、もって冬季数カ月間冬眠状態を余儀なくざれつつある東北、北海道地方等の産業に活を入れんとする画期的法案であります。  本法案は、三月十日本委員会に付託せられたのでありますが、その内容の詳細は会議録に譲ることといたします。  次いで、自由民主党瀬戸山三男君より、本法案第三条における路線の指定に関し、あらかじめ運輸大臣の意見を聞いた上これを指定するものとする旨の修正案が提出されたのであります。  かくて、討論を省略して、修正案及び修正部分を除く原案につきましてそれぞれ採決をいたしましたところ、いずれも全会一致をもって可決せられ、よって本法案は修正議決されたのであります。  次いで、自由民主党瀬戸山三男君より次のごとき附帯決議案が提出せられ、採決の結果、全会一致をもって可決せられた次第であります。  附帯決議は次の通りであります。    附帯決議   政府は、現に実施中の「道路整備費の財源等に関する臨時措置法」に基く道路整備五箇年計画の遂行に支障を与えないため、揮発油税収財源をこの法律の実施に要する経費の財源に充当しないこと。  右、御報告申し上げます。(拍手
  43. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。   [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告通り決しました。      ————◇—————
  45. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 日程第六、学校給食法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。文教委員長佐藤觀次郎君。     〔佐藤觀次郎君登壇
  46. 佐藤觀次郎

    ○佐藤觀次郎君 ただいま議題となりました、内閣提出にかかる学校給食法の一部を改正する法律案につきまして、文教委員会における審議の過程及びその結果について申し上げます。  御承知のように、学校給食の問題については、例の粉ミルク横流し事件について、日本社会党野原覺君、河野正君、山崎始男君、自由民主党の加藤精三君、並木芳雄君から、種々な角度から熱心なる質問が行われました。  その概要を申し上げますと、二月七日、野原覺君から、一、アメリカから輸入している学校給食用の脱脂粉ミルクの横流し事件が新聞に報道されているが、その実情に対して説明されたいこと。第二、長崎県を初め十数県に及ぶ府県が横流しをしたというのであるが、その原因はどこにあるか。第三に、この物資の都道府県に配給する場合の経路はどのようになっているか。第四、長崎県の場合に文部省へ水増し申請をしたというが、それはどの程度に申請したものであるか。第五、都道府県からの申請をどのようにして調査し、配給しているか。第六、この横流し事件に対して、大臣はいかなる責任を感じているか。  次いで、河野正君は、一、この粉ミルクの配給に対しては、他の要望に対してきわめて厳格に査定をしているにかかわらず、はなはだしくルーズであるが、これに対する文部大臣の所見を承わりたい。第二、都道府県からの申請を査定したというが、具体的に示してもらいたい。第三、文部省の通牒なり警告の威令は全く行われていないように思うが、いかん。第四、この問題は、対外的に大きな信用にかかわる大問題と思うが、大臣はどう考えておるか。  次いで、自由民主党並木芳雄君から、一、この横流し事件によって、学校給食の体制が阻害されることはないか等の質疑がありました。  さらに、二月九日の委員会においては、山崎始男君より大要次のような質疑がありました。すなわち、第一に、通産省から外貨の割当をもらって学校給食物資を輸入する場合、その輸入業者の数はどのくらいあるか。給食物資の末端配給についてその支払い状況はどうか。第二、新聞によると、学校給食粉ミルク横流し事件について、長崎以外で北海道その他数県からもその証拠があがっているというが、現在までどのような様子になっているか。次いで、二月十四日の委員会において、河野正君より、第一に、学校給食用粉ミルク横流し事件について、その後の経過はどうなっておるか。第二に、事故品として払い下げを認められた学校給食用物資の用途は何か。第三に、食品衛生法第四条に規定されておる販売を禁止されておる食品及び添加物と、学校給食用物資の事故品の用途との関係、食品衛生法違反行為があるかいなか等に関し、その専門的な立場より追及し、野原覺君より、今回の学校給食用粉ミルク横流し事件について、文部省に絶対波及しないと断定されるが、その確信の根拠を伺いたい。また、日本学校給食会には責任はないか等について、清瀬文部大臣及び小林管理局長に質問をいたしました。二月十六日の委員会において、河野正君から、さらに、第一、ミルク横流し事件も大詰めになっておるが、文部当局の責任についてお伺いしたい。第二、ミルクの不良品を払い下げたというのであるが、不良品を払い下げるということは食品衛生法に触れないか、厚生省の部長から答弁をしてもらいたい。第三、その横流しされたミルクは、食品衛生上から見てどの程度のものか。第四、今回までに横流しをされた不良品というものの実態を文部当局から報告されたい。第五、今回長崎県における転用の状況、あるいは転用の目的についてお聞きしたい。続いて、自民党加藤精三君から、この横流し事件があるので、アメリカ政府当局へこの教育物資の譲渡の継続を取り計られたいのであるが、文部当局はいかに考えているか。二、この横流し事件によって生ずる関税の負担責任者はたれか。第三、この負担を学童にしわ寄せせられては困るが、当局の意見はどうか。また、二月二十一日の委員会におきましては、野原覺君より、さらに学校給食用ミルクの横流し問題について、事件の進展状況を、日本学校給食会の監督責任の地位にある清瀬文部大臣よりその報告を強く求めました。以上が大体委員会における給食問題の経過の概要でありますが、二月二十日に至り本法案が提出されるに至ったのであります。本法律案の要旨は、学校給食が現在小学校等の児童のみに限定されている現行法の適用範囲を中学校等の生徒に及ぼすとともに、公立小学校の設置者が、生活保護法に規定する要保護者で教育扶助を受けていない者、並びに政令で定める準要保護者に対して、その負担すべき学校給食費を補助する場合には、国はその設置者に対して、政令で定めるところにより、予算の範囲内で補助することができると規定しようとするものであります。本法律案は、二月二十日当委員会に付託され、二月二十三日提案理由の説明を聴取して以来、慎重に審議を重ねて参りました。本委員会の審議に当りましては、最後に河野正君よりきわめて熱心なる質疑が行われ、政府当局より答弁がありました。その要旨について申し上げますと、第一に、中学校生徒の保護者で、経済困難なものに対する給食費の補助についてはどう考えているか。第二に、栄養士、調理士等を置くことは、学校給食についてきわめて重要なことであるが、これらの人々の人件費については、保護者の負担に仰ぐことなく、国または地方公共団体が積極的に財源措置を講ずべきでないか。第三は、学校給食に関する経理について、学校給食に関する経費の支出が乱れている疑いが多分にあり、給食用物資の横流し等の問題か続出している現状にかんがみて、当局はこれをいかにする方針であるか等であります。以上のうち、第一点について、清瀬文部大臣より、将来財政上の余裕ができれば公立中学校関係の準要保護者に及ぼしたい旨の答弁があり、第二点について、小林管理局長より、全部の学校に栄養士、調理上等を置くには至っていないが、教員にできるだけ栄養の知識を持ってもらうよう栄養指導を行なっている。第三点については、御指摘の節が多分にあると思われるから、今後一そう引き締めて、学校給食の改善発展に努力したい旨の答弁がありましたが、詳細については速記録によって御承知願いたいと存じます。かくて、三月十六日に至りまして質疑を終了、討論を省略して採決の結果、起立総員をもって原案の通り可決すべきものと決定した次第であります。さらに、すでに中学校に給食をやるとすれば、定時制高等学校についてはいかにすべきかについて、理事会その他で種々協議が行われ、本法案について、すみやかに、定時制、特に夜間の高等学校に給食を実施するよう、山崎委員より提案がありました。次いで、自由民主党坂田道太君から、本法律案に対して学校給食法にかかる学校給食の範囲を、夜間の定時制高等学校の生徒に対しても、可及的速かに拡大して適用するよう、政府において措置せられんことを望む。この附帯決議案が提出せられ、採決の結果、起立総員をもって可決せられました。すなわち、学校給食法の一部を改正する法律案は、附帯決議を付して、総員賛成のもとに議決せられたのであります。右、御報告申し上げます。(拍手
  47. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本案は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————
  49. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 日程第七、日本国カンボディヤとの間の友好条約批准について承認を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長前尾繁三郎君。     〔前尾繁三郎君登壇
  50. 前尾繁三郎

    ○前尾繁三郎君 ただいま議題となりました日本国カンボディアとの間の友好条約批准について承認を求めるの件しつきまして、外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  カンボジアは、昭和二十四年独立国の地位を獲得して以来、終始一貫してわが国に対し友好的態度を示しておりまして、なかんずく、一昨年には、対日賠償請求権を放棄することを声明し、また昨年には、連合国捕虜に対する戦争損害補償金の取得分を日本赤十字社に寄付する旨を申し出る等、その外交の基調を不変の親日政策に置いるいることを表明しているのであります。たまたま、昨年シァヌーク総理大臣外務大臣を長とする同国の親善使節団の日本訪問を機会に、両国間の友好条約締結について話し合いが行われ、十二月九日、東京において、両国外務大臣の間で本条約が署名せられました。  本条約は、内容において、すでにわが国がアフガニスタンやイランとの間で締結しております修好条約と同様、両国間の友好関係を強化することを目的とし、平和の維持、主権、独立及び領土の尊重、外交官及び領事官の待遇等の両国間の基本的関係規定しておりますが、なお、そのほかに、経済、技術及び文化協力関係の強化、移住者に対する便宜供与等についての規定も挿入しておるのであります。  本件は、二月十三日外務委員会に付託されましたので、委員会を開き、政府の提案理由の説明を聞き、質疑が行われ、続いて、日本社会党穗積七郎君から、移民に関してはすみやかに予算その他万全の措置をとるべき旨等の政府に対する要望決議案が提出されましたが、これらの詳細については会議録に譲ることといたします。  かくて、三月十七日討論に入り、日本社会党穗積七郎君、自由民主党北澤直吉君及び小会派クラブの岡田春夫君から、決議案をも含めて本件につきそれぞれ賛成の意を表明せられ、採決の結果、本件は全会一致をもってこれを承認すべきものと議決し、また、本要望決議案も全会一致をもって可決せられました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  51. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本件は委員長報告通り承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告通り承認するに決しました。      ————◇—————
  53. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 日程第八、訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。法務委員会理事池田清志君。     〔池田清志君登壇
  54. 池田清志

    ○池田清志君 ただいま議題となりました訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の要旨及び委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  御承知のように、民事訴訟、刑事訴訟等における証人、鑑定人等の日当及び宿泊料の額は、その性質上、国家公務員が出張した場合の旅費の額を基準として定められております。今回、政府におきまして別に今国会に提出中の国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案は、先刻本院において可決せられた通らであります。これに応じまして、民事訴訟及び刑事訴訟における証人、鑑定人等の日当及び宿泊料、執行吏の取り扱う執行事件における証人及び鑑定人等の日当並びに執行吏の宿泊料につきましても約三割の増額を行おうとするのが、本案の趣旨であります。  法務委員会におきましては、慎重審議の後、討論を省略し、採決いたしましたところ、全会一致をもって政府原案の通り可決すべきものと決定した次第であります。  右、御報告申し上げます。(拍手
  55. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本案は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————
  57. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 日程第九、昭和二十八年度一般会計歳入歳出決算昭和二十八年度特別会計歳入歳出決算昭和二十八年度政府関係機関決算報告書、右各件を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。決算委員長上林與市郎君。     〔上林與市郎君登壇
  58. 上林與市郎

    ○上林與市郎君 ただいま議題となりました昭和二十八年度一般会計歳入歳出決算、同特別会計歳入歳出決算及び同政府関係機関決算報告書につきまして、決算委員会の審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本決算は、昭和三十年一月、第二十一回国会に政府より提出せられまして、決算委員会は、同年五月、政府よりその概要を、また会計検査院より同じく検査の概要を聴取した後、各省並びに各政府関係機関につきまして鋭意審議を重ねること三十数回、去る三月十六日これを了するに至ったのであります。  これらの決算につきまして、会計検査院が検査の結果経理上不当と認めた事項、及び是正させた事項として、検査報告に記載した件数は合計二千二百三十二件に上り、このほか、妥当と認めがたいものとして、それぞれの関係責任者に対し警告を発し改善を促した事項も多数あります。  これら不当事項及び是正事項を経理の態様別に見ますと、不正行為による被害金額が七千四百余万円、架空経理など法令または予算に違反して経理したものが二千四百余万円、検収不良などのため過渡となっておるものが九千八百余万円、補助金で交付額が適正を欠いておるため返納または減額を要するものなどが十一億六千八百余万円、災害復旧事業の査定に対する早期検査の結果により補助金の減額を要するものが百億二千四百万余円、歳入などで徴収決定が漏れていたり、その決定額が正当額を越えていたものが五億二千余万円、工事請負代金、物件購入代金などが高価に過ぎたり、または物件売り渡し代金などが低価に過ぎたと認めたものの差額分が五億千五百余万円、不適格品または不急不要の物件の購入など、経費が効率的に使用されず、いわゆる死に金を使ったと認めたのが十八億八千二百余万円、その他の雑件を含めて総額百四十八億千四百余万円に上っておるのであります。  決算委員会は、昭和二十八年度決算の審議に当って、特にこれら不当事項並びに是正事項につきまして慎重なる検討を加えたのでありますが、その際各委員より特に指摘されましたことは、これら不当事項の責任者の処分がきわめて緩慢かつ軽きに過ぎるという点であります。すなわち、国の予算の執行に、かくも多数の過誤、怠慢あるいは故意による不経済使用が見られ、職員の汚職犯罪などが発生して莫大な国損を生じている事例が依然として跡を断たないのはまことに遺憾であるが、これら非違事項等については、直ちに監督者、実行者等の責任を追及して、一罰百戒、もって将来への戒めとなすべきである、しかるに、これら関係者の処分を見ますと、大部分は国家公務員法その他の法律の定めによる懲戒処分に至らない訓告あるいは厳重注意等にとどまっている状況でありまして、この程度の処分では非常に不徹底であり、このような点から一般行政官庁の国に対する責任観念の希薄を招くおそれがあり、この際、従来のような方針を反省して、各省とも改善刷新の実をあげるべきである旨の意見が開陳せられておるのであります。これに対して、鳩山内閣総理大臣は、去る二月二十二日の委員会におきまして、綱紀粛正については特に留意し、各省内部における内部監査あるいは監督機構の充実強化等についてさらに検討する旨答弁されたのであります。本委員会は、昭和二十八年度決算の審議を終了し、三月十六日採決に入ったのでありますが、その際日本社会党吉田委員から次の通り議決あらんことを望むとの動議が提出されました。すなわち、   昭和二十八年度一般会計歳入歳出決算、同年度特別会計歳入歳出決算及び同年度政府関係機関決算報告書(未確認となつていた既往年度分を含む)につき左のごとく議決する。  左記はいずれも不当と認める。  1.裁判所所管職員の不正行為により国に損害を与えたもの一件  2.総理府所管   調達庁関係において    建物の購入にあたり処置当を得ないもの一件    返還財産の損失補償額の算定当を得ないもの等二件    土地、建物の借料が過大に支払われたもの三件   北海道開発庁関係において    庁費を架空に支出して予算外に経理したもの二件    工事の施行が粗漏で手直しを要するもの等五件    職員の不正行為により国に損害を与えたもの二件   自治庁関係において    地方財政平衡交付金の交付が均衡を欠いたと認められるもの一件   保安庁関係において(北海道開発局および建設省関係で工事施行の分を含む)   建設工事の施行当を得ないもの六件    契約方法および価格の決定当を得ないもの五件    不急の物品を購入したもの九件    物資器材の規格の決定当を得ないもの八件    物資器材の検収当を得ないもの二件    計四十六件  3.法務省所管   経理のびん乱しているもの一件   工事の施行が当を得ないためひいて出来形が不完全なもの一件   購入契約が適正を欠き、かつ、価格が高価となつたと認められるもの等二件   職員の不正行為により国に損害を与えたもの二件    計六件  4.大蔵省所管   徴税に関し処置当を得ないもの等四十一件   旧軍用財産の整理が著しく遅延しているもの等三十三件   職員の不正行為により国に損害を与えたもの二件   租税の徴収過不足又は徴収上の過誤を是正させたもの七百四件    計七百八十件  5.文部省所管   公立諸学校施設整備等に対する国庫補助(負担)金の経理当を得ないもの三十二件   職員の不正行為により国に損害を与えたもの二件    計三十四件  6.厚生省所管   国庫補助金等の経理当を得ないもの五十八件   保険給付の適正を欠いたもの一件   燃料費を架空に支出して予算外に経理したもの一件   職員の不正行為により国に損害を与えたもの二件    計六十二件  7.農林省所管   直轄工事の経理当を得ないもの二件   直轄工事の施行にあたり処置当を得ないもの等十八件   機械の管理著しく当を得ないもの二件   公共事業に対する国庫補助金の経理当を得ないもの等九百五件   農業共済保険事業の運営が適切でないもの七件   職員の不正行為により国に損害を与えたもの一件   食糧庁関係において    輸入米の購入および売渡にあたり処置当を得ないもの等五件    小麦粉の加工および運送にあたり処置当を得ないもの等二件   水産庁関係において    事故発生後に保険引受した漁船に対し再保険金を支払つたもの一件   林野庁関係において    工事の出来高が不足しているもの三件    国有林野整備にあたり処置当を得ないもの等二件    職員の不正行為により国に損害を与えたもの二件    計九百五十件  8.通商産業省所管   機械類の管理等当を得ないもの等二件   国庫補助金の交付について処置当を得ないもの等十三件   糖蜜の運送賃率の算出が実情に即しないもの一件   アルコールの生産計画等処置適切を欠いたもの一件   計十七件  9.運輸省   公共事業に対する国庫負担金の経理当を得ないもの九十八件  10.郵政省   予算の制をみだり給与を支給したもの一件   物品を過大に調達したもの一件   職員の不正行為により国に損害を与えたもの十七件   計十九件  11.労働省所管   失業対策事業費補助金の経理当を得ないもの三件   労働者災害補償保険並びに失業保険保険料等の徴収不足を是正させたもの十一件   計十四件  12.建設省所管   直轄工事の目的を達していないもの等十一件   公共事業に対する国庫負担金の経理当を得ないもの百六十四件   計百七十五件  13.日本専売公社   塩田等改良事業費補助金の精算にあたり処置当を得ないもの二件   職員の不正行為により日本専売公社に損害を与えたもの二件   計四件  14.日本国有鉄道   会計事務職員が架空名義により支払いこれを領得したもの一件   部内発生の石炭がらをそのまま利用しないで請負人持ち材料として工事を施行したもの等四件   軽便軌条等の貸付処置当を得ないもの等三件   石炭の荷役契約にあたり処置当を得ないもの等四件   職員の不正行為により日本国有鉄道に損害を与えたもの二件   機関車直通運転契約を改訂しないで不利となつているもの一件   計十五件  15.日本電信電話公社   工事の計画当を得ないもの等三件   再用可能の電動発電機を売り渡したもの一件   借上機械についての解約が遅れむだな賃借料を支払つたもの一件   職員の不正行為により日本電信電話公社に損害を与えたもの一件   電気通信施設記録図の補正をしなかつたためその用をなさなかつたもの一件   計七件  16.農林漁業金融公庫   農林漁業資金の貸付けにあたり審査または管理不十分なもの一件   総計二二二九件   右のうち左記事項に対しては当局において特に留意すべき事項と認める。  (一)補助金等の不当経理    補助金等に対する不当経理は千二百七十六件であつて、不当事項の総件数二千二百二十九件に対し五七パーセントの多額の割合となつている。右はひつきよう事業主体の作為による虚構の事実を当局者が看過したものである。  (二)犯罪その他虚構の事実による不当経理    関係職員の犯罪またはその容疑により国または政府関係機関に損害を与えたもの三十六件架空経理、経理のびん乱、直轄工事の経理当を得ないものなど七件計四十三件は関係職員の故意によるものである。  (三)農業共済保険事業の不当運営    農業共済保険事業の運営については関係法令に依拠せず組合が支払共済金と未収掛金等とを相殺して決済していたり、損害の過大評価によつて共済金を不当に多額受領したり、共済金の支払いにあたり全部または一部を組合員に支払わず組合に保有して本来の目的外の支出に充てているなどの事実があるのに当局者がそれを看過しているものが多数ある。  (四)物資の調達管理、処分並びに工事に関する不当経理    物資の調達に当り価格の決定、または規格の決定など当を得ないもの不急の物品を購入したもの、検収の不良なものが多数あり、工事についてもその施行が粗漏なものまたは工事の出来高が不足しているのにそれが見のがされて設計どおり完成したものとして請負金額の全額が支払われているものも多数ある。しかして、物資の調達等は保安庁関係において数億円に上る不当金額があり、食糧庁においては食糧の輸入、管理、輸送等に関し処置当を得ず国損をきたした金額は毎年度多額に上り本年度においてもまた数億円に上つている。   以上一般、特別両会計、政府関係機関を通じて不当と認めた件数は総計二千二百二十九件の多数に上り前年度にくらべ四百十六件を増加している。右増加は会計検査院が検査の重点を特に不当事項の多い補助金等の面に注いだ関係にもよるとはいえ、会計検査院の検査は人員と予算上の制約により十分でない事実にかんがみこの点を参酌すれば不当事項の件数は更に多数におよぶことも明らかである。この不当事項の原因、態様およびその是正上採るべき方策についてもすでに明らかとなっているにもかかわらず連年同種の事項が繰り返され会計検査院の検査のすすむにつれ増加の現状にあるのは、まことに憂慮すべき事態である。   前記(一)—(二)はひつきよう関係者中のある者が仮装した書類を作成し外形を整えたことによるものであつてこの種信ぴよう性のない証ぴようによる経理は会計を毒すること極めて大であつて厳につつしむべきである。(四)にあつてはその原因は多種多様であるが、関係職員のはなはだしい怠慢による事務処理の結果と認められるものがある。本件関係の歳出は国および政府関係機関の歳出中重要な割合を占めその経理はきわめて慎重であるべきである。元来こと国費などに関し周到な注意のもとに行わるべき経理事務にこのような事実のあることは遺憾の極みとするところである。   食糧庁の経理事務は近時改善のあとが見うけられるようであるが、病変米の滞貨処分についてはようやくその緒についたに過ぎない。本件については本委員会の昭和三十年十二月十六日重ねて行つた決議の趣旨の実現を計るべきである。   不当事項に関する責任者の処分の状況を見るにその責任の追及は概して軽く犯罪またはその容疑による不正行為によるものを除き他は有名無実に近い実情であつて、その処分といえども下級関係職員にとどまり、真に財務行政の重責を負つている上級職員には及んでいない。監督の地位にあつた者は自らその責任を負うかそうでないときはそれにふさわしい問責を行うべきである。   要するに政府並びに政府関係機関においては不当事項の根絶につき事態に即応した抜本的対策を速やかに講ずべきであり関係責任者殊に監督者はその重責を深く認識し過誤の絶滅を期すべきである。   決算のうち前記以外の事項については異議がない。   なお、昭和二十八年度決算検査報告に、早期検査により「昭和二十八年発生災害復旧事業の査定額を減額させたもの」三件(農林省所管第一八○六号運輸省所管第一九九六号建設省所管第二二〇〇号)あり、右は検査の結果昭和二十九年度以降において補助金の減額となるものであつて、その額は百億二千四百余万円に及び、注目すべき事項と認めここに附記する次第である。 以上決議すべき旨の動議が提出されました。  次いで討論に入り、自由民主党を代表して生田委員から動議の趣旨に賛成の旨の発言があった後、採決に入りましたところ、全会一致をもって吉田委員の動議の通り議決いたした次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  59. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 各件を一括して採決いたします。各件は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、各件は委員長報告通り決しました。      ————◇—————
  61. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) この際暫時休憩いたします。     午後六時五十九分休憩      ————◇—————     午後九時十四分開議
  62. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 休憩前に引き続き会議を開きます。      ————◇—————
  63. 長谷川四郎

    ○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、淺沼稻次郎君外五名提出重光外務大臣不信任決議案は、提出者の要求通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  64. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  淺沼稻次郎君外五名提出重光外務大臣不信任決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。細迫兼光君。     〔細迫兼光君登壇
  66. 細迫兼光

    ○細迫兼光君 私は、提案者を代表いたしまして、ただいま上程せられました外務大臣重光葵君に対する不信任決議案の趣旨説明を試みんとするものであります。(拍手)  まず、その主文並びに理由を朗読いたします。     主文  本院は、外務大臣重光葵君を信任せず。  右決議する。    〔拍手〕     理由  一、重光外務大臣の拙劣きわまる外交のため日ソ交渉は事実上決裂し、政府の重要公約たる日ソ国交回復は今や不可能視されるに至つた。このことはわが国のアジアにおける立場をいよいよ孤立せしめるのみならず、抑留者の引揚を無期延期し、北洋漁業の操業を危たいならしめるものである。  一、重光外務大臣は昨年米国でのダレス氏との会談において、防衛分担金の取極において、さらに又原水爆実験中止要請において自主独立の外交をまつたく放擲し、アメリカ一辺倒の追随外交に終始した。  一、重光外務大臣のアメリカ追随自主性喪失の外交政策のためわが国の国連加入もついに不可能となり、わが国の国際社会復帰の絶好の機会を失うに至つた。  一、重光外務大臣は、アメリカの意を迎うることにきゅうきゅうとし国民の悲願たる日中国交回復に対してなんらの熱意を示さず、あまつさえ中華人民共和国周恩来首相の国交回復のための再三の呼かけをも無視し、日中間の正常なる国交樹立を意識的に阻害している。  一、重光外務大臣は日比賠償交渉に当つて、わが国の経済力を無視した八億ドル賠償案をのみ、他のアジア諸国との賠償問題解決を困難ならしめるとともに、わが国の経済にはなはだしい重圧を加えんとしている。  一、重光外務大臣は、わが国と韓国間の紛争解決につきなんら具体的積極的方策を樹てることなく、いたずらに遅疑逡巡拱手傍観するのみであつて、日韓国交回復は望み得べきもない。外務大臣責任誠に重大である。   これが、この不信任案を提出する理由である。   〔拍手〕  以上は、この重光外務大臣不信任決議案の主文並びに理由の要旨であります。  以下、私は、いささかこれを敷衍して、諸君の理解ある御賛成を得たいと思うのであります。(拍手)  すなわち、われわれは、まず第一に、このたびの日ソ交渉についての重光外務大臣責任を追及しなければなりません。(拍手日ソ交渉は、御承知の通り、昨年六月ロンドンにおいて開始せられ、それから月をけみすること十カ月、延々二十三回の交渉を持ったのでありますが、ついに今日の無期限休会の羽目に陥らしめてしまったのであります。西ドイツのアデナウアー首相が三日か四日でやってのけた仕事を、一体何年かかってやるつもりであるか。(拍手)これがために、ソ連との通商問題はもちろんのこと、緊急を要する漁業問題や抑留邦人の引き揚げ問題をも無期限のかなたに押しやってしまったのであります。  漁業問題の重要性は、今さら言うまでもありません。今日、東支那海の漁業も自由でない。朝鮮海峡の漁業に至っては、不当なる圧迫に、漁業者は悲憤の涙に暮れております。(拍手)また、太平洋においては、アメリカの原水爆実験の脅威にさらされて、わが漁業は重大なる危機に立ち至っておる状態でありまして、漁業者、ことに沿岸中小漁業者は、大規模な漁業会社が北洋漁業に出向くことによって、沿岸漁場の確保を、今日の生活の問題として強く強く——日ソの間の漁業協定の成立を一日千秋の思いで待っておるのであります。(拍手)  さらに、抑留邦人帰還につきましては、抑留せられておる本人の苦痛は申すに及ばず、留守家族は首を長くして日ソ交渉妥結を待っておるのであります。(拍手)このことは、直接留守家族の陳情を聞かれた外務大臣のすでによく御承知のことであります。  今や、これらの沿岸漁業者や留守家族は、失望のどん底に泣いております。まことに外務大臣責任は重大といわねばなりません。(拍手)  そもそも、日ソ国交回復は、第三次鳩山内閣の選挙における公約の一枚看板でありました。(拍手)四十二万戸の住宅建設の公約も、防衛分担金を削減して社会保障費に回すという公約も、今や全く画餅に帰した今日、ただ一つ国民が希望を鳩山内閣に寄せておった日ソ交渉も、ついに無期限休会のふちに陥ってしまったのであります。(拍手)全く鳩山内閣国民の投票を詐欺、横領したものといわなければなりません。(拍手)これらの公約によって、衆議院百八十四名の議員当選者は、この際あらためて国民の信任を問うべきであって、われらがさきに衆議院解散要求決議案を提出した理由の一つも実にここにあったのであります。(拍手)  そもそも、その失敗は、困難なる領土問題を最終的にこの際解決せんとする見通しを誤まった根本態度に出ておるのであります。(拍手)諸君、われわれは戦争を放棄しております。われわれは、これを光栄とし、誇りとしております。当然に、外交交渉に当りましては、常に理路整然たる正しい主張を、堂々と、相手方はもちろんのこと、全世界に訴えて、もってその貫徹を期さなければならぬのであります。(拍手領土問題について、われわれは、先に田中君が指摘しましたように、沖縄、小笠原とともに、南樺太千島返還を強く要求するものであります。(拍手)しかしながら、そのきわめて困難なる問題であることも、あわせて、われわれは見通しを持っておるのであります。(拍手重光外務大臣は、かつて東京湾上ミズーリ号の甲板において降伏文書に調印なさったことを覚えておられるでありましょう。(拍手)この降伏文書には、「茲ニ『ポツダム』宣言ノ条項ヲ誠実ニ履行スルコト」と書いてあります。しこうしてそのポツダム宣言には、明らかに、「『カイロ』宣言ノ条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」と書いてあります。なお、サンフランシスコ平和条約において千島領土権を放棄したのであります。こうした過去の経過をたどってきた千島、樺太問題でありますがゆえに、それがたとい南千島に限られようとも、満足な解決に達することが非常に困難であることは、およそ常識ある人が容易に見通し得るところでなければなりません。(拍手)  われわれの主張は、常に世界の何人をも首肯せしめる、堂々たるものでなければなりません。いやしくも世界の良識者が首肯し得ないような主張をなすことは、われわれの厳に慎しまなくてはならないところであります。(拍手)それは、せっかくの同情者を失うばかりではなく、今後の各方面の問題に対する日本主張を力弱くするものであります。われわれの見通しにおきましては、領土問題は非常に困難である。しかし、不可能であるかといえば、決して不可能ではない。(拍手日本に社会党政権が確立せられ、返還地域がアメリカの軍事基地にならないという保障が客観的に成立したとき、それは可能となるのであります。(拍手)だから、領土問題についてはこの際最終的な決定をなすべきでない。南千島というような、けちな、不利益なところでピリオドを打つべきでない。よろしく領土問題は未解決のままで保留しておくべきであると、われわれはかつて外務大臣に忠告、要請をしたこともあったのであります。(拍手)普通の知識を持つ者なら、何人も同感すべきであります。よって、わが社会党は、戦争状態終結と平和国交回復を主眼とする簡潔な平和条約締結し、そうして抑留者の帰国を早急に実現させ、引き続き通商問題、漁業問題、領土問題の諸懸案の解決計画すべきであると決定いたしたのであります。(拍手重光外務大臣は、この見やすき見通しをも持ち得ないで、ついに今日の無期限休会に陥らしめたのであります。(発言する者多し)外交において最も重要なることは、言うまでもなく、精密的確なる見通しを持って、しこうして、それに対する正確なる手を打つべきことであります。(拍手)しかるに、重光外務大臣は、この正確なる見通しを持つ能力を持たないで、十カ月の日時をむなしく費し、多大な国費を浪費せしめた責任は、断じて許すべからざるものといわなければなりません。(拍手)  次に問題となるのは、重光外相の、この日ソ交渉に当って、常に鳩山総理早期妥結の希望の足を引っぱって事をここに至らしめた責任であります。(拍手)すなわち、鳩山総理は、本年一月二十六日の記者会見において領土問題をあと回しにするという意見を述べたのであります。朝日新聞の録音による速記は次のように報告しております。(拍手)「問、日ソにしろ、日比にしろ、それも通常国会中に仕上げたいというお考えですか。答、仕上げたいですね。そこでまあ戦争状態終結の宣言をしたいというようなことからはじまって来て戦争状態終結の宣言をすれば当然にそれと同時に抑留者を帰さなくちゃあならん。領土の問題にしても不当に占拠しているという理由はないんであるからして戦争を防止するために必要な程度に限ってそういうようなものは暫時の間このままにしといて後日解決するというような結果になって行ってだね、日ソ交渉が片付きゃしないかということをこい願っているわけだ。」鳩山総理はこう言っておられるのであります。鳩山総理が、かねてから、日ソ国交回復だけは自分の手でやりたいと考えておられることは、外務委員会などで、しばしばそれと受け取られる発言によって明瞭であります。私は、それを善意をもって信用しておりました。ほかに何もしておらない鳩山総理でありますから、さもありなんと信用いたしておりました。(拍手)しかも、自分の健康に自信がないので、早期に妥結に持っていきたいと考えられたことは当然であります。(拍手)私は、この鳩山総理の個人的な希望を率直に善意を持って信用し、かつ歓迎しておりました。  私らは、鳩山内閣が平和憲法を改悪して、再軍備、徴兵を強行しようとするきわめて危険なる内閣であることを見抜きながらも、なお日ソ交渉の開始だけは党派を越えてこれに協力し、むしろこれを激励するの態度をとったことは、御承知の通りであります。(拍手日ソ交渉の開始当初は、いまだ保守合同が成立していなかった以前でありましたからして、外務委員会は、日ソ交渉をぶちこわそうとする自由党の諸君と、日ソ交渉を早期に妥結せしめんとする社会党と、この在野の両党の論争の場となるというような奇妙な情景を呈したのであります。(拍手)この間にあって、重光外相は、常に懸案の同時解決主張し、領土問題を鳩山総理が漏らしたごとくにあと回しにしない限り、今日の行き詰まりに逢着することを、口をすくして忠告したにかかわらず、ついに、今日、事ここに至らしめたのであります。(拍手)これ、この日ソ交渉においての重光外相の大失敗が、われわれこの不信任決議案を提出する第一の理由であります。(拍手)  次に、日中問題に対する重光外務大臣の無能ぶりを糾弾しなければなりません。中国の周恩来首相は、今年の一月三十日に、中国人民政治協商会議第二期全国委員会におきまして、次のように申しております。すなわち、中国の政府は、去年の八月十七日と十一月四日と二回にわたって、日本政府に対し、両国政府関係正常化し、従来の問題について話し合いをすることを提案した、こういうことであります。私どもは、この周恩来首相の発言によって、それまですでに二回にもわたって周恩来首相から日中交渉についてわが政府に申し入れがあったという事実を、むしろ初めて知ったのであります。(拍手)しかも、二月十一日に、この三回にわたる周恩来首相の申し入れに対しまして、日本政府は何らの返事をしていないと申しております。私どもは、この間におきまして、重光外務大臣が日中の国交回復あるいは貿易の促進につきまして何らの熱意を持っていないという事実を知ったのであります。去る本会議におきまして、わが党の鈴木委員長が、重光外相は中国に対して何らの手を打っておらないということを質問いたしましたのに対しまして、重光外務大臣は、何の手を打つのかと答弁をいたしたのでございます。全く、一国の外務大臣答弁といたしまして、驚き入った答弁でございます。(拍手)多大の金額、労力を費しまして、お互いに見本市までを開設、交換をいたしておりまする業界の諸方面では、日中の貿易の回復とその促進をまことに熱望いたしております。しかるにかかわらず、重光外務大臣は、これら日本国民、日本実業家の希望すらをもその耳に入れないのであります。そうして、中国に対しまして何の手を打ってよいか、さっぱりこれがわからないのであります。(拍手)  私どもは、この中国に対する問題が非常にむずかしい問題であることは百も承知いたしております。それはすなわち、台湾政府をすでに承認しておるという事実にかかっております。しかしながら、周恩来首相は、常に注意深く、台湾政府承認という事実は何ら日中の国交回復を妨げるものでないとまでつけ加えております。しかるにかかわらず、重光外務大臣は、この間に処しまして、全く何の手を打っていいかわからないで立ちすくんでおる。わずかに、あの見本市をお互いに開催することを承認しておる程度でございまして、しかも、それのためにやって参りました中国の方々に対しまして、法律の端々を適用いたしまして、その帰国に際しまして、指紋をとるとかとらないとかいうような好ましくないところの事態を引き起したのであります。(拍手)これは、直接にはもちろん法務省の問題でありまするけれども、外務大臣たる重光氏において、大所高所からこの円満なる進行を促進することは、決して不可能なことではなかったのであります。(拍手)こういう状態におきまして、中国との関係はいつ回復し、われわれの生存に絶対必要なる中国との貿易もいつ促進されるか、いつ一体われわれの目的が達せられるか、全く五里霧中であるといわなければなりません。(拍手)  御承知のように、台湾、中国だけのことを見ましても、全くばからしい商売をしております。台湾からたくさんの砂糖を輸入いたしております。この協定値段は何と百十五ドルでございます。ニューヨークにおける世界の砂糖相場は六十九ドル四十五セントである。これは、日本のお金に換算すれば、その間に約一万円の差があるのでありまするが、キューバからでも、どこからでも、六十九ドル四十五セントで輸入できるところのこの砂糖を、わざわざ台湾から百十五ドルで輸入しておる。こういうばかな商売をしておる。(拍手)一方、輸出の方を見ましても、硫安を一例としてみましょう。硫安におきましては、台湾に輸出しておるのは幾らであるか、五十八ドルから六十ドル、一方、中国におきましては六十四ドルから五ドルで引き受けようといたしております。しかも、その安い方の台湾には三十万トンになんなんとする輸出をいたし、高く買おうとする中国の方にはわずかに見本程度のものしか出しておらない、こういうようなばかな商売がどこにありますか。(拍手)こういうことをやっておりまするならば、すなわち、高いものを探して買うてくる、安いところを探して売っていくというような商売をいたすならば、これでは日本の経済はたちまち破産でございます。(拍手)国においてこういう商売を続けますならば、これは亡国の商売でございます。(拍手)こういうことを、てんとして顧みず、これの打開策を講ずるの道を知らない。しかしながら、こういう不合理な商売のよってきたるところの原因は一にアメリカ一辺倒の外交政策に基因することは説明するまでもありません。(拍手)すなわち、中国との貿易をしようとするものは台湾との取引を禁止するというような脅迫におびえてのことであります。われわれは、この問題、すなわち、中国と日本との国交回復の問題につきまして、まことに、この決議案に申しまするごとくに、袖手傍観、なすところを知らざる重光外務大臣責任を、ここに追及せざを得ないのであります。(拍手)  次に、身近な日韓問題、韓国に対する問題はいかがでありましょうか。全くこれ袖手傍観、なすところを知らない状態。かつて、広島の原子爆弾禁止の世界大会に、世界各国からほとんどその代表者がやって参りました。政府は、最初ソ連あるいは中国の代表の入国を拒否いたしておりましたが、強い要望のもとに、ソ連あるいはポーランド、中国の代表は、ついに入国を許可するに至りました。しかしながら、とうとう北朝鮮の代表には一歩も日本に入れることを許さなかったのであります。このように、全く韓国の李承晩のごきげんを損ずることをおそれ、はれものにさわるがごとくに、何らの手を打つことがない。重光外相は、ただ李承晩のごきげんを買うことによって、この韓国問題の解決の糸口を見つけようとのみいたしておるのであります。(拍手)これは外交ではございません。われわれは、韓国に対しましても、決して戦力を用いてなどということは考えておりません。主張いたしておりません。しかしながら、朝鮮海峡におきまするところの不当なるあの李承晩ライン問題につきまして、われわれは、その解決の一日も早からんことをこいねがい、これの促進に外務大臣は決起することを要求してやまないのであります。(拍手)いたずらに李承晩のごきげんを損ずることにのみおそれおののいて、具体的な交渉開始の手段というものを持たない。われわれは、これに対しまして、よろしく世界の世論を喚起し、不当なる李承晩ラインに対しまして、世界的な正義の声によりまして李承晩の反省を促し、そこに解決の糸口を求めんとするものであります。(拍手)今や、かくのごとくいたしまして、韓国問題は全くその打開の希望を失った状態にありまして、これまた外務大臣の重大なる責任と申さなければなりません。(拍手)  さて、重光外務大臣は、アメリカに対するところのアメリカ一辺倒の態度のみは一貫しておるのであります。かつて、衆議院におきましても、参議院におきましても、原水爆の実験禁止の決議をいたしました。衆議院の決議は、もちろん、英、米、ソ連に対し、その国際協定の成立するように、こういう要望を伝達するというところの決議でありました。しかしながら、参議院の決議は、ころっと趣きを異にいたしまして、その協定ができるまでは政府において原水爆実験禁止に要する手段をとるべきであるという趣旨であったのであります。しかるに、重光外務大臣は、この国会における決議を何ら顧慮するところなく、実行するところがなかったのであります。(拍手)ただ、衆議院においてかくのごとき決議があった、参議院においてかくのごとき決議があったということを伝達するにとどまったのであります。一つのメッセンジャー・ボーイにすぎなかったのであります。(拍手)この原水爆実験禁止の問題は、われわれの眼前に迫っておる緊急な問題であり、重光外務大臣は、ことに国会の決議もあることでありまするがゆえに、全力をあげて、この決議の実行、すなわち、原水爆実験禁止のために奮闘いたさなければならぬ責務があるといわなければなりません。(拍手)しかるに、単なるメッセンジャー・ボーイに終りまして、この国会の決議を無視いたした結果に相なることは、これまた許すべからざることでございます。(拍手)  かくのごときアメリカ追随主義の根本方策は、あらゆる方面にその露頭を呈示いたしまして、あの防衛分担金の取りきめのごとき、長きにわたるところの日本の不利益を固定してしまいました。すなわち、元来アメリカの駐留軍の費用はみずからこれをまかなうべきであり、われわれがこれを分担しなければならぬ理由は少しもないのでございます。(拍手)しかるに、いかにも、われわれ国民要望によるからして、これを共同事業であるからして両々半分ずつ分担すべしというがごとき、全く卑屈なるところの態度により、この重大問題を永久化したのであります。(拍手)  しかのみならず、去年の八月、重光外務大臣がアメリカに渡りましてダレスとの会談を行いました際には、共同声明を発しまして、ついに、あの、わが国の海外派兵を約束するがごときことまでも取りきめて参ったのであります。(拍手重光外務大臣は、この海外派兵のことにつきましては、力を込めて否認をいたしておるのでありますが、その正文には、かくのごとくに出ております。日本はできるだけすみやかに自国の防衛のための第一次的責任をとり、かつて西太平洋における国際の平和と安全の維持に寄与することができるような諸条件を確立するため、実行可能なときは何どきでも協力できる基礎に立って協力すべき、努力すべきことが合意されたと、このコミュニケは言っているのであります。これがアメリカの官辺筋から発表いたされまして、その真意が、日本も、西太平洋地域における安全のためには海外派兵も辞さないものであり、その責任を同意したものであると発表せられまするや、重光外務大臣は、周章ろうばいいたしまして、あたかも、このことが海外派兵を意味しないものであるかのごとくに否認をいたしました。(拍手)しかしながら、アメリカの官辺筋の言うところのこの発表は、従来の慣例より見まして、相当有力なるアメリカの官辺からの発表であることは確かであります。(拍手)このことは、そのまま日本の通信によりまして、われわれの耳にも達したのでありますが、今重光外務大臣が口を強めてこれを否認しようとしても、この事実は決して消えないのであります。(拍手)すなわち、この海外派兵までをも約束するがごとき重大なることを、この議会の同意をも得ずして、われわれの上に、責任をかぶせてきたということは、まことに許すべからざるものであります。(拍手)  かくのごとくいたしまして、重光外務大臣は、日ソ交渉の失敗に重ねまして、日中国交回復についても何らなすところなく、また、韓国との懸案の解決にも何らの施すところがなく、また、原水爆の実験禁止の問題につきましても、国会の決議を無視するに至りまして、われわれの国政、ことに、その重大なる外交問題を負担せしめるところの国務大臣として、全くその資格のないことをここに表明いたしました。フィリピンとの賠償問題における、また、軽率なるこれののみ込みなどに至っては、言語道断であります。(拍手)  以上、数々の理由によりまして、私は、ここに、重光外務大臣がその任にあらざることを指摘し、その不信任決議案を提出いたしたものであります。よろしく諸君の御賛成をお願いいたします。(拍手
  67. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより討論に入ります。竹山祐太郎君。[竹山祐太郎君登壇
  68. 竹山祐太郎

    ○竹山祐太郎君 私は、自由民主党を代表して、ただいま提案の重光外務大臣不信任案に反対をいたすものであります。(拍手)ただいま長々と提案理由をよく伺いましたけれども、どこに不信任の理由があるのか、(発言する者多く、議場騒然、拍手)いかに考えても、一体、一年も前の古い外交問題を総ざらいに並べたからといって、どうして不信任の理由になりますか。(拍手)今の演説は、要するに、外交問題総ざらいであります。世間がいうように、社会党は選挙法反対のために不信任案を出したというならば、いさぎよくそうだとおっしゃればいい。(発言する者多く、議場騒然、拍手)そうでないならば、私は最も好意的に考えて、日ソ交渉の問題について不信任案を出されたというならば、先ほどの本会議において、すでに、鳩山内閣総理大臣重光外務大臣報告及び質疑応答を通じて、事態はきわめて明白であります。(発言する者多し、拍手)これに私は何らつけ加える必要は感じませんが、しいて言うならば、総理大臣も打ち切るとは言ってない。漁業問題も、同胞帰還の問題も、今後努力をすると言っておるのでありますから、国民の御心配は御無用であります。(拍手)今さら、私は、社会党の不明確な一々の理由について弁駁するほどの勇気もありません。われわれは、ここに、重光外務大臣の不信任案に断固として反対をいたすものであります。(拍手
  69. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 松本七郎君。     〔松本七郎君登壇
  70. 松本七郎

    ○松本七郎君 私はただいま議題になっております重光外務大臣不信任案に対し、全面的に賛成の意を述べんとするものでございます。(拍手)ただいま、竹山議員から、反対の理由として、どこに理由があるかわからないというお言葉がございましたが、重光外務大臣の失政は、皆さん方にはわからないほど、それほどたくさんあるのであります。(拍手)今、竹山さんは、総理大臣外務大臣がこれから努力をするからいいではないかと言われましたけれども、その努力の仕方、方法に実は問題があるのでございます。(拍手)今回の日ソ交渉がこのような暗礁に乗り上げ、まあ、これは、いわば事実上は決裂に近い状態に陥ったにつきましては、結局、これは、重光外務大臣の基本的な外交政策にその責任があると思うのでございます。(拍手鳩山総理大臣は、この日ソ交渉国交回復の必要なるゆえんをしばしば述べられまして、それは、両国の戦争状態を早く終結することが世界の平和のためであり、アジアの平和、日本の利益である、こういう立場に立ってこれを公約されたことは、御承知の通りでございます。そのことが、実は長年政権を担当しておった吉田内閣にかわることができた大きな原因であると私は思うのでございます。(拍手)しかしながら、その鳩山さんの気持を受けて具体的にこの問題を解決しなければならない責任を負っておるところの重光外務大臣の外交政策は、昔通りの権力外交から一歩も出ておらないのでございます。(拍手)しかも、重光外務大臣は、しきりに、日本はそんな力はないんだということを言われる。皆さんもそう言われるでしょう。ところが、その無力な日本の外交を、どこか知らぬ、よその国のトラの威力をかりてやっておるところに、今日の日本の悲劇があるのでございます。(拍手重光外務大臣は、私どもと委員会でいろいろ質疑応答をかわしておるときに、いつも、主張すべきことはどこまでも主張すると、こう言われる。もちろん、理屈に合った正しい主張主張されることに、われわれは異論を唱えるものではない。理屈に合った正しい主張を貫徹するのに、ある程度時日を要する、これも私どもはあえて非難しようとは思わないのでございます。ただ、問題は、国際的な世論に合った、また、国際的な道理にかなった主張でなければなりません。(拍手)今までやられておるこの政府の説明を見ましても、ここに問題を列挙すればたくさんございまするが、私は、時間がございませんから、数点だけ皆さん方に御披露したい。まず、いつも問題になる、わが党が領土の問題のことを持ち出せば、皆さん方はすぐ騒ぎ立てますが、しばらく、いかなるゆえんでこのような主張をなさなければならないかということを聞いていただきたい。御承知のように、千島の問題については、衆参両院の外務委員会で、ずいぶん長い間論議をかわされてきております。ところが、以前の草葉政務次官、あるいは以前の西村条約局長などの答弁は、御承知のように、サンフランシスコ条約においては、歯舞色丹千島に入っておらないけれども、その他は全部千島に含まれて、放棄しておるという立場をとっておるのでございます。この点については、外務委員会でも、わが党の森島委員から、非常に綿密な、突っ込んだ質問がなされておりますが、それを一々ここでは申しません。ただ、一歩譲って、今日の下田条約局長の答弁を見ますると、サンフランシスコ条約でも結局これはきまらなかったのだと言っておるのであります。国際的に、連合国は、この千島の問題についてはっきりした決定はすることができなかった、その責任は連合国にあるのでございますと、こういう答弁をいたしておるのでございます。(拍手)こういうことになりますと、たとえば、この領土はおれの領土だという主張をソビエトにします。もちろん、その主張として、一時これは向うの意向を打診する程度なら差しつかえないでしょう。しかし、国際的に連合国の間での最終決定もなされておらない問題を、最後まで固執して、その連合国の一員でしかないソビエトとの間の国交回復の条件としてがんばるということは、これはどうしても理屈に合わないところなのでございます。(拍手)かりに、ソ連が譲歩いたしまして、この領土の問題が日本ソ連との間では解決したといたしましても、連合国の間ではまだ最終的な決定はなされておらないという結果になるではございませんか。(拍手)そういうことをソビエトの方がおいそれと承諾できないことは、これは当然といわなければなりません。今までアメリカやイギリスがこの日本の皆さん方の主張を支持した証拠があるならば、一つ見せてもらいたい。(拍手)そういうふうな道理に合わないことを種にして、この日ソ交渉をあくまでもまとめないようにしようとしておる魂胆が明らかになって参ったのでございます。(拍手)私は、こういう外務大臣考え方を——ずっと今まで長い間の討論の過程を振り返ってみますると、主観的には外務大臣はどういう気持であっても、結果においてはこれは——外交であると断ぜざるを得ない。(拍手)そういう外務大臣に聞きましたら、先ほど申しますように、日本はゆするだけの力がない、こう言われる。(発言する者あり)ところが、重光外務大臣は、かねがね自主独立外交ということを標榜されながら、実際には自主性も何もないような外交政策を今までやってきておるではありませんか。  先般、私どもは、この外務大臣考え方として一番大事な点、つまり、御承知のように、今アメリカは依然として力によって自分の主張を押していこうという力外交を押し進めておる。本年の年頭一般教書におきまして、米国のアイゼンハワー大統領は、この平和を維持するためには、あくまでも原子爆弾、水素爆弾が必要であるという立場を明らかにしておるのでございます。この考え方を、一体、日本政府は支持するのかしないのか、こういうことについて答弁を求めましたところが、驚くなかれ、外国の政府首脳の言うことについて批評がましいことはできませんというのが、今日の外務当局の態度なのであります心(拍手)これで、一体、諸君は、自主独立外交ということが言えますか。こういう態度をとっておられるからこそ、重光外務大臣は、昨年の八月にアメリカに渡った際に、日本をリスにたとえまして、このかわいらしいリスのように、どうぞ日本をかわいがってくれと言ったではございませんか。(拍手重光外務大臣、あなた自身はあるいはリスかもしれないけれども、日本国民は断じてリスではないということを肝に銘じておくべきだと思います。  また、今回ダレス国務長官が日本に参りましたときに、二時間半にわたって反共演説を拝聴しておるに至りましては、自主独立外交いずくに消え去りたりやといわざるを得ないのでございます。(拍手)このようなことは、あくまでも日本の独自の判断できめるべきである。外務大臣が、わざわざよその国に出かけて、そこで、ソ連がどうの、中国がどうの、だからお前たちは反共の世論をもっと盛んにせいなどというおせっかいを、一言でも反駁したことがありますか。(拍手)今までロンドンで長い間交渉されました松本全権は何と言っておるか。この国交正常化は、日本の自主外交の第一歩である、さらに、アジアの孤児である日本がそれから脱する唯一の道であると喝破しておるではございませんか。  このように、日ソ交渉が成立して国交回復することは、大きくいえば、平和のために、また、いろいろの諸懸案を結局早く解決する一番賢明な道であるということは、識者が全部これを承認しているところでございます。昨年の七月に、参議院の外務委員会におきまして、わが党の羽生議員がこのことについで質問いたしましたときに、鳩山総理大臣は、どうしてもこの日ソ国交回復の念願は成立させます、こういうことを言って、そこで涙を流したのでございます。そのときに、重光外務大臣、あなたは鳩山総理の肩に手を当てて、そして、劇的な場面を展開したほどであったではございませんか。このときに、岸幹事長は、いや、あれは涙ではない、暑かったから汗をかいたのだなどと、あとで言いわけをしておりましたけれども、とにかく、非常に感きわまって、この成立に首相は熱を入れておられたことは、間違いないのでございます。昨今の総理大臣は、あしたに、タベに、百八十度の転換をたびたびやられるような状態でございますから、これまたあまり当てにはならないかもわかりませんけれども、少くとも、私は、今日までの外務大臣の実績にかんがみますならば、この際外務大臣を更迭させることこそ、この日ソ交渉を成功させる早道であると思うのでございます。(拍手)  昨日の朝日新聞によりますと、ロンドンの森特派員の報道といたしまして、相当重光外務大臣の外交政策に批判を加えております。これまで、皆さんも朝日新聞の論調をごらんになればわかりますが、非常に重光外交に対しては好意的であった。これを、むしろ支持してきておりました。それが、今回このような批判を朝日新聞が載せたというところに、大きな意義を私どもは感じるのでございます。(拍手)その内容は、もう一々御紹介いたしません。結論だけを申しますると、この新聞の論評はこういうことを言っております。結局これは内政が外交を牽制した結果であると、こういうことを言っておるのでございます。(拍手)  自由民主党の中には、今日のこの外交政策をまことに適評した言葉が書かれておる、これは自由民主党の議員の言われておることでございますが、現在、自由民主党には外務大臣がたくさんおる、外務大臣心得ばかりじゃなしに、心持まであるということを言われておるのでございます。(拍手)このような多元外交をすみやかに脱却して、すみやかに、自由民主党も、一人でけっこうですから、ほんとうの外務大臣を立てるべきであると思います。(拍手)  そういう意味で、私は、一刻も早く重光さんの退陣を要求する意味において、この不信任案に全面的に賛成をする次第でございます。(拍手
  71. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの松本君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。  これにて討論は終局いたしました。  本案につき採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕   [各員投票〕
  72. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  73. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕 投票総数 三百八十八   可とする者(白票)  百三十九     〔拍手〕   否とする者(青票)  二百四十九     〔拍手
  74. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 右の結果、重光外務大臣不信任決議案は否決されました。(拍手)     —————————————  淺沼稻次郎君外五名提出重光外務大臣不信任決議案を可とする議員の氏名    阿部 五郎君  青野 武一君    赤路 友藏君  赤松  勇君   茜ケ久保重光君  淺沼稻次郎君    飛鳥田一雄君  有馬 輝武君    井岡 大治君  井谷 正吉君    井手 以誠君  井上 良二君    井堀 繁雄君  伊瀬幸太郎君    伊藤卯四郎君  伊藤 好道君    猪俣 浩三君  池田 禎治君    石田 宥全君  石橋 政嗣君    石村 英雄君  稲富 稜人君    稻村 隆一君  今澄  勇君    今村  等君  受田 新吉君    小川 豊明君  大西 正道君    大矢 省三君  岡本 隆一君    加賀 田進君  風見  章君    春日 一幸君  片島  港君    片山  哲君  勝間田清一君    上林與市郎君  神近 市子君    神田 大作君  川俣 清音君    川村 継義君  河野  正君    木下  哲君  木原津與志君    菊地養之輔君  北山 愛郎君    久保田鶴松君  栗原 俊夫君    小平  忠君  小牧 次生君    五島 虎雄君  佐々木更三君    佐々木良作君  佐竹 新市君    佐竹 晴記君  佐藤觀次郎君    坂本 泰良君  櫻井 奎夫君    志村 茂治君  島上善五郎君    下平 正一君  杉山元治郎君    鈴木茂三郎君  鈴木 義男君    田中幾三郎君  田中織之進君    田中 武夫君  田中 稔男君    田万 廣文君  多賀谷真稔君    高津 正道君  滝井 義高君    竹谷源太郎君  辻原 弘市君    戸叶 里子君  堂森 芳夫君    中井徳次郎君  中居英太郎君    中崎  敏君  中島  巖君    中村 高一君  中村 時雄君    永井勝次郎君  成田 知巳君    西尾 末廣君  西村 榮一君    西村 彰一君  西村 力弥君    野原  覺君  芳賀  貢君    長谷川 保君  原   茂君    原   彪君  日野 吉夫君    平岡忠次郎君  平田 ヒデ君    福田 昌子君  古屋 貞雄君    帆足  計君  穗積 七郎君    細迫 兼光君  細田 綱吉君    前田榮之助君  正木  清君    松井 政吉君  松尾トシ子君    松岡 駒吉君  松平 忠久君    松原喜之次君  松前 重義君    松本 七郎君  三鍋 義三君    三宅 正一君  三輪 壽壯君    門司  亮君  森 三樹二君    森島 守人君  森本  靖君    八百板 正君  八木 一男君    八木  昇君  矢尾喜三郎君    安平 鹿一君  柳田 秀一君    山口シヅエ君  山口丈太郎君    山崎 始男君  山下 榮二君    山田 長司君  山花 秀雄君    山本 幸一君  横錢 重吉君    横山 利秋君  吉田 賢一君    渡辺 惣蔵君  岡田 春夫君    川上 貫一君  小山  亮君    中原 健次君 否とする議員の氏名    阿左美廣治君  相川 勝六君    逢澤  寛君  愛知 揆一君    青木  正君  赤城 宗徳君    秋田 大助君  淺香 忠雄君    荒舩清十郎君  有田 喜一君    有馬 英治君  安藤  覺君    五十嵐吉藏君  井出一太郎君    伊東 岩男君  伊東 隆治君    伊藤 郷一君  生田 宏一君    池田 清志君  池田 勇人君    池田正之輔君  石井光次郎君    石坂  繁君  一萬田尚登君    稻葉  修君  犬養  健君    今井  耕君  今松 治郎君    宇田 耕一君  宇都宮徳馬君    植木庚子郎君  植村 武一君    臼井 莊一君  内田 常雄君    内海 安吉君  江崎 真澄君    遠藤 三郎君  小笠 公韶君   小笠原三九郎君  小川 半次君    小澤佐重喜君  大麻 唯男君    大石 武一君 大久保留次郎君    大倉 三郎君  大島 秀一君    大高  康君  大坪 保雄君    大野 市郎君  大野 伴睦君    大橋 忠一君  大平 正芳君    大村 清一君  大森 玉木君    太田 正孝君  岡崎 英城君    荻野 豊平君  加藤 精三君    加藤 高藏君  加藤常太郎君    加藤鐐五郎君  鹿野 彦吉君    上林山榮吉君  神田  博君    亀山 孝一君  唐澤 俊樹君    川崎末五郎君  川崎 秀二君    川島正次郎君  川野 芳滿君    川村善八郎君  菅  太郎君    菅野和太郎君  木崎 茂男君    木村 俊夫君  木村 文男君    菊池 義郎君  岸  信介君    北 れい吉君  北澤 直吉君    北村徳太郎君  吉川 久衛君    清瀬 一郎君  久野 忠治君    草野一郎平君  楠美 省吾君    熊谷 憲一君  倉石 忠雄君    黒金 泰美君  小泉 純也君    小枝 一雄君  小島 徹三君    小平 久雄君  小林  郁君    小林かなえ君  小山 長規君    河野 一郎君  河野 金昇君    河本 敏夫君  高村 坂彦君    纐纈 彌三君  佐々木秀世君    齋藤 憲三君  坂田 道太君    櫻内 義雄君  笹本 一雄君    笹山茂太郎君  椎熊 三郎君    椎名悦三郎君  重政 誠之君    篠田 弘作君  白浜 仁吉君    周東 英雄君  杉浦 武雄君    助川 良平君  鈴木周次郎君    鈴木 善幸君  鈴木 直人君    薄田 美朝君  世耕 弘一君    關谷 勝利君  園田  直君    田口長治郎君  田子 一民君    田中伊三次君  田中 角榮君    田中 龍夫君  田中 久雄君    田中 正巳君  田村  元君    高岡 大輔君  高木 松吉君    高碕達之助君  高瀬  傳君    高橋  等君  高見 三郎君    竹内 俊吉君  竹尾  弌君    竹山祐太郎君  千葉 三郎君    中馬 辰猪君  塚田十一郎君    塚原 俊郎君  辻  政信君    綱島 正興君  渡海元三郎君    徳田與吉郎君  徳安 實藏君    床次 徳二君  内藤 友明君    中垣 國男君  中嶋 太郎君    中曽根康弘君  中村 梅吉君    中村三之丞君  中村 寅太君    中村庸一郎君  中山 榮一君    中山 マサ君  仲川房次郎君    永田 亮一君  永山 忠則君    長井  源君  南條 徳男君    二階堂 進君  丹羽 兵助君    西村 直己君  根本龍太郎君    野澤 清人君  野田 卯一君    野田 武夫君  野依 秀市君    馬場 元治君 橋本登美三郎君    長谷川四郎君  畠山 鶴吉君    八田 貞義君  花村 四郎君    濱地 文平君  濱野 清吾君    早川  崇君  林  讓治君    林  唯義君  林   博君    原 健三郎君  原  捨思君    平塚常次郎君  平野 三郎君    廣瀬 正雄君  福井 順一君    福井 盛太君  福田 赳夫君    福田 篤泰君  福永 健司君    藤枝 泉介君  藤本 捨助君    船田  中君  古井 喜實君    古川 丈吉君  古島 義英君    保利  茂君  保科善四郎君    坊  秀男君  星島 二郎君    堀内 一雄君  本名  武君    眞崎 勝次君  眞鍋 儀十君    前尾繁三郎君  前田房之助君    前田 正男君  町村 金五君    松浦周太郎君  松岡 松平君    松澤 雄藏君  松永  東君    松野 頼三君  松本 瀧藏君    松山 義雄君  三木 武夫君    三田村武夫君  水田三喜男君    南  好雄君  宮澤 胤勇君    村上  勇君  村松 久義君    粟山  博君  森   清君    森下 國雄君  森山 欽司君   山口喜久一郎君  山口 好一君    山崎  巖君  山下 春江君    山手 滿男君  山中 貞則君    山村新治郎君  山本 勝市君    山本 粂吉君  山本 正一君    山本 利壽君  山本 友一君    横井 太郎君  横川 重次君    吉田 重延君  米田 吉盛君  早稻田柳右エ門君  渡邊 良夫君    亘  四郎君      ————◇—————
  75. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) この際暫時休憩いたします。     午後十時三十六分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕