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1956-03-20 第24回国会 衆議院 本会議 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十日(火曜日)     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十二号   昭和三十一年三月二十日     午後一時開議  第一 租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二 賠償等特殊債務処理特別会計法案内閣提出)  第三 日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 積雪寒冷特別地域における道路交通確保に関する特別措置法案小坂善太郎君外六名提出)  第六 学校給食法の一部を改正する法律案内閣提出)  第七 日本国とカンボディアとの間の友好条約の批准について承認を求めるの件  第八 訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第九   昭和二十八年度一般会計歳入歳出決算      昭和二十八年度特別会計歳入歳出決算      昭和二十八年度政府関係機関決算報告書     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  パキスタン国カラチにおいて挙行されるパキスタン回教共和国宣言及び大統領就任式典に参列するための特派大使任命につき外務公務員法第八条第三項の規定により議決を求めるの件  衆議院解散要求に関する決議案淺沼稻次郎君外五名提出)  太田国務大臣不信任決議案淺沼稻次郎君外五名提出)     午後七時五十七分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。     ━━━━━━━━━━━━━
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。内閣から、パキスタン国カラチにおいて挙行されるパキスタン回教共和国宣言及び大統領就任式典に参列するための特派大使に本院議員小金義照君を任命するため、外務公務員法第八条第三項の規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よってその通り決しました。      ————◇—————
  5. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、淺沼稻次郎君外五名提出衆議院解散要求に関する決議案提出者要求通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認りめます。よって、日程は追加せられました。  淺沼稻次郎君外五名提出衆議院解散要求に関する決議案を議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。三宅正一君。     〔三宅正一君登壇〕
  8. 三宅正一

    三宅正一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、衆議院解散要求に関する決議案趣旨弁明をいたしたいと思います。(拍手)  まず、決議案文を朗読いたします。   衆議院解散要求に関する決議案     主文  衆議院を速かに解散すべし。  右決議する。     理由  一、政府は、小選挙区制を中心とする公職選挙法の一部改正案を先の総選挙において何らの公約を行わず、今国会に一方的に提出した。同法案のごときわが国民主政治の将来に重大な影響を及ぼし、国会構成の基盤に一大変革を加えんとする重大法案は、主権者たる国民の総意に問うべきである。  一、第三次鳩山内閣は、反対党として対決せる民主党及び自由党の合同した自由民主党を基盤とする内閣であって純然たる政権のたらい廻しによって成立した内閣である。    政権の移動は総選挙を通じて行うべきであり、政府は直に衆議院を解散して民意に問うべきである。    右が本決議案を提出する理由である。  鳩山首相並びに政府首脳幹部各位は、折に触れて、二大政党対立による議会政治の確立を主張しておりますが、果して二大政党による議会政治の根本義を理解しているかどうか、はなはだ疑いなきを得ないのであります。(拍手)昨年、われわれ社会党の統一に続いて保守合同による自由民主党が成立したことは、久しく小党分立の形にあったわが国議会政治の一歩前進として、心から喜ぶものであります。しかしながら、これは単に二大政党対立の形式が整えられたにすぎないのであって、二大政党対立による議会政治運用の真価は、これを今後の実績に徴するのほかないといわざるを得ないのであります。(拍手)しかるに、前二十三臨時国会並びに今二十四国会を通じて政府並びに与党の動きを見るに、われら国民とともに多大の危惧なきを得ないのであります。(拍手)  そもそも、議会政治運営基本原則多数決原理にあることは言うまでもないが、この多数決原理は、少数意見を圧殺し、国民世論を無視して強行さるべきではもちろんなく、少数意見の尊重と国民世論への考慮の上に行われて、初めてその意義を発揮するものであります。(拍手)かかる考慮を経ずして行われる多数決民主政治に名をかる多数の独裁にほかならないのであります。(拍手)かかる点において、鳩山首相初め政府与党幹部の認識はきわめて憂慮にたえないものがあるのであって、私は、この点、かかる前提の上に、次に国会を解散すべき理由を逐次申し述べたいと考えるのであります。(拍手)  まず、国会解散を要求する理由の第一は、第一次鳩山内閣の成立をもたらしました昨年の総選挙において、国民の比較的多数は、当時鳩山氏の率いる民主党を支持して、議席百八十五を与えて第一党といたしたのでありますが、当時国民が鳩山氏の民主党を支持した理由は、その後鳩山内閣の政策の変化によって、全くその根拠を失っておるのであります。(拍手)当時、鳩山民主党が国民に約束し、国民もまた大きな期待をつないだものは、外交上の問題としては、日ソ交渉の促進、日中国交の回復と、国内問題としては、防衛費の切り下げによる住宅その他民生問題の解決であったのであります。(拍手)しかるに、日ソ交渉は、後に述べるごとく、鳩山構想はその後大きく歪曲せられ、しかも、その妥結の見通しは、その後一年有余の今日何らこれを得ざる状態であって、むなしく決裂して、松本全権を引き揚げさすという致命的な失敗を見んといたしつつあるのであります。(拍手)全国民は、政府の外交方針が首尾一貫せず、しかも、二重外交、三重外交の矛盾をあえてしておるのに、はなはだしく憤激をいたしておるのであります。さらに、国内政策に至っては、防衛費の削減どころか、逆にこれを増加し、その他不生産的支出の増額と相待って、民生費は逆に圧縮を余儀なくされるという現実に直面して、さきに鳩山氏の民主党を支持した一部の国民は完全に裏切られたものでありまして、かくて、鳩山内閣は、パンを求めた国民に石を与えたものといわざるを得ないのであります。(拍手)今日においては、鳩山内閣は、国民の比較的多数が鳩山内閣を支持すると主張する何らの理由をも有しないのであります。ここに鳩山内閣があらためて国民の信任を問う理由が存在すると存ずるのであります。(拍手)  国会解散を要求する理由の第三は、当時、鳩山氏の民主党憲法改正、再軍備促進についてはほとんど触れるところがなかったのであります。しかるに、一たび政権の維持に成功するや、総選挙当時の公約はむしろ軽視せられ、国民に対してさらに訴えることのなかった憲法改正、再軍備促進に血道を上げるに至ったことは、これまた民主党内閣の国民に対する大きな裏切りといわなければならないのであります。(拍手)当時、鳩山氏ら民主党幹部諸君は、大衆に比較的不人気な憲法改正や再軍備促進はこれを国民に訴えることなく、ひたすら、鳩山首相の唱道する友愛革命日ソ交渉の仮面に隠れて、その反動的意図を巧みにカムフラージュして、国民を欺瞞し去ったのであります。しかるに、選挙において比較第一党の票を獲得するや、憲法改正、再軍備促進の意図を露骨にし、さらに自由党との合同によって、いよいよ公然とこれを強行せんとしておることは、国民を愚弄するの最もはなはだしいものといわざるを得ません。(拍手)もし鳩山内閣があくまで憲法改正、再軍備促進を強行せんとするならば、あらためてここに国会を解散し、公正なる世論の審判に訴えることが、議会政治確立を念とする者の当然の責務といわざるを得ないのであります。(拍手)  国会解散を要求する理由の第三は、保守合同による自民党の成立が国民の意思を無視して行われたという事実であります。前回の総選挙において、自由党民主党とは、同じ保守政党でありながら、ともに天をいただかざる犬猿の間柄をもって国民に臨んだのであります。(拍手)その政策においても、たとえば日ソ交渉のごとく、相当相反した政策をもって臨んでおるのであります。しかるに、総選挙の結果、民主党の議席が過半数にはるかに及ばず、政権の担当が困難視されるに及んで、にわかに保守合同を唱え、政策は二の次の野合をあえてしたことは、われらの最も不可解とするところであります。(拍手)このために鳩山内閣の性格は大きくゆがめられ、日ソ交渉のごときも、旧自由党内の強硬意見に左右されて、鳩山首相が初めに唱えた早期妥結は雲散かつ霧消し、日ソ交渉停滞最大原因となっておることはおおうべからざる事実であります。(拍手)  かれこれ考えるとき、鳩山内閣の性格は保守合同を前後して大きく変っておるのである。本来、政権の移動は総選挙によって、主権者たる国民の審判を経て行わるべきものであって、選挙において反対党として相争った政党の合同、現実に野党、与党の対立関係にあった政党の合同により、党の性格も政策も選挙の際と根本的に変ったのに、そのまま第三次鳩山内閣として政権のたらい回しをはかるがごときは憲政運用ルールをじゅうりんする行為といわなければならぬのであります。(拍手)鳩山首相は、政権たらい回しの批判にこたえて、政権の基調は変らないと強弁しておるが、これは一片の空語にすぎないのであります。国会の解散は今からでもおそくはない。政権移動ルールを守るためにも、国会解散の勇断に出られたいのであります。(拍手)  以上は、今日まで鳩山内閣が国会を解散して国民の審判を受くべきであった事由の説明でありますが、当面の解散要求の理由は、今回政府が提案した選挙法改正の重要性に基くものであります。選挙が議会政治のよってもって立つ重要な基盤であることは言うまでもないのであります。従って、選挙法の改正は、この重要な基盤に変革を加えんとするものであって、現に選出されておる国会議員の都合だけで勝手にこれを左右することは厳に慎しまなければならぬところであって、(拍手)謙虚に世論の動向に聞き、国民多数の承認の上に行わるべきものであると思うのであります。いわんや、国会内部において、相手の政党の意向を無視し、多数派のみで押し切らんとするがごときは、最も戒むべきところであるのであります。(拍手)私は、政府がこの峻厳なる世論にすなおに追従して、この際いさぎよく本案を撤回されることを警告するものでありますが、もし不可能ならば、小選挙区制の可否を、特に世界選挙制度史上最悪党略案たる政府案の可否を、総選挙によって国民の審判を経て後、国会に諮るべきものであろうと信ずるのであります。(拍手)  権威ある東京の有力紙が、その社説において、「選挙区制の改変は、政党にとってだけ重大なのではない。同時に有権者にとっても重大な関心事だということを忘れてはならない。前回の総選挙では、保守政党憲法改正は口にしたが、小選挙区制を公約したものは恐らくなかったろう。国民が、まだ小選挙区制がよいか悪いか、深い考えも持つ暇もない間に、しかも党略の露骨な案を出し抜けに提案するなど、この点からいっても、時期を得た提案とは決していえない。」「いったい、自民党は絶対多数党ではあるが、まだ自民党として総選挙の審判を受けていない政党である。鳩山内閣も、その意味で暫定政権の性格を持っている。それで鳩山内閣としては、「早期に国民に信を問うべきが政党政治の常道なのである。自党に有利なように小選挙区制を作って、然る後に総選挙をやって多数を占めようなどというには、その資格を欠く内閣であり、それでは余りにも虫がよすぎる。二大政党の門出に、身勝手な区割り案を作るなどはこの内閣としても、自民党としても、国民をはばからないせんえつな話といわざるを得ない。吉田前内閣は、指揮権発動などの暴挙をあえてして、国民の非難をかったが、自民党の見えすいた今度の行動は、事柄の相違こそあれ、見ようによっては、それ以上の横暴ぶりと称してよい。」と痛撃いたしておるのであります。(拍手)この批判を天の声と聞いて、撤回か解散か、その一つを選ぶべきが鳩山内閣自民党のこの際とるべき方策であることを忠告申し上げたいのであります。(拍手)  政府は、昨年五月以来、選挙制度改革のために、内閣に選挙制度調査会を設置し、十カ月にわたって熱心にこれを審議させながら、その答申を全然無視して、露骨な党利党略案政府案として提出した責任をいかに考えておるか、私は承わりたいのであります。ハトマンダーといわれる党略案を合理化するための隠れみのに調査会を使ったのだとすれば、その心事の陋劣なる、政治的にはもとより、道義的にもこれを許すことはできません。これは、単に選挙制度調査会委員諸君を愚弄するのみならず、国民を愚弄するものであって、断じて許すことはできないのであります。(拍手)  最も熱心に学者委員として起草に努力された選挙制度調査会起草小委員長矢部貞治博士が、完全に利用され完全に黙殺されたドン・キホーテ的役割を自嘲しつつ、某有力紙に発表された感想を読んで、良心を持たざるマキアヴェリストに対し、国民はしんから怒りを感じておるのであります。(拍手)矢部氏は言われる。「与党と政府との間で調整された案は、調査会案を党略で勝手にゆがめたというよりも、むしろそれを「黙殺」して、全然別個に作られた案というに近いもののようである。その二十にのぼる二人区などは、社会党有力候補がいて、一人区では与党に望みがないとか、または与党内の候補の地盤がかち合って、どうにも調整がつかないとかいう理由で設けられ、さらに一人区でも、党内特定候補のために作られたゲリマンダリングの疑いが濃厚である。与党幹部が、党略の入らぬ区割りはないとか、これで落選する与党候補は、よほどかい性がないとかいっているというのは、それを裏書きしている。」「それのみならず、調査会でもっとも熱心に討議されたのは、連座制徹底化、取締りの公正化政治資金規正の強化、公営の拡充などをふくむ選挙の公正確保に関する事項で、これらは要綱ではあるが答申にもふくまれており、これらの点では社会党の委員も大体一致したことである。」「これらの事項が骨抜きにされ、または黙殺されているようである。これもはなはだ不愉快だ。「社会党が怒るのも当然である。」(拍手)「我々としても、かくの如く無視され、都合のよい部分だけを党略に利用されただけでは、すこぶる憤まんにたえない。これでは区割り作業の過程で政治的圧力があったら、あくまで抗争しようと考えた私の決意など、あまっちょろいヘロイズムであったのだ。」と嘆いておるのであります。(拍手)  友愛精神を説く鳩山さん、罪なことをして恥かしくありませんか。三木さん、甲らを経た大ダヌキでも、こんな罪な化かし方はいたしませんよ。天を恐れたまえ、民を恐れたまえと、私は警告いたしたいのであります。  矢部博士が痛憤されたごとく、連座制の強化、公営の拡充、資金規正強化等、小選挙区制の弱点を補う選挙の公正確保の事項が骨抜きにされたのみでなく、選挙の自由が奪われている点も糾弾されねばならない点でありまして、いわゆる所論の公正を期するために、また有力紙の社説をかりて、この点をも指摘、糾弾しておきたいのであります。  選挙はできるだけ自由であることが理想であるはずであるのに、小政党や無所属候補選挙運動を著しく制限しておる一方、民衆にとってようやくなじみ深くなってきた公営立会演説会を廃止し、その上、選挙に熱心な青年団婦人会などが主催する立会演説会まで禁止するなど、およそ選挙の自由とは逆行する点が少くないのであります。(拍手)、そのくせ、選挙に際して最も警戒せねばならぬ買収や供応などには関心が薄く、連座制の強化も公民権停止の強化もすべて現行通りとして、何らの措置も考えていない。五十名以下の政党は認めないというが、選挙法改正に名をかりて政党活動の自由を拘束するなどは、ファシズムの態度であるといわなければならないのであります。(拍手)二大政党は自然に育つべきで、二大政党の布石などといっても、労組、文化団体青年婦人団体等公認推薦も禁止あるいは制限されるから、この点から見ても、社会党その他に打撃を与えることができる。自民党考え方は、要するに、自民党にはきわめて好都合の、虫のいい案だと言わざるを得ない。  小選挙区制が採用される場合、最も懸念されるのは買収や供応などで、連座制の規定は一そう強化すべきだが、自民党試案はそれには全くほおかむりなのも不可解である。また、開票区は現行通りとあるが、小選挙区となれば、地域が狭くなり、投票所の数も少い。従って、投票を一カ所に集め、混合して開票することも不可能ではあるまい。地方の実情を見ると、小さい村落などでは、無記名投票ではあっても、ボスには住民のだれがだれに投票したか見当がつくとさえ言われておる。それをおそれて自由な投票ができにくいという例も少くない。それで、開票所を一カ所にして、各投票所の投票を混合して開票すれば、だれがだれに投票したかが全くわからなくなる。従って、ボスが半強制的に特定候補に投票させるといった弊害も救われ、村八分を心配しない、自由な投票が行われる。自民党案はこの点を考慮したであろうか。かかる案は保守政党は喜ばないというのであろうか。選挙に多数を制することだけが大切か、選挙をよくし、政党政治の将来の発達を期し、国民の信頼を得ることが大切か、自民党は大いに反省をすべきであると警告しておるのであります。(拍手)かかる大それた改悪を選挙民に無断でやるべきではないという意味において、われわれが解散を主張するのも、けだし当然といわなければならぬと思うのであります。(拍手)  今回の小選挙区制の意図するところはもはや何人も看破しているごとく、一気に社会党の勢力を三分の一以下に減少せしめ、アメリカに奉仕する再軍備を公然と行い、かつ徴兵制をしくための憲法改悪を行い、保守政権永久化をねらわんとする、きわめて悪らつなる陰謀から出ていることは明白であります。(拍手)これを、政府並びに自民党は、いとももっともらしく、二大政党の対立による政権の授受と政局の安定、選挙費用の縮減による政界の浄化と刷新という看板を掲げ、これに伴うもろもろの利点をあげておるのであります。すなわち、政策と政策を争う高度な選挙戦が行われ、党内対立が解消する、多額の選挙費用がかからない等々、いろいろな利点を述べているが、これは全く白を黒と言いくるめる詭弁であります。(拍手)より多くの致命的な欠陥を知らないのか、あるいは故意に隠しているのか、いずれかわからないが、非常に多くの欠点や、小選挙区制によって起る弊害について、何ら触れておらないのである。現実の段階ではもし小選挙区制を強行するならば、事実は、これらの理由とは全く逆な結果が現われることは必然であると断言してはばかりません。(拍手)従って、今日においてはかかる理由によっては小選挙区制案を提出する根拠が全くないのであります。  すなわち、第一の理由とする二大政党の対立でありますが、社会党が、昨年十月、国民大衆の要望をになって完全に統一し、これに刺激され、保守党も、大急ぎで、曲りなりにも合同をいたしたのであります。すなわち、二大政党の対立は、小選挙区によってできたのではなくして、われわれが、自発的に、国民の要望によって小選挙区以前に完成したという事実を忘れてはならぬのであります。(拍手)もし、二大政党制を促進するためという口実のもとに、現在の自民党が考えておるがごとき政府案をもっていたしまして、三木君が岐阜における談話のごとく、選挙区制をいじることによって五分の四の多数を、定員を不当に五百人にふやしておいて取るがごときことがあれば、二大政党ではなくて、一党独裁の二大政党破壊の法案がすなわちこの小選挙区法案であるといわなければならないのであります。(拍手)  政局の安定とは、一体いかなることを意味するのであろうか。諸君の言う政局の安定は、常に保守党の絶対多数下における政局の安定であって、逆から言うならば、社会党勢力徹底的縮減を望んでいることなのである。いかに強弁しようと、これが憲法の改悪に通じていることは、何といっても明白であって、今日、現在、絶対多数党で、なおかつこれ以上の多数の勢力を得ようというのは、すなわち、保守政党憲法改悪をねらい、保守の永久政権をねらうところの大きな陰謀であることは明白であると、私は考えるものであります。(拍手)  次に、政界の刷新と選挙の浄化であるが、日本の政界の現実というよりは保守党の現在のままでは、小選挙区にしたからといって、決してこれが実現できるものでないのであって、まさに諸君のたわごとであるとしなければならないのである。  私は、少しく詳細に、かつ具体的に、この非現実的、非論理的、不合理な小選挙区制の政治的陰謀について論破してみたいと思うのである。(拍手)  小選挙区制と二大政党の問題については、よくイギリスアメリカの例を引き合いに出して参りますが、果してイギリスアメリカが小選挙区制によって二大政党の関係が生まれたでありましょうか。イギリスにおいて小選挙区制がとられたのは、十九世紀も末の一八八五年であった。それ以前には、定員一名のところと二名のところとあり、さらに、大選挙区で連記制の時代もあった。それにもかかわらず、イギリスではすでに一六八〇年以来ずっと二党制が存在したのであって、二党制ができて、そのあとに小選挙区ができたくらいのことは、諸君といえどもよく御承知のところであろうと存ずるのである。(拍手)また、一方、アメリカにおいても、十九世紀の半ばに至るまで、各州によって選挙区はまちまちであったが、初めて全州に小選挙区制がしかれたのは一八四二年であった。ところが、二党制は、それから半世紀前の、ワシントン大統領執政当時から存在をいたしたのであります。かように、単純に小選挙区制は二党制を生むという考え方は、根本的に間違いであることが明白なのであります。  しかも、小選挙区制度の致命的欠陥ともいうべきものは、死票が多いということであります。つまり、総得票において負けた方の政党が、かえって議席の数では多数を得て勝つという現象が起り得るのであります。現に、イギリスの一九五一年の総選挙では、総得票において、労働党が一千三百九十四万八千六百五票、保守党が一千三百七十一万七千五百三十八票を得て、労働党保守党より二十三万票も得票数が多いにかかわらず、議席数においては、保守党三百二十一、労働党二百九十六で、二十五名も少い結果が現われて、労働党は破れているのであります。これは小選挙区制では死票が多いからである。これは小選挙区制の防ぐことのできない決定的な欠陥であります。(拍手)国民の多数の支持する党派の持つ議席が支持の少い党派よりも少いというところに、私どもは致命的な欠陥があることを指摘しなければならないと存ずるのであります。(拍手)  小選挙区では定員一名で、単記投票の方法によって比較多数を得た者が当選するのでありますから、それ以外の候補者に投ぜられた票はことごとく死んでしまうのであって、死票が非常に多くなるのである。これが一選挙区に候補が三名以上となると、いずれの候補者過半数の投票をとることができず、少数のものを代表する者が当選することが大いにあり得るのであります。たとえば、有権者十九万人を一単位とする選挙区ができるとして、A候補は六万票、B候補は五万票、C候補は四万票を獲得したとすれば、A候補は六万票で当選し、B、C両候補の得票合計は死票となり、その六万の少数が九万の多数を支配するという不合理を生ずるのである。(拍手)かような不合理が全国的に現われたとするならば、得票数が四〇%であっても、議員数が六〇%を取るという結果が生まれるのであって、国民の意思を正しく国会に反映しようとする目的にそむき、不自然にして不合理なる多数党を作り、民主主義の原理に相反する結果になるという重大なる致命的欠陥を有しているのであります。現に、わが国において大正八年前に大選挙区で選挙を行なったとき、平均して、死票は有効投票の二割二厘であったのであります。大正八年の小選挙区採用後は三割四分五厘に達しておる点から見ても、小選挙区制は民主主義の精神をじゅうりんする最も望ましくない制度であるといわなければならないのであります。(拍手)  言うまでもなく、死票とは、その票によって表明された選挙人の意思が、議会、従って実際政治の上に反映しないことを意味するものであって、民主主義の精神に反するものであります。この死票の多いことから、イギリスの実例について述べたように、ある政党が、総得票において他の党よりも多数であっても、議席の数においてはより少いということが起るのであります。かかる場合には、議会の多数党といっても、それは有権者から見れば少数意見を代表するものなのであります。大正十四年普通選挙が実施されて以来三十余年実施されてきた現在の制度を一気にぶちこわしてかくも重大な点において改めることのできない欠陥を持つ小選挙区制にしなければならないという強引な政府の態度は全く民意を無視したものなりといわなければなりません。(拍手)  次に、小選挙区制の致命的な欠陥の第二は、有権者にとって候補者選択の自由が不当に制限されることであります。これはあらためて言うまでもないことでありますが、国会議員の仕事は国の全域を包含しておるのであるから、有権者が自分の住んでいるところを中心とした狭い範囲の地方から立候補している者に対してのみ投票を制限されるという理由は出てこないのであります。ほんとうは、どの地域から立候補しておる者に対しても投票することができていいはずであります。しかし、それではあまりにも技術的に不便であるので、もつぱら便宜上、全国を幾つかの選挙区に分けて選挙しておるのであります。それゆえに、技術的、政治的に不便のない限り、選挙区はできるだけ大きくして、有権者をして候補者選択の余地をできるだけ大ならしめることが望ましいことなのであります。今日の政治は複雑多岐で、りっぱな議員たるには、高い識見、深い、しかも広い知識、正しい人格を備えた人物でなければなりませんが、そうした人物が、ちょうど都合よく、五百近くの選挙区に一人ずつおるわけのものではありません。議員の品位と識見については、現在ですら、とやかく言われておる状態であります。全国を五百にも区分すれば、ある区には比較的りっぱな人物が二人も三人もおるが、他の区には国会議員にしたいような人物は一人もいないということが必ず起るのであります。(拍手)こうしたとき、一区定員一名では、りっぱな人物を落して、つまらぬ者をみすみす議会に送ることになります。有権者の方からいうと、りっぱな人物に投票したいが、それができなくて、心ならずも、くだらぬ人物に投票するか、棄権するほかに方法がないのであります。民主主義の最も大切なことは民意の暢達ということでありますが、小選挙区制はこの点で、まさに民主主義の原理を破壊するものといわなければならないのであります。(拍手)  さらに、小選挙区制の致命的欠陥の三つは、地方的利害の代弁者たる地方的人物が国会に送られるということであります。小選挙区では常に地盤の培養が行われ、その結果として、地方的因縁や情実が大きく働いて、地方的利害の代弁者が議員となる可能性が多いのであります。ところが、周知のごとく、これからの政治は外交においてはもちろんのこと、国内政治においても、広く国際的視野に立って国全体の観点から論議しなければならないことが非常に多いのであります。(拍手)よし、それが一見地方的問題であっても、国全体の立場から考えなければならぬことがはなはだ多いのであります。そのときに、単に一地方の利益のみを考える地方的人物を国会に送ったならば、どうなるでありましょう。国会の討議は、その水準が著しく低下し、見聞するにたえないものとなり、内外からの信を失うことは必然であります。現行制度ですら、追加予算をおいか予算と読み、元内閣総理大臣たるわが党の片山哲君を片山おりぐちと読み、笑い話の種を提供した人物が現におったのであります。(拍手)かくて、その次に来るものが何であるかは、説かずして明らかでありましょう。  さらに、小選挙区制に伴いやすき致命的欠陥の一つはゲリマンダリングであります。すなわち、党利党略のために選挙区を割り、飛び地、回廊等、自己に有利な区割りを強行することであります。死票の多い小選挙区制では総投票数において少い党が議席の数では多数を占めるということの起る理屈を応用して、不当に選挙区を区割りしたひどい例がゲリマンダリングと呼ばれる歴史的先例でありますが、今回の政府提案は、その典型的なものと言えるでありましょう。(拍手)社会党の票の集まっているところを、縦に割ったり、横に割ったり、飛び地を作ったりして、そのため、円形なり長方形になるべき選挙区が正円形になったり、星形になったり、ひょうたん型になるというようになって、地形も経済的、行政的あるいは民情的条件を全く無視した選挙区を作ってしまったのであります。ゲリマンダリングなる言葉は、米国マサチューセッツ州で、知事デリーが、サラマンダー、すなわちトカゲの形に似たマサチューセッツ州を勝手な選挙区に区分したことから出たのでありますが、今、日本では、保守党により、タヌキ型、キツネ型、ハト型、ネズミ型に分断され、(拍手)ハトマンダリングが白昼行われんとしておるのであります。  私は、この際、先般物故せられました緒方竹虎氏が、今から二十数年前、すなわち昭和四年、朝日常識講座の「議会の話」という叢書において、比例代表制と小選挙区制の長短を比較して小選挙区制が死票の多いことと、時の多数党により勝手に選挙区がいじくられる不合理を指摘せられておる一節を御紹介して、諸君の猛省を促したいのであります。(拍手)  緒方氏は、ジョン・スチュアート・ミルの、有名な、真の平等の議会政治デモクラシーでは、すべての階級の人々は比例的に代表せられねばならぬという言葉を引用し、比例代表制と一口にいえば、ミルの言葉のごとく、国民の意思をその相異なるに応じて比例的に議会に反映せしむると同時に、投票をしてなるべくむだなからしめんための制度である、小選挙区制はこの反対の制度であるが、その第一の弊害が死票の多いことであると、イギリスにおける一九二四年の総選挙において政府党たる保守党が七百六十万票で四百十三人の議席を得、野党たる労働、自由両党が、八百六十万票と、保守党より百万票の多数をとって、議員は百九十二人の、半数もとれなかった不合理を指摘されまして、多数国民の同意の上に政治を行うという議会政治の原則は、実際の数字上において破られているのであると、小選挙区制の不合理を説いているのであります。(拍手)  さらに、小選挙区制の最も大なる欠点ともいうべきは、そのときの多数党の便宜に従って選挙区が区画され、将来長く自然に変遷すべき政党勢力が、これによって故意の支配を受けることである、この故意の区画をゲリマンダリングと言うが、その実例は、市会の場合ではあるが、近く福岡県八幡市で行われたと実例を示し、区画をいじくることにより、五人の定員のうち四人を多数党が占め得ることを示し、しかも、かくのごとき一党または一階級勢力の得手勝手が議会政治の信用の上にいかなる影響をもたらすかは、あらためて述べるまでもありますまい、と結んでおるのであります。(拍手)  死せる緒方氏の二十数年前の警告に対し、諸君粛然としてえりを正して反省されんことを望むものであります。(拍手)  昨年二月の総選挙において、保守両派が二千三百万票を得て三百の議席を獲得し、社会党両派を中心とする革新派が千二百万票を得て百六十余の議席を占め、得票と議席がほぼ均衡して死票のない事実を見るとき、現行の選挙法を変革すべき理由は何もないといわなければならないのであります。もしこれを強行せんとするならば、事前に解散すべきことは当然の話であると考えます。(拍手)  次に、一言触れておかなければならない重大な問題は、小選挙区制においては、選挙費用が逆に多額に上り、悪質なる選挙違反が増加し、警察の選挙干渉が不当に行われ、婦人や青年の政治的進出が極端に妨げられるという事実であります。小選挙区論者は区域が狭くなるから費用は少くて済むと言います。しかし、これほど現実を無視した詭弁はないのでありまして、それは諸君みずからがようく御承知のところであろうと存ずるのであります。(拍手)  一体、保守党の諸君法定費用で選挙をやっておる者が何人おるといわれるのでありましょう。はなはだしい者になると、法定費用の十倍も二十倍も金を使っておる者があると伝えられておるのであります。これは、饗応、買収その他あらゆる不正なことに金がばらまかれているからであります。しこうして、これが、大部分は、現在でも選挙区の全体にわたって行われておるのではなくて、候補者と特に親しいつながりのある一定地域において行われておるのであります。従って、小選挙区になったからといって、こうした不正の金の使われることが決して少くなるものではなく、いな、むしろ、ふえるものと予想されるのであります。(拍手)町村においては、小選挙区になったら、必ず買収、饗応の悪質な違反が非常に多くなるだろうといわれております。すなわち、候補者有権者とが親しい間柄では、監視が行き届くどころか、反対に、ごく隠密裏に買収、饗応が行われるからであります。しかも、狭い地域でこれが行われるので、必然的にそれは激烈となり、かくて、小選挙区においては、むしろ、金がよけいかかるということになるのであります。(拍手)  その上、小選挙区になると、そこから出ている議員や、議員に出ようとする者は、常に平素から選挙地盤を培養していなければならないことになります。学校を建てるとか、橋をかけるとか、道路を普請するとか、公民館を建てるとか、補助金を取ってくるとか、火事だ、葬式だ、子供が生まれた、レクリエーションだと、寄付はおそらく莫大なものとなり、しかも、これが競争で行われ、(拍手)他の区と比較されたら、さらに輪をかけて激烈となり、どんなりっぱな人物でも、このようなことをやらなければ当選はおぼつかないということになるでありましょう。ここから、果して政策と政策の争いの選挙戦が生まれるでありましょうか。結局は、汚職や不正が再び行われて、政界腐敗の救いがたい泥沼を現出せしめないと、何人が保証することができるでありましょうか。(拍手)  大正十四年に小選挙区制から現行の中選挙区制に改正する際の政府提案の理由は、国務大臣の答弁として、若槻礼次郎氏が、小選挙区になると、どうしても競争が激烈になり、ときによると力によって選挙の上に影響を及ぼさんとするものが出たことは、御承知の通りであります、同時に、なかなか費用も多くかかる、小選挙区制は決して大選挙区の害を除いておらないのである、と言っておるのであります。(拍手)まさにこれは日本でも実験済みなのであります。  現に、この議席にもおられると存じますが、現在の文部大臣清瀬一郎君は、昭和二十九年の六月、都道府県選挙管理委員会連合会が発行した「選挙」という雑誌に、中選挙区制を捨てて小選挙区制の昔に返すべきやという論文を掲げられ、その中で、冠婚葬祭は言うに及ばず、入学、就職、借金の保証、建築、納税軽減、神社の玉垣、お寺の屋根がえ、警察のもらい下げ、あるいは夫婦げんかの仲裁、何でもかでも持ち込まれると、事こまかに例証され、(拍手)さらに、血みどろの戦いとなり、政治家は至高国家政策を研究考察するいとまなく、終始選挙区の世話に忙殺されることとなる、忙殺はいまだ忍ぶべし、そのための経費は莫大なものとなる、と言うておられるのであります。(拍手)清瀬君は文部大臣の重責におられますが、この間こういうことを書いておいて、今、平気で、また小選挙区法に賛成されるところに、私は、清瀬君の人格自体についても、大きなる疑念を抱かざるを得ないのであります。(拍手)  さらに、小選挙区は日本の現状においては、婦人の政治的進出と新人の輩出を全くはばんでしまうのであります。全国民の半数以上の有権者を持つ婦人の進出を事実上ふさいでしまうことも、これまた、民主主義の原則の上から、ゆゆしき事柄であるといわなければならないのであります。過般開かれました、各党を網羅した婦人議員団全国会議の席上で、満場一致この小選挙区制反対の決議がなされ、保守党の婦人議員も、ともに、これを強力に推進することを約されたのであります。しかも、この決議が、内閣に、代表から手交されているはずであります。すなわち、言いかえるならば、全国の過半数有権者の代表が、小選挙区制に正式に反対の意思表示をしておるということであります。(拍手)にもかかわらず、政府は全くこれを無視しておるのであります。全有権者の半数を占める婦人の反対を無視しておるという一点においても、国会を解散して、まず世論に問わなければならぬことは、当然といわなければならないのであります。(拍手)  鳩山首相は、去る二月神田の共立講堂において開かれた自主憲法期成同盟の演説会に臨んで、珍しく興奮して壇上をたたきながら、憲法改正はどうしてもやらなければなりません、そのためには社会党の勢力を減殺するように皆さんの御協力をお願いいたします、と結んでおるのであります。いかに強弁しようとも、小選挙区制は憲法改悪の陰謀であることは、まぎれもなき事実なのであります。(拍手)すでに憲法改悪の準備法ともいうべき憲法調査会法案を提出しておるのであり、かつ、しばしばの失言からも、これが証明されているのであります。われわれは、今日、この際、小選挙区制が制度としていいか悪いかということを別にいたしまして、憲法を改悪し、そうして再軍備を強行し、民主主義の基本的権利を、教育からも、労働者からも、農民からも、国民からも奪おうとする、婦人の権利もこれを略奪しようとするこの大きな陰謀に対しては、自由と民主主義を守るために、死をもって戦わなければならないと信ずるのであります。(拍手)  諸君、私は最後に、先輩の言葉を引いて皆様に申し上げたい。選挙の神様と言われました安達謙蔵氏が、小選挙区制の弊害を嘆かれまして、小選挙区制は干渉、買収がふえるほかに、選挙区が狭く、対立するから、親威も、友人も、同窓、親子等すべてが敵味方となり、深刻なる対立感情は地方の一体性を分裂せしめるものであると言われた故事を引いて、私は、天下のごうごうたる非難の中に、かくのごとき不合理なる案を強行されんとする諸君の良心に訴えて、これを撤回されんことをさらに要望しなければならないと存ずるのであります。(拍手)  諸君、三木武吉君はその不公正なる選挙区割りによって五分の四の議席を取ると、岐阜において豪語されておるのであります。万一そんな結果となりましたならば、二大政党の対立は一党の独裁となり、不自然な多数党は横暴と腐敗と汚職を招くことは、政治史の昭々として証明しておるところと私は思うのであります。(拍手)  諸君、自由をほんとうに愛しておるフランスが、ナポレオンの故事にこり、ドゴールの台頭にこりて、政治の能率は多少おくれておっても、その一党の不自然なる膨大さを来たすことによって人民の自由と基本的権利が押えられることをおそれて、比例代表制による多数党政治をやっておりますことは、われわれ日本において、東條その他のファシズムの大きなる犠牲の上にひどい目にあったわれわれが、ここに大きく関心を払わなければならない点であると考えるのでありまして、不自然な多数党が横暴を働き、腐敗と汚職を起し、議会主義を壊滅せしめるがごとき危険のあるこのハトマンダリングをこの際撤回するか、しからざれば、まず主権者たる国民に問うて後、総選挙の後これをやるべきことを主張して国会解散要求の趣旨弁明といたす次第であります。(拍手)
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより討論に、入ります。松岡松平君。     〔松岡松平君登壇〕
  10. 松岡松平

    ○松岡松平君 私は、自由民主党を代表いたしまして、淺沼稻次郎君外五名提出衆議院解散要求決議案に対し、反対の討論を行わんとするものであります。(拍手)  提案の趣旨弁明によりますと、今回政府が提案しました公職選挙法の一部改正による小選挙制案に対し反対であるところから、選挙区制の変更は議員選出の基盤を変えるとの理由をもって、その可否国民に問うために、その審議に先だち、衆議院解散して総選挙を行うべしとの主張であります。およそ、代議制度のもとにある議会の解散は、国の基本法である憲法第六十九条の規定する通り、衆議院で不信任の決議案を可決し、または信任の決議案を否決された場合に、政府がその信任を国民に問うために衆議院解散するのであって、個々の案件につきその可否を問うために議会を解散するという趣旨のものでは断じてないのであります。(拍手)もし議会の解散を提案者の趣旨のごときものでありとするならば、重要案件が議会に提案されるつど、議会を解散して総選挙を行うことになれば、名目は代議制度であっても、その実は、かのレフェレンダム制度と変らないのであります。(拍手)これはまさに議会制度の本質にもとるものといわなければならない。将来、小選挙区制法案国会を通過し、その実施の暁においては、所論のごとく、国会構成の議員の基盤の上に変化が起るであろうことは予見されないわけではないが、しかしながら、該法案が本院に提出されたこと自体によって、昨年二月の総選挙によって選ばれた議員の資格に寸毫の影響なく、その構成にいささかの変化を招くことがないのであります。(拍手)むろん、この案件は重要案件であることは争えないのであるが、それだからといって、これを本院で審議しないで、選挙の方法によって国民にその可否を問うことは、憲法及び国会法で定められた議員の審議権を回避するものであるといわなければならないのであります。(拍手)従って、小選挙法案の審議に先だち、議会を解散して総選挙を行うべしとする提案者の主張は、議会制度の本質を没却し、議員に負荷されたる権限の行使を回避して、党略のために議会制度を否定する結果に陥るものと言わざるを得ないのであります。(拍手)  次に、選挙制案は、総選挙において何らの公約を行わず、今国会に一方的に提出したと主張されるのであるが、小選挙制案政府が一方的に提出したものでなく、国民多数の要望を基礎に立案されたものであります。すなわち、小選挙区制は今にわかに考えられたものではなく、すでに、わが国においては、明治二十三年国会開設の第一回選挙の際は、一人区二百十四区、一人区四十三区としてこれを行い、大正八年原内閣の当時は、一人区二百九十五区、二人区六十八区、三人区十一区として行い、選挙促進会は昨年初頭に小選挙区制の促進を提示しており、この会の有力メンバーの中には、社会党の片山哲氏、三輪壽壯氏がその名を連ねておられるのであります。(拍手昭和二十六年八月、選挙制度調査会は小選挙区制の採用方を答申しておるのであります。さらに、緑風会は、第十九国会に二人区制を加味した小選挙区制法案を提案し、昨年より継続審議となっているのであります。政府においても選挙制度調査会を設置し、これに諮問したるところ、同様小選挙区制の採用方を答申しておるのであります。(拍手)さらに、各社の世論調査の結果も小選挙区制に傾き、もはや国民の多数の意向が小選挙区制を支持していることが明瞭になっておるので、ここに本院に提出する運びとなったものであります。  昨年秋、社会党は統一されて一つになり、自由党合同して自由民主党が結成され、ここに国民待望の二大政党の陣形が成立したのであります。まさに、今国会は、この二大政党対立の初国会であります。その運営の妙たるや、国民の注目するところでありましょう。議会制度の模範とされているイギリスにおいては、保守党労働党の二大政党によって運営され、その選出の基礎である小選挙区制と相待って健全なるデモクラシーの妙味を発揮していることは、万人のひとしく知るところであります。二大政党の基礎は原則として一人一区を基本とする小選挙区制によらなければならないというのが、今や民主主義諸国における常識とされているときに、三大政党システムを主張される社会党が小選挙区制に反対される根拠が那辺にあるか、了解に苦しむものであります。(拍手)しかも、その反対を議会の論議の中に生かさず、議会の外においてその反対の効果をねらうがごときは民主主義のレールを踏みはずしていると言わざるを得ないのであります。(拍手)あらゆる案件に対する賛否は、議会の中で堂々と論議し、選ばれた議員によってその賛否を決すべきものである。議会の外においては、いわゆる春季闘争の名のもとに、国会における野党攻勢と相呼応して、小選挙区制反対、憲法改正反対のスローガンを掲げて、ストライキ、サボタージュが展開されておるのであります。(拍手)この社会党の議会外への転出戦術と、総評を中心とする街頭における政府攻勢とが、その闘争目標において、ぴったりと焦点が合っている。その両者の間に一脈の連携なしと、だれが断ずることができるでありましょうか。  第二点、提案者の理由に、政権たらい回しなどと言うけれども、鳩山内閣は第一次、第三次、第三次ともに総理大臣は同一人であり、しかも、民主党自由党は、その国民基盤において共通点に立ち、かつ、自由民主主義の世界観において同一でありまして、その政綱政策においても共通しておるのであります。そして、ひとしく自由民主主義陣営の政党であって、昨年十一月、国民の与望に従って、政局安定のために合同したもので、これがために政府の本質にいささかも変化を来たしたものではないのであります。(拍手)従って、政権たらい回しなどというがごときことは、全く当らざるもはなはだしいものであるといわなければなりません。従って、本解散要求決議案社会党が小選挙区に対する反対を行わんがための手段として提案されたものにすぎないのであって、全くその理由を欠くものでありますので、ここに反対する次第であります。(拍手
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 原茂君。     〔原茂君登壇〕
  12. 原茂

    ○原茂君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました社会党提案による衆議院解散要求決議案に賛成の意を表明せんとするものであります。(拍手)  一昨日日本にやって参りました米国のダレス国務長官に政府与党の幹部諸公は会われたそうであります。ダレス長官から、日本のアジアに対する戦略的貢献とおだてられまして、おとなになったからというので、洋服を大きくしてやろうなどと、長々と御高説を拝聴されたそうでありますが、おそらく、与党幹部諸君衆議院の多数の上に鳩山内閣は安定いたしておりますと吹聴いたしただろうと存じます。ダレス長官が、この自信のほどを額面通りに受け取ったかどうかは別といたしまして、この鳩山内閣が多数を擁する衆議院におきまして、本日解散要求決議案提出いたされましたことはまことにお気の毒でありますけれども、一昨年の暮れ鳩山内閣成立以来の内外の政治を顧みますときに、特に本国会における数々の失言などを中心とする醜態は、まさに衆議院解散すべきであるとの決意を国民に促しておると信ずるものであります。(拍手)これは与党諸君といえども知っておられると存じます。  あなた方は、今や、小選挙区制を成立させようと、涙ぐましい努力をいたしております。自由民主党諸君が、小選挙区制の区画割りに目の色を変えておられる格好は、もう衆議院解散すべきであると覚悟されておるものと存ずるのであります。(拍手)しかし、問題は、その目的であり、方法でなければなりません。今の選挙法で民意を代表さした現在の衆議院ではどうしてもできないことを、別の選挙法で民意を人為的に作って、それを実現しようというのでありますから、国民に対するはなはだしい裏切りであると断言せざるを得ないのであります。(拍手鳩山内閣の最近の卑劣なあがきぶりと、その無責任な失言、加えるに民主主義をじゅうりんする反動化政策の数々には、すでに、衆議院解散して、逆コース是か非かを民意に問うべきときがきているものと確信いたすものであります。(拍手)  鳩山内閣は一昨年十二月十日に成立したものでありますが、これが民主党内閣であったことは、物忘れのとみによくなられた鳩山総理でも、お忘れになっていないと存じます。鳩山首相民主党に対して、自由党の、今はなき緒方総裁は、その就任に当りまして、政権争奪以外に能のない民主党批判を加え、さらに、鳩山内閣成立しました後にも、自由党の総務会は、保守合同を名目とする民主党自由党に対する惑乱工作を防ぐことを決定いたしておるのであります。昨年二月の総選挙の前後においてはどうでしたでしょうか。閣僚、与党諸君は、それぞれ民主党だ、自由党だと名乗ってしのぎを削られたことは、静かに胸に手を当てて考えられるまでもなく、覚えておられると思うのであります。(拍手)まだ、諸君の額には、民主党自由党と書いてあるではありませんか。  では、与党諸君は、保守合同に対して何と国民に約束されたでありましょうか。鳩山首相は、民主党の総裁として、昨年十一月、自由党保守合同を説くのは、それによって自分の方からの脱落者を防ごうとするのだ、大体、総選挙後にこの二つの党が合同するということは筋が通らないではないかと、今から思うと、鳩山さんにしては珍しく明快に語られました。その後、失言だといって取り消されたとも聞きませんし、陳謝したとも聞いておりませんから、信念なのでございましょう。重光副総裁——重光外相は、もっとはっきりこの点に触れておられます。保守合同国民の決定すべきことである、選挙によって国民の意思表示が行われたあとで、国民関係なく合同することは僣越なことであって、これは許されないことだと私は思う、と。  一方、自由党の方はどうでしたでしょうか。緒方総裁は、民主党は野合の政党であると、いみじくも非難いたしました。鳩山君の最近の言動は危なっかしくて見ておられないと称しております。さらに、その後、選挙期間中に、昨年末の民主党保守合同に対する動きなどから見て、その実現は困難だと思う、と国民に告白されました。二月の十二日には神奈川で、民主党と連立内閣を作るという考えは全くございません、と約束をいたしたのであります。  このように、民主党自由党保守合同はしないと争っているときに、われわれ社会党の方は、一月十八日にそれぞれ大会を開きまして、両派社会党はすみやかに合同することを国民公約して選挙に臨んだのであります。(拍手国民に対する信義を重んずるという点で、まさに雲泥の差のあることを、われわれ日本社会党は誇りといたしておるのであります。(拍手)とにかく、総選挙は終りました。第二次鳩山内閣が一応発足をいたしました。この自由党民主党が、はからずも——保守合同はしないと聞かされた国民にとっては、まさにはからずもであるのでありますが、その年の暮れには合同して自由民主党が発足し、第三次鳩山内閣が生まれ、今日に至ったのであります。与党が今日自由民主というわけのわからない党名を名乗っておりますが、全く選挙民には何が何だかわからない政党が生れたという感じであります。(拍手)良識ある政治家たちの保守党諸君、あなた方だけはその結党宣言に、一切の行きがかりを克服して、と一方的におっしゃっていますが、だまされた国民に対しては、いかにして申しわけをするつもりなのか、自由党民主党の行きがかりは、国会のうちで克服されるのは御自由でございますが、保守合同はいたしませんと選挙民に訴え、約束を並べた自由党民主党は、一体どういう責任をとろうとなさるのか。(拍手国民に無関係にできたこの自由民主党という政党が責任を負うべき対象としての国民日本におるでしょうか。  われわれ議会政治を重んずる政治家が国民に訴え、公約するのは総選挙を通じてであり、国民はまた、この総選挙によって政党に国の政治を負託するものであることは、今さら私が申し上げるまでもありません。もちろん、保守党には保守党の事情があるとは存じますが、新しい政党、総選挙のときっになかった政党は新しい政党としての政策を民意に問うために、衆議院解散すべくみずから行動するのが、天下の公党として当然であろうと思うのであります。(拍手)この議会政治の入門に類するようなことをわきまえず、てんとして恥じぬ与党政府ですから、政府自身無責任なる行動を相次いで起しておるのは当然であります。  その第一は、鳩山首相の相次ぐ失言問題であります。ところが、国民は失言とは受け取っておりません。だんだん、ほんとうのことを正直に言うようになってくる。病気のせいだと考えておるのですが、その失言が憲法無視、ないしはじゅうりんに関係があって、昨年の選挙直前、すなわち二月の三日、東京日比谷公会堂で、さきに三宅議員も言いましたように、現在の憲法は、政府国民も議会も全く自由を持たないときに英文で押しつけられたものである、この憲法をありがたがるのは、よほど忍耐の強い人である、また、この憲法日本を無力化しようという意図のもとに作られた、われわれは三百十二名の衆議院の協力が得られれば自主独立の憲法を制定したいと言われて、憲法改正が昨年行われた総選挙の重要な問題点であったことを公言されたのであります。総選挙の結果はどうでしたでしょうか。鳩山さんの切なる希望にもかかわらず、百八十五名に自由党をプラスいたしましても二百九十七名にしかなりませんでした。憲法改正に反対する議席が三分の一以上あったということは、国会憲法改正の発議をしてはならないとの審判国民によって下されたものであると確信いたします。(拍手)ところが、鳩山首相とその閣僚の諸君はこの憲法を無視する発言をしばしば行なっているのであります。なお、数々の重要な法案を審議すべきこの大切な国会が、まことに情ないことで、鳩山さんにはお気の毒ですが、首相の失言問題でいたずらに時期を遷延させたことは、国民に対して諸君はどうおわびをいたすのでございましょうか。(拍手)  その失言の第一は、一月三十一日、参議院で、わが党の佐多忠隆君の質問に答えて日本が、日本憲法にある通りに、陸軍を持たない、飛行機を持たない、自分はこうやるから、あなた方も軍縮をしろというような主張は私にはできないのであります、私としては、日本が陸軍を持たない、海軍を持たない、飛行機を持たないという憲法には反対でございます、と、現行憲法に反対であることを公言いたしておるのであります。憲法第九十九条によらなくても、当然尊重し、擁護すべき義務を私どもは負っておるのに、首相が率先してこの憲法に反対するなどと公言することは、全く世界に珍無類の現象であるといわなければなりません。(拍手)かつては文部大臣までされました鳩山さんが、この理屈のわからないはずはありません。その後に至って釈明はいたしましたが、一国の総理が、憲法違反を追及されて、国会の壇上で、従いまして、私の発言はこれを取り消しますなどと言うに至っては、日本の権威を失墜するものと考えるのであります。(拍手)しかも、これによって、参議院において二日、衆議院においては予算の審議を一日もおくらしておるのであります。その後、また、鳩山首相は二月二十九日、参議院の予算委員会におきましての失言を、そのような攻撃を防ぐのにはやむを得ぬ必要最小限度の措置をとることと、ほかに手段が認められない限り、誘導爆弾等による攻撃を防御するために他に手段がなければ、誘導弾等の基地をたたくことは自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものだ、と、訂正したとはいいながら、敵の基地をたたかなければ自衛ができない場合において、敵の基地をたたくことはできるという船田防衛庁長官と同じ、食い違いのない答弁をされているのであります。(拍手)  将が将ならば、部下も部下でございましょう。各大臣の憲法無視の失言もにぎやかなものであります。たとえば、清瀬文相つが、日本憲法をマッカーサー憲法と名づけて得々としていたことは、われわれの記憶にまだ新しいところであります。重光外相は重光外相で、日本は太平洋戦争によってアジアの民族主権に貢献したなどと放言をいたしたこともあります。このように、憲法違反を、さして意に介しない鳩山首相なのですから、ある時代には、自衛隊を憲法違反だ、憲法の条文に合わないと考えていましたが、自衛隊法が国会を通過したのだから違憲だとは思っていない、と、八日の参議院で発言をいたしております。自衛隊は憲法に違反していることをみずから認め、しかも、みずからの政権はその自衛隊の増強にやっきとなっておるのであります。また、河野農相にいたしましても、農民に対する生活権の剥奪、新農村の建設等を通じまして、新たに彼らに対するかつての支配権を確立いたしまして、今日せっかく前進いたしました農村の民主化を逆行させようといたしておりますし、労働行政にいたしましても、文教行政にいたしましても、あらゆる場面を通じて、すべてこれら一貫した政府憲法に対する態度は、もはや、すでに完全に現行憲法の精神をじゅうりんしているものと言えるのでありまして、単なる首相の失言問題ではございません。主権者たる国民に対する無責任きわまる政治的態度といわなければなりますまい。(拍手)  すでに、政府与党みずからも、この点に関する自責の念から、この憲法違反と憲法じゅうりんとを合法化するために、急速にこの現実の事態に合せるために、正式に憲法改正しようと決意されたものらしく、その手段として、今国会で小選挙制度成立せしめようとする態度は、まさに傍若無人、国民をおそれざるものといわなければなりません。(拍手)われわれは断じてかかることを許すことができないのであります。政府与党がこの小選挙制案を一方的に立案し、これを本院に提出して、多数の力をもって実施に移そうとしている事実に対して、今や、きゅう然と、全国各界の世論は反対と手きびしい批判の声をあげておるのであります。(拍手)  本来、選挙制度の問題は、あらためて言うまでもなく、議会政党にとっては共通のルールを定める問題でありまして、与野党互いに協力して、最も公正にして妥当なる制度を実現してこそ、初めて成果が上り、また民主政治の基礎をつちかうに役立つものであります。しかるに、自由民主党諸君は、いたずらに党利党略を本位とし、小選挙区制の立案の過程においては、野党たるわが党との話し合いは一切これを拒否し、どこまでも一方的かつ独断的に選挙制度改悪をはかろうとして参っておるのであります。鳩山首相は、二大政党のもとにおける国会の運営に関連いたしまして、少数意見を尊重し、すべて話し合いによる政治を行なっていくと言明されましたが、かかる与党の態度は最も大胆に首相の言動を裏切る態度と申さなければなりません。(拍手政府並びに与党が、小選挙区制の問題に関して、なぜ、かかる一方的な態度をとるのであるか。われわれは、党略的な小選挙制案があらゆる点で不合理な問題を含み、とうてい公正な話し合いの場に持ち出せるものではないことを、みずから認めているからだと断じておるのであります。(拍手)  党利党略を本位として立案された小選挙制案には、与党の内部においても、現在、ただいま、なおこれに強く反対している向きがあると承知いたしております。特にこの際私が明らかにしておきたいと思いますことは、この小選挙区制一般に関して、先には三宅議員より死票の点で言及がございましたが、同じく、現政府の閣僚である清瀬一郎文部大臣が、在野時代、「選挙」という雑誌に、小選挙区制を持続すれば政局は安定するかと設問しながら、しかり、ある意味においては大きい政党はますます大きくなり、その政権は少々失敗があっても、改造とか、たらい回しの方法により長く続けることが可能でありましょう、中選挙区においてさえも、少数議席しか得ておらぬ小党派が、その選挙区を三つか四つに分断されれば、至るところ、次点、次々点者を出して、ますます少数となりましょう、ゆえに、保守某党の議席はますます増加し、その政権は内部抗争か、汚職か、テロのない限り、倒れることはありません、衆議院は何回解散しても、某党は多数の議席を獲得しましょう、また、元来解散ということもなくなりましょう、今の在野少数党がますます少数となれば、政府不信任案が国会を通過するという機会がなくなり、憲法第六十九条により衆議院解散せねばならぬような羽目に陥ることはありません、それゆえ、ある意味における政局安定、政権永続とはなります、しかし、まじめにお考え下さい、こんなふうな政局安定ということは、いいことでしょうか、民意は少しも暢達しません、少数の意見は永久に政治に反映いたしません、と言っております。(拍手諸君の清瀬文部大臣は、二十九年六月、この雑誌「選挙」において、以上のように強調いたしております。清瀬文部大臣が在野時代の言説に責任をおとりになる気があるかどうかは存じませんけれども、清瀬大臣にして、なおかつ、かくのごとき主張を持っておられるということは、まことに重大であると思うのであります。(拍手自由民主党が多数を頼んで提案をしようとしております小選挙制度は、かつて清瀬一郎君が最も心配をいたされました点が、何らの反省も加えることなく、そのまま取り入れられておるのであります。現在、この小選挙制案を急速に実施に移さんとする自民党少数幹部の意図するところは、文字通り一党独裁保守永久政権の実現を夢みるものであろうことは、くしくも清瀬君の深く憂えられた通りであります。  この小選挙区を通じてでは、民意が正しく議会に反映される機会を失い、国会は民意の支持を失って国民と遊離し、極右極左の暴力による混乱を誘発することは火を見るよりも明らかであります。国民世論の動向は保守、革新の二大政党が互いに信義をもって国政の運用に当り、国会が無用の混乱を避けることを強く期待いたしておるのであります。しかるに、選挙制度のごとき共通のルールを定める過程におきましてさえ、多数を頼んで信義を踏みにじろうとする与党の鮮度は、すでに多数という暴力によっての一党独裁、多数党独裁弊害がきざしていると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)すみやかに国会解散し、国民の賢明なる判断に待とうとする決議案の趣旨は、この点において議会と民主主義を独裁とファシズムの危機から救う、ただ一つの道であると考えるのであります (拍手)  自由民主党の作成にかかる小選挙制案は、第一に、党利党略の案でありまして、少数党の圧殺に主眼を置いたものでありますことは、前にも申し述べた通り、今や天下衆目の一致するところであります。第二に、この案が一党独裁を目ざし、選挙を通じての民意の暢達を極度に押える結果になること、いみじくも清瀬文部大臣がかつて主張せられた通りであります。第三に、われわれが最も危険に感じておりますことは、政府並びに与党が問題の多い小選挙制案を一方的に実施に移し、社会党の進出を阻止して、一挙に憲法改正のための血路を開こうとしている点であります。この点について、与党幹部は、憲法改正と小選挙制案の実施は関係がないと言明いたしておりますけれども、これは一種の政治的な遁辞にすぎないのであります。政府並びに自由民主党にとって、すでに、事実上現行憲法を否定し、じゅうりんする言動が相次ぎ、今や、憲法改正の最大の障害は、本院において二分一の議席を占める社会党の存在であることは明らかであります。(拍手)  世論の動向と批判に目をふさぎまして、与党内部の反対派さえも抑圧して、一方的に小選挙制案を強行せんとする最大の眼目が、社会党の進出を阻止することと表裏の関係において、一挙に憲法改正の体制を整える点にあることは、これは客観的な道筋として否定し得ないことと考えられるのであります。憲法改正そのものが民主主義の芽を殺し、公然と軍事的体制を導き入れ、日本を再び軍国主義と一党独裁の中に巻き込む可能性を持っておることは、ここに論ずるまでもありません。(拍手)その手段を尽すために、有力な野党の存在を極度に減殺し、少数派の意見を圧殺しておこうというのが、自由民主党お手盛りの小選挙制案を強行する最大の政治的意図であることは、あまりにも明らかであるため、これほどまた危険の存することはないと思うのであります。いやしくも、一国の憲法に根本的な修正を加えるがごとき、国家と国民にとって最大の改革をはかるに当って、事前に選挙区制に手心を加えて修正を施し、あるいは民意の自由な暢達をはばんでおこうとするがごときは、それ自体、国民国会を侮辱し、民主主義に反する政治的謀略であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)清瀬一郎君がすでに強調しておられる通り、小選挙区制が一党の独裁を生み、保守永久政権を生み出す必然性を持っておることと考え合せまして、その上に憲法改悪が行われるということになれば、日本の民主主義と平和のいしずえは、ここにおいて圧殺されると断じても過言ではないでありましょう。  私は、かつて小選挙区制の危険を言葉をきわめて警告された清瀬文部大臣を含めて、政府並びに与党幹部諸君に、あえてお尋ねをしたいと考えております。諸君は、保守と革新の二大政党対立を歓迎されまして、二大政党対立という形における国会の運営について、寛容と互譲の精神が必要であることを強調されました。現に、鳩山総理御自身が、この壇上において繰り返し、そのことを幾たびも強調されたのは、諸君の御記憶に新しいところであろうと存じます。その諸君が、与野党互いに力を合わして守るべき民主主義の原則と建前を、なぜに、かくまで強引に踏みにじろうとするのか。諸君には、自由民主党の一党あって、目に国民の心配が見えないのであるか。(拍手諸君には野党の批判を聞く耳がなく、良識ある国民の声をいれるべき当然な責務を、いつ、何のために放棄されたのであるか。私は申し上げたいのであります。諸君があえて異論と批判の多い小選挙制案を強行して実施に移されようとするのであれば、その前に、事の当否を国民の判断に訴えるだけの手続を経て、その判断に従い、しかるに後、新しく送り出された国会において、選挙区制の改革を提案すべきであろうと存じます。(拍手)前にもわが党議員の申しました通り、現鳩山内閣自由民主党与党といたしておりますけれども、これは国民によって正式に認知されてはおりません。いわば、親知らずの与党であり、内閣であります。この点だけからいっても、国会はすみやかに解散を行い、総選挙を行なって、国民の判断に従うべきであります。  さらに、小選挙区制の実施によって当然総選挙を期待されておるのであれば、それは行き過ぎもはなはだしい、多数党の独断専行もはなはだしいと言わざるを得ないのであります。現行の選挙区制を小選挙区制に改めるということは、先ほどから申し上げました通り、政治的にきわめて重要な問題を含んでおります。現行法によって選出をされ、現行法によって国民の信任を受けて参っております本院は、どこまでも現行法によって表明された国民の意思を尊重し、これに従うべきでありまして、政府並びに与党があくまで小選挙区制に固執し、どういう手段をもってでもこれを実施に移そうというのであれば、本院は直ちに解散を断行いたしまして、現行法に基く総選挙を行い、総選挙を通じて小選挙区制の可否国民に問うべきであり、与党の飽くことのない陰謀と、反対党に対する卑劣な毒殺手段にも似た手段をもって、すべての政治責任を回避し、あるいはごまかして、とうかいを試み、国民の政治的意思の帰趨にいたずらに混乱を与えよううとするのは、われわれの許すことのできない民主主義への挑戦であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  以上の理由をもちまして、私は衆議院解散要求決議案に賛同をいたすものでありますが、最後に申し添えておきたいと存じます。本日ここに本院の解散要求決議案提出いたしました日本社会党は、きわめて冷静であります。あえて民主主義の破壊をもくろみ、目に自由民主党の一党あって、野党の存在も、世論の良識も、国民の深い憂慮もあえてくむことのできない与党は、いたずらに混乱を引き起し、あるいは不測の事態の起ることをも期待いたしておりますけれども、われわれ日本社会党は、今日ほど冷静なときはないのであります。けだし、それは、われわれが、すべての、いかなる事態にも対処する用意を持っているからであります。しかしながら、われわれは戦うことのみを考えるものではないのでおる。いかにして国民の利益に合致する政治を確立するか、いかにして国民の正しい世論国会に反映せしむるかに万全の練摩と力の蓄積を終っているからであります。  本決議案に対する諸君の心からなる御賛同をお願いいたすものであります。(拍手
  13. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 石野久男君。     〔石野久男君登壇〕
  14. 石野久男

    ○石野久男君 ただいま上程されました衆議院解散要求決議案に対し、労農党、共産党、無所属を含む小会派を作表して賛成をいたすものであります。(拍手)  昨年の秋、一部少数の人々によって、いわゆる保守合同が強行され、現在の第三次鳩山内閣が議会内絶対多数勢力の上に発足いたしましてから、政府与党の施策、言動には、眼中全く国会なく、国民なく、政府与党は、いわゆる、したいほうだい、言いたいほうだいをきわめて参っておるのであります。(拍手政府並びに与党の反動性と反民主主義的性格は、今日その極地に達しているということができるのであります。絶対多数の上に党利党略をほしいままにしているその実態は、議会政治の暗黒時代を作り出しているといって過言でないのであります。(拍手)  いわゆる行政機構改革問題について言えば、行政審議会に対し、実行可能な案という名目で、前もって審議会に圧力を加え、しかも、行われた答申案の中から自己に都合のいい点だけを実現しようとし、いわゆる九人委員会なるものを作って、これによってその実現方法を相談するということをやっているのであります。その最大のねらいが、政府与党少数首脳の各省に対する勢力拡大にあることは、言うまでもないのであります。  また、例の株式定期取引の再開問題でも、事はまさに出し抜けに出されておるのであります。他党のわれわれはもちろんでありまするが、驚いたことには、政府与党の担当者である大蔵大臣さえも知らない間に、この問題が与党一部幹部によって決定され、事務当局者にその実現が強要されておるということである。われわれは、そこに党内派閥と業者との醜い結合を感ずるのであります。(拍手)  いわゆる農業団体再編成問題も全く同様であります。これは、全国の農業協同組合の全面的な反対にあって、うやむやのうちに一応引っ込んだ形となったものでありますが、政府与党い一部の首脳者といわれる人々の専断から強引に出されたものであることは、前と同様であります。その意図するところは、帝国農会的な反動的地盤の強化にあるのであります。  さらに、現在の文教制度を根本からくつがえす大きな変革である地方教育行政の組織及び運営に関する法律案と教科書法案を、中央教育審議会など、政府みずからが作った審議機関の意見さえも聞かず、強引にこれを提出したことであります。本法案は、委員の任命制や権限縮小によって、教育に対する国家統制を復活、強化、拡大するものであることは明らかであります。中央教育審議会にさえも自信を持ってかけることができない、このような改悪案を、ただ国会内の多数を頼んで強行成立させようというのが、政府与党の考えであります。(拍手)  半面、国民の圧倒的多数が待ち望んでいる、また、第一次鳩山内閣以来の宿題である日ソ国交回復の交渉は、どうなっておるでありましょうか。現状は全く停頓し、政府はこれを打開する意向と熱意と能力を失っておるのであります。(拍手)  また、第一次鳩山内閣以来のスローガンであった社会保障制度の充実と拡大はどうなっておるのでありますか。周知のように、三十一年度予算では、事業量と事業内容のメジロ押し削減、保険料の値上げ、受益者負担の一般的増加等々、政府与党は完全に国民をだまし、国民にから手形を渡しているのであります。(拍手)そして、反対に、軍事支出は著しく増加しているのであります。再軍備に狂奔する政府与党は、国民生活の安定については、いささかの思いやりもないのであります。  すべて、これらのことは、第三次鳩山内閣、いわゆる保守合同による議会内絶対多数ができて以来の事実であります。すなわち、政府与党、特にその首脳と幹部は、議会内のいわゆる絶対多数を頼みとし、これあれば、国民の意思や利益も、憲法国会の存在も、他党の批判も、いな、みずからの政府機関の検討さえ、全くこれを無視してよろしいとしておるのであります。(拍手)まさに、わが民主主義と議会制度の危機と言わずして、これを何と言えるでありましょうか。(拍手)戦後、わが民主主義と議会制度は最大の危機に際会しておると言っても決して過言でないのであります。  政府与党の民主主義と議会制度に対する野蛮きわまるこの攻撃は、今提出されようとしておる選挙法改悪案によって、その極に達しようとしておるのであります。選挙法改悪のねらいが、現在の絶対多数をさらに拡大して、議会内三分の二を確保し、憲法改正を目ざすものであることは明らかであります。しかも、憲法改正論者といえども、その人がほんとうに民主主義と議会制度を守ろうと志すほどの人であるならば、すでに新聞などに公表されておる政府与党選挙法改悪案のごときに決して賛成できないでありましょう。(拍手)ごらんなさい。政府与党を除いて、今度の選挙法に賛成し、これを積極的に擁護しておる人が世間にありますか。(拍手)新聞や評論はどうですか。学者や知識人はどうでございますか。そうして、広範な国民大衆はどうであるか。にもかかわらず、政府与党は、この選挙法改悪案を上程し、強引にその成立、実現をはかろうとしておるのである。あらゆる層の国民は、そして、われわれは、このような政府与党の態度の中に、その究極の目的である憲法改正自体の反国民性格とフアッショ的本質を指摘せざるを得ないのであります。  戦後、平和的建設に積極的に努力してきた国民に対して、アメリカ占領政策要望する日本軍備を警察予備隊から今日の自衛隊にまで育て上げた保守政党が、この既成事実を具体的に法文化するために行う憲法改悪を準備するための選挙法改悪は、同時に、他方では、政府与党のごく少数の、いわゆる首脳、いわゆる幹部たちの党内支配を確立することをねらいにしておるものであります。昨年秋第三次鳩山内閣成立以来の諸事実に見ましても、すべて重要案件は政府与党内の一握りほどの人々で勝手に決定されておるのであります。そして、それをいわゆる絶対多数の力で、国会の決定、決議といたしておるのであります。国民を冒涜し、欺瞞するもはなはだしいと言わざるを得ません。(拍手)  しかも、しばしば各方面でも指摘されているように、現在の絶対多数勢力と第三次鳩山内閣は、全く、取引で、人為的に、強引に作られたものであり、昨年二月投票した国民の全くあずかり知らない存在であります。このような、国民の信託を得ていない野合的な存在に、憲法改正はおろか、わが国議会制度に大変革を招来し、わが国民主主義に対する得手勝手な独断を行う資格は寸分も存しないのであります。政府並びに自民党諸君にして、選挙民を偽わらないという一片の誠意があるならば、すべからく諸君の所信を国民に問うべきであります。(拍手諸君が企画し、強行成立を画策する反動諸法案、特に小選挙法案なるものを選挙民の前に示して、われわれの反論を駁すべきである。そうして、今日よりも、より以上の多数を確保したならばよろしい。諸君にはそのような自信がないのであります。(拍手)  鳩山内閣は、国民に対する公約は、とっくの昔に、ごみための中に捨ててしまっておるのである。党利党略選挙後の野合的多数で押し切ろうとすることは、わが民主国会史上許すべからざる罪悪といわなければいけません。(拍手)従って、この際、政府並びに与党は、いさぎよく衆議院解散し、前回選挙以後のその施策と言動について、その是非を国民に問うべきであります。  以上の理由によりまして、衆議院解散要求決議案に対して、われわれ小会派は賛成をいたします。(拍手
  15. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。  本案につき採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票
  16. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  17. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数 三百八十九   可とする者(白票)  百四十二     〔拍手〕   否とする者(青票)  二百四十七     〔拍手
  18. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 右の結果、衆議院解散要求に関する決議案は否決されました。(拍手)     —————————————   淺沼稻次郎君外五名提出衆議院解散   要求に関する決議案を可とする議員   の氏名     阿部 五郎君  青野 武一君     赤路 友藏君  赤松  勇君     茜ケ久保重光君 淺沼稻次郎君     足鹿  覺君  飛鳥田一雄君     有馬 輝武君  淡谷 悠藏君     井岡 大治君  井谷 正吉君     井手 以誠君  井上 良二君     井堀 繁雄君  伊瀬幸太郎君     伊藤卯四郎君  伊藤 好道君     猪俣 浩三君  池田 禎治君     石田 宥全君  石橋 政嗣君     石村 英雄君  石山 權作君     稲富 稜人君  稻村 隆一君     今澄  勇君  今村  等君     受田 新吉君  小川 豊明君     大西 正道君  大矢 省三君     岡  良一君  岡本 隆一君     加賀田 進君  加藤 清二君     風見  章君  春日 一幸君     片島  港君  片山  哲君     勝間田清一君  上林與市郎君     神近 市子君  神田 大作君     川村 継義君  河野  正君     木原津與志君  菊地養之輔君     北山 愛郎君  久保田鶴松君     栗原 俊夫君  小平  忠君     小牧 次生君  五島 虎雄君     佐々木更三君  佐々木良作君     佐竹 新市君  佐竹 晴記君     佐藤觀次郎君  坂本 泰良君     櫻井 奎夫君  志村 茂治君     島上善五郎君  下平 正一君     杉山元治郎君  鈴木茂三郎君     鈴木 義男君  田中幾三郎君     田中織之進君  田中 武夫君     田中 稔男君  田原 春次君     田万 廣文君  多賀谷真稔君     高津 正道君  滝井 義高君     竹谷源太郎君  辻原 弘市君     戸叶 里子君  堂森 芳夫君     中井徳次郎君  中居英太郎君     中崎  敏君  中島  巖君     中村 高一君  中村 時雄君     永井勝次郎君  成田 知巳君     西尾 末廣君  西村 榮一君     西村 彰一君  西村 力弥君     野原  覺君  芳賀  貢君     長谷川 保君  原   茂君     原   彪君  日野 吉夫君     平岡忠次郎君  平田 ヒデ君     福田 昌子君  古屋 貞雄君     帆足  計君  穗積 七郎君     細迫 兼光君  細田 綱吉君     前田榮之助君  正木  清君     松井 政吉君  松尾トシ子君     松平 忠久君  松原喜之次君     松前 重義君  松本 七郎君     三鍋 義三君  三宅 正一君     三輪 壽壯君  門司  亮君     森 三樹二君  森島 守人君     森本  靖君  八百板 正君     八木 一男君  八木  昇君     矢尾喜三郎君  安平 鹿一君     柳田 秀一君  山口シヅエ君     山口丈太郎君  山崎 始男君     山下 榮二君  山田 長司君     山花 秀雄君  山本 幸一君     横錢 重吉君  横山 利秋君     吉田 賢一君  渡辺 惣蔵君     石野 久男君  川上 貫一君     久保田 豊君  小山  亮君   否とする議員の氏名     阿左美廣治君  相川 勝六君     逢澤  寛君  愛知 揆一君     青木  正君  赤城 宗徳君     秋田 大助君  荒舩清十郎君     有田 喜一君  有馬 英治君     安藤  覺君  五十嵐吉藏君     井出一太郎君  伊東 岩男君     伊東 隆治君  伊藤 郷一君     生田 宏一君  池田 清志君     池田 勇人君  池田正之輔君     石井光次郎君  石坂  繁君     一萬田尚登君  稻葉  修君     犬養  健君  今井  耕君     今松 治郎君  宇田 耕一君     宇都宮徳馬君  植木庚子郎君     植村 武一君  臼井 莊一君     内田 常雄君  江崎 真澄君     遠藤 三郎君  小笠 公韶君     小笠原三九郎君 小笠原八十美君     小川 半次君  小澤佐重喜君     大麻 唯男君  大石 武一君     大久保留次郎君 大倉 三郎君     大島 秀一君  大坪 保雄君     大野 市郎君  大橋 忠一君     大平 正芳君  大森 玉木君     太田 正孝君  岡崎 英城君     荻野 豊平君  加藤 精三君     加藤常太郎君  加藤鐐五郎君     上林山榮吉君  神田  博君     亀山 孝一君  唐澤 俊樹君     川崎末五郎君  川崎 秀二君     川島正次郎君  川野 芳滿君     川村善八郎君  菅  太郎君     木崎 茂男君  木村 俊夫君     木村 文男君  菊池 義郎君     岸  信介君  北 れい吉君     北澤 直吉君  北村徳太郎君     吉川 久衛君  清瀬 一郎君     久野 忠治君  草野一郎平君     楠美 省吾君  熊谷 憲一君     倉石 忠雄君  黒金 泰美君     小泉 純也君  小枝 一雄君     小島 徹三君  小平 久雄君     小林  郁君  小林かなえ君     小山 長規君  河野 金昇君     河本 敏夫君  高村 坂彦君     纐纈 彌三君  佐々木秀世君     齋藤 憲三君  坂田 道太君     櫻内 義雄君  笹本 一雄君     笹山茂太郎君  志賀健次郎君     椎熊 三郎君  椎名悦三郎君     椎名  隆君  重政 誠之君     重光  葵君  篠田 弘作君     島村 一郎君  首藤 新八君     正力松太郎君  白浜 仁吉君     周東 英雄君  杉浦 武雄君     助川 良平君  鈴木周次郎君     鈴木 善幸君  鈴木 直人君     薄田 美朝君  砂田 重政君     世耕 弘一君  關谷 勝利君     園田  直君  田口長治郎君     田子 一民君  田中伊三次君     田中 彰治君  田中 龍夫君     田中 久雄君  田中 正巳君     高岡 大輔君  高木 松吉君     高碕達之助君  高瀬  傳君     高橋 禎一君  高橋  等君     高見 三郎君  竹内 俊吉君     竹尾  弌君  竹山祐太郎君     千葉 三郎君  中馬 辰猪君     塚田十一郎君  塚原 俊郎君     辻  政信君  綱島 正興君     渡海元三郎君  徳田與吉郎君     徳安 實藏君  床次 徳二君     内藤 友明君  中垣 國男君     中川 俊思君  中嶋 太郎君     中曽根康弘君  中村 梅吉君     中村三之丞君  中村庸一郎君     中山 榮一君  仲川房次郎君     永田 亮一君  永山 忠則君     長井  源君  灘尾 弘吉君     並木 芳雄君  二階堂 進君     丹羽 兵助君  西村 直己君     根本龍太郎君  野澤 清人君     野田 卯一君  野田 武夫君     野依 秀市君  馬場 元治君     橋本登美三郎君 橋本 龍伍君     長谷川四郎君  畠山 鶴吉君     八田 貞義君  鳩山 一郎君     濱地 文平君  濱野 清吾君     早川  崇君  林  讓治君     林  唯義君  林   博君     原 健三郎君  原  捨思君     平塚常次郎君  廣瀬 正雄君     福井 順一君  福田 赳夫君     福田 篤泰君  福永 一臣君     福永 健司君  藤本 捨助君     船田  中君  古川 丈吉君     古島 義英君  保利  茂君     保科善四郎君  坊  秀男君     星島 二郎君  堀内 一雄君     堀川 恭平君  本名  武君     眞崎 勝次君  前尾繁三郎君     前田房之助君  前田 正男君     町村 金五君  松浦周太郎君     松浦 東介君  松岡 松平君     松澤 雄藏君  松永  東君     松野 頼三君  松本 瀧藏君     松山 義雄君  三浦 一雄君     三木 武夫君  三田村武夫君     水田三喜男君  南  好雄君     宮澤 胤勇君  村上  勇君     村松 久義君  森   清君     森下 國雄君  森山 欽司君     山口喜久一郎君 山口 好一君     山崎  巖君  山下 春江君     山手 滿男君  山中 貞則君     山村新治郎君  山本 勝市君     山本 粂吉君  山本 正一君     山本 猛夫君  山本 利壽君     山本 友一君  横川 重次君     吉田 重延君  米田 吉盛君     早稻田柳右エ門君  渡邊 良夫君     亘  四郎君      ————◇—————
  19. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、淺沼稻次郎君外五名提出太田国務大臣不信任決議案は、提出者要求通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  20. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  淺沼稻次郎君外五名提出太田国務大臣不信任決議案を議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。中村高一君。     〔中村高一君登壇〕
  22. 中村高一

    ○中村高一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました国務大臣太田正孝君の不信任決議案趣旨弁明をいたしたいと存じます。(拍手)   〔議長退席、副議長着席〕  最初に、不信任決議案の主文とその要旨を朗読いたします。  本院は、国務大臣太田正孝君を信任せず。  右決議する。   [拍手〕     理由   政府は、内閣選挙制度調査会を悪用し、自由民主党の党利党略による不合理極まる小選挙区制を中心とする公職選挙法の一部改正案国会提出した。   右は民主政治を根本から破壊する暴挙であつて、その直接の担当者たる太田自治庁長官の政治責任は断じて許すことができない。   これが本決議案提出する理由である。  太田正孝君は、自治庁長官といたしまして、選挙法改正提出の直接の責任大臣でありますが、与党である自民党の全くの党利党略案をうのみにいたしまして、唯々諾々として、これを政府案として提出していることは、まことに重大なことであります。(拍手選挙法のごときものは、憲法付属の法律でありまして、一党一派のためにこれを利用するというようなことは断じて許されないのであります。しかるに、太田正孝君は、この与党の理不尽な、全くの党利党略案に盲従をして提出いたしたのでありまするが、これでは全く正義も公正も地に落ち、国を誤まることこれより大なるはないと考えるのであります。(拍手)太田君の責任もきわめて重大であることを考えなければなりません。  先ほど、三宅正一君が決議案の説明の際にも言われましたが、内閣選挙制度調査会委員諸君が、今日何とこれを批評いたしておりますか。自民党の案に対しまして、小選挙区に賛成であるという熱烈なる意見を委員会で吐かれた諸君が、これではもう賛成ができないという憤激をいたしておりますことは、静かに考えなければならないと思うのであります。(拍手)  内閣選挙制度調査会の小委員会の——次田六三郎氏が委員長でありましたが、その代理をしておられました御手洗辰雄君は、委員会におきましても終始熱心に小選挙区論を提唱し、われわれと常に戦ってこられた小選挙区の支持者であります。この人が、一体今の政府案に対して何と批評をいたしておるか。自民党は、人口のアンバランスを緩和することを名目として、二十区の二人区を作り、調査会選挙区の組み合せにも変更を加えておるが、その組み合せ方は、人口の均衡をはかるというよりは、むしろ与党議員の当選を確保するための党略と見られる傾向のあることは、まことに遺憾である、と言っております。(拍手)あなた方の支持者であった御手洗氏は、さらに、区画割りにしても、罰則にしても、自民党考え方には、選挙制度を改める目的を忘れ、特に小選挙区を採用するに当って最も警戒せねばならぬことについて、全く逆の方向に向おうとしている危険が感ぜられる、もし現在示されているような自民党の考えが捨て切れぬとするならば、小選挙区制は危険であり、断じて採用すべきものではないということを、委員会であれほど熱心に提唱した御手洗氏が、今静かに議論しておることを考えなければならないはずであります。だからして、御手洗君は、社会党に期待をしておることは、これらの点について自民党の犯さんとするあやまちをただすことであると、天下に訴えております。(拍手)  矢部さんにいたしましても、あるいは御手洗氏のような公正な第三者の意見を述べておるのであります。(発言する者あり)われわれの意見でなくして、公正な意見を述べておるのだ。これらの諸君でさえも、今や社会党よ戦えと激励しておることは、正義の義憤であるとわれわれは考えておるものであります。(拍手)  今回政府提出いたしておりまする二十区に上る二人区なるものは、全く、社会党有力候補がいて、一人区では与党に望みがないとか、または、与党内の候補の地盤がかち合って、どうにも調整がつかないというような理由で設けられ、さらに、一人区でも、党内特定候補のために作られたゲリマンダリングの疑いがきわめて濃厚であるということも、第三者が批評いたしておるのであります。(拍手)かくのごとく、調査会に参加をして熱心に戦った諸君が、今やこういう批評をしておることを冷静に考えて、かくのごとき得手勝手な選挙法提出することについて、与党諸君は責任を感じなければならないはずであります。(拍手)  私は、今度出されました政府の案を作成するについて、与党の内部でいかに醜悪なる取引が行われたかを天下国家に訴え、国民諸君に訴えて、批判をしてもらうということが必要だと思う。(拍手)  自由民主党選挙制度調査会の特別委員長であります川島正次郎君が——川島正次郎君は、自民党の特別委員長でありますが、この方が、ある団体の会合で演説をいたしております。これが、いかに党利党略のために戦ったかを、みずから演説しておりまするから、それを二、三御披露いたしておきたいと思うのであります。(拍手)川島君の速記はここに台本がありますから、いつでも、また、一身上の御弁明をなすってもけっこうであります。  代議士からいえば、選挙区の問題は生命線であるから、なかなか猛烈な主張があって、私は副委員長五人とともに党内調整にかかっているが、だんだん了解されていることは喜ばしい、ということも述べております。猛烈な主張で、苦労をしたことはよくわかりますが、党内の調整というのは、調整という名によりまして、いわゆるゲリマンダリングで、あの郡をおれにくれとか、あの市を半分にしてくれとか、二人区にしてくれろとかいうような、それらの注文の調整であったことだけは明らかであります。(拍手)  過ぐる三月十八日の朝日新聞に載っておることで、これは大石武一君に関することでございます。(拍手)大石武一君が、おやじの生まれた家があるからと、石越村を無理に自分の選挙区にくっつけたのには、自治庁側もあきれ果て、修正の理由を新聞記者に問い詰められた兼子選挙部長はとうとう逃げ出しましたと、記事が出ておるのであります。(拍手)しかし、私は、決して大石君個人を責めるのでは断じてございません。ただ、案の作成について、かくのごときことが裏面の取引の一つであったということの例でありますから、大石君よ、私の言を怒らずに聞いていただきたいと思うのでございます。(拍手)  党内調整だとして、川島正次郎君の御演説を拝聴いたしてみますると、今回の提案された選挙法は、まさに、日本選挙法ではなくして、自由民主党選挙法であるというのであります。(拍手)  もう一つだけ川島君の御演説を引用さしていただきたいと思うのであります。特に、川島さんは、特別委員長として責任のある人でありまするから、お聞き願っておきたいのでありまするが、選挙区の分け取りをいたしました実例を、実に正直にお述べになっておるのであります。  長野県の例をお引きになって、長野県の場合、植原悦二郎、唐澤俊樹両君の出ている選挙区は、落選者に増田甲子七、降旗徳弥両君など、前大臣の経歴を持ち、大物ぞろいの選挙区で、四人立って三人しか出ることができないのであります、ということで、まことにこれを悲しんでおられるのでありまするが、四人立って四人出したいということのようだけれども、これたけは川島君もいかんともすることができなかったようであります。現在は保守が二人、社会党が一人出ているが、ここを小選挙にする場合どう分けるかといろいろ話し合いをして、その結果、ようやく、南北安曇は増田甲子七君に、東西筑摩は植原悦二郎君に、唐澤君が松本でやるということになりました。全くこれでは選挙区を自分たちで分け取りにいたしておるようなものでございます。(発言する者多し、拍手)御参考に、これは調査会の案を申し上げるのでありますが、調査会の案が、われわれは別に正しいと支持するわけではありませんけれども、調査会の案を見ると、ちゃんと東筑摩郡の北部と松本市、東筑摩郡の南部と西筑摩郡、大町市と南北安曇というふうに、地勢の上から三分をいたしておるのであります。しかるに、自民党案では、松本市をまん中にはさんで、東筑摩郡の南と北を分断、飛び地を作って、三人に分け取りをいたしておるのであります。(拍手)  また、もう一つは、川島君が分け取りをいたしました、ぶんどりの説明をいたしておりますのを見ると、岡山に総社市というのがある。ここは橋本龍伍君の生まれたところで、吉備郡の中にある。しかも、吉備郡は、犬養健君が先代木堂先生以来の根拠地である。ここも、いろいろ相談した結果、総社市は犬養君に、橋本君は倉敷でやるということで、いろいろ検討して、最近ではいい姿で同案ができました、と言うておるのであります。(拍手)  一体、日本法律与党だけで分け取りにするなんて、ばかなことが許されるか。(拍手)傍若無人もはなはだしいよ。(発言する者多し、拍手)こんなことをしながら、四百九十七のうち、調査会の原案をそのまま採用したのは二百六十五区であるから、半分はこういう党利党略によってゆがめられたと見なければならないのであります。ところが、かくのごとき得手勝手な党利党略案を、太田自治庁長官はこう説明しておるのであります。調査会案は山を見、川を見、政府案はこれに人も見たのだ、こう言うておる。(拍手)一体、太田君は、法の上に人があることを考えなければなりませんよ。人の上に法律を作るなどということは、全く天人ともに許されざるふるまいだと私は思っております。(拍手)新聞に書かれておるところによると、自民党では、代議士会で、現議員全部優先公認をきめたそうであるけれども、現議員の当選を目標に選挙法をきめることも、これも違法であります。ことに、問題なのは、この法案を通過させるために、反対だという議員に特定の地域を与えることは、場合によれば、私は涜職にもなるのではないかと思う。(拍手)反対をする議員に、ある村を与えたり、ある郡を与えて、特定の利益を提供することによってこの法案を通すとするならば、これは刑法の涜職罪であります。(拍手)  こういう例を申し上げまするならば切りがない。私は、たくさん調査をしておりまするけれども、時間の関係がありまして、無理にきょう申し上げなければならないとは考えておりませんから、これをみんな私は言おうとは思いません。時間が参りますればおりますけれども、参考のために、もう一つ、二つ、あまりひどいのだけを、この壇上から訴えまして、(拍手)いかに今度の選挙法が党利党略のためにゆがめられておるかということを、耳が痛いかもしれませんけれども、しばらくお聞き願いたいのであります。  人のために二人区にして無理に調整をつけたところの二十区は、いずれも自民党党略から生まれたものと断定をしても差しつかえがないのであります。(拍手)あるいは、私のあとで、自民党の方から星島さんが討論をせられるそうでありますが、おそらく、この二人区の問題については、大正八年のときにも、明治二十二年のときにもあったという御説明があると思いますが、そのときは、今のとは全然理由が違うのであります。そのときの二人区は、三万以上の市は分断しないという原則があるから、二人区あるいは三人区を作らなければ仕方がなかった。(拍手)今度のように、市を二つに分断したり、郡を分断したり、こういう勝手なことのために二人区があったのではないことを、この際明らかにしておきたいのであります。(拍手)  今度の選挙法の特別委員会の委員長におなりになります小澤佐重喜君の選挙区を一つ例にとらしていただきたいのであります。(拍手)岩手県の水沢市を中心として、岩手県にただ一つの二人区を作りましたが、ここは小澤佐重喜君と椎名悦三郎君の両君とも水沢市出身でありまして、どちらも他区に出るわけにいかず、付近の郡市を合併して無理に一選挙区をでっち上げてこれで小澤君も安心して選挙法委員長が勤まるということに相なっておるのであります。(拍手)  東京の例を一つ引きまして、いかにあなた方の自民党がわがまま勝手な選挙区を作っておるかを、もう一つ説明をいたしますと、東京の選挙区四十一区のうちで、ただ一つだけ二人区が、御承知のように、品川区にあるのであります。一体、自民党が当初案を作りましたときには、東京にはたくさんの二人区があったのです。なぜあったかといいますと、なかなか東京の区を分断することが困難だという事情もあったと思いますが、自民党で発表せられました当初の案を見ると、台東、墨田、世田谷、杉並、豊島、北、板橋、葛飾、品川というふうに二人区があったのに、最後にただ一つ品川だけ残したことは、この品川区は社会党が最も強い選挙区で、ここには松岡駒吉君と加藤勘十君がおるので、二人をはち合せにして保守党が一人割り込もうとする策略であることは明らかであります。(拍手)もしそうでないとするならば、東京の区を無理に割らなくてもいいではないですか。(拍手)それを、東京の他の区は、みな、ずたずたに分断して、ただ松岡君と加藤君のいる選挙区だけを二人にしておることを見ても、あなた方は理由はあると言っても、天下の人はことごとく党利党略というふうに言っておる。(拍手)  あまり詳細にわたりますると、かえって時間をとると存じますから、その他の点はいずれ委員会等におきまして議論になることだと思いまするけれども、今度の選挙法の党利党略であるということについては、おそらく自民党諸君自身がお考えになっておることであると存じまするから、かくのごとく、天下が批判し、新聞雑誌がことごとく批判を加えておるこの事実を、太田長官は何と考えられるか。(拍手)もしも、あなたが、ほんとうに正義の観念があるならば、かくのごとき無理な案に対して戦わなければいけないのだ。(拍手、発言する者あり)太田長官は、今度の提案につきましては、内閣選挙制度調査会に諮問をして第三者の答申を得ておるからということが、おそらく提案に対する理由の一つと思うのでありまするけれども、この調査会については、あなたも委員の一人で、委員会にも列席しておられるから、いかにその運営が無理であったかということについては、あなたの目でごらんになっておることでございます。(拍手)この調査会には内閣から、自治庁長官であるところの太田正孝君、国家公安委員長の資格で大麻唯男君、法務大臣の牧野良三君、内閣官房長官根本龍太郎君、早川自治庁政務次官、林法制局長官等が委員に加わって、三十八名で運営されて参りましたが、その委員の構成がきわめてへんぱであることであります。(拍手)その委員の人選は、初めから小選挙促進会のメンバーが大部分を占めておるのであります。(拍手)小選挙区に賛成の者ばかりで、少数の反対者を言いわけ的に加えて委員会の構成をいたしておるのでありまするから、これでは、最初から結果がわかるような仕組みになっておるのであります。かくのごとき調査会が一体正しい調査会と言えるかどうかを、われわれは攻撃しなければならない。(拍手)しかも、その委員諸君の中には、実に善意で、一生懸命になって区割りを作ることについて戦ってきた者がありますが、今になりましてこの政府案を見たときに、委員諸君が憤慨をいたしていることを考えましたときに当って、一年に近い間調査会を開き、国費を費して、しかも、答申された案を圧殺し、それで責任が済むと考えるのか。今後幾多の政府調査会の運営の上にも暗影を投じたものだと、われわれは考えるのであります。(拍手)これは、世間をごまかすために、知識人を集めて諮問をしたという口実に使うものだとするならば、その罪はまことに大であります。会の運営も全く一方的で、反対意見を圧殺し、予定の計画を立てて押し切り、不当不法の運営でありました。しかも、この委員会の会長は自治庁長官の指名をいたしたものでありまして、総会も、小委員会も、起草委員会も、自治庁の指揮によって行われてきたものであります。しかも、小委員会を十二回以上も開いておりながら、ただの一度も総会に対して中間報告などはいたしておらないのであります。(拍手)最後の総会になって押し切ることだけを考えまして、そのために、蝋山政道のごとき学者から、小選挙区案の欠陥を指摘され、一番大きな小選挙区案の欠陥死票の出ることである、たくさんの国民の民意が現われないということに対しては、小選挙区に合せるのに、比例代表制を採用しておりまする西ドイツの例を引用せられまして、かくすることによっても死票をなくすことができるではないかという提案さえあったのでありますが、ほとんどこの提案に対しましてもどうすることもいたさないで、ついにこれを押し切っておるのであります。  おそらく、皆さんの中には、委員会を傍聴しておられないから、おわかりにならぬ方があると存じますが、ここに最後の委員会の速記録がございますけれども、これで、一体、内閣の、まじめな、日本の運命を決定する選挙法答申案の採決方法であるかどうかを、私はお聞き願いたいのであります。(拍手)  大体、会長であります有馬忠三郎氏は自治庁長官の指名したものでありますが、有馬会長が、最後に、「ただいまの小林委員の、討論を終結して蝋山委員の修正意見を……賛成のお方の挙手を願います。」これでは、一体、討論を終結する方に賛成なのか、蝋山委員の修正意見に賛成なのか、二つを一緒にして採決をいたしました。ところが、有馬会長は「挙手名数」と言っておるのでありまするから、考えようによっては、蝋山委員の修正意見が多数で通ったと見られても仕方がないような形になる。(拍手)そこで、あまりに採決の仕方が常規を逸しておりまするので、島上委員が会長、副会長不信任案を提出いたしましたところが、会長は、却下いたしますと言って、自分で、不信任された会長がみずから却下するという、前代未聞の議事の運営でございました。(拍手)これは速記録にも明確になっておるのであります。さらにまた、最後に、一体答申案は議題になっておらないのであります。有馬会長は、議場騒然であって聴取不能と書いてありますのに対して、「賛成多数」、議題に供さない答申案を、賛成多数だからこれで確定いたしましたと言うて散会をいたしておるのでありますが、およそ、議長として、議題にもかけずに、あわてて多数だということで逃げ出すというようなことは、おそらく、国会の議事に通じておられる自民党諸君といえども、これはいけないということを、速記録をごらんになったならば考えるはずであります。(拍手)  太田長官は、この採決のときには議長の隣席におりながら、傍観するふりをして、あなたは何にもその際に発言をいたしておりません。きわめて不当なこの採決に同調をし、答申案の成立を認めて、これを土台にいたしたのが政府案だとするならば、今度の選挙法などというものは、まことに信を置くことのできないものであると断定せざるを得ないのでありまして、(拍手)かくのごとき内閣選挙制度調査会の運営をいたして参りました太田長官の責任は断じて許すことができないと、われわれは考えておるのでございます。(拍手)  さらに理由を追加いたしたいのでありまするけれども、本日は十二時までに終りたいということでありますから、私は議事の進行には協力をいたします。この選挙法に対しましては、私の申し上げましたことは、党利党略の具体的事実の一片だけを申し上げたのでありまするけれども、いずれ、たくさんの党利党略委員会等におきまして十分に暴露して、天下国民に訴えるつもりでありまするから、どうか御承知を願いまして、以上をもちまして不信任決議案に対する提案の説明といたす次第でございます。(拍手
  23. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) これより討論に入ります。星島二郎君。     〔星島二郎君登壇〕
  24. 星島二郎

    ○星島二郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、太田国務大臣の不信任案に対しまして反対の討論をいたすものでございます。(拍手、発言する者あり)  不信任案の内容を見ますと、結局、太田大臣が選挙制度調査会答申案と異なった案を出した、これに尽きておるではありませんか。今中村君よりいろいろ御説明がありましたが、私も選挙制度の調査委員でありました責任上、ここに立ったものでございます。もちろん、調査会は、近ごろにない熱心さと、非常に委員諸君が勉強をされまして、今答申された案は皆様ごらんの通りでございます。私もいろいろの調査会に出たことがありまするが、この選挙法改正調査に関するほど委員諸君の熱誠なる勉強ぶりは見たことがないのであります。(拍手)     〔副議長退席、議長着席〕  ただいま、中村君が、あるいは、社会党諸君の中で森君が終始出ておられまして、もし、ただいま言われたようなことを申されるならば、(発言する者多し)社会党諸君が、もし……、(発言する者多く、聴取不能)初めから反対的態度をもって出ておられたのに、事、選挙区制になりますると、(拍手選挙制度答申案に太田大臣がこれと違ったものを出すという、そのことだけで不信任案を出すという、それ自体が、諸君はあまりにも頭がどうかしておると思うのであります。(発言する者多く、議場騒然)  私は、ただいま中村君の御批判がありましたけれども、法曹界まれに見るりっぱな人である有馬忠三郎君が、(発言する者多く、議場騒然)あれは互選の結果会長になられた。大臣の任命ではございません。(拍手)その有馬氏を会長として、そうして、政治評論家といえば阿部真之助君、御手洗辰雄君、山浦貫一君、その他、蝋山博士や、あるいは社会党に籍があられると思いますが、吉川博士のごとき、蝋山さんも小選挙区制は賛成論なんだ、吉川博士も小選挙区には賛成論、ただし、吉川さんは、二人区の多い方がいい、こういう条件で賛成されたのでございますが、事、小選挙となれば、まだ別表がきまらぬうちから、あなた方の代表ともいうべき御熱心な中村君、森三樹二君……(発言する者多し)速記録をごらんなさい。  私は、この両君の熱心には敬意を払っておる。しかしながら、終始、別表の改正前から、ともかくもすべて反対。今回できましたこの答申案は、私、小澤君、大村清一君、三人が議員として出ておりましたが、実は私が発議いたしまして、この学者連中、学識経験者にはどういう案ができるか、われわれ政党人はしばらく控えておろうじゃないか、(「何を言うか」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然)それで、現にこれは事実であります。(発言する者多し)私も、小澤君も、大村君も、中村君も、森君も、その別表を作る区画割りの委員は御遠慮したのでございます。これは事実でございます。そのかわりに、われわれは、この委員会の答申案がきまる場合に、われわれ政党がこんなに議論するほど、選挙区となれば、それは、今さら……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)こともあるかもしれぬ。しかし、それに反対する諸君は同じではございませんか。  ことに、今しいて中村君が例を引かれた宮城県の大石君のごときは、それは石越町と石森町の間違いで、これは将来合併するからやっておるのでありますから……(拍手、発言する者多く、議場騒然)私ども、これは初めて聞いたのでありますが、そう気にするほど——与党は気にせぬとは申しません。それを攻撃する諸君も同じではございませんか。(拍手、発言する者多く、議場騒然)  そこで、私は、これはぜひお聞きを願いたいのです。私は、その答申案が出るときに条件をつけております。これは、われわれは政党人でありますから、これできまっても、党に持ち帰って改正されるならば、われわれは党議に服さなければならぬということの条件をつけて、これに賛成したのでございます。(拍手)ゆえに、もし答申案がきまったらば、その答申案のそのままをここに出すならば、国会というものはなくてもよい。  そこで、この問題は、ひとり日本のみではないと見えまして、英国のごときは、もう区制の問題になると困ってしまって 一切お互いはくちばしを入れないで、第三者にまかしてしまうというようなことを英国ではきめておる。もし諸君が小選挙区法に賛成されるならば、これも一つの方法かもしれません。ただ、今回の小選挙区の答申案はたくさんありますけれども、そのうち区制が野党の都合が悪いから太田君を不信任する。(拍手)これは同じことなんです。そこで、私は、今日も鳩山総理に鈴木委員長が会われまして、もしこういうことでいやになってはいかないが、小選挙区は承認するから、区制は英国にまねて第三者にまかしてはどうだ、こういったようなお話があれば、われわれは、内輪に帰って、欣然としてこれに同意したかもしれないのであります。(拍手)  私も長年議会に出てきましたが、今までつちかった地盤を捨てるのは遺憾なことであります。それはお察しできる。わが党の中にも、この案で困る人が多いでしょう。あなた方と同じくらい、あるいは自分は将来出られぬという心配をしておる人があるでしょう。私だって、十四回も出してくれたわが村を捨てるような結果になっておる。けれども、それを言うておってはいかないのであります。  私は、今までの選挙は、どんなことがありましても、同志相はむ現状は何とかせねばならない。二大政党がこうやって渡り合うことは、一面からいえばよろしいけれども、同じ党派で互いに陰険に渡り合う、これに私どもは弱り抜いたのです。これだけはぜひとりたいものだと、かように思う。これには大選挙区の比例代表という方法がある。これも、まだ、なかなか社会の何には合わない。そこで、一応皆様と話し合って、小選挙区をやってみようではありませんか。  私は、あなた方の中にも相当小選挙区論者があることを知っております。(拍手)英国の労働党が、アトリー氏が内閣を組織した原因は、小選挙区であったからできたのですよ、一回、二回は苦しくても、あなた方が、小選挙区でも大選挙区でも、これは必ず国民のためになるという政策を持ったならば、必ずあなた方の時代は来る。もしここに無理を言うならば、笑ってこれを受けてごらんなさい。私はそれを期待するものであります。  しかしながら、先ほど三宅正一君が非常な雄弁をふるわれたごとく、なるほど、小選挙区にも、大選挙区にも、現在の中選挙区にも弊害はあります。今の弊害は、同志相はむのが一番弊害、小選挙区にも弊害があるから、それを是正せよというのが委員会の答申案の骨子でございます。いわゆる公正健保、あるいは政党本位、あるいは政治資金規正法をもっと強化しよう、あるいは選挙の公正監視委員を作ろう、また不満足なのはありますけれども、これはいつでも改正できますから、だんだん強化していこうではございませんか。(拍手)私は、太田大臣が——ひとり答申案のみならず、参議院緑風会がすでに以前から発表しておりましたあの小選挙区制が非常な参考となった。現に一人区が三百二十八、二人区が七十六もある緑風会の案のごときは、初めからわれわれの審議会に非常な参考資料となったのでありまするから、政府も太田君もこれを参考にされまして、ことに、一人区をなるべく原則としたいけれども、どうしてもやむを得ぬところは二人区あってしかるべし、これが従来の沿革でございます。この太田氏の出されました過渡期における一つの案といたしましては、まずまずこの行政区画と地理的と人口分布、それは苦心の跡が見えておりまして、皆さんも御不満足でしょうが、こちらにも不満足があるのでございます。そこで、もしこれがどうしても悪かったら、修正したらいいじゃないか。願わくは、われわれは、むしろ、太田君が非常な努力をして今日までこられたことに対して労をねぎらいたい。このくらいな気持であります。(拍手)ことに、太田国務大臣が、自治庁長官といたされまして、今日まで——今、地方は非常な赤字で困っているときに、財政通の太田君は、自治庁長官として、今が一番適任者で、むしろ信任したいとさえ思うのであります。(拍手)  どうぞ、社会党諸君は、この法案に熱心に反対するために、合法的に、順法的に、不信任案でも解散案でもどんどん出していらっしゃい。これを受けて立つだけの雅量はあります。(拍手)どうぞ、願わくは、このために、議会政治を守るために、暴力だけはやめていただきたい。(拍手
  25. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの星島君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。  松尾トシ子君。     〔松尾トシ子君登壇〕
  26. 松尾トシ子

    ○松尾トシ子君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案の趣旨説明が行われました太田自治庁長官不信任決議案に対して賛成をいたすものでございます。(拍手)  すでにわが党の中村高一議員が情理を尽して説明されましたように、太田自治庁長官は、選挙制度調査会答申が、不当な審議打ち切りによって妨害された、まことに不完全きわまることを十分承知の上で、これを受理したのでございます。そこで、太田長官は、官制として設けられた選挙制度調査会の運営ルールを、最高責任者である自分みずから無視したのでございます。(拍手)ここに、私どもがどうしても太田長官を自治行政最高責任者として認めておくわけにはいかない第一の理由があるわけなのでございます。(拍手)  さらに、太田長官は、自民党が党利党略をこらして作り上げた小選挙制案を、政府提案の公職選挙法改正案として国会提出の手続をとっておられることであります。この自民党案の内容が、答申案とは似てもつかない得手勝手な案であることは、連日各新聞が攻撃をいたしておる通りでございます。(拍手鳩山内閣は、与党の主張ならいかなる悪法でもこれを無批判に受け入れるという、おそるべき悪例を作った点におきまして、まさに戦後十年の民主政治に対して最大の汚点を残そうとしているのであります。(拍手)しかも、その責任あるメッセンジャー・ボーイを太田長官がなさっておられるのですが、今や、太田長官は、国務大臣としての誇りも、自治庁長官としての行政責任もかなぐり捨てて、ただひたすらに与党の御用を承わっておられるばかりであります。ただ大臣のいすにかじりつきたいという一人の大臣病患者があるばかりでございます。(拍手)かくも国の行政を堕落させた当事者である太田長官を、私どもは信任をしているわけには参らないのであります。(拍手)  太田長官は、官僚出身としては例の少い文筆の人であったし、ジャーナリズム、あるいは経済問題の啓蒙解説の上でもはなやかな前歴を持っておられます。ことに、婦人雑誌にも筆を伸ばして活躍され、その御貢献には大いに敬意を表するものでございますが、残念なことには、太田長官の戦前戦後を通ずる文筆活動は、常に時の権力におもねっておられるのであります。(拍手)たとえば、太田さんの名著ともいわれる「物の経済」という本を見ると、昭和十二年、支那事変勃発の年に、早くも自由主義経済の立場を捨てて、国防本位の経済を力説されておりました。かような変り身の早さが今日まで続いて、自民党の小選挙制案をも受け入れたのではないかと思うのであります。(拍手)しかしながら、現在の自治庁長官という公務にある以上は、あまりにも無責任な変節は、国民の迷惑であり、民主政治の破壊でございます。(拍手)私は、太田長官が今日をもっていさぎよく自治庁長官を辞任し、元の書斎生活にお戻りになることを、心からお勧めするものであります。  これより私は本論に入りまして、まず太田長官が提案されようとしている小選挙制案なるものがわが国の実情に沿わないゆえん、及び、これが民主政治の破壊に通ずるゆえんを明らかにいたしまして、太田長官のよって立つ根拠がいかに誤まっているかを指摘したいと思うのであります。第二点として、私は、今回政府提出せんとしている小選挙制案答申案とは全く異なった、党利党略のたくらみにすぎない実体を指摘するものであります。  私ども日本社会党は、党議として、わが国の選挙制度に小選挙区制を取り入れることには絶対反対いたしております。政府並びに自民党は、小選挙区制をとれば、二大政党対立政党政治確立する、選挙費用が低減されて汚職やその他の腐敗が防止されると主張しておられます。この三点につきましては、ただいまわが党の中村議員が明らかにしました通り、全く根拠のない空疎な議論であるということがおわかりだと思います。(拍手)  小選挙区制の本質検討は、かような二点にあるものではありません。私どもがどうしても見のがすことができないのは、選挙制度調査会でも痛烈に指摘された、小選挙区制の持つ致命的な欠陥にございます。すなわち、第一に、小選挙区制ではどうしても死票が多くなるという欠陥、第二に、有権者にとって候補者の選択の自由が不当に制約されるという欠陥、第三に、地方的利害だけの代表が国会に送り出されるおそれが多くなり、国政審議の使命に合致しないという欠陥、第四に、有権者の総有効投票の結果と政党別当選議席の結果との比率の誤差がますます広がっていくという欠陥、これらの欠陥については、すでに選挙制度調査会におきまして鋭く指摘され、政府並びに与党委員がこれを反駁できずに、無理押しに審議打ち切りの動議提出して、これを圧殺せしめたのでございます。(拍手)このように、小選挙区制の当否は、もっと本質的に、慎重に、あらゆる角度から審議さるべきものにもかかわらず、選挙制度調査会では審議が不当に打ち切られ、しかも、その打ち切り時期は、政府が最初に法案国会提出予定としていた二月十七日の事前になされたのでありまして、これは、単なる偶然ではなく、非常に計画的に仕組まれた陰謀と判断できるのでございます。(拍手)  さらに、ここにもう一点、私ども婦人の立場から申しますならば、現在、小選挙区制をとれば、憲法で保障されている婦人参政権は実質的に侵害されるでありましょう。(拍手)なぜならば、現在の選挙区制であれば、政治に関心を持つ素朴な婦人の投票は婦人候補者に集まりますが、小選挙区制では、家庭婦人の清い一票は、目標を失って、棄権に流れるおそれが大きくなるのであります。(拍手)このように、小選挙区制を実施すれば、新憲法実施後わずか十カ年の婦人参政権は後退せざるを得ないと思うのであります。これは、男女平等という新憲法の精神の侵害であるばかりでなく、わが国民の政治意識の向上に対する大なる阻害となりましょう。私は、婦人議員という立場からも、小選挙区制を採用されんとする太田自治庁長官を、女性の名においても弾劾せざるを得ないのであります。(拍手)  以上、私は、小選挙区制が本質的にわが国の現在に適していないゆえんを明らかにいたしたのでありますが、次に、私は、鳩山内閣提出せんとする小選挙区制が具体的にいかなるたくらみを持っているかを明らかにしたいと思います。  大体、選挙法改悪して革新勢力の台頭を押えようとする動きは、一九五一年のフランスにおける選挙法改正、一九五三年のイタリア、西ドイツにおける選挙法改正、今回のわが国における選挙法改悪等、一連のつながりをもって行われているものであります。フランスの場合は、革新勢力の進出を押えるために、比例代表制を取りやめて、比較多数当選制を新採用したのであります。西ドイツの場合は、国民の反対を押し切って再軍備を実施し、ヨーロッパ防衛軍条約に加入するために、西ドイツ連邦議会の総議員数四百八十四名の半数は単純多数制で選び出し、残りの半数は政党のリストによる比例代表制によって選出することにいたし、しかも、総投票数の五%以下の政党投票は除外したのであります。しかも、選挙投票の当日には、投票所のまわりに警察の装甲車や機関銃が選挙地域をパトロールして選挙を強行せしめたのであります。イタリアの場合は、ガスペリ内閣のねらった革新勢力を押える選挙法改正は、猛烈な反対を食って、成功いたしませんでした。しかしながら、このように、世界の主要国におきましては、それぞれ革新勢力の台頭を防止するために選挙法改悪を企てており、これが第二次世界大戦後における世界政治上の新しい特徴となっているのであります。そのうちでも、わが国の場合は、最も民主政治の土台をゆすぶり、侵害するものであります。(拍手鳩山内閣の小選挙区実施のねらいは、アメリカの強い要請に従って本格的再軍備を進めるための憲法改正の準備にあることは、すでにわが党の議員が明確に指摘された通りであります。(拍手)  鳩山政府は、現在のわが国の経済不安の克服について、何らの根本的解決策を持ってはおらない。過般提出された昭和三十一年度政府予算を見ましても明らかでございます。わが国経済が、常に外国景気に左右され、ことにアメリカの経済政策によって大きく影響されていることがはっきりしているにもかかわらず、鳩山内閣は、経済自立政策について何ら努力を見せておりません。それどころか、日本経済の不安定によって起るところの社会不安に対応する民主的政策は何ら持たないで、勤労者の諸基本権及び社会運動の制限、勤労者の最低生活維持に必要な要求に対する拒否などによって、ただひたすら表面的な政局の小康だけをつくろっているばかりであります。(拍手)このような政治方針は、戦前の官僚政治に次第々々に舞い戻ってきた感が深いのでありまして、(拍手)この原因は、大臣諸公、自民党幹部、財界首脳など、保守陣営の各面に戦前指導者が復活してこられたからではないかと思うのであります。(拍手)また、アメリカの極東戦略がすでに朝鮮動乱前からわが国を反共基地として活用せんと企図していた方針が、わが国の保守勢力の方針と利害が結びついて、次第にわが国の経済に対するアメリカの支配力を増し、対米追従の再軍備促進し、かつまた、統一された日本社会党の躍進を抑圧しているのであります。(拍手)すべて、これらは、一連のつながりをもって周到に仕組まれた計画的目標なのでございます。  今回、鳩山政府が小選挙区制を強行するねらいも、おおよそこのような政治目標実現のためであることは、これまた世界周知の事柄であります。(拍手)これによって、保守勢力国会議席の三分の二以上の数を占めて、憲法改正を断行し、その上で、再軍備の公然たる実施、革新勢力の躍進の弾圧、勤労国民の生活の切り下げを強要しようと着々準備していくのでありましょう。(拍手)かかる鳩山内閣の足取りからして見ますれば、選挙制度調査会答申はお飾りにしておいて、その実は、自民党案をこれとすりかえるチャンスをねらう陰険きわまるところの戦術をとったのも、当然の結果であると思われるのであります。(拍手)  今回、太田長官が、わが国政治の反動化、民主政治の破壊の選手として、自民党案を無条件採用するような暴挙をあえて断行されたことは、自民党員としては当然の任務でありましょうが、国民の公僕である自治庁最高責任者として、一日たりともその席にとどまることは、国民の名においてお断りせねばなりません。従って、私は、日本社会党を代表して、太田自治庁長官の不信任決議案にもろ手をあげて賛成することを再度申し上げまして、私の討論を終る次第であります。(拍手
  27. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。  本案につき採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票
  28. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  29. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数 三百七十八   可とする者(白票)  百四十一     〔拍手〕   否とする者(青票) 二百三十七     〔拍手
  30. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 右の結果、太田国務大臣不信任決議案は否決されました。(拍手)     —————————————  淺沼稻次郎君外五名提出太田国務大  臣不信任決議案を可とする議員の氏  名阿部 五郎君   青野 武一君  赤路 友藏君   赤松  勇君 茜ケ久保重光君   淺沼稻次郎君  足鹿  覺君   飛鳥田一雄君  有馬 輝武君   淡谷 悠藏君  井岡 大治君   井谷 正吉君  井手 以誠君   井上 良二君  井堀 繁雄君   伊瀬幸太郎君  伊藤卯四郎君   伊藤 好道君  猪俣 浩三君   池田 禎治君  石田 宥全君   石橋 政嗣君  石村 英雄君   石山 權作君  稲富 稜人君   稻村 隆一君  今澄  勇君   今村  等君  受田 新吉君   小川 豊明君  大西 正道君   大矢 省三君  岡  良一君   岡本 隆一君  加賀田 進君   加藤 清二君  風見  章君   春日 一幸君  片島  港君   片山  哲君  勝間田清一君   上林與市郎君  神近 市子君   神田 大作君  川村 継義君   河野  正君  大原津與志君   菊地養之輔君  北山 愛郎君   久保田鶴松君  栗原 俊夫君   小平  忠君  小牧 次生君   五島 虎雄君  佐々木更三君   佐々木良作君  佐竹 新市君   佐竹 晴記君  佐藤觀次郎君   坂本 泰良君  櫻井 奎夫君   志村 茂治君  島上善五郎君   下平 正一君  杉山元治郎君   鈴木茂三郎君  鈴木 義男君   田中幾三郎君  田中織之進君   田中 武夫君  田中 稔男君   田原 春次君  田万 廣文君   多賀谷真稔君  高津 正道君   滝井 義高君  竹谷源太郎君   辻原 弘市君  戸叶 里子君   堂森 芳夫君  中井徳次郎君   中居英太郎君  中崎  敏君   中島  巖君  中村 高一君   中村 時雄君  永井勝次郎君   成田 知巳君  西尾 末廣君   西村 榮一君  西村 彰一君   西村 力弥君  野原  覺君   芳賀  貢君  長谷川 保君   原   茂君  原   彪君   日野 吉夫君  平岡忠次郎君   平田 ヒデ君  福田 昌子君   古屋 貞雄君    帆足  計君  穗積 七郎君    細迫 兼光君  細田 綱吉君    前田榮之助君  正木  清君    松井 政吉君  松尾トシ子君    松平 忠久君  松原喜之次君    松本 七郎君  三鍋 義三君    三宅 正一君  三輪 壽壯君    門司  亮君  森 三樹二君    森島 守人君  森本  靖君    八百板 正君  八木 一男君    八木  昇君  矢尾喜三郎君    安平 鹿一君  柳田 秀一君    山口シヅエ君  山口丈太郎君    山崎 始男君  山下 榮二君    山田 長司君  山花 秀雄君    山本 幸一君  横錢 重吉君    横山 利秋君  吉田 賢一君    渡辺 惣蔵君  石野 久男君    久保田 豊君  小山  亮君    志賀 義雄君  否とする議員の氏名    阿左美廣治君  相川 勝六君    逢澤  寛君  愛知 揆一君    青木  正君  赤城 宗徳君    秋田 大助君  荒舩清十郎君    有田 喜一君  有馬 英治君    安藤  覺君  五十嵐吉藏君    井出一太郎君  伊東 岩男君    伊東 隆治君  伊藤 郷一君    生田 宏一君  池田 清志君    池田 勇人君  池田正之輔君    石井光次郎君  石坂  繁君    一萬田尚登君  稻葉  修君    犬養  健君  今井  耕君    今松 治郎君  宇田 耕一君    宇都宮徳馬君  植木庚子郎君    臼井 莊一君  内田 常雄君    江崎 真澄君  遠藤 三郎君    小笠 公韶君 小笠原三九郎君   小笠原八十美君  小川 半次君    小澤佐重喜君  大麻 唯男君    大石 武一君 大久保留次郎君    大倉 三郎君  大島 秀一君    大坪 保雄君  大野 市郎君    大橋 忠一君  大平 正芳君    大森 玉木君  岡崎 英城君    荻野 豊平君  加藤 精三君    加藤常太郎君  加藤鐐五郎君    上林山榮吉君  神田  博君    亀山 孝一君  唐澤 俊樹君    川崎末五郎君  川崎 秀二君    川島正次郎君  川野 芳滿君    川村善八郎君  菅  太郎君    木崎 茂男君  木村 文男君    菊池 義郎君  岸  信介君    北 れい吉君  北澤 直吉君    北村徳太郎君  吉川 久衛君    清瀬 一郎君  久野 忠治君    草野一郎平君  楠美 省吾君    熊谷 憲一君  倉石 忠雄君    黒金 泰美君  小泉 純也君    小枝 一雄君  小島 徹三君    小平 久雄君  小林  郁君    小山 長規君  河野 金昇君    河本 敏夫君  高村 坂彦君    纐纈 彌三君  佐々木秀世君    齋藤 憲三君  坂田 道太君    櫻内 義雄君  笹本 一雄君    笹山茂太郎君  椎熊 三郎君    椎名悦三郎君  椎名  隆君    重政 誠之君  篠田 弘作君    島村 一郎君  首藤 新八君    正力松太郎君  白浜 仁吉君    周東 英雄君  杉浦 武雄君    助川 良平君  鈴木周次郎君    鈴木 善幸君  鈴木 直人君    薄田 美朝君  世耕 弘一君    關谷 勝利君  園田  直君    田口長治郎君  田子 一民君    田中伊三次君  田中 彰治君    田中 龍夫君  田中 久雄君    田中 正巳君  高岡 大輔君    高木 松吉君  高碕達之助君    高瀬  傳君  高橋 禎一君    高橋  等君  高見 三郎君    竹内 俊吉君  竹尾  弌君    竹山祐太郎君  中馬 辰猪君    塚田十一郎君  塚原 俊郎君    辻  政信君  綱島 正興君    渡海元三郎君  徳田與吉郎君    徳安 實藏君  床次 徳二君    内藤 友明君  中垣 國男君    中川 俊思君  中嶋 太郎君    中曽根康弘君  中村 梅吉君    中村三之丞君  中村庸一郎君    中山 榮一君  仲川房次郎君    永田 亮一君  永山 忠則君    長井  源君  灘尾 弘吉君    並木 芳雄君  二階堂 進君    丹羽 兵助君  西村 直己君    根本龍太郎君  野澤 清人君    野田 武夫君  野依 秀市君    馬場 元治君 橋本登美三郎君    橋本 龍伍君  長谷川四郎君    畠山 鶴吉君  八田 貞義君    花村 四郎君  濱地 文平君    濱野 清吾君  早川  崇君    林  讓治君  林  唯義君    林   博君  原 健三郎君    原  捨思君  平塚常次郎君    廣瀬 正雄君  福井 順一君    福田 赳夫君  福田 篤泰君    福永 一臣君  福永 健司君    藤本 捨助君  船田  中君    古川 丈吉君  古島 義英君    保利  茂君  保科善四郎君    坊  秀男君  星島 二郎君    堀内 一雄君  堀川 恭平君    本名  武君  眞崎 勝次君    前尾繁三郎君  前田房之助君    前田 正男君  町村 金五君    松浦周太郎君  松浦 東介君    松岡 松平君  松澤 雄藏君    松永  東君  松野 頼三君    松本 瀧藏君  松山 義雄君    三浦 一雄君  三木 武夫君    三田村武夫君  水田三喜男君    南  好雄君  宮澤 胤勇君    村上  勇君  村松 久義君    森   清君  森下 國雄君   山口喜久一郎君  山口 好一君    山崎  巖君  山下 春江君    山手 滿男君  山中 貞則君    山村新治郎君  山本 勝市君    山本 粂吉君  山本 正一君    山本 猛夫君  山本 利壽君    山本 友一君  横川 重次君    吉田 重延君  米田 吉盛君  早稻田柳右エ門君  渡邊 良夫君    亘  四郎君      ————◇—————
  31. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) この際暫時休憩いたします。     午後十一時三十六分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕