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1956-03-16 第24回国会 衆議院 本会議 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十六日(金曜日)     —————————————  議事日程第二十一号   昭和三十一年三月十六日     午後一時開議  一 下請代金支払遅延等防止法案内閣提出)の趣旨説明     ————————————— ○本日の会議に付した案件  議員清瀬一郎君を懲罰委員会に付するの動議淺沼稻次郎君外六名提出)  硫安値下げに関する緊急質問平野三郎提出)  鳩山内閣総理大臣違憲論に関する緊急質問佐竹晴記提出)  下請代金支払遅延等防止法案内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑     午後三時三十九分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 外務大臣から去る二月二日の本会議における受田新吉君の質疑に対し答弁のため発言の申し出があります。この際これを許します。外務大臣重光葵君。     〔国務大臣重光葵登壇
  4. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 去る三月二日当院の本会議で行われた受田新吉君の御質問に対して、今日私から御答弁を申し上げます。  第一問は、近日中に米国国務長官ダレス氏が来訪する由であるが、その際日本に対して米国から新たに圧力が加えられることにならぬか、こういう趣旨の御質問でございました。お答えいたします、ダレス米国国務長官は、カラチにおけるSEATOの理事会の帰途にわが国に立ち寄るものでありますが、滞在期間がきわめて短かいのでございます。それで、改まった話し合いをする時間も少うございますが、政府といたしましては、その機会を利用いたしまして、日米間の了解を進めるために努力いたしたいと考えております。そうでありますから、わが国圧力米国から加えるようなことがあろうとは考えておるわけではございません。また、そういうことがあってはならないのでございます。   御質問の第二は、近々国防会議法案提出される、これは現に行われておる日ソ交渉の妥結のために障害になりはしないか、こういう点が第二であります。第三は、さような国防会議法案を実現することは日本東南アジア諸国に対する関係障害を来たしはしないか、こういう御質問でございます。私は国防会議の設置はわが国防衛体制の完成のために設置するものであって、従いまして、これが直接日ソ交渉悪影響を及ぼすものとは考えません。また、東南アジアに対するわが国関係悪影響を及ぼすものとは考えません。また、さようなことに対しては、十分、誤解のないように、これらの方面に努力をいたしたいと考えます。(拍手)      ————◇—————  議員清瀬一郎君を懲罰委員会に付   するの動議淺沼稻次郎君外六   名提出
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 淺沼稻次郎君外六名より、成規賛成を得て、議員清瀬一郎君を懲罰委員会に付するの動議提出されております。右動議を議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。野原覺君。     〔野原覺登壇
  6. 野原覺

    野原覺君 私は、提案者を代表いたしまして、議員清瀬一郎君の懲罰を求むる動議趣旨弁明を行わんとするものであります。(拍手)  事案は、申すまでもなく、清瀬一郎君の国会軽視日本国憲法侮辱言動に関するものであります。(拍手)すなわち、清瀬一郎君は、昨年七月五日、第二十二国会におきまして、憲法調査会法案提案趣旨説明に当り、わが党飛鳥田一雄君の質問に答えて、われわれがこれから作る理想的憲法と、このマッカーサー憲法と比べ、どちらがよいかを国論に問うのだと申したのであります。国会議員が公式の議政壇上において憲法を論議する場合に、必ず日本国憲法とか現行憲法とか申すべきであるにもかかわらずことさらにマッカーサー憲法とは何事であるかというので、当時の野党でありました自由党の諸君も、ともどもに立ち上ったのであります。(拍手)このために議場は騒然となりました。その結果、清瀬一郎君は次のごとく発言をいたしたのであります。「訂正いたします。——訂正いたします。——訂正いたします。——ただいまのマッカーサー憲法という言葉を取り消します。——いさぎよく取り消しました。今の言葉は取り消しました。マッカーサー憲法というのは取り消しました。」「先刻の言葉は取り消しました。」と速記録にあるのであります。(拍手)しかも、議長は、これを確認するために、「ただいまの発言について、清瀬君から自発的に取り消しする旨の発言がありました。」「重ねて出し上げます。ただいまの発言については、清瀬君から自発的に取り消すとの発言がありました。」と、益谷議長がこれを確認いたしておるのであります。(拍手)すなわち、この経過からも明瞭でございますように、清瀬一郎君は本会議におきまして、マッカーサー憲法という言葉を明らかに取り消したのであります。(拍手)  しかるに、昨日、三月十五日の内閣委員会におきまして、わが党議員質問に対し、「マッカーサー憲法というのは、それほど不当な用語でもなかろうと私は今思っておるのです。」重ねて、マッカーサー憲法というのは私の一貫した信念だ、変更のない信念だと答えておるのでございます。いやしくも、国会議員たる者が一たび本会議において取り消したものを、委員会の公式の席上において再び平然として使い、その取り消しを否定して不当な用語でもなかろう、私の変らざる信念だとは 一体何事でございますか。(拍手)この言動は明らかに、清瀬一郎君に国会議員としての誠実さがなく、本院を侮辱し、国民を愚弄するものであってわれらの断じて許し得ないところであります。(拍手)これが懲罰動議提出いたしました第一の理由であります。  次に、清瀬一郎君は、平素から、われわれの知る限りにおきましては、日本国憲法を軽視いたしまして、白眼視いたしておる事実があるのであります。それは、現行憲法マッカーサー憲法とやゆするだけではありません。清瀬君は、平素、いろいろの機会に、たとえば、あるいは論文におきまして、あるいは放送討論におきましてあるいは講演におきまして、現行日本国憲法を、与えられた憲法である、しいられた憲法である、屈従的憲法であると罵倒しておるのであります。かくのごとき憲法蔑視の考えが清瀬君にあればこそ、マッカーサーに押しつけられた憲法という意味でマッカーサー憲法と呼称するのでございまして、このことは、尊厳なるべき日本国憲法——市井無頼の徒が冗談に言うのなら、私はとやかくのことは申し上げません。いやしくも、国会議員が、国政審議の場において、かくのごとき無責任なる発言をするに至っては、日本国憲法に対する侮辱これより大なるものはないと信ずるのであります。(拍手)かるがゆえに、私どもは、これを不問に付することは絶対にできないのであります。何となれば、国民精神に与える悪影響はかり知るべからざるものがあると思うからであります。(拍手)これ私どもがここに懲罰動議提案するに至った第二の理由であります。  これを要するに、われわれは、日本国憲法の尊厳を守るために、国会における最高政治道義確立のために、たび重なる憲法蔑視を公言いたしまして人心をあやまらせておる清瀬一郎君はすべからく責任をとって、公人としての進退を明らかにしていただかなければならぬのであります。(拍手)どうか、諸君日本国憲法を尊重し、これを擁護しなければならない私ども国会議員は、何とぞ私どものこの提案に満場一致御賛同あらんことをお願いいたします。
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 懲罰動議討論を用いないで採決することとなっております。よって、直ちに採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。淺沼稻次郎君外六名提出動議賛成諸君白票、反対の諸君青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。   [参事氏名点呼〕     〔各員投票
  8. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖開匣開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事名刺及び投票を計算〕
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数 三百五十六   可とする者(白票)   百三十     〔拍手〕   否とする者(青票)  二百二十六     〔拍手
  10. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 右の結果、淺沼稻次郎君外六名提出動議は否決されました。(拍手)  議員清瀬一郎君を懲罰委員会に付す  るの動議を可とする議員氏名    阿部 五郎君  赤路 友藏君    赤松  勇君  茜ケ久保重光君    淺沼稻次郎君  飛鳥田一雄君    有馬 輝武君  井岡 大治君    井谷 正吉君  井手 以誠君    井上 良二君  井堀 繁雄君    伊瀬幸太郎君  伊藤卯四郎君    伊藤 好道君  猪俣 浩三君    池田 禎治君  石田 宥全君    石橋 政嗣君  石村 英雄君    石山 權作君  稲富 稜人君    稻村 隆一君  今澄  勇君    今村  等君  受田 新吉君    大矢 省三君  岡  良一君    岡本 隆一君  加賀田 進君    春日 一幸君  片島  港君    片山  哲君  勝間田清一君    上林與市郎君  神近 市子君    川俣 清音君  川村 継義君    河野  正君  木下  哲君    木原津與志君  菊地養之輔君    北山 愛郎君  久保田鶴松君    栗原 俊夫君  小平  忠君    小牧 次生君  五島 虎雄君    佐々木更三君  佐竹 新市君    佐竹 晴記君  佐藤觀次郎君    櫻井 奎夫君  志村 茂治君    島上善五郎君  下平 正一君    杉山元治郎君  鈴木茂三郎君    鈴木 義男君  田中幾三郎君    田中織之進君  田中 武夫君    田中 稔男君  田原 春次君    田万 廣文君  多賀谷真稔君    高津 正道君  滝井 義高君    竹谷源太郎君  楯 兼次郎君    辻原 弘市君  戸叶 里子君    堂森 芳夫君  中井徳次郎君    中居英太郎君  中崎  敏君    中島  巖君  中村高一君    中村 時雄君  中村 英男君    永井勝次郎君  成田 知巳君    西尾 末廣君  西村 榮一君    西村 力弥君  野原  覺君    芳賀  貢君  長谷川 保君    原   茂君  原   彪君    日野 吉夫君  平岡忠次郎君    平田 ヒデ君  福田 昌子君    帆足  計君  穗積 七郎君    細田 綱吉君  前田榮之助君    正木  清君  松井 政吉君    松尾トシ子君  松岡 駒吉君    松平 忠久君  松原喜之次君    松本 七郎君  三鍋 義三君    三宅 正一君  三輪 壽壯君    武藤運十郎君  門司  亮君    森 三樹二君  森島 守人君    森本  靖君  八木 一男君    八木  昇君  矢尾喜三郎君    安平 鹿一君  柳田 秀一君    山口シヅエ君  山口丈太郎君    山崎 始男君  山下 榮二君    山田 長司君  山花 秀雄君    山本 幸一君  横錢 重吉君    横山 利秋君  吉田 賢一君    和田 博雄君  渡辺 惣蔵君  否とする議員氏名    阿左美廣治君  相川 勝六君    逢澤 寛君   愛知 揆一君    青木  正君  赤城 宗徳君    赤澤 正道君  淺香 忠雄君    足立 篤郎君  芦田  均君    有田 喜一君 有馬 英治君    安藤  覺君  五十嵐吉藏君    井出一太郎君  伊東 岩男君    伊東 隆治君  池田 清志君    石井光次郎君  石坂  繁君    石田 博英君  石橋 湛山君    一萬田尚登君  稻葉  修君    犬養  健君  今井  耕君    今松 治郎君  宇田 耕一君    植木庚子郎君  植村 武一君    臼井 莊一君  内海 安吉君    江崎 真澄君  遠藤 三郎君    小笠 公韶君  小笠原八十美君    小澤佐重喜君  大麻 唯男君    大石 武一君  大久保留次郎君    大倉 三郎君  大高  康君    大坪 保雄君  大野 市郎君    大野 伴睦君  大橋 忠一君    大平 正芳君  大森 玉木君    太田 正孝君  岡崎 英城君    荻野 豊平君  加藤 精三君    加藤 高藏君  鹿野 彦吉君    神田  博君  亀山 孝一君    唐澤 俊樹君  川崎五郎君    川崎 秀二君  川野 芳滿君    川村善八郎君  菅  太郎君    木崎 茂男君  木村 文男君    岸  信介君  北  吟吉君    北澤 直吉君  北村徳太郎君    草野一郎平君  楠美 省吾君    倉石 忠雄君  黒金 泰美君    小泉 純也君  小枝 一雄君    小島 徹三君  小平 久雄君    小林  郁君  小山 長規君    河野 一郎君  河本 敏夫君    高村 坂彦君  纐纈 彌三君    佐々木秀世君  佐伯 宗義君    坂田 道太君  笹本 一雄君    笹山茂太郎君  薩摩 雄次君    椎熊 三郎君  椎名悦三郎君    椎名  隆君  重政 誠之君    篠田 弘作君  島村 一郎君    首藤 新八君  白浜 仁吉君    周東 英雄君  須磨彌吉郎君    杉浦 武雄君  鈴木 善幸君    鈴木 直人君  薄田 美朝君    砂田 重政君  瀬戸山三男君    關谷 勝利君  園田  直君    田口長治郎君  田子 一民君    田中伊三次君  田中 彰治君    田中 龍夫君  田中 久雄君    田中 正巳君  高岡 大輔君    高木 松吉君  高碕達之助君    高瀬  傳君  高橋 禎一君    高橋  等君  高見 三郎君    竹内 俊吉君  竹尾  弌君    竹山祐太郎君  千葉 三郎君    塚田十一郎君  塚原 俊郎君    辻  政信君  堤 康次郎君    戸塚九一郎君  渡海元三郎君    徳田與吉郎君  徳安 實藏君    床次 徳二君  内藤 友明君    中川 俊思君  中嶋 太郎君   中曽根康弘君  中村 梅吉君   中村 寅太君  中村庸一郎君   中山 榮一君  中山 マサ君   永田 亮一君  長井  源君   灘尾 弘吉君  並木 芳雄君   南條 徳男君  根本龍太郎君   野澤 清人君  野田 卯一君   野田 武夫君  馬場 元治君   橋本 龍伍君  長谷川四郎君   畠山 鶴吉君  八田 貞義君   鳩山 一郎君  花村 四郎君   濱地 文平君  濱野 清吾君   早川  崇君  林  讓治君   林   博君  原 健三郎君   原  捨思君  平野 三郎君   廣川 弘禪君  福井 順一君   福田 赳夫君  福田 篤泰君   福永 一臣君  福永 健司君   藤本 捨助君  淵上房太郎君   船田  中君  古井 喜實君   保利  茂君  保科善四郎君   堀内 一雄君  堀川 恭平君   本名  武君  眞崎 勝次君   眞鍋 儀十君  前尾繁三郎君   前田房之助君  前田 正男君   牧野 良三君  町村 金五君   松浦周太郎君  松浦 東介君   松岡 松平君  松澤 雄藏君   松田 鐵藏君  松永  東君   松野 頼三君  松村 謙三君   松本 瀧藏君  松山 義雄君   三浦 一雄君  三木 武夫君   三木 武吉君  三田村武夫君   水田三喜男君  南  好雄君   宮澤 胤勇君  村上  勇君   村松 久義君  粟山  博君   森   清君  森下 國雄君   山口 好一君  山崎  巖君   山下 春江君  山手 滿男君   山中 貞則君  山本 勝市君   山本 粂吉君  山本 正一君   山本 猛夫君  横川 重次君   吉田 重延君  亘  四郎君   石野 久男君  岡田 春夫君   川上 貫一君  小山  亮君      ————◇—————  硫安値下げに関する緊急質問(平   野三郎提出
  11. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、平野三郎提出硫安値下げに関する緊急質問を許可されんことを望みます。
  12. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  硫安値下げに関する緊急質問を許可いたします。平野三郎君。     〔平野三郎登壇
  14. 平野三郎

    平野三郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、硫安値下げに関し、労働問題と関連する政府基本的見解をお尋ね申し上げたいのであります。  最近、政府は、硫安工業関係労働組合経営者側に対し賃金ース引き上げ要求を行なっているに対し、引き上げの余裕ある場合は、その一部をもって肥料価格引き下げに回すべきであるとの勧告を行なったということであります。  ここにその公文書の写しがございますから、一応読み上げますと、   日本硫安工業協会長殿   最近硫安工業関係労働組合が、経営者側に対し賃金ベース引上要求を行い夫々折衝の段階にあるやに仄聞する。もとより当省としても労働者労働条件の適正な改善に反対するものではないが、他面政府基本的政策として、農業生産費低下を図り農産物価格の安定に施策を集中している次第もあり、農業生産資材中最重要の地位を占める肥料価格については、可及的に廉価に供給する如く、努力しつつあることは、御了知の通りであり、労賃の上昇を以って直ちに肥料価格の引下げの阻害要因となし、若くは肥料価格上昇要因となすが如きことは、当省としてはこれを看過しえないところである。   以上の観点より、この際肥料消費  者である農家の側にも、肥料価格の  面における利益を充分に考慮せられ  るよう、特に善処を期待する。以上の通りであります。  私は、この政府勧告はきわめて当然のことと思うものでございます。  現下の経済情勢におきましては、労働者労働条件を適正に改善することの必要なるは申すまでもありませんが、他面において、農業生産費低下をはかり、農産物価格の安定に施策を集中することは、今や基本的国策であります。ことに、農業生産資材中、最重要であります硫安価格は、でき得る限り安くしなければなりません。(拍手)最近、硫安工業合理化がきわめて顕著に進行し、会社経営の上に黒字を見つつあることは、まことにけっこうなことであります。労働組合関係者の間では、この黒字の分をもって賃金の値上げを行うべきであると称し、目下団体交渉が行われているのであります。もちろん、硫安工業経営改善は、労働者諸君努力に基因するところ多く、よってこの黒字分労働条件向上に資することは、きわめて当然のこととして、この点、私は何ら反対するものではありません。しかしながら、この黒字の分全部、ことごとくをもって賃金ース引き上げに振り向けることは、断じて妥当であるとは私たちには考えられないのであります。(拍手)ことに、硫安工業は、肥料需給安定法並びに硫安工業合理化促進法の二つの法律に基き、企業に必要なる資金はおおむね政府国家資金によってまかなわれ、また、硫安価格は、法律に基く肥料審議会の議を経て、農林大臣がその最高販売価格を指示することに定められておるのであります。すなわち、硫安工業合理化は、単に労働者諸君労働意欲のみによって達成されるものではなく、実に国家保護助成に待つところ大なるものがあることは申すまでもありません。かかる国の保護を加えるゆえんのものは、今日、日本農業国家的使命のもとに置かれておるからにほかならないのであります。かように見まするならば、この際一部をもって労働条件改善に資するとともに、反面、肥料価格引き下げをはかることは当然過ぎるほど当然でありまして、この点に関する政府の考え方に対しましては、私どもは満腔の賛意を表するものでございます。(拍手)  しかるに、仄聞いたしますれば、過日、日本社会党におかれては、この政府勧告労働運動に対する弾圧ないし不当干渉であるとの理由をもって、厳重なる抗議が行われたということであります。私どもはまことに了解に苦しむものでありまするが、新聞報道によれば、社会党が、正式に、農林大臣に対し、この旨申し入れたといわれております。(発言する者多し)しかも、驚くべきことは、社会党に所属せられる同党農林委員諸君が同行せられたという話でございます。果してこれは事実でございましょうか。また、現にいかなる申し入れが行われたのでございましょうか。(拍手発言する者多し)その申し入れの内容を説明していただくとともに、その間の事実を率直に政府な明らかにせられんことをお願いする次第であります。同時に、政府は本問題に関しいかなる基本的見解を持つものであるか、また、社会党抗議に対し、いかなる回答をいたしましたのか、まさに、本問題こそは、働く日本の全農民が重大なる関心をもって注視しているところであります。(拍手政府は率直かつ明快にその所信を明らかにせられたいのであります。  私は、この問題は単に硫安工業だけに限ることではないと思うのであります。今日、幾多の大工業といえども、いずれもみな、それは多数の中小工業下請の上に立っております。大工業中小企業に対し九十日あるいは百二十日というがごとき長期の手形支払いをいたしておる場合も少なしといたしませんが、幸いにして大工業経営改善せられ黒字を生じたるような場合、私はもちろん大工業傘下労働者賃金ベース引き上げに充当することは当然とは存じますけれども、反面、その一部をもって、下請中小企業に対し手形期日短縮等の措置を講じ、広く国民全般にその企業利益の恩沢を分配するのが当然であると考えるのでありまするが、この点に関する政府の御見解はいかがでありましょうか。  諸君労働者は、団体交渉の権利を有し、必要の場合にはストライキという実力行使をも許されております。しかるに、農民は、黙々として大地の上にひたすらくわをふるって米麦生産に没頭して、全国民の食糧の確保に挺進しているのであります。われわれは、もとより、労働者のために最善の努力を傾注しなければなりませんが、同時に、国民の台所を担当する農民経済向上のために、また全幅の力を注がなければならないのであります。しかるに、日本社会党は、都市労働者さえよけれは農民はどうなってもいいとおっしゃるのでありましょうか。(拍手発言する者多し)私はもし、社会党が真にかくのごとき、ばかげた申し入れ政府にせられたといたしますならば、もはや社会党農村から足を洗って都会にだけ引きこもるという御方針になられたものとしか思われないのでありまして、あるいは、社会党は、都市労働者利益を守るためには、農村中小企業もあえて犠牲とするも顧みない、その本質をはしなくも暴露したものというべきでありましょう。かかるありさまでは、もはや、農民諸君も、中小商工業者諸君も、社会党を全面的に締め出す決意をせざるを得ないでありましょう。(拍手発言する者多し)  私どもは、日本社会党国民全般利益の上に立脚した大政党に成長せられ、二大政党対立の実をあぐることを衷心から祈るものであります。しかるに、依然として、かくのごとく、ごく一部の階級的立場にのみ拘泥せられる現状を見まするときに、社会党のためにまことに惜しまざるを得ないのであります。社会党は、日本社会党であって、決して都市労働者社会党ではないはずであります。いな、社会党が、国家全体の利益を考えることなく、いつまでもかかる小児病的態度改むることなくんば労働者諸君からも、あいそをつかされるに至るでありましょう。私は、切に社会党諸君の御反省を促すとともに、以上、硫安値下げをめぐる本問題に関し、河野農林大臣並びに石橋通産大臣の御答弁をお願い申し上げまして、私の緊急質問といたします。(拍手)     〔国務大臣河野一郎登壇
  15. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) ただいまの平野さんの御質問に対してお答えをいたします。  政府が、硫安製造会社に対しまして、今回の労使の間の話し合いに対して特に農村の立場を十分御考慮願いたいという通牒を出しましたことは、ただいま平野さんの朗読になりました通りであります。私は、この機会に(発言する者多し)——静かにお聞きをいただきたいと思うのであります。(拍手発言する者多し)私があえてこの通牒を出しましたるゆえんのものは、公正なる労使の間の決定にあえて関与する意思は毛頭ないのでございまするけれども、ただ、全国農民諸君から、昨年の暮れにおきまする硫安工業関係労働組合に対する年末手当があまりに多過ぎたという新聞発表に対して、非常に不満の声がありましたので、今回の省議に当って、また再びそういうことがありましたのでは、せっかく、全国の農民諸君労働者諸君とが、再建のために協力して、お互いに努力し合いつつ今日やっておりまするその間に、万一感情の阻害でも誤解でもあってはいけないということを十分留意いたしまして、あえてこの処置に出たのでございます。(拍手)従いまして、資本家、会社の責任者がこの事情を十分おくみ取り下さいまして、公正なる労働者諸君に対する条件はわれわれは十分賛成するところでございますが、硫安価格決定に当って支障になるようなことは、われわれとしてとらないところでございます。でございますから、その点に十分留意下さるように、あえてこの処置をとったのでございまして、万一昨年末その他最近の硫安工業関係労働組合に対する資本家諸君の態度が一般世間が肯定するようなものであれば、あえてこの処置はとらなかったのでございます。従って、私といたしましては、社会党の方からお尋ねがございました際に、その由をお答え申し上げた次第でございます。(拍手)     〔国務大臣石橋湛山君登壇
  16. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 硫安価格等につきましては、ただいま農林大臣からお答えがありました。それに全面的に通商産業大臣としても賛成であります。同時に、平野君からの質問の中には、下請企業という問題が含まれております。われわれも、労働者に、消費者に、また下請企業者にも適当の分配をするということが、これが正しいことでありまして、一部分に偏することは誤まりであると存じております。(発言する者あり)どうぞ、あなた方の方が反対のようでございますから、よくお聞き願いたいと思います。平野君に、以上お答え申し上げります。(拍手
  17. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの平野君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取調べの上、適当の処置をとることといたします。      ————◇—————
  18. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、佐竹晴記提出鳩山内閣総理大臣違憲論に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
  19. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  20. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  鳩山内閣総理大臣違憲論に関する緊急質問を許可いたします。佐竹晴記君。[佐竹晴記登壇
  21. 佐竹晴記

    佐竹晴記君 日本社会党を代表し、総理大臣に対し、自衛隊と憲法違反の問題に関しお尋ねいたしたい。  第一、首相は今月八日、参議院予算委員会において、亀田議員質問に対し、「私は憲法の成文には、自衛隊を持つということは、憲法の成文には合致しないと思います。この疑いがある。」と答え、他面、日本が独立国家となった以上、正当防衛権を持っている、その防衛のための自衛隊は合法的である、自衛隊法が成立した後は憲法違反にはならないと解釈を変えた、と述べております。一体、首相の真意はどこにあるか。自衛隊を持つことは憲法の成文に合致しないというのは、明らかに自衛隊は憲法違反であることを答えたものと言わざるを得ません。(拍手)しかるに、他面、自衛隊は合法的であり、憲法違反でないと解するというのは、あまりにもはなはだしい矛盾撞着であります。(拍手憲法の成文に合致しないで、しかも合憲的なものがあるというのは、いかなる趣旨であるか、国民の納得のいくまで説明されたい。(拍手)  第二、首相は、参議院において、秋山議員の問いに対し、「国が基本の権利として自衛力を持つと思います。そういう解釈によって、憲法九条が、そういう解釈が優先するというように解釈をするようになったのです。」と述べております。この、自衛力は憲法九条に優先するとは、いかなる意味でありますか。参議院においては、総理大臣は「優先するというのは、つまり憲法九条は禁止をしていないという意味だと申すのであります。」と述べております。さらに、「私は憲法九条を、自衛隊を持てないように思っていたんです。ところが、一国が独立をすれば自分の国を守るという、その自衛権というものは、憲法に書いてあっても書いてなくても、どんな国でも持っておるものと思います。」云々、「憲法が否定をしていないという解釈の方が一般に認められたと私は思う。で、自分の解釈を変えたのであります。」と述べております。この答弁で明確な通り、首相は、当初、憲法九条は戦力たる自衛隊を禁止した規定であると解しておった。日本は自衛隊は持ってはならないと思っておった。ところが、よく考えると、自衛権は国家固有の権利で、憲法第九条はこの自衛権を禁止した規定ではない、だから、憲法第九条にかかわらず、これに優先し、戦力たる自衛隊もこれを持つことができると解するように解釈を変えたのであるというのであります。これは実におそるべき解釈でありす。(拍手)首相のこの考え方は、自衛力そのものと自衛権行使の方法を混同いたしました謬論であります。  総理大臣は、参議院において、かように述べておる。個人に正当防衛権があると同様、国家にもまた正当防衛の権利があると説明されております。まことにその通りであります。それで、諸君によく聞いてもらいたい。個人についてこれを見るに、お互いは刑法三十六条によって正当防衛権を持っておるが、しからば、正当防衛のためならば、常日ごろからピストルと銃剣を用意いたしていいかといえば、これは許されません。(拍手)銃砲火薬類取締規則に従って許可を受けなければ所持することができない。これに違反すれば罰せられます。一般通常の場合には禁ぜられるというのであります。すなわち、正当防衛権があるからといってその防衛のための手段方法が無制限に許されるものではありません。しかし、その防衛の手段方法に制限を加えられたからといって、正当防衛権そのものが否定されたものではありません。また、その制限は正当防衛権の存在と抵触するものではありません。そこで、国家の場合もまた同様であります。憲法第九条に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。」と規定いたしましたのは、まさにその手段方法に関するものであります。すなわち、自衛権は国家固有の権利であり、これを禁止することのできないことが当然であって、憲法第九条がその自衛権そのものを禁じた規定でないことは、これまた一見明瞭であります。しかして、憲法は国権発動に関する基本法でありますから、自衛権発動の場合といえども、国権行使に関する基準を定め得ることは理の当然でありますから、憲法第九条のごとき制約をいたしましても、何の不都合もございません。(拍手)しかして、憲法第九条には、自衛権行使の場合には適用しないとの除外例はどこにも設けておりません。(拍手)この条章がすべての場合に働くことは多言を待つまでもございません。結局、たとい自衛権行使の場合といえども、軍隊や兵力を保持しない、交戦権は認めないというのであります。軍隊や戦力にならない範囲で防衛せよ、戦争は許さないというのであります。この規定のために自衛権が否定されるわけでもなく、また、この制約があるために自衛権の存在と相いれないものでもありません。断じて抵触するものでもない。総理の自衛権優先論は、この根底において誤まっておるものと思うが、いかがでありましょうか。(拍手)第三に、いわゆる自衛力優先論が、自衛権の存在そのものに限らず、その手段方法にまで及び、自衛権行使の場合は憲法第九条の制約に従うの要はないというのであったら、それは実にゆゆしき重大なる問題であります。まず、そうなると、憲法第九条は全く無用の空文となります。(拍手)総理自身口をすっぱくしておっしゃっておる通りわが国の自衛隊は防衛のための自衛隊だというのでありますから、その自衛隊以外に別の兵力や戦力のあるはずはございません。そこで、その自衛隊に憲法第九条の適用がないといたしましたならば、憲法第九条は一体何に適用なさるのでございましょう。(拍手)何のなめに憲法九条は存在しておるものであるか。(拍手)全く無用の空文となるでありましょう。これ明らかに憲法第九条抹殺論であります。(拍手憲法否認論であります。  次いで、自衛隊に憲法第九条の制約を加えないというのは、ひっきょう、国家固有の自衛権に抵触するから国家存立上許されないというのでございましょう。これ明らかに自衛権の前には憲法第九条はその効力を持たないということになります。これはまさに憲法の条章無効論であります。(拍手法律憲法に違反するという議論はしばしば聞きますが、憲法抹殺論や憲法無効論は、いまだかつてこれを聞いたことはない。(拍手憲法順守の義務を負う一国の宰相が堂々と国会においてかようなことを論ずるということ、実に意外千万であります。(拍手)首相は果してこのような言説をなおも維持なさるのであるかどうか、もしも、首相が依然としてこのような説を維持し、自衛隊には憲法第九条の制約を加えることはできないということになりまするならば、自衛隊の行動は一切自由となり、自衛のためならば何をやってもかまわないということになるのでありましょう。そうだといたしまするならば、現憲法のもとにおいても、宣戦布告も、徴兵令施行も、海外派兵も、気のままに、あなたの手一つでできるということになりますが、総理大臣、本気でこれをお認めになるのかどうか。(拍手)  第四に、自衛隊法が成立したので憲法に違反しないと解釈を変えたというが、今日もなおこれを維持されるのか。前段にるる述べたように、総理大臣は、独立国家である以上、自衛力を持つことは、憲法に規定があってもなくても、当然のことである、従って、そのために、自衛隊はこれまた当然持ち得る、憲法違反でないというのでありますから、そうだとしたならば、自衛隊法の成否を合憲、非合憲の引き合いに出す必要がいずこにありますか。自衛隊法の成立によって合憲的になったと解釈を変えなければならないということは、自衛隊法の成否いかんが合憲、非合憲の分れ道であることを明白に自認したものといわなければなりません。(拍手)そうだといたしましたならば、自衛隊を持つのは国家固有の権利で、当初から合憲的であるとの見解と正面衝突をいたします。一体、どちらが正しいのか、その矛盾をいかに解するか。  さらに、自衛隊法が成立したならば、その後の自衛隊は合憲的であると解釈を変えても不都合ではないというのは、それ以前は憲法違反であったことを自白するものであります。(拍手)自衛隊法成立で合憲的になったと解するのは、法律憲法に優先し、法律憲法を変更することができることを認めるものであります。(拍手)このようなことは断じてあり得ません。もしこれを許せば、憲法違反の事実があるときは、これを法律化することによって容易に合憲的なものにすることができるでありましょう。そうだとしたら、何を苦しんで憲法改正の困難な手続を踏む要がありましょうか。このような不合理なことが許されよう道理はございません。総理は一体何とお考えでありますか。  第五に、オネスト・ジョン、B57など原爆機を持ち込み、三十万に近くなる陸上部隊の増強をなさるのは、一体何のためであるか。総理は、おそらく、防衛のためだと簡単に片づけようとなさるでありましょう。しかし、オネスト・ジョンやB57などより受ける国民の印象は、侵略の恐怖であります。首相は、二月二十九日の参議院の予算委員会において、戸叶武君の問いに対して、日本を侵略してくる飛行機の基地を粉砕しなければ日本の防衛ができないというような場合に、その基地を侵略してもよいとおっしゃいました。これは単なる失言ではない。総理の心底に存する信念のひらめきといわなければなりません。(拍手)このことが、さらに、自衛権優先論となって現われ、自衛のためならば何をやってもかまわないという考えに発展いたして参っております。これは実におそるべき考え方であります。この考え方のもとに、オネスト・ジョンやB57など持ち込んでおるといたしましたならば、日本の将来は一体どうなるでありましょう。防衛に名をかりる侵略戦争へりの進展とならないと、だれが保障いたしましょう。(拍手)  次いで、二十万に近い陸上部隊を持つことは、防衛のためいかなる役割を果すのであるか。国内暴動に備えるためにはあまりにも多過ぎる。不必要である。しからば、日本を侵略せんとする敵の部隊が日本本土への上陸作戦をする場合に、これを防止するためでありますか。もしそうだとしたらば、今日、原水爆の時代に、そのようなことが一体考えられるでありましょうか。言うまでもなく、日本をやっつけようとするならば、原水爆の三発か四発で、ぴかりどしんとやれば、一切事済みであります。何を好んで、多くの人命と多大の兵器、弾薬、多額の費用を犠牲にいたしまして、上陸作戦に出てくる必要がありましょうか。こう考えると、上陸作戦に備えるための二十万ではなくして、それはおそらく外地派兵のために用いられ、傭兵的役割を果すような結果になりはしないかと思うのであります。(拍手)そうなると、前述の首相の侵略論や自衛力優先論と相待って、海外派兵、侵略戦争参加の構想がその片りんを現わしたものと見ざるを得ないのであります。そのような大それたことが、憲法改正もしないで、自衛権優先という首相独自の解釈で勝手にやられた日には、憲法国会も民主主義も吹っ飛んでしまいます。首相は一体何とお考えになりますか。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  22. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 佐竹君の御質問にお答えいたします。  佐竹君から、私が八日参議院で申しました言葉に対して御質問がございましたが、参議院で私が申しましたことは、自衛隊法の成立を機としまして、憲法九条に対する私の解釈を改めたということであります。現在、私は、自衛隊は憲法違反であるとは思っておりません。  第二について、自衛権は独立国家に固有の権利であるということは、佐竹さんも認められました。憲法九条がこれを否認するものでないという意味を私が答えたのであります。別に不思議なことは何もないのです。(拍手)第三には、自衛のための措置は自衛の目的の限度にとどまるべきものでありまして、ほかの、あなたがおっしゃるようないろいろの意味、海外派兵等のことは少しも言っておるわけではございません。たびたび申しましたことで御了解を得ておることと思います。(「具体的に答えろ」「九条はどうした」と呼び、その他発言する者多し)  自衛隊法ができましたからといって憲法九条が変更せられるというようなことはあり得ません。法律をもって憲法を改正するということはできないはずであります。私はそういう意味で言っているのではないのです。憲法九条に対する解釈を改めたということだけを言っているのでありまして、誤解のないように願います。  最後に、オネスト・ジョン、B57等が日本における基地に配備されたかどうか。これらは、もとより、防衛上の必要性に基くものでありまして、侵略のためでは全然ございません。海外派兵というようなことは、かつて考えたことはないのです。御安心下さらんことをお願いいたします。(拍手
  23. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 佐竹君から再質問の申し出があります。これを許します。佐竹晴記君。     〔「時間だ、時間だ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕     〔佐竹晴記登壇
  24. 佐竹晴記

    佐竹晴記君 総理大臣にさらにお尋ねをいたしますが、今月の八日、参議院の予算委員会で、あなたはこう述べておる。「今日では自衛隊は軍隊だ、兵力だ、戦力だというようなことを常識のように言うようになったのです。それは私は近いと思うのです。」「それですから、やはりそういう疑いのある憲法九条は改正をして、自衛隊の人自身がわれわれは国家を守る軍隊だというような自信を持つ方がいいと思いまして、やはり憲法の改正はしたいという考え方を持っております。」あなたはこう言われました。(拍手)現在の憲法九条が、あの自衛隊を持つことを禁止しておればこそ、このような説かあえて出るでありましょう。さらに、もし、鳩山総理の言うがごとく、自衛権は憲法第九条に優先する、その行使の方法についても制限を受けないということでありますならば、自衛権行使の方法は何でも自由にできるということになりますが、いかがですか。先ほど御答弁がない。  さらに、お尋ねいたしたい。それは宣戦布告のことです。旧憲法では、宣戦布告は大権事項に属し、天皇がこれを行うことになっておった。現憲法では何の規定もございません。そこで、総理大臣は、勝手にいつでも宣戦布告ができることになりましょうか。天皇の認証も無用であり、国会の同意も不要ということになるのでありましょうか。あなたは、一体、憲法第九条を排除いたしまして、自由に自衛隊の行動を許すというときに、あなた一人の所存で何でもできるとお考えであるか。まず宣戦布告の場合について、これをお答えせられたい。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  25. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、日本は、自衛のためならば、自分の国を守らなくてはならないということを言ったのでありまして、宣戦布告というようなことを考えたことはございません。
  26. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 佐竹君からさらに質問したいとの申し出がありますが、申し合せの時間は残りわずかでありますから、簡単に願います。佐竹晴記君。     〔発言する者多く、議場騒然〕     〔佐竹晴記登壇
  27. 佐竹晴記

    佐竹晴記君 総理大臣は、無用の疾言——この疾言の疾は疾病の疾であります。この疾言をいろいろお繰り返しになりますが、私の質問に対する要点のお答えがございません。弁解これ努めているようでは、国民大衆はもうい伊ぬと言い出しておるのでございます。(拍手、笑声)この際御静養になってはどうです。疾言を繰り返さないように、御健康を回復せられてはいかがであるか。おやめになった方がなお邦家のためによろしいと思うが、いかがでございましょう。     〔「答弁々々」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然]
  28. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 総理大臣から答弁の申し出がありません。(拍手)     〔離席する者、発言する者多し〕      ————◇—————
  29. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 下請代金支払遅延等防止法案趣旨の説明を求めます。国務大臣石橋湛山君。     〔国務大臣石橋湛山君登壇
  30. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) ただいま議題となりました下請代金支払遅延等防止法案につきまして、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。(「答弁だ、答弁だ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然)  下請代金の支払い遅延など、親事業者の下請事業者に対する取引上の思わしからざる行為につきましては、政府関係機関において、独占禁止法等の措置により、これが防止に努力してきたのでありますが、経済情勢が比較的好転した今日におきましても、遺憾ながら、この問題は改善されたとは必ずしも言い得ないのであります。(発言する者多しに下請代金の支払い遅延など、親事業者の不公正な行為は、わが国の経済において重要な役割をになっている中小下請事業者の事業経営を圧迫することになり、ひいてはわが国経済の健全な発達を阻害することになるのであります。従って、下請事業者の利益保護するためには、下請代金の支払い遅延などの防止について、さらに積極的な措置を講ずる必要があると考えられるのであります。(発言する者多し)ここにおいて、政府関係機関は、これまで本問題を処理してきた経験を基礎にして、これが対策を鋭意研究して参りました結果、本問題を解決するためには、独占禁止法のほかに、それと相並んで別個の法制を整えることが必要であるとの結論に達し、とこに本法案を提出いたした次第であります。  次に、本法案の概要について御説明いたします。(発言する者多し)  第一の点は、下請代金の支払いを中心にして、四つの点について親事業者の守らなければならない事項を明らかにしたことであります。
  31. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 石橋君ちょっと待って下さい。     [「石橋下れ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  32. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 石橋通産大臣、説明を続けて下さい。
  33. 石橋政嗣

    石橋国務大臣(続) 第二の点は、公正取引委員会は、以上の趣旨を順守しない親事業者に対しては、その行為を改めるために積極的な努力をするように勧告を行い、もしも親事業者がその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができることといたし、もって下請代金の支払い遅延などの敏速かつ円滑な解決をはかる方法を講じたことであります。  第三の点は、親事業者に下請代金の書面による明示及び下請取引に関する必要な帳簿書類の作成、保存の義務を課しまして、下請取引の公正化に資せしめるとともに、政府の指導監督に便ならしめようとしたことであります。  第四の点は、本法の施行に必要な限度において、公正取引委員会中小企業庁長官及び主務大臣の報告徴収及び立ち入り検査の権限を定め、下請取引の特殊性にかんがみ、政府が積極的にその監督を行い得ることといたしたことであります。  以上の四点が本法案の要点であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)      ————◇—————
  34. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) この際暫時休憩いたします。     午後五時四分休憩      ————◇—————     午後六時十九分開議
  35. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 休憩前に引き続き会議を開きます。      ————◇—————
  36. 益谷秀次

    議長益谷秀次君)佐竹君から先刻の質問に対して答弁漏れがあるとの申し出がありますから、その旨を内閣へ伝えて、速記録を調べた上、もし答弁すべきところがあれば願うことといたします。  なお、先刻の佐竹君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。      ————◇—————  下請代金支払遅延等防止法案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  37. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより下請代金支払遅延等防止法案趣旨の説明に対する質疑に入ります。長谷川四郎君。     [長谷川四郎登壇
  38. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 ただいま上程になりました下請代金支払遅延等防止法案に関しまして、自由民主党を代表いたしまして、政府に所信をただしたいと存ずるのであります。  提案理由にも述べられました通り、戦後のわが国には、親会社が下請企業に対しまして、その支払うべき下請代金を故意に遅延したり、または値引きを強要するなどの悪い風潮が一つの特徴となっておったわけであります。中小企業のこうむる経済的圧迫は、まことに放置しがたいものがあるのでありまして、昨年来の一般的金融緩漫化傾向にもかかわらず、親企業は、下請支払いを依然として滞らせておるというような状態であります。下請企業に対する親企業の支払いの遅延の問題は、ここ数年来、一種の社会問題化するまでに問題化してきておるのであります。政府がこの点に深く考えを寄せられまして、今回この法律案を提出したことは、まことに時宜を得たものと存ずる次第であります。法律案の内容並びに運用に関しまして若干の疑義がありますので、この際、次のような諸点に関しまして当局の答弁を得たいと思うのであります。  その第一は手形期日に関するもので、大蔵大臣の御所見を伺いたいのであります。支払いの遅延、決済の遅延は、何も下請代金のみではありません。下請代金は、その構成の大部分が賃金に相当するもので占められておるのでありまして、その遅延は特に改善を要すると考えられるのであります。従って、ここに本法案の提案となったわけでありましょうが、その他の取引におきましても、支払いが遅延し、しかも、その支払いが多く手形となっており、その手形もだんだんに期日が延びてきて、九十日となり、百二十日となり、ひどいのになると二百十日、世にいう台風手形というようなものが現われる状態になっておるのであります。終戦直後のように、何でも現金でなければ取引ができないというのでも因ったことでありましょうが、そうかといって、現在のように長期の手形が横行するのも感心したものではないと思うのであります。しかも、この長期の手形は、親企業のような比較的信用のある強いものが振り出して、これを信用の乏しい弱小の中小企業に受け取らせるのでありまして、従って、割引に対しましてもおのずから限度があるのであります。相当に無理に無理を重ねてきているような次第であります。今や金融の正常化の叫ばれている時代、大蔵大臣は、この手形期日の短縮、決済関係の確立、これらに対しますところの御所見と、それに対する対策をお持ちになっておるかどうか、この点をまずお伺いしたいのであります。  第二は、第二条に関するものでありまして、公正取引委員長並びに通産大臣にお尋ねしたいのであります。第二条は、本法案でいうところの下請の内容を規定するもので、製造委託、修理委託が下請代金の支払い関係を発生させることになっておるのであります。商品の収集を委託する場合はこれに入らないように見受けられますが、その通りであるかどうか。商品の買い集めを委託されて、これを納入したが、代金がもらえないというようなことは、その代金の直接の構成要素は賃金に相当する部分がかなりあります。このような取引までもこの法律で救済しようとすることは少し無理かもしれませんが、しかし、そのような取引については本法は関係しないということになれば、悪質な親企業は、製造委託をやめて商品収集の委託だと擬装し、下請ではない、売買だ、売買ならば本法の規制は受けないはずだと言うかもしれないのであります。もしこういう擬装の取引があったとするならだ、どうする考えを持っているか、この点を公取委員長にお伺いするとともに、商品収集の委託までは本法が及ばないとするとき、そのような取引をもって強者が弱者をいじめるという事態に対して、いかなる対策をお持ち合せであるか、これを伺いたいのであります。  第三は、同じ第二条について公取委員長に伺いたいのであります。何ゆえに親企業を資本金一千万円以上と限ったかということであります。たとい資本金一千万円以下でも、下請を利用するものは幾らでもおります。織物問屋が機屋に織らせるような場合、問屋が資本金一千万円以下ならば、機屋はこの法律の恩恵を受けられないということになるのであります。下請業者から見れば、なるべく一千万円以上の親事業者の下請だけを引き受けなさいということになります。また、逆に、親事業者に対しては、一千万円以下の下請業者に下請させると、この厄介な法律の規制を受けるから、なるべく大きな一千万円以上の業者に下請をさせなさいというようにも見えるのでありまして、この点、いかなる理由でこのような限定をなさっておるか、御説明が願いたいのであります。  第四にお聞きしたいのは、本法案成立の暁に、政府当局は本法の実施についてどのくらいの確信を持っているかということであります。法案第四条は、親事業者の順守事項として、親事業者の行なってはならない行為四つをあげておるのであります。すなわち、不当解約、不当支払い遅延、不当値引き及び不当返品とも称すべき事項でありまして、これが下請業者を苦しめておったのでありまするから、これを禁止するのは当然であります。これが順守されれば本法の目的は達せられるのでありますが、これを実施することによって親事業者の利益というものが薄くなるのであります。そこで、親事業者は、第四条を誠実に実施したくないだろうと思います。もしこれを実施しない場合、公取は第七条によって実施するように勧告することができ、もしもその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができることになっています。公表が最大の罰であって、これには別に罰則の適用がないのでありますが、公表は親企業にとってもかなり苦痛だろうと考えられるので、この程度の制裁でよいとしても、果してこれらのことが実施できるかどうか、いささか心配になるのであります。その場合、下請発注量の減少、下請単価の切り下げ、納期の短縮等によって、下請企業者に悪影響がありはしないかと思いますが、この点に対しましては、いかがでありましょう。まず、公取は親事業者の第四条違反の事実を的確につかめるかどうかということであります。出先官庁もなく機構も小さい公取で十分にやれるかどうかということであります。下請企業の方から親企業の不当行為を訴え出ればよいのでありますが、親企業ににらまれると、あとでおそろしいというようなことで、下請業者からは申し出さない。公取に報告徴収及び検査の権限が与えられているが、前にも申しました通り、擬装した報告がなされる懸念もあるのであります。さらに、もし悪質の親企業者を公表しようとするようなことがあっても、元来、親企業は、政治的にも経済的にも強力なる背景を持っているものであるから、公取の力ではいかんともいたしがたいというようなことがありはしないかと思うのですが、この辺はどうであるか。  次に、運輸大臣に承わりたい。造船部門の下請支払いは相変らず悪いと聞いている。造船に対する融資ないし利子補給制度の運用に当って、下請企業者に対するひもつき支払い等の方法を考えてはどうかと思うのですが、この辺はどうでありましょう。  さらに、本法実施に当って、運輸大臣、通産大臣が十分これに協力するという決意がなければならないのであります。これらに対するその決意の披瀝をはっきりとしてもらいたいのであります。  最後に、第五点として、公取が一昨年三月に公表した下請代金の不当な支払い遅延に関する認定基準なるものについてであります。公取では、これに違反した場合は独禁法第十九条違反として処断すると申しておりました。そして、公取と中小企業庁で協力して、すでに何回か下請代金に関し調査も行い、勧告もしてきたようであります。しかし、それがあまり実効を上げ得なかったことは事実だろうと思うのであります。この際お聞きしたいのは、認定基準なるものは、第四条の遅滞なく支払うことの基準として考えてよいものかどうか。この点について、公取委員長の御意見を伺いたいのであります。  細部の質疑委員会に譲ることといたしまして、以上の諸点につきまして、政府当局の明快なるお答えをお願い申し上げます。(拍手)     〔国務大臣萬田尚登登壇
  39. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 下請代金の支払いは、相当部分手形によりまして、しかも、その手形が相当長期でありましたことは、まことに遺憾に存じております。今後におきましては、この手形の期日の適正化に極力努力いたして参るつもりであります。もしもこれが不当に長い場合は、今回のこの防止法の実施によりまして、これに違反することになる。同時に、また、最近の金利情勢からいたしまして、今後大企業においてはそう金融に困ることはありませんから、両々相待ちまして、中小企業並びにこの下請代金の支払いについて支障ないだろうと考えているわけであります。(拍手)     〔国務大臣石橋湛山君登壇
  40. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 長谷川君の御質問に対してお答えいたします。  一つは、実際は下請でありながら、うまい工合に擬装されることがありはしないかということがありますが、それは、公取ばかりでなく、通商産業省、中小企業庁におきましても常に検査をいたしまして、さような擬装が行われることを発見いたしまして、十分取り締ることにいたしております。  それから、第四条に、幾つか、親事業のやってはならないという条項がございます。それについて、もしそれを実施しない場合には勧告をする、と同時にこれを公表する、制裁する、一応そうなっておりますが、同時に、これは公取の方の取り締りに当りますから、今度の法律は、法律として公表するもりでありますけれども、それと並んで、公取の審判にかけて制裁をするということになりますから、十分この実施は効力があるものと考えます。  それから、このことのために下請企業が親企業によって圧迫されることはないかということでありますが、これがないように、実はこの法案は非常に注意をして作ったのであります。すなわち、一つ一つのケースについて訴えを受けて、これを取り締るということになりますと、いろいろの弊害を生じますので、平生におきまして書類その他を備えつけさせて、そうして、ふだんに通商産業省あるいは運輸省その他もこれに立ち入って検査をする。公取ばかりでなく、関係各省がときどきこれの検査をして報告をさせる。さようなことで、一般的に親企業が不法なことをやっておることを発見するという形において、この法律を適用するということによりまして、一つ一つの小企業が特に親企業からねらわれる、にらまれるというようなことを防いだつもりでございます。  なお、これについては、公取委員会が、従来通り、あるいは従来以上に活動することは申すまでもございませんが、実は、中小企業庁、通産省として、ぜひともこの法案をほしい、この法案によってやりたいということで立案をいたしたわけであります。公取委員会によってこの法案そのものが作られましたけれども、通商産業省が実はこれを希望して提案をしたようなわけでありますから、むろん私どもとしては十分協力し、率先してこの法案の実施をいたしたい。運輸省その他も、ぜひ自分たちも参加させろという各省からの要求があったくらいでございまして、むろん大いにやってくれるということを信じておるわけでございますから、御懸念はないものと私は考えます。  その他の点につきましては公取委員長から申し上げることにいたします。(拍手)     〔国務大臣吉野信次君登壇
  41. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) お尋ねの造船業の下請業に対する支払いにつきまして、計画造船の対象となっておる造船会社に、運輸大臣が権限をもって干渉するというまでのことは考えておりませんが、通産大臣と十分連絡をとりまして、その支払いがおくれないように努力いたす考えでございます。     〔政府委員横田正俊君登壇
  42. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) ただいまの御質問のうち、公取に関係いたしますものを簡単にお答えいたします。  先ほど脱法が行われないかという御心配でございました。この点は、先ほど通産大臣から申し上げました通り、この法律は製造委託という表現を用いておりまするが、これはあくまでも実質をとらえての規定でございまして、かりに売買その他適当な名目をもちましてこれを脱法いたそうといたしましても、実質において製造委託ということの認定ができます限り、公取といたしましては、これを取り上げ、この法律の対象にいたす所存でございます。  それから規模の点でございまするが、これは、公取といたしましては、この下請問題につきましては、すでに昭和二十八年から三カ年の経験を持っておりまして、この経験に基きまして、この程度の規模の親企業を押え、また、このくらいの小さな下請企業というものを目標に法律を作れば、大体この目的は達せられるというところに線を引きましたわけでございまして、先ほど仰せられましたように、あるいは、特にこの基準に触れないような下請企業を選ぶという、まれな場合もあるかもしれませんが、しかし、実際問題として考えますと、親企業がその下請企業を選択いたします場合には、いろいろ経営上の具体的な必要があって選ぶわけでございまするから、特にこの法律をくぐるために一千万円以上の下請企業を選ぶというようなことはまず考えられないと存ずる次第でございます。  それから、この法律を作っても公取でやれるかという御心配でございますが、これは、ただいま申しましたように、三年間この問題にはじっくり取り組んで参ったわけでありまして、今後も大いにやるつもりでございます。また、実態の把握につきましても、今までの経験を土台として大いにやって参り、御心配のようなことはないようにいたすつもりでございます。  なお、業界からいろいろ圧迫はないかというような御心配でございますが、要するに、公取といたしましては、この問題につきましては、独断に陥らないように注意をいたしまするとともに、厳正なる態度を持ち、かつ、熱意を持ってやって参りたいと考えております。  なお、認定基準につきましては、大体、あの法律の第四条の規定の適用につきましては、すでに発効いたしました認定基準を一応の標準にして参るつもりでございます。  なお、この法案の結果、逆効果を来たすようなことがございますれば、この点も、われわれといたしましては、運用のよろしきを得れば、決して逆効果を来たすことはないと確信しております。(拍手
  43. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 田中武夫君。     〔田中武夫登壇
  44. 田中武夫

    田中武夫君 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となりました下請代金支払遅延等防止法案について若干の質疑を行い、鳩山総理以下関係閣僚に、その真意をたださんとするものであります。(拍手)  わが社会党は、今国会提出せられる商工関係の法案中、さきに提出せられた百貨店法案、繊維工業設備臨時措置法案及び本法案の三法案は、ともに本会議においてその趣旨説明を求めたのでありますが、政府及び与党は、これら法案の内蔵する欺瞞性が国民の前に暴露せられることをおそれ、百貨店、繊維両法案は本会議における趣旨説明を拒否せられ、比較的無難と思われる本法案のみ本会議に上程せられたのであります。(拍手)  そこで、私は、この際、最初に、政府中小企業に対する基本的な態度について鳩山総理にお伺いいたします。政府は、常に中小企業の振興と安定を口にしながらも、そのなすところは大資本擁護、産業経済の独占化助長の政策ばかりであります。(拍手)その結果は、中小企業は自然につぶれていかねばならない状態に追いやられております。政府が最近国会提出した経済立法は、たとえば、二十二国会において、われわれの反対にもかかわらず成立した石炭鉱業合理化臨時措置法、輸出入取引法の一部改正法、また、先ほど申し上げた繊維工業設備臨時措置法案等々のごとく、そのほとんどが、私的独占禁止法をその一角々々から切りくずして骨抜きとし、公正取引委員会を有名無実にするための法案ばかりでございます。ために、中小企業はこのしわ寄せの犠牲となり、ますます圧迫を受け、企業は危機に瀕し、倒産、破産する業者は続出し、経営難、生活苦からの一家心中等が次々と起り、今や大きな社会問題となっている実情は、鳩山総理といえども、よもや知らぬとは言わせぬが、鳩山総理は、このような状態を何と見、どう考えておられるか。中小企業保護育成には、独占禁止法を強化し、大資本の横暴を抑制しなければならないと思うが、総理もまた、だれかのように、中小企業の五つや十倒れても仕方がないとでも言われるのか。アメリカからせき立てられ、おだてられて憲法を改正しようなどと、とんでもないことを考えないで、もしあなたに血と涙があるならば、もっと手近な、深刻な社会問題を、日本の総理として、なぜ解決しようとはしないのか。その経済政策の基本的態度を率直に述べていただきたい。(拍手)  また、石橋通産大臣は、通商産業政策に関する基本的政策で、中小企業の育成を四重点政策の一つにあげ、この際新しい認識に立ってこの育成強化をはかると強調しておられるが、大臣の新しい認識とは一体どんなものなのか。その新しい認識で作られたのが、最近次々と出されてくる独禁法緩和の中小企業圧迫法案なのか。果して政府中小企業保護育成の積極的対策として何を具体的に用意しているのかを聞かせていただきたい。わが党は、中小企業振興法、わが党案のような百貨店法、中小企業の運転資金確保を含む最低賃金法等の制定と並行して、初めて下請代金支払遅延防止法制定の積極的意義があり、それなくしては真の中小企業保護はできないと確信する。(拍手)  次に、高碕国務大臣にお伺いいたします。あなたは、施政演説で、「中小企業につきましては、わが国経済に占める重要性にかんがみまして、その経済的地位の向上をはかる」と言われたが、現在政府がやっている経済政策や経済立法で、果して中小企業の経済的地位を向上させることができるか。あなたの言われる中小企業の経済的地位の向上とは一体どんなことなのか。総合経済六カ年計画の中で、中小企業をどのように把握しておられるのかを承わりたい。下請代金支払いに関する法案は、御承知のように、二十二国会において、わが社会党から、ただいま政府提案せられたものよりも、より完備したものを提出したのでありますが、国会最終日に、砂糖三法案とからみ、無情にも保守党諸君の手でつぶされたのであります。しかるに、今日政府がこれを提案してきたのは、どうせ社会党がより強い下請関係調整法案を出してくるに違いないから、参議院選挙を前にして、全国下請業者に何とか手を打たねばまずいと考えたからであります。(拍手)今、政府をして、この程度ではあるが、この法案を出さしめたのは、政府でも、また与党でもなく、全国十万の下請業者の熱意と、わが社会党であることを、政府及び与党の諸君は銘記せられたい。(拍手)  下請代金の支払い遅延が問題となりましたのは昭和二十七年のころからで、今日では現金支払いはほとんどなく、すべて手形支払いで、その手形たるや、百五十日あるいは二百十日、二百七十日というような、手形とは言えないような約束手形で支払いを受けている。零細なネジ業者が、大資本を擁する親企業に常に百万円以上の金を貸しており、その下請業者は、百万円の証書を入れて八十万円の手取りで、しかも日歩五銭以上の高利の金を借りて、何とか苦しい経営を続けているというのが、今日の下請業者の姿である。市中銀行はもちろん、中小企業金融公庫、商工中金すら相手にしてくれないので、自分のところの労働組合に泣きついて、労働金庫から融資を受けて、やっと年末を越すことができたのも数多いのであります。しかも、下請代金の支払いは一年近くもほおっている親企業が、二割以上の高額配当を続けているのであります。一萬田大蔵大臣は、このような実情を御存じでしょうか。そこで、親企業が発行した手形ですぐ下請企業が金融を受けられる方法はないか、また、このような無情な親企業には配当を制限する措置を講ずる考えはないか、大蔵大臣にお伺いいたします。  旧民主党の諸君は、このパンフレットに見覚えがあると思うが、これは、昨年、総選挙に際し、旧民主党が発行した政策要綱であります。この十四ページに、「中小企業向金融機関たる中小企業金融公庫、商工組合中央金庫及び国民金融公庫につき、その運用を改善して能率化を期するとともに、そり資金源の増強をはかる。」と明記せられております。中小企業金融公庫への政府の出資金を削り、六分五厘の利息が頭からついている運用部資金とすりかえるようなことをしないで、この公約に従い、今後、中小企業の金融機関について、その資金源の増加、運用の改善、能率化等にどのような具体的方法を考えておられるのか、大蔵大臣及び通産大臣より承わりたい。(拍手)  下請代金支払い遅延の現状が、これで打開できるとお考えになっておりますか。なぜ検収及び下請代金支払いに関して期日をきめなかったのか。ただ単に、遅滞なく支払わないことといった、抽象的な規定で解決できると考えておられるのか。また、下請代金について、なぜ先取特権を認めていないのか。下請企業の債権について、先取特権を認める親心はないか。また、親企業が契約前に下請単価をたたいて、安くさせる危険があると思うが、親企業下請企業が対等契約ができるようにするには、下請業者の地位向上を考えねばならない。下請業者の地位の向上のために必要な中小企業の組織化と、その組織の保護育成についてどう思っておられるか。また、昨年二月発足した日本生産性本部は、その事業計画の中に、下請企業の専門化をあげてこれを推進しているが、政府及び大資本家は、下請企業の専門化、実は下請企業の親企業へのより従属強化を考えているのではないか、通産大臣並びに公正取引委員長の御所見を聞かせていただきたい。  本法案は、土木、建築を除くすべての業種を対象としているが、この膨大な業種、企業に対する監視が、今日の公正取引委員会の機構、人員でほんとうにできますか。政府は、下請業者への言いわけのためにこの法案を作ったが、実施に当り、腹から円滑な運営について考えておられるのか。労働基準法があっても、今日これが十分守られていないことは、周知の事実であります。その言いわけは、監督官が少いから十分な監督はできないとのことである。同じような結果になることをおそれるのでありますが、公正取引委員長は、現在の人員で十分な運営をしていく自信があるかどうか、お伺いいたします。また、河野行政管理庁長官に、本法の実施に当り、公正取引委員会の定員を増す考えはないか、承わりたい。  最後に、私は政府並びに与党の諸君に申し上げます。諸君には、大企業の資本の暴力、無制限な圧力の前に、今やぎりぎりのせとぎわまで追い詰められ、死の叫びを叫び続けている、全国中小企業者の血を吐く叫びが聞えませんか。ことしはサル年だからといって、何も見ざる聞かざるをきめ込まずに、この現実を直視し、この叫び声に耳を燈ませていただき、今、もし、諸君らに、中小企業者に対してなしました公約を実現しようとする一片の良心があるならば、今からでもおそくはない、本法案をさらに一歩前進せしめ、十分な運営をはかることはもちろん、今国会提出せられている繊維その他の中小企業圧迫法案は全部撤回し、社会党提出中小企業保護法案をすべて成立させるために努力していただくよう強く要望いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  45. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 田中君から、第一に、経済政策の基本の態度について御質問がございました。政府は、基本的には、自由主義経済の基調のもとに、長期かつ総合的な経済計画を策定いたしまして、施策の総合性、一貫性を保持していくことが肝要であると思っております。政府は、かような認識に基きまして、さきに経済自立五カ年計画を樹立いたしたのであります。今後は計画の目標に対して一歩々々着実に前進していく考えであります。  なお、独占禁止法の取扱いについての御質問がありました。独占禁止法の取扱いの運営については、中小企業に対する影響を十分に配慮いたしまして、大企業中小企業の総合的調和の維持と、生産品種の専門化、事業分野の明確化をはかりつつ、中小企業専門分野に対する大企業の過度の進出の抑制を考慮する考えであります。(拍手)     〔国務大臣石橋湛山君登壇
  46. 石橋湛山

    国務大臣石橋湛山君) 田中君の御質問は非常に多岐にわたっておりますが、どうも、何でも欺瞞性と言いますが、私どもの案には欺瞞性など一つもないのです。(拍手)それから、また、この前の国会以来の、たとえば石炭の法案その他を、これは大企業保護だとか、中小企業を無視しているなんということは、とんでもないことでありまして、これはことごとく中小企業保護なんです。大企業保護の法案などは一つもありません。私が中小企業に対する新しき認識と申しましたのは、ただ口だけで中小企業の対策々々と言うのではだめなんでありまして、そうでなく、ほんとうに親切にものを考えよう、今までの救済的な対策でなく、ほんとうに中小企業日本で経済的に成り立つような方策を講ずるのが新しき認識なんです。われわれの案がいかに正しいかということは、これはもう、社会党からお出しになった、たとえば百貨店法案と一つ比較して、今後御検討を願いたい。(拍手)検討して下されば、いかにわれわれの案が親切であるかということがわかりますから、それはいずれまた御審議を願いたい。  それから、この、今提案になりました法案が、下請企業を親企業に一そう隷属させるようなことにならぬかというような御質問があったようでありますが、われわれは下請企業と親企業の密接化をはかりたい。いわゆる下請企業を隷属させるというような考えを持っておりません。また、この法案によって、そういうことにはならないと確信しております。  なお、この法案の実施が人員の関係上果してうまくできるかという御懸念があるようですが、これは、先ほども長谷川君の質問に対してお答えしたように、単に公取だけでなく、中小企業庁その他が今回はこの法案に協力してやるのでありますから、十分法案の実施ができるという確信を持っておりますから、どうぞ御安心を願います。(拍手)     〔国務大臣碕達之助登壇
  47. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 経済五カ年計画におきまして、輸出の増進と雇用関係をよくする上におきまして、中小企業がいかに重大であるかということは、むしろ、大企業よりも優先的にわれわれは考えているのであります。(拍手)つきましては、中小企業の協同組合法、中小企業安定法を推進いたしまするとともに、中小企業の財政的投融資を含めまして、金融の円滑化をはかることにしております。同時に、中小企業生産品種の専門化、事業の分野等も確立いたしまして、大企業がむやみに過度に進出して中小企業を抑制するようなことがないように考慮していきたいと思います。(拍手)     〔国務大臣萬田尚登登壇
  48. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 下請代金の支払い、総じて中小企業に対しまする支払いが期日の長い手形によっておるということは、これは私も残念に思っておるのでありまして、できるだけこの手形の期日を短かくするように努めておるわけであります。今後一そう短かくしたいと思います。  それから、支払うべき代金を支払わずに配当することはもってのほかであるのであります。今後は、支払うべきものはきちっと払いまして、そうして配当する、かように持っていきたいと思います。  なお、支払いを確実にいたしますために、中小企業向けの資金がいることは言うまでもありません。これを豊富にいたしますために、三十一年度の予算におきましては、国民、中小両金庫が貸し出し得る資金量は、三十年度に比べまして百億以上ふやしております。配慮を加えておるわけであります。なお、この金利につきましても、中小企業関係の貸出金利を一厘ないし二厘五毛程度最近下げておりまして、金利負担もよほどよくなったと思います。  なお、そのほか、中小企業信用保険の強化、あるいはまた信用保証協会、これを強化していく。かようにいたしまして、極力中小企業資金の円滑をはかっておるわけであります。(拍手)     〔国務大臣河野一郎登壇
  49. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 本法案の実施に伴いまして当然事務量の増加が予定されますが、中小企業庁及び主務大臣の協力が得られることになっておりますし、公正取引委員会には現在二百三十七人の定員がありますので、さしあたっては、現行の機構と定員を活用して調査、監督を行なっていくことができると考えております。なお、今後、実施によりまして、必要に当って考慮いたすことにいたしたいと考えます。     〔政府委員横田正俊君登壇
  50. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) ただいまいろいろな点の御質疑がございましたが、先取特権の問題と申し、あるいは買いたたきの問題と申し、これはいずれも非常に重要な問題でございますが、しかし、この先取特権の問題は、いわゆる完全な民法的な問題でございますし、買いたたきの問題は、これは非常にむずかしい問題でございまして、今後の問題としまして大いに検討いたしたいと考えております。  なお、最後に、公取で現在の人員でこの仕事がやれるかという御心配でございます。この点につきましては、河野さんからも申し上げましたように、この三年間、中小企業庁と非常に密接な連絡をとりましてやって参ったのでありますが、しかし、何分、今度の法律の範囲は、現在まで取り上げて参りましたものよりだいぶ範囲が広まっておりますので、一応ただいまの人員で発足をいたしますが、施行の上におきまして、必ず困るような事態が生じてくるのではないかと予想されますので、その場合には、政府当局とよく相談いたしまして、適当な措置をとってもらうようにいたす所存でございます。
  51. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  52. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。     午後七時五分散会