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1956-03-02 第24回国会 衆議院 本会議 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二日(金曜日)     —————————————  議事日程第十五号   昭和三十一年三月二日     午後一時開議  第一 防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二 自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出)     ————————————— ●本日の会議に付した案件  日程第一 防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第二 自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出)  国防会議構成等に関する法律案内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑     午後七時八分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第一、防衛庁設置法の一部を改正する法律案日程第二、自衛隊法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。内閣委員長山本粂吉君。     〔山本粂吉登壇
  4. 山本粂吉

    山本粂吉君 ただいま議題となりました防衛関係法案について、内閣委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。まず、防衛庁設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。本案、現下の諸情勢に対処し、わが国防衛力を国力に応じで整備充実するため、防衛庁職員定員を一万九千百九十三人増加し、現在定員十九万五千八百十人を二十一万五千三人に改めるのが、その骨子であります。この一万九千百九十三人の定員増加のうち、一万七千四百十三人が自衛官であり、残りの千七百八十人が自衛官以外の職員増加となっております。自衛官一万七千四百十三人の増加分内訳について申し上げますと、陸上自衛隊において一万人、海上自衛隊において三千三百二十五人、航空自衛隊において四千八十八人をそれぞれ増員することにいたしております。以上の増員される自衛官は、陸上自衛官については、新設の第九混成団特科大隊三、東北地区補給処等要員であり、海上自衛官については、艦船及び航空機増強に伴う要員であり、航空自衛官については、新設の第二航空団並び教育訓練の充実及び補給その他の支援業務等要員であります。また、自衛官以外の職員千七百八十人の増加内訳について申し上げますと、防衛大学学年進行に伴い二百三十九人、技術研究所機能拡充に伴い七十一人、調達実施本部整備に伴い三十八人増加するほか、陸海空の各自衛隊を通じて一千四十七人の増員がおもなるものであります。以上の定員増加のほか、自衛隊日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基き、米国のいわゆる軍事顧問団から教育訓練等援助を受けておりますが、その便宜を考慮して、同援助協定附属書G第二項の現物提供業務については、労務提供に関するものを除き、調達庁の所管にかかわらず、当分の間これを防衛庁経理局等で実施することにしておるのであります。次に、自衛隊法の一部を改正する法律案について申し上げます。本案は、自衛隊任務遂行に万全を期するため、部隊新設並び自衛隊運営上の経験にかんがみ、所要の規定整備するものであります。その第一点は、陸上自衛隊長官直轄部隊として、新たに東北地方に第九混成団新設し、その本部を青森市に置き、また、航空自衛防衛力整備の一環として第二航空団新設し、その司令部を浜松市に置くこととし、これに伴い、従来の航空団は第一航空団と改称することにいたした点であります。第二点は、自衛官募集等に関する事務を所業する地方連絡部は現在二十三府県に置かれているのでありますが、昭和三十一年度において全都道府県に設置するため、さらに二十六ヵ所増置することとし、地方連絡部長には事務官をもって充てることができることにいたした点であります。第三点は、自衛隊の飛行場に自衛隊航空機以外の飛行機が着陸した場合において、総理府令の定めるところにより、ガソリン等の需品を無償で貸し付けることができることといたしたことであります。第四点は、米駐留軍自衛隊と隣接して所在する場合において、総理府令の定めるところにより、自衛隊施設による給水等の役務を適正な対価をもって提供することができることにいたした点であります。なお、附則において、混成団及び航空団設置の時期が施設等の事由であらかじめ規定することが困難でありますので、公布の日から起算して十ヵ月をこえない範囲内で、政令をもって定める日から施行することといたしております。これらの二法案は、二月十四日本委員会に付託され、翌十五日政府説明を聴取し、引き続き質疑を行い、前後九日間にわたって、自衛権限界長期防衛計画米駐留軍撤退との関係防衛分担金自衛隊増強理由部隊配置原則防衛庁予算執行及びその不当使用問題等について、防衛庁長官及び政府委員に対し活発なる質疑を重ね、慎重に審議を行なつたのでありますが、その詳細については、何とぞ会議録によって御承知をお願い申し上げます。昨三月一日、質疑を打ち切つた後、自衛権範囲について、鳩山総理は、わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害手段として、わが国土に対し誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法趣旨であるということ、私どもは考えられないと思うのでありまして、そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の処置をとること、たとえば、誘導弾等による攻撃を防御するのに他に手段がないと認められる限り、誘導弾等基地をたたくことは、法理的には自衛範囲に含まれ、可能であるというべきものと思うのでありますと、政府見解を直接明らかにいたしました。かくて、討論を省略し、採決の結果、多数をもって原案の通り可決いたした次第であります。(拍手)右、御報告申し上げます。
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 討論の通告があります。これを許します。細田綱吉君。     〔細田綱吉登壇
  6. 細田綱吉

    細田綱吉君 私は、日本社会党を代表しまして、ただいま議題に供されました、自衛隊法の一部を、また防衛庁設置法の一部をおのおの改正する法律案に対し、反対討論をいたすものでございます。(拍手)本法律案は、ただいま内閣常任委員長から詳細に御説明のありましたように、陸上自衛隊約一万人を増員し、そして一個混成団特科三個大隊新設を行い、また海上自衛隊は、約三千六百名の増員をして、艦船七隻の建造と、航空機四機を購入し、なお米国から艦船三十隻と航空機三十機の供与を受け、航空自衛隊は、約四千八百名を増員して、一個航空団新設を行うのほか、なおまた米国から百十一機の供与を受け、さらに百二十機の調達を行うことによって、いずれも陸海空の各自衛隊増強をはかるものであります。よって、これに反対する第一の理由は、前述のような防衛体制の強化は、政府がいかに詭弁を弄して説明しようとも、明らかに憲法第九条にかたく禁止されております陸海空軍というりつぱな軍隊による戰力保持であるからであります。(拍手)申し上げるまでもなく、一国の大本を定めてある憲法は、何人もこれを順守しなければなりません。もし戰力保持を必要とするなら、すべからく国民投票に訴えて憲法を改正してから初めて許さるべきでありまして、(拍手政府便宜によって憲法の条章を無視または曲解するがごとき悪例を残すならば、後世いかにりつぱな憲法法律が制定されましても、それは時の権力者にとつては一顧だに値しない存在であり、これこそ、まさに、民主政治を破壊して独裁政治を迎えるものであると考えます。(拍手)  反対する第二の理由は、本法案は、戦力保持して武力による威嚇態勢をとり、これによって国際紛争を解決せんとするものでありまして、これこそ、将来必ず戦争を誘発する、きわめて危険な結果をもたらすからであります。(拍手わが国憲法は、国際平和を誠実に希求しております。独立を守らんとするに急なる余り、昔日のままの一等国を夢みて、武力をもって国際紛争の解決の策とするがごときは、厳に戒めなければなりません。(拍手)また、日米行政協定の現存する今日、同法第二十四条の、いわゆる急迫せる脅威に籍口しまして、日米共同作戦に移行する危険性が非常に多いのでありまして、わが国戦力保持米国のための極東防衛に任することであり、ことに、本法案審議する過程において明らかにされましたように、鳩山総理及び船田防衛庁長官答弁によれば、急迫不正の侵害に対しては外国基地をすらたたくことができると言明しておりますが、これは明らかに交戦態勢の是認でありまして、これでは、あたかも狂人に刃物を持たすような危険きわまりないものであると考えるのであります。(拍手)  反対する第三の理由は、本法案の反面には、近い将来に一大軍備を持とうとする底意が露骨に含まれておるからであります。政府は、さき防衛六カ年計画を立てて、昭和三十五年までに、陸上部隊は、制服隊員職員で十九万五千人、これに予備自衛官二万名を加えて、総兵力量二十一万五千人を、また、海上自衛隊は、艦艇二百五隻、十二万四千トン、航空機練習機を含めて百七十機を保有する人員三万四千名を、さらに、航空自衛隊においては、F86Fを中心実用機が七百七十七機と、練習機T33を中心に五百十九機、計約一千三百機をもって編成する総人員四万一千人までに、おのおの増強しようとしております。しこうして、この計画は、昨年重光外相が渡米した際に、アメリカ政府に内示して、事前に了解を求めているにもかかわらず、日本国民に対しては、これをひた隠しに隠して、すでに昨年、陸上部隊二万名、海上部隊三千五百人、航空部隊四千人をそれぞれ増強し、本年またまた前述のような増強を企てております。今後、もし、かくのごとき方針を持続するならば、おそらく、昭和三十五年を待たずして、それ以前に該計画を完遂し、さらに、その後は、情勢の推移を理由としまして、一大軍備に躍進せんとする軍国日本の再現をはかっておるものだと考えるのでございます。(拍手)  反対理由の第四は、この法案は、明らかに、日本財政破綻に導くばかりでなく、社会保障制度等、その他の予算犠牲にしまして、国民生活を塗炭の苦しみに追い込む性格を持っておるからであります。現在、防衛関係費はすでに年間一千四百余億円が組まれ、これに軍人恩給等予算七百二十六億円を加えまするならば、優に二千一百余億円という、国家予算の二〇%以上を占める膨大なる予算を擁しております。ことに、防衛庁は、予算執行に際して、会計検査院の批難事項が非常に多いばかりでなく、年々この金が使い切れなくて、二百億円以上の繰越額を出していることは、御承知通りでございます。かくのごとき膨大な防衛関係予算が、さらに将来限りなく拡大せんと企図されつつあるのが本案でありまして、本案こそ、まさに国民生活を圧迫して、日本財政破綻に追い込む必然性を含んでおるものだと言っても、断じて過言ではないと考えるのであります。(拍手)  以上申し上げました理由によりまして本法案反対をするものでありますが、日本自衛隊が真に憲法に定められておる日本独立と平和と自由を保障するものであるならば、あるいはまた一点恕すべきものなしとしないでございましょう。しかるに、現在の自衛隊は、ことごと米国の指示と指導を受けて、全く自主性のない傭兵的軍隊でありまして、しかも、これが日本国民犠牲の上に築かれつつあるに至っては、断々固として反対しなくてはならないと確信するものでございます。(拍手)  政府においてはすみやかに本法案を撤回されんことを要望いたしまして、私の反対討論を終る次第であります。
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。  両案を一括して採決いたします。両案の委員長報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告通り決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立〕      ————◇—————
  8. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告通り可決いたしました。(拍手
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) この際、国会法第五十六条の二の規定により、国防会議構成等に関する法律案趣旨説明を求めます。国務大臣船田中君。     〔国務大臣船田中登壇
  10. 船田中

    国務大臣船田中君) 今回提出いたしました国防会議構成等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明いたします。  御承知通りさきに第十九回国会において成立を見ました防衛庁設置法は、その第三章におきまして国防会議のことを規定いたしておるのであります。すなわち、内閣国防会議を置くこととし、国防基本方針防衛計画大綱防衛計画に関連する産業等調整計画大綱防衛出動可否等につきまして、内閣総理大臣国防会議に諮問すべきものとし、また、国防会議は、国防に関する重要事項について、必要に応じ内閣総理大臣に対し意見を述べることができるものといたしております。しかして、国防会議構成その他必要な事項は別に法案で定める旨を規定いたしておるのであります。  政府は、以上のような国防会議任務にかんがみ、これが構成等につきまして慎重に検討して参ったのでありますが、ここに成案を得ましたので、今回本法律案を提出いたした次第であります。  次に、本法律案の主要なる点を申し上げます。国防会議議長及び議員をもって組織するものとし、議長内閣総理大臣をもって充てることとし、議員は、内閣法第九条の規定により指定された国務大臣外務大臣大蔵大臣防衛庁長官及び経済企画庁長官をもって充てることといたしております。なお、議長は、必要があると認めるときは、議員以外の関係国務大臣統合幕僚会議議長その他の関係者会議に出席させ、意見を述べさせることができることといたしております。以上のほか、議長及び議員の職務上の秘密保持につきまして規定いたしました。なお、国防会議事務につきましては、総理府国防会議事務局を置き、これに処理させることといたしております。  以上が本法律案提案理由及びその内容概要であります。何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。(拍手)      ————◇—————
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの趣旨説明に対する質疑に入ります。受田新吉君。     〔受田新吉登壇
  12. 受田新吉

    受田新吉君 私は、政府より提案されました国防会議構成等に関する法律案に対しまして、日本社会党を代表し、質問をいたさんとするものであります。  そもそも、本法律案は、すでに二十二特別国会に提出せられたのでありまするが、最も重要なる反動法案として名声を博し、オネスト・ジョンの国内持ち込みを契機として、ついに国会の賛同を得ることあたわず、あえなくもついえ去った、いわくつき法案であることは、諸君承知通りであります。(拍手)しかるに、時いまだ幾ばくも過ぎざる今日、再びここに批判の高い同法案が、民間議員の参加をめぐって二転、三転し、党内の派閥争いの具に供せられて容易にまとまらず、心進まぬ首相をしてついに裁断せしめて、強行提出を見るに至ったということは、われわれ国会議員として、提案者であるところの政府並びに与党議員諸君真意那辺に存するかを徹底的にたださざるを得ないのであります。(拍手)さて、私は、本法案がいわゆる憲法違反法案として、はたまた米国依存法案として重きをなす理由一つ——国際緊張の問題からただして参りたいと思うのであります。まず、昨年本法律案が提出せられましたときと今日と比較するとき、国際情勢は著しく好転しておる現実を見出さざるを得ないのであります。この間一年、ジュネーヴにおける四大国の平和共存への努力をかけた会談や、ブルガーニンのアイゼンハワー米大統領への友好条約締結呼びかけ、あるいはまた、米英両巨頭によってなされた侵略否定ワシントン宣言のごとき、そして近くはソ連における第二十回共産党大会において行われた、フルシチョフの、議会政治を通じて平和革命が行えるとの演説など、すべては国際緊張の緩和の努力を意味するものばかりであります。(拍手)冷戦に終止符を打ったとも見るべきソ連世界政策の大変革は、あながちソ連平和的ゼスチュアとのみ見るべきものではないと思われるのであります。私は、このような国際情勢のさなかに立って、祖国日本こそ、真の世界平和確立のために、東西いずれの陣営に対しても厳正中立、友好を守るべき使命ありと考えるのでありまするが、この平和的動向に逆行する国防会議設置をいたさんとせられます鳩山総理真意那辺にあるかを、お聞かせ願いたいのであります。なお、新聞は、近くダレス米国務長官来日を報じておるのでありますが、米国要人来日は、従来期せずして日本における軍備増強の督促となって現われておる過去の事例にかんがみ、今回ダレス訪日目的が果して軍備増強あるいは海外派兵の強力なる要請でないと、政府は断言できるでありましょうか。(拍手重光外務大臣は、昨年渡米に際し海外派兵を約したるごとく米国側で報道されておったのでありまするが、一応これを取り消してはいるものの、事実は、これが実現への前進が強硬に企図せられておるという危惧はきわめて濃厚なのであります。もし再びかかる強制が行われるとき、断固としてこれを拒否するだけの確信があるかどうか、重光外相の明快なる答弁を願いたいのであります。(拍手質問の第二点は、国防本質自衛権に関してであります。国防本質は、言うまでもなく、国を防衛することでありまするが、われわれの考えておる国防と、また政府の考えておる国防とは、その方式において、目的において、根本的に大いなる差異があることを見のがすわけには参りません。われわれの考えていることは、諸外国との相互信頼と、人類普遍平和意欲の上に築かれる、いわば新憲法骨子ともなっておる平和主義による国防方式であります。従って、国防内容をなす自衛権に対しましても、憲法第九条に忠実に従うところの合法的な解釈が当然要求せられなければならぬのであります。しかるに、政府は、自衛権を拡張解釈いたしまして、明らかに憲法違反と断ずべき自衛隊を創設し、自衛のためならば憲法の改正を待たずして軍隊を持ち得ると主張して参ったのであります。自衛隊は、わが国国内法においてのみ単に自衛隊と呼称されておりますけれども、実はりっぱな軍隊であることは、万人のひとしく認めるところであり、特に交戦に当って国際法軍隊規定を適用されるのは当然であります。従って、この際、政府見解をもってすれば、自衛隊の名称も、かつての軍国主義時代に立ら返って、国防軍と改定される日も遠くないと思うのであるが、船田防衛庁長官はいかなる御見解を持っておるのでありますか。さて、過日の内閣委員会におきまして、私の質問に答えて、船田防衛庁長官は、敵基地爆撃も時によっては自衛上行い得ることを答弁いたされ、きのうは、また、鳩山総理みずから、従来の言明を翻して、船田発言を容認せられ、かつ、取り消されたとはいえ、侵略攻撃を軽々しく発言されておるのであります。本日午後の内閣委員会におきましては、わが党鈴木義男氏の質問に答えて、再軍備の既成事実をもってして、憲法をごまかそうと企図しておるのであります。(拍手政府の従来の見解がきわめて広く解釈せられ、自衛戦争限界をして一大飛躍を遂げしめたことは、きわめて遺憾であります。また、そのような解釈政府の新たなる解釈として漸次構築される結果、当然に自衛のため敵基地爆撃と称して先制攻撃が行われる危険性が多分にあることは、おおうべくもないのであります。(拍手かくして、自衛の美名のもとに巧妙なる侵略戦争への発展を阻止し得ないことは、吉田前総理の言を待つまでもなく、あたかも満州事変及び大東亜戦争の実体が明らかにこれを物語っており、その轍を再び踏まんとするおそれなしと、だれが断言できますか。(拍手憲法規定を敢然として犯し、軍隊増強と、事実上交戦権を認めた、たくましき政府の施策は、立憲治下民主主義政府とは断じて言うことができないのであります。(拍手)次に、これに関連する具体的事例の一、二につきお尋ねします。敵基地を爆撃し得る場合の空軍は、敵国の領空に侵入する限りにおいては、事実上の海外派兵ではないかと思うが、どうであるか。次は、政府の言う、自衛のための戦争は認め、交戦権を認めるとするならば、憲法に禁止した交戦権はいかように考えているのであるか。憲法に抵触せざる交戦権があるのかどうか。あるとすれば、一九二一年へーグ条約による宣戦布告あるいは最後通牒の形式をもってする戦争の開始は、いかにこれを解釈しようとするものであるか。これを認めないとすれば、行政協定二十四条による日米共同作戦において、米国が他国と戦争を開始する場合、行政協定に基いて、憲法に違反して戦争をするのかどうかをお尋ねしたいのであります。(拍手)朝令暮改、変節常なき鳩山総理といたしましては、その持つ総理としての軍政二面からの強権発動に対して著しい国民的不安があるがゆえに、あえて総理の明快なる御答弁をお願いする次第であります。私たちは原則として認めることのできない国防会議ではありますが、一応その性格機構についてお尋ねをしておきたいのであります。国防会議は当然国家百年の計を決する国防計画を作成することとなりまするので、従って、かかる防衛計画は当然秘密化され、会議自体が本来の作戦用兵などの技術的なものについて会議を進めますがゆえに、従って、旧軍隊における参謀本部と同一の性格を有し、自然に制服軍人発言力が増大することは想像にかたくないのであります。ましてや、しろうと大臣によって構成される国防会議であるだけに、軍の作戦方式が文官優位の原則を実質的に漸次こわしていくと考えられるのであるが、この点に関し政府はいかなる見解を持っておられるか、明示していただきたいのであります。(拍手)現在、防衛庁は、総理府外局として国民の目を欺瞞し、憲法違反の焦点をはずしているのでありまするが、このたびの法案によると、国防会議内閣の中に直接設けられることになっており、一段の飛躍をいたしておるのであります。もし、内閣の中に国防会議設置され、国防計画の具体的な前進が決定するとなるならば、現在の防衛庁は当然その傘下におさめられてくるのではないか。果して、政府は、防衛庁総理府内外局にとどめておくことなく、かつて砂田前長官が勇ましくラッパを吹かれて宣伝されたごとく、国防省などという独自の省に昇格いたして、行政機構上のバランスをはからんといたしておるのではないか。この点に関しても、総理並びに防衛庁長官の明確なる答弁を願いたいのであります。(拍手)  質問の第四は、政治優先原則内閣責任制についてであります。国防会議が成立いたしまして、国防計画が作られた際には、その計画は具体的にかつ長期にわたり一貫した計画のものとならなければならないことは当然の帰結でありまするが、国防会議構成員は数名の閣僚であるがゆえに、内閣変動によって常に変革を余儀なくされ、その結果、その計画の事実上の立案者となるであろう国防会議事務局、さらには制服軍人が、常に内閣変動のらち外にあって確固たる実権を掌握し、国会意思国民意見を反映せしむる機会すら与えられないこととなるでありましょう。かくして、統帥権軍事秘密主義によって、政治優先原則は刻々と破壊を続けていくことは必然であって、ここにおそるべき軍事優先の萌芽を憂えないわけには参らぬのであります。  政治優先原則とは、内閣国会に対して絶えざる責任を持ち、国民の代表である国会によって行政監督が誠実に行われなければならぬのであります。総理によって任免権を掌握されておる一部閣僚による会議構成は、屋上屋を重ねるほか何ものでもなく、閣内閣議の域を一歩も出るものではありません。いわんや、総理議長となり、防衛閣僚会議たる国防会議の決定が閣議の承認を必要とするというにおいては、全くナンセンスであります。さすれば、総理は自己の意思に従わざる閣僚に対しては罷免権の発動をもって迫り、総理専断の会議とならないと、だれが保証しましょうか。(拍手)しこうして、一旦緩急あって原子力戦への誘発に際しても、総理は、自衛隊法規定により、防衛出動と称して、事前に国会の承認を経ずして自衛隊の出動が  できることになっておりまするので、兵馬の大権を握る時の総理の一存が、  一国の消長を決する重要なる自衛隊の出動を可能ならしめるという、まことに危険きわまりなき憂うべき状態をも招来することとなるのであります。いわんや、心身極度に衰弱して、しばしば正確なる判断を欠く鳩山総理や、公私混淆をもって鳴る船田防衛庁長官のごときが、片や大元帥として、片や元帥として、相呼応して国軍を指揮するときは、祖国の前途まさに暗たんたるものがあるのであります。(拍手、「時間時間」と呼び、その他発言する者あり)かかる点に対しまして、鳩山総理はいかように考えておられるか、統帥を国務がどういうようにして制限していくかということを、あわせて御答弁願いたいのであります。  私は、この際、防衛庁における庁費の乱費あるいは防衛分担金等に関し、いささか質問をいたして、質疑を終りたいと思うのであります。  言うまでもなく、国の予算は、すべて国民のとうとい血税であります。従って、わが国予算のうちで一割五分の莫大な比率を占める防衛庁関係予算において、放置できない事件が数々あるのであります。(拍手)その一つは  防衛分担金であります。わが国は年々三百億あるいは六百億近くを負担しておるのでありまするが、行政協定二十五条に基く日米防衛分担金取りきめによるその支払い分を米軍がいかように使用しておるのか監察できる当然の権利を有しながら、今日豊で一度もその監察を行なっておらず、(拍手)さらに、米軍の分担金が、いかほど、いかように出されているかという点につきましても、何一つ明確なものを持っていないのが実情であります。(拍手)一国の政府が数百億の支出をなすに当って、使い道も相手国の分担分もわからずに、漫然とかかる大金を出すということは、政治道義の上からも断じて許すべきではないと思うのであります。(拍手大蔵大臣及び防衛庁長官の御答弁を要求します。  第二は、防衛庁費が乱費せられ、汚職等を惹起しておるということであります。防衛庁は、その予算が膨大過剰なるがゆえに、年々不要なる物資を購入いたし、会計検査院の批難事項の対象になっており、業者との関係におきましても、納品等をめぐる汚職が絶えないことは、新聞等によってきわめて明瞭なのでございます。(拍手)日々の生活苦にあえぐ大衆をしり目に、かつは、自衛隊に対する違憲論のかまびすしい今日、自衛隊におけるかかる乱脈が断じて許されないことは当然でございます。(拍手)  古人の言葉に、上好む者あれば下必ずこれよりはなはだしき者ありと教えております。例を引いてはなはだ失礼でありまするが、船田防衛庁長官は、大臣就任直後、防衛庁のヘリコプターに搭乗せられて、凱旋将軍よろしく、ふるさとの高等学校の校庭に立ち、選挙民の前に選挙運動をやっておると非難されておるではありませんか。(拍手国民の血税をもって二十万の人員を率いる防衛庁責任者が……
  13. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 受田君、時間が  参りました。
  14. 受田新吉

    受田新吉君(続) かかる公私混同をするということは、断じて許されないことである。防衛庁長官に正確なる御見解を伺いたいのであります。(拍手)  さて、鳩山総理も、最近において、日ソ交渉に対しまして、絶対に日ソ交渉は成功せしめる、失敗すれば……
  15. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 受田君、簡単に願います。     〔「時間だ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  16. 受田新吉

    受田新吉君(続) 責任をとるとまで、かたい決意をしておられるのでありまするが、日ソ交渉の輝かしい成功を目前に控えようとしておる今日、なぜ国防会議のごとき外国を刺激するような法案を強硬に出そうとするのでございましょうか。  最後に、私は、今般提出されましたる法律案は、その提出の理由に乏しく、また、それによってわが国議会政治内閣責任制原則を著しく危うくいたしますとともに、憲法違反自衛隊をして、正面よりは憲法調査会法をもって、裏面よりは本法律案によって正当化しようとする、まことに深い陰謀の現われと見ざるを得ないのであります。(拍手)わが党は、この与党及び政府の陰謀に対して、日本国民の名において、断固としてこの法案反対をするものであります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎君登壇
  17. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) ただいまの御質疑に対しまして、お答えをいたします。  第一の御質疑は、何ゆえに国防会議構成するのかというのが、第一の御質疑でありました。国防会議は、すでに一昨年防衛庁設置法第四十二条により設置されておりまして、同法第四十三条により、その構成その他国防会議に必要な事項規定するために、この法案を提出したのであります。  受田君の御質問の中に、二大陣営が対立するときに、一方のみに偏していることは危険だというようなお話がありました。  現行憲法の改正手続に従ってこれを改正すること以外に、現在、法理上、憲法改正に対する制約はないと思います。国防基本方針防衛計画大綱防衛出動可否等は、政治、外交、財政経済等を含めて、閣僚の段階において、大所高所より、総合的に、慎重に審議することが必要だと考えておるのであります。(拍手国防というのは、わが国安全保障の意味でありまして、政治、外交、経済等の面をも含んだ観念であります。防衛という観念より広いものがあります。自衛権とは、外部からの武力攻撃を受けた場合、必要最小限度の実力を行使するものであります、この憲法のもとにおいても、わが国自衛権を持っておる、つまり、正当防衛ができるということは、たびたび申しておりますから、この席において重複することを避けます。海外派兵のようなお話もありましたが、そういうことは、決して絶対に考えておりません。(拍手)多くの御質問がありましたが、大体私は答弁をしておきましたので、ここに重複することを避けます。他は防衛庁長官から答弁をいたします。(拍手)     〔国務大臣船田中登壇
  18. 船田中

    国務大臣船田中君) 防衛庁の名称を変更する意図はないかというお話でございますが、自衛隊という名前は、読んで字のごとくに、自衛権のことをよく表わしております。今日、この自衛隊の名前を変更するというような考えは持っておりません。行政協定第二十四条の問題について御質問がございましたが、行政協定第二十四条は、日本の区域におきまして敵対行為または敵対行為の急迫した脅迫が生じた場合においては、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置をとるため、直ちに協議しなければならない、とあるのであります。共同措置の内容につきましては協議によって決することでありますが、その場合におきましても、自衛隊のなすべきことの内容憲法及び国内法に従って定められることになるのであることは、もちろんでございます。防衛庁の経費の使途についての御非難がございまして、その点はまことに遺憾な点が従来ございました。従いまして、今後におきまして、さようなあやまちのないように、万全を期して参りたいと考える次第でございます。     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  19. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 防衛分担金の円資金の使途につきまして、重大な関心を持っておることは申すまでもありません。アメリカ側は、その支出済みの額につきまして、証拠書類を添えて毎月報告して参っております。この報告書を審査いたしまして、必要がありますれば、日米合同委員会の日本国委員をして、アメリカ側の援助を得まして監査するのに、決してちゅうちょするものではないのであります。昭和二十八年に、この監査を一応やっております。     〔「答弁が落ちている」と呼び、その他発言する者あり〕     〔国務大臣船田中登壇
  20. 船田中

    国務大臣船田中君) 答弁を追加申し上げます。今日、国防省を設置するという考え方は持っておりません。(拍手
  21. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 外務大臣は病気のため出席されておりませんので、その答弁は適当な機会に願うことといたします。これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  22. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。     午後八時一分散会