○井堀繁雄君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
公職選挙法の一部を
改正する
法律案について、次の三つの理由を明らかにいたしまして、自由民主党の修正案に対する反対の意思表示をいたしたいと思うのでございます。
その一つは、ただいま
委員長の
報告にありましたように、手続の上に重大なる無理があるのであります。第二の問題は、修正の内容がきわめて悪質なものである点、第三は、選挙法の取扱いが非民主的である点を指摘しなければならぬのであります。(
拍手)
まず手続の点でありますが、
委員長の
報告にもありますように、
本案は参議院の各派の共同
提案になるものであります。参議院の院議を経て本院に提出されたものでありまして、かかる経過からいたしますと、当然、自民党といたしましては、
本案の
成立に共同の
責任と義務を負うことは申すまでもないのであります。(
拍手)しかるにもかかわらず、突如として修正案を提出いたしました。しかも、その内容についてであります。この点はあとで述べますが、この修正の内容は案件の本質を全く左右するが
ごとき重大なる修正であるのであります。
かかる態度は、申すまでもなく、
国会の運営を正常なルールの上において行うという立場を乱すところの、すなわち、公的な協定をみずからじゅうりんして、ただに眼前の党利党略にのみ終始するという、きわめて非民主的な行為でありまして、かかる態度は公党として断じて許すべからざる不信行為である。(
拍手)もし、このような態度が許されますならば、政党
政治が
責任政治であるという建前は、ここからくずれて参るのであります。わが国の政党
政治が二大政党の中に健全な
発展を
希望しておる現状におきまして、かかる政党の態度というものは、断じて許さるべきものでないと思うのであります。自由民主党のため、まことに惜しむ次第でありまして、議会
政治担当の
責任を、深く、もっと真剣にお
考えになりまして、
日本の政党
政治確立のために御精進あることを御忠告申し上げたいと思うのであります。(
拍手)
さらに、内容について申し述べなければならぬのでありまするが、先ほどの
委員長の
報告にありまするように、この
改正原案は参議院の共同
提案でありますので、わが党といたしましては、その
責任の一端を分つ意味におきまして、
改正原案に対しましては
賛成の意を表しております。しかるに、自民党の修正案でありまするが、その修正案は四つの点からなっております。その中の一つは、法第三百一条の五第四項の
改正規定の中の「三以上」を「二以上」にするという、文字の上からいえば三を二にするだけのことでありまするが、その持つ内容はきわめて重大であります。すなわち、政党その他の
政治団体の選挙における選挙活動につきましては、参議院の
改正案は数の上において制限を加えようというのでありまするから、一種の制限法であります。自民党の修正案の、三を二にするということは、政党以外の
政治団体について従来許されておるところの公正な選挙活動を、この法律によって禁止するという結果になるのであります。このことは非常に大きな相違を来たすのであります。
これを申すならば、従前の実例で皆さん御案内のように、
全国的な組織を持ちまする労働組合が、毎回行われておりました選挙に、成規の手続と、一定の候補者を
規定いたしまする法の
精神に基いて運動を行いましたことは申すまでもありません。こういう、きわめて合理的な、しかも
日本の重要な
政治的勢力を推進する行為が、この法律
改正によって全く禁止されることになるのでありまするが、その結果は、申すまでもなく、労働組合の健全なる成長、ことに、憲法で
規定されておりまするところの
労働者の
政治的基本権が、ここに全く奪われてしまうのであります。(
拍手)このことは、近代社会におけるところの
労働者の組織的人格というものが、今さら申し上げるまでもなく、すでに国際的な地位において、あるいは、わが国の民主化、平和の勢力確立のために一般に強く要請せられておりまするところの重大な意義を持っておるということは、皆さんの周知の事実であります。
私の強調いたしたいことは、民主主義を推進するために、また、平和主義の確立を念願するために、また、民族の繁栄と経済の興隆をはかろうといたしまするためには、近代社会の原理に基きまして、
労働者の個々の人格を尊重するとともに、その組織的人格が尊重されなければ、民主主義の実は貫かれないのであります。(
拍手)この組織的な人格をさらに
政治に反映せしめることによって、そこに
日本の民主主義
政治の基礎が確立され、
世界が願望するところの平和勢力の確立が
発展してくることは申し上げるまでもないのであります。これは無理解か、あるいは故意か、ここに、かかる萌芽をつみとらんとするところの修正案であることは申し上げるまでもないのであります。こういう態度がここに許されるといたしますならば、口に民主主義を唱え、口に平和を説きましても、断じてこれを容認することはできないのであります。申すまでもなく、この原則を打ちこわすようなことをいたすところに、今日の
政治の反動化が非難されてくるのであります。
私が次に申し上げなければなりませんことは、選挙法の
改正についてであります。これに限るわけではありませんが、選挙法の
改正につきましては、先ほど
委員長からも述べられましたように、選挙を公正に、しかも適正に行うためのものであることは申すまでもございません。しかし、選挙を公正に、公明に行うということは、たとえばスポーツの例にもありますように、そのルールというものが、その選挙に携わるものにすべて公平でなければならぬことは言うまでもない。さらに、
国民の総意が選挙を通じて議会に反映してくるということは当然の措置でありまするから、こういう法律を党利党略に利用するということは断じて許されないところであります。(
拍手)しかるに、ただいま
委員長の
報告にありまするように、自民党は数の力を頼んで
委員会を押し切ってしまつたという、この取扱い方であります。
選挙法の公正を保ちまするためには、政党
政治の建前を貫く現状にありましては、十分政党間において話し合いをし、また、民意を十分反映せしめまして、お互いに納得の上で、かかる基礎的な
法案が作らるべきものであることは、民主主義
政治を理解するものでありまするならば、直ちに同意されるはずであると思います。しかるに、今回とりました自民党の態度は、全くこの事実をゆがめ、
委員会におきまして、しゃにむに、多数を頼んでこれを押し切った。今日、この自民党の正体は、この
法律案審議の中に、民主主義を理解することのできない、すなわち、議会
政治の公正なルールをみずから破砕するところの、あわれむべき行為と私は申さねばならないのであります。(
拍手)かかる手段がもし今後続けられまするならば、それは力による
政治と何ら異なりません。
私どもの強調いたさなければなりませんことは、かかる力をもってなす
政治方式というものは、かつてナチス・ドイツの歩んだ道を行くのじゃないかと気づかわれることであります。御案内のように、ナチスの行き方は、表面、民主的な手続をとって参りました。すなわち、民主的な手続というヴェールに隠れまして、漸次その力をたくわえて、最後に独裁の段階、暴力
政治を確立したことは、今さら申すまでもないのであります。こういうフアッショ的な傾向——選挙法の
ごとき、公正に、かつ、各党が十分納得の上で
成立せしむべき
法案を、数の力によってこれを押し切るようなことをいたしますことは、いかに民主主義を唱えましても、議会のルールを重んずることを主張いたしましても、みずからそのルールを破り、民主主義の行為をじゅうりんするこの事実は、どうしてもいなめないと思うのでございます。(
拍手)かような立場からいたしまして、今回とりました選挙法の
改正は、一部の
改正ではありまするけれども、その行為は断じて許すことのできない、無謀なフアッショを押し通すものの露骨な傾向であると断ぜざるを得ないのであります。
以上、簡単に、三つの理由をあげまして、自民党の猛省を促し、修正案の撤回をなされんことを
希望いたしまして、私の反対
討論を終る次第であります。(
拍手)