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岸上最高裁判所説明員 ただいま
お話ございました
官庁営繕法の問題につきまして、御
承知のように、前の
国会で
官庁営繕法の一部
改正がありました際に、
裁判所の
営繕につきましては、
建設省の方の
所管と申しますか、
実施の権限から
除外していただきたい、
除外するのがしかるべきことだということを、その
法案が
国会に上程されるという
お話がありました当時から
裁判所としては主張いたしまして
関係方面に申し上げておったのであります。その申し上げました
理由と申しますかの点は、要するに、
裁判所につきましては、
司法行政の
独立ということが
憲法上及び
裁判所法その他の
法律上で認められている、その点から言って、
裁判所の
司法行政の重要な
一つである
営繕が
裁判所以外の
行政官庁の手で施行されるということになると、
司法行政の
独立ということについて非常な障害があるのじゃないか。また、これを
予算の面から見ましても、
裁判所の
予算につきましては
予算の
独立ということが
裁判所法にも明らかに
規定されている。
営繕予算ももちろん
裁判所の
予算のうちの重要な
部分をなしている。従って、
予算が
裁判所に
独立して計上されるという
建前は、とりもなおさずその
予算の
執行も
裁判所の
自主性に基いてやるべきであるということを
前提としていると
解釈するのが相当と思います。従って、その
裁判所法の、
裁判所の
経費は
独立して国の
予算に計上しなければならないという
規定は、単に
予算書に計上するだけでなしに、その
執行までも
裁判所の
自主性にゆだねた
趣旨だというふうに
解釈しまして、その点から言ってもどうもこの
改正については
裁判所の
営繕は
除外すべきものだという点を、おもな
理由として申し上げたのでありますが、不幸にいたしまして、その
法案は原案
通り通過いたしました。
そこで、私
どもといたしましては、
法律が通過した後に、その
法律には、九条の二の第一項ではそういう
裁判所の
予算も
建設省でやるということになりますが、特別の事情ある場合は
除外ができる、それには
建設大臣と
協議して
除外ができるという
規定がございます。そこで、その後
建設省方面との間に、
法律はそういうふうになったけれ
ども、
解釈上今申した
裁判所法の
解釈、あるいはさらに、さかのぼっては
憲法上の
趣旨から言って
裁判所の
独立を認めるのが正当ではないかということで、当初は
建設省方面と主としてそういう
法律論と申しますか
解釈論的なことで話をしておったのでありますが、
建設省方面では、いやしくも
法律ができた以上これはそうはいかぬ、反対だということで、結局その
議論は
平行線と申しますか、両方とも一致しない、こういうことで現在まで来ておるわけであります。一方、
大蔵省の
事務当局の
方面はどうかと申しますと、御
承知のように、
営繕予算につきましては、
予算がきまりました後になお個々の具体的な
実施につきまして
実施計画というものを出しまして、それで
大蔵大臣の認可を経て施行するという
建前になっております。その
関係上、私の方は
大蔵省事務当局に本年度の
営繕予算全部につきまして出したのでありますが、そのうちで
継続工事は
法律の
明文上からも
除外されておりますので問題はないのでありますが、ことしからの
新規工事につきまして、その
裁判所の方の
見解と
建設省方面の
見解が一致しないことには、どちらにつけていいかわからない、従ってその話がつくまでは
実施計画はしばらく留保したいということで、
新規の
営繕予算のこの
部分の
実施計画は留保という
状況になっておりますので、この分についてはまだ
予算の上では金が使える
状況に至ってない、こういう
状況でございます。
そこで、私
どもといたしまして、どういうふうにこの問題を打開すべきかということについていろいろその後引き続いて
議論をし、
協議をしておるのであります。いろいろ
意見がございますが、今申し上げました
解釈論でいくという
意見、現在の
法律のままでもそういう
解釈ができるのじゃないかという
意見、それからまた、さらに、いやしくも
法律ができた以上はそういう
解釈の仕方は困難だ、従って現在のこの
法律のもとでは
建設省の方に
実施がいくというふうに
解釈せざるを得ない、しかしながら、今申しました
司法行政の
独立という点から見て、今度の
改正法はどうも好ましくないというふうに考えられるので、現にこの
法律では
国会の方でも
実施についてあるいは刑務所というような特殊な
建物については
除外例を条文で認められているという
関係もありまして、これは
裁判所についても
除外するというふうにこの
法律を
改正していただいて、そしてその点をはっきりしていくべきである、ぜひともそういうふうに
改正をしていただきたいものたというふうな
意見がございます。そういうふうなことで今日まで来ておるのであります。
さて、それでは、かりに
改正をお願いするといたしまして、これには若干の日数がかかる。それまで、と申しますとことし三十一年度の
工事についてのみどうするかという問題がございまして、これについては、ことしは暫定的に、
改正があるまできまらないのだから、形の上では第九条の二の第二項によって全部
裁判所の方で
実施をするということに話し合いをつけるべきではないかという
意見もございまして、実は、
建設省方面とは、さしあたりことしの問題について暫定的に全部
裁判所にやらしてもらいたいということを
裁判所から申し出まして、今話をしておる、しかしそれはまだ現在のところは
建設省方面の承諾を得ていない、従って未解決の状態に現在ある、そういう
状況でございます。
大体の経過と現在の
状況は以上申し上げましたようなことでございます。
なお、
裁判所の方の考えております
司法行政の
独立の問題につきましては、ただいまお手元に差し出しましたこの
資料に、今申し上げましたと大体同じでございますが書いておりますので、ごらん願えれば幸いと思います。いろいろ
意見もございますが、いずれにいたしましても、そういう
見解の相違をなくするためには、ぜひとも
官庁営繕法の
改正、そして
裁判所を
除外するということを
明文ではっきりしていただくのが一番いいのじゃないかというふうに現在考えておる次第でございます。
簡単でございますが、以上でございます。