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1956-09-10 第24回国会 衆議院 法務委員会閉会中審査小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年九月十日(月曜日)     午前十一時二十九分開議  出席小委員    小委員長 高橋 禎一君       池田 清志君    椎名  隆君       世耕 弘一君    林   博君       福井 盛太君    三田村武夫君       猪俣 浩三君  小委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局事務次         長)      石田 和外君         判     事         (最高裁判所事         務総局経理局         長)      岸上 康夫君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 九月十日  椎名隆君同月七日委員辞任につき、委員長の指  名で小委員に補欠選任された。 同日  武藤運十郎君七月十二日委員辞任につき、委員  長の指名で小委員に補欠選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件     —————————————
  2. 高橋禎一

    高橋委員長 これより法務委員会閉会審査小委員会を開会いたします。  最高裁判所当局より営繕関係の問題について出席説明したいとの申し出がありますので、これを許したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  3. 高橋禎一

    高橋委員長 なければ、さよう決定いたします。  それでは最高裁判所経理局長岸上康夫君。
  4. 岸上康夫

    岸上最高裁判所説明員 ただいまお話ございました官庁営繕法の問題につきまして、御承知のように、前の国会官庁営繕法の一部改正がありました際に、裁判所営繕につきましては、建設省の方の所管と申しますか、実施の権限から除外していただきたい、除外するのがしかるべきことだということを、その法案国会に上程されるというお話がありました当時から裁判所としては主張いたしまして関係方面に申し上げておったのであります。その申し上げました理由と申しますかの点は、要するに、裁判所につきましては、司法行政独立ということが憲法上及び裁判所法その他の法律上で認められている、その点から言って、裁判所司法行政の重要な一つである営繕裁判所以外の行政官庁の手で施行されるということになると、司法行政独立ということについて非常な障害があるのじゃないか。また、これを予算の面から見ましても、裁判所予算につきましては予算独立ということが裁判所法にも明らかに規定されている。営繕予算ももちろん裁判所予算のうちの重要な部分をなしている。従って、予算裁判所独立して計上されるという建前は、とりもなおさずその予算執行裁判所自主性に基いてやるべきであるということを前提としていると解釈するのが相当と思います。従って、その裁判所法の、裁判所経費独立して国の予算に計上しなければならないという規定は、単に予算書に計上するだけでなしに、その執行までも裁判所自主性にゆだねた趣旨だというふうに解釈しまして、その点から言ってもどうもこの改正については裁判所営繕除外すべきものだという点を、おもな理由として申し上げたのでありますが、不幸にいたしまして、その法案は原案通り通過いたしました。  そこで、私どもといたしましては、法律が通過した後に、その法律には、九条の二の第一項ではそういう裁判所予算建設省でやるということになりますが、特別の事情ある場合は除外ができる、それには建設大臣協議して除外ができるという規定がございます。そこで、その後建設省方面との間に、法律はそういうふうになったけれども解釈上今申した裁判所法解釈、あるいはさらに、さかのぼっては憲法上の趣旨から言って裁判所独立を認めるのが正当ではないかということで、当初は建設省方面と主としてそういう法律論と申しますか解釈論的なことで話をしておったのでありますが、建設省方面では、いやしくも法律ができた以上これはそうはいかぬ、反対だということで、結局その議論平行線と申しますか、両方とも一致しない、こういうことで現在まで来ておるわけであります。一方、大蔵省事務当局方面はどうかと申しますと、御承知のように、営繕予算につきましては、予算がきまりました後になお個々の具体的な実施につきまして実施計画というものを出しまして、それで大蔵大臣の認可を経て施行するという建前になっております。その関係上、私の方は大蔵省事務当局に本年度の営繕予算全部につきまして出したのでありますが、そのうちで継続工事法律明文上からも除外されておりますので問題はないのでありますが、ことしからの新規工事につきまして、その裁判所の方の見解建設省方面見解が一致しないことには、どちらにつけていいかわからない、従ってその話がつくまでは実施計画はしばらく留保したいということで、新規営繕予算のこの部分実施計画は留保という状況になっておりますので、この分についてはまだ予算の上では金が使える状況に至ってない、こういう状況でございます。  そこで、私どもといたしまして、どういうふうにこの問題を打開すべきかということについていろいろその後引き続いて議論をし、協議をしておるのであります。いろいろ意見がございますが、今申し上げました解釈論でいくという意見、現在の法律のままでもそういう解釈ができるのじゃないかという意見、それからまた、さらに、いやしくも法律ができた以上はそういう解釈の仕方は困難だ、従って現在のこの法律のもとでは建設省の方に実施がいくというふうに解釈せざるを得ない、しかしながら、今申しました司法行政独立という点から見て、今度の改正法はどうも好ましくないというふうに考えられるので、現にこの法律では国会の方でも実施についてあるいは刑務所というような特殊な建物については除外例を条文で認められているという関係もありまして、これは裁判所についても除外するというふうにこの法律改正していただいて、そしてその点をはっきりしていくべきである、ぜひともそういうふうに改正をしていただきたいものたというふうな意見がございます。そういうふうなことで今日まで来ておるのであります。  さて、それでは、かりに改正をお願いするといたしまして、これには若干の日数がかかる。それまで、と申しますとことし三十一年度の工事についてのみどうするかという問題がございまして、これについては、ことしは暫定的に、改正があるまできまらないのだから、形の上では第九条の二の第二項によって全部裁判所の方で実施をするということに話し合いをつけるべきではないかという意見もございまして、実は、建設省方面とは、さしあたりことしの問題について暫定的に全部裁判所にやらしてもらいたいということを裁判所から申し出まして、今話をしておる、しかしそれはまだ現在のところは建設省方面の承諾を得ていない、従って未解決の状態に現在ある、そういう状況でございます。  大体の経過と現在の状況は以上申し上げましたようなことでございます。  なお、裁判所の方の考えております司法行政独立の問題につきましては、ただいまお手元に差し出しましたこの資料に、今申し上げましたと大体同じでございますが書いておりますので、ごらん願えれば幸いと思います。いろいろ意見もございますが、いずれにいたしましても、そういう見解の相違をなくするためには、ぜひとも官庁営繕法改正、そして裁判所除外するということを明文ではっきりしていただくのが一番いいのじゃないかというふうに現在考えておる次第でございます。  簡単でございますが、以上でございます。
  5. 高橋禎一

    高橋委員長 ただいまの説明に対して質問がございますか。
  6. 三田村武夫

    三田村小委員 ちょっとお尋ねいたしたいのですが、私もよく勉強した上の意見じゃないので、その点冒頭にお断わりいたしますが、いつだったか最高裁側からお出しになりました資料の中に、今お述べになりましたように、司法行政独立ということを非常に強くうたわれておったことを記憶いたしております。そこの中に、司法関係裁判関係営繕もまた全部最高裁の手でやらなければいけないという趣旨が強く述べられておったように思います。今お述べになりました趣旨同一であろうと思います。いただいた資料も、第一に、裁判は他のいかなる権力によっても左右されることなく独立に運営されねばならないことは近代国家根本原則であり、わが国憲法もまた同様である、従って、その裁判のための行政すなわち司法行政裁判所において行政権より独立して行われなければならぬ、こういうように書いておる。これは私は一応その建前としてはわかるような気がするのですが、しかし、また一面、裁判所で行う裁判も、またその裁判所で行う裁判行政も、これは国の主権活動の一部分であることは言うまでもないのであります。他のいかなる権力にも拘束されることなくということは、裁判は絶対神聖でなければならぬという建前で、これはよくわかりますが、国の行政活動、国の主権活動と全然別個裁判活動だけあるということは、ちょっと理解できないのであります。ことに、行政の面において、営繕の面においても、他のいかなる行政活動にも制肘を受けない、こういう建前をどうしてもとらなければならないという論拠がちょっと理解しがたいのです。たとえば裁判所を建てる、ここにありますように調停のための部屋を作るとかいうことは、もちろん裁判所側意見は十分聞かなければなりませんが、一切営繕関係の他の官庁——大蔵省の長い営繕関係における経験、あるいはまた建設省関係経験、現在やっておる少くともその専門の立場から、どれだけでもロスを少くして国の予算をより効果的に使おう、こういう立場意見は、これは私は尊重すべきだと思うのであります。全部裁判所でやって、他のいかなる行政部門の関与も受けないという立場をどうしてもとらなければならないという理論的根拠が私は理解できないのであります。どういう不便があるものか、たとえば大蔵省営繕に関する経験を生かしていく、建設省営繕に関する経験を生かしていくということが、裁判独立を保つためにどういう弊害があり、それを排除しなければならぬ論拠としてどういう理由があるものか、ちょっと理解しがたいのであります。それをわかりやすいように御説明願いたい。  これはもとより裁判所制度そのものに関する問題でありますから、いずれは総体的な問題として論議しなければならない重要なポイントであろうと思いますが、今お話を伺っておりますと、そのことのゆえに三十一年度成立いたしました予算もまだ未執行のままだ、結論が出ないためにまだブランクのままだというような御説明でありましたが、はなはだ遺憾だと思います。その論拠一つこの機会にお伺いいたしたいと思います。
  7. 岸上康夫

    岸上最高裁判所説明員 ただいまのお説、ごもっともでございますが、私どもとして考えております点は、司法行政独立ということも、あらゆる方面において行政裁判所独立であって、ほかの方面からは制約を受けないのが現在の制度だというふうには考えておりません。現在の制度でも、司法行政の面において、もちろんある程度他の行政機関との関係におきまして承認を得たりあるいは協議をするという制度になっておりまして、その面におきましては、現在の制度上それはそれでやむを得ないということでありますが、ただ、この営繕の問題につきましては、今も申し上げましたように、裁判所法規定裁判所予算独立して計上されるということになっておる。結局その立法趣旨は、予算の面から裁判所というものの独立性を担保しよう、そのことが国の制度として望ましいと申しますか、いいことだという点から規定されておるのだろうというふうに考えるわけです。また、憲法上にも、内部規律その他につきまして司法行政独立という規定もございますが、予算の面につきましては、今申しました裁判所法にそういう規定がある、また一方財政法にはいわゆる二重予算というふうな規定もございまして、これもやはりその意味に従って裁判所予算というものは一般の行政官庁と違ったある種の独立性を認めることが、すなわち司法権独立性を担保する上において望ましいという考えだろうというふうに理解しておるわけであります。従って、その面から申しますと、予算裁判所所管独立されるということは、その予算執行ということも裁判所自主性に基いてやるというのでなければ、その予算独立して裁判所独立性を担保するという趣旨は相当大きく意味が減殺されるのじゃないか、従って、予算独立を認めてある以上は、現在の制度上それは執行裁判所自主性にゆだねるという趣旨に解するのが相当じゃなかろうかというところなのであります。  従って、今回の問題は営繕予算だけでございますが、同じ論法でいくと、営繕予算以外の予算も、裁判所所管には計上はするが、その執行はほかの官庁がやってもいいという趣旨だ、営繕予算以外の各種の経費についても同じだということに理論上は相なろうかというふうに考えるわけでありますが、そうなりますと、ますます今申しました予算の面から裁判司法行政独立を担保するという趣旨が薄くなるのじゃないか、従って、私どもといたしましては、この営繕予算はもちろん、その他の経費につきましても、裁判所所管に計上されたものは裁判所執行するというふうに解釈するのが妥当じゃないか、今度の官庁営繕法によると裁判所執行という点が除外されるという結果に相なるのじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  8. 三田村武夫

    三田村小委員 今の御説明わかりますが、私が伺いたいことは、冒頭に言いましたように国の主権活動一つなのです。裁判所だけ別個に国の主権活動とは離れてあり得るものではない、これは御承知だと思うのです。世界のいずれの国においても、主権活動は一本でなければいけない、これは当然の建前であります。われわれがここで国民から選ばれて立法をしあるいは予算審議をすることも国の主権活動部分なのです。今のお話を広めていきますと、われわれの予算審議権が拘束されてくることになるのです。裁判所予算独立だ、これは裁判所からの、たとえば予算計画書なるものが必ずしもそのまま全部通るわけじゃないので、やはり大蔵省との間で査定が行われる。そうすると、今お話しの議論をそのまま推し進めていきますと、大蔵省裁判所側から出した予算に手を入れることもいけないことになる。われわれが国全体の予算の面からこの裁判所庁舎建設は来年度に回そうじゃないかという意見を述べることもいけないことになる。そういう議論も成り立つわけなのです。私が今お尋ねしたのは、今御答弁の中の御説明にありましたように、営繕管理までも全然他の行政部門独立してやらなければいけないのだ、そうしなければ裁判独立が保たれないという論拠がわからないのです。なるほど、憲法建前裁判所建前から言えばそうなっておりますが、営繕関係まで一切裁判所の手でやらなければ裁判権独立というものは担保できないという建前が私はわからない。営繕裁判とは別個なのです。バラックの仮庁舎でやっても裁判は厳粛であり、神聖、であり、あくまでも侵すべからざる独立性を持っている。裁判所側営繕計画で建てられた裁判所裁判が行われたときに裁判独立が保たれる——今御承知のように仮庁舎はずいぶんありますね。岐阜県で一言えば多治見の裁判所なんかは借りものであります。そういう借りものの裁判所で行われた裁判が何かの制肘を受けるということはあり得ないのであります。現在すでに仮庁舎もあり、便宜上よその建物を借りて裁判活動が行われている。これは事実であります。そういう面から考えてみて、裁判独立というものはあくまでも制度上、法律上その権威は保たれかつ守っていかなければなりませんが、別個営繕関係まで全部裁判所の手でやらなければいけない、そうしなければ裁判所独立性というものは担保できないというこの建前は私には理解できない。より率直に申しますと、われわれは予算審議をすると同時に予算執行のあとも検討してみなければならぬ責任を持っておる。これは国民から負託されたわれわれの当然の責任であります。そのゆえに決算委員会というものがあり、その決算委員会で果して予算が公正に使われたかということも検討を加えておること御承知通りであります。そういうことから考えて、裁判所に関するものは予算を一たび組んだ以上その予算執行裁判所だ、どのように使われようと他の干渉を受けない、こういう建前制度上はっきり出てしまうということは私は理解できない。昔からもちはもち屋という言葉がある通り、どれだけかの金額で一つ営繕をやる場合に、どういう予算執行をやることが一番安上りでいいものができるかということについては、おのおの経験があるわけなのです。大蔵省大蔵省経験があり、そのことの当然の官庁である建設省建設省経験があるわけなのです。国の予算で建てる建物でありますから、裁判の便宜のために、また予算節約のために、より効果的にこれを利用するために、そういう経験を生かして意見を述べることは、国全体の予算の面、行政全体の管理から、けっこうなことだと思う。司法行政といえどもやはり国の行政部分であります。司法行政だけが他の国の行政と全部離れてしまって別個にあるという概念が私にはわからない。これは裁判所法全体についての議論でありますが、一応御意見は御意見として伺っておきます。いずれ田中最高裁長官にも出ていただいて御意見を伺わなければならぬことがあると思いますが、われわれの立場からそういう一つ疑念——これは私一人の疑念かもわかりませんが、持たれておるということだけは一つ御了承願いたいと思います。
  9. 高橋禎一

    高橋委員長 他に質疑はありませんか。池田君。
  10. 池田清志

    池田(清)小委員 官庁営繕法関係お尋ねがあったようでありますが、私もこれにつきましてちょっと私の考え方を申し上げてお答えをいただきたいと思います。  官庁営繕法は御承知のように議員立法でありまして、私ども法務委員会といたしましては深い関係を持たない間に通ってしまったことを私はうらみと思っております。官庁営繕法趣旨はいわゆる合同庁舎方式原則になっておると伺います。ところが、司法機関法務機関は前におきましては検事局裁判所に付置するという規定によりまして司法機関検事局というものは今日の合同庁舎方式に法定されておったのであります。ところが、今日になりましては司法機関検察庁というものは別の建物にするということか法制化されておるようなわけでありまして、官庁営繕法趣旨とする合同庁舎方式には入れない、こういうふうに考えておるところが第一点であります。そういたしますと、裁判機関当局において一つの御意見が出るのは当然であると思うのであります。官庁営繕法自体の中におきまして例外がないならいざ知らず、国立病院のごときはこれを例外として規定されておる。そういうふうに実施されるというのでありますから、国立病院以上に裁判所庁舎的な独立ということを主張される点もよくわかるわけであります。ただいま三田委員の御質問になりました点もよくわかるのでありますけれども、私の申し上げておりまする、官庁営繕方式というものがいけないか、それとも、今同法の中に例外があるというのを前提といたしまして考えた場合、司法機関営繕独立ということにも言及されておるのか、この点を一つお尋ねを申し上げておきたい。
  11. 岸上康夫

    岸上最高裁判所説明員 ただいまお話しいただきました点は、私どももかねがねそういうふうに考えております。終戦前は裁判所というものに検察庁は付置されるということになっておりました関係もございまして、合同庁舎と申しますか、同一庁舎によって仕事をしてきたのでありますが、新憲法になりましてから後は、検察庁裁判所とは従来と違った意味の、独立と申しますか、別個機関という制度になりましたのに対応しまして、裁判所検察庁別個建物にされることが望ましいということで、現在までそういう方針で約十年近くやってきておるわけでございます。もっとも、事務上非常に密接な関係がございますので、非常に遠く離れることはおもしろくない。隣同士、あるいは向い同士というように非常に近いところで大多数は検察庁が敷地を新しく求められてやってきておるというのが現状であります。なぜ検察庁と同居はいかぬか、いろいろ議論はございましょうが、前から言われておりますところの一つは、どうも同じ庁舎だとなれ合いのような印象を外部が受けるというようなことも言われておった点でありまして、そういう点から見ても、姿としては別個庁舎の方が好ましいということで、これは検察庁の方もその方針には御賛成で、現在までずっとその方針で来ておるという状況であります。
  12. 高橋禎一

    高橋委員長 他に御質疑はありませんか。——なければ、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三分散会