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1956-05-29 第24回国会 衆議院 法務委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十九日(火曜日)    午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 高橋 禎一君    理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君    理事 福井 盛太君 理事 猪俣 浩三君    理事 菊地養之輔君       犬養  健君    小島 徹三君       林   博君    松永  東君       横井 太郎君    横川 重次君       神近 市子君    佐竹 晴記君       細田 綱吉君    武藤運十郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君  出席政府委員         警  視  庁         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         法務政務次官  松原 一彦君         検     事         (刑事局長事務         代理)     長戸 寛美君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君  委員外出席者         法務事務官         (事務次官)  岸本 義廣君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 五月二十八日  委員横井太郎辞任につき、その補欠として足  立篤郎君が議長の指名で委員に選任された。 同月二十九日  委員足立篤郎君、眞鍋儀十君、宮澤胤勇君、古  屋貞雄君及び下川儀太郎辞任につき、その補  欠として横井太郎君、戸塚九一郎君、水田三喜  男君、淺沼稻次郎君及び細田綱吉君が議長の指  名で委員に選任された。     ――――――――――――― 五月二十八日  在日朝鮮人保障等に関する陳情書  (  第八六九号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務行政及び人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 高橋禎一

    高橋委員長 これより法務委員会を開会いたします。  本日は法務行政及び人権擁護に関し調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐竹晴記君。
  3. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 大臣がお見えになっていただかないと、ちょっと工合が悪い。
  4. 高橋禎一

    高橋委員長 ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  5. 高橋禎一

    高橋委員長 それでは速記を始めて下さい。  佐竹君。
  6. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 堂森夫人に対する人権問題については、過般来数回質疑応答がかわされて参りましたが、あいにく大臣の御出席をいただきませず、次官もお見えにならなかったので、その御所見を承わることができなかったのであります。課長よりはいろいろと承わりましたが、この問題はやはり相当責任に関する問題でもありますので、この際次官よりも御所見を承わっておきたいと存じます。  次官前回見えになっておられませんでしたので、この際、前回と少し重複はいたしますけれども、さらに堂森夫人健康状態等について申し上げまして、御所見を承わりたいと考えます。  すなわち、堂森夫人は、心臓病で、勾留取調べ中、昨年の二月の十三日と三月の二十六日、二回にわたって失心状態に陥り、応急手当を受け、しかも医師から生命危険であるという診断を受けておるのにかかわらず、実に五十日にわたる長期勾留継続いたしましたのは、とうてい正常なる取調べ状態とは認めるわけには参りません。  まず問題になるのは、二月の十三日の卒倒に際して、警察から荒川医師を呼んで診察させましたときに、同医師はかように診断をいたしておるのであります。主訴は、全身しびれ感、めまいがする、頭が痛い、心悸高進があり、以前も心臓病をやったことがある、次いで現症は、脈摶微弱不整脈であり、一分間に七十、顔色は蒼白、やや苦悶状を呈し云々心臓を打診すると、心臓濁音界左右とも一横指ほど肥大しており云々聴診器で聴診すると、収縮期性雑音を聞き云々精神状態不安状態で涙を流し泣き通しであり、タイコス型血圧計血圧を測定すると、最高八十ミリ、最低六十ミリ、そこで私は心臓弁膜障害僧帽弁閉鎖不全症ではないかと診断をした、よって二十プロブドウ糖液四十ccにピタカンファー一cc二本を加え静脈注射、左のひじ静脈にはどうしても刺入することができず、右のひじ静脈に辛うじて注入し得た、血圧が下降していたので静脈が出なかったからである。  そこで、証人は、――証人というのはこのお医者であります。即時入院させ、安静加療を要する、しからざれば生命に危険がある、ちょうど警察の隣に中野病院があるので、そこへ入院させなさい、もし取調べ内容が漏れるという心配があるならば、一室を借り切って、その隣の一室警察官でも置いて、二室を用意しておくから、早く入院させなさいと、警察にその旨を進言して帰ったというのであります。  ところが、その後刑務所高橋医務課長診断をさせましたところ、同医務課長は、これは病歴書にも明らかになっておりますように、この高橋医師裁判所証人として出頭して証言をした際にこう言うております。胸部疾患のおそれはない、脈摶一分間二、三個の結滞があり、血圧はエルマのメーター血圧計(水銀柱)によって測定したるところ、最高百十五、六、最低八十前後、勾留に耐え得ると係官に告げて帰った旨を述べております。検事はこの高橋医務課長の言――これは裁判所に出て証言をいたしておりますが、この言をそのままに取り上げ、勾留継続できるものと断じたのであります。しかし、高橋医師診断には胸部疾患のおそれなしとありますが、荒川医師は、心臓濁音界左右とも一横指ほど肥大しており、聴診器で聴診すると収縮期性雑音を聞きと診断しておりまして、事実はまたその通りであります。また、荒川医師診断する血圧最高八十ミリから最低六十ミリで、これはきわめて危険な症状でありますことは、しろうとでもわかります。ところが、高橋医師は、最高百十五、六、最低八十前後で、普通であって危険はない。勾留に耐え得ると断じております。しかし、この高橋医師診断は、荒川医師応急手当を加えて、ブドウ糖ピタカンファー注射をいたしまして、平静に返って間もなく診断をしたときのことであります。この応急処置をしたことは警察も知っておりますし、横車局もこれを知っておる。この被疑者に対するところの措置はすべて検事指揮でやっております。当委員会でも政府委員より御答弁になった通り、三人の医師診断させ、検察官として相当考慮したと陳述せられておりまする通り荒川医師に先に見せて応急措置を講じた後刑務所高橋医務課長に見せておりますことも、検察官は百も承知の上であります。荒川医師診断を無視いたしまして、同医師応急手当小康を得ておる状態を見せて、それで大丈夫、勾留継続差しつかえないと、かように断定をいたしました高橋医師診断を尊重して、この危険な症状にある病人勾留継続をしたということは、もってのほかであると言わなければならぬと存じます。  次官といたしましてはいかなる御所見でございましょうか。
  7. 岸本義廣

    岸本説明員 本件につきましては、所管の刑事局におきまして、当委員会において再三にわたりまして御質問の問題に対し答弁いたしておると存ずるのでございます。実は、私、本件につきまして初めて御質問を受けるような次第でございまして、後刻係官と十分打ち合せまして、答弁すべき点は答弁いたしたいと存じまするが、このように御了承願います。
  8. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 この問題は、過日来重大な問題となりまして、すでに当委員会において質疑応答を重ねること三、四回に及んでおります。しこうして、大臣は御出席いただけませんので、次官が当然責任を感じて、大臣を補佐する責任上、速記録ぐらいはお調べになっておかなければならぬと存じます。しこうして、課長が御答弁をなさっておりますが、課長ば事務的な御答弁しかありません。私どもの要求いたしますのは、その責任をいかにするかという点であります。課長が御答弁をなさいました事実に基きましても、その責任を免れ得ないものがあると私は思っておる。従いまして、その報告を次官が受けないわけはないと思います。初みてここで答弁するんだというのでは、私どもとうてい承服することができません。  問題中、きわめて重要な点はこうなんです。荒川というお医者に見せた。ところが、生命は危険だと言うのです。それなのに、今度は監獄医に見せた。これば大丈夫だと言うのです。ところが、その高橋という監獄医診断したときはどういう状態かといえば、荒川医師が最切に診断をして、危険だというので、ブドウ糖注射して、そうしてビタカンファー注射して応急措置を講じて、小康を得たときであります。その監獄医が見たときに、小康を得ておるから大丈夫だ、こういうのです。しかも、前に荒川医師が見ておることも、検事指揮のもとで、検事が知らぬとは言わせません。先ほど申しました通り、当委員会において長戸課長の御答弁にも明らかなように、三人の医師に見せて十分考察を加えたという。だから、第一回の医師、第二回、第三回の医師、おのおのこれは検事がその病状を考察して勾留継続に耐え得るかどうかということを判断するために、慎重考慮するために三人に見せておる。ところが、前に見せたお医者は、生命危険だというので応急手当を加えて、そこで、小康を得たときに、今度監獄医に見せて、もう大丈夫だから勾留継続可なりというのであります。こうなりますと、いかなる病人といえども勾留継続に耐え得ることになりましょう。  私は、かようなことがもし許されるといたしまするならば、人間をまるきり動物扱いいたしておるという結果になることをおそれます。いかなる危険な症状病人といえども応急措置を講じて、少々よくなったから、これでよろしい、勾留継続して取り調べてもよろしいということになり、医師を呼んで診察させたことは、病気をなおすための措置ではなくして、証拠を得るための手段であったと言わなければなりません。注射しては取り調べ注射しては取り調べ証拠をとるために注射したのであって、病人をなおすための注射ではありません。これは許しがたき人権問題であると私は考えます。いかに被疑者といえども病気なら、まずこれをなおしてやらなければなりません。まず病気をなおして後取り調べるべきではないでありましょうか。危険状態にある病人注射をして、小康を得さしておいて、その小康を得た状態のもとに監獄医に見せて、これでは勾留に耐え得ると言って調べる。今度卒倒すると、また注射をして、注射をした状態小康を得ておるということになると、これではまた勾留継続に耐え得ると言う。まるで人間を生き生きこんぼやっておるようです。こんなことが果して許されるものでございましょうか。次官としていかがでございましょう。
  9. 岸本義廣

    岸本説明員 御質問の点、まことにごもっともでございます。法務省のわれわれといたしましては、御質問の趣旨は、本件に関する責任があるかどうか、あるといたしましたならば、その範囲はどうかという点に帰着するのではないかと存ずるのでありまするが、それらの点につきましては、まだ十分な調査ができておりませんので、その調査を待って、また御答弁申し上げたいと存じます。さように御了承願いたいと存じます。
  10. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 この問題は、すでに数回、十分お調べをいただ事まして何らかの措置に出られるではないかと期待いたしておりましたが、当席においてただ事務的な答弁をなさいますだけで、何一つ責任を感じられたように見受けられませんので、本日は大臣自身の御出席をお願いしたのです。ところが、あの青ざめた大臣がここにおいでになって、私ども質問をあまり継続いたしますると、その御病気にさわってはならぬと私どもは思うて、次官がかわってお立ちになることを私どもは甘んじてお受けをいたしておる。これは当然のことだと思います。この委員会における質疑応答でも、あの青ざめた大臣を長きにわたって苦しめるなどということは、これは人間として耐え得ることではありません。ところが、もしそれが被疑者であるならば、生命の危険を感ずる状態であっても、一同差しつかえないというがごときは、これは断じて許されません。被疑者といえども一個の人間であることには相違ございません。平等でございます。従って、この被疑者に対する扱いにおいても、人間並みのことをすべきではないかと言うのであります。いわんや、それはかよわい御婦人である。しかもわれわれの同僚の代議士の夫人である。医学博士の奥さんである。これが、荒川医師に見てもらったときに、生命危険だというので、ビタカンファー注射をやって、応急措置によって小康を得た。小康を得たときに監嶽医に見せた。血圧最高が八十にまで下っておったものが、応急措置注射きき目が現われて百十五、六になった。そして、監獄医が見たときには、まあこの状態なら心配ないと診断した。その結果を検事がとって、勾留差しつかえないと言って勾留を五十日も継続した。こういうことをやるから、卒倒実に二回に及んでいる。  ちょうど大臣がお見えになったから、私はさらに申し上げますが、大臣の御病後に対してさわりがあってはならぬと私どもは遠慮するほどに、人間人間であってしかるべきだと思う。今大臣がお見えになる以前に堂森夫人病状について詳細を申し上げておったのでありますが、大臣にもお聞き取りを願っておきましょう。こうあります。荒川医師診察では、脈摶微弱不整脈、一分間に七十、顔色蒼白苦悶状を呈し云々、それから、血圧を測定するに、最高八十ミリ、最低六十ミリ、よって二十プロブドウ糖四十ccにビタカンファー一cc二本を加えて静脈注射をした、辛うじてこれをなし得たとあります。この血圧状態であったならば、これは非常に危険であることはしろうとでもわかります。この状態では生命危険であるから入院させなさいと言った。そして応急手当をした。ところが、荒川医師がこの注射をして数時間後に監獄医を呼んだ。監獄医はどう判断したかというと、血圧をはかったところ、最高百十五、六、最低八十前後でありまして、普通であって危険ではない、勾留継続に耐え得ると言った。ところが、その数時間前に、荒川医師ば、生命危険の状態にあったので応急措置を加え、ビタカンファーをやった。このビタカンファーというのは、申し上げるまでもなく相当重症の人に対する応急措置です。それで血圧を盛り返した。盛り返した状態を見て、監獄医が、これならば大丈夫と言った。よって勾留継続いたしております。まるで人間人間と思わず動物のように扱っておる。しかも、荒川医師最初生命危険であると診断をして応急措置を加えたことを知らなかったといえば、検事は知っておるのです。検事指揮のもとに一切の取調べがされておる。また、たとえば食物にいたしましても、あるいは書籍なんかの差し入れにいたしましても、検事の命に従わなければできない状態にある。いわんや、外部からのお医者は、検事の了解なしにはできません。数時間前荒川医師が見て生命危険だといって応急措置をした。そうしてその応急措置によって血圧を盛り返しているところで監獄医に見せて、これでは大丈夫だ、生命に危険はないと言った。そして入院もさせず勾留継続した。これがためにその後しばしば重大なる症状に陥り、また卒倒もいたしております。かくて五十日間勾留継続し、その結果いかがでございましょう。この勾留の後に保釈で出て参りました夫人はどうでしょう。昨年四月に出て、今日に至るまで約一年、再び立つことができません。今でも病床にある。しかも検事はちゃんとそれを知っていて、――前のお医者さんが危険だといって応急措置をやったことを知っていて、今度は監獄医に見せて、応急措置の結果盛り返しているものを見せて、危険でないといって、これに対して勾留継続を請求した。これでは、まるっきり、注射をやって証拠をとり、注射をやって証拠をとり、病人をなおそうというのではございません。証拠をとるためにしばし命を長らえておこうというのです。そういったような取り調べ方が刑事訴訟法上許されるものかどうか、人権題問でないと言えるかどうかというのであります。大臣、御所見いかがでありますか。
  11. 牧野良三

    牧野国務大臣 事件の事実につきましては、この委員会並びに委員会外におきましても詳細承わりまして、深く遺憾を感じております。過去の事実に対して遺憾を感じておるばかりではございません。将来に対しても深く戒しめなければならない事案といたしまして、重大に考えております。何とぞ、当局としてもその点にただいま苦衷のあることをお察し願いたいと思います。
  12. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 この問題は、すでに半年にわたりまして、この委員会においてお尋はすること実にこれで四回目となります。この間当局において何らか責任者に対して責任を問う行動に出たのならば、私、今日何をか申しましょう。大臣も御病気をなさったのでございまして、直接にお聞き取りを願わなかった結果であるかもわかりませんけれども、しかし、これを代理する政務次官事務次官もおられます。事務次官はここにお出になって初めてお聞きするし、答弁をするのだからよくわからないと言う。しかし、長戸局長代理がこの間来口をすっぱくしていろいろと弁解をなさっておる。次官が知らぬとは言わせません。あるいは大臣には御病気のためにお耳に入れなかったかわかりませんが、次官が知らぬとは言われません。私は、少しはこういった問題については責任ある行動に出てもらいたいと思うのであります。  私は、さらに、少くとも大臣にはお耳に入れておく必要があると思います。この堂森夫人に対しまして三人のお医者さんに診断させましたことは、検察官相当考慮した結果であるといわれます。その第三回目の左影医師ば、堂森夫人が夕方になってなお病気を訴えて、お医者を呼んでほしいと言うので、警察からこの友影という女医を呼んだのであります。しかし、常識で考えますならば、病状が一定の時間を経過してもなお良好にならないときは、まず最初診断したお医者さんをさらに呼んで、どういう経過であろうかということを相談するのが常識だと思う。しかも、荒川医師生命に危険があるというのに、これを一切取り上げないで、それを打ち消す診断を求めるのに一生懸命になっておられます。そうして、荒川、高騰両医師診断措置後に、さらに新しい友影医師を呼んで、しかも前に医師診察措置をしたことを告げずに秘密にして診察させまして、もって高橋医師の側に立つ診断を一つでも多く加えようといたしております。これは病気をなおそうという態度ではありません。どうしたら勾留継続を合理的に立証することができるかということに注意が払われたというのほかはございません。被疑者が病苦を訴える以上、まずこれをなおして、そうしてなおして後に取調べをするのは言うまでないことであろうと思います。危険な状態になったら注射し、小康を得たら、そのときに監獄医に見せて、大丈夫だからといって勾留継続する、また危険な状態になったら注射をやっておいて、なおりそうになったら監獄医に見せて、大丈夫だ、これではまるきり動物を試験するようであります。人間を単なる証拠物と見て、証拠をとるために注射してはその生命を長らえさせるのに苦心をしておったとより見ることはできません。かようなことがもし公然許されるとするならば、これは、私どもの将来の人権というものは官憲の前にはほとんど弊履のごときものであるということになるおそれがありますので、私は大臣にも十分お聞きを願っておかなければならぬと思う。  過日当委員会長戸刑事局長代理説明によれば、勾留中、二月の十三日丸岡署において、三月二十六日福井地検において、取調べ中健康に特異状況を認められたほか、おおむね同一状態であると思われると言っているのです。二回の卒倒以外はおおむね健康状態であると言われておるのです。けれども、一件記録を見ると、決してそうではありません。ビタカンファー注射継続です。ビタカンファーというのは相当重症危険信号のある人に対する応急措置です。二回の卒倒以外は健康状態などと言っておる。私は、これはもろてのほかであると思う。この際、大臣を前にいたしまして、長戸局長代理より、もしこの二回以外は健康状態であるというならば、記録に基いてさらにそれを明らかにしておいていただきたいと思います。
  13. 長戸寛美

    長戸政府委員 この前の委員会におきまして、私は、二回の卒倒以外はおおむね同一の状態である、こういうように申し上げたと記憶しておるのでございます。一進一退と申しましょうか、特によくもなく悪くもない状態である、かように私どもは解しておった次第でございます。
  14. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 ただいまも申し上げますように、よくもなく不可もなく、まあ普通の状態であったという意味において、別に変ったことがないとおっしゃるでありましょうが、それならば、何ゆえに高橋医務課長までもビタカンファー注射継続したかということです。これは一件記録にも明らかな通り、ずっと高橋医務課長自身ビタカンファー注射継続しております。繰り返して申しますが、ビタカンファー相当重症病人のみに使用いたします強心剤であります。応急措置の薬であります。高橋医師自身その必要を認めておるのであります。また、平素十三貫もあった被疑者が、保釈のあったときにはわずかに九貫という骨と皮とだけになってうちに帰っておるのは何のためでありましょうか。しかも、昨年四月十二日に保釈になってから今日に至るまで何がゆえに病臥を続けなければならない状態にあるでありましょうか。堂森夫人保釈と同時に日本赤十字社の福井支部入院をいたしまして、その後上京してまた入院いたしておりますが、今日なお立ち上ることができません。本年二月の八日に裁判医の安川氏が判事、検事と同道いたしまして被疑者の宅に参りまして、病床に参りまして、仮病を使って寝ているのではないかというのでお調べに来られた。ところが、その結果は、そのお医者さんよりも診断書が出ております通り保釈後十カ月も経た今日でも、病状に照らし公判廷に出頭するのは適当でないと、はっきり診断をいたしております。勾留中二回の発作以外に異常なかった、普通の健康状態であった者が、かく長期にわたり立つこともできないような重病人に陥ろうはずはございません。勾留中二回の発作以外は異常なしというがごときは、全くの詭弁であると言わなけれればなりません。いかに法務当局といえども、このような詭弁を弄してまでも検察官措置正当化のため弁護するの必要はないと私は思う。大臣は、このような不当な処置をあえてし、被疑者をして不測の病気に陥れしめました係官に対して、相当責任を負わしむべきであると思う。そのことがもしあったならば、何をか私こうやって回を重ねて質問するの必要がございましょうか。この際取扱いの係官に対して相当責任を問うべきであると私は考えますが、いかがでございましょうか。
  15. 牧野良三

    牧野国務大臣 佐竹さん、実際あなたから事実をお述べ下さるたびごとに私は悲痛な感じを抱きます。かような事実はあるべからざるものでございます。従って、事実とすれば、何らかの措置をしなければならぬのは当然でございます。互いに事実を争っている場合じゃないと思います。どうか、佐竹さん、この程度で許して下さい。そうして、ほんとうに虚心たんかい事実を調べ、良心的な措置をするということにおゆだねをいただきたいと存じます。
  16. 林博

    ○林(博)委員 関連いたしまして法務大臣に伺います。  ただいま堂森さんの関係人権じゅうりん問題について種々御質問がございました。実は、横井関係違反につきましても数回にわたりましてこの問題の審査を続けられまして、すでに大臣におきましてもその内容につきましては十分御承知のことであると存じまするので、具体的な事実につきましては申し上げませんが、ただ、横井関係違反につきまして、特に、山田たまという八十一才のおばあさんが取調べ後何時間もたたずして死亡しておるというようなこと、また、北野田鶴子という婦人の取調べに対しまして、肝臓病中の病人に対して、仮病であると言って、しかも不当と考えられるような方法で身体検査をやった、しかもこれを半裸にして非常に不当なる取調べを行なっておるという事実、これは大臣よく御承知なことでありますので、今さら具体的な事実を申し上げません。また、前回横井委員から種々御質疑もありましたようなきわめて不穏当と思われるような取調べ当局がその関係者に対してもなされておるのであります。終戦後民主主義が徹底いたしまして、警察官憲の取調べあるいは検察当局のお取調べもかなり民主化いたしたと私どもも考えておったのでありますが、最近に至りまして、これがややもすれば逆行するような方向にあるのではないかということは、幾多の事例に現われておるのであります。あまり具体的な事実についてはお尋ねいたしませんけれども、ただいま申し上げましたような横井関係の選挙違反の事実関係に対して、大臣はいかなる御所見を有せられておるか。
  17. 牧野良三

    牧野国務大臣 この点は、この委員会の中で私が一番よく事実を知っておる者でございます。のみならず、本件の事件に関係があります。どうか、私に答弁することをここではお許しを願いたい。そして、こういうことがあってはならぬ。従って、ただ責任の問題じゃない。人権を尊重するということに対しては、法務省に人権擁護局があるにかかわりませず、この人権擁護局に対する尊重の念が国会も国民も乏しい。どうか、この機会におきまして、人権擁護局が事前に大きな活動をし得るように、この上とも御援助を賜わりたいと存じます。
  18. 林博

    ○林(博)委員 私も、この問題につきましては、これ以上大臣の御答弁を求めることは、特殊な事情によりまして差し控えたいと考えておる者でございますが、ただ、最近の傾向といたしまして、取調べに当りまして、単になぐったりあるいはけったりしなければ人権じゅうりんじゃないのだ、その他の方法は、あるいは脅迫的な取調べをしても、あるいは堂森関係のように非常に御無理な取調べをしても、人権じゅりんじゃないのだという思想が捜査当局の間に流れておるのではないかと思われるような事例が幾多あるのであります。私は、単になぐったりけったりすることのみが人権じゅうりんだとは思わない。どうか、この点をよくお考え下さいまして、また戦争前のような捜査に立ち戻らないように、特に、この捜査については、また人権擁護に関しては御理解のある大臣でございますので、特にこれを大臣に要望いたしまして、私の関連質問を終ります。
  19. 細田綱吉

    細田委員 大臣は非常に人権擁護に関心を持っておられます。人権擁護局は、大臣のおっしゃる通り非常に大切な問題を扱うので、国民もまた重大な関心を持ってその存在を認めなければならぬと思う。こいねがわくは、大臣にはもっと長く健康も許されて大臣としておっていただきたい。党派をこえてこいねがっておる。  そのことは別としまして、人権擁護局が法務省にあるということが、言いかえれば、きょうも問題になっている人権じゅうりんしても顧みないような検事取り巻かれていることが、人権擁護局の存在が、またその活動がきわめて鈍いということになる。検事人権擁護取調べをさせるということは、私も職業が弁護士で、三十年の経験から見たら、これはまるで噴飯ものです。そう言うと、何を言っておるのだ、検事は公正だと言うが、実際噴飯ものだと思う。そのような検事取り巻かれている法務省の中に人権擁護局を置くということは、重大な考察を要する問題じゃないかと思う。  それから、なお一つ、人権擁護局が、今度の三十一年度の予算でも、私は大拡張をされたようには見ていないが、少くとも大臣の御在職中に人権擁護局の機構を拡充しないと、こんな予算で何も仕事はできませんよ。ただ、世間に対して、法務省は人権擁護に対しては重大な関心を持っておりますという看板を出しているだけである。  これらの点について、大臣はどういうふうにお考えになるか、一つ伺っておきたいと思います。
  20. 牧野良三

    牧野国務大臣 ただいまの御質疑でございますが、検事に守られて一緒におる法務省の中に人権擁護局を置くということは意味がなくはないか、少くとも力が弱くはないかとおっしゃることには、私は同意をいたしかねます。検察官がすべて悪いのじゃございません。第一線において捜査取調べに当る検事に非常な思想的な誤まりがあるというのは、長い因習と伝統からここに来ておると思いますので、私は相当思い切った心を持ちましてこれが矯正に当っておるのであります。それはどういうことかといいますと、刑事警察の捜査も検察陣もほとんど同じような行き方をしておるということが非常な誤まりである。この二つの間にはせつ然たる区別がなければならぬ。警察は第六感を働かしてよろしい。そして有罪資料を集めてよろしい。検察当局は、その有罪資料というものを、批判的に、そして、欠陥がないか、許すべきところはないかという点を見なければならぬのに、いやしくもどれだけでも有罪とすべきところがあれば、それにくっついて、もっとそれを追及しようとする傾向がある。これは大きな誤まりでありますから、これはぜひ改めようということを過去半年にわたりまして微力を尽しておりますが、さらにこの点は御期待に沿うだけのことはいたしたいと存じます。  かつ、法務省の中にある人権擁護局がきわめて微力じゃないかという点は、おっしゃる通りでありまして、この点は、閣議の席上におきましても、そして大蔵当局に対しましても、大臣以下幹部全部の前でこのことをよく言いまして、将来に向っての深い決心を私は要求しておきましたから、必ずこの方面にも私は微力を尽したいと思います。そして、民間の人権擁護委員の諸君と力を合せまして、必ず私はきわめて近い将来において大きい効果をあげ得るベースメントを作り上げたい、かように思っております。  今日までに起りました事案に対してば御寛恕を請い、過去の事案に対しての責任を十分私は身をもって明らかにするとともに、将来については皆さんの十分な御支援を賜わりたいと存じます。ずいぶん苦しい立場におります苦衷をお察しいただきたい。
  21. 細田綱吉

    細田委員 全国的に人権擁護委員という者がおって、これは給料も何もないが、民間に対して人権擁護の一半の責任を持ってもらうために、これに重大な関心を呼び起すということは、私はある程度効果があると思う。しかし、実際一線に働いておる警察官あるいは検事に対して、この人たちは実際しろうとで、これに断固として対抗して、その非違を摘発する、糾弾するというのにしては、私はあまりにも微力だと思う。そこで、この制度もいいが、さらに加えて、日本弁護士連合会なんかに――これは弁護士連合会自身が断わるかどうか、そういう補助金なんかは不覇独立な民間団体としてもらうなと言うかもしれませんが、それは別として、こういう団体に対して、人権擁護局の一つの外郭的な機関として、一つ法務省は、というよりも内閣は、予算なんかの面も十分に考慮して活用する御意思はないか、大臣の御所見を承わりたい。
  22. 牧野良三

    牧野国務大臣 御説、同感であります。そして、すでにバー・アソシエーションの席上におきまして、そのことを私は発表してお願いしまして、協力を仰いでおります。その方面にも新しい真価を得たいと思います。
  23. 高橋禎一

  24. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 大臣からは誠意を込めての御答弁がありましたので、御病気のほども十分お察しいたしておりますから、大臣に対する質問はこの程度にいたします。しかし、過般来、課長との間に質疑応答を重ねて参りました点について、いま少しく話しておかなければならぬ点がございます。これがさらに大臣の御勘考をわずらわさなければならぬ点にも触れておりますので、ちょっとお聞き取りだけは願っておきたいと思います。
  25. 牧野良三

    牧野国務大臣 私は十二時に……。
  26. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 けっこうです。それでは、細田委員より大臣の御在席の間にちょっとお尋ねしたい点があるそうでありますから、細田君に譲ります。
  27. 高橋禎一

  28. 細田綱吉

    細田委員 大臣はもうお疲れですから、伺いませんが、お聞きを願いたい。岸本次官質問いたします。  先ほど佐竹委員に対して岸本次官は、この事件は全然知らないから同僚と協議をしてと、こう言われたように聞いたのですが、これは皮肉な質問のようですが、次官は毎日御登庁になるのか、あるいはたまにしか出ないのか、その点をまず伺います。
  29. 岸本義廣

    岸本説明員 この事件につきましては、当初から報告を受けまして、十分存じております。しかしながら、先ほど来の御質問によりますると、結局取調べ検察官責任があるかどうかという御質問のように拝承いたしました。責任があるとするならば処分しなければならないのではないかというような御質問と拝承いたしたのであります。従いまして、それらの問題につきますると、いま少しく事実関係調査研究しなければという意味で、初めてその御質問を受けたのだ、かように申し上げたつもりでございます。
  30. 細田綱吉

    細田委員 本件はすでに刑事局からも係がお調べ見えておる。人権擁護局からも行っておる。それらの出張に対する決裁は次官を経過しないかどうか、その点を伺います。
  31. 岸本義廣

    岸本説明員 人権擁護局調査の結果、及び刑事局調査の結果、いずれも事務次官のところで決裁するのでございます。もしその間に意見の食い違いがありまする場合には、またこれを事務次官のところで調整いたしておるのであります。従って、本件につきまして、人権擁護局及び刑事局調査の結果を、まだ十分なる調整ができておりませんので、これを調整しなければならないと考えております。
  32. 細田綱吉

    細田委員 刑事局あるいは人権擁護局の両局から取調べに行ったのは、大体いつで、自来幾月たっておりますか。
  33. 岸本義廣

    岸本説明員 ただいまの御質問の点は、詳しく人権擁護局長から説明さしていただきます。
  34. 細田綱吉

    細田委員 それではけっこうです。戸田局長には佐竹委員が聞いたあとで私はまた伺います。  岸本次官に伺いますが、私の受ける印象は、いやしくも国会議員の、しかもその夫人の問題であり、しかも法務委員会では数回にわたって問題になっておる。しかも、本件については、堂森議員は実に謙譲で、不徳のいたすところで裁判になった、裁判中はとにかくひどいけれども法務委員会で問題にすることはあとにしてくれというように、われわれは制肘というか注意を受けておったから、実際はその第一審当時問題にしなかったほどに、彼は謙譲なのです。そういうことに便乗して、まるで、法務委員会でどういうことを聞こうと、そんなことは事務次官関係ないのだというような無関心な状態のように私は強く印象を受けた。先ほど佐竹委員も幾多の設例を申し上げて御質問申し上げたわけですが、あなたも検事出身で、あなたの過去四十年の長い検事生活から言って、一般の取調べにおいて、今ああいうようなことがもし事実だとするならば、これは検事は一般にこんなことは平気でやっておるのでしょうか。また、あなたの経験から、こういうことをやって従来あなたは御出世になったのだろうか。その点、一つあなたの御経験と感想を伺います。
  35. 岸本義廣

    岸本説明員 私個人の問題で、はなはだ恐縮です。われわれの経験、及び現在検察庁で検事が犯罪を捜査いたしておりまする場合には、時間的にも、先ほど来御質問がございましたように、調べの方法につきましても、人権を尊重する上に万全を期するように心がけておるのであります。私自身の体験から申しまして、かような問題が起きないように極力努めて参りましたし、また、今日の検事諸君に対しても、そういうことのないように、あるいはいろいろの会合の機会、あるいはまた個人的な折衝の機会をつかまえて、訓練と申しますか、指導と申しますか、そういう方面に力をいたしておるような次第でございます。
  36. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 大臣ももう時間が迫りましたが、ほんの二、三分、一問だけお聞き取りを願いまして、あとは御退席いただいてけっこうでございます。  ここに一つ重大なことは、三月二十六日に堂森夫人卒倒いたしました際に、さすがの高橋という刑務所のお医者さんも、二、三日は取調べをしてはならぬということを高志警察署へも連絡いたしました旨、公判に出た際証人として明らかに証言をいたしております。しこうして、その卒倒検事取調べ中のできごとでありますから、その後すぐには取調べができないことは検事もよく承知のところであります。ところが、その翌二十七日の午前九時から川崎警部補が取調べをいたしております。この取調べ検事と連絡なしになされたものではないと思います。本件はすべて検事の指揮に従って捜査が進められておりますし、しかも検事自身直接に取調べを続行しておるその途中において卒倒をした。その後の調べは直接検事が当るべきで、卒倒の直後に川崎警部補が直接に調べをいたしておる。これは検事と連絡なしにできることではございません。しこうして、長戸刑事局長代理も、かって当委員会において、検察庁は二十七日、二十八日両日とも検事取り調べていないと御答弁をなさいました。そして、三月二十七日午後になって、検事取り調べようとして、検察事務官をあらかじめやって病状を見させているわけでありますと御答弁をなさいました。ところが、高志警察署の被疑者動向簿によれば、検察庁は、二十七日、二十八日両日とも、本人を検察庁に押送するよう命令を出しております。だが、これは本人が重病で拒否をいたしましたためにできなかったのであります。検察事務官をあらかじめやって様子を見させた上で取調べをするかどうかということをきめようとしたのではなくして、二十六日卒倒したにかかわらず、そうして高橋医務課長より二、三日は取り調べてはならぬと申すのにかかわらず、その翌日検察庁は直ちに身柄を検察庁に押送すべき旨を命令いたしております。そこで、来ないので、午後になって検察事務官を見回りにやっておるのであります。かような行動は、全く人を人と見ない、病人病人と思わない人権無視の行動であると私は考えます。長戸局長代理はこれに対していかなる御所見がございましょうか、承わっておきたいと思います。
  37. 長戸寛美

    長戸政府委員 お尋ねの件につきましては、当日岡田事務官をして一枝さんを自動車に積んで拘置所へ送らせたのでありますが、その際看守巡査に当日の意向を申し伝え、同看守巡査も、その選挙違反被疑者動向簿におきまして右の一枝さんの事項を記載した上、午後十一時ごろ帰署したが、意識がはっきりせずと記載しておるわけであります。検察官は、当時別命のあるまで取り調べないようにとの指示を警察の方にしたというふうに記憶すると申しておるわけでございますけれども、その点につきましては、警察ではその旨を聞いていない。従いまして、私どもの判断といたしましては、検察官から明確な指示がなかったものと考えられるのでございます、この点につきましてはまことに遺憾に存じております。二十七日の午後、検事取調べのために呼び出しをかけておるわけでございますが、それは、午前中一枝さんを診断した高橋医師に連絡して、取調べは差しつかえないであろうという返事がありましたので、呼び出しをかけた次第でございますが、御本人の御希望と申しますか、それをいれまして、取調べは中止しておる次第でございます。私ども、これらの際に、卒倒事故というようなことでございますから、検察官としてはより慎重に扱うべきであった、かように考えておる次第でございます。
  38. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私は長戸局長代理にお聞きをいたしたいのでありますが、その前の晩に、今御答弁通り卒倒をして警察へ送ったのです。警察ではまだ意識不明なんです。そこで、監獄医も二、三日は調べちゃならぬと言った。ところが、その翌朝早くも川崎警部補はそれを引き出して調べた。それは連絡がなかったからだとおっしゃる。だが、常識上どうでしょう。検事が自身調べておる最中に卒倒したものを、翌朝警察官が横取りしてその重病人調べるようなことがあり得ると思えましょうか。検事自身お取り調べになっておりましょう。その前で卒倒したのですよ。それから警察へ送った。ところが意識不明なんです。監獄医調べちゃいかぬと言うのです。だから、警察も万事承知しておる。ところが、翌日、検事の指揮にかかわらず、検事の言うことを聞かないで警部補がいきなり調べるなんていうことがありましょうか。これはおそらく検察当局とも何か打ち合わせの結果なされたことでありましょう。検事自身が調べておるものを警察官が横取りして、しかもそんな重病人を引っぱり出して調べるなどということは、常識上考えられないと思いますが、いかがでございましょう。
  39. 長戸寛美

    長戸政府委員 ただいまも申し上げましたように、検察官といたしましては、二十七日は、少くとも午前中取り調べないようにという指示をいたしたつもりでおったわけでございますが、この連絡不十分のために川崎警部補が調べてしまったということは非常に遺憾でございまして、私の考えますには、種々の事件に関係がございますので、警察と検察庁と別建にあるいは調べておったのではないかというふうに考えられるわけでございますが、こういう際、検察、警察ともに一体として事に当るべきでありまして、その間の連絡不十分ばまことに申しわけない、そのためにこのような病気の方を午前中調べるに至ったということは、検察として責任を感じておる、かように申し上げておきます。
  40. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 この案件は、すべて検事の指揮によってなされておる案件です。検事が指揮しないで、勝手に警察官が横取りして調べる事件ではございません。これは、あなたの長年の御経験上、あなたが直接に調べておるのに、横合いから二本建で警察官が横取りして調べる、しかもそうした重病人を勝手に調べるなどということはありませんでしょう。これは少くとも了解なしにはできることじゃないと私は思うのであります。私は、そうだとしたならば、これは警察当局としてもあまりのやり方であると思う。  いま一つ考えますことは、高志警察署の動向簿によれば、二十七、二十八両日とも身柄を検察庁に押送せよと命令を出しておるのじゃありませんか。これは事実じゃないかと思いますが、いかがです。
  41. 長戸寛美

    長戸政府委員 ただいまお話しの動向簿によりますれば、三月二十七日午前十時四十分ごろ検察庁から診断の結果につき問い合せがあったので、川崎警部補が直接回答した云々、午後一時ころ検察庁へ押送せよとのことであったが、本人はからだの工合が悪いので出頭できなかったというふうな記載がございます。二十八日においてもそのようなことがございまして、確かに検察庁の方から呼び出しがあったというふうに考えております。ただ、私ども調査によりますというと、その場合、病状についても連絡をいたしまして、高橋医師からの取調べ差しつかえなしというふうなあれがありましたので呼び出しをかけた、こういうふうに理解しておった次第でございます。
  42. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 その御答弁は解しかねます。高橋監獄医は、過般地方裁判所の法廷に出て、宣誓の上にはっきりと証言をいたしておる。これによれば、二、三日は取り調べてはいかぬということをはっきり申し伝えて帰ったとあります。高橋さんの了解のもとに、大丈夫だろうと思うて調べたであろうという御推測は、これは全く高橋さんの法廷における証言と相反します。そのようなことはあり得よう道理はありません。前の日に取り調べ卒倒をして、警察へ送ったがまだ意識は不明である、お医者さんも二、三日は調べてはならぬと言うのに、あくる朝からは警部補がもう取調べをする。検察庁はまた呼び出しをする。押送せよと命令をする。何でそんなにまでしなければならぬのでしょう。二日休んだからといって、証拠が消滅するわけのものではございません。明日になって保釈をしたいから、たとえば二十八日保釈をしたいから、二十七日何でもやりたいというならば別です。その後もずっと勾留継続をいたしております。いかに無理な調べを進めたかということがわかります。そんなにまでして調べなければならぬ状態の事件であったでありましょうか。何がゆえにそうまでして調べなければならない状況にあったのか、いかなる御報告をお受けになっておりましょうか、承わりたいのであります。
  43. 長戸寛美

    長戸政府委員 ただいまお話しの公判廷における高橋医師診断のことでございますが、そのときの状況として、「軽い脳貧血のようであったのでビタカンファとビタミンBを注射したところ、本人もこれで結構ですと言ったから、安静を命じ、私も暫く付き添っておりましたが、本人もよくなりましたというので、高志警察署へ送り、その後の安静を命じて帰ったのであります。翌二十七日に、二十六日調べているときに倒れたからその後のことが心配だ、様子をみて来てくれという検察庁の依頼がありましたので、高志警察署へ行ったところ、案に相違して川崎警部補の取調を受けていました。そしてもう何ともないからということでしたから、それで注射をせずにそのときは帰ったように思います。或は注射をしたかもわかりませんが、その点ははっきり記憶がありません。」、かようになっておるわけでございます。その後のことにつきましては、おそらくこのときの一番最後の高橋医師診断によりまして検事は呼び出しをかけるに至ったというふうに考える次第でございますが、検事が非常な病状悪化というふうなことを十分に承知しながらこの事件をどうしてもその際に調べなければならないというふうな事情はもとよりない、医師診断によりまして取調べ可能ということでありましたので呼び出しをかけたというふうに考える次第でございます。ただ、私は、ここで決して弁解を申し上げるのではなくて、この事件全体といたしまして、初め検事が三名の医師診断を受けた次第でございますけれども、その後卒倒事故等もございまして、高志署の医師のみならず外部の医師にも見せる等、さらに慎重を期すべきであったというふうに考えている次第でございます。
  44. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 ただいまお読みになりましたのは、公判における高橋医師証言をお読みになったのでございますか。
  45. 長戸寛美

    長戸政府委員 本日お手元に御配付申し上げました、第一審公判における高橋医師証言病状に関する部分の抜萃でございます。
  46. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 この高橋医師が、法廷において、ともかく二、三日調べてはならぬ、調べぬようにするがいいということを徹底させて帰ったことも、明らかに公判において証言をいたしているのでございます。この部分をとれば、とうてい、ただいま御弁解の、翌日警察官が調べたり、またその翌日身柄を検察庁へ押送せよなどということは、命令することはあり得ないことであると思うのでありますが、この点はさらになお十分にお調べを願っておきたいと思います。  ともかく、本案件は非常に無理な調べをいたしておりますことは、これはもう一件記録によって明らかであります。かようにいたしましてでき上りました証拠が、そのまま裁判の資料となることは、これは重大なる問題であると私は考える。被疑者が折々失心状態に陥ったことは、簡単に脳貧血だときめてしまうわけには参りません。被疑者には心臓疾患があって、しかも肉体的に衰弱が日増しに加わっておりまする場合、ショックによって起った失心状態であって、心臓疾患増悪に基く神経系統の失調による失心状態であると言わなければなりません。このような病人は何ら抵抗力もありません。また防御力もありません。その供述がどのようなものであるかは、おのずから明らかであります。しかも、この症状のもとにおいて、病気回復をあと回しにして、ともかく急いで取調べをして証拠を作ろうというがごとき態度は、いかに検察当局といえども、これは正常ではないと思います。昨晩失心状態に陥って警察へ送り返したが、なお意識は不明であった、お医者も二、三日は調べぬ方がよろしいと言われたのに、翌日は早くも警察はこれを取り調べようとし、さらに検察当局へ身柄を押送せよと命じて、そうして、かようなほとんど無抵抗の、また何らの防御力も持たないところの、そういった病人を急いで調べて、証拠を作り上げようといたしますることは、これは、いかに検察当局が権力を持っておりましても、正常でないと思います。悪い者は病気をなおして、そうして適当に防御をなし得るだけの回復を待って、堂々と取調べをすべきである。にもかかわらず、こういう症状のもとに何らの抵抗力もなければ何らの防御力もない人を取り調べて、そうして証拠をでっち上げようとするがごときは、私は決して正常な態度であるとは見ることができません。しかも、この症状のもとに長期勾留をいたしまして、証拠を得るために注射を打っては取り調べ、投薬をしては尋問を重ね、注射をしては証拠をとり、投薬をしては書類を作る。こういった資料が、これがまた裁判の資料に供せられて、重大なる判決の資料ということになりますと、われわれは戦慄を感ぜざるを得ないのであります。私は、公明なる裁判のためにも、このような無理はすべきでないと思いますが、当局のお考えはいかがでございましょう。次官に一つ御答弁願います。
  47. 岸本義廣

    岸本説明員 ただいまの御質問、もっともでございます。抽象論といたしまして申し上げますならば、ただいまの御質問及び御見解には全面的に賛成でございます。ただ、具体的な本件につきましては、先ほど来主管課長から御説明申し上げているような事情がございまして、はなはだ遺憾ではございます。遺憾ではございますが、当時の事情真にやむを得なかったものがあると考えている次第でございます。
  48. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 やむを得ないものがあったと言われますが、私どもはこれを理解することができません。私は、この委員会が開かれた後においても、政府当局の御答弁が、まるっきり被疑者に対して何かしら解することのできない悪い気持を持って対せられておりますことを看取せずにはおられなかったのであります。たとえば、第一に、荒川医師診断にけちをつけまして、荒川医師堂森派であると最初委員会で御答弁になりました。これは全く事実無根であります。しかも荒川医師診断は科学的で合理的であるにかかわりませず、これを排除いたしまして、先ほど申し上げました高橋刑務所医の非科学的な、しかも重要なる症状を見落しておりますところの診断、また応急手当をした後の診断を尊重いたしまして、勾留継続をいたしておりまして、そうして、これをどこまでも合理化しょうということに当委員会においては一生懸命になっておられることがよくわかるのでございます。真にやむを得ないとおっしゃる言葉でもって、何かしらかばおうといたしております。その気持と実に軌を一にしております。私ははなはだこれを遺憾といたしております。第二に、被疑者卒倒するや、警察荒川医師を呼んでこれを見せたときに、一枝さんが荒川を頼んでくれと言うので荒川を呼んだのだと答弁された。いかにも荒川が一枝さんのために不当な診断をなす理由があったかのごとくに弁解をなさっていたのでありますが、幸いにして、中川刑事部長が、うしろの方から、いやそれは違うと言って下さいましたので、その問題もそうでないことが明らかにせられた。第三に、被疑者が三月二十六月卒倒した事実に対し、卒倒ではない、ゆるやかに倒れたと弁解をされました。しかし、同日高橋刑務所医は被疑者卒倒したから至急に来てくれという連絡を受けて急いでかけつけたことが記録によって明らかにされております。また、その夜警察に帰されてからも夫人はなお意識不明でありましたことは、ただいまも繰り返して明らかにした通りであります。この明白な事実までも、最初のうちは極力これを曲、げて弁解しようとなさっておりました。このように、二、三の点をあげただけでも、法務当局自身が検察当局の報告をうのみにいたしまして、また検察当局は事実を曲げて自分の責任を回避しようといたしておりますことがよくうかがわれたのであります。  検察当局の言動中はなはだよくないと思われますものがたくさんございますが、そのうち一点を訴えてみたいと思います。それは、被疑者が衰弱したのはハンストの結果であると放言をなさっておることであります。堂森夫人がハンストをしたというのは、井村検事も、また当時の次席検事の高田検事もたびたび放言なさっておられる。堂森芳夫氏取調べに際しても、また母親の取調べ中にも、また公判でも、井村、高田検事は、堂森夫人がハンストをやって健康を害したのを検察庁が責任を持てといったふうに言われるのは承服できない旨放言いたしております。これは、堂森夫人の衰弱を自認いたしまして、その責任を転嫁して、かつ長期勾留の理由を合理化しようとする以外の何ものでもないと私は考える。しかし、一件記録によれば、堂森夫人は食欲のないまで病気に苦しんでいたことがきわめて明確であります。それでもなお一生懸命食事をとろうといたしまして、自分の好きなものをいろいろと差し入れをしてもらっております。これは動向簿によって明白である。そうして極力食事に努めておりますることも、また記録上明らかでありまして、ハンストなぞとはもってのほかです。  以上のごとく、検察当局がいかに事実を曲げてまでも責任を回避し、被疑者に不利の事実を押しつけようとしておるかがわかります。法務当局たるものも、いかに部下の行為とはいえ、理非を明らかにしなければなるまいと私は思う。間違っていることはすみやかに正すべきである、責任のあるところは厳粛に処置すべきであると思います。ただいまの次官のお言葉にもちょっと現われておりまする通り、何かしらそれは事態やむを得なかったであろうといったような、そういったような言葉でこれを救うて、おざなりに済ませようというお気持がありますればこそ、何回ここにお尋ねをいたしましても、ついに結論を得ることを得ないのです。当席においても、なお、次官は、さらによく、取調べをいたしましてお答えをいたしますなどと、繰り返しておりまするような状態であって、これは私ははなはだ遺憾に思う。今回は次官もここに御列席をいただいたことでありますので、この際一つ十分の決断をもって処置を願いたいものと私は考えます。これを申し上げまして私の本日の質問を終ります。
  49. 高橋禎一

    高橋委員長 そういたしますと、本日の日程のいわゆる堂森事件調査、いわゆる横井関係事件調査というのはこれで終りとして、次に潤間組事件調査について質問を続行することにいたしたいと思いますが、大体本日の理事会で決定いたしましたのは、堂森関係事件については約一時間という予定をきめておるわけです。(細田委員堂森事件について関連質問があります」と呼ぶ)時間も非常に超過しておるわけですが、細田委員の御質問はそう長くありませんか。――それでは、堂森事件調査に関して細田委員から関連質問があるそうですから、これを許します。
  50. 細田綱吉

    細田委員 戸田局長に伺いますが、あなたの部下が調べに行ったときに、とにかく、十三貫の人が九貫になったということは、きわめてひどい健康状態であることだけはわかると思う。これだけでも、いかに衰弱しているかということはわかるのですが、留置しておった拘置所でこういうことは調べていなかったのですか。それから、今一つは、荒川医師堂森派だということをこの前井本局長も言っている。そういう事実をあなたの方で確かめてみたか、この点をお尋ねいたしたい。
  51. 戸田正直

    ○戸田政府委員 前回の当委員会で私の方に調査要求がございました二、三の点につきまして、調査結査を一応ありのままに御報告を申し上げます。  私の方の調査結果のまず第一点でございますが、堂森一枝さんの身柄拘束状況を申し上げます。昭和三十年の二月十九日公職選挙法違反……
  52. 細田綱吉

    細田委員 要約してお願いします。
  53. 戸田正直

    ○戸田政府委員 それでは、医師の点はもうすでに再三当委員会でも質疑が行われておりますので、これを抜きまして、三月二十六日の卒倒以来から申し上げます。前の方は調べてございますけれども、時間がございませんから省略いたします。  当日午後七時四十分ごろから福井地方検察庁において、検事井村章が検察事務官岡田武男立ち会いで取調べを行なっていたが、同検事が捜索の際発見された一枝さんの家計簿を示し、選挙費用に関し質問したところ、これが同人に精神的なショックを与えたためか、かけていた腰かけから右側にずり落ちるように倒れたので、岡田検察事務官が手をかして応接用ソファーに横臥休養させた後宿直室に移し、福井刑務所高橋医師の来診を得て手当をなした。当日の高橋医師診断では、本人も大したことがなくちょっと目まいがした程度だと言っており、何ら異常を認められなかったので、軽い脳貧血を起したものと認められ、直ちに強心剤の注射をなし、約三十分間横臥せしめ、午後九時半ごろになって、一枝さんがもうよくなったと言うので、自動車で高志警察署に岡田検察事務官外一名をつき添わせて送った。当日井村検事高橋医師に一枝さんの病状並びに勾留していても差しつかえないかどうか尋ねたところ、同医師は、軽い脳貧血であるので今晩のところ治療しておき、明日の診断の結果きめたいとのことであった……
  54. 細田綱吉

    細田委員 あなたの報告を当委員会へ文書で出していただきたい。そうして、私の今伺った、それは私の非常に伺いたいところですから、とりあえずその点を伺いたい。  十三貫のからだ、これも女として普通かもしれません。決して多い方ではないが、それが九貫になった。これは決して偽わりのない、赤十字病院で保釈後すぐ調べたのだ。こういうことは一見してすぐわからなければならぬが、堂森一枝夫人を留置中にからだの目方等ははかったことはなかったか。要するに、人のからだの管理が適正であったかどうかという一助として、あなたの方で調べられたろうと思うのだが、こういうことを調べておられるかどうか。それから、いま一つは、井本局長が、この前、荒川医師堂森派だ、もって信頼するに足らないというようなことを言っておるが、これは私の質問に対してそう言ったと記憶しておる。果して荒川医師堂森派であったか。これは医師同士だから知り合いであることはもちろんだが、しかし、堂森派で選挙運動をやったとかいう関係があったかどうか。この点、一つあなたの方の御調査の結果を伺いたい。
  55. 戸田正直

    ○戸田政府委員 それでは、体重につきまして、調査いたしましたところをまず御報告申し上げます。  丸岡警察署においても、高志警察署においても、体重を測定しておく必要を認めなかったので、体重を測定していないが、当時看守係勤務の警察官、川崎警部補、井村検事の述べているところによれば、一枝さんは逮捕の当時からやせ型であったと言われているが、荒川医師診察当日の感じでは十貫か十一貫しかなかったものと想像されると述べている。三月二十九日福井刑務所において測定したところによると、四十六キロであり、四月十六日に一枝さんが福井赤十字病院に入院した際の測定では四二・五キロであって、三・五キロ減っている。右の測定法は全裸であるか着衣であるか明らかでありません。  それから、次の、荒川医師堂森派の運動員であったかどうかということにつきましては、私どもで十分な調査ができませんが、同じ医師であるということ、また警察医師である、こういう点は明らかでありまして、決して堂森派の人であるというようなことは私ども調査では現われておりません。
  56. 細田綱吉

    細田委員 血圧最高八十ミリ、最低六十ミリ、これは、長戸局長代理は若いから、まだ血圧の点はあまり関心を持っていないかもしれないが、少くとも岸本次官はもうこういうことには十分御関心があると思う。これはしろうとでも――私自身も若干血圧が高いのでしょっちゅう気をつけておるのだが、医学の知識のないしろうとでも、低いのは八十以下になったら危険だ、高いのは二百二十以上になったら危険だということはわかる。ところが、あなたの方は、指導しているのだ、教育しているのだと言われるのだが、血圧を測定すると最高八十、最低六十、この差がまた非常に少い。この差が少いということは危険なのだ。検事なんかは医者じゃないから専門のことは知りませんけれども、少くとも収容して人体を管理する局にある者が、こういうことに全然無関心で取り調べていいということになっているが、あなたたちの教育はどうなっているか。しかも、刑務所医師高橋医師ですら今の事実を認めておられて――ビタカンファーやビタミン等を注射しているということば、高橋医師自身がこれは相当危険だということを認めておられる。こういうことは拘置所の医者なんかはちっとも無関心でやられているのか、また、検事も、あなたたちの教育から言えばこんなものはかまわぬということになっておるのか、あなたはこれをかまわないで調べておる本件についてどういうふうにお考えになっておるか、これを一つ伺いたい。
  57. 長戸寛美

    長戸政府委員 たびたび申し上げますように、本件につきましては三人の医師に見せておるわけでございますが、それは単なる口頭で勾留に耐え得るかどうかというふうなことを聞いただけでございまして、本来申しますれば、その際に診断書をとりまして、それによって十分の検討をすべきであり、また卒倒等の事故があった場合におきましては、現在から考えますならば、そうした場合にさらに外部の医師にも診断を求めて適正を期すべきであった、かように考えておる次第でございまして、ふだんの教養の点におきましては、事人命に関する問題でございますので、一般的にそういう点も特に留意をするように申しておる次第でございます。
  58. 細田綱吉

    細田委員 先ほど佐竹委員質問に対して岸本次官は、一般的にばこういうことはやってはいかぬが、特に当時の事情やむを得ないということを言っておったが、本件取調べについて当時の事情にどういうやむを得ない事情があったか、この点を伺いたいと思います。
  59. 岸本義廣

    岸本説明員 前回申し上げましたように、かような問題を起しましたりは全く遺憾でございまして、これはもう返す返すも残念で、おわび申し上げる以外にないと存じております。やむを得なかったと申しまするのは、取調べの状況から、先ほど来由しまするように健康管理という重大な問題はございますけれども、それを検事がないがしろにしておるわけでは毛頭ございませんので、それを顧慮しつつ取り調べておったという事情がございまするので、この点やむを得なかったのではなかろうかというふうに申し上げている次第でございます。この点御了承願いたいと思います。
  60. 細田綱吉

    細田委員 あなたの御答弁は、当時の事情やむを得なかったと言われているので、当時の事情やむを得なかったというその事情がわれわれには了解ができない。特にそういう危険を冒してまでもやらなくてはならなかったか、その事情が刑事訴訟法の立場から言っても私たちには了解がつかないわけです。あなたは健康管理の上にも非常に注意して取調べを進めておったと言うけれども、ちっとも注意していないでしょう。二度も卒倒して、おまけにカンフル注射、ビタミン注射なんかやって――ビタミンはだれでもやるにしても、カンフル注射なんか打って、今佐竹委員の御質問のように、警察調べさせたりしている。しかも、前から心臓が悪いと言っているのですよ。心臓が悪いというのは法廷に提出されている資料なんかにも出ておるのだが、そういうようなことで、健康管理について注意していない。血圧が八十ないし六十なんというのは、きわめて危険状態ですよ。たまたま死ななかったからよかったものの、死んだらどうする。あなたは、やむを得なかった、健康に注意してやりましたと言うが、われわれはそういう状態では注意ということを言わないのです。世間では一般に言わないのです。検察官の仲間同士ではそういうことを注意すると言うのか、この点についてさらに御答弁を願いたい。
  61. 岸本義廣

    岸本説明員 検事被疑者調べましたのは、そのつど医者診断を得まして、取り調べても差しつかえないかどうかという点を医者に判断していただきまして、取調べに差しつかえないという判断の結果を信頼しつつ取り調べておったのでありまして、その信頼したことがいかぬのじゃないかということになりますると、これははなはだ申しわけないと申し上げる以外にないのであります。さような意味で、やむを得なかったのだという考えを持っておる次第でございます。
  62. 細田綱吉

    細田委員 検事は公安の立場からで、本件裁判所が判断することですから検事が容喙すべきことじゃない、それはわかりますが、起訴官であり国家公安の立場を代表する検察官として、こういうようにしてとった調書が証拠になっておる判決とするならば、この判決は検事の立場からどうお考えになりますか。
  63. 岸本義廣

    岸本説明員 大へんむずかしい御質問のようでありますけれども、われわれ法務当局といたしましては、すべて裁判所の自由な判断にお願いいたしまして、その判決の結果によって、その得られた資料が任意な資料であったかどうかということを判断いたしておりまするので、本件につきましても裁判所の判断を待っておる次第でございます。
  64. 細田綱吉

    細田委員 もう一点だけ。検察庁の立場から、判決には証拠に引用する幾多の資料があると思うが、少くとも一枝夫人に対する証拠裁判所に対して撤回するという御意思はありませんか。
  65. 岸本義廣

    岸本説明員 最終的には裁判所の判決を待つ以外にございませんので、この段階におきまして、法務当局といたしまして御質問のような証拠を撤回するという考えはございません。御了承願います。
  66. 細田綱吉

    細田委員 刑事部長に伺います。三月二十七日に高志警察署で、刑部補が入ってきて夫人調べた。指揮したことはないと言うのですが、検事取調べの過程に、それを警察署が調べておるということは、私は検事の指揮のもとに調べたと、こう考えるのですが、当時検事の指揮がなくて単独にそういう病人調べたのか、あなたの方の御調査の結果を伺いたい。
  67. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 本件につきましては、先ほどの長戸政府委員答弁と結果は一致するのでありますが、重ねて御質問がございましたので、申し上げたいと思います。  かねて、本件取調べに関しましまして、事前に、大体原則としては、午前中川崎警部補が大体調べて、午後は検察官の方が調べるということが一般的の話になっておったのでありますが、御指摘のありましたように、二十六日の夜ああいう事故が起りましたので、それに基きまして自後の取調べをしないという旨の連絡を川崎君は知らなかったという事実がございましたので、かねての検察官の命令に基く、午前中に調べるという了解に基いて調べておったということが事実でございます。一般的に申しまして、送致いたしました被疑事件に検察官と無関係調べるということはけしからぬことでございますが、ただいま申しました事情によって川崎警部補が調べておった、こういうのが事実でございます。
  68. 高橋禎一

    高橋委員長 午前中の会議はこの程度にとどめ、暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ――――◇―――――    午後三時二十七分開議
  69. 高橋禎一

    高橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。林君。
  70. 林博

    ○林(博)委員 横井関係の選挙違反事件について質疑をいたします。前回までに数回にわたりまして御審議を願ったわけでありますが、法務省当局の御答弁と私ども調査いたしましたところと、かなりの食い違いがございますので、問題を限定いたして人権擁護局長にお尋ねいたしたいのであります。  北野田鶴子関係の身体検査の問題並びに多数の婦人が警察官あるいは検事が一緒になってこれを取り調べたという問題に関しまして、前回刑事局代理並びに中川刑事部長から一応の御答弁があったのであります。なお態重なる御調査を要求してあったのでございますが、この点に関しまして、人権擁護局におきましてはおそらく御調査を進められたことであると存ずるのであります。この点につきまして御報告を求めたいと思います。
  71. 戸田正直

    ○戸田政府委員 名古屋の法務局に調査資料を依頼しておりましたが、名古屋の法務局から調査結果が参っておりますけれども、御請求のような趣旨にちょっと沿い得ない点がございますので、私の方から直接に係官を近く派遣いたしまして、十分調査をいたしたい、かよう考えます。
  72. 林博

    ○林(博)委員 前回調査方を要求いたしましてかなりの期間たっておるのでございますが、いまだに調査ができておらない。はなはだ遺憾でございます。早急に御調査の上一つ御報告願います。
  73. 戸田正直

    ○戸田政府委員 御承知の、国会で非常に重要な問題がたくさん出ておりまして、私ども手薄の関係で、一々指示いたしまして、すでに数回報告は受けております。決してなまけておったのではないのでございますが、いずれも私が見まして当委員会における御質問と照らし会せてなお不十分な点がございましたので、私の方から直接課長等を出しまして至急にいたしたい、かように思っております。大へんおくれましたことは申しわけございませんので、できるだけ早い機会に調査官を派遣して、そうして個々の点につきまして詳細調査いたしたい、かように考えております。
  74. 横井太郎

    横井委員 関連。今擁護局長から係官を派遣するというお話がございまして、まことにけっこうなことだと思います。ところで、私が申し上げておきたいことは、先般ちょうど中川部長さんもおいでになりましたし、それから長戸さんのお答えもございまして、たとえて申すなら、北野田鶴子を診察する場合にだれも立ち会っていなかったという問題につきまして、中川部長も、長戸さんも、だれもいなかった、たとえば野々山主任という者はいなかったというようなことを言っておいでになるのであります。ところが、先回問題になりましたそのあくる日の昭和三十一年二月二十八日付の朝日新聞の名古屋市の市内版には、立ち会っていなかったとおっしゃるんだが、野々山自身が、この新聞記者に向っては、そのとき私も自分の机で仕事を続け、診察は藤井先生にまかせておりました、こう言っておるのです。野々山自身はおりました、仕事を続けておったと自分で語っておるのです。よもや新聞記者の諸君がうそを書かれたわけではなくて、そのときには、新聞社からとっさに訪問を受けたので、おりましたと言ったんだが、あとからこれは問題になるというので、当局調べられると、おりませんと、こういうことを言っておるのです。新聞にはっきりこういうことを言っておるんだが、先回の御答弁だと、おりませんでした、こういうことを言うんですから、向うで調べられるとうまいことを言ってしまうのでございます。これはあとで差し上げますが、こういう例もございますので、そういう点は抜かりないと思いますけれども、十分にお調べを願いたい、この一点を申し上げておきます。
  75. 戸田正直

    ○戸田政府委員 ただいまの点も、従来の法務局の調査によりますと、藤井警察医について調べたのでございますが、これが果して十分な調査であるかどうかということは先ほど申し上げたような事情でございますので、十分であるとも申し上げられませんが、一応調べたところでは、この藤井警察医の証言によりますと、この席に最後まで一人の巡査が立ち会わされたが、診察のときだけは、同室していた二、三人の人は、婦人の診察だというのでみな席をはずされたように記憶しております、こういうふうに述べておりますので、今までの名古屋の法務局の調査ではさようになっておりますが、なおこれらの点についても詳細に調査いたしたいと思います。
  76. 林博

    ○林(博)委員 中川刑事部長にお伺いいたします。前回北野田鶴子の関係につきまして種々お尋ねをいたしたのであります。ただいま横井委員からもお話がございましたが、その際に、当局の御答弁と私ども調査いたしましたところと、かなりな食い違いがあるのでございます。その後こちらからいろいろ調査方をお願いいたしているのでありますが、その後新しい調査がなされましたかどうか。特に身体検査に関する問題、ただいま横井委員からもお話がありましたように、新聞記事に出ております野々山氏の談と、前回の御答弁との間には、かなりな懸隔がございます。また、同じ関連した問題といたしまして、数日後の取調べに当りまして、検事警察官が七人で威圧的な取調べをしたということに関しましても、前回の御答弁ではかなりあいまいなところがございまするが、個々のその場に立ち合ったという人の具体的な名前をあげまして、その方々について御調査を願うように御依頼を申し上げてあった次第であります。これらの点に関しまして御調査ができておりますか。できておりますれば、それらの具体的な問題についてお答えを願いたいと思います。
  77. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 名古屋のこの事件の調査につきましては、今林さん及び横井さんのおっしゃる通り、過般の委員会において私ども調べた点を申し上げたのでありますが、両委員の御調査の点と大へん食い違う。ことに、取調べ関係者につきましても、林先生のごときは、具体的に人間をお示しになって、非常に詳細にお調べがございましたので、私どもといたしましては、これに基いて厳重に調査いたしました。ところが、そのときにも私が申し上げましたように、この事案の真相を明らかにするためには、警察官の言い分を聞くのも一つの方法ですが、北野さんとか民間の方々、ことに当時被疑者として検挙または取り扱われた人たちの言い分といいますか、それを聞かないと真相の把握ができにくい。あのときも申したつもりでございますが、そういう民間の方々に今警察が当るという点については、本人に与える心理的な影響等を勘案いたしまして、その点は法務局の方で御調査願って、その法務局の方で、北野さん初め関係の皆さんのおっしゃる供述を集積していただきまして、それと並行して警察取調べと、こう突き合せてみないと真実の発見ができない、こう考えまして、法務局のお調べの結果と、ことに民間の方々の供述の結果と、具体的に突き合せて、供述以外の証拠がありますれば、またそれに基いて事実の判明をはっきりさせたい、私はこういう念願を持ちまして、そういう心組みで調査したのであります。それで、戸田さんとも今後打ち合せたいと思っておりますが、戸田局長の方で御調査になった事項と、私どもが主として調べた資料とを突き合せて――突き合せ作業を今それぞれ別個にやっておりますので、まだ突き合せ作業を終えておりませんので、突き合せた結果、本件事件の事実をはっきりいたしたい、私はこう念願しております。それで、私どもが過般答弁いたしましたその後、北野さんとかそういう民間の方々のおっしゃる言い分は、戸田さんの方の関係官にお聞き願うこととし、私の方では、警察官、暴行その他いろいろ不当なことをやったと疑われる警察官はもちろんのこと、当時の関係者とか、当時警察部内で知り得る状況等についてはできるだけ調べたのであります。その点をここで申し上げるのも一つの方法ですけれども、それは北野さんの言い分と突き合せた結果申し上げる方が、きわめて明確にいくのじゃないかと思いますので、戸田局長の手元においてお調べになった事項と、さらには長戸局長の方でお調べになった事項と突き合せてみて事実の判明をする、これが適当じゃないかと私は考えておるのであります。しかしながら、警察調べた事項を言えとおっしゃれば申し上げますが、それは突き合せた後の方がよかろうと私は考えるのであります。
  78. 高橋禎一

    高橋委員長 椎名隆君。
  79. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 三月十二日に中川さんに横井さんが質問をした後に、あらためて中川さんの方からだれか名古屋の方へ調査員を派遣したことがありますか。
  80. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 私の方では管区警察局というのがありまして、たまたまここは名古屋に事務所のある局が管轄しておりますが、当時本件事件を担当したのは名古屋市警察の管轄であります。名古屋市警察は、御案内の通り、その後愛知県一円の警察に統合されているのでございますが、愛知県一円の警察統合後の愛知県警察の幹部と、それから名古屋管区警察局の幹部等によりまして、私たちの関係の分を調査せしめている、こういうことでありまして、直接私が行った、こういうことではないのであります。
  81. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 三月十二日というと、三月十二日からきょうまでで約二カ月以上たつのですが、そのときに一番大きな問題となったのは、結局千種警察署において警察官が横井派の選挙違反被疑者取り調べるに当って、上からの命令だということをしばしば言っておる。しかもその当時における千種警察署は自治警察でありました。市長並びに助役は、御承知通り社会党であります。警察は役所関係から言うと勢いおせじを使う。――という語弊があるかもしれませんけれども、結局党の有利になるような取調べをする。ことに、その当時における千種の警察署長は政党色については札つきであったとまで言われており、特定の候補者を目標としてこの取調べをやったのではないかという疑問が非常に大きかった。それにつきましては、この前こういうことを答弁せられておる。こういうことがあれば大へんだ、これはあらゆる角度から取り調べて御報告するということになっておるのです。三月十二日からもうすでに二カ月も経過しておるが、こういう大きな問題に対する取調べはすでにできておるのかできていないのか、どっちなのですか。
  82. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 それはできているのでございます。先ほど林さんにお答えいたしましたのは、民間の方の関係者と両方調べた部面についての突き合せができていない、こういうふうに申し上げたのでございます。当時も申したつもりですが、ことに、警察が一党一派に偏し、特定候補者をとりわけねらい撃ちしたかどうかということは大へん重要な問題でございますので、この点につきましては厳重に調査いたしたのでございますが、一党一派に偏したというふうに認めて、私やりましたと言う人はございません。けれども、そのときの状況ないしはそのときの関係者、ことに警察署長が部下にそういうことを言うたかどうかという点は、当該署長に当ってみましても、そういうことをやったとは申しません。また、部下等について調べて参りましたけれども、そういう意味合いの指示は受けなかった、こういうことでございます。少くとも、文書はもちろんでございますが、口頭によってもこの関係のみをやれという指示をしたという形跡は認められないのでございます。それから、ことに、御質問になりました事項についていろいろ調査いたしましたところ、当該事件をやりましたのは、千種警察署がやった事件もあるのでございますが、名古屋市の本部の方でやった他の事件と関連のあった事件等もございまして、少くとも千種署長がこの候補者だけをねらい撃ちにするという考えでやったと認められる資料がないのでございます。大体そういった特定の候補者を目標にして捜査が行われたということには考えられないのでございます。
  83. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 それは当然そうなんです。署長がかりに特定の候補者をねらってやっても、あとから行って、あの候補者をねらい撃ちして取調べをやったかどうか、あの候補者の選挙違反をあげたのか、こう聞いても、それはあげないと言うのが当りまえなんです。大体、人権じゅうりん、ことに刑事事件におけるところの人権じゅうりんというのは、選挙違反をめぐって大きな問題が出てくるのです。人権じゅうりんといえば選挙違反とほとんどくっついているようなものなんです。なぜかというと、選挙違反というのは、限られた期間に証拠を集めて早く起訴しなければならない。いわゆる手腕力量が認められるのは選挙違反なのです。それだから、取調べに当っては勢い無理も出てくるのです。その無理も出てくる中で、ことさらにある特定の候補者をねらったということは、あとで調べて、それはその通りでございますと言う刑事もなければ署長もないのです。これは傍証からいくのが私は当然だと思うのです。署長に聞いても刑事に聞いても、その意思はなかった、証拠もなかった、こうおっしゃるが、しからば、あなたはどういうふうにして調査したか、その点を一つお伺いしたい。
  84. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 椎名先生のおっしゃいますように、ことに、これだけの関係者をねらい撃ちしたかどうかということの関係を、行政監督とし、あるいはそれ以外の方法によって調査することは、実は困難であることは私も考えております。それで、聞いて回るだけで問題が解決したとは思っておりません。そういうことが起らないようにという点については、かなり法的にもやらなければなりませんし、事後の状況、仕事の結果等を見まして、そういうことであったかどうかということは十分検討を常に続けなければならぬと思いますけれども、現在われわれが調査した段階では、特に本件についてねらい撃ち的であったと認むべき事情が発見できない、こういうことなのでございます。  それから、一般論として申しますが、椎名委員の御指摘のように、選挙違反は特に慎重でなければなりませんけれども、ある一定期間の間にやる選挙でございますので、選挙運動関係者等が比較的同時的に行われる犯罪でございますから、片方を一生懸命やっておると、つい片方が――悪意ある場合はもちろんでありますが、悪意がなくても、手が足りぬ結果になって、ついだめになるということの実態もわれわれとしてもよく了解しております。その点は、よく警察の幹部に対しまして、これはねらい撃ちにするという意味じゃなしに、片方に目をとられて片方をやっていないかどうかという点に常に着意を持たす、これが選挙違反という比較的短期間における犯罪捜査上各警察の幹部の工夫を要する点でございます。悪意があればもちろんいけませんが、悪意がなくても、過失で、一部の者はあがって他の者があがらぬという点がないようにということは、大へんむずかしい問題ではございますが、そういう冷静な、しかもどこにも偏することのないような態度でやるのが警察の本来の姿でなければなりませんので、この点につきましては、各警察の幹部において特に気を配っておるのでございまして、私らもほんとうに悪意があればもちろんのこと、過失に基いてそういうことにならないようにということは、常に教養その他の機会を通じて徹底しておるのでございます。こういった点も、われわれ部内においては大いに反省をいたしますけれども、皆さんのような方々に広い角度から御批判をいただきながら、ほんとうに正しい違反取締りの態度がとれるようにということを念願して参りたいと思っております。
  85. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 今まで取調べた段階では、特定の候補者をねらったというようなことはないということですが、取調べの段階というのはどの程度までの取調べをやったのですか。
  86. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ただいまの御質問にありました事項の取調べにつきましては、当時の本件選挙違反の取締りに従事しておりました幹部並びに一般従事員等から事情を聴取し、ないしはその選挙のときの名古屋市警察全体が運営しておった状況等について、数字等――数字だけでもちろん議論はできませんが、そういうことを勘案し、特別にねらい撃ちをしたという形跡は認められない、こういうふうに判断しておるのでございます。
  87. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 そうしますと、よく調査したということは、大体警察部内についてのみですか、あるいは、警察官から調べられた被疑者等もお取り調べなさったかどうか。
  88. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 その被疑者に関する取調べは原則としてやっていないのであります。その点は、公平かどうかという点についての取調べの問題ということでなしに、主として取扱いが適正を欠いたかどうかという問題について私当時疑義を持っておりまして、それで、関係者にぜひ当らなければ真実が発見できないと考えたのでありますが、ちょうど新聞その他の記事等がございまして、警察官とかそういう権力を持っておる人間調べると真実の供述ができにくいような心理作用の面もあるような気がいたしましたので、むしろ人権擁護ということを本来の職務となさっていらっしゃる方々の御意見を聞いた方が真実の発見がしやすいと考えまして、その点は人権擁護関係の機関の調査と相待って真実を発見いたしたいこう考えたからでございます。
  89. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 そうしますと、この取調べはまだ終了したということではないわけですね。
  90. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 その通りでございます。
  91. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 それから、やはり千種警察署で長谷川ふみ子というのが取調べを受けた。これはこの前にもやはり出ておるのですが、この長谷川ふみ子というのが横井の選挙事務所から電車切符をもらってきた。取り調べられて、その電車切符をどこへやったというふうに追及せられまして、女学校に行っている娘に分けてやったと言った。そうしますと、刑事四人が、おそらく、この三月十二日の会議録を見てみますと、お母さんもお父さんもお留守であったらしい。そこへ刑事四人が行って、四人の娘らを取り調べた。四人の娘らが泣き出しているところにおふくろが帰ってきて、どうしたのかと聞いてみたら、実は刑事さんが来て取調べを受けたんだということを言って泣いておった。もし必要がありとするならば、警察あたりへ呼び出すべきがほんとうだろうと思うのですが、あるいは好意をもってそこへ行ってやったのかどうか。四人のまだいたいけないところの女学生を、直接そこの家へ行って、両親不在のところで取り調べるということが果して適正であるかどうか、その点について一つ……。
  92. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 本件につきましては、過般の委員会におきまして御指摘もございましたし、一つの調査項目といたしまして調査いたしたのでございます。それで、私ども関係者の調査は一応完了いたしましたが、先ほど申しましたように、関係の方々の法務局の御調査と相待って結論を出したいというのが現在の考え方でございますけれども、ただいまの御質問に関する部分だけを御説明いたしますと、そのときに長谷川ふみ子さんのお宅に警察官が行ったことは事実でございます。その行ったときにおきまして、最初、子供さんが小さいお兄さんと一緒にいらっしゃって、子供さんたちしかいらっしゃらなかったことも事実でございます。それで、お母さんから回数券をもらったかどうかということを質問しているうちに、相手が子供でございますので、泣き顔といいますか、そういう悲しい表情に相なった。そうこうしているうちに、お父さんでしたかお母さんでしたか、ちょっと――正確に調べましたのですが、親権者の方がお帰りになって、親権者の立ち会いの上で回数券等の任意提出を受けて頌置しておる。ところが、お父さんたちがおいでになる以前におきまして、警察官と子供の問答がございましたので、その問答の結果悲しい状況等に娘さんがお会いになった。こういうことは私たちの調べにおきましても事実でございます。この点につきましての措置が適当であったかどうかの問題でございますが、こういう犯罪関係事件につきまして、回数券等の提出を求めるという行為は、状況等によってやむを得なかったと思いますけれども、小さい子供さんから直接取引するような事柄は適当でない、本件事件につきましては、最終的には、お父さんだったかお母さんだったか、そのとき調べたのですが、親権者の方があとでお帰りになったので、その立ち会いの上になって、不適当さが若干補完されておりますけれども、子供さんとの間においてこういう問答をするのは適当でない、こう理解しておるのでござざます。
  93. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 刑事が行ったことは認めると言われるが、刑事が行ったのは四人行ったのですよ。もしかりに切符をもらった子供らを取り調べるとするならば、一軒の家に行くんだから一人の刑事でよさそうに思うんですが、大の刑事が四人もそろって取調べに行くということ自体が非常に不穏当のように考えられるのですが、四人行ったということについてはどうなんですか。
  94. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 この点は、捜索の関係等がございまして、この切符をもらうということだけで行くのには四人も行く必要は何らございませんけれども、捜索等の関係あるいは運転手等の関係等もありまして、複数の警察官が現地に行ったことは事実でございます。結局子供さんは悲しい状態になったのでございますが、関係した点につきましては、多くの刑事がそこに関与していない。ただし、そこに出かけていったのは、御指摘のように複数の警察官が行っていることは事実でございます。それは、私の調査におきましては、一応その家の捜索の関係等もありましたので行ったのでございますけれども、そういうように子供さんがおられまして、ことにお父さんがお帰りになりまして任意提出等もありましたので、捜索は実施しないで帰っておるのでございますが、必要に基く捜索等の関連におきまして、そのときに複数の警察官が出かけておったという事実は、私ども調査においても認められておるのでございます。
  95. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 捜索等に行った当時は、子供だけで、留守だったのでしょう。その後に両親――お母さんかお父さんが帰ってきた。その留守中に子供を取り調べているでしょう。それは不穏当じゃありませんか。もし、行って、両親もだれもいない、子供らだけだというなら、一応立ち帰るべきが妥当じゃないでしょうか。
  96. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 率直に申しまして、捜索等の関係もありまして一緒に出かけて行ったのですけれども、そういうふうにお留守等の関係もあったので、直ちに立ち帰るのが一番適当であったかと思いますが、子供さん等について回数券の話をいたしまして、そうこうしているうちにお父さんかお母さんがお帰りになられましたので、その立会いのもとに切符の任意提出を受けて帰ってきた、こういう状況であるのでございますが、先ほども申しましたように、後ほどお帰りになりましたから、若干不適当さが補完されておりますけれども、お帰りになる以前に子供との間において押し問答――というと失礼でございますが、そのことにつきましては適当じゃない、こう思っておるのであります。
  97. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 どうも、そういう点を総合してみると、横井派に対するところの捜査というものは厳重をきわめていたように考えられるのですが、どんなものでしょう。
  98. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 厳重と申しますか、結局それが先ほど椎名先生の御質問に関連する事項にかかると思うのでありますが、私ども、犯罪捜査、ことに選挙違反の捜査に当るにつきましては、正しい意味において厳重であることはまことにいいことだと思うのですけれども、その厳重たるや、もちろん法律にのっとるのは言うまでもございません。法律のもとにおいて、法律の精神とするところに基く妥当な捜査でなければならぬということは、常に教養等において徹底して参っておるのでございますが、たまたま親ごさんのおいでにならない以前の状態において、子供さんと回数券等のことについて話すという点については、そのことも妥当でない、こう考えられますので、その部分に関する事項は妥当でない、こう理解いたしておるのでございますが、全体として、先ほどの御質問に関連するのでございますが、この派だけを特別に配意したということは、ちょっとそれだけでは認定しにくい実情にあるのでございます。
  99. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 そればかりでなく、北野田鶴子取調べに当っては、だいぶ食い違いがあるようですが、辰巳検事を中心にして、庄司捜査係長あるいは野々山捜査主任、吉野刑事、家田刑事ほか二名の刑事、合計七名、そのうち調べているのは一名かもしれませんけれども一室において、他の被疑者もなく、七人の刑事並びに検事が一人の女を取り調べている、あるいは中には手錠をがちゃがちゃこうやっているということは、とりもなおさず、私は脅迫じゃないかと思う。それで、真正な、自分自身がほんとうに考えていることが果して言えるかどうか。ことに、あばずれというと語弊があるかもしれませんが、しばしば警察の門をくぐっているような女、たとえばパンパンのようなああいう連中だったら、ひやかし半分に、むしろ女の方が挑戦的に出るかもしれません。普通の良家のおかみさんであったとするなれば、私はこの年になるまで一回も警察へ行ったことがない、警察調べられたことがないというのが普通なんです。そういう女を連れて行って、警察一室で、検事が中心に七人もの刑事で、その一人が調べ、ほかの連中は取調べしなくても、うそを言ったりなんかしたとするなればすぐに縛るのだぞと言わんばかりに手錠をかざして取調べするという行為が、果して適正な、いわゆる法律の命ずるところの任意の供述であるかどうか、その点を一つ……。
  100. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 七人の刑事が、ことに手錠等をがちゃつかせて供述をとるということは、きわめて不適当な捜査だと思うのでございます。ところが、本件につきまして、手錠等の問題は別といたしまして、検事さんの方をお含めして七人の捜査員が同時に調べたのである、こういう御資料に基く御質問が過般あったことは事実でございます。この点につきまして厳重な調査を続けておるのでございますが、これは、先ほど申しましたような関係者の供述等の結果その結論を出したいと思っているのですけれども、私たちの調査だけでは、七人が同時に取り調べたというデータが出てこないのです。ただし、これは片りんでございますので、法務局の御調査等とも並行して十分に事実関係をはっきりさせたい、こう思っておるのでございます。
  101. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 七人が同時に取り調べたということは、こもごも七人が一口ずつ出し合って調べたという意味ではない。一人の捜査主任なら捜査主任が調べておりましても、あとの六人がその被疑者の方を向いてその取調べの状況を聞いているときには、一応、被疑者の方面からいうと、七人の人に取り調べられたと言うのは普通だと思うのです。ことに、被疑者取調べをするに当って、警察署におきましては、一人が取り調べていれば、必ずはたの方から口を出すのです。これは、あなた方が行って、そういう事実があるかどうかということを調査したなら、そんなことはありません。私だけが調べたのですとおっしゃるかもしれませんが、私も三十数年間弁護士をやっていて、被疑者警察取り調べ中にしばしば調べ室に入っていくことがある。そのときには、確かに、他の刑事連中が、この野郎、強情な野郎だと、あっちからも言えばこっちからも言う。そういうことがあり得るのです。そういうときに、他の被疑者も何にもいなくて北野田鶴子一人でいるときに、一人が被疑者取り調べていて、他の六人がその質疑応答を聞いているとするならば、勢いそれは被疑者に対して非常な脅威を与えるものだと思うのですが、その点はどうでしょう。
  102. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 率直にお答えいたしますが、ずっと昔、数人の警察官が取り巻いて一純に取り調べた事情等がありまして、それが不適当な方法であるという点は深く反省いたしまして、自今そういう方法でなしに、過般もお答えいたしたと思いますが、一人でやるとまずい点もございますので、大体二人で適当であろう、やむを得ぬ場合には三人くらいが適当であろうという考え方で、最近は私どもの方もやっておるのであります。その点は過般の委員会でも申したのでございますが、本件の場合に、私が大へん疑っておりますのは、当方の取調べのときは二人または三人だったのかもしれませんけれども、部屋の構造などの関係で、普通の事務室の一角で取調べがあったのかどうかという点でありまして、その点を中心に取り調べておるのでございますが、今のところは、その点について明確な結論が出ていないので、法務局の御調査とともに出したいと思っておるのでございます。
  103. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 それでは、おついででございますから、被疑者がどこにいて、辰巳検事がどこにいたか、それから、そのほかの方々がいた場所等をお調べ願いたいと思います。  それから、長戸刑事局長代理にお聞きしたいと思うのですが、八十一才になります山田たま、これは、一番最初に供述調書をとられましたのが三月二十四日、千種警察署から巡査部長と巡査が一名ずつ山田のうちへ参りまして、そしてたまを取り調べた結果供述書をとったのでございますが、その通りで間違いありませんか。
  104. 長戸寛美

    長戸政府委員 山田たまさんの件は、同人が八十一才という老齢であられるので、千種署の方に出頭できないというようなことでございましたので、千種署の巡査部長外一名が、お話の昨年三月二十四日の午後四時ころ山田さん方におもむきまして、同家において午後五時ごろまでの間に取調べをし、供述調書をとってきておるわけであります。
  105. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 山田たまが八十一才で老齢なんで、千種警察署に出頭ができないから、巡査部長外一名の巡査が行って調書をとったのですか。それとも、病気で寝ているというので調書をとりに行ったのですか。どっちなんです。
  106. 長戸寛美

    長戸政府委員 私ども調査によりますれば、老齢であるということでございまして、当時山田たまさんは老齢であったけれども自宅において炊事などをしており、一見病人のような様子は見受けられなかったというふうに聞いております。
  107. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 そうすると、越えて三月の二十九日――二十四日に調書をとって二十九日ですから、わずか中五日間しかございません。そのときに鈴木勇という副検事が千種署に出張してきている。千種警察署から副検事が出てきたら、山田たまに出頭するようにという命令が行っている。もし老齢で出てこられないということがわかっておるならば、何も呼び出す必要はないと思うが……。
  108. 長戸寛美

    長戸政府委員 その事件は名古屋の検察庁に送致されましたので、検察庁におきましては、ただいまお話しの副検事鈴木勇というのに検察官調書の作成を命じております。同検察官が同月二十九日の午後三時五十分ころから午後五時五分ころまでの間、山田さん方におもむきまして、検察事務官の立ち合いの上で調書を作成いたしております。この間に呼び出しをいたしたかどうかという点については、調査漏れでございます。
  109. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 これは鈴木勇副検事が出ていく前に、千種警察署から出てきてもらいたいという命令を受けたんですが、何しろ病気で寝ておったからというので、鈴木勇副検事と検察事務官が山田の家へ行った。その日は、さきに言ったように、三時五十分から五時五分まで取調べをされたのでありますが、その後わずか二十時間足らずで死んでしまった。この人はもともと心臓病であったんですが、そのことを千種警察署あるいは鈴木勇副検事は知っていたのかどうか。一番最初に迎えに来たときには、もう心臓病で寝ておった。ようやく起きたにすぎないから、とても出頭はできないからと、しばしば断ったということですが、心臓病で寝ておったということは、警察署並びに検察庁では知っておったかどうか。
  110. 長戸寛美

    長戸政府委員 先ほども申し上げましたように、鈴木副検事取り調べましたときには、特に病人のような様子は見えなかった、取調べに際しては率直に事実を供述して、報告によれば、談笑のうちに調書を作成した、こういうふうになっておりますので、おそらくは、この副検事は、御病気であったということは知らなかったというふうに存じております。
  111. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 山田たまは、近隣の評判では、検事取り調べられた結果責め殺されたということになっております。そういう評判があるということは、おそらく否定はできないだろうと思う。なぜかというと、取調べを受けてわずか二十時間以内で死亡している。しかも、心臓病でいつも寝ついているということは検事の方々も知っているし、起きて調べられた結果死んだ、心臓にショックを受けたいわゆるショック死だ、こう言われているのですが、そういう評判が立つこと自体が、検察庁の取調べがあまり芳ばしくないことを証明していると思う。ことに老齢でもありますし、そんなに重要な事案でもないように私は考えるが、こういうふうな方法でもとらなければ、とれなかったのでしょうか。三月二十四日に命令があったとはいえ、わずか五日間で取調べに行かなければならないほど、この事案はせいておったんですか。
  112. 長戸寛美

    長戸政府委員 一般的に申しますれば、先ほどお話のございましたように、選挙違反はなるべくすみやかに取調べをすることが大事でございます。従いまして、この件も取り急いで調べたことと思いますけれども、事件自体としましては、御病気であれば、それを押して取り急ぎ調べなければならぬという筋ではないと私は考えております。ただ、この事件で山田たまさんをお調べする際に、家の方にもお立ち会い願いまして、もし御病気であれば、それこそ、臨床尋問と申しますか、楽な御姿勢で取調べをするというふうなことが望ましかったというふうに私は考えます。
  113. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 私の申し上げたいのはそれなんです。すでにもうよわい八十にもなり、もうまれなんです。こういう年をとって、しかも心臓病で寝ておったような人を取り調べるに当っては、そこのうちへ行っているんですから、少くとも家族の何人かを立ち会わして取り調べるのが私は適当だと思う。もしこのまま、検察庁の方に調べられて責め殺されたのだということになれば、別に責め殺したんじゃないという立証も検察庁ではできなかろうと思う。こういうような場合に当りましては、少くとも世間から疑惑を受けないような方法で取り調べることが必要だと思う。この点につきましては、これはやはり戸田さんの方もお調べになっていると思う。先ほど関連していろいろお尋ねいたしましたが、その点も戸田さんのお取り調べになるときには一緒に調べてもらいたいと思います。
  114. 高橋禎一

  115. 横井太郎

    横井委員 同僚の各位がそれぞれ質問をしておられますので私はそれに関連しまして二、三の点だけ一つ御質問を申し上げたいと思います。  今椎名委員から政治的云々質問がありまして、その際、中川さんの方から、そういうことはないんだ、その具体的な実例はというようなお話がございましたが、具体的なことは前回私が申し上げましたので、速記録をお読みいただければわかります。だから、それはあえて重複して申し上げませんが、その当時の署長がかわりまして、現在の署長が警察の後援会の席上で何を言ったかということを一応お調べを願いたいと思います。前の犬伏署長は非常に行き過ぎだ、政治的な配慮によってやったが、今度は私はああいうべらぼうなことはやりませんということをはっきり言っておる。こういうことを参考に申し上げておきます。  それから、もう一つは、実は私の事務長でありまして市会議長でありました鈴木というのがおります。その鈴木君がやはり、ほかの市会議員十名に対しまして運動実費を一万円ずつとか渡した、こういう問題の容疑によって逮捕をいたされたのであります。ちょうど市会選挙があるわずか数日前のことであります。そこで、その当時の警察部長の小倉君でありましたか、これが市長、助役等とも相談をいたしまして、いやしくも議長を逮捕するとか呼ぶとかいうことは重大なる問題である、これは市政の上にも非常な影響を及ぼすというので相談をしたところが、これは当然やっちまえというのでやったという事実もございまして、このごときものはさらに私いろいろ聞いておりますが、とにかく大事な議長を引っぱるということにつきましては、よほどのことでなければいけませんが、その間におきまして先ほど言った政治的の配慮があるということは、実情をお調べ下さればよくわかると思います。それと同時に、議長を引っぱってから、さらにほかの十一名の市会議員まで呼んだのでございます。ところが、それは選挙の始まる一日前でございまして、いよいよ市会の選挙が始まるというのでみんな選挙に立候補する。議長は、できることなら全部呼ばずにおいてもらいたいということを嘆願をしたそうでございますが、その検事さんも一緒だったそうです。そういう者は呼ばぬ、また呼んでもとめないんだということを言われたそうで、それじゃというので、これこれの実費を出したということを話したそうでございます。ところが実際においてとめられたというような実情もございまして、とにかく、名古屋市といたしましては、保守党の現職の議員が十何名も呼ばれた。そうして、当時の市長、助役、全部これは社会党である。これは政治的の配慮であるということは、市民ことごとくが言いふらしておる。だから、あなた方がそうじゃないとおっしゃっても、現実はその通りでございまして、これは名古屋市としては大問題でございます。議員十一名を一挙に引っぱる、しかもこれを一晩とめたというような事実もございまして、この問題には政治的の配慮があったということは世間公知の事実でございます。いろいろ抗弁をなさるかもしれませんけれども、こういうような実態でございますので、これからお調べ願うというのでございますから、参考に申し上げておきます。  それから、中川刑事部長にお尋ねをいたしますが、このことが国会で取り上げられて問題になりましたから、急遽千種警察署では担当の野々山その他当時の連中の配置転換、異動をなさったということでございますが、それはあなたの方から何かお指図があったのか、それとも現在の署長がこれはいかんというのでかえられたものか、その点を一応承わっておきたいと思います。
  116. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 お話の後段の部分でありますが、具体的に私の方からこれこれをかえろとかいうことを申したことはございません。一般的にこういうことがあるのでございますが、ひとり名古屋の関係だけでなしに、警察職員というものは、常にいかなる場合におきましても、選挙犯罪事件はもちろんでございますが、それ以外の一般犯罪事件につきましても、常に公正に事を処理しなければならぬ職責にありますので、教養とか人の配置等について常々考えねばなりませんし、同時に同じところに著しく長く置くと比較的弊害等も考えられる、ことにそういう誤解等も受ける場合がありますから、一般的に、適当なときに配置転換等を行なって、公正な警察活動を確保するように、常々われわれ警察活動を公正にやる立場から一般に申しておるのでありますけれども、具体的に千種署に対して私の方からこれこれをかえろと言った事実はございません。一般的な問題として、かねがね、警察活動の公正確保の一環として、教養その他を徹底するとともに、勤務地その他につきましても、同じ場所に著しく長くおるということは適正を欠く場合が少くないので、そういう点はよく関係警察の幹部において考えるべきことであると、常々申しておるのであります。
  117. 横井太郎

    横井委員 先ほど私が申し上げました、今度の警察署長が後援会の人々に、前の署長の時代のやり方は非常な行き過ぎだったということを明言した、その後しばらく過ぎましてからこの問題が起きましたところに――実は私はその後聞いたことでございますが、警察署内では、なるほどそうだろうということで非常にお騒ぎになった。これでは現職にとどまらしておいてはいかぬというので、入れかえをしてしまったということを聞いておるのでありまして、現在の署長は実際に自分が認めておると同様に、いかにその当時が無理であったかということを考えて、野々山主任、それから刑事課長、こういう連中の入れかえをやったこういうように世間では見ておるのでございます。あなたの方からの命令でなかったとおっしゃれば、それはそうでございましょう。そういうことを一一命令なさるということはございませんで、そうでございましょうが、少くともこれが国会で問題になりました直後においてそういう事態がありましたので、お尋ねをしたようなわけでございます。  それから、長戸刑事局長代理にお尋ねをいたしますが、先般ここで、検察当局の方でだいぶこの問題があって、加藤検事のお話を申し上げたことがありますが、その後名古屋の検察当局に向って何かお調べになるとかあるいは御指示をなさるとか、ことに加藤検事に対して説諭をなさるとかいろいろなことがありましたでしょうか、一応承わってみたいと思います。
  118. 長戸寛美

    長戸政府委員 お答えをいたします。  栗木さんにつきまして、三浦福松さんなどに現金供与をした事実、これは、加藤検事取り調べ中に発覚した横井さんとの共謀の事実を自供させたために特別賞を受けたというふうな事実はもちろんございません。取調べに当りまして検事が片言隻句も気をつけなければならないということにつきましては、われわれ常日ごろ申しておることでございまして、もし不妥当な言動がございましたならば、今後の指示におきましてその点は是正して参りたい、かように考えます。  それから、野々垣さんと三浦福松さんの取調べの件でございますが、野々垣さんは、加藤検事が主として名古屋地検の検察官調べ室で取り調べたわけでございます。夜間の取調べは、拘置所における身柄取扱いの都合もありまして、午後八時ごろには取調べを終っておったと聞いております。また、取調べ中に足を上げて調べたかどうかという点については、こちらの調査ではそのようなことは出て参っておりません。  大体加藤検事の問題についてはさようでございまして、もし言動等について不妥当な点がありますれば、今後において注意をいたす所存でございます。
  119. 横井太郎

    横井委員 栗木に向って、おれは横井の名前を言わしたから特別賞与をもらったと言った件について、そういうことはないとあなたはお聞きになった、こういう御答弁でございますが、これは実際に栗木が言っておるのでございまして、閉会までに日にちもありませんが、もし何でしたら参考人に栗木を呼んで実際のことをここで聞きたいと思います。もし私がうそを言ってあなたに質問するなら、私は腹を切ります。加藤という人が確かに、この通りおれはほうびをもらったと言って書類を栗木に見せたのです。そういう事実ははっきりある。  それから、後段の加藤検事が足を上げて調べた、これは容疑者に足を上げて調べたことは絶対ないとのあなたの方の御報告でございますが、それじゃ申し上げます。今月の初めのことでございます。私の方の出納責任者をやっておった村瀬伊三郎、この人が検察庁へほかの用事で参りました。たまたま廊下で加藤検事と会いました。そうしますと、加藤検事がその村瀬伊三郎という人を、ちょっと僕の部屋まで来てくれ、いいところで会ったというので、部屋まで連れていきました。そして、その加藤検事が村瀬さんに言うには、実はえらい目にあった、お前を足を上げて調べたものだから、しかられてしまった、――これはうそではない。うそだと思ったら参考人に呼んでいただきたい。とにかく、僕は上からの命令で大いにやったが、おれよりも石原検事の方がもっとよけいやっているではないか、それにかかわらず、おれがしかられて石原がしかられないとは何事だ、そういうことを言っている。ですから、あなたの方に報告するのはでたらめでございます。何だったら参考人として対決してよろしゅうございます。  実に、こういうような状態でございまして、とにかく、あなたの方でお調べになると、みんな裏の方でうそを作って言うことばかりであります。こういうことはよくないと思います。これ以上は同僚の時間の関係もありますのでやめますが、最後に長戸局長に感想を承わりたいと思います。法務大臣は一応予見を持って調べるなということを常に言われるし、検事のでっち上げはいかぬということをおっしゃるのでございますが、長戸局長はどういうようにお考えでありますか。私はでっち上げという言葉を相当使いましたが、一体こういうことをどういうようにお考えになりますか。今度のこの関係につきましていろいろな面が出て参りましたので、最後にこういうことについての御感想を承わっておきたいと思います。
  120. 長戸寛美

    長戸政府委員 未輩でございますけれども……。   〔「ノーノー、局長じゃないか」と呼ぶ者あり〕
  121. 高橋禎一

    高橋委員長 お静かに願います。
  122. 長戸寛美

    長戸政府委員 予見を持って取調べをしていかぬというようなことはもとよりのことでございまして、ことに、選挙事犯につきましては、確たる証拠というふうなものからだんだんに取調べを進めていくべきでありまして、単なる風評あるいは見通しというふうなもので調べをやることは最も慎しむべきものである。もしそういうふうなことでありますれば、結局事件自体があやふやな根底に立つことはもちろんでございます。従いまして、われわれとしては、そういうことのないように、選挙会同その他において十分注意をいたしておるつもりでございます。お話の件につきましては、今後ともそういうことのないようにして参りたい、かように考えております。
  123. 高橋禎一

  124. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 三月十八日付のサンデー毎日に掲載されております「オレが法律だの二十年、無法男に泣かされた千葉県大多喜町」と題する記事の内容について承わりたいと思います。この記事を見てみますと、今日なお地方における暴力団が暴力をほしいままにいたしまして良民を苦しめておる状態の存しておることがきわめて明白であります。かようなことは今日の世代においてあり得べきことではないと思います。これは徹底的に掃滅しなければならぬことだと考えますが、まず、この記事について調査なさいましたかどうか、この記事の内容は真実であるかどうかという点を承わりたいと思います。
  125. 長戸寛美

    長戸政府委員 千葉地検におきましては、本年の初頭、他の事件の捜査中に、土建運送業潤間組の山本進、山本良などを初めとする暴行傷害暴力行為等処罰に関する法律違反事件を探知いたしましたので、山本茂ほか順次七名を逮捕拘留いたしまして取調べをしたわけでございます。三月の七日から四月二日にかけまして、暴行傷害暴力行為等処罰に関する法律違反、関税法並びに物品税法の違反、談合入札等として公訴を提起したのでございますが、その後、被告人側からしまして、裁判所に対して保釈の請求があり、いずれも裁判所において保釈されることになったわけでございます。ところが、事案がこのようなボスと申しますか暴力団的なものでございますので、検察庁といたしましては、被害者に対するその後の被害のおそれというふうな点もございましたので、県警察本部等にもその後の厳重監視を依頼しておったわけでございますが、現在までのところ、被害事実につきまして投書、申告というふうなものがないという状況でございます。最初大体簡単に御説明申し上げます。
  126. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 二月に江口検事が主任になって検挙を始め、逮捕状を出して身柄を拘束して逐次その取調べを進行いたしましたことは、ただいまの御説明通りのようであります。ところが、その江口検事本件検挙に当りまして武装警官何名かを貸してくれということを警察に依頼したことがありますが、警察自身において捜査に当っていなかったようであります。つまり、検察当局が直接に手を下し、警察の力を借りることなしにその捜査を進めなければならぬような状態にあったことが、本件においては重大な問題であると思います。すなわち、本件は、この山本茂外数名、いわゆる潤間組一派の暴力団が警察の中に食い入りまして、警察を意のままに動かすことができるような状態にあって、警察を背景として暴力をたくましゅうしておった。よって、検事局がその検挙をしようといたしましても、警察みずからがその衝に当ろうとしない。かえって、警察にそのことを命ずると、検事のしようとすることを警察被疑者に内通するといったような事実があって、捜査を進行するのにはなはだ工合の悪い事態が起ったために、検事局としては、当日その犯罪事実の内容を告げず、単に武装警官だけを拝借して、そして逮捕、勾留に当った、警察自体はその捜査の衝に直接当らなかったということが実相であるようでありますが、果してさようでございましょうか。法務省の刑事局当局並びに警察庁の中川刑事部長にこの点をお伺いしておきたいと思います。
  127. 長戸寛美

    長戸政府委員 この件は、ただいまお話しのように、本年二月木更津管内のある者を江口支部長検事が主任となりまして取調べ中に、その派生事件として発生して参ったわけでございますが、土建運送業潤間組の山本茂を臓物故買の容疑で逮捕いたしましたところが、同人は、大多喜町に居住して過去二十年間にわたって多数の暴力的な者を育成し、付近五カ村の町村民、関係行政庁官庁等を、暴力によって、あるいは買収によって、完全に――完全と申しますか、支配する、あるいは同地方においてはその子息とか潤間組の子分による傷害、恐喝等の暴力事件は日常茶飯事に化しておる、脱税、談合等が公然と行われておった、住民はこれを訴える道がなく泣き寝入りをするほかはないというふうな状態にあることが、投書等によってうかがわれましたので、内偵の結果、その実態が明るみに出て参ったのであります。ところが、後難をおそれまして、捜査協力というふうなことがなかなか得られない状況にあり、検察庁としてもその間非常な苦心をいたしておったのでございますが、二月二十六日早朝、県警察本部機動隊の協力を得まして、山本茂らを逮捕し、捜査、差し押えをするというような挙に出たわけでございます。  この事件は、千葉地検といたしましては、当時の検事正である岡原検事正及び入戸野次席検事が主になりましてこの捜査をいたしたのでありまして、岡原検事からその間の事情を聞きますと、この摘発に当りましては県警察本部の協力を得てやったのだというように聞いておりますが、ただいまお話しのような詳しい事情につきましては、早急の間でございましたので、さらに調査いたしまして、詳しく申し上げたい、かように考えます。
  128. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 暴力団関係の事件について、これを厳正に捜査しなければならぬことは当然でありまして、とかく警察におきまして、過去において暴力団の幹部とおぼしき関係者と悪因縁があるということは、われわれもずいぶん耳にいたしまして、こういうことではほんとうの警察と言うことはできないと考えまして、そういう悪因縁を断つことはもちろんでございますが、そういう悪因縁を求めるような団体等につきましては、団体は結社の自由でございますから、これを警察が弾圧するわけにはいきませんが、警察はそういう財政援助を目的とするような団体からは寄付を仰がないという措置等も講じまして、そういう悪因縁によって警察の公務が歪曲されないように、こういうことは御指摘の通り十分努力いたしておるのでございます。  御指摘の千葉県の本件につきましては、サンデー毎日を私も読みまして、こういうことがあっては大へんだと思いまして、千葉県警察本部長の方に連絡いたしまして、こういうことがあってはならぬという意味合いで厳重取調べを進めておるのであります。本件事件は、ただいま長戸政府委員からお答えになりましたように、事件の発端は、千葉県の鴨川警察署におきまして窃盗事件で二月十三日館山区検に送致いたしました事件について、送致を受けられました検察庁におかれましてさらに事後捜査等によって事件が発展して参りまして、ただいまお話しのように県警察本部の機動隊等も出まして、事件は進捗し、さらに検察庁の捜査の階階ごとにまた新しい事件等の容疑等もいろいろ出て参りましたので、そういう連絡は緊密にいたしまして、また、警察におきまして事件を捜査いたしましたところが、現在でも十八件くらいある、こういう状況でございます。  それで、私ども警察といたしましては、暴力団関係者がとかく警察と悪因縁が起らぬようにということについてかねがね一般的にもやっておりますし、本件事件につきましても、事の発端としては、警察が送致した事件が、その後検察庁の調査の進展につれて拡大し、拡大に関連しまして捜査は進行いたしておるのであります。それで、ただいま御指摘の最初機動隊云々につきましては、私もその点もっと詳細に調べたいと思うのであります。県の機動隊本部が出ておるのでありますが、大体ああいう警察の機動組織は、警察単位でやっておりますと、なかなか警察等はそういませんので、各府県とも、県の本部長が、機動的に警察力の必要な場合は措置いたしておりますので、最末端の警察署長等においては、自分に手ごまがなかったような関係で、県本部の方に依頼したのではないかと想像されるのでございますが、私ども警察関係者が、ことに最末端の駐在所その他の警審関係者がとかく警察執行務について厳正を欠く、こういうことが起らないように細心の措置をしているつもりでございまして、今回の事件も、県の機動隊が出ておりますし、それから、この大多喜警察署におきまして捜査本部を持ちまして、その後本件事件の捜査の進展につれて判明した事情に基いての捜査を警察もやっておりますので、いろいろ誤解等を受けました原因等については、現在さらに究明をいたしておるのでございますけれども、大筋としては、検察庁のやり方にそっぽを向いて全然やっていないというのではない、こういうふうに千葉警察本部長の報告に基いて言い得るのではなかろうか、こう私どもは思っておるのであります。
  129. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 中川部長のただいまの御説明はとうてい承服できません。大多喜署に捜査本部を設けましたけれども、あと何にもしないのです。そうして、その警察にあれを逮捕しようということを通報すると、今度は逮捕される人のところへ内通するのです。行ってみると病気と称して寝ておる。現に、平田四郎のごときは、逮捕状が出ておるけれども、逮捕していないじゃありませんか。七人の者に逮捕状を出したが、そのうちの平田四郎、朝鮮人で金命祚という者に逮捕状を出して、警察を使ってやろうとすると、警察が向うへ内通してしまった。内通どころではない。今度検事が来たらお前寝ていろよと言うのです。そうして、寝ておるかと思って行ったら、今度は平田四郎は巡査と一緒に飲食店へ酒を飲みに行っておる。これば私の方ではもう詳細に事実があがっております。証人をこの委員会へ出してもけっこうでございます。そんなことでは、警察を用いようにも用いられないのです。せっかく大多喜署に捜査本部を設けてみたけれども警察を使うことができない。だから、ただいま長戸刑事局長代理のお答えのように、警察の手を借りることができないから、警察本部の武装警官を配置しておる。そうすると、警察は、おれの方に何らの相談なしに検事局が勝手にやるなら、おれらは知らぬ、こう言うのです。検事局のやることを警察はじゃまをしておるのです。こんなことでどうしてこういった暴力団の掃滅ができようか。問題はここなんでございます。私は詳細いろいろな具体的な事実を持っておりますけれども、もっとよくお調べを願いました上で一つお尋ねをいたします。  きょうはあまりしさいなことはお尋ねいたしませんが、ここでもう一つお尋ねをいたしておきたいのは、二月二十六日に江口検事が検挙を始めて、四月の末に松戸地検支部に転勤なさいました。すると、その後保釈で続々と被疑者が出て参ります。被疑者が出て参りますと、今度お礼参りを始めたのです。これが今度私どもに訴えるゆえんです。長戸刑事局長代理は、今のところ何の被害の届出もない、まずこれでおさまっているようにお考えのようでございますけれども、とんでもございません。もう彼らは出て参りましていろんなことをやっているのです。江口検事が検挙を始めた当時、検事局に対して協力をいたした人々を片っ端からお礼参りと称して回っておどしております。たとえば駒塚太郎吉という人、上総中野駅長及びその駅員、君塚功、明治乳業西畑工場、それから、平田四郎は、浅野中という鮮魚商の家などを訪れて、盛んにおどしをかけておる。それで、一度検事に協力をして平安になったと思ったところが、その検事がかわって、暴力団の連中が保釈になると、今度は前よりもおそろしいオオカミになって出直してきた。こんなことだったら検挙してもらわぬ方がよかったと、大へんな恐怖に今打たれております。仕方がないから私どもに訴えてくるという状況です。あなた方に訴えても、やりはせんじゃありませんか。仕方がないから法務委員会に申し出るという状態です。これではあなた方の責任は済まされまいと思う。やるなら徹底的に掃滅せんければならぬ。ヘビをなま殺しにしますから、とんでもないことになります。これが今日私どもが正義感に燃えて訴えざるを得ない新しい事態であるのであります。そうして、この警察におけるところの巡査某某が、いろいろなところでいろいろ飲み食いなどをいたしておりますが、きょうはこれはあげません。これはまた捜査に支障があるといけませんから、私からあとで資料を提供してもよろしゅうございますが、もっとやってもらいませんと、警察の存在がございません。だから、警察においても、警察本部の力を借ることなしに、その警察の力でそういった暴力団なるものを掃討するというできるだけの態勢を整えてもらわなければ、警察はあってもないようなものです。現に警察がその暴力団と常に飲み食いをともにいたしまして、そうしてその暴力団はばくちを始終やっておる。そのばくち場に警察の署員が張り番をしてあげておる。実に何たることかと言わざるを得ないのです。昭和の世代にこんなことはありっこございません。私は、このサンデー毎日を拝見いたしましたときに、そんなばかなことはあるまいといったような気持であったのでありますが、今度関係人からいろいろ事実を聴取してみますと、これは全く事実なんです。ほんとうにその通りなんです。私は、こういったような状態では、なまじっか検挙などすることは、かえって後難を大きくするゆえんであるから、徹底的にやってもらわなければ、これは大へんだという気持になりまして、いろいろ事実をせんさくいたしております。なおずいぶんひどいことがあります。私の手元には、いろいろの上申書や、その当時の記録から、新聞その他資料が来ておりますけれども、きょうは三、四十分というお約束をいたしましたので、その詳細は申し上げません。むしろ、検察当局も、それから警察当局におかれましても、責任をお感じになって、根底的にこういうボスを掃討することに力を入れてもらいたい。もしも警察が力を尽さなければ、署長もかえてもらいたい。司法主任も捜査課長もかえてもらう。そうして、腹のある、金筋の通ったところの警官を配置いたしまして、この地方の治安維持に乗り出してもらいたい。現にその地方に治安維持のために一つの団体を作りました。これは治安維持会というものができ上った。すると、その治安維持会に対して警察は反対の行動をとっておる。治安維持会に対して大多喜署は反対しておる。一体何ということでありましょう。そうして、病気と称して引っ込んでおるところの平田四郎のごときは、オートバイに乗って堂堂と歩き回っておる。夜分になると、その平田四郎は警官などと盛んに飲み食いをしてあばれ回っておる。こういう事態が許されておりますならば、とても世の中の治安の維持などというものはできるものじゃございません。そうして、このサンデー毎日には具体的にたくさんの事実をあげております。この事実の有無をお尋ねいたしましたけれども、逐一に対しては今お答えがございませんでしたが、きょうはよろしゅうございます。私はこの具体的事実についてさらにお尋ねをする機会がございましょう。そうして、県会においてもこれが問題となりまして、県会におきましては、警察隊長にこのことを質問いたしました。すると、警察隊長もさすがにこれはある程度――ある程度じゃございません。その大部分事実であることを認めております。、ただ、事件が古くなったとか、恩赦の関係があるとかいうことを言っておるようでありますが、決して古いものだけではないのみか、今度はさらに新しい事態が起っております。今度江口検事が転勤になって、釈放されてお礼参りが始まっております今日においては、これはまた新しい事態が大へんに生まれておりますから、この際徹底的にこういう暴力団の掃討に当ってもらいたいと思います。お調べを十分に徹底願うことができましょうかどうか、これを承わっておきたい。
  130. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 私ども、こういった問題については徹底的に解明いたしたいと存じますので、私どももぼうっとしていないで資料の収集に当りますけれども、お差しつかえなければ、いろいろ私たちのこれからやる仕事のために、まことに恐縮ですが、資料等後ほどいただければありがたいと思っております。そういった点でいろいろ究明して、やるべきものは大いにやりたいと思っております。
  131. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 検察当局も、検事がかわって、そのままあとお礼参りに来られては困るので、法務当局の御意見も聞いておきたい。
  132. 長戸寛美

    長戸政府委員 これは、先ほども申し上げましたように、発端となりましたのは、当時の木更津支部長江口検事調べからでございますが、当時の千葉地検の岡原検事正は、事の重大性から、みずから乗り出してこの掃滅に当ったわけであります。岡原検事正は現在東京高検次席に転ぜられましたけれども本件につきましては後任の検事正にも引き継ぎされておる次第でございまして、私どもとしては、この件についてお話のようなことがございますれば、徹底的に取調べ継続するという覚悟でございまあう。
  133. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 もう一つだけ申し上げておかなければならぬことは、暴力団検挙は地方において協力を得ることがなかなか困難です。ところが、非常に腹の据わった人がありまして、二、三の人が協力した。すると、今度はそれらの人々が片っ端から脅威を受けておる。その中に、たとえば菊地孝というのがあります。元ミシン販売業でありまして、そうして検察局においてもこの菊地を信頼いたしまして情報の提供を受けた。ところが、潤間組の連中が釈放されて帰って参りますと、今度逆のことをやられて、自分で金三万円を払って普通の民事取引をしておるものを、刑事問題だといって訴えて、今度は警察がこの菊地をほうり込んでしまいました。検察局が手を下して暴力団をやった。警察は一切これにタッチしない。そうして、非協力の態度をもって、治安維持会を作っても反対しておるような状態である。そうして暴力団が出てきて、今度は暴力団が警察にかけ込みますると、検事局へ情報を提供した者を警察が逮捕してほうり込んでしまう。一体検察局と警察がこんなに乱れておるようでは、とても治安の維持というものはできっこありません。こういう事件は実は前にもあるのです。この前昭和二十二年に同様の事件があります。衆議院の選挙のときに、西畑村長野口幹が立候補しようといたしますと、これは警察が逮捕してほうり込んだ。それは、その前に潤間組の山本が傷害罪で検挙されたことがありますが、この山本が検挙されたのは、ただいま申し上げました野口が山本の悪いことを密告したんだなということで、この山本が今度は野口を警察へ密告した。それでたちまち野口は取っつかまってほうり込まれましたが、これは何の罪跡もありません。もちろん何の嫌疑もありません。直ちに出てきたのでありますが、一度ほうり込まれてしまった。これと同様の手口をもって、今や菊地はほうり込まれております。検事局へ協力した者を、検事局へ検挙された者が帰ってくると、今度はその協力した者を警察へ密告してほうり込む。こういうようなことでは、世の中というものはおそろしいものでありまして、検事局へも協力ができません。検事局も検事局です。使うだけ使っておいて、そうして今度は警察のなすがままにさしております。おそるべきことだと私どもは感じております。菊地某に対する案件についても資料が十分整っておりますから、なおこれは申し上げてもよろしい。しかし、本日は菊地を救わんとするがためにこの言辞をなしておるのではありません。私は、検察局と警察とがこんな工合に食い違っておるのでは、治安維持上実におそるべきことだということを訴えるのであります。この点十分に御留意いただきまして、これを詳細にお取調べをいただきたい。私はそのようにお願いをいたします。
  134. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 御趣旨の点、よく調べたいと思います。私、前にちょっと聞いたので、うろ覚えですが、菊地関係の捜査の点は、検察庁でいろいろ捜査が進展されまして、検察庁の御捜査の結果、その被疑事実の点が出て参りましたので、検察庁から申し出がありまして、その事情に基いて警察と検察庁と協議して事件を立てた、こういうように私前に聞いた記憶がございますので、よく調査いたしますけれども警察と検察庁と敵視しておるのではない、むしろ相互に連絡を密にして検察庁の捜査の資料をも重要な資料にして菊地関係の事件をやった、こういうふうに私前に聞いた記憶がございますので、さらに調査いたしてみたいのでございますが、今そういう記憶を思い出しましたので、また資料を御提供いただく御参考になるかと思ってお話し申しました。
  135. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 これは、結局、起訴するのには検事局でなくてはならぬから、そうなったのでございましょう。しかし、事の起りが警察なのです。江口検事がおる間はそういう状態だったのです。江口検事がかわって、今度釈放されてくると、お礼参りということになって、今度新しく来た検事は前の江口検事のような気持はございませんから、これはおそらく逆に警察へ訴えてきて、そうして前に江口検事のために協力した者を引っぱろうとして、引っぱってくれということを警察に頼みに行くと、今度は警察の方で証拠を作ってこれこれだといって検察当局へ持っていけば、新しい検事は知らぬものだから、それはよかろうといって引っぱるようになるのは、けだし当然だろうと思います。そうすると、検事がかわりでもすれば、きのうの検事に協力しておればあした来た検事に引っぱられる。こういうことでは、とても情報の提供などということはできません。私もなおこの点十分調査いたしまするが、そういういきさつがありますることも十分御留意をいただいておきたいと存じます。
  136. 細田綱吉

    細田委員 関連して。この前の法務委員会で猪俣委員が例の防衛庁の古エンジンのことを申し上げました。これについては私は繰り返そうとは思いませんが、実は、例のくつの問題で決算委員会調べられておる奈良県の井上信貴男、これは前代議士であり、某政党の大物がバックにおるということで、十分取り調べにくいであろうことはよくわかるが、会計検査院の大坪検査官ほか、もう一人ちょっと私忘れましたが、大坪検査官が検査に行ったところが、おどかされて、できなくて帰ってきてしまった。それから、奈良税務署の署員が調べに行ったところが、井戸へたたき込まれた。なお、これは説明のしようによっては何というか知りませんが、防衛庁の第一検査課か第二検査課の人が検査に行ったところが、四日間宿屋に軟禁されてしまったというようなことがあるのですが、この点は初めての発言ですから、もちろんお調べになっていないと思いますが、お調べになっておったら一つ伺いたい。お調べになっていなかったならば、さらに調べられて、あとでその御報告を伺いたいと思います。
  137. 長戸寛美

    長戸政府委員 本件はただいま未調査でございますので、調査の上御報告いたしたいと存じます。
  138. 細田綱吉

    細田委員 これは、私、中央物資活用委員会というものが終戦後内閣に置かれて、当時その委員をしておったので、たまたま記憶しているのです。終戦後膨大な物資を隠匿しておった。そうして奈良県の検察庁、警察部も手が出ない。従って、大阪の検察庁と警察部の応援を得て若干の隠匿物資の摘発をしたということを聞いております。これは、ひとり社会党あるいは自民党だけじゃない、だれでも、奈良県選出の代議士に聞くと、それだけはかんべんしてくれと言う。とにかく、逃げてしまうことだけで、いかに奈良県において暴力をふるっているかということがわかる。これを御参考に申し上げておきます。
  139. 高橋禎一

    高橋委員長 細田委員に申し上げますが、関連質問ですから、関連のあるところで一つおやめ願って……。
  140. 細田綱吉

    細田委員 午前中のことで証人の請求を一つしたい。これは理事会で御審議を願います。  午前中に私質問しました堂森君の問題では、法務当局警察当局も遺憾の点はお認めになっておるので、血圧八十ないし六十というような人を過酷な取調べをしたかということでは、当法務委員会でも一度証人を呼び出して、委員各位が目のあたり一つ調べていただきたい。そこで、当時の主任検事の井村検事、それから荒川医師友影医師高橋医師と、夫人堂森一枝及び六十何才かで二月以上もたたき込まれていた母親の堂森せん、それと、高志警察署の署長と川崎警部補及び丸岡署長、この人たちを証人として当委員会に御喚問の上、当委員会で直接お取調べを願いたい、これを請求いたします。
  141. 高橋禎一

    高橋委員長 細田委員の今の発言のございました点は、追って理事会において十分検討をして決定いたしたいと思います。
  142. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 先ほどお尋ねいたしておりました点はほんの糸口の質問だけでございますから、御調査をいただきました上御答弁をいただきまして、さらに質問をいたしたいと存じますから、お含みを願っておきます。
  143. 高橋禎一

    高橋委員長 この際私から法務、警察当局に要望いたす次第でありますが、御存じのように、今国会の会期も終りに近づいたわけでして、これまで当委員会において人権じゅうりん問題あるいはまた警察、検察の捜査活動の不十分の問題等についていろいろ質疑が行われ、そして、それに関連してなお調査していただくという事項が相当残っておると思いますが、それらについてはすみやかに調査されて、できれば今国会の終りまでに各委員十分納得されるような結末を得られるように、一段の御努力をお願いいたしたいと思います。人権じゅうりんをなくしつつ、しかも治安維持をされるというた場にある、非常に困難な職責を遂行していらっしゃるのですが、当委員会においてこれまでいろいろ論議のありましたような重大問題について、十分これを資料として、人権を守りつつ一つ治安維持のために格段の御努力をお願いいたしたいと思います。  それでは、本日はこれにて散会いたします。    午後五時九分散会