○猪俣
委員 次に、これは法務当局にお尋ねしたいと思います。
衆議院の決算
委員会におきまして、例の防衛庁の決算の
審査に際しまして、いわゆる中古エンジン問題が発生したことは御存じの通りであります。これにつきまして
国民は多大の疑惑を持っておる。ことに、血税を払っておりまする一般人といたしましては痛切なショックを受けておることは、これまた
政府当局も御存じのことだと思うのであります。そこで、このことを
国民の前に明らかにする
責任が、国会におきましても、
政府当局においてもあると存じます。
事案の大要は、アメリカの放出物資として、
昭和二十六年ころ、一台七万二千円という価格で払い下げを受けた
政府、それが、数年ならずして、同じ
政府の
予算において、一台千二百五十万円で置い取ったということ、これは単純なる
国民に対しましては何としても払い切れない疑惑であります。しかも、かような行動をしておっても何人も
責任を負う者がない。決算
委員会におきまする防衛庁
関係者の態度及びその
説明を見ますならば、何にも
不法はないし
責任もないんだということで、それを聞くたびに、
国民はますます不可解、いかに
国家の金といえども、かようなことが出来して、しかも何人も
責任を負う者がないということに対して割り切れない感情があるのであります。私どもは、決算
委員会におきまする速記に残っております各証人の証言、
政府委員の答弁等を総合いたしますと、はなはだここに疑惑がある。一台七万二千円で払い下げを受けた事情及び一台十万五千円で松庫商店が買い取った事情、それが一台四十八万ないし五十万円で間組の手に入った事情、それに加工費、補給備品費、運搬費、一切の
費用を込めて一台四百万円
程度のものが相当であるということを、買い入れました防衛庁の役人自体が承知しておる。これが決算
委員会の答弁に明らかに出ておるのであります。
政府は、七万二千円の払い下げの事情から、間組が入手いたした事情、一切承知の上で、千二百五十万円で買っておる。しかも、このエンジンは絶対に他に需要のない品物であることも各証人一致しての証言であります。需要供給の
関係において価格が形成せられることは経済学の第一歩である。物自体がどうであっても、客観的需要のない品物というならば、価格はあってなきがごときものであります。間組が他に売り渡す場所がないことは、間組も認めておる。
政府も認めておる。しかるに、かような高価なものを買い入れたということについて、その買い入れの衝に当りました防衛庁の調査本部の役人自体に何らの
責任がないのであろうか。私はこれは刑法の背任罪が成立するものだと考えております。
そこで、かような疑惑を
国民に投げかけている以上、そうしてそれが
犯罪の疑惑が全くないのじゃなくて一応背任的な疑いがある事実が出ている以上
——私は今までの決算
委員会の調べだけでも出ていると思う。これに対して
法務省は一体どういう態度をおとりになるのか。なお、刑法の背任罪のほかに、物価統制令に違反しているのじゃないかと私は思う。物価統制令は
昭和二十一年に勅令でもろてできておりますが、これは
昭和二十七年
法律八八号によって
昭和二十七年四月二十八日以後も
法律としての効力を存続されて今日まできておるはずである。この物価統制令の第十条を見ますならば、暴利行為等の禁止として、「何人ト強モ暴利ト為ルベキ価格等ヲ得ベキ契約ヲ為シ又ハ暴利ト為ルベキ価格等ヲ受領スルコトヲ得ズ」と書いてある。少くともこの物価統制令の第十条の違反じゃなかろうか。少くともこの疑惑があるのじゃなかろうか。
犯罪の疑惑ありとするならば、
法務省は
検察庁を指揮いたしましてこの捜査に当らなければ、
国民の負託にこたえるということにならないと考えます。そこで、
法務省はかようなことに対して捜査をお進めなさっておるかどうか、あるいは背任
関係、あるいは物価統制令第十条違反の事実があるかないかを御
研究なさって、その方向に捜査の歩を進める意思があるのであるか、ないのであるか。私がこの質問をするゆえんのものは、次の質問とも関連いたしておりまして、今日防衛庁を中心といたしましたる国費の乱費は目に余るものがあり、役人どもの綱紀の弛緩も目に余るものがある。今参議院において問題になっておりまする元国鉄総裁加賀山氏の公邸の問題、それに引き続きまして私が今質問いたしました最高裁の判事に関してもいろいろのうわさが出ておる。かような点につきまして、一体何らかこれを処断する
法律がないものであろうか。これはあとで質問いたしますけれども、
国家の
予算を乱費し、綱紀の弛緩せる公務員に対しまして、一体
検察庁の諸君はどういう意思のもとに進まれるのであるか。とにかく、一国の綱紀の弛緩を単に
法務省だけでささえ切れるものではもちろんありません。国会においても、
政府においても、それぞれその部署において
責任がありますけれども、とにかく、第一線に立って、この社会正義の
実現のためにも、
国民の信頼を博するためにも、第一に活動すべきものは
検察庁であり、
法務省であると私は確信しております。かような意味において、当
法務委員会の
責任はきわめて重大であると思います。この
国民の非常なる疑惑を至るところでわれわれ質問を受けます。自分の家族の者からさえ質問を受けます。一体あれでよいのであろうか、防衛庁の言うように何にも
責任を負わないでよいものであろうか、役人というものはえらいものだ、
民間人があのようなことをやったらそれぞれ
責任を負わされる、こういう声もごうごうとしてあるのであります。この町の声を無視してはいけないと存じます。これに対して、きょう法務大臣はおいでにならぬのでありますが、法務大臣の満幅の信頼を受けておる政務次官がおいでになりますし、また
法律問題についてのエキスパートである刑事局長代理がおられますので、これに対する
法務省の所見をお伺いするのであります。