○椎名(隆)
委員 極端から極端にわた るかもしれませんが、一体禅師が旅をして歩いていまして、たまたままっぱだかで水浴している女を見るや、局部に対しましてじゅずをさらさらともんで拝んだ。側近の人がわけを聞いたところが、女くらい偉いものはないんだ、釈迦も孔子も阿羅漢もみな女から生まれたんだ、よって女ほど偉いものはないということを言われておる。また、キリストは、 マタイ伝で、「なんじジョセフ、彼をめとらんことを恐るるなかれ、彼は聖霊を夢見てはらみたまえばなり」と言っている。それほど女が大事だということを一体禅師は言うておる。それに反しまして、ソクラテスや孔子は、女子と小人は養いがたしと言っておる。これは正反対である。私は、マーシャル群島のヤルート島に約二カ月おりまして、性的な問題を
調べたことがあります。あそこは性は全部開放しておる。かりに夫婦でありましても、同じところにいるときには女の方はたばこを吸いません。ところが、一たび亭主と左右に分れるや、たばこをすぱすぽと吸い始める。たばこを吸うことは何人の要求にも応ずるというしるしなんです。それですから、あの島は
婦人連中が全部梅毒患者なんです。それに反しまして、今世界で一番
売春婦の少いところはどこかと申しますとビルマです。このビルマは国民全部が仏教徒なんです。かりに
売春婦ありといたしましても、きわめて少いのです。一方は性を全面的に開放している。一方は
売春婦さえもきわめて少い。これは両極端です。この
法律も、見方によりましては、この
法律が出たならば私通、姦通、めかけを持つことを奨励する
法律である、あるいはまた、現在業態婦として五十万いるというその
婦女が餓死線上に押し出される、——きょうも、生活線を守れとか何とかいうので、こういうビラの配布かあったのですが、この
法律が出るとするなれば即時に私たちは職を失って餓死線上に迷わなければならぬから、
売春法だけは通してくれるなという陳情です。また、この
法律のいい面を見てみますなれば、
売春に関する諸法令がごたごたになっているのを統一するところにいいところがあり、また私はこれは認むべきだと思うのです。松原政務次官並びに岸本さんもおっしゃったように、これは画期的の
法律である、——確かにそうかもしれません。しかしながら、
売春を禁止しようとしたのは今度が初めてのことではないのであります。徳川時代に一回
売春を禁止したことがある。それは、明暦三年正月十八日に江戸に大火があった。そのときに新吉原というものが初めてできた。吉原の黄金時代というのは寛永十七年、「吉原が明るくなれば江戸が明け」——あの当時の女郎さんが、松の位の大夫で十万石であった。その遺風が今もって、女郎道中というのですか、くるわ道中と申しますか、その遺風が残っておるくらいで、あまり弊害がすごい。このまま吉原をしておいたのでは、いわゆる良家の方々が、せっかくためた資金を何もかも全部蕩尽して、家内における平和というものは保たれない。それではいかぬというので、夜間営業を禁止した。ところが、夜間営業を禁止しますと、即時に現われたのがいわゆる湯屋の二階などの
売春営業、水茶屋の茶くみ女、あるいは矢場の女というふうなものが現われてきた。そこで、今度は、その
売春自体が、吉原で営業する以上にはげしくなったために、これはいけないというので、またまた一ぺん禁止したところの
売春を解くようなことになった。私は、この
法律が所期の
目的を達することができるのかできないのか、それは一に
政府当局の決意いかんにあるだろうと思います。これは昨日も
世耕委員からしばしば言われたのでありますが、この
法律がなくても、取締りしようと思えば取締りできないことはない。勅令第九号あり、あるいは刑法、憲法あり、児童福祉法あり、
職業安定法あり、各種の
法律で十分取締りはできます。今まで、いわゆる戦前のわが国におけるところの
警察力によれば、あの当時は、
警察犯
処罰令という法令がありますし、また
警察力も充実しておった
関係上、十分取締りができた。ところが、戦後におけるところの
警察当局の力というものが、いわゆる無力になった。こうした各種の
法律があるにもかかわらず、現在のように性道徳が頽廃したということは、一面から申しますと
政府当局の怠慢です。そう言われても仕方があるまいと私は思う。もしそうであるとするなれば、この
法律が効果を発生するまでには何年かあります。その間の取締りができないことになる。この
法律が効果を発生しなくても、現在の法令で十分に取締り得る。しかしながら、私は、この
法律ができることによって、地方条例と憲法の十一条、十二条、十三条、十四条、十九条等におけるあの摩擦を一応防ぎ得ると思う。二十二
国会において
提出せられました
売春法案は、結局個人
売春、単純
売春を
処罰しておりましたので、その点非常に疑問があったのでありますが、今回の
政府提案を見てみますと、その点がはっきりと抜けて、今後の研究題目とされている。この
法律がいかに出ましても、
売春そのものは決してやまるものじゃない。しかしながら、でき得る限りやめさせる方向にいかなければならない。それについては、
法律ができても、なおかつ審議会を置く。これは私は非常にけっこうだと思うし、また、
更生保護の面も、たとい不十分であるとはいえできておりますので、非常に満足しております。しかしながら、今後この
法律が
実施される暁におきましては、今までの法令等のごとく、いわゆる
警察当局が取り締るべきにかかわらず取り締らなかった、それがために現在のように性道徳が頽廃したというようなことがあるわけであります。そこで、本
法案に対するところの
政府当局の心持をお伺いしたい。