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世耕委員 大体政務次官の御
説明は了承はできるのでありますが、私の質問の要旨を少しはき違えておるように
考えられるのであります。それは、なぜかと申しますると、従来各種の
法律がすでにあるのにもかかわらず、その
法律が一向に実施されてないんじゃないか。ある程度これが従来実施されておったならば、もっと成果があがった、もっと今言う性の
秩序が維持されたのではないか。それが実際問題として実施されてない今日ではないか。それをどうするのだ、それをはっきりさせないでおいて、またこの上に
法律を——政務次官からおっしゃると非常にりっぱな
法律たという
お話でありますが、私もりっぱな
法律であろうと思います。検討さしていただこうと思うのでありますが、りっぱな
法律を作る前に、前の
法律をもっと十分検討なさって、それからこの
法案を完成していくことが必要じゃなかろうか。私がかりに当局であったとするならば、従来の
法律である程度までの成果はあげ得たと私は思う。
一向それについて手を伸ばしてなかったということが今日の結果の大半をなしたのだと、私はかように思う。しからば今度は大いに厳格に徹底的にやれという号令をかけるわけではございません。性の問題は非常にむずかしいから、お互いが慎重を期さなくちゃならぬ、
取締りにしても何にしても、何か万全の策をこれに
考えなければならぬということを説く材料の
一つとして、実は今申し上げたような例を出したのであります。決して今日の行き方を私は是認して申し上げたのではない。いかにすればいいかということを前提として
考えたのであります。もし今の
提案された
法律をそのままうのみにしてかりに判断してみますと、神前で誓った夫婦の結婚は、カトリックのように、むしろ離婚を禁止するというところまで理想としていかたくちゃならぬ。また同時に、最近は、憲法ができてから新たに思想が変りまして、姦通罪が削除された。これも御
承知の
通りです。今の思想からいけば、これは矛盾ではないか。もう一ぺん姦通罪は成立せしめる必要がある。ここに大きな矛盾、食い違いが出てくる。おとなの方は勝手なことをしておる、おれたち若い者だけをやかましく言うというのは、これは当然非難の
中心になってきますよ。
これはよけいな話ですが、この間私は、
委員会を担当しておったときに、女子大の若い
人たち五十人くらいに取り囲まれて大いに私は議論した。性の
純潔を生理的いろいろな
関係から説いたところ、最後に何を言うかというと、何を先生は言っている、男性は一向に貞操を守らない、女子だけ
純潔、そんなことは封建的です、聞けますかと言って一蹴されちゃった。そういう点が、この
法律の中にもつつかれる面が出てくると思います。これは別な面ですが、産児
制限だって同じことでしょう。奥さんの産児
制限は、少くとも専門医に聞けば十日ないしは二十日はかかる大手術です。産児
制限の去勢の方法、いわゆる避妊の方法は、男なら五分で済むじゃないか。御主人がやった方が確実だ。そうして一方は一万円以上かかる。主人の方はせいぜい高い医者にかかっても三千円か二千円で済むのを、男の方は一向やろうとしない。男の方が完全なのだ。
こんな矛盾した
法律をかりにわれわれが作ったって、今の若い
人たちはうんそうだと言って簡単には私は受け入れないのではないかということを心配しております。というて、これはほうっておけと言うのではないですよ。ほうっておけと言うのではないが、若い
人たちも納得して受け入れられるものが何かありそうだ。それには、今申し上げたように、「太陽の季節」、あるいはまた、六月号も出ましたが、谷崎さんの中央公論に出ておる「鍵」、——大ぜいの文士の方、舟橋氏あたりも出てきてもらったらいいと思いますが、あの
人たちはこういう方面には何十年かいろいろな角度から研究された
方々で、そういう
人たちに来てもらってこういう話を聞くこともまたいいのではないか。私は他の
委員の方にも前回の
委員会でも申し上げましたが、これは世論が大事である。世論がこうしろというのだからこういう
法律を作らなければならぬ、あるいは、こうすべきだということが若い人の中からきゅう然と起った、その世論を背景にして
法律を作ることが一番ふさわしいのではないか。年寄りだけで作っちゃいかぬというのが私の
考えです。それには広く意見を聞く。往々にして、おじいさんやおばあさんが性の
道徳を説いたって、それは時代おくれでせせら笑いされる。といって、おじいさん、おばあさんの説く性の
道徳には真理がある。経験に基いておる。尊い経験に基いた真理はあるけれ
ども、その真理をそのまま今の若い
人たちはまともに受け入れてくれません。受け入れられる何かの方法を
考えるべきだということ。
もう
一つは、
取締り当局、特に
法律を預かっている事務当局の
方々が、本件に対する態度をもう一段と掘り下げて、真剣な態度で臨んでもらいたい。
現行法規はどうやらなまけて使ってなかったのじゃないか。これがついに野放図な今日の二重橋前を出現し、各所に青空が展開されたのである、こういうふうにも
考える。その機会をねらって、いわゆる流行を追う文芸人がいろいろな計画のもとに図書、文書等を配布したことが大きな
原因になり、そこへ諸外国の、
日本の
道徳にマッチしないような映画、演劇が無造作に導入されたことが
原因になったのじゃないか。まず、私は、この
法律を作ることも必要だが、そのよって来たる
原因のみぞをせきとめるということを、どういうふうに
考えるかということの決意のほどを、実は
松原政務次官から伺っておきたい、こう思っております。