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1956-04-27 第24回国会 衆議院 法務委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十七日(金曜日)    午前十一時二十八分開議  出席委員    委員長 高橋 禎一君    理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君    理事 高瀬  傳君 理事 福井 盛太君    理事 猪俣 浩三君       小林かなえ君    世耕 弘一君       林   博君    花村 四郎君       古島 義英君    横川 重次君       片山  哲君    木原津與志君       古屋 貞雄君    細田 綱吉君       武藤運十郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君  出席政府委員         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         検     事         (刑事局長事務         代理)     長戸 寛美君  委員外出席者         法務事務官         (事務次官)  岸本 義廣君         検     事         (民事局参事         官)      平賀 健太君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 四月二十七日  委員淺沼稻次郎君、風見章君及び勝間田清一君  辞任につき、その補欠として古屋貞雄君、木原  津與志君及び細田綱吉君が議長の指名で委員に  選任された。 同日  理事佐竹晴記君同日理事辞任につき、その補欠  として菊地養輔君理事に当選した。     ————————————— 四月二十四日  売春に係る処罰保安処分及び更生保護に関す  る法律案片山哲君外十四名提出衆法第二八  号)  売春に係る処罰保安処分及び更生保護に関す  る法律の施行に伴う裁判所法等の一部を改正す  る法律案片山哲君外十四名提出衆法第三四  号) 同日  徳島刑務所移転促進に関する請願三木武夫  君外三名紹介)(第二〇三二号)  売春等処罰法制定促進に関する請願中村高一  君紹介)(第二〇八四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  参考人出頭要求に関する件  法務行政及び人権擁護に関する件(京都地検に  おける犯人誤認事件)     —————————————
  2. 高橋禎一

    高橋委員長 これより法務委員会を開会いたします。  本日の日程に入ります前に、理事辞任についてお諮りいたします。すなわち、理事佐竹晴記君より理事辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高橋禎一

    高橋委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。  引き続き理事補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして委員長より御指名いたしますに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高橋禎一

    高橋委員長 御異議なしと認め、理事菊地養輔君を指名いたします。     —————————————
  5. 高橋禎一

    高橋委員長 次に、先般来調査を続けております立正交成会問題及び京都地検犯人誤認問題につきまして、それぞれ参考人出頭を求め実情調査いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 高橋禎一

    高橋委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。  なお、人選及び日時等につきましては委員長に御一任願いと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 高橋禎一

    高橋委員長 御異議なければさよう決定いたします。     —————————————
  8. 高橋禎一

    高橋委員長 御異議なければさよう決定いたします。
  9. 高橋禎一

    高橋委員長 次に、牧野法務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。牧野法務大臣
  10. 牧野良三

    牧野国務大臣 皆さん、ごあいさつを申します。  先月の二十日以来病気のために引き続き長い間欠席いたしました。委員会の重要なる国務審議の上にお差しさわりをいたした点が少からぬことと存じ、申しわけなく存じます。おかげをもちまして、こんなによくなりました。本日よりは連日登院いたしたいと存じます。つつしんでおわびを申し上げ、お礼を申し上げます。
  11. 高橋禎一

    高橋委員長 次に、法務行政及び人権擁護に関し調査を進めます。  京都地検における犯人誤認問題について法務省より調査報告を求めます。長戸政府委員
  12. 長戸寛美

    長戸政府委員 さきに横井刑事課長現地に派しまして調査いたさせたわけでございますが、その結果は前回横井刑事課長より御説明し、本日お手元にその概要の書類を御配付申し上げたのでございます。その後本月二十四日夜法務省といたしましては再び横井刑事課長並びに人事課横溝検事大阪高検及び京都地検に派遣いたしまして、本日法務省におきましては外事係検事会同を催しておりますので、そのため横井刑事課長は昨晩急拠帰って参りましたが、なお調査未了のため横溝検事現地に残して調査いたさせておるわけでございます。そういうふうな関係で、前回報告申し上げました自後の調査につきましては横溝検事帰庁後全部の資料を整理いたしまして正確な点を御報告申し上げたい、かように思う次第でございます。ただ、いわゆる真犯人として京都地検出頭しておりました佐藤久夫につきましては、本月十九日傷害致死として起訴いたしております。その点のみを御報告申し上げます。自余につきましてはしばらく御猶予を願いたい、かように存ずる次第でございます。
  13. 高橋禎一

    高橋委員長 次に質疑に移ります。質疑の通告がありますので、これを許します。猪俣浩三君。
  14. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は法務大臣にお尋ねいたします。  まだ責任ある当局から詳細なる報告は来ておりません。きょう朝初めてこの京都五番事件報告概要というものを受け取ったのでありまして、なお、直接調査にあてられました横井刑事課長もきょうお見えになっておらぬので、詳細なる事実につきましては当法務委員会でも調査しなければならぬと思っているのでありますが、ただ、法務大臣にお尋ねしたいことは、本件は事が小さいようでありましても大きな人権問題を含んでおり、なおまた刑事訴訟法その他につきましていろいろ反省しなければならない点もあるのじゃなかろうかという点で、私どもは重大な事件だと思うのであります。第一に、被告人少年である、そしてその少年が人を殺すという重大犯罪をみずから自白したというところに、ここに何らかの取調べ官憲の不法なる調べ方があったんじゃなかろうかということが国民疑惑になっておるところであります。そこで、その点が第一に問題であります。今日「真昼の暗黒」なんという映画が相当のセンセーションを起しておりまして、これを見ますると、警察において実に惨たんたる拷問をやっておる場面が出ておる。これは映画でありまするがゆえに、真実であるかどうかはわかりませんが、いわゆる警察官に対しまする恐怖の念を植えつけたことは事実であります。そこに、まるっきりこの映画を裏づけするようなこういう事犯が起った意味におきまして、これは容易ならぬ国民に対する捜査取調べ、そういうことの疑惑をいよいよ深めたと思われまするがゆえに、私はまず第一にこの警察におきまする取調べの状況について徹底的な調査をしなければならぬと思うのでありますが、その点についてまず法務大臣の御所見を承わりたいと思います。
  15. 牧野良三

    牧野国務大臣 ただいま猪俣委員の御質疑通り、この事件は形は小さいけれども深刻な内容を持ち、重大なる意義があると言われることについても同感であります。従って、この事件に対しては相当慎重な態度をもって取調べを進め、御満足のいく程度資料を捧げたいと存じます。
  16. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお、われわれが疑問にする点を指摘いたしますならば、法務省報告によりましても、この四人の少年の一人、宋なる人物が刺殺したというその凶器につきましては、その処分について、凶器を捨てた場所を十数回も変更して、その都度それを捜索したけれども発見できなかったというところに、真犯人なりやいなや重大な疑惑検察官自身が持たなければならぬはずである。しかるに、これを簡単に起訴したというところに、私は非常な問題があると思うのであります。申すまでもなく、現在におきましては、刑事訴訟法証拠主義をとりまして、本人の自白だけによって罪を処分してはいかぬはずでありますが、その凶器が出てこない。しかも捨てた場所が十数回も変る。しかもそれを一々裏づけ捜査しても何も現われない。そうすると、肝心な犯罪に使った凶器そのものがわからないにかかわらず、ただ私が刺しましたということだけで起訴したと思われるのでありますが、さような点につきまして、法務大臣はこの検察官態度につきましてどういうふうな御意見を持っておるか。かような検察官がもし多数あるといたしますならば、法務大臣としてはどういうふうにこれを指導なさる意思であるか。この自白それ自体が十数回も変更され、その場所をその都度捜査しても凶器が何も発見されないのに、なお殺人犯人として起訴だということにつきまして、法務大臣の御所見を承わりたい。   〔委員長退席池田(清)委員長代理着席
  17. 牧野良三

    牧野国務大臣 ただいま御質問の点でございますが、私は検察行政根本において行き方を改めなければならないのでないかということを就任以来主張して参っておるのでございます。この点においては、功を急ぎ犯罪を発見することにのみ熱心になりまして、事実に対してまずみずから疑惑を抱いて、許すべき点があるのじゃないかという大切な点に深い注意が及ばないということが大きな弊害じゃないかと思いますので、この点は検察行政根本において精神的に違った方針を私は今まで半年の間常に主張を続けております。どうかかかる点の改まることを、深い期待を持って、今なお熱心に期待いたしておる次第であります。
  18. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお、疑問の第三点といたしましては、弁護人の申請いたしましたる証人に対しまして、偽証疑いありとして、御念の入ったことには検事証人逮捕までしておる。弁護人の申請したような証人検事起訴事実に不利な証言をしたということで、直ちにその居残りを命じまして検事室でその証人を取り調べる、これは実に弁護制度の根幹を破壊するものなりとの考えを私どもは持っております。ことに戦時中のごときは、統制違反事件につきまして実にこれが乱発されて、堂々と公判廷の中で、証言が終るやいなや、お前あとでちょっと残っておれということを検事が言って、そうして直ちに検事室へ連れていって調べる。そしてこれを偽証としておどかして証言をみなくつがえさせるようなことをやった。これは徹底的の人権じゅうりんであります。かようなことを検察官が乱用いたされましては、弁護制度などは根底から破壊せられる。私は戦後かようなことはなくなったのかと思っておったところが、どうもこの京都事件においてはなはだ重大な過失を検事がやったのではないか。真犯人であるかどうかという重大な問題の証言、しかもその証言真実であった証人を、自分たち起訴事実と違うがゆえに偽証なりとして逮捕するとは、一体何事であるか。本件において最も重大な点はここにある。しかも、さっき申しましたように、その刺したと称する凶器が、十二、三回も供述を変え、捨てたと言う場所にはその裏づけするものが何ら発見されなかった。果してこの宋なる人物が刺したのであるかどうかということに対して重大な疑惑を持たなければならぬ客観的事情があった。そういうところに真犯人が他にあると証言をする者が現われた際においては、懇切丁寧に、自分たち起訴事実、起訴行為それ自体に対して反省を加えるということが良心ある検察官態度でなければならぬ。しかるに、何ぞや、この証人偽証で告訴した。しかも、新聞に伝うるところによれば、この検事村松泰子という若い女の子を相当脅迫したようになっておる。これは、京都法務局調べて、その村松という女の子及びその父親が出頭して実情を訴えておる。私はここに重大なる問題があると思う。そこで、真実証言偽証なりとして逮捕したというこの事実に対しまして、松原法務政務次官は、これは森島という検事がやったのだと参議院証言した。これは、森島という検事単独で、偽証したと称して若い娘さんを逮捕したのであるかどうか。森島検事は憤慨して辞職願を出しておるということです。そこで、法務大臣にお聞きしますが、松原政務次官参議院森島検事責任者だと言っておるのですが、それはその通りであるかどうか。森島検事は他の上司に何らの伺いを立てずして単独でやったのであるかどうか。森島検事上司の方から命令があったということをしゃべっているようであるが、その真相はどうか。もし命令があったとするならば、一体何人がその責任者であるのか。法務省から出されたこの報告書には、私はまだ全部読んでおりませんけれども、あまりそんなことは詳しく書いてない。そういうことが重大なことだと思うのです。そこで、一体この真実を述べた人間を偽証罪として逮捕するがごとき乱暴なる行為をやった責任者は何人であるか、その点をはっきりさせていただきたい。
  19. 牧野良三

    牧野国努大臣 ただいまの御質疑に対しましては、事務次官より詳細御答弁申し上げます。
  20. 岸本義廣

    岸本説明員 ただいまの御質疑に対して御答弁いたします。  御指摘の、松原政務次官参議院におきまして本件偽証容疑者逮捕した責任者森島という検事であるという趣旨答弁をしたという問題でございますが、速記録調べてみましたところ、松原政務次官におかれましては、本件の事実を十分調査いたしまして、責任のある者はその責任の度合いに従ってそれぞれの適当な処置を講ずる趣旨答弁をいたしておるようでございます。たまたま新聞記事にはその詳細な答弁趣旨が伝えられませんで、あたかも偽証容疑者逮捕責任者森島検事であり、この検事に対して相当処分するかのごとき印象を与えるような記事となって現われておるような次第でございます。この点まず御了承を願っておきたいと存ずるのであります。  次いで、森島検事が果して本件偽証容疑者逮捕したほんとう責任者であるかどうか、及びこれに対して上司が何らかの処置をしたのではないかという点の御質疑でございまするが、今日まで調査した結果によれば、偽証容疑者でありまする村松泰子なる女を偽証疑いありとして取り調べたのが森島検事でございます。従いまして、森島検事がこの偽証容疑者を取り調べたという事実はございます。しかし、この森島検事取調べに対して、これを逮捕するかどうかという問題につきましては、非常に微妙な点がございまして、森島検事の一存をもって逮捕するということはできなかったような事情にあるようでございます。すなわち、森島検事上司相談の上この村松泰子証人逮捕するということになったようでございます。しかしながら、ただいま申し上げた事実は今日まで法務省におきまして取り調べた結果でございますが、先ほど刑事局長代理から御答弁申し上げましたように、本件につきましては、法務省といたしまして、この偽証問題に関して、世上伝えられておりまするような人権じゅうりんその他誹議されるような事実が果してあるかどうかということ、及び、もしありといたしまするならばその範囲はどの程度であるかということ、及びその程度いかんといったような問題がございまするので、きわめて慎重な態度調査を進めて参っておる次第でございます。従って、先般は刑事課長京都に派しまして事実の取調べを命じ、二十四日には第二回目の派遣をいたしまして同じくこの問題に関する調査をさせておる次第でございます。なお、二十四日の第二回目の調査に当りましては、もしさような御質疑のような事実がありといたしまするならば、これはやはり検察官としての責任問題にも関連いたしまするので、その係でありまする人事課横溝検事を同道させまして、その責任問題いかんという観点から、横溝検事が極力調査に当っておるような次第でございます。しかしながら、横井刑事課長は、本日は本省におきまして全国の主要都市外事係検事会同を催しておりまして、同課長外事係検事会同を主宰いたしまする関係上、調査の中途において昨夕飛行機で急拠帰って参ったような次第で、横溝検事だけがまだ京都に残って調査を続けておるような次第でございます。従いまして、御質疑の点につきましては、横井課長がもたらしました調査資料、及びやがて持って帰るでありましょう横溝検事調査資料等を整理検討いたしまして、正確な事実を突きとめてからお答えを申し上げたいと存じておるのであります。その資料整理及び調査の終了するまで、この点に関する答弁をしばらく御猶予願いたいと存じておる次第でございます。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 私が本委員会法務大臣にぜひ出席していただきたいと思ったことは、こまかい事務的なこと、事実そのものにつきましては、今岸本次官が申されたように、詳細なる報告を聞いてから当委員会においても調査しなければならぬと思いまするけれども、ここに法務行政上重大な点があるのでありまして、これは法務大臣の御答弁をお聞きせぬといけないのではないかと思うのであります。それは、ただいまの岸本次官のお説明でははっきりその点を申されておりませんが、この二十五日の日本経済新聞を見ますると、森島検事辞表を出した後にいろいろ新聞記者に話をしている。それを見ると、去る三月一日村松さんを逮捕したのは京都地検中田刑事部長と同検事の二人だが、森島さんは、村松さんの証言偽証とは言い切れない、こまかい点は違って真犯人らしい者を見たというのは疑いないと言ってあくまでも村松さんの逮捕に反対した、村松さんの調べが終ってから、中田刑事部長泉次席検事と論争した、そのとき泉次席検事は、君は無能な検事だ、女の一人くらい逮捕するのはわけないじゃないか、君のようなことを言っていたら捜査当局の士気が沮喪すると怒った、そのとき森島検事事件から手を引くことを申し入れたが、いれられず仕方なく逮捕状に印を押したという、しかるに参議院法務委員会で同検事だけが責任を負ったようになったので、四月十七日熊沢検事正を訪れて事情を訴え、さらに二十日牧野法相佐藤検事総長井本法務省刑事局長あて直訴状を出したが返事がない、やむなくついに辞表提出を決意した、——そうして彼はなお新聞記者にこう言っている。私はこれまで検察庁法務省をたよりにしてきたが、もうたよるものはなくなった、こんなことでは良心的な若手検事の生きる道はない、これが堂々と新聞に発表されております。こういう新聞発表があるにかかわらず、あいまいもことした御答弁では、私どもは承知できない。一体森島検事村松偽証容疑者として逮捕することには初めは反対であったのじゃなかろうか。それを無理に逮捕させたのは上司命令らしいが、その命令を出したのはだれとだれか。これを見ると、中田刑事部長泉次席検事、これらと論争して、無能とまでののしられてついにやったと言っているが、この実相はどうなんですか。この法務省報告に何も書いてない。だから私はさっき聞いた。森島検事調べたに違いないが、森島検事逮捕状を出すまでに何か上司相談したに違いない。すると、何人が一体この相談に乗って逮捕状を出すことを勧めたのであるか、あるいは命令をしたのであるか。森島検事が憤慨てし辞表を出すには理由がなければならぬ。そこで、森島検事辞表を出した真相はどうなのか、それをざっくばらんに御説明願いたい。そうして、こういう事態に対して法務大臣はいかなる御処置をとるつもりであるか、それを御説明願いたい。
  22. 牧野良三

    牧野国務大臣 ただいまの御質疑でありますが、ずいぶん私はつらい立場におります。一つの誤まりが連鎖的に幾多の誤まりを重ねて、一波万波を生じて、ついに森島検事辞表となり、辞表と同時に、まだ検事の職にありながら新聞社にあらゆることをぶちまけたというような事態を生じたことは、法務大臣の大きな責任でございます。従って、この事案に対しましては、真相を私みずから明らかにいたしまして委員会に申し上げたいと存じます。それを明らかにするため、しばらくの御猶予を願います。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 今法務大臣の決意を聞きましたので、徹底的な御調査を願いたいのであるが、一体、役所というところは、何かくさいものにふたをするようなことを考えて、他人を調べるときには徹底的に峻厳な態度をとりながら、おのれらの内部のことについては何かごまかすような報告をする癖がある。これは、検察庁だけ言うのではありませんし、法務省だけ言うのではありません。しかし、今法務大臣がここではっきり宣言せられた以上、徹底的におやりになるだろうと思いますが、一体いかなる上司森島相談をしてかような暴挙をやったのであるか、それを調べることが必要だし、森島検事の行動に対しても疑惑があるのであります。これもこの二十六日の読売の夕刊に出ております。それは、村松泰子さん、例の偽証したと称せられて逮捕せられた泰子さんと実父の重次郎さんが京都法務局に出て実情をしゃべっております。これを見ますると、森島検事は、四人の少年に頼まれてそを言ったのだと言えばお前をすぐ帰す、そうじやないと帰さぬ、正直に言えばいい縁組を世話してやる、こう言われた、そこで、やむなく、調書には書かないでくれということを頼んで、公判廷での証言はうそで実は私の見た男はマフラーをしており上衣は着ていなかったというまるで偽わりの証言をしてしまった、こういうことが新聞に報道されておる。一体ほんとうのことを言うた者を偽証犯人として調べ、その調べに際してかような調べ方検事がしていいものか悪いものか、この調べ森島検事についてもはなはだ疑惑があるのであります。その点についても、法務大臣は徹底的に、いわゆるくさいものにふたをせずして、責任責任としてどこまでも真相を追及なさる意思ありやいなや、お尋ねします。
  24. 牧野良三

    牧野国務大臣 猪俣委員の仰せられた通り、とかく官庁のやることについて従来弊害かありました。いい機会でございます。この機会をとらえまして、さような疑い国民から一掃する態度を明らかにしたいと思います。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお、ただいま配付された「京都五番事件報告概要」、これは横井大三刑事課長報告書になっておりますが、これはまだしさいに点検いたしておりませんけれども、どうも、私どもは、今言ったくさいものにふたをするような態度がもうすでに現われているのではなかろうかと思う。と申しますのは、十七や十八の子供が人を殺すという重大な事件であります。泥棒したとかしないという事件とは違う。傷害致死罪あるいは殺人罪、人を殺すという、最大極刑が待っている犯罪であります。これを何らの拘束せずしてすらすらと自白するということは常識が許しません。そこに取調べ官憲拷問誘導尋問か何ものかがあった。これらが不良少年であり前科者であることから、何らか誘導尋問をやったか拷問をやったか——これは、新聞の報ずるところによるならば、この被告人らは徹底的な拷問を受けて負傷までしておるというのであります。しかるに、この報告書を見ると、警察刑事部長及び監察課長説明では、「未だ被告人らの主張するような暴行の事実は見当らないようである。」、こういうような報告だ。一体、この刑事部長だの監察課長説明だけ聞いて、そうして暴行の事実は見当らないようである、こんな報告だけで、これを衆議院の法務委員会へお出しになるその心構えに対して、私は不服があります。人々殺したなんということを、ただで自白する道理がありません。そして、「真昼の暗黒」という映画になっておりますあの事件につきましても、いろいろ拷問事件があったことが宣伝せられておるのであります。この際に、警察における拷問事件、これは私がそちらにも質問書を出しておる。七件も八件もあるのです。きょうはその時間がないから、いずれ当法務委員会でそういう警察拷問事件人権じゅうりん事件を徹底的に調査していただけると思いますが、近ごろひんぴんとしてそういう事実が出てきている。そして、もう最高裁判所で確定した犯罪事実に対しても真犯人があとから現われるというようなことがひんぴんとして新聞に出ている。何かここに捜査の重大な欠陥があるに違いありません。こういうことに対しまして、法務省がもっと徹底的なる調査をしてもらいたい。この新聞には詳細に拷問を受けたことを書いてあります。この被告らも、それから参考人として呼ばれておりましたその参考人までがえらい暴行を受けておる。たとえば京都、上京区長者町の木村武雄という人が参考人として昨年の四月十日突然西陣署へ呼び出され、水口努という刑事になぐるけるの暴行を加えられ、自白を強要せられ、同君は首に全治二週間の打撲傷を受けたということが報道されておる。かような事実を調べたのか調べないのか、御答弁下さい。
  26. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ただいま猪俣委員の御指摘になりました本件事件傷害致死を与えたことを一番最初自供された相手方は、当時京都警察の広瀬という警部でありますので、この広瀬警部その他警察関係官の暴行脅迫によってこういううその自供をしたのでなかろうか、こういう疑いを私たちも持ちまして、そういうことがありますれば、御指摘の通り重大な問題でございますし、こういうことを絶無にするという覚悟でいかなければ、ほんとう真実発見はできませんし、人権の保障というものは全うできませんので、重大な関心を持ちまして、これを徹底的に究明する、こういう態度をとりまして、私ども警察関係といたしましては、話が少し長くなりますけれども、当時関係警察のおりましたのは京都警察の組織であったのでございますが、その後、御案内の通り、昨年の六月三十日をもって京都警察は廃止され、京都府一円の警察に統合されたのでございますが、そうした機会等によって待命その他の職員になっているございますが、ただし、こういう事件真実を発見するのには、関係職員の言い分だけを聞くということは、真実発見の一つの資料には違いございませんが、全貌を把握できませんので、あらゆる角度から関係者の言い分を聞くということはもちろん、そのほかにそれを知るに足るのであろう人間の一切につきまして真実発見に努める、こういう立場をとり、しかも、この警察の監察組織を中心といたしましたけれども、私ども警察部局では大阪に事務所を有する近畿管区警察局という組織がございますので、近畿管区警察局の組織と、京都府の監察組織とをもちまして、徹底的に究明いたしたのであります。事柄が、ある刑事がなぐった、なぐらぬということでございますので、今後ともいろいろさらに究明いたしたいと思うのでございますが、現在あらゆる角度から取り調べました中間的結論と申しますか、あらゆる知恵を出しまして考え出しました結論を申し上げてみたいと思います。  最初に自供いたしましたのは四月十八日でございます。当時宋という少年がほかの刑事の調べを受けておったのでありますが、昼飯のときに、本件調べの一番上役に属します広瀬という警部に会いたい、こういうことを申しましたので、広瀬が会い、このときに自供が行われたのでございます。その場合にいろいろな拷問があったかどうかということが問題でございますが、あらゆる角度から警察官について調べましたところが、警察官はもちろんこれを強力に否認いたします。それから、関係少年について調べましたところが、それぞれ、暴行を受けた、こういう事実を申し述べております。それで、両当事者の申し分が違う、こういうことに相なりますので、その間の証拠にいろいろなことを調べなければ、問題は解決いたしませんので、当時入っておりました留置所の同居者、それから、その事件警察関係取調べに従事しておりましたけれども、その後送致を受けて取調べに従事されました検察官の方々、それから、本件事件少年でございますので、家庭裁判所の調査官の手にもお世話になっておりますので、家庭裁判所調査官の方にその当時少年が申しておった事柄、それなんかを総合勘案いたしますのに、ことに留置人の言い分等についてこれを聞きますと、ある留置人に対しましてこの少年はこういうふうに言っっております。けんかをして、その相手が死んでしまい、仲間四人でやったので、そのうちだれがやったのかわからぬが、なぐったことは間違いないので、仲間がかわいそうだったので、僕が殺したと言ったが、どのようになるのだろう、こういうことをその後留置人の仲間に言いまして、留置人の仲間は、自分がやらぬのなら、そんなことを言わずに正直に言った方がよいぞ、こういうふうに教えられた等の関係もありまして、二十六日には、自供を翻すと申しますか、広瀬警部に面会を申し入れました。御案内のように京都には山科警察署というのがありまして、広瀬警部は山科署で他の捜査用務に従事中、広瀬警部に会いたい、こう申し述べまして、広瀬警部に会いまして、実は自分がやったのではない、こういうふうに言い出したのであります。それで、少年は、四人の中でだれかが刺したに間違いないと思っていたので、勇気を出して、私がやったように言ったのだ、こういうふうに二十六日に広瀬警部に陳述いたしておるのでございます。それから、事案の様相等につきましては、過般当法務委員会法務省の方からも御説明がありましたように、四月十日の事件の内容は、宋外四名の少年の方と被害者とのけんかが行われたことも事実でございますし、それに直近した時間に別のけんかが行われておった。タブったけんかが行われておりまして、他のけんかの分の捜査が不徹底でありまして、その点は大へん反省しておるのでございますが、不徹底な結果そういう欠陥を生んだということは重要な原因でございますけれども本件はそういうふうにずっとけんかが続いておるうちに被害者が死んでおるという事実がございますので、宋外四少年の仲間におきましては、当時は自分たちがけんかに従事しておったので、自分たちの仲間のうちだれかが被害者を傷つけるに至ったために死ぬに至った、こういう認識があったことが想像にかたくないのであります。そういうことからいたしまして、ことに留置人にこういうことを申しておる点、それから、もちろんよくないことでございますけれども、仲間のだれかがやったことであろう、そいつに対して自分がまあ勇気を出して、自分がやった、こういう心境になったということが、比較的経験法則で合理性等もございますので、そういうことが動機でなかろうかと推知いたしておるのであります。  本件事実に暴行等がありますれば、徹底的に究明する考えでございますので、現在あらゆる角度でそういう暴行等があったかどうかということについて究明を続けておりますけれども、留置人の関係人の供述、その後広瀬警部に対する供述ないしはその後に検察官及び家庭裁判所調査官等に少年は会っておるのでございますが、当時は、そういう暴行等によって供述した、そういう供述がなかった、そういう実情等にもかんがみまして、今のところ、本件事件につきましては、暴行脅迫の結果自供が行われた、こういうことを認めることができないのでごいますが、われわれといたしましては、あらゆる角度から、そういうことがありはしないかということにつきまして十分なる検討を続けたいと思うのであります。現在までの調査状況はそういう状況でございますので、御了承願いたいと思います。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 この四人の少年たちを調べたのは一人で調べたのではなかろうと思う。調べた刑事は一体どういう刑事でありますか。その名前を一つお知らせ願いたい。場合によっては当法務委員会に呼んで聞いてみなければならぬ。新聞に大体ありますけれども、あなたの方で調べられたと思うのであります。四人を調べた、これに関係した刑事の名前をここで全部おっしゃっていただきたい。
  28. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 もちろん申し上げますけれども、最初現行犯的にやった人間からずっと調べておりますので、当時の職員は当時の京都警察本部の捜査課の職員と西陣警察署の職員でございまして、私どもの方で調べまして、名簿等もわかりますけれども、日にちに伴いまして調べ官等も相異なりますので、全体として相当の数の刑事が直接当っておるのでございます。直接当った一番上の者は警部でございますけれども、相当の数になりますので、後ほど名前を申し上げたいと思います。
  29. 猪俣浩三

    猪俣委員 たとえば、ある被告に対してはだれ、ある被告に対してはだれと、主任のようなものがあると思う。それから、全体を統合して調べるまた主任があると思いますが、全部でなくてもいいが、主としてこの四人の少年調べた、それに専任したような刑事の名前を一つ当委員会報告していただきたい。  それから、なお、この点につきましては、警察庁としても、ただ一片の広瀬警部の釈明だけで済まされず、徹底的に調査していただきたい。  なお、法務大臣にお願いいたしますが、警察の刑事がこういう人権じゅうりん問題をやったとするならば、これは犯罪でありますがゆえに、検察庁をして徹底的に調査させる義務が法務省にあると思うのです。法務大臣としては、このやりもしない少年自白するに至りました動機、それから、現に参考人として呼ばれた人がけがをするまで暴行されたということにつきまして、新聞ですでに報道されておりますがゆえに、この真相法務省としても徹底的に御調査願いたいと思いますが、法務大臣の御決意を承わりたい。
  30. 牧野良三

    牧野国務大臣 猪俣委員のおっしゃる通り、こういう機会に、さっぱりした心持になることができるような調査をしたいと思います。  なお、猪俣委員にお願いがあります。何分なまの事件、今調査が始まっているところでありますから、新聞記事を中心にいろいろ質疑をされて、その応答がちぐはぐになる等のことがあったり、答弁に誤まったことがあっては困りますので、どうかこれは調査が一段落するまで各論的な御質問をお延ばし願うことはできませんでしょうか。そうして、新聞記事には私は誤まりがあると思う。それの事実によって御質疑下すったのに、答えるときにまた政府委員、私等に欠陥があってはならないと思いますから、なるべくこの程度で、一応質問を後に延ばしていただきたい。何しろ重大でございますか ら、お話を聞くに従って私は大きい責任を感じますので、お願いを申し上げます。
  31. 猪俣浩三

    猪俣委員 大臣の御趣旨、よくわかりますが、しかし、新聞に報道された、たとえば森島検事辞表を出した事実があるのかないか。森島検事法務省あるいは検事総長に上申書を出したというが、そういう事実があるのかないのか。森島検事辞表を出した原因はどこにあるのであるか。しかも森島検事の話として各新聞が伝えております。これはもうそう調査の必要もないことで、森島検事がかような話をしたのであるから、事実があったかないかはとうに法務省としてはおわかりになっているはずなんです。そこで、れは大臣なり次官なりでよろしゅうございますが、森島検事辞表を出したことは事実であるか。それから、森島検事辞表を出す前に法務省及び検察庁に対して上申書を出しておる、それに対して検察庁でも法務省でも全然何らの返事がない、そこで、もう法務省検察庁もたよりにならぬとして自分が辞表を出すようになった、これじゃ良心的な若手検事は生きる道はないとまで新聞に発表しておる。かような辞表を出した事実、及び辞表を出す前に牧野法相佐藤検事総長、井本法務省刑事局長に直訴状と書いてあります が、直訴状という名前もおかしいが、とにかく自分の心境を訴えた書面だろうと思うが、こういうものを一体出したかどうか、それを出したことに対して法務省はほったらかしておいたのであるかどうか、それを御答弁いただきたい。
  32. 岸本義廣

    岸本説明員 お答えいたします。御質問の上申書及び辞表、この二つの点は御承知の通り確かに出されておるのでございます。法務省に届きましたのは、今正確に日時は記憶いたしませんが、確かに二十二日か二十三日であっただろうと思います。法務省といたしましては、この上申書に基いてなお本件調査の必要ありと認めておりましたところ、一両日ならずして、二十四日突如森島検事辞表を出したという事実に接したのであります。そこで、法務省といたしましては、先ほどお答えいたしましたように、事はきわめて複雑であり、また急を要しますので、辞表を出したという事実を知ったその日の夜行で係官を京都調査のために派遣したような次第でございます。京都におきます調査の経過につきましては、これまた先ほど申し上げましたように、まだ十分な調査は完了いたしておりませんので、御質問森島検事辞表を出すに至った事情については、現段階についてはいまだつまびらかに申し上げることができない事情でございます。いずれこの点も一両日中に判明することと思います。とにもかくにも、本省といたしまして、この辞表を出したことに関連し、森島検事がなぜ急遽辞表を出したのか、その理由を究明することが、調査のために係官を派遣した大きな理由でもあるような次第で一両日中には真相を究明いたしまして御説明できると存じます。
  33. 細田綱吉

    細田委員 関連して。新聞の伝えるところによると、森島検事は、当時、村松証人に対して検事起訴事実を裏付けせられないようなことでは全検事の権威に関する、だから何でもかんでも法廷の供述をひっくり返すような供述を取れ、そのために逮捕状を執行できないようなことでどうするかというようなことを次席あるいは検事正から強引に迫られ、自分は最初反対であったが、上司から迫られたのでやむを得ずやったんだ、こういうことが報道されている。われわれ想像ですけれども森島検事はまだ若い。若いということは、言いかえれば正義感に燃えているということなんだ。必ずしも一様にはいかないが、この言葉は私は大体当たっていると思う。あなたは今その事情がつまびらかにならないと言うのだけれども、大体あなたの方の係官が行ったら森島検事のそうした心境はすぐわかるわけだ。行ったらすぐそうい事情はわからなくてはならない。一両日と言われるのだから、すぐではあろうけれども、どうもあなたの言葉はきわめて政治的なにおいが強い。大体、あなたの方にしても、先ほど猪俣委員警察庁の方に伺った答弁にしても、どうも何でもかんでもくさいものにふたをする——警察庁の御答弁はそうじゃなかったが、どうもそういう傾向が強い。私は、もう一両日待たなくても、こんなことは新聞に出ておるし、きのうきょうの問題じゃないので、わかっていなくちゃならぬと思う。一両日中にわかるというのはどういうわけなんです。係官が一両日中に帰ってくるからわかる、こういう御趣旨なんですか。あなたの方の調査が一両日中にわかるという理由はどういうことなんですか。その点をお伺いしたい。
  34. 岸本義廣

    岸本説明員 先ほども申し上げましたように、こちらから調査のために派遣いたしましたのは二人でございまして、一人の横井課長は昨夕帰りましたけれども、いま一人はまだ引き続き京都に残りまして調査を続けておるのでございます。きわめて複雑な事情もございますようで、横溝検事が帰りましてその資料を整理いたしませんことには正確な事情が判明しないという趣旨でございます。
  35. 古屋貞雄

    古屋委員 私も関連して二つだけ法務大臣にお答え願いたい。  御承知の通り刑事訴訟法の原則といたしましては当事者主義が原則でございますから、この当事者主義を理想的に運営しなければならぬ義務が係官にあると思う。ところが、御承知の通り起訴するまでには大体司法警察官並びに検事が一方的に起訴するあらゆる資料というものを集めておる。従って、今度公判にかかると、公判では弁護人の方から努めて被告の利益のための証拠を提出し、裁判所が十分にこれを聞いて、公平なる立場から御判断いただくということが原則なんです。ところが、実際の公判廷におきましては、非常に感情の強い検事さんが出てくると、自分の提出する資料あるいは起訴事実がこわれるような立場になりますると、非常に興奮されて、何でもかんでも証人はけしからぬというような態度をとられる。そうして、従来もそういう弊害がございましたけれども、相手方の基本人権の尊重に対する考慮が足りないと思う。従って、私は、今の制度から申しますならば、公判における一つの立証というものは、検事さんがおやりになったあとは十分に被告の立証を聞いていただくことが裁判所の態度であり、それをめちゃめちゃに攻撃をする検事態度というものは、自信のほどはありましょうけれども、よほどこれは考えなければいかぬと思う。従って、私が法務大臣に伺いたいのは、法務大臣態度、方針は、こういう現行刑事訴訟法の原則を非常に尊重されて、証言が多少自分たちの考えておることと食い違った場合でも、真実を発見する意味において喜んでこれを歓迎して、新たに積極的な正しい証言を十分にさせるという態度を、人権尊重の立場から、裁判の公平を期する上から、お持ちになることが私は係官の態度だと思う。また法務省の方針でなければならぬと思う。たまたま、さような立場から考えますと、本件はもちろん起訴の基本的な積み上げが間違っておったかもしれませんか、本件の最も重要な点は、この起訴を築き上げる基礎となるべき警察調べ検事調べに相当責めるべき点があろうと思いますけれども、私が今承わりたいもっと大事なことは、誤判や人違いのありますことが、公判廷における証人を脅かすということから生ずるという点です。私は、日本人であるならばいかなる人も証言に出てくる義務がある、事実の真相をそのまま証言する義務があると思う。その正しい証言をした者を、起訴事実に反する、そういうものに不利益だという立場において、自分の起訴を維持するためにきゅうきゅうとして、これをけしからぬ、黙っておれ、そして偽証調べる、こういう態度がおおむね検事に多いのです。私は本件ではこの点が一番重要だと思う。それで、本件にはこれが典型的に現われて参りましたが、これは本件だけではございません。私どもはしばしば法廷で検事と争いをする。検事は公けの正義の立場に立って国権の正しい運用に従事すべき義務があると思いますから、自分たち起訴したことであっても、その起訴が間違ってくずれる立場になっても、これは協力すべき一つの態度をとらなければいかぬと思う。本件のごときは、それとは逆に、かような証人参考人真実証言をしたのに対して、勾留をして、供述を改めさせる、証言を改めさせるという態度をとっておる。私どもが今まで経験したところによりますと、全検事さんがそういう考えを持たなくても、係検事が、黒星になることをおそれて、ひそかに証人の邸宅を訪れ、面会して、それとなく威圧した例がたくさんあるのです。私どもはこれを法廷に資料を出して裁判所に申し入れますけれども、こういう事例はたくさんあるのです。従って、法務大臣から厳重に法務省態度並びに方針について、しかも検事の心がまえについてのやかましい御監督を願わなければならぬと思うのでありますが、その点についての法務大臣の御決意を承わりたいと思います。
  36. 牧野良三

    牧野国務大臣 古屋委員、全くあなたのおっしゃる通りで、心持はよくわかります。あなたのお考え通りのことを第一回の検事長会以来常に繰り返して参りましたから、法務省管下における検察行政の方針は一変すると思います。御期待をいただきたい。
  37. 古屋貞雄

    古屋委員 法務大臣から御決意を承わりまして、私ども非常にけっこうだと思うのですが、どうか実践をしていただくように要望いたしたいのです。  もう一つは、ただいま同僚の委員から御質問がありましたが、森島検事がこの真相を一番よく知っているわけですが、森島検事は、村松証人逮捕する気持がなかったけれども泉次席検事からいろいろ言われて逮捕したというようなことを御自分で新聞に発表しているのです。こういう事実があったといたしまするならば、ただいま法務大臣がお約束されたことに著しく反すると思う。これは重大な問題である。むしろ、公判廷における真実発見を妨害することを、この事件の内容をも知らずに第三者の立場から強要しているという、このことこそ重大な問題だと思う。承わりますと、森島検事の懲戒の問題が新聞に出ておりますが、むしろ、森島検事に、真相を知らない、監督の立場における泉次席検事がこういうことを実際やったとするならば、これは重大な問題だと思う。もしこういう事実があったならば、法務大臣はどういう御決意を持たれるか、承わりたい。
  38. 牧野良三

    牧野国務大臣 先ほど猪俣委員に申し上げた通り、なまの事件で、今取調べ中で、今の御質問なんかに簡単に答弁しては私の責任問題が起きるから、どうかもう少し預けておいてもらいたい。数日後にはっきりしたことを申し上げます。
  39. 猪俣浩三

    猪俣委員 私がこの前の委員会のときに法務省にお願いしておきました、過去三年間にわたっての起訴された事実が無罪の判決になった事件概要、及び公判廷における弁護人申請の証人偽証罪で取り調べたような事実があったとするならばその概要、この御報告をお願いしておきましたが、本日できましたらお願いしたいと思うのですが、いかがでありますか。
  40. 長戸寛美

    長戸政府委員 ただいまお話しの件につきましては、全国に照会いたしまして取り寄せ中でございますので、いまちょっとお待ち願いたいと思います。
  41. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから、なお私は宿題として申し上げておきますので、これを御調査願って、後刻の法務委員会で私が質問いたしますから御答弁願いたいことは、四月二十四日の信濃毎日新聞に報道せられたことであります。それは、長野の地方公安調査庁の調査官がある機密書類を東京で紛失した。それを拾った池田哲子という二十一才の女の人が、長野へ行ってその機密書類を公安調査庁に届けた。その際に骨折り賃十万円くれと言った。それを警察及び検察庁では恐喝未遂としてこの婦人を逮捕監禁したという事実であります。罪名は恐喝未遂であります。これも私は不可思議な事件だと思うのであって、たとい十万円を報酬としてくれと言っても、いわゆる警察のお歴々と公安調査庁のお歴々が恐喝されたということは、一体今の刑事訴訟法上どうなのであるか。恐喝未遂という罪名でこれを逮捕した。今法務大臣が言われたように、新聞の報道それ自体は誤伝があるかも存じませんが、これは信濃毎日のトッ三段抜きの大記事として報道されておる。これは一体法務省のお耳に入っているかどうか。私はこれを明らかにしていただきたい。新聞に報道されたままでは何としても割り切れません。  今法務大臣新聞記事とおっしゃるけれども、われわれは新聞記事を重大視するのです。なぜなら、新聞というのは何百万の読者に訴えるのです。それがいいことであろうが悪いことであろうが、われわれ議員としては国民にかわってその疑惑当局者に解きほぐしてもらい、ないことならないということを国民に示してもらわなければならぬ。ですから、新聞記事なるがゆえになおさら私どもはその真否を尋ねるのです。新聞記事が間違っておるなら、やはりこれは法務省なり検察官に対して釈明の機会をわれわれが与えることになるし、ほんとうのことであるならば、それに対して強い反省をしてもらわなければならぬ。ですから、新聞記事を基礎にしてわれわれが質問するということは議員として当然のことでありまするがゆえに、ただそれを乱用しないでくれという御意味であろうと思いまするから、一応納得いたしますけれども新聞記事新聞記事と言われると、私たち質問がなくなる。なぜならば、この次の質問も、四月十五日の日本経済新聞に出ておる記事で、神田の警察署の警官が、浅井松代という女の人に暴行傷害を与えたという事件であります。これは、浅井松代の夫が飲み過ぎてどこかの飲屋であばれて女給に暴行したということで逮捕、監禁されておった際に、妻の松代さんがその女給さんに、うちの亭主がやったんじゃないということを一つ明らかにしてくれと頼んだことを警察で聞き知りまして、松代さんが差し入れか何かで面会に行ったのをつかまえて、なぐる、けるをやったという事件であります。  それから、三番目は、四月十五日の東京新聞に出ておるのです。八丈島における老婆殺し事件。これは、小崎勇という人が警察官の拷問によって、自分がしもせぬことをやったと自白してしまった、こういう事件であります。この真相。  それから、四番目には、最高裁判所で有罪の判決が確定した後に真犯人が自首したという事件。これは大阪地検に夫徳秀という人が自首して出た。そこで、判決が確定してから、前の有罪判決の間違っておったことがわかったということ。ここにも何らかの警察なり検察庁の落度があると思うのであります。これは、建造物侵入暴力行為事件として大阪の地検で調べられ、そして犯人は李達信という者が起訴せられて、これの有罪判決が確定したのですが、真犯人として夫徳秀という者が現われた。こういう事件。  いま一つは、福島県下に現われたことですが、共産党の人たちの住宅の壁にマイクを塗り込んで、彼らのしゃべることを聞き取ったという事件。これも新聞に報道されておる事件であります。こういう事実があったのかないのか、相当われわれ私人の自由に対しまする一つの圧迫となる。われわれの部屋にいつ何どき警察の者がそこらへ隠密にマイクか何かを据えつけてわれわれの話の内容をみな聞かれるというようなことになるかもしれぬ。そんなことになったら市民が安心して自分の住宅に住むことができません。これは人権じゅうりんだ。こういう事実について一つ御調査いただきたい、  もう法務省の方ではおわかりになっていると思いますが、総じてかような検察、警察における人心の弛緩が見られる。ここで上層部の人たちが一大決意を持って徹底的に調査なさらぬと、日本の警察及び検察の行政は私は乱れると思います。そうして憲法に保障せられましたる基本的人権の抑圧が始まり、自来反動的な風潮が現われてきておるのでありますが、司法部だけは私は堅実でありたいことを心から念願しまするがゆえに、かような質問をするのであります。そこで、これは次回でけっこうですから、先ほどお尋ねいたしました無罪の判決の統計と、これらの事件に対する御調査を今からしていただいて、そうして詳細に当委員会報告していただきたいと思います。
  42. 池田清志

  43. 木原津與志

    木原委員 京都の五番町事件についてお尋ねするのですが、問題がちょっと飛んだような感がありますが、もう一回この五番町事件にさかのぼって  二、三点お伺いしたいと思います。  先ほどから猪俣委員及び古屋委員から触れられたことと多少重複する点があると思いますが、私は特にこの公判廷における証人証言偽証として逮捕して調べたという点について法務大臣の見解をお聞きしたいと思うのであります。この五番町の事件はわれわれにとっては人権問題として非常に重要な問題でありますが、事件の当初警察並びに検察官が人違いで事実を誤認してやったという点につきましては、これは見方によってあるいは人間のやることだがらときどきこういった重大な間違いを引き起すであろうということも言えるのでありまして、この点は、不幸な事件ではありますが、私どもが追及しなければならぬ中にも、おのずから人間のあやまちとして私どもはある程度恕すべき点もあるかと思うのでございますが、ただ、私どもが絶対に許すべからずと思うことは、公判の審理で弁護人証人として申請したその証人が、裁判官の真実義務の諭旨に基いて絶対真実を述べておるのに対して、検事がいたずらに自分の起訴した公訴を維持するというような点にはやったのかどうか知りませんが、公判の証言が終るや直ちにその証人検事廷に呼びつけ、そうしてこれに逮捕状を執行してこの証言の真否を追及するという態度が、本件における一番重大な問題であり、しかも検察の責任者として猛省を促したいと思う点でございます。先ほど大臣から、自分としてこの事件についての取調べの心構えは十分訓辞をしておるから、いましばらく時日の経過を待ってもらいたいというお話でありましたが、私どももそれを了といたしますが、先ほど猪俣委員からもお話がありましたように、こういったような、検事が公判の証人証言が終るとすぐ引っぱっていって、そして偽証というような名目で取り調べるというようなことは従来も間々あったことで、われわれもそれを何回か経験いたしております。ところが、本件のように、身柄を逮捕して、うら若いまだ二十才を越したばかりの若い証人を身柄を逮捕して取調べをした、お前はうそを言っているといって身柄を勾留して追及をしたという、こういうふうな例は、私は全国にあまり例のないことじゃないかと思う。こういうようなことをやっておったのでは、これはもう日本の全検察官の信用というものはゼロだ、こういうようなことをほうっておいたのでは、これは裁判の根本がこわれてしまう重大な問題だと私は思うのです。こういうようなことは、少くとも偽証罪という刑法の規定がある以上、一応検事が職権によって調べるということは法的に根拠のあることかもしれませんが、偽証罪の規定による捜査ということをこういうように乱用されて、公判廷から直ちに証人を引っぱっていく、そうして逮捕するというようなことをやることは、これは裁判の問題のみでなく根本的な人間の自由をじゅうりんした大きな問題だと思う。そこで、こういうようなことをやったのを機会にして、一片の戒告あるいは大臣の訓令だけでは、こんな訓令はそのときどきで終ってしまうのです。ですから、一つこれを機会として、何らか法的に、公判廷から直ちに偽証逮捕する、あるいはこれを調べるというようなことができないような法的措置を——大臣は法曹界の大先輩でございますし、こういうような問題についての実情をよく知っておられる方でございます。幸いこういう先輩を日本の法曹の最高の責任者として迎えたことでございますから、この事件をきっかけにして、偽証罪で公判廷からすぐに逮捕して調べるというようなことを禁ずる法律的な何らかの措置を一つやっていただきたいのでございますが、それに対する大臣の御見解をお伺いしたい。
  44. 牧野良三

    牧野国務大臣 全く御質疑を受けるだけでも心苦しい次第でございます。さような、公判廷から検事が自分の意思こ沿わない証人の供述があったからといって引き立てるというような事案がありましたとすれば、容易ならぬことであります。本件では直ちに連れていったのではないらしいけれども、そんなことで弁解のできる事件ではございません。申しわけないと思います。何らかの善後措置に最善を尽したいと思います。
  45. 木原津與志

    木原委員 その最善の措置の中に、今私が要望するように、これをただ一片の大臣訓令、そういうことをしちゃいかぬという訓令のようなことでは、それはもう何回もこういう訓令は今までにあったものと思うのですが、あってもなおかつその跡を断たない現状であり、将来に対する大きな保障をするという意味から、警察官あるいは検察官が拘束を受けるような法的な措置を講じていただくことはできないものか、その点の大臣の御決意をお聞きしたい。たとえば、偽証罪の取調べについては告訴を待ってこれをやるというか、あるいは公判廷証言について特別な捜査の機関を置くというか、そういうふうに、直ちに逮捕される、あるいは証言直後に取調べを受けるというようなことのないような法的措置をやっていただけるかどうか、やる御意思があるかどうか、その点、いま一回お聞きしたい。
  46. 牧野良三

    牧野国務大臣 ただいまの御意見については、非常にむずかしい立法措置だと思いますので、ちょっとお答えしにくいのでありますけれども、本日猪俣さんからの御質疑といい、古屋さん、木原さん、こういう質疑新聞その他によって全国へ伝わることだけでも、立法措置以上の大きい影響があると思います。一つお知恵を拝借して、何かいい適当な立法措置をすることができるようでありましたら、考えたい思いますが、どうも立法としてはむずかしいんじゃないかと思うのです。というのは、日本にはこういうことはあまりなかったのが、アメリカが、むやみに、あの偽証をやっつけろ、やっつけろと言ってから、悪い風習が出たのじゃないかと思うのです。(「もとからあったよ」と呼ぶ者あり)あったですけれども、激しくなったのじゃないかと思うのです。立法措置のことは別の機会に御相談をしましょう。いいことがあればやりましょうや。
  47. 池田清志

    池田(清)委員長代理 ただいま参議院から本会議に法務大臣の出席を要求されておりますので、法務大臣の退席をお認めいただきたいと思います。法務大臣におかれましては、各委員から根本問題についての重大な質問が残っておりますから、次回必ず御出席をお願い申し上げます。
  48. 牧野良三

    牧野国務大臣 お許しを請います。
  49. 細田綱吉

    細田委員 ちょっと大臣に一分間だけ、今の問題とは離れるかと思いますが……。聞いていると胸のすくような御答弁をされるのだが、大臣はもう何回もお聞きになってるが、堂森君の細君の問題です。この前の法務委員会で要求した、検察庁の堂森一枝さんに対する取調べの調書、並びにそれを援用されての一審、二審の判決の謄本——これは最高裁で審理中ですから謄本でなくちゃむずかしいが、そういうものをまだ御提出にならない。まことに申しわけない、ほんとうにお気の毒だと法務大臣は胸のすくような答弁をされるが、さっぱりされない。御承知のように、堂森君の一審、二審の判決に対して、政治的に圧迫があるという印象を与えてはいやだからということで、あのときは私たちは押えて、ことさらに三審にいくまで待ったような謙譲な態度をとっている。そういうわけですから、資料理事会であえて正式に要求しなくても、この委員会を通じて要求しているのですから、一つそういうものを出していただきたい。まだ今もって何も出ていない。答弁だけじゃなくて、胸のすくようなふうにわれわれにも感じさせていただきたい、こういうふうにお願をいたします。
  50. 牧野良三

    牧野国務大臣 大へん怠慢でございました。堂森さんには私は別席で頭を下げて断わってあります。資料の点は当局にお願いしておきます。
  51. 池田清志

    池田(清)委員長代理 それでは法務大臣の退席をお認め願います。
  52. 木原津與志

    木原委員 それでは政府委員の方に一点だけお伺いいたします。新聞の報道によりますると、この釈放した四人の少年を、けんかしたことをもって暴力行為処罰に関する法律違反というので、さらにこれを取調べをしておられるということを聞いておりますが、そういう事実がありますか。
  53. 長戸寛美

    長戸政府委員 これまでの調査によりますれば、この四少年のうち三名は、けんかと傷害致死、いわゆる暴力行為傷害致死のほかに、窃盗、恐喝、暴行等の犯罪もございまして、それらのものを一括して起訴いたしておるわけでございまして、事後においてけんかの点を特に取り上げたという点はないと思っております。
  54. 木原津與志

    木原委員 そうすると、けんかをしたというか、刺されたあとで被害者をたたいたというような事実があったようでありますが、その点については不問に付されるわけですね。
  55. 長戸寛美

    長戸政府委員 これは、起訴といたしましては、けんかをして被害者の木下治という者をなぐったりけったりし、その間に傷害致死があった、これを暴力行為傷害致死起訴いたしておるわけでございます。傷害致死真犯人が出て参ったというふうな場合におきましては、これはやかましい刑法理論——これは皆さんの方が御専門でございますが、理論から申せば、むずかしい点もございますけれども傷害致死について真犯人が出た場合には、二色のやり方があると思うのでございます。一つは、四少年に対する公訴の取り消しという問題であろうと思う。もう一つは、これは十回の公判を経ておりますので、真犯人が出たということ、そしてまたその真犯人と目せられる者につきまして別に起訴したということを公判廷において明らかにして、裁判所の判断にゆだねる、かような点があろうかと思います。さらには、傷害致死の罪がないならば家庭裁判所から逆送をしなかったであろうというふうな点がございますならば、裁判所において少年法の五十五条にのっとってさらに家庭裁判所に移送する、こういうふうなこともあろうかと思っております。
  56. 木原津與志

    木原委員 私はまだ大臣に答弁を求めたいので、きょうは一応これで打ち切ります。
  57. 池田清志

  58. 細田綱吉

    細田委員 これは、現在統計ができているかどうか、また、できておっても、資料を御持参でなかったら、あとで提出を願、いたいと思うのですが、偽証罪としての起訴件数は現在まで何件ぐらい年々あるか、それから、特にそのうちで公判廷から引っぱっていって逮捕状を執行したという事件偽証罪のうちで類別されておるかどうか、その点を一つ……。
  59. 長戸寛美

    長戸政府委員 これは先ほど猪俣委員にもおわびを申し上げたのでございますが、さきに御要求がありまして、偽証として身柄を拘束したというふうな案件の起訴、不起訴、これを全国に照会いたしまして集計しておるわけでございますが、これがまだ少し集まらないのがございまして、しばらくお待ちを願いたいと思うのでございます。それから、その場ですぐ引っぱった、こういうふうなことは統計をとっておりませんので、ちょっとわかりかねるかと思います。
  60. 細田綱吉

    細田委員 これは請求しておきますが、公判廷でそのまま引っぱったというのもこれも一つ御調査願いたい。たとえば本件では証人村松泰子、これは起訴にならなかったと思うのだが、とにかく、そういうふうに公判廷で引っぱって調べたというような件数も一つお調べの上御報告を願いたい。
  61. 長戸寛美

    長戸政府委員 この横井刑事課長報告書にございますように、本件につきましては昨年の十一月十七日の公判におきまして佐藤和代なる証人証言があり、その際にも検事としては若干の疑義を持ったようでありますが、特にさしたることもないというのでそのままにいたしました。ところが、本年の一月十六日にいわゆる村松証人証言があったわけであります。その後にこの佐藤証人を在宅で出頭を求めて調べましてその自供と申しますか、ありました後に、二月二十四日になりまして西村なる者を偽証教唆として逮捕し、さらに三月二日に至りまして村松逮捕して即日釈放した、こういう経緯になっております。従いまして、本件は、公判廷から直ちに引っぱった、こういう案件ではないわけでございます。ただ、今お話しの公判廷からすぐ引っぱった計数というのは、正確なものはとてもとれないというふうに考えておりますが、一応調査いたします。
  62. 細田綱吉

    細田委員 岸本次次官に伺いたいのですが、検事は、正式に無罪を公判廷で出すと、かなり成績に——特に本件のような殺人というようなでかい事件だと、成績に関係しますか。
  63. 岸本義廣

    岸本説明員 お答えいたしますが、従前はよく存じませんけれども、最近におきましては、さようなことはまずございません。絶対にないと言っても差しつかえないと存じます。
  64. 細田綱吉

    細田委員 それでは、最高検から全国の検事に、なるべく無罪のおそれのあるような事件起訴しないようにというような、たしかそういう趣旨の通牒が行っておる。これは、ただいまあなたの言うように、全然成績に関係しないというようには、われわれはどうもとれない。これは、だれが検事をやっておっても、好きで、無罪になるであろうと思って起訴する人はありはしませんよ。特にそういう通牒を出すということは、かなり成績に影響すると見て差しつかえない。私は、検事は国家の代表者として起訴者になり、国民の一人として、お前、無罪になってよかった、おれは黒だと思ったが、白でよかったなと言うような、大らかな気持で法律事務を担当してもらいたい。ところが、成績に関係するから、本件のような無理が起きてくる。これは、最高検の通牒は遺憾ながらあなたの今言われたようなことと逆な印象を一線の検事に強く与えておる。この点について御感想を伺いたいと思います。
  65. 岸本義廣

    岸本説明員 御承知の通り検事のいわゆる検察事務は適正妥当でなければなりませんので、最高検から全国の検察庁に対してさような趣旨の通牒をいたしておりまするならば、——おそらくいたしておると存じます。それはもっぱら検察事務の適正妥当な運営をはかるようにという趣旨で出しているものと考える次第であります。もっとも、数年前から最高検察庁においては無罪事件の審査というのをやったことがございます。なぜ無罪になったかその理由を検討するのがこの審査の目的でございまして、目標とするところは、やはり検察事務の適正妥当な運営に資する一つの資料を得るためであったのであります。かようなこともございまして、最高検察庁の通牒なるものは、今申し上げまするように、もっぱら検察権行使の適正妥当を期する意味でやっているものと私ども解釈いたしております。
  66. 細田綱吉

    細田委員 あなたのお気持、解釈はよくわかるのですが、一線の検事の印象は私が今言った通りであります。自分の扱った事件が無罪になっていいと思って起訴するような検事は一人もない。そういう軽卒な人は一人も全国にいないと思う。それでもなおかつこういう通牒が出るということは、何といっても、私が言うように、上司に対して成績が悪くなるという印象を与えるのは無理もない。これに対して何か真意を伝えるような通牒を出す必要がある。この点に対しての御見解を伺いたい。
  67. 岸本義廣

    岸本説明員 ただいま御指摘の最高検察庁の無罪に関する通牒の内容を実はつまびらかにいたしませんので、その通牒がいかなる趣旨で出されておるかということについては、その通牒自体を見た上でないとちょっと申し上げられません。しかしながら、抽象的、一般的に申し上げまして、おそらく私がただいま申し上げたような趣意からだろうと存ずるのであります。しかるに、この通牒を受け取った全国の検察官に自己の成績に関するからといったような心理的な強制を与えるようでは相ならぬと存ずるのでありまして、御承知のように、法務省におきましては検察長官会議あるいは何々係官検事の会議といったような各種の会議を持ちまして検察運営について常に検討を加えておるのでありますが、さような機会を利用いたしまして検察権の行使の適正妥当でなければならないことを常に訓辞、指示いたしておるような次第でございますが、全国の検察官においてさような無罪通牒について心理的強制を受けることのないよう、こういうような会議の機会に今後指示あるいは注意も出すつもりで現在考えております。
  68. 細田綱吉

    細田委員 警察庁に伺うのですが、大きい事件をやると現在刑事に賞与が出る。これは星かせぎということでかなり弊害がある。先ほど、猪俣委員でしたか、あるいは古屋委員でしたか、証人のような場合はあらかじめ検察庁だけでなくて警察方面からもいろいろ牽制があるという事例を申された。どうも、警察がいたずらに星をかせぐことに狂奔する傾向が一部にあるのは、その賞与ということがあずかって力があると思うのですが、この点の御感想はいかがですか。
  69. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 よく、件数主義と申しまして、あの刑事は何件やった、何とか刑事はあまり件数をやらぬ、こういう雰囲気がありまして、そういう弊害が顕者に出ておるということにつきましては全く同感であります。そういうことがあってはならない。件数主義の弊害という点を私ども十分認識いたしまして、私どもが認識するだけでは意味がありませんから、各府県の警察幹部、ことに警察の監理監督の職にある人間が件数主義でものを見る、たとえば警察官を人格者として見ないで数字で見るという考え方がまず第一よくない、こういう根本思想に基きまして、件数主義を改める、これも徹底してやっております。また、賞与の問題でございますが、警察官外の公務員でもみな同様だと思いますけれども、非違があれば懲戒すべきだ、大へんほめたことをやれば表彰すべきだろう、これは、信賞必罰ということで、こういう組織を運用する者としては当然かと思います。その場合に、罰すべきは罰する、これは懲戒罰でございます。そして、賞の方は、形式的に件数とか事件とかいうことでなしに、内容的に、その人がほんとうに苦労してこういうふうにして公衆の福祉のためにやったという事案について賞与をする。その仕方ですが、これまた、その判定の標準を誤まりますならば、細田委員の御指摘のような弊害があることは十分わかりますので、信賞必罰で、賞もやり罰しもいたしますが、その信賞の方式につきましては、細田委員の御注意の点を十分考えましてやっているつもりでございます。さらに一そうこの点は徹底して参りたいと思っております。
  70. 細田綱吉

    細田委員 自余の点は法務大臣出席のときに譲ります。
  71. 池田清志

    池田(清)委員長代理 ほかに御質疑はございませんか。——なければ、今日はこの程度で散会いたします。    午後一時十九分散会