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内田政府委員 ちょっと前からのいきさつを簡単に申し上げます。
さかのぼりまして一昨年のことでございますが、鳩山内閣ができましてから、一時
日韓の間が少くとも感情的にちょっとやわらいだようなときがございまして、そのとき、先ほど
政務次官が先例としておられますごとく、しかしこれは私が先ほどの御
答弁で申し上げましたように実は
内容が違うのでありますが、ともかくその当時退令に付しておった者の標準から見ますとはるかに軽い
人たちが収客されておった事実がございますので、それを仮放免の形で
釈放し、他方
密入国者の
引き取りが開始された。ところが、そのころから
向うは漁民を帰さないということが始まりまして、その間にほかのいろいろな
事情から、また
日韓の
関係が五月ごろから悪化して参りました。その当時も、私
どもは、やがてこれは
向うで、人質のごとく、抑留しておる
日本人漁夫と
大村の問題をひっかけて参るだろうということを予想いたしましたので、
外務省に対しまして、これに乗っては困るということを実は申し入れをいたしたのでございます。その
理由は、もう高瀬
委員の御質問で御指摘になっておる
通りの、全く同じことを私
どもは外務当局に申し入れてあるわけでございます。それで、外務当局はわれわれの申し入れに基きましてどれだけの外交折衝をやってくれましたか、それはちょっと私からははっきり申し上げられないのでございますが、外務当局の説明によりますと、それはいろいろやったんだけれ
ども、
韓国側がどうしても言うことを聞かない、だから何とか
大村の問題を考えてくれ、こういうようなことで、昨年の夏以来数度にわたり領事館を交えました会議もいたしましたし、また私とアジア局長との会議のようなこともひんばんに行なって参りました。
それで、
外務省に対しまして、先ほ
ども申しましたように、ひっかけられるのは困るという申し入れをしたのみならず、現実に
韓国側がひっかけて参りました以後におきまして、われわれが外務当局に申し入れをいたしました点は、ただこの問題だけではないのでありまして、一体、今のような
韓国のやり方では、自分の
主張を通すためには、いつでも
日本人漁夫を引っぱっていけば
日本側は人質外交にひっかかって言うことを聞く、こういうことを繰り返されたのでは、この問題は一時解決したがごとくに見えても、ちっとも解決にならぬじゃないか、そこで、われわれとしましては、将来こういう
刑罰法令違反の悪質不良な
外国人をば退去させるようなことは、もうほかの問題にひっかけることなしに必ず
引き取るという
原則をはっきりしてもらいたいということが
一つと、もう
一つは、実際問問として、
李ラインを越えたというようなことで
日本人漁夫が幾らでもまた人質にとられる状態がそのまま続いたのでは困るから、
李ラインの問題を解決するか、あるいは、解決できないなら解決できないままで、実際上こういうことが起らないような事態を、何とかして、
国内的か何か存じませんが、考える、あるいは、
漁夫がつかまっても、今後はそれを人質にして何を言ってきても絶対に受け付けることのないような国策をはっきりしてもらいたい、こういうことをずっと申し入れもいたし、またそういうことで協議をして参ったのでございます。その点につきましてわれわれの努力が足りなかったかもしれませんが、われわれとしては、こういう事態の繰り返しがないようにということについては、何度も申し入れもし、協議もいたしたつもりでございますが、遺憾ながら、先ほど
政務次官からお話がございましたように、ともかく今般こういうことで一応
日韓関係の打開のために口火を切るから、
法務省の方も協力せいということでございますので、われわれといたしましては、先ほど来
政務次官、または次官がおっしゃっておりますように、ぎりぎりの線として、先ほど申しましたようなことでやっておるわけでございます。
法的な
根拠とおっしゃいますと、これは
入管令にともかく仮放免ができるという規定があるのでございます。それは、第五十四条に、
退去強制令書の発行を受けた者でもある
条件のもとに仮放免いたすことができるということになっておりますので、この条文を、これは正当な運用であるかどうかには私
ども自身も疑念を持っておりますが、しかし、ともかくこの条文をたてにいたしまして仮放免をいたす、そうして治安上害のないようにということにつきましてはできる限りの手当をいたしたい、そして、先ほどおっしゃいましたように、今後こういうことが繰り返されないように保障をとってもらって、
刑罰法令違反者が円滑に
送還されるならば、実は、私
ども限りの
角度から見ましても、法律的に申せばどうか知りませんが、
一つの取引としても十分に成り立つ取引ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。