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1956-04-06 第24回国会 衆議院 法務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月六日(金曜日)    午後二時四十一分開議  出席委員    委員長 高橋 禎一君    理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君    理事 高瀬  傳君 理事 福井 盛太君    理事 猪俣 浩三君       世耕 弘一君    林   博君       花村 四郎君    三木 武夫君       横井 太郎君    横川 重次君       菊地養之輔君    武藤運十郎君       志賀 義雄君  出席政府委員         警  視  長         (警察庁警備部         長)      山口 喜雄君         法務政務次官  松原 一彦君         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君         公安調査庁次長 高橋 一郎君  委員外出席者         法務事務官         (事務次官)  岸本 義廣君         検     事         (刑事局刑事課         長)      横井 大三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 四月三日  委員細田綱吉辞任につき、その補欠として風  見章君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員下川儀太郎辞任につき、その補欠として  片山哲君が議長指名委員に選任された。 同月六日  理事椎名隆君三月二十八日委員辞任につき、そ  の補欠として同君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  外国人出入国に関する件(大村収容所韓国  人問題)     —————————————
  2. 高橋禎一

    高橋委員長 これより法務委員会を開会いたします。  本日の日程に入る前に理事補欠選任についてお諮りいたします。すなわち、委員異動に伴い理事が一名欠員になっておりますので、理事椎名隆君を御指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高橋禎一

    高橋委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 高橋禎一

    高橋委員長 外国人出入国に関する件を議題とし、調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。猪俣浩三君。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 大村収容所収容せられておりまする韓国人——北鮮人も含んでありますが、この問題は日本の大きな政治問題にも相なっておるかと思うのであります。そこで、近ごろの新聞紙の伝うるところによれば、外務省及び法務省においてこの大村収容所収容韓国人処遇につきまして意見の相違があるかのごとく聞いておりますが、一体、法務省の理解するところの韓国人処遇問題というのはどういうことであって、そうして法務省はいかなるところに反対があるのであるか、その点を責任ある当局者から実相を御説明願いたいと思います。
  6. 松原一彦

    松原政府委員 お答え申し上げます。  先般来大村収容所の問題が日韓両国間における国交調整上の一環として取り上げられておりますことは御承知通りであります。この問題に対して、新聞等で言われております法務省外務省見解相違ということは、必ずしも私は見解相違ではないと思いますが、ただ、この取扱いに対して若干私ども要求があるのであります。その要求をいれてこの処理に当るということで私どもはただいま承認いたしておるのでありますから、そういう前提をもってお聞きを願いたいのであります。  日韓両国間における国交調整の問題として、ただいま一番問題になっておりますものは、日本側から言うと、韓国に抑留せられておりまする数百人に上る日本漁夫解放、帰還の問題であります。これは非常な関心事となっておりまして、昨年来たびたびこれを呼び戻すということで解放要求しておるのでありますが、今回、それが行われようといたしておる、こういうことが韓国代表者から日本の方に通ぜられた、こういうふうに承わりました。その条件として、第一は、日本側からは大村収容所収容せられている密入国者引き取ってくれということをかねて申しておるのでありますが、それを引き取ると申しているとのことであります。これは当然のことであります。第二には、かねて法務省側責任として大村収容所に現在収容してあります四百十九人の刑余人々釈放しろという向うからの要求が参っておるということであります。この点につきまして若干見解相違のあることは御承知通りであります。この点を明らかにしろという御質問でありますから申し上げます。  これは、筋から申せば、この人々は、出入国管理令によりまして、刑余人々であり、かつ比較的重い刑に処せられた人々でありますから、国際慣行に従ってこれは強制退去せしむべき条件人々であります。これを今回朝鮮側に抑留せられております日本漁夫との交換条件として釈放するということについて、法務省の側においては一応の疑義を持ちます。何ゆえに釈放しなければならないか。これに対しまして、外務省の方では、国交調整の必要上、先方においてもかねての要求であり、諸般の事情もあることであるからして、一応この際釈放することに同意してほしい、こう言うのであります。それは必ずしも同意せられない条件ではございません。と申しますのは、現に今日までも、適当なる保護団体等があり、身元保証する者があり、自由意思をもって将来帰るということの保証のついた者等釈放しておる事実もあるのでありますから、必ずしも応じられないことはございませんし、現に昨年は非公式ではありますけれども少数のものならば若干解放するという下話もいたしたということを私も聞いたのでございます。さような意味におきまして、応じてもよろしいが、ここに二つ条件がある。一つは、こういう人々国籍が不明だからではない、国籍はどこまでも朝鮮にある、この国籍をこの際はっきりと承認してほしい、国籍には疑義がないということをば明らかにしてほしい。第二は、この国交調整が行われたならば、今後は国際慣行に従ってかような刑余人々はその強制退去を受け入れて、韓国においても引き取るということをばこの際明らかにしてほしい。この二つはぜひとも今回の日韓間における問題解決の際に条件としてお取り上げを願いたいということを申しておるのであります。これに対しまして、外務省の側では、それは極力努力する、その方向に向ってわれわれは話を進めるということでございますから、私どもの方でもそれより以上の要求はいたしておりません。それができれば大局の上から見てまことにけっこうだと考えている次第でございます。  以上お答え申し上げます。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、結局、密入国者先方引き取る、しかし、刑罰に処せられた者について当方で強制送還をしようとする者に対しては、強制送還を拒んで、内地釈放せよと言う、そこで、法務省としては、それら特別な事情のある者、すなわち釈放しても保証人があったり保護団体引き取ったりして責任明かな者はいいけれども、しからざる者についてば韓国引き取ってもらいたい、それから、いずれにしてもこれは朝鮮国籍のある者で日本人ではないということを認めてもらいたいという主張をなされておる、その点について外務者でも極力それは主張してみるという話であるという御答弁に承わったのですが、それでよろしいかどうか。くどいようですが、もう一ぺん御答弁いだきたい。
  8. 内田藤雄

    内田政府委員 ただいまの政府次官の御答弁を補足いたしながら、前からのいきさつをちょっと簡単に申し上げたいと思います。  これは、ずっとさかのぼりますと、はなはだ古いことになりますが、実は、講和条約発効前までは、戦前からおりました朝鮮人と申しますか韓人と申しますか、そういう人々強制退去に基く送還というのは円滑に行われて参ったのでございます。ただいま政務次官は限定なさいませんでしたが、実は、問題になっておりますのは、あくまで戦前から日本に居住しておる朝鮮人ということが問題になっておるのでございまして、終戦後入国した朝鮮人は問題になっておらないのであるということで自後の話をスタートいたしたいのでございます。  戦前からおりました朝鮮人につきましても、ただいま申し上げましたように、講和条約発効までは円滑に行われて参りました。ちょっと申し落しましたが、現に、二回にわたる日韓会談におきましても、国籍の問題につきましては、相互の了解としては内容的にはもう明らかになっておって、ただ、韓国側では、韓国独立と同時にすでに国籍を回復したという主張をいたし、日本側では、それではまだ足りないので、一般約に韓国独立が認められた状態、つまり、その当時予想されました講和条約発効によってその効力が発生する、それまではその講和条約発効をもって韓国国籍を取得すると予想せられる人である、というところで見解相違がございました以外、実質的な考え方には双方の了解に食い違いはなかったものであるとわれわれは了解いたしておるのでございます。そうして、現に、ただいま申しましたように、その送還引き取りも行われて参りました。ところが、講和条約発効いたしましてから、向うでは、この人々国籍の問題であるか処遇の問題であるのか、はっきりいたさないのでございますが、いずれにしても戦前からおる者についての引き取りを拒否して参りまして、そこから問題が発生して参ったのでございます。  それで、先ほど政務次官も、ある者について過去において釈放したとおっしゃいますが、それは事実その通りでございます。しかし、それは、ただいま申したように、講和条約発効まで、この入管令を文字通り適用した者を向う引き取って参った実績があるものでございますから、その後われわれがこれはどうしても悪質な者だから帰そうと考えました者よりもはるかに軽い刑罰法命違反者退去強制対象者になっていたのでございます。そこで、その収容が非常に長期になりまするし、その後にわれわれがこれでは困るという角度でやっておりますもので非常に軽い者でありますから、これはいろいろな角度から釈放を考慮しなければならないと思いまして、一昨年の暮れから去年の春にかけまして漸次仮放免いたし、さらにその状況を見まして在留許可にいたしました。この許可は二百五十くらいあったと思います。  しかし、その人々と現在大村収容されている四百二十名ばかりの人たちとは内容が全然異なるのでございまして、内容が異なると申しますのは、その犯状、いろいろな状況がはるかに悪い人々でございます。前科一犯ないしは前科二犯で退命にしておりますような人々は、殺人であるとか、強盗であるとか、ヒロポンなんかを数万本も製造したとか、そういう非常な悪質者であり、あとは大体前科三犯以上で、おおむねその人の生活すべてを見まして犯罪の上に生活が成り立っていると認定せざるを得ないような人々なのでございます。  それで、われわれとしては、そういった事情の者を外国人である限り日本国外に追放するのは当然の主権行為であると考えております。しかも、韓国測の、過去のいろいろな事情、ことに戦争中に日本へ徴用で無理に連れてきた者もあるのではないかという主張ども、われわれとしては十分に顧虜しておるのでございまして、入管令の文字通りの適用をいたしますと、生活補助を受けている者でも退令にできる、あるいは一般に一年以上の刑を受けた者はすぐ退令にできる、あるいは精神病者とかはそれを理由にして退令ができる、こういうような条項がありますが、われわれはそれらの条項を文字通り発動いたしておらない。刑罰法令違反者につきましても、非に犯罪内容が悪質であるか、あるいはその度数が多くてその人の生活犯罪と密接に結びついているというような者を選んで退令にしておるのでありまして、割合から申しますならば、百人おりますうちで十五人か二十人程度の者をピック・アップして退令にしているという実情でございます。  従いまして、われわれは、こういう当然の主権行為として、入管令国内法根拠はもちろん、国際的にも当然認められたことをやろうとしておるのであって、これは政務次官もおっしゃいましたように、日本人漁夫を全く人質的にとっているのを帰してくれというのを帰さないというようなのとは全然話が違うわけであります。われわれが抑留とか収容とか申しますのは、そのこと自体を目的としてやっているのでも何でもないのでありまして、退去強制を確保せんがために収容しているのですから、向う引き取ると言うなら今日でも全員を釈放したいというのがわれわれの立場でありまして、これを同日に論じて交換ということは話の筋が通らないのである、こういうのがわれわれの考え方でございます。ただ、先ほど政務次官もおっしゃいましたように、大局的な関係でやむを得ざる妥協の線を考えておりますが、あくまで原則だけは確保してもらいたい、これが法務省考え方であります。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 今入国管理局から配布されました書類の一番末尾に、「昭和三十年十二月三十日現在外国人登録面にあらわれた国籍内容」として、朝鮮が四十三万三千七百九十三名、韓国十四万三千八百八十九名となっておりますが、大村収容されておる不法入国九百六十名、刑罰法令違反四百二十三名、こうなっておりますが、この刑罰法令違反四百二十三名というものは、やはり登録面では朝鮮人なり韓国人となって登録されておるものであるかどうか、この中へ含まれるのですか、この外ですか。
  10. 内田藤雄

    内田政府委員 それは、刑罰法令違反者の場合は一概に申せないのでございますが、正規に登録しておる者の方が数から言えば多いと思います。しかし、非常にしばしば犯罪と同時に登録をしておらぬ者も発見されます。そこで、この登録に必ず入っておるかいなかはちょっと申し上げかねるのでございますが、大体数から申せば登録しておる者の方が多いと申し上げて差しつかえないと思いますので、この数字の中に相当部分は含まれておる、こう申し上げていいと思います。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから、いま一つお尋ねいたしたいことは、この配布資料の中に北鮮帰国希望者八十八名となっておりますが、これは、不法入国九百六十名のうち、あるいは刑罰法令違反四百二十三名、その他五十二名、そのうち全部から八十八名という意味ですか。この関係はどうなっておるか。
  12. 内田藤雄

    内田政府委員 これは全部でありまして、この八十八名のうちに刑罰法令違反者は二十六名でございます。そのほかは、従いまして、不法入国して参りまして、今度帰されるならば北鮮希望する、こういう者でございます。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 外国人登録面に現われた北鮮人というものは非常に多くて四十三万三千七百九十三名からあるのですが、そこで、従って、この刑罰法令違反というもの、あるいは不法入国というものにも、ことに不法入国の中には北鮮の住民が非常に多いんじゃないかと思われますが、その割には北鮮帰国希望者というものは少いような気がするのです。そして、この不法入国あるいは刑罰法令違反、この人数のうち、一体北鮮系が何人で韓国系が何人であるか、そういう統計はございましょうか。
  14. 内田藤雄

    内田政府委員 まず、この外国人登録面に現われました国籍という問題からちょっと御説明いたしたいのでございますが、これは、本来当初の登録はみんな南鮮北鮮を区別いたさずに朝鮮という一本で参っておったのでございます。ところが、昭和二十五年ころと思いますが、間違いましたら後日訂正さしていただきますが、当時ミッションから総司令部に対しまして、韓国というのを認めろ、認めてくれという申し出がございまして、それに基いて登録の面に韓国というのを特に認める制度が行われ始めたのでございます。従いまして、特に自分ば韓国だということを言って参らなければ、自動的に朝鮮ということになっておるわけでございます。従いまして、この韓国というのを除いたものは積極的に北鮮を支持しておるのだ、こういう論理は実は成立しないのでございまして、特に韓国と言って参った者だけがこれになっておって、そのほかの者は、実は、北鮮支持もむろん入っておりましょうが、政治的にどちらもいやだとか、あるいは政治的には無関心であるとか、いろいろな者を全部含んだものがこの四十三万何がしという数字になっておるわけでございます。従いまして、この比例で即ほかの方に及んでいくということは、ちょっと論理的に成り立たないのでございますが、ここに四に掲げてございますように、本籍地の区別だけで申し上げますと、刑罰法令違反者の内訳は、南鮮が四百四で、北鮮が十九、こういうことになっております。これは、私、密入国ケースの方は実は統計はとっておりませんが、もちろん北鮮から南鮮へのがれてきて、さらに日本密入国したという例もむろんあろうかとは存じますが、大体申し上げますと、やはり南鮮の者の密入国が多いのではないかと思います。それから、居留民一般から申しましても、現在の朝鮮人口比例にほぼ似たような数字、つまり南鮮の方が二千百万、北鮮が約五百万ぐらいと思いますが、その程度でやはり内地におります人口比が成立しておるのではないかと考えております。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 私がそれをお尋ねします理由のものは、御存じのように朝鮮二つに分れております。李承晩韓国政府金日成北朝鮮というものは全く違った国に相なっておるのであります。そこで、北朝鮮人間日本へ入ってきたような者、そういう者を韓国政府引き渡すということに相なりますと、これは相当人道問題に相なるかと思うのでありますが、その辺の政府の見通しはいかようでありましょうか。たとえば、北朝鮮から密入国をしてきた、あるいは南朝鮮よりも少いかもしれませんが、そういう者がつかまって大村収容所におる、これを、たとえばこの北鮮帰国希望者八十八名、こういう者を韓国政府李承晩政府引き渡すということは、引き渡しても人道上差しつかえないものであるのかどうか、そういうことについての政府の御所見を承わりたいと思います。
  16. 内田藤雄

    内田政府委員 特に今回の交渉にからみましてそれをどうするかということは、まだ外務省などと協議いたしたことはございませんですが、しかし、従来の日本政府方針といたしまして、帰国希望の者につきましてはその希望を尊重するということを方針としてきめておると私は了解いたしております。従いまして、ただいまお話しのように、韓国側との外交交渉によってそういう原則を曲げてお説のように人道に反するようね取りきめをいたすようなことはなすべきではないと考えますし、またやらないであろうと私は考えます。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 法務省は広く人権擁護立場に立っておられるのであるが、そういうことについては外務省に何らかの希望要望は申し入れてあるのかないのか。それから、これは外務省がおいでにならぬとはっきりわからぬかもしれませんが、私ども先年中国に参りましたときに、北京で北鮮の大使に会って、なおまた私どもの同志が北鮮へ参りまして金日成首相とも会った。北朝鮮人間が足りないで困っておるから、帰りたい人はどんどんわれわれは帰ってもらいたいんだということをはっきり明言しておるのであります。これは法務省の所管じゃないので御答弁できないかも存じませんが、法務省としては、今私が申しましたように、北朝鮮人間韓国引き渡すようなことをしないようにということを外務省には別に要望をなさっておらぬのかどうか、これをお答え願います。
  18. 松原一彦

    松原政府委員 先般外相と私とそういう点についても話し合いはいたしております。そうして、現に釈放するというても、いや北の方に帰りたいのだと言う者についてばどうするかというようなことについては、これから委員もあげて個々のケースについて実際上に相談をし、希望せざる所に帰すというようなことはしない、こういうような話になっております。御了承願います。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから、私どもも、刑罰法令に違反したような者を、日本漁師引きかえに引き取るというのならわかるけれども国内釈放せいということは、どうも筋道が立たぬと思われるのです。それについては向うはどういう理由でそういう筋道の立たぬような主張をしているのであるか。日本漁師不法入国した者と取りかえるということすらおかしいと思うのでありますけれども、それは、向う向うとして、李ラインを越えたのだから不法入国者だという主張はあるかもしれませんが、日本刑罰法令に違反したために強制送還になるような者を内地釈放せよという、その根拠はどういうことからきておるのでありましょうか。法務省で承わっておる理由を聞かしていただきたい。
  20. 内田藤雄

    内田政府委員 これは実際私ども不可解としているところでございますので、どういう根拠かということは想像で申し上げるよりほかないのでございます。私どもがまた聞きあるいは向う人々と話しているときの片言隻句などから想像いたしますと、先ほどもちょっと申し上げましたように、日本へ居住することになった事情などから見まして、今度日本側がそれを一方的に退去させるというようなことは根拠がないというようなことを向うにおいては申しております。それからまた、一つ国籍の問題とからめてでございますが、これは、先ほど申し上げましたように、前の主張ではそういうことは何ら言っていなかったのでございますが、最近になりましてそういうことをちらほら申すようになったのでございまして、これはやはり、引き取りを拒むための言いがかりと申しますか、口実として言い出したのではないかと思うのでありますが、まだ日韓の間には基本条約ができていないから、その条約ができるまではある意味で不確定なんだ、こういうようなことを理由にしておるようでございます。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから、出入国管理令に関することですが、日本人にして外国に渡航したり、外国人にして日本に入ったりする、こういうことに対する監督権法務省入国管理局にあるようでありますが、実際問題として、日本人外国に出たい、あるいは中国なりソ連なりに行きたいという場合におきまして、なかなか旅券が下らず、また、向う人間日本へ入ってくるという場合におきましても、これはなかなかむずかしくて入ってこられない。ところが、アメリカ系フィリピンあたりは、もう有名なばくち打ちとして向う人名簿に載っておるような人間でもどんどん入ってくる。こういうところに、どうもわれわれ理解できないところがあるのです。そうして、日本人外国へ旅行するようなとき、あるいは外国人日本へ入るようなときに、何か公安調査庁身元調査するというようなことを聞いている。さようなことを公安調査庁はやっているのかどうか、やっておるとすれば、何人の命令で、いかなる法規に基いてさようなことをやっておるのであるか、それを一つ公安調査庁の方から御説明願いたいと思います。
  22. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 出入国に関連しまして、私どもの方が調査の結果についての資料を提供することはございますが、それは、特別にそのためにするのではなくして、私どもの本来の破防法に基く団体調査において知り得たことがあれば、その限度において主管の入国管理局なり外務省なりにその資料を提示するにとどまるのであります。特にそのために調査するということはございません。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 御存じのように、鳩山総理大臣ソ連友好関係を進めたいとしてやっていられる。うまくいかなかったが、中国とも何とかして親善関係を増進しようとして考えておられる。総理大臣がそういう意思であることは私どももある程度想像がつくのであります。私どもの方の鈴木委員長との会談におきましても、そういうことは想像つくのであります。ところが、どうも事務官僚がそれを妨害しているやに思われる点がある。たとえば、この間も話しましたけれども中国の総工会の首席である劉寧一君が入ってくるときでも、事務官僚は妨害して、危険人物のごとく報告している。結局軽井沢まで行って鳩山総理大臣の特別の計らいで入国をさせたというようなことがある。そこで、私どもの承わるところによれば、どうも法務省の次官級が中国あるいはソ連圏からの入国公安調査庁と一緒になって拒むような気勢であるというふうに承わる。先般、建築業者の何か協会がありまして、これが中国の建設業界から招待を受けて渡航するに際しましても、非常にめんどうで、それが結局、建設省でも外務省でもオーケーだのに、法務省に行ったところがつかえてしまったというのでありまして、どうも大体この旅券が法務省に行くとつかえてしまう。その中心が岸本次官だ、——松原政務次官からそうじゃないという話をこの間聞かせられまして、私どもはあるいは認識が違っていたのかもしれませんが、しかし、今度の二十八日かに出発したそれなどは、明白に、建設省、外務省みなオーケーをとってきたが、法務省だけがオーケーをとれぬ。そうして、次官会議というものにかけてそこで決定するのだが、その中心は法務省の岸本次官だ、この次官が首を振らないとだめだ、こういうことを聞く。そこで、一体、この旅券についての次官会議というものはどんなものか、また岸本次官は一体どういう立場でその次官会議に臨んでおられるのであるか。私どもは、今後ソ連とも中国とも、とにかく国交の回復は正式な政府の機関でなければできないといたしましても、ことに隣国の中国と民間人として自由に出入りいたしまして親交を厚うするということは、日本の百年の大計から見て何としても猶予すべからざることだと考えておる。しかるに、それをはばむがごとき行動をもしとるとするならば、それに対する十二分なる論理がおありであろうと思うのであって、まず岸本次官はどういう論理をもってさような態度に出られるか。松原政務次官がおっしゃったように、そうじゃないのだというなら、それまででありますが、どうもひんぴんとして昨年、一昨年あたりから岸本次官の名前が出てくる。ただごとじゃないと思うのです。何かあるのじゃなかろうか。そこで、一体この旅券は、旅券法というものに基準があって、それによってやるものであって、政府当局の認定でやるべきものではない。昔は警視庁に外事課というのがあって、政府の頭で、これは海外に出してもよろしい、悪いというようなことを勝手にきめておったが、その弊害を防ぐために旅券法という法律を作って、旅券を発行できない場合については一定の基準があったはずです。法定されているはずだ。その基準に合わぬ者さえ何か旅券を出ししぶるというような権限は政府にないはずなんです。それが、どういうわけか、私ども中国に行くときも実に骨を折った。とにかく七重のひざを八重に折らぬというと通らない。何かそういういやがらせをして快感をむさぼるわけでもなかろうと思うのだが、何がゆえに旅券をすなおに旅券法によって交付ができぬのであるか。しかも、法務省がそれをつかえさせるというのは、どういう権限をもって、どういう根拠でそういうことをなさるのであるか。ソ連圏や中国圏から来る者に対しても、公安調査庁と一体になって、そういう治安撹乱というようなことからお考えになるのかもしれませんが、そんなことはばかげた時代はずれの感覚だと思うのだが、岸本次官の御意見を承わりたいと思います。
  24. 岸本義廣

    ○岸本説明員 私がそういった場合に中心であるかのようねお説、はなはだ光栄に存ずるのでありますが、旅券を出す場合につきましては、法務省が意見は述べますけれども、最終の決定権は外務省にあるのでございまして、先ほど御引例になりました建設省関係の旅券の発付の問題は、もうお聞き及びかと存じまするが、すべて外務省から許可になっております。御承知のように、旅券法によりますると外務省が特定の条件の場合には法務省に協議をするということになっております関係上、法務省の意見を求めて参るのであります。さような場合には、外務省の事務当局、事務次官から、いわゆる事務次官会議にその意見を出されて、次官会議の承認のもとに拒否を決定するという運営の方法でありまして、法務省のみがいかなる場合においてもこれを拒否するということは、これは絶対にないのでありまして、おそらく何らかの誤解ではないかと考える次第であります。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 誤解であればまことに幸いですが、とにかく、中国、あるいはソ連を経由してヨーロッパに行く人の旅券はいつでもごたつくのであります。私はアメリカやその辺に出る旅券なんかについて相談を受けたことはないのですが、ことに中国なんか、当然行っていいような人たちまでがなかなかもって困難なんです。そのたびに実はあなたの名前が出る。そこで今御所見を承わっているのですが、どうか、他意ないことで、外務省にまかせてあることでありますならばけっこうなことでありますが、やたらに日本人に対して甲乙をつけて、あの人間は行ってもいい、あの人間は行かしてはならぬとかいうようなことを区別なさらぬで、公安調査庁なんかもよほど御注意なさらぬと、また昔の特高警察的になってしまいますから、やたらに日本人を色目で見て、あれは赤だ白だなどというばかげた時代はずれした考えを持たぬようにされたい。それから、行く先につきましても万邦一如であります。どこの国に行っても何も差しつかえない。何もそんなにけちけちする必要はない。日本人は大いに世界至るところに出て行くべきであり、ことに政府の正式な外交ができない国こそ、国民外交としてやって、政府が友好親善条約を結びやすいような素地を作るということが、かえって奨励すべきことではないかと私は思うのです。そういうことにつきまして、公安調査庁にそういう頭がないなら幸いでありますが、よほど御注意なさらぬと、また昔の姿が一般の反動勢力に乗じて出てくることを私どもはおそれる。何とぞ、法務省は、そんな旅券やその他のことにつきまして、渡航しようとする人から恨みの的にならぬように、頑迷固陋の巣だなんて言われることは法務省としての威信にも門係しますから、どうか、これは希望でありますが、あまりにたびたび岸本次官の名前が出ますので、あなたに御意見を承わったのです。ただいまの御意見を聞いて、さような考えがないならまことに仕合せだと私は思うのであります。
  26. 松原一彦

    松原政府委員 ただいまの御戒告はよく承わっておきます。ただ、官庁間相互において責任の塗り合いをする傾向があることは、私は非常によろしくないと思います。最終決定のところでその責任は全部負うべきものであって、ここがいけないとかあすこがいけないとか、塗り合いすべき性質のものでないと私は思います。これは政府の共同連帯の責任であり、その最終決定はその所管省がすべきものであって、それをば、いろいろ想像によって、どこが悪いここが悪いというようなことを言いふらされるということは、私は非常に迷惑であるということだけは申し上げておきます。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 今の松原政務次官の御意見は私ももっともだと思うのですが、おそらく、外務省あたりは、うるさいものだから、法務省で言うことを聞かぬものでしょうがないなんていうことを役人どもは言うのではないか、実に無責任な放言をしているのではないかと思う。そういうことは次官会議なんかでよく戒め合っていただきたい。そうしないと、私ども法務省を愛するがあまりに申し上げるのですが、法務省なるものがそういう頑迷固隔の巣みたいになる。法務省はやはり人権擁護立場もあり、そうして一種のそういう権力を持っておりますから威厳があるわけですが、それが頑迷固陋の方向に向けられると、これは大へんなことになる。だから、法務省はどこまでもやはり健全な中立的立場で臨んでもらいたい。昔は司法省と言ったのですが、法務省になってもその点は同じことだと思う。法をつかさどるという中立的立場で進んでいただきたい。私どもは、あまり左がかったやつに特におせじを言えの、右がかったやつにおせじを言えのという意味ではありませんが、司法省なんだから、外務省あたり、あるいは建設省あたりで法務省にみな責任をなすりつけるような言辞を弄することは、私ははなはだけしからぬと思う。私は岸本次官に相当怒りを持っておったのでありますが、松原政務次官の御説明を聞きまして、それは今日よくわかりましたので、どうかその線で進んでいただきたいと存じます。
  28. 高橋禎一

    高橋委員長 志賀君。
  29. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ただいま猪俣委員から質問がありましたことにつきまして、外務省の方は来ておりませんが、お尋ねいたします。  法務省では、重光外務大臣が先日交渉の結果、だいぶ意見があるようでありますが、先ほど松原政務次官は、朝鮮民主主義人民共和国に帰るか、大韓共和国に帰るか、本人の希望しないところには帰さないというふうに言われましたが、新聞によりますと、——もしこれが間違っていましたら、はっきり訂正、言明していただきたいのでありますが、「韓国人国籍疑義のないよう明確にする」、一つにはこういう条件を出されております。もう一つは、「今後新しく刑務所の服役を終えて大村収容される韓国人刑余者は韓国政府が引取る」、この中で私は国籍の問題だけについて伺いたいのですが、この大村にいる韓国人国籍疑義のないように明確にするということは、何を基準としてそれを明確にされるのか、その点を法務省の方に伺いたいと思います。
  30. 松原一彦

    松原政府委員 これは大へん技術的な問題でございますし、法理論にもなりますから、入国管理局長から答えさせていただきます。
  31. 内田藤雄

    内田政府委員 あの新聞が出ました際に、さっそく北鮮人民共和国の系統と思われます方々が私のところへお見えになりまして、その問題を抗議のようなことでおっしゃったのでございますが、われわれといたしまして、今日北鮮人民共和国というものを現実存在しておるという事実まで否認しておるわけではむろんございませんけれども、これはまだ国家の承認も政府の承認も、あらゆる意味においての外交的な関係と申しますか、そういう存在を認識する段階に至っておらぬわけなんでございまして、従いまして、私ども北鮮人民共和国の国籍ということを取り上げる段階にきておらない、こういうふうに考えておるわけでございます。しかしながら、政務次官もおっしゃいましたように、またそのときも私はお答えしておいたのでございますが、要するに、今韓国籍ということを問題にしておりますが、そのことが裏において北鮮人民共和国の国籍を否認するのである、否定するのである、そういうことを一切認めないのだというような、そういう意味を持っておるものとは私ども解しておりません。そうして、要するに、問題は、先ほど政務次官もお答えになりましたように、自分は帰国する場合にはそこに行きたい、あるいはそのほか強制送還で送られる場合にはそこへ行きたいという意思を表明した場合に、それを無理に韓国引き渡そうというようなことは考えておるわけじゃないのでございますから、その点は御了承いただきたいと思います。
  32. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 朝鮮民主主義人民共和国の方に日本の代表が日赤の方から参っておりますが、向うから帰ることを希望するようにいろいろとその問題について協議し、また現に帰って来た者もあるのでありますから、そういう点で、日本の国家の方でまだこれを承認しておらないからこれを帰すことはできないということは今局長の言われた通りでありますが、こういう事情があることを考慮して、朝鮮民主主義人民共和国に帰りたいという希望を持っておる人はこれを今後どしどし本人の意思通りに帰してもらいたい。松原政務次官は、希望しないところには帰さないと、消極的に表現されました。それは、同時に、希望するところに帰すという意思をお持ちなのかどうか。きっとそういう意味が半面にあるだろうと思いますが、そこのところを一つ伺いたいと思います。
  33. 松原一彦

    松原政府委員 すでに台湾籍を持っておる者でも中国に帰るという希望者は帰しておる前例がございますし、私どもあそこに一日もとめておくべきものではないと思うのです。不法監禁しておるのではないのです。帰っていただくまでの間をただおってもらっておるだけの話でありますから、帰りたいというところがきまり、そうして帰れる道があけば、全部お帰し申し上げますから、どうぞ御心配下さいませんように願います。
  34. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうしますと、同時に、日本にとどまりたいという希望を持っている者は、今度の協定の結果から言うと、日本にとどまることはできるでしょうね。これについてもう少し申し上げます。というのは、こういう事例もあるのです。つまり、終戦前から日本に居住する朝鮮人でありますが、小さいときに向うへ別の朝鮮人に連れていかれて、向うへ行った親がこちらに帰りたいというので帰った、それが不法入国ということで向うへ帰された、こりいう事例です。当時そのことが最初に起ったのは十四才で、まだものもよくわからない子共であったのであります。これを不法入国ということで帰した。親から引き離し、向うでは野ら犬同然に暮さなければならないという事例もあったのであります。これは下牧次長がよく御存じだろうと思いますが、おられなければ局長からどうぞ。そういう事例もあったのであります。そうして、国籍ははっきりしておりませんけれども韓国に一時出国するという条件ならば一時解放してもよいという恩恵だか何だかわからないような条件をつけられて困っている人も実例にあるのですが、そういう点も含めて今の点を一つ答弁願いたいと思います。
  35. 松原一彦

    松原政府委員 お答えいたします。そういうふうな、義理から言うても人情から言うても実際にそぐわぬようなことが現に行われていることは非常に遺憾千万で、一日も早く国交を調整して、その間に自由に行き来のできるようにし、本人の希望によって居住が許されるような手続のできることを私どもは切望いたしておる。そのためにこそ、今回の国交調整の上において、若干の無理があろうとも、これはよい機会であるから、軌道に乗せて、一日も早くさような無理のない——ごく近い両国間のことでありますから、北からも南からも同様に、近接の、しかも歴史を最近まで同じにしておった人々の間に交通の無理のないようにできますように、居住の上にも強引な要求のないような時代の来ることを熱望いたしております。どうか御援助願いたいと思います。
  36. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 大へん御理解のある言葉で、そうなることを私も希望するのでありますが、どっこい、今度の重光・金会談の二項にある「韓国政府は、密入国者(終戦以後のもの)を引き取る」、その青年はここにひっかかるのであります。そういうわけでありますから、法務省の御答弁だけを聞いて今の政府も理解炉あるというふうに手放しに喜ぶわけには参らない。先ほどの旅券の問題でも、私もしばしば岸本次官のお名前は伺っております。かなり悪名がとどろいております。それで・先日も私は政務次官に聞きましたところ、政務次官は大いに外務省のやり方にふんまんを漏らしておられた。それを一々御紹介しますとまた裏を暴露することになりますから、きょうは遠慮しておきますけれども、常に外務省はそういうことを言っておりまして、これがとんちんかんになりますと一人の人間の基本的人権を無視するというようなことになります。こういう点はまた外務省が来られたとき両方で一つはっきりさしてもらいたいという程度で、次の問題に移ります。  先ほど局長が言われたのに、どちらへ帰るともはっきりしない者がいるというのであります。それは相当おるでしょう。ところが、どちらに帰るかはっきりするのについて、今の大村収容所についてはちょっとできがたい事情がある。というのは、去る十二月十七日のことでありますが、昨年の暮れ、張東根という人が大村収容所の中で殺されておるのであります。そのことについて「アカハタ」の記者が大村収容所に参りまして藤本事務官に——総務第一課長でありますが、こういう事実を聞いたかと言うと、そのことについては中央に報告してあるので、こちらでは発表しませんと言うのであります。こういう報告がありましたかどうか。その報告に対してどういう処置をとられたか、その点を伺いたいと思います。
  37. 内田藤雄

    内田政府委員 ただいまおっゃいましたのは張東根の事件についてという意味でございますか。
  38. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 その処置をどうされたのか、どうしてこういうことが起ったのか。——それでは、もう少し申しましょう、あなたの御答弁がしやすいように。こういうことが大村収容所で行われておる。これでどちらに帰るかという本人の希望がまっとうに述べられますかどうか。生命の安全さえないところで、差し入れについても問題炉ある。差し入れものを外部から朝鮮人のこちらにおられる人が入れる。それを受け取ることについてもいろいろ迫害が起った場所で、自分の帰国の場所を、朝鮮民主主義人民共和国、大韓共和国、どちらかということをはっきりと申し出てしかも安全であるかどうか。こういう殺人事件が行われておる。脅迫が行われる、こういう条件がありますが、その点についてどうしたらほんとうにその人の本心の帰りたい場所を聞けるか、その保障がある方法を考えておられるかどうかということを込めて、今の事実を伺っておきます。そういう事実があったかどうか、報告を受けたかどうか。
  39. 内田藤雄

    内田政府委員 張東根という人が、昨年の十一月十七日ころでございましたが、殺されたという事件があったことは事実でございます。ただ、その点につきまして、北鮮系と申しますか、総連合の方では、これは政治的な理由による殺人だという宣伝をいたしております。しかし、私どもの調べました事情、また、本件はすでに刑事事件になって長崎の地検に係属しており、その加害者と認められております二名の者が起訴されておるのでございますが、その方の調べの結果によりましても、われわれはそれは政治的な背景を持った事件ではないと考えております。また、最近参議院の法務委員会におきまして本件にからんで調査においでになりました結果を先般伺いましたのですが、その御報告におきましても、本件は政治的な背景を持ったものではないというふうに認定せられておると承知しております。  従いまして、この事件は、もっと詳しく申し上げますと、要するに、食事の際のできごとに端を発しまして、その殺されました張東根という者と十八ぐらいの少年とがけんかをいたしまして、その少年の庇護者をもって任じております者が張東根を叱責し、その際にびんたの一つぐらいはやったのではないかと思いますが、それで、その翌日か何かに、今度は張東根が前日の恨みを晴らすためにシャベルか何かを持って襲いかかった。それで、幸いそのときの傷は大したことがなかったんでございますが、われわれの方の警備官が張東根を、懲罰と申しますか、そういう秩序を乱すことはしてはいかぬというので、独房の方へ入れということを命じまして、そのために身回り品を取りに入ったと遂に、今のシャベルでなぐられた方の男が待ち受けておりまして、やにわになぐって、そうして腹部か何かをけった。こういうことのために起った事件でございます。われわれの方といたしましては、当時直にに入院もいたさせましたし、できる限りの看護をいたしたのでございますが、遺憾ながら、その翌日、内部におきまして内臓が破れておったか何かの理由で死去いたしたのであります。  もちろん、その後の処置とおっしゃいますと、直ちに刑事事件としての取調べもございましたし、それが先ほど申しましたように現に進行しております。また、われわれの方の内部の手落ちがなかったかということも調査いたしましたが、ただいま申し上げましたようないきさつで、ほんの一瞬の間に起ってしまいましたことで、今のところわれわれの方の内部の警備に手落ちがあるものとは考えておりません。  これは、申し上げましたように、そういう政治的な背景がないのでございますから、この問題と先ほどおっしゃいました自分の意思を発表する自由がないのではないかということと結びつけられるところに、われわれとしては同意いたしかねるわけでございます。それで、われわれは決してそういうことの干渉めいたことを何にもやっておりませんし、現に、先ほど申し上げましたように、今日八十八名の人が、北鮮へ帰されるならば北鮮希望するということを申し出ております。ただ、その問題とは別でございますが、この北鮮帰国希望の者の数がふえて参りますにつれまして、韓国側と申しますか、南鮮側と申しますか、そういう人々の団結もまた強まっていく、そうしてその間にいろいろないさかいが起りますので、ことしの一月初めでございましたが、これは決して好ましいこととは思っておりませんが、身辺保護のためにやむを得ない措置と考えまして、今別に収容の場所を分けて収容しております。それで、そういう事故のないように努めておるわけでございます。
  40. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 どうも実際の実情をあなたは御存じないようでありますが、人間が一瞬の間にけ殺されたりなんかするものではないのですよ。独房に入れるとあなた方は言われたが、そういうシャベルをぶっつけたとかなんとかいろと遂に、ああいう収容所とか監獄とかいうところでは、暴行者と当局が目した者に対しては戒具をかけるのです。収容所にも戒具があるでしょう。手錠なんかあるでしょう。そういうものをかけておくと無抵抗なのです。だから、一瞬でこういうことが起ったりするのです。独房に入れたときにそういうことが起る。だから、これは無抵抗の者をやったかどうかということが問題になりますよ。まして、係官がそばについておって、係官に手落ちがないということが言えますか。係官の不注意ということはあるではありませんか。それは詭弁ですよ。さらに、そういう状態のもとで、あなたは今後そういう事件が起らないように分けたと言うでしょう。分けたというのは、朝鮮民主主義人民共和国へ帰りたい者と、そうでない、内部で結束して脅迫を加え、外から差し入れにきたときにそれを受けるなとかなんとか連絡している者があるわけです。これはちゃんと政治的に関係しておる。政治的関係はありませんとは言えません。それでちゃんとそういうふうに収容場所を二つに分けている。だから、あなたの言われることはまだ実情を十分につかんでおらないわけであります。そういうあなたにもよくわからないような所に、まだ千名ばかりどちらに帰るかはっきりしないという者がいるでしょう。それが果して朝鮮民主主義人民共和国へ帰りたいのか、大韓共和国へ帰りたいのか、ほんとうのことはわからないのですから、これは、その拘束を解いて、もう少し公けの場所でできるだけ自由に意思を発表するようにさせなくちゃならない。たとえば、朝鮮人団体などがございますから、そういう人々の立ち会いのもとででもやらなければ、危険でほんとうの意思表示ができない。係官がそばについていて、その者の手落ちがなくて一瞬の間にけ殺されるような事態が起る場所で、自由に意思が発表できるか。よしんば、あなたの言われるように、百歩譲って、それが政治的な事件でないにしても、大韓共和国を支持する者がそういうことをする。そういうけんか心を野放しにして、どうして自由意思を表示できましょうか。できない。だから、そういうことのないように、この点についてははっきりとそういう意思表示を平穏のうちにできる条件を作ってやられないと、非常に間違いが起るのであります。  なお、もう一点伺いたいのでありますが、近く朝鮮から朝鮮にいる日本人が帰ってきますが、その帰り便で約百名の日本にいる朝鮮人で帰りたいという人が今日赤ですわり込みをやっているのです。これを事実とすればお帰しになる御意向があるのですかどうですか。それは外務省でなければわかりませんか。あなたの方ではどういうふうにお考えですか。
  41. 内田藤雄

    内田政府委員 先ほどのお話で戒具を当然用いたと断定しておられますが、戒具は用いておりません。戒具を用いて無抵抗な者をやったのではないかというお話ですが、戒具などは用いておりません。部屋に荷物を取りに入りましたと遂に、その前の先生が待ち受けておりまして、自分たちの友人と部屋に引きずり込んでドアをしめてやったということなのであります。
  42. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 その係官の落度は全くないと言うのですか。
  43. 内田藤雄

    内田政府委員 全くないということを今私ここで断定い忙しますんけれども先ほど、今までわれわれが調べたところではそういうことは発見できないと申しております。
  44. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そばについていて、何のための係官ですか。
  45. 内田藤雄

    内田政府委員 それは考え方でございます。一方にお遂ましては、収容所においては、これは刑務−所と違うのだから、なるべく自由にしろというのが一つの非常に大きな原則になっておるのであります。
  46. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 殺人の自由まではないはずです。
  47. 内田藤雄

    内田政府委員 それはその通りでございますが、なるべく自由にしろということと、こういういさかいが起るということとは、非常にむずかしいのでございまして、これをまた、すべてのいさかいなどが起らないような厳重な監視下に置くということになりますと、今度はまた別の意味において非常な非難が起って参るのでございます。われわれは、そういう事件が起ったことは決していいとは思っておりません。まことに遺憾に存じますが、しか円し、それだからといって、そのやり方一をまた変えるということになります一と、別の角度から非常に問題になるということを御了解いただきたいと思います。  それから、今お話しの、迎えの船が出ると遂に乗れるかどうかということについては、私ども何とも申し上げかねます。主としてこれは外務省の問題でございます。
  48. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 日本にいる朝鮮人の諸君で帰国を希望しておる人は、非常に生活面の圧迫がありまして、貧困者が多いのであります。朝鮮民主主義人民共和国ではこれを受け取ると言っておるのでありますが、この点について、あなた方公安調査庁などでは破壊活動防止法の見地からいろいろと見ておられるようでありますが、こういう貧困者に対して公安調査庁はどういう態度をもって臨んでおられるのか、その点ちょっと伺いたいのです。
  49. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 私どもは、しばしば申し上げます通り、破壊活動防止法の執行に当っておるのでございまして、その観点から在日朝鮮人の実情なども調査いたしますけれども、それによって生活貧困者に対してどうするというところは、私どもの所管外というふうに考えております。
  50. 高橋禎一

    高橋委員長 高瀬君。
  51. 高瀬傳

    ○高瀬委員 実は、私はおもに外務省の大臣初め幹部にいろいろお聞きしたいことがあるのですが、どういう理由か、まだ政府委員がだれも見えませんから、関連した問題として法務当局に二、三伺いたいと思うのであります。  釜山におります漁夫の、朝鮮から言うと刑期を終った人たち、これらの人と大村収容所におる戦前から日本に在住した刑余者の人たちとを相互的に交換するという話が重光さんと金君の間であったという新聞記事があった。もちろん、その問題については、外務省の情報文化局長の田中君も発表しておるようでありますから、これは単なる新聞記事でないことは事実だと思います。それから、先ほどの松原法務政務次官のお話によっても、そういう会談が進行しつつあるということが事実であることは間違いないのでありますが、私は、その会談に関連いたしまして、大付収容所収容されております朝鮮人の実情あるいは南北の別、収容の原因、前科のいろいろな態様、悪質な罪名の件数、これらの点について実は最初に伺いたいと思いましたが、それは、ここに配付されております大村収容所収容韓国人関係概況というので全貌がわかりましたから、省略いたします。ただ、私が問題にしたいことは、われわれ日本人として、朝鮮に不法に抑留されておりますところの漁夫人々が一刻も早く日本に帰ってくるということは、国民感情としてもちろん異議もありませんし熱望するところでありますが、新聞に伝えられるようなところ、あるいは先ほど松原政務次官が言われましたように、これらの漁夫大村収容所収容されております刑余者とを相互的に交換することは、国民感情から言ってここに非常に割り切れないものがあるわけでありまして、これらの相互釈放に関しまして法務大臣は一体どういう見解を持っておられるか、これを私は一つはっきりと伺っておきたいと思うのであります。これはいずれ外務当局にもたださなければならない重要問題でありますが、少くとも事務当局は相互釈放ということについて非常に反対の所見を持っておられることは事実のようでありますけれども、一体法務当局は、これらの相互釈放というものについて、事前に重光大臣から牧野法務大臣に話があって、それはよろしいということで賛成されたのか、また、それらに対して法務大臣としては一体いかなる所見を持っておるのか、この点をまず私は伺っておきたいと思うのであります。
  52. 松原一彦

    松原政府委員 お答え申し上げます。かねてこの問題が閣議においてたびたび出たと、私は法務大臣から聞いております。そうして、できるだけ一日も早く解決して、両国間の国交を調整したい、それで、それにはわれわれも精一ぱい協力しよう、こういうお話を法務大臣から聞いておりますので、今回の韓国代表からの外務省への交渉を、私どもはやっぱり喜んで受けたいと思っておるものでございます。従って、私は、法務大臣にも会いまして、両省でこの解決のためには最善を尽しますから、どうぞおまかせ願いますということで、今までのところでは、私がおまかせをいただいて処理いたしておるようなわけでございます。  相互に釈放するということは、これはそこまで話がくれば大へんけっこうで、向うの罪刑が果して適当であるかないかはとにかくとして、釈放して日本に帰す、同時に大村収容しておる者を朝鮮に帰す、これなら何でもないのであります。その通りにあってほしいのであります。ただ、条件が、終戦前の在留者に対して疑義があるというようなことを聞いております。終戦前から日本に居住しておった者については疑義があるが、この際に国交を調整するために一応大村収容しておる四百何人の人々先方要求の若干を入れて処理するということにつきましては、私どももそれを承認いたしたのであります。ただし条件をつけての承認であります。というのは、従来からもやっておる例でございますが、これは治安維持の上からも非常に重大な問題がありますので、保護団体等ができて、そうして責任を持って引き取ってくれる場合においては、従来からも釈放いたしております。そういう保証のつく限りにおいて、徐々に安心のできる程度においての釈放ならば、私は差しつかえないと今日も思っております。そういうこまかなことにつきましては、外務大臣と私との話し合いにおきましては、在日韓国代表部の委員日本政府側の委員との間においてとくと協議をして、無理のないように実行する、こういう約束になっております。それで、今後、法務省からも委員を出しまして、外務省は今回沢田さんがお当りになるそうですが、協力して円満な解決に進みたいというふうに努めておる次第でございます。
  53. 高瀬傳

    ○高瀬委員 ただいまの御答弁でありますが、戦争前からおって刑余者として収容されておる者は、国際法上から見ましても、出入国管理令によりましても、当然朝鮮の方に引き取らるべき筋合いの人であります。それを、単なる相互釈放というような話し合いから、一体国内的に解決し得るものであるかどうか、この点に私は非常に問題があるだろうと思うのであります。第一、韓国側においては、これらの人が国籍が不明であるから引き取らないのだというようなことを言っているようでありますが、もし引き取らないというならば、これは当然わが国の国内法によって処置すべきものでありまして、この点について、単に外交上の相互釈放とか取引だけで解決するのには、あまりに重大な問題であると思うのであります。  そこで、法務当局に伺いたいのは、一体、これらの人たちに対して、向うが受け取らないから、外交交渉の結果そういう了解ができたから、やむを得ずこれを国内釈放するのであるかどうか、それからまた、釈放する場合には一体どういう法的根拠によってそれを行うのであるか、こういう点についてはっきりした法務当局の見解を伺っておきたいと思うのであります。
  54. 松原一彦

    松原政府委員 それは、従来も釈放した例があるのでございまして、必ずしも前例がないとは限りません。大村収容所収容力は限りがあります。あとからあとからたまれば、そんなに理屈通りに全部を収容するわけにも参りません。それぞれの方法を具して、治安の維持上危険のない程度において釈放いたして、保護団体等に預ける等の方法がございます。今回も、そういう点につきましては、委員をあげて処理して、十二分に納得のいく線においてこれをば一時釈放するということにして、なるべく日韓間の国交を調整したいという希望を持って進んでいるということを御了解願います。
  55. 高瀬傳

    ○高瀬委員 この前も釈放したというお話でありますが、今回釈放するその犯人の内容、それは政務次官御存じでありましょうが、前科九犯ないし十二犯の者が十三人、六犯ないし八犯の者が八十人、三犯ないし五犯の者が二百四十人、こんな犯罪者が含まれているわけであります。ですから、この前釈放したから今回もよろしいということは、非常に問題であろうと私は考える一人なんであります。従って、この前釈放したというのは、私は一向前例にはならないと考えている一人でありますがゆえに、この問題を重視しているわけであります。しかも、これが朝鮮に抑留されているわが国の漁民の一部釈放と関連性を持っているところに、非常に重大性があるのでありまして、それは、もちろん、朝鮮におられる漁夫の家族から言えば、一刻も早くこれらの人が日本に帰還することを望むその気持は、私ども日本人として大いに共感を禁じ得ない一人でありますけれども日本国内法といわゆる外交的取引の調整、こういう問題についてさっぱりはっきりした見解がなっていない。私は、この点外務当局にはっきりした見解を聞きたいと思って、先ほどから出席を要求しているわけでありますが、関連性を持ってそういうふうな問題を取り扱うことが、果して、日本の法律をはっきりと守っていく法務大臣の立場として、一体国民に納得されるのかどうか、これらの点は、どうしてもわれわれは釈然としないところがあるのであります。ですから、関連性を持っているがゆえに、向う引き取らないから、やむを得ないから日本で無条件釈放するということは、一体いかなる法的根拠であるのか、私はさっぱりわからないわけでありまして、その点は一つ松原政務次官のみならず事務当局の岸本次官にもとくと伺っておきたいと思うのであります。
  56. 松原一彦

    松原政府委員 こまかなことは事務当局からお答えさせていただきますが、収容していることそのものは法務省の所管でありますが、治安の維持に対しましては、警察方面、治安関係の方に非常な責任もあれば発言権もあるのでありまして、この問題が起りましたときに、治安関係の方から出ました要望があるのであります。それには、これに応ずるとするならば、相当の方法を具して少数ずつの者を保護団体等によって保護し、責任を負う等の処理をしなければならぬ、それに対しては費用もいる、そういうことが備わった場合においては、これは必ずしもできないものではないということが、治安関係から表明せられております。それで、釈放して外に出た後の処理につきましては、それは私は日本政府責任だと思う。日本政府責任を持って、これに対して国民に危険な思いをさせないようにしなければならぬ。高瀬さんのおっしゃる通りに私どもも心配するものでございます。その処理の仕方等がこれからの相談の上で決定するものと心得ておりますが、法的関係その他こまかなことにつきましては、私もよく承知いたしませんので、事務当局からお答えをさせていただきます。
  57. 岸本義廣

    ○岸本説明員 事務当局の責任者の一人といたしましてお答えいたしたいと思います。  実は、日本漁夫大村収容所収容している朝鮮人とを交換的に釈放するということは全く筋が通らないのでありまして、これは、先方は無法の主張であり、日本は法規、法令に基いて収容しているのでありますから、理論的に考えますと全く筋の通らない話なんであります。しかしながら、法務当局といたしましては昨年夏以来この問題に行き悩んで参ったのであります。外務省に対しましても、法務省から、この朝鮮側の無法な主張をしりぞけていただいて、法務省の意見をいれてもらうよう再三要求もいたして参ったのであります。しかしながら、先ほど政務次官がお答えいたしましたように、大村収容所の施設にも限度がございます。つまり、入れものが詰まって参ったのであります。昨年のたしか十一月か十二月の現状を申しますと、まさに超飽和状態というような報告が参っておりまして、警察上から見ましても、この状況では治安状況がはなはだ危険であるといったようなSOSを発して参ったような次第であります。こういうような状況下にありまして、一方日本漁夫に対する釈放運動が内外を通じて非常に猛烈になって参りました。外務省及び法務省のわれわれのところにも盛んに陳情団が参るような次第であります。また、われわれの見解をもっていたしましても、一日も早くこの釜山に収容されておる漁夫を帰してやりたいという念願で一ぱいだったのでございます。そこで、相矛盾する二つ条件が対立いたしまして、これをどう調整すべきかということが法務省の頭痛の種だった次第でございます。  そこで、先ほど政務次官から申し上げましたように、本件の場合とは事情は違いますけれども、かつて大村収容所収容している朝鮮人を仮放免の形式で引取人を定め保証金をとって釈放したという事例がございますので、その例にかんがみまして、もし日本漁夫釈放して日本送還することができるならばというのが一つの原因でありますが、最近になりましてたまたま朝鮮側から外務省に対して会談の申込みがありました関係が発生いたしまして、事務当局といたしましては、この調整をどうするかという点に関連し、一つの前提を考えているのであります。先ほど政務次官が申されましたように、今後法務省において強制退去令書を出すと必ず朝鮮側において引き取るという条件、私どもはこれを将来の保障と申しておりますが、この将来の保障を取りつけ得るならば、今回朝鮮から申し込んで参りました相互釈放条件を考慮しようというのでございます。いま一つ条件は、大村収容所に四百名内外の刑余朝鮮人がおりますが、これを釈放いたしましても、おそらくまた何らかの機会に犯罪を犯すであろうと想像されるのでありまして、さような場合には、一般朝鮮人と同じように、強制退去令書で先方引き取ってくれというようなことでありまして、これらの条件を前提条件といたしまして、この条件を受け入れてくれるならば相互釈放要求に応じてもよろしいという態度をとって参ったのでございまして、今後、外務省及び法務省から委員が出て朝鮮側との条件会談に関する委員会が設けられて、委員会において会談が進められることと思いますが、この会談を通じて法務省側委員からわれわれの要求を申し出るつもりでおるのでございます。  ただいまのところはさような状況であります。
  58. 高瀬傳

    ○高瀬委員 いろいろその事情はおありになるでありましょうが、私どもが全く釈然としないのは、不法に入国してきた連中、大村収容所の連中、朝鮮人一千四百三十四名、これらの密入国者刑余者をひっくるめて、それと日本漁夫六百九十一名とを、あたかもそれらが一見交換と思われるような条件でこの取りきめが行われようとしておるわけであります。しかも、日本漁夫については、われわれは全然李ラインなどは認めておらず、釜山に抑留されておるわれわれの同胞は公海の自由の原則に従って漁業を営んでおった者で、これを刑余者などとは何ら見ておらないのでありますが、韓国から見て、刑を終ったと思われる者だけと交換するという。われわれの方は日本の国法に従って刑余者を収容しておる。だから、こういうようなことは全然何らの関連性がないのでありまして、法務省としては今後そういうことは外交関係で相互釈放などという問題が起きてきても絶対やらぬとおっしゃいますけれども、そういうことならば、過去において、——これはほんとうのことを言いまして、朝鮮に抑留されておる日本漁夫とは全然関係のない問題でありまして、独自の立場でこの問題を解決するということについて、法務省としては今まで努力をされたかどうか。それから、将来の政府全体の国策なりあるいは朝鮮に対する日本の国策として、これらの問題はこうすべきだということについて、法務当局はそれらについて何らかの具体策をお持ちになっているかどうか。こういう点は非常にわれわれ関心を持つわけでありますが、過去においてそういう努力をされたかどうか。それから、政府朝鮮に対しこれらの問題に対する確固不動の国策を将来樹立する熱意があるかどうか。それから、現在行われている釈放はやむを得ないとして、法務当局はそれでがまんして、今後さえしなければいいという御態度かどうか。この点も一つ伺っておきたいと思います。
  59. 松原一彦

    松原政府委員 お答え申し上げます。  重光外務大臣からのお話も承わり、私もこの点については数次意見を申し上げております。また、閣議は、今回ばかりじゃない、すでに前からたびたび開かれて、この問題は論議せられているということを、先刻も私は法務大臣から承わったと申し上げたのでありますが、さようなわけで、今回日韓両国の間に国交の調整をはかる糸口をつける、そのためにはこれこれの処理をしたいということで、政府において協議せられて法務省の意見を聞かれましたのが最後でございます。  これにつきましては、先刻申し上げましたように、どうか一日も早く国交を調整して不法抑留されている日本漁夫を取り返したい、それを取り返すために話の糸口をつける上においての手段として考慮すべき点がありますならば、われわれもできる限りのことは応ずべきだと思いました。というて、それで日本の法律の権威をまげるわけにもいきませんし、日本がもし今日まで抑留しておることが間違いであったならば、これは不法監禁になるのであります。日本は決して不法監禁はいたしておりません。正当な収容をいたしておるのであって、断じて不法監禁しておるのではない。ただ、従来の例としても、これを保護団体等責任を負うて預かる場合においては釈放したり仮放免した事実もあるので、同じようなケースにおいて、保護団体等ができて引き受けるというならば、それは話の糸口をつける上においてもよろしかろう。ただし、これには費用がいります。ただではなかなか釈放ができないのであります。というのは、あの人々は無一文であります。着のみ着のままで、出た日からめしが食えない人たちであります。これを釈放して、この人人の将来を処理するために、また、向う引き取ってもらうためにも、あるいはその行き先を選ぶためにも——中には、いやもうしばらくここにおると言う人が北鮮側の人にはあるかもしれないという見通しがその当時にはあったのであります。それで、費用もいりますから、その辺についても御考慮願いたいということを申し出てありますし、相当の計算もいたしております。そうして、どうせあそこに抑留しておる以上は一日に七十五円の食費は出しておるのであります。でありますから、この国交を正常なる軌道に乗せる手段としてのでき得るだけの考慮は払いますが、しかし、その軌道に乗った上においては、今後はすべてスムーズに国際慣行通りに進めることの固い保障を願いたいというのがわれわれの希望でございます。
  60. 高瀬傳

    ○高瀬委員 ただいまの御答弁でありますが、国交を軌道に乗せる方便としてとおっしやいますけれども、一体それでは日本の法律というものをいかなる基盤の上でわれわれは権威を持って行うのか。つまり、外交上の取引のためには日本の法律の権威も一時はよろしくやるというふうにしかわれわれはとれないのでありますが、その点に対する法務当局の御見解を伺いたい。
  61. 内田藤雄

    内田政府委員 ちょっと前からのいきさつを簡単に申し上げます。  さかのぼりまして一昨年のことでございますが、鳩山内閣ができましてから、一時日韓の間が少くとも感情的にちょっとやわらいだようなときがございまして、そのとき、先ほど政務次官が先例としておられますごとく、しかしこれは私が先ほどの御答弁で申し上げましたように実は内容が違うのでありますが、ともかくその当時退令に付しておった者の標準から見ますとはるかに軽い人たちが収客されておった事実がございますので、それを仮放免の形で釈放し、他方密入国者引き取りが開始された。ところが、そのころから向うは漁民を帰さないということが始まりまして、その間にほかのいろいろな事情から、また日韓関係が五月ごろから悪化して参りました。その当時も、私どもは、やがてこれは向うで、人質のごとく、抑留しておる日本人漁夫大村の問題をひっかけて参るだろうということを予想いたしましたので、外務省に対しまして、これに乗っては困るということを実は申し入れをいたしたのでございます。その理由は、もう高瀬委員の御質問で御指摘になっておる通りの、全く同じことを私どもは外務当局に申し入れてあるわけでございます。それで、外務当局はわれわれの申し入れに基きましてどれだけの外交折衝をやってくれましたか、それはちょっと私からははっきり申し上げられないのでございますが、外務当局の説明によりますと、それはいろいろやったんだけれども韓国側がどうしても言うことを聞かない、だから何とか大村の問題を考えてくれ、こういうようなことで、昨年の夏以来数度にわたり領事館を交えました会議もいたしましたし、また私とアジア局長との会議のようなこともひんばんに行なって参りました。  それで、外務省に対しまして、先ほども申しましたように、ひっかけられるのは困るという申し入れをしたのみならず、現実に韓国側がひっかけて参りました以後におきまして、われわれが外務当局に申し入れをいたしました点は、ただこの問題だけではないのでありまして、一体、今のような韓国のやり方では、自分の主張を通すためには、いつでも日本人漁夫を引っぱっていけば日本側は人質外交にひっかかって言うことを聞く、こういうことを繰り返されたのでは、この問題は一時解決したがごとくに見えても、ちっとも解決にならぬじゃないか、そこで、われわれとしましては、将来こういう刑罰法令違反の悪質不良な外国人をば退去させるようなことは、もうほかの問題にひっかけることなしに必ず引き取るという原則をはっきりしてもらいたいということが一つと、もう一つは、実際問問として、李ラインを越えたというようなことで日本人漁夫が幾らでもまた人質にとられる状態がそのまま続いたのでは困るから、李ラインの問題を解決するか、あるいは、解決できないなら解決できないままで、実際上こういうことが起らないような事態を、何とかして、国内的か何か存じませんが、考える、あるいは、漁夫がつかまっても、今後はそれを人質にして何を言ってきても絶対に受け付けることのないような国策をはっきりしてもらいたい、こういうことをずっと申し入れもいたし、またそういうことで協議をして参ったのでございます。その点につきましてわれわれの努力が足りなかったかもしれませんが、われわれとしては、こういう事態の繰り返しがないようにということについては、何度も申し入れもし、協議もいたしたつもりでございますが、遺憾ながら、先ほど政務次官からお話がございましたように、ともかく今般こういうことで一応日韓関係の打開のために口火を切るから、法務省の方も協力せいということでございますので、われわれといたしましては、先ほど来政務次官、または次官がおっしゃっておりますように、ぎりぎりの線として、先ほど申しましたようなことでやっておるわけでございます。  法的な根拠とおっしゃいますと、これは入管令にともかく仮放免ができるという規定があるのでございます。それは、第五十四条に、退去強制令書の発行を受けた者でもある条件のもとに仮放免いたすことができるということになっておりますので、この条文を、これは正当な運用であるかどうかには私ども自身も疑念を持っておりますが、しかし、ともかくこの条文をたてにいたしまして仮放免をいたす、そうして治安上害のないようにということにつきましてはできる限りの手当をいたしたい、そして、先ほどおっしゃいましたように、今後こういうことが繰り返されないように保障をとってもらって、刑罰法令違反者が円滑に送還されるならば、実は、私ども限りの角度から見ましても、法律的に申せばどうか知りませんが、一つの取引としても十分に成り立つ取引ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  62. 高瀬傳

    ○高瀬委員 ただいまの入管令か何かで仮放免ができるということは、いわゆる日本独自の法を運用する、あるいは法を実施する独自の立場においてなし得る一つの事柄でありまして、これは外交的に一種のバーター・システムみたいな形でやらるべき問題では絶対にない、こういうふうに私は思うのであります。そこで、ともかくも、この相互釈放という問題は国内の治安にも重大な影響がある。それからまた、国民感情にも重大な影響を及ぼします。それから、心ある者は大いにこれで刺激される。世論も沸騰する。それから、李ラインそのものを通して日韓の将来の関係に非常に悪影響を及ぼす重大な問題であると私は思う。法務当局は、引き受ける人間があるし、保証があるから釈放してもいいと言いましても、そうは簡単にいかないのでありまして、これらの問題は、朝鮮に抑留されておる漁夫のことを考えると、言うには忍びないことでありますけれども、私は重大な問題として取り扱わざるを得ないのであります。そこで本日は外務当局にも出席を要求しておきましたが、いかなる理由か、全然出てこない。私は与党の議員の一人でありますが、この問題は与党とか野党とかいう問題を超越して、日本国民の一人としてはっきりとさせなければならない問題でありますがゆえに私は質問いたしておるのであります。遺憾ながら、外務省責任者はいかなる理由か出て参りませんから、本日これらの問題についてただすわけにはいきませんけれども、実際問題として、内政と外交との調和の問題について外務大臣などは一体何を考えておるのか、私にはさっぱりわからない。遺憾ながら法務大臣は入院され、外務大臣も何か痔の手術で見えないということになると、まるでのれんに腕押しみたいになって、松原政務次官初め岸本次官にははなはだ申しわけないのでありますが、私は全くふんまんにたえないのです。いずれ日をあらためて、外務当局の責任者に出席を要求しまして、私はこの問題について、ほんとうにとらわれない立場から外務大臣の所見を聞きたいと思いますが、法務省関係の各位のお立場の苦しい点は私も非常によくわかりますから、この程度で私の質問は終りといたします。
  63. 高橋禎一

    高橋委員長 池田君。
  64. 池田清志

    ○池田(清)委員 朝鮮半島に不法監禁されている日本人を早く帰してほしいという気持からいたしまして、この不法監禁されている日本人日本で合法的に自由を束縛しております朝鮮半島人との取引というような格好において外交交渉が進められておるという趣旨はわかります。その外交交渉のもとを作るために、外務当局・法務当局がいろいろと御苦労願っておることもよくわかります。私どもといたしましても、日本人が早く帰ってくるということを念願しているものであります。しかしながら、私は国内法立場において物事を考えたいと思うのであります。先ほど来高瀬君も質問しておりましたが、もう少しお伺いしてみたいところがあるわけです。  これはあるいは幼稚なお尋ねであるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。大村収容所は、監獄と申しますか刑務所と申しますか、その性格は法律上どういうことになるわけでしょうか。
  65. 内田藤雄

    内田政府委員 これは監獄でも刑務所でもないものであると存じております。つまり、たとえば密入国で参りました者が、密入国してきても収容施設がないためにどこへでも自由に動けるということでは、これは国際慣行といたしまして旅券ないしは査証を持って入国しなければならないという原則が全然無視されるわけでありますから、そういう者を当然ある一定の場所に収容することができるいうことは、これは国際慣行として十分に認められているところであると考えます。それから、先ほど来申し上げておりますように、悪質不良の外国人を国外に追放するという権利は、これまた独立国として当然認められているものと考えている次第でございます。国内法入管令にその基礎があるばかりでなく、国際慣行としても十分認められております。そういたしますと、そういう退去を強制いたします場合に、やはりこれらをどこかに収容でもできるのでなければ、逃亡の危険もございますし、結局退去の実をあげることができなくなるわけでございますので、そういう意味において、収容いたす権利というものは、国際的な角度からも当然あらゆる独立国に認められておる。そういう意味において収容をいたしますので、これは刑罪でもなければ矯正のための施設でもない。あくまで退去強制を確保するための、いわば本来ならば船待ち場であるというのが収容所の性格であろうと考えます。
  66. 池田清志

    ○池田(清)委員 いずれにいたしましても、わが国内法的には合法的に収容しているのだということは、これは今御説明のあった通りであります。不法入国ということは国内法犯罪であります。従って、刑のいまだ確定していないものであるわけであります。そういたしますと、これは刑務所かあるいは警察署か、そういうところに収容し得る法律が別にありますし、今の場合は特に出入国管理令によってそれが定まっているというのでありますから、もちろんこれは合法的に収容しているわけです。そこで、私は、大村収容所収容については合法的に行われていることを認めるわけであります。  さらにお尋ねしたいのは、朝鮮半島人でありまして刑の確定をいたした者は大村収容所には収容してないのでありますか。つまり、刑の執行中の者は収容されてないのでありますか。
  67. 内田藤雄

    内田政府委員 ただいま池田委員のお話によりますと、あたかも密入国してきた者はすぐそのまま大村収容所に入れているというようにお考えのようでありますが、そうではございません。密入国者であるということで現行犯でつかまった場合はもちろんでございますが、発覚いたしました場合には、まず告発をいたしまして、刑事処分の方が先行いたします。ただ、御承知のように、密入国者の場合には、子供もおりますし、刑事未成年と申しますか、刑事事件の対象にならない者もたくさんあるわけでございまして、こういう者はそのまま収容所の方に参りますが、そうでない者は、一応刑事の事件が終了いたしまして、もし実刑を受けました場合には、その刑を終った者が収容所の方に送られて参るという段取りでございます。そのほか、一般犯罪者の場合にも、われわれがこれを取り扱いますのは、刑の執行が終った以後のことでございまして、実情から申しますと、在監中のほぼ釈放が間近になりましたと遂に、連絡を受けますと、できる限り在監審査という方法をとっておりますが、刑務所に参りまして、過去の犯状、犯歴と申しますか、あるいはその個人の家庭的な状況その他を審査いたしました結果、退令を発布いたすかいたさないかを決定しておるわけでございます。従いまして、刑事処分の終らない者は、建前としては大村収容所にはおらぬわけてございます。
  68. 池田清志

    ○池田(清)委員 刑の執行を終った者をさらに大村収容所収容するということは、これは管理令関係でそういうことが合法的になっているのだろうと思います。そういう御説明であったのであります。先ほど来、これを出すという場合——つまり、私がお伺いせんとするところは、入れる場合は合法的に行っておるのだから、出す場合も合法的であるべきだ、こういう考え方から、出す場合においても合法的になさる必要があると思うのですが、先ほどこの点で仮放免のお話がありましたが、今回のような場合に、つまり多数を集団的に放免するということが必ずしもその条項に該当しないのではなかろうかという懸念を私は持ちますから、この点についてお伺いをしておるのでありますが、法務当局はどういうふうにお考えになりますか。
  69. 内田藤雄

    内田政府委員 その点は全くわれわれも率直に申し上げますと同感なのでありまして、この五十四条の規定というのは、そういう今回のような場合を予想しておる規定であるとは私ども自身考えておりません。ただ、ともかく、ある条件を満たした場合に仮放免ができるという規定炉あるということも事実なのでございますから、この条文の正当な運用であるかどうかについてはいろいろ意見はあり得ると思いますが、われわれといたしましては、この条文を基礎にいたしまして、そういう処置をとる以外にやむを得ない、こういうふうに考えておる次第であります。
  70. 池田清志

    ○池田(清)委員 仮放免の適用の問題について法的に的確なる確信があるというようなお答えがないようであります。ですから、私は、この際、その点について法が不備である、こういうふうにまず考えるのであります。法が不備でありますならば、これを合法化するために立法すべきである、こういう私見を有する者ですが、法務当局はどういうふうにお考えでしょうか。
  71. 内田藤雄

    内田政府委員 われわれといたしましては、先ほど来申し上げておりますように、本来こういうことというのは全くいやなことであるのでございまして、こういうやむを得ない事態が起りましたために、この条文を活用いたす以外に仕方がないと考えておりますが、こういう事態を予想して特に立法いたす、あたかもこういう外交的、政治的な理由によっての一般的な仮放免などということを法自体において予定して規定することが妥当かどうかということについては、これはまた、少くとも今までのところ、そういうふうにしたいという考えは持っておりません。
  72. 池田清志

    ○池田(清)委員 終りました。
  73. 高橋禎一

    高橋委員長 それでは、これにて本日は散会いたします。    午後四時四十四分散会