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1956-03-23 第24回国会 衆議院 法務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十三日(金曜日)    午前十時五十一分開議  出席委員    委員長代理 理事 椎名  隆君    理事 池田 清志君 理事 高瀬  傳君    理事 福井 盛太君 理事 猪俣 浩三君       犬養  健君    小林かなえ君       世耕 弘一君    林   博君       花村 四郎君    古島 義英君       横井 太郎君    横川 重次君       西村 力弥君    武藤運十郎君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  庁         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         法務政務次官  松原 一彦君         検     事         (刑事局長事務         代理)     長戸 寛美君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君         公安調査庁長官 藤井五一郎君         公安調査庁次長 高橋 一郎君         大蔵事務官         (主計局法規課         長事務代理)  中尾 博之君  委員外出席者         参  考  人         (警視総監)  江口見登留君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 三月二十日  委員片山哲辞任につき、その補欠として下川  儀太郎君が議長指名委員選任された。 同月二十二日  委員池田清志辞任につき、その補欠として薄  田美朝君が議長指名委員選任された。 同月二十三日  委員松永東君、薄田美朝君及び淺沼稻次郎君辞  任につき、その補欠として南條徳男君、池田清  志君及び西村力弥君が議長指名委員選任  された。 同日  理事池田清志君同月二十二日委員辞任につき、  その補欠として同君が理事に当選した。     ――――――――――――― 三月二十日  刑法等の一部を改正する法律案高田なほ子君  外六名提出参法第三号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  参考人出頭要求に関する件  違憲裁判手続法案鈴木茂三郎君外十二名提出、  衆法第一三号)  裁判所法の一部を改正する法律案鈴木茂三郎  君外十二名提出衆法第一四号)  法務行政及び人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 椎名隆

    椎名(隆)委員長代理 それでは、これより法務委員会を開会いたします。  きょうは、委員長が所用のため不在でありまするので、かわって私が委員長職務を行います。  本日の日程に入るに先だちまして、理事補欠選任についてお諮りいたします。すなわち、委員の異動に伴い理事が一名欠員となっております。理事池田清志君を私から御指名するについて御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 椎名隆

    椎名(隆)委員長代理 御異議なければ、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 椎名隆

    椎名(隆)委員長代理 違憲裁判手続法案及び裁判所法一部を改正する法律案一括議題とし、提出者より提案理由説明を聴取することといたします。猪俣浩三君。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 ただいま議題となりました裁判所法の一部を改正する法律案並びに違憲裁判手続法案提案理由説明いたします。  まず裁判所法の一部を改正する法律案提案理由から申し上げます。  違憲法令処分を阻止し、憲法解釈を統一するため、最高裁判所による違憲法令処分自体審査制度を確立することは、憲法精神を護持し憲法政治を推進する上に、きわめて重大な意義を持つものと信ずるのでございます。  ところで、憲法第九十八条には、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」との定めがあり、第八十一条には、「最高裁判所は、一切の法律命令、規則又は処分憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」との定めがあるにもかかわらず、最高裁判所判決によれば、いかに歴然たる違憲法令違憲処分がなされようとも、具体的争訟事件とならない限り、これを除去し、これを無効ならしめる道はないとされているのでございます。ここにおいてか、現実政治の面にあっては、大多数の憲法学者違憲なりと断定する事態が発生し、次第に既成事実化していく傾向を生じております。もし、法令処分違憲審査制度を確立することなく、この事態をそのままに放任するときは、やがて憲法そのものさえ破壊せられるに至るであろうということが憂慮されるのでございます。  そういうわけでございますから、現行裁判所法を改正し、具体的争訟事件を前提としなくても、最高裁判所が直接、法令処分自体違憲性審査し得るよう、すなわち、最高裁判所憲法裁判所的機能をも持つよう、明確にする必要があると考えられるのでございます。  この機能を果すため、本改正案は、現行裁判所法第三条に新しく第二項を加え、最高裁判所法令処分自体違憲審査権を有することを明らかにし、同時に、第七条に規定する最高裁判所裁判権具体的争訟事件に関する裁判権であることを明らかにしようとするものでございます。  これがこの法律案提出理由でございます。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、違憲裁判手続法案提案理由を御説明申し上げます。  この法律案は、前に御説明申し上げました裁判所法の一部を改正する法律案と一体をなすもので、同改正案において明らかにされた最高裁判所法令または処分違憲性を決定する権限を行使するに当っての具体的な裁判手続定めたものでございます。  さて、この法律案の概略を御説明申し上げますと、まず第一に、この裁判訴訟形式をもって行われることになっております。すなわち、衆議院議員及び参議院議員のそれぞれの定数を合計した数の四分の一以上の員数国会議員原告となり、検事総長被告として最高裁判所訴えを提起することによってこの訴訟は開始し、その審理及び裁判最高裁判所の大法廷で行われるものといたしました。原告国会議員といたしましたのは、この訴訟が、本来主権者たる国民の厳粛な信託によって行われる国家機関行為違憲性を糾明しようとするものである以上、これを訴追するのは主権者たる国民を代表し得る資格を有するものでなければならないという観点に立つものであり、その員数衆参両院議員定数の四分の一以上としましたのは、主として乱訴の幣を防止せんとする趣旨でございます。また、被告につきましては、この訴訟が公益のためにされるべきものであると同時に、高度の法律論を要求するものである点から、検事総長といたしたわけでございます。  次に、この訴えは、裁判を求めようとする法令の公布または処分のあった日から六カ月以内に、裁判所に訴状を提出してなさなければならないこととし、もしこの要件を欠くときはその補正を命じ、補正ができないものであるときは、口答弁論を経ないで却下の判決がなされるものといたしました。提訴期間を限定いたしましたのは、このような違憲上の重大問題はなるべく早く解決すべきであり、かつ、たとい違憲なものでも、すでに有効なものとして実施されている法令または処分の効果をいつまでも争い得るものとすれば、法律的にも社会的にもゆゆしい不安と混乱を惹起するおそれがあることを考慮したからでございます。なお、原告の数が多いため訴訟の追行が不便となることを考慮して、原告代表者制度を設け、原告の行う一切の訴訟行為原則としてこの代表者によってなされることといたしました。  第二に、有効に係属した事件審理は、口答弁論を中心に行われ、証拠調べの必要があれば裁判所は職権でこれをなし得ることといたしました。しかし、有効に係属した訴訟でも、原告の全員の一致があれば、判決があるまではいつでも訴えの全部または一部を取り下げることができるとともに、各原告はいつでも訴訟から脱退できることとなっております。さらに、原告が、死亡その他の事由、たとえば衆議院解散等により、原告たる資格を喪失し、または訴訟から脱退する者があって、原告の数が訴え提起の際に必要とされる員数に満たなくなったときには、訴訟手続は中断するものといたしました。また、訴えの変更は原則としてこれを認めないことといたしました。これは違憲裁判はなるべくすみやかになされることが望ましく、訴えをむやみに変更して、審理を複雑にし、裁判が遅延することは、この要請に反することになると考えたからでございます。ただ、申し立てにかかる法令を実施するため、またはその委任に基いて制定された法令及び申し立てにかかる法令に基いてされた処分については、右に述べましたようなことが比較的少いと考えられるので、これらについてだけは、申し立て趣旨を拡張して裁判を求めることができることといたしました。  なお、証拠調べにおいて、公務員または公務員であった者が、その職務上の事項について証言または書類の提出を求められたときは、職務上の秘密理由としてこれを拒むことができないことといたしました。これは、法令または処分違憲性の判断という憲法上の重大事が秘密理由として不可能に陥ることを許さない趣旨であり、違憲裁判の権威を強調せんとするものでございます。  第三に、違憲裁判判決形式で行われるものといたしました。また、裁判所は、原告申し立てにかかる法令または処分限り判決をなすべきものといたしました。これは、違憲裁判訴えを待って開始されるという趣旨と同一の理由によるものであり、これによって審判の範囲を明確にしようとしたものでございます。  次に、法令または処分について、それらが憲法に適合しないとの裁判があった場合には、その裁判効力は、原則として将来に向ってのみ及ぶことといたしてございます。  以上、大体において違憲裁判手続の骨子について御説明申し上げましたが、なお、最後に二、三の点について述べますれば、裁判所は、違憲判決をしたときは、すみやかに官報にその要旨を公告して、国民に周知させると同時に、その裁判書の正本を内閣及び国会にも送付することとし、また、裁判の費用は国庫の負担とする旨を規定し、さらに、この裁判手続等についての細則は最高裁判所定めるところにまかせてあります。  これをもって本法案提案理由説明を終ります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  以上をもちまして裁判所法の一部を改正する法律案違憲裁判手続法案提案理由説明を終ったのでありますが、提出者側として委員各位に特にお願い申し上げたいことは、本法案は、画期的な法案であると同時に、学者間におきましても相当議論の分るる法律論点を相当含んでいる提案でございます。これは私が申し上げるまでもないことであると存じます。私たちは憲法の第八十一条によって抽象的違憲裁判ができるものなりとしての信念からこの法案提出したものでございまするけれども、また反対の議論もあるわけであります。かような意味において、当委員会におきまして委曲を尽して委員各位の御質疑をいただきたいと思っておる次第でございまするが、議員提案であり、学者間にも争いのありまする重大な法律論点を含んでおることのために、提案者側といたしましても法律的な用意を必要といたしまするので、御質問いただく方は、その質問の前に、質問せんとする法律論点を整理せられまして事務当局まで提出をお願いいたしたい。私どももその質問要旨につきまして用意をいたしまして答弁をし、もって委員会審議を完璧ならしめたいと存じておる次第であります。さような希望を申し上げまして、提案理由説明を終りたいと存じます。
  6. 椎名隆

    椎名(隆)委員長代理 以上で提案理由説明を終りました。質疑次会に譲ります。     ―――――――――――――
  7. 椎名隆

    椎名(隆)委員長代理 法務行政及び人権擁護に関しまして調査を進めます。  まず、警視総監江口見登留君を参考人とするに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 椎名隆

    椎名(隆)委員長代理 御異議なければ、さよう決定いたします。  それでは、質疑の通告がありますので、これを逐次許します。猪俣浩三君。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 最初に戸田人権擁護局長お尋ねいたしたいと思います。  これは元日本女子大の教授でありました東佐誉子女史不法監禁告訴事件に関することであります。第二十二国会におきまして私は質問をいたしましたが、警察署におきましても、人権擁護局におきましても、取調べ中で、まだ結論が出ないままに二十二国会は終りました。二十三国会は、私はちょうど中国視察中でありましたから国会に出ることができませんので、そのままに相なったのであります。  そこで、本日は、東女史の問題につきまして、どういうふうにこれが取り扱われておりますかを順次各当局お尋ねしたいと思います。ただ、私がこれをお尋ねいたしまするゆえんのものは、東女史個人の問題よりも、一般的な人権擁護の問題としてお尋ねするのであります。これは申すまでもないことでありますが、私は東女史なる者を全然知らなかったのであります。婦人公論東女史の手記が発表せられましてから、私は何の連絡もなしにこの問題を取り上げたのでありますが、自来注意いたしておりますと、この東女史のほかに、どうもこれに類似したような人権じゅうりん問題が起っておるのではなかろうか。私どもは、今まで、人権じゅうりんといいますと、国家権力を握っておりまする警察官とか、検事とかいうことをすぐ頭に描きまして、その方向にばかり向いておったのでありますけれども、われわれの盲点として、思わざるところに人権じゅうりん問題があるのじゃなかろうか。一つは精神病院であります。そのほかは新興宗教である。あるいは社会事業を標榜しておりながらボス化しましたり、そういう事業団みたいなものであります。こういものはわれわれ平生どうも見のがしがちである。国家権力人権じゅうりんにつきましては、刑事訴訟法その他におきまして相当尊重せられまして、今はそうはなはだしいことは少いかと存ずるのでありますが、かような法の盲点をつきましたる人権じゅうりん問題が新たに社会現象として発生しておるのじゃなかろうか。そういう意味におきまして、一連の関連ある意味において私はお尋ねをしたいと思うのであります。  そこで、きょうは、この精神衛生法に関しまする問題といたしまして、東女史その他の件につき、なおまた、新興宗教人権じゅりん問題といたしまして、立正交成会というような団体の問題、そういうことにつきましてお尋ねをしたいと思うのであります。  第一の東女史の問題につきまして、戸田人権擁護局長はどういうふうに取り扱われたか、及び事件の真相がどういうことになっておるかを御説明いただきたいと思います。
  10. 戸田正直

    戸田政府委員 お答えいたします。  本件は、当局における調査は一応終了いたしました。不法監禁被疑事実については、警視庁においても調査いたしまして、すでに東京地方検察庁事件を送致いたしておりますので、検察庁とも協議の上最終的結論を出す予定でおりますが、現在のところ次のような見解をとっております。  まず、日本女子大学精神衛生法定めている入院措置を、東佐誉子が使用していた同大学フランス料理研究室明け渡しのために不法に利用したのではなかろうかというような疑いがございます。それは、本件の遠因は、東佐誉子昭和二十二年の五月八日休講を命ぜられ、さらに翌二十三年十二月免職されたことにありますが、免職された直接原因が、昭和二十一年七月、当時の井上秀子学長が追放され、その後任の選任に当って大橋広学長学長となることに極力反対したことにあったのではなかろうかと思われる点、さらに、日本女子大学では東佐誉子休講を命じました昭和二十二年五月より東佐誉子、及び昭和二十八年七月ごろより同人実弟である東諦に対して部屋の明け渡しを求めるため再三交渉を行なっておりますが、昭和二十九年四月下旬ごろから突然東佐誉子精神状態について論議されており、それまでは同人精神状態についてはあまり疑問を持っておったような形跡が認められておらないのであります。それから、日本女子大事務局長である中原賢次日本女子大学に復職した昭和二十七年夏ごろより、東佐誉子が使用していたフランス料理研究室の処理について、一、法の手続により明け渡しを要求すること、二、警察に依頼すること、三他の適当な方法をとることの三案を当時の理事会提出いたしました。一の案の法の手続により明け渡しを要求するのは否決されました。二の警察に依頼することの案は警察に拒絶されました。そこで、三の案の具体策として、東佐誉子親族に解決してもらうということを考えましたが、実弟東諦は、法的手続をとってもらいたいということを主張いたしましたような関係で、助力を得られなかった結果、研究室明け渡しを得ることに非常な困難を感じておりました。昭和二十七年の夏ごろ、同大学PTA会長荘寛、この人は精神医学研究所の所長でありますが、この方にその件を相談したところ、精神病疑いがあるから診察の必要がある、もし精神病患者ということになれば精神病院入院させることができる旨の発言があってこれ以後急速に東佐誉子精神病院入院させる話が具体化したように思われるのであります。しかしながら、この東佐誉子精神病者であるかどうかということについて、東邦医科大学精神神経科医師新井尚賢、慈恵医科大学神経科医師竹山恒寿、この両氏は警視庁の嘱託によって鑑定した医師でございますが、この両医師鑑定の結果によりますと、昭和二十九年十一月二十三日当時の東佐誉子病状入院を必要ならしめる程度であったということになっておりますので、入院手続に多少の瑕疵があったとしましても、不法監禁罪を構成するかどうかということについては非常に疑問がございました。また、かりに日本女子大学理事者に、東佐誉子精神病者であるということを奇貨として多年の紛争であった料理研究室明け渡し問題を解決しようとしたいというふうな意図が見られるといたしましても、これが不法監禁になるかどうかということは、率直に申し上げまして非常にむずかしい問題でありまして、精神衛生法運用上の問題、また診察技術の巧拙の問題というようなことについてもいろいろ議論がございますが、徳義上の問題は別として、これがいわゆる不法監禁になるかは非常にむずかしい点がございまして、これらにつきましては、なおその処置について慎重に検討いたしておる次第でございます。  それから、入退院手続について申し上げたいと存じます。  東佐誉子入退院手続は、昭和二十九年十一月二十三日から翌月八日までは精神衛生法の第三十三条の規定による保護義務者の同意による入院でございましたが、同月九日に、精神衛生法第二十九条の規定による知事の措置入院強制入院に切りかえております。昭和三十一年一月十一日退院させたものでありますが、調査の結果次のような違法行為が行われておりました。まず一に、東京武蔵野病院長上田守長は、精神衛生法第三十六条の規定によって、東佐誉子を同意入院させました昭和二十九年十一月二十三日から十日以内に東京都知事に対し、精神障害者入院届提出しなければならない義務を有しておるのでございますが、その期間を順守せず、昭和三十年一月十一日退院許可願と同時に提出しているのでございます。これは明らかに同条第二項の罰則を課せらるべき行為であると存じます。また、事実を知りながら何らの処置をとらなかった東京都庁関係職員は、職務怠慢であったという非難を免れないと思うのであります。次に、昭和二十九年十二月八日、東佐誉子精神衛生法第二十七条の規定により精神衛生鑑定医診察した場合、東京都知事がその診察当該吏員を立ち会わせなければならないにもかかわらず、その立ち会いがなされておりません。  次に、上田守長は、昭和二十九年十一月二十三日すでに同意入院させている東佐誉子を、翌月九日に至って精神衛生法第二十九条による措置入院に切りかえておりますが、これには次のいきさつがございます。  上田氏が、昭和二十九年十二月二日ごろ都庁において、精神病院の直接の監督機関である東京衛生局医務部優生課長広瀬克己氏に対し、口頭で、東佐誉子という患者がいるが強制入院させたい旨相談いたしました。措置入院要件を満たさないものとしてこれは拒絶されました。その後、上田守長は、同月の七日に精神衛生法第二十三条の規定による精神障害者診察及び医療保護申請書東京都知事あて板橋保健所を経由して提出いたしました。板橋保健所では同月二〇〇八号をもって所管課である優生課に送付いたしました。優生課ではこれを十二月九日衛医優収――これは記号でございますが、第一三六二号で受理いたしましたが、広瀬課長は、入院する病院の長が申請することは妥当でない、患者親族かまたは学校先生名義にした方がいいという旨を上田守長に告げまして、その補正方を求めたのであります。そこで、上田守長は、その補正方について中原賢次に相談いたしまして、新たに中原名義精神障害者診察及び医療保護申請書昭和二十九年十二月二十二日に都知事あて小石川保健所を経由して提出いたしました。同保健所では、同日これを受理いたしまして、所管課優生課に送付いたしました。これを受理した優生課では、全く申請者の異なる申請でありましたが、前記のような事情にあったので、特にあとで提出された中原賢次名義申請書をさきに上田守長提出した申請書補正という形式で受理して、十二月九日初めから中原賢次から申請されたものとして処理いたしました。  かような経緯であるばかりでなく、次のような違法な事実が認められるのでございます。  それは、精神衛生法第二十九条による措置入院は、第二十七条の規定による診察の結果、自身を傷つけまたは他人に害を及ぼすというような要件に該当しなければなし得ないものであるにもかかわらず、東佐誉子の場合、全くその要件を欠くものと認められるのでございます。すなわち、すでに東佐誉子を同意入院させておるので、かりに右のような危険があったとしても、あらためて二十九条による措置入院手続をとることは無意味なことで、許されないものと考えるのでございます。  次に、あらゆる証拠資料を検討しましても、東佐誉子自身を傷つけまたは他人に害を及ぼすおそれがあると認められるようなものは資料がございません。  それから、この点につきまして精神衛生鑑定医として東佐誉子診察しました上田守長は、東佐誉子が公けの財産を占拠して学校の利益を傷つける行為は明らかに精神衛生法第二十九条の規定に該当するものと認定したのだ、かように弁明いたしております。同条の他人に害を及ぼすという規定は、大体において刑罰法令に触れるような行為に限るのが妥当であると解釈されますので、東佐誉子病状に関する上田守長の右のような診断はにわかに首肯できないのでございます。  その次に、優生課長広瀬克己の、措置入院は、事実上、法律規定された要件を重視するよりも、治療費を都に負担させるという理由でなされておる、本件もその一例であるという旨の陳述がございます。  以上の通り、東京武蔵野病院及び東京都にそれぞれ違法な行為がありますので、この点については当局としてもその責任者に対し勧告をいたしたい、かように考えておる次第でございます。  それから、診察について、ちょっと申し上げたいと存じますが、すでに申しましたように、昭和二十九年十一月二十三日に、東佐誉子精神衛生法第三十三条に規定する同意入院をさせたのでありますが、同人入院させる場合、果して同条に定め診察をなしたかどうかという疑問でございます。精神障害者の診察は他の病人に対する診察とある程度異なるものがあることはやむを得ないところでございますが、厚生省は、精神衛生法定め診察の解釈として、少くとも医師患者を一瞥することを要するという見解を持っております。しかるに、上田守長は、昭和二十九年七月以降日本女子大学から提出された資料及び昭和二十九年十月二十日東京武蔵野病院食養課長小野房子がフランス料理研究室東佐誉子をたずねて直接観察して得た資料に基いて、昭和二十九年十一月二十七日、東佐誉子精神障害者であるから昭和二十九年十月三十日入院させるという決定をなし、その決定を日本女子大学に伝えたところ、同大学も一度その決定に従うことになりましたが、翌日一部の理事者から、実弟東諦の上京を待って処理すべきであるという意見が主張されました結果、前にした同意を取り消すことになって、十月二十九日中原賢次上田守長をたずねて、来たる十月三十日、明日の入院措置は延期されたい旨学校側の意向を伝え延期さした事実がございます。次に、上田守長は、当局調査に対し、東佐誉子診察昭和二十九年十一月二十三日の入院当時、病院の玄関において一瞥した上なしたと弁解しておりますが、右の東佐誉子入院させることに決定したことがありますが、これが全く厚生省の最小限度の診察という一瞥をなしたかどうかという疑問の点でございます。上田守長は十一月二十三日診察したと主張しておりますが、かりにその主張が事実であるといたしましても、強制的に東佐誉子病院に収容するという行為に着手する以前に少くとも一瞥すべきであったにもかかわらず、その後になしておりますことは、精神衛生法定め診察をなしたものに当るかどうかという疑問を持っておるのでございます。この疑問に対しましては、上田守長が十一月二十三日東佐誉子病院の玄関において診察したという主張と相反する東京武蔵野病院看護主任舟山忠重及び東佐誉子の供述によって、これらの点が確かめられるのでございます。以上のようでございまして、果してこれが精神衛生法にいう妥当な診察であるかどうかという疑問が残されておりまして、当局といたしましては、この点につきまして、精神衛生法一般の運用について慎重になすよう厚生省にも要望いたしたい、かように考えております。  るる申し述べましたが、結論といたしまして、入院手続等の違法については関係当局に勧告をいたしたいと考えておりますし、不法監禁被疑事実につきましては、ただいま検察庁において捜査中でありますし、また、先ほど申し上げましたように、率直に申し上げて、この精神衛生法の違反であるかどうかということについて非常に疑問の多い事案でございますので、さらに十分検討いたしまして、処理をいたしたい、かように考えております。
  11. 椎名隆

    椎名(隆)委員長代理 猪俣委員に御了解を求めておきますが、岸本事務次官は法制審議会で手が抜けられないそうですから、岸本事務次官に対する質疑は次回に譲っていただきたいと思います。
  12. 猪俣浩三

    猪俣委員 今、人権擁護局長の詳細なる説明を承わりました。よくお調べいただきまして、感謝いたします。ただ、なお強く要望したいことは、人権擁護局の任務というものは非常に重大であり、今の法務大臣もその点については非常な関心を払っておる際でありますので、戸田局長はこの際厳正中立な立場からこの問題を徹底的に処理していただきたい。これが人権擁護局の信用を高からしめるゆえんであります。今までいろいろ人権擁護局につきましても非難がある。しかし、それは、予算が少く、人員を減らされた。木村篤太郎法務大臣のときに縮小されてしまった。あれはわれわれ非常に反対したのでありますが、今日になってしまったのです。牧野法務大臣は相当そういうことを考慮せられておるようでありますから、この際人権擁護局の拡大強化をはかる足場としても、この問題に徹底的な活動をしていただきたい。  そこで、今お聞きしただけでも、われわれが当初からにらんでおるごとく、ますますもってこれは人権じゅうりんだと思うのでございます。結局、東佐誉子の部屋占拠に対して明け渡しをさせる手段としてかような非常手段をとったということは明白である。いろいろ三百代言的なことを言って言いのがれをしているかもしれませんが、私はその点について実に重大な問題だと思うのであります。正々堂々と家屋明け渡し訴訟を起し、その執行をかけるべきであります。しかるに、さような手続を経ずして、精神病人なりとして、いやしくも女子大学の教授として日本の栄養学の大家として世界的に有名になっておりますこの女史を、ほとんどその生命を奪うがごとき精神病人として二カ月になんなんとする期間精神病院に隔離して、同級生が泣いて訴えても教え子が訴えても面会させないという非常手段を講じた。これは許すべからざることであります。これは、私が憤慨するのみならず、すでに新聞記事にも現われておりまして、東京都立大学教授の関根秀雄さんが日本経済新聞一月二十七日に「日本の知恵」と題して書いております。「いささか旧聞に属するけれども、都下で有名なさる女子大学が、硬骨な教授を何とかして追い出そうと、永年にわたって彼女が狂人であるとの宣伝にこれつとめ、ついにある日、研究室の彼女を自動車に積みこんでさる精神病院にほうりこんだという話である。」、こういうことから書き出しまして、結局、「ここの学校の教授たちは、事ここに至るまで、誰一人として、このいささか変人であるとはいえ正義一徹の老教授をまもろうとはしなかったのである。雑誌社が両当事者を招き、専門家すなわち精神医と法律家との立会いのもとに、事件の真相を語らせようと公平なとりはからいをしたときにも、なぜか学校側はこの釈明の好機会をみずから放棄した。これではいくら弁明書をたくさん刷って父兄や校友の間にばらまいても、世間の疑惑はますます深まるばかりである。もっともこの問題は、その後一ぺん衆院法務委でも採上げられたが、どうやらそれきりになってしまったようである。」、こういうふうに、まだたくさん論じておりまして、人権擁護月間に際してこの点を訴えております。  そこで、私どもは、これは大きなテーマとして、人権擁護局が今おっしゃられたように各関係者その他に厳重なる警告を発していただきたい。さようことは人権擁護局の職権としてあるわけであります。そうして、それぞれ処罰を求むべきものには処罰を要求していただきたい。かようなことがひんぴんとして行われましたら、人権擁護もヘチマもありません。今度の憲法によりまして基本的人権が尊重せられ、官憲は相当留意せられて、刑事訴訟法その他において窮屈なぐらい、強盗犯人を逮捕するにも実に慎重な態度でやっておられる。しかるに、一精神医が勝手なふるまいをやって、人の人格的生命を断つがごときことをいとも容易にやられるというに至っては、人権擁護もヘチマもあったものではありません。私は、この意味において、人権擁護局及び法務省におかれましても、ことに松原政務次官はその間のことはよく御存じの、最も人権擁護の闘士であられるがゆえに、省の問題としてお取り上げ願いたい。  そこで、私は政務次官にお尋ねいたしますが、今人権擁護局長の説明したような事案がここにあるのであります。これに対しまして、私は法務省としても十分なる御研究を願いたいと存じますが、法務省の御見解を承わりたいと思います。
  13. 松原一彦

    ○松原政府委員 この種の問題は、実は私まだ日が浅うございますけれども人権擁護局長からたびたび報告を受けておりまして、実に容易ならぬことだと思っております。なおあとから御質問もありましょうが、全国にわたりますと非常に大きいと思います。精神衛正法のあり方についてもいろいろ疑問があるのではないかと、実は案じておるところでございます。ただいまお示しもありました通りに、今後十二分に注意をしまして善処したい。特に人権擁護局は将来最も慎重にその権威を保つよういたしたいと思います。
  14. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお松原政務次官にお尋ねいたしますが、人権擁護局は、先ほど申しましたように、木村法務大臣時代に縮小されたのでありますが、これをなお拡張せられる意思があるかどうか。何か人権擁護局も非常に繁忙のように見受けられるのでありますが、これは大切なことでありますので、法務省として何かの御構想があるのではなかろうか。牧野法務大臣はそんなようなお話をなすったよう私は記憶しておりますが、当法務委員会では正式に承わっておらぬのでありますけれども、法務省においては人権擁護局の拡大強化のようなことをお考えになっておる点があるかどうか。もしあるとすれば、お漏らしを願いたいと存じます。
  15. 松原一彦

    ○松原政府委員 牧野法務大臣は絶えずそれを言っておりますので、大いに感じておりますが、不幸にして予算がとれませんでした。今後十分検討しまして、堅実に進めたいと思っております。
  16. 猪俣浩三

    猪俣委員 この東佐誉子の問題につきましては、今人権擁護局長から詳細な説明を聞きましたので、あとで速記に読みまして、なお私は当局お尋ねしたいと思うのでありますが、最初の親族の同意入院もはなはだ違法でありまして、これは戸田局長も御存じの通り、ただ一人諦という弟があるきりなんでありますが、この弟は姉さんの佐誉子さんとは二十年も会っていない。そうして奈良県下におる弟である。そこへ学校代表者が数回行って、そうして、ねえさんは乱心してしまった、どうしても今のうちに入院させなければならぬということを言い含めて、諦を上京せしめましたが、ねえさんに一ぺんも会わせない。二十年も音信不通なものを、一ぺんも会わせないで、同意に判こを押さしたという。あとで姉さんが出て来てから、姉弟が初めてここに話し合って、学校にだまされたことを弟が知りまして、烈火のごとく憤りまして、私のところに長文の手紙をよこしております。これも局長は御存じだと思う。実にこの学校のやり方の陰険悪らつ、これは一体教育者として許すべからざる行動をとっております。人権の何ものたるかを知らざる学校なんかは意味がないと存じますが、かような非常手段をとって、この熱心な一老教授を葬ってしまった。こういう点につきましても、私どもは糾弾しなければならぬと思うのであります。  そこで、今検察庁に事が移っておるというお話でありまするので、刑事局長からこの検察庁のお調べについての経過を承わりたいと思います。刑事局長は来ておりませんか。
  17. 椎名隆

    椎名(隆)委員長代理 長戸刑事局長代理が来ております。
  18. 長戸寛美

    ○長戸政府委員 本件は昨年の十一月二十四日に東京地検で警視庁防犯部から、日本女子大学大橋広他四名に対する監禁、窃盗、脅迫、名誉棄損、こういうふうな被疑事件の送致を受けて、現在捜査中でございます。最も問題になりますのは不法監禁の罪が成立するかいなかという点であろうと思うのでありますが、東京地検におきましても、この事案の重要性にかんがみまして、まず、同意入院といわれておるわけでありますが、それが真実保護義務者の同意があったかどうか、それが任意になされておったかいなか、学校側からの圧力によって押しつけられたものでないかどうかというふうな点を中心として取調べをやっておるわけであります。地検としましては、主任検事をその実弟東諦という人のおるところに派しまして、その実弟及び友人関係者等を調べたのでございます。二、三日前帰京いたしましたので、その点を整理し、さらに、先ほど人権局長からお話しの、二十九条の措置入院についても問題があるようでございますので、その点もさらに引き続いて取調べをしておるという段階になっております。東京地検といたしましては相当調べは進捗しておりますので、近い将来に結論を出し得るというふうに考えております。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 質問が飛び飛びになりますけれども、政務次官がおいでになりますから、もう一点お尋ねしておきますことは、今の戸田人権擁護局長の御説明によりましても、どうもこの精神衛生法なるものに相当不備の点がある。そして、いとも容易に人権じゅうりんが行われる。ことに私どものおそるべきことは、精神病鑑定医というものは非常に数が限られておる。そうして彼らは彼らで横のつながりを持っておるのであります。一医者がある程度診察したものに対して、それをひっくり返すような診察をほかの医者はなかなかやらぬのであります。ことに、医者仲間には派閥がありまして、同系統の医者はお互いに擁護し合う点がある。今擁護局長が申されました鑑定医というものは、一体ほんとうの真実の鑑定をしたかどうか、私は相当疑問がある。それはこの武蔵野病院の今問題になっておる上田某と一門の人たちだそうであります。その意味におきまして、全く精神医の派閥の違った者でないと、真正なる診察ができない。かようなグループを作りました精神医者どもが皆勝手なる診察をして、それによってどんどん人を収監するようなことがありましたならば、人権もヘチマもあったものじゃないと存じます。ところが、専門のことの関係でありますので、どうもしろうとにはわからぬ。医者が気違いだと言えば、そうかと言うより仕方がないという現状だ。そこで、精神衛生法は、あまり医者を信用し過ぎて、いとも簡単に人身の収容を許しておるような点があるのじゃなかろうか。今の刑事訴訟法のやり方とあまり不均衡なやり方ではなかろうか。やはり、判事なり何なりの何らかの令状によって、宣誓を命じたる医者の鑑定によって収容するというようなことにならなければ、一般の犯罪者にたいする取扱いとははなはだ不均衡を来たす。医者なるがゆえに絶大なる信任を与え、親族なるがゆえに絶大なる信任を与えた。この親族なるものが、この場合には東諦は非常に学校にだまされたのでありますけれども親族というても、これはこの後の質問にまた出てきますけれども、この親族なるものが、相続財産争いや何かの場合においては、はなはだ危険であります。この親族とある一定の医者とが連絡をとりましたならば、大へんなことを起す。私は、この精神衛生法なるものは根本的に改正しなければ、人権保障ができないと存じております。  そこで、これは要望でありますが、法務省におきましても、この処罰の方面から、あるいは人権擁護という立場から、この精神衛生法に対して御検討を願いたいと思います。私ども法務委員会としても検討したいと存じまするが、当局といたしましても、もう一ぺん御検討を願って、この新憲法精神に合致するような人権擁護が十分にできるように御考慮願いたい。その点について松原政務次官の御意見を承わりたいと思います。
  20. 松原一彦

    ○松原政府委員 これは法務省だけでも扱いかねる問題でございますから、厚生省ともよく連絡しまして、慎重に審議して御要望に沿うようにいたしたいと思います。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 次に、これは石井警視庁長官にお尋ねいたします。  これもやはり精神病に関する問題でありますが、読売新聞の記事であります。「三千五百万円脱税もみ消し」として、国税局部長も共謀で、脱税を指摘した経理部長を精神病院に強制収容したという大見出しの四段抜きの記事が出ております。これは横浜でありますが、土田捜査二課長の話なども出ておりますから、警視庁ですかな。もし江口さんの、警視庁の取扱いでありますならば、警視総監から、そうでない場合には警察庁長官からこの問題についてお答え願いたいと思うのです。  もう御存じかもしれませんが、この新聞の記事が事実だといたしますと、私どもが心配しておるようなことが現実に存在しておることになりまするので、はなはだ驚愕に値するのでありますが、神奈川県の藤田電機製作所、この社長の藤田正三という人がそれぞれ収賄あるいは贈賄容疑で調べられた。ところが、一切の事情を知っている経理部長が事実を事実として主張しておる。これがはなはだけしからんというので、経理部長の虎岩頼敏という人を精神病人として入院させてしまったという事案であります。こういう事実があったかなかったか、もしあったとするならば真相がどうであるか、その後それがどういうふうに処置されておるか、これも一つ御説明いただきたいと思います。
  22. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 ただいま猪俣委員お尋ねの問題は、昨年の十月十六日の読売新聞に報道されたのでございまして、ただいまお話の出ました藤田電機製作所の経理部長虎岩という人が、横浜の脳病院昭和三十年二月から五月の間に三カ月間入院したという事実があります。これに関連します詳しいいきさつは、私の方の刑事部長が承知いたしておりますので、便宜刑事部長から御説明いたさせます。
  23. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ただいまの読売新聞の記事は非常に重要であります。事件は神奈川県の事件でございますので、神奈川県の捜査当局をして厳重に調べさせたのでございます。  本件関係につきましては、税務職員とこの藤田電機製作所関係との贈収賄被疑事件が別個にありまして、贈収賄被疑事件につきましては、神奈川県の捜査当局において厳重な捜査を逐げ、それぞれ被疑者を発見いたしまして、これを検挙送致いたしておるのであります。その被疑者の一人に、ただいまお示しのございましたこの会社の経理部長の虎岩頼敏(四十才)がおるのでございますが、この虎岩頼敏さんは、昭和三十年二月四日から五月四日まで横浜に所在いたします私立横浜脳病院入院した事実もございます。さらに、三十年五月四日から同年八月一日まで財団法人復光会総武病院と称する精神病院入院いたしております。従って、この虎岩氏が精神病院入院しておったということも、これまた事実でございます。  ついては、精神病院入院したことについて、だれかが作為をもってそういう入院処置を購じたかどうかについて疑いが存するのでございますが、神奈川県の捜査当局にいろいろ家庭の関係、ことに奥様の状況その他を精密に捜査せしめたのでございますが、現在のところは、この奥様が虎岩氏に大へん家庭内において虐待されるという事実等がございます。また、奥様が胆石病をわずらっとおって重態であるという関係等もあって、いろいろ親族知己の精神病医師とも相談いたしまして、奥様の申請に基いて精神衛生法三十三条に基く同意入院処置がとられておるといった状況でございまして、現在のところ、これが不法に監禁されて入院したという証拠が見つからないのでございます。  本件を贈収賄関係としていろいろ捜査いたしましたときに、たまたまその被疑者が前に精神病院に入れられたという事実がありましたので、非常に世間から疑いを持たれた、こういうような実情ではなかろうかと思っておりますが、関係事件が重要でありますので、現在のところは一応適法に入院したように考えられるが、さらに慎重にその関係の状況を調べる、こういう状況であります。
  24. 猪俣浩三

    猪俣委員 次は読売の十二月五日の法律相談の投書欄であります。「二カ月ほど前に親類の者たちが親族会を開いて、夫が頭が変だから精神病院に入れた方がよいと勝手に決めてしまい、いやがる夫を義弟がむりやりに病院につれて行って一人で手続をして強引に入院させてしまいました。これまで十年間もいっしょに暮してきた私でも、夫は多少カンの鈍いところはあっても、頭が狂っているなどとは全く思いもよりませんので、再三病院に行って退院させてくれるよう頼みましたが、手続をした義弟の承諾がなければ退院させられないといってとりあってくれません。実は私の家にはいろいろ複雑な事情があるので、義弟たちが自分らの都合のために私の夫を気違いに仕立てて病院に入れてしまったのではないかと思われるふしもあり、それを考えると口惜しくていてもたってもいられない気持です。夫を病院から連れ戻す道はないものでしょうか。」、こういう相談の投書があるのであります。これは人権擁護局が取り扱っていると承知いたしますが、いかような事情であり、どういうふうなお取扱いになっているか、これも局長から承わりたいと思います。
  25. 戸田正直

    戸田政府委員 ただいま猪俣さんの御質問法律相談につきましては、同じ欄で人権擁護局から回答をいたしております。この投書は大阪のS子という匿名でありまして、お尋ねのS子がどこにいるかわかりませんので、新聞社にも問い合わせたのですが、所在不明で、これを調べるわけには参りませんので、ただ回答だけということでこの事件は終っております。
  26. 猪俣浩三

    猪俣委員 きょう資料を紛失いたしましたが、週刊朝日か何かにあったと思いますが、二十七年間座敷牢に入っておった、親に入れられ、親の死後弟が当主になり、兄は二十七年間もその家の一室たる座敷牢に閉じ込められておったのを、人権擁護局の働きでしゃばに出てくるようになったという事件かあった。地元の擁護局で大へん奔走してこれを救い出したということが出ているのですが、この点についてどういう事情であるか、戸田さんの方で御存じであったら御説明願いたいと思います。
  27. 戸田正直

    戸田政府委員 ただいま御質問の週刊朝日かに出ているというのは、多分青森県三戸郡福地村大字法師岡というところの大下福次郎という人の事件ではなかろうかと考えますので、これについて御説明いたします。  本件昭和三十年九月三十日に受理いたしました。これは申告によったものでありますが、申告の要旨を大体申し述べたいと思います。申告者の大下福次郎(当五十三才)は、昭和六年三月ごろ、おじの大下弥五郎と財産相続のことで口論し、その後こん棒で弥五郎宅の雨戸を破り、室内に押し入って電燈を破損し、また印鑑を貸せとおどかすなど、暴言ないし暴行を働いた。そこで、おじの弥五郎は、身の危険を感ずるとともに、福次郎を狂人視して、村の監在巡査に告げる一方、福次郎の父酉松と相談の上、父酉松の住居の南側宅地内に間口一間半、奥行き一間のがんじょうな一むねの小屋を建て、昭和六年四月七日、当時の駐在巡査小野某を立ち合わせて、福次郎をこの小屋へ監禁いたしました。福次郎は、それから二十四年六カ月の長い間この小屋から一歩も外へ出ることを許されずに現在に至りましたが、同人はこの間において寝具は敷き掛け各一枚、たんぜん二枚、ゆかた一枚を与えられたのみで、洗たくやつくろいは一回も施されたことがなく、従ってはなはだしく汚損したものを使用させられている。それから、食事は、三食とも、大わんに飯とみそ汁を各一ぱいずつ与えられ、盆、正月、彼岸の三回には特にわずかのごちそうを与えられている。その次に、父母と死別した際は、その死に目にも会わせられず、また会葬にも参加させられていない。それから、入浴は一回もさせられたことがなく、また、散髪は、監禁された当時、巡査立ち会いの上二、三回散髪してもらったが、その後はバリカン一丁与えられて、本人が散髪している。小屋には、採光のため西側と南側の各上部に二尺四方くらいの窓が設けられ、この窓には格子が打ちつけられ、その上は金網でおおわれているが、室内は暗く、日光浴はほとんど不能の状態に置かれている。それから、便所は小屋の東北隅に敷板をくりぬいて作られているが、室内は臭気はなはだしく、嘔吐を催す状態で、きわめて不衛生的な生活をさせられている。なお、小屋の入口には三尺四方のとびらが設けられているが、とびらは二寸五分くらいの角材を格子にして、その裏側に板を張りつけられたがんじょうなもので、外部から施錠されている。  実は、この事件がわかりましたのは、このうちに新聞を毎日配達してきます新聞配達所のおかみさんがおりまして、たまたまこれが発覚します数日前に、水をくれ、水をくれという声が聞えるので、一体何だろうかと思ってその小屋をのぞいたところが、どうも人間が入っているらしいというので、一体あなたどうしたのですかと聞いたところが、私はもう長いこと入れられて出られないのだというようなことから、いろいろ聞いて、あんた気違いじゃないかと聞いたところが、私は気違いじゃないというようなことで、それじゃ気の毒だというので、さっそく帰って自分の主人に話した。また、主人が、それは気の毒だというので、再三ここへ来て様子を見て、どうも気違いじゃなさそうだというので、それじゃ私が何とか助け出すように方法を講じてあげましょうというので、この高橋治祐という人から八戸の法務局の支局に申告がございまして、さっそくこの事件を、不法監禁疑いが濃厚であるというので調査に着手いたしまして、まず本人の身柄を釈放いたしました。  こういう事件でございますが、二十五年もこの小さな小屋の中に入れられておった、実に非常識、非文化的な、ちょっと奇々怪々な、想像もできないような事件でございましたが、この事件の当時の関係者でありました、おじに当る大下弥五郎、これはすでに死亡いたしております。それから、これも当時の事情がよくわかりませんが、父親も一緒になってこの小屋を立てて、入れてあるのであります。この父親も現在死んでおります。そこで、この被害者である福次郎の弟に当る徳次郎、これが相続と同時にこの監禁も相続いたしたと見えまして、自来このままやはり同じ状態で今までいる。おそらく、想像するところでは、これを出すと、自分たちが恨まれておるので、殺されやしないかというような気持があったのではなかろうかと思うのです。が、引き続きこの弟が兄貴をここへ入れておった、こういう事案であります。  また、村の人たちも、一体これをそのまま知らずにいたものかどうか、非常にどうもわれわれでは想像のできないような事件で、ございましたので、兄弟、親族、村の人たちに対する人権尊重の啓蒙活動も必要じゃないかというので、これらのこの村に対する啓蒙活動を十分にいたしたい、かような考えで、その後この村に行きまして啓蒙活動等をいたしております。  以上が大体この事件の概要でございます。
  28. 猪俣浩三

    猪俣委員 ただいまの問題のごときは、全く親族間に行われたことであります。そこで、先ほど申しましたように、医者とか親族とかいうことを唯一のたよりにして、簡単に精神病院に収容するとか監禁するとかいうことは、この新しい憲法下においては許してはならない。何かもう少し厳重な処置をとらなければならぬ。それには精神衛生法を改正しなければならぬ。その材料だと存ずるのでありますが、かような件につきましては、法務省としてはいかようなる処置をおとりになるのであるか、それを刑事局長代理お尋ねしたいと思います。
  29. 長戸寛美

    ○長戸政府委員 ただいまの三戸の福地村の事件につきましては、現在八戸の警察署において捜査中でございまして近く八戸支部において受理することとなっております。事案の性質にかんがみまして、徹底的に捜査させたいというふうに考えております。  また、精神衛生法の問題につきましては、確かに猪俣委員のおっしゃるようないろいろの重要な人権上の問題がございますので、われわれ事務当局といたしましても、厚生省と密接な連絡をとりまして、これに対して措置するように十分検討して参りたいというふうに考える次第でございます。
  30. 猪俣浩三

    猪俣委員 ただ、法務当局に望みたいことは、厚生省との連絡もいいですけれども、私が問題にしておりますのは人権擁護の立場からですから、これは厚生省じゃなしに法務省が主導権を持って考えていただかなければならぬと思うのです。厚生省の役人なんかの中には医者と非常に親密な者がおるので、それらにまかせておったのではとても抜本的な立案はできやしません。これはやはり法務省に立案の中心を置いてやっていただきたい。これは希望として申し上げておきます。  そこで、私が先ほど申しましたように、人権じゅうりんについて、国家権力を持っておる者にばかりわれわれ興味を向けておる間に、しからざる分野において、はなはだ恐るべき人権じゅうりんが行われておるということであります。その一つがこの精神衛生法に関する問題であります。  次に私が申し上げたいのは、先般来読売新聞が取り上げております立正交成会に関する問題であります。この立正交成会なるものは、私どもよく知らなかったのであります。ところが、一体いかなる魔術をもってやっておるか、非常な金を信者から集めておる。そこに相当疑問な点がなければならぬ。と申します一例をあげますならば、昨年の三月立正交成会はその教祖の乗る自動車を一台買った。これはデムラーという自動車で、これを一千五十万円で買っております。これは日本に二台しかない。一台は皇太子がイギリスから六百万円だかで買ってきた。これは原価で向うから安く買ってきた。日本で買うとこれが一千五十万円になる。だから、皇太子の乗っておる車と、この立正交成会の教祖が乗っておる車と、この二台しか日本にない。とにかく、いかなるものであるかは知りませんが、この生活難にあえいで親子心中がひんぴんと起っている今日、一千五十万円の自動車を買って乗り回すということは何事であるか。こんなものに不正がないなんということはあり得ようはずがないのです。こういう方面に関して取締りが非常に手ぬるいと思う。もちろん、取締り当局に言わせると、やかましくやるとすぐ人権じゅうりん問題でお前たち騒ぐじゃないかとおっしゃられる。まことにその通りであるのでありますが、しかもこういう新興宗教の陰にはみんな政治家がくっついておる。みんな政治献金をとっておる。この立正交成会の陰にも二、三あります。私はきょうは申しませんが、かようにいたしまして、これが実に一般の無知なる庶民に対して驚くべき弊害を起しておる。もちろん、法律に触れざるものにつきましては、これは当局としても手をつけることもできません。信仰の自由は憲法の保障するところでございます。しかしながら、一千五十万円もするような自動車を買い込むとか、あるいは時価百万円もするようなダイヤの指輪を昭和二十五年にはこの副会長という人が買っておるとか、こういうような金の集め方には必ず不正があります。私はクリスチャンで長い間教会で今日まで委員をやっておりますけれども、実に財政にはきゅうきゅうでありまして、今でも掘立小屋みたいなところに入って信仰を続けてきておるのであります、これは七十年、八十年の伝道をやってきておる教会であってしかりであります。しかるに、彼らが四、五年やると、一千五十万円の自動車を買い込む。これはただごとでないことはすぐわからなければならぬ。かような意味において、何事かがここで行われておるということを考えなければなりません。これは日本弁護士連合会にも訴えられたことであって、日本弁護士連合会の人権擁護委員会でも活動していると存じますが、これらの点について、何か脅迫あるいは詐欺、そういうような犯罪があるのではなかろうか。読売新聞に連日掲載されております。  そこで、これらの点につきまして、警察当局あるいは検察当局はどういう捜査をなさって、どういうことが発覚しておるか、その状況をお知らせ願いたい。どなたでも適当な方から御答弁いただきたいと思います。
  31. 江口見登留

    ○江口参考人 ただいまお尋ねの立正交成会に関する問題でございますが、読売新聞にも連日掲載された非常に複雑な、また特殊な事件だと思います。これにつきましては、関係人の方からも告訴状が出ておりまして、それを詳細に検討を加え、検察庁ともよく相談の上、その中の和田堀第二土地区画整理組合に関する被疑事実につきましては、これは検察庁事件を送りまして、そちらの捜査を待っております。その他の事件につきましても、告訴状、あるいはその他捜査の段階におきまして、その告訴状に書かれていることとはまた反対の陳情なども非常にたくさんあるものでございますから、それらを今分類しながら、その他の問題については捜査の継続中でございます。
  32. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは日本弁護士連合会の人権擁護委員会から検察庁にあるいは警察に連絡があったかも存じませんが、内田英子という中野区の仲町十二番地の人間から上申書が出ている。私どものところにも来ているのであります。  これは、自分の最も愛する母親トラというのが自殺をした。その自殺の原因をだんだん割っていくと、立正交成会で非常に信仰的な脅迫をした。このトラは中風病にかかっておった。それをなおしてやると称して参拝を強要するのみならず、山梨県の身延山とか千葉県の誕生寺などに団体参拝を強要して、家族一同がこのからだでは無理だと言うにかかわらず、お前は参拝しなければなおらぬと、参拝を強要いたしました。そうして、毎日参拝しろと、その交成会そのものに参拝を強要するのみならず、こういう遠いところの旅行までも強要しましたから、安静にすべきこのトラが一日々々衰弱している。そこで、親類がとにかく全部で、この参拝及び団体行動をしないようにトラに申し向けても、この交成会の幹部たちが入れかわり立ちかわり、やってきて、それを怠れば直ちに死んでしまうようなことを言うておどかした。しかし、親族はどうしてもそれをさせられないので、今度はトラが、それじゃだれか代参をする者があればいいから、だれか代参してくれというようなことを言い出したけれども、だれも、この立正交成会から脱会させたいと考えておりましたから、代参する者はなかった。そうすると、自分はもう神のお告げで救われないと考えて、彼女はネコいらず自殺をした。こういう事案であります。  これは刑法上いかなる罪になるか研究を要すると思いますが、こういう妄信者に対して、その身体に障害となることを承知しながら、なお参拝を強要し、献金を強要するというようなことは、一種の脅迫だと思うのであります。かようなことがたくさんあるのではないか。私も実は読売新聞全部点検しておりませんけれども人権擁護局におかれましても、あるいは警察、検察当局におかれましても、かような事件にはもう少し積極的に活動していただきたい。新興宗教なるものに対しまして一体検察当局の態度はあれでいいのであろうかと私は疑問を持つのであります。  たとえば、いつだか本委員会で問題になりました東京都の飯倉一丁目にある霊友会の問題、小谷喜美というあの教祖の暴行傷害事件不法監禁事件は告訴せられ、その告訴した人が私に訴えて参りまして、これは検察庁の問題にもなったと思うが、あとどうなったか知らぬけれども、ただ、あれだけの取締りをせられたにかかわらず、旧に倍する繁盛をしておる。一体こういうことでいいのだろうか、はなはだ私は疑問なんでありますが、この霊友会の小谷喜美の事件は一体どういうふうに検察庁処置されたのであるか。これはあるいは私の通告がなかったかも存じませんので、すぐ御答弁ができなければ次回でもけっこうでありますが、これはこの委員会で問題になりましたけれども結論は実はお聞きしておらない。不法監禁、暴行、傷害、これは歴然たるものでありますので、あれはどうなったのでもりましょうか。その点について御存じならばお聞かせ願いたいと思います。
  33. 長戸寛美

    ○長戸政府委員 ただいまのお尋ねの小谷喜美の事件につきましては、ここに書類を持ってきておりませんので、次回に詳しく御説明申し上げます。
  34. 猪俣浩三

    猪俣委員 一連の問題といたしまして、精神病院及び新興宗教の立正交成会の問題につきましては、今検察庁なり警察なりで捜査中であられるようでありますから、具体的に相当材料も来ておりますけれども、今ここで私は詳しく申し上げることを御遠慮申しますが、ただ、どうぞ、全力をあげて、この精神的な暴行者に対し、まして、法の許す範囲において取締りを厳重にやっていただきたいことを要望いたしておきます。  それから、いま一つ、やはり同じ人権問題といたしまして、上野の山にありまする葵部落、これは警視総監にもお耳に入っておると存じまするし、これにつきましては上野警察署へ告訴がなされておると存じますが、どうもこの社会事業をやっておる一味の中には、最初はそうでないかも存じませんが、当局が非常に便利なもの、だからおだて上げる。そのためにボスになってしまう。これは取締り当局に言うことでないかもしれませんけれども、取締り当局としても、そういう弊害のあることを御認識の上善処していただきたいと存じます。たとえば、葵部落の会長尾島という人物に何百世帯かを管理さしておる。そうすると都としても警察としても便利だ。そこで、この尾島を持ち上げまして、そうして彼に一種の権力を持たせて、当局が持つべき権力を彼らが持つようになってしまった。絶対の命令者のような行動をやっておる。今度告訴の出ましたのは、寛永寺から立ちのき料として、五百万円の金が出ておるのを、葵部落の連中はだれも知らない。尾島という人が何とかやっておる。全然何も知らせてない。ところが、この三月三十一日までに、立ちのき料をやったんだから、都としては立ちのいてくれろというので、三十一日には強制立ちのきをやるという通告が来ている。そこで、何百世帯の人は、今さらながらがく然としているという始末です。これには、隅田公園かなんかにおりまする蟻の会かなんかの男も関係している。その実情を今詳しくは申し上げませんけれども、一人のボスを官庁がちやほやするのを奇貨といたしまして、絶大なる権力を握り、そこに絶大なる蓄財をしておりまして、そうしてほとんど命令的にやっている。この葵部落におきましても、尾島の配下で暴力団みたいなのが相当おって、住民に口を開かせない。こういうような状態がある。  これも先般申しましたけれども、ことに鉄道関係の方に私は法務省から警告を発していただきたい。それは、新宿その他において鉄道の用地がある。日本国有鉄道の用地があります。それを鉄道が自分自身管理すればいいはずでありますが、しかし、それをめんどうくさがりまして、暴力団みたいなものにその管理を一任するのです。そうすると、彼らは、何千坪というものをまず国有鉄道から賃借した形にしておいて、それを今度はこまかく商人に賃貸する。その際に驚くべき権利金を取り、賃貸料を取っている。これが彼らの財政的基盤になりまして、そこの管理と称してごろつきみたいな者をみな養う。それですから、商人は相当ひどいことやられても泣き寝入りでやっている。これが新宿の暴力団の本体をなしている。私どもはこういうやり方に対してはなはだ遺憾に思うのでありますが、これは法務省といたしましても一応御考慮願うべき問題じゃなかろうかと思うのです。そういう暴力団の発生を促すような国有地その他の管理権を彼らに与えるような方法、またさような者にたよらなければ管理できないというようなことでは、これは私はなはだ不都合だと思うのであります。  そこで、葵部落の住民が今上野警察署に告訴したと思うのでありまして、上野警察署では捜査を始めるかと存じますが、これに対して江口警視総監はどういうふうな御処置をとるつもりであるか、それをお尋ねしたいと思います。
  35. 江口見登留

    ○江口参考人 葵部落の立ちのきの問題でございますが、これは、昨年あすこに火事が発生しまして、その機会に、都庁としまして、かねてから立ちのいてもらいたいという意向を持っておりましたので、その立ちのき方について都庁から部落民に交渉したのでありますが、その際それらの代表になった者について今名前をあげて猪俣さんからお話がございました。三月一ぱいで立ちのくということに一応なっているようでございますが、われわれの方としましても、直接事件としては関係がございませんが、やはり警備上の問題から警視庁としてもこの問題については非常に関心を持って参っておりますので、大体のあり方については承知いたしております。たまたま昨日上野署へ関係者から告訴状が提起されました。その告訴状によりますと、その問題に関連して詐欺、背任、横領、建築法違反の疑いがあるということになっておりますので、上野署初め警視庁としましても、これからその捜査の段階に入りたい、かように考えております。
  36. 猪俣浩三

    猪俣委員 それでは、質問が非常に多岐にわたりましたので、人権問題につきましてはこの程度で打ち切りまして、あと、ここに大蔵省の方がお見えになっておりますから、ちょっとお尋ねしておきたいのですが、それは、補助金等の適正化に関する法律というものがある。これは私どもぜひ励行してもらわなければならぬと思っているのでありますが、今度の三十一年度の予算におきまして、法務委員会としましても、法務当局としましても、切にその予算の計上を願ったのでありますが、大蔵省ではみな削除してしまった。そこで、大蔵省から、これは一体どういう理由で削除されたのであるか、及び法務省からは、一体この予算がなくてもこの補助金等の適正化に関する法律が適正に実施できる自信があるのかどうか、これを承わりたいと思うのです。まず法務政務次官からこの点についての御意見を承わりたい。その次に大蔵省の御意見を承わりたいと思います。
  37. 松原一彦

    ○松原政府委員 補助金等の適正化に関する法律が出ましてからは、特にこの法律によって法務省の責任が増加いたしましたので、予算の増額を要求いたしたのでございますが、今お話のありました通りに、これは格別の増加を見ていないのでございます。ただし、三十一年度の検察関係総予算としましては、三十九億円計上せられておりまして、昨年に比べますと一億五千万円ほど増額になっておるのでございます。この三十九億円の予算の中で、検事活動に使われまする費用は、人件費を除いて四億九千八百万円ばかりございますので、この中で、ただいま御質問の補助金の適正化等に関する捜査等もいたすことになっておるのでございます。しかし、昨年来の検挙の数から申しますと、実はこれでは少いのでございまして、なお将来一そう充実して、一方には事犯が起らないことを期待いたしたいし、起った場合においては十二分にその効果をあげるようにいたしたいと苦労いたしておるのでございます。
  38. 中尾博之

    ○中尾政府委員 ただいまの大蔵省に対する御質問は二点かと存じます。  一つは、補助金適正化の法律を適正に施行する熱意がないのじゃないかということだと思います。これはまことに心外な御質問でございまして、あるいはそういう何らかの誤解があったといたしますれば、私どもといたしましても多少責任があるのかも存じませんが、決してそういうことはございません。この法律の施行につきましては重大なる関心を持つのみならず、責任を持ってこの法律が適正に実行されていくことを私どもは念願いたしておるわけです。何かそういう誤解がございましたら、どうぞこの際その点につきましては御了解を願いたいと思います。  それから、予算でございますが、予算につきましては、この法律が施行になりますのは実は今年度からでございます。法律を施行いたしますと、新しい法律でありますので、検事の会同をいたさなければなりませんし、資料等も集めなければならぬというような関係で、検察の経費ではございません、そういう内部的な事務の経費が実は今年度必要になるわけでございます。それは、今年度当初予算のほかに、検事の会同に要する経費として六十八万六千円、庁費といたしまして、これは参考資料の購入費等でございますが、これが二百八万円、合計いたしまして二百七十六万六千円、この法律施行に伴います検事の事務費の追加といたしまして、不用経費の流用をもって措置いたしたのでございます。もちろんこの金額につきましては、法務省と御相談の上、御納得を得てきめたものであります。なお、捜査に関する経費は、これはいわゆる補充費になっておりまして、捜査活動そのものを経費の面で押えるという建前は、制度としては全然成り立ちません。従来の事件の件数増によりまして当初予算を組みますが、実際問題といたしまして、事件でございますので、必要が出ます際には予備費をもって大蔵大臣限りの簡素な手続で幾らでもその事件増に応じまして必要な経費を支出する制度になっております。従って、補助金不適正使用の事犯が幾ら増加いたしましても、予算の面でこれが制約を受けるということは全然ございません。もちろん、そういうふうに事件が多くなることを希望いたしておるわけではございません。そういう懸念はございません。もともと、こういう事件に関する予算というものは、予算的に制約していくことが非常にむずかしいことでごいます。こういう制度になっております。従って、捜査活動に関する経費については、御指摘のような御心配がございましたら、そういうことで御了承を願いたいと思います。  それから、補助金の関係で今回法務省から御要求のありましたのは人間の問題で、その他は取り立てて御要求がなかったのです。人間につきましては、法務省全体として非常に窮屈であるという問題はございます。これはほかの省にもあることでございまして、人員増加の要求は毎年相当熾烈でございますが、御承知のように、全体の予算の規模、行政の簡素化といったような基本的な線から、これを今最小限度に圧縮して押えております。そういう基本的な方針がございますので、人間の点は御要望には沿い得なかったのでありますけれども検察庁におきましては、一般職員のうちの百五十人の雇員を検察事務官に切りかえまして、いわば昇格させ検察機能の増加に充てたのであります。それの半数程度のものを今度は下の方の雇員以下の常勤労務者で増員いたしました。人数は今申し上げましたような方針のもとに最小限度の増加にとどめましたけれども、検察機能の面から言いますと、その倍程度の機能の増加になるように実は苦心いたしているわけであります。  そのようなことで予算の措置を講じておりますこと、御了承をいただきたいと思います。
  39. 猪俣浩三

    猪俣委員 今の御説明、私は納得できない。ことに、人員をふやさぬで、検察事務官を昇格さして安上りの検事をたくさん作ってやろう、――今まで人権問題なんか引き起したのに検察事務官上りの副検事なんかが多いのです。そういうことで何でも安上りというようなことからお考えになっている。しかし、私は安上りではないと思うのです。今日この補助金なんか、監視、監督を適正にするぞという態度で臨んだら、相当金が生み出されるではないか、かえって国庫としてはおつりが来るのです。それを、今までどうも法務の金だと出ししぶる傾向がある。これなんかは最も適例だと思うのです。あなたにこんなことを言うてもしようがない。大臣が出て来なければしょうがありませんから、帰ったら大臣によく言っておいて下さい。法務行政に対して最も無知なやり方をしていることをこの予算で大蔵省は暴露した、こう私は思うのです。それだけ私は申し上げておきます。きょうは大蔵大臣を呼んでおったのですが、おいでにならない。それで、これだけにとどめておきます。  次に、不良外人の出入国につきまして、入国管理局長にその標準をお聞きしたい。  これは数年前にも当委員会におきまして私が質問いたしましたが、不良外人の出入りが自由であるということに対して問題が起ったのであります。そこで、当時の犬養法務大臣時代にこれを厳重にやるということを言明されておったのでありますが、どうもこの間の帝国ホテルのダイヤ事件なんかから見ましても、相当不良外人がいともやすやすと出入りしているように見えます。そして、私がその当時指摘いたしました李何がしというような不良外人なんかが、いつの間にかまた日本に入ってきておる。そうかと思うと、今度はソ連とか中国等のりっぱな学者なり教育者なりが入国しようとしても、これは今度は入れない。ここに実に不公平な、不都合なことがあると私は思うのです。そこで、不良外人の出入国について、一体どこの機関がどういう調査をしてどんなふうにやっておるか、その説明を聞きたいし、それから、ソ連人や中国人を、ある者は入れてある者は入れない、また、こちらから中国やソ連に行くという場合に、ある者は許すがある者は許さない、しかも、どういうものですか、最後には許すにかかわらず、私どもが中国へ行くときでもそうですが、何だかんだと言うて、そうして大体公安調査庁がそういうことの調査に当っているようでありますが、一体そこでどんなことを調査しておるのか。中国人やソ連人を入れる場合においても、日本から中国やソ連に行く場合においても、公安調査庁は一体どういうことをやっておるか。また法務大臣は一体どういう標準でいいとか悪いとか言っておるか。私はきょう岸本次官に出てきてもらいたかったのは、この文句をつけるのは大体岸本次官だということなのです。事務次官ががんばっておって、法務大臣なんぞロボットみたいにして、そうして自分の主観的な好ききらいからこういうことをやっておられるとすれば、これは全く官僚の弊害である。岸本次官はまことに公々然として、ソ連や中国へ行くことはきらいだということを言っているそうです。私はきょうその所信をお聞きしたがったが、いずれ当委員会に出てもらって、どういうわけでさようなことをやっているか、あらためてお聞きしますが、きのう私のところに建築界か何かの連中か陳情に参りました。この人たちが中国から招待を受けました。労働省でも建設省でも外務省でもみないいと言うのに、法務省だけががんばっておる。それで、だんだん聞くと、どうも、入国管理局では法務省へそれぞれいいという答申をやっているのじゃないかと思うが、岸本次官のところでいつも渋滞するらしい。岸本さんがいませんから、私はこの次その所信を聞きたいのですが、こういう問題について公安調査庁長官及び入国管理局長からそれぞれの御意見を承わりたい。
  40. 内田藤雄

    ○内田政府委員 私の方からまず一般的な御説明を申し上げます。  御承知のように、日本におきます外国人というのは大ざっぱに分けまして二通りに分けられるわけでございまして、一つは、戦前から日本におる、あるいはまた少くとも講和条約の発効以前、占領下の時代に日本に入りましてそのまま居すわっておる者、それから、もう一つは、正規のわれわれの入管令の適用外と申しますか、行政協定に基いておるものという一群の、しかもこれが実は在留外人の大部分でございますが、これらの者は、ただいまわれわれが新たな入国で審査いたしますような手続、そういうプロセスを経ないで現在すでに日本におるという人々でございます。それから、もう一つ、新たに入国して参っておる者も相当おりますことは確かに事実でございますが、われわれが承知いたしております限り、犯罪等の面において現われて参ります外国人の――これは先ほど申しました一般的な数の比例から当然なわけでございますが、われわれのいわゆる正規の入国手続を経ないですでに日本におる外国人による犯罪が、犯罪面におきましても大部分を占めておるものと考えております。しかし、それにいたしましても、たとえばこの間の帝国ホテルの宝石の強盗事件におきます男などは、これは確かに新しく入国した者でございます。  こういった問題につきましては、事前に何か入国の際にこれをチェックする道はなかったのかということと、入ってから以後そういう者が犯罪をしないように何か阻止する方法はなかったのか、こういう角度から問題が取り上げられるのだと思いますが、まず、入国の方を申し上げますと、御承知のように、日本は一方におきましては観光というようなことでなるべく外国人を招致したいという態勢をとり、また現にそういう政策をとっております。そして、われわれが入国の査証を発給いたしまする場合に、それが東京まで連絡がございまして、東京におきましてその審査をいたしておりますケースは、日本に入って参ります全体の外国人のうちの一割にも満たない部分でございます。と申しますのは、日本に入国して参ります外国人の非常に多くの部分を占めますものは、観光あるいは短期商用あるいは通過査証、この三種類で、日本に参ります外国人の大体七割くらいは占めておるのでございますが、これらの査証は、外務省の出先機関において、その出先機関限りで発給いたしております。これはまた、そういたしませんと、世界に広がっております各地においての査証発給事務を一一東京にまで連絡して参るというようなことでございますと、手数、費用また相手方に与えます不愉快さと申しますか、不便さなどから考えましても、それ以外に方法がないわけでございまして、大体在外公館限りで出すものがその大部分を占めておるのでございます。それで、われわれといたしましては、もちろん野放図にしておるつもりはございませんので、大体問題が起りそうな相手方あるいはその発給する土地につきましては、なるべく東京と連絡をとってやるように手配いたしてございます。たとえて申しますならば、香港あるいは台北そのほか朝鮮人の場合はすべて、あるいはまた、英米人の場合でも、日本の在外公館のないところから参りますような場合には大使館からわれわれの方に連絡して参るというようなことで、ある程度部分的に要点を置きましてチェックいたしておりますが、しかし、数から申しますと、中央と連絡なしに入って参りますものがほとんど大部分なわけでございます。これで、この間の問題を起しました宝石強盗なども、実は観光の旅券を持って入って参りました。それから、もう一つ、今猪俣委員がお名前をおあげになりましたジョンソン・李だろうと思いますが、朝鮮系の米国人でございますが、これは実は、先ほど申し上げましたように、占領中に入って参りまして、講和条約の発効とともにこうした仕事がわれわれの方に引き継がれました際に、当時のわれわれの方の手不足もございましたし、不準備と申しますか、いろいろな能力の不足などもございまして、非常に大ざっぱに、当時日本におった外国人は長期三年という在留資格をとってしまっておるのでございます。それで、問題の李という男も、当時三年の在留資格を講和条約が発効と同時に取っておった男でございます。それで、その後ずっと滞在しておりまして、猪俣委員のおっしゃいましたのは再入国で出入りしたときのことだと思いますが、その後実は当人は出まして、現在は日本にはおりません。最近の新聞によりますと、外国でまた問題を起したようなことも聞いておりますが、いずれにいたしましても、今度は再入国の期限も切れておりますし、三年の期限も切れておりますから、今度、われわれといたしましては、これを入れるかどうかという問題に初めて当面するだろうと思っております。  それから、入国の問題の基準でございますが、少くとも、ただいま申し上げました過去の遺産を引き継いでしまったものは別といたしまして、新たに入国を考えて参ります場合、ただいま申し上げましたように、観光とか通過査証とか、あるいは短期商用で、現地において発給されますものは、これは現地の大公使館あるいは領事館の情報ないし判断に待つ以外にないのでございますが、東京に連絡がありましたものにつきましては、かなり慎重に検討をいたしております。ことに東京に連絡のありますものは、先ほど申し上げましたように、国籍別に多少問題を蔵しておる場合、あるいはその滞在希望期日の長いものでございますので、これにつきましては、保証人その他あるいは日本側のスポンサーなどにつきまして調査いたしまして、大体本人の申しておること、申請の内容が虚偽ではない、また大局的に見まして日本の通商貿易あるいは文化、学術の交流というような角度から日本の利益になるであろう、こういう判定を得ました場合入国を認めておるわけでございます。  次に、それと関連いたしまして、共産圏からの入国の問題でございますが、これにつきましては、われわれといたしまして、決していたずらに閉鎖的にやろうという考えではございません。現に、一昨々年から一昨年、さらに昨年になりまして飛躍的に増加いたして参っております。これはやはり内閣の方針がそういうふうになったからだと存じますが、われわれとしていたずらに閉鎖的な考えを持っておりませんし、また、われわれ少くとも入管といたしましては、大陸と日本の交通というものの必然性と申しますか、長い歴史的な背景、あるいは経済面から見たいろいろな利益という面も十分考えておるのでございますが、何分にも、御承知のように、まず第一には外交上正規の国交がないという事実、それから、相手が共産国の人々である、従いまして、治安的な面あるいは日本におけるその人々の活動が日本に不利な――不利なと申しますか、おもしろくない影響をもたらす懸念はないかというようなことから、通常の場合よりは慎重に検討いたしておることは事実でございますが、しかし、拒否した例というのはむしろ非常に少いのでありまして、そう共産圏であるがゆえに閉鎖的と申しますか鎖国的な態度をとっておるものとは思っておりません。しかし、おそらく今猪俣委員の御念頭にございますのは、先般の日教組の招請をなぜ拒否したかというような例だろうと思いますが、それは、当時、ただいま申し上げました一般的な考慮のほかに、事教育の問題であるというようなこと、しかも日教組がある集会を催そうとしておる、その集会への共産圏からの参加であるというようなことから、大ざっぱに申し上げまして、日本の教育というようなものが共産的な色彩を受けることはおもしろくないじゃないかというようなことと、また、当時の時期が、一方におきまして総評のゼネスト等がいろいろ新聞にも喧伝されておりましたときでありますし、その他、そうした考慮から、これは望ましくない、こういうような結論になったものと了解いたしておりまります。  それから、もう一点、出国の問題につきましても質問がございましたが、この出国の問題につきましては、御承知のように旅券法の問題でありまして、大体その主たる官庁は、御承知の通りこの法律にもありますが、全く外務大臣でございます。そして、ただ旅券の発給を拒否いたします場合に法務大臣と協議しろということになっておりまして、協議を受けました場合に、法務省内部におきまして、私どものところが窓口になっておりますが、いろいろ議論いたしまして、その結論を外務省の方にお伝えいたしておりますが、しかし、もし外務省が、自分は発給したいのであるけれども、法務省がぐずぐず言っておるから発給しないというようなことを言っておりますとすれば、それは全く旅券法の法律の解釈を誤まった見解でございまして、旅券法の建前から申しますならば、そういう外務省の言いのがれはあり得ないものと考える次第であります。
  41. 猪俣浩三

    猪俣委員 もう時間ですから、この問題はもう少しお聞きしたいのですが、ただ一点だけで終りますが、あなたの答弁はどうも実際と違っておるようだ。私自身の中国に行くときも経験しましたし、たとえば中国の総工会の副会長をやっておる劉寧一君が日本に来られるときも経験した。最後は法務省なんです。結局あれは、軽井沢まで出かけていって鳩山総理大臣に話して、鳩山さんのツルの一声で入るようになったのであります。どうも、今の建築業者の中国行きにつきましても、外務省はいいと言うておるが、法務省がどうもということでつっかえてしまっておるということで、私に陳情が来ておるのです。その実情を一つ明らかにしてもらいたいのですが、何か次官会議とかいうものがあって、出国する際はその次官会議で決定するというようなことも聞いておる。私どもが中国に行くときもそうなんです。そうして、その次官会議においても、主として法務次官の発言が非常にウエイトがある。その法務次官の岸本という人が、どうもソ連や中国に行くことを好まない。すると、官僚の一人物のために実に不都合なことが生じておる。そのために要らざるエネルギーを消耗して、どのくらい関係者が、あっちに運動しこっちに運動し、困難を来たしておるかわからない。あなた方はきれい事ばかり言うが、その実情はどうなんですか。次官会議というものが決定するのですか。二十六日か八日に次官会議があって、そこで決定されないとまた一カ月か二カ月先におくれるのだそうですが、その実情を言って下さい。たとえば中国行きについてのほんとうの事務官僚としての処置は一体どこでだれがやっておるのですか。
  42. 内田藤雄

    ○内田政府委員 ただいま私が申し上げましたことをもう一ぺん繰り返すようでありますが、入国の問題と申しますのは、もちろん外国人の入国の問題です。これと、出国の問題、日本人が外国に出るという問題は、全く法律的なあれが違うわけでありまして、先ほど私が申し上げましたのは、出国につきましては、これは旅券法によるのでありまして、これは外務大臣が旅券を発給いたすことになっておりますし、それを拒否いたします場合の事項が十三条に列挙してございます。そして、これが一番問題になる規定なのでございますが、十三条の第一項の第五号に、「前各号に掲げる者を除く外、外務大臣において、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」、こうございまして、第二項に、「外務大臣は、前項第五号の認定をしようとするときは、あらかじめ法務大臣と協議しなければならない。」、つまり外務大臣が旅券の発給を拒否しようといたします際は法務大臣と協議せよ、こういう規定になっておるわけでございます。従いまして、外務省が拒否しようという本来意図がないのに法務大臣に協議してくるということは、これは法律的に見ましておかしいわけでございまして、法務大臣に協議して参るということ自体が、すでに外務省において拒否したいという腹を持っておるからでなければ、法律的にはあり得ないことだと思っております。それで、協議を受けました際には、もちろんこれは法務省が当然法務省の見解を述べる義務と申しますか任務があるわけでございますから、法務省といたしましては、内部においていろいろ協議いたしました結果、その結論を外務省に通知しておるわけでございます。そして、ただいま次官会議のお話が出ましたが、われわれの了解いたしますところでは、まず事務的なそういう協議がありました結果、われわれが向うに回答いたしますと、それをその結果次官会議にかけましてきめておるようでございますが、これは私の了解いたします限り何ら法制上の根拠があるものではないのでございまして、外務省がどういう意図でやっておられるかということは私から申し上げかねますが、あるいはまた、なるべくその責任を全部に分ってもらいたいというような気持でやっておるのではなかろうかと想像いたします。
  43. 猪俣浩三

    猪俣委員 私どもは、旅券法については、あなたから説明を聞かぬでも、すでに経験している。これは問題になった。それは、帆足計君がソ連に行くということに対して、外務省なり法務省なりでなかなか旅券を出さぬということで、相当ここでもんだんです。法律上何にも根拠のないことで、官僚の感情問題から出さないのです。官僚は事務をやっておればそれでよろしい。それを政治的配慮をやるんです。こういう共産圏から入れたら教育に悪影響を及ぼすんじゃないかなんという、大まかな文明事業までも官僚がやって、そうして入れるとか入れぬとか、そういうことはけしからぬと私どもは思う。いわんや、公安調査庁までがその片棒をかついでいる。そういうばかな話はないと思う。だから、あなたがおっしゃった通り、外務大臣がやればいい。ところが、次官会議で決定するなんというところを見ると、お互いに責任をなすり合って、そうして陳情団にはいい子になって、事実は遷延さしておる。それが実情なんだ。いつでもそうなんだ。次官会議という何ら法的根拠のないもので事を処理して、そうしてやっておるのが実情だ。あなたがおっしゃる通りだ。旅券法から言うならば、外務大臣職権なんです。外務省はやりたいと思うんだけれども、どうも法務省がうんと言わぬ、しょっちゅうそれを聞く。もし官僚が遁辞として言うなら、大きな問題だと思う。この法務委員会に出て、法務省と外務省とお立ち会いの上で決定してもらいたいんだ。私どもは現に何回それを経験しておるかわからないのですよ。今言うのは出国です。入国のときは、今度は公安調査庁がいろいろ進言する。この前の花村四郎法務大臣のときも、私は劉寧一君の入国について行った。そうすると、公安調査庁の調査が非常によくない、こういう調査が出ているので、どうも僕としても踏み切れない、こういうような話です。そこで、軽井沢まで行って許可をとった。入国については、その人物がどういう人物かは出先の官憲の証明でやるんだと言う。しかるに、ソ連や中国については、もちろん出先官憲が今ありませんから、本庁でやるのはいいでしょうけれども、一体そういうばく然たる――どろぼうとか強盗とかいうものは、これはやらにゃなりませんが、ばく然たる政治的な考慮で、一体劉寧一が日本に来て強盗をやるというのか。殺人をやるというのか。何を一体やるということで公安調査庁はそんなおせっかいをやるのか。公安調査庁は一体そういう職務をやるところなのか。私はこれは長官に聞きたい。そういう、諸君が言うことと実際やっていることとは、実際わけがわからない。そのためにどのくらいみんなが苦難を経ているかわからぬです。今その陳情書を私は持っておらないが、建築関係の人です。そうして、労働省から建設省から外務省から、みなオーケーになっておる。ところが、法務省に行くと、次官会議にかけなければだめだと称しておって、これがために中国に行くことができない。ところが、この二十六日とか八日に次官会議がある。それに間に合わぬとだめになっちゃうんだ。非常にあわを食っている。これは再三にとどまらない。どこに一体そういうことがあるのか、われわれわけがわからない。旅券法を幾ら見ても出てこないのです。あなたのおっしゃる通りだ。さっぱりわからないんだ。そこで、これは実例をたくさん集めてきますから、あなた方同士で相談をして、はっきりした態度を示してもらいたい。そのために一般市民にどんな迷惑をこうむらしているかわからぬのです。どういうわけだか、旅券法を幾ら見たって出てきません。中国やソ連の行くについて、どこに一体権限があって阻止できるんだ。次官会議だの法務省が何の権限があって阻止できるのか、さっぱりわからぬ。旅券法で、旅券を出してならぬ場合は限定している。それに当てはまらぬ場合に、そんな官庁でお前行っていけないと言われないために旅券法ができたのです。もとは、警視庁の外事課が、そのときの政府のさじかげんで、ある人は出ていいがある人は出ていかぬというふうにやった。それを防がなければならぬために、いわゆる旅券法なる法律を作って、海外旅券を交付するについては、一定の条件があって、その条件に当てはまる者は仕方がないが、しからざる者は一般に旅行の自由がある。これは憲法の保障するところである。それによって旅券法ができている。それにかかわらず、いつでも、中国、ソ連へ行く場合には、すなおにすらっといったことがない。どういう理由であるか私どもわからぬ。法にあらざることによって阻止するなんということは、実際大なる憲法違反である。私はこれ以上申しませんが、もう少し入国管理局長と岸本次官との間に相談して下さい。その場合私は岸本次官にお尋ねしたい。あの人は実にとほうもない放言をやっている。ソ連や中国へ行くのは私は大好かぬというようなことを言っている。陳情に行くとそういうことを言っている。とほうもない人物だと思っている。だから、岸本次官にこの次出てきてもらって、その所信を披瀝してもらいたい。  それで、公安調査庁長官お尋ねします。一体、ソ連や中国から日本へ入ってくることについて、あなた方はどういうふうに調べて、どういうふうに法務省と連絡をとっておられるか、御答弁を願いたい。
  44. 藤井五一郎

    ○藤井政府委員 お答えいたします。  この出入国管理令の第五条によりますと、法務大臣において日本国の利益または公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある外国人は本邦に上陸できないという規定をされております。そういたしまして、私どもは、共産主義国である中共やソ連から日本にやって来て、共産主義の宣伝を行なったり、日本共産党を指導援助する行為を行なったり、あるいは諜報謀略を行なったりする憂いのある場合は、まさしく今申しました条項に該当するものと思っております。そこで、公安調査庁は、職務といたしまして、日本共産党の動向や国際共産勢力の対日動向について平素から調査を行なっているのであります。共産圏からの入国者及び入国事情について調査をいたしました結果判明したる限度におきまして、これを法務省における主管局であるところの入国管理局に連絡いたしまして参考に供しておるにすぎないのであります。  それから、次にお尋ねの出国の場合でございますが、今入国管理局長からも御説明がありましたように、旅券法第十三条では、「あらかじめ法務大臣と協議しなければならない。」という規定になっておりますので、公安調査庁は、先ほど申しましたような趣旨調査の結果判明しておる限度におきましては、これを法務大臣に報告いたしまして、かつ主管の外務省に連絡しておる次第でございます。  以上でございます。
  45. 猪俣浩三

    猪俣委員 その公安を害するとか共産主義の宣伝をするとかいうようなことは実に抽象的なものなんです。一体、そんな抽象的なことで、ある人間がそうだときめつけられるものじゃないと思うんだ。法律にはそういう抽象的なことしか書いていないのです。それにはなお基準があるだろうと思う。公安を害するものなどというのはばく然たることです。どういう地位にあり、どういう者が公安を害することになるかという基準があるだろうと思う。そういう基準が一体あるのですかないのですか。ただソ連や中共の人だとすると、みな公安を害する、共産主義の宣伝をする、こういう立場をとっておるのですか。ただある特定の人間が公安を害するものだという基準が何かあるのですか。それをお尋ねします。
  46. 藤井五一郎

    ○藤井政府委員 お答えします。抽象的な基準はございませんが、具体的にその人の経歴あるいは入国の目的、すべての角度から見て、決して抽象的に判断いたすものではございません。すべての資料調査した結果、これが果して公安を害するか、――決してすべて害するという先入主でやってはおりません。非常に公平に、共産圏から入る人だから必ず公安を害するとは決して見ておりません。
  47. 猪俣浩三

    猪俣委員 この前中国総工会の劉寧一君が入国する際に、公安調査庁は、これは危険人物だという方針で、とうとう広島における原爆禁止大会には出席できなかった。しかも香港にもう何名か待機しておるのに、法務省ががんばって入国できない。そこで、とうとう、昨年の八月六日ですか、その日には出席できないということになってしまった。鳩山内閣のソ連、中国と親善友好を進めようとする政策とはなはだ反することをやったのであります。それまでに公安調査庁が厳密なる調査をして、劉密一君を危険人物なりと進言したとするならば、劉寧一君が入ってきていかなる公安を害することをしたか、お調べになっておると思う。それを御説明願いたい。
  48. 藤井五一郎

    ○藤井政府委員 劉寧一氏の経歴等については調査しておりません。ただ資料を提供したのでありまして、別にこれを拒否するという意見を具申してこちらからそれに対する決定に影響を与える筋合いのものではございません。ただ資料を提供しただけでございます。
  49. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、法務大臣に対して、こういう経歴でこうだという資料を出すだけで、その人間は公安を害する公算が大であるというような意見はつけないのですか。そんなことはありますまい。その人物はこういう経歴の持ち主だからこういう傾向のある人物だという意見がついているのでしょう。
  50. 藤井五一郎

    ○藤井政府委員 われわれが見た資料は、果して公安を害するおそれがないかといういわば価値判断の資料ですから、それはつけざるを得ないのですが、そういう意味においての意見はつけました。その点、先ほど申しましたことは訂正いたします。ただ、公平な意見をつけるつもりで、決して先入主にとらわれてはおりません。
  51. 猪俣浩三

    猪俣委員 ところが、法務大臣といっても政党出身の人がなるんだ。そうすると、諸君が専門家としてそういう調査をやり、そこで価値判断をして具申するとすれば、大臣としては、こういうものを許さぬというのはどうも少しおかしいなと思っても、それを押し切ってやるということは勇気のある人でなければできない。だから、諸君の、官僚の作成した意見というものが実際左右するのですよ。それをもっと考えて、-大臣に責任を全部なすりつけてしまって、自分たちはただ材料を出しただけだということではいけないと思う。そこに公安調査庁の長官に相当の責任があると思う。だから、あなた方がそれほど価値判断をして出したならば、劉寧一君が日本に来ていかなる公安を害することをやったか、私は承わりたいと思う。また、何もやらぬとするなら、あなた方の価値判断は間違っているんだ。自己批判をしなければならぬのです。ただ人を見ればどろぼうと思えという考えは捨てなければならぬと思う、劉寧一君がいかなることをやりましたか。私ども北京で劉寧一君によく会っております。そんなインチキ人物じゃございません。日本に来て日本の公安を害して帰るような人物じゃないのです。しかるに、あなた方は妙な先入観念からそんな価値判断をやっておる。その結果一体どういうことが起りましたか。
  52. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 ただいまお話しの劉寧一氏の具体的な問題につきましては、当時、私どもの方のの調査の結果、私どもはこれは入国を拒否すべきであるという見解でありました。結果においては劉寧一氏は八・六大会後に入国したわけでありますが、その後の動静については私どもの方は調査しておりません。従いまして、劉寧一氏がどのような公安を害する行為があったかなかったかということは、私ども存じません。
  53. 猪俣浩三

    猪俣委員 そんな無責任なことはないじゃないか。入国者に対して公安を害する人物だとして価値判断までした人物に対して、現在その人物が鳩山さんの一断によって入国しておる。それを公安調査庁がほったらかしておくというのは一体どういうわけだ。
  54. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 先ほどから申し上げております通り、私どもは、私どもの本来の調査の結果わかっておるものを資料として大臣に報告し、かつそれに関しての意見を申し上げるのであります。実際に国内におけるいろいろな調査ということは破防法によってやっておるのでありまして、従いまして、そのような権限のない場合にはさような調査をしない場合があるわけであります。それからまた、劉寧一氏がそういう問題があったからといって、実際にその後に入ってきて公安を害する行為がなかったから、公安を害すると前に見たことは間違いであるというふうには一概に申せないと思うのであります。
  55. 猪俣浩三

    猪俣委員 私ども言わんとするところは、そういうことを軽々しく公安調査庁が断定して価値判断をして具申すべきものじゃないと思うんだ。それほどの者ならば――劉寧一君が非常に危険人物だ、これこれの目的を持って来ておる人物だというなら、これに対しては諸般の準備をしなければならぬのに、無責任きわまることだ。だから、さような判断をするところに間違があるんじゃなかろうか。劉寧一君が危険な人物だと思っておる。彼は日本に宣伝することを目的として来ておるのではないことは明らかなんだから、あるいはひそかにそういうことをやるかもしれぬならば十分これは偵察できるはずだから、まずとにかく入れておいて、そうしてそういう妙な妄動をしないように注意を与える、それがよいことじゃなかろうか。真に両国の国交の親善を進めていこうとするならば、そういう方法をとるべきものである。ところが、逆なんだ。入るときはあれは危険人物だと判断して、入ってきてからは知らぬ顔だ。これではやり方が逆ではないかと私どもは思うのですが、これ以上何かと問答しても仕方がないから、私は打ち切りますけれども、世界がこういう情勢になってきて、とにかく各国とも親善を厚うしなければならぬ情勢になってきている。だから、公安調査庁の価値判断というものも、日本の国際外交について相当の影響を及ぼすものでありまするから、ただ人を見てどろぼうと思えという式で、ソ連や中国人だというとすぐ色めがねをかけて妙な価値判断をしないように。そうせられますと、政党出身の大臣などはそれに抗弁する材料などを持っておらぬから、そこで結局において公安調査庁の価値判断というものが左右することになります。これが世界の国交、日本の国交をいかに阻害するか、この点については十二分なる御注意を願いたい。とにかくソ連なり中国なりは国費をもって多数の日本人に国内視察をさしておるのです。彼らに対する答礼としても、われわれはこれを呼ばなければならない。しかるに、妙なことで入国を阻止するというようなことは実に非礼もきわまるものだと思うのですが、公安調査庁の任務、責任というものも重大でありまするから、どうか今後とも、ただソ連人、中国人ということだけですぐ妙な価値判断をしないように私は要望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  56. 椎名隆

    椎名(隆)委員長代理 きょうはこれをもって散会いたします。  次会は公報をもってお知らせいたします。    午後一時二十三分散会