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1956-03-23 第24回国会 衆議院 法務委員会 第19号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十一年三月二十三日(金曜日) 午前十時五十一分
開議
出席委員
委員長代理
理事
椎名
隆君
理事
池田
清志
君
理事
高瀬 傳君
理事
福井
盛太
君
理事
猪俣
浩三
君
犬養
健君
小林かなえ
君
世耕
弘一君 林 博君 花村 四郎君 古島 義英君 横井 太郎君 横川 重次君
西村
力弥
君
武藤運十郎
君
出席政府委員
警察庁長官
石井 榮三君 警 視 庁 (
警察庁刑事部
長) 中川
董治
君
法務政務次官
松原 一彦君 検 事 (
刑事局長事務
代理
) 長戸 寛美君
法務事務官
(
人権擁護局
長)
戸田
正直君
法務事務官
(
入国管理局
長) 内田 藤雄君
公安調査庁長官
藤井五
一郎
君
公安調査庁次長
高橋
一郎
君
大蔵事務官
(
主計局法規課
長
事務代理
) 中尾 博之君
委員外
の
出席者
参 考 人 (
警視総監
) 江口見
登留
君 専 門 員 小木 貞一君 ――
―――――――――――
三月二十日
委員片山哲
君
辞任
につき、その
補欠
として下川 儀太郎君が
議長
の
指名
で
委員
に
選任
された。 同月二十二日
委員池田清志
君
辞任
につき、その
補欠
として薄
田美
朝君が
議長
の
指名
で
委員
に
選任
された。 同月二十三日
委員松永東
君、
薄田美
朝君及び
淺沼稻次郎
君辞 任につき、その
補欠
として
南條徳男
君、
池田清
志君及び
西村力弥
君が
議長
の
指名
で
委員
に
選任
された。 同日
理事池田清志
君同月二十二日
委員辞任
につき、 その
補欠
として同君が
理事
に当選した。 ――
―――――――――――
三月二十日
刑法等
の一部を改正する
法律案
(
高田なほ子
君 外六名
提出
、
参法
第三号)(予) の
審査
を本
委員会
に付託された。 ――
―――――――――――
本日の会議に付した案件
理事
の互選
参考人出頭要求
に関する件
違憲裁判手続法案
(
鈴木茂三郎
君外十二名
提出
、
衆法
第一三号)
裁判所法
の一部を改正する
法律案
(
鈴木茂三郎
君外十二名
提出
、
衆法
第一四号)
法務行政
及び
人権擁護
に関する件 ――
―――――――――――
椎名隆
1
○
椎名
(隆)
委員長代理
それでは、これより
法務委員会
を開会いたします。 きょうは、
委員長
が所用のため不在でありまするので、かわって私が
委員長
の
職務
を行います。 本日の日程に入るに先だちまして、
理事
の
補欠選任
についてお諮りいたします。すなわち、
委員
の異動に伴い
理事
が一名欠員となっております。
理事
に
池田清志
君を私から御
指名
するについて御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
椎名隆
2
○
椎名
(隆)
委員長代理
御
異議
なければ、さよう決定いたします。 ――
―――――――――――
椎名隆
3
○
椎名
(隆)
委員長代理
違憲裁判手続法案
及び
裁判所法
一部を改正する
法律案
を
一括議題
とし、
提出者
より
提案理由
の
説明
を聴取することといたします。
猪俣浩三
君。
猪俣浩三
4
○
猪俣委員
ただいま
議題
となりました
裁判所法
の一部を改正する
法律案
並びに
違憲裁判手続法案
の
提案理由
を
説明
いたします。 まず
裁判所法
の一部を改正する
法律案
の
提案理由
から申し上げます。
違憲
の
法令
、
処分
を阻止し、
憲法解釈
を統一するため、
最高裁判所
による
違憲法令
、
処分自体
の
審査制度
を確立することは、
憲法
の
精神
を護持し
憲法政治
を推進する上に、きわめて重大な意義を持つものと信ずるのでございます。 ところで、
憲法
第九十八条には、「この
憲法
は、国の
最高法規
であって、その条規に反する
法律
、
命令
、詔勅及び国務に関するその他の
行為
の全部又は一部は、その
効力
を有しない。」との
定め
があり、第八十一条には、「
最高裁判所
は、一切の
法律
、
命令
、規則又は
処分
が
憲法
に適合するかしないかを決定する
権限
を有する
終審裁判所
である。」との
定め
があるにもかかわらず、
最高裁判所
の
判決
によれば、いかに歴然たる
違憲法令
、
違憲処分
がなされようとも、
具体的争訟事件
とならない限り、これを除去し、これを無効ならしめる道はないとされているのでございます。ここにおいてか、
現実政治
の面にあっては、大多数の
憲法学者
が
違憲
なりと断定する
事態
が発生し、次第に既成事実化していく傾向を生じております。もし、
法令
、
処分
の
違憲審査制度
を確立することなく、この
事態
をそのままに放任するときは、やがて
憲法そのもの
さえ破壊せられるに至るであろうということが憂慮されるのでございます。 そういうわけでございますから、
現行裁判所法
を改正し、
具体的争訟事件
を前提としなくても、
最高裁判所
が直接、
法令
、
処分自体
の
違憲性
を
審査
し得るよう、すなわち、
最高裁判所
が
憲法裁判所的機能
をも持つよう、明確にする必要があると考えられるのでございます。 この
機能
を果すため、本
改正案
は、
現行裁判所法
第三条に新しく第二項を加え、
最高裁判所
が
法令
、
処分自体
の
違憲審査権
を有することを明らかにし、同時に、第七条に
規定
する
最高裁判所
の
裁判権
は
具体的争訟事件
に関する
裁判権
であることを明らかにしようとするものでございます。 これがこの
法律案
の
提出
の
理由
でございます。何とぞ慎重御
審議
の上すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。 次に、
違憲裁判手続法案
の
提案理由
を御
説明
申し上げます。 この
法律案
は、前に御
説明
申し上げました
裁判所法
の一部を改正する
法律案
と一体をなすもので、同
改正案
において明らかにされた
最高裁判所
が
法令
または
処分
の
違憲性
を決定する
権限
を行使するに当っての具体的な
裁判手続
を
定め
たものでございます。 さて、この
法律案
の概略を御
説明
申し上げますと、まず第一に、この
裁判
は
訴訟
の
形式
をもって行われることになっております。すなわち、
衆議院議員
及び
参議院議員
のそれぞれの
定数
を合計した数の四分の一以上の
員数
の
国会議員
が
原告
となり、
検事総長
を
被告
として
最高裁判所
に
訴え
を提起することによってこの
訴訟
は開始し、その
審理
及び
裁判
は
最高裁判所
の大法廷で行われるものといたしました。
原告
を
国会議員
といたしましたのは、この
訴訟
が、本来
主権者
たる
国民
の厳粛な信託によって行われる
国家機関
の
行為
の
違憲性
を糾明しようとするものである以上、これを訴追するのは
主権者
たる
国民
を代表し得る
資格
を有するものでなければならないという観点に立つものであり、その
員数
を
衆参両院
の
議員
の
定数
の四分の一以上としましたのは、主として
乱訴
の幣を防止せんとする
趣旨
でございます。また、
被告
につきましては、この
訴訟
が公益のためにされるべきものであると同時に、高度の
法律論
を要求するものである点から、
検事総長
といたしたわけでございます。 次に、この
訴え
は、
裁判
を求めようとする
法令
の公布または
処分
のあった日から六カ月以内に、
裁判所
に訴状を
提出
してなさなければならないこととし、もしこの
要件
を欠くときはその
補正
を命じ、
補正
ができないものであるときは、
口答弁論
を経ないで却下の
判決
がなされるものといたしました。
提訴期間
を限定いたしましたのは、このような
違憲
上の重大問題はなるべく早く解決すべきであり、かつ、たとい
違憲
なものでも、すでに有効なものとして実施されている
法令
または
処分
の効果をいつまでも争い得るものとすれば、
法律
的にも社会的にもゆゆしい不安と混乱を惹起するおそれがあることを考慮したからでございます。なお、
原告
の数が多いため
訴訟
の追行が不便となることを考慮して、
原告代表者
の
制度
を設け、
原告
の行う一切の
訴訟行為
は
原則
としてこの
代表者
によってなされることといたしました。 第二に、有効に係属した
事件
の
審理
は、
口答弁論
を中心に行われ、
証拠調べ
の必要があれば
裁判所
は職権でこれをなし得ることといたしました。しかし、有効に係属した
訴訟
でも、
原告
の全員の一致があれば、
判決
があるまではいつでも
訴え
の全部または一部を取り下げることができるとともに、各
原告
はいつでも
訴訟
から脱退できることとなっております。さらに、
原告
が、死亡その他の事由、たとえば
衆議院
の
解散等
により、
原告
たる
資格
を喪失し、または
訴訟
から脱退する者があって、
原告
の数が
訴え
提起の際に必要とされる
員数
に満たなくなったときには、
訴訟手続
は中断するものといたしました。また、
訴え
の変更は
原則
としてこれを認めないことといたしました。これは
違憲裁判
はなるべくすみやかになされることが望ましく、
訴え
をむやみに変更して、
審理
を複雑にし、
裁判
が遅延することは、この要請に反することになると考えたからでございます。ただ、
申し立て
にかかる
法令
を実施するため、またはその委任に基いて制定された
法令
及び
申し立て
にかかる
法令
に基いてされた
処分
については、右に述べましたようなことが比較的少いと考えられるので、これらについてだけは、
申し立て
の
趣旨
を拡張して
裁判
を求めることができることといたしました。 なお、
証拠調べ
において、
公務員
または
公務員
であった者が、その
職務
上の事項について証言または書類の
提出
を求められたときは、
職務
上の
秘密
を
理由
としてこれを拒むことができないことといたしました。これは、
法令
または
処分
の
違憲性
の判断という
憲法
上の重大事が
秘密
を
理由
として不可能に陥ることを許さない
趣旨
であり、
違憲裁判
の権威を強調せんとするものでございます。 第三に、
違憲裁判
は
判決
の
形式
で行われるものといたしました。また、
裁判所
は、
原告
の
申し立て
にかかる
法令
または
処分
に
限り判決
をなすべきものといたしました。これは、
違憲裁判
は
訴え
を待って開始されるという
趣旨
と同一の
理由
によるものであり、これによって審判の範囲を明確にしようとしたものでございます。 次に、
法令
または
処分
について、それらが
憲法
に適合しないとの
裁判
があった場合には、その
裁判
の
効力
は、
原則
として将来に向ってのみ及ぶことといたしてございます。 以上、大体において
違憲裁判手続
の骨子について御
説明
申し上げましたが、なお、最後に二、三の点について述べますれば、
裁判所
は、
違憲
の
判決
をしたときは、すみやかに官報にその
要旨
を公告して、
国民
に周知させると同時に、その
裁判書
の正本を内閣及び
国会
にも送付することとし、また、
裁判
の費用は国庫の負担とする旨を
規定
し、さらに、この
裁判
の
手続等
についての細則は
最高裁判所
の
定め
るところにまかせてあります。 これをもって本
法案
の
提案理由
の
説明
を終ります。何とぞ慎重御
審議
の上すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。 以上をもちまして
裁判所法
の一部を改正する
法律案
、
違憲裁判手続法案
の
提案理由
の
説明
を終ったのでありますが、
提出者側
として
委員各位
に特にお願い申し上げたいことは、本
法案
は、画期的な
法案
であると同時に、
学者
間におきましても
相当議論
の分るる
法律論点
を相当含んでいる
提案
でございます。これは私が申し上げるまでもないことであると存じます。私たちは
憲法
の第八十一条によって
抽象的違憲裁判
ができるものなりとしての信念からこの
法案
を
提出
したものでございまするけれ
ども
、また反対の
議論
もあるわけであります。かような
意味
において、当
委員会
におきまして委曲を尽して
委員各位
の御
質疑
をいただきたいと思っておる次第でございまするが、
議員提案
であり、
学者
間にも争いのありまする重大な
法律論点
を含んでおることのために、
提案者側
といたしましても
法律
的な
用意
を必要といたしまするので、御
質問
いただく方は、その
質問
の前に、
質問
せんとする
法律論点
を整理せられまして
事務当局
まで
提出
をお願いいたしたい。私
ども
もその
質問
の
要旨
につきまして
用意
をいたしまして答弁をし、もって
委員会
の
審議
を完璧ならしめたいと存じておる次第であります。さような希望を申し上げまして、
提案理由
の
説明
を終りたいと存じます。
椎名隆
5
○
椎名
(隆)
委員長代理
以上で
提案理由
の
説明
を終りました。
質疑
は
次会
に譲ります。 ――
―――――――――――
椎名隆
6
○
椎名
(隆)
委員長代理
法務行政
及び
人権擁護
に関しまして
調査
を進めます。 まず、
警視総監江口見登留
君を
参考人
とするに御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
椎名隆
7
○
椎名
(隆)
委員長代理
御
異議
なければ、さよう決定いたします。 それでは、
質疑
の通告がありますので、これを逐次許します。
猪俣浩三
君。
猪俣浩三
8
○
猪俣委員
最初に
戸田人権擁護局長
に
お尋ね
いたしたいと思います。 これは元
日本女子大
の教授でありました
東佐誉子女史
の
不法監禁告訴事件
に関することであります。第二十二
国会
におきまして私は
質問
をいたしましたが、
警察署
におきましても、
人権擁護局
におきましても、取調べ中で、まだ
結論
が出ないままに二十二
国会
は終りました。二十三
国会
は、私はちょうど
中国視察
中でありましたから
国会
に出ることができませんので、そのままに相なったのであります。 そこで、本日は、
東女史
の問題につきまして、どういうふうにこれが取り扱われておりますかを順次各
当局
に
お尋ね
したいと思います。ただ、私がこれを
お尋ね
いたしまするゆえんのものは、
東女史個人
の問題よりも、一般的な
人権擁護
の問題として
お尋ね
するのであります。これは申すまでもないことでありますが、私は
東女史
なる者を全然知らなかったのであります。
婦人公論
に
東女史
の手記が発表せられましてから、私は何の連絡もなしにこの問題を取り上げたのでありますが、自来注意いたしておりますと、この
東女史
のほかに、どうもこれに類似したような
人権じゅうりん
問題が起っておるのではなかろうか。私
ども
は、今まで、
人権じゅうりん
といいますと、
国家権力
を握っておりまする
警察
官とか、
検事
とかいうことをすぐ頭に描きまして、その方向にばかり向いておったのでありますけれ
ども
、われわれの
盲点
として、思わざるところに
人権じゅうりん
問題があるのじゃなかろうか。一つは
精神病院
であります。そのほかは
新興宗教
である。あるいは
社会事業
を標榜しておりながらボス化しましたり、そういう
事業団
みたいなものであります。こういものはわれわれ平生どうも見のがしがちである。
国家権力
の
人権じゅうりん
につきましては、
刑事訴訟法
その他におきまして相当尊重せられまして、今はそうはなはだしいことは少いかと存ずるのでありますが、かような法の
盲点
をつきましたる
人権じゅうりん
問題が新たに
社会現象
として発生しておるのじゃなかろうか。そういう
意味
におきまして、一連の関連ある
意味
において私は
お尋ね
をしたいと思うのであります。 そこで、きょうは、この
精神衛生法
に関しまする問題といたしまして、
東女史
その他の件につき、なおまた、
新興宗教
の
人権
じゅりん問題といたしまして、立正交成会というような団体の問題、そういうことにつきまして
お尋ね
をしたいと思うのであります。 第一の
東女史
の問題につきまして、
戸田人権擁護局長
はどういうふうに取り扱われたか、及び
事件
の真相がどういうことになっておるかを御
説明
いただきたいと思います。
戸田正直
9
○
戸田政府委員
お答えいたします。
本件
は、
当局
における
調査
は一応終了いたしました。
不法監禁被疑
事実については、
警視庁
においても
調査
いたしまして、すでに
東京
の
地方検察庁
に
事件
を送致いたしておりますので、
検察庁
とも協議の上
最終的結論
を出す予定でおりますが、現在のところ次のような見解をとっております。 まず、
日本女子大学
が
精神衛生法
に
定め
ている
入院措置
を、
東佐誉子
が使用していた同
大学
の
フランス料理研究室
の
明け渡し
のために
不法
に利用したのではなかろうかというような
疑い
がございます。それは、
本件
の遠因は、
東佐誉子
が
昭和
二十二年の五月八日
休講
を命ぜられ、さらに翌二十三年十二月免職されたことにありますが、免職された直接原因が、
昭和
二十一年七月、当時の
井上秀子学長
が追放され、その後任の
選任
に当って
大橋広
現
学長
が
学長
となることに極力反対したことにあったのではなかろうかと思われる点、さらに、
日本女子大学
では
東佐誉子
に
休講
を命じました
昭和
二十二年五月より
東佐誉子
、及び
昭和
二十八年七月ごろより
同人
の
実弟
である
東諦
に対して部屋の
明け渡し
を求めるため再三交渉を行なっておりますが、
昭和
二十九年四月下旬ごろから突然
東佐誉子
の
精神状態
について論議されており、それまでは
同人
の
精神状態
についてはあまり疑問を持っておったような形跡が認められておらないのであります。それから、
日本女子大
の
事務局長
である
中原賢次
が
日本女子大学
に復職した
昭和
二十七年夏ごろより、
東佐誉子
が使用していた
フランス料理研究室
の処理について、一、法の
手続
により
明け渡し
を要求すること、二、
警察
に依頼すること、三他の適当な方法をとることの三案を当時の
理事会
に
提出
いたしました。一の案の法の
手続
により
明け渡し
を要求するのは否決されました。二の
警察
に依頼することの案は
警察
に拒絶されました。そこで、三の案の
具体策
として、
東佐誉子
の
親族
に解決してもらうということを考えましたが、
実弟
の
東諦
は、
法的手続
をとってもらいたいということを主張いたしましたような
関係
で、助力を得られなかった結果、
研究室
の
明け渡し
を得ることに非常な困難を感じておりました。
昭和
二十七年の夏ごろ、同
大学
の
PTA会長
の
荘寛
、この人は
精神医学研究所
の所長でありますが、この方にその件を相談したところ、
精神病
の
疑い
があるから
診察
の必要がある、もし
精神病患者
ということになれば
精神病院
に
入院
させることができる旨の発言があってこれ以後急速に
東佐誉子
を
精神病院
に
入院
させる話が具体化したように思われるのであります。しかしながら、この
東佐誉子
が
精神病者
であるかどうかということについて、
東邦医科大学
の
精神神経科
の
医師
の
新井尚賢
、慈恵医科
大学
の
神経科
の
医師
の
竹山恒寿
、この両氏は
警視庁
の嘱託によって
鑑定
した
医師
でございますが、この両
医師
の
鑑定
の結果によりますと、
昭和
二十九年十一月二十三日当時の
東佐誉子
の
病状
は
入院
を必要ならしめる程度であったということになっておりますので、
入院手続
に多少の瑕疵があったとしましても、
不法監禁罪
を構成するかどうかということについては非常に疑問がございました。また、かりに
日本女子大学
の
理事者
に、
東佐誉子
が
精神病者
であるということを奇貨として多年の紛争であった
料理研究室
の
明け渡し
問題を解決しようとしたいというふうな意図が見られるといたしましても、これが
不法監禁
になるかどうかということは、率直に申し上げまして非常にむずかしい問題でありまして、
精神衛生法運用
上の問題、また
診察技術
の巧拙の問題というようなことについてもいろいろ
議論
がございますが、徳義上の問題は別として、これがいわゆる
不法監禁
になるかは非常にむずかしい点がございまして、これらにつきましては、なおその
処置
について慎重に検討いたしておる次第でございます。 それから、
入退院
の
手続
について申し上げたいと存じます。
東佐誉子入退院
の
手続
は、
昭和
二十九年十一月二十三日から翌月八日までは
精神衛生法
の第三十三条の
規定
による
保護義務者
の同意による
入院
でございましたが、同月九日に、
精神衛生法
第二十九条の
規定
による知事の
措置入院
、
強制入院
に切りかえております。
昭和
三十一年一月十一日退院させたものでありますが、
調査
の結果次のような
違法行為
が行われておりました。まず一に、
東京武蔵野病院長
の
上田守長
は、
精神衛生法
第三十六条の
規定
によって、
東佐誉子
を同意
入院
させました
昭和
二十九年十一月二十三日から十日以内に
東京都知事
に対し、
精神障害者入院届
を
提出
しなければならない
義務
を有しておるのでございますが、その
期間
を順守せず、
昭和
三十年一月十一日
退院許可願
と同時に
提出
しているのでございます。これは明らかに同条第二項の罰則を課せらるべき
行為
であると存じます。また、事実を知りながら何らの
処置
をとらなかった
東京都庁
の
関係職員
は、
職務
怠慢であったという非難を免れないと思うのであります。次に、
昭和
二十九年十二月八日、
東佐誉子
を
精神衛生法
第二十七条の
規定
により
精神衛生鑑定医
が
診察
した場合、
東京都知事
がその
診察
に
当該吏員
を立ち会わせなければならないにもかかわらず、その立ち会いがなされておりません。 次に、
上田守長
は、
昭和
二十九年十一月二十三日すでに同意
入院
させている
東佐誉子
を、翌月九日に至って
精神衛生法
第二十九条による
措置入院
に切りかえておりますが、これには次のいきさつがございます。
上田
氏が、
昭和
二十九年十二月二日ごろ
都庁
において、
精神病院
の直接の
監督機関
である
東京
都
衛生局医務部
の
優生課長広瀬克己
氏に対し、口頭で、
東佐誉子
という
患者
がいるが
強制入院
させたい旨相談いたしました。
措置入院
の
要件
を満たさないものとしてこれは拒絶されました。その後、
上田守長
は、同月の七日に
精神衛生法
第二十三条の
規定
による
精神障害者診察
及び
医療保護申請書
を
東京都知事あて
、
板橋保健所
を経由して
提出
いたしました。
板橋保健所
では同月二〇〇八号をもって
所管課
である
優生課
に送付いたしました。
優生課
ではこれを十二月九日
衛医優収
――これは記号でございますが、第一三六二号で受理いたしましたが、
広瀬課長
は、
入院
する
病院
の長が
申請
することは妥当でない、
患者
の
親族
かまたは
学校
の
先生名義
にした方がいいという旨を
上田守長
に告げまして、その
補正方
を求めたのであります。そこで、
上田守長
は、その
補正方
について
中原賢次
に相談いたしまして、新たに
中原名義
で
精神障害者診察
及び
医療保護申請書
を
昭和
二十九年十二月二十二日に
都知事あて
、
小石川保健所
を経由して
提出
いたしました。同
保健所
では、同日これを受理いたしまして、
所管課
の
優生課
に送付いたしました。これを受理した
優生課
では、全く
申請者
の異なる
申請
でありましたが、前記のような事情にあったので、特にあとで
提出
された
中原賢次名義
の
申請書
をさきに
上田守長
が
提出
した
申請書
の
補正
という
形式
で受理して、十二月九日初めから
中原賢次
から
申請
されたものとして処理いたしました。 かような経緯であるばかりでなく、次のような違法な事実が認められるのでございます。 それは、
精神衛生法
第二十九条による
措置入院
は、第二十七条の
規定
による
診察
の結果、
自身
を傷つけまたは
他人
に害を及ぼすというような
要件
に該当しなければなし得ないものであるにもかかわらず、
東佐誉子
の場合、全くその
要件
を欠くものと認められるのでございます。すなわち、すでに
東佐誉子
を同意
入院
させておるので、かりに右のような危険があったとしても、あらためて二十九条による
措置入院
の
手続
をとることは無
意味
なことで、許されないものと考えるのでございます。 次に、あらゆる
証拠資料
を検討しましても、
東佐誉子
が
自身
を傷つけまたは
他人
に害を及ぼすおそれがあると認められるようなものは
資料
がございません。 それから、この点につきまして
精神衛生鑑定医
として
東佐誉子
を
診察
しました
上田守長
は、
東佐誉子
が公けの財産を占拠して
学校
の利益を傷つける
行為
は明らかに
精神衛生法
第二十九条の
規定
に該当するものと認定したのだ、かように弁明いたしております。同条の
他人
に害を及ぼすという
規定
は、大体において
刑罰法令
に触れるような
行為
に限るのが妥当であると解釈されますので、
東佐誉子
の
病状
に関する
上田守長
の右のような診断はにわかに首肯できないのでございます。 その次に、
優生課長
の
広瀬克己
の、
措置入院
は、事実上、
法律
に
規定
された
要件
を重視するよりも、
治療費
を都に負担させるという
理由
でなされておる、
本件
もその一例であるという旨の陳述がございます。 以上の通り、
東京武蔵野病院
及び
東京
都にそれぞれ違法な
行為
がありますので、この点については
当局
としてもその
責任者
に対し勧告をいたしたい、かように考えておる次第でございます。 それから、
診察
について、ちょっと申し上げたいと存じますが、すでに申しましたように、
昭和
二十九年十一月二十三日に、
東佐誉子
を
精神衛生法
第三十三条に
規定
する同意
入院
をさせたのでありますが、
同人
を
入院
させる場合、果して同条に
定め
る
診察
をなしたかどうかという疑問でございます。
精神
障害者の
診察
は他の病人に対する
診察
とある程度異なるものがあることはやむを得ないところでございますが、厚生省は、
精神衛生法
に
定め
る
診察
の解釈として、少くとも
医師
が
患者
を一瞥することを要するという見解を持っております。しかるに、
上田守長
は、
昭和
二十九年七月以降
日本女子大学
から
提出
された
資料
及び
昭和
二十九年十月二十日
東京武蔵野病院
食養課長小野房子が
フランス料理研究室
に
東佐誉子
をたずねて直接観察して得た
資料
に基いて、
昭和
二十九年十一月二十七日、
東佐誉子
は
精神
障害者であるから
昭和
二十九年十月三十日
入院
させるという決定をなし、その決定を
日本女子大学
に伝えたところ、同
大学
も一度その決定に従うことになりましたが、翌日一部の
理事者
から、
実弟
東諦
の上京を待って処理すべきであるという意見が主張されました結果、前にした同意を取り消すことになって、十月二十九日
中原賢次
が
上田守長
をたずねて、来たる十月三十日、明日の
入院措置
は延期されたい旨
学校
側の意向を伝え延期さした事実がございます。次に、
上田守長
は、
当局
の
調査
に対し、
東佐誉子
の
診察
は
昭和
二十九年十一月二十三日の
入院
当時、
病院
の玄関において一瞥した上なしたと弁解しておりますが、右の
東佐誉子
を
入院
させることに決定したことがありますが、これが全く厚生省の最小限度の
診察
という一瞥をなしたかどうかという疑問の点でございます。
上田守長
は十一月二十三日
診察
したと主張しておりますが、かりにその主張が事実であるといたしましても、強制的に
東佐誉子
を
病院
に収容するという
行為
に着手する以前に少くとも一瞥すべきであったにもかかわらず、その後になしておりますことは、
精神衛生法
に
定め
る
診察
をなしたものに当るかどうかという疑問を持っておるのでございます。この疑問に対しましては、
上田守長
が十一月二十三日
東佐誉子
を
病院
の玄関において
診察
したという主張と相反する
東京武蔵野病院
看護主任舟山忠重及び
東佐誉子
の供述によって、これらの点が確かめられるのでございます。以上のようでございまして、果してこれが
精神衛生法
にいう妥当な
診察
であるかどうかという疑問が残されておりまして、
当局
といたしましては、この点につきまして、
精神衛生法
一般の運用について慎重になすよう厚生省にも要望いたしたい、かように考えております。 るる申し述べましたが、
結論
といたしまして、
入院手続
等の違法については
関係
当局
に勧告をいたしたいと考えておりますし、
不法監禁被疑
事実につきましては、ただいま
検察庁
において捜査中でありますし、また、先ほど申し上げましたように、率直に申し上げて、この
精神衛生法
の違反であるかどうかということについて非常に疑問の多い事案でございますので、さらに十分検討いたしまして、処理をいたしたい、かように考えております。
椎名隆
10
○
椎名
(隆)
委員長代理
猪俣委員
に御了解を求めておきますが、岸本事務次官は法制
審議
会で手が抜けられないそうですから、岸本事務次官に対する
質疑
は次回に譲っていただきたいと思います。
猪俣浩三
11
○
猪俣委員
今、
人権擁護局
長の詳細なる
説明
を承わりました。よくお調べいただきまして、感謝いたします。ただ、なお強く要望したいことは、
人権擁護局
の任務というものは非常に重大であり、今の法務大臣もその点については非常な関心を払っておる際でありますので、
戸田
局長はこの際厳正中立な立場からこの問題を徹底的に処理していただきたい。これが
人権擁護局
の信用を高からしめるゆえんであります。今までいろいろ
人権擁護局
につきましても非難がある。しかし、それは、予算が少く、人員を減らされた。木村篤太郎法務大臣のときに縮小されてしまった。あれはわれわれ非常に反対したのでありますが、今日になってしまったのです。牧野法務大臣は相当そういうことを考慮せられておるようでありますから、この際
人権擁護局
の拡大強化をはかる足場としても、この問題に徹底的な活動をしていただきたい。 そこで、今お聞きしただけでも、われわれが当初からにらんでおるごとく、ますますもってこれは
人権じゅうりん
だと思うのでございます。結局、
東佐誉子
の部屋占拠に対して
明け渡し
をさせる手段としてかような非常手段をとったということは明白である。いろいろ三百代言的なことを言って言いのがれをしているかもしれませんが、私はその点について実に重大な問題だと思うのであります。正々堂々と家屋
明け渡し
の
訴訟
を起し、その執行をかけるべきであります。しかるに、さような
手続
を経ずして、
精神病
人なりとして、いやしくも女子
大学
の教授として日本の栄養学の大家として世界的に有名になっておりますこの女史を、ほとんどその生命を奪うがごとき
精神病
人として二カ月になんなんとする
期間
精神病院
に隔離して、同級生が泣いて
訴え
ても教え子が
訴え
ても面会させないという非常手段を講じた。これは許すべからざることであります。これは、私が憤慨するのみならず、すでに新聞記事にも現われておりまして、
東京
都立
大学
教授の関根秀雄さんが日本経済新聞一月二十七日に「日本の知恵」と題して書いております。「いささか旧聞に属するけれ
ども
、都下で有名なさる女子
大学
が、硬骨な教授を何とかして追い出そうと、永年にわたって彼女が狂人であるとの宣伝にこれつとめ、ついにある日、
研究室
の彼女を自動車に積みこんでさる
精神病院
にほうりこんだという話である。」、こういうことから書き出しまして、結局、「ここの
学校
の教授たちは、事ここに至るまで、誰一人として、このいささか変人であるとはいえ正義一徹の老教授をまもろうとはしなかったのである。雑誌社が両当事者を招き、専門家すなわち
精神
医と
法律
家との立会いのもとに、
事件
の真相を語らせようと公平なとりはからいをしたときにも、なぜか
学校
側はこの釈明の好機会をみずから放棄した。これではいくら弁明書をたくさん刷って父兄や校友の間にばらまいても、世間の疑惑はますます深まるばかりである。もっともこの問題は、その後一ぺん衆院法務委でも採上げられたが、どうやらそれきりになってしまったようである。」、こういうふうに、まだたくさん論じておりまして、
人権擁護
月間に際してこの点を
訴え
ております。 そこで、私
ども
は、これは大きなテーマとして、
人権擁護局
が今おっしゃられたように各
関係
者その他に厳重なる警告を発していただきたい。さようことは
人権擁護局
の職権としてあるわけであります。そうして、それぞれ処罰を求むべきものには処罰を要求していただきたい。かようなことがひんぴんとして行われましたら、
人権擁護
もヘチマもありません。今度の
憲法
によりまして基本的
人権
が尊重せられ、官憲は相当留意せられて、
刑事訴訟法
その他において窮屈なぐらい、強盗犯人を逮捕するにも実に慎重な態度でやっておられる。しかるに、一
精神
医が勝手なふるまいをやって、人の人格的生命を断つがごときことをいとも容易にやられるというに至っては、
人権擁護
もヘチマもあったものではありません。私は、この
意味
において、
人権擁護局
及び法務省におかれましても、ことに松原政務次官はその間のことはよく御存じの、最も
人権擁護
の闘士であられるがゆえに、省の問題としてお取り上げ願いたい。 そこで、私は政務次官に
お尋ね
いたしますが、今
人権擁護局
長の
説明
したような事案がここにあるのであります。これに対しまして、私は法務省としても十分なる御研究を願いたいと存じますが、法務省の御見解を承わりたいと思います。
松原一彦
12
○松原政府
委員
この種の問題は、実は私まだ日が浅うございますけれ
ども
、
人権擁護局
長からたびたび報告を受けておりまして、実に容易ならぬことだと思っております。なおあとから御
質問
もありましょうが、全国にわたりますと非常に大きいと思います。
精神
衛正法のあり方についてもいろいろ疑問があるのではないかと、実は案じておるところでございます。ただいまお示しもありました通りに、今後十二分に注意をしまして善処したい。特に
人権擁護局
は将来最も慎重にその権威を保つよういたしたいと思います。
猪俣浩三
13
○
猪俣委員
なお松原政務次官に
お尋ね
いたしますが、
人権擁護局
は、先ほど申しましたように、木村法務大臣時代に縮小されたのでありますが、これをなお拡張せられる意思があるかどうか。何か
人権擁護局
も非常に繁忙のように見受けられるのでありますが、これは大切なことでありますので、法務省として何かの御構想があるのではなかろうか。牧野法務大臣はそんなようなお話をなすったよう私は記憶しておりますが、当
法務委員会
では正式に承わっておらぬのでありますけれ
ども
、法務省においては
人権擁護局
の拡大強化のようなことをお考えになっておる点があるかどうか。もしあるとすれば、お漏らしを願いたいと存じます。
松原一彦
14
○松原政府
委員
牧野法務大臣は絶えずそれを言っておりますので、大いに感じておりますが、不幸にして予算がとれませんでした。今後十分検討しまして、堅実に進めたいと思っております。
猪俣浩三
15
○
猪俣委員
この
東佐誉子
の問題につきましては、今
人権擁護局
長から詳細な
説明
を聞きましたので、あとで速記に読みまして、なお私は
当局
に
お尋ね
したいと思うのでありますが、最初の
親族
の同意
入院
もはなはだ違法でありまして、これは
戸田
局長も御存じの通り、ただ一人諦という弟があるきりなんでありますが、この弟は姉さんの佐誉子さんとは二十年も会っていない。そうして奈良県下におる弟である。そこへ
学校
の
代表者
が数回行って、そうして、ねえさんは乱心してしまった、どうしても今のうちに
入院
させなければならぬということを言い含めて、諦を上京せしめましたが、ねえさんに一ぺんも会わせない。二十年も音信不通なものを、一ぺんも会わせないで、同意に判こを押さしたという。あとで姉さんが出て来てから、姉弟が初めてここに話し合って、
学校
にだまされたことを弟が知りまして、烈火のごとく憤りまして、私のところに長文の手紙をよこしております。これも局長は御存じだと思う。実にこの
学校
のやり方の陰険悪らつ、これは一体教育者として許すべからざる行動をとっております。
人権
の何ものたるかを知らざる
学校
なんかは
意味
がないと存じますが、かような非常手段をとって、この熱心な一老教授を葬ってしまった。こういう点につきましても、私
ども
は糾弾しなければならぬと思うのであります。 そこで、今
検察庁
に事が移っておるというお話でありまするので、刑事局長からこの
検察庁
のお調べについての経過を承わりたいと思います。刑事局長は来ておりませんか。
椎名隆
16
○
椎名
(隆)
委員長代理
長戸刑事局長
代理
が来ております。
長戸寛美
17
○長戸政府
委員
本件
は昨年の十一月二十四日に
東京
地検で
警視庁
防犯部から、
日本女子大学
長
大橋広
他四名に対する監禁、窃盗、脅迫、名誉棄損、こういうふうな被疑
事件
の送致を受けて、現在捜査中でございます。最も問題になりますのは
不法監禁
の罪が成立するかいなかという点であろうと思うのでありますが、
東京
地検におきましても、この事案の重要性にかんがみまして、まず、同意
入院
といわれておるわけでありますが、それが真実
保護義務者
の同意があったかどうか、それが任意になされておったかいなか、
学校
側からの圧力によって押しつけられたものでないかどうかというふうな点を中心として取調べをやっておるわけであります。地検としましては、主任
検事
をその
実弟
東諦
という人のおるところに派しまして、その
実弟
及び友人
関係
者等を調べたのでございます。二、三日前帰京いたしましたので、その点を整理し、さらに、先ほど
人権
局長からお話しの、二十九条の
措置入院
についても問題があるようでございますので、その点もさらに引き続いて取調べをしておるという段階になっております。
東京
地検といたしましては相当調べは進捗しておりますので、近い将来に
結論
を出し得るというふうに考えております。
猪俣浩三
18
○
猪俣委員
質問
が飛び飛びになりますけれ
ども
、政務次官がおいでになりますから、もう一点
お尋ね
しておきますことは、今の
戸田人権擁護局長
の御
説明
によりましても、どうもこの
精神衛生法
なるものに相当不備の点がある。そして、いとも容易に
人権じゅうりん
が行われる。ことに私
ども
のおそるべきことは、
精神病
の
鑑定
医というものは非常に数が限られておる。そうして彼らは彼らで横のつながりを持っておるのであります。一医者がある程度
診察
したものに対して、それをひっくり返すような
診察
をほかの医者はなかなかやらぬのであります。ことに、医者仲間には派閥がありまして、同系統の医者はお互いに擁護し合う点がある。今擁護局長が申されました
鑑定
医というものは、一体ほんとうの真実の
鑑定
をしたかどうか、私は相当疑問がある。それはこの武蔵野
病院
の今問題になっておる
上田
某と一門の人たちだそうであります。その
意味
におきまして、全く
精神
医の派閥の違った者でないと、真正なる
診察
ができない。かようなグループを作りました
精神
医者
ども
が皆勝手なる
診察
をして、それによってどんどん人を収監するようなことがありましたならば、
人権
もヘチマもあったものじゃないと存じます。ところが、専門のことの
関係
でありますので、どうもしろうとにはわからぬ。医者が気違いだと言えば、そうかと言うより仕方がないという現状だ。そこで、
精神衛生法
は、あまり医者を信用し過ぎて、いとも簡単に人身の収容を許しておるような点があるのじゃなかろうか。今の
刑事訴訟法
のやり方とあまり不均衡なやり方ではなかろうか。やはり、判事なり何なりの何らかの令状によって、宣誓を命じたる医者の
鑑定
によって収容するというようなことにならなければ、一般の犯罪者にたいする取扱いとははなはだ不均衡を来たす。医者なるがゆえに絶大なる信任を与え、
親族
なるがゆえに絶大なる信任を与えた。この
親族
なるものが、この場合には
東諦
は非常に
学校
にだまされたのでありますけれ
ども
、
親族
というても、これはこの後の
質問
にまた出てきますけれ
ども
、この
親族
なるものが、相続財産争いや何かの場合においては、はなはだ危険であります。この
親族
とある一定の医者とが連絡をとりましたならば、大へんなことを起す。私は、この
精神衛生法
なるものは根本的に改正しなければ、
人権
保障ができないと存じております。 そこで、これは要望でありますが、法務省におきましても、この処罰の方面から、あるいは
人権擁護
という立場から、この
精神衛生法
に対して御検討を願いたいと思います。私
ども
も
法務委員会
としても検討したいと存じまするが、
当局
といたしましても、もう一ぺん御検討を願って、この新
憲法
の
精神
に合致するような
人権擁護
が十分にできるように御考慮願いたい。その点について松原政務次官の御意見を承わりたいと思います。
松原一彦
19
○松原政府
委員
これは法務省だけでも扱いかねる問題でございますから、厚生省ともよく連絡しまして、慎重に
審議
して御要望に沿うようにいたしたいと思います。
猪俣浩三
20
○
猪俣委員
次に、これは石井
警視庁
長官に
お尋ね
いたします。 これもやはり
精神病
に関する問題でありますが、読売新聞の記事であります。「三千五百万円脱税もみ消し」として、国税局部長も共謀で、脱税を指摘した経理部長を
精神病院
に強制収容したという大見出しの四段抜きの記事が出ております。これは横浜でありますが、土田捜査二課長の話な
ども
出ておりますから、
警視庁
ですかな。もし江口さんの、
警視庁
の取扱いでありますならば、
警視総監
から、そうでない場合には
警察庁長官
からこの問題についてお答え願いたいと思うのです。 もう御存じかもしれませんが、この新聞の記事が事実だといたしますと、私
ども
が心配しておるようなことが現実に存在しておることになりまするので、はなはだ驚愕に値するのでありますが、神奈川県の藤田電機製作所、この社長の藤田正三という人がそれぞれ収賄あるいは贈賄容疑で調べられた。ところが、一切の事情を知っている経理部長が事実を事実として主張しておる。これがはなはだけしからんというので、経理部長の虎岩頼敏という人を
精神病
人として
入院
させてしまったという事案であります。こういう事実があったかなかったか、もしあったとするならば真相がどうであるか、その後それがどういうふうに
処置
されておるか、これも一つ御
説明
いただきたいと思います。
石井榮三
21
○石井(榮)政府
委員
ただいま
猪俣委員
の
お尋ね
の問題は、昨年の十月十六日の読売新聞に報道されたのでございまして、ただいまお話の出ました藤田電機製作所の経理部長虎岩という人が、横浜の脳
病院
に
昭和
三十年二月から五月の間に三カ月間
入院
したという事実があります。これに関連します詳しいいきさつは、私の方の刑事部長が承知いたしておりますので、便宜刑事部長から御
説明
いたさせます。
中川董治
22
○中川(董)政府
委員
ただいまの読売新聞の記事は非常に重要であります。
事件
は神奈川県の
事件
でございますので、神奈川県の捜査
当局
をして厳重に調べさせたのでございます。
本件
関係
につきましては、税務職員とこの藤田電機製作所
関係
との贈収賄被疑
事件
が別個にありまして、贈収賄被疑
事件
につきましては、神奈川県の捜査
当局
において厳重な捜査を逐げ、それぞれ被疑者を発見いたしまして、これを検挙送致いたしておるのであります。その被疑者の一人に、ただいまお示しのございましたこの会社の経理部長の虎岩頼敏(四十才)がおるのでございますが、この虎岩頼敏さんは、
昭和
三十年二月四日から五月四日まで横浜に所在いたします私立横浜脳
病院
に
入院
した事実もございます。さらに、三十年五月四日から同年八月一日まで財団法人復光会総武
病院
と称する
精神病院
に
入院
いたしております。従って、この虎岩氏が
精神病院
に
入院
しておったということも、これまた事実でございます。 ついては、
精神病院
に
入院
したことについて、だれかが作為をもってそういう
入院
の
処置
を購じたかどうかについて
疑い
が存するのでございますが、神奈川県の捜査
当局
にいろいろ家庭の
関係
、ことに奥様の状況その他を精密に捜査せしめたのでございますが、現在のところは、この奥様が虎岩氏に大へん家庭内において虐待されるという事実等がございます。また、奥様が胆石病をわずらっとおって重態であるという
関係
等もあって、いろいろ
親族
知己の
精神病
の
医師
とも相談いたしまして、奥様の
申請
に基いて
精神衛生法
三十三条に基く同意
入院
の
処置
がとられておるといった状況でございまして、現在のところ、これが
不法
に監禁されて
入院
したという証拠が見つからないのでございます。
本件
を贈収賄
関係
としていろいろ捜査いたしましたときに、たまたまその被疑者が前に
精神病院
に入れられたという事実がありましたので、非常に世間から
疑い
を持たれた、こういうような実情ではなかろうかと思っておりますが、
関係
の
事件
が重要でありますので、現在のところは一応適法に
入院
したように考えられるが、さらに慎重にその
関係
の状況を調べる、こういう状況であります。
猪俣浩三
23
○
猪俣委員
次は読売の十二月五日の
法律
相談の投書欄であります。「二カ月ほど前に親類の者たちが
親族
会を開いて、夫が頭が変だから
精神病院
に入れた方がよいと勝手に決めてしまい、いやがる夫を義弟がむりやりに
病院
につれて行って一人で
手続
をして強引に
入院
させてしまいました。これまで十年間もいっしょに暮してきた私でも、夫は多少カンの鈍いところはあっても、頭が狂っているなどとは全く思いもよりませんので、再三
病院
に行って退院させてくれるよう頼みましたが、
手続
をした義弟の承諾がなければ退院させられないといってとりあってくれません。実は私の家にはいろいろ複雑な事情があるので、義弟たちが自分らの都合のために私の夫を気違いに仕立てて
病院
に入れてしまったのではないかと思われるふしもあり、それを考えると口惜しくていてもたってもいられない気持です。夫を
病院
から連れ戻す道はないものでしょうか。」、こういう相談の投書があるのであります。これは
人権擁護局
が取り扱っていると承知いたしますが、いかような事情であり、どういうふうなお取扱いになっているか、これも局長から承わりたいと思います。
戸田正直
24
○
戸田政府委員
ただいま
猪俣
さんの御
質問
の
法律
相談につきましては、同じ欄で
人権擁護局
から回答をいたしております。この投書は大阪のS子という匿名でありまして、
お尋ね
のS子がどこにいるかわかりませんので、新聞社にも問い合わせたのですが、所在不明で、これを調べるわけには参りませんので、ただ回答だけということでこの
事件
は終っております。
猪俣浩三
25
○
猪俣委員
きょう
資料
を紛失いたしましたが、週刊朝日か何かにあったと思いますが、二十七年間座敷牢に入っておった、親に入れられ、親の死後弟が当主になり、兄は二十七年間もその家の一室たる座敷牢に閉じ込められておったのを、
人権擁護局
の働きでしゃばに出てくるようになったという
事件
かあった。地元の擁護局で大へん奔走してこれを救い出したということが出ているのですが、この点についてどういう事情であるか、
戸田
さんの方で御存じであったら御
説明
願いたいと思います。
戸田正直
26
○
戸田政府委員
ただいま御
質問
の週刊朝日かに出ているというのは、多分青森県三戸郡福地村大字法師岡というところの大下福次郎という人の
事件
ではなかろうかと考えますので、これについて御
説明
いたします。
本件
は
昭和
三十年九月三十日に受理いたしました。これは申告によったものでありますが、申告の
要旨
を大体申し述べたいと思います。申告者の大下福次郎(当五十三才)は、
昭和
六年三月ごろ、おじの大下弥五郎と財産相続のことで口論し、その後こん棒で弥五郎宅の雨戸を破り、室内に押し入って電燈を破損し、また印鑑を貸せとおどかすなど、暴言ないし暴行を働いた。そこで、おじの弥五郎は、身の危険を感ずるとともに、福次郎を狂人視して、村の監在巡査に告げる一方、福次郎の父酉松と相談の上、父酉松の住居の南側宅地内に間口一間半、奥行き一間のがんじょうな一むねの小屋を建て、
昭和
六年四月七日、当時の駐在巡査小野某を立ち合わせて、福次郎をこの小屋へ監禁いたしました。福次郎は、それから二十四年六カ月の長い間この小屋から一歩も外へ出ることを許されずに現在に至りましたが、
同人
はこの間において寝具は敷き掛け各一枚、たんぜん二枚、ゆかた一枚を与えられたのみで、洗たくやつくろいは一回も施されたことがなく、従ってはなはだしく汚損したものを使用させられている。それから、食事は、三食とも、大わんに飯とみそ汁を各一ぱいずつ与えられ、盆、正月、彼岸の三回には特にわずかのごちそうを与えられている。その次に、父母と死別した際は、その死に目にも会わせられず、また会葬にも参加させられていない。それから、入浴は一回もさせられたことがなく、また、散髪は、監禁された当時、巡査立ち会いの上二、三回散髪してもらったが、その後はバリカン一丁与えられて、本人が散髪している。小屋には、採光のため西側と南側の各上部に二尺四方くらいの窓が設けられ、この窓には格子が打ちつけられ、その上は金網でおおわれているが、室内は暗く、日光浴はほとんど不能の状態に置かれている。それから、便所は小屋の東北隅に敷板をくりぬいて作られているが、室内は臭気はなはだしく、嘔吐を催す状態で、きわめて不衛生的な生活をさせられている。なお、小屋の入口には三尺四方のとびらが設けられているが、とびらは二寸五分くらいの角材を格子にして、その裏側に板を張りつけられたがんじょうなもので、外部から施錠されている。 実は、この
事件
がわかりましたのは、このうちに新聞を毎日配達してきます新聞配達所のおかみさんがおりまして、たまたまこれが発覚します数日前に、水をくれ、水をくれという声が聞えるので、一体何だろうかと思ってその小屋をのぞいたところが、どうも人間が入っているらしいというので、一体あなたどうしたのですかと聞いたところが、私はもう長いこと入れられて出られないのだというようなことから、いろいろ聞いて、あんた気違いじゃないかと聞いたところが、私は気違いじゃないというようなことで、それじゃ気の毒だというので、さっそく帰って自分の主人に話した。また、主人が、それは気の毒だというので、再三ここへ来て様子を見て、どうも気違いじゃなさそうだというので、それじゃ私が何とか助け出すように方法を講じてあげましょうというので、この高橋治祐という人から八戸の法務局の支局に申告がございまして、さっそくこの
事件
を、
不法監禁
の
疑い
が濃厚であるというので
調査
に着手いたしまして、まず本人の身柄を釈放いたしました。 こういう
事件
でございますが、二十五年もこの小さな小屋の中に入れられておった、実に非常識、非文化的な、ちょっと奇々怪々な、想像もできないような
事件
でございましたが、この
事件
の当時の
関係
者でありました、おじに当る大下弥五郎、これはすでに死亡いたしております。それから、これも当時の事情がよくわかりませんが、父親も一緒になってこの小屋を立てて、入れてあるのであります。この父親も現在死んでおります。そこで、この被害者である福次郎の弟に当る徳次郎、これが相続と同時にこの監禁も相続いたしたと見えまして、自来このままやはり同じ状態で今までいる。おそらく、想像するところでは、これを出すと、自分たちが恨まれておるので、殺されやしないかというような気持があったのではなかろうかと思うのです。が、引き続きこの弟が兄貴をここへ入れておった、こういう事案であります。 また、村の人たちも、一体これをそのまま知らずにいたものかどうか、非常にどうもわれわれでは想像のできないような
事件
で、ございましたので、兄弟、
親族
、村の人たちに対する
人権
尊重の啓蒙活動も必要じゃないかというので、これらのこの村に対する啓蒙活動を十分にいたしたい、かような考えで、その後この村に行きまして啓蒙活動等をいたしております。 以上が大体この
事件
の概要でございます。
猪俣浩三
27
○
猪俣委員
ただいまの問題のごときは、全く
親族
間に行われたことであります。そこで、先ほど申しましたように、医者とか
親族
とかいうことを唯一のたよりにして、簡単に
精神病院
に収容するとか監禁するとかいうことは、この新しい
憲法
下においては許してはならない。何かもう少し厳重な
処置
をとらなければならぬ。それには
精神衛生法
を改正しなければならぬ。その材料だと存ずるのでありますが、かような件につきましては、法務省としてはいかようなる
処置
をおとりになるのであるか、それを刑事局長
代理
に
お尋ね
したいと思います。
長戸寛美
28
○長戸政府
委員
ただいまの三戸の福地村の
事件
につきましては、現在八戸の
警察署
において捜査中でございまして近く八戸支部において受理することとなっております。事案の性質にかんがみまして、徹底的に捜査させたいというふうに考えております。 また、
精神衛生法
の問題につきましては、確かに
猪俣委員
のおっしゃるようないろいろの重要な
人権
上の問題がございますので、われわれ
事務当局
といたしましても、厚生省と密接な連絡をとりまして、これに対して措置するように十分検討して参りたいというふうに考える次第でございます。
猪俣浩三
29
○
猪俣委員
ただ、法務
当局
に望みたいことは、厚生省との連絡もいいですけれ
ども
、私が問題にしておりますのは
人権擁護
の立場からですから、これは厚生省じゃなしに法務省が主導権を持って考えていただかなければならぬと思うのです。厚生省の役人なんかの中には医者と非常に親密な者がおるので、それらにまかせておったのではとても抜本的な立案はできやしません。これはやはり法務省に立案の中心を置いてやっていただきたい。これは希望として申し上げておきます。 そこで、私が先ほど申しましたように、
人権じゅうりん
について、
国家権力
を持っておる者にばかりわれわれ興味を向けておる間に、しからざる分野において、はなはだ恐るべき
人権じゅうりん
が行われておるということであります。その一つがこの
精神衛生法
に関する問題であります。 次に私が申し上げたいのは、先般来読売新聞が取り上げております立正交成会に関する問題であります。この立正交成会なるものは、私
ども
よく知らなかったのであります。ところが、一体いかなる魔術をもってやっておるか、非常な金を信者から集めておる。そこに相当疑問な点がなければならぬ。と申します一例をあげますならば、昨年の三月立正交成会はその教祖の乗る自動車を一台買った。これはデムラーという自動車で、これを一千五十万円で買っております。これは日本に二台しかない。一台は皇太子がイギリスから六百万円だかで買ってきた。これは原価で向うから安く買ってきた。日本で買うとこれが一千五十万円になる。だから、皇太子の乗っておる車と、この立正交成会の教祖が乗っておる車と、この二台しか日本にない。とにかく、いかなるものであるかは知りませんが、この生活難にあえいで親子心中がひんぴんと起っている今日、一千五十万円の自動車を買って乗り回すということは何事であるか。こんなものに不正がないなんということはあり得ようはずがないのです。こういう方面に関して取締りが非常に手ぬるいと思う。もちろん、取締り
当局
に言わせると、やかましくやるとすぐ
人権じゅうりん
問題でお前たち騒ぐじゃないかとおっしゃられる。まことにその通りであるのでありますが、しかもこういう
新興宗教
の陰にはみんな政治家がくっついておる。みんな政治献金をとっておる。この立正交成会の陰にも二、三あります。私はきょうは申しませんが、かようにいたしまして、これが実に一般の無知なる庶民に対して驚くべき弊害を起しておる。もちろん、
法律
に触れざるものにつきましては、これは
当局
としても手をつけることもできません。信仰の自由は
憲法
の保障するところでございます。しかしながら、一千五十万円もするような自動車を買い込むとか、あるいは時価百万円もするようなダイヤの指輪を
昭和
二十五年にはこの副会長という人が買っておるとか、こういうような金の集め方には必ず不正があります。私はクリスチャンで長い間教会で今日まで
委員
をやっておりますけれ
ども
、実に財政にはきゅうきゅうでありまして、今でも掘立小屋みたいなところに入って信仰を続けてきておるのであります、これは七十年、八十年の伝道をやってきておる教会であってしかりであります。しかるに、彼らが四、五年やると、一千五十万円の自動車を買い込む。これはただごとでないことはすぐわからなければならぬ。かような
意味
において、何事かがここで行われておるということを考えなければなりません。これは日本弁護士連合会にも
訴え
られたことであって、日本弁護士連合会の
人権擁護
委員会
でも活動していると存じますが、これらの点について、何か脅迫あるいは詐欺、そういうような犯罪があるのではなかろうか。読売新聞に連日掲載されております。 そこで、これらの点につきまして、
警察
当局
あるいは検察
当局
はどういう捜査をなさって、どういうことが発覚しておるか、その状況をお知らせ願いたい。どなたでも適当な方から御答弁いただきたいと思います。
江口見登留
30
○江口
参考人
ただいま
お尋ね
の立正交成会に関する問題でございますが、読売新聞にも連日掲載された非常に複雑な、また特殊な
事件
だと思います。これにつきましては、
関係
人の方からも告訴状が出ておりまして、それを詳細に検討を加え、
検察庁
ともよく相談の上、その中の和田堀第二土地区画整理組合に関する被疑事実につきましては、これは
検察庁
に
事件
を送りまして、そちらの捜査を待っております。その他の
事件
につきましても、告訴状、あるいはその他捜査の段階におきまして、その告訴状に書かれていることとはまた反対の陳情な
ども
非常にたくさんあるものでございますから、それらを今分類しながら、その他の問題については捜査の継続中でございます。
猪俣浩三
31
○
猪俣委員
これは日本弁護士連合会の
人権擁護
委員会
から
検察庁
にあるいは
警察
に連絡があったかも存じませんが、内田英子という中野区の仲町十二番地の人間から上申書が出ている。私
ども
のところにも来ているのであります。 これは、自分の最も愛する母親トラというのが自殺をした。その自殺の原因をだんだん割っていくと、立正交成会で非常に信仰的な脅迫をした。このトラは中風病にかかっておった。それをなおしてやると称して参拝を強要するのみならず、山梨県の身延山とか千葉県の誕生寺などに団体参拝を強要して、家族一同がこのからだでは無理だと言うにかかわらず、お前は参拝しなければなおらぬと、参拝を強要いたしました。そうして、毎日参拝しろと、その交成会そのものに参拝を強要するのみならず、こういう遠いところの旅行までも強要しましたから、安静にすべきこのトラが一日々々衰弱している。そこで、親類がとにかく全部で、この参拝及び団体行動をしないようにトラに申し向けても、この交成会の幹部たちが入れかわり立ちかわり、やってきて、それを怠れば直ちに死んでしまうようなことを言うておどかした。しかし、
親族
はどうしてもそれをさせられないので、今度はトラが、それじゃだれか代参をする者があればいいから、だれか代参してくれというようなことを言い出したけれ
ども
、だれも、この立正交成会から脱会させたいと考えておりましたから、代参する者はなかった。そうすると、自分はもう神のお告げで救われないと考えて、彼女はネコいらず自殺をした。こういう事案であります。 これは刑法上いかなる罪になるか研究を要すると思いますが、こういう妄信者に対して、その身体に障害となることを承知しながら、なお参拝を強要し、献金を強要するというようなことは、一種の脅迫だと思うのであります。かようなことがたくさんあるのではないか。私も実は読売新聞全部点検しておりませんけれ
ども
、
人権擁護局
におかれましても、あるいは
警察
、検察
当局
におかれましても、かような
事件
にはもう少し積極的に活動していただきたい。
新興宗教
なるものに対しまして一体検察
当局
の態度はあれでいいのであろうかと私は疑問を持つのであります。 たとえば、いつだか本
委員会
で問題になりました
東京
都の飯倉一丁目にある霊友会の問題、小谷喜美というあの教祖の暴行傷害
事件
、
不法監禁
事件
は告訴せられ、その告訴した人が私に
訴え
て参りまして、これは
検察庁
の問題にもなったと思うが、あとどうなったか知らぬけれ
ども
、ただ、あれだけの取締りをせられたにかかわらず、旧に倍する繁盛をしておる。一体こういうことでいいのだろうか、はなはだ私は疑問なんでありますが、この霊友会の小谷喜美の
事件
は一体どういうふうに
検察庁
は
処置
されたのであるか。これはあるいは私の通告がなかったかも存じませんので、すぐ御答弁ができなければ次回でもけっこうでありますが、これはこの
委員会
で問題になりましたけれ
ども
、
結論
は実はお聞きしておらない。
不法監禁
、暴行、傷害、これは歴然たるものでありますので、あれはどうなったのでもりましょうか。その点について御存じならばお聞かせ願いたいと思います。
長戸寛美
32
○長戸政府
委員
ただいまの
お尋ね
の小谷喜美の
事件
につきましては、ここに書類を持ってきておりませんので、次回に詳しく御
説明
申し上げます。
猪俣浩三
33
○
猪俣委員
一連の問題といたしまして、
精神病院
及び
新興宗教
の立正交成会の問題につきましては、今
検察庁
なり
警察
なりで捜査中であられるようでありますから、具体的に相当材料も来ておりますけれ
ども
、今ここで私は詳しく申し上げることを御遠慮申しますが、ただ、どうぞ、全力をあげて、この
精神
的な暴行者に対し、まして、法の許す範囲において取締りを厳重にやっていただきたいことを要望いたしておきます。 それから、いま一つ、やはり同じ
人権
問題といたしまして、上野の山にありまする葵部落、これは
警視総監
にもお耳に入っておると存じまするし、これにつきましては上野
警察署
へ告訴がなされておると存じますが、どうもこの
社会事業
をやっておる一味の中には、最初はそうでないかも存じませんが、
当局
が非常に便利なもの、だからおだて上げる。そのためにボスになってしまう。これは取締り
当局
に言うことでないかもしれませんけれ
ども
、取締り
当局
としても、そういう弊害のあることを御認識の上善処していただきたいと存じます。たとえば、葵部落の会長尾島という人物に何百世帯かを管理さしておる。そうすると都としても
警察
としても便利だ。そこで、この尾島を持ち上げまして、そうして彼に一種の権力を持たせて、
当局
が持つべき権力を彼らが持つようになってしまった。絶対の
命令
者のような行動をやっておる。今度告訴の出ましたのは、寛永寺から立ちのき料として、五百万円の金が出ておるのを、葵部落の連中はだれも知らない。尾島という人が何とかやっておる。全然何も知らせてない。ところが、この三月三十一日までに、立ちのき料をやったんだから、都としては立ちのいてくれろというので、三十一日には強制立ちのきをやるという通告が来ている。そこで、何百世帯の人は、今さらながらがく然としているという始末です。これには、隅田公園かなんかにおりまする蟻の会かなんかの男も
関係
している。その実情を今詳しくは申し上げませんけれ
ども
、一人のボスを官庁がちやほやするのを奇貨といたしまして、絶大なる権力を握り、そこに絶大なる蓄財をしておりまして、そうしてほとんど
命令
的にやっている。この葵部落におきましても、尾島の配下で暴力団みたいなのが相当おって、住民に口を開かせない。こういうような状態がある。 これも先般申しましたけれ
ども
、ことに鉄道
関係
の方に私は法務省から警告を発していただきたい。それは、新宿その他において鉄道の用地がある。日本国有鉄道の用地があります。それを鉄道が自分
自身
管理すればいいはずでありますが、しかし、それをめんどうくさがりまして、暴力団みたいなものにその管理を一任するのです。そうすると、彼らは、何千坪というものをまず国有鉄道から賃借した形にしておいて、それを今度はこまかく商人に賃貸する。その際に驚くべき権利金を取り、賃貸料を取っている。これが彼らの財政的基盤になりまして、そこの管理と称してごろつきみたいな者をみな養う。それですから、商人は相当ひどいことやられても泣き寝入りでやっている。これが新宿の暴力団の本体をなしている。私
ども
はこういうやり方に対してはなはだ遺憾に思うのでありますが、これは法務省といたしましても一応御考慮願うべき問題じゃなかろうかと思うのです。そういう暴力団の発生を促すような国有地その他の管理権を彼らに与えるような方法、またさような者にたよらなければ管理できないというようなことでは、これは私はなはだ不都合だと思うのであります。 そこで、葵部落の住民が今上野
警察署
に告訴したと思うのでありまして、上野
警察署
では捜査を始めるかと存じますが、これに対して江口
警視総監
はどういうふうな御
処置
をとるつもりであるか、それを
お尋ね
したいと思います。
江口見登留
34
○江口
参考人
葵部落の立ちのきの問題でございますが、これは、昨年あすこに火事が発生しまして、その機会に、
都庁
としまして、かねてから立ちのいてもらいたいという意向を持っておりましたので、その立ちのき方について
都庁
から部落民に交渉したのでありますが、その際それらの代表になった者について今名前をあげて
猪俣
さんからお話がございました。三月一ぱいで立ちのくということに一応なっているようでございますが、われわれの方としましても、直接
事件
としては
関係
がございませんが、やはり警備上の問題から
警視庁
としてもこの問題については非常に関心を持って参っておりますので、大体のあり方については承知いたしております。たまたま昨日上野署へ
関係
者から告訴状が提起されました。その告訴状によりますと、その問題に関連して詐欺、背任、横領、建築法違反の
疑い
があるということになっておりますので、上野署初め
警視庁
としましても、これからその捜査の段階に入りたい、かように考えております。
猪俣浩三
35
○
猪俣委員
それでは、
質問
が非常に多岐にわたりましたので、
人権
問題につきましてはこの程度で打ち切りまして、あと、ここに大蔵省の方がお見えになっておりますから、ちょっと
お尋ね
しておきたいのですが、それは、補助金等の適正化に関する
法律
というものがある。これは私
ども
ぜひ励行してもらわなければならぬと思っているのでありますが、今度の三十一年度の予算におきまして、
法務委員会
としましても、法務
当局
としましても、切にその予算の計上を願ったのでありますが、大蔵省ではみな削除してしまった。そこで、大蔵省から、これは一体どういう
理由
で削除されたのであるか、及び法務省からは、一体この予算がなくてもこの補助金等の適正化に関する
法律
が適正に実施できる自信があるのかどうか、これを承わりたいと思うのです。まず
法務政務次官
からこの点についての御意見を承わりたい。その次に大蔵省の御意見を承わりたいと思います。
松原一彦
36
○松原政府
委員
補助金等の適正化に関する
法律
が出ましてからは、特にこの
法律
によって法務省の責任が増加いたしましたので、予算の増額を要求いたしたのでございますが、今お話のありました通りに、これは格別の増加を見ていないのでございます。ただし、三十一年度の検察
関係
総予算としましては、三十九億円計上せられておりまして、昨年に比べますと一億五千万円ほど増額になっておるのでございます。この三十九億円の予算の中で、
検事
活動に使われまする費用は、人件費を除いて四億九千八百万円ばかりございますので、この中で、ただいま御
質問
の補助金の適正化等に関する捜査等もいたすことになっておるのでございます。しかし、昨年来の検挙の数から申しますと、実はこれでは少いのでございまして、なお将来一そう充実して、一方には事犯が起らないことを期待いたしたいし、起った場合においては十二分にその効果をあげるようにいたしたいと苦労いたしておるのでございます。
中尾博之
37
○中尾政府
委員
ただいまの大蔵省に対する御
質問
は二点かと存じます。 一つは、補助金適正化の
法律
を適正に施行する熱意がないのじゃないかということだと思います。これはまことに心外な御
質問
でございまして、あるいはそういう何らかの誤解があったといたしますれば、私
ども
といたしましても多少責任があるのかも存じませんが、決してそういうことはございません。この
法律
の施行につきましては重大なる関心を持つのみならず、責任を持ってこの
法律
が適正に実行されていくことを私
ども
は念願いたしておるわけです。何かそういう誤解がございましたら、どうぞこの際その点につきましては御了解を願いたいと思います。 それから、予算でございますが、予算につきましては、この
法律
が施行になりますのは実は今年度からでございます。
法律
を施行いたしますと、新しい
法律
でありますので、
検事
の会同をいたさなければなりませんし、
資料
等も集めなければならぬというような
関係
で、検察の経費ではございません、そういう内部的な事務の経費が実は今年度必要になるわけでございます。それは、今年度当初予算のほかに、
検事
の会同に要する経費として六十八万六千円、庁費といたしまして、これは参考
資料
の購入費等でございますが、これが二百八万円、合計いたしまして二百七十六万六千円、この
法律
施行に伴います
検事
の事務費の追加といたしまして、不用経費の流用をもって措置いたしたのでございます。もちろんこの金額につきましては、法務省と御相談の上、御納得を得てきめたものであります。なお、捜査に関する経費は、これはいわゆる補充費になっておりまして、捜査活動そのものを経費の面で押えるという建前は、
制度
としては全然成り立ちません。従来の
事件
の件数増によりまして当初予算を組みますが、実際問題といたしまして、
事件
でございますので、必要が出ます際には予備費をもって大蔵大臣限りの簡素な
手続
で幾らでもその
事件
増に応じまして必要な経費を支出する
制度
になっております。従って、補助金不適正使用の事犯が幾ら増加いたしましても、予算の面でこれが制約を受けるということは全然ございません。もちろん、そういうふうに
事件
が多くなることを希望いたしておるわけではございません。そういう懸念はございません。もともと、こういう
事件
に関する予算というものは、予算的に制約していくことが非常にむずかしいことでごいます。こういう
制度
になっております。従って、捜査活動に関する経費については、御指摘のような御心配がございましたら、そういうことで御了承を願いたいと思います。 それから、補助金の
関係
で今回法務省から御要求のありましたのは人間の問題で、その他は取り立てて御要求がなかったのです。人間につきましては、法務省全体として非常に窮屈であるという問題はございます。これはほかの省にもあることでございまして、人員増加の要求は毎年相当熾烈でございますが、御承知のように、全体の予算の規模、行政の簡素化といったような基本的な線から、これを今最小限度に圧縮して押えております。そういう基本的な方針がございますので、人間の点は御要望には沿い得なかったのでありますけれ
ども
、
検察庁
におきましては、一般職員のうちの百五十人の雇員を検察事務官に切りかえまして、いわば昇格させ検察
機能
の増加に充てたのであります。それの半数程度のものを今度は下の方の雇員以下の常勤労務者で増員いたしました。人数は今申し上げましたような方針のもとに最小限度の増加にとどめましたけれ
ども
、検察
機能
の面から言いますと、その倍程度の
機能
の増加になるように実は苦心いたしているわけであります。 そのようなことで予算の措置を講じておりますこと、御了承をいただきたいと思います。
猪俣浩三
38
○
猪俣委員
今の御
説明
、私は納得できない。ことに、人員をふやさぬで、検察事務官を昇格さして安上りの
検事
をたくさん作ってやろう、――今まで
人権
問題なんか引き起したのに検察事務官上りの副
検事
なんかが多いのです。そういうことで何でも安上りというようなことからお考えになっている。しかし、私は安上りではないと思うのです。今日この補助金なんか、監視、監督を適正にするぞという態度で臨んだら、相当金が生み出されるではないか、かえって国庫としてはおつりが来るのです。それを、今までどうも法務の金だと出ししぶる傾向がある。これなんかは最も適例だと思うのです。あなたにこんなことを言うてもしようがない。大臣が出て来なければしょうがありませんから、帰ったら大臣によく言っておいて下さい。
法務行政
に対して最も無知なやり方をしていることをこの予算で大蔵省は暴露した、こう私は思うのです。それだけ私は申し上げておきます。きょうは大蔵大臣を呼んでおったのですが、おいでにならない。それで、これだけにとどめておきます。 次に、不良外人の出入国につきまして、
入国管理局
長にその標準をお聞きしたい。 これは数年前にも当
委員会
におきまして私が
質問
いたしましたが、不良外人の出入りが自由であるということに対して問題が起ったのであります。そこで、当時の
犬養
法務大臣時代にこれを厳重にやるということを言明されておったのでありますが、どうもこの間の帝国ホテルのダイヤ
事件
なんかから見ましても、相当不良外人がいともやすやすと出入りしているように見えます。そして、私がその当時指摘いたしました李何がしというような不良外人なんかが、いつの間にかまた日本に入ってきておる。そうかと思うと、今度はソ連とか中国等のりっぱな
学者
なり教育者なりが入国しようとしても、これは今度は入れない。ここに実に不公平な、不都合なことがあると私は思うのです。そこで、不良外人の出入国について、一体どこの機関がどういう
調査
をしてどんなふうにやっておるか、その
説明
を聞きたいし、それから、ソ連人や中国人を、ある者は入れてある者は入れない、また、こちらから中国やソ連に行くという場合に、ある者は許すがある者は許さない、しかも、どういうものですか、最後には許すにかかわらず、私
ども
が中国へ行くときでもそうですが、何だかんだと言うて、そうして大体公安
調査
庁がそういうことの
調査
に当っているようでありますが、一体そこでどんなことを
調査
しておるのか。中国人やソ連人を入れる場合においても、日本から中国やソ連に行く場合においても、公安
調査
庁は一体どういうことをやっておるか。また法務大臣は一体どういう標準でいいとか悪いとか言っておるか。私はきょう岸本次官に出てきてもらいたかったのは、この文句をつけるのは大体岸本次官だということなのです。事務次官ががんばっておって、法務大臣なんぞロボットみたいにして、そうして自分の主観的な好ききらいからこういうことをやっておられるとすれば、これは全く官僚の弊害である。岸本次官はまことに公々然として、ソ連や中国へ行くことはきらいだということを言っているそうです。私はきょうその所信をお聞きしたがったが、いずれ当
委員会
に出てもらって、どういうわけでさようなことをやっているか、あらためてお聞きしますが、きのう私のところに建築界か何かの連中か陳情に参りました。この人たちが中国から招待を受けました。労働省でも建設省でも外務省でもみないいと言うのに、法務省だけががんばっておる。それで、だんだん聞くと、どうも、
入国管理局
では法務省へそれぞれいいという答申をやっているのじゃないかと思うが、岸本次官のところでいつも渋滞するらしい。岸本さんがいませんから、私はこの次その所信を聞きたいのですが、こういう問題について
公安調査庁長官
及び
入国管理局
長からそれぞれの御意見を承わりたい。
内田藤雄
39
○内田政府
委員
私の方からまず一般的な御
説明
を申し上げます。 御承知のように、日本におきます外国人というのは大ざっぱに分けまして二通りに分けられるわけでございまして、一つは、戦前から日本におる、あるいはまた少くとも講和条約の発効以前、占領下の時代に日本に入りましてそのまま居すわっておる者、それから、もう一つは、正規のわれわれの入管令の適用外と申しますか、行政協定に基いておるものという一群の、しかもこれが実は在留外人の大部分でございますが、これらの者は、ただいまわれわれが新たな入国で
審査
いたしますような
手続
、そういうプロセスを経ないで現在すでに日本におるという人々でございます。それから、もう一つ、新たに入国して参っておる者も相当おりますことは確かに事実でございますが、われわれが承知いたしております限り、犯罪等の面において現われて参ります外国人の――これは先ほど申しました一般的な数の比例から当然なわけでございますが、われわれのいわゆる正規の入国
手続
を経ないですでに日本におる外国人による犯罪が、犯罪面におきましても大部分を占めておるものと考えております。しかし、それにいたしましても、たとえばこの間の帝国ホテルの宝石の強盗
事件
におきます男などは、これは確かに新しく入国した者でございます。 こういった問題につきましては、事前に何か入国の際にこれをチェックする道はなかったのかということと、入ってから以後そういう者が犯罪をしないように何か阻止する方法はなかったのか、こういう角度から問題が取り上げられるのだと思いますが、まず、入国の方を申し上げますと、御承知のように、日本は一方におきましては観光というようなことでなるべく外国人を招致したいという態勢をとり、また現にそういう政策をとっております。そして、われわれが入国の査証を発給いたしまする場合に、それが
東京
まで連絡がございまして、
東京
におきましてその
審査
をいたしておりますケースは、日本に入って参ります全体の外国人のうちの一割にも満たない部分でございます。と申しますのは、日本に入国して参ります外国人の非常に多くの部分を占めますものは、観光あるいは短期商用あるいは通過査証、この三種類で、日本に参ります外国人の大体七割くらいは占めておるのでございますが、これらの査証は、外務省の出先機関において、その出先機関限りで発給いたしております。これはまた、そういたしませんと、世界に広がっております各地においての査証発給事務を一一
東京
にまで連絡して参るというようなことでございますと、手数、費用また相手方に与えます不愉快さと申しますか、不便さなどから考えましても、それ以外に方法がないわけでございまして、大体在外公館限りで出すものがその大部分を占めておるのでございます。それで、われわれといたしましては、もちろん野放図にしておるつもりはございませんので、大体問題が起りそうな相手方あるいはその発給する土地につきましては、なるべく
東京
と連絡をとってやるように手配いたしてございます。たとえて申しますならば、香港あるいは台北そのほか朝鮮人の場合はすべて、あるいはまた、英米人の場合でも、日本の在外公館のないところから参りますような場合には大使館からわれわれの方に連絡して参るというようなことで、ある程度部分的に要点を置きましてチェックいたしておりますが、しかし、数から申しますと、中央と連絡なしに入って参りますものがほとんど大部分なわけでございます。これで、この間の問題を起しました宝石強盗な
ども
、実は観光の旅券を持って入って参りました。それから、もう一つ、今
猪俣委員
がお名前をおあげになりましたジョンソン・李だろうと思いますが、朝鮮系の米国人でございますが、これは実は、先ほど申し上げましたように、占領中に入って参りまして、講和条約の発効とともにこうした仕事がわれわれの方に引き継がれました際に、当時のわれわれの方の手不足もございましたし、不準備と申しますか、いろいろな能力の不足な
ども
ございまして、非常に大ざっぱに、当時日本におった外国人は長期三年という在留
資格
をとってしまっておるのでございます。それで、問題の李という男も、当時三年の在留
資格
を講和条約が発効と同時に取っておった男でございます。それで、その後ずっと滞在しておりまして、
猪俣委員
のおっしゃいましたのは再入国で出入りしたときのことだと思いますが、その後実は当人は出まして、現在は日本にはおりません。最近の新聞によりますと、外国でまた問題を起したようなことも聞いておりますが、いずれにいたしましても、今度は再入国の期限も切れておりますし、三年の期限も切れておりますから、今度、われわれといたしましては、これを入れるかどうかという問題に初めて当面するだろうと思っております。 それから、入国の問題の基準でございますが、少くとも、ただいま申し上げました過去の遺産を引き継いでしまったものは別といたしまして、新たに入国を考えて参ります場合、ただいま申し上げましたように、観光とか通過査証とか、あるいは短期商用で、現地において発給されますものは、これは現地の大公使館あるいは領事館の情報ないし判断に待つ以外にないのでございますが、
東京
に連絡がありましたものにつきましては、かなり慎重に検討をいたしております。ことに
東京
に連絡のありますものは、先ほど申し上げましたように、国籍別に多少問題を蔵しておる場合、あるいはその滞在希望期日の長いものでございますので、これにつきましては、保証人その他あるいは日本側のスポンサーなどにつきまして
調査
いたしまして、大体本人の申しておること、
申請
の内容が虚偽ではない、また大局的に見まして日本の通商貿易あるいは文化、学術の交流というような角度から日本の利益になるであろう、こういう判定を得ました場合入国を認めておるわけでございます。 次に、それと関連いたしまして、共産圏からの入国の問題でございますが、これにつきましては、われわれといたしまして、決していたずらに閉鎖的にやろうという考えではございません。現に、一昨々年から一昨年、さらに昨年になりまして飛躍的に増加いたして参っております。これはやはり内閣の方針がそういうふうになったからだと存じますが、われわれとしていたずらに閉鎖的な考えを持っておりませんし、また、われわれ少くとも入管といたしましては、大陸と日本の交通というものの必然性と申しますか、長い歴史的な背景、あるいは経済面から見たいろいろな利益という面も十分考えておるのでございますが、何分にも、御承知のように、まず第一には外交上正規の国交がないという事実、それから、相手が共産国の人々である、従いまして、治安的な面あるいは日本におけるその人々の活動が日本に不利な――不利なと申しますか、おもしろくない影響をもたらす懸念はないかというようなことから、通常の場合よりは慎重に検討いたしておることは事実でございますが、しかし、拒否した例というのはむしろ非常に少いのでありまして、そう共産圏であるがゆえに閉鎖的と申しますか鎖国的な態度をとっておるものとは思っておりません。しかし、おそらく今
猪俣委員
の御念頭にございますのは、先般の日教組の招請をなぜ拒否したかというような例だろうと思いますが、それは、当時、ただいま申し上げました一般的な考慮のほかに、事教育の問題であるというようなこと、しかも日教組がある集会を催そうとしておる、その集会への共産圏からの参加であるというようなことから、大ざっぱに申し上げまして、日本の教育というようなものが共産的な色彩を受けることはおもしろくないじゃないかというようなことと、また、当時の時期が、一方におきまして総評のゼネスト等がいろいろ新聞にも喧伝されておりましたときでありますし、その他、そうした考慮から、これは望ましくない、こういうような
結論
になったものと了解いたしておりまります。 それから、もう一点、出国の問題につきましても
質問
がございましたが、この出国の問題につきましては、御承知のように旅券法の問題でありまして、大体その主たる官庁は、御承知の通りこの
法律
にもありますが、全く外務大臣でございます。そして、ただ旅券の発給を拒否いたします場合に法務大臣と協議しろということになっておりまして、協議を受けました場合に、法務省内部におきまして、私
ども
のところが窓口になっておりますが、いろいろ
議論
いたしまして、その
結論
を外務省の方にお伝えいたしておりますが、しかし、もし外務省が、自分は発給したいのであるけれ
ども
、法務省がぐずぐず言っておるから発給しないというようなことを言っておりますとすれば、それは全く旅券法の
法律
の解釈を誤まった見解でございまして、旅券法の建前から申しますならば、そういう外務省の言いのがれはあり得ないものと考える次第であります。
猪俣浩三
40
○
猪俣委員
もう時間ですから、この問題はもう少しお聞きしたいのですが、ただ一点だけで終りますが、あなたの答弁はどうも実際と違っておるようだ。私
自身
の中国に行くときも経験しましたし、たとえば中国の総工会の副会長をやっておる劉寧一君が日本に来られるときも経験した。最後は法務省なんです。結局あれは、軽井沢まで出かけていって鳩山総理大臣に話して、鳩山さんのツルの一声で入るようになったのであります。どうも、今の建築業者の中国行きにつきましても、外務省はいいと言うておるが、法務省がどうもということでつっかえてしまっておるということで、私に陳情が来ておるのです。その実情を一つ明らかにしてもらいたいのですが、何か次官会議とかいうものがあって、出国する際はその次官会議で決定するというようなことも聞いておる。私
ども
が中国に行くときもそうなんです。そうして、その次官会議においても、主として法務次官の発言が非常にウエイトがある。その法務次官の岸本という人が、どうもソ連や中国に行くことを好まない。すると、官僚の一人物のために実に不都合なことが生じておる。そのために要らざるエネルギーを消耗して、どのくらい
関係
者が、あっちに運動しこっちに運動し、困難を来たしておるかわからない。あなた方はきれい事ばかり言うが、その実情はどうなんですか。次官会議というものが決定するのですか。二十六日か八日に次官会議があって、そこで決定されないとまた一カ月か二カ月先におくれるのだそうですが、その実情を言って下さい。たとえば中国行きについてのほんとうの事務官僚としての
処置
は一体どこでだれがやっておるのですか。
内田藤雄
41
○内田政府
委員
ただいま私が申し上げましたことをもう一ぺん繰り返すようでありますが、入国の問題と申しますのは、もちろん外国人の入国の問題です。これと、出国の問題、日本人が外国に出るという問題は、全く
法律
的なあれが違うわけでありまして、先ほど私が申し上げましたのは、出国につきましては、これは旅券法によるのでありまして、これは外務大臣が旅券を発給いたすことになっておりますし、それを拒否いたします場合の事項が十三条に列挙してございます。そして、これが一番問題になる
規定
なのでございますが、十三条の第一項の第五号に、「前各号に掲げる者を除く外、外務大臣において、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する
行為
を行う虞があると認めるに足りる相当の
理由
がある者」、こうございまして、第二項に、「外務大臣は、前項第五号の認定をしようとするときは、あらかじめ法務大臣と協議しなければならない。」、つまり外務大臣が旅券の発給を拒否しようといたします際は法務大臣と協議せよ、こういう
規定
になっておるわけでございます。従いまして、外務省が拒否しようという本来意図がないのに法務大臣に協議してくるということは、これは
法律
的に見ましておかしいわけでございまして、法務大臣に協議して参るということ自体が、すでに外務省において拒否したいという腹を持っておるからでなければ、
法律
的にはあり得ないことだと思っております。それで、協議を受けました際には、もちろんこれは法務省が当然法務省の見解を述べる
義務
と申しますか任務があるわけでございますから、法務省といたしましては、内部においていろいろ協議いたしました結果、その
結論
を外務省に通知しておるわけでございます。そして、ただいま次官会議のお話が出ましたが、われわれの了解いたしますところでは、まず事務的なそういう協議がありました結果、われわれが向うに回答いたしますと、それをその結果次官会議にかけましてきめておるようでございますが、これは私の了解いたします限り何ら法制上の根拠があるものではないのでございまして、外務省がどういう意図でやっておられるかということは私から申し上げかねますが、あるいはまた、なるべくその責任を全部に分ってもらいたいというような気持でやっておるのではなかろうかと想像いたします。
猪俣浩三
42
○
猪俣委員
私
ども
は、旅券法については、あなたから
説明
を聞かぬでも、すでに経験している。これは問題になった。それは、帆足計君がソ連に行くということに対して、外務省なり法務省なりでなかなか旅券を出さぬということで、相当ここでもんだんです。
法律
上何にも根拠のないことで、官僚の感情問題から出さないのです。官僚は事務をやっておればそれでよろしい。それを政治的配慮をやるんです。こういう共産圏から入れたら教育に悪影響を及ぼすんじゃないかなんという、大まかな文明事業までも官僚がやって、そうして入れるとか入れぬとか、そういうことはけしからぬと私
ども
は思う。いわんや、公安
調査
庁までがその片棒をかついでいる。そういうばかな話はないと思う。だから、あなたがおっしゃった通り、外務大臣がやればいい。ところが、次官会議で決定するなんというところを見ると、お互いに責任をなすり合って、そうして陳情団にはいい子になって、事実は遷延さしておる。それが実情なんだ。いつでもそうなんだ。次官会議という何ら法的根拠のないもので事を処理して、そうしてやっておるのが実情だ。あなたがおっしゃる通りだ。旅券法から言うならば、外務大臣職権なんです。外務省はやりたいと思うんだけれ
ども
、どうも法務省がうんと言わぬ、しょっちゅうそれを聞く。もし官僚が遁辞として言うなら、大きな問題だと思う。この
法務委員会
に出て、法務省と外務省とお立ち会いの上で決定してもらいたいんだ。私
ども
は現に何回それを経験しておるかわからないのですよ。今言うのは出国です。入国のときは、今度は公安
調査
庁がいろいろ進言する。この前の花村四郎法務大臣のときも、私は劉寧一君の入国について行った。そうすると、公安
調査
庁の
調査
が非常によくない、こういう
調査
が出ているので、どうも僕としても踏み切れない、こういうような話です。そこで、軽井沢まで行って許可をとった。入国については、その人物がどういう人物かは出先の官憲の証明でやるんだと言う。しかるに、ソ連や中国については、もちろん出先官憲が今ありませんから、本庁でやるのはいいでしょうけれ
ども
、一体そういうばく然たる――どろぼうとか強盗とかいうものは、これはやらにゃなりませんが、ばく然たる政治的な考慮で、一体劉寧一が日本に来て強盗をやるというのか。殺人をやるというのか。何を一体やるということで公安
調査
庁はそんなおせっかいをやるのか。公安
調査
庁は一体そういう
職務
をやるところなのか。私はこれは長官に聞きたい。そういう、諸君が言うことと実際やっていることとは、実際わけがわからない。そのためにどのくらいみんなが苦難を経ているかわからぬです。今その陳情書を私は持っておらないが、建築
関係
の人です。そうして、労働省から建設省から外務省から、みなオーケーになっておる。ところが、法務省に行くと、次官会議にかけなければだめだと称しておって、これがために中国に行くことができない。ところが、この二十六日とか八日に次官会議がある。それに間に合わぬとだめになっちゃうんだ。非常にあわを食っている。これは再三にとどまらない。どこに一体そういうことがあるのか、われわれわけがわからない。旅券法を幾ら見ても出てこないのです。あなたのおっしゃる通りだ。さっぱりわからないんだ。そこで、これは実例をたくさん集めてきますから、あなた方同士で相談をして、はっきりした態度を示してもらいたい。そのために一般市民にどんな迷惑をこうむらしているかわからぬのです。どういうわけだか、旅券法を幾ら見たって出てきません。中国やソ連の行くについて、どこに一体
権限
があって阻止できるんだ。次官会議だの法務省が何の
権限
があって阻止できるのか、さっぱりわからぬ。旅券法で、旅券を出してならぬ場合は限定している。それに当てはまらぬ場合に、そんな官庁でお前行っていけないと言われないために旅券法ができたのです。もとは、
警視庁
の外事課が、そのときの政府のさじかげんで、ある人は出ていいがある人は出ていかぬというふうにやった。それを防がなければならぬために、いわゆる旅券法なる
法律
を作って、海外旅券を交付するについては、一定の条件があって、その条件に当てはまる者は仕方がないが、しからざる者は一般に旅行の自由がある。これは
憲法
の保障するところである。それによって旅券法ができている。それにかかわらず、いつでも、中国、ソ連へ行く場合には、すなおにすらっといったことがない。どういう
理由
であるか私
ども
わからぬ。法にあらざることによって阻止するなんということは、実際大なる
憲法
違反である。私はこれ以上申しませんが、もう少し
入国管理局
長と岸本次官との間に相談して下さい。その場合私は岸本次官に
お尋ね
したい。あの人は実にとほうもない放言をやっている。ソ連や中国へ行くのは私は大好かぬというようなことを言っている。陳情に行くとそういうことを言っている。とほうもない人物だと思っている。だから、岸本次官にこの次出てきてもらって、その所信を披瀝してもらいたい。 それで、
公安調査庁長官
に
お尋ね
します。一体、ソ連や中国から日本へ入ってくることについて、あなた方はどういうふうに調べて、どういうふうに法務省と連絡をとっておられるか、御答弁を願いたい。
藤井五一郎
43
○藤井政府
委員
お答えいたします。 この出入国管理令の第五条によりますと、法務大臣において日本国の利益または公安を害する
行為
を行うおそれがあると認めるに足りる相当の
理由
がある外国人は本邦に上陸できないという
規定
をされております。そういたしまして、私
ども
は、共産主義国である中共やソ連から日本にやって来て、共産主義の宣伝を行なったり、日本共産党を指導援助する
行為
を行なったり、あるいは諜報謀略を行なったりする憂いのある場合は、まさしく今申しました条項に該当するものと思っております。そこで、公安
調査
庁は、
職務
といたしまして、日本共産党の動向や国際共産勢力の対日動向について平素から
調査
を行なっているのであります。共産圏からの入国者及び入国事情について
調査
をいたしました結果判明したる限度におきまして、これを法務省における主管局であるところの
入国管理局
に連絡いたしまして参考に供しておるにすぎないのであります。 それから、次に
お尋ね
の出国の場合でございますが、今
入国管理局
長からも御
説明
がありましたように、旅券法第十三条では、「あらかじめ法務大臣と協議しなければならない。」という
規定
になっておりますので、公安
調査
庁は、先ほど申しましたような
趣旨
の
調査
の結果判明しておる限度におきましては、これを法務大臣に報告いたしまして、かつ主管の外務省に連絡しておる次第でございます。 以上でございます。
猪俣浩三
44
○
猪俣委員
その公安を害するとか共産主義の宣伝をするとかいうようなことは実に抽象的なものなんです。一体、そんな抽象的なことで、ある人間がそうだときめつけられるものじゃないと思うんだ。
法律
にはそういう抽象的なことしか書いていないのです。それにはなお基準があるだろうと思う。公安を害するものなどというのはばく然たることです。どういう地位にあり、どういう者が公安を害することになるかという基準があるだろうと思う。そういう基準が一体あるのですかないのですか。ただソ連や中共の人だとすると、みな公安を害する、共産主義の宣伝をする、こういう立場をとっておるのですか。ただある特定の人間が公安を害するものだという基準が何かあるのですか。それを
お尋ね
します。
藤井五一郎
45
○藤井政府
委員
お答えします。抽象的な基準はございませんが、具体的にその人の経歴あるいは入国の目的、すべての角度から見て、決して抽象的に判断いたすものではございません。すべての
資料
を
調査
した結果、これが果して公安を害するか、――決してすべて害するという先入主でやってはおりません。非常に公平に、共産圏から入る人だから必ず公安を害するとは決して見ておりません。
猪俣浩三
46
○
猪俣委員
この前中国総工会の劉寧一君が入国する際に、公安
調査
庁は、これは危険人物だという方針で、とうとう広島における原爆禁止大会には出席できなかった。しかも香港にもう何名か待機しておるのに、法務省ががんばって入国できない。そこで、とうとう、昨年の八月六日ですか、その日には出席できないということになってしまった。鳩山内閣のソ連、中国と親善友好を進めようとする政策とはなはだ反することをやったのであります。それまでに公安
調査
庁が厳密なる
調査
をして、劉密一君を危険人物なりと進言したとするならば、劉寧一君が入ってきていかなる公安を害することをしたか、お調べになっておると思う。それを御
説明
願いたい。
藤井五一郎
47
○藤井政府
委員
劉寧一氏の経歴等については
調査
しておりません。ただ
資料
を提供したのでありまして、別にこれを拒否するという意見を具申してこちらからそれに対する決定に影響を与える筋合いのものではございません。ただ
資料
を提供しただけでございます。
猪俣浩三
48
○
猪俣委員
そうすると、法務大臣に対して、こういう経歴でこうだという
資料
を出すだけで、その人間は公安を害する公算が大であるというような意見はつけないのですか。そんなことはありますまい。その人物はこういう経歴の持ち主だからこういう傾向のある人物だという意見がついているのでしょう。
藤井五一郎
49
○藤井政府
委員
われわれが見た
資料
は、果して公安を害するおそれがないかといういわば価値判断の
資料
ですから、それはつけざるを得ないのですが、そういう
意味
においての意見はつけました。その点、先ほど申しましたことは訂正いたします。ただ、公平な意見をつけるつもりで、決して先入主にとらわれてはおりません。
猪俣浩三
50
○
猪俣委員
ところが、法務大臣といっても政党出身の人がなるんだ。そうすると、諸君が専門家としてそういう
調査
をやり、そこで価値判断をして具申するとすれば、大臣としては、こういうものを許さぬというのはどうも少しおかしいなと思っても、それを押し切ってやるということは勇気のある人でなければできない。だから、諸君の、官僚の作成した意見というものが実際左右するのですよ。それをもっと考えて、-大臣に責任を全部なすりつけてしまって、自分たちはただ材料を出しただけだということではいけないと思う。そこに公安
調査
庁の長官に相当の責任があると思う。だから、あなた方がそれほど価値判断をして出したならば、劉寧一君が日本に来ていかなる公安を害することをやったか、私は承わりたいと思う。また、何もやらぬとするなら、あなた方の価値判断は間違っているんだ。自己批判をしなければならぬのです。ただ人を見ればどろぼうと思えという考えは捨てなければならぬと思う、劉寧一君がいかなることをやりましたか。私
ども
北京で劉寧一君によく会っております。そんなインチキ人物じゃございません。日本に来て日本の公安を害して帰るような人物じゃないのです。しかるに、あなた方は妙な先入観念からそんな価値判断をやっておる。その結果一体どういうことが起りましたか。
高橋一郎
51
○高橋(一)政府
委員
ただいまお話しの劉寧一氏の具体的な問題につきましては、当時、私
ども
の方のの
調査
の結果、私
ども
はこれは入国を拒否すべきであるという見解でありました。結果においては劉寧一氏は八・六大会後に入国したわけでありますが、その後の動静については私
ども
の方は
調査
しておりません。従いまして、劉寧一氏がどのような公安を害する
行為
があったかなかったかということは、私
ども
存じません。
猪俣浩三
52
○
猪俣委員
そんな無責任なことはないじゃないか。入国者に対して公安を害する人物だとして価値判断までした人物に対して、現在その人物が鳩山さんの一断によって入国しておる。それを公安
調査
庁がほったらかしておくというのは一体どういうわけだ。
高橋一郎
53
○高橋(一)政府
委員
先ほどから申し上げております通り、私
ども
は、私
ども
の本来の
調査
の結果わかっておるものを
資料
として大臣に報告し、かつそれに関しての意見を申し上げるのであります。実際に国内におけるいろいろな
調査
ということは破防法によってやっておるのでありまして、従いまして、そのような
権限
のない場合にはさような
調査
をしない場合があるわけであります。それからまた、劉寧一氏がそういう問題があったからといって、実際にその後に入ってきて公安を害する
行為
がなかったから、公安を害すると前に見たことは間違いであるというふうには一概に申せないと思うのであります。
猪俣浩三
54
○
猪俣委員
私
ども
言わんとするところは、そういうことを軽々しく公安
調査
庁が断定して価値判断をして具申すべきものじゃないと思うんだ。それほどの者ならば――劉寧一君が非常に危険人物だ、これこれの目的を持って来ておる人物だというなら、これに対しては諸般の準備をしなければならぬのに、無責任きわまることだ。だから、さような判断をするところに間違があるんじゃなかろうか。劉寧一君が危険な人物だと思っておる。彼は日本に宣伝することを目的として来ておるのではないことは明らかなんだから、あるいはひそかにそういうことをやるかもしれぬならば十分これは偵察できるはずだから、まずとにかく入れておいて、そうしてそういう妙な妄動をしないように注意を与える、それがよいことじゃなかろうか。真に両国の国交の親善を進めていこうとするならば、そういう方法をとるべきものである。ところが、逆なんだ。入るときはあれは危険人物だと判断して、入ってきてからは知らぬ顔だ。これではやり方が逆ではないかと私
ども
は思うのですが、これ以上何かと問答しても仕方がないから、私は打ち切りますけれ
ども
、世界がこういう情勢になってきて、とにかく各国とも親善を厚うしなければならぬ情勢になってきている。だから、公安
調査
庁の価値判断というものも、日本の国際外交について相当の影響を及ぼすものでありまするから、ただ人を見てどろぼうと思えという式で、ソ連や中国人だというとすぐ色めがねをかけて妙な価値判断をしないように。そうせられますと、政党出身の大臣などはそれに抗弁する材料などを持っておらぬから、そこで結局において公安
調査
庁の価値判断というものが左右することになります。これが世界の国交、日本の国交をいかに阻害するか、この点については十二分なる御注意を願いたい。とにかくソ連なり中国なりは国費をもって多数の日本人に国内視察をさしておるのです。彼らに対する答礼としても、われわれはこれを呼ばなければならない。しかるに、妙なことで入国を阻止するというようなことは実に非礼もきわまるものだと思うのですが、公安
調査
庁の任務、責任というものも重大でありまするから、どうか今後とも、ただソ連人、中国人ということだけですぐ妙な価値判断をしないように私は要望いたしまして、私の
質問
を終りたいと思います。
椎名隆
55
○
椎名
(隆)
委員長代理
きょうはこれをもって散会いたします。
次会
は公報をもってお知らせいたします。 午後一時二十三分散会