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高岡委員 社会生活が複雑化して参りますにつれて、
立法機関といいますか、
国会では毎日のように新しい
法律が制定され、法の改廃が行われておりますが、どうしても
法律には
盲点が生じてくることは現実であります。それで、この
盲点で非常な損害と言いましょうか損失を受ける場合が多いのであります。その一つの例といたしまして、私は
印章に関する
盲点というものかあるように考えられるのであります。言うまでもなく
印章に関する
法律は
仏寡聞にしてまだ聞かないのでありますが、私の知る
範囲においては、
市町村の
条例によってのみ、
印章の取締りと言いましょうか、そういうものがあると思っております。そこで、
印章がそのようなことでありますために、
印章による
犯罪と言いましょうか、そういうものがかなりあるやに私は思うのであります。
最近の例で言いますと、ご
承知のように昨年の十月一日から
恩給法等に関する
法律の
改正がございました。すなわち、
戦地において戦死した者ないしは
戦地において戦病死した者、こうした者に今まで
一般扶助料でありますとかあるいは
恩給等がついておったのでありますが、御
承知のように、今度は、
戦地で発病いたしましたその病気に至りましても、従来は銃弾によるもののみでございましたけれども、今度は結核でありますとかあるいは胃ガンといったような、
呼吸器ないし
消化器系統の傷害に対するものまでが戦病死として取り扱われ、広く遺族の方が恩典を受けるようになりました。そうしたことから、まことに見苦しいありさまではありますけれども、今まで家庭内において何らの騒動のなかったものが、そうした法の
改正によりまして、せっかく今までなき夫のあとを継いでその夫との間に生まれた
子供を養育しておりましたものが、いよいよ
扶助料がもらえるというようなことになりまして、その親が、いつの間にやら、
自分の息子の嫁であり、現に
子供のあるその嫁を離縁しております。
本人はどうして離縁されたかわからない。ところが、事実、調べてみますと、ちゃんと
戸籍が剥奪されておる。いわゆる除籍されておる。これは、申し上げるまでもなく、ただむやみに除籍しているのではなくて、それぞれの
手続をとつております。そうしてその
未亡人たる女の
名前の下にちゃんと
実印が押されております。これで
法律的にはりっぱにそれが解決したということにはなっておりましょうけれども、さて考えてみますと、その
未亡人の
印章はだれが一体作ったのかと申しますと、これは
本人にあらざる者が注文して
印章を作り、その
印章を
市町村役場に行って届けております。
こういうことは一体今日までどういうものによって規制されておったのか。私が知ります
範囲においては、どういう人が
印章を頼みに行きましても、
印章を作る店ではこれを断わるすべがございません。また、そういう
実印というものがそうして簡単に作られながら、しかも、これを
市町村に届けに参りますと、
市町村はこれを拒否する何らの
法律的なものがございません。御
承知のように、最近は
市町村が相当広
範囲にわたって合併が行われておるのでありまして、
届出に行きました場合、
市町村によりましては
総務課がこれを扱い、ないしは
戸籍課がこれを扱っておるのでありますが、その
総務課の
課長でありますとか、あるいは
戸籍課長というものは、新たに他町村か合併されておりますために、その
届出人が
本人であるかどうかということがはっきりいたしません。結局
法律で何らこれを拒否するわけに参りませんので、その
印鑑の受理をしなければなりない。そうしました場合に、受理された
実印は、次の日になって
印鑑証明をもらいに行きますれば、これまた
印鑑証明を出すことを拒否するわけには参らないのであります。このようにして、
実印が登録され、
印鑑証明が出されて参りますと、御
承知のように、今日は
司法書士が一切の仕事をやってくれますので、その
司法書士によりましてすべての
手続が完了する。そうして、その結論はどうなるかと申しますと、先ほど申し上げましたように、嫁が知らないうちに
離婚されておる。目的は
扶助料を
本人に渡したくないという見にくい姿ではございますけれども、
新聞等によってもそういう点が出ておるし、また事実私はそういう
事件を扱ったことがあります。
さらに、最近は、この
印鑑によって
自分の
財産がいつの間にやら転売されてしまっておるという事実もかなりあるように私は思うのであります。もちろん、そういうことをしました場合には、公文書の偽造あるいはその他のことで
犯罪は構成しましょうけれども、もしも山の木を売ったとか山を売ったというようなのが親子の間でありますと、結局泣き寝入りの形に終るかもしれません。ところが、御
承知のように
日本は
法治国であります。しかも
私有財産が認められておる。
法治国で
私有財産を認められておりながら、その
私有財産を保証する
印鑑に対しては何らの保障をされていないように考えるのでありますが、
政府当局としては、そうした
犯罪はどういうことによってそれを未然に防ぐ
方法を考えておられますか、その点をまずお伺いしたいと思います。