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1956-02-22 第24回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十二日(水曜日)    午前十一時一分開議  出席委員    委員長 高橋 禎一君    理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君    理事 高瀬  傳君 理事 福井 盛太君    理事 佐竹 晴記君       小島 徹三君    小林かなえ君       世耕 弘一君    古島 義英君       横井 太郎君    横川 重次君       菊地養之輔君    武藤運十郎君       吉田 賢一君  出席政府委員         法務政務次官  松原 一彦君         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君  委員外出席者         検     事         (入国管理局         長)      下牧  武君         参  考  人         (弁護士)   毛受 信雄君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 二月二十一日  委員吉田賢一辞任につき、その補欠として河  野密君が議長指名委員に選任された。 同日  委員河野密辞任につき、その補欠として吉田  賢一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月二十日  人権擁護に関する予算増額請願  (松本七郎紹介)(第七三七号)鹿児島地方  裁判所川内支部庁舎等改築請願池田清志君  紹介)(第七八一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭に関する件  外国人登録法の一部を改正する法律案内閣提  出第五五号)  司法書士法の一部を改正する法律案起草の件  土地家屋調査士法の一部を改正する法律案起草  の件     —————————————
  2. 高橋禎一

    高橋委員長 これより法務委員会を開きます。  前会に引き続き司法書士法の一部を改正する法律案及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案起草に関し議事を進めます。  この際参考人決定についてお諮りいたします。すなわち、本件に関し弁護士毛受信雄君を参考人として意見を聴取することにいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高橋禎一

    高橋委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。  参考人には御多用中にもかかわらず当委員会に御出席下さいまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べ願います。
  4. 毛受信雄

    毛受参考人 ただいま御提案になりました司法書士法、それから土地家屋調査士法の一部を改正する法律案について、日本弁護士連合会におきまして検討いたしました結果、一応意見を決定いたしましたので、この席からそれを御披露いたしたいと思います。  まず、司法書士法の一部改正法律案でありますが、大体においてはこの改正案異議はないのであります。特に司法書士会に対して各司法書士強制加入せしめるという一つの大きな改正でありますが、その点は、司法書士業務向上発展のために、また指導監督のために適当な制度と思いまして、これには賛成いたしたいのでありますが、ただ一点、十七条の改正であります。これは各地区司法書士会一つにして全国を通ずる一個の司法書士会連合会設立しなければならないというところに問題があると思うのであります。現行司法書士法の十七条では、「司法書士会は、共同して特定事項を行うため、会則を定めて、全国単位とする司法書士会連合会設立することができる。」という規定になっておりまして、連合会設立任意ということになっております。すなわち、連合会性格として任意団体であるということになっておりますのを、この改正案では強制設立にするということになっておる点に弁護士連合会としては反対意見なのであります。その理由は、司法書士業務監督懲戒権は、各地区法務局または地方法務局の長が握っておるわけであります。許可、認可の取消し、それから懲戒を行うこと、いずれも法務局または各地方法務局の長が行うことに司法書士法ではなっております。法務大臣司法書士会関係するのは、この改正条の第十五条の二で、「司法書士会会則を定め、又はこれを変更するには、法務大臣認可を受けなければならない。」、強制加入になりまして、司法書士会会則はすべて法務大臣認可を受けるという関係になっておりますが、各司法書士懲戒権地方法務局の長あるいは法務局の長がこれを握っているという建前になっているのでありまして、司法書士会連合会を成立いたしましても、特にこれを法的に強制して参加させるための法律上の必要が少しも認められないのではないかというところに一つ難点があると思うのであります。現行任意団体としておいても、この法律改正の目的である司法書士会及びその会員指導及び連絡に関する事務上の改善進歩ということはできるのではないか。司法書士会強制加入せしめて強制的に連合会設立する。その設立することが便利ではあり、実際の必要があるかとも考えられますけれども、これを法律強制して作らせるという必要についての法律上の根拠がないのではないかと思います。たとえば、日本弁護士連合会強制設立一つ公的団体でありますが、これは各弁護士会及び弁護士懲戒権も持ち、指導監督権も持つことに法律上きめられております。そういう一つの公的な性格を付与せられまして、それがために強制設立ということは認められるのでありますが、司法書士会連合会は、この改正案では法律上そういう公的な資格が与えられていないようであります。そこに法律連合会設立せしめなければならないという根拠が薄弱なように思われるのであります。それから、もしこれを強制設立する必要があり、どうしてもしなければならないものとすれば、十七条の規定だけでは非常に立法上ずさんであると思うのであります。と言いますのは、各司法書士会会則法務大臣認可を受けなければならない。これを変更するについてもまた同じであると思いますが、司法書士会連合会会則については法務大臣認可も必要でないことになっておるようであります。自由に会則を定めて作ることができるようになっております。それから、連合会が結成されましてできましたあと、この連合会法務大臣との関係については何らの規定が置かれておりません。法務大臣監督下に置いて、そして連合会を統制していくという官僚行政立場は必ずしも好ましいものではないと思いますが、さればとて、司法書士会連合会を自由な会則のもとに設立させて、そしてその行動を何も規制する制度がないということは、これは司法書士会連合会の将来の行き方について問題が残ると思うのであります。もし強制設立をさせるのであるならば、ここに何らかの行政的な関係法務大臣との間につけておかなければならないのではないかと思われるのでありますが、その点が何も規定されておりません。日本弁護士連合会は強度の自治権を持つ団体でありまして、みずから会員懲戒する権限を持ち、他から何ら監督等のことはないのであります。しかし、それでも弁護士法の四十九条には最高裁判所との関係規定しております。最高裁判所は必要と認める場合には日本弁護士連合会にその行う事務について報告を求め、または弁護士及び弁護士会に関する調査を依頼することができる、これだけの関係最高裁判所との間につけておりますが、これは最高裁判所監督するという監督権ではむろんありませんけれども、しかし、国家機関がその公的団体との間にこれだけの関係があることを規定しておりますが、当司法書士会連合会については、法務大臣その他の国家機関との間に何らの関係規定されておりません。野放図な団体になる。事実上は話し合いでやっていかれるのかもしれませんが、法律上は何らの関係もつけていない、こういうところに難点があります。弁護士会歴史を申しますと、検事正監督下弁護士会強制設立をされた一各地方裁判所のもとに弁護士会設立された時代があります。その時代には連合会というものはありません。検事正監督した。その後法務大臣監督することになって終戦を迎えたのでありますが、現在では法務大臣最高裁判所監督も離れて独立したということであります。そういう歴史、伝統を考えますと、司法書士会は現在の段階では各地方法務局の長の監督のもとに各地方々々に司法書士会設立しておるということでありますから、全国を打って一丸とする連合会設立することは望ましいかもわかりませんが、また現在連合会というものが設立されておるようでありますが、これを法的性格を与えて強制設立とするというところに問題があり、これを強制設立するほどの必要を認められないというのが弁護士連合会意見であります。これは、さような意味において、現行法通り任意団体としておくことが適当ではないかと思うのであります。  その他の改正条項については全部賛成であります。ただ、司法書士会連合会強制設立しないということになりますれば、十五条の二の二項において、司法書士会会則法務大臣認可する際に司法書士会連合会意見を聞いて認可するという事項がありますが、司法書士会連合会強制設立にはしないという建前になりますれば、この第二項の規定は必要のない規定になるのではないかと思われるわけであります。  司法書士法の一部改正法律案に対する意見は以上で終りますが、土地家屋調査士法の一部を改正する法律案についても全く同様なことが言えると思うのであります。土地家屋調査士法改正案の第十五条の二の二項、それから十七条の改正案は、司法書士法改正案と全く同一の字句が使ってありますし、同一の構想のもとにできていると思うのでありますが、ただいま申し上げたと同一理由によって、この土地家屋調査士会連合会というものを強制設立させるという理由は乏しい。だから、それは現行法通り任意団体としておくことが妥当であるという意見でございます。  以上私の意見の御披露を終ります。
  5. 高橋禎一

    高橋委員長 毛受参考人の御意見に対し御質疑はございませんか。
  6. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 一点だけお尋ねしておきますが、十七条の規定をもし任意規定にいたしましたときは、公的な機関との関連関係規定しないでもよいでしょうか。
  7. 毛受信雄

    毛受参考人 それはよいかと思います。現行法でも規定しておりませんので、会則に定められた行動をすると思います。これは、任意団体とすれば、法務大臣監督下とか、その他の公的機関との関係規定する必要はないのではないかと思います。
  8. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 でき上った限りは、そこにその存在を認めて、法務大臣との関係等についてやはりそこに関係か出て参りますから、その関係規定いたしておく必要はないでしょうか。
  9. 毛受信雄

    毛受参考人 これは、私は、強制設立をさせるということであれば必ず行政機関との関係規定しなければならないでのはないかと考えたのでありますが、任意団体であれば、きめても差しつかえはないかと思いますけれども、持にきめなければならないというふうに考えないのであります。その団体行動がその他の法規等に触れればおのずからそこにそれぞれの監督権は発動できるものと思いますから、特にきめておくことが必要だということは言えないのではないかと考えるわけですが、抽象的になりますからどうですか……。
  10. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 ただいまの御説に対して別にとやかく言うわけではありませんが、任意にしろ、やはりでき上った団体行政機関との関係が出てくるだろうし、そこで強制的にそういう団体を作る場合と任意にそういう連合会を作る場合との区別なしに、でき上った以上は結局同じなんだから、従って、でき上った任意団体について別に行政機関との関係規定する必要がないとするならば、強制的に連合会を作った場合だって別に行政機関との関係規定しないでもいいじゃないか、こういうふうな気持も起るのでありまして、しいて重ねて御質問するわけではありませんが、この委員会においてそういう考えも起るということについて、もし御所見があればいま一度伺っておきたいと思います。
  11. 毛受信雄

    毛受参考人 弁護士法にも、「同じ高等裁判所管轄区域内の弁護士会は、共同して特定の事上項を行うため、規約を定め、日本弁護士連合会承認を受けて、弁護士会連合会を設けることができる。」という各高裁管内弁護士会連合会という任意団体規定があります。この高等裁判所管轄区域内の弁護士会連合会に対しては、公的団体との関係は、規約の制定について日本弁護士連合会承認を受けることが必要だという関係規定されておりまして、このほかには何も規定がないのであります。これは任意団体たる性格からくるものと思われるのでありますが、現行司法書士法でも、あるいは土地家屋調査士法でも、設立することができるという任意団体であるために何ら公的機関との関連規定していないのであります。そういうことで現在不都合なく行われてきておりますからですが、これを強制団体として公的な地位を与えるということになれば、その公的団体であるというための一つ法律的な性格が必要だということをまず第一に申し上げたいのです。それと、さらに公的な機関との関連が必要であるということが第二点に申し上げたいのでありまして、公的団体公的機関との関係が、任意であってもあるいは強制であっても同様に必要ではないかという御質問、さらに進んで、任意団体で必要がなければ強制団体にしても必要がないという結論になるというお考えには、直ちには同意いたしがたいのであります。
  12. 池田清志

    池田(清)委員 簡単にお尋ねを申し上げておきますが、私どものこの法律改正しようというねらいは、司法書士業務が公けの仕事でありまするから、その個人々々の人格を向上せしめ、業務を善良に行なっていたたきだい、そうして公的の任務をりっぱに努めていただきたいという国家的な観点からもちましてこの法案改正しようと考えておるわけであります。従いまして、その現われといたしましては、司法書士個人々々の資格を向上せしめますとか、あるいは懲戒等の面におきましてもさらに厳格を加えるというようなことを初めといたしまして、司法書士お互い団体的規制によって、他から干渉されることなくして、まず自分の団体の中でお互いに向上していこうということをやっていただきたい、こういう意味におきまして、資格向上等をはかるとともに、司法書士会という地域的団体強制的に設立していただきまして、その憲法でありますところの会則を定めたり変更したりする際におきましては国家機関によってこれを認可することにいたそう、こういうことに相なっておりますことはごらんの通りでございます。この際、御意見によりますと、都道府県単位司法書士会強制設立については何ら反対の御意思もないようでございますが、ただいま司法書士会連合会につきましては必ずしも御賛成でないような御意見を伺うのであります。私ども考えておりますのは、先ほど申し上げましたように、法務大臣団体的規制憲法でありまする会則認可する際に、司法書士会連合会意見を必ず聞かなければならない、こういうことにいたしておりまするところから、この司法書士会連合会というものはそこに公的な意味を相当に持ってくることを御認識をお願い申し上げたいのでございます。もちろん、法案全部を通じますと、弁護士法と異なりまして、人事権等につきましては、ことに懲戒問題等につきましては国家機関にこれを持っておりまして、この会自体にゆだねるところはございません。でありまするが、その業務の問題において、あるいは個人々々の人格の陶冶の問題においては団体的規制によってやろうということであります。先ほど来の御意見によりますと、司法書士会連合会についても、法理上絶対的に強制設立をしてはならないというような強い御意見でもないようでありますが、この点、私ども解釈をいたしまするに、認定の違いでありまするか、それとも強制設立をする要否の程度の違いでありますか、そこはどういうふうにお考えになっておりますか。一つその点お知らせ願いたいと思います。
  13. 毛受信雄

    毛受参考人 これは、るるお述べになりましたように、私ども司法書士会連合会設立せしむることについて絶対に反対だという意見ではありません。ただ、それほどの必要がないのではないかという必要の程度の問題と、それから、この改正法案では司法書士会連合会の法的な性格が明らかでないということと、これと国の行政機関との間の関係が明確ではない、そういう点から考えて、絶対に必要ないということではありませんが、やはり必要の程度の問題とお考え下さればよろしいかと思います。
  14. 高橋禎一

    高橋委員長 ほかに毛受参考人に対して御質疑はございませんか。——ちょっと私から一点お伺いしたいのですが、司法書士会連合会強制設立するということにして、その会則法務大臣認可を必要とする、そういうふうにやることによって、何か立法的な立場から見て差しつかえがあるかどうか、その点について御意見を伺いたいと思います。
  15. 毛受信雄

    毛受参考人 これは、各司法書士会会則認可、変更の認可を全部法務大臣が握っておられるこの制度は、むろん異存はないのでありまして、司法書士会連合会会則を定めるについて法務大臣認可、あるいは変更するについて法務大臣認可を必要とするという制度にされることは妥当ではないかと思います。それには異存ございません。法務大臣司法書士会連合会との関係をそういうふうに持っていかれることについては異存はありません。
  16. 高橋禎一

    高橋委員長 ほかに御質疑もないようでございますから、次に移ります。参考人には御多忙のところありがとうございました。     —————————————
  17. 高橋禎一

    高橋委員長 次に、外国人登録法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を許します。椎名隆君。
  18. 椎名隆

    椎名(隆)委員 現在外国人登録実情はどういうふうになっておりますか。
  19. 内田藤雄

    内田政府委員 登録実情と申しますのは、全体で登録がどのくらい行われておるかという御趣旨でございますならば、お手元に御配付申し上げておると存じますが、「第二十四国会提出資料」として差し上げてございます資料の第一ページに、外国人登録国籍別府県別人員調査表というのがございます。それをごらんいただきますと大体御了解いただけるかと存じますが、全体で登録が行われております数が六十四万六百六十五でございます。そのうち国籍別で一番大きなものは朝鮮でございますが、これは、韓国と特に明示してあるものと、そうでない一般朝鮮と合せたものでございますが、五十七万六千七百五十、それから、次に多いのは中国関係でございまして、これも中国の本土、台湾を含んでおりますが、四万三千九百六十七、それ以外には、だいぶ数字は落ちまして、その次はアメリカでございますが八千六百十、そのほか各国にちらばっております。大体そういう状態でございます。
  20. 椎名隆

    椎名(隆)委員 南鮮北鮮を合計して五十七万六千七百五十、これは南鮮北鮮を分けるとどのくらいになるかわかっておりますか。
  21. 内田藤雄

    内田政府委員 正確な数字は、韓国というはっきりしたものが十四万三千三百四十一、朝鮮ということになっておりますのは四十三万二千二百七十でございます。ただし、この点よく誤解を生じているようでございますが、韓国と書いてあるからその人だけが韓国支持であって、それ以外の四十三万幾らは即北鮮支持とは申せないのであります。と申しますのは、韓国と特に表示しております人が韓国支持であることは明らかでございますが、それ以外に、北鮮をはっきり支持している者と、そうでない、いわば政治的には無色と申しますか、あまり関心のない人々どもみんな一括して朝鮮ということになっているわけでございますので、韓国でない者が即北鮮系であるという断定はできないと思います。
  22. 椎名隆

    椎名(隆)委員 登録しているのが全部で六十四万六百六十五ですか。そうすると、推定在留外人はどの程度ですか。在留外人韓国人と両方ですが、これを分けておわかりになりますか。
  23. 内田藤雄

    内田政府委員 これは、密入国をして参りまして登録をしていない者、あるいは出生しているのにかかわらずまだ届出がしてない者等、いろいろあり得ると考えておりますが、この数字につきましては従来いろいろな説がございまして、前にはこの数字は非常に膨大に言われておったのでございますが、だんだん——これはあくまでいろいろなことからの推定でございますから、もちろんこれについての異見はあり得るのでございますが、最近におきましては、警察関係、公安調査庁、あるいはその他関係官署意見は、そう大きなものではないということにだんだん固まってきているのでございます。それと申しますのは、これは正確には捕捉しがたいのでございますが、密入国状況などからの推定一つと、それから、長く潜在しておりましてもいろいろな面で非常な不便がございます。配給の問題とか、あるいは子供など学校へやるといった問題から、あまり長く登録をしないでいるということは非常にむずかしい状況が多々ございまして、そういう点から見まして、相当大きく推定いたしてみましても、この一割以内ではないかというふうに考えております。しかし、これはあくまで推定でございますので、あるいはそれよりずっと少いかもしれませんし、また案外われわれの見方が甘いという考えもあり得るかと存じますが、大体われわれとしてはその以内であろうというふうに考えております。
  24. 椎名隆

    椎名(隆)委員 外国における外国人登録制度日本登録制度と比較検討した結果は、どちらの方がやかましくなっているのか、伺いたい。
  25. 内田藤雄

    内田政府委員 これはやはり、各国法制と申しますか、あるいは管理のやり方など、いろいろございますので、そういった制度と申しますか、形式的な面だけで一がいに判断はいたしかねるのではなかろうかと思うのでございます。ことに日本の場合、外国の場合と比べて相当特殊な問題を持っておると考えますのは、この間まで日本人であった人々朝鮮人あるいは台湾系人々というようなものを相当多数に国内に居住させておるという事実がございます。そういった特殊の事情などを考慮しながら、かつまた、日本憲法を初めといたしまして法制上のいろいろな建前などを考慮いたしませんと、ただ外国人管理法制の面だけを取り上げまして、どこの国が厳重であるとか寛大であるとかいうことは、一かいに申せないのではないかと考えますが、それらのことをいろいろ考慮に入れまして、たとえば共産圏の国のような場合をとりますと、法文は非常に簡単でございますし、また指紋というような制度もとっておらないということだけを見ますと、一見非常に寛大なようでございますが、他面、実際上外国人行動を大きく制約しておる非常な要素がございまして、行動、旅行の自由などにつきましては相当な制限を加えておるようでございます。従って、そういった登録指紋制度をとっておるかおらぬかというようなことだけから、寛大であるとか厳重であるとかいうことは言えないと存じます。たとえばアメリカのごときは、この指紋の点につきましては実に厳重でございまして、入国査証をとりますときに十指の指紋査証発給の際の条件にしておるくらいでございますから、そういう角度から見ますと、また非常に厳重であるとも申せますが、しかし、一たん国内に入りまして、アメリカの全法制考えました場合には、入ってからそれほど厳重なコントロールはされておるとも言えないのではないかと思うのでございます。従いまして、一がいにどこの国が厳重であるとか寛大であるとか、なかなか一般論としては申せないと思いますが、ごく常識的な結論として申し上げますと、日本制度がそんなに厳重な制度であるとは考えておりません。むしろ、先ほど申し上げましたように、現在の日本法制全般建前から見ましても、日本におります外国人というのは、ほとんど何らの制約もなしに、日本人と同様の生活ができるような保障が全法制的な体系として与えられておるわけでございますから、日本における外国人管理制度というものは、むしろ一般的に見て寛大な方ではないか、こう考える次第でございます。
  26. 椎名隆

    椎名(隆)委員 アメリカ指紋制度をとっておることは今承わりましたが、イギリスとかイタリア、フランス、西ドイツのごときもやはり指紋制度を採用しておりましょうか。
  27. 内田藤雄

    内田政府委員 外国人登録に際しまして指紋制度を採用しております国は、われわれの現在までの調査で判明しておりますところを申し上げますが、先ほど申し上げましたアメリカを別といたしまして、十指の指紋をとる制度をとっております国は、フィリピン、インドネシア、キューバ、ポルトガル、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、ベネズエラ、ケニア、コロンビア、チリーというような国でございます。それから、一指の指紋をとっております国は、シンガポール、香港、スペイン、メキシコ、ペルー及びプレトリアでございます。概して申しますと、ヨーロッパにおけるいわゆる民主国はこの制度をとっておりませんが、しかし、これだけで一がいにヨーロッパの各国が寛大であるというふうには申せないのではないかと思っております。イギリスなどはこういう指紋制度はとっておりませんが、外国人の点につきましてはなかなか厳重な管理が現実に行われておるということも承知しております。
  28. 椎名隆

    椎名(隆)委員 本年の十月から来年の一月にかけまして、外国人登録証明書の切りかえをすると同時に指紋をとるということに相なっておりまするが、指紋をとるについて予算措置はどのようなことになっておりますか。
  29. 内田藤雄

    内田政府委員 これも先ほど御提出申し上げました資料の一番最後のところにその予算額を掲載いたしてございます。三十年度にこの関係で八千五百万円余りの予算でございましたものが、三十一年度におきましては一億五千四百三十六万五千円という数字になっておりまして、全般として約七千万円近くの増額が認められております。そして、その内訳は、こまかいことを省略いたしますが、大体におきまして経常費の方は大してふえてはおりませんので、切りかえのための費用と、それから府県あるいは市町村への交付金がふえておるというわけでございます。確かに、前から見ますと、ただいま申し上げましたようにある程度の増額は認められておるのでございますが、ただ、この登録関係の費用は、町村に対しまして元来要る費用のきわめて少数の部分しか回されておらなかった実情でございますので、今回多少ふえましたけれども、市町村側はこれでは決して満足はいたしておらないというのが実情でございます。
  30. 椎名隆

    椎名(隆)委員 そうすると、在留外人指紋は一部は残るようなことになりますか。あるいは辛うじてでも全般の在留外人指紋をとり得るというようなことになりますか。
  31. 内田藤雄

    内田政府委員 そういう事態が起っては困ると思いまして、実は今回の改正法案を提出いたしました主たるねらいもそういうところにあるわけでございます。と申しますのは、従来の経験で、実際市町村のある地区には非常に多数の朝鮮人が密集して住んでおる地域がございます。そういうところにはむろん予算上もある程度の手配はしてございますが、しかし、それにいたしましても、物的並びに人的な施設、あるいはそれに対応する準備というものが、その数に応じたようにはなかなかいたしかねるわけでございます。そこで、ある程度それをならして、期間を少し幅を持たせることによりまして計画的に実行できる、従って全部のものをとり得るようにいたしたい、こういうことをわれわれとしては考えておるわけでございます。それで、ただいまお話がございましたが、予算がないために法律上実行しなければならないことが実行できないという事態にはならないようにいたしたいと考えておりますし、またそれは可能であると考えております。ただし、その際予算面などでは相当市町村がある種の犠牲をこうむるかもしれないということは想像できるところでございます。
  32. 椎名隆

    椎名(隆)委員 この外国人登録法の第二条を見ますると、「この法律において「本邦」とは、本州、北海道、四国及び九州並びにこれらに附属する島で法務省令で定めるものをいう。」ということが書いてありますが、この中に沖縄は入りますか入りませんか。法務省令の中では沖縄は「本邦」に入っているのですかいないのですか。あるいはまた、外国人登録法の適用を受けることになるのでありますか。
  33. 内田藤雄

    内田政府委員 沖繩は入っておりません。従ってまた、外国人登録法の施行区域でもございません。
  34. 椎名隆

    椎名(隆)委員 この中に入っていないとすると、結局は沖縄の人は外国人登録法の適用を受くることになると思いますが、沖縄は日本の国ですか、外国ですか。
  35. 内田藤雄

    内田政府委員 先ほど沖縄においてもこれを実行しておるのかという御趣旨かと思って私は御答弁申し上げたのでありますが、ただいまの御質問の意味でございますならば、沖縄はこの施行区域ではございませんが、沖縄の人が日本へ参る場合のことがもし問題でございますならば、これは日本人であるという考えでございますから、旅券などはなしでも日本へ来られる、こういう考えでございます。また、日本へ入りました場合には、日本人でございますから、この外国人登録法の適用は受けません。
  36. 椎名隆

    椎名(隆)委員 それでは、第二条の中に、沖縄は日本のものだということをなぜはっきり書かないのですか。「これらに附属する島で」ということを書くなら、沖縄も日本のものだということをこの中にはっきり書いておいたらよかりそうに思うのですがね。
  37. 内田藤雄

    内田政府委員 これは沖縄に対する主権の問題になると思うのですが、平和条約できめられておる問題でございます。そうして、日本の潜在主権はあるのでございましょうが、現実には日本の主権はない格好でございますから、従って、日本外国人登録法どもそこは適用される地域には入っておらないわけでございます。
  38. 椎名隆

    椎名(隆)委員 そうすると、沖繩人がこっちへ来たときにはいわゆる日本人として取り扱うのだということですが、出てくるときにはどんなふうな取り扱いになっているのですか。
  39. 内田藤雄

    内田政府委員 出てくるとおっしゃいますのは、沖縄の人が日本へ来る場合のことでございますか。
  40. 椎名隆

    椎名(隆)委員 そうでございます。
  41. 内田藤雄

    内田政府委員 その場合には、われわれの考えております意味の旅券ではございませんが、あそこに南方事務局というのがございまして、南方事務局におきまして沖繩人であるということの身分証明書のようなものを発給いたしまして、それを持って日本へ来るというのが正常の方法でございます。しかし、もしかりにある沖縄人がそういった正規の手続を経ずに鹿児島の海岸に入ってきたという場合を想定いたしますと、その場合でもわれわれはこれを密入国者とは考えません。なぜならば、先ほど申し上げましたように、沖縄の人は日本人であるという観念でございますから、日本人日本へ来たのである以上、密入国者としては取り扱わない、こういうことでございます。
  42. 椎名隆

    椎名(隆)委員 十四才未満の外国人に対しては外国人登録証明書申請のときにも写真を添付する必要はない、指紋もとらないことになっておるのですが、十四才から十五才になった場合には指紋をやはりとることになるのですか。
  43. 内田藤雄

    内田政府委員 その通りでございます。その後の最初の機会にとります。
  44. 椎名隆

    椎名(隆)委員 十四才以下でも、日本に来た以上は、指紋が変るということはないのですから、とった方がいいように思いますが、どうでしょう。
  45. 内田藤雄

    内田政府委員 それも一つの御意見であろうと存じます。実際われわれも、子供に関して指紋をとっていないことからくる、たとえば子供の密入国者を考えますと、不便もあるということは認めざるを得ないと思うのでございますが、しかし、そこはまた、こういう制度を行います場合の相手方に対して与える苦渋と申しますか、不愉快さとか、あるいはまた実際問題として生まれた赤ん坊をそれではいつになったら指紋をとるかとかとか、いろいろなことを考えますと、どこかで線を引かなければならぬわけでございます。われわれとしては一応諸般の情勢を考えて十四才という線を引いておるわけでございます。不便もないことはございませんが、まず大体この程度でよいのではなかろうか、こう考えておる次第でございます。
  46. 椎名隆

    椎名(隆)委員 外国人登録法の違反は、昨年度どのくらい出ておりましょうか。もしわかれば、朝鮮人とその他の外国人との関係を示してもらいたいと思います。
  47. 内田藤雄

    内田政府委員 昭和二十九年度を通計して二万九千七百七十二件、昭和三十年度は一月から六月までで一万二千三百九十五件という数字になっております。その内訳をこまかく申しますと、ずっと古い昭和二十二年、二十五年などの登録すべきものをしなかった者の計数も若干ございますが、大部分はそういうものではないのでございまして、いわゆる不携帯と申しますか、外国人登録証を持っていなかったということによるものが件数としては一番多いのではないかと思います。しかし、その中で起訴された件数は三千二百六件、これは昭和二十九年のことで申し上げておりますが、起訴猶予になりましたのが六千八百九十四件ということになっております。それから、国籍別の点は、これは遺憾ながらまだ調査ができておりませんですが、大多数は、もうほとんど九五%以上と思いますが、大部分は朝鮮人に関して起っておると御了解いただいても間違いないと思います。
  48. 椎名隆

    椎名(隆)委員 その総合計したうちで、本国に送還せられた者は一体何名ありますか。
  49. 内田藤雄

    内田政府委員 外国人登録法に違反して禁固以上の刑に処せられますと、これは退去の該当事由になるのでございます。しかし、実際のわれわれの運営といたしましては、外国人登録法違反のみの理由によって退去にいたした例はほとんどないのではないかと思っております。前は別でございますが、最近はほとんどやっておりません。しかしながら、外国人登録法違反の内容を追及して参りますと、それが密入国であるという場合が相当にございます。そういう場合には、表面は外国人登録法違反という法律上のあれにはなっておりますが、これは実質的には今申し上げましたように密入国だということで退去にいたしております。そういう例は相当ございます。もう一つは、犯罪と外国人登録法違反とが結びついておる場合が非常に多数ございます。それで、御承知のように、懲役一年以上の刑を受けますれば退去該当事由ということになるわけでございますが、これもそれだけでは退去にいたすようなことは避けております。しかし、犯罪が非常に重なっておるということで退去になる人の場合に、その人に同時に外国人登録法違反がある場合が、これは非常に多数ございます。大体そういうことであります。
  50. 椎名隆

    椎名(隆)委員 きょうはこの程度にして、あとは質問を保留しておきます。
  51. 高橋禎一

    高橋委員長 本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十九分散会