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1956-02-22 第24回国会 衆議院 法務委員会 第11号
公式Web版
会議録情報
0
昭和三十一年二月二十二日(水曜日) 午前十一時一分
開議
出席委員
委員長
高橋
禎一君
理事
池田
清志
君
理事
椎名
隆君
理事
高瀬 傳君
理事
福井
盛太
君
理事
佐竹
晴記
君 小島 徹三君
小林かなえ
君
世耕
弘一君 古島 義英君 横井 太郎君 横川 重次君
菊地養
之輔君
武藤運十郎
君
吉田
賢一
君
出席政府委員
法務政務次官
松原 一彦君
法務事務官
(
入国管理局
長)
内田
藤雄君
委員外
の
出席者
検 事 (
入国管理局
長) 下牧 武君 参 考 人 (
弁護士
)
毛受
信雄君 専 門 員 小木 貞一君
—————————————
二月二十一日
委員吉田賢一
君
辞任
につき、その
補欠
として河
野密
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同日
委員河野密
君
辞任
につき、その
補欠
として
吉田
賢一
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。
—————————————
二月二十日
人権擁護
に関する
予算増額
の
請願
(
松本七郎
君
紹介
)(第七三七号)
鹿児島地方
裁判所川内支部庁舎等改築
の
請願
(
池田清志
君
紹介
)(第七八一号) の審査を本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
参考人出頭
に関する件
外国人登録法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提
出第五五号)
司法書士法
の一部を
改正
する
法律案起草
の件
土地家屋調査士法
の一部を
改正
する
法律案起草
の件
—————————————
高橋禎一
1
○
高橋委員長
これより
法務委員会
を開きます。 前会に引き続き
司法書士法
の一部を
改正
する
法律案
及び
土地家屋調査士法
の一部を
改正
する
法律案起草
に関し議事を進めます。 この際
参考人決定
についてお諮りいたします。すなわち、本件に関し
弁護士毛受信雄
君を
参考人
として
意見
を聴取することにいたしたいと思いますが、これに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
高橋禎一
2
○
高橋委員長
御
異議
なければ、さよう決定いたします。
参考人
には御多用中にもかかわらず当
委員会
に御出席下さいまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御
意見
をお述べ願います。
毛受信雄
3
○
毛受参考人
ただいま御提案になりました
司法書士法
、それから
土地家屋調査士法
の一部を
改正
する
法律案
について、
日本弁護士連合会
におきまして検討いたしました結果、一応
意見
を決定いたしましたので、この席からそれを御披露いたしたいと思います。 まず、
司法書士法
の一部
改正法律案
でありますが、大体においてはこの
改正案
に
異議
はないのであります。特に
司法書士会
に対して各
司法書士
を
強制加入
せしめるという
一つ
の大きな
改正
でありますが、その点は、
司法書士
の
業務
の
向上発展
のために、また
指導監督
のために適当な
制度
と思いまして、これには
賛成
いたしたいのでありますが、ただ一点、十七条の
改正
であります。これは各
地区
の
司法書士会
を
一つ
にして
全国
を通ずる一個の
司法書士会連合会
を
設立
しなければならないというところに問題があると思うのであります。
現行司法書士法
の十七条では、「
司法書士会
は、共同して
特定
の
事項
を行うため、
会則
を定めて、
全国
を
単位
とする
司法書士会連合会
を
設立
することができる。」という
規定
になっておりまして、
連合会
の
設立
は
任意
ということになっております。すなわち、
連合会
は
性格
として
任意団体
であるということになっておりますのを、この
改正案
では
強制設立
にするということになっておる点に
弁護士連合会
としては
反対意見
なのであります。その
理由
は、
司法書士
の
業務
の
監督
、
懲戒権
は、各
地区
の
法務局
または
地方法務局
の長が握っておるわけであります。許可、
認可
の取消し、それから
懲戒
を行うこと、いずれも
法務局
または各
地方法務局
の長が行うことに
司法書士法
ではなっております。
法務大臣
が
司法書士会
に
関係
するのは、この
改正
条の第十五条の二で、「
司法書士会
の
会則
を定め、又はこれを変更するには、
法務大臣
の
認可
を受けなければならない。」、
強制加入
になりまして、
司法書士会
の
会則
はすべて
法務大臣
の
認可
を受けるという
関係
になっておりますが、各
司法書士
の
懲戒権
は
地方法務局
の長あるいは
法務局
の長がこれを握っているという
建前
になっているのでありまして、
司法書士会
の
連合会
を成立いたしましても、特にこれを法的に
強制
して参加させるための
法律
上の必要が少しも認められないのではないかというところに
一つ
の
難点
があると思うのであります。
現行
の
任意団体
としておいても、この
法律改正
の目的である
司法書士会
及びその
会員
の
指導
及び連絡に関する
事務
上の
改善進歩
ということはできるのではないか。
司法書士会
を
強制加入
せしめて
強制
的に
連合会
を
設立
する。その
設立
することが便利ではあり、実際の必要があるかとも
考え
られますけれ
ども
、これを
法律
で
強制
して作らせるという必要についての
法律
上の
根拠
がないのではないかと思います。たとえば、
日本弁護士連合会
は
強制設立
で
一つ
の
公的団体
でありますが、これは各
弁護士会
及び
弁護士
の
懲戒権
も持ち、
指導監督権
も持つことに
法律
上きめられております。そういう
一つ
の公的な
性格
を付与せられまして、それがために
強制設立
ということは認められるのでありますが、
司法書士会
の
連合会
は、この
改正案
では
法律
上そういう公的な
資格
が与えられていないようであります。そこに
法律
上
連合会
を
設立
せしめなければならないという
根拠
が薄弱なように思われるのであります。それから、もしこれを
強制設立
する必要があり、どうしてもしなければならないものとすれば、十七条の
規定
だけでは非常に立法上ずさんであると思うのであります。と言いますのは、各
司法書士会
の
会則
は
法務大臣
の
認可
を受けなければならない。これを変更するについてもまた同じであると思いますが、
司法書士会連合会
の
会則
については
法務大臣
の
認可
も必要でないことになっておるようであります。自由に
会則
を定めて作ることができるようになっております。それから、
連合会
が結成されましてできましたあと、この
連合会
と
法務大臣
との
関係
については何らの
規定
が置かれておりません。
法務大臣
の
監督下
に置いて、そして
連合会
を統制していくという
官僚行政
の
立場
は必ずしも好ましいものではないと思いますが、さればとて、
司法書士会連合会
を自由な
会則
のもとに
設立
させて、そしてその
行動
を何も規制する
制度
がないということは、これは
司法書士会連合会
の将来の行き方について問題が残ると思うのであります。もし
強制設立
をさせるのであるならば、ここに何らかの行政的な
関係
を
法務大臣
との間につけておかなければならないのではないかと思われるのでありますが、その点が何も
規定
されておりません。
日本弁護士連合会
は強度の
自治権
を持つ
団体
でありまして、みずから
会員
を
懲戒
する権限を持ち、他から何ら
監督等
のことはないのであります。しかし、それでも
弁護士法
の四十九条には
最高裁判所
との
関係
を
規定
しております。
最高裁判所
は必要と認める場合には
日本弁護士連合会
にその行う
事務
について報告を求め、または
弁護士
及び
弁護士会
に関する
調査
を依頼することができる、これだけの
関係
は
最高裁判所
との間につけておりますが、これは
最高裁判所
が
監督
するという
監督権
ではむろんありませんけれ
ども
、しかし、
国家機関
がその
公的団体
との間にこれだけの
関係
があることを
規定
しておりますが、当
司法書士会連合会
については、
法務大臣
その他の
国家機関
との間に何らの
関係
が
規定
されておりません。野放図な
団体
になる。事実上は話し合いでやっていかれるのかもしれませんが、
法律
上は何らの
関係
もつけていない、こういうところに
難点
があります。
弁護士会
の
歴史
を申しますと、
検事正
の
監督下
に
弁護士会
が
強制設立
をされた一各
地方
裁判所のもとに
弁護士会
が
設立
された
時代
があります。その
時代
には
連合会
というものはありません。
検事正
が
監督
した。その後
法務大臣
が
監督
することになって終戦を迎えたのでありますが、現在では
法務大臣
、
最高裁判所
の
監督
も離れて独立したということであります。そういう
歴史
、伝統を
考え
ますと、
司法書士会
は現在の段階では各
地方
の
法務局
の長の
監督
のもとに各
地方
々々に
司法書士会
を
設立
しておるということでありますから、
全国
を打って一丸とする
連合会
を
設立
することは望ましいかもわかりませんが、また現在
連合会
というものが
設立
されておるようでありますが、これを
法的性格
を与えて
強制設立
とするというところに問題があり、これを
強制設立
するほどの必要を認められないというのが
弁護士連合会
の
意見
であります。これは、さような
意味
において、
現行法
の
通り任意団体
としておくことが適当ではないかと思うのであります。 その他の
改正条項
については全部
賛成
であります。ただ、
司法書士会連合会
を
強制設立
しないということになりますれば、十五条の二の二項において、
司法書士会
の
会則
を
法務大臣
が
認可
する際に
司法書士会連合会
の
意見
を聞いて
認可
するという
事項
がありますが、
司法書士会連合会
を
強制設立
にはしないという
建前
になりますれば、この第二項の
規定
は必要のない
規定
になるのではないかと思われるわけであります。
司法書士法
の一部
改正法律案
に対する
意見
は以上で終りますが、
土地家屋調査士法
の一部を
改正
する
法律案
についても全く同様なことが言えると思うのであります。
土地家屋調査士法
の
改正案
の第十五条の二の二項、それから十七条の
改正案
は、
司法書士法
の
改正案
と全く
同一
の字句が使ってありますし、
同一
の構想のもとにできていると思うのでありますが、ただいま申し上げたと
同一
の
理由
によって、この
土地家屋調査士会連合会
というものを
強制設立
させるという
理由
は乏しい。だから、それは
現行法通り任意団体
としておくことが妥当であるという
意見
でございます。 以上私の
意見
の御披露を終ります。
高橋禎一
4
○
高橋委員長
毛受参考人
の御
意見
に対し御
質疑
はございませんか。
佐竹晴記
5
○
佐竹
(晴)
委員
一点だけお尋ねしておきますが、十七条の
規定
をもし
任意規定
にいたしましたときは、公的な
機関
との
関連関係
を
規定
しないでもよいでしょうか。
毛受信雄
6
○
毛受参考人
それはよいかと思います。
現行法
でも
規定
しておりませんので、
会則
に定められた
行動
をすると思います。これは、
任意団体
とすれば、
法務大臣
の
監督下
とか、その他の
公的機関
との
関係
を
規定
する必要はないのではないかと思います。
佐竹晴記
7
○
佐竹
(晴)
委員
でき上った限りは、そこにその存在を認めて、
法務大臣
との
関係等
についてやはりそこに
関係
か出て参りますから、その
関係
を
規定
いたしておく必要はないでしょうか。
毛受信雄
8
○
毛受参考人
これは、私は、
強制設立
をさせるということであれば必ず
行政機関
との
関係
を
規定
しなければならないでのはないかと
考え
たのでありますが、
任意団体
であれば、きめても差しつかえはないかと思いますけれ
ども
、持にきめなければならないというふうに
考え
ないのであります。その
団体
の
行動
がその他の
法規等
に触れればおのずからそこにそれぞれの
監督権
は発動できるものと思いますから、特にきめておくことが必要だということは言えないのではないかと
考え
るわけですが、抽象的になりますからどうですか……。
佐竹晴記
9
○
佐竹
(晴)
委員
ただいまの御説に対して別にとやかく言うわけではありませんが、
任意
にしろ、やはりでき上った
団体
は
行政機関
との
関係
が出てくるだろうし、そこで
強制
的にそういう
団体
を作る場合と
任意
にそういう
連合会
を作る場合との区別なしに、でき上った以上は結局同じなんだから、従って、でき上った
任意団体
について別に
行政機関
との
関係
を
規定
する必要がないとするならば、
強制
的に
連合会
を作った場合だって別に
行政機関
との
関係
を
規定
しないでもいいじゃないか、こういうふうな気持も起るのでありまして、しいて重ねて御質問するわけではありませんが、この
委員会
においてそういう
考え
も起るということについて、もし御所見があればいま一度伺っておきたいと思います。
毛受信雄
10
○
毛受参考人
弁護士法
にも、「同じ
高等裁判所
の
管轄区域
内の
弁護士会
は、共同して
特定
の事上項を行うため、
規約
を定め、
日本弁護士連合会
の
承認
を受けて、
弁護士会連合会
を設けることができる。」という各
高裁管内
の
弁護士会
の
連合会
という
任意団体
の
規定
があります。この
高等裁判所管轄区域
内の
弁護士会連合会
に対しては、
公的団体
との
関係
は、
規約
の制定について
日本弁護士連合会
の
承認
を受けることが必要だという
関係
が
規定
されておりまして、このほかには何も
規定
がないのであります。これは
任意団体
たる
性格
からくるものと思われるのでありますが、
現行
の
司法書士法
でも、あるいは
土地家屋調査士法
でも、
設立
することができるという
任意団体
であるために何ら
公的機関
との
関連
が
規定
していないのであります。そういうことで現在不都合なく行われてきておりますからですが、これを
強制団体
として公的な地位を与えるということになれば、その
公的団体
であるというための
一つ
の
法律
的な
性格
が必要だということをまず第一に申し上げたいのです。それと、さらに公的な
機関
との
関連
が必要であるということが第二点に申し上げたいのでありまして、
公的団体
、
公的機関
との
関係
が、
任意
であってもあるいは
強制
であっても同様に必要ではないかという御質問、さらに進んで、
任意団体
で必要がなければ
強制団体
にしても必要がないという
結論
になるというお
考え
には、直ちには同意いたしがたいのであります。
池田清志
11
○
池田
(清)
委員
簡単にお尋ねを申し上げておきますが、私
ども
のこの
法律
を
改正
しようというねらいは、
司法書士
の
業務
が公けの仕事でありまするから、その個
人々
々の
人格
を向上せしめ、
業務
を善良に行なっていたたきだい、そうして公的の任務をりっぱに努めていただきたいという
国家
的な観点からもちましてこの
法案
を
改正
しようと
考え
ておるわけであります。従いまして、その現われといたしましては、
司法書士個人
々々の
資格
を向上せしめますとか、あるいは
懲戒等
の面におきましてもさらに厳格を加えるというようなことを初めといたしまして、
司法書士お互い
の
団体的規制
によって、他から干渉されることなくして、まず自分の
団体
の中で
お互い
に向上していこうということをやっていただきたい、こういう
意味
におきまして、
資格
の
向上等
をはかるとともに、
司法書士会
という
地域的団体
を
強制
的に
設立
していただきまして、その
憲法
でありますところの
会則
を定めたり変更したりする際におきましては
国家
の
機関
によってこれを
認可
することにいたそう、こういうことに相なっておりますことはごらんの
通り
でございます。この際、御
意見
によりますと、
都道府県単位
の
司法書士会
の
強制設立
については何ら
反対
の御意思もないようでございますが、ただいま
司法書士会連合会
につきましては必ずしも御
賛成
でないような御
意見
を伺うのであります。私
ども
の
考え
ておりますのは、先ほど申し上げましたように、
法務大臣
が
団体的規制
の
憲法
でありまする
会則
を
認可
する際に、
司法書士会連合会
の
意見
を必ず聞かなければならない、こういうことにいたしておりまするところから、この
司法書士会連合会
というものはそこに公的な
意味
を相当に持ってくることを御認識をお願い申し上げたいのでございます。もちろん、
法案
全部を通じますと、
弁護士法
と異なりまして、
人事権等
につきましては、ことに
懲戒
の
問題等
につきましては
国家
の
機関
にこれを持っておりまして、この
会自体
にゆだねるところはございません。でありまするが、その
業務
の問題において、あるいは個
人々
々の
人格
の陶冶の問題においては
団体的規制
によってやろうということであります。先ほど来の御
意見
によりますと、
司法書士会連合会
についても、法理上絶対的に
強制設立
をしてはならないというような強い御
意見
でもないようでありますが、この点、私
ども解釈
をいたしまするに、認定の違いでありまするか、それとも
強制設立
をする要否の
程度
の違いでありますか、そこはどういうふうにお
考え
になっておりますか。
一つ
その点お知らせ願いたいと思います。
毛受信雄
12
○
毛受参考人
これは、るるお述べになりましたように、私
ども
も
司法書士会連合会
を
設立
せしむることについて絶対に
反対
だという
意見
ではありません。ただ、それほどの必要がないのではないかという必要の
程度
の問題と、それから、この
改正法案
では
司法書士会連合会
の法的な
性格
が明らかでないということと、これと国の
行政機関
との間の
関係
が明確ではない、そういう点から
考え
て、絶対に必要ないということではありませんが、やはり必要の
程度
の問題とお
考え
下さればよろしいかと思います。
高橋禎一
13
○
高橋委員長
ほかに
毛受参考人
に対して御
質疑
はございませんか。
——
ちょっと私から一点お伺いしたいのですが、
司法書士会連合会
を
強制設立
するということにして、その
会則
は
法務大臣
の
認可
を必要とする、そういうふうにやることによって、何か立法的な
立場
から見て差しつかえがあるかどうか、その点について御
意見
を伺いたいと思います。
毛受信雄
14
○
毛受参考人
これは、各
司法書士会
の
会則
の
認可
、変更の
認可
を全部
法務大臣
が握っておられるこの
制度
は、むろん
異存
はないのでありまして、
司法書士会連合会
が
会則
を定めるについて
法務大臣
の
認可
、あるいは変更するについて
法務大臣
の
認可
を必要とするという
制度
にされることは妥当ではないかと思います。それには
異存
ございません。
法務大臣
と
司法書士会連合会
との
関係
をそういうふうに持っていかれることについては
異存
はありません。
高橋禎一
15
○
高橋委員長
ほかに御
質疑
もないようでございますから、次に移ります。
参考人
には御多忙のところありがとうございました。
—————————————
高橋禎一
16
○
高橋委員長
次に、
外国人登録法
の一部を
改正
する
法律案
を議題といたします。
質疑
を許します。
椎名隆
君。
椎名隆
17
○
椎名
(隆)
委員
現在
外国人
の
登録
の
実情
はどういうふうになっておりますか。
内田藤雄
18
○
内田政府委員
登録
の
実情
と申しますのは、全体で
登録
がどのくらい行われておるかという御趣旨でございますならば、お手元に御配付申し上げておると存じますが、「第二十四
国会提出資料
」として差し上げてございます
資料
の第一ページに、
外国人登録
の
国籍別
、
府県別
の
人員調査表
というのがございます。それをごらんいただきますと大体御了解いただけるかと存じますが、全体で
登録
が行われております数が六十四万六百六十五でございます。そのうち
国籍別
で一番大きなものは
朝鮮
でございますが、これは、
韓国
と特に明示してあるものと、そうでない
一般
の
朝鮮
と合せたものでございますが、五十七万六千七百五十、それから、次に多いのは
中国関係
でございまして、これも
中国
の本土、
台湾
を含んでおりますが、四万三千九百六十七、それ以外には、だいぶ
数字
は落ちまして、その次は
アメリカ
でございますが八千六百十、そのほか
各国
にちらばっております。大体そういう状態でございます。
椎名隆
19
○
椎名
(隆)
委員
南鮮
、
北鮮
を合計して五十七万六千七百五十、これは
南鮮
、
北鮮
を分けるとどのくらいになるかわかっておりますか。
内田藤雄
20
○
内田政府委員
正確な
数字
は、
韓国
というはっきりしたものが十四万三千三百四十一、
朝鮮
ということになっておりますのは四十三万二千二百七十でございます。ただし、この点よく誤解を生じているようでございますが、
韓国
と書いてあるからその人だけが
韓国支持
であって、それ以外の四十三万幾らは即
北鮮支持
とは申せないのであります。と申しますのは、
韓国
と特に表示しております人が
韓国支持
であることは明らかでございますが、それ以外に、
北鮮
をはっきり支持している者と、そうでない、いわば政治的には無色と申しますか、あまり関心のない
人々
な
ども
みんな一括して
朝鮮
ということになっているわけでございますので、
韓国
でない者が即
北鮮系
であるという断定はできないと思います。
椎名隆
21
○
椎名
(隆)
委員
登録
しているのが全部で六十四万六百六十五ですか。そうすると、
推定
の
在留外人
はどの
程度
ですか。
在留外人
と
韓国人
と両方ですが、これを分けておわかりになりますか。
内田藤雄
22
○
内田政府委員
これは、
密入国
をして参りまして
登録
をしていない者、あるいは出生しているのにかかわらずまだ届出がしてない
者等
、いろいろあり得ると
考え
ておりますが、この
数字
につきましては従来いろいろな説がございまして、前にはこの
数字
は非常に膨大に言われておったのでございますが、だんだん
——
これはあくまでいろいろなことからの
推定
でございますから、もちろんこれについての異見はあり得るのでございますが、最近におきましては、
警察関係
、公安
調査
庁、あるいはその他
関係官署
の
意見
は、そう大きなものではないということにだんだん固まってきているのでございます。それと申しますのは、これは正確には捕捉しがたいのでございますが、
密入国
の
状況
などからの
推定
が
一つ
と、それから、長く潜在しておりましてもいろいろな面で非常な不便がございます。配給の問題とか、あるいは子供など学校へやるといった問題から、あまり長く
登録
をしないでいるということは非常にむずかしい
状況
が多々ございまして、そういう点から見まして、相当大きく
推定
いたしてみましても、この一割以内ではないかというふうに
考え
ております。しかし、これはあくまで
推定
でございますので、あるいはそれよりずっと少いかもしれませんし、また案外われわれの見方が甘いという
考え
もあり得るかと存じますが、大体われわれとしてはその以内であろうというふうに
考え
ております。
椎名隆
23
○
椎名
(隆)
委員
外国
における
外国人
の
登録制度
と
日本
の
登録制度
と比較検討した結果は、どちらの方がやかましくなっているのか、伺いたい。
内田藤雄
24
○
内田政府委員
これはやはり、
各国
の
法制
と申しますか、あるいは
管理
のやり方など、いろいろございますので、そういった
制度
と申しますか、形式的な面だけで一
がい
に判断はいたしかねるのではなかろうかと思うのでございます。ことに
日本
の場合、
外国
の場合と比べて相当特殊な問題を持っておると
考え
ますのは、この間まで
日本人
であった
人々
、
朝鮮人
あるいは
台湾系
の
人々
というようなものを相当多数に
国内
に居住させておるという事実がございます。そういった特殊の事情などを考慮しながら、かつまた、
日本
の
憲法
を初めといたしまして
法制
上のいろいろな
建前
などを考慮いたしませんと、ただ
外国人管理
の
法制
の面だけを取り上げまして、どこの国が厳重であるとか寛大であるとかいうことは、一かいに申せないのではないかと
考え
ますが、それらのことをいろいろ考慮に入れまして、たとえば
共産圏
の国のような場合をとりますと、法文は非常に簡単でございますし、また
指紋
というような
制度
もとっておらないということだけを見ますと、一見非常に寛大なようでございますが、他面、実際
上外国人
の
行動
を大きく制約しておる非常な要素がございまして、
行動
、旅行の自由などにつきましては相当な制限を加えておるようでございます。従って、そういった
登録
の
指紋
の
制度
をとっておるかおらぬかというようなことだけから、寛大であるとか厳重であるとかいうことは言えないと存じます。たとえば
アメリカ
のごときは、この
指紋
の点につきましては実に厳重でございまして、
入国
の
査証
をとりますときに十指の
指紋
を
査証発給
の際の条件にしておるくらいでございますから、そういう角度から見ますと、また非常に厳重であるとも申せますが、しかし、一
たん国内
に入りまして、
アメリカ
の全
法制
を
考え
ました場合には、入ってからそれほど厳重なコントロールはされておるとも言えないのではないかと思うのでございます。従いまして、一
がい
にどこの国が厳重であるとか寛大であるとか、なかなか
一般論
としては申せないと思いますが、ごく常識的な
結論
として申し上げますと、
日本
の
制度
がそんなに厳重な
制度
であるとは
考え
ておりません。むしろ、先ほど申し上げましたように、現在の
日本
の
法制全般
の
建前
から見ましても、
日本
におります
外国人
というのは、ほとんど何らの制約もなしに、
日本人
と同様の生活ができるような保障が全
法制
的な体系として与えられておるわけでございますから、
日本
における
外国人管理
の
制度
というものは、むしろ
一般
的に見て寛大な方ではないか、こう
考え
る次第でございます。
椎名隆
25
○
椎名
(隆)
委員
アメリカ
が
指紋
制度
をとっておることは今承わりましたが、イギリスとかイタリア、フランス、西ドイツのごときもやはり
指紋
制度
を採用しておりましょうか。
内田藤雄
26
○
内田政府委員
外国人
の
登録
に際しまして
指紋
制度
を採用しております国は、われわれの現在までの
調査
で判明しておりますところを申し上げますが、先ほど申し上げました
アメリカ
を別といたしまして、十指の
指紋
をとる
制度
をとっております国は、フィリピン、インドネシア、キューバ、ポルトガル、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、ベネズエラ、ケニア、コロンビア、チリーというような国でございます。それから、一指の
指紋
をとっております国は、シンガポール、香港、スペイン、メキシコ、ペルー及びプレトリアでございます。概して申しますと、ヨーロッパにおけるいわゆる民主国はこの
制度
をとっておりませんが、しかし、これだけで一
がい
にヨーロッパの
各国
が寛大であるというふうには申せないのではないかと思っております。イギリスなどはこういう
指紋
の
制度
はとっておりませんが、
外国人
の点につきましてはなかなか厳重な
管理
が現実に行われておるということも承知しております。
椎名隆
27
○
椎名
(隆)
委員
本年の十月から来年の一月にかけまして、
外国人
の
登録
証明書の切りかえをすると同時に
指紋
をとるということに相なっておりまするが、
指紋
をとるについて予算措置はどのようなことになっておりますか。
内田藤雄
28
○
内田政府委員
これも先ほど御提出申し上げました
資料
の一番最後のところにその予算額を掲載いたしてございます。三十年度にこの
関係
で八千五百万円余りの予算でございましたものが、三十一年度におきましては一億五千四百三十六万五千円という
数字
になっておりまして、全般として約七千万円近くの増額が認められております。そして、その内訳は、こまかいことを省略いたしますが、大体におきまして経常費の方は大してふえてはおりませんので、切りかえのための費用と、それから府県あるいは市町村への交付金がふえておるというわけでございます。確かに、前から見ますと、ただいま申し上げましたようにある
程度
の増額は認められておるのでございますが、ただ、この
登録
関係
の費用は、町村に対しまして元来要る費用のきわめて少数の部分しか回されておらなかった
実情
でございますので、今回多少ふえましたけれ
ども
、市町村側はこれでは決して満足はいたしておらないというのが
実情
でございます。
椎名隆
29
○
椎名
(隆)
委員
そうすると、
在留外人
の
指紋
は一部は残るようなことになりますか。あるいは辛うじてでも全般の
在留外人
の
指紋
をとり得るというようなことになりますか。
内田藤雄
30
○
内田政府委員
そういう事態が起っては困ると思いまして、実は今回の
改正法案
を提出いたしました主たるねらいもそういうところにあるわけでございます。と申しますのは、従来の経験で、実際市町村のある
地区
には非常に多数の
朝鮮人
が密集して住んでおる地域がございます。そういうところにはむろん予算上もある
程度
の手配はしてございますが、しかし、それにいたしましても、物的並びに人的な施設、あるいはそれに対応する準備というものが、その数に応じたようにはなかなかいたしかねるわけでございます。そこで、ある
程度
それをならして、期間を少し幅を持たせることによりまして計画的に実行できる、従って全部のものをとり得るようにいたしたい、こういうことをわれわれとしては
考え
ておるわけでございます。それで、ただいまお話がございましたが、予算がないために
法律
上実行しなければならないことが実行できないという事態にはならないようにいたしたいと
考え
ておりますし、またそれは可能であると
考え
ております。ただし、その際予算面などでは相当市町村がある種の犠牲をこうむるかもしれないということは想像できるところでございます。
椎名隆
31
○
椎名
(隆)
委員
この
外国人登録法
の第二条を見ますると、「この
法律
において「本邦」とは、本州、北海道、四国及び九州並びにこれらに附属する島で法務省令で定めるものをいう。」ということが書いてありますが、この中に沖縄は入りますか入りませんか。法務省令の中では沖縄は「本邦」に入っているのですかいないのですか。あるいはまた、
外国人登録法
の適用を受けることになるのでありますか。
内田藤雄
32
○
内田政府委員
沖繩は入っておりません。従ってまた、
外国人登録法
の施行区域でもございません。
椎名隆
33
○
椎名
(隆)
委員
この中に入っていないとすると、結局は沖縄の人は
外国人登録法
の適用を受くることになると思いますが、沖縄は
日本
の国ですか、
外国
ですか。
内田藤雄
34
○
内田政府委員
先ほど沖縄においてもこれを実行しておるのかという御趣旨かと思って私は御答弁申し上げたのでありますが、ただいまの御質問の
意味
でございますならば、沖縄はこの施行区域ではございませんが、沖縄の人が
日本
へ参る場合のことがもし問題でございますならば、これは
日本人
であるという
考え
でございますから、旅券などはなしでも
日本
へ来られる、こういう
考え
でございます。また、
日本
へ入りました場合には、
日本人
でございますから、この
外国人登録法
の適用は受けません。
椎名隆
35
○
椎名
(隆)
委員
それでは、第二条の中に、沖縄は
日本
のものだということをなぜはっきり書かないのですか。「これらに附属する島で」ということを書くなら、沖縄も
日本
のものだということをこの中にはっきり書いておいたらよかりそうに思うのですがね。
内田藤雄
36
○
内田政府委員
これは沖縄に対する主権の問題になると思うのですが、平和条約できめられておる問題でございます。そうして、
日本
の潜在主権はあるのでございましょうが、現実には
日本
の主権はない格好でございますから、従って、
日本
の
外国人登録法
な
ども
そこは適用される地域には入っておらないわけでございます。
椎名隆
37
○
椎名
(隆)
委員
そうすると、沖繩人がこっちへ来たときにはいわゆる
日本人
として取り扱うのだということですが、出てくるときにはどんなふうな取り扱いになっているのですか。
内田藤雄
38
○
内田政府委員
出てくるとおっしゃいますのは、沖縄の人が
日本
へ来る場合のことでございますか。
椎名隆
39
○
椎名
(隆)
委員
そうでございます。
内田藤雄
40
○
内田政府委員
その場合には、われわれの
考え
ております
意味
の旅券ではございませんが、あそこに南方
事務
局というのがございまして、南方
事務
局におきまして沖繩人であるということの身分証明書のようなものを発給いたしまして、それを持って
日本
へ来るというのが正常の方法でございます。しかし、もしかりにある沖縄人がそういった正規の手続を経ずに鹿児島の海岸に入ってきたという場合を想定いたしますと、その場合でもわれわれはこれを
密入国
者とは
考え
ません。なぜならば、先ほど申し上げましたように、沖縄の人は
日本人
であるという観念でございますから、
日本人
が
日本
へ来たのである以上、
密入国
者としては取り扱わない、こういうことでございます。
椎名隆
41
○
椎名
(隆)
委員
十四才未満の
外国人
に対しては
外国人登録
証明書申請のときにも写真を添付する必要はない、
指紋
もとらないことになっておるのですが、十四才から十五才になった場合には
指紋
をやはりとることになるのですか。
内田藤雄
42
○
内田政府委員
その
通り
でございます。その後の最初の機会にとります。
椎名隆
43
○
椎名
(隆)
委員
十四才以下でも、
日本
に来た以上は、
指紋
が変るということはないのですから、とった方
がい
いように思いますが、どうでしょう。
内田藤雄
44
○
内田政府委員
それも
一つ
の御
意見
であろうと存じます。実際われわれも、子供に関して
指紋
をとっていないことからくる、たとえば子供の
密入国
者を
考え
ますと、不便もあるということは認めざるを得ないと思うのでございますが、しかし、そこはまた、こういう
制度
を行います場合の相手方に対して与える苦渋と申しますか、不愉快さとか、あるいはまた実際問題として生まれた赤ん坊をそれではいつになったら
指紋
をとるかとかとか、いろいろなことを
考え
ますと、どこかで線を引かなければならぬわけでございます。われわれとしては一応諸般の情勢を
考え
て十四才という線を引いておるわけでございます。不便もないことはございませんが、まず大体この
程度
でよいのではなかろうか、こう
考え
ておる次第でございます。
椎名隆
45
○
椎名
(隆)
委員
外国人登録法
の違反は、昨年度どのくらい出ておりましょうか。もしわかれば、
朝鮮人
とその他の
外国人
との
関係
を示してもらいたいと思います。
内田藤雄
46
○
内田政府委員
昭和二十九年度を通計して二万九千七百七十二件、昭和三十年度は一月から六月までで一万二千三百九十五件という
数字
になっております。その内訳をこまかく申しますと、ずっと古い昭和二十二年、二十五年などの
登録
すべきものをしなかった者の計数も若干ございますが、大部分はそういうものではないのでございまして、いわゆる不携帯と申しますか、
外国人登録
証を持っていなかったということによるものが件数としては一番多いのではないかと思います。しかし、その中で起訴された件数は三千二百六件、これは昭和二十九年のことで申し上げておりますが、起訴猶予になりましたのが六千八百九十四件ということになっております。それから、
国籍別
の点は、これは遺憾ながらまだ
調査
ができておりませんですが、大多数は、もうほとんど九五%以上と思いますが、大部分は
朝鮮人
に関して起っておると御了解いただいても間違いないと思います。
椎名隆
47
○
椎名
(隆)
委員
その総合計したうちで、本国に送還せられた者は一体何名ありますか。
内田藤雄
48
○
内田政府委員
外国人登録法
に違反して禁固以上の刑に処せられますと、これは退去の該当事由になるのでございます。しかし、実際のわれわれの運営といたしましては、
外国人登録法
違反のみの
理由
によって退去にいたした例はほとんどないのではないかと思っております。前は別でございますが、最近はほとんどやっておりません。しかしながら、
外国人登録法
違反の内容を追及して参りますと、それが
密入国
であるという場合が相当にございます。そういう場合には、表面は
外国人登録法
違反という
法律
上のあれにはなっておりますが、これは実質的には今申し上げましたように
密入国
だということで退去にいたしております。そういう例は相当ございます。もう
一つ
は、犯罪と
外国人登録法
違反とが結びついておる場合が非常に多数ございます。それで、御承知のように、懲役一年以上の刑を受けますれば退去該当事由ということになるわけでございますが、これもそれだけでは退去にいたすようなことは避けております。しかし、犯罪が非常に重なっておるということで退去になる人の場合に、その人に同時に
外国人登録法
違反がある場合が、これは非常に多数ございます。大体そういうことであります。
椎名隆
49
○
椎名
(隆)
委員
きょうはこの
程度
にして、あとは質問を保留しておきます。
高橋禎一
50
○
高橋委員長
本日はこれにて散会いたします。 午前十一時五十九分散会