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江口参考人 一昨日の夜
管下におきまして
巡査派出所が爆破されて、
警察官が二名重軽傷を負いました。御指摘の
通り希有な不祥事が
発生いたしまして
新聞紙上を騒がしております点につきましては、まことに恐縮いたしておるのでありますが、一昨日の夜
発生いたしました
事件の概要について一応私から御
説明申し上げます。
爆破の
時刻でございますが、大体十九日午後十時十六分ごろと考えられるのでありまして、それは重傷を受けました
松田巡査の腕時計がその
時刻をさしてとまっているところから察せられるのであります。場所は御
承知と思いますが
王子警察署の上十条二丁目の
巡査派出所であります。負傷しました
警官は二名でございますが一人は三十五才になります
松田巡査で、この
巡査は鹿児島県の出身であり、十年前に
警視庁巡査を拝命しておるのでありますが、負傷の
程度は、
爆風でひどくやられまして、顔面はほとんど全部、両眼、
耳等も非常な故障を起しております。あるいは両下肢の方も、あるいはガスのためでありますか腹部が非常にはれております。昨日私もお見舞に参りましたが、多少奥さんを通じて話ができる
程度になっておりますし、目の方もあるいは失明せずに済むのではないかというふうに判断されております。本日から目に入っております
夾雑物を取ろうという治療に入ることになっております。入院しております
病院は
付近の
岸外科病院であります。この
巡査は、本来は上十条五丁目の
派出所の
勤務でございますが、当日は
補欠勤務としてここに回されていたためにこの奇禍にあったということになるわけでございます。もう一人の
巡査は
佐野巡査でありますが、
佐野巡査は
前額部に二針ほど縫います傷を受けております。この方は十日間ぐらいで全快する、前の
松田巡査は化膿その他合併症が出なければ一カ月で回復するのではないかと診断されております。この
佐野巡査の方は、一昨夜はショックを受けて相当発熱しておりましたが、きのうは熱も下りまして、きのうの夕方には自宅に帰って療養することになったそうでございます。
損壊物としましては、その
派出所が木造準
耐火作りでありまして、この四坪半ほどの
交番か半壊いたしております。それから、その隣に大門という
印判屋がございますが、その
印判屋の
交番寄りの方の壁が爆破されております。そうして、店内の
商品等にも多少の損害を受けて、ショー・ウインドー並びに
ガラス戸だなの
ガラスが破壊されております。なお、
交番の道路を隔てて
隣側あるいは前の
商店にも二、三コンクリートの破片などが飛びまして、
ガラスが数枚割れておるというような状態であります。
発生当時の
勤務員の
状況を申し上げますと、当夜は三人
勤務でありまして、
松田巡査は九時半から十時三十分までの
立番勤務を命ぜられておったのであります。
佐野巡査はその
交番の裏の部屋で畳の上でふとんを着て
休憩中であったのであります。従って、出ておる頭だ
けがけがをするというようなことになったわけでございます。もう一人の
古木巡査は
警ら勤務中でありまして、外に出ておったのであります。
爆発時の
状況を申し上げますと、
松田巡査が
立番勤務中に、午後十時十一、
二分ごろ、十七、八才ぐらいの女がその
交番所に参りまして、一丁目八番地はどこでしょうかというようなことを尋ねましたので、同
巡査は、
派出所の
入口を背にして、後の方の戸だなから
案内簿を出しまして、それを見ておるとたんに、
入口の方でいやな臭気がしますので、それを見るために振り返ったとたんに全面的に
爆風を受けたのであります。
佐野巡査は、
休憩室でうとうとしておりましたときに
爆発音を聞いてびっくりしたのでありますが、それ以前のことは何も
承知いたしていないのであります。
古木巡査は、上十条三丁目あたりで
爆発音を聞いたのでありますが、
付近には旧
造兵廠の建物がありまして、
米軍がいろいろ作業をしておりますので、その事故による
爆音かと考えて、そのまま
警らを続行しておりましたところ、国鉄の十条駅
付近でこの
事件の
発生を聞きまして、急遽
派出所に帰っておるのであります。
この
爆音を聞きまして、たまたまその
通りを隔てた前の
飲食店で飲食しておりました某
新聞社の
記者がいきなり
交番へかけつけて参りましたところ、その
派出所から
巡査が拳銃一丁をかけてよろよろと出てきて、
交番の表で倒れたので、その
記者は走り寄って背中をさすったりして百十番、百十番と叫んだようであります。この百十番を呼べという声を聞いて、
付近の
商店から十時二十分ごろに、この
交番が
爆発して
巡査が大
けがをしたという電話が
警視庁の方の
指令室に入りましたので、
指令室からはたまたま
板橋署の
管内をパトロールしておりました。パトロール・カーの
遠山巡査に命令を下しまして、直ちに
現場に急行させたのであります。急行するに要する時間は
二分であったのであります。そこで、直ちに倒れておる人を収容した。これが服がボロボロになっておりますから、一見してわからなかったようでありますが、それが
松田巡査であるわけでありまして、それをすぐ
岸病院に運びまして、そうしてほかにまた別の
救急車が参りましたので、それによって
佐野巡査をもう
一つの
鈴木病院というところ、に入院させることができたのであります。百十番の
指令を受けました
宿直主任は直ちに
署長にその旨を報告するとともに、全
派出所、
宿直員待機寮その他に連絡いたしまして、全員を招集いたしましたほか、第五
予備隊一個中隊の十出動を要請しまして、
緊急手配を行いまして、この
事件究明のための
捜査を開始いたしたのであります。
なお、
警視庁本部からも、
捜査一課、
鑑識課の係官が直ちに
現場に急行いたしまして、
実況検分を行い、引き続き午前九時より
現場におきまして
爆発物その他
捜査資料を得るために詳細な検査を行いましたところ、
完全爆発、完全燃焼しておりますので、焼け残りのものは全然ないのであります。従いまして、
現場付近の土砂とか
損壊物件等をただいま鑑定中でございます。昨日の午前九時に
王子警察署に
特別捜査本部を設けまして、
刑事部長直接指揮のもとに
関係各部の協力を得まして
総合的捜査をお願いしておりますが、まだ現在の
段階におきましては
基礎捜査の域を出ません。
捜査の経過についてまだ詳しく御報告するまでに至っておりません。
大体の
状況は以上でございます。