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1956-05-15 第24回国会 衆議院 文教委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十五日(火曜日)    午後三時十六分開議  出席委員    委員長 佐藤觀次郎君    理事 赤城 宗徳君 理事 加藤 精三君    理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君    理事 米田 吉盛君 理事 辻原 弘市君    理事 山崎 始男君       杉浦 武雄君    並木 芳雄君       町村 金五君    山口 好一君       河野  正君    小牧 次生君       小松  幹君    野原  覺君       平田 ヒデ君    小林 信一君  出席政府委員         文部政務次官  竹尾  弌君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君  委員外出席者         文部事務官         (大臣官房総務         参事官)    斎藤  正君         文部事務官         (初等中等教育         局教科書課長) 安達 健二君         専  門  員 石井つとむ君     ――――――――――――― 五月十一日  委員並木芳雄辞任につき、その補欠として濱  野清吾君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員濱野清吾辞任につき、その補欠として並  木芳雄君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員池田禎治辞任につき、その補欠として小  松幹君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十一日  教育公務員特例法及び教育公務員特例法第三十  二条の規定適用を受ける公立学校職員等につ  いて学校看護婦としての在職を準教育職員とし  ての在職とみなすことに関する法律の一部を改  正する法律案坂田道太君外四名提出衆法第  五二号) 同月十二日  地方教育行政組織及び運営に関する法律等制  定反対に関する請願小牧次生紹介)(第  二一四二号)  奈良県立医科大学の国立移管に関する請願植村武一君外四名紹介)(第二一四  三号)  大学卒業程度検定制度確立に関する請願(内藤  友明君紹介)(第二一六五号)  教育職員免許法施行法の一部改正に関する請願  (廣瀬正雄紹介)(第二一九四号)  紀元節等復活に関する請願赤城宗徳紹介)  (第二二〇九号) の審査を本委員会に付託された。 同月十日  地方教育行政組織及び運営に関する法律等制  定促進に関する陳情書  (第六四五号)  紀元節復活に関する陳情書  (第六五五号)  同  (第七〇二号)  同  (第七二九号)  児童生徒災害補償に関する法律制定陳情書  (第六五六号)  し体不自由児教育施設設置に関する陳情書  (第六五七号)  へき地教育振興法改正に関する陳情書  (第七〇七号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  教科書法案内閣提出第一二一号)     ―――――――――――――
  2. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出教科書法案及び議員提出教科書法案一括議題とし、審査を進めます。  質疑を許します。高村坂彦君
  3. 高村坂彦

    高村委員 私は、五月九日に第二十九条までの質疑を終っておりますので、本日は第四章から質疑をさせていただきたいと存じます。  第三十条は、教科書発行者並び供給業者登録制規定しているのでありますが、この発行者登録申請に対しましては、あるいは供給業者についてでもですが、大体条件を備えている者は数を制限しないでみなこの登録を許されるお考えでございますか、あるいはその適正な数というものを一応考えておられますか、この点をまず伺っておきたいと存じます。
  4. 竹尾弌

    竹尾政府委員 お答え申し上げます。一応条件を備えておれば発行を許すことになっておりますので、その数の点は考えておりません。
  5. 高村坂彦

    高村委員 そこで、現在すでに発行をいたしておる発行業者に対して、その既得権というものをお認めになるつもりかどうか。現在発行しておる者でも、その条件が不備な者に対しては、これを拒否されるつむりほのかどうか。なお経過規定の七に規定しておるところを見ますと、昭和三十二年度までは、すでに発行いたしておる者は登録を受けないでも発行が継続できることに相なっておりますが、こうした精神からあるいは既得権というものをある程度ごしんしゃくになるお考えがございますかどうか、この点を伺っておきたいと存じます。
  6. 竹尾弌

    竹尾政府委員 この法案を見ますと、昭和三十二年度の使用教科書についてのみ認めるわけでございまして、従って従来の既得権というものについてはしんしゃくしない、こう解釈してよろしゅうございます。
  7. 高村坂彦

    高村委員 そこで三十条の二項の五号に「発行者にあっては、発行する教科書種目」ということがございまして、これも登録しなければならぬことに相なっておりますが、この教科書種目を新たに加えることに一々登録せしめるというのは、いかにも煩瑣なような気がいたします。ことに第三十三条によりますと、その変更の場合にも一定期間内に届出をしなければならぬという義務を課しておる。それを受けて、第六十二条には、さらにこれを行なわなかった場合には罰則規定しておるのでございます。これはどうでございましょうか、教科書種目を一々というのはちょっと酷のような気がしますが、その点はいろいろ御研究になったこととは思いますが、取り扱い上どういうふうになりますか、ちょっと念のために伺っておきたいと思います。
  8. 安達健二

    安達説明員 第三十条第二項の五号で、「発行者にあっては、発行する教科書種目」を登録事項にしておりますが、発行する教科書種目について登録事項といたしましたのは、発行者について、どのような教科書発行するかということが、同時に第三十二条の第二項の事業能力等との関連もございまして、種目能力との関係に一応の関連が認められるということと、もう一つは、登録という制度一定事項を公けによって証明されることでございますので、これによって、発行者というものについての公けの認められた信用というものも出て参るわけでございます。従って、今申し上げました二つの事情から、発行者について、発行する教科書種目登録事項にいたした、かようなわけでございます。
  9. 高村坂彦

    高村委員 私はこの教科書種目発行というものの実情がどうなっておるか存じませんから、若干の心配をいたしておるのです。と申しますのは、教科書種目というものが、発行者がもうしょっちゅう変えておる、あるいはしょっちゅう増減があるということであるならば、これは届出ぐらいでよいのじゃないか、何も登録までして、しかもそれが変った場合にそのつど登録を変更しなければならぬ、それを怠ればすぐ罰則でこれに臨むということはどうかと思ったのです。それは今申しましたように、実情についてつまびらかにしておりませんから、文部省の方で、教科書種目というものがそうしょっちゅう発行者として増減をするものではないのだ、こういうことであれば、こういった規定も今お話のような意味でよかろうかと存じます。  時間の関係で続いてお尋ねいたしますが、三十一条に、「登録を受けようとする者は、文部省令の定めるところにより、申請書に必要な書類を添えて、文部大臣提出しなければならない。」こうあって、さらに第二項に、「登録を申請する者は、政令の定めるところにより、登録手数料を納めなければならない。」こう書いてある。そこで申請書に必要な種類を書く場合に文部省令で定めることになっておりますが、これは大体どういう内容のものを申請書に書かすおつもりでございますか。御腹案がおありかと思いますので、これをお尋ねしたいと思います。  それから、第二項の手数料は大体どのくらいおとりになるおつもりであるか、これは文部省でおきめになるのではねいかと思いますが、どういうふうなお考えでございますか。これも念のために伺っておきたいと思います。
  10. 安達健二

    安達説明員 第三十一条第一項の文部省令でもって、申請書様式添付書類等を定めることとなるわけでございます。添付書類といたしましてただいま考えておりますのは、会社でございますれば、その定款、事業経歴書登記簿謄本、役員の履歴書、それから事業能力とか、信用状態関係もございますので、資産の状況とか、事業計画というものを記載した書類を出してもらうことになろうかと存じます。  第二類の登録手数料でございますが、これは一般の登録の場合との均衡もございますし、大蔵省ともなお協議をしなければならないと思うのでございますが、大体一万円から二万円ぐらいのところでよかろうじゃないか、こういうふうに考えております。
  11. 高村坂彦

    高村委員 第三十二条は登録制限規定しておるようであります。第一項は、これは絶対的制限事項と申しますか、そういうものが規定してあり、第二項で相対的な制限等規定してあるように考えられますが、その中で第一項第五号の、「個人で、その支配人が第一号から第三号までの一に該当するもの」、こういう者は登録してはならぬ、こういうことに相なっておるわけでありますが、この支配人というのは、通俗にいって店主という意味考えていいのでございましょうか。
  12. 安達健二

    安達説明員 これは商法の関係で、いわゆる個人の営業の場合に支配人が置かれる、その場合でございます。
  13. 高村坂彦

    高村委員 必ずしも支配人を置かない場合もあり得ると思うんですが、そういう場合にはどうなるのですか。
  14. 安達健二

    安達説明員 そういう場合には、当然この一号から三号までは、その個人自体について適用があるわけであります。個人でありましても、自分責任と申しますか、主たる支配をしないで、支配人を別個に置いてある場合には、支配人自体には適格条項考える、こういう趣旨でございます。
  15. 高村坂彦

    高村委員 第二項のこれは相対的な制限事項であるから、特に大事を踏まれて教科書発行審議会の議を経ることに相なっておりますが、私はどうも占領下の日本の行政が、いわゆる行政官庁責任を持ってやるという風潮がだんだんなくなって、何かといえばこういう審議会を設ける、そうしてこれは審議会に諮問したんだからというようなことで、審議会というものが隠れみのと申しますか、責任のがれの一つの口実になるような傾向が全般的にあるような気がするのです。そこでこれは最近の行政の一種の通弊でないかとも思うのです。教科書発行審議会の点についてはあとからお尋ねいたしたいと思いますが、こういった場合に、文部大臣責任者として、責任を持って十分に調査をしてやる、その責任自分が負うんだ、こういうふうなやり方をすることの是非について、この条文をお作りになる際に検討されたのでございましょうか。これは相当業者の利害に関係するものであるからということで、こういうふうな方法をとられたのでございますか。おそらく後者だろうと思うのですが、その点のお考えはどうでございましょうか、一つ考えを伺っておきたいと存じます。
  16. 竹尾弌

    竹尾政府委員 御説の通り、特に戦後におきまして、各省ともいろいろ審議会に似たような組織と申しますか、制度がございますが、これは一面主管者である者の責任を回避するような傾向にあるのではないか、こういうお尋ねでございましたが、とりようによりましたらそういうようにとれないこともないかもしれませんけれども、何と申し上げましても、行政それ自体を民主化していかなくてはならぬという方針にのっとりまして、多数の人の御意見を承わるということが、考え方によっては民主主義行政の一端であるというふうにもとれますので、この場合ももちろんそうした衆知を集め、衆議にのっとるという考え方からこういう審議会を設けた方がより民主主義的である、こういうような考えで設けたのでございまして、この点につきましてはいろいろ事務当局も考慮をしたわけでございまして、こういう方法が現在においてはよりよい方法である。業者にとってもその他にとりましてもよりよい方法である、こういうふうに考えておるのでございます。
  17. 高村坂彦

    高村委員 実はこれは意見になりますけれども、最近はどうも制度だけが完備して、実際は魂が抜けて、結局その結果としては、国民自体が迷惑するというふうなことが間々あるように思うのです。従ってこういった行政審議会というものが諮問機関としてできました際に、これを活用するに当っても、やはり文部大臣十分責任を負うといったような立場で、これにかけるまでに十分なる一つ案を作ってやるようなやり方をしていただきたい、これは私ども希望しておきたと存じます。  それから第二項の一号で「登録を申請した者の事業能力及び信用状態教科書発行又は供給事業遂行に著しく不適当であると認められるとき。」こうあるのですが、私はいやしくも教科書のごとき非常に公共性のあるものを発行する者については、不適当であればこれは登録を許さぬというふうにしてもらうことが必要ではないか、何も特に「著しく」ということを規定される必要はないのではないかと思うのですが、これはどういう意味でございましょうか。「著しく」ということがないと工合の悪いというような事情でもおありでございますか。その点を一つ伺っておきたいと存じます。  さらにちょっと引き続いて伺いますが、第二号でございますが、「採択関係者登録を申請した者の教科書発行又は供給事業に対し事実上の支配力を有し、これにより教科書採択の公正が害されるおそれがあると認められるとき、」こういう規定でございます。これは私は採択を矯正するという意味で、この規定は非常に重大な意義を持っておると思いますが、しからばこういう規定を設けなければならなかったという事情、今日のこれは行政監察委員会等でもいろいろ審査をしておるようでございますが、文部省の方で特に御調査になって、現状においてどういうふうな具体的な事例があって、どうしてもこういった規定が必要なんだ、こういうものは事実上の支配力を有し、採択の公正を害するおそれがあるのだ、こういうふうな点についての事実を示して一つ説明をいただきますと、この審議の上において非常に資するところがあろうかと存じます。
  18. 竹尾弌

    竹尾政府委員 この第一項でございますが、教科書発行業者と申しますのは、御承知のように出版業者というのは、相当資本が寝る場合がありますし、それから資本を要する場合もございまして、しかも銀行から見ると非常に危ない企業者である、こういうふうに見られておるのでございまして、それをある意味では悪条件を冒して教科書発行に従事しておるというようなものも相当あろうかと思うのでございます。それでこれの銀行信用状態がABCのCであるから、これはいかぬというようなことになりますと、やはりせっかくの事業の意欲をこわし、またせっかくいい教科書を作ろうと思ってもできない場合もございますので、そうした心づかいも手伝いまして著しく不適当な場合には云々というふうにきめてやったわけでございます。  第二につきましては、これはなかなか事実が複雑でありましょうから、詳しいことは局長から答弁させます。
  19. 緒方信一

    緒方政府委員 三十二条第二項の第二号の問題でありますが、採択関係者登録を申請した者の事業に事実上の支配力を有する、このことでございますが、事実を示して説明をするようにというお話でございますので、従来の経緯等も若干つけ加えて申し上げます。まずこの意味を申し上げますと、採択関係者でございますから学校校長先生だとかあるいは教育委員会関係者等々を含みますが、そういう者が発行または供給をいたしまする事業の上に、その組織あるいは運営実態等につきまして実際上相当有力な勢力を持っておるという場合等でございます。そこで従来の経緯といたしましては、特に供給関係につきまして問題があったことがあるのでございますが、つまり供給事業発行事業もそうでございますけれども、その中に採択関係者勢力が入り込んでくることになりますと、どしても採択の公正ということが阻害されるということになりがちなのであります。そこで供給採択関係、あるいは発行関係につきましても、どうしても分離する必要があるという議論が従来も起っておるわけであります。で以前公正取引委員会から文部省に対しましても意思表示を受けたこともございますし、あるいは教科書供給会社に対しまして警告が発せられたこともございます。それは一部の特約供給者におきまして、採択関係者がその事業構成員としてあるいはまたそれらの役職員等として従事している事例がある、これは非常に遺憾なことであるからということで、文部省に対しましても、発行供給関係者に対しましてもそういう警告が発せられました。これらにつきまして先般衆議院の行政監察委員会においてもお取り上げがあり、またそういう事態はまことに遺憾でありますので、中教審答申の中にもこういうことを排除するような立法措置が必要であるというような答申をいただいておるのでございます。端的に申しまして公取が申しましたことは、警告の対象にいたしましたことは、以前でございますけれども、学校生活協同組合というのがございまして、これは主として先生方生活協同組合でございますけれども、これが教科書供給事業を取り扱っておった。これはどうしてもやはりその取り扱います教科書が、採択関係におきまして影響力がありまして、それがどんどん伸びていく、教科書内容についての審査よりも、そういう利益関係においてその採択が伸びていくことはまことに遺憾であるということが、この問題になった起りでございます。そこで実際を申し上げますと、文部省としましても、そういう経過がありましたあと学生協が取り扱うということは好ましくないという意思表示をいたしまして、漸次指導もいたしたのでございますけれども、現在におきましては、学生協としての取り扱いはございません。これは会社に改組されております。そういう経緯がありまして、そして先ほど来申し上げますように、中教審等におきましても、こういう立法措置をとるようでございますから、発行業者にしましても、供給業者にいたしましても、採択関係者勢力が事実上支配力を有するようになれば、これは教科書採択の公正が害されるおそれがありますので、そう認める場合には拒否し得る。しかしこれはやはり相当事実認定の問題もありますので、発行審議会にかけて、その議を経て登録の拒否をやるという趣旨でございます。以上申し上げます。
  20. 高村坂彦

    高村委員 この第二項は、私は今日の実情に徴して重要な規定だと思います。この法案が成立した暁において、これを運営するに当っては、あまり行き過ぎになりますと、やはり弊害が起きてくると思いますが、慎重に運用されまして、現在問題となっております弊害は除去できますように御活用をいただきたいと存じます。  それから次は第三十五条でありますが、この三十五条では、「文部大臣は、発行者又は登録教科書供給業者が次の各号の一に該当するときは、登録を取り消さなければならない。」こう規定しておる。その第二号に「登録を受けてから二年以内に発行者又は登録教科書供給業者としての事業開始しないとき。」と書いてある。この事業開始という意味を伺いたいのですが、たとえば原稿を二年のうちに執筆者に依頼した、こういうことでもうすでに事業開始したと言えるのかどうか。もしもそれをもって開始したと言えるとすれば、これは非常に変な規定になって、実効がないと思うのですが、この事業開始したというのは、具体的にどういう場合に開始したと見るのかということを明らかにしていただきたいと思うのであります。  それから第二は、三号で「発行者又は登録教科書供給業者としての事業を二年以上休止したとき。」となっておりますが、これも同様であります。休止とは、いかなることをもって休止というか。つまり、本が出なかったということだけをもって、二年以上休止したと言えるかどうか。準備をまだやっているのだ、こういうことであれば休止したとは言えないのか。この辺が若干あいまいなような気がいたしますので、この点を明らかにしておいていただきたいと存じます。
  21. 緒方信一

    緒方政府委員 三十五条一項の第二号、第三号の開始しないときあるいは休止したときについてでありますが、発行者にありましては、登録を受けまして、最初発行申し出をしない、そこまでの間が二年間であるということであります。それから登録供給業者におきましては、発行者教科書供給に関する契約をしないということが二年間、登録を受けてから二年間もそれをしないという場合をいうのでございます。それから休止したときは、発行者につきましては最近の発行申し出にかかる発行の終了したときから二年間、それから供給業者につきましては、最近の発行者との供給契約にかかる教科書供給を終了したときから引き続き二年間で休止したとかように解釈いたします。
  22. 高村坂彦

    高村委員 まだはっきりいたしませんが、発行者の場合に事業開始しないというのは、最初発行申し出を二年間しなかったということだ、とこういうお話なんですが、そういう意味事業開始しないということから私はどうも文字解釈としては出てこないと思うのでありますが、どうでありますか。それから今の発行者が二年以上休止したというときは、発行を一応終了してから、次の発行申し出をしない期間が二年以上だったと、こういうことでございますか。
  23. 緒方信一

    緒方政府委員 今の休止解釈はただいまお話通りだと思います。開始しないときでございますが、これは登録を受けて、二年以内に事業開始がなかったときということでありますけれども、事業開始とは何であるかと申しますと、今申しましたように、発行申し出をもって事業開始、こう見るつもりであります。最初の二年以内に最初発行申し出をしない、こういう場合には第二号に該当いたします、かように解釈をいたします。
  24. 高村坂彦

    高村委員 私は事業開始というこの言葉からそういった解釈が出てくるということについて若干の疑問がございますが、しかしこれは解釈を確定をして、そういうふうに御運用になるということなら、けっこうだと思います。  第二項ですが、「文部大臣は、発行者又は登録教科書供給業者が第三十二条第二項各号の一に該当するに至ったときは、教科書発行審議会の議を経て、登録を取り消すことができる。」とある。私はこの三十二条の第二項の各号に該当した場合、できるというのはどうであろうかと思うのですが、この場合にはすなわち第三十二条の第二項から申しますと、事業能力及び信用状態教科書発行または供給事業遂行に著しく不適当下であると認められるように相なったときであり、さらにまた二号の事実上の支配力を有するようになって教科書採択の公正が害されるおそれがあると認められたとき、こういう場合に教科書発行審議会の議を経て、登録を取り消すことができるというのではなしに、むしろ取り消さなければならぬということでいいのじゃないかと思いますが、その点はどうでございましょうか。  それからまた、取り消された場合に救済方法というものは全然ないのでございますか、あるいは何か方法があるのでございますか、この点も承わっておきたいと存じます。
  25. 緒方信一

    緒方政府委員 三十五条の二項の「取り消すことができる。」という規定でございますが、これは三十二条の登録を与えます場合に、やはり第一項、第二項と書き分けまして、第一項の方は客観的な条件でございますから、こういう場合必ず文部大臣は拒否する、登録を行わない、これをはっきりきめたわけでございます。その第二項におきましては認定の問題で、果して不適当であるかどうか、あるいはまた果して公正を害するかどうかという認定の問題がございますので、「登録を行わないこととすることができる。」とし、しかもそのときには発行審議会の議にかける、こういうことを規定いたしておるわけでございます。これに対応いたしまして三十五条におきましても、登録の取り消しをいたします場合に、この第一項におきましては、客観的な判断がすぐできる問題でございますので、この場合必ず取り消さなければならぬ。しかし第二項におきましては、やはり認定を必要といたします事項でございますから、議を経て取り消すことができるというように、三十二条、三十五条対応した規定でございます。お説のように、著しく不適当でまた公正を害するというものはいけないのでございますけれども、しかしそれを認定いたしますために、議にかけ、そして文部大臣が取り消すことができる権能をここに持たせるという趣旨規定でございます。
  26. 高村坂彦

    高村委員 私も第二項の方は相対的な制限になっておるわけでございますから、あるいは条文のつり合いからいえばできるとした方が適当であるかとも存じます。了承いたしました。  次は三十六条でございますが、この第二項に「文部大臣は、この法律の実施のため必要があると認めるときは、その職員に、発行者又は登録教科書供給業者の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、教科書発行又は供給事業の状況に関し、帳簿、書類その他の物件を検査させ、又は関係者に対し質問をさせることができる。」と書いてある。これは非常に強権的な規定でございますから、この運用については、よほど慎重を期してもらわなければならぬと思いますが、この「その職員」というのは、これは文部省の職員という意味でございましょうか。第三項に、「第一項又は前項の権限を都道府県の教育委員会に委任することができる。」とありますから、この委任を受けた場合には、都道府県の教育委員会の職員もまたこういう権限を持ち得ることがあるのか、この点を明らかにしていただきたいと存じます。
  27. 緒方信一

    緒方政府委員 先ほどのお答えで一つ落しましたが、この三十五条の登録の取消しに対しまして、この法律では特別にそれを補償する規定は作っておりません。ただ一般的に、行政処分に対します行政訴訟等の道は別にあると存じます。  それからただいまの三十六条についての御質問でございますが、第二項におきます議員は、文部大臣がその職員に質問をさせるというのでございますから、これは文部省の職員でございます。ただ第三項におきまして、その文部大臣の権限を都道府県の教育委員会に委任することができることになっておりまして、委任した場合には都道府県教育委員会の職員がこれを行う、かようなことになります。
  28. 高村坂彦

    高村委員 今御答弁がありました登録取り消しの救済方法については、この法律の中には特別な規定がない、これは御説明を待つまでもないわけでありますが、これはあるいは私の記憶間違いかもしれませんが、特に法律行政訴訟の道を許すという規定がない場合には、そういう救済の方法はなかったのではないかと存じますが、いま一度この点を明らかにしておいていただきたいと思います。  それから次に三十六条の第五項でございます。「第二項(第三項の規定により権限が委任された場合を含む。)の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。」この解釈してはならないという意味が、これは戦後の立法例として、こういう書き方があるのかもしれませんが、私は実は寡聞にして存じませんですが、どういう意味でございましょうか、この意味一つお示しをいただきたいと存じます。
  29. 緒方信一

    緒方政府委員 第一間の行政訴訟の関係でございますが、行政事件訴訟特例法というのがございまして、行政庁の違法な処分の取り消し、変更等に関しますことの訴訟につきまして、これはきめておるわけでございます。それでちょっと申し添えますが、法令の規定によって訴願とかあるいは審査の請求とかあるいは異議の申し立て、こういうふうなものが規定されております場合には、それを訴願前置主義ということでそちらをまずやって、そしてそのあと行政訴訟ということになるのが順序でございますけれども、こういう規定のない場合におきまして、あるいはここにあります場合にも、この行政訴訟として受け付けることができることになっております。この法律によりまして、救済の道がとれると存じます。  それから今の三十六条の第五項の解釈でございますが、これはおっしゃいます通り、いわば訓示規定でありまして、この発行者または供給業者事業公共性にかんがみまして、相当これは自由、権利の制限になりますので、文部大臣がその職員をして立ち入り検査させ、あるいは報告を求めさせ、あるいは質問をさせる等のことができるように規定いたしましたけれども、しかしこれはあくまで行政上の監督の建前からこれを考えるわけでございまして、そのためにあるいは権利の乱用になったりあるいは業者の著しく利益を害することのないようにしなければならぬことは当然でございますので、その運用につきまして十分注意しなければならぬと考えるわけであります。そのために第四項をごらん願いますと、証明書を携帯させる等の配慮をいたしておるわけであります。そういう意味からいたしまして、第五項に、これは犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない、行き過ぎをやってはならぬ、こういうような精神的な規定を置いたのでありまして、こういう立法例は、最近ほかにもあると存じております。
  30. 高村坂彦

    高村委員 私がお尋ねしたのは、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならぬという意味は、どういう意味であろうかということをお尋ねしたのです。文字通り解釈すれば、そういった質問等いろいろしたときに、犯罪があるということが発見されても、それを告発するとかそういうことは許されないという意味でございましょうか、あるいは犯罪を聞き出すようなことをやってはいかぬという意味なんでございましょうか、その意味を実はお尋ねしたのです。
  31. 安達健二

    安達説明員 憲法の第三十五条に「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」という規定がございまして、こういう立ち入り検査を認めた場合に、そういうようなことができるという誤解を生ずる。こういうようなことで、終戦後の法令、特に司令部の方の要求もございまして、こういう訓示規定を入れておりますが、最近ではややそういうものも除くような傾向もないわけではないのでありますが、やはり他の立法例との均衡上、均衡を保って入れたということでございます。
  32. 高村坂彦

    高村委員 わかりました。これは占領下の惰性的な規定で、私は、こういう規定は理論からいえば必要はないのではないかと思うのですが、他の立法例からして念のために御規定になったということでございますから、あえて反対するわけじゃございません。  そこで第三十七条ですが、「発行者又は登録教科書供給業者がこの法律又はこの法律に基く命令に違反すると認めるときは、発行者又は登録教科書共給業者に対し、その違反行為をやめるべき旨又は、義務の履行若しくは違反行為の是正のため必要な事項を示して、これを行うべき旨を命ずることができる。」こういうことが規定してございます。これは積極、消極の行為を要求する規定だと思いますが、もしもそれを聞かなかった場合は、第二項にそれに対する措置が規定してあります。このときも「発行審議会の議を経て、登録を取り消し、発行保証金の全部若しくは一部を国庫に帰属させ、又は発行の申出があった」云々と、相当の制裁が規定してあるわけでございますが、ここでも私は疑問に思いますのは、法律法律に基く命令に違反すると認めるものに対して、それを是正するような命令をすることは文部大臣としては当然だと思いますが、それを聞かない場合に、またここで教科書発行審議会にかける。これは議を経てということになっておりますから、非常に扱い方が丁重過ぎて、果してこういった目的を達し得るかどうか。もちろんその制裁が相当強いものがございますから、そういう意味かとも思いますが、こういった手続を慎重にやって、十分目的を達成し得るとお考えであろうと思うのですが、念のためにこの点についての御所見を伺っておきたいと思います。
  33. 緒方信一

    緒方政府委員 この法律又は法律に基く命令に違反する事項がある、そういう場合は、発行にいたしましても供給にいたしましても、その使命を達成することは非常にできがたい場合、これに支障がある場合でございますので、そういう違反者に対しましては、強い態度をもって臨むことはもちろん必要であると思います。しかしながら、何といたしましてもこれは事業を経営する者の権利に関係することが非常に大きいのでございますので、ただ文部大臣の判断、具体的に申しますと、文部省の職員のみでこれを判断をしていくということでなくて、やはり発行審議会の議に十分かけて、そうしてこれを判断していくことが、悪いことを是正するとかいうことば別といたしまして、その処置に遺憾のないことを期することは、これはまた事業の権利を尊量し、これがまた一面教科書に関する事業でございますから、これがうまくいくことはその面から申しましても必要なことでございますので、十分念を入れてその措置を考えるということが必要であろうと考えております。またここにございますように、その処分にいたしましても、発行の取り消しあるいは保証金の国庫帰属あるいはまた教科書等に対する不登載というような処分も一々指摘してございます。事案も区々でございましょうし、それに対してどういうふうな処置をしていいかということも、いろいろ事業内容ともにらみ合せて判断すべき問題だと思いますので、ここに掲げておりますように十分発行審議会意見を聞いてやることが適当であろうと存じます。
  34. 高村坂彦

    高村委員 第二節の発行及び供給に移りたいと思います。第三十八条の「文部省令の定めるところにより、毎年、翌年度使用の教科書として発行しようとする教科書文部大臣申し出なければならない。」と、こう規定しておりますが、これは大体現行法と取扱いは同じかと思いますが、違っておりましたら違っている点のお示しを願いたいと思います。  それからついでにお尋ねいたしますが、第四十条に「文部大臣は、発行者に対し、前条第二項の規定による報告に基いてとりまとめた事項を示して、教科書発行を指示しなければならない。」という規定がある。ところが四十六条に「発行者教科書供給に関する契約を締結した登録教科書供給業者は、文部省令の定めるところにより、発行者の指示に従い、翌年度に使用される教科書について、その需要見込数を調査し、その結果を発行者に通知しなければならない。」前者の方は文部大臣が各都道府県の教育委員会から集まって参りました大体見込み数と申しますか、そういうものを発行業者にとりまとめて指示することになっておりますが、こちらの方は登録教科書供給業者が需要見込み数を調査してそれを発行者に通知するということになっております。この関係はどうなりますか。時期の違いはあるようでございますが、一方はまだ教科書ができておらぬ場合にそれを言って作らせる、こちらは見込み数を調査して通知するということになっているようでございますが、前の数量とこちらの数量と相当の相違があるということでこういうような規定になっているのでございましょうか。この関係をちょっと疑問がございますのまでお示し願いたい。
  35. 安達健二

    安達説明員 最初発行申し出でございますが、これは現行法の臨時措置法の第四条と同じ趣旨でございます。それから発行の指示の場合には、その需要見込み数を「とりまとめた事項を示して、」云々とございます。現行の臨時措置法によりますと、文部大臣が需要数を示して発行の指示を行うということになっております。従って現行の制度でございますと、文部大臣がその数そのものを示して、その数の教科書発行するようにという指示を行う、こういうことになっているのでございますが、しかしながらこの数というものが、その時の景気の変動その他で相当変更がございます。それで文部大臣がそういう個々の実際の教科書の需要数をも把握して示すということは、当時の用紙事情との他の事情からすれば必要なことであったのでございますが、かえってそういうことをやる必要がないのじゃないか。最初の四十条で指示いたしますのは、教科書発行を指示するということで、部数というものは一つの参考資料といたすわけでございます。従いましてこの資料は町村の教育委員会なり都道府県の教育委員会が事務的に、いわば在籍見込数というような数を出してもらう、そういうことで発行の指示によりまして発行者は大体の発行すべき教科書の概略がわかる。それによりまして資金の手当その他をするということ、それからさらにそういうものの実際の需要数というものが、特約業者といいますか、登録教科書供給業者が、さらに実地について詳細に調べてそれを発行者に通知するということによって、部数の変動その他を十分考慮いたしていくことができるようにする、こういう趣旨で、最初の需要見込数というのは、いわば在籍見込数、在籍児童生徒の見込数でございます。そして四十六条の方は、実際買いそうな児童生徒の数というところで、時期の点で違うのみならず、数の上においても最後の数字の需要見込数の方はさらに的確な数字になる、こういうようにいたしておるわけであります。
  36. 高村坂彦

    高村委員 大体御説明で了解ができました。そこで第四十一条でございますが、この規定によりますと供給責任者は原則として登録教科書供給業者であるというふうに規定していると思います。そこで現行法では発行業者供給の最終までの義務を負うことに相なっていると存じますが、一説によりますと、やはり発行業者に最終までの供給義務を負わしておく方が発行業者という、つまり相当の危険を負担して教科書発行をする者が、むしろ供給業者供給責任を負うということになって、これが登録されておりますから、非常に強い立場に立って、取引等の関係で非常に不安がある、こういうふうな意見も聞くのでございますが、これは私は実際の事業関係からいえばもっともだと思うのです。こういった場合に何か発行業者の立場を擁護するような御用意があるかないか、その点を伺っておきたいと存じます。
  37. 緒方信一

    緒方政府委員 四十一条の規定発行者発行義務を規定いたしておるのでございますが、今御指摘になりましたように、現行の臨時措置法の建前は、発行者が末端までの発行責任発行の中には供給を含めまして責任を持つというふうに規定されております。本法によりましては発行者登録供給業者契約を結びまして、その要求に応じてその指示にかかる教科書発行する義務を負う、こういうことでございます。そこで今御指摘になりました点は、なお四十五条と関連をいたすわけでございまして「登録教科書供給業者は、使用者に対する教科書供給を業とする者の需要に応じて、発行者との契約に係る教科書供給する義務を負う。」こういうことになっておるのでございます。そこでこの法律の建前は、発行者責任供給業者責任というものを分界を設けて規定しておるのであります。発行者発行契約に応じまして供給業者供給するまでの責任を負う、それからその先の供給の義務は供給業者が行う、こういうことでございます。この趣旨は、従来の臨時措置法におきましては、供給業者というものを法律上全然規定しておりません。これを法律の上の制度としては全然取り上げませんで、事実上発行者供給業者契約してやっていくのが実体として認められておりますけれども、法律上は認められておりません。従って供給業者に対する監督規制というものは法律上何もできないことになっているのでございますけれども、この法律におきましては先ほど来御審議いただきましたように、供給業者に対しましても登録制度を創設いたしまして、そしてその業を営むにつきまして不適確なものを排除していくという建前をとると同時に、またその事業を営みます過程におきましてもいろいろと監督をし規制していく規定を、この法律におきまして文部大臣の権限としてきめておるわけでございます。かようにいたしました以上、やはり発行者供給業者の義務、責任というものをはっきり規定する必要がございますので、ただいま申しましたように発行者供給業者の相互の義務の分界をはっきりつけておく方がいいのではないか、そのことによってかえって発行供給の完全を期し得るのじゃないか、かように考えた次第でございます。ただこれは公法関係におきまして、さようにこの法律に取り上げたのでございますが、しかし実際上発行者供給業者とが契約を結び、私法上の契約に基きまして行います行為は、別にこの規定に触れておるところではございません。この関係は実際上の両者の契約により円滑に運営されていくことを期待しておるわけでございます。  それからただいま最後に御指摘になりました、従来は発行者が最末端まで供給する義務を持っておったし、またこれが一つの権利でもあったのでございますが、それをここで供給業者までの供給ということになりますと、従来よりもその責任ないし権限が狭められることになりますが、これに対しまして若干いろいろな意見があると存じますけれども、これは今申しましたような趣旨で原則的には運用いたしたい。ただ例外的な場合におきましては、この四十一条の規定にもございますように、第二項におきまして「登録教科書供給業者教科書供給業務を遂行することができないこととなった場合その他政令で定める場合には、発行者は、政令の定めるところにより、その発行する教科書を需要者に供給しなければならない。」こういう規定を設けておるのでございまして、第一に供給業者がその業務を遂行することができないことになった場合、   〔委員長退席、山崎(始)委員長代理着席〕 これは供給業者側の事情でございまして、登録の取り消しであるとか、非常災害等があって事実上できないというような場合でありますが、その場合には直接発行者が需要者に供給をするということが一つ書いてありますと同時に、政令で定める場合ということが一つ規定してあるわけでございます。この政令につきましていろいろ検討いたしておりますけれども、たとえば直接に発行者が需要者に供給する必要のあるような、また特別の事情がある場合もいろいろあると存じますので、それらのことをこの政令で規定いたしたいと存じております。たとえば通常の時期をはずれて個々別々の使用者からの直接の注文があるという場合もございましょうし、あるいはまた特に供給業者との契約が不調でありまして、迅速に供給しなければならぬ教科書供給業務が円滑にいかないというような場合もあるかもわかりません。そういう場合にはあるいは文部大臣の承認等にかからせまして、そうして直接に発行者供給できるというような規定を若干政令の上におきまして研究いたしたい、かように考えております。
  38. 高村坂彦

    高村委員 ただいまの御説明でございますが、実は発行者というのは相当の資本も投じ、相当の危険を冒してやっている事業だと私は思うのです。それが教科書を円滑に供給する建前から、発行者供給業者というものの業務分界というものをお定めになったということは、これはけっこうだと思うのです。しかも両方とも登録されておる関係上、従来のように勝手に取りかえることができなくなっておる。そんなことで実は発行者としては、たとえば供給業者が金を払ってくれないというふうな場合にも、やはりそれを通じて供給しなければならないというようなことが起きて、事業遂行上不安がある、こういうことなんです。そこでただいまお話がございました「政令の定めるところにより」ということがございますから、この政令の中にただいまお話のように、契約が不調の場合だけでなしに、たとえば契約に基く義務を履行しない場合、義務を非常に怠っておるような場合、たとえば代金の回収がなかなかできておらぬとかいうような場合にも、文部大臣の承認を得れば発行者が直接供給ができるような弾力性のある、言葉をかえて言えば、発行者に対して安心して発行のできるようなゆとりのある規定をしていただくように要望いたしておきます。のみならず一体そういった要望というものが政令によってかなえていただけるものかどうか、この点を一つお聞きいたしたいのであります。
  39. 安達健二

    安達説明員 ただいま第四十一条第二項の政令の問題でございますが、この点につきましては、ただいま局長から申し上げました、契約が不調で、直接供給を緊急に必要とする場合というのが一つの場合でございまして、ただいまお示しのような特別の事情の場合に、発行者が安心してその仕事ができると同時に、登録教科書供給業者の地位も考えるというような意味で、政令の場合に十分そういう特別な事情も考慮いたしたい、こういうことで今研究をいたしておるわけでございます。
  40. 高村坂彦

    高村委員 次は第四十三条は、「発行者は、文部省令の定めるところにより、文部大臣の承認を受けて発行計画を定め、これに従って第四十一条の義務を履行しなければならない。」、こう書いてあります。そこでこの発行計画というのは、どの程度の計画を意味しておるのでございますか。もちろんこれは文部省令でお定めになることになると思うのですが、御構想が大体まとまっておればちょっと明らかにしていただきますと、非常に仕合せだと思うのです。
  41. 安達健二

    安達説明員 この発行計画の中には、発行者といたしまして教科書を製造するという意味の製造計画と、製造いたしましたものを登録教科書供給業者供給するところの供給計画というものとの二つがあるわけでございます。現在もこの発行計画という制度をとっておるのでございますので、大体それに同様なこととなろうかと思いますが、製造計画といたしましては、いつ製造するか、どこの印刷所で印刷をするとか、そういうようなこと、それから供給計画としては、その本をいつ供給するか、あるいはまたその教科書をどの登録教科書供給業者供給するかというような事柄を含めまして、そういう製造計画と供給計画を合せた発行計画を考えておるわけでございます。
  42. 高村坂彦

    高村委員 そこでそういったいろいろな計画というものは、業者として事業遂行上非常に重要な要素を含んでおると思うのです。それを一々文部大臣の承認ということで、けちをつけると言っては語弊がありますが、いろいろ御干渉になると、発行業者はその業務遂行上非常に私は支障が起きるのじゃないかと思うのですが、この点については文部当局が運営に当っては業者の立場というものを十分お考えをいただいて、そういうことのないように一つ運営をしていただきたいということを特にお願いをいたしておきます。  それからその次は第四十五条でございますが、第二項に「登録教科書供給業者は、使用者に対する教科書供給を業とする者の需要に応じて、発行者との契約に係る教科書供給する義務を負う。」、こういうことになっておりますが、今度の教科書法案一つの特色となっておるのは、登録教科書供給業者というものを明らかにして、これに必要なる供給面の責任を強く負わしているということだと思う。ところがその下に必ず、どのくらいになりますか、相当数の下部の供給業者というものがこの規定から見ましてもあるわけです。これに対しましては全然規制というものを考慮しておられないのでございますが、これは全然規制なくしてうまくいく、こういうお考えでございましょうか。私どもは実は現状をよく認識しておりませんから、心配がないというのでございましたら現状をお示しいただきますならば仕合せだと存じます。
  43. 安達健二

    安達説明員 御承知のように、現在の教科書供給は、発行者から特約供給業者、特約供給業者から小売業者というルートを通じて行われおるわけでございます。この法案発行者登録教科書供給業者というものだけの規制をいたしまして、小売業者についての規制を何らしておらないという、そういう制度考えた理由でございますが、現在小売業者は全国に約五千ほどございまして、そうしてその業態は種々雑多でございまして、まあ大部分は本屋でございます。普通の一般書籍の本屋でございます。それから雑貨商その他非常にさまざまでございまして、また個々の小売の資本その他も非常に僅少なものもございます。そういうようなものを一々規制をするというようなことはやや行き過ぎではないか。それから登録教科書供給業者というものをしっかり握って、それに対する指導監督というような面で、小売業者をも間接的に指導規制をするということでもって、その方が責任の所在を明らかにする意味においてよろしいじゃないか、こういうような事柄からいたしまして、小売業者について直接の規制をしない、こういうことになっておるわけでございます。そこで四十五条第二項で「使用者に対する教科書供給を業とする者」といいますのは、ただいま申し上げました小売業者でございまして、従いましてやはり小売業者というものを通じて教科書供給するのであるという、そういう事実上の状態を前提といたしまして、通常の履行の方法を四十五条第二項で定めるということにしたわけでございます。従いまして小売業者のサービスが悪いというようなことにつきましては、登録教科書供給業者というものに対する指導監督を通じて規制をする、こういうことで現在のような制度になっておるわけでございます。のみならず小売業者というものにつきまして、登録教科書供給業者との間は一応の私法上の関係にいたして、その相互の関係については独占禁止法による公正取引というような面からの監督も可能じゃなかろうか、こういうようなことをもあわせ考えまして、小売業者自体を直接に規制すということをいたさなかったのでございます。
  44. 高村坂彦

    高村委員 そこで時間も大分過ぎましたから少しかけ足で御質問を申し上げますが、第四十七条の第一項では「その発行する教科書文部大臣が行う検定に合格した旨又は文部省が著作の名義を有する旨及び種目、書名、使用学年その他の事項を表示しなければならない。」とありますが、この表示しなければならぬ具体的なことは文部省令でお定めになるようでありますが、これはこれでいいとしまして、第二項の「発行者は、教科書でない図書に文部大臣が行う検定に合格した教科書である旨又は文部省が著作の名義を有する教科書である旨を表示して、これを発行してはならない。」、こう書いてある。これも私はけっこうだと思います。ところが初めの方は表示の義務を負わせて、次の方は合格した教科書であるということを書いてはならぬということが規定してある。しからば合格したということを書かないで、種目、書名、使用学年等を書いた教科書という名前のものを売り出しても、これは差しつかえないということに解釈されると思うのですが、こうなっても弊害はないと思われるのでしょうか。あるいは私はむしろ教科書でこういうものでないのは教科書という言葉を使うことをある程度制限することがいいのではないか、非常に類似なものが出るおそれがあるのじゃないかと思いますが、そういう点は御研究になったのでございましょうか。あるいは経済学教科書とか社会学教科書とかそういうものはかまいませんけれども、非常に似通ったものを作られるおそれがあるのじゃございませんでしょうか。あるいはそういうおそれは実際上これまでないから心配はないというのでございますか、そういう点を伺っておきます。
  45. 安達健二

    安達説明員 四十七条第二項の一番のねらいといたしましたところは、一たん合格いたしました検定済み教科書であるというものについて、かってに発行者が改ざんを加えまして発行をするということが割合によく行われておるわけでございますので、そういうことを主として禁止をいたしたいというのが四十七条第二項の主たるねらいでございます。  もう一つ教科書という名前をこの教科書法に基く教科書だけにしたらどうかというようなことも研究いたしてみましたけれども、教科書という言葉は非常に一般に使われておる言葉でございますので、そういう名称独占をすることもいかがかというようなことで、教科書という言葉自体は別にかまいませんけれども、文部大臣検定済み教科書とか、文部省著作教科書とかいうようなことは勝手に書いてはいけない、こういう趣旨でございます。現在学校教育法の場合でも、学校という言葉は別に禁止しておらないわけでございますが、小学校とか中学校とかいう正式の学校の名前は使ってはならない、そういう例に従ったわけでございます。
  46. 高村坂彦

    高村委員 まあ採択の手続等も相当慎重になっておりますから、これは単なる杞憂にすぎないかもしらぬのですが、私は小学校理科教科書とかいうふうなものがかりに——そういう物好きもいないかもしれませんけれども、そういうことをちょっと心配してみたのですが、これはお説の通り今日の制度のもとにおいてはそういうものが災いを及ぼすおそれはないかもしれません。私の杞憂であったかと思います。  次は四十八条の第二項ですが、「教科書は、文部省令で定める場合その他正当な理由がある場合を除き、定価以外の価格で使用者に販売してはならない。」こうあるのですが、文部省令で定める場合というのは、どういう場合に定価以外の価格で売る場合を想像しておられるのでございましょうか、それからその他正当な理由がある場合には定価以外の価格で使用者に販売してもいい、こういうことはどういう意味でございますか、またどういう場合が想像されますか、私はむしろ教科書というものは定価で売られるのだということで、こういう例外を認める必要はないような気がするのですが、こういった例外の場合を認められました理由をお示しいただきたいと存じます。
  47. 安達健二

    安達説明員 文部省令で予想されますのは、たとえば児童生徒が被災をいたしましたような場合、あるいは古本屋で古本として教科書を売るような場合もございますので、そういう特殊な場合でございます。それから「その他正当な理由がある場合」と申しますのは、たとえば小売業者がその親戚の子供に安く売ってやるというような場合は正当と言い得るのじゃないか、つまり定価外の価格で販売することを禁止いたしましたのは、これより高く売る場合が困ることはもとより、安く売る場合でも、それによるリベートその他によりまして教科書採択の面に不当な影響を与えるというようなことがないように、文部省の正式の認可を得た定価で売ってもらいたい、こういう趣旨でございますので、そういう趣旨に反せずして、社会通念からいたしましてそれならば別にとがむべきではないというような正当な理由のある場合にはよろしい、こういう趣旨でございます。
  48. 高村坂彦

    高村委員 なお四十八条の教科書の定価という問題は非常に重要な意味を含んでおりますが、この点につきましてはすでに社会党の委員諸君からもいろいろ御質問がございましたので、あまり深く触れないことにいたします。今回の教科書法の制定の目的は、文部省御当局とされても、やはり父兄の負担を軽くするためにある程度教科書の値段を下げることにもその目標があるわけでございますから、あるいは輸送の面とか、あるいはこの前公聴会におきましても紙の問題等も議論になっておりましたが、どうかあらゆる方面から一つ十分御検討いただきまして、教科書が安く父兄に渡りますように御工夫を切にお願い申し上げる次第であります。これは特に希望として申し上げておきます。  それから第三節の教科書発行審議会の問題でございますが、私は先ほども申し上げましたように、このごろは一つの官庁に審議会といったようなものが非常にふえてきている。何々審議会ということでたくさんできる。そこで今回のこの教科書法だけを見ましても、文部大臣諮問機関が、やはり検定審議会発行審議会の二つがあるわけですが、一体文部大臣審議機関というものは現在どれだけございますか。参考のために伺っておきたいと思います。もし今すぐおわかりにならぬほどたくさんあるようでしたら、また御調査の上で御説明をいただけばけっこうです。
  49. 斎藤正

    ○斉藤説明員 お答え申し上げます。現在文部大臣諮問機関として法律で定められておりますものは、中央教育審議会を含めまして十八ございます。ここに出ております教科書に関するものは現在教科用図書検定調査審議会というのがございますが、この機能がここにございます二つの審議会に分かれることになると思います。
  50. 高村坂彦

    高村委員 これは一つまことに恐縮でございますが、その審議会の名前を非公式でもよろしゅうございますから、適当な機会にお示しをお願いいたしたいと思います。  そこで、教科書発行審議会の問題について苦干お尋ねをいたしますが、第五十一条は審議会の権限を規定しておりますが、その第二号に「文部大臣の諮問に応じ、教科書の定価の認可の基準その他教科書発行及び供給に関する重要事項について調査審議すること。」こうあるのです。で、この法律が施行になりました場合に、直ちにこの審議会に諮問を予定しておる事項が今ございましたら、参考までに伺っておきたいと思います。
  51. 安達健二

    安達説明員 最初に特に急ぎます問題といたしましては、登録の場合の拒否の場合についてどういう措置をするかということの、さらに具体的なものというものが最初に問題になるんじゃないか、こういうふうに思います。
  52. 高村坂彦

    高村委員 第五十二条にはこの審議会に「専門の事項調査審議させるため、臨時に、専門委員を置くことができる。」こう書いてあるのですが、臨時というのでございますから、これは非常勤と解釈してよろしゅうございますか、この点を伺っておきたい。
  53. 安達健二

    安達説明員 発行審議会審議会でございますので、この審議会委員自体も非常勤でございます。しかしながら第五十三条によりまして審議会委員について「必要な事項は、政令で定める。」ということになっておりますので、その委員の任期等は政令で定めることになるかと存じます。しかしながら専門委員は臨時にと申しますのは、そういう任期なしに、必要な場合に必要な期間だけ専門委員を置く、こういう趣旨でございますので、さように御承知願いたいと思います。
  54. 高村坂彦

    高村委員 審議会の問題はそのくらいにいたしまして、雑則の中でちょっと承わっておきたいことがございます。それは第五十六条の教師用の指導書についてでありますが、これは確かにこの教科書法案で新たに定められた規定だと思いますが、五十六条には「特定の教科書による学習の指導の手引としてその教科書の記述に対応して著作された教師用の指導書を発行した者は、文部省令の定めるところにより、発行後すみやかに、その指導書を文部大臣提出しなければならない。」こういうふうに規定いたしておりまして、しかも第六十二条には、もしもその届出を怠った場合には二万円以下の過料に処するということに相なっております。ところが第二項では、「文部大臣は、前項の指導書に教育基本法の精神にそわず、又は学校教育法に定める学校教育法に定める学校教育の目標の達成に支障があると認められる箇所があり、その使用が教科書の適正な使用を妨げ、検定の趣旨に著しく反すると認められるときは、検定審議会に諮問して、その指導書を発行した者に対し、その後発行する指導書について訂正を勧告することができる。」とこう書いてある。これは私は当然なことだと思いますが、この訂正勧告に従わなかった場合の措置は何ら規定がないように存じますが、これは審議会の諮問にまで付して文部大臣が訂正勧告をして、それを無視するという場合にもどうすることもできぬということでよいのでございましょうか。私は何らかの方法でその訂正勧告は実行できるような保障がほしいような気がするのでありますが、この点を伺ってみたいと存じます。
  55. 安達健二

    安達説明員 教師用指導書につきましては、現在小学校につきましては、小学校教科書百について八一%出ておりまするし、中学校の場合は七八%出ておりますので、大部分の教科書に即応して出されておる、こういう状況でございまして、具体的に現場の先生方もこの教師用指導書を大いに参考とされて指導されておるわけでございます。従って教育上の占める地位というものは、きわめて重要なわけでございます。ただ教科書と教師用指導書を区別いたしまして、教科書については検定したものでなければ使えないというようになっておるにもかかわらず、教師用指導書についてはただいまお話のように、訂正勧告にとどまっておる。そういう区別を設けました理由は、教科書につきましては、これは学校において使用しなければならないものでございまして、児童生徒なり先生なりに使用義務が課されておりますので、これは必ず使用しなければならないというようなものでありますから、これについての制限は強くあってよろしい、しかしながら指導書は、いわば先生がこれを参考にするわけでございますので、参考にすべきだが、法律上義務とされていないわけでございますので、そこに規制をいたします場合にもおのずから程度の差が必要であるということになったわけでございます。ただこの教科書というものは検定をした、その指導書が出ておる、それを比べてみますと、検定のときにはこういうつもりで検定をしたにかかわらず、指導書では全く反対あるいは著しくそれておることがあるということになると、教科書の検定した趣旨に違ったように現場で用いられるということになるということは、教科書の検定制度を設けた趣旨に合わない、こういうことからいたしまして、その訂正を勧告するということになったわけでございます。訂正の勧告に従わなかった場合においては、何らこれについての罰則その他の規定もないわけでございますけれども、これは先ほど申し上げましたように、教師用指導書と教科書との性格上の相違ということから考えてそうしたわけでございますけれども、教科書採択をする場合に、やはりその教師用指導書の有無なり適否なりは採択の場合に重要な要素になりますので、自然そういう訂正の勧告には応ぜられるであろうということを期待しておるわけでございます。
  56. 高村坂彦

    高村委員 私は実は時間は大してとりませんでしたが、教科書法案の第一章第一条からずっと全体を見まして、質問したいと思う点は大体質問をし尽したわけでございますが、なおこの法律には相当重要な部分を政令または文部省令規定を譲っているわけであります。そこで、この政令なり文部省令なりの規定というものが、やはりこの教科書法の内容を充実してくることと相なりますので、その制定に当りましては、どうかこの教科書法案がその目的を十分達成し、しかも関係者の権利を侵害したりあるいは関係者の利益を害するということのないように、十分御留意をもって御制定いただきますように特に希望を申し上げまして、私の逐条の質疑を終らしていただきたいと存じます。
  57. 山崎始男

    ○山崎(始)委員長代理 本日はこの程度とし、次会は明十六日午前十時二十分より開会いたします。これにて散会いたします。   午後四時五十二分散会