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1956-04-10 第24回国会 衆議院 文教委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月十日(火曜日)    午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 佐藤觀次郎君    理事 赤城 宗徳君 理事 加藤 精三君    理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君    理事 米田 吉盛君 理事 辻原 弘市君    理事 山崎 始男君       伊東 岩男君    稻葉  修君       杉浦 武雄君    田中 久雄君       千葉 三郎君    塚原 俊郎君       並木 芳雄君    野依 秀市君       町村 金五君    山口 好一君       河野  正君    小牧 次生君       高津 正道君    前田榮之助君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 清瀬 一郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         検     事         (法制局第二部         長)      野木 新一君         人事院総裁   淺井  清君         人事院事務官         (管理局長)  丸尾  毅君         文部政務次官  竹尾  弌君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君  委員外出席者         文部事務官         (大臣官房総務         参事官)    斎藤  正君         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 四月六日  委員山本勝市君辞任につき、その補欠として久  野忠治君が議長指名委員選任された。 同月七日  委員北村徳太郎君、久野忠治君及び木下哲君辞  任につき、その補欠として篠田弘作君、山本勝  市君及び鈴木義男君が議長指名委員選任  された。 同月九日  委員千葉三郎君及び辻原弘市君辞任につき、そ  の補欠として古川丈吉君及び三鍋義三君が議長  の指名委員選任された。 同月十日  委員古川丈吉君、山本勝市君及び三鍋義三君辞  任につき、その補欠として千葉三郎君、久野忠  治君及び辻原弘市君が議長指名委員選任  された。 同日  理事辻原弘市君同月九日委員辞任につき、その  補欠として同君が理事に当選した。     ————————————— 四月七日  教育職員免許法施行法の一部改正に関する請願  (床次徳二紹介)(第一八三八号)  同外一件(米田吉盛紹介)(第一九一五号)  広島大学教育学部三原分校存置に関する請願(  塚原俊郎紹介)(第一八三九号)  同(吉田重延紹介)(第一八四〇号)  同(坂田道太紹介)(第一八四一号)  同(高津正道紹介)(第一八四二号)  同(床次徳二紹介)(第一八六二号)  同(久野忠治紹介)(第一八六三号)  同(高橋等紹介)(第一八六四号)  同(古井喜實紹介)(第一八七七号)  同(前田榮之助君紹介)(第一八八七号)  同(山崎始男紹介)(第一八八八号)  同(小牧次生紹介)(第一八八九号)  同(平田ヒデ紹介)(第一八九〇号)  同(山口好一紹介)(第一九〇一号)  同(植木庚子郎君紹介)(第一九〇二号)  同(森下國雄紹介)(第一九〇三号)  同(永山忠則紹介)(第一九〇四号)  同(杉浦武雄紹介)(第一九〇五号)  同(並木芳雄紹介)(第一九〇六号)  同(中山マサ紹介)(第一九〇七号)  同(小枝一雄紹介)(第一九〇八号)  同(古川丈吉紹介)(第一九〇九号)  同(久野忠治紹介)(第一九一〇号)  同(田中久雄紹介)(第一九一一号)  同(伊東岩男紹介)(第一九一二号)  同(千葉三郎紹介)(第一九一三号)  同(西村直己紹介)(第一九一四号)  岩手県に国立水産大学設置請願鈴木善幸君  紹介)(第一八四三号)  児童生徒災害補償に関する法律制定に関する  請願關谷勝利君外一名紹介)(第一八四四  号)  建国祭復活に関する請願外一件(相川勝六君紹  介)(第一八九八号)  同外一件(纐纈彌三君紹介)(第一八九九号)  同(田中龍夫紹介)(第一九〇〇号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  地方教育行政組織及び運営に関する法律案(  内閣提出第一〇五号)  地方教育行政組織及び運営に関する法律の施  行に伴う関係法律整理に関する法律案内閣  提出第一〇六号)     —————————————
  2. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  この際理事補欠選挙につきお諮りいたします。理事でありました辻原弘市君が昨日委員辞任されましたので、理事が一名欠員となりました。つきましてはその補欠選挙をいたさなければなりませんが、先例により委員長において指名いたすに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 御異議なしと認め、辻原弘市君を理事指名いたします。     —————————————
  4. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 それでは地方教育行政組織及び運営に関する法律案並びに地方教育行政組織及び運営に関する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案一括議題とし、審査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。辻原弘市君。
  5. 辻原弘市

    辻原委員 先日の文教委員会におきまして、私どもの手元に配付せられました文部広報なる文部省広報活動機関紙の問題について、文部当局見解を承わりましたが、文部当局の説明によりましては、この内容等になお相当の問題がございますので、さらに文部当局並びに本日特に人事院総裁あとでまた法制局長官等からも、それに対する明快な御見解を承わりたいと思うのでございますが、前会に引き続きまして、なお若干大臣にお伺いをいたしておきたいと思います。  私が問題といたしましたのは、文部広報百四十一号、三月二十三日付をもって出されているものでありますが、現在文部省におけるこの文部広報頒布にかかる予算は一体どの程度確保しているか、この点を一点承わりたい。なお通常この文部広報なるものは、どういう形で、どの範囲に、大体どの程度の部数が頒布されているか、このことをあらかじめ承わっておきたいと思います。
  6. 緒方信一

    緒方政府委員 文部広報刊行に要しまする予算でございますが、三十一年度の予算におきましては広報刊行費といたしまして三百五十一万一千円と相なっております。それから配付いたしまする配付先は、各都道府県知事部局、各都道府県教育委員会市町村教育委員会国立大学公私立大学、それから国公私立の高等学校、中学校、小学校、そのほか所轄機関等に配付いたしております。部数は毎号四万八千と相なっております。
  7. 辻原弘市

    辻原委員 私が今指摘をいたしました百四十一号に関しても、大体四万八千という平常部数範囲で出されたものであるかどうか、この点お伺いいたします。
  8. 緒方信一

    緒方政府委員 この部数だと存じております。
  9. 辻原弘市

    辻原委員 存じておりますではなしに、もう少し明確に言ってもらいたいと思うのですが、四万八千部という部数を越えてはいないですね。なおついでに伺いますが、これは三月号でありますから、当然予算としては三十年度予算範囲でやっておるもの考えますが、三十年度のこれに確保した所要予算が何ぼであったか伺います。
  10. 緒方信一

    緒方政府委員 私、存じますと申し上げましたのは、所管が違いますので、そこを正確に聞いておりませんので、そう申し上げましたけれども、特別に部数をふやして配付したとは聞いておりませんので、四万八千だと存じております。それから三十年度の予算といたしましては百九十二万一千円でございます。
  11. 辻原弘市

    辻原委員 ただいま承わりますると、この広報に要する予算は相当多額なものであります。しかもその範囲は、全国的に教育関係のあらゆる行政機関を網羅し、さらには大学から高等学校に至るまで全部に対して毎号頒布するという、そういった広い範囲を持っておるものであるということが明瞭であります。そこで私がお伺いいたしましたのは、この百四十一号の裏面に、ただいま当委員会で非常に激しい世論背景にいたしまして審議している地方教育行政組織及び運営に関する法律案について、少くとも世論の一方を占める、むしろ私の側から言わしむるならば、世論の大多数が指摘している中央集権的傾向を帯びるものであり、かつはきわめて民主的ならざる委員任命制度を採用しているというこの意見に全く相反する見解を、きわめて大きな表題で取り上げまして、そうしてその周知徹底方をこの広報に託しているというこの問題が、果していわゆる行政部門である文部省の——これはあとでその権限についても伺いまするが、文部当局としてそうしたものを広範囲に配付することが果して妥当なりやいなやということを糾明いたしたのであります。ところが大臣答弁によりますると、これは当然文部省権限ないしは国家公務員として許されたる範囲内においてやっているものであるから、何ら差しつかえないという答弁であります。しかしその答弁答弁といたしまして、私どもが常識的にこれを受けましても、この広報によって読む側の者は少くとも一方の見解に引きずり込まれるという心理的作用というものが当然起り得る内容を有しているし、起り得るようなそういう編集方法をとっていること、ここに重大な問題があるということを私は重ねて指摘をいたしたいのであります。  そこで私はこの問題に関しまして、まず第一に人事院総裁に承わっておきたいのでありますが、私の記憶いたしますところによると、これは根本的にわれわれがそうした考え方に賛成をするのではありませんが、現在の国家公務員法におきましては、各般にわたるいわゆる政治的行為というものがきわめて厳密に規定をされ厳重に禁止をされておるのであります。ちなみにその国家公務員法の一文を引用いたしますると、国家公務員法の百二条に政治活動禁止をうたっております。その百二条の中には、大部分人事院規則によって定められる政治的目的並びに政治的行為、この二つに該当する行為はこれを国家公務員には許さないというそうした規定であります。従いましてその人事院規則をあげてみますると、こういうことになっておるのであります。まずその人事院規則一四−七、このうちの第五項に政治的目的定義というものがうたわれております。  そこでお伺いをいたしますが、このような行為、すなわちこれは文部省職員がやったわけでありまするから、従って当然この国家公務員法関係を持って参るのであるが、その場合に次のような定めをいたしております。そのうちの一つは、「特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対すること。」その次の四項に、「特定内閣を支持し又はこれに反対すること。」こういう政治的目的、さらに私は、特にこの文部広報編集にかかわる国家公務員関係を有する条項としては、その次に第五として「政治方向影響を与える意図特定政策を主張し又はこれに反対すること。」こういう三つの政治的目的が少くとも常識的に浮んでくるのであります。私はその最後の第五の問題から総裁見解を承わりたいのでありまするが、まず行為段階に至らないまでに目的段階において、この広報趣旨はいかがあろうとも、今回編集をいたしました百四十一号の裏面文章表現編集方法というものは、少くともこれは法律案がいまだ法律とならない段階にあって、世論の動向その他法案内容等を審議する結果によって、これが国の法律になるのであります。そういたしますると、これが四万八千部を擁して、全国的にこれに最も関心を持っておるいわゆる教育関係者すべてに対して、この文部広報は大きな影響を持っていることは事実であります。しかもその影響の帰趨がどこに向うかといえば、当然この大量の宣伝活動によって、少くともここには、中央集権ではない、どうも中央集権ではないかと考えておったが、いわゆるマス・コミュニケーションといいますか、こういったような宣伝によって、中央集権ではないといっているのです。あるいは委員任命も、これはきわめて民主的な方法であるという。そこに先ほども申しました読む人の考えの中に重大な影響を及ぼしてくることも、これまた常識であります。そういたしますると、この第五の「政治方向影響を与える意図特定政策を主張し又はこれに反対すること。」ここに関連を有するものと私は考えるのでありますが、一体人事院総裁目的の項においてどのように解釈せられるか、一つ明確に承わっておきたいと思います。
  12. 淺井清

    淺井政委員 だんだんとお尋ねでございますけれども人事院見解といたしましては、この文部広報なるものは、文部省広報課において編さんせられておりまするもので、これに政治活動規則適用を受けまする一般職公務員はもちろん関係はいたしておりまするけれども、これらの職員国家機関構成者としてこれにあずかっておりますので、独立の法人格者としてこれを発行したものではないのでございます。すなわち人事院規則の第七項に、「この規則のいかなる規定も、職員が本来の職務を隊行するため当然行うべき行為禁止又は制限するものではない。」この条項によって違法性は阻却されておるものと考えますので、ただいまだんだんお尋ね目的云々という条項には入らない前に、この問題は解決しておるものと存じます。
  13. 辻原弘市

    辻原委員 文部省一つ行政機関として広報活動をやっておるから、これは一国家公務員が通常行うあるいは行うであろう政治活動あるいは政治目的を有する政治行為とは断定いたしがたい、という人事院の御見解でございます。この点は私は後刻文部省設置法あるいは組織令、こういうものから照らし合せて、それが当然文部省組織令あるいは設置法に該当する広報活動範囲であるという断定が下された場合においては、ただいまの総裁の御見解に私は従いたいと思うのであります。しかし少くとも私が組織令ないしは設置法を見ました場合には、一応一般的な広報活動というものは、それは文部省行政部門の仕事として任務が付与されておるようでありまするが、私がお尋ねしておるのは、少くとも常識的な周知徹底せしめるという行政当局の、その行政範囲に基いた行為ではないという見解のもとにお伺いしておるのであります。従って、いかなる行為であろうとも、それが行政部門職員であれば許されるといったような御見解になりますると、これはあと政治行為にも規定せられておりまするが、職員がその職名あるいはその職権を利用して行う政治的活動というものは、法文には規定しているが、これは事実上ほとんど起り得ないというような形になると思うのでありますが、ただいまの政治的目的定義と、その次の政治的行為とを結び合せて、いま一度人事院総裁見解を承わっておきたいと思います。  その次に、政治的行為と書かれておる行為定義の第一に「政治的目的のために職名職権又はその他の公私影響力を利用すること。」この目的行為とが相からんで、違法である政治活動が発生するということでありまするが、この場合あなたは、文部省所管である広報活動だから、その範囲がかりに逸脱しておっても、その目的なり行為に触れない、こういうような見解を下されておるのでありますが、少くとも行為の項を見ますると、かりに行政部門職員であっても、それが職名ないしは職権、こういうものを背景として行なった逸脱した政治行為については、この国家公務員法考えから行きますると、当然禁止条項に触れて参るという見解が私は常識的であろうと思うのでありまするが、どうでありますか、いま一度見解を承わっておきたい。
  14. 淺井清

    淺井政委員 お尋ねではございまするけれども、この広報活動関係をいたしております一般職職員は、上司の命を受けてやっておりますことで、人事院といたしましては、この第七項によって違法性は阻却されておると考えております。ただこういうことが望ましいかどうかということは、人事院からお答え申し上げるべき問題ではないと思います。
  15. 辻原弘市

    辻原委員 総裁の御見解としては、これは一国家公務員責任範囲内で出したものではない、いわゆる文部省全体としてこの行為をやったのであって国家公務員法個人に対する処罰規定範囲外であるという見解であります。そうでありますか、いま一度お話を承わりたいと思います。
  16. 淺井清

    淺井政委員 その通りでございますが、これは職員の本来の職務を執行するために行なった行為であると考えております。
  17. 辻原弘市

    辻原委員 そうしますと総裁に承わりますが、職員が本来の職務を逸脱した行為を行なった場合、これはいかなる条項に触れますか、人事院所管でないとおっしゃるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  18. 淺井清

    淺井政委員 そういう場合には、この第六項の「政治的目的のために職名職権又はその他の公私影響力を利用すること。」というのに触れる場合もあるかもしれません。しかしそれは具体的の事例がございませんと、ただいま抽象的に申し上げることはできません。
  19. 辻原弘市

    辻原委員 そうしますと、問題はかりに上司の命を受けた本来の職務であっても、その行為職務を受けた範囲から逸脱いたしまして、事実上職名あるいは職権を持って公私政治的影響を与えたということになれば、当然この国家公務員法規定に触れるということに戻ってくるではありませんか、その点はどうですか。
  20. 淺井清

    淺井政委員 さようなる場合もあり得ると思いますけれども、ただいま問題になっている文部広報に関する限りさいぜんお答えいたした通りでございます。
  21. 辻原弘市

    辻原委員 それはおかしいと思うのですが、そういたしますと、ここに書かれている事実上影響を与えているこの編集方法なり内容というものは、当然本来文部省が行う広報活動範囲内であるという断定に基いてそういうことを言われておるのでありますか。
  22. 淺井清

    淺井政委員 さいぜん申しましたように、この文部広報に載っております問題がお尋ねのような問題であるかどうかということは、人事院といたしましては判定するまでもなく、第七条によってこれは違法性を阻却されておると考えております。
  23. 辻原弘市

    辻原委員 そういたしますと、もし文部省設置法ないしは組織令において本来の職務とせられている権限、その範囲からこの行為が逸脱しておるという認定があった場合には、必然的に規則政治的行為の第一に触れるという場合が私は起り得ると思うのでありますが、あなたはどうお考えになりますか。
  24. 淺井清

    淺井政委員 それは起り得るという仮定お尋ねでございますけれども、これが文部省設置法その他から逸脱しておるかどうかということは、人事院としてお答え申すべき限りではございません。
  25. 辻原弘市

    辻原委員 仮定議論ということでお伺いするのはあるいは無理かもわかりませんけれども、あなたの前提が本来の職務であるというその認識の上に立って、第七項においてこれは政治的行為を免れる規定とせられておる、こうおっしゃっておるのであります。従いまして、私は逆に本来の行為を逸脱しておるという場合においては、当然それが問題になるのではないか、こういう一般論をお伺いしておるのですが、後日の参考のために、その私の一般論に対してあなたの見解をもう少しはっきりお述べを願っておきたいと思います。
  26. 淺井清

    淺井政委員 この政治活動規則の問題は、具体的の案件前提といたしませんと非常に誤解を招くのでございますが、ただいまお尋ね文部広報の問題に関する限り、さいぜんからお答えを申し上げた通りと存じます。
  27. 高津正道

    高津委員 関連して。文部広報の百四十一号を読んでみますと、中央集権ではない、こういうことが第一に論ぜられておるのであります。しかし七日と九日の公聴会に現われた人々のほとんど圧倒的多数が、これは中央集権であるということをみな認めておるのであります。野党の者は全部これは中央集権である、こう言っておるのであります。次に公選制を改めて任命制に切りかえるということは必ず不法な支配を伴うに違いないということを、われわれは主張しておるのでありますが、この文部広報の中には、不当な支配は起らないということを、大きな二段抜きの見出しで宣伝をしておるのであります。第三には、教育委員会自主性は阻害しないものであるということをも一方的にきめて、そこが今論議の中心なのに、そういう解釈を一方的に流しておるのであります。それから第四には、文部大臣承認がなければ都道府県教育長任命できない。市町村はまた都道府県教育委員会承認がなければ任命できないというようにして、中央で全部握っておるのでありますが、これは地方公務員に対して文部大臣がそれを承認しなければならないというようにしておるので、地方自治に対する中央の干渉であり、自治権はその場合その部分がくずれるのである。こういう主張が国会で論議されておるときに、地方自治の侵害ではないということをここで盛んに宣伝しておる。このような事実は、それを担当した文部省の一人の公務員責任ではないが、これはだれかが責任を負わねばならぬ。だれが責任を負うべきだとあなたは解釈されるのですか。そういう場合個人には全然責任がないのだ、月給をもらっておるから、これをやれと言われてやっただけだと言われれば、こういう場合はだれが責任を負うべきものですか。
  28. 淺井清

    淺井政委員 人事院の関しておりますことは、一般職公務員だけの問題でございまして、この政治活動規則一般職公務員だけに適用を持っておるのでございます。そこでわれわれの見解といたしましては、さいぜんから申し述べましたように、この規則の第七項によって、上司の命を受けて本来の職務を遂行するためにやった行為だと思っておりますので、これは一般職公務員に関する限り違法性を阻却しておると思います。その上司をさかのぼれば結局文部大臣になるということになるのでありますけれども文部大臣特別職でありまして、この政治活動規則適用を受けておりませんので、これは人事院所管外だと考えております。
  29. 高津正道

    高津委員 私も、人事院総裁の言われるように、文部大臣責任だと思いますが、文部大臣が三百四十一万円という予算文部広報で取って使う。それが自分は常に党議を優先するのだ、文部行政においては党できまったことを行うのだ、こういう文部大臣がその予算をもってあらかじめこういう一方的な見解宣伝するということは、文部大臣はそれは不当な行為だとは自分でお考えにならないですか。
  30. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私はたびたび申し上げました通り、これは議論をしておるのじゃないので、これを起案し提案した文部大臣がこう説明しておるということなんです。これは私はりっぱな広報と思います。
  31. 高津正道

    高津委員 これはここで一番重大な論争点であるものばかりを、一方的の見解だけを流す権利は自分にはある、こういう意味ですか。
  32. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それはたびたび申し上げましたが、問いは主としてあなた方のお問いになったことを要約して、教育行政中央集権を招くことはないかという趣旨のお問いがたくさんありましたから、それに対して私の答えたことを書いておるのです。私も議員でありまするけれども、ここで討論をしたことはないのです。それゆえに初め立案趣旨をここに紹介します、立案趣旨といってその通りのことを私は言うております。それを集約したものなんです。そういうことを教育関係の人が知って下さることはいいのであります。これに対する反駁の論もありましょう、弁護の論もありましょう。それに立ち入らないで、この提案の趣旨として私が述べたことを集約してここに書いておるのです。広報目的範囲内と思っております。
  33. 辻原弘市

    辻原委員 今大臣もこれは私の責任であり、立案趣旨を述べたにすぎない、こう簡単に片づけておるのであります。ところがわれわれが、またこれを配付された側の者か読みますると、幾らそういう理屈をつけておりましょうとも、事実上今日ただいま審議せられておる法案に対して、少くともその見解が一方に重大な影響を与えていることは、これは常識的であります。これは事実であります。しかも国会においては、あなたがしばしばよく強調せられる二大政党の今日、一方の提案をいたしました側がそうではないというが、われわれ社会党の側においては明らかにこの法案中央集権であり、しかも任命制は民主的ならざる方法であり、今後の民主教育に重大な影響を及ぼすという指摘をいたして、その総体的な結論というものが今日出されていないのであります。それらの論議が終了いたしまして、初めてこれは法律案となって、それぞれ行政当局が順守すべき法律となるのである、こういうことは私が申し上げるまでもなく常識でございます。先ほど人事院総裁は、広報活動なりまた文部広報というものは、一国家公務員責任において出されているものではないので、文部省という機関においてこれを出し、文部大臣の指揮、命令を受けてやっている行為だから、かりにそのことが事実上多少の疑義がありとせよ、これは本来国家公務員法による政治行為政治活動禁止条項適用は排除されている、こういうのであります。その前提文部広報であり、大臣がそれを認定したものであるということである。しかしその行為であろうとも、個々人がそれぞれの職務範囲を逸脱した場合においては、私は当然やはり個人責任の問題も発生すると思うのでありますけれども、それはあとの問題といたしまして、一応その前提である文部大臣責任において、また文部省行政当局という責任において、かかる行為が許されるものであるかどうか、この点について幸い林法制局長官が見えておりますので、私はお伺いいたしたい。  その前に私の見解を申し上げたいと思うが、今申しましたように立法府としての国会の権限、またわれわれ国会議員の権限というものは、法律案を審議し法律を決定することである。行政当局はその法律を受けてこれを執行することである。従って法律として制定され、施行されたものを国民にまた関係者に周知徹底させるということは、私は行政部門責任にもなろうと思う。しかし今日提案権がよしあろうとも、いまだ正式の法律とならないものについて、その法律案の帰趨に対して影響を与えるような行為というものが、行政部門に許されておるものかどうか。少くとも今日の三権分立の国家組織形態において、そういうことがまま許されるということに相なりますれば、私は三権分立の精神、三権分立の国家組織形態というものがこわされることになると思うので、きわめて重大な問題としてこの点を法制局長官から、一つあなたの左右されない御見解を私は承わっておきたいと思います。
  34. 林修三

    ○林(修)政府委員 結局御質問の御趣旨は、文部広報がいわゆる文部省の所掌事務の範囲、あるいは権限範囲として出し得るものかどうか、こういうことになると思います。これにつきましては、御承知のように文部省設置法に、所掌事務の広報、周知、宣伝を行うということも権限の中に入っております。あるいは調査局の所掌事務の中に広報活動に関することが行えることが出ておるのであります。こういうことから申しまして、文部広報というものが出せることは、これは当然文部省の所掌事務なり権限範囲だと思います。その内容といたしまして、文部省政策等をこれにおいて周知徹底させる、こういうことも当然入ることだと思うわけでございます。ある法律案、つまり法律としてまだ成立をしておらない法律案を行政府として一般に宣伝することがいいか悪いか、こういう政治的な判断は私どものお答えする限りではないと思いますが、法律的に申せば、要するに文部省のとっておる、文部大臣のとっておられるものを周知宣伝することでございまして、法律としては当然文部省としてなし得る所掌事務の範囲内に入っておるもの、かように考えるわけでございます。もちろんこの文部広報内容は、決してこの二つの法律案ができたものとして書いてあるわけではないのでございまして、法案の提案の趣旨ということを明らかにして書いてあるのでございまして、その点において一般に誤解をされることもないのじゃないか、かように考えるわけでございます。
  35. 辻原弘市

    辻原委員 通常ありきたりの答弁しかあなたはなさっておらないのでありますが、確かに文部省設置法の第五条の第十には所掌事務の周知徹底ということがあります。同時に組織令の第三十五条には、その第三項に「文部広報等を編集し、及び頒布すること。」のいわゆる所掌事務が書かれております。しかしこのことはその前提に少くとも設置法にいう文部大臣権限を逸脱しない範囲内において、これらの条項規定されておるものであると私は判定するわけです。問題はこの広報自体の頒布を問題にしているのではないのでありまして、先ほどから言っている通り、少くともここに編集せられておるその編集方法及びその内容、これから与えられる影響、それらを総合判断して、これが通常行政当局として許されておるそういった行為に属するかどうかということを問題としておるのであります。あなたは今文部大臣権限なり、文部省政策を周知徹底するために広報か所掌事務としてあるのだと言っておる。そこで文部大臣政策というものは、私が判断いたしますれば、それは国会が定めた法律案に基いてその法律案の運用ないしは規則その他の制定にかかわる、ないしは文部省であれば学術その他の指導助言、こういった一般的行政当局としての、また文部当局としての指導範囲に基いて、広報活動といものが行われなければならぬ、こう判断する。ところが事実上国会の審議に影響を及ぼすような広報活動まで広報活動範囲が拡大せられてくるとなれば、これは私はきわめて重大な問題ではないかと思うので、いま一度見解を承わりたい。
  36. 林修三

    ○林(修)政府委員 文部広報の創刊の趣旨等については、文部省組織令あるいは文部省設置法施行規則等に書いてある、その範囲でなすべきものと考えるわけでございます。これは結局文部大臣あるいは文部省としての政策の周知宣伝、そういう範囲で行わるべきものだと思うわけでございます。もちろんこの二つの法案文部大臣の所掌にかかわる、文部大臣立案せられて内閣がこれを国会に提案いたしておるわけでございます。そういう意味において、文部省一つ政策だと思うわけであります。それを法案立案趣旨という形でここに書きます。これは法律的に申して逸脱するものではなかろう、政策的に論ずることは、これはまた別問題でございますが、法律的にはその範囲を逸脱するものではなかろう、かように考えるわけであります。
  37. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 辻原君、簡単に願います。
  38. 辻原弘市

    辻原委員 時間がありませんので多くを申し上げませんが、今法制局長官は、法律的な見解に基いては、これは一応その所掌事務の中にかかっておるのだから、広報活動として許されるであろう。しかし文部省のこうした行為が、文部大臣の職責なりあるいは文部省政策として許される範囲であるかどうかの政策論としては、これは別個であるということを申されましたので、私はその点についてなお今後糾明をいたして参りたいと思うのであります。なおここで私が指摘をしておきたいことは、かりに法律的に一応その内容範囲というものが、こまかく広報活動というその行為の中には規定せられておりませんので、従ってどの範囲のものが許される広報活動であるか、またどの程度が許されざる、逸脱した広報活動であるかという認定は、これはなかなか法律論をもってしては、今日明確にはならないと思います。しかしあなたも法律を解釈せられる長官であると同時に、良識を持つ方であると私は思うし、さらに国全体の行政組織等に対して、一応の見解を下される立場にありまするから、申し上げておきたいと思うのでありますが、かりにこういう行為法律に差しつかえないということで許されるというふうな、一般的な立場をとって、今後どしどし各省が個々ばらばらに、それぞれ立案趣旨説明だということで、たとえば農林省は、あるいは砂糖、あるいはバナナ、こういった法案について特殊な立法をなした。かりにそのこと自体、法案にほうはいたる世論の反対があり、いろんな問題点を含むといえども、農林大臣の決意、農林大臣考え方によって、この法案は少くとも立案趣旨はさようなことではないという広範な広報活動を同時にやるというような事態に至っても、それは当然法律において許される行為だとして、事実は国会の審議、国民の世論の上において、行政当局が非常な影響力を与えるという事実も、見のがしていかなければならないということになるのであります。そういうことになりますれば、これは国会の公正な審議なり、国民の正当な世論の反映というものが、大きく阻害されてくることは、もう疑うべくもない事実であります。そこにおいて私は、法律論ももちろんありまするけれども、一応の法律論をあなた方に承わると同時に、こういったことが今日政策的に、それぞれの各省の権限の中において許されるべきではないという正当な判断、これをあなた方もなすべきではないか。私はこういうふうに思うのでありまするが、いま一度あなたの御見解を承わっておきたい。
  39. 林修三

    ○林(修)政府委員 政策的な判断については、実は私お答えする限りではないと思うのでございます。法律論でございますが、法律論はもちろんこの文部省広報、あるいは文部省広報に盛らるべき文部省の所掌事務の周知宣伝というものの範囲、これは合理的に判断せらるべき範囲だと思うわけでございます。合理的、客観的に、この文部省の所掌事務の周知宣伝範囲に属すべきもの、こういう範囲に限らるべきもの、かように考えるわけでございます。問題のこの文部広報に載っておりますことは、これは先ほどもお答えいたしました通りに、その文部省立案した法案立案趣旨をただ説明した、こういう建前でございますれば、これは法律的に申して、また合理的に判断しても、この範囲じゃなかろうか。ただそういうことが政策的にいいか悪いかという判断は、実は私はなすべき立場ではないので、これは差し控えさせていただきたいと思います。
  40. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 辻原君、簡単に願います。
  41. 辻原弘市

    辻原委員 簡単にやります。そこであなたのお話は、この文部広報内容広報活動範囲にあるとするなれば、これは何も問題がない、こういう前提のもとに先ほどから私に答弁をなさっておるのであります。そこでその範囲にあるかどうかという認定は、あなたもそれについては全然触れられない。行政当局の、しかもそれぞれの設置法なり組織令にかかっていないその権限について、それが範囲であるか範囲でないかの認定というものは一体だれが行うのでありますか。
  42. 林修三

    ○林(修)政府委員 私は先ほど範囲に入るとも入らないとも答えないということではございませんで、法律的に申して、この文部省設置法なり文部省関係法令の範囲内において行われておるものと考えてしかるべきものと、かように考えておるわけであります。その趣旨で、実は私は法律見解を申し上げたつもりでございます。ただそれを政策的にどう思うかというお尋ねでございますから、これは私はお答えする限りではない、かようにお答えしたわけでございます。
  43. 辻原弘市

    辻原委員 あなたは、先ほどの答弁においては、範囲に入るか入らないかはわからぬけれども範囲に入らないならば当然そうだろうという御見解があった。これならば逆にもう一度伺いますが、あなたはどの根拠でもって——私はあなたの主観に基いてお伺いしておるのではない。先ほど政策的にはどう思うかというあなたの主観を聞いたのでありますが、それとは別に、主観ではなくして、私はしぼって、この編集方法なりこの編集内容法律のどこに照らして文部広報というその範疇に属するというのか、そういう規定がありますか、この点を承わっておきます。
  44. 林修三

    ○林(修)政府委員 現在文部省の所掌事務から申せば、文部省の所掌事務についての周知宣伝につきましては、調査局の所掌の範囲になっております。調査局の方では、広報主任官という制度がございまして、この広報主任官の所掌事務として、この文部広報の発行の根拠が規定されております。これについては文部省政策及び文教に関する諸制度の趣旨の普及徹底に関すること、こういうことが文部広報範囲として現在の文部省関係法令で取り上げられておるように見るわけでございます。この文部広報に載っておりますことは、結局文部大臣なり文部省立案されて国会に提案された法案立案趣旨をそのまま書いたものでございまして、その意味におきましては、文部省政策の普及宣伝、普及徹底、この範囲に入る、かように考えるわけでございます。
  45. 辻原弘市

    辻原委員 組織令には、先ほど私から申したように、広報を出すことということだけであって、その内容については何ら限定規定がない。だからその点については、あなたが、これがその広報活動範囲であるという法的根拠にはこれはならない。そこで設置法の方では、一体どの根拠をもってあなたは言われておるのですか。設置法ではどの根拠によって——これは広報活動範囲でございますという明快な答えを今あなたはされたのだが、どの条項に照らして、その範囲であるということを法律的に説明されるのか、これを承わりたい。
  46. 林修三

    ○林(修)政府委員 文部省設置法の五条の権限でも、「所掌事務の周知宣伝を行うこと」ということがございます。これは権限として書いてございます。所掌事務といたしましては、第十一条の第十四号に、調査局の所掌事務として、広報に関することというのがあるわけでございます。所掌事務の周知宣伝ということは文部省権限として今あったわけでございますが、それを広報という形において行うということにつきましては、この調査局において所掌をし、その調査局の中においては——現在文部省組織令はその後攻正されまして、現在は文部省設置法施行規則において、この広報主任官という制度ができております。この広報主任官において、この広報主任官の事務として、文部省政策及び文教に関する諸制度の趣旨の普及徹底に関すること、こういうことが広報主任官の職務として書いてございます。この範囲に入り得るものと、かように考えております。
  47. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 辻原弘市君、要点だけお願いいたします。
  48. 辻原弘市

    辻原委員 あなたが前段に説明されたことは、何も私に対する答弁の法的根拠にはならないと思う。私のお伺いしておるのは、この広報が一般的広報活動範囲に入るか入らぬかの認定は、どの法律根拠によるかということをお尋ねした。しかし設置法並びに組織令によるのは単に所掌事務を周知徹底せしめるということ、広報活動を行い得るということだけしか規定していないということから、後段に言った施行規則文部省政策を周知徹底せしめるというその範囲において、組織令の第五条の三号ですかの広報活動というものが限定されているとあなたは解釈される。私の問題にするのは、その規則に定められているそのことに基いてこういう重大なことがやれるという——これは政策論に属しますが、政策論はさておいたといたしましても、文部省政策を周知徹底せしめるということは、だれが考えても、すでに法律として施行されておるもの、あるいは一般的に文部省が指導助言を行うこと等の政策を周知徹底せしめることが任務であるくらいのことは、この規則を常識的に解釈すれば当然出てくる。しかしそれをもあなたはこういった法案審議に影響を及ぼす法律以前のものだ、法律以前のものに対して広報活動を展開することをも文部省政策を周知徹底せしめる行為である、こういうような解釈を起させるということは、法律解釈ではなしに、これはあなたの主観に基いておるということを言わざるを得ない。どうでありますか。
  49. 林修三

    ○林(修)政府委員 結局私が申しましたことは、法律解釈としてこういうものが入るかどうかということを申し上げたわけであります。その広報は、決してこの法案をできた法律として周知徹底しようとするものでも何でもないわけであります。この法案が国会に提案された、その提案した趣旨はこうこうである、こういうことを述べたにすぎないわけでありまして、その意味においては文部省設置法なり施行関係の法令に基く広報活動の周知徹底の範囲に入る、法律的には入る、かように考えております。これは入らないという根拠は私はないと思います。ただ政策的な問題としては、先ほどからお答えした通りであります。
  50. 辻原弘市

    辻原委員 あなたも文部大臣もそう強弁されるのであるが、これは立案趣旨を述べたものである。私はこれは厳密に言えば、立案趣旨文部大臣の提案理由に書かれているわけである、提案理由には中央集権ではないとかなんとかいうような、一つ法律をまとめ上げるニュアンスをもって解明せられていないと思う。ところがそれは、そういう全体の自分の出したその本人の主観に基いて、その主観を宣伝しようとしている。だからもしそれ、あなた方がこういう種類のもので立案趣旨を一般に解明し、周知徹底せしめたいというならば、その提案理由を述べればそれでいいのである。それ以外の主観に基いた行為をここに述べているところに問題がある。だから立案趣旨というならば、なぜ提案理由をここにあげて、その提案の趣旨を十分周知徹底せしめて、しかる後にそれぞれ個々人が判断をする、そういう機会を与えるという宣伝方法をとらなかったか、そのことが第一に問題になると思う。  それから法制局長官にもう一言言いたいのは、われわれがたびたび経験する選挙法の中に、選挙に際して行うことのできない文書図画の配布というものがある。この行為は、かりにそのことが本人の意思であるかどうかということは別にしても、事実上その中に書かれていることが、結果において得票を得しむるような行為である場合には処罰される。平易に何々候補がどこそこで何月幾日に推薦を受けましたといったような一般的に周知徹底せしむる範囲というものは、従来の判例を見ても事実をそのまま記載をし、事実をそのまま連絡することである。そういう行為の場合には、これは文書図画のそのとがにはならない。ところが非常に大ぜいの人によってこれが推薦を決定されて、そのなには非常に盛会であって云々というような、いわゆる修飾句がくっついたならば、それは違反の疑いがあるというふうに取り扱われておる。問題は違うけれども、この種の一つの事柄というものは、少くともその場合の行為と類似するものである。だから幾ら言い抜けの形ができましょうとも、事実において影響を与えるという行為であるならば、これは当然設置法あるいは組織令には明快なその範囲規定がないのである、従って何らかの機関においてその判定を下すのが至当である。先ほど来幾らあなたから承わりましても、内容において逸脱しているか逸脱していないか、その判断の法的根拠というものを私はうかがい知ることができなかったのであります。しかし時間がありませんのでこれ以上追及はいたしませんが、この事柄は法律論においても、また政策論においてもきわめて重大な、また一つ意図を持った宣伝広報活動を行なっている、かように私は断定せざるを得ないのであります。しかし問題をさらに論議を深めていきますると時間が経過いたしますので、これ以上見解を承わりません。ただあなたが言われたのは、私に対する明快な法的根拠を下されたものではないというふうに本日は承わっておきます。
  51. 佐藤觀次郎

  52. 山崎始男

    山崎(始)委員 私は少しばかり逐条の中で、比較的大切と思われまする一点をお尋ねしてみたいと思うのであります。といいますことは、七日、九日に公聴会を開かれましたが、地方財政に関係をした地方財政の代表者として立たれました公述人以外の公述人は、大部分この三十三条の第二項にありまする教材の問題に触れておられます。この三十三条の第二項は、私たちは決してこれを見のがすことのできない非常に大きな問題だ、かように考えておるわけでありますので、この点につきまして少しばかりお尋ねいたします。  三十三条の二項を見ますると「教科書以外の教材の使用について、あらかじめ、教育委員会に届け出させ、又は教育委員会承認を受けさせることとする」というふうな、一見いたしましてあまり問題にならないような規定に見えますが、その内容をよくよく検討してみますると、これは非常に大きな問題をはらんでおると思うのであります。まず最初に、一体教科書という言葉の定義といいますか、それはどういうふうな解釈をしたらよろしいか、この点からお尋ねをしてみたいのであります。
  53. 緒方信一

    緒方政府委員 この教材と申しますのは、ただいま学校教育法第二十一条二項にも使っておるのでございますが、これと同じ範囲のものだという解釈でございます。つまり学習指導の用に供せられまする材料となるものでございまして、いろいろその範囲はございます。たとえば教科書以外の図書といたしましては副読本とか、学習帳とか、そのほかのものがございましょうし、そういうふうな学習指導の用に供せられるものを教材と申しております。
  54. 山崎始男

    山崎(始)委員 今の御答弁を承わりましても、範囲が非常に広いという気持がいたすのでありますが、そうすると、こうしたもの、ああしたものという個々の特定のものを特に御指摘願えればけっこうなんでありますが、一体どういうようなものでしょうか。
  55. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいまもちょっと申し上げましたように、学校で使いまする副読本、教科書以外にいろいろ使われておりますが、副読本とか、あるいは学習帳とか、そのほか、あるいは映画を見せるといったような場合の映画フィルム等も教材に相なると思います。これは一々全部あげろといわれましても、これは非常にいろいろございますので……(「全部あげろ、法律に書いてあるから当然だよ」と呼ぶ者あり)ですから今例を申し上げておりますが……。
  56. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 質問しているのだから、質問した通りにやれ。
  57. 緒方信一

    緒方政府委員 それでは申し上げ直しますが、今申しましたように、副読本とか学習帳とか、あるいは映画フィルムとか、あるいはそのほか幻灯をやる場合のそういうものとか、いろいろあると思います。これは相当範囲は広いのでございますけれども、学校の学習指導の用に供せられる材料になるもの、かように定義いたしております。
  58. 山崎始男

    山崎(始)委員 今あなたのお言葉を聞きましても、そうすると教材という言葉の定義というものは非常に範囲が広い。新聞、ラジオ、映画、副読本はもとよりでありますが、あるいはスライド、その他少くとも学校の教育用の材料として使われる教科書以外のものは、一切含む、こういうふうな解釈をしてもよろしゅうございますか。
  59. 緒方信一

    緒方政府委員 この教材という言葉は、さように私ども解釈いたしております。
  60. 山崎始男

    山崎(始)委員 そういたしますと、ますます第三十三条の第二項の、教育委員会に届けさせる、承認を受けさせるというこの言葉は、非常に複雑な問題を私ははらんでくると思うのであります。申し上げるまでもございませんが、今日行われております新しい教育で、教科書以外のただいま申し上げましたような一切の教材というものが持っておりました教育的使命といいますか、これによって今日の新しい教育というものがずいぶん推進されてきた。地理、歴史という問題にしましても、国語の問題にいたしましても、すべて教育一切に、この教材というものは、広い範囲で使われてき、同時にこれまで非常な教育的な貢献をしてきたということは言えると思うのであります。そこで私は今回のこの法律案の三十三条でこの第二項をお作りになったというこの趣旨というものは、どうも従来まで文部省が、すなわち国がとっておられましたように、視聴覚関係の教育でも大いに奨励をされて今日まできたのでありますが、それと矛盾するようなことはないかと思うのであります。特に学校教育法の二十一条の第二項には、「前項の教科用図書以外の図書その他の教材で、有益適切なものは、これを使用することができる。」という規定がございますが、こういう問題と、今回の法律案で、教育委員会に届出をし、同時に承認を得るというふうに一応ここで縛っておるのでありますが、こういう面は、従来まであなた方がとっておいでになりました方針とは、かなり矛盾するといいますか、そういうことになるおそれがあるのではないかと私は思うのであります。特に昭和二十七年ごろでありましたか、視聴覚教育課なんていうようなものを文部省でお作りになっている。そうして大いに指導奨励をやってこられた。こういう面からみますると、私はこれは明らかに矛盾をするのではないかと思うのでありますが、この点いかがでございますか。
  61. 緒方信一

    緒方政府委員 御説のようにいろいろな教材を使って教育の効果をあげる、これが必要でもることは当然でありまして、御説の通りだと存じます。ただ教材を使いますことについての基本的な事項について、これを運営するにつきまして定めをいたしますことは、学校を運営管理いたします教育委員会の当然な権限でありますから、この三十三条の第一項におきまして学校の管理運営の基本的な事項について必要な教育委員会規則を定める、こういう規定を第一項に置いたのであります。その中に教材の取扱いということも入れているのはそういう趣旨でございます。それは何も規制をする側だけではないのでありまして、あるいは教育委員会として教材の価値を認めて、いろいろな取扱い方につきまして、その基本的な事項について定めをすることは、当然しなければならぬ問題だと思います。その際に、第二項の規定でありますが、この基本的な規定を定める場合に、教材について教育委員会に届出をさせる、あるいはまた承認を受けさせることとする定めを設けるものとする、そういう規定の必要があるものについては教育委員会が定めなければならぬ、こういうことを第二項に規定したわけであります。教材の教育的価値についていろいろございますが、それについて内容の問題もございましょうし、あるいはいろいろ使う教材が父兄負担を相当もたらしますので、それらの点につきましても、基本的な事項について教育委員会規則を定める場合に、その定めの中に、必要のあるものにつきましては、教育委員会にあらかじめ届けさせたり、あるいは承認を受けさせるという定めをしなければならない、こういうのが第二項の規定趣旨でございます。先ほど教材は非常に広い範囲ではないかと言われましたが、仰せの通りでございまして、これらについて全部承認を受けさせなければならぬ、あるいは届出をしなければならぬという趣旨ではございません。ただこういう定めを設けることは、第二項がございますので、必要であるということに相なります。そういう趣旨でございますので、ただいまお尋ねのように教材を使っての自由な教育活動というものを阻害するということには相ならぬと存じます。
  62. 山崎始男

    山崎(始)委員 そういたしますと、これは認識の相違が前提となると思うのでありますが、今あなたの御答弁は、私が尋ねた矛盾するかしないかということに対して、矛盾しないというふうな御答弁だったと思うのです。そうしますと、それには前提があると私思うのでありますが、あなたがそういう御答弁をなさるという以上は、こういうふうな規定ができても、従来と何ら変りなく、こういうふうなあらゆる教科書以外の教材を使っての教育活動というものはますます盛んになり、ますます発達をしていくのだ、こういうふうな前提がおありになるのですか。言いかえますと、こういう法律を作っても、決して視聴覚教育も何も萎微沈滞をしないのか。私たちはこの法律があるばかりに——なるほど今あなたの御説によりますと、教育委員会に事務的にそういうふうな定めをするだけの規定だとおっしゃるのでありますが、そうするともう一切の教材を使うのに届出も何もしなくてもいいのですか。実際問題としますと扱いというものは……。
  63. 緒方信一

    緒方政府委員 その届け出させまたは承認を受けさせることとする定めは、これは設けなければならぬわけでございますけれども、その範囲が教材全部に及ぶということじゃないということを先ほど申し上げたわけでございまして、それは場合によって教育委員会の判断によってその教材よりもこっちの教材の方がよろしいという判断もあるかもしれません。新しい教材がどんどんできて参りますので、学校で予定している教材よりもなおいい教材を使った方がいいという指導を教育委員会がなす場合もございましょう。それから場合によっては、先ほどもちょっと私触れましたけれども、教材が学校だけの判断で使われました場合に、あるいは非常に過重に父兄負担になる。そういう場合にはそういう高いものはそこの地域の事情等に照らして適当じゃないじゃないかということも、これは教育委員会として言う場合もございましょう。これは学校を運営管理する責任というものは教育委員会にございますので、学校を運営管理する上におきまして必要な限度において教育委員会がそういう定めをする、これは必要なことになって参ります。
  64. 山崎始男

    山崎(始)委員 文部大臣お尋ねしますが、今初中局長の御答弁を通しまして私らとだいぶ認識の違いがあるのでありますが、私たちは、この法律が通過いたしましたならば、いわばこの規定によって教科書以外の教材を使っていく程度といいますか、率といいますか、これが非常に少く、だんだん範囲を狭められていって、今までのような視聴覚教育なんかで上げた効果というものが漸次減殺されるという前提に立っておるのであります。今私お尋ねした学校教育法二十一条の第二項あたりには、どちらかといえば大いに奨励をしなければいけない、自由に使ってもよろしい、一言で言えばこういうふうな規則なんですが、これがありながら今回この法律案でもって規制をされるということは、私は矛盾じゃないか、こうお聞きしているのですが、初中局長は矛盾でないと言われる。ところが実際問題としてその矛盾であるか矛盾でないかということは——それはそういう答弁をされる人にも私は前提があると思うのでありますが、文部大臣としては、この法律ができましても、従来までよりそういうふうな教科書以外の教材を使っても、いわゆる視聴覚教育なんかの教育効果というものは減殺されないと見られるのですか、それともするかもしれぬと思われるのですか、これは私は大切な点だと思うのです。
  65. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 視聴覚教育その他教材が多ければいい、多々ますます弁じるというものじゃないのです。法律にも書いてあります通り、「前項の教科用図書以外の図書その他の教材で、有益適切なものは、これを使用することができる。」有益適切なものを学校に密接しておりまする教育委員会が選定するということは、決して視聴覚教育の効果をそがざるのみならず、ますますよくするものと考えておるのでございます。それを制限せいという規則じゃないのです。有益適切なるものを使えという実体法がありますから、有益適切なるものをこう使いなさいというのですから、悪い法律じゃないと私は認めるのであります。
  66. 山崎始男

    山崎(始)委員 いや有益適切なる教材はこれを使うことができる、これが今までの学校教育法の二十一条の第二項にございました。これが事前の届出も何も要らない。言いかえたら有益適切と見たら自由に使ってもいいということなんです。そういうことなんですね。ところが今回の法律は事前の届出をせなければいけない。しかも教材というものの定義というものは一々列挙すればし切れないほど範囲が広い、こういうことなんです。そこでその教育委員会で許可を与えるか与えないかの定めをすることができるという、非常に範囲が広くて、今局長は一々それは教材で教育委員会規定しなくてもいい教材もあるんだというふうな答弁があったのですが、この法案にはどういう教材は規定しなければいかぬとか、してはならぬとか、そういうことは全然書いてない。ただ教材と書いてある。そうでしょう。だからここらが非常にあいまいもことしてわからないのです。同時に大切なことは、さっきの話に返しますが、要は私が心配いたしますことは、今日非常に教育効果を上げておりまする新聞を教材に使う、あるいはラジオを使う、あるいは映画を使う、副読本はもとよりでありますが、その他一切の、そのときそのとき、その場その場に応じて現場の学校の先生が、いわゆる朝新聞が配られた、これが社会科の教材に非常に役に立つと思えば、その日にすぐそれを教室へ持っていって使うとか、こんなことは私が申し上げるまでもございません。これはやっているんですね。ところがこの事前に教育委員会に届をしなければならぬとか許可をとらなければならぬとかいうような、少くともこれは私は規制だと思うのです。それでもって従来そういうふうな教育が持っておりました、いわゆる最大限に効果を発揮させるようなことか、相変らずこの規制ができても最大限に発揮させることができるのだということは、私はこれは非常に矛盾している、矛盾していると思いますから、従来のような、学校教育法第二十一条第二項にあるような大いに奨励をしておる法律と、今回出されて、ここでのど首を一応締めておる法律というものとは、今までのあなた方の教育遂行の行政の方針において矛盾があるのではないか。しかも視聴覚教育の指導課というものまでわざわざお作りになっておられる。そういう点を見ても、大いに視聴覚教育は教育には必要なのだという立場から多額の予算を組まれておおきになったと思う。そういう面から私はお尋ねしておるのでありまして、今文部大臣は、これは何ら変りがない、ますますこの法規ができても進歩発達するのだ、こういうふうな御答弁に聞いたのですが、これは間違いございませんか。
  67. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私の言ったことには間違いはございません。視聴覚教育でもあるいは副読本でも自由自在に、多ければますますいいというものではなくして、適切なものがいいのです。むやみに詰め込むのが教育ではございません。そこであなたと私とがここで抽象的に話をし合っても、ものが長くなりますけれども、最近経験したことは、山口県において行われた山口日誌です。どうも私見ますると非常に偏向しておるように、ああいうものを全国で続々使わせるということは教育本来の目的にはかないませんです。映画にしたところが、あの暴力教室の映画、これもたくさん見せたがいいというので毎日これを見せるというわけにも参らぬ。学校の教職員は教育に熱心であられるのでございます。多くの教職員もみな有能な人ばかりではございますけれども、しかしながらここに教育委員会という制度をこしらえまして、それにはまた教育長というものも併置し、指導主事も使い、学校の教育の方針をますますよくしようということであったら、むやみに煩瑣な規則はいけませんけれども、やはりいいものが子供の目に触れるというふうにする工夫はしなければならぬ。そのことがここに書いてあるのです。文字に拘泥しないで、われわれの意図するところを御推察願いたいと思います。
  68. 山崎始男

    山崎(始)委員 どうもあなたのお話を聞いておりますると、一昨々年でありましたか、例の偏向教育として問題になりました山口日記の問題、これを取り上げられたから、おそらくあなたの意中というものは、いわゆる偏向教育を押える、特に当時は日教組につながるところの山口教組が関連しておった、そういうふうにしぼっていきますると、結局こういう規制を設けられた御意図というものが、何も数をたくさん縛る必要はないのだ、要するに特定のものを、いわゆる偏向教育と、今「暴力教室」が出ましたから、おそらくこれは不良文化財のことを言われるのだと思うのでありますが、そういうようなものをわれわれは取り締るために、こういう法規を作ったんだ、一々するんじゃないんだというあなたの御意図、立法の輪郭というものが初めてわかりました。ところが私が心配いたしますのは、一ぺんこういう法律が出ますると、二年たち、三年たち、五年たって適用されるものは、清瀬文部大臣の立法の趣旨というものは、適用する側になってきましたら問題でなくなってくる。その点は法律家であられるのですから、私は御同感願えると思うのです。今はあなたはそういうふうな、ごく腹のうちでは特定なものを縛るのだというふうにうかがえるのでありますが、この法案自体には何も特定とは書いてない、一般の教材と書いてある。どこにも不良文化財あるいは山口日記のごときものというふうなことは書いてない。教材等広く一般にと書いてある。しかもその教材の定義というものを最初お尋ねいたしましたが、いわばこれは広大無辺なものだ、数限りなくある、こうなってくると、私はますますこの法律か心配になってくるのであります。この点に対してもう一度文部大臣の御意向をお聞かせ願いたいのです。
  69. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 あなたと遺憾ながら少し物の見方を異にしておるのです。これは第二項は第一項を受けておるのです。一項は、そのために必要な委員会規則を作れと言って、この「必要な」という条件が二項にもかかっているのです。必要以上な規則は作らないでいいのです。これ自身が施行されるのじゃありませんよ。教育委員会が必要な規則を作れ、こういうことです。教育委員会の良識に従って、その時と場所とによって必ずしも均齊じゃございますまい。全国には何千という教育委員会ができるのでございます。その委員会が必要なと認めた規則を作るということには、何ら私は異存はない、むしろ委員会はそんなことを作るべからずとやっちゃ、これは大へんです。委員会は多くは父兄の意図を受けて、子供を育てるためには、このごろはこういう外国映画が入った、あれだけは一つやめてもらいたいといったようなことを感じるかもしれません。すべて教材全部、森羅万象、いやしくも教材というものに全部普遍的のコードを作れということではないので、必要な教育委員会規定を定めるということが第一項にありまして、前項の場合において、必要な規則を定める場合においては、教材についても必要な規定をせい、こういうことなんです。よくこれは悪いと思って読むと、非常に悪く映るのでありますが、親切な規定だと思ってお読み下さると、いい規定なんです。
  70. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 今山崎委員文部大臣並びに局長との質疑応答を聞いておりまして非常に感じたことは、この三十三条第二項は、教材について大いに規制をいたすために、教材を利用する方の先生方が非常にきゅうくつになって、将来学校教育に一大支障があるのではないかという疑問を抱いて、質疑をされた。そういうことはないんだ、こういうことをおっしゃっておる。ところが文部大臣答弁を聞いておりますと、山口の場合はこうだ、これこれはこうであったから、こういう悪いことは規制をするんだ。やはり規制をするんです。ただ規制をするが、文部大臣の感覚といいますか、時代感覚の上からは正しいものだと思った規制をするんだから、差しつかえないんだ、こうおっしゃっているんだと思う。それは一つの近代教育といいますか、終戦後の教育は、われわれが教わったときの教育とは全く変ってきている。われわれが教わったときの教育というものは、一つの型にはまった教材というか教科書というものがきちっとあって、その型を学校の先生が受け継いでやればよろしいのであって、何も新聞やいろいろな映画とかいう教材は必要でもなかったし、そういうものを使用することを許されていなかった。ところが今日の教育は、むしろ教科書なんというものはそっちのけであって、おもに教材等を利用した自由な教育によって、自由な人間を作り上げるというのが、今日の教育の実態であろう。従ってこの教材の利用ということが非常に重要な問題になって、山崎委員の言われるような心配がある。そこで、規制するんだということをはっきり言われたらどうかと思うのです。この条文を読んでみますると、二項の終りに「又は教育委員会承認を受けさせることとする定を設けるものとする。」とある。定めを設けることができると書いてあるのではない。設けてもよろしいと書いてあるのでもない。定めを設けよと法律が命じているんです。どうにもこうにも定めなければならぬ。委員会はどの範囲を定めるのか。定める限りは、前に申し上げました、広範な教材を利用しなければならぬ今日の教育制度であるから、それは定めて規制をするんだ、そういう自由勝手なことは許さないんだ、こういうことにはっきりなっているんだから、そうするんだとおっしゃればいいと思う。そうでないんですか。その点を聞いて、次にまだ私の考えがあるんですが。
  71. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 第一に、これはお問いのうちでわかっておると思いますが、文部省が規制するのではございません。教育委員会はこれを定めるというのです。そこで教育委員会は、前項を受けて、「必要な教育委員会規則」この必要であるかいなかは教育委員会自身がきめるんです。教育委員会が必要な教育委員会規則を作る。その「必要な」というのはだれが認めるかといえば、委員会が認めるんです。ある委員会では、ごくわずかしか必要じゃないと思えば、ごくわずか一項だけをきめましょうし、あるいは時代の影響でそのころの出版物とか映画とかといったようなものはいかぬといって、そいつをまた広くすることもありましょう。事は委員会の良識によって必要な限度の規則ができるのでございます。文部省はきつい規則をこしらえろなんという指導をいたすのじゃありません。御安心を願いたいと思うのです。
  72. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 定める範囲をこの程度にせよああせよということがこの条文に書いてないことは大臣のおっしゃる通りです。そのことは私にも大体うなずけるのです。ところが前にも申し上げましたように、範囲の大きいこまかいじゃなしに、何とか一つここに型を作らなければいかぬということがここに一応書いてある。そこで私心配なのは、こういう場合において文部省が大いにその指導、監督、助言を強化されようとするこの法律全体の意向から考えますと、どうでもいいのだ、勝手にやらせるのだ、こういうことではないと思うのです。ここに第三十三条の一項を受け継いで第二項ができておる限りにおいては、何かそこに文部省としての方針といいますか、意図があるに違いない。  そこで私はこの次にもう一つお尋ね申し上げておきたいのは、この定めを設けさせるために何か御指示をなさる考えがあるか、大体ひな形といいますか、そうしないと、御心配になった、地方委員会の中に多少右寄りしようとする傾向があったり、あるいは左寄りしようとする傾向があったりするために偏向になることになったときには、おそらくあなた方の御意思に反することになると思う。そこで大体のひな形というものをお示しになるお考えがあるなら、この意図がはっきりして、ははあ、なるほど文部省はこういうように教育を進めていこうという考えかなというのでわれわれも了解する点もあろうと思いますが、そういうことがおありになるか、お聞かせ願いたいと思います。
  73. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 抽象的にそういうひな形を示す考えはございません。ただ各地の教育委員会の良識によってお作り願いたい、こう思っておるのです。
  74. 辻原弘市

    辻原委員 関連。重要な三十三条の問題でありますが、議論の前に少しお聞きしておりますと、どうもこの条項に対する文部省見解がはっきりいたしません。大臣の御説明でわかるようにも思うのですけれども、そこでもう少し突っ込んで聞いておきたいことは、第一項と第二項の関係でありますが、第一項で教材の取扱いその他に関する基本的事項についてこれは定めるのだ、それを受けて第二項では、その定めた事項によって届出させる範囲をその委員会規則で定めるのだから、広範な教材のすべてにわたって制約を加えるものではない、そういうような答弁であります。それは間違いございませんか。
  75. 緒方信一

    緒方政府委員 その通りでございまして、第一項にきめますことは、学校の運営、管理の基本的事項について必要な規則を定めるわけでございます。その規則の中に第二項のような規定を作るものであるということではございますけれども、その範囲は教材の全般にわたっておるわけではございません。教育委員会の判断によりましてその範囲はきめるわけでございます。
  76. 辻原弘市

    辻原委員 私はこの法律を読むといささかその考えはおかしいのじゃないかと思う。それをはっきりしないと、この点非常に重要な問題なんですが、第一項をそのまますらすらと読むと、運営に関する基本的事項、たとえて言うならば、第二項に書かれておるような教材の取扱いについて届出させるかさせないかといったような基本的事項を第一項は言っておるのだ、その中に第二項であげた特段の理由は、特に教材の届出についての定めを基本的事項としてこれをきめておかなくてはならぬ、こういうふうに解釈する、それはどうなんです。
  77. 緒方信一

    緒方政府委員 そういう定めをきめるものであるということは第二項に書いてございます。ただしそれは教材の全般にわたるわけではございませんで、教育委員会の必要に応じてそういう届出をさせたりあるいは承認を受けさせたりするということでございます。その範囲教育委員会の判断に待つわけであります。
  78. 辻原弘市

    辻原委員 第一項の解釈からはその範囲をきめるなどということは出てこないように私は思う。運営に関する基本的事項、運営というのは、たとえば教材の届出をさせるかさせないか、これは具体的問題です。運営的な事項にこの条項からいうと入らないと思う。従って第二項にも、特に承認を受けさせることとする定めをきめろ、こういうことで、どこにもその範囲をあげて委員会規則にゆだねるということはない。どういうことなんです。
  79. 緒方信一

    緒方政府委員 第一項との関連においてそういう解釈になるのでございまして、運営管理の基本的事項について必要な教育委員会規則を定めるということであります。その場合において、ここに届出をさせる、または承認を受けさせる、そういう定めを設けるという規定が、第二項であります。その全部について定めるか、どの部分を届出させるか、あるいはどの部分承認を受けさせるか、これは必要に応じて第一項の教育委員会が定める、教育委員会の判断によってその必要な範囲をきめるということでございます。
  80. 辻原弘市

    辻原委員 私はそういうような解釈を文部省がしていることは伺っておったのでありますが、しかしこの法律の建前からいうと、第一項において教材の方だけを書いているなら私はそう見るのですけれども、そうではなしに、施設、設備その他教育課程一切のものを含んで、基本的な事項についてのみきめる、こういうふうにして、あとはその届出をその規則に必ず定めよ、こういうふうにこれは書いておるのです。そうすると規則の中に、承認をしなければならぬ教材について必ず届出をしなければならぬのだという教育委員会規則を作らせることが主目的である、こういうふうにこの法律からは読めないのです。しかしあなた方の方でそういう立法の趣旨であるとするならば、法律論をここでやることでないのでありますから、その点は省いておきましょう。そういたしますと先ほど前田さんの指摘された問題は非常に重要なことになります。  なお私は、少くともすなおに解釈しておるならば、われわれが常識的に考えられるあらゆる教材を含むというふうに考えておったわけです。ところがそうではなしに、教育委員会規則で定める場合にその範囲規定されるということになれば、これはまことに重大な問題であります。しかも先ほど大臣答弁されたように、どういう形のものを届出させる対象としてきめさせるかということの指導は行わない、これはよく承わっておきます。今後施行規則あるいは文部省の何やら指導要領というようなものでそういうことを行なわないと大臣が言明されたので承わっておきます。そうしますと、これはあげて全国の五千になんなんとする教育委員会の五人委員会ないしは三人委員会の手に全部ゆだねる。これは三人、五人の方々がおやりになるのですから、一つのなにがなしに適宜それをきめていく。まことにけっこうな話でありますが、事教材に関しては、今までの教育で言われましたように、何といってもこれは教師の全人格からにじみ出るものが教育であり、その教師がその全人格に基いて付随的に活用するものが教材であるとするならば、それを使う教師は一個の人形になってしまう。それをあらかじめ三人ないし五人の委員会がこれをきめて当てがう、いわゆるあやつり人形になる、しかも五千に及ぶような教育委員会がどうきめるかもわからぬ。これをあなた方の今までのような答弁のやり方で言わしむると、地方分権の趣旨からそういうこともけっこうだと言われるのでありまするけれども、てんでんばらばらな形のものをあなた方は想定されておるわけだ、教材は無限に広いのであります。そのうちで適当にきめなさいということになると、極端な場合においては日常の新聞はりっぱな教材であります。かりにこれを届出させることをきめた教育委員会がある、隣りの村ではそれをきめなかったということも入ってくるわけであります。これはそういうことまで想定しているのですか。指導はしないというのですから、あり得るわけですがどうですか。
  81. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私の言ったことをお聞き違いになって大へん腹をお立てになっておるようでありますが、先刻の質問は文部省はひな型のようなものでも示すかとあなたはお問いでしたね。そうはしない、しかしながら今回の法律では指導、助言、援助ということをいたすことになっておりまするから、何をやっても指導も助言も援助もしないという約束をしたならば法律違反です。この法律にあるように、このことについても必要な指導、援助はいたします。けれどもちょうど会社の定款で模範定款というのがあって、それを見て代書人が書きますが、ああいうふうなひな型で、こういうものを作りなさいというものを書いて流すようなことはないということを申し上げたのです。意味は二つ別のことです。指導権は放棄いたしません。
  82. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 辻原君簡単に願います。
  83. 辻原弘市

    辻原委員 その問題をやると長くなりますが、今大臣はひな型は作ってやらぬ、しかし指導、助言はいたしますと言う。問題はその指導、助言の内容を徹底的にわれわれが究明しないと、あなた方はこういう画一的なものはやらぬというけれども、事実においてやろうという意思がある。しかしそのことはあとで究明いたします。  もう一つ私はこの機会にはっきりしておきたいのは、教材というものは無限大に広い。ところがその中で必要な全部を教育委員会に示させるという立案趣旨じゃないのだと言っておる。そうするとあなた方の立案趣旨である教材というものの範囲は具体的にどういうものか、先ほどちょっと言いかけたけれども、私はこの条項に対する審議の一番大事な点だと思うので、あなた方が考えている必要な教材というもの、またこれは定めなくてもいいというものについて列挙をして、文書によって一つ委員会提出してもらいたい。それがないとこれは審議できませんぞ。何かその対象に必要としているのか、どういうものを教材と思ってあなた方が言っているのか、さっき二つ三つ並べたようなことは赤ん坊でも知っているのです。その他どういう教材があるかということをこの委員会提出しなければこの委員会の審議はできません。その点を委員長に要望いたします。
  84. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 教材の資料について一つはっきり文部省は出してもらいたいと思います。
  85. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 あなたの御趣意はわかりまするが、おそらく問題は二つだろうと思うのです。これが有益適切なるものということに合するやいなや、有益適切であってもあまり高いものではまた財政上困りまするから、経済上の関係などをかね合って、そうして地方教育委員会または県教育委員会の良識によってきめられることと思います。あなたの御要望でありまするから想像し得べきものを考えて出してもいいのですが、これで漏れないという万世不易のものはちょっとむずかしいと思うのです。
  86. 辻原弘市

    辻原委員 委員長要求いたします。前言の通りです。このことは少くとも委員会提出をしてもらわなければ私は三十三条に関する質疑は続行できません。文部省提出すべきことを委員長から要求して下さい。要求いたします。
  87. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 教材の資料を全部一つも漏れぬということはないだろうけれども……。
  88. 辻原弘市

    辻原委員 列挙して提出してもらいたい。
  89. 佐藤觀次郎

  90. 並木芳雄

    並木委員 私文部当局意図はわかっているのですけれども、今御意見を伺っていますと、この法文からくる印象というものはやはり少し疑問があるようなのです。大臣の御意向を満たすためには第一項に「教育課程、教材の取扱」と教材という言葉が使ってございます。第二項においては「学校における教科書以外の教材」同じ教材という言葉が使ってあります。ですから学校における教科書以外の教材も第一項の教材の中に含まれるものと解釈されます。そうすれば大臣及び局長がおっしゃられている目的を達するためならば第二項というものは不必要だ。つまり教科書以外の教材というものについても第一項で「必要な教育委員会規則を定めるものとする。」これで足りるという印象を今受けました。それにもかかわりませず第二項があるということは、教科書以外の教材は大切だから特に届けさせるかあるいは承認を求めるようにするというむしろ強い印象を受けるのです。ですから大臣及び局長が、そうじゃない軽い意味なのだというふうに最初からおとりになっているニュアンスと、私が今ここで受けたニュアンスと違うので、あとから誤解を受けるといけませんからお尋ねをしたいわけなのです。これは法文そのものなのです。大臣の御答弁を聞いていますと「必要な教育委員会規則を定めるものとする。」ということが、必要ならば教育委員会規則を定めることができるという程度に受け取れた節もございます。私はそうでなくこの「必要な」という文字はむしろ必要でないというようにとなるのです。「必要な」というのを除いてお読み下さってはいかがでしょうか。管理運営の基本的事項について、教育委員会規則を定めるものとする。ということで、上の「必要な」というのはまくら言葉であってこれはむしろ取り除いた方がいいのじゃないか。不必要な規則を作る必要はない。大臣がお考えになっているように、必要ならば規則を定めることができるという意味の必要ならば私は認めますけれども、この法文はその点が出てこない、こういう意味で私ちょっと確かめておきたいのであります。
  91. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいまお話のように、第一項の規定は、学校の運営管理の基本的事項について定めるのでございますが、その例示といたしましてここに教材の取扱いも入っておりまして、この教材の中には第二項の教材を含むことは当然でございます。こ規則を作る場合に、あらかじめ届出させまたは承認を受けさせる定めを作るということは必要になって参ります。先ほどから私ども申しましたのは、その範囲について全部ここでやらさなければならぬじゃないかという御趣旨の御質問でございましたから、そうじゃなくて、それは教育委員会教育委員会規則を作る場合に、その必要な範囲において、その判断において作るのだということを申しあげたわけでありまして、そういうように御了承願います。
  92. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、教材の範囲については教育委員会が定めることができるというつけたりが必要だと思うのです。法文そのものをごくプレーンに解釈して——別に攻撃でも何でもない、むろんここに攻撃はできませんけれども、そうじゃないでしょうか清瀬さん、あなたは法律学者だし、私は自由裁量権というものは教育委員会に与えられておらないと思うのです。実態は私よくわかっています。ですからそれが与えられるような法文に、やはり少し再考慮の必要があるのじゃないでしょうか。今言われるような内容は法文そのものから出てこないと思うのです。教材の範囲というものについて、教育委員会が定めることができるというのはどこからも出てこない。前の必要なという文字からは出てきません。必要なというのは前に例示したこれこれについて規則を作りなさいということで、必要なという文字はあってもなくてもこれはできるし、不必要な規則を作るはずはない。これはなくもがなの言葉だと思うのです。しかし教材の範囲について教育委員会は自由裁量の権限があるというならば、それを一言ここへつけ加えておけばはっきりすると思う。
  93. 緒方信一

    緒方政府委員 繰り返して申し上げますが、この法律趣旨といたしましては、第一項との関連において、そういう解釈が出てくると考えております。基本的な事項についてこういう規則を定めるのでありまして、それを定める場合に、こういう定めを設けることが必要になって参ります。全然定めないということはないわけでございますけれども、しかしその範囲につきまして、これを届けさせるとか、これの承認を受けさせるということは、全然法文には触れてないのであります。それは教育委員会の判断、必要によってそれを定める、そういう趣旨でございます。
  94. 並木芳雄

    並木委員 それならば、第二項の最後を教育委員会に届けさせる、または教育委員会承認を受けさせるとする定めを設けることができる。こうやったらどうですか。この範囲は問題になると思うのです。
  95. 小林信一

    ○小林(信)委員 この問題は、相当慎重を要する問題で、文部省としましては納得のいく材料を用意されることが必要だと思うのです。私は今後この問題につきまして質問いたしますが、文部省は用意されるようですから、それにつけ加えて御用意願いたいと思うのですが、もちろんあればけっこうです。これを承認するという言葉を使った以上は承認をする方法、機関こういうものに対しても構想がおありだと思います。おそらくこれが実施されたらその方法なりあるいは承認する機関というものが必要になってくると思うのですが、そういう点については文部省ではお考えになっておりますか、なっておりませんか。
  96. 緒方信一

    緒方政府委員 これは御承知のように、教材は先ほどから御論議になりますように、多種多様でありまして、教育委員会が必要なものについて届けさせたり、あるいは承認を受けさせたりしていくわけでございます。その際の方法、期間というものはその定めました教材についてそれぞれ考えなければならぬと存じます。文部省といたしましては、一律に何ヵ月なければならぬとかいうことは考えておりません。その事態、事態に応じて教育委員会が定むべきものだと考えております。
  97. 小林信一

    ○小林(信)委員 それは非常に重大だと思うのです。教科書以外の教材と申しますと、今範囲が広いということを文部省自体もおっしゃっておられますが、副読本もこれを使用してよろしいとかあるいはやっていけないとか、あるいは映画のフィルム、これがいいとか悪いとかということを教育委員会がこれを承認するとなったら教科書でさえもあれほど問題のある今日です。これを軽々にどういうふうな機関で、どういうふうな方法でやっても、それ自体でよろしいなんていうことになったら、これは三人の教育委員会で、この副読本はいいとか、このフィルムはいけないとか、今映画を見にいこうと思うが、この映画はよろしいかというようなことまでその範囲に入ったら、これはとんでもないことになる。ことに学校図書館の中の本、子供の読み物、おそらくこういうふうなものも規定されることになるのではないかと思いますが、それをよろしい、いけないというふうな判断を下すのに、教科書でさえあれほど問題にされた今日、それが三人の教育委員によって判定できるかどうか。そんな構想だったらこんな問題を載せることが非常に間違っておるのじゃないかと思うのですが、それでいいのですか。
  98. 緒方信一

    緒方政府委員 繰り返して申し上げますように、その必要な限度がどこにあるかということは、それぞれの土地、地域の実情によりまょうし、場合にもよりましょうから、それによってきめていくことに相なるだろうという趣旨であります。そこで今お話しのように教育委員の教はこれは原則として五人であります。場合によっては三人になりますが、これはそれぞれ事務局もあり、特に指導部局等もありますので、それぞれの判断によりまして、適切な承認なりその措置ができるものと考えます。ただ先ほど私が申し上げましたのは、文部省がその期間をどれぐらいにきめるというようなことは、あらかじめ予定することはむずかしいということを申し上げたのでありまして、教育委員会が定めましたそれぞれの事態によって、これはやはり適切に処置すべきものであると存じます。教育委員会は今申し上げましたように、人数は五人が原則でございますけれども、それは専門の職員がおるのでありまして、指導部局があるのでございますから、それらによって適切に措置されるものと期待いたしております。
  99. 小林信一

    ○小林(信)委員 これは運営の将来の問題を考えたときに心配になることなので、与党の方は簡単に賛成されておるのですが、非常に問題だと思うのです。今局長がおっしゃったようなことも実際問題から考えていきますと、指導部局があるというようなことをあなたはおっしゃっておりますが、教育委員でさえも、公選によった教育委員ならとにかく、任命によって出てくる教育委員がやるというような場合には、非常に問題があるわけです。事は先生が子供に対して使用するところの教材である。教育委員は少いけれども指導部局がある、事務職員がいるという。すると先生よりもかえって事務職員の方が教材選択に対して権限を持つというようなことになっていいとあなたはお考えになるのですか。最近教材書問題ではいろいろ不正事件が出ている。教科書は一応公然と出ておるものですから、値段というものも相当厳格になっておる。ところが副読本なんかは非常にでたらめなんですから、営利会社は事務職員が選ぶなんていうことになったら、いよいよもって教科書以上の問題が出てくるのではないか、そういう実際問題を考えたときに、こういう承認制度というようなものをとる以上は文部省においてもその場合にはその助言なり指導なりはしないにしても、どういうふうな構想をもって、方法あるいは機関を設置するかのことくらいを考えなければ無責任ではないかと私は思うのです。あなたの言うその事務職員に、フィルムあるいは図書館のこれから設置する本とか新聞、あるいは副読本というようなものの選定をやらせれば、これはいよいよ先生に対する権威、信頼というものはなく、先生というものは事務職員ですらも自由に動かすことができるということを、制度が裏書きするのですが、それでよいのですか。
  100. 緒方信一

    緒方政府委員 私の申し上げましたのは、今のお尋ねが教育委員は三人ではないか。三人でこういうことが適切にできるかというお話でございますから、それには補助する職員がおって、全部一律というわけには参らないかもしれぬが、指導主事等もございますし、それらの部局で研究をしてその事態には処していくことができるだろうということを申し上げたわけでございます。これはもちろん教育委員会権限でございますから、その職員が勝手に選ぶ、それをきめていくということには相ならぬと思います。これは教育委員会権限としてそれがきめられていくというふうになると思います。それから機関とおっしゃいましたが、私は時期の期間と聞いたのでありますが、これは教育委員会がその機関でございます。教育委員会自分運営管理する学校の使用する教材については、権限責任がございますから、教育委員会がこれをきめていくことは当然なことだと思います。
  101. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 小林君、なるべく最後にお願いします。
  102. 小林信一

    ○小林(信)委員 私はこの問題はもっと深く聞きたいのですが、あまり急ぐならば次にいたします。
  103. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 それではまたそれはあとでやりますから……。山崎始男君、本論に戻して……。
  104. 山崎始男

    山崎(始)委員 関連を返していただいたのでありますが、この問題は非常に大きな問題でございまして、与党の並木委員からすら、あのような反対の、この法案自体の構成に対して非常に疑義のある御発言もあったほど、この法律案というものは政府としては非常に大きな失態だ、しかもこの内容たるや、一日や二日審議いたしましても審議し切れないくらいな広範囲なまた深いものを持っておると私は思うのであります。従って私は関連を返してもらいましたが、もうだいぶ時間もたちましたので、辻原委員の方からも資料の要求もあったことでございますから、これはゆっくりと次回の委員会に譲りたいと思います。
  105. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 第三十三条は重要な条項でありますから、先ほど辻原委員から請求のありました教科書以外の教材につきまして、その内容について具体的な資料を次の委員会にぜひ提出されたいと思います。委員長から特にお願いします。  午前の会議はこの程度とし、午後二時より再開いたします。  この際休憩いたします。    午後一時三分休憩      ————◇—————    午後四時三十八分開議
  106. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。杉浦武雄君。
  107. 杉浦武雄

    杉浦委員 第五十八条の関係でお伺いしたいのですが、現行法においては義務教育の関係の教職員の給与の責任は府県にある、ところが先生方の任免等の関係市町村が持っておる。そのことのために、先生方の配置であるとか、あるいは交流というような事柄に非常に支障を来たしている。その支障を来たしたいろいろな形がありますけれども、最も著しいものは、優良なる先生方が都市へ都市へと集まろうという傾向を生じたのであります。都市は文化の中心でありますから、当然みながそこへ集まりたがるのは当りまえであります。しかも都市は物価が高いからというので地域給をもらっておる。都市へ住んでも経済的には一向困らぬ、こういうことでありますので、いよいよもって先生方が都市へ集まりたがる傾向を持っておるのであります。あらゆる知恵をしぼり、あらゆる方法をもって都市へ先生方が集まる。先生の経験にだいぶなれて、もうほんとうに働き盛りというような先生がおもに都市の方へ集まっていく、こういう状況になっておるのであります。ところがどうしても都市へ行かれないということになりますると、結局いなかの学校をやめてしまう、そうして新たに都市に採用を求めて行く、都市の方では何とかしてこれを許すといったようなことになって、結局都市に先生方が集まり、いなかの方では非常に困るというような状況を来たしておるのです。これが市町村に任免権を与えておった一番困った点であったろうと思うのです。名古屋なんかの実例でいいますと、小学校の場合で、名古屋の小学校の先生の平均給とその周辺の小学校の先生の平均給と比べますと、月にちょっと二千円くらいの開きがある。名古屋の方が高いのです。でありますので、いよいよそこへ集まってしまうというような状況にあったのです。従ってそれらのことがむろん考慮せられたのであろうと思いますが、それらのことを考慮して今回は任免権を県の方へ移すということにしてしまったということはまことに適切なやり方であったと思うのです。ところがこの五十八条の規定でもって、特別市、すなわち五大都市といってもいいんでしょうが、五大都市に限っては従来通り任免権を五大都市に残しておく、こういう関係になってしまっておるのです。しかも校長先生の任命でもあるいは教育長選任でも全部五大都市にはそのままに残っておる、こういうような格好になってしまったのでありますが、非常にまずい現状を直そうとしてりっぱな原則的なものを打ち立てたのに、五大都市に限って特別な扱いをしなければならなかった理由、この点をまずお伺いしたいと思うのです。
  108. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいま御指摘のように、人事の適正な配置あるいは円滑な交流等を従来阻害しておりました点を是正するという意味におきまして、県費負担教職員の任免権を都道府県教育委員会が一般的にはこれを行うことにいたしたのでございますが、ただいまお話のございました五大市につきましては、これはその五大市の規模、能力というような点から申しまして、これは例外的な措置といたしまして、その任免権を五大市の教育委員会に法定委任をすることにいたしたのでございます。その理由は、今も申し上げましたように、五大市というものは、その規模から申しましても、学校数あるいは教職員数等から申しましても、相当な規模を持っておりまするし、それからまたその実力、能力から申しましても、教育委員会の行政能力等から申しましても、相当充実したものがございますので、五大市につきましては特別に法定委任をいたしまして、その人事権を五大市の教育委員会が持つ、特例としてこういうものを設けた次第でございます。
  109. 杉浦武雄

    杉浦委員 五大都市は規模と能力が大きいから困りはしないだろう、この説明はわかるのです。むしろ五大都市が規模と能力が大きいために五大都市を包む周辺のいなかの方が困るのです。五大都市に先生を吸収せられてしまって、いなかの方が非常に参ってしまう、その点は今度の特例を設けるに当って考慮なさらなかったのですか、どうですか。
  110. 緒方信一

    緒方政府委員 御説のように、五大市とそれからその以外の近接の町村等との交流につきましては、これはこういう特例を設けますと若干不便が起ってくるということはあると存じますけれども、しかしながらただいま申しましたように、何と申しましても、五大市というものの規模、能力から考えまして、これをほかの市町村と同じように扱うことは不穏当ではないかという考え方からいたしまして、特別な例外措置といたしまして考えた次第でございます。ただ県費負担教職員の給与の条令等は、その所属する、統括する都道府県の条令できめることになりますので、それらの点につきましては従来よりも相当均衡化してやることができるんじゃないか、こういうふうに考えます。しかしその人事権を行使いたしますのは特例として五大市の教育委員会にこれを行わせる、かような趣旨でございます。
  111. 杉浦武雄

    杉浦委員 どうもお話が十分でないと思うのです。五大都市に特例を設けた結果周辺は従来よりももっと困る状態に置かれるであろうということが想像せられる。これを心配しているのです。その結果は、県と県の中にある五大市とが以前よりもひどい争いをしなければならぬというような部面が起きてきやしないか、こういうことをおそれるのです。こういうりっぱな原則的なものをこしらえたのに、今あなたのおっしゃるように、五大都市に限って特例を設けたというのだが、その特例を設けるに当って文部省の中では何らの反対論もなかったんですか。私は想像するに、おそらく有力な反対論がここにあったんだろうと思う。今あなたのお話によりますと、給与だとか任免だとかいうようなことについては特別に県の方に留保せられている権限があるのだ、それで押えていく道もあるのだというようなお話でありましたが、それはなるほど四十二条以下にずっとその規定がありますけれども、おそらく四十二条以下のそれらの規定というものは、これは上と下との大きなワクをきめるとか、幅をきめるとかいうことであって、そのワクの中において自由に活動する余地がある、そのワクの中で大都市が自由に活動する、そのことのために周辺の連中が非常に困る問題が起きてくる、こういうことが私には想像されるのですが、そういう点はどうですか。
  112. 緒方信一

    緒方政府委員 これについてはいろいろと御意見はあるかと存じますけれども、いずれの方法をとるかということになりますと、これはたびたび繰り返して申して恐縮でありますけれども、やはり五大市の規模、能力から申しましてこれに特例を設けた方がよかろうという判断に立ったわけであります。従来は、これは申し上げるまでもございませんが、人事権は全く市町村にあって、それを一般的には都道府県に上げた、五大市についてはそれを法定委任をして五大市にまかせるということでございますから、従来よりも悪くなる、特にこの措置のために五大市とその周辺の市町村との間に従来よりも非常な不都合が起るということは私ども考えていません。それから今も御指摘がありましたが、四十二条以下、県に任免権が原則として移りました結果、いろいろな条例等につきまして一般的な指示をするというような権限が県にございますけれども、従来よりもこれは改善になると私ども考えている次第であります。
  113. 杉浦武雄

    杉浦委員 四十二条以下の規定があっても、それは大きなワクをきめておるだけなんですから、そのワクの中では五大都市は自由に動けるわけです。五大都市がそのワクの中で自由に動けるために、結局その周辺の人々は非常な迷惑を受けるじゃないか。これは先へいってみなければわからぬことですけれども、私はそういうふうに想像するのですけれども、その点はそれでおきましょう。  次に、この法案をお出しになるに当ってずいぶん長いこと研究なすったというわけなんですが、ずいぶん長いこと研究なすって、いよいよおしまいにこの法案ができるころに、五大市とその都市を含む府県との間に、十八項目か何かの権限委譲の問題が起ってきまして、そして五大都市の人々は十八項目の従来県が持っておった権限を五大都市の方によこせというわけなんです。ところが一方県の方では、必ずしもその十八項目の権限を委譲するということに賛成だというわけじゃなかったかもしれぬけれども、その特別市というような形のものが将来再燃してこないならば、その十八項目の権限を委譲するということはがまんしてもいいというような気持であったようです。その結果、その問題は結局地方自治法が改正せられて、将来特別市の問題が解決せられる、こういうことで落ちついておるのでありまするけれども、そういうふうに一般的に地方自治法で特別市扱いというものをなくさせてしまっておる傾向に向いておるときに、この教育の問題に限ってまた五大都市の形を残そう、こういう考え方は、一体どんなものでしょうか。そこをお伺いしたい。
  114. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいま御指摘のことは、地方自治法の改正との関連のことであると思いますけれども、この法律案といたしましては、地方自治法改正に関係なく、教職員の人事の制度といたしまして、ここにありますように、五大市については特例を設ける、かようにきめたわけであります。自治法一般の五大市の問題がどういうふうに相なりますか、将来のことで、今度改正が出ておりますけれども、それとは関係なしに、こちらは教職員の人事権の問題といたしましては、さようにこの法律で決定をいたしたわけでございます。今御指摘の十八項目というお話でございますけれども、それとは関係なしに、私どもとしてはかように規定をいたすことに相なったわけであります。
  115. 杉浦武雄

    杉浦委員 それは自治法の関係とこの法律とは関係ないことはわかっておりますが、いやしくも一つの国の法律であって、しかも相当長い間続いてきた特別市の問題を改めて、将来も起らないようにしてしまうという、とどめを刺しているような規定を自治法の方では作ったわけです。そういう場合ならば、たとい管轄庁が違っても、それと歩調を合せてやるというくらいのことは、国としてはあっても当り前じゃないですか。そんなことはかまわぬというお考えなんですか。
  116. 緒方信一

    緒方政府委員 はなはだ繰り返して恐縮でございますけれども、この法律といたしましては、県費負担教職員の人事権の問題といたしましては、五大都市につきましてはさような特例を設けるのが最も適当である、かように考えた次第でございます。
  117. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 ちょっとお伺いしたいのですが、私も愛知県の名古屋の周辺の都市から出ているんですが、今杉浦さんから御意見がございましたが、どういう思想で五大市だけは特別に認められたのか。その思想のあり方を一つここで、今杉浦さんから言われましたから、関連して聞きたい。私の郷里にも非常に強力な反対があるので、この点について一つ大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  118. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 五大市が一般の村、町と違って大きな実力を持っておられる。これは五大市内には学校もたくさんあることであるから、それでこれには特例を設けたがよかろうということでございます。今杉浦さんのお問いのうちに、文部省内では反対の意見がなかったかということでございましたが、省内はありませんけれども杉浦さん及び私の属しておりまする党内においては、これについていろいろ御議論があったのであります。実に数日間夜昼論じまして、結局これに落ちついたことでございます。御了承願いたいと思います。
  119. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 あなたの方の党では納まるかもしれませんけれども、私らの方では、これはいろいろ理屈をいえばきりがありませんけれども、どうも五大市だけということになると、特に私ら名古屋との関係が深いのですが、郡部の先生方が地域給の問題その他交通の問題等について非常に不利な状態で、むしろ僻地にいる方は——杉浦さんの選挙区も僻地ですが、僻地も困ると同時に、この周辺の、川一本で名古屋市と郡部という地方も、非常に不利な状態になっているわけですね。こういう点だけの特例を設けられたことについては、教育の機会均等というものが非常にあれになると思うのですが、こういう点大臣はどんなふうにお考えになっておられるか。
  120. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私の故郷の兵庫県においても同様です。それで地方の県会議員諸君の御意見も、市部の人と郡部の人とは反しております。また代議士も、郡を選挙区とする者と市を選挙区とする者とは、からだの置き場所によってものの姿の見え方が違うのであります。しかしながらだんだん調べてみると、やはり大きな都市には、非常に学校もたくさんございますし、また実力も大でございますし、このころでは町村合併の結果、区域も非常に大きくなっておりますし、結局この通りの裁定がよかろうということで落ちついたのでございます。反対の御議論もあることはよく承知いたしております。
  121. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 力の大きい方へますます国家が協力するという結果になり、弱いものは踏みにじられるという結果になるので、この問題はまたあとで私質問します。
  122. 杉浦武雄

    杉浦委員 二十七条の関係でお伺いしたいのですが、二十七条は、さきに伺いました「五十八条第一項の規定により市町村委員会又は市町村委員会教育長に委任した事務の管理及び執行に関し、当該市町村委員会又は当該市町村委員会教育長を指揮監督することができる。」こう書いてある。   〔委員長退席、山崎(始)委員長代理着席〕 結局私の属する愛知県の場合で申しますれば、一応名古屋市の委員会あるいは教育長に対して県が指揮監督をすることができる、こういうことなんです。ところでこの指揮監督ということは、一体どういうことを言っているのですか、それをお伺いします。
  123. 緒方信一

    緒方政府委員 五十八条で教職員の人事の関係権限を五大市に委任をいたしたのでございますが、その委任をいたした事務につきまして、都道府県の方が指揮監督をする、こういうことでございますから、その人事権を行使しますについて指揮監督をする、かようなことに相なります。ただこの指揮監督をするという内容でございますけれども、どこまでこれを及ぼすかという点につきましては、それはそのときどきの事情がございましょうけれども、その委任を受けた人事権がきめられた条例等に従って適正に行使されているかどうかということについて、指揮監督するということであろうと思います。
  124. 杉浦武雄

    杉浦委員 四十一条を見ますと、「教職員の定数は、都道府県の条例で定める。」四十二条には、教職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、都道府県の条例できめる、四十三条の三項には教職員の任免、分限、懲戒は都道府県の条例できめるといったようなふうに、都道府県の条例できめる、条例できめるということがここにある。多分これは、先ほど私が申しました一般的な広いワクは都道府県がきめる、こういうことであろうと思うのです。そこでこのワクの中ではかなり自由に市の委員会は動ける、従ってさっきの指揮監督ということになりますと、ワクの中で動くその動き方の指揮監督、こういうことになるかと思うのですが、そうですか。
  125. 緒方信一

    緒方政府委員 これはただいまお話がございましたように、四十一条以下県費負担教職員の定数、給与、勤務時間その他の勤務条件、あるいはその他の事項につきまして都道府県の条例できめますので、人事権の行使がかような条例に従って行われなければならぬ。またその上には法令の規定もございます。地方公務員法の規定もございます。教育公務員特例法等の規定もございますので、こういうふうな法令の規定、あるいはかようなここにありますような条例の規定に従って、人事権が行使されなければならぬのは当然のことでございます。ただ都道府県といたしましてこれを委任をするわけでございますから、その委任をいたしました事務がかような条例に従って適正に行われておるかどうかということにつきましては、指揮監督をする権限を持つべきだと考えるわけでございます。今お話しの点は条例の範囲においては自由に市町村、その委任を受けた方が行使できるのじゃないか、こういうお話でございますが、それはそうだと存じます。指揮監督と申しますのは、個々の人事について具体的に、あの人物はこうこうといったような指揮監督をすることは、これはおそらく法律趣旨から申しまして一たん委任をした権限につきまして立ち入り過ぎることでございますので、その指揮監督というのは、そこまでやることは不適当であろうと存じます。これはやはり一般的にそういう法令の規定あるいは条例の規定その他に従って、適正に執行されておるかどうかということについて指揮し、監督する、こういうことであろうと存じます。
  126. 杉浦武雄

    杉浦委員 そういうことになると、たとえば俸給の点を突いてみましても、俸給は幾らから幾らまでという広い幅があるのです。今までいなかで割合安い給料をもらっておった人が、市の方で幅の天井のところをもって与えるということになれば相当高く採用してもらえる、こういうことになるでしょう。その弊害がついに優良な先生たちをみな都市の方にさらっていってしまうということを生むもとになる。だからある程度広さを持った範囲、その中だけで自由にやっていいのだというようなことでは、指揮監督権がありましても何にもならぬと思うですね。もっと具体的に先生の任命をした、それはいけない、こういうふうにいけるような指揮監督ならば話はわかるのですけれども、市の方が給料をきめたりあるいは先生の任命をした場合に、さっき言った四十二条以下のワクにはずれていない限りは、——一般的規定にはずれていない限りはどうすることもできぬでしょう。
  127. 緒方信一

    緒方政府委員 これは給与条例等のきめ方にございますけれども、今お話しのように非常に幅の広い運用というものは、条例では普通きめておりません。たとえば初任給の基準とかあるいはその経歴に従っての給与の決定等、これは条例で大体基準がきまっておますので、今お示しのような事例はちょっとどうかと思うわけであります。ただ先ほどから申しますように、この指揮監督というのはあの人間は高いじゃないかというような示し方は、これはいかがであろうか。かりにそういうような示し方をするにいたしましても、これは一般的な条例に違反しておるではないか、そういう意味からも一般的な指揮監督ということに相なると存じます。
  128. 杉浦武雄

    杉浦委員 大体私は五十八条と今申しました条文、この二つをお伺いしようと思ったことで尽きるのですけれども大臣緒方さんも、人事の交流、配置等は大都市になれば能力があって自由にやれるのだから困らないのだ、こういうお話で大都市本位の説明だ。それはその通りだと思う。大都市の方は困りはしません。しかし大都市が困らぬなら困らぬだけ、あるいは都合によって横暴すればするだけその周辺のものはえらい目にあうということは、これは前もって申し上げておきます。きっとそういう問題が起きてきて、大都市が大きければ大きいほど困るという問題が必ず起ってくる。そういうことを私は今から判を押して言っておいてもいいと思っておるのです。そこで五十八条の委任の規定を設ける場合に、文部省がさきに一度考えた案には、学校の校長はのけておったという事実があるように思うのですが、それはどうですか。
  129. 緒方信一

    緒方政府委員 私ども法案立案いたしますにつきましては、いろいろ案を考えまして、それを各方面から検討いたしまして成案を得るわけでございます。その過程におきましてはいろいろな案も考えてみたわけでございますけれども文部省としてきめました案はこの案でございます。校長を含みましてすべての教職員につきまして人事権は五大市に委任をする、こういう案を文部省としてはきめた次第であります。
  130. 杉浦武雄

    杉浦委員 今のお話では校長をのけて考えた案もあったらしいのですが、そのときに校長をのける気持が起きたのは、一体どういう理由であったのですか。
  131. 緒方信一

    緒方政府委員 これはただいま申し上げましたように制度でございますから、それはいろいろ彼此検討してその長所短所を比較して案をきめるわけでございます。でございますので、校長をのけてそのほかの教員だけを委任するという方法一つの案であろうと考えたわけであります。しかしいろいろ検討いたしました結果、これをのけずに全部校長も含めまして委任をする、そういう結論を得たわけであります。途中の考えといたしましては、校長だけは除くという考え方も一つの案としては成立するかと存じますけれども、しかし全体的、総合的に考えました結論はこれを含めて委任をする、かようなことでございます。
  132. 杉浦武雄

    杉浦委員 くどいようでございますが、その校長をのけて考えたのにはそれだけの理由がある。ほかの職員の方は委任してしまうのだ、任命は委任するのだ、けれども校長だけはといって取りのけたんだから、取りのけたのには取りのけただけの理由があると思う。それはどういう理由なのですか。
  133. 緒方信一

    緒方政府委員 これは何度も同じことを繰り返すわけでございますけれども、結論としてはそれをとらなかったわけでございます。そういう案もあり得るということで御了承いただきたいと存じます。それは校長だけは県が人事権を行使する、こういう考え方も考え方によってはあり得ると思うのです。それはやはり全部を委任しないで、一部は県で持ってもいいではないか、さようなことでありまして、どっちがいいかという問題であります。
  134. 杉浦武雄

    杉浦委員 終ります。
  135. 佐藤觀次郎

  136. 高村坂彦

    ○高村委員 第四条の問題について若干お尋ねしたいと思うのですが、第四条では委員任命するに当りまして、「当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者」ということははっきりしておりますが、その下に「人格が高潔で、教育、学術及び文化(以下単に「教育」という)に関し識見を有するもののうちから」云々と書いてありまするが、教育の委員という職責から申しまして、特にこうした要件というものを入れられた理由はわかるのですが、合議制ですからそういう人もいなければなりませんが、中には非常に常識の豊かな方あるいは財政に通暁しているというような方が必ずしもそういう要件を備えないけれども一応入っておく方がいいという考え方をしなくちゃならぬ場合もあるのじゃないかと思うのです。これは公選でないから農業から出てくる、商人から出てくる、いろんな人が出てくるようになっておるようですが、この点はどういうふうにお考えでございましょうか。一つお聞きしてみたいと思います。
  137. 緒方信一

    緒方政府委員 今のお尋ねの、人格が高潔ということはこれは言うまでもないことと存じますが、教育、学術、文化に関して識見を有するものということでございまして、少くとも教育委員会委員でございますので教育、学術、文化、すなわち広い意味の教育でございますけれども、教育に関しまして識見を有するものでなければならぬという条件は最低の条件として必要であろうと考えるわけでございます。   〔山崎(始)委員長代理退席、辻原委員長代理着席〕 そのほか今お話がございましたようないろいろな識見の豊かな方々が入ってこられる、任命されることはこれは非常に望ましいことでございますが、しかしながらここに法律規定としましては、まあ教育委員会委員でございますから、教育に関して識見の豊かな人であるということを最低の条件としては取り入れたい、かような気持でこういうふうにいたしたわけでございます。
  138. 高村坂彦

    ○高村委員 お気持はわかるのですが、私はこういうことが入りますと、どうも委員任命される場合に教員の前職者といったような人を主として選ぶような結果になりはしないかということを思うのです。もちろん教員の前職者けっこうでございますが、教育委員会というものの仕事は主として教育行政を担当するものだと思うのです。教育そのものではないと思うのです。従って私は教員の前職者けっこうであるけれども、そういう人だけを選ぶというようなことになってくると、教育行政としては欠くるところがありはしないか、こういうことを心配したものですから申し上げたのです。ところが最近の傾向としてどうも教育というものは教育に関係した者がやるのだ、そういう人の意見が非常に重んじられなければならぬといったようなことが言われているのですが、私は必ずしも教育に関係した者であろうとあるまいと、それに対して非常に関心を持っている者もあり得るわけですから、そういう点偏しないように将来の教育委員の人選についてぜひ考慮してもらわないと困る、こういう意味からこの点をお聞きしたわけなんですが、今お話のごとく教育、学術、文化に識見を持つということはそういった形式で考えるのじゃないのだ、前任者とか前歴者とかいうことでなしにこれはあくまでも実質的に考えていくのだ、こういう意味でございますね。
  139. 緒方信一

    緒方政府委員 お話の通り、教育、学術、文化に関し識見を有するものという規定をいたしましたのはさような意味でございまして、高い識見を持った人を迎えたい、こういう趣旨でございます。必ずしも経験者とか教育に関する職務に経験を持った者、こういうふうには書いてないわけでございまして、たとえば財政の専門家でありましても、教育に非常に高い識見を持った人もあるかもしれません。さような人が入ってこられることはもちろん望ましいと考える次第でございます。
  140. 高村坂彦

    ○高村委員 これは条文はたくさんにわたっておるようですから、、条文を特にあげてはお尋ねいたしませんが、教育に関する都道府県なり市町村の条例の制定でございますが、これは長がやることになっておるわけでございますか。
  141. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいまのお尋ねは、法令に出ておる条例の制定ということだろうと思いますが、これは一般の公共団体の条例の制定でございまして、これは長が原案を議会に提出いたしまして議会の議決を経てその団体の条例としてきめるわけでございます。
  142. 高村坂彦

    ○高村委員 その場合に予算の方ですとこれははっきりいたしておるので、教育関係予算の編成に当りましては下準備等は教育委員会でやることになるわけですね。そういった条例は、ものにもよるかもしれませんが、大体そういった条例の起案と申しますか、そういったものは教育委員会でやる、あるいはそうでないとすれば教育委員会の意見を徴するとか、そういう点はどういうふうになるわけですか。
  143. 緒方信一

    緒方政府委員 これは二十九条の規定がございまして、予算の場合も同様でございますけれども、団体の長が「議会の議決を経るべき事件の議案を作成する場合においては、教育委員会の意見をきかなければならない。」こういうことになっておりますので、条例の原案につきましても十分教育委員会の意見を聞いて、長が作りましてこれを議会に出す、かような順序になります。
  144. 高村坂彦

    ○高村委員 二十九条は「特に教育に関する事務について定める議会の議決を経るべき事件の議案」を作る場合については、こういうことですね。これは私の勉強足らずでございまして何でございましたが、わかりました。  それから先ほどの辻原氏の方からいろいろ御質問になりました条文に関係することですが、三十三条の第二項の問題で、これは並木委員からもお尋ねがあったわけですが、第二項の「届け出させ、又は教育委員会承認を受けさせることとする定を設けるものとする。」ということがございますが、これはやはり定めを設けることができるとすると、非常な支障が起きるものでございましょうか。その点を文部省の意見を承わりたいと思います。
  145. 緒方信一

    緒方政府委員 第二項の規定趣旨は、第一項の教育委員会規則を定める場合に届け出させ、または承認を受けさせることとする定めは作らなければならぬということに相なります。全然作らぬということはあり得ないわけでございます。これはいろいろと御議論もございましたけれども、教材を使います上におきまして、どういう教材を選んでどういうふうに使っていくかということにつきましてはやはり学校を運営管理する教育委員会責任でございますので、教育委員会が必要と認めるものにつきましてはそういう定めをすることが必要であると考えるのであります。こういう定めを設ける、その他設けなければならぬ、こういう規定を作ったわけでございます。これは何もその教材の規制をしようというだけから考えられたわけではないのでありまして、これはいろいろと教育委員会が教材の積極的な指導あるいはいろいろな方針を立てていく上におきましても必要であろうと存ずるわけでございます。
  146. 高村坂彦

    ○高村委員 その点は届け出させ、または教育委員会承認を受けさせることについて設けをさす、こういうことなんです。しかもけさほど来の御答弁を伺っておりますと、その必要と考え範囲できめればいいのだ、こういうことになりますと、理屈からいえば必要をあまり考えない委員会ができるわけですね。そういう場合に、たとえば文部省の方ではいろいろお考えがあるかもしれませんが、委員会としては夏休み帳なら夏休み帳だけを届けさせる、こういうことをかりに規定してもこの法律の違反とはいえないことになるのじゃないでしょうか、その点はどうですか。
  147. 緒方信一

    緒方政府委員 この規定はそういう「定を設けるものとする。」ということでございますから、たとえばかりに今のような判断を教育委員会がいたしまして、夏休み帳だけについて承認を受けるなら受けるという規定を作りましても、この規定の要求を充足していると思います。それで差しつかえないことだと思います。
  148. 高村坂彦

    ○高村委員 そこまで詰まって参りますと、結局これを義務づけなくても義務づけても同じことになりはしないか。一つくらいのものをやっても委員会としてはいいのだということになりますと、これだけの規定を義務づけなくても、できるとしておいても、教育委員会としては相当やるのじゃないかというふうにも考えられるのですが、この点はどうでございますか。
  149. 緒方信一

    緒方政府委員 その点は、私どもといたしましては、この定めを設けることができるではやはり足りないと考えております。少くともそういう規定を設けなければならぬ。ただいまおあげになりました事例は、そういう判断をする教育委員会があるかもしれませんが、やはりこのくらいのものは届けさせる、このくらいのものは承認させる、大事なものについてはさような規定教育委員会の判断におきまして作るものであろうと期待をいたしております。しかし理屈といたしましては今のような理論が成り立ちます。
  150. 加藤精三

    ○加藤(精)委員 お尋ねする点を申し上げまして、御回答はこの次にしていただきます。  第一番目は本法の二十三条と十七条と四条とに関連することであります。それから整理法律の第一条についてであります。その要旨は簡単なことなんですが、私たちの考えでは、教育委員会法というものは、父兄の声、しろうとの健全なる常識というものを学校教育の上に反映させるということが一つ。それから教育及び教育行政について学識経験を有する専門家がそれに助言をする。そうして執行は大部分その人が当るというような考え一つ。そうしてそのレーマン・コントロールとテクニカル・エキスパートとの間に一つの調和ができる。そうしてそれによって非常にいい教育執行機関を作っていくということに考えておったのでありますけれども、昨日の公聴会等でもいろいろ各学者の発言等において、その点についての考えがなかなかはっきりしなくなったのであります。それでまじめにそれを疑問にしているわけでございますので、教育委員会という一つの合議体が取り扱う事項の専門的知識の必要の有無ということが考えられるわけですけれども、その点は教育長の専門的な知識技能の必要性、並びに教育委員そのものの教育及び教育行政に関する専門的な知識の必要性、この三者の関係についての政府の御意見を一つ示していただきたい。  それからそれに関連するものといたしまして、整理法律の第一条に町村の助役が教育長を兼任するということがありますけれども、その問題をもそれに関連して説明していただきたいのでございます。  それから第二段目には、本法の五十二条の問題でございます。この五十二条は文部大臣の教育そのものに対しての責任の明確化と申しますか、文部大臣権限に関する問題でございますが、この問題に対して質問を申し上げる私の意図裏面には、現在の教育法令全般に対する一つの疑問があるのです。と申しますのは、六・三制教育という概念で、学校教育法というもの一つでもって現在はわが国における各教育施設の教育活動を規制しておるわけでありますけれども、それには若干無理があるのじゃないかというのが根本の疑問なんです。地方団体の府県、市町村、五大市、それぞれみな一緒くたにして地方自治法というもので規定しておるのと同じように、実情に合わないのじゃないかという疑いがある。私の見解によれば、義務教育こそ国家問題中の最も重要問題じゃないか、たとえば最高の学術、科学等の問題は、これはある場合は国境を離れて探求されるべきものであって、超国家的な一つの世界である場合があると思う。ところが義務教育ということになりますと、そうしたものではなしに、国家は国民を最後まで生存させていかなければならぬし、また国民としての最小限度の精神的な雰囲気を作るということが、その本人の生活のためにもまた国家の存立のためにも必要なのじゃないか、そういうようなことを考えますと、それに対しては国家の政治を代表する文部大臣は相当な責任を持っておるのじゃないかと考えるのでございます。教科課程の定めのある学校につきましては、特に私立学校であってもこれは例外ではないように思うのでありまして、そういう意味でたとえば大学の学長や教授が教育の自由を守れという一つの命題と、義務教育についての国家の政治との関連性というものは全く違ったものじゃないかというふうな感じがいたします。そういうことから見まして、この教育委員会法は公立の大学等をも規律する法律でございます。教育二法律案につきましては特に義務教育に限った経緯もございますし、そういう文部大臣責任の徹底という新しい御政策について、一つの学校の教育別のニュアンスの差があるかどうかということについてお尋ねしてみたいと思ったのであります。  それから同時に、教育委員会法そのものが、私立学校について、ことに義務教育に関する限り何らタッチしていないわけでありますが、その点につきましても、私立学校は教科課程を定めない学校から出発したもので、その惰性で今日も市町村の首長の一種の監督のもとにある。これは適切なものでないので、今回の改正が済んだら新しい教育行政上の問題として出てくるのじゃないかと思っておりますので、そういう問題もあわせて御説明いただきたい。  時間が超過いたしましたが、よく御調査、御研究になって、この次の委員会一つ政府の御見解を承わらせていただきたいと思います。
  151. 辻原弘市

    辻原委員長代理 ただいまの加藤精三君の質疑に対する答弁は次会に行うことといたしまして、本日はこの程度とし、次会は明十一日午前十時より開会いたします。  これにて散会いたします。    午後五時三十二分散会