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1956-04-04 第24回国会 衆議院 文教委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月四日(水曜日)    午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 佐藤觀次郎君    理事 赤城 宗徳君 理事 加藤 精三君    理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君    理事 米田 吉盛君 理事 辻原 弘市君       伊東 岩男君    久野 忠治君       杉浦 武雄君    田中 久雄君       塚原 俊郎君    並木 芳雄君       町村 金五君    山口 好一君       河野  正君    木下  哲君       小牧 次生君    高津 正道君       野原  覺君    平田 ヒデ君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 清瀬 一郎君  出席政府委員         文部政務次官  竹尾  弌君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君         文部事務官         (管理局長)  小林 行雄君  委員外出席者         文部事務官         (大臣官房総務         参事官)    斎藤  正君         参  考  人         (日本学校給食         会常務理事)  大野こう毅君         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 四月四日  委員植木庚子郎君辞任につき、その補欠として  町村金五君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月三日  教育職員免許法施行法の一部改正に関する請願  (池田清志紹介)(第一七三〇号)  同(眞崎勝次紹介)(第一七三一号)  教育委員会制度改正に関する請願外十二件(二  階堂進紹介)(第一七九八号)  青年学級運営費国庫補助に関する請願石坂繁  君紹介)(第一八一四号)  追浜地内官修墳墓の祭し及び管理の復活に関す  る請願山本正一紹介)(第一八一五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方教育行政組織及び運営に関する法律案(  内閣提出第一〇五号)  地方教育行政組織及び運営に関する法律の施  行に伴う関係法律整理に関する法律案内閣  提出第一〇六号)  学校給食に関する件  参考人より意見聴取の件     —————————————
  2. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 これより会議を開きます。  地方教育行政組織及び運営に関する法律案並びに地方教育行政組織及び運営に関する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案一括議題とし、審査を進めます。  前会に引き続き質疑を続行いたします。小牧次生君。
  3. 小牧次生

    小牧委員 昨日に引き続きまして、清瀬文部大臣にさらに御質問いたしたいと思います。  きのうは、私は新しくできようとする教育委員会は、その財政権行政首長に握られ、また行政首長任命権を握る、こういうことから新しい教育委員会に対しまして、行政首長は非常に強力な優位性を持って、教育委員会は非常に弱体化する、現在でさえも原案送付権を持っておっても、府県議会体験もあわせて申し上げましたが、非常に弱い。これでは教育自主性あるいは独立性ということはなかなか困難である、こういうところに、さらに今申し上げたように財政権あるいは任命権行政首長が握って、なるほど教育委員会に対して意見を聞くことは規定してあるようでございますが、意見が合わない場合はやはり行政首長権限によって決定されていく、場合によっては教育委員会意思は無視されていく、こういう点をあげて、教育委員会は弱体化されたものになるということを申し上げて、御答弁をいただかなかったのでございますが、これに対する大臣のお考えを承わりたいと思います。
  4. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今回の案におきましても、教育委員会教育に関しては決して町村長下部機関ではないのであります。教育委員会法案第二十三条の権限を持ち、町村長は第二十四条の権限を持ち、相並んで教育、わけても義務教育の運行をなめらかにし、完璧にしようという考えであります。どっちか一方に権限を与えて、学校のことを一般行政とぴしっと二つにわけてしまうことがいいか悪いかはだいぶ疑問がございます。きのうも申しました通り町村長でもあるいは町村会議員でも、みな自分子供、村の青年ため教育はよかれかしと考えておるのであります。また教育委員会の方々も町村が貧乏になればいいと考えておる人は一人もないのであります。立場は違いますけれども、みな教育を大切にしようと考えておる人でありますし、わけてもわが国は伝統的に学問を重んずる国でありますから、この二つ組織が組み合って、相連携して教育を進歩させるという組織の方がわれわれはいいと考えたのが、この案を出したゆえんであります。
  5. 小牧次生

    小牧委員 ただいま新しくできる教育委員会行政首長下部機関ではない、また教育に関するいろいろな問題を行政執行部、また教育機関、この二つにはっきり分けることはどうか、こういうような意見を述べられて、今のような法案内容の方がよろしい、大体こういう御意見であったろうと考えますが、なるほど行政首長教育委員会教育に関する仕事を截然と区別するということについては、これはいろいろ御意見もあろうかと考えます。しかしこれは程度の問題でございまして、終戦後わが国がとりました文教政策は、一般行政から教育を分離して、そうして教育が不当な支配に服しないようにその中立性、その独立性、その自主性を確保しながら教育民主化を推進しなければならぬ、これは戦前のわが国体験から見て大きく変って参った点であります。その線に沿って現在の教育委員会法ができて、しかもこれを実現するために第一の条件として教育委員そのもの公選制、こういう手段がとられたと私は考えるのであります。ところが今回の法案内容を見ますと、明らかに行政首長従属機関であり、諮問機関であり、独立性を失った内容になっておる。現在御承知通り教育の問題ではいろいろしなければならない問題が多いのであります。そうなりますとやはりそれには予算が必要であるし、またいろいろな経費が必要でございます。しかしながら現在は地方公共団体財政が窮迫いたしておる。そういうような面から知事なりあるいは市町村長はいろいろ教育委員会の要求する予算に対しましてこれを聞き入れないし、あるいはまた削減しようとする。こういう点からやはり何と申しましても教育委員会の力というものは今でさえも非常に弱い。昨年の十二月二十二日の読売新聞にはこういうことを書いてあります。一萬田蔵相太田自治庁長官は「来年度の地方財政対策につき協議した。その結果一、市町村教委廃止など地方行政制度改革を行う」今回の法案には実現はいたしておりませんが、地方財政改革には一萬田大蔵大臣太田自治庁長官意見の一致を見たという内容の発表がございました。こういうふうに政府においてもまた行政首長でも、やはり財政上の立場からいろいろな圧力を加えておる。これから見るとやはり現在の法案内容では下部機構に転落いたしておる、かように考えますが、もう一度御意見を伺いたいと思います。
  6. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 この案を決定するまでには、党内においても、また世間の世論としても、町村における委員会すなわち地方教育委員会は、この際廃したがよかろうという有力な議論のあったことは、小牧さん御指摘通り事実でございます。しかしながら各方面から検討いたしました結果、やはり教育委員会は存置するがいい、しかも独立の権能を有する方がいい、またこれを町村執行機関と並んで一つ執行機関とする方がいい、ということまでに研究の結果ものが進んだのでございます。地方自治法の百八十条の四、すなわち執行機関として教育委員会を置くということは、そのままにいたすことにいたしました。ただ従前の委員会と違いまするのは、選定の方法を違えただけでございまして、これは独立執行機関で、下部機構じゃございません。先日以来たびたび説明いたしまする通り予算の二本建て制度は廃しましたけれども予算条例を作る際には、あらかじめ長と協議をすることでありますから、その方がしっくりといって、摩擦を防いでいい結果を生ずるだろう、こういう考えでございます。
  7. 小牧次生

    小牧委員 それでは質問整理いたしまして、しぼってお伺いいたしたいと思います。昨日もちょっと申し上げましたが、今回の新しい法案は、明らかに中央集権化を来たすものであり、教育国家統制である、こういう立場から申し上げたことに対しまして、決してそうではない、こういうような御答弁でございましたが、私ども中央集権化を招来するものであり、教育国家統制に進むものであるという根拠は、まず第一は、公選制を廃して任命制に切りかえたこと。第二は、今いろいろ御質問いたしましたような原案送付権条例権が剥奪されておること。第三点は、都道府県教育長文部大臣承認を必要とする。これは大きな変化であります。なぜ都道府県教育委員会任命でいけないのか。第四点は、文部大臣指導助言援助を与えることができる。これは第一項から第十一項まで法案内容を見ますと、非常に広範な、あらゆる面にわたる大臣指導助言援助内容が規定されております。これによって、中央の強力なる一連の指導権というものが確立されることは疑いのないところでございます。さらにまた第五点は、市町村教育長都道府県教育委員会承認が必要である。ここまで来ますと、中央から末端の市町村まで、はっきりした一本の筋を貫いて、都道府県教育長市町村教育長、こういう線を貫いて教育長自体が完全に中央権力ひもつきとなって、実際は教育長が新しい教育委員会の実権を掌握する、これは必然であろうと考えるのでございます。  以上第一から第五まで申し上げましたが、まだそのほか法案内容を見ますと、いろいろございますけれども、おもなる点は大体以上であろうかと考えます。今申し上げたことこそ中央集権の強化である、新しい教育委員会文部省出先機関にほかならない、そうしてまた昔の教育行政に逆戻りをする、こういうことを申し上げておるわけでございますが、それでもなおかつ大臣中央集権化ではない、官僚統制ではないとおっしゃるならば、今あげました大よそ五つの問題について大臣の御見解を承わりたいと思います。
  8. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 昨日以来、この案は必ずしも中央集権ではないということを申し上げました。権力をもって日本教育官僚が左右するという意味の中央集権じゃございません。今御指摘の第一の、直接公選をやめて、直接ではないが、公選をもって任命された町村長が、同じく公選をもって任命された町村会同意を得て選任するということは、官僚統制じゃございませんです。これがため中央集権官僚統制ということはないと思います。間接ではありまするが、やはり国民意思に基いて選任されておるのであります。しこうしてこのようにする方が、教育中立性を保つという上においてよかろうと考えたことは、過日以来申し上げた通りでございます。  原案送付、これも教育委員会だけが原案を作って、町村長とあわせて別に提案権を持つということは、過去数年の間の経験においても、相当の弊害を見出しておるのであります。そうするよりも、予算条例ができるまでの間に、親しく相談をして出すということは、私は決して中央統制ではないと思っております。すなわち官僚主義でもなし、地方分権を妨げるものでもないのでありまして、町村長教育委員との間に相談をする、その相談にどんな官吏も公吏も介入するのじゃございませんです。  それからして教育長を御決定になる際に、県の教育長に対しては文部大臣が、町村単位教育長に対しては県の教育委員会承認をいたす。といいましても、何も中央からだれそれを教育長になすべしという指令などするのじゃございませんが、どういう人が一体教育長におなりになるかということを見て承認を与えるのであります。今日大学管理者であります学長でも、やはり私ども承認を申し上げておるのです。それでも大学自治は決して侵害されておりません。これがために今回の案が中央集権というわけにも参らぬと思います。  指導助言は今の法律でもあることで、いやしくも国を作って国家責任として国民教育をするという場合に、別々ではいけませんから、いずれ教育のことで悪いことはございますまいけれども日本教育水準を維持するために、政府というものがある以上は、指導を申し上げたり、助言を申し上げたり、援助すること、これが悪いはずはないのです。悪ければ国の一番大きな援助補助金を差し上げることもいけないということになりまするが、中央から援助をするということが地方分権を妨げたり、あるいはまた官僚統制であると直ちに考える必要もないかと思います。これらのことはどこの国でもいろいろ経験のあることでありまして、まるきり地方ばかりに放任して、中央は手をこまぬいて見ておるといったような極端な法制は、私はないのじゃないかと思っております。アメリカはあの通りアメリカ中央政府連邦組織ですから、例をアメリカにとれば、州の単位で見なければなりませんが、州の最高の教育機関がそのうちのカウンティとかコミッティの教育にまるきりほうってしもうておるということは、私はないように見ておるのです。イギリスもその通りでありまして、中央教育責任者はやはり地方教育について、向うは監督、スーパー・インテンドといっておりますが、わが国監督はいたしません。指導助言するのでありますから、これを非常に排撃されるには及ばぬ、かように私は率直に思うておるのでございます。
  9. 小牧次生

    小牧委員 教育委員会制度をどうするかということについて、なるほどいろいろ外国の実績経験、こういったものを参考にしなければならないことはもとより当然であります。しかしまたわが国におきましては、またわが国の今日までの教育委員会が設置されてからの経過、またその実績、こういったものを中心にどういう制度がよろしいかということを検討しなければならないと考えますが、昨日も申し上げました通り県教育委員会は生まれて七年、市町村教育委員会は約三年、まだ十分その実績を批判するところまで至っておりません。まだまだ慎重に今後の実績なり動きを見て、そうしてきめていかなければならない。任命制がいいのかあるいは公選制がいいのか、原案送付権を与えた方がいいか奪った方がいいか、こういう点も今申し上げたような観点から慎重に検討されなければならないと考えますが、今第一の任命制の問題であります。これも今日までいろいろ論議がなされておりまして、わが国の敗戦以来の民主化段階におきまして、ようやく教育というものに国民が大きな関心を持ち、そうして自分たちの手によって教育民主化をはかり、これを発展さしていこうという熱意に燃えてきつつある現段階において、この公選制廃止する、そうして任命制に切りかえるということは、今申し上げたような伸びようとする芽をつまんでしまう結果になると考えるわけでございます。大臣間接選挙であるからやはりその本質において変りはない、こういう御意見を述べられましたけれども、私の体験をもっていたしますならば、教育委員議会同意を得て行政首長任命する場合に、今まではございませんでしたが、あるいは監査委員あるいは公安委員、こういった者を同じような方法で選ぶ場合に、一体どういう措置がとられるかということであります。大体候補者というものを行政首長の方から定員以上の数をあげて議会にこれを内密に提示いたしております。同意を与える方が出さないで、やはり任命する方がこういうような措置をとるというのは、これは避けることのできない現象であろうと考えております。従ってその候補者の範囲というものは非常に狭められてくる。そしてだれをきめるかという場合に、いろいろ行政首長議会の方とに折衝が行われます。最後はやはり行政首長の方から提示した候補者の中にこれが限局されていく。これはおそらく全国の各都道府県市町村において共通の現象であろうと私は信じております。そうなりますと、なるほど間接選挙であるとは言うけれども最後の実質的な決定権というものは、やはり任命権者である行政首長が掌握いたしておる。知事市町村長のきらいなあるいはめがねにかなわないような人は、とうてい候補者名前の中に上ってこない。これはもう初めからわかりきった問題であります。ところが公選制になりますと、御承知のように住民の直接選挙であり、自由な立候補制をとっておりまするから、住民自分の自由な意思をもってこれを選挙していく、行政首長がこれに何ら制約を加え干渉を加えることはできない。非常に大きな違いがあると私は考えておりまして、今まで公選制をもってやってきたものを、任命制に切りかえるということは、今申し上げたように非常に大きな変革である、かように考えるわけであります。また原案送付権の問題やあるいは条例権の問題、こういう点について今まで全国的にいろいろ問題があった。行政首長との間にいろいろ問題があった。これは確かに摩擦があり、問題もあったことは事実でございます。これはわが国に初めて新しい制度ができたのでございますから、いろいろ問題が起るのは当然であります。時には赤札をつけて教育委員会の方が議会にこれを提示するという例もあったと聞いております。しかしこれは決してたくさんの例ではございません。私どもの拝見したところでは非常に少いのであります。大体は行政首長との間に話し合いがついて、そして原案を県議会なり市町村議会に提案する、こういうのが今日までの実情でございます。なるほど今度の法案によって行政首長教育委員会意見を聞き、相談をする、こういうようなことだから大して変りはないとおっしゃるかもしれませんけれども、これは従来の学務部あるいは学務課というものがあって、知事市町村長の下僚であっても、やはり自分の部下の意見を聞いて、そして知事自分意思決定していったということでございます。そうなりますとただ単に相談をするということは昔と何ら変りはない。何といっても教育委員会が自主的に原案を作って、これを提案するということの最終的な権限は奪われておる。こういうようなことを考えますときに、私は今回の法案による教育委員会というものは、なるほど名前だけは教育委員会というものを与えておられるようでございまするが、これはもう実質は全然あってなきがごときであって、昔の学務部あるいは学務課、こういった文部省出先機関のようなものと何ら変りはない。おそらくこの調子で参りますと、早晩教育委員会廃止される運命にあるのではないか。大臣は絶対に教育委員会廃止しないと断言できるかどうか、もう一度お伺いいたします。
  10. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 教育委員会廃止の念慮は毛頭持っておりません。こういう形において運営すれば、りっぱに世間の信用を博し得ると思っております。
  11. 河野正

    河野(正)委員 関連して……。いろいろ今日まで芽ばえて参りました教育委員会の芽ばえに対して、ただいま小牧委員指摘しましたように、ごっそりと芽ばえてきた芽をつみ取られる。その中で私は関連いたしまして、原案送付権の問題について大臣御所感を承わりたいと思うのでございます。今日までの制度におきまして、前回の委員会におきましても私は指摘いたしましたが、現行法のもとにおきましても、地教委執行部との間におきましていろいろと予算上の対立が生まれて参っております。たとえば福岡県におきましては、今度の県会におきまして対立予算ができた。いろいろ議会が、大臣の仰せられます調和ということで努力いたしましたけれども執行部ががんとして聞き入れない、そういったことでついに三月三十一日で幕切れになりまして、予算が全部流れてしまいました。これは非常に重大な次第だと思うのでございまするが、今日のような現行法のもとで原案送付権が認められておる事態のもとで、このような問題が起ってくるわけでございます。ところが今度の改正法案では原案送付権がなくなってしまう。そういたしますと、これは私は寡聞にいたしまして多くをよく知りませんが、今日のような原案送付権を認められておるような事態におきましても、三十一年度予算が全部流れてしまうというふうな事態が生まれておるのでございまするが、こういった事態の中で原案送付権を剥奪されるということになりますると、どういう事態が生まれてくるだろうかというようなことで、私どもいろいろ問題がございますけれども、ただいまの原案送付権の問題について私ども具体的に起って参りました事実をもって非常に憂慮いたしますので、こういった現実の事実が生まれておるが、こういった事実に基いて大臣はどういうふうなお考えでおられるか、また事務当局から大体予算県会地方議会というものはほとんど終ったころでございますから、全国的な実情を見て、今度の教育予算の問題がどういう実情であったか、その辺の事情を御説明願いたいと思います。
  12. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 そのことの根本は、きのう高津君の御質問のときに答えましたが、私はどうかやはり調和をはかりたいと思っておるのです。というのは、これは人間本性で、初めから町村長原案とそれから教育委員会原案と、原案と名のつくものを何か出して結局は調和をはからねばならぬです。二つ原案を出して調和をはかるということは、これは非常にむずかしいことなんです。調和をはからなければならぬ。出すまでの間に——まだ子供が腹から出ない間に、これを調節するということは比較的容易なことなんです。そこで今回の案は第二十九条をごらん下さいますと、議会に出すまでの間に調整調和をはかる、そうして出せば福岡県のようなああいう極端な例はなくなっていくじゃないか、こういうふうに考えておるのであります。これは人間本性に影響するものであります。われわれも言葉を言うてしまうと、それに拘泥して相当口げんかになるのです。腹のうちにある時分に、君どうじゃと言うて一つの話をすることもできるのです。これが実に微妙な人間本性でございます。
  13. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいま三十一年度の教育予算の各地方におきまする審議状況についての御質問でございますが、私どもとしましても、まだ全国的な統計的な資料は十分集まっておりません。ただ概観をいたしまして地方行政全般につきまして非常に困難な事態がございますので、これは教育費といわず全般につきまして、各地方団体で非常な苦心があることは十分うかがわれると思います。特に一番教育問題で問題になりますのは、児童生徒の増に対しまして教員の増をいかように見ていくか、この問題が一番苦心中心のように存じております。御承知のように国の予算としましては、学級増に対しまして一学級当り一名の予算をとって地方には示してあるのでございまして、大体私の通観いたしましたところは、その程度の増員はできるものではないか、かように考えております。これはもちろん、最初申しましたように教育人件費のみならず、一般地方団体職員人件費につきましても地方で今非常に苦心がありまして、そのため予算の編成が困難であることは私も認めます。しかし特に教育の問題にのみ困難がある、こういうふうには見てはおらぬのであります。
  14. 河野正

    河野(正)委員 大臣はヒューマニストでございますから御理解願えると思いますが、流産という言葉、これは人道的に申し上げますなら邪道でございまして、本来から申し上げますならば間違いでございますが、産児制限ということではなくて、計画産児ということでなければならぬのです。それでただいまいろいろ御説明もございましたが、そういったような観点から見て参りますと、教育委員会対立予算を出すということは、これはむしろ望ましい現象ではないわけでございます。執行部案ができます以前において、いろいろ教育委員会意見も尊重して、そして執行部案でまとめるというのが、これが要するに先ほど申し上げた計画産児でございます。流産じゃなくて計画産児でございます。そういうことでございますけれども、どうしてもおやじが言うことを聞かぬで作るというようなことで作るもんですから、あとで問題が起ってくるわけです。願わくは対立予算では出さないということが望ましいわけでございますけれども、どうしてもおやじが聞いてくれぬということで対立予算が出てくる。まあ流産という形が生まれてくるわけでございます。そういうことでございますから、私どもが一番心配いたしますのは、今日のように教育委員会が、要するに原案送付権を持っておるという事態におきましても、そういった無理な事態が起って参りますから、原案送付権が剥奪されますと、さらに一そうそういった深刻な事態と申しますか、露骨な事態が生まれてきはしないか。その一つのテスト・ケースとして福岡県が——福岡県はたしか富裕県でございますが、この福岡県におきましてこういった事態が生まれ、結局教育委員長は辞表を提出した。副委員長も辞表を提出するというようなことでございますから、おそらく福岡県におきましては、私実情はわかりませんが、福岡県においてはちょうど新年度でございますし、非常な混乱が生まれてくるのではないかと思います。たとえば異動等もございますけれども、そういった異動も、今日の実情では困難だ。また今後、予算が流れておりますから、ある部分におきましては知事の専決処分というようなことになるでございましょうけれども、しかし私は運営の面におきましては専決処分だけではなかなかいかない面が起ってくるだろうと思います。そういたしますと、臨時県議会地方議会を開いてということになりましょうけれども、その間におきましてはかなりの空白状態も出て参ります。こういったことは大臣は話し合いだから——なるほど話し合いがうまくいけば問題ないと思うのでございますけれども、今日のような現行法の時代におきましても話し合いがなかなかうまくいかない。しかも福岡県では、一例ではございますけれども、今日教育委員長は辞退をし、副委員長も辞退する。しかも教員の異動もできない。一部におきましては専決処分をやりましても、大部分は専決処分でいかない部分もございましょうし、教育運営というものが非常に阻害されるのではないか。ところが福岡県の実情を見て参りますと、これは教育予算が流れましたために——単に教育だけではございません。すべての福岡県の行政運営の上に、非常な大きな事態を起したという現実の事実が生まれておるわけでございますので、私は単にこれは教育だけの問題として考えて参るわけには参らぬのでございます。こういった実情でございますから、私は現実に起ってきた実情をもって大臣にお尋ね申し上げたのでございます。大臣大臣なりに考えがあると思いますけれども、現実はこういった現実が起って参っておるのでございます。単に教育だけの問題でなくて、今申し上げましたように、福岡県すべての行政に非常に重大な事態を生じておるというようなことでございますし、事務当局からは、全国的な状況についてはまだ統計的な資料がないというので御答弁なかったと思いますけれども福岡県は最近赤字ということで、いろいろ自治庁あたりでも論議しておりますけれども、全国的に見ますならば、最近赤字になったというような実情で、必ずしも私は財政状態は悪いというふうには考えておりません。ところが今日では、地方財政再建整備法の指定を受けようというような府県がたくさん出て参っておりますが、そういった実情のもとでは、私は全国的には福岡県以上の問題がたくさんあるのではないかと思います。ただ問題の福岡県の場合は、いろいろな特殊性がございまして、露骨にそういった現象が現われて参りましたけれども、他の地方におきましては、教育委員会が泣き寝入りする。要するに執行部の圧力で泣き寝入りをするというようなことで、福岡県のような露骨な事態が生まれなかったにすぎぬのではないかというようなことを私ども強く感じて参るわけでございます。これは私、福岡県の実情に詳しいので、福岡県の実情を一言取り上げて申し上げたわけでございますけれども、しかしながら、どうも私どもが観察いたしますところによりますと、他の府県におきましても、福岡県以上のものがあるのではなかろうか。ただ、それが具体的の事実となって、現象となって現われてこない。先ほど申し上げますように、泣き寝入りするというようなことで、現象となって現われてこないから目立たないだけでございますけれども、実質上は福岡県以上のものがあるのではなかろうかというふうな印象を強くするわけでございます。あらためてでございますけれども一つ大臣のもう一度の御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  15. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 福岡県のような現象は、やはり二本建予算を認めたからそうなるんでしょう。現行法通りであったら、ああいうふうな、にっちもさっちも動かぬことができる。しかしそれゆえに私はこれをやめて、予算を出す前に、また弾力性のある、十分に委員会と県とが相談をして——それには忍耐も要りましょうし、寛容の態度も要りますけれども、やはり出すまでに一本にして出してしまえば、勝つか負けるか二つ一つでしょう。出すまでにやれば、その中間的な裁定で一本の予算も出せる、こういう私考えなんです。ああいう事件が起ったということは、むしろ現行法が工合が悪いという例であって、私の方の、出すまでに一本にせいという場合の弊害ということじゃないと思うんです。もっとも妥協してやる場合にはどっちも不満でしょう。譲らなくてはならない。教育委員会は県に押されたと言うし、県は教育会が無理を言うと言うでありましょうけれども、ともかく一本にして出しますと、福岡県のようなことは、私の案に御賛成して下さるならば、今後は絶対に起りません。
  16. 河野正

    河野(正)委員 もちろん、大臣の仰せのような理論も成り立つわけです。しかし私どもが一番心配いたしますのは、やはり現在では原案送付権がございますので、どうしても執行部教育委員会の言うことを聞いてくれないということになりますと、最後の手段として、要するに代案を出すという権利が認められますので、その二つ原案を、どちらが正しいかということを議会が批判し、あるいは県民が批判し、あるいは地方住民が批判するという、批判の場合を与えられて参ります。ところが一本になりますと、出て参りますのは一つの形でございますから、どうしてもそのことのみを批判し、審議しなければなりませんし、言葉をかえて申し上げますならば、執行部の独裁が行われる。先ほどちょっと触れましたが、要するに力関係におきましては、泣き寝入りに陥ってしまうというふうな事態も生れてくるというふうな解釈も成り立つわけでございます。それで大臣が仰せられまするような解釈も、なるほど成り立ちます。しかし私が申し上げますような解釈も成り立つわけでございますが、たまたま福岡県におきましては、私のような解釈の事態が起ってきたということでございますから、私は私の意見も成り立つし、大臣意見も成り立つわけでございますから、何も大臣が、自分がそう思うからそうだ、というふうには、必ずしも相なって参るわけには参るまいと考えるのでございます。この点につきましては、幾ら申し上げましても水かけ論でございます。私は私の考え方がございますし、大臣大臣考え方がございます。しかしながら現実の問題といたしましては、私どもが心配いたしておりましたような事実が福岡県に生まれておるということは、これは十分大臣の頭にとどめておかるべきではなかろうかというように考えます。これは現実の事実でございますが、こういった事実は、やはり頭にとどめおかれまして、今後の運営をはかっていただかなければ、これは力関係におきましては、ことごとくが理事者側の独裁に押しつけられて、泣き寝入りしなければならぬ。それがために、非常に教育予算が圧迫されてくる。教育予算が圧迫されますと、大臣日本教育を発展せしめ、日本教育を育成せしめ、日本教育を躍進せしめなければならぬという最高責任者でございますけれども、結果におきましては、教育予算が非常に圧迫される。そのため教育の発展というものが阻害されるという事態が生まれて参りますので、この点は十分大臣も頭にとどめおいてもらいたいというふうに考えるわけでございます。
  17. 小牧次生

    小牧委員 先ほど私は、このような調子で参りますと、早晩教育委員会廃止される運命にある、かように申し上げました。ところが、そういう考えはない、こういうお話でございましたが、この法案ができる経過を、文部政務次官なり、あるいは大臣から従来お伺いいたしておりますと、存続せよという意見もあり、また廃止せよという意見もある。きのうも申し上げましたが、新聞の報ずるところによりますと、その中間策を清瀬さんが取って、ほかの言葉で言えば妥協して、形だけは何とか一つ残そう、こういうことで法案ができた、こういうふうに新聞は報じておりますが、こういうことを考えますと、おそらく今廃止しては、いろいろこれは反対もあり、また世論の非難もあるので、一応このままでいって、近い将来にうまくこれを廃止しよう、こういうことに私は必ずなっていく、こういう立場から申し上げたわけでありますが、もう一度御意見を承わりたいと思います。
  18. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 この案が確定するまでの党内の話などは、公けにしない方がいいと思いまするけれども、お許しを願っていたしますれば、やはり廃止論者もあったことは事実なんです。有力な先輩方も、廃止すべしという論はありましたが、やはりこの新教育としては教育委員会が要るのだということを、また経験者からよくお述べになりまして、多数決できめたんじゃなく、みんな全員一致で、それならば政育委員会を置いて、この形でいこうということは、わが党は一致いたしております。私は常に党意を尊重しておりまするが、私もわれわれの党派も、教育委員会廃止しようという人は、今はなくなってしまっております。廃止されません。ほかの政府がされれば、これは仕方がありませんけれども……。
  19. 小牧次生

    小牧委員 昨日も申し上げましたが、前の文部大臣の松村さんは、今はどうか存じませんが、少くとも大臣としてこの委員会に出ておられて、私どもがいろいろ御質問を申し上げた経験から考えますると、その当時はおそらくこういうような急激な変化を与えるような考えはなかったのではないか、かように考えます。と申しますのは、これもきのう申し上げましたが、この法案内容は、第二十二特別国会に、地方財政再建特別措置法及び自治法の一部改正というものが出まして、いろいろ論議がございました際に、その内容に盛られたるものをほとんどそのままこの法案の中に、少くとも教育委員会に関する限りは取り入れておる。ただあの際に、原案送付権を剥奪するという一点において松村さんはがんばって、これを取ってしまっては教育委員会自主性、その存在価値というものはほとんど失われるということからこれに反対をされて、ようやく前のあの法案から原案送付権を剥奪するということは中止された。こういうようないきさつを考えますときに、明らかに教育委員会権限を奪って、これを弱体化せしめて、そうして行政首長なり、あるいは中央文部省が大部分の権限を掌握しようという意図があったことは、これはもうまぎれもない事実でございます。そういうような経過から考えてみますと、今おっしゃる通り廃止論者もあった。今はないかもしれません。あるかもしれません。また存続論者もあった。またある。だがしかし、だんだん前から今日までの経過をずっとたどって見てみますと、もう一息です、私どもは、都道府県教育委員会は少くとも現状維持をなさるであろう、公選制を堅持し、原案送付権を与えて、そうしてこれを堅持していかれるであろう、かように確信いたしておったのでありましたが、今回の法案は大きく飛躍いたしまして、地教委もろとも、原案送付権も奪い、公選制も切りかえて、一挙に任命制に持っていった。この段階はもう教育委員会廃止、従って従来の学務部、あるいは学務課、これとほとんど何らかわりがない。こういうふうにわれわれは判断をいたしておるわけでございますが、私はこれでは大きな後退である、かように考えます。大臣はしばしば、よりよき教育制度を作りたい、この法案によって必ずそれを実現するから、安心してもらいたいというようなことをたびたび申されたように記憶いたしておりますが、とうていわれわれはこのような大きな後退を目の前に見て、安心するわけには参りません。大臣の政治家としての信念は、もとより私も了解するにやぶさかでございませんが、このような点を安心してもらいたいと言われるに至りましては、これはまさしく信念の過剰以外の何物でもない。新聞にも、ときどき清瀬文部大臣の信念過剰という言葉がちらほら出ておるようでございます。政治家の信念はけっこうでございますけれども、また声なき声を聞き、真実の声に耳を傾けるという余裕もこれはなければなりません。大臣はこういう点を考え直してみる余裕がないのかどうか、もう一度お伺いいたします。
  20. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今回の案は、町村長及び町村会町村議会という一般の行政組織とは別に、教育委員会なる執行機関を設けて、一般の行政と相並んで独立学校に関する、また教育に関する事柄を審議せしめるということで、今までの組織とは本質においてちっとも変りはございません。変ったのは先刻あなたが御指摘の選任方法が変っております。それから原案送付権が変っておりまするけれども、選任のことは、この案でやる方が中立を保ち得るのであります。原案送付のことは、先刻も河野さんからお話があったようなむずかしい問題を巻き起すのであります。それゆえに中立性調和性という考えで本案を出しましたもので、今これを引っ込める考えはございません。よく新たな芽をつむとおっしゃるけれども、進歩をしようと思えば、実験の結果、弊害のあるところはやはり除いていかなければならぬ。植物を育てるのでも、植木屋はやっぱりはさみを入れておるんです。一ぺんきめたからといって、それで百年もいかなければならぬということは、進歩主義者の考えるところじゃないと私は思います。
  21. 小牧次生

    小牧委員 なるほど法律は一ぺんきめたならば、これを変えてはいけないということは、私は決して申し上げません。悪いところがあれば、これは大いに改正していかなければならない。しかしながら、なるほど現在の教育委員会制度には、いろいろ批判もあり、また欠点もあるでありましょう。しかしたびたび申し上げる通り、まだできてからそう長くたっておらないので、当然欠点が伴うわけでありまするが、これはまだまだ相当期間をかけて慎重に調べてから、はさみを入れるなら入れる、こういう態度でなければならないと考えますが、元来、この問題についていろいろ意見を述べ、あるいは廃止してもらいたい、あるいは任命制にしてもらいたいというような声が強く出ておるのは、これは文部当局はもちろんであるかもわかりませんが、主として地方公共団体行政首長——知事なり、あるいは市長村長、そういうような人々に限られておるのではないか、かように私は推察いたしておるのであります。現在も、この法案を成立さしてもらいたいというような電報がわれわれのところにたびたび来ております。これに賛成で成立さしてもらいたい、こういう意味の電報であるようでございますが、これは行政首長立場として、深くこれを掘り下げて検討してみますと、大きな誤まりであり、考え違いである、私はかように考えております。知事の諸君にいたしましても、前に知事公選制をやめて、そうして知事を官選にしたらどうかという意見が、中央においてもあったことがございます。今でもあるかもしれません。このときに知事の諸君は、一体どういう態度をとりましたか。知事公選をやめて、これを官選に切りかえるということは、これはけしからぬ、非民主的だといって猛烈に反対をいたした。私もよく記憶いたしております。ところが事教育委員会に関しては、選挙をやめて任命制にする、あるいはこれを廃止する、これには大賛成だ、何とか一つ早くこれを実現さしてくれ、これはもう全く自分勝手な言い分でございまして、大へんな誤まりを犯しておると私は考えておるわけでございますが、もう一つ私がこの法案を推進しようとする人々の間違いと申しますか、そういう点を申し上げますと、もしもこの教育委員会公選制がなくなりますと、知事も、あるいは市町村長も大いに喜ぶかもしれません。しかしその次には、必ず彼ら自身の足もとに波が押し寄せてくる。知事官選、そういう方に声がだんだん進んでいかないということは、決して断言はできないと考えております。先般来いろいろ問題になっておりますように、憲法第九十三条「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体住民が、面接これを選挙する。」というこの憲法の精神に違反するのではないかということが、しばしば識者の間にも、また同僚議員の間にも言われておる。これには御承知通り、固定説と移動説があります。鳩山さんや清瀬さんの御意見を承わっておりますと、移動説の方をとっておられるやに推察されるのでございますが、しかし、現在この条文によって公選されておるのは、行政首長や議員のほかには教育委員だけである。ほかには現在該当者はございません。従ってこの憲法の意図しておるところは、明らかに現在ある教育委員公選ということを考えているであろうことは想像にかたくないところである。もしそうでなければ、ただ単にここに空文を掲げたにすぎない、こういうことになりますが、もしこの法案の成立によって、現在ただ一つ該当する教育委員公選ということがなくなるとするならば、これは公選廃止の第一号にほかならない。これは第一番目であります。これは憲法に規定してある公選廃止のナンバー・ワンである。一番目があれば、また二番目が来ないとはだれも断言はできないと考えます。こういうようないろいろな点を考えてみますときに、現在行政首長その他が、教育委員会廃止あるいは公選制任命制に切りかえ、原案送付権を剥奪するということに賛成し、推進しようとしておるこの態度は、深く考えるならば、彼らみずからの墓穴を掘るもの以外の何ものでもない。こういうことを考えるときに、ただ単に行政首長あたりがあなたのところに来て、廃止してもらいたい、任命制にしてもらいたいというようなことをそのまま聞かれて、こういうような案ができたかどうか、それはわかりませんが、それは断言はできませんけれども、少くともある程度はこういうような人々の力というものが、あなたに影響を与えたということは、私は否定し得ないのではないか、かように考えますが、大臣は、この私の考えについてどのようにお考えになりますか、お伺いいたします。
  22. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 問題は、直接公選可なりや、または公選された者の選定可なりやという抽象的の二つの問題を、法理的にとか、哲学的にとかいう問題じゃないのでございます。単純に、公選がいいか、任命制がいいか、そんな命題でものを論ずべきじゃなくして、いかなる場合に、いかなる事物にはどっちがいいかということなんです。教育委員会の特色は、ほかの場合と二つ違ったことがあるのです。一つ公共団体のうちの執行機関として、町村長系統のものと相並んで、もう一つ執行機関だ、こういうことがある。もう一つは、教育は中立でなければならぬ。この二つの要求があります。この場合に、直接公選がいいか、あるいは議会同意を得たる任命がいいか、こういうことに立ち入って判断をしなければなりません。ここに長い間教育に従事された大学者が、公選がいいか、あるいはまた任命が悪いかといったようなことを、単純に言われても、それはことに利益はありません。英語でいってイレリヴァントな……。(笑声)英語を使っては悪いのですが、無関係な、ことに適切ならざる議論と私は思っております。
  23. 小牧次生

    小牧委員 前から任命制あるいは公選制の可否についていろいろ論議がございましたので、私はこれを繰り返しませんが、しかし従来のわが国のいろいろな体験から考えまして、住民が直接選挙をして、そうして自由な意思によって選ぶということと、任命ということになりまして、ある権限を持った権力者がその一人の人の意思によってこれをきめるということと、果してどちらが民主的であるか。中心はどちらが民主的であり、また国民民主化を推進することになるかということを私は考えてみなければならないと思いますが、大臣は今回の法案内容の方がよりよく民主化されていく、こういうお考えでございますか。
  24. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 そのお問いにも前に一度答えたと思いますが、民主的というのは、人民によってという考えと、人民のためにという考えとがあるのです。バイ・ザ・ピープルとフォア・ザ・ピープルという考えがあるのです。そこでなるほど直接公選というのは、人民によってということが強く現われておりまするけれども、人民のためにという、中立的な教育行政を運行していい学校を作るという、人民のためにという要素を考えますると、われわれのこの案の方が人民のためになると思います。それがいかなる場合でも間接の指定がいいというのじゃありませんよ、教育問題についてこれだけの限定は一つお許しを願いたいのです。すべての場合に共通じゃありません。一つ公共団体のうちに二つ併存する執行機関であるということ、また中立を要求する教育委員であるということ、これをあわせ考えて、この場合にはわれわれの案の方が民主主義にかなったものである、かように考えております。
  25. 小牧次生

    小牧委員 そもそも教育委員会が新しくできたのは、前の苦い体験から教育を不当な支配に服させないようにしよう。そのためには教育一般行政から切り離して、そうしてその中立性を保たしていく。時の政治権力によって左右されない正しい教育を推進しなければならないということから生まれたものと考えますが、これについて教育委員会法が公布されました際に、文部次官の通達が出ております。二十三年七月十五日の通達でございますが、これには地方住民の直接選挙による委員で構成される教育委員会の意義を述べて、ここに地方行政民主化が達成されるとともに、教育行政一般行政よりの分離による教育自主性の確保が企図されたのであるということを強調いたしております。従ってこの理屈で参りますと、逆に公選によらない教育制度では教育自主性を確保するということはなかなか困難である、あるいはおぼつかないというふうに解釈いたしますが、当時の文部次官通達につきまして、大臣はいかにお考えでございますか。
  26. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 そのときには文部次官はそのように考えられたと思います。これ自身としては異存はないのです。その後教育委員会法を実行した結果というものもわれわれは見なければならない。それからまた教育委員会でなく、一般の日本の国内情勢というものも見なければならぬ。だんだんとわが国は政党政治が発達して参りまして、ついに今日二大政党対立の情勢に相なりました。またわが党においては、党の規則で各町村にも支部を設けるという計画でございます。おそらくはあなた方の党派もさようになさると思います。政党が国のすみずみまで浸潤徹底いたしますと、教育委員会選挙が政党によって運営される情勢も現われてきておるのであります。かくのごとき場合に直接選挙によって一党派が教育委員会の全部を占める、または半数以上を占めるというときは、あるいは教育が政党支配になることなからんやをおそれるのでございます。そのとき次官の御通達になったのは、そのときの情勢としてはもっともでありまするけれども、自来数年間やってきましたことと、今日ただいま目前にあるわが国の政治展開を考えまして、今回の案をよりよきものと考えたのであります。
  27. 小牧次生

    小牧委員 その問題につきましても、前からしばしば論究され、また私どもの同僚からもいろいろ意見が吐かれたわけでございますので、ここでもう一度繰り返すことはやめますが、問題はここでよくもう一度考えてみなければならないことは、現在教育委員をしておられる方々、これはもちろん選挙によって選ばれた人でございますが、大多数が保守系の方々であろう、私はかように推察いたしております。それらの大多数の保守系の教育委員の方々でさえも、一致してこの公選制廃止任命制、あるいは原案送付権の剥奪、こういった内容の盛られた法案に対しまして総辞職までしよう、これは政党党派をこえて、今回の法案教育の危機、民主主義の危機をもたらし、その根本をゆるがすものであるという大局的な立場から、断固としてこの法案に反対をしておられるのであります。またたびたび話に出ます通り、有力なる大学の学長の方々が多数これに反対の意見を表明しておられます。近く公聴会も行われるようでございますが、その際十分われわれも直接意見を承わって参考にしたい、こういうような考えでおりますが、結局任命制公選制かということの論議の重点は、教育の自主権というものを国民自分の手に握るか握らないか、私はこれを中心として判断されなければならない、かように信じております。一たび教育の自主権が国民の手から離れたならば——大臣間接選挙であるから離れない、こういうお考えであるかもしれませんが、われわれはこのときを機会に教育の自主権はわれわれ国民自身の手から離れていくというふうに判断をいたし、また自主権が奪われた場合に、その国のたどる運命というものがどういうものであるかということを考えますときに、心から憂慮にたえないのであります。大臣やほかの皆さんは、そういうことを心配する必要はない、心配せぬでもよろしい、まかしてもらいたい、こういうお考えであるかもしれませんが、もしそのようなことになるとするならば、断じてわれわれはおまかせするわけには参らない。すでに私どもは大東ア戦争その他身近に非常に悲しい体験を持っておるのである。そのような反省から、教育国民の手に与えられなければならぬ、こういうことになって教育委員会法が生まれて、その教育委員会の最も大きな支柱をなすものは任命制ではなくて公選制にあり、また原案送付権にあったと考えております。これが教育の自主権、国民自身に教育を与えるという最も要点であったと考えますが、これに対する大臣の御所見をお伺いいたします。
  28. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 この案では、あなたのおっしゃる教育の自主権が国民の手より奪わるることはございません。かえって適当なる自主権の行使によって教育中立性を保ち、日本の文化がこれによって増進し、わが国の繁栄に寄与するものと私は考えております。
  29. 小牧次生

    小牧委員 大臣はそのように考え法案を出されたであろうと思いますが、しかし今申し上げます通り、現在教育に従事しておられる教育委員の方々は、ほとんど全部、また学界、教育界の団体、こういう方々があげてこれに反対をしておる。これについては大臣ももう一度よく考えてみる必要があると私は考えます。教育国民の手から離れた場合に、先ほど申し上げます通り、われわれは非常に将来をおそれておるのであります。そうならなければ幸いでございますが、苦い体験を持っておるので非常におそれておる。これは大学の学長あるいは教育委員の方々、その他の団体の方々も同じような気持から教育の将来をおそれておられるのであります。このおそれというものを、われわれは十分くみ入れて、そうして参考にして考えて進まなければならない。この法案で参りますと、次第に教育国民の手から遊離して、そうして権力によって思想の統制あるいは言論の自由の制限、そういったものが生まれてこないということを——清瀬さんは、そういうことは絶対にない、私は自由主義者である、リベラリストであるということをたびたび言われますが、失礼ながら私は必ずしも自由主義者であられるとは考えません。こういうようなものは、これは反動化の方向である。あなたが意識されるとされないとにかかわらず、この法案内容に盛られたものは次第にその方向へ逆行しつつある。こういうことでは、国民は国会に対して非常に信頼を失い、官僚が再びまたここに大きく台頭して——緒方局長さんあたりはそういうお考えであろうとは考えませんが、いわゆる概念としての官僚機構、官僚の力というものは、国会の比重が下るに従って逆にこれは大きく成長していく、こういう情勢に進むと判断をいたしております。過去において、大東ア戦争前後において議会が軍閥、官僚に完全に牛耳られて、そうしてあの無謀な戦争に突入をした、こういうことを考えるときに、われわれはどうしてもこのような方法によって官僚統制の方向に、また官僚権力が末端まで一本の筋を引いて介入していくというこの方向に対しましては、断固としてこれを排撃して、国会を守り、議会政治を守り抜いていかなければならない。そういう意味からも、私はもう一度この法案は慎重に大臣考え直すだけの余裕が必要である、家にお帰りになって、夜静かにもう一度一つこれを考え直す余裕はないかどうか、お伺いいたします。
  30. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 過日来あなた方の御論議は敬意を表し、一言句承わっておりまするけれども、まだこれを変更したり、撤回する考えは浮んでおりません。やはり私としてはこの案を通過さして下さるならば、日本教育は大へん前進すると、かように考えております。
  31. 小牧次生

    小牧委員 ただいまの御答弁はまことに遺憾でございます。この間も高津委員の方からほんの若干御紹介がございましたが、矢内原東大学長が今度新しく巣立っていく卒業生に対しまして、教育統制の方向を警告する演説を行なっております。その要旨を御紹介いたしますと、「学窓から社会へ迎え入れる世界は今いかなる世界であろうか。ソ連の内政は変化を遂げつつあるようだ。自由主義諸国、特にアメリカとソ連との接近の妨げとなっていた精神的障壁は、それだけ低くなった。世界の平和は、世界がこの機会をつかむかいなかにかかっている。またアジア、地中海沿岸地域の民族運動は、西欧諸国に世界政策の修正を余儀なくしつつある。平和は、関係諸国民が、この新情勢にいかに賢く政策を転換するかにかかっている。武力をもって武力に対抗する思想と政策では、世界平和は不可能である。権力主義に基く統制と自由の干渉は、人間の幸福と世界平和への道ではない。日本は占領下に行われた諸改革の修正という合言葉国家主義へ復帰する傾向がある。第一は再軍備の声である。第二は言論と教育に対する国家統制の動きであるが、放送法の改正は言論、宣伝の自由の原則を害し、教育委員会制度改正、教科書法案のごときは、教育国家統制の思想を含む立法ではあるまいか。第三は戦前、戦時中日本のファッショ化に活動した人物が政治の表裏に再登場しつつある点だが、諸君は大学で学んだ科学的批判の精神によって判断し、真の国民の幸福と世界平和の道を知り、正しい道徳的バックボーンをもって日本社会の強健な良心とならねばならない。」、まことに私は同感でございます。大臣は、たびたび教育基本法の改正に触れられて、道徳問題をいろいろ述べておられますが、ほんとうの正しい道徳的なバックボーンというものを、ただいまの矢内原学長の見解に関連して、大臣御所感を承わりたいと思います。
  32. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 この演説は私は聞きませんでした。それから一部分ここに持っておりますが、新聞に掲載もされております。ただいまあなたのお引きいたしたことだけを批評するならば、平和と自由に関する矢内原学長の主張には賛成でございます。しかし教育委員会法と言っておられますが、本名の地方教育行政組織及び運営に関する法律案及び教科書法案が、言論及び教育統制を意図するものであるとお考えになったならば、それは全然間違いでございます。
  33. 小牧次生

    小牧委員 私の個人的な気持を申し上げます。清瀬文部大臣は非常に親しみの持てる、私の年令から申しますとちょうどおやじのような風貌をもって非常に憎めない方であります。何でも言ってもいいような気持になりやすいのであります。しかしそれは個人的な問題でございまして、一たび一国の国務大臣として、文部大臣として重要な文教政策を担当されるという点を考えますときに、前松村文部大臣とはかなり違ったニュアンスを持っていると考えざるを得ない。われわれの立場は違いますけれども、松村前文部大臣に、今現に文部大臣として担当していただいた方がいいのであります。(「社会党のためではないか」と呼ぶ者あり、笑声)決してわれわれのためではなくて、国民全体のために、松村さんを大臣にいただいた方がよかったのではないか、こういう点からいろいろ考えますときに、まだ松村さんの方が少しましではなかったか。(笑声)こんなに大きくスイッチを切りかえて、あらゆるごうごうたる非難のうちに断固としてこれを強行しようというようなことは、おそらく松村さんはおとりにならなかったのではなかろうか、こういう場合には、もう一度その声を聞いて考え直すということをやるような方ではなかったかと失礼ながら考えますが、清瀬文部大臣は、たびたび申し上げます通り、他の方々の御意見も十分聞き、またこの法案に反対する広範なる各種団体、国民大衆の声に耳を傾けて、善処される余裕を国民ために持ってほしいということを強く要望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  34. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 午前の会議はこの程度とし、午後一時半より再開いたします。  この際休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ————◇—————    午後二時五分開議
  35. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑の通告がありますからこれを許します。野原覺君。
  36. 野原覺

    ○野原委員 私は地方教育行政組織及び運営に関する法律案について質問をいたしたいと思うのでございます。  まず最初に、昨日同僚の辻原君から問題点を指摘いたしまして、いろいろ質問されたようでございますが、きのう私どもの手元に配付になりました文部広報についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。この文部広報を読んでみますと、地方教育行政組織運営についての法律案の解説ではなくして、今日私どもがこの法律の最も大きな問題点であると指摘して、いわゆる論争をいたしておりまする点についての一方的な主張になっておることは、これは大方の諸君が認められる通りであります。すなわちその内容を見ますならば、まず劈頭中央集権ではないと書いております。その次に今回のこの法律は決して不当な支配を考えたものではないと主張いたしておるのであります。しかも教育自主性は絶対に阻害するものではない。今日までの私ども質問大臣もお聞きの通り、私ども中央集権ではないかということを指摘して大臣質問をいたしておりまするし、この法案教育の不当な支配を引き起すものではないかという立場で質疑をいたしておりまするし、教育自主性を阻害する点またしかりでございます。これらの私どもが論争している点について、行政機関である文部省がこういうような広報活動を出されるということは、果してこれは許されるものであるのかどうか。私はこの問題は軽々に考えておりません。非常に重要視しておるのであります。大臣の御見解を重ねて承わりたいのであります。
  37. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 この文部広報百四十一号でございますが、これに書いてあることは重要教育法案の問題点を解明したものでございます。この二法案は決して中央集権をはかるものでもなく、また不当な支配を企てるものでもないのでありまして、その通りこれが書いてあるので差しつかえないものと思っております。
  38. 野原覺

    ○野原委員 昨日同僚辻原君にもそのような答弁がなされたようであります。そこで私はお尋ねいたしますが、今度の政府から提案になりました法案についての論争点は、どういう点にあると大臣はお考えになっておりますかお伺いいたします。
  39. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 論争点は私まだ知りません。あなた方の御質問に答えておるので、こちらからは討論はいたしておりません。
  40. 野原覺

    ○野原委員 論争点を知らないというような、そういう見識のない答弁では私どもは納得ができない。すでに今日まで総括質問として、相当長時間私どもはお尋ねをして参っております。大臣は一体、それでは社会党の私どもがどういう点に疑問を持っておるかということぐらいは御把握になっていらっしゃろうと思いますからお尋ねをいたします。どういう点を私どもが主として今日までただしてきたとあなたはお考えでございますか。
  41. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それは長い間のことで、いろいろ思想問題等もあなたなり他の方からお問いになりましたが、この案に触れたこととしては、やはり直接選挙を貫かぬから民主主義ではないじゃないか、また原案送付権をやめたのはよくないではないか、県の教育長文部大臣責任にかからしめたことはよくないではないか、指導援助等をすることはよくないではないか、町村教育長任命について県の教育委員会の承諾にかからしめたことはよくないではないか、先刻小牧委員から秩序よく御説明下さったので、おおむねこの点を出ておらぬと思います。世界の情勢とか思想問題については、過日お尋ね下さいましたが、これはやや間接のことと思って、これもお答えいたしております。
  42. 野原覺

    ○野原委員 行政庁がこういう広報を出す場合には、国会の決定された意思に従って出されるべきものであり、法律によって定められた権限内の解説しかできないと私は考えております。もう一度申し上げまするならば、国会の意思決定したものが出されるならば問題はないのであります。それから、立法機関が定めました法律によってきめられた権限内の解釈であるならば問題はないのでございますが、私のこういう解釈を大臣はどのようにお考えになりますか。
  43. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 国会で決定し発布した法律の解釈でなくても、やはり重要な法案が提案された時分に、その立法の趣意を教育界に知らせるということは広報の仕事としては当然と思っております。
  44. 野原覺

    ○野原委員 あなたから私どもの手に配付せられました提案趣旨の説明ならば問題はないのです。ところがこの文部広報を見てみますと、大きな見出しで「中央集権ではない」「民主的な任命方法、不当な支配は起らぬ」「教委自主性は阻害しない」と出ている。実はこれは今度出されましたこの法案に対する大きな政治上の論争課題となっておるものであります。政治上今日問題になっておるもの、今国会が問題にしておるものを、国会の意思決定しない先に文部広報という形であなたが出すところに実は問題があるじゃありませんか。国会の意思がきまらない先にただいま政治問題になっておることを出したということは、違法とかなんとかいうべきものではなくて、行政庁としては穏当を欠くのではないかと思う。あなたも大臣であり、立法府を構成されておるお一人でございますから、慎重に御答弁にならなければいかぬと思う。いかがですか。穏当を欠くとはお考えになりませんか。
  45. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ここに印刷してあるものは、おおむね私があなた並びにあなたの御同僚から問いを受けて答えた趣旨にのっとります。それをはずれたものではありません。そしてこの印刷物は編集はだれがしようと私の責任であります。文部省の印刷物であります。私が正しいと思って、あなた方の問いに答えたものを編集しておるので、討論はいたしておりません。
  46. 野原覺

    ○野原委員 私はこれが自民党の広報で出されるならば問題に取り上げようとは思わぬのであります。自民党はそういう見解を持って一政党としての考えを立てておるからであります。しかしながら、事文部省ならば、これは行政庁でありましょう。あなたもよく御承知のように、立法、司法、行政、三権分立によって今日の立憲政治は行われておるはずだ。その行政庁が、立法府において今日ただいま政治上の大きな論争課題にしておるものを、一方的な立場で主張を流すとは一体何たることでございますか。明らかにこれは立法府の意思をじゅうりんし、軽視しておることじゃないか、いかがでしょう。
  47. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これが、もしもあなた方の主張はいけないのだとか、自民党の主張はこの通りだというものを書けば不穏当でございますが、しかしこの印刷物は、この提案はこういう理由だという解説だけなんです。それ以上にいっておりません。どうか全文をお読み下さい。解説だといっても、そう窮屈に法案それ自身を書いては意味がわかりませんから、法案のことを砕いて世の中に知らせておるだけなんです。こういう法案文部大臣責任をもって提案しておるということで、その中に一つも私があなた方に答えた点をはずれておるところはありませんです。文部省自身が我流で議論をしたところはございませんです。討論が官報に載って世の中にいくのと同じことなんです。
  48. 河野正

    河野(正)委員 関連して。広報の問題につきましていろいろ先日から論議が重ねられておりますが、大臣答弁を聞いて参りましても私ども全く釈然としないわけでございます。先ほど野原委員も言われましたように、もし法案の趣旨をそのまま忠実に解明していくということでございますならば、先般行われました大臣の提案趣旨の説明なり、あるいはまた政府委員の補足説明なり、こういったことで十分事は足りるのでございます。しかしながら、少くとも今回出て参っております広報の内容は、きわめて一方的な見解が申し述べられておる。しかも、この内容を見て参りますと、全く立法府で行いましたいろいろな審議過程の最終的結論というような印象を強く受けるわけでございます。  以上のような点ももちろんでございますけれども、さらに私どもがこの広報を見て参りまして大きな疑問を持ちまする点は、御承知通り今日まで文部広報は月三回発行するということでございます。ところが、今まで私ども見て参りました広報の内容は、比較的忠実な内容が盛られて参りましたが、その後は——私は事務的なことはわかりませんけれども、その私どもの知っております範囲におきましては、広報はほとんど私どもの手元に渡っておりません。最後に渡って参りましたところが、この教育法案に関して、非常に膨大なスペースを費しまして、まことに疑問の多い内容の広報が発行されておる。こうなりますと、問題のない法案につきましては——もちろん問題があるから十二分に解明するのだということで発行したのだというような御答弁があったと思いますが、しかしながら今まで発行されました広報を私ども見て参りましても、非常に得るところが多かったわけでございます。ところがその後ほとんど私どもの手元には渡らなかったが、今度出て参りました広報は非常に膨大なスペースを使って発行されておる。しかもその内容のごときは、先ほどからいろいろと指摘されておりますように、きわめて一方的な見解が発表されておる。こうなりますと、大臣はいろいろ率直な御見解を述べられておりますけれども文部省当局といたしましては、全くこの広報というものを政治的な意図で発行されておるというふうな印象を、私どもは強く持ってやまないのでございます。これは私どもが想像するわけじゃなくて、少くとも今日までとられました広報に対しまする態度、発行のやり方、こういった態度から見て参りますると、今度の広報というものが非常に政治的に取り扱われている、こういった印象に強くするわけでございますから、その点を大臣とあわせて事務当局から御答弁をお願いしたいと思います。
  49. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 この経過はどうかして教育関係者にこの重大な法案についてよく了解してもらおうという意にほかなりません。そこでこの経過を申しますと、前号、すなわち百四十号には、地方教育行政組織及び運営に関する法案の全文を印刷しております。それから教科書法の全文も印刷しております。それに対して解説として、ほぼ私のここで初めに演説した通りのものを付しております。またそれだけではあなたの方の立場を十分に証明しておりませんから、おおむねたくさんお問いがありましたが、その問いを集約して、教育行政中央集権を招くじゃないかというお問いがたびたび出ておりますから、その問いを書きまして、それに対して、私どものたびたび答えたことを集約して書いておるのです。その次にあなたの方では、公選制を改めて任命とするのは教育に不当な支配を認めるのじゃないかという意味の問いがたびたび出ましたから、それを集約いたしまして私の答えを書いておるのです。さらにまた、特定政党の主張に偏するようなことにはならぬか——中立の問題であります。それも皆さんここでお聞きの通り、たびたび出た問いでありましたから、その問いに対して私の答えたことを集約して書いておるのであります。これは民主党の主張がいいの、社会党の主張が悪いのというようなことには立ち入っておりません。この案を世間でよく知って下さるのには、経験あるあなた方のお問いを集約して、それに対して私の答えを書いて世間に知らすというだけでございまして、広報活動の範囲は一歩も出ておらぬと私は思っております。もっともそれについて、大臣の答えは誤まりなりとか、あるいは正しいとか、批評を加えれば問題でありますけれども、大体それが印刷してあるので、世の中のためには非常になっておると思います。今日いろいろごうごうなる議論は、いい議論もありますけれども、中にはこの案の趣意を誤解してやっておられるのが相当あるのでありますから、これは非常に適切なものであると私は思っております。
  50. 緒方信一

    緒方政府委員 この文部広報をしばらく発行しないでおいて、今度突然スペースをたくさんとって発行したのじゃないか、何かこういう御趣旨のお尋ねのようでございますが、私さようには考えていないわけでございまして、ずっと続けて発行いたしておるはずでございます。私ちょうど所管じゃございませんので、今正確には申し上げかねますけれども、ずっと発行いたしておりまして、おそらく文教委員の方々にはお配りをしておると思うのでありますが、どういう行き違いか、お手元になかったら差し上げます。それからなおスペースをたくさんとったというお話でございますが、昨年度におきましても、たとえば社会科の改訂のときのごとき、あるいはそういういろいろ問題がございまして、十分にその趣旨を周知徹底させなければならぬという問題が起りましたそのつど、やはりこういうスペースを大きくして発行しております。昨年の高等学校の教員課程の改訂のときも、いろいろ趣旨の徹底しない点がございましたので、文部広報を十分詳しく編集いたしましてこれを配ったような次第でございまして、決してこのたびの問題だけを政治的に取り扱ったというわけではございません。
  51. 河野正

    河野(正)委員 大臣の御答弁を承わりますると、全く適切だ——政府が提案されておるわけでございますから、政府にとりましては適切であるかもわかりませんけれども、しかしながら少くとも今日この重要二法案が非常に慎重審議されておりますのは、この法案の将来もたらします影響というものがいかに重大であるかという観点からなのであります。そういったことでございますから、少くともこの広報というものは、法案に対しまして忠実な報道がされなければなりませんし、あるいは少くともいろいろな疑惑を生む——私どもは少くともこの広報というものは政治的な意図で出されたと思う。たとえば緒方局長は、今まで通りにこの広報は出されたとおっしゃいますけれども、少くとも一月に三回でございますから、十日に一ぺんいただかなければなりませんのに、さらに私どもはこのような広報をいただいたことはございません。そういった経過を見て参りましても、少くとも大臣がどう言われましょうとも、事務当局がどう言われましょうとも、非常に疑問があるということは事実でございます。そこで他の所管の中のことでいろいろ疑惑を招くということも慎しまなければなりませんけれども、しかし事教育でございますから、さらに私は慎重を期さなければならない問題ではなかろうかと考えます。ところが前会もそうでございますが、今日も先ほどからいろいろ論議されておりますように、いろいろ疑惑を生んだということは、これは否定することができない事実でございます。そういった点から考えまして、少くとも大臣が私どものこういった質問に対して、多少考慮の余地があった、再考の余地があるというふうに御答弁になりますれば、私ども了承するにやぶさかでございませんけれども、ただいま大臣が、これを適切なことだった、正しいことだったというふうに御答弁なされますれば、私どもとして全く承服することができません。少くともそういう誤解を生んだということは事実でございますから、そういう誤解を生んだということについては、われわれは今後もう少し慎重にやるべきだというふうに御答弁なさるならば了承してもやぶさかでございませんけれども、正しかったのだ、こういうふうにおっしゃるならば、私どもは断じて了承して参るわけには参りません。その点大臣いかがでございますか。
  52. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 少くともここにおられるあなた方の団体の諸君には、これだけの疑惑を生じたのでありますから、だれにも疑惑を生じないようにするのが一番完全であったのであります。その点については遺憾に思います。
  53. 野原覺

    ○野原委員 お尋ねしたいと思うのですが、広報というものは、大臣の見解ならば何でも載せられるものですか。
  54. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これは文部省設置法にあるのでありまして、文部省の政策及び文教に関する諸制度の趣意を普及し徹底するつもりであります。従って内容は、文部省の政策に関すること、重要な通達、調査、統計の結果、重要な会議、研究会の内容等のニュース記事や、これらに関する解説記事等を扱うことになっております。
  55. 野原覺

    ○野原委員 そこで、文部省の政策を解明するということは、私も全く了解できますが、その文部省の政策というものは、だれがどこで作るものでしょうか、お尋ねいたします。
  56. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 全体文部省の政策という言葉は適切じゃございませんが、やはり文部省の政策といえば、文部省において発案するものと思います。
  57. 野原覺

    ○野原委員 とんでもない御見解のように私は承わっておるのでございます。文部省の政策というのは、これは文教政策という意味でしょう。その文教政策というものは国会が意思決定をするものでしょう。  そこでお尋ねをするのですが、今あなたがお出しになっている法案が修正になったら、どういうことになるのです。大臣、あなたがここに出されておる法案に関して、国会の意思決定が、この法案とは異なった方向になされる場合があり得るのであります。今二百九十九名の多数を擁しておるからないと断定したら、それこそ大へんなことなんです。国会の修正はあり得るんです。問題の発展によっては、修正もあり、撤回もあり得るのです。そのために国会が審議しておる。国会の意思決定がこの法案の趣旨と異なった方向になされた場合、一体あなたはどういうことになるのか。この広報を出したあなたの責任がどういうことになるのか、承わりたい。
  58. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 この広報には、この二法案法律だとも書いてありませんし、それから無修正で通るとも書いてありません。次にこれが修正されたら、修正されましたという広報を出しまするし、否決されましたら、否決されましたと広報に出すのでございます。それが正確な方法であります。
  59. 野原覺

    ○野原委員 そこが実は問題であります。私は、文部広報であなたが出されておる法案の提案理由を載せるというのならわかるけれども、今論争の大問題になっている点について断定的な行き方をなさるということは、穏当を欠くと言っておる。これは法的な基準が広報についてはありませんから、私はあえて違法とまでは申し上げませんが、行政庁としては穏当を欠くじゃないか。国会の意思を一体何と考えておるのか、このことを私は申しておるのであります。あなたは、自分がすでになされたから、穏当を欠かぬと強弁これ努めるでございましょうが、明らかに「中央集権ではない」こう書いております。中央集権であるということに最後の判断がなされて、その個所が修正になるかもしれぬし、修正にならなくても、中央集権だという意思決定を国会がするかもしれぬ。そういう場合に一体どういうことになるかと言っている。私はこれ以上申し上げませんが、国会の意思決定を出しなさい。これから国会の意思決定したものをあなたはお出しなさい。そうして法律によってきめられた権限内で種々の解説もしなさい。これはとんでもない越権でございますよ。あなたは強弁されまするから、この問題はこれでおきますけれども、これはあなたに対する私どもの大きな不信任の一つの理由になるということをただいまから申し上げておきます。  そこで本論に入りたいと思います。今大臣の御説明によりますと、この文部広報に書かれてあることが、今日までの同僚議員の質問に対する集約された御意見だということでございまするから、私は一応大臣がそういう見解を御表明になりましたから、この文部広報に書かれたことをもとにして、二、三お尋ねをいたしたいと思うのであります。  まず第一の「中央集権ではない」こう書かれたその中の中ごろに、こう言っておる。「教育の振興をはかるためには、今後も、これらの地方団体に積極的に教育事務を担当してもらう必要があるとともにその教育行政運営が中正でしかも円滑に行われる必要がある。」と書かれてあります。そこでこの言葉の裏をひっくり返して考えてみますと、従来の教育委員会制度が実施されておりましたときには、いわゆる地方公共団体とその地方教育団体との間の関連というものは、中正でしかも円滑に行われていなかった、こういう認識の上に立つから、こういう法案考え出したのだということでございまするから、中正でしかも円滑に行われていなかったということになろうかと思うのでございます。そういう解釈をとってよろしゅうございますか。
  60. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 けさほど河野さんから福岡県の例をとって御説明になりました。京都府においても同様なことがありました。円滑に行われなかった事実は私あると思います。しかしながらここの文章はそれほど明白にいかないで、「教育の振興をはかるためには、今後も、これらの地方団体に積極的に教育事務を担当してもらう必要があるとともに、その教育行政運営が中正でしかも円滑に行われる必要がある。」というので、この文章はそれを非常に婉曲に書いております。私がここ数日来説明したよりも、腹の中には同様のことを含んで、公けに出すために婉曲に書いているものでございます。それゆえに範囲を逸脱せぬというのは、そこのところであります。この方が私の言うよりも婉曲です。
  61. 野原覺

    ○野原委員 中正でなかった、円滑でなかったという実例は、福岡、京都の二府県だけですか、お尋ねいたします。
  62. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これは同様のことは非常にたくさんあろうと思います。私の選挙区等においても、町村長側と教育委員側とのあつれきが、記録には残っておりませんけれども、相当あるもんなんです。あなたも選挙区を持っておられるからきっと御承知でありましょうが、ほめて申したいけれども、必ずしもこれは円滑ということにはいかなかったと私は思っているんです。その村、その町を指摘せいとおっしゃるが、私は今言うことは、あまり利益がないと思いまするから、留保いたしたいと思います。
  63. 野原覺

    ○野原委員 私の選挙区には、幸か不幸か、そういう実例はない。そこでこれは委員長に要望したいと思いますが、中正でなかった、円滑でなかった、だからこういうものを出したんだというのでございますから、中正でなかった、円滑でなかったという実例を、この法案審議に重要でありますから、次の文教委員会までに提示されるようお取り計らわれんことをお願いいたしておきます。  それで次に、文部広報を見ますと、「教委自主性は阻害しない」というところで、問答がなされておる。「教育委員会自主性を阻害するものではないか。」これは社会党の質問でございましょう。ところが清瀬文部大臣は、自主性は阻害しない。これもまた政治上の論争に今なっておるのでありますが、そのお答えの中で「この法律案では、教育委員公選制廃止して任命制とし、予算案や条例案におけるいわゆる二本立制度廃止するほか、財産の取得処分、支出命令権等を地方公共団体の長の権限に移している。これは、本来の教育関係事務はすべて教育委員会管理するところであり、長に移したものは主として財務関係のものであって、地方自治体としての一体制を保持するためのものであるから、そのことにより教育委員会自主性を阻害するとは言えない。」結論は私どものいれないところでございますが、まず結論を申し上げる前に、私は二、三お尋ねをいたしたいと思う。  教育委員会管理するという本来の教育関係事務は、教育委員会管理する、こうなっておるわけでありますが、「本来の教育関係事務」とは、一体何を指しておられるのか、お尋ねいたします。
  64. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 そのこともこの委員会ですでにたびたびお答えいたした通りであります。今回の案では第二十三条に地方公共団体が処理する教育に関する事務、法律またはこれに基く政令によってその権限に属する事務で、次の各号のものを管理するといって、長の権限を書いた二十四条の前に持っていって、教育に関する事務は教育委員会の仕事だとして、実際の便宜のために一から十九までを例示いたしております。すなわち教育の事務は、ほとんど全部教育委員会にやらせるのである。しかしながらもともと学校といえども一つ公共団体である、町、村のものでありまするから、財産帰属の関係はやはりこれは町長さんがやるのが当然であります。一つの法人で財産取得を二人でやるなどということは道理において合いませんから、二十四条の第三号から第五号まで、財産の取得と、他人と契約を結ぶことと、収入、支出の命令、これをやったって子供を教える教育の実態には関係するものではないので、法人原理としてはこれが正しいと思ってこれを二十四条にしたのであります。二十三条と四条を比べて下さるというと、教育のことは教育委員会にまかすという大趣旨は非常に明瞭になっておるものと思います。大学とか私立学校のことは、これは現行もその通りでありまして、話が複雑になりまするから除きます。
  65. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 野原委員より要求の中正かつ円滑でなかった県の実例を次の委員会までにお出し下さい。
  66. 緒方信一

    緒方政府委員 ただいまの資料でございますが、具体的にどこそこの委員会でこういうことがあったという資料は、これはちょっと出すことが困難でございますので御了承いただきたいと思います。
  67. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 今福岡とか京都とか幾つか出たでしょう。そういう県の教育委員会だけでいいです。知っているその実例だけでいいです。ちょっと速記をとめて……。   〔速記中止〕
  68. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 では速記を始めて下さい。
  69. 野原覺

    ○野原委員 中正でなく、しかも円滑でなかったと広報にも書き、大臣がたびたび答弁しているものを、そういう具体的な事例を提出することができないなどということは、一体この文教委員会を何と考えておるのか。大臣がはっきりそういう答弁をしておるじゃないですか。答弁しておる限りすぐ具体的な証拠を出すべきなんです。それをできないという。一体そういう事務当局があっていいですか。  そこで私はお尋ねをいたします。ただいまの質問に対する本来の教育関係事務云々の点でございますが、第二十三条の七号を見てみますと、「校舎その他の施設及び教具その他の設備の整備に関すること。」こうある。この一つの項だけを取り上げてお尋ねをいたしましょう。これは予算とかあるいは財産というものに関係しないはずはないのでございますが、あなたはどういったお考えであるか。
  70. 緒方信一

    緒方政府委員 ここに書きましたのは、校舎その他の施設及び教具その他の設備の整備をはかるということでございまして、こういう整備についていろいろ企画をしたり計画を立てたり、これはやはり教育委員会の所掌するところでありまして、それらの計画等に基きまして教育財産を取得する必要があれば、その取得の事務は長が行う、こういうことになるのでありまして、整備計画を立て、企画をし、そういうことはすべて教育委員会が行う、こういう趣旨でございます。
  71. 野原覺

    ○野原委員 教員の給与については教育委員会権限になるわけでございますか。
  72. 緒方信一

    緒方政府委員 これは二十三条の三号にもございます通り職員の任免その他の人事に関することは教育委員会がつかさどりますので、その任免あるいは給与の決定等については教育委員会の所掌事務でございます。
  73. 野原覺

    ○野原委員 任免ということになれば、定員定数とかいろいろな問題が出てきます。給与ということになると、これはさしずめ人件費予算に関連してくるわけなんです。私は今は逐条審議ではございませんから一々は申しませんが、二十三条のどの項を取り上げてみましても、予算あるいは条例その他に必然的に関係してくるわけなんです。従って財務関係は地方団体の長だ、本来の教育関係事務管理だけが教育委員会だ、こうまっ二つに割るような考え方は、明らかに教育委員会自主性を侵害する、こう見るのですが、大臣はどのようにお考えになりますか。
  74. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これは大体としてごらん願わなければならぬと思っておるのです。ここに書いてある学校の設置とか組織とか、そういうことはきめますけれども、しかしもともと公共団体一つの法人ですから、外部に対して契約をする、所有権の移転を受けるというのはやはり長に置きませんと、法人原理に合わないのです。しかし教育に関係することは、これをごらん下さっても十分に教育委員会に留保しておるつもりでございます。
  75. 野原覺

    ○野原委員 そこでお尋ねをいたしますが、地方教育組織運営においては、今度の法案によれば本来の教育関係事務は教育委員会、財務関係は地方団体、とこう割り切っております。そこで、中央教育組織運営は一体どうなるのか。法案は今度は出ておりませんが、地方のいわゆる教育行政をこういうふうに二つに割り切っていく考え方からするならば、中央におきましては、本来の教育関係事務の管理というものは、これは行政委員会を置くべきじゃないか。そうして文部大臣というものは、財務関係だけを扱ったらよいじゃないかというように考えるのでございますが、この点一体どのようにお考えでしょうか。
  76. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 中央といえば国立学校のことでございますが、中央学校大学管理機関というものをこしらえてやっております。しかしながら管理機関が、ことに教員、中央の場合は教授といいますが、それらの人事については文部大臣の決裁を仰いでやっておるのでございます。こういう機構でありますけれども、明治以来の伝統的の大学の自由というものはちっとも棄損されておりません。これはまた別の角度をもってさらに研究いたしたい。それで今回臨時教育制度議会においては、大学組織制度について御研究を願おうということで、このことも入っております。
  77. 野原覺

    ○野原委員 文部省権限として、文部省の本来の教育関係事務、とこういう場合には一体どういう内容がありますか。あなたは今国立大学だけお示しになっておりますけれども、そうじゃないでしょう。今日の法令のもとでは、文部省の本来の教育関係事務というものは、国立大学以外にまだあるでしょう。ないんですか。
  78. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今、学校のことをおっしゃって、中央のことをおっしゃらないからそれで大学のことを主として申し上げたのです。国立学校大学だけではございません。中央教育行政は、ひとり大学、高等学校ではなくして、教育、文化、各種の仕事があることは、私が今さら言うに及びません。スポーツのことも入っておりますし、天然記念物の保存のことも入っておりますし、各種のことがあるのでありますが、これは文部省設置法で、文部省においてやっておるのであります。財務のことはあなた御承知通り、大蔵省の発案で予算を作ってそれでやる、こういうことになっております。しかしながらこれについてもさらに考えるべき点もあろうと思うて今回は臨時教育制度議会を設けて一つ練り直してもらおう、かように思っております。
  79. 野原覺

    ○野原委員 私がどういうわけでそういう質問をするかと申しますと、文部大臣というのは政党内閣の閣僚です。政党大臣である。そして特に清瀬一郎という文部大臣は、党の主義、方針というものに絶対随順、むしろ渇仰の涙を流されるとまで私ども考えておるのです。私は、清瀬文政というものは、これは自由民主党の即文政だと思っておる。あなたの性格じゃないと思っておる。今度の法案もそうです。そういう意味ではあなた一人を私どもが責めるのは酷なような気もいたすのでございますけれども、当面の責任者ですから、ごかんべん願いたいのです。これは自由民主党の政策であります。これはあなたがしょっちゅう言っておることなんだ。そこでそうなりますと、政党内閣の閣僚というものは党の方針に拘束をされる。党議が許さぬのだということになります。ところが現在のこの法制のもとにおいては、本来の教育関係事務は文部大臣がやるわけでございますから、本来の日本国の教育関係事務というものは、今日の法制のもとにおいては、特定の党派によってなされておるという私の見解は間違っているかいないか、あなたのお考えを承わりたい。
  80. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 そういう意味で中央のことを御研究になるというのですか。初めてお問いの真意がわかりました。そうなれば、日本の憲法組織なんです。議院内閣制度をとりまして、やはり法律の提案は内閣責任においてやるんです。しかもその内閣は、あなたのおっしゃる通り政党内閣でございます。しかしながら今の憲法においては、主権は国民にあって、国会は国権の最高機関なんです。すなわち最高機関の国会がそれに対して統制権なり質問権なり監査権などを持ってやるということに、今の憲法は、あなた方のとうとびになるマッカーサー将軍のイニシアチブをとった憲法はかようになっておるので、それを私がここで変えるなんということは、これは容易に言うべきことではございません。現状のままはその通りであります。
  81. 野原覺

    ○野原委員 そうなると今の憲法のもとでは、中央教育——こう申しますと語弊がございますが、国の教育というものは党派による教育であってもかまわぬ、こういう御解釈ですね。
  82. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 教育についてはだれか国会に責任を持つ者がなければならぬと思います。明治以来の承継で、その人間を今は文部大臣といっております。今の憲法のもとにおいて可能なことは、これよりほかに仕方がないのではあるまいか、かように思っております。
  83. 野原覺

    ○野原委員 仕方がないということであります。そうなるといかがですか。地方でも地方住民選挙して構成された地方議会がある。その地方議会承認し、それから地方団体の長は今日では全部公選だ、だからどうですか、思い切って教育委員会なんていうものは要らぬじゃないですか。地方住民の総意によって、中央教育は党派による教育であってもかまわぬとあなたは言うのですから、地方教育も、地方住民教育であるのだからかまわぬじゃないですか。何のためにこういうまやかしの教育委員会考えてきたのか承わりたい。
  84. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 理屈だけを言えば可能なことはいろいろあります。しかしながら、国民の福利、教育の進歩、中立性、これらを考えれば、これが一番いい。これだけは合法だということだけでいくのならば、方法は幾らでもある。大切なことは人であります。子供であります。教育であります。それを考えて、これが一番いい、かように考えております。
  85. 野原覺

    ○野原委員 そうなるとこうですか。教育中立性教育の公正、そういうふうな立場から考えれば、地方団体の長がその地方教育を主宰することは工合が悪いというのですか。そうなると、一体地方住民の総意というものはどうなるか。地方団体の長が教育をして工合が悪いということをお示し願いたい。
  86. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 現実問題とあわせて考えなければなりません。どういう法律が可能だということでなく、現実問題であります。そうしますと、同じ執行機関でございますが、地方の長は独任制でございます。  もう一つは、今日は政党主義が=原の火のごとく地方にも移ろうとしているときであります。そのときに独任制の、政党から支配されるところの町村長一本にやるというよりも、合議制で、しかも任命には同一党派はたくさん入らぬように、人格高潔な、そういう者を選ぼうという規則を作って教育委員会をやる方が、教育ために非常によかろうとわれわれは考えておるのでございます。教育委員会を廃して、町村長だけでよろしいという議論も、あなただけではない、ほかにもあるのでございますけれども、われわれはそれはよくない、かように考えておるのでございます。
  87. 野原覺

    ○野原委員 そうなると問題ですよ。よく考えてもらいたい。文部大臣は御承知のように独任制の行政機関なんだ。地方教育というものは、地方団体の長は独任制だから困るんだ、教育の安定という点から考えて、やはり合議機関が必要だ、こうあなたが主張されるならば、中央における本来の教育関係事務というものは、これは文部大臣がやるということはいかぬじゃないか。地方だけは教育委員会の合議制でやって、中央というものは文部大臣がやるんだということは、これはとんでもない間違いじゃないですか。中央も独任制でなしに、合議制の行政機関を置いて、そうして、私は教育本来の事務管理をさせるというのならば筋が通って了解できるが、これはどうなんですか。そこをあなたはどう考えるか。
  88. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ごもっともなお問いでございます。私どもも昔、改進党時代には、教育院という合議制の教育機関を作ろうということを考えて立案をしたことがあるんです。しかしながら、今の憲法においては、教育という大きな行政について責任大臣を置かぬということはできない。たといそういう合議制を作っても、だれか一人、やはり内閣に入って責任をとる者がないと、責任制ですから、憲法には合わないんです。そこでその考えをやめて、やはり文部大臣を維持いたしまして、地方とは違って、国の方においては、国権の最高機関たるあなた方の監督を受けるんだからそれでいいだろう。これが現在の憲法を尊重するゆえんであります。あなた方も、現行憲法尊重については御同意であろうと思います。今の憲法を尊重する上においては、教育行政について責任大臣を置くのほかはないという結論に達したんです。あなたと同じ疑問を私持ったこともあるんです。けれどもまず憲法の存する間は文部大臣に置く方が、私はいいと考えております。
  89. 野原覺

    ○野原委員 あなたは、あなたに都合のいい論理を展開する場合には、日本憲法を参照されるのであります。そしてあなたに都合の悪いときには、日本憲法を誹謗されるのであります。これはとんでもないことで、私のただいまの質問に対するあなたの答弁は、すみやかに速記をお取り寄せになってお読み下さい。失礼ですけれども、趣旨一貫いたしておりません。地方教育行政組織運営に対する見解、それに対する中央教育行政組織並びに運営に対する見解は、はなはだ失礼ながら未熟です。その点に対する検討も経ないでこういうものを出されたところに、私どもは大きな問題を実は発見しておるわけなんです。  そこでお尋ねをいたしますが、法文の実は大きな問題点として、私どもは第五十二条の二項を見てみますと、これはどうしても聞かなければならぬのですが、文部大臣都道府県市町村教育行政当局のやったことが違法であり、不適正であると認めるとき、それからまた、つまり法例上の違反または教育本来の目的達成を阻害しているものがあると認めるときは、是正の措置をとることができるという条文です。これはもう非常に実は重要な条文です。今度の法案の中の大きな要素をなしておることは、大臣も御承知でございましょうが、そこで私はお尋ねをいたしますが、明らかに法令違反と認められる場合は問題はありません。ところが教育本来の目的達成を阻害しておるというこの判断は、実は非常に微妙なんです。そこであなたが是正措置をすることになるんですが、文部大臣がやるわけでございますが、一体その文部大臣は政党内閣の閣僚です。文部大臣がこの是正措置をする場合の判断基準になる考え方というものは、党の方針が入るはずだ。これはいかがですか。入りませんか。
  90. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それが私が先刻現行憲法を引用して申し上げたことなんです。文部大臣が是正をいたしますけれども、是正というと言葉が何ですが、必要な措置を講じまするけれども、その措置が不適正であったら、国会の不信任ということで制限ができるのであります。どこどこまでも議会主義に根本をおろした規則であります。私が平清盛のように、言いっぱなしで措置を求めてしまう、こういうタイラントになるということではございません。悪かったらどうか一つ不信任なり懲罰なり、何なりとおやり下さい。これでいけるだろうというのが、今の憲法の組織でございます。
  91. 野原覺

    ○野原委員 そのような答弁をされると、私はますます混迷を覚えるのであります。というのは教育委員会を置いた趣旨というものは、形式的な議会主義的な考え方で教育を律してはならぬというところにあるはずであります。あなたは教育委員会を今度も残されておる。これを残されたのは地方団体の長が、よしこれが地方住民の総意によって選ばれようとも、あるいは公選制を同僚議員の質問に対して論駁されておりましたが、そういうところから考えてみましても、形式的な議会主義、単なる多数というものによって教育を動かしてはならぬというところからでありましょう。ところがこの是正措置を見てみますというと、文部大臣が是正措置をする。なるほど国会は解散が行われるまでは、その多数党の自由意思なんだ。残念ながら形式的には、私ども不信任を出しても破れるんです。懲罰の提案を私はしましたが、あなたを懲罰に付することはできなかった。そういうようなことで、一体党利党略と申しますか、これは党というものはどうしても党利を考え、党略に走りたがるものなんです。そういうような政党的な考え方で地方のやっておる教育行政が間違いだ、こういう判断をされるということは、やはりこれは問題があるじゃございませんか。問題があるとお思いになりませんか。あなたは多数なんだから、国会で多数を取っておれば、何でもできるんだという式で、日本教育行政というものを考えておるのかどうか、これは重要です。
  92. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これもあなたのおっしゃる通りに重要な根本問題なんです。文部大臣が悪ければ、必ずしも今の制度でも、多数党だからといってほんとうに悪いものを見のがすことはないと思います。実際に悪ければ、われわれの友人も十分に私を懲戒し、除名し、あるいは不信任して下さると思います。物のメリットによる、値打によるんですけれども、多数で無理押しして、非常に悪いことでも多数を頼んでこれを看過するということになれば、それは国民がその党を信用しないということになるので、その党が没落するのであります。こういう循環が、すなわち今日の立憲政治でございます。最後の判断は国民であります。その次は国会です。その次は内閣、その次は文部大臣というので、この措置を要求する権限がありましても、どんな文部大臣だってべらぼうなことはできやせぬです。やれば友人、閣僚に相済まぬ。それが無理押しをすれば国会で糾弾される、国会で多数で無理を通せば国民が糾弾する。こういう次第送りがすなわち今日の立憲制度でございまして、これを破ろうとすれば、やはり憲法を破ることになるのでありますので、きわめて合法的、これよりほかに仕方がありません。そうかといって、みすみす違法なことを、教育目的に反することを、あなたは手をこまねいて見ておれという、そういう法律は無理な法律だと思います。
  93. 野原覺

    ○野原委員 方向をかえてお尋ねしましょう。教育基本法の第十条、教育行政を規定した第十条でありますが、「教育は、不当な支配に服することなく、」と書いてある。この不当な支配とは何をさしておるとあなたはお考えですか。
  94. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 正当でない支配であります。
  95. 野原覺

    ○野原委員 具体的な内容、正当でない支配、間違いなかろうと思いますが、不当な支配という具体的なものをお示し願いたい。
  96. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これは広い文字でありまして、この場合の不当ということは、違法のことも入っておりましょう。違法も含む。しかしながら、具体的の成文法には反しないでも、今日私がさっき申しました立憲民主国の常識として、これに逸脱するものはみな不当でございます。
  97. 野原覺

    ○野原委員 政党の横暴というものは入りませんか。あなたは入らぬというんですか、よく考え答弁して下さい。
  98. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 不当なる横暴はむろん入ります。
  99. 野原覺

    ○野原委員 政党が多数を占めておれば、国民の承服しないことでも議会は通るのであります。これはお互いの良心に問うて考えてみましょう。ほんとうに党利を離れて大臣考えてみようじゃないですか。議会主義というものは、これは多数主義でございまするから、国民の総意に沿わないと思われることでも通ることがあるのです。国民の総意とは一体何かというその基準は、あなたに言わせれば、あなたは形引的議会主義者ですから、あなたはそれは議会の多数がきめたのは国民の総意だ、こういう論法で切り返されるかもわかりませんけれども、不当にしろ何にしろ、政党の横暴が教育を抑圧した場合は、これは許さぬというのが教育憲章の第十条でしょう。そういうことが起り得るじゃないですか。第五十二条の是正措置において起り得ないとあなたは詭弁を弄しますか、いかがですか。
  100. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私は、不当の支配が起り得ないと申し上げた記憶はないのです。違法のこと、また常識はずれのこと、それなどはやはり不当の支配でございます。絶対に起らぬという保障をいたしたことはございません。しかしながら、多数党はいつでも不当の支配をするものだという結論には同意しかねるのであります。多数党は国民の負託を重しとして、日夜戦々きょうきょうとして、いいことばかりをしようと思っております。ただしかし、人間立場が違いますから、富士山でも、甲斐の方から見た富士山の写真と、太平洋の方から見た写真は違います。意見は違いまするけれども、われわれは多数を頼んで悪いことをしようなんということは、一時間といえども考えたことはございません。
  101. 野原覺

    ○野原委員 多数党は常に横暴するとは言っていないのです。よく聞いてもらいたい。間々に横暴することもあり得ると言っておる。その間々に横暴することがあり得るということが、やはり教育の場合には問題になってくる。そういうことがあってはいかぬから、教育憲章の十条を作ったのではないですか。あなたの見解を推し進めると、どう考えても、あなたはこの教育基本法の第十条の否定論者のように私は思う。何といっても、この第五十二条の点は、やはり大きな問題があるのであります。あなたが間々にしろ、多数党は横暴することがあるということをお認めになったのですから、その間々に横暴をする多数党の大臣が、教育本来の目的達成を阻害しておる、こういうこともあり得るじゃございませんか。そういうことがあった場合には、国会が判断をしておれを裁判してくれ。そういう御見解のようでありますが、教育というものは、議会において制裁を加えたって、一たん与えた被害というものは回復できませんよ大臣。あなたは教育をどう考えておるか。一たん傷を与えたら、その傷というものはなかなかいやしがたい。教育行政にしろ、教育方法にしろ、内容にしろ、そうであります。だから問題があるから、私どもはこの点を指摘しておるのであります。十分一つ研究をして、この次にはもっと明快なる答弁を要請いたしましょう。  そこで次に発展します。大達文部大臣のときでございましたが、義務教育学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法、昭和二十九年六月三日法律第百五十七号、第五条をあけてみて下さい。この第五条を見てみますと、「前条の罪は、当該教育職員が勤務する義務教育学校の設置者の区別に応じ、左の各号に掲げるものの請求を待って論ずる。」とあります。そうして教育委員会があり、あるいはその他いろいろな機関が、学校の種別に応じて請求権者として規定されておるのでございますが、この処罰請求は、今度出された地方教育行政組織及び運営に関する法律案によれば、文部大臣も処罰の請求権者になるように私は思いますが、いかがですか。
  102. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 お問いはよくわかりました。法文の継ぎ合わせからいえば、地方教育委員会は第五条の請求をすることも、その仕事の一つでありまするから、そういうことは容易にあることじゃございませんけれども、もし万一、適正を欠き——欠きだけではいけないのですよ、「欠き、かつ、教育本来の目的達成を阻害」これは基本法の違反ということです。こういう要件を備えた、容易に想像すべからざるようなことが起りましたら——容易にはないと思いますけれども、適当な措置を講ずべきことを求めることはあり得るのでございます。
  103. 野原覺

    ○野原委員 第五条を作るときに、これは相当論議したのです。一体文部大臣という今日の憲法のもとにおける、今日の政党内閣におけるその閣僚、独任制の政党人が、このような処罰請求権者になるということは、非常に危険なんです。政党的な立場によってこういうような厳正公平でなければならぬ処罰というものがなされるおそれがあるのであります。ここに教育中立性は守られないじゃないかという私どもの主張があるのです。よく考えてもらいたい。一体教育の中立とは、どの党派にも属しないということでしょう。あなたは公正ですから、あなたはそういう是正措置の要求はしないかもしれませんけれども、しかし大臣によってはやるかもわからぬ、政党によってはやるかもわからぬ。一体、具体的にどこに教育中立性があるのか、今日まで抽象的な論議では、あなたはないと言う、中立性は守っておると言うけれども、こういうところではっきり出ておるじゃないですか。その政党人が是正措置の要求をやったら、間違った方向に間々行くことがあり得るでしょう。常にはないかもわからぬけれども、あるじゃないですか。この点を一体どう考えられるか。もう一ぺん聞きましょう。
  104. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今日の責任内閣制においては、これは余儀ないことなんです。日本の裁判は一番公正を必要とします。教育よりまだ公正を必要とします。しかしながら、捜査について法務大臣責任を負うということもあるのであります。あの規則が、あまりいい規則ではないと私は思います。先年も実例がありました。しかしながら、国の政治を統一して、責任内閣を作る場合には、さればといって、非常に違法なことがあるのに、文部大臣が何もするなということも無理な話です。そこで文部大臣は対抗してやるのじゃありませんよ。非常に違ったことがあったら、こういう措置をしたらどうだというのであります。そのくらいのことを言わなければ、だれが一体国の政治の責任をとりますか。しかして文部大臣が誤まっておれば、内閣は連帯責任でありまするから、内閣の不信任も受けようし、それがまた国会の多数で押し通すということであったならば、国民の批判も受けるというのが、自由主義、民主主義の度胸の据え方でございます。それ以上何もするなというわけには、これはいかないものだ、かように思っております。
  105. 野原覺

    ○野原委員 そういう場合には、合議制の公選された教育委員会がやるところのことだけで私はよいと思っておる。独任制の政党人では非常な危険を招くと言っておるのです。それは常にはない、あっては大へんだけれども、ときにその狂暴をたくましゅうすることがないとは保障できない。私ども法律を審議する場合には、法律が何を保障するか、制度的保障を問題にしておる。あなたは法律学者なんだ。法律では、一体保障するのかしないのかということが論点にならなければならぬ。教育の中立というものをこの法律は保障しないじゃないか。あるとかないとかいうことは、その人によってあり得るでしょう。政党によってあり得るでしょうけれども、法が一体保障しておるかということになれば、教育の中立は遺憾ながら今度のこの組織運営においては保障されない。そこで私は次にまたいずれ日を改めてこういう点は質問いたしますから、まあ問題を提起した程度にします。大臣としては、失礼ですが、今度はよく答弁考えてきてもらはなくちゃ困るのです。  それでお尋ねしたいことは、教育基本法の同じく第十条の、「教育は」「国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」という、この「直接に責任を負って」という言葉内容がございますが、あなたはこれを一体どう解釈されますか。国民全体に教育が直接の責任を負うとはどういうことでしょうね。
  106. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これは憲法第十五条第二項とほぼ同様な趣意でございます。いやしくも教育をする者は、その父兄にもその村にも責任を負わなければなりませんが、やはり日本国民全体に対して責任を負え、こういう規則でございます。
  107. 野原覺

    ○野原委員 そこで、国民全体に直接責任をとれということになれば、その直接責任をとれという趣旨に応ずる方式は、これは間接任命制がいいのでしょうか、公選制ということになるのでしょうか。これはいろいろな利害を離れて素朴に考えて一体どうでしょう。お考えが承わりたい。
  108. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それはというならば、学校教育の一番中心学校においての教授でございますが、教員を一々選挙するというわけにも参りませんので、やはり各国は教育委員会を設けたり、あるいは一定の任命権者を設けまして、教員は任命する。任命された教員は、任命者はだれであっても、心に誓って国民全体のため教育を施す、こういう趣意に私は解しております。
  109. 野原覺

    ○野原委員 公選制教育基本法第十条のこの趣旨の方式に適合すると考えないかということを言っている。あなたは考えないという説のようでありますが、それは考えないかもしれない。そういう提案をしておるのですから……。だれが考えても「直接に責任を負って」という趣旨の方式は公選制ですよ。これはよく聞いてごらんなさい。ただ公選には問題があるというなら別です。いかがですか、もう一ぺん聞きましょう。
  110. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これは委員会だけのことじゃなくして、「教育は」とあるのです。よろしいか、「教育は」とあるのです。そのうちのおもなものは教員のすることが教育であります。しかし教育委員会も、教員が関係しておることはむろんでありまするが、教員であっても、教育委員会であっても、およそ教育国民全体に対して責任を負う。世界のどこの国でも、教員を公選しておるところはありませんから、国民全体に対して責任を負うということは、公選にしろという意味じゃないと私は解しているのです。しかしながら民主主義の国において、ほかの場合には何も公選を私は誹謗するものではございません。ただ教育委員会の場合には、今言った間接国民意思の通るようなことでよかろうと申しておるのであります。この規定をもって、教育委員会公選せよという規定だとおっしゃられるのは、どう考えても解釈の誤まりです。
  111. 野原覺

    ○野原委員 そういう見解は、文部当局としていつごろからそういう見解をおとりになったのですか。そういう見解は、あなたが文部大臣になってからとられた見解なのか、それとも文部当局多年の見解でございますか。あなたは責任ある文部大臣であるから承わりたい。いつからとったのですか。
  112. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 これは私の法律家としての解釈でございます。こういうことについて文部省の省議も何もありはしません。法律学者清瀬一郎の解釈でございます。
  113. 野原覺

    ○野原委員 いつからとったかということを言っておるのですが、従来の文部当局の見解も、ただいまあなたがお述べになられた考え方と同一でございますか、それを聞いておるのです。そういう見解を立てる以上、あなたはお調べになられたはずです。
  114. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私は法律家としては文字通りに読むのです。第二項は「教育行政」と書いてあります。第一項は「教育は」と書いてあります。教育行政と言えば、なるほど委員会に非常に近いものでありますけれども、第一項は「教育」と書いてある。しこうして教育というのは、今日の制度ではおもに学校でやっております。教育の任に当るものは学校の先生でございます。学校の先生は国民全体に対して直接責任を負えとも読めるのです。しこうして世の中の通俗として、学校の先生を選挙できめる国は私は知りませんが、大体ないと思います。それゆえにそんな希有なことを書いたのじゃない。私は前任者のおっしゃったことを一々調べませんけれども、だれが日本語を読んでも、第一項は教育委員会公選せよというものとは、野原さん読めませんよ。それはほかのところで、教育委員会公選がいいと言ったかもわかりません。先刻御引用の次官通牒などは明らかにそれが見られます。けれども十条の第一項からそれがくるというのは、文字解釈に非常に反すると私は思います。
  115. 野原覺

    ○野原委員 どうも従来の文部当局の見解をお知りでないようであります。これはどなたが文部当局の見解を代表して御答弁できる立場の人か存じませんが、従来の文部当局の見解、特に教育委員会法に関しましては、提案をいたしました立法当時の見解というものは、教育基本法十条の「直接に責任を負って」というこの文言は、公選制を意味しておることになっておるのです。だから私どもは、大臣がかわるたびに突然そういう見解をとられると、はなはだ迷惑するのです。文部当局の一貫した考え方というものはないのですか。これはよく大臣あとでお調べになって下さい。そこであなたがお調べになる資料を申し上げましょう。教育委員会法の提案をいたしました昭和二十三年の提案説明の速記、まずそれが一つ。それから私も数年文教委員をしておりますが、いろいろな教育委員会問題が出されるたびにこのことは繰り返えされておりますから、そういった方面の記録——文部当局はそういう見解をとってきたのですよ。特にこの提案説明のところではこういうことを言っておる。「前述の地域に設けられる教育委員会委員の選任方法は、一般公選といたしまして、地方住民教育に対する意思を公正に反映せしめることによって、教育行政民主化を徹底いたすこととしました。」教育行政民主化を徹底することは、公選でなければ地方住民教育に対する意思は公正に反映されない、こういう解釈をとっておりまするから、この解釈は、これは教育基本法の第十条を見れば、あなたは教育だと言いますけれども、この第十条は「教育行政」とカッコして最初の十条ができたときから指示しておるのです。この「教育」ということは教育行政をさしておることは明らかなんだ。一般的な概念的な教育はさしていませんよ。そういう提案の趣旨からも、明らかに公選でなければ教育基本法第十条の趣旨が実現できない。しかるにあなたはその公選制廃止されて任命に切りかえるのでございますから、あなたのなされた今回の提案は、明らかに教育基本法の干犯であります。教育憲法違反であります。どう考えても許すことができぬです。(「とんでもない」と呼ぶ者あり)とんでもない方は、とんでもない方でけっこうです。(「もうないのか」と呼ぶ者あり)たくさんあり過ぎて困るんだが、そこで独任制の政党人である文部大臣が、教育に対する不当な干渉ができる個所は随所に出ておりますが、今度の法文によれば、どういう個所だとお考えですか。文部大臣教育に対するいわゆる干渉をするということ——これは独任制の政党人ですよ、それが教育に干渉して、不当な支配をやるということです。赤城さんはないそうですが間々あると文部大臣は言っておる。不当な干渉をする個所が至るところにあるのですが、お気づきになりませんか、そういうことは考えたことはありませんか。
  116. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今回の案が通りましても、教育に関しては教育基本法が優先いたします。教育基本法においては、不当な干渉を避けるといっておりまするから、どういう規則があろうと、不当な干渉はいたしません。
  117. 野原覺

    ○野原委員 とんでもないことです。これはちょっと頭を冷して勉強していただかなければ困りますな、提案をしておって。これはすでにあっちこっちからの反撃が第五十二条、第十六条、その他至るところにあるわけでありますが、私はこれらの点は逐条審議の際にお譲りいたしましょう。その際に私どもの疑念を解明できるように、一つ十分なる御研さんを要請いたします。  そこで私が最も問題にいたしますのは、改正法の第十九条の3、これは教育に対する考え方が一体那辺にあるか、私どもには全く驚きにたえぬ条文が出されておる。指導主事は、上司の命を受けると出ておる。新しい教育がなされて、アメリカ教育使節団の勧告はともかくとしても、この新教育になって参りましてから、こういったような考え方を教育の面から抹殺しなければ、官僚教育統制に堕する、上から下に命令をするというような行き方じゃ困るというので、こういう教育委員会とかあるいは教育民主化とかいうことがやかましく叫ばれてきたにもかかわらず、おくめんもなくそういうような言葉が出ておるのであります。これは現在の法文にはそういう文句はないはずです。お調べいただけばわかるのでございますが、ない。  そこで私が大臣最後に要請いたしたい点は、これらの点でどう考えても、政府から出された今回の法案は、中央集権教育自主性阻害、教育中立性阻害、おそるべき内容のものであって、これは教育の完全なる逆コースであります。反動的提案であります。これは一つ十分お考えになった上で、さっそく撤回せよといっても、政党というところはなかなかそう簡単に参らぬでしょうけれども、しかし一部修正に応ずるくらいの御用意はあってしかるべきではないかと思います。  以上申し上げて、どうも先ほどから坂田君があせっているようでございますから、私のきわめて簡単な質問を終りたいと思います。  そこで委員長、次によろしゅうございますね。
  118. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 今大臣がいなくなるんだが……。
  119. 野原覺

    ○野原委員 やむを得ませんから、それでは給食についての質疑に関しては、あとで大臣の御所見を聞くことにして了解します。     —————————————
  120. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 清瀬文部大臣が参議院の方に出席を要求されておりますので、大臣なしでやりますが、いいですか。   〔「いいです」と呼ぶ者あり〕
  121. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 では大臣どうぞ。  次に去る三月三十日の委員会におきまして、野原委員より質疑を留保されております学校給食について、質疑に入りたいと存じます。つきましては、本件について、日本給食会常務理事大野=毅君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお先日野原委員より要求のありました資料は、本日提出されました。  それではこれより質疑に入ります。野原覺君。
  123. 野原覺

    ○野原委員 私の要求いたしました資料が手元に来ておりません。配付していただきたい。——資料がただいま手元に来たばかりですので、私も十分これをそしゃくできないままに質問いたしますが、資料をお出しになった局長なり大野参考人から、簡潔な御説明を付加してもらいたい。
  124. 小林行雄

    小林(行)政府委員 お配り申し上げました御要求の資料は、現在の給食会の方で調製いたしたものでございます。文部省としても拝見はいたしましたけれども、この内容については、特別に文部省で指示をいたしたものではございません。ただ先般御要求のございました点の中で、配給対象人員については、給食会の方で東京地検の方に書類を提出したままになっておりますので、ここに加えてございません。それでは、給食会の常務理事がおられますけれども、かわって私から簡単に御説明申し上げます。  第一の、事務所の建築資金についてでございますが、これは項目を五つばかり分けてございます。一は、従来から給食会の事務所は非常に手狭でもあるし、また府県その他からの連絡、あるいは関係者の出入り等がございますために非常に不便な状況であったのでございます。従って、適当な時期に何とか新しい事務所を建設すべきであるという意見が非常に強かったわけでございます。昭和二十八年の五月の理事会で、役員会として初めて事務所を建設すべきであるという申し合せができたわけでございます。この申し合せに基きまして、給食会の評議員が全国の給食課長でございますので、二十九年六月の評議員会で、その資金として、価格調整金約四千万円の中から一千万円を、府県に返した分より醵出してもらうという決定ができたわけでございます。その決定に基いて、各府県でそれぞれ教育長その他の関係者の承認を得て寄付されたものでございます。それから、なお当時は木造二階の事務所の建設計画であったわけでございますが、防火地帯でもございますし、また給食会が漸次拡充されてきておりますので、コンクリートの三階建にすべきであるという強い意見がございまして、そのために増加すべき建築の金額についても、前回同様御寄付を願うということになったわけでございまして、これも各府県の主管課長がそれぞれ府県の教育長承認を得て寄付されたものでございます。追加の寄付の方は約八百五十万円を寄贈されたものでございます。  それから第二の資料は、返還金の金額と醵出金と申しますか、寄贈金の一応の配分の額でございますが、第二表は、二十八年度以前の価格調整金の分でございまして、先ほど御説明申しました四千百万円、このうちからちょうど一千万を寄贈されたものでございます。  それから第三表は、昭和二十八年度以後、三十年度以前の価格調整金の返還の資料でございまして、二千九百七十万円のうちから八百五十万円が寄贈されたものでございます。  それから第四表は、給食用脱脂ミルクの年度別、各府県別の配分一覧表でございます。二十八年度から二十九年、三十年、三カ年にわたって各府県にどれだけ配分されたかという資料でございます。  それからその次の表は事故品払い下げ業者、これは現在までに学校給食会で申請を受け付けておる事故品払い下げ業者でございます。  その次の表はミルクの輸入実績、これは二十八年度一千九十七万七千四十ポンド、二十九年度が二千二百一万一千二百七十八ポンド、三十年度が三千二百九十万二千九百五十六ポンド、こういう数量でございます。  それからその下の表は、日本学校給食会で二十八年度以降実際に事故品が生じましたものを、どういった業者にどれだけの数量をどれだけの価格で払い下げしたかという資料でございます。  簡単でございますが以上でございます。
  125. 野原覺

    ○野原委員 そこで、一つきわめて簡単明瞭にお尋ねをいたします。事務所建築資金として、ただいま承わりますと一千八百五十万円の寄付金を仰いでおるのでありますが、この一千八百五十万円はどういうような金に使ったか、まだ残っているのか、使ったのか、使ったとすればその内訳を御説明願いたい。
  126. 大野こう毅

    ○大野参考人 申し上げます。この数字は、失礼でありますが大体にとどめた方がよろしいと思いますが、目下進行中でありますので、建築費に一千百十五万円、買いました土地代が百七十九万円、現在までの設備費が大体百三十万円、事務費が五十五万円、役職員の退職金が三百四十万円、予備費がただいまのところ約五十万円、こういうふうな状態になっております。目下設備等やりつつありますので、まだ結末がついておらないのであります。全体の千八百六十九万円と申しますのは、十九万円くらいの利子が千八百五十万円に付加されておりますので、そういう額になっております。
  127. 野原覺

    ○野原委員 建築費が千百十五万円、土地代が百七十九万円、設備費が百三十万円、こういう説明。事務費の五十五万円というのは一体何です。こういう仰いだ寄付金から事務費を出すということは、学校給食会の定款にもない。これは一体何です。
  128. 大野こう毅

    ○大野参考人 建物を建てます関係で設計をやるわけでありますが、最初は木造の予定でやって、次にはコンクリートの二階建、あとから三階になるというように、幾たびか設計が変っておるのであります。そういったような設計をやるにつきましてはたびたび青写真そのほかの写真をとりまして、それを役員会で検討いたさなければなりませんので、そういったような費用、それから建物を建てますにつきましては、大体五月ごろから着手したのでありますが、コンクリートでありますので、特に基礎工事等コンクリートの打ち上げの間は目を離さずこれを監督しておりませんと、設計通りやるかどうかわかりませんので、そういったような監督の謝金、それから落成式というようなもの、これも地方の評議員等から、せっかくやるなら盛大にやってもらいたいというふうな要望もありまして、落成式に要した費用、そういったような費用を全部まとめましてこれを事務費というふうに使っていったわけであります。
  129. 野原覺

    ○野原委員 どうもあなたの常識と私の常識には大きな食い違いがあるのです。建築におきまして、青写真代とかそういう監督費用というものはすべて建築費として計上すべきものなんです。これは書類が検察庁にあるようですから、実際の帳面づらがこうなっておるか私は見ておりませんが、これはたれが考えても建築費の中に入るべきものなんです。これを事務費にしたというのですから、これは速記録に残りますからあとで問題になりますよ。率直に言って下さい。一体落成式にどれだけ使いましたか。落成式典は盛大にやったというがどれだけですか。
  130. 大野こう毅

    ○大野参考人 ただいま落成式に要しました費用の精算の書類を持っておりませんので、はっきり申し上げられませんが、大体五十万円はかかりませんので、またかけてはならない。しかし設備等を要しましたので、全体をやりくりいたしましてたしか三十万円前後だと思っておりますが、はなはだ申訳ありませんが、その一々を見ればわかるのでありますけれども、ただいま持っておりませんので、その程度でお許しを願いたいと思います。
  131. 野原覺

    ○野原委員 常務理事答弁とも思えません。私がどういうような金を一体どういう面に使ったか調べてくれという質問をしてからも相当期間がたっている。何円何十銭までは聞きたくもありませんが、落成式に幾ら要ったかというくらいは、これは調べなくても、あなた常務理事ですから、給食会を代表される方ですし、また管理局長としても答弁ができないというのはおかしいです。調べなければ三十万円であったかどうか言えません、こういう話ですが、そうじゃないでしょう。もっと要っているでしょう。もっと要っているが、しかし落成式にそんなに使ったのでは格好がつかないというので、そう言っておるのじゃないか。これも一つあなたが答弁できなければ、正確なところを御答弁願いたいのであります。  こういうように、実はこれだけ尋ねただけでも非常な疑いを私ども持たざるを得ない。そこで次にお尋ねしたいことは、第二十二国会ですか、財団法人学校給食会が特殊法人学校給食会に切りかえになったとき、退職金を三百四十万円出したというのでございますが、こうして都道府県から巻き上げた寄付で退職金というものは出さなければならぬようなことに財団人の学校給食会はなっていたのかね。これは管理局長にお尋ねします。
  132. 小林行雄

    小林(行)政府委員 特殊法人に切りかわります際に、従来の勤続年数を新しい特殊法人が受け継ぐか、あるいは受け継がないかということにつきましては、いろいろ問題がございました。従来の財団法人日本学校給食会が特殊法人に切りかわります際には、この勤続年数を引き継がないとはっきりは言っておりませんけれども、引き継ぐという積極的な規定を法律にいたしておりませんので、これは当然切り捨てといった解釈を実はいたしたのでございます。従ってそのときに退職金を出すことは勤続年数を切り捨てることでありますから、至当であろうと文部省としても考えたわけであります。これは一応整理退職に該当するものと考えまして、国家公務員の整理退職に関する法律の規定を準用して、大体退職金の金額をきめたわけでございます。
  133. 野原覺

    ○野原委員 退職金を出すことは至当であろうと考えたことはともかくとして、都道府県から取り立てたこういう寄付金で退職金を出さなければならなかったのかと聞いておる。退職金は出さなくちゃならぬ、それはそうしましょう。出さなければならぬのはいいですが、一体文部省はなぜ考えなかったのか、都道府県が寄付しなかったらどうするつもりです。それを聞いておる。都道府県の寄付で出さなければならぬものかどうかということを聞いておる。いかがですか。
  134. 小林行雄

    小林(行)政府委員 文部省としては退職金を出すことが至当であると実は考えたわけでありますが、もちろんただいまお尋ねのございましたように、寄付はこれは文部省なり日本学校給食会が強制したわけではございませんので、寄付者の方でこれに賛成をしないということがあって、寄付が予定通り集まらなければ、この退職金は一応支給することができない。あるいは金額が少くなればそれは当然減ってくる。整理退職の基準に合致しない金額の退職金を支給する以外に方法はなかったと思います。
  135. 野原覺

    ○野原委員 寄付があったから退職金の基準の通りに支給した、寄付がなければ出さないでそのままにいこう、これはそういうことでしたか。
  136. 小林行雄

    小林(行)政府委員 実は日本学校給食会法が成立いたしましたときにも、それ以前の御審議のときにも、人間についてはできるだけ考慮してやるようにというような御意見も実はあったのであります。その点につきまして文部省としても法律に退職金に関する規定あるいは退職に際しての勤続年限の規定を入れるのも一つ方法考えておったわけでありますが、現実には日本学校給食会法にはこれは入っておりませんので、退職金を出すことは至当であったと文部省としても考えておるわけであります。ただもし府県からそれだけの金額が寄付されなければ、これはやむを得ない措置として、基準よりは低い金額で措置する以外に方法はなかったと考えております。
  137. 野原覺

    ○野原委員 これは局長大へんな問題なんです。私はあなたをどこまでも追究しようとは考えませんが、しかし非常な疑惑を持ちます。あなたの今の御答弁を聞いても、退職したら退職金を出さなければならぬものですから、学校給食会の職員に対して退職金を出す場合に、寄付があれば出すのだ、寄付がなければ出さぬのだ、こういうようなずさんな予算というか、会計というか、それは聞いたことがない。その一つだけ聞いてもいかに学校給食会がでたらめであったかがわかる、一体何たることですか、考えてもらわなければならぬことですよ。当然責任者として、寄付があれば出す、なければ出さぬ、寄付が少かったら少いのだ、そういうようなことで一体日本の全学童の給食の元締めの運営ができるかということを私は申し上げたいのです。そこで三百四十万円だけでしたか、これに付加しておりませんか。退職金はこれぽっきりですか。
  138. 大野こう毅

    ○大野参考人 この上に約十二万入っております。これは醵出金の額を申し上げたわけでありますが、三十年度の四・九の間は財団時代でありましたけれども、せんだって申し上げましたように、その間の事務は、一切国が全額補助でありましたので、その中に退職積立金として、一定の率で政府予算を積み立てておられました。それが四・九の間に十二万ありました。それは解散と同時に、その十二万ではあまりに少いというので、地方の方々が非常に同情されまして、ただいまのような工合になったわけです。その十二万何千という数字もはっきり覚えておりませんが、大体そういうような額であったと思います。
  139. 野原覺

    ○野原委員 職員は何人で分けたかということと、一人の最高額は、それは勤務年限何年で、何円であったかお示しを願いたい。
  140. 大野こう毅

    ○大野参考人 その書類も実は地検の方に参っておりますので、正確な数を今とらえられないのでありますが、大体一番長い職員はほぼ十年だったと思っております。それで六、七十万円、六十万台と覚えておりますが、資料が今ありませんので……。大体そういう状態であったと思います。
  141. 野原覺

    ○野原委員 人数は……。
  142. 大野こう毅

    ○大野参考人 十二人です。
  143. 野原覺

    ○野原委員 退職金を支払った人数は……。
  144. 大野こう毅

    ○大野参考人 支払った人の数は、これも書類がいっておりますのでわかりませんが、退職金または記念品なんかを差し上げました者なんかも一緒にいたしますと、約六、七十人になると思います。
  145. 野原覺

    ○野原委員 六、七十人ということで、最高は十年、一人六、七十万円だ。これが一体寄付に合っておるかどうかも問題であります。書類がないからということですが、そこでお尋ねしたいのはこれからです。私が疑問に思っておるのはこれからなんですが、一千八百五十万円の寄付を仰いだわけですが、一千万円は昭和二十九年度の価格調整金約四千万円のうちからいただいた。全国学校給食主管課長の意見として、その申し合せがあったからもらった。強制寄付ではさらさらございません、こういうことです。そこで残りの八百五十万円は、昭和三十年度のどの金から捻出したものですか。これは正直におっしゃっていただきたい。
  146. 大野こう毅

    ○大野参考人 あとの八百五十万円と申しますのは、価格調整金でありまして、つまりせんだってお答えいたしましたように、必要経費に、損失を補填するとか、あるいは価格の変動がなるべく起きないようにするために、ある金額を加えておったわけでありますが、そういう価格調整金でありまして、その価格調整金は、大体二十九年度、三十年度、主としてそういうふうになって参ると思います。三十年度のものは、その間にたまっておりました価格調整金の中から出したわけであります。
  147. 野原覺

    ○野原委員 価格調整金と言えば合法的、合理的に聞えますが、価格調整金というのはもっとはっきりいうと何ですか。
  148. 大野こう毅

    ○大野参考人 実はこれは私どもの取引銀行の注意もありまして、もしこういう商売ではないが商売のようなことをやっておって、インポーターに払う経費と、それから輸送業者に払う経費、保管料等必要経費だけでぴしゃっと経営をいたしますと、何か本会の損失のときに一体どうするか。国が補償してくれればいいが、おそらく国は補償しないだろうというふうなことも考えられますし、子供に大きな負担をかけたり、あるいはそれがために、価格に大きな変動があるのも困りますので、実は銀行の方がやはりそれに対してある調整金のようなものをプラスしておかないと非常に困りはせぬか、実はそれが一つの金融してくれる条件でもあったのでありますが、そういう関係でそれを入れたのであります。たえとば内地産を買うことが、内地の酪農振興上非常に大事な政策のようでありましても、内地産はずいぶん高いのであります。もちろん国の補助はありますけれども、補助では追っつきませんので、この価格調整金をそれに持って参りますというと、それでもって子供は値段を上げないで飲める。あるいはまたただいまアメリカのCCCから二セントで政府の御尽力でいただいておりますが、これが五セント、六セントとなると、非常に高くなる。そういう場合も、なるべくそのときに渡す値段を変えないようにするために、価格を調整するためと、前申しました本会の負担しなければならぬ損失をときどき子供におっつけるのはかわいそうでありますので、その間にプールしていこう、そういうために価格調整並びに損失補填金というものを作ってやっていたわけであります。そういう金です。
  149. 野原覺

    ○野原委員 そうすると、その価格調整金というのは予算にありますね。昭和二十九年度は四千万円でしたか。それから昭和三十年度の価格調整金というのは幾らでしたか、お尋ねします。
  150. 大野こう毅

    ○大野参考人 予算には、いつでも価格調整金というのはあげておりませんので、予算面に出て参りますのは、輸入商社に支払います輸入代金、それから保管料、それから輸送業者の輸送料、そのほか雑費といったようなものが計算されております。収入の方では、もちろん子供から吸い上げられて学校から納めてくるミルク代金でありますが、このミルク代の中に今のあるいは一円とか二円というわずかの調整金が一ポンドについて加ってきておるわけでありまして、予算では別にそういうのを幾らということは立てておりません。
  151. 野原覺

    ○野原委員 予算にないということであれば、これはどういうようにして価格調整金を集められますか。これは剰余金じゃないんでしょう。つまりそういうあなた方が仕事をしていく上に、どうしてもこれだけないと銀行から信用がないとかなんとかいうことだということになると、これは毎年度どこからかその金をもらってこなくちゃならぬ。都道府県が出したことになっておるのですが、これは毎年度そうやっておったのですか。その点もう少しはっきり御答弁願いたい。
  152. 大野こう毅

    ○大野参考人 地方の給食会から代金が入って参りますと、その代金の中にはほんとうのミルク代金と価格調整金分とあるわけでありますので、私どもの帳簿におきまして、ミルク代金と価格調整金とはっきり二つに分けておきまして、調整金はどうなっていくかをわかるように経理をして参ったわけであります。もちろんこれは価格の中に入っているから、価格自体と考えてもいいかもしれませんが、私どもはいろいろな事情からはっきり分けまして、帳簿は別になって仕訳して入ることになっております。
  153. 野原覺

    ○野原委員 そうなると、毎月々々金が入ってくる。入ってくる中には本物の給食代と調整金があるんだ。その調整金は年度末に集計して、何年度は価格調整金が幾ら、こういうふうにしているんだ、こういうことですか。
  154. 大野こう毅

    ○大野参考人 そういうわけであります。
  155. 野原覺

    ○野原委員 そうしたら、その年度ごとに何千万円か集まった価格調整金の処理はどうしておりますか。年度ごとに解決しているのか、繰り越しているのか、どうですか。
  156. 大野こう毅

    ○大野参考人 年度末に大体価格調整金がはっきり出て参りますし、あるいは年度途中でも試算をするわけでありますが、その場合、その金については役員会を開いて意見を聞くわけであります。そうしてそれをみな返してしまうと、いわゆる手持ちが全然なくなります。ただいま申しましたように保管料、輸送費、あるいは輸入業者に払いまして、それがありませんとゼロという状態になります。手持ちが全然ありませんと、銀行の方の金融を得ますにも不便であるし、そのほか資金繰りの上で非常な困難を来たしますので、ある額は返さぬで持っているがよかろうというような御意見で、ある額は返さぬで持っており、また持っているのも、ただ運転資金繰りの必要のみならず、値段が上りそうだという見通しがありますれば、なおさらそこにある額を保留しておくがよかろうという額を残す、そういうことにいたしまして、ただいま申しましたように返していったわけであります。
  157. 野原覺

    ○野原委員 そうすると、価格調整金の実態は、都道府県都道府県予算から出したものなのか、末端にいきますと、やはり子供が一人々々何がしかのものを負担して、積り積った金額になっているものなのか、その辺はどうなっておりますか。
  158. 大野こう毅

    ○大野参考人 ミルク代金につきましては、私どもはオン・レール渡しということにきめられておりますので、それぞれ府県の指定されましたオン・レールでもって引き渡すわけでありますが、引き渡されました上は、地方の給食会がそれを受け取りまして、学校に運んでいく、そういうわけで、オン・レール渡し以下学校まで参ります運賃その他いろいろな掛りがかかりますので、学校にいく価格はいろいろ違っていると思いますから、私どもはっきりわかりませんが、教育委員会の方では、このきめられた価格をもって学校から受け取る。その受け取る価格の中には当然二十円いただくわけですから、子供からやはり価格調整金なるものが出てくる、父兄から出てくるということは、その通りだと思います。
  159. 野原覺

    ○野原委員 実態がわからないなんという不見識なことはないはずです。常務理事ですから、そういうことは知ってるはずです。だからあなたが最後におっしゃった子供の金だろう、それはその通りです。都道府県予算にはありません。そこでこれは子供が払い過ごしの金なのです。結局払い過ごしの金一千万円か二千万円か、あるいは八百五十万円というものを、一体どなたの権限で処理されたのかわからぬ。これは子供の金なのですから、その子供の金を一体どういう法律によって処分していらっしゃるのか。これはどなたの権限でなされるものですか、お伺いいたしたい。
  160. 大野こう毅

    ○大野参考人 ただいまのように結局子供から出るのでありますが、それは考え方によりますと、価格差というわけではございませんので、純粋の価格差でありました場合には、せんだって申し上げましたように、二十九年の四月から四十円になったものが八月末に二十七円になりましたので、十三円の差額はそのまま返しておるのでありますから、そういう価格差であります。そうではなしに、ミルク代金として二十円を請求しておりますので、それを分析しますと、今申しましたように、必要経費以上に今の調整金が入っておるわけでありますが、それは別に経理しておるのでありまして、価格差ではございませんので、それを返すか返さないか、あるいはこうしようということを役員会できめまして、そうして給食を管理しております教育長承認も得て処理して参ったのでありますので、さしつかえはなかろうと私どもは思っておるわけであります。
  161. 野原覺

    ○野原委員 主管課長会議において、二のところを見ますと、全国学校給食主管課長の意見として一千万円が出た。五のところを見ますと、教育長その他府県の関係者の承認を得て八百五十万円をもらった、こう書いておりますから、強制寄付ではございません。しかしその実態は糾明しなければわかりません。私の聞いたところでは、これは一定の比率であなたの方から表まで出ておりますから、これは主観的な寄付ということであれば、その都道府県の任意に出した寄付とも考えられる。場合によってはゼロのところもなければならない。ところが一定のパーセンテージで、——そろばんははじいておりませんが、これは出されたものです。やはりこれはどう考えても強制寄付なんです。かりにそうじゃないと仮定しても、あなた方は一体主管課長、教育長がこの金を処分する権限がある、こう判断されて寄付を受けておられるのですか、それをお聞きしたいのです。
  162. 大野こう毅

    ○大野参考人 私どもは実際に相手にするものは給食会でありますが、その給食会の理事をやっておるのは主管課長でありまして、それが監督してやっておるわけであります。子供に返さなければならぬものならば当然返すというふうな判断は、そちらでやっておるわけでありまして、こちらのただいまお願いいたしました醵出金につきましては、いろいろお考えになったと思いますけれども、結局これを出しませんと、また子供に、しかも永久的に負担がかかる。せんだって申し上げましたので、繰り返すのは恐縮でありますが、文部省から追い出されて、転々としてあっちこっち事務所を変えておったわけでありまして、そのうちにだんだん人員がふえますし、借りようとすれば莫大な権利金がかかる。また経常費も出さなければならぬ。これは結局子供に大きな負担をかけるから、まあ長い間出すものを一気に出す方がいいのではないかという話がありまして、そういうふうなことで出していただいたのでありまして、私どもは商売をやっておりませんので、子供に奉仕する気持でおりますので、主管課長の方々もそういうふうなお考えで、一々子供の方に意見を聞いて処理することはできないだろうとお考えになったものと思います。
  163. 野原覺

    ○野原委員 建物がないから困るというあなたのお気持は、私は同情いたします。それはわかるのですが、都道府県教育長や主管課長に寄付を求めたときに、その権限があると考えて求められたかということを聞いておる。これはどうですか、権限があると思っておりますか、これだけを聞きたい。こういう価格調整金、子供の払い過ごしの金は、都道府県の給食会の会長というか、教育長というか、給食会法によれば支部長、それが処分する権限があると考えて、受けたのかどうかということなんです。それを聞いておる。これを答弁して下さればいい。
  164. 大野こう毅

    ○大野参考人 結局は子供の金でありますから、子供あるいは親の方が寄付される権限があるのだろうと思いますが、一々照会もできないだろうし、そこで主管課長、教育長等が、これならば子供も親も喜んで寄付するだろうというような心持をそんたくしてやられたのだろうと思います。私ども法律権限というふうな問題につきましては、私の専攻しました学問と違っておりますので、はなはだ申しわけありませんが、法律的な権限ということにつきましては、もう少し勉強さしていただきたいと思います。
  165. 野原覺

    ○野原委員 そういう勉強しなければわからぬようなことを、平然となさっては困る。大へんな問題です。私が質問をしてお答えになることができない、そういうことをやられては困るじゃないですか。それは給食会の建物がない、運営に困るというならば、子供の全体のため日本の国の給食会でございますから、合法的な金を使ったらいい。とんでもない金、子供の払い過ごしの金を権限のないものから寄付してもらって、こそこそとやるから、いつまでも疑惑が残る。この点を一体あなたはどう考えておるか。これは権限はありません。大へんな問題ですよ。私は某府県の教育長に言ったのです。君らは越権じゃないか。一体君らは学校のPTAその他の役員の許可を得たのか。得ていない。そんなことをやられては困る。私は府県会で問題にしようと思ったのだけれども、一応あなたの方に尋ねてみなければできぬから、これはいまだ府県会まで発展しておりませんが、これはえらいことですよ。一体そういうえらいことをさせるようなことを学校給食会が要求すること自体が、とんでもない話である。私はただいま申したように、合法的な金を使ったらいい。建物が足りないから、建物を建てるのにこれだけの金が要るのだと言えば、都道府県教育長から学校長に行き、子供も了解して、自分たちの給食のための建物を国が予算を出せぬのならば、そういう仕組みになっているならば、一円なり二円なりというものが集まって意義のあるものが建つじゃありませんか。一体給食会の運営を何と考えてやってこられたのか、はなはだどうも私は解せないのであります。  解せないままに私はこれで質問を終りますが、最後に、八百五十万円は価格調整金と申しましたけれども、これは価格調整金にしろ何にしろ、ミルクの価格差のためにこれは集まった金であると聞いておりますが、これは私の聞き違いなのか、真相はどうなんですか。八百五十万円は何とも書いてない。あなたの報告を見ると、調整金とも何ともしていない。
  166. 大野こう毅

    ○大野参考人 八百五十万円の金は、先ほど申しました価格調整金の金でありまして、当時計算いたしまして、四千五百万円ぐらいはどうしても持っていないと、運転あるいは金融に困るというので、それを留保しまして、あとの二千九百万円はよかろうというので、返したのでありまして、価格差ではございません。
  167. 野原覺

    ○野原委員 もう一点は、あなたがある人に談話を発表しておるのですが、万年筆なども贈っていますけれども、これはもちろん役員会でやったのだろうと思いますが、そういうような金の使途にも規約があります。それから寄付を受けたり、あるいはいろいろなことを処理する場合には、たとえば八百五十万円の寄付を受けた、これは時の文部大臣承認を与えておりましょうね。これは念のためにお聞きします。時の文部大臣承認をとったでしょうね。いかがですか。
  168. 大野こう毅

    ○大野参考人 財団時代の問題でありますが、財団時代におきましての文部大臣承認を要する事項というのは大体きめられておりまして、そのきめられたこと以外のことは文部大臣承認は必要ないのでありまして、ただいまの場合は文部大臣承認はいただいておらないと思います。
  169. 野原覺

    ○野原委員 非常に問題があるようであります。私は一応この質問は打ち切りますが、学校給食会に対しては実は幾多の疑惑を各方面が持っておりまして、遺憾なことに子供の給食のための元締めになる書類がいまだに検察庁から返ってこないという不祥事態も起しているのであります。こういう点について、私どもは、給食会の役員諸君がもっと考えて、明朗な日本学校給食会であるような努力と誠意を示してもらわなければ、他日給食会の役員の方々の責任糾弾ということに当委員会としても発展せざるを得ないのでありますから、この点を要望いたしまして、一応質疑を打ち切ります。
  170. 河野正

    河野(正)委員 資料でございますが、この点は委員長の方でお取り計らいを願いたいと思うのでございます。事故品の払い下げにつきましてはいろいろな理由があり、あるいは保健所等の検査その他によりまして、加工品あるいは飼料というようなことで払い下げされたと思いますが、その中で問題になりますのは、加工用に流された場合がいろいろ問題になる点が多いと思うわけでございます。この点は食品衛生法の関係もございますので、加工用に回されたにつきましての理由と申しますか、保健所等でいろいろ検査等をやりまして、これは加工用には適するというような理由があると思うのでございますが、その辺の事情を資料として御提出願いたい。その辺を一つ委員長の方でお取り計らい願いたいと思います。
  171. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 ただいま河野委員から御要求の資料につきましてはよろしくお願いいたします。     —————————————
  172. 佐藤觀次郎

    ○佐藤委員長 この際昨日の委員会において御報告いたしました公述人の選定の結果につきまして、多少変更がございますので御了承を願いたいと存じます。すなわち公述人として予定いたしておりました吉村正君及び宮沢八十二君の両君を池田進君及び尾形猛男君の両君に変更することに、委員長及び理事において協議決定いたしましたので、御了承を願います。  本日はこの程度とし、次会は明後六日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十四分散会