○三井説明員 当面の管理者として私から
答弁申し上げます。おっしゃる
通り正倉院の御物は千何百年の
日本の文化の代表的遺産でありまして、私
どももこれの管理につきましては日夜苦心いたしております。そのためには宮内庁が独善的になってもいけませんので、安倍能成会長から成ります専門家をもって構成しております正倉院評議会という諮問機関をも設けまして、年々の行事その他管理についていろいろ御相談しましたり、御
意見を承わっておるようなわけでございます。それでこの道路問題につきましては、今おっしゃいました
通りの経過でございますが、私
どももその道路ができそうだということを昭和二十九年春ごろ存じまして、正倉院の裏の方を通ることはでき得れば避けていただきたいものと思いまして、いろいろ文化財当局の方にもお話してみたことがございます。ところが文化財当局でもいろいろと努力して下さったようでございますけれ
ども、ただいま正倉院の北側、西側、東側と三万回っております道が昔宮内庁の土地だったのでございますけれ
ども、その後国有地との交換などでただいまは全く公道になっておるわけでございます。それで公道になっておる道に山の方から観光道路が続くということがかたい法律的根拠をもって拒否できるものかどうか、そういう点も私
ども研究もいたしたのでございますが、なかなかはっきりした見解が私
どもとしては立ちにくかったのでございます。それで窓口である文化財当局の方に御研究なり御協力をお願いするよりほかないと思っておったのでございますが、地元の知事、市長その他の方の非常な御好意もありまして、必ずこの条件を実行させるからという御確約もございましたし、私
どもとして決して好ましいことではありませんけれ
ども、その確約条項が実行されるならば、まず塵埃の被害をなくすることも必ずしも不可能じゃない、そういう確信を持ちまして、その確約の条項の実行を絶対条件としましてやむを得ないという御返事をしたわけでございます。ところがその後正倉院に一番近い四百メートルの路線が変更になりまして、山手の高い方にその道がつくことになりましたので、最初の案と違います点は、位置が東北の方へ斜めに高くなりまして、東北風の強いようなときには、当初の路線から見ますと、被害がありそうに思えるわけでございます。ただ私
どもも抽象的に言っているのじゃありませんので、実際に塵埃の調査もその後ずっとやっておりますけれ
ども、ただここに数字的にはっきり塵埃がどれだけ道路のためにふえたか、またふえた塵埃がどういう影響を宝物に及ぼすかというような科学的な詳細なことを立証することがなかなかむずかしいものでございますから、ただいまは
文化財保護委員会と御一緒になっていろいろ科学的調査をやっておりますけれ
ども、まず今のところはっきりした結論は得られませんが、今申し上げました
通り、その道が四百メートルの部分が高くなっております点から想像しまして、当初の路線から見て害が多かろう、こう思ったものでありますから、さらに当初の案以上に、私
どもはできればこの道路ができないようにしたいという念は、最初よりはより強くなったわけでございます。しかしその法律上の解釈なり行政の取扱いとしまして、やむを得ず認めざるを得ないような
状態ならば、
先ほどから申し上げました確約条項をさらに強化していただく。強化するといいますのは、その舗装の部分を、さらに新しくできます四百メートルのうち二百メートル、半分ぐらいはさらにいい舗装をしていただく。それから東側の公道の方は、絶対通ってもらいたくないということを、それにまた付加しまして、なお厳重に約束していただきたい。ところが会社は御
承知のように、今までのところを見ますと、どうも私
どもは不安にたえないような会社なものでございますから、それの確約をしましても実行されなければ何にもなりませんので、その点を
文化財保護委員会なりその他地方の知事さんなり市長さんなりの特に御協力を願いたいと思っているわけでございまして、
文化財保護委員会とそう非常に違った
意見だとも思っておりませんが、ただいま申し上げたことが正直思っている
通りでございます。