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1956-03-13 第24回国会 衆議院 文教委員会 第14号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十一年三月十三日(火曜日) 午前十一時十九分
開議
出席委員
委員長
佐藤觀次郎
君
理事
赤城
宗徳
君
理事
加藤
精三
君
理事
高村
坂彦君
理事
坂田
道太
君
理事
米田 吉盛君
理事
鈴木 義男君
理事
山崎
始男
君 伊東 岩男君 稻葉 修君 久野
忠治
君 田中
久雄
君 並木 芳雄君 町村 金五君 河野 正君 木下 哲君 小牧 次生君
辻原
弘市君
野原
覺君 平田 ヒデ君
小林
信一
君
出席政府委員
文部政務次官
竹尾 弌君
文部事務官
(
初等中等教育
局長
) 緒方
信一
君
文部事務官
(
管理局長
)
小林
行雄君
文化財保護委員
会委員長
高橋誠一郎
君
文部事務官
(
文化財保護委
員会事務局長
)
岡田
孝平君
委員外
の
出席者
文部事務官
(
文化財保護委
員会事務局記念
物課長
) 平間 修君 専 門 員 石井つとむ君 ――
―――――――――――
三月十日
委員加藤精三
君
辞任
につき、その
補欠
として高
岡大輔
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同日
委員高岡大輔
君
辞任
につき、その
補欠
として加
藤精三
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同月十三日
委員小松幹
君
辞任
につき、その
補欠
として
辻原
弘市君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同日
委員高木松吉
君
辞任
につき、その
補欠
として久
野忠治
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同日
理事加藤精三
君同月十日
委員辞任
につき、その
補欠
として同君が
理事
に当選した。 三月九日
地方教育行政
の
組織
及び
運営
に関する
法律案
(
内閣提出
第一〇五号)
地方教育行政
の
組織
及び
運営
に関する
法律
の施 行に伴う
関係法律
の整理に関する
法律案
(
内閣
提出
第一〇六号) 同月八日
教育職員免許法施行法
の一部
改正
に関する
請願
(
中垣國男
君
紹介
)(第一一五六号) 同(
堀内一雄
君
紹介
)(第一二四七号) 同(
大石武一
君
紹介
)(第一二四八号)
青年学級運営費国庫補助増額
に関する
請願
(坂
田道太
君
紹介
)(第一一八二号) 同(
小平久雄
君
紹介
)(第一二〇四号)
写真技能師法制定
に関する
請願
(
菅野和太郎
君
紹介
)(第一一九九号) 同(
野田武夫
君
紹介
)(第一二〇〇号) 同(
今井耕
君
紹介
)(第一二〇一号) 同(
吉川久衛
君
紹介
)(第一二〇二号) 同(
小坂善太郎
君
紹介
)(第一二〇三号) 同(
中村三之丞
君
紹介
)(第一二四六号) 教職員の
退職年金等
の
勤続年数通算
に関する請 願(
五島虎雄
君
紹介
)(第一二〇五号)
建国祭復活
に関する
請願
(
大久保留次郎
君紹 介)(第一二四九号)
地方教育委員会制度存続
に関する
請願
(
井谷正
吉君
紹介
)(第一二五〇号) の
審査
を本
委員会
に付託された。 同月十日
紀元節復活
に関する
陳情書外
二件 (第三四〇号) 同外五件 (第三六四号) 同( 第三九二号) 同(第 四一〇号) を本
委員会
に参考送付された。 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した案件
理事
の互選
義務教育費国庫負担法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第七四号)
国立
及び
公立
の
義務教育
諸
学校
の
児童
及び
生徒
の
災害補償
に関する
法律案
(
山崎始男
君外六名
提出
、
衆法
第八号)
文化財保護
に関する件 ――
―――――――――――
佐藤觀次郎
1
○
佐藤委員長
これより
会議
を開きます。 まず
国立
及び
公立
の
義務教育
諸
学校
の
児童
及び
生徒
の
災害補償
に関する
法律案
を
議題
といたします。その
提案理由
の
説明
を求めます。
山崎始男
君。
山崎始男
2
○
山崎
(始)
委員
ただいま
議題
となりました、
国立
及び
公立
の
義務教育
諸
学校
の
児童生徒
の
災害補償
に関する
法律案
につきまして、その
提案理由
の御
説明
を申し上げます。 およそ
国家隆昌
の基盤を
教育
に置かなければならないことは言うまでもないところでありますが、なかんずく
義務教育
における約千七百万人の
児童生徒
のすこやかな成長こそは
国民
全体の念願でありまして、
教育基本法
及び
児童憲章
に明示されておりますように常に留意せねばならぬところであります。 さて、
義務教育
に関しましては、憲法第二十六条第一項によれば「すべて
国民
は、
法律
の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく
教育
を受ける権利を有する。」と
規定
しており、さらにまた、第二項においては、「すべて
国民
は、
法律
の定めるところにより、その
保護
する子女に
普通教育
を受けさせる
義務
を負ふ。
義務教育
は、これを無償とする。」と
規定
しておりまして、
義務教育
について、特にその責務をうたつて重視しておるのであります。しかるに、一昨年来
児童生徒
の
災害
が頻々と報じられておりますのは、先刻御承知のところでありまして、特に昨年の
紫雲丸事件
や相模湖
事件
、三重の
水難事故
や
学校給食
の
集団中毒
など
記憶
に新しいものが多くあったのでございます。 新しい修学旅行や遠足に不安を抱いて行かなければならないことはまことに遺憾なことで、
義務教育
の諸
学校
で起きた
災害
の処置が父母の
負担
のままに放置されているということは実に忍びないところであり、
義務教育
の趣旨からもまた絶対に見のがすことのできないものだと存ずる次第でございます。 現在、
地方公共団体
においては、自主的な
補償策
が共済組合的なものとして全国的に広まりつつあるのでございますが、このことは父兄並びに
国民
がいかに
学校
における
災害
に強い
関心
を持ち、特にその対策の万全をこいねがっているかを端的に物語っているものだと存ずるのでございます。 従ってこのような
現状
におきまして、これをさらに一歩前進させ、
児童生徒
を
災害
から守るとともに、不幸にして
災害
を受けたならば、直ちに迅速かつ公正な
補償
を
国家
によって行うことが焦眉の急務であると信ずる次第でございます。 この
法律案
は、かような事情のもとにおきましてぜひとも必要と考えられる
災害補償
を国に行わせることを目的として立案いたしたものでございまして、その内容を簡単に御
説明
申し上げますと、第一にこの
法律
は、
義務教育
諸
学校
の
管理下
の
災害
について、
義務教育
の
特殊性
に基き、国はこれに対する
補償
を行う
責任
を有するのであるという立場に立っているのでございます。この場合、
学校
の
管理下
とは、
義務教育
諸
学校
の
児童生徒
が
当該学校
の
教育
または、監督もしくは
保護
を受けている場合をいうのでありますが、具体的には
政令
に譲っているのであります。 第二にこの
法律
による
災害
の
補償
の種類としては、
療養補償
、
障害補償
、
葬祭補償
、
遺族補償
、
打ち切り補償
を考えておりますが、
補償
は金銭による
補償
としております。
補償金額
は、
療養補償
については、原則として完全に治療するまでの費用を見ることに考えています。
遺族補償
につきましては、
中学校
を卒業して勤めに入った
労働者
が業務上死亡したとき
労働基準法
で保障されている
金額
に準ずることといたしました。
障害補償等
その他の
補償
につきましても、
中学校
を卒業して直ちに
労働
に従事した者が、
労働基準法
で保障される
金額
に準じて
補償
することにいたすよう考えています。 第三には、最初に申し上げましたように
補償
の
実施
は、
国家事務
でありまして、
文部大臣
が
最終責任者
でありますが、
公立
の
義務教育
諸
学校
については、
都道府県
の
教育委員会
が委任を受けて、その
補償
を
実施
するものとしておるのであります。 第四に、この
法律
による
補償
は、
災害
を受けた
児童生徒
が
社会保険
による
給付
を受けることができる場合には、その
給付
を受けるべき限度において
補償
は行わないようにいたしました。 第五に
補償
を受ける
手続
について申し上げますと、
公立
の
義務教育
諸
学校
の
管理下
で、
児童
または
生徒
が
災害
を受けたときは、本人またはその
遺族
が、
文部省令
で定める
補償申請書
を
学校長
及び市町村の
教育委員会
を経由して、
都道府県
の
教育委員会
に
提出
し、
委員会
は
政令
で定める
基準
に照らして
学校
の
管理下
における
災害
であるかどうか判定を行い、
補償金額
を決定し、
補償
をいたすのであります。これに不服の場合は
文部大臣
に
審査
の請求を行うことができることになるのであります。
国立
の場合もこれに準じております。 何とぞ、慎重御
審議
の上、すみやかに御可決下さるようお願いをいたします。
佐藤觀次郎
3
○
佐藤委員長
本案に関する
質疑
は追ってこれを行うことといたします。 —
——
——
——
——
——
——
佐藤觀次郎
4
○
佐藤委員長
次に
文教行政
について前会に引き続き
質疑
を行います。それでは、去る六日の
委員会
におきまして、
野原委員
より、
高橋文化財保護委員長
に対し、正
倉院裏
に
観光有料道路
が設けられた問題について
調査
を求め、すみやかにその結果を本
委員会
に
報告
するようにとの要求がございました。この際
高橋政府委員
よりその調宜
報告
を求めます。
高橋委員長
。
高橋誠一郎
5
○
高橋
(誠)
政府委員
宿題となっておりました点をお答え申し上げます。 第一の御
質問
は、昨年の二月八日に、
文化財保護委員会
は、この
道路
すなわち正
倉院北側
の
道路
が着工されているということを聞きながら、
道路
の完成する四月半ばごろまで二カ月以上放任したというのはどういうことかという御
質問
と存じます。この
会社
は、一たん行われました
知足院北側
における
佐伯良謙貫主
すなわち法隆寺の
貫主
との
土地売買契約
が解任されましたがために、初の
佐伯
さんは
売買
を承知しておられたのでありまするが、後になりましてこれを破棄せられましたので、
申請許可通り
の
道路
の
設置
が不可能となったのであります。それで
申請
の
予定道路
より
北側
約六十メートルの部分の
土地
を購入いたしまして、迂回する
道路
の新設に
着手
いたしたのであります。今までまっすぐに通っておりましたのを、北の方を迂回する
道路
に
着手
したのであります。
奈良
県の
教育委員会
の
口頭
によりまする
報告
によりまして、
文化財保護委員会
はこれを知りまして、
奈良
県
教育委員会
を通じまして、これは
無断
の
現状変更
でありますからして、直ちに
工事
を中止して
成規
の
手続
を経るよう
注意
いたしましたところが、正式に
現状変更
の
許可申請書
を
提出
いたしました。
委員会
がこれを受け取りましたのが三月三日であります。この
変更
は、
史跡
の
保存
に対します
影響
につきましては、先に
許可
せられました
道路
、すなわちまっすぐにつけまする
道路
と比べまして大きな相違はないのでありますが、新たに買収いたしました
土地
の地番などの
調査等
を行わしめましてまた直接
会社
を呼びまして、
工事
の中止と不誠意とを警告いたしたのであります。同時に、以前からの
関係者
をなお慎重に取り扱う必要上、正
倉院御物
に対しまする
影響いかん
をおもんばかりまして、再び
宮内庁
の意見を聞きますとともに、その他の
関係機関
と協議を重ねて検討しておったのでございます。その間に御指摘になりましたような時間が経過いたしたのでございます。第二の御
質問
は、すでに
許可
になっておる十分の九の
有料道路
は、二十八年から二十九年にかけて無
許可
で
工事
が始められているというが、どうかという御
質問
と存じます。この
現状変更
は、
昭和
二十八年初めごろ、
指定
はされておらないのでありますが、
肥鉄土
を採取、運搬いたしますために、従来の鋪道を広げまして、地はだが見え始めましてから問題になったのであります。すなわち掘っておりますところは、これは
指定地外
ではあったのでありますが、
奈良
市の方から見ましていかにもぶざまであるということで、
注意
を引いたところから問題になったのであります。この年の六月ごろに、
新聞紙上
及び
奈良
県
教育委員会
の
報告
に上りまして、われわれの
委員会
は初めてこれを知ったのであります。これは結果的に見まして
無断現状変更
であります。従ってこれが
無断
の
現状変更
であることは、その後再三
口頭
をもって
注意
を喚起いたしますとともに、
奈良
県
教育委員会
から
注意
されますまで
史跡
であることを知らなかったという
会社
の釈明と、今後の
文化財保護
の約束を信じまして、
史跡
にとって大きな
影響
がないと思われます方への
道路
の
設置
を勧告いたしたのであります。これはいわゆる
柳生街道
を
通り
まして遠回りをする道であります。これを勧奨したのでありますが、
会社
はこれを用いません。十月に至りまして、
肥鉄土運搬
とともに、
一般路線
を延長いたしまして
観光道路
としたい旨の
現状変更
の
申請
を行なったのであります。これは
東大寺大仏殿北側道路
に結ぶものでありまして、
史跡
の
保存
上好ましくないことを考慮いたしまして、
専門審議会
におきましても種々検討いたしました結果、二十九年三月、
申請通り
の
許可
はできない旨の通知をいたしました。開通することは無
許可
の
現状変更
となるとの警告を発したのであります。このわれわれ
委員会
の意思を知りました
会社
は、二十九年五月に至りまして、
大仏殿北側道路
に結ぶかわりに、すなわち
大仏殿
の
北側
を結びます
道路
を思いとどまりまして、先ほど申し上げましたこの
知足院北側
に新たに
道路
を開設いたしまして、正
倉院
の
北側
及び
西側道路
を連結するようあらためて
申請
して参ったのであります。この案につきましては
専門審議会
に諮りまして、同時にこの案は
奈良県知事
の
あっせん案
であって、鋪装その他の
制約条項
を確実に実行させ正
倉院
の
保護
に協力せしめるから認可を望む、こういう
知事
の副申を得ました。一方
宮内庁
から
確約条項
を
実施
するならば差しつかえない旨の
回答
を得ましたので、二十九年六月二十六日付をもってこの
現状変更
は
条件つき
で
許可
せられることとなったのであります。 それから第三の点でありまするが、これは七月一日から
保護法
の
罰則
は強化されたはずである、強化されない六月の最後の
保護委員会
が
許可
しておるが、これは間違いであるかどうか、こういう御
質問
と存じます。前に申しました
通り
、
専門審議会
からは五月二十日にやむを得ずとの答申があり、五月中旬
奈良県知事
、
奈良教育委員会委員長
の、また六月上旬には
奈良
県
県会議長
の来訪を受けまして、この問題につきまして将来を必ず保障するから
許可
せられたいという
申請
がありました。同時に
知事
から公文も受け取りましたので、
手続
が終り次第
許可
したものであります。ことさらに
改正法律
の
施行
前に
許可
するというような考えは全くなかったものであります。偶然とも申すべきものであります。 なおこの点は、
改正法律
の
施行日
以前または以後の
許可
に
かかわり
なく、すなわち
法律
が
改正
せられた後の
許可
であるか、前の
許可
であるかということに
かかわり
なく、行いました
現状変更
は二十八年から二十九年にかけてであるのでありまして、そこまで
改正法律
の
規定
中
罰則
であるとか
原状回復命令
であるとかいう
規定
は遡及できないことになっておるのでありまするから、その点においては違いはないことと存じます。この点を御了承願いたいと存じます。
佐藤觀次郎
6
○
佐藤委員長
質疑
の通告がありますので、これを許します。
野原覺
7
○
野原委員
ただいま
高橋委員長
から私の先日の
委員会
における
質問
に対する御
回答
があったのでありますが、ますますもって私は
疑惑
を深めずにおれないのであります。そこで私は何回も申し上げまするように、この
奈良
にある
日本肥鉄土会社
の新
若草山ドライブ・ウェー
、この問題は大きく分けて二つあるわけであります。私がこの前
質問
いたしましたのは、その二つの中の第一点でございまして、
文化財保護法
という
法律
があるが、この
法律
のもとにおける
文化財保護
という観点から見て、
史跡現状
の
変更
のあり方に実は問題があるのではないかというのが
一つ
。もう
一つ
は、これも何回も
質問
いたしましていまだに十分なる御
答弁
が寄せられておりませんが、正
倉院
の宝物は
世界的国宝
なんだが、この正
倉院
の
御物保存
について、あそこの
有料観光道路
が一体問題を起すのか起さぬのか、弊害はあるのかないのかはっきりしてもらいたい。これもあなたの
答弁
ははなはだ不満であります。 そこで私は
——
この前の
質問
をむし返すわけではございません、時間の
関係
でむし返したくはありませんので、的確に項目をあげてもう一度
お尋ね
をしてみたいと思いますが、一体あなたの方は
若草山
の
ドライブ・ウェー
の
許可
を与えたのは正確にいって
昭和
何年何月何日ですか。
岡田孝平
8
○
岡田政府委員
昭和
二十九年六月二十六日と存じます。
野原覺
9
○
野原委員
処罰規定
の
実施
は
昭和
二十九年の七月一日からでございますが、七月一日まで余すところ五日しかない。 それでは、
許可
を受けてからこの
会社
は着工したのかどうか。これはただいまの
答弁
にも明確であるように、無
許可
で
工事
に
着手
をいたしておりますね。明らかにあそこは
史跡
なんです。
史跡
の
現状変更
をするのであります。それをこの
会社
は
文化財保護委員会
の
許可
を受けないで着工をしておる。しかも私の
調査
によりますと。全長四キロ余りの
コース
が完成しておるのであります。あなたの方に
許可
の
申請
をしたときに、四キロ余り勝手に
道路
を作って、しかも
奈良
では個人の
所有権
まで侵害して裁判ざたまで起しておるのです。私はこの
会社
の社長というのは何とむちゃな男だろうと思って大
へん憤慨
にたえぬのです。 そこで
お尋ね
しますが、
許可
をしたのは
昭和
二十九年六月二十六日。それでは
現状変更
の
申請
をして参りましたのは
昭和
何年何月何日でございますか。
岡田孝平
10
○
岡田政府委員
同じく二十九年三月三日でございます。
野原覺
11
○
野原委員
無
許可
で
工事
に
着手
いたしておりますが、これは当然
文化財保護委員会
は
調査済み
のはずであります。一体無
許可
で
昭和
何年何月何日から
工事
に
着手
しておりますか。
岡田孝平
12
○
岡田政府委員
その点は、先ほど
委員長
から御
答弁
申し上げました
通り
、
昭和
二十八年の六月ごろ、
新聞紙上
及び
奈良
県
教育委員会
の
報告
によって初めてその事実を知ったということでございまして、いつからその
工事
に
着手
したかということは私の方では直接わからぬ次第でございます。その時日は二十八年六月ごろに着工したということであります。
野原覺
13
○
野原委員
当時は正確にわからなかったけれども、御
調査
はなさっておられるに違いない。当時は
奈良
県
教育委員会等
の
報告
によってあなたの方で知った、それはその
通り
でありましょう。しかしその後これは
調査
をされておるべきはずであります。こういう無
許可
で
現状
を
変更
する
工事
の
着手
は一体いつからやったかということを、その
会社
の
責任者
なりその他いろいろな手だてを尽して
調査
をされるべきはずだ、していないとすれば怠慢です。正確に一体いつからやっているのかはっきりしてもらいたい。
高橋誠一郎
14
○
高橋
(誠)
政府委員
私の聞いておりまするところでは二十七年、これも正確な月日につきましては
報告
を受けておりませんが、とにかく二十七年からぽつぽつ
工事
に
着手
したという
報告
を受けているのでございます。その点はっきりした
報告
は得ておりません。
野原覺
15
○
野原委員
二十七年から
工事
に
着手
をしておる、しかも
奈良
県からはひんぴんとして情報が入っておる。その間に
文化財
に
関心
を持つ諸君の
陳情
、訴えもあったと私は聞いている。
工事
に
着手
したのがかりに二十七年六月といたしますと、あなたの方が
許可
を与えましたのが二十九年六月です、そうすると二カ年経過しておる。この二カ年の間、
史跡
の
現状変更
に対してなぜ黙っておるか。
若草山
のあの
ドライブ・ウェー
、正
倉院
に害を及ぼすであろう
史跡
の
現状変更
を、二カ年もほっておったわけを
お尋ね
いたします。
岡田孝平
16
○
岡田政府委員
先ほど
委員長
が二十七年ごろと
答弁
いたしましたが、二十七年の終りか、あるいはおそらくは二十八年の初めごろかと存じます。正確なことはわかりませんが、そのころから着工したものであろうということを二十八年六月ごろに
教育委員会
の
報告
によって初めて知った、こういうことでございます。二十八年の六月ごろにこれを知りまして、先ほどの
委員長
の
答弁
のように、その後
教育委員会
を通じまして、あるいは直接に
会社
を呼び出しまして、これが無
許可
の
現状変更
であるから
工事
を中止するように、また
正式手続
をいたすようにということを何回となく警告いたしておったのであります。
野原覺
17
○
野原委員
ただいまの
答弁
は私の
質問
に合っていない。私が問題の
核心
に触れますと、あなたの方は
核心
をそらそうとしている。だから私は
疑惑
を深めるのですよ。あなた方は
文化財保護
の
責任
を持っているのだから、実は経過はこうなんだと率直に御
答弁
にならなければ私は徹底的に追及いたします。 そこで
お尋ね
いたしますが、天然記念物の
春日山
の
ふもと
で
石炭
を掘る
計画
があり、あるいは
若草山
ではチタンの
鉱業権
の
採掘願い
が出され、また同じ
若草山
で
地下ケーブル設置
の
申請
がなされているはずであります、そういう事実はございませんか。
地下資源
なり
観光
的な
計画
についての
許可
の
申請
が
文化財保護委員会
に何回となく出されていると思いますが、事実はいかがでございますか。
岡田孝平
18
○
岡田政府委員
お話の点につきましては正式には何ら私の方に書類は参っておりません。そういう話は聞いたことはございます。
野原覺
19
○
野原委員
昭和
二十七年に
春日山
の
ふもと
で
石炭
を掘る者があった。これは
許可
なく
石炭
を掘ろうとした、そのときに
文化財保護当局
はこれを中止せしめておるが、まことに妥当な
措置
でございます。
岡田事務局長
ではなく前の
森田事務局長
です。そういう事実があったと思うがいかがですか。
岡田孝平
20
○
岡田政府委員
ただいま
記念物課長
が
うしろ
におりますが、そういう
記憶
はないと申しております。
野原覺
21
○
野原委員
それでは
昭和
三十年に、これは最近でございますけれども、
地下ケーブルカー
の
設置申請
をするものがあったときに
——
これは公式でなく非公式です、
許可
をしていないのであります。その事実はありませんか。
岡田孝平
22
○
岡田政府委員
的確には申し上げられませんが、そういう話は聞いたことがございます。たしか前
局長
が、そういう話のあったときに、これは
史跡
の
保存
上望ましくないことであるから、そういう
申請
があってもおそらく困難であろうというようなことを申し上げたことがあるというようなことは聞いておりますが、それ以上的確なことは私ちょっとわかりかねます。
野原覺
23
○
野原委員
ただいま
岡田局長
は私の
質問
を必ずしも否定されていないのであります。私は実は二、三の事実を
調査
した上で
お尋ね
をしておるのでございまして、こういうような
地下資源
なりあるいはいろいろな
観光
上の
施設等
について非公式的にもせよこれに
許可
を与えていないということは、
文化財保護委員会当局
の慎重な
措置
として私はむしろ賛成をしておる。ところが何がゆえに、
昭和
二十七年から
計画
されたこの業者に対しては、七月一日からの
罰則適用
を前にして五日前にあわてふためいて二カ年間のあらゆることをひた隠しに隠してこれをカバーする
措置
をとられたか、それが私は了解できないのであります。先ほど
高橋委員長
の御
回答
をお聞きいたしますと、
許可
を与えるときに
問題点
はやはりあった。それはどういうことかというと、
東大寺
の
境内
を通るという
計画
をこの
肥鉄土会社
は立てておった。ところが
東大寺
の
境内
を通してはならぬというので、
柳生街道
へ抜けるように
コース
を
変更
することをあなたの方は
条件
として出されておるわけですね。
コース
の
変更
をせよと言って
許可
を与えなかったのです。ところがこの
会社
は
柳生街道
に
コース
の
変更
をしなかったのです。あなたの方が最後的に出した
条件
を聞かなかった。聞かずして、
柳生街道
は遠過ぎるし、
柳生街道
では金もうけの
道路
としてはその価値が減殺されるからというので、
知足院
の
北側
から正
倉院
の北西を通る今日の問題の
コース
が実は
変更
申請
されておるのでございますが、そのことはお認めになりますか。
回答
にもありましたが、いかがです。
高橋誠一郎
24
○
高橋
(誠)
政府委員
これは認めます。
野原覺
25
○
野原委員
あなたの方がそれでは困るという
条件
を示しておりながら、向うがその
条件
に従わないで違ったことをやってきた場合に、それを認めるというのは一体どういうわけなんです。どういうわけでそういうことを
文化財保護委員会
はこの
会社
にしたのでございますか、
お尋ね
します。
高橋誠一郎
26
○
高橋
(誠)
政府委員
すでに申し上げましたように、この
会社
は社長の名におきまして
委員
あてで始末書を二十九年の五月に出しております。それからさらに三十年の四月九日
——
出したのは五日でございますが、受け取りましたのは九日、
委員長
あてで誓約書を出しておるのでございます。 しかしこういう違法なことをやりましたものに対して
委員会
はどういう態度をとったらいいのであるか、これは
委員会
におきましても慎重に考えたところでありまするが、一口に申しますると、適当な処置を見出し得なかったということを申し上げなければならぬ遺憾を忍ばなければならぬのであります。この
会社
の社長と
文化財
委員会
におきまして
記念物課長
が会見いたしたりなどしておりました際において、先方の態度がはなはだ何と申しまするか、傲慢不遜とでも申しまするか、課長は実際私に向いまして切歯扼腕しておったのであります。それならば、これに対してどういう処置を講ずべきであるか、
罰則
を適用することが果して妥当な策であるかどうか、それからまたこれを適用いたしますることが実際にできるかどうか。
法律
に
規定
してありまする過料、以前はたしか二万五千円、後に改められまして三万円になったかと思いまするが、これ以下の過料を課するということになりましたところで、果してどれだけの効果があるのであるかどうか。それからこういう事例に対しまして過料を課するということは、私その道の専門家に聞いたのでありまするが、これは今まで聞いたこともない、こう言うのであります。少くも
奈良
県あたりでは、かようなことはなかった。かりにこれをやるといたしまするならば、非常な労力と時間を要することであろう、どうもこれはあまり策の得たものでない、こういう消極的な意見であります。それからして後にこれを
許可
するというようなことになりまするならば、過料を課することはどうであろうか、こんなような答えがありましたので、われわれといたしましてもこの点はさらに十分考えなければならぬのであってこれくらいな刑罰を課するというようなことでは、とうていこの
会社
を押えることはできないのではないか、こういうような考えに支配せられまして、慎重な態度をとっておったのであります。 それからまた、これが果して
史跡
を棄損したものと称することができるか。滅失、棄損、衰亡というような文字がたしか
法律
には使ってあると存じまするが、こういう場合に果してこれが
史跡
を滅失させたと言うことができるか。今まで道が通っておったのでありまするが、その道をさらに拡張するということによって
史跡
を滅失させたということはおそらく言い得ないのではないか。それから棄損でありまするが、これもある程度までの棄損とは称することができるのでありまするが、滅失、棄損、衰亡と、こう並べてあるところから見ますと、相当大きな棄損でなければこれは成り立たないのではないか。衰亡ということになりますと、これもやはり問題でありましてこういう態度をわれわれがとったといたしましても、果してその目的を達成し得るやいかんということを問題といたしまして、その
措置
をとらずにおったのであります。
野原覺
27
○
野原委員
さすがの頭脳明晰な
文化財保護委員
長の
高橋
さんも、私のこの種の
質問
に対しては全く支離滅裂であります。失礼でございますが……。私はそれを指摘して重ねて
お尋ね
をいたしたいと思いますが、この
肥鉄土会社
の業者を押えることができなかったというようなことに至っては何をかいわんやです。
肥鉄土会社
というこういう
会社
があってふらちなことをやる、しかも
文化財保護
に
影響
のあることをやる、これを押えすして何のために
文化財保護法
はあるのでございますか。あなたは過料とかなんとか言われますけれども、しかも私は専門家の意見を聞いた、と言いますけれども、あなたは
文化財保護委員
長なんです。日本の
文化財保護委員
長であります。世界的な
保護
委員長
なんだ。あなたが専門家にあらずして、だれが一体専門家かと私どもは
お尋ね
したい。
文化財保護法
第百七条の二には、
委員長
、何と書いてありますか。「
史跡
名勝天然記念物の
現状
を
変更
し、又はその
保存
に
影響
を及ぼす行為をして、これを滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、五年以下の懲役若しくは禁こ」云々とございます。なるほど滅失もまだしていない、棄損もしていない、衰亡もしていないけれども、衰亡するに至らしめたもの、あるいは衰亡するに至らしめるかもわからぬでしょう。だからこそあなたはただいま専門家を
奈良
に派遣して科学的な
調査
をここ二、三カ月やるとこの前おっしゃった。そういうおそれがあるのでございましょう。おそれがあればこそ、
柳生街道
に
コース
を変えたらどうかと、最後の
許可
を与えるときに、
保護委員会
が親心で
条件
を出してやった。その
条件
を彼は聞いていないのです。一方的にこれをじゅうりんしている。それを聞かないで正
倉院
の裏を通している。そういうものを、七月一日から
罰則
が強化されるというので、あわてて六月の二十六日に
許可
をするとは一体何事ですか。私はこれは了解できない。しかもこの業者は始末書を出して参りました、この業者は誓約書も入れました、と言うけれども、一片の始末書や誓約書で事が済むとお考えでございますか。あなたの方は、
柳生街道
へ抜けるという
条件
はだてで出したのですか。
文化財保護委員会
としては、相当お考えになったに違いないと私は思うのです。正
倉院
の裏を通っては困る、そういう判断をすればこそ、
柳生街道
に抜けてもらいたいとしたのでしょう。ところが始末書が入ってきた。これからわれわれも気をつけますというわび証文を入れてきた、だから許したのだ。しかもこの
会社
に対して、いろいろな既成事実を作ったために、適当な
措置
を見出すことができなかったという御発言がありましたが、私はこの言葉に至っては許すことができない。これは
委員長
として、まことにあなたは職責を考えないお言葉ではないかと思うのであります。適当な
措置
を見出し得なかったとは何でございますか。
文化財保護法
はこういうようなものに対してこそ適用するために、
法律
を国会は作っておる。この
法律
で
措置
をとれば、これが適当な
措置
であります。しかも行政処分の
規定
——
第八十条の3をお読み願いたい。事務
局長
でもよろしい、この
委員会
で読んでみて下さい。しかも第八十条の3が準用される第四十三条の4には何と書いてあるか。
許可
を受けた者が「
許可
の
条件
に従わなかったときは、
委員会
は、
許可
に係る
現状
の
変更
の停止を命じ、又は
許可
を取り消すことができる。」とある。
昭和
二十九年の六月二十六日にあなたの方は
許可
をしたという御
答弁
なんだ。ただいまは
昭和
三十年の三月十三日であります。
許可
をしてから半歳以上を経過しておる。約一年にも近い。それにあとで私はこれをはっきりしたいと思っておりましたが、時間の
関係
もあるから触れておきますが、あなたの与えた
条件
は何ら履行していないのです。それに行政処分を適用しようともなさらない。どう考えても私は
疑惑
を深めずにおれぬのであります。そこで
お尋ね
をいたしまするが、この業者が
工事
に
着手
する前に
申請
をしておれば、おそらく正
倉院
の裏側を通るあの問題の
道路
は私はできなかったと思います。すでに
工事
に
着手
されてから二年経過して既成事実を作ってしまって、どうにもこうにもならぬ、建設省の
許可
もとった、そういう既成事実を持ってきたために、
文化財保護委員会
が、この業者から押されてしまったのではないかという疑いを持つのでございますが、これは
一つ
率直に御
答弁
願いたい。既成事実があったために、この業者のあの正
倉院
の裏側
道路
については
措置
をとることが非常に困難であったかどうか
お尋ね
いたします。
高橋誠一郎
28
○
高橋
(誠)
政府委員
既成事実をそのままわれわれは認めたのではないのでありましてこれに対しまして県
知事
そのほかの副申もあったことでございまするので、これらを尊重いたした次第であります。 なお先ほどお話のございましたように、
文化財保護法
の解釈について専門家の意見を聞いたのかどうかということでございまするが、われわれ
文化財保護法
を始終取り扱っておる者でありまするが、しかしながらこの
法律
につきましては必ずしも疑問なきところばかりともいえないのでありまして、往往疑義の生じました点につきまして専門家の意見を聞きますることは、私といたしましてはやむを得ないことであり、またなさなければならないことと考えておるのであります。そうしてかくのごとき業者に対しまして
文化財保護法
を発動して断固たる取締りを行うことができないで、何の
文化財保護
であるかという御
質問
でございまするが、こういう問題に対しましたのはおそらくこれが初めてではないか、今までもいろいろな問題はあったのでありますが、業者の良識あるいは
文化財
を
保護
するの念によりまして円満な解決を遂げてきておったのでありまするが、今度のような場合が起りますと、
法律
必ずしも十分とはいえないのでありまして、さらにもっと
罰則
を重くするというようなことも必要ではないかと考えさせられるのであります。実は
法律
改正
の際におきましても、もっと
罰則
を重くしたらどうかという考えもわれわれあったのでありまするが、しかしながらこれは法制局その他といろいろ打ち合せをいたしました際に、一般の
法律
と照し合せてみてどうもこの程度にとどめておかなければならぬ、これ以上の
罰則
を付するということはどうかというような意見がございましたので、これにとどめておいたのでありまするが、こういうことになりますると、さらにこれを強化する必要がありはしないか、これは研究問題として残されなければならぬところと考えておるのであります。
野原覺
29
○
野原委員
法律
について再検討するということは、これはいかなる
法律
についてもその
通り
でなければならぬと私は思います。しかしながら今日の
文化財保護法
で、あの
肥鉄土会社
のああいう行為が取り締れないという断定はその論理からは生まれません。これはできます。これは
委員長
としてよく御研究なすつて下さい。 そこで私は発展して
お尋ね
いたしますが、あなたの方が
許可
を与えるときに、
条件
を六項目出されておりますね。
一つ
その六項目の
条件
とはいかなる
条件
か、
一つ
あげてもらいたい、いかなる理由でその
条件
を出されたのでございますか。
岡田孝平
30
○
岡田政府委員
ちょっとその前に、先ほどの点で、既成事実があったから
文化財保護委員会
は認可したのではないか、というお話でございましたが、既成事実があったので直ちにこれを認めたということにはならないかと思います。先ほど
委員長
が御
答弁
になられましたように、
柳生街道
の方に抜けるようにということを再三勧告いたしたところが、
会社
の方では、
大仏殿
のすぐ
北側
の
道路
にするように
申請
してきたが、私の方では、それはやはり
史跡
に直接
影響
があるので、それは全然認めない。なお無
許可
の
現状変更
は
法律
違反になる旨を警告いたしたのでありますが、そこに至りまして、
知事
のあっせんによりまして、現在のようて
知足院
の
北側
の
道路
を作るということになりました。これならば先ほどの
大仏殿
の
北側
の
道路
よりは
史跡
に対する
影響
が少いであろうというようなこともございますし、また的確な
条件
をつけまして必ずそれが履行されるという見通しがつきますならば、それはまた別の観点から考えられる。同時にこの
知事
の
あっせん案
は、
県会議長
、県
教育委員会
委員長
その他地元の有力なる代表者がそろっての
申請
になりましたので、
知事
の
申請
の公文をつけた上で慎重
審議
いたした結果、これを
許可
いたした、こういうことになっておりますので、既成事実があったから直ちに認めたというのではなくて、やはりそれは既成事実があったことがだんだん原因になったことは認めざるを得ないと思いますが、直ちにこれがために
文化財保護委員会
が
許可
したということにはならないかと存じます。 それから、ただいま
お尋ね
の
許可
の
条件
は、第一は芝張りでございます。切り取りによって露出した山はだには芝を張ってこれを緑化すること。第二は、
道路
沿いに適当な植樹を行い、努めて
道路
が露出しないようにすること。第三は、検問所のほか一切の建物その他の工作物を設けないこと、ただの検問所の
設置
に際してはあらかじめ
委員会
の承認を受けること。第四は、会桂において立案した緑地
計画
を確実に行うこと。第五は、二十九年六月十日付で
会社
から出された念書記載事項を
計画
通り
に実行すること。それから第六は、施工に当っては
奈良
県
教育委員会
の指示を受けること、右の六項でございましていずれも
道路
を作ることによりまして
史跡
の
保存
に支障のないように、かつまた正
倉院
に対する
影響
も防ぐようにという両方の観点からこれらの
条件
をつけた次第でございます。
野原覺
31
○
野原委員
知事
のあっせんがあったからとか、あるいはいろいろ
関係者
の意見が出されたからと申しますけれども、私の知るところでは、
文化財
関係者
——
私はここに名前をあげてもよろしゅうございますが、これらの
文化財
に見識を持たれる四十何名の方々がそろって反対
陳情
をされておるが、その反対
陳情
は事務局に何通来ておりますか、お伺いいたします。
岡田孝平
32
○
岡田政府委員
何通かちょっとはっきり
記憶
がございませんが、
奈良
の有力者の方々の連名の
陳情
書は数通参っておると存じます。
野原覺
33
○
野原委員
正
倉院
事務所長の和田さん、博物館長の黒田さん、林学大教授、唐招提寺の赤谷さん、橋本
東大寺
執事、堀池同司書、水谷川春日神社宮司、平崎
東大寺
住職、落合
奈良
女子大学学長等々が六通にわたる
陳情
書を出したと言っておる。一体六通の
陳情
書が事務局にございますか。私はここで疑問に思うのは、こういう見識ある方方の反対意見、反対
陳情
というものが、
文化財保護委員
の諸君に正当に出されたのかどうか、私はこれを疑っておるのであります。あなたが
答弁
したから私は重ねて言うのですよ。
文化財保護委員
はどなたであるかを知っております。私はその人々を参考人としてここに呼んでみましょうか、この六通の
陳情
書をお目にかけておるかどうか……。事務局の
責任者
がほごにしておるという事実があったら、
高橋
さん、いかなる処断をなされるか、
委員長
に
お尋ね
いたします。
高橋誠一郎
34
○
高橋
(誠)
政府委員
ただいまお読みになりました方々の署名と一致しておりまするかどうか、私ただいま書類を持っておりませんのではっきり申し上げかねまするが、
記憶
に残っておりまするものでは博物館長黒田氏、
奈良
の学芸大学長落合太郎さんというような方々の連署で参りました書面は、私拝見いたしておりまするし、それからまた私あてで参りましたところのものは、私は直ちにこれを
委員会
で朗読いたし、やがてこれを事務局に交付いたしておるのでございまして、決してこれが握りつぶされたというようなことはなかったと存じます。
野原覺
35
○
野原委員
あったらどうするかということを聞いておるのです。しかしこの
答弁
は、
委員長
ですから、あなたは慎重でなければならぬと考えるが、あったらどうするかと聞いておる。よろしいですね。六通のものが示されていなかったらどうするか。一通くらいは示されておるかもしれません。これは私はここでどうこうは申しませんけれども、
委員長
よくお考え願いたい。ただ言いたいことは、これらの反対
陳情
が出されておるにもかかわらず、
奈良県知事
が副申を出してきたから、あるいはこの業者に
関係
のある某々君たちが言ってきたからといって、なぜこれを取り上げたかというところに問題がある。よろしいですか。
文化財保護委員会
がおのれの主体性において、これは当然だという判断だという
答弁
なら、私はこういう追及はしない。あなた方の
答弁
は、副申があった、だれが言ってきた、そういうことを聞いたというから、片一方の反対があったじゃないか、なぜこれを聞かぬということになるのであります。よくお考え願いたいのです。ここにやはり問題が
一つ
ある。 それから六つの
条件
の問題でありますが、この六つの
条件
というものを出したのは、やはりこの
道路
を作るというと、正
倉院
の宝物に被害を与えるという懸念があればこそ出されたのだろうと思う。あるいはやはり
史跡
を
変更
することになるから、何とかしてこの
奈良
の
史跡
だけは損壊、殴傷を与えないであらせたいという心配があればこそ、六つの
条件
を出されたのだろうと思うのです。ところが六つの
条件
はその後守られていないでしょう。これはこの前守られていないということだったから、もう時間の
関係
もあるから、私は
質問
の形式はとりません。 そこで
お尋ね
したいことは、この六つの
条件
があれば、正
倉院
の宝物に被害はない、大丈夫だと判断されて、この六つの
条件
をおつけになったのだろうと思いますが、間違いありませんか。
高橋誠一郎
36
○
高橋
(誠)
政府委員
この点間違いないと申し上げることができます。これだけのことをすれば、まず正
倉院御物
に対して被害を与えるということはあるまいということが、
宮内庁
そのほかの
調査
によって明らかになっておりまするので、われわれはこれを認めることに傾いたのであります。しかしながらこの前申し上げましたように、さらに美術品に対する
影響いかん
という点になりますると、一そう慎重な
調査
を必要とするというので、東京
文化財
研究所に命じましてただいま
調査
をいたしております。そうしてなお先ほどお話のございました
奈良
の良識ある諸君の
委員会
あてで出されました手紙、これが実際
委員会
に対しましては相当大きな
影響
を及ぼしたのでありまして、
専門審議会
の
委員
の諸君と懇談をいたしました際においては、まずもう
許可
して差しつかえないのではないかという意見大体傾いたのでありまして、非公式ではありますが、その
報告
も受けたのでありまするが、
委員会
におきましてはこういう手紙を受け取っておるということであるし、事いかにも重大であるからして、さらに
許可
をいたすにつきましては慎重を期さなければならぬのである、こういうことで延び延びになっておったのであります。そうしてただいま申しましたように、研究所の
調査
というようなこともその後加わって参りましたので、今日に至りまするまで、その態度をまだ決しずにおる次第でございます。
野原覺
37
○
野原委員
この六つの
条件
があれば大丈夫だ、この判断はいささか軽率ではないかと私は思います。これは
委員長
率直にお認めいただきたい。何とならば、あなたはただいま専門的にやはり科学
調査
を進めていらっしゃるのです。ガソリンのしぶきはどうか、それからその舗装をしたにしても四月、五月のほこりの多い時期には、いかに
奈良
の春日公園といえども、非常な塵埃が立つ。このことが一体正
倉院
の宝物にどういう
影響
があるだろうかといって、頼まれもしないのに大阪管区の気象台まで乗り出してやっておるのですよ。そういうことから見ても、この六つの
条件
さえあれば大丈夫だという結論的な判断は私は軽率であったと言わざるを得ません。これは
一つ
率直にお認め願いたいと思うがいかがですか、簡単でいいです。
高橋誠一郎
38
○
高橋
(誠)
政府委員
前回にも申し上げたと存じまするが、われわれが実際申しまして、これまで
宮内庁
の所管である正
倉院御物
の
保存
につきましては、
宮内庁
が最善の力をいたしてきたところであり、これに対しまして十分な知識のあることと存じまするので、まず
宮内庁
の意見を尊重して参ったのであります。しかしながらなおわれわれとしては慎重を期さなければならぬというので、先ほども申しておりまするように、特に古美術に対する塵埃並びにガスの
影響
というようなことについて
調査
いたしておるのでございまして初めにおきましてはわれわれはわれわれの研究所を顧みなかったという点は全く遺憾であったということを申し上げるのでありまするが、これはしかしながら研究所におきまして、
保存
科学の研究に
着手
いたしましてから日もなお浅いことであったしいたしまするので、私どもはさような考えを初めは持たずに、
宮内庁
その他に依存するということであったのであります。
野原覺
39
○
野原委員
かりに六つの
条件
を全部いれたといたします。幸いなるかないれていないのです。いれてないから、いれてないということで私は取り消しは可能だろうと思いますけれども、かりにも六つの
条件
を全部いれた。その上で科学的に
調査
したら問題があった。どうしてもこの
道路
はつぶさにやいかぬ、取り消さなければいかぬ、こういう事態が起り得るわけです。あなた方のとった
措置
の方から、今後の
文化財保護
のあり方の上から私は尋ねておるのですが、そうなった場合に一たん
許可
を与えて取り消すということになる。そうして
許可
の
条件
は全部いれておるんだ、その上で取り消すんだということになれば、これは一体この
会社
に対して国は損害を与えることになるのです。よろしゅうございますか。一体そういう損害の
補償
はこれは国がしなければならぬと思いますが、
文化財保護委員会
の失態のために損害
補償
を国がしなければならぬという事態も起り得る問題を今回の場合は提供しておるわけです。お認めになりますか。
高橋誠一郎
40
○
高橋
(誠)
委員
これは認めなければなりません。損害を与えました場合においてはこれを償わなければならぬことと存じます。
野原覺
41
○
野原委員
私はこれで私の
質問
を終りたいと思います。幾多の
疑惑
を残しながら私は
質問
を一応終ります。私の
疑惑
は何ら解明されていないのであります。この
許可
にからむところの
疑惑
、正
倉院
の
保存
に対する
文化財保護委員会
の熱意のきわめて微々たる問題、私に言わしめるならば、
昭和
二十九年の七月一日りっぱな
文化財保護法
が国会を通過した。その五日前に、二年前から
無断
でやっておるふらちな業者に対して何らの制裁もかけないで、しかも今日
許可
を与えてから一年近い日子がたっておるのに、何らの
条件
も満たされていないのに、これが完全に放任されておるというのは一体どこに原因があるのでございましょうか、了解できないのであります。ある人に言わしむれば某々氏の政治的圧力だということも聞いておる。ある者に言わすれば事務局の忌まわしい問題を口にする人もあるのであります。私はこれらの問題が明るみに出ないうちに、
文化財保護委員
長としては正
倉院
のこの問題については、一大英断をもって当られんことを要請いたします。 最後に一点
お尋ね
をいたしておきたいことは、もしこの業者がどうしても
条件
をいれない、こういう場合に取り消さなければならぬと思いますが、ここで数年間も経過して、そしてほんとうに正
倉院
の宝物に
影響
があるという事態が起れば、
高橋
さんも進退を決していただかなければなりません。一体いつになればこの業者に対する
文化財保護委員会
の最後的な意思を表明されるのか。問題が起った場合には
高橋委員長
としてはいかなる処置をとろうと考えておられるか、この二点、重大でございますから
一つ
慎重に御
答弁
願いたい。
高橋誠一郎
42
○
高橋
(誠)
政府委員
先ほどのお話でございますが、われわれはただ刑罰を課することのみが問題の解決になるとはむろん考えておりませんので、でき得れば刑罰などということは回避して、他にたつとい
文化財
の
保存
のために道があるならばこれを講じたい、こう考えてこれまで処置して参ったのであります。 それから政治的圧迫があったというようなことを実は私も投書などによりまして承知いたしたのでありまして、特に
注意
を払ったのでありますが、これは全然なかったと、今までの
調査
によりますと申し上げることができると存じます。それからなお涜職があったというようなことでありますが、昨年
文化財
につきましてははなはだ遺憾な
事件
がございました直後でありまするので、私も特に敏感になっておったのでございますが、新しい
局長
、課長などを呼びましていろいろ話を聞き、また前
局長
からは文書をもって
回答
を求めたのでありますが、この点は幾ら私が強くこの席で主張してくれても差しつかえない、断じてさようなことはないということを申しておるのでありまして、私といたしましてはそれ以上に刑事的な態度をとって探るというようなこともできかねておるのでありますが、至誠面に現われての
回答
、私といたしましては疑うことのできないものがあると存じておるのであります。 それからそのあとの点でありますが、もしこのバスが
通り
ますことによって古美術、ことに正
倉院御物
に対しまして悪い
影響
がある、これを毀損するということに相なりまするならば、むろん通行をとどめるというような態度にも出なければならぬと存じます。そしてまた私どものとりました態度に対しましては責めをとらなければならぬ点があると思いまするならば、少くとも
保護
委員長
であります私はその責めをとる覚悟でおります。
野原覺
43
○
野原委員
大事な点が抜けておりますので、終ろうと思いましたが続いて
お尋ね
いたします。
文化財保護法
の第四十三条第一項、「重要
文化財
の
現状
を
変更
しようとするときは、
委員会
の
許可
を受けなければならない。但し、その維持の
措置
をする場合は、この限りでない。」さらに第三項にこうある。「第一項の
許可
を与える場合において、その
許可
の
条件
として同項の
現状
の
変更
に関し必要な指示をすることができる。」そこで六つの指示をしたわけですね。ところが従ってはいない。ですからいつまでお待ちになるかということを聞いておるのです。ここまで問題がきていて、あなたの
責任
を追及されるまで足元に火がついておるものを一体いつまでこの
許可
の
条件
を放置されるか、それを聞いている。これは私、この前も
委員会
で、十分検討してこの
質問
には答えてくれということで御
答弁
を留保させておるので、考えてきていらっしゃるはずだ。一体いつまでお待ちになりますか。
高橋誠一郎
44
○
高橋
(誠)
政府委員
その点でございますが、植樹は行なったと申しております。しかしながらいろいろな事情によりまして枯れたものが相当多かったということ、芝も張ったのであるがつきが悪かった、それから舗装も完全舗装とは申すことができないのでありますが、これを始めたということであります。散水の点でありますが、これは私どもの調べましたところでは、散水協会と申しますか、それに加入しておらぬというところが大へんわれわれとしては不満な点でありますが、この点にも相当力を入れるというようなことを申しておるのであります。しかしながら
着手
はいたしましても、これが完成するまでにはなかならひまどることと思いますので、われわれといたしましてはしばらく向うのやり方を見ておるのでありまして、いつまでこれを待つかということはいろいろ
調査
してみませんと、ここで即時御
回答
申し上げるわけには参りかねると存じます。しかしながらそれがために御物に対して非常に悪い
影響
を及ぼすということであるならば、また手段を講じなければならぬとはむろん考えておるのであります。
佐藤觀次郎
45
○
佐藤委員長
野原
君、簡単に願います。
野原覺
46
○
野原委員
これで終ります。この前の
委員会
では二、三カ月ということであったのですが、この国会は五月の中旬の予定でございますが、場合によっては六月まで続くかもわからぬ。だから私はこの国会の会期末までに、一体この
条件
がどれだけいれられておるか、それも
委員長
個人の御意見ではなしに、
文化財保護委員会
の
会議
の上の意見の最後的なものをお示しあらんことを要請して、
質問
を一応終ります。 —
——
——
——
——
——
——
佐藤觀次郎
47
○
佐藤委員長
次に
義務教育費国庫負担法
の一部を
改正
する
法律案
を
議題
といたしまして、
審査
を進めます。
質疑
があればこれを許します。
河野正
48
○河野(正)
委員
ただいま
議題
となりました
義務教育費国庫負担法
の一部
改正
に関しまして二、三
お尋ね
を申し上げたいと思います。 まず第一点は、私が申すまでもなく
提案理由
の中に述べられたところでございますが、御承知のように今日までの恩給に対しましては、それぞれ交付税を通じまして所要の財源
措置
が行われておったわけであります。ところが今度の
法律案
によりましてその財源
措置
を国庫
負担
として法文上明確にしたということがこの法案を提案した趣旨だと思うのでございます。そこで、恩給というものは
義務
的なものでございますので、交付税の中に含まれておりましても、あるいは国庫
負担
法といたしまして法文が明文化されましても、一応財源
措置
が行われるわけでございますが、今までのように交付税を通じて財源
措置
が行われておった場合と、今度のように明らかに法文化されまして国庫
負担
法として行われます場合と、実際のことを言うと私どもは同じような問題であろうと思いますが、法文化されまして果してどのような実益、どのような実利が生まれてくるものか、その点を明らかにしておいてもらいたいと思うのであります。
竹尾弌
49
○竹尾
政府委員
私どもはこの
義務教育費国庫負担法
を作りました趣旨は、当時もちろん地方交付金制度がございましたけれども、あの制度は河野
委員
も御承知のようにどのように使ってもよろしいということであって、特に
義務教育
費の額が非常に高額に上りましたので、ややともするとタコの足のように切られるというような危険も非常に多かったので、せめて
義務教育
費の給与に関する部分だけでもいわゆるひもつきにいたしまして正確に教職員方に差し上げたい、こういう趣旨であれを作ったのでございます。その結果は非常によかったと考えております。なお恩給につきましてもさらに正確に支給をして差し上げたい、こういう趣旨で今回の
法律
改正
を行なったということであります。なお詳しいことは所管の
局長
から
答弁
をいたさせます。
河野正
50
○河野(正)
委員
地方財政がだんだん圧迫されて参りますので、ただいま次官が仰せられましたように法文に明確化されるということで、きわめて合理的にいくというようなお考えでございますならば、私どもも了承するにやぶさかでございません。 次にお伺い申し上げたい点は、新予算は前年度予算に比べまして大体六十六億五千六百万円の増加となっておるのでございますが、今度この法案が提案されまして相当額の財源
措置
が行われると思うのでございますが、その財源の総額は一体どのくらいあるのか。それから前年度よりも六十六億五千六百万円の増加との関連、その中に今度の財源
措置
の分が含まれるのかどうか、あるいはふえたと称します六十六億五千六百万円以外に財源
措置
が行われるのかどうか、それらの点を
お尋ね
申し上げたいと思います。
緒方信一
51
○緒方
政府委員
このたびこの法案が成立いたしますと、三十一年度におきましては大体五千万程度の予算が必要になって参るのでございます。この
法律
にございますように四月一日から
施行
ということにいたしておるのでございまして、退職者は年度末に集まるのが普通でございますので、本年度の経費といたしましては五千万程度でまかなえるであろうと考えておるわけであります。しかしこれは清算
負担
になりますので、実際にやってみました上で、増減がございましたならば本年度において精算をする、かようなことになります。このたびの、ただいまお示しのありました
義務教育
費国庫
負担
金の予算の中に五千万円を含めて計算いたしておるわけでございます。
河野正
52
○河野(正)
委員
それから法文の中の第二条について若干
お尋ね
申し上げたいと思うのでございますが、御承知のように第二条の末尾のところに「特別の事情があるときは、各
都道府県
ごとの国庫
負担
額の最高限度を
政令
で定めることができる。」というようなことが明記されております。ところが本法の精神から申し上げますならば、当然
義務
的なものでございますから、その最高限度を
政令
で定めるということにつきましては多少矛盾がありはせぬかと思うのでありますが、しからば「特別の事情があるときは、」という「特別の事情」というのはどういう事情をお考えになっておるか、その辺の事情を御
説明
願いたいと思います。
緒方信一
53
○緒方
政府委員
この
政令
は現在
義務教育
におきまする給与費支給につきましてもいわゆる
政令
百六号というのがございまして、国の
負担
いたしまする最高限度をこの
政令
によってきめておるわけでございます。「特別な事情があるとき」と申しますのは、現在の
政令
について申し上げますと、いわゆる富裕な財政の団体につきましては、その府県に対しまする国の
負担
限度というものをきめる、この特別に富裕団体に対しまする場合、これが「特別な事情」に相なっております。このたびの恩給費の
負担
につきましても同様にこのことは適用いたさなければならぬと考えるのでございまして、御承知のように現在国と府県の財政の
関係
あるいは府県間の財政の不均衡というような点を考えてみました場合に、特定な富裕な府県に対しましては国の
負担
の限度を一定限度に押えていくということは変りありません。このたびの
改正
につきましてもこの
政令
百六号というものは残してこれを適用させて参りたいと考えております。
河野正
54
○河野(正)
委員
富裕県というのは地方財政の場合にしょっちゅう問題になるわけでございますが、今日地方財政というものがだんだん困難になって参りました。地方財政再建整備法等によりまして再建せられるということでございますけれども、その成果というものは一朝にして期待することはできないだろうと思います。そういった事情の中でいつも問題になりますのは富裕県ということでございますが、今後富裕県だということで国庫
負担
が一定限度に押えられるということがありますると、結局恩給で
義務
的なものでございまするから、地方自治体としては出さなければならぬというようなことで、富裕県という名目で
——
富裕県の認定につきましてはいろいろ問題があると思いますが、そういうことで一定限度に押える、押えたために再び地方財政にしわが寄っていくというようなことを、私ども今日までの経験で非常におそれているわけでございます。そういった点は文部当局としても当然考えられておると思いまするけれども、今日そういう危険性があるかないか、その点を重ねて
お尋ね
申し上げたいと思います。
緒方信一
55
○緒方
政府委員
ただいま私の御
説明
が少し足りなかったようでございますけれども、現在
政令
百六号につきましては、昨年でございましたか
改正
をいたしました。現在これを適用いたしておりますのは、いわゆる地方交付税の不交付団体だけに限っております。従いまして三十一年度について申し上げますと、大体東京と大阪だけだろうと考えております。これは結果が出てみないとわかりませんけれども、そういうふうに想像されるわけでありまして、そのほかの府県につきましてはこの
政令
はかかってこない、かようなことに相なると思います。
佐藤觀次郎
56
○
佐藤委員長
ほかに御
質疑
もないようでございますので、本案に関する
質疑
はこれにて終了いたします。 —
——
——
——
——
——
——
佐藤觀次郎
57
○
佐藤委員長
この際お諮りいたします。
理事
でありました加
藤精三
君が去る十日
委員
を
辞任
され、同日再び
委員
に選任されましたので、
理事
が一名欠員になりました。つきましてはその
補欠
選挙を行わなければなりませんが、先例により
委員長
においてその
補欠
を
指名
いたすに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐藤觀次郎
58
○
佐藤委員長
御異議なしと認め、加
藤精三
君を
理事
に
指名
いたします。 —
——
——
——
——
——
——
佐藤觀次郎
59
○
佐藤委員長
それではこれより
義務教育費国庫負担法
の一部を
改正
する
法律案
を討論に付します。別に討論の通告がございませんので、討論を省略し、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐藤觀次郎
60
○
佐藤委員長
御異議なしと認めます。 これより採決いたします。本案を原案
通り
に可決するに賛成の諸君の起立を願います。 〔総員起立〕
佐藤觀次郎
61
○
佐藤委員長
起立総員。よって本案は原案の
通り
可決するに決しました。 なお本案に関する
委員会
報告
書の作成につきましては
委員長
に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐藤觀次郎
62
○
佐藤委員長
御異議なしと認め、さよう取り計らいます。 本日はこの程度にいたし、次会は明十四日午前十時より開会いたします。これにて散会いたします。 午後零時四十六分散会