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1956-03-13 第24回国会 衆議院 文教委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十三日(火曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 佐藤觀次郎君    理事 赤城 宗徳君 理事 加藤 精三君    理事 高村 坂彦君 理事 坂田 道太君    理事 米田 吉盛君 理事 鈴木 義男君    理事 山崎 始男君       伊東 岩男君    稻葉  修君       久野 忠治君    田中 久雄君       並木 芳雄君    町村 金五君       河野  正君    木下  哲君       小牧 次生君    辻原 弘市君       野原  覺君    平田 ヒデ君       小林 信一君  出席政府委員         文部政務次官  竹尾  弌君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君         文部事務官         (管理局長)  小林 行雄君         文化財保護委員         会委員長    高橋誠一郎君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 岡田 孝平君  委員外出席者         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局記念         物課長)    平間  修君         専  門  員 石井つとむ君     ――――――――――――― 三月十日  委員加藤精三辞任につき、その補欠として高  岡大輔君が議長指名委員に選任された。 同日  委員高岡大輔辞任につき、その補欠として加  藤精三君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員小松幹辞任につき、その補欠として辻原  弘市君が議長指名委員に選任された。 同日  委員高木松吉辞任につき、その補欠として久  野忠治君が議長指名委員に選任された。 同日  理事加藤精三君同月十日委員辞任につき、その  補欠として同君が理事に当選した。 三月九日  地方教育行政組織及び運営に関する法律案(  内閣提出第一〇五号)  地方教育行政組織及び運営に関する法律の施  行に伴う関係法律の整理に関する法律案内閣  提出第一〇六号) 同月八日  教育職員免許法施行法の一部改正に関する請願  (中垣國男紹介)(第一一五六号)  同(堀内一雄紹介)(第一二四七号)  同(大石武一紹介)(第一二四八号)  青年学級運営費国庫補助増額に関する請願(坂  田道太紹介)(第一一八二号)  同(小平久雄紹介)(第一二〇四号)  写真技能師法制定に関する請願菅野和太郎君  紹介)(第一一九九号)  同(野田武夫紹介)(第一二〇〇号)  同(今井耕紹介)(第一二〇一号)  同(吉川久衛紹介)(第一二〇二号)  同(小坂善太郎紹介)(第一二〇三号)  同(中村三之丞紹介)(第一二四六号)  教職員の退職年金等勤続年数通算に関する請  願(五島虎雄紹介)(第一二〇五号)  建国祭復活に関する請願大久保留次郎君紹  介)(第一二四九号)  地方教育委員会制度存続に関する請願井谷正  吉君紹介)(第一二五〇号) の審査を本委員会に付託された。 同月十日  紀元節復活に関する陳情書外二件  (第三四〇号)  同外五件  (第三六四号)  同(  第三九二号)  同(第  四一〇号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  義務教育費国庫負担法の一部を改正する法律案  (内閣提出第七四号)  国立及び公立義務教育学校児童及び生徒  の災害補償に関する法律案山崎始男君外六名  提出衆法第八号)  文化財保護に関する件     ―――――――――――――
  2. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  まず国立及び公立義務教育学校児童及び生徒災害補償に関する法律案議題といたします。その提案理由説明を求めます。山崎始男君。
  3. 山崎始男

    山崎(始)委員 ただいま議題となりました、国立及び公立義務教育学校児童生徒災害補償に関する法律案につきまして、その提案理由の御説明を申し上げます。  およそ国家隆昌の基盤を教育に置かなければならないことは言うまでもないところでありますが、なかんずく義務教育における約千七百万人の児童生徒のすこやかな成長こそは国民全体の念願でありまして、教育基本法及び児童憲章に明示されておりますように常に留意せねばならぬところであります。  さて、義務教育に関しましては、憲法第二十六条第一項によれば「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と規定しており、さらにまた、第二項においては、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」と規定しておりまして、義務教育について、特にその責務をうたつて重視しておるのであります。しかるに、一昨年来児童生徒災害が頻々と報じられておりますのは、先刻御承知のところでありまして、特に昨年の紫雲丸事件や相模湖事件、三重の水難事故学校給食集団中毒など記憶に新しいものが多くあったのでございます。  新しい修学旅行や遠足に不安を抱いて行かなければならないことはまことに遺憾なことで、義務教育の諸学校で起きた災害の処置が父母の負担のままに放置されているということは実に忍びないところであり、義務教育の趣旨からもまた絶対に見のがすことのできないものだと存ずる次第でございます。  現在、地方公共団体においては、自主的な補償策が共済組合的なものとして全国的に広まりつつあるのでございますが、このことは父兄並びに国民がいかに学校における災害に強い関心を持ち、特にその対策の万全をこいねがっているかを端的に物語っているものだと存ずるのでございます。  従ってこのような現状におきまして、これをさらに一歩前進させ、児童生徒災害から守るとともに、不幸にして災害を受けたならば、直ちに迅速かつ公正な補償国家によって行うことが焦眉の急務であると信ずる次第でございます。  この法律案は、かような事情のもとにおきましてぜひとも必要と考えられる災害補償を国に行わせることを目的として立案いたしたものでございまして、その内容を簡単に御説明申し上げますと、第一にこの法律は、義務教育学校管理下災害について、義務教育特殊性に基き、国はこれに対する補償を行う責任を有するのであるという立場に立っているのでございます。この場合、学校管理下とは、義務教育学校児童生徒当該学校教育または、監督もしくは保護を受けている場合をいうのでありますが、具体的には政令に譲っているのであります。  第二にこの法律による災害補償の種類としては、療養補償障害補償葬祭補償遺族補償打ち切り補償を考えておりますが、補償は金銭による補償としております。補償金額は、療養補償については、原則として完全に治療するまでの費用を見ることに考えています。遺族補償につきましては、中学校を卒業して勤めに入った労働者が業務上死亡したとき労働基準法で保障されている金額に準ずることといたしました。障害補償等その他の補償につきましても、中学校を卒業して直ちに労働に従事した者が、労働基準法で保障される金額に準じて補償することにいたすよう考えています。  第三には、最初に申し上げましたように補償実施は、国家事務でありまして、文部大臣最終責任者でありますが、公立義務教育学校については、都道府県教育委員会が委任を受けて、その補償実施するものとしておるのであります。  第四に、この法律による補償は、災害を受けた児童生徒社会保険による給付を受けることができる場合には、その給付を受けるべき限度において補償は行わないようにいたしました。  第五に補償を受ける手続について申し上げますと、公立義務教育学校管理下で、児童または生徒災害を受けたときは、本人またはその遺族が、文部省令で定める補償申請書学校長及び市町村の教育委員会を経由して、都道府県教育委員会提出し、委員会政令で定める基準に照らして学校管理下における災害であるかどうか判定を行い、補償金額を決定し、補償をいたすのであります。これに不服の場合は文部大臣審査の請求を行うことができることになるのであります。国立の場合もこれに準じております。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願いをいたします。
  4. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 本案に関する質疑は追ってこれを行うことといたします。     —————————————
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 次に文教行政について前会に引き続き質疑を行います。それでは、去る六日の委員会におきまして、野原委員より、高橋文化財保護委員長に対し、正倉院裏観光有料道路が設けられた問題について調査を求め、すみやかにその結果を本委員会報告するようにとの要求がございました。この際高橋政府委員よりその調宜報告を求めます。高橋委員長
  6. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 宿題となっておりました点をお答え申し上げます。  第一の御質問は、昨年の二月八日に、文化財保護委員会は、この道路すなわち正倉院北側道路が着工されているということを聞きながら、道路の完成する四月半ばごろまで二カ月以上放任したというのはどういうことかという御質問と存じます。この会社は、一たん行われました知足院北側における佐伯良謙貫主すなわち法隆寺の貫主との土地売買契約が解任されましたがために、初の佐伯さんは売買を承知しておられたのでありまするが、後になりましてこれを破棄せられましたので、申請許可通り道路設置が不可能となったのであります。それで申請予定道路より北側約六十メートルの部分の土地を購入いたしまして、迂回する道路の新設に着手いたしたのであります。今までまっすぐに通っておりましたのを、北の方を迂回する道路着手したのであります。奈良県の教育委員会口頭によりまする報告によりまして、文化財保護委員会はこれを知りまして、奈良教育委員会を通じまして、これは無断現状変更でありますからして、直ちに工事を中止して成規手続を経るよう注意いたしましたところが、正式に現状変更許可申請書提出いたしました。委員会がこれを受け取りましたのが三月三日であります。この変更は、史跡保存に対します影響につきましては、先に許可せられました道路、すなわちまっすぐにつけまする道路と比べまして大きな相違はないのでありますが、新たに買収いたしました土地の地番などの調査等を行わしめましてまた直接会社を呼びまして、工事の中止と不誠意とを警告いたしたのであります。同時に、以前からの関係者をなお慎重に取り扱う必要上、正倉院御物に対しまする影響いかんをおもんばかりまして、再び宮内庁の意見を聞きますとともに、その他の関係機関と協議を重ねて検討しておったのでございます。その間に御指摘になりましたような時間が経過いたしたのでございます。第二の御質問は、すでに許可になっておる十分の九の有料道路は、二十八年から二十九年にかけて無許可工事が始められているというが、どうかという御質問と存じます。この現状変更は、昭和二十八年初めごろ、指定はされておらないのでありますが、肥鉄土を採取、運搬いたしますために、従来の鋪道を広げまして、地はだが見え始めましてから問題になったのであります。すなわち掘っておりますところは、これは指定地外ではあったのでありますが、奈良市の方から見ましていかにもぶざまであるということで、注意を引いたところから問題になったのであります。この年の六月ごろに、新聞紙上及び奈良教育委員会報告に上りまして、われわれの委員会は初めてこれを知ったのであります。これは結果的に見まして無断現状変更であります。従ってこれが無断現状変更であることは、その後再三口頭をもって注意を喚起いたしますとともに、奈良教育委員会から注意されますまで史跡であることを知らなかったという会社の釈明と、今後の文化財保護の約束を信じまして、史跡にとって大きな影響がないと思われます方への道路設置を勧告いたしたのであります。これはいわゆる柳生街道通りまして遠回りをする道であります。これを勧奨したのでありますが、会社はこれを用いません。十月に至りまして、肥鉄土運搬とともに、一般路線を延長いたしまして観光道路としたい旨の現状変更申請を行なったのであります。これは東大寺大仏殿北側道路に結ぶものでありまして、史跡保存上好ましくないことを考慮いたしまして、専門審議会におきましても種々検討いたしました結果、二十九年三月、申請通り許可はできない旨の通知をいたしました。開通することは無許可現状変更となるとの警告を発したのであります。このわれわれ委員会の意思を知りました会社は、二十九年五月に至りまして、大仏殿北側道路に結ぶかわりに、すなわち大仏殿北側を結びます道路を思いとどまりまして、先ほど申し上げましたこの知足院北側に新たに道路を開設いたしまして、正倉院北側及び西側道路を連結するようあらためて申請して参ったのであります。この案につきましては専門審議会に諮りまして、同時にこの案は奈良県知事あっせん案であって、鋪装その他の制約条項を確実に実行させ正倉院保護に協力せしめるから認可を望む、こういう知事の副申を得ました。一方宮内庁から確約条項実施するならば差しつかえない旨の回答を得ましたので、二十九年六月二十六日付をもってこの現状変更条件つき許可せられることとなったのであります。  それから第三の点でありまするが、これは七月一日から保護法罰則は強化されたはずである、強化されない六月の最後の保護委員会許可しておるが、これは間違いであるかどうか、こういう御質問と存じます。前に申しました通り専門審議会からは五月二十日にやむを得ずとの答申があり、五月中旬奈良県知事奈良教育委員会委員長の、また六月上旬には奈良県会議長の来訪を受けまして、この問題につきまして将来を必ず保障するから許可せられたいという申請がありました。同時に知事から公文も受け取りましたので、手続が終り次第許可したものであります。ことさらに改正法律施行前に許可するというような考えは全くなかったものであります。偶然とも申すべきものであります。  なおこの点は、改正法律施行日以前または以後の許可かかわりなく、すなわち法律改正せられた後の許可であるか、前の許可であるかということにかかわりなく、行いました現状変更は二十八年から二十九年にかけてであるのでありまして、そこまで改正法律規定罰則であるとか原状回復命令であるとかいう規定は遡及できないことになっておるのでありまするから、その点においては違いはないことと存じます。この点を御了承願いたいと存じます。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。
  8. 野原覺

    野原委員 ただいま高橋委員長から私の先日の委員会における質問に対する御回答があったのでありますが、ますますもって私は疑惑を深めずにおれないのであります。そこで私は何回も申し上げまするように、この奈良にある日本肥鉄土会社の新若草山ドライブ・ウェー、この問題は大きく分けて二つあるわけであります。私がこの前質問いたしましたのは、その二つの中の第一点でございまして、文化財保護法という法律があるが、この法律のもとにおける文化財保護という観点から見て、史跡現状変更のあり方に実は問題があるのではないかというのが一つ。もう一つは、これも何回も質問いたしましていまだに十分なる御答弁が寄せられておりませんが、正倉院の宝物は世界的国宝なんだが、この正倉院御物保存について、あそこの有料観光道路が一体問題を起すのか起さぬのか、弊害はあるのかないのかはっきりしてもらいたい。これもあなたの答弁ははなはだ不満であります。  そこで私は——この前の質問をむし返すわけではございません、時間の関係でむし返したくはありませんので、的確に項目をあげてもう一度お尋ねをしてみたいと思いますが、一体あなたの方は若草山ドライブ・ウェー許可を与えたのは正確にいって昭和何年何月何日ですか。
  9. 岡田孝平

    岡田政府委員 昭和二十九年六月二十六日と存じます。
  10. 野原覺

    野原委員 処罰規定実施昭和二十九年の七月一日からでございますが、七月一日まで余すところ五日しかない。  それでは、許可を受けてからこの会社は着工したのかどうか。これはただいまの答弁にも明確であるように、無許可工事着手をいたしておりますね。明らかにあそこは史跡なんです。史跡現状変更をするのであります。それをこの会社文化財保護委員会許可を受けないで着工をしておる。しかも私の調査によりますと。全長四キロ余りのコースが完成しておるのであります。あなたの方に許可申請をしたときに、四キロ余り勝手に道路を作って、しかも奈良では個人の所有権まで侵害して裁判ざたまで起しておるのです。私はこの会社の社長というのは何とむちゃな男だろうと思って大へん憤慨にたえぬのです。  そこでお尋ねしますが、許可をしたのは昭和二十九年六月二十六日。それでは現状変更申請をして参りましたのは昭和何年何月何日でございますか。
  11. 岡田孝平

    岡田政府委員 同じく二十九年三月三日でございます。
  12. 野原覺

    野原委員 無許可工事着手いたしておりますが、これは当然文化財保護委員会調査済みのはずであります。一体無許可昭和何年何月何日から工事着手しておりますか。
  13. 岡田孝平

    岡田政府委員 その点は、先ほど委員長から御答弁申し上げました通り昭和二十八年の六月ごろ、新聞紙上及び奈良教育委員会報告によって初めてその事実を知ったということでございまして、いつからその工事着手したかということは私の方では直接わからぬ次第でございます。その時日は二十八年六月ごろに着工したということであります。
  14. 野原覺

    野原委員 当時は正確にわからなかったけれども、御調査はなさっておられるに違いない。当時は奈良教育委員会等報告によってあなたの方で知った、それはその通りでありましょう。しかしその後これは調査をされておるべきはずであります。こういう無許可現状変更する工事着手は一体いつからやったかということを、その会社責任者なりその他いろいろな手だてを尽して調査をされるべきはずだ、していないとすれば怠慢です。正確に一体いつからやっているのかはっきりしてもらいたい。
  15. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 私の聞いておりまするところでは二十七年、これも正確な月日につきましては報告を受けておりませんが、とにかく二十七年からぽつぽつ工事着手したという報告を受けているのでございます。その点はっきりした報告は得ておりません。
  16. 野原覺

    野原委員 二十七年から工事着手をしておる、しかも奈良県からはひんぴんとして情報が入っておる。その間に文化財関心を持つ諸君の陳情、訴えもあったと私は聞いている。工事着手したのがかりに二十七年六月といたしますと、あなたの方が許可を与えましたのが二十九年六月です、そうすると二カ年経過しておる。この二カ年の間、史跡現状変更に対してなぜ黙っておるか。若草山のあのドライブ・ウェー、正倉院に害を及ぼすであろう史跡現状変更を、二カ年もほっておったわけをお尋ねいたします。
  17. 岡田孝平

    岡田政府委員 先ほど委員長が二十七年ごろと答弁いたしましたが、二十七年の終りか、あるいはおそらくは二十八年の初めごろかと存じます。正確なことはわかりませんが、そのころから着工したものであろうということを二十八年六月ごろに教育委員会報告によって初めて知った、こういうことでございます。二十八年の六月ごろにこれを知りまして、先ほどの委員長答弁のように、その後教育委員会を通じまして、あるいは直接に会社を呼び出しまして、これが無許可現状変更であるから工事を中止するように、また正式手続をいたすようにということを何回となく警告いたしておったのであります。
  18. 野原覺

    野原委員 ただいまの答弁は私の質問に合っていない。私が問題の核心に触れますと、あなたの方は核心をそらそうとしている。だから私は疑惑を深めるのですよ。あなた方は文化財保護責任を持っているのだから、実は経過はこうなんだと率直に御答弁にならなければ私は徹底的に追及いたします。  そこでお尋ねいたしますが、天然記念物の春日山ふもと石炭を掘る計画があり、あるいは若草山ではチタンの鉱業権採掘願いが出され、また同じ若草山地下ケーブル設置申請がなされているはずであります、そういう事実はございませんか。地下資源なり観光的な計画についての許可申請文化財保護委員会に何回となく出されていると思いますが、事実はいかがでございますか。
  19. 岡田孝平

    岡田政府委員 お話の点につきましては正式には何ら私の方に書類は参っておりません。そういう話は聞いたことはございます。
  20. 野原覺

    野原委員 昭和二十七年に春日山ふもと石炭を掘る者があった。これは許可なく石炭を掘ろうとした、そのときに文化財保護当局はこれを中止せしめておるが、まことに妥当な措置でございます。岡田事務局長ではなく前の森田事務局長です。そういう事実があったと思うがいかがですか。
  21. 岡田孝平

    岡田政府委員 ただいま記念物課長うしろにおりますが、そういう記憶はないと申しております。
  22. 野原覺

    野原委員 それでは昭和三十年に、これは最近でございますけれども、地下ケーブルカー設置申請をするものがあったときに——これは公式でなく非公式です、許可をしていないのであります。その事実はありませんか。
  23. 岡田孝平

    岡田政府委員 的確には申し上げられませんが、そういう話は聞いたことがございます。たしか前局長が、そういう話のあったときに、これは史跡保存上望ましくないことであるから、そういう申請があってもおそらく困難であろうというようなことを申し上げたことがあるというようなことは聞いておりますが、それ以上的確なことは私ちょっとわかりかねます。
  24. 野原覺

    野原委員 ただいま岡田局長は私の質問を必ずしも否定されていないのであります。私は実は二、三の事実を調査した上でお尋ねをしておるのでございまして、こういうような地下資源なりあるいはいろいろな観光上の施設等について非公式的にもせよこれに許可を与えていないということは、文化財保護委員会当局の慎重な措置として私はむしろ賛成をしておる。ところが何がゆえに、昭和二十七年から計画されたこの業者に対しては、七月一日からの罰則適用を前にして五日前にあわてふためいて二カ年間のあらゆることをひた隠しに隠してこれをカバーする措置をとられたか、それが私は了解できないのであります。先ほど高橋委員長の御回答をお聞きいたしますと、許可を与えるときに問題点はやはりあった。それはどういうことかというと、東大寺境内を通るという計画をこの肥鉄土会社は立てておった。ところが東大寺境内を通してはならぬというので、柳生街道へ抜けるようにコース変更することをあなたの方は条件として出されておるわけですね。コース変更をせよと言って許可を与えなかったのです。ところがこの会社柳生街道コース変更をしなかったのです。あなたの方が最後的に出した条件を聞かなかった。聞かずして、柳生街道は遠過ぎるし、柳生街道では金もうけの道路としてはその価値が減殺されるからというので、知足院北側から正倉院の北西を通る今日の問題のコースが実は変更申請されておるのでございますが、そのことはお認めになりますか。回答にもありましたが、いかがです。
  25. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 これは認めます。
  26. 野原覺

    野原委員 あなたの方がそれでは困るという条件を示しておりながら、向うがその条件に従わないで違ったことをやってきた場合に、それを認めるというのは一体どういうわけなんです。どういうわけでそういうことを文化財保護委員会はこの会社にしたのでございますか、お尋ねします。
  27. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 すでに申し上げましたように、この会社は社長の名におきまして委員あてで始末書を二十九年の五月に出しております。それからさらに三十年の四月九日——出したのは五日でございますが、受け取りましたのは九日、委員長あてで誓約書を出しておるのでございます。  しかしこういう違法なことをやりましたものに対して委員会はどういう態度をとったらいいのであるか、これは委員会におきましても慎重に考えたところでありまするが、一口に申しますると、適当な処置を見出し得なかったということを申し上げなければならぬ遺憾を忍ばなければならぬのであります。この会社の社長と文化財委員会におきまして記念物課長が会見いたしたりなどしておりました際において、先方の態度がはなはだ何と申しまするか、傲慢不遜とでも申しまするか、課長は実際私に向いまして切歯扼腕しておったのであります。それならば、これに対してどういう処置を講ずべきであるか、罰則を適用することが果して妥当な策であるかどうか、それからまたこれを適用いたしますることが実際にできるかどうか。法律規定してありまする過料、以前はたしか二万五千円、後に改められまして三万円になったかと思いまするが、これ以下の過料を課するということになりましたところで、果してどれだけの効果があるのであるかどうか。それからこういう事例に対しまして過料を課するということは、私その道の専門家に聞いたのでありまするが、これは今まで聞いたこともない、こう言うのであります。少くも奈良県あたりでは、かようなことはなかった。かりにこれをやるといたしまするならば、非常な労力と時間を要することであろう、どうもこれはあまり策の得たものでない、こういう消極的な意見であります。それからして後にこれを許可するというようなことになりまするならば、過料を課することはどうであろうか、こんなような答えがありましたので、われわれといたしましてもこの点はさらに十分考えなければならぬのであってこれくらいな刑罰を課するというようなことでは、とうていこの会社を押えることはできないのではないか、こういうような考えに支配せられまして、慎重な態度をとっておったのであります。  それからまた、これが果して史跡を棄損したものと称することができるか。滅失、棄損、衰亡というような文字がたしか法律には使ってあると存じまするが、こういう場合に果してこれが史跡を滅失させたと言うことができるか。今まで道が通っておったのでありまするが、その道をさらに拡張するということによって史跡を滅失させたということはおそらく言い得ないのではないか。それから棄損でありまするが、これもある程度までの棄損とは称することができるのでありまするが、滅失、棄損、衰亡と、こう並べてあるところから見ますと、相当大きな棄損でなければこれは成り立たないのではないか。衰亡ということになりますと、これもやはり問題でありましてこういう態度をわれわれがとったといたしましても、果してその目的を達成し得るやいかんということを問題といたしまして、その措置をとらずにおったのであります。
  28. 野原覺

    野原委員 さすがの頭脳明晰な文化財保護委員長の高橋さんも、私のこの種の質問に対しては全く支離滅裂であります。失礼でございますが……。私はそれを指摘して重ねてお尋ねをいたしたいと思いますが、この肥鉄土会社の業者を押えることができなかったというようなことに至っては何をかいわんやです。肥鉄土会社というこういう会社があってふらちなことをやる、しかも文化財保護影響のあることをやる、これを押えすして何のために文化財保護法はあるのでございますか。あなたは過料とかなんとか言われますけれども、しかも私は専門家の意見を聞いた、と言いますけれども、あなたは文化財保護委員長なんです。日本の文化財保護委員長であります。世界的な保護委員長なんだ。あなたが専門家にあらずして、だれが一体専門家かと私どもはお尋ねしたい。文化財保護法第百七条の二には、委員長、何と書いてありますか。「史跡名勝天然記念物の現状変更し、又はその保存影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、五年以下の懲役若しくは禁こ」云々とございます。なるほど滅失もまだしていない、棄損もしていない、衰亡もしていないけれども、衰亡するに至らしめたもの、あるいは衰亡するに至らしめるかもわからぬでしょう。だからこそあなたはただいま専門家を奈良に派遣して科学的な調査をここ二、三カ月やるとこの前おっしゃった。そういうおそれがあるのでございましょう。おそれがあればこそ、柳生街道コースを変えたらどうかと、最後の許可を与えるときに、保護委員会が親心で条件を出してやった。その条件を彼は聞いていないのです。一方的にこれをじゅうりんしている。それを聞かないで正倉院の裏を通している。そういうものを、七月一日から罰則が強化されるというので、あわてて六月の二十六日に許可をするとは一体何事ですか。私はこれは了解できない。しかもこの業者は始末書を出して参りました、この業者は誓約書も入れました、と言うけれども、一片の始末書や誓約書で事が済むとお考えでございますか。あなたの方は、柳生街道へ抜けるという条件はだてで出したのですか。文化財保護委員会としては、相当お考えになったに違いないと私は思うのです。正倉院の裏を通っては困る、そういう判断をすればこそ、柳生街道に抜けてもらいたいとしたのでしょう。ところが始末書が入ってきた。これからわれわれも気をつけますというわび証文を入れてきた、だから許したのだ。しかもこの会社に対して、いろいろな既成事実を作ったために、適当な措置を見出すことができなかったという御発言がありましたが、私はこの言葉に至っては許すことができない。これは委員長として、まことにあなたは職責を考えないお言葉ではないかと思うのであります。適当な措置を見出し得なかったとは何でございますか。文化財保護法はこういうようなものに対してこそ適用するために、法律を国会は作っておる。この法律措置をとれば、これが適当な措置であります。しかも行政処分の規定——第八十条の3をお読み願いたい。事務局長でもよろしい、この委員会で読んでみて下さい。しかも第八十条の3が準用される第四十三条の4には何と書いてあるか。許可を受けた者が「許可条件に従わなかったときは、委員会は、許可に係る現状変更の停止を命じ、又は許可を取り消すことができる。」とある。昭和二十九年の六月二十六日にあなたの方は許可をしたという御答弁なんだ。ただいまは昭和三十年の三月十三日であります。許可をしてから半歳以上を経過しておる。約一年にも近い。それにあとで私はこれをはっきりしたいと思っておりましたが、時間の関係もあるから触れておきますが、あなたの与えた条件は何ら履行していないのです。それに行政処分を適用しようともなさらない。どう考えても私は疑惑を深めずにおれぬのであります。そこでお尋ねをいたしまするが、この業者が工事着手する前に申請をしておれば、おそらく正倉院の裏側を通るあの問題の道路は私はできなかったと思います。すでに工事着手されてから二年経過して既成事実を作ってしまって、どうにもこうにもならぬ、建設省の許可もとった、そういう既成事実を持ってきたために、文化財保護委員会が、この業者から押されてしまったのではないかという疑いを持つのでございますが、これは一つ率直に御答弁願いたい。既成事実があったために、この業者のあの正倉院の裏側道路については措置をとることが非常に困難であったかどうかお尋ねいたします。
  29. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 既成事実をそのままわれわれは認めたのではないのでありましてこれに対しまして県知事そのほかの副申もあったことでございまするので、これらを尊重いたした次第であります。  なお先ほどお話のございましたように、文化財保護法の解釈について専門家の意見を聞いたのかどうかということでございまするが、われわれ文化財保護法を始終取り扱っておる者でありまするが、しかしながらこの法律につきましては必ずしも疑問なきところばかりともいえないのでありまして、往往疑義の生じました点につきまして専門家の意見を聞きますることは、私といたしましてはやむを得ないことであり、またなさなければならないことと考えておるのであります。そうしてかくのごとき業者に対しまして文化財保護法を発動して断固たる取締りを行うことができないで、何の文化財保護であるかという御質問でございまするが、こういう問題に対しましたのはおそらくこれが初めてではないか、今までもいろいろな問題はあったのでありますが、業者の良識あるいは文化財保護するの念によりまして円満な解決を遂げてきておったのでありまするが、今度のような場合が起りますと、法律必ずしも十分とはいえないのでありまして、さらにもっと罰則を重くするというようなことも必要ではないかと考えさせられるのであります。実は法律改正の際におきましても、もっと罰則を重くしたらどうかという考えもわれわれあったのでありまするが、しかしながらこれは法制局その他といろいろ打ち合せをいたしました際に、一般の法律と照し合せてみてどうもこの程度にとどめておかなければならぬ、これ以上の罰則を付するということはどうかというような意見がございましたので、これにとどめておいたのでありまするが、こういうことになりますると、さらにこれを強化する必要がありはしないか、これは研究問題として残されなければならぬところと考えておるのであります。
  30. 野原覺

    野原委員 法律について再検討するということは、これはいかなる法律についてもその通りでなければならぬと私は思います。しかしながら今日の文化財保護法で、あの肥鉄土会社のああいう行為が取り締れないという断定はその論理からは生まれません。これはできます。これは委員長としてよく御研究なすつて下さい。  そこで私は発展してお尋ねいたしますが、あなたの方が許可を与えるときに、条件を六項目出されておりますね。一つその六項目の条件とはいかなる条件か、一つあげてもらいたい、いかなる理由でその条件を出されたのでございますか。
  31. 岡田孝平

    岡田政府委員 ちょっとその前に、先ほどの点で、既成事実があったから文化財保護委員会は認可したのではないか、というお話でございましたが、既成事実があったので直ちにこれを認めたということにはならないかと思います。先ほど委員長が御答弁になられましたように、柳生街道の方に抜けるようにということを再三勧告いたしたところが、会社の方では、大仏殿のすぐ北側道路にするように申請してきたが、私の方では、それはやはり史跡に直接影響があるので、それは全然認めない。なお無許可現状変更法律違反になる旨を警告いたしたのでありますが、そこに至りまして、知事のあっせんによりまして、現在のようて知足院北側道路を作るということになりました。これならば先ほどの大仏殿北側道路よりは史跡に対する影響が少いであろうというようなこともございますし、また的確な条件をつけまして必ずそれが履行されるという見通しがつきますならば、それはまた別の観点から考えられる。同時にこの知事あっせん案は、県会議長、県教育委員会委員長その他地元の有力なる代表者がそろっての申請になりましたので、知事申請の公文をつけた上で慎重審議いたした結果、これを許可いたした、こういうことになっておりますので、既成事実があったから直ちに認めたというのではなくて、やはりそれは既成事実があったことがだんだん原因になったことは認めざるを得ないと思いますが、直ちにこれがために文化財保護委員会許可したということにはならないかと存じます。  それから、ただいまお尋ね許可条件は、第一は芝張りでございます。切り取りによって露出した山はだには芝を張ってこれを緑化すること。第二は、道路沿いに適当な植樹を行い、努めて道路が露出しないようにすること。第三は、検問所のほか一切の建物その他の工作物を設けないこと、ただの検問所の設置に際してはあらかじめ委員会の承認を受けること。第四は、会桂において立案した緑地計画を確実に行うこと。第五は、二十九年六月十日付で会社から出された念書記載事項を計画通りに実行すること。それから第六は、施工に当っては奈良教育委員会の指示を受けること、右の六項でございましていずれも道路を作ることによりまして史跡保存に支障のないように、かつまた正倉院に対する影響も防ぐようにという両方の観点からこれらの条件をつけた次第でございます。
  32. 野原覺

    野原委員 知事のあっせんがあったからとか、あるいはいろいろ関係者の意見が出されたからと申しますけれども、私の知るところでは、文化財関係者——私はここに名前をあげてもよろしゅうございますが、これらの文化財に見識を持たれる四十何名の方々がそろって反対陳情をされておるが、その反対陳情は事務局に何通来ておりますか、お伺いいたします。
  33. 岡田孝平

    岡田政府委員 何通かちょっとはっきり記憶がございませんが、奈良の有力者の方々の連名の陳情書は数通参っておると存じます。
  34. 野原覺

    野原委員 正倉院事務所長の和田さん、博物館長の黒田さん、林学大教授、唐招提寺の赤谷さん、橋本東大寺執事、堀池同司書、水谷川春日神社宮司、平崎東大寺住職、落合奈良女子大学学長等々が六通にわたる陳情書を出したと言っておる。一体六通の陳情書が事務局にございますか。私はここで疑問に思うのは、こういう見識ある方方の反対意見、反対陳情というものが、文化財保護委員の諸君に正当に出されたのかどうか、私はこれを疑っておるのであります。あなたが答弁したから私は重ねて言うのですよ。文化財保護委員はどなたであるかを知っております。私はその人々を参考人としてここに呼んでみましょうか、この六通の陳情書をお目にかけておるかどうか……。事務局の責任者がほごにしておるという事実があったら、高橋さん、いかなる処断をなされるか、委員長お尋ねいたします。
  35. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 ただいまお読みになりました方々の署名と一致しておりまするかどうか、私ただいま書類を持っておりませんのではっきり申し上げかねまするが、記憶に残っておりまするものでは博物館長黒田氏、奈良の学芸大学長落合太郎さんというような方々の連署で参りました書面は、私拝見いたしておりまするし、それからまた私あてで参りましたところのものは、私は直ちにこれを委員会で朗読いたし、やがてこれを事務局に交付いたしておるのでございまして、決してこれが握りつぶされたというようなことはなかったと存じます。
  36. 野原覺

    野原委員 あったらどうするかということを聞いておるのです。しかしこの答弁は、委員長ですから、あなたは慎重でなければならぬと考えるが、あったらどうするかと聞いておる。よろしいですね。六通のものが示されていなかったらどうするか。一通くらいは示されておるかもしれません。これは私はここでどうこうは申しませんけれども、委員長よくお考え願いたい。ただ言いたいことは、これらの反対陳情が出されておるにもかかわらず、奈良県知事が副申を出してきたから、あるいはこの業者に関係のある某々君たちが言ってきたからといって、なぜこれを取り上げたかというところに問題がある。よろしいですか。文化財保護委員会がおのれの主体性において、これは当然だという判断だという答弁なら、私はこういう追及はしない。あなた方の答弁は、副申があった、だれが言ってきた、そういうことを聞いたというから、片一方の反対があったじゃないか、なぜこれを聞かぬということになるのであります。よくお考え願いたいのです。ここにやはり問題が一つある。  それから六つの条件の問題でありますが、この六つの条件というものを出したのは、やはりこの道路を作るというと、正倉院の宝物に被害を与えるという懸念があればこそ出されたのだろうと思う。あるいはやはり史跡変更することになるから、何とかしてこの奈良史跡だけは損壊、殴傷を与えないであらせたいという心配があればこそ、六つの条件を出されたのだろうと思うのです。ところが六つの条件はその後守られていないでしょう。これはこの前守られていないということだったから、もう時間の関係もあるから、私は質問の形式はとりません。  そこでお尋ねしたいことは、この六つの条件があれば、正倉院の宝物に被害はない、大丈夫だと判断されて、この六つの条件をおつけになったのだろうと思いますが、間違いありませんか。
  37. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 この点間違いないと申し上げることができます。これだけのことをすれば、まず正倉院御物に対して被害を与えるということはあるまいということが、宮内庁そのほかの調査によって明らかになっておりまするので、われわれはこれを認めることに傾いたのであります。しかしながらこの前申し上げましたように、さらに美術品に対する影響いかんという点になりますると、一そう慎重な調査を必要とするというので、東京文化財研究所に命じましてただいま調査をいたしております。そうしてなお先ほどお話のございました奈良の良識ある諸君の委員会あてで出されました手紙、これが実際委員会に対しましては相当大きな影響を及ぼしたのでありまして、専門審議会委員の諸君と懇談をいたしました際においては、まずもう許可して差しつかえないのではないかという意見大体傾いたのでありまして、非公式ではありますが、その報告も受けたのでありまするが、委員会におきましてはこういう手紙を受け取っておるということであるし、事いかにも重大であるからして、さらに許可をいたすにつきましては慎重を期さなければならぬのである、こういうことで延び延びになっておったのであります。そうしてただいま申しましたように、研究所の調査というようなこともその後加わって参りましたので、今日に至りまするまで、その態度をまだ決しずにおる次第でございます。
  38. 野原覺

    野原委員 この六つの条件があれば大丈夫だ、この判断はいささか軽率ではないかと私は思います。これは委員長率直にお認めいただきたい。何とならば、あなたはただいま専門的にやはり科学調査を進めていらっしゃるのです。ガソリンのしぶきはどうか、それからその舗装をしたにしても四月、五月のほこりの多い時期には、いかに奈良の春日公園といえども、非常な塵埃が立つ。このことが一体正倉院の宝物にどういう影響があるだろうかといって、頼まれもしないのに大阪管区の気象台まで乗り出してやっておるのですよ。そういうことから見ても、この六つの条件さえあれば大丈夫だという結論的な判断は私は軽率であったと言わざるを得ません。これは一つ率直にお認め願いたいと思うがいかがですか、簡単でいいです。
  39. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 前回にも申し上げたと存じまするが、われわれが実際申しまして、これまで宮内庁の所管である正倉院御物保存につきましては、宮内庁が最善の力をいたしてきたところであり、これに対しまして十分な知識のあることと存じまするので、まず宮内庁の意見を尊重して参ったのであります。しかしながらなおわれわれとしては慎重を期さなければならぬというので、先ほども申しておりまするように、特に古美術に対する塵埃並びにガスの影響というようなことについて調査いたしておるのでございまして初めにおきましてはわれわれはわれわれの研究所を顧みなかったという点は全く遺憾であったということを申し上げるのでありまするが、これはしかしながら研究所におきまして、保存科学の研究に着手いたしましてから日もなお浅いことであったしいたしまするので、私どもはさような考えを初めは持たずに、宮内庁その他に依存するということであったのであります。
  40. 野原覺

    野原委員 かりに六つの条件を全部いれたといたします。幸いなるかないれていないのです。いれてないから、いれてないということで私は取り消しは可能だろうと思いますけれども、かりにも六つの条件を全部いれた。その上で科学的に調査したら問題があった。どうしてもこの道路はつぶさにやいかぬ、取り消さなければいかぬ、こういう事態が起り得るわけです。あなた方のとった措置の方から、今後の文化財保護のあり方の上から私は尋ねておるのですが、そうなった場合に一たん許可を与えて取り消すということになる。そうして許可条件は全部いれておるんだ、その上で取り消すんだということになれば、これは一体この会社に対して国は損害を与えることになるのです。よろしゅうございますか。一体そういう損害の補償はこれは国がしなければならぬと思いますが、文化財保護委員会の失態のために損害補償を国がしなければならぬという事態も起り得る問題を今回の場合は提供しておるわけです。お認めになりますか。
  41. 高橋誠一郎

    高橋(誠)委員 これは認めなければなりません。損害を与えました場合においてはこれを償わなければならぬことと存じます。
  42. 野原覺

    野原委員 私はこれで私の質問を終りたいと思います。幾多の疑惑を残しながら私は質問を一応終ります。私の疑惑は何ら解明されていないのであります。この許可にからむところの疑惑、正倉院保存に対する文化財保護委員会の熱意のきわめて微々たる問題、私に言わしめるならば、昭和二十九年の七月一日りっぱな文化財保護法が国会を通過した。その五日前に、二年前から無断でやっておるふらちな業者に対して何らの制裁もかけないで、しかも今日許可を与えてから一年近い日子がたっておるのに、何らの条件も満たされていないのに、これが完全に放任されておるというのは一体どこに原因があるのでございましょうか、了解できないのであります。ある人に言わしむれば某々氏の政治的圧力だということも聞いておる。ある者に言わすれば事務局の忌まわしい問題を口にする人もあるのであります。私はこれらの問題が明るみに出ないうちに、文化財保護委員長としては正倉院のこの問題については、一大英断をもって当られんことを要請いたします。  最後に一点お尋ねをいたしておきたいことは、もしこの業者がどうしても条件をいれない、こういう場合に取り消さなければならぬと思いますが、ここで数年間も経過して、そしてほんとうに正倉院の宝物に影響があるという事態が起れば、高橋さんも進退を決していただかなければなりません。一体いつになればこの業者に対する文化財保護委員会の最後的な意思を表明されるのか。問題が起った場合には高橋委員長としてはいかなる処置をとろうと考えておられるか、この二点、重大でございますから一つ慎重に御答弁願いたい。
  43. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 先ほどのお話でございますが、われわれはただ刑罰を課することのみが問題の解決になるとはむろん考えておりませんので、でき得れば刑罰などということは回避して、他にたつとい文化財保存のために道があるならばこれを講じたい、こう考えてこれまで処置して参ったのであります。  それから政治的圧迫があったというようなことを実は私も投書などによりまして承知いたしたのでありまして、特に注意を払ったのでありますが、これは全然なかったと、今までの調査によりますと申し上げることができると存じます。それからなお涜職があったというようなことでありますが、昨年文化財につきましてははなはだ遺憾な事件がございました直後でありまするので、私も特に敏感になっておったのでございますが、新しい局長、課長などを呼びましていろいろ話を聞き、また前局長からは文書をもって回答を求めたのでありますが、この点は幾ら私が強くこの席で主張してくれても差しつかえない、断じてさようなことはないということを申しておるのでありまして、私といたしましてはそれ以上に刑事的な態度をとって探るというようなこともできかねておるのでありますが、至誠面に現われての回答、私といたしましては疑うことのできないものがあると存じておるのであります。  それからそのあとの点でありますが、もしこのバスが通りますことによって古美術、ことに正倉院御物に対しまして悪い影響がある、これを毀損するということに相なりまするならば、むろん通行をとどめるというような態度にも出なければならぬと存じます。そしてまた私どものとりました態度に対しましては責めをとらなければならぬ点があると思いまするならば、少くとも保護委員長であります私はその責めをとる覚悟でおります。
  44. 野原覺

    野原委員 大事な点が抜けておりますので、終ろうと思いましたが続いてお尋ねいたします。  文化財保護法の第四十三条第一項、「重要文化財現状変更しようとするときは、委員会許可を受けなければならない。但し、その維持の措置をする場合は、この限りでない。」さらに第三項にこうある。「第一項の許可を与える場合において、その許可条件として同項の現状変更に関し必要な指示をすることができる。」そこで六つの指示をしたわけですね。ところが従ってはいない。ですからいつまでお待ちになるかということを聞いておるのです。ここまで問題がきていて、あなたの責任を追及されるまで足元に火がついておるものを一体いつまでこの許可条件を放置されるか、それを聞いている。これは私、この前も委員会で、十分検討してこの質問には答えてくれということで御答弁を留保させておるので、考えてきていらっしゃるはずだ。一体いつまでお待ちになりますか。
  45. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 その点でございますが、植樹は行なったと申しております。しかしながらいろいろな事情によりまして枯れたものが相当多かったということ、芝も張ったのであるがつきが悪かった、それから舗装も完全舗装とは申すことができないのでありますが、これを始めたということであります。散水の点でありますが、これは私どもの調べましたところでは、散水協会と申しますか、それに加入しておらぬというところが大へんわれわれとしては不満な点でありますが、この点にも相当力を入れるというようなことを申しておるのであります。しかしながら着手はいたしましても、これが完成するまでにはなかならひまどることと思いますので、われわれといたしましてはしばらく向うのやり方を見ておるのでありまして、いつまでこれを待つかということはいろいろ調査してみませんと、ここで即時御回答申し上げるわけには参りかねると存じます。しかしながらそれがために御物に対して非常に悪い影響を及ぼすということであるならば、また手段を講じなければならぬとはむろん考えておるのであります。
  46. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 野原君、簡単に願います。
  47. 野原覺

    野原委員 これで終ります。この前の委員会では二、三カ月ということであったのですが、この国会は五月の中旬の予定でございますが、場合によっては六月まで続くかもわからぬ。だから私はこの国会の会期末までに、一体この条件がどれだけいれられておるか、それも委員長個人の御意見ではなしに、文化財保護委員会会議の上の意見の最後的なものをお示しあらんことを要請して、質問を一応終ります。     —————————————
  48. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 次に義務教育費国庫負担法の一部を改正する法律案議題といたしまして、審査を進めます。質疑があればこれを許します。
  49. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま議題となりました義務教育費国庫負担法の一部改正に関しまして二、三お尋ねを申し上げたいと思います。  まず第一点は、私が申すまでもなく提案理由の中に述べられたところでございますが、御承知のように今日までの恩給に対しましては、それぞれ交付税を通じまして所要の財源措置が行われておったわけであります。ところが今度の法律案によりましてその財源措置を国庫負担として法文上明確にしたということがこの法案を提案した趣旨だと思うのでございます。そこで、恩給というものは義務的なものでございますので、交付税の中に含まれておりましても、あるいは国庫負担法といたしまして法文が明文化されましても、一応財源措置が行われるわけでございますが、今までのように交付税を通じて財源措置が行われておった場合と、今度のように明らかに法文化されまして国庫負担法として行われます場合と、実際のことを言うと私どもは同じような問題であろうと思いますが、法文化されまして果してどのような実益、どのような実利が生まれてくるものか、その点を明らかにしておいてもらいたいと思うのであります。
  50. 竹尾弌

    ○竹尾政府委員 私どもはこの義務教育費国庫負担法を作りました趣旨は、当時もちろん地方交付金制度がございましたけれども、あの制度は河野委員も御承知のようにどのように使ってもよろしいということであって、特に義務教育費の額が非常に高額に上りましたので、ややともするとタコの足のように切られるというような危険も非常に多かったので、せめて義務教育費の給与に関する部分だけでもいわゆるひもつきにいたしまして正確に教職員方に差し上げたい、こういう趣旨であれを作ったのでございます。その結果は非常によかったと考えております。なお恩給につきましてもさらに正確に支給をして差し上げたい、こういう趣旨で今回の法律改正を行なったということであります。なお詳しいことは所管の局長から答弁をいたさせます。
  51. 河野正

    ○河野(正)委員 地方財政がだんだん圧迫されて参りますので、ただいま次官が仰せられましたように法文に明確化されるということで、きわめて合理的にいくというようなお考えでございますならば、私どもも了承するにやぶさかでございません。  次にお伺い申し上げたい点は、新予算は前年度予算に比べまして大体六十六億五千六百万円の増加となっておるのでございますが、今度この法案が提案されまして相当額の財源措置が行われると思うのでございますが、その財源の総額は一体どのくらいあるのか。それから前年度よりも六十六億五千六百万円の増加との関連、その中に今度の財源措置の分が含まれるのかどうか、あるいはふえたと称します六十六億五千六百万円以外に財源措置が行われるのかどうか、それらの点をお尋ね申し上げたいと思います。
  52. 緒方信一

    ○緒方政府委員 このたびこの法案が成立いたしますと、三十一年度におきましては大体五千万程度の予算が必要になって参るのでございます。この法律にございますように四月一日から施行ということにいたしておるのでございまして、退職者は年度末に集まるのが普通でございますので、本年度の経費といたしましては五千万程度でまかなえるであろうと考えておるわけであります。しかしこれは清算負担になりますので、実際にやってみました上で、増減がございましたならば本年度において精算をする、かようなことになります。このたびの、ただいまお示しのありました義務教育費国庫負担金の予算の中に五千万円を含めて計算いたしておるわけでございます。
  53. 河野正

    ○河野(正)委員 それから法文の中の第二条について若干お尋ね申し上げたいと思うのでございますが、御承知のように第二条の末尾のところに「特別の事情があるときは、各都道府県ごとの国庫負担額の最高限度を政令で定めることができる。」というようなことが明記されております。ところが本法の精神から申し上げますならば、当然義務的なものでございますから、その最高限度を政令で定めるということにつきましては多少矛盾がありはせぬかと思うのでありますが、しからば「特別の事情があるときは、」という「特別の事情」というのはどういう事情をお考えになっておるか、その辺の事情を御説明願いたいと思います。
  54. 緒方信一

    ○緒方政府委員 この政令は現在義務教育におきまする給与費支給につきましてもいわゆる政令百六号というのがございまして、国の負担いたしまする最高限度をこの政令によってきめておるわけでございます。「特別な事情があるとき」と申しますのは、現在の政令について申し上げますと、いわゆる富裕な財政の団体につきましては、その府県に対しまする国の負担限度というものをきめる、この特別に富裕団体に対しまする場合、これが「特別な事情」に相なっております。このたびの恩給費の負担につきましても同様にこのことは適用いたさなければならぬと考えるのでございまして、御承知のように現在国と府県の財政の関係あるいは府県間の財政の不均衡というような点を考えてみました場合に、特定な富裕な府県に対しましては国の負担の限度を一定限度に押えていくということは変りありません。このたびの改正につきましてもこの政令百六号というものは残してこれを適用させて参りたいと考えております。
  55. 河野正

    ○河野(正)委員 富裕県というのは地方財政の場合にしょっちゅう問題になるわけでございますが、今日地方財政というものがだんだん困難になって参りました。地方財政再建整備法等によりまして再建せられるということでございますけれども、その成果というものは一朝にして期待することはできないだろうと思います。そういった事情の中でいつも問題になりますのは富裕県ということでございますが、今後富裕県だということで国庫負担が一定限度に押えられるということがありますると、結局恩給で義務的なものでございまするから、地方自治体としては出さなければならぬというようなことで、富裕県という名目で——富裕県の認定につきましてはいろいろ問題があると思いますが、そういうことで一定限度に押える、押えたために再び地方財政にしわが寄っていくというようなことを、私ども今日までの経験で非常におそれているわけでございます。そういった点は文部当局としても当然考えられておると思いまするけれども、今日そういう危険性があるかないか、その点を重ねてお尋ね申し上げたいと思います。
  56. 緒方信一

    ○緒方政府委員 ただいま私の御説明が少し足りなかったようでございますけれども、現在政令百六号につきましては、昨年でございましたか改正をいたしました。現在これを適用いたしておりますのは、いわゆる地方交付税の不交付団体だけに限っております。従いまして三十一年度について申し上げますと、大体東京と大阪だけだろうと考えております。これは結果が出てみないとわかりませんけれども、そういうふうに想像されるわけでありまして、そのほかの府県につきましてはこの政令はかかってこない、かようなことに相なると思います。
  57. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 ほかに御質疑もないようでございますので、本案に関する質疑はこれにて終了いたします。     —————————————
  58. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 この際お諮りいたします。理事でありました加藤精三君が去る十日委員辞任され、同日再び委員に選任されましたので、理事が一名欠員になりました。つきましてはその補欠選挙を行わなければなりませんが、先例により委員長においてその補欠指名いたすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 御異議なしと認め、加藤精三君を理事指名いたします。     —————————————
  60. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 それではこれより義務教育費国庫負担法の一部を改正する法律案を討論に付します。別に討論の通告がございませんので、討論を省略し、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。  これより採決いたします。本案を原案通りに可決するに賛成の諸君の起立を願います。     〔総員起立〕
  62. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決するに決しました。  なお本案に関する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。  本日はこの程度にいたし、次会は明十四日午前十時より開会いたします。これにて散会いたします。     午後零時四十六分散会