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1956-03-06 第24回国会 衆議院 文教委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月六日(火曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 佐藤觀次郎君    理事 加藤 精三君 理事 高村 坂彦君    理事 坂田 道太君       稻葉  修君    杉浦 武雄君       田中 久雄君    野依 秀市君       山口 好一君    伊瀬幸太郎君       河野  正君    木下  哲君       小牧 次生君    野原  覺君       平田 ヒデ君    小林 信一君  出席政府委員         調達庁次長   丸山  佶君         文部政務次官  竹尾  弌君         文部事務官         (社会教育局         長)      内藤譽三郎君         文部事務官         (調査局長)  福田  繁君         文化財保護委員         会委員長    高橋誠一郎君         文部事務官         (文財保護委員         会化事務局長) 岡田 孝平君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁不動産         部補償第二課         長)      佐藤 長治君         大蔵事務官   瀬戸山公一君         文部事務官         (大臣官房総務         課長)     斎藤  正君         専  門  員 石井つとむ君     ――――――――――――― 三月五日  委員阿左美廣治君、小松幹君及び三鍋義三君辞  任につき、その補欠として加藤精三君、平田ヒ  デ君及び高津正道君が議長指名委員に選任  された。 同月六日  委員高津正道辞任につき、その補欠として伊  瀬幸太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  理事加藤精三君同月三日委員辞任につき、その  補欠として同君理事に当選した。 同日  理事鈴木義男君同月二日委員辞任につき、その  補欠として同君理事に当選した。     ――――――――――――― 三月五日  市町村立学校職員給与負担法及び教育公務員特  例法の一部を改正する法律案平田ヒデ君外二  名提出衆法第一〇号)  私立学校法の一部を改正する法律案河野正君  外二名提出衆法第一一号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  万国著作権条約実施に伴う著作権法特例に  関する法律案内閣提出第七七号)(予)  文教教育及び文化財保護に関する件     ―――――――――――――
  2. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事でありました加藤精三君及び鈴木義男君が去る三日委員辞任されましたが、再びそれぞれ委員に選任されました。つきましては、理事が二名欠員となりましたので、その補欠選挙を行わねばなりませんが、先例により委員長においてその補欠指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 御異議なしと認め、加藤精三君及び鈴木義男君を理事指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 それではまず万国著作権条約実施に伴う著作権法特例に関する法律案を議題といたします。その提案理由説明を求めます。竹尾政務次官
  5. 竹尾弌

    竹尾政府委員 ただいま政府から提案いたしました万国著作権条約実施に伴う著作権法特例に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容について御説明申し上げます。  まず、この法律案提案理由を御説明いたします前に、万国著作権条約につきまして若干御説明いたしたいと存じます。  従来、著作権に関する多数国間条約といたしましては、ベルヌ条約米州関係条約とが併存対立しておりました。前者は、著作権保護に関して無方式主義原則とする条約であり、後者は、方式主義原則とする条約でありまして、この両条約の統合は戦前から試みられましたが、実現を見なかったのであります。戦後ユネスコが設けられるに及びまして、この両条約橋渡しを実現することを目的として万国著作権条約が創設せられました。この条約は、ベルヌ条約米州条約の両系統の条約を統合するものではありませんで、これらの条約併存を認めた上で橋渡しの役割を目的とするものでございます。わが国は明治三十二年にベルヌ条約に加入いたしますとともに著作権法を制定いたしまして、今日に至っているのであります。  万国著作権条約につきましては、第二十三国会で批准の承認を得ましたので、本年一月二十八日批准書を寄託いたしました。この条約によって新しい関係を生じますのは主に米州諸国でありまして、これらの諸国のうち著作権について特に深い関係を生ずるのは主としてアメリカ合衆国でございます。  次に、万国著作権条約内容といたしましては、第一に、この条約は内国民待遇原則をとっているのでございます。すなわち、締約国は他の締約国著作物について自国民著作物に与えている保護同一保護を与えればよいこととしているのであります。  第二に、著作物にCの記号と第一発行の年と著作権者の名前を表示いたしますれば、方式国で自動的に保護を受けるという、日本にとって有利な規定を持っているのであります。  第三に、著作物保護期間につきまして締約国間に長短がある場合には、相互主義を採用することができる旨を規定いたしております。  第四に、翻訳権につきましては、法定許諾制を採用することができる旨を規定しております。  以上が万国著作権条約のおもな内容でございます。この条約は本年四月二十八日からわが国について発効いたしますが、この条約は、国内法の定めるところによりまして、わが国にとって有利な保護期間相互主義翻訳権に関する法定許諾制度を採用することができることといたしております。そこで、これらの事項について著作権法特例を定めるとともに、この法律適用を受けまする著作物範囲等につきましても、法律で明らかに定める必要を認めたわけであります。これがこの法律案提出する理由でございます。  次に、この法律案内容概要につきまして御説明申し上げます。  第一は、万国著作権条約に基いて著作権法保護を受ける著作物保護期間について特例を設けたことであります。すなわち、その一つには、著作権法規定する保護期間著作物本国法令で定められている保護期間より長い場合においては、その超過する部分は保護を与えないことにいたしました。その二つには、著作権法によれば保護対象となっている著作物であっても、著作物本国法令では著作権保護を受ける種類に属していないものにつきましては保護を与えない旨を明らかにいたしました。  第二は、翻訳権に関する特例を定めたことでございます。すなわち、原著作物最初発行された年の翌年から起算いたしまして七年以内に適法な日本語翻訳物発行されていない場合には、この期間の経過後、日本国民は、文部大臣許可を得て補償金を支払い、または、供託してその日本語翻訳物発行することができることとしたことでございます。  第三は、ベルヌ条約による保護万国著作権条約による保護との併存から生じます紛争を避けるために、ベルヌ同盟加盟国一つ著作物本国とする著作物については、ベルヌ条約のみが適用せられますので、かような著作物についてはこの特例法適用がない旨を明らかにしたことでございます。  第四は、日本国との平和条約第十二条の規定に基きまして同条約最初効力発生の日から四年間、内国民待遇保護を受けている著作物については、この法律施行の日以後もなお従前どおり著作権法による保護同一保護を受ける旨の規定を設けたことでございます。  第五は、この法律は、この法律施行の日以後に著作され、または発行された著作物についてのみ適用する旨を規定したことであります。すなわち、遡及効のないことを宣言したのであります。  以上がこの法律案提案理由および内容概要でございます。何とぞよろしく御審議の上、すみやかに御賛成下さらんことをお願い申し上げます。
  6. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 次に内藤社会教育局長より補足説明を聴取いたします。内藤政府委員
  7. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 このたび提出いたしました万国著作権条約実施に伴う著作権法特例に関する法律案提案理由につきまして、ただいま文部政務次官から説明がございましたが、私からこれを補足してその要旨について御説明を申し上げます。  まず、第一条は、この特例法目的について定めております。万国著作権条約は内国民待遇原則に対して保護期間及び翻訳権について特例を認めておりますので、この条約規定に基いて保護を受ける著作物保護期間及び翻訳権について著作権法特例を定める旨を明らかにしております。  第三条及び第四条は保護期間特例に関する規定であります。第三条第一項は、著作物保護期間について相互主義適用する旨を明らかにしております。第三条第二項は、保護を受ける著作物種類についても相互主義適用する旨を定めております。すなわち、相手国著作権保護を受けない種類著作物、たとえば、米国政府刊行物・レコードのごときものは、日本でも著作権保護を与えない旨を明らかにしたのでございます。  第四条第一項は、非締約国最初発行された締約国民著作物については、相互主義適用上、その締約国民の属する国を著作物本国となす旨を規定しました。これは、万国条約国籍主義をとっているのでかような規定を必要としたのでございます。第四条第二項は、二つ以上の締約国で同時に発行された著作物については、相互主義適用する場合、その保護期間の最も短い締約国著作物本国とみなす旨の規定でございます。  第五条から第八条までは法定許諾に関する規定でございます。第五条は、翻訳権に関する法定許諾規定であります。万国条約では、翻訳権は原著作権同一期間存続するのを原則としていますが、締約国国内法で、他国語文書たとえば英語の著作物を、自国の国語、たとえば日本語に翻訳する権利について法定許諾制をとることができると規定しています。そこで日本もこの制度を採用することといたしました。この規定は、ベルヌ条約における翻訳権に関する十年留保が万国条約では認められないことになったので、それにかわるものであります。  第六条は、法定許諾による翻訳物発行する権利は譲渡することができない旨の規定であります。  第七条は、法定許諾による翻訳物にはその出所を明示しなければならない旨の規定であります。  第八条は、法定許諾による翻訳物輸出禁止に関する規定であります。しかし、かような翻訳物の輸入を認める国へは輸出することができる余地を残しております。  これらの規定は、いずれも万国条約規定されている事項であります。  第九条は、無国籍者及び亡命者に関する規定であります。万国条約の第一附属議定書がこの議定書締約国に常時居住する無国籍者及び亡命者締約国国民同一に扱う旨を規定しておりますので、この特例法においてもこれらの者を締約国国民とみなす規定を設けました。従って、この議定書締約国たとえば米国に常時居住する無国籍者及び亡命者著作物についてもこの特例法適用せられるのであります。  第十条は、ベルヌ条約保護を受ける著作物について規定しております。すなわち、ベルヌ条約万国条約保護を重複して受ける著作物については、この特例法適用せられず、著作権法のみが適用せられる旨を明らかにいたしました。従って、万国条約締約国、たとえば米国ベルヌ条約国、たとえば英国で同時発行された著作物を翻訳する場合には著作権法第七条の規定適用せられ、翻訳権は十年で消滅することになるのでございます。  第十一条は、日本国との平和条約第十二条の保護を受けている著作物についての規定でございます。すなわち、この特例法施行の際、日本国との平和条約第十二条に基いて日本で内国民待遇を受けている万国条約締約国民の既存の著作物たとえば米国人著作物は、この法律施行後も従前どおり著作権法保護同一保護を受ける旨を規定したのであります。これは万国条約第十九条の趣旨ならびに既得権尊重という一般法律理念に基いたものでございます。  次ぎに、附則二項は、この法律の不遡及について規定したものであります。この特例法は、この法律施行後、すなわち、万国条約日本について効力を生ずる日以後の著作物についてのみ適用する旨を規定し、遡及効のないことを明らかにしたのであります。従って、翻訳権について法定許諾制実施されますのは七年以後のこととなるのであります。  附則三項は、著作物の第一発行年月日登録制度を創設した規定でございます。この第一発行年月日公簿に登載しておけばその年月日法律で推定されますので、紛争が生じた場合には当事者にとって立証手数がはぶかれることとなるのであります。また、万国条約効力発生方式国においてC記号を附した日本著作物について争いが生じた場合にも、当事者はこの登録の謄本を送付すれば複雑な立証手数と費用とを節約することができるのでございます。この登録申請者に義務を課すものではなく、申請するといなとは申請者の自由でございます。この点は従来の登録制たとえば著作年月日登録と同性質のものでございます。  以上がこの法律案内容の要点であります。何とぞ十分御審議の上御賛成下さいますようお願い申し上げます。
  8. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 本案に関する質疑次会よりこれを行うことといたします。     ―――――――――――――
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 次に文教行政について前回に引き続き質疑を続行いたします。質疑の通告がありますので、これを許します。野原覺君。
  10. 野原覺

    野原委員 文化財保護についてお尋ねいたしたいのであります。私は去る十二月十五日の本委員会におきまして正倉院御物についての質問をいたしたのでございますが、これは高橋委員長も御承知のように正倉院の裏に有料観光道路が作られましたために、土ぼこりなどが上ることによって保存をいたしております世界的な国宝、特に銀器類そのほかに有害な変質が起るのではないかという質問をいたしたのでありますが、その際高橋文化財保護委員長答弁速記録から要約いたして申し上げてみますと、こういうことになっておる。正倉院御物宮内庁所管であって、文化財としての指定を受けていないので対策を講ずる上に困難が多い、文化財保護委員会としても近く専門審議会研究結論を待って正式に態度を決定したい、つまりこの有料観光道路から来るところの諸問題、こういう点については申し上げるまでもなく文化財保護法が当然適用されなければなりません。正倉院御物にこの法律適用されないということは絶対あり得ないのでございまするから、保護委員会としては専門審議会研究を依頼して、そこで結論を得た上でこの有料観光道路の問題についての態度を決定いたしましょうということを私にお約束されておられるのであります。そこで当時から今日まで三、四カ月の期間を経過いたしておりまするから、私はその間にどのような措置がとられたのかという点についてまず委員長にお尋ねをいたしたいと思います。
  11. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 前会御質問を受けました際に私のお答え申し上げましたところは、ただいま速記録を御朗読になりました通りでございます。その際野原さんから特に文化財保護委員会はあまりほかの機関に依頼し過ぎておりはしないか、私は言葉を正確に申し上げることはできないのでありまするが、文化財保護委員会自身付属機関として研究所を持っておる。ことに奈良研究所というものがあるではないか、ここで塵埃美術品に及ぼす影響、ことに正倉院御物に及ぼす影響というようなことを研究されたらどうであるか、こういう御注意を受けたのであります。これは私どもはなはだ不念でございまして、実際他の機関に依存し過ぎておったことを自覚いたしまして、直ちに文化財保護委員会付属機関調査させることにいたさなければならぬとこの席で考えたのでありまするが、奈良研究所創立日はなはだ浅いのでありまして、その設備が十分に届いておりませんし、これまでのところ研究対象といたしておりまするものが全然違っておりまするので、この研究所調査させることが全くできない状態にあります。東京の文化財研究所には保存科学に関しまする部が設けられておりまするので、直ちにここに話をいたしまして、四人の技官が担当いたしまして調査することとなったのでございます。これはこれまでも他の機関調査の結果を聞いておったのでございます。しかしながらこれらはただ一般観光バスを通すことによりましてどれだけ塵埃をこうむるかという点であったのでありまするが、今度はわれわれの方の研究所におきまして、これが特に美術品に対しましてどれだけの影響を及ぼすかということを調査することになったのであります。これは現地において行いまする調査と、室内、この研究所におきまして行いまする調査二つに分れておるのでございまするが、何分研究はなはだ困難なものがございまして、その都度中間的な報告は受けておるのでございまするが、まだ最後的な報告を申し上げるに至っておらぬ、こういうふうに言われておるのであります。たとえばテスト・ピースと申しまするか、試片というものを使いまして、結論を出しまするのは今年の曝涼の際にこの試片をお倉に入れまして、そして明年の曝涼の際にこれを取り出して検討をするというようなことをしなければならぬということであります。はなはだ先の長い話でありまするので、われわれもあせりまして、何とかもう少し早く大体の見通しがつかぬものかということを申しておるのでありまするが、どうしてもここもう二、三カ月は待ってもらいたいということを申しておるのでございます。この研究方法調査方法などにつきましてはあまり専門的にわたりまするので省略いたしまするが、相当綿密なものでありまして必ず成果をあげ得ると考えておるのでございます。この調査研究のまず大体がきまりましたところで再びこれを専門審議会にかけまして、その答申を待って文化財保護委員会態度を決したい、かように考えておる次第でございます。
  12. 野原覺

    野原委員 私が質問いたしました十二月十五日から五、六日置いて十二月二十一日に、実は正倉院事務所におきましても非常な関心をもって所長和田さんが新聞に談話を発表いたしておるのであります。その談話を読んでみますと高橋委員長が私に答弁をいたしたことと非常な食い違いがあるように思われてならぬのであります。ということは十二月十五日にあなたは私の質問に対してこういうことを答えられておる、これは宮内庁所管であるから宮内庁の方に尋ねたところが、宮内庁書陵部長から通知があった、それは三十年の九月二十九日付の文書でございますが、その通知によると塵埃ガソリンしぶきなどのために宝物に及ぼす害はないだろう。こういうことであったから、この観光道路が十分の九だけ許可になっておる。残りの十分の一の四百メートルは、委員長も御承知のようにこれはまったくこの悪質なる業者が勝手に道路を正倉院の裏に作っておるのであります。私はこのことはまたあとで申し上げたいと思いますけれども、だから許可になった十分の九の道路にいたしましても、ガソリンしぶき塵埃のために正倉院宝物影響がある。こういうことになりますと、これは、保護法によってその許可を取り消さなければならない。これは保護法規定されております。書陵部長の見解というものは、そういう害がない、こういうようなことをこの前御答弁になっておりますが、私いろいろ調べて見ますと、書陵部長はそういうことを言った覚えはないというのです。あの若草山から水が流れてくる。山水の害は世間で言われるほどのことはなかろうけれども、塵埃ガソリンしぶきについては、私は一言も言った覚えはない、このことは重要でありますから、そういうことは私としては触れてはいない、こういうことを書陵部長は申しております。同時に和田事務所長談話でございますが、これは現地における、責任者でございますから、ここで委員長に申し上げまして、和田所長談話に対する委員長所見を伺っておきたいと思う。「有料ドライブウェーの建設で校舎の東及び北側それぞれ五十メートル先を大型バスが砂煙をたてて通り管理に頭をなやませている。」と和田さんが言っておるのです。「今秋校舎の虫干し中もエンジンの排気が風にのって舞いこみ、学術調査団も驚いていた。校舎の軒先に幅六寸の空気窓があいているのでホコリ有機ガスが庫内に舞い込むのだが、この窓をふさぐと御物保存能力に大きな影響を与えるので締切ることはできない。とくに困るのは新宝庫で」――これは昭和二十八年にでき上っておる鉄筋コンクリートであります。委員長承知の新宝庫です。「この建物は外気の交流を利用して優秀な保存能力を有するよう設けられているのでホコリの問題は致命的だ、再調査の上、科学的なデータを出して文化財保護委に、ドライブウェー処置を申入れたい。」私は現地のいろいろな機関が慎重に今調査中であるので、科学的なその結果を待った上で処置をしたいという委員長のお言葉はわからんでもございませんけれども、しかしこれはかなりの期間、半年なり一年なりというような長い期間を経過いたしますと、そのことのために宝物に非常な害があったという結論が出た場合に、一体その責任はだれがとるかという問題も出てくるのであります。私も現地に行って見た。行ってみるとほんとうに五十メートルくらいのところに道路がある。そこを大型バスが通れば鋪装をしていないのですから、ほこりは舞い上っておるのです。これはだれが見てもわかる。しかも大阪管区気象台大谷気象台長は、目分の所員をやって、これは重大だというので、気象台空気中の塵埃が多いか少いかということを相当慎重に今調べておるようであります。大谷気象台長がこう言っておる。塵埃が増加すれば加速度的な宝物腐敗ということは当然考えられます。私はあそこに道路ができたために塵埃が多くなったと思います。そのことのために世界的な正倉院宝物腐敗というようなことにでもなれば何のために文化財保護委員会があり、文化財保護法があるか。私はあの若草山肥鉄土開発業者の今日までとってきた悪らつなやり方というものを聞いておる。私はそのやり方が悪らつかどうかここでは申し上げたくございませんけれども、そういう業者のためになぜ一体問題のある道路を許さなければならぬのか、調査の結果を待った上で処断しようということとは別に、そういう業者に、しかも四百メートルは、許可されていない道路を今日まで放任しておる理由について、まず委員長所見をお伺いしたいのであります。
  13. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 宮内庁からの回答につきまして書類をここに持参いたしておりますので、これを朗読いたしてもいいのでございますが、私の記憶によって申し上げますれば、ただいまお話のありました点、宮内庁としては観光バスが通らぬことをむろん希望しておる、これが一番望ましいことであるが、観光そのほかの見地からどうしてもこれを通す必要があるのならば、これだけの施設を施してもらいたい。舗装とか散水とかいうような施設を施してもらいたい。そうであるならば許して差しつかえないと考える、こういうことを公文書をもって回答せられておると存じます。この点は間違いないと存じます。  それから和田所長の話、そのほかの点でございますが、これは昨年いかにもこの塵埃がひどくなってきたという報告をわれわれも受けまして非常に驚いたのでございます。これは要するに東側道路であるのでございまして、これは県道になっております。これを全然とめてしまうわけにはとうてい参りませんので、県の当局と交渉をいたしましてずっと制限をする、こういうことになりまして、非常ないい成績をおさめておると報告されておるのであります。以前には非常にたくさん通っておりました車が十二月においてはただ一台に減少しておる、こういうことでありまして、これによりましてよほどこの塵埃が防げることと存じます。先ほど申しました四人の調査担当者の中の一人は特に大阪気象台長と個人的にも親しい人でありまして、しばしば気象台長の意見を聞いておるのでありますが、まずこの程度であるならば塵埃は相当防げることと思うというところに到達したと聞いております。  それから他の担当者の一人でありまする登石君という人がただいま奈良に参りまして、もっぱら調査を行なっておるのでございます。まだその報告を聞いてはおりませんが、おそらく同様な報告がなされるのではないかと考えておるのであります。問題は、主として今度塵埃をはなはだしからしめましたのはこの東側の道路でありまして、われわれの方で許すか許さぬかということを調査いたしております北側の道路、これとは別個のものでありますので、この北側の方でもむろんいろいろ影響はあることと存ずるのでありますが、その点は先ほど申し上げましたように、研究所調査報告を待ちまして、さらに態度を決したいと、かように考えておるのであります。
  14. 野原覺

    野原委員 大阪管区気象台の大谷さんの調査は、実は昨年この文教委員会で問題になってから初めて調査をしている。だから最も空気の澄んだ、観光シーズンでない十二月十五日から今日までなのです。奈良は御承知のように、全国の遊覧客が殺到するのであります。そうしてあすこをひっきりなしに大型バスが走るということになれば、これはいろいろ専門家の意見によると、大阪の工場地帯と同じくらいの塵埃空気中に舞い上る。ごく短い期間でありますが、四月から五月、――若葉の五月、ころにかけて、奈良の最も観光シーズンになると、そういう事態が来る。これははっきりしておるのです。冬でございますから、問題がなかったのです。そのことが一つ。  もう一つ私はここではっきりしたいことは、ただいま委員長の御答弁によりますと、有料道路許可する場合に、昭和二十九年六月二十六日付になっておりまするが、条件をつけております。それは、その有料道路のぐるりに緑の木を植える、それから正倉院の周辺は必ずその道路を鋪装するということ、その鋪装は三年以内に完了しなければならないということ、三年以内に完了するまでの期間は、必ず車が走るときは水まきをやれ、こういう条件がつけられて、従前の許可はなさっておるのですが、一体その条件は履行されておりますか、いかがですか。
  15. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 一部分は鋪装をしたということでありますが、これも遺憾ながら完全鋪装の程度に達しておらないのでありまして、この点は強硬に交渉いたしたいと考えております。それから散水の点におきましても、はなはだ遺憾なものがあるのでありまして、散水協会と申しますか、それにずっと続いて加入するということがないというようなことを聞いておるのでございます。この前もちょっと申し上げましたように、この観光のバス会社は、まことに不誠意な点がこれまでもあったのでありまして、こういう会社を相手にいたします場合には、よほど強い決意をもって対さなければならぬと考えております。これまでも、何度となくこの会社の社長に対して交渉をいたしておるのでございますが、そのつど、その非を悔いておるような文書をよこしておりましたり、あるいは口頭をもって答えたりしておるのでございますが、なお十分の手配を行わなければならぬと、かように考えております。  それから大阪の気象台調査いたしましたのは、ちょうど観光客の最も少いころでありまして、これが観光シーズンになりましたならば、一そう塵埃をはなはだしからしめるだろうということも、われわれ深く考えておるところであります。これは先ほど申しました担当委員の一人であります関野博士から、大阪の気象台長に向いまして、いろいろお話をいたしておるのでありますが、かような制限をしまするならば、相当塵埃を防げるのではないか、そうして、前に何年でありましたか、調査いたしましたときと比べますと、奈良塵埃が全体としてふえておるのではないか、こういうような話なども出たということを先日承わっておるのでありますが、とにかく東側の交通が制限せられたということによりまして、観光シーズンになりましてもよほど塵埃を少くすることができると考えておるのであります。とにかく大勢の観光客を迎える季節になりますならば、文化財保護委員会におきましても、一そうの注意をいたさなければならぬという覚悟はいたしておるのでございます。
  16. 野原覺

    野原委員 あなたの方で調査をする結果を待つまでもなく、すでに道路許可の条件すら履行しない。こういう悪質な、おのれの金もうけのために、日本の世界に誇る宝物である正倉院の裏に道路を作って、しかも鋪装という条件、水をまけという条件すら守られていない。あなたの方が幾ら紳士的に注意したってだめなんです。奈良現地の心ある人々は非常に憤慨していますよ。一体文化財保護委員会はおかしいじゃないか、この業者とあなたの事務局と何かあるのじゃなかろうかとまで言っておる。私はそう考えざるを得ない。何かあるといって、現地の心ある人々は非常に憤慨しているくらい、これは問題になっている。この鋪装と散水の条件すら履行しないというこれだけで、この道路許可を取り消すべきである。もう調査するまでもない。もしあらためて観光道路の必要があったならば、科学的なデータその他を出して綿密にやることはいいでございましょう。私は取り消すべきだと思う。昭和二十九年六月からもう二カ年経過いたしております。その間におけるところの塵埃の与えたその被害ということになりますと、これは大へんなことになるでしょう。保護委員長も御承知のように、文化財保護法の行政処分の規定を読んでみますと、第八十条の三で、第四十三条の第四項が適用されることになって、こう書いてある。許何を受けた者が許可の条件に従わなかったときは、委員会許可にかかる現状の変更の停止を命じ、または許可を取り消すことができるとある。なぜあなたはこれを適用しないのか。これはもう塵の調査をする必要はないと思う。現状の変更の停止を命じ、許可を取り消すことができるというこの行政処分の規定で、なぜ勇気をもって御処断なさらないのか、この規定適用しない理由についてお伺いしたいのであります。
  17. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 先ほどお話のございました、何か文化財保護委員会の事務局に忌まわしいことがあるということは、私も奈良のある人からの手紙によりまして承知いたしました。直ちに調査を行なったのでありますが、さような事実は断じてないということに相なりまして、いささか安心をいたしたのであります。どうもあすこにいろいろないきさつがありますので、こういうようなうわさが立てられますことは、まことに遺憾であります。われわれの調査が不十分であるかは存じませんが、どうも私みずから調べたところによりますと、かようなことはなかったと申さなければならぬと存じます。全くのうわさにすぎなかったのではないかと考えます。この点は東京におきましても、奈良におきましてもいろいろ問い試みたのでありますが、確実な証左らしいものは何も得られなかったのでありますので、ただいまのところではそのままにいたしておるのでありますが、その当時の局長ももうかわっておることでありますが、必要がありますならば、さらにまた調べなければならぬとも存ずるのであります。さようなことでございます。  それから第二の御質問の点、なぜ許可を取り消さなかったかということでありますが、この点は他の官庁、運輸省、建設省などとも連絡をとりまして善処いたしたいと考えておるのであります。御承知のように、北側の道路、初めに許可いたしましたところは変更になりまして、新しい道をつけておるのでありますが、この道につきましてはまだ許可を与えておらぬのでありまして、これに許可を与うべきかどうかということが、先ほどからお答え申しておりますように、今後の調査研究の結果に待ち、またいろいろな機関に諮って行わなければならぬところと存じておるのでありまして、この観光会社については、いよいよ誠意を認めることができないということでありますならば、われわれもむろん断固たる態度をとらなければならぬと考えておるのでございますが、今までのところではまださような段階には達しておらぬのでありまして、相当な期間内において十分鋪装並びに散水を行わしめるということをいたさなければならぬかと考えておりますし、またこれが行われますならば、塵芥その他を相当防ぐことができるというふうにも報告されております。
  18. 野原覺

    野原委員 事務局のうわさかどうかの問題は、あなた方の誠意いかんと相待って、これが真実かどうかをあらためて私自身も糾明いたしたいと思います。これは一つ委員長におかれても、現在の事務局長でない前の事務局長にまでさかのぼって、これは問題があなたにもかかってくるかもわかりませんから、十分なる事務局内の御調査をされんことを、私はこれは老婆心ながら御要請いたしておきたいと思うのです。  それから、これは何回も申し上げますように、許可の条件であった鋪装は、これは二カ月で大部分つぶれてしまうくらいの貧弱な鋪装しかされていない。もう昭和二十九年六月から二年たっておるじゃありませんか。三年内に鋪装完了という条件なんです。しかも水を何べんまいたのですか。私は現地の人の話を聞いたのですがほとんどまいていない。あなたは一体いつになればこの業者に誠意があるかないかという判断をされるのか。誠意の認められる時期というのは、委員長としてはいつだとお考えでございますか、承わりたい。
  19. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 まず最近の機会におきましてわれわれの態度を決したいと考えております。ことに間もなく参ります観光シーズンなどにおいて、果して散水などを行うかどうか、あるいはこれだけのことでもこれを行わなかったというようなことでありますならば、われわれも考えを立て直さなければならぬ、こう考えておるのでございます。ただいま申し上げましたように、研究所報告が二、三カ月の後、こう申しておりますので、大体このこりにおきましてわれわれの態度を決するときがくるものと考えております。
  20. 野原覺

    野原委員 この国会は五月の中旬まででございます。私はここで委員長にはっきり申しておきますが、委員長が二、三カ月ということを言われましたので、この通常国会が幕を閉じるまでに最終的な態度を決定されんことを私は希望いたしておきます。もしあなたの方でそういうことができないということであれば、私はあらためて問題を提起したいと思う。先ほども申し上げましたように、行政処分の規定第八十条の三項を私は読み上げましたが、第八十条の五項にはこれはまた問題がございますよ。今委員長のお認めのように、その十分の一の未許可部分、知足院の横の路線四百メートルというのは、許可を得ずにこの業者は勝手に道路を作っている。これについて私は十二月十五日に質問したときに、あなたはこういう答弁をなさっているのであります。原状変更の許可がない諸施設には原状回復を命じたいと言明をされているが、一体この四百メートルの未許可道路の原状回復をお命じになられたかどうか。命じられたとすればそれは何月何日であるのか。そうしてあなたの命じたことに対して業者が一体どういう反応を示しておるのか、承わりたい。
  21. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 私のお答え申しました点、私の答弁がはなはだ不十分であったためとも存じますが、原状回復の命令を発しましたのは主として建物の点でありまして、何か許可を得ないで建物を建てたその建物を取り除かせるということ、これがこちらで命じましたところの原状回復でございます。
  22. 野原覺

    野原委員 私は、建物にいたしましても、第八十条の五であなたの方で原状回復をお命じになったかどうかを聞いておるのであります。命じられてこの業者が一体原状回復をしたかどうか、その点いかがでございますか。
  23. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 この点は原状回復を命じまして原状回復ははなはだ容易なことであったと聞いておるのでありますが、その建物は撤去した、こういう報告を受けております。
  24. 野原覺

    野原委員 四百メートルの道路が一体無許可で作られておることをあなたの方はいつ知りましたか。そして知っておるにかかわらずこの道路が竣工するまで放置したわけ、及び今日までこの道路を黙認している理由等について聞きたい。
  25. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 今私はちょっと何月でありましたか記憶がないのでありまするが、奈良文化財保護課長に連絡いたしまして、あの道路にバスを通しておるということであるが、さっそく調査してもらいたいと申したのであります。それに対しまして返事がございまして、自分は相当長い間あそこに立ってバスが通るかどうかを見ておったのであるが、自分が立って見ておった間は一台も通らなかったというような報告を聞いたのでありまするが、その後になりましてバスが通っているという報告を受けたのであります。しかしながらこれをどう処置するかということにつきましては、ただいま申しました建設省、運輸省などと連絡をとる必要もあることでございまするので、今日に至りまするまで措置を講ぜずにおる次第でございます。
  26. 野原覺

    野原委員 私一人時間を食うことはどうかと思いますので、もう二、三分質問いたしたら終りたいと思いますが、これは一つ委員長卒直に御答弁願いたいのです。私の調査によると、三十年早々に四百メートルの工事の着工かなされております。そこで奈良県の教育委員会文化財保存課坂元課長が三十年の二月四日上京いたしまして、平間記念物課長に会って報告いたした。もうすでに工事を始めているが、これは大へんなことなんです、こういうことを二月四日に報告している。これは坂元課長が証言をいたしております。ところがこの道路ができ上ったのは四月の中旬なんです。二月四日文化財保護委員会はこの道路が着工されておることを聞きながら、道路の完成する四月中旬まで二カ月以上放任したというのは、一体どういうことですか。ただちにこの問題については何らかの処置をとるべきではありませんか。許可なしに道路を作るということを、あなたの方では二カ月放任をしておるのでございますよ。よろしゅうございますか。あなたの答弁いかんでは、私は委員長に坂元課長なり適当な人を証人として申請しますから、一つ間違いのない御答弁を願いたい。二カ月以上ほうった、これはどういうわけですか。一体この業者保護する意図でなされたのかどうか。私はどう考えても、あの正倉院有料観光道路の問題はどうもこの業者に対してあなた方は非常に甘いと思うのです。あらゆる点から私は申し上げる材料がある。一体この道路の二カ月間はどういうことでございますか、お聞きしたいのであります。いいかげんな答弁は困りますから、ただいま答弁できないならばできないで、的確に資料を調べて、次回の委員会にでも御答弁あってよろしゅうございます。
  27. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 むろんただいま野原さんのおっしゃいました日付には誤まりないことと存じまするが、この点は十分書類を調べまして、次の機会に御答弁申し上げまするが、私の記憶にありまするところでは、ただいま申しましたように、初めに聞きましたときには道は一部分できておる。しかしながらまだ車は通っておらぬ、こういうことでありました。むろんこれはやがて道路ができ、バスが通ることと、こう考えましたので、これは事務局に命じまして、ただちにこのバス会社に向いまして、何と申しますか、詰問いたしたのでありまするが、それに対しまして文化財保護法規定を十分に知らなかったというような文句があったかと存じまするが、以後は注意して、かような違法なことはやらぬようにするということを申して参ったのであります。ところがその後になりまして、道は通り、バスは通ずるということになりましたので、いかなる態度を講ずべきであるかという点を考慮しておるのでありまするが、先ほどからたびたび申しておりまするように、まだこの道の許可は与えておりませんので、許可すべきかどうかということは、専門審議会の答申を待って決したい、かように考えております。
  28. 野原覺

    野原委員 昨年の四月、すでに道ができて車が走っている。それを一年たった今日許可するかどうかなんて、そういうようなことで一体文化財保護の重責が果せますか。高橋先生にはなはだ失礼な言い方でありまするけれども、私は疑問に思う。あなた方の文化財保護に対する誠意を私は疑わずにはおれない。しかしこれはこの次の委員会報告するということでございますから、私はこの点は次の委員会で申し上げましょう。  そこで二点、あなたの方で調査をしてもらいたいことをただいまから申し上げますから、次の機会に報告していただきたい。それはこういうことです。すでに許可になっておる十分の九のこの有料道路も、二十八年から二十九年にかけて無許可で工事が始められているというが、いかん。工事に着手したのは、無許可でやっている、これはどうかということ。次は、その無許可で工事を始めたときに、文化財保護委員会並びに奈良県の教育委員会からのたび重なる注意や警告や中止命令をこの企業者はけっております。そうして、委員長も御承知のように、昭和二十九年の七月一日から文化財保護法の罰則は強化されたはずです。そこで六月の最後の保護委員会において、この無断で工事をやっておった道路許可すると決定しておりますが、その真相いかんということ。これもご報告願いたい。今すでに許可になっておる道路は一体いつ文化財保護委員会として許可したのか。私の調査によれば、昭和二十九年の七月一日から強化されるというので、その強化されない六月の最後の保護委員会許可しているが、これに間違いがあるかどうか。これは委員長大へんなことでございます。一体今日の文化財保護委員会はほんとうに本腰を入れて日本文化財についてどこまで熱意があるのか。正倉院のこの一例をとってみても非常に暗たんたる気持を抱かずにおれぬのであります。ただいま申しました二点は、もしお聞き違いがあってはいけませんから、速記録を十分お読み下さった上で、次の文教委員会に正確なる御報告あらんことを希望いたしておきます。そこであらためてまた私は意見を申し上げたい。終ります。
  29. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 関連して、高橋委員長一つ簡単にお伺いしたいと思います。  それは、私は昭和二十九年の五月ころあなたにお会いして、奈良県の巣山古墳の買収方を依頼したわけです。当時保護課長が呼ばれまして、さっそく何とか調査して、大蔵省の方に財源を求めて買い取るような方法をいたしましょう、こういうお話でございましたが、その後どういうふうな努力をなさって下さったか、お伺いしたいと思います。
  30. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 この点はその後一向文化財保護委員会に対しまして正式な買い取りの要求が出ておらぬと聞いておりまするが、これを待ってわれわれそれぞれの機関にかけ、いろいろ関係各庁と交渉いたしたい、かように考えておったのでございまするが、私の不念でありますか、どうも出たということは実はまだ聞いておりませんので、今までのところ何ともいたしかねておったのでありまするが、この点いかがでございましょうか。
  31. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 その当時書類を出してもらっても大蔵省ではなかなか予算をくれないのだ、その見通しがつきましたならば、さっそくそういうような申請を出していただくようにいたしましょう、こういうことでありましたが、その後どういうふうに誤まり伝えられたか、朝日新聞には、奈良県において巣山古墳が荒されているというような大きな記事が出たわけなんですが、そういう点御存じでございましょうか。
  32. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 新聞記事は読んでおります。これが荒されておるという程度、どこまで荒されておりまするのか、これも先日新聞を見ました後において調査を命じておるのであります。史跡、ことに特別史跡のごときものは、国家におきまして全部これを買い取るということがいいのではないかも考えられるのでありまするが、しかし委員会の中などにおきましてもいろいろ議論もありまして、果してさようなことをなすべきであるかどうか、相当疑問があるのでありまするが、かりにこれを行うべきものだといたしましても、実際におきましていろいろな困難に遭遇しなければならぬのでありまして、史跡を買い上げましたのはきわめてまれのように承知いたしております。何年でありましたか、太平府におきまして、それから武蔵の国分寺におきまして土地を買収したことがあるのでございまするが、それだけではなかったと思います。ところが最近におきまして御承知のようにイタスケ古墳が問題になりまして、これを買い上げることになったのでありまするが、これは御承知のようにここでも問題になったのでありまするが、これは堺市が購入いたしまして、価格は四百万円であったかと存じます。その中で国庫は二百五十万円、六割何分かを支出しておるのであります。これによりまして危険の直前に抑止することができたのでありまするが、このたびの御質問の場所などもやはりこういうふうにでもいたすのが一番適当なのではないか、まず土地におきまして、奈良県なら奈良県、あるいはそのほかにおきましてこれを購入されるということにいたされて、そして国庫がどれくらい負担いたしまするか、六割ないし七割負担する、こういうようにいたすべきものではないだろうか、ほんとうにあれが危険にさらされておるということでありまするならば……。さように考えておる次第でございます。
  33. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 昨年末イタスケ古墳が破壊されたということで全国的な大きな問題になって、たまたまこれを堺市が四百万円で買い取ったというような新聞記事も私は見ていますし、当委員会において同僚野原委員からもこのことについてるる質問をなさって、イタスケ古墳の周辺にはまだたくさん貴重な史料が残っておる、これをすみやかに指定をしろというような御質問をなされたかに見ておるのでございますが、指定いたしましても、指定後におけるところのその古墳を守る処置をどうなさっておるか。また保護法の第七十条には、委員会は所有者を尊重しなければならない、こういうことが出ておるのです。史跡に指定してその後における所有者の権利を尊重するというようなことは、一体どうなさっておるか。それから巣山古墳の所有者に対してどういういわゆる尊重をなさっておるか、こういうことを具体的にお聞きしたいと思います。
  34. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 所有権はあくまでも尊重しなければならぬことと存じておるのでありまして、ただ文化財保護の上から申しまして、文化財が危険にさらされるというような場合には、これに対しまして制限を加えなければならぬ、こういう態度で臨んでおるのであります。それから、先ほどイタスケの場合も話に上ったのでありまするが、イタスケと巣山との間にはかなりの相違がございまして、イタスケは御承知のように指定されておらなかったのでありまして、仮指定を行なっておったのであります、巣山の方は十分御承知のように、すでに史跡として、また特別史跡として指定されておるのでございますからして、文化財保護法規定によりまして現状を維持することができるものと考えておりますが、これが著しく荒されておるということが明らかになりますならば、ただいまお答え申しましたように、何らかの手を打たなければならぬと、むろん考えております。
  35. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 それならお尋ねしますが、その古墳を指定なさったときには、所有者に対してどういう補償をなさっておりますか、それを一つ具体的にお聞きしたいと思うのです。ただ個人の所有している物件に対してこれを特別指定するといって標木を立てて、そうしてこの保護法規定によって現状を変更することはならない、変更するときには委員会許可を要すとか、認可を要すとかいうような厳重な規則でそれを縛って、しかもこれは個人の所有で個人の財産、これは相続税もとられるし財産税もとられるというようなことで、ただ地方税を免除するという規定はあるけれども、これは個人の財産、それに対して特別指定だといって、そうして何の補償もしないというようなこと、そうして現状を変更して、たとえばその土地に立っているところの樹木を伐採するというようなことは現状の変更だ、こういうことでこれはなかなか許可しないということであると、所有者はどうにもならぬ。そうしてしかもそれを他人に売却しようとすると、あんな標木が立ててあるから普通の価格では買わないんです。周囲は果樹園だから、果樹園にできるようなのであれば適当な価格で買い取れるが、果樹園にも何にも、その標木が立ってあるためにできない。指定されているためにできないということになり、持っていて大へん困る。これは床の間の置物だったら、税金も財産税もかからぬからじゃまにもならぬし、そこに置いておけますけれども、そういうわけにはいかぬのです。一体これはどんなふうになさいますお考えですか。
  36. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 この問題は文化財保護の全般の問題でございますが、文化財保護につきましては、まずきわめて重要なものを国が指定する。指定いたしましたならば、それに対して現状を変更してはいけないとか、その他いろいろな制限があります。その制限によりまして、文化財保存が全うされる。しかし単なる制限だけではいけませんので、あるいはその修理をいたす場合には、その修理に対して補助金を交付するような規定もいろいろございますが、要するに個人の所有のものは個人の所有の財産であって、それは同時に公共的なものである、こういうふうなきわめて二重な性格を持っておりますので、この点はお話しの通り文化財保護のうちで一番めんどうな点でございますから、ただいまのところ法律ではそういう場合に特に補償の規定を置いてない。従って古墳の所有者がそれが売れないなら国が補償してもらいたいというようなお話がありましても、直ちにそのために補償というところまでいっていないわけであります。
  37. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 そうすると個人の所有物に対して国が特別指定して、その個人の所有権に対して重大な変更を加えているわけなんですが、それに対して何の責任も感じない、こういうことになるんですか。しかもこの巣山古墳の指定は昭和十三年になされておるが、それ以来何の監督というか監視というか、そういうものもやられていないように思う。私らの記憶では、つい戦前は円筒古墳なんかが周囲に七つも八つもずっと露出しておったのが、昨年正倉院の院長と、博物館の館長と私が見に行ったときには、それがそっくりなくなっておる。それからあの周辺に、私ども十四、五年前に見に行ったときには、家型埴輪の破片とかいろんなものがうず高く積まれておった。それが今では一つもなくなっておる。ことにあの古墳には人家が建っておるのです。人が住んでおるんですよ。あの周囲の堀の中に古墳がありますが、その中に人家があるんですよ。それだからそこへはどんどん用事で行く、こういうような関係で大へん荒らされておるんです。一体その荒らされておる監督、監視はどういうふうにやられておるんですか。
  38. 岡田孝平

    ○岡田政府委員 文化財保護責任は第一に所有者にございまして、所有者にその管理の義務があるわけであります。その管理がうまくいっているかどうかということは、やはり第一義的には、都道府県の教育委員会が最も地元でございますから、そこで十分ふだんの状況を調べてもらう。その報告によりまして、文化財保護委員会で実際の状況を知るということになっておりましてそれによって適当な措置をとる、こういうことになっております。
  39. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 指定された所有者がそれを監視するということになるのですか。巣山古墳の所有者は大阪府に住んでおるのですよ。しかもいつの間にか知らないうちにそういうふうに指定された。そうして他人に売却しようとしたら、お前の土地は特別指定になっておのだから、普通の値段では買えないと言われる。それから戦前でしたが、食糧増産のためにその付近を開墾してカンショを植えた。またそこには大へん木が生えておるから、周囲から鳥が飛んできてどうにもならぬということで、竹を切ろうとすると、それはいけない、こういうことで現状を変更することができない。持っている人も大へん困ればその付近の農民もこれがために大へん困っておる。だからこういうような、国が特別指定をしなければならぬような重要な史跡は、所有者の意思によって政府がすみやかに買いとるような方策をすべきが当然だと思う。ところがそういう努力はなされていない。きょう私は大蔵省の方の出席を求めた。一体大蔵省はこういう文化財の問題に対してはきわめて冷淡である。そうしてその金を出ししぶっておる。大阪府のイタス左古墳は、ああいうことをやったから二百五十万円の予算でも出すが、ああいうことをやらなかったならば、出さないというのなら、奈良県あたりはそういうような史蹟がたくさんありますが、そういうことをやらなければ出さぬというのであったら、ちょっとやってみて、大蔵旨から金を出してもらうというような方法も、文化財を守る一つ方法ではなかろうかと思うのですが、委員長はどんなお考えですか。
  40. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 お説の通りでございまして、先ほども申しましたように、でき得るならば全部を国家の所有に移すべきだという意見も相当強いのであります。しかしながら、何と申しましてもこれが実現は非常に困難な状態に置かれております今日、所有権者はむろんその所有権を尊重せらるべきではありますが、国家社会公共の利益のために、あくまでも所有権を制限してまでも、いろいろの迷惑を忍んでまでも、文化財保護のために尽してもらいたいとわれわれは念ずるところであり、また保護法規定するところであります。どうしても所有者みずからが文化財を尊重する念がなければ、幾ら国家社会がやかましく申しましても、とうてい文化財を守り抜くことはできないのではないかと痛感いたしておるのであります。しかしながら特にこの巣山の場合、いろいろ困難のあることは私どもも存じております。所有者は一人でありますが、事実におきまして数名あるいは十人くらいの人たちの手に、事実上権利は移っておるというようなことも聞いております。そのためにこれを保存することが非常な危険にさらされておるということでありますならば、奈良県そのほかと協力いたしまして、保護方法を講じなければならぬと思うのでありますが、どうぞ一つこのことは地元の方におかれましてまず指導的に働いていただきたいと存じます。さような場合におきましてはわれわれ委員会におきましてむろんこれと協力いたしますことを惜しむものではないのでございますが、どうぞ一つ、所有者並びに地元におきまして、このたっとい文化財を守り抜くことのために御尽力願いたいと考えておる次第でございます。
  41. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 大蔵省から瀬戸山説明員が来ておりますから御説明願います。
  42. 瀬戸山公一

    ○瀬戸山説明員 ただいま御質問文化財保護につきまして、大蔵省はあまり金を出したがらないというようなことでございましたが、われわれ決してそういうつもりはございませんし、文化財保護につきましてはいろんな点を十分考慮いたしておる次第でございます。先ほど問題になりましたイタスケにつきましては、地元と文部省文化財保護委員会との話がうまくまとまりましたので、それに応ずる予算措置を講じたわけでございますが、一般的に危険に瀕している古墳その他の文化財をどうするかといったようなことは、今後よく保護委員会と協議いたしまして、そういう貴重な文化財がなくならないように、また長く国民文化財として保存できるような措置をば今後とりたいと考えております。そういう趣旨では決して大蔵省も文化財保護につきまして冷淡であるということはございませんから、その点は今後十分保護委員会と話しまして措置いたしたい、かように考えております。
  43. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 そうすると、もし文化財保護委員会からそういう予算的措置を要求された場合には、特別指定地というような重要な文化財に対しては要求される金はお出しになるという御意思だと思います。そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  44. 瀬戸山公一

    ○瀬戸山説明員 その点につきましては具体的な問題をよく検討いたしまして、かりに古墳でございましたら具体的な古墳の価値判断を十分検討いたしまして、どうしてもそういった措置を講じなければならないという結論に、保護委員会と大蔵省がよく相談してそういう判断がつきました場合には、適当な処置をとりたい、かように考えます。
  45. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 大蔵省が価値判断するというけれども、この古文化財に関しては文化財保護委員会というものが価値があるかないかということを決定するものであって、大蔵省の方でそれを価値判断するというようなことは、これはあり得べからざることだと思うのです。たとえば、こういうりっぱなものだけれどもどうも金のやりくりがつかぬというならとにかくですけれども、そういうような価値判断を大蔵省でやられて、貴重な文化財をあなたの方でとやかく言われるということは私は了解できぬ。これはやはり率直に当局の文化財保護委員会責任を持って、こういう特別指定地であるというような重要な決定をなさっておるのです。これは簡単にああそうか、それならここへ指定してやろうかというような、それくらいの軽率なことで指定をしているのではないと私は思うのだけれども、大蔵省ではそういうことをおっしゃらずに、この保護委員会からの要求に対しては率直にこれは善処すべきが当然だと私は思うのですが、それはどうですか。
  46. 瀬戸山公一

    ○瀬戸山説明員 先ほどの答弁は多少訂正いたします。文化財に指定された具体的な物件につきまして、それをどういうふうに国の予算措置を講ずるかといったような問題につきまして、よく保護委員会と相談する、こういう意味でございます。
  47. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 それから一つ高橋委員長にお願いしておきますが、この巣山古墳は特別指定というような重要な指定をなさっておる。そうしてしかも所有者に対しては何の補償もしていない。しかもこれを個人で売買をやろうといったところでこの指定をされておるために売ることができない、買取人がない、こういうようなことで、これを開墾してもうイタスケのようにやってしまうか、それともこういうりっぱな古文化財を国の所有として、幸いこういう機会に大蔵省がさようにおっしゃっているんだから、これを大蔵省に財源を要求して、即刻に一つ買い取るような方途を講ずるように努力すべきだと私は思うんですが、そういう御意思はお持ちでしょうか、どうでしょうか。
  48. 高橋誠一郎

    高橋(誠)政府委員 これも先ほど申しましたように、正式な書類が出まするならば、これを専門審議会にかけましてそうして買い取るべきが適当である、買い取る必要がどうしてもあるということでありまするならば、大蔵省と折衝いたしまして予算的措置を講じたいと考えておるのでありまするが、実はこれはまだ専門審議会にもかけてございませんので、専門審議会の答申を待って委員会態度を決しなければならぬと考えております。委員会は五人の会議制でございまするので、私の考えだけでいかない場合もありまするので、その点御了承願いたいと存じます。
  49. 佐藤觀次郎

  50. 河野正

    河野(正)委員 私は軍事基地と文教に関連しまする若干の事柄につきまして質問をいたしたいと思います。  まず第一に、文部省当局も御承知だと思いますが、この春には新しく学校の卒業生がたくさん出て参りますが、そういった卒業生が非常な就職難に苦しんでおる。そうしてこの春を待たずにみずからの生命を就職難のために断っていくというふうな実情がちょいちょい出て参っておりますし、新聞紙上でも報道されております通りでございます。かつては炭鉱地帯におきましても、炭鉱地帯の環境が非常に悪いということでそういった悪環境にございます子供たちの就職が妨げげられたというふうなことが多々あったのでございまするが、最近の新聞紙上等で見ますると、今度は基地の子供たちに対しまして、大工場その他中小工場等におきまして、基地の子供たちはごめんだというようなことで、基地の子供たちの就職に関しまして一つの大きな問題を提起して参っておるようでございます。こういったことはこれ全く子供たちに罪があるわけではないのでございまして、これは基本的には国内に軍事基地を設けられたということがきわめて重大な事柄でございまして、そういったあおりを食って子供たちが非常な大きな迷惑をこうむって参っておるというふうなことでございまするかり、私はこれは単に部分的な問題ではなくて、これは当然国として責任を持たなければならない基本的な重要な問題ではなかろうかというように考えておるわけでございます。そういった意味で、きょう大臣はおられませんので、一つ次官の方からこういった実情に対しまして文部省当局はどのように考えておられるか、またどのように善処しようと考えておられるか、御所見をお伺いしたいと思います。
  51. 竹尾弌

    竹尾政府委員 基地の問題につきましては、基地が設置されたために、それに関連していろいろの問題が起っておることは、御承知通りでございます。そこで、そうした問題が起るたびに、文教関係関係した事件につきましては、私どもも今日までいろいろ努力をいたして参っておりまするし、特に基地の付近にある小中学校の問題などにつきましても、いろいろと考慮をめぐらして参ったのでございますが、ただいま河野委員のお述べになったような点も、これはいろいろの意味で非常に重大な問題でございますから、よく調査研究――というといつも同じような言葉になりますけれども、真剣に調査研究をいたしまして、それが子供たちに対してもよい結果を及ぼすように、十分私どもといたしましても努力をいたしたい、こう考えております。
  52. 河野正

    河野(正)委員 ただいま竹尾次官からまことにけっこうな御答弁をいただきまして、私どもも非常に好感を持っておるわけでございますが、こういった問題が起ります考え方というものは、大体今まで成績、あるいは人物本位というようなことで採用しておりました考え方が、逐次、いろいろな道義上の問題もあると思いますが、今日におきましては、今までの成績、人物本位というような考え方が、家庭第一主義と申しますか、要するに環境第一主義といった考え方から、ただいま申しましたような、基地の子供たちの就職をはばむ、あるいはまた炭鉱地帯におきましては炭鉱地帯の子供たちの就職をはばんでいくということが起ってきたものと考えるわけでございます。もちろん、成績、人物本位でいくか、あるいは環境主義でいくかというようなことにつきましては、それぞれの考え方があると思いますけれども、しかしながら、少くとも、今日日本に七百数十カ所の基地があるといわれておりますし、この基地の問題というものはきわめて重大な問題でございますが、そういったきわめて多数の基地をかかえておる、その多数の基地の周辺に生活を営まなければならない子供たちがたくさんおる。そういった実情の中で、ただいま申し上げましたような環境第一主義というような考え方で雇用の面を考えて参りますと、勢い基地の子供たちが就職に対して門戸を閉ざされるということが、当然の事柄であろうというふうに考えておるわけでございます。そこでこういった考え方につきましては、いろいろの考え方があると思いますが、少くとも基本的には成績、人物本位でいくか、あるいは環境主義と申しますか、家庭主義と申しますか、そういった二つの考え方が、こういった雇用の面に最終的には非常に大きな影響をもたらして参るものと考えております。今後こういった問題について、成績、人物本位を重点的に取り上げていこうという考え方か、あるいはまた環境、家庭第一主義でこういった問題を考えていこうという考え方かということは、結果的には非常に基地の子供たちに影響を及ぼしますので、今後文部省当局の指導方針として、これはなかなかむずかしい問題でございますけれども、どちらも結果的にはこれが非常に影響を及ぼすわけでありますから、この成績人物本位でいくか、あるいは環境主義でいくかというような点に対しまして、今後当局としてどのような指導方針で臨んでいかれようとせられるものか。このことは結果的に非常に重要なことになって参りますので、この点につきましての御所感を次官から承わっておきたいと思います。
  53. 竹尾弌

    竹尾政府委員 少し大きな言いぐさになるかもしれませんが、個人生活とその社会的環境との関係につきましては、私から申し上げるまでもなく河野さんは、そうした社会と家庭生活の関係というようなことにつきましては十分御検討をされていることと存じます。そこでこれがどういう結果をもたらすか、また具体的にそうした問題が起った場合にどうするかということにつきましては、社会と家庭生活、環境と家庭というような関係にもなりますので、実際そうした社会環境を直していくということが一番いいのでありまして、それには今の基地の問題が起りましたが、そうした具体的問題をどう解決するかというきわめて大きな問題になろうかと存じますので、そうしたことについては今こうだということは、私からちょっと申し述べにくいのですけれども、とにかく社会環境を直していくということが教育問題についても一番大事なことなんで、そういうようなことを具体的に解決をはかりながら、今河野さんの言われたような問題が起った場合には、環境と成績というようなことを十分両方面から検討いたしまして、一番いい方法によって具体的に解決をして参りたい、こういうふうに考えております。
  54. 河野正

    河野(正)委員 ただいま竹尾次官から非常にけっこうな御答弁をいただきまして、私どもも非常に意を強うするわけでありますけれども、これは少くとも罪のない子供たちが結果的には非常に迷惑をこうむる問題でありますから、一つ十分御善処していただきたいと思います。  ただいま申し上げましたような問題、あるいはまた風教上その他たくさんの問題が基地をめぐりまして文教に関するいろいろな問題が起ってくるわけでありますけれども、そこで私はさらに基地周辺におきます学校施設の問題につきまして重ねて質問を続けて参りたいと考えております。  御承知のように基地周辺の文教施設におきまする教育というものが、非常に大きな実害をこうむっているという点につきましては、すでに昨年の委員会等におきましてもいろいろと論議されたところであります。その後私どもも実際に基地周辺の学校を視察して参り、また実態、実情というものをつぶさに見せていただきまして、なお当局の善処をお願いしなければならない点が多々あるというふうな考え方を私ども強くいたしましたので重ねて当局に質問をいたしてみたいと思うのであります。  そこでいろいろ具体的には後ほど続けて参りたいと思いますが、今日基地周辺におきまする文教施設というものが、たとえば飛行機の爆音、あるいは騒音、あるいはまた振動等に基きましていろいろと教育に支障を受けて参っておるところの事実は否定することができないわけでございますが、その点につきまして、きょうは調達庁からもおいで願っていると思いますので、今日いろいろ文教施設というものが教育上大きな支障を受けておりますが、そういった障害を受けております点につきまして、これは基本的な問題でありますが、どのような考え方で対策を立てておられるのか、対策を立てておられます柱というような問題につきまして、まず概括的な御答弁をお願いいたしたいと考えます。
  55. 丸山佶

    ○丸山政府委員 演習場あるいは飛行場等いわゆる米軍の基地に関しまして、飛行機の騒音、演習の射撃、この騒音等によりまして周辺の学校が授業をできないまでに悩まされる。この対策に関しましては一昨年文部当局とも相談の上、何とかこれを防止するために防音工事その他の措置をする必要がある、これを国としてやるには特別の法律が必要である、こういうことから軍の駐留に伴う特別損失補償法、一般的に特損法と申しますが、この特損法を基本にいたしまして、それに基きまして今のように該当する周辺の学校等に主として防音工事をして、騒音の害を少しでもやわらげていただく。なおどうしてもそれでは措置のできないようなものは、実情によって、あるいは地元の希望によっては若干位置を変える、こういうような措置をいたしておるのが一般的な実情でございます。
  56. 河野正

    河野(正)委員 大体今、今日までとって参られました当局の方針というものが述べられて参ったわけでございます。ところが私どもが現地の実情をつぶさに調査をいたして参りますると、なるほど特損法で一応補償するというふうな考え方で措置が行われておりますけれども、それを総括いたしますると大体三分の一の対策が建てられておる。どういうことかと申しますと、たとえば滑走路の直下に校舎があるということでありますると、これは非常に危険性があるということで、その校舎は一定の個所に移転をするというような対策が建てられております。ところが一つの例でありますけれども、大体小学校あるいは中学校というものは、校区制でございますから、たとえば危険な個所から移すといたしましても、校区の中で移すということでございますから、一応滑走路の直下から移転いたしましても騒音あるいは爆音あるいは震動音ということにつきましては、何ら考慮が払われておらない、あるいはまた若干危険度が少い個所におきましても、やはり今日ではジェット機がとんでもないところに落ちてみたり、あるいは福岡の板付基地におきましては高射砲の破片が飛んできたり、あるいはある校舎のごときは機関砲のたまが教室の中に突き刺さったり、こういったことがやはり滑走路直下でなくても、周辺におきましてはいろいろなこういったきわめて危険な実情というものが起って参っております。そういたしますると、そういったところはただいまの特損法では移転ということが不可能でございますから、それにつきましては防音装置をするというような措置で一部におきましてはなるほど危険度は解消する。しかしながらただいま申し上げますように、防音装置その他につきましては全然考慮が払われておらない。一部におきましては防音装置を行なって、ある程度、十フォーンから十五フォーンのフォーンは押えられましたけれども、しかし危険性というものは同じく今日まで存在しておる。ただいま申されましたところの特損法の内容でございます。こういったことでは、私はたとい特損法が実施されているというふうな御答弁でございましても、今日の基地周辺にございまする文教施設に対しまする対策というものは十分なものとは考えるわけには参らないわけでございます。こういったことにつきまして当局はどのような考え方でおられるのか、あるいは文部省といたしましてもこういった態度をそのままでいいものとして考えられておるのかどうか。この点を文部省当局とそれからまた調達庁当局から相ともに御答弁をお願いしたいと思います。
  57. 竹尾弌

    竹尾政府委員 まことにごもっともなお尋ねでございまして、基地周辺の文教施設につきましては私も何回か各地を見せていただきまして、このままではとても困るというようなところもあったように記憶をいたしておりますので、その当時もいろいろ当局に対して要請もいたして、おりましてその結果とは申し上げられませんか存じませんけれども、そうした法律も御承知のように成立しておるような次第でありますが、もちろんお説の通りなのでございまするので、できるだけそうした法律による補償の額を高めると同時に、実際危険なところもございますので、そういうようなところにつきましては少し金がかかっても何とか抜本的な方途を講じなければならぬ、こういう考えは私ども強く持っております。しかし御承知のように予算の関係もございますので、なかなか思ったような結果にはなりませんけれども、お説をよく拝聴するどころか、よく私ども存じ上げておるような次第なので、できるだけ特別の措置を講じ得られるならば講じたい、こういう考えを強く持っております。
  58. 丸山佶

    ○丸山政府委員 特損法の施行に当りましても、一つには予算の関係と、もう一つは、実は大きな防音工事そのものの仕方というものは新しい仕事でございます。大学の建築教室あるいは実際的な工事をやられる建築協会の専門家等の御意見によりまして、防音工事そのもののやり方に十分な検討を要する事情があった。かようなことから当初はわずかの学校しか入りませんので、そのうち最も、たとえば滑走路に突き当っているとか云々のものを対象にいたしましたが、逐次その工法等にも改良を加えられ、実際に仕事をされる方も習熟された。また予算方面も努力をいたしまして、実は昨年度は十数校でございましたが、本年度は三十校ほどやるようになり、現在やっておりますが、明年度はやはり三十校程はやる、こういう工合で、滑走路の直下等に限らず、周辺全般で騒音その他の影響を受けるところはできる限り特損法の処置で十分にいたしたい、かように考えております。
  59. 河野正

    河野(正)委員 私ども非常に残念に思いまするのは、先ほども申し述べましたようにたとえば危険な区域から移転いたしまして校舎を新築いたしましても、その校舎につきましては何ら防音装置が行われない。要するに危険であるから危険でない地域に移した、それでその損失補償が行われるのだというような考え方で今日まで措置が行われたということは、私はまことに遺憾だというふうに申し上げたのでございます。と申しますのは、先ほども申しましたように、校区制というものがなければ、それは一里も二里も先の危険性がない、音もしないというところに移られまするけれども、しかしながら校区制がございますから、移ってみましても、やはり一定の区域に移らなければならぬということでございますから、騒音、震度というものは防ぐことができないわけでございます。ところが、お前のところは今危険な地域だから多少危険な地域でないところへ移してやるということで、新築はしてもらいましたけれども、その建物につきましては防音装置は何ら行われていない。要するにやや危険の度合いというものは減少して参りましたけれども、防音その他につきましては何ら考慮は払われていないというのが今日の実情でございます。また一方におきまして今度は既存の建物に対しまする防音装置につきましては、単に二重窓にするとか、あるいはまた防音壁を設けるとか、こういった措置が行われておりますけれども、単にフォーンが低下するように、あるいはフォーンを防止するようにという考え方でそういった防音装置が作られておりますけれども、照度、光の均整度、その他につきましては、ほとんど考慮が払われておらないというのが、今日の実情でございます。ところがどうも当局の態度を見て参りますと、要するに、危険であるならば危険個所から移してやればいいのだ、音がやかましければ一応音を消してやればいいのだというふうな、全く姑息的な、失礼な言葉で申し上げますならば、ごまかし的な態度で今日の防音対策というものが実施されておるというふうな点を私どもは非常に遺憾に考えておるのでございます。  そこで、この特損法の精神を生かして損失に対して補償をやっていこうという考え方でございます。ならば、校舎を移転したならば、移転した校舎につきましては当然防音装置をやる。また防音装置を施しました教室に対しましては、光の均整度、あるいは保健衛生上のいろいろな施設、そういったものにつきましても十分な措置が行われまして、そうして初めて私はこういった問題に対します最善の対策が立てられたものというように考えて参るわけでごいます。ところが今日まで調達局でやって参られました措置を見て参りますと、どれを見て参りましても、大体三分の一の処置が行われておる。ところが私どもの希望と申しますか、要望といたしましては、その三つ、危険度を解消するということ、音の問題を解消するということ、あるいはまた光、その他の保健衛生上の問題を解消するということ、この三つの処置が三つとも一つの学校に完全に行われて初めて私は一応の文教施設の対策が――まあ完全ではございませんけれども、一応全うせられるというふうに考えて参るわけでございます。ところがどの施設を見て参りましても、大体私どもの要望いたしております三分の一が解決されておる。ところが当局のお話を承わって参りますと、三分の一を解決したということが即解決であるというふうに、私ども今日まで承わって参りまうたことを非常に残念に思います。  そこで私どもが御要望申し上げたい点は、少くとも今日の、ただいま申し上げますような三分の一の対策でこの特損法の精神を生かされておるというようなお考えにつきましては、十二分に御反省願いたいということでございます。そういった意味で、たとえば校舎を移しまして、それが補償はできたというようにお考えになりますと、校舎はせっかく特定の地域に移転いたしまして建てかえましたけれども、騒音、震動につきましては何ら考慮が払われず、今日学童が非常に迷惑しておる、非常に大きな実害をこうむっておるということでございますから、今後そういった対策もますます拡大して行われる御意思があるのかどうか、その点は一つはっきりお答えを願いたいと思います。
  60. 丸山佶

    ○丸山政府委員 御質問の御趣旨よくわかりました。実はその問題を私どもも承知しております。法律的に申しますとなかなかむずかしい面もあるのでございます。軍の騒音のためにこうむる被害の損失を補償するという精神と、しかしながら現在建っておる校舎か、もうすでに相当年数かたっておって、このまま防音工事を施しても全面的な役にはあまり立ちそうもないというような事態のものも多々ございます。従ってその問題につきまして、その校舎自体を改良あるいは建て直していく問題とともに、一面軍の騒音等に悩まされる損失の補償、これを実際的にはかみ合せてやらざれば、その学校自体に対しての十分な措置にはならない。この実情をお話の通りよく存じ上げておりますので、それを法令の精神、それから校舎自体の管理上の措置と合せまして、実は調達庁当局は管理上の面を見ておられる文部当局の方といろいろ相談しまして、いかにしてこれを完全ならしめるか、目下検討しておる問題でございます。十分処置したいと思います。
  61. 河野正

    河野(正)委員 時間がないので簡単に質問いたしたいと思います。私どもが実情を見て参りましても、あるいは当局がお気づきになっておると思いますけれども、防音教室にいたしましてもなかなか完璧なものはございません。一応音はある程度抑制できたけれども、光の均整度、照度の均整度、あるいは震動、換気等に不十分な点が多いわけでございます。これにつきましては当局は十分それぞれの機関を通じて御研究なさっておると思いますが、どういった面でそれを研究なさっておられるか。この研究ということが今後の改善に非常に役立つものでありますから、私はこの研究ということは非常に重大なものであると考えて、おります。どういうように御研究なさっておられますか、その辺の事情を一つ承わっておきたいと思います。
  62. 佐藤長治

    佐藤説明員 何せ木造建築に対します防音工事というものは、世界でも例がないのだそうでございまして、調達庁といたしましても大へん苦労したわけでございます。まず二十九年の夏に立川で試験工事をやりまして、大体これでよかろうというので、全国の十一校で施工したわけでございます。ところが仰せのように音は確かに下ります。大体二十フォーンから三十フォーンくらい下ったところがございますが、大体二十フォーン平均くらいは下っております。ところが照度、明るさという問題、それから換気の問題において多少欠陥があるということが発見されました。それで昨年の九月でしたか、伊丹飛行場の原田小学校においてさらに試験工事を重ねました。照明につきましても、照度は百ルクス程度を目標にいたしまして工事をやりました。今までは廊下側の窓を防音の必要上閉じたのでございますが、これをあけるというようなこと、あるいは塗料についても考慮を払うというようなことをいたしまして、大体満足すべき結果を得たのでございます。それから次に換気の問題が一番大きな問題でございました。当初の立川の実験では、これでよかろうと思ったものが、実際夏場を迎えてみますと換気が不足するという結果が出て参りましたので、ファンの能力も増しまして、大体二つのファンをつけることとしまして、排気口も数をふやし、そして大体実験の結果、これならば大丈夫という線が出てきたのであります。その実施設計に基きまして、ことし全国に三十校くらいですか、やっておるわけでございます。大体そういう方向で徐々に問題の解決をはかりたいと考えておる次第であります。
  63. 河野正

    河野(正)委員 私ども現地調査しましていろいろつぶさに観察いたしますと、いろいろ科学的に見て不合理な点がたくさんございます。そういった点につきましては、おそらくそれぞれ研究機関を通じて御研究を委嘱なさっていると思いますが、ただいま御研究を委嘱なさっているところはどこですか、東大ですか。
  64. 佐藤長治

    佐藤説明員 文部省に騒音対策協議会という組織がございまして、東大の佐藤教授ほかいわゆる権威と言われる方がそろっておられるわけでありますが、ここに御相談申し上げているわけであります。
  65. 河野正

    河野(正)委員 そこでお尋ね申し上げたいのでございますが、今日までそういった研究機関に御委嘱願ってそういった資料に基いていろいろな改善が加えられたものと思います。ところがそういった資料に基きまして改善を加えられたにかかわりませず、いろいろ私ども見て参りましても、非科学的な点がたくさんございます。先般福岡の周辺の学校を見て参りましたが、九大等も現地に出て参りまして、いろいろつぶさに研究をやっておるようでございます。ところが私どもがいろいろ現地調査なさっております研究員の方々とお話し申し上げましても、今日まで非常に研究費その他が出ておりませんので、自費を費して非常に熱心に協力なさっておられます。それから先日内閣委員会の皆さんと一緒に九大当局を訪れました場合にも、この爆音、それから建物に及ぼします震動、こういたものが教育上非常に支障を来たすというような陳情が行われて参りました。そこで私も御質問申し上げたわけでございますが、それでは九大でも一つこの問題と取っ組んだらどうか、これは自分たちの問題を解決することであり、全国的な問題を解決することで、あるのでこの問題に取っ組んで、一つ専門的な立場から御研究をなさったらいかがですかと申し上げたのです。ところが今日までそういった単に九大の問題のみならず全国的な基地のいろいろの問題を解決する基礎になるような研究に対しまして、当局はきわめて冷淡な態度をとっておられるという実情を私どもつぶさに体験して参ったわけでございます。何と申しましても、そういった研究というものが資料になって今後いろいろと改善されるわけでございますから、もし当局に、今後改善して教育上いろいろ支障を及ぼしておる障害を何とかして除去しようというような御熱意がございますれば、その基本となる研究に対しましては、研究費を出すとかいろいろの便宜をはかってやることが、私は当然の道ではないかと考えておりますが、この点に対しまして調達庁ではどのようにお考えになっておるのか、一つその点明確にお答え願いたいと思います。
  66. 丸山佶

    ○丸山政府委員 調達庁は実はこの点の直接の損失補償の実施機関に当りますので、研究費という点までは今のところ考えておりませんが、実は今お話ありましたような九大に関しましても来年度においては、やはり相当の騒音に悩まされておるその実情を軽減するための補償措置と申しますか、経費を差し上げるように予定しております。
  67. 河野正

    河野(正)委員 私が申し上げておりますのは、いろいろ改善していたたくのはけっこうでございますけれども、改善を行います基礎資料というものもきわめて重大である。今日まで基礎資料に不十分なものがあったから、今日の防音その他の対策が不十分なのだ、私はこういうふうに理解するわけです。そこで改善するということも必要でありましょうけれども、それ以上に大事なものは基礎資料になる研究である、私はこういうふうに考えておるわけです。そこで調達庁は補償すればいいということでございますけれども、むだな補償をするよりも、まずりっぱな基礎資料を作らせるということを先に解決して、その後に補償をするという考え方の方が私はきわめて合理的だと思うのです。そうしませんと、ただいま申し上げますように、せっかく防音教室の設備をやったけれども不十分であったということになる。今日福岡基地の周辺の学校を見て参りますと、ほとんど不備です。私は特に医者でございますから科学的立場から見て参りますと、どうしてこういう施設を作ったろうと思います。たとえば換気孔を作ってやっていますけれども、実際見て参りますと、吸気孔は二つあるが、排気孔は一つだ。空気は吸い取りますけれども、ちょうど教室内にエア・ポケットみたいなものができます。そこでは不純な空気がいつまでも充満しておる。その設計によりますと、四十分から四十五分かかると換気が完全にできるという設計だそうでございますけれども、私たち見て参りますと非常に不合理だ。これはやはり研究というものが不十分であったために、せっかくやったけれども非常にむだなものができたというようなことでございます。そういった意味で、いろいろの研究機関も非常に協力してくれているようでございます。私ども二、三べん行ってみましたが、九大の環境衛生学の教室からも研究に出て参りまして、非常に熱心に研究をやっておりました。こういった費用については幾らかもらっておるのかと質問いたしましたところが、一銭も出ておりません、これではどうも教室といたしましても研究に支障を来たすので何とかやってくれぬだろうかということで、私も福岡の教育委員会に行き、九大当局も出て参りましていろいろお願いしましたが、金の出るところがない、しいてとおっしゃいますれば結局PTAあたりからでもお金を出してもらってというお話でありました。私はとんでもない、これは単に研究いたしますその学校の問題ではないのでございます。これは全国に七百数十カ所の軍事基地があるということでありますが、その軍事基地の周辺にあるすべての学校の問題を解決する研究でございます。そういたしますと、特定の学校のPTAから金を出してもらって研究するということではなく、それは当然国の責任において研究する問題でなかろうかというような感じを私ども強く持って参ったわけでございます。当局もこの問題を解決しなければならぬという御熱意はあると思います。御熱意があるといたしますならば、その基本となる基礎研究に対しましてもっと熱意を示さるべきではなかろうか、それに対する財源の捻出ができなければ、当局が誠意を示して幾ばくの研究費でも捻出していただいて、そして納得のいくような合理的な解決方法をはかっていただきたい。この点につきましては調達庁もそうでございますが、竹尾文部政務次官一つ答弁を願いたいと思う。
  68. 竹尾弌

    竹尾政府委員 まことにごもっともな御説でございまして、ただばらばらに行き当りばったりのことをやっておってもこれは効果も上りませんし、それでは私どもの責任も果されないことでございます。これは新しいケースになろうかと思いますが、よく御説を拝聴いたしまして、問題はやはり基礎的な研究でございますので、それをやらぬければ私もやっぱりだめだと思いますから、そういう点は十分考慮いたしまして、御要求に応ずるように努力いたしたいと思います。  なお河野さんが一番最初お話の通り、環境の問題もありまして、ただいかに施設、設備が整っておってもそれだけでは教育の効果はもちろん上りませんので、やはり私どもはそうした基地の周辺の子供たちに対してはあたかい気持を持って迎えなければならぬ。やはり物とともに心の教育をしなければならぬ、血の通った、気持の通じた教育をしなければならぬということになりますので、そうした点はもっぱら私どもの関係でございますから、よくまた御相談をいたしまして、できるだけそういう方向に向って進んで参りたい、こう考えております。
  69. 丸山佶

    ○丸山政府委員 河野先生の御説まことにごもっともで、私どもも全く同感でございます。単に補償すればいいといって済ましておくような考え方でございませんで、その補償が生きなければならぬ。生きるためには御説の通り新しい仕事であればあるほど改良の方面に研究が進んで、初めて効果が上るものと存じます。ただ調達庁の仕事の性質上、研究そのものをまともにするわけじゃございませんので、先ほど担当課長も申し上げましたように、実施とともに、研究と申しますか、あわせてやるような処置をとってきておるのでございます。先ほど申し上げました通り、明年度において、たとえば九大等にその補償と申しますか経費がいく。これに関しましては実施とともに、幸い大学でございますのであわせて研究もお願いできれば仕合せだと存じております。
  70. 河野正

    河野(正)委員 それは私の質問と全く意見が食い違っていると思います。やることによって今後改善する方策を講ずるというようなことには非常にむだがあるので、改善するならばその改善がむだにならないような研究をやらせていただきたい、そういった意味の御要望を私は申し上げたのでございますので、今日まで行われております改善することがすなわち研究指導になるのだというような誤った方策を今の答弁は一歩も出ておらないわけです。私どもが言いたいことは、やってみてこれは都合が悪かったということで、次の段階ではそこを改善されるというようなことには非常にむだが多い、そこで少くともやるならもっと基礎的な研究というものを十分やって――実際やれるのです、私どもが現地を見て非常に簡単なことがたくさんあるのです。東大の研究基準としてやられたという話も聞いて参りましたが、東大の皆さんはどうしてこんな非科学的なことをやられたのだろうと言っておる。私自身も現地を見てそう感ずるところかたくさんあるのです。それですから今申し上げましたように、何らかの研究助成をやられるならばもっと合理的、科学的な十分な施設がむだを省いてできると思うのです。そういう意味で、今後改善されるならばその改善というものがむだにならないように、完全なものができるような基礎になる研究にもっと熱を入れるべきではなかろうか、もし学校に対しまする当局の熱意があるといたしますならば、その基礎になる基礎研究にもっと力を注ぐべきではなかろうかという要望を申し上げたわけであります。ところが今の御当局の答弁を承わっておりますと、旧態依然として改善するのだ、改善することによって今後研究をやるのだということですが、それでは非常にむだが多い。そういうむだを作らぬためにもっと基礎になる研究に力こぶを入れるべきではなかろうかという意味での御答弁をお願いいたしたい。
  71. 竹尾弌

    竹尾政府委員 ごもっともなことでございまして、河野さんのお考えのような基礎的研究をとにかくやらなくてはいかぬと私どもも考えておりまするし、これをやるとなればやはり文部省が主体となってやるべき分野が相当多いと思います。私が先ほど申し上げました通り、何しろ新しいケースになろうかと思いますので、十分力を入れまして御要望に応ずるような処置を講じてみたいと思っておりますので、御了承願いたいと思います。
  72. 丸山佶

    ○丸山政府委員 今文部次官も申されました通りで、研究の問題についてはよく文部当局と打ち合せの上処置いたしたいと思います。
  73. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 他に御質疑もないようでございますので本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時十五分散会