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1956-10-09 第24回国会 衆議院 農林水産委員会台風等による農林漁業災害に関する小委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十月九日(火曜日)    午後一時二十五分開議  出席小委員    小委員長 綱島 正興君       大森 玉木君    吉川 久衛君       白浜 仁吉君    田口長治郎君       赤路 友藏君    足鹿  覺君       井手 以誠君    稲富 稜人君       中村 英男君  出席国務大臣         農林大臣臨時代         理国務大臣   高碕達之助君  小委員外出席者         農林事務官         (大臣官房長) 永野 正二君         農林事務官         (大臣官房総務         課長)     伊達  博君         農林事務官         (農林経済局         長)      渡部 伍良君         農林事務官         (農林経済局農         政課長)    保坂 信男君         農林事務官         (農地局長)  安田善一郎君         農 林 技 官         (林野庁指導部         長)      仰木 重藏君         水産庁長官   岡井 正男君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 十月九日  小委員大野市郎君及び中村英男君同日小委員辞  任につき、その補欠として吉川久衛君及び足鹿  覺君が委員長の指名で小委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  第十二号台風による農林漁業災害対策に関する  件     —————————————
  2. 綱島正興

    綱島委員長 これより農林水産委員会台風等による農林漁業災害に関する小委員会を開会いたし、調査を進めます。  ただいま農林大臣臨時代理国務大臣高碕建之助君より発言を求められておりますから、これを許します。
  3. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私昨日から河野農林大臣の留守中、農林大臣を兼任いたすことになりましたので、どらかよろしく御指導を願います。  今回北海道の冷害及びこの第九号、第十二号その他の風水害につきましては、その対策緊急事であり、かつできるだけ早く適切なる措置を講ずるということは、どうしても必要だと私どもは存ずる次第であります。政府といたしましても、すでに御承知のごとく、緊急復旧分といたしまして七千余万円の予備金支出の決定をいたしました。ともにこの農林漁業金融公庫から地元の負担分といたしまして約七億円の融資を行うことといたしまして、さらに被害農林漁業者の再生産を確保するために、経営資金として十六億円を、天災による被害農林漁業者等に対する資金融通に関する暫定措置法によりまして融資を行うことにその政令一を公布いたしましたような次第であります。何しろ今回の風水害は、離島だけ一でなく干拓地帯等とか、新しく施設をしたところの被害というものは予想以上に多いということを私どもはよく存じておる次第であります。その他の被一害につきましては、農林漁業者の今後の生産に支障のないように処置いたすよう現在せっかく努力いたしておりまして、大蔵省と折衝いたしまして、今後とも努力を傾倒いたしたいと思いますが、どうぞよろしく御指導願います。  以上ごあいさつ申し上げます。
  4. 綱島正興

    綱島委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  5. 綱島正興

    綱島委員長 速記を始めて……。  皆様にお諮りをいたします。去る六日以来本小委員会において、従来審議いたしたる事柄に対する結論をとりまとめておったのでありますがこれについて御採否を伺いたいと存じますので、あらためてこの際特に読み上げさせます。
  6. 岩隈博

    岩隈専門員 朗読いたします。    昭和三十一年台風第十二号等による農林水産業被害対策に関する件   第九号台風に引続き暗々同一コースを辿って本邦を襲った第十二号台風は、第九号台風により九州、中国、四国及び北陸地方における農林水産業の受けた被害をさらに拡大し、総額は実に二百五十億円になんなんとし、被災地域における農山漁一家の苦悩をいよいよ深からしめている。   さきに本委員会は、第九号台風による災害こ対し、主として金融面に関する緊急措置を決定して、政府の努力を要請したのであるが、ここに第十二号台風に関する対策を併せ、左記の各項につき、政府は既定経費の活用及び予備金の支出を行って早急かつ万全の方途を講じ、もって農林漁業生産力の確保と農山漁家の経営の安定にいかんなきを期すべきものと認めるものである。      記  一、農林漁業金融、共済及び予約米概算金等に関する事項   (一)1 被害農林漁業者に対して「天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法」の適用により、速かに経営資金及び事業資金の貸付を行い、併せて利子補給損失補償の措置を講ずる。    2 被害の特に著しい農林漁業者に対しては、政令による地域指定を行い、貸付利率を年三分正厘とし、償還期限を五年とする。据置期間、償還の方法等については、農家及び漁家の経営の実情にてらし、過重な負担とならないよう特別の行政指導を加える。指定地域内の被害激甚な農林漁業者の選定に関しては、さし当り行政庁の責任において実施し、その選定基準等に関しては今後必要に応じ法律を改正して明確化するものとする。      なお、累年災害を受けた農林漁業者に対しては、本法により償還の延期及び借換資金の貸付けを行う。      また、同法による地方公共団体利子負担額一般金利の低下に即応して引下げ、地方財政再建整備指定団体に対する国の利子補給及び損失補償の率を引上げ及び牛又は馬を所有する被害農家に対する増加融資額三万円を、乳牛に限り、五万円に引上げるよう次期国会において法律改正を行うものとする。   (二) 被害を受けた開拓農家に対しては、とりあえず前項により融資する。     連年の災害によって累積した借入金については、このさいこれを整理するものとする。また、開拓政策の刷新を図り、営農の基礎を脅かす諸障害を取除くこととし、開拓地の営農類型について再検討を行い、開拓者資金融通制度の改革と同特別会計資金枠の大巾な増額を行うものとする。これがため必要な法的措置を講ずる。   (三) 農林漁業金融公庫の資金を増加し、被害地における土地改良、林道及び立木の伐採調整等に対する新規融資枠を拡大するとともに、既貸付分に対しても、今回の災害のため償還が困難となった者があるときは、公庫をして償還猶予の措置を講ぜしめる。   (四) 災害のため事務費賦課徴収が困難となり事業の運営が困難となった養蚕農業協同組合等に対しては、その実情に応じ、農林中央金庫等より当該組合に融資するか、又は「天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法」に基いて、当該組合員に融資するかの方途を講じ、事業の遂行に遺憾なきを期する。   (五) 災害のため困窮が著しく、自作農の維持が困難となったものに対しては、「自作農維持創設資金融通法」第二条第四号資金を、農林漁業金融公庫自作農維持創設資金枠を拡大し、優先的に貸付ける。     償還期限は三年据置、二十年以内、利率は年五分とする。     なお、拡大資金の枠は十二億円とする。   (六) 有畜農家であって家畜の維持が困難となったものに対しては、第一項による経営資金の融通を、農業協同組合の所有する家畜が流失したものについては同項による事業資金の融通をそれぞれ行うこととし、なお、このさい有畜農家創設資金制度を検討して家畜維持金融の疏通を図る方途を講ずる。   (七) 農舎、畜舎、蚕室、堆肥舎、水産加工施設(魚干場を含む)、水産倉庫養殖施設、網干場、漁船等個人施設の被害については、農林漁業金融公庫主務大臣指定災害の枠より復旧資金を融通する。     融資枠は、融資要望額に応じて増加する。   (八) 農林漁業金融公庫から前項による復旧資金を融通するに当つては、別の融資要領を制定し、融資率は所要資金の八割以内、貸付利率年七分、償還期限は十年(据置期間一年を含む)以内でできるだけ長期とする。   (九) 被害農家に対し速かに共済金の仮払いを行わしめるため必要に応じ、農業共済基金より農業共済組合連合会に対し仮払資金を融通するに必要な財源措置を講ずる。     また、夏秋蚕の掃立不能及び九割以上の水陸稲被害農家に対しては、農業共済保険特別会計より早期に概算払いを行う。   (十) 漁船保険に加入している被害漁船に対しては、保険金早期支払いを行う。     また、このさい未加入漁船加入促進については特段の努力を払うものとする。   (十一) 農業災害補償法の適用を受けることができず、且つ、自作農維持創設資金の借入の資格のない開拓農家であって、干拓堤塘の欠壊により農作物が収穫皆無となったものに対しては、特にこのさい別途特別の措置を講ずる。   (十二) 被害の甚大な農家であって予約米概算金の返済が不可能となつたものに対しては、明年の収穫期までその返納を延期し、金利を免除するものとし、所要の立法措置を講ずる。   (十三) (1)食料品の製造工場等中小企業施設災害復旧については、希望額の最大限度中小企業金融公庫及び国民金融公庫より融資するとともに、このさい利子の引下げを図るものとする。     (2)従来開発銀行より融資をうけ建設した農漁村の製氷並びに電力施設の復旧については、同銀行において前項と同様の措置を講ずるものとする。  二、農地及び農林水産業施設等災害復旧に関する事項   (一)1. 「農林漁業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律」及び「公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法」に基き、農地、農業用施設山地砂防施設、漁港及び共同利用施設等の災害に対し、査定を終りしだい、速かに復旧事業に着手するものとする。    2. 1の共同利用施設災害復旧事業に対して国が支出する補助の比率を、当該事業に要する事業費の十分の五に引上げ、また、漁業協同組合区画漁業権が設定されている漁場の災害復旧事業をも共同利用施設災害復旧事業に準じて行うことができるよう立法措置を講ずるものとする。    3. 被害額の査定に当っては、小被害についても国庫の補助又は負担の対象となり得るよう法の運用に当り実際的解決を図る。    4. 災害復旧工事に当っては、単に原形への復旧にとどまらず、当該工事に関連して必要と認められる超過改良工事を実施する。    5. 災害復旧事業又は災害関連事業の対象とならない施設であって、損傷が甚だしく欠壊のおそれがあり、農地又はその他の施設に危険を及ぼすと認められるものについては、速かに防災補強工事を実施し災害の発生を未然に防止するものとする。    6. 地すべりによる農地、林野及び公共土木施設の災害については、各省の緊密なる連繋により、その急速なる復旧に遺憾なきを期するものとする。    7. 公共施設又は個人施設災害復旧に使用する木材については、国有林野から、それぞれ減価譲渡又は特売を行う。なお、漁港指定申請中の被害漁業施設については、速かに漁港の追加指定を行い、災害復旧事業の対象とする。    8. 被災開拓者の住宅、農舎等については、入植後五年以内の全壊住宅等にとどまらず、戦後入植者全壊住宅等並びに半壊、大破したもののうち必要なものに対し復旧資材費全額補助を行うとともに、住宅建築費自己負担分をとりあえず農林中央金庫より融資し、将来、住宅金融公庫又は農林漁業金融公庫貸付金で肩替りすることができるよう措置する。      なお、従来の老朽住宅を解消し、今後の開拓住宅は、ブロック建等堅牢な建築様式に漸次移行するよう計画ものとする。    9. 堤塘の欠壊により海水が侵入し長期に亘り冠浸水した被災農地については、塩害の除去のため必要な事業を実施せしめることとし、その経費は昭和二、十八年第十三号台風の例により国が補助する。  三、干拓堤塘災害復旧に関する事項   (一) 干拓地の堤塘復旧工事はその特殊性にかんがみ、関係各省は密接なる連絡を保ち最も緊急にこれを実施するものとし、昭和三十一年十二月三十一日までに潮止工事を行い、三十二年水稲の栽培時期までにすべてを完成するものとする。   (二) 干拓堤塘災害復旧工事に当っては、原形復旧の原則にとらわれることなく、今次災害の教訓にかんがみ、特に法落による土砂の欠壊を完全に防止するよう設計するものとする。   (三) 干拓堤塘であって未だ欠壊に至らないが、損傷が甚だしく将来欠壊のおそれがあるものについても、このさい全面的に災害関連防災補強工事を行うこととし、この工事に対しては災害復旧事業と同率の補助率又は負担率を適用するものとする。   (四) 干拓堤塘の改修、補強工事は、すべてこれを国の直轄事業とするものとする。   (五)(有明海の北部にある干拓堤塘の高さは、おおむね七米を下らざるものとし、その改良補強工一事はできるだけ三ケ年以内に完成するものとする。   (六)今次の災害に当り使用した叺、俵等の購入費は国において負担するものとし、今後速かにこの種水防資材の備蓄又は購入補助の制度を確立し、河川堤塘又海岸堤塘の欠壊による大災害の発生を未然に防止するにいかんなきを期するものとする。   (七) 今後実施すべき新規の干拓事業にあっては、潮止工事完了後、すべて、三年乃至五年以内に完成するよう予算措置を講ずるものとする。  四、救農土木事業等に関する事項   (一) 農地、農業用施設、漁船、水産業施設等壊滅的打撃を受け、他に現金収入の乏しい農家及び漁家に対しては、災害復旧事業に優先的に雇用し又は副業を積極的に奨励する。   (二) 主として農作物の被害を受け適当な災害復旧事業のない地域の被害農家に対しては、土地改良事業等を新規に又は繰上げて実施するものとし、この場合、団体営、かんがい排水小規模土地改良(農道、客土、床締、区画整理暗渠排水等)及び溜池改修事業等に対する補助率をすべて五割以上とし、かつ、対象面積を一団地二町歩に引下げるものとする。     なお、救農土木事業にかかる補助金の交付があるまでの期間の所要資金については、簡保年金特別会計又は農林漁業金融公庫等よりつなぎ融資等融資措置を講ずる。  五、営農資材及び水産増殖等に関する助成等に関する事項   (一) 農作物、桑、果樹等減産防止用の農薬、肥料、病虫害防除用機具等購入資金にっき左の国庫補助を行う。    1. 水陸稲病虫害防除に要する農薬代については、従来の例により一回撒布分の額の二分の一を目途として補助する。    2. 被害桑園については、桑の胴枯病・芽枯病予防薬剤購入費に対し二分の一を、潮風害特に甚だしく明春蚕期収穫激減を予想せられるものに対しては樹勢回復用肥料購入費の三分の一及び蚕種代を補助する。    3. 果樹等病虫害防除に要する農薬代及び樹勢回復用肥料(特に加里肥料)代の一部を補助する。    4. 病虫害防除機具購入費の一部を補助する。    5. 家畜伝染病予防に必要な経費の一部を補助する。   (二) 台風常襲地帯における農業生産力増強のため、明年度以降、水稲早期栽培の奨励を行うこととし、所要の助成措置を講ずる。   (三) 被害地域の稚蚕共同飼育所又は稚蚕共同桑圏の設置に必要な経費の一部を補助するとともに、農業改良資金積極的活用を図る。   (四) 被害激甚農家に対し転作用種子及び明年度用種もみ購入費に対して補助する。   (五)1. かき、海苔等を養殖する被害漁家に対し、種苗購入費の一部を補助する。    2. 今次災害により被害を受けた有明海の養殖漁場に対しては耕耘整地事業を継続実施せしめるものとする。   (六) 果樹防風林の設置を促進することとし、農業改良資金制度の活用を図る。  六、 その他の事項   (一) 被害農家及び漁家の食糧を確保するため、政府保有米麦の売渡、無利子、代金延納の措置を講ずる。代金延納の期間は、売渡しの日から一カ年間とする。   (二) 統計調査職員蚕業技術員農業改良普及員農業共済団体職員、耕地又は山林関係県職員及び開拓営農指導員活動等に要する経費を増額する。   (三) 災害を受けた農家及び漁家については、申請による予定納税額減額等所得税の減免を行うとともに、地方税の減免の措置を講ずる。   (四) 地方財政再建整備指定団体の行う災害復旧事業については、国庫補助又は国庫負担の比率を引上げるよう立法措置を講ずるとともに、災害復旧事業費地方負担分単独復旧事業に起因する財源の新規需要及び地方税の減免又は徴収猶予等による地方財政収入上の欠陥を補填するため、特別交付税を増額交付し、地方起債特別措置を講ずるに当っては国庫において利子補給を併せ行うよう特段の配慮をするものとする。   (五) 著しい被害を受けた零細農漁民であって、他に適当な救済方法のないものに対しては、生活保護法の弾力的な運用によりその生活援護に万全を期するものとする。   (六) 次期通常国会において、台風常襲地帯における農林水産業につき、台風による災害を防除するための綜合的な対策を樹立し、農林水産業の生産力の維持向上を図るため、「台風常襲地帯における農林水産業災害防除に関する法律」を制定するものとする。
  7. 綱島正興

    綱島委員長 以上読み上げましたる原案でございますが、これを皆様にお諮りをいたします。これを本小委員会結論となすことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 綱島正興

    綱島委員長 御異議なしとすれば、これを農林水産委員会に報告をいたすことその他の処置をとることについては、小委員長に御一任願えますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 綱島正興

    綱島委員長 ではさようにいたすことにいたします。  本日はこれにて散会をいたします。   午後二時九分散会