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1956-05-22 第24回国会 衆議院 農林水産委員会 第41号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十二日(火曜日)    午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 村松 久義君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 白浜 仁吉君 理事 助川 良平君    理事 田口長治郎君 理事 中村 時雄君    理事 芳賀  貢君       赤澤 正道君    足立 篤郎君       五十嵐吉藏君    石坂  繁君       大森 玉木君    川村善八郎君       楠美 省吾君    小枝 一雄君       中馬 辰猪君    綱島 正興君       原  捨思君    本名  武君       松浦 東介君    松野 頼三君       赤路 友藏君    淡谷 悠藏君       伊瀬幸太郎君    稲富 稜人君       石田 宥全君    小川 豊明君       神田 大作君    田中幾三郎君       中村 英男君    日野 吉夫君  出席政府委員         農林政務次官  大石 武一君         農林事務官         (農林経済局         長)      安田善一郎君         農林事務官         (畜産局長)  渡部 伍良君  委員外出席者         農林事務官         (畜産局酪農課         長)      松田 寿郎君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 五月二十一日  委員楠美省吾辞任につき、その補欠として千  葉三郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員千葉三郎辞任につきその補欠として楠美  省吾君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十九日  農林漁業組合再建整備法の一部を改正する法律  案(芳賀貢君外十二名提出衆法第五七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  家畜取引法案内閣提出第九二号)(参議院送  付)     —————————————
  2. 村松久義

    村松委員長 これより会議を開きます。  家畜取引法案を議題といたし、審査を進めます。質疑に入ります。質疑の通告がありますのでこれを許します。神田大作君。
  3. 神田大作

    神田(大)委員 今度の家畜取引法案については、農家の立場に立って、農家家畜を自由に取引をする上において、農家獣医師とかあるいはその他家畜を業としておる人たちによって取引が阻害されておったというのが現実であったと思うのですが、そういう点に対しましては、いかなる考えを持ってこの法案を作ったか、その点をお尋ね申し上げます。
  4. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 従来家畜取引は、主として家畜商によって相対取引といいますか、そでの下取引でやられておるのが大部分であります。売り手の農家はそれが一体どれだけの価格で最終的に売られたかということはよくわからない、買い手の方も、一体これは農家から幾らで手放されたものがこの値段自分の手に入ったかということがわからない、取引の上において何となくしっくりしないというところであったのであります。今回法律を出します上におきましては、まず家畜市場における取引は、家畜市場施設とかあるいはそこにおる獣医によって、個体がりっぱであることと同時に、ガラス張りの中で公明に行われるためにせりを原則とする、こういうふうにしております、一方市場外でも取引が行われることがありますので、その場合には必ず契約書文書による書類を相手方に渡して、将来問題が起った場合に証拠になるようにする、すなわち取引公明にし、公開いたしまして円満なる家畜取引ができることを期待しておるのが、この法律のねらいとするところであります。
  5. 神田大作

    神田(大)委員 市場における家畜売買適正化をはかるためにせりをする人の資格をきめるとか、そういうことに対しましては、この法案においては何ら規定してないと思いますが、その点については自由にだれでも入っていくというようなことにした方が公正な取引になるのか、それともせりをする人の一定の資格をきめた方がいいと思うのか、その点お伺いいたします。
  6. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 せりを行う者の資格業務規程によって定めさせまして、その地方々々の特性を生かしたいと思っております。しかしいずれにしましても、制限しても制限しなくても、取引の一切は毎日市場に公示さすことにいたしておりますので、今後は取引やみからやみに行われることは防止できるというふうに考えております。
  7. 神田大作

    神田(大)委員 業務規程で定めるというが、業務規程では一体どういうふりに定めるか、その構想を明らかにしてもらいたい。
  8. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 法律第四条に基きまして書いておるのでございますか、特に御指摘のあります取引を行う右の制限につきましては、私の方といたしましては、その取引人が従来不正を行なったことがないこと、その不正の中には代金の支払いが悪い、あるいは刑事裁判に問われておるというような取引の信用を害する事項、がなければいい、こういうふうに現在のところは広く考えております。
  9. 神田大作

    神田(大)委員 今の説明だと非常にはく然としておりしまして、規程資格をきめるというようなことの具体的な話になっていないのですが、農林省としてはそれ以上の構想はないのでございますか。
  10. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 現在のところあまりこまかく指示しない方がいいんじゃないかと思います。この法律によりますと、せりにしましても文書契約にしましても、従来の取引からいいますと相当はっきりしたものになります。これは一般の取引から言えば、あるいは非常に時代おくれというふうな御批評もあると思いますけれども、事実はそうでありますので、これから相当期間をかけて教育しなければならないというのが実情であります。従って本法によって市場を開き、その状況を見ました上で順次必要な規定を追加していく方がいいのではないかというふうに考えております。
  11. 神田大作

    神田(大)委員 どうもあまりばく然として話がわかりませんが、家畜市場における家畜商というものが大体市場取引というものを支配すると思うのであります。その家畜商というのは何らの資格もなく、だれでも届出をすれば家畜商になれるので、いろいろな弊害があると思うのであります。そういう点において生産者消費者を保護する意味合いにおいてこのせり市に参加する家畜商に対する何らかの基準とか資格に対して考えなければならぬと思いますが、そういう点はどうお考えでありますか。
  12. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 御指摘通りでありまして、私どもの方でも家畜商法を改正いたしまして、たとえば試験制度をしくとか、法律的にもっと資格制限というようなことを考えたのでありますが、現行憲法のもとにおきましては、単に取引上の問題だけで制限を課することは困難であります。たとえば衛生の問題とか、あるいは非常に公安に影響があるという場合であればそういう規定を置けるのであるけれども相対取引あるいはせり取引の中で、買手売手の間に見込み違いがあった、そういう場合をできるだけ防止するようなきつい規制を行うということは、法制局におきまして十分議論した結果、憲法上許されないということで法律の改正まではいっておりません。しかし現実にはいろいろな家畜商がおります、家畜商の数は五万といい六万といい、とにかくお話のように年に二頭か三頭扱っても家畜商の免許を持っておるのであります。従いまして現在私どもの方で考えておりますのは、実際の指導方針として県の公認あるいは推薦家畜商あるいは畜産団体推薦公認家畜商、そういうもので仕分けをして取引の円滑と公正を期するようにしたらどうか、こういう案を考えて今相談中であります。
  13. 神田大作

    神田(大)委員 今の場合は家畜商に対して何らの法的な制約は加えない。それは憲法においてできないということはわかりますが、もし不正な取引をやった、あるいは家畜市場の育成のために好ましくない、そういう場合にはどういうような方法でそれを助長するのか。
  14. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 ただいま申し上げましたように、売手買手の自発的な推薦制度というふうなもののほかに、もし現実に実畜商法なり家畜市場法なりの法律違反の事実があればこれは当然排除できます。その程度にいかないで、法律の盲点をくぐって、実際には相手方に迷惑を及ぼす。これは商売ではうまくやったというふうにいわれる部面があるかもしれませんが、それでは困りますから、そういうものは今度は先ほど申し上げましたように、順次業務規程の中に細則を追加することにしまして防止していきたい、こういうふうに考えております。
  15. 神田大作

    神田(大)委員 業務規程の中でそういうことを順次追加するということですが、業務規程というものは一体どういうことまできめられるのですか。そういう点において業務規程というものに、法律できめられた以上広範なそういうことがまかせられることになっておりますか。
  16. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 業務規程規定すべき条項は、法律第四条にありまして、取引上準則となるべき事項を記載するのでありまして、そのあとの方に、たとえば八、九、十、十一というふうにこまかく取引方法規定することができるようになっております。特に十一につきましては、「違約の場合の処置」という項目がありまして、取引上不公正を行なった場合、その程度によりまして一時市場に出入りを禁止するとかいうこともできるわけです。それらはそれぞれの地方市場の大きさあるいは従来の慣習等が相当違っておりますから、一律にこうやれということを私の方から当初から指示はいたしませんが、順次経験によって業務規程の内容が整備でき、御指摘のような不正といいますか、あるいはずる賢い家畜商の排除はできるものというふうに私は考えております。
  17. 神田大作

    神田(大)委員 今度の家畜市場法を制定した大きな目的は、中小家畜市場か乱立して、取引の公正を欠くというようなことも大きな目的であろうと思いますが、現在全国でどのくらい家畜市場があって、しかもそれを政府としてはどの程度に指定していった方が適正であるかというようなことはお考えになったことがありますか。
  18. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 市場の数並びに開設者の調査は、別に資料でお配り申し上げておりますが、大部分農業協同組合であります。千三、四百の数になっておりますが、われわれの考えといたしましては、この中の実情を見ますと、その次の表に種類別家畜……。第三表には市場別取扱い頭数別市場の数を出しておりますが、非常に小さな市場等もありますので、われわれの大体の目標といたしましては、半分もあれば数は十分ではないか、こういうふうに考えております。しかしそれはその地方々々の飼育頭数及び地域の広さによって、一概に何頭以下は整備したいということは言えませんので、この法律に書いておりますように、地方長官が認定して整備していく、こういうふうに考えております。
  19. 神田大作

    神田(大)委員 非常にたくさん市場があって困るというようなことも全国にはあるでしょうが、所によっては家畜市場がないためにいわゆる個人取引が行われて、そのために農家が非常な損害を受ける。不正な取引が行われておることは事実であろうと思う。そういう場合に、整備も必要であるけれども、もっとこまかく市場が開設されて、しかもそういう市場によって簡易に取引されるような方法が必要じゃなかろうかと思います。こういう問題についてどう考えられますか。
  20. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 地方によってはそういうことの必要な地方があることは認めざるを得ないと思います。これはこの前の家畜市場法が廃止になったときに、すぐにあとでは県によっては条例を出しまして、あとの始末をしたところもあるし、そうでないところはほったらかしになっておる県もあるわけであります。その後、昭和二十三年に廃止したのでありますから、七、八年になりますが、家畜頭数等も非常にふえておりますから、従来のままではいけない地方が相当出てきております。それらは私の方で行政指導によりまして、県あるいは畜産団体を慫慂して、模範的な市場を作らせるように指導したい、こういうように考えます。
  21. 神田大作

    神田(大)委員 家畜市場整備というものは非常に大事なことであって、これをある一つの力によってやられると、かえって家畜取引の公正を欠く。たとえば整備しなくてもいい家畜市場整備したり、あるいは開設しなくてはならぬ必要な土地に開設しなかったり、ここは家畜の実態と即応して非常に大事なことであろうと思いますので、この家畜模範取引所の設置あるいは家畜市場を開設することによって、その地方の産業その地方取引が円滑にいくというような、そういう点については、こまかく統計に基いて、その土地経済事情に基いて指導しなくてはならぬと思いますけれども、そういうことに対しまして、大体あなたたちは、今までの家畜市場を半減するというような方針のようでございますけれども、半減した場合におけるいろいろの不便、あるいはそういう不合理というようなことに対しましては、どうお考えになっておりますか。
  22. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは私の方でただいまお配りしております資料の第三表から、一市場当り取扱い頭数別の数を出しております。それによりますと一年間における頭数が百頭以下のものが千百以上もある。あるいは百頭から四百頭までが七百カ所もある、こういう状態でありますので、それを見て机上の計算で大体の数字を出しておるのであります。実際にはこれは農家飼育所から市場まで持っていきます距離、それからその地域内の頭数によって、一概にその頭数だけで整理をすることができないのは当然であります。そこで法律の十九条以下におきまして、私の方では無理押しをするという考えではなく、もしその地方の中で、今まで市場を開催しておる関係者がやったがいいというならば、地方長官に申請して、そして十分その地域内の関係者の意見も尊重した上で整備計画を立てる、こういうふうにしております。従って戦時中にありましたような企業整備を無理々々する、こういう考え方ではなくして、その市場の能率を上げ、そのことがひいては家畜生産者の利益になるという目的が達せられなければ、無理にこのことをやろうという意思はないのであります。従いまして十九条以下に、ある程度こまかく規定を置いているゆえんもそういうところから出ておるのであります。
  23. 神田大作

    神田(大)委員 今の家畜市場は大家畜ですね。牛、馬とかそういうものに大体限られておるのですけれども、豚とか綿羊とかいう小家畜に対してはどのようにお考えになっておるか。
  24. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 家畜種類別市場の数は二ぺージに掲げておりますように、御指摘通り牛、馬が主でありまして、中家畜市場の数は非常に少いのであります。これは従来肉の生産者、あるいは綿羊につきましては、毛の処理業者というものとのある程度特約的な飼育が行われておるということが相当大きい原因であると思います。しかし今後の傾向といたしましては、綿羊の数ももうすでに百万頭を相当突破しておるのが実情であります。ヤギにしても百万頭になんなんとし、豚にしましても肉の加工業が非常に進んできておる関係上、潜在的な需要が非常に強くなっております。従いましてこれらの中家畜市場に出るチャンスも非常に多くなってくるのではないかとわれわれの方は考えております。またそうすることがこれらの中家畜飼育者の経済安定に稗益するところが大きいのではないか、こういうふうに考えておりますので、われわれとしましては、中家畜市場上場というものを今後指導していかなければならない、こういうふうに考えております。
  25. 神田大作

    神田(大)委員 これは大事なことです。今の家畜市場というのは大体牛、馬の大家畜で、小家畜は等閑に付されている。そのために豚とか綿羊とかそういう小家畜取引に非常な不公平が行われておる。農家は豚や綿羊を飼っても、結局中間利潤追及に災いされて採算が合わない。ところが片方において、消費者消費者で高い肉を買わなければならぬ。そういう大きな矛盾をどこであなたたちは合理化していくつもりでおるのであるか、その点のお考えをお聞かせ願います。
  26. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 お話通りでありまして、たとえば豚の一番先進県といわれる神奈川県でも、豚の取引については外に公表されていないのであります。そこで肉屋生産者の間にブローカーの入る余地が非常に大きいのが実情でありますので、肉屋の方も、従来の程度の肉の生産ならばそれで間に合うけれども、今はあらゆる肉を調合してハムなりソーセージなりを作るというのが肉加工の新しい部面であり、そういう方面がうんと伸びていくということになりますので、もっと公明に豚を手に入れなければ、今のように加工する人も農家の人も豚の価格に不平を持って、加工する方は豚が高い、こういうことではうまくないわけですが、やっとその点がはっきりしてきましたので、これらの取引については、私どもの言っておるような市場にのせて、百姓も安心して、肉屋の手にはどれだけ入っているか、われわれの手反り幾らと、はっきりわかるような制度になっていくのがいいということになってきておりますから、われわれはその線で指導を進めていきたいと考えております。
  27. 神田大作

    神田(大)委員 農家が飼っておる豚とかその他の小家畜、それを中間に立って売買あっせんをする業者と、それから加工する加工業者小売りをする業者、この関連において何か生産を阻害するような現象があると思う。そういう点で消費者も非常に高い肉を食べなければならぬという現象をあなたは認めておるのですが、それをどう解決するかということについてはまだ構想は固まっていないようですが、その点をはっきりしていただきたい。
  28. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは要するに、豚の生産者自分が何ぼで売ったのが肉屋に何ぼで入っておる。従ってその開きが何ぼある。だからもっとわれわれは高く買ってもらったらいいじゃないか。それから肉の相場あるいはハム相場が出ておる。それに照らして豚の値段は非常に変動が多いわけです。それをある程度合せていくのには両方の価格をはっきりしなければいかぬわけです。これは豚なら豚を市場に出しましても、そこでその日その日の取引価格取引数量がわかってくるわけです。その際の肉の価格なり加工品価格と照らし合せて、それでは何だからもっとこれは高くしなければならぬ、こういうことになってくると思います。いきなりわれわれの方でこの値段にしなければいかぬということじゃなしに、やはりそこは内輪で取引して、徐々に一つ流通形態を作っていくことがいいのじゃないか、こういうふうに考えております。
  29. 神田大作

    神田(大)委員 市場であなたが言うように売る方の人が納得できるような相場を確立する。そういう公平な価格が確立するような具体的な方法を現在どういうふうにしてあなたたちは行おうとしておるか、また行わさんとするのか、この点をお尋ねいたします。
  30. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 御質問の趣旨が相当具体的になっておりますので、あるいは私十分つかんでないと思いますが、施設としましては、今度は十四条で「一年間に農林省令で定める日数以上開場する家畜市場においては、開設者は、農林省令で定める基準に適合する構造施設を設けなければならない。」こういう規定を置いております。それによりまして、つなぎ場とか、売り場、下見所検査場、汚物の処理場あるいは代金決済所、そういうものの構造等について省令できめることにするのでありますが、なかんずく秤量器の問題、現在秤量器を備えつけても、遺憾ながら翌日からすぐ秤量器がこわれている。それらを厳重にいたしますことによって、それと同時に毎日の取引を公表することによって、売手の方が損ならば次の時期を待つということによって、取引が順次公正化される、こういうふうに考えております。
  31. 神田大作

    神田(大)委員 これは根本的にこういう家畜取引に対して国家が考えないと、正しいはかりを置くから大丈夫だとか、そういうことではなしに、施設そのものに大きな欠陥があるのじゃなかろうかと思うのです。現在の取引事情だと、豚の場合なんかはいわゆる地方肉屋さんが農家の庭先を回って、大きいはかりを持って歩く。そして適当にはかるのです。ちゃんとしたはかりではなしに、豚を下げて足を持って押えると、二貫目や三貫目の目方はどうにでもなるという原始的な取引をやっているわけです。そういうふうにして、非常に不利益な取引農家はさせられている。そのために、一生懸命に豚を飼って、一年幾らになるだろうと思って計算しても、どうもさっぱり手間にならぬということで、豚を飼育するのをやめてしまう。そうしてあんまり少くなって豚の価格がよくなると、あわててまた農家が豚を飼う。またふえてくるとそういうふうにたたかれるというふうにして、いつでも薄い利潤でもって農家飼育している。そういうために日本の豚の繁殖はできないのだろう、同時に消費者関係においても、高い肉をいつも買わせられるということで、これを根本的に改革するためには、これを業者や、そういう組織のない農家人たちにまかせておかないで、国家的な一つの力、でもって公正に取引できるように、喜んで農家が豚を飼育する、あるいはまた消費者が安い肉をふだんに食べられるような、そういう構想による施設をすべきだろうと思うのでありますけれども、この点に関して、どういうように考えておられますか。
  32. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 まことにごもっともでありまして、先般何かの機会に申し上げたと思いますが、そういう施設が十分でないのは日本畜産業あるいは肉業界の現状であります。端的に申し上げますと、豚肉の生産量戦争前に約十二、三万トンであったのが、現在は二十万トンを突破しているのであります。ところが暑場の施設は何らふえていない。それから需要の方はとにかく非常に旺盛になってきているわけです。たとえば東京小売統計を——これは正確な統計ではありません、業界の新聞で伝えているところを見ますと、戦争前には大体小売の店舗の取扱いが一日半頭ないし一頭であった。現在は二頭ないし三頭になっている。それだけふえているのであります。肉あるいは加工品として需要がふえてきているわけであります。従って芝浦屠場あるいは大阪屠場全部狭いのでありまして、東京芝浦屠場では、三十年度予算拡張費四千万円の予算を出してやることになっている。そのほか福岡、広島、大阪名古屋等屠場拡張については、できれば見返り資金を使ってやりたい、こういうふうに考えているのであります。さらにもっと重要なことは、これは最も激しいのは豚でありまして、お話のように数年間を周期にして価格変動がある。これは日本だけでなく、ピッグス・ラインといって、世界的に問題であった。その問題が先進国においては肉に対する冷蔵庫施設の拡大によって防止されつつある。従ってどうしてもその施設を増加しなければいかぬ。すなわち消費を平均化する。しかし農家の方としては金が要る時期がふるから、ある時期には出したいということがある。その際に冷蔵庫に貯蔵しておけば、ある程度変動はあるけれども大きな変動はなく、変動がスムーズになってくる。そういうことになるので、屠場の拡充と同時にそういう施設をやりたいという構想をもって、現在各府県あるいは各市と協議を進めております。しかし何しましても魚等のいわゆる資本主義的な企業経営の大きな施設冷蔵庫とかあるいは漁船というような大きな施設は肉の業界にはまだないわけです。これらについて現在はヨーロッパあるいはアメリカ施設を相当取り入れなければならないというので、数日前にも中央畜産会あっせんによって、肉の卸し、加工それから屠場関係者ヨーロッパ及びアメリカの方の施設を見に行ったような状況であります。単に生畜の取引だけではなしに、肉の取引まで及んだそういった施設が必要になってくる。これをできるだけ早い時期に整備することが日本畜産業ひいては農家経営を安定するゆえんである、こう考えます。
  33. 神田大作

    神田(大)委員 現在はそうすると中央畜産会等がそういう外国の進んだ施設を取り入れ、日本にそれを持ってこようという業界の動きにだけまかせておるようにわれわれ印象づけられるのでありますが、これを国家的な見地に立って、今米や麦やこういう主食は、食糧管理法によって一応生産者の立場も考え消費者の立場も考えて国家で処理している。それと同様に、長い間のこういう取引によって消費者生産者も何か暗い気持になっておる畜産取引を、そういう国家的観点から、あなたたちはこれを国家的なもの——私的なものというのは多くはやはり利潤追求に走って、結局それだけの利潤は特定な人に入ってしまう。そうしてこれが農家に還元されない、あるいは消費者に還元されない。だからこれを農家にも消費者にも還元されるようなそういう公的な施設をわれわれは要望しておる。そういう点についてどう考えておられますか。
  34. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 肉の消費は、最近まではこれがどういうふうに伸びていくだろうというようなことを突き進んで実はあまり考えてなかったのです。畜産局におきましてもあるいは資源調査会等におきましても、日本の食糧構造をどうしたらよいかということをあまり突き詰めて考えていなかったのでありまして、最近において、三年間の努力で安里博士のところで、人口一億の場合の食糧構造はどうあるべきかという結論を出しておりますが、それによりますと、肉は現在の三倍までは当然伸びるであろう、また伸びなければ国民の栄養を保持することには不十分である、こういう結論も出ておるわけであります。関連して申し上げますと、卵は現在六十億個ぐらいですが、それが倍、ミルクは五百万石、これの倍一千万石というように、その程度まではどうしても伸ばさなければならぬ。そういう見地に立ちますと、現在の施設ではいかないことは先ほど申し上げた通りであります。それと同時に、幾ら国が公的施設でやろうとしましても、肉の処理加工につきましては、いいところの肉だけではなしに、内臓、皮、骨全部の処理をうまくやらないと、今までのように内臓はせいぜい焼き鳥ぐらい、あとは肥料にするという形では 栄養が逃げるのみならず、肉の価格それ自体も安くならないのであります。そこでこれらをうまく処理するためにはもっと大きい規模で、もっと大きい施設を作らなければいかぬのでありますけれども、それを動かす人の問題が問題になってくるわけであります。そういう点で現在、先ほど申し上げましたように、全業界が一丸となってその方向で考えて、そうして政府の意図するところを実際に担当していく基盤を作っていかなければならない、こういうことが必要でありまして、たとえば国が何億かかけて屠場を作り、それに関連する肉、皮の処理施設を作っても、すぐ右から左にその処理ができるというわけにはいかないところがちょっと肉の事業としてむずかしいところであります。もうしばらく時間を拝借して、御説のような趣旨に合うような施設を作ることに進みたい、こういうふうに考えております。
  35. 神田大作

    神田(大)委員 こういう非常に大事な問題が今まで真剣に考えられておらなかったことは、私は非常に残念に思うわけでありますが、これはもちろん業者もそういう努力をすることは必要です。同時に国家がある程度の資本を投入して、そうしてそういう施設を作るか、あるいは公団方式につきましてはいろいろと批判がありますけれども、たとえばああいう方式によって高度の施設をして、農家が飼う豚に対しましても十分な利潤が得られるように、また消費者も安く買えるというような施設を早く、ある程度予算的措置をして一つやってもらいたい。そうでないと、日本の畜産食糧関係の経済というものはいつでも中間搾取に災いされて、伸び悩みをしておるというのが現実ではなかろうかと思います。そういうことを今後真剣に、速急に御考慮願いたいと思います。同時に自家用屠殺という問題——農家人たちの栄養状態を見てみると、都会の人たちなんかよりも比較的私はへんぱな栄養を摂取しているように思う。たとえば卵をとっても、それを食べないで売らなければならぬというような、そういう農家の貧しい経済状態にあることも非常に原因がありますので、共同で屠殺をして、みなが使えるようにしていくというような方法をもって、もっと簡易な許可の仕方をやったならば、もっと農家の栄養というものは向上するのじゃなかろうか、こういうように考えるのですが、この自家屠殺に関してはどういうふうにあなたは考えておられますか。
  36. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 前段のお話の、国家がもっと金をつぎ込んで肉の流通改善に資すべきだという御意見、われわれもそういうふうに考えまして、先ほど申し上げましたように、ささやかではありますが助成金なり、あるいは見返り資金をこの方につぎ込もうと思っております。しかしまだこれでも足りない、遺憾ながら基盤がそこまで追いついていかないので、それを一挙にやれないというのが現状でありますので、われわれも努力はいたしておりますから、御鞭撻を願いたいと思います。  第二段の簡易屠殺の問題につきましては、これはフランスとかイギリス等ではどんどんやっておることで、われわれの職員が向うに馬を買いに行ったり牛を買いに行ったりするときに、下宿のおかみが牛の頭を見ると、あたかも日本の主婦がマグロの刺身を見てさもうまそうに感ずるのと同じような状態になる、それまで肉食が普及しておるわけです。日本の方では遺憾ながらそこまで肉食が普及してない。ことにいなかにおきましては、数百年続いておる肉食忌避の仏教のあれがありまして、肉の屠殺は一定の人たちにまかされておったというような関係がありまして、肉の屠殺について農家自身が十分知識がないのが現状であると思います。そこでこの前のと畜場法の改正のときにこの問題が非常にやかましくなりまして、簡易屠場というものができたのでありますが、それにつきましてもやはり衛生的な見地——これは屠場に来ます牛を一々外からの検査、内臓の検査をやりますが、数%の病畜がおるわけでありますから、そういうものをよく知らずにやったのでは病毒に侵されるおそれもありますので、ある程度の規制が必要になってくる、それが現在の簡易屠場であります。そこで簡易屠場制度で、あとは作ったものが簡易に農家の手に入るようにしたらいいのじゃないか、これは肉を行商さしてくれ、こういう話が出ておって、それで十分であると思うのでありますが、肉の配達ということで肉の行商に近い販売方法を認めよう、そういうことで現在は進んでいこうと考えております。
  37. 神田大作

    神田(大)委員 自家屠殺の問題については、実際問題とすると申請してもなかなか許可しないのです。これは、たとえば農家が売っても引き合わないという場合が出てくるのです。それは、今までの飼育費用から換算してとてもそういう価格では引き合わないという場合に、やはり農家は、それでは共同で食べようじゃないかというような場合に、実際問題として許可してくれない。そういう点は今後もっと簡易に許可することによって、正常な価格取引が促進されると思うのです。そういう点についてはどうお考えになりますか。
  38. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 お話ごもっともであります。ただ最近までは、終戦後肉の需要が非常に旺盛でして、やみ屠殺というものが横行したわけであります。そういう場合にお説のような簡易屠殺を認めれば、やみ屠殺で、ほんとうに衛生的な処理——獣医に相談するなら相談するということをやって、やってくれればいいのですが、そういうことをしないでやる。そこで丹毒にかかっておる牛を食ったとかいう問題も出てきたのであります。そこで非常に神経質になっているのでありますが、だんだん世の中が落ちついてきたのでありますから、一定の施設と一定の、獣医あるいは保健所の医者の立ち会いのもとにならば、自家屠殺ができるということくらいは考えていいのじゃないか。これは私まだ個人の考えでありますが、そういう方向で今後研究を進めたい。これは厚生省が衛生の方から非常にやかましい問題でありますので、厚生省の方と渡り合わなければいかぬ問題でありますが、実際の実情をもっとはっきりいたしまして、もう世の中が落ちついたから、いわゆる危険なやみ屠殺はないのだという実際を示して、農家にそういう道を開くことは、当然農林省としてやらなければならぬと考えております。
  39. 神田大作

    神田(大)委員 終戦当時と現在は非常に違っておりますし、われわれの食生活もずっと変化しておるのです。つまでも十年、二十年も前のそういう考え方を持って自家屠殺を制限しておるということは、やはり畜産の増殖にはならぬと思う。農家飼育をして、そしてそれが簡易に食べられる、余ったやつはどんどん売れるのだということにしないと、不合理な面が出てくると思う。その点局長が言ったように、厚生省と折衝して、できるだけそういう点を緩和してもらいたいと考えております。  最後に、先にもちょっと申しましたが、要するに家畜取引というものが、現在においてそれが公正に取引されるか取引されないかということは、家畜ももちろん役牛やあるいは役馬として使用される、その他に使用される場合においては肉として食用にされる。その場合に枝肉市場の現在の取引が、果して適正にうまく運営されておるかどうかということが非常に家畜取引にも影響する。枝肉市場がかりに正当に取引されておれば、自然と家畜市場というものはそれによって公正になるわけです。この枝肉市場取引の機構、取引方法あるいはそういう問題について、もっと検討を加えて正しいものにしていく必要があると思うのですが、その点についてはどうお考えになりますか。
  40. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 御指摘通り現在枝肉の取引公明化が非常な問題になっているのです。ところがこれはやはりせりにしたがいいという見地から、せりにするためには冷蔵庫、懸垂施設、肉をかけて置く施設が十分でなければできませんから、まずその施設を作ることが先決だというので、東京都に四千万円の補助金を出したのは、冷蔵庫と懸垂施設を作る補助金が主になっておるわけであります。それができました暁には、まずそこからせりをやらしていこう。現在のところでは狭いところに十人、二十人押しかけてきて、一々枝肉の前に立ってそでの下に手を突っ込んでやっておるのが実情でありますので、こういう狭い施設でいきなりせりに持っていけといっても、これは不可能なことだと思いますので、まず施設を作っていこう。それでその施設を現に建設中でありますから、これももうちょっとお待ち願いたいと思います。それをどういうふうにやるかということについては、せりが原則である。それに従っていろいろな状況考えるべしということで、今農林省から東京都の方に事務的な指示を与えて準備をさせております。
  41. 神田大作

    神田(大)委員 それといま一つ大事なことは、今枝肉市場の公正な取引というものが大きな問題です。同時に今度はいま一つは、市場の市況というものが末端に正しく反映すること、そのためにはいわゆる家畜組合といいますか、家畜協同組合といいますか、あるいは今農業協同組合が主としてやっておりますが、農業協同組合というようなものがこの家畜の問題に対してもっと強化されなくてはならぬ。ところが地方に行くと、家畜というものはいわゆる農家のものじゃなしに、消費者のものじゃなしに、家畜商のものである。家畜商家畜である。いわゆる畜産行政も農民の畜産行政でなく、家畜商の行政である。この点を根本的に改善しなければ、日本家畜の増殖とか正常な発達というものはなかなか期せられない。この点は私が先ほど申しておる通り、どうしたならば農民のための畜政になるか、あるいは消費者のための蓄政になるかということについて、あなたたちは責任者でありますから、この点は十分にわかっておるのだけれども、実際現在の状況では手が入らないだろうと私は思う。これを根本的に改革しない限りにおいては、どういう法律を出してもだめだと思うのです。こういう根本的な問題についてあなたたちはどうお考えになっておりますか。
  42. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 御指摘通りでありまして、これは先ほど申し上げましたように、畜産の目標をどうするかということがまず第一であります。これは先ほど申し上げましたように、従来は軍馬と役あるいは堆肥をとるための畜産であったのであります。今度は軍馬はなくなりましたけれども、役と肉、あるいは卵、毛、その部分が非常に大きくつけ加わった。すなわち従来は一年のうちに十日なり二十日役に使っただけで、あとねかしておいて老衰してそれを売っていくという考え方であったのでありますけれども、これを役に使うと同時に、肉として和牛なら和牛を売るという考え方にならなければならぬ。やっと、たとえば和牛の先生方もそういうふうな認識になりまして、生産者の方でも目標がはっきりしてきたようであります。そういうふうな状態でありますので、この波に乗りまして、一連の施設を充実することによって、家畜を飼う人の利益、それの製品、肉、卵等を買う人の利益、そういうものを擁護するようにしたい。これは先ほど申し上げましたように、たとえば農業協同組合中央会なり全販連、今の団体等にも話しかけておりますけれども、十分研究が積んでいないから、畜産に対しての理解はなかなかめんどうなところがあります。これらをどうしても得心していただいて、農家農家の側で意思を統一する必要がある。それからまたいたずらに肉屋農家を搾取したというような考え方でなしに、やはり取引だから対立させますけれども、終局はどっさり——いじめられてもうまくいかないわけですから、これも畜産会の中で議論をするように今なりつつありますから、その点もお説の方向にいけると、われわれは考えております。いま一そうの努力をいたしますので、国会の方でも御鞭撻を願いたいと思います。
  43. 神田大作

    神田(大)委員 これは畜産行政の根本的な問題ですね。われわれは生産者側にも非常な欠陥があると思うのです。生産者側が、協同組合等が今日畜産問題に対して非常に知識が足りない、あるいは技術が足りない。そういう面においてやはり専門的な者に牛耳られるということは、今までの段階においては当然だと思う。しかしそれをいつまでも放任しておくことは、これは日本の畜産行政のために、畜産の振興のためにはプラスにならぬと思う。そういう意味合いにおいて私は、生産者をして自分の利益を守ると同時に、畜産の振興に役立たせるために、やはり協同組合的なものを育成しなければならぬ。そういう点において、農業団体もそういうことを考えなければならぬけれども、さしあたって、これは行政面において、あなたたちにおいても絶大な考慮を払って、具体的な施策を持ってもらいたい。私はこういう例を持っております。私の方で実は畜産協同組合というものを作った。ところがこれがいつの間にか生産者の団体じゃなしに、地方肉屋家畜商の協同組合になった。それで農業協同組合の連合会、それからそういう畜産協同組合の生産者の団体でないものができて、県でもって畜産委員というのを選任することになった。ところが協同組合関係の責任者が畜産委員にならないで、そういう家畜商の代表者が畜産委員になった。だからこれは県段階においても、生産者の畜産行政じゃなしに、家畜商の畜産行政になってきている。こういうことは今までのいろいろの関係でなかなかむずかしい問題であるけれども、私は畜産を振興する意味合いにおいて適当なる——家畜商としても適正なる利潤を得ることは、現段階においてはやむを得ないことなんだけれども、そのために生産増強を阻害するようなことがあってはならぬから、この点についてもっと国家的立場に立って、一つあなたたち市場の問題、末端における家畜生産者家畜商との取引の問題、あるいは消費者と肉の販売者との問題、そういう問題について根本的な改革をするためにやってもらわないと、どんなに家畜取引法を作っても、これは何ら役に立たぬ。ただ特定の人のために利潤を守っていくようなものになってしまうのじゃなかろうかと憂える。そういう根本的な問題を解決せずして、この家畜取引法案が成立しても、私は意味ないと考える。こういう意味合いにおいて、もっと末端の事情をよく勘案されまして、善処してもらいたいと思うのでありますが、それにしても、現在の生産者の団体とすれば農業協同組合でございますけれども、この農業協同組合等の家畜取引等に関する知識とか経験、特別な技術、そういうものをどういうふうにして作り上げるかについて、あなたたちは特定な考え方を持っておるかどうか、お尋ねします。
  44. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 お説ごもっともでありまして、一々問題点は御指摘通りであります。その方向に向ってやっておるのでありますが、来年度の予算にはそれらの点について、相当思いきった経費を計上したい、さように考えております。農業団体の関係においても、これは現実農業協同組合中央会の方に私ども出向きまして討議を重ねております。しかし、お話のように、なかなかこれは特殊専門分野として、あまり御理解が願えないのであります。これは繰り返し繰り返ししてどうしても農業者の団体において、はっきりした畜産の将来、これは成畜の個体だけでなく、製品にまで関心を持った農業団体の動きが必要であると考えます。
  45. 稲富稜人

    ○稲富委員 市場開設者資格というものが明記してないのですが、どういうわけで明記されなかったのか、その点つまびらかにしていただきたい。
  46. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 市場開設者資格は、第五条に書いてあるのでございまして、これはそういう資格というよりも、どういう事故のある者は開設者になり得ないということを書いておるわけでございます。
  47. 稲富稜人

    ○稲富委員 この第五条は開設不適格な資格だけを示してあるのであって、もっと市場というものを積極的に推進しようとするならば、こういう資格の者でなければならない、こういう団体でなければならないというのを明記することが、市場を積極的に推進するゆえんだと思う。ただこういうものは資格がないのだということで資格を決定するということは、ほんとうに資格決定の趣旨に沿わないと思う。この点提案者はどういうお考えを持っておられるかということを承わっておきたい。
  48. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 配付申し上げました資料の中で、開設音別の市場数という表がございますが、ほとんど大部分農業協同組合になってるわけです。従って私の方では積極的には事実が示しておるという考え方でありまして、あとはやってもらってはいかぬ人だけを示しておけばいい。つまりわれわれは協同組合が市場を開設してもらいたいというのがねらいであります。
  49. 稲富稜人

    ○稲富委員 それならばその点は、こういう人は資格者であるという法律を提案するのが、明記するのがほんとうじゃないか。現在協同組合がやっておるから、これだけを明記すれば——これこれの人は資格がないというよりも、資格者をはっきりきめるということが、大体立法の趣旨でなければならないと思いますが、それは私の解釈が違っておるのか、立案者のどの点が違っておるのか。この点だけ私は関連として聞いておきたい。
  50. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは一つ憲法上の権利の問題になってくるわけです。すなわちある特定の資格のある人だけがよくて、あとはだめだという規定はできないのであります。やっちゃいかぬ人を規定する以外には、今の法制の建前からできないので、こういうふうにいたしたのであります。
  51. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 農業協同組合の畜産の仕事を進展させますことにつきましては、まず第一に、自主的に最近取扱いの基本、畜産行政に対する批判及び積極的な推進等、熱意の高揚しておるものがありまして、長野等においては、畜産専門の農業協同組合連合会などがあって、これに準じて他の地区にもその動きが多い。また総合単協におきましても、場所によっては畜産単独の部課を設けて特に力を入れておるところがありますが、そうでなくてもこれを扱う機運がたくさん現われております。鶏卵、豚肉販売加工等においてももちろんでありますが、全般的な畜政制度の問題、消費宣伝の問題、こういうことは農協中央会の自主的な力に待ちますとともに、政府も本年度六千万円の予算を計上して補助し、それらによりまして活動していただくつもりでありますので、自主的な力をもって大いにやっていただきたい、こういうことになっております。今後はなお一そうそういう方面に力を尽していきたいと思っております。
  52. 神田大作

    神田(大)委員 それでは今の経済局 長の答弁に対しましては、あとの機会に質問したいと思います。
  53. 村松久義

  54. 芳賀貢

    芳賀委員 まずこの法律の提案者であるところの政府を代表して大石政務次官にお尋ねしたいのですが、家畜取引法は、これは以前に家畜市場法というのがありまして、昭和二十三年に廃止になっております。その後それにかわるような意味で初めて出たのですが、この法案の内容を検討すると、最初からふんどしをゆるめておるような法案なんです。どこにも締りというものが全然ないのです。ですから、どういうためにこの締りのない法案を作ったかということを最初にお尋ねしておきたい。
  55. 大石武一

    ○大石(武)政府委員 お答えいたします。(「憲法尊重か」と呼ぶ者あり)おっしゃる通りでありまして、大体が憲法尊重の意味であります。二十三年から今までこの法律がなかったのでありますが、法律を作る場合には、やはりどうしても初めからきついかたいものはなかなか作り得ないのが現状であります。この程度でやっておけば、まあまあ今までの県条例によるよりももっとよい家畜取引法ができるということで、これによって一応やりまして、だんだん改善して完全なものに持っていきたい、これが一応の考え方であります。
  56. 芳賀貢

    芳賀委員 憲法尊重ということであると、どの点が憲法違反になるという事例をあげてもらわないと、国民の自由とかあるいは経済的な行為の自由というものは、家畜取引法以外においても規制している問題が非常に多いのです。そういうことであるから、一つの国の秩序を維持するためにおいても、元全な個人の自由の原則の上に立っての行動というものがほとんど全部規制されてはならぬということになれば、こういうはりきりした法律というものができなくなるのです。ただ憲法に触れるということに名をかりて、こういう非常に効果の上らない法律を作るというのは、政府としても非常に無責任な態度ではないか。どこが憲法に抵触するのですか。
  57. 大石武一

    ○大石(武)政府委員 この全体の行き方がこの程度で一番よろしかろう、この程度が一番憲法に抵触しないであろうと私は考えておるわけでございます。逆に、どこが一番ふんどしがゆるんでおるのか、その点を御指摘いただければ、それについて考え方を申し上げたいと思います。
  58. 芳賀貢

    芳賀委員 では具体的にお尋ねしますが、第一の点は、家畜市場を設けるということは、その利用度を高めるということだと思うのです。家畜市場を開設した場合は、産地市場においても、中間市場においても、やはりその市場を高度に活用させるようにしなければいけないと思うのです。もう一つは、この市場以外においての取引をできるだけ規制するということでなければ、利用度を高めるということにいかないのです。そういう場合の家畜市場の利用度を増大させるための具体的な措置というものは、この法案の中においてはあまり明確になっていないのですが、そういう点をどこにうたってあるかということですね。行政的な措置としては四百万くらい取引に対して補助を出すわけですが、そういう微温的なものがあるとしても、市場を利用した者に対するもう少し具体的な優遇措置が講ぜられるとするならばどういう点であるかということを具体的に示してもらいたい。
  59. 大石武一

    ○大石(武)政府委員 一例をあげますと、設備を非常にりっぱにしていい取引ができるということ、あるいはせりにいたしまして、取引の公正であるとか、いい正しい価格の形成ということ、こういうふうにいたしたいと考えているわけでございますが、なお具体的なことに関しましては畜産局長よりお答えいたさせたいと思います。
  60. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 ただいま政務次官が申し上げた通りでありますが、なおそのほかに、毎日の取引の詳細を公表すること、これが一番大きい問題になってくると思います。それから、従来は許可制度にしておったのでありますが、その許可制度が新憲法に抵触するというので二十三年に廃止になったのであります。そのかわりに、一定の資格要件等をきめも登録させるということにしているわけであります。  それからさらに、ただいまお話がありましたところの、場外取引を禁止しないのはどうかというお話でありますが、これは営業の自由ということにまっこうから抵触するのでありまして、非常に公共性の強いもの、たとえば証券取引所のごとく、その取引いかんによっては日本経済の大混乱を起すというふうに、市場そのものに直接影響を与える範囲内のもの、そういう影響が大きいものについては規定している例もあります。家畜市場は常時開設するのでなくして、定期々々にやるのが通例でありますので、そういうところまでいくのは新憲法のもとでは行き過ぎであるということで、これは私どもの方でもずいぶん法制局と議論したのでありますが、そう勝手なことばかりもできないというので、今回の法律はこれを入れることができなかったのであります。
  61. 芳賀貢

    芳賀委員 今後もやはり場外取引というものは非常に問題になると思う。場外取引というものは、結局特定の地域の中においていわゆる家畜の取扱をやっているのが家畜商ですね。その地域における家畜取引の支配的た力を歴史的にこの人たちが持っているわけです。ですから、この法律が成立してもやはり依然として、場外取引が簡単に跡を断つというようなことにはなかなかいかぬのではないかと思う。むしろ市場取引と対抗するような形の中において巧妙な場外取引が行われているというふうにも考えられるわけであります。  もう一つ、この市場を利用する人の立場から見ると、市場による取引の方が経済的にいって確かに有利だということは生産者等も考えているわけでありますが、その場合、公開ですから幾ら取引されたかということが明らかになる。そうすると、当然これは税金の面等にも関係するというような一つの不安がかもされるわけであります。ですから、税等に対する配慮を市場に上場さした場合においてはどうするかというようなこともやはり考える必要があると思いますが、そういう配慮というものはどういうふうにしているのですか。
  62. 大石武一

    ○大石(武)政府委員 おっしゃる通りだと思います。すっかり取引の内容がわかれば、やはり税の面に関しても農民に非常に不安を与えるということは全く同感でございます。従いまして、その方面の配慮まで当然いたすべきでございますが、それを法案の内容に盛るということは非常にむずかしいことだと思いますので、別の方面においてこれを指導して参りたいと考えるわけであります。
  63. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、先ほど稲富さんからも質問がありましたが、家畜市場の性格規定が非常にあいまいになっておるわけですね。たとえばこの市場が農民の共同利用施設的なものであるか、あるいは公共的施設であるか、そういう点の性格規定というものが非常に不明確なわけですが、先ほどの畜産局長の答弁によると、開設者を主として協同組合等に期待するということでありますが、その点はどうなんでありますか。登録は知事が認めることによってやられるということになるわけですね。
  64. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは現在のところではどうしても協同組合の共同利用施設的な性格が強いことになります。なぜかと申しますと、家畜頭数がこの市場の開催日を継続的にやるだけないわけであります。これが今予想しておるような家畜頭数になるということになれば、それによって所要の改正を当然与えなければならぬことになると思いますが、現在のところはどうしても先ほど申し上げましたように、協同組合の共同利用的色彩が強い、これはやむを得ぬと思います。
  65. 芳賀貢

    芳賀委員 次に法第十五条の規定ですが、取引方法で、せりまたは入札によらない場合というようなただし書きの規定があるわけですが、このせりとか入札というものは正当な市場における取引の行為なんで、それ以外の場合というのはどういう場合ですか。
  66. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 たとえば松阪牛とか、特殊の資質を持っておるものとか、そういうものでせりにかけても一般的にはちょっと効果がないもの、あるいは災害などで施設がこわれたとかなんとかいう場合、せりをやる施設が間に合わないという場合も予想できますので、こういうただし書きの規定を入れておるわけであります。
  67. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、せりにかけるべき必要を認めない場合ですか。かけても結果的に何も変らぬという場合、あるいは矛、の施設等が使用できない事態になったというときの取引ですか。
  68. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 私のところで現在考えているのはそういう点であります。
  69. 芳賀貢

    芳賀委員 それではそれは特に例外規定だと思います。その次はせり人ですが、これはいわゆる仲立ち業者ということになると思いますが、私どもの知っているところでは、最初は法案の中にせり人の規定をうたうということであったように承知しておるのですが、これが今度は業務規程に全部ゆだねてあるようでありますが、こういうせり人の資格条件等はやはり市場経営の上からいうと非常に大事な点であると思います。こういう大事な点を業務規程等によっておるという点はどうも理解に苦しむわけですが、どういう理由でこうなったのですか。
  70. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは家畜の規模とかあるいは地方状況等によりまして、あまりこまかく法律規定しない方がいいのではないか。それよりも基準を指示してやった方がいいのではないか、こういう関係から法律から落したのであります。
  71. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃこのせり人の点は不明確にしておいた方がいいというのですか。これは明確にしておいた方がいい。やはりせり人というものは、その市場においては中心的な役割を果すものなんです。そういうものを非常にあいまいにしておいた場合においては、期待した効果が上らぬ場合があると思います。今の説明では納得できないのです。
  72. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは先ほど申し上げましたように、市場の性格として協同組合の共同利用的な施設という点から見ますと、むしろ逆にこの業務規程等で資格を自主的にきめた方が実情に合うのじゃないか、こういう意見が出できたのであります。法律で書きますと、資格等についてもどうしても非常に制限的な規制だけしかできなくなりまして、せり人がどうあるべきかということは、やはり市場開設者が相当権限を持って業務規程できめた方がよい、こういう考え方で書いたのであります。
  73. 芳賀貢

    芳賀委員 次に取引によるところの代金の決済ですが、こういう点はやはり市場を利用する者は安心して取引ができるようにしなければならぬのです。この取引代金の決済は、もちろんその開設者に大半の責任があると思うのですが、その責任の限界というものはどういうことで規定しておるのですか。
  74. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 ちょっと意味がよくわからないのですが、責任の限界といいますと……。
  75. 芳賀貢

    芳賀委員 つまりせりにかけるでしょう。そうしてその取引が成立するでしょう。そういう場合においては当然代金の決済を行うということになるでしょう。ですから市場に出場させた場合においては、当然開設者に対する責任というものが相当あると思うのです。その責任の限界というものは市場開設者にあるものであるか、それともそのせりに出た馬とか牛とかを買い取った者にあるのか、そういう点はやはり明らかにしておいた方がよいと思います。
  76. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは十六条に規定してありますように、開設者が全責任を負うわけであります。買った人は開設者に払う、売った人は開設者からもらう、こういうことになります。
  77. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると代金決済はあくまでも開設者が最終的に重任を負うということになりますね。  その次にお尋ねいたしたい点は、ここに市場の再編整備の問題がうたってありますが、新しい市場を開設する場合における地区の範囲というものは非常に影響があるので、どの程度の区域を一単位市場の区域とする計画であるか。もちろん府県によりいろいろな立地条件によって違うと思いますが、大体の基準というものはあると思います。
  78. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは要するに家畜売買する当事者が家畜を運び得る経済単位、つまり一晩もかけて持っていかなければならぬようなところでは絶対だめなんですから、数時間で到達し得る地域ということになります。ですから数カ町村または県によっては一部くらいの範囲、こういう考えでおります。
  79. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合に、畜産局長の言われたように、主として協同組合の連合会等にその開設者の地位を与えることが望ましいとすれば、その競合というものは避けられると思います。しかし一つ地域内において異なった性格を持った市場経営者が現われた場合においては、スムーズにいかない場合も出てくると思います。そういう調整等はやはり必要になってくると思いますが、そういう場合はどうやって調整するのですか。
  80. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 現在われわれの方で調べたところでは、そういう事実がないのであります。従って法律にはそういう規定をわざと落しておるのであります。今後の問題でそういう場合が発生することが予想できるのじゃないか、こういうふうなことも言えるのでありますが、この法律通りまして再編整備をやった場合には、それがうまくいくならば、そういうふうな協同組合でないものが直ちに市場を開くという意図は出てこないじゃないか、こういうふうにわれわれの方は判定しておるのであります。
  81. 芳賀貢

    芳賀委員 特に産地市場の場合ですが、これは北海道とかあるいは内地の府県においても実例があるのですが、主として県の経済連あたりがこの産地市場経営に当っておる。そういうことになると、この産地市場の場合は、この経営者は、その県等における非常に広範な地域における経営者ということになって、そうしてそれをまた郡単位とか特定の地域単位に市場を開設するということの方が、産地市場経営の場合においては非常に理想的でないかというふうに考えておるのですが、当局の考えあるいは今後の指導方針等は、そういう形でやっていく御意図であるか、その点はいかがでありますか。
  82. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 私の方はそういう、ふうに考えております。個々の単位組合でやるよりも連合会でやった方がいい、こういうふうに考えております。しかしそれを一挙にどうこうという考えは持っておりませんけれども指導としてはそれをしたいと思っております。
  83. 芳賀貢

    芳賀委員 昨年から作った畜産会に対しては、畜産の技術面の指導だけしかやらさぬということを畜産局長は再三言っておったのですが、今度のこの家畜取引法案関係して畜産会なるものは全然この面にはタッチしないのか、またさせるのか、そういう点はいかがですか。
  84. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは地方状況によって変ってくると思いますが、私どもとしては、畜産会に市場をなるべく開設さそうという考えは持っておりません。この点は先ほど申し上げますように、地方市場がなくて新たに市場を作りたい。その場合に畜産会がやりたいというような場合が出てくるかと思いますが、そういう場合には、その地方実情を検討した上で指示しようと思っております。
  85. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃ話が違うじゃないですか。今まであなたは、畜産会に対しては畜産技術の振興とか指導とか、そういう部面のことしかやらさぬということを強調してきたのです。この市場開設とか経営をやらすことになれば、実際に畜産会がそういう事業面に進出するということになる。その機会を与えるということなのです。そうすると発足当時の考えと全く違うのです。一つの事例が生れれば、畜産会は当然家畜市場開設者になれるんだ、というよりむしろなるんだというような能動的な考えが強くなってくる場合がある、大した違いじゃないですか。だからその点は政務次官から明らかにしてもらいたい。
  86. 大石武一

    ○大石(武)政府委員 これは畜産局長にお答えさせたいと思います。
  87. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 私の言葉が足りなかったと思うのですが、現在先ほども申しましたように、市場がたくさんあるところと、ブランクになっておるところがあるのであります。このブランクになっておるところは、市場が要らないかというと、やはり市場があっ方かいい地力があるわけであります。その際に、協同組合がやりたいと言えば、協同組合の方を優先的に許したいと思いますが、しかし協同組合がやりたくない、畜産組合連合会もない、その際にだれがやるか、家畜商市場を開くか、あるいは畜産会が開くかというような問題が出てくる場合が予想できるのであります。その際には、畜産会が、その地方に適合すれば畜産会にやらした方がよかろう、こういうのでありまして、お話のように、何でもかんでも畜産会にやらそうという考えでは全然ないのであります。そういう場合があった場合には、それも私どもはやむを得ないというくらいな考え方であります。
  88. 芳賀貢

    芳賀委員 この法律市場開設者の適格条項をうたってない、不適格条項だけしかうたってないのですが、やらさぬとかやれないということにはならぬと思いますが、そういう事態が生れてくれば、今作られておる畜産会なるものの性格に大きな変化が現われてくることは否定できないのであります。むしろそういうことを事前に予見してそうした規定を作られたのかもしれぬが、技術指導程度のもので地方畜産会、都道府県畜産会を作るはずがない、何か魂胆があるんじゃないかというふうにわれわれは考えておるのですが、ぼつぼつこういう点から実体が現われてきたように考えるのですが、これはやはり将来の農業団体のあり方といろいろな意味における問題をはらんでくるということだけを指摘しておきたいと思います。  その次は家畜商の問題ですが、これは法律的に家畜商法という法律があるけれども、これは有名無実で、あまり運用面では適切なものではないと考えられるわけですが、現在家畜商資格等に対しては一昔は試験制度等があったのですが、現在はどういうようなことで家畜商に対する許可を与えておるのですか。
  89. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは現在では家畜商法第四条の各号に免許を与えないものを規定しておるのであります。すなわち第四条第一項第一号が「禁治産者又は準禁治産者」第二号は「この法律又は家畜伝染病予防法に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終った日又は執行を受けないことが確定した日から一年を経過しない者」それから第三号は「第七条第一項又は第二項〔免許の取消及び業務の停止〕の規定による免許の取消があった日から二年を経過しない者」それから先般参議院の方から修正が家畜取引法案に関してありましたが、もしそれが御協賛があった場合には、禁錮以上の刑に処せられた者もやはり二年以内は家畜商になれない。それだけの規定でありまして、今の事項に該当しないものは、申請があれば全部免許になるということであります。これは先ほど神田委員の御質問にお答えいたしましたように、試験制度にしたらいいじゃないかということで法律の改正案を立案しまして、本国会に出すつもりで法制局と協議を重ねたのでありますが、単に商取引制限するだけの試験はだめである。衛生とかあるいは公安を害するというふうな状況がない限りは試験制度はだめである、こういう結論になったのであります。ところがこの衛生の部面家畜商に強制することは実情に現在のところ合いません。従って先ほど申し上げましたように、これは自主的に府県とかあるいは畜産会等で推薦家畜商という制度をやって試験のかわりにした方がいいじゃないか。ここではっきり出ておりますように、ほかの法令でもそうでありますが、強盗を働いても、刑を二年たてば、あるいは二年なり三年なりたてば、もう当然人民としての権利義務を百パーセント享受できるのは、憲法規定になっておるのでありまして、われわれ行政官からいきましても、もう少し規制ができた方がいいじゃないかというのでありますけれども法律的には現在までのところ、そういう改正ができないのが実情であります。
  90. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、先ほど神田委員からも枝肉市場の問題が出たのですが、肉畜及び食肉の消費改善等の措置の問題です。聞くところによると、政府は食肉会社というような販売会社のようなものを今考えておるようですが、その構想は現在どうなっておりますか。
  91. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 いろいろな考え方を今練っております。今の食肉会社という案は、家畜生産者、それから肉の取扱い会社が一緒になって、一つ施設を——施設というのは冷蔵庫、店舗、そういうものを持ちまして、今は枝肉で取引しているのですが、普通の公正な取引をするには、枝肉の個体個体が全部商品価値が違うわけです。そこが問題になりますので、肉を骨からはずして、もも、ひれ、内臓、皮、そういうものにきれいに分けまして、急速冷凍にかけて、セロファンで包んで、だれが見てもこの商品はどういう部分であるからどれだけのグレイドであるということがはっきりわかるようにしてやれば、取引公明になるのではないか、こういう考え方であります。外国ではそういうことをだいぶやっておるわけでありますから、日本でもやれないわけはないじゃないかということで、案ができておるわけであります。しかし現在のところ、その施設もあるいはそれに対する技術者も、まだ十分でありませんから、すぐそこまでいくことはどうかという意見もあります。あるいは少々無理でもやったらいいじゃないかという意見もあります。今各方面で、その案に対して検討が加えられつつあるのが現状であります。
  92. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、まだ素案程度で、それほど具体的にいっていないのですか。
  93. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 まだ検討の段階にあるわけであります。
  94. 芳賀貢

    芳賀委員 枝肉取引の問題が出ましたが、ことしの見返り資金の配分は、枝肉市場の改善等に相当額の配分方針を立てておるように聞いておるのですが、その計画は現在どういうふうになっておりますか。
  95. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 ただいまのところ、出てきておるのは福岡、広島、大阪、名古屋、それから二、三の畜産協同組合から、加工工場をやりたい、それからその後続々と各市の屠場から、枝肉冷蔵庫整備のために見返り資金をもらいたいという申請が出ております。現在具体的に各屠場の設計書、それから市当局の予算的な裏づけがどの程度までできるかということを審査しております。そして私どもの希望としましては、できるだけたくさんの見返り資金をそちらの方に回したい、こういうことで、まだ検討いたしております。
  96. 芳賀貢

    芳賀委員 最後に枝肉市場関係ですが、屠場と荷受機関との関係で、非常にいろいろな弊害を実は生じておるのですが、こういう屠場の機構とか、そういう問題等に対して、農林省は今までどういう検討を加えておるのですか。あるいは重大な弊害等に対して、何らか注意等を喚起したようなことがあるのですか。そういう点を少し説明して下さい。
  97. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 先ほど申し上げましたように、屠場によって非常に状況が違いますけれども、たとえば東京屠場で申し上げますれば、私が繰り返しいろいろ意見を申し上げておる点からいえば、要するに需要が非常に多くて、屠殺申し込みが非常に多いわけです。従って地方から牛を受ける人が、屠殺の順番をせり合う。従って従来の顔ききの問屋さんでなければ、あとから来た人はうまく順番が回ってこないで、商機を失するというのが実情ではないかと思います。これを解決するには、どうしても屠場施設を拡大しないと解決できないのでありますが、しかしそれまでも待てませんので、屠場長等と連絡しまして、できるだけ円滑にいくように協議はしております。しかし先ほど申しますように、根本は施設を拡大する以外には解決方法はない。絶えずやかましく言っておって、少しでも弊害を少くするのが現状では関の山だ、こういうように思っております。
  98. 芳賀貢

    芳賀委員 それは施設にも関係があるかもしれませんが、旧来からの一つの因果関係というものが相当悪弊を温存しておるわけです。たとえば屠場には常勤の労務に携わる屠夫というのがおります。それだけでは足らぬということにしておいて、今度は手伝い人夫というものを提供しておるわけです。たとえば食肉卸売協同組合、そういう荷受機関からその手伝い人夫が出ていって、屠場へ持ってくるそういう肉畜等の処理の順位をそういうことによってきめる、先に屠場へ着いて係留しておいても、それがあと回しになったりその日の処理にならないというような場合が非常に多いようにわれわれは聞いておるわけであります。こういう弊害は、これは運営上の問題ですから、当然その弊害を除去することはできると思うのです。そういうことはできないですか。
  99. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは施設が現在のような状況であれば、一ぺんそれを直せといっても、直してもまた翌日から同じことをやられる、すなわち従来の問屋さんの勢力関係でどうしてもそういうふうになってくるのじゃないかと思います。それと一つ東京都といたしましても、地方公務員の関係屠場の人の扱いに相当苦心しておるようでありますけれども、なかなかうまくいかない点があるのであります。根本はとにかく施設を拡大しなければ、先ほど申し上げましたように、いってもまた翌日からもとへ返る。まあ順次にはよくなると思いますけれどもお話のようにきちっと改まるということは現状では期待できません。
  100. 芳賀貢

    芳賀委員 具体的に確認された弊害というものは即刻取り除く、屠夫が足らなければそれを増員しても、十分利用度が高いのですから、屠場経営が成り立たぬということではないのでしょう。ただ手伝い人夫を出しておるということに名をかりて、そこで順位をつける、有力な商人がいつも非常に優位を保っておる。そうなると生産者側はそれによって非常な不利を受けるということは当然です。これは農林省が監督の任に当っておるのですから、慣行上やむを得ぬということではなくて、そういう実態を調べて、弊害を是正するという勇気はないですか。
  101. 大石武一

    ○大石(武)政府委員 お答えいたします。ただいまのお説はごもっともと思いますけれども畜産局長からお答えしましたように、事情が非常にむずかしい問題であります。非常に困難な問題でありますけれども、ことに今までの伝統と申しますか、因襲と申しますか、そのような悪いことは除去するのが当然でありますから、できるだけ努力いたしまして、なるべく早く屠場の拡大をいたしまして、かような悪習に対しては一日も早く是正されるようにいたす方針であります。
  102. 芳賀貢

    芳賀委員 これは政務次官、別に憲法違反にならぬでしょう。憲法違反だとすれば別でありますけれども、そうでないとすれば、公営的な屠場の運営は、そういう悪弊を断って、正しい姿に戻さなければならぬ。そうでなければ、一般市民に対して低廉な、優質な食肉を提供することができないというようなことにもなってくる。毎日の新聞等を見ても、経済欄の終りの方に、きのうの未処理の大家畜の数が何頭ということが毎日出ているでしょう。そういうものをあなた方が見ておれば、どこにその原因があるかということも明らかになると思う。だからこの点に対しては、直接この法案には関係はないのですけれども、流通過程の中においては、先ほど神里委員が言うたように、家畜取引の一貫した流れの中における枝肉市場の適正なる運営というものが当然必要なことになってくると思う。具体的な事例をいろいろ並べればいいのですけれども、時間がないし、これは私どもよりも当局の方が知っていると思う。ですから、ここでそういう弊害を十分究明して、直ちに是正するということを確認していただければ、この問題はこの程度にしておきたいと思いますが、いかがですか。
  103. 大石武一

    ○大石(武)政府委員 おっしゃる通りでございます。その通り是正することに極力努力いたします。そして悪因縁を絶つことばかりでなく、それと同時に設備の拡大ということに懸命に努力いたす方針でございます。
  104. 芳賀貢

    芳賀委員 最後に、これは参議院から回付された案ですが、参議院における修正が行われているのです。これに対しては委員長にお尋ねしますが、修正をされた参議院側から修正の説明を受くべきであるか、あるいは政府当局から受けた方がいいか、それは委員長に取り計らいをおまかせしたいと思いますが、とにかく修正点に対する一応の御説明を受けたいと思います。
  105. 村松久義

    村松委員長 政府が参議院にかわって説明をし、かつその内容については妥当であるという御説明を申し上げておりますので、この際政府に対して御質疑を得れば幸いと思います。政府も答弁の用意ありますね。
  106. 大石武一

    ○大石(武)政府委員 家畜取引法案政府原案について提案理由の説明を以前に申し上げたのでございますが、参議院において修正の点がございますので、かわって御説明申し上げたいと思います。  その主要な点の第一は、家畜市場の登録基準として、禁固以上の刑に処せられ、刑余二年を経過しない者には登録を与えないこととする。第二点は、禁固以上の刑に処せられた者、その他家畜商法家畜伝染病予防法または家畜取引法の違反者で刑余二年を経過しない者は家畜市場免許の欠格事由とし、その免許を取り消すこととする、この二点でありまして、その他これに伴う経過規定等の修正が行われたのでございます。この修正点は中央卸売市場における卸売人、商品取引所における会員及び証券取引所における会員についても同様の規定がございますし、家畜商等の業界におきましても、要望のあるところを考慮して、これにならうという趣旨でございます。
  107. 村松久義

    村松委員長 それに対する政府の意見は……。
  108. 大石武一

    ○大石(武)政府委員 この通りの修正で当然けっこうでございます。
  109. 稲富稜人

    ○稲富委員 先刻神田委員並びに芳賀委員の質問に関連して、二、三点お尋ねしたしと思います。  まず先刻の登録の資格の問題で、資格の問題を明記することは憲法に抵触するようなおそれがあるから、これはやらなかったという説明のようであります。ところが第五条の五に「家畜市場を開設し、及び運営するのに必要な資力信用を有しない者」というのは、これは資格がないことになっている。法律の制裁を受けた者は、こういう規定によって資格はないといっても、この五号の規定というものは、それを登録をするかさせぬかという一方的な観察が行われると思う。憲法に抵触するからその資格は与えなかったというのなら、第五号の問題は人間の基本的人権をこれによって認めてないことになるのでございますが、この第五号は憲法には抵触しないという解釈でございますか。
  110. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 家畜市場を開設するには一定の施設が要るのでありますし、それからこの法律に基きましては代金決済の責任者になるわけです。登録を申請する場合には一定の申請様式に、どれだけの施設をし、どういうことをやるかということがありますから、それにも金がない、あるいはとにかく家畜取引について全然未経験者であるというものは欠格条項にしているのであります。適格条項にしているわけではありませんから、前各号と同様の趣旨とわれわれは考えております。
  111. 稲富稜人

    ○稲富委員 欠格条項の中に第五号が入っているということは、第五号の解釈によって非常に欠格条項というものが広げられることになってくると思う。市場を開設しようとする以上はやはりそれだけの設備その他してやるでございましょう。ところがこの五号の解釈の工合によっては、しかも資力信用を有しないというのですから、これは解釈によっては非常に広範に解釈される場合あると思うので、この点であなた方が憲法の趣旨を尊重されようとするならば、その趣旨には非常に沿わないようになるわけです。この点を一つ提案者がどう考えられているかということを重ねてお聞きしたいと思う。
  112. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 資力の方は今の施設をいたすだけの資力が最低必要だと思う。それから信用は、たとえばそれに基いて金を借りる、協同組合なら協同組合あるいは銀行なら銀行が金を貸すくらいの信用がなければいかぬわけです。しかしこれは抽象的にはそういうことでありますけれども、大体家畜取引の経験者であるとかあるいはどういう団体であるかということは、そうとっぴなものは出てこないのが実情ではないかと思いますけれども、御心配になるような非常に広範な解釈が行われるというおそれはないものと考えております。
  113. 稲富稜人

    ○稲富委員 そうしますと、こういうような不適格条件を持たない人は全部登録してもいいということになってくる。ところが今度は市場再編整備を促進することによってこれもまたあとから抑制されてくることになってくる、この点はどうなんですか。
  114. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは第十九条以下の規定では現在乱立しているのを整備しよう、こういう考えであります。
  115. 稲富稜人

    ○稲富委員 憲法違反にならぬですか。
  116. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは憲法違反にならぬようにみなの相談によってそれに得心してやるということになっておりますから、憲法違反にはなりません。強制的にやればなるのであります。
  117. 稲富稜人

    ○稲富委員 相談がまとまらなかったら……。
  118. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 相談がまとまらなかったらこれはできない。それから五条の方ではそういう整理をしたときにまた出てくるものがありはしないか、こういう御心配ではなかろうかと思いますが、それだけやかましく整理をしてそのあとに出てくるということは、私どもとしては常識から考えてその心配はないもの、とこういう判定でこの規定を使ったわけであります。
  119. 稲富稜人

    ○稲富委員 いま一点だけ芳賀委員の質問に関連してお尋ねしたいと思います。従来家畜取引の弊害というものは、市場外取引が非常にあったと思う。ところがこの市場外取引に対して何ら抑制されない。これは憲法に抵触するからと、こういうことなんです。非常に憲法の精神というものを重要視されるのでございますが、その結果骨抜きになっているという形なんです。それで生産地の市場に対しましては、これは再編整備ということが行われるかもしれませんが、最も弊害の大きい消費地方におきます市場外取引というものに対して何ら抑制がない。こういうことに対してはどういうようなお考えを持ってこの弊害を除去しようとお考えであるか。ただこれは家畜商試験制度の問題を考えておる、こうさっきおっしゃっているのでありますが、これに対して何か具体的な案がこれに関連しましてあるのでございますか、それともこれは野放しにしておこう、やむを得ない、こういうことで見送ろう。ただこの取引法だけ通しておくのだけれども消費地方におきます最も弊害の多い市場取引等はこのまま野放しにしておくのだというお考えであることは、私はこれは非常に家畜取引法の基本的な精神に沿っていないと思う。これに対してどういうようなお考えを持っておるのか、承わっておきたいと思う。
  120. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは産地市場消費市場とでは画然と性格が変っているわけでございます。消費市場の方ではほんとうに肉屋さんと家畜商なら家畜商取引が重点をなしておる。生産者が出る場合でも、それは団体として出てくるわけであります。従ってその場合には何といいますか、ほんとうの商売、虚々実々の商売ができるわけであります。産地の市場はそうじゃなくして、一方では天下の経済情勢のよくわからない生産者に対して、よくわかっている家畜商という関係にありますので、その点にわれわれは注意力を集中しているわけでございます。従って産地の家畜市場で公正な取引ができて、そこで買った家畜家畜商消費地へやる場合には、これは家畜商の責任になりますから、そこでもうけんがために産地の方で家畜商生産者をたたくということがないことだけを防止しておけば目的の大半は達成できる、こういうふうな考え方から、産地の家畜市場指導育成に重点を置いているのでございます。
  121. 稲富稜人

    ○稲富委員 その点で、私、申し上げておりますように、この取引法の重点というものが生産地の市場に非常に重きをなしておるわけでございます。消費地方におきましては、ことに農家家畜商取引によりまして牛馬を非常に動かすのです。ここに非常に弊害があるのです。これを野放しにするということは、せっかく農家経済をよくするために家畜取引法を立案されましたその恩恵には消費地方の農民は浴さないような結果になりやせぬかと思うのです。この点に対してどういうような将来の対策を持っておられるか、この点を承わっておきたいということが私の質問の趣旨なんです。
  122. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 お配りしている表にありますようにたとえば神奈川県等は市場外がゼロになっておりますが、消費地の近くはやはりブローカーなり、肉屋さんなりが直接入り込むチャンスが多いわけであります。しかしその場合でも取引には書面で契約書を取りかわす規定を置いております。それよりも、結局市場を開いて、そこでせりをして公明取引ができた方がいいのでありますから一この法律ができますればそれによって市場ができるところも相当出てくるのではないかと思います。そうして市場取引を公表すればおのずから今までのような、生産者がそういつまでもいい食いものになるというようなことは防止できる、こういうふうに考えます。
  123. 稲富稜人

    ○稲富委員 それは非常に認識が足らないと思う。消費地方でたとい市場を開設したとしても、やはり市場外取引というものを取り締っておる時代でももう家畜商と農民との間に話ができて、市場にかけなくちゃいけないということになると市場はただ持っていくだけなんです。そうして手数料を払うだけが市場の行為になってしまうということが多いわけです。それを今度は、その市場外取引ということを野放しにしておくということになりますと、たとい消費地方市場を開設しましたところで、わざわざ手数料を納めるために市場に持ってくるものはない、こういう弊害が生ずるわけだが、これに対しては何かこの家畜取引法というものをここに具体化する以上は、この点に対する考え方というものを置いておくことが、私は農家経済をよくし、農民のためには非常にいいことではないかと思うのです。ただこれを出すことによって消費地方もだんだん市場に持ってくるだろう、こういうような考え方というものは、これは実態を知らない考え方なんですよ。こういうような実態があるのです。市場外取引の方が横行するのですから、これに対して何とか考えないかということを聞いておるわけです。
  124. 渡部伍良

    渡部(伍)政府委員 これは私の方の認識不足という御指摘のようでありますが、今市場が一番うまくいっておるのは群馬県と神奈川県であります。近くにそういういい模範例が二つあるのであります。私ども考えるのは、要するに市場の運営がうまくいけばこの法律の条項によって相当規制を加えますから、そこへおのずからくるだろう。もしこなくてもこの場外取引の場合には二十八条によりまして文書の契約をするということになります。一方では市場で、ほかの県でも、先ほど御指摘がありましたように新聞に相場が出ておるわけでありますから、そこで注意を喚起して場外取引もそこでやっていく。もっと家畜頭数がふえあるいはどうせそういうことをすればせりにした方がいいということなら市場開設ができる、こういうことを期待するわけであります。これに一見非常に迂遠なようでありますけれども、単刀直入にぴしっとこう規制しても取引がその通り行われないのが取引であると思いますが、一方においては生産者の方の自覚を促すことも重要でありますが、いろいろな手段で農家経済に好影響をもたらすことを期待しておるわけであります。
  125. 稲富稜人

    ○稲富委員 これで最後です。二十八条によって場外取引の弊害等を除去しようという考えを持っておる。こういう考え方は非常によけいなんです。そういうことは形式上の問題であって、実際弊害は減らないと思う。しかしこの問題はいろいろここで論議をしましてもしょうがございませんので、いずれ何かの機会に場外取引の弊害というものを何とか一つ考えていただきたい、こういうことをこの機会に私要望いたしまして、私は関連でございますから、私の質問は大体この程度にいたしますけれども、何とか考慮していただきたい。
  126. 村松久義

    村松委員長 ほかに御質疑はありませんか。——なければこれにて質疑は終了いたしました。  なお本会議終了後再開いたします。その際に群馬県の凍霜害に関する色彩映画をこの部屋においてお目にかけたいと思います。  暫時休憩いたします。    午後一時九分休憩      ————◇—————    午後三時三十五分開議
  127. 村松久義

    村松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  家畜取引法案を議題といたし、審査を進めます。  討論に入ります。討論はありませんか。——なければ直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  128. 村松久義

    村松委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  この際、神田大作君より本案に対し附帯決議を付したいとの申し出があります。これを許します。神田大作君。
  129. 神田大作

    神田(大)委員 私は、自由民主党並びに社会党共同提案による、家畜取引法案に対して附帯決議をいたしたいとの動議を提出いたします。  まず案文を朗読いたします。    家畜取引法案に対する附帯決議案   政府は、家畜取引に内在する因襲を打破し、その改善を図るに当り、着実な効果を挙げるため、左記各項に留意して本法の運営に当るべきである。     記  一、家畜取引の公正をはかり、生産者の利益を擁護するため、市場開設者せり人を置いてせり売を行うよう業務規程の作成について強力に指導すること。  二、産地家畜市場における取引を増加させ、その利用度の向上をはかるため、市場再編整備地域をできるだけ広範囲な地域について指定せしめるよう指導すること。  三、産地家畜市場は本来農業者の共同利用施設たるべき性格にかんがみ、かつ、再編整備を円滑に促進するため、できるだけ実情に即し都道府県農業協同組合連合会等をして市場の開設及び運営に当らしめるよう指導すること。  四、枝肉取引をめぐる悪弊を剪除し、これを近代化するため、屠畜場の整備及び枝肉市場の新設並びにその取引方法の改革等に関し明確な方針を樹立実行し、併せて系統農協による肉畜の共販態勢の確立に努めること。  右決議する。 以上であります。
  130. 村松久義

    村松委員長 ただいま神田君より提案されました附帯決議を付するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  131. 村松久義

    村松委員長 御異議なしと認め、さように決定いたします。  この際、附帯決議に対する政府の所見を求めます。
  132. 大石武一

    ○大石(武)政府委員 ただいま御田委員より御提案になりました家畜取引法案に対する附帯決議につきましては、政府としましては全面的に賛成を申し上げる次第でございます。この線に沿いまして法の運営を十分に行なって参る所存でございます。  まず第一点のせり売りの点につきましては、諸外国においてもせり売りが行われておりますし、わが国における家畜取引をめぐる因襲等にかんがみまして、せり売りを徹底することが取引の公正をはかるゆえんであると存じます。  第二点の産地家畜市場整備をできるだけ広範の地域において行うことは、整備を促進していくゆえんでもあろうと思います。  その他、以下の点につきましては全く同感でございます。
  133. 村松久義

    村松委員長 なお本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 村松久義

    村松委員長 御異議なしと認め、さように決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十九分散会      ————◇—————