○久保田(豊)
委員 多分そうおっしゃるだろうと思いましたが、御
承知のように
余剰農産物というものは、今のところ
政府の食管
会計のやりくり等においては直接の大きな圧迫は加えておりませんが、しかしながら、
日本の農業全体については大きな圧迫を加えておるものであります。そのために今の
日本の農民は非常な不利な
状況になり、不安定になっておる。これが今日の
実情である。これは、かりに価格面である程度の操作をいたしましても、そんな程度では、
日本の農業に与えてくる大きな不安なり破壊的な要素というものはとれない。しかもこの
余剰農産物そのものが
日本の食糧増産計画というものを根本からくつがえしておる。また軍事費の圧迫によって食糧増産費というものはどんどん削られております。一方今年の予算にしても、
政府の食糧五カ年計画によりますと、五カ年の間に二千二百九十八億円の金を入れて千三百五十三万五千石の増産を食糧だけでいたしても、なお五カ年後においても四百十万トン程度の輸入が必要である。この計画を実行するためには、まず第一に三十一年度においても、
政府の計画によっても三百八十七億の金が要るわけです。それに対し本年度
政府の方としては幾らの金を食糧増産費に入れておるかというと、二百四十七億です。その結果は二百十四万石の増産計画が今年は百八十一万石に減っておる。しかもその中で、いわゆる大
規模開墾の方へどんどん
資金が削られております。そういうような
関係からいいまして、結局一般の
土地改良その他の経費というものは減っておる。なるほど
資金源においては昨年と同額であるが、その中で十億何がしというものは大
規模開墾の方にとられておる。しかもそれは北海道その他に見られるように主として畜産でありまして、その畜産の基礎というものは不安定である。こういう
状態の中で私
どもが第一に
考えるのは、
日本の農業に非常に大きな圧迫を加えておるこの
余剰農産物の
資金そのものが、
政府の計画によりますと、昨年度は御
承知のように百八十二億五千万円が電源
開発、それから食糧
関係に三十億
——愛知用水です。こういうようになっておる。ところがことしはどういうことになっておるかというと、百二億八千万円が電源
開発、あとはどういうことになっておるかというと、農業
関係に八十八億幾らということになっておりますけれ
ども、そのうちで農業には前年度分も含めてわずかなものしか来ておらない。そして
森林、漁港の方に四十一億何がしということになる。こういうことになりますと、片方においては年々軍事費の圧迫を受けるのは当然であります。
政府が防衛六カ年計画なり五カ年計画によって
資金がよけい要ることは明らかであります。こういうことになりますと、
余剰農産物の見返り
資金さえも非常にあちこちにとられて、結局こういうことになれば、
日本の食糧増産というものは減退せざるを得ない。おそらくこのようなことで行ったならば、五カ年後において
政府は外国食糧を少くとも五百五十万トンないしは六百万トン近く入れなければならないような事態になってくると思う。こういう際に、なるほど奥地
森林の
開発ということも大事であり、漁業も大事であり、そのほかどれ
一つとってみても大事であると思いますが、全体の農林政策という点から見て
——私はあとでいろいろお聞きいたしますが、こういう点から見て、食糧増産なるものを大きく犠牲にして、食糧面において外国にますます依存する、こういう態勢を片方において促進するような金の使い方というものは、農林当局としては
考えるべきものではないというように私は
考える。おそらく
日本国民、特に農民は、この圧迫を一番大きく身にしみて感じておるのであります。奥地
森林の
開発ももちろん大事であるが、しかしこれは当然別個の方策をもって計画を定むべきものだと思う。にもかかわらず、こういう方に大きく金を入れるということが、果して
政府としては適当かどうか。この点は、私はさらに検討を要する点があると思う。もちろんこういうことをおきめになって提案される以上は、
政府は適当であると言うにきまっています。そういう一片の議会
答弁ではなくて、もう少し
日本の農林業全体、あるいは国民経済全体というものを
考えて、真剣にお
考えになる必要があるのではないか。ことに
余剰農産物の見返り
資金は、ことしは大体において従来
通り電源
開発に百二億八千万円と、生産性本部に十億という金が行く、農業
関係に四十四億と、そり他全部合せて八十八億、開拓者
資金上億七千四百万、
森林、漁港に四十一億四千五百万、こういうことになっておりますが、このほかに、たとえばテンサイ糖の増産計画、これにも十億金をやるという話もある。そのほかに、これはまだ決定しておらないでしょうが、霞ケ浦や東京湾の埋め立てにも新しく金を使うという話がある。
肥料合理化
資金にもこの見返り
資金を使うという話がある。もっとひどいのは、城ケ島の観光
開発までこの
資金を充てようというふうな計画も、農林省の一部にはあると聞いておる。こういうことが新聞にはっきり載っております。こういうような
資金を、ほとんど農業以外といってもいいか、あるいは直接
日本の農業の基礎を固めることでないような、ある意味においては土建屋をもうけさせ、
事業屋をもうけさせるような方向に使うことが果して適当か。今度の
森林公団も
——私はあとでお聞きいたしたいと思いますが、そのにおいがないわけではないのであります。こういう点から見て、私は果して農林省が見返り
資金の問題なり、
日本の農林業全体をまじめにお
考えになっておるのかどうかということを疑わざるを得ない。この点については、ほんとうにどういうようにお
考えになっておるのか。もしお
考えがあれば、まず第一にお伺いをいたしておきたい。