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1956-04-04 第24回国会 衆議院 農林水産委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月四日(水曜日)    午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 村松 久義君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 助川 良平君 理事 田口長治郎君    理事 中村 時雄君 理事 芳賀  貢君       足立 篤郎君    安藤  覺君       五十嵐吉藏君    伊東 岩男君       井出一太郎君    大野 市郎君       大森 玉木君    加藤常太郎君       川村善八郎君    楠美 省吾君       小枝 一雄君    鈴木 善幸君       中馬 辰猪君    綱島 正興君       原  捨思君    本名  武君       松浦 東介君    松田 鐵藏君       松野 頼三君    赤路 友藏君       淡谷 悠藏君    伊瀬幸太郎君       稲富 稜人君    石田 宥全君       小川 豊明君    川俣 清音君       神田 大作君    田中幾三郎君       中村 英男君    日野 吉夫君       久保田 豊君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         農林政務次官  大石 武一君         農林事務官         (大臣官房長) 谷垣 專一君         農林事務官         (畜産局長)  渡部 伍良君         林野庁長官   石谷 憲男君         水産庁長官   塩見友之助君         通商産業事務官         (通商局長)  板垣  修君  委員外出席者         農林事務官         (林野庁林政部         長)      奥原日出男君         通商産業事務官         (通商局農水産         課長)     日比野健児君         海上保安監         (警備救難部         長)      砂本 周一君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 四月四日  委員石坂繁君辞任につき、その補欠として松田  鐵藏君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月三日  綾里漁港修築工事促進に関する請願鈴木善  幸君紹介)(第一八〇三号)  台風常襲地帯における農林水産業災害防除に  関する特別措置法制定に関する請願八木昇君  紹介)(第一八〇四号)  家畜取引法案等に関する請願中馬辰猪君紹  介)(第一八一九号)  平鹿郡の土地改良事業促進に関する請願笹山  茂太郎紹介)(第一八二〇号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  肥料取締法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二四号)(参議院送付)  森林開発公団法案内閣提出第一四五号)  農林水産業基本施策に関する件     —————————————
  2. 村松久義

    村松委員長 これより会議を開きます。  去る三月二十六日付託になりました内閣提出参議院送付肥料取締法の一部を改正する法律案議題といたし、審査に入ります。まず本案の趣旨について政府説明を求めます。大石政務次官
  3. 大石武一

    大石(武)政府委員 ただいま上程になりました肥料取締法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  現行肥料取締法は、明治四十一年法律第五十一号肥料取締法にかわりまして昭和二十五年第七国会において成立をしたものでありまして、その後、第十九国会において、単位農業協同組合の生産する配合肥料登録に関する権限につき、これを農林大臣から都道府県知事に委譲するための一部改正を経て、今日に至っているのであります。  本法は、御承知通り流通肥料につきまして品質を保全し、その公正な取引を確保するため、公定規格の設定、登録検査等を行い、もって農業生産力維持増進に寄与することを目的といたしております。  しかるところ肥料形質種類について見まするに、最近数カ年間における技術的その他の発達はきわめて顕著なものがありまして、またこれに伴いその種類及び銘柄も必要以上に複雑多岐にわたって参ってきているのであります。これに加え、戦後におけるわが国肥料生産事情は、その設備増強と相待ち、その生産量の増加は相当順調に進んでおりますので、これに伴い国内市場における販売競争が複雑、かつ激甚になってくる傾向を増してくるものと考えられます。  以上の事情からいたしまして、この際、すみやかに、最近及び今後における肥料供給流通等実情に即しつつ、一段と肥料品質を保全し、その公正な取引を確保いたしますことが緊要と存ずるのであります。よって、この見地から今般肥料取締法の一部を改正いたしまして、その目的達成に万全を期したいと存ずるのであります。以下本改正法律案の主要な内容につきまして、概略御説明申し上げます。  第一は、肥料の保証すべき主成分の指定を、従来は法律別表で行なっているのでありますが、これを政令をもって定めることといたしたのであります。これはさきに申し上げました通り、最近における肥料種類形質につきましての技術的その他の発達が著しく、現行法律別表肥料の分類が、すでに現状に適合しなくなりつつあり、これを再検討する必要があると同時に、現行のようにこれを法律に固定いたしておりますことは、その技術的その他の発達に機動的に対処し得ないうらみがあるからであります。なおこの際、特に化成肥料及び配合肥料につきましては、含有すべき主成分及びその肥効において、ほとんどこの両者を区別すべき理由がありませんので、単一名称の種別に統一し、これにより、農民が選択に迷わないような表示を命ずることを考えているのであります。  第二は、特定の種類肥料に限っては、その主成分含有量を調整するため混入する一定の異物は、これを農林大臣の許可を受けなければならぬようにいたしたことであります。  第三は、現行制度において、公定規格で定められている事項中、保証すべき成分量についてのみ登録しているのを改めまして、含有する有害成分粉末度等についても登録し、これに違反する肥料については、その譲渡を制限することができることを明確にいたし、必要な規定を加えたことであります。  以上のほか、関係業者業務施設表示義務の廃止、登録証等の書きかえ申請事項簡略化、その備付義務簡略化等手続及び事務簡素化をはかったのであります。  以上が本法律案の主要な内容でありますが寸何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  4. 村松久義

    村松委員長 質疑は追ってこれをいたすことにいたします。     —————————————
  5. 村松久義

    村松委員長 次いで森林開発公団法案議題といたし審査を進めます。質疑を続けます。淡谷悠藏君。
  6. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大石次官にお尋ねしたいのですが、この森林開発公団法の適用によって林道開発しようという地方には国有林野はないようであります。民有地が非常にたくさんございまして、特に日本でも有名な山林地主の所在地でございます。この法案によって、農地改革の場合に土地解放されなかった山林地主がこの法案の上にあぐらをかいて、山林地主的性格をますます発揮するようなことになると思いますが、これについて一体次官はどういう考えをもって進まれるのか、お伺いしたいと思います。これはどうも林野庁の方ではないと思いますので、土地に対する基本的な構想次官からお聞きしたい。
  7. 大石武一

    大石(武)政府委員 これは非常にむずかしいかつ大きな問題でございますので、私の答えが果して御期待に沿うかどうかわかりませんけれども、お答え申し上げたいと思います。  農地解放はまことにけっこうなことであったと思います。ただし現在におきましては、日本では山林までこれを解放することはまだまだ時期が早いと考えております。従いましてこのような山林を解放しないという現状におきましては、かりに山林があったといたしましても、これを開発しないでそのままにしておくということは、今後国の資源を開発する上においてあまり有益ではないと思います。御承知のように、大体国有林は大多数が手入れが行われておりまして、林道なりその他の開発がよくできておりますけれども、不幸にしてこのような民有林においては、特に熊野川流域であるとか剣山のような非常に集約的な針葉樹林の広大であるところにおきましてはまだ開発が進んでおらないということは、国の発展、開発上においてもむだが多いと思うのでございます。従いましてかりにそれによって森林を持っている者あるいはその他の所有者相当利益を得てその財産が大となることがありましても、それ以上にその開発日本の国全体に非常に役立つと考えておる次第でございます。
  8. 淡谷悠藏

    淡谷委員 今の御答弁矛盾を感ずるのでありますが、土地解放はけっこうだが山林土地は解放する段階ではない。しかもその山林地主が持っております山林というものはほとんど手が入っていない。一体手の入らないような山林を保有することがいいことかどうか。手が入らない山林を持っておって、植樹もしなければ手入れもしない、そしていたずらに土地の上にあぐらをかいておる制度をこのまま残しておくことが適当であるかどうか、これは次官の御答弁矛盾がある、こういった点いかがでありましょうか。
  9. 大石武一

    大石(武)政府委員 確かにおっしゃる通り矛盾があります。矛盾というのは、そのような今の制度矛盾があると思います。制度といいますか、手入れもできないような山林所有するところの今のあり方に確かに矛盾があると考えております。しかしその矛盾というものを一挙に解決するということはなかなかできませんので、これを開発させて、そして多数の日本国民にも利用させ、かつ非常な利潤の所得があれば、これを税金なり何なりで適当に国家へ召し上げるというような方法もあると考えておる次第であります。
  10. 淡谷悠藏

    淡谷委員 今のままの状態では、民間林というものはなかなか手入れができない。それに国家がある種の補助政策を行いまして、この山林から利益が上るような制度にいたしますと、ますます黙って土地を持っておるという地主が安住するのではないか。むしろこれは三千町歩、二千町歩といったような、全く個人の手の入らないような大きな山林所有者土地は、次官の言う何らかの処置を講じて、もっと土地の上からいっても合理的な制度に直すという方法を将来やる御意思はないかどうか。今のことは聞きません。将来その方向に進むという構想があるかないか、この点をお聞きしたい。
  11. 大石武一

    大石(武)政府委員 ごもっともでございます。私も将来これを何らかのもっと開発し得るような——ただ財産の上にあぐらをかいて安眠をむさぼるようなことがないように、何らかの処置を講ずるような方法というものは将来考えなければならぬ、私もそう思います。
  12. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この法律が出まして仕事が始まりますと、これは非常に利益を受ける山林所有者、労力を提供する以外にはあまり利益を受けないといったような山林労働者現地には多分にございます。従って地元負担等におきましても、いろいろ考慮を払うべき点があると思いますが、一体町歩以上の所有者にどれくらいの負担率をかけるのであるか、その点の構想がございますかどうか。これは林野庁の方でお答えを願いたいと思います。
  13. 石谷憲男

    石谷政府委員 開発をいたさんといたしますこの二つの大きな流域につきましては、御承知のように、比較的大規模森林所有者の持っております森林面積が多いのでございます。これを全国平均の一人当りの所有面積と比べてみますと、奈良県のこの流域の場合におきましては、約九倍近いような平均森林所有規模ということに相なるわけでございまして、この点全国平均の姿から見ますと、いささか趣きを異にしているように考えておる次第であります。  そこで私どもといたしましては、大小さまざまな森林所有者、なかんずく本事業によりまして受益をする人たちから、どういうような基準割合によってこの受益者負担というものをかけ合っていくかということになると思うのでありますが、私どもといたしましては、やはりこれは土地立木というものをそれぞれ別々に区分して考えていく、こういうふうに考えております。それから少くとも負担金を徴収いたしますために必要な費用諸掛りがかかるわけでありますが、そういったことを考えました場合に、徴収する金額よりも、そういった費用諸掛り等の方が多きに失するといったようなものにつきましては、むしろ徴収対象から免除して考える必要があるのじゃないか。従いまして、そういったものの基準がおおむねどのあたりに置かれるかということを概算してみますと、土地だけについて所有しておるというような人に対しましては、おおむね平均町歩以下ということに相なろうかと思います。それから立木所有しておる場合におきまして、薪炭林でありますような場合には、おおむね一町歩前後以下ということに相なろうかと思うのでございます。従いまして、それ以上の規模森林所有者に対しましては、受益の程度に応じましてやはり負担をかけて参る、こういうことにいたしたいと考えております。
  14. 淡谷悠藏

    淡谷委員 現地について見ますと、山林所有者が終戦後非常に変化を起しております。零細なる山林所有者が随時その土地を手放しまして、大所有者がこれを持つという形が、かなり露骨に現われて参っているようでございます。特に全国的な傾向一つでございましょうが、パルプなどの会社山林を非常に持っている傾向があるようです。これは普通の山林地主とは別個な形において考慮されているかどうか、この会社所有に対するお考えをお聞きしたい。
  15. 石谷憲男

    石谷政府委員 特にこの両流域におきましては、ただいま申しましたように、比較的零細な森林所有者の数というものは少くて、それに対しまして百町歩以上の所有規模でありますいわゆる大規模森林所有者の数に比しまして、その所有している面積が非常に多いという特徴があるようでございます。たとえて申しますと、森林所有者の全体の数の上から言いますと、百町歩以上の森林所有者が、全国平均におきましてはわずかに〇・一%でございます。にもかかわらず、熊野川流域におきましては一・五%、こういうことになっているわけでございます。ところが反対に面積の上から言いますと、全国平均で申しますと、全森林所有の八%が百町歩以上の森林所有者所有面積になっているにもかかわらず、熊野川流域におきましては実に六一%近く、剣山地域におきましても五七%、約六〇%に近いものが所有されているというような状況でございまして、大規模森林所有者割合が数の上においても全国平均よりもだいぶ高い。その上に面積の比率が非常に高くなっている、こういうことであります。そこで一つ特徴といたしましては、いわゆる市町村有林野あるいは部落有林野という形において、かなり大規模所有というものが依然としてこの地域には大きく残っているという実情がありますと同時に、ただいまのお話のごときパルプ会社等手山として相当面積のものを持っている、また持とうとしているという傾向も明らかに見られるように思います。現在のところ私ども調査におきましては、大体熊野川流域にそのようなものがございまして、面積は約四千町歩ぐらいということでございますが、御承知のように奥地にモミ、ツガのようなパルプ資材として比較的好適なものがまとまって残っているということのために、特別にそういったものに対する関心を持って取得したものである、かように考えているわけであります。今後さらにそういったものがこの地域に大幅に伸びて参るといった傾向につきましては、私どもといたしましては、大きなものはないであろう、かように考えているわけであります。
  16. 淡谷悠藏

    淡谷委員 次に、この開発方式としてはいろいろなケースが考えられておりましたが、今度いよいよ公団方式として出て参りました。愛知用水公団を初め、各地に公団ができたようでございますが、この公団ができた後の動きが一体どうなっているか。これは次官あるいは林野庁の方からお答え願いたいのですが、発足したのはよろしいが、果してその発足後の状態がどうなっているか、むしろ開店休業のような形になっておりはしないか、こういう点を御説明願いたい。
  17. 大石武一

    大石(武)政府委員 今まで愛知用水とか、機械開発公団とか、いろいろな公団ができております。そうして世評は必ずしもこの公団に対してよいとは私ども考えておりません。それにはいろいろな原因もございましょうけれども一つはやはり、たとえば愛知用水にいたしましても、土地買収とか、あるいは補償問題になりますと、非常なむずかしい問題がありますので、その点においても非常に事業が進まないところもあるだろうと考えられるのでありますが、いずれにしても今までの公団という方式はあまり評判のよいものではございません。私どもは、この森林開発に関しましてどのような方式をとろうかということについて、いろいろと苦慮いたしました。しかし結局は公団にすることがベター・ベスト——と申しますか、これが最善とは申しませんけれども、いろいろ考えられる方式のうちで一番いいであろうということに考えついたわけでございます。しかし世評にありますような、でき上ったあとちっとも働きのない公団では困りますので、できる限り頭でっかちでないように、むだな費用をかけないで十分な機能を発揮しますようにということを考慮いたしまして、こういうものを作り上げ、その運用についても最善の努力をいたす所存でございます。
  18. 石田宥全

    石田(宥)委員 関連して、今公団法の原則的な問題が出ましたが、愛知用水公団の場合は、審査に当ってわれわれが心配をいたしておったことが、その通りに悪い方に動いてきたように考えられるのであります。  そこで今次官の御説明によりますると、ただ抽象的に評判が悪いというようなことでありますけれども、実際はやはりアメリカとの関係においてこっちの計画が思うようにいかないということが、一番根本の問題じゃないかと考えるのです。なるほど用地の買収その他もございましょうけれども、それよりはアメリカとの関連がもっと強いのではないかと思うのですが、そういう点についてもう少し承わっておきたいと思うのです。
  19. 大石武一

    大石(武)政府委員 いずれ具体的なことは専門家の方からお答えさせたいと思いますけれども、私はこの愛知用水公団評判の悪いのは、あまり拙速をたっとび過ぎたせいではないかと思うのであります。十分な調査なり十分な基礎を作らないで、急いで公団という組織を作り上げたいというところに、一つの大きな評判の悪い原因があるのではないかと思うのでございますけれども、詳しいことは後日あらためて調査いたしまして御報告申し上げたいと思います。
  20. 石田宥全

    石田(宥)委員 この点は次官に詳しいことをお尋ねするのは無理かとも思いますが、その点は今後の公団というものに対する考え方基本となりますので、最近の愛知用水公団進行状況、これは今お話のように急ぎ過ぎたと言われるかどうか知らぬが、とにかく店開きだけは大急ぎでやられたのですが、店開きしたまま開店休業のような状態になっておって、さらに今後の見通しについては必ずしも明るくないと思うのです。そこでこれは担当の係の方から、進行状況資料を出していただきたいのです。  それから林野庁の方にお伺いしますが、今お話があったような状況で、公団方式が必ずしも最初考えついたように思うように進んでおらない。そこでそういうような弊害はすでに体験済みなんでありますから、そういうことにならないようにするには、やはり従来のような公団方式一本やり考え方というものをもっと緩和されて、林野庁特別会計というものもあり、あるいは府県との関連等もあるので、そういう点について、形は公団方式によるけれども、実質的には地元林野庁との関係、それから公団との関係をいかにして緊密に、スムーズに行けるようにお考えになっておるのか、多分お考えになっておられるのじゃないかと思うので、そういう点不安のないように御説明願いたいと思います。
  21. 石谷憲男

    石谷政府委員 御承知のように、この開発公団方式をもっていたすことにいたしましたまでの間におきましては、あらゆる場合を比較検討してみたのでございますが、ただいまも次官から説明のありましたように、比較的いい方式といたしまして公団ということに取りきめたようなわけであります。御承知のように現在林野庁の中には国有林野事業特別会計という会計がございまして、これは国有林野に関する事業をやっておるのでございますが、別に新しいものを作らなくて、そのままそこから金を借りて特別な開発を同時にやったらいいのではないかといったことも、一つ考え方としては当然浮んでくるわけでございますが、そのことによりまして、必ずしも両者事業というものが並行いたしましてスムーズに進行しがたいといったような事情から、このような考え方をとることを実はやめたわけでございます。そのほかただいまのお話にもございましたように、森林開発特別会計といったようなものを新しく作ってやるという構想もあるのじゃないか、こういうことにつきましてもいろいろ検討いたしたのでございますが、こういった特別会計を新たに作ります場合の実施機関につきましては、やはり現地に手足を持っております県の関係部課というものを中心にして、これに委託をして、その機能を活用するといったような方法か、あるいは国有林野事業特別会計によりまして現在事業をやっております営林局あるいは営林署の組織をそのまま使いまして、これに事業を委託してやるということにいたしますか、いずれかの方法にやはりよらざるを得ない、こういうことになりますと、双方の場合にいずれも一長一短がある。むしろ現地仕事を円滑に進めて参ります上で考えつきましたのは、やはり営林局署という実際的な事業経験を非常に豊富に持ち、しかもかなりまとまった優秀な用員を多く持っております機構、それから特に地元関係等に対して非常に密接不離関係を持っております県関係双方から適切なる用員を出し合って新たに実施部隊というものを作り上げるようなやり方でいくことが、この問題をスムーズに進めていくゆえんではなかろうか、かように考えまして、いわゆる公団直営方式というものを一つ考えて参ったようなわけでございます。従いまして、今の場合に持っております長所をとり、短所を捨てまして、そうして新しい方式で簡素強力にやって参りたい、実はこういう考え方を持っておるわけでございます。
  22. 石田宥全

    石田(宥)委員 ちょっと悪く考えると、余剰農産物見返り円資金を受け入れてやるというその基本的な点に非常に不安がある。そこで林野庁特別会計方式でやるというような場合あるいは地元府県相当責任を負わせてやるというような場合に、その資金源に変更を生ずるというような場合の被害をおそれて、何かもうどっちも責任がないような公団というところへ、もし間違った場合には公団責任を一手に負わせるのに都合がいいという、そういう逃げ道として公団方式をとられるようにも考えられるのですが、その点はどういうことですか、その真相を一つ……。
  23. 大石武一

    大石(武)政府委員 そのようなことは毛頭考えておりませんで、やはり皆様ともよくお打ち合せをしました結果、このような結論に到達したのでありまして、われわれの真意をどうぞまげずにおくみ取りいただきたいのでございます。これが今までの方式として考えられる中では一番いいという信念でやったということを御了承願いたいと思います。なお石田委員にお願いしたいのでございますが、先ほど愛知用水公団資料についてのお話がございました。これは承知しましたが、これは別個のものとお考え下さって、この法案審議とは別によろしくお願いしたいのでございます。
  24. 石田宥全

    石田(宥)委員 場合によっては別にいたします。
  25. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大石政務次官答弁は大へん正直だからいいのですが、正直なだけにあっち、こっちからしっぽが出てくる。あなたは現在の方式のうちでは公団方式が一番いいといって現実に発足しました公団ははなはだおもしろくない。現実に発足した公団がおもしろくないのは、公団法そのものではなくて、何かやり方に特別な悪いところがあった。ところがこの公団方式を見ますと、何も変っていないのです。愛知用水の場合の公団方式とこれは変っていない。今度のこの公団方式によって愛知用水公団がひっかかっておる点を一体どう打開していくのか。たとえばこの組織理事長一名及び監事一名その他役員として理事二名がいるが、これはほんの上部機構でございまして、おそらくこの手足になるのは、今林野庁長官からお話になりましたように、現地仕事をする部隊としてたくさんの職員が集められると思う。そうしますと、今石田委員から言ったように、これはただ一つの飾りなんです。こういうふうに思われるのですが、前の公団の発足後の状態にかんがみまして、いかなる新構想を持ってこの公団をやられるか、その点は正直にお話し願いたいと思います。私はこの公団法には反対ではございませんけれども、この発足後の運営に非常に疑義を持つ、こういうことからあえて御質問申し上げたいと思います。
  26. 大石武一

    大石(武)政府委員 お答えいたします。数ある方式のうちで公団方式が一番よいと考えられると言ったのは、この森林開発の場合に考えられますいろいろな方式のうちで、開発公団が一番いいと考えたというのでございます。今までの公団がよくなかった、今度も同じゃないかという御意見もあるようでございますが、今度の場合は今までの悪いところを捨てて、できるだけよい方面を生かしていきたいというわけでございます。先ほど申し上げましたように、十分なる基礎的な調査であるとか、基礎的な手続であるとか、あるいは資金の獲得の条件、そういうことについて、あまり十分なる基礎を作らないうちに、急ぎ過ぎて前に公団を作ったおそれがあるのではないかと考えられますので、そういうようなことのないように、十分な調査、強い基盤の上にその開発方式を組み立てていきたい、こう思うわけであります。もう一つは、頭でっかちにならないように、公団にむだな費用をかけないようにということで、今までできるだけの最小限度のことを考えたわけでありますが、問題は、やはり私は運用する人を得ることだろうと思います。今はトップ・マネージメントというのがはやっておるのでありますが、この公団の上層部の組織を最も充実した、ほんとうに有用な人材だけを集めまして、そうしてそれが一番の中心になって、この開発について総合的に有機的に活動させたい、こう考えておるわけでございます。
  27. 淡谷悠藏

    淡谷委員 公団がうまくいかない理由は、この資金余剰農産物資金を持ってくるという形の中にある。つまり外国の資本が入ってくる、ここに非常な無理があるので、このために公団ができ、また公団の運営がうまくいかないという点があるように思われますが、この点はいかがですか。率直にお答え願いたいと思います。
  28. 大石武一

    大石(武)政府委員 この公団の基礎資金余剰農産物見返り円資金でございます。この金は、日本が自主的に、われわれが自由に使えて、開発に何らの制肘を受けない資金である、こう考えて、われわれはそのように行動する所存でございます。
  29. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 奈良県の方では公団方式ではなくして、奈良県に委託して工事をやりたい、こういう強い要望がなされておったのですが、公団でやらなければならぬ理由はどういうところにあるのか、それを率直に聞かせていただきたい。
  30. 大石武一

    大石(武)政府委員 長官から具体的にお答えいたします。
  31. 石谷憲男

    石谷政府委員 ただいまお話のありましたような御要望が強く出されておりますことについては、私どももよく存じております。それで必ずしも奈良県ということでなくて、県に委託をするという一般論として私ども考えましたことは、特に大親木な造林、林道事業を実行するということが公団事業の中で大きく取り上げられて参るわけでありますが、そういうような場合におきまして、県内のさまざまな事業に制約を受けて、必ずしも万全にこれらの仕事が達せられないような場合があるのじゃないかという一つの懸念があります。ただ設計等の技術能力につきましては、県当局にも相当優秀な技術者がおりますし、さらにそういう経験を豊富に積んでおりますので、その点はそう心配はいたさなかったのでありますが、工事の実施面につきましていささか心配の点があるのであります。  それから、特にこの公団におきましては、契約によりまして造林事業もあわせて実行ができるように仕組んであるわけでありますが、この造林の仕事になりますと、従来県当局はいわゆる行政指導のみをやっておるわけでありまして、造林を実施したという実際的の経験はないわけであります。従いまして公団の行います造林の推進につきましては、県当局に委託をした場合にはいささか欠くるところがあるのではなかろうかということを考えたのであります。それから、最近の一般的な地方財政の悪化しておる現状から考えますと、相当多額の資金を渡して仕事をやってもらうということ自体の中にもいろいろと実は不安があるわけであります。そういうようなことによりまして、県に一般に委託をするという方式をこの際とらないことにいたしたわけであります。同時に、たとえば奈良県は公団開発の場合のおよそ七割以上の仕事を占めておりますので、奈良県としてはそれでよいということに相なりました場合においても、その方式を奈良県に対してとります場合においては、同時に三重県なり和歌山県にもとらなければならない。そういうことになりますと全体的な仕事の効率的運用という点から見ますと、必ずしも適切なものでなくなるのじゃないか。むしろ公団のような一本のものになりますと、これらの地域を含めて現実の事業場というものは事務所が一カ所でよいということに相なるわけであります。そういうことをあれこれ考えました上で、ただいま申し上げますように公団方式をとるということにいたしたわけであります。
  32. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 なるほど現地は和歌山県、三重県、奈良県に分れておりますが、そういうようなものを一本の事業場をもってやるということは必ずしも不可能ではないと思われるし、特にこの際問題の多い公団方式を採用されて、地元が強く要望しておるそういう県委託ということをやめられたということは——あなたは工事の実施面のことをおっしゃるが、実際工事なんというものは県が委託をされてやられる方がかえってスムーズに行くのじゃないか。というのは奈良県においてもいろいろな施設を持っておりますし、そういう施設を利用してやるということはいろいろの点において都合がよいのじゃないか。ことに三重県あたりも、別に公団には反対していないが、陳情を聞きましたところ、県でやりたいというような御意向のようでもございます。ただ和歌山県の方ではまだ意見が一致していないというようなことでしたが、この際特に私は、これから工事をやりましても、いろいろな徴収というような面では県の協力なくしてはでき得ないことで、特にそういう点を考慮なさったならば、何も公団方式一本でやらなくともこの仕事はよいのじゃないかと思いますが、その点に関する御見解をお聞かせ願いたい。
  33. 石谷憲男

    石谷政府委員 ただいまお話のように、私どもやはり県の十分なる協力なくして、この仕事の円滑な運営はあり得ない、これはその通り考えております。従って公団方式によって仕事を進めて参ります場合においても、できるだけ現地の機関と十分に話し合い、さらに必要なお手助けもいただきましてやって参るという考え方は、首尾一貫いたしたいと思っております。実はこういった方式にいたすにつきましても、県当局者と十分に相談をいたしまして、そして事前によく了解をいただいた上で御提案を申し上げているようなわけでございます。
  34. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この公団方式でやる場合に、いろいろ従来のものが行き詰まりとまではいきませんが、行き悩みを来たしておりますのは、さっきも石田委員から話がございましたように、アメリカの方から、実際は、条件をつけないと言っておきながら、機械はアメリカ製のものを入れろ、あるいは技術家を雇えとかいったような要求があって、それが若干愛知用水公団等においては行き悩んでいるということを聞いておりますが、この真偽等についても一つ次官から、例によって率直な御答弁を願いたいと思います。
  35. 大石武一

    大石(武)政府委員 どうも、政務次官をいたしておりますが、まだ残念ながら他の公団のことの詳しいことまで勉強が及んでおりませんので、何とも申しわけない次第でございます。ただそのようなことは私はないと思うのでございます。なかなか仕事が進まないのは、よく俗に申しますように、生みの悩みというものがございますので、やはり初めはやりにくいと思っております。この点はいずれ詳しく調べまして、御答弁申し上げたいと思います。
  36. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうも次官はお医者さんにも似合わない答弁をされておりますが、生みの悩みというのは、生まれる前の悩みでありまして、公団は生まれてしまっている。あなたの答弁は生まれる前のことを言っている。これは発育不良じゃないかと私は思います。今度の森林開発公団については、今のところ予想されるアメリカ側の要求というものはございますか、ございませんか、この点が一点。  さらに、上部機構はわかるのですが、長官のさっきの答弁では、何かこの公団の下に熟練した人たちをたくさん配置するようなお話でございましたが、この人間の配置は何人くらいで、どの方面からお入れになるつもりか、具体的に御説明願いたいと思います。
  37. 大石武一

    大石(武)政府委員 前段の点だけお答え申し上げます。今までのところ何も外国からは注文も折衝もございません。それから、たとえば今後行いますについても、御承知のように奥地の森林開発するのでありますから、その他の公団と違いまして、機械とかなんとかいうような文明の利器はそう使い得ないだろうと思うのでございます。そのような点でも今後も一切干渉を受けるようなことはないとわれわれは信じております。あとのことは長官に答えさせます。
  38. 石谷憲男

    石谷政府委員 これは法律によりまして理事長一名、監事一名、理事二名、これが理事者でございますが、大体仕事の中心となります熊野川流域と、それから剣山周辺の地域に一カ所ずつ現地事務所を開設いたさなければならぬものと考えております。その場合において、ただいま申し上げました理事者以外の職員は大体事業費支弁の現場担当者を含めまして百名くらいでやって参りたい、またやり得るものだ、かように考えております。
  39. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そういたしますと、そこで働く人たち公団の職員ということになりますが、これは一体公務員として扱われるつもりか、あるいは単なる雇用関係か、この点はどうなりましょうか。
  40. 石谷憲男

    石谷政府委員 主として現地仕事を担当してやって参りますために必要な職員でございますが、これは従来からこの種の仕事関係しております営林局あるいは署、県の林務部の職員、こういうものを供出してもらいまして、大体こういうものを中心にして構成をするということに相なろうかと思うのでございます。それから公団に出向いたしました者は、これは厳密な意味の公務員の取り扱いを受けないことになります。
  41. 淡谷悠藏

    淡谷委員 さっき伊瀬委員からもいろいろ御質問がありましたが、現地との話し合いが一体ついたのかどうか。この前に参りましたときは、各種の陳情で、施業箇所などでも相当各県ひっぱり合いがあったということでありますが、そういうふうな現地においての打ち合せは済んでおりますか。それとも公団ができてからあとのことになりますか。この点を……。
  42. 石谷憲男

    石谷政府委員 原則的にこういう方式で、こういう内容でやりたいと考えておりますということにつきましては、現地との打ち合せは済んでおります。それから特にいろいろと負担金等の問題がございますので、こういう点につきましては、関係の各県の知事とも十分事前に了解をとげ合っております。
  43. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは次官にお伺いしたいのですが、昨日の御答弁の中に、余剰農産物は三カ年間見つもった。そうしますと次官の御信念では、三カ年間で余剰農産物を入れるのだ、こう理解してよろしいか。また今年度並びに明年度、明後年度にわたりまして、余剰農産物を確実に向うの方がこっちによこすことになっているのか、なっていないのか。この点などはっきり御返事を願いたい。
  44. 大石武一

    大石(武)政府委員 この計画は一応基本計画は三カ年でございまして、三カ年間に三十億円の資金を想定したわけでございます。きのうは大体一年に十億ずつの見返り円資金を予定していると申し上げましたが、来年度までは確実に参ると思います。従いましてもし三カ年の見通しがつきませんならば、来年度において二十億円をできるだけ確保いたしまして、そうして三十億円の資金を作りたい、そういう考えでございます。
  45. 淡谷悠藏

    淡谷委員 未開発土地がまだ相当にあるようでございますが、今次官が言われた通り余剰農産物資金の借り入れができなかった場合は、この未開発土地開発はやらぬつもりでごさいますか。その点もはっきりと御答弁願いたい。
  46. 大石武一

    大石(武)政府委員 一応三十億円の資金をもって三カ年間に大体幹線道路その他基本的な開発は済むわけでございます。なおその上に、われわれが期待し希望を持って遂行いたしたい計画を実施しますには、約二十億余りの金が要るわけでございます。この三十億の基本的な開発をする第一期の資金は確保されると思いますので、これを確保いたしまして、その後三カ年間になお二十億の資金をできるだけ作り出したい、こう考えるわけでございます。   〔委員長退席、吉川(久)委員長代理着席〕
  47. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私のお聞きしておりますのは、熊野地区ではなく、全国にまだまだ未開発土地がある、特に北海道とか東北とか新潟等には相当あることが参考資料にもはっきりしている。これは熊野の開発公団資金が、余剰農産物の見返り資金が取れなくなった場合には、これで打ち切りにしまして、あとの未開発の地方の開発は中止をいたしますのかどうか。その点をお聞きしたい。つまりこの森林開発は、あくまでも余剰農産物見返り資金に重点を置くのか、これがなくてもやるおつもりか。この点です。
  48. 石谷憲男

    石谷政府委員 お説のように熊野、剣山周辺の地域以外に、さらに相当まとまった規模の未開発相当多く残されている地域があるわけでございます。資料にも掲示しているのでございますが、大体十七カ所ばかりございます。それでとりあえず熊野並びに剣山周辺というところに問題を集約いたしたのでございますが、これはやはり、何といいましてもこの両地域内容的に見まして資源の質が非常にいいわけであります。要するに現在の情勢下におきまして、開発のベースに乗ると同時に、その開発の効果が大きく期待されるという意味において、この二つに限定をいたしたわけでございますが、実はその他にもまだ十五カ所ばかりあるわけでございます。それで、国有林を主体といたしますものは国有林野事業特別会計を運用いたしてやって参るという方式を従来ともやっておりますが、今後もそれでやって参りたい。ところが、民有林主体の地域もございますが、少くとも現在の木材価格等の条件から見ますと、なかなかこのような資金を借り入れてやっていく場合に、開発のベースに乗って参らないという状況一つございます。しかし私どもといたしましては、何も余剰農産物資金に期待するというような意味ではございませんで、低利長期の金を借りられるというような状況がある場合には、でき得るならばこういう方式でもって続けてやって参りたいのだ、かようには考えておるわけでございます。
  49. 淡谷悠藏

    淡谷委員 さっきもちょっと触れましたが、戦前、製紙会社はかなり各地帯に山を持っておりまして、例のパルプ資源の不足から不当な利益を得たよりでありますが、終戦後はこれらの山か放擲されて、全くかまいつけられない山が方々にございます。これは森林行政の上から見て一体どういうふうにされるつもりか。王子製紙などは特に方々に山を持って、ほうっておくようでありますが、これは何か未開発資源としてお考えになっておるかどうか、伺っておきたい。
  50. 石谷憲男

    石谷政府委員 御説のように、パルプ産業等の場合におきまして、いわゆるパルプ備林といったような意味合いから、相当規模森林を平山をして所有しておるという事情はございます。そこでこれらのものにつきまして、必ずしもほうっておるという状況でもないようでございますけれども、ただ問題は、できるだけ当局の資材が、売材によりまして入手できるという限りにおきましては、売材中心でやって参りたい。ところがそうもいかないといったような時期的な問題もございます。そういうときにいわば調整用として自己の手山を使う、こういうような考え方のもとに持っておるように考えますので、いわゆる計画的な経営の上に乗せまして、積極的な開発考えているというような事実はあまり見られないように考えております。
  51. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 関連して。政務次官にお伺いしたいのですが、この事業は最初は六カ年計画で五十億をもって、第一期、第二期に分けられてやるということで、これはアメリカ余剰農産物関係にあるのですが、大体今御答弁のありました、三十億は確実である、あとの二十億は期待するというようなお言葉でしたけれども、かりに余剰農産物の受け入れができないという場合に、この工事は一期で終るものですか、また引き続き、次官がおっしゃったような二十億の金を期待して継続する御意思なのか、この点一つはっきりしたお考えがあれば伺いたい。
  52. 大石武一

    大石(武)政府委員 お答えいたします。第一期の三十億だけは確保できると考えておりますので、とりあえずこれをもって基本的な開発はやるように計画いたした次第でございます。なお、でき得ればそのあとの約二十億近くの工事も行いたいと思います。それができればもっともっとわれわれの考えている完全な開発ができるわけでありますが、その資金につきましてはお説の通り、必ずしも確実とは申されない状態でございますが、何とかして特別のそのような資金をこの三年間の間に見出すように努力をいたしまして、継続いたしたいと今念願いたしておる次第でございます。
  53. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 そうすると今のあなたの答弁では、三年分の第一期の工事だけははっきり見通しがつくが、第二期に対してはまだわからない、従って金がなかったらできない、これで打ち切りということに了承してよろしゅうございますか。
  54. 大石武一

    大石(武)政府委員 そのような事態もあり得るということを一応予想しなければならないと思います。
  55. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 三年間でもう打ち切らなければならないというような、ある程度そういう見通しを持ってやるような事業であるならば、無理に公団方式でやらなくても、三年間くらいであるならば、一つ県に委託しておやりになってもいいのじゃないか。ことに今お話を聞きますと、事務所を熊野川並びに剣山に一カ所ずつは持つ、それから新しい職員を、県並びに営林局あたりの人をその方に振り向けるというようなこと、しかもその職員は公務員から一応はずされる。そういうのじゃなしに、県の工事として委託されて、県がやっていかれるのならば私はその方がいいと思うのです。この点一期工事だけで二期はわからないというようにはっきり見通しがつかぬときに、無理に公団方式でやらなくてもいいと思うのですが、この点に関する御所見を一つ承わりたい。
  56. 大石武一

    大石(武)政府委員 第一期工事で打ち切りになるかどうかということは三年近くたたないとわからないわけであります。われわれは何とかしてこれを六年間ずっとやりたいと念願しておるわけであります。ただ万一の場合を考えます場合に、そのような事態もあるということを申し上げただけでございます。われわれはこの六年間にこれを完成いたしまして、これをモデルとして、その他の地区にもできるだけ及ぼして参りたい、こういう信念でおりますので、やはり公団形式でやらせていただいた方が一番いいと思う次第であります。
  57. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは全般として、この公団方式によりましたのは、余剰農産物の見返り資金があるからだ、余剰農産物の見返り資金がなくなったときは公団はできないのだ、こう了解してよろしいですか。
  58. 大石武一

    大石(武)政府委員 現在においては見返り資金を資本ということを大体中心にいたしております。しかし長い年月の間に、必ずしも見返り資金でなくとも何らかの方法を見出したい、資金を見出したい、こう考えておりますので、全部が全部見返り円資金によるとだけは御解釈していただかない方がよろしいかと思います。
  59. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それじゃおかしくないですか。今の伊瀬委員の質問に対する答弁で、三年間の余剰農産物の見返り資金は見込がある、だからやるそのあとの第二期はこの資金がなければどうも危いような御答弁でしたが、それでは公団だけ残して仕事はしないわけですか。私ははっきり聞きたいのは、見返り資金がなくなっても公団は残して所定のこの仕事はやるんだ、この御決意を伺いたい。あるいは本予算を組みましても、あるいは別な借り入れをしましても、あくまでもこの国内の未開発資源というものは政府独自の力をもってもやる意思があるんだ、このはっきりした御決意を伺いたいわけです。
  60. 大石武一

    大石(武)政府委員 私の表現の仕方がまずかったかしれないのですが、三年間はこの見返り資金でやれる、そのあとも見返り資金が続けばけっこうでありますが、もし見返り資金がないような場合には何か別の低利な資金というものを獲得してこれをやりたいというのがやり方の中心でございまして、われわれの信念としましては、今後もこの森林開発公団というものを持続させて、でき得る限り未開発森林開発したいのがわれわれの現在の心境でございます。
  61. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 本名武君。
  62. 本名武

    ○本名委員 本法案に対して関連して二、三点お伺いしていきたいと思います。  まず私は、この法案政府としては非常に画期的な御計画であると思って非常に敬意を表しますが、ただいままでいろいろな質問がございましたが、私も若干この法案の実施に当って不審を持つ一人であります。従いましてこの不審の考え方が具現しないように、今からそのために二、三の点を念を押しておきたいと思います。大体基本的な御意見は今まで尽されておるように思いますが、まず私は、この計画は森林の国営化の一歩とさえも考えられるように思うわけであります。森林の国営化ということのよしあしは別といたしまして、ここまで国の政治が森林を尊重し、森林を有意義に考えるというその御着想に対して敬意を表する。その反面、また幾多の弊害もその裏には横たわっていると思うのであります。  そこでまず政務次官にお伺いしたいのでありますが、第一に機構の問題であります。機構の問題が今日までいろいろ論議されまして、最終的に公団方式をおとりになったということは、ただいままでいろいろ御説明がありましたので、一応納得いたします。ただ先ほどのお話の中に、これは必ずしもベストではないのである、ベターであるという正直な御意見がありました。しかしながらベストでない、ベターであるというところに問題が起きると思うのであります。すなわち、ベターであるからということになって安易な運営をなされると、非常な弊害が起きてくるのであります。従って、この法案がかりに通過いたしましたならば、これをベストとしてその処置をお考え願いたい、こう考えるのであります。それにつきまして、林野庁特別会計の中で開発事業をやれとか、いろいろな論議をなされましたが、私は一応公団方式を推進されることが望ましいことだと思うのであります。ただここで問題になりますのは、機構はベターであっても、資金の面がどうかということであります。これはベストでもなければ、ベターでもないと思うのであります。双務次官その他長官のお話を聞きますと、安易に十億か二十億くらいと言っておられますけれども、さらにまたの見返り資金が断ち切られたときはうかという論議も今なされました。私はその前にお聞きしたいのは、大体余剰農産物の見返り資金融資特別会計ですか、この中で森林漁業等の振興貸付金というものが四十一億五千万円あったと思いますが、これに対して当局下お考えになっておる数字は、この森林公団の融資その他を合せますと四十八億二千万円と記憶しておりますが、そこに約七億の開きがあるのであります。この四十八億二千万円を四十一億五千万円にしぼりましたときに、この公団の十億というものに影響があるかないか、それを確認されておられるか。この特別会計の中におけるその数字の確認をまずもってしていただいて、初年度の十億というものを確保するという見通しをはっきりつけていきたいと思うのであります。その点どうなっておりますか。
  63. 大石武一

    大石(武)政府委員 お答えいたします。この見返り円資金は、十億円この森林開発公団に本年さくということは、農林省の初めからの方針でございまして、今後もこれは変えない所存でございます。
  64. 本名武

    ○本名委員 それはわかっておるのです。そのように森林公団に十億、あるいはテンサイ製糖に七億五千万円、あるいは土地造成に五億円、いろいろな数字を寄せますと、そこに七億ほど余分に数字が出てくるのであります。いずれからかその七億を削らなければならないと思うのですが、どれを削るか、その削る場合に、この十億を一億でも二億でも削るようなことになりはしないか。と申しますのは、今この法律が通って公団が設立されて仕事をしますと、おそらくここに二カ月、三カ月の日にちがかかる、あるいはひょっとすると九月からでないと仕事ができない。そうすると、年間を通じて十二カ月、あるいは十カ月の計画が、実際七カ月か八カ月しか金を使う必要がなくなるという場合に、要求が七億過剰しているのだから、ややもするとこの十億に手をつけられないかどうか、それをはっきりと確認されておるかどうかということです。
  65. 大石武一

    大石(武)政府委員 見返り円資金の食糧増産以外に使う資金が大体四十一億なんでございます。これは初めから四十一億というものを基準にしてわれわれはその配分方法考えておりますので、この十億という森林開発公団費用は一切減らす意思はございません。その点は確保いたしたいと思います。
  66. 本名武

    ○本名委員 その御自信があればあえてこれ以上お聞きしませんが、そういう心配もないわけでないと思う。その点を重ねて念を押しておきまして、その十億はぜひ確保されるように、そうして事業の遂行に支障のないようにしていただきたい。  それから法案を拝見いたしていきますと、対象受益者に対するいろいろな準備が必要であろうと思うのです。と申しますのは、先ほども大きな山の問題がございましたが、大きい山の所有者に限らず、民有林というものは、面積あるいは区画、境界というものが非常に不明確なのが今日までの民有林実情であります。従いまして対象受益者を求めてそれと契約する場合に、その面積、境界その他の上に非常に混乱が起きて、そのためにこの仕事の経営遂行の上に支障を来たすようなことがないかどうか。今まで伺うところによると、これらの現地仕事は、主として現地事情を知った県庁あるいは森林組合などに委託ないしは協議の上で決定すると言われますが、その点に対して御自信があるかどうか、ちょっと参考に承わりたい。
  67. 大石武一

    大石(武)政府委員 ただいまの御質問は、詳しいことは林野庁長官からお答えいたさせたいと思いますが、われわれといたしましては、十分地元の町村なり県なりと打ち合せをいたしておりますので、そのような手違いはないと思いますけれども、なお具体的なことは長官からお答えいたさせます。
  68. 本名武

    ○本名委員 わかりました。あとで問題が起きないということを確信を持って政務次官はお答えになったことと思いますから、こまかいことは答弁していただかなくともけっこうです。  そこで問題は、さらに進んで参りますと、その契約についてでありますが、この契約の権利義務はこの法律だけによってなされるのか、あるいは民法の適用もするかどうかということをお聞きしたい。といいますのは、一例をあげますと、負担金の徴収にいたしましても、強制徴収の方法はこの法律にうたってあります。しかしながら、こに対して地方自治体、町村などの徴税手段をもって徴収するということになっておりますが、ただそれだけでいいかどうかということであります。何しろ年数は長い、そこに持ってきて所有者もかわるかもしれません。いわゆる債務者がかわるかもしれません。そういうときに必ず民法上の適用も必要でないかと私は思いますが、そういった措置をどうなさるおつもりですか、お聞きしたい。
  69. 大石武一

    大石(武)政府委員 ごもっともな御質問でございます。これは具体的に長官よりお答えいたさせたいと思います。
  70. 石谷憲男

    石谷政府委員 お説のように所有者もかわるということでございますが、要するに負担金を徴収します相手方を最後的にきめますのは、この法律にうたっております実施計画が確定をいたしたときということにいたしておりまして、その後これは年賦でもって徴収して参るわけでございますので、その間にはもちろん売買が行われ、所有者がかわって参るということがあるわけでございますが、そういった場合におきましてはこれは残額を一時に徴収するということにいたして参ることにいたしているわけでございます。大体この法律によって大丈夫じゃないか、かように考えております。
  71. 本名武

    ○本名委員 これが政府の直営の仕事、あるいは政府が直接の契約当事者である場合には、かなり強く出られますが、今日までの公団の心理的な国民の判断からいたしましても、端的に申し上げますれば、非常に甘く見られはしないか。従いましてそれによって起きるいろいろな弊害があろうと思います。あえて私が民法と申し上げましたのは、その投下あるいは融資に対して何がしかの担保その他の方法をお考えになっていないかどうかということも重ねてお聞きしたつもりでありましたが、これもちょっと簡単に御意見を承わっておきたい。
  72. 石谷憲男

    石谷政府委員 格別考えなくてもいいんじゃないかと考えているわけであります。
  73. 本名武

    ○本名委員 いずれにいたしましても、念を押す程度で今後の推移を見ていきたいと思います。時間がないので次に移りたいと思います。  次に、この計画は熊野川剣山の二カ所に限られ、今後の資金の見通しがつくならば、他の候補地である十七カ所にもぜひ実行の手を差し延べるべきであろう、これは国土保全の意味から、あるいは総合開発の見地からも当然必要であろうと思います。同時に私は、この際この計画を実行するに当って、国民に対する森林政策の基本的な考え方というものを一応明らかにしておくべきでないかと思います。一方先ほど御指摘のございましたように、大森林所有者あるいは大資本家の所有する山林に国はこのような強い力を加えて、農民を初めとしてあるいは山林家が営々として国家的な、国策的な造林事業に挺身しているが、これに対して政府は今日までの方策で臨むのか、公夫事業の造林、林道その他わずかばかりの助成法律によってこれをやっていくのか、あるいはまた近い将来において、一般民有林に対する対策を変更しようとする意思があるかないかを伺っおきたい。
  74. 大石武一

    大石(武)政府委員 これから国土を緑化するということはごもっともであり、われわれもぜひともそのようにいたしたいと念願いたしておりますが、今後の森林開発の方針につきましては、そう大きい変革を加えようとはただいま考えておらないのであります。
  75. 本名武

    ○本名委員 まだほかに法案に対していろいろお聞きしたいことがありますが、もし先へ行って時間があれば伺うことにいたします。  農地局に関係したことを一点だけ伺いたいと思います。最初に林野庁長官から御説明いただきたいと思います。今の政務次官のお答えでは、別に画期的な計画はないとおっしゃいますが、画期的な計画を私どもは希望はいたしますけれども、今直ちにということはなるほど無理でありましょう。しかしながら、少くとも今日までの森林に対して、天然林はもとより、造林地であっても、森林として育ってきた山に対して一つ考え方がなければならないと思うのです。それがたまたま崩壊するような、あるいはお役所行政の上から、みずからが破壊するような行為があったならば、私は大へんな問題だろうと思います。しかも全国にそういう問題の横たわっているということは、私はこういう法律を通す政府といたしましてぜひ解決しておかなければならないと思うので、ここで一つの問題を提起いたしまして、御説明をいただきたいと思います。  それは今日の日本の食糧事情あるいは人口問題、国土総合開発という見地から申しまして、農地法の四十四条による自作農の創設であるとか、あるいは営農の安定であるとか、こういう法律の言葉をかりるまでもなく、当然これはやらなければならないところであります。従って一寸たりとも国土の上に余裕があるならば、これは農耕地として食糧増産その他の目的のために使わなければなりませんが、ただ遺憾なことには、ここにおいて造林地との競合、あるいは天然林との競合が起ってきた場合にどうするかということであります。そこでその造林地に対するいろいろな問題について、少くともこの機会に画期的な森林開発公団、いわゆる民有林に対して政府がこれだけの手厚い施策をする段階において、こういうことは考えていかなければならない。  その一つは、人工造林に対して、いわゆる未懇土地買収の態度というものをもう少し鮮明にして、入植者も営農者もあるいは造林業者も、安心してお互いが仕事に携わることができるようにしなければならないと思います。それから天然林をどうして保護倍養していくかということも、この段階においてとくと新しい方式考えなければならない実情でないかと思うのであります。さらにまた、こういう問題は常に適地の調査が非常に不均衡であった、不公正であったというところに問題があろうと思います。これらについても、一応農地と林野の立場から協調して再検討する必要があろうと思います。  それから法にも示してありますように、開拓審議会というものが一応意見をまとめることになっておりますが、この開拓審議会の構成についても再検討するときがきたのではないか。これは必ずしも林地を未墾地として買い取るばかりではなくて、あるいはまた林地を未墾地として買収することを拒む意味ではなくして、真剣にこの審議会の構成も検討しなければならぬと思います。  もう一つは、林野の調整の拡充強化でありますが、私はこれが非常な問題であろうと思います。そこでこれらの問題をこの機会に一つはっきりしなければならないと思いますが、これは若干この法案からはずれますので、いずれかの機会にいろいろ質問したいと思います。ただここで一つ申し上げ、かつお伺いしたいのは、年々わが国に起る災害は何が原因か、いろいろな原因がありましょうが、やはり山を守らぬことがその原因一つである。これは決して過言ではないと思います。これはどうしてかというと、極端な事例があるのであります。それは長い間農地として買収しておきながらそれを放置しております。従って手を入れないために未立木地となっておる所がたくさんある、その結果山はくずれ、水は増加して思わざる災害を来たしておるということもあります。そのほか直接農地とは関係なく、山河に対する対策その他諸般の対策がいろいろあろうと思いますが、これらのことを考える。さらにまた造林事業と開拓の調整の上に非常なむだがないかということであります。もしむだがあるとすれば、これは林野行政の失態でもあり、また農林行政の誤謬もそこにあるのではないかと考えられるのでありますが、こういうことをずっと考えて参りますと先般は青森県において林地が買収されたために自殺をした人がおる、あるいは九州その他の地方においても、この林地と農地買収との競合が繰り返されて、北海道などにおいては七十万町歩を今日までに買い上げて、そのうちに売り渡したのが三十万町歩、そのうち入植着工したのがわずか十一万町歩、ほとんど六十万町歩というものが荒れ地になっておる、こういうことであります。こういう事例はたくさんあります。  そこで林野庁長官にお伺いしたいのですが、二十八年の三月四日に林野庁、農地局との共同通牒が出ております。これは買収計画は立てたが、不適格な土地買収しないでもいいということでありますが、これが一向に全国どこでも実行されていないという事実を御存じであるかどうかということ、もし実行されていないとすれば、一体何のためにこういう通牒をお出しになったのか、この点をお伺いいたしたい。
  76. 石谷憲男

    石谷政府委員 農地法の定めに従いまして未墾地の買収が引き続いて行われており、行われていくであろうということにつきましては、その通りでございまして、私どもといたしましては国土の資源の利用に関する総合的な見地から、開拓適地基準に従いまして適当と認める対象を選定して参る、こういうことで実はやっておるわけでございますが、具体的な問題に相なりますと、双方の主張が必ずしも一致しないというこのために一見非常なトラブルを起しておるように考えられる事例も決してなくはないのであります。御承知のように、すでにこれは失効いたしたのでありますが、造林臨時措置法によりまして指定をされました土地については、これは開拓適地の選定からこれをはずすという取りきめも実はあったのであります。その後、特に国民経済的な観点からいたしまして、これらのものはぜひとも必要であるから開拓適地に選んではならないというような項目についての取りきめも実はできておるのでございます。具体的に申し上げますならば、特殊な優良樹林のごときもの、あるいは母樹林のごときもの、そういうものはかりにその土地が開拓適地でありましても、一応適地の選定からはずしておるという実情もあるわけでございます。さらに国土保全上必要な個所はもちろん開拓の対象地からこれをはずすという措置も実はいたしております。そのほかいまだ利用期に達しておらないような森林についての開拓適地の選定の基準につきましても、具体的な取りきめをいたしておるのでございますが、個々の森林ということになりますと、その判断の基準というものが、双方の主張の中からなかなか的確に生まれてこないというところに非常に問題があるのではなかろうか、かように考えておるわけでございますけれども、今後さまざまに生起いたします具体的な問題等を通じまして、それらの基準が的確に行われて参りますように努めて参らなければならぬ、そのような意味合いで農地局とも十分な連絡、話し合いを遂げて参りたい、かように考えておるわけであります。
  77. 本名武

    ○本名委員 具体的な事例に対して善処されるとおっしゃいますけれども、実はもう今まで問題が起き尽して、北海道の例なんか申しますと、今度二十数万町歩という計画があっても、これは買い上げられる政府も困りますし、森林をせっかく育てた森林所有者も困ると思う。これは個々の問題ではなくて、今後林野行政の上に立って農地行政とはっきりと見解を一致させておかないと、もうすぐ春植えしなければならぬ時期を目の前に控えております。しかも緑化運動週間が始まっておる。こんなときにこういうことでは、幾ら木を植えろと太鼓をたたいても、国民は庭木くらいは植えるかもしれないが、なかなか木は植えません。そこをよくお考え願いたい。そこで私は具体的な案を一つ提供したいと思います。これを実行する意思があるかどうかお伺いしたい。  まず第一に、伐期齢級未満の森林を開拓地に買い上げなければならぬ場合は、少くとも慣行伐期齢級くらいのところは認めて延期する御方針はないかどうか。たとえば杉などは三十五年、あるいはカラマツは二十五年が大体慣行伐期だと思います。これらの年までは一応森林の収獲を上げてからやるというような方法をおとりになれないかどうか。もしそれが適当であるとするならば、直ちに次官通牒を出して、前に出された二十八年三月四日の共同通牒と関連いたしまして、その訂正をなさる御意思があるかないか、それを一応伺っておきたいと思います。  もう一つは、農地局長がおいでになりませんので、いずれ別の機会に伺いますが、先ほど青森県の自殺の話をいたしましたが今北海道におきまして、この買い上げ計画に対して訴願が相当出ております。ところが年数がたっても一向に回答がない、あるいはなかなかむずかしい。はなはだしい例は、自作農創設法によってあらためて訴願したところが、一部容認されたなどという法の運用、先ほど長官がおっしゃった農地局との打ち合せ、協調などということが、全くなされていないということが如実に今日まであのるです。そこで私は一つの例として、今後検討する資料にしたいと思いますから、ぜひこの回答を、後日でけっこうですからお願いしたい。北海道の十勝に三影村というのがありますが、ここの買い上げ反対同盟会長の大村何がしの名前で農林大臣あてに訴願が来ております。農林大臣は林政と農政の上から、この訴願をどう取り扱われているか、林野庁長官に特にこの訴願の取扱いの今日までの経緯について御報告をお願いしたいと思います。  以上で私の質問は終りますが、先ほどの次官通牒をお出しになる御意思があるかないかをお伺いします。
  78. 石谷憲男

    石谷政府委員 一番問題になりますのは、やはり開拓適地というのが実はきわめて優良な人工造林地であるということであります。優良な造林をやりましたところがやはり開拓する場合においても適地である場合が非常に多いというところに問題があると思います。幼齢林を慣行伐期まで存置せよという御説でありますが、もちろん土地利用の上からいたしまして、そういうことが妥当である場合が非常に多いのじゃないかと私ども考えております。ただし開拓計画の円滑なる進行上必ずしかもその時期まで待ち得ないというような個々の具体的ケースもあろうかと思います。従いまして、ただいまのような問題につきましては、十分に研究いたしまして善処したいと考えております。
  79. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 私も大事な点を一つお伺いします。まず第一に政務次官にお伺いいたしますが、今度の森林公団資金というものは、言うまでもなく余剰農産物の見返り資金になっておるわけであります。この余剰農産物の見返り資金をこういう方向に使うことが果してよいかどうかという点であります。国全体の立場、あるいはまた農業全体から考えてみた場合に、果して適当であるかどうかということを、どのようにお考えになっておるか、この点をまず第一にお伺いいたします。
  80. 大石武一

    大石(武)政府委員 非常にけっこうであろうと考えましてこのような提案をいたしておるわけであります。
  81. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 多分そうおっしゃるだろうと思いましたが、御承知のように余剰農産物というものは、今のところ政府の食管会計のやりくり等においては直接の大きな圧迫は加えておりませんが、しかしながら、日本の農業全体については大きな圧迫を加えておるものであります。そのために今の日本の農民は非常な不利な状況になり、不安定になっておる。これが今日の実情である。これは、かりに価格面である程度の操作をいたしましても、そんな程度では、日本の農業に与えてくる大きな不安なり破壊的な要素というものはとれない。しかもこの余剰農産物そのものが日本の食糧増産計画というものを根本からくつがえしておる。また軍事費の圧迫によって食糧増産費というものはどんどん削られております。一方今年の予算にしても、政府の食糧五カ年計画によりますと、五カ年の間に二千二百九十八億円の金を入れて千三百五十三万五千石の増産を食糧だけでいたしても、なお五カ年後においても四百十万トン程度の輸入が必要である。この計画を実行するためには、まず第一に三十一年度においても、政府の計画によっても三百八十七億の金が要るわけです。それに対し本年度政府の方としては幾らの金を食糧増産費に入れておるかというと、二百四十七億です。その結果は二百十四万石の増産計画が今年は百八十一万石に減っておる。しかもその中で、いわゆる大規模開墾の方へどんどん資金が削られております。そういうような関係からいいまして、結局一般の土地改良その他の経費というものは減っておる。なるほど資金源においては昨年と同額であるが、その中で十億何がしというものは大規模開墾の方にとられておる。しかもそれは北海道その他に見られるように主として畜産でありまして、その畜産の基礎というものは不安定である。こういう状態の中で私どもが第一に考えるのは、日本の農業に非常に大きな圧迫を加えておるこの余剰農産物資金そのものが、政府の計画によりますと、昨年度は御承知のように百八十二億五千万円が電源開発、それから食糧関係に三十億——愛知用水です。こういうようになっておる。ところがことしはどういうことになっておるかというと、百二億八千万円が電源開発、あとはどういうことになっておるかというと、農業関係に八十八億幾らということになっておりますけれども、そのうちで農業には前年度分も含めてわずかなものしか来ておらない。そして森林、漁港の方に四十一億何がしということになる。こういうことになりますと、片方においては年々軍事費の圧迫を受けるのは当然であります。政府が防衛六カ年計画なり五カ年計画によって資金がよけい要ることは明らかであります。こういうことになりますと、余剰農産物の見返り資金さえも非常にあちこちにとられて、結局こういうことになれば、日本の食糧増産というものは減退せざるを得ない。おそらくこのようなことで行ったならば、五カ年後において政府は外国食糧を少くとも五百五十万トンないしは六百万トン近く入れなければならないような事態になってくると思う。こういう際に、なるほど奥地森林開発ということも大事であり、漁業も大事であり、そのほかどれ一つとってみても大事であると思いますが、全体の農林政策という点から見て——私はあとでいろいろお聞きいたしますが、こういう点から見て、食糧増産なるものを大きく犠牲にして、食糧面において外国にますます依存する、こういう態勢を片方において促進するような金の使い方というものは、農林当局としては考えるべきものではないというように私は考える。おそらく日本国民、特に農民は、この圧迫を一番大きく身にしみて感じておるのであります。奥地森林開発ももちろん大事であるが、しかしこれは当然別個の方策をもって計画を定むべきものだと思う。にもかかわらず、こういう方に大きく金を入れるということが、果して政府としては適当かどうか。この点は、私はさらに検討を要する点があると思う。もちろんこういうことをおきめになって提案される以上は、政府は適当であると言うにきまっています。そういう一片の議会答弁ではなくて、もう少し日本の農林業全体、あるいは国民経済全体というものを考えて、真剣にお考えになる必要があるのではないか。ことに余剰農産物の見返り資金は、ことしは大体において従来通り電源開発に百二億八千万円と、生産性本部に十億という金が行く、農業関係に四十四億と、そり他全部合せて八十八億、開拓者資金上億七千四百万、森林、漁港に四十一億四千五百万、こういうことになっておりますが、このほかに、たとえばテンサイ糖の増産計画、これにも十億金をやるという話もある。そのほかに、これはまだ決定しておらないでしょうが、霞ケ浦や東京湾の埋め立てにも新しく金を使うという話がある。肥料合理化資金にもこの見返り資金を使うという話がある。もっとひどいのは、城ケ島の観光開発までこの資金を充てようというふうな計画も、農林省の一部にはあると聞いておる。こういうことが新聞にはっきり載っております。こういうような資金を、ほとんど農業以外といってもいいか、あるいは直接日本の農業の基礎を固めることでないような、ある意味においては土建屋をもうけさせ、事業屋をもうけさせるような方向に使うことが果して適当か。今度の森林公団——私はあとでお聞きいたしたいと思いますが、そのにおいがないわけではないのであります。こういう点から見て、私は果して農林省が見返り資金の問題なり、日本の農林業全体をまじめにお考えになっておるのかどうかということを疑わざるを得ない。この点については、ほんとうにどういうようにお考えになっておるのか。もしお考えがあれば、まず第一にお伺いをいたしておきたい。
  82. 大石武一

    大石(武)政府委員 お答えいたします。私どもが食糧増産五カ年計画を立てておりますこと、そしてそのためには約一千七百億円の資金を投じまして、一千三百万石の増産を得たいということは御承知のことだと思います。私どもは、何とかしてこの計画を五カ年間に実施いたしたい。こうすることによって、日本の五年間の人口の増加、ことに労働年齢の増加に対処するために、これ以上の食糧を輸入しなくてもよいという状態を作り上げることができると確信いたしております。そのためには、先ほどお説のように、一年平均三百八十億何がしかの金が要るような話でありますが、われわれは五カ年計画の達成ということを、必ずしも毎年平均の金額において、平均の石数においてこの計画を立てておるわけではありませんので、別に年次計画を立てておりません。従いまして、今年は確かに三百億足らずの少い金ではありますけれども、今年はこれで一応がまんしまして、五年間に一千七百億の資金で一千三百万石の増産をしたいという方針であります。  なお見返り円資金お話でありましたが、本年度は農林関係に使われる費用は八十八億円であります。このうち食糧増産に使われます金は四十七億、それ以外に使われる金が四十一億ということがきまっております。その四十一億の内訳につきましては、まだ具体的の決定をいたしておりません。おそらく先ほどの久保田委員の御発言は新聞の発表をごらんになったものと思いますが、新聞の発表は正当ではございません。われわれはあのように確定いたしておりませんし、あれは決してわれわれが確定いたしたものでありませんので、必ずしもあの御説を肯定するわけに参りませんが、この森林開発公団の十億の費用は四十一億円の中から選んだものでありまして、これによって食糧増産とは直接関係がなく、この森林開発公団に十億円の金を投ずることによって日本の食糧増産に対する見返り円資金が減らされたものとはお考えになっていただかないでけっこうであります。
  83. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今話がありました通り、八十何億という金を私ども承知いたしております。私が今あげましたようなことは新聞報道の範囲でありまして、なるほどこれが政府の決定案でないことも承知をいたしております。しかしそのために動いておる政治家もたくさんおるわけであります。大体においてそういうことが新聞に出るのは、新聞といえども何にも火のないところにそういうことをあえて捏造の記事を書くはずはないわけであります。こういう点でそういうでたらめな使い方をされては困るということをまず第一に申し上げておるわけであります。  それからさっきからいろいろ話がありましたが、大体こういう計画やその他のいろいろの計画をおやりになる場合には、大臣も皆さんも余剰農産物は来年度はやる、しかし再来年度はどうなるかわからぬというようなお話であります。ところが政府の計画を見ますと、五年先まではっきり余剰農産物を受けなければ、すべての資金計画が成り立たないような五カ年計画になっておる。私が言うまでもなく、今大規模開墾だけで、現に政府が決定しておるものだけでも、大体において四百五十三億という大規模資金計画を立っております。その中の九十何億というものは要するに見返り資金に依存せざるを得ないというような状態です。その方に一般の土地改良費がことしも十一億近く食われておるのであります。そのために一般の土地改良費がだんだん実質上削られておるのが今日の実情であります。こういう矛盾があります。特に、政府答弁のいかんによらず、すでにいろいろな五カ年計画なり何なりに、具体的にこういうようなものを入れなければならぬ。これを前提としてやる諸計画というものは果してできるのかどうか、これが日本の農業全体のプラスになるかどうかという点が、一つの大きな問題になるのではないかという点を心配いたしておるのであります。この点が第一点であります。これは政府として明確にすべきだと思います。ごまかして済ませる点ではない。それから森林開発の問題について、この計画によりますと、大体において約六十億の資金を投じました場合においては、年間において素材として約百十三万石、薪炭におきまして約百十二、三万石の林産物がここから出てくるわけです。これも確かに私は大きいと思います。しかしながらこれだけのものをやるために、余剰農産物をさらによけいに入れるような態勢にしてやることよりも、日本の今日約一億何がしというような大きな素材需要のある中で、百十三万石程度のものを開発するために六十億の金を特にここに投資をするという理由、あるいはもっとはっきり言うならば、貿易の関係を楽にいたしまして、もっと安い素材の入れるところがあるわけであります。こういうところから入れることと関連をいたしまして、森林の奥地開発については、もっと総合的な計画なり資金計画を当然立つべきじゃないか。金がここに余るから、まず持てるときにやってみようというような考え方はどうししもわからない。こういう森林は、なるほど百何万石出るかもしれませんが、その反面において食糧の輸入はますますよけいになるという関係にならざるを得ないと思う。こういうことは、国の全体の経済から見て果して利益かどうかという点を、お伺いいたしたいと思うのであります。
  84. 大石武一

    大石(武)政府委員 順序が逆になりますけれども森林開発の方からお答えいたしたいと思います。日本森林行政も相当に進んでいると思います。ことに国有林につきましては、林道開発なりが相当に進んでおります。ただわれわれが現在問題にしておりますのは、民有林の大規模開発でございます。不幸にして民有林は、御承知のように個人なりあるいは民間の資金でもってやらなければならないので、ここに大規模開発は今まで行われておりません。先ほど申し上げましたような熊野川流域であるとか剣山のような非常に優秀な大森林源が未開発に放置これておることは、何としても国家森林政策上これはあまり得策ではないと思うのでございまして、この点につきまして、民有林開発ということを一眼といたしましてこの森林開発公団体を出したわけであります。このために見返り円資金を第一期として三十億円投入いたしまして開発いたしまして、大体の開発は終り、なおできるならば二十億円の追加をしてこれを完成いたしたいというのが念願でございます。ひいてはこの公団方式をさらに延長いたしまして、他の地域にも及ぼして参りたいという考えでございまして、これは一つの大きな日本の国の森林行政の重要な問題であって、決してこのために見返り円資金を今年、あるいはこの数年間で十億円投入いたしましても私は惜しいとは思いません。ことにこの十億円を森林開発公団に投入いたすことによって、日本の農業開発、ことに食糧増産に対する円資金というものを減らすことにはなっておらないのでありまして、その点は別に日本の食糧増産に対しては何らの支障もないと考えておる次第でございます。  なお余剰農産物の輸入の問題であけますが、これはやはりできるだけ今後続けて参りたいと思います。ことにこの余剰農産物の輸入は、日本の輸入食糧の範囲内において行われるものでございまして、決して日本の農業の圧迫にはならないと確信いたします。今後は日本にさらにもっと有利な条件において、日本がもっと強い買手市場になってこの余剰農産物を受けることができると確信いたしておりますので、これはできるならばこの状態を続けて参りたいと存ずる次第でございます。
  85. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 この点はこれは議論になりますからやりません。余剰農産物をもっとどしどし入れてやることが日本の農業に有利になるなんていう認識は全くさかさまで、およそ不見識だ。これは金を使いたい人の寝言でありまして、百姓の立場からいって、また今日の農業を本気に考え、農業の実態を見ている人は、そんなばかな議論はできないと思うのでありますが、これは議論になりますからやめます。  その次にもう一点お伺いいたしたいのは、今までの御答弁の中にありましたが、今度の熊野地区と剣山の場合は民有林が、しかも大山林地主の持っておる民有林開発ということが重点になっておりますが、これは十七カ所ありますうちを見ますと、民有林はこの二つですか。そうではないように思うのです。十七カ所全体のいわゆる開発計画が立っておるのですか立っておらないのですか。これと今度の森林公団とどういう具体的な見通しと関係を持っておやりになっておるか。もっと具体的にいえば、国有林の場合はさっきお話のありましたように、国有林土地開発国有林野特別会計でやるといっておりますが、この十七カ所についてはそう大して進んでおらないわけです。この見通しが十分にあるのかどうか。そうして非常に大きな山林地主の特っておるそういう大きな地帯をやって、この公団が将来全体をずっとまとめて、この公団によって次々に、これによると大体三カ年計画によってできることになっておりますが、あとの管理やいろいろな問題はありましょうけれども、そういう方式をこの十七地区全体に及ぼす御予定でやっておるのか。それとも特にこの二つの地区についてのみやるというならば、この二つについてのみやるという特殊な理由がなければならぬ。この理由を明確に一つ説明いただきたいと思います。
  86. 石谷憲男

    石谷政府委員 ただいまの御質問でございますが、特に熊野と剣山を最優先に考えましたのは、山それ自体の内容からきておる問題でございます。資料の中にも書いてあります通り、全体の面積が非常に広いことと、その中で当面の開発の対象といたしまして有利な針葉樹の占めておる比率が非常に高い、従って当面の開発ベースにこの二つだけがようやく乗り得るということに発しておるわけであります。従いまて将来木材価格などの変動によりまして、あるいは他の今回取り上げられていないようなところにもこういったような方式で取り上げられるという場合があり得ると思います。  それからたまたま比較的大規模森林所有者の持っております林野がかなり多いということでございますが、他の地域におきましても、おおむね林道の少い未開発地域における森林所有形態は、市町村有林あるいは部落林寺も含めまして、かなりまとまった規模所有者が多いということはやや共通でございます。
  87. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そうしますとちょっとお伺いしますが、この公団はまず二地区をやって、あとの地区もどんどん拡充してやっていくという御計画ですか、それともとりあえずこれだけやってみて、あとの地域は全然別個にまた考えるのだ、こういうようなお考えですか。この点はどうなんですか。
  88. 大石武一

    大石(武)政府委員 未開発のが大体五地区ばかりございますが、これはできる限りこの公団をもって開発いたしたいと私ども考えております。ただし、先ほど長官から申し上げましたように、熊野、剣山という地区は非常に優秀な内容を持っておりますので、これは十分に採算が取れるという方針でいたしておりますが、ほかの地区に関しましては、必ずしも現在の見当では簡単に開発できるものではないのであります。とりあえずまずこの優秀な未開発の地区を開発して、これをもって公団事業というものを一応完成しまして、さらにその後資金方式とを十分に準備いたしまして、できるならばそれらの未開発の地区にも及ぼして参りたいというのがわれわれの現在の考えでございます。
  89. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうもその点がわからないのです。なるほど現在の材木の価格やその他の点から見れば、この二地区が採算ベースに合うのかもしれません。しかし今の日本の全体の木材需要なり森林行政からいくと、これを十七地区に及ぼすという計画がない限り、この一環として取り入れられておらない限り、この二地区だけが特別の理由があるとしか思えない。この点はどうなんですか。
  90. 石谷憲男

    石谷政府委員 比較的低利で、しかも長期な資金でございますか、とにかく資金を借りまして開発するわけでありますから、従って十分に開発効果が上りまして、いわゆる間に合うことに相なりませんと開発のベースに乗らない。ところが現在の木材価格の事情からいたしますと、やっと乗りますのがこの剣山熊野川地区だ、こういう意味でございます。ところが先ほど他地域からの輸入も考えられるのではないかというお話がございましたけれども、現在のところでは、木材に関します限りは、相当大量な輸入を期待されるような相手先は全然ございません。たとえばソ連材等の輸入問題も現在起きておりますけれども、国内の木材価格とのつり合いにおいてなかなか大量に入ってくるという状況にはございませんので、従いましてやはり将来の木材価格の見通しということからいたしますならば、漸次これらの内容が比較的貧弱な森林開発ベースに乗って参る、そういう場合にはやはりこういった開発方式考えらるべきものだ、かように私どもとしては実は考えている次第であります。
  91. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それではなお具体的にお伺いいたしますが、この計画によりますと、結局国が五割何ぼという金を公団に納める、府県が一〇%、受益者が三〇何形ということになっていて、大体受益者のほとんどは個人の大森林所有者である。そこでまずお伺いいたしたいのは、これで大体大森林所者が年に百十三万石並びに薪炭が百十四、五万石、これだけの増産効果があるとして、これによるところの地主ないし森林所有者の所得、利益というものはどのくらいになるか。それによる負担は石当りあるいは反当どのくらいになるか。また林道の補修費等は反当なり石当りについてどのくらいの負担になるのか、こういう点を一つ数字でもってお示しをいただきたいと思うのです。
  92. 大石武一

    大石(武)政府委員 林野庁長官からお答えいたさせます。
  93. 石谷憲男

    石谷政府委員 一応順を追って御説明申し上げますが、ただいまお話のありましたように国は五割二分、府県が一割、受益者が三割八分の負担であります。これをもし従来のような公共事業方式でもってやって参りますと、国が六割、府県が一割、受益者が三割ということになるわけでございます。これは要するに非常に資源の内容がいいものでございますから、受益者負担能力が当然出て参るということで、受益者のみから言いますと三割が三割八分の負担になっている、こういうことでございます。  それから、このことによりまして一体林産物の受益額というものはどれくらいあるかということでございますが、これはこの公団の一応継続を予定しております十七年間の年平均でありまするが、大体一億九千万円ばかりというものがこの開発によるいわゆる林産物の受益額であります。それから林道の維持管理費、災害復旧費というものの負担額を差引きまして、それから税金その他のものを同時に差引き、それからこの開発をいたしまする場合に受益者負担があるわけでございますが、こういうものを差引きまして、結着残るところは大体千六百万円平均、こういうような数字を一応試算をいたしておるわけでございます。  それから林道につきましては、いわゆる利用料を徴収することになるわけでございますが、これは概算でございまするけれども、まあ能野の場合に木材については石当り約十円くらい、それから炭につきましては一俵当り大体二円くらいという見当に相なるかと思うのでございますけれども、これは具体的には走行キロ等によりましても格差をつけなければならぬのであります。従っていろいろ実施面では多少内容を改訂する必要があると考えておる次第でございます。
  94. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 残余の質疑は後日に譲りまして、午後は二時から開会することとし、暫時休憩をいたします。    午後零時四十五分休憩      ————◇—————    午後二時五十分開議
  95. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業基本問題について質疑を続行いたします。淡谷悠藏君。
  96. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大臣の昨日の答弁を聞いておりますと、私新しい疑点が生まれて参りました。俊敏にして、いささか傲岸不遜な態度のあります農林大臣が、昨日は珍しく中村時雄委員の二、三の質問に対して、あっさりかぶとを脱がれ、あやまっておられましたが、同時にはるばる太平洋を越えてお持ち帰りになった愛馬のスカーレット嬢並びにケープタウン嬢を惜しげもなく他人に譲渡した。この大きな大臣の心境の変化の理由はどこにあるか。一体あれほど頑強にあなたの良心並びに良識に照らして行動されたという農林大臣が、どうしてこういう瞬間的にその愛馬を手放すような悲痛な心境になられたかということを、私は新しい疑点として御説明願いたい。
  97. 河野一郎

    ○河野国務大臣 もともと前々回から申し上げました通りに、私は牧場の経営をいたそうというつもりでおったのでございますが、実はだんだん法規等もよく勉強いたしまして、いやしくも疑惑のあるような——法規によって、取扱い上間違いじゃないけれども、絶対にこれでよろしいんだ——私自身の考え方が、いやしくも政治家の行動は、言いわけをしなければならぬということはよろしくないという建前をとっております。一々弁明をしなければいかぬという行動は妥当でない、こう思っております。ところがこの馬の問題に関する限り、いろいろ法規を調べてみますと、こういうわけでございます、ああいうわけでございますと弁明をしなければならない、そうして御了解を得なければならぬというようなことは必ずしも妥当でない、こう考えまして、昨日中村委員にお答えをした通り、またこの馬についても、これは種馬であるというようなことで、牧場を経営して、そこで馬の改良をやっております私の友人があり、しかも私は前の馬もその友人に譲り渡したことがありますので、この機会に、私がその馬を所有しておるということよりも、すみやかにその牧場を経営しておる人にその馬を譲渡して、これは明確に種馬として将来利用されるものということで各方面の御了解を得ることが一番妥当である、こういうふうに率直に考えまして、お答え申し上げた次第であります。
  98. 淡谷悠藏

    淡谷委員 前回、稲富委員並びに中村委員の質問に対して大臣が御答弁になっておりますが、その御答弁ではっきりしなかった点が二点ございます。この馬を輸入するにあたってとられた手続の問題が一つ、もう一つは、競馬の監督者の地位にある農林大臣として、自分の所有馬を競馬馬として登録したことがよろしいかどうか、この二点だと思いますが、この二点とも大臣はあっさり認められ、間違っておったからあやまる、こういうふうに了解してよろしいですか。
  99. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。前段の方は、前回芳賀さんにお答え申し上げました通りに、十分経緯を調査いたしまして——調査とは何だという質問を受けましたが、これも昨日率直に申し上げた通り、間違いのないように調べてお答えを申し上げたい、こう思うのでございます。  それから後段の所有馬の登録を変更するということは、農林大臣として馬を持つことが悪いから、それを変えるということなのか、こういうことでございますが、これは私は実は前回にも申し上げました通り、前に持っておりました馬を農林大臣就任と同時に名義の変更をしたわけでございます。ところがその後競馬の関係者から、監督上、馬券を買うということは、これはいかぬ、しかし馬を大臣が持つということは、これはもう少し考え直して、もっとすなおな気持で考えた方がいいのじゃないかという御意見の人もおありなのでございます。そういう意味合いで、私は馬を持つ持たぬという点については、今これは持ってはいけないものだという解釈はとりませんけれども、私自身としては持たぬ方がよろしい。しかもこういうふうに普通の競馬馬を競走馬として持つならよろしいけれども、種馬として一定の能力検定期間中持つのだというような条件付の馬を大臣が持つということはよろしくないという解釈をとりまして、私は先ほど申し上げたように、自分としては直ちに手続をとろう、こういうように思うのであります。
  100. 淡谷悠藏

    淡谷委員 実はこのうわさがほんとうであるかどうかを確かめるために、私は府中の競馬場に参りまして厩舎を見て参りました。なるほどはっきり、スカーレット、馬主河野一郎、ケープタウン、馬主河野一郎という札がかかっております。さらにかつて大臣がお持ちになっておったガイセンモンという馬が、河野謙三の馬主名に変り、それからもう一つクモノミネ、河野照子、さらにナンブというのが一頭河野一郎の名前になっている。河野一族の馬がずらっと並んでいるのを見て参りました。たまたまそこで大臣が牧場を経営したいという御意思のあることは、単なる委員会での思いつきでなくて、初めからそういう御意見があったということも聞いて参りました。むしろこの点は私は敬意を表します。ただこの間からの答弁の形を見ておりますと、どうも農林大臣は野人だったころのくせが抜けていないように考える。非常に闊達自由にふるまっておられる。それが農林大臣という位置では、どのような影響を世間に与えるかという顧慮なしに今まで行動されたように一見受けられたのであります。特にこの馬の処置につきましても、あなたは前回の委員会では、まだ代金を清算されていないという答弁をされた。代金を清算されていない馬を譲るというのは一体どういうわけなんですか。一体代金を幾ら清算して、無償で譲ったのか。あまりに私たちは境遇が違いますから、こういう勘定についてはこまかいかもしれない。大臣には百万、二百万の金はものの数でないかもしれませんけれども、対世間的な影響を考えますと、この名馬を代金も払わないで自分のものにし、しかも条件もつけないで簡単に譲る、こういう心境は、これは世間一般に与える空気を考えまして、もう少し慎重に考えていいと思いますので、その点についてももう少し大臣としての答弁を願いたいと思う。
  101. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ごもっともで、そういう点についてお尋ねがあれば、この際明確にいたしたいと思います。今申し上げました通り、この前持っておりました馬も、実は競馬に使いまして、百五十万円で譲ったわけでございます。その牧場主と私は非常に懇意でございますから、実は今回の馬につきましては、大体二百五十万円で——まだ値段がはっきり出ておりませんが、大体その前後になるだろうということでございますから、その前後で牧場主に譲りたい。私はお話通り百万、二百万のものを、取るときも自由かってにやる、やるときもかってにやる、そういうことは決して考えておりません。その点は私も多少のそろばんをむろん考えて、そしてそれによって損をするわけにもいきませんから、なるべくその値で譲り受けてもらいたい、こう言って頼むつもりで、数日中にと申しましたのは、今その友人と話し中でございますから、そういうふうにお答え申し上げたのでございます。
  102. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そうしますと、現金の授受もされないでも、結局あなたに金を立てかえ払いをしておった人が馬を譲り受けておる金はあなたが譲り渡した人から請求する、こういう形になりますか。あなたはまだ金の支払いをしていないという、金を支払いしていない馬を売るのですから、あなたは金をとってそっちに回すのか、その人から直接あなたに立てかえ払いをした人に金を払うのか、どっちですか。
  103. 河野一郎

    ○河野国務大臣 むろん依頼をした人の了解は得て、そしてその金の授受は私は直接であっても、私が一たん受け取ってその方に払っても、それはまた別にその点まで及んでどういうふうにするのだということは考えておりません。
  104. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私こういう立ち入った質問をいたしますのも、今大臣の身辺には非常な疑惑が重なっているのであります。単に競馬馬だけの問題ではございません。砂糖の問題にしましても、バナナの問題にしましても、あるいは根拠のないうわさかもしれませんが、さまざまのうわさが立っている。これに対しては大臣はさっきおっしゃったように、やはり一々弁解しなくても済むような明朗な態度をとることが絶対に必要であると私は思う。  あなたは昨年八月の十日から九月の二十二日まで外国に行かれておったはずであります。その場合に、ロスアンゼルスの南方百マイルのポポナというところで畜産共進会があった。そこで有償か無償か知りませんが、馬を一頭贈られたというようなうわさが飛んでおりますが、この真偽について一つ答弁願いたいと思う。
  105. 河野一郎

    ○河野国務大臣 向うで贈ろうという話がありましたので、無償でそういうものを譲り受けることは適当でありませんので、そこで礼をして譲り受けたということでございます。
  106. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その馬と今回の馬とは関係があるのかないのか。さらに、そこに農林省の前畜産局長である原田伝という人が参りまして、種馬用として一万五千ドルあるというような話をしたというようなうわさもありますが、これは先般の委員会答弁と若干食い違っておりますが、どっちがほんとうですか。
  107. 河野一郎

    ○河野国務大臣 前畜産局長が外国へ行ったことはありませんでございます。そういう話をしたというようなことはあるとは思いません。  馬は、その馬が今度の三頭の中の一頭でございます。
  108. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そうしますと、この間の答弁にございました一万五千ドルの外貨が余っているということを大臣の耳に入れたのはだれでございますか。
  109. 河野一郎

    ○河野国務大臣 これは先般もお答えいたしました通りに、サンフランシスコで永田雅一君から聞いたわけでございます。
  110. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはこの間の委員会の速記録によりますと、渡邊畜産局長だったか、通産省の方か知りませんが、買い入れましたトロッターがまだ入っていないから、どれだけの値段で取引されたかわかっていない、こういうことを言っておる。どれだけの価格で取引されたかわからないトロッターが、一万五千ドルあるいは二万五千ドルの為替の余剰を残し、その前の一万五千ドルの種馬用の為替ワクに振りかえられたといういきさつは一体どうなんでありますか。  それからトロッターが三十一日に入ったはずでございますが、もうその価格がはっきりわかったかどうかお答え願いたい、これは大臣でも局長でもどちらでもよろしい。
  111. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 速記録によりますと、ただいま大臣からお答えがありましたように、上期の種畜輸入外貨の残が一万五千ドルほどあるというふうなお話が出ておりますが、これはこれで上期に輸入すればそれを使うことができたのでありますが、時期が経過しましてその話が立ち消えておるのであります。それと第二段の先月の末に着いた馬についての概算はわかっております。運賃を含んで一頭当り約二千三百ドル平均くらいになっております。
  112. 淡谷悠藏

    淡谷委員 概算ではなしに、ほんとうの価格がわかり、ほんとうの外貨のワクの余りが出てくるのはいつですか。
  113. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは輸入取扱い商社の明細書が全部整いませんとはっきりしたことは出ません。すなわち運賃あるいは輸送中の飼葉の費用、そういうものが当初の予定と実際の支払いの差をはっきり清算していないわけであります。これはちょっと事情を申し上げますと、馬を買う時期がありまして、相当余裕を持っておかなければ、すなわち秋の競馬が済んで、春の競馬が始まる間に買うわけですが、早く買わなければいけないわけです。それがだんだん春の競馬の準備の時期になってくると、馬が少くなってくる。こちらで買いたい馬も春の出走準備の時期になるとなかなか手に入りにくくなる。そういう関係がありまして、私の方で秋大体見当をつけたときには、一題当り二千五百ドル見当ならばいいだろうということでありましたが、それが今実際に報告を得ているところでは、概算二千三百ドルくらいで上る、こういうことになったのであります。これは買付の事情からきておるわけであります。
  114. 淡谷悠藏

    淡谷委員 外貨のワクの余りが二万五千ドル、あるいはこの間中村委員が質問をしておりましたように、四万ドルくらい余るのだから、これはまだちょっとわからないということになるようでございますが、そこに外貨のワクをめぐっていろいろ不明朗な事態が起ってくる原因があると思う。これはあとで通産省の方にお聞きしたいと思うが、大臣は答弁の中で、トロッターを入れるに当って農馬改良の上から必要であるということを再三言っておられる。大臣は牧場を経営しようという悲痛な御決意が固まったようでございますから、私は非常にありがたいと思いますが、日本の馬政上の問題として、ざっくばらんに申し上げまして、競馬馬を入れるのに農馬の看板をかりておる、こういう形が非常に濃厚であります。今の局長の答弁を聞いておりましても、秋の競馬に出場するのに間に合うように顧慮していろいろ考えられておる。看板は農馬であっても、ほんとうに入れる目的は競馬ではないかという疑いが非常に濃厚であります。そのように無理をすることがさまざまの不明朗な事態を招いているようにも考えられる。これははっきり申し上げたいのですが、一体農林大臣がトロッターが農馬改良の上に必要であるという外国における見聞、一体どこの国でトロッターを農馬に使っておるか、あるいはどこの国でトロッターを農馬改良に使っておるか、具体的な実例を見てこられたのでありますが、その点などもお教え願いたいと思います。
  115. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知通り馬の利用については、その国その地方によっていろいろな品種があると私は思うのであります。たとえば山間部に使います馬と平地で使います馬、湿田地帯で使います馬、乾田地帯で使います馬といろいろあると思います。それに相応する馬を作っていきますには、たとえばトロッターの血量をどのくらいふやすとか、アラブの血量をどのくらい必要とするかとか、もしくはサラブレッドの血量をどのくらい必要とするかとか、言いかえますならば、その利用度によって違ってくるのでありまして、しかもどういう農馬にいたしましても、農馬はみなこれらの雑種で、どういうふうな用途にはどういうふうな雑種血液をまぜた方がよろしいということになるのでありまして、在来農馬という一つのものは私は必ずしもいい馬ではないと思う。それをだんだん改良して、それぞれの農耕に適する馬もしくは輓馬もしくは山間部の輸送馬というようなものを作っていくということで、従ってそれに入れます血液として、そういうふうなものを順次入れていく必要があるのだ、こういうふうに私は考えておるわけであります。外国を回りましても、大体そういう意味からその原種の保存その他の点で、これに競馬が組み合っておるというので、アメリカあたりでも競馬と畜産組合というようなことで、これは共進会など一緒に開催されるというようなことになっておるのを見たわけであります。
  116. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私のお聞きしたいのは、トロッターの血を入れ、あるいはトロッターそのものを農馬に使っておる実際の形をごらんになったかどうかという点であります。日本の農馬改良の目的は別です。大臣は外国を回って、トロッターを入れなければならぬという決意をされて帰ってきておるのでありますが、その決意を促した見聞をどこであなたはなされたか、具体的な例を私はお聞きしているのです。
  117. 河野一郎

    ○河野国務大臣 トロッターを入れなければならぬ決意は私がいたしたのではないのでありまして、私の前任者は、すでに前年度からトロッターの輸入を計画されているのでございまして、私が計画をして、私が決意を固めてやったのではないということに御了承願いたいのであります。従って私は、トロッターの原種そのものが農村に使われておる、非常によいからぜひトロッターをやれということを申したのではございません。
  118. 淡谷悠藏

    淡谷委員 一体農林大臣日本の農馬をどのように持っていかれようとするのか、御承知のように馬を役畜として使おうという形が年々減っておる、馬の値段が安くなってきておるこの際、新しい高い値段の馬を入れまして、血の改良をしよう、農馬の改良をしよう、これは一体日本の農馬をどこに持っていかれるのでありますか。これは農政上の基本の問題でありますから、じっくり私は大臣の御説を聞きたい。
  119. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知通りわが国の現在の農地の現状から見まして、非常に土地改良ができておるとは申しながら、山間地等においてはまだ十分いっておりませんそれから湿田地帯におきましては、十分なる機械の利用も困難な土地が多いわけであります。それから山間部におきます輸送用の農馬として必要な面があるわけでございます。それからどうしても馬の堆肥が必要であるというような面もあるわけでございますので、これらの需要を満たすように改良し、充足していくことが必要である、こう考えております。
  120. 淡谷悠藏

    淡谷委員 運送馬あるいは耕作用の馬をこういうふうに持っていこうというお考えのようでありますが、その場合に競走馬の能力検定はどういうふうになさるのでありますか。トロッターあるいは今度入りましたサラなども、能力検定のために走らせると言っておる。この競走馬としての能力検定が農耕馬としての能力検定とどういうふうな関係を持つのか。
  121. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私もそこまで行きますと、専門家ではございませんから十分わかりません。しかし専門家の方がそういうふうにしてやっておるわけであります。おそらく能力を十分に調査して、そうしてそれが優秀なものであるかどうかということを調べるのじゃなかろうかと思います。
  122. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私の聞きたいのは、競走馬としての能力検定と農耕馬としての能力検定とは目的が違うと思います。今度サラ種とトロッター種とを一緒にして種馬として輸入したことにつきましては、はりきり通産省から通達が出て、競走馬の輸入はしないということを言っておる。それにもかかわらず種馬を入れるのでありますから、一体本質的な違いがあるのか、目的に違いがあるのか、この点をはっきりお聞きしたい。ですから競走用の馬として能力検定をする場合に、一体どっちの能力検定をするのか、これは畜産局長にお聞きしたいと思います。
  123. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 先般お話し申し上げました二十六年の馬の改良方針の中に、種馬の用途別体型標準というのが出ております。農馬大型、中型、小型、輓馬の大型、乗馬というふうになっておりまして、それに体高、体重、胸囲というようなことで標準を出しておるわけであります。そうしてその地方にそれぞれ適当な種類のものを持っていかなければならぬということは先ほどお話のあった通りでありますが、結局からだに相応したというか、馬としてそれぞれの用途に使う場合にからだが一番中心でありますので、それを調べるために便宜上競走に出すというふうに私ども考えております。
  124. 淡谷悠藏

    淡谷委員 一体競走馬を入れるために農馬の名前を使うのか、農馬のために競走馬を入れるのか、この点をはっきりさせたい。競走馬として出して軽い騎手を乗せて早く走らせるということが、果して重い荷物を背負って山坂を上るような農馬の検定になるかどうか、ごまかさないではっきり言ってもらいたい。これには非常な無理があるのですから、将来日本の馬政の方針を変えなければならぬということならよろしい。ごまかしで何か農馬という看板だけを掲げておいて輸入をたやすくしようというようなこそくな手段ではなくて、これでは困るから方針を変えるなら変えるでよろしい。競馬に出させることが農馬の能力検定になるのだという説明は非常なこじつけだと思っておりますから、その点一つ納得の行くように大石農林政務次官のように正直な御答弁を願いたいと思います。
  125. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは先ほど大臣からちょっとお話がありましたように、要するに血の交換をやって、その土地土地に適当したものを出していくのでありますから、その血のもとになる個体が健全でなければいけないわけであります。それをもととしてよいものを出していく、こういうのであります。そのためには最も基礎になる個体の能力を十分に出して検討する必要がある。その検討の方法として競走に出すということを一つの手段として考えておる。そのほかに、何といいますか体格、姿勢、大きさというものが当然出てくると思います。
  126. 淡谷悠藏

    淡谷委員 確かに農耕馬としての走る能力も必要でしょう。あるいは人を乗せる能力も必要でしょう。けれども同じ能力でございましても、ストリップ・ガールの能力とくわを持つ農夫の能力とは違うのですよ。目的が違うのです。競走馬の能力というものは必ずしも農耕馬の能力ではないと私は思う。ただ血をまぜるためと大臣も答えておりますが、固定した日本の馬匹の血を更新するというような場合、どうしても外国の馬を入れて混血馬を作らなければならないのか、日本にも優秀なサラブレッドはたくさんあります。ノルマンもあるでしょう。こういう国内産のかなり困っている馬産家もありますのに、こちらの方には考慮しないで、貴重な外貨を使ってまで血をまじえるために馬を買ってくる、こういう基本的な方針は、ごまかしなしには、日本の馬政上どうなんです。
  127. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 新しい血を入れなければどうしても退化するということは、遺伝の方からいって当然ではないかと思います。従いまして、それをどの程度に外から入れ、あるいは従来の在来種のものあるいはすでにミックスしたものをまぜ合せるかということが問題であろうと思います。それらは外貨事情その他の関係もありますし、それから日本の馬の生産者の関係、馬の価格の関係等もありますので、それらをにらみ合せて勘案しなければならないと思います。
  128. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大臣、あなたにお聞きしたいのです。畜産局長は、あなたの前を気がねして非常に苦しい答弁をされておる。とても今のような理由で高い外国の馬を入れなければならないという必要はないと私は思うのですが、大臣が今度のケープタウン嬢及びスカーレット嬢をお買いになった場合には、やはり渡部局長と同じような御意見で、日本の農馬に外国の非常に貴重なる姫君の血をまぜるという意味でお買いになったのかどうか。大臣の非常に放胆な、直截な御答弁を願いたいと思う。局長は心配しておるようですから、大臣に聞いた方がいいと思います。
  129. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私は牛の場合でも同様に考えておりますが、馬の場合でも、最近非常に近親繁殖になっておりますので、どうしてもある程度の血液を入れていかなければ、かけるのに実は困っておるような状態にあるのではないかと思っております。ただ私もしろうとでありますから、はっきり申し上げかねますけれども、きのう申し上げたように、人のやっておるのをそのままそれはいいだろうというのでやったところに私の不注意があったということは申しておるのであります。しかし私の考えとしましては、従来農馬にサラブレッドの血を入れていかなければいけないというのは、サラブレッドのかけるということではなしに、あの敏感で利口なところが必要じゃないかというような点から、サラブレッドを入れておると思うのであります。私はよくわかりませんが、従来馬の品種改良上サラブレッドの血液を入れておるのは、そういうわけではないかと思うのであります。私は専門家ではないから、これはよくわかりません。
  130. 淡谷悠藏

    淡谷委員 農林大臣としての河野さんに大いに敬意を表しますから言うのですが、そういう認識では、日本の農政を非常に誤る、特に馬政を誤る、馬政を誤るだけではなくて、今度のような思わざる疑惑が生まれます。利口で頭のいいものはだめなんです。人間でもそうです。頭が非常によくて利口であれば、今のような非常に困った日本の農村では暮していけない。サラのこういう性格は、農馬としてはむしろ欠点になりこそすれ、特徴にならない。もっと鈍重な力があった方がよろしい。そうでなければ耐えられないのです。馬のように働く人さえあるのですから、そんなところに優秀なサラが耐えると思ったら、とんでもない間違いです。あなたはそういう観点でサラブレッドのをお入れになったのですか。
  131. 河野一郎

    ○河野国務大臣 先ほど来申し上げますように、私はしろうとで、専門家でございませんから、そういう点はよくわかりませんが、従来それを入れておるのはそうじゃないかと実は思っておった、こういうことでございまして、むろんサラブレッドは農耕馬の改良上必要がないというところに、私の知識で改良上必要であるという一項を入れるほど私は大胆ではございません。それはむろん専門家の技師の諸君が研究されたことによってやらるべきことでございます。私がきめるべき領分ではないと思っております。
  132. 淡谷悠藏

    淡谷委員 種馬に使うということになれば繁殖能力は非常に必要なんですが、かけらせる能力はあっても、繁殖能力の検定はやっているのですか。これは局長でも大臣でも、どちらでもいいです。
  133. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 それはその馬の先祖を調べますれば、一応の標準は出てくるわけでありますから、当然そういうところも考慮に入れておるわけであります。ただし、競馬に長く使ってしまうと繁殖能力が落ちることは御承知通りであります。
  134. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この前にも一ぺん通産省の方に、同僚の委員から話があったのですが、通産省の通達は競馬用の馬は不要不急と認めて割当をしないというので、政令昭和三十年四月二十二日が出ておる。これを調べましたら、通産省の方では、そういう詳しいことはわれわれにはわからないと、大臣と同じような答弁をしておりますが、農林省の方で差しつかえないとなればこれは入れることが当然だ。こういう答弁だったのですが、農林省の、特に畜産局長あたりは、今までの競馬用の馬をそういう観点から農馬改良のために必要だというふうにしてお入れになったのならば、これは馬種によらず、使用目的さえ農馬改良用であるといえば、どんな馬でも入れますか。トロッター、ノルマン、アラブであろうが、サラであろうが、馬の性格、馬の種類関係なしに、その本人が農馬改良の種馬にするのだという目的さえきまれば、どんな馬でも入れるというのですか、この点をはっきりしてもらいたい。
  135. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは今までのところは、馬としましては、サラブレッド種、アメリカン・トロッタ一種、アングロ・アラブ種、アングロ・ノルマン種、プルトン種、ペルシュロン種、この種類を一応種馬として、輸入許可の範疇に別表に掲げてありますように、やっておるわけであります。この範囲の中では、当時の外貨状況等、それから実際の必要性から見て、外貨の許す限り、それからまたこちらの必要に応じて許さなければいかぬと思います。
  136. 淡谷悠藏

    淡谷委員長 そういうふうな立場から許可をしましたトロッター種は、現在どういうふうに使おうというのですか。やはり二年間競馬をやらして能力検定をやるのですか、それともそのまま種馬としての育成の仕方をするのですか、どっちですか。
  137. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは前年二十五頭入れておりますが、これは阪神、中京、小倉、京都、四カ所で今二カ年の能力検定に使っております。三十年度に今度入れますものも同様に使っていく、こういうことにしております。
  138. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはいろいろ言いますけれども、農家が繁殖用の種馬として使う場合、今の優秀な競馬馬は非常に高いのです。競馬で一もうけしなければ安く払い下げはできないから、一もうけさせるのだといったような経済的理由はございませんか。
  139. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは先般トロッターを輸入するこきに、通産省の方に出した書類の中にも、トロッターは原産地における価格が比較的高いので、日本の零細農民個人の資本力では独力で購入することはできないから、購入資金の一部を馬主団体に負担せしめる、一定期間、すなわち二年間能力検定のため競走に出走を認めることは、直接種馬に使用する馬種の輸入を実現することができる妙味がある。こういうふうに、購入する農家の負担をある程度安くする意味も含めておるのでございます。
  140. 淡谷悠藏

    淡谷委員 今のトロッターの件ですが、これはやはり二年後には農馬として払い下げますか、それから払い下げる価格は幾らにしますか、また入札にでもしますか。
  141. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは当然種馬として二年後には払い下げます。これは軽種馬協会、トロッター協会の方で所管しておるわけですが、まだはっきりどうしようということはきめておりませんが、おそらく入札になるのではないかと思います。
  142. 淡谷悠藏

    淡谷委員 トロッター協会というのが新しくできていますが、それとも古いトロッター協会なのですか、本質をはっきり私はお聞きしたい、種馬種馬と申しますが、トロッターを入れましたのはトロッター協会で、サラを入れましたのは中央競馬会、そうしますとほんとうに農馬を持っております牧場主なりあるいは農村の協同組合等は申請していない、そうすると目的が種馬であっても、当面これを引き受けるのは全部競馬屋さんです。一体トロッター協会というのはどういう性質を持った協会ですか。
  143. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 軽種馬の生産者が、トロッターの繁殖育成をはかりたいという人が寄って作っているわけであります。
  144. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それだけじゃわからないのです。いつ創立になりまして、どういう連中が幹部になって、何の目的でということをもっと正確にはっきり聞かしてもらいたい。
  145. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 二十九年三月一日に設立されました。昨年度はこの協会と関西馬主協会で二十五頭入れたのとあります。今年度はこの協会が日本競馬会に輸入の業務を委託しておるのであります。この役員は軽種馬協会の会長広沢氏が会長をしまして、あとトロッターの育成者が会員になっております。会員の数は約四百名でありふす。
  146. 淡谷悠藏

    淡谷委員 馬を繁殖させるという目的がほんとうなのですか、トロッターを入れて競馬をやらせるというのがほんとうの目的なのですか、どっちなんですか。
  147. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 協会の会則を申し上げますと、第三条に、「前条の目的を達成するため、左の業務を行う。日本トロッターの蕃殖、育成、改良の調査研究並びに指導奨励に関する事項、速歩競走の健全なる発達に関する事項、種牡馬の繋養及び配合の調整に関する事項、種牡馬、種牡馬の購入及び産駒の売買斡旋に関する事項、速歩馬及び速歩競走に関する図書雑誌の刊行に関する事項、会員の親睦、福祉、及び厚生に関する事項、その他……」こういうふうになっております。
  148. 淡谷悠藏

    淡谷委員 トロッター協会の発足は大へん新しいようですが、会員の中に、農林大臣のように農場でも持って、十分そこで馬の繁殖をやろうという実績のある人がおるのですか。
  149. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 当然馬産地の有力者が入っております。
  150. 淡谷悠藏

    淡谷委員 馬産地の有力者と申しますが、これは御承知通り最近は大部分、農馬の繁殖をさせましても馬産家は引き合わないのです。普通の農馬が一体幾らくらいしておるか、これだけは幾ら競馬だけに熱心な農林大臣もおわかりだろうと思う。従って農家の間にも、競馬馬として馬産をやろうという傾向が強いのですが、地方の馬産家の中にはそういう人が多いじゃないですか、どうですか。これは私はここではっきり申し上げますが、農家の経営上農馬の繁殖よりは競馬馬の繁殖の方が有利だと考えている人がある。もしそういう傾向があるならば、これを一つの問題点として十分に考慮する必要があると思う。競馬をいつまでも農馬の陰に隠れたものとして考えないで、競馬をやるなら競馬をやるというように、もっと大胆明朗にその有用性を説き、はっきりとこの繁殖をするような方向にいっていいじゃないですか。どう百ですか。
  151. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 そういうお説も出るかと思いますが、先ほどちょっと大臣からお話がありましたように、どうしても日本の農業経営の状況からいいまして、昔の軍馬に必要なほどの頭数は要りませんけれども、幾ら機械化が進みましても一定数の必要がある。従って農業政策としては、やはり農馬の改良にウエートを置かなければならない、こういうふうに考えます。競馬馬と農馬との関係をはっきりそういうように割り切るということは、そう簡単にいかないじゃないかと思うので、そういう点は十分検討しなければいかぬと思います。
  152. 淡谷悠藏

    淡谷委員 トロッターを種馬に使うということは、トロッター協会が発案したのかあるいは畜産局あたりが暗示を与えたのか、この点はどうですか。一体畜産局として、トロッターという馬は新しい農耕馬の繁殖用種馬として適当であると考えられたのですか、あるいはまたトロッター協会が入れたいというから無条件にこれを入れさしたのか、どっちですか。
  153. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは御承知のように、戦争中は軍馬が目的でありまして、何というか非常に大きい馬でありましたが、先ほど申し上げましたように、昭和二十六年の新しい馬の改良生産方針の中にトロッター、プルトンというものを新しくといいますか、再度取り上げまして、十勝あるいは岩手県南の中心地を圏にしまして発展さしたい、こういうふうに考えておるのであります。昭和二十六年から農林省の馬の改良方針の方ではっきり取り上げられたのであります。
  154. 淡谷悠藏

    淡谷委員 従来の競走馬で実際に種馬として農家に払い下げたのは何頭くらいありますか。
  155. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 競走に出た種牡馬の方はほとんど競馬をやめてから種に使われております。しかし長く使っておりましたものは種牡馬としての有効期間はあまり長くないようであります。種牡馬の方もそれぞれ農家に購入されて、やはり種牡馬として使われておるようであります。正確な数字は手元にありませんので……。
  156. 淡谷悠藏

    淡谷委員 資料としていただきたい。これは今言いました通り、競走馬が種馬として払い下げられた数、並びに価格、これを出していただきたい。それからこれは非常にむずかしい計数だろうと思いますが、事の本質に関しますからあえてお願いしたいのですが、この間の稻冨委員の、質問に対しまして、農林大臣がトロッターの雄が五頭、雌が二十五頭、これは近親繁殖を避けるために必要な数であるという答弁をされている。その後雌が二十九頭、雄が一頭に変っている。私たちはこれを為替のワクをとるために変えたのだと考えておりますが、あくまでも近親繁殖を避けるために五対二十五という数が必要で、さらに農林省の方では手持ちのトロッターの中に雄がたくさんあるから、これでいいのだという結論を出されたのか。一体五対二十五という雄雌の比率はどういうふうな関係で出てきたのか。この雌雄の数と近親繁殖との関係について、専門的なデータを一つお出し願いたい。今御答弁ができるようならそれでもよろしい。
  157. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これはそのとき御答弁がありましたように、大体の目安でありまして、そんなに数学的にぴちっと出るものではないのであります。そういう範囲で、現地でいいものを物色したらいいだろう、こういう程度であります。
  158. 淡谷悠藏

    淡谷委員 一体血を更新する場合は雄馬の方が更新率が早いでしょう、これはこの間からの各委員の質問でもはっきりしております。一頭しか子を産まない雌馬の更新と雄馬の更新の度合いというものは、私は違うと思うのですが、それをわざわざ雄馬を予定しながら数を減らしたのは、近親繁殖は困るから減らした、近親繁殖を避けるために五頭にするといっておいて、これを減らしておる。こういう点などはばく然とした数字では納得ができない。これは価格の上でもはっきりしています、為替のワクを余すのならはっきりしていますが、近親繁殖で雌を多くしたということはどうしても認められない。
  159. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 私の方ではこの程度ならいいと思っておるのであります。なお資料として、あとで数字について一応の試算をしてお示しいたしたいと思います。
  160. 神田大作

    ○神田(大)委員 関連して。畜産局長にちょっとお尋ねしますが、種畜の問題であなたは、雌の種畜であるということを言っておられましたが、家畜改良増殖法の第三条には、種畜とは雄をいうとはっきり明文化してあるのですが、この点についてあなたはどうお考えですか。
  161. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 家畜改良増殖法には、「この法律において種畜とは、牛、馬その他政令で定める家畜の雄であって、」ということを、この法律としてはそうしております。
  162. 神田大作

    ○神田(大)委員 しからばあなたたちは、法律によって雌だの雄だのの定義が異なるのですか。
  163. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 それぞれの法令によって定義を変えております。
  164. 神田大作

    ○神田(大)委員 しかし種畜というものは雄をいうというのです。あなたが言う、いわゆる畜産局の通達によるところの種畜というものは、増殖を目標にしている、家畜改良増殖法に基く種畜であるのだから、明らかに種畜というものは雄ということに定義がはっきりとしておるのであります。それを何とか言いのがれようとして、雌だの雄だの、雌でも種付できるだろう、そういう言いわけをするということははなはだけしからぬと思う。そういう点についてはあなたたちは、実際間違ったら間違ったとはっきりと言うべきなのを、われわれがしろうと——私はしろうとですよ。しろうとですけれども、こういう法文にちゃんと明瞭に出ているものまでも何とかして言いのがれするという、そういう心構えははなはだもってけしからぬと思う。その点についてはっきりと君は弁明していただきたいと思うのです。
  165. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 輸入公表の中には、種畜にあっては改良技術、施設及びその種畜を十分に活用する能力とかあるいは家畜の種類及び品種には輸入家畜の改良及び品種は農林省畜産局が定める畜産振興計画に適合する(別紙)でなければならない、そういうのがあるのでありますが、この家畜改良増殖法というのは種付を効果的ならしめる、すなわち雌を持っていって交配してもらうために、その種がまずければ不測の損害を与えるから、この種畜の雄を優良性を確保することを目的としておる法律であります。従いましておしかりがありますけれども、たとえば種馬統制法というのが昭和十四年にありますが、この中では、馬の改良増殖をはかることを目的として、政府は優良種牡馬たるべき資質ある馬を選定するというようなこともあります。それから、これは古いところから順次申し上げますれば、明治二十九年の種馬牧場官制による種馬牧場では種牡馬を多数つないでいた。それから大正、昭和とずっといきまして種畜あるいは種馬の中には両方が入っておるのであります。従いましてこの家畜改良増殖法だけを取り上げてそう言われても、全体のことをさすことにはならないと思うのであります。
  166. 神田大作

    ○神田(大)委員 あなたがどうしてもそういう強弁をするのでは、私はきょうはこれで終りにしようと思ったのだが、またあとでゆっくりとあなたとやります。それで、十分か二十分という時間の制限がありますが、あなたが種畜というものは雄をいうというこの法律を、どんなに弁解したってこの法律は直らない。種畜というものは家畜改良増殖法に基く種畜なんです。それは、河野農相がいわゆる種畜として輸入したというのは、家畜改良増殖法に基く種畜とするために輸入した。だからこの法律に当てはまらなくちゃならない。この法律では種畜というものは雄をいうということがはっきりしているのに、それでもあなたがいろいろと弁解をするなら、私は質問を通告してありますから、あとでゆっくりあなたにいろいろ話を聞きましょう。  それで、それに関連して通産局関係の方にちょっとお尋ねしたいのですが、輸入貿易管理規則第五条に基いて外貨の割当申請を出すのだが、その申請書が出ているかどうかをお尋ねします。
  167. 日比野健児

    ○日比野説明員 今の御質問、今度のあの馬の場合でございますか。
  168. 神田大作

    ○神田(大)委員 今度の馬の場合の外貨割当。
  169. 日比野健児

    ○日比野説明員 申請書は出ております。外貨資金割当の……。
  170. 神田大作

    ○神田(大)委員 今度の河野農相が持っておるといわれるサラブレッドの輸入外貨の割当の申請書が出ているかどうか。
  171. 板垣修

    ○板垣政府委員 サラブレッドの分については出ていないわけです。
  172. 神田大作

    ○神田(大)委員 河野農相は、私の質問に対して、この申請書を出しておる申請人はだれかといって聞いたら、日本中央競馬会であるという答弁をこの前あなたはしておるのです。通産省の答弁とあなたの答弁と食い違っておりますが、どうでしょうか。
  173. 河野一郎

    ○河野国務大臣 昨日芳賀さんからお尋ねになりましたように、それについては十分調査をいたしまして、間違えるといけませんから、お答えいたしたい。こう申し上げたわけであります。
  174. 神田大作

    ○神田(大)委員 そうすると、この間私が質問したことに対し、日本中央競馬会が申請人になって外貨割当をしたということは、それはどうなんですか。
  175. 河野一郎

    ○河野国務大臣 そういう点だと思うのでありますが、また間違えるといけませんから、よく調べてお答えいたしたいと思います。
  176. 神田大作

    ○神田(大)委員 通産省関係にお聞きしますが、それではトロッターの申請書に品名、型あるいは銘柄というものを申請書には書くことになっているのですが、この型と銘柄は何と書いてありますか。
  177. 板垣修

    ○板垣政府委員 申請書には書く必要がないわけでございまして、申請書にはライヴストック、すなわち家畜たる馬ということになりまして、そのうち約三十頭の馬を入れるということになりまして、それに対して十万ドルの外貨割当をしたわけであります。従ってただいまのサラブレッドの問題につきましても、申請書はありませんが、割当の範囲内において買ったわけでございます。
  178. 神田大作

    ○神田(大)委員 これが一番大事なことなんです。輸入貿易管理規則の第五条に、輸入管理令第九条第一項の規定によって、別表第四に定めた様式によって外貨割当の申請書を出さなければならぬということが書いてあります。この別表第四には、型と種類を書くことにちゃんとなっているじゃありませんか。あなたは専門家だから、そんなことはわかっているはずです。
  179. 板垣修

    ○板垣政府委員 ただいまの答弁はやや間違いましたが、私の申し上げましたのは、外貨割当につきましてはそういうふうになっておる。従って外貨割当の前提となる申請書は出ているわけであります。
  180. 神田大作

    ○神田(大)委員 そうなっておっても、それを書いていない。あるいは書いてあるとすればどういうふうに書いてありますか。お尋ねします。
  181. 日比野健児

    ○日比野説明員 申請書につきましては、「品名」「型および銘柄」「数量および単位」全部入っておりますが、実際に割当をいたしますときには、従来の慣行によりまして、品名の点だけドメスチック・アニマルでありまして、あとは為替割当金額が十万ドル、こういう二つの欄だけ打ち込むのが従来の慣行になっております。
  182. 神田大作

    ○神田(大)委員 これはどうも、書くことになっているのに従来の慣例で書かないという、そういう解釈の仕方はないと思う。法律でちゃんときまっておって、書くようになっているのを書かないで、それを慣例で書かないという、そういう解釈はわれわれは納得できない。しからば、外貨割当するときに、これに発注書というものがついているわけです。発注書には品名と型というものが書いてあるわけですが、それには何と書いてありますか。
  183. 板垣修

    ○板垣政府委員 ただいま申し上げました通り、申請書には今御指摘の通り、品名、型、数量が出ているわけであります。その「品名」は「実畜たる馬」、「型および銘柄」は「馬」、「数量および単位」は「約三十頭」ということになっております。外貨の割当につきましては、慣例といいますか、ただいまの御質問とは趣旨が違うわけであります。
  184. 神田大作

    ○神田(大)委員 今の答弁はまことに聞き捨てならぬ答弁です。重大問題です。あなた方自分が法律を忠実に実行し、しかもそれを見守らなければならぬ立場の人が、法律をごまかすことを認めるような、そういう態度であると思う。品名が馬であるといって、型、銘柄が馬であるという、そういうばかにした話がどこにありますか。一体実際それにそう書いたかどうか、その発注書を出して、見せてごらんなさい。そんな詭弁を弄してはいかぬ。
  185. 板垣修

    ○板垣政府委員 法律をごまかすと言われますが、決してそうでない、法律通りにやっているのでございます。ただ品名、型等の書き方は従来そういうふうになっているわけでございます。
  186. 神田大作

    ○神田(大)委員 これは品名と型と銘柄と、こういうことをここに書き入れることになっている。品名は家畜である馬、型にはその種別を書かなくてはならぬ。それをどうして種別を書かないのです。一体型と品名というものはどういうものか、それから聞きましょう。
  187. 板垣修

    ○板垣政府委員 それはものによりましては非常にこまかく型を書くこともありますし、馬のごとく税関のコード・ナンバーになっているのは、大体馬ということになっているのが従来の慣行であります。
  188. 神田大作

    ○神田(大)委員 そういうことを言うなら、もっとずっと聞きます。時間の制限なしにやりますよ。型と品目をあなたたちは馬でいいというなら、競走馬を輸入してはならぬということをどこであなたは見分けます。それを聞きましょう。
  189. 板垣修

    ○板垣政府委員 競走馬を入れるとか入れないという問題は、馬の場合には通産省と農林省とで編成をしております割当会議の内部基準でございまして、ことに馬のような問題の場合には、主務官庁が指導をいたすことになっておるわけでありまして、外貨割そのものの形式は、従来通りこういうような形になっております。
  190. 神田大作

    ○神田(大)委員 あなたの言うように法律第五条を解釈すると、品目も馬である、型も種類も馬である。それでは競走馬を割り当てないという区別がつかないじゃありませんか。それはどうするのです。
  191. 板垣修

    ○板垣政府委員 先ほど申しましたように、ものによってはこまかいのもありまするが、家畜については従来こういう慣例になっておりまして、その内容について、ある一定時期においていろんな事情で、たとえば競走馬を入れないというときには、主管省である、馬の場合には畜産局が主になって指導をするということで処理をされておるわけでございます。
  192. 神田大作

    ○神田(大)委員 あなたの答弁ではどうしても納得いかないのです。品名も馬である、型も種類も馬であるということであれば、外貨の割当を競走馬にやってはいかぬという場合に、あなた方はそれをどこで区別をするのです。あなたが言ったように、ものによってはいろいろこまかく書くが、馬の場合には型も馬、品名も馬、そういう理屈は世界広しといえどもこれでは通らないでしょう。これはどうですか。
  193. 板垣修

    ○板垣政府委員 これは法律に違反しているわけではございませんが、従来の慣行でございまして、特に日本の輸入制度上絶対に入れてはいけないというものははっきりと書かれまするけれども、馬の場合の競走馬を入れていいか入れていかぬかという問題は、そのときどきの外貨事情なり、あるいは畜産行政上の問題でございまするので、それはそれぞれ主管省においてそのたびごとに行政指導をすれば足りるという意味で、こういうことになっておるのでございます。(「了解、了解」と呼ぶ者あり)
  194. 神田大作

    ○神田(大)委員 了解ごころの候じゃない、これは。  それでは、通産省農水産課の通達というのをあなたたちが出しているのですよ。あなたたちが競走馬は割り当てしないということを通達してるのですよ。その通達に違反してもいいということですか。競走馬も馬であれば輸入してもいいということになれば、あなたたちは自分で作った通達に、自分で違反するということになるのですか。
  195. 板垣修

    ○板垣政府委員 その点はいいとは申し上げてないのでありまして、私どもも、前に御答弁申し上げました通り、当初においてはトロッター種が入るものと了解しておりました。しかしその後畜産局の中で外貨の余裕が生じたので、種馬たる競走馬を若干入れるということに変更されました。その際当然実は農林省から私どもの方に連絡があるべきでありますが、この行政上の連絡がなかった点ははなはだ遺憾でございまするが、これはときどきある行政官庁内部の連絡不十分の問題でございまして、私ども事情を聞きましてやむを得ないと考えておる次第でございます。
  196. 神田大作

    ○神田(大)委員 連絡があるないじゃない。あなた方は協議をしてこれをやらなければならぬ。農林省の畜産関係の人と、通産省の通関関係をやっているあなた方が話をし合って、割当をするのです。連絡があるも連絡ないもないじゃありませんか。しかも種別のところに馬としか書かないで、勝手に割当をする。こういうことでは輸入しちゃいかぬというような競走馬でも何でも入れられても、あなた方はぐうの音も出ない。自分で通達したものを自分で守らないで、それでもあなたたちは法律に違反していないと言えるのですか。
  197. 板垣修

    ○板垣政府委員 今度の場合を申し上げますと、さきにトロッター用として十万ドルの割当がきまったわけで、これは農林省と通産省で編成しておりまする割当会議できまったわけでございます。その割当後において、買付事情にかんがみて余裕ができた。従って、その主管いたします畜産局で二、三頭種馬たるサラブレッドを入れるということにきめられたわけでございまして、その際は一応会議にかけるか、あるいは連絡すべきであったわけでございますが、その点の連絡が不十分であったわけです。
  198. 神田大作

    ○神田(大)委員 それではあなたたちは発注書並びに申請書に種別、種類を書かないで、そうしてトロッターを輸入するんだという話は聞いたけれども、外貨が余ったので、あとでサラブレッドにした、そういうあとで余ったので直すという、その直す場合に正規の手続を経ないのは、これは外国為替管理規則の第五条に違反する。それではだれでも、余ったらいつでも勝手に輸入していいということになる。これはこの規則に完全に違反すると思うんです。それをあなたたちは違反しないように何とか言いのがれしようとするから、私もしつこくなるので、あなたたちはどうしても違反しないと言うのならば、委員長に時間を催促されておりますから、この次、大臣によく聞いていてもらって、やることにします。
  199. 淡谷悠藏

    淡谷委員 今の沖田委員関連質問に見ましても、この問題は決して来るところに来ておりません。農林大臣は昨日あっさり頭を下げたと思ったら、為替管理についてはなお詳細に調べた上ということで、ただ他人に馬を譲ったというだけで、いわばスカーレット嬢に対する告別のあいさつにすぎなかったという気がします。これは十分追究する必要があると思う。あなたは馬を譲ったという告別のあいさつをされた。しかしほんとうの為替管理に対する問題はきまっておりません。あなたは調べてから答弁すると言っておる。ことに先ほどから競走馬並びに農耕馬の能力その他の点につきましては、局長自身が資料を提出すると言っておりまするし、要は畜産局がこのサラブレッド種三頭をどういう観点から種馬と認めたのか、この点についてもう少しつきとめなければ、問題の本質に触れませんから、きょうは時間がないといいますから、私は残余の質問を留保いたしまして、きょうだけはこれで打ち切っておきます。
  200. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 本件に関しましては、後日適当な機会にあらためて質問を続行することにいたしたいと思います。     —————————————
  201. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 ただいま日野吉夫君から、はえなわ漁業に関する緊急の発言を求められております。これを許します。
  202. 日野吉夫

    ○日野委員 農林省は二月二十三日に中央漁業調整審議会を開いてその答申を求めて、従来自由漁業であったはえなわ漁業を許可漁業にするという方針を明らかにし、農林省の試験場等の発表によって有望であるということを見て、すでに完全に準備して操業しようとしていた漁民に重大なる衝撃を与えて、これが大きい漁業問題として騒がれていたことは御承知通りでありますが、水産庁もこれに対していろいろ研究をし、その後若干の方針の変更等もあって対応しようとしておる、こう承わっておるのであるが、漁期ももう迫っておる。これ以上遷延することはますますこの問題を紛糾に陥れることになるので、この機会に水産庁がどういう方式で今年の操業をやらせるつもりか、一応の方針を承わっておきたいと思うのであります。
  203. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 サケ、マスの延べなわ漁業につきましては、昨年末あたりの状態では、今まで出ておりました東北の母船以外は出るような模様を私どもの方は承知しておりませんでしたけれども、一月になりましてから、ことに北洋の母船式漁業への独航船の繰り上りの問題が起りまして、そのために船の許可を委譲した人々が相当に出てきまして、それがはえなわ漁業へも動きたいという空気が盛り上りますのと、一方この漁業は相当なれた漁業者でないと、また小さな船でないと、専門家に言わせますと採算的ではないのでございますが、サケ、マスが非常に有望な漁業だという空気と声が非常に広範にわたりましたために、各地でその準備を始めてきたというふうな状態でございます。そして二月になりましてからも、その準備の状態等も危険なので、県の部課長を集めまして意見を聞きましたが、そういうふうな過程を経まして、サケ、マスのはえなわ漁業につきましては、現在の主漁場において、サケ、マスの流し網漁業者が千ばい以上も操業しているという状態もございますので、それとの調整もございますし、またその系統の資源は太平洋のまん中を北上いたします資源とは別で、それほど資源量が多くないという状態もございますしいたしますので、これを許可漁業とするのが適当ではないか、こういうふうな形で中央漁業調整審議会の意見を徴したわけであります。その結果中央漁業調整審議会においては、十トン未満のものは、これは沿岸性のものであるから別に許可制をとらなくてもいいだろう、十トン以上のものを許可制にするというようなこと、それから上の限度は四十トンが適当であろうけれども、その点についてはもう少し技術的に水産庁の方で検討してみてきめた方がいいだろうというようなこと、それから許可すべきものは、はえなわ漁業のほかに、ひきなわを入れるのが適当であろうというようなこと、許可につきましては、実績船については当然認めるべきものであるけれども、できるだけ沿岸の漁業者、ことに漁業組合等がやりますもの等については、あまり過剰になることは好ましくないけれども、ある程度認めてはどうかというふうな答申がございまして、その後各県の状態その他をずっと検討しておりまして、最近サケ、マスの流し網漁業の取締り規則を一部改正いたしまして、はえなわ漁業を十トン以上のものを許可制にしたいというふうな中央漁業調整審議会の答申の線に沿いましてやって参りたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  204. 日野吉夫

    ○日野委員 今の説明で大体はっきりした点は、十トン以上は農林大臣の許可とする、十トン以下のものは府県知事の許可にするか、あるいは自由操業にするか、その点はまかせたのですか、それとも五トンまでは自由操業に一して、十トン以下は府県知事の許可事項にするか、その点どうなんですか。
  205. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 十トン以上のものは、総括的に府県の規制にまかせるということでございます。船鑑札等の関係がございまして、府県の方で事務手続上、府県が規制する場合も、ほかの方の漁業等も見まして、五トン未満のものについての規制をしないような場合もございます。そういう問題がありますから、一括して府県知事の規制の方に一任しております。
  206. 日野吉夫

    ○日野委員 そうして制限した場合、完全に準備をして出漁しようと思っておる漁船は、水産庁の調査ではどのくらいあるのか、そのうちどのくらいが操業ができて、どのくらいが操業不能に陥っているのか、その点を一つ明らかにしてもらいたい。
  207. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 準備船につきましては、これは調査方法が非常にむずかしゅうございます。それで各県で業者の方から準備したというものを取り次いで参りましたものはございます。これは準備をどの程度したかという点については、県の方でもはっきりとつかめない。たとえばえさを買ったといっても、漁期全体のものを買っておるか買っていないか、また買っていないけれども、準備をしておるのだというようなものもありまして、県でなかなか把握ができないわけです。それがきちっと把握ができますと、われわれの方でも方針がきめられやすいのですが、その方も県と再三打ち合せたのですが、非常に困難です。現在県の準備がきちっとできたというふうな立場ではなしに、ある程度のそういう心がまえで、ある程度のところで出たいと言っている希望船、そういうものと、それからほんとうにあらゆる準備をしたものと両方ございましょうが、私どもの方では、まだきちっと準備をしたというものを正確に当り得ません。それで希望船の方を申し上げますと、約千百ぱい、あるいはその後に幾分の増減があるかもしれませんが、大体千百ぱい、これは今まで行きました実績船約百ばかりを含んでそのくらいになっております。
  208. 日野吉夫

    ○日野委員 中央漁業調整審議会でも秘密会か何かで補償の問題がやかましく話が出たということですが、制限をされて操業不能に陥ったものに対する補償について、水産庁は何か考えておりますか。その案がありましたら……。
  209. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 水産庁の方といたしましては、これはもし情勢が非常に早くわかっておるとか、われわれももうちょっと触覚を十分に持っておって、ともかく見通しとしまして昨年中にも早く手が打てれば、漁業者にもそう御迷惑にならなかったかと思いますが、先ほど申し上げましたような形から、四十八度以南の流し網の船が独航船に繰り上った関係でその船が残った、その点も加わって、それから各県の試験場等で北洋の鮭鱒がもうかるという声か非常に広く広がったために、本年になってから急速に出た関係で、われわれの方としては現在やっている漁業者との調整も考えなければならぬという点で、非常に立場は苦しかったわけですが、許可制をとったというような経緯から見まして、十分に準備をやりつつあるような漁業者に対しては、これは実損害が生じないようにできるだけの努力はいたしてみたい、こう考えております。これはできるだけの処置——ただ具体的には船を改造したというふうな部分とか、あるいはえさを買ったとか、なわはまだ作っていないけれども、綿糸の糸を買ったとかいろいろな実態はございましょうから、これは県当局等とも十分検討した上で、実損害が生じないような万全の処置をとりたい、こう考えております。
  210. 日野吉夫

    ○日野委員 実損害の生じないような万全の処置というばく然としたことですが、大体これは漁業法の六十五条による漁業調整の規定でやったのだろうと思うのですが、この規定は「主務大臣又は都道府県知事は、漁業取締その他漁業調整のため、左に掲げる事項に関して必要な省令又は規則を定めることができる。」それでこれらの条項があげられている。これは罰則を伴う省令になるわけだが、当然これは自由漁業でやり得るのだから、準備をして漁業をやろうと思っているところに、突如として、今の説明でも明らかだが、制限する必要がある、しかし制限する必要は水産庁長官説明ではあまり明確ななにがない。憲法に認められた自由漁業の権利がここで重大なる制限を受ける。しかもこの六十五条の関係では、農林大臣は「第一項の省令を定めようとするときは、中央漁業調整審議会の意見をきかなければならない。」とあるが、それならば審議会の意見を聞けば自由にやってよろしいか、こういうことの問題が起るわけでございます。これをこの通りに解釈していくと、何でも審議会の意見さえ聴すればできるように表向きは見えるけれども、これは重大な一つの権利の侵害になるのであって、しかもあなた方がやったのは二月の二十三日に中央漁業調整審議会を開いて、二十七日にはすでに中止の通達が出ているはずであります。こうして全く寝耳に水に、漁業者に対して一応これをやるとするならば、重大な損害を与えないような処置をとるというけれども、明確な補償の方式をきめておかなければならないのではないか、こういうことで、いつも大臣の権限でもって、憲法が保障する国民の自由権が剥奪される、こういうことになるならば非常に危険なことであって、この六十五条の規定というものは官僚の独裁に陥らないために調整委員会という項を設けてあると解すべきであろうと思うのであります。こういう案件はことしの一月ごろというなら、去年中からよく周知徹底せしめて、用意をしないところであればよろしいが、この準備をしてもう発足しようとしているときに、突如としてこうやられるということになれば、当然これは損害を見て補償してやらなければならない義務があると思う。これは憲法がまかせた大きな大臣の権限であるか、権限が大きければ、その裏には大きな義務がある、その義務履行に対する補償の方法として、できるだけ実損害のないように考えてやろうというよりなことでは、きわめて不十分であっし、生業というものが非常に不安にさっされると思うが、長官はこの損害を当然補償しなければならない、こういう観念に立っているのか、できるならばしたいという考えに立っておるのか、この点は一つ大臣から伺っておきたい。こういうケースのものは今後も起り得る、それに対し大臣として損害補償をどうするか。
  211. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お説の点は実は前年の出漁引き揚げ後に、直ちにこの処置がとられれば私は妥当であったと思うのであります。ところが遺憾ながらただいま長官から御説明申し上げました通りに、今年の出漁の形態を多少変えましたために、そこに多少の余裕もあるやに思われる人ができてきた、そこでそういうものを計画される人もできてきたというような誤解もあったと思うのであります。そういうことでございますが、事情のいかんはともかくといたしまして、準備をせられて、それが実損害を与えるということになればおのずから考えなければなりませんが、行政指導の面におきまして、できるだけ損害を不当に与えないようにしていきたい、そうして最後にどうしても具体的にこれだけの損害が起ってきたということになれば、それはそのときに当然考えなければなるまいと思います。
  212. 日野吉夫

    ○日野委員 今大臣の答弁されるように時期的にもこれは水産庁に大きな手落ちがあった、もっと早ければ損害を少く済ますことができたが、出漁直前になってそういう処置をすることになったという点に水産庁の大きな責任があったと思う。  もう一つはこれはもっと妥当な理由、独航船に繰り上ったという理由、乱獲、魚族保護というようなことは大きな理由になるが、水産庁は従来鮭鱒漁業については乱獲ではないという一点張りで通しておるはずであります。そうなれば憲法の規定する自由権を制限し得る場合は、公共の福祉に反するという事情がなければならぬはずであるが、今の理由ではどこにも公共の福祉に反すると主張される根拠がないと思うが、あんたはどう考えるか、この点を……。
  213. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 この条文は先ほど御指摘になりましたように、漁業法の六十五条でございますが、主たる理由はここに書いてございます通りに、「漁業取締その他漁業調整のため、」と書いてございますが、主たるねらいはやはり漁業調整なんであります。ここのところは、四十八度以南の流し網の漁場につきましては、母船式の漁場においては余地は相当あるわけです。昨年もあったわけです。しかしながらこの四十八度以南の流し網の漁業につきましては、千四百隻の許可がございまして、非常に過剰でございまして、その漁業者の方からできるだけこの過剰な状態の漁場から母船式の漁場へ転換をさせてほしいという声は非常に強かったわけで、この漁場につきましては過剰になっていたということだけは言えると思います。そのうちの相当な部分を母船式の漁業の方に、資源的に余裕のありますそういう方と転換させたわけでございます。しかしながら転換させたといっても、過剰の状態を十分に救い得ない状態で、おそらく千隻前後のものがなお残るというようなところへ、サケ、マスはもうかるというようなことで、ここのところ漁夫の方も非常な苦況にありますから、そういうふうなものにひかれて、たくさんの船が殺到しますれば前よりももっと操業状態は悪くなる。そういう危険もありますので、既存の流し網の漁業者の千何ばいというものとの調整は当然はかりませんと——少量の船が出るくらいで済むならば、私の方としては自由漁業として放置しておいても危険はないと考えられますけれども、そういう状態でないのですから、それは近い数が出るという危険も生じたわけですから、漁業調整上の必要で、それを六十五条によりまして規則をいたしたわけであります。
  214. 日野吉夫

    ○日野委員 漁業調整上の必要は認められるけれども、漁業者にとってみれば、これは重大なる権利制限であり、自由権の剥奪であります。漁業者にとっては、従来自由操業であった地域が許可漁業ということになると、権利の剥奪になるのであるから、これをやるためには、もっと明確なる理由と、もう一つは今のような、時期的に十分な準備をしてやるのでなければ、これはやり得ないことであって、もしそれを調整上の必要でやらなければならぬとするならば、結局明確なる損害補償を用意しなければならない。要は、この漁業者というものは善意の漁業者で、何らの過失なしに今日権利を剥奪される。漁業者からいえば善意、無過失であります。これをただできるだけ損害を少くしてやりたいということで臨むならば、これは将来重大なる禍根を残すと思うので、いずれこのことについては何とかきめなければならぬと思うけれども、明確なる損害補償の方針——糸あるいは網あるいは中にはチャーターをして用意しているものもあるだろうし、船を修繕してこの準備をしているものもあるであろう。これらの損害を明確に補償するという一つの方針をきめて臨まなければ、これは重大なことになると思うが、その補償の用意——先刻の答弁では、できるだけ補償を考えるというが、それ以上何かの補償の用意があるのかないのか。府県と相談してどうにもならなかったということで、あなたは無補償でこれを食い逃げするつもりじゃないか、そういう点に対するあなたの決意のほどを一つ伺っておきたい。
  215. 河野一郎

    ○河野国務大臣 先ほど私からお答えいたしましたが、今水産庁長官からもお答えいたしました通りに、元来四十八度線以南の漁場における漁業は、昨年の事情も十分御承知通りでありますが、ああいう事情で漁獲をいたしますと、結局共倒れになる、みながよくないという事情になるわけでございます。そういうふうで、表面から解釈しますれば、私が申し上げました通りに、こういうものを制限する場合には、前年度の漁期の終了後に、来年はおよそこうでございますよということを言えば、おそらくそういう問題は起らなかったであろうというのでございます。しかし、この漁場が引き続き前年通りであったとすれば、あれだけのたくさんの人が行っておられたのでありますから、今年も行こうという人は、おそらく少かったであろうと思うのであります。ところが、これが今お話がありました通りにオホーツクの方にそのうちの一部の人を独航船として転換されるようになった。そういう転換するようにいたしましたことは、昨年度の現状をもっていたしましては妥当でありませんから、そのうちの一部の人がオホーツクの方に転換されたので、あれをあの程度にそのままにしておくならば、十分ではございませんけれども、まあまあがまんのいくように幾らかなるのではなかろうかというように、実は改善を企図してオホーツクの方に転換したのであります。ところがこれを転換されたのに対して、一部の業者の方々がまたその間に入っていってやられるということになりますと、これをそのまま放置すれば、結局非常にたくさんの人が共倒れになるとか、漁業がそこで混乱をするとかいうようなことになりますので、やむを得ずこれを制限せざるを得ない状態に立ち至っておるということは御承知通りと思うのであります。これを、全然この処置をとらないで、そのまま干そうにもなるような人があそこの漁場に参りまして漁業に従事するということになれば、おそらく私はことしは大混乱を来たすことになるだろうと思うのであります。従って政府といたしましてはやむを得ざる処置に出たものである。既存の漁業者の立場も保護をし、漁場の整理もいたさなければいかぬというやむを得ざる処置である、この点は御了承いただけると思うのであります。しからば、そのやむを得ざる処置をとるに当って、制限する時期も実はおくれておる、それによって準備をした人もあるという事実は、事実としてあるのでございますから、これらの方方に対しましては、今後の教育指導もしくは御相談もいたしまして、その準備をされましたものが損失にならないように十分御協力申し上げて、そうしていたしたい。しかしどうしても損害が起ってきてどうにもならないというようなものに対しましては、そのときに考慮いたしたい、こう私は考えておる次第でございますから、その点を御了承いただきたいと思います。
  216. 日野吉夫

    ○日野委員 ことしのやむを得なかった事情については一応の了解ができるけれども、しかしこういう問題に対しては、重大なる権利の侵害が伴うので、補償を十分考える。もう一つは、公海自由の原則についてはもっと重大に考えてもらわなければ困る。現に日本が李ラインの問題で、操業の自由が奪われるということに対する抗議をしておる。ビキニの水爆実験に対しても、漁業者の出漁の自由をたてにとって、主張をしている。北洋の今度の問題等も、これはあとで審議をしなければならない問題ですが、これらの問題の交渉等にも当然に公海自由の原則をたてにとっていかなければならぬとき、国内で簡単にこういう国民の基本的人権が侵害されるというようなことになると、これは筋が通らないばかりじゃなしに、これによって起る幾多の損害、政治的な問題等も起るので、これは十分一つ自由権を尊重する建前において補償の完璧を期し、そうして今後の漁業の問題に対処するの用意がなければならぬと思いますので、私などはできればこの機会に、委員会の皆さんの賛成を得て何らかの決議をしおきたいと思うのであります。今度の事件に対しては、特に水産庁の天鷹丸の試験の成績の発表、水産時報等の配布の禁止等、いろいろあわてたような格好もあり、漁民が納得できないものがあるので、これらの点については後日十分論議いたしますが、この重大な問題をそう簡単に考えることなく、補償の点は十分配慮されんことを希望して、質疑を打ち切っておきます。
  217. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 関連して。先ほど日野委員からの、サケ、マスの延べなわの許可をめぐる準備船の損害についての質問に対して、塩見長官から答弁があったのでございますが、準備船というのは文字通り準備船でありますが、準備船の中にもいろいろなケースがあるのじゃなかろうか、かように私は考えるのであります。たとえて言えば、今まで実際にやっておって準備をした者もありましょうし、それから流し網の権利等を売って船を持っておる、あるいは流し網も持っておるというような漁業者で、おそらく準備をしておる者も相当あるのではなかろうか、かように考えております。ところが準備船に対してはできるだけ実質的損害のないように、何とか考えていきましょうという長官の御答弁でありましたが、そういたしますると、いかなるケースの準備船であっても、やはり実質的損害を水産庁で責任を負って解決をつけていかなければならぬということになりますが、少くとも準備船といえども、流し網の権利等を売って船を持っておるからそれで準備をしたのだというようなケースは、実質的損害を水産庁でなくするような責任はないと私は思うのであります。と申し上げるのは、いやしくも漁業者たるものは、流し網に限りませんけれども、権利を持たなければ漁業ができないというはっきりしたことになっております。その漁業を経営するだけの権利を与えられており、また持っておる者がサケ、マスをとることをやめて、しかも権利を他に売って莫大な利益とかあるいは金といいましょうか、それをつかんだために、その資金をもってはえなわ漁業をやろうとすることは私は許すべきではない。かように考えております。そこでまずその流し網その他の権利を売って、そしてはえなわ漁業をやろうとする者に権利を許すのか許さないのか。もし許さないとすれば、その損害もやはりないようにしてやらなければならないという、長官の答弁のような責任も負わなければならないのでありますが、そういう者に対しては、実質的損害がかりにあったといたしましても、政府において責任を負うべきではないと私は申し上げたいのであります。なぜかならば、漁業権というものは漁業法によって賃貸も許されておりませんし、それから売買も許されておりません。しかるにその許されておらないところの法律の裏をくぐって売って、同じサケ、マスをとるというような者に対しては、許可も与えるべきではないし、実質的損害がかりにあったとしても、私はそれは補償すべきではないという意見を持っておるのでございますが、その点について長官はどう考えましょうか。今後そういう漁業権を売るがごとき不徳漢に漁業権を与えるべきではない、漁業もやらせるべきではないという強い意見を私は持っております。そうでないと、この漁業権を他に売って、その金をもうけたからまたぞろ別な漁業をやるということになりますれば、一体漁民はどうなるか。権利ということは売買が許されるということを頭の中に置かれたならば、あなた方の許可行政は法律がないとひとしいような考えに漁民がなってしまって、漁業行政の正しいわり方をますます破壊するということになるのですが、長官はこれについてどういうお考えを持っておりますか。まずその点を伺いたいと思います。
  218. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 そういうようないろいろな実態がございましょうが、それに対しては具体的な例をよく検討した上で対処したいと思います。許可の方針といたしましては、本年の許可を売らなければ出られたのに、その方が得だからといって権利を売ったようなそういう漁業者については、許可は、順位からいえば最もおくれた順位で出てもらわなければならぬと考えております。違反をやったような人たちはもちろん除外しなければならぬ。従来の許可の例によって処置して参りたいと考えます。
  219. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 それからそれに付随してもう一つお伺いしておきたいことは、流し網の権利を売ったという問題については、必ずしも漁民ばかりが責任を負うものではない。水産庁が、買ってこい、そうして補充すれば許可をしてやる、いわゆる独航船に繰り上げをしてやろうという方針をとったことにも、いささかこういう問題を起した責任があるのじゃないかということを、私は水産庁に申し上げたい。あるいはほんとうに権利を持っておってもやらないという漁民があるならば、これは行政庁ですべからく取り消すべきだ。まあ漁民の実情考えて親心で売らしたかもしれませんけれども、結局売った者がまたぞろいわゆるはえなわ漁業に出るというようなことにならしたのも、水産庁がそういう制度をとったからだとは私は思いますけれども、しかしそれを知っておって漁民が売って、そうしてその金でまたなわをやるというような者に対しては、それは今順位云々といっておるが、私は許可すべきではないという議論を持っておりますが、いずれこれはひざ詰め談判したいと思います。それから今、準備船に対してはできるだけ実質損害を与えないようにするということでありますけれども、このはえなわ漁業がどの程度に許可されるかわかりませんけれども、漁場の区域というものは流し網漁業の区域と重なるのです。従ってかつての流し網あるいは今年やるところの流し網漁業と必ず摩擦が起きます。この摩擦によって生ずる損害も相当大きいものだと私らは感じております。準備船に実質的の損害がないようにするということであるならば、いわゆる既存の流し網をやっておる漁業に対して損害を与えた時分には、当然これは国として責任を負うて補償の義務があるだろうと思いますが、この点について水産庁長官はどうお考えになっておりますか、お伺いいたします。
  220. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 既存の流し網漁業とはえなわ漁業との調整は十分考えておかなければならないと思います。はえなわ漁業者が新しく入っていって、流し網漁業者にいろいろな損害を与え、漁業上の紛争が起り得ることも考え得られます。それらの処理につきましては具体的な問題でございますので、やり方については関係府県関係漁業者とも十分相談してきめて参りたいと思いますが、被害につきましては、被害の内容、たとえば流し網漁業者の網を取っていってしまったとかどうとかいう問題ならこれは刑事事件になりますし、その内容等によりまして調整処置や解決方法等は考えなければなりませんので、これらは具体的ないろいろなケースを想定した上で、そういうことが起らないように、またそれが起りましても、当事者間で話し合うなりあるいは官庁が間に入って処理でき得るような事態を考えて進みたい、こう考えております。
  221. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 もちろん既存の流し網に損害を与えた場合には、長官の今御答弁になったような処置は講じてやらなければならないと思いますが、今までもやった例がある。これは現長官の時代ではございませんが、東北方面から北海道に独航船が流し網の密漁をしておった。こうしたようなことから騒ぎが大きくなりまして、これを調整しなければならぬということで、北海道で相当反対があったのを、松田委員と二人で相談をして、そこで密漁をやっておることは不当だ、しかしながらかつて食糧の不足の場合に、一にも増産、二にも増産、取れよ取れよで宣伝して奨励金まで与えたのであるから、この漁業を全面的に拒否するわけにいかぬということで、百五十隻入れたのでございます。ところが、相当調整上の注意もし、あるいは取締りもやったのでございますけれども、三十何隻かの違反者が出て、相当の損害を与えました。ところがその損害の要求に対して、わずか一割か二割しか責任を負う機関が補償しなかったという例がございます。従って既存の流し網の損害というものは必ずあることは明らかでありますので、この損害に対しては、ただ県当局と相談をしてしかるべく実際的の損害を与えないようにする、こう長官は答弁されますけれども、こういうことは漁師には徹底いたしません。県当局も、自分の県の船にはなるべくそういうものを出させたくないということで、いろいろやりますけれども、とにかくあとの始末に困るので、やはり逃げ足を使って政府に解決せよということでありますので、今度の準備船に対して政府が予算の中から出すとか、あるいは現在予算がないが予備費から出すといったようなことをお考えになるのでありましたならば、既存の流し網漁業に損失を与えた時分に政府責任を負うて、実質的損害のないような方法をとりますということを答弁してもらわない限りは、今さら決議案か何か出そうとしておりますけれども、まっ向から私は反対せざるを得ないのであります。どうか実質的損害を既存の流し網に与えないということをこの際長官から明確な御答弁を願いたいのであります。
  222. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 これは政府が与えるわけではなくて、そういう問題は流し網漁業者が不当な操業をやって与えるわけでございますから、それが与えないか与えるか、それは事実問題として解決しなければならぬ。できるだけそういうような状態にならないように指導をすると同時に、そういう問題は、今母船の漁業の中でも、違った母船間の独航船の間でも問題はございますけれども、そういう問題はやはり話し合いで調整を行なっております。そういう点について今度は初めての問題でございますし、業種も違いますから、なかなかむずかしい問題が内容的には起り得ると思いますが、そういう点は十分具体的に検討した上で、起らないようにするとともに、起りました問題についての解決方法について、できるだけの努力をして参りたいと考えております。
  223. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 独航船同士の損害があった場合には、これは解決がつきやすい。母船会社責任を負いまして、一隻から幾ら幾らという金を事前に集めておく。いわゆる独航船の負担を明確にいたしております。従って解決がつきやすい。この場合おそらく母船式漁業のように、はえなわ漁業から、そういう場合のことを考慮して負担金などを取っておかないでしょう。そういたしますと、個々の解決などはとうていできません。従って県自体が責任をとるような態勢をとっておくか、あるいは先ほど申し上げたように、政府がその予算を幾らか持っておって、はえなわ漁業者にも若干の負担をさしておいて、ここに一つの、損害を与えた場合の基金といいましょうか、こういうものを持っておってのことであるならば、長官の言われるように簡単に解決つきますけれども、私はなかなかそういうことにいかないと思っているのです。そういう摩擦のあった場合の解決のために、各漁業者から負担金を取らせる、あるいは水産庁がそういう措置に出なくとも、県にその措置をとらせるか、いずれかにしておかないと、かなり紛争が大きくなりますので、そういう措置をとる意思があるかないか、この点を御答弁願いたいと思います。
  224. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 紛争が起らないことが第一でございますから、それについて具体的に検討して、起らないように漁業者間の調整をはかりたいと思いますが、起った場合のことについては、具体的な問題について処置して参りたいと思います。たとえば府県に金を積むといっても他の府県の違反行為があったものまでも持てるかどうかということになれば、もちろん府県でそういう点は決断はできないでしょうし、紛争の内容によって、片方が非常に悪いのだという問題かどうかによってもこれは違ってきましょうから、母船のように簡単にはいきにくいと思いますが、それについては具体的に検討して、解決方法考えたい、かように考えております。
  225. 川村善八郎

    ○川村(善)委員 具体的、具体的ということを長官が言われますけれども、おそらく具体的にそういう問題が起きることは明らかだということを私は明言してはばかりません。従って各県から、少くもそういうふうな意思表示の書類をとっておくか、あるいは何かしら処置をとるというお考えなのかどうか、この点を最後にお伺いしておきます。
  226. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 各県の方も今度の出漁についてはいろいろあっせんもし、指導もしてもらわなければならないのですから、そういうふうな紛争の処理については、行政庁としての責任は十分とってもらうように話したいと考えております。
  227. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 松田鐵藏君。
  228. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 ただいままでいろいろと議論をお聞きしておりますと、非常に一方的な議論ばかりされておるようでございまして、私どもは、党内において調整ができ上ったものでありますから、その線に沿うていかなければならないと考えておりますが、どうも質問する者も、答弁する長官においても一方的にのみ考えているきらいが多いのでございます。この点をはっきりと是正しておかなければならないものではないかと思っております。第一に自由漁業、基本的人権の擁護ということをいって、憲法である、法律である漁業調整であるという議論もありました。しかし、はえなわ漁業のみの立場において、憲法、法律を主張されているようでございますが、こうした考え方でいったならば非常な誤まりであると考えるのでございます。憲法あり、また法律あり、しかして法律の中で一番大事なものは漁業調整でなければならないのでございます。長官はこのところに留意をされていかなかったならば、将来起きるであろうところの紛争に対しての解決の道はつかないものと私は考えるのでございます。そこで川村委員からの議論である、既設の同種類の漁業との調整こそ、この漁業を許可する、または自由漁業にする、そうしたいろいろな点から見まして、一番大事なところであるのでございます。この調整ということに対しても、過般党内において調整ができたものでありますから、議論をすることを私は避けますが、ただここにおいて、既設の流し網漁業に対してどのような指導方針をとるか、長官の御意見をまず一点聞きたいと思います。
  229. 塩見友之助

    ○塩見政府委員 四十八度以南の流し網漁業につきましては、当初は母船式にいかないような沿岸性の漁業者がとにかく漁業をやるわけであるから、これは別な区域で沿岸近いところで認めるというふうな建前で認めたものでございます。その後の経過としましては、これらの漁業者もだんだんと資力を得るとか、船もやはり採算を考えて大きくするとかいろいろの形で発展して参りましたし、ことに採算等の関係から考えますと、これはやはり母船式のものに比べますと、魚の処理の点もそうでございますし、航海日数上の有効な漁撈の期間等についても相当の差が出て参りますので、できるだけ母船の方へ転換をさしてもらいたい、ことにあの漁場においては相当隻数が過剰であったという状態がありましたので、その声が非常に強いというふうな関係からして、本年度出ますものの許可につきましては、これの中から相当な部分を実力のあるような流し網の母船の方やオホーツクの方へ新しく転換を願う、こういう形でございます。筋としてはそういうふうな方向が漁業者も喜びますし、経済的な自主性にも合っておりますから、方向としてはそれが筋だと考えております。ただしかしながらそれがどのくらいのテンポで参りますかというふうなことになりますと、これは今後の国際的な関係だとか、操業の状態とかいうような点を考慮しながら考えていくべきものであって、今年度はあの通りといたしましたけれども、次年度の問題につきましては、今ここで具体的にどの程度というふうなことはお答えできないが、方向は、私はことしとりましたような方向が妥当ではないかというふうに考えております。
  230. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 先ほどの長官の御答弁の中にも、四十八度の流し網漁業は沿岸性の漁業である、かように申されておりますが、事実その通りでございます。ところが終戦後と今日との世の中はこれほどまで変っております。すなわち日進月歩でございます。その発展があってこそ国力も増すものであり、漁業もまた、当時は十トンから十五トンの船であったのであります。しかしておととしあたりのあの四百何十人も遭難したような事実がある。沖合いに、沖合いにという政府の指導方針もあり、かくして漁業が進歩してきておるのでございます。こういう点からいきまして、今日の流し網漁業はもはや当初の沿岸漁業でなく、沖合い漁業に進展して参ったのでございます。しかるに今日においてソ連の一方的な新聞発表によって漁民は今非活に驚いております。これに対しては政府は適当な措置をこられることであろうけれども、私ども考え方からいけば、今までの主漁場であった四十八度以南というものは、その大半があの線の中に入っておるものでございます。しかして今二百マイルないし三百マイルの沖合いまで行っている、この漁場の流し網がほとんど壊滅の状態にいっておる。そこにもって二百隻なり二百五十隻なり許可した、この延べなわを出すということからいったならば、これも党内で調整ができたことであるから私は今とやこう言うものではありませんが、非常にここに大きな考え違いがあることであろうということはだれしも指摘のできることであろうと思います。よってそこにおける紛争が必ずできるものであります。委員の各位は知っているか知らないかは存じませんが、大半はお知りになっていないことだろうと思います。流し網というものと、それから浮き延べなわというものとどのようになっていくかという具体的な問題は、私どもはみずからやったものでございます。かような点からいきまして、流し網と流し網とがひっついたときには、かりにこれがだんごになってもこれを解決する道は簡単でございます。しかして延べなわと流し網とがからまった場合における延べなわというものは、自由に一本をはいておりまして、それに枝なわがついておる。それに魚が食うと、その魚は生きておるものでございますから自由に動き回る、馬がひっぱられたら騒ぐように動き回るものでございます。それが全部針がついておる流し網に対してひっからまったときにおいて必ず針が流し網につくのでございます。そうした問題からいって、非常な紛争というものがここに起きることは明らかになっておるのでございます。こういう点に対してこれを許可するということに対しては私は不賛成でありましたが、党内の調整のついたことでございますから、これは今さら云々するものではありませんが、かくした場合におけるこの紛争をどのように解決するかということは、長官の先ほどの御答弁では、既設のもの——この部屋が自分の漁場であったとして、この中に他からどんどん、水産庁の許可だからといって入ってきておる、それによって侵害されて、そこでもって損害が起きるものに、ただ調整をいたしましょう、それの損害を出しましょうといったところで、なかなかそれは容易なものではないと思います。こういう点に対するはっきりした方途を今考えておかなかったならば、既設のものが非常な侵害を受けるわけでございます。先ほども言ったように、憲法からいって、法律からいって個人の自由であり、個人の基本的権利の侵害であるということで漁業調整の面からこれは割り当てていかなければならないものでございます。ましてこの漁場の中にどんどん入って侵害されたときにおいて、一方の四十八度の流し網というものの権利、また自分の操業の権利というものは常非に脅かされることになるのでございます。これに対してどのような方途を考えられるか。この点をよく今からきめておかなかったならば、とうてい問題は解決するものではないと思います。しかしこのことは今直ちに長官の御答弁を要求するものではございません。こういう点をよくお考えになってやらなければならないと考えるのでございます。この点に対する答弁は必要はありません。お考えおきをいただけばそれでけっこうでございます。時間がありませんから、この点は十分後刻御調査になって、方針を御発表願えれば非常に幸いだと存じます。
  231. 赤路友藏

    赤路委員 ちょっと長官にお願いします。今まで大体御説明を承わりました。しかし許可基準が非常に不明確である。それで鮭鱒漁業取締規則を改正するとするならば、一つこの許可基準を明確にしていただかなければならぬと思います。従って案ができましたら早速一つ御提出願いたいと思います。  それから海上保安庁の警備救難部長にお願いいたします。御承知通り、どちらにいたしましても、この船は大型のものでなしに、ごく小型のものになろうかと思う。特に北洋は気象の谷と言われるほど天候の急変するところでありますから、それだけにこの警備救難の計画については万全を期さなければならぬ。それに対しておそらく十体入るだろう隻数、あるいは押える芦ろうトン数の限度、こういうようなものがほぼ決定してきますならば、それと対応して警備救難の計画というものが当然立てられなければならぬと思う。そこで警備救難部長の方にお願いしたいのは、水産庁とよく御相談を願って、現在の保安庁で持っておる勢力の中で、どの程度これにさいて救難に万全の措置がとり得るか、これに対する御計画、以上二つの資料の御提出をお願いしておきます。
  232. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 本件に関する質疑はこの程度にとどめまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十二分散会