運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-03-08 第24回国会 衆議院 農林水産委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月八日(木曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 村松 久義君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 白浜 仁吉君 理事 助川 良平君    理事 田口長治郎君 理事 中村 時雄君    理事 芳賀  貢君       赤澤 正道君    足立 篤郎君       安藤  覺君    五十嵐吉藏君       伊東 岩男君    大野 市郎君       川村善八郎君    楠美 省吾君       小枝 一雄君    鈴木 善幸君       中馬 辰猪君    綱島 正興君       原  捨思君    本名  武君       松浦 東介君    松野 頼三君       赤路 友藏君    淡谷 悠藏君       伊瀬幸太郎君    井谷 正吉君       稲富 稜人君    石田 宥全君       小川 豊明君    川俣 清音君       田中幾三郎君    中村 英男君       日野 吉夫君    久保田 豊君  出席政府委員         農林政務次官  大石 武一君         農林事務官         (農地局長)  小倉 武一君         食糧庁長官   清井  正君         林野庁長官   石谷 憲男君  委員外出席者         農林事務官         (農地局管理部         長)      立川 宗保君         農林事務官         (林野庁林政部         長)      奥原日出男君         農林事務官         (林野庁林政部         林政課長)   奥田  孝君         農林事務官         (林野庁林政部         調査課長)   渡辺 喜作君         農 林 技 官         (林野庁業務部         長)      藤本 和平君         農 林 技 官         (林野庁業務部         業務課長)   田中 重五君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 三月八日  委員伊瀬幸太郎君及び神田大作辞任につき、  その補欠として安平鹿一君及び田中幾三郎君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員安平鹿一辞任につき、その補欠として伊  瀬幸太郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  開拓者資金融通法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三〇号)  公有林野官行造林法の一部を改正する法律案(  内閣提出第二七号)(参議院送付)     —————————————
  2. 村松久義

    村松委員長 これより会議を開きます。  開拓者資金融通法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。質疑を続けます。川俣清音君。
  3. 川俣清音

    川俣委員 きのう留保いたしておきました機械開墾に対する食糧庁の見解をお尋ねしたいと思います。機械開墾地域については、主として大麦、裸麦またはイモ類を植えて営農基礎にしようという説明でございます。しかもそり中には酪農地域として将来農民経済の基盤を酪農に置こう、こういうのでございますが、それにしましても消費価値のあるバレイショイモ類麦類を植え付けるというのでありますが、この機械開墾は短期間に土地を造成して、しかもそれを償還するというのがねらいでありますが、その償還基礎になります農作物価格が安定するかどうかということによって、機械開墾が可能か不可能かという問題が起きるということになると思うのです。そこで食糧庁は、農産物価格支持政策をどのようにとっておられますか、この点をお尋ねしたいと思います。現在の価格を維持できるならば、あるいはこれより低落しなければ採算がとれる、そして償還が可能だ、こういうことになっている。そこで果して償還ができるかできないかということが問題なんです。ところがイモ類は、政府買い上げてほしいということをやかましく決議いたしておりながら、これを放任しておる。さらに機械開墾をいたして増産をするというのだけれども、今ですら過剰だということで買い上げをちゅうちょしておる。しかも安く買うというような状態では、これは新しく機械開墾をやって、農地を造成して入植させるということは非常にけっこうなことだけれども採算がとれないということになると、せっかく金をかけた土地から離れていかなければならないのではないか、こういうことになりますから、食糧庁長官に、イモ類価格支持政策並びに大豆価格支持政策についての意見をお尋ねいたしたいと思います。
  4. 清井正

    清井政府委員 ただいまお尋ね機械開墾地におきます農業経営上の問題、主として換金作物の問題についての価格安定に関することでございますが、御指摘通り開墾地におきます作物価格の面、特に開墾地特質といたしまして、特に換金作物は必要である。しかも短期に収穫される作物についての価格安定が必要であるという点はおっしゃる通りと思います。私どもといたしましては、ただいま農産物価格安定法に基きまして澱粉類価格安定措置を講じておるのであります。その他採種等もやっておるわけでありますが、主として澱粉等価格の安定をやっております。この点につきましては、すでに御承知通り毎年法律に基く規定によりまして、一定価格を定めまして、これに基きまして生産されたところの澱粉買い上げるという措置を講じておるのであります。特に本年度イモ類が非常に増産でありました関係上、澱粉生産も非常に多量に上っておるわけであります。ただいま私ども予算措置としては、切りぼしイモ等澱粉合せまして約二千万貫の予算をもちまして、ただいませっかく買い入れをいたしておる最中でございます。買い入れ場所その他につきましても、できるだけ生産地に近いところに買い入れ場所をきめまして、もって澱粉市価の安定ということに努めてただいま実施いたしております。なお最近の事情によりまして価格安定の目的達成不十分な場合には、さらに必要な措置を講じたいと思ってただいまやっておる最中でございます。なおその他の作物につきましても、私どもとしては、開拓地特質から考えまして、開拓地における換金作物価格の安定には今後努力して参りたいと考えておるわけでございます。
  5. 川俣清音

    川俣委員 イモ類価格を維持する上に、澱粉価格低落を阻止していかなければならないということについては言うまでもない。大体でき過ぎて弱っておるというのが今の食糧庁の現状ではないのですか。その点はどうですか。
  6. 清井正

    清井政府委員 弱っておるというふうに申し上げてよいかどうかわかりませんが、大体昨年産のバレイショカンショ、特にカンショは非常な増産でありました。そのためにそれによって生産されるところの澱粉もまた非常に生産が増強されておるわけであります。ただ価格につきましては、御承知のように生産状況を加味いたしましたところの価格をきめてありますので、一昨年よりは若干低目に実はぎめてある状況であります。さらに相当増産がありましたために、現在の政府支持価格によって買い入れをいたしましても、実際の市価相当低目になっておるというような実情であるようであります。私どもとしては、本法の建前上、やはり一定価格をきめまして、政府が買う以上はその価格でもって澱粉価格を安定させるようにいたしていかなければならないと考えておるのであります。従いまして今度の措置につきましても、今後の澱粉市価状況を見まして適当な措置をしていかなければならないというふうに実は考えておるわけでありますが、さらにまた一方、申すまでもなく澱粉等消費につきましても、単に水あめ等の用途に限らず、ブドウ糖のようなものの生産を増強するとかいうような方法を講じまして、澱粉消費の面の拡大をはかっていく必要があるのじゃないかと思っております、とにかく私どもといたしましても、本年度の異常な増産に基く澱粉生産の増大、それに基く価格低落に対しましては、農産物価格安定法の精神に照らしまして、一定価格に安定させるように今後努力して参りたいと考えておるわけであります。
  7. 川俣清音

    川俣委員 今後の努力ではだめです。現在も低落しておる。それをなにらか措置するということであるならばよいのですが、現在低落して弱っておるのです。そうすると、これに手を打つところがないということになると、もうこれ以上の植付はごめんこうむりたいというような意向に聞えるのですよ。植付面積のふえることはあまり好ましくないというような感じを受けるのですが、この点はどうですか。
  8. 清井正

    清井政府委員 御指摘の点は確かにただいまございまして、地域にもよりますが、大部分の地域におきましては、政府の定めましたところの一定買い入れ価格よりも下っておるという実情であることは、その通りであります。私どもといたしましては、二千万貫程度予算をもちまして買い入れを今実施いたしておるわけでありますが、その買い入れ措置が不十分であるということのために価格安定の目的が達せられないというようなことがありますれば、さらに予定を繰り上げて買い入れを増強いたしますとか、あるいは買い入れ場所につきまして、さらに生産地の近くに買い入れ場所を設定いたしますとか、いろいろの工夫が現在でもあり得ると思うのであります。そこで私どもといたしましては、その辺の事情にかんがみまして今後の買い入れ数量予定量をさらに増強いたしまして、できるだけこれを大幅に大量に買い入れるということによって市価の維持安定に資するようなこともあると思います。その他ただいま申しましたような買い入れ数量の技術的な方法を講じまして、主として市価に刺激を与えるというようなことに努めていかなければならないと考えております。さらに根本的には、予算をもちましても不十分でございますれば、さらに食管特別会計予算措置におきまして、数量以上のものを買い入れます場合には考えていかなければならないと考えておるわけでありますが、その点は今後の市価の維持のために努力いたすというように考えておりまして、今後の事情によりまして適当な措置を講じていきたいというように考えております。
  9. 川俣清音

    川俣委員 今、市場価格よりも買い入れ価格が高いのだと言っておられますが、こんなことで満足しておっては何も支持価格意味をなさないじゃないですか。買い入れ価格を上回るようにすることが価格支持政策なんですよ。買うことが目的じゃない、価格を維持することが目的なんです。それを混同してはいけません。あなた方は商売人として買うのじゃないのです。そこで、市場価格を安定させるということに安定法のねらいがある。従って澱粉等買い上げを急速にやって、市場価格を上げていくというところにねらいがなければならない。だから、市場価格を引き上げるために買い入れ量を非常に増大する、二千万貫あるいは二千五百万貫まで買う、こういう声が必要なんです。それによって市場価格が安定し、適当なところに落ちついてくる。今の市場価格が低いということは、食糧政策がなつていないという証左なんです。市場価格より買い入れ価格が高いのだからこれで満足してくれなんて、とんでもない話です。そんな不安な状態にしておくならば、機械開墾なんてやめて、この法案を撤回した方がいい。そんな不安な中で、機械開墾なんてやれるものじゃありません。政府農作物価格が安定するような政策をとっておる、従って大いに入植してやろうじゃないかという機運が出てくる。これは法律では機運が出て参りません。イモ類にしても豆類にしても雑穀にいたしても、政府安定政策をとっているのだ、それならば犠牲を払って入植し、危険にさらされながらもなお営農を持続しようじゃないかという決意が生まれてくるのです。入植なんというものは非常に不安定なものなんです。従って、農作物価格を安定させていくという政策がとられているところにこそ旺盛な農業生産意欲が生まれてくる。ですから先に必要なことは、農民をして安定した価格のもとに営農にいそしむという機運を作り出すことが必要なんです。ただ機運ができただけでは現実に進行しないから、その裏づけとなるような法律案なり予算を出す、こういうことになる。一番基礎になってくるイモ類の不安定、あるいは大豆類の不安定をそのままにしておいては、機械開墾なんて考えられないですよ。せっかく国がこれだけ機械開墾に対して熱意を入れるならば、その前に農産物価格安定方法を講じなければならないと思うのだが、食糧庁長官はどうなんです。
  10. 清井正

    清井政府委員 開拓政策に伴って、生産される農産物価格安定に努めなければならないという点につきましては、私どももっともに考えます。従いまして、先ほど私が申し上げたのでございますが、御指摘通り、ただいまの澱粉等市価が、政府買い入れ価格よりも相当下回っておるという現実にかんがみまして、ただいまの二千万貫の買い入れ予算措置を早めに繰り上げまして、買い入れを進捗しようということを実は努力いたしておる、極力澱粉価格の引き上げに努めていきたい、こういうふうに実は考えておるのであります。二千万貫の買い入れをやりまして、なおかつ市価低落状況にありましたならば、さらに農産物価格安定の措置を講じまして、努力していきたい、こういうふうに考えておる次第であります。御了承願いたいと思います。
  11. 川俣清音

    川俣委員 時間がないからこの程度にしておきます。やるかやらないかによって、こっちもこの法案を可決するかどうかという段階でありますから、長官よく含んでおいていただきたい。  次に政務次官お尋ねいたします。機械開墾をどういうふうに実施するか、二段階、三段階に分けて実施するのだろうと思いますが、計画はどこでし、設計はどこで実施して、どこでやるか。それはどういう方針ですか。
  12. 大石武一

    大石(武)政府委員 せっかく政務次官お尋ねでございますが、これは専門的な事項でございますので、農地局長よりお答えいたさせます。
  13. 小倉武一

    小倉政府委員 開墾地区につきましての実施主体の問題でございますが、申すまでもなく、この全体の計画につきましては、これは国がいたします。それから建設工事については国が実施いたします。国と申しますれば、青森県につきましては農林省農地事務局北海道につきましては農林省それから北海道開発局ということになります。開墾作業につきましては、これは機械公団実施するということになります。
  14. 川俣清音

    川俣委員 計画では国で計画をする、これはその通りです。それはやるべきでしょう。それから建設もこれは国営でやろう、こういうことですね。これもまた機械開墾の本質からいってそうだろうと思います。次に実施機械公団がやるというのは、機械公団はそういう実施面を受け持つように本来からできておるのかどうかということが一つの疑問の点です。それから今までの説明によりますと、開拓者がやるんだ、こういう説明なんです。従って開拓者融資をするんだというのが、この法律案の持つ趣旨のように思うのですが、今のような説明だと、きのうから私議論しておるように、機械公団援護法というような法律になって、どうも開拓者資金融通法じゃないというような気がするのですが、どうですか。
  15. 小倉武一

    小倉政府委員 全体を簡単に申し上げましたので、申し上げ方が足らず、はなはだ失礼いたしましたが、厳密に申しますと、これは開墾作業自体は、これは普通の開拓の場合と同様に、入植者自体がこれをやるべきものでございますが、機械開墾という特殊性にかんがみて、その作業自体公団請負と申しますか、委託を受けてやる、こういうことになるわけでございます。
  16. 川俣清音

    川俣委員 そうすると入植者が先にきまって、それから委託を受けた機械公団がやる、こういうことなんですね、そうでしょう。もしも入植者主体であるとすれば、機械公団を使わないということもできるわけですね。機械公団を使わなければならないということはどこから出てきたのですか。
  17. 小倉武一

    小倉政府委員 機械公団を使うといいますが、機械公団委託するという法制上の強制は別段考えておりません。
  18. 川俣清音

    川俣委員 そうすると、入植者が先にきまるわけですね、入植者が確定しなければ事業ができない、こういうことなんですね。そうじゃないのですか。
  19. 小倉武一

    小倉政府委員 これはお説の通りであります。
  20. 川俣清音

    川俣委員 そうすると、一定入植者がきまって、その入植者団体ができて、その団体機械公団を利用するか、あるいは他の方法を講ずるかは別にして、事業実施をしていく、こういうねらいですか。そうだとすると、どうもこの法律は必ずしもそうできていない。入植者自主性によるということになると、それは法律とは違っていますよ。そういう建前でできていません。必ず機械公団を使うものという想定と申しますか、それならば融資をしよう、別な方面ならば融資は必ずしも可能かどうかという疑問の点ができてくる。
  21. 小倉武一

    小倉政府委員 これは御承知のことだと思うのですけれども、これを作りました趣旨は、機械開墾入植者に対しまして法律命令でもって機械開発公団開墾委託すべし、こういった強制的な措置は講じない、そういう意味ではお説の通りでございます。しかしながら建前といたしまして、入植者公団作業委託するか、あるいは他に委託するか、あるいはみずから手開墾をするか、これは全く自由である、こういう建前もとっておらないのでございまして、建前としてはあくまでも機械開墾につきまして公団委託するという建前であります。そういうことは別に法律上の強制をしなくても、行政指導あるいは入植者の選定といったようなことを通じましてできる、こういう意味に考えておるのであります。
  22. 川俣清音

    川俣委員 そこが問題なんです。法律機械公団を使わなければならないと規定するならこれは別問題です。融資をするかしないかという場合に、強制をして機械公団を利用しなければ融資をしないというところに問題がある。問題はそこなんです。法律にきめてあるならまだいい、やむを得ないでしょう。そうじゃないのです。機械公団を利用しないと融資はせぬのだ、こうなるのです。必ず機械公団を使ってやるのだ、あるいは機械公団にやらせて、そこに入植させるのだということなら別なんです。そうじゃない。入植を先にさせて自主性に待つ、こういう建前をとっていながら、ほかのものをやれば融資はせぬ。おれのひもつきを使わないと融資はせぬ。これだからおかしいんじゃないかというのです。だから機械公団擁護法だ。私が前から指摘しているのはこの点なんです。機械公団をして仕事をやらしめて、整理してそこに入植させるというならこれは一つ方法なんですよ。それかまた入植者を先に選んで、そして自主的にやらせる、どっちかと聞いたら、入植者を入れて自主的にやらせるのだ、それにはひもつき機械公団を利用しなければ融資をせぬのだ。これはだいぶ今までの開墾方式が違うのです。
  23. 小倉武一

    小倉政府委員 妙なたとえでございますけれども、私ども生命保険会社に入るようなものでございまして、入るか入らないかはもちろん自由であります。入れば保険会社のきまっている契約をのむかのまぬかということになります。それと同じようなものでございまして、機械開墾というシステムで大いにやるという、そういう機械開墾地入植するかしないか、そこで増反するかしないかということは、もちろん入植者開墾者の自由でございます。そういう地区に入ることによって公団作業を利用してもらうということを私どもは期待をしておりまして、厳密に申し上げればそこで一々の委託契約になるわけであります。委託契約をするかしないかということも、また厳密に言えば自由になりますけれども、全体の考え方機械開墾地区入植する方は公団を利用していただく、こういう建前にいたしておりまして、それを川俣委員のように割り切ればこれは仰せのように入植者といえども入植をした上に一々契約をするわけでありますから、するかしないかということは、これはやはり個人の自由であるというようなことになりますけれども、制度の建前としては、ここであまり自由を主張されるという向きは実は困るのでございます。
  24. 川俣清音

    川俣委員 それは小倉局長答弁が困るのです。自由にしておいて、しかも機械公団を利用するならば、一番効果的であって、経済的である、こういうことでそれを利用するならいいのですよ。何も文句を言っておるのじゃない。機械公団を利用しなければ融資はせぬのだとか、何だとかいう条件をつけられると、機械公団の思うままの契約になるのではないかということを言っておる。問題はそこなんです。機械公団意思によって左右されるのじゃなくて、入植者意思によって機械公団を利用する方がより経済的で、より効果的だ。それでこれを利用するという決定ができる。ほかに何を利用してもいいかというと、そうじゃないのです。これを利用しないと入植もさせないぞ、そういう融資もしないぞ、これに従え、こういうことなんです。それでは入植者本位じゃないですよ。あなたのような方式をやるならば、先に機械公団仕事をやらせて、これだけでき上ったが、これで入植するかどうか、こうなってこなければならない。これは趣旨が違うのですよ。入植者主体にして考えるならば入植者意思に従わせる。どうも機械公団を利用しないと融資をしないというのは束縛ですよ。自由意思ではないのです。だから機械公団に先にやらして、こういう条件土地が造成されたが、これに入植するかどうか。これならば機械公団を利用してもいいのです。入植者を先に決定しておいて、何を利用して土地を造成するのか、機械公団を利用しなければならないということは法律的に何もないじゃありませんか。そこに問題があるということを指摘しておるのですよ。だからこれはどうも局長じゃだめだから、政務次官にとさっきから言っておるのです。
  25. 大石武一

    大石(武)政府委員 考え方川俣委員のお説の通りだと思います。ただ実際の話は、あのように今まで放置された原野を早く大規模に開墾するということになりますと、非常な資本と非常な機械力が事実要ると思うのです。私から申し上げるのもおかしな話でありますが、国家の資本なり、意思というものが中心になりましてそれをやることが一番便利であり、やりやすい、こう思うのでございます。そういう意味公団を利用さしてやろう、そうすれば公団を通じて直接開拓移民と結びついて、国の方でも十分正しい指導をして上げよう、めんどうを見て上げようこういう考えでこういうことになったのでありまして、お説の通りでございますが、実情はこのように理解していただきたいと思う次第でございます。
  26. 川俣清音

    川俣委員 政務次官はなかなかもののわかった答弁をしたけれども、その通りやるとすれば先に機械公団土地を造成させて、それから入植させる、こういうことになるわけですね。
  27. 小倉武一

    小倉政府委員 これは先ほど申しましたように、(川俣委員食い違いじゃないか」と呼ぶ)食い違いじゃございませんで、実質的に解釈する場合には、川俣先生のおっしゃることに近くなる場合もあり得るかもしれませんが、(川俣委員「あり得るじゃない、どういう方針かと聞いておるのです。」と呼ぶ)建前はそういう建前じゃございませんで、これはあくまで厳密に、正確に申しますれば、入植者開墾作業をやる、その開墾作業を今までのように個個の入植者がやっておったのでは、相当の年数がかかって効率も上らないということでございますので、そういう作業を請け負う公団、従いまして経済的に成り立つように考えなければなりませんので、公団作業やり方なりあるいは請負料のきめ方なりということについては、実際上一種の独占的な機関にもなりますから、役所が厳重に監督をする、こういうことにいたしておるのであります。
  28. 川俣清音

    川俣委員 大体政府独占機関を作ってこれに従わせるというようなやり方は、これは慎しまなければならぬと思うのです。もしもやるならば、責任をもって土地を造成して、その造成したものに入植者があるかないか、そこで批判を仰ぐということが本来必要なのです。まあこれ以上は追及はいたしません。これはなかなかうまくやらないと問題が起きるということだけを一つ警告して私の質問を打ち切っておきます。
  29. 村松久義

    村松委員長 留保にかかる川俣君の質疑は終了いたしました。よって本案に対する質疑は終局いたしました。  次に討論に入ります。討論の通告もございませんのでこれを省略して直ちに採決いたしたいと存じます。御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 村松久義

    村松委員長 御異議なしと認め、採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  31. 村松久義

    村松委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なおお諮りいたします。本案の委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 村松久義

    村松委員長 御異議なしと認め、さように決定いたしました。     —————————————
  33. 村松久義

    村松委員長 公有林野宮行造林法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。通告順に従って質疑を許します。伊東岩男君。
  34. 伊東岩男

    ○伊東(岩)委員 ごく簡単にお尋ねいたします。  政府は造林に対して官行造林を主とするのか、部分林制度を採用するのか、あるいは個人造林を主体とするのか、その方針についてお尋ねいたします。
  35. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 民有林造林の推進方策につきましては、私どもといたしましては、あくまでも補助金交付による自力造林を主体にいたしまして考えて参りたい、かように考えておるわけであります。ただしその方式をもちましては実際面におきまして造林を進めることが非常に困難である、かような対象に対しましては官行造林事業をもってこれをやって参りたい。それからさらに補助金交付による自力造林を待つまでもなく、融資によって十分にその造林の推進がはかられるというものにつきましては、融資による造林を進めて参りたい。具体的に申し上げますならば、各産業の持っております産業備林的なもの等につきましては融資造林をもって進めて参りたい、かように考えておるわけであります。
  36. 伊東岩男

    ○伊東(岩)委員 造林の拡大強化についてはいろいろ考え方がございますが、はげ山に対して植林をやって治山治水の目的を達する、これの方法としては、やはり部分林制度が一番いいと私どもは考えておるのであります。官行造林よりも、部分林でいくならば、政府の投資する金も要らないし、ただ、今までは個人造林に対して苗木の補助をやっておりましたものを、部分林に拡大いたしますならば、部分林で苗木を農家がもらって、そうして造林するということがきわめて簡単でございます。この部分林制度に対する今後の政府考え方はどうか。今日まで国有林を払い下げるという方針がございましたけれども、国有林の払い下げをやって造林を個人にさせるよりも、むしろ部分林制度でいくならば、これが一番簡単でうまくいくと考えておるのでございます。  なお部分林にいたしますならば、分収歩合の問題でございまするが、今日まで大体五官五民あるいは四官六民といったようなことで、部分林に対する分収歩合が非常に多いのであります。これを大体二宮八民くらいまで進め て、そうして苗木を全部ただでやるということに相なりまするならば、期せずして造林はできるのであります。大体今日まで部分林制度に対して非常に高い分収歩合であります。国が五もしくは四とるというこんな高い小作料はおそらくありません。これは完全なる小作料ですが、この分収歩合をうんと下げるならばたちまち造林はできると思いますが、この点いかがでございますか。
  37. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 私どもといたしましては、民有林が少く国有林がかなりの面積を占めておるような地域におきましては、市町村部落等の希望によりまして部分林を大いに拡大して参りたい、かような考え方のもとに進めておるわけであります。分収の歩合でございまするが、非常に古いものにつきましては官収四割民収六割といったようなものもあるのでございますけれども、現在やっております大部分の部分林の分収歩合は、官収三割、民収七割であります。最近のものにつきましては、ただいまの御説の中にありましたように、官収分二割、民収分八割というものも相当程度にふえておるという現状であります。  それから苗木の購入費に相当いたしまする意味合いの造林の補助金でありまするが、従来は町村合併促進法によりましてできました部分林にのみ一般の造林の場合と同じような補助金の交付をいたしたのでございまするが、明三十一年度からは、その他の部分林に対しましても同様に補助金の交付がなし得る、かような措置がつく見込みでございます。
  38. 伊東岩男

    ○伊東(岩)委員 苗木代の補助を個人造林からさらに部分林造林まで拡大するということになると相当予算措置か必要でございまするが、ことしの予算によると昨年度よりも造林費が非常に減っておりますが、これはどういうわけですか。おやりになる気ならば予算がふえなければならぬと思いますが、これはいかがですか。
  39. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 その点は御説の通りでありまして、実は明三十一年度予算の中でそのような対象にも交付することができる、こういうことでありますからして、対象がふえるのだから当然予算もふえなければならぬじゃないかということに相なるわけでございまするが、従いましてその間の問題の調整策といたしましては、従来私どもといたしましては、造林地を伐採いたしました場合に、再造林をすることのほかにあるいは林相の改良をいたすとかあるいは樹種の転換をいたすとか、その後の造林という問題について予算努力を続けて参ったのでありますけれども、現在林相の劣悪なものあるいは樹種の悪いものを変えて参るといったような造林面に多少の引き込みができまして、新しく部分林等に補助金が回っていく、こういう方針で調整せざるを得ない現状であります。
  40. 伊東岩男

    ○伊東(岩)委員 私の私見から言いますると、政府が腹を据えて、二十ヵ年計画くらいにして部分林制度を推進する。その根拠は、土地は国有でございますから、これを従前のように払い下げるということよりも、土地は国が持っておった方がいいのであります。個人造林をさせると、十年か十五年間に百姓は経済上の関係で売ってしまう。部分林制度ならば伐期が四十年とか、五十年とかございますから、勝手に処分することができない。それと同時に、計画性を持った造林計画を立てるということになると、そうたくさん金を要せずして、大体二十ヵ年くらいで日本のはげ山を全部緑化することができると思います。これができるということは、治山治水の上に非常に影響があることでございますし、こういったような面に向って重点的におやりになると、ひとり造林だけではなくて、治水の面にも非常に役立つのでありますから、これらについて農林省としては何らか計画などはございませんか。
  41. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 昨年の三月三十一日をもちまして国有林野整備臨時措置法が失効いたしたのでございますが、にもかかわりませず、やはり町村の基本財産等を造成する手段といたしまして林野を持ちたいという希望が依然としてあるわけでございます。従いまして私どもといたしましては、ただいまのお話のように、可能な限り部分林をもってこれに対処して参りたいということで、実は部分林の拡大方針を作りまして、極力各市町村に勧めて、部分林を広めて参るということを計画的に実行いたしておるのであります。
  42. 伊東岩男

    ○伊東(岩)委員 これで質問を打り切りますが、今お答えのようなお考えがあるならば、かりにも削るなどということはよくないと考えております。造林ということは大きな問題であります。緑化運動などといっていいかげんな運動をやっておる必要はないのであります。ほんとうに農林省や林野庁が本腰を入れて、さっき言ったようにきちんとした計画性をもって、そうして苗木代をやれば、労力は全部農家が出すのでありますから、いつの間にか山というものはできるのでございます。こういう工合に重要なところの予算を削られても黙っておるということは、はなはだよくないと思います。林野庁長官は今度が初めてでございますから、来年は一つしっかりやって下さるようにお願いいたしまして、私の質問を打ち切ります。
  43. 村松久義

    村松委員長 淡谷悠藏君。
  44. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この法律説明書の中に「部落有林野を官行造林契約の対象として、その造林を促進することといたしたいのであります。」と書いてありますが、どういうものをさして部落有林野といっておられるのか、部落有林野の性格について御説明願いたい。
  45. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 非常にむずかしい観念であろうかと思うのでございますが、私どもといたしましては、すでに部落という観念によって規律されておりますものが共同使用をいたしておりますところの林野、一言のもとに申せばそういうことに相なるかと思うのでございます。ただ構成の上からいたしましても、あるいは実態の面からいたしましても、非常に千差万別な姿があるのでございまして、これをひっきょういたしまするに、いわゆる徳川時代の村落共同体とも申すべきもの、その物質的な基礎として、当時は自給的な草肥農業や農山村の生活を成立させるための基礎となっておりました共同財産、こういうものがあったのでございまするが、その後社会、経済的な変動の中で非常に大きな変貌を遂げながらも、現在いわゆる部落の財産というような姿のままで、旧来からの使用権による使用慣行にゆだねられておるというようなところが相当あるわけでございます。私どもといたしましては、このようなところを総括いたしましていわゆる部落有林という表現で呼んでおるわけでございますが、その実態の中でいろいろ共通いたしまするもので、部落民の共同利用されておる林野ということに尽きるように考えておるわけでございます。
  46. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 実はそこに問題があったわけです。同じ公有林といっても、村有とかあるいは区界制度を設けました部落有ならば、これは別段問題がない。ただ長官も言われました通り、共有でもなし、公有でもなし、いわゆる総有権的な存在の部落有林というものが相当あると思います。これは一部村有に寄付統一などをいたしましたけれども、まだ非常に残っておるところがございます。これが造林の契約をする場合、一体だれを相手にして契約をされるのか、あるいは分収するにいたしましても、だれがやるのか、この点を一つ明確にお答え願いたいと思います。
  47. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 お話のように、いわゆる総有的な形において現に共同使用されておるところの林野も相当ある現状でございます。それからすでにそういう状態から姿を変えまして、いわゆる割山といったような姿におきまして利用されておるというような形態もあるわけでございます。さらには持ち分利用といったような形まで進展をしておる姿のものもあるわけでございます。そこで私どもといたしましては、共同使用をいたしておりますものが、実質的な所有者であるといったような関係のものについてのみ、この官行造林事業の拡大をはかって参る、こういう考え方でございまして、ただいまのお尋ねにありましたような総有的なものであって、しかも共同使用しておるといったようなものの中にはこの対象になるものは大体においてないのじゃないか、かような考え方を持っておるわけであります。
  48. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 開墾の場合も部落有の土地が非常に問題で、かなり無理をして開墾させましたところが、あとになって相当な紛擾をかもしている例が多分にございます。御承知通り、総有権というものは非常に浮動する観念のように考えます。たとえばそのうちに子供が生まれると権利が移る、村を出てまた帰ってくると権利がもとのようになる。長期にわたる造林をした場合と分収の場合の共同利用の権利者が違ってきております。たとえば一家の長男と次男、三男の分け前が違ったり、あるいは本家、分家の分け前を違わせてとんでもない訴訟になっておる例も多分にございます。これが法廷でも何ともいたしかねて二年、三年と係争しておる例はずいぶんあるのでございますが、こういう点に対する御準備がございましたら、お話願いたい。
  49. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 ただいま申しましたように、共同使用をいたしておりますものが実質的に所有をいたしておるという関係の分についてのみ、この契約の取りきめができて参るということになるわけでございますが、非常にたくさんの共同使用者に対しまして、個々の所有の形をとらまえて契約するということは、実際問題といたしましてほとんど不可能に属することでございます。当然民法上の組合契約に基く官行造林組合といったようなものを作ってもらいまして、それによって一本で契約していくということに相なるわけだと思います。そういたしますと、契約当時の組合員と申しますか、持ち分的なものを持って加わっております組合員は、その後の状況によりましていかようにも変化をするということになるわけでございますが、私どもといたしましては、そういった官行造林組合を作らせるような場合におきましても、その部内の移動というようなものについては当然認みていかなければならないのじゃないか。しかしながらそれが村外に出る、あるいは他の地域のものに売り渡されるとかいうようなことは、この組合契約の中でかたくこれを厳禁いたしまして、部落内部の移動というものについてはこれを認めていくといったようなことでやって参る考え方を実は持っておるわけでございます。
  50. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 その場合組合を作りまして土地を利用するわけでございますが、組合と土地所有者との関係、これも新しい契約一つする。組合が造林の利益を得るといたしますと、その土地所有の権利者と造林をしてその分収を受ける権利者との間に若干ずれができる。それで問題が起らなければよろしいのですが、土地総有権を持っております部落民から異議が出ました場合に非常に困っておったのではないですか。ある程度造林のために他の人の利用が制限されるということはあると思います。この場合はどうなさいますか。
  51. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 ちょっと事例を取り上げて申し上げますると、要するに現在の部落有林と称されておりますものの土地台帳面に記載されておりまする、いわゆる所有の形態でございまするが、非常にさまざまな形があるわけであります。中には個人名義で実際の扱いは部落の共同使用にゆだねられておるというような面もございまするし、あるいは社寺の名義で共同利用されておるということもあるわけでございますが、そういったものを個々の場合について調べてみますると、実際の所有者であります場合と、名義上の所有者である場合があるわけであります。従いまして名義上の所有であるような場合につきましては、当然共同使用をいたしておりますものにその所有をわけて返すと申しますか、そういう格好で共同の使用権者が即所有者であるという形で整理いたしまして、そうして共同の使用者の組合を作って、その組合一本で契約をして参る、こういうことになさざるを得ないものというふうに私どもは考えております。従いまして土地の所有者と分収権者は同一人という形で整理して参りたいというふうに私どもは考えております。
  52. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 部落有林の問題は非常に法制上困った問題のようでございますので、各地でさまざまな整理の仕方をしておりますが、どれもうまくいかないという形になっておる。ここで徹底的に御質問申し上げましても時間の関係もございますのでやめておきますけれども、実際これが行われる場合は、各地の部落有林野という性格はよくお調べになって、あとで要らざる親族間あるいは兄弟間にまで争いをかもすような事例を残さざるように十分なる注意をお願いいたします。
  53. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 その点に関しましは全くお説の通りでありますので、そういう関係のはっきりいたしたものにつきまして契約を取り進めていきたい、こういうことで運営して参りたいと思います。
  54. 村松久義

    村松委員長 芳賀君。
  55. 芳賀貢

    ○芳賀委員 若干お尋ねいたしますが、今度の法案の改正点は、拡大の意図は、たとえば公有林、さらに部落有林、さらに指定された個人所有の水源涵養の地域に対する拡大ということになるのですね。そういたしますと、これは林野の高度利用という考えが一つあると思いますし、もう一つは、林野の高度利用とあわせて林野行政の中における考え方は、一つは公益性を強めるというかあるいは国家性を強めるというか、そういう思想がだんだん強くなってきておるというふうに考えられるわけですが、その点に対する解釈はいかがですか。
  56. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 冒頭の御質疑のときに御説明申し上げましたように、私どもといたしましては、自立造林というものを中心にして民有林の造林推進をはかって参りたいという考え方を現在持っておるわけでございます。しかしながら公有林野、部落有林野までを含めました公有林野は、現にその土地利用の状況が非常に不集約であるという現状とあわせまして、現に荒廃しておるところが相当ある。それがやはり治山治水問題の一つの大きなガンをなしておるという実態も実はあるわけであります。従いましてこれに対しまする強力なる造林推進という問題は、すでにこの官行造林法が制定されました大正の初期からあるわけでありまして、それにもかかわらず、なお公有林野の造林関係につきましては幾多の問題があります関係上、さらにその対象を広げましてやって参る必要があるんじゃなかろうかということと、それから公有林野の場合におきましては、現に酸性地あるいは粗悪林地、未立木地というものが大面績に集団をしておるという地域が必ずしも少くないわけでございます。そこで自力造林と申しますと、もちろん補助金の交付があるわけでありますが、相当部分が自分の負担によって進められていかなければならぬ。そういう場合に、現在の町村財政の姿からいたしますと、なかなかそれだけの投資ができかねて、土地はあるにもかかわらず造林は進まずにおるという実態にある。従いましてそういう部分に対しましては、当然官行造林の方式が一番願わしいじゃないか、かように考えられるのが一点であります。  それから従来主として対象として参りましたのは、一般の経済林地の造林推進ということをやって参ったのでございますが、この拡大の機会に水源林のような対象にまで官行造林事業の対象を広げて参りたい。しかも水源林になりますと、可能な限り造林をいたしますと同時に、その後の保育、手入れと相待ちまして水源機能の涵養に役立つというような意味におきまして官行造林事業をやって参ることが、水源林の構想よりしても一つの大きな意味を持つというように考えて参ったわけでございまして、従いまして公有林野を主体とする水源林の設定といったような場合に、その地域に介在をいたしております私有林があって、たまたま先方にも希望があるし、こちらもあわせて一緒に造林をし、しかも管理することが願わしいというふうに考えられるものは、一緒にやった方が効果的ではなかろうかということで、一部私有林にまで及ぼして参るということを考えたのでございます。
  57. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その考え方は非常にいいのです。結局林野の所有者の意思のままにこれをまかしておくことはできない。だから一つの高度利用と国家目的の見地から、この法律の中には国の意思を林野全体に反映させる、浸透させるという一つ目的は明らかにあるというふうに考えられるわけであります。これは好ましい傾向ではあるけれども、そうであるという明確な基本的な態度というものを明らかにされる必要があるのでありますが、その点はいかがですか。
  58. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 ただそういった考え方というものはなくはないのでございますが、事柄の進め方は、あくまでも相手方との契約によりまして進めていくということが、実際問題として双方ともに願わしいという対象があるわけでございますから、広げることによりまして現実的に問題の解決推進をはかられる、こういうことであるわけでございます。
  59. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これはただこの法案だけでなくて、たとえば前の国会で審議した保安林整備措置法にしても、そういうような国の意思というものをだんだん国有林野以外にも反映させなければならぬという考え方は必然的に出てきているのですけれども、やはり林野に対する施策のあり方というものは、そういう方向に必然的にいかなければならないのです。これは日本だけの実例ではないが、特にわが国の場合には国土の七割以上も林野が占めておるのですから、これの高度利用ということが国の経済基盤を確立する上においても非常に重大な点になってくると思うので、方向はそうであるかということを十分確かめておきたいのでお伺いしておくのです。
  60. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 私どもといたしましては、公有林野が土地利用の上におきましてきわめて不集約な現状であるということと関連いたしまして、やはり荒廃が相当顕著であるという事実認識に基きまして、こういう有効な方式でその造林推進を進めて参りたいという限度のものでありまして、それがあるいは将来公有林野の官行管理までもいたす前提であるかという御質問に対しましては、現在の段階においてはそのような考え方を意識いたしましてこのような進め方をしておるものではないということを申し上げておきます。
  61. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは所有形態をどうするかという林野の所有の問題よりも、むしろ利用権とかそういう点に対しては所有者の恣意のままにまかすべきでないということは、これはやはり明らかにされる必要がある、これはどうですか。
  62. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 もちろん森林法によりましても、森林所有者が造林をいたしません場合におきましては、これに対しまして代執行もできるような規定も設けておるわけでございますから従いまして造林ということ自体が森林所有者の恣意にゆだねておくべき問題でないということにつきましては、私どももはっきりした考え方を持っておるわけであります。
  63. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこでお尋ねしたい点は、国内の林野の面積の分布からいって、公有林野は大体一七%ぐらいですね、そうじゃないですか。ところが蓄積の分布が必ずしもそれと同一の率ということではないのです。先ほど長官が言われたように、公有林野等の単位の蓄積というものは非常に低位であるということは、これは論議の余地がない。ですからこの点に重点的な施策を講ずるということは一日も早く行わなければならぬ点でありますが、公有林の撫有が非常に低位であるという最大の原因はどこにあるのですか。公共団体等の財政の困窮というものは、必然的に所有している公有林を乱伐過伐する、無計画にやるというところに追い込まれていくということも一つの原因になっておるというふうに考えられるわけであります。それで、たとえば町村合併促進法に基くところの国有林野の払い下げとか、あるいは林野整備に基くところの国有林の払い下げ等も行われたわけでありますが、それらの払い下げというものは、その後どういうような期待に沿うような措置が講ぜられておるかどうかという現状の実態、それをもう少し御説明願いたい。
  64. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 昭和二十六年の六月から昨年の三月末までにおきまして、国有林野整備臨時措置法によりまして、約十三万町歩の国有林を実は売り払ったのでありますが、あの法律によります売り払いは、必ずしも売り払いをいたしました相手方の町村の基本財産の造成というようなことを目的にいたしまして売り払ったものではなかったのでありますが、実際面におきましてはそのような意味に運用されたことは事実でございます。当然国有林野として持っているよりもむしろ市町村に売り払いをいたしまして、既存の市町村林野とともに一体のものとして経営してもらうということの方が、土地利用の上からいっても、林業経営の面からいっても一そう集約な仕事ができる、こういうことを実はねらって売ったのでありますが、現状は必ずしもそのような運営に相なっておらないという事例が非常に多いのでございます。御承知のようにちょうど木材価格の上昇期にもありましたので、売り払いました物件が、すぐさま地上のものだけにつきましては他に転売されるというようなことによって、実際売り払いの目的に合わないような結果に相なっているものもあるわけであります。しかしながらやはり将来の町村財政の点を十分考えられて、期待通りの経営というものを進められているものも相当ございます。町村合併促進法による売り払いは、現に適確なものについて取り進めているわけでありますが、さきの林野整備の場合におけるときの轍を踏まないように、特に町村合併の場合におきましては、新市町村の育成促進のための基本財産の造成ということが売り払いの唯一の目的になっているのであります。従いまして基本財産の造成上適当な山を選定して、該当するものを売り払っていくということになっておりまして、買い受ける能力等も十分吟味いたし、その後の経営計画等につきましても私どもさまざまな注文を出しまして、そして十分納得の上で売り払っていただく、こういうことでやっていくように考えているわけであります。
  65. 芳賀貢

    ○芳賀委員 結局国有林野を公共団体等に払い下げをするということが、結果的に見ると国の期待し、あるいは予想したようなことに現実には必ずしもならないという結論が、これによって立証されたということが言えるのです。林野整備の法律はなくなりましたし、町村合併の分はまだ残っているのですが、そういう結果がこうなるという見通しがついた場合には、今後の払い下げ等の措置の場合においては、その点十分考慮の中に入れてやらないと、せっかく国が払い下げをしてもそれが荒廃してしまって、また再びこういうような法律の適用等によって官行造林をしなければならぬという悪循環が生まれるので、この点は十分御注意を願いたい。  次にお尋ねしたい点は、先ほど申した通り公有林の蓄積が非常に低位である。国有林の場合は大体一町歩当り四百石程度です。ところが公有林は百八十石程度ということに、資料によるとなっているわけです。この法律の改正等によって年次的な計画を進めていくわけでありますが、この官行造林法の適用によって将来、たとえば五ヵ年後においてはどの程度にこの蓄積が高まるかというような、期待効果に対しての数字があればお示し願いたい。
  66. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 御質問に対します的確な資料の持ち合せばございませんが、ただ国有林の一町歩当りの蓄積が非常に高くて、それに比べまして一般の民有林が低いということでございますが、国有林の場合におきましてはいわゆる用材林が非常に多いということのためであります。しかも利用し得ておらない奥地林の中に相当の用材林を含んでおるということが、一町歩当りの蓄積量を多くしているようであります。民有林が低いということは、民有林の約半分は御承知のように薪炭林の経営にゆだねられているわけでありまして、従って薪炭林の経営という場合においては、一町歩当りの蓄積は少いのが実態でございます。従いまして将来その中で一部用材林化するというものが出て参りまする場合におきまして、初めて民有林の蓄積というものは平均して高まってくる、こういうふうにお考え願えたいと思います。
  67. 芳賀貢

    ○芳賀委員 こういうふうに必ずしも一町歩当りの蓄積が多いからいいというわけではなくて、むしろ問題は伐期の問題にあると思うのですね。いたずらに老齢に達するような林分だけをもって、それによって非常に蓄積がいいということにはならぬと思います。特に国内における需給関係から見ても、やはり需要が二億一千万石ぐらい出る場合、供給量が一億七千万石ぐらいしかないということであれば、やはり伐期をどの程度に置くかということをよほど積極的に考えて、更新と伐期の問題を十分科学的に、合理的に方針をきめる必要があるんじゃないかと思います。国有林野の場合においてもそういう現象は生ずると思います。民有林等の場合においては、やはり伐期に達する前に伐採しなければならぬというような事態も非常に多いと思いますが、これらについてはたとえば資金措置等によって若干運営しているような点もありますが、今後伐期等の問題に対しては、林野庁としてどういうような指導方針のもとに進まれるか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  68. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 御承知のように、国有林野の場合におきましては、いわゆる超伐期の大材生産といったことが、従来生産の目標を決定する場合の一つの大きな因子になっておったのでございまするが、最近の市場動向等から考えて参りますと、決してそのような必要がないということで、近年におきましては次第に伐期を低下せしめまして、いわゆる生産量の面からいたしましても投下する資本の回転の面からいたしましても、合理的な伐期に下げて参るという考え方のもとに再検討をいたしているという段階でございます。それから民有林の場合におきましては、もうすでに伐期が年々非常に低下しつつあるということは明らかに看取せられるわけでございます。極端に低下し過ぎまして、そのことが逆に荒廃を促進をしておるといったような事例まで出ておる現状でございます。しかも一般林における薪炭林経営の場合におきましては、近年異常に伐期低下の傾向が顕著に相なりまして、その面からむしろ生産力が低下して参っておる、こういう実情でございます。
  69. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に運営上の問題でありますが、公有林に対して契約を進めていくことになるわけですが、その場合、これは森林計画等の問題も出てくると思うのです。ですからこれを消極的に、任意の話し合いによって契約を進めるという方法もありますが、たとえば森林法によるところの森林計画に基いた現状の上に立って、そうして指導的な計画を立てて、それに基いた契約を強力に進めていくという措置は講じられなければならぬと思いますが、当局としてはどの程度の強力さをもってこれを進めていくか、その点をお尋ねしたいと思います。
  70. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 あくまでも話合いでやっていくというのが原則でございますが、官行造林事業の対象といたします森林は、先ほども説明申し上げましたように、おおむね現在の粗悪林地あるいは未立木地、それが相当面積あるといったような対象のところでございまして、造林技術上もやや困難を伴いますような対象を優先して選んで参るという考え方でございます。従いまして森林計画の面で、そういう地域は大体この部分だということが出て参ります。従ってそういう見当をつけまして話し合いを強力に進めて参る、こういうことでやって参りたいと考えております。
  71. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その次に民有林の関係ですが、水源涵養の地域を指定して官行造林をやる、これは保安林整備臨時措置法からいっても、保安林を流域別に指定して、これに対しましては国の一つの施策としてこの地域に対する造林を積極的にやらせる、買い上げをやるということになっておるので、私どもこれは非常に関連性があると思うのであります。それで保安林関係の法律に基く民有地の買い上げ等は、その後どういうことになっておりますか。
  72. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 保安林の買い上げは本年度が第二年度でございますが、御承知のように保安林整備臨時措置法によりまして、昭和二十九年度以降大体十年目標で五十万町歩の民有林を買い上げて、これに必要な施設を実施して参る、こういうことであったわけでございます。初年度である二十九年度におきましては、約五万二千五百町歩ばかりのものを買い上げたわけでございます。第二年度であります本年度におきましては、予算関係等の問題からいたしまして、大体三万五千町歩くらいの買い上げが達成できるという実情でございます。
  73. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は分収歩合の問題でありますが、十分の五と十分の五、この場合一つの計算上の問題ですが、林野の所有者が全く自分の意欲で造林をやらない、そうして官行造林の対象にしてもらって、その五割、五割の分収でいくということは、収益の面においてどういうことになるのですか、たとえば三十年伐期としても、これが非常に有利であるということになると、林野の所有者は、ただ所有権を持っておるということによって、いたずらに安眠しておって、そうして相当の利益をそこから受益するという事態も出ないとは限らぬわけです。そういうような計算はどうなっておりますか。
  74. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 従来やって参りました官行造林事業は、国と所有者の分収歩合が五分五分でございます。これはいわゆる国の投資分でありますところの造林と、それから相手方の投資分であります地代が大体五分五分の計算におきまして、伐期において大体半々だ、こういう計算の上に立ちまして五分五分という分収歩合が実はきまっておるわけでございます。これを現在の基準に照らしまして、厳密に計算をいたしますと、これはいわば国がある程度の負担をいたしておるという結果にもなるわけでございます。従いまして厳密に計算をいたしますと、造林者でありますところの国は五分の取り分では不足だということになるわけでございますが、すでに三十年も前からやっております官行造林事業というものの歴史的な沿革もございますし、それの延長としてやる事業でありますから、一応分収歩合についても従来の五分五分をとって参りたいというふうに考えているものでございますが、ただ今回の改正によりますと、一部私有林にまで官行造林事業を及ぼすということになっておりますので、この場合にまで五分五分の分収で参るということにつきましては、一つ問題があるのではないかと考えておるわけでございますが、御承知のように水源林の造成につきましては、公共事業でやっているあの方式もあるわけでございますので、これらとの比較検討をいたした上で適正なる分収率をきめてやって参りたい、私有林についてはこういうふうに考えております。公有林については、いろいろ問題があると考えておりますが、従来の五分五分の分収をそのまま続けて参りたい、かように考えております。
  75. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこで民有林に対しては考えるというのは、どっちの方へ考えるのですか。その分収歩合は……。
  76. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 これは計算をいたしますると、国の取り分が少しよけいになるという方向でございます。
  77. 芳賀貢

    ○芳賀委員 官行造林をやる場合は、国と所有者の間において地上権を設定するということになるのです。ですから所有者の方の取り分は、いわゆる地代です。これは農地でいうと小作料に相当することなんです。ですから今日の地代、いわゆる小作料なるものの考え方は、これは農地の場合においては、この地代の収益によって、その所有者が生活をささえるに足るということの算定は、今も用いていないわけです。これは御承知通りであります。ですから、地代という一つの通念からこれを分析する場合に、農地の場合におけるときと、それから林野の所有権の上に立ったところの地代の場合との対比というものは、今後十分厳密に検討していく必要がどうしてもあるのじゃないかというふうに考えるわけです。これは関係がないとかいうことでは許されない問題であると思うわけでありますが、この点に対しましては長官としても今ここで明確な意思を表明することは差しさわりがあるかもしれませんが、そういう必要があるかないかという点に対してはいかがですか。
  78. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 それは当然比較検討の関連性は出てくるものと考えておりますので、今後の研究問題としてやって参りたいと思います。
  79. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この国会に、おそらく森林開発公団等の法案も出てくると思うのですが、これは当然もしそういう公団方式でやる場合において、林道以外に造林等も取り上げるということになると、やはりそこで分収率の問題等も出てくると思いますので、あえてこの機会に申し上げておきたいと思うのです。  次に申し上げたい点は、いわゆる会社有林が、国内においては六十七万町歩くらいですか、そういうような社有林が、パルプ会社が中心になってあるわけです。そのうちにいわゆるパルプ備林というものがあることは御承知通りであります。最近、会社と個人の所有者の間において、ややこれに類似したような分収契約によるところの造林が行われておるということは御承知と思いますが、この傾向に対する林野当局のお考えはいかがであるか、その点お聞かせ願いたいと思います。
  80. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 ただいまのお話のような傾向があることは、私もよく存じておりますが、特別にそれを推進するとか、あるいは拒むとかいったようなことにつきましての具体的な方針は、何もとっておりません。ただ往々にいたしまして、かなり無理な分収の契約の進め方というものがあるような場合におきましては、こちらで双方の間の調整をはかって参っておるといったような程度のことであります。
  81. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は長官、もう少し詳しく御説明願いたい。一つはパルプ備林の場合には、これはやはり原料を自己が生産、所有するという、これは一つの工業林的な考え方の上に立っていると思います。最近荒廃林地の一つの集中化といいますか、こういうものが資本が中心になって行われている。これは緩漫に行われていると思いますけれども、そういう所有形態、一つの企業のもとにだんだん集中化されるということも、今の制度のもとにおいては可能なわけですね。無制限にそういうことをやっても、これを阻止する何ものもないわけです。そういう傾向が一つ出てくることと、それから会社あるいは個人間におけるこういう分収契約によるところの造林の傾向がもし顕著になるような場合においては、これに対しては国としてもやはり一つの明確な判断を示しておく必要があるのではないかと考えられるわけでありますが、この点に対してもう少し具体的なお考えがあれば、この際明らかにしておいてもらいたいと思います。
  82. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 大体会社有林というものを大規模に持とうとしておりますのは、パルプ関係の会社でございますが、御承知のように相当大きな設備投資をいたしております関係上、原材料の取得に関して無関心たり得ないという事柄が、いわゆる備林的なものを持とうということを促進していることは事実でございます。しかしながら御承知のようにパルプ適材というものは、内地の場合においてはアカマツを主体にするといったようなものでございますからして、いわゆるパルプ備林を相当程度に持っていくという事柄自体が、非常に私は困難な問題を持っているということは、事実であろうと思うのであります。要するにここに百町歩のパルプ備材を持とうといたしますと、おそらく百五十町歩、二百町歩の地域の森林を取得しなければならない、あるいは契約しなければならない。こういうことになりますので、従ってパルプ工業が立っていくために必要な原材料の取得について、今後の入手見通しがやや確実だということになって参りますと、これはおそらくパルプ備林を持ちたいということはやまるんだろうと考えているわけであります、だから年々の増加率等を見ましても非常に変動がございます。従いまして私はある非常に低い限度において、こういった傾向がやまっていくものでないか、こういう見通しを持っているわけでございますが、今後の成り行きを見ました上で十分検討を加えて参りたい、こういうように考えております。
  83. 村松久義

    村松委員長 ここで休憩いたしまして、本会議散会後再開いたします。    午後零時二十八分休憩      ————◇—————    午後二時五十二分開議
  84. 村松久義

    村松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  公有林野官行造林法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。質疑を続けます。芳賀貢君。
  85. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先ほど長官から答弁のあったパルプ備林と個人所有の分収契約の問題でありますが、会社有林が全国で約六十七万町歩で、パルプ備林と称するものは約十三万町歩くらいあるのです。この会社と分収契約を結んだ部分林は約一万町歩くらいあるのですね。ですからこの程度基礎的な数字の上に立って、パルプ工業が工業原料としての造林地の買収とか、分収契約を進めるということに対しては、原料の所要数量との関係から見ても、こういうケースが発展していって、それで期待に沿うような実績が上るというところまではとうていいかないのではないか。この点に対しては長官も先ほど肯定されたようでありますが、ただ問題は、たとえば荒廃林地の買収、移動をやるとしても、あるいは分収契約をするとしても、やはり三十年なら三十年という伐期があるので、将来に対する一つの見通しがなければこういう問題に対しても着手できないという点も非常に多いと思うのであります。ですから先ほども答弁がありましたが、この点に対してもう少し具体的に、林野当局としての見解をお示し願いたいと思います。
  86. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 現在会社とあるいは村との間に、分収契約によりまして産業備林的なものを作っておるということは先ほど申し上げた通りあるわけであります。私どもの見解といたしましては、これらのものはやはりあくまでもきわめて低い限度があるものだということで、いわゆる兼併的なものとしてそういった対象が限りなく広がっていくというふうには考えておらぬわけであります。現在契約の上で締結されております分収の歩合も、大体会社分が四ないし八、それに対しまして土地所有者の分が二ないし六ということで、他の分収契約による造林の場合に比べまして多少有利な状況になっておるということでございますし、さらに限りなく伸びていかない問題があるという見通しでありますので、一応その問題に限りまして特別なる今後の指導方針というものは考えておらない、こういう意味であります。
  87. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこでいわゆる社有林なるものは、会社が林野を造成して実際にそれを原料林として適期に有効に活用しておるかどうかというところにも問題があるのです。たとえば北海道等においても、王子の社有林にしても、自分の会社の持ち山は相当伐期を経過したような林分に置かれていて、それを積極的に伐採しておらぬはずです。それ以外に国有林に原料を依存するとか、非常に単価の安い民有林からの原料供給を受けておるという、この傾向は否定できないと思うのです。そうなりますと、理由としてはいかにも筋が通ったようなことであるけれども、今日の社有林なるものの運営というものは、決して言うがごとき状態で経営がされておらぬという点が指摘できると思う。ですからこういう点に対しましては、やはり林野庁として積極的な指導を行う必要があるのではないかと思うわけですが、この点はいかがですか。
  88. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 私どもといたしましては、いわゆる各産業が自分の部門で所要する木材を全部自己の所有林の中で調達するといったような考え方に対する指導は、実はしておらぬわけであります。ただ従来各会社の持っております社有林は、御承知のように自分の企業で消費いたしまする原材料を全部自己の部門でまかなうといったような考え方ではなくて、やはり時期を失しないで一定量のものが確保されなければ工場の運営がとまらざるを得ないというような事態に対処しまして、そういう非常に危険な状態に遭遇いたしましたときに、自己の山林によって調整する、こういう考え方の社有林であったのでございます。従いましてその限りにおきましては、一種の計画性のある植伐関係というものを強く規律して参る行き方というものを強制することは非常に困難である、私どもはこういう見解に立ちまして、従来の社有林の経営をながめてきておったわけでございます。従いまして今後の長い将来にわたる見通しでございまするが、自家消費する相当部分を自己の山林において生産するのだという目標に立てかえられた場合におきましては、当然それは、いわゆる産業備林としての経営方式というものを強くしているような方向をとって参らなければならぬ、かように考えております。
  89. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから社有林なるものは、ただ単に企業の上における備蓄的なものであるという考え方と、それから会社が原料を自家生産するという考え方とはだいぶ違うと思うのです。ですから、単純に社有林というものは備蓄的なものであるという思想の上に立った場合には、これは決して好ましいことじゃないと思うのです。あくまでも原料を他に依存するという前提の上に立って、企業を順調に進ませる上においてたまたまその原料が不足したような場合においては、会社の持ち山を切るのだ、こういう考え方は、私的な企業の上から言えば非常にいいかもしれませんけれども、林野の施策の上がら見て、そういう非常に功利的な考えというものは、やはり排除しなければならぬというふうに考えられるわけです。ですから政府としては、この点の判断を明らかにするような措置は、指導の面からも大事でないかと思うわけですが、その点に対して長官はどう考えますか。
  90. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、私どもといたしましては、各産業部門が自家消費する木材を自家生産するというような考え方による指導はいたしたくない、かように考えておるわけであります。ある一定地域の林地から出て参りますものは、それぞれの用途に適合する多彩なものが出てくるし、従って特定部門の消費材を特定部門の自家生産によってまかなうということは、全体の需給関係の上からそういったやり方を推進する必要はあり得ない、またすべきものでもない、かように考えておるわけであります。ただいま申し上げましたのは、おそらくそれぞれの産業部門におきましては、将来自家消費するものは自家生産いたしたいということが一つの目標になって、社有林の経営をいたしておるということはあるようでございますが、実態論といたしますと、先ほど申し上げましたように、ただ火急の場合の調節的なものを社有林として持っておるという現状でございますから、そういう現状に立ちましてただいまのような御説明を申し上げたのであります。
  91. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点を繰り返して申し上げることは、今長官の言われた一つの大企業が、しかもその山林の所有を集中化するという傾向がその場合必ず出てくるわけです。ですからこの林野の民間における所有の集中ということに対しては、これはむしろ今の政府のとっている政策の上から見ても背反するような傾向になるわけですね。この点は長官が今言明されたので了としますけれども、こういうような逆行するような傾向に対しては、十分に施策の中において注意していただきたいということであります。  それからなおパルプ関係の問題でありますが、たとえば国有林の毎年の伐採量の中において、パルプ原料の占める部門というものは非常に大きな率を占めておるわけであります。この際有効に用材を活用する場合に、これはパルプ用材としての適材というものは、一般の用材と違った性格を持っているわけですね。必ずしも優秀な材でなければならぬということではなくて、繊維の含有があるかないかというところに問題があると思うのですが、この国有林の払い下げの場合においても、パルプ用材に回さなくてもいいような優秀な用材をあえてパルプ原料に消耗しておる。これは企業採算の上から見れば、そういう優秀な原料を消耗することの方が利潤を増大しているということになるけれども、今の現状から見ると、そういう大企業の独善的な原料の選択にまかせるというようなことは、これは特に国有林の用材の処理の場合においては、厳重にそれをいましめる必要があると思うのですが、その点はいかがですか。
  92. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 それはお説の通りでございまして、私どもといたしましては、一般材に向かないものをパルプ材として売り払うという方針はあくまでも堅持いたしております。ただし一定数量のものを確保するといった場合に、やむを得ずその一般材にも向くようなものが多少混入しておる、こういうことでございまして、売り払いの方針といたしましてはあくまでもそういうような考え方でやるつもりでございます。
  93. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、この法案と直接の関係はありませんけれども、たとえば木材関係の税制の問題でありますけれども、最近特に地方税のうちで木材引取税の撤廃のごとき、そういう運動が非常に全木連等を中心にして、いわゆる木材業者が中心になって木材引取税の廃止運動を、相当の資金等も集めてやっておるように見受けられるわけでありますが、これは林野当局としては、今業者が中心になって展開されておるところの引取税の撤廃運動に対してはどういう見解ですか。
  94. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 私どもといたしましては、木材引取税が流通税でありますことの性格から考えまして、林業税制の中で必ずしも適当な税ではないというふうに考えておるのでございますが、現在直ちにこれが撤廃し得るかどうかということに関連いたしましては、地方税の問題とも関連いたしましてなかなか困難なものがある、かような見解を持っておるわけであります。
  95. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、税の体系からいうとこれは必ずしも好ましい税ではないけれども、現段階においてはこれを直ちに廃止するということは困難であるし、望ましくない、そういうことですか。
  96. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 むしろ非常に困難であるという解釈であります。
  97. 芳賀貢

    ○芳賀委員 撤廃すべきであるという理由の一つに、今地方行政委員会に国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律案というものが出ております。この中には国有林野法に基くところの土地の、いわゆる地元市町村に対する交付金関係の条文もこれに載っておるわけです。おそらくこれによると今後地元交付金なるものは、今までの交付額よりもある程度増額になるというふうにも考えられるわけです。その点はどういうことになっておりますか。
  98. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 増額になるわけであります。これは率が上りますると同時に、従来は保安林というものは対象になっておらなかったのでありますが、今後は保安林も対象にいたします。相当程度に増額いたします。
  99. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この法律案の成立等によって、交付金が増額されるということを理由にして、木材引取税を廃止するということは、非常に筋が違うということに考えるわけですが、その点は御同意ですか。
  100. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 それはお説の通りでございます。
  101. 芳賀貢

    ○芳賀委員 特にこの引取税の場合は、国有林の払い下げのときは、これは払い下げ価格の算定の場合に、この引取税相当分の額を払い下げ価格より控除して、国有林は払い下げを行なっておるわけですから、これが業者の負担において納付されておるということにはならないと思う。この点は明確な点であると思いますが、いかがですか。
  102. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 これはいわゆる売り払いの予定価格を作ります場合に、その因子の中から差し引いておるということでありまして、指名競争入札あるいは公入札等の場合におきましては、必ずしもそういう関係は明確になって参らないわけであります。
  103. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうするとその配慮は、これは特売ですね。いわゆる特定の有力な業者に払い下げをする分に対しては、政府が配慮した通りの払い下げが行われる。公売等の場合においては特売を受けるものよりも、むしろ劣勢な業者の場合においてはどうしても競争によって落札しなければならぬという関係で、その配慮というものが具体的に徹底できない場合もあると思うのですが……。
  104. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 随意契約によって売り払うものも相当程度あるわけですが、こういうものはいずれも条件によって売り払いができるということでありまして、その場合の価格算定の因子の中からは木材取引税相当額というものを控除した額、こういうことになっております。
  105. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に、この際石谷長官から、今後のわが国の林野行政に対して、かくあるべきであるというような御高説をまだ聞いておらないのですが、われわれとしては林野関係の法律、たとえば基本的な法律であるところの森林法についても、その他保安林の関係の法律であるとか、官公造林の法律にしても、これは非常に公共性のある、国家性のあるような、そういう高度の性格を持った法律であるということをわれわれは認めておるわけです。ただ問題は、その運用というものは、時の政治権力の影響等によって、法律の精神がそのまま実行に移されていないといううらみが随所に現われておるわけです。そういうところに大きな運用上の欠陥があるということをわれわれは判断しておる。ですから実際に仕事を担当しておる長官の立場から見た場合において、法律はりっぱであるけれども、いろいろな支障があって、そういう点に運用上うまくいかないという点が随所にあると思う。その体験の上に立って何かお考えがあればこの際率直に一つ披瀝してもらいたい。
  106. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 個々の具体的な問題を取り扱って参ります場合には、いろいろ苦心を要する問題も決して数少くはないのでありますが、私どもといたしましては、あくまで法律制定の趣旨に沿いましてやって参ることもできるし、またやっていくべきだ、かように考えておるわけであります。
  107. 稲富稜人

    ○稲富委員 簡単に一点だけお尋ねしておきます。林野庁長官は、今日炭鉱ボタ山の造林は可能であると言われておる。しかし実際上においては、炭鉱においてやらないがために放置されておる点が多い。これに対して、せっかくこの法律を改正されるならば、この炭鉱ボタ山の造林にまで拡張するという御意思はないのであるか、この点伺いたいと思います。
  108. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 具体的な問題といたしましては、すでに福岡県の場合にそのようなケースがあるわけでございますが、福岡県の場合について申し上げますと、いわゆるボタ山が約四千町歩あるというふうに私どもは了解いたしておるわけであります。すでにその中の約半数の二千町歩程度のものにつきましては、地盤も安定いたしまして、植林の対象になり得る、こういう判断を実は持っておるわけでございます。従いまして、このボタ山の山すその方面につきましては、一般造林の方式でもってやって参りたい。それから上部につきましては、やはり肥料木を植栽いたしまして、土地を改良しながら、やがて本格的な造林に移っていくというようなやり方で、現在私どもの方で瘠悪林地の改良という名目の仕事をやっておりますが、こういう方式でいくべきではないか。それからボタ山の頂上の方につきましては、やはり荒廃防止事業というような考え方に基く造林を進めていかなければならぬのじゃないか、こういうことですでに具体的の計画に着手しておるわけであります。明三十一年度におきましては、瘠悪林地の改良で約五十町歩やって参りたい。それから一般造林の対象になるものにつきましては、現に県の方で計画を作成いたしまして、私どもの方と協議いたしまして、可能な限りやって参るという考え方でおるわけであります。
  109. 村松久義

    村松委員長 ほかに御質疑はありませんか。——なければこれにて質疑は終局いたしました。  次に討論に入りますが、討論の通告がございませんので、これを省略して直ちに採決に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 村松久義

    村松委員長 御異議がないと認めまして直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  111. 村松久義

    村松委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なお、お諮りいたしますが、本案の委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任あらんことを願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 村松久義

    村松委員長 御異議がなければさように決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。    午後三時十五分散会      ————◇—————