○久保田(豊)
委員 それでは限られた時間ですので、新
農村計画の基本問題についてだけ、
大臣にお伺いいたしたいと思うのであります。
大臣が今度提案をされました新しい村作り運動、これは農民にとっては非常に魅力のある問題であります。しかもその
内容が、農家の安定あるいは
経営の安定をはかる、そのやり方は青年の自主的な動きに待つ、しかも下からの
計画に対して相当多額の
補助金と資金を流してやる、非常にけっこうであります。けっこうでありますが、私がまず第一にお伺いをいたしたいのは、日本の農民の
状態が今日どのようにあるかということを、あなたははっきり認識をされて出発されたかどうか、どうもこの点が私どもからいって非常にぼけておるように思うのであります。と申しますのは、いろいろ具体的にわたりますが、農林省のいろいろ発表されました統計、あるいは私どもが日常
農村を歩いて経験をします
ところは、日本の七四%の農民というものは一町歩以下のいわゆる
ほんとうの零細農、下層農民であります、学術的にいえば貧農であります。この人
たちがまず第一に今苦しんでいる問題は何かというと、土地が足りないという問題であります。第二の問題は何かといいますれば、これは御
承知の
通りこの二、三年来特に昨年以来地主側のいわゆる土地取上げ、やみ小作の反攻といいますか、これが非常に強く出ているということであります。第三の問題は何かといいますれば、これらの農家の大多数の生活というものは農業によってはいない。
政府の統計によりますと、五反歩以下の
経営面積を持っております農民の数が四〇・六%、一町歩以下の者が三三・五%、合せまして七四%というものはいわゆる零細農であります。この連中の農業所得による家計費の充足の
状態というものは、農林省の調査によりますと、五反歩以下の者においては二二・五%でありますが、一町歩未満の者については四九・八%であります。つまり五反歩以下の者については約七割五分が労賃収入である、一町歩以下の者については約五割が労賃収入であるということであります。しかもこれが二十七年の統計によれば、全体の農業所得が一兆五千八百六十一億のうち、農業による所得は一兆二十二億であります。農外所得によるものが五千八百三十九億であります。こういう実情にある日本の七割五分の農民、これは今何に苦しんでいるかといえば、いわゆる農外所得、特に労賃収入が少くなったことによって苦しんでいるのであります。さらにもう
一つの問題は、こういう労賃所得が少くなり、祝金がよけいになり、農業
経営はあなたの政策だけではありませんけれども、非常に不安定になり、
経営と生活か行き詰まって土地を売り出す者が非常によけいになっている、この四つの点が今の日本農民の最大の苦痛であります。この点は二十八年度において
政府の統計に現われましたいわゆる自作地の売却件数が四十九万件、二十九年度においてはこれが六十八万件になっている、しかもこれは
政府の統計に現われた公のものでありまして、実数はおそらくこの三倍でしょう、こういう実情になっております。こういう実情を土台にして
——私は
ほんとうのあなたの言われるような額面
通りの
農家経営の安定、農家の生活の安定をはかるならば、新
農村建設運動はこういう事態をどう解決するかということが根本の問題でなくてはならぬと思う。そこでこういう問題について、私どもが新
農村建設の資料その他を農林省から直接いただいたり何かして得たものをいろいろ
検討してみますと、こういう七割五分の日本の農民の土地をほしいという切実な要求に対する政策も、生活と
経営に困って土地を売り出すという者に対してこれを防止する政策もほとんどない。労賃収入をふやすという政策もありません。また地主側の反攻によって土地取り上げ、やみ小作料がどんどんふえているということについての政策も、この中には
一つもない。そこで私はこれらの要求に基いて、この新
農村建設計画との
関係を以下少し具体的にお伺いをいたしたい。
まずこの七割五分の農家の
経営安定の基礎は、何といいましても土地を与えることであります。私はそれだからといってここで土地解放を全面的にやれなんということを申すのではありません。今
農村を見ますと、土地の少い農民にとりまして手がすぐ届きそうな小規模の開墾可能の土地がたくさんあるのでありますが、こういう土地についてはどのような御方針をおとりになるか、これが新
農村計画におけるまず第一の基本要件だと私は思う。これについては農相はどのようにお
考えになっておるのか。私の手元に入った情報から、
一つの例を申し上げます。これは私はどうも農相のこれに対するお
考えが逆をいっておるのではないかと思う。それは埼玉県比企郡玉川村の日影という
ところにおいて今現に問題になっておる問題であります。これは五年前に村の
農業委員会もあるいは県の開拓審
議会もすでに解放を決定して、買収済みの土地であります。
ところがこれに対します解放の手続がまだ依然としてできない。私はまさかそういうことはないと思いますが、
河野農相が某代議士を通じてそういう土地は解放しなくてもよろしいからやめろといってじゃましているというのが、現地の農民側の言い分であります。私はこれを決して
河野さんのおやりになったこととは
考えませんが、これらの土地は一例でありますけれども、これはわずかに五町歩であります、こういう土地が実は全国至る
ところにあります。私はこれを
政府があえて無理をして地主から取り上げろとは言いません。何らかの方法でもってこういう土地に苦しんでおる農民が気安くとれるように取り計らっていただくということが、私は新
農村建設の第一歩の要件だと思いますが、この点についてはどんなふうにお
考えになっておりますか。