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1956-02-29 第24回国会 衆議院 農林水産委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十九日(水曜日)    午前十時十八分開議  出席委員    委員長 村松 久義君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 白浜 仁吉君 理事 助川 良平君    理事 田口長治郎君 理事 中村 時雄君    理事 芳賀  貢君       赤澤 正道君    安藤  覺君       伊東 岩男君    石坂  繁君       木村 文男君    鈴木 善幸君       原  捨思君    福井 順一君       本名  武君    赤路 友藏君       淡谷 悠藏君    伊瀬幸太郎君       稲富 稜人君    石田 宥全君       小川 豊明君    田中幾三郎君       中村 英男君    日野 吉夫君       久保田 豊君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         農林政務次官  大石 武一君         農林事務官         (大臣官房長) 谷垣 專一君         農林事務官         (農地局長)  小倉 武一君         水産庁長官   塩見友之助君  委員外出席者         専  門  長 岩隈  博君     ————————————— 二月二十八日  委員松野頼三君辞任につき、その補欠として池  田勇人君が議長指名委員に選任された。 同日  委員池田勇人辞任につき、その補欠として松  野頼三君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員赤澤正道辞任につき、その補欠として福  井順一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業基本施策に関する件     —————————————
  2. 村松久義

    村松委員長 これより会議を開きます。  農林水産業の基本問題について質疑を続行いたします。通告順にこれを許します。中村時雄君。
  3. 中村時雄

    中村(時)委員 先般に引き続き、主として新農村と新団体の最後の御質問をしてみたい、このように考えておるわけであります。  まず第一点として、きょうは具体的な問題に入っていきたいと思いますが、市町村段階の新農村建設協議会事務局というものは一体どこが担当されるか、お聞きをしたいと思うのであります。
  4. 河野一郎

    河野国務大臣 これは、それぞれの協議会ができた上で、その協議会の中に協議会委員長なり何なり適当にお作りになって、それがお持ちになると思います。
  5. 中村時雄

    中村(時)委員 協議会の中にその事務局を置く、大体こういうふうにお答えでございますが、協議会計画の立案をし、既存団体事業を実施させるとのことでありますが、それでは補助金というものは一体どういうふうにお流しになるか。たとえば末端へは協議会を通じて流すのかどうか。現在の段階では、県における問題と市町村の内部における問題とでありますが、その補助金はこういう末端協議会を通じて流される御予定でいらっしゃるかどうか。
  6. 河野一郎

    河野国務大臣 先般もお答えいたしました通りに、既存団体事業をする場合には、既存団体を通じて補助金が流れるでありましょうし、それから新しい計画のものとしましては新しい角度から、これを一番適当な便利な方法で流すことにしていきたいと思っております。
  7. 中村時雄

    中村(時)委員 協議体というものは、大体その事業を実施する根幹であって、立案されたものを協議することが主体なんです。そこで片方の事務局というものは、そういう事業体に対するところの資金の運用なりいろいろなことをやらなければならぬと思う。そういう意味においてお聞きをしておるのであって、私は事務局が別になれば協議体を通じて流すのが建前だ、これが普通の考え方じゃないかと思いますがどうですか。
  8. 河野一郎

    河野国務大臣 その協議体でおきめになるなり方によると思うのであります。それから非常にその協議体が強力に結成されまして、そうしてその協議体事業計画をされます。その計画されたものを、たとえば先般も申し上げました通りに、農地改良土地改良のようなものでありますれば、土地改良のすでにありますものを通じて流しておると思います。それから協同組合を通じて計画されるものにつきましては、協同組合を通じていくものもあるだろうと思います。従ってこれはそのそれぞれの場合々々によって違う、こういうふうに御了承願いたいと思います。
  9. 中村時雄

    中村(時)委員 適地適産を奨励して過剰生産になり農産物価格が下落をする。これは以前においてそういうことはたくさんあるわけなんですが、農家経済を圧迫するような事態となった場合には、政府はどういう責任をとるかお聞きしたい。たとえば私たちの愛媛県におきましてもみつまたというものがある。これは急傾斜にもってきて非常に農地の高度の利用をはかっている。それを政府奨励をいたしまして、そうしてこれは多年作ですから、ことしやったら来年とれるものでもない。そういうような奨励の結果私たちは一生懸命になってそれを行なった。ところが現在ではその買い入れも政府はやらない。そのあとの補償も行わない。そして実際には五千円内外の価格も必要とするものが二千円くらいに下っている。しかも政府がそれを見殺しにしているために買いたたかれる。そういうような瀕死の状態になっている。適地適産とおっしゃいましても、てれに対するところの裏づけがない場合にはそのような悲惨な状態が間々起る場合もある。そういうことを考えました場合には、一体どのような考え方をもってそれを処理されるか。かりにせっかくやったものがあっても、経営出にはたとえば土地条件中心にして考えていくような場合にはプラス面が出るかもしれない。しかし今言ったようにただ施設であるとかいろいろなものに投入して、それがマイナスになった場合には、それを援助し補助するだけの基礎的な一つの受け入れがなかった場合には、非常に困難な状態となるわけなんですが、それに対してはどのようなお考えをもって進められていくか。
  10. 河野一郎

    河野国務大臣 お話のような点は十分検討しなければならぬと思うのであります。今みつまたの特異な例をお出しになりましたが、今後につきましてもそういう点は十分考慮しなければならぬと思いますが、先般来お答えいたしました通りに、需要を十分勘案いたしまして過剰生産にならないように、計画の基礎をそこに置いていくように、すなわち県の協議会中央協議会がその点については十分に検討をして万遺憾なきを期することが必要なことだと思うのでありまして、これはどこまでも適地適産の反面において過剰生産にならないように、それらの協議会を通じ、中央においてその点については十分注意をしていかなければならぬと考えます。
  11. 中村時雄

    中村(時)委員 今後の問題については注意でいいのですけれども、現実にある問題、そういう問題を片づけない限りは、なかなかそれに乗っからないと思うのです。そういう意味において私どもはお聞きしたわけなんですが、今後そういうことのないようにと言っても、今言ったように適地適産的な感覚からいくと、すでにあるそういうマイナスを起している面を救助される意思があるのかどうか。
  12. 河野一郎

    河野国務大臣 みつまたの点につきましては、御承知通り全国に非常にやかましい問題になっております。これはこのまま放任すべき問題ではないことは御承知通りでありまして私といたしましても大蔵省の紙幣もしくは硬貨の制度については十分注意をいたしましていろいろ大蔵大臣にも注意を喚起いたしておるわけでございまして、これが国策上どうしてもみつまた硬貨にかえるということになる場合には、これに対してはもちろん相当な救済の方策を講じなければなるまいと考えております。
  13. 中村時雄

    中村(時)委員 ちょっと話がそれて失礼ですが、そうすると、みつまたに関しては以前から大臣にお願いしておったし、委員会発言をし、お答えもいただいたのですが、その御努力の結果が大体硬貨は昨年度よりも水増しをしないという結果が出ておるわけですね。
  14. 河野一郎

    河野国務大臣 それにつきましては、私は大蔵大臣にやかましく言ってありますが、正式にまだ回答してきておりませんけれども、おそらくそういうふうに進んでいないのじゃないかと思います。もしそれをやる場合には何とか返事があるだろうと考えております。
  15. 中村時雄

    中村(時)委員 非常に御協力を願い、われわれの努力もそれで成果を得たと思って、農林大臣に非常に期待をしますが、よろしくその点より以上の御協力を願いたい。これは重ねてお願いをしておきたいと思います。  第四点として、この建設計画を実施するにつきましてこれを法制化する御意思があるかどうか。
  16. 河野一郎

    河野国務大臣 法制化を必要といたさないというふうに今は考えておりますが、今後なお進めて参ります上におきまして、そういう必要が起ればそういうことをやるかもしれません。現在はその必要はないという考えでおります。
  17. 中村時雄

    中村(時)委員 今の段階で十五億円という予算措置を講じて、しかもそれにまた融資をしていくという建前もあるし、今私の聞いておるのは新農村の方ですが、そういう面において一応法制化をされるという御意思が打ち出されるのがほんとうじゃないかと思うのですが、今のところ研究中とおっしゃれば、一応それは研究中で可なりとしておきまして、次に、もしも法制化するなれば、大体いつごろの実施を目当てにして行われんとしていらっしゃるか。
  18. 河野一郎

    河野国務大臣 これは予算が成立いたしますればすぐに着手するつもりでございます。私も法制化しておいた方がよろしいという意見でおったわけであります。と申しますのは、五カ年計画で進めていく、その計画確実性を持たして、将来に対するしり切れにならないようにするのには、法制化した方がいいだろうという考えで、研究を進めて参りましたけれども、そうしなくてもいけるんじゃないかというような点で、今申し上げましたように結論は出ておりませんが、現在ではその必要はないのじゃないかというわけでございます。
  19. 中村時雄

    中村(時)委員 次に新団体の問題を一、二お尋ねしておきたいのですが、現在までの大臣の御答弁、またわれわれの推察からいたしまして、それを要約すると、農業委員会中心として、これはこの前の質疑のときに、農業委員会のあり方、内容そういうことは大臣も私も意見は同じだったわけですが、新団体をそういう意味において作って、その新団体法人組織として、全国都道府県、村をつなぐ系統組織にする、このようにおっしゃっておりますが、そのお考え方には変りはありませんでしょうか。
  20. 河野一郎

    河野国務大臣 大体考えには変りがないのでございますけれども、実は先般もここで申し上げました通り、来月初め、十日以前に結論を得たいということで、時間の許す限り省内におきまして最終検討をいたしておるわけでございます。その検討の結果、いろいろ案を、今ABC案を持っているわけでございますが、まだその結論に達しずに検討中でございます。両三日御猶予いただきたい、このように考えております。
  21. 中村時雄

    中村(時)委員 ABCの案をもうすでに持っていらっしゃるそうなんですが、そのABCの案をお示し願ってともに研究をしていきたいと私たちも思うのですが、そういうものをお示しになれるかどうかお伺いしたい。
  22. 河野一郎

    河野国務大臣 一本にまとめて御意見を拝聴する方が便利だろう、こう思いまして、今一本にまとめてということでせっかっかく努力をいたしております。大体あと一週間くらいで結論を得るようにせっかく検討しておりますから、どうかしばらくの御猶予をちょうだいしたいと思います。
  23. 中村時雄

    中村(時)委員 新団体に関しましては、これは法律化する考えでいらっしゃいますか。もしも法律化をするお考えならば、いつごろ提案される御予定にお考えになっていらっしゃいますか。
  24. 河野一郎

    河野国務大臣 むろん法案にして議会の御審議を願うつもりでおります。それは大体私のところ結論を得るのは、今申しましたように最終決定をいたしますのは三月の上旬、それからこれを党その他の調整をするのに中旬、三月中旬には結論を得て議会に提案いたしたいと私は考えておりますが、その間になお——承知通り問題が問題でございますから、いろいろ各方面の御意見もあるかもしれませんので、一応のめどとしてはそういうめど事務を進めていきたい、こう考えております。
  25. 中村時雄

    中村(時)委員 その場合に、先ほどおっしゃるように系統組織にするということが一点はっきり出てきたことと、それから法案化するということがはっきり出てきたことと、それのABC案というものが一週間以内、すなわち三月の上旬には大体成案を得たい。そういたしますと、その内容の問題に今度は入るわけですが、その内容は主として農政活動を主要な仕事として農業共済損害評価、それに対する諮問、この間新聞にも発表されておったようでありますが、あるいはそれとともに農業技術を行わせるように大体の腹案としてお考えを持っていらっしゃるかどうか。
  26. 河野一郎

    河野国務大臣 今お話農業技術指導の点になりますと、これは一部分は協同組合で行った方がいい部面もありましょう。ないしはまたそうでなしに他のものとの関連するものも出て参りますので、そこに一番問題点を置いて今検討しておるわけでございまして、今一番私として結論にいろいろ検町村組織をどういうふうにするかということと、指導部面をどういうふうに運営していくかということについて、今重点を置いて検討しておるところでございます。
  27. 中村時雄

    中村(時)委員 そこで農業技術の問題でこういうお考えを持っていらっしゃるかどうか。たとえば農業委員会が少くとも今までは農地改革に伴っていろいろな問題をやっていた。ところかその農地に関する問題の解決が非常に縮小されてきた。同時に今までの農地という問題が変じて、今度は農家経営にまで農政活動をやろうという当初の考え方がずれてしまって、そういう立場に立って今技術員が二名おりますが、二名おります技術員を国家が保障して、たとえば農業協同組合に駐在さす、そしてこの技術農村におけるところ経営とのマッチをはかっていく、そういうお考え方を持っていらっしゃるか。あるいはそういう考え方ABCの中の原案の中のどれかに含まれているかどうか、お尋ねしておきます。
  28. 河野一郎

    河野国務大臣 むろん今お話のような点につきましては深く考えまして、検討しておるわけでございまして、最下部市町村組織をどういうふうにするかということに一番私も深い関心を持ちましてそこに重点を置いて検討しておるわけでございまして、今お話の点は一番いろいろ案が立つわけでございますから、研究しております。この点につきましては、しばらく今申し上げますように御猶予を賜わりまして御説明を申し上げたいと思います。
  29. 中村時雄

    中村(時)委員 その研究をしているということは、あなた自身が研究しておるのではなく、みんなに研究さしておるんだろうと思うが、大いに研究されるなら私たちも大いに発言をして、そういう意味において河野農林大臣に対していろいろな援助をしているつもりなのです。私たち考え方は、少くともそうあるべきであろうという考え方に基いてお聞きしておるわけでありますが、それに対してあなた方ももう少し真剣に、ほんとうにそういうことを具体的にもう少し考えて、ともに討論してみたいと思いますが、それに対して、やはりいましばらく研究余地をもらいたい、このようにおっしゃいますか。
  30. 河野一郎

    河野国務大臣 御意見を拝聴いたしますことは喜んで拝聴いたしますが、自分の方針、方向をきめないうちにいろいろお話し合いをいたしましても、私の方も腹づもりがきまりませんので、せっかくお相手ができませんことは残念でございますが、御了承いただきたいと存じます。
  31. 中村時雄

    中村(時)委員 第二点に入りますが、今までの答弁からみると、農業委員会仕事がなくなって使命が終る。そうして新しい仕事をどっかで考えなきゃならぬ。というのは、国費を投じて行政補助機関を作るということは、党並びに内閣の重要政策行政機構監査に対して相反しないかという第二点をお尋ねしたい。というのは、あなたは現在その長官をやっていらっしゃって、行政機構簡素化を叫んでいらっしゃる。ところが実際の問題としては、新団体を作っていくということは、しかもその事務局を今度別の新しい農村建設協議体の中に作る、こういうことになっておる。そうしてまたかりに農業委員会をそのまま今予算措置において残すとするならば、その機構は非常に複雑になってくる。そうすると、あなたは機構簡素化を叫んでいらっしゃるにもかかわらず、その機構は実はより以上複雑になるんじゃないか、このように考えられるのですが、これに対してどういうお考えを持っていらっしゃるか。
  32. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、現在の農業協同組合法によりますと、十五名以上集まれば団体を作ることができる。これについて政府はこれを許さなければならないということになっておりますことは御承知通りであります。従いまして、その面から申しましても、農業団体が自由に結成され、しかもそれが複雑になっておりますことも御承知通りであります。ただおおむね信用部経営いたしまする単協につきましては別で、ございますけれども、その他のものは非常に複雑でありますことはすでに御承知通りであります。従って私といたしましては、この協同組合法で一面において非常に自由に結成され、その自由にいろいろ農村に複雑な組織ができておりますものを簡素化していきたいというふうに考えるのでございまして、先般来申し上げますように、協同組合活動分野を育成強化しつつ、それと別に、複雑になっており、もしくは任意組合等が自然発生しておりますものにつきまして、縦の線を一つ入れることにしたらどうだろうかという点に研究重点を置いて実は考えておるわけでございまして、いたずらに複雑にしようという考えは持っておりません。
  33. 中村時雄

    中村(時)委員 お話骨子はよくわかってくるわけですが、そのときに、今言ったように新団体とそれから協議体事務局を置くということと、農業委員会というものとが出てくるわけなんですが、その場合に、農業委員会というものはそのままに捨て置くというお考えを持っていらっしゃるか、あるいは新団体に吸収されて簡素化をはかろうとされておるか、この点を一つ
  34. 河野一郎

    河野国務大臣 その点は結論は出ておりませんけれども、やや結論近く私として知っておりますことは、農業委員会の現在やっております仕事のうちで、農地に関するものにつきましては、これを市町村長がそれぞれの議会同意を得て諮問さるべき委員会を作れば、その仕事はその方に回すのが公正じゃなかろうか、その方に回した方がいいのじゃなかろうかというふうに考えております。これはなぜかと申しますと、想定される団体強制加入というわけには参りませんで、任意で結成さるべきものというようになると思うのであります。今の農業委員会事務をそのまま移してやるということには、相当無理があると思うのであります。ただ、今お話通り農業委員会の方に農業会議所がございます。これらについても検討を加えておるわけでございまして、これより先は、先ほど来申し上げますように、まだ話を固める段階になっておりませんので、しばらく御猶予を願いたいと思います。
  35. 中村時雄

    中村(時)委員 今のお話を聞きますと、農業委員会の中の農地関係市町村に渡してしまうとなったら、農業委員会の本質というものはすでになくなってしまうわけです。そこで、こういうものを置いておっても仕方がないということになる。仕方がないなら、これをなくするかあるいは新団体の編成の中に入れてしまうか、どちらかになってくる。そのどちらのお考えを持っておるかということをお聞きしたい。何も追及するわけでなく、まだ研究段階だとおっしゃるなら、われわれも研究段階考えておるのだから、一つ率直に言っていただきたい。
  36. 河野一郎

    河野国務大臣 それは今お答えいたしました通り農業委員会が従来やっておりました農地関係仕事は、別に市町村長議会同意を得て任命する委員会にまかして、市町村長諮問機関にしてよろしいのじゃないかと実は考えておるわけでございます。従って、その他の仕事についてどういうふうにこれをしていくかということを研究しておる、こういうわけでございます。
  37. 中村時雄

    中村(時)委員 構想は大体はっきりしてきたのだが、今のお考え方からいくと、ほかの仕事考えていくということになれば、おそらくそれは新団体よりほかない、機構を縮小して一つのものにまとめたいとおっしゃるのですが、農村にまだ何かほかの仕事で作るという考え方があるのですか。おそらくその新団体というものが考えられるのじゃないかという結論になっていくのじゃないか。そういうようなお考えならお考えでけっこうだと思うのです。だから、そういうようにしましょうということを一つはっきり言っていただきたい。
  38. 河野一郎

    河野国務大臣 そこはまだちょっと申し上げかねることがあるのであります。
  39. 中村時雄

    中村(時)委員 大臣、もっとはっきりしましょう。二つしか結論はないのですよ。農地関係農業委員会からとってしまったら、農業委員会に何が残るか。何も残らぬでしょう。何か考えようじゃないかとおっしゃるから、私はその前提で聞いている。機構を縮小していって、ほんとうに正しく一本にしていきたい、あなたは系統的にやりたいのだと言っていらっしゃる。そうすると、出てくるものは新団体よりほかないじゃありませんか。ほかにまた機構を作るといった複雑なことはやりたくないとおっしゃっているのですから、残っておるものは一つしかない、はっきり出てきているのに、まだ少し考えたいとおっしゃる。私は考え余地がないと思うのです。それともまた、常日ごろからおっしゃっておる河野農林大臣の高邁なる構想がここに出てきて、またとてつもない何かを作るというお考えなのかどうか。そういうことならまたここに問題が出てくると思います。少くとも私はほかにないと思いますが、なければないではっきりしてもらったらいいじゃないかと思います。
  40. 河野一郎

    河野国務大臣 一週間御猶予をちょうだいすれば、明確に結論を出しますたしたい。そういうことですから、今中村さんのおっしゃることはごもっともでございます。ごもっともでございますが、私の考えていることは、今中村さんのおっしゃるほかにもう一つあるのでございます。それはそこに出ていくか出ていかないか、まだ踏み切りがつかずにおるのでございますから、もうしばらく御猶予をちょうだいい私したいと思います。
  41. 中村時雄

    中村(時)委員 もう一つ考えがあるのだったら、これは非常に重要な聞賭だと思います。そこでおそらく他の農林委員方々全国農民方々も、何が出てくるかとびっくりしておるかと思います。だから一つその点をここではっきりおっしゃって、ともにここで研究しようという態度になり得ないでしょうか。非常に重要なことなんですよ。たとえば今言ったように、また別の一つ考え方があるということになれば、これはもうすでに農業委員会大会が来月の初旬にやってくる、大会があるからちょっと困るから待ってくれ、そうすればまた話が別な問題になってくる。ところがそうじゃないとおっしゃるから、それなら当然出してきて、河野農政としての骨子——もっともあなたの骨子というのは、今まで農業政策の上において何もない。ただ価格現象あるいは流通過程におけるところのものは、ジープを走り回して飛びはねている。その点は私たちも感心して見ておりますが、しかし農政そのものとしては何もない。それでこの際お互いに研究し、相談してみましょうよというのです。それが信用できないというなら仕方がないですがね。
  42. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り団体の問題につきましては、誤解の上に農村の諸君を無用な不安に陥れております。そのために協同組合大会等でいろいろ議論が出ております。そういう際でございますから、結論が出た上で申し上げた方が——今ここで中村さんとお話をするならば、それははっきり意思の疎通もできますし、よくおわかりになったお話でございますけれども、それが外部に伝わります際には、またそれが別の感覚で議論されますことは、非常に私としても迷惑でありますし、また外部の人も迷惑すると思いますので、この際は、きちっとわれわれとしての結論を出す。その結論に対していろいろ御批判をちょうだいし、直すべきは直していくことの方が、いたずらに外部に摩擦を起す危険がないということで——私は決して秘密でどうこうというのではありません。こういうことを申し上げてははなはだ恐縮でございますが、まだ政府としての最終的な態度でなしに、河野一郎としての考えを今いろいろ勉強中でございますので、中村さんの御意見も十分拝聴いたしまして、参考にさせていただければ大へんありがたいことでございますから、いろいろまたお聞かせ願うことはけっこうでございます。しかし私が申し上げますことは、今申し上げますように、誤解を招くおそれがありますから、お許しをちょうだいいたしたい、こうお願いいたすわけであります。
  43. 中村時雄

    中村(時)委員 どうも私ははっきりわからないのです。河野さんが不安な状態農業団体再々編成において各農民に与える、農業協同組合その他にも影響が出てきたということは、何かといったら骨子がはっきりしていないにかかわらず、こういうような問題を取り上げたところに問題がある。そこでたとえばその問題に関しましても、そのことを一応河野さんが決定をしてしまうと、今までのあなたのやり方をずっとながめてみると、決定してしまうと、あくまでも強引にそれを行なってしまうという結果が出てくる。決定してしまったら、いろいろ相談してみたって、なかなか受け入れられるものではない。だから私は、その決定をする前にお互いにいろいろな考え方を出して、そして検討してみましょうというのです。それがまたこの農林委員会のいろいろな検討にもなるのではないか。それが言いにくいということになれば、これは各委員方々にもお話して、秘密会でもけっこうだから、一応外部に漏れないようにして、一つ話し合いを進めてみたらどうかと思うのですが、これは委員長から一つ委員にもお諮りを願って進めてみたいと思います。委員長から各委員にお諮りを願いたいと思います。
  44. 河野一郎

    河野国務大臣 中村さんのただいまの御提案、私も大へんけっこうと思いますが、それはいましばらく時間をおかし願って、適当のときにそういう機会をお与え願って私からも十分申し上げますし、皆さんからも十分意見を拝聴いたします。私は決して、一人で結論を出してそれを押し切ろうという考えは毛頭持っておりませんし、各方面の御意見を拝聴するということは大へんありがたいことでございますから、そういう機会を適当のときに私からもお願いをしてお与え下さいますことは大へんけっこうと思いますが、今日はまだ私の方にそれだけの用意がございませんから、しばらく時間をちょうだいいたしたい、こう思います。
  45. 村松久義

    村松委員長 委員長としても適当の機会にお諮りをいたしますので、きょうは御発言を続けていただきたいと思います。
  46. 中村時雄

    中村(時)委員 それでは私もそのことを了といたしましょう。だがしかしよく注意しておっていただきたいのは、たとえばバック・ペイの問題にしましても、あるいは米の余剰集荷の問題にいたしましても、たとえば党できまってくると、農林委員方々農村の立場から賛成なんだけれども、どうにもこうにもならないのだというようなお話が多々あるのです。だからそういうことをよくお考え願って、ともに研究していただきたい、これだけを一つ付帯的にお考えを願っておいて次にいきたいと思います。  次にお尋ねしたいのは、この新団体は農民から賦課金を取るかどうか、これに対してお聞きしたい。
  47. 河野一郎

    河野国務大臣 その点は先ほど申し上げましたように、市町村組織をまだ最終的にきめておりませんので、賦課金についても従って未決定でございます。
  48. 中村時雄

    中村(時)委員 そうすると取るかもわからない、取らないかもわからない。その新団体の、どういう目的で出てくるか知りませんが、おそらく私は農業委員会がそういう骨子になって出てくるのじゃないかと思うのですけれども、そういうふうにいたしまして、取るかもわからない、取らないかもわからないそこのところははっきりしない、こうおっしゃるわけなんですね。  次にそれではお尋ねいたしたいのですが、農業共済損害評価諮問機関としてこの団体は行いますか。
  49. 河野一郎

    河野国務大臣 そういうことも強く研究をしております。
  50. 中村時雄

    中村(時)委員 これは少し考え過ぎかも知れませんが、共済というのは各農村にとっても個々の農民にとっても非常に重大な問題であります。そこでこの団体に加盟をしていないと、少くともその共済資金がもらえぬのじゃないかという考え方は当然出てくるのです。村の行政自体としましても、そういう立場の方がかえって非常に有利な回転がしやすいという立場をとるということは、往々にしてその補助金なりいろいろな問題の利害関係が伴った場合に行われてくるわけなんです。そうした場合に少くともあなたは強制加入ではないといっても、現実の問題としては加入をしなくちゃ損をするという立場をとりますと、一つのそういうふうな補助金なりあるいは災害補償というような名目から、当然口には出さないけれども、一種の加盟をしなくちゃならぬのじゃないか、こういうかっこうが下部においては出てくると思うのですが、これに対してはどういうふうなお考えを持っていらっしゃるか。
  51. 河野一郎

    河野国務大臣 お考えを承わりまして、十分参考として考えて参ります。
  52. 中村時雄

    中村(時)委員 そういう点では少くとも私は、口では強制加盟という言葉づきにはなりませんけれども、現実の上では強制加盟になる。もしもそういう結果が出てくるならば、それは口では賦課金はどういうふうにしてもよろしいといっても、結果においては賦課金も当然必然的にはくっついてくるのじゃないか、こういうふうに推察されていくわけですが、そういうことのないように一つ十分な御考慮を払っていただきたい、このように考えております。  それから次に、時間がございませんので非常に残念なのですが、農地関係事務市町村に移す、こうおつしゃるならば、農業というものは農地と資金と同時に労働と、この三つがいろいろな形をもって経営の実体をなしている。そしてそのうちであなたが農地行政の方向についてどういう基本方針を有するか、その所信を承わってみたい。
  53. 河野一郎

    河野国務大臣 今お話通り農地につきましてはあくまでも自作農を推進して参りたいというふうに考えております。
  54. 中村時雄

    中村(時)委員 もう一点、第六点として二月十八日に自民党の総務会の決定として、岸幹事長が農協幹部に対して、新団体は設立をしないと言明しておる。ところ大臣は新団体を設立するとの答弁である。こういう食い違いがあるのですが、その点はどうですか。たとえば二月二十日に衆議院常任委員長室へ全購、全販、全中、農林中金、これらの幹部を呼んで、そのときに水田政調会長もいらっしゃったはずですが、その中において岸さんがはっきりと、新団体は設立をしないのだということを言明されておる。そこでみんな納得をして帰られたという話を聞いておる。事実それが文書になっても流れておる。ちょうど幸か不幸か政務次官がいないのですが、政務次官などのおっしゃるのには、私は党人でありますから党の決定したものに対しては絶対いかなることでも従いますと言明しておる。河野農林大臣もおそらくそうであろうと思うが、党の決定に従うのかあるいは自分の構想でこれを進めていこうとされるのか、その点に関してお尋ねをします。
  55. 河野一郎

    河野国務大臣 もちろん党議の決定に従います。しかし私は政調会長、幹事長がその会合に出てどういう発言をしたかは、私に連絡もございませんし、聞いておりません。私の関する限り、先般総務会に私は出席いたしましてはっきり申しております。申しておりますことは、世上伝えられておるような農協を弱体化するような団体再編成と申しますか、新しい団体は作りません、しかしそれとは別個に、これこれこれこれの必要性から自分は案を具して、あらためて総務会の議を経てやるつもりであるから御了承願いたいということを、総務会で私は発議いたしたのであります。これは総務会で了承を得ております。今お話の点はお答え申し上げました通り、党議の決定には党人でありますから従います。しかし農業再編成と申しますか、農村に対する新団体はやらないというわが党の党議の決定は私は了承しておりません。
  56. 中村時雄

    中村(時)委員 そうするとこれは一応岸さん個人あるいは水田政調会長個人の意見である、このように解釈していいわけですね。
  57. 河野一郎

    河野国務大臣 それはその会合のことを私は聞いておりませんので、ここでお答えはできませんけれども、少くとも今申し上げました通りに党議の決定はない、こういうふうに御了承いただいていいのじゃないかと思います。
  58. 中村時雄

    中村(時)委員 それじゃこれがもし党の決定でそういうことがいけないということになれば、この新農村団体の編成に対する問題は取りやめる、こういうことが確実になったわけであります。私は大体きょうは概念的な問題をお聞きして、次に法案が出た結果これと対決してみたい、このように考えておりますので、以上をもちまして概念的な質問だけは終らしておきたい。ただし今言ったような法案が出ましたら、これに対する対決を委員長の方としても御準備を願いたい、このように考えます。
  59. 村松久義

    村松委員長 久保田豊君。
  60. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 最初に委員長にお伺いをいたしておきますが、新農村の問題、新団体の問題は日本の農政の基本に関します問題なのでありまして、従って私ども大臣にいろいろお聞きしたいことがたくさんあるのでありますが、きょうは時間がありませんから、その全部にわたることができません。そこで委員長にまず第一にお聞きしておきますが、私はこの問題はアメリカの余剰農産物の受け入れをめぐります諸問題と非常に大きな関係があると思うのであります。従いまして、今外務委員会の方に第二次余剰農産物の受け入れ協定についての案件が出ているようでありますが、それと同時に、土地改良その他につきまする基本的な点について、当委員会で審議をされますかどうですか、この点と、もう一つ、ただいま大臣お答えの中でも、新農村についてはいずれ具体案を出して御検討をいただく、こういうことでありますが、この点についても、さらにこまかい点については当委員会検討されるようになるのかどうか、まず委員長にこの二点を最初にお伺いいたしておきます。
  61. 村松久義

    村松委員長 基本問題に関する点につきましては、今後も引き続いて質疑応答をいたします。こまかい点に関してはできるだけ法案の審議の際に御議論を願いたい、かように考えております。
  62. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それでは限られた時間ですので、新農村計画の基本問題についてだけ、大臣にお伺いいたしたいと思うのであります。  大臣が今度提案をされました新しい村作り運動、これは農民にとっては非常に魅力のある問題であります。しかもその内容が、農家の安定あるいは経営の安定をはかる、そのやり方は青年の自主的な動きに待つ、しかも下からの計画に対して相当多額の補助金と資金を流してやる、非常にけっこうであります。けっこうでありますが、私がまず第一にお伺いをいたしたいのは、日本の農民の状態が今日どのようにあるかということを、あなたははっきり認識をされて出発されたかどうか、どうもこの点が私どもからいって非常にぼけておるように思うのであります。と申しますのは、いろいろ具体的にわたりますが、農林省のいろいろ発表されました統計、あるいは私どもが日常農村を歩いて経験をしますところは、日本の七四%の農民というものは一町歩以下のいわゆるほんとうの零細農、下層農民であります、学術的にいえば貧農であります。この人たちがまず第一に今苦しんでいる問題は何かというと、土地が足りないという問題であります。第二の問題は何かといいますれば、これは御承知通りこの二、三年来特に昨年以来地主側のいわゆる土地取上げ、やみ小作の反攻といいますか、これが非常に強く出ているということであります。第三の問題は何かといいますれば、これらの農家の大多数の生活というものは農業によってはいない。政府の統計によりますと、五反歩以下の経営面積を持っております農民の数が四〇・六%、一町歩以下の者が三三・五%、合せまして七四%というものはいわゆる零細農であります。この連中の農業所得による家計費の充足の状態というものは、農林省の調査によりますと、五反歩以下の者においては二二・五%でありますが、一町歩未満の者については四九・八%であります。つまり五反歩以下の者については約七割五分が労賃収入である、一町歩以下の者については約五割が労賃収入であるということであります。しかもこれが二十七年の統計によれば、全体の農業所得が一兆五千八百六十一億のうち、農業による所得は一兆二十二億であります。農外所得によるものが五千八百三十九億であります。こういう実情にある日本の七割五分の農民、これは今何に苦しんでいるかといえば、いわゆる農外所得、特に労賃収入が少くなったことによって苦しんでいるのであります。さらにもう一つの問題は、こういう労賃所得が少くなり、祝金がよけいになり、農業経営はあなたの政策だけではありませんけれども、非常に不安定になり、経営と生活か行き詰まって土地を売り出す者が非常によけいになっている、この四つの点が今の日本農民の最大の苦痛であります。この点は二十八年度において政府の統計に現われましたいわゆる自作地の売却件数が四十九万件、二十九年度においてはこれが六十八万件になっている、しかもこれは政府の統計に現われた公のものでありまして、実数はおそらくこの三倍でしょう、こういう実情になっております。こういう実情を土台にして——私はほんとうのあなたの言われるような額面通り農家経営の安定、農家の生活の安定をはかるならば、新農村建設運動はこういう事態をどう解決するかということが根本の問題でなくてはならぬと思う。そこでこういう問題について、私どもが新農村建設の資料その他を農林省から直接いただいたり何かして得たものをいろいろ検討してみますと、こういう七割五分の日本の農民の土地をほしいという切実な要求に対する政策も、生活と経営に困って土地を売り出すという者に対してこれを防止する政策もほとんどない。労賃収入をふやすという政策もありません。また地主側の反攻によって土地取り上げ、やみ小作料がどんどんふえているということについての政策も、この中には一つもない。そこで私はこれらの要求に基いて、この新農村建設計画との関係を以下少し具体的にお伺いをいたしたい。  まずこの七割五分の農家の経営安定の基礎は、何といいましても土地を与えることであります。私はそれだからといってここで土地解放を全面的にやれなんということを申すのではありません。今農村を見ますと、土地の少い農民にとりまして手がすぐ届きそうな小規模の開墾可能の土地がたくさんあるのでありますが、こういう土地についてはどのような御方針をおとりになるか、これが新農村計画におけるまず第一の基本要件だと私は思う。これについては農相はどのようにお考えになっておるのか。私の手元に入った情報から、一つの例を申し上げます。これは私はどうも農相のこれに対するお考えが逆をいっておるのではないかと思う。それは埼玉県比企郡玉川村の日影というところにおいて今現に問題になっておる問題であります。これは五年前に村の農業委員会もあるいは県の開拓審議会もすでに解放を決定して、買収済みの土地であります。ところがこれに対します解放の手続がまだ依然としてできない。私はまさかそういうことはないと思いますが、河野農相が某代議士を通じてそういう土地は解放しなくてもよろしいからやめろといってじゃましているというのが、現地の農民側の言い分であります。私はこれを決して河野さんのおやりになったこととは考えませんが、これらの土地は一例でありますけれども、これはわずかに五町歩であります、こういう土地が実は全国至るところにあります。私はこれを政府があえて無理をして地主から取り上げろとは言いません。何らかの方法でもってこういう土地に苦しんでおる農民が気安くとれるように取り計らっていただくということが、私は新農村建設の第一歩の要件だと思いますが、この点についてはどんなふうにお考えになっておりますか。
  63. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまお話になりました趣旨には、私も決して異存はございません。ただいま例にあげられました埼玉県の場合も私は聞いております。これは幸いに農地局長がおりますから、農地局長に私が指示をいたしまして、農地局長からそれについて必要な指示を県の方にいたしておりますことも、必要ならば御説明申し上げてけっこうでございますが、今お話のようなことにはいたしておりません。その他の一般の全国的な例につきましては、お話の点は今回の新農村建設計画の中にも取り入れるものは取り入れてよろしい、取り入れるべきだと私も考えております。ただ先般来申し上げます通りに、土地が足りないということは事実でございますが、その土地を完全に開墾をする、しないということでいろいろ問題がありますことも、御承知通りであります。善意なものに対しましてはあくまでもそれを推進して参らなければならぬことは、決して私は異存はございません。が、そうでなしに、まま上木をとって処分してしまったらばあとはやらずにほうってあるというようなものもないことはないのでございます。そういうものについては、これをしも善意に解釈してやるわけには参らぬ場合もございますけれども、今久保田さんのおっしゃいましたことに私も同感でございます。しかしそういたしましても、土地の足らないという事実は事実として残されるわけでございます。そこで問題は、食糧の極度に不足いたしておりました際に、たとえわずか一反、二反でも作って、自分は鉄道に勤めておるけれども食糧だけは自分でとっておきたいということから、耕作に対しての意欲が非常に出て、そういうふうに、一方において労銀というか、月給というか、収入のかたわら、自分が農業を営んでおる農家のふえたことも私は事実だと思うのであります。こういう姿が私は決していいとは思いません。一時的な現象として起ったその事実に対して、そういうことが生れてきたということもあるのであります。これらにつきましては、それぞれの村、それぞれの地方におきまして、その村のために全体の人が御協議いただきまして、交換分合もけっこうでございましょうし、または一反、二反のあまり熱心でない百姓をしておられる人にこれをやめていただいて、熱心な人に回してもらうという処置もけっこうでございましょうし、そういうことを一つやっていただくことがいいじゃないか。しかし私は決して上から、そうあるべきだ、こうあるべきだということは申しません。それはそれぞれの村におきますその地方の事情によって、その協議会の決定によって計画を立てていただいて、何とか少い農地をたくさんの農家の諸君が完全に利用して、安定した経営のできるような創意工夫をお願いいたすというところに新農村建設をして参る基本的な要素を持っておるわけでございまして、これはそれぞれの農民諸君にやっていただく。政府といたしましては、別途土地の改良でありますとか、また新しく干拓であるとか、開墾であるとかいうことを別の角度から進めていかなければならぬということで、従来政府のやって参りました施策は施策として行い、現在の農家の諸君には、今それぞれの地方に与えられておりまする条件をよりょく、より効果的に十分御検討を願うというところに着想を持っておるわけであります。
  64. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その点でもう一点お伺いいたします。大臣の今の御答弁がどうもはっきりいたしません。と申しますのは、大規模の干拓であるとか農地の造成であるとかという点は、これでおやりになることは当然だと思うのです私の今申し上げておるのは、いわゆる村の一割以上の農民が立ち上るためには、やはり土地がほしい。その土地がすぐ近くに、荒されたり、あるいは山のような形である。ところ河野さんもよく御承知通り、日本の農村におきまする関係では、農民自体の力ではなかなかこの問題の解決は困難であります。そこで私が今あなたにお聞きしたのは、そういう点について、政府は何らか——これは法制的な措置でなくともよろしいが、積極的な施策を講ずる、それが新農村建設計画の中に何も入っておらない。これは耕地の交換分合だけです。それでは困るので、今申し上げましたような点についても、今後この新農村計画の中に助成なり補助なりの対象としてやると同時に、政府としてはそういう政策をとるのかどうか。私は当然とるべきものと考えるが、農相はこれに対してどう考えるかということを申し上げておる。
  65. 河野一郎

    河野国務大臣 お話通りそういう計画を立てておいでになりますのは大へんけっこうであります。そのことを引き続きやっていただくことにするつもりでございます。
  66. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今の点はこう解釈します。政府としても、そういう地帯が多いのでありますから、これについて新農村計画の中にそういう一項目を起して、はっきりした助成なり、補助なりの政策をとる、そうとってもよろしゅうございますか。
  67. 河野一郎

    河野国務大臣 小団地の開墾は、従来やっておりますので、それはそのまま進めて参るわけでございますから、それを計画の中に織り込んでそういう案を立てておいでになりますれば、それはそのまま取り入れてやることは当然でございます。
  68. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 小団地は、御承知通りすでにでき上った土地の問題です。私の申し上げておるのは、でき上った土地ではなくてもう少し手を加えれば十分に活用ができるという土地が至るところにたくさんある、この問題をどうするかということをお聞きしているのです。
  69. 河野一郎

    河野国務大臣 小団地の新しく開墾する分もむろんけっこうなんであります。
  70. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その点は時間がありませんから、それ以上お聞きしません。  その次にもう一つお伺いいたしたいのは、農相も最近御承知通り、いわゆる解放農地で国家補償獲得期成同盟、通称地主同盟というがあります。これが全国的に非常に活発な活動をしておる。特にこれは最近政治活動だけではなくなっておる。土地の集団的取り上げということが至るところに出てきておる。最も顕著な例は、昨年の十一月三十日金沢市並びに石川県石川郡の両方にわたりまして約八百町村でありますが、四百五十五名の地主が二千六十一名の小作人に対しまして、二百四十一町歩分の農地法二十条に基きますいわゆる強制土地取り上げの措置をして、今現地では大ごたごたを起しております。これに似たような例は至るところに出ておる。これは明らかに農地法の違反であります。しかも地主側は、農業委員会の許可を経ずに二十条でやっておる。これがだめになれば、すぐその次は、必ずこれに対しましてはいわゆる土地の差し押え、所有権に基く立ち入り禁止の処置をするということが全国至るところに出てきておる。私は技術的な問題は農地局長に聞かなくてもわかる。農地局長の必要はありません。この地主の全般的の土地の取り上げあるいはやみ小作料の問題に対して、農林大臣はどのような政治方針で臨むか。自民党の政策ではないでしょうが 最近一部伝えられるところによりますと、この地主の国家補償要求を取り上げるようなうわさも新聞には載っております。私は必ずしもこれが全面的に悪いとは言いません。地主にもいろいろあります。昔からではなくて、近代において自分でもって汗して苦労してようやっと獲得したのに、農地改革でもってただみたいに土地を取り上げられたという地主が少数あります。こういう地主にはある程度補償してやることが私は正しいと思う。しかし大部分の地主は、明治初年時代御承知通り、あの当時の農地改革をごまかして土地を取ったものが大部分であります。こういう地主に補償する必要はない。補償すれば、その負担はまた必ず農民にかかってくる。こういう基本の問題もありますが、今の地主同盟は全国で五万といわれているが、こういう集団的土地取り上げが至るところに出てきておる。この事実に対して農地局長や何かの一片の通牒では、への役にも立ちません。現に立っておらない。これは一番大きな最近の例をあげたのですが、私はあげろと言われれば、幾らでもあげます。これに対して農林大臣はどのような措置を講ぜられるか、この点をはっきりお聞きしたいと思うのであります。
  71. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまお示しでございますが、何人地主が集まろうと、これはあくまでも合法的に適法で処置されるものでございまして、人数が集まったから違法が通るということはない。通すべきものじゃないと思います。あくまでも農地法により、農地委員会の議を経て、そうして合法的に処置されるもの、また処置しなければならぬということには変りはないと思うのであります。
  72. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうもそれが非常におかしいと思うのです。農林大臣の職責は。農地法の基本精神を現実に政治的に保障していくことにある。今の地主の集団的土地取り上げは、農地法の精神を根本から否定するものであります。それは勝手だから自由におやりなさい、そんなものは通るものではないというてほうっておいたのでは、こういう問題が至るところに出てくる。従って私は、農地法をちゃんと守る職責を持っておる農林大臣は、これに対して明確な方針をもって対処しなければならぬのは当然だと思う。それを今のようなお答えでごまかしては困る。
  73. 河野一郎

    河野国務大臣 ごまかそうという量見は毛頭持っておりませんが、それよりほかに答えようがないじゃないですか。農地法によって現に秩序が維持されておるのでありますから、あくまでも適法に農地法によって処置される、それが何人人数が集まったからといってもできるものじゃない。一人であっても正しいものは通るでございましょうが、何人集まっても間違っておるものは間違っておる。農地法の定めるところによってすべては処置される、されることは絶対維持いたします。それよりお答えのしようがない。
  74. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それはその通りです。問題は二十条によって、農業委員会の裁定も許可も経ずに土地取り上げをやってきているというようなことが農地法の精神をじゅうりんしている。それに対してあなたが具体的な措置をとることは当然でしょう。それをとるかとらないかということを聞いているんですよ。
  75. 小倉武一

    ○小倉政府委員 ただいまの農地法二十条に関係いたします小作人からの土地引き上げの問題でございますが、お話のように金沢近辺、石川県におきまして、ある程度まとまって地主の方から小作人の土地引き上げの申請が農業委員会に提出されておることは私どもも承知いたしております。これは近ごろ農地法が改正になりまして、小作地がまた解放になるんだ、こういったふうなうわさが当地方に出まして、それか利用されたのか悪用されたのかよくわかりませんけれども、そういうことで申請が一度に出て参ったというのが実態であろうと存じます。もちろん今お話の解放地主の運動との関連もあろうかと思いますけれども、そういうことが出て参ったのでありますけれども、現実に土地が取り上げられた、引き上げられたということでなくて、そういう申請が出て参っておる。これは力ほど大臣から申し上げました通り、長地法の精神なり条文に照らしまして官法的に処理するつもりで、そういうふうな指示を農地事務局なり県なりに出した次第であります。
  76. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 事務当局がそのくらいのことをやるのは当然の話ですよ。そのことを私は聞いているんじゃない。これは石川県だけではないのであります。諸地方で小規模だけれども出ているのであります。私どもはその処理に苦労している。しかもそう言っては失礼ですが、これは自民党の一部の方が、下条さんが会長で、裏でもってやっていることは事実です。私は具体的に人の名前はあげません。同僚でありますからあげませんけれども、そういうことに対して農林大臣としては明確な政治的な措置を当然すべきだと私は考えておるのであります。それに刑して表直はどうであれ、裏ではどんどんこれを挑発するような格好に事実なっているんであります。石川県の方でも裏話をもう少しすればはっきり出せますが、私はここではやりません。しかし裏話をすれば、今農地局長の言うようなそんな単純なものじゃない。これはあなたは大がい聞いて知っているだろうと思う。そこで大臣は、こういう農地法違反に対してどういう措置をとるのか、結果はどうであれ農民は苦しんでおる。生活条件も非常に悪くなっているんです。全国の農民がそうなっている。こういう不安定な状況であるのに、法律通りにやればいいじゃないかと言ったのでは話にならぬ。新農村のねらいは、大臣の言う通りでは農家の経営と生活の安定じゃないですか。土地取り上げの措置をやってこられた場合において、官庁なり県なりがこれに対して法による適切なる措置をとらなければならない。農林大臣はこれをやるべきではないか。これをやらないということにでもなれば、経営の安定も生活の安定もありはしません。ですからこの点を大臣はどんなふうにお考えになって、今後どういう措置をとられるつもりかということをお聞きしている。
  77. 村松久義

    村松委員長 なお久保田君に申し上げますが、大体あなたの発言時間は委員長において三十分程度と予想しておりますから、どうぞそのおつもりで……。
  78. 河野一郎

    河野国務大臣 お話でありますけれども、知事がそういう不当な要求、不当な行政措置をとろう、とったというならば、これは私も黙って見ておるわけに参りませんけれども、まさか今お話のように、地主が何人集まったからといって、法の精神をまげて知事がそれを運用するということがあろうとは想像できません。でありますから、今知事が正しく運用しようとしておるものに対して、こちらからそれに対してどうこうというわけには参らぬのじゃなかろうかと思うのであります。
  79. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 この問題を突き詰めて参りますと、時間がありませんが、大臣、そうじゃないのです。知事もあるいはこれは一応法というものの形式はやります。そうではなくて、全国的にこういう動きが出ておるのです。二十条によって次ぎ次ぎにこういう問題が出てきておる。もっとひどいところは、すでに解放された土地の返還まで要求しておる。登記済みの土地の返還まで要求しておるという事実がたくさん出ておるのであります。こういう点について知事なり、現在のところでは農業委員会なりに、明確によるべき基本的基準というものを政治的に示すということが必要だということを申し上げておるのでありますが、これをやる気があるかないかということを聞いておるのであります。知事が適当にやっておるのであるからよかろうということでは、われわれの言っておるこういう全国的に出ておる事実に対する標準にならない。
  80. 河野一郎

    河野国務大臣 下条君がやっておられます運動は私も承知しております。両三回陳情も受けましたのでよくわかっております。しかしこの地主連盟の要求に対しましては、先般予算委員会でもお答えいたしました通り政府といたしましては最高裁の決定もあるのでありますから、これについて直接補償するとか、賠償するとかいうことはあり得べからざることであります。これは政府としても明確にその態度は決定しております。ただ先般来新聞等に伝えております戦争の影響もしくは敗戦の影響等によってこうむった損害については——この問題というのじゃありません。全面的に再検討しようじゃないかというような意見の方がわが自民党並びに政府部内にありますことは事実でございます。それと今の小作地の返還要求というようなこととは全然関係がない。そういうことと関係をもって政府考えていない。小作地については、あくまでも農地法の精神によって、もしくは農地改革によって創定せられた農地については、あくまでもこれは自作農として維持するという方針によって行政措置を進めていくということ以外にはやりようがない。これについていやしくも間違いが起るというようなことはあり得べからざることと私は思います。
  81. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 時間がありませんので、あとはいずれまた政府委員に対しましてこの問題を深く突き詰めて参りたいと思いますので、一応これで終ります。その次は、昨日もちょっとお伺いしたのですが、いわゆる貧農層、下層農民の生活並びに経営の行き詰まりからする自作地の売り放ちということが非常に多い、ずっとふえておる。昨日もいろいろお伺いをしたわけでありますが、自作農の維持資金が初年度二十億、その次が二十五億、現在でも大体農林省の調査でも、実質上土地を担保として三百八十億も借金がある。政府の見解では、大体二百億くらいの資金があればどうやらこれの防止ができる、こういう話です。ところが今の調子ですと二百億の原資ができるまでに八年かかります。これではとてもしょうがない。早急にどうしても二百億の自作農維持資金を充実することが、今日の農家並びに農業経営の基礎を安定する土台だと思われる。こういう点はいずれあとでお聞きしたいと思いますが、何か効果の明確でないような自作農創設資金の方へ予算面ではわずか十四億、資金を入れて三十億、それにいろいろ資金を入れますと百二十一億になる。こういう余分の資金をやることが農家経営の安定の基礎になるかということを私どもは疑問に思う。そこでこの点について、自作農維持資金——いろいろな欠点はあります。ありますけれども、今農民はこれをぜひほしいのです。そうしなければ農家の経営と生活の基礎がくずれてくる。これに対して早急にこれを二百億なら二百億に短期間にする。ことしやれとは言いません。言いませんが、御意思があるかどうか。
  82. 河野一郎

    河野国務大臣 私も同感でございまして、前年度以来これについて努力をしておりますけれども、力が足りませんで思うようにいきませんが、できるだけ御趣旨に沿うように今後努力を続けるつもりであります。
  83. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その次に私がお聞きしたいのは、いろいろ新農村ということを言っておりますが、大体政府の五カ年計画を見ましても何を見ましても、河野さんの構想の一番基本には、米作りで引き合わないものはやめて引き合うものだけにしよう。それはいろいろありましょう。同時に引き合わない米作といものは転換しなければならぬ。何に転換するかというと私は酪農を中心としたいわゆる商業農業だろうと思う。これはあなたがそうでないと言ったって、たとえば五カ年計画でもどういうことになっているかというと、穀菽農業の五年後における目標は、一二五です。ところが酪農だけは二一九という最高の目標を持っておる。そうしてあとその次に大きいのは養蚕です。養蚕が一四九、そうするとおそらくほかの、たとえば野菜を作ったってくだものを作ったって——くだものは今のところちょっといい。ほかのものを作ったってなかなか引き合うような農業にはならないと思う。私も村でやってみましたが、一年や二年はいいが、二年、三年たてばやはりだめだ。今のような政策の中ではこういうことであろうと思いますが、大体そういう方向で、この計画を見ても大体そうなっている、こういうようなことが果して日本農業の基本的なコースとしていいかどうか。酪農そのものは、えさは全部アメリカや外国の飼料に依存をする。草地改良をやってもあるいは自給のあれをやっても、これはなかなか安定をいたしません。同時に製品面ではどうかといいますと、大乳業商に押えられ、さらにアメリカの余剰乳製品によって押えられ、不安定の限りを尽しておるのが今の酪農家の実情であります。しかも今度はジャージイというものを入れてやってくる。これを中心にしていわゆる今までの水田を中心としての穀菽経営から、酪農中心のいわゆる商業経営へ移っていこうというのがあなたの大体基本構想だと思う。これで日本の農業が安定するとお考えになっておるのかどうか。日本の農業経営は、私どもの見解では、こういうことでは国民経済の観点からいっても、農家経営農村の生活の点からいっても、ごく一部の富農は別といたしまして、少くとも八割以下の大部分の農民というものはこういう経営には依存はできない。またやっても決して安定はしない、こう思うのですが、この点についてはどうお考えになりますか。
  84. 河野一郎

    河野国務大臣 これは議論にわたるかもしれませんが、私は総じて考えますのに、食糧は順次移行して参るべきものだ、文化と食糧との変遷というものはあると思うのであります。おおむね先進国の例をとってみましても、非常に澱粉質のものをたくさんとったものが、少量の蛋白質に変って、カロリーをとっていくというふうに変っていく傾向はあると思うのであります。この傾向は決して無視するわけには参らないと思うのでございます。それだからといって米を作らないでよろしい。急激にそれが現われてくるとは思いませんけれども、順次そうなっていくべきものと思うのであります。従いまして農家としてはより有利なものに変っていくということは決して悪いことじゃないと思うのでございます。ことに労働条件等を考えました際に、これと見合って日本の国是を確立いたします際におきましては、農業政策の面におきましても、今申し上げました通りに相当にわれわれとしては考えていかなければならぬ問題が多いのではないかと思うのでございます。でございますから、今お話のように酪農の方に力を入れ過ぎておる、生糸の方に力を入れ過ぎておると仰せになりますけれども、私は生糸の将来性を考え、もしくは酪農の動物蛋白を補給する国民栄養の方から考え、もしくは粉食に変ったことを考えますれば、その程度に力を入れていくことは決して間違ってないと考えておりますが、今たまたま明治、森永というような、大資本のものが現在この酪農の上におりまして、これが非常な影響を与えておるということは事実でございます。これについても、これをこのままにしておいてよろしいかどうかということについては、次の命題としてわれわれは当然考えなければならぬと思うのでありまして、この点は今お話のように、米をそっちへ変えるのかとおっしゃいますけれども、積極的に米作りを変えなければならないとは決して考えておりませんけれども、将来の問題としては、今申し上げましたように深く心して参らなければならぬと思っておる次第であります。
  85. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今の点は非常に基本的な問題ですが、時間がありませんからまた別の機会にします。  そこで次の直接の問題といたしまして考えますことは、この新農村では、農相の構想によりますと、一カ町村で補助金が四百万円、資金が六百万円で大体一千万円、これを五カ年間で五千町村にやるというと、五百億の資金が両方でいる。ことしは三十億かそこらでしょう。しかもそれを見ますと農林省の計画では、あと十三、四項目の各種補助金というものが重点的に加わるという構想になっておる。その金額は全部合せますと大体において百二十一億何がしということになる。この五百億という膨大な金が、しかもことしの大体を見ると、ほかの部面を削って新農村に持ってきたのであります。決してほかの部面をそのままにしておいて、新農村をそれの上積みとして加えたものじゃありません。今日は時間がないので詳しく予算検討をする機会がありませんけれども、私どもがいただきました予算書を検討してみますと、ほかのあらゆる部面予算を削って、これに集中したというふうにしかとれない。しかも全体の傾向としては、農林予算は二十七年以来年々減ってきておる。その中でこれから今後五カ年間に、一年間百億の資金が出るかどうかということ、もう一つ出るといたしましても、それは私どもからいえば、他のより重要な費目を犠牲にして、この新農村建設ということにぶち込むという結果になる。しかもこれを中心にして他の補助金その他がこれに重点的に行われる。こういうことが非常な今日むずかしい段階にきております日本農業全体の発展の方向、少くとも政策の基本になり得るかどうか、この点を私はこまかく論じたいと思っておったのでありますが、これは時間がありませんからお聞きできませんが、第一は、今後農相は五カ年計画をおやりになるというが、ことしでさえ三十億、今後毎年百億ずつの予算と資金、両方が調達できるかどうか。それはほかの費目を犠牲にしないでできるか、犠牲にしておるじゃないですか。しかも今現われましたような新農村建設というようようなこういうばく然とした計画に、この巨額を投資し、しかもそれを中心として、本年度からいいますれば、資金と両方では大体において百二十何億、これを集中してやることが、日本農業の基本的な発展の方向を保証するものとあなたはお考えになるのかどうか。私どもはこの点について、過去のいろいろの自力更生運動の結果を見ても、しりすぼみであって、当時の政党なり政府が、単に農民を一時ごまかしているだけのものであって、決して日本の農村の基本的な発展の方向には役立っておらない。戦後におきましてもいろいろこれに似たような計画はたくさんできております。いずれもしり切れとんぼになっておる。こういう事態から考えましても、私はこの点に非常な不安を持っており、同時に疑問を持っておる。私個人の見解を申してみれば、こういう農村のやり方が日本の農業が国際農業に対決していく場合におきまする、日本の農業の生産力の基本的な発展の方向をゆがめてきた。これではいけないのではないかというふうに思うのでありますが、以上四点について私は農林大臣の確たるお見通しなり御決意なりをはっきりお伺いいたしたい、こう思うのであります。
  86. 河野一郎

    河野国務大臣 大体今回の新農村計画の金が、他の重要なものを削ってこれに振り向けたということをおっしゃいますけれども、そういうふうに私は考えておりません。これは全然新しい新規施策として行ったことでありまして、他のものを削ってこれをやったのではないのであります。また将来にわたってこの運動を強力に発展させまして、ぜひ五カ年間にこれを実現いたしたいと考えております。  次には、他に非常に重要なものがあるにもかかわらずこういうことに移行することによってかえって危険ではないかということでございますけれども、私がここに一つ考えいただきたいと思いますことは、従来日本の農政は、政府の施策を農民をして追随せしめる施策であったと思うのでございます。国策の遂行、つまり国家の要請に基いて農業経営をその線に集中せしめてきたと思うのでございます。ところがその段階はすでに過ぎて、もしくはその段階を飛び越えて、農家自身の安定、農家自身の営農の企画というものによって進めていくべきであって、従って国家的な計画、地域的な計画もしくは個人の農業経営のそれぞれの創意によってやらしめるということにしていかなければいけない、そういう時期がきておるのだという意味において、ここに新しい農村の建設、新しい農村といいますよりも、新しい農家の経営形態の発展ということを意図して考えておることでございまして、こういう方向にいくことの方が世界経済、世界農業の変遷に伴って、これに弾力性を持って対抗していくことにおいては、より有効ではないかという考えのもとにやっておるのでございます。
  87. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もう一つ私が申し上げておきたいのは、今度のあれでは、大体九百町村に計画をことしのうちに出させて、五百町村を五カ年間でやる。実は私は農業委員会当時これを提唱いたしまして、みずから自分の村で六年間やってみました。実際にやってみると、私はその経験もいろいろ申し上げたいが、時間がないから申し上げないが、今のような、ことしのうちに九百カ町村に計画を出さしてやるなどというそういういいかげんなことでは、ほんとうの村の総合計画なんてできるものではありません。それで出てくるものは何かというと、農業委員会なりあるいは改良普及員なり、ボス連中の作った単なる作文であります。これが農家のほんとうの要求と結びついた計画になるには並み大ていのものではありません。一人々々が納得し、一人一人が借金をしょうことを承知し、一人一人の計画が立たなければほんとうの総合計画ができるものではありません。従いまして今の農村には、青年を中心にしてやるといいますけれども、そういう民主的な要素はほとんど少い。一人々々の農家がこの問題に積極的な発言ができる、こういったものが保障されてまとまってくるものでなければだめだ。私はこれをやるのに四年間かかりました。四年かかってやっとことしあたり大体において私の村では、この総合計画からして農家の所得は約一億ふえております。約千二百戸ばかりの村であります。しかもやりました計画はまだごく一部であります。一番基本の問題の土地改良、ここでいっておるところの交換分合というような問題は、なるほど事業予算政府から五千二百万円もらっておる。それにさらに耕地整理を入れますと全部で八千万円くらいになりましょう。これが金が来ないために、三年間にできる計画が四年たっておりますけれども、何も工事が進みません。一年間にわずかに百メートルか二百メートルずつの事業資金しか来ないということではできないのである。私はこういう全体の構想はいいといたしましても、急にこういうふうにやられると、必ずかつての自力更生運動時代のペーパー・プランが出てきます。そうして村の連中は何も知らないうちに、ボス連中があっちの施設を作ったり、こっちの施設を作ったりして、補助金を食い荒してしまって残るものは借金だけ。そうしてただ一つだけ残ることは、河野さんには言いたくないですが、そういう金をもらった連中の一部のボスだけは、政治的にあなた方とつながりましょう。これがあなたのねらいでないことは間違いない。間違いないといたしましても、結果はそうなりましょう。しかし最後に農民に残るものは、決してプラスは残りません。これをまじめにおやりになるならば、やり方はまだ別にある。ほんとうに今の農村の状況をしっかりつかんで計画をしなければ、一年間に百億の巨費を投じてやってもどうにもならない。私はこの運動をみずからやってみた。全国的にもやってみた、同時に全県的にもやってみました。私の郡でもやってみました。あなたのように、青年を動かし講習会もやり、いろいろなことをやってみました。しかしほんとうに農民の一人々々が結びついた、いわゆる村の総合計画は、そんなあなたの言うようなことでできるような日本の農村は状況じゃない。この点を見落して、機構であるとか何がどうとか、そういう団体なんかどうでもいい。ほんとうにその点に民主的なものがあれば、結局はどんなものができてもやれます。そんなことは問題じゃない。そういうことにこだわることでなく、この計画をまじめにおやりになる、政治的な効果をねらわれるならすぐ早くやった方がいいけれども、それでは農家の経営の安定にもならない。そうしてこれは大体の計算でしょうが、今度の計画によりますと、五千カ町村として、大体一カ町村二百町歩ないし百二十町歩くらいになりましょう。百二十町歩くらいの計画を一千万円ではほんとうのものはできませんよ、そんな目くされ金では。もう少し本気でやるならば本気な計画を立ててもらいたい。河野さんの構想は、政治的なあなたの御意図から判断して必ずしも私はどうこう申し上げる意図はない。ないがやるならばまじめに、一つ本格的に取り組んでもらいたい。こういう場当り的な、人気取り的な行き方、そう言っては非常に失礼ですが、そうでなくてほんとうにまじめに取り組んでいただくならば、私としてはある程度の効果は期待できるんじゃないかと思うのですが、この点について私は、基本のあなたの構想がどうもいいかげんな、こう言っては非常に失礼な言葉になりますが、私はこの点を申し上げて、まだたくさん申し上げたいことがありますが、今日は時間がありませんからこの程度にいたしまして、最後にこの点だけをお伺いしておきたい。
  88. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまも御指摘になりました点は、私も深く留意をいたしております。先般も静岡県知事にお会いしました際に、久保田さんが郷里で非常に努力しておられる点も十分伺いました。そういうのが全国各地にあるわけでございます。そういうふうにすでに検討されておるところもありますから、それらの地方を十分に参考ともするでございましょうし、今日の農村の青年諸君には、私が直接お会いした人にも、非常によく勉強しておられる人がたくさんあるわけであります。そういう人が従来のおやじとかおじいさんに押えつけられて、なかなか改革ができないという方面も相当あるわけでございます。それを呼び出してそして新しい方向に持っていこうというところにも私は一つのねらいをもっておるわけでございまして、今一千万円ぐらいのことじゃとうていものにならぬ、こういうことでございますが、ところが従来農林省でやっております、たとえば土地改良であるとかその他の施策は、そのまま進めて参るのでありますし、これらもこの計画と合わせてやって参りますから、私はこれでいける分だけやろう、こういうつもりでございまして、決して一時の人気取りであるとか、一時の計画であるとかというようなものでいうことは考えておりません。町村におきましても、少くとも今私の考えておりますのは、三十人もしくは五十人ぐらいの協議会を作ってもらいたい、一部少数の人によってできた協議会では困るので、あらゆる種類の団体長を集め、部落会長を集め、そして人数の点からいっても、これ以上の人の集まった協議会で立案することを要望するというようなことで規制をして参りたい、こう考えておるわけでございまして、急いでおるわけではございませんが、そういう例もあるのでございますから、そういうところを十分検討すればおのずから結論が出る地区が、相当に全国にあると思っておるわけでございます。
  89. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 資料の要求を一つ農地局長にしておきたい。農地法の運営が非常に乱れておると思うのです。大臣は適法にやっておるといわれるけれども、農地法の四条、五条、二十条、二十一条、二十二条、二十三条の実施の状況、それからその現れた数字と、裏面的な動きの実態、これを一つ早急に資料を御提出願いたいと思うのです。
  90. 村松久義

    村松委員長 資料を一つ提出するように願います。  午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十二分休憩