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1956-02-08 第24回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月八日(水曜日)    午前十一時四分開議  出席委員    委員長 村松 久義君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 助川 良平君 理事 田口長治郎君    理事 中村 時雄君 理事 芳賀  貢君       赤澤 正道君    足立 篤郎君       五十嵐吉藏君    大野 市郎君       加藤常太郎君    木村 文男君       楠美 省吾君    小枝 一雄君       中馬 辰猪君    綱島 正興君       原  捨思君    松浦 東介君       松野 頼三君    赤路 友藏君       淡谷 悠藏君    伊瀬幸太郎君       井谷 正吉君    稲富 稜人君       石田 宥全君    小川 豊明君       神田 大作君    田中幾三郎君       中村 英男君    日野 吉夫君       久保田 豊君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         農林政務次官  大石 武一君         農林事務官         (大臣官房長) 谷垣 専一君  委員外出席者         農林事務官         (大臣官房総務         課長)     檜垣 好文君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 昭和三十年十二月二十日  農産物価格安定法の一部を改正する法律案(芳  賀貢君外十三名提出、第二十三回国会衆法第四  号) 昭和三十一年二月七日  国立伝貧研究所設置請願外四件(石坂繁君紹  介)(第三三八号)  同(助川良平紹介)(第三六二号)  農地改革の行過ぎ是正に関する請願外三件(灘  尾弘吉紹介)(第三三九号)  同外一件(高橋等紹介)(第四一四号)  林道費増額に関する請願田中利勝紹介)(  第三四〇号)  三陸沖並びに常磐沖高潮による水産関係被害対  策確立に関する請願田中利勝紹介)(第三  四一号)  新農業団体設置反対に関する請願有田喜一  君紹介)(第三七〇号)  同(伊東岩男君外五名紹介)(第三七一号)  同(山本粂吉君外五名紹介)(第三七二号)  同(大高康君外二名紹介)(第四一五号)  同(田中武夫紹介)(第四一六号)  同(植木庚子郎君紹介)(第四一七号)  耕地地すべり地災害防止対策事業費国庫補助に  関する請願塚田十一郎紹介)(第三七三  号)  亜麻、ちよ麻事業振興対策確立に関する請願  (横路節雄紹介)(第三七四号)  同(芳賀貢紹介)(第四一八号)  日本中央競馬会法の一部改正に関する請願(中  馬辰猪君外三名紹介)(第四一九号)  農業共済団体事務費国庫負担増額に関する請願  (鈴木善幸紹介)(第四二一号)  三陸沖暴風雨による水産関係被害復旧促進に関  する請願鈴木善幸紹介)(第四二二号)  さんま漁業限定操業に関する請願鈴木善幸  君紹介)(第四二三号)  も−かさめ延繩漁業の許可に関する請願鈴木  善幸紹介)(第四二四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業基本施策に関する件     —————————————
  2. 村松久義

    村松委員長 これより会議を開きます。  昨日の農林大臣農林水産業基本施策に関する説明に対する質疑を行います。
  3. 中村時雄

    中村(時)委員 その前にちょっと議事進行について。実はこれは委員長にも責任があると私は思うのですが、昨日ここで理事会を開催いたしました際に、本日は農林大臣施政方針に対して一応総括質問をしようという結果が出、そこで本日十時より開会をする、こういう結論になったわけであります。ところが本日に至りまして、委員長よりの御報告によりますと、農林大臣予算委員会出席のために出席ができないという御返答があり、そのために委員会が非常におくれてきたわけでありますが、その後予算委員会を調べてみましたところが、本日は、自民党山本勝市君が質問をされる時間としては午後三時ごろからになっており、それまではあいているという結果が出てきたわけであります。そこでこの問題を取り上げまして、いろいろ紛糾していったために・その内容をいち早く察知をした大石政務次官が極力手配をし、農林大臣出席となったわけであります。  そこで現在農林大臣としては、うわさによれば、あるいは副総理兼準外務大臣等とか、いろいろお忙しい問題があるとは思いますが、しかしそれにいたしましても、そのような不信な行為、たとえば委員会において本日出席されると言明しながら、事実は予算委員会に出るんだとかいう、調べてみると、予算委員会には午前中は何の出席要求もない、こういうような詭弁を弄する行動に対しましては、厳に今後は慎しんでいただきたい。同時に、もしこういうような事柄がたび重なるならば、われわれといたしましては一応ここで不信任を上程するだけの決意だけは持っていることを明確にお伝えしておきまして、私はまず農林大臣のお考え方をお伺いしておきたい。その結果において、実はこの議事進行が非常に停滞をし、あるいはそのために審議がおくれるということの責任は、よってすべて農林大臣にあると私は思うわけなんです。そういう意味において一つ農林大臣の御発言をまずお願いしたいと思います。
  4. 大石武一

    大石(武)政府委員 私が前座を勤めます。実はただいま中村時雄委員の手きびしい御戒告の言葉がございましたが、一言これについてその手違いの原因を確かめてみたいと思います。  きのう委員会のあとでここでは理事会がございました。その折、大臣施政方針演説に対する質問に対してぜひとも大臣出席要求するという皆様お話がございましたので、何とかしてできるだけ出席できるようにわれわれの方でも時間の手配をいたしたいということをお約束を申し上げました。その結果、昨日の五時ごろ自民党幹事長室において大臣とお会いいたしまして、ぜひあしたの午前十時にはこの委員会出席をして皆様の御質問に対して答弁をしていただきたいということを申し上げましたところが、よろしい、実はあしたは行政審議会があるけれども、それをほうっておいても委員会出席をして答弁をするという約束をいただきました。実はそのことをすぐ私が委員長に連絡すればよかったのでありますけれども、ついいろいろな雑用に追われまして委員長に報告するのを忘れたのだけれども、安心してそのままいろいろの用事に行ったわけであります。実はきょうは私も十時十五分ごろここに参ったのでありますが、そろそろ大臣が来るころだろうと思って政府委員室に寄ってここへ来てみたところが、どんな手違いか知りませんけれども、大臣予算委員会には出席するけれども農林委員会には出席しないのかという農林委員会皆様の激しいごけんまくに驚いたのであります。しかしそんなことは一つ約束をしたことはないのでありまして、大臣はきのうは疲れたと言っておりましたから、もし疲れたならば予算委員会政務次官が代行しようというわけで、一応答弁要旨をもらってきておったわけでありまして、われわれとしては、大臣農林委員会を軽視して予算委員会出席して、この委員会には出席しないというようなことは一つも申したことはないはずであります。どんな手違いでそういうことが起りましたか、この点について私は不思議に思うのでありまして、決してそういうようなでたらめがなかったことを私ははっきり申し上げておきます。
  5. 河野一郎

    河野国務大臣 いろいろ中村委員から御注意をいただきましたが、私といたしましても、これからの委員会の進捗に支障のないように、他の方面の時間を差し繰りまして十分皆さんの御質問にお答えするようにするつもりでありますから、今日のところは一つ了承をいただきまして御質問をお進め願いたいと思います。
  6. 中村時雄

    中村(時)委員 大石政務次官の問題ですが、今の発言中の、委員会において、予算委員会には出席するが、農林委員会には出席しないという条件に基いた紛糾一つもなかったのであります。もしもそういうことがあるならば、その出所なりあるいはそういう紛糾の性質なりをあなたは十分調査され、責任を持って答弁に当らるべきがあなたの責任だろうと私は思います。ところが自分が想像されて、そういう形式的なものを取り上げて、その内容の十分な検討もせずして、単に抽象的にそういうことを発言されることはもってのほかだと思う。そのときの問題は、予算委員会には出るが、しかし午前中はあいておったと思っておったのが、午前中に予算委員会に出るという事柄がここに起ってきたわけであります。その問題についてわれわれは取り上げたわけで、あなたが農林大臣に忠実であるということはけっこうでありますが、しかしやはりものの考え方はすっきりしておいてもらわなければ困る。  それから河野農林大臣に最後にちょっと……。あなたがそういうことをおっしやるなら、実は心の底からはあなたを信用できないのでありますが、これを一応信用して、これ以上追求しませんが、今後における行為によってこれを十分実証されたいと思います。
  7. 大石武一

    大石(武)政府委員 政務次官といたしまして、農林大臣に忠実なるあまり変な誤解をいたしまして申しわけなかったと思います。今中村委員お話をよく伺いまして、ついつまらない憶測をしまして申しわけございませんでした。以後は行動において皆様の御信用を得るようにやって参りたいと思います。
  8. 村松久義

    村松委員長 ただいまの中村君の委員会議事進行に関しては、これは私ども委員といたしましては重大関心を持っておる点でございます。その内容に関してもいろいろだだいま応答があった次第でございますが、さらによく研究協議をいたしまして善処いたしたい、こう考えております。どうかさような点において御了承をいただきたいと存じます。  では総括質問に入ります。芳賀貢君。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 私は、昨日の農林大臣農林水産施政に関する御方針内容について若干の質問をいたしたいと思うのでございます。昨日の農林大臣演説によりますと、まず前提といたしまして、世界農業情勢の分析の上に立っての政策をだんだん進めておるように考えておるわけです。その点に対しましてお尋ねをしたい。  今日の世界的な農業情勢一つの趨勢といたしましては、過剰生産傾向がだんだん顕著になってきておるということは否定することができないのであります。そういうような現状の上に立って、わが国農業施策をどういうふうに対応させるかということは非常に大事な点であると考えるのであります。その対案といたしましては、大臣方針によりますと、まず農民の下から盛り上ったところの総意の結集によって、農業生産性向上農民自主性の中から強めていかなければならぬ、そういうところに一つの重点があるというふうに考えるのであります。もちろん国内農業が、世界農業に対応できるような力強いものに成長するということは最も望ましいことであります。その点は否定することはできませんけれども、世界農業過剰傾向から来る日本農業に対する圧迫をどういうようにして排除するかという点に対しては、全然触れておらぬのであります。その点に対しましては、どのような配慮を講じようとしておるか、まずお伺いします。
  10. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘の点につきましては、御承知通り、現在わが国におきましては、為替の面において管理をいたしておりまして、必要なものに為替の割当をして輸入をするということにいたしておりますから、世界農産物過剰の問題はこの点でカバーできるし、もしその点で不十分な問題があって、価格その他国内農産物悪影響を及ぼすものにつきましては別途考慮することとし、御承知通り、だんだん必要に応じて政府施策をするということになっておるわけであります。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 その点が大事なんです。為替管理だけでやるというのでは本旨に沿わないと思います。世界的な一つ過剰傾向において、やはり市場開拓をして、たとえば日本なら日本に対して余剰農産物の処理の場を開拓しようという考えは、アメリカにしても当然持っておるわけです。ですからそれをどういうふうにして防遇して、わが国の弱い農業をそれに対応させるようなものに持っていくかという政策は、これは非常に大事な点だと思います。それに対してどういう対策を用意しておるか、その点はやはり明確にする必要があると思います。
  12. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り米麦については現にこれを実施いたしております。その他サツマイモを通じまして、澱粉等については砂糖の面でこれを強化して参ろうとしておることを見ても御理解いただけると思います。そういうふうに主要農産物につきましては現に実行中であります。また菜種等についても生産時におきましては輸入を防止しております。そのようにして、政府においては国際的な過剰農産物については、国内にこれが悪影響を及ぼさないように全部実施をして参っておりますし、今後もこの線を緩めるという考えは持っていないのであります。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣の申される点は現実と非常に異なっておるのです。余剰農産物等圧迫を阻止しなければならぬということを言いながら、実は今の河野農政というものは、その一番おそるべき余剰農産物圧迫むしろ手先になっておるという点が非常に多いのであります。この点は大臣としても否定できないと思います。そういう政策をやりながら、この演説の中には非常にりっぱな文章だけを並べておるのです。ですからその内容は非常に空疎である。しかも今日の政府が行なっておる農業政策というものは、農林大臣しか知らないのです。農林次官も知らないし、各局長、官房長も、農政基本的な中心がどこにあるかということを全然わきまえておらないのです。ですから農林大臣の勘のおもむくままに農政というものが動いており、安定性を失なっておるというのが現状ではないかと思うわけです。ですからそういう点に対しましては、やはり世界的な農業情勢を分析した場合においては、これに対応する明確な対策というものをまず明らかにして——もう一つは、世界的に見ると過剰の傾向が強くなっておると言うけれども、日本農業の場合においてはそれと非常に異なっておるのです。過剰傾向というものは、国内農業生産全体を見ると、まだ現われておらぬわけです。ことしの輸入計画等にいたしましても、米麦輸入計画は四百万トン以上ということになっている。そのほかに、たとえば食糧輸入、大豆とか飼料の輸入とかそういうものを入れると、やはり五百万トン以上の農業生産物輸入をしなければならぬというところに置かれておる。ですから日本農業は、まだ過剰傾向は現われていないのです。そこに私は、今後の農政基本を置かなければならぬと思う。ですから、たとえばこの演説の中には示されておりませんが、今後のわが国農業生産性向上に対してどのような計画を立てて、それに対応したような施策をあわしていくか、そういう点はお述べになっておらぬわけです。政府には自立経済の五カ年計画というものはあるわけなんです。食糧増産に対しましては、一応長期経済六カ年計画の中において、これは一千三百五十万石程度食糧増産計画を持っておるはずなんです。ですからその計画の一環として、昭和三十一年度にはどのような計画を明らかにしておるか、そのような点を数字をあげて少し御説明を願いたいと思う。
  14. 河野一郎

    河野国務大臣 少し申し上げますことが長くなるかもしれませんが、お許しを願いまして私の考えを申し上げてみたいと思うのでありますが、基本的に考えられますことは、食糧自給度向上して参るということは、これは厳に政治の上に取り上げていかなければならない。この基本方針は間違いないのでありますけれども、しかしこれにあまりに急であって、農家経済を度外視して、自給度拡充しさえすればよろしいというわけには参らぬと思うのであります。農政基本農家経済確立拡充向上というところに第一義を置いてやって参ることが必要である。これが国策の面からいたしまして、ただいま申し上げまする食糧自給度向上というものと二つの問題を組み合せまして、そこに調和点を見出して、現実農政を運用して参るということだろうと思のであります。従いまして国内において農産物が不足しておる、食糧が足らない、であるから農政を足らない農産物増産に向けていく、これはその通りであります。その通りでありますけれども、一面から申し上げまする農家経済安定拡充という方からいたしまして、非常に立地条件の整わない、しいて申し上げますれば、生産費の高いところで米麦生産を強く要請するということにいたしますると、御案内の通り米麦価生産者価格決定最高生産費にとるならばそれはよろしゅうございます。しかし最高生産費にとって米麦価決定をするわけには私は参らぬと思うのであります。どうしても平均生産費でいかなければいけないと思うのであります。しいて申せば、どの辺にその平均値をとるかということには議論がありますけれども、いかに考えましても、最高生産費に基準を置いて米麦価の維持をするということはとうてい不可能だと思うのであります。一面そういう施策をいたしますれば、一般国民大衆食生活費負担が非常に大きくなりますから、これはとうていできない。これは議論になるかしれませんが、社会党の皆さんがおっしゃるように、二重価格制をおとりになって最高生産費主義でおいでになることができれば、これはまた一つ考え方かもしれませんけれども、私たちは最高生産費にとらず、適当な安定値を見出してやりまする以上は、最高生産費では生産に従事しまする農民経済安定値を乱すことになりますから、その点は困難であるというふうに考えますれば、一方において国内における食糧自給度拡充と申しましても、拡充いたしまするには、十分に施策を講じて、食糧生産費のあまりに高くならないように、限界点はある程度に置かなければいけない、こう思うのであります。そういたしまして一面において農家経済を安定して参るということにいたしまするから、そこに外国食糧輸入をある程度認めていかなければいけないという点が起ってくると思うのであります。さればと申して、国内食糧安定を乱すような外国食糧輸入を手放しにするわけには参りませんから、あくまで外麦外米について、これを政府管理して参ることについては、厳にこれは続けていかなければいけないということを思うのであります。その他の農産物につきましても、今申し上げました通り増産はいたさなければなりません増産はいたさなければなりませんけれども、その増産には生産費限界がある程度あるんじゃないかということを私は考えなければならないと思うのであります。そういう面からいたしまして、これが生産費限界と申しましても、副業でやる場合と専業でやる場合とございますから、いろいろその間に融通性はむろんありますけれども、これを取り入れて考えます際に、今申し上げました通りに、農家経済拡充食糧自給度向上と、この二つの面を適当に調節して施策方向に定めて持っていくということが正しい行き方ではなかろうかと考えておる次第であります。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 そこでお尋ねしている点は、食糧増産六カ年計画と、今年の、たとえば農林予算関係がどうなっておるか、こういう点はやはり明らかにする必要があると思います。六カ年計画によりますと、千三百三万石を増産するということになっておる。そのうち三十一年度は二百十三万石の増産の期待を持った計画を持っておられます。その場合においては、農林省の最初の予算要求の原案は、千六百五十億くらいを要求したのですけれども、今の政府予算案として示されておる数字は、約二分の一の八百七十五億円くらいになっておるのであります。そういたしますと、この食糧増産計画のみならず、農林計画全体に対しての大きな狂いが来ておるはずですね。そういうのはやはり内容を明確にして、この農林予算に対応したところの計画を立てることがまた必要になってくると思うわけなんです。そういう点の関連性大臣が検討しておるとするならば説明していただきたいし、わからぬとすればそれでいい。
  16. 河野一郎

    河野国務大臣 当初要求いたしました千六百億の予算の中には、これを後年度の資金に振りかえてよろしいものもございますし、かつ予算として要求いたした数字を適当に分析いたしますると・まず千二百億から三百億の間くらいのものを要求したわけであります。この千二百億ないし三百億の要求をいたしたのでございますけれども、これは例年皆さんの御了解の通り、大体予算は、当初要求した予算決定いたして参ります予算とは、全体の予算規模の上から、これはある程度年度に回して実行してよろしいものについては後年度に回す。たとえば、今御指摘食糧増産五カ年計画の中に出て参りまする数字につきましても、これは後年度回しにしようというようなものがある程度出ておるわけであります。その他のものにいたしましても、たとえば災害復旧の点にいたしましても、私は二十九年度までの災害はこの際ぜひ復旧すること、全部片づけることにある程度要求したわけでございますが、これも財政都合である程度年度回しにいたしております。そういうような関係で、必要の最小限度はこの予算に計上することができて今御審議願っておるわけであります。今理想として、できればこういうものをやりたいというものとの差が今お示しのように現われてきておるわけでございまして、どうぞ御了承願います。
  17. 中村時雄

    中村(時)委員 関連してお聞きしたい。私は今の大臣食糧増産の問題について、一つの大きな危惧を持っておる。それは、農林大臣はこういうことを予算のぶんどりの際におっしゃっておる。食糧自給が戦中戦後のように国家至上命令でなくなった現在、なかなか獲得しにくい、こういう発言を新聞に発表されたことがあるわけですが、それを考えた場合に、少くとも私は河野さんのおっしゃっておるような流通経済からくる価格構成としての米の輸入、そういう問題について今言った基本的な予算の措置の上からでなくして、ただ規模的にその問題を取り上げているのじゃないか、こういうふうに考えられるわけです。そこで、実際の五カ年計画を見てみましても、当初三十一年度におきましては百三十万石くらいが予定されておったと思う。ところが実際には一割五分くらい減となりまして、百万石に足らないような状態になっておる。このことは、当初の計画が完全にずれている、すなわちこの五ケ年計画はただ単なる計画であって、実質的にはちっとも進行されないというお考え方を持っているのかどうか。これは非常に大事なことですから、そういう意味において一つ大臣考え方を聞きたい。
  18. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま申し上げました通り、五カ年計画は五カ年の計画目標として、これをぜひ具現するといふことに現内閣は方針をきめておるわけでございます。しかし予算都合で今年度に実行するもの、これを二年度、三年度において幅を広げていくというものはあるわけでございまして、その間に社会情勢一般国内政治情勢と、見合いまして、一方を多少急ぎ一方をおくらすというようなものができるわけでございまして、計画全体を、今年度でやる予定であったものを今年度予算に組まないから、これはこれで捨てるのだということには考えていないわけでございます。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 毎年のように農林予算が非常に減少しておる、それはお気づきでしょう。たとえば二十八年の予算の中では、総額一千七百億くらい炉農林予算になっておった。二十九年度は一千二百億でした。ところが現大臣になってから、去年は一千億を割って九百五十億、今年は八百七十五億ですから、同じ一兆の国家財政規模の中においても、四年間くらいに農林関係予算が二分の一くらいに減っておる。この減っておるということも、日本農業がだんだん自立方向に向っておるということであれば非常にいいのですが、そうじゃないのです。むしろ農村における階級分化というものは今非常に顕著に進行しておるわけです。そういうことになると、農林予算を圧縮することはむしろ日本農業、しかも中層以下の大多数の農民経済基盤を破壊するようなことになるわけです。そういう点には、やはり農政基本的な面から大きくてこ入れをするというような政策をどうしても構ずる必要があると思いますが、この点に対して大臣は何ら打つべき手を打っておらぬように私たちは見受けるのですがこの点はいかがですか。
  20. 河野一郎

    河野国務大臣 昨日も次官から御説明申し上げたと思うのでありますけれども、現実に前年度予算と今年度予算と比べますれば、御承知のように昨年は災害がありません関係で、天候のかげんで災害関係の経費が、前年度と今年度を比較して主たるものとしては、これだけが金額的には減少しておるということであって、実質的には前年度予算より今年度予算は充実しているというように御理解いただいてもいいと思うのであります。さらに前年には災害関係が非常に大きく出ているというような点もございますし、特に同じ一兆億予算と仰せられますけれども、御承知通り今の国家財政から参りますと、当然増が法律に裏づけされている。当然増でどうしても三百億ぐらいのものがあるわけでございます。そういう関係からいたしまして二十九年の一兆億と三十年の一兆億を比べますと、二十九年の九千七百億くらいに当るわけでございまして、従ってことしの一兆四百億が初めて昨年の予算とことしの予算と同程度のものになるという予算規模になっていると思うのでありますが、そういう関係からいたしまして、むろん不十分でございまして、現在の農業事情から考え、さらに将来の農村の事情を勘案いたしますときに、なるべく早い機会に農村施策を十分に打ち立てるようにしていかなければならないと考えておりますけれども、何分社会政策その他において非常に緊急を要するものが多いものでございますから、幸い昨年は希有の豊作に恵まれまして、天災等もございませんでした関係等から考えて、こういう予算の編成で一応やって参ろうということにいたした次第であります。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 結局農林予算が減少するということは、農民の階層分化を非常に促進させているといことはお認めになっていると思う。一例をあげますと、昭和二十二年には専業農家が五五・四%、兼業農家が四四・六%であったのですね。ところが二十九年度になると非常に変りまして、専業農家が三八・九%、兼業が六一・一%というふうに変ってきている。これは何のためかというと、結局農業専業では食っていけないというのがこういう傾向を示しているわけです。ですからむしろ農業専業よりも半農半プロ的な方向に転化していかなければ生活をささえることができないということになっているわけです。ところがその傾向も大体三十年度以降は兼業の機会というものは非常に狭くなって、兼業の機会を求めることはできないようなことになっているわけです。そういうことになるとますますわが国の中農以下の、いわゆる下層農民農業者としては全然生活を維持していくことができないようなことになるわけです。こういう点に対しましてはやはり農業の保護政策日本農業の零細性に対しては国の施策の中で強い保護政策を講じていくということは必要なのだ。ところが河野農林大臣の就任されて以来、こういう中農以下の力の弱い農民に対する保護的施策の突つかい棒を一本々々はずしているわけである。そういうことは果して今の日本農業政策の上において望ましいことであるかどうかということに対する御意見を聞かしてもらいたい。
  22. 河野一郎

    河野国務大臣 御意見でございますけれども、私は率直に申し上げますが、農村の現状から見まして、いつまでも現在までとり来たりましたるような傾向の農村のあり方は正しくない。と申しますのは農村が失業者、失業問題を解決する温床であるかのごとき現状で進めて参ることは妥当でない。もう少し農業農業としてりっぱにこれは成り立つ農業の育成をしていくことが眼目であって、そうして農業に保護政策を続けていって、いつでも帰農すれば何とかやっていけるのだ。都市で少し不景気が来たから、農村に帰れば何とか食っていけるのだというようなことで、従来日本のとり来りましたるような傾向の、景気がよくなるとみな都会へ出ていってしまう、不景気になると農村へみなそれが戻ってきて、これが潜在失業者になって農村の中に入り込んできて、これが専業農家圧迫するというような傾向農業政策を続けていくことが果して妥当かどうかということを私は考えたいと思うのであります。確かに今御指摘のような数字になっておりますけれども、これはその通り数字がそのままの議論ではなかろうと私は思います。というのは、終戦以来わが国の人口の増加率、すなわち海外から引き揚げておいでになった人で、農村に相当に溶け込まれた人も私はあると思うのであります。これが入植者という関係でなしに溶け込まれた人も相当おいでだろうと思います。都市に失業者ができてくると、そのうちの何%かの者が農村に入ってきて、これが農村の労力を一時的に非常に過剰にする。都会の方に仕事ができると、これがすぐ都会へ出ていって農村は常に動揺するところの経済事情の圧力を受けるというようなことを続けて参ったのではいけないのじゃないか、そこにもう少し基本的に日本農業のあり方を固定するようにしていくことが必要じゃないかというふうに私は考えるのであります。でありますから、今回私が提案いたそうといたしておりますものについてもいろいろ御意見もあるようでございますけれども、農村自体がお互いに協同して、そうしてそこにそれぞれの村、それぞれの地方において自立できるようなしっかりしたものを創意と工夫によってやっていくようにしていってもらいたい。それには農業技術の向上ということが一番必要である。農業技術を向上して、そうしてただ帰農すればすぐに従来の農業経営をしておる人と同じような力を持って、同じ競争の立場に立てるというようなことでなしに、固定した農家は固定した農家として、そういう一時的な農家の人とはおのずから隔たりのあるというようなものを育成していくことができれば望ましいのではないかというふうに考えられるのであります。むろんそれは、今あります農業人口の構成を直もに変えるというようなことを申しても、なかなかそれは言うべくしてできないことであります。しかも国際情勢を勘案いたしますれば、諸外国の非常に恵まれた土地の条件でありますとか、その他気候、風土等の条件をそれぞれ活用いたしております農家と、このわが国の土地に非常に恵まれない農家、しかも非常に多くの人口を持っております農家とこれを同様な文化水準に立てていくということは、なかなかそこに困難性があるということを考えまして、さればと申して農家は常に保護助長の中に生活をしていかなければいけないということよりも、一段と農家自立達成のできるように何らか施策をする方向はなかろうかということを考えていくことの方がいいんじやないかというふうに思うのでございます。しかしそういう空理空論を述べても問題にならぬというようなおしかりを受けるかもしれませんが、理想としてはそこに置くべきではないかというふうに私は考えるのでざいまして、将来の方向としてはそういう方向に持っていきたいものだというふうに思っておるのであります。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 今大臣の申された、農民農業者として自立できるようなことはこれは非常に望ましいのです。ですからそういう条件や環境を作るための施策が必要だと思うのです。あなたはいろいろなことを長々と述べられたけれども、具体的にどうするのだというものは何にもないじゃありませんか。今まで保護助長したとか言っているけれども、何を保護助長したのですか。現在の農政の中におて農民がどれだけ保護助長されているのだという具体的なものがあったら一つ示してもらいたい。
  24. 河野一郎

    河野国務大臣 今申し上げたのは、そういう目標でいくべきだということを申し上げたのでありまして、それについてたとえば今年度予算にはわずか十五億程度のものでございますけれども、私としましては、こういう費用については相当に今後大幅にこれを拡大して、そうして農家の創意によって自立達成できるようなふうにしていきたいと考えておるわけざいます。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 ですからその具体的な案として、あなたの言いたいのは、いわゆる新農村建設だと思うのですが、十四億九千万だかつけてこれで農民自立できるのですか。この効能を一つ述べていただきたい。こういうことをやれば農民自立方向にいける、国内自給度が高まるとか、外国からの食糧輸入に対する依存度が低減する、そういうようなことを実証をする何ものかがあれば、これを明らかにしてもらいたい。そこにわれわれは期待を持っておるのですから……。
  26. 河野一郎

    河野国務大臣 でございますから、先ほど申し上げましたように、輸入農産物、すなはち食糧輸入の防遏というような問題と、農家自立達成ということは二つの別の問題だ。輸入の方を防遏して、そうして増産施策を徹底的にやるということになりますれば、今の与えられた立地条件では生産費が高くなる。生産費が高くなってもかまわぬから輸入を防遏するということに専念して、そうしてどういう場所ででもいいから国費を投じてこれをやっていくという方向一つ方向かもしれませんけれども、それにはおのずから限界がある。でございますから、その問題と今私の申し上げた問題とは別なんであります。私の申し上げましたことは、主として農家経済自立達成の方向に重点を置いて私は申し上げたのであります。でございますから、なるべく生産費を引き下げて、そうして流通過程を改善して、農家の取得を多くするように、第一に政府施策考えよう。そうしてしかも農家自身は適地適作によって無理のないようなところでもって、効率の上るところでもって生産を上げるように奨励しょうということを——あまりこれは強くいたしますと、しからば食糧増産の面はほっておいてよろしいかということになりますから、この二つの問題をよく勘案しつつ施策を進めていくんだ、こう申し上げたのであります。しからば十五億や二十億では何になるか。その通りでございます。私は十五億や二十億でもの炉できるとは考えておりません。これは初年度でございます、計画の初めでございますから、これによって計画を立てて、そうしてその効果を上げるようにしていけば、できれば五カ年間ぐらいのうちに私の意図いたしまする——まあそう申し上げると、お前は五年間農林大臣をやっているわけではあるまいとおっしゃるかもしれませんが、何事をやるにいたしましても自分一人でできるものではございません。皆さんの御協力がありますれば、引き続き少くとも五年、六年の長きに及んでこの施策を続けていただくことができますれば、少くとも私の申しまする一農村単位に対して政府から現金で四、五百万円のものを——私は最初一千万と考えましたけれども、それは少少無理のようでございますから、少くとも五百万円ぐらいの現金で政府から別にひもをつけず、これを農村のそれぞれの創意と工夫によってその地方に一番適したる、たとえば家畜の育成に必要な施設も必要でございましょうし、ないしはまたその他園芸、野菜のようなことをおやりになることもけっこうでございましょう。その他土地改良にお使いになることもけっこうでございましょうし、それぞれその地方地方における一番必要のあるものに政府が出す。そのほかこれに加えるに、利息はかかりますけれども、公団からの融資もいたし、少くとも最小限度一千万円程度のものを一単位農村にこれを補助いたしまして、そうしてそれぞれの地域において農村の将来の生産計画を立てて、その計画によっていくようにしてもらいたい。申し上げますことが、あまり抽象的であるかもしれませんが、私が抽象的に申し上げることは、すなわち地方の創意と工夫を生かすことによって、またそこに熱意を集中することにしていきたいというふうに考えておるのでございまして、各方面の御意向を十分に承わって順次案を固めていきたい、こう考えておるのであります。もちろんこれだけでできるとは考えません。これだけでできるとは考えませんが、従来の政府施策に待って、これと並行して各農村の自立経済達成の目標をそこに置いてやっていただくようにしていきたい、こう考えておる次第であります。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣わが国農民の力というものの判断を誤まっているのではないですか。ですから保護政策をしないでも一本立ちをさせれば世界的な農業情勢の中で太刀打ちできるのだ、そういう判断を持っているのかもしれないのですね。そうじゃないのですか。そういうことになるとこれは非常に大きな間違いが出ておるのです。これは力の限界というものがあると思います。河野さんがたとえば二十貫の荷物をしょえるとしても、ほかの者が皆二十貫しょえるということはない。ところが二十五貫しょわせるということになればそれはしょえないのですよ。だからしょい切れない荷物を農民にしょわしてこれをやるというようなことでは、全然期待に沿わぬ結果が生まれてくるのです。それで私は最初も言ったように、世界農業との立場においてどういう考え方があるかということなんです。ことしの一月の九日に、アイゼンハワーはいわゆる農業教書を出しておるわけです。その前に年頭教書の中にこういうことを言っておるのですね。アメリカの農民は当然受けるべき繁栄の恩恵にあずかっていない。このアメリカの繁栄を諾歌したアイゼンハワーの年頭教書の中において、しかしこのアメリカの農民は当然受けるべき繁栄の恩恵にあずかっていないというのです。彼らは上昇する生産費と下落する販売価格という二つのひきうすにはさまれている、彼はこういう判断をしておる。アメリカの農業の中におてもこういう問題炉出ておるのですから農業教書を一月の九日に出して、九項目にわたる彼の政策を示しておるわけです。そういうのは日本農林大臣としてもやはり関心を持って検討されておったと僕は思うのですがどうですか。
  28. 河野一郎

    河野国務大臣 私はアイゼンハワーの言ったくらいのことはわれわれの先輩は皆言うておったと思うのです。皆それはすでに日本では実行済みだと思うのです。何も私が今あらためてそういうことを申さぬでも、今まで、私の先輩の歴代の農林大臣は皆その程度のことは考えて、すでにそういう方針農業政策を実行してこられたと思うのであります。たとえて申しますれば、明年度食糧政策につきましても、外米、外麦の輸入差益において約二百億以上のものを国内米麦価格差に入れて販売しようという計画を立てております。このごときは予算の面には全然現われておりませんけれども、二百億といろものが国内米麦価格維持に使われるのであります。消費者の負担においてこれは使われるのであります。これは明らかに農村政策食糧価格政策の上において大きな施策だと私は思います。こういうことは何もアメリカのアイゼンハワーが価格政策の上においてどうでこうでということを言いますけれども、こちらはすでにそういうことを長年実行しておることである。今珍しくアイゼンハワーの言うことを取り上げるほどのことではないと固く私は信じております。今私が強く申し上げようと思いますことは、問題は人口問題だと思うのであります。このふえていく人口をそのままにしておいて、この領土内において、たとえばこの与えられたる農地において、日本の農村人口の問題に触れずに施策を完全にやっていこうということはなかなかできることじゃないというふうに思うのでありまして、日本は農村人口をどの程度考えるか、どの程度に持っていくかということにあると思うのであります。農村人口のふえることもしくは先ほども申し上げました通りに、国内の景気、不景気、経済事情がことごとに逼迫を加えて参りますような現状に置いておいて農村問題を円満に遂行していこうとすれば、これは極端な保護政策をもって臨むよりほかに仕方がない。これはあえて私が申すまでもないことだと思うのであります。しかしそういうふうにして農家経済を常に保護の対象にするような最低の状態に置くということは私は取るべき政策ではない、この点はアイゼンハワーも言うておるようですが、少くとも農業も他の産業に比べて同等のレベルもしくは同等以上のレベルの産業として成り立つように持っていくのには、少くとも農業自立経済に持って行くような施策を講じなければならぬ、これは農業問題を考える者としては理想だと私は思うのです。しかしそれをやるには今申しました通りに、与えられたる条件におきましては人口問題を勘案いたさなければできない。農村人口の構成をどうするかというところに基本があると思うのであります。そこで私は今申し上げましたように、新しい農村の建設ということにして、そうしてその地区その地区における農業構造を確立し、固定して、その固定の上に立っていくようにしなければいかぬのではなかろうか。ただ入ってくるものは無制限に入ってくるというようなことをしたのではいかんのではなかろうかと実は考えておるのでございますが、これについてもいろいろ御意見もございましょう。また国策として人口問題はどういうふうにするかということは、農村問題を超越して国策としてあることと思うのであります。ないしはまた国家全体の人口とは別に、農村人口をどういうふうに持っていくかということにつきましてはこれはまた国家政策の一環として考えなければならぬ問題もあるでしょうから、軽軽に一農林大臣としてこの問題の解決点を出すことはできないと思います。思いますが少くとも理想、目標はそこにおいてやるべきものなりと考えておるわけでございまして、今お話通り、二十貫の者に二十五貫しょえといってもしょえぬじゃないか、その通りだと私も思います。しかししょえる限界をきめて、そうしてその上に立って施策を講じていくということでなければ、二十貫の者に二十五貫しょえといってもしょえぬから五貫分は補助金でいくのだ、十貫になったら十貫分は補助金でいくのだということなら、常に最大のものをしょわされて歩かなければならないというみじめさに農村を置かなければならないということになるので、私は共鳴できない、こういうわけでございまして、しょう限界をきめて、そのしょう限界を上げるように自分が持っていくというところに理想をおいて、その理想の達成に進めるようにしなければならぬ、こう思うのであります。芳賀委員 河野さんがアイクの言うぐらいのことはわかっておるというのですが、わからぬでやらぬというならまだ話はわかるのですが、わかっておってやらぬというのは、これは非常に悪質なんです。アメリカにおいてすらアメリカの産業構造の中において、アメリカの農業というものはその後進性をみずからの力で脱却することができないというところに農業一つの特性があるのです。そうでしょう、だからアメリカにおける農業に対する強い保護政策というものは、日本農業に対する日本政府の保護政策よりも強いものを講じておる。向うの方が強いけれどもまだやはり保護政策を強化しなければならぬわけです。わが国の場合は弱いにもかかわらずその保護政策を捨てて、一本で立ってみろ、もっとしょえるのではないかというところに間違いがあるのです。その間違いに気がつかないで、自分のやっておることだけが正しいというようなそういううぬぼれの中で農業政策を進めるということは、日本農民の最大の不幸なんです。ですから私はその点を指摘しているのです。たとえば農業教書の中においても、すでにアメリカは生産制限を強くしなければならぬという事態に来ておるわけです。いわゆる土地銀行の制度を作って、主要農産物の耕作面積の二〇%程度は休耕させる。しかもそのうちで二千五百万エーカーは、耕土保全という形でこれは非農地にするというような強い政策を立てて、そうして生産を制限することによってその価格の維持をはかる。それからこの九項目の中のもう一つは、今後の余剰農産物の処理の方針なんです。今の政府余剰農産物をアメリカから受け入れることに努力されておるようですが、この処理方針によりますと、アメリカの支持価格に対して一〇五%の輸出価格をきめて、それに輸送費を加算したものが余剰農産物の処理の基準価格ということになっておったわけです。ですから余剰農産物がなぜ高いかということはここに問題があったわけです。今後はこの余剰農産物を一そう消化するために、今度は支持価格に輸送費だけをプラスした値段で外国の市場を開拓する、しかも今までは自由主義国家群だけにこれを押しつけておったのですが、今度は東西交流の形で、共産諸国に対しましてもこの余剰農産物の市場を求めるというところまできているわけです。ですから、アメリカの一連の農業政策というものは、わが国農業に対してどういうような影響を与えるかということは、十分なる判断をもってこれに対処する対策を早期に立てておかなければ、これは取り返しのつかないことになると思う。この点に対しては、どうお思いになりますか。河野国務大臣 はなはだ御無礼でございますが、おっしゃることが私に理解できにくいのです。アメリカの非常に余っておるものと、日本の非常に足らないものとを両方一緒にして話をしていらっしやるように私は思うのです。今お話のように、アイゼンハワーのやっておりますこと、それはかって日本が戦前に朝鮮、台湾の米が入ってきて余ってしょうがないときに、品川の沖に持っていって捨てようということを考えて、そのくらい勇断を持ってやられた農林大臣もおられた。後藤文夫さんのごときは大いに考えられた。減産も大いにやろう——今アイゼンハワーのやっていることは、すでに昭和の十年ごろに日本の議会でもってさんざん論じたことです。でありますから、歴代の農林大臣が、そういう場面には今のアイゼンハワーの考えている以上のことを考えて、日本でもやった、こう私は申し上げたのです。これは私はちっとも不思議でないと思う。アメリカほどの国だったら、もっと金があったら、もっとやることはたくさんできるだろうと思う。あの程度農業の保護政策をもって、これを模範にするとか、これをうらやましく思うような程度ではありません。現在日本でやっているのは、もっともっと数等上のことで、脆弱な農村を相手のことでございますから、政府としては、すでに歴代の農林大臣がやって参られたと私は申し上げたのでありまして、これはすでにみなやっております。その程度のことではいけない、こう私は考えているのであって、現在は保護施策をやる必要はないということは、私は決して申しておりません。たとえば食糧の面で申しますれば、わが国は足りないのでございます。であるから、自国内のものを圧迫しない限界において輸入管理しております。外国の食糧が幾ら安くなっても、その安いものを安いなりで国内に売るというようなばかなことを考える人は一人もないと思います。政府におきましても、これらについては厳に戒めまして、輸入等においては、極端に申せば、一番特異の例はコンニヤク玉においてその例が見られると思います。国内のわずかな一地方の生産でありますコンニヤク玉でさえ、安いコンニヤク玉がたくさんあってもこれは入れてはいかぬといって輸入を押えている。その他の生産物につきましても、いやしくも国内農業生産圧迫を加えるというようなものについて、これを手放しに入れるということはいたさぬのでありますから、極端に保護施策を講じておるということは、御了承願えると思うのであります。これは消費者の負担において国内農産物価格を維持して、そして十二分の保護を加えておることは御承知通りであります。価格の面においては輸入を防止して、適正な価格に維持することに専念し、あとは生産の奨励をすることによって国内農民自立達成の方向にいく。私はこの方向よりないと思う。その場合に、輸入を防遏しつつ国内自給度向上する面において、農業生産もしくは農家経済圧迫してまで自給度向上するということは考えなければいけないというふうに、私は最善の配意をしてやっておるつもりなんでございまして、その間に今御指摘のように、こんなことでどうするか——余剰農産物にしてもそうであります。余剰農産物は今御指摘の点で、アメリカで何ときめよう炉、日米間の取りきめは国際価格でございまして、アメリカが売りたいというその値をいかにきめておっても、国際価格以外にはきめない。自由にきめられた国際価格と同様の値段でなければ、価格はきめません。なお、輸入する数量につきましては、決して余りものは入れない、これも厳重にいたしておるのでございまして、それによってわが国農家経済農業生産圧迫するというようなことは絶対にいたさぬということにきめておるのでございますから、その点ははなはだ言葉を返すようで恐縮でございますが、一つ了承いただきたいと思います。
  29. 芳賀貢

    芳賀委員 その点は大臣こうなのですよ。外国ではすでにもう生産が過剰になって、生産制限さえもしなければならぬ事態が生じておる。日本の場合においてはまだ食糧が不足して、一年に四百万トン以上も輸入しなければならぬのだ。だから日本農業事情というものは、まだまだ生産性を十分向上さしても、それでもう頭打ちになるということにはならないわけなのです。だから積極的な施策がそこへ講じられるのではないかということを私は指摘しておるわけなのです。その点あなたはわからないのですね。それを外国の例をとって、もう十分伸び伸びと食糧増産とか生産性向上をやった場合においては困る事態がくるかもしれぬというような危惧を持っておるのじゃないか、その危惧があるから毎年農林予算を減しておるのです。農民に力をつけた場合には生産が高まるから困るということで削減しておるのでしょう。だからそういう間違いをやめなさいと言っているのです。そこにその間違いがある。われわれ社会党から見た場合の心配な点がそこにあるわけです。  それからもう一つ、適地適産ということをあなたは言っていますけれども、適地適産ということは昔からやっているのです。ただこれに何ら計画性を与えない場合は、たとえば昨年のカンショ、バレイショあるいは豆類のような場合、増産したものに対して何ら価格的な保護あるいは支持をしない場合においては、豊作貧乏という形になるわけです。この点に対しましてもあなたは十分やっている、やっていると言っておるけれども、何もやっておらぬじゃないですか。それから必要以外のものは外国から入れないと言っていながら、たとえば大豆に一例をとっても、昨年は三百八十万石国内でとれておるくらいの豊作で、しかも輸入大豆をどのくらいの計画を立てたかというと、去年よりも三十万トン多いところの七十万トンの輸入計画を立てておる。ですから豆の値段が半分に下っておる。そういうことをやっておって、しらじらしく絶対にやっておりませんというのがあなたの常套手段なのですよ。こういう点は十分反省をする必要があるのじゃないか、いかがですか。
  30. 河野一郎

    河野国務大臣 お言葉でございますけれども、私は国内の可能な生産にしてしかも世界的に過剰になっておるから押えてよろしいと毛頭考えたことはありません。可能なものはどんどん奨励して作ることは望ましいことであり、それをいたさなければ農家経済自立達成ということはできるごとではございません。私の申し上げることはその限界で多少議論が出るかもしれませんが、生産費の非常に高いところ、収益率の非常に少いところにおいて無理に増産々々ということで、自給度の達成ということにあまり急であるということは、農家負担をかけ過ぎて農家を困窮せしめるのみであるから考えねばならぬのじゃなかろうかというのでありまして、これにもおのずから限度炉ございます。限度がございますからそういうことを言うておるのでございます。だからその点は、今あなたのおっしゃる点を決して私ははき違えてもおりませんし誤解もしておりません。その点は今私が申し上げますと、お前のようなことを言ってはいかぬということになるかもしれませんが、私が申しておることは同じだと思うのでございまして、最初から申し上げますように農家経済自立を達成するということ、食糧自給度向上するということと、この二つの観点から見合って、適切な結着点をここで施策していくべきだ、私がたびたび申しておることはそのことでございます。しかしそれには御議論がございまして、お前のやるのは少し甘過ぎるという御議論もあるかもしれません。予算が少いからやらないのじゃないかとおっしゃるのでございますけれども、予算の少いのは別の意味から少いのであって、やる必要がないからやらないというのではございません。それは先ほどから御弁明申し上げた通りでございます。  その次に大豆の点でございますが、大豆その他の点について入れたじゃないかとおっしゃいますけれども、これはおのずから国民全体の負担を勘案しつついかなければならぬことでございまして、農家の収益さえ多くなれば、他は幾ら犠牲になってもよろしいのだというわけには参らなかろうと思うのであります。御承知通り全国労働者大衆の生活の今日いかに困窮であるかということも考えなければなりません。またそこには、蛋白資源がいかに重要であるかということも考えなければなりません。また油がいかに動労大衆に必要であるかということも考えなければなりませんのでございますから、従って私は、この油脂原料については安い方がよろしいという立場をとっておるのでございます。そこで昨日も予算総会で申し上げました通りに、国内で販売される二十万トンの大豆、輸入する六十万トンないし七十万トンの大豆、この二つの点をどう勘案していくかということが、当面われわれに課せられた一番大きな問題である。二十万トンの販売される大豆のためによかれとはかっても、六十万トンないし七十万トン輸入する大豆も、それから大豆かすが取れ、それが肥料となりえさとなるのでございますから、これを価格がどうなるかということを勘案しつつ、今大豆を使用農産物として価格安定の線に繰り入れて、そうしてやることがいいか悪いか、もしそういうことにいたすならば、別途砂糖において勘案いたしますように、ただ輸入する大豆について利益を壟断ずる者からその利益をいかに吐き出さすかということと、この二つが並行していくのでなければ私はにわかに賛成しがたいということで、それら両方について今せっかく検討中でございます。ということを予算総会でお答えいたしたのでございますが、これについては今申し上げた通りでございます。そういうふうにして、いやしくも農家経済を考慮しつつ、一般大衆の食糧に与える影響を勘案しつつ施策は講じていくべきだと思う次第でございます。
  31. 芳賀貢

    芳賀委員 それは詭弁ですよ、大臣農産物価格が暴落して安い販売価格で消費者が安くそれを使えるのなら、それは話はわかる。農産物が急激に暴落しても、原料は安くなるときに製品は少しも下っていないじゃないですか。油にしても、しょうゆにしても、みそにしても何も下っていないじゃないですか。原料が急激に下っておって製品が少しも下らぬということは、中間でどこか収奪されているのです。そういうことはわかっているでしょう。わかっておってそれを調整するということをあなたは全然怠っておるわけです。言うことは非常にいいのです。当委員会等に言われることは一応傾聴に値することを言われるのですけれども、やり方というものは全然われわれの期待に反しておるのです。しかもわからぬでやっているのならいいけれども、あなたはそういうことをわかりつつあえてやっているというところに、河野農政に対する批判というものがあるわけです。あなたは力だけの政治でやっているのです。いわゆる強引さと勘だけでやっている。だから弱い面には非常にしわ寄せが来るということを、これはどうしても注意してもらわなければならぬ。あと三年ないし五年あなたが農林大臣をやればと言っていましたけれども、そうなったら日本農業はどうなるということを考えるときに、これは実に憂慮にたえぬものがある。そういう反省はありませんか。
  32. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘でございますけれども、確かに豆は下ったが、とうふは下らぬ、それはその通りでございます。しかしこういう相場のことを、下ったからすぐ私が声をかけた、上ったからすぐ声をかけた……、経済界のことをあとを追っかけてみたって、これは追っかけて回れるものでないと思います。  これは一番の原因は雑穀の取引所にある。取引所の今の構成がよろしくない。だから取引所について抜本的に考慮しなければいかぬ。今のごく少量のものを取引する、これ炉相場の対象になっておったのでは困るというわけで、雑穀取引所について何らか考慮を払わなければいかぬと、今せっかく考えておるのでありまして、どうも今お話通り豆が下る、下ったからいかぬ、輸入を抑えろ、上った、あいつがしやべるたびに上った下った、どうもあのやろう、くさいんじゃないかと、そのたびに言われたのでは私はやりきれませんから、実は黙って経済界の動きを見ているわけでございますが、物の動きは御承知通り、豆が下ったからあしたすぐとうふが下ると、そううまいわけになかなかいきません。少し長期にわたって安定値を求めるということよりほか仕方がないと思います。これはどなたがおやりになっても、そううまくはいきがたい、だからいけるところから手をつけて、御注意があればできるだけやるということで、一つ了承願うより仕方がないと思います。決して私も、今申し上げますように、豆が下ったからとうふが下ったと申しているのではありません。ありませんが、総じて大局においてそういう傾向をとればそういう方向になるから、そういう方向でやっていきたいと思っておりますとお答えいたしたので摩ります。現実は御指摘通り、確かに私が申し上げる通り行っておらぬことは、私も十分承知しております。その原因はどこにあるかといえば、ごく少数の現物をつかみ思惑をやり相場をやるやつがよくないのだ、だからこの動きを何とかしなければならぬということで、せっかく今考えておるのでありまして、これをつぶすといえば、またなかなか厄介な問題が出るでしょうし、実は困っているわけでございまして、いいお知恵があれば拝借すればけっこうだと思っているわけでございますが、どうぞ一つよろしく御指導を願います。
  33. 村松久義

    村松委員長 暫時休憩いたします。    午後零時十六分休憩      ————◇—————    午後二時九分開議
  34. 村松久義

    村松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  資料の要求があれば、一つこの際お申し出を願います。
  35. 中村時雄

    中村(時)委員 これはいずれ砂糖の件に関しましての問題がある場合を想定いたしまして、資料を要求しておきたいと思います。  まず第一に、政府が、差益金を供出する旨の念書を引きかえに砂糖の輸入許可を与えたものの一覧表、すなわち三十年七月以前を含む全部について、その許可年月日、数量、金額、差益額、仕入れ地域、被許可名、その他の条件としては、その処理の状況、差益の処理その他の条件の処理。第二点は昭和三十年一月以降現在までの各月別国内相場の平均価格及び最高、最低価格、二月以降毎日の相場一覧表。第三に、砂糖の割当対象となった会社名、役員及び顧問名、資本の変遷、四番目に、実需若向き割当及び実施以来の内訳・年月日、被割当者氏名、砂糖の種類、仕入地域、輸入業者名、その処分状況、第五点は、昭和二十七年以降現在までの砂糖輸入状況、発表の時期、割当方法、仕入れ地域、数量、金額、それから第六点は、自作農創設資金特別融通法による貸付実態の状況、この六点を資料の要求をいたしたいと思います。
  36. 村松久義

    村松委員長 この際ほかに資料の御要求はありませんか。  芳賀貢君。
  37. 芳賀貢

    芳賀委員 午前中に引き続いて大臣に御質問申し上げます。次にお尋ねしたい点は、河野農政の相当大きな看板であると思いますが新農村建設です。これに対してどの程度期待を持てるかということに対して、一つ自信のほどを聞かしてもらいたい。
  38. 河野一郎

    河野国務大臣 午前中お答えいたしました通りに、現在のわが国の農村の事情は、町村合併等によりまして行政区域が非常に広範になり、ないしはまた都市を中心にして町村合併が進行いたして参ります現状にかんがみて、都市中心の行政になりがちである等々の関係からいたしまして、この際いわゆる経営状態、規模もしくは条件を同じくいたします地域の者が集まって、ここに新しい規模の団体を作って、ここに助け合って共同生産確立していくということ炉必要だろう、標準といたしましては、大体私は全国の農村を五千単位ぐらいにわけることが適当ではないか、むろんこれには広いところも狭いところもできるでございましょうが、おおむね戦前の二カ村が一カ村になるぐらいに、さればといって今町村合併の進行しております三千四、五百にいたすのは少し広過ぎるというような程度のところをねらって考えておるわけであります。これは行政区域とは全然別個に考えて指導して参りたい、こう考えておりまして、その単位によりまして、そこに今申す通り生産条件がやや同じ地区の者が集まりまして、そうしてあえて申しますれば同一の工場の形態のように、同じ米を作るにいたしましても養蚕をやるにいたしましても、同じ畜産をその間にいたしましても、それぞれの生産を共同して、一切のものを進めることによって助け合いができ、共同して販売ができるというような方向にしていくことによって、そこに相当の経済上の優位性を考えることができる、政府としては、これを対象として補助助成、育成の施策を講じていくという単位を作るということにしていきたい、こう考えることによりまして、今全く農村と呼んでもどのものが農村なのか、団体のどの単位がわれわれが農村として対象にしていいのか、今の町村合併をいたしたものを農村の一単位と見てよろしいかということにつきましては非常に不便でございますし、また実情に沿わない点がございますから、ここで農政の対象にするものをそういうところに求めていくということは必要ではないかと考えます。一方先ほど申しました通りに、その地域々々の青年等勉強をよくしておられます諸君炉中心になり、その地方の諸君と相はからってここに生産規模もしくは生産条件もしくは生産の構想を計画を立てまして、そうして将来の働く基礎を立てていくということにしていったらいいじゃないか、ただこの間に特に留意しなければなりませんことは、その地その地で計画いたしますると、物の需要と供給の関係において不自然な条件が超ってくる場合がございます。でございますからそれを大きく取り上げて勘案して、これを指導と申しますか、考慮してもらわなければならぬ場合炉起ってくるだろうと思います。そういう意味合いからいって、比較的適地であってこれをやることがよろしいというものと、最適地であってそれをやるのがよろしいという場合に、取捨選択の必要が起ってくる。そういう意味合いからいたしまして、県または国にそれぞれの場合に委員会を作って、この委員会にその計画をかけて、その委員会と相談をして、案を立てていくようにしてもらいたいと考えております。その結果として相当な効果を上げ得るというふうに考えておるわけであります。
  39. 芳賀貢

    芳賀委員 そこでお尋ねいたしますが、ただいまの御説明によりますと、生産条件を同一にする、共通性にある一つ経済単位を基礎にして、この農業振興の具体的な計画を立てて、それに重点的な施策を集中するということでありますが、この場合必ずしも行政区域にこだわらぬということになると、計画の策定等に対しては非常に抽象的なものになると思うのです。そういう場合には、考え方としては一つの構想かもしれぬですけれども、実際これをこなすという場合に、これはすぐ困難性に当面すると思うのです。この場合あわせてお伺いしたい点は、今までたとえば積寒地帯に対する農業振興計画の策定を求めて、これに対しまして政府が特殊地域に対する諸般の助成を行っておるという事実がある。さらにまた急傾斜地あるいは海岸砂地であるとか湿田地帯であるとかこういうふうな国内における生産条件の劣悪な地域をきめて、そこの生産性を高めるために、国としては今までそこへてこ入れをしてきておるわけです。これとやはり関連性が必ずあると思うのです。私の推測によると、これらの積寒法によるところの総合助成とか、そういうものを全部この新農村建設の中に吸収して、何か看板のぬりかえだけではないかというようなことも感ぜられるわけです。今度変ってくる点は、今までは生産条件の非常に後進的な地域を指定して、この地域に対して主力を入れるというやり方を、今度はそういうことでなくて、この共通の生産条件ということになると、水田地帯は水田地帯、傾斜地は傾斜地とかそういう共通性を求めるということは、一カ村においても困難じゃないかと思うわけです。ですからむしろこれは今までの特殊立法に基くところの一つの保護的な政策の後退になるような、非常に平面化するようなおそれが出てくると思うわけですが、そういう点に対しまして大臣はどういうようにお考えになっておりますか。
  40. 河野一郎

    河野国務大臣 農政を取扱います場合に、あまりに急激なる変革を避けなければなりません。従って今や御指摘になりますように、従来実施されております急傾斜地帯、積寒地帯等に対する施策は、今回私の考えてありますものと併用して参りたい。たとえば湿田単作地帯は湿田単作の方法も取り入れて、それを実行するのに、今申します別の角度から補助助成をいたしますものと、両々相待っていけば、その効果が早く上るというふうに考えますので、積寒地帯におきまする従来の施策施策としてこれを進めまして、そのほかにそこの生産条件をより高度化するために、一段の補助助成の施策を取り入れていくということにして参れば、その間にそう矛盾も起らずに、より一層効果を上げていくことができるだろう、こう思うわけであります。
  41. 芳賀貢

    芳賀委員 私の考えをもってすれば・農業に対する施策というものは、比較的長期の計画の上に立って、それに恒久的な持続した努力を傾ける必要があるわけです。たとえば積寒法にいたしましても、この法律が成立した当時は、全国の積雪寒冷単作地帯の期待は非常に大きかった。これは名前は違うけれども、今の新農村計画と大体軌を同じゅうするわけです。これは、当時末端の総意を益り上げて、町村ごとに農業振興計画を策定して、それを県段階あるいは全国というふうにまとめ上げて、この計画に対して国が適切な助成をするということで、末端の総意を尊重してこれを助長することに努力すべきであるというのが法律の命ずるところなんです。三十年度までで大体その五カ年計画が一応終るわけですが、そこで大臣にお尋ねしたい点は、積寒法に基くところのこの計画に対して、どの程度国が責任を持って力を入れたか、進捗率はどのくらいになっているかということは御検討になっておると思うのですが、その点はいかがですか。
  42. 谷垣専一

    ○谷垣政府委員 事務的な問題でありますので、私からお答えいたします。  従来やっております積寒地帯の問題は、今までの経過から見まして、まだ十分な進捗率に至っていないことは御存じの通りだと思います。それで今度の新農村と申しますか、これの計画考えてみますと、そういう特殊地帯の立法の各やり方に比較いたしますと、事業の内容において、今度の場合には若干広い感じが出てくると思います。それから地域的な問題につきましては、たとえば海岸砂地問題にしても、急傾斜とかあるいは湿田単作の問題におきましても、これは地域的に、あるいはそれらの特殊地帯立法の方が広いような問題が多かろうと思います。つまり今度の新農村の場合は、大体において市町村の区域を区域として考えておりますが、新町村の区域になりまして、非常に広過ぎるような、一つ経済的な、あるいは社会的な共同意識と申しますか、そういう点について、むしろもう少し新町村よりも狭い区域でまとめた方がいいというのが現実においてあろうかと思います。そういうところを対象にしていたしますために、海岸砂地のような場合でありますと、町村にこだわらないで、広い地域で計画を立てたりいたしますので、そういう点で食い違いが生じて参ります。  それから、積寒の問題でございますが、これは事業の内容は、今までいわゆる総合助成と申しますか、共同施設とか、共同加工施設というものが主体になっておったかと思います。今度の場合は、事業の内容等ももう少し広げていきたい。たとえば、耕地の交換のような事業、あるいはまたその他の漁村地域なら漁村地域に対しても、漁村集落に対する特別な施設というようなものを広げていきたい。かような考え方でおるわけであります。従いまして積寒地帯の村が現在全国でおよそ四割くらいあると思いますが、当然これらの村々が対象に相なるわけだと思います。でありますから、従来やっておりました積寒地帯の計画というものに対して、むしろこれが応援するような格好になるのである、かように考えておる次第であります。
  43. 芳賀貢

    芳賀委員 官房長説明大臣説明はちょっとずれておるのです。大臣の場合には必ずしも行政区域にこだわらないで、一つ経済単位を求めてそこでやる、あなたの方は、これは当然なことですが、市町村という、そういう行政区域が単位にならなければやれない、それはわかっておるのです。ただ進捗率がどうなっておるかということ、これは積寒法の関係のものを一応伺っておきたいのです。問題は、こういうような法律が現存しておるにもかかわらず全然これに国が熱意を傾けておらぬという事実が至るところに現われておる。簡単に内容を申し上げますと、農村振興の総合施設に対しましては、四カ年でわずか二億二千万円くらいしか出ておらぬ。それから農業改良に対しては十四億五千万円、蚕糸関係が一億六千九百万円、畜産関係が四億五千四百万円、農地関係が九十九億六千万円、全部関係しているものを合せて四カ年間に百二十二億六千万円ということにしかなっておらぬ。特にわれわれが期待したところのいわゆる総合助成、これに対しては全く形式的なものに終らんとしておるわけなのです。これを平均した場合、十カ年計画の中においてわずかに一五%くらいしか進捗しておらぬ。ですから新農村をやるのもけっこうですが、今まで厳として計画が持たれて、当然これでいけば期待が持てるというものに対して、なぜ力をさらに傾注しないかということなのです。これももう中途でやめて、また新しい看板を上げてやるということは、ただ売らんかな主義なのです。宣伝効果さえよければ中身がどうあってもいいという考え方はいけないのではないかと思います。内閣がかわっても、農業上の施策というものは長期間のものでなければだめだと思う。ネコの目の変るようにこういうことをやった場合は、これは末端農村が一番迷惑するのです。全国の四割以上の積寒地帯の町村がどれだけの苦心、どれだけの労力あるいは経費をかけて振興計画を作ったかということは記憶にあると思うのです。こういうものを全くほごにさせるような形で新農村計画を立てる、中身は全く空疎だということに尽きておると思うのです。しかも一つ経済圏の中において共同化させる、そういう字句炉使ってあるけれども、共同化というのはどういう形なのですか、これは基本的な問題でありますから大臣に……。
  44. 河野一郎

    河野国務大臣 私は芳賀さんのおっしゃることがどうも合点のいかないことがあるのです。せっかくやっていることをやめてしまってまた別のものを作る、決して私はさっきからそういうことを申していないのであります。傾斜地けっこうであります、積雪寒冷地帯については特別にやっていこう、けっこうであります。しかし先ほど来申し上げますように、全国の農村が現在市町村合併によりまして行政区域炉非常に広範にわたりました、これは御了承願えると思います。しかもそれは都市を中心にして合併しております。これは農村振興という農業施策を遂行することを考慮に置かずに町村合併が行われていると私は思います。従来の農村の範囲また同様であります。非常に小さいものもあれば大きいものもあった、そういうことでいくのでなしに、たまたま町村合併によって行政区域がこういうことになりましたから、この際これは将来の日本の農村建設のために、一つここでわれわれの呼ぶところの農村とは、こういう区域のこういうものを呼んでいるのだというものを作っていこうじゃないか、私はこれに別にそう御異存があろうとは思わない。みなこれはそうした方がいいと御賛成願えると実は考えております。これは押しつけるとか無理にどうするとかいうことではないのであって、そういうものを一つきめようじゃないか、みなお互いにきめた方が便利じゃないかということだけでございます。そういうものをきめて、みなでもって一つ行こうじゃないか。そうして行く場合に、そういうふうにきめて、そうしてこの地方でこういうものを作る、こういうものをやるのが一番便利だと、こういうことでやればうまくいくと従来思っておりましたけれども、昨年の議会に私がお願いしたのは、公庫を通じて一つ資金を融通して、そしてその生産資金を貸し付けるというようなことで、新たに農業経営を合理化するとかあるいは農業経営を新しい方向に向けるというための資金を融通するというようなことはどうでしょうといってお願いしたわけであります。それをもう一歩前進して、そうしてその地方地方のそういうものを共同施設なり、ないしは各農家が豚を飼えば非常によろしいからみなで豚小屋を作ろうとか、牛小屋を作ろうとか、みなでサイロを作ろうというようなこと、ないしは先ほど申し上げましたように、湿田地帯一をすみやかに直そうというようなこと、いろいろあるでございましょう。そういうことに対して低利資金を借りるにしましても、みんなで金を出し合うにしましても、先立つものは金だということになりますから、その金をこの際一ぺんにはむろん出せませんけれども、五年間のうちに一区域当り、一町当り一千万円くらいの金を一つ融通してその中に入れて、これを元にして何か気合いをかけてやったらうまくいきはせんだろうか。これはむずかしく考えずに、やさしくすらっとした気持で考えれば、農村炉これに対して、ああそれはけっこうなことだ——私は農村相手にあまりむずかしい話はだめだと思う。そうでなしに、一つすっきりした話で持って、どうだろう、よかろうということでいくのではなかろうかと思う。その間に御注意があれば、いかようにも御注意は承わります、みな農村のためにどうしたらよかろうかということでございますから、いかような御注意も承わりますが、決して今までやっているものをぶっこわしちゃってまた新しくやると言っているのではありません。今までりっぱな案が立っておれば、その案をより以上に早く具現化してやるようにしたらいいのであって、何も今の案ではだめだから今度は全然新しいものを持ってこいとか、別のものを持ってこなければ金をやらないとか、そんなことは決して考えていないのです。それを先日来承わっておりますと、何だか衣の裏によろいでもちらちらさしているようにおっしゃって、そしてそれ炉再軍備だとかなんとかいうことをおっしゃいますけれども、そういうようなことをどこに私は考える余地があるかと思うのであります。全然そういうことを考えずに、もっと表面に出たところで、さらっとしたところでお互いに一つ御協力願えれば仕合せだと思うのでございまして、そういうようなことを全然考えずに一つ農村の諸君にも御協力願う。そういうことによって、できなかったから、その次にはまたどういうことをやろうと、順に積み重ねていくのでなければ、今の農村に対して一服の薬ですべてよくなるということは、これはなかなかむずかしいと思います。しかし順々に一つずつ直していくというならそれでけっこう。まずやってみて、そうしてやってみた結果こういう点が足らないからこういう点についてどう考えようということで行くことにして、今まで積雪寒冷地帯にもやった、急傾斜地帯にもやった、今や全国平均して一つ施策を講じてみよう。そういうものを順に積み重ねていくことが、農林の振興を将来期待できるゆえんだと私は思うのでありまして、それは今おっしゃるように、こんなものを持っていった、それはだめだ、今度はこっちだ…看板ぬりかえを売り込むだけじゃないかとおっしゃるけれども、いろいろな点からいろいろなふうにやることが、それが結局積み重なっていくということであります。それは私らの選挙区に行けば、積雪寒冷地帯でもなければ急傾斜地帯でも何でもない。そういうところでは、一体どうなっているのだということが方々に起ります。ですから三度に一度は全国一円にやはり考えなければならぬこともありましょうし、それから特別に悪いところだけやらなければならぬこともありましょうし、これはいろいろなことをいろいろなふうにやることが積み重なって農村全体がよくなる。これだけの細長い、生産条件もしくは気候風土すべて違う農村でございますから、一つのもので行くことはなかなか困難であるということは、その通りと思いますけれども、やはりいろいろな角度からいろいろなふうに考えてやることがいいだろうというようなことでございますから、一つせっかく御注意をいただきまして、御協力をいただきたいと思うわけでございます。
  45. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣に申し上げておきます。別に私たちは議論したり、反対とか賛成とか、そういうことを言っているのではない。ただ河野農政の疑点とするところを明らかにしてもらわぬといけないので、それで質問をしているわけです。ですから反対だとか賛成だとか、そういうことはまた別なんです。いかにも説明を聞いていると、ぼたもちで顔をなでるようなことなんですが、そこまではいいのです。ただそれを充実させるための用意が果してあるのかないのかというところに問題があるのです。午前中大臣の言われた点も、農家の経営安定によって農業自立化をはかる、それによって食糧自給度を高めるという、その通りなんです。ただそれをやる場合に、大臣炉繰り返して言われた通り、この生産条件の非常に劣悪なところでは、どのような努力をしても、これはコストが高くつくのです。ですから悪い生産条件を改善するということを順序としては先にやらなければならぬのじゃないかと思う。そういうことで今までの積寒法以下の特殊立法というものは出ているのです。非常に条件の悪いところ、後進的な地帯に力をつけて、その水準を高めるということとによって、日本農業全体が力がついてくるということになると思う。ですからこの点やはり当初の目的の通りやってもらわなければいけないのです。これを今度新農村になる場合には非常に平面的になって、むしろ順序として先にやらなければならぬ地域のその対策というものはおくれてくる。そういう事態は必ず起きるのです。しかも新農村の予算が十四億何がしぐらいでは、大したことができないことは最初からわかっている。ですからやはり今まである法律と同時に、特殊地域の、しかも下から盛り上った計画に対する政府の助成とか補助とか、そういうものは大体底流をなすものは同じであるとすれば、もう少し重点的にこれに力を入れる必要があるのではないか。大臣は強弁されているけれども、この新農村計画ができれば、積寒法以下特殊立法の関係は全部この中に入ってしまう。それから去年から始めたところの小団地関係の、山間地におけるところの非常に面積の狭いそういう地域の土地改良事業等が自然対象になってくるというように考える。今までも、特殊立法の中においても、土地改良にしても団地の単位というものは二十町歩なら二十町歩、それで広過ぎるからもう少し単位を下げなければいかぬということが常に論議されておったのですが、それを十町歩とか五町歩というように引き下げた場合においては、これは非常に国の財政的な支出もかさむということで、そこに問題があるわけです。話を聞くといかにもいいのですが、実際問題に移した場合においては、自分のことは自分でやれ、人にたよらぬでお前たちが下から盛り上った力でやれということにしかならないのではないですが、しかも農村の中堅的な青年を動員するという場合においては今日の日本農業一つの悪い面、たとえば今の政府農政を通じて好ましくない面というものは、やはり今日の農村における青年諸君は、大体わかっているのです。そういうことをどんどん指摘されて計画を立てるということ、農林大臣がそれに期待するということは、これは非常にけっこうなことなんですが、そういうことで新農村計画をやるのでないのじゃないですか、上からの意思を末端に浸透させようという、そういう考え方の方がむしろ強いのではないですか、その点はどうなんです。
  46. 河野一郎

    河野国務大臣 今お話の中で、私ちょっと御注意願いたいと思いますことは、生産条件の悪いところを直してやることに努力せよ、私もその通りと思いますけれども、しかしこれが国際的に食糧がなかった、入れようとしても非常に割高であったり、少くとも思うようなものが入れられなかった、どんな無理をしても国内でこれを生産しなければいかぬという時代と今とは、多少緩急が違う。ただそういうことになったからやらぬでよろしいとは決して申すのじゃございません。申すのじゃございませんが、その時代には今申す通りに、どういうところでも全部ここに金をかかるだけかけてやらなければいけない時代もあったけれども、今はそういうものの緩急を考えて、そうして今の急傾斜であるとか積雪寒冷地帯、単作地帯以外のところにも経営の改善を加えて、一ぺん日本の農村全体についての自立更生の計画を立て、その上に立って農村の安定をはかるような時代炉来ておる、こう考えて全面的にこういう施策を講じていこう、こういうことでございますので、その点は一つ了承願いたいのであります。ただ多少あと回しになるということでございまして、そういう方面はもうやめてしまって、捨ててしまうというようなことを考えておるのではないのでございます。今こういうふうにしたら、そんな方はもうやめてしまうのか、決してそういうことじゃないということを御了承いただきたい。ただ前後が、今まず積雪寒冷地帯であるとか、そういう生産条件が悪いところを直すということをどこまでも続けていって、一般はあと回しでいいんだということでなしに、この際には全国的に一ペん生産計画の立て直しとか農家の立て直しというようなことを考えてやって、その上に立って、これを実行しつつ、積雪寒冷地帯その他生産条件の悪いところについて順次いくことにしようじゃないか、こういうことでございますから御了承願いたいと思います。  なお今お話の後段にありました通りに、青年を動員して云々ということで、上から命令するのだろうということでございますが、それなら初めから青年を動員して、これら諸君の協力を求めるというようなことを言わないのでございます。そうじゃないのであって、先ほど申し上げました通りに、中央における委員会もしくは地方における、府県における委員会等において、生産計画があまり片寄ったものができてはいけない。これらの分布の適正をはかるというような意味において相談相手になる。この地方でもこういう計画を立てたが、その計画が全国的に非常に多い。そうすると、その生産計画では生産過剰になって所期の目的が達成できないというような全国的なあんばい、全県的なあんばいからして、これが相談相手になっていくというようなことを考えております。ないしはまた計画といっても、たとえば上の方でいいますのは、こういう地帯についてはこういうような計画が割合にいいじゃないか、国際的にながめて、輸出農作物とすれば、こういうものを重点として取り入れられるのがいいじゃないかというようなことについては申す場合はございましょうけれども、それを一々の村についてこうだのああだのといって注意する必要はむろんないのでございまして、今日の農村の青年諸君は、いろいろ本を読まれ、新聞、ラジオ等で勉強される点において非常に進んでおるということを私自身知っておるわけであります。ですから、それらの青年諸君の勉強しておられるものを取り入れて、そうして案を立てさせてみ、その努力の上に立って、新農村計画をこれらの青年諸君の手によってやらせることによって、非常にこれらの人に発奮の機会を与えることになるだろうということを実は期待いたしておるわけでございます。そのせっかくの期待を上から下手に指導するとか、上から押しつけるというようなことは、全然今日の農村に流れるものじゃございません。戦争中のことが今日行われるというような時代ではないことは十分御承知通りと思いますから、その点は一つ、今私が申し上げました通りにやっていくつもりでありますから、なお各般の点について御注意がありますれば十分承わって、万遺憾なきを期したいと思っておるのでございますので、さよう御承知を願いたいと思います。
  47. 中村時雄

    中村(時)委員 私は関連ですから簡単に、基本的な問題に関しましてはいずれお互いに話し合う機会があると思いますが、二点だけお尋ねしておきます。一つは、今の河野農林大臣考え方に対する基礎であります。先ほど官房長のおっしゃっているような関連から考えますと、大体行政単位にこの問題は考えられているように見受けられます。ところが実際の問題といたしまして、これが経済単位、すなわち業種別のような格好で打ち出されているというようなことになりますと、少くともこの特殊立法なるものは、その劣悪な条件のあるところから、まだ十分でないというのででき上ったのだろうと思う。少くともそういう十分でき上っていない場合には、経済的に考えた場合に、そういう事柄の基礎を十分私たちが——わずか十四、五億の経費を新農村の方に持っていくんじゃなく、その劣悪な条件のところをセーブするという方向にやはり重点が入るんじやないかというような考え方からいたしましてきておるようでありますが、これらの急傾斜問題あるいは寒冷地帯の問題、こういう問題に対する特殊立法というものは、完全に別個なものとして取り上げられてるというような考え方を持っておるかということが第一点。  それから第二点は、先ほどから新農村建設ということを盛んに言われましたけれども、少くとも農政基本というものは、労働と資本と土地、この三っの条件の組み合せでありますが、少くともそのうちで土地に対するところの生産立地の条件、あるいはまた農業労働に対する賃金制の確立の問題、そういうことも十分でき上っていないにかかわらず、現象的な問題を取り上げて、今言った十四、五億円を出して一っの方向確立しようという考え方、そういう考え方よりも、もっと深い、なぜ農村炉そうしなければならぬかというお考えを持っていただきたい、このように考えるわけです。
  48. 河野一郎

    河野国務大臣 考え方といたしましては、従来のものとは別に考えてあります。しかし従来のものと対象炉同じでありますから、実行して参ります場合には、それが一緒にくっついていく場合もあるというふうになるだろうと思うのであります。その次の点は御注意として十分承わっておきます。
  49. 中村時雄

    中村(時)委員 この特殊立法は経済的単位として考えた場合には、ある意味においては同じような方向をとらざるを得ぬという場合もあるということのお考えですが、私の今聞いてるのは、そういう特殊立法と切り離してこれを考えておるのか、たとえば急傾斜の問題にしましても、寒冷地帯の問題にしても、これはいずれ来年の三月三十一日で切れるわけです。すると本年度においてこの問題はすぐに取り上げなければならぬ問題です。かような場合に、あるいはこれがかなり継続的に考えなければならぬというような状態にあるわけです。そこでこの問題を切り離して一応特殊立法としてのお考えを持ってるのか、あるいは今の新農村建設の中に包括して考え方を打ち出そうとされておるのか、この基準だけをはっきり答弁願いたいと思います。
  50. 河野一郎

    河野国務大臣 急傾斜地帯に新農村の建設をこの計画によってやります場合には、その中には今の急傾斜問題に対する施策が入ってくることになるだろうと思います。しかしこの新農村計画は二カ年間で、それが済めばあとはやっていくわけでありますから、それが済んでしまったら、そこに急傾斜もしくは積雪寒冷地帯に対する施策というものが、法律として来年三月三十一日から延長になりまして引き続きこれを実施するということになりますれば、引き続いて農業施策としてはまたそういう施策を続けていく必要が生れてくる、こういうふう考えております。
  51. 中村時雄

    中村(時)委員 いや、お考え方はよくわかるんですよ。私の聞いてるのは、今おっしゃったような劣悪な条件だから、これを重点的に一つ方向確立したいという考え方が出るわけです。そういう意味において特殊立法というものができ上ったわけです。それを平面的なものじゃなくして今言ったような重点的な経済価値の問題として、これは農家経営のあり方もありますから、そういう意味ではこの問題の継続の方向をとり得るというお考え方を持ってるかどうかということを聞いてるのであって、これをとり得るであろうというような考え方でなく、今言った特殊立法としての立場をあなた自身が十分認識され、そういう方向に実行されるかどうかということを聞いておるわけです。
  52. 河野一郎

    河野国務大臣 今特殊立法の施行の期限がきまっておるわけでありますから、これが明年の三月三十一日に期限が切れれば、そこで一応その施策は終ることになるのであります。私としては、それによってまだ十分目的を達することができないという地方が多いということならば、それを延長していただかなければならぬだろう、延長されます場合には、その方向へ、今計画しておりまする新農村計画のあとに引き続き急傾斜その他の特殊立法の施策が続いていくということになる、こう申し上げておるのであります。
  53. 中村時雄

    中村(時)委員 非常に大事なことですから、くどいようですがもう一度お尋ねします。たとえば十四、五億円のものをまんべんなくばらまいて平面的な問題にするよりも、集中的に今言ったような経済価値という考え方に立って農林大臣経済価値説を唱え、この問題は経済単位に考えていきたいとおっしゃったが、実際には経費の上からの裏づけとしてはそこまで行っておらない。あなたのおっしゃる通りです。そこでやはり特殊立法というものに対しては、それだけの劣悪な条件を備えておるという立場に立って、優先的にものの考え方を打ち出されるかどうかということの心がまえをお聞きしておるわけなんです。
  54. 河野一郎

    河野国務大臣 今考えておりますのは、大体全国の五千と想定いたします町村を五カ年間程度でこれを完成したいということを考えておりますから、本年度予算は今十五億でございますけれども、これを引き続き実施いたします場合には、私は相当の施策ができると思っております点が一点。そういう地帯を優先的にやるかという、これはそうではなしに全国的にりっぱな案ができました熱意のある町村から順次実施していくということに考えております。
  55. 芳賀貢

    芳賀委員 この問題はさらに具体的な検討をする機会があると思うのですが、ただ今まで大臣のお述べになった点によって明らかになった点は、農業の弱い面に力を入れるということは、経済的な観点からという非常にむだが多い。そういう思想があなたの考え方の中には非常に強いのです。もちろん生産条件の恵まれた地帯に力を投入すれば経済的ね効果が上ることはわかるけれども、そういう場合には、日本農業の中において今非常に顕著になっておるところの農民の階層分化を一そう促進させるという一つの結果がそこから生まれてくるわけです。ですからそこに意を注いで、とにかく自分の力では何ともやっていけないような悪い条件の地帯にこそ、農業政策を通じて国が責任を持って力を入れなければならぬという、それが長期にわたる歴代の政府一つ施策だった。それをあなたが勇気をふるって改めておるところに非常な特色があると思うのです。  次にお伺いしたい点は、先ほども、今後の農政とか農業計画は、上からの押しつけではなくて、下からの盛り上げにするということでありましたが、私は、新農村の建設の問題とあわせて見のがすことのできないのは、現在非常に世上をにぎわしておるところの農業団体の第二次再編成の問題であると思うのです。この関連というものは、昨年農林大臣は、全国の農業会議所に、町村合併に伴う農政浸透の方策いかんというような非常に見当のつかぬような諮問をされておる。これは農政浸透ということになると、やはり農政を下部に浸透させるという、上から下への作用をする場合にはどうしたらいいかということなんです。それでこれを別々に考えるとわかりにくいのですが、ここの新農村建設と大臣の持っておるところの新しい農業団体の構想との関連性一つ聞かしてもらいたいと思うのです。
  56. 河野一郎

    河野国務大臣 私の農業団体を再編成しようということと、今の新農村計画をやろうというものの間には、表裏一体の関係を私は考えておりません。団体の問題は非常に複雑でございますし、既存の各種の団体もあることでございますから、この事実を無視してやるわけには参りません。でございますから、これを必ずきれいに片づけて、そうして新しい新農村運動を取り入れて、一切その方向に行くのだ、たとえば協同組合にしてもやるのだというようなことのできるはずはないのでございます。たとえて申しますれば、行政区域が変りましても、農業団体は旧態の地域によって経営されているのは非常に多いわけでございますが、その間に、それでは絶対にいけないというので、これを新町村合併単位にするということを強く要請するというようなことがないわけはそこにあると私は思うのでございます。今申し上げまする新しい区域を考えておりまするものが行政地域と必ず上も一致しないということは、たとえば従来の農業団体の地域が三つのものが二っになる場合もあるでございましようし、二っのものが一っになる場合もあるでございましょう。そういうふうに想定されまするから、すべてを一気に画一的にやるというようなことが非常に困難性があり、それがかえって農村に悪影響を及ぼす点もあるということは十分考慮しなければいけないと思うのでございますから、これを無理にそういう方向に持っていくというようなことは絶対に考えておりません。この点はさよう御承知おきを願いたいと思うのでございます。
  57. 芳賀貢

    芳賀委員 そういたしますと、新農村建設運動を進める場合も、末端の総意の結集というものはどういう形でやるのですか。新しい団体の構想の中にもそれがうらはらでない、表裏ではないかもしらぬが、不可分のものだと私は考えているのです。
  58. 河野一郎

    河野国務大臣 計画を立てましてそうして実行に移していく、この期間を大体両三年と私は考えております。これによって永久にいろいろ施策をしてやっていくというふうな仕事の規模もしくは事業は一応両三年で、それで政府の対象とすることは終ると思うのです。そういうふうにして企画され経営されたものが自然のうちにそこに溶け込んでくる場合は、これはあってしかるべきであり、あることを私は希望いたしますが、しかしそれは一に農民諸君の現実に即した動きであるべきであって、それを政府が強要してみたり何なりするということは必ずしも必要だとは私は考えていないのであります。御承知通りこれは生産条件が違うと申しましても、大体そうひどく違っているわけではございません。ただ、川を隔てて川の向う側とこちら側であるとか、湖を隔てて湖の向う側とこちら側であるとか、もしくは大きな町を控えて町の向う側とこちら側であるとかというような場合に、同じ横浜市と申しましても、横浜市の北側と南側というようなものが、これが一つの農村であって、これが一つの協同組合を経営しなければならぬというようなことが妥当でないというようなことから、適当にこれを分けてした方がいいだろう、分けてそここ新しい農村としての経済単位を打ち立てた方がいいだ上ろう、そういう自然の姿を考えて私は考えておるのでございまして、それを無理に画一的に行政区域と合せようとかどういうふうにしていこうというようなことを、上から注文がましいことを言うことはよくない。大体の目標は、従来の一万を五千ぐらいにしたら規模がちょうどいいのではなかろうか、やるならばこれぐらいの戸数のものが集まってやればちょうどいいのじゃないかという標準はあるでしょうが、それを画一的にしていこうとか、その中に従来の農業団体を溶け込ましてしまわなければいかぬとかいうことでなくして、いいことは自然のうちにいいことになるでありましょうし、便利なことは自然のうちに便利の方向に行くだろうと思うのでありまして、それが不便なことであり悪いことであるならばそういうふうにいかないだろうと思うのであります。でありますから、農業団体といたしましても、盛り上る力、農民諸君の要求によってでき上る団体ということで、自然のうちにやろうとすればできる態勢は整えておいてやることがよろしい、こう思うのでありまして、それを放任いたしておきますれば、今のように全国非常に広範囲にわたって、多数の人が全く目標を失うということになりますから、その目標を示すことがいいじゃないか、こう思っおるのであります。
  59. 芳賀貢

    芳賀委員 どうもその点がわからないのです。新農村の計画を立てる場合にも、責任を持って計画を策定し、その所在地が明らかにならなければいけないのです。あなたは行政単位でもない、それから農業関係の団体でもないと言う。ただ簡単に抽象的な経済単位においてそれをやるのだということで、その態勢をどういうような形で作るかということは少しも述べていない。またそれは両三年後になるかもしらぬということであっても、とにかくことしの予算を通じて五百カ村に対しましては二百六十万ずつ出すのでしょう。それをどこに出すかということをきめなければこの予算は使えないじゃないですか。そうすると、受け入れ態勢をどうさすかということもまだ考えていないのですね。そういう場合においては、あなたは農業団体の再編成問題と全然関係がないと言われておるけれども、これは関係あるのではないですか。その点率直に言われたらどうですか。
  60. 河野一郎

    河野国務大臣 問題は、私ができやすいことを想定して考え、あなた炉できにくいことを想定して質問されておるというふうに私は思うのであります。できてくいところを主としておっしゃれば、それはできにくい面ばかり出てくるでしょう。しかしやることがよろしい、やった方がいいということであれば、できやすい区域でできるような方向に持っていくべきだと思うのでありまして、たとえば農業会が中心になってやる場合もあるでございましょう。農業会が不適当なところであれば、協同組合が集まってやる場合もあるでありましょう。地方に参ればお互いにそれぞれ地方の実情がわかっておりますように、その地方々々の人が集まり、団体の幹部、町村長というような人が集まって、こういうふうな施策政府にある、その施策に沿って、お互いに一つ協力してやろうじゃないかというような話になれば、そこにそういうふうな団体が生まれてきて、そうして相談をして、いい案を立ててそれを持ってきて下さるということになるだろうと思うのであります。それを育成強化していくのがわれわれお互い政治家の使命ではなかろうかと私は思うのであります。これを一つの規格を定めて、それを扱うのは何団体だ、そういうものじゃだめじゃないか、あれじゃ困るじゃないかとおっしゃれば、それは困る面もできましょう、できない面もございましょうが、それをやかましく一つの規律、一つの基準を定めて、それでなければいけない、あれでなければいけないということにすると、今申し上げますように、町村の規模が非常に広範囲にわたっておりますものもあれば、農村の生産性とはかけ離れた町村合併をいたしておるものもございます。そういうことでありますから、それを一つ何とかまとめていくように、まとまるように持っていこうじゃないかということをねらって私は申しておるのでございますから、どういうふうにすればうまくまとまっていくだろう、どういうふうに考えたらよかろう一あまりこれを一つの基準によってコンクリートにしてしまいますと、そのワクにはまっていかない面も出てきます、そこに融通性を持たせていきたい、私はこう考えておりますが、融通性を持たせると申し上げれば、何もきまっていない、きまっていないとお小言を受けるのでありますが、決してきまっていないのではねい、きめていけばきめていけると思いますが、あまりしゃくし定木にこれをきめてしまいますと、今申し上げますように、現在の農村の姿が必ずしも適当な姿ではありません。あります団体にいたしましても、規模もしくは区域等において適当な姿ではない場合がたくさんございますから、これらの間に処して、むしろ融通性を持たせていくことが必要である、こう申し上げておるのであります。
  61. 芳賀貢

    芳賀委員 ただ抽象論でなく、政策の具体化ということがやはり農政の実体じゃないですか。それをあなたは具体的な点に触れない。そうなると、この新農村の予算というものは花咲かじじいのように、木の上に上って総花的にぱっとまいて、落ちたところで拾えばいいじゃないかということに終るのですよ。そこをわれわれは心配してお尋ねしているのですが、その具体策がないとすれば何をかいわんやです。ただ問題は、一方農業団体再編成の問題は大臣は非常にほど遠いようなことを言うておられれるが、これはやはり直面した問題として非常に論議されておるような面もあるわけです。しかもわれわれの承知しておるところでは、一月の下旬に平野三郎君案なるものが発表になった炉、これは私どもの知る範囲においては、農林大臣の意思に基いて農林省炉これを作業して、平野三郎君をして平野私案として発表せしめた、そういうふうにわれわれは承知しておる。そうするとその震源地は大臣ではないですか。とわろ炉団体再編成の問題はまだ全然知らないとか、将来自然発生的にそういうものが生まれれば期待するとか、そういうことでなくて、もう少し簡明直截に、今後の新しい農業団体のあり方等については、やはり河野農政基本的な考え方の中にあると思いますので、それを述べていただきたい。
  62. 河野一郎

    河野国務大臣 実は昨日予算委員会で川俣さんからもお尋ねがございましたので、明確に申し上げたつもりであります。ここは委員会炉別でありますし、何度も申し上げますけれども、それは社会党の代表の方には明確にそのとき申し上げたと私は思うのであります。今そういうふうにおっしゃいますけれども、私は農業団体の再編成はぜひやりたいと考えております。自然発生的に起ってくるものを待っているというような夢のようなことを言っておるのでは決してございません。明確に申し上げます。その方向はどうだと申しますれば、先日平野君が発表されました案の中には、今ここであの通りにやらなければならぬ必要のない点炉たくさんあります。これも明確に申し上げたのであります。内容はどうかと申しますれば、単位農協の信用部門を分離するということは、今直ちにそれを実行しなければならぬ必要はございません。これもする必要はないということを明瞭に申し上げたのであります。ただ誤解のないようにお聞き取りいただきたいと思いますことは、現在の農村の実情にかんがみまして、現在の協同組合はこれをより以上に強化拡充しなければならぬということはたびたび私が申すことでございます。これは団体再編成に当って各方面でいろいろ誤解があるようでありますから、この席を拝借いたしまして重ねて申し上げますが、たとえば米の統制撤廃をする時期があるにいたしましても、その時期の準備行為として、今日の一連の農協を整備拡充するということが、農産物の平均売りをいたす上において絶対に必要である。今日の程度の農協の力、組織をもっていたしましては不十分である。従って農協の整備拡充は意を十分に注いでこれをいたさなければならぬということは、これまでもたびたび機会あるごとに申し上げたと私は思うのであります。農協の力を弱めようとか、もしくはその施策が農協の拡充に支障のあるようなことは極力避けなければいけない。むしろ今申し上げますように極力強化するようにしていかなければならぬ。ただし農協を整備拡充するということと、新しい別の使命のために農村に団体が必要であるということとは別個のことであると考えております。たとえば今の農業委員会の使命等にかんが冒しても、これを改組する必要がある。農業委員会の使命の中の一部は町村事務に移行してもよろしいものもあるでありましょうし、おのずからその段余の使命を新しい団体で負ってよい場合もあると私は思います。その他農村の新しい団体としての使命を持っていかなければならぬものがたくさんあります。そういうように経済行為を中心として行う協同組合と別個の使命を持ってやらなければならない問題がたくさんありますから、これらについて協同組合との間に摩擦を避けつつ、強化して新しい団体を作って、協同組合の拡充強化と相並行して新しい団体を育成していくということが、今日の農村に対する組織として必要なものであるということを考え、鋭意その方向に向って妥当な案を目下作成中であります。案のでき次第この議会にでも提案をいたしまして、そうして皆さんの御審議を願いたいと考えておる次でございます。
  63. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうふうに正直におっしゃって下さればわれわれにもよくわかるのです。今聞いたところにより新農村建設はやはり不可分なものだということがわかってきた。それでよいのです。ただここで申し上げたい点は、新農村の建設は、あくまでも上からの強圧ではなくて、農民の下からの結集の形でこれをやらなければならぬ。それから新団体の構想というものは、これは強権的に農民をそれに加入させて、農政の浸透をどうしてもこれにやらせる。ですからそこに性格上了承しがたい面があるということを一つ指摘するのと、それから大臣が言われた通り、協同組合を、今の段階において、今よりもいっときたりとも弱めるということであってはならぬということはもちろんです。ですから農林大臣炉新聞等に伝えられたああいう暴挙をあえてしょうとはわれわれは全然考えていないんです。そういうことはまたあり得るはずもないし、できないと思うんです。これは産業組合以来そうですけれども、町村における協同組合の力の強い弱いというのは、自己資本の構成の問題だと思うんです。そこに協同組合の資本力が強いか弱いかという問題があるんです。いわゆる組合員の出資金あるいは貯金、それから積立金等が自己資本になっておるんです。この中から一番中心になる貯金をとってしまって、今度は協同組合は商人と同じように売ったり買ったりさえすればいいんだ。もう生産協同体とか、そういうことを唱えておるからだめなんだという論は、全然成り立たないんですよ。この協同組合を商業機構の中へ入れようとする考えでやるなら別です。そういう意味において協同組合をある期間弱体化させていくということは、むしろ農協の力を弱めて、そうしてその商業資本をそこに進出させる機会を写えるという目的がある場合には、今伝えられているような手段をとることが非常に効果的だということをわれわれは考えるんです。もう一つ、信用事業を中金から一本の縦割りのものにして、たとえば二段階にするということを言っておりますが、今でも中金の全国における支所は大体三十六カ所くらいあるんです。もう府県の数とそう違いがないんですよ。もし農村の金融機構を中金に一本化した場合において、今でさえも協同組合の機構の中における中金あるいは都道府県の信連、この金融事業を行う協同組合の、他の事業協同組合に対する金融面を通じての権力支配というものは非常に強くなってきておる。ですから、そういう形に持っていけば、一そう中央集権化された中金の支配というものを強めるような結果に必ずなると私は思うんです。ですから、そういう点は、経済人としての感覚も十分ある大臣は十二分に検討をしておると思うんですよ、これはただ時間の問題です。今国会に出るとすれば、他日これは法案の形で現われてくるんですから、そのときにどういう考えであったということはおのずから明らかになるので、この機会にこれ以上のことは私は申し上げませんけれども、とにかくことしの農業政策を通じての昨日の大臣の九項目にわたる施策の中にも、われわれとしては十分了承できがたい点が数点あるわけです。むしろこれが契機をなして、日本農業一つの逆コースの形が出ては困るという考えを今でも捨てるわけにはいかないわけです。それで今後の協同組合の育成強化というような問題に対しては、強化しなければならぬとすれば、今新聞に出ておるようなああいう考え方と別に、何か具体的な構想があればこの機会にお聞かせ願いたいと思います。
  64. 河野一郎

    河野国務大臣 協同組合の強化は、一にかかって協同組合の健全なる運営と組合員の協力にあると思うのであります。これを他から助けたところで、内容の運営が悪かったり、もしくは組合員の協力がなければ、これをよくするものじゃありません。しかし、さればと申して、一たんゆがめらられておりますものを立ち直らしめるというような場合には、政府としてもこれに十分な援助を与えて、そうして平常化の線までは持ってこなければいかぬ、こう考えております。
  65. 芳賀貢

    芳賀委員 もう一点、最後に、基金制度の問題について若干お尋ねいたします。基金制度は、たとえば今まで補助金として出ておる耕土培養法であるとかあるいは健苗育成促進法、こういう法律に基いて、法律の命ずるところに従って政府が補助金を出す。こういう部類をことしの予算においては全面的に打ち切って、これを融資の形に改めたわけですね。こういうことは非常にいけない措置であるとわれわれは考えておるわけであります。これらの法律は時限法であって、まだ期限があるわけです。たまたまこういうことをやられておるわけですが、この零細な補助金を打ち切るという考え方はあるいは成り立つかもしれませんが、全部補助金を打ち切ってこれを融資に切りかえた場合、その結果どういう事態がくるかということを一つ御考慮願いたいのです。中農以下の零細な農家の場合は、補助金の場合には末端までも、その額が少額であっても、これは配分されるわけです。この補助金をやめて全部融資に切りかえるということになれば融資というのは、これは貸すんですから、返させるということが前提になるのです。返さなくてもいいんだというような融資はないと思うのです。そうなると、末端において基金制度を通じて融資でこれを行おうという場合においては、取扱いの上から言うと、やはり返す力のある者にこれを貸しつけるという事態に必ずなるわけです。今までの、毎年の災害融資の場合においてもそうなんですよ。ほんとうに力のない、弱った被害農家に貸さなければならぬという場合においても、これは貸しつけるんだからして、返せる力ということがどうしても前提になるわけです。そういうことになりますと、今後中農以下の零細農家に対する国の配慮というものは、このことによって全く失われてしまうことになると思うんですね。こういうことは十分注意していかなければならぬ点であると思うのであります炉、大臣はこの点どういうふうにお考えになっておりますか。
  66. 河野一郎

    河野国務大臣 私は実は遺憾ながら意見が違うのでございます。大きな金額のものでございますれば、資力の少い零細農家にいきにくい、貸しにくい、借りにくいということはあるかもしれません。しかし、その補助金が末端におきまして非常に零細化されまして、たとえば温床苗しろの場合でございますとかいうような場合には、これを個々に借り受けてみましたところが、非常に金額が少い。その効果が上れば、ちょうど肥料を買った代金を払うという程度にやり得るものがある。しかもこれを、従来の補助金の場合でございますと、その政府が出しました補助金がそのまま全部末端まで細分化されずに、途中で相当のロスが出る。金額のわずかなものを出しました場合に、全部そのままいきにくい場合が従来間々あったわけでございます。それが、今回の無利息にして融通する場合には、それがそのまま全額細分化されていく長所があるということでございますので、その長短を十分に検討いたしまして、補助をいたします場合に、基金制度をとることが妥当なものはこの方法をとっていった方がよろしいということで、補助金は両方の施策をかねてやった方がよろしい、こう考えておるものでございます。
  67. 村松久義

    村松委員長 総括質問はこれで終ります。  明日の日程等は公報をもってお知らせすることにして、本日はこれで散会いたします。    午後三時二十分散会