○石橋(政)
委員 私は
日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする
国防会議の
構成等に関する
法律案に反対の意見を述べんとするものであります。
反対の理由の第一は、その法条の持つ違憲性を私
たちとしてはあげたいと思うのであります。本法案が、
防衛庁設置法四十二条に基いて提案されておるということでございますが、われわれはこの
防衛庁設置法は、
自衛隊法とともに、明らかに憲法違反の法律であるとして認めてはおりません。しかもこの
防衛庁設置法第四十二条によりますと、
国防会議の任務といたしまして、国防の基本方針あるいは防衛計画の大綱あるいはまた
自衛隊出動の可否といったような現行憲法の認めておらない問題について審議をしようというのでありますから、とうてい容認できないわけであります。皆さん方もすでに御承知の
通り、現在の
日本国憲法は、民主主義、基本的人権尊重主義、そうして世界にその例を見ない絶対平和主義を三大原則として掲げており、この三原則が全憲法を通じて一貫して生命として流れていることは御承知の
通りであります。これは数百万のわが国同胞の血によってあがなわれたものである、この現行憲法の第九条にも示されております戦争の放棄、そうしてまた軍備の放棄というものは、再びあやまちを繰り返しませんと誓ったわれわれ
日本人のこの叫びが、そのまま高らかにうたいあげられたものであると私
たちは考えておるのであります。しかるにこのたっとい平和憲法の精神は次々に踏みにじられて、初め警察予備隊として出発いたしましたものも、現在すでに
自衛隊として完全に軍隊の性格を持つようになっております。その実勢また驚くなかれ二十万に達しようとしておるのであります。かくして平和憲法がじゅうりんされている段階にあって、ここに
国防会議というものを設置するとなれば、二重にさらに大きく憲法違反の大罪を積み重ねることになると私どもは考えます。さような
意味合いにおきまして、平和を求める国民の名において私
たちは本法案に賛成する
ことを拒否するものであります。
次に本法案の審議に当って、私
たち十分に自信を強めたのでありますが、もう
一つの特質を備えている。それは何かといいますと、かりに名づけるならば、やはり隷属性と呼ばれるものであろうと考えておるのであります。大体この
国防会議が問題になって参りましたのも、昨年の
防衛分担金削減交渉の際にさかのぼって、当時
防衛分担金を
削減してもらうために、
アメリカに対して
国防会議を早急に作るということを約束した。その約束を果す
意味において二十二特別
国会に提案されたのであったのでありますが、それが
アメリカ製オネスト・ジョンでむざんにも爆砕され、前長官杉原さんはその責任を負って自決したといういわく因縁つきの法案であります。(「自決とは大きいぞ」と呼ぶ者あり)今
国会におきましても、原水爆を持ち込まれて再び船田さんも自決しないように
一つ十分に御留意願いたいと思います。とにかく終始このような経緯の上に立って出されております
国防会議法案は、
アメリカ抜きでは考えられないと私
たち思うのであります。そもそも現在保守党の方方が進めておられます再軍備政策は、
アメリカの要請によって出発し、
アメリカの援助によって促進されているという現状から推しまして、当然のことであるかもしれませんけれども、私
たちはこれを認めるわけには参らないのであります。しかも
国防会議の任務といたしまして、国防の基本方針を決定する、あるいは防衛計画の大綱を策定するというようなことを掲げております。しかしながら現在の状態下にありまして、
日本は自主的にこのようなものを決定する力を残念ながら持っておらないと断ぜざるを得ないのであります。
まず国防の基本方針について考えてみましても、われわれの
質問に対しまして船田さんは、この
委員会において、まず国力、国情に相応する最小限度の自衛体制を整備して
米軍の撤退を期するのだ、それが達成されるまでは
日米共同防衛体制をとっていくのだという御
説明をなさっておりました。ところがこの第一段階から第二段階への転移に当っての、いわゆる
米軍の撤退の時期については明言されないのみならず、おそらく確信を持っておられないのではないかと思うのであります。少くとも現在の米
駐留軍というものは、
日本の政府の要請に基いて存在するがごとく装われております。そうであるならば、
日本の要請がなくなれば、当然に撤退しなくちゃならないというふうにわれわれ考えるのでありますが、その撤退の時期がいつになるのかわからない。どの
程度の防衛体制を整備すれば撤退するのか、
日本側のみではきめられないというような現在の両国の
関係、このようなものから自主的な国防方針などというものは絶対に作れないということを指摘せざるを得ないわけであります。これは安保条約の性格でもあるわけであります。少くとも今のような保守党の続く限り、地上兵力はおそらく撤退するでありましょうけれども、海
空軍、特に
空軍の撤退などというものは
向う九十九カ年後のことになるかもしれない、私
たちはそのようにすら考えております。他国の指示あるいは承認を得なければ、
日本の国防方針をきめられないという、このような国防方針は、国防の名に私は値しないと思います。しいて国防という名を冠しようとするならば、それは
アメリカの国防方針であると、そのように述べるべきであると私
たちは考えます。また防衛計画の点について考えてみましても、鳩山内閣は長期防衛計画を策定する必要ありといたしまして、
防衛庁において着々と六カ年計画試案なるものを作っております。これはすでに幾段階かを経てばおるのでございますが、昨年の八月重光さんが
アメリカに渡りましたときに、彼の品からつぶさに
アメリカ側に対して
説明がなされておるにもかかわらず、
日本の国民に対しては
昭和三十五年最終年度の地上兵力、そうして艦艇保有士、
飛行機数といったようなものだけが
発表されておるにすぎないのでありまして、その内訳はもちろんのこと、年次計画すら全部秘匿されておるのであります。なぜこれが
発表されないか、表面では
国防会議ができないからだと言っておるけれども、実際は
アメリカの完全なる了解が取り付け得ないからだと私
たちは考えるのであります。このようなことを考えていきます場合に、どうして防衛計画、ましてや長期防衛計画などというものが
国防会議において自主性のあるものとして策定され得るでありましょう。一、二の例をあげてみますならば、これも審議の過程において話したのでありますが、この六カ年計画の中で対潜哨戒機P2Vこれを最終年度に九十六機、三十年度において二十四機保有する目標で
防衛庁は計画を組まれておる。ところがそれがわずかに二機しか来ないというので、あわてて防衛六カ年計画の練り直しを取りざたするような醜態を演じておる。また四月の二十一日に
アメリカのヒギンズ
米陸軍次官補がやってきたときの話によりますと、今まで兵器供与という形で現物が
日本に援助として持ち込まれておったけれども、これは今後は現物供与という形から兵器の自給体制、立のための援助、こういうものに切りかえる必要がある、いうようなことを言われて、これまた
防衛庁いささかあわてふためいておる。おそらくこれが今後推進されることは明らかであろうと思う。あなた方がP2Vの
航空機の国内生産というものを盛んにこのごろ考え出しておるのも、この言明と一連の関連ありと考えるのでありますが、このようなことに
アメリカの計画が変更されて参りますと、今のあなた
たちの考えておる六カ年計画なるものも根底からくずれ去っていくことは明らかであります。先日大体防衛
費用としては国民所得の約二・二%を使うんだということを言っておられました。この六カ年計画に要す
費用は、これまた約八千三百億ということを言っておられました。しかし
アメリカの現物給与が
削減され、減少されて、国内生産というものに方向を切りかえた暁には、明らかにコスト高になって参りまして、現在考えているような計画が根本からくずれ去っていくことは、これまた明らかなのであります。このように防衛計画におきましても、
アメリカの大きな影響を受け、彼らの了解なしには絶対に策定できないというような運命に置かれているときに、何の
国防会議かと私は言いたいのであります。少くともこのような自主性のない
国防会議というものを私
たちはこめません。おそらくこの
国防会議というものを作ることによって、
日本の国防の基本方針も、防衛計画も、
日本が自主的に決定し得るのだ、決定しているのだというように装わんがために、国民を欺瞞せんがために、この
国防会議が使われるおそれすらあると私
たちは考えまして、反対の第二の理由として掲げたいと思うのであります。
次に、一応違憲性というものをたな上げいたしまして、法案の細部についての検討を加えるといたしましても、そのずさんさというものに私
たちは目をそむけるわけには参らないわけであります。少くとも
国防会議を何のために作るのか、これにはいろいろありましょうが、私どもは過度の権力が集中されることを排除するという
目的、また軍事をいかにして政治が押えていくかという
目的、あるいはまた防衛計画というようなものがある
程度の恒久性を持たなければならないというこの
目的を果すためにこそ、
国防会議は必要なのであろうと考えております。ところが残念ながら、本法案にはこの精神を生かしていく何らの考慮も払われておらないのではないかというふうに考えざるを得ないのであります。少くともこの大原則を生かしていくためには、
会議の構成という面と事務局という面に慎重なる考慮が払われなくちゃならないと私どもは考えております。まずこの構成を取り上げてみますと、先ほども申し上げましたように、鳩山内閣は昨年の二十二特別
国会にも同様
国防会議の法案を提出いたしました。その際の構成は、
関係閣僚のみならず五名以内の練達堪雄の士という形で民間人を入れることになっておったのであります。それが本
国会において出されました案によると、完全に抹殺されている。単に閣僚だけで構成する形になってきているのであります。同一内閣が同法案を提出するに当って、全く生命となる部面において内容を異にするというがごときことは、あまりにも無定見に過ぎると私は考えます。この点につきまして、前
国会で衆議院において修正された点を尊重したのだということを、総理あるいは長官は再々言明されておられますけれども、しかし考えてみるに、当時と現在においてはその情勢を大いに異にいたしております。まず第一に当時は自由党の諸君は野党でございました。そうしてこの野党にあった自由党の諸君が強硬に民間人を除くことを主張しておったのであります。ところが現在はこの自由党の諸君も、保守合同の結果鳩山総裁の統制下にある
一つの党の中に存在しております。去年においては野党であったから、法案を通すために、自由党の諸君の意見を取り入れて修正しなくちゃならないということもあったかもしれませんが、本年は、もし民間人を入れることが正しいとするならば——これが最も正しいとするならば、鳩山総理は十分に党内の意見を調整し、説得する機械を持っているのであります。また力をも与えられているのであります。ところがそれについての何らの
努力もしておられない、これではあまりにも無定見であろうと考えます。また衆議院の意見を尊重したというのであるならば、事務局の面についても同一の法案が提出されるべきであります。しかし事務局の面については、これを拡充することの方が正しいとお考えになったのでありましょう。今度は幾分これを拡大した形で提案されておる。しからば民間人の面につきましても、民間人を除くことが正しいと信じて変更されたのならともかく、院議を尊重したのだというがごとき責任回避の言辞を弄することを、私
たちは絶対に認め得はいのであります。
なおこの事務局について見ましても、人員わずかに十五名、このような規模においてどのような仕事ができるでありましょうか。昨年度よりはややましであるにいたしましても、やはりお茶くみ仕事以外の域を出ないというように私
たちは考えます。ましてや制服の
説明を反論し、あるいは議員の方方を補佐し、適度の修二を加えるための情報収集に当り、
資料を作成するというようなことは、この
程度の事務局では絶対に不可能であろうということを私
たちは憂えるものであります。
いろいろほかにもございますが、とにかく申し上げました
通り政治優先の大原則というものが少しも生かされておらない、この大鉄則にひびの入るおそれのあるこのような法案には、私
たちは絶対に賛成し得ないのであります。国家百年の大計を誤まりなからしめるために、歴史のあやまちを再び繰り返さないためにも、私
たちはこのような無定見な自主性のない法案に断固反対せざるを得ないわけでありますが、このような法案がもし通過されることになりますと、さきに不法な成立を見た教育二法、あるいは現在問題になっております小選挙区法その他と相待って、
日本の反動化、軍国主義化、ファッショ化がさらに大きく前進するであろうことを憂えまして、私
たちは本法案を絶対に粉砕しなくてはならないという信念の
もとに反対を吐露するものであります。
委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)