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1956-04-17 第24回国会 衆議院 内閣委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月十七日(火曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 山本 粂吉君    理事 江崎 真澄君 理事 大平 正芳君    理事 高橋  等君 理事 保科善四郎君    理事 宮澤 胤勇君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    北 れい吉君       薄田 美朝君    高瀬  傳君       床次 徳二君    福井 順一君       眞崎 勝次君    松浦周太郎君       粟山  博君    山本 正一君       横井 太郎君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    井手 以誠君       稻村 隆一君    片島  港君       西村 力弥君    細田 綱吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         宮内庁次長   瓜生 順良君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         検     事         (保護局長)  齋藤 三郎君  委員外出席者         宮内庁長官   宇佐美 毅君         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 4月十六日  委員勝間田清一辞任につき、その補欠として  古屋貞雄君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員古屋貞雄辞任につき、その補欠として片  島港君が議長指名委員に選任された。     ―――――――――――――  戦没者追放公務扶助料支給等に関する陳情書  (第五五一号)  同(  第五八O号)  薪炭手当制度化に関する陳情書  (第五七八号)  元満州国日本人官吏恩給法適用に関する陳情  書  (第五七九号)  公共建設行政の一元化に関する陳情書  (第六二二号)  国府軍編入の元軍人軍属遺家族恩給法等適用  の陳情書(第八  二三号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国防会議構成等に関する法律案内閣提出第  八七号)  宮内庁法の一部を改正する法律案内閣提出第  一〇七号)     ―――――――――――――
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより会議を開きます。  国防会議構成等に関する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。通告がありますのでこれを許します。茜ケ久保君。
  3. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 いろいろ聞きたいことがあるのでありますが、時間の制約もあるようでありますから、私の方も簡潔に聞きたいと思います。長官もどうぞはっきり御答弁していただいて、質問の要点を明瞭にさしていただきたいと思います。  まず第一に、前国会からいわれておりました政府長期防衛計画最終目標決定についてであります。もちろんこれが正式に決定されるまでは国防会議の議を経て決定するということは当然でありますけれども、一応防衛庁としては、いろいろな機会にあるいは当委員会においても防衛庁試案というものをたびたび御発表になっておりますが、その長期防衛計画最終目標決定根拠というものをどこに置いておられるのか。これをさらに具体的にお聞きしますと、自主防衛確信を持つだけの一つ根拠によってお作りになっておるのか、これだけの最終目標が完成したあかつきには、日本がいわゆる自主防衛確信を持てるという根拠があるのか、あるいはまたそういった自主防衛確信は持てないけれども日本経済情勢からこれ以上の防衛力を持つことは不可能だという一つ限界点に立っておるのか、もう一点は、さらに私ども考えますことはアメリカ駐留軍との共同防衛、これはまた後ほどお尋ねするのでありますが、アメリカ駐留軍共同防衛をするという観点から大体このくらいの目標で一応の日本防衛基礎ができるということであるのか、これは私の一つ質問がこの三つの点に関連するのであります。このいずれにあるのか、あるいはまたそれ以外の何か根拠があるのか。とにもかくにも長期防衛計画最終目標決定根拠について一つ答弁を願いたい、こう思うのであります。
  4. 船田中

    船田国務大臣 この長期防衛計画立てます根拠についてただいま御質問がございましたが、これをまとめて大体の防衛基本目標というものを申し上げますと、第一には、国土上空及び周辺海域制空、制海権を確保する、それから第二には、外敵上陸進攻に対しては、陸海空統合力を発揮いたしまして、外敵出土外に撃退する、第三には、主用海上交通路を確保する、第四には、治安維持に関し国内関係機関協力する、大体こういうような四項目を今申し上げましたが、そういうようなことが防衛基本目標になっておるわけであります。そこで陸海空行部隊防衛目標をどこに置いておるかと申しますと、まず陸上につきましては、国土に来寇する外敵上陸部隊の撃退、それから国内治安維持協力、こういうことが陸上自衛隊防衛目標になると思います。それから海上自衛隊につきましては、海上交通路の確保、主要な海峡、水道及び港湾の防衛主要水路の掃海、それに沿岸の哨戒、パトロールですね。こういうことが海上自衛隊防衛目標になっている。それから航空自衛隊目標といたしましては、国土領域の防空、それから哨戒、偵察、地上作戦及び海上作戦協力、こういうことが航空自衛隊防衛目標になるわけでございます。以上の防衛目標に対しましては、わが防衛力のみをもってしては十分でないのでございまして、御承知通り現在におきましては米軍協力を得ましてわが国国土防衛を全うする、こういうことで、大体方針立て、そのために防衛力の増強をいたしておるわけであります。ただいま御指摘になりました昭和三十五年度において防衛庁試案として持っておりまする最終目標を達成しようということが、以上のような考え方からいたしまして、われわれ防衛責任者といたしましては、これを経済、財政あるいは民生安定、それらの諸般の要素を十分勘案いたしまして、御指摘になりましたような最終目標を達成するようにいたしたいという考え方を持っております。従いまして、その案を作成するにつきましては、ただいま申し上げました通り現状におきましては日米安保条約の規定によりまして、すなわちわが国土の防衛日米共同で当る。しかしわが方の防衛力が漸次増強されまして、ただいま御指摘になりましたような最終目標を達成するということになりますれば、米駐留軍撤退基礎はできることと存じます。もちろんその間におきまして、日米関係におきまして、わが方といたしましては、どこまでも自主的に防衛計画立てるのでありまして、その自主性を持ちつつ、米軍協力を得て日米共同して国土を守る。そして米軍といたしましては、漸次陸上戦闘部隊撤退をして参りますので、そこでそれらのことも考え合せまして、ただいま申し上げたような目標立てて、そしてその目標に今せっかく努力をしておる、こういう状況でございます。
  5. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 大体長期防衛計画をお立てになる考え方というものはわかったのでありますが、それをお立てになる根拠というものが、私が尋ねましたのは、それによって自主防衛確信をお持ちになると申しますか――大体聞いておると自主防衛というものが基本になっておるように思うのでありますが、もちろんそれについては経済その他の関係も当然加味して参りますけれども、大体長期防衛計画最終目標決定というものは、日本自衛隊自主防衛確信の持てる線であるというふうに了解してもよろしゅうございましょうか。
  6. 船田中

    船田国務大臣 現状をもとといたしまして、昭和三十年度から三十五年度に至る六ヵ年間に、御指摘のような目標を達成するように努力をしておるわけでありまして、それから先のことについては現在は計画を持っておりません。その最終目標を達成することによりまして、米駐留用撤退基礎ができる、かように考える次第でございます。
  7. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 でありますから、その長期防衛計画最終目標陸軍十八万、海軍十三万トン、空軍千三百機、大体こういう数字が幾度か発表されましたが、こういったものが完成しましたあかつきにおいては、一応自主防衛確信の持てるものであるかということを私はお聞きしておるのであります。現状においてはできておりませんが、三十五年度のこの長期計画最終段階の完成後には、先ほど、長官発表されましたいろいろな陸海空それぞれの防衛目標がございましたが、そういったものに対して、一応自主的な防衛確信が持てるものであるかという点をお開きしておるわけでございます。
  8. 船田中

    船田国務大臣 ただいま茜ヶ久保委員のおっしゃられる自主的ということが、日本の独力で、他の何らの援助も協力も得ないという意味でありますと、それに対して全く日本の独力でそれだけの防衛ができるかということについては、私はここにはっきり申し上げかねると思います。しかし少くともこの最終目標を達成することによりまして、米軍撤退基礎がここにでき上るのでありまして、従ってそういう趣旨におきましては、自主的に日本国土防衛に当り得る、それだけの確信はできるわけでございます。
  9. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 たびたびの御発表兵力最終目標というものは陸軍が十八万、海軍十三万トン、空軍千三百機ということがありましたが、この場合海と空における兵力数字というものを大体試案としてお持ちであろうか。大体十三万トンの海軍に対しては兵員がどのくらい要るか、千三百機の航空機を持った空軍はどのくらいの兵員が要るか、大体おわかりになると思いますが、いまだかつて海と空においてはこの兵員の数においての発表がなかったと思いますが、一つこの辺で海空最終目標兵力、いわゆる員数の御発表がお願いできたらと思うのです。
  10. 船田中

    船田国務大臣 これは前にもここで答弁申し上げたことでございますが、陸上自衛隊については、人の力、マン・パワーというものが中心になりますので、十八万という目標を出しております。ところが海上につきましては、その主たる装備が艦艇でございますので、そこで艦艇を十二が四千トンという目標を置いております。それにどれだけの要員が要るかということは、艦種及び艦艇の数によることでございまして、これは航空についても同様でございまして、飛行機の種類機数、どういう種類のものをどれだけ持つかというその細目については、まだ決定いたしておりませんので、従って何人の要員が要るか、また海上においてどれだけの来員を必要とするかというはっきりした数字はまだできておりません。
  11. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 ちょっとここで一言官房長にお聞きしておきたい。防衛調達公報という雑誌が出ておるようであります。相当防衛庁とは深い関係にあるように思うのでありますが、あの公報発表されるいろいろな内容相当防衛庁の実態に即したものだと私どもは思うのであります。あの記事に対して責任をお持ちになるかどうかということは御無理でしょうが、あれに掲げた記半あるいはその他の数字について、ある程度の真実性があるものと考えますが、ここで官房長見解をお開きしておきたい。
  12. 門叶宗雄

    門叶政府委員 ただいま防衛調達公報について御質問がございました。防衛庁には二、三業界関係通信社が出入りいたしましていろいろな記事を出しておりますが、中にはわれわれ全然考えてもいなかったものも出ておるようであります。その内容につきましては、防衛庁としては一切責任を持ち得るものとは考えておりません。
  13. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 私も責任をお持ちになるということは期待はしておりませんけれども、やはり一応責任あるそうした出版社が、しかも防衛調達公報といったような名前で定時に出版をいたしております。私ども実は内閣委員として防衛庁担当国会議員でありながら、なかなか容易にわからないような数学あるいは記事等も、あとから考えますと相当的確なものが出ておるようでありますので、防衛庁責任をおとりになるならぬは別として、相当密接な関係があるものと思うのであります。その防衛調達公報の中に、今長官お答えできない海並びに空に関する兵員数字が出ておるの、であります。それによりますと、いわゆる長期防衛計画最終段階における海軍は十二力四十トン、兵員が三万四千、空軍が千三百機、四万一千五百、こういったような数字が出ておるわけでございます。これは、先般発表されましたアメリカ駐留軍現有勢力の艦船のトン数あるいは兵長、また空軍機数と人員の関係等に比較いたしますと、やや正確ではないかと思う数字であります。従いまして、もちろん長官お答えのように、艦種機種その他の関係陸上部隊のように正確な数字は出ませんでも、こういったようなやや考え得られる数字は、やはり防衛庁の中に試案試案といったものにしてもあるのではなかろうかと思うわけであります。先ほど官房長お答えでは責任は待てぬということでありますが、それは当然でありましょうけれども、一応防衛庁が相当深く関係されていると一般にも考えられ、また雑誌社等相当防衛庁との関係においては自信のある考え方で出しておるこうしたものに、このような数字が出ておるのでありますが、これは防衛庁としては全然お考えになったこともない数字であるか、あるいはまた何らかの場合に、ほんとうに試案試案といった形ででも出たことがあるのかどうか、こういう数字が出ておりますので、この点を一つ長官からお聞きしたいと思います。
  14. 船田中

    船田国務大臣 この問題につきましては、先ほど官房長お答え申し上げた通りでございまして、ここに国会において責任を持って答弁あるいは説明を申し上げる段階にはまだ来ておりません。ただ先ほど茜ケ久保委員からも御指摘がありましたが、その数字の一部につきまして、参議院の内閣委員会におきまして吉口田法清委員から御質問がありましたときに、事務当局から、これは全くただ目の子計算をするだけのことであるがという前提のもとにお答えした数字がございます。それは、参考のために申し上げますと、航空機要員、これは先ほど申し上げましたように、機種あるいはどういう機種のものをどれだけ置くか、また練習機実用機によりまして非常に違いますが、それらを含めまして今までの実績から割り出してみますると、整備要員をも含めて、練習機については約三十名、実用機については約四十名程度の要員が必要である、こういうことにはなります。それから艦艇の方について申し上げますれば、乗員、整備要員を含めて艦艇三トン半当りについて一人くらい必要になっておる。しかしこれは、先ほどお答え申し上げておりますように、ただ、今までの練習機あるいは実用機艦艇と人間の数を算術的に割り出しただけのことでございまして、今後どれだけのものを置くかということにつきましてはまだ正確に計算をいたして計画立てておるわけでございません。
  15. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 大体、長期防衛計画の私の質問しようとする点については、了解するしないは別として、長官の御答弁でだいぶ判明して参りました。先ほど長官がこの計画をお立てになるいろいろな目標を、陸海空のそれぞれについてお述べになりましたが、私が先般鳩山総理に、いわゆる日本自主防衛をされるについて、あるいはまた急迫不正という言葉をお使いになるが、何かそういった具体的な動きなり心配があるかと尋ねたのに対して、総理は、全然そんなことはない、さらに考えてもいないという御答弁であった。それから、自衛隊配置状況について御質問したのに対して、船田長官からかわって御答弁になったのでありますが、先はど長官がおっしゃったいわゆる空、海あるいは本土上陸といったことに対するそれぞれの防衛体制お作りになる基礎がこの長期防衛計画であるとすれば、私はそこにやはり、国際的な関連性があるからという理由もありましょうけれども、一応の仮想敵国というものがなくとも、大体日本に侵攻してくるであろう一つ敵国というものがなければ、私は防衛計画基礎は立たぬと思う。この間ある青年が、はっきり申し上げれば、中曽根君のところの青年が私のところに防衛論争に参ったのでありますが、その青年の言うのに、いろいろ話しておりましたが、最後には、茜ヶ久保先生、そうおっしゃってもフィリピンが攻めるかもしれませんというところに行ったのであります。私はそういうことは全然考えませんが、一つのやはり私は具体的な仮対敵国というようなものがなければ、こういった防衛基礎はできぬと思うのであります。防衛庁長官として、やはり鳩山総理のおっしゃるように、現在どこか日本に急迫不正な侵攻をするという具体的なお考えはないのか、またそんな心配はないのか、また防衛計画をお立てになるのに、全然そういうことをお考えにならずに、こういった計画をお立てになっておるのか、これは私は、やはり一応一国の防衛責任を持つという立場にある以上は、ないというのはうそだと思うのです。おそらく全世界のあらゆる国々がそれぞれの国防軍を持っておるということは、日本に持つ一つ理由として皆さん方はたびたびおっしゃるのでありますが、どのようにおっしゃっても、一団の防衛基礎つけていくという建前においては、そういったものがなければ、おそらく防衛計画は立たぬ。ここにその専門家の辻君やあるいは保科君たちもいらっしゃいますが、かつてのそういった諸君も、訓練なりあるいは計画根拠には一つ確信を持った仮想敵国というものを常に持って、それに対して防衛計画立て、さらにその計画によってあらゆる日常訓練がなされておった、これは当然だと思う。そこで今回の自衛隊に関する限りは、何べんお聞きしても、総理あるいは防衛庁長官も、いまだかつてそんなことはない、 ないとおっしゃっていたのでありますが、私どもはもうこの段階に来ては、特に長期防衛計画責任を持って立てるという段階においては、そういったいわゆる逃げ口上では済まぬと思うのです。やはり国民の前にはっきり、こういう状態であるから、それに対しては一本はあくまでもこういう体制を整えて、防衛の任に当るべきであるという大方針を、私は御明示になることが必要だと思う。でなければ、膨大な経費を要するこの計画を、単に急迫不正の侵害があるかもしれぬという非常な莫然とした抽象論によって、しゃにむに遂行することは、私は許すべからざることだと思う。政治的にも私は非常に責任だと思う。そこで私はぜひきょうは、防衛庁長官としてこれに対する責任ある御答弁をお願いしたい。今も言いますように、鳩山総理のおっしゃるように、そんな心配もなければ、将来もそんな不安もないというならば、急迫不正の侵害があるかもしれぬということで、この膨大な防衛計画立てることは、私は重大な責任だと思う。もしあるならあるで、はっきりおっしゃって、一つわれわれにその点を御明示願いたい、こう思うのです。船出長官、思い切ってその点をここに御発表願いたいと思うのであります。
  16. 船田中

    船田国務大臣 わが国現行憲法が、御承知通り平和憲法といわれている通りに、国策遂行のために戦争をするということはやらない、いわゆる戦争放棄憲法を持っておりまして、われわれは平和にして文化的な国家を建設するということに進んで参りつつありますことは、御承知通りでございます。従いまして私どもはたとい防御の責任者という立場にありましても、今日仮想敵国というようなものは、たびたび繰り返して申し上げる通り、持っておりません。これは決して隠しだてをしているのではなくして、私は率直に申し上げる次第でございます。  ただしかし、今回の自衛隊が課せられております任務は、御承知通り法律に明記してありますが、外部からの直接または間接の侵略に対して、わが国の平和と独立を維持し、そのために国土を守る、その必要からいたしまして、国力に相応する最小限度防衛体制は整備して参らなければならぬと考えておるのでございます。その前提となりますものは、申すまでもなく、今日の国際情勢あるいは近い将来における国際情勢の推移をどう見るかということであると存じます。私ども防衛責任者といたしましては、これは国会においても外務大臣あるいは総理大臣から、国際情勢ついての見方が率直に申し述べられておるわけでございまして、その国際情勢についての見解前提といたしておるわけでございます。すなわち原水爆をもってする第三次世界大戦が現在または近い将来において起るとは私は考えません。  さればといって、いわゆる部分戦争なり冷戦が全く終息したと見ることはできないと思います。現に中近東における情勢をごらん下さいましても、その心配は十分あるわけでございます。そういう国際情勢に対処いたしまして、日本独立をして、いわば太平洋まん中日本丸を乗り出していくという場合におきましては、あらゆる天候障害、そういうものに対処いたしまして、無事日本丸太平洋を乗り切るためには、やはりそういう天候の変化やあらゆる障害に対処し得る、少くとも船を安全に航行し得るだけの準備をいたして参らなければならぬのでございまして、それがすなわち日本防衛しなければならぬ必要とその目標であると存じます。  従いまして、われわれとしましては、仮想敵国は持っておりませんけれどもしかし今日の国際情勢は全く部分戦争冷戦もないというふうに見るわけには参りません。その国際情勢前提といたしまして、日本丸太平洋まん中に乗り出す以上は、不測のいろいろな障害に対しまして、それを排除しあるいは防衛するというその必要最小限度自衛体制を整備していきたい、かように考えまして、今せっかく努力をしている、こりいう次第でございます。
  17. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 かつて名法制局長もされた船田防衛大臣の御答弁としては、私はちょっと了解できないことは、現憲法戦争を否定している、平和主義を主張している、従って戦争はしたくないという御答弁でありますが、私は、自衛隊はやはり戦争するための道具だと思うのです。その戦争するための道具をお持ちになるならば、あとの御解明で、どこかから暴風がくるかもわからぬ、海上に出るというような例も引かれましたけれども、これについていろいろ申し上げると水かけ論になりますから多くを申し上げませんけれども、やはりそうおっしゃっても私どもには納得がいかない。おそらく国民も納得しないと思う。大体旧民主党の諸君や、第二次鳩山内閣等の選挙その他による宣伝によっては、やはり国民は今自局党鳩山内閣考えているその一つ相手というものはだれもソ連中共考えておる。またこの間防衛長官も御発表になったように、日本の今の自衛隊配置現状をずっとながめて参りますと、北海道に最重点が置かれておる。そしてさらに今度は九州にだんだん重点がまた置かれつつある。日本本土いわゆる本州にはあまり重点が置かれないでソ連に最も接近した北海道に最重点が置かれている。さらに今度は中共と相接する九州自衛隊根拠が大きくなってきておるということは、これは防衛長官が何とおっしゃっても明らかに対ソ、対中共防衛根拠だと私は思う。これはごまかしになっても言葉だけでは済まされません。さらに具体的な訓練は、私は自衛隊諸君と話し合う機会をたびたび持っておりますが、私どもがかつて軍隊に引っぱられて訓練された場合に、私ども軍隊時代というものは明らかにロシヤ相手ソ連相手戦闘訓練ばかりに終始いたしました。これほど露骨でありませんけれども、私ども自衛隊諸君と話し合う課程を通じて、現在の自衛隊訓練もややソ連中共、いわゆるそれは防共戦線という言葉――言葉ではなれておりますけれども、これは明らかに中共ソ連日本自衛隊建軍一つの根底にあるということは、自衛隊諸君も大体了解しているし、国民もそう思っている。皆さん方がそういったソ連中共をお考えになることは、それはお考えは自由でありますから、私ども何も悪いとかいいとかいうことは決して申しません。しかしそれならそれではっきりしたことを明示して、はっきりおっしゃっていただきたいと思う。ただそういったごまかしのことではいかぬと思う。対中共、対ソ連に向って自衛隊が具体的に動いているのです。さらに先般私が指摘したように、板付の飛行の何とかいう師団長がはっきり言っておる。あなたはそうおっしゃるけれども中共ソ連いわゆる大陸からいつ飛行機が飛んできて、日本の本土を空襲するかわからぬ、これに対しまして私ども防衛しておるのだとはっきりおっしゃっておる。アメリカは、日米安保条約によって空軍日本防衛責任を持っておるということをはっきり言っておる。これは私どもはやはり日米共同防衛責任を持っているアメリカとして言うのは当然だと思うが、こういう点を私が言うのは決してソ連中共仮想敵国にしていいとか悪いとかいうのではなくて、一つの具体的な事実をもってはっきり表明していくことが必要だと思う。そういったことに対して訓練もし、配備もされておりながら、なお今育った言葉太平洋日本丸をというふうに、子供ではなしに、国民責任を持っているわれわれ国会議員にそういう御答弁ではとても納得できないと思う。もう水かけ論になりますからこれ以上私は申し上げませんけれども船田防衛長官はこの配置を持っている点においては当然そうだと思う。こういった具体的な事実があるにもかかわらず、なお日本はいわゆる自衛隊を作った基礎並びに長期防衛計画を作る基礎というものは、あくまでも空想的な、あるいは根拠のない急迫不正の侵害があるかもわからぬといったような、ただ単なる言葉の上においての自衛隊お作りになるのか、あるいは今私が具体的な事実をあげて申し述べたように、さらに自衛隊諸君もこの対共産圏、共産党の戦略といってあること、あるいは自衛隊配置状況から推して、明らかに対ソ連中共が、日本自衛隊一つ計画の、あるいは訓練の、あらゆる今後想定されるすべての基礎であるということを国民もやや感じておると思うのだが、長官はやはりあくまでも何らの、そういったこともないという御答弁であるかどうか、私はもう一ぺんここで聞いておきたいと思う。
  18. 船田中

    船田国務大臣 重ねて御質問でございますが、わが自衛隊といたしましては、現在仮想敵国というものを持っておりません。先ほど申し上げましたように、国際情勢をどう見るかということにつきしては、私の見解外務大臣が本会議あるいはあらゆる委員会におきまして答弁申し上げておりまする国際情勢の見方と全く同じでございまして、今日の国際情勢は、さほど、第三次世界大戦が起るとは考えられませんけれども、しかしさればといって、部分戦争なり冷戦が全く終息したと安心することはできませんので、それらの国際情勢前提といたしまして、わが国力及び国情に相応する最小限度自衛体制を整備する、この自衛体制を整備するということによりまして、もし万一にも侵略の意図が他国に起った場合においても、わが方にこれを防衛する実力がございますれば、その侵略の意図を事前に防ぎ得る、阻止し得る、かように考えます。これは御承知通り、過去の歴史、われわれの体験から申しまして、そういう事実があるのでございます。すなわち日本を真空状態に置かないようにする。真空状態になりますれば、そこにいろいろな悪い空気が入って参りますから、日本を真空状態にならぬようにするということが、私は防衛責任者として大切なことである、そういう趣旨におきまして、むしろ自衛体制を整備することによりまして侵略の意図を阻止し得るものである、かように私は確信をいたし、そしてその体制を整備しつつあるわけでございます。
  19. 山本粂吉

    山本委員長 茜ヶ久保君にちょっと御相談しますが、関連質問がありますがよろしゅうございますか。
  20. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 あと関連質問があるそうですが、もう一点。大体軍隊というものは、戦闘訓練あるいは戦略、戦術の設定が非常に重要性を持っております。そういたしますと、大体敵対行動をする場合に、戦略、戦術の基礎ができ、戦闘目標ができてそれに相応した戦闘訓練が日常行われるのでありますが、今舟田長官の御答弁を聞いていると、全然そういった仮想敵国など持たぬということであります。いつどんな侵略があるか知らぬということでありますが、およそ今申しますように、軍隊訓練は、日常四六時中行われまして、大体具体的な訓練をするのでありますが、もし全然そういったお考えがなくて訓練をされる場合には、どこの国が攻めてくるといったような場合には、戦略戦術の上に大きな誤差が起きましょう、また戦闘訓練の結果が、長官が期待されるような実態が上るとは考えられない。たとえば共産圏の戦闘方式と自由諸国の戦闘方式とでは大きな差がありましょうし、また戦国する隊員の士気その他についてもいろいろな感じが生まれてくるので、こういった場合、やはり私はこれだけの巨費を使い、これだけの暴挙をなすって、こういった膨大な計画をされる以上はやはりどこから、だれが、どんな場合があっても、それにこたえて防衛できるという確信を持つためにはやはり一定の方式というものが生まれなければならぬ。そういう一定の方式というものは、よかれあしかれ一定の仮想敵国というものがあって、それに対する戦略戦術が研究され、戦闘目標訓練が行われるということが軍の一つの大きな根底になるのじゃないか。それでなかったならば、どこから何が攻めてくるかわからぬで、どんな訓練をされておるのであるか。今までを見ていると、明らかにアメリカ式の訓練が行われておりますから、アメリカとの協同防御をするでありましょうが、この間服装の問題が出ましたが、服装云々のことは別として大体戦闘方式等は全部アメリカ式である。特に空軍に至っては日本語を使わないで全部英語でやっている。これは明らかにアメリカ空軍と一体であります。端的に申し上げると、今の日本自衛隊アメリカ軍隊と同じ訓練をされ、同じ戦略戦術によってなされておるといえばそれまででありますが、これでは一向日本軍隊でなくてアメリカ軍隊であると、いみじくも辻自民党の専門家までが指摘するようなことでありますから、これは間違いない事実でありましょうけれども、それにしても私は根拠のある戦略戦術の決定あるいは戦闘訓練がなされてしかるべきだと思うのでありますが、防衛庁長官という最高責任者が、ただそういった一つの仮定のもとに何かわからぬけれども、一たん有事の場合に備えるのだということで、ほんとうに自衛隊があなたの心配される一朝有事の場合に、どこの国がどんなことをやってきても、防衛できるだけの責任をおとりになる自信があるかどうか。私に言わせると非常に不安なものを感ずるのでありますが、防衛庁長官は今までのままでそういった責任をとれる自信があるかどうか一つお伺いしたい。
  21. 船田中

    船田国務大臣 今の自衛隊仮想敵国を持っておらないということは、先ほど来申し上げておるところでございます。仮想敵国がないから自衛隊訓練に身が入らぬじゃないかというような御趣旨の御質問でありますが、戦前のわが国軍と今日の自衛隊というものはそういう点においては、非常な違いがあると存じます。戦前の国軍の教育の上にいいところもありましたろうが、また悪い面もあった。今日の自衛隊につきましても、戦前の国軍の専門家からごらんになれば、まことに至らないという点もあろうかと存じます。しかし現在の自衛隊の大部分のものは一人も残らずということは、ここで申し上げることを差し控えますが、大部分の自衛隊員は自衛隊の任務を十分自覚いたしまして、教育訓練に励んでおるのでございまして、独立と平和を維持するためにわが国土を防衛する、直接または間接の侵略に対して国土防衛するのだというしっかりした認識を持って、教育訓練をいたしております。教育の程度も戦前に比べますと、相当程度の高いものが自衛官として入っておりまして、しかも教育に圧倒的なことをいたしておりません。自衛隊員として十分自覚を認識させるようにしむけていっておりますので、無理をしませんが、しかし隊員は自己の任務責任を十分自覚して訓練を励んでおるのでございます。  またただいま御質問の中に、日本航空自衛隊が英語を使っておるじゃないかということでございますが、それはその通りでございます。現状におきましては、日米安保条約によりまして現在日本防衛についてはアメリカ軍の協力を得ておりまして、ことに航空管制につきましては、アメリカ軍によって行われておるという実情でございます。従いまして航空につきましては、特に航空管制との関係がございますから、航空要員が英語を使うということは事実ございます。しかしそれだからといって、何も日本自衛隊アメリカの傭兵になるとか、全くアメリカ式の教育を受けておるのだというふうには私は見ておりません。日本防衛のために自衛隊があるのでありまして、どこまでも自主性を時って、そしてアメリカ協力も得る、こういう建前でやっておる次第でございます。
  22. 粟山博

    ○粟山委員 私ちょうど十二時十分前に出なければならぬところがありますので、関連して簡単にお伺いいたします。長官がしばしば説明されるように、わが国自衛隊は自衛防衛の性格を持つものであって、これは厳固として明らかなるものであることを了承しておりますが、今や北洋漁業の問題について私どもまことに心配をしておる。そこで国際公法上に明かに認めておる公海における漁業について、日本ソ連との間には戦争状態がまだ形の上においては継続しておるという説もありますけれども、現実においては戦争状態ではないというのが日本国民の感覚であり、世界のすべての人が認識しておる常識だと私は考えております。そこでもはや漁期の迫った今日において、もし船団がどうしても出漁しなければならぬという必要に迫られて出漁した場合に、これは各自の責任でありましようが、最も直接の保障の任に当るべき長官といたしましてのお考えはどうであるか伺っておきたい。
  23. 船田中

    船田国務大臣 公海上におきまして、韓国との関係はいわゆる李承晩ラインが引かれ、また最近日ソの漁業の問題が争いの種になっておるということはまことに遺憾でございます。しかし日ソ漁業の問題につきましては、近く農林大臣が政府代表として派遣され、日ソの間にサケ・マス漁業の漁獲制限及び海難救助等のことにつきましてソ連側と交渉をすることになっております。また日韓の問題につきましては、日韓会談をなるべく早い機会に再開しようということで向う側においても数年前とはだいぶ変っておりまして、ぜひ日韓会談を再開したいという空気が動いてきております。そこでこの日韓の問題にいたしましても、日ソ漁業問題にいたしましても、いずれも外交折衝によりましてこれを解決するようにいたしたい、こういうことで政府は今せっかく努力をいたしております。この両者の問題は遺憾でございますが、どこまでも外交折衝によって円満裏にこれを解決する方法に進んで参りたい、さような方向に向って努力して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  24. 粟山博

    ○粟山委員 円満裏に解決したいという希望は、それはもうごもっともなのであります。おそらくソ連の側でも円満裏に解決したいと思うでございましょう。しかしながらそこはソ連の側が考えた円満の線であって、日本考える円満の線というものは、日本おのずからの自主的な理論的、国民感情の上に置かれた線の上に、私は議論は立たなければならぬと思うわけであります。そういう観点からいたしますれば、私どもはあくまでも公海における漁業というものは、もうすでに昨年実績を持っておる。それでありまするから、どう考えましてもこれは相当の船団が行くべぎものであって、行かれるべぎものであると私は考えておる。そこに非常な不安、心配を今日にわかにわれわれが招かなければならぬことはないかということを考えましたときに、私ども日本立場から考えれば、これはもう深刻な決意を持って、慎重な態度で臨むべきものであると私は思う。私の考えから言いますれば、船団の漁業者が昨年非常に活躍して国家のために貢献をした。けっこうです。ことしもそうありたい。しかしながらことしは去年と事情が違っているような雰囲気において、一体船団が出漁することが許されるかどうか。万々一これが望みなきいわゆるホープレスの場合においては、船団の準備が三十億万円あるいは四十億万円と聞いておりますが、この金額は補償するとも、慎重な態度で、万一不幸なできごとのないような線に正常外交をかたく堅持して、あせることなく対ソ外交を進展すべきものだと私はかように考える。それでありまするから、むろん日本からおもむかれるところの代表団がどういう形式でどういう話を進められるだろうか知らぬけれども、漁期に迫っておる今日における閣議の腹がまえといりものはもうとうになくちゃならぬと思う。腹がまえをきめて、そして決定したる線を邁進する場合においては、経済閣僚の責任も大であるけれども、なおさらに私は治安維持に対する責任を持っておられる長官考え方、その行動力というものはまことに大きなものを含んでおる、かように考えておる。それゆえにこの場合におきまして船田長官にお願いすることは、ほんとうに日本がヒューマニストの線においての正常外交で堂々とソ連に対決する、またアメリカともその旗において堂々と折衝しておる、こういうような自主的な日本国民の理念と感情というものを把握して、どうか長官にしっかりやってもらいたい、これを私は希望するのであります。
  25. 船田中

    船田国務大臣 ただいま粟山委員の御激励を受けましてまことにありがとうございますが、今その線に沿うてせっかく関係者省の間で意見を調整し、またソ連に対しましてもわが方の主張を具体的に述べて、そして外交折衝によって円満なる妥結に達するように努力をいたしつつあるわけでございます。しばらく政府代表なりあるいは農林、外務等関係当局の努力に御期待を願いたいと思う次第下であります。
  26. 山本粂吉

    山本委員長 西村君。
  27. 西村力弥

    ○西村(力)委員 ただいま粟山委員質問の要旨は、いよいよの場合には実力的出動を求める、こういうような希望であったのではないかと思うのでありますが、今の答弁で私もほっとしたのであります。(「もっと深刻だ、もっと深い」と呼ぶ者あり)そうですが。私は茜ケ久保委員質問に関連して一つお伺いしたいと思うのでございますが、政府の態度というものはもちろん責任を持たなければならないけれども、それとともに十分なる権威を持った態度、答弁でなければならないと思うのです。何が何やらわからないようなただ一時のがれの、くらますような御答弁ではわれわれはとうてい納得ができない。しかもときどき比喩を用いられて真空論を出したり、太平洋まん中に船を乗り出して大波さざなみにゆられた場合、こういうような比喩を用いられまするが、国会答弁においては、比喩というものはあまり好ましいものではないと私は思う。なぜかといいますると、比喩というものは俗的に理屈がつかないから――言いようがないからたとえ話で言う、こういうのが比喩の俗的な用い方なんです。端的にわかりやすいようですけれども、そういう場合のたとえ話というものは非常に危険味が多い。ですから国会答弁において比喩を用いられるということは、これは好ましいことではないと私は思うのです。それで問題に入りますが、長官ももちろん平和を求めていらっしゃると思う。しかも日本の平和というものは国際的な平和の関連性においてのみ確保できるという、こういう考え方に立っていらっしゃるだろうと思う。そういたしますると、今平和を求める全人類の叫びというものはいろいろありまするが、アメリカの当局者は常に力の均衡こそ平和だ、こういうことを言っておる。アイゼンハワーの年頭の教書にもそういうことが出ておったように記憶をしておりまするが、そういう力の均衡こそ平和であるのだという考え方をやはり日本政府、ことに日本防衛を担当せらるる船田長官はその考え方世界平和の基礎となるものである、基底である、こういいう工合にお考えになっていらっしゃるかどうか、その点についての御答弁を願いたい。
  28. 船田中

    船田国務大臣 アメリカが力の均衡によって今日の平和が維持されておるということを言っておるということの御指摘がありましたが、私も大体やはり力の均衡があればこそ、今日の平和は維持されるのではないかと思います。従いまして自衛力を持つということは結局それによって戦争におもむくのではなくして、逆に戦争を阻止するためにはどうしても最小限度自衛体制を持つことが必要である、かような意味において先ほど真空論を申し上げたのでありまして、比喩を用いたことがよくないということでありますれば私あえてそれを強く主張するわけではございませんが、やはりそういうふうに御説明申し上げた方が、私の述べんとするところがはっきりおわかり下さると思って真空論を出したわけであります。自衛体制を整備するということによって侵略の意図を事前に阻止し得る、こういう考え方に立っておるわけでございます。
  29. 西村力弥

    ○西村(力)委員 力の均衡が国際平和の基礎になるのだということを承認せられておるわけでございますが、今の均衡というのはソ連と米国の二つの大きい勢力の均衡ということはだれが見てもその通りでございますが、どの接触点でその均衡を保ってわるか。地球はだいぶ狭くなりましたけれども、その二つの勢力の接触点というものがある。西欧においてはどこが接触点であり、東亜においてはどこが接触点になっておるか。こう考えてみまするときに、均衡の接触点はわれわれ日本にちょうどあるのだ。日本は米側に含まれてあるのだ。こういうような立場は明瞭だと思うのです。日本のかつての軍部は、満州こそ日本の国防線である、田中大将は何かすばらしいことを言って、バイカル湖に日本の国防線を引くのだということを言ったように覚えておりますが、ちょうど日本の軍部が国防線の最先端を満州あるいはバイカル湖に引こうとしたように、今のアメリカソ連勢力との接触点として、日本を自己の陣営の中の接触点であるというふうにはっきり考えておる。この点はお認めになりませんか。
  30. 船田中

    船田国務大臣 アメリカ世界政策がどういうものであるかということを私は詳細には存じません。しかし、現状におきましては、日本独立と平和を維持するために、直接間接の侵略に対しましてわが方において国土を守るために最小限度自衛体制を整備することが必要である。しかしそれは一朝にしてなかなかできません。そこで、現状におきましては日米共同わが国土の防衛に当るという建前をとっておるわけでありまして、その意味において接触と言われればあるいは接触で、今御指摘のようなことになるかもしれませんが、しかしわが方といたしましては、どこまでもこの国土防衛のためにアメリカ協力を得て、共同で日本国土防衛に当っておる、こういう現状であり、またその建前によってやっておるわけでございます。
  31. 西村力弥

    ○西村(力)委員 アメリカの東亜の戦略体制の最先端として日本は位置づけられておるのだということは現状としてはっきりお認めになっていらっしゃる。それは日本の国は形式的にももう独立したのだから、われわれの心がまえ、気持としては自国を防衛するということが優先し、それに専念するのだ、だがしかし現状はやはりアメリカとの協定に基きアメリカの戦略体制の最先端にあるのだということは認めざるを得ない、こういうことでございまするので、現状についてはやはりアメリカの戦略の最先端としてはっきり日本は確保されて位置づけられておるのだというこの現状を率直にお認めになったものと私は解釈しておるのですが、それでよろしゅうございますか。
  32. 船田中

    船田国務大臣 先ほど申し上げましたように、わが国の平和と独立を維持するために直接及び間接の侵略に対して国土を守る、その国土を守るために、現状におきましてはまだ十分な自衛体制が整備されておりませんので、アメリカと共同して日本防衛に当る、こういう体制をとっておるわけであります。それ以上の意味を持っておるわけではございません。
  33. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私は現状をこのように率直に認めるのが正しいことであると思うのであります。われわれもこういう国の現状に目をおおってはならない。たとい自民党の諸君でも社会党でも、日本現状国民に隠してはならないと思う。真に国を愛する私たちの行き方は、そういう現状を絶対に隠してはならないと思う。そういう現状を率直端的に認めたとするならば、日本自衛隊はいかなる方向に訓練しなければならないか、あるいは配置しなければならないかということは言わずして明らかなことではないか。それを、いかにも右からも左からも上からも下からも敵が来るのに備えるのだというがごとき甘い方は、日本現状について目をおおわしめる言辞だと私は思うのです。そういう考えでおるから、シビリアン優先なんということをあなた方が言うても、幕僚関係の連中からばかにされる事態が起きてくる。もっと率直にいかなくてどうして文官優先なんということがいえますか。文官優先をあくまでも自衛隊の筋として通そうとするならば、日本の国情からいうて自衛隊の当面の目標はここだという方向を打ち出さなければならないと思う。あなた方がそういうことを言うても、幕僚関係は、やはりそれぞれ侵略の予見をいろいろとやっておるだろう、そして、侵略があった場合には、アメリカさんが助けにくるまで五時間ぐらい持つような工合にしようというようなことを考えているなんということも聞いたことがある。こういうことをきっぱりと割り切って臨んでいただきたい。この憲法のある現状からいうて、なかなか仮想敵国という言葉は使えないでしょうけれども戦闘訓練をやる以上はそれだけの予想をもってやらせなければ、あなた方の指導権というものはなくなるのじゃないか。私たち幸いにこれから内閣委員会の視察でもありましたら、上陸川舟艇に乗って青森から北海道に敵前上陸をする、こういう訓練が一番いいのじゃないかと私は思う。そういうことでありますので、この際、仮想敵国ではなくとも、戦闘あるいは平和攻勢の起きる可能性は当然われわれは予想して訓練をしているのだという答弁だけでも今なさるべきではないか。それが文官優先の原則を貫く一つの態度になると思うがいかがでございましょう。
  34. 船田中

    船田国務大臣 文官優先とおっしゃいますけれども、せびろの者が制服を押えておるという意味において文官優先ではなくして、私らは政治優先というふうに考え、またそれを実行しておるわけでございまして、政治優先がくずれる心配がありはしないかという御懸念もあったようでございますが、その点は、現在の国会あるいは内閣、防衛庁の機構、組織をごらん下さいますれば、政治優先の原則は一貫しておるのでございまして、今後におきましても政治優先の線がくずれることはないと信じます。また、ただいま自衛隊員の訓練につきまして、仮想敵国がないと力が入らぬのじゃないかというようなお話がございましたが、先ほど御説明申し上げたように、現在の自衛隊員は十分自衛隊員としての任務を自覚し、その責任を感じて、そしてその任務遂行のために必要なる教養を積み、訓練をいたしておるのでありまして、仮想敵国がどこにあるかというようなことを申さぬでも、自衛隊員は十分訓練ができるのであります。その点は御懸念のようなことは絶対にないと私は信じます。
  35. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 だいぶ質問が残っておりますが、時間の都合で次会に譲りまして、最後に一点だけ防衛庁長官にだめを押してお伺いいたしたいのは、先ほど来仮想敵国という言葉が、語弊があったかもしれませんが、とにかく具体的な自衛隊配置等を例にとって、一応日本防衛目標ないしは自衛隊設置の基本ソ連圏、いわゆるソ連中共にあるのじゃないかということについてのお尋ねに対して、防衛庁長官はそんなことはないというような御答弁でありましたが、そこで最後に一言お尋ねしておきたいことは、いわゆる春岡、あるいは私どもが自民党の代議士諸君などと立会演説をしたり、あるいはいろいろな公式の席上で討論会をいたします場合に、往々にして自民党の代議士諸君は――これは個人の意見かも存じませんけれどもソ連中共がいろいろな意味で日本に攻めてくる可能性があるし、さらにソ連中共の示唆によって国内に内乱等が起る危険があるというようなことをたびたび発言するのであります。そういたしますると、公式のこういった国会における総理並びに防衛庁長官の御答弁ではそれを否定されておるのでありますが、しからばここで、現在日本政府のあらゆる情勢の分析によって基礎つけた結論として、ソ連中共が当面日本に対して何らかの形において進攻するという意図がないということをはっきり御認識になっておるし、さらに将来においてもソ連中共日本を侵略するという危険性は全然考えていないというふうに了解してもよろしいかどうか、この点を最後に一言お脅ねしておきます。
  36. 船田中

    船田国務大臣 ソ連中共をわが仮想敵国考えておるということはございません。ただ私どもとして希望を申し上げますれば、平和は決して言葉だけでできるものではございませんので、もし平和を主張せられるならば、みずから持っておる厖大なる軍備を縮減するなり、あるいは放棄されることが望ましいと私は考えます。しかしソ連中共仮想敵国考えておるということは絶対にございません。
  37. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 先ほど長官は力の均衡ということを申されました。アメリカソ連の関連において、ソ連が一方的に軍備を撤廃し、あるいは縮小するということはとても考えられません、力の均衡ですから。力の均衡は今西村君が指摘したようにソ連中共の共産圏とアメリカの自由諸国との均衡でありますから、今長官が幾ら御希望されても、ソ連だけが軍備を撤廃し、縮小するということは不可能であります。ただ私がお聞きしておるのは、そうしたソ連が軍備を持っておるいないではなく、また仮川敵国であるかないかではなく、ソ連中共が現在から将来にわたって日本に対して侵略する危険性がないと考えているかどうかということを聞いておるのですから、その危険性について明確な答弁を願いたい。
  38. 船田中

    船田国務大臣 重ねて申し上げますが、私といたしましてはソ連中共を仮想敵個とは考えておりません。しかし将来のことについて、ただいまここに私がいろいろのことを予想して申し上げるということは、適当でないと存じますので、その点は申し上げかねます。
  39. 山本粂吉

    山本委員長 残余の質疑は延期し、暫時休憩いたします。午後は一時より再開いたします。    午後零時六分休憩      ――――◇―――――    午後一応四十九分開議
  40. 山本粂吉

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  宮内庁法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。前会に引き続きの問題でありますので、まず江崎君に質問を許します。江崎君。
  41. 江崎真澄

    ○江崎委員 宮内庁長官にお尋ねをいたします。先般たまたま私と受田委員から、皇太子の予想せられておるところの結婚の問題について、次長にいろいろと御質問を申し上げたわけであります。ところが残念ながら次長から承わった言葉というものは、どういうつもりでああいうお答えが出ましたのか存じませんが、きわめてあいまいな、しかもあたかも新聞記者でも談話からはぐらかすような体の御答弁しかいただけなかったのであります。そこで私どもがお尋ねいたしました、――特に江崎がお尋ねした趣意は、皇太子が今日、二十二年四ヵ月、比較的まだお若い御年令であられる。しかも学習院大学は御卒業という形をおとりになりますか、あるいは聴講生という姿で、このままの形でおられますか、それはともかくといたしまして、少くとも今後は一般社会人としての真剣な勉強にいそしみたい、こういう決意を学習院大学の卒業式に披瀝をなされ、また側近に時されるところのあなた方もその構想をもって、今日以後の皇太子を見ておられるわけであります。そのときに、たとえば最近の新聞記事を見ますと、皇太子の結婚問題がいかにも迫ったかの感じを与えております。そうかと思うと、皇太子の記事が、それはあたかも皇太子であるということを露骨に表わした「孤独の人」とかいう小説も、まだ完成も見ないうちに各社の映画の製作者から対象にせられておるというような動き、あるいはまたすでに週刊雑誌等ではこの人にきまったというので、それぞれ該当者におぼしい人々の顔ぶれをずらりと並べて、もう今にも決定するかのうわさをまき散らしております。こういう環境に二十二年四ヵ月という若い皇太子がさらされ、置かれておって、ほんとうに社会人としての正しいしかも将来わが国のりっぱな天皇陛下としてのいろいろな教育試練の場に果して立ち得るかどうか、私どもははなはだ心配に思うものであります。そういう見地から、この問題はただに縁のものだからいつになるかわからないとか、われわれが想像しておるのは早くもなければおそくもないというようなあいまいな話では、少くとも私ども国会議員としては納得するわけには参りません。新聞紙上の単なるミーちゃん、ハーちゃん式のうわさならいざ知らず、ここで私ども責任者であるあなたにお尋ねをする場合には、果してそういう環境におられることが皇太子として適当であるのかどうなのか。あなた方はそういう毎日の新聞や、週刊雄志等をにぎわしておるようなああいう環境に皇太子をただ黙って置いておくことに、何らの反省、何らの責任も一体お感じにならないのか。これを一つ長官に承わりたいということで、この間私は次長に対する質問を控えたわけでありますが、お帰りになりましたので、一つこの際はっきりした責任ある御答弁を承わりたいと思います。
  42. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 皇太子殿下はすでに御承知通りに、ことしの三月に学習院を御終了になりましたのでございます。大学の途中から聴講生ということになられましたので、御卒業ということではございませんが、この三月をもちまして、学習院で御勉強ということは打ち切りになりまして、ただいま仰せになりましたような、学生でない立場で今後ますます御修養を積まれることと思うのでございます。まだ年令もお若いわけでございますから、基礎的な御勉学あるいはさらに実社会についての御修養ということを進めていただきたいと考えておるところでございます。皇太子殿下は御卒業になりまして、すでに学友等のうちには近く結婚する人もおるように聞いておるわけでございます。ただ御結婚の時期等につきましてのお尋ねでございますが、目下のところ特にお急ぎにならなければならない理由もございませんし、また何年先に延ばさなければならないという特別な理由もございません。今の陛下は数え年で二十四のときに御結婚になっておりまして、必ずしもそれを基準にするつもりもございませんけれども、なお弟宮の義宮様も二年後には大学を御卒業になり、清宮様も来年は大学に進まれるというようなことで、そう遠い将来であるとはわれわれも考えておらないのでございます。事務当局といたしまして、われわれは慎重にいろいろな調査を進めていることはこの前次長もお答申し上げた通りでございますけれども、ここにいつごろだというようなことを責任をもってお答えするだけの具体的なところまで進んでおらないのでございます。一般報道機関が取り扱いましたのは私の記憶では昭和二十六年くらいでございます。その後私といたしましても、ずいぶん早くから報道されますので、その点について、そういうことは近くはないということをはっきり申したことはございますけれども、しかし実際問題はそういうことにかかわらず盛んに報道されておるのでございまして、実際問題として準備が進んでおらない実情でございます。特に結婚と申しますことは、殿下の御意思がもちろん中心でございますが、もちろん相手方のあることでございまして、そういう日を限ってどうという間判をここで責任をもって申し上げることは困難であるという事情は、何とぞ御了承いただきたいと思うのでございます。殿下はもちろんいろいろな責任のない報道につきまして、もとよりいい気持はなさらないと思いますけれども、非常に着実なお考えの方でございまして、これがために御勉学に辛も差しつかえているとは私は考えてわらないのでございます。実にしっかりとしたお考えでおられると思いますし、われわれといたしましては、こういう情勢につきましてなおできるだけの微力を尽しまして、殿下がすくすくとお育ちになりますように努力をいたしたいと存じます。
  43. 江崎真澄

    ○江崎委員 御結婚の話は二十六年ころから起った、その当時は非常に早いと思ったが、もう今となってはそう遠い将来ではないように思う、こういうお話でございます。そこでお尋ねいたしたいのは、皇太子殿下が時の人であることはけっこうです。われわれも喜ばしいことで、国民が親しみを持ってくれることはほんとうにうれしいと思います。しかしまだ相当先に結婚が考えられるものを、こんなに大騒ぎをして、たとえば学友のだれそれが新聞社にそのことを特種として取ることを条件に特別採用されたとか、あるいはその話題をめぐって常に国民の関心が寄せられるとか、これはお互い個人の場合を比較にとってみましても、非常にわずらわしいことなんです。そういうわずらわしい場面ならば、およそ大体いつごろ――これには天皇陛下、皇后陛下の御希望というものもあらせられましょう。御本人のおよその御希望というものもおありになるのでありましょう。だからそういうことはこういう時代ですからある程度はっきりすることが、むしろ国民としても喜びでもあるし、また同時にりっぱな勉強をおやりになって学校を出られた皇太子としてのあり方にも一致すると思うのですが、これはどうなんですか。
  44. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 るる御心配の点、過去のいろいろな報道の仕方が中には非常に無責任なものがあるんじゃないか。現に候補者として伝えられるのも昭和二十六、七年ごろから出た方がそのままの状況でございます。しかしそうだからと申しまして、われわれがこれを一々肯定、否定し得る性質のものではございません。お話の点はわれわれといたしまして責任を時ってなし得る時期が参りましたら、十分考えて、そういった混乱かなるべく少くするということに努めたいと存じます。
  45. 江崎真澄

    ○江崎委員 おおよその、何と言いますか、めどというものがあるはずだと思うのですが、これはどうですか。それははっきりおっしゃった方がいいのじゃないですか。
  46. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 ただ私一人できめ得る問題ではございませんし、相手のあることでございまして、いつまでと、公開あるいは正式の場合にお答えすることはどうもできないじゃないかと思います。
  47. 江崎真澄

    ○江崎委員 けっこうです。私は別にそのことを中心に聞こうと思っているわけではありません。ただ、あなた方がそういう環境に皇太子をさらすことにもう少し責任を感じてもらいたい。これを中心に御要望をしながらお導ねしておるわけです。  そこで、ついでにこれはわれわれの気持として参考にしたがら承わりたいのですが、大正天皇の御婚約ができたのは何才ごろですか。そうして御婚約から今の御結婚までの間というものはどれくらいであったのか。それからこれはもしおわかりならば、今の天皇陛下が二十四才で御結婚になった。そうすると、結婚というか、皇后陛下はこの人である、この人がなるべきであるというふうにおよその見当がついたのはいつごろでございすいすか。
  48. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 正確な資料を持っておりませんので、ここで正確にお答えいたしかねますし、今の陛下の場合はいわゆる御内定から御成婚まで三、四年の間があったことと思います。
  49. 江崎真澄

    ○江崎委員 そうすると、二十四才で御結婚になる三年くらい前に御内定があったわけでございますね。そこでわれわれが心配するのは、昔でいいますと、天皇陛下の配偶者であるべき皇后陛下という立場は、これは大へんなことでしたね。いろいろだ記録に見ましても、皇后となるべき方に対しては特別の教育をなされた。いわゆる皇后学というものをあなた方が中心になっていたされたことでしょう。計画をなさったわけでしょう。今日では新憲法のもとに新しい姿の天皇陛下であり、皇后陛下という形になるわけであります。しかし今日この新憲法下におきましても、皇后とならるべき方のあり方についてのあなた方の関心というものはやはり当然おありになるだろうと思う。昔は友人関係の手紙を全部没収してしまうとか、いろいろ形兄に残るようなものは全部これも取り上げてしまうとか、なかなか厳格な、今から考えれば想像もできぬようなこともあったそうでありますが、今後皇后陛下となるべき候補行がきまった場合、これに対して、まあきまってから考えるということをまたお答えになるかもしれませんが、大体将来われわれの皇后陛下になってもらうべき人でありますから、いかに新憲法下とはいいながらおのずとそこにあなた方の考え方、構想というものがやはりおありだろうと思います。何か特別な教育とか、特別ないろいろの方向をお示しするような機会、そしてまたそういう機会を持つとすれば、それは大体どれくらいあったらいいものであるか。この間宮内庁の次長は受田委員質問に対して、それは広く一般の女性にも希望が持ち得るのだ――これはおざなりの一つの御答弁であったかもしれないが、ああいう表現の仕方をなさいますと、新聞などではすでにおもしろおかしく取り上げて、一般の女性というものが対象になっているのだ、一般女性必すしも希望なきにしもあらずといったよりな、そういう形になって現われている。これがいいか悪いかということは別としまして、一体今の特別な方向を身につけていただくというようなことは必要はないのか、あるのか、またあるとすれば、一体それはどれくらいの期間を要するものであるか、こういつたようなことについておおよその構想を入わっておきたいと思います。
  50. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 お答え申し上げます。御内定になりまして御結婚までの期間についてのお尋ねでございますが、私ども考えておりますことは、皇太子妃殿下として、あるいは将来の皇后陛下として、国民の統合の象徴であらせられる陛下の皇后陛下として十分な御修養を願うべきが当然であろうと思っております。しかし人間の修養と申しますのは私は一生かかる問題であろうと思いまして、特別な期間に、言葉は悪うございますが、詰め込み的なことは今は必要ないんじゃないかというような考え方を私自身いたしておるのでございます。しかしもちろん御内定になりまして正式の御結婚までにはいろいろ準備もございますし、またそれだけのお心がまえができる期間も必要でございましょう。しかし昔のような長い期間というものは私どもはただいま予想いたしておりません。
  51. 江崎真澄

    ○江崎委員 大へん民主的な一つ考え方を持っておられるようで、その点はけっこうであります。ところが今としてはあまり必要はないとおっしゃられるが、そうすると、次長がおっしゃったように、一般女性が対象になるとかいうことは、言葉の端でありまするから、それに重点を置こうとは思いませんが、たとえば過去の華族の方からそういう御縁がきまるといったような場合、ほんとうにそれがそのまますっと――皇太子殿下の配偶者としてそんなにたやすくすっと持っていけるというお気持ですか、どうなんですか。
  52. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 御結婚あそばすときは皆さんまだお若い方でございます。やはりただいま申し上げました通り、もちろんりっぱな御素質がある方と私は信じますけれども、それをいよいよみがいていただくことはやはり御一生のお仕事としてなされることであろうと思います。そういうことでございまして、特殊な一般的な教養、あるいは御学問をなさるというようなことは私は必要ないんじゃないかというふうに考えておるのであります。
  53. 江崎真澄

    ○江崎委員 皇后学というものは要らぬのですね。
  54. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 それはすぐ皇后様になられるわけじゃございません。皇太子妃殿下として遠い将来にそういう時期がくるのじゃないかと思います。そういうことでございますから、もちろんただいま申し上げました通りに、内定して即日というようなことにとうてい参るわけじゃございません。いろいろな御準備もあり、上がられる方のお気持も整う必要はもちろんあろうと思います。しかし昔のような数年という長さを求める必要はないんじゃないかという意味で申し上げたわけであります。
  55. 江崎真澄

    ○江崎委員 そこで私はほんとにこれはあなたに真剣に考えてもらわにゃならぬと思うことは、私はある週間雑誌に、将来の妃殿下になるべき候補者の一人というお父うさんから、しみじみ私に訴えられたことがある。これは特に名前は秘しますが、自分の娘が妃殿下の候補者の一人に擬せられて週間雑誌に名前が出た。自来私のうちは非常に暗くなってしまいました。娘がさようなことがあろうはずはないし、またそんなことがあったら、これは一門大へんなことなんだ。けれどもまことしやかに取り上げられて、新聞記者は来られる、あるいはまたその友だちはいろいろと疑いの眼であれやこれや誘導質問をする。何となくそれ以来娘が外に出歩くことをきらうようにすらなってしまった。これは私あなたが名前をあとで言えとおっしゃるならほんとに申し上げてもいいと思うが、親としていかにも困ったということを切々として応えられたことがあるのです。これはあなたが今お説におっしゃるように、新しい時代の皇后陛下となるべき妃殿下というものは、昔のようにいわゆる俗世間と隔絶する必要もないし、にわかに変ったあり方を整える必要もない、こうおっしゃる。そういうお気持ならば、この皇太子殿下の結婚問題をめぐって、相手相手であられるだけに、これは世間が必要以上に騒ぐ。騒ぐのが悪いと言えばそれはそれでおしまいでありまするが、しかし皇太子殿下も、冒頭申し上げたように若い勉強のさなかを、結婚問題だ、やれ興味対象の中心だというふうな環境に置く、あるいはまたこれをあなた方が言を左右にして、縁のものだからいつのことだかわからないとおっしゃる。これはおそらくあなたも御令息なり、お嬢さんなりおありだろうと思うが、大体いつごろにはこうしたら、この次はこうしたら、およその考え方、行き方というものはあるものです。そういうものをお示しにならぬから、特定の被芹者というものができて、この民主主義時代にもかかわらず、皇太子殿下の今のきさきの問題をめぐって大へんな泣く人や、被害者が出てくる。これは若い女性の場合、右足の一個人々々の場合を考えてごらんなさい。私は重大な問題だと思いますよ。これは皇太子の場面を、また候補者になる場面をいろいろあなたがお考えになりますと、これはただ縁のものだとか、やれにわかに断言することができないのだとかいうようなことで、言を左右にせらるべきじゃない。それは皇太子を興味の中心にいつまでも置いて、その興味の中心がわれわれの象徴としての天皇にならるべき皇太子ではなくて、何となく巷間の人気俳優に対する一つの好奇心というような感じ方で接せしめることにもなるだろうと思う。これはそう軽々に簡単に考えてもらっちゃいかぬと思う。いやそんなことは考えておるとおっしゃるならば、およそのめどくらいは、国会においてある程度われわれの前に安心のいくように、納得させるようにお話しになることが必要だと思うのです。これは私はほんとうに皇太子のことを思い、国のことを思うから申し上げるので、興味本位じゃありませんから、もう少し一つつっ込んだ御返事を承わりたいと思います。
  56. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 重ねての御質問でございますが、今仰せの通り心配の点はよくわかりますが、私自身としても、私自身がだれにも負けない心配をいたしておるつもりでおります。ただ一般の報道機関がいろんな推測をいたしまして、個々の人をあげることは、非常にお話の通り迷惑された方があることを伺っております。しかしわれわれといたしまして、そのためにその方が候補者であるとかないとか、有力であるとかないとか甘えるはずのものではございません。しかしそうかといって、そのために無理な進め方をすることもできません。われわれとしては、皇太子殿下のために、またこれが将来の皇后陛下として全国民のためになられるようなりっぱな方を得られるということで、専心努力をするほかはないのでございます。今ここでいつになったらそれができるということを申し上げる自信がまだございません。以上私が現在ほんとに考えていることを申し上げた次第でございます。
  57. 江崎真澄

    ○江崎委員 わかりました。なかなかお答えがむずかしいようですし、この個人的な問題についてそうせんさくをするわけにもいきますまい。けれども、どうぞあなたに課せられておる責任というものを、もう少しお考えになって下さい。これはわれわれは繰り返して言っておるように、興味本位で言っておるのではありません。こんな環境にいつまでも置くことは、俗な言葉で言うなら、何か色男がたくさんの女に気を持たせるようなやり方だ。ドン・ファンを周囲のものが見守っておるような姿、そんなところにわれわれ皇太子をいつまでも置いておいてどうなりますか。そんなに遠い将来ではないとおっしゃるならば、およそのめどくらい近い機会に御発表になった方がいいですよ。きょうはなかなか騒がしいようですから、ちょっと御緊張になっているようでもありますし、また一ぺんしみじみ伺ってみたいと思いますが、どうぞそのあたり責任あるお立場として将来に対して責任を持っていただきたい。お願いします。
  58. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 関連してお尋ねいたします。私どもは皇太子がどんな結婚をされようと問題にはしておりません。これは江崎君とは違いまして、私どもはむしろ市井の一無名の女性と恋愛結婚されることの方が望ましい。私は皇太子の結婚問題についてこの間次長にお伺いしたのですが、そのことよりも、皇太子の最近の育て方、教育のされ方、ここに問題があると思う。私は皇太子が皇太子としてただ単に個人であれば問題はございません。何も触れません。しかし一応新憲法のもとで、象徴という形にしろ、特殊な地位を持つお人でありますから、国民との関連性があるのであります。私ども国民との関連性においていろいろなことを心配している。この岡も次長に申し上げたのでありますが、天皇という存在が過去の憲法の形に逆行する可能性が強い。これは現在の日本の動き方、政治のあり方、また自民党鳩山内閣考え方の根本に大きく動いております。憲法改正の問題も、いわゆる自民党案、元の自由党案、あるいは民主党案等を見ますと、元首という言葉を使ってさらに昔の天皇の姿に変えようとする動きがあるのであります。これはなかなか私ども看過できない。そういう際に皇太子のあり方が、私は先般「孤独の人」という小説の材料を一つのテーマとして申し上げましたが、あれが真実で真実でないか別にいたしましても、少くとも皇太子のあり方が、あなたの今おっしゃったすくすくと育つということでなくて、そのすくすくが、型にはめた昔の天皇制の天皇の姿に育つような教育の方法であってはならぬと私は思う。私はこの間も申し上げましたが、天皇という存在が歴史的にあるのでありますから、この存在を私は今ここで没却しようとは思いません。しかしその天皇という存在が国民を犠牲にし、国民にあらゆる圧迫と国民生活を非常な悲惨に追い込むような姿のものに変るならば、私はこの国も言ったのですが、重大な決意をしなければならぬ。しかしそういった過去の歴史が現にあるし、またそれを復元しようという形がありますから、せっかく皇太子が新しい時代の姿に育って参るし、また育とうとしたとき、最近になってその行き方を転換して、私ども心配する昔の天皇制の天皇のような姿に変えようとする動きがあるということを、私どもはいろいろな意味で聞いている。これでは困ると思う。私どもは先ほど江崎君の心配された皇太子妃がどんな形であるか、そんなことは大した問題ではないと思う。それは個人の意志であるし、どんなところから皇太子妃がきまろうとも、どんな形できまろうとも、いつきまろうとも、それは問題じゃない。そんなことよりは、皇太子のあり方、それの育ち方、国民との関連性が問題である。こういう点において長官は、皇太子の教育なりあるいは成長なり、今後のあり方について、長官としてどのような自信と議見と、そして意見を持っておられるか、それこそざっくばらんに一つ私はお示し願いたいと思います。それでなかったら、私どもは、いわゆる今の皇室に対する考え方というものはすなおに考えてきておる、その考え方に対してやはり重大な段階に来ざるを得ない面があるということを考えるのであります。そこで私の今言った点に対する、長官の簡明率直なお答えを願いたいと思います。
  59. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 私は皇室が古来わが国のため、国民のためにお尽しになるということを中心に考えておられると思います。皇太子殿下が学校を出られて、今後皇太子としての義務をお尽しになるのは、やはりそこにあると私は考えておるのでございます。そういう意味で自分の御修養を積まれ、識見を高められて、それを通じて日本の国、日本国民のためにできるだけの寄与をするというお考えで御修養なさるようにすべてのことを考えていきたい、かように考えております。
  60. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 言葉はそれでいいでしょう。では具体的に、皇太子が将来その国民のために尽すという形はどういうものか。ただ言葉だけで、国民のためになるように勉強されるとか、あるいは国民のためになるような考え方で物事をなさるとおっしゃっても、これは非常に抽象的であります。言葉だけでは何でも言える。具体的にではどういうふうなあり方があるのか。たとえばあなたは先般天皇のお供をして山口にいらっしゃったようであります。ああいうことについても私どもは意見を持っていますが、ああいう行幸そのものに対しても、国民の目から見るといろいろな問題がある。あなた方は国民の中に天皇のあり方――天皇を一緒に御案内して、何か特別な御意思があるのかどうかは別として、あなたのお考えもありましょう。しかし国民の側から見るとまたいろいろな見方がある。それはそれとして、皇太子が今後自分なりに、国民のためになるという意思で物事をなさるとおっしゃるが、具体的にどうなのか。ただ単にあなたは、皇太子がわれわれ国民のために尽すためにいろいろ勉強するとおっしゃっても、どういうふうに今後国民のためお尽しになるのか、皇太子として、あるいは天皇になられた暁において、具体的な事例を示してお答え願いたいと思う。ただ言葉だけ国民のためになるとおっしゃっても、とても私どもはわかりません。国民のためになる皇太子のあり方を、一つ具体的な事例をお示し願いたい。
  61. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 ただいまの皇太子殿下のお立場は、あくまで皇太子としてのことで、象徴としての御活動ではもちろんございません。従って皇太子殿下がそのお立場において国家、社会、国民のためお尽しになるというのは、陛下のお立場とは少し違うと私は思います。しかし古来伝統的にやつておられまする、社会事業を通じますとか、あるいは産業、学術の御奨励、それぞれの形において、自然にその義務をお果しになる場面がたくさんあると私は考えております。
  62. 粟山博

    ○粟山委員 関連――この内閣委員会で、意外にも、皇太子殿下の御一身に関する質疑がたびたび行われました。けだしこういうこともあり得ることとして、私どももこの貴重な時間を割愛して拝聴をし、静かに考えさせられておるのである。そこで要は、天皇たるべき皇太子殿下は学習院を御卒業といおうか、まず学習院の課程を習得されたというような形において、一応学校生活は終られたわけである。こういう機会国民の関心がここに寄せられるということは当然だと思うのです。従って御年齢が御年齢であればこそ、女性との関係も種々うわさされるのは当然だと思う。しかしここで私は長官に伺っておきたいし希望することは、今の日本の現実というものは、戦前と戦後と、そういうものの歴史と人々との間によって構成されておる。これはもう戦後派の人が戦前を抹消しようといっても抹消し得ない。戦前の人間、戦後の人間、戦前の歴史、戦後の歴史を通じて、日本の今日というものは現実に作られておる。そこで最近は戦中派というようなものも浮き彫りにされておる。私はこれも見方によっては一顧の値を寄せなければならないものと思いますけれど、これは歴史の一こまである。現実の姿である。そういう点から考えますと、以前の常識からいえば考えられないようなことも、こういうような議事堂の中で、貴重な時間を費して論議をされるということも、これが世相であるから、長官も真剣にこれをお聞きになってよろしいと思う。そこで私のお願いするところは、今のように、ラジオ、新聞、鉛筆等によるマス・コミュニケーションというものは、まことにおそるべき力をもっていろいろな両に重大なる影響を与えておる。この現実にも兄のがしてはならぬ。そういう中にわれわれが置かれてる。これがいいとあしいと、これが高い目で見てどうであろうと低い目でながめてどうであろうと、これが現実なんである、そういう場合に宮内庁に要職を持たれる長官ないしは長官の周囲の人々は、非常に強い人格の力と判断力とにおいて、きぜんたる態度を持ってもらわなければならぬと思う。私はいささかたりとも、質問によく聞き、世論によく聞いて、あなた方の判断は、この国家を誤まらざる、この皇室を護る上において、不動の信念の上に出所進退してもらいたい、その上に言葉を使ってもらいたい。その上に筆に乗せ、電波に乗せてもらいたい。私はそういう正しい強きものを要求するのであります。それが思い起すことは、私はあの終戦当時において、事なくしてあの終戦が終るであろうかとだれもが心配されたことが、今の天皇のお声によって終止符を打った。これはだれがさせたのか。だれがさせたというより、天皇みずから非常な御決心で、マイクをとられたことにあると思うのです。教えられたり、しいられたことじゃありますまい。そういうことを考えると、どうして陛下があの当時それだけの勇気をおふるいになったかということを考えれば、私は教育であったと思う。杉浦重剛先生が書いて著されたいわゆる「倫理御進講草案」というものは千何百ページあるはずである。長官はお読みになりましたか。この千何百ページというものは、杉浦重剛先生の人格――日本人としては戦前、戦後、戦中を通じても、私どもは今の学習院大学の学長の安倍さんなどでも、散見する文書の上から見まして、当然こういう人も杉浦先生には頭を下げて教えを受けてもよろしい。死んだ杉浦先生に教えを受けてもよいくらい、私は輝やける存在であると考えておる。しかも国学にはたんのうである。漢文には精通しておる。そうして英語にも達し、そういうような広い識見の上に、人格またすぐれたる人である。きぜんとして今の皇后陛下の問題のごときも、ごう然たる世論の間に、この杉浦先生の正しい行動が結論を与えておる。そういうことを考えますときに、御成年になるまでに教えられた経路を見ると、ずいぶんといろいろな人の意見を聞いて、自分も心胆を砕いて、一文一章まで先生の魂を浮き彫りにしている。そうして御進講を申し上げている。人間としての天皇はいかにあるべきか。御成年になったときには、初めて性の問題を御進講申し上げますとして、男と女の関係を教えておる。後醍醐天皇に対する批判のごときも、当時のわれわれ国民感情からいかがかと思いますが、後醍醐天皇のごときも、不世出の英才をもってして、あの歴史に遺憾なものを残されたことは、婦女子に甘かったということ、論功行賞というものにははなはだその当を得なかったことを摘出しておるような、それくらいの秋霜烈日たる態度をとって御進撃申し上げた。でありますから、そういうような教育が何年か積り積って現天皇の終戦に臨んでのマイクを通ったお声が出たものと私は拝察する。同時に……。
  63. 山本粂吉

    山本委員長 栗山君に御注意申し上げます。質問の要旨をどうぞ簡単にお願いします。
  64. 粟山博

    ○粟山委員 複雑怪奇な思想の混乱している渦中にあって、皇太子殿下も天皇も、今の社会党のシンパでもあるはずもない。保守党のシンパであるはずもない。政治家であらず、経済行動の経済人でもない。それは象徴なのである。でありますから、そういう点について国民が天皇一家族の生活を守っているのであるから、私は宮内庁の方々は、その重大なる責任にかんがみて、まさに超然たるべき姿であらねばならない。そこにあなた方が地に足をつけて国家の大局を見て誤まらざる行動をとって、世論紛々の間に、私は耳をかすなとは言わないけれども、動揺されるところのない、不動の信念たもって、引き続き今日まで残されている皇室の方を、人間として偉大なる成長をはかられるようにお取り計らって、御助力を――御助力と申しては失礼でございますが、御進講を申し上げることを私は希望するのでございます。
  65. 山本粂吉

    山本委員長 受田君。
  66. 受田新吉

    ○受田委員 私はきょうせっかく山口からお帰りになられたばかりの長官が御出席に相なりましたので、特に県議の問題に関して重要と思われる諸点について質問させていただきたいと思います。皇太子殿下の妃殿下をお迎え申し上げることについての質問が出ておりますので、最初に一言だけお尋ね申し上げておきたい点があるのであります。憲法第一条における日本国の統合の象徴である天皇御一家の御繁栄は、国民としてこれをお祈りすることは、現在のお互いの偽わらざる心理状況であります。しかるがゆえに、この憲法第一条の国民統合の象徴であられる陛下御一家の土にいまわしきことのないように願うことも、これまた国民的要望であるのです。そこで皇太子の御成人についておきさきをお迎えするという場合にも、その点非常に念を入れて、その妃殿下の冊定をされる必要があるのであって、長官としては、そうした妃殿下をお迎えすることについての事務処理の最高責任者であるはずであります。私は、皇太子妃殿下の冊定に当って、対象となる方は、結果的には、今までのお家柄等が尊重せられて、皇族の身分にあった方あるいは華族の身分にあった方というような方々がその対象となるという常識が動くのではないかと存じますが、長官はいかがお考えでありますか。
  67. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 将来の選定の場合の範囲等についての御質問と存じますが、申し上げるまでもなく以前は皇族に限る、華族に限るという理由がありましたけれども、現在はその規定はございません。従って法制的には何ら制限されたものはありません。実際問題としてどうするかというお尋ねだと思いますが、もとより皇太子妃殿下としてお迎えする以上、われわれとして、その標準をお聞きになりますれば、いずれの標準においても最高の標準であると申し上げるよりほか仕方がございません。しかし実際問題はその条件にすべてお合いになる方があるかどうか、これはやってみなければわからないわけであります。お家柄のことにつきまして、もとより古来から続いております皇室にふさわしい方を選ぶというのは当然であろうと考えております。
  68. 受田新吉

    ○受田委員 英国においてすらも、英国の国教でありますアングリカン・チャーチというものの規定によれば、ディボースという立場にある人々は、英国皇室の御結婚の対象からはずされている。だからこそエドワード八世も、シンプソン夫人との恋愛を成功されるために、英国王の地位を捨てなければならなかった。またマーガレット姫も、タウンゼント大佐との恋愛を捨てて、英国の王室の一員たることを守られたわけですが、こういう点におきましても、日本の皇室としても、そうしたある程度の制約というものが、何らかの形でなされる要はないか。皇太子の御意思を尊重することは当然であるけれども、その皇太子の御意思を、周辺にあられるあなた方のお立場でいかに育成され、助長されるかという点についての御見解を伺いたいのであります。
  69. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 皇太子殿下は、その御身分の上から、一般の青年と違ったきびしい御修養あるいは特別なある意味の制限をお受けられになるということは、今仰せの通り、私はあるものと考えているわけであります。それはあくまでもその皇太子としての義務をお果しになる上においてやむを得ないことであろうと考えておるのでございます。ただイギリスのような宗教的な不文法的ないろいろ制約は日本にはございません。将来これが必要かどうかは、私どもはその必要はないと思いますが、しかし実際問題といたしまして、皇族が妃を迎えられる場合には、皇室会議の議を経るを要すると規定してございます。これは単に一般国民の結婚と違って、皇太子殿下の御結婚、皇族さんの御結婚というものが、それだけ国家として慎重を期していると私ども考えております。その線に沿い得るように、具体的な問題について考えなければならぬというふうに存じております。
  70. 受田新吉

    ○受田委員 皇太子殿下の御意思を尊重されるということは、民主主義の国家においては特に私は重大な問題だと思いますので、皇太子殿下が適当な女性をお認めなされる機会を、皇太子殿下にお与えするということも必要だ。皇太子殿下を九重の雲深きあたりにのみとじ込め奉ることなく、広く適当な上品な社交の場においでを願って、皇太子殿下そのものが大衆の中にある皇太子殿下として祝しみを持たれるお立場に置かれることが必要ではないかと思いますが、そうした皇太子殿下の日常の生活について心すべきところはありませんか。
  71. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 今後の皇太子殿下のお進みになることにつきまして、単に今おあげになりましたような意味のみならず、殿下がやはり国民とともにいなさるということは、私は必要であると考えております。そういう趣旨から単に奥深く御殿の中におられるばかりでなく、常に国の進んでいる状況、社会の状況というものを進んでごらんになる、国民と苦楽をともにされるという行き方が必要であろうと考えております。
  72. 受田新吉

    ○受田委員 陛下や皇太子殿下が原子展などにおいて制約を受けていることについては、茜ヶ久保君からも質問がありましたが、こういう国民の前に広くみんなに見せられるものは、陛下及び皇太子殿下にもお見せするというお心がまえが、大衆の中にある陛下、殿下に対してのお立場ではないですか、この点宮内省の責任者として御答弁を願いたい。
  73. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 やはり皇族様方はありのままにごらんになる。学校時代のことが小説化されたという御質問もございます。結局そういう学校においでになりましたときもいろいろなことが起って参ります。そういうようなことを経て切磋琢磨されて、自分の識見を養わなければならないはずであると私は考えます。ですから物事のきれいな面だげをごらんに入れておったならば、皇太子殿下が完全な御成長をなさるということにはむしろ欠けてくると私ども考えておるのでございます。ただ将来外にお出ましのときも、いろいろ一定の限度がある、何でもいいというわけにはもちろんいかないと思いますけれども、なるべくそういった国民とともに進まれるという立場をとるべきであるというふうに考えております。
  74. 受田新吉

    ○受田委員 殿下が御結婚されるまでの課程において、殿下が広く平和を願う世界各国との間の親しみのつながりともなられる立場から、戦争の痛手を受けしめた国々に対しての償いの意味からも、かつて現在の天皇が御外遊をきれたことにちなんで、御結婚までに世界各国のおもなる国々に対して、今申し上げましたような意味の御旅行をなさるということは、殿下御自身の御修養にもなることだし、見聞を広められることにもなるし、外交上の効果もあるということが考えられますが、長官として、殿下が海外の御旅行を御結婚に前後して行うことについての御意見を伺いたいと思います。
  75. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 殿下はすでに御承知通り、イギリスの皇帝の戴冠式の機会に十数ヵ国をお回りになりました。お帰りになってやっと二年たつか、たたないかというところで、今お述べになりましたような機会にというようなことは、目下のところ考えておりませんが、将来適当なことがございましたら、御外遊ということも起り得る問題であろうと考えます。現在のところ考えておりません。
  76. 受田新吉

    ○受田委員 私はいま一つ、ここで重大な皇位継承の問題について質問をしたい点があるのです。皇室典範の第一条に、皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。という規定があります。ところが男系の男子ということになりますと、ただいまの皇太子様と正仁親王、それから、三笠宮様ということになって、非常に限られた数名の方しか皇位継承権がないわけです。こういうことになりますと、日本国統合の象徴の御一家に後継者が――たとえば急迫不正の侵害がいつあるかわからぬと政府が言うているくらいですから、いつどういう天変地異があるかわからないということを考えると、ごく数名の後継者だけということになりますと、皇位継承権を有する人に支障があった場合に、皇位を継ぐ人がなくなるおそれがあると思う。特にその意味からも、また憲法で男女同権が叫ばれている立場からも、皇位継承権者に女子を加えるということはいかがかと思うのであります。男女平等の原則に立つ世界各国、また歴史的にも祖国日本にも由来女帝がおられたわけです。明治憲法によって初めて男系の男子だけという制限を受けたのですが、この際女子の皇位継承権を認めるということはいかがかと思いますが、いかがですか。
  77. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 皇位継承権の問題はごく数名というお話でございますが、皇室典範の上では二条あたりで相当広くなり得るというふうに私は記憶いたしております。  女帝のお尋ねがございましたけれども、これは憲法改正その他の問題にも及ぶ問題でございますから、私の立場で申し上げるのはどうも不適当じゃないかと思います。御了承を願います。
  78. 受田新吉

    ○受田委員 あなたのお立場で、皇族の女子の方に継承権を持たしめるということについては御意見を差し控えるようなお話と了解するのですが、皇室典範改正の政府側の提案責任者はどなたがなられることになりましょうか。
  79. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 閣議で決定されると思います。
  80. 受田新吉

    ○受田委員 その場合、宮内庁長官は皇族会議の構成員でもありますが、宮内庁長官は関与しないお考えでございましょうか。
  81. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 宮内庁は内閣の外局でございまして、重要な事項は総理大臣の指揮を受ける、かように考えております。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、あなたの宮内庁の運営をする上の責任という意味から、皇室典範の改正の課程において意見を述べることができませんか。
  83. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 部内において述べることは可能であろうと考えます。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 部内の御意見をここで表わすことはむずかしいということであるようでありますが、宮内庁長官として個人の見解というものを、ここで個人の見解として表明されたって私は差しつかえないと思う。  そこで今第二条のことを指摘されまして、皇族の身分にある人が多気あると仰せられましたが、どの条項で皇族の人々が多数あるということになりますか。
  85. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 三笠宮殿下のお子様方、男の方がたしかお三方おられると思います。
  86. 受田新吉

    ○受田委員 その方は今私が申し上げた数名の中に入るのです。二皇子と三笠宮の系統しかないと私は指摘したのですが、それ以外ににどなたがあるのですか。
  87. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 それだけでございます。
  88. 受田新吉

    ○受田委員 そうしましたら、私が今指摘した数名の方だけであって、二人の王子と、それから三笠宮様とそのお子様だけである。ほかには皇位継承権を有する人はないわけであります。この点について私が今お尋ねしておるのであって、法律的解釈をしても三、四名しかいらっしゃらない。もしその方方にお子さんがないという場合もあるし、また不幸で、途中でなくなられるという御心配もある場合に、後継者をただこの三、四人の方に限定するということは、非常に問題だと私は思うのですが、いかがでしょう。
  89. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 ただいま御成年の方が御結婚になりまして、だんだんお子様もおふえになるだろうと思います。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 今の陛下の御兄弟は四人おられるが、お二人しかお子様がおられないのです。三笠宮様と天皇陛下だけです。それをあなたはよく御存じであろうと思う。そういうことで、お子様方がだんだんとおっしゃっても、その調子になかなかいかない。従ってごく三、四名の方が皇位継承権を有するにすぎない現状において、皇室典範において女子の方を認めぬということは、これを憲法の精神からいっても非常に重大だと思うのです。あなた御自身としては、この女性の方が皇位継承権を持たないという点は、憲法に規定する男女の性別を問わないという原則に反するものだとはお考えでないでしようか。
  91. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 私どもは、現在の国会において定められました法律に従って措置をいたしております。それ以上の重大な問題につきまして、先ほど仰せになりましたような私個人の御意見を申し上げるのは、むしろ不適当じゃないかと考えておるわけでございます。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 それだけでその点は私おきますが、先ほどの長官の御答弁に、皇太子の御婚約の期間がある程度設けられるということでありましたが、こういうことにつきまして今非常に問題にされている点がある。それは、皇太子の御結婚が間近かにあるのだ、その間近かにあるがゆえに、公職選挙法の違反をやった諸君が判決をされても、これは控訴、上告すれば、そのうちに皇太子の御結婚があって、間もなく大赦、特赦、復権、刑の執行免除等の措置が行われるから、今の間にしっかりやっておけとか、また今違反をしても、殿下の御結婚に際して、そういう恩赦令が出るのだから大丈夫などといって、今ごろ盛んに判決の発表をされている諸君が、心の中でそうした恩赦の恩典に浴しようというさもしい心から、殿下の御結婚をひそかに考えている者があるという声を各地で私聞いておるのです。この点は、憲法第七条の天皇の国事事項直接担当される宮内庁長官として、もちろん恩赦法については法務大臣がやられると思うので、法務省の方をお招きしておりまするが、恩赦を食いものにするような公職選挙法違反が特に多いということを考えると、われわれは恩赦法、恩赦令の中に何かの心すべきことはないか。二、三日前ごろから、盛んに全国の選挙違反が新聞に発表されておるが、そういうときに、候補者そのものが違反をしたり、候補者の奥さんが違反をして判決を受けたり、あるいは選挙事務長が判決を受けたり、判決がどんどん出ている。こういうときに公職選挙法違反者を恩赦とつながりを持たせて、きもしい心を起すことがないようにわれわれはすべきだと思うのでありますが、御見解を伺いたいのであります。
  93. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 憲法七条の天皇の国事事項のうち、宮内庁の所管は最後の二号だけでございます。大公使の接受と儀式を行うことだけでございまして、その他の十号ございますうちの八号は、全部内閣の所管でございまして、私から答弁申し上げるのは僭越だと存じます。
  94. 受田新吉

    ○受田委員 それじゃ一つ法務省の方から……。
  95. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 お答え申し上げます。法務省では現在恩赦のことについて、ただいまお話の皇太子殿下の御成婚に際しての恩赦ということを作業はいたしておりません。また今までの先例を見ましても、たとえば、ごく軽微な刑を、多少減ずるというような先例はございますが、大赦等によって、すっかり公訴権を消滅するというような先例はござい出せん。恩赦は申し上げるまでもないことでございますが、行政権によって司法権の効果を左右するものでございますので、軽々にはいたすべきものじゃない、かように存じております。
  96. 受田新吉

    ○受田委員 今の局長の御所見であるならば、きわめて妥当な結論が出ると思います。われわれは、法を犯した者に対しては厳格に処断するという立場で、その社会の公序良俗を保とうとしているわけです。だから恩赦というものは、ほんとうに良心に背かない、やむを得ず犯した罪という場合に、そうした恩典に浴すべきであって、意図した罪というものは、これは断じて私は許すべきじゃないと思うのです。従って法拙劣としては、将来そういう事態が起った際には、今の御見解を十分その基盤としてお考え願いたいと思います。それであなたの方は終えます。
  97. 細田綱吉

    ○細田委員 関連して法務省の政府委員に伺いますが、行政権によって司法権を左右すべきでないから、慎重に扱うとおっしゃる。それはその通りでなくちゃならぬと思う。過去において大正天皇、ただいまの今上天皇のときに、選挙権には及んでいなかったですか。先例はどうですか。
  98. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 十分資料を持っておりませんので、正確なことはあとお答え申し上げたいと存じますが、今まで大赦で、ある罪に限りまして、この罪について起訴中の者は免訴になるし、刑務所へ入っている者はすぐ釈放され、また起訴されない者は公訴権が消滅するというふうな大赦というものは、きわめてわずかでございます。ただいまのお説の場合はおそらくそうではなくして、もっと軽い、ある程度の罪の四分の一を滅するとかいうふうなものとか、あるいは復権の期限を短縮するというような恩赦でなかったかと存じますが、正確なことは追って調査の上お答え申し上げたいと思います。
  99. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたのおっしゃることはどこまでも抽象的ですが、たとえば選挙法違反は、お互い選挙をする者がよくひっかかる問題ですが、これはいやしくも憲法付属の法令の違反で重要な問題です。こういう選挙法違反について、軽減または復権という前例は、私は過去においてあったと記憶いたしますが、あなたはごく軽微なものというようなことを言われるが、あなたの言われるごく軽微なものの中には、選挙法の違反はあったのかなかったのか。あなたは調べておらない、こう言うのですが、調べておらなくとも、その程度のことは専門家だから御承知のはずだと思うので、さらに御答弁願いたい。
  100. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 調査の上正確なことを申し上げたい、かように存じます。現在記憶いたしておりません。
  101. 受田新吉

    ○受田委員 宮内庁法の改正案がここへ出た機会に皇室に関する問題を審議願わないと、なかなか皇室に附する問題を質問応答する機会がない。そこでこの法律に関連のあるいろいろな問題に触れて皇室典範及び皇室経済法との関連を尋ねたのでありますが、戦後皇室の財産で国有財産に転換されたのが相当あるわけです。その転換されたもの処理は、今度は大蔵省の所管になるかと思うのでありますが、その国有財産にかえられた皇室財産の中で、再び皇室財産に転換したようなものはないでしょうか。
  102. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 御承知通りに、新憲法施行と同時に、すべて皇室の財産は国有とすということになりまして、現在すべて国有財産となり、原則として大蔵省が所管するわけでありますが、そのうち皇室用財産として使いますのを、宮内庁が一応管理いたしておるわけでございます。所有権が皇室にありますものは、不動産には何らございません。もちろん返ったものもございません。
  103. 受田新吉

    ○受田委員 一般の民間人が皇室に献上品というものを出します。あなたが今度陛下のお供をされて中国へ旅行された際にも、現地でいろいろな献上品をお受けになられたと思いますが、この献上品は皇室の財産としての性格のものか、あるいは単なる陛下御自身の私的な財産となるものか、及び献上品には制限があるのかないのか、あわせお答え願いたいと思います。
  104. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 憲法に、天皇が賜与される場合あるいは皇室に献上する場合、これは国会の議決に基かなければならないという条章がございます。しかし現実にいろいろなこまかいものまで一々国会の議決を経ることは実際上むずかしいので、皇室経済法におきまして一定の限度を限ってよろしいということになっております。その金額は、陛下がお出しになる方が三百七十万円、いただかれる方が百二十万円という限度でございます。従ってわれわれといたしましては、一年間にそれだけの限度を守って、お出しになる方ももらわれる方も一応評価いたして計算してやっておる次第でございます。山口県においでになりましたときに何を献上を受けたというようなことが、いろいろ新聞に出ておりますが、宮内庁といたしましては、食べものがほんのわずかばかり、一つか二つあったかと思いますが、それ以外はまだお受けいたしておりません。
  105. 片島港

    ○片島委員 関連して。その百二十万円という限度は天皇だけでございますか、皇太子も含めてでございますか。というのは、私昨年トヨダ自動車を見学いたしました際に、皇太子殿下がお見えになって、トヨペットの自動車を献上する、こういうことがあった。これは百二十万円という限度があるので、お受けしがたいという話であったけれどもあとでまたいただいた、こういうことを言っておりました。そういたしますと、やはり百万円ぐらいを自動車一台でお受けになった、こういうことになるのでございますが、その百二十万円というのは天皇も皇后も皇太子も含めての話であるか、またその私が申し上げた実例のいきさつはどうでございましたか。
  106. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 それは皇室経済法に天皇、皇后及び内廷にある皇族ということで、皇太子殿下、義宮、清宮、全部で御五方の一年間の制限額でございます。それでトヨダの問題は私伺っておりますが、これはトヨダの全職員が貯金をいたしまして献上したいという話がございました。しかしその制限がございますし、お断わりいたしました。ただ実際問題としまして、役所の用といたしましては正当の手続で買っております。買っておりますけれども、献上を受けたことはございません。
  107. 受田新吉

    ○受田委員 皇室経済法に規定されておるこの内廷費とそれから皇族費というものをちょっとお尋ねしたいのですが、皇族の身分を確保し、その品位を保つために、国が支出しておるこれらの費用というものは公正に使われなければならないのですけれども、一たび皇族の身分を離れた人、元首であった人、こういう人々が社会的に非常に悲惨な生活をして、皇族であったことの権威を失墜するような心配のある方々はないでしようか、そういう者に対して宮内庁としてその品位を保持するために、何か積雪な措置をするというようなことが考られておるのでしょうか。
  108. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 皇室典範におきまして皇族に対して品位保持に必要な経費ということで一定額がございまして、これは予算に計上いたしまして議決をいただいておるわけであります。その他の旧皇族、これは法制的に申しますと一国民ということでございまして、宮内庁が取り扱うべきことでは実際はないわけであります。しかしお尋ねの通りに、相当経済的にお困りの方もあるのじゃないかと推察をいたします。しかしこれは国費をもって、あるいは内廷費も御案内の通りの一定でありまして、実際問題として解決すべき道がないのでございます。
  109. 受田新吉

    ○受田委員 その解決の道がないことを御内帑金などによって幾分心しておられるのかどうか、事務責任者としてそういうところについて陛下の御意思を伺っておられることはないのですか。
  110. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 もし内廷費に余裕がありといたしましても、ただいま申し上げました百二十万円の制限もございますし、これは容易にできないことだと思います。
  111. 受田新吉

    ○受田委員 私は元皇族であった方々は、民間人にはなっておられるが、元皇族であったという品位を保つことがやはり現に皇族である人に準じて必要だと思うのです。それが社会的にはなはだ気の毒な立場に置かれておるのに対して――社会では生活保護費というようなものの対象になる人々もあって、非常に気の毒な人々に対してそういう道を考えておるわけですけれども、皇族であった皆さんでその生活にも困窮するというのが今少数あるように開いておるというお話でありましたが、そういう方々に対して、宮内庁として元皇族であった人々に対する道徳的な立場からの責任ある何らかの措置をされてはいないか、道徳的な意味からの宮内庁の心づかいというようなものを伺いたいのです。
  112. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 ただいまは旧皇族の皆様の法制的な立場を申し上げたわけでございます。しかし皇室と御姻戚の方もおられます。また従来のいろいろな御関係もございますし、何かいろいろお話のございますときは、できるだけのお手伝いはするつもりでおりますが、財政的にということになりますと、経費の問題は簡単でございませんということを申し上げておきます。
  113. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ。皇族、皇室においての宗教というものは、これは自由であると思いまするが、宗教的な制約を受けて婚姻などに支障が起るという心配はもちろんないことを確認されますね。
  114. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 皇室は古来いわゆる賢所というものを代々奉祀されております。従って皇室のおぼしめしはこれを永世に伝えるということに、ろうかと思います。しかし具体的な個人の宗教につきましてわれわれは特殊な考えは何も時っておりません。しかし代々お引き継ぎのことはなされるであろうと確信をいたしております。
  115. 受田新吉

    ○受田委員 東久邇宮であった東久邇氏が東久邇教という宗教を始められ、また最近は皇室におかれても、高松宮様が奈良の天理教本部にしばしばおいでになる。こういうことで、皇室におかれても皇族におかれても宗教的にはきわめて自由にたられたと私は観察するのであります。そうした意味において、皇室、つまり天皇の御一家というものは、今までの特別の神道であろうがほかのものであろうが全部自由で、皇太子の妃殿下におかれても、またそのほかの皇室と御婚姻なさる方々も、宗教はこれを問わないという原則は確立しておりますね。
  116. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 ごく私的な個人のお考え、これはいろいろ御好悪がおありと思いますけれども、公けの立場においてありようがないと考えております。
  117. 山本粂吉

    山本委員長 西村君。
  118. 西村力弥

    ○西村(力)委員 宮内庁長官にお尋ねいたします。今地方から勤労奉仕ですか宮城清掃、こういう形の人がたくさん来るわけですが、あれは今仰せられた百二十万円のワク内には勘定されないかどうか。上京費用や労力などは同じように考えなければならないものではないだろうか、こういう工合にも思うのですが、あれは全然別個に考えておられるのですか。
  119. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 労働奉仕は御希望の申し出によって受け付けております。おそらく労力を奉仕するので、労力を換算してというようなお気持ちかと存じますけれども、仕事は要するに国有財産の清掃、整備というようなことでございまして、われわれといたしましては、いわゆる献上の金額の制限というものとは関連して考えておりません。
  120. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それから、私地方の人と一緒に宮城内を見せていただいた場合の感じでありますが、職員の教育に対して少し考えてもらわなければならぬではないかと思ったのです。それは、よく全国の仏閣あるいは神社、そういうところに行きますと、そこの案内人が玄ことにありがたく御利益を説き、言辞たくみに説明するのでございますが、職員の純朴な国民の扱い方及びそれに対する説明の態度が、職業人である神社、仏閣の案内人と同じような態度に印象づけられたのです。国民はすなおに皇室に対してある愛敬の念を持ち、あの中でつつましやかに拝観させてもらうという気持ちでおるのですけれども、職員の扱う態度は、昔のような工合に、皇室のありがたさをことさらに背中に背負っておれは勤務しているのだというように見えるので、もっとすなおな立場で接触ができるようにしていただきたい。それが天皇のほんとうの心ではないかと思うのです。中に入っている職員に、御幣のようにだんだんかつぎ上げていくような気持があるような印象を受けたのですが、こういう点に対して宮内庁長官として今まで何らかお考えになられたかどうか、職員の指導に対して考慮せらせれたことがあるかどうかお聞かせ願いたいと思うのです。
  121. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 ただいま皇居の参観に見える方は一日午前、午後にわたって約二千人でございます。この案内をいたします者はその方の専門家でございませんで、ほかの仕事を持っております者が時間をさいていたしているわけでございます。しかし、毎日々々いたしておりますとだんだん上手になりまして、必要以上のことを説明するという場合なきにしもあらず、ためにその点は、ただいま仰せのようなすなおな説明をするということでいろいろ工夫をして指導いたしておるわけでございます。毎日々々のことでございまして、あるいはそのときに何かあったのかも存じませんが、全く御同感でございまして、われわれもなお注意をいたして参りたいと存じます。
  122. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そのようにお願いしたいと思うのです。  次に皇宮警察の問題であります。警察法で皇宮警察は警視庁の所管ではなく国家公安委員会の所轄になっているようですが、私はこの点に対して反対の考えを持っているのです。宮内庁長官としては所轄の仕方に不便や何かを感ぜられた事実がないかどうか。私の考え方としますと、やはり一国民という立場でおられ、しかも東京都内におられる天皇御一家でございますので、警視庁がその警護に当るのが当然の筋であると思う。わざわざ国家全体の警察がこれを掌推しなければならないということはない。東京都民として、東京を首都としての誉れにかけて天皇御一家をお守りする、これが都民、都知事あるいは警視庁の誇りという工合になってくる。これがほんとうのあり方であると私は思うのです。わざわざ国家警察と言いませんけれども、そういうものに所轄させるということは、せっかく天皇が今のような国民立場になられた、そういうことからいっても不合理ではないか、こう思うのです。その意見に対してあなたの意見を求めるわけではないのですが、宮内庁としてそのために連絡上さまざま不便を感ずるというふうなことがないかどうかということをお聞きしたいわけなんです。何年前ですか二重橋事件が発生した場合に、私たちは警視庁との連携が、皇宮警察が国家警察に直結しておるからこういう事故の発生の原因の一つにもなったのではないか、こういう考え方を持っておる、そういう点から言いまして、皇宮警察が国家警察に直結していることによって非常な不便やなんかを感ずる、こういう実情についてお話し願いたい。
  123. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 皇宮警察のことにつきまして宮内庁の立場からということでございますが、現在は警視庁も国家警察の一指揮下に入っております。皇宮警察も入っておるのでございます。宮内庁の立場から申しまして、それがいずれでなければならぬ、非常に困るというようなことは何もございません。
  124. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それはもちろん警察法が一本になったけれども、東京とか大阪とか、そういうところはまだ形がちょっと違っているはずなんですが、あなたは一本だからかまわぬというようなことを仰せられるけれども、やはり国家公務員委員会の所掌事務の中には皇宮警察に関すること、こういうことがあるはずです。いろいろ警備の場合なんかについては国家公務委員会を通して警視庁にいろいろお願いするという迂回路を通るのではないか、その点は現在はどういうことになっておるか。今度また四月二十九日天皇誕生日が来るわけですが、そういう場合にはやはり神経を使われて警備態勢をしかなければならない、そういうときにはどういうふうにするか、全然そこに不便というものを感じないかどうかお尋ねしたい。
  125. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 皇宮警備は宮城、皇居の中の警備その外は警視庁がいたしておるわけでございます。宮内庁といたしましては、常にその両警察が連絡をとっておりまして、今のところ何も不便を感じないという息吹でございます。何か大きな行事になります際は、両警察ばかりでなく、宮内庁自身も参加いたしまして、慎重に連絡会議をいたして、連絡をいたしておるわけでございます。私ども立場から現在こうでなければ困るというようなことは起っておらないと考えております。
  126. 山本粂吉

    山本委員長 受田君。
  127. 受田新吉

    ○受田委員 この宮内庁法に規定されております時従職、東宮職、式部職、この三つの職について関連的に一貫してお尋ねしたいと思うのです。この三つの職はそれぞれ責任者が従事長であるか、東宮大夫か式部官長かでありますけれども、この三つは職務遂行の上において関連した取り扱いがされている部面がありますか。つながりを持って、相互の連絡はなしにやっておるのか、あるいは連絡して取り扱っている部面があるか、つまり事務的に横の連絡、たとえば東宮職と時従職との間に相互に連絡をとっている事項はないかということです。
  128. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 東宮職と時従職これはいろいろな儀式あるいは皇室で御会合算のございますときに、どうしても打ち合せ連絡をしていかなければならないことがしょっちゅうこまかい点でたくさんございます。時従戦の方は主として外国人の扱いあるいは儀式を扱う、従ってそういう場合に時従職、東宮職それぞれみんな関係を持って仕事をいたしておるわけでございます。
  129. 受田新吉

    ○受田委員 陛下の教育というか、陛下に進講、つまり講義を進められる場合とか、あるいは皇太子にいろいろと補導をされるという職務はどういうことになるのでありますか。
  130. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 両陛下がお聞きになりますことにつきまして、実際問題は主として時従職がいろいろおぼしめしを伺い、自分でも考え、あるいはわれわれも参加することもございます。皇太子殿下の方の御教育は、東宮職におります者が中心でこれをととのえて、連絡をしつつ進めるわけでございます。
  131. 受田新吉

    ○受田委員 東宮職で、その東宮の御教育をしている人々は、東宮職のどういう名前を用いているのか、何名ぐらいあるのか、これはただ単に東宮職とだけ書いてあるので、こまかい職名を発見できませんが。
  132. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 皇太子殿下が未成年でおられますときは、いわゆる東宮傅教官という形でございます。御成年になられましてから傅教官という制度を廃止いたしまして、時従がおるわけであります。しかし時従というのは何も殿下の教育官ではございません。しかし日常いろいろなことについて一番接触が多いわけでございますが、いろいろ御進講とか、講義をお聞きになるということにつきましては、それぞれの学者、専門家に来てもらいましてお聞きになっておるわけでございます。東宮職にそういった学者、専門家が特別におるわけでございません。
  133. 受田新吉

    ○受田委員 東宮並びに皇子たちのお仕事、皇太子はもちろん陛下の跡を継ぐでしょうけれども、ほかの皇子様たちのお仕事という問題は自由である。たとえばいずれの方面に進んでもいいということになっておると思うのですが、昔であれば皇族は武官にしか進められなかった。文官に進もうとしても絶対に門を閉ざされてだめだったわけですが、こういう点、皇子の職業という点についての宮内庁のお考えはどういうふうになっておりましょうか。
  134. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 これも法制的にはどの職業におつきになってもいいことになると思いますけれども、しかし皇族様のお立場は、全国民のために、一つのグループあるいは一つの団体のために、職業とされるということはわれわれといたしましてどうかと考えております。ただいろいろな団体の名誉総裁といりような職業にあらざることで、それを奨励される、力を尽されるということはけっこうだと思いますが、これによって職を得るという意味におきましては、なるべくそれはなさらないのが適当ではないか、ただ三笠宮殿下が大学の講師という肩書きを持っておられます。これは教授というようなふうに、学校のいろいろな運営に責任を持たないで、講師としてただ自分の勉学されたところを役立たされておるというふうに考えて、今まで講師となられることも非常に例外的なことでございましたが、殿下がお引き受けになっておられるわけであります。今申し上げました通りに、特別な職業につかれるということは、むしろない方がいいのではないかという考えでおります。
  135. 受田新吉

    ○受田委員 昔といっても、旧憲法時代には貴族院議員の身分たる皇族がおられたわけです。この皇族は成年に達せられたならば終身貴族院議員たる身分を持続されたわけですが、この皇族が国会議員に立候補する、あるいは政治に関与するというようなことは妥当でないとお考えでしょうか、自由であるとお考えでしょうか。
  136. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 妥当でないというふうに私ども考えております。
  137. 受田新吉

    ○受田委員 三笠宮は非常に自由を尊重せられる方で、近く出版も志しておられるようでありますが、その出版内容ども、皇族の特権というものを抜きにした、きわめて自由な気持で自分の意思を表明したいというようなお気持があるようです。その三笠宮御自身も、皇族の身分を離れて民間人としてやりたいという気持の時代もあったというような意味のことも、新聞に伝えられているようでありますが、皇族の身分にある人が政治に関与することが適当でないということになりますと、これは皇族そのものは、憲法に保障されたいろいろな国民的な自由権というものが制約を受ける要請をされる方々とお考えでしょうか。
  138. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 皇族たる御身分というのは、皇位継承権をお持ちになるという意味でございます。先ほどお尋ねのあった通りでございます。そういう方はやはりこれは国民全体に対するいつも責任をお待ちになるということであって、特定の政党あるいは特定の主義、主張というもので政治的な運動、活動をされるということは、私どもはお避けになるべきじゃないかと思うのであります。法律的にはただいま選挙法の規定で被選挙権をお待ちになれないようなふうになっていると私記憶いたしております。でございますから、今すぐ問題になろうとは考えておりませんが、やはりそういった基本的な憲法上の権利はお持ちでありましても、実際のそのお立場から制限というものが自然に起る。そこがやはり皇族としてのお身分からやむを得ない点であろうと私ども考えておるわけであります。
  139. 受田新吉

    ○受田委員 旧憲法時代の貴族院議員たる皇族のお立場は――これは過去のことでありますが、一つの先例としてどう解釈するか問題になるのですが、長官はいかなる解釈をされましょうか。その皇族たる身分の人の貴族院議員であったことですね。
  140. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 不勉強でございまして、当時の立法趣旨をただいま明らかに存じませんですけれども、実際の問題としてはおそらく議場にお出になったことはなかったのじゃないかと私ども考えております。結局やはりそういうようなお立場から実際には行使されないということではなかったのじゃないかと思います。
  141. 受田新吉

    ○受田委員 では委員長からの御要請もありますし、質問を早く打ち切って参ります。今度京都の事務所を付属機関として置かれるわけでありますが、この京都また正倉院、こういう歴史的に皇室の伝統を誇るものに対しては、これは一方において皇室の機関であるとともに、国民的に考えても特殊の文化を後世へ継承する大事な資料でもあると思うのです。従って文化財保護委員会、という文部省内における重要文化財を保護する立場の取扱いと関連をして、この宮内庁法の改正案には心された点がありましょうか、いかがでしょうか。
  142. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 今回の法律案の中にはそういう問題は何ら考えてございません。
  143. 受田新吉

    ○受田委員 そういう宮内庁が考えておられるような皇室の伝統ある建物あるいは重要美術品というものが、即日本の文化の伝統を飾るものであるということに事実上なっておるのです。従ってこれが宮内庁付属機関で、ただその建物の管理をするとかいうような、ここに書いてある事務分掌的に取扱いをされることは、一方においてはなはだ簡単に仕事を片づけるのには都合がいいでしょうが、そうした重要文化財の保存維持という立場から考えたならば、これははなはだ粗雑な扱い方だと思うのですが、この七条、八条に、そうした重要文化財保護の立場からの機関を、どこかにつながりを打たせるように置いておく必要はないか。たとえば文部省内にある今申し上げた委員会の事務の一部を、この内部において分掌するとか、あるいは文部省の重要文化財の対象となるものについては、宮内庁の事務の中においてこれに協力するというような意味の取扱いをする必要はないかと思うのです。単に事務的処理をする機関だけで、そうした他の方面に全然つながりを打たないということになりますと、たとえばこれはいろいろ文化財取扱いの法律には規定がありますけれども、京都あるいは奈良のこの重要美術品の中にそそうが起って、どろぼうその他が持ち出すとかいう場合に、あるいは皇室の昔の珍しい、非常に貴重な物品が、外国人の方にやみに売りさばかれるというようなおそれもあると思うのです。これに日本の重要な文化財を徹底的に保存維持するという立場からの取締りの対象にもなるものだと思うのですけれど、そういうところをあわせて御研究いただかなかったかどうかお尋ねしたいのです。
  144. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 法文の書き方はさようでございますが、京都御所あるいは正倉院、特に正倉院のごときはかけがえのない国家の財宝であると思います。これは日夜事故があっては相ならぬと実に心配をいたしておるわけであります。正倉院の事務所、あるいは京都御所の京都事務所というものが置かれておりますのも、その目的の以外に何も仕事はほとんどないわけです。京都御所あるいは桂離宮その他の貴重なものを管理するのは京都事務所の中心でございまして、これの起りはむしろそういったこと以外に他の仕事というのはほとんどない。正倉院事務所も、あれを安全に守るというのが第一でございます。それに付随いたしまして、まだ未研究の調査をいたしますとか、あるいは特別な場合に一般に鑑賞させ、学術文化の進歩のために寄与する、あるいはスライドを作るというような仕事事態が正倉院事務所でありまして、それ以外に仕事はないわけでございます。従来はこれは宮内庁の内部だけで置いた事務所でございましたのを、今川この法律ではっきりと根拠を与え、責任もはっきりとし、事務を整備するという趣旨でございます。正倉院につきましては特に宮内庁に正倉院協議会という専門家を委嘱いたし、また文化財保護委員会とは常に連絡をとって、ことに奈良博物館、文化財研究所というものと常に連絡をとって、意見も聞いて仕事を進めておるわけでありまして、かけがえのない世界的な財宝として、われわれとしてはできるだけのことをいたすつもりであります。そういう意味で今回法律的にはっきりしていきたい、かような意味で置いたのでございます。
  145. 受田新吉

    ○受田委員 第二条にちょっと戻るのですけれども、もう一つ皇宮警察の関係をお評ねして質問を終りたいと思うのですが、たとえば外国の元首の他の礼をもって遇しなければたらない、憲法第七条の規定にも関係してくると思うのですけれど、そうした儀式的な用にするための儀仗の隊というものが、これは各国とも何かの形で形式的な部隊というものが存在すると思っておりますが、日本の場合はそれが警察隊によって臨時にやられておると解釈しますが、さようですか。
  146. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 皇宮警察の内部規定におきまして儀仗もなし得るというふうにたしか規定がしてある。外国の大、公使が初めて信任いたしますときに、馬車を出します場合には、やはりその警備と儀仗という意味を含めておるわけでございます。それは警察庁の内部規定でやり得るようになっていると考えております。それから特殊な国賓が参りましたときにも、過去においてこちらと協議してそれをしてもらったこともございます。将来におきまして、皇宮警察というものが皇宮の中の人及び設備の保護以外に、やはりそういった面の仕事があるのではないかというふうに私ども考えておるわけで、従ってあそこに参観に見える人のいろんな空気からいっても、あそこの皇宮警察官の服装、装備というようなものがもっと研究されていいんじゃないかというふうに考えております。
  147. 受田新吉

    ○受田委員 近衛儀仗隊というようなものが、これは軍国主義の再現という心配も一部あるわけですけれども、近衛儀仗、つまり陛下の身辺を保護するという意味でなくして、単なる今のような儀式の部隊としての儀仗兵というものを、自衛隊からとるということが考えられるのではないですか。
  148. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 私としては何ら考えておりません。
  149. 受田新吉

    ○受田委員 考えておらないということで私も宏心したわけです。警察力が皇居内に及ぶことについては何ら異存はないわけですが、第二条のこの規定が連絡を密にするために設けられた規定であり、所要の措置を警察庁長官に求めるということをしないでも、その程度なら今まで何かできていたということであるならば、わざわざこの規定を設けなくても用が足りるじゃないか。非常に不便を感じた過去の実際上事務上の不都合な点があったんでございましょうか。
  150. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 非常に大きな問題は過去においてございませんでした。しかし実際の儀式を行いますときに宮内庁の式部の儀式の面から見た場合、それに対して警備の人が入ってきますときの調整とか、現実の場合にいろいろ相談すべきことがこまかい点でたくさんございます。こういうような問題につきましで、従来とても協力をいたしておったわけでございますが、しかし法律の面におきましてはっきりといたしまして、より緊密ならしめたいというわけでございます。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、法律に別に規定しないでも、単なる行政措置でもできないことはない問題なんですね。
  152. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 特にこれをしょっちゅう援用いたしまして、措置を求めるという形においてやろうということは今では考えておりません。しかし何かのそういった協力体制にあるということは――やはり同一の区域で仕事をいたしていることでございますから、そういう場合のことを考えてこういうようなものを法制的にもはっきり設けておくことは、お互いの気持の上からいいましても必要ではないかということで、警察当局ともよく話し合ってわれわれはこの提案をいたしたわけでございます。
  153. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、この規定は内輪に法律の条文に準じた規則か何かを作られますか。
  154. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 今のところは例に考えておりません。
  155. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、単なる連絡的な措置をとるための大まかな規定にすぎないわけですね。
  156. 宇佐美毅

    ○宇佐美説明員 そうです。
  157. 山本粂吉

    山本委員長 これにて質疑は終了いたしました。  ただいま宮澤君より本案に対し修正案が提出せられております。この際提出者よりその趣旨の説明を求めます。宮澤君。     ―――――――――――――
  158. 宮澤胤勇

    ○宮澤委員 宮内庁法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正いたしたいと思います。この修正案は、自由民主党、社会党一致の案として修正の動議を提出いたします。  修正の要点は、   第七条の改正規定を削り、第八条及び第九条の改正規定をそれぞれ第七条及び第八条とし、第九条として次の一条を加える。  第九条 宮内庁に、地方支分部局として、京都事務所を置く。  2 京都事務所は、長官の定めるところにより、営内庁の所掌事務の一部を分掌する。  3 京都事務所は、京都市に置く。第十条の改正規定中「京都事務所、正倉院事務所及び下総御料牧場」を「正倉院事務所、下総御料牧場及び京都事務所」に改める。  理由は、京都事務所は宮内庁の所掌事務の一部を分掌することにかんがみ、地方支分部局とすることが適当であるというのであります。名称だけの問題であります。
  159. 山本粂吉

    山本委員長 これより本案並びに修正案を一括して討論に入ります。別に通告もありませんで、これを省略するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 山本粂吉

    山本委員長 御異議なければさよう決します。  これより採決いたします。まず宮澤君提出の修正案について採決いたします、本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  161. 山本粂吉

    山本委員長 起立総員。よって修正案は可決いたしました。  次にただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  162. 山本粂吉

    山本委員長 起立総員。よって修正部分を除く原案は可決いたしました。よって本案は修正議決いたしました。  なお本案に関する委員会報告書の作成については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 山本粂吉

    山本委員長 御異議がなければさよう決します。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十一分散会