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1956-04-06 第24回国会 衆議院 内閣委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月六日(金曜日)     午前十時四十六分開議   出席委員    委員長 山本 粂吉君    理事 大平 正芳君 理事 高橋  等君    理事 保科善四郎君 理事 宮澤 胤勇君    理事 石橋 政嗣君 理事 受田 新吉君       石坂  繁君    大坪 保雄君       薄田 美朝君    田村  元君       高瀬  傳君    辻  政信君       床次 徳二君    福井 順一君       眞崎 勝次君    松浦周太郎君       粟山  博君    山本 正一君       横井 太郎君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    井手 以誠君       稻村 隆一君    西村 力弥君       古屋 貞雄君    細田 綱吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         内閣官房長官 田中 榮一君         法制局長官   林  修三君         宮内庁次長   瓜生 順良君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 四月六日  委員矢尾喜三郎辞任につき、その補欠として  下川儀太郎君が議長の指名で委員に選任された。 同日  理事松浦周太郎君同日理事辞任につき、その補  欠として江崎真澄君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  国防会議構成等に関する法律案内閣提出第  八七号)  官内庁法の一部を改正する法律案内閣提出第  一〇七号)  国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当の  支給に関する法律の一部を改正する法律案(黒  金泰美君外一名提出衆法第一九号)  国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当  の支給に関する法律の一部を改正する法律案(  受田新吉君外五名提出衆法第二三号)     —————————————
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。松浦周太郎君より理事辞任の申し出がありますので、これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山本粂吉

    山本委員長 御異議なければさよう決します。  引き続き理事補欠選任を行いたいと存じますが、委員長より指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山本粂吉

    山本委員長 御異議なければ江崎眞澄君を理事に指名いたします。     —————————————
  5. 山本粂吉

    山本委員長 次に、国防会議構成等に関する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。通告がありますので、順次これを許します。保科君。
  6. 保科善四郎

    保科委員 私はまず国防会議の性格、目的といったようなものにつきまして、一応政府の見解をお尋ねいたしたいと思います。  最近におきまする科学技術躍進的発達や、国際情勢の進展の状況などをまじめに研究いたしておるものにとりましては、今日における国防、つまり憲法前文にありますところのわれわれの安全と生存の保持ということは、自衛隊とかあるいはそれを運営する防衛庁だけではとうてい達成し得ないものであることは、直ちに理解ができると思うのであります。ところが世の中には、昔の惰性によって物事を考えようとするものが少くないのでありまして、こういう人たちは、国防で言えばすぐに昔流の軍隊だけを思い起して、今日の国防重大要素であるところの国際協力外交、あるいは国内治安の対策とか、心理戦とか、思想戦とか、防御産業と上一産業との調整というようなことについては、どうもぴんとこないのではないかというように考えるのであります。ことに本年度の英国国防白書などにも強調されておりますように、水素爆弾とかウラン爆弾、それにまたこれを弾頭につけた長距離誘導弾などか発達して参りますと、大規模戦争は事実上不可能になってくるのであります。ところが今のところは、全面的に戦争の防止ができるような国際情勢にはなっていない。そこで戦争そのものは、局部戦争かあるいは冷たい戦争の緊迫というような格好になってくるというのが、最近の見方のように考えるのであります。従ってこうした状況においては、武力戦ばかりでなく、政治外交治安経済等要素が、武力戦に劣らぬ大きな役割を演じてくるようになりました。これらの総合国際関係を決定的なものにすると考えられるのであります。もちろんこれは万一戦争に突入してしまった場合のことでありますが、これを別個の角度から申しますと、こうした局部戦争や冷たい戦争に巻き込まれたり、または引き起したりしないようにするためにも、政治外交治安経済等について、絶えず国防的観点からの総合調整を行なっていくことが必要となると考えるのであります。総理大臣は、国防会議発足の暁には、こうした観点を重視して国防会議を運用されるおつもりでおられるかどうか、それをまずお伺いいたしたいと思います。
  7. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま保科君の言われたことは、全くその通りと私は思っております。現在経済外交あるいは政治等、すべてのものを総合的に慎重に審議する必要があると思えばこそ、国防会議というものを起しまして閣僚をもってそれに当てまして、そうして研究をして参りたい、総合的の慎重な審議をしたいために国防会議を起すわけであります。あなたの考え方は……(「全く」と呼ぶ者あり)全く私も同感であります。(笑声)これはじょうだんではないです。ほんとうにそう思っているのであります。(「書いてある」と呼ぶ者あり)いや、書いてないです。証拠を見せますから見て下さい。書いてございません。(笑声
  8. 保科善四郎

    保科委員 第二の点は今申し上げましたことと密接な関係を持っておる問題でありますが、いわゆる軍事に対するシヴィル・コントロールということについてであります。昔流に言えますと、国防の主体は軍事にありましたが、今日はそんな考えはきわめて危険であると考えるのであります。武力というものは、これ野町放しにいたしますと、際限なくその力を発揮することを主張するものであります。その結果勝利のためには手段を選ばないというようなことになりまして、戦争を大規模に持っていくようなことになりやすいのであります。ところが原水爆の出現に伴いまして、戦争手段の無限界の行使ということは、これは人類文明の破滅をもたらすように相なるものでありまして、軍事シヴィル・コントロールということは、従来にも増して飛躍的な重要性を加えて参っておると信ずるものであります。しかるに政府は従来国防会議担当官庁をややもすれば防衛庁だけに指定するかのような傾向があったように思いますが、軍事シヴィル・コントロールは単に防衛庁長官文官にしたり、あるいは防衛庁の内局を文官中心組織運営するというような程度ではとうてい達成できるものではないと信じます。たとえば英国などでは国防会議は五十年以上も前からあったために、ややもすれば国防省が中心になって運営されておるような間もないではございませんか、それにいたしましても歴代の総理大臣国防担当者総理みずからだということをはっきり申しております。一九〇四年に英国国防会議が発足いたしましたときは、正規の構成員総理大臣一人でありました。昨年の十月二十五日の上院においてはイーデン主相は、国防主務大臣総理大臣みずからであることは、幾ら強調しても強調し切れぬほど明らかなことだという意味のことを言っておるのであります。鳩山総理大臣のこの点に関する所信をお伺いいたしたいと思います。
  9. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政治軍事に対する優先は民主政治の原則です。あくまでこれを堅持しなくてはならないと思っております。その意味国防会議もやっていきたいと思います。
  10. 保科善四郎

    保科委員 世間では国防会議アメリカ要請によって発足させるのではないかというようなことを申す者がございます。私は日本独立して自主的に国防問題を考えねばならなくなったからこそ、国防会議が必要であると思うのでありまして、アメリカ要請とかいうこととは関係なしに国防会議が必要であると考えるのであります。つまり今日のように国防問題が複雑となり、平素から連綿不断研究をしておらないと国防体制真空を生ずるのであります。そうするとここに野心国家からそこをつかれてきたりあるいは友邦からも干渉されるというような結果がそこに生まれて参ります。かるがゆえに国防会議を常設して不断に組織的に国防体制真空の個所を生じさせたいようにすることが大切であると信ずるのであります。また世間では国防会議違憲性を説く者があります。それは国防会議自衛隊育成運営のためにあると解釈をし、また自衛隊違憲なりと主張する立場からなされるものでありまして、私はあまり価値のない議論のように思うのでありますが、むしろ政府国防会議憲法の義務を遂行するためにも積極的に必要であるというふうに、進んで申すべきであると私は考えております。憲法前文には、政府の行為によって再び戦争惨禍を招いてはならないというような言葉がございます。また現代の国際情勢においては力による平和という言葉もあるくらいでありまして、野放しの楽天主義では現実に平和はとうてい保たれるとは考えません。いかなる手段方法を用いるにせよ、何かしら国防上にすきを作らないような考慮、用心が必要であると考えるのであります。これをやりませんと、すきをつかれ、それが発火点となって戦争の危険を招くことになると考えるのであります。こうしたすきを作らないようにするために、つまり戦争惨禍を誘起しないようにするためには、国防会議のごときものをぜひ作らねばならないと考えるのであります。また憲法前文には「われらの安全と生存を保持しようと決意」しておるという文句があります。ところがこれをどんな方法手段、またいかように運営いたしまして、この安全と生存とを維持するかということを研究審議することは、きわめて必要ということに考えておるのであります。そこで特殊の限定された閣僚の間でこういうものを審議するということが、これは世界の常識であります。昨日英国から日本に参りましたハーバードモリソン氏が、労働党内閣において枢要な位置を占めておりました当時の経験から、一昨年パーラメント・アント・ガヴァメントという本を書いておりますが、非常に名著だと言われております。この本の中にもこのことがはっきり書いてあるのであります。しかるに政府風防会議発足に対する熱意は、ただいま総理大臣から承わりますと、非常に御熱意があるようでありますが、どうも消極的になったように思われるのでありますが、その考え方はどうでありますか。国防会議をすみやかに発足させて活発に運営するということに対する総理の御熱意を、もう一度伺いたいのでございます。
  11. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は世界平和外交からいえば——平和外交政策といいますけれども、すべての点から戦争のないようにいたしたいということについては、非常な熱意を持っておるつもりであります。冒頭にあなたがおっしゃいましたように、戦争のないことが日本国防なのですから、戦争のないように政府努力をするということは、国防の第一であります。それですから、そういう意味におきまして国防会議が完全なる組織をこしらえ、完全なる発達をするように切に願っておるのであります。アメリカからの注文があったとか話があったとかいうことは全くありません。
  12. 田村元

    田村委員 私はこの際保科委員が今おっしゃいましたことに関連して、ちょっと御質問を申し上げてみたいのであります。国防会議というきわめて重要な問題を審議するに当りまして、私どもは今飜って日本の国の置かれておる立場に目をやらなければならないと考えるものでございます。そういう意味におきましても、今日私ども総理からきわめてはっきりした御答弁をいただきたい。これは国民大衆の声であると思うのであります。それはすなわち国防というものはとりもなおさず祖国の防衛でございます。しかるに最近の国会審議を私どもじっとながめておりますのに、いかに国際主義理論がはなやかな今日と申しましても、なお外交問題等討論のごときは、どうも米国大使ソビエト大使との討論、すなわち祖国立場をあまりにも卑下して、米国的立場ソ同盟的立場から論戦されておるやに国民から批判されるのではなかろうかということを、非常に憂うるものでございます。もちろん集団安全保障理論を無視するわけでもありませんが、どうも民族主体性を失っているかのごとくに思われるのははなはだ遺憾でございます。  たとえば対米関係におきましても、私どもは終戦時からの行きがかりというものと、それからまた対共産主義という利害関係から、同じ自由主義陣営に属していると考えておるのでございますが、そういうふうに考えるならばなおさらのこと、アメリカに対しても、民族主体性を脅かすおそれある場合には、強く主張すべきことは主張すべきだろうと考えるのでございます。政府はどうもアメリカに対して軟弱であるとの印象を全国民が有していることに留意すべきでございます。駐留軍の諸施設を整理するとか、あるいは基地拡張自衛隊必要性に応じて行うべきであって、アメリカのために行うべきではない、あるいは日米安全保障条約を全面的に改訂する、あるいはまた国民大衆不平不満を有しておる、この今まで申し上げたような実態に対して、総理は目をおおってはならないのであります。対米態度をきぜんとなすことによって、われわれはソビエトに対しても堂々と主張ができるものと信ずるものでござい、なす。たとえば領土問題におきましても、われわれは、国後、択捉その他の品々に対してきぜんとした要求はなすべきでございましょうが、しかしながら南千島の返還要求をするときには、同時にアメリカに対しても小笠原や沖縄の返還要求すべきだろうと思うのでございます。何でもかんでもアメリカさんのおっしゃる通りという考え方政府は持ってはなりません。同時にまた国民にも持たしめてはならないのであります。私どもアメリカ日本州では絶対にございません。りっぱな独立国家としての日本国という誇りを持っておるのでございます。戦い済んで十一年、祖国はりっぱに独立いたしたのでありますから、今やだれから見ても堂々たる独立国家として祖国の再建にいそしむべきであろうと考えるのであります。祖国独立の強い意識に立脚した政治が行われるならば、国民憲法改正その他の諸問題を一気呵成に解決してくれるものと信ずるものでございます。ソビエトわが国に対する非道な態度も、わが国の対米政策の転換によって幾らか好転するのではなかろうかということも、私どもは考えておるのでございます。  私は、社会党や共産党の諸君のように、国防そのものを否定するのではございません。もちろん、むしろ大いにその必要性を痛感いたしておるものではございますが、先ほど来申しあげたことに深い憂いを有するものでございます。国防会議というきわめて重大な機構構成する法案審議するに先だちまして、私は総理のはっきりした御所見伺いたいのであります。願わくは、総理御自身昨日りっぱに独立あそばしたのでございますから、どうぞこの席において内外に、総裁総理立場からはっきり宣明されるおつもりで、明快な御答弁をお順い申し上げたいのでございます。
  13. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政府アメリカ注文によって何かしているというような感じを持っておる方がおありのようでありますが、そういうことは絶対にございません。  それから、昨日も申したのでありますけれども日本独立完成のためにだんだんとしなくてはならないことがたくさんあると思います。独立を完成してこそ初めて洋々たる日本の将来が展開してくるということはわかり切っておりますから、その独立完成のために、総理とし総裁として努力をいたしたいと決意をしておる次第であります。
  14. 保科善四郎

    保科委員 次は国防会議具体的構成運営についてお伺いをいたします。この国防会議は、総理議長として運営される重要なる会議でありますので、やや具体的にお伺いをいたしたいと存ずるのであります。  従来、国防会議民間人を入れる、あるいは入れないということで、非常に熱心に論議せられました。民間人を入れるという議論は、端的にこれを申し上げれば、私は総理やあるいは内閣に対する信頼感が少いという点にあることを見のがすわけには参らないと考えるのであります。つまり総理大臣の権限が強過ぎるとか、また逆に総理大臣閣僚国防に関する知識が不足であって、国家の安全を託するに足らないというようなことにあるのであります。また内閣が更迭したならば、国防政策ががらりと変りはしないかというようなことを心配する点にあるのであります。私は鳩山総理大臣が、内閣責任制の確立を重視されまして、民間人を入れないことに決裁されたのであると考えるのでありますが、しかし民間人構成員に加うべしと主張せられる方々の理由は、依然として存在しておると思うのであります。従って今後の運営においてこのような一部の不信感を払拭し、かつまた民間人を入れろと主張せられる方々の心配を解消するためにどういう手段方法をとり、どういう方針で国防会議運営していかれるか、総理の御意向をお伺いしたいのであります。もっと端的に申し上げれば、たとえば民間人成規構成員に加えないかわりに、第六条を活用して、民間有識経験者意見を徴する機会をつとめて作るように運営をする御意向があるのかどうか、また進んでは反対党首悩者とも十分相談するような機会を作る幅の広いお気持があるのかどうかといったような点について、総理所信をお伺いしたいのであります。
  15. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 民間人を除きました案が昨年議会を通過いたしましたものですから、民間人を入れないのが衆議院の意見だと思いまして、このたびそれを尊重して入れませんでした。けれどもただいま保科さんの言われました通り民間人意見を聞くことが必要であるということは当然なことでございます。でありますから、民間人意見を聞くことについてはできるだけの方法を講じたいと思います。
  16. 保科善四郎

    保科委員 次に運営構成重大関係を持つものでありますから、事務局機構につきまして若干お伺いをいたします。事務局機構に関しましては、最近イギリスとかアメリカの実情もかなり詳しくわかってきております。大体私はこういうような先進国にならった方がいいと思うておるのでありますが、世間にはこれについて不安疑惑があるように考えるのであります。第一の疑問、不安は、事務局は何か昔の参謀本部のような地位を獲得することになるのではないかということにあると考えます。この点につきましては、私は組織、編成、人選、運営等について世間不安疑惑を解くように、政府側から適切なる御説明をされることが必要であると考えるのであります。  今ここに各国の実例を簡単に申し上げるのでありますが、アメリカ安全保障会議につきましては、最近アトランティック・マンスリーに、アイゼンハワー大統領国家安全保障会議特別補佐官をしておるディロン・アンダーソン氏の論文が載っておりますが、これには米国の事務所の様子が非常によく出ております。また先ほど申し上げましたイギリス労働党ハーバードモリソン氏のパーラメント・アンド・ガヴァメントにも、英国国防会議運営の要旨を非常によく述べておるのであります。こういうよう大先例がございますので、わが国防会議事務局も、こうした各国先例を十分に研究して、その経験を活用すべきだと考えるのであります。もちろん事務局が単なる寄り合い世帯であっては困りますから、事務局そのものも相当に強化して、特に視野の広い有用の人士を擢用、選任いたしまして、各省各庁の意見を能率的に総合し得るように配慮することが必要であると思うのでありますが、こういうようにして事務局としては国防会議に諮問すべき一案を起草することは当然と私は考えておるのであります。この点に関する総理の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  17. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国防会議事務局は、既存の機関との重複を避けまして、もちろん関係行政機関の機能を十分に活用する建前をとりたいと思っております。その人員は専任者を十五名といたしまして、その他の関係行政機関権威者をもって充当することにいたしたいと思っております。
  18. 保科善四郎

    保科委員 次に、国防会議審議の際に参考とすべき国際情勢資料でありますが、これは非常に重要な資料と私は考えておるのであります。政府はこの国際情勢資料を、いかなる機関によって集収し、分析し、評価するつもりでございますか。もちろん各新聞社その他の民間機関の助力も得まして、各官庁情報機関も利用するとは考えますが、中心総合機関として、現存の内閣調査室のごときものは、もっとこれを強化、活用する必要があると考えておるのでございますが、いかがでございますか。  また最後に申し上げたいと思うのでありますが、何と申しましても国防国民のものであります。国防会議や閣議で審議するだけでは、これはとうてい足りません。私はなるべく広く国民の批判を問うことが必要であると思うのであります。これがために、イギリスのごとく国防白書を作成してこれを公表し、政府のとりつつある国防に関することを国民一般に周知させることが必要なりと思うのであります。そうでないと、国防問題に関する国民理解協力も得にくいと存ずるのであります。またかくのごとくすることによって、かりに内閣が更迭いたしましても、国防が大きくぐらつくことも国民がこれを許さなくなりまして、事実上できないことになると思うのであります。政府にかかる努力を払われる御意思があるかどうか、お伺いいたしたいのであります。
  19. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの御質問の中に、調査室を利用する意志があるかというようだ御質問がございましたが、もちろん調査室を利用いたしまして、戦争を回避するという意味において活用いたしたいと思っております。  それから国防白書ということは、実は今保科さんから初めて聞きましたので、そういうようなことについて研究いたしまして御返答いたしたいと思います。
  20. 保科善四郎

    保科委員 私の質問はこれで終ります。
  21. 山本粂吉

    山本委員長 次に茜ケ久保君。
  22. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 私は、大自民党初代総裁になられました鳩山総理に対して野党の最初質問者のようでありますから、ここで鳩山総理に、大自民党の、しかも初代の、そしてまた輝ける公選による総裁に就任されましたことを心からお喜び申し上げます。(拍手)さような意味で私は率直にお伺いいたしますので、鳩山総理一つ総裁襟度をもって、簡明率直な、しかも勇気のある御答弁をお願いしたい、こう思うのであります。  最初に私は大総裁に特にお伺いしたいことは、現在小選挙区法あるいは教育委員会法健康保険法、そしてまたここに審議をいたします国防会議法と、天下にその悪名をとどろかせた法案が続々と今国会に出ているのであります。これは特に教育委員会法や小選挙区法については、鳩山総理もきのうの総裁就任最初記者会見で、さすがに世間に悪評の強いことを御自認になっているようであります。私は戦後このような悪名をとどろかせた法案が次々に出たことは遺憾でありますし、日本民主主義と平和を守るためにまことに遺憾にたえません。こういった点から私は、この際鳩山総理が、かつて日本になかったころの大政党であり、しかも公選という立場で当選されました総裁の第一歩の一つの善政として、この際思い切って法案を撤回されるだけの襟度があるかどうか。私はむしろこの際に反対党として、そういった悪法を一挙に総裁就任の機に乗じて撤回されることを御期待するのでありますが、一つここで総理の御所見をお伺いしたい、こう思うのであります。
  23. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 大へんおだてられて、どうも何だか心苦しいのですけれども、ちょっとそのおだてには乗るわけには参りません。(笑声)一たん提出したものを撤回する意思はありません。
  24. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 撤回する意思がないとおっしゃるのでありますが、私は決して総理をおだてるわけではありません。(笑声)心からそのように信じて総理にお祝辞も申し上げ、さらにいろいろ内容はあるようでありますが、大自民党総裁になられたのでありますから、私はおだてる意味ではなくて、国民がそういったことをやはりひとしく期待しておると思うのであります。そういう機会に、これはいい機会でありますから申し上げたのでありますが、残念ながら鳩山総理に撤回の意思がないとすればやむを得ません。  そこで私は、ここで憲法論をむし返そうとは存じませんけれども国防会議の内容をつぶさに検討して参りますと、非常に簡単な条文から成立しておりますが、この内容はきわめて正大なものを含んでいる、こう思うのであります。国防の基本的な大綱をきめるとか、あるいは特に私が重大に思うのは、防衛出動の可否を決定するという点であります。この防衛出動というのは、言葉は違いますが、私どもに言わせるとこれはかつての宣戦布告にも匹敵するような重大な内容を持っておると思うのであります。このような問題を含んでいる国防会議というものは、どうしても現行憲法と相反するものである、総理がどのような御答弁をなさるにいたしましても、私どもはこういった重大案件を持っている国防会議は現在の憲法と相反するものであると信じますが、総理は、もし違憲でないという御答弁であるならば、その違憲でない具体的な内容をお示しになって、一つ答弁を願いたいと思うのであります。
  25. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国防会議は防衛出動、防衛した方がいいかどうかという可否を決定する諮問機関ですから別に憲法問題は起きないと思います。
  26. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 諮問する機関であるから憲法問題は起らぬとおっしゃいますけれども、まさしくこの防衛出動に対しては国会の承認が要るようになっております。しかし国会開会中はとにもかくにも、国会の閉会中等におきましては、防衛出動の決定は、これは諮問機関とはおっしゃるけれども、この国防会議がその可否を決定するのでありますから、国防会議が防衛出動可なりという結論を出した際に、おそらく総理議長をなされ、そうしてその国防会議が決定したことに対して、閣議がおそらく相反した結論を出すとは考えません。そういたしますと単なる諮問機関とはおっしゃるけれども、実質的にはこの国防会議の意思の表示があるときには、国会の意志と関係なく防衛出動の可否を決定して、それが最後的な決定であるということを私は信ずるのであります。そうしますと私はただ単に諮問機関であるから違憲ではないという御答弁では承服できません。私はこれは重大な憲法違反の内容を持っているものと考えるのであります。私はそのような形式的な御答弁でなくて、もう少し事実に即した御答弁を願いたいと思う。
  27. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 結局あなたの御質問は、社会党がたびたび言っていらっしゃる自衛ということと憲法九条の関係だと思うのですが、そこでしょう。
  28. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 それもありますけれども……。
  29. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそこが根本だろうと思うのです。その根本問題についてはたびたび申し上げました通りに、自衛目的のためには適当の設備をするということは、憲法九条の禁止するところではないという解釈をわれわれはとっておりますので、憲決違反にはならないと思っております。防衛出動の可否についてはむろん最終的に内閣が責任はとります。ただあなたの今おっしゃる憲法違反だというのは、結局根本は自衛の目的のための行動と憲法九条との関係にあると私は解釈するのですが、そうでしょう。
  30. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 防衛出動の可否をきめるということは、私が先ほど言ったように、これは形の変った宣戦布告と同じと思うのであります。ただ単に自衛のためとおっしゃるけれども、もうすでに防衛出動を適当であるという御決定をなさるときには、宣戦布告なり、一つ戦争状態に入ると思うのであります。従いまして自衛権の云々は別として、このような重大な案件をきめるようなこうした会議そのものが、憲法第九条はもちろん、日本国憲法の根底を流れるものと相反すると私は思うのであります。これはただ単に自衛権のあるなしだけでは解決しないと思うのでございますが、いかがでございますか。
  31. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は憲法違反という問題は、自衛隊憲法九条との関係だと思いますが、その点大体理解をして下さることと思いましたけれども、御質問がもしも私の考えと違うならば、他の言葉をもってお答えをいたしたいと思います。防衛出動をしたことの行政の大任はむろん内閣がとるのであります。その意味憲法違反にはならないと思います。
  32. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 憲法問題はまだありますが、これは同僚の古屋委員があとにおりますので、そちらに譲りまして、とにかく憲法違反云々は別として、このように重大な国防会議というものは、日本の今後の政治経済あるいは文教その他あらゆる国の大本を大きく変革するような内容を持っておると私は思うのであります。防衛問題がいわゆる国政の表面に現われまして、自衛隊法あるいは防衛庁設置法等が生まれまして、自衛隊が生まれ、さらに進んで国防会議が生まれるに至りましたことは、私は国防ということがいわゆる国の全般の大きな面にウエートを持っていくと思うのであります。そうしますと、今この内容を見ますと、簡単でありますが、おそらく今後の日本政治経済その他あらゆる万般のものが、この国防会議によって決定された基本方針を無視しては何もできない、ちょうどかって占領当時アメリカの防衛分担金を中心としたいわゆるアメリカの防衛計画を無視しては日本政治経済が確定できなかったと同じように、この国防会議の決定を無視しては何もできないということなのです。このような重大なることがただ単に五人の閣僚運営されるということに私は非常な危惧を持つのであります。もちろん外務大臣あるいは大蔵大臣その他ありますが、数人の閣僚でこのような重大なことが決定せられるということに対して、私は大きな危惧を持つのでありますが、総理大臣は責任者としてそういったことをどのようにお考えか。確信を持ってそういったことが遂行できるとお考えかどうか、この点を一つ明快に御答弁願いたいと思います。
  33. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 防衛というものは、行いかえてみれば自衛とも言えますし、自衛ということを言いかえてみれば、先刻保科さんの言われたように、いろいろなことがあります。外交もありますし、とにかく戦争のないようにして日本を守るというのでありますから、これはなかなか小規模のものではできないと思います。すべての機関の活動によって初めて平和外交なり日本を守るという平和的の手段を講じなくてはならぬわけでありますから、すべての機関の活動をしなくてはならないのですけれども、その方法を決定するのはあまりたくさんは要らない、国防会議の数人でもって決定して十分だと私は考えております。
  34. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 さらにこういった重大な案件を取り扱う国防会議事務局でありますが、いろいろ質問意見が出ましたが、この案で見ますと、こういった国の大本を左右するようなまことに重大な会議事務局が、一総理府の中に設けられておる。私はもし今総理のおっしゃるようなことでありますならば、事務局を膨大なものにしろとかあるいは事務局に大きな権限を与えよということではございませんけれども、これほど重要な案件を取り扱う国防会議事務局は当然内閣に置いて、もう少しそれ相当な重要性を持たして取り扱っていくべきではないか、機構の云々は別として総理府の一部局に置くのでなくて、内閣に直属して置いて、そして総理大臣みずからがこの事務局を総括するようなことが必要じゃないかと思うのでありますが、そうでなくて総理府に置かれたのはどんな理由か、あるいはまたそれを内閣に直属に置いて総理自身が統括されるような御意思はないかどうか、この点を伺いたいと思います。
  35. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 事務局の必要なことは、私はあなたと意見は同じです。事務局は非常に必要だと思います。それで事務局総理府に置きまして、私が総括いたしまして、私が責任をとっていきたいと思います。そうしてその事務局総理府に置くと同時に、各庁の連絡を密にいたしまして、各庁の人々にも全部協力をしてもらいたいと思っております。
  36. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 総理は、船田防衛庁長官と同じように、急迫不正の侵害に備えて自衛隊を作っておるし、さらに急迫不正の侵害があった場合には、その根拠地、たとえば無線誘導弾等が飛んでくる根拠地に対しては攻撃をしてもいいということをたびたびおっしゃっておられます。私どもは急迫不正というものがどういう状態であるのか理解に苦しむのでありますが、現在日本の現状からしてやはり急迫不正の侵略がなされるような状態が現に日本の周辺に対してあるかどうか。もしないとするならば、自衛隊という一つの大きな組織、そしてまた国防会議というものを作ると言われますが、急迫不正の侵略があるかもしれぬというただ単に抽象的な言葉だけの問題で、こういった問題が国政の中にどんどんと大きなウエートを持ってくることは、私はまことに重大だと思う。もし急迫不正の侵略の危険性があるならば、具体的にやはり国民の前に、日本は今こういう状態になっている、こういう方面から急迫不正の侵略があるかもしれぬということがなければ、ただ単に言葉だけで、あるいは抽象論だけでそういうことをおっしゃって、こういった既成事実を作ることは私はまことに重大であると思うが、鳩山総理は現に日本が急迫不在の侵略を受けるような危険性が今あると思うかどうか、あればどういう方面からあるか、これについて私は御所見伺いたいと思います。
  37. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は今急迫不正の侵略があると思っておりません。ただそういうことを想像いたしまして、準備をする必要があると思っております。
  38. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 私は先般当内閣委員会から派遣を命ぜられて九州の福岡の板付飛行場の調査に参りました。そのときに、あの五十万市民のまん中にあります板付飛行場が市民の非常な怨嗟の的になって、何とかあれを移転してくれという陳情がありましたが、私はその際にあの板付飛行場のアメリカの司令官に会いまして、いろいろ問答いたしましたが、その際にこういうことを言っておる。アメリカ空軍は日本の空の守りに責任を持っておると言った。ではあなたはどういう方面から日本に空から侵略する危険を感じていらっしゃるか、一体アメリカはどういうふうな考えで日本に対して守る態勢を整えておるかという質問に対しまして、その司令官は、大陸方面からいつ日本に侵略するかわからぬ、大陸とは何だと言ったら、大陸とはいわゆる共産圏だとおっしゃった。アメリカ空軍が、日本に日米安保条約で駐屯しておるのは、明らかに大陸、ソ連、中共圏から急迫不正の侵害があるという想定のもとにやっておるのであります。そうしますと、日米安保条約で日本を守るために駐屯したアメリカ空軍が、そのような確信と想定のもとに日本の空を守るということであれば、当然日本としてもこれはアメリカと同じ歩調でありましょうから、私はいかに言葉をお濁しになっても、政府は明らかに共産圏、いわゆるソ連、中共方面からの急迫不正の侵害があるというお考えをお持ちであるのではないか。もしないとすれば、日米安保条約によるアメリカ軍と日本との間には私は大きな意見の相違があると思う。これは私は重大だと思います。アメリカはソ連や中共圏から急迫不正の侵害があるということを想定しておる、日本はそうでないというならば、そこにおいて私は重大なそごがあると思うが、この点に対しての答弁を願いたいと思います。
  39. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカはあなたがお聞きになったような考え方を持っておるかもしれません。しかし私は現在想定国というものを持っていないのです。仮想敵国というものを持っておりません。
  40. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 そうしますと、総理日本自衛隊の配置の状態をどのように思っておられますか、最後にお聞きします。北海道の自衛隊の配備の状況、さらに本土、九州の一連の現在自衛隊の配備の状況を見ますと、これは訓練その他において、明らかに自衛隊そのものは対ソ連、対中共の防備体制をとっておりますが、この点はいかにお考えですか。
  41. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは防衛庁長官から答弁をいたさせます。
  42. 船田中

    ○船田国務大臣 北海道及び九州に相当な人員、装備をいたして配置をいたしておりますことは事実でございます。しかしこれは先ほど総理が御答弁になりましたように、防衛の責任者といたしまして、現在仮想敵国は持っておりませんけれども、しかしわが国土を防衛する必要からいたしまして、北海道と九州に現在のような相当な人員及び施設をいたすことは適当なりと考えて配置いたしておるわけでございます。
  43. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 自余の質問はあとに譲ります。
  44. 山本粂吉

    山本委員長 次に細田君。
  45. 細田綱吉

    ○細田委員 ただいま茜ヶ久保委員からも質問がありましたが、国の防衛は、もちろん全責任は総理大臣にある。そこで国防会議の議員はいずれも内閣閣僚なんです。そうしてこの閣僚の任免権は内閣総理大臣にある。こうなると、極端にいえば、自分の気に入らない違憲を持っておるような閣僚はどんどん更迭することができる。自分の気に入った、意に合ったような閣僚だけをそろえて国防会議構成すると、これは戦争の好きな総理大臣なら実に簡単に戦争に持っていくことができる。これは太平洋戦争の東条さんの場合よりももっと機構そのものが危険じゃないか。総理大臣はこの点ではどういうふうにお考えでございましょうか。
  46. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまは民主主義が確率せられまして、国会の議決を経なければ重要なることはできないのでありますから、そういうあなたのお考えになるような危険は絶対にないと確信をいたします。
  47. 細田綱吉

    ○細田委員 戦争は一日になるものじゃなくて、そういう情勢が序々に、あるいは急速に醸成されていって、最後の断が戦争になってくる。従っていよいよそこまでそういう情勢を育て上げ、醸成してから、引くに引かれないところまできて、国会に諮るといっても国会はきわめて迷惑である。そこで国防会議構成、ふだんのそれに対処する構成は非常に大切なわけなのです。あなたは国会の承認を得なくちゃならぬ、こう言うけれども国会の承認を得る——戦争に至る前の内外の日本の対処すべき態度について、内閣はもちろん、特に国防会議がそれを担当するわけです。ですからどうもあの閣僚は気に入らないんだというのを更迭して、そこで自分の意に合ったような者だけを閣僚国防会議の議員に選任すると、あなたの言ったような国会の承認を得なくちゃという、最後の段階に至る前のプロセスが非常に危険じゃないか。御承知のように、太平洋戦争における東条総理は、参謀本部でもあるいは陸軍省でも気に入らない者はどんどん第一線に飛ばしてしまう、そして自分の意を迎えるような名を自分の近傍というか周辺に置いたということは、あなたの方がよく御存じだ。こういう危険がさらにこの国防会議法を通じてわれわれには強く感ぜられるが、この点さらに御意見伺いたい。
  48. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は先刻申しましたように、国防というものは自衛の意味でありまして、自衛ということは戦争という意味ではないのでありますから、戦争によって自衛を——自分の国を守ろうというわけではないのであります。保科君にお答えいたしましたような趣旨で国防会議はできるのであります。国会というものは、常にあらかじめ外交についても、経済についても、諸般にわたっていつでも質問ができるのですから、そういうような危険は、将来は日本には生じないと私は確信をしております。
  49. 細田綱吉

    ○細田委員 憲法査会法案審議の際に、参議院においてもあなたはそうだとおっしゃった。船田長官は当委員会でもそう言っておられる。急迫不正の侵害があったならばその基地をたたく、こう言うのです。だからその基地をたたく限りは、あなたの言うような今の戦争はないと言っても、これは国の将来のためにあらゆる角度からあらゆる場合を想定して進まなくちゃならぬことは私が申し上げるまでもない。従ってそういう場合に、この国防会議構成はこれで妥当であるか、これを一つ伺いたい。
  50. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は不正の侵略があった場合、これを放置しておくことは憲法の命ずるところではないと思います。不正の侵略があって、それ以外に日本を防ぐ方法がない場合においては基地をたたく。不正の侵略があるならば直ちにその基地をたたいてもいいとは、船田君も私も申しておりません。よく調査して下されば、不正の侵略があって、それ以外に防衛する方法がない場合においては基地をたたくより仕方がないと申したわけであります。私はそれは当然なことだと思います。
  51. 細田綱吉

    ○細田委員 もしもと言われるのだが、そういう構想が防衛庁にも国防会議の場合にもあるということは、これはあなたのおっしゃった通りだ。従ってまず伺いますが、日本の過去において急迫不正の侵害があったかどうか、そういう事実が歴史的に証明されているか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  52. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 過去のことは、私はただいまのあなたの質問によく答弁できませんが、将来は少くとも国防会議の目的、国防会議方法は、ただいま私が申した通りであります。
  53. 細田綱吉

    ○細田委員 これはわれわれ、今の答弁では承知できない。言いかえればどんな戦争でも、特に二十世紀に入った戦争はすべて自衛を目的とし、国防を名目とした戦争になっておる。特に日本のいわゆる日清、日露戦争においても、これは敵の侵略という名目で立ち上っている。太平洋戦争またそういう言葉国民に呼びかけている。ですからどういう程度を急迫不正の侵害と想定されておるかということは、本法案審議に一番必要なのです。日本の国が歩んできた過去の経験に照らして、従来の日本にいわゆる急迫不正の侵害があるのか、たとえて言うならば二十七、八年の戦役、三十七、八年の戦役の場合に急迫不正の侵害として立ち上るかどうか、それは祖国防衛のために必要なりとして立ち上るかどうかということは、日本の今後をトする意味においてきわめて重要な問題だと思いますから、私はさらに総理の御意見伺いたいと思います。
  54. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私どもが言っておる急迫不正の侵略というのは、日本の国土に対しまして直接急迫不正の侵略があった場合にということを言っておるのでありまして、想像をして、急迫不正の侵略があった場合を想定して話をしておるわけではないのですから、誤解のないようにしていただきたい。
  55. 細田綱吉

    ○細田委員 まだ依然として抽象的なんですが、そうすると過去の日本においては直接国土の侵略はなかったんで、国防を言おうと自衛を云々しようと過去におけるような事態では、あなたのいわゆる急迫不正の侵害と考えない、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  56. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 少くとも過去の事例は別として、私の現在の考えはそうだということを申したのであります。
  57. 細田綱吉

    ○細田委員 それであるならばどうしてこんなに軍備を急がれるか。あなたも日本には急迫不正の侵害はないと思っておりますと言われておる。またこれはわれわれが申し上げるまでもなく、総理の方がよく御存じのように世界は平和の方へ向っておる。戦略、戦術の転換であろうとどうであろうと、スターリンが批判されてソ同盟においてはいわゆるほほえみ戦術が展開されておる、平和の方へ向っておる、また軍縮の問題もいわゆる軍備を持つ大国といわれる間においてその方向に進んでおることだけは、これは事実である。しかるに日本だけがこの世界の趨勢に反して、一生懸命で軍備をしておる。警察予備隊から保安隊になり、さらにまた自衛隊になるというように、あるいはまた秘密保護法をこしらえて、再軍備を強行するために憲法の改正まで行われるというふうに、鳩山内閣の施策は少くとも再軍備を非常に急いであせっておられる。これはいわゆる大陸との関係から、アメリカの防衛の一線としてアメリカから強制されておるということはわれわれも想像するけれども、しかし断固として独立国の対面を守る、また世界の平和を考える、急迫不正の侵害はないのだ、過去においても日本はその意味においての急迫不正の侵害はなかったと言われるならば、何がゆえにこう自衛隊の拡張を急がれるか、また法制の整備を急がれるか。これはもう年々歳々費用はふえていく。防衛予算はふえていく、こういうことを見ましても法制の装備を見ましても、これはおおうことのできない事実です。こういうことを考えましたときに、どうして世界の趨勢に反してまでも急がれるか、あなたが選挙で公約をされた社会保障なんというものは後退してまでも、こっちの方だけはぐんぐんなぜ進められるか、その点を伺いたいと思います。
  58. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は過去において急迫不正の侵害がなかったと断言はしておりません。やはり戦争の危惧を考えていた人はあると思います。御承知のように伊藤公あるいは桂公あるいは後藤伯のごときは、日露の国交を調整したいと思って非常に骨を折った人なんです。日露の国交調整については非常に努力したということは歴史上明白なんです。ところが日露戦争は起ったじゃありませんか。ロシヤは攻めてきた。それですから急迫不正の侵害ということも、目の見える人と目の見えない人とでは、幾らか違うのです。それですからどの国でも、現に急迫不正の侵害がなくても、自衛のためにあらかじめ軍備を持っているのです。軍備を持っていない国なんというのは、世界中ないのです。日本だけは全滅してしまって、ないのですから、日本だけが急ぐということはこれは当然のことで、少しも不思議とするには足りないと私は思っております。
  59. 細田綱吉

    ○細田委員 当時の世界情勢は違うと思うのです。現在でも世界の平和機構がどこまでその効力を現わすかということはこれはまだ未知数ですが、いわゆる日露、日清の当時はこういう平和機構というものは世界になかった。ところが国際連合がありその他のものがあって、あるいは大国間の外相会議等が催されて、いろいろ世界の平和を維持するための機構というものが非常に整備されつつある。しかしあなたの言う目の見える人、目の見えない人で急迫不正の侵害を想定するとすれば、あなたのような非常に目の見える人が急迫不正の侵害を拡大されて、見られたら、これはきわめて迷惑なんです。また日露戦争においても日清戦争においても、これは国土の侵略ではなかった。少くとも朝鮮における、満州における問題が契機になったことは、これは私が申し上げるまでもない。従ってこういうような問題であったならば、現在は世界の平和機構がある程度の役割をする、従ってあなたの選挙の公約までも放棄して、そうして再軍備へ再軍備へとその費用をつぎ込まなくても、世界が今申し上げたように、軍縮と平和の方に向っておるとするならば、私はそんなにあせって年々歳々予算をふやしたり、あるいは法制を整備する必要はないと思う。この点につきましてあなたの言う、過去においては急迫不正の侵害があったとしますならば、過去において日本経験した程度の急迫不正の侵害があれば日本は立ち上るか、さらに伺いたい。
  60. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは非常にむずかしい問題で、過去のどのくらいの程度で、その程度が来たならばどうこうというようなことは私としては考えられません。現に急迫不正の侵略かあった場合、これを避けるのに他に方法がないといったときには、自衛のために自衛隊が動くということを言ったのであります。それから世界の平和観につきましては、あなたと私は意見があまり違わないと思います。とにかく私は戦争が近づいてきているというようなことは、毛頭考えておりません。それですから仮想敵国は考えてないと言っているのです。ただ自衛の目的の範囲内においてだけ、日本一つも自衛力を持っていないから準備をしておこうというだけであります。  世界ではロシヤの変動——ロシヤはスターリンをとにかくああいうように国賊のようにしてしまって、今ではスターリンの死骸を取り除いたようなことが、非常な問題になっておりますけれども、ロシヤはやはりとにかくまだアメリカと一緒になって両方ともに水爆やら原爆の競争はしているのです。それですから、戦争は起きまいとは思いますけれども、絶対に起きないということはだれも言えないだろう。それで戦争は近くは起きないだろう——戦争の被害は非常に大きくなりましたから、めったな戦争は起きないようになったと思うけれども戦争の空気というものはまるっきりないというふうにきめてしまうわけにはいかないと思う。現在すでにアラブとイスラエルはやりかかっているぐらいでありまして、戦争がすっかりなくなったとは考えられないと思います。それですから準備はしておく必要がある。それは最小限度の自衛の準備だけでありまして、ごく小規模のものである。これはアメリカとの共同防衛の約束があって、その程度において日本はやっているのでありますから、どうも防衛費の増額は本年はやむを得ません。これは安保条約によってきめているものですから、やむを得ず日本の防衛費はことし幾分ふえております。しかしそれによって保障費を減額したわけではありません。保障費もやはり百億以上は日本の予算上ふえております。私は国民に対して約束を破ったとは決して考えていないのであります。
  61. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたの経験からいって過去の日本で急迫不正の侵害は必ずしもなかったとも言えない、戦争は今後起きないと断言もできない。——今後の戦争はその通りでございましょうが、そこでそれでは最後まで一つ伺いたいのだが、あなたのおっしゃる自衛権と交戦権の限界はどこにあるか、言いかえれば自衛権とはどういうことをいうのか、その定義を一つ総理みずからの口から聞かしていただきたい。
  62. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は昨年申しましたが、自衛権と交戦権とは違うと思います。不正の侵略があった場合にこれを防ぐというのが自衛権でありまして、それをやればすぐ日本が国際法上の交戦権を持ちまして、第三国の船舶を拿捕できるとかあるいは占領地域の行政が、できるというような、そういう交戦権というものは直ちに日本が持つものとは思っておりません。
  63. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたの答弁も自衛権の限界がはっきりしないのですが、あなたの想定からいうと、将来急迫不正の侵害なしとは確言できないのですね。今のあなたの御説明でそう私は急迫不正の侵害はないと思いますと言ったが、あなたの御説明ではだんだんそういうことがあるような、その可能性を示唆しておられる。そうするとどうしても日本が自衛権を発動する、戦争状態に入ることだけは事実だと思うが、その危険の可能性なしとあなたは考えておられるか。
  64. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本が将来侵略を決して受けないというように確信を持つわけにはいきません。
  65. 細田綱吉

    ○細田委員 最後に防衛庁長官伺いたいのですが、あなたは前会の御答弁で、どなたかの御質問に対して、労働争議鎮圧に対して出動はしないが、しかし、これもまたもし条件が揃った場合は出動する訓練をしている、こういうことを言われたが、その訓練とは具体的にどういうことをさしているか。
  66. 船田中

    ○船田国務大臣 労働争議と治安問題とは全然区別をいたしております。従いまして労働争議が起ったからといって、これにどういうふうに対処するかというような訓練をいたしているということを申してはおりません。治安出動については訓練をする、すなわち警察力をもってわが国治安を維持することができないというような場合におきましては、自衛隊法の命ずるところによって治安出動をしなければならぬ場合が起って参ります。従ってそういう場合においてはどういうふうな手段を講ずるかということについては、平素これを考究をし、またそれに対処し得る訓練もしなければならぬ。そういう訓練は労働問題とは全然区別いたしておることをはっきり申し上げておきます。
  67. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたの速記録を読みますと、労働争議の鎮圧に対して条件の備わった場合には出動する、あるいはその訓練をしている、こういうふうに言っておるのですが、今のことがいわゆる条件の備わった場合に該当するのですか、その点を伺っておきたい。
  68. 船田中

    ○船田国務大臣 先般の御質問が、労働争議が治安を害するような場合にどうするか、こういう御質問でございました。政府といたしましては労働争議に対してはどこまでも中立を守ります。堅持して参ります。しかしそれがかりに御質問のようにわが国治安を害しまして、そして警察力によっては治安の維持ができない、こういう条件を備えて参りまして、すなわち自衛隊法の規定に従って治安出動をしなければならぬような条件を備えた場合においては、治安出動のことを考えなければなりませんから、従いまして治安出動のことも考え、検討もし訓練していかなければならぬ、こういうことを申したのであります。
  69. 山本粂吉

    山本委員長 次に、約束の時間をすでに過ぎておりますが、古屋君の質問時間は約十分程度の約束でありますのでこれを許します。古屋君。
  70. 古屋貞雄

    ○古屋委員 時間がございませんから率直に鳩山総理に承わりますが、まず第一に鳩山総理政治的道義観念について私は簡単に御質問申し上げたいのです。  昨日のお喜びのあとのことらしいのですが、鳩山総理はごあいさつの中にこういうことをおっしゃっておるのです。これは私は非常に道義的に考えましても聞き捨てならない言葉だと思うのです。と申しますのは、現在の憲法九条に対する問題については非常な解釈上疑義がある。従って考え方が変っておりまする立場から、結論においては相いれない結論が出ております。言いかえまするならば、社会党のわれわれの解釈といたしましては戦力が持てない、交戦権を否認しておる日本憲法であるから、自衛権の発動の結果として戦力というような関係にまで考えられるようなことは、観念的にそれはないんだ。しかし鳩山総理はかっては自衛隊違憲であるという御主張をしておりながら最近はお変りになったようでございますが、さような重大な、国を思い民族を考えまする立場から、公党がこうした疑問のある問題について態度を別々にしておりまする問題について、鳩山総理は昨日こういうことを、新聞で拝見しますと、お述べになつておる。私はラジオでも直接お聞きいたしましたが、自衛のための関係において戦力を持つことを侵略戦争を挑発するものであるというようなことで、社会党はこれを国民にしいて欺瞞しておる、こういうことをおっしゃっておる。なおあとから伺いますと、公党として卑怯な態度である、こういうことをおっしゃっておられますけれども、われわれはともに日本の将来を考えて、しかも国民の代表として、信念を持ってこの疑義を明らかにしたいという主張をしておりますのに対して、かように侮辱的な言動をされておるということは、私は政治的に考えましてまことに聞き捨てならない、道義的にまことに私どもは考えられないことでありますが、これに対する鳩山総理の御心境をまず承わりたい。当然であるのかどうか、言い過ぎたのであるかどうか、明確な御答弁をいただきたいと思います。
  71. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法の解釈を正当に、自分の自説を主張することに対して私は敬意は払います。なお憲法九条は兵力を持つことを絶対に禁止する、しておるものだ、自衛隊は持てないんだという主張に対して私は少しも非難はいたしません。けれども一歩を進めて、わが党の主張する自衛隊は侵略のためのものである、これは言い過ぎでしょう、あなたの方も……。それに攻撃しただけです。
  72. 古屋貞雄

    ○古屋委員 私はただいま、侵略するものであるという疑いがあるということを、それを主張するのは当然でございまして、さような点において明確にして、あやまちなきを期すことがわれわれ政党の任務であります。それを国民を欺瞞するものであるとか、公党として卑怯であるというようなことは、これは少し言い過ぎではないでしょうか。当然ではないと私は思うのですが、いかがでしょう。
  73. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自衛のために兵力を持つというか備えるということは憲法違反でないということを主張しておるのでありまして、これが侵略のためというようなことは毛頭考えていないのです。これは侵略のためだということは、しいて自衛のためにする準備を非難するのに最も適当なあなたの方の武器です。戦争をこいねがっている者は一人もいない。われわれもそれはよく承知しておる。侵略のための兵力などを持つようなことは考えておらないのです。それを侵略のために、侵略の目的をもって兵備をするのだろうということぐらい、あなたの方として有力なる武器はありません。この有力なる武器を粉砕したいという希望をわが党が持つということも、これは無理のないことです。それを私は言っただけであって、言論の自由というものもそこぐらいまでは許されていいと思います。(笑声
  74. 古屋貞雄

    ○古屋委員 総理はずいぶんその点については苦労人であり、事実を御存じでしょうが、今まで世界のあらゆる国の戦争が、いずれも主張する国は自衛のための戦争であり、自衛軍であるという主張をされております。第二次世界戦争あるいは大東亜戦争、あるいはそういう問題についていかなる場合でもそういう立場に立っておりますから、その結果、自衛のための軍備であるという名目を持っても、具体的な事実となって参りますことについては、それが侵略の戦争というものに発展するいう、そういうおそれを持ち、そういう言論をもって御質問をして、その点を明確にしようということ自体の態度は、卑怯でもなければ、無礼でもなければ、欺瞞でもないと思うのです。その点なんです。その点を一体欺瞞である、無礼だとおっしゃる、そのあなたの結論に対するお考えを聞きたい。
  75. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、あなた方がそういってわが党を攻撃することに対して言っただけでありまして、あなたの力を誹謗する意味で申し上げているのではありません。
  76. 古屋貞雄

    ○古屋委員 党を攻撃するという考えは毛頭社会党にはございません。われわれはこれだけの疑問な憲法総理自身もすでに自衛隊違憲だということをおっしゃった時代があったのだ、それではその点はどうなんです。
  77. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 違憲であるとか違憲でないとかいうことを言うのは、私少しも差しつかえないと思うのです。ただ人の意思を推測しまして、違憲だという以上にプラスそれは侵略のためなんだから不適当だと言うのは言い過ぎだと思います。
  78. 古屋貞雄

    ○古屋委員 わが党は侵略のためだと断定はいたしておりません。おそれがあるし侵略のためになるということなんです。結諭は実際なると申しておるのです。さように申しているのです。従いましてこういう具体的な事実から申しますと、結果が侵略のためになるということになるのでありますから、その点を承わっているわけなんです。いかがですか。はっきりして下さい。
  79. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自衛隊を持つことは憲法九条に反するとか反しないとかいう問題に対しては私は論議はいたしません。自衛隊を持つことが憲法違反である、違反でないというような議論に対しては何ごとも申しません。ただあなた方の力で、ただいまおっしゃるように、わが党の主張、あるいは政府の主張の自衛隊を持つということが、決して侵略の目的のためと言わない、おそれがあるというのならば、あえて非難はいたしません。自衛隊を持つことは侵略の目的のためなんだと断定せられることは、それは卑怯だと言ったのであります。事実がそういうことでないならば決して攻撃はいたしません。
  80. 古屋貞雄

    ○古屋委員 ただいまの問題については時間がございませんから後日に譲りまして、一応私は本論に入ります。すでに鳩山総理憲法九条に対する解釈か変っておりますが、その変った原因について非常にいきさつがあるようですが、ただ簡単に伺いたいのは、鳩山さんの参議院並びに内閣委員会、予算委員会において答弁いたしました結論を申しますと、前には自衛隊違憲である、現在はそうではない、その事情の変更について詳しくは承わりませんが、ただ一つ鳩山総理法律家でございますから承わりたいと思いますが、法律をもって憲法を改正したり、大体憲法の解釈を変えることができるかできないか、その点を承わりたい。
  81. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 法律をもって憲法を改正することができないのは私も承知しております。それは正しい議論と思われます。しかしながら、国会自衛隊法が成立いたしまして——国会をあの法律が通過したのを機として私は自分の意見を変えた、こう申したのであります。
  82. 古屋貞雄

    ○古屋委員 ただいま総理自衛隊法が国会を通過したのを機としてということをおっしゃっておりますが、これはきよう初めて承わるのですが、機としてというのは……。
  83. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 前からその通り言っております。
  84. 古屋貞雄

    ○古屋委員 総理憲法改正論者のなかなか熱心な方です。自衛隊を持ったり、防衛庁設置法というようなものをこしらえて、国防会議を作りますことは、憲法に非常に疑義があって危険であるというようなお考えのもとに、かつては憲法改正論者なんです。従って私は今日承わりたいことは、さような、法律が新しく生まれたことを契機として前の憲法解釈が変ってきた、こういうこと自体私は非常に不思議に思うのですが、そのポイントはどこで変ったのでございましょうか。
  85. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本が自衛力を持つということは、私ばかりでなく、固有の権利として自衛権を持つということはあなた方もみな主張されておるのです。固有の権利というものは憲法に何と書いてあってもあるのだというのは、社会党もそうなっておるじゃありませんか。本会議においての御質問によれば、自衛権を持つということは国家固有の権利であります。国家固有の権利というものは憲法はどうしようもないと思います。国家固有の権利を憲法は否定するわけにいかない。であるからして、九条もこの固有の権利に対してだけは禁止していないという解釈をと方が正しいのですから、間違った考えを正しい方に直したからといって、そんなに攻撃しなくてもいいでしょう。
  86. 古屋貞雄

    ○古屋委員 わが党も固有の自衛権がないとは申しません。持っておることを主張しております。しかしそれが力によって表現される問題であるということについては、わが党は否定しておるのである。その点なんです。その自衛権とは、国際法において、かつての古い国際法の解釈論者からいいますと、必ずこれに力が伴う、武力が伴うという解釈ですが、現在の自衛権、固有権の解釈はさようなものではないと私は思うのです。その他の方法があると思う。その力の問題が問題になってくると思う。力を持つことによって、私どもの申し上げている考えとは違っております。  それでは質問を変えまして、国防会場をお持ちになるのについての目的並びにいろいろなことを承わりましたが、ただいま総理は急迫不正の侵略の事実は現在ないのだ、憲法上の点についてはいろいろな疑義がある、そういう急迫不正な問題がなければ、どうでしょう、こういうような国防会議というような問題は、憲法を改正してはっきりと国防会議が持てる前提、基礎の上に立ってから、政府としてはこの法律案をお出しになって、それで御審議を願うということが、私は順序だと思う。総理大臣はいかがでしょう。
  87. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそうは考えておりません。現在の憲法のもとにおいて自衛の準備ができると思っておるのでありますから、憲法改正を待たずして国防会議を作るということは差しつかえないと思っております。
  88. 古屋貞雄

    ○古屋委員 時間がありませんのでもう一回大事な点を承わりますが、国防会議をお持ちになってこの目的を達し得るのについては、やはり日米安保条約であるとか、MSA協定というものについて、日本は幾多の義務を負担しておりますが、この日本が独自の立場に立って、あなたがお考えになっておりますような、また御提案になって審議しているような国防会議が、独立に勝手に日本でやれるものでございましょうか。私は目的は達せられないと思うが、その点はいかがでしょう。
  89. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が先刻申しました通りに、国防ということは自衛の意味なんです。自衛のためにはやはり戦争のないようにすることなんです。その目的のためには、決して安保条約その他との衝突なくどんどん進行はできるものと思っております。
  90. 古屋貞雄

    ○古屋委員 かりに国防会議が持たれまして長期の国防計画をこしらえましても、アメリカの顧問団その他アメリカ要請によって、あるいはこれを変更されるというおそれが私どもあると思うのです。さようであるならば本法案が通過して国防会議をお作りになりましても、何も役に立たないと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  91. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうおそれはないと思っております。
  92. 古屋貞雄

    ○古屋委員 具体的にその説明を御答弁願えませんか。
  93. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいまの御質問に私からお答え申し上げますが、日米安保条約によりまして、もちろん日本の国土の防衛ということ今日米共同でやることになっております。しかしそのために、国防会議法を作ったからといって日本の自主性はどこまでも失うものではございません。わが方といたしましては、わが国の国力、国情に相応する最小限度の自衛体制を整備して参りたいという根本方針を立てておるわけでありまして、もちろんわが国の国土の防衛につきましては、現実の問題といたしまして、日米安保条約によりまして日米共同で防衛の対策に当っておるわけであります。その間においてわが方の自主性を失うということは全然ございません。
  94. 古屋貞雄

    ○古屋委員 最後に一点伺いますが、ただいまの御答弁によりますと、国防に対する自主性をお持ちになるという御主張と、アメリカから制約されておる制約と非常に矛盾する、私は絶対に自主性は持てないと思うのです。果して持てるというお考えでございましょうか。これは重大な問題ですから総理の御答弁を願いたい。
  95. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国防に関しては日本はむろん自主性を持てるものと思っております。
  96. 山本粂吉

    山本委員長 暫時休憩いたします。午後は一時より理事会を開き、引き続き委員会を再開いたします。    午後零時二十分休憩      ————◇—————    午後三時四分開議
  97. 山本粂吉

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  宮内庁法の一部を改正する法律案を議題とし、これより質疑に入ります。  この際政府に御注意申し上げます。政府委員の出席がおくれるために、委員会の審議が遅延することはまことに迷惑でありますから、定刻までに御出席下さるよう特にお願い申し上げます。受田君。
  98. 受田新吉

    ○受田委員 宮内庁法の一部を改正する法律案に対しまして、提案理由の御説明をいただいておりますが、この提案理由の御説明の中に現われております今回の改正理由を拝見いたしますと、内部部局所掌事務に対して所要の調整をしたい。特に当該事務の能率化、合理化というようなものをはかりたいというお気持のようであります。今までわれわれは、宮内庁というものはある特別の区域にあって事務をとり、一般行政事務とは違って、九重の雲深きあたりにおわします皇室事務を取り扱ってきたという伝統の仕事である関係上、民衆に親しまれない事務であった。しかし最近においては、陛下御自身が国民とともにあると宣言をされ、憲法も改正されて国民の象徴としての立場をはっきりされているし、またいろいろな機会に、陛下御自身が皇居を解放して、適宜国民と接触しておられるという点においては、これはまことにいい傾向だと思っているわけなんです。しかし一方において依然として宮内庁という役所が、国民と皇室とを遊離せしめるような固い取扱いをされることは、これははなはだ心外であります。そこで、皇室と国民というものは全く解け合っていることになっている今日、別に特権的意識を発揮される皇室でないという立場に立つ以上は、思い切って宮内庁の内部の行政事務を、民衆に解け込んだ皇室の立場をはっきりさせるように御措置願いたい。ところがこの言葉の中に、「現在侍従職と管理部に分れております調理供進事務を一体化して」云々とありますが、「きょうしん」と読みますが「くしん」と読みますか、これはどういうことになるのでしょうか。
  99. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 これは調理「くしん」と普通いっております。「きょうしん」と読んでもよろしいのですが、調理は料理を作る方でございます。それから「くしん」または「きょうしん」と申すのは、作りました料理をお客さんの方へ出しまして、そうしていろいろもてなす方のことを申すのであります。
  100. 受田新吉

    ○受田委員 それで供進というのは、一般のお客さんに出す言葉でしょうか。
  101. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 これはなおお客さん以外に両陛下に差し上げることも申し上げます。
  102. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、私たちが皇居へおじゃま申し上げるときにいただくのにわれわれに供進していただくことになるのでございましょうか。
  103. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 広い意味におきましてその中へ入るわけでございます。
  104. 受田新吉

    ○受田委員 まことにかたじけないきわみでございまして、供進をしていただいたごちそうをわれわれが召し上るということになっておるようですが、供進というのは陛下にも差し上げる、また一般のお客様にも差し上げる、皇居へ来られたお客は、ごちそうをいただくことは全部供進という言葉で取りまとめておるということになるわけですか。すべてのお客ですか。
  105. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 今の御解釈によりたいと思います。以前は供進と申しますのを、「くしん」という読み方をいたします場合は、陛下にお上げするのを「くしん」、皇族方あたりにお上げをいたすのも「くしん」というふうに言っておりましたが、それを「きょうしん」という広い意味に解釈いたしますと、いわゆる「くしん」という昔の使い方よりもさらに広げて、調理したものを差し上げるという意味に解釈してもいいというふうにわれわれは解釈しております。
  106. 受田新吉

    ○受田委員 「現在侍従職と管理部に分れております調理供進事務を一元化して、」こう書いてあるのでありますが、侍従職と管理部にどういうふうに分れておったのでございましょうか。
  107. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 現在厨房厨司といいまして、料理をする専門家、この方は侍従職の所属になっております。秋山主厨長以下の料理の専門家の厨房、つまり台所は侍従食の方の管理になっております。それから主膳官と申しまして、料理の方の準備をし、あるいは御陪食とか午餐、宴会の会場のとりつくろいをいたし、またいろいろお膳を出し、また運んでサービスをするという方は主膳官の系統で、これは管理部の方で所管をしておる。そういうふうに料理をする方と出す方が部局が両方に分れておりますので、その点でこれを一本化した方が合理的であろうということであります。以前は大膳食というのがございまして、一本になっておったわけであります。それが終戦後大膳食を廃止するというふうなことから、その中の料理をする方は侍従職、そのほかの差し上げる方の事務的な面は管理部というふうに分裂した。その分裂しているのが実際の仕事をする上に非常に不便な点がありますので、これをこの際一つにまとめていきたいというのが、改正したいという趣旨でございます。
  108. 受田新吉

    ○受田委員 そうした立場で調理供進事務を一つにまとめられたということでありますが、第一の改正理由の中にもう一つ考えてみたい言葉があるのであります。それは侍従ということでありまして、侍従という言葉はずっと前から日本の皇室にのみ用いられた陛下のおつきの人という意味で、侍従長、侍従武官、一般侍従職というものがあったわけでありますが、こういう言葉、そして東宮大夫といいますか、東宮職というものの中にそういうのがあるわけでしょうが、そうした皇室の独自の言葉——特に式部長官東宮大夫及び式部官、侍従官、こういうような特殊の名称というものは、ほかの官庁の事務官とかあるいは書記官とかいうような言葉に切りかえをして、宮内庁というものを何か高いところから下を見おろす皇室の特殊の事務を取り扱う特権機関のような印象を与えないような方法をお取りになる必要はないかと思うのですが……。
  109. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 侍従という名称につきましてのご意見でございますが、あるいは事務官とか書記官というふうにして侍従職勤務というふうにするということも一つ考え方かとも思いますが、侍従一言でわかりやすいものですから、今までずっとそれでわかりやすくきておりますので、名称を変えることによって、かえって侍従職のこういう仕事をする事務官という説明をしなければいけなくなるよりは、簡単でわかりやすいから、まあ従来からなれている言葉の方がいいだろうということで、踏襲をいたしてきておるわけであります。
  110. 受田新吉

    ○受田委員 従来の名称にしましても、はべり従う、あたかも陛下の膝下にひざまづいてはべり従うという、昔の陛下と臣民の間のような印象が、この侍従という言葉の中に私は何か余韻が残っておると思うのです。これははべり従うというその動作の上に現われたような言葉をそのまま官職の方へ用いられているわけなんで、動作そのものをやるのは、書記官というのはものを書く、事務官は事をつかさどる、こういうことになるわけですが、はべり従うということは動作としてはまことに謙虚でいいけれども、人権尊重の上からいうならば、陛下御自身も、おい侍従よ、ここへ近う参れというような印象になるおそれがある。この点は、民主的な国家として陛下御自身がきわめて大衆的になられた今日、侍従の名称を、率直に動作の上に現われる言葉としてももっと人権が尊重されるような言葉に切りかえをされる必要はないかと思うのでありますが、そういう改正をしてもいいという御意図がございましょうか。
  111. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 適当なよりいい用語があればこれはそれに改めてもいいとは思いますが、単に事務官というふうではかえってわかりにくいのでにないかというので、一昨年から昨年にかけまして、いろいろ皇室内の用語の改正なんかを研究いたしましたときにも、一応もちろん研究の対象になりましたのですけれども、どうも適当ないい言葉もありません。日本でもいろいろ言葉についてその起りを一々取り上げてみますと、起りはいろいろのむずかしい起りであっても、それが普通名詞のようになっておれば、そう特にいい言葉があれば別ですが、それがないとすれば、踏襲してもよかろうということで使っておるのです。しかしよりいい、これはというような明暗が出れば、われわれもいつまでもその言葉に固執するわけではないわけであります。
  112. 受田新吉

    ○受田委員 今や皇室の事務を担当される職員の方々も公務員法によってはっきりと身分が確保されてお了のでありますし、また宮内庁という役所も国家行政組織法の一環として成立しておるのでありまして、この点におきましては、古い伝統をそのまま残すほどの必要はないのではないか。むしろ宮内事務官というような形にせられて侍従という言葉におきましても、陛下の直属の事務を取り扱う事務官としては、それに相当した名称を用いた事務ということにておけばいい。何か一貫して書記官とか事務官とかでまとめることができると思う。参事官という言葉も非常にいい言葉だと思うんです。参事官、事務官というような形で、それに宮内という言葉をつけて宮内参事官、宮内書記官、宮内事務官という形にされて、特に陛下の直接おそばの仕事をされるということになれば、宮内秘書官というようなことにされてもいい。いろいろ言葉の使い方はあると思うんです。昔の内侍従、典侍という陛下の身辺をお世話なされる女性の人々の名前にも、そういう言葉がつけられ、それが権という言葉がつけられて階級が設けられたこともある。こういうことやら、そして個々の言葉の中に皇子のふ育官というのがある。この法律の中にふ育という言葉は養育という——皇子を養育されるお仕事で、おそばでお守をされるということになれば、ふ育の「ふ」という字の漢字がないものだから、そこでかなでふ育とつけられたわけです。ひらがなで「ふ」とつけて、ふ育官などということは、あまりに変なことなんです。役目の名にひらがなの「ふ」をつけてふ育官というような役目があることは、官職の統制の上からも私は感心しないと思うんです。従って皇子を養育されるなら、養育というはっきりした——ほかの役所では見ることのできない特別の言葉、昔の官職要解をひもとかなければわからないような言葉が出ておるわけで、この点新らしい時代感覚をもった官制の上からは、できれば皇室事務に当りましても、一般行政事務とことさらに変った名称を用いないように、また国民にもことさらに変った——皇室であるという特権的な印象を与えないために、一つ名称全般について御考慮をされる時期がきているんじゃないか、特別職の職員の中に、皇子ふ育官というのがあって「ふ」とひらがなで書いてあるこの言葉などを見たときに、現在では一般職、特別職の公務員を通じ、あるいは地方の公務員を通じてみても、ひらがなを使った名称のある職名というは、全然ほかに見当らないと私は思うんです。こういう点において宮内庁法、あるいは宮内庁法の施行令に、でき得べくんば名称において印象的に特権的な意識を国民に与えしめないように、変更をされるところの御用意がありはしないかと思う。今回の法改正に当りまして、おそらく私のこの見解については賛成される方もあろうし、また反対される方もあろうと思いますが、反対される方も、ひらがなを用いなければならないような、皇子ふ育官のような名前が厳として残っているというにおいては、何らその改正に異議を持たないと思うのでありますが、御所見伺いたいのであります。
  113. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 いろいろ名称につきまして、改めた方がいいじゃないかという御意見の根本の御趣旨の点については、われわれも同感であります。ただ、それじゃどう改めるかということについて、いろいろ研究しても名案がなくて、今のようなことになっておるわけでありますが、(「りっぱな名案があるじゃないの」と呼ぶ者あり)しかしながら今の御意見もありましたので、さらにこうした問題については、今後研究をさしてもらいたいと思います。ですから根本の趣旨においてはわれわれも同じ気持でありますが、どう変えたらいいかというような問題については、ここですぐにお答えをする準備もありませんので、よく研究をさしていただきたいと思います。
  114. 受田新吉

    ○受田委員 さらに改正の要点の第二宮内庁と皇宮警察との関係事務についてお尋ねしたいのであります。従来宮内庁と皇宮警察の仕事及び警察庁の仕事との関連については、密接なつながりを持っておられたと思う。そこにおられる田中さんは、警視総監としてあの桜田門の堀一つ隔てた対岸に、厳としてそびえ立つ警視庁の親方でいらっしゃった。そうしてあのお堀は警視庁の管轄内か、あるいは宮内庁皇宮警察の管轄内か、これはいろいろ法律討論にもよく出るお堀です。つまりあの堀へだれか身投げをやったときには、どっちが事務をつかさどるかという、なかなかおもしろい議論の引例にもされたところでありますが、そういうところへ皇宮警察と普通の警察、すなわち東京ですから警視庁ですが、それとの関係事務はきわめて密接にやられておったと思うのでありますが、ことさらにこの規定をお入れにならなければならぬ理由はどこにあるのでしょうか。
  115. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 この規定は普通一般の警察との関係ではございませんで、宮内庁と皇宮警察との関係でございます。皇宮警察は皇居の中、また御所、離宮の中にあって、宮内庁の職員と同じようなところで、後続の身近に仕事をしておられるのでありますが、その所属は皇宮警察は警察庁の所属でありまして、これは宮内庁とは別個の系統の機関であります。同じところに、ときには似たような面もあります仕事をしておりますが、宮内庁長官としては皇宮警察に対しましては、他の官庁と協議をするとか協力を求めるとかいうことは、いろいろな官庁に共通のことで、これはできるのでありますが、法に基いて特にこういうようなことをしてもらいたいというようなことを言う権限はないのであります。そのために、それでは両者がうまくいってないかというと、それほどではないのでありますけれども、やはり宮内庁の方の立場からも、この法に基いて所要の措置を皇宮警察に求めるというような条文があった万が、お互いに物事を申し上げていく場合に、より緊密にいくのじゃないかというようなことでありまして、特に最近皇居へおいでになる方で、門を入られる場合に、門で番をしておりますのは皇宮警察官でありますけれども、こういうふうにしてもらいたい、ああいうふうにしてもらいたいということをわれわれの方にいろいろ言ってこられるのであります。宮内庁職員と思って言ってこられるのでありますが、それに対しましては、われわれの方からは特にどうこうということを法に基いて申し上げる権限はないのであります。これは警察庁の系統で、われわれの方からも警察庁に話しておきますが、なおあなたの方からもそのことをおっしゃって下さいというような、ちょっと回りくどいようなことになることが多いのであります。警察の方でも、皇居の警衛その他番のことをやっておられる人に対しましては、最近特に、多数のいろいろな方々がおいでになりますが、そういう人の扱いにつきましては、できるだけ民主的に、皇室と国民の親近感を阻害しないように扱うようにはしておられますけれども、やはり警察の方は治安維持、秩序の維持という警察的な点を強くお考えになりますから、そういうような面に対して宮内庁の方の立場から、またもっとこういうふうにしてもらいたいということを法に基いて言えるようにしたら、皇宮警察と宮内庁の関係が一そう密接にいくとともに、皇宮警察も現代の皇室を守るにふさわしい、よりよいものになり得るのじゃないかというようなことから、そういうような条文を唱えるようになったわけであります。
  116. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、宮内庁長官が必要ある場合に云々で、この警察庁長官に所要の措置を求める。その場合に警視庁所管の警察官の協力がされるということも考えられますね。すなわち皇居の中へ参観者がたくさん入って、いつぞやのようにたくさんの人々が入り過ぎて死傷事件が起る、そういうようなことがある。二十九日にはまた陛下からわれわれ御案内をいただいている。そういう場合には、この一般の人が皇居に入る。そうしてその皇居の中で秩序を維持するのには、やはり皇宮警察のみをもってしては、手がつけられぬ。一般の警察の協力を求めなければいかぬという場合もあるわけでしょう。こういうこともあわせた意味の規定でございますか。
  117. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 この一般の警察の、たとえば警視庁の方に対してこういうふうなことをしてもらいたいとかなんとかいいます点につきましては、これは従来と同じでありまして、今度のこの条文とは直接関係はないのであります。今度の条文のは、皇宮警察に対して所要の措置を求めるということだけなのであります。ですから、一般警察に対しましては、従来もこういうことがありますから、どうぞよろしくというようなお願いをしておったわけであります。これは同様であります。皇宮警察に対しましては、こういうことでありますからどうぞよろしくというよりも、もっと進んで、所要の措置を求める。指揮命令ではありません。所要の措置を求めることができる。こうした方が、あの中で一緒にやっておるものには、より円滑にうまくいくだろうという趣旨でありますから、警視庁に対しては、この条文の適用はないのであります。
  118. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、皇宮警察の所管について、宮内庁長官と、警察長庁官との権限の及ぶ限界線はどういうところでありますか。
  119. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 皇宮警察は、警察庁長官の指揮下にありますから、従って警察庁長官の権限は、ずっと皇宮警察のおるところは全部に及ぶわけであります。警察庁長官の部下であります。警視庁はやはり東京都を管轄しておられます。それは別ですね。宮内庁といたしましては、皇宮警察に対しましては、今までのところ法律による権限は何もないわけであります。宮内庁の管理いたします地域は、皇居その他皇室用財産——皇居とか、御所とかそういう地域内の管理をするということですから、宮内庁としては皇宮警察が分担しておりまする地域と同じ地域の管理権を宮内庁も持っておりますが、これは警察権でなくて、普通の管理権であります。
  120. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、皇宮警察においては、宮内庁長官としては何ら支持権もなければ、もちろん命令権はないわけでしょうが、何らこれに対して制限を加える権限は全然ない。別個の存在として、同じ区域内で両方の機関が対立しているわけですか。
  121. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 もちろん指揮とか指示をする権限は全然ありませんので、同じ地域に一緒に協力して仕事をしておるというのが現状であります。その現状ではどうも不十分だということで、所要の措置を求める。これは求めるというのは、指揮でもなく指示でもありませんが、しかし単に協力をお願いするよりも、幾らか法的根拠があるわけで、つまりそういうような条文を入れることによって、この皇居内の皇宮警察の活動についても、宮内庁長官の職務を遂行するに必要な範囲内において、所要の措置を求めることができるように改正をしていただきたいというのが、この条文であります。
  122. 受田新吉

    ○受田委員 よくわかりました。今までは皇宮警察に対しては宮内庁長官として何らこれを利用する措置がなかった。それで今度それを警察庁長官に連絡して与えてもらうようにするという意味なんですね。  それで第二点は、今の問題は同じ区域内におって、たとえばどろぼうが皇居の中へ侵入したというときに、皇宮警察の所管と警視庁の所管とで、境界線でいろいろな争いも起るだろうと思うわけですが、皇居の岸辺のみぎわまで警視庁、それからみぎわを越えて岸へどろぼうがはい上ったら、そこが皇宮警察の所管になる、こういうようなことで、私自身としては警視庁と皇宮警察というものの連絡の方をきわめて密接にして、しかも皇宮警察そのものに対しては——宮内庁としては同じ区域にある警察業務をつかさどっている人々に対しては、ある程度の権限委任を私はしてもいいと思う。こういう連絡などということでなくして、むしろ権限の委譲というものを考えた方がいいんじゃないですか。この点をお伺いします。
  123. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 権限の委譲といいますと、警察庁長官が皇宮警察、警視庁、両方を指揮監督しておりますが、その警察庁長官の警察官を指揮監督する権限の一部を委譲したらどうかという御趣旨かと思います。そうしますと、その範囲において宮内庁長官も警察権を持つというようなことになりますから、宮内庁も、以前宮内省といっていた時分は、宮内大臣が皇宮警察を指揮命令しておったわけで、皇宮警察は宮内省の中にあったのです。終戦後宮内庁と変り、宮内庁というような役所で警察権を持たない方がいいだろうということで、民主化の趣旨からも離したわけですから、一部のそうした警察権の委任を受けるということも適当であるかどうか。終戦後に改正になった趣旨から考えまして疑問に思いますので、よく考えないといけないように思います。
  124. 受田新吉

    ○受田委員 私が権限の委譲ということは、皇宮警察の権限の根拠は、もちろん警察庁が持っている。しかしながら内部において宮内庁職員の間におけるいろいろな争いのために公序良俗に反するようなことがあって、これの処分をせにゃいかぬというようなときには、警察庁長官の指揮下に置くよりは、そういうふうに取扱いの対象が皇居内部における職員であり、場所が皇居内部であるというような場合には、皇宮警察の指揮に対して宮内庁そのものがある程度の権限を委譲せられろというような方法にされても、決して私は警察の民主化には逆にならぬと思います。この点は研究問題だと思います。  それで第三点に入りますけれども、侍従次長を今度作られたわけでありますが、これは従来は宮内庁だけの内部の何かの規則でやったわけなんですね。それを今度は正式に侍従次長という地位を置いて、しかもこれに匹敵する地位が、たとえばあなと同じ宮内庁次長とかいうようなはっきりした地位と匹敵するように認められたわけですか。
  125. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 侍従次長は終戦後の改正で、宮内庁内部の訓令でその侍従次長という名称が認められておったのでございます。しかし部局の、特に次長という性格のものでありますから、やはり法律できめて責任をはっきりしておく方がほんとうであるというふうに考えられまして、今度法律の中へそれをうたったわけであります。現在もいるのでありますが、その現在の待遇と何も変らない、待遇も現在のままでありますけれども法律にはっきりしてその責任を明確にしていった方がこの組織の合理化の上によかろうということでそこへうたったわけであります。
  126. 受田新吉

    ○受田委員 それでは大体内部の部局の立場からの名称ということですね。依然としてその点には変りない。待遇も変らぬ。それから地位も別に変ったわけではない、今まであまり陰の方に置かれたのが日陰のカツラでも気の毒だから、一応表面に出そうというようなあたたかい心づかいをされた結果の名称である、さよう心得てよろしゅうございますか。
  127. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 まあ大体そういう趣旨でございますが、しかし要するに責任をはっきりするにはやはり法律ではっきり明記して、そしてさらに責任を十分に果してもらうということで、あるいはおっしゃるようなあたたかい気持という、これもあると思います。
  128. 受田新吉

    ○受田委員 侍従長の任命は天皇が認証するということになっております。これは認証官でございますね。認証官ということになると他の公務員の認証と同等の取扱いを受けている地位にあると了解してよろしゅうございますか。
  129. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 さようでございます。
  130. 受田新吉

    ○受田委員 そういたしますと侍従長の地位と宮内庁長官の地位との関連はどういうふうになりますか。
  131. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 侍従長は宮内庁長官のやはり指揮監督のもとにあるのでありまして、宮内庁長官と並列でなくて宮内庁長官の下にあるのであります。
  132. 受田新吉

    ○受田委員 宮内庁長官も認証官ですね。従って認証官である宮内庁長官が認証官である侍従長を指揮監督する、こういうことになるわけでありますか。
  133. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 さようであります。
  134. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、侍従長は常に側近に奉仕しているものであって、天皇のおそばでいろいろな仕事をされる関係上、宮内庁長官が指揮監督するのには、あまりにも御遠慮せなければいけぬような事態が起りませんか。
  135. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 この側近に奉仕をするということも宮内庁の事務の一部でありまして、従ってそういうことのよしあしにつきましては宮内庁長官長官としてやはり責任を負うわけであります。従って側近に奉仕をされるそのやり方について、こういうふうにしてもらいたいとか、ああいうふうにしてもらいたいということを主張し、なお侍従長はその部下を指揮監督するのでありますから、その指揮監督について、こういうふうにしてもらいたいというように指揮をすることは、現在でもやっておりますし、それがやはり宮内庁として全体の統制をとっていく上には必要なことと思います。
  136. 受田新吉

    ○受田委員 侍従長がその職にとどまるに適切でないと認めた場合には、宮内庁長官はこの侍従長を罷免することができますね。
  137. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 これは宮内庁長官が任命しているのではありませんが、たしか内閣総理大臣だったと思いますが、宮内庁は総理府の外局なんですから宮内庁長官の上に内閣総理大臣がおられるわけです。それで内閣総理大臣にその旨を話して、場合によってはそれをかえていただくということもあり得ることであると思います。
  138. 受田新吉

    ○受田委員 もうしますと、侍従長は宮内庁長官の指揮監督を受ける、しかし罷免権はない。自分の直属の部下である侍従長を罷免できないということは、これはどうも指揮監督下の行使の立場からはなはだやっかいだと思うのです。指揮監督する立場の人は常にその部下に対して指揮権の発動ができると思うのでありますが、どういう形になっておるか。いずれも認証官であるという意味でそうなっておるのでしょうか。
  139. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 指揮監督をしている場合に、指揮監督を受けておる者を指揮監督をしている人が、必ず罷免する権限がなくてはならないというふうに役所の組織ではなっておりませんで、たとえば私宮内庁次長をしておりますが、私の指揮監督のもとに部局長、課長があるわけでありますが、その任免は宮内庁長官がやっておるわけでありまして、次長は部下を指揮監督する場合に上司を助けて、上司の命を受けて指揮監督するということになります。従ってその指揮監督の立場から長官意見を上申してそこで考えてもらう。宮内庁でありましたら宮内庁長官内閣総理大臣のもとにありますから、内閣総理大臣に話をされて適当に考えられるのだろうと私は思います。
  140. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、もちろん指揮監督権の行使は直上の上官が直接の責任を持つ場合もあるし、また具申する場合もあるでしょうが、宮内庁という役所は宮内庁長官が最高責任者です。あなたのように宮内庁次長としておられても、それは宮内庁長官がやられるのは当たり前の話であって、宮内庁の職員であって、しかも宮内庁長官が指揮監督をしている部下を宮内庁長官が罷免できないというのはこれは問題だと思う。すなわち宮内庁という役所以外の役所となれば、もう内閣総理大臣ということになるわけでしょうが、宮内庁職員の中で内閣総理大臣しか罷免権が発動できないのは侍従長がただ一人。もちろん宮内庁長官もこれに入りましょうが、この点内閣総理大臣が羅免をするということになっておりますか。それは間違いありませんか。
  141. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 その点ちょっと調べてもらっておりますが、現在内閣総理大臣の宮内庁に対しまする関係は、重要な事項については宮内庁長官内閣総理大臣に報告をして、ものによっては総理大臣によってきめていただく。総理府の外局でありますから、従って平生のことは宮内庁長官で切り盛りいたしておりますけれども、すべてそこが最高の責任者というものではなくて、宮内庁に関しては最高の責任者といいますと内閣総理大臣、普通のことについては宮内庁長官というふうに考えております。そういうふうにできておるわけであります。
  142. 受田新吉

    ○受田委員 宮内庁長官が宮内庁部内の職員を全部指揮監督する権限がある、ところが宮内庁長官という一つの役所の長官が自分の役所の中で自分が罷免できない者があるという、ここに問題があるというのであって、直接の上の課長、部長とか指揮監督がある者が云々というのではなくて、その役所の中のすべての指揮監督の最高責任者が長官である場合の例を言っておるわけです。だからあなたは宮内庁長官を助けて、部内の人事においてもあなた御自身のいろいろな協力によって長官がなされると思うのであります。従ってあなたも侍従長を罷免したらいいかどうかの知恵を宮内庁長官にいろいろと申し上げて、宮内庁長官の了承を得るという、まことに得がたい有力な地位にいらっしゃるのじゃないかと思うのです。こういうところを明らかにしていただかないと、侍従職というような宮内庁長官の下におる存在を、その役所の最高長官でさえ処分することができないということは問題だと思います。これはきわめて大問題だと思うので、一つ御回答願いたいと思います。
  143. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 今条文の厚いものを持ってきておりませんので、第何条によってこうと申し上げられないのを相済まぬと思いますが、私の記憶によりますと、たしか内閣総理大臣だったか、内閣の方の任命であります。そういう形のものでありますが、指揮監督権はもちろん宮内庁長官が持っている、そういうことであります。
  144. 受田新吉

    ○受田委員 それを明瞭にしていただくために、この法案は次の機会に御回答があるまで保留しておきましょう。これはなぜかというと、侍従長の下で命を受ける立場にある侍従次長というものがここに置かれることになるので、侍従職を規定した重要な法案でありますので、そこを明確に願いたいわけです。
  145. 細田綱吉

    ○細田委員 ちょっと関連。侍従長というのは戦前は親任官でございましたか。
  146. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 終戦前は親任官であります。
  147. 細田綱吉

    ○細田委員 終戦後宮内庁の組織が非常に簡素化され、国会に対する地位も違ってきたのでありますが、これは今までの経験に照らして侍従長を認証官にしなければ、どうしても不便であったというようなことがございますか。
  148. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 侍従長は陛下の側近に奉仕する仕事をしておられまして、重要な仕事をしておられるとともに、特に陛下との非常に密接な地位において仕事をしておられますので、天皇が関与されない形での任命された方では不適当だろうということで認証官になっておると思いいます。
  149. 細田綱吉

    ○細田委員 これはややもすると独立して、陛下側近のもとに前の内大臣制度の復活というようなことも考えられる。形の変った内大臣制度になる。ただ陛下の側近だからというだけで認証官に昇格するということが私にはのみ込めない。言いかえれば侍従という職業は、官制を見せんからよく知らないが、陛下の側近に奉仕して御用を足す役割である。従ってその人を認証官にしなければ不便だということは私はわからない。その点を一つ明確に願いたい。
  150. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 侍従長の関係は、戦前を申しますと宮内大臣、内大臣、侍従長、式部長官、宗秩寮総裁、そういう人が親任官であったわけであります。戦後はずっと縮小して二人になっておりますが、主として戦後は侍従長がやはり認証官であった方がいいとわれわれが感じますのは、外国の国賓その他使臣がよく見えます。それから大使、公使もよく見えますが、そういう場合には侍従長がまず接します。陛下がお出ましのときは侍従長がついて出ますけれども、そういう場合にやはり相当の人がついておりませんと、その方に対する扱い方が何か若ぞうが扱っているというふうにとられないためにも、やはり相当な方が侍従長として仕えていただいた方がいいということを感ずる点がわれわれも多いのであります。確かに認証官であった方が相当な人を得ることもできますし、そういう点でそうなっていると思います。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 これは問題が多くありますので、どうしても次に残りますが、宮内庁関係は今までみんながこれをよく検討していなかった結果、積弊が一ぺんにたまったわけです。そこに問題があったわけなので、次の第四の改正要点でありますところの京都事務所、正倉院事務所、下総御料牧場等ではその責任を明らかにするために、今度これを宮内庁の付属機関としたという話でありますが、これらは同格に取り扱われているわけでございましょうか。
  152. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 別に同格に扱っておりません。京都事務所はこの中では一番大事なところであり その所長も一番地位の高い人がやっているのでありますが、法律で書き並べていく場合にも、それで京都事務所が一番先に書いてありますが、別に同格に扱っているというようなものでありません。
  153. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、京都事務所の所長と下総の御料牧場長ですか、その責任者の地位の差等はどういうふうになっておりますか。
  154. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 京都事務所には一般職の国家公務員で、現在十三級の人がやっております。下総の御料牧場長は去年までは十二級職でしたが、これは技術者の相当古い方で、最近十三級職になった方であります。正倉院事務所長は十二級職でありますが、正倉院事務所とか、御料牧場の責任者は技術的な人がやっております。京都事務所の方は事務的な人かやっているわけであります。
  155. 受田新吉

    ○受田委員 正倉院というのは、これは奈良朝時代に聖武天皇の御物その他が保存されているところで、これは文部省の所管からいっても重要な文化財のあるところなんです。これは今まで一般に公開されていない皇室の特別の機関であった関係上、また今度も宮内庁の特別の付属機関としまして取り上げられておりますので、一般の者の観覧にも非常に不便を来たしている。しかしこれを焼いては大へんなのであるから、一年に一ぺんの虫ぼしも心してやっておられるというような状況でありますが、正倉院というような文化財、国として将来長く保存して祖先の残した遺物を子孫をして敬仰せしめる、こういう大事な機関は、一方においては宮内庁の付属機関として大事にすると同時に、一方においては大衆にも親しみをもってこれを観覧せしめる便宜も必要だと思うのですが、そういうところの事務は、いささか神がかり的な御物として、一般の人にはめったに見せないというような取扱いがなされておるのでありますが、この取扱いについて御考慮いただくことはできないでしょうか。
  156. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 正倉院の御物につきましては、毎年十月の下句から十一月にかけまして虫ぼしをやりますが、その虫ぼしの期間に蔵のかぎをあけますが、そのときに特別の研究をなさる方、それから特にそういう面に関心の高い特別のごく少数な方には、蔵の中まで入って見ていただくようにしております。その他一般の方に一々入られますと、中に入っているものがいたむわけでありますし、ほこりもたちますし、建物自体も非常に大事な建物で、いたんでもいけません。入っているものがいたんでももちろんいけませんので、その期間その中の御物になっておりまするものを、毎年点数でいきますと相当の数、百数十点と思いますが、これを奈良の博物館に持って参りまして、奈良の博物館で一般の方にお見せをしておるわけであります。全部を一ペんにというわけにはいきませんが、毎年少しずつ、ことしはこういうもの、来年はこういうものというふうに分けまして、その期間奈良博物館で一般の方にお見せしておるのであります。趣旨からいえば、ごらんになりたい方には、できるだけたくさんの方にお見せした方がいいのですが、御物は世界的な宝物でありますので、これをいためないようにということも十分考えなければいけないものですから、その両方の調和点を考えて現在そういうような措置をとっております。
  157. 受田新吉

    ○受田委員 残余の質疑は次回のこの委員会ですることにしてこれで終りますが、最後の質問は、天皇のお墓、陵墓の取扱いというものは、これは一応歴史的にも価値のあるものもあり、またある程度国民の中には、特殊の信仰的に考える人もあるわけでありますが、最近陵墓は、全国を通じて荒れに荒れておる傾向のように伺いますが、この歴史的な価値、あるいは一部の国民の信奉者に対する配慮というような立場から、どういうような取扱いをなされておるかをお伺いしたいのであります。
  158. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 陵墓は歴代の御陵百十一、それからその他皇后、北朝の天皇なんかが七十五、それが御陵ですが、ほかに以前の皇族の方のお墓も約六百数十ありますか、そういうところにつきましては、宮内庁の書陵部の方で管理し、お世話をし、守っておる。現地には陵墓職員が駐在いたしております。陵墓職員が百数十名になりますか、それがそれぞれのところに分かれまして、お世話をしておるのであります。荒廃をするというようなことのないように、予算の許す範囲でできるだけ——たとえば特に大事なのは、陵墓によりますと、ずっとお堀がめぐらしてあるのがありますが、お堀の堤がいたんだりしまして、そこが破れますと、付近の一般の住民の方に洪水の災いを及ぼすようなおそれがあってはいけませんから、そういうような点については、常に係の技師が回りまして、そういうことのないように、小さい間にこれを直すというような措置をとり、荒れたところにつきましては、予算の許す範囲におきまして、できるだけこれを修理いたしておりますので、この陵墓につきましては、皇室の御祖先のお墓であるとともに、文化財的にも、文部省の方の関係で文化財保護委員会の関係でも関心を持たれておりますので、そういうような点も考慮して、予算の許す範囲では、できるだけ荒さないように努めておるわけであります。
  159. 受田新吉

    ○受田委員 そこで一例を申し上げますと、下関の赤間宮のそばにあります安徳天皇の御陵です。この安徳天皇の御陵はお気の毒であります。そばの春帆楼が料理屋になりまして、安徳天皇の御陵はすぐ下にひっついておるのですが、もう二間か三間くらいのところで盛んに飲み食いをやって、安徳天皇の御陵のところには汚物が流れ出るような状況です。いま週刊朝日にも昨年の九月ごろから「新平家物語」というのであすこが書き立てられておりましたけれども、少くとも国民の象徴として、憲法第一条に保障されておられる陛下の御祖先という意味からは、安徳天皇の御陵が料理屋の軒先に醜態をさらされておるということでは、大へんお気の毒だ。特に悲運の天皇として、御裳濯川の流れ絶えせずして壇の浦に沈まれました安徳天皇のお墓としては、大へんわれわれはお気の毒に思う。西陣わずかに残る地域になると、中央の威令が行われないというところがあるのじゃないか。この点につきましては、十分現地を御調査なされて、お隣の料理屋と安徳天皇のお墓との間の関連をよく御調査されまして、しかるべく御処置あらんことを希望いたしまして、次会に質問を留保しておきます。
  160. 山本粂吉

    山本委員長 本案に対する残余の質疑は後日に譲ります。     —————————————
  161. 山本粂吉

    山本委員長 次に国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案(黒金泰美君外一名提出衆法第一九号)及び国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案受田新吉君外五名提出衆法第二三号)の両案を一括議題といたします。  ただいま国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案(黒金泰美君外一名提出衆法第一九号)に対し、石橋君及び大平君より修正案が提出せられております。この際石橋君より提案の趣旨説明を求めます。石橋君。
  162. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 黒金泰美君外一名提出国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案の理由を説明いたしたいと思います。  まず最初に修正点の要旨を申し上げたいと思います。  本法律案によりますと、第一条の支給地域に関連いたしまして、大体内閣総理大臣が定める地域が十三県に限られております。これを一々青森県、岩手県、秋田県といったように例示することなく、内閣総理大臣の定める地域というふうにしてしまおうというのが一つの修正点であります。  それからもう一つは、本案によりますと、世帯主である職員に対しては薪炭手当を四千五百円、その他の職員に対しては千五百円支給しようというふうになっておりますが、これをそれぞれ五千円をこえない額、それから千七百円をこえない額というふうに、金額を修正したいというふうに考えておるわけでございます。  以下日本社会党並びに自由民主党共同にかかる修正案の内容を申し上げます。   国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   第一条第三項の改正規定を次のように改める。  3 北海道以外の地域で内閣総理大臣の定めるものに在勤する第一項に規定する職員に対しては、予算の範囲内で寒冷地手当とあわせて薪炭手当を支給する。   第二条の改正に関する部分中「薪炭手当の額は、」を「薪炭手当は、」に、「四千五百円、」を「五千円を、」に、「千五百円とする。」を「千七百円をこえて支給してはならない。」に改める。   第三条の改正に関する部分を次のように改める。   第三条第二項中「及び石炭手当」を「石炭手当及び薪炭手当」に改め、同条第一項を削る。  なお本修正案施行に要します経費は約二千二百方円であることを付記いたします。  以上修正案を提出いたします。
  163. 山本粂吉

    山本委員長 これより黒金泰美君外一名提出衆法第一九号、同法案に対する石橋、大平両君提出の修正案及び受田新吉君外五名提出衆法第二三号の三案を一括して質疑に入ります。質疑はありませんか。——なければこれを省略するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 山本粂吉

    山本委員長 御異議なければさよう決します。  次に国会法第五十七条の三により、黒金泰美君外一名提出衆法第一九号、同法案に対する石橋、大平両君提出の修正案及び受田新吉君外五名提出衆法第二三号について政府より意見を求めます。田中政府委員
  165. 田中榮一

    ○田中(榮)政府委員 ただいま議題となっておりまする法律案につきまして、政府側意見を述べさせていただきます。  かねてから寒冷地におきまする国家公務員側から薪炭手当の要求があったのでございますが、政府といたしましては現在公務員制度調査会の答申に基きまして公務員制度全体の改正を計画いたしております。総合的に公務員制度をより合理的なものに改むべく、現在内閣の公務員制度調査室において鋭意検討中でございます。寒冷地手当及び石炭手当につきましては、答申にも示されたごとくにこれを総合的に整理いたしまして、これを簡素化する方針のもとに現在検討中でございますので、この際新たに薪炭手当を加えるということはさらにこれを複雑化するようなおそれもございますので、政府側といたしましては新設することは好ましくないという見解を持っておるのでございます。それからなお薪炭手当を支給いたそうとする場合におきましては、その地域の確定に際しまして暖房用薪炭を多量に使用しておる地域ということが、いろいろの点におきまして判定がむずかしいのではないかという意味からも、いろいろ紛議を起すようなことはないか、かような点から、これも政府側といたしましてもいろいろ検討はいたしておりますが、まだ実現の運びに至ってないのでございます。さらに薪炭手当の所要額はまだ正確な計算はしてございませんか。現行の寒冷地手当支給地域のうち五級地に支給するものとした場合におきまして、国、政府関係機関及び地方公共団体を通じまして数億円を要するものと考えておりまして、財政負担の点からも政府といたしましては今直ちに賛成いたしがたい、かような見解を持っておりまして、国会法の五千七条の三の規定によりまして、政府側といたしましてはすみやかにこれに賛成することは、非常に困難な事情であるということだけを申し述べさせていただきます。
  166. 山本粂吉

    山本委員長 これより討論に入ります。別に通告もありませんのでこれを省略するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  167. 山本粂吉

    山本委員長 御異議なければさよう決します。  これより採決いたします。  黒金泰美君外一名提出衆法第一九号に対する石橋、大平両君提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  168. 山本粂吉

    山本委員長 起立総員。よって修正案は可決いたしました。  次にただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  169. 山本粂吉

    山本委員長 起立総員。よって修正部分を除く原案は可決いたしました。従って黒金泰美君外一名提出衆法第一九号国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案は修正議決いたしました。  右の結果、受田新吉君外五名提出衆法第二三号国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案は議決を要しないものといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  170. 山本粂吉

    山本委員長 御異議なければ本案は議決を要しないものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました両案に対する委員会報告苦の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 山本粂吉

    山本委員長 御異議なければさよう決します。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十七分散会