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1956-04-04 第24回国会 衆議院 内閣委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月四日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 山本 粂吉君    理事 大平 正芳君 理事 高橋  等君    理事 保科善四郎君 理事 松浦周太郎君    理事 宮澤 胤勇君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       江崎 真澄君    大坪 保雄君       山本 正一君    横井 太郎君       北 れい吉君    薄田 美朝君      茜ケ久保重光君    飛鳥田一雄君       高瀬  傳君    田村  元君       井手 以誠君    稲村 隆一君       辻  政信君    床次 徳二君       西村 力弥君    古屋 貞雄君       林  唯義君    福井 順一君       細田 綱吉君    矢尾喜三郎君       眞崎 勝次君    粟山  博君  出席国務大臣         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         法制局次長   高辻 正巳君         防衛政務次官  永山 貞則君         防衛参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛参事官         (防衛局長)  林  一夫君         防衛参事官         (人事局長)  加藤 陽三君         防衛参事官         (経理局長)  北島 武雄君         防衛参事官         (装備局長)  久保 亀夫君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 四月四日  委員片島港君辞任につき、その補欠として矢尾  喜三郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 四月三日  戦傷病者増加恩給及び傷病年金増額等に関す  る請願中村時雄紹介)(第一七一五号)  関東東山農業試験場高冷地土地利用部等に薪  炭手当支給に関する請願粟山博紹介)(第  一七一六号)  同(本名武紹介)(第一七一七号)  同(笹山茂太郎紹介)(第一七一八号)  同(松浦周太郎紹介)(第一七一九号)  同(井出一太耶君紹介)(第一七二〇号)  同(内藤友明紹介)(第一七二一号)  同(吉川久衛紹介)(第一七二二号)  同(三木武夫紹介)(第一七二三号)  同(竹山祐太郎紹介)(第一七二四号)  同(河野金昇紹介)(第一七二五号)  同(今井耕紹介)(第一七二六号)  同(伊東岩男紹介)(第一七二七号)  元満州国日本人官吏恩給法適用に関する請願  (菊地養輔君紹介)(第一七三六号)  同(藤枝泉介紹介)(第一八一二号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国防会議構成等に関する法律案内閣提出第  八七号)     ―――――――――――――
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより会議を開きます。  国防会議構成等に関する法律案を議題とし、これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。辻政信君。
  3. 辻政信

    辻委員 防衛関係法案審議の際に質問をしようと思っておりましたが、時間の関係でそれができませんでしたので、国防会議法案に関連をさせて若干長官及び当局の所信をただしたいと思います。  第一に長官にお伺いしたいことは、国防会議法案にかけられる日本国防基本方針について長官はどういうお考えを持っておられるかを承わりたいと思います。
  4. 船田中

    船田国務大臣 国防基本方針につきましては国防会議が設置されましたときに十分審議いたしまして立案されることと存じますが、この重大な問題につきましては、すでに辻委員も御承知通りに、自由民主党が昨年十一月十五日に結党されましたときに、政綱として、わが国国力及び国情に相応する最小限度自衛体制整備して、外国駐留軍撤退に備えていく、こういう基本政策を掲げております。第三次鳩山内閣といたしましてはその基本政策に従って政府政策を立てておるわけでございまして、従って私といたしましてはその考え方においてやって参りたいと存じます。すなわち自主的にわが国国力国情に相応する最小限度自衛体制整備するということに専念して参りたいと思います。しかし今日の日本の実情におきましてはそれだけの十分な力がまだございません。従いまして御承知通り日米安全保障条約の規定をもちまして日米共同してわが国土の防衛に当る、こういう体制をとっておる次第でございます。
  5. 辻政信

    辻委員 ただいまの御答弁は、国力国情に相応して自主的な防衛体制整備し、駐留軍撤退を早めるというふうに述べられております。これは一つの見方ではございますが、私は、国防基本方針は、さらに突っ込んでその根本目的をどこに置くかということを明確にしておく必要があると考えるのであります。戦いに敗れた日本人が一人の例外もなく希望しておりますことは、二度と再びこの祖国を戦争渦中に投じてはならない、これはおそらく党派を越えた全国民の心からの悲願であると思います。この国民悲願にこたえることが日本国防基本方針でなければならぬと考えるのであります。そこで、そのためにわれわれとして努力しなければならぬ点はどこにあるかといいますと、私の考えを申し上げますと、第一に自主的な防衛体制を確立して日本から米軍を一日も早くかつ完全に撤退させる、日本戦略的立場が、積極的には他国を脅威しない、消極的には他国から侵されるすきを与えないことであろうと考えます。第二には、暴力革命に対して国内治安を確保しまして、平和で安定した日本を作り、米国に不安を与えない、日米相互の友好と信頼を保持することによりまして、いずれの陣営からも侵略を受けないことが、日本を再び戦争渦中に投じないただ一つの道であると考えるのであります。日米安保条約の前文によりますと、米軍日本駐屯は、日本責任を持ってみずから守り得るに至るまでの暫定的措置であります。日本国防に対する永久の保障では断じてないと思います。これらの点を考えますと、国防基本方針を自主的に決定しなければなりませんが、その点についての船田長官のお考えをもう一度確かめておきたいと思います。
  6. 船田中

    船田国務大臣 ただいま辻委員の御指摘になりましたことは、大体において私は同感を表するものでございます。このわが国土を再び戦火のちまたに投ずることのないようにすることが、われわれの防衛体制整備する基本考え方でなければならぬということもまことにその通りであると存じます。従いまして、自主的にわが国の力をもってわが国土を守るということにいたさなければならないのでございますが、先ほど申し上げましたように、現在の日本国力をもっては、独力をもって日本国土防衛ということの全きを期することができません。従って暫定的の措置として、日米安保条約によりまして、わが国防衛日米共同防衛するという体制を持っておるわけでありますが、日本の実力が十分整って参りますれば、外国駐留軍撤退をしてもらうということは、これは当然であると存じます。ただその時期がいつ来るかということにつきましては、これはなかなか簡単にここで申し上げることはできませんので、これらの問題につきましては国防会議が設置されました暁において、十分目際情勢をも勘案いたしまして、できるだけ国力国情に相応する防衛体制整備することに努力して参りたいと存じます。
  7. 辻政信

    辻委員 次にお伺いしたいことは、自衛隊強化根本方針についてであります。自衛隊任務は直接侵略間接侵略に対し、わが国の平和と安全を守るにありますが、この二つ目的のために、同一の部隊をもってどっちにも使えるように両刀使いにお使いになるというお気持であるかどうか、あるいは異なった編成装備部隊を、区別して整備をなさろうとするのか、直接侵略間接侵略様相根本的に違っておる、その二つの異なる侵略形態に対して一つ部隊両刀使いをやるのか、あるいは直接侵略に対する部隊間接侵略に対する部隊は、建前として別個の編成装備訓練をやらそうとされるのか、その根本についてお伺いいたします。
  8. 船田中

    船田国務大臣 自衛隊といたしましては、直接侵略に対処いたしまして国土防衛をするということとともに、間接侵略に対しましてもわが国の独立及び平和を維持する、防衛するという大きな任務を持っております。今御指摘のように、直接侵略及び間接侵略に対しまして、いわる両刀使いでいくか。ということでございますが、両刀使いという御指摘になりました言葉が、どういう御趣旨であるか、私はっきりその言葉意味を理解いたしませんが、自衛隊を育成して参ります方針といたしましては、直接侵略に対しても十分備え得るところの装備訓練をいたしております。そのために相当大きな特車あるいは火砲等をもって装備をいたし、またその訓練もいたしております。しかし同時にその間接侵略に対して、わが国の平和を維持するということについての訓練も決して怠っておるわけではございません。ただその場合におけるこれに対処する兵器につきましては、間接侵略の場合はさような大きな火砲とか特車というものでなくして、むしろ拳銃とかあるいは小銃、さらに機関銃程度のものであると存じますが、そういうものについての訓練も十分今日いたしておるのでございまして、今後におきましても間接侵略に対して間違いのないような体制用意し、また訓練を怠らないつもりでございます。
  9. 辻政信

    辻委員 それではやや具体的に分析して、さらにお伺いしたいと思いますが、将来不幸にして日本が直接侵略を受けるおそれがある場合のことを想定してみますと、その様相は過去における戦争形態と全く異なりまして、誘導弾、または空軍による原爆攻撃に支援をされて、空艇部隊政治経済中心地に降下をする、続いて海上よりの上陸部隊がその占領を確保する、こういう事態が予想されるのであります。今までの戦争形態と変ってくる。これに対抗すべき部隊誘導弾レーダー部隊、それに戦闘飛行隊、それらの戦力を総合した防空戦力というものが直接侵略に対しての最も重要な防衛兵力になるのであります。次いで海上から上陸するその敵を阻止するための用意が必要になって参ります。これがその次であります。アメリカ中古兵器によって陸上自衛隊中心頭数だけをふやす防衛では、とうていこのような直接侵略には対抗できないものと私は考えております。次に間接侵略様相を判断しますと、労働争議が悪化してゼネストになり、重要産業が麻痺し、行政機能は停止し、社会不安から内乱状態になり、外国からの武器が密輸によって補給される、こういう事態に対しまして、国内治安を確保しようとすれば、まず第一に必要なことは何か、それは鉄道通信電源などを守り得る技術部隊平時から準備をなさって、ゼネストに対抗して直ちに重要産業を守り、運輸交通を確保し、社会不安を除くことが先決条件であります。その上に立って郷土自衛するための地域的な自衛組織というものが必要になって参ります。遺憾ながら今日の自衛隊には鉄道連隊もなければ、電源連隊もなければ、通信連隊もない。ゼネストになっても対抗すべき手段がない。それを弾圧する武器は持っているでしょうが、私が述べるのは、重要産業を守り、運輸交通を守り、社会不安を除くための根本的な対応策をこの自衛隊部隊の中に持つべきではないか。いたずらに軍隊の出勤と警官隊の弾圧によってゼネストを押えるというだけが間接侵略を押える道ではないのであります。そういうことを考えると、遺憾ながら今日の自衛隊は、何らの準備用意もないのではないか、こういう感じを持つのであります。すなわち現在の方針で逐次兵力を増強なさっても、そのような軍隊は直接侵略に対してははるかに時代おくれであり、間接侵略には大した役に立たない。防衛庁長官はこの点について率直に現状をいかたにお考えになっているかを承わりたい。
  10. 船田中

    船田国務大臣 ただいま辻委員の御指摘にならそれような様式によって侵略が起ってくるかもしれないということは、その通りであろうと存じます。しかし具体的にどういう侵略が起るかということにつきましては、これはなかなか予想のできないことでございます。従いまして今自衛隊の育成の方針といたしましては先ほど来申し上げておりますように、わが国国力及び国情に相応する自衛体制整備する、そして外国駐留軍撤退に備えていくということを第一に考えまして、従いまして陸上自衛隊におきましては、本年度におきましても一万を増強いたしましてこれを十六万にする。そうして三十五年度におきましては十八万で自衛官を増強して参りたい、かような考えを持っております。それに対しまして辻委員のお考え方では、陸上に少し偏重するのではないかというお考えがあるかと存じますが、しかしこれは米駐留軍撤退に備えるということも勘案いたしますと、まず陸上においてその程度整備をすることが必要であると存じます。装備の点におきましても、米軍供与に待つということからいたしまして、あるいは多少時代おくれであるというような御批評があるかもしれませんけれども、しかしそれは必ずしも私はさようには考えておりません、やはり特車なりあるいは火砲なり、そういうものの供与を受けまして、そうして訓練をするということは、これは自衛隊といたしましては最も必要なことでありまして、不測侵略が起りました場合に備える第一線部隊としては、今日のような装備を持ち、訓練をするということは適当である、かように考えるのでございます。しかし同時に海空の点におきまして十分な装備を持ち、またもう少し力を入れて強化していかなければならぬということについては、今御指摘通り、まことにその通り考えます。しかし海空につきましては、陸上よりもおくれて発足をいたしており、ことに空につきましては、一昨年の七月に初めて航空自衛隊が創設されたというようなことのために、その整備がおくれておりますことは、事実でございます。しかし今お話のうちにもありましたように、将来の侵略誘導弾あるいは航空機による侵略ということも予想されますので、この航空機及び誘導弾についての研究またそれに対応する防衛体制整備するための訓練ということにつきましては、十分力をいたしまして、できるだけ早い機会自主防衛体制整備されることを目途といたしまして、今せっかく努力中でございます。
  11. 辻政信

    辻委員 ただいまの御答弁は大きな点が抜けております。間接侵略、すなわちゼネストに対抗する方法として鉄道連隊通信部隊あるいは電源連隊等作る必要がある。それは外国でも持っておるのです。今全然日本に持っていないです。鉄道がストライキをやって、食糧の配給ができなくなっても政府はなすべき手がないのです。そういうときに、アメリカでもイギリスでも、直ちに軍隊が出動して、民衆に迷惑をかけないで基本の輸送は確保する体制を、平時からとっておる。その部隊が現在の自衛隊に何一つないのです。お作りになる意志があるのかないのか、お考えをはっきり伺っておきます。
  12. 船田中

    船田国務大臣 御指摘のように、鉄道連隊というものは現在持っておりません。しかし今お話の、たとえば労働争議ゼネストに発展をし、そうしてそれが政治闘争になるというようなお話でございますが、労働争議に対しましては、先般もいわゆる春季闘争がかなり激しく行われましたが、われわれといたしましては、ことに政府といたしましては、労働争議には全く中立の立場をとりまして、労働争議治安問題というものは俄然区別をいたしまして、これに対処して参りたい。労働争議が起ったからといって、これを直ちに治安対策として考えるというようなことをいたしておりません。しかしもし不幸にしてわが国治安が乱れて、今御質問のうちにも御指摘のありましたような事態が起るといたしますれば、これはまことにゆゆしき大事でございますので、自衛隊といたしましても、平素からどういうところを守らなければならぬかということについては、できるだけの想定をいたしまして、この防衛体制も整え、またこの訓練もいたしておるわけであります。もちろん米英仏諸国におけるがごとき鉄道連隊あるいは通信連隊を持って、直ちにゼネストというような不幸な事態が起った場合に、これにかわり得るだけの体制整備するということには参りませんけれども、少くとも消極的にこれを防衛する、そうして不測事態を引き起さないだけの用意は整えつつあるということでございます。
  13. 辻政信

    辻委員 私の質問を少し勘違いなさっておるようです。私はゼネストとか労働争議治安出動の形で干渉するということを考えているのではない、また守るということは、破壊に対して消極的に守るという意味じゃないのであります。その機能を停止させないような働きを持つということは、むちゃくちゃな労働争議を悪化させない一つの原因である。それから爆弾を投げることに対して守るということは消極的であります。そうじゃない、そういう運動を起させないようにするための一つのポイントを押える、こういう意味でありまして、陸上自衛隊十八万という頭数をそろえるならば、鉄道連隊二つや三つ持てないことはありません。九州に一つ、大阪に一つ、名古屋に一つ、東京に一つ、北海道に一個連隊、これくらいのものを持っておりまして、そうして青年を集めて機関車訓練とか技術を教えておく。これは除隊後の一つ職業補導にもなる。そうしていよいよ計画的に外国の示唆を受けて、日本鉄道を麻痺させるようなゼネストが起ったら、直ちにとってかわることが、できるのであります。歩兵一個連隊を持つよりも、鉄道一個連隊持っておった方がはるかにいい。これは社会党の諸君は反対をする。反対をするのは、これがおそろしいから反対をする。私は、鉄砲を持って弾圧するというようなことは毛頭考えていない。  そういうことを考えますと、このような技術部隊は決してむだにならない。こういうものを準備しておいて、最悪の場合に備えるということは自衛隊としての責任であります。これはアメリカがやっている。争議がひどくなると、直ちにその部隊が出ていきまして、そういう争議に対して民衆に迷惑をかけないようにしている。そういう着意が必要である。そういうことを考えますと、歩兵連隊頭数をふやすよりも、そのような民衆の生活を守るに足る技術部隊に重点を置かれることが必要である。長官の先ほどの答弁では、アメリカ駐留軍撤退のために陸上自衛隊十八万というものが必要であるという印象を受けましたが、これは間違いだと思います。アメリカ駐留軍は今十万しかいない、しかも陸上は非常に少い。これを撤退させるための条件として、陸上自衛隊の十八万という目標をおきめになったとしたならば、これは筋が違っておると思う。いかがでございますか。
  14. 船田中

    船田国務大臣 前段の御質問につきましてお答え申し上げますが、先ほど答弁申し上げましたように、現在のところといたしましては、消極的に防衛するということを考えておるのでありまして、積極的に鉄道連隊整備し、あるいは通信その他の部隊整備するというところまでまだ考えておりません。しかしこれは、辻委員も御承知通り、戦前と辻いまして、現在は施設部隊が相当できつつあります。今後におきましてもこれを相当強化して参らなければならぬと思っております。また機動力を持っておるジープその他の自動車を相当多量に持っておりますので、鉄道連隊というようなものは持ちませんけれども、もし不幸な事態が起った場合におきまして、これを消極的に防衛する、民心の不安を除くに足るだけの応急措置を講ずるということにつきましては、できるだけの整備をいたしつつあるわけでございます。  それから先ほどの陸上自衛隊十八万を整備するということにつきましては、これは米駐留軍撤退に備える。米駐留軍といたしましては、陸上戦闘部隊がまずだんだん引いて参ります。その米駐留軍陸上戦闘部隊撤退と見合いまして、陸上自衛官の数を相当ふやしておるのでありますが、これは御承知通り、全部志願制度でございまして、いわば現役だけの力しか今日はたよりにすることはできません。従って十八万になりましても、それを全部第一線部隊として使うというわけには参らないのでありまして、それらの点も勘案いたしますと、予備自衛官を二万増強するということにはなっておりますけれども、しかしアメリカのように非常にたくさんの後方部隊を持っておるものと比較いたしますと、わが方といたしましては、第一線に十八万というものを全部使えない現状におきましては、相当程度陸上自衛官を備えるということは、どうしてもやむを得ない必要から出ておることと存じますので、その方針によって今整備しつつあるわけであります。
  15. 辻政信

    辻委員 第三に、民兵制度について若干お伺いいたします。  日本自衛隊建前海外戦場を求めないということが原則であります。アメリカ軍制建前は、戦場海外に求めることを原則として立てております。しかるにかかわらず日本はその海外戦場を求めるアメリカ軍制に模倣しておる点が多い。むしろ私は、スイスとかスエーデンのような軍制に模範をとるべきものじゃないかと考えます。そういう意味から申しましても、民兵制度はきわめて重視すべき価値を持っておるのであります。砂田前長官はこの点について積極的な考えをお持ちでありましたようですが、現長官はいかなる構想を持っておられるかについて承わりたいのであります。
  16. 船田中

    船田国務大臣 今辻委員のおっしゃられる民兵制度というのは郷土防衛隊のことかと存じますが、郷土防衛隊は私も決してこれを軽視しておるわけではございません。ただこれにつきましては十分研究をいたす必要がありますので、本年三十一年度におきましては、これを具体的に検討を加えまして、国防会議ができましたときには、それらの問題もあわせて十分審議をいたしまして、なるべく早い機会に適当な成果を得たいと考えておるのであります。これは決して軽視しておるわけではございません。
  17. 辻政信

    辻委員 先ほども仰せられたように、最近施設部隊のブルトーザーが民間の希望によって農地改良道路建設に積極的に御協力なさいまして国民から深く感謝されておることは、過去の軍隊に見られなかったよい点であります。それをさらに拡充して国土開発の大事業、たとえば全国の縦貫自動車道路建設、そういうものなどに動員をされたならば、その成果は刮目して見るべきものがあろうと考えます。国民信頼を得て軍備に対する認識を改め、建設開発郷土自衛というものを兼ねた独創的な民兵制度が生まれてくるのではないか。鉄砲を持った民兵制度じゃなしに、農地改良に協力し道路建設に協力し、それによって国民感謝の上にみずから守ろうという認識を高めて郷土自衛隊を発足させぬというと、鉄砲の撃ち方を中心にした郷土自衛隊というものは現状には即さない。これは一つの大きな独創的な考え方と思いますが、いかがでございますか。
  18. 船田中

    船田国務大臣 ただいまお話施設部隊を増強いたしまして、そうしてほんとうに民衆の希望するような施設建設することに自衛隊が協力するということは、私はまことによいことであると思います。施設部隊を作るということについては、今後におきましても力をいたして参りたいと思います。ただ現状におきましては、陸上自衛隊につきましても先ほど来申し上げておるような事情もございますので、何といってもまずそれらをそろえる――ただ頭数をそろえるというばかりじゃございませんが、それによりまして日本自衛体制整備するという必要から、現在立てておりまするような計画に従って着々整備をいたしておるのでありますが、しかしただいまお話のような施設部隊は各方面から非常な御要望がございますので、そうしてまたその施設部隊の活動した結果は非常に良好でございますので、これらにつきましても今後財政の許す限りできるだけの力をいたして参りたいと思います。   〔委員長退席、保科委員長代理着席〕
  19. 辻政信

    辻委員 第四に三軍統一の問題、軍という名前をつけると社会党の諸君からまた怒られますが……。陸上自衛隊は生まれてから六年、海上自衛隊は四年、航空自衛隊はまだようやく二つになったばかり、六才と四才と二才の子供であります。個性がまだ固まっておらぬときに将来の大方向を決定しなければならぬと思うのであります。このままで放任しておきますと、自衛隊が成長するに従ってこの三軍の対立抗争というものが激化して参ります。これは自明の理であります。日本敗戦の大きな原因が元の陸海軍の対立にあった。もう一つアメリカにおいてもまた現に陸海空の対立に悩み抜いております。今にしてこの三つの自衛隊を統一の方向に指導いたしませんと、将来に非常な禍根を残す。その第一歩は何かといいますと、陸海自衛隊の服装を統一することがまず第一で、それは補給の点からも経済的である。しかるになぜ陸海空自衛隊アメリカの陸海空軍のまねをした服装をして、日本自衛隊であるにかかわらず異なった服装をしておるか。この服装の点から見ても自衛隊が傭兵的性格を表わしておるといわれても仕方がない、これは予算、法令に大して関係ないことです。その陸海自衛隊の服装を、長官は独自の見地に立って傭兵的性格を抜き、三軍統一の方向に改める意思があるかどうか、それを承わりたい。
  20. 船田中

    船田国務大臣 陸海空自衛隊を統一するかどうかということにつきましては、これはきわめて重大な問題でございますが、それにつきましては国防会議におきましても十分慎重に審議をしてもらうつもりでおります。現状におきましては、現在の今までやってきておりまする方針でやっていくことがよくはないかと私は考えております。これを無理にいわゆる三軍統一というような方式に持っていくことはどうかと思いますので、現状におきましては、今までやって参りましたところをこのまま続けて参りたい、これは御承知通り、イギリスでもモントゴメリー将軍のような人は、絶対に統一しなければいかぬということを言っておられます。しかし陸海空またそれぞれの特色を発揮するというところに軍の強くなるという実情もございます。それらを十分勘案いたしまして、国防会議ができましたときに、その点については根本的に十分検討を加えて、間違いのないようにして参りたいと考えます。
  21. 辻政信

    辻委員 アメリカやイギリスで困っておるのは歴史に因習があるからであります。陸海空軍に古いコケがはえております。日本は生れたばかりの赤ん坊です。そうしてまだ個性が固まっておらない、清純でありますから、それに正しい方向を今から与えておく。アメリカが悩み抜いておる問題、また旧陸海空の対立の弊害をそのまま将来に残すような考え方ではいけない。多少の摩擦があろうと、新しい長官は、その大きな動きを見られまして、これを一本にまとめていくという方向に御決意をなさるべきであって、国防会議ができてからそれに諮ってきめるというのではなくて、国防会議の構成で最も指導的な役割を果されるのはあなたであります。あなたはあなた自身の御見識をお持ちにならなければいけない。私は二度と再び旧陸海空軍の対立を繰り返してもらいたくない。アメリカが困っておる陸海空軍の対立をわれわれは踏みたくない。今生まれたばかりの子供に正しい方向を与えていただきたいということを重ねて要望して次の質問に移ります。  日米の国民感情というものが最近どんどん離れる。その大きな原因はどこにあるかというと基地問題、その感情から来ております。ことにひどいのは、かつて戦争に勝ったものが一方的に戦争に負けたものを裁判したあの市ヶ谷国際裁判法廷の跡に、極東単司令部が今なお君臨をしておる。また三宅坂にはかまぼこ兵舎が残っておる。こういうことを見ますと、国民感情は決していい方向に向かわない。これはアメリカでもまことに考えのない所作だと思いますけれども、日本政府責任をもってアメリカに反省を求められるべきものでなかろうかと思うのであります。日本自衛力が年々増加するにかかわらず、今なお十万の米軍が駐屯をしており、その基地はかえって拡張の方向をたどっておる。これでは日本を守るための軍備ではなくして日本を足場としての対ソ軍事基地であるという観念を国民に与えることは社会党諸君の宣伝を待たないでも明瞭な事実であります。私は自由民主党の立場において、日米両国の友好を希望するがゆえに、政府は勇気をもって市ヶ谷台上の極東軍司令部を沖縄に移すか、少くとも座間に移すべきものである。また巣鴨に抑留中の戦犯があります。これを一日も早く無条件で釈放するという処置、全国民を代表して勇敢にアメリカに要請すべきものじゃないかと考えます。これはもちろん重光外務大臣の所管になるだろうと思いますが、防衛庁長官4七光外務大臣を強力に支援なさって日米の感情を疎隔するような市ヶ谷台上の極東軍司令部、巣鴨の戦犯、この二つを解決すればしこりは解けてくる。もう一つは、基地に関連いたしましてその一例を申しますが、内灘問題は基地反対最初のケースとして内外の耳目を集めましたが、政府は当時の解決方法として三年以内に限ってアメリカが使う。こういうことを約束したはずであります。この四月の末でその期限が切れます。それを確実に実行しないと、また政治に対する国民の不信が爆発をする。こういう事態になっておりますが、自衛隊はそれを受け継ぐ準備をされておるか。アメリカに四月一ぱいで切れるぞということを念を押されておるかどうか、これを一つ、大事な点ですからお向いたしたいと思います。
  22. 船田中

    船田国務大臣 日米の間に国民感情の疎隔があるというようなことでございますが、もしこれがありといたしますれば、まことにこれは遺憾なことでございまして、両者ともお互いに誤解を解くということに最善の努力をいたさなければならないのであります。ただこれにつきましては、従来自由党あるいは民主党の分れておりましたときにおいても、アメリカとの関係についてはっきり国民の前にその真相を示しておらなかったといううらみもあったと思います。攻撃する方は非常に攻撃をされますが、しかしそれを説明する政府の努力も足らなかったのではないかということもあります、しかし今後におきまして、日米間に意見の疎隔を来たすようなことのないようにいたしたい。私も最善の努力をして参るつもりでございます。ただ辻委員のお指摘になりましたように、市ヶ谷の総司令部の移動の問題、あるいは内灘の問題、これらにつきまして、今直ちに辻委員の御指摘のようにすることがいいかどうかということにつきましては、私は十分研究しないとここで確定的な意見を申し上げるわけにはいきません。しかし日米間の感情の疎隔のないようにして参るということは絶対必要なことであり、ことにわが国防衛について日米は共同してわが国を守るという立場にありますので、相互信頼がなかったならば、これはできることでございません。従って相互信頼を裏切るようなことのないように最善の努力をいたして参りたいと存じます。  内灘の問題については、私よりも辻委員の方がよく内情を御存じのことでございまして、これは三年以内ということになっておるようでございますが、しかしその後引き続き米軍が使うかどうか、私といたしましては聞いておりません。これは調達庁の所管であり、また外務省との関係もございますので、今御意見のありました点は十分それを含みまして、関係当局と折衝いたしまして間違いのないようにして参りたいと思います。
  23. 辻政信

    辻委員 次に海上自衛隊につきまして、これは保科さんが専門ですが、私は私なりの常識で特に久保装備局長にお尋ねいたします。昨年の十月ですか、川崎重工業に対して防衛庁が委託研究をさせておりますその中に、耐圧船殼構造の研究、水中標的の水中安定性能の研究、水中標的の抵抗試験の研究、シュノーケル装置構造の研究、ディーゼル機関給排気圧の出力に及ぼす影響、こういうことを見ますと、どうも千トン潜水艦に必要な委託研究を三十年度におやりになったように拝察するのであります。それに間違いないかどうか。
  24. 久保亀夫

    久保(亀)政府委員 お答え申し上げます。三十年度において、ただいま仰せのように水中目標艇の建造に必要な予備研究と申しますか、そのために川崎重工、新三菱重工に委託研究をいたしております。
  25. 辻政信

    辻委員 その予算は三十一年度に計上された三十億の中から出したものですか。
  26. 久保亀夫

    久保(亀)政府委員 三十年度に出しました予算の根拠は、技術研究所の研究委託費という項目がございまして、その中からただいま仰せのような項目についてそれぞれ予算を計上いたしまして、大蔵省の承認を得て建造費以外に委託研究費として出しております。建造費とは一応別でございます。
  27. 粟山博

    粟山委員 私、辻委員質問に関連して一言長官に伺います。労働争議に関して、自衛隊の出動について今長官の御説明がありましたが、長官の言われる通りに、労働争議に関する限りにおいては、きわめて慎重に態度をとるべきであって、容易に出動し得ないことは自衛隊の本質として明らかであります。ただし労働争議が政治的意味を含み、あるいは国際的な関連によるまことに注意を要するような事態が生じた場合、しかもそれが警察官の出動によって抑制し得ないような事態が生じた場合におきましては、国内治安の上から人命あるいは財産の毀損の恐るべき事態も考慮せられて、等閑に付しておられぬ問題と思います。これはそのままにしておくわけにいかない。そういう危急の場合において長官は果してどういうような処置をとられるか。それを伺っておきたい。
  28. 船田中

    船田国務大臣 労働千歳に対しましては政府は中立の立場を堅持いたします。従いまして労働争議がその労働争議目的の範囲内において行われておる場合に、自衛隊が動くというようなことはこれは絶対にございません。しかし治安問題としてただいま粟山委員の御質問になりましたような不幸な事態が起りました場合においては、自衛隊法の命ずるところによりまして、治安出動の規定もあることでございますから、その要件を備えた場合におきましては、治安出動をいたすことがあるのでございます。この治安出動をするのにどういうことをするかということにつきましては、十分用意をいたし、また訓練もいたしておるわけでございます。
  29. 粟山博

    粟山委員 私は長官のその御説明で満足をいたすのでありますけれども、ともすればこれは笑い事に捨てておけないことは、昨日起きた花見の際の民間人と警察隊とのなぐり合い、ああいうようなことについても昨日来きびしい批判がありますが、自衛隊といたしましてはやはり同様に――警察官は警察官としておのずから守るべきところの規定がありその節度があるべきはずでありますけれども、ともすればやはり感覚のずれが生ずるような場合がなきにしもあらずでありますから、自衛隊の日ごろの訓練におきましても、自衛隊の職務というものはいかなる場合においてもいかなる誤まりもあってはいけない、その任務の大なること、国民自衛隊に期待しておりますところの期待の深刻であり、かつまた重大なる任務であることにかんがみましても、常にこういう点において十分、この複雑な問題を簡明に隊員に指導教育される必要があるではないかと思われるか、この点長官に一応伺っておきたい。
  30. 船田中

    船田国務大臣 まことにごもっともでございまして、自衛隊員の教育訓練につきましては、十分自衛隊員の任務を自覚せしめまして、一般市民として教養を積むばかりでなく、その上にさりに身を挺して防衛に当るという犠牲的の精神、また隊の一致協力、団結というようなことにつきまして、一般市民以上に厳格な教育訓練をいたしておりまして、いやしくも世間の指弾を受けることのないように、十分戎心をいたしておる次第でございます。
  31. 辻政信

    辻委員 それでは続いて聞きますか、千トンの潜水艦を三十一年度予算に計上されておりますが、これは何のためにお作りになるのですか。
  32. 久保亀夫

    久保(亀)政府委員 水中目標艇を作ります目的は、警備艦あるいは駆潜艇あるいは航空等の対船攻撃の訓練に目保艇として使うためであります。
  33. 辻政信

    辻委員 演習の標的艦として三十億の税金を使って作るお考えですか。
  34. 久保亀夫

    久保(亀)政府委員 標的と申しましても相当高度の性能、あるいは水中速度あるいは深度等、最近の一流の潜水艦の程度の性能を持つことはどうしても必要ではないか、かように考えておるのであります。
  35. 辻政信

    辻委員 そのために必要ならばアメリカからもらった古い潜水艦「くろしお」でたくさんじゃないですか。
  36. 久保亀夫

    久保(亀)政府委員 演習のための数量、これは一隻以上はもらえない見込みでございます。それから「くろしお」は性能もかなり低いのであります。あれこれ勘案いたしまして計画いたしたわけであります。
  37. 辻政信

    辻委員 そうすると今作るというその設計はアメリカからもらった「くろしお」よりもまさっておるといわれまりか。
  38. 久保亀夫

    久保(亀)政府委員 さようでございます。たとえば水中速力は「くろしお」は約九ノット弱、これに対しまして私ども今計画しておりますのは二十ノット弱、十九・五ノット、それから安全深度は「くろしお」は九十メートル弱となっておりますが、ただいま計画しておりますのは安全深度百五十メートルということになっております。
  39. 辻政信

    辻委員 それは大戦末期における海軍の持っておった伊号潜水艦の性能と比べてまさっておるかどうか。
  40. 久保亀夫

    久保(亀)政府委員 伊号潜水艦のここに承知いたしておりますのは一七六型でございますが、これは大体安全深度は八十、それから二〇一型これが安全深度は五十、水中速度は一七六型の方は八・九ノットですが二〇一型の方は十八ノットということで、安全深度につきましてはかなり差異があるのしゃないかと思います。
  41. 辻政信

    辻委員 それはアメリカが最近最新の潜水艦として作りましたところのアルバコアに比較してどうか伺いにい。
  42. 久保亀夫

    久保(亀)政府委員 アルバコアは全然形が違うのでありまして、トン数もがなり少くなっておりまして、これは別に全然新たな角度で勉強しなければいかぬものじゃないか、かように考えております。
  43. 辻政信

    辻委員 今いい御答弁がありましたが、再新のアルバコアはあなた方の考えておられる古い潜水艦と全く変った観点から作られた世界における最も進んだ潜水艦なのであります。それをまねして作ろうというならわかるが、今まで要らなくなったもう落伍した潜水艦を三十億円を出して作るということは、防衛庁の頭がどうかしておりはせぬかということを承わる。
  44. 久保亀夫

    久保(亀)政府委員 もちろん船に進歩はございますし、新しいものを常に考えていかなければならぬと思います。今日私ども十年の空白を埋めていきまして、最大限度考えられ得るものを考えた次第であります。一方ではいわゆる水中飛行機と称されておりますが、戦争末期に出て参りました日本の小型の潜水艦、これは当時必ずしも全部成功いたしたわけではございませんが、それのアイデア等を――ただしこのアイデアには額面通りの性能は別といたしまして、個々の問題をとらえますと、あるいは電池の問題でありますとか、エンジンの問題とか、いろいろ具体的にございますが、そういったものもあわせて研究に着手して、今のアルバコアの問題もございますが、研究題目としては相当むずかしい、また底の深い問題がたくさんあるのじゃないかと思いますが、それについても三十一年度にあわせて研究には着手したい、かように考えております。
  45. 辻政信

    辻委員 ただいま予算で取った千トンの潜水艦ができ上るのは二年後でありますが、その二年後の世界の潜水艦の情勢というものは、今申しましたアルバコア型におそらく切りかえられる。そうするとあなた方が苦心をして三十億円の金で作ってでき上った潜水艦は、もはや標的艦としての性能はあっても、実戦に役に立たない落伍した兵器になる。それを十分考えなければならない。このアルバコアの問題は昨年の四月一日のアメリカのコリアーズという雑誌に出ておりますが、それにはこう書いてあります。アルバコアは、新しい技術的理論と近代性に対する戦術の見地から、明日の潜水艦の船型と管制方式を研究するために、米海軍で二億ドルの巨費を投じて作られた実験艇で、本発案者のモンゼン少将は、三年後には潜水艦の型はがらりと変り、また水上艦艇等もその用途が全然変ってくるだろうと言明しているごとく、海洋兵器及び作戦に革命を来たすくらい画期的の性能を現わしたものである。その要目は、排水トン数が千二百トン、全長二百四十フィート、乗員四十九名、速力はノーテラス号より早く二十五ノット以上、推進機一軸五枚翼、こうなっておるのであります。アルバコアは、その実験の結果、原子潜水艦より早い現在世界最高速度の潜水艦で、一九四八年に当時アメリカ海軍の作戦部水中戦参謀であったモンゼン少将が発案をして作ったものである。この原理は水中飛行機を主体として作られたものであります。このことは、日本海軍の末期におきまして、浅野宇一郎という機関大佐、帝大の造船科を出た天才的な人がこれを作られた、いわゆる海瀧二十トン型の有翼艦という原理を、アメリカが敗戦のときに日本の実物模型を持って帰って、その独創的な研究に敬意を表して発展させたのがアルバコアなんです。日本海軍が精根して、海面防禦のために六百隻計画をして、三百七十隻はすでに完成をしておった。それを使用せずしてアメリカにその技術考え方を持って行かれた。そうしてアメリカでは新しい潜水艦をその方式によって作ろうとしておる。旧来の潜水艦の構想を捨てようとしておる。それにもかかわらず、日本は十年の空白というような理由で、もとあった落伍すべき潜水艦を新たに作ろうというところに難点がある。急いで作る必要はない。標的艦ならば「くろしお」一隻でたくさんだ。その三十億の金をむしろこのような独想的な研究に振り向けて、その研究が完成したときには、あなた方の作られたものを世界に誇るべきおくれをとらないものにするという考えをもって予算をお使いにならぬと、三十億はむだになるということを私はおそれる。これは日本におていもやかましく取り上げられて、サンデー毎日、及び読売新聞の三月一日に出ております。「陽の目をみる水中飛行機、防衛庁で再び研究、米海軍を驚かした着想」となって出ておる。またモンゼン少将は、この構想を米軍の顧問に伝えて、日本もこれを促進するようにという注意まで与えておる。昨年の防衛庁予算で、砂田さんでありましたか、この研究に百万円の研究費を計上しておいたが、今度それはいつのまにか消えてしまって、そうして古いものを作ろうとしておる。川崎に注文しておるから、やむを得ず船会社の利益のためにこれを取り消すことができないのだ。六百トンに切り詰めても練習用の標的艦としては使えるはずだ。千トンの大きなものに二十億使わなくても、二十億で六百トンができるのじゃないか。そうすれば、あとの十億を新しい独創的な研究費に振り向けるということが当然じゃないか。それについて一体防衛庁はどう思うのか。
  46. 久保亀夫

    久保(亀)政府委員 ただいまお話の出ました水中飛行機の問題でありますが、私どもも当時の関係者からいろいろと公式、非公式にデータをいただきまして、検討はいたしております。ただ私どもといたしまして、部内でもいろいろ真剣に研究をいたしておるわけでありますが、たとえば水中飛行機の右翼による利益といったもの、あるいは、これは辻先生に私が申し上げるのは釈迦に説法でございますが、非常に浮力を要しない、あるいは潜航速度が早いとか、いろいろその面の利益もございますが、ところでこれは一方非常に高性能の電池を必要とする。そういうことで実は今度の千トンを作ります場合にも、電池に非常に大きな問題がございまして、できるだけ千トンを少くしたいというのも、非常にネックになりましたのは、一つは電池の問題でございまして、電池も別途関係の会社に研究を委託いたしておりますが、ようやくそれが地につきかけたといったようなことでありまして、例の水中飛行機につきましては電池が一つのネックになる。非常に軽くて放電率の荷い電池、これは非常に危険を伴うものでありまして、そういったものの研究も、これはもちろんむずかしいからといって、逃げるとかやめるとかいうことではなくて、これは一例を申し上げたのでありますが、非常に問題が大きく深いということで、私どもとしてはこれはじっくり腰を据えて勉強しなければいかぬということで、三十一年度には、これを特殊な大きな項目としてはあげておりませんけれども、潜水艦全体の委託研究費の中から操作いたしまして、数十万円の研究委託をしてじみちに進めて参りたい、かように実は存じておるわけであります。決してそういったアイデアに目をふさいでおるわけではありません。しかし私ども内部で検討してみますればみまするほど、むずかしい問題が多いわけであります。しかも今日のわれわれの到達し得る技術で最大限の性能のものは、私どもの訓練目的からしてぜひほしいということで、この潜水艦の建造をいたしたわけであります。そういった将来への努力ということも含めてたゆまずに勉強はして参るつもりであります。
  47. 辻政信

    辻委員 それはあなたがさか立ちしてもその技術の勉強はできません、専門家でないから……。海軍が敗戦の経験で脳みそを尽してこしらえ上げた考えた考案というものが、日本で見捨てられているうちにアメリカに採用されて、アメリカの世界最強の最新の潜水艦の原理になっているのです。それにアメリカは二億ドルの研究費を出して完成しておるのです。そういう事態をあなた方は忘れて、ただアメリカの古ぼけたものをもらいさえすればいいという安易な考え方で、この予算を使ったら大へんなことになる。三十億の潜水艦を作るよりも、三十億をもってこの研究費に充てる。十年おくれた空白を埋めるために、その出発点を十年前に戻してはいけない。将来の十年先を見通して研究費に充てなさい。こんなものを作って何になりますか。川崎が弄ぶばかりだ。それを取り上げて、もしくはそれを削減して、思い切った研究費を新しい技術に振り向けるということを長官はお考えになりませんか、長官に承わります。
  48. 船田中

    船田国務大臣 三十一年度において潜水艦を一ぱい建造するという予算をちょうだいいたしておるのでありまして、今直にこれを中止するということは考えておりません。しかし辻委員の御指摘になりましたような、最新の科学技術を取り入れた最新兵器で最も有効な防衛体制整備するという上におきまして、そういう科学技術研究するということには十分力を尽して参りたいと考えます。
  49. 辻政信

    辻委員 中止できないのは、川崎重工業と約束されたのですか。
  50. 船田中

    船田国務大臣 いまだどことも約束も何もいたしておりせん。
  51. 辻政信

    辻委員 それから中止して、われわれの言う通り、役に立たぬものに三十億使うなら、それを半分に減らすなり、あるいは千トンを六百トンに減らすなりして、四百トン分のものは研究費に回すということができるはずであります。それができない理由はどこにありますか。
  52. 船田中

    船田国務大臣 今具体的にどういうものをどこに注文するかということは、まだ何にもきまっておりません。まだどこの会社に対しても何らの約束もいたしておりせん。
  53. 辻政信

    辻委員 ただ問題は、川崎重工に干トンの潜水艦に必要な委託研究費を昨年からやっておられるから、口約束があるのじゃないですか。
  54. 久保亀夫

    久保(亀)政府委員 委託研究費は出しております。川崎重工にもいたしておりますし、新三菱にも、若干研究は違いますが、同じ研究委託をしております。ですからそういった研究委託は必要上いたしているのでありまして、今度建造にかかるときに、これは率直に申し上げまして、川崎もしくは新三菱しかないと思いますが、そのいずれにするということは全然きめておりません。
  55. 辻政信

    辻委員 千トン潜水艦を基準にして、作るということを予想して委託研究された費目が上っておる。予算はやっていない、昨年の研究費であるから……。そこでこれを変えると船会社が迷惑するから変えられないのだから、今のようなことを述べると、これは作っても役に立たない。でき上ったときには落伍した潜水艦になる。標的艦としては使えるかもしれないが、標的艦に三十億使うのは惜しいじゃないか。私の論旨は、それを六百トンに制限するとかあるいはそれを中止するとか、損害賠償をやってもよろしい、むだな金を使わずに、新しい技術に対して研究興を思い切って振り当ててもらいたいということを申し上げておる。
  56. 久保亀夫

    久保(亀)政府委員 もちろんどんどんと進歩して参ることでありましょうが、私どもの考え方としては、水中目標艇といたしましてここ数年二十ノット程度の速度を持ち、またこれだけの安全深度を持つものなら、訓練目的に対して、意義はないというふうには私ども考えておりません。もちろんあわせてさらに新しい性能の荷いものを研究はしていかなければなりませんけれども、やはりこの必要に対してはこたえていかなければならないし、またここ十年の空白とたびたび申しますが、電池一つをとりましても、千トンを作ること自体も今日の日本技術では容易ならぬわざであるというふうに、部内の検討の結果判断いたしています。  それともう一つは、先ほど千トンでなく六百トンを作ってはというお考えもございましたが、私どもといたしましては千トンを必ずしも全然固執しておるわけではありません。これは若干トン数を減らしても、二十ノットの速度、安全深度といったもの、それから搭載いたしますものが確保できますならば、千トンというものを絶対というふうに、実は申しておりませんで、むしろもっと少い方がいいのじゃないかということで二年間研究を重ねまして、先ほど電池の問題を申し上げましたが、どうしてもこれだけの性能のものには千トンなければならないという、私ども防衛庁内の技術的結論を得たということでございまして、私どもとしてはもっとトン数を少くしてこの性能が持てるものならば、まだ研究の余地があるというふうに考えております。
  57. 辻政信

    辻委員 あなた方のその役人の頭で考えるから結論が出ないので、海軍の優劣な天才的な技術家があるのですよ。それを呼んで、どうせ苦心をするなら新しいものを創作するためにその苦心は払うべきであって、旧式のものに追いつくための苦心では役に立たないということを申し上げておる。千トンというものはすでに行き詰まっておる。児にあなたは先ほど深度が百五十メートルと言ったが、潜水深度百五十メートルでは近代戦はだめだ。三百メートルまで進めなければならない。あれではなしに水中有翼艦の構想でいけば、水深三百メートルまでいけるという一つの構想を持っておる。その技術がある。その技術をなぜ率直に取り入れようとしないか。官僚の頭で、古い海軍の艦政本部式な頭で新しい世界の趨勢をこなすことはできませんよ。この問題の起りは海軍の艦政本部の技術者と、それから全く別個の角度から天才的な人がやった技術の海軍内における争いから起ってきておる。そうして終戦末期における六百隻のうち三百七十隻の小型の模型ができて配置されておる。訓練が終っておる。それを使わずにアメリカがペンタゴンに持って帰って、その原理に驚嘆して作ったのが今のアルバコアなのです。アルバコアの潜水原理をあみ出したのは日本の旧海軍の天才なのです。それをあなた方が無視して、旧来の艦政技術家というものを相手にし、そうして元の潜水艦の艦長だけを相手にしてこういう構想を練られてはまずいですよ。ほんとうにあなた方が努力されるのは、金を使ってもいいから世界におくれをとらぬような科学技術に追いつくというところに金と努力を集中してもらいたいということを申し上げる。
  58. 久保亀夫

    久保(亀)政府委員 私どももちろん率直な気持で新しい技術なりあるいはアイデア、そういったものを取り入れるにやぶさかであるはずはありません。でありますからこそそういった関係の方々のお話は十分に聞き、研究もいたそう、またいたしつつあるわけですが、ただ私申し上げたいことは、たとえば今の千トン級のものですと、私承知しているところでは、たしかあれは十六ノットで計画されたけれども、結局最終的には、五、六ノットしか出なかったというふうにも聞いております。電池のことを繰り返して申し上げるようですが、この三百トンの艇でこれだけの出力を持つ電池を装置することはこれ自体容易な問題でないということも明らかなようであります。これは技術的見解に属しますが、現にアルバコアは二億トル、七百数十億円の巨費が使われておる。こういうことを考え合せますと、私どもこういうものを毛ぎらいするなどという気持は毛頭ないのですから、これを率直に取り入れて次の段階を考え勉強する。しかしこの干トンも多少減るかもしれませんが、これは私どもとして今日の技術でも相当大きな到達目標であること、これが必要であるという見解もまた堅持しておるわけであります。
  59. 辻政信

    辻委員 あなた方は過去のいきさつにこだわらないで――私は与党で質問しておるのです。野党で攻撃しておるのではない。与党が良心的な立場であなた方に反省を求めておるのだから、まずいものはまずいと率直に述べなさい。この計画は悪くはないが、そこをよく考えてもらいたい。  次に、小さな問題に質問を転じます。長官は北海道をお回りになりましたが、北海道の隊の将兵の士気は上っておるとお考えになったか、沈滞しておるとお考えになったか、それを伺いたい。
  60. 船田中

    船田国務大臣 私は士気は旺盛であると考えます。
  61. 辻政信

    辻委員 その士気というのは一体どこから出るのですか。
  62. 船田中

    船田国務大臣 これはもちろん教養及び訓練、平素の隊員の任務に対する自覚、そういうようなところから出てきておると存じます。北海道の部隊はもちろん私全部を見たわけでございませんから、その結論を申し上げるのは少し早いと存じますけれども、私も、御承知通り、昭和二十七年の十月以来内閣委員をいたしておりまして、自衛隊もたびたび視察をいたしました。先般一月の末に北海道に参りまして、あの寒い中で訓練をよくやっておる実情を見まして、士気は旺盛なりという結論を得ております。今後におきましても大いに士気旺盛で、自衛隊任務遂行に間違いのないようにしてもらいたいということは、くれぐれも私は総監以下幹部にも申して参りました。また直接隊員にも自覚を促して参ったような次第であります。
  63. 辻政信

    辻委員 この士気というものは訓練と給与からくる。腹が減っては士気は上らないのです。そこでこれは北島経理局長にお伺いしたいのでありますが、東京と北海道と山形のやみ米の値段はわかっておりますか。
  64. 北島武雄

    ○北島政府委員 ただいま急で存じておりません。
  65. 辻政信

    辻委員 それはまことにうらやましいことです。われわれの家庭でもときどきやみ米を買いに行く。東京において買うやみ米は一升百三十五円、安いところで百二十円、山形もしくは新潟では安いのは九十七円しております。北海道は百五、六十円、この九十七円と百二十円と百五、六十円ということが東京と北海道の給与の基準になる。内閣の調査では北海道の物価指数は一〇二だというふうにいっておられるかもしれませんが、ほんとうの状態はそうじゃない。北海道でできるものは安いができないものは非常に高い。にもかかわらず北海道隊員の給与は、たびたび申しておりますけれども、皆さんは上げない。総理府統計局の調査によりますと、物価指数は東京一〇〇に対して帯広一〇三、所得割は東京の〇・一八に対して帯広では〇・二五となっております。この指数については大いに異論がありますが、かりにこれを認めるとしても、北海道の在勤者というものは東京に比較して物価も税金も高い。増俸または減税の処置が当然必要と考えるのでありますが、それを一体長官はどういうふうにごらんになっておるか。
  66. 船田中

    船田国務大臣 北海道の隊員について、辻委員からたびたび同情ある御意見を伺っておることはまことにありがたく存じますが、この問題につきましては今直ちに給与を北海道の隊員について増給するというようなことは、他の公務員との関係上できがたいのであります。従いまして防衛庁といたしましては、北海道の隊員に対しましては官舎を建てるというようなことにつきまして、財政措置のできるだけの範囲内において、北海道に優先的にいたしておるのであります。その他共済関係の方面におきましてもできるだけの処置をとりまして、今御指摘のような物価高、あるいはその他の関係におきまして、隊員の給与が他に比較いたしましてめぐまれておらないということに対しまして、幾らかでもそういう心配のないようにすることに最善の努力はいたしておる次第でございます。
  67. 辻政信

    辻委員 石炭手当は幾らもらっていますか。
  68. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 石炭手当といたしまして、これは他の官庁の公務員と同様であります。六千二百カロリーの石炭三トン、一トン六千五百円といたしまして一万九千五百円であります。
  69. 辻政信

    辻委員 それに対して税金は幾らかかりますか。
  70. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 これは辻委員よく御承知と思いますが、税金は総合したものにかかるのであります。階級別、所得によって違うのであります。私の方の調べによりますと、一等陸尉三号を標準に考えてみますと、俸給の総額が東京におります者が、一年間の支給総額三十八万九千四百円、これに対しまして北海道に在勤いたします者は四十三万二百七十円、これは石炭手当、寒冷地手当の関係でございます。それに対しまして所得税が北海道在勤者が五万九百五十円、東京が三万八千六百五十円それから地方税になりますと、これは地方税でございますので、北海道でも各土地によって迷うわけでございますが、一例として美幌をとりますと、一万四千八十八円、これに対しまして東京は八千二百六円でございます。
  71. 辻政信

    辻委員 そこに問題があるのです。石炭手当を一万八千円もらったばかりに、同じ東京の者に比較いたしますと四十万の所得になる。そこで税金がうんと離れてしまうのです。一万二千円以上違うでしょう。だから石炭手当をもらっても、実質の手当というものは六千円そこそこにしかならない。それで石炭三トンをどうして買えるのだ。私は一昨年からこのことを言っている。石炭手当は税金も課するな、実際にいるのだから所得外にしろ。それをあなた方は実際総合所得に繰り入れるから、その所得の割合が非常に上ってくるわけなんです。実質的に一万六千円もらっているのではない。そういうことをどう思うのか。もっと卑近なことを聞きますが、北海道に在勤しておる営外居住者が、ボーナスをもらったら一番先に買うものは何ですか御存じですか。知っておったらどなたからでもお聞きしたい。
  72. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 これはもちろん各家庭によって違うと思いますが、私の大体推察によりますと、本土の方から北海道に初めて参りましたものは、やはり防寒用の衣服とかなんとか、家庭用の防寒必需品でありましょう。
  73. 辻政信

    辻委員 それではまだまだ北海道の実状を御存じない。皆さんはボーナスをもらったら奥さんと一緒に三越に買いものに行かれるでしょうか、北海道はそうじゃないのです。あの下士官とか低い階級の将校がボーナスをもらったらまっ先に買うのは、北海道では白菜と大根を半年分買ってつけものをつけるのです。半年間の冬ごもりをする野菜を貯蔵する。その白菜と大根の半年分にボーナスの大部分を使ってしまうのが実情なんです。そうしてその次が石炭は高いからまきを買う。まきも市価では手に入らないのです。そこで山の立木を買う。そしてそれを隊員の力で切り出して、隊のジープで運んで安く出す。(「それはけしからぬ」と呼ぶ者あり)それが最近あのようにやかましく言われるのでできない。そこでまきを割る人夫賃はどのくらいかかるかというに、あの一山を割る人夫賃は千円しますよ。その金が苦しいというので、大隊長、中隊長以下の幹部は、午後五時になるのを待ちかまえて、そうしてバスに乗って家へ飛んで帰ってまき割りを手伝わぬとおかみさんにしかられる。残った金で子供の下着一枚も買えたらいい。このような状態で隊員の士気が上るとお考えになったら、長官それはちょっとおめでたいです。腹が減っては士気は上らぬです。そういうことを考えますと、北海道においては第一に隊員の給与は、これは一般公務員も同様でありますが、半年の寒さに対して、東京に住んでおる人にはわからない苦労がある。私は自衛隊の隊員だけを優遇せよと言っておるのではないのです。不便なところで勤務しているのだから――国家公務員全体のレベルを上げていきなさい。防衛庁に勤務しておられる皆さん方は、北海道で勤務した経験のある人はおそらくないでしょう。これはほんとうにお考えにならぬと、ただ観兵式で歩調のとり方がうまいから士気が上っておるということだけではいけない。腹が減っては士気が上らない。  最後に念を押しておきますが、石原前経理局長、これは大いに有能であり、大いに期待されておったのに、さっさと大蔵省に引き揚げてしまった。北島君にも多く期待しておりますが、おそらく二年くらいでまた大蔵省へ帰っていくのじゃないか。古巣を恋いしがるような人ではほんとうの経理局長は勤まりませんぞ。ほんとうに腰を据えてやるつもりか。長官はまたかえないつもりかどうか、その辺を人事の面においてしっかりやらぬと――防衛庁は常に大蔵省の出先機関である。これではほんとうの防衛庁の経理は確立しません。どう考えておられますか。
  74. 北島武雄

    ○北島政府委員 一身上のことにつきましてただいま辻先生から御質問がございました。私は今まで役人を二十三年いたしておりまして、その間官の御命令があればどこへでも行って参ります。私は今までかつてこれに不服を申し立てたことはございません。しかしどんなポストにおりましても、その間におきましてかつて浮き腰で仕事をいたしたことはないつもりでございます。防衛庁に参りますときも、もちろん私は浮き腰でもって、あと足で砂をかけていくというようなことはございません。しかし官の御命令でございますから、私は官吏でございますので、自分一身上の希望がかなえられるものではありません。しかし私は防衛庁におります限りにおきましては、あくまでも浮き足立てて仕事をするつもりはございません。平常の仕事によりまして一つ御判断を願いたいと思います。
  75. 辻政信

    辻委員 次に官舎の問題について、あなたの方から提出された官舎の配当比率を見ると、内局のシビリアンが四四%陸幕三三%、第一線部隊が一二%、平均が一六%。海幕の本部が二八・七%、第一線が一〇・四%、平均が一五・八%。空幕が四三・七%、第一線が一・九%、北海道と内地を比較すると、長官がおっしゃったように、北海道が四五%、内地が一四%になっている。なるほどこれだけ見ると、本部に厚く第一線に薄い。幹部を階級別に見ると、北海道は五百八十名の陸曹クラスが営外居住で、これに対してわずかに九十のむぬ割長屋しかない。これは全体の一六%である、あらためて聞きますが、妻と子供一人を持った二等陸曹の俸給は幾らですか。
  76. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 二当陸曹でもいろいろな俸給の方があるのでございますが、二等陸曹の三号俸で日給三百九十円であります。年間の所得が、東京におきまして十七万一千六百円でございます。
  77. 辻政信

    辻委員 日給三百九十円、月収一万二千円、そうしますとその一万二千円で家内と子供を持った三人家族の八四%が官舎がなくて、高い家賃で下宿しておる。名寄の町でバラック建て一間くらいのもので三千円もしておりますよ。そうすると一万二千円の月給をもらっておる下士官が、三千円の下宿を借りて、九千円であの寒い不便な北海道で、親子三人どうして食っていけるのか。私は二年前から官舎はまず六畳一間のむね割長屋を優先的にやって、これらの下級幹部の薄給者のために作れということを強調してきたが、それがいまだに実行されておらない。これは上に厚く下に薄い。司令部が第一線に優先し、シビリアンがユニホームの第一線より優先しておる。ここだけでは文官優位の原則を実行しておられる。ほんとうの統帥というものは司令部に薄く、第一線部隊に厚く、上に薄く下に厚くすることが統帥の要諦です。逆をいっておりはせぬか。防衛庁はどうです。
  78. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 官舎の問題につきまして、かねがね御配慮をいただいておることは非常にありがたく思っておるのであります。しかし防衛庁全体といたしまして、新らしい役所でございますので、ほかの官庁並みの官舎を持つところに至りますことは、なかなか時日がかかるのでございます。しかもその官舎を建設するにつきまして、部隊が恒久配置ときまりますところが初めの間は少かった。そこで東京とか確定的に役所のありますところを先に官舎を建てていったという事情があります。今御指摘になりましたような官舎の比率は、主としてそういう実情に基いてできておるということが一つ陸上自衛隊はまず北海道について何とか隊員の福利厚生のことを考えてやらなければいけないということで、陸上自衛隊の配当のうちの大部分を北海道にもっていった。そこで第一線部隊における官舎の配当が少かったということはあるのであります。決して意識的に中央を重く、上に重点的に考えるということはないのでございます。それから陸曹官舎についてのお話でございますが、これもわれわれといたしましては、何とかやってやりたいと思うのでございますが、御承知と思いますが、国家公務員のための国設宿舎に関する法律によりますと、官舎そのものは国がその事務の円滑な運営に資する目的をもって作るということになっておるのでありまして、どうしても仕事の必要上官舎が要るというものが優先的に取り扱われざるを得ないのでございます。今後さらに努力しまして、漸次官舎の数をふやしてそういうところにも潤うようにしていきたいと思っております。
  79. 辻政信

    辻委員 次に旅費と交際費について伺いたい。第一線部隊に対する旅費の割当が少いために一佐、すなわち連隊長クラスに相当する幹部がせびろに着かえて三等車でこっそり公務旅行しておるのであります。旅費が足りないために知人や友人の宅に宿泊して旅賢を節約している実情でございます。それを御存じないかどうか。
  80. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 旅費につきましては、大体各省と同じような基準で配当を受けておるのでございますが、ただ入校、講習旅費等につきましては、予算の執行上、予算の総額が十分でないような関係もございまして、実行に当りまして、制限をしておるやに聞いておりますが、しかし三等旅費で一等陸佐の者を旅行させるということはないのじゃないかと思います。宿泊費につきましては、ほかの官庁の職員と同様でございます。
  81. 辻政信

    辻委員 次に交際費の配当について伺いたい。あなたの方から提出された資料によると、長官と内局を含めて年に百五十五万円、陸上自衛隊は全体で百七十二万円です。皆さんが第一線部隊をお回りになって出される一ぱいの紅茶にも薄給の部隊長が身を切ってサービスしておるということをお考えにならぬか。そこで部隊長はこの費用をひねり出すために御用商人の上前をはねておる。汚職の根源がそこに出てくるのです。正直者は質屋通いでどうにか体面を保っておる。交際費全体をふやせとは言わぬが、少くとも第一線部隊部隊長が不自由せぬくらいにはやってやらなければならない。われわれを御招待されることはまっぴらごめんです。そういう必要はない。その点について官房長にお伺いしたい。
  82. 門叶宗雄

    ○門叶政府委員 お答え申し上げます。辻先生からいろいろお話を承わっておりますと、全体に何とかもう少し工夫をしろというお話ですが、こういう費目につきましては、なかなか増額を期待し得ないので、はなはだ残念でございますが、当分これでやっていただきたいと考えておる次第でございます。
  83. 辻政信

    辻委員 次に兵器について簡単に伺います。歩兵の中隊に配当されておるカービン銃、ライフル銃、これをある隊について私が調べたところによりますと、その命中試験は三〇%が廃品同様でたまが当りません。撃っても、音は出るがたまは当らない。残り三〇%がその附近に行く。正確に当るのは残りの三割であります。こういう状態になっておる。アメリカから借りたものがもともと古いのに、それを数年間使っているので、腔線が摩滅しておる、照星がぐらぐらしておる。こういうことで一体どうして任務を達成できるのか。これの更新と、いわゆる携帯兵器その地軽兵器の自給自足について、防衛生産というものに非常な欠陥があると思うが、長官はどうお考えになりますか。
  84. 船田中

    船田国務大臣 防衛生産のことについては今仰せもございましたが、まことに私は遺憾に存じております。この問題につきましては、実は弾薬の製造、火器の修理、補給、営繕につきまして十分今後やって参らなければならぬのでありますが、何分にもまだ防衛生産の基本的な方針及び計画が立っておりません。この問題につきましても目下せっかく検討中でございまして、通産省とも非常な関係がございますので、その方とも関係省の間におきまして研究をいたしておりますので、何とか早い機会にこの防衛生産の基本方針を立てたいと考えております。
  85. 辻政信

    辻委員 時間がありませんので打ち切りますが、最後に一言申し上げておきます。現在の自衛隊は、大にしてはその増強の根本方針から、小にしては交際費、官舎の配当に至るまで思い切って大改革を加えないといけないことがたくさんあります。日本防衛するための客観条件は敗戦前と今日とでは根本的に変っております。それを念頭に置かれて断じて旧軍の復活であってはならない、同時にまた断じて米軍の補助部隊であってもなりません。自主的、独創的新車の建設長官以下全力を傾倒されまして、国民の期待に沿われることを希望しまして私の質問を終ります。
  86. 薄田美朝

    ○薄田委員 関連質問をいたします。私は昨年十月初めに北海道の自衛隊を一週間にわたって親しく実際を視察して参ったのであります。今辻委員質問されたことは大体肯繁に当っておるのでありますが、北海道のような寒いところについては十分考えていだたきたい。まず第一に先ほどありました薪炭のことでありますが、十月というと非常に寒い。それはもかかわらず十一月からでないとストーブがたかれないという状況でありまして、非常に気の毒な状態にあります。ことに兵舎のあるところは、大体町から非常に遠いのでありまして慰安施設などありません。ことにふろに入るくらいがせいぜいその日の一番の楽しみだというのに、ふろをたく燃料も少いので、一週間に三べんとかいうふうな哀れな状態であるのであります。ことに晩などになりますと、電気を節約するというのでほとんどまっ暗になっておって、本などとうてい見るわけに参りません。ある隊では一カ月どのくらいの電気代が倹約になるかというと、わずか十万円だそうであります。そういうのは何か方法があるのじゃないか。一方におきましては、食いものなどについてはずいぶん食わない人があるので、捨てるとか、廃品にするものがある。これはお役所のことですから、流用とかいうことは困難であろうと思いますが、何か新しい考え方で、そういう点を節約して他の経費に回せるのじゃないか。非常に気の毒な状況であります。ああいうりっぱな防衛庁の新庁舎に中央の人が入って、第一線で苦しんでおる人があんな不自由な生活をしておるということになると、これはまことにおかしいのじゃないか。私は庁舎をこしらえるということは反対ですが、そういう点を十分考えていただきたいと思います。ことに今お話がありました交際費ですが、これは哀れです。実際隊員が参りますと、その町の当局者から絶えず招待などを受けます。にもかかわらず、これをお返しするような費用というものはほとんどない。こういうふうな経費は遠慮なく取った方がいい。こういう経費がないから、悪いことをするということになるのであります。必要な経費については十分お考えをいただきたいと思う。それから北海道のような場合には家がありません。発展しつつあるところでありますから、家の借り貨が非常に高い、そのために非常に苦労しているというような状況であります。今お話を承わりますと、全国的に平均をとっておるようでありますが、北海道のようなああいう場所につきましては、一つ十分考えていただかなければならないと思うのであります。中央の方は自衛隊は相当経費もあり、人もどんどんふえるので、景気がいいのでありますが、第一線に行きますと、そういう点に非常に不自由している。ちょうど今お話もありましたので、防衛庁長官におかれましては、どうぞ北海道などの場合については十分親切をもって考えていただきたいと思います。私は大体北海道の自衛隊を回ってみましたが、そういうふうな状況にかかわらず、やはり士気は非常に旺盛で、これなら大丈夫だという感じを深くしたのであります。どうかそういう点につきまして、十分一つ長官初め皆さんのお考えをいただきたいと思う。一応皆さんの御意見を承わりたいと思っております。
  87. 船田中

    船田国務大臣 ただいま薄田委員から御指摘の点につきましては、先ほど辻委員の御質問にお答え申しましたように、われわれといたしまして、できるだけの措置を講じて参りたいと思います。ことにへんぴなところに相当量要な役割を持って配置されておる部隊もございますので、それらに対する給与、待遇等につきましては、今後もできるだけの措置を講じて参りたいと思います。しかし中央が特にぜいたくをやっておるということは、これは絶対にないのでありまして、防衛庁の新庁舎を作ったことも、これは実は今までの越中島の仮庁舎は商船大学の校舎でありまして、どうしてもこれをのかなければならぬということで、一昨年大蔵省に予算を認められまして、そうして建てたのであります。あれも一番安いときに建てたので、坪当り十万円以下でできておるのでありまして、他の官庁に比べますればきわめて簡素なものなのであります。決して中央においてぜいたくをやっておるわけではございません。しかし今御指摘のようなことにつきましては、十分今後も予算措置のできる範囲内において、最善の努力をして参りたいと存じますので、どうぞ地元の御選出の議員諸君もその点を隊員にも伝えられまして、志気をそのために落すようなことのないようにお願いをいたします。
  88. 保科善四郎

    ○保科委員長代理 暫時休憩いたします。午後一時半より再開いたします。    午後零時十四分休憩      ――――◇―――――    午後二時一分開議
  89. 保科善四郎

    ○保科委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長不在でありますので、理事の私が委員長の職務を行います。  質疑を継続いたします。石橋君。
  90. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 本日から国防会議構成等に関する法律案についての審議に入るわけでございますが、まず最初にわれわれといたしまして、この法案に対する基本的な考え方を持っておりますので、それを申し上げておきたいと思います。  その第一は、本法案が明らかに日本国憲法に違反するものであるということであります。本法案の根拠法規となっております防衛庁設置法、これが自衛隊法と同様憲法違反であることはわれわれが従来指摘して参りました通りであります。従って、この根拠法規が違憲のものである以上、これに基いて出されて参りましたものが違憲であることは言うまでもないわけであります。またこの法律によりますと、国防会議国防基本方針あるいは防衛計画の大綱といったようなものを審議するということになっておるのでございますが、こういうことも現在の憲法は認めておらないところであるというふうに考えております。これがわれわれの本法案に対する基本的な考え方の第一であります。  第二として述べておかなくちゃならないことは、この国防基本方針あるいは防衛計画の大綱といったようないわば国防の頭となる問題が処理される機関ができないのに、すでにお役所であるところの防衛庁あるいは実力部隊であるところの自衛隊というものは現存して、先に突っ走っておる。一見何不自由なきかのごとき観を呈しているわけであります。一番中心になる問題を論議し、決定するものができないで、こういう手足の方がさっさと何不自由なく動いておるというところに、私は今後作られようとする国防会議なるものの性格といいますか、無力さといいますか、そういうものを想像することができると思うのであります。現在の日本アメリカとの関係、あるいは日本自衛隊が持っております武器、その他あらゆるものがアメリカの援助に待っておるというような関係からいきましても、いかに国防会議を作っても、こういう基本的な国防基本方針とか、防衛計画とかいうようなものが自主的に決定され得ないということを運命づけられておる。こういうものは作る必要はないんじゃないか。だからこういうものを作る法案審議する必要はないんじゃないかということを基本的にわれわれは考えておるわけであります。以上、二つ基本的な考え方を持っておるわけでございますが、一応百歩を譲りまして、本法案審議に入りたいと考えておるわけであります。前提といたしまして、われわれの態度を申し上げておきたいと思うわけであります。  今申し上げたように、それでは百歩を譲って審議に入るわけであります。が、少くとも国防会議というものが作られる場合に、私たちの考え方としまして、二つの問題点が浮んでくるんじゃなかろうか。その一つは何かといいますと、非常に強力な軍事力という問題について審議する機関であります。この権力の集中というものを排除する、権力の集中を排除して、結局力を抑制する働きを一つ持たなくちゃならない。果してそういう役目を国防会議が果し得るかどうかということ、それからもう一つは、政治というものが軍事に優先するということが、果してこのような構想のもとに作られる国防会議のもとにおいて可能であるかどうかということ、この二つの問題が国防会議についての焦点にならなくちゃならないと私は思うわけであります。そこで、この二つの問題に一応焦点を置きながらいろいろの角度から質問をしてみたいと思うわけでございます。  御承知通り、保守合同以前の旧民主党におきましては、国防会議には絶対に民間人を入れなくちゃならないというふうに主張されておられました。これは改進党の当時から一貫した理論であったと私は思うのです。なぜ国防会議に民間人を入れなくちゃならないかという説明に当りましては、現行憲法のもとにおいて総理大臣が非常に強力な権限を持っておる。また軍事面におきましてもこれに非常に強力な権限が付加されてきておる。これを抑制するためには、総理大臣が自由に罷免することのできる閣僚だけで構成するというのはよろしくない。ある程度の一定の任期を持った民間人を入れておくということによって、少しでも総理大臣の権限を抑制することができればいいんじゃなかろうか、こういうふうな理論づけであったと思うのです。こういう改進党、民主党という旧政党の一貫した考え方の上に立って、二十二特別国会に提案されました国防会議法案におきましては、民間人でいわゆる識見の高い、練達の者のうちから内閣が両議院の同意を得て任命する者五人以内というものを含んだ案が提案されておったと思う。それなのに、同じ鳩山内閣が同じ法案を出してきた今国会においてはみごとに民間人が抜かれております。一体なぜ国務会議の構成の中から民間人を抜いたのか。法案の名前が示しております通り国防会議構成等に関する法律のこの構成ということは、たれを入れるかということが本法案の生命であろうと思うのでありますが、なぜ今国会におきましては同じ鳩山内閣でありながら民間人を抜いたのかということから御質問していきたいと思います。
  91. 船田中

    船田国務大臣 国防会議法案の御審議をいただきますに当りまして、ただいま石橋委員のお述べになりました前提につきましては、私としては全く反対考え方を持っております。すなわち、自衛隊は憲法違反ではない。また防衛庁設置法も憲法違反ではない。従いまして、第四十三条によりまして国防会議構成等に関する法律案を提出いたしましたことは何ら憲法に違反するものではない、かような立場をとっているのでありまして、そのことを一言申し上げておきます。  ただいま問題点としてあげられました軍事力が非常に強大になって、権力集中になるんじゃないかというようなお話もございましたが、これは現在のわが国の憲法及びその他の法制におきましてさようなことは絶対に起らないと存じます。すなわち、政治優先ということはどこまでも貫いていき得るものと考えますし、またわれわれは政治優先でどこまでも貫いていきたい。今後もその方針に従ってやって参りたいと思います。  御質問の民間人をなぜ入れなかったか民間人を入れるということにつきましても、相当の理由はあることと存じます。しかしながらこれにつきましては、また反対の意見もございまして、御承知通り、第二十二国会においては慎重に御審議を願い、その結論といたしまして、ついは民間人を入れないということで、衆議院の決議がなされたのでございます。私といたしましては、この衆議院の御決議の趣旨を尊重いたしまして、今回政府国防会議構成等に関する法律案を提出するに当りまして、民間人を入れないで原案を作成することにいたしたわけでございます。しかし、ただいまお話しのようなことは、たとい民間人を入れない国防会議の構成ができましても、決して御心配のような点は私はないと信じます。すなわちわれわれ国会に籍を持っておりまする者は、政治について十分はっきりした、しっかりした常識を持っておらなければならぬと同時に、防衛というような問題につきましても、われわれは常識としてこれを持っておらなければならぬし、また現在の多数の国会議員の諸君は、これを十分持っておられると存じます。従って非常勤の民間人をある任期をもって国防会議の中に入れなければ、軍事優先であるとか、あるいは権力集中であるとか、あるいは総理大臣の強大な権限を押えることができないというようなことは起らぬと存じます。要するに民間人を抜きましたのは、第二十二国会において十分御審議を願いまして、そしてその結論として修正議決されましたあの原案の趣旨を取り入れまして、そして今回の法案を提出するということにいたした次第でございます。
  92. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 今度の法案から民間人を抜いたのは、前回の国会において示された衆議院の意思を尊重したのだというお話でございますが、今国会におきまして本法案を提案するまでに、この点非常に党内においてもめたということをわれわれ聞いておるわけでございます。またむべなるかなと思うわけであります。当時は自由党が野党の立場にあった。現在はこれが自民一緒になりまして、一つの保守党になっておるわけでございますが、政治的な情勢というものは異なってきておるわけでございます。そういうことを考え合せて、再度御質問をいたしたいわけでございますが、それではこの国防会議の中に民間人を入れようと入れまいと、大して変らないというふうに防衛庁長官はお考えになっておるかどうか。もしそういうお考えを持っておるとするならば、その理由をもう少し詳しく御答弁願いたいと思います。
  93. 船田中

    船田国務大臣 原案を作成するに至る過程におきましては、党内においていろいろ議論もあり、また政府と党との間においてかなり白熱した論議を重ねたのでございます。しかし結論としては、先ほど申し上げましたように、第二十二国会において修正議決されたものをとることが最も適当であるという見解に従いまして、政府としては今回のこの国防会議法の提出をいたすことになった次第でございます。民間人を入れなくとも、先ほど御質問のうちに御懸念になられましたような点は、その弊害を受けることはなかろうと存じます。なお民間人の意見を聞く必要のありまする場合には、第六条の規定の適用によりまして、議員となっておりまする閣僚のほか、他の関係閣僚あるいは統幕議長その他の関係者をも会議に招きまして、そうして総理大臣たる議長は、いつでも民間人の意見を聞くことができる建前になっております。この規定の活用によりまして、任期を持っておる民間人を議員として入れなくとも、その目的とするところは十分達成し得る、かように考えますので、特に任期をつけた民間人を入れるという第二十二国会において提出した原案の趣旨はとりませんで、修正御決議になりましたその案を原案として今回提出するということになった次第でございます。
  94. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 ただいまのような御説明でございますと、二十二特別国会におきましては、さして入れなくともよかった民間人を入れた、こういうことになってくると思う。入れても入れなくても大して影響のないものならば、当時なぜ民間人を入れたのか。防衛庁長官は当時と現在とではおかわりになっておりますが、鳩山さんは依然として総理なんです。そのお方がそう重大な意味もないのに、民間人を当時入れて提案したというふうにわれわれは考えておらない。  そこでもう少し具体的な例をあげながら、それではお尋ねいたしましょう。当時の鳩山内閣考え方というものの中に、国防基本方針とかあるいは防衛計画の大綱とかいうようなものは、内閣がかわるたびにぐらぐら変るものであってはならない、だからある程度の恒久性といいますか、一貫性というものをこういうものは持っておる必要がある、そのためにも、内閣がかわるたびに、結局閣僚がかわるたびに、国防会議の構成がかわるということではこれは困るから、それで内閣の変動とある程度超越できる立場にある民間人というものを入れる必要があるのだ、こういう説明があったと思うのですけれども、この点今度は民間人を抜いた場合に、それでは果して方針なり計画なりが一貫性を持つ、恒久性を持つというようなことについて不十分ではないかとわれわれ思うのですが、その点についてはどういうふうにお考えになったわけですか。
  95. 船田中

    船田国務大臣 私はその点におきましては、民間人が入らない現在の原案の構成においても、決して一貫性が失われるというふうには考えません。
  96. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 考えませんとおっしゃいますけれども、先回は変動があるから民間人を入れるのだという御説明だったわけです。そういう御説明であったから、それでは今度は抜いたから、変動があってもいいのかという疑問が当然出てくる。そういうふうに考えませんとおっしゃっても、それではどういうふうな具体的な手を打たれて、この国防会議法案の中でどういうような防止策を講じてあるからそういう心配はないのだという具体的な例をあげての御説明でないと、ちょっと納得しにくいわけです。私がここで引用しておりますのは、前回の二十二特別国会における鳩山内閣の説明を引用しておるわけでございますから、それが変った情勢なりあるいは防止策なりをお示し願わなくては、信念だけ吐露していただいても、ちょっとこれは信用するわけに参らないわけであります。
  97. 船田中

    船田国務大臣 民間人を入れるということにつきましても、ごもっともな理由はあると思います。しかしながら先般申し上げましたように、第二十二国会におきまして慎重に御審議の結果、民間人を入れない方がよかろうということの結論になりまして、これはまことにその方がごもっともである、こういう結論になりましたので、今回政府が提案するにつきましても、第二十二国会において修正御議決になりましたものを原案として提出するということになった次第でございます、
  98. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 やはり抽象的な答弁をなされるわけで、私は民間人をなぜ抜いたか、なぜ入れたかという形で論議すればそういうことを繰り返すだけになるので、一つずつ例をあげてお尋ねしているわけなんです。結局民間人を入れるという根拠としてあげた中に、国防基本方針防衛計画というものの恒久性、一貫性をねらったのだということがいわれておった。そうすると、民間人を抜くことによって、この点の懸念が新たに出てくるじゃないか、それはしからばどういうふうにして防止されるのか。こういうふうに具体的な例をあげての質問でございますから、同様に具体的な例をあげての答弁をしていただきたいと思います。
  99. 船田中

    船田国務大臣 この前民間人を入れるというときに政府から御説明申し上げましたのは、おそらく国防に関する重要事項を大所高所から、慎重の上にも慎重に審議するというために、民間人の練達たんのうな方をわずらわすことがよかろう、こういうことを御説明申し上げておったと思うのであります。その点につきましては、もちろんその趣旨において、今後も国防会議というものは重大な国防に関する基本方針なりあるいは防衛生産の問題なり御審議を願うのでありますから、その趣旨においては同様でございますが、しかし民間人を抜いたから、今御説明申し上げたようなことが、全然できないかといえば、私はそのことはそうならぬと思います。なお先ほども申し上げましたように、第六条の活用によりまして、必要があればいつでも民間人に来てもらって、そして会議において議長がその意見を聞くこともできることになるのでありますから、特に任期を持った民間人を議員として入れなくとも、御心配になるようなことは起らぬと私は信ずるのでございます。
  100. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 起らないと幾ら船田長官がお信じになったところで、現実はそういかないと思うのです。特に現在は、御承知通り、二大政党の対立時代でございます。かりに保守党から社会党に政権が移ったといたしましょう。根本的に考えが違います。これは一番極端な例でございますが、そういう例をあげないまでも、内閣がかわって閣僚が全部かわる。そうすると、その閣僚だけで国防会議というものを構成しておる限り、これは変ることはあり得るとあなたはお考えになりませんか。その点から、それじゃ確かめましょう。
  101. 船田中

    船田国務大臣 今のように自由民主党と社会党と対立しておりまして、この問題についての根本的の意見が違うということでありますれば、今御指摘のような危険もあるかと思いますけれども、私はお互いに冷静にだんだん論議を重ねて参りますれば、おそらく自由民主党と社会党の間においても、そんなに大きな意見の違いはなくなってくるものと期待いたしております。国防根本方針が、内閣がかわったから急に大変革を来たすというようなことは、おそらくなかろうと思います。また、ないようにして参らなければならぬと存じます。
  102. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 長官答弁はあくまでも願望の域を出ておりません。現実というものを無視されておられると私思いますが、これ以上申し上げましても、具体的な答弁が出ないようでありますので、もう一つ次に例を変えましてお尋ねしてみたいと思うのでありますが、この国防会議というものは総理大臣の諮問機関である、こういうことでございます。そうすると、総理大臣の諮問機関である国防会議の議長これまた総理大臣。これは一体どういうことなのか、私たちだれしも疑問を持つわけでございます。閣僚だけで構成するということになりますと、五人ないし六人ということになるのでございますが、これはインナー・キャビネットというふうな形のものになる。これと閣議との関係は一体どういうふうになるのか、どうしても疑問が生ぜざるを得ないわけであります。防衛閣僚懇談会あるいは戦時閣僚会議というふうな性格のものと大して変らないようにわれわれとしては思うわけでございますが、一体そこのところの関係はどういうことになるのか、一つわかりやすいように御説明を願いたいと思います。
  103. 船田中

    船田国務大臣 内閣総理大臣は内閣の首班として国防の問題についてももちろん最高の意思決定者になるわけでありますが、その内閣の意思を決定する前に、総理大臣が国防に最も関係の深い閣僚をもって組織いたしまする国防会議に直接意見を聞きまして、そしてその答申に基いて、これはまた再び内閣の閣議におきまして国家の意思を決定する、こういう関係になるのでありまして、よその国の例におきましても、この国防会議に似たような国家安全保障会議とかその他の会議を持ちまして、しかもそれはやはり閣僚をもって組織するというのが英米仏等の実情でございます。それらのことを考えましたときに、今後の国防会議の運営というものは、やはりそれらの国の例にもよりまして、一応国防に最も関係の深い閣僚の間におきまして方針をきめまして、そしてそれを閣議にかけて政府の意思を決定する、こういう段取りをとっていくようになると思います。
  104. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうしますと、防衛庁設置法の四十二条によって「国防会議にはからなければならない。」とあるのは、実際には閣議に諮らなくてはならないというのと何ら変らないということになるのではないかと思う。最終的に決定するのは閣議だということになると、これは屋上屋を重ねると申しますか、二重手間をとるというようなことになりはしないかというふうに思うわけでございますけれども、そういうことなんですか。
  105. 船田中

    船田国務大臣 国防というようなきわめて重要な問題であり、しかもこれには相当国際情勢あるいは財政経済というようなことを勘案いたしまして、原案を作らなければならぬわけでありますが、そういう問題につきまして閣議にいきなりそれを提出いたしまして、多数の者で論議するというよりも、まず関係の深い閣僚の間において十分検討を加え、意見をまとめて、そうしてその意見を閣議に提出いたしまして、また再び慎重に審議をいたしまして、国家意思を決定するということは、これは実際問題としてかような手続をとることが、こういう重要な問題については適当である、かような考え方からいたしまして、防衛庁設置法においてもそのことを予定いたしまして、四十二条、四十三条の規定が置かれたようなわけでございます。
  106. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうしますと、この法案の第四条でわざわざ議員として副総理、外務大臣、大蔵大臣、防衛庁長官、経済企画庁長官というようなものを列挙しておるわけでございますが、その必要も実際にはないのじゃないか、その議題に関係のある閣僚がその都度寄って相談すればいい。それがまた一番理想的だということになりはしないかと思う。あなたのおっしゃるように、一番詳しい、関係のある閣僚が寄って、まず下相談をして、それから閣議にかけるのだということになりますと、あらかじめ国防会議の議員たる閣僚というものを列挙しておく必要はないじゃないか。なぜそういうことを言うかといいますと、特に通産大臣が除かれておるからである。昭和二十九年の参議院の内閣委員会で示されました当時の自由党案あるいは木村試案というものには、通産大臣が入っておった。国防会議に諮らなくちゃならない事項として、防衛産業調整計画の大綱というものが明記されておる関係上、これは入るのが妥当じゃないかと私も思うわけです。ところが、この通産大臣が最近ではメンバーから除かれておるというようなことから見ましても、今の程度のとで、最終的には閣議で責任を負うのだ、それまでの一応の草案を作る程度のものだというならば、だれとだれとを議員にするということは明記する必要がないのじゃないか。その都度議題に最も関係の深い閣僚が寄って相談をするというふうにしておけばよさそうなものでございますが、そうなっておらないということはもう少し説明を必要とするのではないかと思うわけです。なぜそういうことじゃ困るのか、そこのところを御説明願いたいと思います。
  107. 船田中

    船田国務大臣 国防の問題につきましては、広く申しますればすべての閣僚が関係ございます。しかしながら、そのうちでも最も関係の深い閣僚、しかもこの国防の問題について、責任を持って原案を作成するということに最も関係の深い閣僚をもって国防会議を組織するということが、国政運営の上においてきわめて適当である、かように考えるのであります。他の国政の上におきましても、たとえば外国為替の予算を編成するということにつきましても閣僚審議会を持っております。そういうような例もございまして、先ほど来申し上げましたように、国防に関するきわめて重要なことでございますので、その問題に関係の深い閣僚、そして、しかもそれが責任をもって方針を決定する、こういう上におきまして国防会議を持つことは最も必要であり、またそれがなければ十分円満な運営は期せられないと考えますので、最終決定は閣議がやるからといって、国防会議は要らないという理屈にはならぬと存じます。
  108. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 一つの例といたしまして、私はなぜ通産大臣を除いたかということをお伺いしたわけです。通産大臣を入れれば農林大臣も運輸大臣も何大臣もということになるからとおっしゃるかもしれませんけれども、少くともこの場合、他の経済閣僚とはちょっと性格を異にしているのじゃないか。というのは、先ほど申し上げたように、国防会議に諮らなくちゃならぬとして明記してあるものの中に、防衛産業調整計画の大綱というものが示されておる。これは絶対に通産大臣を入れなければあなたがおっしゃるような案を作るわけには参らないのじゃないかと思うわけでございます。絶対に国防会議に諮らなくちゃならない事項に最も関係のある通産大臣をも除いておるということは、私といたしましてはだれでもいいのじゃないかという印象を受けますので、お尋ねをしておるわけでございます。
  109. 船田中

    船田国務大臣 ただいまの御意見はまことにごもっともだと思います。そういう点につきましては、方針、企画に関する問題は現在においても経済企画庁長官が由として担当いたしておりますので、経済企画庁長官はこの議員の中に入っておるわけであります。なお、ただいまお話のような、通産大臣が防衛生産の計画、調整等に非常に大きな役割をするということにつきましては、御意見の通りごもっともでございまして、その点につきましては、必要があれば第六条の適用によりまして、十分通産大臣等の意見を聞きまして国防計画あるいはその他の重要施策を決定することに進めていきたいと思います。
  110. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 第六条を盛んに引用なさっているようでございますが、この第六条の「その他の関係者」というのはしからば一体どういう範囲になるのか。これは政府部内の人たちだけをさしておるのか、それとももっと広く政党、国会あるいは民間人として労組の団体の役員あたりまでもこの中に含めて考えておられるのかどうか。アメリカの国家安全保障会議などには労働組合の役員あたりが出席しておるということを私聞いておるのでございますが、そういうふうに幅の広い考え方をしているものかどうか。それでは「その他の関係者」ということについて一つ御説明願いたいと思います。
  111. 船田中

    船田国務大臣 第六条の民間人をどういうものにするかということについては、まだ具体的にどの程度のものをやるかということの範囲を確定しておるわけではございません。国防上についての意見を求めるに適当な人は特別の制限を設けずに、民間人をも含めてできるだけそういう意見を求めたいと考えております。
  112. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 結局国防会議というものに一応諮らなくちゃならないということが防衛庁設置法の四十二条に明記されている。しかし、最終的にこれを決定するのは閣議であるということになると、そのものが国防会議を浮び上らして、実質的には大して力のないものである。だからこそ民間人を入れたって入れなくたってこれまたそう大きな影響はないのだろうと思う。二重手間になるだけだ。屋上屋を重ねるだけだというふうな印象を非常に強くするわけであります。ところが、世間一般では、そういうふうに国防会議考えておらない。そこに問題があると思う。実質的にこれは内閣責任制という建前から当然といえば当然かもしれませんけれども、閣議が全権を握っておる。しかも、この国防会議にいたしましても、閣僚にいたしましても、内閣総理大臣が絶対の権限を持って、自由に首のすげかえすらも可能であるというような現状下においては、内閣総理大臣の権力がますます強化されることになるわけであります。これでは、もし独裁的な首相でも現われたときにどいうことになるか、末おそろしい気持に私たちなるわけでございます。こういうものは総理の権限をチェックするために何らの役目もなさない。そういう点で大きな欠陥を持っているだけでなしに、形式的には何か国防会議がよっぽど大きな権限を持って責任があるかのように印象づけさしている。内閣全体の責任を下げておるような印象を与えておる非常に悪い制度で、かえって国防会議なんか、はなから設けずに、最初から内閣が全責任を持つのだという形で押していった方が、まだこれよりはましな制度ではないかというふうに考えるわけでございます。こういうふうな考えについて、あなたはもちろん賛成なさりませんでしょう。しかし、先回憲法調査会法案に関する私の質問に対しまして、鳩山総理は、現在総理の権限が非常に強過ぎるということを言っております。この権限の強過ぎるのを、鳩山総理は何を勘違いしたか、少し権限を天皇の方におわけしようというような口振りで述べておったのであります。これは根本的に間違っていると思いますけれども、総理の権限が強過ぎるということは鳩山総理みずからも認めている。そうしますと、この面において若干総理の権限を抑制する、チェックするというふうな働きがあってしかるべきじゃないかというふうな考えをわれわれは持つわけでございますけれども、この点あなたは全然矛盾しないというふうにお考えになとておるかどうか。これを第一に関連しての最後の質問としてお伺いしておきたいと思います。
  113. 船田中

    船田国務大臣 私は、総理大臣の権限が法律的に強大でありましても、しかし、実際の運営に当りましては、現行憲法が施行されてすでに八年になるのでありますが、その運営の実情からごらんになりましても、決して総理の独裁的な政治が行われるということはないのでありまして、今後においても私はさようなことはあり得ないと存じます。  なお国防会議につきましては、先ほど来申し上げておりますように、国防という相当重要な問題でありまして、しかもこれは閣僚が責任を持って研究もし、十分検討を加えなければなかなかこれについての方針、企画を立てるということは困難でございますので、そこで関係の深い閣僚が責任を持って国防会議を構成し、そしてその原案を作る。しかし法制的には最終的に閣議がこれを決定する、そういうことになりまして初めて、ただいま石橋委員の御質問のうちにありました御懸念の点も、よほどチェックされることになるのではないか。要するに、国防の問題につきまして十分関係の深い閣僚が検討を加えて、そうしてそれを原案として閣議に諮る、そういう手続をとることによりまして、しかも総理大臣は他の閣僚と協議をして最終決定をするのでございますから、ただいま御懸念のような総理独裁というようなことは絶対に起らぬと私は信じます。
  114. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 絶対に起らない、その例として関係閣僚が寄っていろいろ知恵をしぼるのだというふうにおっしゃいますけれども、私はこの関係閣僚が寄って相談するということと、立案すると言われるそのことにも大きな疑問を持っているわけです。冒頭に二つの焦点というような形で私持ち出しておりましたその第二番目に関係してくるわけでございますが、これはいかに五人か六人の関係閣僚が寄って相談をしてみましても、ここに出されてくる資料というものを一体どこで作るのか、また正鵠を射た正確な判断を下す材料となる情報をどこから持ってくるのか、そういうことを考えていきますと、いよいよもって憂慮せざるを得ないと私は思うわけであります。先ほども申し上げたように、政治が軍事をいかにして抑制していくかということにも発展していくわけなのです。少くとも過去の失敗を再び味わいたくないというならば、国防会議の構成に当ってこの点に最も重点を置いて考慮がめぐらされておらなくちゃならぬと私は思うのでございますが、残念ながらそれが片鱗だに見えない。少くともこういう構成で、こういう組織で進んでいきましたならば、首相やあなた防衛庁長官は、単に制服組である幕僚長、こういう人たちの作った案なるものをそのままうのみにしてしまわなくちゃならないのじゃないかという心配が出てくるわけです。なぜかといえば、この案を作る国防会議直属のあるいは内閣直属の立案機関というものが、全然見られないわけなのです。事務局にいたしましても、非常に弱小のものであろうと私思う。  そこで最初にお尋ねいたしますけれども、この国防会議の事務局といたしまして、一体どの程度の規模のものを考えておられるのか、予算、組織、人員、編成その他について、できるだけ詳細にまずお尋ねをいたしたいと思います。
  115. 船田中

    船田国務大臣 事務局の職員は専任十五名でありますが、必要に応じて関係行政機関から若干名の職員を兼職させるようにいたしたいと存じます。国防会議の予算は七百十九万二千円を計上いたしております。
  116. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 組織について追加の答弁をあとでお願いいたしたいと思いますが、十五名の人員、七百十九万円程度の予算で一体制服が立案するものを押えるだけのりっぱな資料ができるというふうにお考えになっているものか、あるいは情報が収集できるというふうにお考えになっておるのかどうか、私はおそらくそういうことまでは考えておらないだろうと思う。そうしますと、少くとも先ほど申し上げたような、政治が軍事を抑えていくというような体制は、この国防会議の中からは出てこないという結論に出ざるを得ないと私思うわけです。一体こういう陣容で独自の立案が可能だとお考えになっておりますか。おそらくそうじゃございますまい。防衛庁設置法で明示されておるように、幕僚幹部あるいは統合幕僚会議といったようなところで作られたブランというものが、そのまま国防会議に乗っかってきて、これをうのみにするというようなことになり終るのではないかと私は懸念しておるわけです。少くともこれに対抗するだけの組織だというようなことは絶対に言えないと私は思うのでございますが、その点まずお答えを願います。
  117. 船田中

    船田国務大臣 先ほど答弁漏れになっておりまする事務局の組織でございますが、これは部とか課とかいうものを設けませんで、参事官制を考慮いたしております。  それからただいま御質問のありました軍事が政治に優先しはしないかという御懸念でございますが、これは現在の制度をごらん下さればきわめて明瞭でございまして、さような懸念は全くないと存じます。今御指摘になりました統合幕僚会議議長の問題でございますが、これは防衛庁長官の下僚でございまして、防衛庁長官防衛についての意見の最終決定をいたしまして、そして原案を作成し国防会議に付議する、こういうことになると存じます。またこれは防衛庁だけが原案を国防会議に出すのではございませんで、財政の問題、経済あるいは防衛生産、そういうことにつきましては、それぞれの担当の省庁から原案が出てくると存じます。そしてそれをどういうふうに付議し、あるいは議事の順序をどういうふうにするかということは、事務局で調整をいたしまして、そして最も適当な審議方法を考えまして、そして国防会議に付議する、こういうことになるのでありまして、従って事務局の構成はただいまお話がございましたように、まだ決して大きなものではございませんけれども、しかし現在のところ、この国防会議を運営する上におきましては、この程度の事務局で十分間に合い得るものと存ずる次第でございます。
  118. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 この程度でおそらく間に合うでありましょう。なぜかといえば、これは単なる会議のお茶くみ程度のことをやるのですから、間に合うはずなんです。先ほど申し上げたように、独自の情報を収集するとかあるいは計画立案をはかるとかというような構想のもとにできておらないのでありますから、できるのが当然です。しかし少くとも国防会議というものを作るからには、独自のものを自分たちが作るだけの組織というものを持って、初めて国防会議の存在価値があるのではないか、少くとも防衛庁だけの立案に基いて、それを議案として審議するものであるならば、国防会議なんてぎょうぎょうしいものは要らないわけなんだ。どうせ作るならば、アメリカの国家安全保障会議が持っておるようなああいった付属機関までも持つくらいの、そういう気がまえがあって初めて私は存続の価値があると思う。御承知通りアメリカにおいては国家安全保障会議は、付属機関として計画立案委員会とか、活動調整委員会とか、あるいは中央情報局といったようなものを持っておる。それで重要なまた確実視される情報がこの会議において直接披露される。だから軍事に対抗するものを持っておるわけです。統合幕僚会議で作ったものに対抗するだけの案も持っておるし、情報も持っておる。ところが日本の場はないじゃないですか。ほんのお茶くみ程度の事務局ならば、結局統合幕僚会議、そういうようなところで作られた案というものがするする通っていかざるを得ない。それに反駁するだけの資料も情報も何もないわけなんです。そういう国防会議ならば存在の価値がないのじゃないかということを私申し上げておるわけなんです。(「それはだんだんにやっていくのだ、そんなら賛成か」と呼ぶ者あり)御承知通り、幕僚監部の仕事の中にはっきり「防衛及び整備に関する計画の立案に関すること。」以下いろいろ列挙されております。統合幕僚会議の所掌事務の中にも「統合防衛計画の作成及び幕僚監部の作成する防衛計画の調整に関すること。」というようなことがはっきり出ておる。こういうようなところででき上ってきたものが、単にここでせいぜいプリントの表書きを書くような事務局になる。そこを通じて国防会議に出されてくる。これに対抗する資料、あるいは判断を下す情報というようなものが何らない。一体それで国防会議というものの存在価値があるかということを私申し上げておるわけなんです。
  119. 船田中

    船田国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、防衛庁だけが原案作成者ということではないのであります。その防衛庁の原案を作るというような場合につきましても、これも先ほど申し上げたことでございますが、統合幕僚会議というものは防衛庁長官の下僚であり、なお内局がございまして、防衛計画については十分そういう点をも考慮して、内局において意見も述べ、それを防衛庁長官が最終決定をいたしまして、防衛についての意見を提出するわけでありますから、その点においてももうすでに調整は十分されるわけであり止す。なお、各省にわたります財政、経済あるいは生産というようなことにつきましては、それぞれの省庁から原案も出て参りましょうし、また資料もそれに伴って出てくるわけでありますし、ことに内閣の調査室におきましては、情報につきまして十分調査室の情報機関も活用するということになりますので、決して防衛庁だけの考え方国防会議において最終決定になるということはないと存じます。いわんや軍事が政治に優先するというなことは起り得ないと私は信じます。
  120. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 意見の面にわたりますと、すぐさっき不規則発言がありましたように、そんなら賛成するのかというようなことになりますので、意見は差し控えたいと思いますが、少くとも作る段階になれば、その程度の事務局あるいは付属機関というものを持たなければ意義がないじゃないかというのが当然の意見だろうと思います。しかももう一つ別の角度から、国防会議がいかに能力を発揮することが困難であるか、自主的な計画などというものを立てることが困難であるかということを、例をあげながら御質問していきたいと思うのでございます。  それは、冒頭にも申し上げたように、現在の日本アメリカとの関係においていかに日本独自の防衛計画を立てようとお考えになってもそれは不可能だということであります。最近の新聞にも出ておる。皆さんごらんになっているだろうと思いますが、防衛六カ年計画練り直しというような見出しで盛んに出てきておる。これは当然の運命だろうと思う。いかに日本が独自の防衛計画をお立てになろうとお考えになっても、アメリカなしで、アメリカの指示――せいぜい上品な言葉で言って、アメリカとの協議なしに、日本の独自の防衛計画などというものは立てられようはずがございません。これはあまりにも明らかでございます。アメリカとの話し合い、アメリカの指示を待たずして防衛計画一つ立てられないような国防会議が、一体何の存在価値がありますか。私はこの点についてぜひ明快な答弁を願いたいと思うのでございます。先月の委員会におきまして、防衛庁が作っておりますいわゆる六カ年計画の片りんなるものをお示し願いました。これは最終年度におきまして、地上兵力十八万人、海上艦艇が十二万四千トン、飛行機が百八十機、飛行機は練習機を合せて千三百機というような構想であったと思います。これは防衛庁で非常に苦労してお作りになったんだろうと思うけれども、早くも基本がくずれてきておるという情報が出てきておる。なぜかといえば、アメリカから援助してもらう量というものに非常に大きな期待を寄せて作られている計画だから、向うさんの方が、当てにしただけくれない、持ってくることができないということになれば、一ぺんにくずれてしまう計画なんです。こういうふうな日米関係にあって、そもそも長期計画を立てようなんというのがおこがましい。吉田内閣当時の方がよほどすなおだった。そのつど一年々々ごとの計画しか立たないというのが、現在の日米関係においてはすなおでもあり、当然のことなんだ。それを鳩山内閣は、欲ばって、長期計画を立てるんだ、六カ年計画を立てるんだと、かけ声ばかりもうだいぶ前からかけているけれども、実際にはなかなかお示しにならない。そうして国防会議ができたら最終的に確定するのだということを言いのがれのように言っているけれども、国防会議ができたってできっこない。現に政府案じゃございませんとはいいながら、防衛庁試案なるものを作っておるけれども、これ自体根本がくずれてきたという情報がすでに出ているじゃございませんか。これは読売あるいは三月二十九日の朝日新聞というようなものに出ているのでございますが、なぜ防衛庁が作った防衛六カ年計画が再検討されなくちゃならないかという例として、海上自衛隊の増強計画に盛られた航空機のMSA協定によるアメリカからの援助が期待通り入らず、当初の増強計画の実施が困難になったこと、またF86Fジェット戦闘機、T33ジェット練習機や陸上兵器の国産化が進むにつれて、その経費が予定額よりはるかに上回ることになったというようなことが例示されております。その具体的な問題として、海上自衛隊航空機、特にP2V、これが思うように入らない。防衛庁が三十年度に二十四機のP2Vの供与を期待しておったのが、今日までアメリカから受け取ったのはわずかに二磯だ、こういうことなので六カ年計画の最終目標である九十六機を今後MSA協定によって受け取ることはまず見込みがなくなったというようなことを述べておりますが、この第一番目の例などは事実でございますか。まずそれからお尋ねしましよう。
  121. 船田中

    船田国務大臣 海上自衛隊の対潜哨戒機としてP2Vの相当多量の供与を期待しておったことは事実であります。ところがこのP2Vの生産は、アメリカ側といたしましても、これは第一線機であるためになかなか生産がまだ行き渡っておりません。その上にわが方といたしましては、これの乗員の訓練、それから基地の施設等につきまして、まだ十分二十四機を受けるだけの準備ができておりませんので、それらのことが相待って、わが方で期待しただけのP2Vが入っておらないことは事実でございます。
  122. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 もう一つ、ここに書いてある例を確めてみましょう。ジェット機や地上火器の生産に際し、単価の見積もりがその後変更されたため、六カ年計画の当初の所要経費約八千三百億円を三、四百億円上回ると予測されるに至った、こういう面からも根本的に組みかえなければならない、練り直さなければならない状態になってきたというふうに書いてございますが、この点も間違いございませんか。
  123. 船田中

    船田国務大臣 戦闘機の問題につきましては、そこに全御指摘になりましたような事実があるかどうかということは、現在まだ検討が済んでおりませんので、はっきりしたことは申し上げかねます。なお練習機のT33及びF86Fの生産につきましては、順調に今進んでおるのであります。
  124. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 今申し上げたようなことでも明らかなように、日本の再軍備の強化、これはアメリカというものに大きく依存しておるわけであります。向うさんの都合によって大きく左右されることは明らかなのです。これは前国会におきまして、杉原防衛庁長官も本委員会において率直に認めておりました。向うさんまかせの日本軍隊、これが防衛計画を立てるというふうなことになった場合に、日本独自の案などというものがありようはずがないわけです。向うさんがどれだけの飛行機を供与してくれるか、援助してくれるかというようなことがわからないでおって、どうして防衛計画が立ちますか。せいぜい立って一年、その一年すら先ほど言ったように、二十四機もらうはずだったのが二機しか来ないということになる。ましてや五年とか六年とかいう長期計画が立ちようはずがない。私は国防会議ができたら六カ年計画が発表できるのだというのは、うそだと断言せざるを得ない。現に船田さんはこの間の委員会でこういう答弁をしておられます。「三十二年度の計画になりますと、これはアメリカからの初度兵器の調弁ということにつきましていろいろ折衝をして、向うからもらうものも相当に見積りを立てていかなければなりませんし、また、経済財政各般の事情も勘案して参らなければなりませんので、従いまして三十二年度の予算につきましては、本日ここにお示しするほどの具体的なものがまだできておらないのであります。」これは受田委員質問に対するあなたの答弁です。三十二年度の骨組みすら答弁できません。アメリカさんがどういうふうな考えを持ち、どういう程度のものを供与してくれるかわからないから、そういうようなことはわれわれが一方的に作ることはできないということを言っているわけです。三十二年度のこともわからないで、どうして六カ年計画が立てられるか。しかも今申し上げたように、一年一年、その当年度だけの計画にしても、このように向うさんの都合で大きく変ってくるのであります。こういうふうな情勢の中で、どうして日本が向うさんが計画を立てないのに、日本だけの計画などというものができるか。アメリカでは、日本にことしは幾らどういうものをあげます、五年先にはどういうものを幾らあげますなどという計画はないのです。今後においても絶対にそういうことはあり得ない。アメリカの大統領の任期が四年だというようなことだけでなしに、アメリカにおいては議会の勢力が非常に強いから、翌年のことなど議会の議決もなしに発表もできない、そういう情勢にあることは、あなたも御承知通りだろうと思う。こういう日米の関係にあって、日本における自主的な長期防衛計画などというものが、たとい国防会議ができたってできっこないと思うのでございますが、その点どのようにお考えですか。
  125. 船田中

    船田国務大臣 わが国防衛体制整備するのにつきまして、アメリカ側の艦船、兵器、飛行機等の供与を受けるということは、これはどうしても免れないことでありまして、もしこれを全然受けずに、日本独自の力でやるといたしましたならば、何千億の金を要すると存じます。これは午前中の辻委員の御質問にもお答え申し上げましたように、遺憾ながら今日の日本国力から申しますれば、初度調弁に属する火器あるいは装備品等につきまして、アメリカ側の供与を期待しなければならぬ状況でございます。しかしアメリカ供与を期待いたすにつきましても、わが方の計画がなければ供与を期待するわけに参らぬのでありまして、どうしてもわが方としては国力国情に沿う防衛体制整備するという方針のもとに、まず計画を立てまして、そうしてアメリカ側に向って、供与を受くべきものは供与を期待するということの折衝を始めなければならぬのでありまして、アメリカ側の供与があるから、全部アメリカまかせでよろしいということにはなりません。どこまでもわが方といたしましては、日本国力国情に相応する最小限度防衛体制整備するという計画を立てまして、その計画に基いてアメリカ側の供与を期待する、こういうことで防衛体制整備して参りたいと思います。またそうしなければ防衛体制整備はできない状況であるわけであります。
  126. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 アメリカから援助を受けなければ、日本独自の財政力その他から軍備の強化をはかることはできないというのは、わかるわけなんです。ところが先ほどから言っておることは、それほど深いアメリカと依存関係にある日本が、独自の防衛計画などというものを作られるとお考えになっておるのかどうか。一年度の計画においてすら、かくのごとくアメリカの援助のあるなし、援助の大小によって、基本的に計画がくずれてきているじゃないか。それが五年とか六年という長期のものになるならば、なおさらくずれるのは当然ですし、また立てようにも立てられないじゃないか。あなたは日本アメリカの援助を受けるためにも計画は必要だ、こうおっしゃる。その点では一応了解いたしましょう。しかししからば、日本で六年計画の最終の年に地上兵力を十八万にすることは、これは人間をふやすことはおそらくできましょう。しかしながらこれに伴う兵器装備というようなことになると、簡単にいかない。特に海上、空軍ということになりますと、いかに艦艇十二万四千トン、飛行機百八十機、空軍は練習機含めて千三百機と呼号いたしてみても、アメリカがそれまでに確実にこちらが予定するだけのものを供与してくれるという可能性がはっきりしない限り、これは確定した計画とはならないではありませんか。かりにこれだけの計画を立てましたから、一つアメリカさん御援助を願いますと言ったって、向うさんの方が五年先、十年先というような計画は立てられない。確実に援助いたしますと言ってみたところで、政府がかわるかもしれない。また先ほど申し上げたように、アメリカでは議会というものが大きな権限を持っておるのですから、翌年のことなんか外国とそんな約束なんかできません。そうしますと、幾らあなたの方で国防会議であろうと何であろうと、計画をお出しになってみたところで、向うさんの方が肝心の品物をくれる方の計画が立たない限り、確定した計画にはならないじゃありませんか。だからその年の計画ぐらいは若干こういうふうにずれても立つでありましょうけれども、六カ年計画というような長期防衛計画は絶対に今の日本においては立てることはできないというふうに考えておりますが、この点はいかがですか。
  127. 船田中

    船田国務大臣 もちろん計画を立てましても、その計画が寸分たがわずそのままに実現するということはなかなかむずかしいことと思います。御承知通り計画経済を建前としておるソ連の五カ年計画にいたしましても、最初立てた計画と実施された結果とにおいては非常な大きな違いがありますが、これはどこの国でもそうだろうと思います。だからといって計画を立てる必要はないという議論には私はどうも承服しかねるのでありまして、わが方といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、自主的に日本国土をどうしたなら守れるか、守るためにはどういう装備、隊員、施設あるいは生産が必要であるかという計画を立てまして、その計画の実現ができますように、アメリカ側の供与も期待する、こういうことでなかったならば、日本防衛体制整備はできないと思います。従いまして、防衛体制整備する必要がないということなら議論は別でございますが、私どもはどこまでも、国力及び国情に相応する最小限度自衛体制はできるだけ早い機会整備いたしたい、こういう熱意を持って考えておりますので、ぜひ国防会議を成立せしめまして、そうしてあらゆる情勢を判断をし、またできるだけの資料を集めまして国防会議において十分検討を加えて、日本国力国情に相応する自衛体制整備に一日も早く進んで参りたい、かように考えましてこの国防会議法案も提出しておるというようなわけであります。
  128. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 計画を立てることはけっこうです。またあなた方の立場として立てなくちゃなりますまい。しかし今あなたがおっしゃっているようなものならば、これは計画とは言えない。六年先にはこの程度にするという一応の努力目標にすぎない。計画というものは計画通りにいかないということについては私もわかりますけれども、その程度のあいまいなものを計画とは言わないと思う。その点はあくまで努力目標ということになろうと思う。先ほどあなたもお認めになったように、二十四機ことしもらおうと思ったものが二機しかこない。これでも二十四機は計画だとあなたはおっしゃるでしょう。私たちは、二十四機もらう予定だったものが二機しか来ぬというこれが計画とはちょっと認めがたいのです。あまりにもずれ過ぎるじゃございませんか。それがたった一年間の計画についての結果なのです。ましてや六年先のことがこういうふうな調子でどうして計画というような名を打って立てられますか。先ほどから申しておるように、まずアメリカの方で、ことしこれだけのもの、来年これだけのもの、再来年これだけのものをやるときちっと計画を立ててくれなければ、こんなふうでは立てようがないじゃありませんか。私はそのことを申し上げておる。一つには、事務局というものがお茶くみ程度のもので、ここで権威のある計画などは立ちようがないということ、もう一つには、今の日本アメリカとの関係において、日本独自の計画などというものは立てようがないということ、現にあなたが先ほども言ったように、三十二年度の計画すら立てられないじゃありませんか。なぜ立てられないかといえば、アメリカがどの程度武器供与してくれるかわからないからとはっきり言っておる。当然です。だから、あなたが六年後において一応こういう目標に達したいと思うとおっしゃっても、一年心々の年次計画を立てろというならばますます困惑されるだろうと思う。現に今まで一回だってこの点についてはお答えになったことはない。当然です。日本アメリカとの関係において立てられるはずがない。だから、国防会議ができたら防衛計画が立つのだ、しかも長期計画が立つのだというようなうそはこの際おっしゃらないようにしていただきたい。どうしても言いたければ、目安だ、努力目標だ、そういうものを立てるのだと言った万が私は率直でいいと思う。先ほど申し上げたように、吉田内閣の方がまだこの点については鳩山内閣よりも正直だった。立てられないものは立てられないと正直に認めておった点で、私は吉田内閣の方に歩があると申し上げておるわけです。少くともアメリカにおいて、来年、再来年、年次ごとに日本にどれだけのものを供与するなんという約束は絶対にいたしません。し得ない体制にある。そういう状況下において、日本がかりに国防会議なるものを作っても独自の防衛計画なんというものは立てられないのだということをはっきりお認めになった方が私は賢明だと思います。しかも、アメリカにどれだけのものを下さいというふうにお願いするための計画だといたしましても、アメリカがそれだけのものをやれないといえばそれまででおしまいでしょう。昨年重光さんがわざわざワシントンに出かけてダレス長官と会談をいたしました。そのあとで日米共同声明なるものを発表せられておりますが、この中でも日本のたどらなくちゃならない運命を明示されております。よく御承知のことであろうと思いますが、御参考のためにちょっとその関係のところだけお読みいたしますと、外務大臣は日本防衛当局によって最近作成された防衛力増強に関する計画を説明した右の計画は東京における日米防衛計画に関する継続的協議の過程において検討され、かつ戦略的見地を考慮して随時再検討すべきことが合意されたとはっきり書いてありますよ。随時です。そのときそのとき相談しなければ、アメリカさんの方でも幾ら都合がつくかわからない。これが日米関係の軍事援助に関する最も可能性のある範囲だろうと思うわけなんです。現に、重光、ダレスの間でこういう声明が発表されておる。この点から推しても、国防会議ができたって長期の防衛計画なんというものは絶対にできないのだということを率直に認めていただきたいと思います。
  129. 船田中

    船田国務大臣 わが国国土の防御につきましては、今御指摘もありましたように、日米安保条約によりまして共同の責任を持ってわが国防衛をいたしております。従いまして、日米の間におきまして、この防衛問題につきまして随時意見の交換をし、協力を求めておることは事実でございます。しかし、わが方といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、国力国情に相応する最小限度自衛体制整備するという方針のもとに、この防衛体制整備を急いでおりますので、国防会議ができましたならば、それに諸般の資料あるいは案を具しまして、長期計画を確立することに努めて参りたいと思います。私は、どこまでもそれは長期防衛計画でありまして、ただ単純な達成目標ではないと存じます。どこまでも長期防衛計画を策定することに努力して参りたいと思います。
  130. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 三十年度に二十四機アメリカからもらうつもりだったのが二機しか来ないという現実の姿を見ておって、なおかつそういう強弁をされる。しかし、今ここでその点を再度追及してみたところで、あなたもお立場上翻すわけに参りますまい。しかしあなたが幾ら力んでみたところで、日本の独自の防衛計画とかあるいは国防方針など立てられる立場には現在ないわけです、たとえば、国防基本方針について午前中に辻委員があなたにお尋ねをいたしました。そのときにあなたは、国力国情に相応する最小限度防衛力を整備して米軍撤退を期する、それまでは日米共同防衛体制をとっていくんだ、これが日本基本的な国防方針だというふうにおっしゃいましたが、これがあなたのおっしゃる通り、現在における日本国防方針だといたしましても、しからばその日本最小限度自衛力を持ってアメリカに帰ってもらう時期はいつかというと、これすらわからないような、そんなことで一体国防方針だ、防衛計画だと大きな口がきけますか。少くとも日本独自の計画だ、方針だというならば、何年までにこれだけのものを持つのだ、そうしたらこのときにアメリカさんに帰ってもらうのだ、そういう計画が立てられて初めてあなたも大きな口がきける。かりに六カ年計画でこれだけの軍隊を作ってみたところで、アメリカさん帰ってくれるか帰ってくれないかわかりませんという、そういう答弁をなさっておいて、どうして独自の計画だ、方針だということが言われますか。どうです、その点で、米軍撤退の時期は、どれだけの自衛力を日本が持てば撤退してくれるのだという明言ができますか、お尋ねいたします。
  131. 船田中

    船田国務大臣 防衛庁で持っておりまする試案が達成されたから必ず米軍撤退するというふうには申し上げかねます。米軍撤退は、しばしば申し上げておりますように、日米の会議によって行われることでありまして、それは国際情勢とよくにらみ合せまして、日米の合意のできたときに米軍撤退するということになると思っております。
  132. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 時間もだいぶ経過いたしておりますので、大体この程度でとどめたいと思うわけでございますが、先ほどから申し上げておりますように、かりに国防会議なるものを作りましても、一つにはこのような弱小の事務局を擁して、何ら独自の情報資料の収集も不可能な、こういった付属機関も持たないで、りっぱな計画や方針が立つはずはない。もう一つには、現在のアメリカ日本関係から推しても、独自の計画などは絶対に立たないのだということを中心に私質問を続けたわけでございますが、この点について、ただいままでの答弁で了承したわけではございませんけれども、本日の質問は一応これで私保留いたしまして、また時期を見て質問を継続いたしたいと思います。
  133. 井手以誠

    ○井手委員 石橋委員質問に関連して長官に一言お尋ねしたい。それは先刻、国防会議の重要な任務である国防基本方針あるいは防衛計画の大綱、それをきめるのにわずか十五人くらいの職員では困難ではないかという質問に対して、私が――すなわち船田防衛庁長官が――国防計画その他はきめるので大丈夫だという御答弁がございました。そこでちょっと長官にお尋ねいたしますが、防衛庁の設置法なり自衛隊法などに、国防基本方針あるいは防衛計画の大綱をきめる任務がどこに規定されておるのか、その点を、私よくわかりませんので、この機会にお尋ねしておきたいと思う。
  134. 船田中

    船田国務大臣 先ほど石橋事委員の御質問に対して私がお答え申し上げましたのは、国防会議に提出する防衛計画、ことにこれは主として技術的の問題になると思いますが、そういう原案の作成は防衛庁においてやる。従って防衛庁においては、統幕議長あるいは内局の次長以下局長等の意見を十分聞きまして、その最終決定は防衛庁長官がやる、こういうことを申したわけでございます。
  135. 井手以誠

    ○井手委員 長官にお尋ねいたしておりまするのは、防衛庁がどういう権限で国防基本方針なり防衛計画の大綱をきめられるのか、いわゆる防衛庁の設置法なり自衛隊法のどこにその任務が規定されておるのか、その点をお尋ねいたしておるのであります。
  136. 船田中

    船田国務大臣 先ほど答弁申し上げたのは、防衛庁のみが防衛根本方針をきめるということを申し上げたのではないのであります。
  137. 井手以誠

    ○井手委員 私の調べによりますと、防衛庁には国防基本方針なり防衛計画の大綱をきめる権限もなければ、それを計画する立場でも私はないと解釈いたしておるのであります。ところが先刻長官の話によりますと、防衛庁できめるので、国防会議の事務局においてこれをいろいろ立案する必要はない、自分の方で長官がきめて出すのであるから大丈夫であるという御答弁があった。防衛庁設置法によりますと、自衛隊を管理し、運営し、これに関する事務を行うということが任務である。どこにも国防基本方針なり防衛計画の大綱を立案し、もちろん決定する権限はないのであります。従ってあなたの方からお出しなさる資料はないはずでございますが、いかがでございますか。
  138. 船田中

    船田国務大臣 これは防衛庁設置法の第十二条におきましても、防衛局においては「防衛及び警備の基本及び調整に関すること。」それから第三号に「陸上自衛隊海上自衛隊及び航空自衛隊の組織、定員、編成装備及び配置の基本に関すること。」こういうようなことを所管いたしておるのでありまして、防衛庁において防衛についての計画立案をするということは、これは防衛庁法において禁止しておることではございません。従いまして防衛庁長官がその原案を作りまして、そうして国防会議に付議する、国防根本方針基本方針につきましては国防会議の議を経て内閣において決定する、こういうことになるのでありまして、私が先ほど申し上げておるのは、防衛の問題について原案を出すときには、防衛庁長官がきめてそれを国防会議に提出するようになるだろう、こういうことを申し上げたのであります。そのはかの国防に関する、あるいは財政、外交、経済あるいは防衛生産、こういうような広い国家的の見地に立って国防基本方針を決定するということは、関係の省庁からも原案が出て参りましょうし、また資料も提出される。そして国防会議においてそれが検討せられまして、そして総理大臣に答申があり、そして総理大臣のもとにおいて、閣議においてその方針が最終的に決定するであろう、こういうことを先ほど来申し上げておったのでありまして、何ら防衛庁設置法あるいは自衛隊法の規定に違反したことを防衛庁長官がやるというようなことを申し上げているつもりではございません。
  139. 井手以誠

    ○井手委員 私の質問いたしておりますことは、防衛庁はそういう国防基本方針についての計画を立てるところではないと私考えております。そうであればこそ国防会議というものが設けられると思うのです。ところが先刻あなたの御答弁によりますと、防衛庁で多くの資料を持って研究し、これを長官が決定するのでありますから、国防会議の事務局においてそういう立案その他について携わる多くの人間は必要でないというふうに御答弁になっておったのであります。防衛庁設置法によりますと、第四条の任務についてはっきりその原則が立てられておる。その原理の範囲内において防衛局は防衛及び警備の基本及び調整に関する事務をつかさどる。お示しの同条第三号におきましては、各自衛隊の組織、定員、編成装備及び配置の基本に関する事務を取り扱うということになっておる。どの条文を解釈いたしましても、将来にわたる国防基本方針あるいは防衛計画の大綱をつかさどるということはないのであります。どこからあなたはそういうことが、言えるのか、もう少し権限、任務の点から、防衛庁ができるその組織上の任務一つお示し願いたい、
  140. 船田中

    船田国務大臣 今、井手委員のおっしゃっていることは、私は決して御心配のようなことを先ほど来申し上げているつもりはございません。国防に関する基本方針は、国防会議におきまして審議をし、決定をしてもらうということで、ただ私が先はど申し上げましたのは、防衛に関する主としてテクニックの問題になると思いますが、そういう原案を提案を提出するとぎには、防衛庁が提出するようになるだろう。その防衛庁が提出するときには、先ほど石橋委員が非常に御心配になつておりましたように、いわゆる軍事優先というようなことになりはしないかという御質問でありましたから、それは防衛庁長官のもとに統幕議長もおりますし、同時に内局も持っておりますので、防衛庁においても十分防衛に関するテクニックの問題につきましても調整をし、最後には防衛庁長官が決定して、原案を作成して国防会議に付議する、こういうことになるだろう、従って軍事優先というような御懸念はあるまいという趣旨において、答弁申し上げておるのでありまして、防衛庁が国防基本方針を決定するのだというような趣旨の答弁を申し上げておることは絶対ないのであります。その点は誤解のないようにお願いをいたします。
  141. 井手以誠

    ○井手委員 関連でございますから、そう長くは申しませんが、先刻石橋委員の笠岡に対する答弁を聞いたところでは、確かに私はそのような印象を受けたから、関連質問に立ったのであります。国防会議が事務局を設ける以上、あなたの力から原案を出されるというのも私はおかしいと思う。国防会議の事務局が原案を作るのには重要な参考資料にはなるでしょう。しかしあなたの方のものが原案になるということについては、私は疑点があると思う。しかしこの点についてはあらためて私は後日お尋ねしたいので、その点だけ明らかにしておきたいと思います。もしあなたのおっしゃるように、あなたの方から原案を出されるということでありまするならば、総理大臣のもとに関係の各四、五の大臣をもって国防会議を構成するということについても、多くの疑点があらためて私は発生してくると思うのであります。あなたの方から原案を出され、それを審議するという程度のものでは、国力に相応した自衛力の計画を立てるということは、私はできないと思う。防衛庁が中心であって、ほかの意見を聞くというものですか、国防会議というものは。その点を一つ承わっておきましょう。
  142. 船田中

    船田国務大臣 その点については大へん誤解をされていらっしゃるんじゃないかと思うのですが、私の申し上げているのは、国防基本方針を決定するのに、その原案を防衛庁で作るという意味において答弁申し上げておるのじゃないのであります。防衛についてのテクニックの問題、すなわち現実の防御力としてまず考えられますのは、陸海空自衛隊でありますから、そういうものの現有勢力はどれだけあるか、あるいは日本国防を全うする上においてはどれくらいにしなければならぬか、こういうようないわばそのテクニックに関する問題については防衛庁が案を出すことが多いと思います。これはどうしても防衛庁が直接の担当者でありますから、それについての案を出します。しかし国防基本方針というものは、もちろん外交、財政、経済、さらにあらゆる面に関係をいたすのでありますから、従って他の省とも協力いたしまして、日本国防方針はいかにすべきか、いかにあるべきかということは、関係各省庁と十分協力して作成しなければならぬの、であります。従って事務局におきましても、そういう点については、事務局は事務局としてそういう必要があれば、事務局も案を出し得るわけでありまして、防衛庁だけが防衛計画についての案を出すということを申し上げておるわけではございません。その点はだいぶ誤解があるようでございますから、あらためて誤解のないように努力いたしたいと思います。
  143. 井手以誠

    ○井手委員 私の言うことが誤解であるかどうか。  それでは一点だけ聞いておきたいと思います。国防基本方針防衛計画の大綱、防衛出動の可否などについての原票は、どこでお作りになるのでございますか。防衛庁は防衛計画なり大綱の基本的問題の多くの資料は提出になるでございましょう。しかし原案はどこでお作りになるのですか。防衛庁で作ったものを国防会議に持ってきて、国防会議にかけるというわけでございますか。
  144. 船田中

    船田国務大臣 それは議題によって違うと思います。原案はそれぞれの関係各省から出てくると思います。それでそういうものをどういうふうに調整して出すかというようなことは、事務局において十分検討して、提出するということになると思います。
  145. 井手以誠

    ○井手委員 あとでまた承わりますが、そうしますと、国防会議に提出する原案は、どこで作成いたしますか。その点だけはっきりしておいてもらいたい。
  146. 船田中

    船田国務大臣 諮問すべき原案は、内閣総理大臣が拠出するということになります。
  147. 井手以誠

    ○井手委員 内閣総理大臣を補佐する事務局は、どこでございますか。
  148. 船田中

    船田国務大臣 議題によりまして、それぞれあるいは防衛庁がやる、あるいは通産省が原案を出すという場合もあると存じます。その議題によりまして、それぞれ関係の深い省が原案を出して、そうして内閣総理大臣がそれを諮問すべきものと認められた場合において、内閣総理大臣が国防会議にこれを付議するということになるわけでありまして、その事務的な順序を立て、あるいは印刷をするとか、議事日程をきめるとかいうことは、事務局の方においてやるわけであります。
  149. 井手以誠

    ○井手委員 少しおかしくはありませんか。少くとも国防基本方針を決定する、防御計画の大綱を決定する国防会議で、きょうは防衛庁の原案を審議する、明日は通産省の原案を審議する、そんなでたらめな、不見識な話がどこにございますか、そんな事務局は私はどこにもないと思う。少くとも小さな事務局であっても、たとい原案の九割までは防衛庁が出すにいたしましても、原案は事務局で作成しなければならぬはずのものであります。どこの組織法でも、事務局が作成するのが当りまえですよ。きのうは防衛庁、きょうは通産省、あすは外務省、それぞれ自分の主張を盛った原案をもってやって参りますならば、審議する価値はないじゃございませんか。各省ばらばらであればこそ、国力に相応した防衛計画を立てようというわけで、外務大臣、防衛庁長官、大蔵大臣が参加して、国防会議を作るんじゃありませんか。何のための事務局ですか、何のための国防会議ですか。そんなでたらめな答弁では、私は承知いたしません。
  150. 船田中

    船田国務大臣 原案という言い方が悪かったと思いますが、そういう各省から資料を出しましたものを事務局におて調整をいたしまして、そうして内閣総理大臣の決済を経て諮問事項を決定して国防会議に提出する、こういうことになるのであります。
  151. 井手以誠

    ○井手委員 先刻の御答弁と今のとは少し違っておよるうです。船田さん、あなたも防衛庁の長官なら、男らしく――防衛庁が原案を出しましてそれを審議してもらうと先刻おっしゃいました。今は持ってきたものを調整して提出するとおっしゃった。違うじゃございませんか。取り消してから発言して下さい。男らしく言って下さい。
  152. 船田中

    船田国務大臣 先ほど申し上げたことと私変っておらないと思いますが、先ほど申し上げたことが誤解を生じておるようでありましたら、あらためて申し上げますが、原案という言葉についてあるいは誤解されたかもしれませんが、原案を作成し、そしてこれを総理が決済をいたしまして拠出する。その事務的な仕事は事務局においてやるわけであります。その前に各省から資料を提出する。防衛に関するテクニックの問題については防衛庁が担当し、あるいは防衛生産については通産省が担当して、資料を出すというようなことはあると思います。先ほど私が最初に申し上げたのはその趣旨を申し上げたのでありまして、もしそれについて誤解があるといたしますれば、これは誤解を解く意味におきまして、先ほどの私のそれに違った答弁があったといたしますれば、それを取り消しますが、ただいま申し上げたようにして、事務局が総理の決済を経て国防会議に原案を提出する、こういうことになるわけでございます。
  153. 井手以誠

    ○井手委員 そう私は追及しようと思いませんけれども、いかにも私が誤解したごとく今もおっしゃった。私は誤解じゃございませんよ。あなたの言い違いですよ。答弁を訂正されたのです。はっきりしておる。なんなら速記を調べてからやり直してもよろしゅうございますが、誤解じゃありませんよ。前のは間違いでございましたから、こう訂正いたしますとおっしゃれば、私はいろいろ申しませんよ。私はいつまででもあなたを追及しようと思いません。取り消すなら取り消すと言って下さい。言い直して下さい。誤解のままで私は引き下りません。
  154. 船田中

    船田国務大臣 その点は私決して取り消しをちゅうちょしておるものではございません。私の申し上げたことが、後に申し上げたような趣旨で答弁したつもりでおったものですから、そういうことを申し上げたので、決して取り消しをしないというようなことを申しておるのではありません。もしただいま後に御答弁申し上げたことと違っておる部分がございましたならば、それは私の言い違いでございますから取り消します。
  155. 保科善四郎

    ○保科委員長代理 残余の質疑は次会に譲ることといたします、次会は明後六日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十五分散会