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1956-03-22 第24回国会 衆議院 内閣委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十二日(木曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 山本 粂吉君    理事 大平 正芳君 理事 高橋  等君    理事 保科善四郎君 理事 松浦周太郎君    理事 宮澤 胤勇君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       池田 清志君    江崎 真澄君       大坪 保雄君    北 れい吉君       久野 忠治君    高瀬  傳君       田村  元君    辻  政信君       床次 徳二君    林  唯義君       福井 順一君    眞崎 勝次君       粟山  博君    山本 正一君       横井 太郎君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    井手 以誠君       石橋 政嗣君    稻村 隆一君       片島  港君    西村 力弥君       細田 綱吉君    三鍋 義三君       森 三樹二君  出席国務大臣         国 務 大 臣 清瀬 一郎君         国 務 大 臣 太田 正孝君         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         法制局長官   林  修三君         厚生政務次官  山下 春江君  委員外出席者         議     員 古井 喜實君         議     員 山崎  巖君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 三月二十日  委員田中久雄君、山本勝市君、加藤精三君及び  濱野清吾辞任につき、その補欠として大村清  一君、薄田美朝君、横井太郎君及び粟山博君が  議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員大村清一君、椎名隆君、薄田美朝君、林唯  義君及び飛鳥田一雄辞任につき、その補欠と  して田村元君、江崎真澄君、池田清志君、久野  忠治君及び井手以誠君議長指名委員に選  任された。 同日  委員井手以誠君及び片山哲辞任につき、その  補欠として飛鳥田一雄君及び三鍋義三君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十日  恩給法の一部を改正する法律案野本品吉君外  二名提出参法第四号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  憲法調査会法案岸信介君外六十名提出衆法  第一号)     —————————————
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより会議を開きます。  憲法調査会法案を議題とし、質疑を続行いたします。通告がありますので、順次これを許します。西村力弥君。
  3. 西村力弥

    西村(力)委員 私はこの重要な憲法改正を企図する法案、これの最終的な審査に当りまして、全部の大臣に御出席を願って、それぞれの担当分野に精魂を込めてやる場合に、現在の憲法がどのように障害となっておるか、こういう責任あるお考えをお聞きしたい、こう思って全部の大臣の御出席を願っておったのでございますが、今見ますと、清瀬担当大臣提案者山崎さんしかいらっしゃらないんですが、その点の取り計らいはどのようになっておりますか、一つお尋ねしたいのであります。
  4. 山本粂吉

    山本委員長 西村君にお答えいたします。国務大臣に対する質疑の御要求がありましたので、それぞれ各国務大臣出席を要望しておりますが、各担当委員会、それから参議院における予算質疑等でただいま出席いたしておりませんから、順次出席をするよう取り計らいますから、出席しておる担当国務大臣並びに提案者に対する質疑を御続行願いたいと存じます。
  5. 西村力弥

    西村(力)委員 順次出席を取り計らって下さるとのことで御苦労さまでございまして、ありがとうございますが、それでは今の御発言は、必ず全部の大臣出席を確実に願う、やるんだ、こういう工合に私の方で受け取ってよろしゅうございますか。
  6. 山本粂吉

    山本委員長 できる限り出席されるよう取り計らいます。
  7. 西村力弥

    西村(力)委員 できる限りでは、決してわれわれの真剣な審議意思を尊重したということにはならないのではないか。担当大臣博学でございますけれども、全部が全部お知りになるはずはないし、御答弁の数々を聞いておりますと、天皇が空気になったり、さまざまなそのつどそのつどの答弁でございまして、ほんとうにわれわれが、よしやろう、憲法改正審議に本格的に取り組もうというような、こういう気持が出てこない。それでありますから、どうしてもやはり全部の大臣のお考えを聞きたい。できる限りではなく、必ずそうすると、かようにお願いしたいのでございますが、いかがですか。
  8. 山本粂吉

    山本委員長 参議院予算総会分科会、それから他の担当省委員会等の都合で御要望に応じかねる場合もないとはいえませんので、できるだけと申し上げたのですから、御了承願います。
  9. 西村力弥

    西村(力)委員 いろいろ各方面に引っぱられて大へんでございましょうけれども、私たちとしましても憲法改正問題は絶対に反対だ、これを強行するのは自民党の何か意図する動きである、こういうような立場のままでこの法律を通したくない。みんなの意見を聞いて、ほんとうに正常な国家の発展を願うために、あるいは福祉国家として前進をさせるために、どうしても憲法条章が桎梏となって困るので、これを改正しなければならない、こういう考えまでわれわれも立ち至って、この法案を通したいんだ、そうでなくて、はっきり対立したままこの法案を通すということは、私は日本の国のためによろしくないと思う。憲法改正をどういう工合にやるかという個々改正点についての意見対立はあっても、今憲法改正国民全体として、その意思のもとに与野党問わず取っ組んでいく、こういう気持になるようになるまで持っていかなければならぬじゃないか、そういう考えを私は持つんです。それであるから、全部の大臣に来ていただいて、とことんまでわれわれ鈍根なる者に対してその必要性を深く認識させてもらいたい、そういう工合に思っているんです。きょうおいで願えないとすれば、この次にでも逐次おいで願って、やはりとことんまでやっていくことが必要じゃないか。今までの提案者とこちら側の質疑応答を聞いてみると、全く観念論的なやりとりが多いではないか。これは質問者の方が真剣であるけれども、答弁はその場その場をただそらすという工合に私には聞えてならない。こういう真実の意図というものは、単に私のいやがらせのいつものでんなんて思わずに、ほんとうの話じゃないかと思うのです。何とかして全国民意思のもとに、一緒になって憲法改正と取り組もうという気持が起きるまでやっていきたいと思う。どうです委員長一つきょうできるだけやって下さる。そうしたら残りはこの次やる、こういう工合にできませんですか。
  10. 山本粂吉

    山本委員長 西村君にお答えいたします。西村君御要求の各担当大臣中、法務大臣病気欠席重光外務大臣外務省委員会出席中、船田防衛庁長官大蔵大臣厚生大臣自治庁長官官房長官は、参議院における予算分科会出席中でありますので、それとにらみ合せて、本委員会にそれぞれ出席されるよう要求しておりますから、出席されたときに、それらの所管大臣に対する質問をしていただくことにして、本法案の直接の政府担当大臣である清瀬国務大臣並びに提案者山崎君に対する質疑がおありでしたら質疑を願うし、なければ他の委員質疑を続行したいと思いますから、さよう御了承願います。
  11. 西村力弥

    西村(力)委員 約束議会運営のルールとして尊重しなければならないけれども、しかしその約束以上に大事なのは、審議を尽すということじゃないか、こういうように思う。(「約束を守らないというのはどういうことなんだ」と呼び、その他発言する者あり)不規則発言をちょっと注意して下さい。
  12. 山本粂吉

    山本委員長 お静かに願います、
  13. 西村力弥

    西村(力)委員 それは私は約束を全部無視しろとは言わない。約束は、これは正常な国会運営のために尊重しなければならぬと言っておる。だがしかし、それよりも大事なのは審議を尽すという問題だ、こう言っている。だから私が先ほどから言っている憲法改正というこの大事な問題については、よしやろうという工合にわれわれの気持が動く——ただその改正ポイントポイントについての意見対立、それはあるでしょう。しかし初めからこの憲法改正についてはまっこう対立したまま、今押し切られようとしている。これをやはりもっと審議を尽していく必要があるのじゃないか、こう思うのです。だから全大臣出席を私は要求しておる。その点について今個々大臣の事情も少しお話がございましたが、それではきょう中に出席を願える大臣はどなたとどなたでございますか。
  14. 山本粂吉

    山本委員長 ただいま申し上げた、あなた御要求の、病気法務大臣以外のものは御出席を願うことにいたしております。どうぞ質疑を御続行願います。
  15. 西村力弥

    西村(力)委員 それでは、ただいままで私が申しましたことに対して、提案者である、また担当であられる清瀬大臣の御見解を承わりたい。
  16. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今委員長お答え通りでございます。それからお互いわが国では議院内閣制度を本旨といたしておりますから、内閣の責任は連帯でございます。私がお答えして、足らぬところがあったら、どうか一つほかの人に御質問下さるように、決して私は質問を制限するのじゃなく、他の大臣出席をはばむのじゃございませんけれども、やはり物事には常識の限度もございますから、どうか一つ実質について御進行賜わりたいと私は希望しておるのであります。
  17. 西村力弥

    西村(力)委員 今の御答弁もその通りでございましょうが、私たちがこの憲法改正に取っ組もうという気持までいかせることに対する御熱意のほどをお聞きいたしたいのです。そうでなくて、まあとにかく二大政党対立であるから、教育上の問題についても、あるいは刑法上の問題についても、やはり政党色が出てまっこう対立したままいってもやむを得ないのだ、こういう工合にお考えのようですが、憲法でもやはりやむを得ない、これはやっぱり強行する以外にないのだ、こういう立場をとられるか、事憲法に関しては、私はそうはいきたくない、その私の気持に対して、清瀬大臣はどういう工合にお考えであるかという点であります。
  18. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 あなたのお気持を私が批判することは失礼に当ると思います。国会法衆議院規則の命令するままに進行するのほかはないと思います。
  19. 西村力弥

    西村(力)委員 私の気持に批判を与えろということは、すなわちあなた自身気持を申してもらいたいということなんです。このままの姿で押し切るか、それともやはり本気にわれわれが取り組み得るような工合に、ほんとうに情熱こめて説得これ努める、こういう方向にこれからもやるんだ、こういう気持をあなた自身がお持ちかどうかということなんです。そういう立場でやらなければいけないじゃないか、私はそう思うから、そのお気持をお聞きしたいと思うわけです。
  20. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私は議員ではございますが、提案者としてここに出ておるのであります。その議事をどう運行されるかは、あなた方と委員長との間でおきめ下さるごとで、前申した、議会政治おいては国会規則衆議院規則がなめらかに運行するように私は希望しております。
  21. 西村力弥

    西村(力)委員 それではお聞きしますが、この憲法改正すると——いろいろな改正の腹案も持っていらっしゃるようでございますが、今の憲法をあなた方の企図せられておるような工合改正された暁に、国民福祉というものがどれだけ向上するであろうか、その点についてはどういう工合にお考えでございますか。私は今国民の最も求めておる問題は、雇用政策とかあるいは道徳振興——しかしそれは観念的な道徳秩序の向上じゃなくて、その道徳秩序が維持されるための経済政策の充実、こういうことをまず求めておるだろうと思う。ここで憲法論議をやっておる過程において、どれほどの人々が現在の政策のらち外に置かれて生活上の苦痛にあえいでおるか。あるいはまた、今三月末で、就職に漏れた若い青年たちの苦労というものはどれほどあるか。今求めておるのはそこじゃないか。それを満たす上に、憲法改正成果がどれほどの影響を与えるだろうか。それについては大臣はどういう工合にお考えでございますか。
  22. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 たびたび提案者並びに政府から申しまする通りわが国繁栄及び安全が保たるるように、憲法改正調査をしてもらいたいのであります。必ずやりっぱな成果を得る憲法草案ができることを期待しております。
  23. 西村力弥

    西村(力)委員 ただ調査をすると仰せられるけれども、調査をするに踏み出す限り、改正方向というものは当然持っていらっしゃるはずなんです。だからその玖正の方向が実際に国民福祉にどう影響するだろうかということを確信を持って打ち出さなければならぬのじゃないか。単に改正するかしないかということを調査するということではなくて、実際企図せられておることは、改正をこうやるんだ、そのためにその民主的な手続として一応調査会を作ってやるんだ、こういうことになっておるのですから、必ずや国家繁栄国民利益のために効果をもたらすだろう、こういう漠たる期待ではなくて、やはり実際の確信に満ちた見通しというものをわれわれは持ってかからなければならぬ。はっきりそれを国民に示していかなければならぬ。そうしないで、ただ押しつけられた憲法だからといって、低俗な民族感情のごく一部分をゆすぶって憲法改正を押し切ろうというような簡単な行き方ではいけないと思う。やはり憲法改正することによって国民の安全、利益というものはこのように向上し得るんだという点を一応国民に示していく。単なる言葉ではなく示していくということがぜひ必要だと思うのです。今、憲法に対する国民関心は、私から見るとまだまだ薄い。これは明治憲法の罪悪だ。欽定憲法というわけで、われわれはそれには一指だも触れない。明治憲法はわれわれのものじゃなかったんだ。そういう長い生活をさせられたために、このたびの憲法を喜んで、明るい見通しを持って迎えたけれども、まだ多くの国民は、憲法はおれたちのものだという認識が十分でない、こう思うのです。それを改正するのでございますが、とにかくもっと関心を持たせる。それにはやはり現段階に当ってはかくかくのごとく憲法改正することによって成果は期待せられるんだということを、国民に示すことがぜひ必要であると私は思うのです。単に言葉で期待し得られるだろうと言われても、それだけでいただくわけには参らないということになるのではないかと思うのです。もう少し、一つ本気な考えを聞かせてもらいたい。
  24. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今、西村さんの熱烈な御弁論を拝聴いたしましたが、これは憲法調査会法なんで、憲法改正案を出しておるのではございません。内閣では、調査会ができるまでは憲法はこう改正すべきだなどという発表はすべきものではないと思います。
  25. 西村力弥

    西村(力)委員 それは形式的にはその通りでございますけれども、この調査会を作ろうとするのは、かくかくの改正方向を実現しようという意図に基いている、これは間違いないことなんです。そういう意図を持たないで単に調査を始めましょうというような、こういうようないき方は、やはりこの審議に対する今までの応答と同じように、どうもお互いに真剣に自分の至情を吐露し合っての討議になっていない御答弁ではないか、そういうことでこの法案を通す、そうして日を経るに従って結局改正というものがぽっこり出てくる、こういうことになったんでは、私たちはどうもこの改正方向に対して、この際審議をしようという気持を失わざるを得ないわけなんです。もう少し今のようなごまかしの答弁じゃなく御答弁を願いたいと私は思う。調査会であるから、改正方向について国民必要性を訴える具体的な例は、この際具体的には言えない、こういうようなことではとても私たちはこの審議を本気になってやるわけにはいかぬということになってくるんです。いかがでしょう。もう少し国を憂うる老骨清瀬先生というような、こういう立場——何か言葉言葉やりとりのようなことじゃなく真剣な話を一つお聞かせ願いたい、こう思うんですが、いかがでございましょうか。
  26. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 いろいろ丁重なお言葉がありましたけれども、今から調査会を作ろうという際に、政府の方でこういう憲法を希望するんだと言っては第一審議会の構成にも——ややともすると世間では御用機関になりはせぬかといわれる際でございますし、実際に内閣おいては憲法案はこさえておりません。私自身考えはありましても、それは今言うべき時期じゃないと思います。しかしながら望むところは独立国にふさわしき憲法案を作ってもらいたい、こう考えておるのであります。
  27. 西村力弥

    西村(力)委員 こういう話をぐずくずやっておってもしようがないと言えばしようがない。(笑声)結局やはりわれわれの討議というものが上すべりな言葉やりとりだけで通らざるを得ないのかということになると、はなはだ残念な気持がいたすのであります。それでは全体の関運おいて、担当大臣としての御出席でございますので、お聞きしたいと思うのでございますが、今までの応答を見ておりますと、やはり平和というものに対する希求は、お互いに熱烈なるものである、ただ政府当局あるいは自民党皆様方の仰せられることは、平和の基礎は力のバランスにある、こういうことでありましたが、大東亜戦争の突入以前のあのときの、力のバランス、力の均衡が平和を維持するゆえんだ、こういう打ち出しで軍備の拡張が次から次へと行われて、結局力の均衡戦争を誘発したという先例を、われわれは痛いほど知っておる。今も力の平和ということを主張せられるが、あのとき戦争に突入した力の平和と、今力の均衡による平和と唱えていることとの差異はどこにあるか。あっのままの形の考え方をすれば、やはり今の力の均衡という打ち出しは、戦争に行く危険性をそのままずっとはらんでいるわけです。われわれはそれを非常におそれる。何か平和を求められる熱烈なる希望に基いての平和の力、こういうような打ち出し方は、どういう工合に違っているのか、これはほんとうに大事なことです。とにかく憲法改正は、さまざまの条章がありましょうけれども、第九条の戦争放棄というものに是正を加えようというところが、最大のポイントになりつつある。だからそれを改正して、力の平和を実際的に実現していくということになるのですから、そこのところでこれが破裂しないで、ほんとうに平和に行く、戦争に行かないためには、今唱えている力の平和に対しては、何かそこに違った考えがなければならないのではないか、こう私は思うのです。その点については、一体どういう工合にお考えでございますか。
  28. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ほんとうの平和は、西村さん、力によらない平和なのです。カントの恒久平和、トルストイの平和です。何人も力を用いないで、人類が永久に平和になることが、真の平和でございます。一部の人の今でも考えておる世界連邦思想あたりも、やはりそれでございます。しかしわれわれ現代に生きておる者は、現代世界情勢を知らなければならぬ。これを無視するわけにいかない。今現に、今日ただいまといえども、人間発砲戦争をしております。フランスアルジェリア、チュニスにおいてもあの通り、地中海のサイプラスおいてもあの通りイスラエルとジョルダンの間にもあの通りで、今日ただいま、ともかくもまだ人間の心のうちには、武力をもって相争うという考えが捨てられておらないのでございます。現にアメリカもソ連も武器をこしらえておるということは、トルストイのような考えをアイゼンハワーが持っておらぬ、ガンジーのような考えをブルガーニンが持っておらぬ、世界政治家がやはり武力における争いを捨てておらぬという現状においては、やはり力の均衡のほかは平和を保つ道はないのではないか、こういうふうに区別して考えております。
  29. 西村力弥

    西村(力)委員 それはフランスアルジェリアにしましても、イスラエルの問題にしましても、あるいは台湾海峡の問題にしましても、民族としての一つの息吹き、それを圧迫しようとする武力がそれに加わる、あるいは介入しようとする武力が加わる。これをもって武力戦争であるという工合に見るのは、それは今の国際的な動きに対して、認識がちょっと違うではないか。台湾中国の問題にしても、あの海峡の問題は、やはり極東政策というアメリカ政策が先行するからこそ、危機をはらむのだ。民族の問題として、中国自体の問題としておった場合には、何のことはない。事実朝鮮の戦争おいてもその通りなのです。そういうことから力の均衡というものが必要だという、こういう理論は、われわれはちょっと今の世界人類民族独立の意欲というものに対して、認識を欠いておるではないか、こう思われるのです。  まあそれはそれとしまして、とにかく力の均衡が必要だ、それこそ平和のポイントである、こういうようなことでありますが、私がお聞きしたのは、大東亜戦争に入るときには、力の均衡が結局破滅に導いた。今力の均衡を唱えられるそのあなた方のお考えと、あのとき唱えられたこととどう違うか、こういうことなんです。力の均衡をやって平和を築いていこう、戦争には行かないようにしよう、こういう意図を持っておるのですから、あのときとどういう工合に違うか、どういう工合に違わせるか、それをお聞きしたいわけなんです。
  30. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 あのときも今も、人間の心にまだまだ武力行使の念がぬぐい去られておらぬということは、同一であります。あのときもカントの恒久平和の時代に達しておらず、今日もその通りであります。ただわが国一国について考えてみれば、あの当時は、その当時の国際法日本国家は完全なる宣戦の権を持っておりました。これを交戦権というのは言葉が悪いのであります。しかしながら今日日本国民は、何人自衛をする以外の場合に武力を使おうとは考えておりません。そこの点が少し違っております。
  31. 西村力弥

    西村(力)委員 それが違うということになりますと、そうすると、大東亜戦争自衛戦争ではなかった、これからやるのは自衛以外の戦争はやらない、こういうところに違いがある、こうなるのでございますか。そういうことになりますと、今までの御答弁とちょっと違ってくるのではないか。大東亜戦争おいても、初期においては自衛の戦いであったが、終末に至ってこれが侵略的な様相を帯びてきた、こういう答弁でありましたが、その点はどうですか。やはり大東亜戦争自衛のためだ、こういう打ち出しでやられたのではないか。前の答弁と違うようでございますが、その点を一つ解明願いたいと思います。
  32. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 前の答弁と違うのではなく、あなたのお問いが違っております。今の国際均衡と、それから戦争前のことと違うか、このお問いに対して私は答えたのであります。
  33. 西村力弥

    西村(力)委員 どういう均衡もそれは必要だ、それはあなたの所論としていいだろうと思うのですが、前にも言った。武力均衡こそ平和に必要だ、こういった形は同じだ。今唱えておるのとどう違わせるのか、前のような考え方でいったのでは、やはり一つの破綻を来たすから、どこか違わせなければならぬ、そう問いましたところが、これからは自衛戦争以外には絶対にやらない、こういう御答弁でありますので、前の大東亜戦争自衛戦争であったという答弁と同じだから、結局力の均衡という問題は、前も今も唱えておることは同じじゃないか、こういう工合に私は受け取らざるを得ないのです、いかがでございますか。
  34. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 あなたは太平洋戦争前の力の均衡といったことと、われわれが今方の均衡ということとは、どこが違うのだというお問いから今の問答が始まったのです。当時は日本国際法上の独立国たる完全なる宣戦権利を持っておりました。不戦条約に入っておりますけれども、国際法上の権利はすべて備えておった。今日われわれは国際法上の権利はともあれ、つまり自衛のための武力行使のほかはしないという決心をしておる。そこは言葉の上だけでなく、国民の心持の上においても非常に違っております。しかしながら戦争以前においても世の中はいまだ恒久平和の時期に達せず、今日においても達しておらぬという点は同一であります。
  35. 西村力弥

    西村(力)委員 宣戦布告を今はやれない、今はもちろんそうでしょう。しかし私が聞いておるのは、憲法改正して第九条を改正するときは、やはり宣戦も布告をする、そういう戦時国際法の保護も受けるというような立場憲法改正される。それがすなわち力の均衡ということになれば前の力の均衡と今の均衡を唱えられていることと全然違わないではないか。そういう宣戦布告の問題——今の憲法ではできない、改正すればそれはできるようにする、それが今唱えている力の均衡ということなんです。だからそこに違いがないではないか、こう私は受け取らざるを得ないわけなんです。とにかくこれは大事です。力の均衡によって第九条を修正していくということになると大東亜戦争のときと同じですから、そこを絶対にそうでなく違わせるのだというはっきりしたところを聞かないと、やっぱり非常に危険を感ずるわけなんです。しかも現実には憲法改正してもアメリカの一翼となって日本武力が発動せられる、こういうことが目に見えておる。これは否定できないことなんです。だから今言う力の均衡というものはますますわれわれにとっては不合理であり、あるいは不安である、こういう気持を持っているわけなんです。だからその点どういう工合に違わせるのか、はっきりしてもらいたい。自衛戦争しかしないというようなことを言いますけれども、自衛戦争以外はやらないというようなことはあちこちの憲法にもあるわけです。そしてまた現在の憲法解釈でも政府としてはそれはできると言う。自衛戦争だけしかやらないというからすれば、今の憲法改正しないでも、あなた方の解釈がまかり通っておるんだから改正の必要がなくなる。とにかく国民の一人として不安に思っておる、大東亜戦争、太平洋戦争に突入したとき、力の均衡を軍部が盛んに唱え、それを官僚が支持し、それをすべての教育面に浸透させ、あるいは部落組織を持って浸透させた。そういうことからとうとう破綻にいったのですが、今憲法改正をやろうとする。力の均衡がどうしても平和を維持するのに必要であるから改正してそれを実現するのだ、こういうところがどういう工合に違うのか。決して太平洋戦争のような工合に破綻を来たすようなことはないという制限をどうつけるか。その点について私はやっぱりどうしてももっとしっかりしたお考えをお聞きしたいわけなんです。
  36. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今の御説明にありました通り、今の憲法のもとにおいても自衛のための兵力は持てるという解釈を持っております。しかしながら憲法でも一般の法律でも、法律は文字に書いたものでありますから、明白にこれを示しておる。人を感動せしめるくらいこれを示すということはやはりこれは必要なことで、これからの憲法改正調査会調査して下さることでありましょうけれども、一層明白なりっぱな規定のできることを期待しております。
  37. 受田新吉

    ○受田委員 関連してお尋ねしたいのですが、清瀬文部大臣は、この憲法調査会法案担当主任大臣として、あらゆる立場からの総合的な御意見を用意されておると思います。従ってここに船田氏がおいでにならなくても、また法務大臣おいでにならなくても、あなたはあらゆる問題について責任を持って答弁できるとお考えになりますか。
  38. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 そのつもりでおります。
  39. 山本粂吉

    山本委員長 受田君。
  40. 受田新吉

    ○受田委員 清瀬さんは大東亜戦争自衛のための戦いであるという信念を、極東軍事裁判において東条弁護のために堂々とお述べになられましたが、その信念は今日も変っておられませんか。
  41. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 先日提案者たる山崎さんのお答えになった通りであります。
  42. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、弁護人として論述せられた言葉は、今日やむなく大東亜戦争は最後は侵略に変らざるを得なかったという御解釈と了解してよろしゅうございますか。
  43. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 戦争が始まったときは、山崎君の言われた通りであります。戦争が何年か続きまする結果は、いろいろと双方に——先方もわが国に対して攻撃のほこを向けてきました。わが国もまた終始これを防いだのであります。これが歴史上どういうものであるかは今からの歴史家のきめることでございます。
  44. 受田新吉

    ○受田委員 私あの際にさらに船田氏にもお尋ねしたのでありますが、真珠湾攻撃は宣戦の布告以前に攻撃が加えられておることは周知の事実です。昭和十六年十二月七日に真珠湾攻撃がやられておる。布告があったのは八日であった。すなわち宣戦布告がおくれておる。こういうやり方を大東亜戦争でやっておるのでありますが、これはいかなる御解釈をおとりになりましょうか。
  45. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 山崎君の、始まりは自衛権の行使だとおっしゃるのはそれです。自衛権の行使には宣戦の布告は……。
  46. 受田新吉

    ○受田委員 聞こえなかったので、恐縮ですが、もう一度お願いします。
  47. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 宣戦の布告が真珠湾攻撃よりおそかったことは事実であります。しかしながら山崎君も始まりは自衛権の行使だとおっしゃっておる。自衛権の行使は必ずしも宣戦布告後にやるものではございません。
  48. 受田新吉

    ○受田委員 自衛権の行使は必ずしも宣戦の布告後にやるわけではないのである、こういうことになると、これは大へんな問題であって、私は現在の憲法九条に基く解釈をここでお尋ねするのでありますが、自衛権の戦争は必ずしも宣戦の布告を要せずというこの清瀬さんのただいまの論点をもってするならば——この間から総理は憲法九条に基いて自衛権のための戦争はできるとここで答弁されております。そうすると鳩山総理の自衛戦争というものは、宣戦の布告なくしてなし得る戦争ということになると思うのでありますが、そうすると現在の憲法おいでりつぱに宣戦の布告なく自衛戦争ができるという解釈もできると思うのでありますが、御見解いかがでしょう
  49. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 自衛権の行使は、たびたび言う通り、敵の方から攻撃して、それに対してほかの手段を講ずるのいとまない急迫の場合の抵抗が、これが自衛権でございます。
  50. 受田新吉

    ○受田委員 先ほどの真珠湾攻撃は、そうしますとどういう解釈になりますか、もう一度関連して御答弁願いたいと思います。     〔発言する者多し〕
  51. 山本粂吉

    山本委員長 お静かに願います。
  52. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 少し聞き取れませんでしたが、現在の憲法でできるということじゃございません。しかしながら自衛権の行使というものは、全体として、敵が浸略して、ほかの手段をとるのいとまなし、この場合にできるということが、これが国際法上、ウェブスター国務長官以来の自衛権成立に関する解釈でございます。
  53. 受田新吉

    ○受田委員 あなたの国際法上の解釈について、私さらにお尋ねを続けたいのでありますが、現在の憲法第九条によって、総理は自衛のための戦争はできると答弁せられておるのであります。自衛戦争の可能を論じておられるのであります。しからば自衛のための戦い、それは急迫不正の侵害に対してなし得るということになれば、宣戦布告なくして自衛戦争を現在の憲法でなし得るではないかと私はお尋ねしておるのです。
  54. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 その自衛戦争という言葉は、用語がちょっと不正確であります。自衛権の行使というものは、その状態が急迫で他の考慮の余地なきときにこれを行うというのが、これが自衛権の行使であります。自衛権行使以後にだんだんと続いて自衛戦争という言葉もできるのでありましょうが、問題の自衛権行使は宣戦布告に基くものじゃございません。
  55. 受田新吉

    ○受田委員 あなたの先ほど来の御答弁で、真珠湾攻撃は自衛のための戦争であった、宣戦布告なくして自衛権の行使、武力行使をしたのである、こういう御解釈と私は了解しておりますが、もしそれに変更があればまた御答弁いただくこととして、そういう解釈であるならば、自衛のための戦争と称して、急迫不正の侵害に対して、宣戦の布告なく、どしどし戦いを現行憲法おいてなし得るという危険が多分に行われるのであって、真珠湾攻撃とは一連のつながりがある解釈として明答を願いたいのであります。
  56. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今の憲法の解釈として、自衛のための兵力は持てるということは、やはり敵の方で急迫に不意にやってきて、ほかの考慮をするいとまがないというときに、自衛権の行使ができるということでございます。
  57. 受田新吉

    ○受田委員 真珠湾の攻撃はそういう観点からなされたのですか。
  58. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 わが国宣戦の詔勅にもありますが、当時これを自衛と言ったのは、あの当時はわが国中国との間で数年間戦争をして、力はほとんどバランスであったのであります。その時分にイギリスはビルマから物を供給し、アメリカは金銭を供給し、わが国に向っては輸入禁止の手段をやっておるのであります。向うからいえば輸出であります。輸出の禁止というものは、あの当時国際公法上できるものじゃなかった。これを黙視しておきますと、わが国の生存が危うくなるということで、当時の政府はこれを自衛権と解したのであります。
  59. 受田新吉

    ○受田委員 今度の新憲法にある、国権の発動たる戦争というのはこれは宣戦の布告による正式の戦争の場合ですか。
  60. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 九条第一項による国権の発動たる戦争自衛権とは相違いたします。自衛権はやむを得ずしてなすことでございます。
  61. 受田新吉

    ○受田委員 国際紛争を解決する手段としての戦力は保持しないとありますから、この国際紛争を解決する手段ということになりますと、自衛のための戦争も、これは国際紛争の解決の手段ではないか、こういうことになるのですか。
  62. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それは違うのです。国際紛争の解決というのは、あるいは領土権の問題とか、あるいは個人の賠償とか、国際上の政策を解決するためです。自衛権は、ずっとあとから考えれば国際紛争でありましょうけれども、国際紛争の概念のうちに入らないのです。どういうことで起ったにしろ、いきなりやってきて、攻撃をする。ほかの手段をとる考慮のいとまなくしてやる、これが観念でありますからして、自衛権の行使は国際紛争解決の手段ではありません。これはもうよくわかったことなんであります。
  63. 受田新吉

    ○受田委員 その点はよくわかっておる。それは国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄しておるのでありますから、あなたのおっしゃる自衛戦争憲法でもこれを容認されるかということを私はお尋ねしておるので、そういうことになるならば、今あなたのおっしゃったような急迫不正の侵略が突然あったという場合、国際条約違反をやつて、急に襲ってきたという場合に、国際条約違反のそういう侵略に対しても制裁のための戦争ということも考えられるかどうか。
  64. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 制裁戦争はまた別の観念であります。自衛権は制裁じゃないのです。自己保存のためであります。
  65. 受田新吉

    ○受田委員 ここで問題が起るのは、行政協定二十四条です。これによりますと、米軍と日本軍は外敵の浸略に対して、共同作戦の規定が掲げられてあります。こういう場合に、あなたのおっしゃったような国際信義を無視して、いつ急迫不正の侵略を加えるかわからないという国際情勢のさなかに立って、米軍がその急迫不正の侵入に対して宣戦の布告をして戦争を始めた。そのときに、これと共同作戦をする日本軍は、共同作戦をとる立場上、米軍から共同の戦闘を要求された場合に、これは事実上宣戦布告をした米軍と同一行動をとらなければならぬけれども、この場合はいかなる解釈をもってこれに当ればいいのでありますか。
  66. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 御質問の趣旨が少しわかりにくかったのでありますが、日本の国では自衛のためでないというと、戦力は使わないのであります。そうしてアメリカ日本は二十四条で協議するのであります。自衛のため以外の戦争と見ればわが国は協議に応ずるはずはないのであります。
  67. 受田新吉

    ○受田委員 自衛のための戦争は、これは政府も認めておられるのですよ。これは鳩山総理もはっきり言うておられる。そういうことになった場合に、自衛戦争を認めている政府としては、アメリカがいずれかの国と戦争を開始した、これと共同作戦をとらざるを得ない国際協定を結んでいる日本国としては、当然アメリカの支配のもとに、日本国の自衛隊が動かせるということは、もうきわめて可能性の多い問題ではないですか。この点はあなたも責任者として、はっきり船田さんがおらぬでも答弁できるとおっしゃったのです。
  68. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 可能性が多いとおっしゃるが、私は可能性は絶対にないと思います。あなたの言葉のように、自衛戦争ということを言って問題を複雑にされました。わが自衛隊は自衛権の行使のために抵抗の武力を用いるだけであります。アメリカが他の目的で中国とでも戦争する場合にお手伝いをするという約束はしておりません。
  69. 受田新吉

    ○受田委員 先般の国会におきまして、鳩山さんの御答弁の中に、自衛のための戦争があり得ると答弁されていることは、間違いでありますか。
  70. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 その答弁問いと答えがどうなっておるか、今ここに記録はありませんが、たといそう言われましても、問題の観念をはっきりするためには、自衛権の行使という言葉にとどめて、自衛戦争だといったようなことをあとにつけたりすると、話がこんがらかってくると思います。
  71. 受田新吉

    ○受田委員 あなたの御答弁によるならば、自衛のための戦争でなくして、日華事変のごとき、自衛のための単なる事変だというふうな解釈ですか。
  72. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 戦争という言葉がいろいろと連想を持つのです。しかし今われわれの討論しておったのは、自衛権の行使のことだけでしょう。だから観念ははっきりして言葉も正確に使う方がいいと私は言っているのです。
  73. 受田新吉

    ○受田委員 先般船田長官は、急迫不正でない侵略ということに対して、石橋君の質問に対して、急迫不正でない侵害というのはどういう場合かということになると、たとえば宣戦布告をやって日本へ襲いかかったような場合をいう、すなわち日本は現実に宣戦布告によって侵略を受ける可能性をはっきり船田長官が答弁されておるが、これに対して大臣も同様にお考えですか。
  74. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ここで決することは日本だけのことで、敵の方がどういうことをして日本へやってくるかは別問題であります。それが急迫であれば必ず自衛権が行使できるのです。その来がけにラジオで宣戦布告をしてもせぬでも、それは同じであります。問題は、日本へやってくるとき、それが急迫でほかに手段がない、こういうときに自衛権を行使するのです。
  75. 受田新吉

    ○受田委員 宣戦の布告をするか、あるいはしないか、とにかく急迫不正の侵略をやってきた場合に、日本はこれに対して敵の基地も十分たたき得るという解釈を政府はされておる。国際的に宣戦布告を日本へして、堂々と戦いをいどんできた敵国に対して、日本が敵の基地をたたくということは、事実上宣戦布告という事態が起り得ると私は思うが、いかがですか。
  76. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今はたぶんに仮定的の状態を想像されておるので、具体的にならなければぴたりとした解釈は出ませんけれども、過日以来防衛庁長官が答弁せられ、鳩山総理も答弁せられておりますが、非常に急迫で、不正で、今は一たん来れば原子爆弾というて全滅の武器もありますから、そういう場合には、攻撃する場所が敵地であっても、あるいはこちらから敵地にとどくような武器を出しても、それはやはり自衛の範囲だろうと存じますけれども、自衛権の成立するやいなやは、そのときの情勢に非常に支配されるものでございます。
  77. 受田新吉

    ○受田委員 その通り情勢に支配されることはわれわれ認めますが、先方が急迫不正の侵略をしてこちらがこれに対して応戦をしているという段階において、日本国としては、宣戦布告をして戦いをいどんできた場合には、これに対してまた戦宣布告をして、自衛のためだといってどんどん敵地をたたくという作戦をとるのですか。
  78. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それも具体的の問題でないとぴったりしませんけれども、われわれ平生民事上のケースを判断するにしても、具体的でないと判断を誤まる。しかしながら自衛権を世界が認めた国際法の根拠はいわゆるカロライン号事件であります。カナダの方からアメリカへ敵がやってきた、ナイヤガラの方から。そうして、こっちへ来るまで待ってはいけないから、来る先にそれを討って瀑布へ落してしまった。だからこっちへ来るまで待たなければならぬということは、自衛権の解釈上はないのです。
  79. 受田新吉

    ○受田委員 私はそのことを今お尋ねしておるのじゃない。私のお尋ねしているのは、日本国の自衛隊が、あなたのお説では、自衛権の行使としての自衛隊であって、軍隊ではないのだというような御解釈であるので、私はそれを論駁するのですが、日本の軍隊はこれはもう事実上できている。これを自衛隊をもってあてていることは万人が認めている。従って国際的には日本自衛隊は軍隊と解釈をされている。それが敵国から侵入を受け宣戦布告によって戦いをいどまれた。これに対して日本国は、この宣戦布告の戦いを開始した敵国に対して、敵基地をたたくために攻撃を加えたというときに、宣戦の布告をしないで敵基地をたたくのか、あるいは宣戦布告をしてたたくのか、そこをちょっと確かめておきます。
  80. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 自衛権の行使は急迫不正で他にいとまがない場合に起るのです。その場合には、自衛権を行使しますといったようなことを初めから布告するいとまもないかもしれません。自衛権の行使にはそんな口上は必ずしも必要ではございません。
  81. 受田新吉

    ○受田委員 あなたのお説は具体的な例をとおっしゃるのであるが、しからばどういう例をお持ちかを私はここでお確かめ申し上げたいのですけれども、日本国は非常に急迫不正の侵害を受ける可能性があるとおっしゃられておるが、どういうところから急迫不正の可能性をあなた方はお考えになっておられるのですか。アメリカの国は日本と今条約を結んでおる。しかしアメリカの国も日本に対して急迫不正の侵害をする可能性もあるかどうか。これはいずれの国も急迫不正の侵略の可能性を持っておるのかどうか、あわせて御答弁願いたい。
  82. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 アメリカの国が今日本に急迫不正の侵害をするということは、私は想像いたしておりません。
  83. 受田新吉

    ○受田委員 あなたが急迫不正の侵害を加えるであろうという想定をされる国は、アメリカを除いた世界の国々でありますか。
  84. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 そんな国は一つも想像しておりません。そんなことをだれか想像するものですか。今日本は平和に生活しておる。そのときに、日本国会国務大臣が、どこの国が急迫不正の侵害をするなんていう答ができますか、それを私は……。     〔「しているよ」と呼び、その他発言する者多し〕
  85. 受田新吉

    ○受田委員 清瀬さんは今両手を振り上げて、絶対に急迫不正の侵害がないと答弁されました。ここでは急迫不正の国はないのだ、そういうことは考えられないと答弁されておるのでありますが、これは非常に重大な国務大臣間の答弁の食い違いで、おととい総理ははっきりと片山哲氏の質問に答えて、力の均衡が必要である、平和のためには力が必要であると言われて、いつ急迫不正の侵害が加えられるかしらぬから力を持たなければならぬと、ここで答弁しておる。ところが今清瀬さんは、急迫不正の侵害を考えることは、日本国務大臣として妥当でないんだとみえを切られたのでありますが、この点あなたと総理との発言の食い違いはないかをもう一度御確認願いたい。
  86. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 きょうの問いは、あなたはアメリカが急迫不正の侵害をするのかとお問いになった、そうじゃないと答えております。それじゃどの具体的な国が日本に急迫不正の侵害をするんだ、こうお問いになっておるのです。将来どっかの国がやるかもしらぬというのでわれわれは準備しておるけれども、その国がどこの国だということは総理も言っておられません。高島呑象といえども言うことはできません。
  87. 受田新吉

    ○受田委員 アメリカは急迫不正の侵害を加えないとあなたはここで言い切られた。だからアメリカを除くそのほかの国が急迫不正の侵害をする可能性のある国だとあなたは断ずるかと私はお尋ねしたのです。ここを間違えないでよく答弁してもらいたい。アメリカは急迫不正の侵害をしない国とあなたは今断言された。しからばそのほかの国々が急迫不正の侵害をする国であると想定しておるのであるか。
  88. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 そんな想定はいたしておりません。しかしながら今日の問答の初めにある通り、悲しいかな人類は、今すべての武力行使を放棄するだけの進歩性を示しておらないのです。カントの恒久平和は、今日では白昼の夢でございます。現に鉄砲を放しておる国もあるのです。でありますから、いつ何時どこの国から急迫不正の侵害があるかもわからぬから、これに準備する、備えあるを頼むということでございます。
  89. 受田新吉

    ○受田委員 カントの名説もそうでありますが、仏教の大乗教のまん中に、国に干戈を用いずとはっきり書いてある。すなわち国は一切の軍力を持たないと仏教は教えております。その意味で仏教が国に戦力を保持しないでいいということを三千年の昔にすでに教えを開いておる現実から見ましても、あなたのおっしゃるような、いつ急迫不正の侵害がやってくるかもしらぬから、ここで自衛のための軍隊を持つのだというような御解釈は、これは平和的な世界の共通の理念に対して非常に矛盾しておる。特にあなたは、今どの国が急迫不正を加えるかわからないけれども、そういう場合のために自衛隊を持つんだと言うておられるのです。アメリカは急迫不正の侵害をしない国だと断言された。しかしそのほかの国が急迫不正の侵害を加えるおそれがあるんだということになると、これはアメリカを除くそのほかの国は、いずれが日本に侵害を加えるかわからぬというお考えのもとに自衛隊を持っておると思われるのです。それですよ、私がお尋ねしておるのは。ある特定の国は指さぬけれども、アメリカを除くそのほかの国は日本に侵害を加える可能性があると断じてよろしいか。
  90. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 大体お答えはいたしたと思いますけれども、今この時間で、わが国に急迫不正の侵害をどの国がするということは考えておりません。私も仏教の信者でございます。釈尊が二千五百年以前に平和を唱えられた。しかし同じ仏教信者同士の間で、やはり悲しいかな戦争が起っておるのです。これが二千五百年も続きました。それでこれから先、人類が改心して、みんな仏の心になり得るというのには多少の時間がかかろうかと思うのです。
  91. 受田新吉

    ○受田委員 あなたのは、二千数百年来の釈尊の教えが、実際は戦争によって汚されておるんだ、従ってこれからもほんとうに釈尊の教えを実現させるためには時間がかかるから、ここで軍力を持たなければならぬのだという結論になっておると思うのです。私はここでいま一つお尋ねして質問を終りますが、あなたは大東亜戦争の責任者たちの弁護に当って、明らかに自衛のための戦いであったということを裏づけするべく懸命に努力された。それが終ると、ただいまはすでに前説をある程度くつがえして、自衛権はこれはやむなく発動されたものであり、自衛のための戦争もあり得て、宣戦布告なしに攻撃したことは、これは自衛戦争の範疇を起えるものではないと答弁されておる。こういうような、時の勢力にとかく押されて適当な変更を加えておられることは、これは非常に問題が重大だと思う。特に戦力の解釈において、自由党内閣から鳩山内閣に至る過程において何回変遷がありましたか。初めのころは軍隊は持てないと言い、だんだん軍隊が持てると言い、そして戦力とは総合戦力体系を言うのだというふうに発展してきて、今日ではどうかというと、自衛戦争もできるというように発言した。この大きな飛躍と、それからあなた方御自身が持たれる内心における矛盾とが今日の政治の混迷を来たしておるのです。この点においてあなたはもう一つしっかりした御答弁を願いたいのでありますが、私たちが心配しているのは、この間もダレスさんが参りましたけれども、ダレスが、日本に海外派兵は絶対させないんだ、日本憲法に違反までして再軍備は増強しなくてもいいのだ、というふうに言われたと政府の責任者たちは言うておりますけれども、当日、後刻出席を願わなくちゃならぬ船田氏のごときは、はっきりとダレスとの会談において、海外派兵を否定するような憲法を作ったことは、占領政策の大きな欠陥であったとまで言うておるのです。いいですか、そういうような答弁までもしておる国務大臣がおるんです。こういう点について、あなたもおそらく憲法担当せられる国務大臣として御出席になったであろうが——船田氏の欠席裁判のごとくなるけれども、明らかに船田氏がこういう発言をしているところを見ると、政府筋としては、ある程度ダレスに対する、海外派兵その他の規定をなし得ないような憲法を作ったことについて、不満を持たれているということがうかがえるのであるが、さよう考えてよろしいかどうか。
  92. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 あなたと私との論は、食い違ってなかなかぴったりしないのです。西村さんのお問いに対しての答えもそうでありましたが、ことにあなたのお問いと私の答えとはうまく食い合わないのであります。それはどこにあるかといえば、自衛権というものの性質を二人とも違って考えておる。ここに私はあなたの党派が今月十二日の中央執行委員会でおきめになった声明を持っております。あなたの方も自衛権はあると言っておられる。ただしかしその行使はできぬ、その行使はやはり国際機関——具体的の侵略に対する防止は武力以外の方法、たとえば国際司法裁判所への提訴、こういうことをやるという。ところが自衛権というものは、急迫不正のときにこっちも自力でやることですよ。これが自衛権で、自力でやるのが自衛権であるのに、国際司法裁判所へ提訴するという自衛権がありますか。
  93. 受田新吉

    ○受田委員 時間がないから、午後またあらためてやります。
  94. 片島港

    ○片島委員 議事進行で……。実は今自衛権の発動という重大なる質疑が行われておるのだが、文部大臣自衛権の発動をやるわけではありませんから、これは防衛庁長官に来てもらわなければならぬ。ところが防衛庁長官は、きょう防衛庁の建物の落成式で、十時半からその落成式に出ておるはずです。与党の諸君もみな招待を受けましたけれども、内閣委員会が非常に重要なものだから——私も招待を受けておりましたけれども、そこへ行かないでこの委員会出席をしておるわけです。ところが防衛庁長官は、ここに出席をしないで建物の落成式に行っておる。十時半からだから、おそらく十二時ごろ、今から一ぱい飲み方が好まるかと思います。しかしこういう重大なる憲法調査会法案、特に自衛権の行使というような重大なる問題を議論いたしておりますときには、その主管者である船田長官がここに出席しなければ、文部大臣が幾ら言われてもこの質疑はむだだ。もし午前中にどうしても出られないならば、午後の再開劈頭から船田長官がここに出席をせられるように取り計らいをしていただかなければ、この審議を続行することはできないと思う。どうか委員長はそういうふうに取り計らいをしていただきたい。
  95. 山本粂吉

    山本委員長 片島君にお答えいたします。船田防衛庁長官は午後出席するように取り計らいいたします。
  96. 細田綱吉

    ○細田委員 ちょっと関連して。ただいま文相が、抽象的な議論で、また一つの仮定としては答えられないし、また答えても一致しないというようなお答えでしたから、私は具体的なことを伺います。それから、再び日本国は真珠湾攻撃や太平洋戦争という世界中から指弾を受けた戦争に入って国を滅ぼすようなことがあってはならないと思いますので、私は太平洋戦争を例を引いて、こういうことをなからしめるように、またこういうことに入らない憲法が一番いいと思いますので、伺いたいのです。あなたの御答弁では中国や満州へ兵隊を出して力のバランスがとれておったところへ、アメリカが輸出禁止その他の方法に出たから、これは国際条約に違反したということで、私はそばで聞いておると、あたかも日本自衛権の発動をしたという意味の印象を受けた。そこでそういう場合に輸出禁止をすることが国際条約の違反であるか、また違反なりとすればどこのどういう国際条約に違反なのか、お教えを願いたい。
  97. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 アメリカ日本の間には通商航海条約というものがありまして、売りにきたものは買う、買いに行ったものは売る、国内の交通も自由、こういう条約があったのでございます。その廃棄以前に輸出禁止をいたしたので条約違反であります。
  98. 細田綱吉

    ○細田委員 通商航海条約というのは限度をきめた条約です。これは限度をきめてそれだけは必ずやらなくちゃならぬということではなかったと思う。と同時に、もしそれが軍需品なんかの場合は、むしろ国際慣例に従ってそういうものを送らない方が世界の平和を守ることができると思うが、その点一つ伺っておきます。
  99. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 あるいはルーズベルト大統領はそうお考えになったかもしれませんけれども、あのときの通商航海条約には物資のリミットはないのです。
  100. 細田綱吉

    ○細田委員 だからアメリカがこれだけ出し得るというそういう限度をきめたのが条約の中身ではないか。それだけ必ず義務的に出さなければならぬというのが通商航海条約ではない、こう考えているが、あなたはいかん。
  101. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 あのときは、おもな物資はくず鉄、石油でございました。日本の商人と向うの商人との間に商談ができて、船に乗せて日本に送る時分に政府命令で禁じたのは、それはやはり通商航海条約に私の法律解釈では違反していると思います。
  102. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたは太平洋戦争自衛戦であったとお考えになるのですか。
  103. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私は、山崎君が過日お答えになったことを受け継いで今答えているだけであります。
  104. 細田綱吉

    ○細田委員 二十世紀に入って、いかなる国の戦争自衛を名とせざる戦争がありましたでしょうか。非常に学者である文相に対して一つお教え願います。
  105. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それは一々歴史を調べなければなりませんが、やはり双方から自衛といえば、一方は自衛じゃないかもわかりません。
  106. 細田綱吉

    ○細田委員 ニュールンベルグの裁判、東京裁判等いずれも自衛を名として侵略戦争に移ったということをはっきり判決でうたってある。あなたは当時の弁護人としてどう弁論されたか、弁護人としての弁論は別です。私はそれを追及しておるのではありませんが、現在閣僚の重要ポストにあるあなたとして、この両裁判の今申し上げた結論と申しましょうか、規定は全然別だ、こう考えておられるのですか。言いかえれば、ニュールンベルグの裁判も、東京裁判も自衛を名として双方が侵略戦争に移ったというこの言葉は、あなたは当っていると思いますか当っていないと思いますか。
  107. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ニュールンベルグの裁判と東京の裁判とは少し違うのです、主たる論点が、向うはヒットラーの主義に全部崩壊してほんとうに無条件降伏をしたので、連合軍は何ら条件なくあの裁判を始めたのです。こちらの方は、ポツダム宣言というものを向うが出して、それを承知だ、こういうて一つ約束があるのです。契約のもとに日本が降伏しておるのです。そこで、日本の裁判では、法廷があの十三カ条のポツダム宣言の契約の範囲内であるかないかがおもな論点でございました。二つ同じようには論じられません。
  108. 細田綱吉

    ○細田委員 どうもあなたの言うことがわからない。要するに自衛を名として侵略戦争に突入した。こういうことに対して、ポツダム宣言がどうとかなんとか、無条件降伏がどうとかいうことは必要ないのです。そういうふうな形態をとった太平洋戦争であったかどうかということ、言いかえれば、またこの判決の趣旨が正しかったかどうかということを伺っているのです。
  109. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私自身としてあの判決は不満であります。
  110. 山本粂吉

  111. 西村力弥

    西村(力)委員 山下さんおいでになっておられますが、厚生大臣の代理でございましょうか。
  112. 山本粂吉

    山本委員長 さようでございます。
  113. 西村力弥

    西村(力)委員 それではお尋ねいたします。厚生省の所管せられておる行政を伸張するために、現在の憲法のどういう点がどういう障害になっているか。もちろんあなたも自民党の一員として憲法改正に対しては熱意と確信を持っていらっしゃると思うのでございますが、その点から見まして、今お尋ねした点についてお話しを願いたいと思うわけなんです。
  114. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 厚生行政を担当いたしております私どもは、現憲法が規定しております福祉国家を目ざしておるその内容につきましては、政府も今後一そう福祉国家の推進充実に当る覚悟でおりますので、詳しい点につきましては憲法調査会の方で御答弁を願いたいと思っておりますけれども、大体におきましては、私どもはその点は今後も変らないものと確信をいたしております。
  115. 西村力弥

    西村(力)委員 厚生省としては真実国民福祉増進のために努力せられ、例年のこと予算も膨大に出されるが、いつもそれが予算不足という点から大なたを振われているわけでございます。それが一番の障害ではないか。やりたいと思ってもやらせられない、こういうところじゃないかと思うのです。今厚生行政を担当せられて不満足だ、こういうような工合にもちろん考えていらっしゃると思うのでございますが、そういう点はどんなところであるか、そしてまたそう自分の意に満たないまま行政をやっていかなければならぬという理由は、根源はどこにあるとお考えでございますか、その点についてお尋ねをいたしたいわけなのでございます。
  116. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 お答えいたします。たとえて申し上げますれば、八十九条でいろいろ社会福祉関係の仕事をいたしております団体に対しまして、現行の憲法は国が補助をしてはならないということになっておりますことは、われわれこういう事業を担当しておる者にとってきわめて不便であり不本意でございますので、その点は改正されるべきことを希望いたすものでございます。
  117. 西村力弥

    西村(力)委員 その点も一応やはり障害だと考えられるでございましょうけれども、そこに一つの制約を加えたほんとう考え方はどうであるか。日本の国がやはり国家というものの抽象されたところが優先してずっと進んできた。それに対する制限であった、こう思うのですが、ただそこのところだけを最も重大な障害と考えられるのでは、厚生行政というものがあまりに狭小ではないか。自分たちがやろうとしてもやれない点の障害に対しては、もっともっと大きい点がたくさんあるのではないか、こう思うのです。その点はどういう点であるか、それができない理由はどこに見出されておるか、こういうことを私はお聞きしたいわけなのであります。
  118. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 私どもは現行憲法に恐怖症をもってそういうものを控えておるものではありませんけれども、現に明らかに規定してございますために、たとえば赤い羽とかいろいろなことを行わなければ、これらの事業を遂行することができないということをきわめて遺憾に存じております。外国の憲法の例などに見ますれば、母子福祉とかあるいは老人に対するものに対しては、国家がこれらの福祉増進を規定しておる憲法もございまして、これらを阻止しておる憲法というものに対しては、きわめて不満に存じておるものでございます。
  119. 山本粂吉

    山本委員長 残余の質疑は午後一時半より行うこととし、暫時休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後三時十四分開議
  120. 山本粂吉

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。この際、委員各位にお願いいたしますが、去る十九日の理事会におきまして御決定願いました、すなわち十九日以後の委員会における質問時間は、社会党四時間、与党一時間、計五時間とし、お互いにその申し合せば尊重することにいたしましたことは御承知の通りであります。ただいままでの消費時間は、社会党委員おいて関連質問時間を合せ計三時間となっております。重要法案でありますので、今日まで慎重御審議を願って参りましたが、本日は討論採決を願うこととの理事会の申し合せもありますので、右の申し合せの趣旨を御了承下さいまして御質問願いたいと存じます。委員長は不当に言論を圧迫し、時間がきたからといって直ちに発言を禁止するようなことはいたしませんが、委員会運営上、理事会の申し合せば尊重せらるるようお願いいたします。受田君。
  121. 受田新吉

    ○受田委員 ただいま委員長より、委員会運営に当っての御親切なるごあいさつがあったわけでありまして、時間がきても質疑の打ち切りはしないという寛大なるお気持を御表示いただきました。この点、われわれ野党に了解なしに質疑の打ち切りなしと了解の上におい質問を続けたいと思うのであります。  私は、御列席の国務大臣船田先生及び官房長官に対してごく簡明に御質問を申し上げたいと思いますが、船田防衛庁長官は少くとも国務大臣としてこの憲法を守る重責にあられる方でありますから、ゆめ憲法軽視の御意図はないと信じております。従って現在の憲法が存する限り、憲法に忠実なる国務大臣と、私はあなたをながめさせていだだいてよろしゅうございますか。
  122. 船田中

    船田国務大臣 現行憲法はもちろん尊重いたします。
  123. 受田新吉

    ○受田委員 船田大臣の御答弁により、現行憲法を十分尊重する国務大臣であることが確認されました。そこでお尋ねするのですけれども、大臣は先般ダレス長官が日本へ寄られた際に、新聞の報ずるところによると、占領政策の中において海外派兵の規定などがされないような憲法を作ったことは、これは非常に誤まりであった。そのためにわれわれが憲法論争等において、はなはだ苦境に陥っておるというような発言をされた趣きでありますが、真偽のほどをお伺いしたのであります。
  124. 船田中

    船田国務大臣 ダレスアメリカ国務長官と、十八日午後三時から約二時間にわたりまして会談をいたしましたが、これはすべてコンフィデンシャルなものということになっておりますので、その内容については申し上げかねます。しかしただいま受田委員の仰せられましたような事実は全くございません。
  125. 受田新吉

    ○受田委員 新聞の報道は、最近においては政府筋の見解をとかく誤まり伝えていると解釈してよろしゅうございますか。
  126. 船田中

    船田国務大臣 新聞の記事につきましては、私は責任を負いかねます。
  127. 受田新吉

    ○受田委員 少くとも新聞は公正に民論を喚起する重責にある機関であります。この新聞が誤まりを犯した報道をしばしば繰り返すということはあり得ないとわれわれは思う。従って大臣発言が、どこかでそういう批判を受けるようなところに触れていたということは、これはもう大体において認められるところなのです。不用意に発言されたことの中に、あなたの真意がぽっと出てくるということは、これは過去において幾たびか繰り返されておることであり、特にあなたは昨三十年十二月、あなたの談話として発表された言葉の中に、当然将来徴兵制をしかなければならないというお言葉も見られるのであります。この点は現在の憲法のもとにおいて徴兵制をしがなければならなくなる機会がくるという想定を持っておられるようなことは、これはあなたの真意であるかどうか、この点をお伺いしたい。
  128. 船田中

    船田国務大臣 現行憲法おいて徴兵制を施行するということは、これは憲法の許すところではないと存じます。将来のことにつきましては、憲法調査会ができるのでありますから、憲法調査会おいてそういう点をも含めて、十分御研究を願うことが必要であると存じます。
  129. 受田新吉

    ○受田委員 私が先般あなたにお伺いした質問の中にこういうことがあったのであります。すなわち憲法第九条の解釈でありますが、自衛権の限界をお尋ねした際に、日米共同作戦により、米側がいずれかの国と宣戦布告をして戦争を開始した場合に、日本自衛隊はどういう運命に立たされるのかとお尋ねしたのでありますが、これに対してもう一度はっきりした御答弁を願いたいのであります。
  130. 船田中

    船田国務大臣 わが国がよその国から侵略を受けましたときにおきましては、行政協定二十四条の規定によりまして、いかなる共同措置を講ずるかということについて、日本政府アメリカ政府と協議をしなければならないということになっております。日本側といたしましては、わが自衛隊は憲法及び国内法の命ずるところによって、わが国防衛のために必要なる最善の行動をとる、こういうことを繰り返し申し上げておるのでありまして、現在もさような考えを持っております。
  131. 受田新吉

    ○受田委員 米側がその場合に行政協定の規定を強硬に主張いたしまして、日本に対して米側の作戦に協調せしめ、その結果自衛権の行使の限界線を越える行動を要請される場合においては、条約違反としてこれを拒否できない立場になると思うのであるが、この点条約と憲法との関係に矛盾を生じた場合にどういう御見解をとられますか。
  132. 船田中

    船田国務大臣 かような場合におきまして、日本政府アメリカ政府とがいかなる共同措置をとるかということについて協議をしなければならないということになっておるのでありますから、その協議がまとまらなければ、わが方といたしましては行動はしないわけであります。わが方といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、憲法及び自衛隊法その他国内法規に従って、防衛のために必要なる最善の努力をするということでございます。
  133. 受田新吉

    ○受田委員 協議をしなければならないけれども、協議の結果これを納得し得ないという場合には、自由行動をとると今あなたのお言葉によれば解釈できる節があったが、さよう了解してよろしいか。
  134. 船田中

    船田国務大臣 わが方といたしましては、アメリカ政府と協議をいたしまして、共同措置につきまして十分協議をし、お互いに納得づくでわが国の防衛に当る、こういうことになると存じます。その場合におきましても、もちろんわが方といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、憲法及び国内法規に従うことはもちろんであります。
  135. 受田新吉

    ○受田委員 その場合に米側が日本に対して強硬に共同作戦に参加することを要請された場合に、日本の自主性を尊重してこれを拒否するということが果して可能であるかどうか。
  136. 船田中

    船田国務大臣 アメリカ政府は、日本憲法をよく知っておりますから、ただいま受田委員の仰せられるようなことは、日本側に強要するというようなことはないと私は信じます。
  137. 受田新吉

    ○受田委員 鳩山総理も、また清瀬調査会法案担当国務大臣も、平和を口に唱えておるけれども、世界は今方の持ち合いによって均衡が保たれるのであって、実力なくして平和は保たれない。いつどこの国が襲いくるかもしれないのだ。かくはっきりと答弁をしておられます。従ってあなたが米国を非常に信頼し過ぎておられて米側はおそらく日本に対して強い要請はしないであろう、こういう軽い気持をお持ちになることは、はなはだ危険であると私は思います。米国は行政協定二十四条に基く強力なる措置を日本に要請し得る場合には、日本憲法あるいは国内法を無視しても、日本に対して強硬手段をとることを要請される場合はいかがですか。
  138. 船田中

    船田国務大臣 重ねて申し上げますが、アメリカ側は日本憲法及び国内法については十分よく知っておりますから、ただいま受田委員の仰せられるようなことは絶対にないと私は信じます。
  139. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと急迫不正の侵害は、アメリカに関する限り絶対にないということになりますか。
  140. 船田中

    船田国務大臣 アメリカから急迫不正な侵略をするなどということは絶対にないと私は信じます。
  141. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、あなたはしばしばこの委員会発言されております急迫不正の侵略とか、宣戦布告によるところの戦争開始は、アメリカを除いた他の国々の場合とお答えできますか。
  142. 船田中

    船田国務大臣 私はどこの国ということを特定して申し上げておるのではございません。
  143. 受田新吉

    ○受田委員 その場合アメリカは絶対にないと今御答弁されましたが、あなたの御心配になっているそういう侵害は、アメリカは絶対ない。しかしその他の国はどことは指定しないが、その他の国々に対してそうした心配があるのだという結論になりますか。
  144. 船田中

    船田国務大臣 過去の歴史とわれわれの体験は、絶対に部分戦争なり作戦が起らないと断言することはできないと存じます。
  145. 受田新吉

    ○受田委員 あなたはアメリカを非常に信頼しておられる。しかしここで午前中に清瀬さんはアメリカ日本に対する自衛権の侵害に対して、急迫不正の侵害があったのであるから、宣戦の布告をせずしてこれを撃った、こう答弁されております。アメリカを非常に信頼しておられる船田さんにしては、現に同じ閣僚の中に、アメリカ自身日本自衛権を侵すような恐ろしいことをやったから、宣戦布告をせぬでこれを撃ったと言われておるのでありますが、この事実をもってしてもアメリカに急迫不正の侵害が断じてないなどということはいえないと思うのでありますが、御見解を願います。
  146. 船田中

    船田国務大臣 太平洋戦争前のことと後のこととは違っております。今日におきましてアメリカがかような侵略をするとは信じません。
  147. 受田新吉

    ○受田委員 船田さん、あなたはあまりにものを安易にお考えになっておられる。アメリカをあまり信頼し過ぎておられる。日本政府も過去においアメリカを信頼し過ぎた。信頼し過ぎた結果、ついに日本自衛を妨げるようなアメリカの圧力に対して、決然と立ってこれを真珠湾にまず第一発で攻撃を加えた、こういわれておるのです。この点あのときと現在とは違うとあなたは仰せられておるが、国際情勢というものはいつどう転換するかも知れないのです。その点においてあなたのアメリカは絶対に日本に対しては心配がないという御発言は、非常に大臣としては軽率である。この点におきまして、もしこれがあなたのお説のようにアメリカを絶対に信頼されるということになるならば、そこで行政協定二十四条においアメリカ日本ほんとうに信頼をし、日本アメリカを信頼するという立場から、ある特定の国とアメリカが戦いを開始した場合に、当然日本をして動員せしめるという公算ははなはだ大であります。この点は信頼しているがゆえにその結果ははなはだ重大な結果になると思うのですが、大臣、もしアメリカがいずれかの国と戦いをする場合に、日本に対して共国の防衛の目的をもって戦争に参加せしめるという事態が発生した場合においては、行政協定二十四条に基いてやむなくこれに共同行動しなければならぬという結果が起るということは、これは絶無と言えますか。
  148. 船田中

    船田国務大臣 行政協定二十四条は、日本の地域及びその付近において侵略もしくは侵略の脅威が起ったという場合に発動されるのでありまして、第三国とアメリカ戦争をするときに日本に参戦を強要するというようなことは、日米安保条約及び行政協定には何ら予想いたしておりません。さようなことは起らぬと存じます。
  149. 受田新吉

    ○受田委員 私は日本の周辺における安保条約に規定された侵害のおそれがある国々というものを、大臣はどういうふうに考えておられるかということをここでお尋ねしたいのでありますが、第三国というはるかかなたの国々がこれを襲う心配はないが、日本の周辺において侵害を加えるおそれがあるということになるなれば、およそ相手の国が限定されてくると思うのです。この点はアメリカ日本に対して絶対に侵害を加えない。しかし日本の周辺におい日本に侵害を加える国があるということになると、これはきわめて重大な結論が出る。それはなぜかというと、日米共同作戦、協議による戦争開始の場合において、日本の軍隊をして、自衛隊をして、アメリカ側が当然アメリカの作戦行動の中にこれを編入せしめるということが、これは非常に可能性が大きくなるじゃありませんか。日本の周辺における戦いが開始された場合において、日本自衛隊の運命はきわめて危機に立つという可能性が非常に大きくなるではありませんか。
  150. 船田中

    船田国務大臣 日本の区域及びその近いところの公海におきまして不正な侵略が行われ、またその脅威が加わったときに行政協定二十四条の発動があるのでありまして、いかなる共同措置をとるかということは、日本政府アメリカ政府と協議をしてきめるということになるのであります。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 その協議がととのわないときは、日本アメリカの申し出をけるというたくましい御意見が今あったのです。事実上そういうようにけり得ることが実現しますか。
  152. 船田中

    船田国務大臣 行政協定二十四条によって協議をいたしますが、もちろんそのときにおいてもわが自衛隊は憲 及び国内法規に従って最善の防衛行動をとる、こういうことになると存じます。またそうすべきであると考えておる次第であります。
  153. 受田新吉

    ○受田委員 あなたはダレスが来られたときにおいても、そういう場合のことについていろいろお話し合いされたと思いますが、ダレスは日本憲法を尊重し、海外派兵などはやらないのだ、海外派兵などは要請しないのだ、こういうふうに陳述されたと私は聞いております。ところが私、繰り返しちょっとだけ、前のあなたの新聞紙上における報道を一つ追及したいのでありますが、あなたは向うがそういう気持でおるにかかわらず、みずからは海外派兵をなし得ないような憲法を作ったのは失敗だったとあなた自身が言っておられる。ニクソンなんかが言ったのと同じようなことを言っておられる。こういうことを責任ある国務大臣として考えておられる以上は、おそらく行政協定二十四条の協議がととのわないときにおいアメリカの申し出をけり得るという勇気のある大臣とは思えません。私はここに非常に心配があるのであります。行政協定二十四条というのは、一つの条約ですから、この条約に縛られて日本憲法や国内法も無視して、自衛隊の行動を米側に協力せしめなければならぬ結果が起り得ると思うのです。この起り得るときに、問題を一つ進めて考えますと、宣戦の布告あるいは急迫不正の侵害等に対して、敵基地をたたくことができるという解釈をされている政府としては、国際法上の宣戦の布告の手続がとられ、あるいは急迫不正の侵害の行為があった場合に、日本としてはこれに対して宣戦の布告なくしてこれを撃退するのか、あるいはそういう措置があった場合には、宣戦の布告をして敵基地をたたくのか、その点を一つお答えいただきたいのです。
  154. 船田中

    船田国務大臣 ダレスアメリカ国務長官と会談したことにつきましては、これは相手のあることでございますから、ここにその内容を申し上げることはできません。しかし私が海外派兵の考え方を持っておるというように今御指摘になりましたが、さような考えは持っておりません。また最後にお尋ねになりました不正の侵略が行われたときにどうするかということは、結局先ほど来たびたび申し上げておりますように、行政協定二十四条の発動によりまして、日本政府アメリカ政府といかなる共同措置をとるか、共同作戦をどうするかという協議をすることになっておりますので、わが自衛隊といたしましては、むろん憲法及び国内法規に従って最善の防衛努力をするということになるものと信じます。またさようにいたしたいと考えておる次第であります。
  155. 受田新吉

    ○受田委員 日本が米側と共同作戦をする場合に、宣戦の布告をアメリカと一緒にする場合があるかどうか。
  156. 船田中

    船田国務大臣 宣戦の布告をするというようなことはなかろうと存じます。
  157. 受田新吉

    ○受田委員 なかろうと存ずるということは、これははなはだあいまいな言葉であって、ないならないとはっきり言ってもらいたい。そういう特殊な場合があるならあるとはっきり言ってもらいたい。
  158. 船田中

    船田国務大臣 わが方から宣戦の布告をするということは考えられません。
  159. 受田新吉

    ○受田委員 先方が宣戦の布告をして戦を開始した場合においてはいかがですか。
  160. 船田中

    船田国務大臣 わが方といたしましては、自衛権を発動させるということだけでございます。
  161. 受田新吉

    ○受田委員 自衛権の発動の方式が、国際的に見たならば向うが宣戦の布告をしておる、それに対してこちらは戦いを開始したのでありますから、そうしますと、これは国際法上にいうところの宣戦の布告なき事実上の戦争ということに解釈できる問題ですか。
  162. 船田中

    船田国務大臣 国際法上の解釈はいかが相なりますか、それは今御議論のありましたような問題が起るかもしれませんが、わが方といたしましては、どこまでも自衛権の発動ということでわが国土の防衛に当る、こういうことでございます。
  163. 受田新吉

    ○受田委員 国際法上は、そういう問題が考え得ると解釈してよろしゅうございますか。
  164. 船田中

    船田国務大臣 国際法上どう見るかということは別問題であるという意味を申し上げたのであります。
  165. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは国際法規の上においては、事実上の戦争を開始しておる日本軍は、もはやりっぱな交戦権の発動をしておる国だというふうに国際的には解釈されておる、それはやむを得ないということになると、国内的に交戦権が発動されてない、しかし国際的にはそういうふうに見られておるのは仕方がないのだということになりはしませんか。
  166. 船田中

    船田国務大臣 わが方としてはどこまでも自衛権の発動ということで、事実上できるだけの防衛努力をする、こういうことでございます。
  167. 受田新吉

    ○受田委員 憲法第九条の国際紛争解決の手段の戦争ではない。しかし、自衛権の発動である戦争だということになりませんか。そういうことになれば、もう一つ自衛権の発動たる戦争以外に、憲法の国際紛争解決の手段としての戦争以外の戦争という中には、国際法規に違反した戦争を開始した国に対して制裁を加えるための戦争ということも、これは国際紛争解決の手段としての戦争以外の戦争ではありませんか。
  168. 船田中

    船田国務大臣 わが方といたしましては、憲法九条の規定に従いましてわが国土を守るために自衛権を発動するということであります。
  169. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、国際法規違反の戦争を起した国に対しての制裁戦争というものは、憲法第九条の、国際紛争解決の手段としての戦争ではないということにもなりますか。これは憲法九条の解釈です。
  170. 林修三

    ○林(修)政府委員 今仰せられましたいわゆる制裁戦争という言葉でございますが、これはまだ国際的に確立した観念ではありません。また実践されてもおりません。従いまして、いわゆる制裁戦争というものが、国際法的に確立されるような段階になりました場合には、これは別問題でありますが、ただいまのところはそういう観念は確立しておりません。日本憲法としては、自衛のために必要な措置、こういうことしかできないと考えております。
  171. 受田新吉

    ○受田委員 自衛のための自衛権の行使というものは、戦争のための戦闘ですね、実際にそういう軍の行動を開始することになるのか、あるいは軍隊の対敵行動でなくて、たとえば一つの単なる事変のような形のものに解釈するのか。
  172. 林修三

    ○林(修)政府委員 自衛権の行使の内容でございますが、これはそのときどきによっていろいろの形があり得ると考えますが、いわゆる防衛のための措置でありまして、自衛のための措置、もちろん武力による措置も防衛の措置の中に入るのであります。
  173. 受田新吉

    ○受田委員 今の林法制局長官のお説は非常にあいまいもことしているので、憲法第九条の解釈に政府のなしている行為がはなはだ釈然とせぬ言葉になっているのでありますが、支那事変とか満州事変とかいう単なる事変、これは武力の行使ではあったが、戦争ではなかった。すなわち最後まで宣戦の布告をしなかったことにおいて、単なる事変だということになっておりますがこういう単なる事変と解釈するような武力の行使があり得るかどうか。
  174. 林修三

    ○林(修)政府委員 今のわが国憲法の範囲においてなし得ますることは、自衛のための措置でございます。自衛のための範囲において行い得ることだけでございます。その内容としては武力の行使もあり得ると思いますけれども、いわゆる支那事変あるいは満州事変というものは、日本の国内の防衛のためということはまた別問題でございますから、今の憲法でできることは先ほど来申し上げました通りに、急迫不正な侵害があった場合に日本を防衛する、そのために必要な範囲に限られる、こういうことだと思います。
  175. 受田新吉

    ○受田委員 憲法に規定されている戦力という解釈は、今まで幾変遷をやってきたわけですが、最近における戦力というものはどういうふうに解釈されておりますか。
  176. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは最近ということではございませんで、昨年来同じことを申しておりますけれども、戦力という言葉にはいろいろ解釈のしようがあると思います。これは吉田内閣当時においては、いわゆる戦力という言葉を一定水準以上の戦い得る力、つまり近代戦争遂行能力ということにおける戦う力を戦力といったわけでございます。しかし戦力という言葉は別の言葉でも解釈し得るわけであります。いわゆる一切の戦い得る力を戦力というふうにも使い得るわけであります。つまり警察力等を含めての戦い得る力も戦力ということになりますが、ただいまにおいてはこれは自衛のための必要相当限度に限られる、そういうふうにいっておるわけでありまして、あらゆる戦力を用い得るということにはもちろんならないのであります。戦い得る力でも自衛のための必要相当限度の範囲以下のものしか用いられない、かように考えております。
  177. 受田新吉

    ○受田委員 あなたにお伺いする時間はきょうは非常に惜しいので、一つ国務大臣にお尋ねいたしますが、私がいつも心配しているのは、日米共同作戦というものが非常に食わせものなんです。あなたは総理と御一緒にいつでも自衛隊を防衛出動せしめる実権を握っておられる。あなたが日米の協議によって、米側の申し出を拒否してまでも、日本にはかく憲法があり、かく国内法があるので、絶対に御協議には応じられませんというほどの熱情を持っている人であるならば、私はある程度の安心ができますが、あなたはこの国会を通じ米側に感謝感激しておられた、しかも現在の日本自衛隊は、アメリカの協力なくしては自衛隊の行動は非常にむずかしいのだといって、本の自主的自衛隊というものを否定しておられる。ここに問題がある。従って二十四条の協議の結果、日本憲法、国内法を無視する行動はしないと仰せられておりますけれども、アメリカそのものが日本の周辺のいずれかの国と戦いを始めた場合に、日本自衛隊を、日本の申し出をそのままにしておってくれるかどうか、これはわれわれきわめて憂慮にたえぬところです。日本自衛隊をアメリカの司令官の支配下に置くことは、指揮官をだれにするかも協議してきまるのであるから、協議の結果日本の指揮官がアメリカの指揮官の中に吸収されて、アメリカの指揮官が行動する場合に自衛隊の行動は自主性を失うじゃないですか。この点日米協議の結果指揮官がアメリカ人になったときには、日本自衛隊に対していかなる自主権が持たれますか。
  178. 船田中

    船田国務大臣 行政協定二十四条の場合は、指揮官をだれにするかということについても、日本政府アメリカ収府と協議をして決定せられるということになるわけであります。
  179. 受田新吉

    ○受田委員 そのことじゃないのです。その協議の結果アメリカ人が指揮官になった場合に、日本自衛隊はどうなるかということです。
  180. 船田中

    船田国務大臣 わが自衛隊といたしましては、憲法及び国内法規に従って最善の防衛努力をいたします。
  181. 受田新吉

    ○受田委員 アメリカ人の指揮のもとにおける日本自衛隊が、ここからは憲法違反だから行動をやめますとか、ここからは自衛隊法違反ですから行動をやめますとか、そういう戦争ができますか。
  182. 船田中

    船田国務大臣 ただいま御指摘のようなことも、すべて日本政府アメリカ政府と協議をして決定せられることになりますが、わが方といたしましては、たびたび繰り返して申し上げる通り憲法及び国内法規に従って最善の防衛努力をすることになるのであります。
  183. 受田新吉

    ○受田委員 アメリカ人の指揮官が日本自衛隊をその指揮下に置いておる場合、作戦計画におい日本自衛隊がアメリカの指揮官の指揮下に置かれている場合、その場合にその自衛隊に対して、あなたはここからは憲法違反だから引き返せ、ここからは自衛隊法違反だから返せといって、向うが指揮をしている途中から引き返す力がありますか。
  184. 船田中

    船田国務大臣 たびたび申し上げます通り、わが自衛隊といたしましては、憲法及び国内法規に従って最善の努力をいたします。
  185. 受田新吉

    ○受田委員 あなたははなはだ用心深く今発言しておられますが、アメリカの指揮官が日本自衛隊を吸収して戦いを今始めておる。外敵の侵入に対して、不正の侵略に対して戦いを始めておる。そのときに、はっきりお尋ねしますが、もしアメリカの指揮官が憲法違反及び自衛隊法、国内法違反をやったら、指揮官が指揮をしている途中自衛隊だけをあなたは呼び戻すかどうか、具体的な例から申します。
  186. 船田中

    船田国務大臣 さようなきわどい仮定の御質問には答えられません。
  187. 受田新吉

    ○受田委員 さようなきわどい質問というが、きわどいだけに大事な問題ですよ。さようなきわどいとおっしゃったが、あなたはこの問題は非常にきわどいというお考えを今持っておられるでしょう。少くとも今日本自衛隊がアメリカの指揮官のもとに行動させられるときに、あなたは自衛隊の最高責任者の一人として、総理と二人が指揮官が憲法違反やら国内法違反をやる作戦行動を始めたら、途中からすっと引き返せという命令を出すか出さないかを聞いておるのです。
  188. 船田中

    船田国務大臣 行政協定二十四条によりまして、いかなる共同動作をとるか、共同作戦をするかということを協議いたすのでありまして、そのときにもちろんわが方といたしましては、わが自衛隊は憲法及びわが国法律に従って行動する、最善の防衛努力をするという前提に立って協議が行われるものと思います。
  189. 受田新吉

    ○受田委員 そういうゆっくりしたことを考えるような簡単な問題ではないのですよ。敵は急迫不正の侵害をしている。国会に諮る間もなく急遽これに対して防衛出動をしなければならぬ、日米共同防衛の立場で作戦を練っておるというときに、もう間髪を入れざる急迫不正ですよ。そういうときに指揮官を向うにきめて、そうしてこちらがその指揮官の支配下に属しておる場合に、ゆっくりと落ちつくようなひまがありますか。こういうときにあなたは日本自衛隊をアメリカの指揮官の中に入れておきながら、最後に国内法に違反してないか、憲法に違反してないかというようなことを考える余裕がありますか。実際問題として、これは日本自衛隊はアメリカの指揮官のもとに迅速機敏なる行動をとらざるを得ないと思うが、事実上の問題としていかがお考えでありますか。
  190. 船田中

    船田国務大臣 日本自衛隊は、これは日本自衛隊でございまして、アメリカの軍隊ではございません、アメリカの傭兵ではありません。自主性を持っておるのであります。従いまして先ほど来たびたび申し上げておりますように、日本の地域、日本の区域及び日本の区域の近海におきまして侵略が行われたときには、行政協定二十四条の発動によっていかなる共同動作をとるか、作戦をするかということについて、日本政府アメリカ政府と協議をするのであります。そのときにわが方といたしましては自主性を持ってもちろんアメリカ側と緊密な連絡をとって協議をしなければなりませんが、わが方といたしましては、たびたび繰り返して申し上げる通りに、わが憲法及び国内法規に従って自衛隊が最善の防衛努力をする、こういうことになるのであります。
  191. 受田新吉

    ○受田委員 もうこれ以上の問答をする必要がないと思うのでありますが、しかし船田さんにどうも釈然としないものがあるのです。急迫不正の侵害は突如として起るのであって、突如として起った急迫不正の侵害に対し、日米が協議して憲法違反か国内法違反かを考えるひまがない、非常に急ぐ場合です。その場合に間髪を入れず敵の基地をたたき得る場合があるとあなたはおっしゃられた、間髪を入れず敵の基地をたたかなければいかぬような場合に、ゆっくりと法規違反などを考える余裕がありますか。すなわち日米の指揮官というものは、いずれかにきまったらさあっとした行動をとるのです。あなたはそういう非常に逼迫した場合をいつも例に引いているだけに、逼迫した場合の日米の作戦を私はお尋ねしておるのです。きわめて逼迫した場合の例を言っておるのです。
  192. 船田中

    船田国務大臣 これは先ほど来たびたび同じことを繰り返して申し上げるのでありまして、それによって一つ御了承願いたいと思います。
  193. 受田新吉

    ○受田委員 私はそういうことのお尋ねをよしましょう。あなたは繰り返し同じことを御答弁せられておるわけで、結局自衛権というものの行使を非常に用心深く説明をせられておる。従ってこの自衛権の限界の解釈についても、失言をしないようにという用心深さがあるようでありますが、失言とか失言しないとかいう問題ではなくして、日本の運命をかける大事な自衛権の解釈論が起っておるのです。従ってあなたのお説をもってするならば、現在の憲法をもってしてはもはやこれ以上の兵力の増強ということは、現在においてはもう行き詰まっておる。木村前保安庁長官は二十二、三万人になったら志願兵制度はもうだめになる、従って徴兵制をしがなければならぬという説を立てておられますが、あなたの昨年の御答弁とあわせて、二十二、三万人以上に兵力を増強する場合は必然的に徴兵制をしがなければならぬとお考えになりますか。
  194. 船田中

    船田国務大臣 私は徴兵制を施行しなければならぬというふうには考えておりません。
  195. 受田新吉

    ○受田委員 志願兵制度の現在をもってして外敵の侵略に対して、これに対抗する場合に、志願兵であるからその任期がきて新しく募集もできなくなるとか、あるいは志願兵が満期がきて除隊していくという場合に、その補充がきかない場合はいかなる措置をとられるか。
  196. 船田中

    船田国務大臣 私はそういう問題も憲法調査会ができたらよく検討されるがよかろうと思います。しかし私個人といたしましては、徴兵制を今直ちにやった方がいいなどということを考えてはおりませんし、またそういうことを申したこともございません。
  197. 受田新吉

    ○受田委員 それは調査会でやりたいとおっしゃっておりますが、実際の自衛隊の任務を遂行する上において、その自衛隊の隊員が除隊したりあるいは新しく戦争が開始されたために応募者がなくなつたという場合に、自衛隊が構成できますか。
  198. 船田中

    船田国務大臣 自衛隊法によりまして、六カ月ないし一年の任期を延長することはできることになっております。
  199. 受田新吉

    ○受田委員 その任期の延長という問題と、新しく募集できないという状態になる場合とは、別に考えなくちゃならない。
  200. 船田中

    船田国務大臣 そういう場合にも、任期の延長及び予備自衛官の活用ということは、最善の努力をしてやって参りまして、防衛体制の整備に事を欠かないように努力して参りたいと存じます。
  201. 受田新吉

    ○受田委員 非常事態に立ち至って後続部隊の新しい志願者が非常に少くなった、特殊な人は別として、非常に減ってきた、従って今おる隊員を全部任期を延長するというふうな作戦をとっていこうという御答弁のように解釈したのでありますが、さように心得てよろしゅうございますか。
  202. 船田中

    船田国務大臣 今の御質問の御趣旨がよくわかりませんが、もう一度お願いたします。
  203. 受田新吉

    ○受田委員 あなたの今の御答弁では、自衛隊の在職期間を延長して、そういう志願者があとから続かないとかいう場合の措置に充てるというように私はお聞きしたのですが、さよう心得ていいかということです。
  204. 船田中

    船田国務大臣 わが現行憲法及び自衛隊法の範囲内において最善の努力をいたします。
  205. 受田新吉

    ○受田委員 その最善の努力をするという場合は志願兵があとから続かないという場合を私は指摘しておるのですよ。具体的になっているのです。
  206. 船田中

    船田国務大臣 さような事態になるかならぬかということは今から予測することができません。従いまして今日そういうきわめてまれな場合にどうするかということについて、ここに申し上げかねる次第でございます。
  207. 受田新吉

    ○受田委員 きわめてまれな場合を考えておかなければ不用意なことが起るのです。きわめてまれな場合の措置までも考えないような計画は、はなはだ不用意な計画だと思うのです。この点きわめてまれな場合は、いつも政府の方針からはずすという自衛隊の方針があるのでありますか。
  208. 船田中

    船田国務大臣 現行憲法及び自衛隊法のもとにおいて最善の努力をいたします。また今受田委員の仰せられるような事態が起るといたしますれば、わが国民は安閑としてはおらぬと思います。従いまして政府の最善の努力に呼応して、国民は十分これに協力してくれるものと私は信じます。
  209. 受田新吉

    ○受田委員 はなはだあやふやなお考え大臣は持っておる、国民の忠誠を信頼しておられるような印象を受けたわけであります。清瀬さんと同じように国民の忠誠を信頼するということになっておるようですが、私はこの自衛隊の将来の問題は、国民の上に精神的にも非常に影響を与えると思うのですが、志願兵制度の限界というものはもうおおよそ世界的にはっきりしてきていると思う。徴兵制をどの辺からしくかということも、各国の歴史の上からはっきりしていると思うのです。日本の現状においてという意味ではなくて、一応世界のそうした徴兵制、志願兵制の制度の上における歴史上の立場から、あるいは現在における国際的な情勢から、日本の場合には志願兵制度の限界線がどの辺にあるかという見通しをお持ちでございましょうか。
  210. 船田中

    船田国務大臣 今後国防会議等ができましたときに十分検討をいたします。
  211. 受田新吉

    ○受田委員 国防会議がというような先の問題ではなくて、現実に防衛の責任者として志願兵はどの辺までで限界がくるかというようなことをお持ちにならぬようでははなはだたよりないことになる。木村前保安庁長官もはっきり言明しておられるのだが、大体におい日本自衛隊を志願兵から徴兵に切りかえるのは二十二、三万だと言っておりますが、前木村長官の言葉はあなたとしては絶対にお退けになられるかあるいはあなたの御見解としてはいかなるものを持っておられるか、御答弁いただきたいと思います。
  212. 船田中

    船田国務大臣 防衛庁試案として持っております陸上十八万その他予備自衛官二万といったような、最終の目標は三十五年度にきまっておりますが、それらの達成のためには私は志願兵で十分間に合うと考えております。
  213. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと昭和三十五年に海上、陸上、空軍を合せて大体二十二、三万になりますから、三十五年の目標は一応志願兵制度の限界線であるというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  214. 船田中

    船田国務大臣 それが限界線であるかどうかということは、十分研究してみなければわかりませんが、少くも三十五年度に達成せんとしておる最終目標を達成するためには、志願兵制で十分間に合う、かように考えておる次第であります。
  215. 受田新吉

    ○受田委員 船田さんは何かほかの委員会に行かれますか。
  216. 船田中

    船田国務大臣 参議院の方に呼ばれていますから……。
  217. 受田新吉

    ○受田委員 他の国務大臣もおられるのですから、あなたもおられるならそこにおっていただきたい。それで船田さんとほかの大臣に関連する問題をお尋ね申し上げておきたいのであります。ここに根本さんがおられるのですけれども、あなたはこの憲法調査会法案を強引に、この国会を通そうとする与党政府の大番頭として、一体この法案が通って、調査会ができて、いつごろ調査会が結論を出すという目標を持っておられるのですか。
  218. 根本龍太郎

    ○根本政府委員 お答え申し上げます。この調査会は自主的に運営することになっておりますので、自主的に決定されることでありますから、今からいつごろ回答が出るかということは、まだ予測いたしておりません。
  219. 受田新吉

    ○受田委員 憲法改正案を用意せしめるための調査会だと、政府意図しておる。従ってある期間がきたらそれの結論が出る。その結論の結果を、新しく国民の信を問うた国会によってこれを取り扱う御決意だと考えてよろしゅうございますか。
  220. 根本龍太郎

    ○根本政府委員 お答え申し上げます。調査会おいて一応案がまとまりましても、それを国会に発議する場合に、どういうふうな形になるか、今からこれは予測できません。その当時における国会の勢力なり、あるいはまたその当時の国会がどういうふうな考えを持っておるかということも今予測できませんから、この調査会の答申案が出ましても、それを直ちに原案として出すか、あるいはまた国会おいて特別にそれに考慮を加えて出すか、あるいは政府で出すかということもまだきまっておりませんから、その点について今から明確に申し上げることはできません。
  221. 山本粂吉

    山本委員長 本日は午後四時より本会議が開かれますので、暫時休憩いたしますが、本会議休憩後直ちに再開いたします。     午後四時三分休憩      ————◇—————     午後七時二十四分開議
  222. 山本粂吉

    山本委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。なお念のため申し上げますが、社会党委員の持ち時間は、残り時間わずかに十分以内になっておりますことを御了承の上質問継続を願います。細田君。
  223. 細田綱吉

    ○細田委員 清瀬さんにお伺いいたしますが、御承知のように、憲法が制定せられてまだ約十年、長い間官僚、軍閥のほとんど専制下に置かれたいわゆる欽定憲法のもとにおいて、日本国民はまだ実際民主主義の政治生活になれていないと申しましょうか、訓練されていない。品を開けば自由民主党の方々も民主主義国家とかあるいは基本的な人権の護擁とかいうことは言われますが、しかしいわゆる憲法改正意図されてその草案を発表されてからもうすでに二年たつ。欽定憲法のもとでは、申し上げるまでもなく、いわゆる不磨の大典としてこれを永久のものだと思っておつた。ところが国家の基本法である憲法がわずか十年にして、もう改正が必然であるかのごとく印象づけらてれおるということは、法生活の安定と申しましょうか、また民主生活になれるというような意味において、非常に国民に現憲法に対する不安の念を持たせるのではないか。ひいては法治国として一番基本的に大事に考えなくてはならぬ憲法そのものが、常に動揺しておるという印象を国民に与えて、法の順守、法の尊重という観念が薄らぐのではないかと思いますが、この点に対する御所見を伺いたいと思います。
  224. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私は日本の一般国民が民主主義になれておらぬとは存じません。やはり日本人は文化知識をはや明治時代に受けておりますから、新憲法のとった民主主義も了解しております。暴力で政治をやるということはきらっております。ただそれを知っておるがゆえに、民主主義を了解しておるがゆえに、完全な意思の自由を持たなかった占領下の憲法には不満を抱いておるのでございます。
  225. 細田綱吉

    ○細田委員 いわゆる政治の基本法である憲法が、わずか十年にして改正必至であるがごとく強い印象を国民に現在与えていますが、法生活の安定、この意味からいっていかがでございましよう。
  226. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 法生活は真に自由主義の憲法のもとにおいて安定するのでございます。人民のための、人民によっての憲法を欲するので、それができるまでは不安でございます。
  227. 細田綱吉

    ○細田委員 清瀬国務大臣は押しつけられた憲法ということをよくおっしゃられるが、押しつけられた憲法であってはならないとするならば、現在アメリカの基地が全国に七百数十もあり、しかもほとんど行政協定によって実際に日本が管理されているような状態下においては、一歩半歩であると思っておる。むしろ自立した後の自由な意思による憲法ということをこいねがわれるならば、アメリカ軍の撤退後に憲法改正を企図されることが、時期的に適当ではないかと考えるが、いかがでございましょう。
  228. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 この期に及んで言葉のことなどは言うに及ばぬのでありますが、私自身は押しつけられたという言葉はあまり使わない。押しつけられたのでありましょう。けれどもそれよりも、降伏条件のもと、日本の天皇も日本の行政官も日本の代議士も言論の自由を持たなかった時代、占領時代においてできたということに私は重きを置いておるのであります。それゆえにかようなる時代において制定された憲法は、国民によってせられた憲法とは言えないのです。アメリカの民主主義を了解すればするほど、彼の民主主義を体得すればするほど、占領の間に作った憲法は自由主義憲法とは言えない、さような感じを国民は非常に深く持っておるのであります。国民は声はありませんけれども、それは今日も全国至るところマッカーサー時代の憲法とは残念だという声は日本国内に満ち満ちております。
  229. 細田綱吉

    ○細田委員 軍閥協力者として、日本の軍国主義の協力者として、当時は清瀬国務大臣はいわゆる追放になっておる。従って追放者としてのあなたは、きわめて言論は不自由であったかもしれません。しかし日本の軍国主義に協力せざる幾多の国民は、当時は別にそう言論の不自由を感じたことはございません。私自身なんかも、別に感じたことはございません。従ってその意味においては、私は現在と少しも違わない。しかもアメリカの基地が七百数十も現在日本国内に置かれている。世界でほとんど——ほとんどじゃない、全く例のないほどに基地を置かれておることは、これはだれが何と言ってもほうはいとして日本国民の心理にきわめて強い影響を与えていることは、これは確かです。従ってあなたが自由な意思によって、憲法改正されようとするならば、これはすべからくアメリカ軍が撤退後にさるべきが適当であると思う。あなたはきわめて不自由だ、言論不自由なる当時に制定されたと申しますが、これはあなたが追放を受けておったから不自由である、追放を受けざりし者は、当時は別に不自由を感じなかった。もう一度御意見を伺います。
  230. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私は具体的の自由、不自由じゃないのです。ポツダム宣言のもとにおいて、降伏条件を約束しておるのです。降伏条件には、日本の天皇にも日本の行政権にも自由はないことを規定しておる具体的の証明じゃないので、降伏のもとにおいて一体憲法を作ったのがいけないということです。しかしながらあなたがおっしゃるから申しますが、あの憲法を作るときに修正をするのであったら、進駐軍の許可を得ておるのですよ。(「その通り」)間違いありますか。あのときの委員長であった芦田君から私は聞いておる。一一の修正は大小を問わずことごとく英訳して、オーケーがあって、初めて修正になっておるのです。それが一体自由の真義でありますか。どこの国の国会が、外国人の許可を得て憲法を作りますか。
  231. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたは憲法改正する意図は、明らかに再軍備を……(発言する者多し)再軍備を目途とした憲法改正であることは間違いありません。鳩山首相は、あるいはあなたでしたか、関係はないと言いますけれども、これはもう強弁です。国民はひとしくそう印象を受けております。また真相も間違いないと私も確信しておる。  そこで伺いますが、現在でもあなたの党の自由民主党は、二百九十九名、法案を通そうとして可ならざるはない状態に置かれておる。しかしながら社会党は、百五十四名——少数なりといえども、百五十四名あるが、憲法改正をしようというような場合には、御承知の通り、これはちょっとあなたの方の数は少い。そこであらゆる場合に何をしても差しつかえないそれだけの数をそろえなくちゃならぬ。それには小選挙区制をしかなくちゃならぬというような、きわめて遠大な計画で小選挙区制を提案された。(「委員長、時間」「何を言うか」と呼び、その他発言する者多し)御承知のように、民主主義は平等の原則に立っております。従ってこの平等の原則からいって、少数意見というものは常に尊重されなくてはならない。しかるに二百九十九対百五十四の数においてすらなお不足として、小選挙区制を強制しようというようなことは、あなたの方でかりに関係なしとおっしゃっても、結果においては多数党独占、独裁、いわゆるボルシェヴィズムのロシヤの多数党専制に陥ることは、これは申し上げるまでもない。(発言する者多し)多数党の独裁下に置こうというようなことは、これは民主政治の上に危険きわまりないことであると考えますが、小選区制の施行とともに、いわゆる多数党の独裁まで強行しようとするこの憲法改正は、清瀬国務大臣からどういうふうにお考えになっておるか御説明を伺いたい。
  232. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 われわれは今期議会で憲法改正案自身を論じておるのじゃないのです。憲法は大切でありますから、丁重に調査をしなければならぬ。調査会法案を今論じておるのであります。しかしながらわれわれは名前のごとく自由民主党で、自由主義、民主主義です。でありますから、あなた方の議論は非常によく聞いております。この案を提案してから今日まで、十回余りの会合を開いて、少数派の御意見にも耳を傾けております。これを本会議にかけた結果、賛成が多数ならば、通過するのは当然です。これはかけてみなければわかりません。委員会をすみやかに終って、本会議でやってみようじゃございませんか。     〔「何を言っているか」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
  233. 山本粂吉

    山本委員長 これより十五分間休憩いたします。     午後七時四十一分休憩      ————◇—————     午後十一時二十二分開議
  234. 山本粂吉

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  ただいま委員長に対する不信任案が提出せられましたから、委員長代理に宮澤胤勇君を指名いたします。     〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕
  235. 宮澤胤勇

    ○宮澤委員長代理 ただいま山本委員長に対する不信任案が出まして、私が委員長代理を指名されましたから、委員長の席に着きます。     〔発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
  236. 宮澤胤勇

    ○宮澤委員長代理 諸君、議席にお着きを願います。——議席にお着きを願います。——議席にお着きを願います。——静粛に……。 (発言する者、離席する者多く、議場騒然、聴取不能)松浦君。
  237. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 ……。     〔「委員長代理の不信任案が出た」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然、聴取不能〕
  238. 宮澤胤勇

    ○宮澤委員長代理 ただいま私に対する不信任案が出ましたから、この席を高橋君……。 (発言する者多く、議場騒然、聴取不能)委員長代理に対する不信任案はないそうです。  ただいま松浦周太郎君より提出されました質疑打ち切りの動議を採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  239. 宮澤胤勇

    ○宮澤委員長代理 起立多数。よって質疑は打ち切られました。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。    午後十一時二十六分散会