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1956-03-20 第24回国会 衆議院 内閣委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十日(火曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 山本 粂吉君    理事 大平 正芳君 理事 高橋  等君    理事 保科善四郎君 理事 松浦周太郎君    理事 宮澤 胤勇君 理事 石橋 政嗣君    理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    加藤 精三君       北 れい吉君    椎名  隆君       薄田 美朝君    高瀬  傳君       田中 久雄君    辻  政信君       床次 徳二君    林  唯義君       濱野 清吾君    福井 順一君       眞崎 勝次君    山本 正一君       山本 勝市君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    稻村 隆一君       片島  港君    片山  哲君       西村 力弥君    細田 綱吉君       森 三樹二君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         国 務 大 臣 清瀬 一郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君  委員外出席者         議     員 山崎  巖君         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 三月十六日  委員福井順一辞任につき、その補欠として山  崎巖君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員辻政信君及び山崎巖辞任につき、その補  欠として小林かなえ君及び福井順一君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員小林かなえ辞任につき、その補欠として  辻政信君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員大村清一君、小金義照君、薄田美朝君、福  井順一君、粟山博君、横井太郎君及び成田知巳  君辞任につき、その補欠として田中久雄君、高  瀬傳君、山本勝市君、足立篤郎君、濱野清吾君、  加藤精三君及び片山哲君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員足立篤郎辞任につき、その補欠として福  井順一君が議長指名委員に選任された。 同日  理事江崎真澄君及び下川儀太郎君同月一日委員  辞任につき、その補欠として松浦周太郎君及び  石橋政嗣君理事に当選した。 同日  理事宮澤胤勇君同月三日委員辞任につき、その  補欠として同君理事に当選した。 同日  理事高橋等君同月九日委員辞任につき、その補  欠として同君理事に当選した。     ――――――――――――― 三月十七日  国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当の  支給に関する法律の一部を改正する法律案(受  田新吉君外五名提出衆法第三三号) 同月二十日  運輸省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一四〇号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  憲法調査会法案岸信介君外六名提出衆法第  一号)     ―――――――――――――
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。去る一日江崎真澄君及び下川儀太郎君、五日宮澤胤勇君、九日高橋等君等がそれぞれ委員辞任せられました結果、理事が四名欠員になっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じますが、委員長より指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山本粂吉

    山本委員長 なければ松浦周太郎君、石橋政嗣君宮澤胤勇君、高橋等君をそれぞれ理事指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 山本粂吉

    山本委員長 憲法調査会法案を議題とし質疑を続行いたします。通告がありますので順次これを許します。片山哲君。
  5. 片山哲

    片山委員 私は鳩山首相に対しまして本案についての総括的質問を行いたいのであります。憲法につきましての総理大臣としての見方、全体的な考えを聞こうと思うのでありますが、それはもちろん字句解釈法律論の細目にわたるものではなくして、憲法全体につきましての考え方、特に首相がすでに認められておるという憲法の三大原則について順次お尋ねいたしたいと思うのであります。  第一には第九条の見方であります。読み方と申しますか、これについての認識を聞きたいのであります。これは言うまでもなく、戦争放棄という表題が示しておりまする通りこれが主となっております。戦争放棄宣言である。首相認められておりまする三大原則平和宣言という意味は、戦争放棄宣言解釈すべきが当然と思うのであります。一切の戦争放棄する宣言がわが憲法平和宣言となっておる、こう読まなくてはならないし、解釈しなければならないのであります。これから推していきますと、解決に戦争放棄しておるのみならず、自衛権はありましても、武力によって自衛権は守らなくてもよろしいのであって、それはその他の平和的な方式自衛権を行使していくのである。自衛権目的を達成すべく平和的な方式をもってやっていかなくてはならないという宣言解釈することによって、この価値は大きくなるのであります。首相が説明されておりまするように、国際紛争武力は用いないが、ただし自衛権のためには戦力を行使してもいいという意味にこれを狭く局限して、縮小して解釈いたしますならば、第九条の平和宣言としての価値は半減されまして、何ら魅力は持てないのであります。世界的に申しましても特殊なる憲法、新しい憲法として戦争放棄宣言ということが大きく取り扱われましたゆえんは、一切の戦争放棄する宣言、こういうふうに解釈されなければならないのであります。よってまず第一に、鳩山首相の第九条の読み方見方、その認識最初に伺いたいと思うのであります。
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 戦争放棄をするということを単純に申しましたときには、あなたの解釈通りと思いますけれども、自衝権のためには――憲法九条は自衛権行使について必要なる措置を禁止しているものとは思いません。
  7. 片山哲

    片山委員 そうすると、勢いこの九条を慎重に読み直していかなくてはならないのであります。すなわちあなたは第一項は認めると本委員会において申し述べられたようであります。第二項の最初の一文字に「前項目的を達するため、」とこう書いてあるのであります。これは別に字句に拘泥して、これを中心としてお尋ねするのではないが、第一項の目的というものは、日本国民正義秩序基調といたしまして、世界の平和に貢献したい、世界の平和を造成したい、正義秩序というのは何を意味するかというと、これは戦争に上らないということです。秩序を重んじて国際関係の調整をはかっていく、一切の国際関係秩序を重んじて合理的にやっていこう、今唱えられておりまする話し合いの外交というのは、戦争によらないで平和的手段によってやっていこうというのでありますからして、第一項の主たる目的はこの冒頭に掲げておりまする平和と秩序ということを中心として、世界の平和に貢献しようということでなくてはなりません。従って日本は、まずこれを忠実に実行するために武力を行使しないのであるという実証をあげて、戦争放棄宣言平和宣言といたしておるのでありますからして、この九条の本旨は――字句よりも本旨、ねらい、使命とするところは何かというならば、平和的手段で一切の問題を解決しよう、つまり前項目的を達成するということは秩序正義を重んじて戦争によらないということになっております。でありますからして、その目的を達成するために陸海空軍はこれを保持しない、交戦権はこれを認めない、こういうふうになっておるのですからして交戦権認めない、武器もすべて捨てるということは、この正義秩序基調とする外交方式を達成するということにかかってこなければならないのであります。私はそう理解をいたしておりますが、これが常識であろうと思う。これが九条の読み方であろうと思うのであります。そうすると、あなたのように自衛権だけ武力を使ってもいいということは非常な曲解でありまして、まことに無理であります。いろいろと弁明されましても、それは国民が納得しないと思う。議会においてはいざ知らず、国民の理解できる、納得し得る答弁を願わないことには、憲法権威政府がみずから傷つけることになります。憲法権威を十分に高めるためには、国民全体が納得する読み方をしてもらいたい。またそういうふうな解釈をされることが首相としては当然のことであろうと思います。この点についての読み方をもう一度伺いたいと思います。
  8. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 急迫不正の侵略がありまして、そのときにも憲法九条の適用があって適当な措置ができないというようなことになれば、どうなるでしょう。結局自分の方では戦争放棄をしておる、相手方戦争してもいいというようなことはあり得ないことだと思う。向うが戦争をしかけてきまして、日本急迫にして不正な侵略をして参りましたときに、なお日本憲法九条を守っていなくてはならないというならば、日本としては自滅を待つより仕方がない、九条はそういう趣旨ではないと思うのであります。九条はそういう場合は禁止していないと思う。自衛権があるから、自衛の場合はそれは除外――除外というか自衛権は禁止してないという条文だと思います。
  9. 片山哲

    片山委員 あなたはすぐ急迫不正の問題を持ってきたり正当防衛の問題を持って参りますけれども、それはあわて過ぎると思うのです。その前に日本国としてなすべき仕事がたくさんある。つまり急迫不正の状態をあらかじめ防がなくてはならなし、これを防止するための仕事があなたに課せられたる大きなる仕事である、こう考えますので、その問題についてはあらためてお伺いすることにいたしまして、この九条とあなたの忌めております三原則二つの関連を前提として、もう一度お尋ねいたしたいことがありますので、それをまず聞いていただきたいと思います。すなわち憲法には三大原則があって、これは認められるといわれております。この三大原則はともに制限加こてはいけない、制肘を加えてはいけない、国民主権制限を加えるとか基本的人権制肘を加えるとかいうようなことは許さるべきことではない、半分だけ国民主権があって、あとの半分を天皇元首がこれを引き受けているというようなことはあり得ざることである。国民主権は完全であって絶対性を持っておる、また同時に基本的な人権制限さるべきものじゃない、公共福祉のためといえども基本的な人権については制肘を加えることはいけない、これはさきに公聴会がありましたときに戒能教授がその点を説明されたことと思いますが、それは当然なことであって、学説上におきましても基本的人権制肘は加えられない、こういうふうにこの二つは絶対的絶対性を持っておる。そういたしますと、この平和宣言においても、基本的に申しますならば戦争放棄に二色ある、戦争放棄にいろいろの解釈がある、相手方がやってきたときにどうするかということだけを大きく取り上げることはあわて過ぎておるということを私は考えますので、とにかくこの三原則というものはともにこの憲法認めております大いなる基本線である、これは絶対性であるということを最初に承認をしていかなければならないのであります。しかもこの戦争放棄ということは、すこぶる重要なる役割を持っておるものでありまして、戦争を再び起さないために天皇主権国民主権に切りかえておる経過がこの憲法前文の中に明白にうたわれております。すなわち政府の行為によって戦争惨禍が再び起らないようにすることをここで決意をして、つまり国民主権にすることによって天皇主権の袞竜のそでに隠れて戦争を始めた、そういうことを再び繰り返さないということを明らかにして、そうしてそれを防ぐために国民主権を実現しよう、国民主権の起りというものはどこから来たかというと、戦争を再びやらせないように、自衛戦争はかまわぬとは書いていないのです。一切の戦争惨禍を、どの戦争であっても戦争惨禍きわまりないことはもう申すまでもない、原子爆弾を使い、水素爆弾を使うならばなおさらのこと、勝っても負けても自滅状態の、その戦争惨禍を叫び起さないようにするために天皇主権国民主権に切りかえるのであって、これを宣言して国家主権国民にあることをここに確定するのである、この憲法を確定するゆえん戦争放棄から来ておる国民主権であるということを、この前文は明らかにいたしておるのであります。従って三原則不可分一体関係をなしておりまするしかも国民主権のよって起るゆえんを明記いたしておりまするこの前文を、あなたは当然お認めにならなくてはならないはずでありますが、この前文に対する認識と、同時にまた国民主権の起ったゆえんを、以上私の考えておるのと同じ考えであるべきはずであると思うのでありますが、これについての考えを伺いたいと思うのであります。
  10. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたのおっしゃる通りに、戦争をできるだけ回避するということは当然です。ただ急迫不正の侵害のないときに九条によってその禁止されていることを行動してもいいとは私言っていないのです。急迫不正の侵害があったときになお必要な措置をとれないということはないはずだということを言っておるのであります。それを九条は禁止していない。基本的人権についても同じです。われわれに自由がある、これが民主政治のできた根本です。われわれが自由があるからといって、人の自由を侵害してもいいという権利はわれわれは持っていない。基本的人権というものがあるからといって、他人基本的人権を侵してもいいといえないと同じことだと思うのです。戦争はしてはならぬ、われわれは戦争はしてはならぬが、他人戦争してやってきてもいいのだということはあり得ないと思います。
  11. 片山哲

    片山委員 そうばく然と申されましても、この条文文字じゃなしに精神解釈して、またこの憲法全体にあふれておりまする趣旨をもう少し深く理解してもらわなければならないと思いますので、次のことを私はここであなたに申し上げたいと思います。すなわちあなた方首相並びに与党の諸君は、よく、この憲法権利ばかりを書いて義務の事項がはなはだ少い、これは山崎君も提案のときに説明されたかと思いますが、しかしこの憲法というものは申すまでもなく人権憲章といわれたほど、政府国民の自由と権利を保障するために制定せられたのでありますることは、歴史の示すところであります。勝手なことをさせないようにする、主権制限する、主権国民に切りかえさすという際の人権憲章が、憲法の形となって現われておるのでありますからして、この憲法においても憲法国民に保障するという文字をよく使っております。国民の自由と権利をこの憲法が保障するのである、国民を塗炭の苦しみに追い込めない、国民戦争惨禍から救う、そういうことを中心といたしまして、独裁者に勝手なことをやらさないように、ここに民主政治を興したり、人権を尊重したり、あるいはまた平和的な宣言をいたしましたりして、ここに憲法というものが制定されるようになってきたのでありますからして、特にわが国民日本状態に当てはめてみますと、その点については深く考えなくてはならない点が多々あるのであります。申すまでもなくこの憲法制定以前のわが国民地位というものは非常に低かった。あまりに低いので今度はこれを一定の水準まで引き上げなくてはならない、その水準を保たしめる要があるということで、憲法は非常な努力をいたして、国民地位を上げよう、その権利を確保しよう、その自由を保障しよう、一体だれがこの保障するのですか、だれが一体その水準を引き上げることについての仕事をやるのでしょうか、働きをするのでしょうか、これは政府にその責任が課せられておるのであります。よってもって考えてみますと、政府にはこの憲法を守っていくという義務がある。義務はないないというけれども、国民のために政府がこれを忠実に行なっていくという義務が課せられておる。憲法は順守する、憲法を尊重しこれを擁護する義務というものが、政府に課せられたる一番大きな義務なのです。この新たなる義務ということが変ってきておるのでありまして、国民もまたこの憲法精神を保持するの義務がある。基本的人権の条項を見ますならば、国民不断努力によってこの地位を保持することをやらなくてはならないということを書いておりますることが、やはり義務であります。大きなる義務がたくさん課せられておるのでありまして、昔風に国を守るの義務、徴兵の義務、君の馬前に大いに奮闘しで、しかばねとなっても差しつかえない、そういうことを中心考えるよりも、もっと大きな問題がここに取り上げられておるのであります。「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想目的を達成することを誓ふ。」と誓っておりますこともまた義務であります。またこの憲法国民に保障する自由及び権利は、国民全体の絶えざる不断努力によって保持しなければならない。みなこれは条文にある言葉なんですけれども、みなこれは義務であります。つまり基本的人権が侵すことのできない永久権利として守られているならば、また戦争惨禍から救われて守られているならば、自然に国が守られてくるのである。武器を持って国を守るよりも、もっと大きい人類普遍原則です。人類不遍の原則と崇高なる理想を深く自覚して、戦争の恐怖と経済の欠乏から免れ、平和のうちに生活をする権利国民が有するように守っていかなくてはならない義務を、政府は負わされておるのであります。ですから国民義務、云々という前に、国民の生命を預っておりますところの政府が、非常に大きな義務を持っておるということを考えていかなければならないのであります。この憲法の高き価値というものがここに現われておるのでありまして、単に国を守るの義務がないから義務観念が少いというようなことは、これはもうあまりにも表面的な皮相の見方といわなくてはならないのであります。従ってここに書かれております国民権利義務は、人類多年にわたる自由獲得努力の成果であって、つまりこういうふうな憲法を書くようになったということは、わが国の歴史的な経過にかんがみまして、人類多年にわたるこの人間の生活を向上し、自由が圧迫せられておったのを守っていかなくてはならないという不断の、多年の努力の結晶がここに現われてこの憲法となってきたのである。こういうふうになかなか秩序を追いまして、しかも悲愴なる表現を用いまして、この歴史的な経過を現わしておるのであります。これらの権利は過去幾多の弾圧の嵐をくぐって、幾多の試練を耐えてきて、現在及び将来の国民に対して侵すことのできない永久権利として確保せらたものとなっているのである、ということがこれは条文なのですから、これをかれこれと変えるわけにはいきません。厳として存在する最高法規憲法最高法規である。こういうふうな特殊な他の法文にはないところの最高法規として歴史的な経過を記述いたしまして、現在及び将来に向っての国民の侵されないところの永久権利を書いておるのである。こういうふうになっておるのでありますから、あなた方政府人々はこの価値の高き崇高なる理想、もちろんこれは空想ではない実現すべき理想です。それなくしてはこの三原則は達成されないというこの崇高なる理想を持つ憲法を尊重し、擁護する義務があるということは当然であります。この憲法を守って国民全体の幸福を願えばおのずから国は守られてくるのである。福祉の国が守られてくるのである。戦前の国のことばかりを仮想しておっては間違いであります。新たなる福祉の国、国民が幸福になって、その生活水準が上って、文化が高くなって、ほんとうお互いに自由を尊重し合い、道義は高まってきますならば、それこそ福祉の国としては幸編に順調に育て上げられていくのでありまして、この憲法自体発生の過程から、この憲法のねらいというものは武断の国、軍国の日本ではなくて、ほんとう福祉の国、国民大衆の幸福なる国を実現したいという念願から作られた憲法でありまするからして、これを最初にまず切りかわった戦後の日本の国柄として育て上げていくということは、政府に課せられたる大きな義務であります。こういうことを自覚なされなければならないのであります。またお認めにならなくてはならないのであります。ですからしてこれを十分に尽されておりますならば、――この尊重の義務擁誕義務、これもちゃんと条文に書いてあります。九十七条から九十九条に書いてあります。みなそのために旧来のことを心配いたしまして、あらかじめこれを最高法規といって、わざわざ三カ条をさきましてこれを書いて、国務大臣政府は特にこの大きなる責任を持っておる。国会議員公務員ももちろんその責任はありますけれども、特に行政部面を担当いたしております政府に、この憲法擁護の大きなる責任のあることを明らかにいたしておりますことは、何としてもこれは前提なんです。国を守るの義務前提であるということをお考え願いたいのであります。そうすれば直ちに急迫不正の問題に飛び込んだり、正当防衛の問題を心配なさる必要はなくなってくるのであります。これは第二でよろしい、二段にお考えになってよろしいと思います。この意味において第一番に基本的に考えなくてはならない政府責任政府憲法に対する態度がはなはだぐらついておることは遺憾にたえない、でありますからして、まず憲法を尊重し擁護する義務がある。国民のために、新しい国建設のために大きなる責任を持っておるという所信が欠けておったと思いますからして、その点について明白にしていただきたいのであります。
  12. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政府憲法を順守する義務があり、責任があるということはおっしゃる通りであります。国民も同じように憲法を順守し、これを守っていく義務があるのは当然であります。先刻あなたがおっしゃいましたが、われわれは自分の自由、自分の平和、これを保持するのにももちろん熱心でなければなりませんが、同時に他人の自由、他人の平和も維持することにわれわれも助けていかなければならないと思います。国のためにということをおっしゃいましたけれども、国民同胞の自由、同胞の平和を守るためにわれわれに不正の侵略、不正あるいは急迫侵略のときに黙っているということは、基本的の考え方に間違いがある。そういう場合には憲法九条は決して制限をしていくものではない。禁止していくものではないと私は思う。
  13. 片山哲

    片山委員 そこでこの急迫不正の問題、正当防衛の問題について私の考えを申し述べ、総理大臣の御意見を聞きたいのでありますが、武力で国を守らなくてもよいように、あらかじめ努力をするということが今日最も必要でありますことは言うまでもない。現に世界人々はみな戦争を防止しよう、戦争のないように、戦争惨禍から世界大衆が避けたいということは、もうあらゆる会合において現われておるのであります。ジュネーヴ会議からバンドン会議から、その他あらゆる世界的な会合におきましては、戦争を避けよう、戦争に突入しないように努力しようとしているこの際でありますから、わが日本におきましても急迫不正の侵入をなからしめるように内外に努力を払うということが、これは言うまでもなく大きな仕事であります。内政においてまずそれをやらなくてはならないし、外交においてもこれをやらなくてはならない。これが何よりも必要なことでありますからして、これを専心努力をいたしまして、急迫不正の侵入のないように、正当防衛論に頭をつっ込んで心配をしないように、あらかじめの仕事が今日の政治の大きな課題なんです。でありますからして、急迫不正の侵入とか正当防衛のことばかりを考えておることは、あわて過ぎておるというか、また時代おくれというか、時代が進んだならば、お互いに別に護身用武器などは持たなくてもよろしいのであります。これは個人の関係をよくお引きになりますから申し上げますが、正当防衛のために武器なんかを用意しておったのは昔の話でありまして、今日時代が進んでおりますから、何ら武器を持たなくていい周囲の状態で、急迫不正の事実がだんだんだんだんと防止されてきておる、こういうわけですから、その個人々々に護身用武器を持たい時代に、文化が進み時代が前進いたしますならば、当然なってくるわけであります。でありますからして、ここにそれを念願いたしまして、そうしてそれを中心といたしまして考えていかなければならないと思います。それを差しおいて、それはやっておるけれどもどうも仕方がない。それはやっておるけれども、この程度が一ぱいである。それよりも不意に来た場合にどうするか。この不意に来るとか来ないとかいう問題は今日の課題外でありますから、何か外務委員会等における問題として十分論議をしなければならないと思いますが、その問題に頭をつっ込んで、この憲法へ持ってくることは、これは実に間違いであろうと思います。あたかもこれは鳥の羽音に驚く平家の末路にほうふつたるものがあることを思わせしめるほどあわて過ぎておる。それよりもなすべき内政外交に対して、この憲法精神を十分に現わしていって、急迫不正の事実をなからしめるために最大の努力を払う、この最大の努力を払う意味において、一切の戦争放棄しておる。自衛権ありといえども、武力自衛権を行使しないで、平和のうちにこの自衛権を行使する日本であるということを、世界に表明することが必要であろうと思います。これが平和宣言――つまり自衛権の問題について武器を持たなくてはならないということは、何ら平和宣言としての価値はないのであります。でありますからして、日本自衛権はありますけれども、それは平和外交あるいは文化政策その他いろいろの対策を立てまして、この自衛権を文化的に平和的に守っていくという体制をやりつつある日本が、戦争放棄平和宣言ということによって世界に打ち出すべきき価値のある、また世界においてもこれを期待いたしておりまする第九条であります。それをあわてふためいて時代おくれの正当防衛論を持ってきますことは、これは実にあわて過ぎておると思いますし、せっかくの第九条の崇高なる価値人類普遍原則に立脚し、平和なる生活を保障しようという建前に立っておりまするところのこの第九条の価値を、非常に弱めることになって、あなたが平和宣言認めていられるという趣旨と全く矛盾をすることになります。この点についての考えを明白にお述べ願いたいと思います。
  14. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 世の中が全く武器を持たずに平和になるということを、願っていない人はないと思います。けれども現在の世界の平和は、何で維持されているのでしょうか。現在の世界の平和というものは、私は言いかえてみれば、力になる、平和だと思うのです。とにかくアメリカも、ソビエトも原爆、水爆の競争をやっているじゃありませんか。それからやはりアラビアだのイスラエルもいくさをやっている。とにかくいくさのない世の中にしたいということは、これは万人の希望するところだと思います。それを達成したいために、みな心配をしていることと思うんです。しかるに世の中では、とにかく戦争をしないという理想は長い前からあるのでありますけれども、現実においては戦争はやんだことはない。現在においても、やはりそういうような空気がないとは言えない。ですからして、軍縮問題でもよく条約ができないような現情なんですから、現在は各国が自分の国を守る――一時的にでも守れるくらいの防衛力を打たなければ、世界の平和というものはないと思うんです。武力が全くなかったならば、いつ侵略を受けるかもわからないというのが、私は実情だろうと思うのです。それですから暫時でも日本武力によって押えられないという形をとっている必要があるから、自衛隊法ができて相当程度の武力を用意しているわけだと思います。これを戦争をしたいと思って自衛隊を持っているということを考えている人は、私は日本人には今いないと思っております。自分の国を守るためたけで、戦争をするという、他国を侵略するというような意思を持って武器を用意している人はないと思います。現在の世界平和というものは、そういうようなことを必要とさせているんですから、いたし方がないと思います。(拍手)
  15. 片山哲

    片山委員 あなたの平和に関する根本的な考え方が、あまりよくわからないのです。ことに平素より友愛精神を説かれているのでありますから、戦争をきらうなれば、戦争を避けたいというならば、それに徹しなければならぬのです。あいまいもこなことを言って、自分は平和主義者であるとか、友愛精神政治の基本になさろうというのでは、その精神通りません。この際徹底して平和に徹するという強い信念あってこそ、この難局は切り抜けられるわけなんです。しかも平和宣言を守ろうと言っているんです。この平和宣言戦争放棄宣言と同一であるということは、先ほどお認めになったようなんですが、真に第三次戦争を防止するために、日本が再び戦争の災害に見舞われることのないように、絶対にやらなくてはならないという信念を国民の前に披瀝されるということが必要なんです。その点について、どうも攻めてくるかもしれないというようなることをすぐ言い出されるので、あなたの平和主義の認識を非常に疑うのです。場合によっては戦争の中に入って、前回ここで話がありましたように、あるいは基地をたたくとか、海外派兵の要請があった場合においては、海外派丘もあるいは受けなければならないような疑惑を国民に与える。徴兵制度の問題についても疑惑を多く国民に与えて、再び戦前と同じ日本が出てくるんではないか。実に政府の大きな責任であろうと思います。その際政府としてははっきりと――ことにあなたとしてはこの戦争放棄宣言平和宣言である、この点、ことに三つの原則との関係をもう少し明らかにしていただきたい。
  16. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私のお答えは、今までのことで御了解を願いたいと思います。海外派兵というようなことは、全く考えておりません。昨日もダレスの方からそう言っていました。ダレスは日本憲法をよく知っているから、日本侵略を受けた場合においてはアメリカはこれを助けるけれども、アメリカが日本に海外派兵を要求するというようなことは、憲法上できないことを知っているから、しやしないということを、私が何も言わないのに向うから言っているのです。
  17. 片山哲

    片山委員 平和に対する信念が非常に疑わしいのであります。憲法を変えて再軍備をする、こういうことと相並んで、特にこの憲法は非常に欠陥が多い、再検討をしなきゃならぬ、こういうことは政府としての責任に大いに欠くるところがあると私は思うのであります。  進んでこの憲法を守る義務を最も大きくかけられておりますのは内閣であるということを先ほども申しました。特にいささか条文に照らし合せてこの関係を明らかにいたしたいと思いますが、行政権が内閣に属することは申し上げるまでもありません。内閣はこの憲法の忠実なる執行者でなくてはならない、これもまた六十五条及び九十九条を照らし合せてみますならば、忠実なるこの憲法の執行者、国民のために、新たなる国家のための忠実なる執行者、こういうふうに内閣がなるのでありますから、この当面の擁護の責任者であります政府がこの憲法を批評したり、あるいは改正すべき点があるとか、検討を加えなくてはならないとか、あるいは外国の圧力が加わってできたものであるというようなことは言うべきではないのであります。国会がこれを言えば別でありますけれども、政府としては忠実なる執行者、行政権は内閣の専属でありまして、その行政権を執行いたしておる政府といたしましては、この憲法の批判は断じて許されるべきではない。この憲法に欠くるところがあるというようなことは言うべきではないのであります。でありますからして内閣に憲法調査会を置くということは、たびたびこの委員会において議論になっておりますけれども、私はこれは許さるべきではないと思う。そこでこれをこういう面から伺いたいのであります。第九十六条に改正をするということは、これはあなたの認めておりまする三大原則に反する改正ではなしに、大きな問題の改正ということになると憲法の廃棄なんです。ここでいう改正というものは、第九条を変えたり、国民主権制限を加えたり、基本的人権制肘を加えたりするというようなることはやるべきではなくして、手続上のさまつなる細目の改正、根本問題に関係のないところの、根本問題を脅かさないところのさまつに対する改正をのみ取り扱うべき問題であろうと思うのです。しかもこれが国会において発議しなければならないのでありますからして、内閣はこれに関与すべきではない、私はかように考えるのです。  時間がありませんので私の結論を申したいと思うのでありますが、その第二項なんです。二項をよく読んでもらいたいと思いますが、改正された場合においては「この憲法と一体を成すものとして、」と書いてあります。一体をなすものとして、改正されたものと一諸のものになる。だから改正されたものが一体をなす。根本の憲法と矛盾しておるようなことでは、これはだめなんです。つまり基本問題に相応じたる、基本問題を認めての上の改正でなくてはならないのです。ですから一体をなさざる改正は許さるべきではない。第九条を削って再軍備をするというようなことは、一体をなすべきはずはないのです。第九条を削って再軍備をする、天皇元首制を持ってくる、基本的人権公共福祉の名をかりていろいろ制限をするというようなことは、これは根本問題を脅かし、制肘を加えることになるのでありますから、これらは一体をなさないことになります。そうなればこれは廃棄なのです。廃棄はこの九十六条ではやれません。九十六条はさまつなる改正にすぎないのである。根本問題に関係のないことである。しこうしてこれと一体をなすものでなくてはならない、こういうことになりますと――条文解釈法制局長官でもけっこうでありますけれども、根本問題について大きなる問題の改正は九十六条では断じてできるものではない。この読み方を正しく読んでもらいたいと思います。これに関する所見を伺います。
  18. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 改正の限界につきましては議論がございましょう。けれども政府としては、その三大原則を変更するという意思は持っておりません。
  19. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいま総理大臣からお答えいたしました政府の方針については御了解のことと存じますが、あと九十六条の条文の問題でございます。今仰せられました第二項の点でございますが、この条文としては、この改正せられた内容が形式的に既存の直らない分と一体をなして、改正された後の新しい憲法を構成する、こういう意味だと思います。従いましてこれが必ずしも形の上における全文改正を許さないものとは考えておらないわけであります。ただいま仰せられました改正の限界については、これは学説上いろいろ議論のあるところでございして、これについては御承知の通りだと思います。しかし政府といたしましては、先ほど総理が仰せられたように三大原則というものはあくまで尊重する、こういう考え方だということでございます。
  20. 片山哲

    片山委員 先ほど伺い落しましたが、総理大臣はこの前文は全面的に支持ですか。憲法前文については、その精神において全面的に支持されますか。
  21. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 平和主義、主権在民、基本的人権という三大原則には、私は変更する意思は持っておりません。ただ前文に対する文字の使い方などについては、憲法調査会において適当に修正するかもしれないと思っております。
  22. 片山哲

    片山委員 平和宣言戦争放棄と同一であるということも認められますか。
  23. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかく戦争は、日本国民はだれもかも喜んでいないということだけは明瞭にしておく方がいいかもしれません。
  24. 片山哲

    片山委員 よくわからぬですな。平和宣言戦争放棄宣言と同一なり、これだけなんですが、もう一度……。
  25. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 将来戦争はやりたくないという意思は明らかにしておいた方がいいかと存じます。(片山委員戦争放棄宣言は」と呼ぶ)もちろん幾度も申します通りに、自衛のことに関しては別のことであります。自衛権日本が持っておるということは明瞭にしておいた方がいい、こう思っております。
  26. 片山哲

    片山委員 もう一度法制局長官に、この九条の「前項目的を達するため、」という意味は、私の申し上げた趣旨認められますか。
  27. 林修三

    ○林(修)政府委員 この第二項の「前項目的を達するため、」という言葉の解釈については、いろいろこれはまた議論のあることでございますが、私どもといたしましては、これは一項全体を受けているものと考えるわけであります。
  28. 片山哲

    片山委員 一項全体のうちの主たるものは正義秩序という、この前段に主力を置いておるかどうか。
  29. 林修三

    ○林(修)政府委員 正義秩序を愛するために戦争放棄するということと同時に、反面においてこの自衛権を否定しておらない、これはすべての学説が大体一致しておりますが、そういう自衛権日本認められるということと、そういうことと両方受けて考えておるものと考えます。
  30. 片山哲

    片山委員 時間がありませんので最後に総理大臣に、小選挙区制と改正の前提としての憲法調査会案を二つ並べて今国会に出されておりますので、政府並びにあなた方が弁明しておるように、小選挙区制は憲法改正の前提ではないということが信じられないのであります。一諸に並べてきておりますからして、どうしてもこれは前提である、憲法を変えるために小選挙区制を出した、こういういうことはもう国民全体も考える常識であろうと思います。そこでこれは手段じゃない、小選挙区制は全然関係がないというならば、別々にお出しになってもよかろうと思う。よって私はここで本日小選挙区制をお出しになる、出すことは御自由でありましょうが、しかしこの調査会案を憲法精神をじゅうりんして内閣に置くというような無理もたくさんありますし、また憲法上いろいろの疑義がありますからして、これを切り離して別々にするということによって幾らかでも――われわれは両方に反対でありますけれども、幾らかでも、これは手段ではないということを国民にも納得せしめる意味において、これを切り離すべしということをお考えになるのが当然だろうと思います。よってもってどちらかをおやめになったらどうでしょうか。まずこの調査会案というような不徹底なるもの、あいまいなるもの、疑義の多いものをまずおやめになった方がよかろう、そうして国民の疑惑を解く、ただ漫然やめろというのじゃない。疑惑を解く意味においても大いに必要なることであろうと思いますからして、この点に関してほんとうに誠実にお考え願いたいと思いまして、御所見をお伺いいたします。
  31. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政府としては小選挙区制と憲法改正とは関係ありとして提案いたしたのではございません。憲法調査会というものはずいぶん歳月を要するものと思います。そんなに急に憲法改正なんというものはできるものではないと思っております。関係があるというわけではございません。
  32. 片山哲

    片山委員 時間が参りましたので打切ります。
  33. 山本粂吉

    山本委員長 次に床次徳二君。
  34. 床次徳二

    ○床次委員 本案の提案理由といたしまして、過去の九カ年の憲法実施の経験にかんがみまして、わが国情に照らし種々検討を要すべき点があるということをいわれておるのであります。いかなる観点から、またいかなる立場に立って検討を加えるかということは、なかなかこれは重大なる影響のあるものであります。今日提案の趣旨として考えられますことにつきまして、たとえば社会党の各位が言っておられるのでありますが、この目的は天皇制の復活にある、あるいは徴兵制度の復活である、海外派兵である、あるいは封建的家族主義の復活である、あるいは基本人権の全面的侵害である、あるいは地方自治制の縮小による官僚的中央集権の再現である、かような言葉をもってうわさがせられておるのでありますが、しかしながらこれらの事柄は本案が提案せられたところの理由とは全く違っておるものと思っておるのであります。この際総理からかかる誤解を十分に解いていただきたいと思うのでありますが、簡単に以下お尋ねいたしたいと思います。  第一点は天皇制の改正についてでありますが、われわれが今日検討を加えておりますことは、真に主権在民の日本におきまして、あくまでその建前を守りながら、天皇を中心とする国民の感情の基礎の上に、民主国日本として国民と天皇とがぴったりと一つになる、そうしてこの民主日本を発展させる、こういうことが日本伝統にも、またわれわれ国民精神からも合致するのではないか。こういう建前からいいますと、現在の天皇の規定というものはいろいろ検討を要するのではないかというふうに私どもは考える。従って今日の調査会の対象となり得ると思っておるのでありますが、この点に関して総理の御意見を伺いたいと思います。
  35. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御質問がありました通りに、床次君の言われた通りに、社会党の諸君が危惧するような改正をする気分は少しも持っておりません。天皇制にまた改めて、主権在民を破るというようなことも考えておりません。これらは天皇をどういうような――今の象徴という言葉づかいで満足するかどうかというような点については、調査会において慎重な審議をしてくれるものと私は思っております。
  36. 床次徳二

    ○床次委員 第二の問題は自衛の問題でありますが、われわれの意図するところは、あくまで第九条によりまして戦争を否定しながら平和な民主日本の独立の擁護と安全の保障をはからんとするのであります。現行第九条の解釈といたしましても、自主独立国として国家自衛権認められておることは当然でありますが、当然な事実を憲法の明文においてはっきりさせるということが主眼点であると思うのであります。従ってこの自衛というものは最小限度のものでありますので、海外派兵とかあるいは徴兵制度ということは当然考えておらないものである。なおここにわれわれ国民といたしましては祖国を愛し、これを擁護するということは当然国民として持つべきものである。われわれ自衛とともに愛国心あるいは国家に対する忠誠心というものはやはり民主日本の存立の基礎であるということを考えておるのでありますが、これに対する総理の御所見を伺いたいと思います。
  37. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 大体床次君の御意見と全く同感でございます。
  38. 床次徳二

    ○床次委員 第三点といたしまして家族制度の問題でありますが、個人の尊厳と両性の本質的平等の原則は、これは十分尊重すべきものでありますが、家族というものにありましては、やはり家族の一員は相互に和親協力の実をあげる、そうして家族というものが愛情によって成立するということも忘れてはならないことと思うのでありますが、この点におきまして、現在の条文におきましてある程度までこれに検討改善を加えるということが、やはり調査会の対象になる、そういう趣旨において提案者は考えておると思うのでありますが、政府のお考えを伺いたいと思います。
  39. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 これもまた床次君のおっしゃる通り考え方を持っております。憲法調査会においてよく審議をしてもらいたいと思っております。
  40. 床次徳二

    ○床次委員 次は基本人権の問題であります。先ほど片山委員からも御質問があったのでありますが、理想についていろいろお話がありましたが、現在の基本人権に関する規定というものは相当不完全なものと考えておるのであります。すなわち権利の点につきましては十分な規定があるのでありますが、同時にこの権利の乱用と申しますか、あるいは公共福祉との関係において明確を欠くものがある。これを明瞭にすることがかえって基本人権を完全に発揮せしめるゆえんであるというふうに私ども考えておる。別の言葉をもって申しますと、個人と社会の調和をはかることが必要である、この点も憲法において明らかにすることが社会の発展のためによいのではないか、かように考えて、やはり調査会の調査の対象の対象になるべきものと思うのでありますが、この点に対して御意見を伺いたいと思います。
  41. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 この点も、先刻片山君の御質問のうちにもお答えをいたしたつもりでありますが、あなたのおっしゃる通りに、憲法調査会においてこの点はよく審議をしてもらいたいと思っております。
  42. 床次徳二

    ○床次委員 時間がありませんので、この程度で……。
  43. 山本粂吉

    山本委員長 鳩山総理大臣に対する質問は、理事会の決定によって一時間ということになっておりますが、すでに一時間超過しておりますので、鳩山総理大臣は退席をいたします。  暫時休憩いたします。     午前十一時三十二分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十四分開議
  44. 山本粂吉

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。飛鳥田君。
  45. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 まず最初に、前回山崎委員にお伺いをいたしましたことについて伺わせていただきたいと思うのです。前回私、現憲法の制定の際にできました秘密議事録というものがありまして、これについての公開をせられる御意思がありやなしやということを伺いましたところ、公開をしたい、そう努力をするというお話でありました。もう憲法調査会法案も審議が大詰めに参りましたので、至急そうした重要な資料について私たちは検討をいたしたい、こう考えるわけであります。この問題について、その後どうなっておりますか伺わせていただきたい。どのような御努力があったか、これも伺わせていただきたい、こう考えるのであります。
  46. 山崎巖

    山崎巖君 ただいまの飛鳥田さんの御質問にお答えをいたしたいと思います。前に飛鳥田さんから憲法制定当時の秘密会の議事録の公開をしたらどうかというような御要望があったわけであります。その後私といたしましては党の首脳部にも諮りまして、党の首脳部としては、社会党の申し入れを承知してもよろしいのじゃないか、こういうことに相なったわけであります。そこで、衆議院の事務総長であります鈴木君に御要望の次第を伝えまして、至急に手続をしてもらいたい、こういう要望を私からいたしたわけであります。事務局側におきましては、この問題がいろいろ法律的にもまた技術的にも慎重に検討を要する点が残されておるということで、まだ鈴木君から結論をいただいておりません。しかし要はこれは国会自体の問題でございますから、国会の運営委員会で問題として取り上げていただいて、それから具体的に話を進めていただく以外にはなかろうかと考えておるわけであります。私の方からも椎熊運営委員長にも話をいたしておりますし、また社会党の方からも一つぜひ議運の問題として取り上げますように、御協力をいただければ、この問題が早く進行しやしないか、こういうふうに考えておるわけであります。今までの経過を申し上げます。
  47. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 この前あなたはすでに今お話しになりましたようなことを答弁なすっていらっしゃるわけです。速記録を読みますと、議院運営委員会等に持ち込みまして、そこで御決定を願う性質の問題であろうと思います。、「社会党におかれましてもぜひ御協力をお願いしたい。」こういうふうにおっしゃっているわけです。その後議運にあなたの方の提案者の側から、この問題が正式に提案をせられたという事実も伺っておりません。御提案になりましたかどうか。もし御提案になりましたら、その日時を一つお聞かせいただきたいと思います。
  48. 山崎巖

    山崎巖君 ただいま申し上げましたように、事務局側でさらに検討を加えておりますので、その結論を得た上でわれわれの方としても議運に持ち出したい、こういうふうに考えているわけでありまして、今議運に持ち出す段階にまでは至っておりません。
  49. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それではこの法案は審議が終ってしまう結果になるのであります。結論としては、あなたは御努力をなさったとおっしゃりながら、実は公開をすることを妨げているとしか考えられないわけであります。社会党に協力せよというお話でありますが、この法案を提案なさっていらっしゃるのはあなた方であります。提案をなさっている方々が重要な資料の提出について責任を持たるべきことは当然であります。私が御質問を申し上げましてから以後今日まですでに二十日以上を経過いたしております。この問題運に御提案になった事実もない。さらにはまたいろいろな点を検討いたしているという御答弁でありますが、鈴木さんとあなたの間でどのような検討をなさって、どのような障害がそこに存在しておったのか、こういうこともお答えにならない。これではただいたずらに秘密議事録の公開を、形の上では賛成ですとおっしゃりながら、実質的には妨げているとしか考えられないと思います。聞くところによりますと、この秘密記事録は二重帳簿になっているという話であります。総司令部に提出をした議事録とほんとうの議事録と二重帳簿になっているという話であります。こういうような事実も国民は知りたいのであります。またもとのところへ問題を戻してしまうというふうにお笑いになるかもしれませんが、現行憲法が成立の経過において押しつけられたものであるかどうかということを判定するのに、これ以上好個の材料はないはずであります。少くともいずれなりやを国民は疑っているこの事態において、あなた方がその最も重要な資料の公開をなさらずに、審議を打ち切られよう、終了しようとせられますのは、名を民主主義にかりて、実は十分に討論を尽させない、こういう結果に終らざるを得ないのであります。一体議運に提案できなかったその一番大きな障害は何であるか、このことについてお聞かせをいただきたい。
  50. 山崎巖

    山崎巖君 ただいま申し上げましたように、鈴木事務総長といろいろお話しをしまして。鈴木君の方で検討の結果事務局として事務的に出せるという段階であればそれを知らせる、それから議運の問題にしてもらいたい、こういうことであるわけであります。二重帳簿になっているかどうか、そういう点は私どもはむろん承知はいたしておりませんけれども、そういう理由から今日まだ議運の運びに至っていないのが実際の真相であります。
  51. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 くどいようですが、この資料の重要性をあなたが御認識になるならば、その点においては一致したと思っておったのですが、もし重要性を御認識になるならば、相手方が事務的に打ち合せをしたあとで障害がなくなったら提案をしたい、こういう答弁を受け取りっぱなしで、それきりほおっておかれるという理由は私はないと思うのです。提案者としては少くともこの重大な材料を議会だけではなしに、国民の前に提出をせられる義務があると思う。もしそれなしにやられようとするならば、資料も十分に与えずして国民に勝手な議論をさせるという結果に終らざるを行ないと思うのです。憲法を改正する必要があるかないか、この問題については、この国会の中だけで討論がされておるのではありません。国民ひとしくいずこの場所においても関心を持ち、これを討論しておるのであります。この人々に正確な資料を持たせるということは、提案者の第一の義務でなければならない、こう私は思うのであります。ところがあなたは頼みっぱなしで、それっきり。一体ほんとうに熱意があるかどうか、私は疑わざるを得ないと思うのです。鈴木さんにあなたは要求をせられて、それ以後鈴木さんからの中間報告をお聞きになったのかどうか。もしお聞きになったんだとするならば、その中間報告でいかなる点に障害がありとあったのか、これを伺わせていただきたいと思います。
  52. 山崎巖

    山崎巖君 飛鳥田さんから前回御要求がありましてから、数回にわたりまして鈴木事務総長に私は催促をいたしたのであります。ところが鈴木事務総長の方では、いろいろ検討をしておりますが、もうしばらく待って下さい。それが数日前のことでありまして、そういう事情でございますので、私は別にこの問題について速記録の公開を非常に回避しておる、あるいはこの問題について責任をのがれておる、こういうつもりは毛頭ございません。
  53. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 一体どういうところにその待ってくれという理由があるのか、お問いただしにならなかったのですか。
  54. 山崎巖

    山崎巖君 理由につきましては、詳細なことは鈴木君から話を聞いておりません。
  55. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そのようなことで一体国民に十分なる資料を提供する態度と言い得るかどうか、御反省をいただきたいと思います。あなたがもしこの速記録を公開することに反対だという立場にお立ちなるのならば、私はあえて申し上げません。     〔委員長退席、保科委員長代理着席〕 しかし速記録を公開することに賛成だとおっしゃる限りは、あなたは単なる個人ではありません。提案者です。個人ではないはずです。国民の前にこの重要な法案を提案なすっているお一方であります。その方は少くとも責任があるはずです。その責任に基いてもっともっとこの公開について努力をせらるべき義務があります。そのことを私はあえて申し上げたいのであります。一体それでは今後いつごろこの公開について具体的なステップを踏み出し得るか、この見通しを一つ伺いたいと思います。けんか過ぎての棒ちぎりでは何にもなりません。国民が議論をしたい、考えたいと思うときに、資料を十分に提供するということでなければならないのでありますから、この点も一つ御考慮に入れられて、確とした見通しを伺わせていただきたいと思います。
  56. 山崎巖

    山崎巖君 本日の委員会でも終了いたしましたならば、直ちに鈴木事務総長と相談をいたしまして、すみやかに公開のできるような方法がとり得るとしますならば、善処をいたしたいと思っております。     〔「公開反対」と呼ぶ者あり〕
  57. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 別に私はあげ足をとるわけではありませんが、私が今こうやってお伺いをいたしております最中にも、宮澤委員から不規則発言がありまして、公開反対だとおっしゃっていらっしゃる。提案者のお一方だと私思うのですが、こういう提案者内部に足並の乱れがあって、なおかつ至急公開をするように努力をなさると山崎さん断言ができるのでしょうか。ちょっと皮肉っぽいですが、この点も心配ですから、伺わせていただきます。
  58. 山崎巖

    山崎巖君 私は前回申し上げましたように、公開について別に初めから反対しているわけではごごいません。日まで努力をしてきたわけであります。ただ問題は、くどいようでございますが、これは議院運営委員会で決定する問題でありまして、私がそういう意見を持っておりましても、私の意見の通りになるかならぬかは運営委員会の問題であることを御承知おきを願いたいと思います。
  59. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 ちょっとあげ足をとるようで恐縮ですが、前回のあなたの御答弁に、「与党としましてはぜひ公開の方に持っていきたい、こういうふうに考えております。」、こういうふうに述べておられるわけです。与党としては、とちゃんとおっしゃっているのですが、今の御答弁を伺っておりますと、私はそう考えておりますが、必ずしも私一人でそういう方向に持っていけるかどうかわかりません、とこういうふうに話が戻ってしまいました。しかも有力なる与党委員の中にも反対反対と不規則発言をせられるかもあります。これで一体ほんとうに公開できるでしょうか。もし何でしたら、前に与党といたしましてはぜひ公開の方向に持っていきたい、こういうお考えをもっと強くここで明確に述べておいていただきたいと思います。
  60. 山崎巖

    山崎巖君 初めの御答弁で申し上げましたように、前回飛鳥田さんからその問題が出ましたときに、私は党の首脳部にも一応この問題を諮りまして、これは事務局とよく相談をして、事務局で差しつかえないという意見がきまったならば、議運に持ち込んでよろしいじゃないか、こういう了解を得ているわけであります。従いまして議院運営委員会に出まする場合には、おそらく与党としては賛成をせられることと私は期待をいたしているわけであります。
  61. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 この問題は一つ今のお約束を信じます。どうせ衆議院における審議には間に合いますまい。しかしながら参議院もございますので、参議院においても十分討論ができますように、この点についての御尽力をいただきたいと思います。  次に小さなことを三つ、四つ伺いたいと思います。まず第一は、憲法調査会法案を拝見いたしますと、第三条の二項に「委員は、次の各号に掲げる者のうちから、それぞれ当該各号に定める数の範囲内において、内閣が任命する。」、こう書いてあります。ところが前二十二国会において提案をせられました憲法調査会法を拝見いたしますと、同様第三条の二項において、「委員は、次の各号に掲げる者のうちから、それぞれ当該各号に定める数の範囲内において、内閣総理大臣が任命する。」こうなっております。二十二国会に提案をせられた憲法調査会法案と今二十四国会に提案をせられた憲法調査会法案はただここだけにおいて異なっております。その他は全部同じです。なぜ内閣総理大臣が任命するとありましたものが今回は内閣が任命するという形になりましたのか、これを伺わせていただきたいと思います。
  62. 山崎巖

    山崎巖君 御指摘の通りに第二十二国会に出ました憲法調査会法案では任命者が内閣総理大臣に相なっております。今回任命者を内閣といたしましたのは、委員の任命につきましても慎重な手続をとりたい、内閣が任命するということは、すなわちその人事につきましては閣議に諮りまして閣議の決定を経てきめる、こういうことになるわけでございまして、憲法調査会の重要性にかんがみましてその点を変更いたした次第であります。
  63. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もしそうだとするならば、なぜ専門委員、これについても内閣が任命するとなさらなかったか。あるいは幹事についても内閣が任命するとなさらなかったのか。事務局長もまた内閣が任命するとなさらなかったのか。非常に首尾一貫しないと私は思うわけであります。もちろんあなたはきっと委員と、専門委員あるいは幹事、事務局長とはその重みが違うとおっしゃるかもしれません。しかし実際はそうでないことは御存じの通りでありまして、この専門委員がどのような操作をなさるか、研究をなさるかということはこの憲法調査会の内容をほぼ決定するかもしれない重要問題であります。専門委員は学識経験ある者のうちから内閣総理大臣が任命をするということになっておるのでございまして、これと委員とウエイトを変えて考えるということは、私はむしろ誤っておるのじゃないか、こう考えざるを得ないのであります。ところが専門委員も幹事も、ことに重要な事務局長も内閣総理大臣が任命するとなさってあって、内閣が任命するとは書いてないのであります。特に調査会の委員についてだけ内閣が任命するというふうになっておるのでありまして、これは首尾一貫せられない。むしろこの際専門委員は学識経験ある者のうちから内閣が任命する、幹事は学識経験のある者及び関係機関職員のうちから内閣が任命する、事務局長は内閣が任命する、こうなさる方が正しいのではないか、むしろ慎重を期するというあなたのお説であるならばこうなくてはならない、こう私は思うのですが、この点はいかがでしょう。
  64. 山崎巖

    山崎巖君 ただいまの御質問につきましては飛鳥田さんが御指摘になりました通りに、調査会の委員は私はむろん非常に重大だと思います。委員と、専門委員あるいは事務局長とを比べますとその重要性は非常な違いがあると思います。事務局長は調査会の事務を総括するだけであります。また専門委員等につきましては一種の調査の補佐役であります。こういうものと委員を同列にすること自体が私はむしろおかしい。こういうことから一方は内閣であり、一方は内閣総理大臣、こういうふうに書き分けをいたした次第であります。
  65. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それではさらにこの内閣が任命するということについて伺いますが、この場合内閣の任命ということは――当然内閣それ自身が一つの政党内閣であります。そして一つの考え方を持っているはずであります。考え方のない内閣などというものは存在し得ますまい。もしそうだとするならば、この内閣が任命するということによってこの調査会の活動が制約をせられはしないか、こういうことを私たちは疑問に思うのであります。あなた方はすでに再々社会党にも入ってもらいたい、反対論者も入ってほしい、こういうことでありますが、しかし真に反対論者をも吸収していく、こういうことであって公平にやられる、こういうお考えであるならば委員の数を賛成、反対を同数にしなければ意味がないと私は考えるのであります。この点に関して清瀬大臣は、政府より独立して、公平に自発的に審議されようと考えてこの案を立てているのでございます、こういうふうにたしかお答えになっていらっしゃるはずであります。真に自発的に公平に政府から独立してこの調査会を運営していくとするならば、賛成、反対同数でなければならないでありましょう。もしそうでなく政府考え方に賛成する方の人を数多くとりますならば、これは見せかけの民主主義であります。見せかけだけの公平であります。また数は少いが言いたいだけのことは言わしてやろう、こういうことに終ってしまうはずでありますが、この点についていかがでしょうか。これが私が先ほど内閣が任命するということの意味を伺ったゆえんであります。どうぞ一つ明確にお答えをいただきたいと思います。
  66. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 賛成、反対は問題ができてからのことであります。初めから賛成、反対を同数にするということは困難な話です、しかしあなたの意味政府の与党とあなたの党派と同数にせい、こうおっしゃる意味なら意味はわかります。しかしながら今の民主政治としてはやはり多数のものを選出した有権者の代理とそうでないものとは多少比例的にやっても無意味なやり方ではないと思っております。しかしこの国会議員三十名の中でそれをどういう割り振りにするかは追ってのことでございます。
  67. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 問題ができてからとおっしゃるのですが、しかし問題はもうすでにできているじゃありませんか。現にあなたあるいは山崎さんはこの調査会について憲法をどう改正するかというだけではなしに、改正をすることがよいか悪いかということをまずやるのである。そうして改正すべしということになったならば、初めてそのいずれの個所を改正するのか、こういうことをきめるのだ、こうおっしゃっているわけです。しかしすでにもう日本の国内において、憲法を改正すべしという議論と、改正すべからずという議論とが相当な対立を示しておるということは、御存じの通りであります。問題はできている。ところが今のお話ですと、問題が現われてみなければ賛成、反対わからないじゃないか、こうおっしゃるのですが、こういうことでは困ります。すでに国内にその意見の対立があり、その対立をこの憲法調査会の中であなた方は処理をなさりたいと考える限り、今から賛成、反対はありと考えなければならないのであります。それからもう一つ、国会議員三十人という中に社会党と自民党とを同数にしろという意味ならわかるけれども、しかし選挙によって出てきたものは仕方がない、その比率はやむを得ないとおっしゃいました。だが一つ思い起していただきたいと思います。二十三国会で私が本会議において、われわれは憲法改正是か否かということについて総選挙を行なったはずだ、そして現に国民は現在の憲法を守れということで三分の一以上のわが党を選出したのであるから、こうした選挙の情勢に照らし合せてみてあなた方は憲法改正をおやめになるべきだという御質問を申し上げましたときに、あなたは前の総選挙は憲法改正ということには関係がない、こう御答弁になったはずです。憲法改正と関係のない選挙であった、こう御答弁になりながら、今ここに参りますと、とたんにひっくり返って、憲法改正のための調査会を作る場合に、現在の議会の比率はどうもやむを得ない、こうおっしゃるのであります。これを私たちは矛盾撞着と呼びます。こういうその場その場のお答えでは私たちは困るのであります。話は少し横道にそれてしまいましたが、ともかくこの憲法調査会の委員の中に賛成、反対を同数お選びになる意思なのかどうか、この点を先ほど来伺っておる次第であります。それは国会議員、学識経験のある者すべてを通じてのことであります。私はここでわが党とあなた方の自民党との対決などというけちくさいことを考えておりません。国民の意思を公平に、正確にこの憲法調査会の中に反映をさせたいというお心持ちなのか。たまたま議会の中で、あなた方が今あなたのおっしゃる憲法の改正とは関係のない総選挙によってでき上った比率を利用なさって、見せかけだけの公平を持していこうとなさるのか、二つに一つ、お返事をいただきたいと思います。
  68. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 委員を任命する際には、委員の方にあなたは御賛成でありますか。御反対でありますかということを聞いて任命はいたしません。経験の豊かな識見のある人を選ぶこともあります。それからまた憲法改正に賛成、反対という問題だけではなく、憲法の内容を議するのですから、たとえばこの間からの自衛権のことでも、あなたの党派に属される方でもやはり自衛権がいいという考えを持っておられる方もあるのです。またこちらの方でも、しかしながらさらに考え直そうという人がなきにしもあらずでありますので、党派の区別でかっきりするわけにもいきません。これで御了解下さったと思います。重ねて申しますが、賛成、反対を確かめて委員をとるということはいたしません。
  69. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 英邁なる清瀬国務大臣の答弁として私納得できないので、ちょっと関連して質問させてもらいますが、ただいま学識経験者の任命に当っては事前に賛成、反対ということを調べて任命するようなことはない、問いただすようなことはしないのだと言っておられますけれども、少くともあなたがおっしゃっておられるような学識経験者ならば、一応現行憲法を改正すべきかあるいは改正しない方がいいかという意見というものは世間一般に発表されておるわけであります。何もあなたの方であなたは賛成ですか反対ですかと聞かないまでも十分にわかっておると私は思う。私はその点をつくというのではありません。去年二十二特別国会におきまして、本委員会鳩山総理に学識経験者の選考について総理の構想を示されたいという質問をしたのに対して、「学者についても同様に、賛否両論の意見をなるべく混合して採用したいというような気持でおります。」と総理は明確に言っておる。あなたよりもよっぽどものを知っておられる。あなたは事前に賛否というものを考慮して任命しないと言うけれども、総理ははっきりと賛否両論が混合して採用されるように任命したいということを言っておりますが、総理と清瀬さんとの意見の食い違いがあるのかどうか、その点ちょっと確かめておきたいと思います。
  70. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 鳩山総理のその御言明は私聞いておりませんでしたことは事実ですが、しかし鳩山総理といえども日本の学者すべての賛否両論を御承知なかろうと思います。いわんや今回は学識経験者は必ずしも憲法専門家のみを考えておるのじゃありません。歴史の大家も必要なことです。歴史の盛衰にかんがみてわが国の将来を考えなければならぬ。実業家もその通りであります。いろいろな国内の碩学を集めますから、この人は賛成、この人は反対という色分けをしてやるというようなことは不可能なことであります。
  71. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは鳩山総理が、本委員会において、委員の質問に対して、できもしないことを答えたとあなたはおっしゃるのですか。これは非常に問題は重大だと思いますので、念のためにもう一度伺います。
  72. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 言葉をぎりぎりに言えばそうもとれますけれども、なるべくはそういうふうにという腰だめでおっしゃったものと善意に解釈しなければなりません。今から審議しようというのに、審議せぬ先から賛成と反対のバランスをとることがどうしてできますか。会を開いて、問題に対して、初めて賛成なり反対が出てくるのです。
  73. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 清瀬さんはあくまで自論を保持されるいつもの癖が出ておられるようであります。これはあなたはここで自論を強硬に突っ張っていいかもしれませんけれども、それでは総理にちょっと当ると私は思います。先ほどから申し上げておりますように、それでは鳩山総理が本委員会において委員の質問に対して、そういう無責任な答弁をしておるということになると思います。これは非常に重大だと思う。少くともこのときの質問についても、何も憲法学者についてただしておるわけじゃありません。学識経験者の選考についてどうなさるかというので、こっちは何も誘導尋問したわけでもない。総理の構想をお尋ねした。それに対して賛否両論の意見をなるべく混合して採用するということを言っておられる。あなたと明確に違う。しかし内閣で任命するとはいいながら、やはり総理大臣考えというものは非常なウェートを持ってくる。しかもこの憲法調査会の主任の大臣は総理大臣です。それと憲法担当の国務大臣との間に、憲法調査会の委員の任命の方式について、意見の食い違いがあるということは、私軽々に見のがすわけにいきません。清瀬さんがあくまで自論を撤回されないならば、鳩山総理に出席していただいて、一体どちらの意見に統一して、委員の任命をやるのか、これを私はお伺いしない限り議事の進行はできない。少くともこの憲法調査会法案の中で、一番重点はどこにあるかといえば、どういう委員をどういう基準によって選考するかということにすべての運命がかかるわけです。そういう大切な問題について総理と担当大臣との間の答弁が食い通う、考えが違うというようなことは、私見のがせません。あくまで清瀬さんがそういうふうな口論を老いの一徹で言われるならば、私は総理に出席していただいて、明確な統一した答弁をするように要求いたしたいと思う。
  74. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 私の平素の癖が出たとおっしゃいますが、あなたもだいぶ平素の癖が出たようであります。それは、総理は、なるべく賛否両論を混合して、一方に偏せぬような委員会を作りたいという希望を述べておられます。私もそう思うております。ゆえに鳩山さんはなるべくと言っておられます。私もなるべくそうなることを希望しております。一方に偏することはいけません。こういう国家重大のことでありますから、中にわかっておる人もあります、憲法改正反対という人もありますが、そういう人も入っていただくという意味に了解したらいいと思うのです。同じ人間でも、時を違えて話をすれば、表現はおのずから違ってくるのです。いわんや違った人が同じ内閣におるといっても、違った人が違ったときで言葉を出す分には、そこに言葉のニュアンスというものがあるものです。鳩山さんがなるべくは混合したい、私もなるべく自分の友だちはかり入れようなんという考えはありません。混合してやりたい、こういうのであります。これをどうも言葉が違うから総理を出せなんと言われることは、先日来のあなたの癖がだいぶ出ておると、失礼ですけれども私は思うのであります。
  75. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私の癖がだいぶ出ておるとあなたはやり返しておられますが、私が今までそういう癖をいつ出したかお尋ねしたい。清瀬さんこそ老いの一徹で、これこそ癖です。今だいぶ後退されたようです。最初にあなたは、学識経験者が憲法改正について賛成の意見を持っているか、反対の意見を持っているかわからない、だからそういうことをあらかじめ頭に置いて任命するようなことはできないと言っておったけれども、今はそれじゃなるべくそういようにやろうというふうに、だいぶ後退されて、ここで一徹も怪しくなっておるわけでございます。それでは鳩山さんの考え方に同調して、あなたもなるべく混合して採用されるのかどうか、念のため最後にお尋ねいたします。
  76. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 なるべくそういうふうにいたしたいと思っております。
  77. 西村力弥

    ○西村(力)委員 関連して。きょうの新聞を見ますると、矢内原東大総長、南原前東大総長、木下東京学芸大学長、大内法政大学総長、大浜早大総長、安部学習院大学長、内田東京工大学長、蝋山お茶の水女子大学長、上原一橋大学教長(元学長)、務台慶大教授(元東京文理大学長)、こういう学長クラスの人々が、民主教育を作り、現在あなたが担当せられておる文教政策の動向というものは、明らかに日本の教育を逆行せしめる危険をはらむものであり、かつまたそのことは、憲法において保障されておる基本的な権利である言論の自由、そういうものに将来暗い影をさすものである、この点は十分に反省せらるべきであるという声明を出した。それに対して清瀬大臣は、子供のときに覚えたような民主主義一本やりでそういうことを言うのはたやすい話だがと、こういうことを言っていらっしゃる。われわれが日本の知識人の最高の人々として尊敬をしておるこれらの学長諸君に対して、大臣は、評価するに、子供の民主主義だ、こういうことを言っていらっしゃる。これは前総理吉田茂氏が曲学阿世をもってののしったのとほとんど同じではないか、こう思われるのです。それで、今学識経験者の選任に当っての構想をお話になっていらっしゃいますが、このような子供っぽい民主主義者を学識経験者には入れない、こういう腹づもりでございますか。私たちは、あなたの考えであるとするならば、入れるとするならば、子供のような民主主義ということを承知して、まことに鼻であしらうような工合に軽蔑している。これは憲法に対する尊重の度合いが軽いということです。入れないとすれば、日本の最高の良識を否定する憲法改正の考え方である。こういう工合に、いずれにしましても、入れる、入れないにかかわらず、私たちは重大性に考えを及ぼさざるを得ない。その点に対して清瀬文部大臣のお考えをお聞かせ願いたい。
  78. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 そのことについて、誤まりなきように私は正確に申し上げます。あの声明なるものは、私はまだ直接には受け取っておりません。けさ起きて新聞で見ました。これを数回読み直してみますと、文字に拘泥しないでいうと、教育の根本は容易に動かすべきものじゃない、しかしながら、容易に動かすべきものじゃないが、ところどころ改正の必要があるならば審議会その他について諮問をいたし、また世間の言うことに耳を傾けてやるべきものである。これは有志と書いてある。会ではない。学者の有志相はかってここに声明する、こういう意味なんです。これについて文教委員会においても質問がありまして、私はかように答えておるのです。第一段の民主教育の根底は容易に動かすべきことでないということは、賛成でございます。学者諸君のおっしゃることはちっとも非難はないのであります。第二段の、改正が必要ならば諮問委員会等に諮問すべし、これもその通りでございます。ただ、その中に私が諮問しなかったということが含蓄されておるならば、それは事実の間違いでございます。諮問は大いに諮問いたしました。問題たる教科書法案のごときは、中央教育審議会に諮問いたしまして、十一月五日に答えを得まして、大部分この諮問の結果をとっております。また教育制度の組織、運営――主として教育委員会中心としたものですが、これは前の大達文部大臣が諮問されまして、中教審から答申がありました。これは尊敬して見てはおりますけれども、この中教審の諮問それ自身のようには立案はいたしませんでした。少しはとっております。すなわちこれらの諮問を尊敬することは、尊敬はいたしますが全部はその意味をとってはおりません。しかし諮問はしておる。もしこれらの事実を御承知なくして声明されたのであったら、事実相違でございます。しかしながら周囲においては、日本の一番大きな大学の先生――その学殖の富贍なることは私は敬意を表しております。ゆえにこの案について軽蔑したんじゃ決してございません。あの新聞に載っておりますことは、この案をまだ私が見ない先に、意味で新聞記者から電話がありまして、電話で答えておきました。その後私の家に寝るときにやってきていろいろ言いましたから、今言ったのと同じようなことをもう少し詳しく言いました。そうすると新聞はその一分を、群盲象を探っていわれて、ある新聞はこっちを書き、ある新聞はあっちを書く、きょうの東京の新聞で一致した記事は一つもありません。夜おそくいろいろと目をこすって私の言うたことの一部分をお書きになっておるのです。書いてあることは意味においては大いには間違いありませんけれども、表現においては非常に間違っております。
  79. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 枝に枝を咲かして恐縮ですが、デマに向ってデマをもって答えるというのは……。(「電話だよ」と呼ぶ者あり)電話ですか、それは失礼。(笑声)ぼくにはデマと聞えたから……。電話ですね、デマですか、どっちですか。
  80. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 電話です。
  81. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それじゃけっこうです。いつもデマを飛ばされるから、ついデマと聞えちゃったんですよ。  それじゃ一つ最終的に、枝に枝が咲きましたが、結論として伺っておきたいのは、調査会の中に賛成、反対の方方を公平に入れるという意思は今のところはない、こう伺ってよろしいのですか。これは山崎さんと清瀬さんに伺っておきます。(「公平と半数とは違います」と呼ぶ者あり)半数、半数という意味でけっこうです。
  82. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 先刻お答えいたしましたように、なるべく公平にいたしますが、しかし特定の問題について御賛否は実際はわからないのです。私の考えでは憲法学者のみならず主として歴史に通じておる人が非常に必要な場合と思います。それからまた産業経済、それらの人をとろうとしますから、個個の問題あるいは国防のこととか、あるいは元首のこととか、あるいは家族制度のこととか、これらについてどの方がどういう意見ということを調べて半半にするなんていう、そんな正確なことはできませんけれども、鳩山さんの言葉をそのまま使えば、なるべく公平にしたいこういうことです。
  83. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もうこれ以上それは無理でしょう。それじゃまたこまかい条文の問題ですが、これは先般石橋君からも質問があって、山崎さんのお答えは一応いただいておるわけですが、しかしその後の事態の変化を見て参りまして非常に心配でありますので、明確にしておきたいと思うことであります。と申しますのは、法の第二条、これを読んでみますと、「調査会は、日本国憲法に検討を加え、関係諸問題を調査警戒し、その結果を内閣及び内閣を通じて国会に報告する。」こうあります。この場合の「通じて」ということは単なる経由機関にしかすぎないということでしょうか、それともその間に内閣が何らかの独自の権限をお持ちになるということでしょうか、この点を一つ明確にお答えをいただきたいと思います。     〔保科委員長代理退席、委員長着席〕
  84. 山崎巖

    山崎巖君 簡単にお答えしますならば、内閣はこの場合は全く経由機関だと考えております。
  85. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 なぜ私がこんなことを伺ったかと申しますと、それは選挙制度調査会の成り行きを心配したからであります。あそこでは公平に世論を反映せしむるといううわべだけの御趣旨に従って、学者、議員、こういう人々を集めて選挙制度の調査を諮問されたのであります。現実にこの委員の方々が鋭意努力をせられて調査会案なるものができ上って、これを内閣に答申いたしますと、内閣はこれを無視するどころではなく完全にじゅうりんし去って、委員諸公に対する侮辱をさえあえてなされたと私は考えるのであります。このようなことがもう一ぺんここであってはなりますまい、こう考えますので、「通じて」ということを私は明確にしていただきたい、こう思ったわけであります。そういたしますと、内閣は憲法調査会から関係諸問題を調査審議して、その結果を報告せられますと、これに対して何ら操作を加えることができない、一字一句改正することなくして国会に報告をする、こういうふうに解釈をしてよろしいのでしょうか。それともう一つの疑問は一字一句の修正はしないが、しかし現実には気に食わない答申であった場合には握りつぶしてしまう、こういうこともあり得ると思うのでありますが、内閣は憲法調査会から答申をせられたものを握りつぶす法律的な権限があるのかないのか、この点も明確に承わっておきたいと思うのであります。もし握りつぶしてしまうということができないならば、さらに進んでなぜ憲法調査会が内閣に答申をした場合には、内閣は何日以内に国会に報告をしなければならないという義務規定をお置きにならなかったのか。握りつぶしはいたしません、だがしかしまだまだその時期ではございません。あなた方お得意の言葉であります。石橋さんの言葉をもってすればくせを出します。そうして半年も一年も握りつぶしているということもあり得ると思うのです。そういう措置を一体この法案の中でどうなさっていらっしゃるのか、これも伺わしていただきたいと思います。
  86. 山崎巖

    山崎巖君 前々申し上げますように、憲法調査会が設置せられますれば、その運営もきわめて自主的でありまして、かりに調査会におきまして結果が出ました場合には、ただいま御指摘のように一言一句そのままを内閣を通じて国会に報告する義務を内閣は持っていると思います。また何ゆえに何日以内にというようなことを、この法案に書かなかったかという御質問でございますが、従来の立法例等におきましても、そういう言葉はあまり使っておりませんし、また内閣が義務を持っております以上は、すみやかに国会にその結果を報告するものと私は信じております。
  87. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そこで私は疑問が出るのです。前回鳩山総理はこの委員会で、憲法調査会に原案を作らせる、こういう答弁をなさって、あわてて原案という言葉を取り消されたと私は記憶いたしております。今お説の通りであるとすれば、憲法調査会で作った草案はすなわち原案じゃないでしょうか、こういう疑問が出て参ります。これから一つ伺わしていただきたい。なぜ総理が原案を憲法調査会に作らせるということをおっしゃって、あわてて、取り消されたのか、あなた方はやはり憲法調査会が作るものが原案だとは言いたくなかったのでしょう。これは山崎さんもきっと同感だろうと思うが、それならば一字一句修正なさることができないのに、なぜこれを原案であると言うのをはばかられるのか、伺いたいと思います。
  88. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 私から。(飛鳥田委員「提案者から伺いたい」と呼ぶ)調査の結果を内閣を通じて報告する調査報告書であります。原案、すなわち提案権によって出すのは、あるいは議員立法で行くかあるいは内閣の案にするか、これは別であります。その原案は別の作用によって作られるのであります。
  89. 山崎巖

    山崎巖君 総理が原案というようなお言葉をお使いになりましたのは、私は深いお考えのもとに使われたものとは思いません。もとよりただいま清瀬大臣からお話のございましたように、この調査会は憲法の草案をそのまま作るものとは考えておりません。検討の結果、いろいろ問題点を検討して、どういうふうに改正すべきか、そういう点についての一応の意見は出るものと思いますけれども、これが直ちに憲法の草案になるものとは考えておりません。
  90. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、私にはなおわからなくなるのですが、今山崎さん及び清瀬さんは、この憲法調査会から出てきたものは一字一句修正を加えることなしに国会に報告をする、こういうお話でありました。内閣はこれに対して修正を加える権能がない、こういうこともおっしゃいました。そういたしますと内閣の、あなた方がおっしゃる提案権というのは、この調査会から出てきた報告とは全然別個のものだ、こういうことですね。そう解釈してよろしいのですか。これを一つ……。
  91. 山崎巖

    山崎巖君 その通り考えております。
  92. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、内閣の、あなた方がおっしゃる提案権というものは、この憲法調査会とは法律的には関連性がない、こういうことですか。憲法調査会の出してこられた報告を参考にはなさるでしょう。だがしかしそれは参考にしかすぎないのであって、憲法調査会の出してきた案とは、法律的には無関係に内閣は提案権を持っているのだ、こう伺ってよろしいわけですか。  さらにいま一つ伺いますが、そういたしますと、憲法調査会と内閣とは別個の行動だ、こういうことですね。
  93. 山崎巖

    山崎巖君 憲法の草案ができまして、それを内閣が出すか、あるいは国会自身で出すか、この問題は別個の問題だと思います。ただいま飛鳥田さんの御意見の通りに、憲法調査会におきまして結果を得ました場合は、これは提案する場合の一つの参考資料でありまして、別にこれがそのまま国会に提出されるものとは考えておりません。
  94. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうしますとまた私は意地が悪いかもしれませんが、選挙制度調査会の事実に思いをいたさないわけにいかないのです。先ほどあなた方お二方は、選挙制度調査会のようなあんな不始末はやらないという御意思と承わりましたが、しかし憲法調査会は憲法調査会で勝手に調査して、その報告を内閣及び内閣を通じて国会にせよというのとは別個に内閣に提案権があり、その提案権に基いて原案を出すのだ、こういうことでありますならば、選挙制度調査会で行われたような不始末が再びないとどうして保証なさるのでしょう。政治的な良心とおっしゃるかもしれませんが、良心はもののみごとにあそこで裏切られているのです。私たちはこういう重要な問題については、単に良心とか道義とかいうことだけでなしに、法律的に明確な保証がなければならないと思う。そうでなければだれが無視されるかもしれない憲法調査会などに委員となり、あるいは専門委員となって入って、営々として働くでしょうか、私はこういう点も伺わせていただきたいと思います。(発言する者あり)お待ちなさい。この門問題はいまだかつてだれも質問していないことです。
  95. 山崎巖

    山崎巖君 先ほどの飛鳥田さんの御質問は、法律論としてどうかというお話でございましたので、かりに内閣が提案する場合の提案の内容と、憲法調査会会で出ました結論とは別個のものである、こういうことを申し上げたわけでございます。しかしながら憲法調査会におきまして国会議員並びに学識経験者が慎重審議せられました結論につきましては、かりに内閣が提案する場合におきましても、それが重要な資料であり、それを大いに尊重されるということは自然であろうと考えるわけであります。
  96. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、憲法調査会というものは単なる内閣の諮問機関だということに尽きるわけですか、これも一つ、最終的に伺っておきます。
  97. 山崎巖

    山崎巖君 憲法調査会は内閣の諮問機関ではございません。内閣から憲法改正を要するか、あるいはこういう点についてどうかというような諮問を出すわけでは毛頭ございません。憲法調査会自体が、前々から申し上げますように、自主的に現在の憲法に再検討を加えて、かりに改正の必要がありという場合に、その改正点についてさらに具体的の検討を進める、これが任務でございまして、決して内閣から諮問を受けて、その諮問に応じて答申をするという性格の調査会ではございません。
  98. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 しかしいずれにせよ内閣は憲法調査会の答申に拘束をせられないというお話ですが、これもくどいようですが、もう一度はっきり伺っておきます。
  99. 山崎巖

    山崎巖君 先ほど申し上げた通りでありまして、法律的にこれを究明せられますと、別なものであるというふうに言わなければならぬわけでありますが、しかし調査会が結論を見ました場合には、内閣におきましてもその結論を十分尊重するということは当然であろうと思います。
  100. 受田新吉

    ○受田委員 関連。今御答弁になったことで関連してお尋ねしなければならぬのですが、調査会の案に対して十分尊重すべき政府が、これにこたえ得ない場合はないか、すなわち調査会が憲法を改正すべきでないと結論を出したときには、政府はこれをいかようにお取扱いになりますか、そこをお伺いいたしたい。
  101. 山崎巖

    山崎巖君 かりにそういう結論が出ました場合には、政府としても十分にその結論について考慮せられることは、私は当然であろうと思います。
  102. 受田新吉

    ○受田委員 政府憲法改正を考えておられるのであって、調査会の結論が改正を可とするというように出ることを期待していることは間違いありませんか。
  103. 山崎巖

    山崎巖君 調査会の任務は、憲法改正の要否並びに改正の必要ありとした場合にはどういう点を改正するか、これが調査会の任務であることは、前々申し上げた通りであります。この答弁によりまして御了解を得られるはずであります。
  104. 受田新吉

    ○受田委員 いま一つお尋ねしておかなければならぬのですが、あなた方は憲法改正を企図しておられることはきわめて明瞭なのであって、従ってこの調査会の構成メンバーも、結果的にはあなた方の御意見と一致する人が多数出ることを期待していることもきわめて明瞭なのである。だからこの間の公述人の人々も、自分の意見が十分述べられるように、委員の構成メンバーが振り当てられるならば、出席してもよろしい。しかしおそらくあなた方のお考え通り委員を多数お出しになるのであろうということによって、この憲法調査会に入ることをちゅうちょしておられる人たちのおられたことは御承知の通りです。従って私が非常に心配しているのは、あなた方はこの憲法調査会を政治的意図をもって強引に構成させようと計画しておられることは、これは火を見るよりも明らかなんです。そういう際にもっと冷静にお考えになられて、委員の構成も賛否相半ばするような、公平な御選任をされるというのであるならば、われわれも納得する。従って国会議員も党派的にも賛否双方が同数であるというように振り当てられる用意があるということであるならば、われわれは深く敬意を表しますが、この点国会議員の割り振りも与野党を通じて公平にやるというように、そこまで深く考えておられるか、確かめておきたいと思います。
  105. 山崎巖

    山崎巖君 調査会が設置せられました場合の委員の選考につきましては、先ほど清瀬文部大臣からお答えになった通り考えております。決してこの調査会ができましても、われわれがかつて研究しました、あるいは自由党時代の結論、あるいは改進党時代の結論、これを調査会に押しつけるという考えは毛頭持っておりません。ただ申し上げておかなければならぬことは、わが自由民主党としましては、立党の新政策におきまして憲法改正必要なりということは、国民に打ち出しております。また鳩山内閣も同様、第三次鳩山内閣成立と同時に、重要政策の第一項目に憲法改正という項目を出しております。従って政府としても、与党としても、憲法改正必要なりという確信は持っておりますが、しかし調査会におきましては、広く世論を聞きまして、その結論がかりに受田さんの言われるように、憲法改正に反対だということになれば、わが党としても、政府としても、さらに考慮を加えなければならぬ段階になると考えております。  国会議員の割り振り等につきましては、従来の慣例等もございまょうし、今ここで反対、賛成同数というような結論は直ちに出かねると思います。
  106. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 この問題の最後にもう一つ伺っておきます。今の山崎さんのお説によりますと、憲法調査会の出した結論に対しては、内閣は単なる経由機関にしかすぎない、このいうお説であります。従って内閣は修正も、これを握りつぶしもできない、こういうことでありますが、そんな経由機関であるならば、なぜこれを特に内閣に付置する必要があるのか、国会に付置なすったらよろしいのじゃないでしょうか、こういう疑問が生じてくるのであります。内閣はただ経由機関だ、トンネルにしかすぎないというお話ですが、そんなら何も内閣に無理して置かないで、国会に付置なすったら一番直接的ではないか、それは技術的な困難はありましょう。学識経験者をこの委員の中に入れるというような点で、技術的な困難さはありましょうが、それはあくまでも技術的な困難という点でありまして、そういう技術的な困難な問題は乗り越えて、本来の本質的な姿においてこの調査会を設置せられることの方が正しいんじゃないか、私はこう思うわけです。なぜ内閣に置いて国会に置かないのか、こういうことをもう一度、今の内閣は経由機関にしかすぎないということとからめて御説明をいただきたい。
  107. 山崎巖

    山崎巖君 法文にございまするように、この憲法調査会が結果が出ました場合には、内閣を通じて国会に報告すると同時に、内閣自身にも報告することになっておることは、この法文によって明らかでございます。国会に置かずして内閣に置きました理由につきましては、これは前回あるいは前々回に他の委員の方の御質問に詳細にお答え申し上げましたように、従来の例から見ましても、学識経験者と国会議員と同列に置く委員会であるかどうか、国会に置くよりも内閣に置くことが適当である、こういうことから設置をいたしたような次第でありまして、その結果につきましては、国会と同様内閣にも報告することになっておることは条文によって明らかであろうと思います。
  108. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それでは次の質問をやらしていただきますが、この現行憲法について提案者の山崎さんもあるいは清瀬さんも、それは完全なる主権のない時期に制定をせられたものだ、こういう説明をなさり、その言葉の表現にいろいろ問題はありましたが、押しつけられたものであるということについては一致をせられておると思います。前回公聴会を開きましたときに神奈川博士がお見えになりました。神川博士のお説もあなた方のお説とほぼ同様であったと思いますが、神川さんはこの点についてかなり明白に、現行憲法は国内的に見れば占領軍命令である、国際的に見ればこれは無効のものである、こういうふうに断定をせられておったように思います。この点についてあなたの方のお考えと同様であるかどうか、お伺いをしたいと思います。
  109. 山崎巖

    山崎巖君 学問上の問題でございますから、私からお答えするのはあるいは不適当かと思いますが、少くとも現行憲法が明治憲法の改正様式によりまして制定せられました以上は、国内的には有効な、またこれを国民としてあるいは政府として、公務員としてこれを順守すべき義務のありますことは、当然であろうと存ずるわけでございます。
  110. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 清瀬さんの御意見も伺わせていただきたいと思います。
  111. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 山崎議員の御説明と変りはございません。しかしながら学説的にいろいろ申しますと切りはございませんが、日本国長法は有効な憲法でございます。われわれはこれを順守しつつあります。
  112. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 だいぶ清瀬さんのお説は変ってきたように私は思います。完全主権のない時期に制定をされたものだ、押しつけられたものだ、こうおっしゃっていらっしゃる。さらに記憶が不確かですが、参議院において国際法、すなわちヘーグ規約四十三条、大西洋憲章第三条に違反しているから、これは無効なものだとさえおっしゃったように記憶いたしております。こういう点から考えて参りますと、なぜこれが有効であって、順守しなければならないという御説明をなさるのか、私は非常に疑問に感ずるのであります。およそ意思の自由のないところに適法な法律行為の成立いたしませんことは、先生御存じの通りであります。完全主権のない、いわゆる占領軍命令によって作ったとおっしゃるこの憲法が、なぜ法律的に有効なのか。この問題についてあなたは明治憲法の改正様式に従って改正したから有効だなどとおっしゃることは、これは少しいただきかねます。それは一個の形式です。もしお説のようだとするならばそれは形式であります。手続をもって実体をおおうがごとき御言説は一つお許しをいただきたいと思います。なぜ意思の自由のないところに適法な法律行為が成立したのか、この点についてもう少し法学者としての清瀬先生のお説を承わりたいと思います。
  113. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 飛鳥田さんも私どもも同じ法学教育を受けた者であります。私法上の行為も意思が圧迫されたために当然無効じゃございませんので、取り消し得べき行為となっております。いわんや国際公法においては、多く戦争終末の平和契約は、みなこれ意思の自由を欠いた敗戦者の意志を抑圧した契約であります。ウェストファリアの条約でもヴェルサイユ条約でもわがポツダム宣言でもその通りであります。しかしながらこれは公法の上においては無効とはいたさないのです。別の情勢が起ってこれを取り消し、改正するまでは有効と受け取っておるのが、国際公法の原理でございます。それゆえに、ポツダム宣言があり、わが国は降服しておるときにかような憲法を作らなければならぬことになったのは身を切るよりつらいことではございますけれども、これは法律的には今有効な憲法でございます。
  114. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 初めてそういうお説を承わりました。今国際法上のお話をなさいましたが、それは国と国との関係であります。この憲法は国内法であります。国際法をもって国内法をおおうような御言説も一つ御容赦賜わりたいと思います。さらにもう一つ驚くべきことは、意思の自由のない、圧迫せられた行為も即座には無効にならない、その通りでしょう。それならばこの現行憲法は瑕疵ある意思表示ですか、きずのある憲法ですか。そうおっしゃらんばかりでした。この点明確にしていただきたいと思うのです。
  115. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 国際法なりあるいは国内の公法の範囲においては民法と同じ瑕疵ある意思表示という言葉は使っておらないのであります。やはり圧迫のもとに受けても有効な条約、有効な公法となっておるのでありまして、ただ理解のために初め民法のことを言っただけのことであります。公法の範囲あるいは国際公法の範囲にはヴォイダブルな、瑕疵ある行為ということは認めておりません。やはり有効でございます。
  116. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 けっこうです。名分そうおっしゃる。だろうと思ったのですが、それならばあなたのお説は非常に矛盾しているのではないか。たとえば現行憲法についてその憲法改正の限界があるかどうか、こういうことを前々回の国会において私たちの同僚が質問いたしましたときに、あなたは、私は限界はあろうと思うのです。憲法制定権の混淆は自殺論法でございますから、今われわれがもし新憲法を作るといえば、やはり日本国民主権があることを変更することはできないと思います。こういうふうに、憲法改正について限界があると述べておられます。ところが現行憲法が有効であるとせられるならば、明治憲法から現行憲法に変るときに、一体限界がありましたか。こういうふうに、明治憲法から現行憲法に変るときに、その改正の限界を全然無視することをして、今有効だとあなたはおっしゃっておいて、今度はさらに憲法を改正しようとする場合に、くちびるを翻して改正の限界がありますとおっしゃる。こういうことを矛盾と言わずして何を矛盾と呼ぶのでしょうか、伺わしていただきたいと思います。
  117. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 明治憲法改正要件によって、そのときまでの主権者であった皇室から御発案なさっております。それからして明治憲法規定の枢密院を経て、少くとも憲法の上においては、合憲に発案されて国会の承認を得ておるのであります。しかしなら、実際はわが国は負けて、非常に国民が嘆いておるときに、一部の政治家を追放しておられたこの政治意味については、非常に議論はありますが、今の憲法は、憲法として有効な憲法でございます。
  118. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 どうもますますわからなくなります。もう少し問題をそらさずに、明確に答えていただきたいと思います。明治憲法から現行憲法に改正が行われた、これは合憲な正しい手続で行われたのだから、われわれはこれを認める、こういうふうなお話がありました。だからこそ、それでは明治憲法から現行憲法に変るときに限界がなかったじゃないですか。こう私は申し上げているのですが、限界がなかったことをあなたがお認めになる以上は、今度新しく憲法を改正しようとするときに、あなたがどんなに言葉丁寧に、現行憲法の改正には限界があろうと思うのですなどとお答えになったって、だれも信じやしませんよ。またやるに違いない、あの手だな、こう思いますよ。私たちは、やはり前にあなた方が限界を無視して作って、しかもそのできたものを有効だとおっしゃるのなら、またその手を用いるだろう、こう思ってお尋ね申し上げたんです。ところがあなたはそれを避けようとして、主権者たる天皇の御発案によって、枢密院会議の議を経てやったんだから有効だ、こうおっしゃるのです。それではまたあなた方は、現行憲法国民主権、この国民主権の集約点である最高の機関の国会が発案して認めたんだから、差しつかえないときっと言われるに違いありません。そうすれば国民主権まで否定できるということじゃないですか。私はそういう非論理なことをおっしゃらぬ前に、再々申し上げているわけです。もう一度伺わせていただきます。あなた方は現行憲法を押しつけられた憲法である、意思の自由のないところの憲法である、それは民法的にいってみれば瑕疵のあるものだが、しかし公法上はそうもいえないから適法だと考えている、しかもその適法である根拠としては、明治憲法の改正手続によって行なっているのだ、だから有効だ、こうおっしゃるなら、憲法の改正の限界について云々なさる資格がありますか。
  119. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 これは多分に理論闘争になっているのです。最終のぎりぎりまでいけば、国民主権憲法の改正に、国民主権を除いての発案は、これは自己矛盾であります。しかしながら、実際問題としてわれわれの考えるのは、国民主権のことも、基本人権のことも、平和主義のことも、この三つのことは認め憲法改正に進みたいと言うております。それで問題はすでに解決しているのであって、そのうしろにある法律哲学のことは、いろいろと学者によって意見もございます。いわゆる進歩学者の方が限界があるとおっしゃっているのです。私は保守党に属しておりますが、その点においては、むしろ進歩学者の説を採用いたしまして、憲法改正に限界あり、こう申しているのです。これ以上お聞き下さっても学説の披瀝というふうなことに終りますので、この程度におとどめ願いたいと思います。
  120. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 変なお説を聞きますが、私たちはここで国民の総意として議論をしているのです。筋を通さない議論などというものはナンセンスです。ところが学説の披瀝はよしましょう、こういうお話でありますが、一体私たちは学問を尊重し論理的な議論を展開しないで何があるのでしょうか。そういう非論理なことによってこの国会の論議がねじ曲げられていったのが今までの通弊で、今後もあなた方はそういう態度をおとりになろうとするのか、これを伺わしていただきたい。
  121. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 私は、政治上の実際として必要なる限度においては、法理論を戦わします。これが限度でございます。
  122. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 はなはだ失礼ですが、憲法解釈政治上に必要のない議論でしょうか、法理論でしょうか、これを伺います。
  123. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 必要がある場合と、必要のない場合とがございます。
  124. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それでは伺いますが、国民主権制限しないとあなたはおっしゃった。だがしかし今や現に国民主権制限しつつある。なぜかといえば、それは国民権利及び義務という条章について、あなた方は人民の集会、結社その他信教の自由、こういうものをも、法律の範囲内において、すなわち公共の福祉に反しない限りという事実をつけて、法律事項にしていこうとする、こういうことであります。ところが現行憲法によりますならば、居住権及び職業選択の自由を除いたすべての自由権は、法律事項ではありません。法律によっても制限し得ない国民権利であります。この権利法律事項をもって制約しようとすることは、すでに国民主権の中に食い入っているのじゃないですか。あなたは表に国民主権に尊重し、陰において現実に一城々々を落していこうとする態度をとっていらっしゃる。こういう点を考えてみますと、先ほど来のお説を私は信ずることができないのであります。もっと率直に、改正には限界ありません、明治憲法から現行憲法にやったと同じ手口をまたやります、こうおっしゃった方がいいに違いありません。
  125. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 そう言えば、あなたの方がこちらを攻撃する討論には大へん都合がよかろうと思いますが、われわれは国民主権は変えず、基本人権は尊重し、平和主義はとると言っておるのです。これに何か御不足があるのですか。まさか、質問の中に基本人権を云々するとおっしゃいましたか。私どもは、基本人権は変更せずということはたびたび言っておるのです。だれか、いつかの場合に、来たるべき憲法においては、基本人権制限しますと答弁でもしておったら、あなたの御質問はレリヴァントないい質問ですが、だれも基本人権を変えようとしておるのじゃないのですよ。
  126. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 では伺いますが、現実に国民の自由を法律事項に書いていこうとすることは国民主権制限でありますか、ありませんか。そういう意図をあなたが持っていらっしゃる、いらっしゃらないは別でございますよ。純粋にそのことだけを伺いましょう。
  127. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 それは規定の内容いかんによります。現在の民主憲法においても公共の福祉に反することは制限を許しておるのであります。そういう問題は具体的な案件に当って議論しないと役に立ちませんですよ。
  128. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それでは、もっと具体的に伺いましょう。明治憲法の中に定めてありましたような法律事項による制限を、あなたは国民主権制限であるとお考えになるかならないか。     〔「清瀬さんの頭も古くなったな」と呼ぶ者あり〕
  129. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 大へん私の頭も古くなりましたが、あなたのお問いもちと進歩し過ぎておる、飛躍しておるのであります。明治憲法だって必ずしも不道理のものばかりではないのです。しかしながら法律制限する範囲も多い、たくさんあります。あれはもう少し縮める方が私はいいと考えております。
  130. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 いいか悪いかということを伺っているのではなく、それは国民主権制限ではありませんか、ということを伺っているのであります。
  131. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 それは事項により、また制限の仕方にもよります。
  132. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 僕はかなり自分の感情を押えて、論理的にお伺いをしているつもりですが、何かのらりくらりとお逃げになる、残念であります。  そこで次の質問をさせていただきますが、あなた方は憲法の条章について、それが非常に空文化してきている、端的に言えば現在の実情に合わないとおっしゃっていらっしゃるわけであります。従ってなるべく現在の情勢に合わせたい、こういうお考えを述べられましたが、一体、憲法の条章が現在の社会の状況と合わなくなったということの責任はどこにあるのでしょう、現在の、あるいはその前に続くところの保守党内閣の責任ではないでしょうか、このことについて伺いたいと思います。
  133. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 問題が具体的でありませんから……。歴代の内閣または立法府といえば国会であります。戦後十年間の政治のやり方が影響しておる場合もございましょうし、あるいは本質的にこの憲法がいけなかったという場合もあろうと思います。あまり問いが広範で、大きなお問いでありますから、私の力ではお答えできないのであります。(笑声)
  134. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 この憲法によりますと、国民はすべて就労する権利を持っております。労働をする権利を持っております。ところがこの人々は、今潜在失業者を合せますと一千万人にも上る失業の群に追い込まれているわけです。これを憲法と現実の矛盾といわずして何かということを私たちは考えるのでありますが、こういう状況を作り出してこられたことについて、現在の内閣も責任を分有せられるおつもりがあるかないか。
  135. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 飛鳥田さん御承知の通り、労働権というのは、それに対する義務を生じたのではなくて、一種のプログラム的の憲法の規定であります。今、失業があることは憲法違反だといったようなことは言い過ぎでありますけれども、われわれは一日も早く失業問題を解決いたしたいと思って、五カ年計画を作り、完全雇用の状態を持ち来たそうと努力いたしておるのでございます。
  136. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 最後に一つ、時間もありませんので伺っておきますが、およそ資本主義社会の憲法をながめて参りますと、現実とその憲法との間に非常に大きな矛盾がある。その矛盾について日本を見て参りますと、特にまたその上に日本の資本主義の後進性あるいは封建的な諸関係の残存、こういうことを交えまして、もっと大きな二重の開きが出て参っておるように思うのであります。そうした矛盾あるいは開きを、あなた方はこの憲法を改正することによって解決しようとなすっていらっしゃる。これを私たちがながめて参りますと、それは解決にはあらずして、憲法水準を下げて現実を肯定する側に近寄ろうとなすっていらっしゃるのでありますが、私たちは逆に憲法を、少くともそこまで国民生活水準を引き上げなければならない理想として、基準として、考えざるを得ないのであります。この点について、あなた方は憲法を引き下げて現実に合わせようとなさる。私たちは社会生活国民生活を上げて憲法の方に引き上げていこうと考えておる。この二つの矛盾について、あなたはどういう御所感をお持ちであるか、承わらせていただきまして、僕の質問を終ります。
  137. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 この点についてはあなたと同一の希望を持っております。日本国民生活水準が上り、最大多数の最大幸福が持ち来たされるように、われわれは日夜念願いたしております。
  138. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 実は伺うつもりではなかったのですが、そうおっしゃいますので、私はもう一つ追加して伺わせていただきます、それでは家族制度を復活させよう、こういうことについてあなたはどうお考えになりますか。私は少くとも日本の現在の社会生活の中で、いたずらに過去の家族制度を復活させるということは、社会の上に混乱を起す、こう言わざるを得ないと思うのでありますが、この点についても、答弁というよりは御所感を伺いたいと思います。
  139. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 過去の家族制度を復活する考えはございません。
  140. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 けっこうです。
  141. 山本粂吉

    山本委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十九分散会