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1956-03-09 第24回国会 衆議院 内閣委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月九日(金曜日)     午前十一時十七分開議  出席委員    委員長 山本 粂吉君    理事 大平 正芳君 理事 高橋  等君    理事 保科善四郎君 理事 受田 新吉君       臼井 莊一君    大坪 保雄君       大村 清一君    加藤 精三君       北 れい吉君    小金 義照君       椎名  隆君    薄田 美朝君       辻  政信君    床次 徳二君       福井 順一君    坊  秀男君       眞崎 勝次君    宮澤 胤勇君       粟山  博君    横井 太郎君      茜ヶ久保重光君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    稻村 隆一君       片島  港君    永井勝次郎君       西村 力弥君    細田 綱吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         文 部 大 臣 清瀬 一郎君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         法制局次長   高辻 正己君         文部事務官         (調査局長)  福田  繁君  委員外出席者         議     員 古井 喜實君         議     員 山崎  巖君         専  門  員 安倍 三郎君 三月八日  委員辻政信君、福井順一君及び稻村隆一君辞任  につき、その補欠として大高康君、小澤佐重喜  君及び三宅正一君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員小澤佐重喜君及び大高康辞任につき、そ  の補欠として福井順一君及び辻政信君が議長の  指名委員に選任された。 同月九日  委員江崎真澄君、高橋等君、辻政信君、床次徳  二君、福井順一君、下川儀太郎君及び三宅正一  君辞任につき、その補欠として加藤精三君、坊  秀男君、森清君、臼井莊一君永田亮一君、永  井勝次郎君及び稻村隆一君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員森清君及び永田亮一辞任につき、その補  欠として辻政信君及び福井順一君が議長指名  で委員に選任された。 同日  委員臼井莊一君加藤精三君及び坊秀男辞任  につき、その補欠として床次徳二君、江崎真澄  君及び高橋等君が議長指名委員に選任され  た。 三月八日  未帰還公務員に対する恩給法改正請願(中村  時雄君紹介)(第一五六号)  元沖縄県有給吏員恩給支給に関する請願(淵  上房太郎紹介)(第一一七七号)  元満州国日本人官吏恩給法適用に関する請願  (保科善四郎紹介)(第一一九三号)  同(竹谷源太郎紹介)(第一二三一号)  同(佐々木更三君紹介)(第一二三二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求に関する件  憲法調査会法案岸信介君外六十名提出衆法  第一号)  臨時教育制度審議会設置法案内閣提出第一〇  号)     —————————————
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより会議を開きます。  憲法調査会法案を議題とし質疑を続行いたします。、稻村君。
  3. 稻村隆一

    稻村委員 きょう実は法制局長官に御出席を願っておったのでありますが、お見えになりませんから、次長の方もしくは清瀬さん、古井さん、山崎さんどちらでもよろしいですから、お尋ねしたいと思うのです。私はこの調査会法案というものは、どうしてもこれは憲法違反である、こう考えております。  まず第一にお尋ねいたしますが、鳩山首相は前国会から、国民発議するのには政府提案権はないことは明瞭であります。しかしながら国会意思決定する議案につきまして、理論的には内閣提案権があると考えます。こう言っておられるのです。法制局長官もそういうことを二十二国会参議院におきましてはっきり申しているのでありますが、この点は憲法第七十二条によってであるかどうか、いま一度はっきりお答えを願いたいと思うのであります。
  4. 高辻正己

    高辻政府委員 お答え申し上げます。憲法改正手続の段階といたしましては、御承知のように、憲法規定によりますと、国会国民発議し、その内容は国民提案をして、いわゆる国民投票によって憲法改正をするというのが憲法規定でございますが、その発議原案と申しますか、発議をすることについて国会意思決定をされるそのもとの原案を果して政府が出せるかという問題であろうと思いますが、その発議原案につきましては、憲法規定は直接に触れておるとは私ども思っておりませんので、これを議員提案することができることはむろんでありますが、内閣もまたそれができる、こういう解釈を私どもはとっておるわけであります。
  5. 稻村隆一

    稻村委員 林法制局長官は、二十二国会参議院においてこういうことを言っておられるのです。「国会がこういう憲法改正国民に対して発議されるにつきましては、あらかじめその意思決定議案についてなされることが必要であるわけでございます。その意思決定をするについての議案をだれが発案するかということにつきましては、憲法九十六条が直接にはきめておらないわけでございまして、これは憲法一般原則から解釈すべきものであるわけでございます。それにつきまして国会議員提案権を持っておられることは、これはもちろん申すまでもございません。しかし憲法七十二条の規定からいって、内閣提案権を持っておるということは、理論的に言えることだと存じておるわけでございます。」と言っております。林長官はみずからこういうことは憲法の第九十六条は直接きめておらない、だからこれは憲法一般原則から解釈すべきものである、こう言っておられる。そう言っておられるのに、理論的には内閣提案権を持っておる、こういうふうに言っておることは、どう考えてもこれは独断的な三百的な議論であると私は思うのです。そこで憲法一般原則の問題でありますが、大体憲法一般的な原則からいって、外国の例をとって言うわけではないけれども、これは憲法には歴史があるので、外国憲法日本憲法もない、主権在民憲法をとった以上は、その解釈というものは当然歴史に従わなければならぬ。イギリスでもアメリカでも憲法上の規定に関する一切の提案権国会に専属するということが習慣になっておる。もし成文憲法規定があいまいな場合においても、憲法解釈は長い間の歴史慣習に従うのが当然です。憲法規定が明確でないからといって勝手な解釈をするならば、イギリスのような不成文憲法の国は大へんなことになる。ところがイギリスではマグナカルタ以来憲法民主主義慣習——ラスキ民主主義慣習であると言っておる。その慣習が厳として守られておるから、そこで不成文憲法でけっこうなんです。ところがイギリスのような民主主義慣習のないところはどうしても一々明確に規定する必要がある。それが私は成文憲法であると思うのです。そこで憲法の長い間の習慣というものを厳格に守らなければ大へんなことになる。たとえばアメリカ大統領制です。この前の二十九日の私と清瀬さんとの問答の速記録を見ますと、私がアメリカ大統領のやる議会政治だと言ったようなことが書いてあるが、これはとんでもない間違いで、大統領議会政治なんてばかなことはないので、これは議事録の間違いですから訂正しておきますが、アメリカ大統領政治です。大統領政治でありますし、ほとんど四年間は大統領独裁権力のごとき絶大な権限を持っておる。これはアメリカという国が独立戦争とかあるいは南北戦争とかという戦争の過程から憲法が制定された国だから、従って政府権限が非常に強く絶大であるという必要から生まれたので、これはやむを得ない一つの客観的な事実であった。日本がちょうど行政権力の非常に強いことを要求した明治時代、これは非常に国家権力が強かったというのは、これはまたやむを得ないことなんです。そういう歴史上の事実からそういうふうな強い行政権力政府が生まれるのでありますが、しかしこのアメリカがかように政府権力が絶大であるにかかわらず、ほかの国のようにいわゆる独裁政治にならないことは、アメリカにおいて三権分立の精神が厳重に守られているからである。こういうふうな絶大な政治権力を持っておる政府といえども専制政治を行えないのは、これは立法権独立が厳として存在しているからである。そこでアメリカ憲法を調べてみましても、行政権力憲法のことに容喙することは厳重に排斥されておる。だからして憲法改正の問題を議するに当っては、立法府にすべて専属しておる。そういうことは、専制政治を防ぐために当然のことなんです。それからイギリスでは、日本と同じ議会政治の国です。大統領政治ではない。この議会政治の国におきまして成文法はないけれども憲法上の規定はすべて議会がこれを議することに、慣例が厳重に守られておる。そういう憲法歴史慣習からいって、林さんもこれは憲法一般原則から解釈すべきものであると言われているとき、それが九十六条の規定では明確でないからといって、いやしくも憲法上の問題を内閣が主として調査会を作っていろいろ相談をするというふうなことは、これは日本国憲法からいっても明瞭に憲法違反である。これは憲法歴史慣例から私は申し上げる。それを無理に内閣にも意思決定をする提案権ありと称してこの憲法調査会内閣に置かんとするがごときは、何といっても憲法違反であって、三百的議論である、こう私は申し上げたい。その点に対してこれは清瀬さんでも、古井さんでも、山崎さんでもけっこうですから、御意見を承わりたいと思います。
  6. 山崎巖

    山崎巖君 ただいまの稻村さんの御意見つまきしては、前会稻村さんにお答えいたしました通り、私どもといたしましては憲法九十六条の規定から申しましても、また七十二条の規定から申しましても、内閣におきましても提案権ありという解釈をとっておるわけであります。この点につきましてはもとより提案権なしという学説もございます。しかし学界の意見といたしましては、内閣提案権ありという意見の方が多数説のように、私ども見ておるわけであります。ただ前会も申し上げましたように、内閣憲法調査会を作りまして、だんだんと憲法の全面的の検討を遂げ、そしていよいよこれを提案する場合に国会から提案するか、あるいはまた内閣から提案するか、これは別個の問題だと思います。ただいまの稻村さんの御意見のごときも非常に傾聴に値する点もあると私どもは思いますが、法律的解釈といたしましては、ただいま申し上げますような憲法の条章から考えましても、私ども内閣にも提案権ありと、こういうふうな解釈をとっておるような次第であります。
  7. 稻村隆一

    稻村委員 七十二条は予算案とか一般法律案をいっているのであって、憲法の問題に対する議案を私はいっているのじゃないと思う。これは何度も繰り返すようですが、憲法に関する一切の議案というものは立法府のみがやるべきものであって、その歴史習慣からいっても、英米の例をとっても、主権在民の世界の憲法模範である英米憲法からいっても、これは断じて間違いである。明治憲法ならこれは別で、もう憲法改正はすべて大権に属するのだから別ですが、いやしくも主権在民憲法模範としている国において、一般法律案予算案などと同じように、第七十二条によって政府にも提案権ありというがごときは、絶対に間違いだと思う。そう思うのですが、清瀬先生はどうですか。
  8. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ただいまの山崎さんの御説明と同様に私も考えております。
  9. 稻村隆一

    稻村委員 絶対にそういう考えは間違いだと思うのです。内閣総理大臣国会の多数党を代表しているのであるから、やはり提案権はあるのだというふうなことを言っている人もあるのですが、そういう意味からそうお考えになるのでもないですか。
  10. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今まで山崎君のおっしゃる通り国会に対する議案権提案権内閣にもある。この手続考えてみますと、憲法改正発案自身を初めするのじゃなくして、このたび憲法改正をするから国民発案をしなければならぬ、発案原案内閣なり議員から国会に出しまして、国会国会自身で、このときは内閣発言権はありません、三分の二の多数を得て国民投票に問うて採決するのだと思います。それより一歩前の案はやはり通常議案だ、憲法改正発案に関する件といったようなものを先に出すのだと思う。そのときのあり方通常法律と同じでいいのじゃないか、こう思っております。
  11. 稻村隆一

    稻村委員 これはどうもおかしな話で、例証は悪いかもしらぬが、強盗が出て困る、だから強盗を縛る法律を作る。しかしその場合縛られる強盗立法相談をするのはおかしなもので、被害者である一般の人が困るからといって強盗を制裁する法律を作るということになる。ところでこれは非常に原始的な話の仕方ですが、暴政というものでしばしば民衆は困った。たとえば昔のシナの軍閥政治というものは、あれは政府というか一種の強盗です。そういうふうなことが歴史上しはしばあった。特に西洋には東洋より専制政治が横行した。西洋憲法政治が発達したということは、西洋専制政治がひどかった、東洋はそれほどひどくなかった。だから東洋ではいわゆる憲法政治がおくれていたということになる。こういう歴史的事実です。その強盗みたいな政府、そういう政府を押えるために憲法ができた。むろん今の政府強盗ではないでしょうが、しかし行政権力を支配したものはしばしば悪政をやるのです、非常に悪い政治をやるのです。そういう場合に人民の自由を守らなければならぬ、それが憲法なんです。そういうときに歴史的にも理論的にも考えて、法律適用というものが歴史的事実を背景として考えられなければ問題にならない。そういうときに政府憲法のことを単に法律論によって、それもあいまいな法律論によって、ありと称して憲法改正を云々することは、個人としてやるのは差しつかえないが、法案として予算をとってやるということは絶対にいかぬ、間違いである、こう私は思うのです。これは私の独断ではない、憲法歴史から考えてそう思うのですが、どうも幾らお尋ねしても、どうしてもあるというのですから、それだけですけれども、私はそういう憲法の制定の歴史から考えて間違いではないか、こう言うのです。
  12. 山崎巖

    山崎巖君 その点につきましては意見の相違だと思いますが、申すまでもなく憲法改正議案国会に出ました場合には、国会において十分の御審議も願うことでありますし、しかも両院ともそれぞれ三分の二の多数の賛成を得られなければ、国民発議することもできないことになっておるわけであります。従いまして憲法最終的の改正決定いたしますのは、国民自体であると申さねばならぬと思うわけでありまして、その点につきましては、提案権内閣にあるという解釈をとりましても、最終決定国民意思によって決定することを御了承を願いたいのであります。従いまして、憲法歴史のお話がるるございましたけれども、この最終決定国民意思によってきまるわけでございますから、その点は何ら差しつかえない問題ではなかろうかと考えておる次第でございます。
  13. 稻村隆一

    稻村委員 しかし私はこれはそういうお答えでは絶対に納得ができないのです。これは保留いたしまして、いずれ法制局長官が来られてからまた質問を継続することにしたいと思っております。
  14. 細田綱吉

    細田委員 関連して提案者一つ伺いたいのだが、提案者の方の御意向はよくわかりました。わかりましたが、こういうことはお考えになりませんか。ただいま非常に適切な例を稻村さんから言っておられたのですが、民主主義というのは、とにかく国民中心にした制度であることは、申し上げるまでもないことであります。行政府の感覚というものは、要するに行政執行の上に都合がいいとか悪いとかいうことが第一になってくるのは当りまえなんです。当然なんです。明治憲法の当時はこれはきわめて強いものであった。この点ではもう十二分に経験のある文相は知り過ぎているほどよく知っている。だから、憲法はどう改正すべきかというようなことは、これは国民の代表の集っている国会が痛切にこういう点は直さなくちゃ不便だ、直さなくちゃ不合理だというようなことを感じてやるべきであって、行政府なんかそれをやるべきでない。従って何でもかんでも行政府に、内閣にこういうものもできるんだ、ああいうものもできるんだということを集中することは、やがてまた戦争前のあの強い行政府をこしらえ上げることじゃないか。清瀬先生なんかはもう十二分に苦い経験を経られておるあの戦争前の形に戻すことになる。少くとも今後の政治あり方は、そういうことは厳に戒めて、政治をやるものが中心ではない、政治を受ける国民中心にものを進めていかなくちゃならぬという立場から立てば、憲法提案もまた国会の中に置くべきではないか、こういうふうに考えるのですが、どういうふうにお考えになっておりますか。
  15. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私の名前が出ましたから私からお答えいたします。ただいまの御質問の、言葉ではなく、御趣意のことは稻村さんのおっしゃるのと同じでございます。例をとっておっしゃいましたから、私もその例を拝借しましてお答えいたしますと、政府をどろぼう強盗にたとえて、これを捕えるなわは警察官が持つのが当りまえである、こういう趣意ですね。そのことはよくわかりますが、また強盗の方で仏心を起して、悪うございました、私をくくって下さいという強盗もなきにしもあらずなんです。政府の方から、現在の憲法が悪かった、きのうまでは自分憲法を乱用した、やはり将来のためにはこの規定は変える方がよかろうということに気がついて、政府発案するという余裕をとることも、それは珍しいことではありますけれども、またあり得ることだと思っております。それゆえに、政府発案権を全部とるということは公けの道理ではないじゃなかろうか。旧憲法は比較になりませんけれども、旧憲法時代政府、ことに天皇だけが発案権を持っておられたということも、わが国には前例もあることでございます。しかしながら政府憲法改正草案国会に出そうという腹を持っておるということじゃございませんよ、けれども、そういうこともあり得ることでありますから、この情勢上内閣審議会を置くということは、必ずしも憲法違反ではなかろう。今御両君の御質問の底は、一つ政治論、あるいはさらに進んで政治哲学論としては、私も心のうちには賛成いたしますけれども、共鳴はいたしますけれども、しかし現在のやり方としてはこれがいいんだ。もしこれを国会に置くということで、院外学者歴史家、それらを集めるというと非常に異例になる。憲法は当りまえの法律家じゃだめです。憲法で必要なことは歴史です。こういう憲法があったからこの結果になったのだというようなことを知る上において、歴史家哲学者実業家、そういうものを集めて、日本の将来のために、広くとはいわぬまでも、非常に深く考えなければならぬわけでありまして、お互い代議士は目前の処理を要する政治問題に忙殺されております。ロシアとの外交もやらなければならぬ、フィリピンの賠償もやらなければならぬ、労働争議も処理しなければならぬといったようなことで、政治家ばかりではいけないので、広く各界の人——実は日本にそれだけの碩学大家があるかどうか疑わしいのでありますけれども、民族の全能力をしぼって、将来のための憲法を作るのには、議員だけでは足りない、院外の者もとる——院外の者をとるということは、国会内の委員会特別委員会といますか、それまでやったことはないのです。例はあるのです。調べました。イギリスなどでは院外の者を集めたコミッテイを作ったこともありますけれどもわが国には明治この方ないのであります。やはりこれは内閣がよかろう。正直申しますと、この国会に置こうということを私の属しておりました前の改進党時代にも、一ぺん研究したことがあるのですが、やはり内閣に置く方が安全だ、こういう結果でございます。これは何もかも打ちあけてお答えをいたしたわけであります。
  16. 細田綱吉

    細田委員 今清瀬先生の言われたことは、法律家としての法理論を一歩も出ていない。あなたは今、政治哲学として、あるいは政治論としては共鳴するというが、われわれはこれは政治として扱っているのです。単なる条文の解釈としてそれもできるというような可能論を言っているわけじゃない。遺憾ながら法律家法学博士清瀬一郎議論を一歩も出ていない。あなたは今、どろぼうもまた戒心しておれを縛ってくれという法律もでき得る、また行政府国民のためにということで憲法改正するという考えもあり得るという、要するに、あんたの言うのは例外なんでしょう。大体あなたは非常に博学の博士ですから、こんなことは申し上げるまでもないが、各国で国会圧力なくして、また人民圧力なくして、天皇みずからが自分の権能をうんと縮小した憲法改正した例がありますか。いずれも国会圧力によって、あるいはまた断頭台に上ったがゆえにそういう憲法改正されておる。何といっても内閣がやろうというなら内閣中心、要するに行政執行都合のいいようにやるのはこれは当然なんで、人情の必然なんだ。そういうふうに、日本政治を、可能だ、あり得るというような例外をもって、少くとも憲法改正のこの法案内閣審議させるというようなことに、内閣の責任ある一員としてのあなたはとっていこうとするのか、それを伺いたい。
  17. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 先刻申し上げたほかにはつけ加えることはございません。あの通り御了解願いたいと思います。
  18. 細田綱吉

    細田委員 可能だ、あり得るということをおっしゃるならば、国会議員国会議員外というものが対等の立場で採決して法律決定するのではなくして、これは要するにどこまでも原案原案をこしらえるのですから、国会の中に憲法改正調査会というようなものを国会議員以外で嘱託して、そういう参考案をこしらえしめる機関を置く、そうしてもちろん国会議員も一部に参加する、要は憲法改正に対する参考案を作るについてのイニシアチブを国会がとっていく、内閣がとるのじゃなく、国会がとっていくということも、また法律上不可能という議論は少しもないと思うが、この点いかがでございますか。
  19. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 そのことは先刻もお答えしましたが、疑わしいです。現在の憲法及び国会法では国会議員が自主的に裁断を下すので、院外の者は公聴会という形でお呼びするようになっております。あれを広げて院外の人をやはりメンバーにして、ここに委員会を置くということができるのか。またできるとしても、そういう前例を開いてだんだん進むというと、国会政府と区別がつかぬようになるということもあり得る。ゆえに国会内につまり院外学者耆宿を入れる前提という話です、そういうものを国会に置いていいだろうかということは研究いたしたのであります。イギリスには前例はあるのです。全く前例がないとは言えませんけそども、この道をここで開くということはどうだろうか、非常に疑問がある。はっきり断定を私、よう下し得ません。日本が新たに憲法を作って国会法でやっておりますが、今回初めて大学の教授なり、産業界の巨頭なり、何十人かメンバーに入れて、代議士と一緒に委員会を作ってこの部屋でやるといったことをここで始めるということは、これは非常に疑問があることです。絶対不能ではありますまいが、その例を開くよりも、むしろ——政府政府とおっしゃったが、昔の政府と違って議院内閣でありますから、やはり一種の国会を代表しておる議院内閣であります。この際政府に、永田町に置く方がこれは安全なんだろう、こういうことが包み隠しもせぬわれわれの解釈でございます。国会に置くことは絶対不能とは考えませんでした。ごく初めに、われわれの属しておった党は国会に置こうということを提唱した時代もあるのです。だんだん掘り下げて、考えてどうもそいつは悪例だろう、こう考えたのであります。
  20. 細田綱吉

    細田委員 野党であられた当時の改進党の清瀬先生の御意見は、今おっしゃったように国会に置くということです。ところが自由民主党になって政権を担当する清瀬一郎は、今度は内閣に置くというようになっておると私は思う。こういうことをやっておられるから、鳩山内閣というのは官僚にちっとも頭が上らない。行政改革の最近の発表を見ましても、まるで気の抜けたような案になって、予算局もどっかへ行ってしまっておる。事ごとに行政府に移して、そして官僚の手を借りてやるということだから、官僚の力を押えることがちっともできない。結局は中身は官僚政治なんです。三十年、四十年、多年の御経験を持っておる政治家清瀬先生は、日本政治がこういうことでいいと思われるか、この点最後に一つ伺います。
  21. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私は自己の弁明をしようとは考えませんが、さきにあからさまに言いました結果、またあからさまに言わなければならぬ立場に立ち至った。改進党が憲法改正を思い立った当初においては国会内といったのでありますが、私が民主党にいまだ入っておりません、すなわち一昨年中に改進党の素案を作ったときは、すでに内閣に置くということに変えておるのでございます。日本民主党になってからそうしたのではございません。改進党時代といえば野党の時代であります。そのころいろいろ考えまして、党内では外に置く方がいいということで出発したけれども、ほんとうに外に置いたらどうなるんだろうかということを立法考査局その他の方にだんだん調べさせまして、外国には例はあるけれども日本調査会を院内で、院外の者とをまぜて議長のもとに、国会予算内でこれをやるという前例を開けば、また後日の問題も重要だというので——議員と民間との合同会議のようなものが国会にだんだんできますと、これはおもしろくない傾向だから、やはり内閣に置くがよかろうということは、私が自由民主党に入るもう一つ前、改進党時代にそれはきめておるのであります。今日われわれ政府党になったから、そういうふうに変節改論したのではございません。一身の弁明をいたして済みませんけれども、そういうわけでございます。  お問いの後段のことについては、政府にかような委員会を作るということは、日本の国の政治を乱るものだとは私は思いません。国内に、あなた方は御反対だが、また他方には憲法改正すべしという論はあるのであります。言論界にもあるのであります、実業界にもあるのであります。こういう国家の大切なことは、内閣委員を委嘱して調べさすということは決して悪いことでございません。
  22. 稻村隆一

    稻村委員 ただ国会に置けばそういうふうないろいろな専門家の意見も聞けない、専門家を入れることもできない、そういうふうなことで内閣に置かなければならぬ、こういうふうなことは少しも理由にはならぬと思うので、政党にもおのおの政務調査会があるのだから学者を呼んだりなんかして十分意見を戦わし、その意見をいれることは幾らでもできるわけなのです。それで清瀬先生は、内閣に置くことも日本は議院政治だからかまわないのじゃないか、こういうふうなことを言われた。私はそういう観念が非常に重大だと思うので、実は多数派政治議会政治大統領政治とは違って、ほんとうは行政権と立法権の区別が、はっきりしない場合があるわけです。それは議会における多数党が政権を取り、衆議院の者が総理大臣になって行政権を支配するのだから、そこでそういう観念が非常に危険だと私は思うのです。というのは、たとえば多数党が政権を取って、多数横暴をやるやつが一番これは手も足もつかぬ。これが一番危険だ。歴史上しばしばそういう例がある。ヒトラーはワイマール憲法で多数党になって、そうしてあらゆる独裁権力をふるって行政権中心独裁政治を行なった。そういう例は日本にだってあるわけです。過去における多数党の横暴、多数独裁というものは民主主義でなく、議会政治でないことは、これはもうだれでも知っているわけなので、少数派の意見を尊重し、少数派の基本的人権を守る、これが憲法政治なのだ。多数派独裁は官僚独裁、軍閥独裁、君主独裁と同じような危険性があることは、これはもう歴史上の事実です。内閣憲法の問題を議する、それは議院政治だからかまわないじゃないかという意見こそ私は最も危険な意見であると考える。そういうことを聞いて、ますます——かりに多数党の政府内閣といえども憲法上の問題に公式に、法的に容喙するということは絶対にいかぬ、憲法違反である、こう私は考えるのです。清瀬さんの議論を幾らお聞きしましても、これは憲法違反であるということに対して、私はどうも考えが変らないのです。これはどう考えても憲法違反ですよ。
  23. 山崎巖

    山崎巖君 私ども憲法違反とは絶対に考えておりません。たびたび申し上げますように、今回内閣調査会を置くという建前には相なっておりますけれども、この調査会自体は広く世論を反映せしむるというために設置するわけでありまして、この調査会には反対の意見の方々もぜひ御参加を願いたい。そして憲法改正是か否かという根本論から大いに検討をし、その結果改正を必要とするということになれば、さらにこの憲法改正の要点について御討議を願う、こういう建前にいたしておるわけであります。また内閣に置きますことが、行政府意見が非常にそれに強く反映するのじゃないか、こういう御心配であると思いますが、この調査会法の案文をごらんになりますとわかりますように、簡単に申し上げますならば、これは内閣がこの調査会のいろいろの世話をする役目でありまして、調査会自体が自主的に運営をはかり、そしてその結論につきましても、その運営から出て参ります結論は、むろん委員各位の自主的な意見によってきまる、こういう建前に相なっておりますので、決してこの調査会行政府意見が強く反映するという建前には、私ども考えておらないわけであります。従いまして私どもはこの調査会の設置が憲法の条文に違反するというふうには絶対に考えておらないのでございます。
  24. 稻村隆一

    稻村委員 それは調査会をやって憲法原案を作るのですからね。法律を作る者は官僚です。何といっても官僚か作るのですから、それはもうどうしたって幾ら憲法調査会でこういうふうにしろとかなんとか言ったところで、原案を作るということになれば、これは官僚が作るのだから、決して真の意味の主権在民憲法、基本的人権を守るようなものはできないと思う。多数党でも行政権をとった者は、自分都合のいいようにやるということは習慣ですよ。だから行政権力を拡大して、できるだけ議会側がやかましく言うて、いろいろな問題で政府の自由を束縛するようなことをなくしようということは当然なのですから、これは一つのごまかしなのです。必ずしも行政権がこれに干渉しないとかなんとかいうけれども原案を作るのだから、原案を作れば、その原案というものは立法技術において、政府都合のいいような、政府権力を増大するようなものができるにきまっている。それをわれわれはおそれるのです。それはごまかしなのです。先ほどの清瀬さんの議院政治だから、内閣に置いてもかまわないじゃないかという考えがどだい間違っておる。さっき言った通り多数横暴というのはいつもおそろしいのだから、君主独裁もおそろしいのだから……。そういう危険性に対して清瀬さんは全然ない、こうおっしゃるのですか。
  25. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それは少しもないと私思っております。憲法調査会は名のごとく調査会なのです。調査の結果は内閣に報告され、内閣を通じて国会に報告されるものであります。その後に憲法改正を可とすれば国会が御提案のこともあろうし、また内閣提案することもあると思います。それが提案されて、国会で三分の二で決せられるのです。そのときに至っては、内閣は表決権は持っておりません。閣僚は代議士としては持っておりますけれども。今の憲法は世界の憲法にまれなほど改正手続を厳重にしております。参議院も衆議院も三分の二で発案に同意をして、それから国民投票にかけるのです。これだけ丁重な手続をとっておりますから、微々たる一内閣日本憲法の将来をゆがめるなんということは毛頭ないと思っております。
  26. 稻村隆一

    稻村委員 私は法律は全然知りませんから、そういうむずかしい法理論は申しませんが、政治の実際においては反省のない多数党政治というものは非常におそろしいものです。これは過去においてもそうです。政府議案を出す。それに対していかに議員が間違っていると考えても、やはり党の統制に服さなければならぬ。それが今の議会政治の実態なんです。ヒトラーの場合も同じです。多数党が権力をとってあらゆる横暴なことをやる。それに対して多数派に属する議員というものはいろいろな考えがあっても、党の統制上、選挙の関係等において幹部の意向、従って多数党政府の意向に従っていくという危険性がある。それがつまり多数党政治議会政治を破壊している実情なんです。そういう危険性が日本にも現にあった。政党横暴の時代がそうです。そういうふうなことがあるから心配するので、多数党政府であればあるほどその心配が起る。アメリカあたりなら常識的に考えられない。大統領憲法の問題にいろいろくちばしを入れるというふうなことは考えられないのだが、日本立法と行政の区別があいまいだから、多数党が勝手なことをやるのが現実なんです。清瀬さんはそういうことはないというけれども、事実そういうことがある。  それから、なるほど日本憲法上の改正規定が非常にやかましい。これは事実です。やかましいことは非常にいいと思う。日本のような特に専制政治に陥る危険性のあるところは、憲法改正規定がやかましいことは絶対にいいと思うのだが、しかしこれも多数党政府決定したことは、一つ国民の世論として、これが国民投票の場合でも、自分たちの代表として選んだ議員が多数できめたのだからといって、盲従する危険性が多分にあるわけです。いずれにせよ、たとえばヒトラーみたいに選挙をやればその通りになる。ソビエトだって憲法主権在民で多数派でいっている。しかし選挙すれば政府の方の者が全部当選するとか、それから政府の言った通り法案が一切通るとか、また国民投票においても通るとかいうふうなことは、これは多数派独裁の国家においては通常のことなんです。こういう多数派独裁からもわれわれは人民の自由を守らなければならぬ。そういう意味からいって、憲法の問題に内閣が容喙する——これは容喙するにきまっている。憲法改正を前提とする調査会にきまっているのだから、幾らいろいろな理屈を言うてみても、調査してから云々なんて、これはへ理屈なんです。そういうようなことからこの憲法問題に内閣が容喙することは絶対に危険である、これはもう私は深く信ずるのです。清瀬さんの議論は、これはもう全然私はへ理屈だ、こう思うのです。
  27. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今のは御質問でなく、御批判でございましたが、私自身はへ理屈とは思っておりません。良心的にそう考えておるのでございます。
  28. 稻村隆一

    稻村委員 まだいろいろお聞きしたいことがあるのですが、きょう、前から要求しております林法制局長官がお見えになりませんから、私の質問はこれを保留いたしまして、次に質問をしたいと思っております。
  29. 山本粂吉

    山本委員長 午後は一時から再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時十一分休憩      ————◇—————    午後二時十八分開議
  30. 山本粂吉

    山本委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  この際お諮りいたします。憲法調査会法案について公聴会を開催いたしたいと存じますので、公聴会開催要求を議長に申し入れたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 山本粂吉

    山本委員長 なければさよう決します。  なお公聴会手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 山本粂吉

    山本委員長 なければさよう決します。  暫時休憩いたします。なお午後五時より再開いたします。    午後二時十九分休憩      ————◇—————    午後五時五十一分開議
  33. 山本粂吉

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  臨時教育制度審議会設置法案を議題とし、質疑を続行いたします。受田君。
  34. 受田新吉

    ○受田委員 総理が来られる前に清瀬さんにこの法案の最後の質疑をいたしたいと思います。あなたは自民党の政策の最高目標の一つである国民道義の高揚の立場から、この法案を出さなければならぬと仰せられ、かつ憲法改正と背後において相通ずるものがあるのだという御答弁があったわけでありますが、日本の教育というものと一体的なあり方として今日に至っておるところの新憲法の精神と違う方向に教育がおもむかしめられるとなれば、現状においてはこれは非常に重大な問題だと思うのでありますが、自民党の基本政策の一つとしての国民道義の高揚の立場から考えられる今回のこの法案の目標は、結局は国会の忠誠と道徳教育の強化、中央政府の意図を地方へ反映せしめ、指揮監督権を強化して、教育の中央集権化におもむかしめる傾向にある法案だと断定してよいかどうかをお尋ねしたのであります。
  35. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今のお問いの初めにありました憲法改正調査会と臨時教育制度審議会とが、これを立案するもとにおいて相通ずるものがあるということをこの間申し上げました。それはどちらも占領中にできましたので、その動機よりして日本人自身がやってみたいということで、相通じるという意味で申したつもりでございます。この憲法は、御承知の通り、わそわれは改正の主張はいたしておりますけれども、人権の尊重、人格の尊貴、個人の価値ということについては今の憲法も世界のどの憲法にも劣らぬくらい明確にこれを高調いたしております。教育というものは人権、人格に関することでございますから、今の憲法のもとにおいても十分に向上、革正できるのでございます。それゆえに憲法改正されなければいい教育制度はできぬとは私は決して考えておりません。このことも過日申し上げたと記憶しております。
  36. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、憲法改正のあるなしにかかわらず教育の基本的理念というものは一貫しておると考えてよろしゅうございますか。
  37. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 憲法改正の事業が達成しないでも、今回できまする臨時教育制度審議会の方が寄られまして、日本において一番正しい教育をするように御討議を願いたいと思っております。
  38. 受田新吉

    ○受田委員 私は先回尋ね残りに政治と道徳との関係をあげておったのでありますが、政界の浄化粛正を期する意味において、少くとも文教の府の最高責任者としての大臣は身をもって政界を清める立場にあらねばならないと思う。しかもその文相が中心になってこの法案をお出しになった以上は、少くとも政府みずからが国民の前に立って、みずからの仲間には汚れた者はおらないのだ、また国民に対しては率先範を示すのだという御決意を示していただかなければならぬと思うのです。この点において現在の政界は、はなはだ残念でありますけれども、党利党略に走って、国民に著しく不安動揺を与えている。こういうことを粛正するという点においても文相として十分自覚しておられるか、あるいはこれに対する対策を用意しておられるかどうかをお尋ねしたいのであります。
  39. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 政界の粛正は私一生の願いでございます。文相の地位にあろうと、あるいは在野の時代におきましても、政界の粛正は必ずいたしたい。政界の粛正のためにはたった一つの手段ということはないのです。いろいろなことが交錯いたしております。政界は世の中と離れたものではありませんから、世の中の風儀、教化、昔の言葉でいえば世道人心ということがあります。またあなたの御指摘の選挙ということもこれは重要なことであります。わいろが行われていい政治が行われるはずがありません。これも粛正しなければなりません。学校に預かっている者は白地の子供でありますし、これは非常に大切なことで、子供の訓育には道徳を第一にしたい、こう思っているのでございます。
  40. 受田新吉

    ○受田委員 総理の御準備される前に、今一言文相にお尋ねしたい点がございますが、あなたは今選挙にも例をとられて、国民の期待を裏切ってはならないという決意を示されたわけでありますが、政治のやり方によっては民生の安定が汚されて、国民の中には非常に苦しい生活、最近のあの自殺行為、親子心中などを見てもわかる通り、はなはだ悲惨な社会生活を営んでおる人が多いのでありますが、こういうところの背後には政治の貧困、すなわち政治のやり方が道義的に頽廃して、その衝にある者が汚職、疑獄をやって国民の苦しみを底抜けに考えているというようなことも考えられるのであります。少くともこういう国の教育の根本方策を改めようというような案をお出しになろうとする文相並びに政府といたしましては、政府内部において絶対に民生安定を傷つけることのないような、身をもって範を示すところの熱意がなければならぬ。この点において、政府部内にいろいろいかがわしい風聞が伝えられ、かつ官庁の綱紀は頽廃して、はなはだしくひんしゅくを買っておる事実があるのでありますが、政府自体、綱紀粛正、政府部内の人々に十分の責任を持たしめるとともに、閣僚そのものが絶対に疑惑を抱かせることのないような自信をもってやっていく決意があるかどうか、これを最後にお伺いしておきたいと思います。
  41. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 前段の親子心中その他経済上の理由等で命まで捨てる事件が新聞に出た、あるいはほとんど毎日報ぜられておることは実に遺憾なことでございます。そういうことを除くためにわれわれは努力いたしておるのでありますが、遺憾ながら現実の社会はまだ理想境には達しておりません。十分努力いたしたいと思います。私は閣僚同僚のうちに非行のある人は一人もないと信用をいたしております。
  42. 受田新吉

    ○受田委員 では最後に一言文相に対する質問をして、文相に対する質問は終りたいと思うのですが、この審議会法案には、第十条にいろいろな必要事項を政令で定めるという規定が掲げられてある。これは委任事項としてはきわめて重大な問題であって、あなた方の方の立案がもし道を誤まるならば、この法律意思にも反する場合がある。この点どういう構想を持って政令を用意しておられるのか、お伺いしておきたいと思います。
  43. 福田繁

    ○福田政府委員 政令の内容でございますが、この臨時教育制度審議会の会につきまして、たとえば会長が招集するとか、あるいはその定足数、二分の一以上が出席しなければ開くことができないとか、あるいは出席議員の過半数で会議は事を決するとか、あるいはまたこの審議会の庶務につきまして必要な規定を設けるとか、あるいは審議会の運営に関する細則につきましては審議会会長が審議会意見を聞いてきめる、そういった事項を政令できめたいと予定しております。
  44. 受田新吉

    ○受田委員 では総理に対して質問をさしていただきたいと思います。総理は朝来非常なお疲れで、ここへ来ていただくのにははなはだ情において忍びないところがあるのでありますが、しかし健康は回復して国務にたえ得ると当局の御説明のある通り、ここへおいでいただいたので、あえて総理の健康を信じて質疑を続けたいと思います。  総理は、臨教審のこの法律に対しては背後に憲法改正と相つながるものがあると清瀬文部大臣は答弁しておられるのでありますけれども、総理もまたこれを同様に認められておられましょうか。
  45. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法調査会と臨時教育制度審議会とは何も直接の関係はあると思いませんが、両者がともに占領中にでき上ったという点は共通しておると思います。それで占領中にできたものでありますから、その当時の外国の方針としてあるいは地理の教育をやめさせ、あるいは歴史の教育をやめさしたというような時代に、日本の教育制度はでき上ったのであります、これは占領中にできたものでありますから、再検討する必要は十分あるものと信じております。
  46. 受田新吉

    ○受田委員 憲法改正をして、教育の根本方針も変えようという関連があるのだということなんでありまして、私自身といたしましては、もし政府がそうした国の教育の根本方針を変えようというような御意図があるならば、少くともあなた方が意図しておられる立場憲法改正をして、しかる後にすべき問題だと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  47. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻申し上げました通り憲法改正と教育制度改正とは直接の関係はない。ただでき上ったのはともに占領時代だという類似性があるということを申したのでありますから、誤解のないようにお願いいたします。
  48. 受田新吉

    ○受田委員 国の教育制度である六・三制というものは今後も厳として存続せしめる御意思を持っておられるかどうかを伺いたいのであります。
  49. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 六・三制というものを変更するという意思を私は持っていませんけれども、これはやはり教育制度審議会において慎重に検討すべきものと思います。
  50. 受田新吉

    ○受田委員 自民党の統一の際の根本方針の一つの中に国民道義の高揚という一項が掲げられ、その意思のもとにこの法案が出されたと言われております。われわれは一党の根本方針に基いて教育の方針が曲げられるということになれば、これは党利党略によって国家百年の教育体系がくずされると思うのです。総理はこの点、自民党が統一しなかったならばこういう法案が出なかったであろう、統一したから出たということになれば、ある程度政党の政策によって教育の体系が曲げられるとお考えではないでしょうか。
  51. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 全然教育制度を党利党略によって変更しようというような考え方は毛頭ありません。そういうようなことは考えたことはございません。
  52. 受田新吉

    ○受田委員 自民党の統一根本方針としてこの案が出たのだと文相は答弁しておられるのですが、もし統一しなかったらこういう法案が出なかったという陰の声があるわけなんで、この点時の政府の息によって、そのときの政党の消長によって教育の基本体系がくずされるということが心配なのであります。
  53. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうことは絶対にありません。ただ党は教育制度を再検討するのがいいだろうということを決定したのであります。それには私も賛成なのであります。
  54. 受田新吉

    ○受田委員 それは文相の意見でこの法案が出たのであって、党の政策とは大した関係がなかったのでございましょうか。
  55. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それは私が答えなけばならぬことかと思います。これは結党の際、日本の教育を再検討する、道徳を向上するということは党の方針であります。その方針を受けまして、内閣でその方針の採用をお願いし、案文は私が原案を書いて、党の総務会の許可を得ております。しかしながら教育を検討することを党の考えでしたのでということと、その内容が党の言う通りに、党利党略であるということは、これは違う問題でしょう。(受田委員「それはわかります」と呼ぶ)今調査委員会をこしらえて——憲法の場合も同じことでしょう。憲法調査会はこっちが提案しましたけれども、できる憲法は不偏不党の憲法ができます。
  56. 受田新吉

    ○受田委員 あなたはその内容の、私が聞いていることでないことをお答えになっているので、少くとも提出された意図は教育の根本的改革ということをあなたは言うておられる。そういうものがあなたの御自身の意図で出たように今総理が言われたわけなのですが、清瀬文部大臣がそういうふうに発案をしたのでという意図をここでお示しになったと思うのですが、さよう了承してよいかどうかをもう一度総理及び文相からお答え願いたい。
  57. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 総理がこの案は清瀬が独断でやったという意味のことをおっしゃったとは私は聞きませんでした。やはりこれは党の考えであり、政府考えでございます。
  58. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私の申しましたのは、現在の教育制度も現在の憲法も、同様な状態において占領中にできたものであるから、再検討をした方がいいだろうということを申したのでありまして、どういう案ができるか、その案は清瀬君が作ったとかいうようなことは触れてはおりません。
  59. 受田新吉

    ○受田委員 次の問題に入っていきたいのであります。私は政府の方針は、道義の高揚という観点から言うたら政治道徳の高揚とか政治の倫理化というのを常に考えておられると思うので、この点に関して党利党略的なにおいがするような法案を出されたり行動があったりしては、これは許されないと思うのです。特に鳩山さんは文部大臣として令名嘖々とした方で、人格高潔の点においては、また文教に関係を持たれた経験のある方としては、おそらくあなた一人が総理になられたと思うんです。そういう意味からいっても、たまたま文教に熱心であった、文相の経験者であるあなたが総理大臣になられた機会に、政界の浄化粛正をはかり、党利党略を排するという決意をお持ちになるべきだと思うのでありますが、総理はさようお考えでございましょうか。
  60. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 今あなたがおっしゃる通り考え方です。とにかく民主政治というものは今度の憲法でできたものでありまして、民主政治というものはどういう政治であって、どういうような考え方を国民が持つことが民主政治を成立せしむるかということを、子供のときから教えてもらいたいのです。民主政治というものは、むろん自由主義を理想とするものでありますから、自分の自由ということを尊重するということが一番理想ではありますけれども自分の自由を尊重するということだけでは、民主政治というものは成立しないのであります。他人の自由を尊重するということによって、初めて民主政治は成立するのであります。そういうような心持を持ってお互いに助け合う、そういうような道義を子供のときから教え込むというような教育をしてもらいたいと私は心の中でも思っております。
  61. 受田新吉

    ○受田委員 私は政治道徳のことに今触れているわけでありますが、政治道徳を高揚するという立場からいうならば、自民党の党利党略的な政策は、この際おやめになられるという御決意が必要だと思うんですが、いかがでございましょう。
  62. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたのおっしゃる通りであります。
  63. 受田新吉

    ○受田委員 今度の選挙法の改正などで、小選挙区制を実施したいとお考えになられて、選挙制度調査会なるものを鳩山総理大臣がお作りになりました。これは内閣に責任を持って作られたものでありますが、この調査会の結論というものは尊重する御意思がありましょうか。
  64. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 二大政党が対立してきますと、まず小選挙区というのは、どこの国でもとっておるような制度であります。同時に小選挙区の方が国民政治の思想が浸透いたしまして、従って国民意思議会に現われるという制度なんでありまするから、公平なる小選挙区ができて二大政党の完成することを、私はこいねがっておるわけであります。
  65. 受田新吉

    ○受田委員 私は今、選挙制度調査会の答申というものは尊重をされるかどうかをお尋ねしておるのであります。
  66. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 何とおっしゃいましたか、ちょっと私聞きそこなったのですが……。
  67. 受田新吉

    ○受田委員 政治道徳の関係から、かかる法案を出される政府としては、国民道義の高揚と同時に政治道徳を高める必要がある。従って党利党略的なやり方を排して、筋の通った政策をお進めになることが、道義ある政府といえるということになる。従って小選挙区制なるものの中で、選挙制度調査会が結論を出されたものに対しては、内閣の責任で作られた機関の結論として尊重されるかどうかをお尋ねしておるのであります。
  68. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 尊重するつもりでございます。
  69. 受田新吉

    ○受田委員 尊重されるという御意思でありますのでお尋ねしますが、同時に自民党においては、独自の区画割りを盛った案を出しておられて、それがゲリマンダリングなどと称せられて、非常に不愉快な印象を国民に与えて、新聞その他で批判を受けております。総理としてはこういう区画割りの自民党案に対しては、これと調査会案とどちらを尊重されるであろうかとお尋ねするのであります。
  70. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 むろん調査会の案というものは、政府としては尊重はいたしますけれども政府が出しますときは、政府が全責任を負って公正なるものを出します。
  71. 受田新吉

    ○受田委員 これは通告して御答弁を要求してある問題ですからお尋ねするのですが、選挙制度調査会がまだ結論を出さない現在、自民党で、勝手に区画割りをどんどん作ってやっていくということは、一体どうお考えでございましょうか。
  72. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政党は、すべての政策についてみずから検討するということは、当然のことだと思います。
  73. 受田新吉

    ○受田委員 調査会案は、自民党に関係の少い人が立案された比較的公平な案だと思います。自民党の独自の案というものは、これは野党には全然相談なしに、自民党の内部の党利党略で立案されたということは、各新聞、世論のひとしくこれを認めるところでありますが、このいずれを尊重されるであろうかということをお尋ねいたします。
  74. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政府は、案を見まして、政府の責任において正しい案というものを提出いたします。
  75. 受田新吉

    ○受田委員 二人区というのは、これは中選挙区でしょうか、小選挙区でしょうか。
  76. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 小選挙区制をとっている国においても、二人区がないわけじゃないのです。やはり事情によって二人区というものを例外的に認めることは、小選挙区の体制をくずすものとは私は考えません。
  77. 受田新吉

    ○受田委員 二人区は、自民党案によれば、これは社会党の強いところとか、あるいは自民党に二人の有力な候補者があるとかいうようなところに限られて、非常に党利党略的で、政治道徳を無視したことだと思いますが、御見解はいかがでしょうか。
  78. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は一向に詳細を知りませんので、内容を検討しなければ、御返事ができません。
  79. 受田新吉

    ○受田委員 まだ最後のことを御存じないということでありますが、では基本的には、比較的党利党略的の少い調査会案というものが尊重さるべきであるという御意思はございますか。
  80. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あります。
  81. 受田新吉

    ○受田委員 最後に一言、参議院選挙がとかく延長されるのじゃないかという不安の人もあるようでありますが、政府は予定された参議院選挙の日は、はっきりと現在の通りにお考えでございましょうか。
  82. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はその点について、まだ考えを述べたことも、それについて相談を受けたこともございません。
  83. 受田新吉

    ○受田委員 そうしたら、参議院選挙の期日は既定方針通りに御予定されていることでございましょうか。
  84. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 現在、延ばした方がいいというような考えを持っておりません。
  85. 受田新吉

    ○受田委員 それから最後に、総理の健康を憂える気持はわれわれひとしく同様で、与野党を通じて総理が御健闘いただくことを願っているわけです。そこで、総理が健康であるという保証をつけられて、こうして会が進められているのでありますが、総理の誠実な、われわれの委員会へもまじめに出ようというこの態度に対しては、大いに敬意を表しておりますけれども、総理は自信を持って今後いつごろまで、あるいはアイクの言うように、三年でも五年でも健康を保持して、職務に耐え得るという御自信を持っておられましょうか、どうでしょうか。
  86. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は現在の健康ならば、現在くらいの忙しさの政務はやっていけるものと思っおります。この考えの続く限りは、国家のために尽したいと思っております。
  87. 受田新吉

    ○受田委員 昨年のいつでしたか、自民党の東京支部大会で、総理は、ことし一ぱいくらいでやめるんだという意思表示をされたと聞きますが、はなはだ意思の弱い意思表示であったと批判されているのでありますけれども、さようなことはございませんか。
  88. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 イギリスでは、次の総理とか総裁とかいうものは早くきまるのです。そういうことは非常にいい制度だと思います。それには、私がやめるというような気分を党員に与えておく方が、いい次代者ができるだろうと思いますのでそういうことを言っておるわけであります。私自身としては倒れるまで今日ではやるつもりでおります。
  89. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私はこの際議事進行の動議を出したいと思うのですが、教育の理念あるいは教育制度あり方というものも、すべて憲法の全体の精神から導き出されておるものであります。そういういう点からいいますと、現在政府は自民党提案の名のもとに憲法改正を目途として調査会法案を出しておる。それでありますから、ただいま受田委員から質問がありました通り憲法調査会の帰趨がはっきりしてからその憲法の示す精神に基いて教育のあり方改正していく、これが順序であると思う。これを並行して出すということは全く憲法に対する、それから導き出される教育のあり方というものに対する考え方の統一されていないことであると思う。そしてまた現在教育委員会法も改正しようと政府は企図しておる。教育が不当なる支配から脱却するために教育委員会法というのが現在できておるわけけですが、それを改正していこうとしておる。あるいはまた教科書法案を出そうとしておる。あるいは地方自治法の改正あるいはまた選挙法を改正して、校長とか教頭とかいうものを管理者という立場に立てて、学校教育を官庁のごとき職員構成にして行こうとしておる。こういう点からいいますと、そういう法案を出す限りにおいては教育制度審議会を持つ意義もない。これ以上何をやろうとするのだ、こういうことにりなます。また今回の審議会の内容を見ますと幹事は非常勤だ。あるいは予算が少くて、年に何回くらいしかできないという。こういうような状態で完全なる結論を得られるということはない。結局するところ、政府の企図しておるあるいは自民党の企図しておる教育改正が押しつけられる危険性がある。こういう点からいいましても、この際この審議会法案政府の手によっていさぎよく撤回されるべきであるという動議を提出いたす次第であります。
  90. 山本粂吉

    山本委員長 西村君の動議について採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  91. 山本粂吉

    山本委員長 起立少数。よって西村君の動議は否決されました。  これにて質疑は終了いたしました。  これより討論に入ります。討論の通告がありますので、これを許します。細田綱吉君。
  92. 細田綱吉

    細田委員 私は日本社会党の立場から本法案に反対の討論をいたします。  まず申し上げたいことは、私が申し上げるまでもなく、日本憲法はもちろん独立規定して平和と自由を徹底的にうたっております。この意味において世界に類例を見ないというほど進んだ憲法だといわれていることは皆さんも御承知の通りでございます。従って憲法日本独立、平和、自由というようなことをうたってある限り、また教育もこの線に沿って進めていかなくてはならないということはこれまた当然な話で申し上げるまでもございません。現在の教育制度がこの民主主義制度を十分に考えて設けられておることも、また私が申し上げるまでもございません。  そこでこの立場から本法案を検討してみますと、まず本法案の指向するところが少しも明確でないということ、と言いかえればその性格がさっぱりわからない。もしこの法案をしいて性格づけるならば、戦前の教育制度に戻そうというようなことがむしろ考えられてくる。もちろんわれわれは文相の意図はまさかそうではないと推測するにやぶさかではないのでございます。従ってそうでないとすると、この臨時教育制度審議会というものが何を指向しておるか、これがさっぱり明確でないと私は考えるのでございます。すでに中央教育審議会というものがある限り、なぜ屋上屋を重ねてこういうことをしなくてはならぬかということを考えるのでございます。私が申し上げるまでもなく、中央教育審議会は文部大臣の諮問に応じて教育に関する基本的な制度、その他教育学術または文化に関する基本的な重要施策についての調査、審議をし、及びこれらの事項に関して文部大臣に建議する、こういうことが中教審の性格としてはっきりうたってある。しかもその総会において当時の文部次官は、終戦後政府は民主的教育の健全なる発達を期するための、これに必要な教育施設の実施にあらゆる努力を重ねてきましたが、過去六年有余にわたるこれらの新教育施策の運営の実際に徴し、かつ独立後の新事態にかんがみまして教育全般にわたってその制度、内容及び運営などに再検討を要するということを説明の中に付加し、そうして当時の岡野文部大臣も根本的に検討をするということで、これが中央教育審議会の使命として生まれ、しかもこれは二十七年の八月、正確に申しますならば第一回の総会は二十八年一月二十一日ですから、まだ三年余しかたっていないのに、さらにこの機構の上に積み重ねるというようなことは、この設置法の趣旨がさっぱりわからないのでございます。こういうことを考えてみますと、屋上屋を重ねるようなこの臨時教育制度審議会設置法というものはもう必要ではないのじゃないかということを、われわれは強く考えるのでございます。  第二に本案に反対する点は、審議の対象がまた明確ではない。文相はこれに対して教育目的に関する反省、教育内容に関する国の責任と、それからまた教育も国のため民族のためでなくてはならぬ、こういうことを言っておられるんだが、教育目的に関する反省というようなことは、これは冒頭に申し上げました日本憲法独立、平和、基本的な人権ということを強くうたって、この線に沿って日本の教育制度がしかれている限りは、そうしてまた中央教育委員会というものがあって、今申し上げましたように、根本的な制度その他重要施策についての調査、審議をするという以上は、これも文相の言われる点はきわめてあいまいもことしてくるのでございます。もちろん私が申し上げるまでもなく、戦前の教育というものは、極端な国家奉仕の全体主義の立場から強制したものであることは、文相のよく御存じのところでございます。しかし民主主義の新憲法下においては、そういう教育であってはならない。国家の手による国家のための統制された絶対主義的な教育なんというものは、これはもう弊履のごとく捨て去られておる。そうして国に奉仕する教育ではなくて、国民に奉仕する教育に置きかえられているわけです。従って教育に関する国の責任というようなことは、これはどういうことを意味するのかわからない。文相は内閣文教の連合審査の場合には、指導、助言、勧告ということは規定してあるがということを説明されている。その中から考えてみますと、指導、助言、勧告は現行法ではあるけれどもという文相の意の次には、ただし強制ということがないということを裏づけしている。教育というものは強制するものじゃないので、これは指導、助言、勧告で十分なんです。教育を強制的にやろうという意図があるならば、さっき申し上げましたように、おのれを捨てて国家に奉仕するというような全体主義的な教育に導いていくということは申し上げるまでもない。こういうようなことを考えるならば、どうも危険きわまる法案ではないかと考えるのでございます。もちろんリベラリズムのオーソリティをもって任ずる文相ですから、そういうことがないとするならば、審議の対象がきわめてまたあいまいもことして明確でない、これが私の反対する第二点でございます。  第三は、現在の教育があまりにも憲法の線に沿って、平和と自由ということを強調し過ぎているということを文相がお考えになっておるから、この前の連合審査のときの文相のお言葉を拝読してみまするならば、国民の不満は日本の教育の目標にある、こういうことを言われておる。これは別に現在の教育の目標に対して国民は不満に思っていない。もちろんいろいろ各個の問題については、年とともに改善されていくべきことは当然でございますけれども、しかし現在の教育の根本的な方針について、国民はどこも不満に思っている点はないと私は思うが、もし現在の国民でなくて、教育に不満を持っておる人の目標はどこにあるかといえば、先ほど申し上げました国に奉仕する教育を押しつけようということが、その裏にひそんでおるということを、明らかにこの言葉で物語っていると考えるのでございます。言いかえてみますならば、今申し上げました平和と自由、あるいはまたそういうことを強くうたっておりまする現在の教育に対して官僚が文部省が強い干渉をはかっておるというのが、この臨教審法案の趣旨ではないか。従って現在の教育制度を強く反動化の方へ導いていこうというのが、本法案をこしらえたならば当然進むであろう一つの目標であると私は考えるのでございます。教育は官僚が強制したりなんかすべきものじゃないので、責任と強制は全く違う。教育は責任を強く高揚して教えても、強制あるいは干渉というようなことは教育では全く無用なことでございまして、これから考えましても、本法案が全く意味をなさない、むしろ有害無益の、反動化へ役立つものであるということを考えて反対するのでございます。  なお最後に申し上げますることは、機構がいたずらに複雑になるということ、先ほど申し上げましたように、中教審の総会のとき、あるいはその説明で、十分その設置の目標がはっきりしている、言いかえれば臨教審の設置とほとん同じである。こういうような制度のある上にさらに屋上屋を重ねて複雑化するというようなことは、これまた有害無益である。行政機構の簡素化ということは鳩山内閣の表看板である。しかるにここへ四十人も並び大名を置いて、そうして大臣の指導のもとに、いや官僚の指導のもとに日本の教育を再編成しよう、こういうようなきわめて危険な法案が本法案であると考えるのでございます。従って行政機構の簡素化という鳩山内閣の表看板からいきましても、こういうものは設置すべきでなく、いわんや反動化の目標へ進むとするならば、なおさらわれわれはこういう反動法案は絶対に通してはならないと考えるのでございます。こういうような数々の欠点を網羅しておりまする本法案に対しては、社会党は断じて反対であり、また与党の諸君も、いずれの方々も、戦年中の軍部、官僚の全体主義の横行には辟易した経験を持っておられる方々で、今この制度を通すということは、やがてはまた日本を戦前の教育制度に戻す第一歩を踏み出すというようなことを十分お考え下さいまして、本法案の撤回を私は切に望みまして、反対討論を終る次第でございます。(拍手)
  93. 山本粂吉

    山本委員長 これにて討論は終結いたしました。  これより採決いたします。本案を原案通り可決するに賛成の記君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  94. 山本粂吉

    山本委員長 起立多数。よって本案は原案通り可決いたしました。  なお本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 山本粂吉

    山本委員長 御異議なければ、さよう決します。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十分散会      ————◇—————