運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-03-06 第24回国会 衆議院 内閣委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月六日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 山本 粂吉君    理事 大平 正芳君 理事 高橋  等君    理事 保科善四郎君 理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    大村 清一君       北 れい吉君    椎名  隆君       薄田 美朝君    辻  政信君       床次 徳二君    眞崎 勝次君       宮澤 胤勇君    粟山  博君       山本 正一君    横井 太郎君      茜ヶ久保重光君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    稻村 隆一君       西村 力弥君    細田 綱吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         国 務 大 臣 清瀬 一郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         文部事務官         (調査局長)  福田  繁君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 三月五日  委員平野三郎君、粟山博君及び西村力弥辞任  につき、その補欠として江崎真澄君、大島秀一  君及び楯兼次郎君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員大島秀一君及び楯兼次郎辞任につき、そ  の補欠として粟山博君及び西村力弥君が議長の  指名委員に選任された。 同月六日  委員田村元辞任につき、その補欠として横井  太郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月五日  厚生省設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第九五号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  臨時教育制度審議会設置法案内閣提出第一〇号)     ―――――――――――――
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより合議を開きます。  臨時教育制度審議会設置法案議題とし、質疑を続行いたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。西村力弥君。
  3. 西村力弥

    西村(力)委員 鳩山総理は与党によって御健康が保証されたのでございますので、一つこれから私はあまりめんどうくさい論議はしたくないと思います。ごく国民的な、常識的な立場に立って、総理にいろいろ見解をただしたいと思うのでございますので、率直に国を憂える熱情を吐露して、御見解を披瀝していただきたいと思うわけなのであります。ただ新聞や何かでもやゆしているように、後の方からいろいろ言葉がありまして、きのうの朝日新聞でしたかには「根本式イヤホーン」などと、こういうような工合に出ておりますが、ああいうことは一つ絶対におやめ下さるようにお願いしたいと思うのです。私たちああいう光景を見ますとまことに侮辱されたような気持がいたしますので、その点は絶対におやめ願いたい。  第一番にお伺いしたいのは、教育制度という重要な緊急な問題について早急に改正する、そのために臨時教育制度審議会を置くのだ、こう言われますが、教育は何としても国政大本を貫くものでございます。でありますから、現在非常な熱情をもって計画されておる憲法調査会、その副査会が成立するならば成立して、そうして憲法改正の、原案ができ、国民の支持を得て憲法改正ができた、こうなってからこの教育根本に対するメスを、新しい憲法に寄せられた国民意思に基いて加えるべきが当然だろう、こう思うのです。私は一つの筋を貫く憲法国政大本としてその規定されたる精神のワク内において教育なり、あるいはそのほかの全般を考えていくのが正しいと思うのですが、この点はいかがでございますか、総理の御見解一つお聞かせ願いたいと思うのであります。
  4. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 現行教育制度占領下という特異な情勢のもとに行われ、わが国実情に即しない点もありますので、教育制度改正が慎重を期すべきことは当然であるが、次代の国民育成に重要なな影響を与えるものでありますから、できるだけ早く改正したいと思いまして、憲法改正を待たずに提出したわけであります。
  5. 西村力弥

    西村(力)委員 そうしますと憲法改正の問題がまだ未知数でありますのじ、今囲企画せらるる臨時教育制度審議会において審議するこの範囲というものは、現慰法の粘神そのままにおい上行われるのである、こういう工合考えてよろしいか、どうか。現憲法に準拠して教育制度改正しようと考えている、それだけの範囲考えているのだ、臨時教育制度審議会のなすべき仕事の範囲をそう考えておられるかどうか。
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 現行憲法を生きているものとして、そのもとにおいてそれに違反しないようにやっていくつもりであります。
  7. 西村力弥

    西村(力)委員 それではその点ははっきりしました。それでは現在どんな点に日本教育の欠陥がある、これは国の将来の発展のためにあるいは国への生活の向上のために教育あり方こして好ましくない、この点を改正したい、こういう点をこのたびの臨時教育制度審議会に諮問したい、こういう具合に当然総理としてはお考えと思うのですが、どういう点を御諮問なさろうと今考えていらせられるか、お聞かせ願いたい。
  8. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本民主政治になりましたので、民主政治の要求する人格尊厳尊重というようなことは最も必要なことで、自分人格尊厳尊重し、同時に他人の人格尊厳尊重するような風習ができるような教育をやっていきたいと考えております。
  9. 西村力弥

    西村(力)委員 それ一つだけを今度の審議会に諮問なさろうとするのでありますか。
  10. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 わが国伝統と長所とを十分に自覚させまして、その基盤に立って個人尊厳を重んじて真理と平和をこいねがい、かつ自主的精神に満ちた心身ともに健康な国民育成に期待する、そういうような範囲にわたってのことを諮問したいと思っております。
  11. 西村力弥

    西村(力)委員 ただいまの御答弁は全く言葉の羅列でございますが、そういうお言葉でございますと、現在の教育基本である教育基本法の前文なり、第一条なりに規定されているそのままのことでございます。それでありますと、私たちとしては何を諮問するかてんでわからないのでございますが、結局すると現在の教育基本法というものはそのまま手をつける必要がないのだ、こういう工合総理はお考えりように受け取れるのです。さようでございますかどうか。
  12. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 教育基本となるべき道徳の基準、学生特に大学教育に対する国の責任監督明確等をやはり検討していきたいと思っております。
  13. 西村力弥

    西村(力)委員 ただいまのことは特に大学生の教育に関して国の責任を明確にしていきたいということで、ございますので、いろいろ教育目標とする人間形成学校教育法に規定されたる人間の形を考えていくのだというから、その点は問題ございませんが、ただ総理の申されることは、国の教育に対する監督権を強化していきたい、これを重点としておるのだ、このような御答弁のように受け取れるのです。日本日氏としてのあり方については、現在の教育基本法に規定されておる目標で何ら差しつかえはないのだということは、あなた自身の言葉からそのまま教育基本法の第一条を再現されたようでございますから、その点はそれでいいとして、次に問題として提起されましたのは、教育に対する国の監督権を強化する、ことに大学教育に対しては強化する、こういう御所見のように承わった。それではその一点を今度の臨教審に諮問なさるのだ、こう受け取ってよろしゅうございますね。  私は先ほど陰の声を否定しました。法律上の句題とか、詳しいこまかい数字の問題とかは、政府委員の助言も必要でございましょう。しかし私は当初申し上げましたように、国民的な常識的な話をしておるのです。何もめんでうな話はしない。総理は一国の総理として教育に対する信念があるはずだ。それを陰の声がとやかくロボット的にいじるということは、われわれの認められないところであります。これはまた日本国民全体に対する非常な屈辱になるのではないかと思う。そういうことはやめてもらいたい。
  14. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はただいままでの言ったことで十分だと思いますが、足りないことがありましたら文部大臣から、御答弁をしてもらいます。
  15. 西村力弥

    西村(力)委員 それでは十分だというのは、私が今言いましたように、教育内容については、教育基本法で規定された通りでけっこうだ、そういう人間を作っていくのだ、それに対して諮問はしないのだ、ただ国監督権に対してのみそれを強化することが是か非か、こういう点についてだけ諮問するのだ、こういう御答弁と受け取っておりますが、それでよろしいかどうかということです。
  16. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 教育基本法にはなお付加すべき点もあるかと考えております。
  17. 西村力弥

    西村(力)委員 いかなる点を付加しょうとなさっていらっしゃるか。
  18. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 はなはだふつつかでありますが、私も閣僚の一人として連帯責任を負っておるのでございます。そのことは前の連合審査会以来重ね重ね申し上げておるのでございます。今総理の言われたこととちっとも違っておりませんが、もう一ぺん簡単に言いますれば、今の教育基一本法に書いてあることはけっこうなことでございますけれども、やはり日本としては、日本のうるわしき伝統を維持する点が薄弱なんでございます。それらの点について教育根本を反省するということであります。日本教育行政全体について、憲法には、国は国民教育を与える義務があるごとく書いてありますけれども、しからばどうして与えるか、国、それを代表する文部大臣の権限については非常に不明確でございます。現に一昨日も大阪で暴力教室事件が起っているが、これに対して私は実に心配いたしておりますけれども、直接この学校に向って人を、派して調査をするといったよなことができるかできないかは不明確であります。わが国学校制度は大体はよくいっておりますけれども、今日非常にたくさんな大学ができましたので、卒業生は十五万人で、これらがわが国の要求にぴったり合っておるかどうかについても疑いがございます。これらの点を調査するために、臨時に期間を限って教育根本を反省してみようということでございましてそのことは清瀬一郎一個の考えではなく内閣意見としてたびたび申し上げておる通りでございます。総理はそれを抽象的に今おっしゃっただけのことでございます。
  19. 西村力弥

    西村(力)委員 ただいま清瀬文部大臣の申されたこと、あるいはこの前の連合審査会において清瀬文部大臣がるる申されたこと、改革の方向として示されておるのは結局自民党の緊急な文教政策の三項目その通りだと思うのでございます。そこでもう一ぺん突っ込んで聞きたいのは、わが国伝統尊重教育内容に織り込んでいきたいということでございますが、その伝統の中で特に現在稀薄になっておるのは何であるか、どういう点であるかという点をお聞きしたい。
  20. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 一つは、わが国のうるわしき伝統は、そのときの主権がだれにあろうと、ともかくも国家、公けに対して忠誠ということは昔の、歴史から通じて動いておるのでありまして、一たん戦争には負けましたけれども、しかしながら国民のうちにみなぎった国に対する忠誠という心を捨ててしまうことはできないと思います。それからして人格は平等であります。平等であります、わが国では、家庭的にあるいは父母、祖父母、先祖に対しては報恩感謝の念を持って動くということも私はうるわしき伝統と思っております。今の教育基本法をずっと引き伸ばして解釈すれば、人格の完成ということもございます。その人格のうちにはこれを含んでいると言えば言えぬこともないのでございますけれども、常識的に、教育基本法の第一条に八つの徳目があげてありますが、それだけではわが国のうるわしき伝統が伝え得ないのじゃないか、こう私は見ておるのであります。あなたが常識でおっしゃいますから、私も常識的な解釈でこれを読んでおるのでございます。
  21. 西村力弥

    西村(力)委員 国家に対する忠誠というものは、国が要請するものか、主権者である国民自分の名誉にかけて、これを国家の名誉と一つにしてやっていくのが、其実の忠誠であるかどうか、私たちはここにあなた方の感覚と相当違うものを狩っておるのです。あなた方の感覚は、国が個人に対して忠誠を要求する、その要請にこたえることが真に国家に対する忠誠である、こういう工合にまずとらえておるように聞えるのでございますが、私たちはそうじゃない。憲法の前文の末尾に、国民は国の名譽にかけてこの理想の実現に努める、こういう言葉が出ておる。ここにこそ真の新しい人間を発見した日本国民忠誠の姿があるのだろうと思います。そうしてそういう工合に把握する限り、現在の教育基本法において忠誠という言葉国民義務として規定しないにしても、自分の、国の名誉にかけてやる一つ責任であるという立場において、はっきり忠誠というものがっちかわれていく、そういう形の人格が形成されていくという工合に私は思うのです。そういう忠誠こそ望ましいことであって、あなた方の言われておる国家伝統に咲く忠誓を求めるという言葉は相当危険性を持つものであるという意見を持つのです。  その意見はとにかくとしまして、それでは総理にお開きしますが、砂川のあの基地拡張に、条件付賛成をする人と絶対に反対の人と二つに分れておりますが、総理は、いずれが国に忠誠であるか、どういう工合に御判断なさいますか、これをお聞かせ願いたい。
  22. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その人たちの心持を詳しく知りませんから、どちらがどうということはお返事はできません。
  23. 西村力弥

    西村(力)委員 それは無責任なる御発言と私は思う。あなたが何か自民党党内事情によってカン詰にされておるときに、私も箱根まで参りました。あなたは会わなかった。その先には砂川のお母さんあるいは娘が、あなたに一国の総理として、国民の一人としての苦しみに対して同情を求めたいといって行った。このときにあなたは、あなた方の苦しみは十分わかるが、こういう言葉を漏らされたけれども、結局会われなかったということになっておる。この砂川事件は、国民全体の問題であり、世界的な問題とまでも言い得るのじゃないか。それをあなたが、知らないから申せないというのでは、あまりに総理としての――重点の置き方というか、こまかいことは知らぬでもいいが、今国内全体の問題であり、国民全体の問題であり、世界の注視の的になっておる砂川の問題は、わからないということはあり得ないことじゃないかと思う。これはぜひ一つ総理見解をお聞かせ願いたい。
  24. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私の申しましたのは、個々事情を知らないと言ったのであります。新聞にも書いてありました通りに、先祖伝来の墓地をとられるのが困るというような人もあるし、個々に持っておる事情は違っておることは、新聞によってもわかるのであります。どうしても同情すべき事情もあるでしょう。そういうような事情をつまびらかにしていないから、概括的に皆が出せということはいえるかどうか返事はできない、こう言ったわけです。
  25. 西村力弥

    西村(力)委員 それならば、その反対をする人々が、事情は詳しくわからないにしましても、事情いかんを問わず、とにかく強く強く最後まで反対しているというこの事実は御承知だと思いますので、そうすると、国家忠誠なる人々ということを教育内容にして、将来の国民あり方として求める場合に、この砂川反対派人々は、その要請に合わない人間であるか合う人間であるか、いずれであるかということをはっきりしてもらいたい。その点一つ総理、はっきりお聞かせ願いたいと思います。
  26. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国ということを考え自分ということをしんしゃくして政治をやっていくのはいいと思うのです。どちらをとれというよううなことは、事情によらなければ断定はできません。
  27. 西村力弥

    西村(力)委員 そうすると、賛成派反対派も、いずれが是でありいずれが非でめる、国家的にいずれが好ましい、好ましくないということは今断定ができない、こういうお考えなのでございますか、それをはっきりして下さい。
  28. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 基地拡張についてはさよう考えます。
  29. 西村力弥

    西村(力)委員 そういう工合考えていきますと、今あなたの政府の内部においてあの砂川基地品題にについて、われわれから見れば切りくずしのような、そしてまた国の政治としては最も好ましくないような形の手段がいろいろとられようとしておるわけなんです。それは、御承知かどうかわかりませんが、申し上げますが、賛成派の、協力をする人々に対して、最低五万円、最高五十万円の協力謝礼金をやろうとしておるわけなんです。このことは、私たちは、憲法の何条でしたか、法のもとに平等であるというあの条項に対しまして、あるいはまた私有財産を侵す場合には正当な補償を出すことができる、こういうことがあるが、正当な補償というものは一つのはずだ、賛成をして出す人もあるいは国の強権によって最後的に取られる人も、その受けるべき補償というものは正当でなければいかぬ、その正当な補償というものは一つであるべきはずだ、こう考えておるのでございますが、今政府考えておられる協力謝礼金というものは、条件派すなわち賛成派にだけやろう、こういうことなんでです。あなたは今どちらが是でどちらが非であるかわからない、こう仰せられた。そうであるとするなら、は、今政府部内において企画されておる協力謝礼金というものは、これは明らかに総理の、意思と反することになるわけなんです。その点はいかがでございますか。
  30. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそういう実情を知りません。どういう事情で、どういう人に渡しているのかも私は存じません。
  31. 西村力弥

    西村(力)委員 存じませんと言うから、私が今るる申し上げたわけなんです。基地拡張賛成なんだ、おれの十坪の土地をやりましょう、これはういやつだ、だから協力謝礼金をやる場……(「議題外だ」と呼ぶ者あり)議題外ではない。これははっきり、国に対する忠誠をあなたがどういう工合考えているかという問題に関連する。(「ピントがはずれているよ」と呼び、その他発言する者あり)いや、そうじゃない。そういう人に五万円ないし五十万円の特別の金をやる。これはいわば、お前さんはいい約束をしてくれたから、これだけ包んでやろうという博労の包み金のようなものである。そうして現在自分土地を守るために反対している人々には、最後的には国家権力で取り上げて、そのときにはこの協力謝礼金は出さない、こう言っておる。その事情をはっきり詳しく私は申し上げている。私の話を聞かれて事情がおわかりになったはずですから、この点に対する見解をお述べ願いたい、私はこうお願をしているわけなんです。
  32. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうことはそれぞれの事情に基いてやっているのでありまして、一がいにどうということは言えないと思います。一がいに不当のことをやっているというふうにも考えられません。
  33. 西村力弥

    西村(力)委員 この件に関しては、これは忠誠にも関係します。国家あり方にも非常に関係する問題です。政府が企画してこれをやろう、ところが自己の権利に基いてまた自己生活を維持しようとするその意欲に基いて、政府考え反対の態度をとった者は、これは政府によって不当なる差別待遇を受ける。そうすれば、この日本国家というものは、明らかに政府考え方が全部優先するという考え方になり、フアッショ的な政治形態になるのです。国家忠誠教育内容に織り込もうとするこの忠誠の形、それをどう考えているかということを具体的な問題として今お伺いしているのです。
  34. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 忠誠という言葉は、先刻私が使った言葉で、だんだんと御質問が発展しております。今おっしゃることは、私があのとき言ったことと少しニュアンスが違うのです。私が忠誠と言ったのは、昔の官僚政治あるいは天皇主権の際の政治のように、上から押しつけることを忠誠とは思っておりません。憲法が変りまして、主権国民にある。国民意思は諸君が代表されてここに法律をお作りになっております。合法的に法律に従うということも忠誠の一部分でございます。法律がない場合でも、全体のためには尽さなければなりませんが、今では法律に従うことが忠誠の一要件でございます。砂川のことは、やはり日本アメリカとの合法的の協定によりまして、わが国法律ができ、法律の執行として、あの通り立ち入り調査を要求しているのであって、個々一の一つ一つ警察の言動とかは別として、大体あの立ち入り調査法律に従って法律執行官がやっておるのでありますから、これに抵抗することを私は忠誠とは考えないんです。大体においては法律的手続には従っていただくことの方が国に対する忠誠と、私はこう思っているんです。人の言葉は使い方によっていろいろ意味合いも迎いますけれども、大体はあの調進庁の処分に従って、土地調査を許し、また必要なる場合には、所有権の移転も許す、これが忠誠で、都落以外の多数の人の力にたよって、調進庁調査を妨げるという方を私は忠誠と思っておらないのでございます。
  35. 山本粂吉

    山本委員長 西村君に御注意申し上げます。お約束の時間は、受田君西村君とで大体三十分という約束でありますのに、あなたの質問時間はすでに三十分を超過しております。答弁を入れておりますけれども、それを差し引いても、お約束の時間で受田君質問時間が消滅いたしますから、どうか貧疑を簡潔に、結論をお急ぎ願います。
  36. 西村力弥

    西村(力)委員 私は、忠誠という言葉を今後の教育内容として強く打ち出そうとしているので、具体的に上っている問題について今質問しているわけです。警察に抵抗するのを忠誠とは言わない、そんなことを私は言っておるのではない。あなた方は法律に基いてやるんだと言うが、砂川人々法律に基いてその強権を押しつけられている、あの人三団体が法律の拘束のもとにあるんだというふうにとるのはうそではないか、誤まりではないか。ただ日米行政協定に基いて政府がやらなけれ、ばならぬ、政府があすこをアメリカの要望に基いて必要だ、こういう工合断定するが、これは政府施策なんです。それは法律ではないではないかと私は思う。それであるから砂川人々自分生活を守るために、反対をするということも、当然あり得ることなんです。それがいいか悪いかということは総理は判断ができない。いずれがいいかどうかはわからない、こう言っている。わからないと言っておりながら、賛成した者にはよけいに金をやる、反対した者にはその金はやらぬと言う。そういうことが一体国政治としてあり得てよいのであるかどうか。結局教育の上に忠誠を入れていこうとするのは、あなた方がやろうとする施策に全部はいはいと言ってなびいていく、現実にあなた方はこれを忠誠考えておるようになるわけなんだ。だからこの点に対してはっきりした見解をお聞きしたいと私は言う。総理はいかがでございますか。やはり条件派はこれは国に対する忠誠であるから、よけいに金をやってもよろしい。反対、派は国に対する忠誠を欠いているものであるから、差別的な待遇を受けてもやむを得ないんだ、こういう工合に御判断なさるかどうか。その答弁いかんによって、教育内容忠誠ということを織り込もうとするその忠誠の姿というものが、はっきりわれわれは納得できるわけなんです。
  37. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういう意味で金を渡しておるとは考えません。
  38. 西村力弥

    西村(力)委員 何の意味とお考えでございますか。
  39. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 いろいろな事情があるからでしょう。
  40. 山本粂吉

    山本委員長 西村君に再度御注意申し上げます。結論をお急ぎ願います。
  41. 西村力弥

    西村(力)委員 これは先ほどから申しましたように、忠誠というものをどう考えるかということの重大な具体的例である。事情があってやるというようなことは許されることであるかどうか。同じ立場にある人々が、同じように土地を出して同じようにその苦しみを受ける、それに対して国家法律に基いて補償する、そこに差別をつけるということは何によるか。あなた方は、忠誠というものはこうこうだ、国の施策に従う者が忠誠である、そうでない者は忠誠を欠くものだから差別をつけるのだ、この事情以外にないじゃないですか。その事情というのはいかなる事情があるか、一つお聞かせ願いたい。
  42. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、どういう人にどういう事情で金を渡しているのか知らないのですから……。
  43. 西村力弥

    西村(力)委員 それでは時間にもなりましたが、ただいまの件はこれから国民に要求する忠誠の具体的な問題としてはっきりしてもらわなければならない問題でございますので、総理におかれては、閣内において十分にお話合いになって、半信をお調べになって、今後の機会にぜひこの件に関する明快なるお答えを願いたいと思うのです。(「忠誠に関係ないじゃないか」と呼ぶ者あり)委員長忠誠に関係ないと自民党の諸君が言われますけれども、今後政府が求められる国民に対する忠誠というものは――砂川条件派忠誠であるか反対派忠誠であるか、そこにほんとうに国家施策として差別をつけるのかどうか、こういうことをはっきりさせるために、臨教審において今後求められる国家に対する忠誠というのはいかなる忠誠か、これがはっきりしなければこの臨教審の法案の真相がはっきりしないわけでありますので、総理が今後研究なさって再度まとまった見解を示すことができますように、機会を作って下さるようお願いをしたいと思うのでございます。  時間でございますので、以上をもって私は終ります。
  44. 山本粂吉

  45. 受田新吉

    ○受田委員 鳩山総理大臣はおつかれのところ御足労いただいておるのでありますが、今清瀬文部大臣の御答弁に端を発して西村君の質問が続行されたわけで、その間の事情をおくみ取りになられまして、清瀬文部大臣の発言による時間の経過である意味をもって、あまり時間はかけませんから、御苦労にならぬ限度で私の質問に御答弁願いたいと思います。  私は、総理大臣に教育政治の関係の基本的なものをまずお尋ね申し上げたいのであります。教育というものは、一般的にいって、個々人間を理想の人間に近づける努力であり、また政治というものは、個々人間の集積体であるところの共同体を理想に近づける、そういう活動をいうものだと思うのであります。そういう関係からいいまするならば、両方究極の目的は一致しておると思います。しかし政治というものは、その個々の政策で、時に為政者の考えで思わぬ方向に行くことがあるので、教育だけは常にその個々の政策に動かされることなく、基本的に普遍、妥当性を持つ方向へ守り通しておかなければならぬと思うのです。その魚味で、時の政府の政策によって教育がしばしば動かされるということになるならば、国家百年の大評である教育が阻害されると思うのでありますが、この点につきまして、政治的に国家百年の大計は順守すべきであるということを、かつて滝川幸辰さんを処分された以外には、自由主義の立場に立つ文部大臣として名声を博しておられた、文部大臣の経験者でいらっしゃる総理大臣としての御見解を伺いたいのであります。
  46. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 教育は、あなたのおっしゃる通りに、次代の健全な国民育成を任務とするものでありますから、その適否は国の将来に重要な関係を持っていることはもとより当然であります。政治を担当する者としてもこれに意を注ぎまして、一時的のことで教育が左右せらるべきものとは私は思いません。
  47. 受田新吉

    ○受田委員 総理の御答弁は私の意見と一致してけっこうに思うのであります。しからば、今のこの法案は臨時的という言葉が使われており、しかも国会議員、学識経験者というようなものが網羅されて、結局内閣に機関が置かれて、時の政府の意図によって委員が任命せられ諮問がされるという形になるおそれが多分にあるのでありますが、この点について、国家年の大計の教育に支障なしと思われましょうか。
  48. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 このたびの審議会委員については、そういう意味においてきわめて厳正にやるつもりでおります。各派から、また学識経験者から集めまして、最も適当としたる公正なる人を集めてよく審議をしてもらいたいと思っております。
  49. 受田新吉

    ○受田委員 しからば、百会議員は与党、野党半数ずつ平等に分けていくとか、学識経験者もまた意見のある人は、反対意見賛成意見と両方の立場の人を平等に立てるという形になりますか。
  50. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その具体的にどうするかはまだ決定しておりませんが、公正にやるということだけは当然に堅持していきます。
  51. 受田新吉

    ○受田委員 私は、公正にやるどころか、時の政府の息のかかった委員の任命になることが、結果的にこれは必然だと思うのです。そういうところへ、総理臨時的にこういう制度をお作りになられて、現在ある中教審というりっはな制度を信頼せず、屋上屋を重ねるようなことをなさろうとせられ、しかも戦後内閣に置かれる審議会としてはこれが初めてだと、この間も文相が言われておるのでありますが、このような基本的な大きな機構改革にも当るようなやり方をこの際やらぬでも、中教審がゆっくり間に合うと思うのであります。国家百年の大計からいって、時の政府鳩山内閣の息のかかった臨時措置をおやめになる考えはありませんか。総理教育基本方針として憲法を尊卒する教育がしかるべきだとお考えになりませんか。
  52. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法は国の基本法でありますから、憲法尊重するということは当然のことであります。
  53. 受田新吉

    ○受田委員 しからば、憲法尊重するということになれば、九十九条で総理以下公務員は全部憲法尊重し擁護する義務を負わされているのであります。憲法に違反するような教育をすることは教育基本精神と離れると思うのでありますが、いかがでしょうか。具体的に申し上げますならば、憲法違反の教育をしてよいかどうかということです。
  54. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法違反の教育をしてもよいということはございません。
  55. 受田新吉

    ○受田委員 現在憲法には明らかに戦争放棄の規定があり、平和宣言がしてあるのでありますが、こういうことを主張いたしまして、これに違反する軍隊を持ちあるいは敵の基地を爆撃するようなことはいけないのだと教育することは、憲法を擁護する立場教育であるとお思いになりませんか。
  56. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 非常にむずかしい問題でありまして、現在の平和というものは一体どうしてできているかということもよく考えなければなりません。現在の平和というものを、一国が自衛隊を持たないで平和が維持できるのか、自衛隊を持っている方が平和が維持できるか、これは問題なのです。私は日本はやはり相当の自衛隊を持つということが、自分の国の平和を維持し、同時に世界の平和に貢献するゆえんになる、こう考えておりまして、今どんな人をつかまえても、戦争を好んで平和をきらいな人はないと思います。ただ平和を維持するのにどういう方法をとるかという問題でありまして、あなた方のおっしる通りに自衛隊をなくしてしまえ、自衛軍をなくしてしまえ、兵力を持つということが憲法違反ということなら、これは実際は実に楽なことです。楽なことですけれども、そういうような解釈をしている人は世界中には少いと私は思っております。
  57. 受田新吉

    ○受田委員 質問を早く切り上げますが、総理はいましばらく最後の質問をお答え願いたい。こういう内閣に大きな機関を置くという法案を出されているのでありますから、総理もできればさらに重ねてこの委員会にも御出席いただいて、他の委員からの質問にもお答えしていただくというふうにしていただきたいのでありますが、ここで一言重大な問題に触れておきたいのです。この法律案をお出しになる趣旨は、清瀬さんをして言わしむれば、国民の道義を高めるという趣旨から出たと仰せられているわけなんです。そういう意味からいいましたならば、政治道徳を高めるということが、やはり基本的な問題として取り上げられなければならぬと思うのですが、政治の倫理とか政治の道徳の高揚ということを総理はいかがお考えでございましょうか。
  58. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 むろん政治の道徳ということを非常に必要なことと考えております。
  59. 受田新吉

    ○受田委員 小選挙区制のいろいろの区割り等が研究されておりますが、これらは明瞭に党利党略だといわれております。個人に都合がいいような区割りがされ、都合の悪いところは二人区とする、こういうような党利党略の法案をお出しになることは、総理としては十分戒めなければならぬと思いますが、いかがお考えでございましょう。
  60. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 小選挙区の方が国民の意志が国会によく反映できるというような見地から、小選挙区論者というものはあると思うのです。代議士は小選挙区を便利とする者もあり、小選挙区に反対の人もありまして、代議士の利害から考えてみれば、決して小選挙区一がいいとは言えないのです。私が考えてみますに、現在の代議士は現在の制度で出ておりますから、小選挙区を喜ぶ人の方がかえって少いのじゃないかと思うのです。けれども国家の大局から考えまして、小選挙区の方が国民の意志が直接に議会に反映できるという考え方が成り立ちますれば、その方にした方がいい、こう考えております。
  61. 受田新吉

    ○受田委員 私は党利党略によるかかる法案作成がいけない、政治道徳に反するということを申し上げておるのでありまして、党利党略を政治の上に盛ることは、こういう道徳を尊重する法案をお出しになる政府の建前からいいましたならば、これは断固拒否すべきではないかと思うのでありますが、総理いかがお考えでございましょうか。
  62. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたの言うように、小選挙区論が党利党略から出発しているということがきまれば、それは悪いことでしょう。党利党略ということがきまらないうちに、小選挙区論が悪いということは、少し早く行き過ぎると思います。
  63. 受田新吉

    ○受田委員 あなたによって、区判りなどに党利党略が考えられておる、こういうようなことを拒否なさって、少くとも政府政治道徳は無視しないということを、今後の政策の上にもはっきり織り込むことができるかどうか。昨日の新聞を見ますと、総理はしばしば失言をされるが、この失言をされたことに部内で意見が出たら、おれは失言をしても背後に三百人の議員が控えておるのだから、失言をした跡始末をしてくれるのだからいいんじゃといってお笑いになったそうでありますが、こういう無責任考えをお持ちになる総理で、政治道徳が高揚できるとお考えでございますか。
  64. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私そういうことを言った覚えがありません。
  65. 受田新吉

    ○受田委員 いま一つ総理は、文部大臣が紀元節の復活を唱えておられますが、このようなことは法律を守る国として、国民の祝日に関する法律に規定してない祝日を挙行するというようなこと、しかもこれをやっておいたならば、やがて紀元節復活の空気もできるであろうという観測気球を出す形などの、かかるやり方に対しては、かかる法案が出た機会にはっきりと、そうしたやり方は戒むべきであるという態度を持ってお臨みになるかどうかも御答弁願いたいのであります。
  66. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は日本の国の始まりを国民が喜ぶというような空気ができることは、歓迎すべきことだと思います。けれども紀元節は祝日となっておらないのでありますから、法律上祝日がきめられまして、祝日の中に紀元節が包含されておらない今日、これを文部省が主体となって強行するということは行き過ぎだと思います。
  67. 山本粂吉

    山本委員長 受田君に御注意申し上げます。おわかりのことと存じますが、結論をお急ぎ願います。
  68. 受田新吉

    ○受田委員 総理に再びこの委員会に来ていただく機会があれば、私は質問を打ち切ります。総理いかがでございましよう。
  69. 山本粂吉

    山本委員長 約束の・時間でございますから、それを御注意申し上げたのです。
  70. 受田新吉

    ○受田委員 しからば時間が来たなどとせき立てないで、総理は今気楽な気持でおっしゃっていらっしゃる。だからこの問題はどうぞ一つ引き続き御答弁願います。  この紀元節の問題は、高知県の学校では、ことしは紀元二千六百十六年の紀元節だと教えておるのでありますが、これはいかがお考えでございましょう。
  71. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、先ほど申しました通りに、法律上祝日ときまっていないのでありますから、学校として強要をすることはしない方がいいと考えております。
  72. 受田新吉

    ○受田委員 しない方がいいということになれば、教育委員会が認めればしてもいいという清瀬文相の意見とは食い違いがあると思いますが、いかがでございましょう。
  73. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 教育委員会が認め、また学校の授業にも関係がないというような状態において、先ほど申しますように、日本の国が始まったことを国民がこぞって思うようになることを欲しておりますから、そういう見地から考えればそういうこともある。つまり学校の本業を忘れずに、教育委員会反対もなくできることならば、私はけっこうなことだ、こう思っております。
  74. 受田新吉

    ○受田委員 紀元二千六百十六年という歴史的根拠のない紀元の年数まで計算されて教育されていることは、許されるべきでないとお考えでないでしょうか。
  75. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 紀元二千六百十六年というのは、根拠があるのか果して根拠がないのか、私不明にしてその知識がないものですから、それに対する答弁は勘弁してもらいたい。
  76. 受田新吉

    ○受田委員 それでは結論を急ぎますが、次に総理は、靖国神社の英霊を国民尊崇の中心にして、国民的行事として守るべきであるというお考えでしょうか。教育的な見地から見て靖国神社の取扱いはいかにすべきであるとお考えでしょうか、御答弁願いたいのであります。
  77. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 せっかく書いてあるのですが、今ちょっと見つかりませんが……。(笑声)靖国神社の……。
  78. 受田新吉

    ○受田委員 名答弁をいただいたわけでありますが、私は総理には今までたびたび非常に鋭くごあいさつをしたのでありますが、き、一うは気軽にお話をしておるわけで、おとがめはいたしませんけれども……。
  79. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 見つかりましたから返事をいたします。靖国神社は現在戦没者を祭神といたしまして、遺家族を崇敬者とする特殊の性格を持つ宗教団体であります。これに対しまして国費の支弁を求める遺族の心情は十分理解されるものであるけれども、現憲法の建前では、宗教団体としての靖国神社に対しまして、公金を支出するなど特別な取扱いをすることはできません。また宗教法人法との関係においても問題があると思います。なお今後国民の世論を十分聞いて研究をしたいと考えております。
  80. 受田新吉

    ○受田委員 総理の詳細な御説明を今いただいたわけでありますが、国民の世論を聞くということは、これは非常にいいことだと思うのです。しかし総理は、この法案は国民の世論を聞くよりは、政府の意図を浸透させるためにお出しになられた。清瀬文部大臣をして言わしむるならば、少くとも戦後十年たったこの機会に、国の教育根本的な問題を考えてみたいというお考えが示されたのであります。しかし私は世論を尊重するという立場からいいますならば、十年間の日本の新しい教育の運営は、相当功果があるという方向に傾いておると思うのであって、これを今十分世論も調査しないで、急速に二年間くらいの間に答申案を出させようというお考えであるならば、世論無視である。これは民主主義に反するわけだ。憲法調査会法案とともにこれは非常に政府政治的意図で出されたような感じがするのでありますが、この点世論尊重であるならば、もっと国民の声を聞くべきではないか。憲法改正には世論は賛否を合せて六〇%しかない。四〇%はまだわからないとあなたの調査室が調べております。こういうことを考えても、四〇%もわからないという人がおるときに、憲法調査会法案などを出すことは、やはり民主主義に反する。またこの法案も同じつながりで出されておるのでありますが、もっとゆっくり考えられて、もう少し先で検討されるという問題ではないかと思うのでありますが、御見解を伺いたいのであります。
  81. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は憲法改正がなかなか早急にできるものだとは思っておりません。だけれども、お互いに憲法はどういうわけで改正するのだというようなことを国民に示す機会がないといけないと思うのです。われわれはどういう考えをもって憲法改正をしようとするのか。あなた方のように、軍拡であるとか、軍備の充実をして、また侵略戦争でもするのだろうかというような間違った国民があると困りますから、そのために憲法改正をやろう、そうしてたびたび選挙でもしていれば、よく国民にわかってくるわけでありますから、私は憲法改正論をやめてはなら、ない、改正すべき点があることを国民に示す機会をこしらえる必要があると思っております。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 私をしてわからない人間だというような意味の御発言があったのでありますが、総理としては、この御発言は人権を無視した、憲法違反です。
  83. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 委員長、誤解がありますから……。そんなことはありません。あなたの方が物は僕よりよけい知っておられると思います。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 私は最後に言申し添えて質問を終りといたしますが、総理は現在の憲法とか法律というものを尊重する法治国の総理であることを十分お考えだろうと思う。しかるところ、私たちはこの法治国でありながら、法律憲法を無視して勇敢にこの法律違反、憲法違反をやるというような、今の政府のやり方に対して批判を鋭く加えておるわけで、この点はあなたは憲法違反はやっていないとおっしゃろうし、法律違反はやっていないとおっしゃろうけれども、この法律違反も要するに教育基本法を何とかしたいという意味教育基本法精神とは少しずれようとする傾向がある法案であることがはっきりしておるし、また総理が先般来いろいろ失言をしておられることは、りっぱに憲法違反でありますが、憲法法律を徹底的に守る政治をするという御意思を十分持っておられますか。
  85. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法法律とは守らなければ政治はできません。これを破って政治をするというような考えはむろんないのであります。
  86. 受田新吉

    ○受田委員 同時にその衝に当る人は、身を持するに厳にして、道徳を尊重する政治家でなければならぬことは、先ほど申し上げた通りですが、あなたのそばにおられる清瀬さんは、明らかにマッカーサー憲法と昨年の本会議で言われた。取り消します、取り消しますと言われたけれども、精神はマッカーサー憲法に塗りつぶされておる――今の憲法を称してそういうふうに解釈されておる人です。あなたの部下として防衛庁長官の船田さんは、これまた天下の公器を私視するような方で、非常にひんしゅくを買っておるということになると、閣僚に道徳を尊重しない人がおるということになれば問題でありますが、そういう事実があって国民の批判を買うような人があるならば、よろしくこれを罷免するというぐらいの決意をもっておられるかどうか、御答弁願いたいのであります。
  87. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 今閣員の中にそういう人はございません。
  88. 受田新吉

    ○受田委員 総理に長々御苦労をおかけいたしました。総理はこの制度は内閣に赴くという基本的な制度であるがゆえに、特に総理大臣、あなたの責任であなたが任命をされるというような意味にもなっておるので、最後まで総理の御責任をもってこの法案の審査をお続けいただけるという、一つ御苦労でありましうが、今後もそのお気持をお持ちいただくように、誠心誠意御協力いただけましょうか、どうでしょうか。
  89. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は許す限りはむろん出席いたします。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 わかりました。御苦労でした。(拍手)
  91. 山本粂吉

    山本委員長 総理大臣に対する質疑は終りましたが、なお政府委員が出席されておりますから、質疑を続行いたします。  暫時休憩いたします。午後は一時から再開いたします。    午前十一時三十九分休憩      ――――◇―――――    午後三時二十五分開議
  92. 保科善四郎

    ○保科委員長代理 休憩前に引き続きまして会議を開きます。  委員長不在でありますので、理事の私が委員長の職務を行います。  臨時教育制度審議会設置法案議題とし質疑を続行いたします。受田君
  93. 受田新吉

    ○受田委員 清瀬文部大臣に、具体的な内容に触れて質疑をさせていただきます。本法案は、先般来連合審査会あるいは委員会において、大臣よりしばしば御説明をいただいたのでありまして、政府の意図するところは、大よそ見当のつくところに達しました。そこで一つ今度は掘り下げてお尋ねいたしますが、文部大臣としてかかる重要法案をお出しになられたその背後に、自民党基本政策、国民の道義の確立を中心とした基本政策があって、それに基いてこの法案が出たという、すなわち自民党の政策に基く法案と見るべきものかどうかをお尋ねしたいのであります。
  94. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 さようでございます。
  95. 受田新吉

    ○受田委員 午前中鳩山総理にお尋ねした際に、教育百年の大計の立場から、教育政治との関連において、教育は永遠性を持っており、政治はその時の政府施策でとかく変更される向きがあるという点においては、少くとも教育に対しては政治的な配慮があまり大きく加えられることは、教育の百年の大計をこわすという点においては同感であると答弁されたが、大臣もこれに対して御共鳴されますか。
  96. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 幾分政治という言葉意味にもよりますけれども、趣意においては総理の言われることに少しも異存はございません。
  97. 受田新吉

    ○受田委員 私は、清瀬さんは非常に御勉強をされて、文部大臣としてその点においては文教の、府を握る資格のある方だと思っておるのであります。ところがこの文教の府がその時の政府施策によってゆがめられて、次の内閣が変った立場の政策をとろうとするときに、教育政策をまた切りかえなければならぬというような問題が起ったならば、これは国家百年の教育大計の上からはなはだ悲しむべきものだと思うのであります。現在二大政党が対立しておる。従ってかかる対立した二大政党下においては、少くとも文教政策だけは、相手の政党と極・度の懸隔がないようにある程度の中正が保たれて、教育者自身もまた教育内容そのものも、時の政府施策によって動くことのないように筋を通す必要があると思うのでありますが、文教の府の責任者として、二大政党対立の場合における文教政策に対する御見解を伺いたいのであります。
  98. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 抽象的に二大政党ということは申されませんけれども、現在わが国では、あなたの政党と私の方の政党であります。いずれも日本民族のためによかれと思ってやっておるのでございますから、教育のような根本については、全く相反する政府が変ったから根本的に違うといったようなことはなかろうと存じておるのであります。(「明快」と呼ぶ者あり)それゆえに今回の委員のうちにも、もしお入り下さるならば、喜んで委員におなり願いたい、こう思っております。
  99. 受田新吉

    ○受田委員 二大政党対立によって、文教の基本的な一線はくずすべきではないのだということには、御共鳴をいただいておるようでありますが、従ってこの案に示されている国会議員の中にも野党から入ってもらいたい一この入る野党の割当というようなものも、あなた方が意図されているのは、議員数によって割り当てるとか、あるいはそれぞれの立場で適格者を党派を越えて考えるとか、いろいろあると思うのでありますが、御見解はいかがでしょう。
  100. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 この案自体にあります通り、国会議員から十名ということになっております。それをちょうど各派の比例にするか、また衆参両院どういうふうにするかは、これは常識的に考えたいと存じます。また従前の先例等もありましょうから、非難のないようにいたしたいと思っております。
  101. 受田新吉

    ○受田委員 さらにあなたがお考えになっている学識経験者は、現在中教審の委員になっておられる方々と考え合せて、どういうことを構想に持っておられますか。
  102. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 中教審におられる方でもおられぬ方でも、教育について見識を持っておられる、また教育家ではございませんでも、あるいは実業界、あるいは言論界等から適当な人がありますればお願いいたしたいと思っております。
  103. 受田新吉

    ○受田委員 そういたしますと、中教審の委員の方も兼ね得る場合もあるわけでございますか。
  104. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 そういう場合もあろうかと思います。
  105. 受田新吉

    ○受田委員 学識経験者の中には、たとえば組合の代表者のような人々をも考え得る場合があるわけですか。
  106. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 組合に属しておる方も決して排斥はいたしません。しかしながら、お願いいたしましても、組合代表としてはお願いしないつもりであります。ほかの団体も同様でございます。各種の団体に属せられておっても、その団体代表ということにはすべきものじゃなかろうと思うのであります。これがあなたのおっしゃる教育は政党または社会運動外に立つというふうなことからきておる考えであります。   〔「明快」と呼ぶ者あり〕
  107. 受田新吉

    ○受田委員 「明快」なる激励の言葉があるようですが、大臣御満足であろうと思います。ところがこの委員の選考に当っては、あなたが任命されるわけじゃない。総理大臣が任命されるわけです。あなたは総理に対してはどういう御献策をされるか。政党の政策になるべく共鳴してくれるような者をという考えで選考されるか、あるいは反対意見を十分尊重する意味をもって、できるだけ政府の政策とは意見の違う者を多く取り入れた方がいいというような形で御選考になられるか、選考基準というようなものをお示し願いたいのです。
  108. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 あらかじめ申し上げますが、この法案第三条では、内閣が任命するということになっております。それから専門委員等は総理大臣が任命する。そこで内閣全体の会議で、お願いする人をきめよう、かように思っております。それゆえに、私も閣員の一人として発言権はあるのです。私は公平にやろう、しかしながらこの人がどういう意見を持っているから採用するということではなくして、委託する時分にはまだその人の意見は知らないで、ただしかし学識経験者であり、そういう教育についてりっぱな意見を持っておられるというのでありまして、政府の思っているところをやるだけであったら別段委員会を作ることはありませんので、そういう偏見を抱いて予断して人を委託しようということはほんとうにございません。
  109. 受田新吉

    ○受田委員 この会議の答申というものは内閣の諮問に応じてお答えになられる、調査審議されることにおいては、多数決主義か全会一致というような形をとられるのか、御答弁願います。
  110. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 いずれそれらの議事規定はできると思いますが、常識的に多数決主義だと私は了解しております。
  111. 受田新吉

    ○受田委員 しからば公平なる判断で委員の任命をされたとしましても、内閣が任命する委員である以上は、自然に内閣意思がそれに浸透する人が多数出るという結果になると私は思います。従って内閣考えるような結論がこの審議会において出されるという方向にあることは常識として考えられると思うのでありますが、大臣いかがお考えでしょうか。
  112. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今回は国内一流の大家、また議員としてもりっぱな方を嘱託いたすので、一内閣に迎合するような阿世曲学の人間は、選んだら選んだ方が間違いであります。(「明快」と呼ぶ者あり)
  113. 受田新吉

    ○受田委員 しばしば「明快」なる激励のやじが飛ぶようでありますが、大臣は曲学阿世の士が任命されるということはあり得ないということでありますが、少くとも内閣が任命され、総理以下各大臣の総合的意見によって任命される人物が、結果的に見てそのときの政府の意図する方向にある人が多数を占めるということは考えられると思うのです。私はそこをお尋ねするのです。
  114. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 ほかのことと違って教育界の大家耆宿が一内閣に迎合するなんていうことはあるべきものじゃないと思います。国家のために独立した意見を、最善の意見をお出し下さるように私は希望しております。
  115. 受田新吉

    ○受田委員 少くとも内閣責任で任命されるようなりっぱな人々であるから、変な考えの人はおらぬ、こういう御答弁であります。ここは非常に大事な問題でありますから、私いま一歩突っ込んでお尋ねするのですが、少くともあなた方の内閣が任命される場合に、自分内閣の政策とは変った方向にある人を、儀礼的にはある程度任命されましても、原則としては任命することを遠慮されるのが政治の常識だと思うのです。そこに問題があるのであって、内閣がむしろ反対意見を持つくらいの人を多数任命するというくらいな、そういう雅量があるならば、私は清瀬文部大臣及び総理は非常にりっぱな政治家だと思うのですが、いかがでしょう。
  116. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 反対意見者だと知って反対意見の者をとることの悪いことは、政府と同意見だからといってとることの悪いのと同じであります。どっちも考えないで、公平にとるのが一番いいのです。
  117. 受田新吉

    ○受田委員 私は大臣がその候補を考えられるときに、この人は教育感覚がどうか、思想的にはどうか、こういうところは一応わかって任命されると思うのです。全然そういうことがわからないで、政府の意図する方向に審査を進めてくれる人か、政府とは逆な方向に審査を進める人かぐらいがわからぬような大臣では、われわれはその大臣は無知蒙昧の大臣だと断定せざるを得ないのでありますが、御見解を伺いたいのであります。
  118. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 問題の数をここではっきり申し上げることはできませんが、過日三つのグループに分けてお答えいたしました。これらの問題について一々この人は賛成だから、これは反対だからといって数えて委員を任命するなんという卑劣なことは、私は決して考えておりません。世間の認めた、公認の大家を嘱託しようと思っております。
  119. 受田新吉

    ○受田委員 中教審の中でも適切な人があるならばこれを採るというお答弁でありますし、またきわめて適切な判定で候補をきめるのだという御答弁でありますが、結果的には、われわれがいつも憂えることは、そのときの政府施策に協調する人の方が数が多くて、反対する立場の人が少いという結果になることなんです。あなたがこの間から申されたような教育根本的改革をはかろうとされる場合に、政府の意図する三つの原則に賛成をする委員反対する委員かくらいのことがおわかりにならぬようでは、任命の基準は定められないと思うのでありますが、その点政府考えている構想に反対賛成かくらいのことは、委員選考の基準には浮ぶと思うのでありますが、いかがでしょう。
  120. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それは頭に浮びましても、そんなことはもう顔にも出さず、やはりりっぱな大家を嘱託いたすのでございます。この内閣ではまだ委員会を作ったようなことはありませんが、従前また戦前から、あるいは関税の問題とか租税の問題などについては幾分手心を加えたことがなきにしもあらずと思いますけれども、事国家教育に関して、そんな予断をもって人を採るなんということは、それこそ国に対して忠誠を欠くゆえんでありまして、もっとまじめにやります。
  121. 受田新吉

    ○受田委員 国家に対する忠誠という新提案に対して賛成をする委員賛成をしない委員とがやはり出てくると思うのです。こういうことについてはいかがお考えでしょうか。
  122. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 いやしくも学界の耆宿で、日本の国に生まれ、日本の国に育った者が、国に対する忠誠を否定なさるとは、私は思っておらないのです。
  123. 受田新吉

    ○受田委員 大臣が意図されている基本的改革については、国に対する忠誠個人尊厳、こういうものを鋭く批判し検討をするほどの能力がある人でなければだめだということになると思うのですけれども、しかし結果的には、国家への奉仕を中心に考える人と、そして個人尊厳重点を置いて民主的な教育考えようとする人と、学識経験者には二通りあると思います。あなたがおっしゃるように、国家への奉仕、国家への忠誠を中心にして、そしてそのほかは犠牲にするおそれさえあるような、こうした偏向的な考え方に、あなたが御任命される相手が片寄ったとしたならば、私は非常に片寄った教育方針が形成されると思うのであって、これに対しては鋭い公正な批判のできる委員ということが、私は筋が通ると思うのでありますが、御見解をもう一度伺いたいのであります。
  124. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今言う通り、世間に評価のあるりっぱな人を選定したいと思っておるのであります。
  125. 受田新吉

    ○受田委員 中教審の委員は、あなたが今お考えになられている臨教審の委員として転換せしめるのには不適当であるとお考えでございますか。
  126. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 中教審の委員の方は二十人おられますが、どの方も私存じ上げております。知らない人は一人もございません。みんなりっぱな人でございます。
  127. 受田新吉

    ○受田委員 そのみんなりっぱな人が、臨教審の仕事ができそうもないとお考えでございますか。
  128. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 委員におなり下さればできると思います。しかしながら中教審と臨教審とはすることが違うのですから……。
  129. 受田新吉

    ○受田委員 中教審と臨教審の構想が違うということで、その相手もまたかえなければならぬということのようでありますが、私は、中教審で、臨教審のあなたが考えておられることが十分果し得るということは先回も申し上げた通りで、いまさらかかる臨時的な機関を設ける必要はないという考えを持っておりますが、中教審の委員が臨教審で要請されるような問題を果し得る人材であるということになれば、屋上屋を重ねるかかる制度を作ることよりは、むしろ中教審の機構を拡大強化する方が行政機構の簡素化の上からも妥当ではないかと思う。いま一度再考の余地はありませんか。
  130. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 このことについては過日あなたからも御質問がありました。問題が、たとえの言葉で言うと、連想のためにかえってあやまちを生じますが、今度のは・現行制度のよほど基本のところに改革の余地がありはせぬかを検討してもらうのです。でありますから、恒常的の平生教育のことを続けて研究してもらいまする中教審とは非常にニュアンスが違うのです。それゆえに委員の数も倍にいたしております。それからまた臨教審には政治的角度から見てもらわなければならないからして一この政治という意味は対立を考えていう政治ではありませんけれども、国の将来を見るということから国会議員も入ってもらっておる、こういうふうなことで二つの会はほぼ――言葉では非常に名状しにくいのでありますが、おわかり下さると思うのです。それゆえに中教審という恒常的の文部大臣の諮問機関がありましても、そのほかに内閣自身の諮問機関としてもっと根本のことを研究する必要がございます。
  131. 受田新吉

    ○受田委員 中教審の考えている目標と臨教審の考えている目標とが一致し得る場合もあるでしょうし、また今あなたがおっしゃるように、根本的にある程度違っている部面もあるということでありますから、その部面については臨教審が一歩はみ出ていることもあると思うのです。しかしこの間から基本根本かということは討論をし尽したのでありまして、今これをあらためてここで繰り返す要はないと思うのでありますが、少くとも中教審においては国の基本的な教育政策をいろいろと審議していることは間違いないのです。ところが中教審で今まで政府に答申したけれども、政府は事実それを採用していないという・ようなこともたびたびあるのです。こういう点を考えると、中教審の答申すらも尊重し得ないということになると、中教審はあまり信頼されないのだ、そこでこの臨教審というようなものを一つ作って中教審のなし得ない大きな役割を果すべきだというお考えがひそんでおりますかどうですか。
  132. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 役をなし得ないといったようなことで、不信任的な意味は少しも持っておりません。中教審は中教審で役をなしておるのです。ところが独立後二年、三年の間に世間の世論はどうもこれはもとが占領という特殊の時代にできたものだ、日本的でないものがあるといったようなことが、あなた御承知通り各方面から起って、しかもそれは事重大であります。次の国民の性格にも関係する重大なものだ。そこでひとり教育家といったような楽屋落ちばかりの理論じゃなくして、政界にあって広く世界各国のことも知っておられる方々、また学者でも、教育家に限らず、歴史でもやられたような人で、教育根本はどういう結果になるかといったようなことを、縦にも一つ研究してもらわなければならぬ、大きな格好の問題が起りましたから、ここにこの委員会を新たに作らんとするゆえんでございます。
  133. 受田新吉

    ○受田委員 憲法改正のための調査の目的をもって憲法調査会法案も提出されておるのでありますが、これと相対応するごとくにこの法案が出されたのでありますが、この点につきましては、何らかの政府としては関連する意図があったのでございましょうか。
  134. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 政府でこれを関連さして立案するという意図はございませんけれども、やはり同じく憲法も占領中にできましたもの、またの教育制度もほとんど同時期に成立したものであります。そこで独立後振り返ってみて、日本人としては施すところあるべしといったようなことは、おのずから背後に連絡はしておると思いますが、この三つの委員会を連結して提案したというものではございません。
  135. 受田新吉

    ○受田委員 おのずから背後に相通ずるものがある、暗黙のうちには百手を握っているんだというお言葉だと思うのです。しかし技術的には別々に今出され審議されるということになるのですが、この教育という基本的な問題、国家百年の大計に充当さるべきこの一番大事な問題が憲法改正とどこかで通うように意図されている節もあるということならば、これは明らかに現在の政府施策憲法改正を意図し、あわせて憲法改正に基く教育根本方針を変革せんとする意図だということが言えると思うのです。私はその意味でここに国家百年の大計の教育を、少くとも時の政府考え方でこれが曲げられないようにありたいと、さっきから申し上げておるのであって、反対党が今どういう考えを持っておるか、できるならば反対党が政府をとった場合においても、自分内閣がいつ内部に大スキャンダル事件を起して、閣僚の中に難くべき汚職、疑獄を起して、国民のひんしゅくを買う者がおって、総辞職をせねばならぬという事態になっても、そのときに内閣を受け継ぐものは社会党なんです。その社会党の政府ができたというときにでも、あなたが今お考えになられているこの法案が通過して、実際に仕事をするというときに、これが変更されなければならぬ、委員の変更がされなければならぬというような事態では、私はこれは教育百年の大計はこわされると思う。そこを私は心配して教育のこの基本的な問題が、時の政府の消長によって動かされるようなかかる法案は筋が通らぬと思う。この点特にもう一度、二大政党対立の場合日における、反対党の政権が立したる場合のことをお伺いしたい。
  136. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 言葉のせんさくは避けますけれども、二つの委員会が同一意図ということはないということは申し上げているのです。ただ偶然二つのようなものを作らなければならぬ背後の原因が同じところから来ているであろうと私は申し上げたのですから、誤解のないようにお願いいたします。  それから先刻申す通り教育は非常に大切なことで、今二大政党といっても、わが日本の政党はあなたの党派も、党派も、今日議会会政治を、認め、また民族自立の理想を持っておるのでありまして、両派の者も一結に入って教育の制度を審議する場合においては、私は一年や二年で鳩山内閣は倒れるとは思いませんけれども、かりにかわりましても、あなたの党派が内閣を組織されても、またその他の第三勢力が組織されても、われわれのこの建設的仕事が根本からくつがえるべき性質のものではないと思っております。
  137. 受田新吉

    ○受田委員 国会議員が十名というのが、委員の構成のトップに掲げられていて、その次に学識経験者が掲げられている。この点国会議員は結果的には、その数の比率において与党勢力が多数を占めることになるのが常識だと思うのです。あなたのさきの答弁によれば……。そうすると時の政府の意図する議員が多数いる審議会なるものが、そのときの政府の政策とは異なった見解を出し得る場合があるとお思いですか、いかがでしょうか。
  138. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 委員の順序を国会議員、学識経験者と書いたのは、国会議員を重んずるということではなく、平等でありますけれども、どちらか先に書かなければならぬからそうなったまでであります。  そこでこの委員会の運営は党派別の運営にはしたくないと思うのです。党派の立場を離れ、また学識経験者もあ一る団体に属せられていても、その団体の立場を離れ、公喜正に審議されることを希望しているのであります。
  139. 受田新吉

    ○受田委員 きわめて理想的なお考えを持っておられるのでありますが、自分の党に属する議員が自分の党の意図する方向に意見を出し得ないとしたならば、これは政治家として本人はまことに良心的でりっぱでありますけれども、政治的な立場においてこれはなし得ない結果が起ると思うのです。大臣は自分の党よりかかる問題について、あるいは反対意見を持つような委員も出ることを期待されているのかどうか、この点も御答弁願いたいと思います。
  140. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 われわれの党派は昨年十一月に結党いたしましたが、その時分に文教、道徳のことは第一の綱領といたしております。それゆえにみなほぼ同様な教育観を持っている同志でございます。それゆえに自然これらのものは同様の傾向に進むであろうと思いますけれども、自由民主党から出ている議員にこういうふうにやれなんという指導は、政府はむろんのことでありますが、党幹部もなさるものではなかろうと思います。ただもともとの考えが同様で党を作っているのでありますから、同様の結果になることはあり得るかと思います。しかしこういう基本のことについては、あなた方の党派も、そうはおっしゃるけれども、子供がおとなしく道徳的になるということについては御反対はなかろうと思う。議論や演説をすると、いろいろ一言葉が違いますけれども、やはりわが国学校伝統的の日本人のよさを持っていこうという点については、受田君も心中あまり御反対はないだろうと思うのです。それゆえに党派的に分れてやろうという考えは決してございません。
  141. 受田新吉

    ○受田委員 受田君の気持をそんたくしてもらったわけでありますが、(笑声)これは私としてはそういう問題とは別に考えていかなければならぬのです。すなわち少くともあなたの今お考えになっておられる御意思は、われわれが曲解しないで公正に考えて与党議員が国会議員十名の多数を占めていく、学識経験者もあなたの意図する人が多い、こうなってくると、あなたの政府の御用機関のような委員会になるおそれがある。ここに問題があるので、御用機関には断じてしないとあなたがおっしゃっても、結果的にはそうならざるを得ない。ここに市大な問題がある。この点御用機関という性格を帯びるおそれがあるとお考えでございますか、絶対におそれなしとお考えですか、この点明瞭にしていただきたい。
  142. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 国会議員十名のほかに学識経験者は三十名おるのです。この三十名の方々は厳正公平な人を選びます。もしわれわれの議員がふつつかな者ばかりが出ましても、御用機関にはなりません。いわんやわれわれ議員の方で人を選ぶについても、教育の方に見識を持っておられるりっぱな議員を選ぼうと思っております。でありますから、この機関が御用機関になって、私どもの言うがままに発言してくれる、そんなことは思っておりません。そういうことを希望するんだったら、こんな機関を作らなくても政務調査会でやります。政務調査会を持っておるのに、そのほかにこれを作ったゆえんは、公平な結果を出してもらうためでございます。
  143. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは公平な結果と仰せられますが、少くとも教育基本法改正しようとする意図を持っておられる。次は学校の職業教育について一つの新しい期待を持っておられる。あるいは学校制度そのものにも一つの問題点を考えておられる。こういうことを取り上げるならば、あなたの考えられるような方向にこの審議会結論が出るという想定をしておられると思うのでありますが、いかがですか。
  144. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 それはわかりません。今言う通り、厳正公平なる審査をしてもらった結果でございます。それが初めからわかっておるようなことであったら、この会を置く必要はありません月給だけ損です。
  145. 受田新吉

    ○受田委員 なかなかあっさり答弁されました。しかしあなたは、その基本的な政策を考えておられるわけですが、その内容が充足されるような結論を出し得ない委員会を期待しておられますか、おられませんか。
  146. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私が問題を提供したものと同じように、委員会でお出しになるとも予想しておりません。十人十色でありまして、人同の心の違うことは顔の違うくらい違ったものです。それらの人の切瑳琢磨によって、これがよかろうというものをお出しになれば、私の考えておることと違ったことでも、これは尊重いたします。
  147. 受田新吉

    ○受田委員 あなたのお考えと違う結論が出てもそれを尊重していくというこの雅量には、さすが文教の府の最高責任者としてごりっぱで敬意を表したいと思います。しかし大臣、問題は、あなたのお考えになっておられるような方向に委員の任命がされる危険が多分にあることを、私はここで指摘申し上げておきたいのです。むしろ今まで国会議員を含めていないで、公平な判断をしていく中教審の答申すらも十分尊重されないでこられた政府として、政府施策よりはずれたような答申が出たならば、それに対してとうてい満足し得られるものではないという結論に、私は結果的にはなると思うのです。願わくは、あなたがこれほどの大きな構想をもって、法案をお出しになられている以上は、中教審というものをもっと尊重して、できれは中教審にこの教育根本的問題の解決をさせてもらおうではないかという雅量をお示しになったならば、あなたはりっはな文部大臣として、後世史家の批判を受けないで済むと思うのですが、今ここに臨時という名称のついた、門家百年の大計を臨時的な機関によって打ち立てるなどというような法案が出るということは、やはり清瀬という人もりっぱな人ではあったが、こういう問題にはとんでもないことをした男だ、教育を政策の共に供したというような批判を後世史家から受け、後人から受けるというおそれがあると思う。哲人清瀬  一郎をして後世りっぱな文部大臣であったというようにさせるために、この臨時的なかかる措置をおとりやめになるということを私はお勧め申し上げたいのです。いかがでしょう。
  148. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私の一身上につき、いろいろと御訓戒も下され、御激励も賜わって感謝にたえませんが、しかしながら私は、やはり中教審のほかに、教育専門家ばかりじゃなく、国家的、政治的の見識を持っておられる方人を寄せて、もっと大きな機関を内閣に作る。それから臨時と申しますが、政策を立てるのは臨時ですけれども、立てる政策は永久なんですよ。臨時だからというて臨時の方策を立てるのではございません。そういうことを今すべき時期だと思っているのです。もっと早くても世間の世論は熟しませんし、おそくても困る。ちょうで今年あたりが占領中の教育を是正するに適当な時期だと思っているのです。これをもってお答えといたします。
  149. 受田新吉

    ○受田委員 まさしく今こういう制度を作るのに非常にいい時期だ、早くてもおそくともいかぬ。たまたまそこに清瀬という文部大臣がおった、時と人が調和してこの法案ができたということに同感を表しておられます。清瀬さん、憲法改正しようとせられておるあなたの立場をもってすれば、憲法改正された後においてこういう制度や国防会議というものが考えられるというならば、順序としてわれわれはあなたの立場を了承するのでありますけれども、現在のところ、戦時中からずっと今日までの社国の発展段階を見ると、教育だけを憲法改正よりも先だって根本的に改めるべき段階であるなどとわれわれは考えることができない。あなたの立場を了承しない。少くも六・三・三・四制などというものは、日本の現状においては相浸透しておりまして、日本の現在の教育制度につきましては国民的な世論の中に溶け込んでいる。また教育基本法学校教育法においても、一応その理想として掲げられているものに近づこうとして努力しておる。こういうときに、なお基本法の第一条の人格その他の八つの項目についても考えさなければいけないのだとか、あるいは職業教育を十分尊重する必要があるの、たというような、思いつきの考えをお出しになった印象がはなはだ深いと思うのです。この国家百年の大計を打ち立てるためには、むしろ長い歴史の流れの中に立って、そして時の政府自民党の政策にマッチさせようとする法案を出すような形でなくして、いずれの政党にも中正を保ってき中教審そういう案を出させる方が公平だ思うのです。自民党の政策に基いてこの法案が出たというところに、教育政治によって変革されようとする一つの大きなおそれがあると思うのです。それを時期いまだ尚早、また国民的感情からいっても、現在の教育制度基本的に変えようなどという気持を持っている人は、世論調査をやっておたならばおそらく少数であろうというときに、あなたが大急ぎでこういうものをやられようとするこの拙速主義を私は戒めたい。この点いかがお考えでしょうか。
  150. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今の発言の前段は憲法との関係でございました。今の憲法改正しなければならぬという信念を私は持っておるのです。しかし一方基本的人権、人格尊重については十分な規定を持っております。そうして人を作るのが教育でございますから、現行憲法改正される以前において、人格の陶冶を目的とする教育の制度の検討はできるのでございます。  それから今教育についてのことは早いかどうかとおっしゃいますが、これはこれはもう新聞とかいったようなことじゃなくて、どの家庭へ行っても一人か二人ぐらいは学校へやっております。そのお父さん、お母さんのおっしゃることを聞くと、やはり今の学校教育には不平の声が必ずあるのですよ。どうも学校では、もう一つ親を大切にするのだとかいったような伝統的の感覚が子供に薄くなったということは――私は言えとおっしゃるなら人名でも言える。至るところの不平なんです。これは長くほおっておくべきものじゃない。今時期が早いとは思っていないのです。この、ころの学校を見てごらんなさい。おとといあったことです。大阪では、あなた、卒業生が卒業証書をもらって帰ってきて先生をなぐったという。これも偶然じゃありませんよ。この岡は岐阜でもあった。東京でもありました。この状態を見ていただきたい。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 文部大臣として今の教育の実際を見ると、はなはだあきたらない。民主主義をあまりに高く掲げ過ぎて、至るところに自分の思う通りになっていないところがある。そこで文部大臣の指揮監督権を強化して自分の思うような教育界にしたいのだというお気持が、その背後に炎として燃えておるというように読まれて仕方がないのですが、大臣はこの臨教制度を通じて文部大臣の指揮監督権の強化ということを当然意図されておると思いますが、誤りでありますか、どうでしょう。
  152. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 先刻来申します通り、私の考え通りをやらせる会じゃございません。それからまた日本学校に通っておる者は千万人以上もあるのです。それを一人が監督権を持ったからといって直ちによくなるものじゃございません。教育全体の機構、それから教育内容、それから先生方のやり方、こういった三つも四つもの元素が相待って教育がよくなるのであって、文部大臣監督権を持ってそれを振り回したからといって、そんなことで教育がよくなるんだったらこんな簡単なことはありませんけれども、それではうまくいかないのです。だから調査が要るのです。
  153. 受田新吉

    ○受田委員 あなたの何代か前の文部大臣に岡野清豪という先生がおられた。この清豪先生は昭和二十八年三月に、国会に義務教育学校職員法案というものをお出しになられて、全国の義務教育学校の先生を全部国家公務員にして、そして地方教委でその人事権を発動し得ない場合には、府県の教育委員会があっせんをする、それでなおかつ処理できない場合には、文部大臣が最後の人事権を握るという強大なる法案をお出しになられたことがあったのですが、この法案に対する御感懐はいかがでありますか。
  154. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 その法案は私つまびらかにいたしておりませんです。しかしながら今申しました通り教育をみな国家公務員にして、最後に任命の権を文部大臣が持つといったような簡単な方法だけでは、日本教育水準が必ずしも上るとは私考えておりません。もうちょっと複雑な、全般的な、総体的なことで日本教育をよくしなければならぬと思っております。
  155. 受田新吉

    ○受田委員 清瀬文相は正義の人として時の権勢におもねらず、断固としてこれに反発してきた歴史があると伝えられておる。だからあなたはときには革新のごとく見え、ときには保守のごとく見え、変幻自在でいらっしゃるということもわれわれ確認申し上げておるわけなんです。ちょうど戦時中そうした非常に進歩的な意見を持っておられたあなたが、今日再び文部大臣として権力をふるうような機構になることを期待されておられるようなこの法案に対して、われわれは了承できない。岡野文部大臣考えた全国の教員を全部国家公務員にして、最後の任免権を文部大臣が握るというようなやり方は、指揮監督権の最たるものであって、従って大臣もおそらくこういう方向を期待しておられると思うのです。現に教育委員会法の改正案のごときも、大臣の御期待に近づきつつあるということも衆目の見るところなんですよ。そこで私はあなたに訴えたいのでありますが、こういう大事な時局を背負う文部大臣として、せめて教育の民主化がはばまれないように、あなたが後世この民主主義教育の大きな前進の途上において汚点を残されないように要望したいのであります。従って今回もこの法案によってさらに裏づけされる答申、それに伴う施策、一貫せるあなたの夢が実現される過程において、願わくは民主主義教育を平和主義の教育を、阻害しないようにというこの一線だけは、どうぞ確保していただきたい。しかし、同時にもう一つこれにつけ加えて、あなたのお考えの上に不安があるのでありますが、あなたは時代逆行、あまりにも復古調の考えをお持ちになる傾向がある。たとえば紀元節について、高知県である校長が紀元節をやられた、これに対して教育委員会が認めればいいのだと言っておられるのですが、教育委員会というのは数名で構成されておりまして、片寄った人が教育委員になった場合には、教育委員会の決定として了承して――しかもあの紀元節の歌には、「雲にそびゆる高千穂の、高嶺おろしに草も木も、なびき伏しけん大御代を、仰ぐきょうこそ楽しけれ」という文句があって、大御代は雲の上から吹いてくる風に草木がなびくかごときものであるというように、大みかどをたたえるという考え方は、現在の日本憲法精神からいっても、また教育基本的指導理念からいっても間違っていやしないか。また先ほど総理にお尋ねしたように、紀元二六一六年である、こういうことをたたえたといわれる校長の訓示は、これは根拠のなきものをいたずらに固守したものであって、こういうことを容認されるような文部大臣が今日本におられるということになると、私ははなはだ片寄った、すなわち右翼偏向教育が実現すると思うのであるが、大臣の御見解を伺いたいのであります。
  156. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今のお話の前段、すなわち私に対する警告、忠告の点は了承いたしまして、ありがたく存じます。  あとの紀元節のことは、私が自由主義者だからそう言ったのです。紀元節を祝えと言ったのです。祝いたい者があったら祝わしてよろしい、祝うのがいやな人は祝わなくてよろしい、これは右翼偏向ではなくして民主主義なんです。それから近時地方分権で、いなかの小さい村で五人も教育委員がおられて、相談をして、あの校長が子供を集めて紀元節の日に訓話でもしてくれるのだったらよかろうじゃないかと地方の人が言うて、それでやるのであったならば、学校の授業に差しつかえない以上は、文部省としては何も干渉しない方がいいのじゃないか、それでもやれとかやるなとかこっちが言うのであったら、あなたの御非難のごとくに私が強権をふるうことになりますが、そういうことは自分の主観で圧迫しないということなんです。土佐のように、三河でもやれ、東京でもやれと私が通知したら、それはいけませんけれども、地方の父老、お父さん、お兄さんの集まった会で校長の人格を信じて、それはやって下さいとおっしゃる場合には、これはよかろうじゃありませんか、どうでございましょうか。
  157. 受田新吉

    ○受田委員 私に御相談をしておられるので、私はお答えいたしますが、あなたの今の御見解は非常に謙虚な気持でおはかりいただいておるわけですが、私はこう考えるのです。この紀元節というそのことは、これはいにしえの日本の四大祝日の一つであるから、その紀元節という節をそのままごとって、そして同じ二月十一日に、しかも従来の紀元に通算して二千六百十六年、こういう数字まで出して、しかも「雲にそびゆる」の歌までうたって、あたかもいにしえの紀元節を謳歌するごとくにここに儀式を行われたということです。このことを受けた子供の立場考えてみましよう。子供はその儀式によって、紀元二千六百十六年で西暦よりも日本の皇紀の方が今度は新しく考えられるのだとか、あるいは陛下の大御代をたたえるごとくにあるべきなんだとか、こういう考えを持ってその学校の子供は今後進んでいくでしょう、ここに問題があるのです。こういう紀元節をやられた学校の生徒と紀元節をやられざる学校の生徒と、あなたは同じ立場で、これを見ることができましょうか、御見解を伺いたいのであります。
  158. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 わが国の歴史の観察でありますが、だいぶんむずかしいところに話は参りました。今日では神武即位がやはり六百年くらいはずれておるだろうということは、みな言うておるところであります。それゆえに今から三千六百年前に大和の橿原宮で即位をあげられたといったことは、即位はあげられたには相違ないけれども、きちっとその日その時であるとは実はだれも思っておらないのです。それは一  つの伝説としてさように見ておるのであります。この国会を組織しておる参議院の人の持っておられる手帳には、やはり二千六百十六年と書いていらっしゃる。この国会でも他の院はそれを使っておるのです。これは日本の言い伝え、伝説といったようなもので、言い伝え伝説を言い伝え伝説なりとしてやはり子供にも教える方がいいんじゃないか。これが二千六百十六年ほんとうに指折り数えてその日であったというふうな言葉であったら、それはちょっとあやまちと思います。しかしこの校長は非常にえらい人で、読んだのは昔ながらの勅語などは読んでおらぬのです。昭和二十一年の一月一日に、人間天皇だ、おれと国民とは敬愛、信頼の関係であるんで、自分は現人神じゃないんだという勅語を発せられて、それを教えて講釈しておるのです。今から二千六百十六年のちょうどその日に即位があったという話はこの人はしておりません。これは電話で聞きました。それらを考えてみると、常識に富んだえらい先生じゃなかろうかと思っております。まだ面会はしたことは、ございませんけれども。これは非難するに当らぬと思っておるのです。
  159. 受田新吉

    ○受田委員 二千六百十六年であると用いうことを教えたという報告はありましたか。
  160. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 その年号についての講演の報告はございません。しかしながらこういうことを言っておるのです。人間が生まれたときを誕生というてそれを祝うんだから、国が生まれたときを祝うのもいいことだと言って、その口裏にはやはり国の生まれた年とは言っておるのですけれども、二千六百十六年という数字を掲げて言っておるというようには私聞いておりません。
  161. 受田新吉

    ○受田委員 それは新聞の伝えるところに年号が書いてあったので、私はそれを確かめたいと思うのでありますが、私はあなたがよろしいと言われたこの紀元節の式典について、一つ問題が起ると思う。それは、今あなたは二千六百十六年というある程度伝説を何か期待的なものにさせたいと思っておられるようでありますが、大体六百年の差は辛酉革命から発したものであって、仁徳天皇までは歴代の天皇の生存が百歳以上、たまに九十歳というのがありますが、大体百歳以上です。ところが履中天皇以後は急に五十歳以下に下っておられる。この天皇の年令を見ても、仁徳天皇以前の天皇はみな百歳以上生きておられ、十七代の履中書天皇以後はみな五十歳前後でなくなられておるということになれば、これは明らかに紀元年数において約六百年くらいの差があるという辛酉革命説は、ある程度肯定せざるを得ないと私は思う。そういうようなことを文教の府の最高責任者である大臣としては――少くともわれわれは、国の初めの日を祝うという気持を持つのは個人の誕生を祝うと同じように私も否定しません。むしろこの法律審査するときも、紀元の日を設けたらいいという空気は各委員の口からも叫ばれたような次第であるから、われわれはそれを絶対に否定しておりませんが、この二月十一日という日を切って、そしてこれが紀元節だという儀式をあげた、ここに問題があるので、一家がまだはっきりした決定をしていない儀式を勝手にやるということになるならば、今後その教育委員会考え通りに勝手な儀式がどしどしやられることになる。ことに民間の年中行事などどしどし、やられることになる。私はそこに非常な危険があると思うので、少くとも文部大臣としては、紀元節の儀式をやるというそのことに対しての何かの見解を表明されなけれ、ばならぬと私は思うので、紀元節を肯定され、紀元節の儀式を挙行することを教育委員がやれば認めるというようなやり方でなくして、いま一歩進んで県教育委員会が解釈をするとかいうようなことまで持っていって、もつと広くしていかないと、地方の教育委員、ことに山間僻地では、教育委員の皆さんは、校長が強力に張すると、あの校長はりっはな人だからいいじゃないかということで同調するおそれが多分にあるのです。そういうときには教育委員会の五人の構成人員というのは、明らかに校長の意図に同調せざるを得なくなるのです。日本のどの一角かにそうした復古調の式典が行われて、それを文部大臣が容認したということになるならば、これは日本の文化問題としても非常に重大だと思うのでありますが、大臣、あなたは今まで御容認された御発言を何とか是正されないと、これは今後各学校でかかる類似のことがしばしば起されてくると思うのでありますが、いかがでしょう。
  162. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 私は不当なことを言ったとはちっとも考えておりません。やはり日本の国の初めを祝いたい人は祝ってよろしいと思うのです。ただ二月十一日をそのまま用いるか、まただれかあるいはこのごろあの辺で土地を掘ったりして、いろいろ客観的の歴史を調べようという人があります。そういうこととか、あるいはまた大陸の、歴史との関連によって、ほんとうの即位の日がわかれば、そのときは改めてもいいが、そのほかの日だという証拠はないのですね。神武天皇のような方があられたということは、どうもほんとうの歴史です。それからまた建国され即位されたということも確からしい。一番わからぬのは日なんです。その後暦号も違っておりますし、だから新たな科学的な日がさまるまでは、今まで二月十一日とお互いに言い来たったのだから、これをとるのをとめることはなかろうかと私は思っておるのです。
  163. 受田新吉

    ○受田委員 大臣の御見解は、今まで民間でやられている紀元節が国の祝日としてやられておったのだから、それをやってもよかろうという軽い気持のようでございますが、これは文部大臣見解を表明されたというところに問題があるのです。ほかの人がやったのなら大した影響力はないと思うんですが、一国の文相が堂々たる御見解を表明されたということになると、今後文部大臣が言うたのだからというので、各学校でも相次いでこれが行われる。しかも国の祝日の中に入らないうちにどしどし行われて、それが今度既成事実となって紀元節というものにそのまま持っていかれる、正確な世論の調査を用いずして行政措置による紀元節が事前に既成事実の積み上げで生れてくるおそれがありますが、そういうやり方は私は文部大臣としてよろしくないと心うのです。
  164. 清瀬一郎

    清瀬国務大臣 今のは必ずしもお答えを求められたんじゃないようでございますが、行政措置をしたのではございません。あなた方がお聞きになるから国会で答弁をしておるだけのことで、二月十一日の祝いをやれと言ったことは一ぺんもございません。しかし、やるなと言ったことも一ぺんもございません。それだけのことでございます。
  165. 受田新吉

    ○受田委員 時間がだいぶ進行したのでこれはおきますが、最後に二言政治と道徳の問題について大臣にもう一ぺん確かめておきます。――それでは与党の方もおらぬようですからこの問題はこの次の機会にやることにしますが、先ほど総五に申し上げた遮り、政治道徳、政治の倫理化と、現在与党がやっておられるいろいろな施策は道徳を裏切っておるという点である。これを十分御柳付いただいて、次回の質問のときに詳細にお答え願うよう御用意を願いたいと思います。これはこの法案と直接結びつきのある基本的問題で、法案をお出しになられた政府みずから、教育尊重されるという政府みずからが、道徳をこわすようなやり方では、法案を出す価値なしと認めますので、その点詳細にお伺いしますが、与党の方々も急いでおられますから、与党の御要望に応じて本日はこれでやめておきます。
  166. 保科善四郎

    ○保科委員長代理 残余の質疑は後日に譲ります。  次会は明七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十二分散会