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1956-02-15 第24回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月十五日(水曜日)    午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 山本 粂吉君    理事 大平 正芳君 理事 高橋  等君    理事 保科善四郎君 理事 宮澤 胤勇君    理事 受田 新吉君       大坪 保雄君    薄田 美朝君       辻  政信君    床次 徳二君       林  唯義君    横井 太郎君      茜ケ久保重光君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    片島  港君       西村 力弥君    森 三樹二君  出席国務大臣         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 田中 榮一君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (経理局長)  北島 武雄君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君  委員外出席者         防衛庁課長         (長官官房法規         課長)     麻生  茂君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 二月十五日  委員細田綱吉君辞任につき、その補欠として稲富稜人君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 二月十四日  防衛庁処置法の一部を改正する法律案内閣提出第四二号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第四三号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提出第四二号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第四三号)  米駐留軍ジェット機墜落事故に関する件     —————————————
  2. 山本粂吉

    山本委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案一括議題とし、まず政府より提案理由説明を求めます。船旧防衛庁長官。     —————————————
  3. 船田中

    船田国務大臣 防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案提案理由及び内容概要について御説明申し上げます。  最初に、防衛庁設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  政府は、現下の情勢に対処し、国力に応じて防衛力整備する必要があることを認め、防衛庁職員定員を一万九千百九十三人増加し、現在の定員十九万五千八百十人を二十一万五千三人に改めることといたしました。この一万九千百九十三人の増加分のうち、一万七千四百十三人が自衛官で、残りの千七百八十人が自衛官以外の職員であります。自衛官増加分は、一万人が陸上自衛官、三千三百二十五人が海上自衛官で、残りの四千八十八人が航空自衛官でありまして、陸上自衛官にあっては混成同一の増設その他に充てる要員であり、海上自衛官にあっては艦艇の増強等に伴い必要となる人員であり、航空自衛官にあっては航空団新設等のため必要な要員であります。  また自衛隊日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基く教育訓練等援助を受ける便宜を考慮し、同協定附属書第二項による日本国政府現物提供に関する事務については、労務提供に関するものを除き、防衛庁が行うことを適当であると認め所要規定整備することといたしました。  次に自衛隊法の一部を改正する法律案について申し上げます。  第一に陸上防衛力整備のため東北地方北部陸上自衛隊長官直轄部隊として混成団一を新設するとともに、航空自衛隊ついては、既存の航空団一に加えてさらに一航空団を増設することとし、所要改正を行うことといたしました。  第二に、自衛官募集等事務を行なっている地方連絡部の長は、従来自衛官をもって充てることとなっておりましたのを、その事務の性質にかんがみ、事務官をもって充てることもできることといたしました。  最後に、自衛隊飛行場自衛隊航空機以外の航空機が着陸した場合においては、一定条件のもとに便宜所要の燃料を無償で貸付けることができることといたし、また駐留米軍自衛隊とが隣接して所在する場合においては、自衛隊米軍に対し、一定条件のもとに、必要に応じ給水その他の役務を適正な対価提供することができることといたしました。  以上両法案提案理由及びその内容概要を申し上げた次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。
  4. 山本粂吉

    山本委員長 次に両案について補足説明を求めます。門叶政府委員
  5. 門叶宗雄

    門叶政府委員 ただいま国務大臣から両法案提案理由及びその内容概要について御説明がありましたが、これについて補足説明をいたしたいと存じます。  まず防衛庁設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  陸上自衛官は、現在十五万人でありますが、改正定員は、十六万人となっております。この一万人の増員は、新設の第九混成団特科大隊三、東北地区補給処等要員に充てられるものであります。  海上自衛官定員は、現在一万九千三百九十一人でありますが、改正定員は二万二千七百十六人であります。差引三千三百二十五人が増員されるわけでありますが、艦船及び航空機増強等に伴い必要とされる増員であります。  航空自衛官定員は、現在一万三百四十六人、新定員は一万四千四百三十四人でありまして、その増は、差引四千八十八人であります。この増員は、新設の第二航空団要員に充てられるほか、教育訓練の充実及び補給その他の支援業務等増強のために充てられるものであります。  自衛官以外の職員は、千七百八十八人増員されますが、その内訳は、陸上自衛隊で、百六十二人、海上自衛隊三百四十八人、航空自衛隊で七百七人の増員を見るほかは、防衛大学校の学年進行に伴う増員二百三十九人、技術研究所の機能の拡充に伴う増員七十一人、調達実施本部整備に伴う増員二十八人等がおもなるものであります。  次に防衛庁は、当分の間、その本来の任務に加えて、日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定附属書G第二項の規定により、アメリカ合衆国政府使用に供せられる不動産備品需品及び労務以外の役務調達提供及び管理に関する事務を行うことといたしております。同協定においてはその第七条第二項により、日本国政府が同協定実施に関連する経費として、アメリカ合衆国政府随時円資金提供すべきことを規定している一方、その附属書G第二項により、資金提供にかえて必要なかつ適当な不動産備品需品及び役務使用に供することができることになっておりますが、このような現物提供に関する事務は、自衛隊が同協定による教育訓練等援助を受けている便宜を考慮し、防衛庁において処理することが適当であると認めた次第であります。ただし、労務提供事務は、駐留軍労務者と一体としてその労務管理を行うことを適当と認め、なお従前の通り調達庁において実施することとしております。なおこれが事務については経年局所管事務とするほか、これに関する建設本部及び調達実施本部任務を明らかにいたしております。  次に自衛隊法の一部を改正する法律案について申し上げます。  第一に陸上自衛隊長官直轄部隊として新たに東北地方北部警備区域とする第九混成団を設け、陸上防衛力整備をはかることといたし、その本部は青森市に置くことといたしております。  また航空自衛隊による航空防衛力整備の一環として第二航空団新設し、その司令部を浜松市に置くこととし、これに伴いこれまでの航空団は、第一航空団と改称することといたしております。  第二に地方連絡部自衛官募集等に関する事務をつかさどる機関で現在二十三府県に置かれていますが、昭和三十一年度においてはこれを全都道府県に設置する予定でありまして、その事務の性格にかんがみ、これまで地方連絡部長には自衛官をもって充てることとしておりましたのを、事務官をもっても充てることができることといたしております。  第三に自衛隊飛行場自衛隊航空機以外の航空機が着陸した場合において他から入手する道がないと認めるときは、航空機の運航の便宜を考慮し、次の飛行に必要な限度において、かつ、自衛隊任務遂行支障を生じない限度において総理府令の定めるところにより、ガソリン等需品無償で貸し付けることができることといたしております。  第四に当分の間、駐留米軍自衛隊と隣接して所在する場合において他から入手する直がないと認めるときは、自衛隊任務遂行支障を生じない限度総理府令の定めるところにより、自衛隊のために設けられている施設による給水等役務を適正な対価をもって提供することがきることといたしております。  なお、自衛隊法の一部を改正する法律は、混成団及び航空団設置の時期が施設等の前山であらかじめ規定することが困難でありますので、公布の日から起算して十カ月をこえない範囲内で政令で定める日から施行することといたしております。  以上をもちまして補足説明を終ります。
  6. 山本粂吉

    山本委員長 これより両案を一括して質疑に入ります。通告がありますので順次これを許します。石橋君。
  7. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私は先日に引き続きまして、長崎県の大村設置されようとしております海上自衛隊大村水上基地の問題につきまして、質問いたしたいと思います。先日もお伺いいたしましたけれども、残念ながら長官の方が準備下足のために完全な答弁を得ることができなかったわけでございますが、委員会において審議会が十分にされないうちに、地元においては着々と計画が進められておるような報道も次次に入ってきておりますので、この際地元住民の不安を一掃する意味からも、十分に質問をいたしたいと思っておりますので、明確なる御答弁をお願いいたしたいと思います。  まず最初大村基地計画について、できるだけ詳細に御説明を願いたいわけであります。中でも予算額がどの程度見込まれておるのか。飛行場として使用する地域水域範囲がどの程度のものであるか。あるいはここに配置されようとしておる飛行機の種類、機数定員というようなものが、どの程度のものであるかといったようなことを中心に、まず御説明をお伺いしたいと思います。
  8. 船田中

    船田国務大臣 前会に石橋委員から、大村基地の問題につきまして御質問がありましたが、そのときに計画及び経過概要について御説明を申し上げることをお約束しておきましたが、大体次のようなことになっておりますので、それをあらかじめ私から御説明申し上げておいた方がよかろうかと思います。  第一に、大村基地の下交渉経過のことでございますが、昭和三十年十一月下旬、佐世保総監部担当官が県知事並びに県会正副議長をたずねまして、水上基地設置計画概要説明し、御協力をお願い申したのであります。一方本年の一月県の東京事務所長防衛庁担当官がたずねまして、本件について協議をいたし、自衛隊水上基地設置について、県側の原則的の御了解を得た次第であります。次に本年の一月佐世保総監部担当官大村市長をたずねまして、同様協力方の依頼をいたし、その節あわせて関係漁業組合に対し意見をただしおかれたいという旨を申し述べたのであります。その後二月八日大村漁業組合代表佐世保総監部総監をたずね、水上基地設置について利害関係漁民のみと直接話し合って解決するよう、申し入れがあったのであります。なお陸上施設使用区域については、本年一月以来航空局並び海上保安庁と三者で協議を重ねておりますが、近く解決される見込みになっております。なお詳細の計画につきましては、政府委員から御説明申し上げたいと存じます。御了承願います。
  9. 北島武雄

    北島政府委員 ただいまの御質問に対しまして、非常に事務的な面がございますので、私から一応計画内容につきまして御説明申し上げたいと思います。  問題になっております大村基地は、海上自衛隊におきまして、水上基地として使用する予定でございましてこれに配置いたしますところの飛行機は、水陸両用PBY及びJRFという機種でありまして、合せて一応十二機程度のものであります。これに配置いたします人員といたしましては、ただいまのところ昭和三十一年になりまして大体四百十六名という定員予定いたしております。これの予算関係でございますが、整備費といたしまして、昭和三十年度におきまして約一億九千万円見込んでおります。三十一年度におきましては約二千三百万円でございます。防衛庁施設いたします内容といたしましては、隊員の約四百十六名の隊舎を整備いたさなければならぬほか、整備工場新設いたします。それからなお海上掲灯浮標を二十二基設置いたしますほか、 スリップから格納庫までの陸上誘導路新設するといったような計画内容でございます。  陸上部門につきましては、当初実は防衛庁におきましては、航空局がこれを御使用になりたいという意向がありますことを存じませんので、そのつもりで計画を進めておったのですが、計画中に航空局がこれを民間航空飛行場としてぜひ使用したい、こういうお話がございました。それからまた現在の国有財産地域内におきましては、格納庫海上保安庁ヘリコプター格納用として使用いたしておりますので、航空局海上保安庁との間に官庁間の折衝が行われました。結局におきまして陸上施設につきましては、原則的に民間航空にお使いになってけっこうだということに私ども考えております。それから従いましてこれに要する陸上滑走路につきましては、航空局所管といたしまして、昭和三十一年度におきまして整備する計画でございます。格納庫につきましては現在千百坪のものが三棟ございまして、うち一棟海上保安庁所管でございますが、この一棟は主としてヘリコプターを格納するためのものでございます。使用面積も少くて、余裕がございますれば、航空局共同使用の可能の見通しでございます。その他の二棟ははなはだしく損傷いたしておりますので、防衛庁におきまして修理いたしまして、先ほど申しました水陸両用飛行機をここに格納いたしたい、こういう計画でございます。飛行場面積陸上概算約十五万坪であります。なお海上自衛隊におきまして水陸両用飛行機を飛ばすわけでございますが、海上方面に問題があるのでございます。現在の計画といたしましては長さ三千メートル、幅三千メートルの着水帯域と、誘導水路といたしまして、長さ三千メートル、幅四百メートル程度のものが必要でなかろうかと考えております。従いまして海上使用面積は約三百万坪に相なろうかと存じます。このうちで着水帯域の方は自由海域でございまして、誘導水路漁業権設置されているところでございます。こういうことでございます。海上自衛隊におきましては、この水上基地使用いたします頻度は大体午前中——先ほど申しましたように、ごく少数の飛行機でございますので、大体午前中を訓練時間に充当するだけで間に合うかと存じております。最近漁業組合の方で非常に漁業権のことにつきまして御心配のようでございまするが、ただいま申しました漁業権の設定されておる地域に属するところの誘導水路につきましては、防衛庁におきましてできるだけこれを円満に漁業権買収というような方向で一つ交渉を申し上げたいと考えております。それから着水帯域につきましては、これは自由海面でございますが、これに伴いましてやはり漁業制限されることにも相なりますので、補償の問題も起って参ろうかと存じます。これらの補償の問題につきましては、地元と十分にお話し合いをいたしまして、適正な補償をいたしたいつもりでございます。  ごく概略を御報告申し上げました。
  10. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 ただいま一応詳細な説明を聞いたわけでありますが、地元佐世保海上自衛隊総監部あたりがいろいろと話しておる内容相当隔たりがあるのじゃないかというような気がいたしまして、若干もう少し詳しくお尋ねしたいと思うのですけれども、陸上施設の面については現在長崎県を中心に進めておる民間航空基地と競合しないように、陸上施設の大半はそちらの方に譲っていくというようなお話でございましたが、そういたしますと、新たに相当土地自衛隊の方で必要とするのじゃないか、この面の農地の接収というようなことも当然起きてくるのじゃないかと思うのでありますが、その辺の事情一つ説明願いたいと思います。
  11. 北島武雄

    北島政府委員 陸上部門につきましては、原則的に民間航空に御使用願ってけっこうでございますが、ただし自衛隊としてもときどき着陸することもございますので、その点は航空局とよくお打ち合せいたしまして、この陸上施設については共用いたしたい、こういうふうに考えております。従いましてただいまのところ民間土地買収するというような計画にはなってございません。
  12. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この問題で一番中心になってくるのは、お話がありましたように、漁民の生活と結びついてきておる、漁業権制限あるいは買収といった問題にかかってくるわけなんです。この間もお話いたしましたが、先ほど説明のあったような着水帯あるいは誘導水路が設定されることになると、操業その他壊滅的な打撃を受けて漁獲高はほとんど全滅するのじゃないか、八割方減収するのじゃないかという計算を地元ではしておるようであります。これを買収するとか補償するとかいうことで臨まれるといたしますと、文句はないじゃないかという考え方も確かにあるかと思うのでありますが、私はそういう一時的な補償といったようなもので解決つく問題じゃないと考えておるわけであります。それで質問しておるわけでありますが、どうしてもこの大村湾特に大村市のこの近辺でなくちゃならないという理由でもあるのか、この点について私は納得のいく説明をまずしていただきたいと思います。
  13. 北島武雄

    北島政府委員 防衛庁におきましては、特に海上自衛隊水上基地をどこに求めるかにつきまして、いろいろ研究したのであります。他にも候補はないことはなかったのでございますが、いろいろな条件を考えまして、大村の現在の基地が最も適当であるというふうに結論が出たわけであります。  それから漁業権につきまして壊滅的打撃をこうむるのじゃなかろうかと漁業者の方が御心配なさっているようでございますが、漁業権の設定されております地域の中で誘導水路として使用いたしたい部分は、ただいまも申し上げましたように、長さ三百メートル、幅四百メートルの地域でございまして、これは大村第十一号共同漁業権設定区域の約十五分の一の面積に当るわけでございます。これによりまして漁業権を、お持ちになっておる方が壊滅的打撃をこうむるというようなことは、まあないのではなかろうか、こういうふうに考えております。この買収によりまして漁業者の方にお支払いをしなければならぬ金額につきましては、もちろん適正な補償をいたしたい、こういうふうに考えております。この点につきましては地元と十分お話し合いをなさねばならぬかと存じております。ただいま御質問のありましたような漁業者壊滅的打撃をこうむるというようなことは、まず御心配が過ぎるのではなかろうか、こういうふうに考えております。
  14. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 誘導水路水域面積が全漁業権設定区域の十五分の一程度だから大した減収にならないという理屈は通らないと思うのです。地元漁民があげております理由といたしまして、やはり操業に大きな制限を受ける。特に誘導水路から北と南の関係でもし迂回しなければならないというようなことになりますと、時間的にも大きな打撃を受けて、実際操業が不可能だというような条件も出てくる。あるいはまた爆音といったようなもので、魚族が逃避する、あるいはその辺に棲息しなくなるというようなことも考えられる。接収されるあるいは漁業権制限される水域面積が、そのまま減収と比例してくるというようなことは言えないのじゃないか。従って、今言われたような、十五分の一だから大した減収にはならないのじゃないかという理屈は私は通らないと思う。特に盛んに地元から反対陳情に行ったときに、強行はしない、また最終的に固まった計画でもないので、ほかに適当な所があればかわってもいいかのごとく言いながら、実際にはどんどん計画が進められているというようなやり方、そういう面からいきましても、最初は小さな制限買収にとどめておいて、既成事実をこしらえておいて、あとからどんどん制限水域範囲を広げたり、あるいは時間的、空間的な制約を拡大していったりするようなことも、十分に考慮されるわけであります。特にこの大村湾沿岸漁民人たちは、旧日本軍から、ほとんど実質的に何らの操業もできないような羽目にまで追い込まれた苦い経験を持っておるので、そういう言行不一致が非常に大きな不信を生ぜしめておるということを、私特に指摘しなくちゃならないと思うのであります。今さしあたって必要とする水域が、そう大きなものじゃないといったような、あいまいな言葉でたぶらかしてはならないと私は考えるわけです。将来も絶対にこれ以上のものを必要としないという確約は、私はおそらくここではできないのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  15. 北島武雄

    北島政府委員 ただいまお尋ねがございましたように、あらかじめ既成事実を放念に作っておいて、底意があるにかかわらず伏せておいて、将来拡張する、こういうことは防衛庁としては実は考えておりません。ただいまの使用機種寺から考えまして、目下海上自衛隊といたしましては、この程度水域をもって十分と一応考えておるわけでございます。もちろん今後大きな事情の変化がありまして——大村湾に多くの基地を持つということはただいまのところ私想像できませんけれども、かりにありました場合においても、初めからそういう底意を持って既成事実を作るということは防衛庁としては毛頭考えておりません。ただお話がございましたように、旧海軍時代のいろいろな御不満がそのままはね返って、防衛庁に参っておるようでございますが、こういう市民の御感情につきましては、私ども十分に御納得いただくよう今後お話し合いを進めたいと考えておるわけでございます。
  16. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 最初に申し上げましたように、今この委員会で明確に御説明があった点と、地元総監部部課長というんですか、そういう人たち住民説明する内容と食い違ってきておる面があるのじゃないか。そこを私百行不一致と言ったわけなんです。それがまた地元住民不信を買う原因にもなるということを申し上げたわけなんです。  試みに二、三の例を申し上げますと、これは地元西日本新聞に出ておる記事でございますが、二月六日の大村市長帰任談——これは東京に来て海上幕僚長あたりと話し合ったというふうなことで、談話を発表しているのですが、水上機誘導水路発着場などの特別な水域は設けておらないというようなことを言っております。あるいはまた二月十一日の防衛庁海上幕僚監部総務課長杉江一三一佐、佐世保地方総監部久保一佐、井関三佐というような人たちが、大村市議会市漁協防衛庁設置計画説明、その質疑応答の中から次のようなことが判明したのです。  これも二月十二日付の西日本新聞記事なんですが、この中でも誘導水路発着場は特別に設けない方が、漁民に有利であれば話し合ってそうしたい。漁業や船の航行は差しつかえないし、具体的な点は文書で契約してよい。将来契約を無視して計画を変更することは絶対ない、こういうような記事になっておる。今委員会説明されましたことは権威のある説明だと思うのですが、それと非常に食い違ってきておる。今の御説明によると、明らかに最初から、地元でわれわれが聞いた通り誘導水路発着場も作るということに一致しているわけなんです。そうすると目的を達するために、住民反対を抑えるために、いろいろな便法的なごまかしが言われておるということです。これはどうも納得いかないということを私は言っておるのです。そういうごまかしをやるから、地元民がいよいよ疑心暗鬼で、防衛庁なんて信用できない、かつての旧軍隊以上ではないかというふうなことにもなってきて、いよいよ話をこじらしていくという結果になると思うのです。この新聞記事はうそですか。こういう説明などは決して今まで市の関係者に言われたことがないと断言ができるかどうか、ここで明確に御答弁を願いたいと思います。
  17. 北島武雄

    北島政府委員 私は海上幕僚監部の方が、市長さんなどに御面会なさることに立ち会っておりませんので、そのようなことをおっしゃったかどうかについては私存じておりません。ただ私が海上幕僚監部からの計画といたしましては、先ほどから御説明いたしておりましたように、着水帯及び誘導水路を作りたいという計画でございました。また事実着水帯誘導水路があって初めて水上機訓練は目的を達するわけでございます。誘導水域及び着水帯がないということは、非常に不便なものでございまして、初めからこれを除外することは当然ないと私は考えます。
  18. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 立会っておらないからわからないじゃちょっと困るわけなんです。おそらくそれは私が言ったように、こういう最終目的に引きずっていくために、反対を押えるために、いろいろなでたらめが責任ある人たちから言われているんじゃないか。そうでなければ、私は次々にこういう新聞報道がされるはずはないと思う。一日や二日じゃないのです。私が持っておるだけでも、四、五日分持っておりますが、それにも同様なことが書いてあります。ごまかしじゃないですか。立ち会っていないからわからないということでは済まない。こういうことは絶対にない。今自分が説明した通りにやる、ということを確認していただきたい。
  19. 北島武雄

    北島政府委員 帰りまして実情を調査いたしまして御報告を申し上げます。
  20. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そういうことでは自信がなさ過ぎると思う。防衛庁長官質疑を聞いておられてこの点はよくわかられたと思うのですが、いかがですか。あなたの部下がこういうようなことをやっておるのかもしれないのです。立ち会っていないからわからないと言っておりますけれども、地元ではそういうふうに了解して、現に幹部の中では、そういうことならばやむを得ないのではなかろうかというような声も出かかったというようなことが報道されておるわけです。しかし下部の漁業組合の組合員の人たちは、絶対信用できないということでがんばっておるというような報道も聞いておるわけです。私はそういう目的に引きずっていくために住民を瞞着するようなことを責任の地位にある者がやっておったとすれば、どういう処置をとられるか、はっきり長官から言明していただきたい。
  21. 船田中

    船田国務大臣 ただいま北島政府委員から御説明申し上げたように、本庁としては計画を進めておるのでありまして、地元民をごまかして将来大きな計画を実行しようというような、さような悪だくみを考えておるというようなことは毛頭ございません。なお担当の責任者がどういうことを漁民の諸君と話し合ったかということは、ただいまも北島政府委員から申し上げましたように、実情を調査してでないとはっきりしたことを責任をもって答弁申し上げられませんから、それは十分調査いたしまして、もし不都合があれば、長官としてそれに対して適当な処置はとりますが、しかし私はさような地元民をあるいは漁民を瞞着するような考えをもって交渉したものでないと信じております。
  22. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今私が申し上げたことは将来のことじゃないのです。現に一番最初に聞いた計画と、今の説明に基く計画とは全く一致しているのです。結局幅四百メートル、長さ三千メートルの誘導水路が設けられて、それにつながる三千メートル平方の着水帯が設けられるのだということは、ずいぶん前から私は地元で聞いておった。ところが本日明確にその計画を聞くまでの間に、いろいろ伝わっておる情報、先ほど申し上げたような人たち地元民に話しておる計画というようなものは、全部ずれてきておる。確固として立てられた計画がことさらに伏せられておるという現実の問題です。調べてみなければわからないと言われればそれまででございますけれども、今言ったように、もしそういうふうな確固たる計画を伏せて、一時的に住民を瞞着するようなことを、もし責任ある者が言っておったとするならば、私は今後の自衛隊のためにも——これは単にマイナスというふうな問題じゃない。国民の不信を買う大きな原因になるのです。旧日本軍が国民に対して買っておった以上の不信を、また自衛隊なり防衛庁が買うような原因にもなりますから、徹底的なる処置をとっていただきたい。この際私は長官に厳重に申し上げておきたいと思います。  引き続いて質問をいたすわけでありますが、そういうふうな誘導水路なりあるいは潜水帯が設けられており、今言っておられるように着水帯漁業権水域の外にあるから、直接漁業権制限したりあるいは収用する必要は起きてこない。しかし爆音その他の被害が間接的にこの漁業関係者に影響してくるわけでございますから、何らかの補償措置をしなくてはならないだろうというふうな御説明でございましたが、一応直接漁業権制限してくる、あるいは禁止しなくてはならないような段階になってくる。この問題にしぼって私は質問したいのですが、先ほどの御説明によると、この漁業権買収したいというふうな言葉があったようでございますが、これは事実ですか。確かめておきます。
  23. 北島武雄

    北島政府委員 でき得べくんばこれを買収いたしまして専用に使いたい、こういうことであります。もちろん、かりにその区域の漁業権買収いたしましても、そこを漁船が御通行なさるのを別に妨げるわけではない。海面として御通行なさることは別に禁止するわけではございません。ただそこで漁業をなさるということは占有漁業権者としては困る。まあ第一段階としてはお話合いの上で誘導水路というものを買収したいと考えております。
  24. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 漁船その他が通ることを制限するわけじゃないというけれども、実際は制限を受けるわけでしょう。飛行機が飛んだりおりたり、うろうろしているところを自由に通れるはずはないわけです。実際に制限を受けると私は思うのですけれども、現在自衛隊がそういうふうに民間の船が自由に通ることができなくてもかまわないんだ、制限することができるんだという何か法的な根拠でもあるのでございますか。
  25. 北島武雄

    北島政府委員 お尋ねの点につきましては、自衛隊法第百五条にその訓練のための漁船の操業制限または禁止を規定しておるわけであります。「内閣総理大臣は、自衛隊の行う訓練のため水面を使用する必要があるときは、農林大臣及び関係都道府県知事の意見を聞き、一定の区域及び期間を定めて、漁船の操業制限し、又は禁止することができる。」第二項に、「国は、前項の規定による制限又は禁止により、当該区域において従来適法に漁業を営んでいた者が漁業経営上こうむった損失を補償する。」こういう規定がございます。この法律の定めるところに基きまして制限または禁止ができる、かように考えます。
  26. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私はその条文しかないから、おそらくそれを言われるだろうと思ったのですが、ここには今読んでおわかりの通りに訓練のためという言葉が使われているわけです。そうすると訓練以外の目的のために制限されたり禁止されたりすることは不可能だということになるわけです。そこで私は訓練というものの定義を一つおききしたいわけです。この練訓を今あなたが言われるように解釈していくならば、どこか民間地を演習場に指定しておいて、毎日そこへ行って権利を制限して勝手に演習してもよろしいという理屈になるわけです。私はそういう意味にこの訓練を使うというのはおかしいのじゃないかと思う。何かそのときちょっと通らなければいけない、あるいは船に乗っていかなければならないという程度のものをいうのであって、連日使われる飛行場訓練だ、飛行場飛行機が上ったりおりたりするというのが訓練だという理屈でやっていくなら、日本中の権利は全部自衛隊制限禁止することができるということになるじゃないですか。
  27. 北島武雄

    北島政府委員 自衛隊法の百五条の規定は、訓練または水面を使用する必要があるときです。陸上飛行場から飛び立つ場合は別に百五条と全然関係ないわけです。なお百五条の詳しい法律的な問題につきましては担当の法規課長が御説明になります。
  28. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 陸上のは私は例として引いたわけなんです。今の水面の問題でも、一つの水上の基地になるわけです。そこに毎日飛行機が上ったりおりたり、あるいは誘導水路を飛ぶというのはおかしいのですが、陸上の方に運ばれていったりするわけです。そういうものも訓練だというならば、陸上の方で毎日勝手に演習に使ってもよろしいと解釈するのと一つも変らぬじゃないか。水面を飛んだりおりたりすることも訓練といえばいえるかもしれない。戦争でないのはみんな自衛隊訓練だというふうに定義をすれば、実戦以外はみんな訓練だというならば、確かにこの法規は適用されるかもしれないけれども、飛行機が水上の基地に上ったりおりたり誘導水路を行ったり来たりするのが全部訓練だということで、漁業操業制限または禁止をするということになると、三百六十五日毎日制限禁止されることになる。そんなべらぼうな法律は私は日本にはないと思うのです。
  29. 麻生茂

    ○麻生説明員 その百五条は、一定の区域及び期間を定めてやるわけでありまして、内閣総理大臣としましては一般の漁業に対する損害というものを十分考慮を加えて、できるだけ損害のないように考慮いたしまして一定の区域なり期間を定める。あるいは訓練を行うにしましても、一日のうちの何時から何時までというような制限をしまして、無制限にやるというような訓練の仕方はしないと思うのであります。具体的な事態に応じまして、その辺は先ほど御質問のありましたような極度の制限を行うというようなことはないであろう、こう思うのであります。
  30. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そういうふうな一定の区域と期間とが明確に定められる場合だということははっきりしているわけなのですよ。ところが水上機基地あるいは飛行場というようなものになるときに、何月何日何時から何時までというようなことが一々明確にわかっておって、農林大臣なりあるいは都道府県知事との連絡がついておって、そうして制限することができますか。それ以外の時間に絶対に飛行機は上ったりおりたりしませんか。私はそういう飛行場ならもうほとんど飛行場としての意義を制約されてしまっておって、あまり役に立たなくなるのじゃないかということを聞いているわけなのです。ここに書いてあるから聞いているのですよ。何月何日何時から何時まで、このときだけ操業、通行を禁止します、制限しますということならわかる。それは普通の演習のときならできるのですよ。ところが飛行場というようなものにしようというときに、一つ一つその期間を、水域を——あるいは水域はできるかもしれないけれども、期間を事前にきちんときめておいて制限することができる、そういうふうに自衛隊は考えておるわけですか。
  31. 麻生茂

    ○麻生説明員 非常に恒久的なもので、漁業権の変更なりあるいは取り消しをするようなものでありますならば、漁業法の三十九条という法の適用によってやるというようなことも考えております。百五条だけで全部できる、こう考えておりません。
  32. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 漁業法三十九条というのを具体的に説明して下さい。
  33. 麻生茂

    ○麻生説明員 漁業法の三十九条を読んで見ますと、「漁業調整、船舶の航行、てい泊、けい留、水底電線の敷設その他公益上必要があると認めるときは、都道府県知事は、漁業権を変更し、取り消し、又はその行使の停止を命ずることができる。」云々というのがございます。その公益上の必要ということで、ある場合できる場合もあるのじゃないかと思います。
  34. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私の本質的な考え方としては、憲法で認めておらないような自衛隊がやることが、何の公共の事業かと言いたいところなのですが、その点言っておりますと、根本的な問題になりますから避けますが、今言われた漁業法の三十九条ですか、それは直接今ここで引用されるのは私ちょっとおかしいのじゃないかと思う。明らかにこの自衛隊法百五条というものが唯一の根拠だろうと思うのですが、先ほどから私申し上げておるように、大幅な制限を加えるこの飛行場の設定に自衛隊法百五条を引っぱり出してくるなんというのは、私はちょっとおかしいと思う。端的に言えば、これはもう憲法違反は明らかだ。公共の利益のために国民の権利を制限する場合には明らかに法律によらなくちゃならないときめられておる。その明らかな根拠法律となるべきものがこのような百五条程度のものだということでは、私は明らかにこれは憲法違反だと考えるわけです。  それからもう一つお尋ねしますが、漁業権買収したいというようなことを言っておる。簡単にそのようなことを言われるけれども、一体自衛隊漁業権買収することができるのですか。これはどのような根拠法規に基いて言われるのか一つ答弁を願いたい。
  35. 北島武雄

    北島政府委員 漁業権を抹消いたしますための措置といたしまして、買収ということになるわけであります。自衛隊としてぜひとも占有したいという場に合おきましては漁業権を抹消しなければなりません。それを買収という行為に現わすわけであります。
  36. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうすると自衛隊法の百五条で漁業権買収する、こういうわけですか。
  37. 北島武雄

    北島政府委員 漁業権買収の方は百五条ではございません。一般に必要上財産権を取得することができるわけでありますから、その意味におきまして買収ということができます。
  38. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうすると民法上の相互の納得に基く任意の契約だ、こういうことなんですね。
  39. 北島武雄

    北島政府委員 お説の通りです。
  40. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは地元の直接利害関係者、この場合は大村漁業協同組合が絶対納得しない、もうごめんこうむる、買収なんかいやだ、自衛隊には私たちのこの権利を差し上げませんと言われれば、これは絶対にできない、こういうことなんですね。
  41. 北島武雄

    北島政府委員 法規的には土地収用法によりまして収用という措置もできるわけでございますが、自衛隊といたしましては、このような強権的措置はできるだけ避けまして、できるだけお話し合いの上におきまして契約によりこれを買収いたしたいと考えます。
  42. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 言葉は非常に大切ですから慎重に使っていただきたいと私は思う。買収法律上できるけれども、自衛隊の方針としてそういう強硬措置はとりたくないんだ、地元人たちとゆっくり話し合って納得ずくでやりたいんだ、こういう意味で言われるのですね。実際には法的にも強制措置はできるという解釈なんですか。
  43. 北島武雄

    北島政府委員 従来からそのような解釈でございますが、そういう強権的措置によることなく、話し合いの上で、相互の契約によって納得ずくで解決するというのが防衛庁の従来からの方針でございます。
  44. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 方針としては非常にりっぱだと思うのですが、私は果して自衛隊がそういう強権を持っておるかどうかという点に疑問を持つわけなんです。今土地収用法で買収できるんだというようなことを言われましたが、土地収用法で収用し、あるいは使用することができる事業というものは法律できまっております。法定になっておる。しからばこの法定になっておる第三条の果して何号に基いてあなたは買収ができると言われるのですか。
  45. 北島武雄

    北島政府委員 法規課長から条文をもちまして御説明いたさせます。
  46. 麻生茂

    ○麻生説明員 土地収用法の第三条の第三十一号と了解しております。
  47. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 具体的にその三十一号を説明して下さい。
  48. 麻生茂

    ○麻生説明員 「国文は地方公共団体が設置する庁舎、工場、研究所、試験所その他直接その事務又は事業の用に供する施設」ということでございます。   〔「全然違うじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  49. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それと今度大村で作ろうとしておる水上機基地漁業権とどういうような関係になるのか。もう少し納得のいくように、みんな議員さんもほかの人たちもわかるように説明して下さい。その三十一号とやらが一体今聞いておる問題とどういうふうな関係があるのか。
  50. 麻生茂

    ○麻生説明員 自衛隊設置する飛行場施設の一部として漁業権買収することであると了解して私は御答弁申し上げた次第であります。
  51. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この土地収用法ができたのは御承知の通り昭和二十六年、自衛隊はその当時できておりません。従ってこの土地収用法の中で自衛隊買収いうようなことは当時全然考えられておらなかったわけです。また先ほども申し上げたように、大体憲法違反の自衛隊がそういう強権を持っておるという考え方自体がおこがましいのです。最初経理局長が言ったような方針を最後まで貫くべきであって、強権発動しようと思えばできるのだというような考え方は、私はおこがましいきわみだと思う。土地収用法のどこを押したって、自衛隊がそういう強権発動をして、国民の正当な権利を制限したり禁止したりすることができるなんという条文はない。私はここでまだ十二号でも引っぱり出すのか、そうすればまあ気のきいた方だと思った。ところが三十一号ですという。全く抽象的な条項を引っぱり出してきて、これでやるのだというようなことはこじつけに過ぎる。そこで私は長官にここではっきり聞いておきたい。この間も長官は納得ずくでやる、絶対に強制なんということはやらないと言ったけれども、今法律的に見ても、これはそういう態度をとるのが当然だ。特に今後の日本の国防の第一線に立つといいますか、任務を持つとされておる防衛庁、特に長官としては、その心がまえというものは終始一貫貫いていくことが私は必要だと思いますので、絶対に地元住民反対を押し切って強行するようなことはしない、納得ずくで、最初北島経理局長が言ったように、民法上の契約に基く合意の上に立った任意契約に基いてやるのだという所信のほどを再度ここで言明していただくならば、私は本日の貫目をこれで一応切ち切りたいと思う。
  52. 船田中

    船田国務大臣 先ほど御説明申し上げました北島政府委員の申されました通りに、防衛庁といたしましてはどこまでも地元の方々と納得ずくでこの基地を作るようにいたしたい、かように考えて今後も努力いたします。
  53. 山本粂吉

    山本委員長 片島君。
  54. 片島港

    ○片島委員 私は今の石橋君の質問に関連してお尋ねしたいと思うのですが、宮崎県の新田原という元の落下傘部隊がおりましたところ、ここに築城の航空学校の分校を設置をしようといううわさを私たち聞きまして、今月の初めに実は防衛庁経理局長にもお会いをしていろいろとお話を伺ったわけでございます。ところがこの新田原に航空学校の分校を置こうというのは、すでに三十一年度の予算に計上せられておる。そうしてこういう内定をせられるのにどういう手続を踏まれたか、ただいまお聞きをしておりますと、納得ずくでいこうということをお話をしておられるようであります。ところが私たちが調査をいたしましたところでは、昨年の十月十日、これが最終であったかと思うのでありますが、幕僚幹部の一係官が地元の村長のところに行っていろいろと打ち合せをいたしております。私たちが防衛庁にお伺いをして、その事情を県当局に通知をいたしましたら、県知事がびっくりしておる。県知事は、これは困ったことだ、私たちはまだ何にもこういう問題については聞いておらない、こういうような話であります。少くとも防衛庁として防衛庁独自の計画で、行政協定等によらないで行われようとするのは、今度が初めてではないかと私は考えるのでありますが、そういう重大なる、しかも相当大きな施設を作ろうという場合に、一係官が地元の何にも知らない村長あたりのところにこそこそとやっていって、県を抜きにして、そしてそこでどういうことを言うたかわかりませんが、おそらく甘言をもって、非常にこれはいいことがあるんだよというようなことを言うて——また村長はそう言っております。何かいいことがあるらしい。そういうようにまるでこそどろみたようなやり方をもって、三十一年度の予算にこれを内定する、これは私は重大なる問題だと思う。もしそういうことをやるならば、堂々と局長クラスなりもっとお偉い人が県知事あたりに会って話をきめて、それから全体的な大きな視野に立ってやるべきであるのに、地元の入植者のおかみさんに会って、お前の方には金も相当差し上げるから今やめた方がいいのだとか、村長に会って、お前の方には金が相当落ちるぞというようなことを言って、これで納得したと思って内定をせられ、しかも三十一年度に予算化せられておる。これは私は非常に重大なる問題だと思う。今後に重大なる悪影響を残すと思うのでありますが、新田原を内定せられるに至った経緯について、防衛庁長官は知っておられるかどうか。知っておられるならばその経緯、知らなければそういうことをやっていいものか悪いものかという防衛庁長官の考え方を、ここで明確にしておいていただきたい。
  55. 船田中

    船田国務大臣 ただいま御質問のありました新田原の問題につきましては、防衛庁として決定したものではないのでありまして、これは係の者が下調査に出ておる程度のことに私は承知いたしております。なおその計画の詳細につきましては政府委員から説明していただきます。
  56. 片島港

    ○片島委員 この問題は三十一年度の予算にすでに載っておるのです。防衛庁の予算ということになれば、長官が全責任を持ってこれを大蔵当局と折衝してきめられたものでありますから、予算に載っておるのにそれを知らないならば、政府委員からお聞きをしましよう。しかし、そういうようなことで内定していいものかどうかという長官のお考えを先に承わっておいて、それから政府委員にその経緯をお伺いしたい。
  57. 船田中

    船田国務大臣 予算に計上いたしましたのは、築城の分校を新設したいということだけがきまっておるのでありまして、場所をどこにするかということについてはまだ決定しておらないのであります。
  58. 片島港

    ○片島委員 内定もしておりませんか。
  59. 船田中

    船田国務大臣 しておりません。従って、それを決定するために下調査をした程度のことなんでございます。
  60. 片島港

    ○片島委員 ただいまの長官の内定しておらないという言明で私たちは非常に気が楽になりました。私たちは今まで勘違いしていました。私たちが今までいろいろと連絡をいたしました限りにおいては、内定をしておる、こういうような話でありましたから、これは穏やかなことではない、こう考えておったのです。まだ内定していないということでありますから、本日また直ちに県の方にも連絡をいたします。しかし内定をしておるやに言明をしておられる方もおります。これが今日そういうふうに流布せられ、また地元でもそういうふうな心がまえで今進んでおるようでありますが、今日こうなりました経緯について、政府委員からでもよろしゅうございますからお伺いをしたい。それから係官であろうとも、防衛庁という肩書をもって行かれた以上は、地元の者は防衛庁の代表者と見ておるのでありますが、その係官が何も知らない地元の人に会っていろいろと当ってみた、その結果どういう御意見であったか、地元の人の声なども、おわかりでありますならば、この際はっきりとしておいていただきたい。
  61. 北島武雄

    北島政府委員 築城の操縦学校の分校としてどうしても飛行場が必要なのであります。これの候補地といたしましては、実を申しますと鹿児島県に二カ所ほどございました。ただ地形その他を調査いたしますと、山ありその他でどうしても第三操縦学校の分校として不適当である、こういう結論になりましたので、なお航空幕僚監部におきまして各地を調査いたしましたところ、新田原が最も適当であるというふうな技術的検討に達したようでありまして、防衛庁事務当局者としては新田原が最も適当である、こういうふうな関心を現在持っているわけであります。そこで、おそらく航空幕僚監部の者が一応実際の下調査に行ったのであると存じます。その際にはまだ防衛庁が決定したというのではないのでありまして、一応どの程度の地形であり、今どういうような現状であるかということを調査に行かれたわけでありまして、内定したから調査に行ったということではございません。これは今後庁議を練りまして、長官の御決裁を経た上は防衛庁として正式にお願いに行くことに相なろうかとも存じますが、ただいまのところはそういう段階であります。
  62. 片島港

    ○片島委員 調査に行かれて地元の反響はどうであったか。県の方には行っておりません。正式には県知事も知らないし、また県の農地部長も知りません。きのうも来ておりましたが、農地部長は知りません。知らないうちにきまったのでありますが、係官がその村に行って内査をしました結果地元の人としてはどういうことを言われたか、それが参考になると思うのです。地元の人が絶対に反対であるという場合と、また地元でも全部に当るわけにはいきませんが、村長なり入植者のおかみさんが会われたかもしれない。そういう人たちの意見はどうであったか。それがもととなっておそらく適当だという一つの大きなファクターになったと思うのでありますが、その結果はどうでありますか。
  63. 北島武雄

    北島政府委員 個々の方々の御意見がどうであったかにつきましては、実はまだ承知いたしておりません。こういう問題につきましては、いずれ庁議の席上におきまして十分その土地の状況が述べられて、その上で長官が御判断になるかと存じます。
  64. 片島港

    ○片島委員 その村の村長の意向を私は知っておりますが、まあ非常に歩のよいような甘い話に受け取っているようであります。それから入植者の人たちにも会っておられるようでありますが、これもなかなか様子がよいのであります。しかしながら、この新田原には純入植者は七、八十戸しかありません。この新田原の地元の農民から土地を取り上げられて元の飛行場になり、それのまた返還を受けている農家は三百数十戸であります。七、八十戸のよそから来た入植の方々は、相当の札たばを積めばおそらく喜んでどこかに行かれるかもしれません。しかし地元の三百数十戸の人たちは、非常なる反対の意思を表明しておるのであります。そういうようなことがどの程度大所高所から検討せられておるか。この点については、ただいまのお話を承わりましても、防衛庁としては全く検討をしておられない。もしやるというならば、あなたの方から相当責任ある方が出向かれて、県知事あたりとよく交渉せられて、大局的な立場からこれが検討せられることを要望いたします。それと、築城の飛行学校の方はこのたびは相当余裕ができるということを承わっておりますが、もう築城の方はアメリカがだんだん引き上げることになっているので、その方を拡充することによってこれを補うことはできないのかどうか。旧軍の学校は、北九州に一つ、南九州にも一つ置かにゃいかぬ、中国の瀬戸内海に置いたならば北の方にも置かなければならぬというようなそんな学校の設置方法ではなかったのであります。これは学校で、訓練をするのであるならば、こういうところに分散をして幅広くどこにもここにも設置しなければならぬ必要がどうしてあるのか、この点も一つお伺いしておきたいのであります。
  65. 北島武雄

    北島政府委員 築城だけで間に合わないかというお尋ねでございますが、現在の訓練計画等から考えまして、築城の飛行場ではどうしても足りないのであります。現在築城の飛行場にはたしかT33が五十九機おったと思います。しかし来年度全体といたしまして相当増強されます関係からいたしますと、飛行場だけではどうしても足りない。そこで分校といたしまして他の場所が必要だ、こういうことになるわけであります。
  66. 片島港

    ○片島委員 まだ内定もしておらない、また分校の予算を取ったけれども、これは単に分校を置くというだけで、土地をどこに置くというようなことは予定もしておらない。ただ調べてみたところがなかなか条件がいいようだというだけであって、まだ正式にだれも行った者も何もないということでございますから、この点は地元の方にも十分連絡をとっておきたいと思う。しかしこれがもう少し進展をいたしますならば、私はあらためて質問をいたそうと思うのであります。ただ私は御注意申し上げておくのでありますが、行政協定等に基く場合の軍事基地の設定というような場合には、あるいは行政協定に基く日本政府の米国に対する義務として、あるいはアメリカという大きな力、虎の威を借りたような形において、これをどうでもこうでも、泣きの涙でもその土地を取り上げるというようなことが現在まであった防衛庁が独自の立場から、行政協定にも基かず、また何もひももつかない場合にも、なおかつ行政協定やあるいはアメリカあたりのひもがついたと同じような、今までの習慣に基いて、今後土地の取り上げというようなことをやられるということになれば、私は非常に悪い慣例を今後残すと思うのでありますが、このたびの設定に当ってもどうか慎重なる態度をとっていただきますように要望いたします。この問題がさらに進展いたしますならば、その情勢によって私は再質問をいたしたいと思います。
  67. 山本粂吉

    山本委員長 茜ケ久保君。
  68. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 石橋委員質問に関連して船田長官にちょっと一言明言していただきたい。と申しますのは、先ほど法規課長がどうしても話がつかぬ場合には、何か変な条項に照らして強制収用ができるようにおっしゃった。石橋委員の重ねての質問に、長官は民法上の相互納得の上での話し合いでいきたい、こういう話でありましたが、相互の納得の話し合いでいくということと、しかしどうしてもいかぬ場合に、いわゆる法規課長が言っておった何らかの変な条文から照らして強制収用をかけるということは別でありますから、私は長官から、とにかく自衛隊の現状においては、絶対に土地収用はかけ得ないものであるという言明をはっきりしてもらいたい、こう思うのであります。あくまでも最後の場合には強制収用にかけていけるというお考えかあるいは今までお話がありましたように、絶対に強制収用はかけ得ないという見解でおられるか、そこのところをはっきりしてもらいたい、こう思うのであります。
  69. 船田中

    船田国務大臣 自衛隊は申すまでもなく国民の自衛隊でありますから、飛行場を作るとかその他の施設を作るという場合においても、地元の方々とどこまでも納得づくでやるように努力して参りたいと思うのであります。
  70. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 官房長官が内閣の大番頭としているくなところにおいでになって、それぞれの立場から発言をされておりますが、その場合に官房長官として発言せられた言葉は、政府を代表した発言と受け取っていいかどうか承わります。
  71. 根本龍太郎

    ○根本政府委員 政府の正式なる見解として表明する場合においては、当然私の言明は政府の見解でございます。しかし個人的な会合あるいはそうでないことでありましても、政府の代表としてでなく私的な意見を申し述べることも、これは人間社会の通例でございますので、その点は明確に区別しておるわけでございます。
  72. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 これは政府の正式代表ではなくとも、官房長官という肩書によって御出席になった会合の席上で、官房長官が御発言になったことはどのように考えておりますか。それは私的か知らないけれども、いわゆる官房長官という立場で御発言なさったことは、これは純然たる私的なものか、あるいは一応政府を代表する官房長官としての御発言か、この点を明確にしてもらいたいのであります。
  73. 根本龍太郎

    ○根本政府委員 これも政府の代表として出席した場合におきましては、私の言葉は政府のスポークスマンとしての当然の資格においてやっているわけであります。しかしそうじゃない場合においてもこれはございます。どういう点をあなたが御質問になるか、非常に抽象的でちょっとわかりませんが、具体的に例示していただきますれば、それは私は政府の見解として述べたかあるいはそうでないかを明示いたしたいと思います。
  74. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 具体的に申し上げます。あなたはたびたびラジオ等において国会の討論会等に御出席になっていらっしゃいますが、その場合に一般の国民は、官房長官根本龍太郎としてお出になっていますので、これは当然官房長官という立場から政府の意見を代表したものと受け取っておるのでありますが、去る十二日の午後六時からNHKにおいてなされました国会討論会の場合における根本官房長官の御発言は、いかような立場でなさったか、これを具体的にお伺いします。
  75. 根本龍太郎

    ○根本政府委員 お答え申し上げます。国会討論会におきましても、政府の見解として述べる場合と、また私の個人の意見でありますといって申し述べる点はございます。従いまして政府を代表してという場合には、明確に政府を代表してと申しております。そうでない場合に、これは討論会でございますからいろいろの意見を聞かれた場合に、国会議員の立場として意見を申し述べることもございます。これは当然のことでございます。私ばかりでなく従前も、あるいはまた社会党の代表の方も、社会党を代表してということでなく、いやこれは私の個人の意見としてという場合もございます。最近は御承知のように、国会放送討論会においては与党二名、野党二名が出ておりまして、お二人が出た場合に社会党の方方の意見のうちにも若干のニュアンスの差があります。それはやはりそのときに出た人の主として個人的意見がニュアンスとして強く出る場合、社会党の正式の見解としてという場合と二様あるようであります。
  76. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 私がお聞きしているのは、NHKとしては自民党から二人、社会党から二人呼んでおりまして、そうした中へ特に官房長官が出られるのは、これは自民党の根本龍太郎でなくて、政府を代表した意味における官房長官根本として呼んだのであります。従いましてそれを聞いている国民というものは、根本龍太郎という国会議員は鳩山政府を代表して出ておるという印象を持っておるのは当然であります。従いまして、あなたがそういう場合に特に個人根本として御発言なさったのなら問題はございませんが、そういった断りがなくて発言された言葉というものは、これは政府を代表した言葉として受け取るのは当然であります。私は去る十二日の国会討論会を聞いておりまして、まことに重大な御発言があったようでありますから、その点を前もって特にお聞きしたのでありますが、最近どうも政府の高官諸君はいろいろな場所で発言をしておきながら、それが新聞、ラジオ等で発表になったことを国民が異様に不審に思うと、とたんにそう言った覚えはないとかか、そんなことは言っておらぬとか言って、まことに新聞記事等を軽々しく否定するのは遺憾であると思う。そこで私が特にお尋ねしたのは、去る十二日の討論会の中に、私どもが看過し得ない内容を含んだものがありましたからでありますが、その際に根本官房長官は、個人としてというお言葉がなかったのでありますから、私は当然これは官房長官として政府を代表した御発言と解釈しておるのでありますが、念を押すようですが、もう一ぺん一つ長官にこれに対するはっきりした態度をお伺いしたいと思います。
  77. 根本龍太郎

    ○根本政府委員 討論会において、断わりなく言った場合においては、大体政府の見解を表明しておるつもりでございます。
  78. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 そこで私が今からお聞きすることは、当然根本官房長官は鳩山内閣を代表して発言されたと思うのであります。その中で特に私が指摘したいのは、長官は、あの討論会の最終段階に近いあたりで、私どもの聞いたところによると、自衛隊の出動ということに関連して御発言なさった個所がありますが、あれは長官としては、どのような御発言をなさったのか、ここでもう一ぺん長官が御記憶ならば——おそらく重大なことでありますから、はっきり長官は記憶していると思う。一つそのことをここでもう一ペん録音式に発言してもらいたいと思う。
  79. 根本龍太郎

    ○根本政府委員 私はあまり記憶力が強い方ではありませんので、正確に録音通りにはいかないと思いますが、当日の放送討論会におきまして、社会党の代表として出られた赤松勇君から、船田長官自衛隊出動の準備をしておるということは非常に重大なことだ、こういったような意味の発言があったようでございます。それで私は、政府としてはストライキに対して自衛隊を出動せしむるというような考えをもっていない、しかしながら政府はあらゆる事態に対しまして、万全の治安の責任がありますから、これはその意味において言われたことではないかと思う、こういう意味のことを私は言ったのであります。それでそうじゃないとか何とかわあわあ言って幕切れになって、私の意思が十分発表できないうちにあれは時間切れに終っておる。こういう状況でございます。
  80. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 今長官は記憶力がないとおっしゃるが、なかなか記憶力旺盛な官房長官でありますから、おそらく御失念でなかろうと思います。しかし実際のものと違うのであります。官房長官の言葉は重要でありますから、今でも私はここにはっきり覚えております。またしかし私も一人では不安でありますから、あちらこちらに問いただして参りました。幸いこうしたものを録音のようにしてとっておる人もありましたので、私は数カ所かけ回って集めて参りましたが、それによりますと、こうおっしゃっておる。政府はかねて自衛隊や警察を平時でも国家の公安を害し、そしてさらに次には、または炭労の——わざわざ炭労のことをおききになっておる。炭労の保安要員の引き上げのような場合、非常な破壊を来たす場合は、万全の対策を講ずるとおっしゃっておる。わざわざ炭労の保安要員引き上げの例を引いて、いわゆる非常な破壊を来たすような場合は万全の対策を講ずるということは、さきの船田発言と関連して考えて、私はこの根本官房長官の言葉からすると、船田発言が今官房長官がおっしゃったようなことでなくて、政府の中に明らかに一連の流れがあって、今の自衛隊をこういった場合に出動させる用意のあることを如実にここに表わしておると思うのであります。今の官房長官お話では、そういうような船田発言以上のものをえん曲に言われましたけれども、この十二日の発言からすると、私どもは船田発言といい、根本長官の発言といい、明らかに自衛隊をこういう場合に出動させる用意のあることがはっきり出ておるのでありますが、これに対するはっきりした長官の御所見をお伺いしたいと思います。
  81. 根本龍太郎

    ○根本政府委員 御承知のように、自衛隊法におきましては、非常事態のときには、知事の要請があれば出動しなければならぬことになっておりますことは、今申し上げた通りでございまして、これは間接侵略、直接侵略に対しての自衛隊任務でございます。従いましてそれに対する万全の処置を講ずることは政府の義務であると思います。今御指摘になりました点は、私の言葉が足りなかった点があるかもしれませんが、炭労において保安要員の引き上げというようなことで非常に破壊的なことが起り、そのために地方の自治体の長官から要請された場合には、出動することが至当だと私は思います。そういう点をもあわせて政府は万全の治安の維持について平素から整えておる、こういうことを言ったことは当然のことだと私は存じておる次第であります。これは政府の何ら変らない方針でもあると私は信じております。
  82. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 ただいまの官房長官の発言はまことに重大なものを持っておると思います。今炭労の争議の場合の保安要員という一つの具体的な問題でありましたけれども、炭労の保安要員の引き上げあるいは保安に関する問題、これは憲法二十八条の団結権行使の当然の権利でありまして、その結果がどのようなものを招来するかは別として、そういった場合に、いわゆる自衛隊を出動させてこれに当るということは、私は完全に憲法二十八条の違反であると思う。その点に対する官房長官の見解を聞きたい。
  83. 根本龍太郎

    ○根本政府委員 私は炭労が保安要員を引きしたから出動するとか、そんなことを言っておるのゃじありません。大体炭労の諸君といえども、労働争議の手段として保安要員を引き上げることは禁止されておる事項です。そういうことはおそらくないと思います。私が申し上げておるのは、非常事態になった場合に、地方の長官から出動を要請するということは、地方長官一つの権限として与えられておる、そうした場合において出動しなければならぬという任務をも、ある意味においては自衛隊法規定していると解釈していいと思います。そういう一般的のことを言ったのでありまして、今回の争議行為に対して自衛隊の力をもって弾圧するなどということは、政府は毛頭考えていないし、私もそいう考えは持っておりません。どうもその点を少し意識的にひっからめて御質問なさるようですけれども、それはちょっと私は事実に沿わないことじゃないかと思います。だから討論会なんかにおきましては、御承知のように、発言の時間が非常に短い、そしてやりとりが行われます。しかも御承知のように、両方から一時にわっと言われたときには意思が十分に伝わらない点があるかもしれません。しかし私の真意は断じてそうじゃないということは、この国会を通じて明確にいたしておきます。もし政府が今度の民間の労働争議に対して自衛隊の力をもって威嚇あるいは弾圧するというふうに解釈されるならば、そういうことは全然考えておらないというこだけは明らかにしておきます。
  84. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 官房長官は今はっきり断言されましたが、私どもは決してそういったことを春季闘争の問題にこじつけて言うわけじゃない。今やまさに春季闘争が相当熾烈な段階に入ろうとしているこの場合、せんだっても政府としはて官公労に対して警告を発しないということを社会党にはっきり約束されている。にもかかわらず政府は、やはりああいう声明を出し、官公労の責任者に文書をもって通告なさっている。こういうふうに、いわゆるわれわれと話し合いの過程においては、断じてしないしないと言いながら、すぐその言葉がかわかぬうちに、別な角度から弾圧を加えるようなことをなさっておる。そういう際に行われた放送討論会において、官房長官がこういう発言をされることは、これは官房長官いかに弁解されましても、やはり一般の受ける印象というものは、これは私がこじつけて聞くのではなくて、当然一般の人たちが感じている。政府は何か今度の春季闘争に対して、権力をもって、しかもいわゆる自衛隊といったような具体的な一つの、今どこへも使い道のないものだから、せっかく作ったけれども使い道がない、使いものにならぬこういった自衛隊を、争議のいわゆる弾圧に持ってくるほかないというようなことを印象づける、こういった観点があるのです。あるから世間では非常に重要視している。私が先ほど指摘したように、船田長官は自民党の総務会でやはり同じような発言をなさったということを聞いて、同僚の西村委員が、先般の委員会で詰問したところ、長官はそんなことを言った覚えはないとしている。私が自民党所属の新聞記者諸君に会って話すというと、確かに言ったと言う。新聞に出るとあわててそういうことはないとおっしゃる。逆に社会党や総評が何かやるとなると、新聞に出る、すぐに政府の皆さんは、新聞はこう書いていると、新聞のためにして、いろいろなことを灰になさる。自分の都合のいいことはみんなそのままで、悪いことはみんな捨ててしまう。こういうことがありますから、今重要な時期でありますから、私はこの問題をお聞きするのですが、しかし官房長官が絶対にそういうことがないと断言されるなら、ここではさらに深追いはいたしません。しかし私どもの最近感ずるところでは、政府の部内に、やはりそういった自衛隊を平時において国内で何か出動させてもいいのだ、また出動させることが当然であるといったような考え方があるのじゃないか。それはこの自衛隊法に基きますと、確かに地方長官なりが要請すれば出るという条文はございます。これは昔の軍隊にもありましたが、昔の軍隊ですら、あの軍閥が専横をきわめた時代ですら、そう国内において軍隊の出動した例はないのであります。そういう際に、条文にあるから万全の策を講ずるということはおっしゃってもよろしいでしょう。おっしゃってもよろしいけれども、事態がこのような事態に際して、そのようなことをはっきりおっしゃることは、これは一般に大きな危惧を与える。当然であります。従いまして、そういうことはあるけれども、それは絶対してはならぬ、またすべきでないということならいいが、先ほどの長官の言葉は、私は断固としてそういう万全の策を講ずるのだと、非常に積極的な態度の御発言だったと思う。やはりそういうことなら、こういった発言が一般国民に与えあるいはわれわれ勤労者に与える非常に強いものを持っておる。そこで私はもうくどく申しません。鳩山内閣は、自衛隊を持っておるけれども、また条文にはこうあるけれども、どんな事態であっても、絶対に自衛隊を平時において国内に発動させるということは、断固としてないという強い否定の言葉があれば、一応ここではこの発言に対して了承しますけれども、そうでない限りは、やはり私どもは現在の政府部内にそういった一つの思想が流れておるということをもう看過できないと思うのでありますが、一つ最後に官房長官から、政府を代表した発言として、これに対する確固たる御所見を表明してもらいたい。
  85. 根本龍太郎

    ○根本政府委員 茜ケ久保さんの御意見は拝聴いたしましたが、自衛隊法規定されておる、地方自治体の長官の要請、あるいはまたそれに対する、政府がそういう要請があった場合にどう処置するかは、その事態において判断すべきでありまして、抽象的に、断じて自衛隊は出すとか出さぬとかというような問題で、今からあらかじめ政府が言っておくべきことではないと思います。ただし少くとも今回の労働争議に関しまして、労働争議を弾圧するために、政府自衛隊を発動させるということを考えていないということは、先ほど申した通りでございます。
  86. 山本粂吉

    山本委員長 残余の質疑は次回に延期いたします。     —————————————
  87. 山本粂吉

    山本委員長 次に、ジェット機墜落事故問題に関し質疑を許します。西村君。
  88. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私は去る九日、小岩に米軍ジェット機が墜落した問題について、田中副官房長官に笠間をいたし要請をいたしております。人家の密集した都市上空で、米軍がひんぱんに今後演習のようなことをやられましては、日本の国民が安心しておられないという点から、この事故を契機として、アメリカ軍当局に強く抗議すべきである。その点は副官房長官も了承し、直ちにその旨を担当の外務省に連絡する、こういう話でございましたが、そういう田中副官房長賞のわれわれに対する約束が、直接あなたの方にどういう形で行っておりますか、それをお聞かせ願いたい。
  89. 千葉皓

    ○千葉政府委員 米軍飛行機の墜落による事故につきましては、かねてから米軍側に申し入れをいたしておりました。今回の一件に関連いたしましても、その原因、今後の事故の防止について、先週米軍側に申し入れをいたしました。官房副長官から私に直接お話がございまして、そういう抗議ということではなくて、私そのお話のありましたときには、すでにそのことについて米軍側にきつい申し入れをいたしておりましたので、まあそれでよかろうというお話でありました。
  90. 西村力弥

    ○西村(力)委員 その米軍側に対する、あなたの万から今後そういうことがないようにという意思表示は、おそらく日米合同委員会でなされたのだろうと思うのですが、その際どういう話し合いの結末が見られたか、その辺に関しては、相当政府としても強い信念で、やはり今後のそういう事故の絶無ということを期せなければならぬと思うのです。そういう点から、単なる申し入れをして、はいお聞きしておきましたという、従前のような行き方ではならない、こう思いますので、話し合いの大体の結論、そういうものはどうであったかということについてお聞かせを願いたい。
  91. 千葉皓

    ○千葉政府委員 事故防止が日米関係に非常に重要であるという点を指摘いたしまして、今後そういうことが繰り返されないように、厳重な処置を申し入れた次第であります。それに対しまして、先般は、まだ今回の事故の原因についてはつまびらかでない、しかしながら米軍におきましては、密集地域の上空における訓練あるいは飛行については非常に厳重なる規則がある、おそらく何か不可避な原因に基くものであると思われるが、今せっかく取調べ中である、こういう話でございました。なおもとより事故防止については、かねがね飛行隊員にやかましく言っているところであるという話でございました。その後この月曜日になりまして、米軍の方から、取調べの結果、米軍の厳重なる密集地域上空飛行についての取締り規則に照しても飛行の手落ちがあったということはないという回答がきました。
  92. 西村力弥

    ○西村(力)委員 事故防止という立場が、日本側の立場と向う側の立場が少し違うような工合に私どもは受け取れるのです。もちろんアメリカ軍側の操縦士の方も死なれたのでお気の毒ですが、わざわざ日本の国で事故で死ななければならぬということは、日本も困ったことであるし、またアメリカ軍側も困ったことじゃないかと思うのですけれども、向うの方では、事故の原因を探求して、大事なジェット機を失うまい、人命を失うまいという観点からの事故防止だ。こちらの方は、日本人民の生命、身体、財産というものの保護という立場からの事故防止を主張せられる。その際に、やはりその二つの立場の相違が一致しなければならないのじゃないか。そういう場合における一致は、あくまでも日本国民の生命、身体、財産というものの保全ということが優先すべきであると私は思う。たとい行政協定でアメリカ軍が日本に来て演習をする権利があるにしても、あの方々は軍隊ですから、その訓練の途中において死なれる場合もあり得ることでございます。しかしながら平穏な国家安穏を願っておる者には、その事故によって自分の権利を侵害されるということは絶対に許せない。われわれの権利が優先すると私は考える。そういう立場に立って強く要求せらるべきであると思うが、いかがでございますか。
  93. 千葉皓

    ○千葉政府委員 取締りについて、先方の考え方とわが方と御指摘のような食い違いはないと考えます。先ほど申しました先方の取締り規則は、もちろん先方の搭乗員の安全とか、飛行自体の安全を考慮しておるでありましょうが、これは密集地域の上空における特別なる取締り規則だそうであります。これの主たる目的は、そういう事故によって下におる人民あるいは人民の財産に対する被害を予防するというものであると考えております。
  94. 西村力弥

    ○西村(力)委員 先ほどの御答弁では、向う側の月曜の回答は、米軍の航空取締規則ですか、そういうものに違反していなかったという通告であったということでございますが、現実に彼らは取締り規則に違反しないけれども、こっちの方はやられている。都市上空で演習をしている。そこでははっきり一致しておる。あなたがおっしゃるような工合には私たちは受け取れない。向うの方のきまりに違反してなければ違反してないのだと向うはこっちに言ってくるだろうけれども、これは一方的だといわなければならない。私はやはりこちらの権利を守るということが優先すべきであると思うのです。そういう立場を外務省がおとりになって強く要求せられることが必要であると思いますが、その点についての御見解はどうですか。
  95. 千葉皓

    ○千葉政府委員 米軍の回答は、先ほど申し上げたようなことでございます。これが何か搭乗員の故意過失あるいは部隊側の故意過失があったということでありますならば、厳重に抗議するに値いすると考えております。
  96. 西村力弥

    ○西村(力)委員 故意過失があったかどうかということは、こちらで調査する権能がありますか。あったならば厳重に調査するという権能いずこにありや。そういう答弁は決してそのまま受け取れない。どうして調査ができますか。
  97. 千葉皓

    ○千葉政府委員 御指摘の通り、わが方としては、向うの調査の結果に依存するほかはありません。
  98. 西村力弥

    ○西村(力)委員 先ほどの答弁は欺瞞するものだといわざるを得ない。調査の結果そういうことであったならば抗議をいたしますとおっしゃるけれども、米軍からの通告、こちらの規則に違反しなかったという通告を受け取って、一方的に処理する立場にあるでしょう。そういう答弁はちょっとやめてもらいたいと思う。そういう調査する権能もないから、安はこれらを取り締る規則がいかにあって、それに違反しないならばそれで十八二だという考え方ではいかぬ。あくまでも日本国民の生命、身体、財産が侵害されることを防ぐという観点に立っての交渉でなければならないのではないか。だからそういう点に立って考える場合において、調査する権能がないとするならば、一体アメリカ軍のそういう事故を大きくしないための取締り規則を十分にあなたの方で検討せられて、その点を改正するなり何なりの方法を講ぜられる必要があるのではないかと思いますが、そういう米軍の規則、空軍の規則ですか、そういうものをあなた方の方は十分おわかりになってそれに対する検討をなさっていらっしゃるかどうか。
  99. 千葉皓

    ○千葉政府委員 米軍側の取締り規則は、その規則を私どももらいまして、日本の航空法による類似の取締り規則と比較検討いたしました結果、米軍の方がわが方のものよりも幾分厳重であるということを承知いたしております。
  100. 西村力弥

    ○西村(力)委員 厳重であるにもかかわらず、現実にそういう事故が起るというのは、やはり日本国民に対する気持、広島、長崎に原子爆弾を落した戦勝者のむぞうさな気持というものが動いているだろうと思う。そういう気持は気持としてあるというのはやむを得ないでしょう。それは人類の良識の発展というか発達によって解決せらるべき問題ですからやむを得ないでしょうが、そういうことであるから、そのことを防ぐ道は、あなた方が日本人の生命、財産を守るのだという立場から、規則云々で手落ちがないという一片の通告だけで満足をされずに強く向うべきである。それを一つ要望したい。  もう一つ考えられるのは、彼らがいろいろな訓練をする場合に、東京の上空をぜひとも通らなければならないという状態に、東京や何かの都市周辺に飛行場や何かを配置していることが誤まりである。どうしても東京上空を通ってするジェット機訓練なんかも、ちょっとおどけた気持でやってしまったりする気持が間々あるのではないか。この米軍飛行場の配置を東京周辺から何とかやめて、東京上空を通らずとも済むような工合に配置することがぜひ必要ではないか。われわれとしては、全部お帰りを願いたいが、そこまでいかないにしても、あなた方も、日本国民の権利を守るという立場から、そういう観点に立つならば、第一に強くそういう主張をやってもらいたい。  それからもう一つは、基地の配置問題についてよほど日本の政府としての考え方を、こういう事故防止を中心とした考え方に立って今後考えらるべきじゃないか、こう思うのです。御所見を伺って終りにしたいと思います。
  101. 千葉皓

    ○千葉政府委員 米日に対する施設提供につきましては、もちろん米軍側の戦略上の要請に基くものでありますが、しかしやはり国民の利益あるいは国民の安全を十分考慮した上で、この可否を決定しなければならないと存じます。個々の施設提供につきましては、御承知のように、政府提供する、しないの決定権を持っておるわけでありますから、従来ともそういう考慮でやってきておるわけであります。今後もそうする所存であります。
  102. 山本粂吉

    山本委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十一分散会