○竹内
委員 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
放送法第三十七条第二項の
規定に基き、
国会の
承認を求めるの件につき、これに
承認を与うべきものと
議決するに賛成の意を表するものであります。
本議案の内容をなすものは、
日本放送協会の
昭和三十一年度
収支予算、
事業計画及び資金計画でありますが、申すまでもなく
日本放送協会は、
放送の全国普及をはかるとともに、
放送を通じて国民の要望にこたえ、文化水準の
向上に寄与することを目的として設置された
放送法に基く法人であり、わが国の
放送事業界において基幹
放送としての使命をになっているものでありまして、本議案は、その
日本放送協会の
事業方針を決定するものとして、まことに重要なものと存ずるのであります。
まず
収支予算についてでありますが、
事業収入の大宗である受信料は、ラジオ月額六十七円、三カ月二百円、テレビジョン月額三百円と、前年度と同額に据え置かれ、また
給与については、本
予算からは、新たに
定期昇給源資が明確に
予算化されている等の
措置は妥当なものであり、
予算規模もおおむね堅実なものと認められるのであります。
委員会で問題になりました
固定資産税の納税額が
予算に計上されていない点は、
予算策定の時期等を勘案すればやむを得ないところであろうと存じます。
次に
事業計画において、その主眼をラジオでは難聴区域の解消、老朽設備
改善及び番組内容の充実に、またテレビジョンについては、札幌外七局の新設、既存設備の
改善整備及び
放送番組の内容充実に置いておりますが、これらの計画は
日本放送協会の使命に照らし、適当な方針であると考えます。受信
契約者数の見積りも合理的で、ことに従前、ともすればそごを来たしがちであったテレビジョン受信
契約者数の算定も、最近の普及状況から見て無理のない見積りと考えられ、また
収支予算、
事業計画に照応する資金計画も適当であると認められるのであります。
以上申し述べました
通り、本議案については、私はこれを妥当とするものでありますが、この際、本議案に関連して
政府並びに
日本放送協会に対して、一、二希望を申し添えておきたいと存ずるのであります。
その第一は、国際
放送の充実についてであります。本議案審議の途上、
委員会でも
委員各位が熱心に主張された
通り、国際
放送の拡大、充実は、国が積極的に推進すべきものであって、国家財政上よりの困難を理由に拡充をちゅうちょし、
改善を遷延し、またその
経費を国内
放送受信者の負担である
日本放送協会の
経費にのみ期待すべきものではないと存ずるのであります。またその
放送効果、並びに受信状況の調査については、従来いささかずさんかつ不徹底ではなかったかと思われる点が多く、せっかく相当多額の国費を費しながら、果して有効適切な
放送が行われているかいなか、判然としないようであります。正しい調査資料がなくて、計画を策定し、またその計画を実施しても、真に効果的な
放送は期待できないのであります。
政府においては、以上申し述べました諸点を考慮し、みずから責任をもって実情を調査するとともに、その調査に基いて、
放送の指向方向を決定し、周波数の割当を行い、かつまた真に有効なる
放送をなし得るだけの
経費を交付せられたいのであり、一方実施を担当する
日本放送協会においては、所期の成果をおさめ得るよう、全機能を上げて御
努力願いたいと存ずるのであります。
次に希望いたしますことは、
放送に関する技術の振興についてであります。
放送技術が日進月歩の発達を続けていることは御案内の
通りで、
放送文化の恩恵をあまねく国民に均嘱せしめるには、常に
放送技術の進運におくれないよう、不断の研究を要することは今さら申し上げるまでもないところでありますが、わが国の研究施設ははなはだ貧弱で、
日本放送協会の技術研究所が唯一の総合研究機関としてあげられるのみという実情であります。しかも
日本放送協会の技術研究所は、建前としてはあくまで
日本放送協会の内部機関であり、その研究方針は
日本放送協会の必要に基いて決定され、またその研究結果は発表を義務づけられておるわけではないのであります。
日本放送協会として、その研究結果を公開することに努めているとは思いますが、テレビジョン時代に入ったわが国の
放送界は、現状をもっては満足するものでなく、
放送技術研究所の機能による研究結果を、
日本放送協会以外の利用に供することを強く期待しており、技術研究所を
日本放送協会から分離して独立機関とすべしという論さえあるのであります。分離論の可否については後日の論に譲りますが、ただ現状において、すなわち現行法のもとにおいて、技術研究所の機能を全
放送事業界のために利用できる道があるにかかわらず、利用されていない点を指摘いたさねばなりません。すなわち
放送法第三十四条は、
政府は
放送の進歩発達に必要な研究を命令できると定め、同法第三十五条は、右の研究に必要な費用は、国が負担すべきことを
規定し、明らかに今日、技術研究所が期待されているような状況に備えて
法律ができておるのでありますが、法制定以来いまだかつてさような技術研究についての
政府命令が出されたことがない。
当局は、国家財政の実情がこれを許さなかったとしておりますが、
放送事業界の現状、特にテレビ
事業の現状及び将来を展望すれば、技術上幾多の重要にして未解決の課題があるのであって、今や財政の逼迫をたてに逡巡しておるべき時期でなく、
政府においては右費用の捻出について格段の配慮をなし、
日本放送協会においても右の趣意を含んで、
放送界全般に視野を広げて研究の実施に当られたいとこいねがうものであります。
最後に希望しておきたいのほ、テレビジョンの地方普及についてであります。
電電公社のマイクロ回線も来年度には一応全土縦断が実現し、続いて中小都市への支線の建設が始まるようであり、一方テレビジョン工業も受信機の量産態勢の整備がようやくできたようであり、受信機価格の点においてはまだ大衆的価格に安定したとは申しがたいが、先行きとしては価格引下げの工夫が期待される状態にあると思うので、来たる
昭和三十一年度はテレビジョン
事業にとっては、普及が軌道に乗って一大飛躍の年になるものと考えられるわけであります。これらの状況に応じて郵政
当局も、全国的なテレビジョン・チャンネル・プランの決定を急いでおるようでありますが、この時期に当り特に要望しておきたいのは、テレビの地方普及の促進であります。とかく文化の恵沢におくれ、知識にも誤楽にも飢えている地方にとって、テレビジョンが及ぼす効果は、豊富な刺戟に満ち満ちている都会とはとうてい比較にならないのでありまして、テレビジョンに対する渇望もまた尋常ならざるものがあります。この間の消息をるる申し上げる必要もないことでありますから省略いたしますが、
日本放送協会においては、その使命に照らし、ある程度採算を度外視しても地方普及に努められたいのであり、
政府においてはブースター局サテライト局等の電波割当についても、格別の配慮をいたされたいと存ずるのであります。
以上、若干の希望をつけ加えまして、本議案の
承認に賛成の意を表するものであります。(拍手)