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1956-07-27 第24回国会 衆議院 地方行政委員会 第56号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年七月二十七日(金曜日)     午前十一時四分開議  出席委員    委員長 大矢 省三君    理事 亀山 孝一君 理事 鈴木 直人君    理事 永田 亮一君 理事 吉田 重延君    理事 北山 愛郎君 理事 中井徳次郎君       青木  正君    加藤 精三君       川崎末五郎君    纐纈 彌三君       櫻内 義雄君    渡海元三郎君       徳田與吉郎君    灘尾 弘吉君       丹羽 兵助君    福井 順一君       山崎  巖君    加賀田 進君       川村 継義君    五島 虎雄君       坂本 泰良君    櫻井 奎夫君       西村 彰一君    西村 力弥君       門司  亮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 太田 正孝君  委員外出席者         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁長官官         房財政再建課         長)      長野 士郎君         総理府事務官         (自治庁行政部         長)      藤井 貞夫君         総理府事務官         (自治庁財政部         長)      小林與三次君         総理府事務官         (自治庁税務部         長)      奧野 誠亮君         総理府事務官         (自治庁財政部         財政課長)   柴田  護君         大蔵事務官         (理財局地方資         金課長)    堀口 定義君         文部事務官         (大臣官房総務         参事官)    齋藤  正君         文部事務官         (調査局宗務課         長)      近藤 春文君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 岡田 孝平君         専  門  員 圓地與四松君     ――――――――――――― 七月二十七日  委員小澤佐重喜君、森清君及び中村高一君辞任  につき、その補欠として福井順一君、加藤精三  君及び西村力弥君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員加藤精三君、福井順一君及び西村力弥君辞  任につき、その補欠として森清君、小澤佐重喜  君及び中村高一君が議長指名委員選任さ  れた。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  地方自治法施行令に関する件  地方財政再建及び観光施設税創設に関する件     ―――――――――――――
  2. 大矢省三

    大矢委員長 これより会議を開きます。  それでは地方自治及び地方財政に関して調査を進めます。昨日委員からの御希望もございましたので、本日は大蔵省堀口地方資金課長、それから文部省から近藤宗務課長、それから岡田文化財保護委員会事務局長が来ておられます。なお閣議が終りましたらば太田国務大臣が出席されるそうです。きょう特に奥野税務部長も出席されております。  今度新しく大阪から赴任されました藤井行政部長を御紹介申し上げます。
  3. 藤井貞夫

    藤井説明員 ただいま御紹介を賜わりました藤井でございます。このたび自治庁行政部長を拝命いたすことに相なりました次第でございます。しばらく地方におりまして中央の状況とは疎遠になっておることをおそれておる次第でございますが、微力を尽しまして大いに勉強をいたしたい、かように考えておりますので、委員皆様方には格別の御指導と御鞭撻をお願いいたしたいと考えている次第でございます。一言ごあいさつを申し上げます。(拍手)
  4. 大矢省三

    大矢委員長 では、昨日資料として配付せられました地方自治法施行令の一部を改正する政令案要綱について小林財政部長から説明を願います。
  5. 小林與三次

    小林説明員 便宜私から政令案中身を御説明申し上げたいと思います。お配りいたしました政令案要綱でございまして、本物の政令はもう閣議できまりまして公布手続中でございますので、三十一日には間違いなく公布になるはずでございます。この政令案前段の方はもう大した問題はないと思いますが、問題は四の例の五大市に対する事務移譲の問題で、これについてだけ御説明を申し上げたいと思います。この四の五大市事務移譲につきましては、最後参議院におきまして政府基本方針を明らかにいたしたのでございますが、この基本方針にのっとりまして、政令政府部内におきまして調整をして決定いたしたのでございます。この四に掲げてございますのは、その当時国会で言明した中身でございます。ここに書いてあるこれ以外の事務は、一切五大市移譲する、こういうことにいたしたのでございます。  ちょっと読み上げますと、「四 地方自治法第二百五十二条の十九第一項の規定により、指定都市又は指定都市市長その他の機関処理し又は管理し及び執行する事務は、同項各号に掲げる事務の中左に掲げる事務を除くものとし、これに伴い必要な規定整備を行うものとすること。(一) 市の区域を超えて統一的に処理しなければならない事務 1 保母試験に関する事務。」この保母試験は、試験というものの性質上府県一本でやるべきだということで、府県に残すことにしておるのであります。「2 伝染病流行し若しくは流行の虜あるときその伝染病疑似症に対し伝染病予防法の全部又は一部の規定を適用すること。但し、指定都市においても、適用することができるものとすること。」これは法定伝染病以外で疑似症が出ました場合に、伝染病予防法を適用するか適用しないかという問題がございまして、これは法律適用の問題で、一部、全部を問うべき問題ではございません。そこでこの仕事府県に残すことにしたのでございます。しかしながら指定都市において適用することができるものとし、府県に一般的に残しましたが、指定都市自体でも指定都市内部指定都市だけに発生する場合もあり得るので、これを指定都市もダブってやり得る、こういうことにいたしまして、事実上指定都市もやれることになったわけでございます。  次は「(二) 府県全般にわたる統一的な基準の設定に関する事務 1 飲食店営業その他公衆衛生に与える影響が著しい営業施設につき業種別公衆衛生の見地から必要な基準を定めること。但し、指定都市においては、その特殊事情による必要な基準を附加して定めることができるものとすること。」これは2と関連しておりますから、一括して御説明いたします。  2は「興行場旅館及び公衆浴場換気採光、覇、防湿及び清潔その他公衆衛生上必要な措置につき条例基準を定めること。但し、指定都市においては、その特殊事情による必要な基準を附加して定めることができるものとすること」。1は食品衛生法にいう公衆食品衛生についての営業規制ということであります。それから2はいわゆる営業立法興行場浴場旅館についての営業規制規定でございますが、そのうちで全般的な基準を定める事務一つ。つまり三営業の部に書いてあります換気採光その他の施設についての規制条例できめることになっております。それとその条例に基いてここの許認可の処分あるいは取り消し処分あるいは検査の処分、こういうものがあるのでありますが、そのうちで条例事項は、これは最低限度府県下を通じて統一的に規定するのが筋じゃないか。それで最小限度基準を定める権限府県に残して一本で定める。これが前段でございます。しかしながら五大府県と申しましても、市部郡部とがございまして、府県で作ればどうしても市部郡部を通じた統一的な最小限度基準を定めざるを得ない。しかし市部におきましては、大都市特殊事情から、さらにこの保健衛生上の要請が強いので、特別な規制を加える必要があり得るのでございます。そこでそういう場合には、その最低基準の上にプラスした基準は市もきめることができる、こういうことにいたしたのでございます。その他この条例に基く自治体執行処分は全部五大市に移す、こういう原則を立てたのであります。なおこの付加基準条例規定し、市が定めるというのは、実は建築基準法に従来から先例もございまして、建築基準一般基準府県で定めるが、それぞれの市町村がその実情によってさらに条件をプラスする、あるいはまた緩和できる、こういう事例もございまして、これは五大市の場合にはプラスする以外は考える必要がございませんので、プラスできる条例にいたしたのでございます。  それから(三)は「府県を通じて一つ施設又は機関で足りる事務身体障害者更正相談所を設置すること。但し、指定都市においても設置することができるものとすること。」身体障害者更生相談所は、これは身体障害、特殊な身体障害者に対する相談サービス施設でございますので、通常は一府県を通じて一個あれば必要にして十分だと考えられるのでございます。それでそれは重複して作る必要がない。しかしながら市の実情によって、これはサービス機関としてなお不足であって、もう一つ作った方がよかろうという場合もあり得るので、そういう場合には設置できる道を開いたのであります。なおこの前参議院で声明を明らかにいたしましたときに、身体障害者審議会という問題がございまして審議会府県に置くが市も設置できるという趣旨規定を入れておいたのでございますが、現在の段階では実際上はむしろ作らせなければいかぬという事例もございましたので、これは移譲することにいたしました。だからこれは国会で声明した以上におろすことにいたしたのでございます。大体これが残すものでございまして、あとは全部おろす。  ただしこのうちで、もう一つつけ加えて申し上げておきますが、伝染病予防法で特にいろいろ法律案審議のとき議論になっておったのでございます。汽車の検疫事務、港の検疫事務、あるいは漁撈制限とか游泳制限という事務がございまして、これは市郡の境界にまたがる場合も当然あり得るのでございます。そういう場合には市だけでやるということは、場合によっては伝染病という特殊な対策上不十分じゃないかということになりまして、最後厚生省と話し合いの結果、市にはもちろんおろしますが、府県もこの市郡の境界にまたがって伝染病が蔓延したり蔓延するおそれのあるような場合におきましては、知事においても今申しましたような伝染病予防法の十八条、十九条の事務で、検疫関係事務漁撈制限あるいは游泳制限等の特殊な制限事務ですが、これは知事においてもそういう市郡にまたがるような場合に処分することを妨げないという規定を残すことにいたしまして厚生省と話を遂げたのでございます。その点だけを報告を申し上げておきたいと思います。  それから次の五番目は、これは委員会であまり議論になりませんでしたが、不要許可の問題、五大市に対する許可事務を緩和するという問題でございます。「地方自治法第二百五十二条の十九第二項の規定により、指定都市又は指定都市市長その他の機関がその事務処理し又は管理し及び執行するに当って、都道府県知事許可認可等処分を要せず、若しくは改善停止等指示その他の命令に関する法令規定を適用せず、又はこれに代えて主務大臣許可認可等処分を要するものとし、若しくは主務大臣指示その他の命令を受けるものとするものは、原則として、指定都市移譲すべき事務及びこれらに類する事務に関する法令並びに五大都市行政監督特例に掲げる法令規定する許可認可等処分又は改善停止等命令をすること。」ちょっと書いてあることがわかりにくいのでございますが、要するに事務は、知事権限仕事は市におろす。それとともに市長処分に対して知事監督権あるいは指示権、そういうものを持っている事務が相当あるのでございます。そうでございますから、事務移譲とともにその不要監督は排除いたしまして、市長に全部まかせるというのがこの二項の規定でございます。今申しましたすべての法律につきまして、こういう原則事務を排除したのでございます。知事指揮監督権を一般的に持っておって、各省大臣が全然関係しておらぬ事務がございます。そういうものは五大市につきましては全部はずす。それからそうでなしに、府県がやる場合には各省大臣監督権を持って、市町村がやる場合は知事が持つ、こういう場合がございます。そういう場合は、五大市府県並みに扱いまして、知事監督にかえて各省大臣監督にする、こういう原則で、要するに府県と同じ体制でいこうというので、いろいろありましたものを全部排除することにいたしたのでございます。そういうことによりまして、政府といたしましては、関係各省の間に百パーセントの了解をつけまして、政令案閣議決定をし、今公布手続を進めている。この点御報告を申し上げておく次第でございます。  なおこれの施行につきましては、最初法律自治法全体は九月一日施行いたしたい。その施行政令も決定いたしております。それとともにこの事務移譲の問題は、施行のときから六カ月以内に事務の引継ぎをしなくちゃならないという規定法律にあったのでございますが、九月できまって六カ月となりますと、例の三月一日までになるのでございます。しかしながらこの政令の話も早くつきまして、方針がきまった以上は、むしろなるべく早く事務移譲をやった方がお互いにいいんじゃないか、そういうことで政府部内で相談いたしました結果、十一月一日までに事務移譲を完了する、そういうことを政令に明らかにいたしてございます。こうした後直ちに五大市五大府県お互いに協議いたしまして、事務移譲手続を進めて、十月一ぱいに完了いたしたい、こういう考えでおりますので、その点も御報告申し上げておきます。  なおこれに伴いまして、これからどういう人間がどういくかというようなことは、それぞれの団体で協議によってきめざるを得ないと思うのでございまして、その職員身分の異動に伴う給与その他の調整などのことは、法律にも書いてありましたから、政令にもそれを受けて、身分、本人の地位は十分に確保する。恩給その他は通算するようになっておりますから、この点も御了承願いたいのでございます。  それからもう一つこの自治法施行令で申し上げたいのは、例の都道府県国家公務員義務教育職員との間の恩給通算並びに都道府県市町村間において恩給通算に努めるという趣旨規定が入ったのでございまして、実はその関係政令をもあわせて出したいと思っておりましたが、これは技術的になかなかめんどうな点がたくさんございましたり、恩給局との折衝がまた時間がかかっておりまして、今度はちょっとすぐに間に合いませんでしたので、恩給の部分以外は全部施行令を出しまして、恩給は今さっそく話を進めております。おそくとも八月中に話をつけまして通算政令を出したい。これは多少おくれましても恩給は追っかけてやればいいのでございますから、その点技術的にも支障がないので、一応二段がまえにすることにいたしたので、この政令には乗っかっておりません。その点も御報告を申し上げておく次第でございます。
  6. 大矢省三

  7. 鈴木直人

    鈴木(直)委員 ただいま説明を受けましたのは、かつてわが党としても決定した線でありますし、委員会においても了解を得た線だと思いまするからいいとしまして、第六に「指定都市の区に、区長区助役区収入役区出納員及び区分任出納員を置くとともに、これらの職員並びに区の選挙管理委員会に関する規定整備すること。」ということになっておりますが、この点については実は初めて聞くわけなのです。今度新しく制度をきめるということでありますが、現在の指定都市の区はこの通りになっておるのか、現在はどんなふうになっているか、現在なっているものとこれとがどういうふうに違うか、その点を明らかにして説明をお願いしたいと思います。記憶によりますると、区長はありますけれども指定都市におきましては市の出張所のような形において置かれてあって助役とか収入役とかいうようなやや市に準じたようなていさいは、まだ行われていないのではないかというふうに思うのであります。これによりますと、東京都における特別区――もちろん議会はありませんが、特別区にやや類したような、出納独立性も相当認められておるようでありますが、現状とこの指定との差異を伺いたい。
  8. 小林與三次

    小林説明員 これは現状と全然一緒にしてございます。これにつきましては改正をほとんど加えることをやめました。と申しますのは、現行法では、政令指定する五大市につきましては行政区の規定を準用するということになっておりまして、行政区というのは例の特別市の中の区でありますが、自治法で実はこういう規定がみな乗っかっております。今度特別市の規定をはずしましたから一応落しまして、そうして区に特例を設けることになった、それをそのまま持ってきたということになっております。
  9. 中井徳次郎

    中井委員 きのう配付されました資料に基きまして、再建整備の問題で二、三お尋ねをして、あと時間がありましたら町村合併のことをちょっと伺ってみたいと思います。  再建整備事務手続が済みました一覧表をいただいたのでありますが、府県においては九、市においては二十一、町村が二十七というふうになっております。実は私どもの伺うところによると、大へんたくさんな申請府県市町村がしたようでありますが、五月の三十一日が締め切りであったと思うのです。それからニカ月たちましてわずかに府県で九つ、市で二十一というような進捗の仕方で、これでいいのでしょうか、どういうところでそういう事務が停滞しておるのか、その辺のところをちょっと伺っておきたい。
  10. 小林與三次

    小林説明員 ごらんの数字はまことに多くないのでございますが、その事情は、昨日も私申し上げましたが、大半は自治庁で今現地お互いに折衝して審査中の問題もあります。それから現地自体でも具体的の再建計画がまとまっておらぬ、だから、正式の申し出の申請はございましたが、計画自体がそれぞれ団体内部において調整がついておらぬという問題もございます。せっかく自治庁にきたものにつきましては、一日もすみやかに処理を進めたいというので、自治庁も勉強し、また大蔵省へ行けば大蔵省の方でもそれに御協力願うようにさっそくやっておる次第でございます。
  11. 中井徳次郎

    中井委員 今お話がございましたが、この赤字団体は、資金繰りその他の面において火のつくように困っておると思うのです。従いまして、最初この案が出ましたときには、この案が出ると非常に地方自治体の自主性がそこなわれる、これは私どもの持論でありまするが、もっともだということになりまして案外財政再建整備申請をする府県市町村が少かったように私は伺った。そういたしますると、自治庁の方では、いやそういうものではない、これは大いに温情をもってやるのだというので、来る人にそういう説を説いたとみえまして今度は逆に非常にふえた。私も知っておりますが、自治庁の廊下には非常に各団体から人が参りまして、陳情、書類整備その他で一ぱいであった。それが過ぎると、今度はまた書類審査がなかなかどうも進まない。どうも私ども最初考えましたように、書類整備その他の方法が非常に厳重であって仮借なく、しかも詳細な点にわたるまで指導してチェックしていく、そうでないといかぬ、こういう結果になったので事務がおくれておるように思うのであります。承わるところによると、自治庁でOKといった、それから大蔵省にいく、また自治庁に返ってくるというような非常な煩瑣な手数をかけておるようでありますが、どうですか。自治体はあなた方の下部機構ではありません。特に大蔵省関係皆さんにも私はこの点は訴えたいのでありますが、自治体というものはそんな性格なものではないのであります。大きなワクで最低の線をがっちりと押えて、あとは自主的な判断にまかすということが原則でなければならないと思うのでありますが、現在進捗模様を見ておりますと、どうもそうじゃない、非常にこまかく何千円というところまでおりていっているような形跡があります。このようなことをやっておりましてそれは事務としては非常に馬力をかけてはおりましょう、しかし、政治としてこれが果して妥当なものであるかどうか、これは非常に私は疑問だと思います。ちょうど大臣もお見えになりましたが、この点につきまして今私がお尋ねしておるのは、再建整備に関する事務手続が非常に渋滞をしておるということなのであります。こういう点について、もう少し幅の広いしかもがっちりとした――あなた方は数字をこまかく何千円までいかないことには押えられないと考えておる、その考え方にどこか欠点があるのではないか、私はかように思うのであります。こういう点について、きのうも私質疑を伺っておりますとこういうことがありました。山形県や宮城県あたりで災害で非常に困った。山形県はすでに承認を受けております。そういたしますると、災害によってさっそく承認計画を変更しなくてはならぬ、こういうことであるならば、一々皆さんが御丁寧にチェックをされましても、これは絶えず変更の問題が起ってくる。単に事務が煩瑣になるばかりであって大局としては一向どうも意味のないことをやっておられるのではないか。意味がないといえばおしかりを受けるかもしれません。大事なお金のことであるというので厳重におやりになるということなら、それまでのことでありますが、これは皆さん予算をお組みになるわけではないのであります。大きなところで押えられて、それで私は間違いがないように思うのでありますが、この点についての自治庁の御見解を一つ伺っておきたいと思います。
  12. 鈴木俊一

    鈴木説明員 再建計画承認並びに財政再建債許可手続進捗状況を、もっと円滑にすみやかにまた煩瑣にわたらないようにやるべきであるという御主張に対しましては、私ども全くそのように考えておるのでございます。自治庁といたしましても、従来調査課という一つの課が、地方に対する窓口になりまして、具体的に再建計画相談指導にあずかってきたわけでございますが、つい最近財政再建課というものを独立いたしまして、この仕事専従をする、もっとも従来とても調査課と申しておりましたものの、実質は財政再建専従をしておったと申してもよいと思うのでありますが、今回専任の課長をはっきりと定めまして、財政再建仕事の迅速な処理をはかるということにいたしたわけであります。また大蔵省との間におきましては、昨日もいろいろ御心配の御質疑亀山委員等からもあったようでありますが、一般的な方針といいますか、基準というものにつきましては、あらかじめ十分これを打ち合せまして、その基準に従って個々の審査はできるだけ自治庁にまかせてもらうという考え方で話を進めておるわけでございます。ただ実際問題といたしまして、具体的な地方団体について、ややめんどうな問題が起ったというような例もあるわけでございますが、そういうようなことも今後できるだけないように、一般的な原則によって事がさばかれるようにいたして迅速な処理をいたしたい、かように考えている次第でございます。
  13. 太田正孝

    太田国務大臣 今次長が申された通りでございますが、中井さんのおっしゃる点は、結局魂の置き方が問題だろうと思います。結局予算でこうきまっておって、これを実際に当てはめるについて、考え方を少し政治的――と言うと少し大きくなりますが、広い考えでこの制度の精神にかんがみてというお言葉と思いますが、その点はしかと自治庁に関する限りは御趣意を徹底するようにして急がすことにいたします。また私の方で急いでも、大蔵省関係がおくれる場合があるということも御指摘の通りでありまして、この点も大蔵大臣に強く主張するつもりでございます。さよう御了承願います。
  14. 中井徳次郎

    中井委員 今の大臣のお答えでありますが、現実はどうもそうではないようでありますから、特に念を押しておきますが、お願いをいたしたいと思います。それに関連をいたしまして、私は数日前に、国会から出しております雑誌でありますが、それをちょっと見ましたところが、京都府の計画承認に対する計画書が出ております。それに対するある有志の詳細なる解剖がありましたが、それを拝見いたしますと、京都府におきましては、これは何年か、八年間でありますか、再建年数がかかる。それがだんだん見てみますと、最後の年になればなるほど投資的な経費が毎年々々非常に減ってきております。これはどういうことであろうか、私も非常に疑問に思ったのでありますが、現実にそういうような形になっておりますので、これを一つお聞きいたしたいと思います。
  15. 長野士郎

    ○長野説明員 京都府の計画におきましては、過年度に発生いたしました災害がたしか三十四年ごろで終ることになっておりまして現年度以降の新しい災害については計画上見込んでおりませんので、事業量としてはそれが相当大きく減った形になるようになると思います。それから公債費も多少上っております。そういう関係で後年度においては一応事業量が落ちてしまったような形をとっているというふうになっております。
  16. 中井徳次郎

    中井委員 せっかくの長野君の説明でありますが、京都の災害の関係はあともう一、二年で終ると思っております。従いまして私はあの数字を見てこれは非常に無理をしていると思う。大体投資的経費がここ数年だんだん減っていくというふうなことは、日本の現状から考え、道路の問題、河川の問題、いろいろさまざまなことから考えましてこれはとうてい考えられない。従ってあれは第一号であったろうと思いますが、ああいうもので承認をされるということであれば、あの計画には相当な無理がある。これは私どもがしょっちゅう言っておりますように、何としても地方自治体の自己財源をふやさない限り、帳面づらははなはだ合う、あるいはまた計画としては、皆さん大蔵省のエキスパートがいろいろチェックされましたので、それは非常に厳重な詳細な計画になっておるかもしれませんが、現実の前には一ぺんに押しつぶされてしまうというような感じを持ったのであります。そこでお尋ねするのでありますが、あの計画で行かれまして年度末に多少金が余りましたら、それはどういうことになりますか。再建年数十二年というのを十年に短かくするとか、あるいは余りました金を投資的なものにやるとか、この点についての自治庁としての一定の方針がおありかどうか、あるいはまたそれは一にかかって地方自治体の自主的な判断にまかすということになっておるのであるかどうか、この点は非常に重要だと思いますので、一つお答えがいただきたいと思います。
  17. 小林與三次

    小林説明員 大体の考え方は、これは現状を基礎にして計画を作っておりますから、長い先のことは事情もいろいろ変ってくるだろうと思います。その場合に今の余剰の財源ができました場合には計画を繰り上げるかどうかという問題で非常に長い計画を一応考えておりますが、それ以後でも事情によっては考えなければなりませんが、非常に長い計画のものは計画を短縮するという問題を考えております。そうでないものはいろいろ具体的な事情によって考えなければなりませんが、投資的な事業その他の団体が自主的に判断する事業に回してもいいというふうに考えております。そういう場合に一々承認か、許可かという問題になりますが、計画自体の軽易なものは自主的にやっていい建前にいたしておるつもりでございます。
  18. 中井徳次郎

    中井委員 今の御答弁でありますが、軽易なものと重要なものに対する基準、そこまではお考えになっておりませんか。私どもの見解では、一応政府承認されましたならば、あとそういう余剰財源が出た場合には、これはせめてそれだけは一つ自治体の自由にまかすべきであるという考え方をしたいと思うのでありますが、この点についてちょっと大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
  19. 小林與三次

    小林説明員 大体の基本的な気持はそういうものでございますが、しかし変更の度合いと申しますか、後年度に影響の及ぶものも当然あり得るのであります。計画全体に本質的な影響があるというふうな程度のものは、これはやむを得ないと思っております。
  20. 中井徳次郎

    中井委員 私は一つの事実でもってお尋ねしたいと思うのでありますが、東北方面のある県及び市においては近く非常に大きな工場を誘致するというふうなことで話が進んでおる、ところが再建団体指定を受けましたものですから、工場誘致に伴いまするこれまでの工場側との契約を破棄せざるを得ないようになった。具体的に言いますると、固定資産税などの免除とまではいくまいけれどもあと建設の二、三年に関する限りは、一つ奨励金か何かの形で還付しようとか、いろいろな話し合いが出ておったようでありますが、再建整備を受けたためにそれができなくなる、できなくなるということになりますと、その都市はますます貧弱になっていく、こういう具体的な事例がはっきりと出ておるのであります。そういう面についても、自治庁はどういう考えであるか。もう少し私はそういう点については、やはり自治庁の本来の性格から考えて、大いにそういうことにならないような指導をなさるべきである。方法は私は幾らでもあろうと思います。税金を免除するなどということは元来正しくないことでありまして、私は終戦後できました各都市の工場誘致に関連するああいう話については反対であります。しかしそのかわりに、それを見合いにして適当な措置を講ずるということは非常にけっこうであるというふうな考え方を持つものでありますが、具体的にそういう問題にひっかかりまして、工場誘致がどうも成功するかしないかというふうな問題にまで、影響があるような事態が起っておるように伺っておるのであります。そういう問題について自治庁はどういうふうな考えでありますか。これは一つの例にすぎませんけれども、再建団体になりましたために、そういう問題についてはその府県市町村が萎靡沈滞をするというふうなことがあっては、まことにお気の毒であろうと思いますので、ちょっとお尋ねを申し上げる次第であります。
  21. 鈴木俊一

    鈴木説明員 工場誘致等をはかりまして、団体の繁栄をはかりたい、こういうことは地方団体計画をしておるわけでございまして、そういう場合には何か奨励金を交付するというような形で、実質的に固定資産税をしばらくの間免除する、あるいは事業税をしばらく免除する、こういうようなかっこうの措置を条例をもって定めておるところがあると思います。再建計画を作ります場合には、やはりあくまでも自主的にこれを作ることを認めております。従って個々の具体的の団体実情に即して、たとえば先年誘致をして参りました工場の税収が、今後三年目から税金が入ってくるというような場合には、そういうものを現実に即して収入の上に計上して、再建計画を立てる、こういうようなことを実際にやっております。また新しく設置する場合におきましても、条例規定に基いての歳出なり歳入なりというものを、それぞれそれに見合って計上する、こういうことで、やはり事態に即した考え方に立っているのであります。ただこの際従来免除いたしておりましたものをもうやめる、再建団体になったから、とてもそういうことはできない、こういうようなところもあるいは理論的には考え得るわけでございますが、しかしそれはそうした方がその団体としてはより有利であるというふうに自主的に決定した場合に、そういうことになると思うのでありまして、やはり当該団体のあくまでも自主性を基礎にして、工場誘致等の問題も、再建計画との関連も考えて参りたい、かように考えておるのであります。
  22. 中井徳次郎

    中井委員 今の鈴木氏の答弁でありますと、市や府県でもって条例を作っておって、それをやりたいといえば、自治庁はそこまでは押えておらぬというわけでありますか。そういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  23. 鈴木俊一

    鈴木説明員 実際そういうふうに作ってありますところに対しまして、それを押えるというところまではやっていないと思います。
  24. 中井徳次郎

    中井委員 ちょっとその点はおかしいのでありまして、私はきょうは具体的なことは申しませんが、これは東北のある市でありますが、再建団体指定をされるので、せっかく条例は作ったけれども、それができないのだというふうなことで、工場側は非常にあわてているというふうなことを伺っております。これはこの席でこれ以上は申しませんが、そういう御方針であるならば、どうぞ一つその方針を貫いてもらいたいものであると私は考えております。  それからこれに関連をしまして、せっかく再建案を作ったけれども災害があるとすぐに変更せなければいかぬというふうなものとも関連があるのでありますが、先般国家公務員に対して人事院が勧告を出しました。この点について勧告が出ましたならば地方公務員もおそらく右へならえということにならなければならぬと思うのでありますが、この点について政府はまだはっきりとした方針がお立ちになっておらぬようにも伺いまするけれども、どうでございますか。国家公務員において何らか手を打つということになれば、地方公務員においてもこれを考えていかなければならぬと思うのでありますが、自治庁長官とされまして、いつも国家公務員地方公務員との間に線を引かない、こういうことが大方針のように伺っておるのでありますが、この点についての大臣の率直な気持を一つ聞かしていただきたいと思います。
  25. 太田正孝

    太田国務大臣 先般人事院が勧告をした国家公務員に関する問題は、きょうも閣議で出ましたけれども、まだ決定しておりません。あの勧告の中にある問題と、今中井さんの御質問になった問題と関連があるかとも思いますが、地方公務員の方は高いのだから、この際これに即さなくていいというふうなお言葉がありましたが、これは私は反対でございます。そう思いません。これは一部の府県あるいは一部の市でありますと高いものもございましょうが、平均論をもってかように言うことはできないじゃないか、ましてや交付団体、不交付団体の関係もございますし、しかも昨年の一月十日現在をもっての調べでは、国家公務員より地方公務員の方が高いところがある、これは事実に出ております。けれども一年余りの月日を経ているのでありまして、一回昇給を延ばしましても相当に差が出てきますので、実際におきましてかようなことはできないということが一つと、もう一つは、再建計画の中におきましては、御承知の通り国家公務員の給料によって実員をかけておりますので、その国家公務員の給料が上りますれば、右へならえの原則を当然受くべきものであり、再建計画は直さなければならぬと考えております。ただいまのところどういうふうにこれを処理するかという国家公務員関係はきまっておりませんが、地方公務員関係と国家公務員関係についての財政関係は、かようなふうに私は考えております。
  26. 中井徳次郎

    中井委員 今の大臣の答弁は自治庁長官として当然のことであろうと思うのでありますが、しかしそれはまだ閣議了解は得ておられないのでございますか。その点のところをもう一つ
  27. 太田正孝

    太田国務大臣 国家公務員関係もきまっておりませず、地方公務員の方もきまっておりません。ただ私の意見としては今日もそのことを述べてきたような次第であります。
  28. 中井徳次郎

    中井委員 この点、国家公務員との間に区別をつけないという点においては、少くとも一つがんばってもらいたいと思うのであります。  人事院勧告の線でいきますと、国家公務員で所要の経費といたしましては、年額どれくらいになるお見込みでありますか。これは事務当局から伺います。
  29. 小林與三次

    小林説明員 あの人事院勧告通りだと国家公務員については人事院の数字では六十九億という数字が一応出ておるのであります。それからそれに見合う地方公務員、これは元がどうなるかよくわかりませんので、私の方でまだ試算中でありますが、それをそのまま人事院の計算方法で一応伸ばしてみますと、総額二百五十四億という数字が――これは交付、不交付全部入れた数字でございまして、これは義務教育職員の負担金の補助金の問題、国庫補助職員、負担金支弁職員を全部入れて計算した数字でございます。しかしそういうものは国庫補助関係として国庫から支出されますので、そういうものをそれから除きますと、地方公共団体としては百九十八億円くらいの数字が出やせぬか、そのうちで交付、不交付に分けますと、交付団体は大体百五十億円ちょっと、不交付団体が四十四、五億というような一応の概算でございます。これは、今の人事院の勧告は御承知の通り新しい号俸への切りかえとともに、特別手当〇・一五というものも入っております。これらをみんな計算した数字であります。
  30. 中井徳次郎

    中井委員 もう一つ念のために伺うのでありますが、そうなりますと結局地方自治体の負担になるものは、非常に厳格に計算して二百億ですか、そうして不交付団体を除くと交付団体はぎりぎりのところどれだけの経費がかかるか、財政計画に影響のあるものはどれだけであるか、あるいはまたそれをやることによって不交付団体が交付団体に変るというふうなことも私はあり得るのじゃないかと思いますが、そういう面でぎりぎりのところ、どれくらいのものであるか伺っておきたいと思います。
  31. 小林與三次

    小林説明員 今までの数字の概算で申しますと、ぎりぎりのところで交付団体分が百五十三億という一応の数字が出ます。その結果交付団体から不交付団体に移る団体もあるいは具体的にはあり得るのであります。そこらは研究いたしております。
  32. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 今の中井君の質問に関連いたしまして、地方によっては昇給昇格の延伸をしておるところがあるわけであります。かりに国家公務員に対する人事院の勧告が実施されたといたしまして、そのような処置をとっておるところの地方団体地方公務員と国家公務員との間における非常な不均衡、こういう点について自治庁ではどのように考えておられるか、大臣の御所信をちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  33. 小林與三次

    小林説明員 ちょっと先に答弁さしていただきたいと思います。これは今度の新しい勧告の有無にかかわらず、同じような問題が出ておるのでございまして、われわれといたしましては国家公務員並みの給与を地方の財政上保障するという建前をとっておりますが、個々の団体で給与の上げ下げは御承知の通り地方の公共団体にまかしております。財政計画上は必ず国家公務員並みのものを確保いたしたい、そういう方針で努力いたしておるつもりであります。
  34. 中井徳次郎

    中井委員 今の御答弁で大体数字はわかったのでありますが、困難な地方財政の中にありまして、百五十三億という数字は相当の数字であろうかと思うのであります。そうなりますとやはりまた平衡交付税の問題とか、あるいは税制改正の問題とも大いなる関連を持ってくると思いまするが、自治庁長官は前の国会におきましては昭和三十一年度において相当な財源を見た、しかしこれの仕上げは一つ三十二年度にやるというふうなことでありましたが、昭和三十二年度には少しまだ早いかもしれませんが、税制改正につきまして自治庁として案がもうだんだん固まりつつあるのではないかと思うのでありますが、どういうふうなお考えでありまするか、お考えがありましたら今のところどういう程度のものであるか、お話をいただきたいと思うのであります。
  35. 太田正孝

    太田国務大臣 三十二年度の問題こつきましては、国家財政、地方財政ともに関連を持った問題でございます。ただいまその問題につきまして政府としても考えておる最中でございますが、私は地方財政の建前からいえば、国家財政の実際に下に仕事をおろして行う場合に、みな地方財政にかかって参りますので、地方財政現状というものは相当に苦しいものである、しかも赤字団体においては給料の値上げもとめておるといわれ、実に涙ぐましいような事実を各地において見ておるのでございますが、そういう点を考えると同時に税制についても十分工夫していかなければなりませんので、御承知の税制調査会におきまして三つの部に分れて、地方財政の部はたしか二週間前ぐらいでしたか――だんだん始めておりまして、きのう、おとといは実地調査に千葉、茨城の方に行ったような状況で、まだ固まっておりませんです。けれども国の経済が御承知の通り、船で言えば底の浅いところから底の浅くないところまで来たというのが一般の観測でございます。また経済白書の中におきましても、日本の経済生活は戦前戦後と分けた場合に戦後時代は去った、しかし底は深くなった、戦後時代が去ったといっても、ここでどういうふうにかじをとっていくかということは、国家の経済及び国家財政の問題であり、これをまた裏打ちしていく、また裏打ちされる地方財政の問題がからんで参りまして、ただいまそれらを一括して政府としても勉強しておるような次第でございます。
  36. 中井徳次郎

    中井委員 固まっておられぬという、まあそうでございましょうが、ここでちょっと参考までに伺っておきたいのですが、昭和三十年度の全国各府県市町村の大体の決算の模様であります。これは二十九年度に比べまして相当よくはなっておるのではないかと思うのでありますが、これを一つお漏らしをいただきたいということ、それから去年からことしにかけまして私はしょっちゅう申しましたが、自然増収とでもいわれまするか、そういうものが相当あろうかと思うのであります。国税を頂点といたしまして三十一年度あたりは住民税その他にはね返ってくる、かように考えておるのでありますが、そういう点の見通しもちょっと伺っておきたいと思います。これは事務当局でけっこうです。
  37. 小林與三次

    小林説明員 三十年度の決算は実はまだ集まっておりません。これは集まり次第なるべく早くわれわれも集計いたしまして、その結果を報告いたしたいと思います。お話の通り前年度よりはよくなっておるとは考えます。
  38. 中井徳次郎

    中井委員 全部は集まっておらぬだろうが、大体のところはもうわかっておらなければならぬと思う。もう二カ月もたっておりますが、どうですか。別にそれでどうこうしようというわけではないのですから。
  39. 柴田護

    ○柴田説明員 府県市町村を通じまして、全部正式の決算が集まって参りますのは、今ごろから大体ずっと集まって参ります。従いましてはっきりしたことは申し上げられませんけれども、二カ月ほど前に、府県の場合につきましておおよその見通しを県の財政当局者から私が聞きましたところでは、大体単年度におきまして赤字を出すというような団体は非常に減少、むしろ団体によりましては古い赤字も若干解消しておるといったような傾向が見受けられます。なお団体によりますと、逆に赤字がふえたというような団体もあります。これはごく特異な団体でありますけれども、そういう団体も中にはございます。
  40. 中井徳次郎

    中井委員 ちょっと参考までに伺いたいのだが、その赤字がふえた府県というのはどういう県でございましょうか。
  41. 柴田護

    ○柴田説明員 たとえて申し上げますと大分県であります。結局一般的に申し上げますと、あの県はずっと黒字で参った県でございますが、やはり三十年度に税収入の見積りを誤まったことがおもなる原因だと思います。
  42. 中井徳次郎

    中井委員 財政関係のことはこの程度ですが、ちょっと最後に私、町村合併の問題で伺っておきたいのですが、よろしゅうございますか。
  43. 大矢省三

    大矢委員長 どうぞ。
  44. 中井徳次郎

    中井委員 町村合併は大体順調に進んでおるというようなことでありましたが、いよいよ九月三十日で促進法案の期限が切れるわけでありますが、どうでございますか、今残っておりますものについて特に私がお尋ねいたしたいのは、府県境界にあるような村で、そうして非常に住民の意思は他の府県にむしろ行きたい、ところが府県側においてこれを押えているというようなことのために、もやもやといたしまして、一向にはかどらない、関係の府県におきましてもそれに対する計画を一向に出さない、計画を出せば反対される、それで黙っておろう、これを九月三十日までほおかむりでいって、そして強引にどうも境界変更されると困る、少しでも減ると困るというような、まあ領土争いのような、非常に封建的な考え方から、住民の意思を故意に束縛をし、そうして遷延をしておるというふうな村が相当あるやに私は伺っておるのであります。これは府県知事の立場からすれば、一応うなずけることではありましょうけれども、どうも日本というこんな小さいところでそんなことを言っておっても、とうてい私は町村合併の円満な進捗などはありそうにないのでありますが、そういう点について自治庁は一般的にどういうお考えであるか、それをちょっとこの際伺っておきたいと思います。
  45. 小林與三次

    小林説明員 ちょっと便宜上私から答弁させていただきたいと思います。町村合併は今中井先生のお話の通り、九月三十日を一応のめどにして進めておるのでありますが、従来、今お話の通り府県境の問題は全国を通じますと相当ございます。たくさんというほどではございませんが、かなりございます。これにつきましては、一般的に自治庁といたしまして、やはり県内の合併のめどをまずつけるだけつけまして、どうしても県間にまたがって調整しなくては町村の適正化が期せられない、そういうものは最後に取り上げて調整をいたしたい、こういう考えで進んでおるわけであります。それで県内の問題につきましても、従来県の計画が百パーセントいいとは必ずしも言えぬ場合もございまして、その後の実際の状況によって調節をする必要があろう、そういうので自治庁も今乗り出しまして、実はきょうも近県を集めてやっているはずでございますが、各県の残った町村につきまして、合併計画をもう一ぺん再検討いたしまして、県の計画のいいものはよし、ものによっては調整すべきものは最後の段階ですから調整をして、それもなるべく各県調子の合うように調整をして、そして最後の合併目標をきめたい、こういうことで今進んでおります。そこでこうした県内の合併計画の一応の調整も終りまして、ある程度進んで、どうしても県間に残るものは残ると思います。その場合には最後にそれを取り上げまして、自治庁が中心になってこれは県境の問題ですから、地元だけでは必ずしも話が私は進まないと思う。しかし現に円滑に進んでおる例もあるのでございますが、今までこじれているところは必ずしも地元だけでは進まない問題だろうと思いますので、そういうものにつきましては、最後の段階で自治庁も入りまして県境の問題を調節したい。その基本的な考え方は今中井委員もおっしゃいました通り、それぞれ地元の住民の意思を十分に汲む必要があろうと思います。ただその場合にも、地元でも必ずしも意見がまとまっておらぬ場合がございまして、県は別として町村自身の中でも意見が分れている場合があるのでございます。それでわれわれの一般的な気持は、町村の意見の分れているようなものにつきましては、県境の問題まで中央が乗り出してやるのは行き過ぎじゃないか、大きく言いましてそういう考えでございます。まず地元の町村の意見は百パーセントまとまっている。百パーセントと申しましても、もちろん例外はございますが、その前提で県間の意見がまとまらぬというときにこっちが乗り出していったらどうか、こういう考えでございます。さらにその場合にも、それじゃ地元の町村が百パーセント意見がまとまっておったら、必ずその通りにすべきかということになりますと、これはやはり多少問題がございまして、正直申しまして富裕県に隣接している町村は、おそらくはいいということになれば、どの町村もそれぞれ行きたいという傾向は現にあるのでございます。そうなってきますと、むしろそれは個々の町村の合併というよりも、県間の境界変更と見るべき事態が多いのでございまして、そういうものまでこの際取り上げるのは、私は行き過ぎじゃないか。ただ個々の町村といたしましては、県境にまたがって、隣県にまたがらなければどうしても町村として合理的な合併ができないというものも、地勢、交通その他から必ずこれはあるのでありまして、そういうものを一つ中心にして、思い切って県間の調整をはかるべきだというのが基本的な考え方でございます。その場合でもやはり県の立場から、これは一応考えないといけないのでありまして、県といたしましても、県の行政を総合的に推進していくためには、どうしてもその地域が必要だ、こういうところも私はあり得ると思うのでございます。地勢その他計画を進めたりなんかするために、山奥でも一緒でなくてはいかぬということもあり得るのでありまして、そういう点は特別にある程度配慮する必要があると思います。しかし基本的には町村民の意思とそれを取り巻く客観的な事情というものを基礎にして、最終的にはぜひ調整すべきで、こういう機会には調整すべきものというのが基本的な考え方でございます。
  46. 中井徳次郎

    中井委員 大体の考え方はわかりましたが、町村の意思が百パーセントまとまるということは、現実の問題としては、町村合併の問題いろいろありましたけれども、ほとんどそれはない。ある意味において民主主義でありますから、十人に一人か二人の反対はあり得ると思う。それから私はこの問題について、皆さんが少々急ぎ過ぎた、来年の三月までにみな断を下すというのでありますが、それまでにできますか。今残っておりますのは数は少い。数は少いが少いだけ非常に困難なところばかり残っているわけであります。そういう点について来年の三月までに線を引くということ、私どもはあれについてはまだ少し早いといって反対したのであります。通った以上はやむを得ませんが、どうも少し無理があるように思うのであります。そういう点についてどうでございます、自信を持っておられるのですか。それから百パーセントといいますが、そういう非常に問題のあったところは、やはり住民の意思も分れてしまいまして、あるいは分村の問題などが大きく浮び上ってくるのではないかと思います。そういう場合は最後にはやはり住民の意思というものが私は支配的でなければならぬと思うのであります。府県の都合ももちろんありましょうが、府県の合併でありません、町村合併でありますから、そういう点についてさらに突っ込んだ意見を伺っておきたいと思います。
  47. 小林與三次

    小林説明員 百パーセントと申しましたのは、これは言葉に少し語弊があったと思いますが、もちろんこれは大多数という意味でございます。少数の反対はもちろんあり得ると思っております。しかし県境にまたがるような場合には少くとも県内と同様に、多少は四分六分でもというわけには私は参らぬのではないか、大半の意向が合致しているという前提で事を進めるべきではないかというふうに考えております。  それからもう一つは、さらにその場合に県間を越える分村の問題があると思う。これは当然にあり得ると思います。今までの事例でも、現に今言った岐阜と愛知などというものは県間の分村でございまして最後には分村によって解決すべき事例はあろうと思います。それもその実態に即して考えてよかろうと思います。  それからもう一つは来年の三月まで全部うまくいくかという見通しの問題でございますが、これはきょうからやっております各地方最後の意見を聞かなければ、正確なことは申せませんが、私の大体の今までの見当では、国の計画一つありましてそれに基いて県の方で、もっとそれよりも上回った計画を作っております。大体国の計画の線は、私はおおむね五月前後までいくんじゃないだろうか。そこで県の計画はそれより数百上回っておりまして、この程度のものはきっと残らざるを得ぬじゃないか、客観的に見てそういう条件であります。そこでそういうものは三月までみんな片がつくかといえば、私は必ずしもそこまではいかぬと思っております。そこらにつきまして、先ほど申しました通り計画自体に無理のあるものは、計画から場合によってはずしてしまう。北海道などはずいぶん事情も違いますから、はずすものははずして、だれが見てもやるものをやるということで、最後計画を作りました。そうして三月までということも、これは勧告の期間でございまして、それまでに幾月までということは、私は必ずしも断言はもちろんできぬと思います。そういうことにはならないだろう、こういうふうな大づかみな見当をつけております。
  48. 大矢省三

    大矢委員長 北山愛郎君。
  49. 北山愛郎

    ○北山委員 大臣に簡単な問題を二、三お伺いします。  第一はこの地方制度調査会の問題でありますが、地方制度調査会は第三次の調査会でもって、府県制度の改革を多少やったようであります。ところがその問題を結論を得ないままに今度も任期が切れてしまったわけです。何でも申し送りの事項として府県制度の改革、それから地方債の問題等を懸案事項として申し送ったようでありますが、今までの地方制度調査会の審議状況などについても、この際われわれとしては、また政府としても考えを改める必要があるんじゃないかと思います。この際府県制度の改革なり、あるいは地方自治全体にわたっての百年の大計を立てるのでありますから、一つ調査会の声価を発揮させる意味におきまして、従来の委員について再検討するというようなお考えはありますかどうか、これを伺いたいと思います。
  50. 太田正孝

    太田国務大臣 これまでの地方制度調査会が大へん有益なる御答申を下さいまして、それに非常に助けられつつ、及ばずながら地方行財政の改革をして参ったのでありますが、ただいまお言葉のあった通り、申し送りの問題としての二つの地方制度の根本改革と地方債の問題とは、ぜひ次の委員会において、りっぱな御答申をお願いいたしたい、こう思っております。委員の切りかえのときに参りましたが、もちろん両院の議員の方々、これは法律によって数もきまっておるのでございます。これもぜひ早く充当したい。それからその他の学識経験者につきましても、ただいまいろいろと交渉等をしておる最中でございます。なるべく早く発足したいと考えております。
  51. 北山愛郎

    ○北山委員 従来の調査会が相当の成果を上げ、その調査会の答申について、政府としては相当熱心にこの実現をはかったという点は認めるわけであります。しかし私も調査会の委員として審議に参加した状況などを見ましても、実際の答申案の内容、中身というものはやはり自治庁内部事務局の方で、大体の骨子は作ってしまって、それをイエスと言うかノーと言うか、少しくらいこれを手直しするという程度に調査会が使われておるのじゃないか、私はどうもそういうふうに見えてならぬのであります。従って一つこの委員の人選等についても十分お考えを新たにせられて、そして民間の学者、経験者等においても相当清新な、しかも十分検討しておる学者等もあるわけでありますから、一つそういう人たちを新しく調査会に加えて、もっと調査会自体がその自主的な活動ができるように御考慮をいただきたいと思うのであります。  それからもう一つ、昨年の調査会の活動を見まして感ずるのは、調査会といえば根本的な地方制度ないし行財政の制度の改革を腰を据えてやるのが、調査会の本務であるにもかかわらず、その年度の予算を組むについて、場当りの答申を出す、また答申を求めるというふうに、政治的に調査会を自治庁が利用するかのごとくに見えることははなはだ遺憾である。従って今度の申し送り事項の中にも、地方債の問題がございますけれども、やはりこの問題についても、単に昭和三十二年度の予算編成の際に、自治庁の立場を有利にするため、てこを入れるというふうに調査会をお使いになることなく、もう少し根本的な制度を、将来を見通してしっかりとした答申を出させるという気持でやっていただきたいと思うのです。  そこでお伺いしたいのは、府県制度について第二次の調査会におきましてたしか表面には出ませんでしたが、幹事会の案というものがあったわけです。それは、たしか府県を統合して中間団体を作るというような府県統合案であったように思われる。大臣としては、一体府県の将来について、道州制がいいのか、府県の統合がいいのか、あるいは大体現状の事態を基本にしていくのがいいのか、どういうふうにお考えであるか、この際ざっくばらんにお話を願いたい。
  52. 太田正孝

    太田国務大臣 地方制度調査会の運用について、もう少し清新なる空気を送り、委員にしてもまた調査方法にしてもという御注意は私も同感でございます。その心組みをもってやっていきたいと思います。地方制度について道州制の問題が出ましたが、私自身も今踏み切るところまで行っておりません。これは白状申し上げます。よく調査会の意見も聞き、また自分も勉強して、庁内の意見も徴して腹をきめたいと考えております。
  53. 北山愛郎

    ○北山委員 それでは次の地方債の問題については、これは大臣も事あるごとに地方財政の対策としては、いろいろ三十一年度においてはやった。ただし地方債の問題が残っておるというふうに御見解を表明されておる。地方債について三十二年度においては、大体どういう格好で地方債の問題を処理していくお考えがあるかと私は思うのです。結局問題が残っておると言われるのですから、残っておる地方債の問題をどういうふうに解決をするつもりであるかお伺いしたい。
  54. 太田正孝

    太田国務大臣 その問題は最も大きな問題で、私は国のいろいろな計画を立てても、地方にこれが流れていって実現をするのには財源の問題になる。財源の問題になる場合に、過去の地方債がどれだけの妨げをしておるかということも考えなければならぬ。ただ単に国家財政等の立場から各省があれやれこれやれといっても実現できる程度、及び地方の負担力、そういうものを考えてみますと何としても地方債を片づけなければならぬという強い信念を持っております。しからばその地方債の利子補給の方法とか、あるいは借りかえの方法とかその他いろいろな案が、今自治庁の中でも起っておりますが、まだ決定するところまで行っておりません。何としても地方債問題が片づかなければ、これからの地方の行く道につきまして非常な困難を来たすということの事実を認識しつつ、いろいろな案が出ておりますけれども、そういう案をまとめていきたい、こういうように考えております。
  55. 北山愛郎

    ○北山委員 ただいまのお話ですと、要するに地方債問題というものは、民間の地方債元利償還の負担が増高していくという、地方の負担を何らかの方法によって軽減をするんだ、こういうお気持かと思うのです。その際に地方債の一部を国の方で肩がわりをするという方法、それから利子補給をするというような方法、あるいはまた私どもがこの前の国会に提案をした通りに、一部の元金についてこれを数年間たな上げをするというようないろいろな方法があると思うのですが、いずれにしましても昭和三十二年度の予算編成なり地方財政計画については地方団体の公債費の負担を相当程度に軽減をするという気持といいますか、そういう方針でもっておやりになると了解していいかと思うのですが、そうでございますか。
  56. 太田正孝

    太田国務大臣 その通りでございます。
  57. 北山愛郎

    ○北山委員 なおこれに関連して、この公債費負担を減らすというのに、毎年の財政計画上の財源としての公債費、いわゆる地方債の割当でありますが、それを減らすべきであるという意見があると思うのです。昭和三十一年度は多分政府としてもそういうお考えのもとに一般事業債について相当大幅な圧縮をしたわけでありますが、私はこれは必ずしも適当でないんじゃないかというふうに考えておりますが、大臣としては昭和三十一年度において百八十数億の一般事業債の政府資金のワクを減らした、こういうやり方を来年度においてもおとりになる考えであるか、その点はどうなんでしょうか。
  58. 太田正孝

    太田国務大臣 地方債の総額をどうするかという問題につきましては、この前の国会におきまして、私は三十二年度以降普通公債については六百億の限度をこさぬようにしたい、こういうことを申し上げましたが、その点につきましてもなお経済事情の移り変り等を考えまして、もう一ぺん考えてみたいと思いますが、ただいまのところはこの間の国会で申し上げた通り考えでおるのでございます。
  59. 北山愛郎

    ○北山委員 次に、地方財政財政再建について大ざっぱにお伺いしますが、今まで地方財政再建促進法の適用状況を見ておりますと、結局地方赤字団体に対して適用の結果、まず相当増税になってきた、それから事業が相当程度に圧縮された、それから首切りをやった、そういうふうなマイナスの面が非常に出てきておるのです。これは昨年地方財政再建促進法が提案をされたときに、この法案を実施すれば必ず増税、それから事業の圧縮、サービスの低下、それから職員の首切りというようなことが起るんだぞということをわれわれは指摘したわけなのですが、その通りになってきた。私ども実に不思議に思うのは、かりに赤字が実質のものを含めて七百億にしましても、これを解決するなんということは大してむずかしい問題ではないと思うのです。七百億という赤字はこれを七年間にすれば百億じゃないですか。この二十九年度に出てきた累積赤字を処理するならば、かりに六百億、七百億としても、これだけの問題とし考えるならば、それほど何万人の人の首を切ったり、あるいは税金をどんどん上げていろいろな種類の税金を新しく立てていく、あるいは事業がさっぱりできないというようなこんなマイナスの現象を起さなくても、あの程度の赤字であれば私は解決の方途があるように思うので、まことにこれは奇態だと思うのですが、今までの再建促進法の状況を見て、大臣としてはどういう御感想を持っておるか、お伺いしておきたい。
  60. 太田正孝

    太田国務大臣 次長からお答えいたさせます。
  61. 鈴木俊一

    鈴木説明員 二十九年度の赤字は、なるほど御指摘のように七百億足らず、六百四十八億ということでございますが、団体によりましては、さっきも財政課長から説明いたしましたように、三十年度において徳島県等では二十九年度の赤字と同額程度の相当の赤字を出しておるというようなこともございます。また今後の再建期間中において公債費の非常に大きな負担が急激にかかって参りまして、それがやはりその年の半年度だけを取り上げてみますと、あるいは三十三年、三十四年というような一つの年度だけをあげてみますと、相当の赤字が出るということがあるわけでありまして、二十九年度の赤字なり三十年度の赤字なり、あるいは今後の一般の交付税の伸び、地方税の伸びをもっては処理できないような計画年次中の赤字というものを、全部消していくというような考え方再建計画を立てておるわけであります。再建期間の終了年次においては、そういう赤字をみんな解消するという建前であるわけであります。そういうわけでありますから、個々の団体にいたしますと、それらの解消のために非常に大きく圧力がかかるというような団体もあるわけであります。そういう団体は再建期間が十年をこえ、あるいは十二年、あるいは徳島県の十五年というようなことになるのでございまして、いろいろな増税、超過課税とか法定外普通税のような形で現われております団体におきましては、そういう異常な強い圧力がかかっておるというような団体が普通であります。大体の状況はそういうことでございます。
  62. 北山愛郎

    ○北山委員 しかし先ほどもお話があったのですが、昭和三十年度、今年度の赤字はふえないということでありましたし、また地方債の元利償還の負担がふえてくるのだということになれば、これは地方債の問題として今大臣のお話の通りの方法で別途解決すればよいのだということであるが、そういうことをやらないでおいてそうしてあの再建促進法で何とかつじつまを合せようと思うから、おそらく実際には必要と考えられる以上の圧力、苦しみを地方団体に与えておるのじゃないか。こんな状態で五年も七年も赤字だけをなくするために税金だけをどんどん高くして、仕事はさっぱりしてくれず首は切るということでは地方団体は浮ばれないと思います。だからこういう事態を自治庁としては何とか直す考えはないのか。たとえば今地方債については何らかの措置をとるというようなお話がございましたが、そういうことになれば、当然すでに適用になっている再建団体に対しても、これの計画変更にもなるし、そういういろいろの形で何とか今のような八方ふさがりの、ただ財布の帳じりを合せるということにおいてきゅうきゅうとしてやっておるような今の情ない地方自治体の状態を何とか解決、解消するということが大事じゃないか。何か考えはないでしょうか。
  63. 鈴木俊一

    鈴木説明員 今申し上げましたような実情でございますが、これは各団体のそれぞれの自主的な決定ということを建前にいたしておりますけれども、先ほど申し上げましたように税収等でいわゆる伸び等を見ます場合に、新しい控除ができるということが確定しておるものについては、そういうものを将来の年次においても見て参りまして、それらを財源の中に組んで考えておるのでございますが、何と申しても再建をほんとうに確実に行わしめますためには、見積りが非常に甘いということでは結局再建が成り立ちませんので、どちらかと申せば非常にかたい見方をしているわけであります。先ほどもお話がございましたように、最近の経済状況の好転というようなことで、地方税も今明年にかけて非常な増収も考えられるでありましょうし、それらのものも非常にかたく見ております。また地方交付税等の増というようなことも当然出てくるわけでありまして、そういうようなものが見込みました以上におそらく出てくる場合が多いと思うのであります。そういう場合にはそれらを財源といたしまして事業量のワクを拡大するということが当然に出て参ると思うのであります。また必要最小限度指定事業として、国としてもぜひこれはやってもらわなければならぬというような種類の事業については、昨日もお話がございましたように、最低限度のところは国も補助率の引き上げまでやってこれをやってもらう、こういう建前にいたしているわけでありまして具体的の年度におきまして再建計画に基いて組まれる予算については、いわば再建計画に若干の肉づけが行われることになろうと思うのであります。  それからさらに御指摘の公債費等についての根本的な処理が将来行われるということになりますならば、今の再建計画、ことに徳島県とかいうような団体においての一番大きな問題は公債費でございますので、そういうような点が根本的に打開されますならば、面目を一新することになろうかと思うのでありまして、今日の出発におきましては、計画だけをごらんになりますと、あるいは非常に窮屈にお感じになるかもしれませんが、具体的に、だんだん毎年度の予算編成におきましては必ずや好転する、今はむしろ一番悪い状況再建計画を作ってもらって、しかもかたく見てもらっておる、こういうのが実際だと思うのであります。
  64. 北山愛郎

    ○北山委員 財政再建についてはいろいろ聞きたいこともあるのですが、このしわ寄せが国民健康保険に及んでくる。それから定時制高校ですね。これなんかは非常にやりにくくなってきておる。この定時制高校に対する市町村の寄付金、こういうものが制限をされてくることは当然なんですが、しかしそれは定時制高校をつぶすというんじゃなくて、やはり定時制高校が県立のものであるならば、県が負担すべきである、県の財政需要の中にこれを見るということでなければならぬと思うのです。ところがこの定時制高校について、特に県立の場合、そういうものについての地方交付税の基準財政需要額算定の場合に一体十分見ておるでしょうか。あるいはこういう高等学校等の施設費等について財源を十分与えておるのでしょうか。私の間違いであれば直していただきたいのですが、定時制高校の授業料の収入を市町村の収入に見ておるのじゃないですか。県立の定時制高校の授業料は県の方に入るのが当然でしょう。それを市町村の方の財政収入の中に入れているんじゃないですか、どうでしょう。
  65. 柴田護

    ○柴田説明員 定時制高校の問題につきましては、前から本委員会等でおしかりを受けております。毎年改善を実はいたして参っております。本年度におきましても、先般本委員会におきましていろいろおしかりもございましたが、文部省とも話し合いをいたしておりまして、相当改善すべく目下作業をいたしております。
  66. 北山愛郎

    ○北山委員 今お伺いした点をお答え願いたいと思う。一体定時制高校の基準財政需要額と財政収入はどういうふうに交付税の算定上なされておるか。市町村は実際には寄付金でやっている。寄付金でやるのが当然だと認めるならば、財政需要の市町村の分に、全部でない、一部にしてもこれを計上しなければならぬ。そういうことはどういうふうになっておるのですか。あるいは寄付金として例の制限の中に入れておるのかはずしておるのか。何でもこれを委託費ということではずしておると聞いておる。市町村の事業を県に委託しているんだ。これも奇態な理論ですけれども、そういうふうな計算をしているようにも聞いておる。一体どういうふうになっておるのか。
  67. 柴田護

    ○柴田説明員 実態に従って大体の単位費用を算定しております。今御質問にありました点につきましては、実態は定時制高校の授業料は市町村が収入しておるのが実情でございます。そういう意味合いから、在来全部県の収入にいたしておりました分が相当あったのでありますが、それが漸次市町村が授業料を全部取るというように実態が変って参っておりますので、漸次そういう方向に方針を変えて参っております。
  68. 北山愛郎

    ○北山委員 それは私も初めて聞くのですが、県立定時制高校の授業料を市町村が取るということなのですか。
  69. 柴田護

    ○柴田説明員 私誤解しておりました。県立の場合はそうでありません。
  70. 北山愛郎

    ○北山委員 それを地方交付税の基準財政収入の中で見ているというのは、市町村立の定時制高校の授業料、そういうふうだと私は思うのです。  それからもう一つお伺いしたいのは、例の寄付金の制限の中から、市町村から県立の定時制高校に出す寄付金は除かれておるかおらないか。要するに、定時制高校について地方財政再建がしわ寄せされておるわけです。定時制高校が、今までもやりにくかったのが、さらにだんだん縮小されていく、やめていくというような傾向にあるわけです。相当な問題になっておるわけです。これは文部省のお考えも聞きたいのですが、一体定時制高校をつぶす気なのか、これを立てていく気なのか、やる気なのか、やらぬ気なのか、それを、はっきりした見解を聞きたいのですが、それにしても、財政上県立のものであれば県の方でちゃんと財政需要額の中で、はっきり見ておればそんなことになるはずがないのです。それが見てないから結局財政再建のしわ寄せを一番強く受ける。国民健康保険もそうであります。今の国民健康保険の経営の実態というものは非常に苦しいのです。やっとやっとやっている。仕方がないから一般会計から繰り入れをしてやっと経営しているのが実態だと思う。ところがこの再建団体になると、繰入金をやっちゃいかぬ、だんだん減らせという。ところが厚生省の方では、たしか繰入金を入れなければ補助金も少くするというような御方針のようにも聞いている。この国保についての厚生省考え自治庁考えはどうなっておるのか、それから定時制高校について文部省はどう考えておるのか、これもこの機会に聞いておきたい。
  71. 齋藤正

    ○齋藤説明員 勤労青少年の教育といたしまして、定時制高校並びに通信教育、それから社会教育におきまして青年学級、この両者の振興をはかっていくということは、文部省の考え方の根本でございます。財政計画の上におきまして、全日制の高等学校に比べて定時制高校の方が不利であるという点もいろいろ承わっておりますので、この点につきましても、自治庁にいろいろお願いを従来もいたしております。今後もいたすつもりでおります。なお市町村立の定時制高等学校が逐次県立に移管ということに伴いまして、実態としてなお市町村の分担金と申しますか、寄付金というものによって相当数まかなわれておるところがある。それがいろいろ再建法との関係で問題があるということも承知しております。この点につきましても、事務的にいろいろ自治庁の方にお願いをいたしております。なお現在の定時制高校がこのような形で振興していく上に種々の障害があるかどうかにつきましては、本年度文部省としては根本的に検討を加えたいと思っております。
  72. 鈴木俊一

    鈴木説明員 ただいまのお尋ねの点でございますが、定時制高等学校の問題につきましては、自治庁といたしましても、従来たしか標準的な施設基準として七百人の高等学校の生徒を基礎として計算をいたしておりましたものを、本年度はそれを四百人程度にして計算をしていくようにいたしたい、こういうことを今検討いたしておる次第であります。昨年に比べますると相当画期的な改善になろうかと考えておるのであります。それからまた国民健康保険の関係でございますが、これも赤字団体でございましても、国民健康保険それ自体は独立採算が建前でございまして、特別会計でございますから、あくまでもそういう趣旨でやってもらわなければならぬのでありますが、将来の繰り戻しということを条件にいたしまして、どうしても始末のつかない国民健康保険の特別会計に対しては、一般会計の財源の一部を繰り入れるということを認めることにいたしておるわけでありまして、これらにつきましても厚生省とは十分打ち合せをしておるのであります。  それからなお前の問題に戻りますが、定時制高等学校につきまして、再建団体等におきまして、ある程度の統廃合ということを、ことに分校の統廃合ということを考えておりますが、これはやはりその県の財政力というものと定時制高等学校の分校等の分布状況というものとが必ずしもマッチしていない。ことに町村合併等が行われました場合において、いま少し分校の統合を認めてもいいのではないかというような場合もあるわけでありまして、若干の統合をいたさなければならぬのもやむを得ないことかと思うのであります。それらの点につきましては、文部省の御意向も私どもの方としては十分拝承いたしたいと考えております。
  73. 北山愛郎

    ○北山委員 簡単に大臣にお聞きしますが、農業事業税は来年度やるかやらないか、これを一言お答え願いたい。  それからもう一つは、先ほど人事院勧告の話がありましたが、二十四国会地方自治法の改正の中で、地方公務員に対する手当のうちに薪炭手当というのが入ったわけです。これは一応内容的にはどういうものだということは書いてありませんけれども、そういう薪炭手当という名のものを、地方団体が、地方自治法の改正案が施行された以後において、条例を作ってやっても違法であるのかないのか。いつでも国家公務員に右へならえをするというのですが、場合によっては国家公務員の方が地方公務員に、右へならえしても一向おかしくないのじゃないか。従って地方自治法の改正案が施行になり、薪炭手当が出せることになっておるのですから、地方団体が良識によって条例を作って薪炭手当を支給しても違法であるのかないのか、この二点だけをお伺いしておきます。
  74. 太田正孝

    太田国務大臣 農業事業税につきましては、この前の国会のときに申し上げた事情でございまして、及ぶところが多いという関係などをその後におきましてもなお調べておる状況でございます。今度の税制改革の中におきましては、もちろんこれをよく検討いたしまして態度をきめたいと思います。  それから薪炭手当につきましては、財政部長からお答えいたします。
  75. 小林與三次

    小林説明員 薪炭手当はどうせ国家公務員につきまして法律上年度内に支出しなければならぬのでございましょうから、その手当がつき次第、われわれといたしましても、それに見合う財政上の措置はあわせて考えなければならぬと考えております。今のお尋ねはそういうものとかかわりなく、自治法上入ったからやったら違法であるのかないのか、こういうことかとも思いますが、これは純粋法律論だけから言えば、そこに書いてあるのだから、それは違法だとは申せませんが、これは国家公務員に対する財政上の措置もございませんし、やはり国家公務員に準じて措置されることを期待しておるわけであります。
  76. 門司亮

    ○門司委員 この機会に大臣一つだけ聞いておきたいのですが、それは来年度から動き出して参ります例の首都圏建設に関する問題であります。首都圏の建設に関する法律案が通過いたしました際の政府の答弁では、各地方自治体に財政上の迷惑をかけないということが言われております。ところがこの問題は御承知のように関係をしております各都道府県の中にあります市町村の持っております現在の都市計画に、かなり大きな変更を加えることは事実であります。都市計画に変更が加えられて参りますと、必然的に財政上のいろいろの処置が生れて参ります。そうしてその中には建設省関係もございましょうし、あるいは厚生省の問題も出てくるかもしれない、あるいは農林省関係の問題も出てくるでございましょう。各省がいろいろこれに関連を持っておりますが、法律の内容を読んでみますと、各省はこれに協力をしなければならないということだけであって、はっきりした義務づけがない。そこで一つの省がかりにこの問題に対して比較的熱意がなかったというようなことになって参りますと、全体の首都圏建設の計画というものがくずれざるを得なくなってくる。こういう問題について大臣は、あの法律案通りましたときと同じようなことで、そういうことは絶対にさせないという御答弁がここでできるかどうか、その点を一つはっきり伺っておきたいと思います。
  77. 太田正孝

    太田国務大臣 首都圏整備の問題は、国の大きな問題でございましてその計画がきまりましたならば、予算その他につきまして十分考えなければならぬと思います。
  78. 門司亮

    ○門司委員 私が聞いておりますのは、すでに事務局長もきまりましたし、これから動き出すのであります。ただ予算のときに、今の大臣のような答弁では、実際に計画するところでは困ると思う。今までの都市計画というものが変って参りますから変更しなければならぬ。そうすると、そこに要する費用というものは、どうしてもやはり首都圏の整備に関する問題として各省が予算をとっていただかぬと、この問題の解決はつかぬのであります。そうしてこれは、建設事業は建設省が考えるのだ、保健衛生関係については厚生省考えればいいのだというような問題では済まされないと思う。あの法律案通りましたときの会議録を読んでみますと、少くともそういうことについては迷惑をかけないという答弁がしてある。従って各省はこれに対して忠実に法律趣旨を守るべきだと思う。その責任の帰趨はもとより建設大臣にあるとは考えますが、しかしこれが地方の財政に及ぼす影響というものはきわめて甚大でありますし、また行政上の処置についてもいろいろの問題が出てくると私は思う。従って自治庁の長官としてこれをそのまま放任されておるということは自治体にとって非常に迷惑だと思う。だから自治庁の長官として建設省に、あの法案が出たときと同じような気持で財政上の裏づけは必ずする。いわゆる二十年の計画で首都を整備しようという案でありますが、これも計画は必ず実行する。従って予算の裏づけは必ずする。だから各都市はそれに基いて都市計画のやり直しをしても地方に迷惑をかけないという御確信が、この際あるかどうかということを自治庁の長官としての立場からお聞きをしたいと考えるのであります。
  79. 太田正孝

    太田国務大臣 建設大臣の所管になっておるその計画が正しいものである限りにおきましては、必ず今門司委員の言われました通りの趣意におきまして、自治庁としては措置していきたいと思います。
  80. 門司亮

    ○門司委員 自治庁としてということですけれども、問題になりますのは、建設省の所管であって、建設省がやるのだと言っておりますが、これは事業の主体が建設省にあるということであって、問題の解決はやはり地方自治体がはからなければならぬことは当然であります。そこで出てきますのは、先ほど来申し上げておりますように、都市計画が今までの立場と変ってくるということに必然的にならざるを得ないということであります。そうなって参りますと、地方の財政に及ぼす影響というものはきわめて甚大である。そうしてかりにそれの一環がくずれ、一つの省がそれについての熱意がなかったとするならば、道路はできた、あるいは家はできたが、保健関係の問題がどうもうまくいかないとか、あるいは住宅地の指定はできたが、それに対する財政上の措置がなかったことのために、どうも都市計画としてうまくいかないというような問題が必ず出てくると思う。私ははっきり一つの例を申し上げます。たとえば横浜市なら横浜市で今立てております、あるいは今まで立てた都市計画というものを変更しなければならぬ、東京の首都を、行政上これ以上の膨張を完全に防止する。これ以上の東京都の複雑した行政を緩和することのために、どうしてもいろいろの施設を郊外に求めてくるということになりますと、それに対応した都市計画というものがやはり立てられる。御承知のように、東京を中心として何マイルくらいはこういう計画にするとか、あるいは緑地帯をこういう形で設けるとかというような構想に基いた案がありますので、この構想に基いた案を地方計画を立てなければならない。そうした場合に、これは単に建設省の問題であるから、建設省だけでいいということでは私は済まされないと思う。責任のすべてのしりぬぐいは地方自治体がこれをさせられる。そうすれば自治庁もそのはね返りを食って、また財政上の処置、また行政上の考え方をこれに及ぼしていかなければならない。従って自治庁の長官としてこれを今の御答弁のように何とかしましょうというようなことでは、私どもなかなか安心してやれないと思うのです。この問題が成功するかしないかということは、非常に大きな問題であります。今日の都市行政のあり方というものをある程度理想的に、人工でこれを直していこうというのでありますから、資本主義の社会にそういうことができるかどうかということを私は非常に疑問に思う。その疑問は大きい問題であって、ただ考え方としては、一応そういうことが考えられるという構想に基いて、為の法案というものが可決されている。従って実施は非常に困難性があり、多くの疑問を持っております。しかもその影響するところは地方自治体に全部影響してくる。行政、財政両面とも影響してくる。従ってさっきから申し上げておりますように、もう少しはっきりした、自治庁の長官として各関係省に、計画に盛られたことに違反しないようにさせるというところまで、一つ思い切った御答弁ができるかどうかということを、もう一度念を押して聞いておきたいと思います。
  81. 太田正孝

    太田国務大臣 政府として計画がきまりましたなら、自治庁としては万全の処置をとります。
  82. 亀山孝一

    亀山委員 大臣はお急ぎのようでありますので、きわめて簡単に、結論だけをこの際申し上げて、あと事務当局への質問は保留させていただきます。  問題は今世間でいろいろいわれております京都市において実施しようとする観光施設税の問題であります。これについて私はるる申し上げますよりも、本日の朝日新聞の天声人語が、簡にして要を得たことを書いております。まずそれを一つ読ましていただきます。「京都も奈良も地方財政の赤字に苦しんでいる。古文化財を保護しようにも、国からのわずなか金では、ものの役にたたない。観光客は迎えたい。そこで、思いついたのが観光税であろう。京都市では、税収一億円ばかりの見当だという。もし、この税収が、市の一般的な赤字の穴うめにされるのであれば、税金としても明らかに悪税である。古文化財の保護、観光道路のためなどに使われる目的税であれば、感心はしないが、観光客も、高くない限り、これを支払うことを、さまで苦にはしまい。それにしても、社寺側では、十円でも五円でも拝観料が多くなるのは、観光客を少くする心配があるかもしれない。が、社寺側の最も憂えるのは、このような税金をかけることは、宗教法人法の精神に反し信仰を疎外することにあるようだ。一般の入場税と同じような形になると、仏像を拝し、建物、庭園を観ることも、いよいよ信仰と切り離され、博物館などでの観賞と同じ気持にさせ、社寺の神聖を汚すことになる、と考えるのは、宗教家としては、もっともと思われる。信仰に関することは、ただの理屈だけでは押しきれない。このことは、政治を行うものがよくよく心しておくべきで、当局は話の運び方がまずかったのではないか。社寺側にしても、古文化財を保護するには、なんとか金の工面をしなければならぬことはわかっていよう。拝観を謝絶するのはよろしくない。観光客を招くことは、信仰の機縁をつくるうえにも大切だ。信仰の純粋を保つことは結構ながら、同時に、宗教家は、現代の文明と宗教との調和について、十分努力しなければならない。文明と宗教との〝平和的共存〟を保つことができないでは、役人も衆生も済度はされまい。」そして冒頭に、「近ごろは、何一つことを運ぶにもすぐ税金、税金で、うんざりする。おまけにこんな争いとなっては、いよいよもって暑苦しい。東山三十六峰もウシミツ時でも静かには眠れまい。お互に、あんじょ話し合いはったらどうどす。」るる申し上げません。あとのことは、先ほど申し上げましたように事務当局に伺うとして、この際大臣にお伺いしたいのは、昨日のラジオでもまた昨今の新聞でも非常に論議されておる。そこで伺えば京都市会では強行しようとしておられるようであります。ところがやはり朝日新聞の指摘するように、やはり話し合いが必要ではないか。その話し合いができるまで、この市町村法定外普通税の自治庁の認可をある程度見合わされて、むしろ話し合いを自治庁は勧奨されてはどうか。話し合いができなければ、ある期間課税の問題を延期せざるを得ないのではないか、こういうように私ども考えるのであります。こういうような問題でありますだけに、大臣のこれに対する一つ御所見をお伺いしたいと思う。
  83. 太田正孝

    太田国務大臣 観覧税の問題につきましては、今の御趣意はよくわかりました。法定外の税を許す、許さぬの問題は、地方税法の定めるところでございまして、御承知の通りこれは許さなければならぬとなって、許さない場合が三カ条あると記憶しております。国税と地方税と重複した場合とか、あるいは国の経済施策と相反する場合とか、あるいはもう一つ地方の経済を阻害するというような場合、今の三カ条にわたって考えてみますと、それに触るることはないように思います。従って法律の文句から言いますれば、許可しないところの理由は発見することはできないと思います。しかしながら問題は地方自治体とその社寺との関係でございますので、亀山委員がるる申された通り、いわゆる話し合いによってやらなければならぬということを自治庁の当局といたしましては内意を聞きに来たときに強い条件をつけておるのでございます。私どもは京都国際文化都市建設法とかいう昭和二十五年の法律が出たが、財源措置もできておらない。これをどうするかという、こういう問題から見て、京都市が措置しておることは地方税法に関する限り、これを許可するか許可しないかという法律の解釈に関する限りにおいては差しつかえないものと思いますが、これを実行するにつきましては、お示しの通りよく地方当局と社寺関係との間が円満に話をつける必要がある、そう思っております。またそれが自治体としての立場であり、また世の中における実際の問題を処理する方法であろうと思います。もちろん先ほど新聞の最初の言葉にありましたような、赤字を埋めるためというようなことは問題外であり、かくのごときことと関連して私は考えておりません。さよう御了承を願いたいと思います。
  84. 亀山孝一

    亀山委員 非常に心強い御答弁でしたが、この問題につきましては昨日もラジオで市長と社寺側との討論みたいなものを聞きましたが、なかなか感情的になって容易でないと思います。そこで今大臣のお言葉にありましたように、この問題を話し合いでぜひ解決してやっていただきたい。法律上の問題はおっしゃる通りかもしれませんが、できる限りぜひ話し合いでやっていただきたいということを繰り返して申し上げまして、大臣に対する質問はこれで終ります。
  85. 加賀田進

    ○加賀田委員 今の京都市の観光施設税の問題に対して大臣の答弁の中で、これは地方税法の多分六百七十一条を適用されて、三項目に抵触しなかったら許可しなければならぬと言っておりますが、この税金はそういうものに抵触しないなら許可せざるを得ない、こういう答弁だったと思うのです。もしそういうことになりますと、最も懸念されるのは、今京都市の問題として取り上げられておりますけれども、これはさらに奈良とか、あるいは日光とか、いろいろ全国的に波及するというおそれも相当あると思います。そういう場合にはやはり今と同じような形で全部承認されるという意思を長官が持っておられるのかどうか。このことはやはり全国的な問題として波及する大きなおそれをなしておる。この際明らかにしていただきたい。
  86. 太田正孝

    太田国務大臣 現に加賀田委員の言われる通りでございまして、奈良県及び奈良市から同様な問題を聞き及んでおります。私は、京都市だけにこの問題を限定するという考えよりも、その問題の本質が何であるか、文化財いうものがいかに乱暴――乱暴という言葉は悪いのですが、その保護につきましても手厚くないというような現状等に顧みてみますれば、そういうことに財源を見出すことが他の条件において違わない限りにおいてはやむを得ないことじゃないかと思います。ただしくれぐれも申します通り、かようなことは実際問題としてその土地その土地の社寺関係の方々との話し合いがっかなければいかぬ、この点はやはり同様に感じておる次第でございます。
  87. 加賀田進

    ○加賀田委員 そういたしますと、大体目的税でありますから、古文化財の保存等に重点を置かなければならぬと思うのですが、もしその目的にはずれた用途に基いて財政需要としようとする場合には政府としてはどう考えられるか。
  88. 太田正孝

    太田国務大臣 むろん目的税でありますし、またその目的を達したならばやめるべき時限税たるべきものと私は思っております。それ以外はこれを使うとかいうことは断じて法律の精神でもなければ、その税の目的でもない、かように考えております。
  89. 大矢省三

    大矢委員長 ちょっとこの機会に伺いたい。奈良市と奈良県両方から申請があるようですが、これはいずれを許可するのが妥当なのかどうか。自治庁当局の御意見を聞きたい。
  90. 奧野誠亮

    ○奧野説明員 先ほどの加賀田さんの問題ともあわせて補足してお答え申し上げたいと思います。法定外普通税を許可いたします場合の条件として大臣が三つあげられたのですが、その通りでございます。さらにその大前提として当該団体自体の財政需要がある。こういう言葉も使っております。言いかえれば、京都国際文化都市建設法というように、国としても観光資源の維持開発あるいは観光施設整備という問題について必要な援助を与えなければならないとまで規定しているような地方につきましては、そういう観光施設整備の財政需要があると考えておるわけでございます。従いまして、今地方においてこういう問題が起りました場合には、原則として許可をすべきだという考え方をとっておるわけでございます。従いましてどんな市町村であっても観光施設税の許可を願い出た場合に許可しなければならないものだとは考えていないのであります。なお奈良県と奈良市の場合でありますが、奈良公園の管理を奈良県がやっております。しかしながらそれ以外の都市計画、その他道路施設の問題などは当然奈良市が担当しておるわけでございます。従いまして、そういう意味においては奈良県においても、奈良市においても観光施設税を整備するというような問題が起ってくるわけでございますので、奈良県と奈良市に対しましては、相互によく話し合って問題をどう解決するかということをきめてもらいたいということを言っております。この場合に税を起すことが目的ではなくて、観光施設整備することが目的なんだろうから、どの観光施設から整備していくか、優先順位をつけてそれをきめたらどうだろうか。そうしますと、おのずからそれぞれ幾ら金がかかるかということがわかり、その金を現在の建前からいうと、県の負担に属するか、市の負担に属するかということがきまってくるわけだから、それに応じて何らかの形において財源が得られた場合にその財源を分け合って観光施設に充てていくべきことになるのじゃなかろうという考え方を申しておるわけであります。
  91. 門司亮

    ○門司委員 文部省に聞きたいのですが、今観光税をかけようとするのは具体的にいうとお寺だとかお宮だとかいうものの収入に対してかけようという考え方だと思うのですが、今日の宗教法人に免税をしておる角度からいってこういう収入に直ちに税金をかけられますか。
  92. 齋藤正

    ○齋藤説明員 現在京都で考えられておりますことは、地方税法の規定に基きまして行われます場合に、直接宗教法人法との規定と矛盾抵触するところはございません。
  93. 門司亮

    ○門司委員 そうだといたしますと、たとえば観光に使っております入場料その他というものは上げる必要がないということですね。その収入の中からかければいい、現実には大衆の負担にならないでその収入を得ておる社寺から税金を取ればいい、こういうことですか。
  94. 奧野誠亮

    ○奧野説明員 ちょっと私からお答えさせていただきたいと思います。問題になっております観光施設税は、観覧料を徴収するような社寺に、観覧者に一回十円程度のものを負担してもらったらどうだろうか、こういう考え方になっておるようであります。観覧料収入から税金を出してもらうのではなしに、それとは別途に観覧料を徴収する機会に観光施設税も一緒に徴収してもらう、言いかえますれば、観覧料と別途に徴収の任務だけをその機会に負ってもらったらどうだろうかという考え方になっているのであります。
  95. 門司亮

    ○門司委員 そうなると問題は別になる。京都市で争いになっておる問題は観覧者にかける。社寺に関係がないというのならば今の問題は起らぬと思う。ところが今社寺側と市長との間に感情的に何か文句を言っておるのはおかしいと思う。実際の問題は一体社寺が収入の中から負担するのか、今のお話のように観覧者が負担するということになれば、観覧料の値上げ以外にはないのですが、そう解釈していいですか。
  96. 亀山孝一

    亀山委員 関連質問。この際今の京都でかけようとしている観光施設税のことを一応話していただきたい。いろいろ疑問もあるから、はっきりと一つ説明を願います。
  97. 奧野誠亮

    ○奧野説明員 京都市で考えておりますのは、観覧料を徴収しておりますような施設で、特に条例指定したような個所は当初三十数個所考えておったようでありますが、現在では二十個所くらい考えておるように聞いております。その施設に訪れました場合に、観覧料を徴収する際に一人一回十円ずつを徴収していけば、その観光施設税の部分だけを市に納入してもらった額は観光施設のために全部あげていくのだ、こういう建前になっておるわけであります。従いまして門司さんが指摘されましたように観覧料が現在三十円であるといたしますと、観覧料と観光施設税十円を合せまして観覧者の負担は原則として四十円になるわけであります。社寺等がその場合に観覧料三十円を二十円に下げて従来の観覧者の負担が変らないようにするという問題もあるかと思いますが、建前は別でございますから、観覧者の負担はそれだけ加わるということになると思っております。
  98. 門司亮

    ○門司委員 それで私はさっき文部省の方に聞いたのです。社寺のそうした収入に対して税金をかけることがかりに不都合でないというのならば、大衆の負担によらざる税の徴収の方法がおのずから生まれてくると思う。今の奥野君の答弁では大衆の負担による地方税だけであって、神社等については、税金だけ観覧料が高くなったから安い方に行って高い方に来なくなるという多少の入場者の減少はあるかもしれないが、しかし実質的に社寺の収入に変りはない。ただ手数がかかるだけである。そういうことがはっきりしておれば、そうしたことがあれば、今日社寺の強い反対はない。私はそう考えるからさっき聞いてみたのだが、その点は今奥野君の言ったことに間違いないですね。
  99. 奧野誠亮

    ○奧野説明員 私の言ったことに間違いはございません。ただ社寺側が反対されております当初の意見を新聞その他で見ておりますと、門司さんがおっしゃいましたように、社寺に税金をかける、こういう誤解を持たれた向きがずいぶん多いようでございます。こういう問題が一つと、かりに観覧観光施設税を課するような考え方を是認するとしても、その分も一緒に、観覧料といいましょうか、そういうもので観覧者に負担してもらって、その中から寄付金として先に納付していただく、こういう考え方も社寺側から強く出されているようでございます。もう一つ、社寺側が特別徴収というような任務を負うことはまっぴらだ、こういう気持もかなり現在では強く議論されているようでございます。
  100. 加賀田進

    ○加賀田委員 そういたしますと、大体目的税であって、特に観覧者に利益を与える費用に充当するということが基本的な考えのように自治庁では考えておるように聞きましたが、この計画を見ますと、大体四つに集約されて事業計画が立てられておりますけれども、その中で観光施設整備、これは道路とか河川等の拡充整備をやるので、直接観光者に利益があると思うのですが、ただ最後に国際文化観光会館、国際文化観光という名前はついておりますけれども、これがほとんど大半の経費を使用することになっておるわけです。これに四億五千万円とかいうような計画を立てておりますが、これを見ますと、大体京都におきましては公会堂が倒壊して、その後大会場がないから、国際的、国内的に大会場を作ることが主要目的だ、こういうことになっておるようでありますけれども、こう見てみますと、名前は国際文化観光会館となっておりますけれども、こういう公民館的な建物を建てることにおいて、外来者のいわゆる観光者にどれだけの利益が与えられるかということが大きな疑義になってくると思う。あと三つの今申し上げた観光施設整備するとか、あるいは観光財保存の経費に使う、あるいは観光資料館を設置してサービスをする。こういう問題は観光者に対して直接のサービスにはなると思うのですが、第四項目の会館の建設に対しては、外来者には少しも影響を及ぼさない。京都市民にはもちろん影響があり、利益を受けると思う。ところが納税義務者はほとんど市以外のところから入ってきた人が多いのではないか。そうすると目的税としての目的からはずれておる傾向が非常に強いと思うのです。この点私は非常に疑義を持つわけです。目的税であるとするならば、納税義務者に直接利益のある事業というものが中心にならなければならない、こう思うのですが、今の計画によると、そういうような傾向がないので、この点自治庁はどう考えておるのか。
  101. 奧野誠亮

    ○奧野説明員 京都市からこの問題が持ち出されました際には、私たちとして一番関心を持ちましたのは、その財源がどういうところに向けられるかという問題でございます。その際に、国際文化観光会館の建設の問題もございましたので、さらにその内容をもっとつまびらかにしてもらいたいということでるる承わったわけであります。その結果京都市から明らかにされました問題は、京都市で会合をいたします場合、二千人とまとまった人の会合をする場合には京都大学の講堂以外には何ら施設がないそうでございます。従いまして大会議になりますと、多くの人たちが京都市で会議を持ちたいのだけれども施設がないためにやむを得ずよそに行ってしまう。その結果せっかく京都の観光資源を公開したいと思ってもその意に満たないという場合もあるのだ、こういうわけでございます。従いまして二千人も集って会議ができるような施設を持ち、さらにそこに国際会議も開けるような施設を充実して、広く外客も誘致していきたい、そうすることによってもっと京都市に観光客が入ってくるように、同時にまた観光客もそこで十分必要な要件を満たせるようにしたい、こういうような考え方でございました。
  102. 加賀田進

    ○加賀田委員 今申し上げた通り特別徴収義務者の社寺側は京都市民かもしれません。しかし納税者のほとんどは外来者でございます。そうしますと、この会館を作ることによって、外国の人を招請したり、あるいは国内の集会を招請したりすることは可能になるでしょう、また観光も繁栄するでしょう。しかしそれによって直接利益を受けるのは市民なんです。だからやはり重点的に目的税としての事業を行うような経費を多く使わなければならないのに、その計画においては会館建設にほとんど使われておるところに大きな疑義があるのではないか。その点はどうですか。
  103. 奧野誠亮

    ○奧野説明員 おっしゃっておる意味が、これは目的税だから受益者負担として利益の限度を越えてはならぬというような考え方をいたされますと、厳密な意味においていろいろ問題が起ってくるかもしれません。しかし基本的に私たちはこういう考え方を持っておるわけです。京都市には観光文化資源が豊富にあるものでございますから、多数の人たちが京都市に入って参ります。その結果京都市といたしましては、道路施設にいたしましても、あるいは観光施設にいたしましても莫大な財政需要を負っておるわけでございます。そういたしますと、京都市を訪れる方々に対しまして、そういうような費用を幾らかでも持ってもらった方がいいのではないだろうか、なお社寺等を訪れます場合に、たまたま観覧料を徴収するものでございますから、その機会に同時に負担してもらう、そのかわり多くの外来者の人たちが京都市に入って会議をする、そういう場合には京都市にそういう会議をする施設もないものですから将来にわたってそういう施設整備していくということになって参りますと、現在の外来の人と将来の外来の人という問題はございましょうけれども、やはり総体的にそういうような人たちの便益にも供されることになるのではないだろうか、そういうふうに考えているわけでございます。
  104. 加賀田進

    ○加賀田委員 間接的な利益というものは、全然皆無とは言い得ないと思うのですけれども、やはりこういう目的税である以上、観光財の保存等に相当多く財源を導入するのが正しいと思う。計画を見ますると、八年間で千四百万円しか計上してないわけです。会館、建設費四億五千万円、財源というのはほとんどこの会館建設に使用される、だから直接利益を与えるような方向の事業に重点的にやってもらうのが、私は今後の正しい方向ではないかと思うのです。  もう一点は税率でございますけれども、一般の人たちには一回に対して十円、義務教育の学徒に対しましては五円ということになっておりますけれども、学生はやはり普通の観光客と違って、教材として教師がそういうものを奨励し、あるいは観光施設について説明して、いろいろ歴史をひもといていくという性質のものであるのに、これに税金をかけるというのは少し酷ではないかと思う。昨年もスケート場の入場税を廃止しましたが、あれは学校によっては運動の正課としてスケートをとっておるところもあるから、こういうものには入場税をかけるものではないというので廃止をされたのです。その精神と全く同じではないかと思う。これに対して一回に五円ということになっておりますし、また特に修学旅行等におきましては、一日に十カ所、十五カ所を見る場合もございます。そうすると、十カ所見ますと五円だといっても一日に五十円、こういう観光税を支払わなければならないという問題が起ってくる。一般の人はバスに乗って一日に十カ所も、十五カ所も見にいくということはなかろうと思う。こういう点について自治庁としては考慮するように市の方に話をされたかどうか、あるいはその点について自治庁としてはどういうように考えているか、伺いたい。
  105. 奧野誠亮

    ○奧野説明員 先ほど大臣がお話になりましたように、観光施設税をかけるについては五つの問題に留意してもらいたいということを言っております。その一つの中で、おっしゃいますように、観光文化資源というものが教材的な役割を果しておるわけでありますので、生徒児童に対しては新たな負担をかけないことが望ましい。しかし観光施設整備の財政需要等もにらみ合して可及的に負担の過重を来さないように留意してもらいたい、こういうことを言ったわけであります。これに対しまして京都市としては、現在の観光施設整備計画からすると、どうしてもやはり生徒児童にも五円程度の負担をしてもらわないと、今の観光施設整備の目的が達成できないんだ。しかしこれらの施設整備に伴って、自分たちとしては観覧者もさらにどんどんふえてくるんじゃないかと思うので、その状況ともにらみ合せて財政計画のめどが立った場合においては、なるべく早く生徒児童の負担はやめるようにしたい。差しあたりは五円ということで出発したい、こういうことを申し出ておるわけであります。  なお京都市といたしましては、修学旅行の生徒等につきましては、観光資料館を作って、そこにさらに映写室も設け、観光、修学旅行の生徒たちが短期間の間に見得ないようないろいろな文化財を、フィルムによって公開するようにしたいんだ、こういうことも言っておるのでありまして生徒児童に負担をかけるかわりに、観光文化財の維持の問題なり、あるいは積極的にそういうフィルムを通じての公開の努力なりをしたいんだ、こういうことを申しておるわけであります。
  106. 加賀田進

    ○加賀田委員 そういたしますと、ここに明確にしていただきたいのは、社寺側と市側との話し合いということになっておりますが、現在社寺側はこれに反対いたしまして、金閣寺、苔寺その他はそれぞれ観光客が入場することを断っておる状態です。将来はどうなるか知りませんが、現在ストライキを決行しておるというような状態であります。そういう状態の中で両者が円満に話し合いを続けて解決をつけるというような見通しは、近い時期には私は不可能な状態だと思うのです。その一つの大きな理由としては、やはりこの問題が全国的に波及するおそれも私はあると思う。今申し上げた通り、こういうことが自治庁としては許可せざるを得ないというような立場をとっておると、各よそのそうした類似の市町村にもそういう問題が起ってくるというようなおそれもあるので、今のお話は奈良県のように問題は県と市との話し合いでどちらかはっきりしてもらいたいというので、大体市で許可するような意思を私は聞いておりますが、そういたしますと、現在のところ全国的にそういう事態はないにしても、今のところは京都と奈良のみにそういう目的税を許可しようとする意思を持っておるのか。あるいは他にも検討されて、同じような例があれば、これも許可するというような気持があるのか。その点一線をどこに画すか、その点を明確にしていただきたいと思います。
  107. 奧野誠亮

    ○奧野説明員 先ほどもちょっと申し上げましたように、国際文化観光都市建設法まで制定されておって、それらの都市の観光施設整備に対して国が必要な援助を与えなければならないという法律が作られているような地方で、だれが考えてもそういう方向に努力を国民としてしていかなければならないというような地方に限って、こういう問題を認めるべきだというふうに考えております。差しあたっては京都と奈良以外には問題の具体化しているのはございません。
  108. 加賀田進

    ○加賀田委員 それではもう一点だけ。地方財政のこういう状態の中から大体宗教法人にまで課税しようとして手を差し伸べるような傾向が各所に行われております。社寺側でたとえば物品を販売しておるとか、あるいは料理を提供するというような場合に、それに対しても税金を課そうという傾向が、特に京都にも各所に起っておるわけであります。一つの例を申し上げますると、京都の宇治に有名な万福寺というお寺がございますが、このお寺で中国式の精進料理を大体希望者に出しております。料金は最低百八十円から最体五百円程度の料金をとっておるわけであります。一年間に一万名くらいの人が来る。このことが現在宇治を中心として問題になっております。これに対して課税すべきである。営業行為ではないか。しかも飲食物を提供しておるから食品衛生法を適用して許可をもらってもらいたい、公衆衛生上適当な施設をしてもらいたい、こういうことで、地方団体と社寺側といろいろ現在論争を行なっておるという状態があるわけであります。こういう問題に対して、自治庁としてはどういう――たとい宗教法人であろうとも、そういう営業的な行為をするのは、当然課税対象として税金をとるべきだという態度をとりておるのか、宗教法人には別個の考慮をすべきであるという態度をとっておるのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  109. 奧野誠亮

    ○奧野説明員 今お話になりましたような事件につきまして、従前遊興飲食税の問題がずいぶんあったように思います。現在それらの事業から上ります所得に対しまして課税するかしないかという問題は、これは事業税として起っている問題ではなしに、国税の法人税として起っている問題だと私は承知しております。宗教法人の本来の事業に対しては課税いたさないのでありますけれども、収益事業を営んでいる場合には、これに課税できる。これを収益事業といっていいのかどうか知りませんが、物品販売に類するような行為をやっておって、何千万円あるいは億に達するような収入を上げて、これを放置しておくことがいいかどうかというようなことで、宗教法人のそういうような事業を国税関係でかなり綿密に調査をして、その結果一部においていろいろ争いも起っているという話も聞いているのであります。事業税は原則として法人税なり所得税なりの所得に乗っかって課税するという建前をとっておりますので、第一次的には国税の問題として起っているのではないかと思います。非常に顕著なものについては課税をして差しつかえないじゃないかと思いますが、しかしあまり零細なものでありましたり、本来の事業といえるようなものにつきまして課税の範囲を広げていくことは差し控えていくべきじゃないだろうかというふうにわれわれも考えているのでございます。
  110. 門司亮

    ○門司委員 もう一つ聞いておきたいと思います。自治庁考えは今の奥野君の説明でわかったのですか、文部省関係でも、そうした社寺等の特別の収入に対して課税をすることに対する御意見はどうなんですか。反対なんですか、それとも差しつかえないという御見解ですか。
  111. 齋藤正

    ○齋藤説明員 この点については二つ問題があろうと思います。一つは宗教という観点からでございます。そして先ほども申し上げましたが、これが宗教の行為、信仰というものに由来するお布施とか寄進とかいうもの、それをやるものがそれによって課税をされるということになりますれば、これは重大な問題でございます。信仰の自由という観点から重大な問題でございますので、先般この問題につきまして、大臣が京都へ行きました際も、現在計画されている税と、それから信仰上いろいろ寄進をすることを区別して、混同しないように工夫をこらしていただきたいということも申しております。その点も重要な点でございます。  それから第二は、文化財の保護活用、あるいは歴史的な遺産に対する学生、児童生徒の見学、修学という観点で、これに対して税金であろうともいかなる形であろうと、児童生徒、あるいは一般の人に負担の増高を来たすということは、文部省として好まないことでありますし、ない方がいいことと考えております。この問題に対しましては、大臣自治庁長官に対しまして、これを実施される場合には、これによる収入は文化財の保護活用に充当してもらいたいということと、それから学校の児童生徒に対してはできるだけ免税の措置をとってもらいたい。この二点を申し入れ、事務当局としてもいろいろ御連絡したわけであります。
  112. 門司亮

    ○門司委員 そうなりますと、問題は二つに分れてくるようになると思います。一つは現行の観覧料というものについての考え方であります。宗教法人の建前からくる、信仰からくる一つの問題であって、これに税金をかけることが好ましくないという態度をとるということになって参りますと、たとえば社寺の持っておりますそうしたものについての保存、あるいはこれを別に汚さないようにしていくという建前からいけば、おのずからそこには観覧料に対する制限が生れてくると思います。いわゆる社寺の別途の収入という形でなくして、その観覧料はその社寺におけるそうした文化財を保存をすることのために必要な財源を、ここから求めていくというような考え方が出てくる、そういうことでありますと、信仰とはっきりと結びついていく。しかしその信仰というものが利用されて、その範囲を越えて、それが社寺の収入というような形においてなされているということになってくると、ここには一つ営業的関係が生まれてくる。この関係は非常にむずかしいと思う。そうはいっても、その文化財だけを保存するのでなくして、その宗教の対象になっておる社寺全体を保存するための費用がこれだけかかるのだ、そうすればやはり入場料もこのくらいもらわなければやっていけないのだというような問題も出てくると思う。従ってこの限界は非常にむずかしいと思う。もう一つ考え方は、そうでなくして、今の映画、演劇と同じようなものの考え方の上に立ってこれを入場税と同じような形で考えるということになれば、今自治庁考えておりますように観覧をする人から税金をとっていくという建前がおのずから出てくると思う。この二つの問題をどうかみ合わせていくかということが今京都における問題の争いの中心になっておる。従って、社寺側からこれをとるのかあるいは一般の観覧者からとるのかということが具体的の問題である。その奥にひそんでおるものには今申し上げましたようなことが考えられる。そこで文部省にもう一つ聞いておきたいと思いますことは、今の社寺のそうした観覧料というものについては、文部省が何らかの形で値段をきめる場合に干渉というと言い過ぎかもしれないが助言なりその他を与えておるかどうか、この点についてもう一度聞いておきたい。
  113. 岡田孝平

    岡田説明員 京都の場合は社寺に対する課税ではありませんで、観覧者からとるいわゆる行為税であります。そういう点で考えております。観覧者からとるこの観光施設税に対して、文化財保護の見地からどういうふうに考えておるかということをちょっと申し上げます。これは文化財といたしましては広く一般国民にできれば無料で公開することを期待しておる。これが文化財の保護、活用の根本精神でありますので、そういう点からいいまして観覧者に対して一々税金をとるということは望ましくない。ことに学校生徒につきましては、これが教育上一つの社会科の実習とでもいうべき場合が多いと思いますので、そういう場合に一々税金をとることはやはり学校教育上も感心しない、かように考えております。また国税におきましては、一般に文化財あるいは国宝とかあるいは史蹟名勝天然記念物を公開する場合はすべて入場税はとらない、また宗教法人に対しましても入場税はとらない、無形文化財に指定されましたものを公開します場合にも入場税は特別の場合のほかはとらない、そういう国税の立て方からいいましても、税金をとることは本来からいえば望ましくない、かように考えております。しかしながら、京都市におきましてどうしてもこれは課さなくてはならぬ、自治庁もこれを認可しなければならぬということでありますならば、それは私ども権限外でありますのでいかんともいたし方ありませんので、さような場合には、とりました税源はできる限り文化財の保護活用つまり保存とか修理とかそういう経費に充ててもらいたい、かように考えまして、この旨は自治庁及び大蔵省に申し入れいたしております。京都市の計画は、承わるところによりますと、とりました税源のわずか四十分の一だけが文化財の保護に還元される。これではどうも文部省としてはまずいのじゃないだろうか、やはり税源はできる限り文化財の保護の必要面に優先的に充ててもらいたい、かように考えておる次第であります。  それからお話の社寺の観覧料についてはどう考えるかということでありますが、社寺の観覧料はやはりできる限り安く、できればただにしてもらいたいと思いまして、その旨は文部省といたしましては機会あるごとに助言はいたしております。しかしながら文化財の保存、修理にも相当の経費がかかりますし、また国家から修理費に対しては補助金を出しておりますが、平常の管理に対しては何ら補助金は出しておらないというような実情もありますので、そういう文化財の保存管理上やむを得ざる程度におきましてはこれまた拝観料もやむを得ない、しかしこれは本来ならばできるだけ安くまたは無料にすべきだ、かように考えておる次第であります。
  114. 門司亮

    ○門司委員 そうするとこういうように解釈してよろしゅうございますか。観覧料については、先ほどから申し上げましたようにその対象物の保存あるいは修理等に要する費用に充てることに大体限らるべきだ、このことのために社寺がここから非常に大きな財政収入をあけておることについては文部省としては好ましくないと考えてよろしゅうございますか。
  115. 岡田孝平

    岡田説明員 社寺に対する課税の問題は一応別に考えております。私の申し上げましたのは、今回の問題になっておる京都市の税金、観覧者からとります税金につきまして申し上げたわけであります。それはできるならば文化財の保存管理の方に還元してもらいたい、しかしながら京都では、いろいろな観光施設の充実にもいろいろ経費も要りましょうから、それらの点もにらみ合せましてできる限り合理的に考えてもらいたい、かように考えております。
  116. 大矢省三

  117. 亀山孝一

    亀山委員 まず自治庁にお伺いしたいのですが、この法定外普通税の許可は、市から申請してくればどうしてもある一定の期間には許可しなければならぬものですか、それとも、先ほど私が大臣にお尋ね申し上げたように、ある程度話し合いの期間を猶予するとかあるいはまたこれを修正するようなことが考えられますか、ちょっとその点をお伺いしたい。
  118. 奧野誠亮

    ○奧野説明員 地方税法の定めるところでは、特別の条件に該当しない限りは許可をしなければならないという条項になっておるわけであります。しかしながら、何日までに許可をしなければならないという規定があるわけでもありませんので、税務行政が円滑にいくように、その推移を見て許可手続をとるべきであろうと存じております。
  119. 亀山孝一

    亀山委員 先ほど来同僚の加賀田委員並びに門司委員からいろいろ御質問がございましたが、確かにこの税はよほど問題になるだろうと思うのです。先ほど私が読み上げました朝日の天声人語あたりにも書いてありますが、特に今加賀田委員が触れられた観光施設税の使い方です。この問題は、税務部長はいかにも市を弁護されるような御趣旨の答弁だと思いますが、もう少しこの問題をよく考えていただきたい。  それから、同時にこの問題は非常に宗教上の関係を持ってくると思うのです。その点で文部省当局に伺いたいが、こういう問題は宗教上あまりおもしろくないのじゃないか、単に文化財保存というだけでなく、こういう社寺の観覧に対して、幾ら観光施設のために金が要るとは言いながら、観光施設税をかけることは、今門司委員の指摘された以外に宗教上の問題から私は考慮を要すると思いますが、いかがでございますか。
  120. 近藤春文

    近藤説明員 宗教法人に対しまして各種の免税措置が講ぜられておりますのは、宗教団体の保護育成が前提になっておるわけであります。従いまして、先ほど門司先生からの御質問がございました中に、拝観料があがっても文化財以外の使途に使うことは不当であるかどうかということがありましたが、宗教団体といたしましては各種の宗教行事、儀式等を行うわけであります。従いまして、そういう場合に、宗教団体といたしましては一般的には檀徒信徒の寄捨金等によってまかなっていくわけでありますけれども、京都におきましては比較的檀家は少いのであります。従ってこれをまかなうために拝観料によりまして宗教法人の運営をやっていく、こういうことになっておりますので、そういう意味から古文化財の保護以外に、たとえば拝観料その他の今回の観光施設税をとることが不当であるということは言えないわけであります。もちろん大きな伽藍も持っておりますし社風等もありますので、その個々の寺院におきましては、希望はあると思いますが、その宗教団体の運営のために拝観料が使われていくということは妥当なことだと思います。またこの宗教法人の多くが文化財を持っております関係上、文化財に使われている金だけでも大きいということも考えられますが、その全部が文化財の修理管理以外に使ってならないということは宗教法人法上妥当でないと考えます。なお今の宗教法人におかれましては、いろいろ公課課税をいたします場合には、宗教法人の特殊性、宗教団体の特殊性あるいはまたその慣習というものを十分尊重して行うということが前提になっております。従って今回の京都の問題におきましても、社寺側と市側とが十分に話し合っていくということがまず何よりも必要だと思います。きょう問題になっておりますのは、信仰の行為そのものに課税をするということが不当じゃないかということが問題になっておるわけであります。もちろん拝観者として、一般の観光者として来る者もありますが、その中には自分の信仰のために参る、いわゆる善男善女その他の信仰心を持って来る人が参る。これを全部観光という観点でやられることは宗教の自由から非常に一考を要するものではないかということが社寺側の言っていることであります。それからまた対象は何か、本尊とかそういうものを観光財として見るという考え方は必しも妥当でない。これらは何を対象とするか、あるいは信徒というものを全部観光客という一律の見方ですることは、宗教の保護あるいは宗教の尊重、宗教の自由ということから問題になるということを言っているのである。そういう意味から今回これにつきまして宗教団体側が非常に心配しておるということも十分了承されるわけでありますので、あくまでも社寺側等の意向を聞きあるいは市側当局の意見を聞きましてお互いに交渉する。またどういう部分について了解を得るという点についての話し合いをするように持って参りたいと考えております。
  121. 亀山孝一

    亀山委員 今の御答弁ぴんとこないのですが、私が御質問申し上げたのは、一体こういう社寺、ことに宗教関係のそういうものを介してたまたま観覧料を取っているから観光施設税をかけるという点に私は非常に疑義を持つ。おそらく観覧料を取っているから徴収義務者を社寺にやらせるのが一番便利である、税の確保ができるというのかもしれないが、これは便宜論であって、京都市が観光施設税を真剣に考えるならば、私はこういうような観覧料を取るところだけということについては多少便宜論ということに過ぎてしまうと思う。全般的に宗教を基礎とする社寺というものに対して観光税をかけるという点が、私は宗教上非常に問題じゃないかという気がしたのでお伺いしたのですが、これ以上御答弁は求めません。先ほど大臣に申し上げたことと、加賀田委員のおっしゃった全国に波及するという問題について、今奥野税務部長は、奈良くらいかもしれない、また奈良以外のところはいろいろな事情でこれはできぬかもしれないという意味のお言葉でありましたが、これはよほど考えていただきたい。法定以外の税が認められるならば、それは単に京都だけ奈良だけの問題ではありません。おそらく全国に波及してくれば、観光というもののために今のような税を課するという問題については、しきりに観光を宣伝している日本としても考えなければならぬ。そういう点を特に自治庁当局にお考え願いたい。また話し合いの問題につきましては、先ほど門司委員でしたか、心配されましたが、率直に申し上げれば、坊主憎けりゃけさまで憎いということでいろいろな市の問題があるらしい。そういうような感情的な問題ではなくて、事実観光施設のために必要であれば、そこに税によらずとも話し会いができるのではないか。自治庁当局は、大臣の御答弁にもありましたように、その及ぼす影響は非常に大きい、宗教に及ぼす影響は深刻であるということを考えられて、こういう税という制度によってこの観光施設をやられる観光施設はけっこうですけれども、社寺の観覧料を取るところにこれをぶっかけてやるということについてはよくお考えを願いたい。そういう点に対して話し合いをすると大臣がおっしゃいましたが、事務当局も勧奨される御意思があるかどうか、もう一ぺんはっきり伺いたい。
  122. 奧野誠亮

    ○奧野説明員 前段の観光施設税を認めるような問題は特に限定すべきであるというお話はまことにごもっともに私も考えております。心に十分とめまして、そのように持っていきたいと考えております。  後段の寄付金の問題でありますが、これは社寺側は寄付金ならという気持を持っておられるようであります。それに対して京都市では寄付金ではいやだということを言っておられます。おそらく社寺側では信仰の問題もありましょうし、ふところ勘定が表向きになることを好まないところだろうと思います。京都市側といたしまして、観覧者の負担しておるものが社寺の収入になっておるのやら、京都市の収入になって観光施設整備に当てられているものなのやら、寄付金ということになって参りますと、その関係が非常に不明朗になるのではないだろうかという心配を持っておられるようであります。同時にその金額をきめる場合にも、そこに観覧者の負担との関係において必ずしも明確な一線が画せられないで不明朗な感じを与えられはしないかという心配もあり得るわけであります。先般京都市からこの税をかけるに当りまして自治庁に協議に参ったわけであります。その際に五つの点を示しまして、その条項を前もって市会の議決を経て、それが申請をされるならば許可を与えます、こういうことを申し上げたわけであります。その際に社寺側と十分協議懇談するということを言っているわけでありますが、なかなか協議懇談が軌道に乗らないようであります。その過程においてたずねて来られたと思いますが、自治庁が協議懇談をしろと言われているけれども、ほんとうにそういうことに努力をするが、観光施設税を許可すると言われたのは、税ということを建前にして申請した場合に許可をするということなんだろうか、それを確認しておきたい、こういう話がありました。それはもとよりそういう話し合いでありましたので、そうだということを答えております。しかし京都市側が税の形をとらないで寄付金の形をとるということは京都市の任意であります。しかし京都市側が観光施設税という形で設けたいということで協議懇談を尽して自治庁許可申請を求めた場合に許可せざるを得ないのではないだろうか、こういう考え方を持っているわけであります。できる限り円満にいくようにわれわれとしても注意をして参りたいと思っております。
  123. 亀山孝一

    亀山委員 最後に私はもう一つ天声人語の最後の文を引用して自治庁にお願いいたしたい。それは、文明と宗教との平和的共存を保つことができないでは、役人も衆生も済度はされまい。」と言っておりますが、非常に名言です。今税務部長の言葉では、税とか寄付とか、役人式のみつぎ取り式のお考えがありますが、こういう問題は文明と宗教との共存という意味で今のような割り切れないところに一つの味もありますから、そういうふうになるべく一つ話し合いをお進め下さるようにお願いを申し上げまして、私の質問を終ります。
  124. 門司亮

    ○門司委員 さっき申し上げましたが、この問題の起った原因は、行為に対する税金をかけよう。実際は社寺における収入その他がかなりたくさんある。従ってこれをある程度社手の方から吐き出させた方がいいのではないかという考え方がありはしないかと思う。そういう問題がもしひそんでおったとすれば、いろいろな問題を起してくると思う。だから、問題の焦点として考えてもらわなければならぬことは、これは一つの行為税として観覧者から取るのだということになってくると、今の映画や演劇とちっとも変らぬと思う。何も差別することはちっともない。映画を見たから税金を取る。仏様を拝んだから見たから税金を取る、拝んだから税を取るということにはならない。そういうことで簡単に片づけばこの問題は大した問題ではないと思う。しかし問題はいろいろ議論されましたようなことがひそんでおりますので、この機会にもう一つ文部省側に聞いておきたいと思うのであります。さっき聞いたことではどうも十分でないので、重ねて聞いておきますが、観覧料その他についての料金のきめ方について、文部省は何らかのサゼスチョンをする権限をお持ちになっておるかどうか。またそういうことを今日までされておるかどうか。この点をもう一つ聞いておきたいと思います。
  125. 岡田孝平

    岡田説明員 これはあるいは宗教課長からの方がいいかと思いますが、社寺の観覧料、入場料等に対しまして、何ら法的に押えるものは別段ございません。しかしながら、お話の通り観覧料があまりに多いということになれば、自然社寺が利得するという結果にもなるわけであります。そうなりますと、いろいろそれに対する課税等の問題まで起ってくることは、先ほどの自治庁の答弁の通りでございます。しかしながら文化財保護委員会としては、先ほど申しましたように、できる限りこれは必要最少限度の文化財の保護管理に必要なもの、あるいは宗教法人で言いますと、宗教法人の存立、宗教活動に必要な限度において観覧料を取るということはきわめて当然でありましてそれ以上に取ることはできる限り避けてもらいたいと、私ども常にそう考えておりますし、またさように今後も助言いたしたい、かように考えております。  それから今映画のお話がありましたが、映画等におきましても、ああいう一種の娯楽施設についても、国税では三十円以下の場合には入場税は無税になっております。先ほど申しました文化財の公開につきましては、保護のための観覧料を取ることは差しつかえないと私は考えております。大体社寺の観覧料は三十円、四十円、あるいは二十円、十円と、低額の場合が多いのであります。そういう場合にやはり税を取ることは好ましくないというふうに考えております。
  126. 門司亮

    ○門司委員 はっきりしませんが、私が聞いておりますのは、値段が高い安いということではなくて、観覧料をきめる場合にあなたの方から許可制とまではいかぬかもしれないが、何らかのサゼスチョンをする権限をあなた方が持っておるかということです。社寺が一方的に庫裏のやりくりがつかぬからこれくらい上げたらよかろう、これくらいにしたらよかろうというようにおまかせになっておるかどうかだけを、返事していただけばいいのです。
  127. 近藤春文

    近藤説明員 宗教法人につきましては、観覧料は高過ぎるとか、そういう額をきめるとかいう権限は持っておりません。
  128. 北山愛郎

    ○北山委員 税務部長が来られておりますので、これは観光税みたような、天声人語のような派手な問題じゃないですけれども、勤労者、いわゆる給与所得者の住民税ですが、これは例の特別徴収ということが原則になったわけです。これはたしか去年の改正でありましたか、原則としては特別徴収ということになった。そこで従来は納税組合等を作ってやっておったのを、特別徴収ということで源泉徴収されるために、幾らかの手数料といいますか、三分くらいのものをもらっておったがもらえなくなった、こういうことで相当各地でぶすぶす言っておるようですが、これは何か今の法律の上で救済というか、適当な方法がないものでしょうか。これは言うまでもなく給与所得者というものは確実にとられている。おまけに従来のこのような納税組合等の形による多少の恩典も剥奪されてしまうということで、どうも観光税どころではない、深刻な問題じゃないかと思うのですが、何か便法あるいは法の解釈で方法がないでしょうか。
  129. 奧野誠亮

    ○奧野説明員 給与所得者にかかります住民税を特別徴収にする、その場合に若干の金をその関係の向きの市町村が還付しておるかという問題であります。これは給与所得者の負担が他の所得者に比べて高過ぎるというところから起ったんだろうと思います。従いまして、根本的にはその問題を解決しなければいけないじゃないかと思っておりまして、そういう意味で努力をしているわけでありますが、所得税におきましても給与所得者の負担が実際面においてかなり重いのだ、これをぜひ是正したいということでいろいろ検討されておりますので、そういう面から抜本的な解決をはかりたいというふうに現在のところは存じておるわけであります。
  130. 北山愛郎

    ○北山委員 それも問題ですけれども、深いところへ持っていかれたんじゃ、これはいつも言うことで、いつまで待っておってもやってくれないのです。奥野さんがやってくれればそんなことを言う必要はないですけれども、そっちはそっちでやってもらう。しかし今後の徴収の問題でありますから、従来であれば納税組合等を作れば多少そういうふうな形もできたが、それを剥奪されてしまった。税が高い上に確実に徴収され、しかもほかの方にあるような便宜までなくなってしまった。まことに何から何までよくないのですが、その分だけでも何とかならないか、こういうわけですが、根本的なことはまた別に解決するとして、これは徴収方法の問題として別個に考える余地がないか、こういうことです。
  131. 奧野誠亮

    ○奧野説明員 特別徴収義務者に対しまして徴収事務に対する交付金的な形において金を渡されますことは所得税等にも関連して参りますので、これは避けていただきたいと思っております。しかし給与生活者の福祉の増進に役立つような施設を充実していく、これは幾らおやりになってもけっこうなことじゃなかろうかというふうに思っているのであります。そういうことよりもむしろそういうふうな施設の充実に金を使っていただきたいというふうに存じております。
  132. 川村継義

    ○川村(継)委員 大へん時間がたっておりますので、簡単に、一、二の問題をお聞きしたいと思います。  昨日いただいた再建の資料についてお伺いいたします。午前中中井委員からも何かお話になったようでありますが、たくさんの団体で再建団体としての申し出をしているけれども承認されている団体の数が非常に少いということは、財政部長からお話がありましたように、地方自治体自体の計画が進んでいないという理由もありましょうが、やはりこれは自治庁が何回も計画をやり直させる、非常に親切、丁寧に指導なさっているという結果が大きな原因じゃないかとわれわれは考えるが、もっと大きな原因は融資の内定について大蔵省自治庁あたりとの折衝が難航しているじゃないか、こういうようにも見ているわけです。それが承認され、団体が決定されるのが非常に遅れているというふうに思うのですが、その中で融資の内定額なんであります。これは法の十二条あるいはそれに関係する政令等に基いて内定額をきめていかれると思いますか、この内定された府県の額等を考えてみて、一応内定された考え方なり、あるいは方針なりをお聞きしたいと思います。
  133. 長野士郎

    ○長野説明員 再建債の融資の対象になりますのは、先ほどお話がありましたように、地方財政再建特別措置法の規定及び政令規定に基きまして融資額を大体定めるわけでございます。その内容は、法律規定にもございますように赤字を見る見方といたしまして三種類ございまして、一つは二十九年度の決算におきまして繰り上げ流用をいたしております。これは形式的な赤字というふうに一応考えますが、その繰り上げ流用額全額でございます。それからもう一つは、事業繰り越しをいたしております場合に事業繰り越しの中で、補助事業の場合でありますと補助基本額相当部分につきまして、継ぎ足しを除きましてその特定財源相当額については、これは赤字として考えることにしております。これも法律及び政令規定できまっております。それから単独事業につきましては、事業繰り越しをいたしました場合には、それに伴う特定財源を先食いするといいますか、そういう形になっております場合にはこれを赤字として考えることになっております。その次は支払い繰り延べでございまして――支払い繰り延べと申しますのは御承知のように当該年度、すなわち二十九年度の予算に歳出の費目として上っておりますけれども歳入がそれに相応いたしませんとか、いろいろな事情がございまして契約その他債務が発生しておりますにもかかわらず支払いを繰り延べておる、こういうものは支払い繰り延べといたしまして、それも赤字額として算定をするにことなっております。大体その全額をまず確定をいたしまして、そうしてそのものを基本にして考えるわけでございますが、この場合に国庫支出金の未精算金、たとえば義務教育費の国庫負担金で精算額を二十九年度に精算されまするものがおくれて三十年度に入るというものがございまするが、これは当然に入るわけでございますから、その部分をそれから落して考える、それから三十年度に黒字を出しまして過去の赤字を消しております場合には、それに相当いたしますものを落して考えるということになっておりますが、三十年度に黒字を出した団体というものはそれほど該当が多くございません。そういう関係がございますから、おおむねの考え方といたしましては国庫支出金の未精算額、先ほど申しました赤字額から国庫支出金の未精算分がありました場合には、それに相当するものを落した額というものが、おおむね融資対象額の総額となっておるわけでございます。
  134. 川村継義

    ○川村(継)委員 そうしますと、端的にお答え願いたいと思いますが、二十九年度の決算の実質収支の赤字よりも、この内定額というのは上回ることがありますかどうですか。
  135. 長野士郎

    ○長野説明員 二十九年度の決算で出て参りますのは繰り上げ流用額、従いまして今申し上げましたような事業繰り越し、支払い繰り延べが加わりますから、それより上回るのが普通でございます。
  136. 川村継義

    ○川村(継)委員 ここに九つの府県団体がありますが、これをちょっと見てみますと、たくさん言ってもしようがありませんが、京都の場合歳出歳入のマイナスが二十九年度は二十二億一千五百万円余になっていますね。それからいわゆる実質赤字というものが二十四億九千五百万円余になっております。京都の場合には約二十五億ばかりの実質赤字というのを出しておる。それから徳島の場合は、二十九年度の決算で見ると四億五千万円余が歳出歳入の赤字であり、実質赤字として七億九千万円余出ておりますね。長崎の場合は三億五千万の歳出歳入の赤字であって、実質収支の赤字は六億余である。ところがこの内定額をずっと各府県見て参りますと、大ていの県がこの実質収支の赤字よりも少い額が決定される。ところが長崎は実質収支の赤字よりも多く決定されておる。こういう結果が出ておるわけですね。私はさっきお尋ねしたように法の十二条あるいは関係政令によって今お話しのような基準で算定されたでありましょうけれども、何かこの決定した結果がふぞろいのような感じがしたのでお尋ねしたわけですが、その点二十九年度のいわゆる実質赤字というもの、それとこの内定になったところの関係がどういうふうになっているのか、もう一ぺんお聞かせ願いたいと思います。
  137. 長野士郎

    ○長野説明員 先ほど申し上げましたのは決算上現われました形式的な赤字との関係はどうなっておるかというふうなお尋ねのように伺いましたので申し上げたのでありますが、今までの実質赤字額の見方と、それから再建債を算定いたします場合の見方とで多少相違がございます。その点が融資対象額を見ます場合に食い違いを生ずる一つの原因でございますが、たとえば事業繰り越しについて考えました場合に、事業繰り越しといいますものについて今まで出ておりました見方では、未収入の特定財源を引いたもののその余の部分を全部実質的な赤字として考えておったわけであります。それはこの場合には未収入の特定財源を引いたものということをさらに分析をいたしまして、正確にしたと申しますか、事業繰り越しの中で補助いたしますならば補助対象になっております事業額、継ぎ足しというものを一応はずして考えまして補助対象になっておりますところの事業額の中で未収入の特定財源を落しましたものについて考えるということに考えておるわけでございます。また単独事業につきましては、もちろん未収入の特定財源を落しますと同時に、一般財源を落して考えるという考え方になっておるわけであります。従いまして今まで言っておりますところの実質収支額よりやや下って参るわけであります。先ほどお話しの京都府とか、そういう問題について詳細に今よく記憶しておりませんが申し上げますと、京都の場合にあいておりましたようなお話のような額であったかと思いますが、落ちておりますのは、一つは生活保護その他の先ほど申し上げました国庫支出金の未精算部分というものを除きましたので、それで落ちて参ったのであります。それからそのほか、たしか退職手当債の関係で退職手当債の振りかわったものの関連があると思います。長崎県の場合にふえておるということでございますが、これは今までの実質収支として長崎県の場合に考えられておりましたものをさらに精査をいたしましたところ、たしか昭和二十八年のころでございましたかに、いわゆる支払い繰り延べと称するものが相当あることが明らかになりました。これははっきり記憶いたしておりませんが、たしか二十八年の暮れでございますか、年末手当を職員に一応貸付をしたというような形になっておりまして、実際に支払っていないものでございます。それをやはり正式には支払い繰り延べとして考えるべきものというふうになって参りました。正当に予算上の経理ができておりませんが、実際はその場合に年末手当を、相当な額でございましたが、これを長崎県の債務として職員に対して支払うべきものであった、それが実質上はただ貸付という形で回収されるような形になっておりまして、正規に支払われていないということは明らかになりましたので、それを本来支払い繰り延べとして算入すべきものでございましたが、今までの実質収支額との関係で、それだけふくれて参った、こういう状況でございます。
  138. 川村継義

    ○川村(継)委員 今の融資内定額と書いてありますが、その額はこれは動かない数字ですか、あるいはその後これから減らすことはないでしょうが、増加する見込みがあるのですか。それが一つ。それからもう一つは、政府債と公募債の配分、割り振りについての考え方、あるいはその方針、それをちょっと簡単でいいですからお話し願いたい。
  139. 長野士郎

    ○長野説明員 ここにあげました融資内定額は、今後変更することはないと思います。  それから政府債、公募債の割り振りでございますが、これは普通に四百億円の中二百五十億円が公募債、百五十億円が政府債となっておりますので、普通の場合には五対三の割合でございます。ちょうど二百五十億、百五十億ですから五対三になりますが、五対三の割合で考えることになっております。ただし地元の金融機関その他の消化能力というものとのにらみ合いがございますので、そういう場合に消化が実現しないということでは再建債としての意味をなしませんので、そういう場合には割合を変えることにいたしております。
  140. 川村継義

    ○川村(継)委員 いろいろ聞きたいことがありますが、大筋だけ聞いておきます。今ここに京都初め山梨県にわたる九つの団体承認になっておりますが、この九つの団体計画の中で昇給昇格という財源についてどうなっているか、これはさっき北山委員からも御指摘されましたように、再建団体は非常に地方公務員に大きな犠牲というのはあまり大げさかもしれませんが、とにかく犠牲が人件費とか昇給昇格とかいろいろな面でかぶさっている傾向が出てきている。あるいは人員整理というような面へ出てきておりますが、この出ております九つの団体計画の中に昇給昇格を初年度において落しておる団体はありますか、ありませんか。ちょっとお聞きしておきたい。
  141. 長野士郎

    ○長野説明員 これらの団体で、初年度におきましては昇給昇格を落しておる団体はございません。
  142. 川村継義

    ○川村(継)委員 実はこれは次長一つ考えをお聞きしたいのですが、四月の十日ごろだったと思います。この委員会で昇給昇格とかいうような問題で論議なされまして、次長名かで各都道府県に昇給昇格の財源を確保するようにというような通牒を出されたことがあったと思います。私の記憶では、四月十三日だったと思いますが、次長自治庁の幹部諸君と団体交渉をなさって、そうしてそこに六項目かの確認事項をなさっておるようであります。その中で、ここにちようど私の手元にありますが、第三項目の中に、地方公務員の給与は国家公務員の給与と均衡を保つように、右の財政計画を基礎として、昇給昇格が赤字団体であると黒字団体であるとにかかわらず、すべての地方団体において実施されることを期待している。それから四項目になりまして、従って再建法適用団体再建計画審査においては、昇給を含む給与費についても、今後も合理的基礎に基いて検討を加える。こういうような項目が確認されているようであります。鈴木次長と自治労の幹部との間に右事項を確認するという六項目、そうして今私が読んだのがその三項目と四項目になっております。これは自治庁としては当然そのように地方公務員に対する給与ということを考えていただくこと、努力してもらっていることについては、われわれは敬意を表するわけでありますが、今お聞きしますと、承認されている九つの団体の中には、いわゆる昇給財源というものを落して計画しているところはない、こういうことでありますので、これは非常にけっこうなことだと思いますが、私この前地元に帰りまして、私の方の県の計画を聞いて回ったところ、初年度は昇給昇格財源が全然計画に載せていないということだそうであります。その後どうなったかわかりませんが、どういうようなことで自治庁承認なさったか、あるいはなさろうとしているか、よく存じませんけれども、昇給昇格財源を去年度において全然落している。これはそうなりますといつやられるか、見通しがつかない。しかしまあ何か交付税が多くなってきたというようなことであれば、それは実施しようというようなことだそうでありますが、もちろん実施してもらわねばならないと思います。ところが実施となると、第二年度以降の計画にこれは大きく支障が参りますので、当然修正をしなければならぬ。修正はもういつでもいいから、初年度においてとにかくそういうものを必ずしも載せておく必要はないじゃないかということになりますと、私は大へんなことじゃないかと思っている。こういうのを県自体が提出した場合に、自治庁としては当然これについては、今の次長の確認事項にもありますような考え方を持っておられるわけですから、これは自治庁としては、そういう計画を提出した団体については十分指導の手を加えていただくことが当然じゃないかと思うのですが、この辺についての自治庁のお考えをお聞かせ願いたい。
  143. 鈴木俊一

    鈴木説明員 ただいまお話のございました点でございますが、今年度の地方財政計画におきましては、御案内の通り給与費について従来の計算との間のズレを国家公務員の給与水準を基礎にいたしまして大幅に是正をいたしたわけでございまして、また昇給財源等につきましても国家公務員並みの財源措置を講ずるというふうな建前にいたしたわけでございます。そういうような関係からいたしまして、今の通常の財政運営によります団体におきましては、地方公務員の昇給昇格ということは、まず財政計画に予定いたした通りのことができると思うのでございまして、赤字団体あるいは再建団体等におきましては、私どもといたしましてはそういうことを期待いたしておりますけれども団体の財政運営上そういうことがどうしてもできかねるというような結果になっている団体が遺憾ながらあるわけでございまして、その点はいたし方ないと申せばまことにいたし方ないことだと思うのであります。再建団体につきまして、財政再建計画自治庁といたしまして相談に応じて検討いたします際におきましては、これは歳入歳出の両面に及びまして、およそ合理的にさらに歳出の効率化をはかり得る余地があれば、あるいは節約し得る余地があれば、これを節約していただく、あるいは歳入についてもさらに合理的に増収をはかる余地がございますれば、必ずこれをやっていただく、そういうようなことで、何カ年かの間に赤字を帳消しにしてもらう、こういう前提によって審査をいたしておるわけでありまして、給与費につきまして昇給の財源というものをどういうふうに考えるか、これは今御引用の中にもございましたように、われわれといたしましてはあくまでも合理的基礎の上に立って検討する、こういう考え方でございます。ただいま九県以外の県について昇給財源を初年度において見込まないものがある、そういう計画を出しておるところがあるというお話でございますが、私どももそういうものが具体的に出て参りました場合におきましては、十分に今申しましたような趣旨審査をいたしておるつもりでございます。
  144. 川村継義

    ○川村(継)委員 御承知のように地方財政の苦しいという立場から、再建団体の申し出もたくさんしておるわけでございますから、これは大幅な人員整理というものが各県で行われておる、あるいは条例で、どうも不当だと思われるような条件で、かつてに給与表を切りかえてみたり、今のように昇給昇格を一年間ストップしてみたり、あるいは一年なり九カ月なり六カ月なり、発令したけれども実際の金は渡っていない。いろいろなことが行われているわけです。各県の苦しい台所のことを考えると、あるいはやむを得ないということも成り立つかもしれませんけれども、ただ再建計画というだけのために、やはり公務員のそういう身分というものが脅かされるということは、これはよほど考えなければならぬ重大な問題だとわれわれは見ているわけです。そこで今ここに出ております九団体には、そういうようなことはなかったといっておりますけれども、私が聞いた範囲内でもそういう昇給財源等は全然再建計画に載せていない。計画書を出してそうして自治庁から承認をとろうとしている、こういう点については、やはり自治庁はよろしいというような態度で出られるのか、やはりあとう限りの、将来新陳代謝等は、これは当然考えなければなりませんでしょうけれども、やはり昇給財源等は、初年度からちゃんと計画に載せて、再建計画を立つべきである、こういうふうに見て指導されておるのか。そのところが私は非常に大きな問題ではないかと思うのですが、もう一度次長からお聞かせ願いたい。
  145. 鈴木俊一

    鈴木説明員 再建計画審査いたします場合に、給与費につきまして、合理的基礎に立って検討すると申し上げましたのは、当該団体の類似規模あるいは同一のような状況にありまする他の団体との比較等をいたしまして、果してこれでよろしいかどうかというようなことを、やはり私どもとしては検討いたしておるわけでございますが、昇給の財源等につきましては、今お話にもございましたように、あるいは新陳代謝で高給の者がやめて参り、かわりに採用するものは少額で済むという場合に出て参りますような財源を、昇給財源に考えるとか、あるいは職員の若干の整理を計画いたすというような場合におきましてよって生ずる財源をその一部に充てるとかいうようなことを計画の上に考えておる。最小限度そういうようなことは考えておる団体が多いと思うのでございます。なおそれをもっても足らないような計画になっておる団体も若干ございますが、そういうようなものは先ほども申し上げましたように、税の自然増収等の見方を非常にきつくいたしておりますので、現実の当該年度の予算の編成の際におきましては、事業費なり人件費なり等で、さらに優先的な順位にありますものを、ふくらまして肉づけをしていく、こういうようなことをやるわけでございます。そういうような際におきまして、さらに妥当な基礎に立った調整が加えられるのではないかというふうに考えております。
  146. 川村継義

    ○川村(継)委員 時間がありませんので、いろいろお聞きしたいことがありますけれども、また別の機会にいたしたいと思いますが、この四月の十三日に次長が自治労の諸君と団体交渉で確約された六項目については、これは当時ただおざなりに気分休めに確約されたいというような意味合いでなくてやはり地方公務員の立場に立って、ぜひとももう一度読み返していただいてお含みおき願いたいとお願いいたすわけであります。  それからきょうの新聞で私ちょっと見たのですが、市町村共済組合の使い込み事件、あれは一体どういうふうになっているのですか。この前の国会で、私は市町村共済組合の法律改正、あるいは市町村恩給法の一部改正等で、相当ああいう掛金の問題等が論議されたと思っております。問題になったわけです。先般は農林省の使い込み事件というのが大きく世間を騒がせた。とにかくこういうような公金かあのような不始末にされるということは、よほど注意しなければならぬ大問題だと思うのです。きょうの新聞に、名前はちょっと忘れましたが、市町村共済組合の使い込み事件が出ておる。それに対して自治庁市町村共済組合について会計面あるいは一般問題について、どのような指導監督をしておられるか、そのようなところを、その事件の内容あるいはそれらについての自治庁の立場をお聞かせおき願いたい。
  147. 鈴木俊一

    鈴木説明員 今の市町村職員共済組合につきましては、昨年ですか、市町村職員共済組合法というものを制定願いまして、そして市町村の雇用人並びに職員に対します、共済の制度施行することになったわけであります。これは各都道府県単位に市町村職員共済組合というものを作って、そこで市町村職員から一定の掛金を徴収し、市町村もこれに若干の負担をいたしまして、そして共済制度ができておることは御承知の通りでございます。これは全国四十六都道府県にあるわけでございますが、これらの第二次的な監督責任と申しますのは、自治庁の長官でございますが、第一次的には所在の都道府県知事にその監督をお願いいたしておるわけであります。きょうの新聞に報道されておりましたことは、そのうちの東京都の市町村職員共済組合についての問題でございます。私どももまだ具体的の内容をきょう新聞で初めて知っただけでありまして、内容を承知いたしておりません。十分これは調査をいたしまして、また御報告を申し上げたいと考えております。
  148. 加賀田進

    ○加賀田委員 ちょっと一つだけ。小林さんにお尋ねしたいのですが、戦後自治法の改正で、あとの始末でいろいろ説明されたのですが、恩給通算に対して十六項目が委譲されて、それに基いて職員が異動して恩給通算される。聞きますとその職員が改めてさらに違った業務の方に、部とか課に異動した場合には、恩給通算されぬというようなことを言っていたのですが、そういうことがあるのですか。
  149. 小林與三次

    小林説明員 この恩給法の通算規定法律に基いておるのでございまして、自治法の改正法の附則十二号で、「指定都市職員となる者は、政令で定めるところにより、その選択によって、都道府県の退職手当を受け、又は受けないことができる」、これは本人の得になるように選択権を認めたのでございます。ただし問題は、もう一つは退職手当の問題でございますとともに、恩給の問題が中心だろうと思います。恩給法が準用になっておる、あるいは適用になっておる職員が、そのまま市へ行った場合に、恩給法そのものをつなげよう、こういうのと、もう一つ府県が自主的にやっておる退職金をつなげようという両方があるわけであります。そこで恩給法は、恩給法の一部を改正する法律で、その職員が二百五十二条の十九の第一項の各号に掲げる事務に従事する間に限り恩給法の規定を準用することになっております。そこでこの恩給に関する限りは、今お尋ねの通り法律に現にそうなっておりまして、これはわれわれも実は必ずしも合理的な法律だとは思っておりませんが、従来から市に移譲になった事務がほかにもいろいろあります。その場合に実は従来全部この例で一貫して参っておりまして、この場合もその例に従わざるを得ないんじゃないかというので、これは従っておるわけでございます。それでありますから根本的にこの問題を解決するためには、つまり恩給法の通算というものを府県だけでなしに市にどう及ぼすか。少くとも五大市あたりは府県と変らずにある程度職員の交流もあるから及ぼすべきではないかというようなところまで踏み込まなければ、今のところ解決できません。この点はわれわれとしては今ワン・ステップ踏んだわけでありますから、次の問題として研究いたしたいと思います。
  150. 大矢省三

    大矢委員長 それでは本日はこの程度にして散会いたします。     午後二時三十二分散会