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丹羽委員 私は自由民主党を代表して、ただいま議題となりました新
市町村建設促進法案に賛成し、社会党の提案にかかる
町村合併促進法の一部を
改正する
法律案に
反対の討論を行わんとするものであります。
御承知の通り
町村合併促進法は
昭和二十八年九月制定され、同年十月一日より三ヵ年の有効期間をもって実施されたのでありますが、その後数回の一部
改正を経て
町村再編成に偉大な役割を果し、本年九月末日をもってその有効期間を終らんとしておるのであります。
合併の成果については一部に批判的な異論がないではありませんが、わずか二ヵ年半にして、全国
町村数を三分の一に減じようとする大計画の八割五分を達成したのであります。ただ数字の多少のみをもってその成績を論ずることはできないとはいえ、わずか一部の境界変更でも過去において多くの難事件を惹起した事例の多かったことを思えば、以上の数字はまさに驚異に値すべく、
町村合併の成果は、わが国
地方自治制度史上画期的事実であり、この間に
促進法の果した使命と意義はきわめて大なりと信ずるものであります。もとより
町村合併の目的は、いたずらに
町村数を減少するにあるのではなくて、これによって
町村の規模を適正ならしめてその基礎を強化し、基礎的
地方公共団体として機能を十分に発揮し、
住民の福祉を増進するにあることは言うまでもありません。
町村合併促進法は
合併全体計画の大部分を達成し、その予定する有効期間の満期に近づきつつある今日、今後に残された問題は、
合併によって誕生した新
市町村が新しい地域を基礎としてすみやかにその一体的態勢を確立し、強化された行財政能力を活用して、その建設を計画的かつ効果的に行い、地域社会の発展向上に努め、もって国民生活の充実と国民経済の基礎をかたくすることであります。すなわち
町村合併の現段階は、
町村の適正規模を目標とする過小
町村の数の減少と、
合併の促進から新
市町村の内容の充実に向って建設の実行に進むべき過程に入ったのであります。この段階においては新
市町村自身がその建設に努力を払うとともに、国、都道府県等においても協力と援助を適切に行い、新
市町村の建設を着実有効に進めていくことは現下の要務であり、
町村合併の有終の美を飾るゆえんでありまして、この段階に臨み
政府が諸
事情を勘案して、新
市町村建設の方途を進め、
政府の協力体制を整えて本案を提案したことは、まことに時宜を得たものであり、関係
地方団体は鶴首してその成立の一日も早からんことを待望しておるのであります。これが本案に対して賛成する根本的理由であります。
しかるに
町村合併の成果を疑い、本案提案の必要なしと論じ、むしろ現行の
町村合併促進法の有効期間を延長して、国の援助協力を徹底せしむるにしかずとの説もあります。この説が社会党提案になる
町村合併促進法の一部
改正案であります。なるほど現在でも未
合併町村が相当存在していることは事実であり、また現行の
促進法が規定する国の補助援助も十分その実をあげたとは言えないことも事実であります。
政府各機関の
町村合併に対する協力援助に統一を欠いたとの批判のあることも、また否定するものではありません。
合併をめぐる紛争事件のあることも承知しております。しかしながら私どもは
町村合併はともかくもここに一段落を遂げ、若干の未
合併町村を残しつつも、
合併新
市町村の建設のため新しき構想のもと再出発をなすべきであり、これがためには新法の制定により建設の基本事項を明示し、国及び都道府県等の協力援助の措置を明らかにすることが必要であるとする
政府の
方針は、正鵠を得たものであり、私はこれに対し全面的に賛意を表するものでありまして、
反対論者の説には、はるかにくみしがたく、社会党案には賛成し得ないのであります。
これは要するに
町村合併の意義や成果に対する疑惑あるいは否定的批判は三年というごく短期間にかかる歴史的大事業を一挙に遂行したことによって起った
町村合併の方法の不備や摩擦及びその結果として生まれた新
市町村の現状、さらに新
市町村建設の前途についてでありますが、しかしながら
町村規模の拡大をはからねばならぬことは、異論の余地は全くないところでございます。
合併の過程における方法論や新
市町村の現状をもって、直ちに
町村合併の功罪を論じ、
合併に寄せていた期待がはずれたとするのは早計であると思います。
新
市町村がいかに建設されるかは今後にかかっております。
政府が新
市町村建設並びに経営の基本
方針として総合性と実効性のある新
市町村建設計画の策定と実施、行財政運営の合理化及び一体性の確保の三
方針を示し、新
市町村建設計画の実施の促進に関する国、都道府県及び公共企業体の協力援助による措置を定め、また新
市町村建設計画の実施を促進するために諸法律の特例を設け、なお
合併に伴う論争の処理及び未
合併町村の
合併の推進に関しても、これが解決の道を講じ、
町村合併の趣旨を貫徹し、その最終目的を達成するため本法案を提案したことは、まことに意義深いものがあります。
すなわち基本
方針は新
市町村建設のための軌道であり、都道府県の協力援助は潤滑油や燃料の役目を果し、みずから走らんとする機関車に対し、大きな推進力となるものであります。また
町村合併に伴う論争の処理のため、
町村合併調整
委員の制度を設けたことは、軌道に横たわる障害物を除去することであり、未
合併町村の
合併の推進の方法を講じたことは、現行
促進法の失効後に備えたもので、いわば古い軌道から新建設の軌道に乗りかえるための用意であって、これまた私の
政府案に対し賛成するところであります。
社会党の諸君は、このような内容を持つ新法を制定する必要はないと言われ、その論拠として現行法で
合併また
合併する
町村は、すでに
合併条件として新
市町村建設のための事業計画があり、国の援助または諸法律の特例による
合併促進の保護も現行法に定められておる、
政府がその法律に忠実に財政措置をもって協力援助を行えば足りるのである。新法を制定して新
市町村建設計画を調整するというのは、当初の
合併計画における事業計画を一方的に圧縮せしめるのではないか、また法案における国の協力援助のごときもその実がないのではないかというのであります。しかしながら
町村合併促進法と新法とは、段階的にその主たる使命の異なることはすでに述べた通りであります。また当初の
合併関係
町村における事業計画もあるいは過大であったり、新
市町村成立後の新事態に即応しないものが多いことは言うまでもありません。
新団体の個性と
実情に相応し、新たな見地から総合的検討を加え、新
市町村建設計画が計画的効果的に実行可能のように調整され、再出発の必要のあることは当然でありまして、新団体の誕生によって再出発の必要ありとすれば、進むべき新たなる道が必要であり、新たなる
市町村としての計画の総合性、行財政の合理化、自治意識の一体性を確保するという、よるべき
基準が必要なことは明白であります。
国、都道府県の援助については、財政その他の
事情により完璧を期しがたいのでありますけれども、
政府は新
市町村建設のためにはでき得る限りの努力を示しておりますので、既往の
町村合併促進の過程においては、この点につき遺憾があったことはいなめませんが、要は関係各方面の理解と協力のいかんにあると信ずるのであります。
なお
政府は本案の立案に当り、関係各機関と協議して国の援助計画を総合的に実効性あるものとし、国庫の補助、起債の優先、事業計画遂行への協力等、法文に規定するにとどまらず、予算措置等にこれを具体化しておりますので、この効果は期して待つべきものと信じます。これが私が
政府案に賛成する第三の理由であります。
今や全国関係
地方公共団体、特に
合併による新
市町村は、本案の成立を一日千秋の思いで待望しておるのであります。私はこの全国の熱望にこたえて本法を成立せしめ、新
市町村の建設を一日も早く堅実なる軌道に乗せ、民主政治の基盤たる
地方自治法の根基をつちかい、もって新日本興隆のいしずえを築かんことを念願しつつ、社会党案に
反対し、
政府案に賛成して討論を終ります。(拍手)