運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-04-25 第24回国会 衆議院 地方行政委員会 第41号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十五日(水曜日)     午前十一時十分開議  出席委員    委員長 大矢 省三君    理事 亀山 孝一君 理事 鈴木 直人君    理事 永田 亮一君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 北山 愛郎君    理事 中井徳次郎君       唐澤 俊樹君    川崎末五郎君       木崎 茂男君    纐纈 彌三君       櫻内 義雄君    渡海元三郎君       徳田與吉郎君    中嶋 太郎君       灘尾 弘吉君    丹羽 平助君       堀内 一雄君    山崎  巖君       加賀田 進君    川村 継義君       五島 虎雄君    櫻井 奎夫君       西村 彰一君    門司  亮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 太田 正孝君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁行政部         長)      小林與三次君  委員外出席者         専  門  員 円地与四松君     ————————————— 四月二十四日  地方自治法の一部改正に関する請願(中馬辰猪  君紹介)(第二〇八八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一一号)  地方自治法の一部を改正する法律施行に伴う  関係法律整理に関する法律案内閣提出第一  二五号)     —————————————
  2. 大矢省三

    大矢委員長 これより会議を開きます。  地方自治法の一部を改正する法律案及び地方自治法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案の両案を一括議題として質疑を行います。質疑の通告がありますので、これを順次許します。北山愛郎君。
  3. 北山愛郎

    北山委員 きのうに引き続きまして、自治法の御質問を申し上げますが、昨日の大臣お答えでありますと、今度の自治法改正で特別市を削除したということは、将来府県から大都市独立させるというような考え方については賛成できない。要約すれば、こういう趣旨でございますか。
  4. 太田正孝

    太田国務大臣 私の言葉が足りなかったかもしれませんが、賛成できないという意味で申し上げたのでなくて、この大きな問題は、府県制度根本改革につきましての地方制度調査会のお考えも聞いた上できめたい、こういう意味でございます。
  5. 北山愛郎

    北山委員 そういたしますと、今度の自治法改正後において、地方制度改革、ことに府県制度問題等につきましては、大臣はどのようにお進めになる考えであるか。地方制度調査会をさっそく開いて、府県制度等についてあるいは大都市制度について御検討なさるというような予定でございますか。
  6. 太田正孝

    太田国務大臣 国会が済みましたあと、至急その諮問をいたしたいと考えております。
  7. 北山愛郎

    北山委員 それでお説の通りに、特別市の問題、大都市制度をどうするかという問題については、地方制度調査会の新しい決定答申に基いて今後考えるというようなことであるのならば、特別市の規定をわざわざとる必要もなかったのではないか、そのままにしておいて、今後そういうふうな地方制度調査会等意見に基いて、あらためて検討した上でやるべきであって、今回卒然としてこの特別市の規定を削除されたということは、やはり一つ政府としての考え方を示しているのではないかと思うので、大臣の御答弁とは矛盾するのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  8. 太田正孝

    太田国務大臣 私の考えているところは、現在の地方制度のもとにおいては適当でない、こう考えております。今回削除した理由もそこにあるので、しからばといってこれをうっちゃっておいていいという意味ではございませんので、地方制度調査会に諮問いたしたい、かような意味でございます。
  9. 北山愛郎

    北山委員 大都市の問題については、御承知のように府県から独立をする、現在までの自治法にある特別市の制度一つ方法であります。それからもう一つ他方法としては、そういうふうに独立の形にしないで、事務配分をやっていく、要するに大都市に対しては特別に府県事務配分していく、いわゆる事務の再配分というような方法によって、この大都市問題を解決していこうという考え方があるわけですが、今度の改正案で見ると、今申し上げたような考え方で、自治庁は行こうとしておるのではないか、こういうように思うのですが、いかがでしょうか。
  10. 太田正孝

    太田国務大臣 この問題は、事務配分という点におきましては、答申の方におきましても、まずさしあたり事務配分をやったらという御意見でございまして、それを取り上げたのでございます。これが根本的に将来の特別市というものをやめていいという意味とは私は考えておりませんので、とりあえずの方策として、事務配分ということをやったのでございます。
  11. 北山愛郎

    北山委員 ただいまのお答えではどうもはっきりしないわけです。というのは、要するに事務配分をし、十六項目の事務を特に大都市に対して委譲するという点についてはわかるわけですが、ただ積極的に現在ある特別市の規定をとるという趣旨においては、どうも不明確なんで、その点についての大臣の御答弁は明確でない。必ずしも特別市というものを否定しないでおいて、規定だけは削除するということであって、これはどうしてもわれわれが伝え聞いておるように特別市というものを削除するということを、一つの取引の道具として使ったような印象を裏づけるような感じがいたすわけであります。そうでなく率直にこれは事務配分でいくべきであるというならば、一応わかるわけです。だから特別市の規定は必要じゃないんだという御信念であるならばわかるのですけれども、そうじゃなくして、特別市の問題も今後さらにいろいろ機関にかけて検討した上できめる、必ずしも否定はしないんだ、こういうふうなお考えでおりながら、特別市の規定をわぎわざ削除されたということについては、やはりそこに不明確な点が残るのでありますが、その点についてお答えをいただきたい。なお小林行政部長もおられるのですが、御随意に補足をしていただきたい。
  12. 小林與三次

    小林(與)政府委員 北山委員のおっしやいましたところの御趣旨通りであります。われわれの考え方は現在の府県制度のもとにおいては、現行法考えられておるような特別市の規定を動かすことは適当でない。それはむしろ事務配分によって、大都市実態に即するように大都市制度というものを整理すべきものだ、こういう考え方でございます。しかし府県制度につきましてもいろいろ論議があって、現に地方制度調査会でも根本的に研究することになっております。そういう場合に府県制度改革の一環として、この大都市問題とかあるいは首都制度の問題とか、北海道の問題とかいろいろ問題があるわけでございまして、そういう問題を総合的に検討されてしかるべし、こういう考え方でございます。
  13. 北山愛郎

    北山委員 府県制度と特別市、大都市の問題はいろいろ数年来論議をされておるわけであります。しかし同じところをぐるぐる回って、さっぱり結論を得ておらないというようなことも、これは事実じゃないかと思うのです。現在までの地方制度調査会審議状況についても、一体どの方向に行くのかさっぱりわけがわからないというような事態でありますが、一体自治庁としてはどうお考えであるか、一つこれを承わりたい。たとえば府県市町村の問題について、前の塚田長官はたしか府県市町村自治体が二段階になっておるということは好ましくないんじゃないか、将来はこれは一段階にすべきじゃないかというような構想を述べられたこともあります。そういうふうな基本的な考え方につきまして、太田さんはどのようにお考えであるか、こういう点をお伺いしたいと思います。
  14. 太田正孝

    太田国務大臣 お言葉通り、非常にこの問題はむずかしい問題でございまして、かるがゆえに地方制度調査会答申にもさしあたって事務配分という言葉が生まれたと思います。また長年争った経過にかんがみて見ましても、特別都市を否定するという実際問題につきましては、法律のようにこれが現われておらぬ現状が示しておるがごとくに、非常にむずかしい問題だと思います。塚田長宮の私見として述べられた点は、どういう意図を持ってやったか存じませんが、私としては、自治体の本旨というものは、今の府県市町村を一本にしていわば国の出先機関のような関係に持っていくという考えには、私は賛成することはできないのでございます。
  15. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、やはり太田さんは府県市町村の現在のそれぞれ自治体としての二段階制度維持していく、これが適当である、そういうふうなお考えだと思っていいですか。
  16. 太田正孝

    太田国務大臣 その通りでございます。
  17. 北山愛郎

    北山委員 そこでお伺いするのですが、今度の改正案内容に触れるわけでございますが、今度の改正案につきましては、大体第二条におきまして府県市町村性格地位というようなものについて規定をされておるわけであります。これをずっと見ますと、まあいわばあっさり読みますと、現状とさっぱり変りがないようにも思われる。そこで法律のことでございますから、しろうとの考え方で文章のように読んでしまったのでは、間違いが起ると思いますので、今度の第二条の改正というものによって、現在の府県市町村性格ないし事務配分と、これとはどういう点が違うのであるか、これを明らかにしていただきたい。
  18. 小林與三次

    小林(與)政府委員 この二条をお読み願えば特別な意味も何もありませんで、こう書いてある通りでございます。要するに現在の自治法の形式と、それから府県市町村実態というものとの問題でございまして、現在の自治法は御承知通り地方公共団体として府県市町村を一様に考え、一様に規定いたしておるわけでございます。しかしながら実態的に申しまして、市町村は基礎的な地方公共団体として仕事をやり、府県はその市町村包括する公域的な団体として仕事をやっておるのでございまして、つまりそれぞれの本質的な使命というものはあるわけでございます。その本質的な地位、職能というものをはっきりさせるということが公共団体運営上きわめて必要であろう。また国としていろいろ府県市町村事務をさせる上におきましても非常に必要なのでございまして、現在あるがままの本質をはっきりさせまして、その筋道を立てて行政運営の適正を期しておこう、こういう考え方でございます。それでございますから、現実府県のある仕事市町村のある仕事とがこれによって積極的にひっくり返るとか、どうこうという問題はないのでございまして、それぞれあるべき姿をはっきりさせて、あるべき道に従って運営の適正を期する、こういうことが根本考え方でございます。
  19. 北山愛郎

    北山委員 現状をそのまま移したのだ、こういうお話でありますが、そうすると、今度の改正案のその部分について、これをかりに削除しても何ら差しつかえはない、こういうように考えていいですか。
  20. 小林與三次

    小林(與)政府委員 削除するとか、差しつかえないという問題じゃ一つもないのでございまして、現在府県市町村もあるのでありますから、府県市町村というものの地位性格というものをはっきりさせる必要がこれはあるのでございます。現在の大筋はそれでいっておりますけれども、現在やや、いわば平面的に書いてありますので、府県市町村は同じ同列地方公共団体のような感覚がございまして、場合によってはやや競争的、対立的な空気があったり、仕事の面におきましても、そういう場合も現になきにしもあらず、そういうことはおかしいのでございまして、それぞれ自治体としてその公共事務は適切にやっていいのであります。府県府県らしく、市町村市町村らしくその行政の筋をはっきりする必要がある、こういう考え方でございます。それで地方制度調査会の基本的な考え方もそうであれば、前にありました地方行政調査委員会議あたりでもそういう趣旨を明らかにしておるのでありまして、そういう大筋によって運営と今後の府県市町村事務配分というものの適正を期していくということは、自治法基本法たる性格上当然に考えてよい問題であるし、現在の実情から考えてその必要がある、こういうふうに存じておるのでございます。
  21. 北山愛郎

    北山委員 ただいまの小林さんのお話は非常にデリケートなんでどうもよくわからぬのです。先ほどの御答弁であると大体現状を映したのだ、こういう話であります。ところがあと答弁では、どうも今の府県市町村関係がともすれば同列考えたりするようなことがあるから、その間の関係を明らかにするのだというふうに言われておるので、何かやはり一つの法の改正なり立法については一カ条といえども、これは一つ効果といいますか、その内容効果を持つものだと思うのであります。それをお伺いしておるのです。先ほどの御答弁のようであれば、何もわざわざこういう規定を設けなくても、現実がそうなっておって一向差しつかえないのだから、形容詞がほしいという程度のものであって、そんなものはなくても間に合う。わざわざこうやって変えた以上は、何らかこの規定意味があり、効果があるだろうと思って私は聞いておるのです。ところが今の御答弁では非常に微妙なニュアンスがあるので、地方制度調査会答申の中にもあるというお話でありますが、たとえば府県市町村包括する団体だ。この包括という意味はどういう意味があるかといえば、これまた従来の地方自治法の第五条の第二項にあるいわゆる包括と何ら意味は違わないのだ。これはこの前の二十二国会のときにそういうお答えがあった。それからまた広域という言葉が新語というか、出ておるのですが、それでは今の府県というものは広域だか広域でないかといえば、これは現在の府県でも差しつかえないのだというような御答弁もあったように思うのです。そうするとやはり先ほどの御答弁のように、現在の姿をそのまま映しておるようにも思えるので、何かそこにこの第二条の改正の中に従来と違った点というものを、もう少しはっきりと示していただかぬと、この規定効果意味がさっぱりわけがわからぬということになるのですが、それをはっきりしてもらいたい。
  22. 小林與三次

    小林(與)政府委員 現在は御承知通り地方自治法では府県市町村は、つまり包括ということは五条に使っておりますが、その事務性格の上におきましては、全然平面同列的に同様に規定してあるのであります。事務も同じように書いてあるのであります。しかしながら現に府県市町村というものが二段階にあり、市町村最下部基礎団体として存在し、府県はそれを包括する、それより大きな広域的な団体として存在しておる以上は、府県府県としてし本質使命があり、市町村市町村としての本質使命が当然にあるべきものなのであります。そこでその点をはっきりいたしまして、中央政府府県市町村、こういう三つの組織で、今の日本の内政が行われておるのでありますから、それぞれ市町村市町村としての機能に専念し、府県府県としての機能に専念するそれぞれの事務性質をはっきりさせまして、市町村でやるべきものは市町村にまかせればよし、府県でやれるものは府県でやった方がよし、そういう建前をはっきりさせる必要があるのであります。それは大筋は現在そのように動いておりますけれども、平面的に書いてあるがためにその点がぼけておる点もあり、事務の執行上についても問題がある場合もあるし、大きく各省の法律事務配分にも問題なしとしない。そこで地方自治法といたしましては、基本的に市町村というものはあくまでも地方公共団体として住民に直結した仕事をやる建前を明らかにし、府県はそれを包んだ大きな団体として、府県らしい仕事基準を明らかにして、そういう仕事によって両者の配分、調整、協力というものをはっきりさせよう、こういうことなのでございます。
  23. 北山愛郎

    北山委員 どうもわかったようでわからないのですが、簡単に言えば従来は府県市町村はいわゆる性質は同格だ、仕事の上の系統としてはずっと国からの系統がある、しかし性格としては何ら上下の差別はないというふうに、団体としてそう考えておったのです。また今の自治法はそういう制度だと思うのですが、今度のこの規定によって、その上下関係をつけよう、こういうことだと思うのです。今度はいわゆる国と府県市町村、こういうふうに立体的に——今までは平面なんです、今度は立体にして団体としての系列をつけよう。国の事務機関委任などしている際には、自然一つ系統がある。今まででも上下系統はあるが、団体として府県市町村の上にある団体である、こういうようなことにしようというところに、この規定のねらいがあるのじゃないですか。
  24. 小林與三次

    小林(與)政府委員 今お尋ねのようなそういう趣旨じゃない。上級団体下級団体に、府県上級団体市町村はその指揮、統括下にある下級団体、そういう考え方は全然ないのであります。しかしながら府県というものがあり、市町村というものがある以上は、当然仕事事務というものは違うべきであります。全然平面的とおっしゃいますが、同じレベルにあるものなら、府県市町村の区別は要らぬのでありまして、やはり平面が違うわけであります。それでありますから、公共団体としては、いずれも自主独立地位を当然に持つべきでありますが、その団体地位が違う以上は、地位にふさわしい事務権能というものをお互いに分け合ってやるべし、こういう考え方でございます。ただ市町村包括する地位にありますから、包括する地位にある府県として、府県らしい仕事をやっていくという考え方でございまして、これでもって市町村府県下部団体にするとか、あるいは府県市町村上位団体にするとか、そういった意味団体としての軽重というか、上下というか、そういう考え方はわれわれは持っておりません。
  25. 北山愛郎

    北山委員 それでは一つ規定の条項でお伺いするのですが、今度の改正案改正後の第二条の第五項第三号、これは府県仕事なのですが、その第三号に「国と市町村との間の連絡、市町村組織及び運営合理化に関する助言勧告及び指導市町村相互間における事務処理の緊密な関係を保持させるためのあっせん調停及び裁定、」その次に「市町村事務処理に関する一般的基準設定、」こういう言葉があるのですが、この市町村事務処理に関する一般的基準設定というものを府県団体仕事としてやり得る、こういうことは従来と違っておるのじゃないでしょうか。
  26. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは現在でも御承知通り府県条例でいわゆる行政事務条例と申しますか、俗に統制条例などという言葉を使っておる学者もおりますが、県で一般的な条例を作るそれぞれの範囲内において、市町村がそれぞれ市町村内部において条例を作る、こういうことは現にあり得るわけでございます。市町村が現在合併でずいぶん少くなりましたが、数十あってそれぞれ自主的に事務処理してよろしゅうございますが、事柄性質によっては、やはり府県くらいの区画で、おおむねの基準が確立されて、それぞれ自治体市町村実情で事を考えるという必要が当然あり得るわけでございまして、現在の自治法のいわゆる行政事務条例というものも、そういうことを考えておるわけでございます。それですからそういうことは当然考えられるところでございます。
  27. 北山愛郎

    北山委員 考えることは何でも考えられるのですよ。ただ問題は、今例をあげられたことは行政事務について従来はあったようですが、今度は市町村事務処理に関する一般的な基準設定というものを、府県がやるのですよ。そうすると府県条例でもって府県内の市町村事務処理に関する一般的基準と称して、それが行政事務であろうが、公共事務であろうが、固有の市町村事務であろうが、その処理について一般的な基準というものをきめる。そうすると市町村はそれに従わざるを得ない。この規定があればこういうような関係に立ってくる。従来はそれができなかったわけです。これはやはり重大な変化であり、今申し上げたように、府県というものを市町村の上に置いて、そうして団体として市町村団体事務処理についての一つのいろいろな規定を出していけるという道がここに開かれてくる。その前の第二号の場合にもあります。たとえば「義務教育その他の教育水準維持、」こういうことがある。しますと、市町村社会教育その他について、府県水準維持であるというような考え方で、一般的にいろいろな基準を設けてやれるのです。その他伝染病の予防、公衆衛生水準維持であるとか、社会福祉事務基準維持であるとか、いろいろ市町村団体の行う事務についてのものさしを、府県条例でどんどん今度は作り得るのです。こういうことであって、これは従来と大きな変化なんで、先ほど小林さんが言われたように、今まで現にある状態を明らかにしたのだということとは大きな違いなんです。そういうふうに解釈せざるを得ないのですが、この規定はそんな意味はないのですか。
  28. 小林與三次

    小林(與)政府委員 府県市町村、現に中央政府だってその通りでございますが、それぞれ必要があって、ある程度仕事ができますが、それだからといって何でもできるかといえば、もちろんできない。地方自治根本趣旨に従ってそれぞれの自主的な活動は自主的に伸張させる必要が当然にあろうと思うのでございます。しかしながら事柄によっては、どうしても府県を通じて統一的に処理すべき行政事務もあり得るのであります。それから市町村があまりてんでんばらばらでもかえって困るという問題もあり得るのでございまして、そういう問題につきまして一般的な基準設定するということは、府県として考えていい仕事でありまして、個々の仕事実施とか施行とか決定とかいう問題は、当然市町村本来の仕事市町村がやるべきでありますが、府県というものがあれば、市町村についてどういう程度仕事をするかといえば、そういう一般的なレベルを保持するということは、府県という団体考えてよい、また現にいろいろ行政上そういう問題も考えておるのでございまして、そういうことは府県らしい仕事として設定されてしかるべし、またあと実施上の問題について府県市町村をどれだけ押え得るかといえば、それぞれの法規建前に従ってやるべきことは当然の話であります。
  29. 北山愛郎

    北山委員 何かこの規定以外に別な建前がどこかにあるようなお話なんですが、その建前に従った規定じゃないですか。従ってこういう規定があると、これをどう解釈しようが、たとえば行き過ぎがあろうとも、こういう規定があるのだから——今まではなかったのだから、助言勧告指導ということはあるいはできたかもしれない、あるいはあっせんとか調停はできたかもしれない。しかしこういうような基準設定であるとか、水準維持であるとか、そういう事務市町村に対して府県がきめるという規定はなかったはずなんです。だから従来はそれをやらなかった。助言勧告範囲でやったでしょう。今度それを一歩突き進んでこういう規定になりますと、府県というものは、こういう規定ができたのだからというので、いろいろ市町村事務処理を、たとえば会計の事務処理をする基準条例を作ることも当然できる。そして市町村はそれに従わざるを得ないということになるでしょう。あるいはまた衛生についても、町内には何メートルに共同便所一つずつ作れというような基準府県条例下、作ると、市町村はその基準に従ってやらざるを得ないということになって、いわゆる団体としての上下関係ができるのです。一般的なそういうふうな事務についての上下関係ができる。そういう規定をここに置いたのではないですか。
  30. 小林與三次

    小林(與)政府委員 そういうことでは全然ございません。これはそれぞれ教育の問題なら教育関係法規があるし、それぞれの他の法令があって、事務上の順守の基準がきまっておるものは当然その法律に従ってやるべきことは、これはもう当然な話でございます。そこで、ここに書いてありますのは、府県として市町村団体に対する監督とか、統轄とかという問題ではないのでありまして、県民一般、市町村民一般と申しますか、国民に対していろんな行政をやる上において、府県がやるべき仕事市町村がやるべき仕事、これを考えておるにすぎないのであります。この仕事が、各市町村ごとにてんでんばらばらにやっては困るような、大きくまとめて統一的にやらなければ困るようなものは、府県が取り上げてやるべし、それからあとの問題も、これは市町村の間における連絡調整の問題でありまして、連絡調整上必要な問題はだれがやるか、それはやはり府県というものの一つの役割じゃないか、こういうことなのであります。それで、大体警察の問題なら警察法によって、規律の方法がきまっておるものは、もちろんそれによってそれぞれやるべきことは当然の話でございます。
  31. 北山愛郎

    北山委員 特別な法令のあるものはわざわざ書く必要はないのです。その法令に従ってやるのは当然な話であります。こういうふうに書けば、その法令できめられたものもそれ以外のものも広範に含むから問題なんです。やはり一つ府県の内部は同じ歩調でいった方がよろしいという必要からなら、連絡調整で一向差しつかえないのです。これでいきますと基準設定ができるのですから、府県の権能としてこういう権限があるわけですよ。そういう性格のものだということになれば、これによって府県はやはり条例で、あるいは相当行き過ぎを起す団体もあるかもしれない。それだからといって、やはり違法でないという法律解釈になれば、違法でなければ市町村はそれに従わざるを得ないということになるでしょう。そういう効果が出てくるのじゃないですかということを申し上げるのです。
  32. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは御承知通り、現在の自治法の二条の二項と三項に地方公共団体事務が例示されておりますが、これは普通地方公共団体として同様にやり得る。しかし法令の規定があればその限りでないことになっておりまして、その規定は、御承知通り府県市町村も全部一様に書いてあるのであります。どんな仕事をどうやってもいいという一応の法律上の建前になっておるわけであります。ところがこの自治法に明示してあります二項と三項の規定は、県と市町村によってそれぞれの処理の仕方はおのずから違うことを、この項によって明らかにしただけでありまして、これによって特別に何かプラスになったとか、マイナスになったとかいう問題ではないのでございます。それぞれ地方公共団体としてやり得るものと、現に自治法で予定されておる事務につきまして、それは平面的にどっちもこっちも競争してごたごたにやってもよいかと言えば、それはそうはいかぬぞ、例示されておるものでも府県はこういう仕事をやるべし、市町村はこういう仕事をやるべしということを明らかにいたしたのでございます。
  33. 北山愛郎

    北山委員 例示されておるというのですけれども、こういう規定が例示されるならば、従来例示されなかった規定が置かれるならば、それはやはり府県市町村の権能、地位というものに相当な変化を与える規定であると私は言わざるを得ないのです。先ほどの小林さんのお言葉はそうだと思う。今までは平面的に考えられておった。それが実態だった。ところが今度は立体的に構成しようという規定がここに一部現われておる。そういうような、今までの例示規定なりそういうもので、別段そう特別に飛躍したものでないんだというならば、この規定は誤解を生むから削除した方がいいと私は思うのです。なくてもあってもいい、こういうふうに思うのですが、どうでしょう。
  34. 小林與三次

    小林(與)政府委員 私が申し上げましたのは、現在の法律の第二条の規定の書き方が、まさしくまた平面的なのであります。平面的でありますが、現実府県市町村というものが——現に自治法でも市町村包括するという形で府県がきめられ、府県にも市町村が持っておらぬいろいろな権限をばらばらに書いてあるのでありますが、その現実を基礎にして考えれば、従来の二条の平面規定にもかかわらず、府県府県としての事務責任があるべきだし、市町村市町村としてのものがあるべきであって、もともと二条を作ったときに、府県市町村の区別がある限りは、府県はこういう仕事市町村はこういう仕事と違いがあってしかるべきだったと言えるのでございます。そこでそういう点が、形の上においては平面的、実質の上においてはおのずから違う役割をとる、そこに食い違いがありまして、そこでいろいろ考え方にも誤解があったり、混乱があったりする点がございまして、そこでこれはやはり規定の上におきましても実態に合うように、実態に即するように、それははっきりさせる必要がある。そうしてそれぞれののりに従って、それぞれ自主的に行政を展開してもらう必要がある、こういう考え方に立っておるのでございまして、これは規定からいたしましては、どうしても置いてもらうことによって、府県市町村はそれぞれ分を守って大いに協力して自治を発展せしめる、こういうことに非常な役割を演ずるものと信じておるのでございます。
  35. 北山愛郎

    北山委員 それは小林さんは現在の府県市町村関係を好ましいものでないと思っているから、現状が混乱だとか何とか言われるのですよ。混乱でも何でもない、現実にそれが今の自治制度なんです。それを何か想定した方向へ持っていきたいと思うから、現在ではどうも府県市町村関係が混乱しておる、こういうふうに上下関係をつけよう、そうして整備しようということなんです。ですからこれはやはり現状を変えようというのです。要するにそうじゃないですか。そういう効果があるんじゃないですか。どんな御説明があろうともこういう規定を新たに置いた以上は、市町村事務処理に関して一般的な基準設定というものを府県ができるということになるんじゃないですか。そういう効果が出るんじゃないですか、こういう規定を置けば。
  36. 小林與三次

    小林(與)政府委員 私は何もこの自治法二条以外の特別の世界を考えてこの二条を作るか、作らぬとかという気持はさらさらないのでございまして、現在問題にしているのは二条だけで、二条ういう規定が要るか要らぬか、適当かどうか、こういう議論だけしか、われわれとしては考えておらぬのでございます。  そこで、要するに現在の二条じゃ足らぬから規定としては変える必要があると思ったのは事実であります。それだから改正するわけであります。しかしながら、今の二条が、そもそも府県市町村というものが、現に別種の自治団体として存在しておるのでありますから、規定はいかに平面的になっていても、それぞれ事務の分担と責任が違うのは当りまえであります。またその違いをはっきりさして、その違いに従ってそれぞれ府県市町村事務配分を適正に行なって協力してやるべきことは当りまえだと思うのでございます。その当りまえであることをはっきりさして、そうして府県府県として、市町村市町村として、それぞれの事務処理していただきたいということでございます。
  37. 北山愛郎

    北山委員 小林さんはどうもうまい答弁をされるのですが、当りまえだというのがくせ者なんですよ。それは当りまえじやなくて現実を変える、当りまえだ、当りまえだと言いながら一つの方向に変えようという気持を現わしていると思うのです。現在平面的に規定されておる第二条で、府県市町村が何か混乱でも起しておるようなことを言われるのですが、どこが混乱しておるのですか。
  38. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは現に府県市町村事務をどう処理するか、自治の発展と言っては語弊があるかもしれませんが、大都市の問題であっても同じであります。それは規模が大きい大都市と大府県という問題はありますが、要するに府県市町村というものがある限りは、それは同じ国民が構成しておる団体で、国民のために行政をやる団体でありますから、その団体がお互いに重複を避け対立を避けて、それぞれの分を守って協力していくという態勢が必要なのであります。それがどらかしますと、やはり市町村と県がやや競争的に考えたり、対立的に考えたりして、いろいろ問題があることもないわけじゃないのでございまして、だから市町村市町村として、できるだけ市町村機能を発揮させるようにしてやる。これはもう地方自治というものの基礎を固め、発展させるためには当然の考え方であります。府県府県としてのその役割に専念すべし、市町村にまかしていいものは市町村にまかしてよし、府県で取り上げなければ仕事に困るものは府県にやらしてよし、そういうことで、それぞれの分を守っていくことが、制度というものの大筋を立て、運営大筋を貫くゆえんだというふろに考えておるわけでございます。
  39. 北山愛郎

    北山委員 要するに小林さんの考え方というのは、分々ということを言われるのですが、身分ですね。まあ地方自治の家族制度みたいなものを構成しようという考え方です。府県府県の身分があり、市町村市町村の身分がある。一つの立体的な、どうも市町村は自分の分を越えて府県と同格であるなどというようなことを考えてはならぬ——私どもは、分というのはそうではない、近代的な意味において、民主的な意味においては、事務配分だと思うのです。事務担当が違う。たとえば府県は高等学校をやる。市町村は中学校以下をやる。そこには仕事の種類の違いはもちろんある。分担はあります。だけれども、上下関係ではない。これが現在の地方自治法の精神だと思うのです。それを小林さんはそこに上下関係をつけようというところに、分分と言われる意味があるのじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  40. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは私の言葉の使い方が下手だったものですから申しわけないのですが、自治法第二条の改正をごらんになれば、今北山委員のおっしゃった通りのことを実は考えておるわけでございまして、説明がまずかったことはお許し願いたいのであります。府県市町村というものについておのおの事務配分の適正を期したい、そういうことで、その事務をどう考えるかというのが、ここにいろいろ列挙してあるところでございまして、全く北山委員のおっしゃった通りの気持でございます。身分的に上下があるとかなんとかいう、そういう封建的な気持はさらさら持っておりませんし、またそういうふうな規定にはなっておらぬはずでございます。
  41. 門司亮

    ○門司委員 関連して。今北山君からいろいろ質問がありましたが、私はこの際ごく簡単に質問しておきたいと思うのですが、二条にこういうものを入れなければ——従来までどういう不都合があるか、それを一つ聞いておきたい。
  42. 小林與三次

    小林(與)政府委員 どういう不都合が具体的にどこの県に幾つあったかとおっしやいましても、私もちょっと困りますが、これは事実上間々こういう問題があるのでございまして、そういう実際上の問題も一つあるし、実際上の問題は別といたしましても、府県市町村というものの今の事務配分に適正を期するために、事務上の分界というか、考え方というものをはっきりさせることは、私は根本的に必要だ、こう存じておるのでございます。
  43. 門司亮

    ○門司委員 私はもう一つ聞いておきたいのですが、不都合がなかったとすれば、私は別に入れなくてもよかったと思う。自治の精神というものは、何でもかんでも法律にきめられたもので画一的に、三角定木みたいなものを持ってきて筋を引っぱるようなわけにいかぬので、自治行政というものはお互いの事務の中で住民に不都合がないという形で行われれば、それが一番望ましい姿だと思う。どうも不都合なことはなかった——これは役人の悪趣味だと思うのです。何とか法律をいじってみたくてしょうがない。それからもう一つは、配列によってくる混乱がこれで出てきやしないかと考える。いろいろなもので予防はしてあるようだが、しかしいずれにいたしましても地方行政事務というものは、こういう形で例示されてくると、私はいろいろな問題が必ず起ってくると思う。ここにある問題の中でも市町村の持っておる仕事というものがたくさんあるので、こういうことでなくして、この一番最後に市町村処理することが不適当であると認められる規模の事務に関することということを書いてありますが、この通りであって、市町村がそれをすることが不適当であるというものでなければならぬと思うのですが、この中で、市町村処理していいものが、私はかなりあると思う。それからもう一つは、こういうものでなくても、たとえば教育関係においては教育関係法律、それから福祉事業関係においては福祉事業関係法律、社会保険は社会保険、あるいは警察制度は警察制度というように、おのおのの法律の中に、大体の仕事というものはちゃんと書いてある。だから、法律があるのに、また一つこういう法律をこしらえて、私がおかしいと思うのは、警察の管理及び運営というようなことをここに書いているのだけれども、こういうことは実際は警察法に書いてある。これは実際は府県警察なんだ。これは何も府県でやらなければならぬ仕事として自治法の中に書かなくても、警察法の中にちちゃんと書いてある。これは実際は府県警察なんだ。われわれは国家警察の性格が強いから国家警察と言うけれども、これを読んでみても府県警察なんだ。この点何も書く必要はない。警察の管理運営ということになるとここに非常に大きな問題が出てくる。警察の運営並びに管理ということは、今日の府県段階では実際に行い得ない。何でやるか、警察法によって公安委員会運営管理が全部まかされておるわけではないか。警察法を読んでごらんなさい、県の公安委員会が何をやるか、警察の運営管理するものをもう一つ置くつもりですか、この委員会のほかにもう一つ置くのですか。公安委員会のほかに何かもう一つ置いて警察の運営管理をやらせるつもりですか。そういう点が解せないから書き過ぎておると言うのだけれども、実際問題として書き過ぎておるのではないですか。何かほかに置くつもりですか。これに当てはめた法律がみんなあるのですよ。その法律範囲を入れて、自治法で何らかの処置をさせなければならないということは考えられないのですが、これはどうなんですか。
  44. 小林與三次

    小林(與)政府委員 現在で全然事実上不都合がないかということになりますと、私ははっきりしたことを申し上げませんでしたが、ないわけではない、あろうと思います。やはり市町村というものは基礎的団体として市町村にまかせるべきものは市町村にまかしてやる。これは基本方針をはっきりさせて、府県府県らしい仕事にとどまる、そういう基本的な問題の考え方は、現にその必要もあるし、その方向はもっと進むべきものだと考えております。  それからここに列記いたしました列記の仕方につきましては、それはいろいろ議論はあり得るだろうと思いますが、要するに現在二条にいろいろ列記してありますものを基礎にいたしまして、要するに現在の建前では、府県市町村自治法ではお互いに何が何をやってもいいということになっておりますので、そこはやはり府県市町村というものの事務配分基準を、はっきりさせる必要があるのです。市町村段階府県段階との二つに分ける必要があるが、さらにその上に国の段階があり得るのでありますが、それは別問題といたしまして、いやしくも府県市町村段階でやる仕事ならば、それぞれの段階仕事のものの考え方を相当はっきりさしておく必要があろうと思うのであります。そこでいろいろここにありますが、それぞれ特別法というものもございます。それはその通りでございまして、現に自治法でも法律に別段の規定がある場合にはこの限りでないと書いてあるのでありまして、個々の事務につきましては、個々の事務についてそれぞれ批判というか判断に基いてやるべきでありますが、要するに地方自治法自治体基本法でありますから、府県市町村というものを一般的な地位から考えて、どういうふうな事務府県市町村とに分けるかということをはっきりさせたい、こういうことであります。それでありますから、公安委員会のほかに別に自治法機関を置くとか置かぬとかいう問題は、さらさら考えておらないのでありまして、府県段階市町村段階との間における事務配分考え方を明らかにする、それぞれの執行につきましては、それは自治法で動きのつくものもありましょうし、それからそれぞれの法律で他の機関を作ってやるものもありましょうし、それも府県機関でやるか、市町村機関でやるか、こういう問題が中心になって問題を処理していくのが考え方だろう、こういうふうに思っております。
  45. 門司亮

    ○門司委員 もう一つ聞いておきますが、今の行政部長の考え方はおかしいですよ。特別法で処理するものは特別法で処理する、これは警察なんか市町村でやろうとしてもやれないのです。府県事務と競合するところはないのです。もしわずかにあるとすれば、五大市に警察の本部というものを置いております。しかしこれは法律で置いておるのですから、これは市から県にとるわけにはいかない。特別法で向うに持っていっておりますから競合するところは何もないのです。大体特別法で規定したものがどこが競合するか、そのために特別法がちゃんとできておるのだから、たとえば労働問題にしてもここにいろいろ書かれておるようだけれども「労働争議の調整その他労働組合及び労働関係に関する事務、」なんというものは、これは県の段階でなければ労働委員会なんというものはないでしょう、市の段階にありますか。だからこんなことをことさら書かなくても、ちゃんと区分はできておるのですよ。私はこういうことを書くこと自体がさっき言ったように役人の悪趣味だ、出てきた法律をいじくってみたいというものの考え方だというのですよ。私は民主主義というものはこういう形ではなくて、できるだけ話し合いの上で話せということであって、できるだけその機能を持ったものにやらせるという方が筋が本筋だと思う。どう考えても、これを読んでみて、北山君が質問されておりますけれども、何らか特別の不都合があったら別ですよ。警察法があって市が警察をやっている、独自で何か警察の運営管理をやっているから、これは県に移さなければならぬというなら別な話ですけれども、こんなものは市にないのだから、ないものを何もことさら、事務の輻輳もなければ何もないと私は思う。労働問題などにしても、一体特別法で市でやることがありますか、ないですよ。これは不都合さえなければ、もうこういう悪趣味は私はやめておいてもらった方がいい。ことさらけんかの種をまくようなもので、あまり感心しない。  それからこの二条の辺がどう考えても書き過ぎておると思うのだが、私は大臣に一応聞いておきたいと思いますが、こういう案を出されたお考えというのは一体どこにあるのです。「文化財の保護及び管理」ということも、ずっといろいろ書いてある。これはいずれにしてもこういう特別法が出ておって、それの管理というものは大体きまっておると思う。そして市に保存させる方がよければ市に保存させる、府県に保存させる方がよければ府県に保存させる、特別法がいろいろあると思う。だからどう考えてもこのことは私にはわからぬですよ。警察なんというものは、くどく申し上げるようですけれども、市町村にはないのですから、競合するといったって競合のしようがない。そういうものをことさら運営管理なんと書くから——警察法とちょっと離れた字が使ってある。今まで警察法の中に管理運営という言葉はない。昔は警察法には公安委員会が警察の運営管理に当るということで行政責任からすべてを持っていた。しかし今の警察法にはそんなことを書いてない。書いてないことまでここに書くというと、新しい警察法でも自治庁でこしらえるつもりか、こういうことになるのです。自治庁からいうと、警察の運営管理ができるということになると、今の考案委員会は警察法をいじらずして仕事をすることになる。どう考えても自治行政というものを曲げたものの考え方ではないかと思う。従ってこれらの底意にあるものは、だんだんとこういう形で、いわゆる知事が政府出先機関のような形に一応持っていく仕組みではないかと考えるが、この点について大臣はどういうふうにお考えになっておるか。どうも国の出先機関にすれば、それは警察の運営管理というものが県に行くかもしれない。しかし今はそうじゃないのです。大臣はどうなんです。将来府県を国の出先機関にする、いわゆる知事を官選にするというようなお考えでもあって、その準備のためにこういうことをされてるのじゃないかというように、私どもはどう考えても受け取れるのですが、そういうことはありませんか。
  46. 小林與三次

    小林(與)政府委員 大臣にまたあとから御答弁願いますが、それは今の労働の問題とか警察の問題とか、はっきりし過ぎるほどはっきり府県段階でやっておる問題がこれはあろうと思います。それでございますから、われわれといたしましてそういう個別的な事務につきましてはきわめて自明——自明と言っちゃ語弊がありますが、はっきりしておるものもあろうと思います。要するに府県市町村がある以上は、その個々の事務についていろいろありますが、全体として府県というものはどういう仕事市町村というものはどういう仕事、そういう点をはっきりさせる必要がある。そこできわめて自明なものもここに例示されておりますが、それは必ずしもそうでないものもある。これはそういう例示の一つとして書いてあるだけでございまして、基本的な気持はあくまでも府県一般の権能、市町村一般の権能というものをどう考えるか、考える場合にただ抽象的にだけ書いてはよくわかりませんし、現に自治法でいろいろ例示しておりますから、そうしたものの例示をここへ書いて、その考え方を明らかにしようじゃないか、こういうことでございます。でありますからこれはあくまでも現在の府県市町村というものを基礎にして、自治体としての事務配分考え方考えたのでございまして、これで府県を将来どうこうするとかいうことと全くこれはかかわりのない、関係のない問題点でございます。
  47. 太田正孝

    太田国務大臣 仕事の分ち方でございまして、立体的になってはいかぬ、命令的になってはいかぬ、あるいは将来の知事官選というような点も考えているか、こういう問題でございますが、上下的の考えでなく、また将来の知事官選の制度の下ごしらえの意味においてこういうものを作ったのではございません。私はそういうことは少しも考えておらないのでございます。
  48. 北山愛郎

    北山委員 そこでこの第五項の第三号のところの問題、この「市町村事務処理に関する一般的基準設定」というのは、少くともたとえば部落会はこうしろとか、あるいは会計の処理はこうしろというようなことを、この規定があれば府県としては条例市町村事務の一般的な基準というものをきめ得ると解されるかどうか、具体的に明確にお答え願いたい。
  49. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これはわれわれは市町村固有の組織機構をどうこうするというような問題はここに入っておるとは考えておりません。ただ市町村処理する行政事務、市民に対して処理する事務がいろいろあり得ます。そういう問題について現在府県自治法上当然にやり得る事務について、つまり府県市町村との事務の調節をこれは考えておるのでありまして、市町村に対する固有の監督権をどうこうするという、そういう問題ではさらさらございません。
  50. 北山愛郎

    北山委員 さらさらございませんと言っても、私はあなたのお言葉よりも、この規定の文句を見ているのです。この「市町村事務処理に関する一般的基準」ですよ。何も限界がないんですよ。だから府県市町村関係のみであるといったって、そんなことは何もここに書いてない。市町村自体の仕事ですよ。市町村事務なんだから非常に広範なんだ。事務処理一般的基準というものを府県がきめ得るということになっちゃうと思のです。いかに小林さんがどう言ったって、こう書いてある以上はそう解される。法律ですよ、そういうふうに解せざるを得ないような規定だと思いますが、どうです。
  51. 小林與三次

    小林(與)政府委員 大体上に例示してありますが、締めくくりはここにある「市町村に関する連絡調整の事務に関すること。」これが基本というか全部でございまして、市町村に関する連絡調整の事務の例示を何か書く必要があるというので、これは書いただけでございます。それでありますからあくまでも府県というものは、やり得るとすれば市町村相互の間における連絡関係等というものを考えておるのでございます。
  52. 北山愛郎

    北山委員 だから連絡調整というのは一つの目的なのだ。ただその一般的基準設定というのは一つの手段ですね。ところが手段としてそういう、いわば府県の方が基準で縛れる、縛るという方法によって連絡調整をしよう、連絡調整というのはいろいろ方法があると思う。連絡調整は連絡調整として目的としてはいいが、手段としてそういう権能を府県に与えるのはいいか悪いかということになれば問題は別だ。従ってこういうようにかりに最後には連絡調整のためであると書いてあっても、そこの中で例示的に事務処理一般的基準設定ができるということになれば、そういう手段、方法を無制限に使えるということになると——そういう解釈にならざるを得ないと思うのですが、これを小林さんはそんなことはさらさら考えておらぬと言っても、かりに自治庁長官がそう言ったって、私どもは、法律内容の客観的な一つの解釈というものは意味があるのですから、そう言わざるを得ないと思うのですが、どうです。
  53. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは前から続くのでありまして、国と市町村との間の連絡が一つ、それから組織運営合理化に関する助言勧告及び指導、それから市町村相互間における事務処理の緊密な関係を保持させるために、下の部分をやる、こういう式で、そして要するに結局市町村に関する連絡調整の事務をやるのだということでございます。これはあくまでも市町村に関する連絡調整にかかわりのない事務府県がやる、市町村プロパーがそれぞれ個別的にやっていい仕事をやるという趣旨では全然ございません。
  54. 北山愛郎

    北山委員 市町村間のことであれば、府県がいわば極端な場合をいえば何も干渉しなくてもいいのです。市町村間のお互いの自主的な連絡調整の方法もあり得る。何も府県がそこに立ち入らなければならぬというはずはないのです。ここでは必要な限りにおいて適当な手段によって、無理のない手段によって連絡調整に府県が当るという意味です。その際に一般的な市町村事務処理について基準設定するということは、手段としては行き過ぎではないか。だからいろいろな場合のいろいろな事務についての基準設定というものを府県がやった場合においては、この規定によってやれるのじゃないか、こういうふうに読まざるを得ないのじゃないか、こう言っておるのですが、この点どうですか。
  55. 小林與三次

    小林(與)政府委員 そうではございません。要するにこの基準設定というものは、われわれは方法というか、手段、基準設定することによって連絡調整の事務をやる。連絡調整の事務というものは府県仕事ではないが、しかしながら連絡調整の事例を何を書くかという問題でございます。そこで市町村相互間において、府県としてどうしても調整せぬならぬような仕事があれば、そういう基準設定するという方式でやる。たとえば今いろいろ例があるかもしれませんが、煤煙の取締りなら煤煙の取締りで、煙突をどうするというような仕事であれば、そういう取締りの仕事は、そうてんてんばらばらではいかぬではないかということで、一般的な基準をきめて、そしてあと市町村がそれぞれやる。屋外広告物にしてもそうばらばらに取締りをやってはいかぬじゃないかということは、必要を認めなければ別問題ですが、そういう一般的な基準を作ることだけは認めるが、問題はあくまでも市町村に関する連絡調整の事務でございます。それ以外のことは全然やれっこありません。
  56. 北山愛郎

    北山委員 連絡調整というものはただ目標だけであって、基準設定をすれば個々の市町村というものは、その基準によってやはり規制されるわけです。個々の市町村がその一般的な基準によって規制されるからこそ調整ができる。そういう手段によって調整しようというわけでしょう。従ってかりに消防の仕事について防火貯水槽はこれこれに、こういうふうな基準で置くべきものであるということを、府県条例できめられれば、やはり個々の市町村はその基準によってやらざるを得ないということになる。従っていろいろ広範な事務についての、固有の事務についての指図が、連絡調整と称しながらも、個々の市町村に対して府県はやり得る、こういう道をこれは開くのだ、こう解釈せざるを得ないのですが、私の解釈が間違っておるでしょうか。そうでなければ法制局でも呼んで聞いてみなければならぬ。
  57. 小林與三次

    小林(與)政府委員 だからそれは市町村に関する連絡調整の事務の中に入るか入らぬか、こういう問題になるわけでございまして、市町村について調整を必要とする問題がかりにあるとすれば、その調整をどういう方法でやるかといえば、それは一般的な基準を作ることだけでやり得る。それ以外の個別的な指示をしたり、自分できちっときめてはいかぬぞという趣旨が、これは出ておるのであります。それはそうでありますが、それなら一般的基準は何でも作れるかということは、そういう意味では一つもないのでありまして、ここに書いてあります通り市町村相互間における云々の問題で、連絡調整だけのためにこれはやることができる、こういうことでございます。
  58. 北山愛郎

    北山委員 これはある意味では警察法の中にも同じようなことがあるのです。連絡調整のために一般的な基準設定とかそういう言葉があるのです。それと同じで法律そのものが一般的な基準設定だとも言えるのです。個々の具体的なケースを法律できめるわけじゃないでしょう。だからこの方法、このやり方でやれ、市町村はこういうふうにやれということが法律に書いてあれば、これはやはり一つの一般的な基準設定ですよ。その基準によってやらざるを得ないでしょう。やらなくてもいいならこれは別です。こういうふうに書いてあればやはり府県というものはそういう条例を作るでしょうし、その範囲、限界というものは必ずしも確定しておらない。町村の事務処理に関するのだからずいぶん広範なものですよ。これをどんどんやっても違法じゃないのです。違法じゃないし、また市町村はそれによって縛られる。私はこれはそういうふうな意味を持つものであると思うのだが、どうも小林さんの答弁では、私のみならずほかの人も納得しないのではないかと私は思う。この点はまず留保しておきます。  もう一つ、この第二条の改正というものはいろいろな事項を含んでいる。たとえば第五項の第一号のいわゆる総合開発等の仕事の中で、広域にわたる事務府県がやる、それ以外は市町村もやれるということになるのだと思うのです。こういうことは何ぞや。たとえば「地方の総合開発計画の策定、」云云と書いてありますが、その総合開発計画の中にやはり市町村のやれるような事務も入ったりしている。だから必ずしもこれははっきりしておらぬのです。広域にわたる事務というが、一体広域とは何であるか。
  59. 小林與三次

    小林(與)政府委員 広域とは要するに数市町村の区域にわたる、平たく言えばこういう事務を言っていると思います。一市町村内で総合的にやり得る仕事はもちろんこれは市町村仕事、そうでなしに数市町村あるいは数十市町村の区域にわたって一貫的にやらなくちゃならない、そういう意味でございます。
  60. 北山愛郎

    北山委員 ところが一部の説によると、広域というのは、またいわゆる広域事務というものをやるためには、現在の府県の区域でも狭過ぎるのだ、だから広域ということも何か今の府県よりももっと広い地域でやるというような概念も行われておる。消極的に言えば、それは今お話通り市町村以上の広い地域だ、こう言えば一応の説明にはなるかもしれませんけれども、やはり実体的な概念としては非常に不確定なんですよ。総合開発等の広域事務ということは、一体どの程度をもって広域と言うかということは、別個の問題だと思う。今の数市町村にわたるということは、いわば三百代言的解釈であって、実体的な解釈ではないと思うのです。そこであらためてお伺いしたい。
  61. 小林與三次

    小林(與)政府委員 それは三百代言でも何でもないのでございまして、実は広域は、もっと広く言えば数府県の区域にまたがることも当然あります。広域の中へ概念上私は入ってくると思います。要するに数市町村にまたがる以上は、上はどこまでもあり得る。しかしこの問題は府県と国との事務配分の問題でありまして、ここに書いてありますのは府県市町村とを考えて、府県は何、市町村は何、こういう比較をいたしておるわけでございます。でございますから、さらに数府県にまたがって、それが府県と国との間にどう事務処理すべきかという問題は当然に別の世界であり得るのでございます。
  62. 北山愛郎

    北山委員 しかし必ずしも今の三百代言的解釈でも当てはまらぬことがあるのですよ。一つの市の区域、の中の仕事であっても、性質上県でやらなければならぬような大規模な仕事があるのですよ。これはどうなんです。数市町村にわたらなければ広域、と言えないわけですか。一つの市あるいは町村の中で行われるような事業であっても、性質広域的な、総合開発的な仕事があるはずです。たとえば一つのダム、発電所が一つの市の区域の中にある場合があるでしょう。だったらそれは市町村でやっていいということになるか。いわゆる広域的というのは、そんな市町村の中にあるからとか、中からはみ出すから広域だというような解釈ではないと思う。性質上やはり総合開発というか、広い地域を一つの基礎にして考えられるような大きな事業という意味だと私は解釈するのですが、そういうふうに考えていくならば必ずしも明確ではない。そこでお伺いしているのです。
  63. 小林與三次

    小林(與)政府委員 それは今私は数市町村のことだけ例に言いました。それは典型的な事例を申し上げたのですが、一市町村の区域でも広域であることがあるかと言えば、それは今おっしゃいました通りあり得ると思います。広域というのは結局常識的な判断でどこから以上が、何平米以上が広域、とか狭域とかいう問題ではないと思います。要するに県と市町村との仕事のものの考え方として、広域的か狭域的かという考え方でございます。
  64. 北山愛郎

    北山委員 そうすると先ほどの数市町村にわたれば広域だというようなことは三百代言的解釈だと言ったのは、やはり当っておるということになる。だから広域にわたる事務というのは必ずしもいろいろな観点から角度から範囲が明確でない。従ってこの第五項の第一号にしても必ずしもこれだけは府県事務だとか、市町村事務であるとか確定したものでないと思う。それから第四号にしても高等学校やその他のいわゆる補完行政と称せられるところの分、これについても明確でない。従って私どもは今度の第二条の改正によって府県市町村との間の実際的な事務配分を実は期待しておった。高等学校はまず府県でやるとか、あるいは指定市でやるとかいうふうに、はっきりした事務配分の明確化ということを期待しておったが、その点についてはさっぱり不明確なんです。そして今申し上げたような上下関係だけが新しく入ってきておるので、そこにだけしか意味がない。ほかの事務配分については現状と大して違いはないと思うがどうでしょうか。
  65. 小林與三次

    小林(與)政府委員 それは今仰せられました通り、個々のそれぞれの事務について、県と市町村ときちっと書き分けるということは、最上というか、最後の徹底した問題であろうと思います。これはすべての行政法規全般につきまして、そういう問題を取り上げて、再編成しなければできぬ問題で、当然そういう問題も考えられてしかるべき問題だとわれわれは考えております。しかし地方自治法といたしまして、そうした問題を考える基本的な考え方は、自治法としても当然考えておくべき問題であります。それぞれの府県市町村事務配分の立法的な基準もあってしかるべし、実際の運用上の基準もあってしかるべし、そういうところでこの問題がこう取り上げられておるのでございまして、これだけでわれわれは問題が百パーセント解決するとは思っておりません。それぞれの法令によって事務基準が明らかにされておるものは、やはりこういう物さしによって、当然市町村に移すべきものは市町村に移すように問題を考えていく必要が私はあろうと思っております。もっと大きく言えば、国と府県との間においてもそういう問題が当然にあって、われわれはこれからの問題として考えたいのでございます。ただ規定があいまいだとおっしゃれば、あいまいな点もございますが、府県市町村というのは千差万別でありまして、なかなか竹を割ったように書き切れない問題がございまして、おおよそのものの考え方がわかることをはっきりさせよう、こういうことでこの規定ができておるのでございます。それでありますから、規定の上におきましても、たとえばおおむね次のようなというような式で、ものの大筋考え方をはっきりさしておるのでございます。
  66. 北山愛郎

    北山委員 大臣にお伺いしますが、今広域事務についての質疑をやっておりますが、総合開発等の大規模な治山治水事業あるいは電源開発という事業、広域事務とここに書いてあるが、これは現在の府県の区域でやらせるのに適当であると大臣はお考えであるか、これは一説にはこういうことをやらせるのは現在の府県では狭過ぎるという意見がある。そこでお伺いするのです。
  67. 太田正孝

    太田国務大臣 計画につきましては一府県でできるものもございますし、全体として国の立場から考えていかなければならぬものもあろうと思います。広域という意味はそういう意味で、小さいところは数市町村にわたる問題もありましょうし、数県にわたる問題もあろうと思います。計画そのものにつきましては広い立場から考えなければならぬ、かように考えております。
  68. 北山愛郎

    北山委員 今事務配分のことのお話しがありましたが、事務の再配分について、現在の府県事務をできるだけ市町村の方に移すべきであるという意見もある。それからまた必ずしもそれが定説ではなくて、市町村事務をやはりもっと府県の方に、あるものについて移すべきだという考え方もあるわけです。今の日本の地方政治の現状としては、どっちに行くべきであるというふうに考えておられるか、大臣あるいは小林さんから伺いたい。
  69. 小林與三次

    小林(與)政府委員 それがまさしくわれわれこの二条で、一体府県事務市町村事務をどう考えるかという、大筋を明らかにしようとしたゆえんでございます。個々の事務につきましては、そういういろいろな考え方もあり得るし、事務によってはまたそう調節した方がよいものもあり得ると思うのであります。いずれにいたしましても自治法といたしまして基本的な考え方をまずはっきりいたさなければ、それぞれの事務につきましてもなかなかその問題の処理が困難だろうと思うのでございまして、全くそのことをここで現わそうとしたのであります。
  70. 大矢省三

    大矢委員長 今の質疑応答の中に二点ほど、どうもはっきりしない点があったのですが、この第二条の改正として、地方公共団体とは府県並びに市町村を言うと明らかにされておるのが改正されて、今度の法律案の中には地方公共団体とは市町村をいう、府県はそれらの市町村にまたがる問題を処理する団体であるということになっておる。明らかに性格が変ったように考えられるが、変っていないのかどうか。それが一つ。  それからいま一つはこれはいわゆる五大都市関係ですが、それは答申に基いて行なって、そして近く大都市の問題については特に諮問機関に諮って検討する、こう言っておるが、それならばなぜ一体現在特市としてあるものを除かなければならぬか、特別の大都市として考えられる特市の問題を削った理由、それからもしあってどういう不都合があるか。それを研究して処理しようとする間にあって、その特市というものを除かなければならぬ理由、あってどういう不都合があるかということの二点を伺いたい。
  71. 小林與三次

    小林(與)政府委員 第一点の問題は、われわれは府県性格はこれによって変ったというふうには全然考えておりません。みな相変らずの普通地方公共団体として都道府県及び市町村があるわけでありまして、そして二、三の普通地方公共団体事務が現に例示されております。その例示されております事務が、都道府県市町村によっておのずからその間に配分があるべきではないか、その配分関係を、ここに明らかにしようとしただけでございまして、本質的に変っておるとはわれわれは全然考えておりません。ただ事務だけはおのずから配分は差異あるべし、こういう考え方を持っておるのでございます。  それから特別市の規定でありまして、これは現在あったらどんな不都合があるか、こういう御議論でございますが、これは現行法のもとにおきましても、特別市の指定は別の法律できめることになっておりまして、現在動いておりません。そこでわれわれの気持といたしましては、要するに現在の地方自治法のもとにおいて、現在の都道府県市町村との関係において、地方自治法規定されておるような特別市というものを作ることが、一体必要であるかどうか、こういう論点から問題が考えられておるのでございまして、地方制度調査会も、現在の府県制度のもとにおいて、直ちに現行法考えておるような特別市を作るということは必ずしも適当ではあるまい。われわれとしてもそれは適当だとは考えない。しかしながら、今のままでほうっておいてもいかぬことも明瞭でありまして、そこで指定市として事務を大巾に委譲して、市でできるものは市に処理させようという形で、この問題を解決する必要があるという結論になったのであります。それであるから、そうした特別市というものを予想されておる大都市は、事務配分によって自治法上特市の扱いをつけるということが正しいという結論になった以上は、それと重複する特別市の規定があるのはおかしいじゃないか。同じ市についてどっちの法律も動き得るということを予想しておることが法律上あるということは、法律の体系からいっても必ずしも筋が通っておらぬのであります。そういうこともありましてこの規定を削る。しかしながら特別市そのものにつきましては根本的な議論があります。先ほど申しました通り都道府県につきましても、現に根本的な議論がある。われわれといたしましては、いずれもはっきりとした見通しとか見解とかいうものは持っておりませんが、現に議論がありまして、地方制度調査会でその検討が進められておる。そこでその調査会の検討によって、かりに府県制度をこのまま、ということになるかもしれぬし、特別市がどうなるかもしれませんが、その結論に従ってこの問題は一貫的に処理すべきだということになっておりますので、一応規定の上からは削って、指定都市を、事務配分によって規定を整備しよう、こういうことにいたしたのであります。
  72. 大矢省三

    大矢委員長 もう一ぺん……。よくわからぬのですが、今度の改正の中に市町村は、基礎的な地方公共団体とする。今までは地方公共団体とは都道府県及び市町村をいうとあって、この二つが地方団体であるが、今度は基礎的なものは市町村であって、都道府県はこれこれだということを書いておるから、おのずから変ってくると思う。それがどうもはっきりしない。  いま一つは近き将来に特別市の問題は考えるからそれで削ったんだという、大体そういうことですが、答申の中にはとりあえずこうやっていくということで、特別市の問題はこれから削るとか、そういうことは意思表示していない。それをどうして削ったかということです。
  73. 小林與三次

    小林(與)政府委員 それはおっしゃる通り市町村は、基礎的な地方公共団体として、という表現が出ているのでございます。現在の普通地方公共団体は、都道府県市町村があります。現在も都道府県市町村がある以上は、これは平面的な同一なものじゃあり得ない。同一なものなら別種の公共団体に入らんわけでありまして、同じ考えでいいわけであります。しかしながら現に府県市町村包括する団体として現在もあるわけであります。市町村はそうでなしに、一番住民に直結した自治体の土台をなしておる団体としてあるわけでございまして、その地位性質をはっきりさして、基礎的な住民に直結しておる事務は、市町村でやれるものはできるだけ市町村にさしていこう。その性格を、——性格と申しますとまた語弊があるかもしれませんが、その地位をはっきりさせよう、こういうことでございます。それでありますから現在の地方自治法のもとにおきましても、元来府県というもの、市町村というものは、現実にはそういう地位を占めておるはずでございまして、その持っておる地位を一そうはっきりさして、その地位に従って事務処理配分考えるべきじゃないか、こういう考え方でございます。現行法では府県は基礎的な地方公共団体か、そういうことにはならないと思っております。  それからもう一つ特別市の規定の問題は今おっしゃいました通り、調査会では削るということは書いておりません。さしあたり事務配分で解決すべしということで、特別市の規定は将来の基本的な研究題目に残しておるのでございます。その基本的な研究題目というのは、結局都道府県全般の改正というものが問題になっておりますから、あわせて検討しよう、こういうことになっておるのでございまして、現在の自治法でわざわざその特別市として予定しておったような市について事務上の特例を設けるとすれば、その規定の体裁とか建前からいいましても、一応削ってくのが筋でございまして、すぐ実施するという前提、ならば、その規定はあってもいいんでありますが、事務配分で問題を解決しようとしておるとすれば、それを明らかにして、将来に残された問題は、さしあたり必要もないものならば規定を整備しておく、こういうことは当然に考えられることだと思っております。
  74. 門司亮

    ○門司委員 今の答弁は少しおかしいのだが、一体どうなんです。答弁を聞いておるとだんだんわからなくなるのだが、少くとも、今委員長が言ったように、市町村を基礎的な地方公共団体とすると書いてある。そうすると自治の本体というものが実際は市町村にあるんだという解釈ですね。結局、できれば市町村事務処理をすべてするということが、自治の精神からいけば正しいということなんです。われわれは少くとも、地方制度調査会が、地方公共団体については市町村を基礎的団体考えておるということの意思表示をしたということは、府県と地方の自治体との事務配分に関する一つの問題を、こういう基礎観念の上に立ってこしらえようということであって、これは法律の明文の上に書くべき字句じゃないと思う。もしこれが明らかに基礎的団体だということを考えてくるならば、府県仕事というものは、市町村の現在の段階処理する事務について不適当なものを行うということでなければならないと思う。それだけで足りるのでありまして、それ以上のものがここに書かれておるということは、どう考えても私どもには考えられない。  そこで問題になりますのは、今小林君は県府の性格というものは変らぬというお話でありますが、府県性格が変らぬということになって参りますと、一体府県というものがほんとうに基礎的団体ではないということを法律にはっきり書いてしまうと、憲法の九十二条に書いてある自治の本旨というものの解釈に、私どもは非常に大きな問題が出てきやしないかと考える。今日の都道府県自治体であるという観念は、地方の自治体市町村処理のできない仕事府県が行う、しかもその仕事は九十二条の自治の本旨という建前からいえば、やはり住民の自覚あるいは責任によって、そうしてさらに負担がこれに加わるかもしれないのですが、負担によって自治行政というものは行わるべきであるという一つの憲法上の解釈はできると思う。そうするとどこまでも地方の市町村というものが仕事をやっていくということが、ほんとうは正しいのだということが私はできると思う。従ってもしこういう字句を使うとすれば、都道府県というものは、当然市町村の行うべき仕事で、あるいは市町村が行い得ない一つ段階がある。だからこの字句を、府県が行うからこれも自治体だということもある程度言えるかもしれません。当然市町村の行うべき仕事であるが、しかもそれを行い得ないという問題であって、住民と直結しておる県政というものがあるから、これを自治体という中に私は入れたのだと思う。こういうように解釈してくると、どう考えてもここで基礎的団体としておいて、そうして特別市を削るという問題は私はおかしいと思う。事務配分だけでできるということになれば、結局事務配分の中でできてしまって、五大市なら五大市というものに府県仕事を全部移した場合における府県地位というものは、一体どうなりますか。府県地位と当該市との関係はどうなりますか。ただ法律の上でその区域がその中に含まれておるというだけで、行政上実質的のものは何も持っておらないということにならざるを得ないと思う。そうした場合に、やはり特別市というものが現在の段階では私は必要だと考える。だからここで小林君の意見のように、基礎的団体ということを書いて特別市を削るということになると、その次にくるものは、さっきから申し上げておりますように、県の性格がおのずから変ってくる形を持つと思う。大臣、私は最後に聞いておきたいと思いますることは、ここに基礎的団体と書いております以上は、できれば今日の地方行政事務というものは、全部市町村にやらせることが正しいんだというように大臣はお考えになって、ここに基礎的団体という文字をお入れになったのかどうか、その点を一つはっきり聞いておきたいと思います。
  75. 太田正孝

    太田国務大臣 自治体におきまして市町村府県というものが、片一方は基礎的であり、片一方は広域ということになっております。市町村だけで全部できるか、こういうことにつきましては、私は現状におきましてまのあたり見る自治の本体から申しましても、広域にわたることはやはり府県でやり、それから基礎的と申しますか、地域の狭いまた国民の生活に直接関係を持っている方のことは市町村でやるべきだ、それでは全部が市町村でやり得る状況であるかと申しますと、広域的の範囲におきましてはこれは無理ではないか、かように考えております。私は常識的に考えまして市町村——あるいは言葉が悪いかもしれませんが、基礎的な地方事務をやる、片一方はさらに広い広域的な事務をやる、かように考えておる次第であります。
  76. 門司亮

    ○門司委員 市町村を基礎的団体とするということは、法制上にも書いてあります。われわれもそう考えております。当然こういう基礎観念の上に立って、事務配分が行わるべきであるということを考えております。そしてなおかつ残る分を府県が補完行政としてこれを行う、従って補完行政である限りにおいては、府県というものはやはり地方の公共団体とみなすことができるというように、われわれはこういう常識的な解釈をしているのです。ところがその場合に、もし大臣が今のような答弁であるとすると、特別市というものが現在の段階では必要になってきやしませんか。いわゆる特別市という基礎的な大きな権能を持った市が、府県事務をことごとくやっても——府県とほとんど変らないような実力を持っている、あるいはそれ以上の実力を持っておる特別市という大きな市が、今日府県の中に包含されておるから、その当該府県というものは非常に力が強いように考えられておるが、その力が強いということは、実際は財政的にも行政的にもやはり大きな都市というものがある、これがあるから五大府県というものがおのずからでき上ってきておる。ところがここに書いてありまするように、基礎的団体市町村であるということになれば、そのでき得る範囲のものはことごとく当該市に移譲することが私は正しいと思う。そうなって参りますと、現在の段階ではそれをさして特別市という一つの項目を入れておかなければ、この基礎的団体というのと変った解釈が出てきやしませんか。だから私は特別市というものは必要だ、字句は必ず置いておかなければならない。そしてそこにおける府県事務というものをどんどん移せるだけ移してしまって、府県事務が全部特別市、大都市に行ってしまったあとはどうなりますか。やはりその場合は一般の都市と違うのですから、行政上の府県仕事というものがなくなるのですから、そうすれば一般市と異なった都市ができる。異なった都市ができてやるのだから、これに特別市という名前をつけなければしゃうがない。何という名前をくっつけるつもりですか。少くともここで基礎的団体であるということを打ち出して、今の大臣の御答弁のようなことになって参りますと、結局特別市という字句は必要になってくる。事務配分をするからそれでいいんだということにはならない。府県と同じような力を持っている団体ができてくる。性格は全然別でありますが、同じような団体が二つできるのであります。府県行政範囲に介入を許さないという一つの同じような団体ができてくる。そうなった場合に、やはり特別市という字句を削るというのは私はおかしいと思う。だから今のような答弁で、大してじゃまにならないようなものを——じゃまになるところのものをたくさん書いておいて、置いておいても差しつかえないものを書いてない。書かなくてもいいものを二重にたくさん書いてある。さっき指摘したように警察とか労働というのは特別法でできておる。そんなことは自治法で書かなくてもいい。市に持って行きようがないし、何も法律にないんだから……。よけいなものがここに書いあって、残しておくべきものを削るということは、どうしても解せないところがある。置いておいてどういう不都合があるか、この点をもう一度はっきり言っておいてくれませんか。
  77. 小林與三次

    小林(與)政府委員 現在だって特別市という規定は前からありまして、現実に動いておらぬものですから不都合はないということは言えると思うのでございます。しかしながらこの特別市と、今門司委員がおっしゃいました指定都市という考え方は全然別でございまして、かりに市にすべての事務をやっちまって都道府県と同じ力、権能を与えてしまえば、これはまさしく現行法にいう特別市にほかならぬだろう、これは結果的にそうなるだろうと思うのでございます。しかしわれわれの今の考え方では、現在の府県のもとにおきまして現行法にあるようなこの特定の市が完全に府県の区域の外へ出て、府県市町村地位をあわせ持つ、そういうものを——これは法律で作ることになっておりますが、作るということはいろいろ問題がある。府県というのはやはりその市だけが府県ではないのでありまして、その隣接郡部の町村もありまして、それからその行政から申しましても、その市の区域と郡部の区域にまたがる行政もありまして、そういうものをどう処理するかという問題とこれはあわせ考えなければ、直ちに現在の特別市というものを作るということは無理だろう、そういうことでこれは法律で作ることになっておりますが、現に作られておらぬわけでございます。つまり語弊があるかもしれぬが、いわゆる空文になっておるわけです。あるけれども動いておらぬわけであります。そこで今度の改正におきましては、そうした特別市の予定しておる特定の市については、この法律のままの特別市をやるということは適当でないが、しかしながら実情から考えて、まかしていい仕事はできるだけまかすべし、こういう考え方でその市の行政処理の適正を期そう、こういうことで特に指定都市として事務配分の特例を設けることにいたしたのであります。それでありますから、いわばその市が五つあれば、その五つについては指定都市として、これから法律の規制を受けるわけであります。そうすればそれと矛盾する特別市というものの規定はおかしいのでありまして、そこへすぐやるというのなら話はわかりますが、指定都市として特別扱いをしようとすれば、それによって規定処理していくことが当然で、規定の上から申しましても、同じ法律で同じ対象を前提にして規定があるということはおかしいじゃないかという一つの理屈が成り立つだろうと思うのであります。法律は結局ある対象に対してどういう規制をするかという問題でありますから、その場合に指定都市で規定をして、事務配分をしてそれでやっていこう、そういうことになれば、それと食い違った、あるいは動きのつかぬ必要のない法律は削っておくのがむしろ筋が通っておる、こういう理屈も成り立つのであります。ただわれわれは将来の立法論として特別市を否定するのかということになれば、これは別問題だという考え方でございます。
  78. 門司亮

    ○門司委員 これ以上聞きませんが、おかしいのですよ。特別市という字句が今作用してないから要らないのだという理屈は、私はどこにも成り立たぬと思う。この法律で最初特別市というものをこしらえたことは、いろいろな問題あるいは沿革があって、そうして将来自治体仕事というものは、ここに書いてあるように基礎的団体市町村であるとするならば、できるだけやはり単一行政というものが望ましいのであるということが基礎的観念の上になければならぬと私は思う。そうでなければ基礎的団体という言葉は使えないと思う。そうすれば少くとも現在の段階で、この行政のすべてを一つ段階にまとめて行い得る。行政事務を非常に集約して能率的にあげていこうとする段階において、能力と規模を持っておる地方の都市が府県と同じ権能を持つということは、私は今日の自治体というものの解釈からいけば正しいと思う。府県というものがどうしてもなければならないという現在は段階ではないと思う。これは要するに、補完行政を行うという建前の上にこういうものが置かれておる。さらに従って補完行政の面だけから考えれば、今日問題になっているような道州制にするとか、あるいは府県の統合をするとかいう問題は起らぬのであります。こういう問題が起っておるということは、広域行政をどうするかということ、いわゆる広域行政範囲が狭くなってきた、地域が府県は狭いじゃないか、従って広域行政というけれども、広域行政範囲を広げようとすれば、おのずからそこには府県の統合、あるいは道州制というようなものが必然的に生まれてくるのが、現実地方自治体の総合的な考え方だと思う。従って補完行政というものは、できればこの法律に書いてあるように、基礎的団体に移すことが正しいと考える。そうすれば、その権能を持つ特別市というものができるというのは、私は当りまえだと思う。これは法律で特別市という文字を使うか、あるいは特別市という文字が悪ければ指定の都市と書けばいい。同じことです。現在の段階では、いずれかの形でそういう方向に自治行政というものが進むべきであるという考え方からするならば、現在ないからこれを削るのだ、あるようになったら、またこしらえようというようなばかばかしいことは私どもには考えられない。特別市というような字が三字か五字印刷してあるからといって、私は法律の体裁は悪くないし、じゃまにならないと思う。地方行政建前からいって現在の段階では基礎的団体にすべての仕事をさせるのが正しいのだとするならば、それをかりに特別市と呼ぶなら、特別市という言葉を残しておくことはちっとも差しつかえない。こういうことをあまり言っていくと、しまいに東京都の都制まで発展しますよ。だから私は少くともこの削られた字句というものは、そういう小林さんの今のお話のようなことだけでは、どう考えても承服するわけには参りません。だから、もしほんとうにこれを削る必要があるというなら、もう少し明確な理由がなければならない。これは、さっきから申し上げているように、非常に矛盾している。基礎的団体とここに明記した以上は、特別市を置いても差しつかえない。それでは一体この矛盾をどこで解決するのですか。
  79. 小林與三次

    小林(與)政府委員 特別市という言葉をどう使うかという問題は、これはどこでもあり得ると思う。かりに、今度は指定都市という字を使いましたけれども、指定都市という字のかわりに特別市という字を使って、そういう事務配分をやるのだということになれば、これはまたできる問題だろうと思います。しかしわれわれといたしましては、従来特別市というものは、単にそういう事務上の特別の地位だけでなしに、本質的に都道府県の外にあって、都道府県市町村と同じ権能をあわせ持ったものとして、従来は特別地方公共団体として規定されておったわけです。しかしながらこれは別の法律が要りまして、現在動いておらぬ。これはいわゆる空の規定法律にあるわけであります。現に動かすのならこの規定は当然要りますが、現在動かす気持もない、また動かすのは適当でないという考え方があれば、その必要があるときまで、これは規定がなくても一向にかまわぬし、またその方がむしろ法律としてみれば筋の通った法律の形態じゃないか、こういうことが言えるのでございます。そういう意味で、この事務配分によって問題を解決し、事務配分によって特別な扱いをしようということにした以上は、それとちぐはぐな規定は削っておくのが、むしろ格好のいい規定じゃないか、こういうふうに思うわけであります。
  80. 門司亮

    ○門司委員 そこまでいくなら、もう一つ聞いておきたいけれども、もしこれを削るというならば、問題が残されてくるのは憲法の九十五条との解釈関係であります。むしろ現在の自治法が、特別市の場合には当該都道府県全体の投票によって別特市というものができるという規定があるから現在は困難だ。これはやればやり得るかもしれませんが、大体五大市全体についてもそういう矛盾が出てくる。そこで問題になりますのは、憲法九十五条の解釈いかんなんです。私は少くともこの憲法九十五条の解釈を、特別市の設定に限って府県の投票にこれをまかせてこれをこしらえたということが、その当時から憲法違反だ、間違いだと考えておったのです。これはよく大臣に聞いておいてもらいたいが、政府の諸君は、アメリカからもらったのだからけしからぬというが、あのときの法律審議を見てごらんなさい。これはチルトンが現にわれわれの委員会に来たでしょう。私ははっきり暴露してもいいと思う。事実上の内政干渉もはねはだしかった。しかもこの問題は当時の地方行政委員会が、与野党全会一致で特別市を設定することが必要だということを出しておる。しかも当時の委員会としては向うのサインがなければ法律はできなかった時代であったが、サインしようとしまいと日本の国会の意思はこうだということで決議した事実がある。従ってもし自治庁がほんとうに地方の自治体のことを考えて、地方の自治行政というものは、市町村を基礎的団体とするというならば、この特別市を実現することのためにあのあやまった条文を削るということは、憲法違反にならないと思う。たとえば横浜が国際港都法によって、これは横浜国際港都法という特別の法律施行するからといって、横浜の住民だけが投票しておる。京都の観光都市においても同じことだ。長崎、広島でも東京都でも同じことなんです。東京都制案というものについては住民投票にまかしておる。しかしこれを都の全体、府県の全体の範囲まで広げておらない。何がゆえに特別市のときだけこれを全府県の投票にしなければならないかということは、私は疑問があると思う。憲法九十五条にはそういうことは規定していない。特別の法律施行する当該都市ということに、はっきりなっておる。従って特別の法律施行される今申し上げましたような都市は、おのおのそういう法律に基いて住民投票を行なって、その住民投票の範囲府県範囲でなかったということは事実でしょう。同じ特別の法律施行する場合に、片方は府県の区域を含んで投票しろ、片方は当該都市だけでいいという、こういう矛盾が現在あるでしょう。矛盾の大きな原因は、そういう一つの圧力によって法律ができておることにあるのは間違いはないと思う。当時のいきさつから考えてその通りだと思う。これはあとから修正して入れた条文でしょう。だからもし自治庁がこの二条に書いておりますように、市町村を基礎的団体とするという観念を貫こうとするなら、当該府県を含めた住民投票にするという条項を削って、特別市を置いておいた方が私は筋が通ると思う。特別の権能を持つものが府県と同じような仕事をする道を開いておった方が、また道が容易に開けるようにしておいた方が筋が通ると思う。自治庁はそこまで考えなかったのですか。
  81. 小林與三次

    小林(與)政府委員 基礎的地方公共団体として、できるだけ市町村を発達充実させようという気持は、全く門司委員のお考え通り、われわれもそういう考え方でおるので、その点を二条にも明らかにしたわけであります。それでありますから、いよいよ市町村が強固になって、できるだけ事務処理するような態勢に持っていくことは望ましいし、またそういう方向に推進もいたしたいのであります。しかしながら現在それだからといって、直ちにすべて市町村だけでまかないがつくかといえば、これはつかない。そこで都道府県という制度があって、都道府県というものが、ことに権能をどうするかという問題があろうと思うのであります。根本的な方向としては、それは当然そうあってしかるべしと思うのであります。そこでそうなれば特別市の規定は当然に要るが、特別市の規定が通ったときの住民投票につきまして、いろいろ御議論がありましたが、それは特別市の住民投票の規定の立法論として、これをどうするかという議論は、別にあり得ると思うのであります。しかしながら、現在のわれわれの考え方は、特別市の実施自身が、少くとも現在直ちに実施することが適当とは考えておらぬのであります。そういう前提でものを考えておりますので、特別市の施行を前提にするならば、その投票方法のいかんということも、これまた別途議論が必要ならば大いにやっていいだろう、こういうふうに考えておるのでありまして、さしあたりの問題といたしましては、この事務配分によって問題を処理し、そうしてさらに特別市がかりに実現可能なような、その他相関連した府県制度全般の改正か、あるいは改革が考えられるのならば、これはそのとき総合的にそういう問題も考えて、そしてその実現の方策というものを考えてしかるべきではないかと存ずるのでございます。
  82. 門司亮

    ○門司委員 もう一つだけ最後に聞いておきますが、そうするとこの法律は次官会議を通ってから国会に出てくるまで約一ヵ月たっておる。次官会議を通ったときにはそんなものはなかった。この項を削るなんということはなかった。あとで削るということが出てきたのだが、これは私は事実だと思う。そのいきさつはどういうわけです。次官会議にすでにかかってあした閣議にかけるというところまできておったものが、どういうはずみかわからぬが、とにかくおくれておることは事実だ。その間にいろいろな問題があったことも事実である。だから自治庁は一応そういうことを考えていなかったが、いよいよ提案するのに一カ月ばかり、次官会議から一カ月ばかりおくれて、出てくるときにこういう姿になって出てきたという経緯が、もしお話ができるなら、一つこの機会に明らかにしていただきたい。それは政府の意向なのかあるいはほかの意向なのか、一体どうなのか。政府の意向だとすれば、次官会議にかけたものが不完全であったのかどうか。
  83. 小林與三次

    小林(與)政府委員 政府の意向は、最後に閣議できまって法案に出した、これが最終的な政府の意向でございます。ただ最終的な意向が確定するまでにはいろいろな経緯や意見があったというのも、これは事実でございます。最後はこの法案によって一つ御判断を願います。
  84. 大矢省三

    大矢委員長 それじゃ午前中の会議はこの程度にして、午後二時から再開することにいたします。  暫時休憩いたします。     午後一時二分休憩      ————◇—————     午後三時二分開議
  85. 大矢省三

    大矢委員長 休憩前に引き続いて会議を開きます。  地方自治法の一部を改正する法律案地方自治法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案、右両案を一括して質疑を継続いたします。加賀田君。
  86. 加賀田進

    ○加賀田委員 自治法改正を全般的にいろいろ検討してみたわけでありますが、各条項その他に対して質問する前に、この改正案の中で特に新しい目的として、いわゆる内閣総理大臣あるいはその他の委員会に協議をしなくてはならないという字句が、あちらこちらに見受けられるわけであります。いわゆる部局の設定について内閣総理大臣と協議をしなければならないとか、あるいは委員会における職員の任免あるいは定数等をきめるために、従来であれば委員の同意を得てというのが、委員会と協議をするとか、なお委員会の財産の処分その他いろいろの処分をする場合には、いわゆる知事に協議をしてきめなければならぬということにして、協議という字句が相当見受けられるのですが、この協議に対して、政府としてはもちろん協議を行なって、問題が双方とも了解に達して円満に妥結すればいいのですけれども、妥結しない場合の問題を考えると、一体協議というものをどういうように考えているのか、一応この点を明確にしていただきたいと思います。
  87. 小林與三次

    小林(與)政府委員 協議は今加賀田委員のおっしやいました通り、話し合いがついて初めて成立する、こういう解釈でございます。話し合いがつかなければきまらないということであります。
  88. 加賀田進

    ○加賀田委員 協議をして話し合いがつかなければきまらないというのですが、しかしきめなくていい問題と、どうしてもきめなくちゃならない問題とがあるだろうと思う。そういう場合に協議をして、しかも相当協議したが意見の相違があって、どうしてもきめることができない、こういうことになりますと、その事項を提議した、たとえば知事とか、そういう人たちが協議をしてきめられないからそれを実施することはできないとか、あるいは協議がずっと一年も二年も長引くというような場合には、いろいろ問題が起ってくるのではないか、そういう場合にいわゆる協議というもの、これは労働組合と経営者の問題のときも同意約款とか、協議約款とかいうものでいろいろ問題が起ったことがあります。そういう意味で、この改正案の中で協議というものが出ておりますが、この協議というものの将来の措置に対して、あるいは原則的にどういうような考え方を持っておるかということについて、この際明確にしていただきたい。
  89. 小林與三次

    小林(與)政府委員 協議が出ておりますのは、何か積極的に事をしようという場合にだけ実は出ておるわけであります。そこでそういう場合には話し合いをつけて事を進める、こういうのがわれわれの考えでございます。もしかりに話し合いがつかぬ場合——私は何らかの形でつくと思いますが、つかぬ場合には、だから積極的にはしょうがないということになるだろうと思います。特に協議などという字を使いましたのは、結局話し合いということを考えましてお互いにいろいろ話し合いで適当なところで落ちつけ得るという前提で協議という表現を使っておるわけであります。
  90. 加賀田進

    ○加賀田委員 そういたしますると、同意と協議とは実質的に同じことになるのではないかと思います。同意とは、やはり相手方がその事項に対して同意を与えてそれを実施する。今小林さんのお話のように、お互いが話し合って妥結を見て進めるということになれば、同意と協議というものは何ら実質的には変りないと思う。そこで私はやはり同意と協議というものとは違っていると思うのです。
  91. 小林與三次

    小林(與)政府委員 実は同意という言葉を使わなかったのは、やはり違っておるからでございます。同意は一方的に一つの意思表示をしまして、それに賛成するか賛成しないか、するかしないかということのオール・オア・ナッシングの関係の場合に同意という言葉を使っておるわけです。協議というのはそうではなくて、お互いに話し合いで、要するに調整のとれたところで事を進める、こういう場合に協議という言葉で表現をしておるわけであります。
  92. 加賀田進

    ○加賀田委員 同意という字句が使われておっても、同意を与えることに対していろいろ難色のあった場合には、協議という形で、同意をするための一つの過程として双方とも話し合いを進めるということはあり得ると思う。だから私は、ここで同意を協議に変えたということは、やはり何らか円満に解決できないような場合の処置というものが重大な問題になってくると思うのであります。その点で、もし委員会の職員の身分その他の問題を知事が行う場合に、これは重大な問題だと思うのですが、同意を与えなかったら、従来はそれを実施することができなかった。ところが今度は協議に変った。協議にして、しかも委員会運営のためにそれは困るというような問題が起った場合に実施できないのかどうか。こういう題間が起ってくるだろうと思うのです。この点を明確にしていただきたい。
  93. 小林與三次

    小林(與)政府委員 協議がととのわなければ実施できません。たとえば今の問題は、事務局の職員を兼ねさせる、補助執行させるという問題であろうと思いますが、そのときに、長は何とかしたいといっても委員会の方ではする意思がない、すべきでないと考えれば、それはできない、こういうことになる。これはきわめてはっきりしております。
  94. 加賀田進

    ○加賀田委員 そうすると、今申し上げたように、同意を協議に変更した意味というものがあいまいになってくるのではないかと思う。もちろん同意がなくては実質的に実施をすることができない。しかし同意という結論を得るためには、簡単に同意しなかった場合には、双方がやはり協議するでしょう、話し合いを進めていくでしょう。同意を与える話し合いを進めていくでしょう。そのことは協議であって、実質的に現在それが行われておるわけです。協議で双方の意思が一致点を見出せなかったら、それは実施できないことの見方であるとするなら、同意を協議ということに変更したところに何ら意味がないじゃないか。政府としても、これを変えたというからには、やはり何かの意図があるだろうと思う。その点を明確にしていただきたいと思います。
  95. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これはおそらく百八十条の二の規定を主として申しておられるのだろうと思います。この場合に、この点では実質的に変っておると私は思いません。結局意思が一致しなければ事が進まないわけでありますから、この規定は、たとえば百八十条の三にも似たような規定がございます。結局ほかの委員会と執行部局の長との間の問題をどういうふうに規定しようかというので、実質上えらい意味があるとすれば百八十条の三にあるわけです。これは向うの申し出があるときというのを、お互いに話し合いでやろうじゃないか、こういうことにしたわけです。そこでこの関係規定はみな同じ表現にした方がよかろう、そういう意味で結局協議にしたのでございまして、百八十条の二に関する限りは実質的には私はあまり相違はないと思います。ただ字句はこういう形でみな統一しようじゃないかということでやったのでございます。
  96. 加賀田進

    ○加賀田委員 委員会の職員の問題に対しては、実際的にはこの委員あるいは委員会が実質的な同意を与えなくては実施は不可能だろうと思うのです。しかしそういたしますると、その問題と関連して百五十八条にも、いわゆる部局を設定する基準をきめておる。そしてこの部局をふやす場合には、内閣総理大臣と協議しなくてはならないということになっております。部局の変動に基いて協議するのではなくして、これを縮小する場合にはただ届出だけでいいということになっているわけですが、こういう意味では、やはり内閣総理大臣に協議して了解を求めなかったら、地方団体はできないという大きな制約を私は受けると思うのです。部局とか課の問題は地方自治体の自主性に基いて決定されるべきであって、内閣総理大臣——実質的には長官になるだろうと思うのですが、頭を横に振ったらそういう変動もできないというのでは、地方自治体の自主性を侵すような形になっているわけです。これに対して私は、運営上もし内閣総理大臣がいわゆる協議して一致点に了解をしなかったら、これができないというふうな形では、今申し上げたような委員会の職員の問題とはまた性格が違うのではないかと思うのですが、これもやはり協議という形になっている、これはどうなんでしょうか。
  97. 小林與三次

    小林(與)政府委員 百五十八条は、これは明らかに全く新しい規定でございます。仰せの通り都道府県の部局は自治体に自主的にきめさして、中央が干渉すべきではないじゃないか、こういう理論が当然成り立つわけでありまして、御承知通り従来はそれで法律上標準の部を設けておったのでございます。そしてあとのその増減は全部自治体の自由にまかしておったわけでございます。しかし、実情を見ますというと、都道府県の部局がやはり少し大きくなり過ぎておる府県も少くないのでございまして、これはやはり府県実情に合せて、できるだけ簡素で合理的な体制の方が適当だろうと存ぜられるのでございます。それで現に府県でもいろいろ自主的に縮小の動きがあるのでございますが、これにつきましてはいろいろ問題もあって、やりたいけれどもやれないという事情もあるのでございます。そこで一般の市町村とか、それから課のようなものはこれはもちろんどうこう言う必要はありませんが、都道府県の部だけはいろいろ中央の各省との関係もありますし、それから基本的な府県の体制でございますから、これはできるだけ合理的なところでとどめたい、こういうのが今度の改正趣旨でございます。そこで部局の数を法律で限定をすることといたしたのでございます。それで、その範囲内で自治体が自主的に増廃をやったらいいじゃないかという考え方根本的にとっておるのでございます。ただ、その数の範囲内では府県実情上どうしても工合が悪いという場合が事情によってはあり得ると思うのでございまして、そういう場合に、法律範囲内においてでなければ全くできぬということにしては、かえって実際に合わぬことがあるだろう。そういうときには何か穴をあけておく必要があるのではないか、こういうことで、われわれといたしましてはその穴をあけるということにすれば、総理大臣に相談でもすることにするよりしょうがあるまい、そういうことでこの規定を入れたのでございまして、この場合かりに協議がととのわなかったら、それ以上の部の増置はできないことになります。ただ、かりに府県が二部増置したいという場合に、一部ならばほかの府県との均衡上もそれはいいじゃないかということになれば、一部だけ認めようじゃないかというようなことで話し合いがつく、こういうこともあるだろうと思うのでございます。
  98. 加賀田進

    ○加賀田委員 今一つの仮定からいろいろお話があったのですが、本質的に従来は自治体の自主性に基いて議会の承認を経て、こういう部局の増変を行うことができた。ところが今度は少くする方はこれは届出制だけでいい。ふやす場合には大臣の許可を得なくちやならぬ、協議ですから実際的には許可になります。こういうことで地方の自治体の自主性——しかも議会できめるんですから、大体議員は住民の意思に基いて選出された自由意思でやっているわけなんですから、そういうものにまで政府のいわゆる意見というものが強く入ってくるということは、自治体の自主性の侵害になると同時に、そういう二つの面からの矛盾もあるわけです。こういう調整は自治庁としてあるいは政府としてどうお考えになっておるか。
  99. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは仰せの通りでございまして、府県の内部の組織をどこまで法律で規制するか、こういう基本の問題になるだろうと思うのでございます。それであまりこまかいことはもちろんまかさぬといけませんが、少くとも都道府県の部というものは、府県として基本的な制度だろうと思うのでございます。たとえば議員の定数もそれぞれ人口段階別に法律で定数をきめておりまして、その定数の範囲内で自主的にきめる、こういう体制をとっておるのと同じように、府県の中心の組織である部制というのは、やはり法律一つのめどをつけておく方が適当じゃないか。特に戦後府県の部制が事実きわめて膨張しておるところがございまして、これはやはりできるだけ合理的なものに簡素化することが適当だろうと存ぜられるのでございます。そういう意味で、今度法律でしかるべきところでこれを押えるのが筋だろうということにいたしたのでございます。ただしそれを法律でぴしっとやってしまいますと、これは経過的な問題もございますが、地方の実情によってはかえって動きがつかぬじゃないか。そこでやはり動きがつき得る道を何とか開く必要はないか、こういうところで、よんどころなく協議をして、その範囲内でやろうじゃないかということにいたしたのでございます。
  100. 加賀田進

    ○加賀田委員 私は考え方が逆だと思うのです。前の法律では自主的にできることになっておった。大体の基準だけ示してありた。ところが今度は部局の数をきめて、ぴしっとときめるのは不自由だから少しぐらは協議する穴をあけておこうじゃないかという形よりも、前の法律通りにして、自治体実情によって、もしそういう部局を大幅に増減するということではサービス機関として運営が円滑にいかないということがあれば、自治庁としてもやはり助言をしたり監督することができるわけでありますから、そういう形で指導すべきであって、内閣総理大臣に協議をする、総理大臣が承認しないということになれば、全然新たに設けることもできないというような、自治体の自主性を侵すような形の法案は、われわれとしてはどうも承服することができないわけなんです。しかも経過措置についても、聞くところによれば現在百局部ほどこの法案に比べれば多いとか聞いておりますけれども、この経過措置としては、この法案が通ったら、三カ月以内に大臣と協議をする。協議がととのわなかったら六カ月以内にこの法案によって部局を減らさなければならぬというような、実際に命令的な内容がこの中に含まれておる。これで果していいかどうか。部局の内部的な問題はやはり自治体自体の自主性にゆだねていくべきであって、それを外部から援助するとか指導するという形で自治体の自主性を認める、発展を認めていかなければならないのにもかかわらず、政府がまずそういろ内政に干渉していくというような形は、今いろいろな風評がありますけれども、前の内務省の復活ではないか、その一角を切りくずすのではないかというような議論もあるわけで、非常に危惧されておると思うのです。この点は大臣としてはどうお考えでしょうか。
  101. 太田正孝

    太田国務大臣 お言葉のように、全然自治体の自由にしていくことも考え方でございますが、しかし今回の総理大臣との協議によってやっていくという考え方は、審議権を侵害しようという考え方でなく、ただこれを増す場合においてのみ相談にかける。しかもその分掌、何をやるということや名称なども自由にしておるわけでございまして、決して審議権を侵害しようとか、旧内務省時代のような考えをもってやっていこうという趣意ではございません。
  102. 加賀田進

    ○加賀田委員 そういたしますと、審議権を侵害しないとかいうことになりますと、議会で自治体が部局を一部ふやすべきだという決議をした。それに基いて総理大臣に協議を求めてきた、これは承認できないということになると、実際は部局の増設はできないことになるわけであります。こういういろんな問題が私は起ってくるだろうと思うのです。減らす場合には届出でいいんなら、ふやす場合も同じように届出をして、これを自主的に認むべきである。これが法の建前として私は正しいと思うのです。ふやすだけを制限するということには、何かの意図があるんじゃないかと思うのです。その点を聞きたい。
  103. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これはもっぱら府県組織というものをできるだけ簡素合理化したい、それだけの趣旨でございます。それでこれは地方制度調査会でもそういう趣旨答申がございまして、それは平均六部以下でしたか、そういうものにしろという答申もあるのでございますが、われわれといたしましては、全然自由にしろとか、特別に勧告したり、助言したりする形よりも、法律で一定の基準を与えまして、その基準範囲内において自主的にきめる体制の方がむしろいいんじゃないか、こういう考え方でこの部制を考えておるのでございます。それが今申しますように、議員の定数も全部まかしていいかという問題もあります。しかしそれは団体の大小によって、おのずから議員の数というものはある程度であるべし、こういうことで議員の数も法律で制限しておるのであります。それでもっぱら今度の趣旨は、そういうことで内部の組織というものを簡素合理化したいという趣旨に出ておるわけでございまして、県によりましては、大体標準の範囲内でやっておるところもあります。それから相当たくさん超過しておるところもございます。しかしながら普通の府県の規模で、普通の府県事務をやっていくのなら、およそ権衡がとれたところで内部組織というものの編成も当然考えられてよいのでございまして、そういう意味でその数というものを合理化したいというのが根本趣旨なのでございます。これによってどうこうという考え方とは全然かかわりのない問題でございます。それでありますから、部の編成とか事務の分掌などという問題は、全部自主的な決定にまかせまして、数だけは押えようという考え方で、この条文ができておるのでございます。
  104. 加賀田進

    ○加賀田委員 だからいわゆる事務の簡素化あるいは合理化をはかりたいという意図から、部局の大体の数をきめ、基準をきめた。それだけでいいじゃないかと思う。それに基いて自治体は自主的に基準に基いてやればよい。不当に部をふやすような場合には、自治庁がうまく指導すればいい。従来もやっていることだと思うのです。これは十分いくんじゃないかと思います。ところが協議しなければならない。僕は協議の意味に対していろいろ疑義があるのです。今小林君の言うように、協議が成立しなかったら、その議案を提出したものが何も実行することができないということは、協議じゃない。私は同意だと思う。実際はそういう意味では協議という意義の解釈に疑義があるのですが、自治庁の解釈されておる協議ということになると、今言ったような、大臣が承認をしなくちゃ、議会がきめようと知事が意思表示をしようが、絶対に部局をふやすことができないことになる。それは縮むのは勝手に縮めろ、伸びる場合にはいかぬ。しかしこれはやはり地方住民のサービス機関として、その実情に基いてやるのですから、そういうような制約を私は与えるべきでないと思う。そういう点に対して大臣どうお考えですか。
  105. 太田正孝

    太田国務大臣 先ほど部長からもお話申し上げましたが、実はだいぶふえていくようなところもございましたし、簡素合理化ということが、答申案においても、やるべきことではないか。基準さえたしか示したように記憶しております。そういう意味で、しかも固定しておく場合と違って、ふやす場合には、ふやすことができないということもいけないのでございますから、ふやす場合だけ協議してやっていったらどうか、こういう意味で定めたのでございます。
  106. 加賀田進

    ○加賀田委員 そこで私は協議の問題がいろいろ論議されてくると思うのです。そういう形で地方の議会並びに知事がどうしてもサービス機関が必要だ。しかし総理大臣はそれに対しては同意を与えない。協議してもそれを了解しないということになると、協議の字句から行きますと、やはり議案を発議した人が、あるいは事項を提起した人が、協議が成立しない場合には、それを実施するかあるいは中止するかということは、自主的立場できめるべきものだと思うのです。協議というものは、小林部長の説明では、運営上双方が同意するということは好ましいにしても、やはりこの意味の解釈からいけば、どうしても協議して同意が得られない、一致点が見出せないとなると、それをやめるかやめないかということは、これを提起したところが、やはり自主権を持つわけである。  知事がもし部局を、あるいは委員会の委員を減らすとかふやすとかいう場合に、協議が成立しなかった場合は、まず委員会の場合は、職員のいろいろな身分とかその他のものに対しては、知事がどうするかという決定を従来通りするか、協議した字句の通りするかというような自主権を持つんではないかと思う。それと同じように、知事が部局をふやすという場合に、大臣がどうしても承認しない場合には、それを中止するかふやすかということは、知事が自主権を持つべきだ。こういう性格のものが協議だと思う。そうでなかったら、あらゆる協議と同意という問題が、実質的に何ら意味をなさないことになる。ただよそが協議だから、現在の委員会の同意を得てという百八十条の二を今度協議にしたんだ、そういう簡単なものではないと思う。あらゆる相互の団体の契約等におきましても、同意と協議とはいろいろ区分されて出されていると思う。だから実際問題として運営上に同意と同じような運営をしてもらいたい、こういうことはよく了解いたしますけれども、協議の条文からいけば、総理大臣の許可を得なければ増加することはどうしてもできないという見方は、協議の意味では成り立たないと思う。運営上とこの文章の解釈上との相違という問題に対して、小林部長はどう考えているか。
  107. 小林與三次

    小林(與)政府委員 結局協議の法律上の意味でございまして、要するに協議不調の場合に、当該行為がなおかつできるかできぬか、こういうことに帰着するだろうと思います。それでわれわれの解釈では、協議不調の場合は、当該行為は積極的にできない。それが協議の法律上の効果だ、こういうふうに考えているのでございます。そこで同意というのとは、結果におきまして双方の意思が合致するという意味じゃ、両方とも一緒だと思います。同意という言葉を使わずに協議という言葉を使いましたのは、協議は、要するに話し合いでやりとりをして結論が一致しさえすればいい。そのもつれがある場合に協議という言葉を使いまして、同意という場合は、実際の運用上は、もう一ぺん引き下って、もう一ぺん意見を出すという形をとるだろうと思いますが、法律的には、一方が確定的な意思を出してそれを認めるか認めぬかという場合に同意というのを法律上使っておりますので、そういう意味でわれわれは使いわけをいたしているのでございます。だから問題は、今の同意と協議という解釈をどう考えるかという問題が一つと、それから百五十八条で、部制のようなものはそもそも自主的にまかしたらいいじゃないかという問題と、両方あるだろうと思うのでございまして、部制の問題につきましては、部制をできるだけ簡素化しよう、こういうのが部制だけの問題でなしに、今度の自治法全般の改正の重点の一つでございます。そこで都道府県のようなところの部は、ある程度均衡をとって基準通りに作っていただかぬといかぬのじゃないか。現行法は御承知通り標準を一応示してありまして、標準の上げ下げが全部自主的にまかしてあるわけでございます。その結果いろいろ県によっては非常に機構がふくれ過ぎているところが現にあるのでございまして、それはやはり適当じゃない。ほどほどのところで内部組織といろものはきめていただきたいというのが、今度の改正の要目になっているわけでございます。
  108. 加賀田進

    ○加賀田委員 同じ協議の問題で、字句にこだわるようでありますけれども、委員会の場合はどうなんです。合理簡素化を行いたいということで、委員会の職員に対しては、ある程度減員をいたして、そういう簡素化をはかりたい、能率化をはかりたい、こういうような問題で現状よりも職員の数を減らしてもらいたいということを、知事が委員会に申し入れ、どうしても委員会がいうことをきかないということになると、それは今の場合はできないということになるのですね。
  109. 小林與三次

    小林(與)政府委員 そうです。
  110. 加賀田進

    ○加賀田委員 そろすると、同意を協議と変えたことは、何ら意味をなさなくなって、百八十条の二は、事務の簡素化、能率化はただ名目だけになってしまうが、私は自治庁のねらいはそうじゃないと思う。職員に対しては、事務の簡素化、能率化の一環として、これに対しても全面的に手をつけたいという意向を持っているのだろうと思います。そういう意味で、委員会においてはやはり協議をしてもらわなければならぬということになって、公共団体の長から、委員会に対しても、いろいろな協議事項を職員の問題に対して提起する権限を持っておる。そういう形で同意を協議に変えた場合、もし委員会が協議をして同意をしなかった、あるいは意見の一致を見なかった場合には、現状の職員あるいは機構その他は維持できる、こう見て差しつかえないですか。
  111. 小林與三次

    小林(與)政府委員 その通りでございます。百八十条の二とか百八十条の三ならば、協議がととのわなかったら従前通り、こういうことになります。これは要するに兼任の問題とか補助執行の問題でございますが、行政委員会などは現在それぞれ任命権を持っておるのございます。任命権は長も持っておれば、委員会も持っておる。任命権を持っておる職員について勝手に補助をさせたり、委任をさせたりすることは適当じゃありません。だから、どうしても話い合いをつけてやるようにしなければいけない、話し合いがつかなければ、つかないままで従前通り、こういうことでございます。
  112. 加賀田進

    ○加賀田委員 任免権を持っているのですから、実際問題としてそういう形になっていくだろうと私は思います。そうすると、今申し上げたような同意を協議に変えた意味は全然なくなるのです。文書で要求する、あるいは委員会がそれを協議するという形——そうするとその過程においては、双方議題を出して話し合うということは、従前ともやっておるわけですね。ただ文書で出して同意をするとかしない、イエスとかノーということを回答しただけで、この問題を解決していくというような運営方法をしていないと思います。職員は何名ほしい、増員をしてもらいたい増員すべきであるというようなことは、やはり双方の話し合いの上に立って問題を解決していると思います。ところが協議ということになると、変えた意義は、自治庁としては明確なものを持っておると思います。私はそれがわからないから聞いておるのですから、お答えを願いたい。
  113. 小林與三次

    小林(與)政府委員 今の百八十条の二の場合には、実質的には私は変らないと思います。両方の意思の一致が要るということだけは、はっきりしております。法律上同意と書いてありますが、加賀田委員もおっしゃいましたように、事実上話し合いをつけてやっておったに違いないのでありまして、オール・オア・ナッシングでけんか別れをするということは、私は通常ないと思います。それを協議に変えましたのは、実質上はあまり変りませんが、百八十条の三とかその他類似の条文がありまして、これは協議としなければ動きがつかないことがありますので、それぞれの場合にそう違った条文を使うのは適当ではないじゃないかというというので、百八十条の二に関する限りは、同意を協議ということに直したのであります。ですから、そう特別の意味というものは、私はないと言ってよろしいと思います。ただしかし、こういう事柄はどちらの表現がより適当かといえば、私は協議の方がより適当だろうと思うのでございまして、そういう意味もございまして、ほかの条文と表現を統一する意味もありますし、事柄からいっても協議と言った方がより適当であろうということもありまして、この機会にあわせて改正をするということにしたのであります。
  114. 加賀田進

    ○加賀田委員 私はそういう意味ではないと思うのです。百五十八条で内閣総理大臣に協議しなければならないということになって、それから引き続いて協議という同じ形の字句がずっと使われてきたのではないかと思います。もしこれが内閣総理大臣の同意を得なければならぬということになると、表面的に政府自治体に対して相当の制約や干渉をするという印象を非常に強める、それで同意も協議も実質的に同じという形で理解をしておるから、これは協議に変える、こういうような見方じゃないかと思うのです。それですから、これは同意も協議も実質的に同じとするならば、この内閣総理大臣の協議というような問題は私は重大な問題を含んでおると思う。今申し上げたように、自治体の自主性をここにおいて侵略することになる。自治体自体が今申し上げたように、自主的に部をふやそうとかいうことになると、これはいけないということになってしまう、総理大臣がいけないということになれば、何らふやすことができないということで、そういう形が生まれてくると私は思うのです。しかもさいぜんも申し上げたように、減らすことは届出だけでよいということになれば、ふやすことも届出だけでよいということになる。実質的に合わなかったら具体的な事実を自治庁の方で指導すればよいのであって、こういうような自治体の自主性を侵するような権限を現在の政府に渡すべきでない、またそういう思想に基いて法の改正をすべきではないと思いますが、この点は小林部長はどうお考えになりますか。
  115. 小林與三次

    小林(與)政府委員 それでございますが、加賀田委員のお話の問題の重点も、結局府県の部制について、総理大臣に相談しなくちゃ事が運ばぬということにしたところに問題があるのだろうと思います。これは繰り返して申します通り、県の部制というのは現行法では標準を示しまして、その上げ下げが自由にできるわけであります。その結果府県の機構が部が基準になって、適当なところにとどまっておればいいのでありますが、府県の部が機構がふくれ過ぎておる。これはわれわれといたしましては、できるだけ合理的にやってもらいたいという気持で、従来も一般的に望んできたのでありますが、しかし現実はなかなかそうできがたい。県としてやろうといたしましても、いろいろ中央各省の関係があったりなどいたしまして、実情はなかなかできがたい事情もあるのであります。そこで府県の部制はやはり府県の基本的な制度でございますし、それから中央といたしましても、関係の深い問題でありまして、そういうものだけくらいは限度をはっきりするのが適当じゃないか。今度の行財政全般の合理化の見地から見てそれが必要である、こういう趣旨に立って、単に標準を示すだけでは物足らぬ、むしろ上を押えるべきである、こういうのが今度の改正でございます。しかしながら、法律でぴしっとやって、押え切りにするのも一つ考え方でございますが、そうしたならば県の特殊な事情によって事を考えなくちゃならぬ場合に、かえって動きがつかぬことがありはしないか、その動きのつかない問題を、むしろさばきのつくようにした方がよかろうという考え方で、総理大臣に対する協議という道を開いたのでございます。大体協議という総理大臣に対する関係は、現行法でもたとえば市の設置などの場合は、やはり総理大臣に協議するという表現を使っておりまして、その表現をかりてきまして、ここに協議という言葉を使ったのであります。百八十条の二や三とは、このこと自体は何の関係もありません。
  116. 加賀田進

    ○加賀田委員 小林さんの答弁では、地方公共団体の長が部を減らしたいという意向が相当あるにかかわらず、いろいろな面で妨げられておる、こういう話ですが、大体どういう理由に基いてそういう減らしたいという意向が妨げられているのか。私の聞いておるのでは、結局これを減らそうとすると、政府関係の方からいろいろな手をもって圧力がかけられておる、厚生省とかあるいは建設省からこんな部や課を減らしてもらっては困るじゃないかということで、長へ圧力がかけられてどうしてもできない、これが大きな原因だ、こういうことを聞いておるわけであります。であるから、結局部を減らしたいということになれば、そういう考え方を持っておる長がおれば、政府からの圧力さえみんな排除してもらえば、これは自主的に減らすことはできると思う。法に基いてそういうことを制限して総理大臣に協議しなければならぬ。結局知事が自主的にきめ得ないのを総理大臣の力によってきめる。ところがそのきめ得ない大きな原因は、やはり総理大臣の責任下にある各省から圧力がかかっておる、こういう矛盾が現在部局を減らさない大きな原因だと思う。だから私は法律でこうするよりも、ほんとうに地方公共団体の自主性を認めて、そして事務の能率化、簡素化をはかるために部を減らさなければならぬという形になれば、こういう法に基いて内閣総理大臣の権限に委譲するということよりも、政府自体が今申し上げたような厚生省や建設省に、そういう処置をしてはならぬ、やはりそういう意向に基いて地方団体に協力すべきだというような閣議決定でもすればすぐできると思うのです。そういう形で問題を処理すべきだと思うのですが、その点大臣はどう考えているか、答弁してもらいたい。
  117. 太田正孝

    太田国務大臣 私も今おっしゃったような各省側からむしろふやせとかいうような言葉も承わっておりまして、非常に苦々しいことだと思っております。政治の線からいたしまして、また閣議決定等によりまして御趣意のようにいたしたいと思います。ただ減らすよりふえる場合を非常に心配いたしましてこういう規定を設けた次第でございます。答申意味を少し強く取り過ぎたものでありますから、さよう御了承願いたいと思います。
  118. 加賀田進

    ○加賀田委員 資料の要求をしますが、全国でこの基準に基いての部と現在の部と、各団体ごとの比較を出してもらいたいと思うのです。できれば現在自治庁が減らそうとしている基準一つその点で明確にしてもらいたいと思うのです。今申し上げたように太田長官がそういう強い意思を持っておるとするなら、これは実際の運営上、政府の腹さえきまれば、総理大臣の協議という問題をはずしてでも実際的にできるのではないか。いかにも政府から地方団体にこういう面で圧力を加えるという印象で、地方団体を抑制するということははかるべきじゃないと思うのです。その点もう一ぺん明確に答弁をしてもらいたい。
  119. 小林與三次

    小林(與)政府委員 この府県の部制の現状は、お配りしてございます地方自治法の一部を改正する法律案関係資料というのがございます、それの四十七ページ、現在の府県の部の現状の表を乗せてございます。これをごらん願えばわかると思いますが、県によっては標準部より三部とか四部とか多いところもございます。標準部通りでやっておるところもございます。全体としては百部あまりが全国を通計いたしますと増加することになっております。  それからなお、従来も加賀田委員おっしゃいました通りのような事例をわれわれも耳にしまして、ぜひそういうことをやめたいというので、閣議でも次宮会議でも話し合いを始終願って参っておったのでございますけれども、百パーセント実効は上げていないのが実情でございます。この点はわれわれも非常に遺憾に存じております。いずれにいたしましても部の簡素化の問題はすみやかに実現をしたい。それで結局こうする以外にはほんとうに妥当に、あるいは適切に行い得ないのが実情である、こういうふうな観点に立ちまして、この法律案を立案いたしたのでございます。
  120. 加賀田進

    ○加賀田委員 そういたしますると、この法を改正した趣旨に基いて、今申し上げたような経過処置として、三カ月以内に協議してそれを決定するということになっておりますから、大体政府としてのめどがあると思うのです。もしそのことが協議が成立しなかったら、自然的にそれをやめなければいかぬという強い制約を受けているのですが、そういう見通しがあるかないか、もしあるとするなら、どういう趣旨で、どういう方法に基いて指導するような考えを持っておるか、この点一つはっきりしてもらいたいと思います。
  121. 小林與三次

    小林(與)政府委員 ごもっともでございます。この案はこの前の国会のときにも出した案でございます。地方に対しまして、自治庁ではこういう案でこういうことで行くということを繰り返し説明いたしております。こういう案も考えながら地方では簡素化を進めておるのであります。自治庁といたしましてはそう恣意的にやるということは適当でないのでございまして、われわれといたしましては現在の段階では必要ならばプラス一部を認めよう、それ以上は認めない、こういう方針で進めたいと思います。このことは地方にもしばしば法案の説明をする場合に説明をいたしおります。どういう部をどうするかということは地方に全部まかせる、数だけは必要ならば一部だけ認めよう、こういうことで指導したいと考えております。
  122. 加賀田進

    ○加賀田委員 大臣にお尋ねいたしますが、そういたしますと私の説明しました通り各省の圧力と、自治庁の縮小すべきだということと、両方から地方公共団体の長は、サンドイッチのハムのような形で困っているだろうと思うのです。従ってそういうような調整を長官としてすべきではないかと思います。たとえば今申し上げたような閣議決定をいたしたり協議をするとかというようなことで……。一方では縮小しろ、一方では縮小しては困るという形が起っておる。その調整の権能というものは、自主的な権限で内閣が内部的に持っているわけです。それを調整する意思があるかないか。調整しようとするならばどういう方法でやるか、この点を明確にしていただきたいと思います。
  123. 太田正孝

    太田国務大臣 ただいま部長が申しましたようにここに標準を設けまして、ふやす場合の指導の方針としては一部程度ということでやっておりまして、またそれが行われないことのないように各省の間の調節をはかっていきたい、かように考えます。
  124. 大矢省三

    大矢委員長 五島君。
  125. 五島虎雄

    ○五島委員 昨年の十二月に自治庁地方自治法改正の基本を発表されたわけです。そのときは大体二十二回特別国会で提案されたのとほぼ大同小異、そしてその中の地方議会に関する検討等が削除されたところの基本の要綱が発表されておったわけです。ところが本国会のこの法律案を見ますと、きのうから問題になっております特別市制の条項が全部切られている。そうしてそれと交代的な姿で十八項目が五十万以上の市に委譲される。その委譲することが地方自治法で十六項目、教育関係において二項目、そのままの姿で指定市にその事務が委譲されるというようなことならば、われわれは特別市制の問題とこの仕事の再配分の問題とをすり変えられたというようにそのまま認識するわけです。意見は別として……。ところがこの二百五十二条を見てみると十六項目の一部ないし大部を政令に委任するということが書いてあります。それをうたっている。そうすると大体この事務配分の問題で政府はどういうように考えているか。その意向が那辺にあるかということが法文を読んでみてもわからない。一体その事務の再配分がはっきりと指定市に行くものか行かないものかわからないような状態で、われわれは法律の案文を読まなければならぬわけです。きのうも鈴木委員からこの一部ないしは大部の政令の考え方を資料にして出してくれと言われたわけです。政府はそれじゃその政令の内容を資料にして出しましょう、こういうような答弁があったわけです。そうするとこれはこのまま、十八項目のうちの一部ないしは大部を、やはり指定市の方に移さないことを考慮しているのかどうかということです。それをはっきりしなければこの条文自体がどうもおかしくなってくる。一部ならばまあわかりますけれども、こういう十六項目にわたってその大部を政令にまかせる。そしてその政令の定めるところによって管理とか運営とかをするという法文そのものが非常に疑義の多い条文であるから、この点についてやはり大部を政令にまかせる気持が依然として政府にあるかどうかということを、この際はっきりしておきたいと思います。
  126. 小林與三次

    小林(與)政府委員 今のお尋ねはごもっともでございます、この二百五十二条の十九は、これはこの前の案の通りでございます。ただ十八が十六になりましたのは、今仰せられました通り教育関係の問題で向うの法律が変りまして、事柄がなくなった。給食の事務は今度の改正府県事務から落す、一般事務からも落してしまう。それから展示の制度も変えることにいたしましたのでやめたのでございます。あとは従前通りなのでございます、そこでこの法律趣旨は、一部政令の定むるところによりと書いてありますが、全部または一部という建前で市民に直結する事務は原則としておるす、こういう基本的な方針で出ておるのでございます。ただその事務は各法律にわたっておりまして、その規定も非常に複雑なので読みかえの規定が要ったり、あるいはその他ある程度政令で調節しなければならない規定が多いのですから、そこで政令で定めるところによりという文言を入れてあるのでございまして、市民に直結した事務というものは原則としておるす、こういう基本的な考え方で進んで参りたいと存ずるのであります。ただ非常に特殊な事務があり得るのでございまして、一部という表現が使ってあるのでございます。
  127. 五島虎雄

    ○五島委員 そうすると一部ないしは大部という字句の表現について、われわれはどれが一体大部に該当するのか、どれが一部に該当するのかということは法律を策定するに当って、われわれ自身がわからない。こういう内容をもって法律を策定するということは非常に疑義が生ずる。だから十六項目を、教育委員会は別としてこの該当法案の十六項目のどれを一部にし、どれを大部にするか。大部というのは全部でしょう。それをちょっと説明していただきたい。
  128. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これはこの間鈴木委員からも御注文になった問題に関連するのでございまして、われわれといたしましても最後は確定的な問題にまで至りませんが、大体の考え方はお示しいたさなければならない、こういうふうに考えてはおります。それで大体われわれの今の考え方は、要するに市が市民に対して実施する実際上の事務は原則としておるそう、こういう考え方でございます。しかしながらやはりその市だけでなしに、たとえば伝染病予防のような事務で、たとえば検疫の仕事がある。列車の検疫があったり、郊外電車の検疫の事務などというものは書いてあるわけでありますけれども、そういうものになってきますと、これはやはり現在府県がやっておりまして、やはり府県に残さざるを得ないのではないかということが言えるわけであります。だから要するに市内と郡部とに分けて仕事ができて、市内だけで始未のつくような事務は、もう原則としてできるだけおろしたい、こういうのが基本的な考え方でございます。それからかりに府県一つあれば済むというような機関もあろうかと思います。全府県間を通じてそういう問題は、府県に残しておいた方がやはりいいんじゃないか、市にもあり郡にもあるというような問題はもちろんおろしていいですが、全府県間を通じて一つあれは済むような施設があれば、そういうものは残しておいた方がいいじゃないか、大体今申しましたような考え方で、どうしても府県間を通じて統一的にやらなければならぬというような事’務とか、数府県に現にまたがっておるとか、そういうふうな基準で問題を考えたいと存じておるのでございます。
  129. 五島虎雄

    ○五島委員 そうすると大部というものはどこに属するのですか、大部というような構想、考え方があるのですか。あったらどれをその政令に委譲したいと思われるか、その方針だけでもいいですから伺いたい。
  130. 小林與三次

    小林(與)政府委員 それでございますから、ここに十六ございますが、たとえば行旅病人の事務とか、寄生虫の事務とか、墓地埋葬の事務といったようなものは、当然全部おろしていい事務だろうと思うのでございます。そこでたとえば伝染病予防の事務でも伝染予防法の中に規定が幾つもございまして、今の検疫の事務でも、列車の検疫とか郊外電車の検疫もあれば、伝染病が発生したときに家の消毒の事務をやったり、小地域の交通の遮断をやったりする事務があるわけであります。そんなものの仕事は当然市におろして一向にかまわぬし、また事実市もタッチしてやっておる事務なのでありますから当然おろそう。その他でも社会福祉関係行政は、社会福祉事務所の市の施設が関与しております。衛生関係事務は市の保健所が大てい関与しておりますので、そういうところの手を借りなくてはいけないし、また事実そういうふうに行われておるような事務は、当然に市におろすべきじゃないか。だから大ていの問題につきましては原則としておるしますが、今申しました数府県にまたがるとか、数市町村にまたがるような問題が、ところどころ法律上あるわけです。それは無理じゃないかそれともう一つ組織一つあれば済むものはなお問題点がありますが、たとえば身体障害者については福祉法で身体障害者相談所というものがある。これは現在どこの府県でも府県に一カ所しかない。一カ所で身体障害者の相談を市と郡部を通じてみなやっておる。こういう問題はむしろ残しておいた方が全体として合理的じゃないだろうか。やればやったで両方作らなくてはいかぬ。こういう問題が実はあるわけです。そういう特殊な問題が幾つかございまして、そこら大体のプリンシプルは今申しましたような考え方で、それぞれの法律の条文を拾わないといけない問題がありまして、それでわれわれといたしましてはなお各省と十分な——政令の問題になれば一条々々話をつけないといけませんものですから、そこまでできかねますけれども、実質上市民を対象にし、市内だけ独立して単独でやり得るような仕事は、もうむしろ全部おろす、こういう考え方で問題を処理していきたい、こういうふうに存じております。
  131. 五島虎雄

    ○五島委員 そうすると身体障害者の問題の事務等々については、関係省との相談がなければ、今のところはまだわからないと言われるわけなんですか、よくこれから相談されるということに了解しておいていいのですか。
  132. 小林與三次

    小林(與)政府委員 最終の問題は政令できめていかなくてはなりませんから、政令になれば自治法の、単独法の整理もやることになっておりますので、そこで最終的には確定的なことになると思います。しかしわれわれといたしましては、できるだけ今申しましたような基本的な方向をきめまして、そして事務処理していきたいという考え方でおるのです。
  133. 五島虎雄

    ○五島委員 この十六項目が関係市に委譲された場合の財政的裏づけははっきりしておりますか。そうするとこれから一部あるいは大部にわたって政令にまかせるということならば、その政令がはっきりしなければ、財政的な問題は考慮できないと思うのですけれども、その財政的裏づけの問題についてどう考えられておりますか。
  134. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これはごもっともでございますが、大体事務配分仕事自治法国会を通って三カ月後に施行されまして、それからまた事務の委譲が大体六カ月ぐらいあることになっておるはずでございまして、その間に人の問題、事務施設の問題の話し合いをつけなくちゃなりませんので、これは今年度の年度末に事実上なるだろうと思うのでございます。それで本年度においては大した影響がないだろうと存じております。大体われわれの委譲する事務は、実施上ほんとうに金がかかる実質的な仕事が主として市町村へ行けば、そうでない特殊な事務だけが残るわけですが、一応の大見当としては七億くらい初年度にかかるのじゃないだろうかという計算をいたしております。正確には今やる具体的の事務がきまらなければ確定いたしません。本年度はせいぜい要って六千万かそこらじゃないだろうかという見当をつけておるのでございます。これも一応の見当でございます。
  135. 五島虎雄

    ○五島委員 そうするとこの十六項目について、何かきのうも問題になっております特別市制の問題が全然抹消されてしもうて、私たちはあぜんとしたわけなんです。ところがさいぜんの太田長官の答弁内容で、現在の地方自治体の組織の様態の中には適してないという説明が一句あったわけです。太田長官の言葉の言質をとらえて私は申し上げる気持はないわけですけれども、何かこの十六項目を関係市に委譲するがゆえに、その取引の具にされたような印象をわれわれは受けるわけです。(「印象じゃない、そうなんだ」と呼ぶ者あり)そうなんです。そこでこの地方自治法が制定されて以来——憲法の九十二条では自治の本旨に従ってとうたつてあるし、九十五条にはその自治の本旨に従って地方団体の特別の問題については法律でこれを定めるということで、堂々と憲法九十五条に示してある。そうして自治法が新しい自治の精神を発揮し、自治の行政の発展という意味において特別市制が第三編の十七ヵ条に盛られながら、これが現在の自治の様態の中に適していないということは、一体どういう意味なのかということに疑義を狭んでくるわけです。そうすると自治の本旨と特別市制の実現の問題について、これは自治の本旨に適していないと太田長官が言われたような印象を受けて仕方がない。太田長官が将来のことについてどう考えられているかということは別問題として、当面その法の改正に当って特別市制の問題がばっさりやられてしまうことは、特別市制を今の法律に盛っていることは法の体系上どうもおかしいということは、自治の本旨にのっとらないという、意味であるかどうかということを聞いておきたい。
  136. 太田正孝

    太田国務大臣 午前中からだんだんの質疑応答がございましたが、特別市の制度はこれを指定する法律も実行されておりませんので、長い間の議論であり、またこれに熱中されているお方の立場もよく了解しております。しかしながら実行されざるかような状況をもう一歩進んで考えてみますと、何としても地方制度根本的な改革をしなければならぬときでございますので、私といたしましては市が伸びていくという問題と、また村のあり方というような問題も頭の中にあるわけでございます。全部が特別市的に生々発展していくものであるか、こういうようないろんな問題がありまして、これを根本的に考えるという意味からお答え申し上げた次第でございます。これと事務委譲の問題と引きかえにしたという考えではございません。
  137. 五島虎雄

    ○五島委員 引きかえにしないと言われたわけですが、昨年十二月から二十四回国会が始まってずいぶん新聞に騒がれまして、すったもんだの後にこの法案となって出てきたわけです。それでは太田長官の言われる通りに理解するとして、将来地方制度調査会答申等等も待って、地方の自治のあり方を根本的に改革する、そうして地方財政の抜本的な対策を来年度に考えなければならないと、従来長官が説明された通りに行きますならば、将来地方制度調査会等々から案が出、答申が行われ、道州制の問題等考えられ、そうしてその地方の姿を改革するというときは、この一市で他にたよらず自治が行われるという能力のある市には特別市制をしこうという考え方を長官は持っておられるのですか。
  138. 太田正孝

    太田国務大臣 そういう点につきましての答申を望んでおるわけでございます。私は実は率直に申しまして、たとえば私の郷里の県でございますが、泉地区問題などを考えてみても、どうもやはり県と県との境などを考えていきますと、どうにも片づかぬところに参りましたので、私どもは実は直接の関係者として心配したのでありますが、何としても早く地方制度根本改革に手をつけなければならぬ、その事柄自体はまた財政とも種々からみ合っておるのであります。だができるところのものが特別市でよいかどうかという事柄は、今回の事務委譲につきましても五大都市でやる考えで、福岡のごとき人口五十万以上でありますが、やることについては今考えておらないような状況でございます。こういうようなわけでそれぞれの都市についての事情もございますので、根本的な制度として特別市というものをやって行くか行かぬかということは、ひとえに答申を待ちつつ私ども勉強して行きたい、今ここでやるということもやらぬということも申し上げかねる段階にございます。
  139. 五島虎雄

    ○五島委員 そうすると答申を待つ、そうして答申で特別市制の問題がはっきりしてきたら、長官はその通りそれを尊重して行われるということで、もう特別市制の問題は現在の時点においては長官は、あるいは政府当局といいますか、全然考えていないというように了解してよろしいのですか。
  140. 太田正孝

    太田国務大臣 決してそういう意味ではございません。もちろん英知を学識経験者等に求めるのでございますが、自分たちも一生懸命この解決策を考えております。やめてしまうとか、そういうことはもちろん今言い得る段階ではございませんので、さよう御了承願いたいと思います。
  141. 五島虎雄

    ○五島委員 そうすると調査会の答申について非常に期待をしておられるようですけれども、私たちは現在の政府がこういう重大な問題になったことについて、どう考えておられるかということをはっきり聞きながら、この法案そのものを審議して行かなければならない、調査会がどう考えておるであろうか、調査会の答申が来年ごろには出てくるだろうということで、この法律案を審議するということは非常におかしいと考えわけです。それで現在ばっさりやってしまったところで、現政府は一体将来のことについて特別市制の問題や、あるいは地方自治のあり方というものを、どう考えておられるかということをはっきり聞かない限りにおいては、何かおかしくなって、どうも審議するということが困難になってくる。それでこの問題についてなお長官の考え方をはっきりしてもらわなければ困ると思うのです。たとえばこの法律ができると、直ちにその法律は国民に影響するわけなのですから、五大市なら五大市の住民に大きく影響してくるわけです。今後の生活のあり方についても、ぴしぴしと影響してくるわけです。この自治法の制定された当時から特別市制がうたわれている。しかし現実には特別市制は、当該住民の投票によって実現するという法案になって、現実にはできないから切ってしまう。現実にはできないから切って上まう長官の考え方と、将来あるべき大都市の姿というものは、僕は違うと思うのです。将来はどうするかというようなことについても、私たちはやはり地方自治のあり方というものを、現在の政府がどう思っているかということが、非常に重大な意味を持つのではないかと思うのです。切ってしまって、そうして将来はわからない、それは望ましいけれども、現在のところ特別市制にしようかという考えは持っていないという長官の考え方は、これはどうもおかしい、こういうように思うわけです。
  142. 太田正孝

    太田国務大臣 日本の全体の地方制度としては非常に大きな問題でございまして、すぐ右左にさばけるような事情でもないと私は思います。従って特別市といわず全面的な問題が今われわれの前にあるではないか、それならばこれに対してどういう方策かということになりますが、たとい特別市を作って、残った府県との関係をどうするとか、府県そのものはどうするとか、実はいろいろな関係法律などを考えてみましても、それが簡単に行かないのが現状でございます。従ってここに自分たちも勉強し、世の中の意見も聞いて、求めるというのが、偽わらざる現状ではないかと私はかように考えておるのでございます。
  143. 北山愛郎

    北山委員 ただいまの御答弁ですけれども、歴代の自治庁長官はみんな同じようなことを言って、今までごまかしてきたのです。ちょうど同じようなことを言って、前の塚田さんにしろ、川島さんにしろ、まあ根本的に考えてみなければならぬのと言ってきた。ただ違う点は、太田自治庁長官は、知事官選にしたいとかなんとか、個人的な意見を申されないということが違うだけであって、根本的に考える、あるいは地方制度調査会にかけなければならぬというようなことを言って、この数年間私の知る範囲においても、この問題がちっとも進んでおらない。しかも地方制度調査会という非常に大きな機構があって、そして地方制度根本的な改革をするというような機関を置いておきながら、その地方制度調査会は毎年度の予算をとるためにこれを活用する。ちょうど昨年の臨時国会の前に地方財政の交付金をとるための裏づけに、この地方制度調査会の委員が利用されるというふうに、一向制度根本の改革には利用しておらない。そしてその問題が済んでしまえば、あとは調査会の招集も何もしない。いつまでたっても根本的な制度の改革のごときは、現在のような保守政府のもとではできない。こういうふうに私ども印象を受けるのですが、大臣はどのような御信念をお持ちですか。
  144. 太田正孝

    太田国務大臣 未熟でございますが、私は実行的な立場を今まで支持してきたつもりでございます。財政にしましても税制にしましても、及ばずながら自分の力では実行という点だけを考えて努力して参った次第で、夢を——夢と言ってはあるいは前任者の言葉にそむくかもしれませんが、やはりこの問題は大きい問題でございまして、実行という面から、私は今これを申し上げるのははばかっている。また自分が未熟でございますので、ただ口先だけでこの問題を解決しようなどとは私は考えておりません。日本の現状において地方制度というものはいかにも大切な問題である、かように考えている次第でございます。
  145. 中井徳次郎

    ○中井委員 けさほどから地方制度の問題、特に特別市の問題についていろいろ議論がされております。私は昨日も他の法案について申し上げたのですが、地方自治法の一部を改正する法律案というものを出されまして、この間から拝見いたしておるのですが、どうもやはりきのう申し上げたように、書かずもがな、言わずもがなのことがたくさん入っておって、そうして今日本の内政の中で一番大きく燃え上っている重要問題については逃げているというような形が、どうも出ているように思えてならない。今北山君も御質問があったが、特別市制の問題だとか、あるは道州制の問題とか、知事の官選とかということについては、前大臣、前々大臣は、太田さん、あなたよりはもっと正直に自分の個人的の見解を言うておられたと私は記憶しております。それでどうでございましょうか、そういう重要な差し迫った問題をあとにやって、そうしてこまかいこと——いろいろあります。私もあとで関連して一、二聞きたいと思っておりますが、やはりそういう府県の規模とか特別市の問題等については、これは十分研究する——これはその通りでありますが、この間も財政の問題につきましてかなり現内閣は前進した。ことしの初めでありましたか、補正予算の関係その他で前進した。しかしいろいろ議論をいたしておりますと、まだまだそれでは足りないということがわかって参って、大臣以下関係の皆さんからは、三十二年度にはこの抜本的な対策をさらにやりたい、こういうような答弁であったと思うんですが、こ税制、財政の問題と関連いたしまして、制度の問題については、これまではとにかく財政難に籍口いたしまして、押えておった。この地方自治法をずっと拝見いたしますと、そういう線が一本流れている。その線と、もう一つはやはり昔の官治統制といいますか、それにと対するノスタルジアが現われている、こういうことだろうと私どもは解釈しているのですが、それにしましても、今申し上げましたように、どうもすきっといたしておりません。今一番問題になっていることを逃げているという点であります。どうです。そこで私はこの特別市の一章を削ったということは非常に遺憾である。自治庁の皆さんは涙をのんで削られたのじゃないか。実はあれをふくらましていきたいにもかかわらず、これは作戦的にやむを得ないで、ことしは削っておこということになったのだろうと私は推察しておるのです。これは間違っておったらごかんべん下さい。従いまして私は、近い将来に何とかこの地方自治法改正という名において実質的な改正がなされるべきである、なされねばならないというふうに思うのであります。そういう時期等についても、一応来年あたりさらに抜本的な財政的な改正をなさる、自治体の財政的な規模を充実なさるということになれば、その次に来るものは制度の問題である。現実の国民の生活に密着したようないい制度を作っていくということになれば、けさほどから議論になっている問題にぶつかると思うのでありまするが、そういう面について、もっと率直な意見を聞かしていただきたい。これはこの法案の審議に際して一番大きな山になってくるということと、将来私ども、これは自民党、社会党を問わず、日本の政党といたしまして、日本の内政をどう持っていくか、機構をどう持っていくかということを研究していかなければねりませんが、私はその大きな山になるのであろう、かように思うのであります。何も大臣のあげ足をとろうというのでお尋ねしておるわけではありませんが、そういう意味においてこの山をもう少し率直にお話が願いたいと思うが、どうでありましょうか。
  146. 太田正孝

    太田国務大臣 御意見ありがとうございます。私は実は自分がこの席に着くときに、二十九年度前の借金の問題の法律が通らないままに渡されました。しかもそれを片づけたところが、残っておるのは二度も出したところの自治法がどうなるかという問題でございます。私としては今まで政党各派において議論なすった点も十分取り入れて、実行ということを主にしながら、一部後退に見えても、実行し得るものでなければ何にもならない、こういう意味において新しく入れたものもございますが、大体において今までの問題となった点を調整しつつ、実行すべき今回の案を作った次第でございます。私不敏にして、さらに進んだところまでいけなかったことは、私の足らざるところでございますが、過去二度も流産したこの法案は、その中には相当問題になる点があると思います。実行しなければならぬ問題点があると思います。議会制度についても、あるいは執行機関の問題についても、また戦後作られたときと違った意味におきまして、あまり意味ないというお言葉でございましたが、根本的に市町村及び広域自治体のあり方を示すということから始まりまして、ただいま申しました各般の問題、またよく世間でいわれる恩給の通算問題など、私は早く実行に移さなければねらぬ切実たる問題と思っております。小さい問題と言われるかもしれませんが、私としては、今まで二回出してなぜこれが流産になったかというその原因も調べて、譲れるだけ譲っても、実行し得るもので行こうじゃないか、こういう意味で部下を励ましつつ、また各方面の意見も聞きつつ、ここまでこぎつけたわけでございます。もちろん北山委員及び中井委員から仰せられたような根本的な問題としては、はなはだ不満な面が多いと存じ上げます。けれども現状において、この自治法の機構に関する根本問題が、たとい微温なものであるにしても、なぜ通らなかったか。それには政治的な理由もありましょう、議会運営の問題もありましょうが、私責任者としては、どうしてもこの点は少くとも今やっておかなければならぬ。大体におきましては、地方制度調査会答申もかような線で進んでおりました。全部入れたというわけではございません、また答申にないところもございます、足らぬというところもございますが、大体において実行ということを主にいたしまして、過去二回出した法案もよく考えつつ、今回未熟ながら私としてはこの点が取りまとめる点と存じまして出したような次第でございます。もちろん御意見として申された大きな機構問題としては、私もせい一ぱい力を入れてこれまた実行に移す考えで審議を続けていきたいと思います。最初この御審議に入る前北山委員からお言葉がありましたときに、私の申し上げたことは、ほんとうに何の隠すところのない自分の意見を申し上げたので、この自治法に私が執心してる、執着しているという意味も御了解願いたいと思うのでございます。
  147. 中井徳次郎

    ○中井委員 今大臣のお気持を伺ったわけでありますが、そういたしますと、次の大きな改革といいますか、そういうものに対しては、来年あたりあらためてお出しになりたいというお考えであるのかどうか、その点も関連して伺っておきたい。
  148. 太田正孝

    太田国務大臣 お言葉のように進みたいと思っております。
  149. 中井徳次郎

    ○中井委員 この点は小林君でもけっこうですから伺いたいのですが、地方議会の開催なんかについて一年四回以内と制限してみたり、いろいろあります。こういうことも私はここまでやるのはどうかという考えを持っておるのです。特に常任委員というふうなことで、「議員は、それぞれ一箇の常任委員となるものとし、常任委員は、会期の始めに議会において選任し、条例に特別の定がある場合を除く外、議員の任期中在任する。」というふうなことは、たとえば県会議員に初めて当選して、土木がおもしろいと思ってやってみたが、半年ほどやったら財政難で土木も何もできやせぬ、昔から長いこと小学校の先生をやっておったから、やはり教育委員の方にかわりたいというようなことがあってもかわれない。これはまことにどうもここまでやることはあこぎじゃないかと思います。皆さんがどうしてこういうことをお作りになったか、それをちょっと伺いたい。なるほど率直に言いますと、このごろの地方議会には、たとえば議長は一年交代、副議長も一年交代で、任期四年間に議長四人、副議長四人できて、それらが次の選挙にみな落ちてしまったとようなことがたくさんございます。けれどもそういうことのために、常任委員の任期まで、お前一ぺん土木をやったら四年やれというようなことは、まことにすさまじい法案だと思うんです。これについては私は参考人の意見も伺い、自民党の皆さんの御意見も伺って、実は私ども意見があるのですが、その前に一つ政府の見解を伺っておきたい。これは行き過ぎですよ。私の解釈に何か間違いでもあれば言ってもらいたい。
  150. 小林與三次

    小林(與)政府委員 今の問題は実は現行法の問題でございまして、実はわれわれ今度別に新しく考えわけでもないのでございます。定例会の年四回の問題は、現在御承知通り毎年四回、こうくぎづけになっております。それはむしろ自治体実情に合わぬじゃないか、そこで四回の範囲内で条例で定める回数にして、自主的に実情に合うようにしたい、今中井委員のおっしゃいました通り趣旨でございます。  二番目の委員の選任の問題は、これも実は現行法にもこの通り規定がございまして、「常任委員は、会期の始めに議会において選任し、条例に特別の定がある場合を除く外、議員の任期中在任する。」これはそもそも国会法のまねをしたわけでありませんが、国会法にも同じ規定がございまして、常任委員は会期の初め議院において選任し、議員の任期中任にあるという建前になっておるわけであります。あとの運用で適宜やっておられるわけでございまして、この点は地方では特に条例で特殊な扱いができる道を開いてあるのであります。
  151. 中井徳次郎

    ○中井委員 改正案の中に書いてあるのですよ。
  152. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは改正案の中のアカクロの方をごらん願いますと一番よくわかるかもしれませんが、その一項を全部変えたから出ておるわけであります。ここで変えましたのは、百九条の方は、「議員はそれぞれ一箇の常任委員となるものとし、」これは実は新しく入れた規定でございます。それでそれに伴いまして、全部の条文を書き直したのでございます。それでこの常任委員の制度をどうするかという問題は、この前の国会でもずいぶん議論のあった問題でございまして、常任委員会制度の運用を改善するという地方制度調査会答申にも基きまして、実際上いろいろ問題がありますので、常任委員会につきましては府県の部制と同様な考え方で数の大ワクをきめよう、それでワク内でそれぞれ適当にやっていただこう、それから常任委員の構成も現行法では特に事務に関する部門ごとにこれを設ける、こういうふうに積極的に書いてありましたので、むしろこの規定をやめて条例で自主的に部門ごとに設けようが、そうでなしに、われわれはいわゆる横割と申しておりましたが、どういう形で、国会と同様に設けようが、それらも全部自主的に条例にまかせようじゃないか、こういう考え方で、数だけを制限したらいかがということにしたのでございます。数を制限するに伴いまして、建前上「一箇の常任委員となる」という規定を入れたのでございまして、それに伴ってこの選任の時期の規定とか、任期中の在任の規定とかを条文の技術上改正案に書いたのでございまして、その点一つ御了承をいただきたいと思います。
  153. 中井徳次郎

    ○中井委員 そうなりますと、あなたの方で直したというのは、この常任委員となるということだけを直したというのですか。
  154. 小林與三次

    小林(與)政府委員 百九条の二項ではそうです、実質的に直したのは……。
  155. 中井徳次郎

    ○中井委員 しかし現実に今問題になっておりますのは、常任委員を兼ねるというふうなことじゃなくして、あまりかわり過ぎるというふうなことで何とかしなければならぬというのが、この改正案のほんとうの趣旨じゃなかったかと思うのですが、私はそういうふうにこの前の議会あたりから理解いたしておるのですが、これを一箇にしぼるということになりますと、逆にまた問題が起ってきやしませんか。
  156. 小林與三次

    小林(與)政府委員 この部分に関する案と実はだいぶ変っております。この前提案になりましたときには、常任委員会組織と申しますか、それを変えて、現行法では今申しましたように事務に関する部門ごとという、いわゆる各部ごとに縦割で設ける、こういう建前になっておりましたのが、これでは、常任委員会がむしろ総合的に審議する必要があって、あまりにも部門ごとにこだわり過ぎる弊がありはしないか、こういうのでいわゆる横割と申しますか、歳入とか、歳出とか、決算とかいう考え方で部門を設けるようにしようというのを、この前の案のとき、実は考えておったのでございます。そこで今度そこの部の中身まであまりはっきり書くのは、かえって実情にも合わぬじゃないか、それも行き過ぎじゃないかという御意見もいろいろありましたので、数だけを一つ制限して、数も団体の規模によって当然大小があってよし、議員数も違う、あるいは仕事の中身も違いますから、数だけはもっと弾力性を持たせよう、この前の案では五つの委員会になっておったのを、こういうふうに弾力性を持たせるようにして、そしてあと組織は全部条例にまかした、そしてそれに伴うて二項を今のように改正をいたしたのでございます。
  157. 中井徳次郎

    ○中井委員 今のお話を伺うと、常任委員を一つにしたというだけであり、それから四年間やれとかなんとかいうことは現実には各市町村府県においては行われておらぬ、そうすると、これはもう全く死文のようなものですね、どうですか。
  158. 小林與三次

    小林(與)政府委員 それは府県では現行法もそうなっておりますし、今度もそうしておりますが、「条例に特別な定がある場合を除く外、議員の任期中在任する。」という規定がありまして、地方が実際にどういう運用を——条例規定は私もよく知っておりませんが、やはり建前は、常任委員はそれぞれ部署に属したならば、それを専門的に研究してやるということであろうと思うのでございます。それでそういう建前現行法でもなっておりますし、今度の改正案もそういう趣旨になっております、国会法自身ももちろんそういう趣旨でできておるのでございます。しかしながらあと現実の運用の問題として、それぞれ実情に合うように委員の更迭が現に行われておる、こういうのが現状でございますが、制度建前はやはり任期中その仕事をやるというのが本筋だろう、こういうふうに考えております。
  159. 中井徳次郎

    ○中井委員 今のお話を伺うと、現実には法の建前はそうなっておるが、やっておらぬということになれば、ほとんど死文のようなものであります。整理をするならむしろそういう面も一切整理をしたらどうか、そういうふうな気持をもって私はお伺いをいたしましたが、どうもそれと同じように、これはちょっと事情が違うかもしれませんが、だらだらと書いてあるが、現実にできるかなあというふうなこと——今度の改正府県仕事の中で、何か水準維持とか基準維持とか標準のなんとかとかいろいろな形容詞を使っておる。それからまた図書館とか体育館とか美術館とか、これは最近におきましては府県だけではなく、市町村においてどんどんやっておるようなことについても、何か標準とか水準ということになっておるが、こういう文句が出て参ると、厳格な意味においてはこれはやらなければいかぬ、県がこれを指導監督というか、助言というか、運営合理化に関して注文をつけなければいかぬ、ところが注文をつけるためには金が要るのだ、ただ注文をつけっぱなしでは何ともならぬということになってきやせぬかと思うのであります。この地方自治法の一部を改正する法律案の二ページの二に「義務教育その他の教育水準維持、」ということが書いてある。これも非常にけっこうですが、僻村の教育水準維持しようと思えば、僻村において小さな学校を作っていかなければならぬ、そのためには校舎が要る、そういうものを県がみな経費の世話をするのですか。「文化財の保護及び管理の基準維持、」、これは最近の流行でありまして、こういう文化財の保護ということは、新聞紙を大いににぎわしておるが、現実府県はそういう指定をいたしましても、ほとんど金は出さないというのが多いのでありますが、こういうものを設けるからにはこれの裏打ちがなければならぬと思うのであります。裏打ちなしにこういう法律を幾ら書き直したところで、これは逆に問題を非常に混乱させるようにも思うのでありますが、そういう点については政府はどんなお考えでこれをお書きになったのでございましょうか。
  160. 小林與三次

    小林(與)政府委員 この二条の問題は、先ほど午前中も申しましたが、結局現在の府県市町村事務配分基準を明らかにしようという、たとえば義務教育の問題ならば、義務教育実施事務というものは当然市町村がやるべきでありますが、たとえば給与を統一的に支払うとか、その他給与に伴ういろいろな条例をきめるとかいうようなレベルの問題は、これは府県がやってもいいじゃないかという趣旨のことを、実は書いただけでございます。それでこれによって府県はいろいろ他の法令その他自治法の定めるところによって事務処理ができる、またその筋で処理をしてもらいたいという建前を明らかにしたのでございまして、これによって特定の事務市町村に押しつけるとか義務づけるとかいうことは当然には出てこない。あとはそれぞれの府県の自主的な活動が基礎になっていくわけでございます。
  161. 中井徳次郎

    ○中井委員 この点は今あなたがおっしゃったように、幾らレベルを示してもこれはできないですよ。財源の裏づけがないですから……。将来府県はどんどんやる。こういう仕事は自分の方は金が要らぬですからおもしろい。お前の市はこうやれ、ああやれ、お前の町村はこうやれ、ああやれということを幾ら命令を出したって、これは非常に無責任なことになる。あなた方は一方におきましては大いに教育委員会の公選をやめるとかなんとかいって、経費も節約できる。全国的に見ればあまり大した金額でございませんが、そういうものをやらしておきながら、今度は逆にレベルをきめるということになれば、これは市町村としては大へんな問題になる。やってもやらぬでもいいというふうなことをおっしゃるけれども、やはりそれに近寄っていかなければならぬということになると大へんなことになってくると思う。これはどうも今の府県市町村の立場からいって広域行政である、一方では基礎自治体であるというあなた方の概念からいって、どうもこれは少し行き過ぎのように思うが、この点はどうですか。簡単にこんなものをずっと書き流して責任を持てるのですか。
  162. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは何もこの規定によって府県市町村仕事を押しつけろとか、そういう趣旨規定ではないのでございまして、結局教育事務につきましては、義務教育実施については府県はどういう趣旨事務をやるか、市町村はどういう趣旨事務をやるか、こういうことを使い分けをしたわけでございまして、義務教育については、府県というものは一般的なレベルに関する問題を処理するのが建前であろう。現にいろいろな法律にもそれはありますし、義務教育職員の負担を府県がやるということは、まさしく義務教育の教員のレベルを全県下を通じて保障しょうという建前に出ているわけでございます。そういう意味仕事府県がやるのであるぞ、こういうことを書いたのであります。それで府県が積極的に市町村仕事を押しつけるとか押しつけぬとかという問題ではございません。それにつきましては、もちろん府県仕事を押しつければ財政法でいろいろ財源の措置を考えろとか、負担をさせる場合にはどうしろとかというような制約がございまして、それに従ってやらなければならぬことは当然の次第でございます。
  163. 加賀田進

    ○加賀田委員 さいぜんの五島君の質問で、十六項目の指定市への委譲の問題で、ちょっと関連してお尋ねしたいと思うのですが、附則の中の十項を見るとそういう心配はないと思うのですが、実は町村合併によって上山市で条件つき任用期間だとかなんとかいって首切ってしまった。それで小林君はそれは法解釈ではそうだけれども、運用の面でとあいまいなことを言っておったので、今度の場合はそういう十六項目の事務が委譲されて職員が転任する場合には、そういう懸念はないと思うのですが、念のために確かめておきたいのです。そういう場合には条件つき任用期間という見方をするのかしないのか、この点について明確にしていただきたいと思います。
  164. 小林與三次

    小林(與)政府委員 都道府県において正式に任用をされておった者は当然に正式任用された者として引き継がれるのでございます。
  165. 加賀田進

    ○加賀田委員 そういうことになりますと、十一項では給与差を手当で支給しなければならぬという規定になっております。これは多分府県から指定都市に移転をした場合、給与が低いときにはその差額をいわゆる手当として支給しなくてはならぬ。多分警察法の改正に基いて市警が府警になった場合のそういう経過処置としてなされておると思うのでありますが、この手当は一体いつごろまでつける予定なのか明確にしてもらいたい。
  166. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは現実の場合、十一項が働くことはあまりないと思います。むしろ市の方が給与の高い場合の方が実際は多いのじゃないかと存じております。しかしながら万が一にもそれで下るようなことがあってはいけませんので、それで補償の規定は入れておく必要があるのじゃないかということでこれは入れたのでございます。だから実際問題としてはそう必要もございませんが、本人の不利益にもならぬようにその基準を定めたいと思っております。この前の警察法のように、期間をいつにしろというようなことまでここに書いていないのは、実際に合うようにやらしていいんじゃないかという気持もあるのでございます。
  167. 加賀田進

    ○加賀田委員 そのまま身分が保障されて、指定都市の職員となる場合にそういうことが起るかと思います。課長、係長が係員という場合にはこれは起ってくるのじゃないかと思います。そういう場合には実質的に勤務条件の低下になりますから、その低下を防ぐための臨時措置として手当というものをつけたと思うのです。しかしこれはいずれの日かとられるのじゃないですか。ただとる方法というものは一つ基準というものがある。警察法にはありました。そういう問題に対してどう考えられますか。
  168. 小林與三次

    小林(與)政府委員 かりにポストが下ればその問題はございますが、要するに現実の給料が市のレベルで下ったら、これはまことに気の毒ですから、これはやることは考えないといけない。しかしながら市の職員になった以上は、早く市の給与条例にのっとって動くようにしてもらわなければいけませんから、引き続きまして、あとは昇給期間というものは、どうせだんだんございましょうから、だんだん昇給期間に行って、そして給与条例に乗っかるようになるためには、この手当で穴埋めをしております。こういう考え方で今のところでは二年以内にちょん切るとか、三年以内にちょん切るというような気持は持っておりません。それですから自動的に昇給期間まで行って乗っかったときに、市に条例に乗っかって行こう、こういう建前で行った方がいいんじじゃないかと考えております。
  169. 加賀田進

    ○加賀田委員 警察法の改正の場合と同じ方法なんですか。結局本俸が上った場合に、上っただけの額はその手当だけを下げていくという形で、将来給与法に乗っかった場合には手当をとる。これは実質的には一ぺんに切ってしまうか、長期にわたって逐次切るかという形になってくるだろうと思いますが、これと引き続いて、退職手当金とかあるいは恩給の計算の基礎というものは本俸だろうと思うのです。そういう形の場合に実際に本俸が下って総収入は手当によって保障されていても、そのためにやめたものとか、あるいは恩給に大きな影響をもたらしてきて、実質的には損失を招くという事態も起ると思うのですが、こういう事態が起ることはないか。また起るとするならばそれに対してどう処置されるか。
  170. 小林與三次

    小林(與)政府委員 考えられますのは、警察の場合はレベルの高いところから、国家公務員並みに低いところに行ったものですから、この問題が極端に実は起りました。私はまず実際はほとんど起らないだろうと思っております。しかし起り得るかもしれぬので、制度としての道だけを開こうということにいたしたのであります。  そこで今おっしゃいました通り、たとえば市に移ってすぐにやめてしまうということにすると、給料額が低いじゃないかという事例はあり得ると思います。これはまあ理論だけの問題ですが。しかしこの法律ではやはり最小限度だけを保証しておけばいいのでありまして、すぐにやめるような人は——すぐにやめるというと語弊がありますが、この附則の十二項にもございますが、そこでやめて退職金をもらった方が得だということもあろうと思います。そういうのは十二項で選択ができる道も開いてあります。都道府県の退職手当をもらった方がよければそっちへ行く、そうでなければこっちへ行くというようなことも考えまして、できるだけというか、あまり本人の不利益にならぬように、最高限で扱い方も考えたいと思っております。
  171. 加賀田進

    ○加賀田委員 実際は、指定都市の方は実質的には給与の高いところが多いだろうと思います。だからこういう問題はあまり起らぬのじゃないかと思いますが、この条文に書いてある以上はそういう危惧もあるのだろうと思います。私のお尋ねしておるのは、指定都市の方へかわってすぐやめるというのではなくて、かわったとたんに本俸そのものが下るのじゃないかということです。総収入としては、手当によって保証されておりますから……。本俸が下るとすると、本俸に基いて恩給とか退職手当というものが計算されていくわけで、そうすると従来の府県の職員であれば現在の本俸に基いて上昇していく。ところが一たん指定都市の方へ行ったら下って、それに準じて上っていくという場合には、永久的にその差額は従来と異なって恩給、退職金に影響してくるという問題が起るわけだと僕は思うのですが、そういう事態が起ることを了承されているのか、それともそういう問題が起ってもやむを得ぬという考え方か、何とかそれに対して善処するような方法考えられたのかどうか。
  172. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これはごもっともでございます。加賀田委員もおっしゃいました通り現実にはまずまず例はないだろうと思うのでありますが、まかりにあり得た場合に現実の問題が起るのは、市に行って早くやめてしまうと——市のレベルがかりに低かった場合の話ですが、市のレベルが低ければ、やはり市の条例に右へならえしていかなければいかぬので、本俸はそこを受けるということになるだろうと思います。しかしながら、すぐやめればそういう問題が起ると思いますが、多少時間がたてば当然に昇給をして、ある程度レベル・アップが行われるということになるだろうと思うのでございます。ですから現実にはそう御心配されるようなことはないと思いますが、これは市の条例でどうでもできる問題でありますから、その点はなおわれわれも実際の運用上支障のないように指導いたしたいと思います。
  173. 加賀田進

    ○加賀田委員 逆の場合、自動的に上る場合は認めるわけですね。これは下った場合手当として補償していく。今度は逆に市の方が高い場合には自動的に上る場合がありますね。これは転勤してすぐ上るのかどうか。
  174. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは市の職制上当然上るものは上って一向に差しつかえないと思います。
  175. 中井徳次郎

    ○中井委員 恩給のことで一点だけお伺いいたしますが、あなた方の案を拝見すると、府県と国との間は恩給の通算を考えておられるが、市町村府県、国との間はないのです。しかし現実はどうですか。先ほどから特別市の話がありますが、特に五大都市などを中心にいたしまして、将来これは大いに交流が起り得ると思うのだが、そこまでどうして一歩前進しなかったか、この点ちょっと伺っておきます。
  176. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これはごもっともでございまして、この問題につきましては、お耳にも入っていましょうが、特に市町村立の高等学校の職員の通算の問題で、ずいぶんわれわれも陳情を受けておるのでございます。そこで結局今中井委員がおっしゃいました通り市町村吏員全般と都道府県ないし国との通算をどうするかという問題で、現案には府県ほどそれはもちろんありません。ありませんが、これはある程度あり得るのは事実でございます。ただ恩給との通算の問題になってきますと、それぞれ市町村の給与制度とか恩給制度とかいうものが、国とバランスがとれておらぬと、そこにちぐはぐが起るのでございまして、ところによりましてはこの退職金の年限なども現にずいぶん低いところ、短かいところがございます。それから給与の額も非常にアンバランスになっておる。それから人の異動も府県相互間ほど一般的でもないので、今法律で直ちにぴしっとやって恩給の通算という踏み切りは、われわれもできかねたのでございます。恩給法との調整の問題もありますのでこれは踏み切りができかねたのでありますが、しかし実質的にできるだけやらせたい、その気持を法律の上で明らかにしようじゃないか、こういうので、それぞれ似通ったところで人の動くところは通算の措置を講ずるように趣旨を明らかにしたのであります。
  177. 門司亮

    ○門司委員 この機会に資料を少し出しておいていただきたい。それは、第十一章の大都市に関する特例、これについて、しまいの方に、「全部又は一部で政令で定めるものを、政令で定めるところにより、」こう書いてある。めんどうくさくてわかりませんが、政令の内容がどういうことになっておるのか、各十六項目にわたって——各省から出る政令ですね。あなたの方で出す政令ではないのだから、各省が出す政令だから、自治庁がこんなことを書いていたって、各省がどんなことを考えているのかわからぬ。各省みんな出てきてもらって何を考えているか聞かなければならぬのだが、あらかじめあなたの方で事務的に打ち合せた範囲内において政令の内容はどんなものか、一応出していただきたい。  それから、十六項目の委譲をすることについて、財源措置を要するものはどのくらいの額になるかということ、これを一応出していただきたい。  それからこの中にいろいろ書いてあります、たとえば常任委員会制度に制限を加えておる、こういうものによってどのくらいの費用が節約できるのか。大臣の説明の中には能率的というようなことが書いてある。だからどのくらい節約できるのかということを一応資料で出してくれませんか。たとえば教育委員会あるいは選挙管理委員会というものを、全部日当制に直してしまうということになると、どのくらいの節約ができるものか。そういう財政的の面を大体書いて、それを資料として出してくれませんか。そうでないと、どうも能率化とかいろいろ書いてありますが、どういうことになるのか一向わからぬ。大体間違いのない数字をあまり粉飾しないでお聞かせ願いたい。そうしないと、あとでまた来年度になって金が足りなくなったとか多くなったとかなんとかいうことで議論になって、また財政の方に持ち込まなければならぬ。これを出していただきたい。
  178. 中井徳次郎

    ○中井委員 その点明後日に参考人に来てもらおうじゃないかという話が下打ち合せで出ております。済みましたら理事会を開いて決定しますが、それまでにやはりいただきたいと思います。明後日までに一つ作っていただきたい。
  179. 小林與三次

    小林(與)政府委員 数字的な資料は大体考えているものを差し上げます。政令の要網は、大体の考え方は作って差し上げたいと思います。具体的な個々の事務までは百パーセント引き受けられぬと思いますが、考え方だけは明らかにして……。
  180. 門司亮

    ○門司委員 考え方というのは自治庁考え方ではだめですよ、各省の考え方でなければ。自治庁はこう考えておるということを聞いても、各省が譲らなければ困るので、それを一つはっきりしておていただきたい。
  181. 大矢省三

    大矢委員長 さいぜん中井君から話があった常任委員会の問題で、常任委員会の改善の点で問題になっておるのは一箇の常任委員で、兼ねてはならぬということです。今までそれはなかったのです。それについて具体的な問題で一つお尋ねしておきたいことは、自治庁の意向によって各府県市町村、特に市で定員をうんと減じたとか——具体的にいうと、大阪の布施市なんです。前四十人からあったものを、二十五人までにした。自治庁意見だというので、協力する意味でやったのです。そうすると、かりに四つの委員会になって、兼任ができないということになる。さらにまた近く人口が三十万になれば、六つになるから、三人か四人の委員会になってくる。それでは、委員長をとるとあとは二人か三人になる。それは条例を作ればかまわないということになっていますが、しかし原則としてはこれでなければならぬというのだから、そういう場合に条例は作ると思いますけれども、こういうことは兼ねてはならないということを、わざわざ今度は入れた理由がもっとあるのではないかと思います。その点について伺いたい。
  182. 小林與三次

    小林(與)政府委員 これは今の議員数が特に少い市の話をおっしゃいましたけれども、議員数が少いところは、われわれはもちろん常任委員会の数を減らすのが筋だろうと思うのであります。大体議員数も考えて常任委員会の数を書いてありまして、小さいところはもちろん全体として問題を論議していただくのが、議会の運営上一番ふさわしいのでございまして、無理に三人や四人の常任委員会を作らなければならぬということは、私はないのではないかと思っております。もっともお作りになればそれはいけないというわけではもちろんございませんが、趣旨はそこにあるだろうと思います。そこで、常任委員会を幾つか作れば、それぞれ議員として専門的に所属して御勉強を願うのでございますから、建前といたしましては一箇に限る、常任委員会性質上そうあるべきものだと考えておるのでございます。
  183. 大矢省三

    大矢委員長 もう一つ伺いますが、「条例に特別の定がある場合を除く外、」というのですから、自治庁としてはそれは必要と認めて承認するということで、別の法文が書いてあるけれども、指示を受けると、そういうものはやってはいけないということが多いのです。
  184. 小林與三次

    小林(與)政府委員 議員定数の問題で、自治庁は何も特に個別的に議員定数を減らす指示をしたわけではありませんので、その点も御了承願いたいと思います。条例に特別の規定がある場、合で条例にまかしてあるものは、条例で自主的に考えていただいていいと思います。ただこの条例は議員の任期中の在任の問題でございまして、頭の方にはこれはかからないのじゃないかと存じております。
  185. 鈴木直人

    ○鈴木(直)委員 それに関連して解釈の問題ですが、今委員長の質問に対して部長から答弁がありましたが、やはり部長の答弁のように、一箇の常任委員となるものということが法律できまっておりまして、それと別個な条例がかりに作られたとしても、この条文から見ますと、法律に違反する条例ということになると思うのです。従って議員の任期中在任するということについての特別の条例はできるとしても、一箇の常任委員となるのを二箇にすることができるという条例は作ることができないという法文である。こういうふうに私は解釈して、これがいいか悪いかということを別途に検討する問題だ、こう考えますから……。
  186. 大矢省三

    大矢委員長 それでは本日はこの程度にして、次会は公報をもってお知らせいたします。     午後五時五分散会