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太田国務大臣 だんだんの
お話を承わりまして、
体育の大切なること、同時に
地方財政の面からして、どうして
持ち回りのこのとうとい行事がやめになったか、こういう
お話でございます。少し長くなるかもしれませんが、第一に、
体育に対する私の心構えを申し上げなければなりません、第二に、今
亀山委員が言われたように、
地方財政が窮乏しているということがこの
持ち回りの
競技を延ばすことと、どういう
関係にあるかということを申し上げなければなりません、第三に、とかく誤解があるようでございますが、閣議決定の趣意、この三つに分かって申し上げたいと思います。
第一については、私はごらんの
通り小さいからだでありまして、運動もほとんどできませんけれ
ども、この間文教
委員会でも申し上げましたが、山登りはぼくは一年も欠かしたことがないほどでございます。富士山も十八回登ったということを
自分の自慢にしております。それだけでなく、ほんとうに国の
立場から見て
体育の大切なことは、とくと承知しております。第二次戦争前のドイツが、悪い世界征服の
考えを起したが、
体育にどれだけ力を入れたか。ベルリン郊外のグリューネワルドのあのスタジアムを見、私のつたない筆で幾たび書いたことでございましょうか。また
田畑さんも、また東
俊郎さんのお兄さんに当ると思いますが、東龍太郎さんも、死んだ同窓の末広厳太郎さんも知っておりまする
通り、新聞
事業をしておりまするときに、初めて外国の水泳を呼んだことも私の誇りの
一つだと思います。金栗君とか、死んだ日比野君も、また閣僚の一人も、当時早稲田の学生でございましたが、マラソン競走をしたことさえ今日思い出すのでございます。私は
体育は非常に必要と思います。しかもこの
体育の問題につきましては、所管は文教の府であるところの文部省でございます。その文部省がこのことについてやるかやらぬか、またどういうふうにして効果的に文教の面に扱うかということは、これは申し上ぐるまでもないことで、所管は文部省でございます。しこうして
地方持ち回りの
意義が、
地方自治体の仕事と
関係すると思いますが、その効果のあることは
東参考人、また
田畑参考人のお
方々から申されたと存ずるのでございます。これに何らの
異議を持つものではございません。しかし大切なる
体育であり、しかし大切なる
地方持ち回りのこの行事でございますが、これを受け入れる
地方財政がどうであるかということについては、私の
立場としてもどうしても申し開きをいたさなければならないのでございます。
地方財政が
赤字かどうかということは、もう皆さん方よく御承知と思いますが、本年現在どんなことをしておるかといえば、たとえば
地方におきまして支出面においてどんなことをしておるか、また今後収入面においてどうやっていくのであるか。その一端を申し上げましたならば、停年制をしくということも今度新しく三十一
年度において
計画しておることでございます。いかに年をとったとはいいながら、国家公務員にない停年制を、
地方公務員にことしやろうというのも、私としては気持のいいこととは思いません。また支出の面におきまして寄付金という問題がございます。今再建整備をやっておりまして、二十九
年度までの
赤字の県に対しましては、ここで今までの借金をたな上げにしていく、国家はこれに対して利子補給をして、さらにその
赤字の県がこの
団体に入ります場合においては、寄付金さえ制限しておるのであります。これは支出における大きな事柄であります。また
地方の
財政を救うために本年新しい税をかけました。国は、少いという批判もございますが百五十億円の減税をするときに、
地方は増税しておるのでございます。私としてはこの増税ということを決しておろそかに
考えることができない。
さらに三
公社の課税と申しますか、運賃収入をどうするということは別として、
相当経理のむずかしい国鉄が、十何年の間叫ばれた
国有資産に対する税を出そう、こう言っております。また全国に電話のない村が非常に多いのでありまして、電電
公社は十二億の金を出してことしこれにかかろうとしたのを、それもがまんしてもらって、その一部分、二億ばかりの金を町村合併のために継ぎ足してもらうように、三
公社課税につきまして三回にわたり、私が閣議に訴えたような次第でございます。かようにいたしまして、出る方の面では停年制と寄付金などのことをやり、収入の方面において国には減税があるが
地方財政においては増税しなければならぬ、三
公社の課税までもやっていくということを
考えまして、しかもその結果はどうであるかというと、
地方財政に対する根本策を立てると申しますが、国から出す金が不十分でございますために——これは社会党の
方々の御批判の
通りでございまして、私も不本意でございますが、国家
財政の現状においてがまんしておるような
状況であります。かように不十分で、かような
赤字の、支出においても収入においても
相当ひどい面になってやっております。私自身の心がまえといたしましても、
自治庁としては
自治庁自体の経費が要ります。同時に
地方財政にやる金、たとえば
交付税というものを
考えなければなりません。
自治庁に対する金は、年々繰り返されることですが、あそこの人をふやすとか、あるいはこうこうこうしたいというような
事業がありましたが、一文も復活要求をいたしません。
各省とも本年
予算に対する不足を訴えておられましたが、
自治庁自体に金が出れば
地方へ行く金が少くなる、わずかな金であったと申しますが、二割二分を三分にするに当りましてどれだけ気を配ったか、
自分の部下とも言っていい
自治庁自体の仕事に復活要求一文もしなかったということは、私過去の
予算編成にも
関係した一人でございますが、私自身としても非常に苦しかったのでございます。そこまでやらなければ
地方財政はうまくいかないじゃないか、こう私は
考えたわけでございます。しかも
赤字に直接
関係する
国体地方持ち回りの
関係を
考えてみますれば、徳島県において宮城県において、この
体育の催しをした
あとの
赤字がいかなる姿になっておるかということは、あるいは
後藤財政部長からよくお聞きを願いたいと思いますが、これは現実でございます。何の偽わりもございません。また世間で東京都は俗に富裕県などと申しますが、私はそうとっておりません。この大都市をやっていく上におきまして、今回入場税をとるにつきましてもなかなかの御非難がありました。東京都のする仕事を
考えますと、これは黒字
団体ではない。日本では
赤字の
団体がもう八割であります。しこうして
大阪、神奈川が残っておるのでございますが、
大阪は警察費がふえてきた
関係で、これがこの
あといつまで続くでありましょうか。また神奈川県におきましてはこの
関係とは申しませんが、今のところわずかな金の余裕と申しますか余力しかない現状であります。これが偽わらざる
地方財政の現状でございます。東京都は富裕と申しますが、富裕の
状況もかくのごときものであり、決して楽観すべきものではないと思います。国の
財政自体と申しますか、基本は、
地方財政ができなければどうにもならないのでございます。今少しく景気がよくなった、米がとれたなどといって、健全
財政はもう底をついたようなことを
考える方がございますが、今のままでうっちゃっておきましたならば、この借金の多い
地方財政が、この
赤字の多い
地方財政が、どうして持ちこたえていくことができましょう。国家
財政から見ても、
地方財政から見ても、この際において
地方財政の実に切実なる
状況を、私といたしましては御了解願いたいと思うのでございます。
第三点に申し上げますのは閣議の問題でございます。閣議におきまして三回この問題を出しました。それで決定いたしましたのは
予算閣議でございます。いろいろな議論がもちろん出ました。先ほどお聞きいたしたところによれば、自治体というものは国でやる仕事をこなしていくところでございます。サービスでございます。この
体育の問題もそうでございますが、農業の問題にしても教育の問題にしても、ほんとうにこれを
事業にしてこなしていくところは
地方自治体でございます。従ってこの意味から私は三
公社課税もねらうのです。これは閣議において三回に及びました。また増税の問題もやむを得ずやるのだ。マラソン選手が走っていくあの道路、これが今までどうなっておるかを
考えれば、軽油税までも今日増税しなければならぬ
状況でございます。従って閣議におきましては、かような
状況を御了解になりまして、
国体地方持ち回りの問題につきましては延ばすということが決定されたのでございます。しかし、現在
兵庫県かやっておりますが、
相当多額の金を使ったということは皆様方も御承知のことと思っております。これをすぐやのるということはできない。現に本
年度の
予算におきましてはたしか文部省所管において七百万円の金が出ることになっておると承知しております。問題は、私情で申すのではございませんで、来年行われる
静岡県——、はっきりと申しまして私は
静岡県の選出議員でございます。同じ閣僚の石橋湛山君も
静岡県の者でございます。県のやる仕事を私
どもがそんなに簡単に切れるものではございません。むろんこのことについては県
会議員の
方々の陳情もございまして、また同時に
地方財政の当局者から反対の陳情もあるのでございます。どうしたらばいいかということは、石橋君も私も切に
考えたのでございます。全体今日の
地方財政をやっていく上におきましては、その場を預かる私といたしまして、決して
体育の重要なることを忘れるにあらず、今ここでふんばらなければ——しかもいかにふんばってもなおろくなことができないじゃないかと政治的非難を浴びせられている私といたしましては、この際閣議にお願いいたしたような次第でございます。しかし文部省がどこまでもやるということに、私が反対すべき理屈は毛頭ございません。その当時、あるいは山口県へ持っていったらという説も承わりました。山口県は
赤字県でございます。しかし数億の貯金を持っております。これは中国電力からの株であったと記憶いたしましたが、売れば数億の金が出るところでございます。この話をしたときに石橋湛山君怒っていわく、
静岡県にやらないものを山口県にやるということを閣議で決定したのではないのだ、金があればという意味ではないのだ、こういうことを閣議で言われたのでございます。私はかようなことをあけすけに何も隠さずに申します。ただし
地方を強制するということは閣議ではできません。昔の内務省が
地方団体に対したような
立場は、今日の新憲法下における自治では計されないのでございます。従って県議会等がやろうということをとめるここはできません。しかしそのやる事柄は、われわれ
交付税を取り扱ったり、
地方財政の
赤字を消そうという
立場かり見ますれば心よく思わないのですけれ
ども、権能的に
地方の議会がこれをやろうとすることをとめる
立場は今日においてはございません。閣議の決定はかような意味でございまして、私
どもが申し上げました事柄も決して
体育を軽んずるのではない、ただ
地方財政を預かる私としては、すべてのものに先だって、今ここの踏み切りをしなければならないという
状況でございます。
終りにもう一ぺん言います。
体育を軽んずるにあらず、
地方持ち回り意味なきにあらず、大いに効果があると思いますが、同時に全国の八割以上に及ぶ
地方財政の
赤字の現状、一歩誤まれば国の
財政がまたもって悪くなるというのが私の見方でございます。むろん見方の違いもございましょうし、皆様方の御支持を仰ぎたいと思う次第でございます。