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1956-04-10 第24回国会 衆議院 大蔵委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月十日(火曜日)     午前十一時二十三分開議  出席委員    委員長 松原喜之次君    理事 有馬 英治君 理事 黒金 泰美君    理事 小山 長規君 理事 高見 三郎君    理事 石村 英雄君 理事 春日 一幸君       生田 宏一君    池田 清志君       内田 常雄君    加藤 高藏君       吉川 久衛君    杉浦 武雄君       竹内 俊吉君    内藤 友明君       古川 丈吉君    坊  秀男君       山本 勝市君    横川 重次君       有馬 輝武君    石山 權作君       井上 良二君    木原津與志君       田中織之進君    平岡忠次郎君       横錢 重吉君    横山 利秋君  出席国務大臣         大蔵大臣    一萬田尚登君  出席政府委員         大蔵政務次官  山手 滿男君         大蔵事務官         (管財局長)  正示啓次郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (管財局特殊清         算課長)    岩動 道行君         専  門  員 椎木 文也君     ――――――――――――― 四月七日  委員坊秀男君、石村英雄君、田中織之進君及び  石野久男辞任につき、その補欠として小川半  次君、岡良一君、竹谷源太郎君及び中原健次君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員小川半次君及び中原健次辞任につき、そ  の補欠として坊秀男君及び石野久男君が議長の  指名委員に選任された。 同月九日  委員古川丈吉君及び岡良一辞任につき、その  補欠として千葉三郎君及び石村英雄君が議長の  指名委員に選任された。 同月十日  委員淺香忠雄君、遠藤三郎君、千葉三郎君、中  山榮一君、石村英雄君及び竹谷源太郎辞任に  つき、その補欠として内田常雄君、池田清志  君、古川丈吉君、山本勝市君、下川儀太郎君及  び田中織之進君が議長指名委員に選任され  た。 同日  理事石村英雄君同月七日委員辞任につき、その  補欠として同君が理事に当選した。     ――――――――――――― 四月九日  財政法の一部を改正する法律案内閣提出第一  五八号)  国家公務員のための国設宿舎に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第一五九号) 同月七日  旧外貨債有効化に関する請願小川半次君紹  介)(第一八三五号)  同(永山忠則紹介)(第一八六〇号)  同(永山忠則紹介)(第一八八六号)  中小企業等協同組合法の一部改正に関する請願  (堀内一雄紹介)(第一八三六号)  中小企業に対する税制改正に関する請願外一件  (稻葉修君紹介)(第一八三七号)  手巻蓄音器に対する物品税免税点設定に関す  る請願戸叶里子紹介)(第一八六一号)  国民金融公庫の貸付わく増額に関する請願(永  山忠則紹介)(第一八九七号)  庄原信用金庫中小企業金融公庫代理店設置の  請願永山忠則紹介)(第一九一二号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  金融制度調査会設置法案内閣提出第七六号)  閉鎖機関令の一部を改正する法律案内閣提出  第七二号)  旧日本占領地域本店を有する会社本邦内に  ある財産整理に関する政令の一部を改正する  法律案内閣提出第七三号)     ―――――――――――――
  2. 松原喜之次

    松原委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任の件についてお諮りいたします。理事であります石村英雄君が去る七日委員を一たん辞任いたしたことがありますので、理事が一名欠員となっております。この際理事補欠選任を行いたいと存じますが、その方法は、先例によりまして委員長において御指名いたすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松原喜之次

    松原委員長 御異議なしと認めます。それでは委員長におきましては、石村英雄君を再び理事に御指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 松原喜之次

    松原委員長 次に、閉鎖機関令の一部を改正する法律案、旧日本占領地域本店を有する会社本邦内にある財産整理に関する政令の一部を改正する法律案及び金融制度調査会設置法案の三法律案一括議題として質疑を続行いたします。田中織之進君。
  5. 田中織之進

    田中(織)委員 去る金曜日に質疑をいたしました際に保留した数点について、そのとき要求いたしました資料も出て参りましたので、若干質疑をいたしたいと思います。  ただいま資料をいただいたので、この資料の検討のためには、私の方で用意している資料とのつき合せ等の関係で、なお若干の時間をいただかないと、私の疑義が解けない点が出てくるのではないかということを心配いたすのでありますが、できるだけその意味で、まだ資料理解が十分いっておりませんから、私の理解の十分でない点があれば、政府委員の方から御教示を願いたいと思うのであります。  私は金曜日の委員会で、特に朝鮮銀行朝鮮殖産銀行関係朝鮮にあります資産と、朝鮮においてこれらの両銀行が持っておる債務の額についての質問をいたしたのでありますが、本日出て参りました資料によりますと、朝鮮銀行在外資産負債調、これによりますと、資産の合計が二百五億二千六百万円、それに対して在外債務が百四十六億五千七百万円、結局資産超過になるので、この関係から見れば、今回の国内資産のいわば処分ということも、今後かりに日韓交渉等において彼我の財産請求権の問題が出て参りましても直接影響がない、こういう意味合いでこの資料が出されて参ったと思うのであります。ところが私がここでお伺いいたしたいのは、この朝鮮内にある在外資産評価の二百五億二千六百万円というものは、現実には南北朝鮮に分れておりまするが、その関係は、一体南北内訳はどういうようになりましょうか。それからこの二百五億二千六百万という数額評価基準、これは二十年三月の総合バランスシート基準として、内地店舗資産負債を差し引きして算出し、さらに今回国内で支払う預送金債務九十六億七千六百万円を調整して作成したということであるのでありますが、この算定基準である、特に土地、建物、有価証券地金銀というようなものがございまするが、これらは全く昭和二十年三月の基準をそのまま踏襲してきておるのでありますか、その点の事情はどういうようになっておりますか。
  6. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。ただいま御指摘資料朝鮮銀行在外資産負債調の金額でございますが、まず第一は、この資産につきまして、南北に分けられた朝鮮区分ということでございますが、これは先般もある程度そういう点にお触れになったのでありますが、二十年三月の総合バランスシートでございまして、その区分をいたしておらないわけであります。今日私どもといたしましては、遺憾ながら南北関係に分けた資料というものは、御承知のようにまだその実情を知るすべがないわけでございます。  それから第二に、この基準でございますが、これはどこまでもただいま申し上げました備考の通りでございまして、二十年三月のバランスシート基準でございまするから、いわば当時におきまする簿価によって算定をいたしておるわけでございます。
  7. 田中織之進

    田中(織)委員 この南北内訳は、日本側としては、今日の状況においては明確にすることは非常に困難というか、不可能に近い状況にあることは私らもよくわかるのでありますが、片一方、そのうちの韓国との間に近く交渉が再開されるということになりますると、当然向う側が膨大な財産請求権要求いたして参りまして、今回この閉鎖機関令の一部改正に基いて、これら特に朝鮮関係のある朝鮮銀行並びに朝鮮殖産銀行国内資産処分するということに対しましても、これら朝鮮本店のあった金融機関日本内地資産は、当然韓国返還すべきだというような、全く筋の通らぬ要求をして参っておるのでありますが、そういうことは、われわれが当然退けなければならぬのでありますが、退ける関係からいたしましても、この際われわれは、やはり日本政府の方としてもあらゆる方法を通じて、南北にまたがるこれらの在外資産実情については――これはこの法律が通る通らないを切り離した今後の日韓交渉の点から見ても、特に大蔵当局としても、最後に差し引きもし、支払い勘定があるということになれば、これはまた国民全体の負担において向うに払わなければならぬようなことになるわけです。向うからとるものがあるということになれば、今度の講和で無賠償条約ができたために、個人の在外資産というものもそのまま向うへ放棄してきている。それでなければ、原則として無賠償サンフランシスコ条約は成立しなかった。これは、国内的な立場においては、この間も申し上げましたように、当然国の責任において、憲法上私有財産保障原則に基いて、これら引揚者の在外資産についても結局何らかの補償をしなければならぬことになるわけであります。私はそういう観点から見て、この点の調査を十分やってもらわなければならぬと思う。  もう一つは、評価の問題はあくまで二十年の二月のバランスシートの当時の帳簿価格そのもので来ている、これが非常に問題になると私は思うのです。国内の場合には、国有財産に準ずるものでありまするから、閉鎖機関等で行う場合には、いろいろ国内財産を金にかえる場合には時価基準としてやってきている。私の手元には、閉鎖機関当時、特に朝鮮銀行台湾殖産銀行との関係においても、内地資産処分について時価と著しくかけ離れた処分をしている事例がたくさん上ってきておる。その資料は別途要求いたしたのでありまするが、十分出てきておらない。そういう問題がありまするけれども、やはり朝鮮における関係の、いわゆる向うにある資産評価帳簿価格でいくということになりますると、これはわが方にとってきわめて不利益なことになる。実は私が去る金曜日の委員会以来質問をいたしておる関係で、一応韓国側が膨大な要求をしておるという事実は事実としてわれわれはそれを認める。そういう事実は、こういう理由でわれわれ日本側としては承服できないということで対抗する観点から申し上げているのを、私の発言が韓国側を激励しているようなことを与党の諸君が、冗談でありましょうけれども申されておるようなことは、私は実は心外なのです。むしろ今正示管財局長が言われたように、あなた方は帳簿価格不動産だとかそういうようなものをそのまま踏襲してきているということ自体が、ある意味から見れば韓国側をきわめて有利にするところの、まさに利敵行為という言葉は適当ではないかもしれませんけれども、実はそういうことになる。その意味から見て、私はこの場合に、直接関係させようとはこの際考えませんけれども、今後の日韓交渉の場合において、外地資産はあくまで帳簿価格でいくのだ、こういう原則を貫いていくことが日本の国全体にとって重大な不利益を及ぼすということについては、あなたたちはお考えにならなければならぬと思うのでありますが、その点はいかがです。
  8. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。まず第一に、今後日韓交渉を進めていく場合に備えまして、韓国と申しますか、朝鮮南北実情等につきまして、また閉鎖機関韓国並び北鮮における実情等につきまして、的確なる実情の把握が必要ではないか。この御意見はまことにごもっともでございまして、私どもといたしましても、ぜひともこれはあらゆる方法を講じまして、さように努力をいたすべきことは心得ておるわけであります。今後も外務当局と十分に連絡をとりまして、さように努めたいと考えます。  第二の点といたしまして、先ほどお答え申し上げました通り、またすでに当委員会におきましてよく御承知通り在外資産帳簿価格によりまして評価をいたしておる点でございますが、この点につきましては、まずこれは国内資産清算の対象といたしまして、国内資産をもちましてお認めをいただきました債務を支払っていくような場合に、在外資産負債を見合わす、その基準は、申し上げましたように、簿価によって見ておるという意味でございます。すなわちきわめて安全を見ておる建前でございまして、ただいまお示しの通りに、資産を再評価いたしますれば、これは、もとより不動産その他につきまして相当評価増が出て参ることは、見やすい道理であります。そこで今後の日韓交渉あるいは対中国の交渉等におきましては、もとよりさようにいたすべきことは当然のことと心得ておるのでございますが、先ほども申し上げましたように、今日は遺憾ながらまだ実情も把握することができませんし、のみならず、国内資産清算方法といたしますれば、最も安全な方法をとっておるという意味で御了解を賜わりたいのでございます。すなわちこれは、最悪の場合におきましても、簿価によって資産負債を見合わせまして、これだけの資産超過に相なっております。従って在外資産負債関係におきまして、国内資産を引き当て留保する必要がございませんという意味資料に使っておる意味でございます。今後在外資産状況等がつまびらかに相なりますれば、これを再評価いたしますれば、これによって一そう在外資産の方の超過額というものがふえてくることは、御指摘通り考えられるのであります。従いまして、これはどこまでも対外折衝におきましては、さような点を、先ほどもお答え申し上げました通り、的確に実情を把握いたしつつ、今後わが方にとって最も有利な主張をいたすべきは当然のことと心得ておるわけであります。今日の清算の場合と対外折衝の場合とは、さように私どもも明確に区別をして考えておる点を申し上げたいと存じます。
  9. 田中織之進

    田中(織)委員 その点は、朝鮮銀行在外資産債務対照表においても、まだいろいろ問題があるのですが、ただいまの正示局長答弁によりますると、国内資産の合理的な処分という点から見て、在外資産債務バランスがどうなっているかということを立証する意味資料を出された、そういう意味合いからいたしますると、朝鮮銀行関係は、なるほど在外資産の方がはるかにオーバーしているのであります。二百五億に対して百四十六億でありますから、相当超過いたしておるのです。ところが朝鮮殖産銀行関係になりますると、この間の答弁にもありましたように、在外資産が、帳簿価格によりますると十八億八千万円、それに対して在外債務が二十二億三千四百万円ということで、この表から見ますると、結局債務超過になるわけなんです。この間も、そういうことになりますと、結局国内資産の中からも、この債務超過に見合う分だけは保留しなければならぬようなことにもなるということを言われたのでありまして、またそういう関係のものから、現実に当てておりますように、たとえば今回の改正に従いまして、朝鮮殖産銀行社債を支払うことになりますると、昭和二十八年の当委員会でありましたか、決議をしたように、漸次預金だとか、そういうものを返済した残りのものは株主に還元してやるんだ、こういう衆議院の院議がきまっておるわけでありますが、この趣旨にもはまらない。結局株主には、別途社債権者等が、今回の改正案がかりに成立した場合に、返済を受けるものの中から若干株主の方へ出す、こういうようなことでもしない限りは、特に朝鮮殖産銀行株主は、今回の国内資産整理では、実は何ら返還を受けられないような事態になる関係から、関係者方々からも、局長も御存じのように、非常に真摯な陳情が続けられておるわけであります。私は朝鮮殖産銀行関係在外資産帳簿価格が、御承知のように、ここに動産不動産で七百万円と計上されておるのであります。ところが私が入手いたしましたところの資料によると、この朝鮮殖産銀行というものは、一九四八年の四月から韓国殖産銀行として業務を引き継がれて、これが一九五四年、昭和二十九年の四月に新しく韓国産業銀行というものが設立せられて、それに韓国殖産銀行――前の朝鮮殖産銀行を引き継いだ韓国殖産銀行債権債務が実はそのまま引き継がれてきておるのでありますが、その韓国産業銀行ができる直前の、韓国殖産銀行の一九五四年三月末現在の貸借対照表があるのであります。それによりますると、何と動産不動産は百十九億円に評価されておる。しかも今ここで七百万円と計上しておりますが、南北あわせますと、厳密に申しますると七百四十六万七千円です。このうちで、朝鮮殖産銀行の側で北と南に分けました関係から、南、いわゆる韓国領が五百五十二万一千円という帳簿価格のいわゆる動産不動産が、昭和二十九年の三月末で百十九億ということで、この朝鮮殖産銀行財産債権債務を引継いだ韓国殖産銀行が計上いたしておる。さらにこの韓国殖産銀行閉鎖になりまして、新たに全額韓国政府出資韓国産業銀行に引き継がれたのでありますが、韓国産業銀行が引き継いだ当初に、昭和二十九年四月末現在で発表いたしましたバランスシートによりますと、百十九億円のものを再評価いたしまして、八百八十三億円ということで計上いたしておるのです。私の持っておる資料は、それぞれ実は正確な資料に培いて出てきておるのでありまして、そこにかりに今回の国内資産関係から見て、在外債務在外資産帳簿上のバランス朝鮮銀行のようにとれているところは、それだからこれで内地資産処分しても問題はないのだということには私はならないと思う。帳簿上の数字で参りますれば、朝鮮殖産銀行は、これでいけば明らかに五億円近い債務超過ということになる。しかも動産不動産の問題を取り上げただけでも、時価あるいは再評価というような形で参りますと、問題にならない莫大な数額になってくるのです。  私はこの間の金曜日にも、実は向うが一九〇九年からの朝鮮における産金のうち、日本に移出したものについて補償要求する。これだけで一千億円だというふうな朝日新聞の報道を取り上げましたが、向うがそういう数字を出してくるなら、私は韓国殖産、いわゆる朝鮮殖産銀行帳簿価格、わずかに五百五十万円程度のものが、現在においては約九百億近くになっておる。こういう事実を私は見のがすわけにはいかないと思う。そういう点から考えまして、特に私が今申し上げました朝鮮殖産銀行在外債務資産バランス関係から、朝鮮殖産銀行国内財産を今度処分する、特に社債返還すると、株主に戻る点がほとんどなくなるのだ、こういうことでは、私はこういう事実を、殖産銀行関係者が営々と何十年にわたって朝鮮でまじめな経営を続けてきた立場から、材料を用意するのは当然だと思う。そういう数字がやはり国会へ提示されるということになりますれば、私はこの問題についても、政府として特に殖産銀行関係社債の処理を、今日朝鮮銀行台湾銀行と同時に行うというようなことが果して時期を得たものであるかどうかというところにも、私は大きな疑問を持た、さるを得ないと思うのでありますが、幸い大蔵大臣も御出席になりましたので、この点についての大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  10. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 大臣は途中でお見えになりましたので、まことに恐縮でございますが、一応経過的な御説明を申し上げまして、あとで大臣からまた総括的にお答えいただきたいと思います。  ただいま田中委員の御指摘の点は、予算分科会におきましても御指摘になった点でございまして、殖産銀行に関しまして朝鮮にあります資産、これは先ほど申し上げましたように、閉鎖機関一般の例によりまして、簿価によって評価しております。これはその通りでございます。そこで、これを韓国側資料その他で推算されまして再評価すると膨大な額になる。さようなことをこの際考慮せずして、単に国内資産によって殖産債券返還する。その結果社債権者に対する償還が一部だけ行われまして、株主に対する帰属ということが全然行われない。この点についての御指摘でございます。これは、閉鎖機関一般につきまして先ほどお答え申し上げましたように、在外資産負債は、私どもの方で的確に判明をし、また権威ある数字としましては、閉鎖直前バランスシートによりまして、簿価によって見ておることはお答え申した通りであります。またこれが非常に安全を見た数字でございまして、その限りにおきまして、国内資産をもって預金を払い、あるいは社債を払う、こういうこともお認めを願って何ら不安ないという建前で、従来清算が進められてきたのでございます。  そこで特に殖産銀行についての御指摘でございますが、最近そういう韓国側情報等がある場合、これはむしろ将来韓国との特別取りきめ等によりまして、在外資産返還を見るような場合におきましてのいわば殖産銀行株主なり、あるいは社債券の一部がまだ未払いなのでございますが、そういう方々に、すでに非常に大きな期待と申しますか、将来これだけの資産がなお外地に残っておるのであるという意味におきましては、まことに私どもとしては喜ばしい一つ情報かと思います。しかし遺憾ながら、ただいまおあげになりましたような数字が、一体いかなる基礎によって、またいかなる方法によって算定されておるかという詳細なることは、私どもとしては入手できないのが今日の実情でございまして、この点は先ほど田中委員もお認めになった次第でございます。そこで、今日清算事務を進めていくためには、従来と同じ方式をもちまして、在外資産負債につきましては、なお閉鎖当時の薄価によってこれを比較いたしまして、そして資産超過になる場合は差しつかえないわけでございますが、資産が不足する場合は、一応在外資産不足分を、国内資産をもって引き当て留保するという方式をとって参るわけでございます。ただ今回殖産銀行につきましては、国内で払うべき殖産債券相当の額に上っております関係をもちまして、国内資産をもって弁済いたしますと、その四割ないし四割五分程度しか払えないことは御承知通りでございます。そこで、これらの点につきましては、先般来当委員会におきましていろいろ御議論もございましたが、御承知のように旧殖産銀行関係者方々顧問団をお作りになりまして、ただいま社債権者株主との問におきまして、暫定的な一種の実行上の話し合いをお進めになっておることも御承知通りであります。私どもといたしましては、一つ事例をもちまして全体の制度を動かすことはできません。従来預金支払いの際、また今回の従業員債務社債を支払う場合におきまして、一貫いたしまして、在外資産負債簿価によって見ていくという建前は変更ができないのでありますが、将来の見通しといたしましては、今おあげになりましたような情報は、きわめて明るい一つ見通しを与えるものという意味におきまして、これは関係者のためにも非常に喜ばしいことではないか、かように考えておるのであります。
  11. 田中織之進

    田中(織)委員 いずれ大臣にもお答えを願いますが、私は、やはり国内資産処分に当っては、在外資産簿価で抑えていくという処置をとられているということは、これはすぐ日韓交渉に響いてくる問題であります。私はそういう国内的な別題と、そうして一方対外的な点では、私が今あげたような数字をもって対抗していくならば、向うがべらぼうな要求を持って来て、そういうやはり一応正式の交渉の場に臨んで向うか出してくるものを、われわれは論理を通して向うを追い込めていかなければならぬと思う。そういう点から見て、観念的、機械的にはそれは分けられるでしょうけれども現実政治というものはそういうものではないと私は思うのです。私は、やはり正示局長のただいまの答弁では満足をいたしません。ことに私が申し上げました韓国産業銀行貸借対照表、一九五四年四月末現在、それから韓国産業銀行に引き継ぐ直前朝鮮殖産銀行貸借対照表、一九五四年、昭和二十九年三月末現在の貸借対照表というものは、正式に韓国側で発表いたしたものなんです。大蔵省から本日お示しになった在外資産負債対照表の中に、わずかに七百万円として計上されておるものが、実に八百八十億からの多額のものになっているという現実は、日韓交渉のときにはそれは持ち出せると思うけれども国内限りの問題をなにするときには、それは取り上げないんだ、そういう態度ではいけないと私は思う。その点について大臣いかがでしょうか。在外資産評価簿価でやっておるという点については、それは台湾銀行の特殊清算人であります前の頭取の上山英三さんが、今年の一月に、台湾銀行の特殊清算の結了と第二会社の設立についてという報告をなされておるのであります。その中にも、台湾銀行関係は、結局本支店の為替じり関係が借り越しになっていた、そういう関係からいたしまして、これは朝鮮銀行関係も同様であります、国内資産相当多額に上ることになったわけでありますが、上山さんはその中において、外地に所有していた不動産を再評価することによって、在外債務超過額はなくなるということを根拠としてあげておるのであります。私は、これは当然わが方として目の前に迫っている日韓交渉等に対処する点から見ても、これは少くともその日韓交渉の結末が受取勘定になるか支払勘定になるか、それはすぐ大蔵省の所管に関係してくる問題だと思うのでありますから、この際在外資産評価について、私は簿価でいくというような日本の国にきわめて不利なことをもたらすことをあなた方が踏襲せられるという態度は了解できないのです。大蔵大臣の御所見はいかがですか。
  12. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 在外資産評価の問題でありますが、またこの具体的な問題として朝鮮殖産の韓国における資産評価、この問題につきましては、もしもこれがほんとうに把握ができるなら、そうして同時に自由にこれが清算処分に付せられ得るなら、これはお説の通りだろうと思うのでありますが、何分今実際の問題として、どうにも把握のしようがないのであります。それで、やはりこういうふうな閉鎖機関清算していくとすれば、先ほどから管財局長が詳しく御説明申し上げたような現状で、この場合におきましては、閉鎖機関令の定めるところによって処理していく、そしてまた株主が最後に残余資産の配当を受ける、これも当然なことになるわけでありますが、そういうふうな行き方、将来在外資産の把握ができ、再評価されていけば、また株主が最後にその配当を受ける、これは私やむを得ない今日の状況であろう、かように考えておるわけであります。
  13. 田中織之進

    田中(織)委員 それは、特に朝鮮関係等においては、南北に分れておる関係もありますし、なかなか把握のむずかしいことは私も認めます。認めますけれども、少くとも原則として、これは当然目前に控えておる日韓交渉関係からみても、私は取り上げていかなければならぬ問題だと思うのです。そうでないと、私はやはりきわめて不都合な問題が出てくると思うのです。たとえば在外公館の借入金の返済を一時金五万円で打ち切ったという今までの処置に対しても、これはきわめて最近に、三十一年の三月十七日に東京地方裁判所で、これは憲法二十九条に違反するのだという判決が下っておることは大蔵大臣も御承知でしよう。これは満州で、奉天の居留民会の十三人分の難民救済金証書四十九万円を、北条という人の名義で持って帰ったのに対して、政府は、在外公館借入金返済に関する処置に伴いまして、一時金五万円で打ち切った。同時に、その場合の貨幣の換算率の問題は、これは不当であるということで提訴したのに、この東京地方裁判所の判決の結果――これは在外資産の問題についてもきわめて重大な問題に響いてくる。私はなぜこれを今ここで持ち出すかというと、この外地資産評価基準をどこに置くかという問題は、やはりこの閉鎖機関の、今処分しようとする国内財産の問題にもきわめて関連を持ってきているのです。それはなぜかといえば、私は時間を節約する意味から申し上げないつもりでおりましたが、朝鮮銀行関係国内資産が非常に多いということ、これは朝鮮銀行の有志株主から発行されました、残余財産は何によって生じたかという項目の中に従いますると、その閉鎖機関朝鮮銀行の残余財産と納付金の問題、今度納付金を取ることは不合理だということを陳情いたしました書類の中に出てきていると考えますが、これは、やはり閉鎖当時の本支店勘定分、いわゆる五億六千二百四十四万六千円の債務が消滅するに至った利益だということになっておる。特にこの関係から見れば、いわゆるこの前の閉鎖機関令改正に従って、外地からの預送金を返還するときの、特に北支関係の連銀券の率を百分の一にとにかく切ったことに伴って出て参ったものであるということが、これはもうはっきり出てきている。実際支払額が六億五千五百万円、それが帳簿上では百十八億七千八百万円となった関係からいたしまして、従来借り越し勘定であったところの為替じりが貸し越し勘定に変った関係から、実に七十数億円という現在の朝鮮銀行国内資産が出てきたということを明示している関係から見まして、片一方では、やはり引揚者等の外地から送金したもの、あるいは外地預金というようなものは、ある意味から見れば、所を変えたことによるところの貨幣価値の変動というようなものを考慮に入れてこれを打ち切っておいて、片一方においては、やはり韓国という外国を利するような形であくまでも帳簿価格でいくということは、私は論理が合わない、矛盾することだと思う。そういう点については、大蔵省はどういうふうに調整していかれようとするのであるか。
  14. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。在外公館借入金につきましての最近の裁判所の判決につきましては、先般の委員会におきましてもお話が出たのであります。これは全く今回の閉鎖機関の場合とは違うのでありまして、特約があるという点につきましての判決の趣旨は、田中委員承知通りであります。従って閉鎖機関に従来行われておりました問題と換算率の問題とは、全然別の問題を裁判所は指摘しておるという点は、先般の当委員会におきまして質疑が行われておりますから、それによって御承知願いたいと思います。  第二の連銀券につきましての換算率、これが鮮銀の残余財産の原因であるという一部の御意見、これは、私どももそういう御意見のあることは承知しております。しかしながら連銀券の換算率は、何も朝鮮銀行だけに適用された換算率ではございません。御承知通り閉鎖機関一般につきましてこれが適用されたものでございます。そこで何ゆえに朝鮮銀行についてかような膨大な残余財産が発生したかにつきましては、これまた当委員会におきましてしばしば質疑応答がかわされました。これは発券銀行としての特殊な機能から生まれたものでありまするから、これに対して所要の法律をもちまして納付の処置を講じていただきました、かようなことを繰り返し御説明申し上げておりますので、これまたそれによって御承知をいただきたいと思います。帳簿価格によることが利敵行為であるとおっしゃいましたが、これはもってのほかでございまして、私どもとしましては、さような意味は毛頭ございません。先ほど大臣のお答えをいただいたのでございますが、どこまでも清算の場合におきましては、どちらから見ても安全な方法によりまして、預貯金、預送金の支払いその他の場合から一貫しました方法でございまして、何も今回の法律改正に際しまして新しく取り上げた方式ではございません。前回の預送金を支払うことをお認めいただきました際に、やはりこういう方式をもって、在外資産負債の見合いは簿価によってやるということでずっと進んで参ったのであります。これは、しかしながら閉鎖機関清算の場合の方針なのでございますから、先ほど大臣も、できれば実情を把握してやるにこしたことはないと思うけれども現実にはそれができないということをお答えになったのでありますが、私どもも、今日遺憾ながらそればできないのであります。しかしながら、将来の対韓交渉その他に備えまして、できる限り実情を把握すべく努力する点につきましては、田中委員と何ら考えを異にしておるわけではございませんので、先ほどもお答え申し上げました通り、将来とも外務当局その他と十分連絡をとりまして、できる限り現地の実状の把握に努めることにつきましては、そのように極力努力をいたしたい、かように考えておるわけであります。
  15. 田中織之進

    田中(織)委員 なおその点については、どうも私と見解が違いますので、結局見解の相違ということになりますから、私はあえてその点についてはこれ以上伺いません。  次に、やはり国内資産の今度の処理をなすに当りまして、閉鎖機関としてのこれら国内資産の現在の内訳の問題でありますが、それに関する的確な資料がまだ出ておりません。ただ朝鮮銀行の二十年九月三十日から三十年十二月三十一日までの貸借対照表が出ておりまして、多くのものは国債及び公債、それからなおここに土地、建物、什器等で若干のものはございますが、特に朝鮮銀行関係朝鮮殖産銀行等の関係において、これは今問題になる台湾銀行等の関係国内資産で、不動産等の処分されたことについての実は明細な資料をという意味で、この問要求をいたしたのでありますが、本日それの的確な資料が出ておらないので、その点についても実は相当問題があるわけなんですが、しかしその資料が出て参りませんと、私のその点についての追及ができませんので、その点はいずれまた決算委員会等でも持ち出すことにいたしましょう。いたしましょうが、相当問題があるのです。特に殖産銀行関係の、今回のことで数億の国内財産から株主に還元されるものがないというような関係から見ると、朝鮮殖産銀行の大阪支店の建物は一体幾らで処分しただろうというようなことについても、深い関心を持たざるを符ないのです。そんな形で、閉鎖機関でぽんぽん処分された関係のもので、社債が優先するということで国会で議決をしておる。二十八年の第十六回国会における大蔵委員会の決議によると、「閉鎖機関を終止せしめるよう、ことに閉鎖機関株主会社設立案を具して申請したときで、当該閉鎖機関実情に照らしその必要があると認められるものについては、政府においてただちに特殊清算人をその機関の旧関係者より選任し、新会社の設立を促進せしめる措置をとられるよう決議する。」この決議は単に朝鮮銀行台湾銀行関係だけではないのです。私はやはり二十八年のこの閉鎖機関令改正のときの大蔵委員会の決議から、取り残されている人たちのことを考えれば、実はその問題も問題になるのでありますが、資料も出ておりませんから、それはもうここでは取り上げないことにいたします。  そこで最後に、この間私の質問に関連して同僚春日君からいろいろお話がありまして、それに対して管財局長からも、特に社債権者殖産銀行関係のいわゆる顧問団との間で、株主への国内資産の何らかの配分ということについては、話し合いをしていただくように考えておる。これば局長委員会における言明でありますから、そのように進められることだと私期待いたしておるのでありますが、ところが、実は社債権者というものは、突き進んでいえば、政府も大蔵省もやはり社債権者なんですね。さらに金融機関関係社債を持っている社債権者は、この間も申し上げましたように、金融機関再建整備措置法に基いてすでに補償を受けている。従って今回のこの国内財産処分社債権者で返済を受けた人たちは、これは当然さしあたりの予算には載っておりませんけれども、結局雑収入の関係で、補償を受けた分については当然返還をされなければならない。局長は、この間第二封鎖で凍結されているのが解除されるという。それは大阪や何かで若干はあるようであります。あるようですけれども、第二封鎖が非常に大衆に影響があるような答弁をされました。若干第二封鎖になっている部分の人たちは、今回の関係でそれが解除になることは私も認めますけれども、問題は、やはり社債権者というものは金融機関政府である。それから特に金融機関の問題は、今申しましたように、すでに金融機関再建整備措置法に基いて補償を受けているということになれば、回り回って結局国内資産処分したものは国に入ることになります。そういうことになれば、社債権者清算人の顧問団との間で話を進めてもらうように配慮するという局長答弁でありますが、この際これは結局のところ、私は大蔵省がむしろ社債権者を兼ねておったといたしましても、大蔵省が中に入って、多くの問題について、あとへ引かない意味においても、何らかの政治的な解決の方法をとられるべきだと思うのですが、この点についての大蔵大臣の御見解を伺って、私の本案に関する質疑はなお残っておりますけれども、一応打ち切ります。
  16. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この法律の問題はともかくといたしまして、御意見のような点もありますから、私としましては、今お話しの顧問団等の御意見は、法令の許す限り尊重いたしたい、かように考えております。
  17. 松原喜之次

    松原委員長 次に石村君。
  18. 石村英雄

    石村委員 先日資料要求いたしましたところ、きょう提出されたのですが、この資料についてのお尋ねもしたいと思うのですが、せっかく大蔵大臣が見えておりますから、この法律の根本問題について、大蔵大臣にお尋ねしておきたいと思うのです。私がこの法律で問題にいたしておりますのは、朝鮮銀行なんかに、国内資産を、債権債務を処理して資産が残ったら第二会社を作らせる、つまり資産株主に渡すという問題でございます。これまでの正示局長の御答弁を要約いたしますと、この閉鎖機関清算というのは、あくまでも中間段階の特殊清算で、これが終ったからといって、朝鮮銀行なら朝鮮銀行自体の清算が全部済んだというわけではない、在外資産関係整理がついて初めて最後の清算は終るのだ、こういう御答弁でございました。従って先ほど田中君が、朝鮮殖産銀行について、国内資産整理によっては株主には何ら帰属するものがないが、しかし朝鮮にある資産の再評価等によって、相当なものが予想されるという質問に対して、正示局長は、はなはだ明るい情報であるという、株主に将来財産が分けられるということを期待せられるような御答弁もあったわけでございますが、そういうことになりますと、なるほど朝鮮殖産の場合には、そういうことによって将来株主資産が渡るといういい結果を生むかもしれません。私はそういうことになれば、株主のために大へんけっこうだと思いますが、しかしそういうことを予想するということは、同時に朝鮮銀行は、国内資産を処理して株主財産を渡すわけでございますが、最後の清算によると、在外財産清算の結果、反対に足りなくなるということも理論上予想されるではないか、余ったらそのときはもらう、足りないときは知らぬぞいうことはできないはずである。こういう趣旨の質問をいたしましたところ、正示局長はそれに対して、そんなことば自分は絶対にないと思うが、万一そういうことがあったならば、それは国において予算を組むとか、財政法による処置を講じて、国が払わなければならぬというような御答弁があったのでございます。このことを私は問題にいたしております。つまり株主国内資産処分して、そうして株主に渡して、将来外地債権債務清算した結果、足りなくなったら国が払わなければならぬということを予想せられる法律を、今ここで通すということは、国民に対してまことに相済まぬことになるのではないかというのが私の考え方でございます。大蔵大臣は、この閉鎖機関の特殊清算の結果そういうことが万一起った場合、やはり正示局長のお考えのように、それは国において処理せざるを得ないという考えをお認めになるのでございますか。
  19. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御意見は、論理的にはまさに異議はありません。がしかし、そうでありますから、在外資産負債につきましては、十分負債をカバーいたしますような資産を残してやる、かようにして内地の資産清算分配をする、かようにしておるのでありまして、万一というお言葉もございましたが、万一に不足することはないのであります。さように考えます。
  20. 石村英雄

    石村委員 大蔵大臣の御答弁も、正示局長の御答弁と同様、論理的にはそういうことは考えられるが、しかし事実上そういうことは起らないのだ、大丈夫だという御趣旨の答弁理解いたしました。そういたしますと、ここに出されておる資料によって見ますに、朝鮮銀行の場合、なるほど外地資産資産が二百五億二千六百万円、負債が百四十六億五千七百万円で、資産超過でございます。しかしこの金額というものは、単に長簿に載せられておる金額にすぎません。先日当委員会で、外務省の方の御答弁でも、外地状況はさっぱり調べようがありません、こういう御答弁でございました。大蔵大臣は長らく金融機関関係していらっしゃって、こうした帳簿というものは、帳簿記載の金額がそのまま現実に実現化されるということはあり得ないことは、御承知だろうと思います。この外地朝鮮銀行資産負債を調べてみますと、貸付金が百八十五億六千七百円とありますが、果してこの貸付金の百八十五億六千七百万円が、りっぱに貸付金として回収されるという確信をお持ちになっていらっしゃるのですか。外務省のお話しでは、さっぱり内容がわかりません、こういう御答弁です。内容がわからずに、帳簿に百八十五億六千七百万円あるから、これは資産に間違いない、清算をしたとき、ちゃんとこれだけの金が生きて生まれてくるという確信を、どうして大蔵大臣はお持ちでございましょうか、この点をお尋ねいたします。
  21. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この朝鮮銀行の貸付金ですが、これは銀行の経営、特に朝鮮ではこれは中央銀行であったのでありますが、中央銀行の貸付としては、十分担保をとっているはずでありまして、大体あの場合、朝鮮銀行の貸付は、私はやはり電力方面が大部分を占めておったように思うのでありますが、これは事務的に調べてみなくちゃわかりません。そして常に半期ごとに従来でも大きな利益を上げておりまして、この貸付金の償却の少し怪しいものについては、償却を高めて、常に優良債権――発券銀行は特に普通の銀行と違うので、資産は常に優長なものにしておくのが発券銀行債務でありますので、そういう点については、私は間違いないと思います。従いましてこの貸付金は、相当償却をしたものであるというふうに考えております。そういう意味において、私はこれは心配がない、かように考えております。
  22. 石村英雄

    石村委員 大蔵大臣は単に心配ない、こうおっしゃるのですが、われわれは、どうもこれは心配ないのかあるのかわからない。朝鮮におきましては、ああして二へんもローラーをかけられたというような状況です。また朝鮮銀行は、単に韓国のみならず、北鮮にも関係が当然あったはずであります。また北支等にも関係があったのじゃないかと思うのですが、それがどうして間違いない、こう断言できるであろうかいぶかるのですが、これは幾ら聞いても、おそらく大蔵大臣は、いや間違いないと私は考えます、こうおっしゃるだろうと思います。結局水かけ論になってしまうので、これは冷静な第三者の判断に待たざるを得ないと思うのです。  そこで私は、むしろそうした水かけ論をやるよりは、もっと突っ込んでお尋ねしたいのですが、朝鮮銀行にしろ、外地にあったこういう会社銀行は、講和条約関係で――朝鮮という文字はありますが、これは法律的には、一体どのように処理せられるものと判断なさっていらっしゃるのでございましょうか。私はあの戦争の結果によって、外地資産負債というものは、韓国、あるいは北鮮の人民共和国、あるいは中国に、もう一切債権債務をそのままで向うが引き取るんだという考えなら、いい悪いは別として、それは問題はないし、清算というものは、簡単にケリがつくと思うのですが、この問題についてどういう考えを持っていらっしゃるのか。やはり大蔵大臣は、正示局長の御答弁のように、将来清算して、そしてその資産負債をはっきりしてやっていくんだというお考えなのか、あるいはこうした処理については、韓国との交渉、あるいは北鮮との交渉、あるいは中国との交渉で、どういう方向に持っていこうとしているのだというお考えがあるのかどうか、その点をお聞かせ願いたいと存じます。
  23. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、法律的の問題でもありますので、私は、最終的には朝鮮政府といいますか、韓国とも話し合いをして、終局的にきめなくちゃならぬと思いますが、一応やはり日本の法人としての処理を進めていきたい、かように考えております。
  24. 石村英雄

    石村委員 結局これは韓国なり、それぞれの関係の国と折衝の結果によってきまるのだ、こういうお考えですか。どうも御答弁がはっきりしなかったのですが、もう一度はっきりその点をおっしゃっていただきたいと思います。
  25. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の考えは、やはり日本の法人として処理を進めていくのでありますが、しかし外交的といいますか、いろいろの関係において、最終的に解決するのには韓国側との話し合いを必要とするであろう、かように考えておるわけであります。
  26. 石村英雄

    石村委員 これは、単に韓国だけの話し合いで解決つく問題ではございません。北鮮あるいは――私、朝鮮銀行が北支でどんなことをしたか存じませんが、かりにやっておったとすれば、中国との関係、そういうことの交渉というものは全然必要のないことなのか、朝鮮銀行については、単に韓国との交渉によってすべてが解決する、こういう意味なのか、それはどうです。
  27. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 私から便宜お答え申し上げます。  今、大蔵大臣のお答えになりました御趣旨は、とにかく韓国との交渉ということが、平和条約によりましても特別取りきめをするということになっておりまして、この特別取りきめがまだ行われておらないことは、御承知通りでございます。まずその特別取りきめを見なければ最終的処理もできない、こういうことの趣旨でお答えになったわけです。  さらにそれに対しまして石村委員から、北鮮あるいは中国の関係等もいろいろあって、これらの全容がわからない場合に、なお問題が残るのではないかという御趣旨の御質問かと思うのでありますが、これは特別取りきめをする場合の状況等にもよってくることかと思うのでありますが、全く外交の問題になって参りまして、将来の予想ということにもなろうかと思うのであります。  いずれにいたしましても、まず平和条約関係からいたしまして、日韓特別取りきめという外交的な措置がない限り、閉鎖機関は、ただいま大臣がお答えになりましたように、一応日本法人としてのできる限りの清算をする以外に方法はない、かような意味で申し上げたわけであります。
  28. 石村英雄

    石村委員 この問題についての大蔵大臣の御答弁は、これ以上あまり進展しないと思うので打ち切りたいと思うのですが、しかし朝鮮銀行の場合に、株主国内資産を分けてやるということは、結局韓国との交渉あるいは北鮮あるいは中国との交渉を得たなければ、実際のことは処理できない問題である。その交渉の結果、悪くいけば日本国が予算を組むなり何なりして金を払わなければならぬという事態も予想されないではないという私の従来の考え方は、今までの御答弁では、全然打ち消されていないわけでございます。どうか大蔵大臣は、もっと真剣にこの問題の処理を考えていただきたいと存じます。  私の大蔵大臣への質問はこの程度にしておきまして、次に鮮銀の連銀に対する預金債務資料について、ちょっと事務当局にお尋ねいたします。  私は北支における軍費の支払い状況と連銀との関係についての実際のことは何にも存じませんが、しかしここに書いてある事項は、どうも合点のいかぬことが多いので、一応事実関係をお尋ねいたしますが、北支における日本の軍費の支払いというものは、どういう形で行われたのであろうか、日本政府が送金する軍費を出す場合に、それはどういう形で送金され、その金はどういう方法で出されたのか、単に軍票のみでやられたのか、あるいは連銀券等によってやられたのか、その点の事実をお尋ねいたします。
  29. 岩動道行

    岩動説明員 御説明申し上げます。北支地区におきます軍費の調達は、資料にも概略説明を申し上げているのですが、まず第一に、所要の軍費の額がきまりますと、その金をまず朝鮮銀行が中国連合準備銀行から借り入れをいたすことになっております。つまり北支地区におきましては、軍票の発行はいたしませんで、中国連合準備銀行券をもってすべての支払いが行われております。従いまして、北支地区におきます軍費は、すべて連銀券をもって調達され、それによって支払いが行われております。そのような状況におきまして、かりに百億の軍費が必要であるという場合には、百億の中国連合準備銀行券を朝鮮銀行が借り入れをいたします。その次に鮮銀は、この借り入れた連銀券を外資金庫にさらに預け入れをする、つまり預金をいたすわけでございます。その結果、外資金庫が取得いたしました連銀の預金を、さらに政府に納入する、外資金庫は政府に対して預け入れをするのではなくて、政府に納入をするということになっております。その結果政府は、百億円の連合準備銀行券を取得いたしまして、政府の所要資金として軍費等の支払いに充てる、こういう方法をとっておったのであります。
  30. 石村英雄

    石村委員 そうすると、結局は朝鮮銀行の借入金で現われてくるということになるわけですね。
  31. 岩動道行

    岩動説明員 最初の段階におきましては、朝鮮銀行は中国連合準備銀行から借り入れをする、つまり連合準備銀行券百億円を調達するために、それと見合いの円の債務を負う、こういう格好になっておるわけであります。しかしこの場合に、朝鮮銀行はあくまでも中間の調達機関として、通り抜けの勘定でやっております。最終的には外資金庫から政府に納入され、政府がこれを処理するという格好のものになると思います。
  32. 石村英雄

    石村委員 通り抜けにしても、その金額は朝鮮銀行の借入金という形で現われてくるということですか。
  33. 岩動道行

    岩動説明員 さようでございます。
  34. 石村英雄

    石村委員 そしてその借入金は、結局終戦によって、この資料に書いてあるように金を渡して処理した、朝鮮銀行の借入金は、この金の売却によって教理がついた、こういう意味なのですか。
  35. 岩動道行

    岩動説明員 最終的な決済は、ここにも概略書いてございますが、まず第一に、政府の所有しておりました金塊を正金銀行に当時の安い価格でこれを払い下げいたしまして、その結果、正金銀行は安い金塊を取得いたしますが、これを北支における時価で連銀に売ったわけであります。従いまして連銀は、その金塊の代金を正金に対して負うわけでありますが、その決済は、中国連合準備銀行朝鮮銀行に対して持っております、先ほど例にちょっと引きましたが、かりに百億円といたしますと、その百億円の朝鮮銀行に対する、預金債権をもって弁済をする、つまり正金銀行は、連銀から朝鮮銀行に対する預金債権を取得するという格好で金の決済をいたしたわけであります。その段階において、朝鮮銀行は全く連銀に対する預金債権というものが消えてしまうということになっておったわけであります。
  36. 石村英雄

    石村委員 どうも頭を冷してよくこの資料を読み、御説明を考えてみないとわからないのですが、朝鮮銀行は初め連銀から金を借りるときに、その借りる金というものは軍費に充てる金である、従って朝鮮銀行に対して、日本政府が借りる場合に、朝鮮銀行に対する送金の形をとっておったのではないのであろうか、こう判断するわけなんですが、いかがですか。
  37. 岩動道行

    岩動説明員 これはそのような手続等は一切とらないで、ただいま申しましたように、現地において所要の資金を調達するということになっておったわけであります。それが朝鮮の地域におきまする、かりに臨時軍事費を必要とするというような場合におきましては、日本銀行券をまず鮮銀に払い込む、その結果鮮銀は、朝鮮においてそれに見合う鮮銀券を発行するという格好で、一種の送金に似たような操作はいたしておりましたが、北支におきましては全然そのような、送金をするというような方法での資金調達はいたしておらなかったわけであります。
  38. 石村英雄

    石村委員 朝鮮銀行を通じての送金ということは、北支においては行わなかったというお話ですが、そうすると、朝鮮銀行国内の公債なんかがたくさんできたのは、今まで為替関係、軍費の支払い関係だ、こういうことだったのですが、朝鮮銀行に送金を依頼した、そうして朝鮮銀行国内に為替じりの莫大な金が出てきたというのは、朝鮮における軍費というものを送金さしたのですか。
  39. 岩動道行

    岩動説明員 朝鮮銀行に、国会にこれだけの資産ができた原因は、かねて管財局長から御説明申し上げているように、やはり軍費の送金関係がその主要な原因になっております。これは、北支地区におきますものではなくて、朝鮮、関東州、この両地域に対する臨時軍事費等の送金の結果がここに生まれてきておるというふうに御承知いただきたいと思います。
  40. 石村英雄

    石村委員 こっちに知識がないのかもしれませんが、どうも……。(「遠慮せぬでやれ」と呼ぶ者あり)遠慮するもせぬもない、説明がどうも頭に入らないので、質問のしようがなくなってしまう。これはもう少しゆっくりよく資料を読んで、さらに質問したいと思います。
  41. 松原喜之次

    松原委員長 次に、横山利秋君。
  42. 横山利秋

    ○横山委員 旧日本占領地域本店を有する会社本邦内にある財産整理に関する政令の一部を改正する法律案について、御質問申し上げます。最初にきょうもらいました資料の「主なる在外会社整理状況調」これはきわめてアウトラインでありますが、この間聞いたところによりますと、二百十会社がまだ未整理で残っておるそうでありますが、これらの会社の関連をいたします外国の名前をお聞きしたい。
  43. 岩動道行

    岩動説明員 在外会社、いわゆる外国に開式をしたものは、非常に少いと申し上げてよろしいかと思います。これは法律によりましても、旧日本占領地域日本国の領土というような関係になっておりますので、その地域は大体朝鮮、台湾、樺太、それから沖縄もこの中に関係して参りますが、なお華興商業銀行、これは上海にあるものでございます。あと満州にありましたものが若干ございます。具体的にここに掲げてありますもののうちでは、一番左の欄の台湾貯蓄銀行、台湾商工銀行、彰化銀行、これは台湾の地域になっておるものであります。それからその次の三つのものが朝鮮にあったものでございます。その次に済南銀行と華興商業銀行、これが北支ないし中支にあったものでございます。それからあと大陸アルミニウム、日本精蝋、これは満州にあったものでございます。それから朝鮮農薬、これは朝鮮にあったもので、一番最後の樺太水産、これは樺太、こういう内訳になっております。
  44. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますと、この法律に伴って、引き当て財産の処理の問題が各国との関連の問題になってくるわけでありますが、ここに出ております在外負債超過額、この表の中では六つの銀行においては負債の超過があり、それから残った六つにおいてはプラス・マイナスとんとんというふうな数字が出ておるのでありますが、これはどういう根拠で算出され、どういう方法で算出されたか。簡単でよろしいからまず伺います。
  45. 岩動道行

    岩動説明員 これは閉鎖機関の場合と同様に、やはり終戦時を基準といたしまして、当時わかり得た一番正確な資料によった帳簿上の価格による比較の結果出て参った数字でございます。
  46. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますとこれも閉鎖機関と同様な問題がやはり展開されてくるわけであります。今韓国の問題は、先ほどから質問が始まっておりますように、日韓交渉再開の前の問題として最も重要な問題ではございますが、同時に、ひいてはこれが将来起り得べき中国のあるいは台湾政府の、あるいは沖縄をめぐる問題の、あるいはソビエトとの交渉のすべての問題に関連を持ってくるわけであります。そこで先ほど質問がありました日韓交渉の問題と全部同様のケースである、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  47. 岩動道行

    岩動説明員 さようであります。
  48. 横山利秋

    ○横山委員 そこでこの在外負債超過額が、簿価をもって当時一応あった資料によってなされておるというけれども、実際問題としては、関連をいたします各国の意見を問うたわけではなく、あるいは協議が全然行われてもおりません。手前勝手にということは何ですが、日本としての判断でこれが行われた。そうすると、将来起り得べき交渉によって、もし万一この数字が間違っておるということに相なりまして、在外に資産があるという場合、それから負債がさらに増大したという場合には、ここに引き当て財産として残したけれども、その数字が違っておる場合にはどういうふうになされるつもりであるか伺っておきます。
  49. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 先ほど石村委員からの閉鎖機関についての御質問と、大体同じ御趣旨かと思うのでありますが、在外会社についても、ただいま岩動課長からも御説明申し上げましたように、この閉鎖機関と同じ建前で、いわゆる閉鎖直前におきまするバランスシート基準にいたしまして資産負債を見合わせまして、負債の超過につきましては、国内資産から引き当て留保するという建前に御改正をすることにお願いいたしておるわけであります。そこで、ただいまの横山委員の御質問は、一応こういう数字で備えをしておるわけであるが、万一在外負債がお前たちの考えるよりもふえる場合はどうするんだというような御質問のように拝聴いたしたのであります。これは、全く閉鎖機関につきまして、いろいろお答えを申した通り資産につきましては、先ほど田中委員からも再評価というふうな点について、すみやかに実情調査して努力すべきではないかという御意見もあったのでありますが、簿価で見ております関係上、まさにこれは最も安全な見込みというふうに申し上げて差しつかえないと思います。この点から申しましても、今日まで頭金の支払い債務とずっと一貫した建前としまして、簿価資産を見て参る――負債ももちろんそうでございますが、そこで見合っておりまして、不足する分は国内資産から引き当てるという建前をとっております関係上、先ほど大蔵大臣からもお答えがございましたが、私どもといたしましては、万が一にもさような心配はないということで、今日まで預送金の支払いその他もお認め願っておるわけであります。今日におきましても、この点の考え方は全然変っておらないのでございまして、一応われわれとしましては、最も安全な備えをいたしておりまするから、将来心配のようなことは起らないものという考えで進んでおるわけでございます。
  50. 横山利秋

    ○横山委員 先ほどその答弁は承わりました。しかしながら戦争があれ以来起って、日本資産朝鮮の戦争によってなくなっておる場合もある、あるいは債務関係者がいなくなっている場合もある、それから建物は燃えてしまっているという場合も想定される、そういうときに、簿価であるからということだけを根拠にして、やれ台湾も、やれ朝鮮も、やれ沖縄もと言うたところで話は始まりますまい。従って万一という場合は――私は万が一ではないと思う。この引き当て財産を留保するというゆえんも、そういうところにあろうかと私は推測しておるのでありますが、あなたが言う万が一が実現する可能性は、今日の朝鮮の事情の中にもあり得るものと私は思わざるを得ないのであります。たとえば、話が変って恐縮だけれども、大村収容所の釈放問題についても、外交は一つの取引だ、こういうふうに考えれば、法務省が怒っておる、国民が怒っておるというても、ある程度は外務大臣立場も納得できないことはない。そういう立場になれば、この日韓交渉の問題についても、どうせ一萬田さんがやるわけではないんですから、重光さんがやるときに、どういうふうな結論になるとも限らないのであります。そういう結論になったときに、いや、これは簿価でやっているんだからといって、大蔵省ががんばってもしようがありますまい。この点について、閣僚の一人として一萬田大臣はどういうふうに考えられるか、もし万一債務が引き当て財産よりも超過した場合に、国が責任を見るのか見ないのか、その点を一つ明確に大臣からお答えを願いたい。
  51. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今後におきまする日韓の外交交渉の問題でありますが、それは経済的な問題でありまして、お互いのいろいろと挙証の問題はありましょうが、論議の筋は、そうだれがいっても変りはないのでありまして、私は合理的な解決ができると考えておるわけであります。従いまして、今お話しのようないろいろな点もありましょうから、そういう点も十分慎重に考慮いたしまして、在外の資産負債の処理については、財源的に遺憾のないように十分な配慮を加えてあるわけであります。
  52. 横山利秋

    ○横山委員 そういうことを聞いているのではありません。それは前に伺いました。かりにあなたの言うように配慮を加えたとしても、なおかつ起り得べき事態というものは想定されるのではないか。唯一無二のように、簿価でやったから金が余ってくるはずだとおっしゃっても、その後の戦争の問題もあり、十年たってどうなったかわからぬ債務者の問題もある。そう考えれば、この財産を処理することに対して、どうしたって会社は自分の都合のいいように、財産がたくさん配分されるように計算いたすのが人情の当然におもむくところでございましょう。そういたしましたら、結局最後のどん詰まりとして、交渉一つの妥結の姿として、在外負債の勘定が足りなくなってきたという場合を絶対に想定をせぬといったら、それは外務大臣のやることはありはせぬのであります。そういう場合に、一体債務超過額はどうなさるおつもりであるか。もうここできっちりちょんと引き当てた財産を――日本の占領地域の問題でもそうでありましたが、引き当てた財産だけは残せ、そのあとは全部配分してもよろしいというのでありますから、その額が交渉の結果違った場合においては、それはだれがめんどうを見るのかという点をはっきりいたさなければ、この法律のよって来たるところが明確にならぬ。責任の分野が明確にならぬのであります。その点を大臣は明快になさる義務がある。
  53. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 人間の世の中ですから、こういうことも起る、ああいうことも起ると、次々に問題を提起して、一体これはどうするかと言われれば、なかなか困るのであります。私どもとしましては、経済的な問題を取り扱う上におきまして、われわれの考えたところで、一般の社会の通念にもより、またさらに互いにそれに慎重を加えたところで、一応経済問題を処理いたしておるのでありますから、それ以上どういうことが起らぬとも限りません。それはそのときに、一体どういう原因で、どういう態様で、どういうことになるかによってまた考える以外に仕方がない。(「名答弁」と呼ぶ者あり)私は今ここでどうするということを申し上げるわけにいかないのであります。
  54. 横山利秋

    ○横山委員 迷える迷答弁であろうと思います。われわれは今法律の審議をいたしておるのでありまして、一般的な政治論や人情論を討議しているのではございません。法律を制定いたします際に、事務当局が私どものよく知らないところまでいろいろと答弁をし、微に入り細をうがって答弁をせられておる。その法律の根拠となります問題を、この法律が想定をいたします問題について、政府の内部において疑問が起らなかったというばかなことは、私は想像することはできません。従ってもし大臣が知らなければ、この法律の立案に当り、あるいは作成に当った法制局を呼んでもらって、この法律は一体どういうところに最終的な根拠を持っているかということを御答弁願わなければ、私は納得できないのであります。従って大臣の政治的な答弁としては、どんな法律であっても状況の変化ということもないではないという点については、私はわからぬではないが、法律論として最後の責任がどこにあるかというくらいの答弁ができないほどだったら、これは法律ではありませんよ。何のために作っているのですか、もう一度誠意のある御答弁を願いたい。
  55. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、今のところ御質問のようなことが起らないように最善を尽して処理してあるということを申したのでありまして、もしも今後一国の外務大臣が国を代表しまして外交交渉をやって、ある成果を得た場合に、国はその成果を順奉して実行していく、これは私は当然な結論じゃないかと思います。
  56. 横山利秋

    ○横山委員 当然なことであるということは、あとは国がめんどうを見る、こういうことに相なると思います。国がめんどうを見るということは、とりもなおさず、国民の税金をもってめんどうを見るということに尽きようかと思うのであります。しかりといたしますならば、この在外資産は、できるだけたくさん銀行関係者に配分をして、もしもこれが足りなんだら国民にけつをふかせるから心配するな、こういうようなことにも一言でいえばなろうかと思いますが、その論議にどこに違いがありますか。局長は今首をひねっておりますが、違っているという根拠を一つお聞かせ願いたい。
  57. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 横山委員から先ほど来お話しもありましたように、大臣のお答えで十分御了解をいただいたと思うのであります。当委員会におきまして、従来預金支払い、あるいは従業員債務支払い、また今回債券の支払いに当りましてとっております在外資産に対する見方等は、何ら従来と変っておりません。従いまして、ただいま大臣からお答えのありましたように、御心配のようなことのないようにやっていくというのが建前でございます。ただ、しいて万一の場合ということで、大臣からお答えがあったのでありまして、今お話しのように、納税者の負担において何でもやるというふうな考え方は毛頭とっておりません。これは従来の預送金の支払いの際にも、今回の閉鎖機関令改正の際にも、その建前は一貫いたしまして、十分カバーをつけてやっていくという建前でやっておることは、御承知のことでございますから、この点は私からもう一度お答えを申し上げることによって、大臣のお答えで十分カバーされておるのでありますが、御了解いただきたいと思います。
  58. 横山利秋

    ○横山委員 残念ながら、あまり了承ができないのであります。それは、大臣先ほど言った通り、一国の外務大臣がやることでありますから、しかもとんでもないことをなさる外務大臣のやることでありますから、心配なのであります。  そこであともう一つ質問があるのでありますが、留保した引当財産の管理をする権限はどういうところへ移るのかということ、それから引当財産の処理についてば、必要な事項を法律で定めるというのでありまするが、その法律はどういうことを想定いたしておるのかという二点についてお伺いをいたしたいと思います。
  59. 岩動道行

    岩動説明員 引当財産の管理につきましては、これは別途に管理人を選任いたしまして、その運用方法等につきましては、大蔵大臣の定めた方法に従ってその資産の最も堅実なる保全をはかるということを考えております。なお、引当留保された財産について、後に別途法律でその処置を定めるということは、将来外交交渉等によってどのような結果が出て参りますかわかりませんが、かりにこのような資産がそのまま国内において自由に処分し得るというような場合が想定されます場合には、これはたれにその財産を帰属させるのが適当であるかというようなことを、その際に法律できめるということも一応考えられることであろうと思うのであります。
  60. 松原喜之次

    松原委員長 春日君、ごく簡単に。
  61. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま田中委員から発言のありました閉鎖機関令の一部を改正する法律案は、かつて昭和二十八年、十六国会において議決されまするとき付せられた附帯決議の中身がきわめて重要なことでありますので、この機会に政府の見解をただしておきたいと存ずるのであります。それは、「本委員会は、事実上閉鎖機関を終止せしめるよう、ことに閉鎖機関株主会社設立案を具して申請したときで、当該閉鎖機関実情に照らしその必要があると認められるものについては、政府においてただちに特殊清算人をその機関の旧関係者より選任し、新会社の設立を促進せしめる措置をとられるよう決議する。」というのであります。具体的に申し上げますれば、鮮台関係におきましては、不動産金融機関が第二会社として発足することになり、政府もこれに了解を与えておるのであります。ところが朝鮮殖産銀行については、今回清算によって発生いたしました四億五千万円の財源を対象といたしまして、株主間において第二会社設立の意向等もあるやに承わっておりまして、いろいろと具体的な計画も進められているようであります。従いまして、本議決にのっとりまするならば、当然これを対象として政府において特殊清算人の任命が行われて、その希望に沿ったととろの清算事務、あるいは第二会社設立の事柄等が運ばれ、政府がこれに協力されるという段取りに相なると考えるのであります。しかしながら、現状からいろいろ判断いたしますると、今この際新しく特殊清算人を任命すれば、すでに既往において決定処理された事柄等についても、あるいは大きな影響を与える等のことも考えられますので、そこで、管財局長が先般本員の質問に対して御答弁されました通り、すでに発生いたしましたところの残余財産四億五千万円を対象といたしまして株主の利益がいろいろと主張されまする場合、さきに任命されました顧問団の意見を十二分に尊重するということでありました。そこでこの際伺っておきたいこと、確認いたしておきたいことは、これらの顧問団が、この第二会社の設立について政府にいろいろの申請をして参りました場合、しかもその計画がすでに任命されておりまする清算人との間に意見の合致をみましたような場合においては、当然この決議の条文並びにその精神を尊重せられまして、そういうような申し出に対して政府は十二分に協力をしてやっていただきたいと思うのでありますが、これに対する当局のお考えはいかがでありましょうか、この点を一つお示しを願っておきたいと思います。
  62. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほど一度御答弁申し上げたのでありますが、朝鮮殖産銀行清算に当りましては、今お話しの顧問団の御意向は、法令の許す範囲内でできるだけ尊重いたしたい、かように考えているわけであります。
  63. 黒金泰美

    ○黒金委員 動議を提出いたします。  ただいま議題となっております三法律案中、閉鎖機関令の一部を改正する法律案、旧日本占領地域本店を有する会社本邦内にある財産整理に関する政令の一部を改正する法律案につきましては、その質疑も大体尽されたと存じますので、この程度にて質疑を終了し、討論を省略して、直に採決せられんことを望みます。
  64. 松原喜之次

    松原委員長 ただいまの黒金君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 松原喜之次

    松原委員長 御異議なしと認めます。よって動議のごとく決しました。  これより採決に入ります。閉鎖機関令の一部を改正する法律案、旧日本占領地域本店を有する会社本邦内にある財産整理に関する政令の一部を改正する法律案の両法案を一括して採決いたします。両法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  66. 松原喜之次

    松原委員長 起立多数。よって、両法律案はいずれも原案の通り可決いたしました。  この際、春日一幸君より閉鎖機関令の一部を改正する法律案に対する附帯決議に関して発言を求められておりますので、これを許します。春日一幸君。
  67. 春日一幸

    ○春日委員 この際私は、ただいま可決されました閉鎖機関令の一部を改正する法律案に対しまして、附帯決議を付するの動議を提出いたします。  本法律案は、ただいま自由党の賛成のもとに多数で可決され、社会党はこれに反対をいたしたのでありますが、われわれといたしましても、本法律案閉鎖機関清算推進のため非常に重要な法律案であることにかんがみまして、委員会を通過いたしました以上は、本法律案を施行するに当りましては、当委員会で特に論議を重ねた点を、当委員会の意向に従って運営していただきたいと思うのであります。  そこで、特に従業員に対する解雇手当の支給に関しましては、附帯決議をつけることにより、明確な委員会の意思を表明する必要があると認めまするので、ここに本附帯決議を提出いたしました次第であります。  案文を朗読いたします。    閉鎖機関令の一部を改正する法律案に対する附帯決議案   閉鎖機関の従業員の解雇手当の支給に関し、旧役員より指定日以前の重役会決定事項につき、書面による申出があつたときは、終戦時における混乱事情、他の閉鎖機関の場合との権衡等を考慮の上、政府において善処すること。 以上であります。  何とぞ諸君の御賛成をお願いいたします。
  68. 松原喜之次

    松原委員長 ただいま春日一幸君より提出されました閉鎖機関令の一部を改正する法律案に対する附帯決議案について採決いたします。本附帯決議案を可決するに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 松原喜之次

    松原委員長 御異議なしと認めます。よって本附帯決議案は可決いたしました。  この際お諮りいたします。ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成、提出手続等につきましては、先例によりまして、委員長に御一任願っておきたいと存じますが、これに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 松原喜之次

    松原委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  本日はこの程度にとどめ、次会は明後十二日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後一時十一分散会