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1956-03-30 第24回国会 衆議院 大蔵委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月三十日(金曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 松原喜之次君    理事 有馬 英治君 理事 黒金 泰美君    理事 小山 長規君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 石村 英雄君    理事 春日 一幸君       生田 宏一君    大平 正芳君       奧村又十郎君    加藤 高藏君       吉川 久衛君    小西 寅松君       杉浦 武雄君    竹内 俊吉君       中山 榮一君    保利  茂君       坊  秀男君    前田房之助君       横川 重次君    有馬 輝武君       石山 權作君    井上 良二君       竹谷源太郎君    田万 廣文君       平岡忠次郎君    横錢 重吉君       横路 節雄君    石野 久男君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君  出席政府委員         大蔵政務次官  山手 滿男君         大蔵事務官         (管財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  東条 猛猪君  委員外出席者         外務省参事官  森  治樹君         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 三月二十七日  委員植木庚子郎君、大橋忠一君、亀山孝一君、  木崎茂男君、田子一民君及び森清辞任につき、  その補欠として川島正次郎君、山村新治郎君、  淺香忠雄君、坊秀男君、前田房之助君及び横川  重次君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員井堀繁雄辞任につき、その補欠として横  路節男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十八日  物品税法の一部を改正する法律の一部を改正す  る法律案内閣提出第一五三号) 同月二十九日  中小企業等協同組合法の一部改正に関する請願  (砂田重政紹介)(第一六〇一号)  同(佐竹新市紹介)(第一六三〇号)  純粋果実水に対する物品税撤廃に関する請願(  山本友一紹介)(第一六〇二号)  骨牌税軽減に関する請願黒金泰美紹介)(  第一六〇三号)  余剰農産物見返円の貸付に関する請願宇田耕  一君紹介)(第一六〇四号)  同(佐竹新市紹介)(第一六二九号)  旧外貨債有効化に関する請願佐竹新市君紹  介)(第一六三一号)  同(首藤新八紹介)(第一六五二号)  同(永山忠則紹介)(第一六五三号)  同(生田宏一紹介)(第一六七六号)  同(橋本龍伍紹介)(第一六七七号)  同(石坂繁紹介)(第一六七八号)  在外資産補償に関する請願森島守人紹介)  (第一六三二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉鎖機関令の一部を改正する法律案内閣提出  第七二号)  旧日本占領地域本店を有する会社本邦内に  ある財産整理に関する政令の一部を改正する  法律案内閣提出第七三号)  物品税法の一部を改正する法律の一部を改正す  る法律案内閣提出第一五三号)     —————————————
  2. 松原喜之次

    松原委員長 これより会議を開きます。  一昨二十八日当委員会審査を付託されました物品税法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案議題として審査に入ります。まず政府側より提案理由説明を聴取いたします。大蔵政務次官山手滿男君。     —————————————
  3. 山手滿男

    山手政府委員 ただいま議題となりました物品税法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  現行税法におきましては、テレビジョン受像機及びその部分品に対する物品税は、原則として三〇%の税率で課せられることになっておりますけれども、十四インチ以下のブラウン管を使用したテレビジョン受像機及びその部分品につきましては、その生産及び普及状況等を考慮いたしまして、本年六月三十日までは一五%の軽減税率が適用されることとなっているのであります。  従いまして、本年七月一日以降は、何らかの改正をいたしませんと、これら十四インチ以下のものにつきましても本来の三〇%税率の適用を受けることとなるわけでございます。しかしながら、最近における十四インチ以下のものの生産及び普及状況等にかえりみまするときは、直ちにこれに三〇%の税率を適用することは適当でないと認められますので、他の課税物品との権衡をも考慮し、当分の間、二〇%の軽減税率を適用することとするものでありますが、この税率の変更の及ぼす影響を考慮し、その間においても、昭和三十三年六月三十日までは、さらに一七%の軽減税率を適用しようとするものであります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようにお願い申し上げます。
  4. 松原喜之次

    松原委員長 以上、提案理由説明は終りました。本法律案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  5. 松原喜之次

    松原委員長 次に、閉鎖機関令の一部を改正する法律案及び旧日本占領地域本店を有する会社本邦内にある財産整理に関する政令の一部を改正する法律案の両法律案議題として質疑を続行いたします。春日一幸君。
  6. 春日一幸

    春日委員 この閉鎖機関令改正案に関しまして質問をいたします。  第一点は、閉鎖機関外地従業員に負うておるところの債務についてであります。ことにその解雇手当、これはその閉鎖機関指定日以前に支給決定されたもの、または支給内示があったもの、すなわちその確定債務に限られておるのであるのかどうか、この点について御答弁を願います。
  7. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。ただいま御質問の点につきましては、閉鎖機関令の第四条の規定から申しましても明白でございまして、すでに確定をいたしました債権債務につきまして清算をいたすのが、閉鎖機関令建前でございます。
  8. 春日一幸

    春日委員 そこでお伺いをしたいのでありますが、その確定という言葉の具体的な事例、これはどういうような場合を確定しておったところの債務とみなすのであるか、これの一つ定義と、それから具体的な事例とをあわせてこの陣御説明を願いたいと思います。
  9. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げますが、具体的な事例でございますが、先ほどお述べになりました、従業員に対する退職金等につきましては、御承知のように各会社にはそれぞれ退職金に関する規定等がございまして、退職の事実が発生をいたしますと、この規定に従って具体的に退職金支給額確定を見るわけであります。今回提案をいたしました閉鎖機関令改正は、外地におきましてその当該機関規定によって退職金の額が確定しておるわけでありますが、それが在外債務というふうな形になっておったために、従来閉鎖機関といたしまして支払いの道がなかったものを、特に内地資産によって支払う道を開いていただく、こういう趣旨でございまして、従って具体的に申しますと、その会社退職金に関する規正によって確定をいたしました退職金を支払う、かようなことを規定いたそうとする趣旨でございます。
  10. 春日一幸

    春日委員 今回の法律改正で、ただいま正示局長から御答弁のありました通り在外債務に限られておりましたところの弁済の道が、この改正規定の第二条第八号でありますか、これによって、これらの退職金その他の債務で省令で定めるものは、特にこれを在外債務と見なして支払い得る道が開かれたことは、非常にけっこうであろうと思うわけであります。ところが、ただ問題は、今局長が御答弁になりましたように、解雇手当に関する内規、それから契約、慣習、こういうようなものが実在して、そうしてそれに基いて計算されたものは、これはすなわち確定債務として支払うことができる、こういう御答弁でございました。ところが問題の核心は、それでもって問題の最終的な解決にはならないわけであります。と申しますのは、御承知通り今回閉鎖機関指定を受けましたところのこれらの機関は、いかなる理由によって閉鎖されたか、申し上げるまでもなく、これは前代未聞不測事態発生をいたしました。すなわち敗戦という形によりまして、しこうしてこれらの諸君は、経営者従業員も自分の意思というものに全然関係なく事業閉鎖しなければならないような状態に相なったわけであります。そういうような事柄は、申し上げるまでもなく当然国の法律によって、さらにはまた従業員の側から申しますならば、当然経営者責任において、そういう事態に当面した従業員の救済ということについて内規があったものとみなしての処理がなされなければ相ならぬと存ずるわけであります。そこで私は、政府にお伺いをいたしたいことは、今回のこの閉鎖された機関のかつて従業員であった者、こういう者に対します解雇に関するいろいろの規定は、そのような事態があるということを想定しておるならば、従業員は当然そういうことを要求いたしまして、そういうような異常事態に対処するための解雇規定というようなものは、当然これは協約によって締結をいたしておると思うのであります。ところがそういうようなことは期待もしていなかったし予測もしていないから、従って、そういうような協約を締結するというようなことは無用なことであり、その当時における事情としては必要なことではなかった。ところが現実には、そういう事態が起きたのでありますから、従ってかれこれ判断すれば、そういうような規定があったものとみなして、解雇手当あるいは雇いどめ手当というような手当支給するの道が開き得るものと了解はできないかどうか、その点について政府側の御答弁を願いたいと思います。
  11. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま御指摘の点は、今回の閉鎖機関令改正は、敗戦という前代未聞事態におきまして、これらの閉鎖機関が大量の強制的な解雇あるいは退職者を出したということに関連をしての退職金あるいは雇いどめ手当の問題であるから、これに対して、事前にそういうことを予想しておらなかったではないか、従ってそれに対しては何か特別の道をもって支給できるように考えるべきではないか、こういう御趣旨のように拝聴いたしたのであります。これは全く仰せの通り、通常の場合に予想できない事態だったのでございます。ただ御承知のように、閉鎖機関令におきましての清算の基本的な前提は、やはり閉鎖機関活動中の業務に伴う債権債務、こういう既往の債権債務前提といたしまして、これを特別の清算方式によりまして清算をする、これが閉鎖機関令前提になっておると思うのであります。従ってただいまお話しのように、そういう事態を予想しなかったからということで、たとえば従業員退職金について閉鎖後において新しく債務を負う新しい規定を設けるということでは、閉鎖機関令第四条にお定めを願いました前提がそもそも成り立って参らなくなるわけであります。  ただいまの点につきましてもう一点申し上げなければならぬ点は、なるほど従業員退職なり雇いどめという事態も、これはまさに異例のことであり、予想されなかったことでございますが、その点は経営者、すなわち役員その他についても同じ関係であり、さらにまた株主というような者についても同じ関係であろうかと思うのであります。しかしながら閉鎖機関令規定は、そういう特別の問題ということは一応別の問題といたしまして、先ほど申し上げましたように、指定日前においてこの機関活動から生じました債権債務というものを対象にいたしまして、これに対していかように清算を進むべきかということをお定め願っておるものとわれわれは了解しておるわけであります。従いまして、ただいまの御趣旨につきましては、閉鎖機関令建前からいたしまして、やはり個々の機関がその規定なり、あるいはその他の定めによってすでに確定をいたしておりますところの退職金あるいは雇いどめ手当というふうなものの未払い分を、今回払う道を認めていただく、こういうことにわれわれは考えている次第でございます。
  12. 春日一幸

    春日委員 さらにこの点を明確にしておかなければならぬと思うのでありますが、この閉鎖機関の場合には、これは占領軍の絶対権力によって一方的に強制解散を命ぜられたのでありますから、従ってこれを従業員の側からすれば、これは会社都合によって大量解雇されたと同じ結果に相なるわけであります。そういうことになった場合のあらゆる対策を立ててその事業に臨むのが経営者責任であるわけでありますが、そういうような事態に到達して、そうしてなおかつ強制命令によって会社が解散されてしまったのだから、その解散命令会社の側に来て、会社の側からそういう通達が従業員に移されたのであります。従って従業員側からすれば、これは理論的にはいろいろ疑義があるかもしれませんけれども、実質的には会社都合によって大量解雇された。会社都合というものは、経営が成り立たなくなった場合もあるでありましょうし、事業都合によって閉鎖するという場合もあるでしょうし、多くの理由が想定されるのだが、今回の場合は、すなわち占領軍からの強権の発動があったから経営ができない、こういう理由によって、会社都合によって解雇されたわけです。従って、そこで現実の問題として解雇手当を要求したいということは当然のことであろうと思う。そこで問題は、残余財産があった場合のことなんです。全然なければ、ないものをくれと言うたところで、これは仕方がないけれども閉鎖機関清算人によって清算をされて、そこで残余財産発生いたしました場合において、そういうような解雇手当支給されておる場合はよろしいけれども解雇手当支給されていない分については、これは道義上からいっても、条理を尽す立場からいっても、当然解雇手当支給という事柄が考慮されていいと思う。それで、かつて決定いたしております法律の条文の中において不備な点があるならば、法律はお互いがここで作ったんだから、欠陥があるならば、その法律を私は修正していけばいいと思うわけなんです。この点の理解はどんなものでありますか、これは非常に政策的な内容をも含んでおると思いますので、山手政務次官から御答弁を願います。
  13. 山手滿男

    山手政府委員 当時連合国司令官からの要求に基きまして、いわゆる財閥の解体とか、私的独占の禁止とか、ああいうふうな大きな政策の一環として閉鎖機関指定が行われ、その当時の財産状態によって清算を遂げていくということに決定を見まして、今日に至っておるわけでございまして、御指摘の点については、われわれもいろいろ考えさせられる点もあるのでございますが、いろいろ均衡そのほかのこともあろうかと思いますし、今すぐ法律を変えていろいろな均衡を破っていくということもいかがであろうかと思います。ただ清算段階におきまして、株主財産の分配もすでに確定をしたような段階で、株主意向によって、その財産の中から従業員に何らかの金額を分与せしめるというふうな措置を、現実の問題としてはとることはもちろん異存はございませんけれども、今後まだ十二分に研究する余地があると考えておる次第でございます。
  14. 春日一幸

    春日委員 株主意向によって、その残存財産から退職金を出すことは異存ないけれどもというお話でありますが、これは山手さん、御承的の通り株主権限というものは、一切閉鎖機関令その他の法律によって制限を受けてしまって、一切の執行は清算人に移行されておるわけであります。株主が払おうと思っても、むろん払えない、株主権限債権債務一切を凍結されてしまっておるわけでありますから、そういう御答弁は成り立たないと思うのであります。ただ問題は、権衡を破るのは好ましくないという点であろうと思うのでありますが、これは、われわれといえども大いに尊重しなければならぬと思います。ところが私どもの真意は、権衡を破っても仕方がないという立場において、こういう所論をなしておるのではなく、むしろ権衡を保たしめるために、こういう措置が必要ではないかという点に重点が置かれておるのであります。  そこで問題をわかりやすくいたしますために、さらに一歩進んで、具体的な事例に触れて問題を解明して参りたいと思うのであります。朝鮮銀行の場合と朝鮮殖産銀行の場合についてでありますが、この解雇手当支給に関連して、おおむね同じような立場、同じような業務内容を持っておりましたところのこの二つの銀行従業員解雇手当に対する権衡を保つという立場から、一つこの問題を論じてみたいと思うのであります。  そこで、私は正示さんにお伺いをいたしますが、朝鮮銀行従業員は、同じこの法律のもとにおいて、解雇手当その他これに類する債務というものを一体どういう工合に処理いたしますか。それからあわせて、朝鮮殖産銀行の場合、これは一体どういうような立場に置かれておるのであるか。この二行における実情をありのままに一つ答弁を願いたいと思います。
  15. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。まず朝鮮銀行でございますが、朝鮮銀行は、御承知のように、終戦発券業務預金業務を行なっておりました。終戦の直前、八月十二日に朝鮮本店におきまして重役会決定をいたしておるのであります。それによりますと、従来の退職金規定の額に対して二万四千円の増額支給ということを決定いたしております。この決定に基いて内地におきまして退職金支給いたしたのであります。これが朝鮮銀行における退職金支給のあらましであります。  これに対しまして、朝鮮殖産銀行でございますが、殖産銀行の分につきましては、実はまだはっきりと書類をもって清算人の方へ申し立てが行われておりませんが、私ども当時の関係者から口頭の話を伺っておりまするので、きわめて大筋になろうかと思いますが、その点を申し上げます。それによりますと、殖産銀行におきましても、終戦前の混乱状態でございましたが、将来従業員に対する退職金等に充てるために、当時の朝鮮本店におきまして、内地に対してある程度の送金決定し、その手続を進めようとしたというお話でございます。その額は総額で約二千万円というお話も伺っております。そういう措置を講じようとしたことの基本といたしまして、退職金支給につきまして、特例を設ける重役会決定があったのだというふうなお話を伺っておるのでございます。  そこで私の方では、今回のこの閉鎖機関令改正お願いをいたしまして、これが施行になりますれば、まずもって従業員に対する債務未払い分を支払うのが順序でございますので、ただいま殖産銀行関係者に対しまして、すみやかに当時の模様を詳細に書類にいたし、また責任者もそれぞれ明確な書類をもって清算人の方へ所要の手続を進められるように申し入れをしているわけであります。近くさような手続が進められるものと期待をいたしておる次第であります。
  16. 春日一幸

    春日委員 それではお伺いをいたしますが、朝鮮銀行はいわゆる内規によるところの退職金を支払って、プラス二万四千円、こういういわゆる非常事態発生に伴う解雇手当に見合うようなものが支払われておる、こういうことでありますね。ところが殖産銀行については、退職金は支払われておるのでありますか。
  17. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 先ほどちょっと申し落しましたが、全職員に対しまして、すでに一人当り約五千三百円くらいのものを支給いたしておりますが、そのほかに、先ほど申し上げました約二千万円のものを送金すべく努力したというお話を伺っておるわけであります。
  18. 春日一幸

    春日委員 いずれこれらの具体的な事柄内容につきましては、与党も野党も、それから政府へも関係者から陳情が参っておるであろうと思うのであります。そこでただいま正示局長からお示しになりました二千万円、これはただいまのお話では、退職金に引き当てるものとして送金を企画した、こういうことでありましたが、これはおそらく言い違いであられましょう。これは退職金ではなく解雇手当、あるいはそれに見合うものに該当する資金であろうと思うのであります。そこでわれわれの党へ寄せられております陳情内容によりますと、これは朝鮮にありましたところの二千万円、それから当時の計画といたしましては、内地にありましたところの資金三千万円、プラス五千万円というものを当時の朝鮮における重役会が、終戦倉皇の間にそういう決定をしたという工合陳情書が寄せられておるわけであります。いずれその事実に基いての詮議は、それぞれの機関によってつまびらかに相なるでありましょうが、二千万円であったか五千万円であったか、これは別といたしまして、ただ問題は、朝鮮銀行の場合一人が二万四千円の支給額であったということから考えまして、同じ朝鮮に任地を置いた両行従業員の、この解雇手当に関します支給額権衡をはかるためには、おそらくは両行重役会議においてそれぞれの連絡がとられておったと私は思います。そういうような事態を想像いたしまする場合、朝鮮殖産銀行従業員の総数は、的確な数字はここに持っておりませんが、たしか千八百人か九百人、これに朝鮮銀行において支給いたしました二万四千円というようなものをかけますと、いずれにしても五千万円以上、これは六千万円近いものに相なろうかと思うわけであります。そういうような意味合いで、いずれにいたしましても、あなたの方へ口頭によって概要が申し出でられておりまするならば、すなわち終戦直後においてこの朝鮮殖産銀行は、朝鮮銀行決定をしたとほぼ同様の決定朝鮮の現地において行なった、すなわち朝鮮殖産銀行従業員に負うところの債務というものは、すでに確定しておったと思うのであります。従いまして、お伺いをし、確認をしておきたいと思いますことは、当時における重役会決定事項、その事実を証明する事柄文書によってそれぞれの機関申し出があります場合は、これは今回改正法がうたっておりますところの第二条第二項第八号でありますか、それに該当する、すなわち指定期日以前に確定しておったところの債務として、これを取り扱っていただくことができるかどうか、この点を一つ答弁を願いたいと存じます。
  19. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 先ほど私の御答弁に多少不十分な点がありますので、あわせて御答弁申し上げます。  先ほど殖産銀行が一人当り五千三百円の退職金支給いたしたということを申し上げたのでありますが、これは、二十七年当時、前の理事者からの申し出になりまして、その事実がはっきりわかりましたので、この五千三百円までは支給いたしておるのであります。その当時におきまして、先ほど申し上げた二千万円送金企画云々というお話は、実は全然なかったのでありまして、これがもし当時からはっきりいたしておりますれば、私どもとしては、十分資料を整備いたしまして準備を進めて参ったのでありますが、実は当時におきましてはさようなお話がなかったので、とりあえず五千三百円ということで支給いたしておったのであります。その後今回の政令改正法律提案をいたすことになりまして以来、さようなお話がございました。そこで、ただいまはその詳細につきまして、先ほど申しましたように書類をもっての御提出お願いをしておる段階であります。従って、その点につきましての内容の詳細を承知いたしておりませんので、これは申し上げかねるのでありますが、大体ただいま春日委員が御指摘のように、当時の朝鮮の非常な混乱の中でございましたが、各金融機関、それぞれ混乱の中にも最善を尽して、将来に備える対策を講ぜられたことは、想像にかたくないのであります。そこで殖産銀行におきましても、今申し出のような措置をとっておるということを理事者が申しておりますので、さっそく当時の責任者からこれを文書をもってはっきりと御提出を願いまして、その文書によって、まず清算人がこれを審査いたし、最終的には大蔵大臣の承認ということに相なってくるわけでありますが、その内容審査いたしまして、明確にこれが当時の有権の機関の手による決定と認めることができる場合、先ほど申した従来すでに支給済みの分のほかに、そういう債権の確定したものがあったということの確認に至りますれば、これは先ほどお答え申し上げました令第四条の規定ということからも、すでに確定した債権として支払うべき筋合いのものということになろうかと思います。
  20. 春日一幸

    春日委員 これは、現実に当時の朝鮮殖産銀行従業員当事者にとってみますれば、現実の問題として需要な影響を与えると思いますので、さらに明確にいたしておきたいと存じますが、この法律の第四条は「何人も、指定日以後は、閉鎖機関財産上の権利義務に変更を生ずべき行為をすることができない。」こういうことになっておる。「但し、第十条第一項に規定する特殊清算人」の処分、これは関係ありません。そこでお伺いいたしたいことは、朝鮮殖産銀行の場合において、理事者があなたのところに書類提出する、すなわち指定日以前において、そういう従業員に対して解雇手当等の支払いを行うというような決定をしておるということの書類をあなたのところに出す。そうしますと、あなたがまず審査をされるという過程を経て、さらにまた大蔵大臣がそれを承認するというか、あるいは認証するというか、いずれにしてもそういう過程を経なければ、その理事会の決定というものは確定しないというか、効力を生じないわけなんです。すなわち本日ただいまにおいてその効力を生じていないわけなんです。これを言うならば、潜在債務とでも称すべきものでありましょうか、とにかく不確定債務とでも称すべきものでありましょうか、そこに私は疑義があると思う。全然疑義がないならばそれでよろしい。昨日の理事会等において、局長からこんな御答弁がありました。たとえば預金者に対して預金の払い戻しを行う場合、たしか一万円なら一万円という預金があったという申し出があったけれども、しかしそのときにおいては、たまたまその預金通帳がない。だから、その金額等が預託されておるという事実は、債権債務関係確定しておったけれども、しかしその預金通帳がないという事柄だけで、これは不確定のものというわけには参らない。あたかもそれと同じように、この朝鮮殖産銀行の場合も、債務としてはすでに確定しておったんだが、そういう書類がいまだあなたの方へ提出されていないという、すなわち預金通帳を紛失したり、その当時手元に持ち合せていなかったりすることとほぼ同じような意味合いにおいて、これが確認を得ないような状態にある、それだけのことで、これは不確定債権とかあるいは潜在債権ということではなく、もうすでに債権としては確定しておるが、ただその証明が立たない。だから朝鮮殖産銀行の場合においては、そういう証明が立ちさえすれば、その当時の理事会の決定は、確定債務として何ら法律に抵触することなく支払うことができる、こういう工合に理解をしてよろしいかどうか、この点さらに御答弁を願います。
  21. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 昨日の理事会におきましてのお話等を御引用でございましたが、大体の御趣旨はその通りと思うのであります。ただ私、預金の場合と少し違う点があろうと存じますので、その点だけを補足させていただきたいと思うのであります。  すなわちまず重役会決定ということにつきまして、今ここで申し上げる通り、そのままあったということになりますると、これによって従来の支給規程なりあるいは退職金に関する会社債務というものは確定を見るわけでございます。ただその書類がまだ出ていないのでありまするから、これを審査しなければならぬ段階が残っておるということを申し上げたのであります。  それからもう一つの問題は、これは総額の問題でございまするので、かりに二千万円というこの金を各個人にどういうふうに分けるかというその計算が、実はまだできていないのでありますが、これまた重役会においてどういう決定になっておりまするか、その決定によりまして、各個人別金額というものも確定を見ることになるわけであります。そこで、初めて預金と同じような関係に相なってこようかと思うわけでありまして、要するに上預金の場合におきましては、まずもって個人の預金額というものが客観的には確定を見ておるわけでございますが、それを支払うためには預金通帳、その他証拠書類をお出しいただきまして、確認をするという手続が残るわけでございます。そういう手続を経まして預金の払い戻しが行われることは、申し上げるまでもございません。  そこでただいま申し上げた退職金の場合におきましては、問題は、重役会決定内容がはっきりと立証いたされますると、これによりまして、総額、各個人別支給額というものがきまってくるのでございまするから、要はその重役会決定を立証すべき有権的な機関決定に関する具体的事実を詳細に立証する書類提出にかかっておる、こういう意味で、先ほど御引用のような事例を申し上げたのでありますが、ただいま申し上げたように、多少その段階的なニュアンスは違っておるわけでありますが、大体の考えといたしましては、預金の場合と違いがない、かように考えておる次第であります。
  22. 春日一幸

    春日委員 この機会に申し上げておきたいと思うのでありますが、少くともこの朝鮮殖産銀行は、当時におきまする一つの国策的な金融機関であります。その理事者決定というものは、機械的な預金通帳そのもののごとき信憑性と、あるいは見方によっては多少の違いはあるかもしれませんけれども、そのように、公務員だけが機関として決定をしたということで書類をあなたの方へ出して参りますれば、それは荒唐無稽なものであれば、常識的に見ても、その当時の他の機関決定との振り合い等を勘案いたしまして、たとえば朝鮮銀行の場合、二万四千円という支給額決定されておるが、これが五千円とかあるいは一万円とかいうとっぴなものであれば、その信憑性についてはさらに慎重検討を加えるという必要もあるかもしれませんけれども、その権威ある機関がみずから決定したものは、これこれと言って書類提出いたしましたら、これはやはりあなたの検討も大蔵大臣の検討も、やはりその預金通帳そのものが持っておる程度の権利をこれに認めて、そうしてめちゃくちゃに値切り倒してしまうようなことのないように私は希望をする。のみならず、またそうあらねばならぬと私は考えるのでありますが、この点について山手政務次官の御見解はいかがであられましょうか。
  23. 山手滿男

    山手政府委員 この点につきましては、お説の点はいろいろわれわれも考えなければいかぬと思いますけれども関係書類提出をされましたならば、十分に検討をいたしました上に、よく考慮をしたいと思います。
  24. 春日一幸

    春日委員 そこで私は、この法律案質疑を終了すれば法律は通ってしまうわけなんです。法律が通ってしまえば、資産が四億五千万円朝鮮銀行の場合は発生をしておりますけれども、これは他の条章に基いて社債、株主、その他の関係でこの財産というものが消滅してしまいます。消滅してしまってからああだこうだと言うたところで、これはあとの祭になってしまって無益なことだ。そこで私は、その法律の疑義をみじんたりといえども残さないというような審議の仕方、あるいは立法を行わなければ、われわれの職責を問われるのではないかと思うのでありますが、そこで私は、さらにわれらの検討におきまして、こういうようなことも考えてみました。これは、一つ正示さんの技術屋としての御意見を一ぺん伺っておきたいのでありますが、私どもの見解は、解雇手当支給に関する疑義をこの際明確にしておくために、法律を次のように直してはどうかと思うのであります。それは閉鎖機関令の一部を改正する法律案に対する修正案といたしまして「第四条第一項中「財産上の権利義務」の下に「(閉鎖機関の役員又は従業員に対して負う退職金その他の債務で省令で定めるものに係るものを除く。)」を加える。」加えておく。そういたしますと、この省令事項としてどういうことを期待しておるかと申しますと、これはその当時、朝鮮殖産銀行理事者たちが、理事会の決定でこういう解雇手当を支払うということを議決した。けれども、その議決は、法律上の立場から言うならば、議決したということを一方が言ってきた以上は、その全額を払わなければならない。ところが今のあなたの答弁だと、多少ニュアンスがある。果して信憑性がどうであろう、こうであろうというようなことで、あなたが審査して、そうして大臣がさらに検討を加えて、それに認証を与えて、そこで初めて債権が確定していくという形のプロセスを踏まなければならない。これは、法律の各条章が明確に規定いたしておりまする指定日前の確定債権であるかどうかということについて、一まつの疑義なきを得ない。そして、その確定債権であるかどうかということを決定する権限大蔵大臣に与えている。すなわち、省令によって出されてきたところの書類を、その信憑性について清算人がそれを検討し、あなたが検討し、そうして大蔵大臣が検討して、これならばよろしかろう、他との権衡をはかってもこれは行き過ぎではなかろう。たとえば朝鮮殖産銀行理事会があなたのところへ、退職金を四億五千万円払うということを決定しておりましたとかりに言うてくるような場合がもしあった場合、そこに紛議が生じてくる。そういうような場合に、四億五千万円は適当ではない、朝鮮銀行との権衡を保つ上において、また朝鮮銀行との権衡上、一人二万四千円の率で決定しようと思えば、それで計算して、おおむね当時朝鮮殖産銀行において理事会が決定すべかりしところの公正にして妥当なる解雇手当額、こういうものを省令によって定める額とする、こういう工合にしていけば、あなたの方は権威をもって、かつまた政治的に配慮を加えて、法律上の疑義を全然なくして、そうして問題の処理が後日に残し得ると思うのだが、この点について、立法の責任者としてその衝にあられる正示さんは、わが社会党のこれらの試案についてどんな御見解をお持ちでありましょうか。
  25. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答えを申し上げます、ただいまの御質問に対する答えは、大体先ほど来私は出たんじゃないかと実は思いまするので、これははっきり申し上げますが、最初に申し上げましたように、閉鎖機関令第四条、これはこの閉鎖機関に対しまする清算の基本的な前提規定いたしておると考えます。すなわち、「何人も、指定日以後は、閉鎖機関財産上の権利義務に変更を生ずべき行為をすることができない。」ということでございまして、こういう大前提がございまして初めて閉鎖機関清算が今日まで順調に進んでおりまするし、今後も最終的な処理ができるものというふうに存ずるのであります。ただいまお示しの「閉鎖機関の役員又は従業員に対して負う退職金その他の債務で省令で定めるものに係るもの」は、この財産上の権利義務のうちから除くという考え方はどうであろうかという御趣旨でございますが、これを入れますことは、私は、ただいま申し上げたような大前提に基きましてせっかく今日まで進めて参りました閉鎖機関清算事務が、成り立たなくなるおそれがあるのではないか、かように考えまして、先ほど果実はお答えを申したのであります。その点につきましては、春日委員も、すでに先ほど政務次官に対する御質問の中で、朝鮮殖産銀行の例をお引きになりまして、たとえば一人当り幾らぐらいということで当時決定があったとするならば、これは朝鮮銀行とのバランスから考えてもいわゆる妥当な決定ということで、しかも非常に公的色彩の強かった殖産銀行重役会決定をしたということであるならば、これは認めてもいいじゃないかというふうな御趣旨のように拝聴いたしたのでありますが、これは私どもも、いずれ関係書類を提示されました場合には、当時の客観的な情勢その他ほかの機関とのバランス等から考えまして、その重役会決定自体の信憑性ということについては、先ほど政務次官からお答えのようなことが判断の基礎条件になってくるものと考えております。要するにこれは、どこまでも指定日以前におきましての機関の有権的な行為からくる債権債務ということを前提にいたしまして清算をしぼって参らないことには、閉鎖機関清算というものは成り立たないという先ほど来の応答、これによって私はこの試案に対する答えは一応出ておるというふうに実は考えるのであります。万一かようなことで、今日まで進んで参りました、すでに確定したる権利義務ということにある程度例外を認めるということになりますと、これは限りなくその面が広がるおそれもあるのでありまして、従来一応そういう前提で進めて参った閉鎮機関清算建前から申しまして、やはり先ほど来質疑応答のありました線によって本件の処理をはかるべきが唯一の道ではないか、かように考えておるのであります。     〔委員長退席、石村委員長代理着席〕
  26. 春日一幸

    春日委員 大筋においては、従業員側の主張もまた社会党としてのわれわれの見解も、それからあなた方の理解もそんなに大きく隔たってはいないと思うわけであります。ただ私が顧慮いたしますのは、その執行に当りまして、疑義がごうまつもないわけじゃないというところに心配があるのであります。と申しますのは、あなたの方で申し述べられております、それら朝鮮殖産銀行理事者のいわゆる決定事項なるものは、二千万円というような工合に入っておる様子でありますが、私どもが聞いておりますところによれば、朝鮮からは二千万円、それから朝鮮殖産銀行の国内の保有分として三千万円、合して五千万円をそれに充当せんとして、そういう決定が行われた。これはかけ引きでもはったりでもない、そういうことを権威ある誠実な理事者から陳情を受けております。そこで大蔵大臣やあなたがその信憑性を検討される場合に、何といってもファースト・インプレッションは強い。二千万円というものを基準として検討されがちになるだろうと思う。そうすると、機関決定は、すなわちこの朝鮮殖産銀行の有権的な決議に基くところの事柄は五千一万円だと言っておる。あなた方は二千一万円だと思い込んでおる。そこで検討しようと思えば相当問題があって、これは不確定債務だからいっそやめちゃえということになってくる。あなた方の理解も、またその解雇された当事者たちの考え方も大体一緒でありながら、なおかつ結果においてそういう望ましからざる結果になることを私はおもんばかるのであります。でありますから、法律によって改正することが、すでにその法律に基いて清算事務を完了した他の閉鎖機関に対して権衡を失するような結果になるという心配がありますならば、たとえばそれにかわるような明快な方法、すなわち附帯決議を付するとか、あるいはさらにまた何らかの明文を設けることによって、この問題を後日のために備えなければならぬと存ずるのであります。しかしながら、これらの問題は、今このような質疑応答の過程においてそのまま結論に到達するということは、慎重を欠くのそしりを免れないと考えますので、いずれこれは理事会等においてさらに御検討も願い、当事者たちの意向も、実情に即して十分しんしゃくをいたしまして、そして後日あらためてもう一回この問題について質問をいたしたいと思います。社債その他株主等に対しまする処理についても、いろいろ疑義がございますけれども、時間の関係上、ひとまずこれをもって私の質問を終ります。
  27. 石村英雄

    ○石村委員長代理 小山君。
  28. 小山長規

    ○小山(長)委員 閉鎖機関令改正に関しまして質問いたしたいのでありますが、この閉鎖機関令というものが制定されてから、指定を受けた閉鎖機関は二千幾つあって、だいぶん最近片づいてきいのであります。しかしながら朝鮮銀行、台湾銀行、あるいは朝鮮殖産などの解除指定というものについては、株主側からは非常に急がれておったのにかかわらず、今日までこれが延び延びになって参りましたのは、仄聞するところによると、今の韓国側の日本に対する請求、いわゆる日韓相互間の請求事件といわれておりますところの、サンフランシスコ平和条約第四条に基く請求の問題がからんでおった。このようなうわさを耳にいたしておったのでありますが、この点については、今度の改正をなすに当っては、はっきりとした踏み切りを外務当局においてはおつけになったのかどうか、この点をまず第一番に確かめておきたいのであります。
  29. 森治樹

    ○森説明員 韓国との交渉におきまして、請求権の問題が一つの重要な論点であることは御承知通りでございますが、本問題が、そのために特に解決がおくれたということは、そういうふうには私ども承知いたしておらない次第でございます。
  30. 小山長規

    ○小山(長)委員 しからば、韓国側が申しておりますところのいわゆる朝鮮総督、あるいは朝鮮銀行朝鮮殖産などが、あるいは台湾銀行などが、日本内地において持っておるところの資産、こういうものは韓国側の請求権の対象にならないという点については、外務当局としてははっきりした見解を持っておられますか。
  31. 森治樹

    ○森説明員 交渉の過程におきまして、韓国側から、韓国に主要事務所ないしは法人の所在地がありましたものの在日資産に対する請求があったことは事実でございます。しかしながら本件は、日韓双方の交渉によりまして決定せらるべき問題でございまして、日本側としては、その主張に対する日本側としての主張をもって、そしてこの交渉の過程において、日本側の主張も提示されたのでございます。
  32. 小山長規

    ○小山(長)委員 その点については、政府としてははっきりした態度をすでに明確にきめておられる、こういう前提でこの問題に入りたいと思うのでございます。  ところで今度の改正を見ますと、朝鮮銀行、台湾銀行閉鎖機関を解除せられる場合がある。しかしながらその閉鎖を解除されて、第二会社の設立の許可を受けようとする場合には、朝鮮銀行法第二十七条、または台湾銀行法第二十条の二の規定によって納付すべき納付金の、これらの規定定める利益金に対する割合を乗じて得た金額を政府に納付しなければならない、こういうような規定がここに出てきたのであります。この理由は一体どういうところから出てきたのか、その点をお示し願いたい。
  33. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。ただいま御引用になりました朝鮮銀行及び台湾銀行の納付金に関する問題でございますが、この問題はすでに久しく懸案になっておった問題でございまして、申し上げるまでもなく朝鮮銀行及び台湾銀行は、朝鮮及び台湾におきまして、それぞれ発券業務及び普通銀行業務をやっておったのであります。ただいま御指摘朝鮮銀行法あるいは台湾銀行法の条文は、発券業務に伴う営業中の納付金の規定によりまして納めたその規定に準じまして、残存資産から納付金を納めるようにという規定を援用されたわけでございますが、実は朝鮮銀行につきましても、台湾銀行につきましても、解散の場合の法律がなかったのであります。これは、今日日本銀行についてははっきりと規定がありまして、大体日本銀行におきましては、額面以上の金額はすべて国に帰属するというふうな規定がはっきりあるわけでございますが、朝鮮銀行、台湾銀行法律には、さような解散の場合の規定はございません。しかしこの発券業務すなわち通貨を発行するという国の特権を、こういう朝鮮銀行及び台湾銀行において、それぞれの地域で認めておった。この一種の国の特権に伴う納付義務というものは、これは単に営業中だけではなくて、それらの機関が解散になりました場合に、残余財産についてもそういう発券の特権のついた残余財産がある場合には、同じことを規定すべきだということは、大体条理としてお認め願えるのではないか、かように考えているのでございます。しかし、それはすでに閉鎖になりましたこれらの機関の基本法の中にはないのでございますから、形としては、これは今日閉鎖機関令改正していただきまして、さような規定を設けることは、手続として必要でございますので、この手続は、いわば条理としてすでにそういう関係になっておりますものを顕在化すると申しましょうか、一応条文の形にしてはっきりとしておくというふうな関係ではないか。いろいろこの納付金についての考え方はあったのでございます。たとえば残存財産の二分の一を納付するというふうな考え方もあったことは御承知と存じますが、やはりその際に、ただいま申し述べましたような考え方をとる方が自然であり、すなおであるというような見地に立ちまして、営業中の納付金の規定をそのままとりまして、これに準じた計算によって残存財産から納付金を納めていただくという考え方をとりました理由もまたただいま申し上げましたような、大体条理としてそういう関係はずっと認められてきたものを、ここに条文の形にはっきり直したという考え方にふさわしいものというふうな見地から、かような案になったものと承知いたしておるのでありまして、大体ただいま申し上げたところによって御了承を願いたいと思います。
  34. 小山長規

    ○小山(長)委員 ただいまの御説明中にもありましたように、朝鮮銀行及び台湾銀行は発券銀行であったのであります。また発券銀行である日本銀行法には解散の特別規定があるにかかわらず、朝鮮銀行、台湾銀行法にはその解散の規定がなかったということは、一つには明治初年において国立銀行がありましたが、この国立銀行発券業務を取り扱っておると同時に、預金業務、為替業務等の一般銀行業務を扱っておった、こういうような関係朝鮮銀行、台湾銀行はあったのであろうと思う。そういう意味においては、商法の株式会社であったに違いない。商法の株式会社という考え方であったがゆえに、解散の規定を置かなかった、こういうふうにも考えられるのであります。今あなたの御説明によると、条理上、発券の業務を取り扱っておったから、当然に納付すべき残存利益があったのを、この際法律の上に顕在化したのであるという御説明であるけれども、そうするならば、毎営業年度中に営業料金の中からとっておる納付金は取り足りなかった、利益がまだ残存しておって、その残存利益をとるだけ、こういう理屈にならなければならないのであるが、そういう意味でありますか。
  35. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。その点は、発券業務をやっており、また普通の銀行業務をやっておりましたが、営業中の納付金が不足であったことから当然とるべきであるというふうには考えておりません。これは、ただ発券業務に結びついた残存財産があるならば、営業中のそういう業務による利益を納めたという考え方と同じ考え方をもって、残存財産からも納むべきではないか、こういうふうな考え方をいたしておるのでありまして、取り足りない分をとるという考え方ではございません。営業中に、こういう理由に基く利益は国に納むべきであるという考え方が成り立っておると存ずるのでございますから、解放後における清算財産についても、同じような対象になるものがあるとするならば、これを国に納めていただくことが、同じ法律の考え方からいってすなおなものではないか、こういう意味で申し上げたわけであります。
  36. 小山長規

    ○小山(長)委員 その点の御説明については、どうも十分納得いたしかねます。しからば、鮮銀及び台銀の清算の対象になる残余財産関係内容はどういうふうになっており、その残余財産は発券利益によって生じたものであるというふうな説明がつきますかどうですか、その点を一つ……。
  37. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 先ほど申し上げたような考え方でこの残余財産内容を分析いたして考えますと、今日の朝鮮銀行なり台湾銀行なりの保有いたしております残存財産というものは、大体終戦直前の内地からの軍事費の支出等に伴いまして、これらの軍事費の送金業務が主たる業務であったようでございますが、その送金業務を営みます場合におきまして、朝鮮銀行、台湾銀行はその発券の機能を活用いたしまして、これによって内地に相当額の財産ができておることは事実であります。先ほど申し上げた残存財産内容を見ますと、大部分その機能から生じておることは否定できないと思うのであります。従いまして、やはり鮮銀、台銀の発券機能によって生じたものだという説明ができる、私はかように考えております。
  38. 小山長規

    ○小山(長)委員 この朝鮮銀行や台湾銀行発券業務というものは、発券業務そのものが内地において行われたのではないのですか。そして内地から銀行券そのものを向うに送って、向うで発行しておった、つまり発行利益というものはほとんどなかった、そういう関係にあったではないですか。
  39. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいまの御質問は、朝鮮銀行券あるいは台湾銀行券というものはどこで発行したか、また発行利益があったかという御趣旨と思いますが、御承知通り朝鮮銀行ないし台湾銀行銀行券は、平常の場合は内地で印刷をいたしまして、これを朝鮮なり台湾に持って参りまして、発行はどこまでも向うでいたしましたが、内地で印刷をしておったことは事実であります。それから、それに伴う発行利益というものがなかったかという点でございますが、これは、先ほども申しましたように、営業期間中から相当利益が生じまして、納付金をしておった。明白に利益はあったわけでございます。問題は、終戦前の残存財産にそういうものが生じたことと発券の関係でございますが、先ほど簡単に申し上げましたが、内地で軍事費等の送金によりまして払い込みを受けました場合に、朝鮮及び台湾において発券をいたす、こういう形で処理をいたしましたから、相当額内地に積み立てられるという格好になったわけであります。残存財産の生じた原因を御説明申し上げますと、やはり外地において銀行券発行の機能を営んでおったということが裏づけになって、内地資産が積み立てられたわけであります。
  40. 小山長規

    ○小山(長)委員 私が、発券銀行に伴う利益であったかどうかということを究明いたしておりますのは、納付金を取ることが果して妥当であるかどうかということに実は関連するわけでありますが、発券銀行であったからこれだけの財産が残ったと言われるけれども、軍事費の送金というのは、朝鮮銀行を通そうが、第一銀行を通そうが、三井銀行を通そうが、どこを通してもかまわないわけです。そうして三井銀行を通したものは、三井銀行本店に日本銀行券が入って、それはそれで日本銀行券として滞留している。向うへ送金するか、集めた金で銀行へ払うか、そういうことであるに違いない。朝鮮銀行もその点は同じであって、こちらで送金されたものを日本銀行券で預かる。そうして向うで朝鮮銀行券で預金されたもので払っていくのだ、こういう関係は、民間の銀行と何ら変りないと思う。ただそれがほかの銀行ならば、こっちから送金していかなければならぬ、送金していって向うで兌換しなければならない、経費がかかる。しかし朝鮮銀行の場合は、内地で受け取った金をそのままこっちに置いておいて、向うは勝手にそれに見返りの朝鮮銀行券を発行するのだというならば、残った財産は発券に伴うところの財産だ、こう言えるかもしれぬが、全くその点においては一般の民間銀行、第一銀行や三井銀行と同じように、朝鮮銀行財産が残ったのじゃないか、こういうことを、聞いておるわけであります。
  41. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 一般の市中銀行の場合の送金は、お示しの通りであります。これに対しまして朝鮮銀行及び台湾銀行は、銀行券発行の機能を営んでおりましたから、その点が一般の市中銀行と違っておるという点を御説明申し上げたわけであります。それによりまして、朝鮮銀行及び台湾銀行残存財産の大部分はでき上っておる、こういうことが申し上げた趣旨であります。
  42. 小山長規

    ○小山(長)委員 その点同じじゃないかと私は言っているわけです。つまり朝鮮銀行が向うで印刷して向うで払うならば、送金の手数も、運賃もかからないのだから、内地財産を発券利益だと言えるかもしれぬが、内地で印刷して向うへ送っておるのなら、第一銀行や三井銀行などと何ら経費は変らぬし、同じじゃないか、こう言っておるのです。
  43. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 市中銀行の場合は、お示しの通りに、こちらで払い込まれたものを現地に送りまして、これを現地において払い出すという格好になるわけであります。これに対しまして朝鮮銀行及び台湾銀行の場合におきましては、内地で払い込まれた日本銀行券、これがそもそも鮮銀券なり台銀券発行の準備になるわけであります。それを内地に置きまして、そういう形で準備にいたしまして、これが御承知のように国債その他の形になってくるわけでありますが、現地において払い出しに必要な資金は、発券の機能によっても支弁できたわけであります。もとより預金によって払い出すという機能は持っておったわけでありますが、発券によってもそういう支払いができた、ここが一般の市中銀行と違っておる、こういうことを申し上げておるわけであります。
  44. 小山長規

    ○小山(長)委員 そうすると、こういうことですか。第一銀行や三井銀行の場合は、十億円の送金があった、それを本店で受け取った。その十億円を京城の支店で十億円しか払えない。朝鮮銀行の場合は、十億円の送金があったら、それで国債を買って、三十億円の朝鮮銀行券が発行できた、こういう関係ですか。
  45. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいまあげられました例は、私はやや事実と違っておると思います。十億のものをこちらで払い込まれた場合、十億向うに送るという関係はその通りであると思います。朝鮮銀行及び台湾銀行の場合といえども、十億払い込まれて、それに対して三倍のものを現地で出すという関係ではございません。しかしながら、内地においての日本銀行券というものは発券準備になりまして、その準備に対しまして、御承知のように朝鮮銀行法、台湾銀行法に定められました発行限度というものがございまして、その限度までは朝鮮銀行及び台湾銀行銀行券の発行ができたわけでございます。そこで内地に払い込まれた日本銀行券というものは、内地に置きまして、国債その他の形で発券の準備になる、こういう関係を申し上げたのであります。
  46. 小山長規

    ○小山(長)委員 それでは発券業務に伴う残存利益にならぬですよ。為替じりなんです。普通の民間銀行本店から支店に金を送る、すると金は本店に残っておるのですよ。朝鮮銀行の場合にも、本店に残っておってそれが国債となったならば、これは理屈の上からいえば、第一銀行の場合にも為替じりであり、朝鮮銀行の場合にも為替じりなんです。為替じりとして残った金を国債に投資しようが、不動産に投資しようが、その辺は勝手にできるのである。ただそれを国債に投資することによって、朝鮮において発券機能を利用して何倍か、つまり払い込まれた金額よりもよけいな金額を向うで払うことができるというような特権を持っておったなら、それは、内地に残った国債は発券に伴う利益だと言えるかもしれぬ。けれども、単なる為替じりならば、局間の銀行と何ら変りはない、その辺の説明がどうも足らぬのですが、どうですか。
  47. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 通常の市中銀行でありますと、まさにこれは為替じりにすぎないわけでありますが、朝鮮銀行及び台湾銀行の場合には、先ほども申し上げましたように、発券準備になるという点が違っておったわけであります。従って同じものを発券するだけならば、これは何ら発券の特権ということはないじゃないかという御趣旨のようでございますが、これは、準備に対しましてどの程度の発券をするかということは、それぞれ銀行法によって定められておったわけであります。限外発行の道ももとよりあったわけであります。ただ普通の銀行と違う点は、発券準備になるという点が違っておったということを申し上げたわけであります。
  48. 小山長規

    ○小山(長)委員 その点もおかしいのであって、あなたは発券準備という言葉を使われるけれども、民間銀行の場合に、本店に残っておる為替じりは、支店における支払い準備なんですよ、同じなんです。本店で払い込まれたから支店で払うのであって、支店からいえば、本店にあるのは支払いの準備なんです。それと同じなんです。内地で払い込まれたから、京城の朝鮮銀行本店がそれに見合うところの発券をする、従って限外発行の特権があったという、その限りにおいて、あるいは若干の発券利益があったといえるかもしれない。しかし、ここに残っておる国債なり不動産なり、そのものが直ちに発券による利益だということは、これは銀行の為替じりの関係からいってもどうしたって出てこない、だから、その点において確かにこれは無理がある。納付金を取るということそのものの思想はいいかもしれぬ、むろんこれに対しても疑義があるのだけれども、しかし発券利益に見合うところの納付金をこれで取っておるということには重大な疑義がありますよ、その点はどうですか。
  49. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 先ほども申し上げましたように、内地に生じました残存財産がそのまま発券に基く利益ということを申し上げておるわけではありません。ただそういう発券の機能を持っておったために、内地にさような発券の準備の形におきまして、巨額のものが国債等に投資されて残ったという関係を御説明いたしたわけであります。すなわち、それは発券に基く残存財産という意味で申し上げたわけであります。従って私どもは、それが全部発券の特権に基く利益であるならば、これは全部国に帰属すべきであるという立論ができるわけでありますが、さような考え方はいたしておりません。すなわち、発券に基く利益というものを含んでおりますから、営業中の発券機能を営んでおった場合の納付金の割合に応じて納付していただく、こういう考え方を持ったわけであります。
  50. 小山長規

    ○小山(長)委員 それで、その考え方はわかりましたが、すると、ここに定めてあるところの割合、この割合というものは、普通の民間銀行よりもこれだけよけい発券に伴うところの利益があったのだ、普通たとえば臨時軍事費が十億なら十億朝鮮銀行に払い込まれた、あるいは第一銀行に払い込まれ、三井銀行に同じように十億払い込まれたけれども朝鮮銀行の場合には、ほかよりもここに書いてある割合のよけいな発券利益があるのだ、こういう推定ですか。
  51. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 実は少くともこの程度のものはあったという推定のもとに、かような割合を出したのであります。
  52. 小山長規

    ○小山(長)委員 そうすると、少し困らせるように言えば、どうして、そういうような推定の根拠が出てきたかということなんです。
  53. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 この推定は、なかなかむずかしいのでありまして、実は前回法律案を準備いたしましたときは、大体二分の一という考え方もしたことがございます。当時はついに成案として国会の御審議をいただかなかったのでございますが、そういう考え方もあったのであります。またこの発券の特権ということから、残存財産につきましては、もう少し多額のものが発券特権に結びついておるというような推論も成り立つようでございます。そこでいろいろと御議論がございまして、またただいま小山先生の御指摘のように、やはりこれはもはや営業中に相当の納付金をしておるのであるから、解散の段階においてまで納付金をとるということは無理ではないかというふうな考え方もございます。いろいろな考え方がございましたので、かれこれ十分検討を遂げまして、結局営業中において納付をしていただいた割合程度のものを納付していただくという線が最も妥当な線として、一応その線に落ちついた次第であります。
  54. 小山長規

    ○小山(長)委員 これはいろいろ御苦心の点もあったろうと思うのです。しかしながら、納付金をとるということが果して妥当であるかどうか。それからこのような割合の納付金をとることが果して妥当であるかどうか。これは大いに疑問があるところなんです。しかしこの点については深く追及はいたしません。  次に一つ、問題点は、こういう納付金を鮮台から取る。これはいわば発行利益によって生じた利益を取るんだという思想でいくと、将来、たとえば韓国あるいは台湾との間に、そういう通貨に対する処理事項が出てきた場合に、政府は通貨利益を取ったじゃないか、だから通貨の処理に関する取りきめなどができた場合に、政府はこれに責任を負わなければならぬということが生じはしませんか。
  55. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。ただいま御指摘の点は、いわゆる通貨債務についてのお話でございますが、朝鮮銀行及び台湾銀行銀行券に対しまして、学説といたしましては、いわゆる通貨債務というものを、這般の終戦のような事態の場合に認むべきかどうかというようなことについていろいろ議論がございました。しかしながらこの点は、一応今日の閉鎖機関清算の方式といたしまして、朝鮮銀行及び台湾銀行につきましては、その発行券を在外債務ということに計上いたしまして、これを在外資産負債と比較いたしまして、大体両行ともに資産超過であるということに認められております。従って、この通貨債務に相当するものを国内の財産から留保する必要はないというのが現実事態でございます。ただいま御指摘のように、いきなり国の責任になってくるかどうかにつきましては、まずもって朝鮮銀行及び台湾銀行の在外資産の面におきまして一応のカバーはついておる。そこで一つのクッションがあるわけであります。しかし私どもは、そのクッションにくるまでに、先ほど申し上げた通貨債務というものを理論的に認むべきかどうかという点について、やはり日本側といたしましては、一般の例に沿うた学説から申しまして、わが方に有利なような主張をなすべきである、かように考えております。
  56. 小山長規

    ○小山(長)委員 最後に一つ伺っておきますが、この閉鎖機関である朝鮮銀行あるいは台湾銀行などが全部清算を終って、そうして第二会社を作った、そうすると、その閉鎖機関なるものはなくなってしまうのでありますが、日本は、朝鮮に対しては日本人の財産請求権があると言っておる。その請求権を行使すべき対象がなくなってしまうのであります。つまり朝鮮に対して日本人の請求は、朝鮮殖産銀行あるいは朝鮮銀行、台湾銀行もこのままの財産を持っているんだと外務省は思っておられるはずなんです。その主張は、おそらく最後までやらなければならぬのでありますが、その請求権を行使する実体というものがなくなってしまう、こういうことになりませんか、その点はいかがですか。
  57. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 外務省からも別途お答えをいただくと思っておりますが、私ども閉鎖機関の監督者としての立場でございますが、これは、私どもとしては、そういう請求権を全然放棄してはおりません。これはあくまでも行使するというふうに考えております。
  58. 森治樹

    ○森説明員 大蔵省の御意見を十分しんしゃくしてやっていきたいと思います。
  59. 小山長規

    ○小山(長)委員 第二会社ができても、閉鎖機関である朝鮮銀行に対して、今の在外資産の請求権を持つのか。第二会社としてできたものに在外資産の請求権を持つのか。どっちに対して持つのですか。
  60. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 どこまでも在外資産負債の関係において、閉鎖機関はなお残るという考え方でございます。その結果新会社がより多くの資産を取得しますような場合は、第二会社の方の資産がさらにふえるという事態も考えられるわけであります。
  61. 小山長規

    ○小山(長)委員 それでは、自余の質問大蔵大臣が参りましてからいたすことにいたしまして、留保いたしておきます。
  62. 石村英雄

    ○石村委員長代理 午前中の会議はこの程度にとどめ、午後一時半から再開することとし、これにて休憩いたします。     午後零時十七分休憩      ————◇—————     午後一時五十一分開議
  63. 松原喜之次

    松原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  閉鎖機関令の一部を改正する法律案及び旧日本占領地域本店を有する会社本邦内にある財産整理に関する政令の一部を改正する法律案の両法律案を一括議題として質疑を続行いたします。小山長規君。
  64. 小山長規

    ○小山(長)委員 閉鎖機関令について質問を継続いたします。  午前中に事務当局と応答をかわしたのでありますが、この閉鎖機関令の一部改正に伴いまして、朝鮮銀行あるいは台湾銀行閉鎖を解除され、そうして第二会社を作るためには、納付金を納めない限り解除もしない、第二会社指定もしない、こういうような規定になっておりますことは、いろいろ無理な点もあるようである。第一この納付金を納めることの根本的な理念は何だと僕は聞いてみましたところが、発券銀行であったから、発券に伴う利益が残存財産として残っておる、だからそれの利益を吸収するのであるというのが事務当局の答弁であります。ところがそれはそれとしても、しからばその発券による利益の吸収は、ここに定めてあるこの割合でとれば、可もなく不可もなくとれるのかという質問に対しては、なかなか答弁はそう的確なものではなかったのであります。  そこで、その問題はその問題といたしまして、次に移りたいのは、この朝鮮銀行あるいは台湾銀行閉鎖機関の解除を申請して、そして所定の手続に従って第二会社を作りたい、こういうような申請がありました場合には、それがたとえば新しく銀行を作るということであっても、政府としてはこれを承認していこうという御方針であるかどうか、これを一つ大蔵大臣からまずもって伺っておきたいのであります。
  65. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 銀行を設立するという申請がありますれば、その銀行がどういう銀行であるか、特に今日日本の経済上あるいはまた社会的に必要としておる銀行でありますれば私は免許を与えたい、かように考えております。
  66. 小山長規

    ○小山(長)委員 大臣も御承知のように、自由党においては、不動産銀行を作りたいということが党の基本方針となっております。そして、たまたまここに朝鮮銀行残余財産をもって不動産銀行を作る、しかもそれは、中小企業を対象としたところの不動産銀行を作りたいのである、こういう希望でございますが、このような銀行については、その設立認可について踏み切りになる御方針であるかどうか、重ねて伺っておきたいのであります。
  67. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 特に中小企業を相手といたしまして不動産担保の金融をするという銀行の設立の申請がありますれば、私これは許してもよかろう、かように考えます。
  68. 小山長規

    ○小山(長)委員 この銀行は、不動産担保の銀行ということでありますが、この銀行のよってもって立つところの準拠法というのは、長期信用銀行法によることが最もいいのではないかと思うのであります。その点については、どういうふうにお考えになっておられますか。
  69. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 不動産を担保にして融資するということになれば、自然長期の金になります。従いまして、長期信用銀行法に基く銀行となるだろうと、かように私は考えております。従いまして、その法律に基いて許可をする、かようになろうと考えております。
  70. 小山長規

    ○小山(長)委員 長期信用銀行法に基いてということでありますと、ここに金融債の発行ということが起って参ります。そうしてこの銀行がかりに申請され、認可されるということになりました場合に、最も大事なことは何かと申しますと、むろん預金業務を扱いませんから、従ってその不動産担保の貸し出しをするための資金源で、その資金源は、むろん金融債によってまかなっていかなければならぬことに相なります。ところが、その金融債をだれが引き受けるかということになると、当然個人が引き受けるのではなくて、都市銀行あるいは地方銀行等の金融機関が引き受けることになるだろうと思うのであります。その金融機関がそれらの金融債を引き受けるについては、ただ強制命令をしてみたところが、とうていこれはできるものではなかろうと思う。やはり都市銀行あるいは地方銀行が納得して、よし一つこの不動産銀行をもり立ててやろう、中小企業のためには金融上いろいろな隘路がある、あるいは現在の金融制度についていろいろ盲点がある、その盲点のためにできる銀行でありましょうから、われわれの党としてもそれをねらっているのでありますが、それにはやはり都市銀行、地方銀行がその盲点のあることを認識し、あるいはこれらの不動産担保金融というものはなかなかむずかしい問題であるというようなことを認識して、これをもり育てていこうという気がまえが都市銀行あるいは地方銀行の間に起ってこないと、なかなか定期的に一定の金融債を売っていくということは非常に困難だと思う。その点について、大蔵大臣としてはどのような心がまえで地方銀行に対し、あるいは都市銀行に対して臨んでいかれるお考えであるか、こういうことを一つ伺っておきたいのであります。
  71. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今日この不動産抵当銀行を設立します場合に最も問題となるのは、やはりこういう銀行が果して収支が償っていくかどうかという点だと思います。特に今日は、いろいろな法令で家屋、土地等について制約があります関係から、一そうそうであると思う。従って不動産抵当銀行を設立される方々がどういう事業計画を持っておられるか、その際につまびらかに検討を必要とする次第であります。しかしまた、他面資金コストといいますか、先ほどからお話しのありますように、出資金以外はどうしても金融債によらなければならぬという問題がある。そこで私は、今これがどういうふうにペイするかということについて、これは私が作るわけでもありませんから、詳細に立ち入って申し上げるわけにもいきません。そういう申し出——こういうふうにしてペイするから、こういう銀行を作るという申し出があったときに検討したいと思いますが、しかし御承知のように、単に当事者だけでそういうふうないい結果を生ずる銀行ができる情勢にも必ずしもないように思います。こういう銀行が所望されるとすれば、大蔵省といたしましても、こういうものが成り立つような協力を惜しむものではありません。そういう点につきまして、やはりペイするようなある一定の資金コスト、同時にそういうふうなコストの資金が一定量あるというようなことを一応構想しておりまして、それ以上については、普通の金融債でいけるように、こういうふうなことを今私頭に描いておるのでありまして、そういうふうな考え方である限りにおいては、市中銀行等の協力、特に大銀行の協力を得るだろうというふうに期待をしております。ただこういう銀行について、むしろ一番問題になるのは、あるいは相互銀行かもしれません。ところによっては、相互銀行が営業の関係から、いろいろと考えておられる点もあろうと思います。またそういう点については、両方ともうまくいくように十分配慮を加えていく必要があろう、かように考えております。
  72. 小山長規

    ○小山(長)委員 相互銀行の問題は、またあとで申し上げるといたしまして、今大臣が言われたように、新しい不動産銀行を作ろうというのでありますが、この残余財産は、朝鮮銀行の場合についていいますと十七億見当だという。この十七億見当の金で長期の不動産金融を始めてみましても、これは資金が足らぬことはわかり切っているのであります。そこで、いわゆる追加資金量というものが必要になってくる、あるいは増資によりまするか、あるいは社債によるかはわかりませんが、ともかくそういうような資金を作ることが必要であり、同時にまたこの銀行がペイするためには、われわれしろうと考えでいいましても、どうしても資金量が三百億見当にならないと、なかなかペイしないのじゃないかというふうに考えられる。おそらく一年ないし二年の長日月を要するだろうと思うのでありますが、その間にそれだけの資金量を確保する方法を講じなければならない。これは何としても大事なことであります。しかしながら、金融債でその資金を確保していくのでありますが、金融債が売れていくためには、銀行そのものがペイする見通しがついていなければならぬということは、これは当然第一のことであります。銀行の設立計画によってみまして、その銀行がペイしないということであれば、幾ら大臣が奔走されても、金融債は売れないであろう。でありますから、ペイすることがまず第一でありますが、その次には、この都市銀行あるいは地方銀行等、金融債を引き受ける側との町の人的な協力といいますか、意思の疎通というものがなければ、やはり私はいかぬのじゃないかと思います。そういう意味では、この朝鮮銀行の側においても、自分たちの残余財産銀行を作るのだというような考え方では、実はいけないのであって、国民大衆のために不動産担保金融の銀行を始めるのだ、そしてそれは中小企業者の救済になるのだ、こういう大きな目的のために動いてもらわなければならぬと思うのであります。その意味においては、ただ残余財産でおれたちが作るのだ、従って金融債の方は、政府の力によって強制的に売っていくのだ、こういう考え方では、私は一切成り立たぬと思う。やはり銀行を作る最初から、ペイすることはもとよりでありますが、金融債を引き受けてくれる側との間にも、設立に当っていろいろ相談をするとか、あるいは人的な配置についての相談をするとか、人的、物的あらゆる面にわたりまして連絡を緊密にして、そして初めて私はこの銀行なるものは所期の目的を達成していくと思うのであります。そういう意味においては、ただ単に朝鮮銀行財産をもって作っていくのだという考え方だけでなしに、市中銀行の金もこれに投入されて、そうしてやっていくのだということが第一でありますが、そのあっせんをするのはやはり私は大蔵当局でなければならぬだろうと思うのであります。そういうあっせんの労をとられ、そしてこの銀行が途中で野たれ死にすることがないようにするために、あらゆる便宜、あらゆるあっせんをおとりになるお考えがあるかどうか、これも一つあわせて伺いたいのであります。
  73. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私も同じような考えで、むろん大蔵省としてもあっせんの労をとります。なおこのあっせんの労をとると申しますか、この機会に、私は若干その構想についての考えを御参考に申しておくのがよかろうかと思うのでありますが、それは、私は、やはり初めからあまり高い理想で、大きいものを考えるのは必ずしも適当じゃないだろうと思うのであります。ある一定の規模の銀行にしておきまして、そして冴え方としては、中小企業金融というものを指向されて、その中小企業金融の中で、特に不動産抵当ということに重点を置く、こういうふうな構想です。それで資金関係では、残余財産の、具体的にいえば十七億円、これに低利なといいますか、何らかの形において、資金コストの安い資金を相当額流入するようなことを考えまして、そして、大体そういう資金関係であれば、ある一定量のまた普通の金融債を発行しても、資金運用上収支が償う、こういうふうな形にしておく。そしてある意味において、これは金融機関全体から見て、今日欠けているところを補うというような機関であるという意味において、可能な限り他の金融機関の協力を資金的にもあるいは経常的にも求めていく、こういうふうな考えでいけばいいじゃなかろうか。それについては、今私がここでかれこれ申すのは、かえって適当でないのでありますが、金融界といいますか、あるいは銀行の間においても、十分協力しようというような様子もうかがわれますので、実現性を持つだろう、かように考えているのであります。
  74. 小山長規

    ○小山(長)委員 ただいまの大臣の言葉をそんたくいたしますと、市中銀行が普通の金融債よりも低利な金融債に応募して、それに残余財産の十七億を加えて一応出発する、そしてその後において逐次金融債を発行しながらやっていくのだ、こういうふうな考え方がよかろう。こういうお考えのようでありますが、むろんその点については、大臣の御努力を仰がなければいかぬだろうと思う。同時に、しかしまた一方考えてみますと、海のものとも山のものとも知れぬ新銀行ができるわけであります。しかも、それはわれわれの党の方からいえば、絶対必要な不動産金融機関を作っていこうというのでありますから、それが途中で野たれ死にするようじゃ困る。これはあくまでも一つ銀行として新分野を開いていってもらうのでなければならぬのでありますが、先ほど申しますように、そのためには、毎年一定の資金量が逐次ふえていく態勢でなければならぬ。金融債がふえていかなければならぬはずであります。その金融債が売れていくか売れていかぬかというときには、従来の長期信用銀行のように、たとえば発足した場合には、資金運用部によってその起債の一部を引き受けるというような、いわば民間でいうと寄付金の筆がしらというようなことで、資金部がまず引き受けて、そしてあと地方銀行に金融債の引き受けを頼んだというような先例があるのでありますが、やはりそういうようなこともおやりになる心がまえがないと、所望の額まで資金量がふえていくということは非常にむずかしくて、やがては野たれ死にということにならぬとも限りませんので、その点についてのお考え方というものも考えておいていただかなければならぬと思うのでありますが、おそらく現在のところ、具体的にそういうふうな御返事もできますまいが、方向としてはそのような方向に行くということに了承してよろしゅうございますか。
  75. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 新しい銀行ができます場合に、それが将来十分やっていけるという見通しが立たない限り、これはとても免許をするわけにもいかないと思います。従いまして、大蔵省としてはそういうふうな存続の見通しが十分立ち、または立つような措置もあわせとりまして、その上で免許をする、こういうことになると思います。
  76. 小山長規

    ○小山(長)委員 それからこれは少しこまかくなりますが、朝鮮銀行や台湾銀行が保有しておる国債は、これは登録国債であるようでありますが、この登録国債を引き受けるときに、日本銀行の方では、発行価額で引き取るという約束があったやに聞いており、またそのようなことで、ほかの金融機関を通じて買い戻しをしたような先例もあるやに伺っておるのでありますが、今度の鮮台銀の解散のときにおける国債というものは、どのような評価で、どういうふうにして処分されるものであるか。というのは、これは一つは納付金の問題もありますし、税金の問題もありまして、現金化することが必要であることは、予算等においてこれは前提とされておるわけでありますので、この評価額をどういうようにおきめになるのか、その辺の御方針を伺っておきたいのであります。
  77. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 鮮台銀の今日本銀行に登録されております国債は、登録しておるだけで、別に日本銀行でこれを買い上げるというお約束はなかったように存じます。そこで、それならこの国債をどういうふうに処分するのが今日適当であるかということになりますが、今日日本銀行で公債を買い取るということは、やはり通貨政策の点からいえば適当でないので、今市場もゆるんでおりますし、市中で評価をするか引き取らせていきたいと私は考えておるわけであります。
  78. 小山長規

    ○小山(長)委員 その点事務当局に確かめておきますが、日銀が売り出すときに九十八円だったのですが、九十八円で買い戻すという約束はなかったのですか。
  79. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま大臣からお答えになりましたように、文書でそういう御契約をしたことはございません。
  80. 小山長規

    ○小山(長)委員 ちょっともとに戻りますけれども、新しい不動産銀行ができるであろうというようなことで、相互銀行方面が、時分たちの強敵が現われるかのような考えのもとに、不安の気分があるやに伺うのでありますが、しかしながら不動産銀行の目的は、中小企業であり、また不動産担保ということでありますので、この目的は変えるわけにはいきますまいけれども、何らかこの間に調整の措置を講じて、同じように中小企業をやっておる相互銀行あるいは信用金庫等が不安に陥らないように、大臣として何か御構想がございますか。
  81. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 不動産抵当銀行ができました場合における相互銀行との関係でありますが、私は、問題は抽象論をしてもいたし方がありませんが、どこの地方でどういう銀行と競合関係が生ずるかという具体的な問題になると思います。しかしそれについては、私当事者からは、特に相互銀行から直接話も聞いておりませんし、今何とも申し上げかねるのであります。しかしいずれにいたしましても、相互銀行と何らか競合関係、あるいは競合があっても、特に相互銀行がお困りになるような事態発生しないように処理するつもりであります。つけ加えて申し上げたいことは、私はそう御心配なさることはないのじゃないか、大きな力を持っておる銀行は、とうてい卒然としてできるものではありません。特にこの銀行は非常な制約を受ける、言いかえれば業務分野が限られておる、資金調達方法にしても、金融債ということに限られる、その資金量においても、さしあたりは少くともそう大きなものにはなり得ない、そして運用についても制約を受けている、しかもこういうような銀行は、所在するところは大都市ということになると思います。してみると、この銀行ができたから他の銀行がそり脅威を受けるというようなことはあり得ないと思うのでありまして、かりにあるとすれば、適当な措置をとる、そういうことがないように、できるだけ従来の欠陥とされているところを、この銀行が特に補っていくという方向に指導して参りたいと考えております。
  82. 松原喜之次

    松原委員長 関連質問申し出があります、これを許します。高見委員
  83. 高見三郎

    ○高見委員 私は最初に、午前中小山君が質問いたしておりましたが、朝鮮銀行、台湾銀行残余財産の中から納付金を納めさせる、この措置法律的な根拠が、朝鮮銀行法あるいは台湾銀行法によっておるものであるか、あるいは別個な立場から作られるものであるか、まずその点を明らかにしていただきたいと思います。
  84. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その点につきましては、鮮台両行の根拠法、それから閉鎖機関令にも直接的な規定はないようであります。そこで別途立法をして、これによって処理をいたしたいと考えるわけであります。
  85. 高見三郎

    ○高見委員 朝鮮銀行法、台湾銀行法の納付金の条項によるものではないということであると、新しく立法をされるわけでありますが、この場合に、それでは発券銀行であり、発券業務を行なっている銀行に対して、その営業収益を納付させるという制度があって、これに準じてとるということでありますと、これは憲法上所有権の侵害になるという考え方が成り立たないものであるかということを、まず事務当局からでけっこうでございますが、お伺いいたします。
  86. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答えいたします。けさほど小山委員の御質問に対してお答えを申し上げましたように、朝鮮銀行、台湾銀行法律の中には、解散の場合の規定がございませんで、ただいま大臣からお答えになりましたように、やむを得ず今回の閉鎖機関令改正によりまして、新しくお願いをしているわけであります。しかしながら発券の特権と申しますか、機能から生じます利益につきましては、御承知のように営業中におきましての規定があったわけでございまして、解散の場合の規定がたまたまなかったのであります。しかしながら、解散の場合の残余財産がどういうところから出てきたかという点を究明して参りますと、けさほども申し上げたように、発券の特権とも結びついているということを申し上げたわけであります。  そこで、営業中の発券に基く利益につきまして納付金を納むべしという法律規定がありまして、これが今日もまだ生きておるのでございますが、たまたま残余財産についてそういう規定がございませんが、その対象は本質的に何も変りはないのあります。そこで、たまたまそういう規定がないとは申しながら、それは明文がないだけのことでありまして、けさほども条理ということを申し上げたのでありますが、さような筋道と申しますか、事物本然の姿と申しますか、そういう関係を今回成文化する、こういう意味におきまして、これは憲法に真正面からどうこうという問題ではなく、いわば本然的に国に帰属すべき利益につきましての定めを明定していただく、あるいは顕在化していただく、こういう言え方をとっておる次第でございます。
  87. 高見三郎

    ○高見委員 私そこが問題だと思うのであります。発券銀行という特権を持っておった、その特権に対しては納付金という制度があって、今日まで納付金を取ってきておったのでありまして、それでは、発券銀行の特権に対して取り方が少かったという結論になるのでありますが、そういうことは言えないはずだと思う。発券銀行の特権に対しては、すでに納付金を取っておった。ところでその残余財産について、解散の場合に発券銀行の特権によって得たであろうという推定のもとに、一つの立法によって、憲法上認められておる私有権を侵害するという結果になるおそれはないか、この点については、根本的にどうお考えになっておりますか、伺っておきたいと思います。
  88. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいまの御質問は、営業中に納付金を取っておったが、取り足りない場合があるならばそれは別であるが、取り足りないものを取るのでなく、新しく取るならば、これは違憲ではないかというふうな御趣旨のように拝聴いたしたのでありますが、これは、営業中の分はそれぞれ法律によって取っておるわけでございます。しかしながら解散の場合の規定がなくて、その解散の場合に、残余財産がどうして生じたかという点が問題でございます。ただいま推定によってとおっしゃられましたが、これは推定ではございませんので、けさほど小山委員にお答えを申し上げましたように、国庫送金というものと発券業務とがからみ合いまして、いわば発券機能から残余財産の大部分が発生しておる、こういう事実があるわけでございます。そこで、営業中に発券利益を納めさせるという条理、あるいはそういう法律がちゃんとあったのでございますから、そういう考え方を残余財産に対してやはりすなおに適用していくという考え方をとったわけでありまして、これは、その残余財産のよって生じた原因は、発券業務によって利益が生じたのと同じ事由によって生じた財産である、こういう考え方をとっておるわけであります。たまたまそこに明文がございませんが、そういうものは本来国の特権としての通貨発行の特権に結びつくものでございますから、これを一株式会社株主に専属させるべきものではない、こういう考え方を発券の業務営業中においてもとっておるわけでございますから、残余財産についてもそういう考え方をとるのが、これは事物本然の理に沿うわけであるという趣旨で申し上げたのであります。なおこの点は、今日の日本銀行規定序におきましても、明らかにさような規定が設けられておるということを御参考までに申し上げておきます。
  89. 高見三郎

    ○高見委員 憲法上の疑義につきましては、私まだ釈然とはいたしませんが、発券銀行の特権が残余財産を作成しておる大部分であるというのなら、一つ具体的に何と何とがそうなっておるかということをお示し願わなければなりませんが、時間もありませんから、これはその程度にいたします。  私は大蔵大臣に、先ほどの小山君の質問に関連してお伺いいたしたいのであります。党が中小企業対策として、中小企業の不動産金融を考えるということになっておるわけでありますが、不動産金融銀行というものが果して現在のところで成り立つものであるかどうか。と申しますのは、現在のように借地借家法だとか、法律上の制約のいろいろあります際に、一体大蔵省は、御調査になっておると思うのでありますが、中小企業者の担保として出し得る不動産の物件というものが、金額に見積ってどのくらいあると御推定になっておりますか、まず最初にそれを伺っておきたいと思います。
  90. 東条猛猪

    ○東条政府委員 ただいまのお尋ねの、全国でどれくらいの金額が不動産の担保金融の対象になり得るかという具体的な計数は、実は私どもも法務省の方ともいろいろ連絡して取り調べておりますが、この場で的確に責任を持って、これくらいでございますということを申し上げる計数は持ち合せておりませんが、いわば側面的な資料としてちょっと計数を申し上げてみますと、全国銀行で不動産抵当の貸し出しが、現在におきまして大体五千二十二億円というくらいの推定をいたしております。それから相互銀行が大体九百六十五億、信用金庫が四百十億、商工中金が大体二百三十三億、政府関係機関といたしまして中小企業金融公庫が大体三百四十億見当じゃなかろうか。国民金融公庫になりますと、御承知のごとくいわゆる零細なる、国民大衆の金融機関ということを予定しておりまするので、ぐっと落ちまして、大体十六億円ということに相なっておるわけであります。冒頭に申し上げましたように、全体的な担保の金額というものを導き出しますのは非常に困難でございますが、一応そのようなことを材料として御参考に供したい、かように思う次第であります。
  91. 高見三郎

    ○高見委員 これ根本的な問題になりますが、中小企業の今日の一番大きな悩みは金融の問題である、ことに不動産金融というものが十二分に使われておらない、不動産金融の不動産の担保価値というものが、法律的、制度的に非常に制約されておるために、十二分に使われておらないというところに大きな原因があると思う。そこで大蔵大臣としては、この銀行をお作りになるならば、その前に担保の範囲というものを拡張する国全体としての一つの政策をお立てになる必要はないのであるか、これに対してどういうお考えを持っておいでになるか、まず伺っておきたいと思います。
  92. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 不動産担保専門の金融業務を営み、かつこれが収支相償うというふうに打っていくためには、お説のように、今日の土地並びに家屋等に対するいろいろな制限的な法令の政廃を必要とすると考えております。特に今日の借地借家法というようなもののもとでは、これを担保にとって営業が成り立つかどうか、私非常に疑問を持っております。そこで私の考え方は、先ほども申し上げましたように、この中小企業に対する金融というものを指向して、その中で特に不動産というものを重点的に一つ取り上げて営業をやっていく、特に今日中小企業でお困りになっておるのは、別に借地借家法の適用を受けるのではないですが、自分は小さい工場を持っておる、ところがどうもこれは資金的にもどう——むろんそういうものは、中小企業金融でもできるじゃないか。いろいろありますが、これはボリュームの問題になりまして、中小企業金融だけではなかなか手が及ばぬ、今日ここに欠陥があるから、そういう点を補っていこう、あるいはまた自分の住宅を持っている、これは自分が住んでおるのだから、なかなか担保にとってくれにくいということもあるが、こういうこともやったらいいじゃないか、そういうふうなこと、あるいはこれは非常に専門的でないような言葉になるかもしれませんが、そういうふうな方向をとりつつ、中小企業金融ということでいけばこれはいくんじゃないか。特にそういう困難性があるから、資金コストにできるだけ便宜をはかるような道も講じたい、かように考えております。不動産だけを抵当にして、しかもこれを大規模にやろうとなれば、お説のような法令の改正も必要とするだろうと私も考えております。
  93. 高見三郎

    ○高見委員 今大蔵大臣の御答弁の中で、資金等の獲得について特別に考えなければならぬというお話がありましたが、私もその通りだと思います。さて、それでは朝鮮銀行残余財産十七億でこの仕事ができるわけじゃありませんし、いずれ金融債の問題が出てくると思う。そこでお伺いいたしたいのですが、しかし、これは申請が出てみなければと言われるだろうと思いますが、大体大蔵大臣としての御構想は、その場合に資金量はどれくらい初年度に集め、将来どれくらいの程度のものにしたいというお考えであるか。また金融債の金利は大体きまっておるようですが、これをどれくらいにするか、あるいは貸し出しの金利をどのくらいにすれば不動産銀行というものがペイしていくかという大体のお見通しがあれば、一つお聞かせいただきたいと思います。
  94. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 数字的な規模といいますか、あるいは数字をもってこういうふうになるということは、大蔵当局がやっておるかどうか私知りませんが、これは設立者において十分考えて持ってくると思うのであります。あるいは銀行局長から御答弁ができるかもしれませんが、幾らか政策的な面について、若干私から御答弁申し上げておきます。これは資金で十七億というものがあります。それでは不足する。そこで、これは私の幾らか希望的意見になるかもしれませんが、これは実現性があると思っておるのですが、できれば、そこでコストの要らない資金というものを相当金額ここで出してもらいたい。できれば出資の形がいいのではないか、こういうふうに思っておるのですが、あるいは出資という形が困難であるかもしれません。あるいはまた全然コストのかからぬというのも無理かもしれません。そうすると、出資にかえまして、ある程度低い金利の債券を発行したい。これを一つ持ってもらう。持ってもらうには、結局は金融界の適当な方面にこれを持っていき、協力関係を持っていただく。そうしてその資金ボリュームがどれくらいになるか、これは相当資金コストは安いものになるかもしれません。そうすると、普通の金融債の発行というものを考えて、資金コストからいけば私はペイするというように持っていきたい。数字的にどこがどうというふうなことは、私申し上げかねるし、また私自身が計算をしておりません。あるいはある程度事務当局にあれば、事務当局から説明をしてもらいます。
  95. 東条猛猪

    ○東条政府委員 新しい銀行が免許に相なります場合の採算の関係、あるいは経営の具体的内容は、やはり申請者の申請内容を十分大蔵省といたしまして検討をいたしまして、ただいま大臣から御答弁がありましたようなことも十分頭に入れました上の問題でありまして、具体的なケースにつきまして申し上げるのは、まだその時期でもありませんし、また私は適当でないと思います。ただ資金量の問題について御参考になりますことを申し上げますと、先ほど来小山委員の御質問があった点でありますが、現在の長期信用銀行法の規定によりますと、自己資金の二十倍までの債券の発行ができるという規定になっておりますので、今大臣から御答弁がありましたような方法によりまして、自己資金の量がきまりますれば、いわゆる金融債と申しますか、借入金と申しますか、そういう全体の金額が出て参る、それによってこの銀行資金量は大体の見当がついて参る、かように考えますが、こまかい貸付の条件、あるいはそれに伴う収支採算のようなことは、具体的な申請内容を待ち、いろいろな観点から検討を加えて申し上げるべきもの、かように考えております。
  96. 高見三郎

    ○高見委員 そういたしますと、その場合に、今度は既存の中小企業金融機関との間に摩擦競合が起ることが考えられる。と申しますのは、これが新しくできます銀行資金のコストと既存の信用金庫あるいは相互銀行資金コストの間には非常な開きがある。開きがあって、しかも同じような競争をするということになりますと、これは関取とふんどしかつぎとを、同じ土俵に上げて勝負をさせる結果になる、これを一体どう考えられるか。大蔵大臣は、なるべく摩擦がないように考えると言われるが、具体的にどうお考えになっておるか、一つお聞かせをいただきたいと存じます。
  97. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、一つには一番具体的なものは融通に対する金利の問題であります。特に安い金利で貸し得る銀行もあります。そういうふうな貸し出し金利で、たとえばそうした銀行等と競争するということは絶対にあり得ない、そういうことはまたさせないように措置をします。あるいはまた店舗の問題について、適当な調整措置を加える、かようなことが一番おもな方法になるのではなかろうかと考えております。
  98. 高見三郎

    ○高見委員 だんだん時間を取りますから、終りますが、私は、申請が出てないのでございますから、大蔵大臣にこの際特にこの点について具体的にどうするという御返事をいただくことはできないと思う。申請が出たときに十分にお考えをいただかなければならぬと思いますので、念のために伺っておきますが、そういう場合に、中小企業金融機関との間に非常な摩擦競合が起るという場合があり、しこうしてまた中小企業金融機関が非常な打撃を受けたという結果が出ました場合には、大蔵大臣としては、これに対して積極的に救済の措置を講じていただけるかどうか、これをまず伺っておきたいと思います。  もう一点、中小企業金融対策が中小企業対策の中心問題であることは、これは何人も否定できないところでありますが、遺憾ながら今日までの中小企業対策における金融政策というものは、ボーダー・ライン以上のものに対しては金融で解決する面が非常に多いのであります。しかしながら、中小企業のほんとうに救済をしなければならないボーダー・ライン以下のものについては、幾ら金融政策が、資金が豊富に用意されましても絶対に貸すものではない、借りられるものではないということは、これは、大蔵大臣は実によく御承知になっておると思う。むしろこういう制度を設けられるならば、その前に私どもが政策として考えなければならぬ問題は、このボーダー・ライン以下にある中小企業者を救済するために、ただいまは保証制度というものがそれぞれありますけれども、保証制度というものは個々の貸し出しについての制度でありまして、損失全般の全体の割合から見る保証制度ではないのでありますから、当該取り扱い銀行になりますと、危ないものには絶対に貸さないということです。そこで、この際これだけの御決意をなさるものならば、一つ公企業体として出発されるべきだと思いますが、保証制度とあわせて、金融機関に対する融資の保険制度をお設けになって、そして少々危険なものにも貸せるだけの道を講ぜられるだけの御決意があるかどうか、あわせて伺っておきたいと思います。
  99. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 第一の点の、かような銀行の申請が出て許可された場合に、その新しい銀行と、既存の同種というか、あるいは同系の銀行との大きな摩擦が生ずるようなことは、させないように考えております。  それからこういうふうな銀行を考えるならば、まず中小企業の金融政策について、もう少し根本的に従来の政策を考え直してみたらどうかというような御意向であったようでありますが、これは、私はやはり同じ考えであります。こういうふうな民間的な銀行が徐々に中小企業にしても整備するにつれまして、私は中小企業金融を専門としておる国の銀行というか、国の金融機関、これがお説のような、普通のいわゆる金融ではやりにくいような困難なものを主として扱っていく、こういうふうな切りかえを今後やっていったらいいと思います。一般の中小企業金融機関の融資に対して国が保険をするということは、私今のところ考えておりません。
  100. 小山長規

    ○小山(長)委員 最後に一件だけ伺っておきたいのですが、先ほど私に対する答弁としまして、大臣は不動産銀行の申請があった場合には、その条件を見て認可する方針だ、こういう答えでありますが、その場合の心がまえは、認可の申請がどうも従来の基準に合わぬというならばはねるという考え方なのか、何とか合わせるように指導して、この銀行が成り立つような指導をやっていくのだという心がまえで臨まれるのか、その一点だけ、最後に伺っておきたいと思います。
  101. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大へんむずかしい御質問でございますが、御相談がありますれば、できるだけ御相談に応じていきたい、かように考えております。
  102. 松原喜之次

    松原委員長 次に横錢重吉君。
  103. 横錢重吉

    横錢委員 先般閉鎖機関の問題に関係して、朝鮮における私有財産の取扱いについて、外務省の所信をただしました。このときの答弁はあまり明確でございません。ところが最近の新聞によりますと、先日アメリカのダレス長官が来日をしまして、     〔委員長退席、石村委員長代理着席〕 そのときに朝鮮の方では、ダレス長官を通じて、日本と日韓会談の交渉をとりなしてもらうようにということを頼んだということが出ておりました。そうしてこれに伴うところの予備会談が行われたというような点も報道されておるわけであります。これらが現在どの程度、予備会談、あるいはまた会談を開くことの交渉が進んでおるのか、この点について、一つ承わりたいと思います。
  104. 森治樹

    ○森説明員 韓国との交渉は、すでに御承知通りに、終戦後から今日まで続けられてきたわけでございます。もっとも、この間数次の中断があったことも御承知通りでございます。最近日本といたしましては、李承晩ラインの問題はともかくといたしまして、多数の六百数十名という日本人の漁夫が釜山に抑留されておる、これをいかにしてか日本に返してもらいたい、こういう問題を中心としまして、それでは大村に収容されておる韓国人をどうするかという問題が提起せられまして、この問題が解決するならば、日韓会談の再開というものに非常な光明が持たれるということでございまして、重光大臣と金公使との間にもその点が話があったということを承知いたしておりますが、最近の情勢といたしましては、日韓会談の早期開催に関して、非常に明るい見通しを持ち得るに至った段階にあると考えます。
  105. 石村英雄

    ○石村委員長代理 皆さんにお諮りします。大蔵大臣は三時に参議院の方へおいでになる御用があるそうであります。もし大蔵大臣への御質問の方は、先にやっていただきたいと思います。どなたかありますか。     〔「みんな大蔵大臣だ」「今度あとでまた来てくれればいい」と呼ぶ者あり〕
  106. 石村英雄

    ○石村委員長代理 では横錢君。
  107. 横錢重吉

    横錢委員 日韓会談が希望が持たれる段階に来たということは、日本にとっても韓国にとってもきわめて幸いなことだと考えておる。そこでこの日韓会談が開催されるならば、当然ここには各種の問題がかかってくると思うのであります。今答弁されたところの漁夫抑留者の問題であるとか、あるいは大村収容所の問題であるとか、あるいは李承晩ラインもそうであろうと思うのでありますが、問題は、これは大体戦後に発生しておる問題だと思うのですが、それ以前に発生しておる問題が実はたくさんある。これは日韓併合から日本人がたくさん朝鮮の中に住んでおります。また営業もしておりましたし、事業もしておった。これらが終戦によりまして着のみ着のままで、一切の財産を置いて内地の方に引き揚げてきてしまった。当然この問題は、日韓会談の重要な議題として取り上げられなければならない問題だ、こういうふうに考えておるわけであります。この場合におけるところの公有財産、また私有財産、こういうものの取扱いに対してどう考えておられるか、その考え方について、この前のときはあまり明確でなかったのでありますから、お答えを願いたいと思います。
  108. 森治樹

    ○森説明員 私有財産につきましては、極力私有財産尊重という原則にのっとりまして、この原則を貫徹するように努力いたしたいと考えております。
  109. 横錢重吉

    横錢委員 私有財産尊重の考え方で交渉を進めるという外務省の態度は、これでわかったわけですが、その場合に韓国の方では、この考え方をそういうふうには必ずしも考えていないように伝わるのです。というのは、当時において処理された問題は、米軍が日本人から没収して、これを韓国の方に渡したものである。従ってこれらの財産に対しては交渉の余地なし、こういうふうにも聞いておれば、あるいはまた日本人の営業しておった事業が、朝鮮の中に本店を持っておった。これらが閉鎖機関となったのです。こういうようなものは、むしろそこに持っておった債権というものは、内地の方に支店等を持っておるならば、それらの財産まで韓国としては日本に対して請求する権利がある、こういうようなことまで——これはちょっと日本人としては信じられませんけれども、こういうふうな点まで報道されてきておるのです。こういうふうな点については、お聞きになっておられるか、あるいはまたどう考えておられるか、この点を伺いたい。
  110. 森治樹

    ○森説明員 韓国の従来の交渉における態度につきましては、ただいま横錢委員から御指摘通りに、日本側の韓国に対する請求権というものは一方的に放棄してくれ、それでなければ、会談を開催することはちゅうちょせざるを得ないという態度にあることは御承知通りであります。これに対しまして日本側は、先ほど申し上げましたように、私有財産の尊重という原則でもって交渉に臨んだ次第でございます。問題は、結局平和条約第四条(b)項の解釈の問題に帰着する次第でございます。
  111. 横錢重吉

    横錢委員 平和条約の中においては、日本の私有財産については特別取りきめをするということであって、これがどうなるかということについては書かれていない。ところが平和条約を締結したときの主導者はアメリカである、それから日本の朝鮮における財産を接収をして、これを韓国に渡したのも、これもまた米軍である、従ってこの問題については、条約についても、財産の処理についてもアメリカが関係をしておるのである。従ってこのことは、当然アメリカのものの考え方というものは一体どこにあるかということが中心になってくるだろうと思うのであります。従ってこの場合に、韓国の考え方、今出されてきているようなものは、われわれとして考えたときに非常に理不尽な考え方である、こういうふうに思うのですが、アメリカは幸いにこの日韓会談の取りなしをするというのであるならば、これはアメリカの考え方、あるいはまたアメリカのこういう問題を扱った先例というもの、あるいはまた国際間におけるところの先例というもの、こういうものが当然尊重され、これに従って解決されるべきだと思いますが、この間についてアメリカの方にはどういうふうに渡りをつけ、あるいはまた中に入ってもらうというふうな点がございましたか。
  112. 森治樹

    ○森説明員 お答えいたします。日韓交渉の再開に関してアメリカのあっせんを求めたことは、従来しばしばございます。特に第四条の財産権の問題につきましては、第四条(b)項の財産の処置というものが、占領軍の行う、占領軍としての管理的な行為から一歩を進め得るやいなやということが問題でございまして、結局そういう点が問題になれば、(a)項に返りまして、両国の協議により決定するほかはないわけでございます。私は、アメリカが的確にどういう考え方を持っておるかは十分承知いたしませんけれども、結局(a)項によってそういう問題は解決するということに帰着するのではないかと思います。
  113. 横錢重吉

    横錢委員 日本の方で私有財産の尊重をする、それからまた国際法の通念においてもこれらが当然である、こういうふうな考え方を持つならば、私はアメリカの考え方もまた同様の立場に立っておるだろう、こう思うのです。ところが韓国の場合においては、これは、私は直接聞いておらぬからわからぬけれども、新聞や何かに報道される限りにおいては、これは没収したものであるというような考え方を持っておりましたり、あるいはまた日本に対してあべこべに請求するというような態度を見せたりするというようなことでありますると、これは、日韓会談においてもなかなかこの問題がこんがらがるだろうと思うのです。そこで意見が衝突した場合には、当然財産を処理したところのアメリカの見解というものが問題だと思う。アメリカが占領軍としてこれを接収をした。接収は必ずしも没収ではないということは、これもまた通例だろうと思うのです。それからまた占領軍においては、これを没収する行為というものは、私有財産においてはできないし、またそういう先例もない、こういうふうに聞いておるわけです。従って日本の財産を管理して、これを朝鮮に渡した。従ってその後における価額というもの、あるいはまたこの対価というものをどうするかという問題は、これは平和条約に残されたところの両国間の問題である、こういうふうに考えておるわけです。従って、この問題で外務省がこちらの考え方を出す、それから韓国の方から出す場合には当然衝突をする。衝突した場合に、これは当然アメリカにこの裁量をしてもらわなければならぬと思うのですが、この場合において、アメリカの意見をあまり聞いていないということは、日韓会談が再開される、再開されるというよりも、これは前から何度もやったのでありまするからして、もう少し突っ込んだ意見が私は実際に出ておるんじゃないかと思うのですが、その辺のことをもう少しお聞かせ願えませんか。
  114. 森治樹

    ○森説明員 この点に関するアメリカ側の非公式な見解というものは、私ども承知いたしております。しかしながら、結局問題は(a)項によって、日韓の両国に財産権の問題についてどういう協議が整うかということが問題の核心だろうと思います。今度の交渉に当りましては、御承知通り財産権の問題が最も重要であり、また最もデリケートな問題でございますので、今後この問題をやっていく上につきまして、アメリカ側の意見等も十分しんしゃくいたしますけれども、具体的にどういうふうにやっていくかということは、現在では申しかねる段階にあることを御了承を願いたいと思います。
  115. 横錢重吉

    横錢委員 それならば当然私有財産が尊重され、これらが会談の主要な議題となってくる。この場合に、しからばあの当時における日本人の財産というものは、どういうふうに管理をされたか、米軍から韓国政府に対してどういうふうに処理をされたかというような事情については、これは、この前伺ったときには明確を欠く答弁しか得られなかったのですが、もう少ししっかりした考え方をお聞きしたいと思うのです。
  116. 森治樹

    ○森説明員 お答えいたします。御承知通りに、韓国との間には正式国交がいまだ回復しておりませんので、わが方の在外機関が駐在をしておりません。従いまして、従来の日本人の私有財産がどういうふうな取り扱いを受けておるかということは、的確な情報を得がたい立場にあるわけでございます。そこで日韓会談の際に、従来の日本側の財産はいかなる状態にあるかということを、韓国側に対して照会をなしたわけでございます。しかしながら、御承知通り韓国側は、先ほど申し上げました通りに、この財産に対する請求権は日本側にはないという立場でございますので、この日本側の照会に対しては満足な回答を得なかったのでございます。従いまして、遺憾ながらこういう二つの事情によりまして、日本側の財産の状況がどうなっておるかということに関する的確な情報は、現在入手しがたい状態にあるわけでございます。
  117. 横錢重吉

    横錢委員 それは、非常に職務怠慢というか、あるいはまた私有財産に対する尊重の精神がないというか、国民としては、日韓会談において私有財産の処理をどうしてくれるかということに対して、重大な関心を払っておると思う。ところが肝心な権利を持っておる日本の政府が、戦後すでに十年たつのに、その問題を把握してないということは怠慢きわまるものだと思う。これは、調べるならば当然すぐにわかる。日本に裸一貫で引き揚げてきた者はたくさんある。この者は大体どういうふうな事情であったかということはわかるはずです。それらを基準として対韓交渉に出だしていくべきである。これらの何らの資料も持たずに、相手側の方に照会をして、相手側の資料でもって交渉しようということでは、交渉がだめだった場合にはうっちゃってしまってもいいという考え方だと誤解されてもやむを得ないと思う。向うの方として、もし回答したとしても過小にしか評価をしてこない、また今のように、はなはだしく請求権もないというような考え方をとっておるわけです。こういうようなことでは、具体的にあなたが交渉に出かけていっても、手の中に何もつかんでいない、確たる資料を何も持っていないというのであっては交渉にならぬ。そこで、これはもう少し米軍に渡した事情、あるいはまた日本人の朝鮮内における私有財産というものに対して、これを保護し、尊重し、これを対難問題において解決づけるという基本的な立場に立って資料をそろえなければならぬと私は思う。今のままで外務省は出かけていこうとするのか。これでは、交渉に出ていったって負けるのはさまっている。何も手の中になくて交渉に行って、向うからそんなものはない、あるならば資料を見せなさい、実はこっちには資料がないので、そっちで作ってくれ、これでは問題にならないのであります。この問題は真剣に考えていただきたい。何かもう少し考えがあるのじゃないですか。
  118. 森治樹

    ○森説明員 先ほどから申し上げました通りに、わが方としてこの調査に一番の難点は、韓国にわが方の機関がないということでございます。従いまして、韓国との折衝に当りましては、一応諸種の懸案事項は別としまして、とにかく正式の国交を暫定的に開こうということで、これらのラインに沿いまして、日本の在外公館を設置して、最近における日本側の財産の状況というものを調査しよべといたしたのでございまするが、諸種の懸案が解決しない間は国交調整はできない、在外公館開設というものはできないという韓国の態度でございましたので、最近における新しい資料というものは入手することが困難な状況にあることはまことに遺憾でありますが、そういう事情にあるのでございます。
  119. 横錢重吉

    横錢委員 韓国の方の物の考え方は、想像するに、日本は韓国を侵略して、だまして取った、一切のこういう活動朝鮮から搾取したものだ、こういう考え方の上に立って今の請求権がない、何がないというような考え方をいたしておると思うのですが、これは日本政府が取ったものと、日本人が私の生活において取ったものとは当然別個にされなければならぬものです。これは戦争の終結に伴って各所で派生した問題で処理をされてきておる。いわゆる領土の割譲というもの、軍事的なもの、こういうものと私有財産とは明確に区分されて処理をされてきておる。従ってそういうような韓国の態度であるとするならば、これに対しては、もとより外務省の方としての策もあろうと思うのですが、策のあるなしにかかわらず、私有財産の認定というものはあなたの方で、どの程度のものを国民は要求しておるのか、または持っておったのかということを、しっかりとつかまえておいてもらわなければ交渉にならぬと思うのです。この点は答弁を聞いて、私も非常にがっかりしたが、おそらく国民ががっかりするだろうと思うのです。そういうことでなく、しっかりとした資料を一つ収集して、この解決をつけていただきたいと思うのです。そこで問題は、私有財産をあなた方が尊重して解決をつけるというふうに言うておるし、それからまた国際の先例においても、当然これは解決がつけられていくものと考えております。この場合に、たとえば朝鮮銀行あるいは朝鮮殖産銀行、こういうような銀行朝鮮の中にたくさんの財産を残して引き揚げてきておる。これが今度の閉鎖機関令の一部改正では、この社債というものが、国内の財産をもって差し引かれるということになってきている。そうすると、これは先ほど私が質問しましたように、朝鮮の考え方と大蔵省の考え方とが一致している。大蔵省の方でも、国内にあるところの財産の中から——社債というものは、これは国内のものでなしに、全部朝鮮の中に投下をしたもので、朝鮮財産となっていろいろな形で残っている。従って対韓交渉のときには当然これが取り上げられて、私有財産として扱われなければならない問題であるが、これが今度の場合のように、在外財産というものと関係なしに国内から引いてしまうというようなことをしますと、これは、今韓国が一本の方に請求をしてきている考え方と同一のものであります。この点に対しては、大蔵省の方からも社債問題について伺いますが、当面こういう問題を扱うところの外務省の考え方を聞きたい。
  120. 森治樹

    ○森説明員 午前中にお答えいたしました通りに、こういう点につきましては、大蔵省と十分お打ち合せをいたしまして、外務省としてはその意見に従いまして善処する覚悟でございます。
  121. 横錢重吉

    横錢委員 大蔵省と打ち合せてというよりも、具体的には大筋の論があろうと思うのです。私有財産を尊重する、これは当然向うの方と交渉をして、日本人の権利というものを認めさせるという考え方に立っている。ところが今度の場合でいきますと、在外財産というものは全部切り捨ててしまって、国内だけでもって整理をする。残っている社債は国内であるけれども、この社債の見返りとしての財産は全部朝鮮の中にあるわけです。これは社債のきめられている十億ですか、その金額に対して、あるいはそれ以上の金額があろう、その方には全然手をつけないで、こちらだけで整理をつける、こういうことをやると、これは当然日韓会談の問題にも支障を来たしはせぬかと考えているわけですが、この点について大蔵省に聞く前に、外務省にもう一度聞きたい。
  122. 森治樹

    ○森説明員 これを切り捨てておられるかどうか、大蔵省の方から一つ答弁を願いたいと思います。
  123. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お許しを得ましたから申し上げますが、ただいまの横錢委員お話は、殖産銀行なり朝鮮銀行なり、韓国にある資産を一応切り捨ててというお話でございますが、これを切り捨てるという御趣旨はどういう御趣旨か存じませんが、われわれはそういうものを切り捨てて、いわゆる放棄する意思は全然ございません。どこまでもわれわれとしては、その所有権を留保いたしているわけでございます。ただ清算の順序といたしまして、けさほど来御質疑に対してお答え申し上げ、また御質疑の中にもございましたが、閉鎖機関清算は、とにかく国内資産の限度においてのみこれは清算できるものでありまして、ただいま在外資産を回収して清算をするということは、これは事実上不可能なので、そこで国内にある資産の限度におきまして、御承知のように預金あるいは送金従業員債務というふうなも一のをお払いをいたして、そうして社債を払う。こういうことをいたしているわけでございまして、これは単に支払いの順序でございます。これによって殖産銀行が韓国に持っております資産を放棄するとか、切り捨てるとかいうふうなことは、毛頭考えておりません。その点は大蔵省のために一応お答え申し上げます。
  124. 横錢重吉

    横錢委員 この点は相当問題があると思うんです。というのは、今不動産銀行の点が問題になっておりましたが、不動産銀行がやはり金融債を発行して、これで銀行業務を営もうというような構想だということを今聞いたわけです。殖産銀行の場合にも、主として内地でもって金融債を発行して、これを朝鮮の中に投資して業を興した。この場合に殖産銀行の金というものは、朝鮮の中で使えというふうに総督令で指定をされておる。従ってこの金というものは、全部朝鮮の中に投下をされ、ここでいろいろな形になって朝鮮の中の産業を興してきた、こういうふうに了承しておるわけです。従って社債というものは、国内に残ったところの金ではない。社債の見返りというものは、当然朝鮮の中に財産となって残っておる。従って今あなた方が法律を出してやろうとしておるのは、国内に残った金から引こうというのだから、この国内に残った金というものは、預金の支払い準備の金なんだ。支払い準備の金として東京と大阪に残っておったこの金の中から社債を引くということは、とりもなおさず、この社債というものは在外財産として朝鮮にあるわけです。それを今やらずに、こっちから引いてしまうということになれば、これは結果として在外財産に対するものを切り捨てたというように、当然韓国の方では解釈をして出てくるだろう、こういうふうに私は考えるわけです。今あなた方の方では、対韓請求権というものは放棄しないと言うてみても、具体的にこういう問題を切り捨てておったならば、国会においてこうやっておるじゃないか、大蔵省の考え方はこうだ、こういうふうにやられるならば、当然今度の日韓会談が再開されても、この問題は相手側を利するだけであって、日本の方を不利益にする、こういうふうに考えておるわけであります。
  125. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 大蔵省がかようなことをやろうなどという点につきまして、重ねての御言葉でございますが、これは、どこまでもまだ殖産銀行清算は進行の過程にございます。この殖産銀行を含めまして閉鎖機関全般の清算をいかように進めるかということにつきまして、法律案として提案申し上げ、国会の議決を求めておるわけでございます。その場合に、大蔵省が切り捨てるという考え方を持っておるとのお話でございましたが、さようなことは毛頭ございません。どこまでも韓国にあります資産に対する権利は留保しておるもの、であるということを、はっきり申し上げたのであります。  ただいま御質問の中に、殖産債権は、これは現地においてそれぞれの事業に投下せられまして、従ってそれらの事業からの回収によって返済すべきものじゃないかという御趣旨でございましたが、殖産債券にいたしましても、また殖産銀行の預金にいたしましても、とにかくいろいろの面に運用せられまして、殖産銀行資産がそれによって発生したことは御指摘通りかと思います。しかしながら、殖産債券はどの資産をもって償還すべきであるということを、特定した法律は何もございません。また預金につきましても、殖産銀行の預金は何をもって返済すべきであるというふうな規定は毛頭ございません。そこで一昨年の第十九国会におきまして、預送金につきまして、これは在外預送金でございましたが、国内の資産から払うことを、法律をもってまずお定めを願ったわけであります。今回はその次の段階といたしまして、従業員債務あるいは社債権につきまして、かような規定お願いしているのでありまして、先ほど申し上げました支払いの順序の筋道を立てているのであります。これによりまして、朝鮮におきます資産を放棄する、あるいは所有権をもはや将来主張しないということでございますれば、これは大問題でございますが、さような考えを毛頭持っておらないことは、繰り返して申し上げた通りでございます。これは殖産銀行の残った資産のうち、まずもって預金を払い、従業員債務を払い、債券を払うという順序立ての問題でございますので、この点は本質的に何ら矛盾するものじゃない、かようにわれわれは考えております。
  126. 横錢重吉

    横錢委員 今支払いの順序について、人件費とかあるいは預金とか、こういうふうなものは優先順序があるから、これを払っていくということ、これは当然だと思うのです。そのあとに社債を払うならば、あと何も残らない、具体的にはこういうことになると思います。そこでこの閉鎖機関令整理をする、あるいは清算を命ずるというのは、従来やってきたのであるから、これはその通りでいたし方がないとしまして、この殖産銀行のように、国内に一部の財産と国外に大部分の財産とがあるという銀行、こういう銀行整理に当って、国内の財産から社債を全部優先して引くという考え方、こういうような考え方が許されるかどうかという問題です。これを引くということは、当然在外資産を考えていないということに結果としてなるじゃありませんか。社債というものの見返りはあるのだから、だとするならば、対韓交渉においてこの問題が解決のつくのを待ってこの整理をすべきだ、この対韓請求を待たずに整理をする、社債というものは国内に残っているところの預金から引いてしまって、今度株主にから手形だけ与えておいて、株主はから手形だけもらって、今度対韓問題が解決のついたときには、株主はから手形だから何も出さぬでいいだろうという話になって、今度外務省が出ていっても、一銭も取れやしない。一銭も取れないように、あなた方が法律を作っているじゃないか。これはそういうことになりますよ。だからこの問題は、よほど真剣に考えなくちゃいかぬと思う。単に国内だけで解決のつく問題じゃない。日本と朝鮮と、しかもこの一番ややっこしいところの国と交渉しよう、しかもその中の一割が日本の中に財産があって、九割が朝鮮の中に財産が残されている。これを解決しようとするのに、この九割の財産の方には手を触れないで——社債というものは大部分そこに投下してある。その投下した財産というものは全然触れないで、国内に残っておったところの預金の支払い準備金の中から引いてしまうという考え方を具体的にやってごらんなさい。そのことは当然相手側を利するだけです。このことがわからなかったならば、この特殊清算というものは大へんな失敗をすると思う。そうじゃないですか。
  127. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 御趣旨でございますが、その点は、私は政府の原案を作ることに参画いたしました者といたしまして、今お話しのような点につきましては全然考え方が違っております。はっきり申し上げますが、ただいまのお話でございますと、社債権者にある程度の——社債権と申しますのは、言うまでもなく、国内に支払い主があるものの社債権でございます。そういうものに支払いをいたしますると、もはや韓国に対する請求権は効果がなくなるのだ、何かこういう御趣旨にとれるのでございますが、これは私は非常におかしいのでありまして、たとえば殖産銀行が預金をやりまして、そこからある程度の資産ができていることは事実であろうかと思いますが、その預金者に対する払い戻しをいたしまして、あとの在韓資産に対しましては、これはなお存続いたしておりますところの閉鎖機関が、まずもって回収を主張いたすわけであります。最終的には株主がその主張者になるわけであります。預金者が主張すれば韓国は返すけれども株主が主張すれば返さないという議論は、これは私はきわめて納得いたしかねるのであります。社債権者が主張すれば、韓国は資産を返すけれども株主が主張すれば返さないということは、これはあり得ないことだと思うのであります。対韓国の請求権は、日本のそれぞれの法律によりまして、最終的に権利を持つ者が主張すべきものでございまして、これが何人であるから韓国はその主張を聞くとか聞かないとか、さようなものではない、問題は、韓国がさような主張を根本的に認めるかどうか、この点が、先ほど横錢委員からも御指摘のように、韓国はわれわれの常識と違った考え方をしておるから、まずこの考え方を根本的に改めてもらうことが必要なのでございまして、社債権者であろうが株主であろうが、およそ権利を持っておる者からの合法的な主張に、韓国が聞くということが問題の中心ではないか、かように考えております。
  128. 横錢重吉

    横錢委員 今のあなたの答弁の最後の方は、気に入った。(笑声)当然社債としてこっちの方が残しておいて——今度清算をする場合にも、社債だけは残しておいて、その残すのはなぜ残すかというと、社債を清算せずに残しておくということは、とりもなおさず、この見返りというものは相手の韓国の方にあるんだ、従ってこの問題の話し合いがつかないうちは、この問題は清算できないという態度をとって、初めて相手側の方に対して外務省が出かけていかれるのじゃないですか。こっちの方で向うに投下した財産に対しては、請求権は放棄しないというふうに言っておっても、現実に国内で募集した金額というものは、みんな清算してしまって何も残っていないで、     〔石村委員長代理退席、委員長着席〕 相手は株主だけで、株主の一般原則論だけが残っておったのでは、相手に対して、これだけのものが日本の方の財産として残っておると主張しても、これは話にならぬのであります。当然この債権というものは、今度の清算からたな上げをしておいて、この清算の見返りというものは、当然韓国の方に財産となって残っておるのです。従って、この問題を外務省として解決をつけろということになって、そこで初めて話が進展するのじゃないですか。それを、こっちの方の債権を全部整理をつけてしまって、在外資産はまだ全然話題にも乗っていないということでは、私は結果として相手側を利するだけだと思う。
  129. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 重ねてのお言葉でございますが、国内支払いの社債の全額を今日払う、これは殖産銀行について限定をいたしましてお話しを申し上げますと、内地払いの社債の全額を支払うだけの資産は、今日殖産銀行の国内資産にはございません。大体の見当から申しますと、四割五分くらいしか払う資産はございません。なお残りの五割五分は残るわけでございます。横錢委員お話でございますと、社債権者に権利を残しておけば韓国は言うことを聞くであろう、しかし閉鎖機関が社債権者にあるものを払うと、もはや韓国は言うことを聞かないであろう、こういう御趣旨のように受け取れるのでございますが、さようなことはないと思います。債務者が債務の履行を決意いたしますならば、その債権がどこにありましょうとも、債権でございますれば、これは変りはないという考え方に立脚をいたしましてこそ、預金の払い戻しもできたわけでございます。預金を預金者に払い戻しましても、その預金をもとにいたしまして、韓国にある資産というものは依然としてあるわけでございまするから、預金の払い戻しをいたしましても、閉鎖機関殖産銀行は厳然として韓国に対して請求権を主張する、こういう考え方でございます。
  130. 横錢重吉

    横錢委員 この殖産銀行のような場合の清算に当っては、これは朝鮮に残した在外資産というものを勘定に入れずには完全な清算はできない、私はそう思う。それを、向うの方はいつ解決がつくかわからぬ、会談が開催されてもなかなか結論は出ないのではないか、こういうような考え方から、これは請求権だけ残しておいて、先に国内に残っている問題だけで話をつけてしまおう。今日この法律を出している趣旨は、こういうような考え方ですが、これだと、私は結論としてそうなると思うんです。だからして、これは当然相手側に乗ぜられてくる。これは、当然ここでもって整理が済んだならば、社債というものは一応たな上げしておいて、この社債の見返りというものは、具体的には朝鮮の方に残っておる、従ってこれだけのものが投下されておるのだからして、この請求権を認めろということの交渉になって、そこで初めて具体的に殖産銀行関係の日本の財産というものが確認される、私はそう思います。
  131. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 同じ答えを繰り返すだけでございますが、私どもといたしましては、この国内資産をもって国内払いの預金なり債権を払う関係は、法律関係といたしましては何ら差異がない、かような考えをもちまして、従いまして、韓国にありまするところの資産に対する請求権というものは、この支払いによって何ら影響を受けるものではない、こういう建前でおります。
  132. 松原喜之次

    松原委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる四月三日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後三時二十七分散会