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1956-09-24 第24回国会 衆議院 商工委員会貿易振興に関する小委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年九月二十四日(月曜日)     午後一時三十三分開議  出席小委員    小委員長 永井勝次郎君       阿左美廣治君    宇田 耕一君       小平 久雄君    南  好雄君       多賀谷真稔君    帆足  計君       水谷長三郎君  小委員外出席者         検     事         (入国管理局次         長)      下牧  武君         外務事務官         (経済局次長) 佐藤 健輔君         外務事務官         (経済局第二課         長)      二階 重人君         大蔵事務官         (為替局総務課         長)      佐々木庸一君         通商産業事務官         (大臣官房長) 松尾 金藏君         通商産業事務官         (通商局次長) 中山 賀博君         通商産業事務官         (通商局輸出課         長)      星  文七君         通商産業事務官         (通商局輸入第         二課長)    本田 早苗君         通商産業事務官         (通商局振興課         長)      中野 秀雄君         通商産業事務官         (重工業局長) 鈴木 義雄君         通商産業事務官         (重工業局鉄鉱業         務課長)    井上  亮君         通商産業事務官         (繊維局繊維輸出         課長)     大城 齊敏君         通商産業事務官         (石炭局長)  讚岐 喜八君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 九月三日  小委員笹本一雄君及び森山欽司君同日小委員辞  任につき、その補欠として山本勝市君及び鈴木  周次郎君が委員長指名で小委員に選任された。 同月二十四日  小委員鈴木周次郎君及び加藤清二君同日小委員  辞任につき、その補欠として宇田耕一君及び水  谷長三郎君が委員長指名で小委員に選任され  た。 同日  小委員松尾トシ子君同月十日委員辞任につき、  その補欠として多賀谷真稔君が委員長指名で  小委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  貿易振興に関する件  昭和三十二年度貿易振興関係予算に関する説明  聴取     —————————————
  2. 永井勝次郎

    永井委員長 これより会議を開きます。  貿易振興に関して調査を進めます。まず政府当局より日中貿易に関するその後の経過並びに措置日ソ貿易に関する見通し及び諸情勢等について説明を求めます。中山通商局次長
  3. 中山賀博

    中山説明員 前回塙認取扱い方針について種々御質問がございました。御承知のように特認制度は各業界からの御希望ないしは陳情の上に立もまして、通産省としましてはあるいは外務省に相談しまして、国際義務あるいは国際約束関係について、またその数量あるいは価格等が、ココムワクの中で認められるものかどうか等について、事前に十分の研究をし、そうしてまた国内希望の強弱、あるいはその必要性等についての十分な検討をいたしまして、そうしてこれを場台によりましては申請される方の御希望をそのまま取り次ぐということもございますが、従来は多くの場合にあるいは商品戦略性程度によりまして、より戦略性の少いものだけを出していただくようにするとか、あるいは場合によりましては数量を限るということもございましたが、これを一定政府の判断によりまして処理いたしまして、そうして場合によっては関係各国了解を得あるいはココム等了解を得るように努力してきた次第であります。ただ特認の時期につきまして、あるいは関係国了解を得る、その他のことのために、一種の外交交渉の途中におきまして予想以上の時間を経過しましたために、商機を逸するというようなこともあるように聞いております。その点につきましては、われわれといたしましても今後とも内部の事務を迅速にし、かつ関係各国了解を得ることに努力しまして、できるだけすみやかに何分の結論が出るというように大いに努力していきたいと思っておる次第であります。ただ先ほど申し上げましたように、何と申しましてもココムの制約あるいは国際義務の履行という点から、必ずしも申請される方の御希望を百パーセント御満足できないということは残念に思っておりますが、しかしまたわれわれとしては、そういう国際義務範囲内におきまして、またその許される状況下において、最大限の輸出を認められるように今後とも努力していくつもりでございます。  それから次に見本市出品ワク拡大について前回お話がございまして、もう少しどしどし中共見本市出品したらどうかというお話がございました。実はこの見本市出品につきましては政府といたしましては、その前に数カ月にわたりまして関係各国了解を求め、現に禁輸品である品目につきましても戦略性の少いものについては特に出品を認められるように了解を求めまして、そうして御承知のように持ち帰りを条件として一定ワクを作りまして、出品をすることになったわけでございます。すでに商品も船積みを終りまして現地に到着しているようでございますが、大体先回の基準というもの、あるいは先回認められました出品品目は残念ながら現在の段階においては、ぎりぎりの段階であるように承知しております。ただこの見本市関係につきましては、これに対する政府補助金につきまして、一応前回におきましては政府としては四千万円出すというお話しを申し上げましたが、その後関係各位の強い御要望もございまして、大体二千万円増額いたしまして、合計六千万円を出すということに方針が決定いたしました。  それからその次に、日ソ貿易問題でございますが、日ソ交渉が成立いたしますればもちろんでありますが、その前におきましても一部に日ソ貿易を伸張させようという努力は従来から続けておられますし、またソ連側においても相当大きな計画のもとに日本との貿易拡大希望があるように承知いたしております。ただ日ソ貿易最大の問題といいますか、おそらく最大のボットル・ネックであろうと思われる点は、わが方としてはかなりいろいろなものが輸出できることは御承知の通りであります。国際義務範囲内であるいは自由諸国との政治的協調範囲内で輸出を増大していきたいと思いますが、これに見返る物資につきましていろいろの難点がございます。石炭の問題につきましてはおそらくまた後刻お話が出ると思いますが、木材の問題あるいは石油の問題その他につきましても、しばしばソ連物資ば割高である、その他の理由によりまして輸入困難である、少くとも商業的採算のべースに乗らないということが両国貿易をはばんでいる一つの大きな理由だと承知しております。しかし今後ともそういう障害を克服しまして、両国貿易にわれわれとしては努力をしていきたいと思います。
  4. 永井勝次郎

  5. 佐藤健輔

    佐藤説明員 私、経済局次長佐藤でございます。ココム禁輸に対する政府態度について御報告申し上げます。われわれといたしましては、その後も各国協調を保ちまして、特認制度を十分に活用いたしまして中共貿易ができるように話し合いを進めております。
  6. 永井勝次郎

    永井委員長 次に松尾官房長から三十二年度貿易振興関係予算について説明を求めます。
  7. 松尾金藏

    松尾説明員 ただいまお手元に貿易振興関係の三十二年度予算要求概略を印刷して配付しておると思いますが、通産省として来年度予算要求をいたしますにつきましては、当然その前提となるべき貿易振興策、さらにさかのぼれば全体の通産省としての産業政策を討議いたしまして、さらにその前提となるべき本年度から来年度に対する概略見通しをもって来年度予算要求をいたしておるわけであります。その結果今ここにございますような大きな項目として貿易振興費項目を掲げたわけでありますが、金額的に見ますとやはりいわゆる海外市場開拓に必要な経費として、ここにあげておりますような海外引揚開拓紹介宣伝でありますとかあるいは海外市場調査でありますとか、あるいは国際見本市べの参加、こういう経費が比較的大きな金額を示しております。またこの内容は一々各項目についてここで御説明申し上げることはないと思いますが、その事業の主体となるものはその相当部分がいわゆるジェトロ関係中心となって仕事をやる項目が多いわけであります。もちろんそのジェトロのほかに若干のものは貿易関係組合がその事業の実体を行うものもございますが、主としてジェトロ中心となりまして海外市場開拓のための紹介宣伝なり市場調査なりあるいは海外見本市その他に参加をする仕事を遂行していくことになるわけであります。その関係がこの予算の総表の第一ページ目から二ページ目の初めの辺に取り上げられております。またそのあと二ページ目の前半のところにおきまして、それぞれの仕事の分担が、繊維関係仕事でありますとかあるいは軽工、重工関係仕事にそれぞれ分れておりますし、またたとえば化学肥料海外市場開拓というようなことになりますと、事実上表向きジェトロ中心となりましても、実際の仕事はやはり化学肥料関係組合なり会社が中心となってこの事業活動をやっていくと思いますが、そういうものをまとめましてこのような各項目予算要求をいたしておるわけであります。  次に貿易振興対策と申しましても、従来輸出振興対策は、打つべき手段をおおむね打ち尽しているという格好ではないかと思います。そういう意味から申しまして、三十一年度予算額と三十二年度予算要求額の各項目を比較していただきますとわかりますように、金額を増額して要求しておる項目が大部分でございまして、全く新しい項目というのはそれほどないのであります。しかし三ページ目あたりのところに参りますと、たとえば意匠センター仕事でありますとか、意匠デザイン関係仕事等におきましては、従来手の及ばなかった仕事について手を広げてやっていく項目がかなりございます。また輸出検査関係等におきましても、従来なかった項目を若干新たに要求いたしております。従来とてもこれらの点はやっておったのでありますが、この際さらにその事業範囲を広げてやっていくという構想になっております。  なお、前に戻りますが、ニページ目の下のところに「国際経済協力に必要な経費」という項目を掲げております。この中でもすでに海外技術者の養成その他は従来もある程度はやってきておるのでありますが、これにさらに力を入れますと同時に、従来日本海外に対していわゆる国際経済協力、もっと端的に言いますれば、海外投資と言われております面につきまして、従来日本のやって参りました程度は、諸外国の先進国に比べまして非常に小さな程度しかやっていなかったと思います。このような点をやって参りますために、やはり海外投資等の面についての今後の対策を請じていきますためにも、たとえばここにございます保険制度等の拡充もやっていくということを考えた次第であります。  なお、三ページ目の下のところに参りまして、中小企業輸出振興に必要な経費を掲げておることは本年度と同様でございますが、これも中小企業対策輸出振興の面と結びつけてこの際拡充していかなければならないという意味で、ここの要求金額も本年度に比べて相当大幅に増加しております。  その他、あとの方の五、六の項目は、大体従来の標準予算的なものでございますが、ただいま申しましたように、概略いたしまして、従来の予算要求項目について、あるいは若干これに新しい項目を加えて、その方策を拡充強化していくという予算要求の形に相なりまして、この関係で申しますと、本年度予算額といたしまして約十億になっておりますが、来年度予算要求といたしまして、ただいま申しましたような点を考慮いたしまして、三十九億の予算要求概算額に相なっております。  なお、お断わり申し上げておかなければなりませんけれども、この予算要求総表は、実はまだ大蔵省と正式の交渉に入っておる最後の表ではございませんで、とりあえずこの程度のものを大蔵省に一応は出してございますが、まだ各項目についてさらに検討をして、差しかえ修正等もこれから起ると思います。ただ本日の委員会に御参考までにお配りをしたということを御了承願いたいと思います。
  8. 永井勝次郎

    永井委員長 それでは質問の通告がありますから、順次これを許します。なお、ただいま出席中の政府側説明員は、通商局次長石炭局長通商局輸入第二課長振興課長官房長法務省入国管理局次長外務省経済局次長大蔵省為替局総務課長、それから通商局輸出課長諸君であります。  それでは宇田耕一君。
  9. 宇田耕一

    宇田委員 重工業局関係の方がいないとまずいのですが……。
  10. 永井勝次郎

    永井委員長 今すぐ参るそうであります。  それでは帆足君。
  11. 帆足計

    帆足委員 重工業局長課長がおそろいになりましたら、ちょっと途中で宇田さんにお譲りいたします。  商品見本市に関連いたしまして、中国国慶節議員団が十五名参りますので、この際中国貿易の問題について政府意見を確かめておくことは、きわめて価値あることと思います。先般の委員会におきまして、中国貿易について、統制方式の問題を関係の皆さんと一緒にここで懇談いたしたのでございます。たまたま今次の貿易会談におきましても、貿易駐在員の交換ということが問題の一つになっております。これは大体において民間的性格のものに現段階ではなると思いますが、石橋通産大臣も大体その趣旨に賛成されておるようでございます。しからばこの駐在員諸君仕事は一体どういう仕事かといえば、貿易市場調査あっせん、隘路の打開などであろうと思いますけれども、そういう民間駐在員の方が商社に協力してあっせんするとすると、直接自分で商売はしない、商行為はなさないわけです。そこであっせん業務は一体どういう観点からするかということになると、やはり中国との貿易統制方式というものについての一つの一貫した方法が、民間業界にも、国会商工委員会においても、また官庁指導方針においても確認されていないと、そこに思わぬ混乱が起って所期の効果をおさめにくいことになることを心配する次第です。何分にも中国側計画経済をしておって、業種別幾つかの公司はありますが、おおむね統一的に仕事を行なっておるのに対して、日本側は原則として自由競争状況でありますので、この矛盾を適切に措置することが私は必要だと思います。輸出入組合もそのためにできたのでありますけれども、先日輸出入組合日中貿易促進議員連盟国際貿易促進会等の間で、こういう問題をめぐりまして懇談をいたしましたときにも、組合のある首脳者の方は、組合にもう少し大きな権能をくれなければ業界取引秩序を樹立することができないという御発言があり、またある方は、中国側日本商社を勝手に選ぶ、それに追随するだけでは困るではないかという御発言もあり、あるいはまた非常に資力の薄弱なメーカーたちダンピンク値段をもって何百という電報中国に送って、商品の乱売を来たすおそれもあるという御発言がございました。しかしそれぞれの御発言の間にまた矛盾がありまして、私はこれを聞いていて、それぞれの団体首脳部のお考えになることが矛盾撞着しているようなことであっては、これは今後の中日貿易の発展のためにやはり心配であるから、ここで研究会でも作って、一つこの困難な問題についての大体の思想統一をはかる必要がある、自由経済統制経済の合理的な調整をはかる必要があるということを痛感いたしました。  そこでしからば、これをどう処置するかということを考えてみますと、根本は先方が統制経済の国であって、こちらが自由経済を建前とする国であるというところに問題が起っておるのでありますが、同時に、貿易という問題は独善的にやり得ることでなくて、やはり相手の国との間の相互理解友好関係の必要なことは言うまでもございません。すなわち貿易業者任務というものは商機をつかまえること、相手市場及び需要状況をよく理解して、それに互恵の立場からサービスをする。中国側には国営と申しますものの、業種別にもやはり十幾つ商社があり、地方別にも何十の公司があるわけで、これらの公司のそれぞれの特色や需要状況や、それから貿易についての担当者の特殊の心理、希望などをよく理解することが必要である。こういうようなこと、すなわち相手市場との有機的つながりを深くするということが、私は貿易商社任務一つであると思うのです。世間で玉をつかむ、オファーをつかむくらい何事かといいますけれども、偶然で玉をつかむこともありますけれども、慎重な準備と手紙、電報のやりとりによってよいお客をつかむ、よい市場をつかむということが基本的には貿易商任務でありますから、貿易商市場とのつながりというものを軽く見ることば間違っておるのではあるまいか。中国が間違ってふさわしくない商社に玉を与えることもありますけれども、しかし多くの場合は相、互が長い間の理解のもとにオファーをとるのでありますから、これをあまりに軽視することは貿易国としてとるべきことでないのではあるまいか、これが第一です。  第二には、従ってまた相手国があるいはメーカーブランドを指定したり、あるいは特別の商社を指定したり、特に強い要望を出すことがありますけれども、その場合にはやはり日本自主的立場から、そのブランドよりこちらに切りかえたらどうかとか、その商社よりこういう商社グループの方がよりょくはあるまいかというようなことを適時適切にこちらが申し出ることはもちろん自由であり必要なことでありますけれども、これを全然無視するような態度に最初から出ることはやはりまずいことである。  それから第三には、同時にこちらのメーカー側要求もまた国内需要者側要求も尊重せねばならない。これを全然無視して、そうして相手市場だけの要求を取り上げるというのではやはりいろいろ不都合なことを生じてくる。これが第三の要因だと思うのであります。  それから第四の要因としては、中国取引関係を結んだ商社のすべてが分量の限られておるその商品を取り扱うことはできませんので、どうしても何百社の商社のうち何十社かが特定商品取引に集中されていくことになる。そうするとそれらの商社はおのずからグループを作って、場合によっては、そのグループが公平にできぐておる場合には、中国側もそれが単に独占不正のための、グループでなくして、取引を円滑にするための善意に出たグループの場合には、そのグループ相互に尊重し合うというふうなことが現在起っておるわけです。統制経済中国自由経済日本との取引関係においてこのグループ活動が成功した場合には、これも一つの名案ではあるまいか。しかしその場合にはグループに入っているものとはずれておるものとの間にいろいろな摩擦が起るわけです。そういうときにはまず商品別知識、しかし商品別知識だけではなくて、やはり市場別知識を持っている商社も尊重せねばならぬ。それからまた当該商品の当面の取引についての努力と実績、そういうものも幾つかの要因を尊重してグループはおのずから形成されていく。こういうグループの世話をするのもまた輸出入組合首脳部の識見であり、一つ仕事ではあるまいか。これらの要因をそれぞれかみ合わして、そうして中日貿易円滑化をはかるのが輸出入組合の今後の進む方針であって、こういう穏健な考え方ならば、およそ官庁国会業界意見ばほぼ接近するところではあるまいかと考えまして、三団体の間で研究会でも作りまして、多少方法論統一をはかる必要があることを痛感しております。特に貿易出張所がお互いにできますと、やはりこういう問題がはっきりしておりませんと、門前市をなして、逆に取引円滑化をはかるための機関がいろいろの不正を生み、矛盾を生み、中傷、混乱を生む原因になるおそれもありますので、ぜひとも行政当局側においてもお考えおきを願いたい。と申しますのは、先日も特免のことにつきまして特免神権天授説というような十八世紀の思想が多少通産省に発生しておりまして、通商局長神権天授説憲法違反であるから撤回した。同時に特免国有説も撤回した。やはり商機をとらえて努力しておる商社継続的努力の尊重の上に特免解除行政措置も組み合せていくという、ただいまも次長からの答弁でありましたので、私は満足いたしますが、これまでは必ずしもそう考えられていなかった。また輸出組合自分権能がないものですから、何か神から特別の権力を天授してもらって、国権をかさにきて官庁下請機関として働きたいという熱烈な要望もあるわけですが、私はこれに無条件に賛成することは国民代表としてはできがたいと思います。そこでたとえば一つの例として、鉄鋼課長がお見えになりましたら、宇田さんから私よりももっと実際家としての御意見の開陳や御質問があると思いますけれども、たとえば石炭輸入につきまして、日本製鉄メーカー首脳部方々が非常に慎重な態度をとっておられる。石炭鉄鋼業の米の飯でございますから、この輸入について、品質について、技術について、あるいはまた値段交渉等について十分な調査もせずに、業者がめいめい勝手な取引をして、日本原料政策に不利な状況を作ってはならぬというので、大きなメーカーの責任ある指導者方々が非常に慎重な態度をもってこれに臨まれておるという態度には私はかねて敬意を表しておるものでございます。従ってまたそのメーカーさんたち窓口を一本にして交渉統一的にしたい、そうして政府と十分な打ち合せのもとに、日本鉄鋼政策鉄鍋の品位を高め、値段を安定させ、コストを低めるような方向に向って合理性のある立脚点から、中国との原料輸入についての交渉一つ窓口で行いたいとお考えになっておることについても、これは私は合理的であると思います。しかしその結果、今度はそれが行き過ぎになりまして、その取扱い商社を一社にしてしまって、すべてを鉄鋼メーカー及び一社取扱い商社のオールマイティで行ってしまおうということになると、そこに若干の行き過ぎが起りまして、たとえば中国側から申しますならば、今まで多くの商社と民主的に互恵平等で取引を続けてきた。また鉄鋼政策日本鉄鋼業者意向中心になりますけれども、政府意向輸出組合意向なども参考にして、そうして日本の責任あるメーカー代表と長期にわたる交渉をしたい。スポット買いだとか思いつきの取引でなくて、なるべく安定した取引に進みたい、中国側もそれを希望しておるわけでありますけれども、同時に中国側としては、長い間中国との貿易は多くの商社と共同にやっておりますから、幾つかの友人商社とも提携し合って進みたいという希望を持っておりまして、今次も五十万トンないし六十万トンの当面の日本需要のうち四十万トンをある製鉄業者関係の深い一社に、その他の十数万トンを他の幾つかの商社に注文をしてきておるような次第であります。この場合に中国側は別に悪気があってそういうことをしておるのでなくて、その辺の事情は中国に行った服部君も輸出入組合高見専務理事もよく知っておられるわけです。それが必ずしも正確にメーカーさんの側に伝わっていないのではあるまいか。中国側としましては、窓口一つの相談は簡便でよいけれども、仕事それ自身は膨大な原料輸入、また見返りの鉄製品輸出を一社独占という形態でいくことはあまり希望しない、中国ですら私営商社もありますが、その他業種別にやはり幾つかの公司地方別に数十の公司があるではないか、それを日本では一社だけでやるということは今までの両国貿易運動の点から見ても望ましくないというような意向を持っているようです。このことについては宇田さんからも詳しい御説明があると思いますが、私はそういう場合に、あまりこういう問題にとらわれずに、それらのグループにおいて最も有力なる商社を幹事にいたしましてそして取引を続ければ、相手を不必要に刺激することもないのではあるまいか、こう思いますが、こういうようなことをあっせんなさるのが行政指導であり、また輸出入組合のお仕事だと思うのです。しかしこの問題に対して決してメーカーさんが暗愚であるというわけではなくして、直接中国市場に接する機会がありませんから、多少事情にうといことと、それから責任を重んずるのあまり、一本交渉ということを強調されるのあまり、他の諸条件を顧みるいとまがない。たとえば中国においてよく聞かされることは、日本メーカーさんが直接中国の当局と話し合わないので、非常に中国貿易当局に関する認識がおくれておる。たとえば開演炭に対して中国日本以外に売る場所がないのだから、あんなものはほっておいても泣きを入れてくるであろうというような感じを持っておりましてそれを雑誌の座談会のときなどに言われることが向うの耳に入りまして、まことになさけない認識不足の考え方だ、そういうような考え方であるならば、中国側貿易提携に熱意を感じない。そうではなくして、確かに両国は立地的に相接近しておるから、有無相通の貿易をしてそうしてお互いの平和な福利民福に貢献し合おうじゃないか、日本も膨大な中小企業とよい技術を持っておる、その機械類を中国の平和建設のために輸出する、同時に島国日本にないところの食糧や原料を隣邦から平和のうちに輸入する、そうして相互の国民生活の向上に寄与しようではないか、という平凡な貿易上の真理をよく理解して友好関係を進めていきたい。それを、困ったらやがて売りに来るんだから、当分相手にするなというような気分で来られるならば、われわれは日本との提携を真剣に考える気がしないということを非常に強調するわけです。こういう点も貿易で生きる日本としては、単に隣邦中国だけではなくて、インドやインドネシアに対しても、国民の心理や希望や喜びや悲しみを正しく理解して貿易を進めることが必要であろうと思うのですが、重工業局長通商局次長さんはこの問題に対してどういうお考えでございましょうか。私はこまかなことはよく存じませんから宇田さんの御意見を拝聴するとしまして、まずその原則について一つお尋ねしたいと思います。
  12. 中山賀博

    中山説明員 ただいまの御発言非常に同感の点が多いのでございます。今日の貿易におきましては、それが自由諸国であろうと、あるいは共産圏諸国であろうと、ある程度の規制が要るということは事案でございます。ことに今おっしゃいましたように、相手が国家貿易という形態をとっております共産圏諸国との貿易につきましては、わが方が自分の利益を擁護する建前からも規制の要るということは事実でございます。ただ通産省といたしましては、やはり原則としては業界の自主的な規制というものがあくまで第一にならなければならない。もちろん政府としましても、貿易の伸張にはできるだけの努力をし、またお手伝いは申し上げますけれども、根本におきましては業界の自主的な規制というものであり、かつまた業界の冬商社ないしはメーカーの自然的な創意とかあるいはそのイニシアチブというものは、どこまでも生かしていかなければならないというように考えております。先ほどもお話がございましたような中共貿易に関する輸出入組合を例にとってみましても、組合日本中共との貿易全体についての輸出輸入の調整をするということが建前になっておりまして、具体的な商取引については、やはり商社がこれに当るというはっきりした建前があるわけでございます。それからさらに、重工業局長あるいは石炭局からいろいろ御説明があると思いますが、たとえば石炭輸入については、やはり基本的な交渉は代表者が一本でやっておりますけれども、それに基いて具体的な取引をいたしますときは、数商社が複数でこれに当っておるという状況でありまして、政府としましてはできるだけ交渉の成立をお手伝いするという意思には変りございませんが、同時に自分から先に立って行くというのでなくて、冬商社あるいはメーカーのおやりになることを背後あるいは側面からできるだけのお手伝いをするということを根本の建前にいたしております。
  13. 帆足計

    帆足委員 ただいま重工業局長も井上課長もお見えになりましたので、私よりもっと鉄鋼のことに詳しい宇田さんから御質問もあろうと思いますが、前回のときも詳細に私から貿易統制方式について御報告したことであり、本日のことはまた後ほど速記録を見ていただくことにしまして、私は、政府の方では業界の自主的な統制規制を尊重して、政府並びに輸出組合は若干の行政的側面からのあっせんを行う、側面指導を行うという行き方は非常に正しいと思うんです。そういうことから現在の開らん炭の輸入がどういうふうになっているかということの御説明を願いたいと思います。
  14. 鈴木義雄

    鈴木説明員 私が参ります前にどういうふうな御質問があったか、私実は存じ上げませんけれども、御質問の開演炭の契約につきましては、日本側から代表が参りましていろいろ折衝しました結果、とりあえず大体四十万トンを輸入するというふうな契約ができたというふうに承知しております。
  15. 讚岐喜八

    ○讃岐説明員 私の方からは別にありません。
  16. 永井勝次郎

  17. 宇田耕一

    宇田委員 四十万トンというお話が今ありましたけれども、五十五万トンの輸出をしてもよろしいという中国側考えであるということを公式に発表いたしておるのですが、五十五万トン向うが出してもよろしいという場合に、日本の受け入れについてはどういうふうな考えであるか、これを局長にお伺いしたい。
  18. 鈴木義雄

    鈴木説明員 当初五十五万トンという話があったわけでございますが、その後向う側の事情、これは多分生産者、つまり石炭を生産する側だと思いますが、そういうふうな事情からとりあえず四十万トンというふうな契約ができた。しかしなおさらに今後のものについても向うの状況によっては話し合いができるというふうに聞いております。
  19. 宇田耕一

    宇田委員 それは鉄鋼連盟の方の希望というお話でございますが、こっちの受け入れ側ですか。
  20. 鈴木義雄

    鈴木説明員 それは向う側の問題だと思います。従来のこちら側の希望は、初めの話し合いといたしましては、大体五十五万トンというふうな話し合いから始めておりまして、向う側も一時そのような話があったように聞いておりますが、最終的には向う側の事情によりまして、一応四十万トンにきまったわけであります。
  21. 宇田耕一

    宇田委員 今回第四次協定の場合、あるいは明日の関係で代表者が二十七日に出発いたします。その節に出る話の中で、これは重要な問題の一つと思いますが、そのうちで、四十万トン日本で受け入れることは大体話がつく、ただあとの十五万トンを現在輸入希望しておるところのメーカー関係輸入業者外の者がこれの取扱いをし得る形にある。そういう場合に関係業者輸入をすることを渋るのじゃないかというような話も聞いておる。日本の粘結炭の輸入について、中共炭をどういうふうに見ておるのか。具体的に申しますると、一昨年私たちが北京に行ったときに、開らん炭というものはアッシュが二〇%そこそこあるので、フレートの関係から見ると、どうしてもアメリカ炭の輸入の方が有利である、そういうので、鉄鋼連盟の話もあって、話はつけて帰ってきたのですけれども、技術的に出銑率が下るおそれがあるから見合わしたい、こういうことであったのです。ところが国際環境が変ったからアッシュが少し多くても、溶鉱炉へ入れるときにはこれは五%かそこら混炭すれば差しつかえないというので、輸入をするという話を聞いております。そういうことなら輸入に対するコストが安くなるという計算があったのです。これはそういう建前からいくと、これの輸入ということは当然政策として考えなければならないだろうと思います。ただ、政策として考える場合に、輸入業者が好ましくあるとかないとかいうので、向うの方で出してもいいという腹の中の五十五万トンを、十五万トンだけ少くしなければならぬというような話し合いは、少しこれは考えなければならないのじゃないか。北京へ代表者が行ってまたその話がむし返される場合に、こっちはそういうふうな日本の内輪の業界の不統制、話し合いのつかないことを理由にして、せっかくくれるところの希望原料をもらわないような数量を増すということは好ましくない、こういうふうに思われます。そういう点について局長のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  22. 鈴木義雄

    鈴木説明員 開らん炭の輸入につきましては従来から、昨年も輸入いたしましたし、結局品質、価格が満足するものなら、できるだけわれわれとしては入れたい、かような考え方に立っておるわけでございまして、今年度交渉におきましても、御指摘のアッシュの問題が起きたことも聞いておりますが、将来これはできるだけよくしてもらうという話し合いで、とりあえず今回は話をきめたように聞いております。さような次第で、とりあえず四十万トン、さらに向うの生産者の事情が許すなら、向うの方からするなら、さらにわれわれとしては買いたい、かように考えております。またただいま御指摘の国内の態勢の方の問題は、先ほど通商局の方からお話があったかと思いますが、われわれとしましてはできるだけ交渉並びに基本的な契約というものは一本にしていきたい。しかしながら実際の輸入実務と申しますか、そういうものは国内メーカーのそれぞれの事情もございまして、そういう点を考えて、それぞれ適当と認めるものにやらしていきたい、かような考え方でおります。今後も大体さような方向でいきたい、かように考えております。
  23. 宇田耕一

    宇田委員 それで、第二次の貿易協定を結びましたあとで鉄鋼連盟の諸君とお会いして、そのときに鉄とか石炭の話を、私が自分で連絡をしてきたのですから、その報告をいたしました。そうすると、亡くなった渡辺さんがあのときに連盟の理事長をやっていたのですが、そのときの話の要点は、海南島の鉱石も出す、しかしこれは新しい開発計画を立てで開発するというところまでは行っていない、山元にあるものを出してやる、それが一つ。そして、そのときの話では鉱石百万トンという話があった。石炭は四十万トン。しかしこれは第一・四半期だけの話にしよう、こういう話で、とりあえず四十万トン持って帰ってきて、これを鉄鋼連盟に話した。ところが鉄鋼連盟の理事会での話では、スポット買いでは困るのだというのが結論だった。そのときにスポット買いであるかそれとも長期で契約ができるかということについては、これは中国側のほんとうの現在の実情を関係者が認識をしない限りは、われわれが帰ってきて説明した程度では話になりませんから、それなら鉄鋼連盟を中心として中国の現状に対する認識を、一つ自分で体当りしてみる以外に手がない、こういうことであった。昨年代表がきたときにそれぞれ関係者が会っておるはずです。それでそのときにも話がありましたが、スポット買いではなくて長期の契約ができるのだ、こういうことです。ただそのときに隘路といわれるのは、見返り物資をどういうふうに責任を持ってとっていくか、Aクラス商品日本特認その他の方法でどう責任をとってくれるかということに意見の食い違いが起ったと思っております。今度向うへわれわれの代表が何人か行くについても、その点が話し合いの一番要点になるのじゃないかというふうに思っております。ただいま話題に上っておらないもので昨年の四月に向うの代表が来たときに話が出たのは、銑鉄が少し余っておる、とりあえず十万トンばかり入れてみたらどうかという話があったのです。そのときに私は連絡をしておいたのですけれども、われわれの見ておるのでは、昨年の秋から暮れにかけては銑鉄はやはり予定通り行ったのですが、昨年の四月ごろに向うはそう言っていたのです。向うも大体経済事情ばかなりわかっておるな、こういうふうに思ったのです。それで今回もこっちの方針がきまれば、石炭、鉱石のみならず、銑鉄にしても向うはある程度出してよろしい、こういう話でしたから、これはこっちの意をまとめる必要がある、こういうふうに思ったのです。そういう点については通商局も同様で、やはりその最近の方針から行くと反対でないように思われますから、これは協議しておかれる必要があるだろうと思います。ただ、そのときに輸入をするところの業者をうまくまとめていただきたい。今次長からお話がありましたが、次長の言われるところの根本方針は私はけっこうだと思います。要するに業界の自主的な統制にまかせたい、こういうふうに了解しましたから、その点は私はけっこうだと思います。ただ中国との関係で、従来非常に努力をしてきた中小企業といいますか、中小の商業あるいは貿易業者があります。そういう連中を、今までの努力を無視して、そのらち外に置かないような配慮はしてやらなければならぬじゃないか、そういう連中の扱う分量というものは実際問題として非常に少いと思う。そういうふうなものをらち外に置くことによって中国との連絡がうまくいかないような何かのしこりが残るということはないでしょうけれども、もしそういうおそれがあったらつまらぬことだと思いますから、それは行政当局として一つ配慮をしていただきたい、こういうように思います。  そういうわけで米や大豆の輸入のときと同じように今後石炭あるいは鉱石等の輸入につきましては必ずそういう問題が付随して起るだろうと思いますから、そういう輸入業者に対する行政措置は、自分らの自主的なグループ統制はいいのですけれども、そのグループの中にだれが入っていくかということ等については、従来の実績を無視しない方がいいと思いますから、その点について何か伺うことがあったら聞かしていただきたいと思います。通商局の方からも一つ聞かしてもらいたい。
  24. 中山賀博

    中山説明員 今おっしゃいました商社の系列あるいはメーカーの系列が若干あるということは聞いております。ただ建前といたしましては、われわれとしてはできるだけ業界自身の中で話し合いがつくことを第一義的にはもちろん希望する次第でありますけれども、仰せのような点は今後とも十分考慮しなければならぬ、また事情も十分明らかにして研究しなければならぬ点だと思っております。
  25. 鈴木義雄

    鈴木説明員 ただいま通商局の方からお話しした点と同じような回答になると思いますが、燐鉱石、鉄鉱石、その他いろいろなものもございますけれども、先ほどいろいろ御説明いたしましたように、交渉並びに基本契約については一本が望ましいと思います。しかし実務につきましてはメーカー関係その他従来のいきさつのしさいな点を考えてやっていくように処置していきたい、かように考えております。
  26. 帆足計

    帆足委員 ただいまの宇田君の質問に関連いたしまして、私は先ほど貿易統制については考慮すべき点を詳細に述べたわけでありますが、先ほど重工業局長が言われましたが、交渉は一本でやることが望ましい、私はこういう日本の重工業の主要原料といわれるものについてはまさにその通りだと思う。全く先ほど申したように賛成で、七大メーカーがこれに対して慎重な態度をとっておられることにはかねてから敬意を表しておるわけであります。しかし今宇田さんが指摘されましたように、輸入方式については、貿易商社貿易商社としての有機的連関、相手国市場に対する理解、それから人的連関などの長所もあるわけであって、メーカーさんの意向中心として政府と相談して一本の交渉が望ましいのですが、先方が一社独占をきらっておる事情は高見さんや服部さんからお聞きになって十分行政当局は知られておると思うのであります。それで宇田さんの言われましたように、不当な要求であるならば、また不適切なオファーの仕方であるならば、中国側希望も修正してもらわなければならぬ、中国側の言う通りにならなければならぬ必要はありません。しかしそれが大局から見てそれほど不都合でないものなら、あえて中国側の感情を害してまで、輸入計画を変えてまでどうこうする必要もないわけで、ございまして石炭の今年の輸入が四十万トンとか五十五万トン、来年は七十万トンとか八十万トン、今後幸いにして品質改善が行われて、中国との貿易原料と製品の取引がふえて参るとすれば、そのたびごとにこれらのものは一社独占でやるというようなことで、無理に相手の感情を刺激する必要もあるまい、しかしメーカーさんと深いつながりがあり、また深い資本関係つながりもある商社を尊重して、それを中心として運用されるということは、窓口一本の取引に特って参りますためにも、事務的にも便利でありますし、そういう態勢に傾くことも実際的であると思います。だといってメーカーさんは自主統制であるから日本鉄鋼政策原料政策をにて食おうと、焼いて食おうとおれの自由である、おれの政策はおれだけできめるのであるから、官庁意見も、輸出組合意見も、また一般の中日貿易のために努力しておる何十の商社の世論も聞く必要はないのだというなら、それは日本の貴重なこの原料や貴重な為替を個人の私物化しておるという非難を免れないと思います。やはり自己の職責に対する責任上大事をとり、慎重な態度はとるけれども、しかしいろいろな世論の声も聞いて万事円滑にやるというのが私は近代的実業家の考え方であって、政府当局はとかく行政指導や行政干渉をすることが好きですが、この事件に限ってはメーカーの言うことだから仕方がないという。中小企業者に対しては自分が必要なときには不必要な官僚統制までするくせに、こういう強いメーカーさんに対してはやむを得ないの一言で済んで、そうして今年は四十万トンであったからと言われますけれども、私どもの聞いておるところによりますと四十五万トンか六十万トン輸入しても差しつかえないというお考えを持っておられた。しかし残りの十五万トンないし二十万トンは、自主的にメーカーさんがおきめになった商社以外に、中国がいわゆる反人商社といって適宜選んだ商社に玉がきたために、商談に差しさわって玉が流れようとしている。鉄製品輸出についても同じようなことが起っている。ことしは硫安メーカー中国側との感情の相違、連絡上のそごから、硫安の発注がゼロになって今ごろになって硫安メーカーさんが親善使節を派遣するというようなことを始めようとしている。それから前述の木造船の問題についても中国側との連絡が不十分であって、特免神権天授説のために中国側との有機的関連が切れ、今業者努力によってあやうくも連絡がついた。私は貿易というものは特殊な人の独占的な気持によって行うべきものでなくて、一つ理解と友好の雰囲気の中に高度の常識をもって行うべきものだと思います。そうして互恵平等であって、向うの言うことを全部うのみにする必要もございません。向うがこういう商社に玉を出したといっても、その商社がいろいろな関係から不適当であろう、またやらせたいけれども、従来のつながりが少いからそれはちょっと無理であるというようなことはしばしばあると思うのです。しかしながら鉄鉱石とか石炭とかいう重要な物資を取扱うものを窓口一つにして交渉することにはもちろん全幅的に賛成ですけれども、相手の感情を害してまで一社にしぼらねばならぬ理由はない。そういうことについては、国内の問題だけで済むならよいけれども、中国側意向はどういうところからきているのか。中国側が何か不当なことを考え要求しているのだったら、それは穏やかに断ればいいと思うのです。別に不当な気持でなくて、ざっくばらんに幾つかの商社にやってもらいたい、しかし窓口一つでけっこうですと言っておるのならば、その商社検討してみて、悪かったら他と交代してもらうなり、適当にあっせんしてまとめるのが私は輸出入組合任務であり、それを内面指導していくのが行政当局の仕事だと思うのです。しかしこの問題がそもそもそういう形になったことは、第一にはメーカーさんがこの重要な原料輸入を無責任な商社によって撹乱されたくない、一本で国策的に統制したいという健全な要求から出ている一面があるわけです。と同時に他面においては、これは特免と連関がありましたものですから、特免天授説、特免国有説から官庁が大いに積極的に肯定した。それに対して何らの批判を加えなかったということとあわせて、一本でこういう成り行きになってしまった現在としては、神権天授説特免天授説は十八世紀の思想だということになって、あの有名ながんこな輸出課長も退場したわけです。そういう状況になって、今後は向うの意向とこっちの意向とを五分五分に、やはり穏やかに、日本貿易国であるから何も必要もないことで角を立てる必要もない。中国側が重要な原料貿易については、メーカーさんの最も信頼している中核の商社、その商社の性格は、かつてよくない性格があったということもいわれておりますが、今は鉄鋼メーカーさんのよい監督のもとに信用ある経営者さんたちがおることを私たちも信頼しておるわけです。従ってその商社中心にすることに何ら異存がないけれども、長い間両国貿易のために関与したその他の数社も貿易数量において適宜使って参りたい。それが貿易上の仁義というものであって、一社だけに中国貿易の成果の過程に生れた取引を独占させることは、中国側としてはどうも気持がそれではおさまらないということを先方は言っておる。そのことは服部さんや高見さんからの報告をよくお聞きになればわかるわけです。メーカー方々は決して悪気があるわけではなくて表面取引に出ておりませんために、中国の各公司の気持や、国際貿易委員会の気持を知る機会がないからがんこに構えておるのであってわずか二割か三割の数量のものを、他の商社と、もっと努力した商社と協力し合ったらよかろう。そうして当事者たちも協力する気分になっておる。通商局もそういう御気分であるというのに、重工業局の方の御指導が多少不足ではあるまいか。もちろん民間のことにみだりに干渉すべきではございませんし、今日鉄鋼業者努力というものが復興上非常にりっぱな業績を示されておりますから、通産委員の一人として今日の鉄鋼生産の増大についての努力を過小評価しておる者もありません。われわれも鉄鋼政策が順調に進みつつあることに対して非常な敬意を表しておりますけれども、こういうさまつなごたごたがメーカーさんの耳に正確に入っておらずに、また重工業当局も問題を正確に把握しておらないために、硫安の二の舞をしようとしておる。そういうことで与党も野党もこれは実情をよくお調べになって、もう少し弾力性のある政策をおとりになったらどうであろうか。個々の商社の名前をあえて言うわけではありません。それはまた適当な商社にとりかえてもいいです。中国側も私は必要とあればそれぞれの妥当な要求には応ずると思うのです。それを巷間五十五万トンなり六十万トンくらい要るといわれておるものを四十万トンにお削りになって、そうしてある特定の一社の分だけはメーカーさんの了解を得てそれをのむ。しかし他の部分はそのいざこざのために一時留保になり、または流れるというような事態は私はそれはむだなことではあるまいかと思うのです。貿易というものはお客様のある仕事ですから、別に必要のない場合には、特にわざわざ相手国の感情を刺激する必要がないわけです。必要があれば話し合ってこれは国内的にきめる。それでお前の方はそれだけの能力がないからこちらに譲らないか、協同連盟で中国側交渉して、そして向うが売りたいというもので必要があるならば、本期要らないならば来期のために準備として残しておくのが双方常識ある態度であるのに、こういうつまらないところで行き違いが起っておりますのは、私はメーカー首脳部方々も、先ほど宇田さんもいろいろ疑問があるなら直接交渉してみて御経験なさったらよかろうと申されましたが、私も多少そういう思いがするのです。ですからもう少し中国側希望もよく聞いて、謙虚に事を——謙虚というよりも合理的に事を処理されることが必要ではあるまいか。決してメーカーさんの態度をわれわれは攻撃しておるのでも、非難しておるのでも批評しようとしておるのでもないのです。そうではなくて、中国貿易の推進の方に多少関連し、熱意を持ってこれに協力しておる私どもとして、多少思慮の足らぬところがありはしないかということを政府当局に申し上げて、行政指導ということは通産省の得意とせられるところでありますから、多少はこの辺で指導権を上手に行便せられて、輸出入組合首脳部ともこの点について御相談なさってみたらよいのではないか、こういうことを要望しておるわけです。
  27. 鈴木義雄

    鈴木説明員 通産省の行政指導につきまして、いろいろ貴重な御意見を拝聴いたしましてありがとうございました。御指摘の点でござ、ますが、実は先ほど私申し上げました通り、やはりかような鉄鉱石、私の申し上げました鉄鉱石を例にして申し上げますが、かようなものにつきましては、やはり信頼のあるものを通して、窓口を一本にし、交渉し、契約するのがよろしい、さように先ほど申し上げました。しかし実際の面は、できるだけメーカーの従来の系列なり、あるいは従来のいろいろの関係を考慮してやらしておるというふうに申し上げました。従来の経過で申しますと、昨年のものにつきましても、大体一社で契約はいたしましたが、LCは三社がやりましたし、実務は九社が担当しておる、かような実情になっております。従いまして今後の場合におきましても、窓口、契約というふうなものは一本で行いますが、実務等につきましては、さような点を考えて十分今後指導していきたい、かように考えております。
  28. 帆足計

    帆足委員 ただいまのような重工業局長のお考えならば、私は中国側を満足させるに足る折衷案も成り立とうかと存じます。とにかく私どもは個々の業務には何ら関与せず、何ら関心を持っておるものでございませんから、筋道が通って、貿易が円滑にいくことを希望しておるわけでありますから、われわれの要望の趣旨をおくみとり下さって、そういう方針で、いろいろ今後商談があるとするならば打開のために御努力なさることを重いたしまして、ただいまの件は、言うべきことは言い尽しましたから、それでけっこうです。
  29. 永井勝次郎

    永井委員長 次に多賀谷真稔君。
  30. 多賀谷真稔

    ○多賀谷小委員 私質問に入る前に、今の問題に関連して重工業局長並びに石炭局長にお尋ねいたしたいと思いますが、帆足委員質問は、開らん炭を中国では五十六万トン輸出したいというのに四十万トンになった経緯はどうか、あるいはその中には、商社が一社であって民主的でなかったようにも思われるから、行政指導をよろしくやってもらいたいという質問でありましたが、そういう意味でなくて、開演炭の輸入についてお聞きいたしたいのは、まず第一に、開らん炭の輸入による国内石炭産業べの影響はどうか、これは石炭局長にお尋ねいたしたいと思います。  さらに現在における鉄鋼の外国炭と国内炭の比率はどういうようになっておるのか。  さらに第三点は、開らん炭の輸入は、主としてアメリカから人ってくる石炭輸入の分を転換するのかどうか。すなわち運賃の関係その他によって非常にアメリカから入る石炭は高くなっておる。これの分を転換するのかどうか。  さらに第四点は、アッシュが非常に多いのだけれども、この出銑率に対する影響はどうであるのか。  さらに第五点は、今の開らん炭の輸入計画は、長期契約であるのかどうか、この五点についてそれぞれお尋ねをいたしたいと思います。
  31. 讚岐喜八

    ○讃岐説明員 開らん炭の輸入によります国内石炭鉱業に対する影響でございますが、石炭輸入につきましては、年間三百六十四万トンを計画をいたしておりますが、石炭局といたしましては、そのワクの中でアメリカ炭が輸入されるか、あるいは開らん炭が入れられるか等によりまして、別段影響はないというふうに考えております。要するに国内炭の不足を補うために輸入するのであります。  なおアメリカ炭と開らん炭の関係で、ございますが、三百六十万トンのワクの中でどちらが幾らになりましてもそれは輸入計画としては関係のないことであります。
  32. 鈴木義雄

    鈴木説明員 大体鉄鋼関係石炭輸入につきましては、国内が六割、輸入が四割、さような比率になっております。この四割は実は開らん炭を含めましての四割でございまして、メリット計算によりましてアメリカの場合は幾らになる、開演炭の場合は幾らになるというような計算でやるわけであります。もちろん開リャク灘炭はアッシュが多くございますから、アッシュが少ければ非常にいいわけでありまして、先ほど申し上げました通り、われわれとしてはアッシュの少いのを希望いたしますが、そうすぐになかなかよくなるというわけにもいきませんので、開らん炭側には今後の努力要求している、かような状況でございます。  それから長期契約かどうかという問題は、そのつどといいますか、今年は今年ということで契約をいたしております。しかし昨年もいたしましたし、今年もいたしましたし、また将来も事情が変らなければそういうようなことにしたい、かように考えております。
  33. 多賀谷真稔

    ○多賀谷小委員 いよいよ第四次日中貿易協定の問題が現実の日程に上ることになったわけでありますけれども、政府はこれらの問題に対して一度も方針をはっきりお出しにならない。石橋通産大臣は二十四国会では、そういうような協定が結ばれるというような情勢になるまでには、政府方針をはっきり明示いたしたい、こういうことをおっしゃっておるのですが、もう現実の問題として日程に上りつつありますが、政府はどういうような方針であるのか、お聞かせ願いたい。すなわち第一には通商代表部の設置についてその待遇についてはどういうように考えておるのか、どういうように歩み寄りをするつもりであるのか、さらにまた支払い協定の問題はどういうように考えておるのか、こういう点についてお答え願いたいと思います。
  34. 二階重人

    佐藤説明員 第一番目の通商代表部の問題でございますが、これははなはだ遺憾でございますが、私の主管になっておりませんので、ここで御答弁申しかねるのであります。
  35. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 支払い協定につきましては、大蔵省といたしましてはポンド現金決済の方式が現状において一番好ましいものと思いますが、ただ今まで行われております取引の実情に徴しまして、手続上あまりに煩瑣に過ぎるような点は、できるだけ簡素にして参りたいと思います。
  36. 中山賀博

    中山説明員 御承知のように、日中問の協定は民間協定の建前でございまして、民間のベースによりまして双方の要求をつけ合うということに第一次的な意味があり、またそれが残念ながら今日の国際情勢のもとではなし得る一つの限度だと存じております。もちろん昨年におきましても鳩山総理の書簡がございまして、政府としてはできるだけその達成に努力をするという建前に変りはないわけでございます。具体的にその協定の中に入ります品目ないしはそれからよってきます契約等につきましては、実際問題としまして、たとえば個々の具体的な商品につきましては、われわれが当初予想しておったものを先方の都合によって買えないという、向うがそれだけの余力がないというような場合、あるいはこちらが見返りの物資につきましていろいろ困難があるというようなこともございまして、一応民間ベースで希望をつけ合ったものが必ずしもそのまま成立するとは限りませんが、昨年におきましても政府としてはできるだけの努力をしてお手伝いをしてきたわけであります。  それから支払い協定の問題につきましても、今佐々木課長から言われたことに通産省といたしましても同感でありまして、いろいろな便法その他特殊なスキームが考えられておるようでありますが、今のところ大蔵省考え方も非常に妥当なことのように考えるのであります。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷小委員 この非常な問題点になっております通商代表部の設置をした場合におけるその身分の取扱いといいますか、待遇——向うとしては外交官待遇をしてくれ、こういう問題では実際はどういう点まで向うに行って話し合われるつもりであるのか、またどういう点までお考えになっておるのか、そういうことはしないとこう言ったって実際問題としては解決できないと思いますが、そういう点についてお尋ねいたしたい。
  38. 中山賀博

    中山説明員 この問題につきましては、過日来貿促、輸出入組合、それから議員連盟の方々を加えて、外務省中心にいたしまして通産省大蔵省、その他関係官庁代表者が集まりまして研究をして、今度持っていかれる訓令あるいは交渉議題の内容について研究を続けておることは御承知の通りだと思います。そうしてその内容につきましてもいろいろ意見が分れておる点もございますが、根本においては民間代表という線で何か一本にして訓令が出るように研究し、また努力をしておる現状でございます。
  39. 多賀谷真稔

    ○多賀谷小委員 いろいろ議員連盟その他で折衝をされておるようでありますから、本日は私はこれについてこれ以上深く答弁を求めません。しかしこの委員会で常に論議をされ、また委員会の全員の意向というものはよくわかっておると思いますので、そういう線でまとまるように努力をしていただきたいと思います。  次に私は渡航の問題についてお尋ねいたしたいのですが、この渡航の許可の基準というのがきわめて不明確であります。ですから、私は渡航の許可の基準というものはもう少し明確にされたらどうか。非常に不明確であり、不明朗である、一体行けるのか行けないのか、そのときの交渉次第ということでは、私はきわめて行政処置上もうまくいかないと思います。  そこでまず第一に、商用で行くとき、あるいは中国からの要望があったとき、日本側からも渡航を希望するときというような三条件が並立して全部具備しておる、こういう場合には私は当然許可すると、こういう基準をもう少し明確にされたらどうかと思う。そのときどきに議論をされて、行くとか行かないとか、許すとか許さないとかいうことでなくて、こういう商用的な問題はもう少し明確に基準を定められたらどうか、こういうように考えますけれども、それに対する御答弁をお願いしたい。
  40. 下牧武

    ○下牧説明員 ただいまの問題は本来外務省の所管でございますが、私の承知しておる限りでは、純然たる商用で中共へ渡航する場合にこれを断わった事例はありません。
  41. 多賀谷真稔

    ○多賀谷小委員 では純然たる商用で中国から要望があり、また日本から行く、こういう場合にはこれは許可する、こういうように考えてよろしいですか。
  42. 下牧武

    ○下牧説明員 問題を決定するのは外務省でございますから、私の方ではっきり申し上げるのはちょっと越権かと存じますが、今までの実例では純然たる商用で渡航を禁止したという実例はございません。
  43. 永井勝次郎

    永井委員長 次に帆足君。
  44. 帆足計

    帆足委員 先ほど多賀谷さんから御質問しました、中国との懸案になっております貿易出張所とか為替協定とかの問題につきましては、先般来の話し合いを私どもの方でも少し取りまとめてみまして、なお未解決な問題またはいろいろ研究する必要のある諸点などの一覧表を作ってみましたので、後ほど議事が終ってから差し上げますから、御研究のほどを願いたいと思います。  それから重工業局長に重ねてお尋ねしたいのですが、先ほどの問題は、こちらへお見えになる前に、私は統制方式の問題として実はお話ししたのです。というのは、それとまた類似の問題がいろいろのことが起っております。中国日本との貿易統制方式といいますか、貿易秩序のあり方というものについての向うの要望と、それからこちらの商社またはメーカー、それから市場別または商品脚のメーカー、また当面の仕事に対して実績を持っているメーカーと、古い実績のあるメーカー、それらの諸関係を——相手統制経済であり、こちらは自由経済の建前の国が、どういうふうにすれば円滑に筋道立てて、摩擦少くやれるかということについて研究の必要があるということをまず申し上げたのです。特に商品出張所、海外通商部ですかを作ることになると、やはりこういう秩序をきめておきませんと仕事ができませんし、また輸出入組合がなかなか仕事しにくいといっておりますが、それは一体どういうことから来たことであるかということの材料にもなるわけです。それを申し上げたのですが、かりに日本政府の方で五十五万トンくらい買おうというお考えに、またその必要があったときに、ただいまのようなつまらない行きがかりから十五万トン流れてしまうというようなことになるくらいならば、それはやはり中国側があまり無理でない要求であるならば、輸出入組合政府メーカーさんたちが相談し合って、スマートに解決すべきであろうと思うのですが、それについて最後的な御意見はどのようにお考えですか。
  45. 鈴木義雄

    鈴木説明員 具体的なことにつきましては、もちろんその際によく輸出入組合なり、あるいはメーカーなり商社側と相談してきめなければいけないと存じますが、私が先ほど来申し上げました通り、やはり交渉窓口なり契約は信頼すべきところで一本でやり、実務はそれぞれのメーカー関係、従来の経緯でそういったところできめるようにすべきではないか、かように考えております。しかしもちろん具体的のケースについては、よくその際に先ほど申し上げました関係方面と相談してきめていきたい、かように考えております。
  46. 帆足計

    帆足委員 その場合に私が申し上げるのは、単にメーカー商社が話し合うだけでなくて、やはり顧客側の中国側希望が一体どこからどういうためにそういう中国側要望があるのか、そういう点もやはり正確に把握されて、中国側が悪意を持ってそういう貿易秩序を乱そうと思ってそうしているのではなくて、きわめてたんたんたる立場で、また貿易振興の必要上から向うがそういう建前をとっておるというような事情も、先ほど宇田委員も言っておられましたが、メーカーさんは仕事の方に忙しくて、貿易の方の事情はよくおわかりになっていないように思うものですから、もう少しそういう点をざっくばらんに御研究になっていただきたいと思います。  硫安の問題は、軽工業局長がお見えになっておるか知りませんが、去年は非常にあれは不幸なことであったと私は思うのです。先方は年間二十万トンでもいいし、十万トンでもいいから、少くとも数カ年にわたって最小限度の約束だけしておきたい、と申しますのは、硫安の輸入は農民に直ちに影響する、農民は獲得する約束になっていた肥料が入らないと仕事ができないので、自分たちはたよりにならない市場相手にすることはできないから、数量は少くてもいいから最小限だけでも取りきめをしたい、それに日本の硫安業界は応じなかった。私はこれは台湾を刺激しない別な方法で、紳士協定かまたは非公式の覚書のようなものでもよかったと思います。そこで中国側はせめて日産化学だけとでも話し合いたい、そして私もその席に立ち会ったのですが、日産化学に、あなたの方で五万トンだけでも約束してくれれば、自分の方では西ヨーロッパから五万トンだけ買わないで済む、それでせめてそれだけでも約束してくれないかといわれたのに、硫安協会はそれに応ぜず、日産化学も硫安協会の思惑を考慮して応じなかったわけです。それが今日中国との肥料の取引が途絶する一つの原因になったわけです。従いまして私はこういうことは愚かなことであって、中国はやはり一種の文化の高い国でありまして、貿易に対しても情理兼ね備わったことを申しております。すなわち単に商売をするだけでなくてお互いに国体は違い、政情は違うけれども、ひとしく隣邦の国として互恵平等と有無相通の貿易をしようじゃないか、単に相手を利用することだけでなくて、長きにわたる親善友好の貿易をしたいという気持を持っているわけです。これは日本の硫安メーカーさんや鉄鋼メーカーさんたちが、直接先方の当局と折衝すれば向うの気持はよくわかると思うのです。国土は膨大で、そして非常に貧しい国です。その貧しい国が、政体の相違はありますけれども、大きな建設をして、そして民の生活を豊かにしたいと思って努力しておることは間違いありません。それに対して日本の工業は理解し寄与してもらいたい、同時に原料と食糧の少い日本に対して、中国はその地広く、物資豊かな能力で寄与しよう、こういう論理で呼びかけているわけですから、その辺の心理を私はもう少し懇切に日本業界理解する必要があろうと思います。  それから時間も移りましたので、一言最近技術交流の問題が起っておりまして、村田さんもあちらに行きましたら、一つ技術センターのようなものを考慮したいというようなことを言っております。また機械の輸出ができるようになると、アフター・サービスの問題もありますし、代理店の問題も起りますが、一般の自由諸国のように、個々の大企業が自分の代理店を置くというわけにも参りませんから、これは輸出入組合とか国際貿易促進協会等で共同して技術センターの最初の萌芽になるようなものを考える必要があるのではないかということを申しておりますが、通産省当局としては、これに対してどのようにお考えであるか。  それからもう一つ、法務省及び外務省が指紋のことにいまだにこだわっております。それできょう外務省は来ておりますか。
  47. 永井勝次郎

    永井委員長 法務省は来ておりますが、外務省は所管の人が来ておりません。
  48. 帆足計

    帆足委員 それではこのことは所管外の人に聞いても御迷惑でしようから、ただいまのことをお尋ねしまして、質問を打ち切りたいと思います。
  49. 中山賀博

    中山説明員 中国との人の交流の問題につきましては、先ほどもお話が出ましたが、通産省としては具体的な商談に寄与する人あるいは具体的な貿易の促進に寄与する人とかは、そのつど外務省に推薦いたしまして許可をもらうよう努力している次第であります。そういうようなわけで人の交流も盛んにし、またわれわれの国際協力、国際協定の範囲内におきまして、物の交流あるいはさらに技術その他の交流も当然考えるべきもので、われわれとしてもその促進に努力したいと思っております。またお話意匠センターあるいは技術センター等の企ても将来の貿易の進展に即応しまして十分考慮に値する問題だと思っております。
  50. 宇田耕一

    宇田委員 関連して。鉄鉱石、粘結炭の輸送のことですが、最近話題になっております鉄鉱専用船の問題ですが、これに対しては軍工業局ではどういうような考えを持っておられますか。
  51. 鈴木義雄

    鈴木説明員 従来からこの点は非常に問題となっておりまして、結局運賃の問題を解決するために比較的安くするというふうな意味で、従来は鉄鋼メーカー関係方面で専用船の問題が考えられてきております。この二、三年来ずっと御承知の通り考えられてきております。世界の傾向も大きな船によって運ぶべしというふうになっておりまして、各国ともさような方向に進んでおります。従って日本といたしましても、さような方向に持っていきたい、かようなことでございます。昨年まではまず現地の港湾施設とかそういうふうなものをよく調べて内地の鉄鉱の輸送の設備等を考え、どういうふうなタイプのものがいいかというふうなことの研究をしようというふうに考えております。現在でもその方面の研究は続けられておりますけれども、御承知のごとくこの四、五カ月前におきまして、とりあえず十四、五隻、一万五千トンから二万トンくらいの専用船を作るべしというようなことが鉄鋼メーカー側において結論が出まして、それについて今海運関係あるいは用船関係、さようなところと話し合いを進めて、通産省としてもかような計画を推進したいと考えております。しかしさらに将来いろいろ鉄鉱石の大規模の開発に伴いまして、もっと大きなどのようなタイプの船をどのような形で、またその運営方法はどのようにすべきかということについて今後さらに研究を続けていきたいと考えております。
  52. 宇田耕一

    宇田委員 今のお話で大体見当はつきますが、輸送する場合の鉱石は、フィリピンのララップとか、ゴアとかいうところですか。
  53. 鈴木義雄

    鈴木説明員 今運んでいるのは御指摘のようなところからになります。将来の問題としては、たとえばインドとか、さようなところの開発計画がきまると、それに対応してどのようなものを考えるかということになります。
  54. 宇田耕一

    宇田委員 まとまったところといえば、インドとか、マライとか、コアとか、そんなところでしょうが、おそらくそれが重点でしょうね。そうすると、イギリスのように専用船の管理とか運営の母体とかというものについてはどういう構想でいくのか、それについての研究はどういうふうになっておりますか。
  55. 鈴木義雄

    鈴木説明員 昨年あたりまでは、さような場合に一つの会社を作ってやりたいというような構想がございましたが、現在では必ずしもその構想によらないで、むしろ海運業界、さようなところに持ってもらってもいいのではないかという考え方もあるが、最終的な結論が出ておりません。この点今後どうふうにするかということについて研究いたしたいと思います。
  56. 宇田耕一

    宇田委員 そうすると、たとえばアメリカのように非常に大きなトン数の船を持って行って、積込み設備さえうまくいけば、それを持ってきて、日本の貧弱な港湾設備を改善することは第二にして、一定のところに集積して各メーカーがそこへはしけでとりに行くという方法もあるが、そういうようなことは研究はなさっていないのですか。
  57. 鈴木義雄

    鈴木説明員 今までの研究の過程においてさような意見も出たことはありますが、まだそれについてどうこうという大きな方向ではしけでとることについては結論が出ておりません。
  58. 宇田耕一

    宇田委員 そこで最近の鉄鋼計画の数字だけをわれわれ間接に伺ってみると、かなり膨大な原材料を必要とするように思う。そうすると当然コストの安い品物を相当長期にわたって輸入しなければならぬ。そうした場合に海運界の一番の問題は、何といってもフレートの激動が非常にある状況ですから、鉄のようなものの原材料を長期にわたって一定コストのもとに確保することはやらなければならぬ。それが重要な基本線だ。それについては専用船の問題も当然考えなければならないと思いますが、その点についてはあらためて別の機会にお聞きいたしたいと思います。なおもっとそれを具体化するような予算措置等が当然考えられるべきものではないかと考えますから、別の機会に伺います。
  59. 永井勝次郎

    永井委員長 次に阿左美君。
  60. 阿左美廣治

    ○阿左美小委員 輸出の振興はお互いの相手国関係が大いに影響することと思います。現在わが国の主要輸出製品として生糸が非常に輸出不振でございます。すでに買い上げ価格すれすれというようなところでありまして現在製糸家は繭高の製品安だ、このままこの価格を継続するならば、製糸家は破産の状態に立ち至ると思います。そういうことになりますならば、養蚕家にしわ寄せをして参り、わが国の農村経済に最も主要な役割をしておるところの繭の価格が低落するということは国民経済に非常な影響があると思います。この生糸の価格が現在のように低下したということはいろいろな原因はあると思うのでございますが、聞くところによりますと、中国の養蚕が非常に増大してきて生糸の現在の生産というものは相当なものである。しかもその価格は現在千匹十六貫でありますか、それが十三万円であるというようなことを聞いておりますが、果して現在中国の生糸がそういうような価格で取引されておりますか。また中国の実際の現在の繭の生産はどのくらいのものであるか、その数量、またそれらの生糸がいずれの国、方面に現在輸出されておるかということを一つ詳細にお伺いをいたしたいのでございます。
  61. 大城齊敏

    ○大城説明員 お答え申し上げます。中国の繭の生産高と国内状況については従来とも政府におきましても、生糸の輸出業界におきましても、努めてはおりまするけれども十分な資料がありません。ただ輸出面におきまして中国生糸と日本生糸との関係を申し上げますと、日本の生糸は先ほど阿左美議員のおっしゃいました年々減っておるという点、この点は実は違うのでして、年々ふえておりまして、昨年は八万六千俵ふえております。戦後の最高であります。本年はうまくいけば十万俵という計画を持っておりましたけれども、例年前半は振わないのが常でありますけれども、本年は今のところ一月−六月の三万二千俵、場合によってはあるいは昨年程度に終るかとも存じますが、いずれにいたしましても戦後ずっと伸びております。ただしかし中国の生糸の関係ではヨーロッパに対しましてスイス経由フランスへ、あるいはフランスから直接買い付けておるような状況でありまして、その詳細はわかっておりませんが、いずれにいたしましても中国の生糸が欧州市場に出なかったならば、戦後この欧州諸国におきます消費の増大に比例いたしまして日本の生糸の輸出がもう少しふえるべきであった。そこを中国生糸のために食われたということは言えると思います。一応調べたものはありましたが、ちょっと今資料を持ってきておりませんので申し上げかねまするが、相当の数量が出ております。しかもその値段日本の生糸より確かに安い。そしてその安いのは日本値段が高いと思ったときに向うはある操作をいたしまして、日本より安い値段で売るということ、これは中国輸出が国営でやられておるといったような関係から、自由な価格操作ができるという面にあるというふうに聞いております。私どもの方の対策といたしましては、この中国生糸がいかにして欧州に入ってくるか、その流入の実態、それからその販売の実態というものを調査いたそうという書画はあるのでございますけれども、十分なことはできませんので、対策といたしまして、できますればフランスのリオン、これはフランスにおける機業の中心でありまして、生糸の欧州における流通の情報を得るには最もいいところでありますが、そこにジェトロの出先あるいは輸出組合の出先というものを設けさせまして調査をしたいというような計画は持っておるような実情であります。肝心な中国状況について完全なお答えができないことは遺憾に存じますが、ただいま申しましたのが実情でございます。
  62. 阿左美廣治

    ○阿左美小委員 私は日本の生糸が減産するということを申し上げたのではないのでありまして、仰せの通り生糸は年々増産をしておるわけであります。増産をいたしますと、輸出が振わない場合にはやはり非常に問題だと思います。昨年よりは本年、本年よりは来年と、確かにわが国の生糸はますます増産すると思います。増産する生糸に対しまして、現在のような状態をこのまま放任するならば、最後には価格的にもまた数量的にも行き詰まるのではないか、それで中国の生糸というものを考えざるを得ないと思います。中国で生糸がやはりそういうような価格で生産され、生産が増大していくことになりますれば、日本の生糸はいずこにいくかというような問題に行き詰まるのではないか、そうでないといたしましても、現在の国内消費というものから考えてみますと、国内では本年あたりはほとんど生糸を使用していない、ほとんど化繊維であると申してもよろしいと思います。そういうことになりますと、日本で生産された生糸は今度は全部輸出しなければならぬというようなことがやはり国の一つの政策でもある、なるべく生糸は輸出して、国内では化繊維を使えということが日本の施策でもあるのでございまして、どうしても生糸の輸出ということに相当の施策を講じなければならないということになりますと、中国の生糸というものが非常な問題になってくる。これに対しましてどういう対策を今後立てるかということは、最もこれは生糸輸出に対する一つ対策ではないかと考えられるのでございまして、三十二年度計画を見ますと、予算も本年度に比較いたしますと相当増大してあるようでありますから、御心配になっていることは事実でございます。しかしながらこのくらいのことではまだ足りないのではないか、日本の生糸を海外に宣伝するということになりますと、もう少し力を入れる心要があるのではないかと思う。  私、先般ヨーロッパ、アメリカを回って参りまして、日本の生糸の将来をいろいろ調べて参ったのでございますが、まだまだ宣伝をすれば、日本の生糸は特殊の繊維でございますから相当の販路があるのではないか、やはり宣伝がまだ足りないようなことを痛感して帰って参ったのでございますが、今後どうしても日本の生糸は海外にもう少し宣伝をする必要があると考えるのでございます。そこで価格におきましてもやはり中共の価格とある程度の比較をしなければならないと思うのでございまして、いろいろの面からの対策を必要とするのでございますが、こういうような面に対しましてどういうふうにお考えになっておりますか、一応御意見を承わりたいと思います。
  63. 大城齊敏

    ○大城説明員 お答え申し上げます。生糸の価格の問題につきましては、ただいまは十九万円を最低価格として農林省においてこの対策を講じておられ、それに基いて私どもは輸出の態勢を考え輸出の増大につきましては、さきの質問中共の問題につけ加えたいのでありますが、中共はどのようにして欧州に生糸を売っているかという情報を集めるのみならず、日本の生糸が中共の生糸より質において劣る点がある。これは何と申しましても日本では戦前から生糸の増産ということを主眼にいたしまして、多量生産を主眼としたために、質において中共の、日本よりはカルチュアする程度の低い繭よりは、日本の増産に増産を重ね、改良に改良を重ねた日本の生糸の方が、でき上りの生糸においてけば立ちとか何とか技術の点において劣るところがあるそうであります。それにつきまして生糸の品質の改善、これはもちろん農林関係で一生懸命おやりになっておりますけれども、中共生糸と太刀打ちするという関係から輸出を扱っている私どもといたしましても、特にその点に注意いたしまして、現にアメリカ方面におきましては通産省予算をもって生糸の品質改善ということの委託研究もやらしておるような次第であります。これも中共生糸に対する対策一つであるということを申し上げたいと思います。  なお一般的に生糸の輸出増進につきましては御指摘の通り予算にも実は相当の要求を出してありますが、昨年も要求いたしましたけれども、思うにまかせなかったわけでありますが、本年も予算要求を出しまして、これが幸い許されることと相なりますれば、生糸の非常な潜在的な需要を持っております、特に戦後絹織物に対する需要が非常に復興してきたアメリカを中心といたしまして、強力な宣伝をいたしたいと考えております。すでに農林省におかれまして中央蚕糸協会に対する補助金の形において、ニューヨークに生糸事務所があって、そこにおいて大々的な宣伝をやっておられます。これと躍もありまするけれども通産省といたしましても 生糸の輸出増進については今後とも十分な努力を続けたい、こういうふうに考えております。
  64. 阿左美廣治

    ○阿左美小委員 いろいろ御研究はなすっておいでのようですから、一応われわれとしても安心はしておりますが、しかし生糸の前途に対しては、私は相当に考慮をしなければならぬと思うのであります。なぜならば、輸出振興とは申しましても、相手国もやはり経済人でございますから、何も安く買えるものを高く買う必要はないのであります。やはりかけ引きは相当あるのでございますから、どうしても輸出を振興すると同時に国内消費ということも考えなければならぬのではないかと思います。輸出一本でいきますれば、どうしても価格を引かれる。相当に生産が増大してきたのですから、ある程度国内でも消費するということを考える必要があるのではないか、こういうふうに考えます。三十一年度におきましては国内消費が全然減って参りまして生糸は国内では消費しないというような状態ですから、これではどうにもならぬというので、現在製糸協会が一千万、業界が五百万、千五百万という宣伝費をもって大衆宣伝する、そして国内消費を大いに振興するというような対策を立てつつあります。その第一回の何を京都において来月の六日の日に発表する、現在こういうような運びになっておるようでありますが、こういうことに対しまして政府は何らかのお考えがあるか。国内消費についても業界ではそういうような対策を立ててやっておるのですが、国内宣伝も、これは輸出と関連があるので、こういう面に対しましても何らかのお考えがあるかどうかということをお伺いいたした。
  65. 大城齊敏

    ○大城説明員 実は正直に申し上げまして、国内問題については私所管でないものですから研究をいたしたことはございませんが、私の気持を申し上げますれば、そういった面国内が安定しなければ輸出も安定しないということはこれは当然の理でありまして、国内の消費が非常に少いということになりますと、勢い赤字輸出というような好ましからぬ輸出もあるわけであります。たとえば今年五月仏印三国に対する輸出について、従来輸出承認の品目でなかったものを、組合で協定を作らせまして、最低価格以下の輸出を不可能ならしめるような措置をとったわけでありますが、それなんかも、国内の不振ということが結局そういったような出血輸出をさせるという点がありますので、私ども輸出の方を担当いたしておりまするものといたしましては、国内においても適当な消費が常に維持され、しかも安定した、生産に見合った消費が維持されるということについては非常な関心を持っているわけでありまして、そのような方面を所管している課に対してそのようなことにやってもらうように今後とも勧告し、また輸出いたしたい、こう存じております。
  66. 阿左美廣治

    ○阿左美小委員 いろいろお考えにはなっているようですからけっこうと存じますが、何と申しましても生糸の海外宣伝ということは最も必要である。また絹織物の輸出に対する補助というようなことも予算の面にあるようでありますが、これらも大いに予算を取っていただき、海外の宣伝指導に対しては万全を期していただく必要があるではないか、こういうふうに考えます。国の経済におきましても、また農民の生活におきましても非常に大きな影響のある問題であると考え輸出品目の中でも最も重要な商品でございますので、生糸の輸出に対しましてはひとしお力を入れて今後対策を講ずるようお願いする次第であります。  時間も過ぎておりますから、以上をもって質問を打ち切ることにいたします。
  67. 永井勝次郎

    永井委員長 本日はこの程度をもって散会いたします。    午後三時三十七分散会