○帆足小委員 非常に切実な御
意見を承わって大へん参考になりました。私も
考えるところあって数年前から、原子科学の時代に生きる
日本としては
世界各国と平和を保ち、そして島国
日本は
貿易で行かねばならぬと思って、人がらい病病みの
ように忌みきらうところの、また錯覚を持ち、今日の
日本人の教養では精神錯乱に陥る対象であるところの共産圏との
貿易という困難な仕事を推進するために多少
努力してきましたけれ
ども、しかし
日本は北アジア、中国の
貿易だけでやっていける国でなくて、やはり
アメリカとの
関係も交通が発達しました今日非常に重要であるばかりでなく、東
南アジアはどうしても切っても切れぬ生存圏の
一つです。従いまして東
南アジアに対してもっと真剣に、
市場も研究するだけでなくて、この民族の心理と政治の動向をもう少し研究する必要がある。そしてもっと深い親善
関係、相互理解
関係を結ぶ必要があるし、場合によっては東
南アジア諸国と経済
会議の
ようなものを恒常的に持ち、政治的にも経済的にも
日本とは特別最恵国的
関係を持つといった
ような政治工作が必要でないかと、実は思っておる次第ですが、何ゆえか
日本人は、
日本は
アメリカ、イギリスの同盟国、白色人種の同盟国であり、戦勝国の一国であって、インド、インドネシア、中国は、あれは敗戦国であり、敗残の民族であるという
ような錯覚をまだ持っている人が非常に多い
ような気がいたします。こういう
ような心理では、どうもインドやインドネシアには近づきにくいのではないか。現にある種の思想、保守というよりもむしろ反動的思想を持っている
日本の政治家がインドなどへ行きますと、インドの青年は非常にきらう。しかし社会党員であり、ヒューマニストである私たちが行きますと、非常な歓迎を受けます。こういうことも
一つ業界の方にお
考え願って、
貿易と平和の問題は超党派的な国民の要求でありますから、皆さんが今後インド、インドネシア、ビルマ等、東
南アジア、アフリカ等に工作をなさるときには、社会党系の政治力と保守党系の政治力と両方をお使いになることが有利なんじやないかと思います。これから私
ども東
南アジアの方を研究いたしまして、皆さんの仕事をしやすからしめる
ように、もう少し政治的にも相互の親密、理解を深めたいと
考えております。まあ、それはそれといたしまして、戦争が不可能であるとするなら、島国の
日本としては今後一体どうやって生きていくか、あげて皆さんの
輸出産業の双肩にかかっているわけです。敗戦以来大脳は少しぼやけておりますけれ
ども生殖器と胃袋だけは依然として旺盛な民族でありますので、私はこれは容易ならざることだと思っております。昨日も国勢調査の結果を見ますと、九千万という一億になんなんとする民がこの小さな、スエーデンより三割も挾い島の中で生きねばならぬ。終戦直後はよく文化国家という
ようなことを言いましたけれ
ども、
世界で文化国家といわれるスェーデンが人口六百万、デンマークが四百五十万ベルギーですらわずか東京都の人口以下で、しかもアフリカに相当の植民地を持っておる。そういう国に比べて
日本ほど困難な状況に置かれた国民はないと私は思うのです。しかも生産は戦後十一年で戦前の百六、七十をこえておる。よくぞここまできたものだと思うのです炉、かくなる以上は戦争で他国の領土をかすめるという、最も安易にして常識的な
方法はいつの間にか消えてしまって、とにかく連隊旗がこたつぶとんになったり、ぞうきんになってしまったわけですから、これは百八十度の頭の切りかえをしなければならぬ。しかるにまだ頭の切りかえができていないところに
日本のあり方が暗中模索の状況であるという悩みがあると思うのです。国民の
向うべき目標がはっきりしておりません。原水爆の時代に生きねばならぬ
日本の目標が私は明確になっていない
ような気がします。これは無理からぬことでありますけれ
ども、しからばどうしてやっていくかといえば人口の調節ということも
考えねばならぬでしょうが、結局国内の開発、科学
技術の
振興です。外に対しては
貿易の
振興、この
二つしかないと思うのです。そのほかにもう
一つ必要なことは、労使の協力と、それから生産が進めばその能率に応じて国民生活の水準を多少は高める、それを高めないとめぐりめぐって皆さんの作った品物炉売れなくなる。自転車でも、ゴムぐつでも、ミシンでも、ワイ
シャツでもこれは勤労者が使うために作るのですから、生産能率が高くなり、生産が高くなったら、じわじわと生活水準を上げていくという方針を
世界的にも国内的にもやはりとらねばならぬと思う。個々の企業からいえば労賃は安いほどいいには違いないけれ
ども、国民経済全体から見れば、自分が作る品物を買う人はだれかといえば、重役が買うワイ
シャツの数などわずかなものです。重役の乗る自転車は微々たるものです。これは大衆の乗る自転車、大衆のはくくつを作るわけですから、あまり高過ぎない範囲でじわじわと給料を上げる――労賃はおでんみたいなものです。あまり熱過ぎると国民経済が持ちこたえられない、ぬる過ぎると食べられません。だからあたたかくて経営者の皆様から見ると、ちょっと熱過ぎやしないか、しかし給料をもらう側からいえばそのくらいのところが、国民経済の繁栄上よろしいのであって、国民経済全体として今日まで
日本の景気が持ちこたえられてきたのは、あるいは総評さんが適当に賃金の値上げをして下さったから、皆さんの庶民工業が購買力と均衡しておるのであって、もし総評というものがなかったら、三年前に恐慌が起ってあるいは皆さんの
中小企業がつぶれておるかもしれない、こういう
関係があるのじゃないかと思います。そういう
ようなことをお
考え下さって社会党のやっていること総評のやっていることが多少の行き過ぎがあったりまた至らざるところがあるかもしれませんが、むちやをやっているという
ようにお
考えになるのは少し見解が間違っておると思います。同じことは共産圏の
貿易に対しても言えるのでありまして、
アメリカ、東
南アジアの
貿易は非常に重要です。中共
貿易というと、中共
貿易で何もかもできる
ように言う
ような性質の人がおります炉、それはその人の性質にすぎないのであって、社会党は
アメリカとの
貿易、東
南アジアとの
貿易、中国との
貿易、これを三・三・三くらいに
考えて均衡のある
対策をとらねばならぬと思っております。昨年に至って
コールテン、
別珍、毛織物が若干出る
ようになりました。それに対しまして、盧緒章という進出品公司の総裁が、皆さん御待望のそういう日常の平和的な
繊維製品、それを中国が買うか買わないかという問題について談話を発表しまして、私も総裁、副総裁にゆっくり会いましていろいろ
意見の交換をしました。中国側は今建設に全力を注いでおるから建設資材を優先的に買う。しかし建設が進むにつれて、今日の中国の大衆は都会では多少自転車があるけれ
ども、農村にはほとんど一台の自転車もない。農民は紺の着物を着ていかにも涼しげにしておるけれ
ども、冬になっても下着を満足に着ておる
ような状況ではない。従って上海または東北の
繊維工業が相当発達しても、なおかつ六億の大衆によい着物を着せるということは大へんな仕事です。従って建設に多少でも余裕ができれば、やはり非常に大量の平和物資がいるから、たとえば最初に私が行きましたとき、四万台の自転車を注文しました。そのときに総経理が言いますのには、五万トンの硫安を売ってくれるならば、私の方はそのお礼の意味もあって四万台の自転車を一緒に買いましょう、こう言ったのです。硫安は
輸出禁止物資でないのに
日本政府はさる方面のおしかりを考慮してとうとう硫安を出しませんでした。私は苦心惨たんして日産化学をくどいて当時、おととしの春です。五千トンの硫安をやっと伏木の港から日章旗を掲げて天津の港へ出しました。中国では万雷の拍手をもってこの硫安の船を迎えまして私には祝電がくるそうして自転車四万台の注文は取り消されていましたのが、せめて五千トンでも出たお礼に四千台の自転車を
日本の
中小企業に発注し
よう。それから十万本の体温計を発注し
ようという
ような注文が当時参ったのでございます。
〔小
委員長退席、加藤(清)小委長代理着席〕
今やことしは二十三万トンの硫安を中国に
輸出する
ようになりました。わずか三年前を思うと私は感慨無量の思いがいたします。こういう勢いの
一つの中に、
別珍、
コールテン、毛織物の発注がぼつぼつ参り始めました。この問題について私は話し合いましたが、ただいまは間歇的に、自転車、ミシン、綿織物、毛織物等を注文しておるきけれ
ども、これはほんの氷山の一角で、はしりの
ようなものです。今後は秋の報奨物資、春の祭、夏のはだ着など必要なと遂に間歇的に注文を差し上げます。従って今回のは一回限りではありません。間歇的に注文が出ます。しかしまたしばらくとだえることもあるでしょう、しかしそのあとは今度は間歇的でなく、継続的、計画的に大量の注文をする日が必ずくるのですから、そのことを
業界の皆さんによく伝えていただきたい。一回自転車の注文が四千台きた、その次一万台きた、また八カ月とだえたという
ようなことで絶望なさらないで、最初は間歇的にきますが、やがては継続的に注文をする
ようになりますから、もうしばらくしんぼうしておって下さい、こういうことでした。これに対して私はまことに筋のある、建設の途中においてはかくあるべきだと思った。
日本でも明治維新のころでは貴重な生糸を
輸出したときに、大久保利通は優先的に輸入するものは機械でなくてはならぬと、明治の元勲はそう主張したのです。ソ連でも四十年前にはもう子供たちははだしで歩かせろ、女はズロースをはかせなくてもよい、ひたすら重工業、重工業といって四千三百万トンの鉄と原爆、水爆を作ったがゆえに、スターリンがよかったか悪かったかは別とし、ソ連の思想が正しい、正しくないは別として、
アメリカの一喝におびえなくて、勢力相均衡して
世界が平和になった。これは私は天の摂理だと思いますけれ
ども、それだけの
努力をソ連もしてきたのです。中国は犬ネコ同然の裸の生活をしておった国ですから、まず機械を作りたいというのは当然だと私は思う。そうすればソ連向きの
輸出禁止物資は、バール法によって戦略物資と規定されていて、バズーカ砲やナパーム爆弾をソ連に
輸出してはならぬ、これは当然のことだと思う。これはだれにも異議がない。ところが第二リストにちょっと加えられているのが中国リスト、これは木造船も
輸出してはいけない、トラックの
輸出はいけない、ラジオは
輸出していいが部品の
輸出はいけない。部品の
輸出を禁止されてラジオが出るはずはない。それから薄板すら
輸出はいけない。これは戦略物資ではなくて平和物資、すなわち平和
貿易の闘いにおいてちょっと
日本に足踏みさせるという戦略、すなわちソ連に対する戦略ではなくて、
日本に対する戦略から、そういう物資の
輸出禁止が行われておる。もし同じことがかりにフランスにアフリカと
貿易するな、英国にインドと
貿易するな、または
アメリカに対してカナダ及び中南米などと
貿易せぬでもよいじゃないか、英国がついているから安心しろなどといったら、一体そういう政権が半年保てるかどうか、その国の商工
会議所は黙っておれるかどうか疑問だと思うのですが、
日本ときた日には、かって今の金にして
輸出入合計十六億ドルの
貿易をしていたところの中国全体と
貿易を途絶せざるを得ぬ状況に一昨年までなっておったわけです。今日それらが回復して
輸出入合計一億ドルになりました。輸入だけ炉七千万ドルです。しかし七千万ドルの去年の輸入は、今年はほっておいても一億ドルになり得るのです。輸入が一億ドルになり、不当な
輸出制限がなければ、
輸出も一億ドルにこれもなり得るのです。すなわち一億ドルというものは中共
貿易はもうワクに入ってくるのです。一億ドルの
貿易ができるならば、来年は三億ドルの
貿易ができる。三億ドルの
貿易ができるならば、再来年は五億ドルの
貿易は大体ワクに入ってくる。私はこう見てもよいと思う。今中国はちょうど転換期で、まさに第二次五カ年計画に移ろうとするときですから、平和物資の面で中国にやはり何か役に立つものを送る。硫安きとか薄板とかトラックとかを送る、そして同時に
日本の
繊維製品を買ってもらう――皆さんは
アメリカに不景気がくるかもしれぬ、東
南アジアは欧米各国の角逐戦場であるほかに、民族資本が起ってきたからなかなか困難な
市場になるだろうと悲鳴を上げられる。それで中国六億の民を擁する
市場にも
努力せねばならぬと言われる。それならばわれわれが中国に軽工業物資を送って
日本の不景気を緩和し、
中小企業の苦しみを緩和して、よい原料を安く買う、そうするならば同時にわれわれが中国に何か寄与するところがなければならぬ。中国の新政権ができて一カ月たたない一月六日に、早くも英国は中国を承認いたしました。英国は一体おっちょこちょいだから中国を承認したといえるでしょうか。これは深謀遠慮、きわめて現実主義に基いて承認しておると思う。現在代理大使が北京におります。それに対して
日本は
アメリカへの遠慮から何もしておりません。何も中国に役に立っていない。人に役に立たないでおいて、自分のものを買ってくれ、買ってくれ――中国の
貿易次官が私にこう言ったのです。中国の
市場は
日本の
中小企業の心のうさの捨てどころではありません。また
日本の
中小企業のはけ品でもありません。中国と
日本との
関係は互恵平等であって、中国の欲する品物を
日本が下されば喜んで買って、中には不急不要の物資まで
日本から買って、同時にまた
日本の必要なものを中国から
輸出しましょう。たとえば薬にしても越中富山の反魂丹、森下の仁丹を買ってくれというだけでは困ります。もちろん中国にも老人がおりますから、多少の反魂丹も買いましょう。しかし今ほしいのはペニシリンであり、ストマイであり、ズルフォ・アミド剤がほしい、これは総
輸出額の九割はすでに中国に出ております。同じことは
繊維製品についても言えることであって、
繊維製品も買うと同時にトラックも薄板も一緒に売って下さい。ところが相手が病める者が薬を求める
ように、ほしがっているものに対してはそっぽを向いてその
輸出のために
努力もせず、便宜をはかろうともせず、自分の余った
商品だけ、しかも東
南アジからやがて駆逐され、
アメリカにも今後は締め出されかかっている品物を中国に買ってくれという論理が果して通用するかどうか疑問に思っておりますが、皆様
業界の
方々は一体中国との
通商関係の増進に対しまして、
日本側が中国に現在寄与し、将来寄与する
ようなことを何かしたことがあるかどうか、私はそれを
一つ伺いたいと思います。大へん皮肉な、質問で恐縮ですが……。