○
佐藤説明員 まず
輸出入関係から申し上げます。三十年度の
輸出の
状況でございますが、三十年度は当初十六億四千万
ドルというような予想から出発いたしたのでございますが、期の半ばにおきまして
予想外に
輸出が伸びまして、結局二十億五千万
ドル程度の
輸出が実現を見るであろうというような
状況でございます。その
原因は、対外的な
原因といたしましては、
米国その他
諸国の
景気が非常によかったということ、従ってそれに伴う
産業活動が盛んで、需要が旺盛であったということ、それから他の
ヨーロッパ等の
先進工業国がそのために
輸出余力が
減退を来たしたということ、
国際価格が非常に高くなったということ、こういう対外的な非常な有利な条件にささえられまして、
国内におきましても、ここ二、三年来の
安定経済の基調が継続をしており、あるいはなお
業界方面でも
輸出意欲が非常に旺盛であったというようなことが
原因となっております。
そこで三十一年度の
輸出予想でございますが、三十一年度の
輸出見通しを立てます
前提といたしまして、まず対外的な要因を考えてみますと、
アメリカにおきましては、本年下期に
大統領の選挙を控えまして、大体前年
程度の
好景気は持続するものと見ております。
西ヨーロッパ方面におきましては、最近イギリスにおきまして金利の
引き上げ、それに伴う一連の
緊縮政策がとられるようでございまして、これが
わが国の
輸出にどういう影響をもたらしますかはまだつまびらかにいたしませんが、しかしまだ直接三十一年度におきまして、この英国の新政策が
わが国の
輸出に大きな影響をもたらすとも考えられません。なお英国以外の
西欧諸国につきましては、若干の
景気減退を見るということは予想されますが、これもあまり大きな
悲観的要素はまだ見当らないようでございます。
東南アジア、
中南米等の
諸国につきましては、インフレが高進いたしておりまして、相当経済的な難問題があるようでございますが、全世界を通じて見まして、まず三十年度に比べまして、著しく悲観的な
要素は見当らない。従ってこれを
地域別に具体的な数字で当ってみまするところ、大体少くとも本年の二十億五千万
ドルを一億ないし一億五千万
ドル上回る
輸出が可能であろう、こういう
見通しを立てております。
そこで
輸入関係でございますが、このような
輸出の
見通しを
前提といたしまして、三十一年度の
輸入を考えるわけでございますが、さしあたりこの四月以降の三十一年度上期
外貨予算を編成いたさなければなりませんので、その方針につきまして検討いたしておりますが、それをかいつまんで御
説明申し上げますと、まず
前提といたしましては、ただいま申し上げましたように、三十年度におきまして
輸出伸張のささえとなりました
アメリカ経済の
好況は、来年度におきましても急激な
下降傾向は見られない、大体これが続くであろう。なお
西欧諸国の
景気の動向につきましては、先ほど申し上げましたように、下期におきまして若干の
減退を見るといたしましても、大体
横ばい程度は持続できる。それから
特需収入におきましては、
駐留軍の撤退によりまして若干の
減少を見るといたしましても、総
受取額におきまして、大体二十八億
ドル程度は可能であろう、こういう
前提に立っております。そこでこれに対しまして
輸入の
支払額につきましても、三十年度下期における
支払額及び来年度の
産業活動の上昇に伴う
需要増を考慮いたしますと、かなり
増加する
見通しでございまして、本年度を約一億五千万
ドル上回る、約二十二億二千万
ドル程度に達するものと思われるのでございます。これに
貿易外支払い等を加えますれば、約二十六億
ドル程度と見込まれる次第でございます。このような
好況は三十一年度におきましても継続するものと考えられますので、三十一年度の上期
外貨予算につきましては、
国内産業活動の上昇に伴う
輸入需要の
増大傾向にもかんがみまして、また世界の
貿易自由化の
趨勢をも勘案いたしまして、できるだけ
輸入数量を
増加しようという考え方でおります。
そこでこれをさらに具体的に分析して御
説明申し上げますと、まず
輸入数量の
増加でございますが、これを一方におきましてもちろん国際的な
趨勢から申しますれば、できるだけ
自由化の割合を大きくいたしますとか、あるいは
数量をよけいとるということが望ましいのでございますが、一方これをはばむ要因といたしまして、
国際競争力の弱い
農産物、
鉱産物、あるいは
重化額工業製品等、
国産保護の問題がございます。また大部分を
輸入に依存しておる
工業原材料類につきましては、できるだけ
輸入量を
増加するのが望ましいのでありますが、またこれが
過当競争の弊害を生じまして、
産業の安定を害するという問題もございます。しかしながら全般的に申しますれば、
物資需給の
円滑化をはかり物価の
引き下げ、経済安定を確保するという見地から申しまして、三十一年度の上期におきましては
生活必需物資、あるいは
輸出品生産用の
原材料、あるいは
合理化用機械等につきましては、極力
輸入量を
増加しようというふうに考えております。なおその
予算実施の方法についてでございますが、先ほど来申し上げます世界的な
貿易自由化の
趨勢にも対処いたしまして、
自動承認品目をできるだけ拡充する、あるいは
グローバル予算を
拡大するというような
方向に努力をいたして参りたいと存じます。しかしながらただいま申し上げましたのは一応の
方向でございまして、これを具体的に
個々の
品目に当ってみますと、先ほど申し上げました
国内産業保護の見地、あるいはまた
貿易上から見ましても、
協定貿易遂行の
必要等から、必ずしもこの理想のように大幅な
数量の
拡大あるいは
自動承認制の
拡大というようなことも現実には直ちに期待できないような
要素もございますので、この点をあわせ考えまして、その
数量あるいは
予算の
実施方式等につきましてただいま慎重に検討中でございます。
次に最近におきます諸外国との
貿易上の問題につきましてかいつまんで御
説明申し上げます。まず
東南アジア地区につきましては、大きな問題が
インドネシアでございまして、現在の
日本・
インドネシアの支払い取りきめは一九五二年八月に締結されたものが数次にわたって延長されまして現在に及んでおります。ただ最も問題となりますのは、従来わが方の著しい
輸出超過のために、現在約一億八千万
ドルの
累積債権を生じております。この回収の見込みが容易に立ちませんので、
輸出権方式等によりまして
輸出の
調整をはかっておりますが、この終局的な
解決といたしましては、どうしても賠償問題の処理とあわせて考えなければならない。従いまして当分この
状況は続くものと考えざるを得ないと存じております。
次に
タイでございますが、
タイにつきましては従来
清算勘定を通じまして
貿易が行われておりましたが、最近の
状況では、必ずしも
清算勘定がわが方の
貿易にとりまして有利ではないということがわかりましたので、この
清算勘定方式を廃止いたしまして、
現金取引に移行することといたしまして、目下バンコックにおきまして
交渉中でございますが、
タイとの
貿易で一番の問題は、
タイから米を幾らでどれだけの
数量を買うかということがわが方の
輸入サイドとして問題になります。同時に
輸出サイドといたしましては
重工業品、化学工業品等出にくい
物資が従来
日タイ・
オープン協定を通じまして相当出ておりましたが、これが
清算勘定廃止後、いかにして
国際競争にたえながらこれらの出にくい
物資の
輸出を増進していくかということが、今後の大きな問題になると存じます。
パキスタンにつきましては、
現行協定が一月末まで延長中でございます。近く新
協定の
交渉を開始する予定でございますが、この国につきましては従来
パキスタンの綿花を
一定数量買うという約束をいたしますとともに、こちら側の
綿糸布あるいは
鉄鋼類、
プラント類等につきまして向う側に
一定数量の
買付の約束をさせるという、いわゆるシングル・
ライセンス方式をとって
貿易の
拡大をはかって参ったのであります。今回の新
協定の
交渉につきまして、従来のような
方式がとれるかどうかということは、
米綿の
委託加工の問題とも関連いたしまして、
慎重研究を要する問題であると思います。
ビルマにつきましては、これは
賠償協定の問題がございますが、そのほかに、先ほど
パキスタンについて申し上げましたような
米綿の
米国の
余剰農産物売却に関する
協定が
ビルマとの間に調印されまして、
パキスタン方式によりまして
委託加工を第三国にさせる、
わが国もこれのうちに加わるということが予想されるのでございますが、そのほか一般的には
賠償協定に基く賠償の
実施の問題、あるいは
賠償協定に伴って締結されました
経済協力協定の
実施の
問題等がございます。
次は
韓国でございますが、これは従来
わが国の
輸出超過によりまして、
日韓の
オープン・アカウントというものは大体わが万の四千七百万
ドルの
累積債権を持っておったのでございますが、昨年の八月、御承知のように
韓国の対
日経済断交の宣言がございまして、その後
両国間の
貿易は事実上途絶に近い状態になっておったのでありますが、本年の一月になりまして、
先方から
日韓の
貿易の再開について声明が行われたのでございます。しかしながら、この
日韓貿易再開に当りまして、
韓国ミッションといたしまして、非常に詳細な点について事前に
承認制度をとり、あるいは今後の
日韓貿易は約一千三百万
ドル程度で均衡させるが、その中にはノリの四百万
ドルあるいは
鮮魚類の二百万
ドルというものを含めるというような宣言が、
先方からなされております。これらのノリ、
鮮魚等につきましては、
輸入の面から申しましても相当むずかしい問題がございます。果して今後
両国間に
均衡状況が続けられるかどうかということは非常に困難な問題のように考える次第であります。なおそのほか根本的には
日韓の
国交関係の
悪化を
前提といたしまして、
貿易上でも非常に困難な問題があるということは御承知の
通りでございます。
次に
台湾でございますが、
台湾につきましては従来の
貿易計画が今年の三月末をもって終りますので、近く台北におきまして新
協定の
交渉を行う予定でございます。この国につきましては、
台湾からの砂糖あるいは
米等をできるだけ安く買うということが問題でございまして、来たるべき会談におきましてもこの点を強く要求するつもりでございます。
先方は
砂糖等につきましては長期の
買付契約をわが方に要求いたして参っております。なお
輸出入規模につきましても、年々
日本の入超の幅が大きくなっておりますので、わが方から
台湾に対する
輸出を一そう伸張する必要がございます。この点も来たるべき
日台会談におきまして
十分話し合いをいたすつもりでございます。
次に中共でございますが、これはしばしば
予算委員会あるいは本
委員会等におきましても問題が提起されておるところでございます。昨年
日中輸出入組合の
成立を見ましたので、この
組合を中心といたしまして、できるだけ――もちろん
禁輸品の
輸出等につきましては、別途考えなければなりませんが、
禁輸品に該当しない
品目につきましては、この
日中輸出入組合を通じまして、従来の
個別バーター方式を
総合バーター方式に改める等、できるだけその
拡大をはかりたいというふうに考えております。
次に
アメリカ関係でございますが、
米国におきまして
日本品の
輸入制限運動が行われておること、ことに
繊維につきましてこれが重大化しておるということにつきましては、先ほど
繊維局長からお話のあった
通りでございまして、それに対する
対策も、
通商局といたしましても
繊維局と
十分連絡の上、できるだけの善処をいたしております。それは先ほどの
小室局長の
説明によって御了承願ったと存じますので、
繊維につきましての御
説明は省略いたしますが、
繊維以外にもマグロ、
陶磁器等につきましてもなお問題を包蔵しております。できるだけ
輸出組合等の
自主的制限措置等によりまして、
米国側を刺激しないように、秩序ある
輸出の
増加をはかるように努力をいたしたいと存じております。
次に
カナダについてでございますが、従来
カナダとの
関係は
わが国の非常な
輸入超過になっておったのでございます。
日カ協定の
成立あるいは
日本の
ガット加盟による
カナダ側の
関税引き下げ等によりまして、最近著しい改善を見せております。しかし
繊維製品その他につきまして、やはり
アメリカと同じような問題が起る可能性もございますので、その点は十分注意しながら秩序ある
輸出の確立に努力をいたしたいと考えております。
南米に参りましてアルゼンチンでございますが、これは約九千万
ドル近くの
累積債権を抱えまして、これが回収が事実上むずかしいという
状況におきまして、先ほど
通商局長を団長といたします調査団を送りまして、日ア
貿易の改善につきまして協議いたさせたのでありますが、その結果、アルゼンチンの経済の現状におきまして、急速にこれが回収をはかるしいうことは事実上なかなかむずかしいようでございますが、できるだけアルゼンチン産の品物を多量に買い付ける、ことに小麦、羊毛等につきましてこれをできるだけ買うということによりまして、その
累積債権を減らすように努めますと同時に、第三国の仲介
貿易等も大いにやる、あるいは
累積債権のうちから投資に充てる等、あらゆる方策を使いまして、この
累積債権の
減少に努めたいと考えております。なおアルゼンチンの最近の
状況では、できるだけ
オープン・アカウント制度を廃止いたしまして、多角決済
方式に移行いたしたいという希望が
先方に強くて、
西欧諸国等に働きかけておるようであります。
日本といたしましてこの多角
貿易決済機構に入るかどうかという問題につきましても、慎重にその利害を検討中でございます。
ヨーロッパに参りましてまず英国でございますが、これは昨年十月に
貿易取りきめをいたしまして、
日本及びスターリング
地域間の
貿易の
拡大均衡ということを目ざしておる次第でございますが、この三月中旬からロンドンにおきまして、この
貿易取りきめの中間レビューをやるということになっております。この中間レビューにおきまして、従来の
予算の遂行の
実績等を検討いたしまして、今後の四月から十月に至る
予算の運用
問題等につきましても協議をいたすことになっております。日英取りきめの基本原則は、スターリング
地域からかせいだポンドは、
日本が必ずスターリング
地域に払うという建前になっておりますので、現在までの
実施状況を見ますと、大体
輸入の方も順調に進んでおりますし、従いまして
輸出の方につきましても、心配いたしましたような
輸入の制限等を受けることなく、日英及び
日本とスターリング
地域間の
貿易はまずまず順調に進んでおると考えてよいと思います。
ドイツとの
関係でありますが、これは昨年十月までございました清算
協定を廃止いたしまして、現金決済
方式に移行したのでございますが、わが方といたしましては、できるだけドイツの
自由化に均霑をして
輸出を伸ばすということを目途といたしまして
交渉をいたしております。何分
繊維、ミシン、
陶磁器等につきまして、ドイツ側が
日本の
輸入に対して十分な
自由化を与えるということを希望いたしませんので、これらの
日本側から要求すべき特定
品目についてさらに
輸入ライセンスをよけい出すことを要求いたしておりますが、
先方はこれに対しまして、ドイツの特産品である機械あるいは
鉄鋼類につきまして、
日本側がさらに大幅な譲歩をすることを要求いたしております。目下ボンにおきまして相談中でございます。
なおスェーデンにつきましても、ほぼ似たような問題がございまして、これも従来の
オープン・アカウントを廃しまして、現金決済に移行すると同時に、双方が
貿易拡大のために、許される範囲のできるだけ多い
自由化を与え合うという
方式で、目下スエーデンにおきまして
交渉中でございます。
中近東につきましては、まず問題は、
貿易量といたしましてはあまり大きくはございませんが、一番むずかしい問題としてトルコの問題がございます。トルコにつきましては、昨年二月結ばれました
協定によりまして、
オープン・アカウントをもって
貿易が行われることになっておりますが、
先方の
輸入制度が非常に特殊なものでありますのと同時に、インフレーションによって物価高になつておりまして、わが方の
輸出が全然伸びない。
先方からこちらの買い付けるものは非常に高いという問題がございまして、この
輸出入を
調整させるために、一応資格商社を限定するという制度でスタートをいたしたのでございますが、これがなかなか
先方側との話し合いにおきましてむずかしいことになっております。この難点を除きますために、現在ミッションをトルコに派遣して
交渉中でございますが、わが方の制度につきましても、種々再検討を加える必要があると存じますので、目下慎重に検討中でございます。
大体諸外国との
関係におきましておもな問題点を申し上げたつもり、でございますが、このような
状況におきまして三十一年度の
貿易見通しは、大体悲観すべき
要素はあまりないと考えていいのでございます。一番の問題は、
米国あるいは
カナダ、
ヨーロッパ等におきまして、先ほど申し上げましたような
わが国からの
輸出品に対して、あるいはダンピング、あるいはその
数量があまり急激にふえるというようなことからの、反撃が見られるということでございます。このように
輸出は伸びておりますが、必ずしもこのままほうっておいてもいいという問題でもございませんので、通産省といたしましても、依然強力な
輸出振興策をとっていく必要があると考えます。
三十一年度といたしまして私どもが考えたいと思っております
輸出振興策の
方向につきまして、ごく簡単に申し上げますならば、まず経済外交の推進でございまして、通商航海条約をできるだけ結ぶ。あるいはガット三十五条を援用いたしております国に対しましては、この三十五条援用の撤回を求める、あるいは賠償問題をできるだけ早く
解決するという部面が必要なことはもちろんでございますが、そのほかにもなお海外の
市場調査等も、従来不十分でございました点をで送るだけ改善をして、大いにやって参りたいと考えております。なおジェトロの活動等につきましても、従前にもましてこれを活用いたしたいと考えております。
貿易斡旋所あるいは海外の見本市の参加等も積極的にその活動を進めまして、ことに
わが国の
貿易品といたしまして一番出にくいブラント類、重化学工業品等につきましても、これの
輸出促進をはかりますために、
日本プラント
輸出協会その他の
関係機関を動員して参りたいと考えております。
なお金融面では、
輸出入銀行の融資につきまして、従来以上の努力を続けたいと考えておりますが、特に海外投資を促進いたしますために、新たに海外投資保険制度を新設いたすこととなりました。従来の
輸出保険法を改正いたしまして、この制度を入れるための改正法律案を本国会に提案して、御審議を願うことにしております。
国内的には
国内経済の安定、あるいは
産業の合理化を進めることはもちろんでございまして、
通商局といたしましても、
産業原局と十分な連絡のもとに、
貿易促進の見地からこのような施策を進めていただくことを要望いたしております。
その他商社外貨保有制をできるだけ
拡大をする。あるいは先ほど申し上げましたように
貿易の
自由化を促進してこちら側の
輸入態勢を
自由化に近づけるとともに、
先方に対しましても
輸出を促進してその
自由化に均霑するというような
措置も考えたい、このように考えております。
このような構想のもとに三十一年度の
貿易振興費の
予算を要求いたしたのでごさいますが、大体前年同様の
予算を一応大蔵省の査定を経まして、本国会に御審議を願うことになっております。大体おもな項目につきまして、ごく簡単に御
説明申し上げたつもりでございます。